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特表2023-551405高エネルギー荷電粒子線遮蔽のための多機能複合構造材料
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  • 特表-高エネルギー荷電粒子線遮蔽のための多機能複合構造材料 図1
  • 特表-高エネルギー荷電粒子線遮蔽のための多機能複合構造材料 図2
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  • 特表-高エネルギー荷電粒子線遮蔽のための多機能複合構造材料 図4
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-12-08
(54)【発明の名称】高エネルギー荷電粒子線遮蔽のための多機能複合構造材料
(51)【国際特許分類】
   G21F 1/08 20060101AFI20231201BHJP
   G21F 1/10 20060101ALI20231201BHJP
   G21F 3/00 20060101ALI20231201BHJP
   G21F 3/02 20060101ALI20231201BHJP
   B64G 1/54 20060101ALI20231201BHJP
【FI】
G21F1/08
G21F1/10
G21F3/00 N
G21F3/02 B
B64G1/54
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023528962
(86)(22)【出願日】2021-11-24
(85)【翻訳文提出日】2023-05-15
(86)【国際出願番号】 US2021060836
(87)【国際公開番号】W WO2022115614
(87)【国際公開日】2022-06-02
(31)【優先権主張番号】63/118,384
(32)【優先日】2020-11-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523177975
【氏名又は名称】コズミック シールディング コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100098475
【弁理士】
【氏名又は名称】倉澤 伊知郎
(74)【代理人】
【識別番号】100130937
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100144451
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 博子
(74)【代理人】
【識別番号】100123630
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邊 誠
(72)【発明者】
【氏名】シーヴァー レンビット
(72)【発明者】
【氏名】バーゴーティ ファクリ ヤンニ
(57)【要約】
第1の遮蔽層(210)、第1の遮蔽層上に設けられた少なくとも1つの金属含有層(208)、および第1の遮蔽層と反対側で少なくとも1つの金属含有層上に設けられた第2の遮蔽層を有する複合材料であって、第1の遮蔽層(210)および第2の遮蔽層が各々かつ/あるいは複合材料の他の層と組み合わせ状態で、放射線遮蔽特性を備えた複合材料を提供することを特徴とする複合材料。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複合材料であって、
第1の遮蔽層と、
前記第1の遮蔽層上に設けられた少なくとも1つの金属含有層と、
前記第1の遮蔽層と反対側で前記少なくとも1つの金属含有層上に設けられた第2の遮蔽層とを有し、
前記第1の遮蔽層および前記第2の遮蔽層は、各々かつ/あるいは前記複合材料の他の層と組み合わせた状態で、放射線遮蔽特性を備えた前記複合材料を提供する、複合材料。
【請求項2】
前記少なくとも1つの金属含有層の反対側で前記第2の遮蔽層上に設けられた1つ以上の構造層をさらに含み、各構造層は、多機能複合材料から成る、請求項1記載の複合材料。
【請求項3】
前記1つ以上の構造層は、少なくとも1つの流星塵層上に設けられた少なくとも1つの原子状酸素抵抗層を含み、前記少なくとも1つの流星塵層は、前記少なくとも1つの金属含有層の反対側で前記第2の遮蔽層上に設けられている、請求項2記載の複合材料。
【請求項4】
前記多機能複合材料は、耐酸化性材料、耐熱性材料、およびポリマー系材料を含む、請求項2または3記載の複合材料。
【請求項5】
前記少なくとも1つの金属含有層の反対側で前記第1の遮蔽層下に設けられた少なくとも1つの熱保護層をさらに有する、請求項1~4のうちいずれか一に記載の複合材料。
【請求項6】
前記第1および前記第2の遮蔽層は、一組の機械的・熱的要件を満たす放射線抵抗性複合材料を含む、請求項1~5のうちいずれか一に記載の複合材料。
【請求項7】
前記第1の遮蔽層は、熱可塑性ポリマーを含み、前記熱可塑性ポリマーには1種類以上の化合物がドープされている、請求項1~6のうちいずれか一に記載の複合材料。
【請求項8】
前記1種類以上の化合物は、少なくともホウ素(B)および/またはリチウム(Li)を含む、請求項7記載の複合材料。
【請求項9】
前記1つ以上の金属含有層は、原子番号(Z)の金属または金属酸化物を含み、(Z)は、22~30および/または72~79である、請求項1~8のうちいずれか一に記載の複合材料。
【請求項10】
原子番号(Z)は、少なくとも2つの金属含有層の金属または金属酸化物について13である、請求項9記載の複合材料。
【請求項11】
前記1つ以上の金属含有層は、原子番号(Z)が72~79の少なくとも1つの金属または金属酸化物を含み、前記少なくとも1つの金属含有層は、これよりも小さい原子番号(Z)の少なくとも2つの他の金属含有層相互間に配置されている、請求項9または10記載の複合材料。
【請求項12】
各金属含有層は、1mm~30mmの厚さを有する、請求項9~11のうちいずれか一に記載の複合材料。
【請求項13】
各層は、他の各層に合体して単一構造としての前記複合材料を形成するようになっている、請求項1~12のうちいずれか一に記載の複合材料。
【請求項14】
複合遮蔽材料であって、
最適化された熱的性質を備える複合遮蔽材料を形成するよう各々が互いの上に積み重ねられた、または互いに合体するグラジエントとしての複数の多機能層を有し、
前記複数の多機能層は、少なくとも2つの遮蔽層を含み、各遮蔽層は、構造層、金属含有層、流星塵層、および熱保護層の中から選択された少なくとも2つの他の多機能層相互間に設けられている、複合遮蔽材料。
【請求項15】
複合遮蔽材料であって、前記複合遮蔽材料は、請求項1~13のうちいずれか一に記載の前記複合材料を含む、複合遮蔽材料。
【請求項16】
複合材料を提供する方法であって、
前記複合材料のモデルを仮想環境内に作り出すステップを含み、前記モデルは、第1の遮蔽層、前記第1の遮蔽層上に設けられた少なくとも1つの金属含有層、および前記少なくとも1つの金属含有層上に設けられた第2の遮蔽層を有する複合材料のデジタル表示を含み、
前記複合材料の組成物をデバイスに提供するステップを含み、
前記組成物を用いて前記モデルに基づき前記複合材料を作り出すステップを含み、前記組成物は、前記複合材料の層を形成するよう組み合わされ、
1つ以上の入力に基づいて前記モデルに従って、前記複合材料上の欠陥または欠点をなくすステップを含む、方法。
【請求項17】
前記組成物を用いて前記モデルに基づき前記複合材料を作り出す前記ステップは、前記組成物を0゜たて方向および45゜~90゜よこ方向に合体して前記複合材料の少なくとも1つの層を生じさせるステップをさらに含み、前記組成物は、炭素繊維および熱可塑性ポリマーを含む、請求項16記載の方法。
【請求項18】
前記組成物は、請求項1~14のうちいずれか一に記載の複合材料を作り出す前にまたは後に架橋される熱可塑性ポリマーを含む、請求項16または17記載の方法。
【請求項19】
前記作り出されたモデルは、請求項1~14のうちいずれか一に記載の複合材料または複合遮蔽材料をさらに含む、請求項16~18のうちいずれか一に記載の方法。
【請求項20】
前記複合材料は、銀河宇宙放射線、放射線帯内に取り込まれた粒子に対しかつ太陽エネルギー粒子線およびX線とガンマ線を含む電磁線に対して遮蔽を可能にし、高速、低速、および熱二次中性子に対して遮蔽を可能にし、構造的目的に役立ち、弾道保護を可能にし(例えば、流星塵、デブリなどに対して)、地球低軌道(LEO)のところでまたはこれよりも上方で用いられた場合に原子状酸素に対して保護を可能にし、熱防御および熱保護を可能にし、耐火性または火災誘発効果に対する耐性をもたらし、またはこれらの組み合わせを行う、請求項1~14のうちいずれか一に記載の複合材料。
【請求項21】
前記複合材料は、電磁線に対して遮蔽を可能にし、構造的目的に役立ち、弾道保護を可能にし(例えば、流星塵、デブリなどに対して)、地球低軌道(LEO)のところでまたはこれよりも上方で用いられた場合に原子状酸素に対して保護を可能にし、熱的効果に対して保護を可能にし、またはこれらの組合せを行う、請求項1~14のうちいずれか一に記載の複合材料。
【請求項22】
前記複合材料は、宇宙放射線および太陽放射線に対する遮蔽を可能にし、高速、低速、および熱二次中性子に対して遮蔽を可能にし、X線および光子に対して遮蔽を可能にし、構造的目的に役立ち、弾道保護を可能にし(例えば、流星塵、デブリなどに対して)、地球低軌道(LEO)のところでまたはこれよりも上方で用いられた場合に原子状酸素に対して保護を可能にする、請求項1~14のうちいずれか一に記載の複合材料。
【請求項23】
請求項1~14のうちいずれか一に記載の複合材料の使用方法であって、前記方法は、前記複合材料を用いて、宇宙航空機の受ける放射線暴露を遮蔽するとともに/あるいは前記複合材料を宇宙航空機、宇宙服、宇宙居住環境、またはこれらの組み合わせのための構成材料の一部として用いるステップを含む、方法。
【請求項24】
請求項1~14のうちいずれか一に記載の複合材料の使用方法であって、前記方法は、前記複合材料を宇宙航空機の遮蔽のための構成材料、居住環境、宇宙服の構成材料、または居住環境の放射線遮蔽のための構成材料、人工衛星または任意の高高度宇宙船の遮蔽のための構成材料に加えて、構成材料として用いるステップを含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、地球大気圏の上方およびこれを超えた空間で用いられる遮蔽のための複合多機能材料に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、宇宙技術においてなされた急速な技術的進歩により、宇宙旅行および月や他の惑星での将来の居住を可能にするような目覚ましい成果が得られた。これらの成果により、過酷な宇宙環境で利用可能な保護材料の開発を続ける必要があり、これは、かかる材料が敏感なまたは高感度のエレクトロニクス周りに位置し、宇宙航空機内での特別な放射線シェルター周りに位置し、または宇宙航空機内部の他の機器周りに位置する宇宙航空機の外郭構造の一部として用いられるにせよ、外側遮蔽構造体として用いられるにせよいずれにせよそうである。
【0003】
かかる材料は、宇宙で使用する資格がなければならず、しかも、幾つかの試験を受けなければならず、かかる試験によって、材料が以下の表1に従ってどのような「技術完成度レベル」(TRL1~TRL9)に格付けされるかが決まる。
【0004】
表1
【0005】
試験に合格するためには、材料科学、放射線物理学、放射線防護についての知識、ならびに異なる材料における光子、電子、イオンの反応および輸送についての理解が必要不可欠である。本明細書において説明する複合材料は、少なくとも人間およびエレクトロニクスを地球の大気よりも上でありかつこれを超えたところの宇宙空間内における有害な物理的損傷、熱的損傷、化学的損傷、および放射線による損傷から守るための必要な保護を可能にすることによってこれらの試験に合格することを目的としている。
【0006】
以下に説明する実施形態は、上述の既知のアプローチの欠点のうちの任意のものまたは全てを解決する具体化例には限定されない。
【発明の概要】
【0007】
この発明の概要の項は、詳細な説明において以下にさらに説明する単純化された形態の技術的思想の選択を導入的に記載するために設けられている。この発明の概要の項は、クレーム請求された発明の重要な特徴または必須の特徴を特定するわけではなく、クレーム請求された本発明の範囲を定めるために用いられているわけでもなく、本発明の実施を容易にするとともに/あるいは実質的に同一の技術的作用効果を達成するのに役立つ変形例および別の特徴は、本明細書において開示する本発明の範囲に含まれると解されるべきである。
【0008】
本項は、詳細な説明において以下にさらに説明する単純化された形態の技術的思想の選択を導入的に記載するために設けられている。この発明の概要の項は、クレーム請求された発明の重要な特徴または必須の特徴を特定するわけではなく、クレーム請求された本発明の範囲を定めるために用いられているわけでもなく、本発明の実施を容易にするとともに/あるいは実質的に同一の技術的作用効果を達成するのに役立つ変形例および別の特徴は、本明細書において開示する本発明の範囲に含まれると解されるべきである。
【0009】
本発明は、種々の形式の放射線に対する遮蔽を行うための多機能層状構造を提供する。多機能層状構造を複合材料または複合多機能材料として説明する。複合材料の層を互いに合体させ、それにより単一の多機能構造が形成される。複合材料は、構造的支持作用、弾道保護作用(流星塵、デブリなど)、熱/火災保護作用、および原子状酸素に対する保護作用をさらに提供する。
【0010】
本発明の第1の観点では、複合材料であって、第1の遮蔽層と、第1の遮蔽層上に設けられた少なくとも1つの金属/金属酸化物層と、第1の遮蔽層と反対側で少なくとも1つの金属/金属酸化物層上に設けられた第2の遮蔽層とを有し、第1の遮蔽層および第2の遮蔽層は、各々かつ/あるいは複合材料の他の層と組み合わせた状態で、放射線遮蔽特性を備えた複合材料を提供することを特徴とする複合材料が提供される。
【0011】
本発明の第2の観点では、複合遮蔽材料であって、最適化された熱的性質を備えた複合遮蔽材料を形成するよう各々が互いの上に積み重ねられた、または互いに合体するグラジエントとしての複数の多機能層を有し、複数の多機能層は、少なくとも2つの遮蔽層を含み、各遮蔽層は、構造層、金属/金属酸化物層、流星塵層、および熱保護層の中から選択された少なくとも2つの他の多機能層相互間に設けられていることを特徴とする複合遮蔽材料が提供される。
【0012】
本発明の第3の観点では、複合材料を提供する方法であって、本方法は、複合材料のモデルを仮想環境内に作り出すステップを含み、モデルは、第1の遮蔽層、第1の遮蔽層上に設けられた少なくとも1つの金属/金属酸化物層、および少なくとも1つの金属/金属酸化物層上に設けられた第2の遮蔽層を有する複合材料のデジタル表示を含み、本方法は、複合材料の組成物をデバイスに提供するステップと、組成物を用いてモデルに基づき複合材料を作り出すステップとをさらに含み、組成物は、複合材料の層を形成するよう組み合わされ、本方法はさらに、1つ以上の入力に基づいてモデルに従って、複合材料上の欠陥または欠点をなくすステップを含むことを特徴とする方法が提供される。
【0013】
本発明の第4の観点では、種々の図に記載された複合材料が提供され、この複合材料は、第1の層、第1の層上に設けられた第2の層、第1の層とは反対側で第2の層上に設けられた第3の層を有し、第2の層は、第1の層と第3の層との間に設けられるようになっており、第1の層は、構造かつ放射線遮蔽層を有し、第2の層は、放射線遮蔽層を有し、第3の層は、流星塵および熱保護層を有する。
【0014】
複合材料を製造するために本明細書において記載する方法は、タンジブル記憶媒体に記憶された機械可読形式のソフトウェア、例えば、コンピュータプログラム形態のソフトウェアによって実行でき、このコンピュータプログラムは、プログラムが複合材料を製造するコンピュータまたは装置上で実行されたときに本明細書において説明する方法のうちの任意のもののステップ全てを実施するようになったコンピュータプログラムコード手段を含み、コンピュータプログラムは、コンピュータ可読媒体に具体化されるのがよい。タンジブル(または非一過性)記憶媒体の例としては、ディスク、サムドライブ、メモリカードなどが挙げられ、これらは伝搬信号を含まない。ソフトウェアは、パラレルプロセッサまたはシリアルプロセッサ上での実行に適していると言え、したがって、方法ステップを任意適当な順序でまたは連続的に実施することができるようになっている。流星塵および熱保護層。
【0015】
本明細書において説明するオプションとしての特徴またはオプションは、当業者には明らかなように、適宜組み合わせ可能であり、しかも本発明の諸観点の任意のものと組み合わせ可能である。
【0016】
以下の図面を参照して本発明の実施形態について例示的に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】複合材料の互いに異なる層の組成物の例を示す図であり、複合材料が宇宙航空機内における居住を可能にする構成材料として用いられている状態を説明する図である。
図2】遮蔽のための複合多機能材料の互いに異なる層の組成物の別の例を示す図である。
図3】遮蔽のための複合多機能材料の互いに異なる層の組成物の別の例を示す図である。
図4】遮蔽のための複合材料を提供する例示の方法を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
共通の参照符号は、類似した特徴を示すために図全体を通じて用いられている。
【0019】
本発明の実施形態を以下に例示としてのみ説明する。これらの実施形態は、本出願人に現在知られている本発明の具体的実施に適したモードを表しており、ただし、これら実施形態は、これを達成することができる唯一の方法ではない。本明細書は、実施例の機能、および実施例を構成して作用させるステップの順序を記載している。しかしながら、同一または等価な機能および順序は、異なる実施例によって達成できる。
【0020】
本明細書において、遮蔽、すなわち、例えば、陽子、アルファ粒子および重イオンのような荷電粒子、例えばX線およびガンマ線のような光子、高速、低速、および熱二次中性子に対する遮蔽を可能にするとともに構造的目的、弾道保護(流星塵、デブリなど)、熱防御および地球低軌道(LEO)のところまたはこれよりも上方で用いられたときの原子状酸素に対する保護を可能にする多機能層状構造または複合材料について説明を行う。例えば、遮蔽は、銀河宇宙放射線、放射線帯内に取り込まれた粒子並びに太陽エネルギー粒子線およびX線とガンマ線を含む電磁(放射)線の作用効果を最小限に抑えるようになっているのがよい。
【0021】
複合材料は、1つ以上の層を有し、かかる層は、互いに次第に合体して単一構造体を形成するのがよい。本明細書で用いられる「層」は、放射線遮蔽特性を備えた複合材料の2つ以上の層を指している。これらの層は、多機能であるのがよく、または、宇宙空間に位置しまたは宇宙空間を動いている物体を物理的、熱的、化学的、および放射線による損傷から保護しまたはこれらを最小限に抑えることによって保護するという単一の目的に役立つのがよい。例えば、層は、腐食性の原子状酸素に起因した化学的損傷を軽減するために使用されるのがよい。
【0022】
層はまた、グラジエント(gradient)、コーティング、または単一もしくは複数の層の副層の形態をしていてもよい。層は、互いに次第に合体され、それにより単一の層状構造が形成される。層は、互いの上に積み重ねられまたは設けられても良く、それにより複合材料が形成される。各層は、同一または異なる最適化された機械的および/または熱的性質を備えた構造材料を含むのがよい。層は、遮蔽層、金属含有層、ならびに以下の項で説明する任意他の層を含む。
【0023】
遮蔽層は、放射線遮蔽特性を備えた複合材料、層、グラジエント、またはコーティングの一部を指し、または宇宙空間内の物体への放射線暴露からの保護をもたらす。遮蔽層は、1種類以上の化合物をドープした熱可塑性ポリマー、例えば、超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)または中密度ポリエチレン(MDPE)を含む。化合物は、ホウ素(B)を主成分としまたはリチウム(L)を主成分とするのがよい。化合物としては、B、BN、BC4、B23、LiH、6LiH LiBH4、Li10BH4、Li21212、Li4BH4(NH23、NH3BH3、NH3、Mg(BH42が挙げられるが、これらには限定されない。リチウムは、天然Liか濃縮された6Liかのいずれであってもよく、ホウ素は、天然Bか濃縮された10Bかのいずれであってもよい。放射線保護作用を提供する目的としては、種々の別のBを主成分としまたはLiを主成分とする組成物およびこれらの誘導体を遮蔽層の一部として熱可塑性ポリマーと一体化されているのがよくまたはこれと一体化可能である。熱可塑性ポリマー、すなわちUHMWPE、HDPEまたはMDPEは、機械的強度を保証するよう作られ、熱可塑性ポリマーの高い水素含有量は、宇宙空間内に存在する高または高エネルギーの荷電粒子に対して良好な放射線遮蔽特性または性質を保証する。また、熱可塑性ポリマーは、二次的に発生する中性子を減速させる。ホウ素および/またはリチウムの具体的には1~20%のドーピングは、低速中性子および熱中性子を吸収するために行われ、遮蔽の品質がさらに向上する。
【0024】
図1図3を参照して説明する遮蔽層の一例は、流星塵・軌道デブリ(MMOD)から保護するためにも働く機械的に強固な放射線遮蔽材であるのがよい。層は、1~20%(すなわち5%)のホウ素および/またはリチウム化合物をドープしたUHMWPEまたはHDPEを含む。ホウ素およびまたはリチウム化合物は、B、BN、BC4、B23、LiH、6LiH LiBH4、Li10BH4、Li21212、Li4BH4(NH23、NH3BH3、NH3、Mg(BH42であるのがよい。ホウ素化合物およびリチウム化合物に関し、リチウムは、天然Liか濃縮された6Liかのいずれであってもよく、ホウ素は、天然Bか濃縮された10Bかのいずれであってもよい。化合物としては、アルミニウム、水酸化アルミニウム、リン、窒素、アンチモン、塩素、臭素、マグネシウム、水酸化マグネシウム、アンチモン、錫‐亜鉛、炭素が挙げられるが、これらには限定されず、これら化合物は、耐火剤/耐火炎難燃剤として混入されるのがよい。
【0025】
図を参照すると、遮蔽層の別の例は、機械的に強固な放射線遮蔽材であるのがよい。遮蔽層は、1~20%(すなわち15%)のホウ素および/またはリチウム化合物をドープしたUHMWPEまたはHDPEを含む。ホウ素およびまたはリチウム化合物は、B、BN、BC4、B23、LiH、6LiH LiBH4、Li10BH4、Li21212、Li4BH4(NH23、NH3BH3、NH3、Mg(BH42であるのがよい。ホウ素化合物およびリチウム化合物に関し、リチウムは、天然Liか濃縮された6Liかのいずれであってもよく、ホウ素は、天然Bか濃縮された10Bかのいずれであってもよい。アルミニウム、水酸化アルミニウム、リン、窒素、アンチモン、塩素、臭素、マグネシウム、水酸化マグネシウム、アンチモン、錫‐亜鉛、炭素もまた、難燃性化合物として添加されるのがよい。
【0026】
さらに、図を参照すると、構造層は、LEOに存在する原子状酸素に対する保護のための層を含み、このLEOでは、強力なUV放射線がO2を原子状酸素に分解する。この層は、SiO2なしで作られ、8~15(体積)%のフルオロポリマー、薄金または白金層、またはシリコンを主成分とする塗料で満たされてもよい。構造層は、強固な流星塵(MMOD)、デブリおよび熱保護層をさらに含むのがよい。宇宙船および/または宇宙居住用途に関し、セラミック材料は、酸化アルミニウム(Al23)、炭化ホウ素(B4C)、または炭化ケイ素(SiC)、炭化アルミニウム(Al43)で作られる。
【0027】
金属含有層は、複合材料、層、グラジエント、またはコーティングの一部を指している。金属含有層は、例えば、金属層、金属酸化物層、ポリマーマトリックス中に分散した金属/金属酸化物粉末、金属/金属酸化物濃縮層、または複合金属/金属酸化物のコーティングであるのがよい。金属含有層は、例えば、金属/金属酸化物およびこれらの誘導体を含むのがよい。
【0028】
金属含有層は、電子、X線またはX線に由来する放射線の影響を最小限に抑えるようになっている。複合材料、層、グラジエント、またはコーティングは、1つ以上の金属含有層を構成することができる。1つまたは複数の金属含有層は、複合材料の遮蔽層相互間またはこれに隣接して位置する。金属含有層は、1mmから30mmまでの(1mmと30mmを含む)任意の厚さを有することができ、かかる金属含有層は、複合材料、グラジエント、コーティング、または熱可塑性樹脂中の金属/金属酸化物の粉末形態の一部として多数の金属含有層を形成するよう互いの上に積み重ねられる。
【0029】
金属含有層が図2および図3に示されている。これらの図と関連して、金属含有層の一例は、金属/金属酸化物、または原子番号(Z)が13に等しくまたは22~30のうちの任意の値であるポリマーマトリックス中に分散した金属/金属酸化物粉末を含むのがよく、かかる一例は、X線の発生を最小限に抑える一方で初期電子を減衰させることを目的としている。
【0030】
金属含有層、金属/金属酸化物層、またはポリマーマトリックス中に分散した酸化物粉末の別の例は、原子番号(Z)が72~79のうちの任意の値に等しい金属/金属酸化物を含むのがよく、かかる別の例は、発生したX線の減衰を最大にすることを目的としている。
【0031】
金属含有層、金属/金属酸化物、またはポリマーマトリックス中に分散した酸化物粉末の別の例は、原子番号(Z)が13に等しく、または22~30のうちの任意の値に等しい金属/金属酸化物を含むのがよく、かかる別の例は、相当多量なX線を生じさせることなく二次電子を停止させることを目的としている。
【0032】
2つ以上の金属含有層を用いて複合材料を作るのがよい。多数の金属含有層の一例は、原子番号(Z)が13に等しく、または22~30のうちの任意の値である金属/金属酸化物から成る第1の層であるのがよい。第1の層は、原子番号(Z)が72~79のうちの任意の値に等しい金属/金属酸化物から成る第2の層上に設けられる。第2の層は、原子番号(Z)が13に等しくまたは22~30のうちの任意の値に等しい金属/金属酸化物から成る第3の層上に設けられる。第1、第2、および第3の層の各々の厚さは、少なくとも1mmであるのがよく、好ましくは1mm~30mmである。これらの層は、グラジエントの形態をした熱可塑性材料の一部であるのがよい。
【0033】
理解されるように、金属含有層(または具体的には、金属/金属酸化物層)または本明細書において説明する層のうちの任意のものが、上述したように放射線遮蔽効果を生じさせるためにグラジエントとして複合材料の熱可塑性ポリマーに埋め込まれるのがよくまたはその一部をなすのがよい。この作用効果は、原子量が小さい、すなわち、13に等しくまたは22~30(22と30を含む)のうちの任意の値である金属/金属酸化物の性質に固有である。金属含有層は、電子を遮蔽する役割を果たし、原子番号が72~79(72と79を含む)の重い金属は、光子(X線およびガンマ線によって放出される)を遮蔽する役割を果たす。
【0034】
さらに理解されるように、層は、単一の複合構造を形成するために層が互いに次第に合体されるのがよい。複合材料は、1つ以上の構造層をさらに含む。構造層は、流星塵・軌道デブリ(MMOD)に対して構造的支持作用をもたらし、または物理的、熱的、腐食および放射線による損傷に対して保護するようになった複合材料、層、グラジエント、またはコーティングの一部を指している。
【0035】
図1図3を参照すると、構造層の1つの実施例は、少なくとも1つの流星塵層上に設けられた原子状酸素抵抗層を含むのがよい。構造層は、遮蔽層上に位置しまたは設けられるのがよい。構造層は、遮蔽層と一緒になって宇宙船の一体部としてかつ/あるいは宇宙居住環境内で用いられるのがよい。一般に、構造層は、多数の機能を備えた複合材料または多機能複合材料の多くの層を含むのがよい。かかる材料は、耐酸化性材料、弾道保護材料、耐熱性材料、およびポリマーを主成分とする材料を含むのがよい。多数の層は、流星塵層、熱防護層、および原子状酸素抵抗層を含むのがよい。
【0036】
多機能複合材料の1つの実施例は、耐熱性材料を含むのがよく、かかる耐熱性材料としては、酸化アルミニウム(Al23)、炭化ホウ素(B4C)、炭化ケイ素(SiC)、または炭化アルミニウム(Al43)で作られたセラミック材料が挙げられるがこれらには限定されない。多機能複合材料は、これらの軽量特性とともに、相対的硬度および耐摩耗特性を備えた物理的および熱による影響に対して保護を行う。多機能複合材料は、流星塵層またはコーティングの一部であるのがよい。
【0037】
多機能複合材料のもう1つの実施例は、耐酸化性材料を含むのがよく、かかる耐酸化性材料としては、SiO2なしで作られるとともに5~15(体積)%のフルオロポリマー、ポリマーを主成分とする材料、薄金または白金層、またはシリコンを主成分とする塗料で満たされた材料が挙げられるが、これには限定されない。多機能複合材料は、原子状酸素抵抗層またはコーティングの一部であるのがよい。
【0038】
熱保護層は、耐熱性および/または耐火性層、コーティングまたはバリヤを指し、この層は、実質的に熱伝達特性および/または耐火性特性を示す。熱保護層は、熱による損傷に対する保護に加えて、防火障壁のような火炎または火炎による損傷から保護する少なくとも1つの耐火性副層またはコーティングを含むのがよい。熱保護層は、熱保護層の互いに反対側の側部を潜在的な火災による影響から保護するためにグラフェン、ホウ酸亜鉛、三酸化アンチモン、およびグラフェンを主成分とする化合物のうちの単一の成分またはこれらの組み合わせを含むのが良い。
【0039】
機械的要件および熱的要件は、宇宙空間または地球の大気圏の上方のところ、例えば、軌道、すなわち地球低軌道(LEO)、地球中軌道(MEO)、地球静止軌道(GEO)よりも上の場所で、しかも地球と月の間に位置し、そしてこれを超えたところおよび深宇宙を含む場所で使用するのに適したある特定の規格またはしきい値を満たす特性を備えた材料の組成物に関する要件を指す。複合材料の層の示すこれらの特性は、放射線抵抗性複合材料を形成するよう組み合わされた放射線抵抗性材料の全ての組成物または部分組成物の結果である。これら特性としては、構造特性、強度または硬度特性、高エネルギー荷電粒子に対する遮蔽特性、X線およびガンマ線を含む電磁線に対する遮蔽特性、高速中性子に対する遮蔽特性、低速および熱中性子に対する遮蔽特性、外側層に関する流星塵保護、外面に施された原子状酸素抵抗性コーティング、低密度、有毒ガスを放出しないこと、融点が低すぎないこと、燃焼性が低いこと(これは、材料の比熱、熱伝導率、分解および着火温度、材料が燃えるときに生じる熱(燃焼熱)で決まる)、振動に耐えること、大きな温度変化を受けた場合であっても機能および形状が保たれること、熱伝導性および断熱性が良好であることが挙げられるが、これらには限定されない。これらの特性は、複合材料を提供しまたは製造する際に用いられ、または組成物を選択する際に用いられ、または選択するために用いられる場合がある。したがって、一オプションとして、放射線遮蔽のための多機能構造を、物体が宇宙空間に位置しまたは移動しているとき、または月面上、小惑星上、または惑星上の居住建造物のために用いられる場合に物理的損傷、熱的損傷、放射線による損傷に対する保護の面で最適化された特性を備える構造材料としても使用できる。
【0040】
構造的目的に役立つことに加えて、本明細書において説明する複合材料は、銀河宇宙放射線、放射線帯内に取り込まれた粒子に対し、かつ太陽エネルギー粒子線および電磁線に対して遮蔽を可能にすることを目的としている。放射線は、例えば、X線およびガンマ線を含むのがよい。放射線保護または遮蔽は、高速、低速、および熱二次中性子に対する放射線保護または遮蔽を含むのがよい。遮蔽は、地球低軌道(LEO)のところでまたはこれよりも上方で用いられる場合に原子状酸素に対する保護に及ぶのがよい。
【0041】
構造的に見て、複合材料は、弾道保護(例えば、宇宙空間内の流星塵、デブリ、および他の物体に対する)を可能にする。すなわち、複合材料は、宇宙航空機の受ける放射線暴露を遮蔽するために用いられるとともに/あるいは宇宙航空機、宇宙服、宇宙居住環境の構成材料の一部として用いられる。加うるに、複合材料は、宇宙航空機の遮蔽のための構成材料、居住環境、宇宙服の構成材料として使用でき、または居住環境の放射線遮蔽のための構成材料に加えて、人工衛星または任意の高高度宇宙船の遮蔽のための構成材料として使用できる。
【0042】
複合材料は、種々の仕方で生産または製造でき、かかる仕方としては、3Dプリンティングまたは3Dプリンティング技術の使用、および従来型の成形技術または方法が挙げられるが、これらには限定されない。製造または方法に関するそれ以上の細部については本明細書において説明する。
【0043】
図1は、複合多機能材料の種々の層の例示の構成または組成物を示す図であり、複合材料としての材料は、宇宙航空機居住環境用の構成材料とし用いられる。
【0044】
多機能層状構造は、地球低軌道(LEO)のところまたは例えばこれよりも上方で用いられる場合、遮蔽、例えば宇宙放射線および太陽放射線遮蔽、高速、低速、および熱二次中性子に対する遮蔽を行うとともに、構造的目的、弾道保護(流星塵、デブリなど)、および原子状酸素に対する保護に役立つ。
【0045】
図中に例示された複合材料は、互いに異なる厚さおよび組成の多くの層を備えた状態で製造されるのがよい。層の数および層の順序は、材料の用途(例えば、宇宙航空機内であれば、宇宙航空機、宇宙服の構成材料として、または宇宙居住環境用の構成材料などとしてのみ用いられた場合)で決まる。
【0046】
第1の層は、放射線遮蔽要件と構造的要件の両方を保証するために、スマートホウ素‐10(10B)またはリチウム‐6(6Li)ドープ炭素繊維強化超高分子量(UHMW)ポリエチレンまたは高密度ポリエチレン(HDPE)複合物を含むのがよく、第2の層は、最適放射線遮蔽特性を保証するために、UHMWポリエチレンまたは高密度ポリエチレン(HDPE)複合材を含む。高エネルギー帯電粒子放射線に対する放射線遮蔽有効性は、スマートポリエチレン(PE)繊維の高い水素含有量に起因している。複合材料またはスマートPE層は、この材料のイオン化放射線遮蔽特性を損なわないで、効果的な断熱材としても働くよう最適化された繊維サイズを有する。
【0047】
複合材料は、流星塵および熱保護、ならびに追加の放射線遮蔽のための第3の層をさらに有するのがよい。この層は、例えば、炭化ホウ素(B4C)(オプションとして、10Bで濃縮される)を含むのがよい。変形例として、炭化ケイ素(SiC)または炭化アルミニウム(Al43)コーティングを、流星塵および熱保護手段として使用することができる。
【0048】
第1および第2の層中のPE繊維は、高速中性子の衝突または散乱断面積が大きいので高速中性子を減速させまたは熱化することができる。次に、低速中性子および熱中性子は、1つのスマートPE層中に混ぜられたホウ素‐10(低速中性子と熱中性子については高い吸収断断面を備える)によって、かつ天然ホウ素(または濃縮ホウ素‐10)および炭化ホウ素(B4C)によって吸収されるのがよく、炭化ホウ素は、流星塵および熱保護手段として働く(天然ホウ素中のホウ素‐10の存在率は、19.9原子パーセントである)。変形例として、また、炭化ケイ素(SiC)や炭化アルミニウム(Al43)のコーティングを流星塵および熱保護手段として使用してもよい。
【0049】
二酸化ケイ素ガラスの極めて薄い層は、地球低軌道(LEO)のところに存在する原子状酸素から最も外側の層を保護することができる。
【0050】
ポリエチレン繊維は、例えば、あらゆる補強用繊維の中でも最も高い比引張強度または単位重量当たり最も高い強度、および黒鉛繊維およびボロン繊維にほぼ等しい比モジュラスを有するのがよい。
【0051】
宇宙航空機の内部に向いた層の表面上に施されている薄い保護バリヤは、優れた化学抵抗性、熱抵抗性、および機械抵抗性をもたらす。例えば、薄い可撓性黒鉛シート/層は、宇宙航空機の内部に対して化学的、熱的、および機械的保護バリヤとしての役目を果たすことができる。
【0052】
バルク材料を任意所要の形状に3Dプリンティングすることができる。その後、表面コーティングを例えば物理的気相成長(PVD)または化学気相成長(CVD)技術によって、次に、増大した温度および圧力下において層をまとめて成形することによって追加するのがよい。
【0053】
現在存在している多機能層状複合宇宙線および太陽放射線遮蔽構造のうちで構造的属性もまた有し、高速中性子、低速中性子、熱中性子に対して遮蔽を行い、しかも防火壁、熱防護、弾道保護、および原子状酸素に対する保護を行うものはない。熱防護は、宇宙航空機が地球の大気に再突入する際に特に有用であり、かかる再突入の場合、強力な太陽光、および宇宙航空機の運動エネルギーを熱エネルギーに変える空気と宇宙航空機との間の摩擦に起因して生じる極めて高い熱がこのプロセス中に示される。
【0054】
本明細書において提案する構造は、材料科学、放射線物理学、放射線防護についての知識、ならびに異なる材料におけるイオンの反応および輸送についての理解を必要とする。
【0055】
複合材料は、宇宙航空機の遮蔽のための構成材料、居住環境の構成材料、居住環境の放射線遮蔽、または人工衛星もしくは任意の高高度宇宙船の遮蔽のための構成材料に加えて、宇宙航空機用の構成材料として使用できる。
【0056】
材料の要件:1.良好な構造特性、2.良好な強度特性、3.高エネルギー帯電粒子に対する良好な遮蔽特性、4.高速中性子に対する良好な遮蔽特性、5.低速および熱中性子に対する良好な遮蔽特性、6.X線および光子に対する良好な遮蔽特性、7.外層上の良好な流星塵保護、8.外面上の原子状酸素抵抗性コーティング、9.できるだけ小さい密度、10.有毒ガスを放出しないこと、11.融点が低すぎないこと、12.燃焼性が低いこと(これは、材料の比熱、熱伝導率、分解および着火温度、材料が燃えるときに生じる熱(燃焼熱)で決まる)、13.振動に耐えること、14.大きな温度変化を受けた場合であっても機能および形状が保たれること(良好な熱伝導性および断熱性を含む)。
【0057】
図は、複合材料の層1~5の一例を示している。理解されるように、これよりも多いまたは少ない層が設けられてもよく、ただし、これらの層が少なくとも1つの遮蔽層を含むことを条件とする。複合材料の層は、グラジエント、コーティング、または単一または複数の層の副層であるのがよい。これらの層は、次第に互いに合体され、それにより単一の層状構造が形成される。この例の層1~5について、以下のように詳細に説明する。
【0058】
層1:防火障壁(熱保護/耐火性層):重量が約20~300g/m2の可撓性黒鉛シート/層。弾性黒鉛シート/層は、優れた化学抵抗性、熱的抵抗性、および機械的抵抗性をもたらし、したがって、宇宙航空機の内部に対して保護バリヤとしての役目を果たす。
【0059】
層2:大きな原子番号および高エネルギー(HZE)粒子および高速・低速・熱中性子に対する構造的および放射線遮蔽(遮蔽層):この層は、30~95体積パーセントの繊維、5~20体積パーセントの10Bを含む3Dプリンティングされた天然ホウ素またはスマートホウ素‐10(10B)ドープ炭素繊維強化超高分子量(UHMW)ポリエチレン複合材である。残りの体積パーセント分は、繊維相互間の空間を埋めるためにエポキシ樹脂マトリックスで充填されるのがよい。複合材(すなわち、スマートPE層)は、0゜たて方向および45゜~90゜よこ方向に布設された、織り合わせ炭素繊維とPE繊維の層を含むのがよい。繊維/孔径のサイズは、大きな温度変化中に構造的および形態学的変化を最小限に抑えるために材料全体にわたって最大材料強度および熱調節を行うよう最適化されるのがよい。
【0060】
層2は、天然ホウ素および天然リチウム‐6をさらに含むのがよい。UHMWに加えて、この層は、高密度ポリエチレン(HDPE)によって強化されるのがよい。HDPEは、UHMWの適当な代替手段であってよく、または、UHMWに加えてまたはこれと組み合わせて利用されるのがよい。HDPEは、熱可塑性ポリマーが利用できる他の層で使用することができる。
【0061】
層3:HZE粒子および高速中性子に対する放射線遮蔽材(遮蔽層):この層は、65~80体積パーセントの超高分子量(UHMW)ポリエチレン繊維を含む3Dプリンティングされた超高分子量(UHMW)ポリエチレン複合材である。スマートPEは、0°のたて糸方向および45°~90゜のよこ方向に布設された繊維の層を含む。繊維/孔径のサイズは、大きな温度変化中に構造的および形態学的変化を最小限に抑えるために材料全体にわたって最大材料強度および熱調節を行うよう最適化されるのがよい。層2と層3との間には、図2および図3に示すように、電子線、X線、ガンマ線に対する保護を行うよう1つ以上の金属含有層が追加されるのがよい。
【0062】
層4:流星塵および熱保護、ならびに放射線遮蔽材(構造層):この層は、例えば、炭化ホウ素、炭化ケイ素、炭化アルミニウム、またはこれらの組合せを含むのがよい。炭化ホウ素コーティング(B4C、硬度、ヤング率、圧縮強度、密度を考慮して最善の選択肢であり、しかも、これは、以下の図2に示す熱中性子に対する遮蔽材として働く)、炭化ケイ素コーティング(次善の選択肢)、または炭化アルミニウムコーティング(最後の選択肢)。炭化ホウ素は、天然ホウ素、または天然ホウ素よりも熱中性子に対する遮蔽効果が良好なホウ素‐10濃縮炭化ホウ素で作られるのがよい。
【0063】
表2:セラミックおよびスチールで作られた弾道保護材の比較
【0064】
熱試験の結果の示すところによれば、B4C層を温度1,200℃以上に当てると、12.7cm厚さの炭素フォームサンプルの底部のところで記録された最高温度は、40℃以下である。この熱的能力は、スペースシャトルで用いられた耐熱セラミックタイルの熱能力と同等である。
【0065】
ホウ素‐10の天然存在率は、19.9原子パーセントであり、したがって、この層は、熱中性子の吸収体としても働く。ホウ素‐10を濃縮したB4Cであれば、熱中性子の吸収量は、天然ホウ素が用いられている場合と比較して大幅に増大する。
【0066】
連続気泡炭素フォームと炭素フォームの外面上に被着されるプラズマ蒸着B4Cコーティングの組み合わせを用いることができる。石炭を主成分とする炭素フォームは、低い密度(0.268g/cm3)、低い熱伝導率(気泡構造に応じて0.25~5W/mK)、および非酸化性雰囲気内においてあるいは適当な表面保護を施した状態で最高3000℃までの温度に耐える能力を有する。炭素フォームの熱伝導率は、スペースシャトルで用いられたHRSIタイルの熱伝導率と同程度である。B4Cを真空プラズマ溶射(VPS)により炭素フォームの表面上に蒸着させるのがよい。
【0067】
層5:原子状酸素抵抗性コーティング(構造的/原子状酸素抵抗性層):地球低軌道(LEO)のところでまたはこれよりも上方のところで宇宙構造の他の層を原子状酸素から保護するため、複合材料は、原子状酸素抵抗性コーティングをさらに有する。炭化ホウ素(変形例として、炭化ケイ素、または炭化アルミニウム)の層を、二酸化ケイ素ガラスの非常に薄い層でコーティングし、かかる二酸化ケイ素ガラスは、すでに酸化されており、したがって、原子状酸素によって損傷を受けないようになっている。層を極めて薄く作ると、この層は、可撓性であり、これは、熱的特性を全く犠牲にしない。別のコーティングは、例えば、材料を、酸化黒鉛溶液を用い、または材料を酸化黒鉛溶液中に浸漬させて得られる黒鉛コーティングである。層5の一部としてまたは層5に加えて、別のコーティングまたはグラジエントを設けて、この場合もまた、図2および図3に示された放射線帯デブリ中に取り込まれた粒子、流星塵から保護するのがよい。
【0068】
図2は、遮蔽のための複合材料の異なる層200の別の実施例を示す図である。この図は、地球軌道上の宇宙空間で動きまたは位置していることに起因して生じる作用効果としての損傷を最小限に抑えるために少なくとも1つの遮蔽層206,208を含む複合多機能材料または複合材料を示している。複合材料の層は、互いに上下に設けられたとき、次第に互いに合体するのがよく、それにより複合材料の単一の構造またはブロックが形成される。
【0069】
図2に示す構成材料は、第1の遮蔽層210、第1の遮蔽層210上に設けられた少なくとも1つの金属含有層208、および第1の遮蔽層210とは反対側で少なくとも1つの金属含有層208上に設けられた第2の遮蔽層206を有する。1つまたは複数の金属含有層208は、2つの遮蔽層206,210相互間にサンドイッチされている。2つの遮蔽層206,210は各々かつ/あるいは複合材料の他の層と組み合わせた状態で、放射線遮蔽特性を備えた複合材料を提供する。具体的に説明すると、これらの層は、一組の機械的および熱的要件を満たす放射線抵抗性複合材料を含む。これらの特性は、ホウ素を主成分としかつリチウムを主成分とする化合物と熱可塑性ポリマーを混和することによって、HZE粒子に対するだけでなく、高速中性子および低速熱中性子に対しても得られる遮蔽特性を含む。それにより、遮蔽層206,210は、二次的に生じる中性子を効果的に減速させ、低速中性子および熱中性子を吸収する。遮蔽のための1種類以上の化合物をドープした熱可塑性ポリマーを含む遮蔽層206,210の実施例を本明細書の他の箇所に提供する。
【0070】
一オプションとして、複合材料は、少なくとも1つの金属含有層の反対側で第2の遮蔽層上に設けられた1つ以上の構造層202,204を含むのがよい。構造層の各々は、耐酸化性材料、耐熱性材料、およびポリマーを主成分とする材料である傾向がありまたはこれらを含む多機能複合材料―放射線遮蔽作用に加えて遮蔽目的のための多機能複合材料を含む。
【0071】
もう1つのオプションとして、構造層202,204は、少なくとも1つの流星塵層204上に設けられた少なくとも1つの原子状酸素抵抗性層202をさらに含むのがよく、少なくとも1つの流星塵層204は、少なくとも1つの金属含有層208の反対側で第2の遮蔽層206上に設けられる。もう1つのオプションとして、複合材料は、少なくとも1つの金属含有層208の反対側で第1の遮蔽層210の下に設けられた少なくとも1つの熱保護層212をさらに含むのがよい。
【0072】
加うるに、構造層202,204は、熱防護層を含むのがよい。一オプションとして、熱防護層は、原子状酸素抵抗性層上に設けられるのがよい。もう1つのオプションとして、熱防護層は、少なくとも1つの流星塵層204上の原子状酸素抵抗性層202に一体化されるのがよい。
【0073】
遮蔽層206,210における遮蔽のために用いられる化合物は、少なくともホウ素(B)および/またはリチウム(Li)を含む。例えば、組成物は、本明細書において説明するホウ素化合物およびリチウム化合物を含むが、これらのカテゴリには限定されない、ホウ素を主成分としまたはリチウムを主成分とする化合物を含むのがよい。ホウ素を主成分とする化合物およびリチウムを主成分とする化合物は、天然に存在する元素か他の化合物、例えば、ホウ素‐10濃縮B4Cかのいずれかであるのがよい。ホウ素‐10の天然存在率は、19.9原子パーセントであり、したがって、ホウ素‐10を含む遮蔽層206,210は、後方散乱熱中性子の吸収体として働くようになっている。かかる吸収量は、天然ホウ素に変えてホウ素‐10濃縮B4Cを用いた場合に著しく増大する。
【0074】
金属含有層208は、図示のように、2つの遮蔽層206,210相互間にサンドイッチされている。各金属含有層208は、一オプションとして、22~30および/または72~79の原子番号(Z)の元素の金属/金属酸化物を含むのがよい。もう1つのオプションとして、原子番号(Z)は、少なくとも2つの金属/金属酸化物層について13である。もう1つのオプションとして、原子番号(Z)は、72~79であり、少なくとも1つの金属含有層208は、原子番号(Z)が小さい少なくとも2つの他の金属含有層208相互間に位置決めされる。各層は、例えば、1~30mmの厚さのものであるのがよく、その結果、1つ以上の金属含有層208が設けられた場合、厚さは、少なくとも1mmになる。この厚さは、複合材料が宇宙航空機に設けられるにせよ宇宙服に設けられるにせよいずれにせよ、複合材料を用いているのがどこであるかまたはどの機能であるかに適合して設定される。
【0075】
図3は、遮蔽のための複合多機能材料の異なる層300のもう1つの実施例を示している。この図は、複合遮蔽材料を複数の層として示している。この材料は、1つ以上の多機能層を含み、最適化された熱的特性を備える複合遮蔽材料を形成するよう各層が互いの上に積み重ねられ、またはグラジエントが互いに合体する。複数の多機能層は、少なくとも2つの遮蔽層304を含み、各遮蔽層304は、構造層302、金属含有層306、流星塵層、および熱保護層ならびに異なる構造層302の中から選択された少なくとも2つの他の多機能層相互間に設けられている。多機能層は、図1および図2に示した層に対応している。
【0076】
多機能層は、構造層302に加えてまたは構造層302に変えて、構造および遮蔽層をさらに含むとともに、例えば、防火障壁、HZE粒子や高速、低速および熱中性子に対する構造的かつ放射線遮蔽のための層、HZE粒子および高速中性子に対する放射線遮蔽層、X線および光子に対する放射線遮蔽層、放射線遮蔽特性を有するのがよく、そして放射線吸収化合物がドープされた流星塵および熱保護のための層、および原子状酸素抵抗性コーティング/層をさらに含むのがよい。
【0077】
防火障壁または熱保護層の一例は、重量が約20~300g/m2の可撓性黒鉛シート/層を含むのがよい。弾性黒鉛シート/層は、優れた化学抵抗性、熱的抵抗性、および機械的抵抗性をもたらし、したがって、宇宙航空機の内部に対して保護バリヤとしての役目を果たす。弾性黒鉛シート/層は、優れた化学抵抗性、熱的抵抗性、および機械的抵抗性をもたらし、したがって、宇宙航空機の内部に対して保護バリヤとしての役目を果たす。
【0078】
遮蔽層の一例は、3Dプリンティングされたスマートホウ素‐10(10B)ドープ炭素繊維強化超高分子量(UHMW)ポリエチレン、または高密度ポリエチレン、であるのがよく、複合材は、30~95体積パーセントの繊維、5~20体積パーセントの天然ホウ素または10Bを含む。残りの体積パーセント分は、繊維相互間の空間を埋めるためにエポキシ樹脂マトリックスで充填されるのがよい。スマートPEは、0゜たて方向および45゜~90゜よこ方向に布設された織り合わせ炭素繊維とPE繊維の層を含むのがよい。繊維/孔径のサイズは、大きな温度変化中に構造的および形態学的変化を最小限に抑えるために材料全体にわたって最大材料強度および熱調節を行うよう最適化されるのがよい。遮蔽層は、宇宙空間内の物体に対する物理的遮蔽を行うための特性および材料を含むのがよい。
【0079】
遮蔽層のもう1つの例は、超高分子量(UHMW)ポリエチレン、または高密度ポリエチレンであるのがよく、この組成物は、65~95体積パーセントの超高分子量(UHMW)ポリエチレン繊維を含む。スマートPEは、0°たて方向および45°~90°よこ方向に布設された繊維の層を含む。繊維/孔径のサイズは、大きな温度変化中に構造的および形態学的変化を最小限に抑えるために材料全体にわたって最大材料強度および熱調節を行うよう最適化されるのがよい。図1に関して層2と層3の間に設けられた1つ以上の金属含有層306は、電子、X線、ガンマ線に対する保護を行うよう追加されるのがよい。
【0080】
構造層(具体的には中性子のための放射線遮蔽材として役立つ)の一例は、例えば、炭化ホウ素、炭化ケイ素、炭化アルミニウム、またはこれらの組み合わせを含むのがよい。硬度、ヤング率、圧縮強度、密度を考慮して最善の選択肢である炭化ホウ素コーティング(B4C)が表2に示されおり、しかも、これは、熱中性子、炭化ケイ素コーティング(次善の選択肢)、または炭化アルミニウムコーティング(最後の選択肢)に対する遮蔽材として働く。炭化ホウ素は、天然ホウ素、または天然ホウ素よりも熱中性子に対する遮蔽効果が良好なホウ素‐10濃縮炭化ホウ素で作られるのがよい。
【0081】
複合材料層のためのドーピング剤としてのB4Cの場合、熱試験の結果の示すところによれば、B4C層を温度1,200℃以上に当てると、12.7cm厚さの炭素フォームサンプルの底部のところで記録された最高温度は、40℃以下である。この熱的能力は、スペースシャトルで用いられた耐熱セラミックタイルの熱能力と同等である。
【0082】
連続気泡炭素フォームと炭素フォームの外面上に被着されるプラズマ蒸着B4Cコーティングの組み合わせを用いた一例を提供することができる。石炭を主成分とする炭素フォームは、低い密度(0.268g/cm3)、低い熱伝導率(気泡構造に応じて0.25~5W/mK)、および非酸化性雰囲気内においてあるいは適当な表面保護を施した状態で最高3000℃までの温度に耐える能力を有する。炭素フォームの熱伝導率は、スペースシャトルで用いられたHRSIタイルの熱伝導率と同程度である。B4Cを真空プラズマ溶射(VPS)により炭素フォームの表面上に蒸着させるのがよい。
【0083】
さらにもう1つの構造層302の一例は、地球低軌道(LEO)のところまたはこれよりも上方のところで宇宙構造体の他の層を原子状酸素から保護する原子状酸素抵抗性コーティングであるのがよい。複合材料は、この原子状酸素抵抗性コーティングをさらに含むのがよい。コーティングに関し、炭化ホウ素(変形例として、炭化ケイ素、または炭化アルミニウム)の層を、二酸化ケイ素ガラスの非常に薄い層でコーティングし、かかる二酸化ケイ素ガラスは、すでに酸化されており、したがって、原子状酸素によって損傷を受けないようになっている。層を極めて薄く作ると、この層は、可撓性であり、これは、熱的特性を全く犠牲にしない。別のコーティングは、例えば、材料を、酸化黒鉛溶液を用い、または材料を酸化黒鉛溶液中に浸漬させて得られる黒鉛コーティングである。層5の一部としてまたは層5に加えて、別のコーティングまたはグラジエントを設けて、この場合もまた、図2および図3に示された放射線帯デブリ中に取り込まれた粒子、流星塵から保護するのがよい。
【0084】
図4は、遮蔽のための複合材料を提供する例示の方法400を示している。複合材料を提供する際、ステップ401において、複合材料のモデルを仮想環境において作り、この場合モデルは、第1の遮蔽層、第1の遮蔽層上に設けられた少なくとも1つの金属含有層、および少なくとも1つの金属含有層上に設けられた第2の遮蔽層を有する複合材料のデジタル表示を含む。モデルを作ることは、オプションである。本方法によってモデルを作らない場合であっても、適当な装置を用いると、外部に提供されるモデルを用いて、または装置内に埋め込まれたモデルを用いて、複合材料の層を製造することができ、またはかかる製造を可能にする。
【0085】
複合材料の製造は、諸材料の組成物を装置に提供するステップ402で始まる。装置は、材料の組成物を受け取ってかかる組成物を加工するのに適した3Dプリンタまたはモデル化装置であるのがよい。ステップ404において、材料を用いたモデルに基づいて複合材料を作る。複合材料は、諸材料を用いて複合材料を生じさせる。具体的に説明すると、諸材料は、複合材料の層を形成するよう組み合わされる。材料を組み合わせて層を形成する方法は、これら層が次第に互いに合体されるようにする種々の技術を用いて実施されるのがよい。オプションとして、複合材料の欠陥または欠点を1つ以上の入力に基づいてモデルに従って除去する(406)。
【0086】
さらに、例えば、組成物を0°たて方向および45°~90°よこ方向に合体して複合材料の少なくとも1つの層を作ることによって複合材料を生じさせるのがよく、この場合、複合材料は、炭素繊維および熱可塑性ポリマーを含む。もう1つのオプションとして、組成物は、複合材料を形成する前または後で架橋される熱可塑性ポリマーを含む。
【0087】
より具体的に説明すると、ドープした多機能複合材料の層は、3Dプリンティングされるのがよくまたは一緒に成形されるのがよく、この場合、適当なコンピューティングまたはシステムツールを用いた、例えばコンピュータ支援設計ソフトウェアを用いたプリンティングまたは成形に先立って、複合材料の1つ以上のモデルを作るのがよい。3Dプリンティングまたは成形プロセス中、1つの実施例では、エポキシ樹脂マトリックスを用いて、熱可塑性ポリマー、特に、UHMWPEもしくはHDPEまたは異なるPE繊維の混合物相互間の空間を埋めるのがよく、そして材料は、0°たて方向および45°~90°よこ方向に布設されまたは3Dプリンティングした織り合わせ炭素繊維とPE繊維を有するのがよい。複合材料は、50~100体積パーセントのUHMWPEもしくはHDPE、またはPE繊維と残りの体積パーセントのエポキシ樹脂マトリックスとドープ剤の混合物であり、これには黒鉛繊維を混入する。同じことは、エポキシ樹脂および黒鉛繊維なしの場合でも実施できる。
【0088】
繊維/孔径のサイズおよび配向は、機械的応力および温度の変化中に構造的および形態学的変化を最小限に抑えるために材料全体にわたって最大材料強度および熱調節を得るよう最適化されるのがよい。
【0089】
複合材料の製造は、例えば、押出し法を用いることによって実施され、この場合、全ての成分(ドープ剤および生プラスチック)を溶融して連続異形材の状態に形成する。押出しプロセスは、プラスチック材料(ペレット、顆粒、フレークまたは粉末)をホッパーから押出し機のバレル中に供給することによって始まる。スクリューの回転によって生じる機械的エネルギーと、バレル周りに配置されたヒータを用いることによって材料を次第に溶融させる。次に、溶融ポリマーをダイ中に押し込み、このダイは、ポリマーをフィラメントの状態に賦形し、フィラメントは、冷却することで硬化する。フィラメントを3Dプリンタに移送し、3Dプリンタは、所要の形状をプリントする。成形技術を3Dプリンティングの代替手段としてまたはこれに加えて使用することができる。
【0090】
製造中における複合材料の機械的強度および溶融温度を増大させるには、熱可塑性ポリマーまたはポリエチレンをイオン化放射線または紫外線で架橋するのがよい。反応を加速するための追加の触媒(すなわち、酸性触媒)をプロセス中に利用するのがよい。
【0091】
複合材料の製造は、本明細書において説明した方法および技術だけには限定されない。プラスチックをドープする別の技術が利用可能であるといってよく、その目的は、複合材料と関連した種々の利益および利点を提供するために種々の条件下において複合材料を製造することにある。
【0092】
1つの観点では、複合材料であって、第1の遮蔽層と、第1の遮蔽層上に設けられた少なくとも1つの金属含有層と、第1の遮蔽層と反対側で少なくとも1つの金属含有層上に設けられた第2の遮蔽層とを有し、第1の遮蔽層および第2の遮蔽層は、各々かつ/あるいは複合材料の他の層と組み合わせた状態で、放射線遮蔽特性を備えた複合材料を提供することを特徴とする複合材料が提供される。
【0093】
1つの観点では、複合材料であって、第1の遮蔽層と、第1の遮蔽層上に設けられた少なくとも1つの金属/金属酸化物層と、第1の遮蔽層と反対側で少なくとも1つの金属/金属酸化物層上に設けられた第2の遮蔽層とを有し、第1の遮蔽層および第2の遮蔽層は、各々かつ/あるいは複合材料の他の層と組み合わせた状態で、放射線遮蔽特性を備えた複合材料を提供することを特徴とする複合材料が提供される。
【0094】
別の観点では、複合遮蔽材料であって、最適化された熱的性質を備える複合遮蔽材料を形成するよう各々が互いの上に積み重ねられ、または互いに合体するグラジエントとしての複数の多機能層を有し、複数の多機能層は、少なくとも2つの遮蔽層を含み、各遮蔽層は、構造層、金属/金属酸化物層、流星塵層、および熱保護層の中から選択された少なくとも2つの他の多機能層相互間に設けられていることを特徴とする複合遮蔽材料が提供される。
【0095】
別の観点では、複合材料を提供する方法であって、本方法は、複合材料のモデルを仮想環境内に作り出すステップを含み、モデルは、第1の遮蔽層、第1の遮蔽層上に設けられた少なくとも1つの金属/金属酸化物層、および第1の遮蔽層と反対側で少なくとも1つの金属/金属酸化物層上に設けられた第2の遮蔽層を有する複合材料のデジタル表示を含み、本方法は、複合材料の組成物をデバイスに提供するステップと、組成物を用いてモデルに基づき複合材料を作り出すステップとをさらに含み、組成物は、複合材料の層を形成するよう組み合わされ、本方法はさらに、1つ以上の入力に基づいてモデルに従って、複合材料上の欠陥または欠点をなくすステップを含むことを特徴とする方法が提供される。
【0096】
別の観点では、複合材料であって、この複合材料は、第1の層、第1の層上に設けられた第2の層、第1の層とは反対側で第2の層上に設けられた第3の層を有し、第2の層は、第1の層と第3の層との間に設けられるようになっており、第1の層は、構造かつ放射線遮蔽層を有し、第2の層は、放射線遮蔽層を有し、第3の層は、流星塵および熱保護層を有することを特徴とする複合材料が提供される。
【0097】
一オプションとして、第1の層は、BC4またはBNもしくはホウ素‐10(10B)、炭素繊維、ポリエチレン、およびエポキシを含む。
【0098】
一オプションとして、第1の層は、BC4もしくはBNもしくは10Bドープ材料、炭素繊維強化材料、30~95体積パーセントの繊維、5~20体積パーセントのBC4もしくはBNもしくは10B、および残りの体積パーセントがエポキシを含む超高分子量(UHMW)ポリエチレン複合材を含み、エポキシは、繊維相互間の空間を満たす樹脂マトリックスを含む。
【0099】
一オプションとして、炭素繊維とUHMWポリエチレン繊維は、第1の層中に織り合わされる。一オプションとして、炭素繊維およびUHMWポリエチレン繊維は、0°たて方向および45°~90°よこ方向に布設される。
【0100】
一オプションとして、第2の層は、ポリエチレンを含む。
【0101】
一オプションとして、第2の層は、ポリエチレンおよびエポキシを含む。
【0102】
一オプションとして、第2の層は、65~95体積パーセントの(UHMW)ポリエチレン繊維を含む超高分子量(UHMW)ポリエチレン複合材を含む。
【0103】
一オプションとして、第2の層は、65~95体積パーセントの超高分子(UHMW)ポリエチレン繊維および残りの体積パーセントのエポキシを含む超高分子量(UHMW)ポリエチレン複合材を含み、エポキシは、繊維相互間の空間を満たす樹脂マトリックスを含む。
【0104】
一オプションとして、第2の層は、UHMWポリエチレン繊維の複数の層を含む。
【0105】
一オプションとして、UHMWポリエチレン繊維は、0°たて方向および45°~90°よこ方向に布設される。
【0106】
一オプションとして、第3の層は、炭化ホウ素、炭化ケイ素、炭化アルミニウム、またはこれらの組み合わせを含む。
【0107】
一オプションとして、第3の層は、炭化ホウ素を含む。
【0108】
一オプションとして、第3の層は、BC4もしくはBNもしくは10B濃縮ホウ素化合物を含む。
【0109】
一オプションとして、複合材料は、第2の層と反対側の第1の層上に設けられた防火障壁層をさらに有し、第1の層は、防火障壁層と第2の層との間に設けられている。一オプションとして、防火障壁層は、可撓性黒鉛層を含む。一オプションとして、防火障壁層は、20~300g/m2の密度または重量を有する。
【0110】
一オプションとして、複合材料は、第2の層と反対側で第3の層上に設けられた原子状酸素抵抗性コーティングをさらに含み、第3の層は、第2の層と原子状酸素コーティングとの間に設けられている。一オプションとして、原子状酸素抵抗性コーティングは、二酸化ケイ素、黒鉛、またはこれらの組み合わせを含む。一オプションとして、原子状酸素抵抗性コーティングは、二酸化ケイ素ガラスを含む。一オプションとして、原子状酸素抵抗性コーティングは、酸化黒鉛を含む。
【0111】
一オプションとして、複合材料は、宇宙放射線および太陽放射線に対して遮蔽を可能にし、高速、低速、および熱二次中性子に対する遮蔽を可能にし、構造的目的に役立ち、弾道保護を可能にし(例えば、流星塵、デブリなどに対して)、地球低軌道(LEO)のところでまたはこれよりも上方で用いられた場合に原子状酸素に対して保護を可能にし、またはこれらの組合せを行う。
【0112】
一オプションとして、複合材料は、宇宙放射線および太陽放射線に対する遮蔽を可能にし、高速、低速、および熱二次中性子に対して遮蔽を可能にし、構造的目的に役立ち、弾道保護を可能にし(例えば、流星塵、デブリなどに対して)、地球低軌道(LEO)のところでまたはこれよりも上方で用いられた場合に原子状酸素に対して保護を可能にする。
【0113】
一オプションとして、本方法は、複合材料を宇宙航空機の遮蔽のための構成材料として宇宙航空機内に、宇宙居住環境の構成材料として宇宙服内に、またはこれらの組み合わせとして用いるステップを含む。
【0114】
一オプションとして、本方法は、複合材料を宇宙航空機の遮蔽のための構成材料、居住環境の構成材料、または居住環境の放射線遮蔽のための構成材料、人工衛星または任意の高高度宇宙船の遮蔽のための構成材料に加えて用いられる構成材料として用いるステップを含む。
【0115】
一オプションとして、複合材料は、少なくとも1つの金属/金属酸化物層の反対側で第2の遮蔽層上に設けられた1つ以上の構造層をさらに含み、各構造層は、多機能複合材料を含む。
【0116】
一オプションとして、1つ以上の構造層は、少なくとも1つの流星塵層上に設けられた少なくとも1つの原子状酸素抵抗性層を含み、少なくとも1つの流星塵層は、少なくとも1つの金属/金属酸化物層の反対側で第2の遮蔽層上に設けられている。
【0117】
一オプションとして、多機能複合材料は、耐酸化性材料、耐熱性材料、およびポリマーを主成分とする材料を含む。
【0118】
一オプションとして、複合材料は、少なくとも1つの金属/金属酸化物層の反対側で第1の遮蔽層の下に設けられた少なくとも1つの熱保護層をさらに含む。
【0119】
一オプションとして、第1の遮蔽層および第2の遮蔽層は、一組の機械的要件および熱的要件を満たす放射線抵抗性複合材料を含む。
【0120】
一オプションとして、第1の遮蔽層は、熱可塑性ポリマーを含み、熱可塑性ポリマーには1種類以上の化合物がドープされている。
【0121】
一オプションとして、1種類以上の化合物は、少なくともホウ素(B)および/またはリチウム(Li)を含む。
【0122】
一オプションとして、1つ以上の金属/金属酸化物層は、原子番号(Z)を有し、(Z)は、22~30および/または72~79である。一オプションとして、原子番号(Z)は、少なくとも2つの金属/金属酸化物層について13である。一オプションとして、1つ以上の金属/金属酸化物層は、原子番号(Z)が72~79である少なくとも1つの金属/金属酸化物層を含み、少なくとも1つの金属/金属酸化物層は、原子番号(Z)の小さい少なくとも2つの他の金属/金属酸化物層相互間に位置決めされる。
【0123】
一オプションとして、各金属/金属酸化物層の厚さは、1mm~30mmである。
【0124】
一オプションとして、各層は、互いに合体して単一構造としての複合材料を形成するようになっている。
【0125】
一オプションとして、組成物を用いてモデルに基づき複合材料を作り出すステップは、組成物を0゜たて方向および45゜~90゜よこ方向に合体して複合材料の少なくとも1つの層を生じさせるステップをさらに含み、組成物は、炭素繊維および熱可塑性ポリマーを含む。
【0126】
一オプションとして、複合材は、本明細書において記載した観点のうちの任意のものによる複合材料を形成する前または後で架橋される熱可塑性ポリマーを含む。
【0127】
一オプションとして、作ったモデルは、本明細書において記載した観点のうちの任意のものによる複合材料または複合遮蔽材料をさらに含む。
【0128】
一オプションとして、複合材料は、銀河宇宙放射線、放射線帯内に取り込まれた粒子に対しかつ太陽エネルギー粒子線およびX線とガンマ線を含む電磁線に対して遮蔽を可能にし、高速、低速、および熱二次中性子に対して遮蔽を可能にし、構造的目的に役立ち、弾道保護を可能にし(例えば、流星塵、デブリなどに対して)、地球低軌道(LEO)のところでまたはこれよりも上方で用いられた場合に原子状酸素に対して保護を可能にし、熱防御および熱保護を可能にし、耐火性または火災誘発効果に対する耐性をもたらし、またはこれらの組み合わせを行う。
【0129】
一オプションとして、複合材料は、電磁線に対して遮蔽を可能にし、構造的目的に役立ち、弾道保護を可能にし(例えば、流星塵、デブリなどに対して)、地球低軌道(LEO)のところでまたはこれよりも上方で用いられた場合に原子状酸素に対して保護を可能にし、熱的効果に対して保護を可能にし、またはこれらの組合せを行う。
【0130】
一オプションとして、複合材料は、宇宙放射線および太陽放射線に対する遮蔽を可能にし、高速、低速、および熱二次中性子に対して遮蔽を可能にし、X線およびガンマ線に対して遮蔽を可能にし、構造的目的に役立ち、弾道保護を可能にし(例えば、流星塵、デブリなどに対して)、地球低軌道(LEO)のところでまたはこれよりも上方で用いられた場合に原子状酸素に対して保護を可能にする。
【0131】
一オプションでは、複合材料を用いて宇宙航空機の受ける放射線暴露を遮蔽するとともに/あるいは複合材料を宇宙航空機、宇宙服、宇宙居住環境、またはこれらの組み合わせのための構成材料の一部として用いる。
【0132】
一オプションでは、複合材料を宇宙航空機の遮蔽のための構成材料、居住環境、宇宙服の構成材料、または居住環境の放射線遮蔽のための構成材料、人工衛星または任意の高高度宇宙船の遮蔽のための構成材料に加えて、構成材料として用いる。
【0133】
理解されるように、上述した利益および利点は、1つの実施形態に関する場合があり、または幾つかの実施形態に関する場合がある。実施形態は、上述の問題のうちの任意のものまたは全てを解決する実施形態、または記載した利益および利点のうちの任意のものまたは全てを奏する実施形態には限定されない。変形例は、本発明の範囲に含まれるものとみなされるべきである。
【0134】
原文明細書において“an”アイテと記載した場合、どのような記載であってもこれは、かかるアイテムのうちの1つ以上を指している。原文明細書の“comprising”(訳文では、「~を有する」としている場合が多い)は、特定した方法ステップまたは要素を含むことを意味するために用いられているが、かかるステップまたは要素は、排他的なリストを含まず、方法または装置は、追加のステップまたは要素を含むことができる。
【0135】
本明細書で用いられる「例示の」、「実施例」または「実施形態」は、「何らかの例示または実施例として役立つ」ことを意味するようになっている。さらに、原文明細書の“includes”(訳文では「~を含む」)が詳細な説明または特許請求の範囲の記載に用いられている場合、かかる用語は、“comprising”と類似した仕方で包括的であることが意図されており、と言うのは、“comprising”は、請求項中の移行句として用いられている場合があると解釈されるからである。
【0136】
図は、例示の方法を示している。特定のシーケンスで実行される一連の行為として方法を図示するとともに説明しているが、理解されるべきこととして、かかる方法は、シーケンスの順序によっては限定されない。例えば、幾つかの行為は、本明細書に記載した順序とは異なる順序で実施される場合がある。加うるに、ある行為は、別の行為と同時に実施可能である。さらに、幾つかの場合、本明細書において説明した方法を実施するのに、全ての行為が必要であるわけではない。
【0137】
本明細書において説明した方法のステップの順序は例示であるが、かかるステップは、任意適当な順序でまたは適宜同時に実施できる。加うるに、ステップは、追加的または代替でき、あるいは、個々のステップは、方法のうちの任意のものから省くことができ、このことは、本明細書において説明した本発明の範囲から逸脱しない。上述の実施例のうちの任意のものの観点を上述した他の実施例のうちの任意のものの観点と組み合わせることができ、それにより求められる作用効果を失わないで別の実施例を形成することができる。
【0138】
理解されるように、好ましい実施形態についての上記説明は、例示として与えられているに過ぎず、種々の改造を当業者によって実施できる。
【0139】
上述した内容は、1つ以上の実施形態の実施例を含む。当然のことながら、上述の観点を説明する目的で、上述の装置または方法のあらゆる想到可能な改造および変形を説明することは不可能であるが、当業者であれば、種々の観点の多くの別の改造および並び替えが可能であることを認識することができる。したがって、説明した観点は、添付の特許請求の範囲に記載された本発明の範囲に含まれるかかる全ての変更、改造、および変形を含むものである。
図1
図2
図3
図4
【国際調査報告】