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特表2023-551419ピペットおよび2シンボル符号化を含むピペット補助具
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-12-08
(54)【発明の名称】ピペットおよび2シンボル符号化を含むピペット補助具
(51)【国際特許分類】
   B01L 3/02 20060101AFI20231201BHJP
   G01N 21/64 20060101ALI20231201BHJP
【FI】
B01L3/02 D
G01N21/64 F
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023529048
(86)(22)【出願日】2021-11-24
(85)【翻訳文提出日】2023-05-16
(86)【国際出願番号】 CH2021050025
(87)【国際公開番号】W WO2022109756
(87)【国際公開日】2022-06-02
(31)【優先権主張番号】01500/20
(32)【優先日】2020-11-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CH
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】514114770
【氏名又は名称】インテグラ バイオサイエンシーズ アーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】100098394
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】フィリップ,クリストフ
【テーマコード(参考)】
2G043
4G057
【Fターム(参考)】
2G043AA04
2G043CA05
2G043EA01
2G043FA06
2G043GA07
2G043GA08
2G043GB01
2G043GB16
2G043KA01
2G043KA03
2G043KA05
2G043LA01
4G057AB16
(57)【要約】
本発明は、吐出する液体を受け入れて除去するための第1開口部と、第1開口部の反対側にある第2開口部とを有するピペットに関する。本発明によれば、ピペットは、ピペットが吸収した電磁放射線とピペットが放出した電磁放射線との間に波長シフトを引き起こす材料を含む。本発明はさらに、液体を吐出するピペットを受容するピペット補助具に関する。本発明によれば、ピペット補助具は、基準測定データを含むデータベースが保存されているデータ保存装置と、2つの放射線源および1つの放射線検出器との両方を含み、2つの放射線源は、異なる波長の電磁放射線を放出し、放射線検出器は、受け取った電磁放射線の波長を検出する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
好ましくはピペット補助具(23)と一緒に使用するためのピペット(11)であって、吐出する液体を受け入れ、排出するための第1開口部(19)と、前記第1開口部の反対側の端部にある第2開口部(21)とを有し、前記ピペット(11)は、2つの開口部(19、21)の間の充填容積部と、前記充填容積部を取り囲む外面とを有するピペットにおいて、前記ピペット(11)は、前記ピペット(11)が吸収した電磁放射線と放出した電磁放射線との間に波長シフトを引き起こす材料(17)を含むことと、前記波長シフトを引き起こす前記材料(17)は、前記ピペットの前記第2開口部から30mmまでの部分に位置していることとを特徴とする、ピペット(11)。
【請求項2】
前記ピペット(11)が吸収した前記電磁放射線と放出した前記電磁放射線との間の前記波長の差は、少なくとも20nmであることを特徴とする、請求項1に記載のピペット(11)。
【請求項3】
前記ピペット(11)が吸収する前記電磁放射線の波長は、100nm~3,000nmであることを特徴とする、請求項1または2に記載のピペット(11)。
【請求項4】
前記波長シフトを引き起こす前記材料(17)は、前記ピペット(11)の前記材料に埋めこまれることを特徴とする、請求項1から3のいずれか一項に記載のピペット(11)。
【請求項5】
前記波長シフトを引き起こす前記材料(17)は、前記ピペット(11)に塗布される層にあることを特徴とする、請求項1から3のいずれか一項に記載のピペット(11)。
【請求項6】
前記波長シフトを引き起こす前記材料(17)は、ピペットの周全体に塗布されることを特徴とする、請求項1から5のいずれか一項に記載のピペット(11)。
【請求項7】
前記ピペット(11)は、前記首部の直径が前記充填容積部の外面の直径以下である場合に、前記第2開口部(21)がある端部に首部(15)を有することを特徴とする、請求項1から6のいずれか一項に記載のピペット(11)。
【請求項8】
前記波長シフトを引き起こす前記材料(17)は、前記ピペット(11)の前記首部(15)にあることを特徴とする、請求項7に記載のピペット(11)。
【請求項9】
ピペット(11)は、前記放出された放射線に前記波長シフトを引き起こす蛍光材料(17)を含むことを特徴とする、請求項1から8のいずれか一項に記載のピペット(11)。
【請求項10】
液体を吐出するためのピペット(11)を受け入れるピペット補助具(23)であって、
-前記ピペット(11)を前記ピペット補助具(23)に固定するための受容部(25)、
-前記液体を受け入れるか排出するための制御器具(39)、
-前記ピペット補助具(23)を保持するためのハンドル(27)、
-前記液体の受け入れおよび排出を制御する少なくとも1つの制御要素(29)、
-前記制御要素(29)および前記制御器具(39)に接続されている制御ユニット(37)
を有するピペット補助具において、
-前記ピペット補助具(23)は、基準測定データを含むデータベースを保存するデータ保存装置(38)を備えていることと、
-前記ピペット補助具(23)は、2つの放射線源(33)および1つの放射線検出器(35)を有し、前記2つの放射線源(33)は、異なる波長の電磁放射線を放出し、前記放射線検出器(35)は、受け取った前記電磁放射線の前記波長を検出することと
を特徴とする、ピペット補助具(23)。
【請求項11】
前記第1の放射線源は、電磁放射線を380nm~780nmの波長で放出するように設計され、前記第2の放射線源は、電磁放射線を10nm~410nm、または750nm~3,000nmの波長で放出するように設計されることを特徴とする、請求項10に記載のピペット補助具(23)。
【請求項12】
前記ピペット補助具(23)にある前記2つの放射線源(33)および前記放射線検出器(35)は、前記受容部(25)に向けられることを特徴とする、請求項10または11に記載のピペット補助具(23)。
【請求項13】
前記放射線検出器(35)は、カラーセンサであることを特徴とする、請求項10から12のいずれか一項に記載のピペット補助具(23)。
【請求項14】
前記制御器具(39)は、前記液体を受け入れ、排出するために前記ピペット補助具(23)内に圧力を発生させるポンプを含むことを特徴とする、請求項10から13のいずれか一項に記載のピペット補助具(23)。
【請求項15】
前記ピペット補助具(23)は、前記ピペット(11)を出入りする空気の流量を測定し、その値を前記制御ユニット(37)に送信する流量センサ(53)を有することを特徴とする、請求項10から13のいずれか一項に記載のピペット補助具(23)。
【請求項16】
前記ピペット補助具(23)は、前記ピペット内の静水圧(11)を測定するための圧力センサ(55)を有することを特徴とする、請求項10から14のいずれか一項に記載のピペット補助具(23)。
【請求項17】
前記制御要素(29)は、第1のボタンおよび第2のボタン(31’、31’’)を有し、前記第1のボタン(31’)を押すと、前記ピペット補助具(23)に真空が発生し、前記第2のボタン(31’’)を押すと、前記真空を解放するか、前記ピペット補助具(23)内に圧力を発生させることを特徴とする、請求項10から15のいずれか一項に記載のピペット補助具(23)。
【請求項18】
前記ピペット補助具(23)は、前記ピペット補助具(23)の長手軸の重力方向に対する傾斜角度を算出するための加速度センサ(57)を有することを特徴とする、請求項10から16のいずれか一項に記載のピペット補助具(23)。
【請求項19】
対象物の種類、特に実験装置および/または実験装置の付属品に特有である対象物の特性を識別する方法であって、
-前記対象物に第1の電磁放射線を第1の範囲の波長で照射する工程と、
-前記対象物から放出された前記電磁放射を放射線検出器(35)で検出する工程と、
-前記放射線検出器(35)が検出した前記波長を一時ファイルに保存する工程と、
-前記対象物に電磁放射線を第2の範囲の波長で照射する工程と、
-前記対象物から放出された前記電磁放射を前記放射線検出器(35)で検出する工程と、
-前記放射線検出器(35)が検出した前記波長を前記一時ファイルに保存する工程と、
-前記一時ファイルに保存されている前記第1の電磁放射線および前記第2の電磁放射線の前記波長を、データベース(38)に保存されている波長と比較する工程と、
-前記波長の組み合わせの比較に基づいて、前記対象物の種類に特有である前記対象物の特性を明らかにする工程と
含む方法において、
-前記対象物は、前記対象物が吸収した前記電磁放射線と放出した前記電磁放射線との間に波長シフトを引き起こす材料(17)を含み、前記第1の範囲の波長は、380nm~780nmにあり、前記第2の範囲の波長は、10nm~410nmまたは750nm~3,000nmにある
ことを特徴とする、方法。
【請求項20】
前記対象物は、ピペット(11)であり、前記方法は、ピペットの特定の種類を識別するための方法であることを特徴とする、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
請求項1から9のいずれか一項に記載のピペットおよび請求項10から18のいずれか一項に記載のピペット補助具を含む一式。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1のプリアンブルに記載のピペットおよび請求項10のプリアンブルに記載のピペット補助具に関する。本発明は、請求項19に記載の方法および請求項21に記載の一式にも関する。
【背景技術】
【0002】
日々の実験作業では、ピペット補助具が付いたピペットを使用することが多い。ピペット補助具は、真空または圧力を発生させ、それによって液体をピペットに引き込むかピペットから排出するために使用される。吐出される液体および用途に応じて様々なサイズのピペットが使用される。これは、他の基本条件がすべて同じままである場合に、ピペットのサイズが吐出動作に影響を及ぼすからである。この場合の基本条件は、ピペット補助具によって発生する真空または圧力で生じる条件である。
【0003】
ピペット補助具は通常、ピペット補助具に設定する圧力または圧力曲線が保存されている制御ユニットを有する。従来のピペット補助具は、圧力を決定するための調整装置を有する。実験技師は、この調整装置を使用してピペット補助具の圧力を決定できる。圧力の大きさは、使用するピペットによって異なる。圧力によって、液体の流量と、ピペット処理の完了にかかる時間の両方が決まる。実験技師は、視覚による評価を基にピペット補助具に必要な圧力を算出し、それを制御ユニットの入力手段を用いてピペット補助具に入力する必要がある。その1つの根拠が、ピペットにある色付きラベルであってよい。この色付きラベルは通常、ピペット補助具内に設定されているピペットの端部にある。この色付きラベルは、同じ種類のピペットに同じ色が使用されている場合に、ピペットを分類するために使用できるものである。これによって実験技師は、ピペット補助具にどの設定を用いるのかがわかる。
【0004】
上記のピペット補助具の機能は、好ましくは血清の研究に使用されるピペットに適用される。アキシャルピストンを有するピペットも使用できる。このようなピペット用のピペット補助具では、吐出を制御するためにピペット補助具に設定した圧力を使用しない。代わりに、ピペット補助具は、ピペットの内部でピストンを動かして吐出を制御する制御要素を有する。ピペット内のピストンを利用して圧力を発生させることができ、その圧力で液体を吐出する。その際、ピペットのサイズおよび吐出される量は、調整装置を備えたピペット補助具に手動で入力する必要がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の1つの目的は、ピペットの種類を自動で識別するラベルを有するピペットを作製することである。このようなピペットの最大充填容積を自動で判断するピペット補助具も提案する。目的は、ピペットと相互作用しているピペット補助具内のピペットを確実に自動で識別するピペット補助具およびピペットを得ることである。別の目標は、様々な容積のピペットをピペット補助具内の制御ユニットによって確実に識別できる安価な装置を製造することである。本発明のもう1つの目的は、対象物、好ましくは実験器具および/または実験器具の付属品を識別する方法を得ることである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前述の問題は、請求項1の特徴を有するピペット、および請求項10の特徴を有するピペット補助具で解決される。この2つの装置は、両者が互いに相互作用することで上記の問題を解決するような関係にある。両装置は、ピペットに照射されたときにピペットから放射線が放出されること、その後ピペット補助具でこれらの放射線が検出されることとの相互作用を通してつながっている。
【0007】
ピペットは、ピペット補助具に設置される血清ピペットであることが好ましく、このピペットは、液体を受け入れ、排出するための第1開口部を有し、その反対側に第2開口部を有する。ピペットの充填容積部は、2つの開口部の間にあり、この充填容積部は外面に取り囲まれている。
【0008】
ピペットを受け入れて液体を吐出するためのピペット補助具は、
-ピペットをピペット補助具に固定する受容部と、
-液体を受け入れたり排出したりするのに用いる制御器具と、
-ピペット補助具を保持するためのハンドルと、
-液体の受け入れと排出を制御するハンドルにある少なくとも1つの制御要素と、
-制御要素および制御器具に接続している制御ユニットと
を備えている。
【0009】
技術的な背景は、両装置の以下の特徴で表される:
-ピペットは、ピペットが吸収する電磁放射線とピペットが放出する電磁放射線との間に波長シフトを引き起こす材料を含む。
-ピペット補助具は、基準データを含むデータベースが保存されているデータ保存装置を有する。ピペット補助具は、2つの放射線源および1つの放射線検出器も有し、2つの放射線源は、異なる波長の電磁放射線を放出し、放射線検出器は、受け取った電磁放射線の波長を検出する。
【0010】
この材料は、ピペットを構成していて、吸収された電磁放射線と放出された電磁放射線との間に波長シフトを引き起こすため、ピペットは、異なる波長の放射線を放出できる。そのためには、ピペットに2つの異なる波長の電磁放射線を照射する必要がある。これらの波長の一方は可視スペクトルにあることが好ましく、他方はヒトの目に見えないことが好ましい。目標は、ピペットが放出する放射線、特にピペットの波長に生じるシフトに基づいてピペットを識別することである。
【0011】
電磁放射線の波長シフトを引き起こす材料は、ピペットの種類によって異なる。同じ種類、または同じ直径および同じ容積のピペットは、波長にシフトを引き起こす材料が常に同じであるという特徴を共有している。したがって、材料は、ピペットの種類ごとに異なるため、同じ電磁放射線を照射したとき、波長は異なる程度でシフトし、ピペットの種類が異なれば、異なる波長の電磁放射線を放出する。吸収された放射線と放出された放射線との間のこの電磁放射線の波長シフトは、ストークスシフトとして知られている。ピペットが作製される材料により、本発明によるピペットはストークスシフトを引き起こすことができる。
【0012】
ピペット補助具は、ピペットをピペット補助具の適所に保持する受容部を有する。2つの放射線源がそれぞれ異なる波長でピペットに照射する、ピペットの一連の照射、すなわち連続照射は、2つの異なる波長の放出となる。
【0013】
ピペット補助具内の放射線検出器は、ピペットから放出された電磁放射線を検出する。2つの異なる波長の放射線が放出されるため、放射線検出器は、2シンボルコードを生成できる。ピペットの容積をはじめとするピペットの種類は、2シンボルコードを使用して判断できる。放射線検出器は、2シンボルコードをデータ保存装置に保存する。データ保存装置には、各々の2シンボルコードが特定の種類のピペットに割り当てられているデータベースが入っている。受容部にあるピペットの種類は、放射線検出器からの測定データをデータベースのデータと比較することによって判断される。これには、使用する異種類のピペットがすべてに、2つの波長のシーケンスに関連する2シンボルコードを割り当てる必要がある。前述したように、ピペットの種類は、長さまたは充填容積などのピペットの寸法に関する情報も含むことができる。ピペット補助具内の2つの放射線源および放射線検出器に加えて、ピペットが吸収した電磁放射線とピペットから放出された電磁放射線との間に波長シフトを引き起こすピペット構成材料は、ピペットの種類を識別するためにも必要である。換言すると、ピペットは、ピペットが吸収した電磁放射線にストークスシフトを引き起こす材料を含んでいる必要がある。波長にシフトを引き起こす材料は、ピペット第2開口部から30mmまでの領域にある。
【0014】
この領域は、第2開口部から30mmまでの外面の部分で形成されるピペットの首部にあるとすることができる。ピペットがピストンを有する場合、ピストンがある区画(第2開口部から30mmまで)もこの領域にある。ピストンに関連性のある部分は、ピストンが伸びていないとき、すなわちピペットがピペット補助具に設置されたときと同じ位置にピストンがあるときに明らかになる。その結果、波長シフトを引き起こす材料は、ピストンが動かない限り、ピペット第2開口部から30mm以内の所にある。ピペット補助具にある放射線源および放射線検出器は、ピペットの限られた領域に向けられているため、波長シフトを引き起こす材料は、この領域に塗布する必要があるだけである。
【0015】
ピペット補助具にあるセンサとピペットとの間の距離をできるだけ短く保ち、外部干渉を最小限に抑えることで、ピペット補助具による読み取りの信頼性が高まる。波長シフトを引き起こす材料をピペット補助具に受け入れたピペット内に設置することでこれを実現する。ピペット補助具がピペットの首部を受け入れた場合、首部は、ピペット補助具に最も近いピペットの領域であり、この理由から、波長シフトを引き起こす材料が位置しているべき場所である必要がある。これにより、外部の影響および読み取りエラーも実際になくなる。好適な実施形態では、ピペットの首部は、ピペット補助具内にあるときは見えない。
【0016】
ピペットおよびピペット補助具に関する改良および/または有利な変形例は、従属請求項の主題である。
【0017】
ピペットは、血清ピペットであることが好ましい。血清ピペットの最大容積は、100mlである。
【0018】
吸収された電磁放射線と放出された電磁放射線との波長の差は、少なくとも20nmであることが好ましい。最小波長シフトが少なくともこの長さであれば、シフトを確認しやすくなる。
【0019】
ピペットに吸収される電磁放射線の波長は、100nm~300nmの範囲内であることが好ましい。この範囲は、紫外線から赤外線までをカバーするため、可視光波と不可視光波の両方が含まれている。
【0020】
好適な実施形態では、波長シフトを引き起こす材料は、ピペットを作製する材料に埋め込まれる。この場合、この材料は、ピペット全体に分散される。その結果、ピペットのあらゆる場所でストークスシフト効果が起こる。
【0021】
別の好適な実施形態では、波長シフトを引き起こす材料は、ピペットに塗布する層を形成する。この材料をピペットに塗布することによって、ピペットを製造した後に別の工程でその材料をピペットに塗布することができる。これは、半分完成したピペットを製造するよりも効率的な方法である可能性がある。この場合、材料をピペットの特定の箇所に塗布することができるため、必要な材料の量が節約される。さらに、ピペットに間違った材料のラベルが張ってあれば、そのピペットを取り外して正しい材料に交換できる。
【0022】
波長シフトを引き起こす材料は、ピペットの周全体に塗布することが有利である。ピペットは、回転対称である。そのため、材料をピペットの周全体にわたって塗布する方がよい。これはつまり、ピペットの動作に負の影響を及ぼすことなくピペットをピペット補助具内で回転させることができるということである。これにより、ピペットをピペット補助具の内部で自由に回転させることができるため、実験技師の仕事がより簡易になる。
【0023】
別の好適な実施形態では、ピペットは、直径が充填容積部の外面の直径以下である第2の端部に首部を有し、ピペットの第2の端部は、第2開口部がある場所である。ピペットの首部は、直径が4.5mm~8.1mmであることが好ましい。首部の直径と外面の直径との差は、ピペットの直径によって異なる。ある箇所でのピペットの直径がすでに4.5mm~8.1mmであれば、首部がそれよりも細くなることはない。なぜなら、首部の直径は、ピペットの筒状の外面の残り部分と同じだからである。直径が小さくなっていなくても、第2開口部から30mmまでの領域は、ピペットの首部となる。ピペットは、ピペットの首部をピペット補助具によって適所に保持できるように、首部がピペット補助具内に設置される。
【0024】
波長シフトを引き起こす材料は、ピペットの首部に塗布されることが有利である。ピペットの首部は、本発明による受容部によってピペット補助具に取り囲まれている。別の好適な実施形態では、ピペットは、放出した放射線に波長シフトを引き起こす蛍光材料でコーティングされる。蛍光材料は、衝突して吸収される電磁放射線のエネルギーレベルが、放出された電磁放射線のエネルギーレベルよりも高い材料である。その結果、蛍光材料は、電磁放射線が照射されると、最初に目に見えるようになるか、色が変化して見える。
【0025】
蛍光材料は、ピペットを作製する多くの物質の1つであってよい。この場合、蛍光材料は、ピペット全体に均等に分布することになる。蛍光材料は、ピペットの表面に別の層として塗布することもできる。
【0026】
ピペット補助具の好適な実施形態では、第1の放射線源は、特定の第1の波長の電磁放射線を放出するように設計され、第2の放射線源は、特定の第2の波長の電磁放射線を放出するように設計される。例として、第1の放射線源は、可視光線、すなわち380nm~780nmの範囲で放出でき、第2の放射線源は、紫外線、すなわち10nm~410nmの範囲で、または赤外線、すなわち750nm~3、000nmの範囲で放出できる。本発明に関しては、放出される放射線の波長が異なっていることが重要である。10nm~410nmの短い波長は、紫外スペクトルを形成し、750nm~3,000nmの長い波長は、赤外スペクトルを形成する。紫外線と赤外線は両方ともヒトの目には見えない。波長範囲が380nm~780nmの光は、ヒトの目に見える光線を形成する。吸収された放射線と放出された放射線との間に波長シフトを起こす材料に照射することで、ヒトの目に見えない光を可視範囲にシフトさせることができる。このようにするために、紫外線の波長を長くし、赤外線の波長を短くする必要がある。これは、適切な材料を用いて達成でき、その材料は、本発明によるピペットに含有されている。波長の増加は、蛍光材料を使用することで達成され、低減は、光子増幅を起こす材料を使用することで達成される。
【0027】
2つの放射線源および放射線検出器は、受容部に向けられることが有利である。ピペットは、ピペット補助具内の受容部の適所に保持される。2つの放射線源および放射線検出器は、ピペットを識別し分類するために使用されるため、ピペットへの明確な光学アクセスがある必要がある。これが受容部に向けられる理由である。3つの要素はすべて、円周に沿って並び、放射線検出器が2つの放射線源の間にあることが好ましい。3つの要素の並びは、設定したピペットの長手方向に対して垂直であることが有利である。
【0028】
別の好適な実施形態では、放射線検出器は、カラーセンサである。カラーセンサは、目に見える電磁放射線を検出でき、情報をデジタル形式に変換できる。カラーセンサは、ピペットが放出した放射線が可視範囲にあり、それによってカラーセンサで検出できる場合に使用すべきものである。
【0029】
ピペット補助具は、ピペットを出入りする空気流を測定してその値を制御要素に送信する流量センサを有することが好ましい。ピペット補助具にあるピペット第2開口部には空気以外に流れるものはない。第1開口部は、液体を受け入れ排出するために用いられる。第1開口部を通る交換量は、媒体の状態に関係なく、第2開口部を通る交換量と同じでなければならない。これはつまり、第2開口部から流出する空気の量は、ピペット第1開口部に流入する液体の量と同じでなければならないということである。したがって、ピペット第2開口部の体積流量を測定することにより、ピペット第1開口部の体積流量も算出される。これはどちらの方向にも当てはまり、第1開口部でピペットから液体が排出されると、もう一方の開口部で空気がピペットに入る。
【0030】
第1開口部の体積流量データは、ピペット内の液体の体積を計算するためにいつでも使用できる。ピペットのサイズがわかっていれば、ピペットの充填容積全体に対するピペット内の液体の体積を算出することにより、ピペットの充填レベルを判断できる。ピペットに流入する空気を測定することにより、ピペットから液体がどれだけ流出しているかを算出することが可能である。この流量を時間に対して積分すると、排出された液体の総量が得られる。これにより、ピペットから特定の量を繰り返し吐出することが可能になる。
【0031】
ピペット内の静水圧は、液体の高さに関係していて、それに伴いピペットの充填レベルに関係している。そのため、充填レベルを明らかにするには、ピペット内の静水圧を測定すれば十分である可能性がある。ピペット補助具は、ピペット内の静水圧を測定するための圧力センサを有することが有利である。静水圧には限界値を設定でき、その地点でピペット補助具のポンプが止まり、それによってピペットは、液体をそれ以上取り込むのを停止する。
【0032】
別の好適な実施形態では、制御要素は、第1のボタンおよび第2のボタンを有し、第1のボタンは、ピペット補助具に真空を発生させるために使用され、第2のボタンは、この真空を解放するか、ピペット補助具に圧力を発生させるために使用される。真空の発生または解放、および圧力の発生は、ピペットの吸引または吐出に直接の影響を及ぼす。これらの機能に対して2つの異なるボタンを使用することで、実験技師によるピペット補助具の操作が容易になる。
【0033】
ピペット内の静水圧の計算は、重力方向に対する傾斜角度によって異なる。ピペットの長手軸が重力方向と平行であれば、静水圧を計算する際に補正係数は必要ない。そうではなく、ピペットの長手軸が重力に対して傾斜していれば、静水圧を計算する際に補正係数を考慮する必要がある。この補正係数の値は、ピペットの傾斜角度によって異なり、この傾斜角度は、加速度センサを使用して算出できる。ピペット補助具は、ピペット補助具の重力に対する長手軸の傾斜角度を算出するために加速度センサを有することが好ましい。
【0034】
本発明の別の態様は、対象物の種類、特に実験装置および/または実験装置の付属品に特有である対象物の特性を識別する方法に関し、本方法は、
-対象物に第1の電磁放射線を第1の範囲の波長で照射する工程と、
-対象物から放出された電磁放射を放射線検出器で検出する工程と、
-放射線検出器が検出した波長を一時ファイルに保存する工程と、
-対象物に第2の電磁放射線を第2の範囲の波長で照射する工程と、
-対象物から放出された電磁放射を放射線検出器で検出する工程と、
-放射線検出器が検出した波長を一時ファイルに保存する工程と、
-一時ファイルに保存されている第1の電磁放射線および第2の電磁放射線の波長を、データベースに保存されている波長と比較する工程と、
-波長の組み合わせの比較に基づいて、対象物の種類に特有である対象物の特性を明らかにする工程と
を含む。
【0035】
対象物は、対象物が吸収した電磁放射線と対象物が放出した電磁放射線との間に波長シフトを引き起こす材料を含んでいる必要がある。本方法は、第1の波長が380nm~780nmの範囲内にあり、第2の波長が10nm~410nmまたは750nm~3,000nmの範囲内にあることを特徴とする。
【0036】
実験装置は、実験室での使用に適している任意の対象物であることが理解される。
【0037】
対象物の種類に特有の特性は、個々の対象物を分類して類別できる情報を含んでいる。対象物は、物理特性および/または化学特性のほか、対象物に特有の特性に基づいて分類できる。物理特性の例が、公称体積などの幾何学寸法、または材料の密度などの機械特性である。対象物特有の特性には、対象物の処番号、製造日、または製造場所が含まれてよい。上記の情報は、対象物の種類に特有の特性の不完全なリストである。
【0038】
好適な実施形態では、本方法は、特定のピペット11の種類を識別するように考案されている。この場合、対象物はピペット11である。ピペットの種類は、一時ファイルに保存されている波長の組み合わせを比較することによって判断される。
【0039】
様々なオプション機能は、それが相互に排他的でない限り、任意の組み合わせで使用できる。特に、好ましい範囲が指定されている場合、他の好ましい範囲は、その範囲で指定された最小値と最大値の組み合わせから取得できる。
【0040】
本発明の他の利点および特徴は、図面の概略図を参照して、本発明の例示的な実施形態についての以下の説明から導き出すことができる。図面は縮尺通りではない。
【図面の簡単な説明】
【0041】
図1】本発明による容積の異なる3つのピペットを示す図である。
図2】ピペットを含む本発明によるピペット補助具の3次元図であり、一部を透明に描いて放射線源および放射線検出器を見せている図である。
図3】構成要素が中に入っているピペット補助具の断面図である。
図4】ピペット補助具の信号処理の概略図である。
図5】吐出を制御するためのピストンが入っているピペットを含むピペット補助具の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0042】
以下(様々な図面)では、同一の要素または機能が同一の要素には同じ符号を使用している。異なる実施形態で同類の要素または機能が同一の要素、または機能が同類の要素を区別するために、付加的なアポストロフィを使用することがある。
【0043】
容積の異なる3つのピペット11、11’、11’’を図1に示している。これらのピペットは、本発明の枠組みでは異なる種類のピペットともみなされる。
【0044】
ピペット11、11’、11’’は、筒状の外面を有し、円錐状の第1の端部がピペット先端部13を形成している。ピペットの首部15は、ピペット先端部13の反対側の端部にあり、ピペット先端部は、ピペットの種類に応じて細くなっていることがある。図1のピペット11、11’、11’’は容積が異なるため、ピペットの直径は異なる。ただし、ピペットの首部15の直径は同じである。そのため、ピペットの胴部の直径と首部15の直径との比は、これらのピペットでは異なる。
【0045】
ピペット先端部13は、端部に第1開口部19を有する。この開口部19は、液体を受け入れて排出するために使われる。第2開口部21は、首部15の端部に位置している。第1開口部19と第2開口部21との間の容積部は、ピペット11の充填容積部を形成し、ピペット11が保持できる液体の最大量を規定する。ピペットの首部15には蛍光材料17があり、これをクロスハッチングで示している。
【0046】
ピペットが細くない場合、第2開口部21で接しているピペットの外面の部分がピペットの首部15を形成する。この領域は、第2開口部21から最大30mmまで広がっている。
【0047】
図2にはピペット補助具23を示しており、ピペット補助具にピペット11が装着されている。ピペット補助具23は、ピペット11を適所に保持する受容部25を有する。ピペット補助具23は、制御要素29および取付台26を含むハンドル27も有する。取付台26は、ハンドル27と受容部25との間の接続部となる。
【0048】
ハンドル27は、手で持つことができるため、追加の補助なしに制御要素29をもう一方の手で操作できる。制御要素29は、2つのボタン31を有する。ピペット補助具23は、2つのボタン31で制御され、第1のボタン31’は、ピペットに液体を受け入れるために使い(吸引)、第2のボタン31’’は、ピペットから液体を排出するために使う(吐出)。ピペット補助具23は、図2に示した実施形態ではU字型で、ハンドル27は、U字の片足を形成し、ピペット11が中に配置されている受容部25は、もう一方の足を形成する。ハンドル27および取付台26、ならびに受容部25およびピペット11は、線形の設計で単一の軸に沿って並べることも可能である。
【0049】
受容部25は、ピペット補助具23のピペット補助具23の取付台26から取り外せることが好ましい。これはつまり、受容部25をピペット補助具23の残り部分から取り外すことができ、別々に消毒またはオートクレーブで処理できるということである。
【0050】
取付台26は、2つの放射線源33’、33’’および1つの放射線検出器35を含む専用のセンサ要素32を有する。センサ要素32は、放射線源33’、33’’および放射線検出器が受容部25の内部を向くように取付台26に配置される。受容部25の一部は、センサ要素32を見せるために図2では透明になっている。センサ要素32は、受容部に配置したときにピペット11の首部15と同一線上になるように、受容部25に対して配置される。ピペットの首部15は、図2にクロスハッチングで示している。クロスハッチングを付けた領域は、蛍光材料を含むピペット11の表面を示している。
【0051】
2つの放射線源33’、33’’および放射線検出器35は、センサ要素32内で一直線に互いに隣接している。放射線検出器35は、2つの放射線源33’、33’’の間の中央にある。2つの放射線源33’、33’’および放射線検出器がある線の方向は、設置されているピペット11の軸方向がこの線に対して垂直になるように選択される。
【0052】
図3は、図2に示したピペット補助具23の断面を示している。ピペット補助具23をハンドル27、受容部25、および取付台26に分割した場合、ピペット補助具23の構成要素のほとんどがハンドル27にある。複数あるボタン31はそれぞれ、ピペット補助具23のハンドル27内の螺旋ばねの上に配置される。ボタン31は、対応するばねによってできる限り押し出されたとき、それぞれの非作動位置にある。各ボタン31は、ニードルバルブ43にも接続されている。ニードルバルブ43は、対応するボタン31が押されると開閉する。ニードルバルブ43は、バルブブロック44の内部にあるため、この図では見えない。
【0053】
ボタン31’、31’’を操作し、続いて対応するニードルバルブ43を開くことによって、ピペット補助具内の制御ユニット37によってポンプ39に送られる信号が生成される。ポンプ39は、この信号を開始信号または停止信号として使用する。ボタン31’、31’’を押すことによってニードルバルブ43が開くと、ピペット11とポンプ39との間にホース接続部が形成される。
【0054】
ハンドルは、上端にバッテリ41を内包している。バッテリ41は、ピペット補助具23内の全構成要素に必要なエネルギーを供給する。そのため、バッテリ41は、制御ユニット37、ポンプ39およびセンサ要素32に別々のワイヤ(図示せず)で接続される。
【0055】
ホース接続部47、49、51およびピペット補助具23内の個々の構成要素間のワイヤの概略図を図4に示している。ピペット11は、第1ホース接続部によってニードルバルブ43に接続される。第2ホース接続部49がニードルバルブ43をポンプ39に接続する。ニードルバルブ43の設定に応じて、ポンプ39は、ピペット11に空気を運ぶか、ピペットから空気を運ぶ。ニードルバルブ43の設定およびポンプ39の機能により、ピペット11は、液体を受け入れるか排出するかのいずれかを行う。ニードルバルブ43の設定は、前述したように、制御要素29のボタン31の操作によって異なる。
【0056】
ニードルバルブ43をバイパスするために、ポンプ39とピペット11との間の第3ホース接続部51を使用する。このホース接続部51に制御バルブ45を装着する。制御バルブ45は、ニードルバルブ43のいずれかが開いている場合に閉じられる。制御バルブ45を開くと、ピペット11内の液体の排出が始まる。制御バルブ45は、制御ユニット37から開くか閉じるかの命令を受ける。制御要素29のボタン31を操作することで、この命令の信号が生成される。ボタン31は、ニードルバルブを制御する2つのボタン31’、31’’、または追加の第3のボタン31’’’のいずれかであり得る。制御ユニット37から制御バルブ45への信号は、それぞれのボタンが長く押されたとしても、限られた時間にわたって制御バルブを開く。この限られた時間にわたって制御バルブ45を連続して開くことで、一定量の排出を繰り返す。
【0057】
第1ホース接続部47には流量センサ53が位置している。流量センサ53は、このセンサによって検知した差圧に基づいてホース接続部47の流量を測定するための差圧センサを含む。第1ホース接続部47には、ピペット11内の静水圧を測定する圧力センサ55もある。湿度センサ54が、ホース接続部47を流れる空気中の液体量を測定する。3つのセンサはすべて、別々のワイヤで制御ユニット37に接続され、それによってそれぞれの測定から得た情報を制御ユニット37に伝達する。制御ユニット37は、データ保存装置38を有する。センサからの情報はすべてそこに保存される。ピペット補助具23には加速度センサ57があり、ピペット11の角度を算出するのに使用される。
【0058】
別の種類のピペット補助具23をピペット11と共に図5に示しており、このピペット補助具は、軸方向に移動できるピストン59を有する。ピペット11内のピストンは、ピペット11内に真空または圧力を発生させ、それによって液体は、ピペット11に引き込まれるか、ピペットから排出される。ピペット11は、第2開口部21に蓋61を有する。蓋61は、第2開口部21の縁を覆って適合する。蓋の中央には孔があり、この孔を通してピストンロッド63が挿入される。図5に示したピペット11は、蓋61と一緒にピペット補助具23に装着するように設計されている。
【0059】
図5のピペット補助具23は、ピペット11内でピストン49を動かす制御器具39を有する。このピペット補助具23の制御器具39は、ピペット11がピペット補助具23に設置されたときに、このためにピストンロッド63の自由端に接続される必要がある。ピストン59は、液体をピペット11に引き込むとともに、その液体をそこから排出するために使用されるため、ピペット補助具23は、真空または圧力を発生させるためにポンプを必要としない。ホース接続部およびニードルバルブに、図5に示したピペット11用のピペット補助具23が備わっている必要もない。制御要素29は、制御ユニット37に接続され、制御ユニットは、制御要素が動作するときに信号を受信し、対応する信号を制御器具39に送信する。
【0060】
蓋61とピストン59の両方が、図5に示したピペット11の別の部分を形成し、この部分は、吸収された電磁放射線と放出された電磁放射線との間に波長シフトを引き起こす材料を含むことができる。
【0061】
液体を吐出するための空気圧制御システムを有する図1に示したピペットとは異なり、図5のピペット11は、吐出機能のために一体化したピストンによって形成される機械制御システムを有する。
【0062】
本発明のさらに他の利点および特徴は、本発明の例示的な実施形態および/または用途についての以下の詳細な説明から導き出すことができる。
【0063】
その他の例示的な実施形態
図面は、有利な技術的効果を得るために相互作用する、本発明によるピペットおよびピペット補助具の例示的な実施形態を示している。
【0064】
同じ有利な効果は、蛍光性ではないが、代わりに光子増幅を引き起こす材料を含むピペットでも得ることができる。ピペットに赤外線電磁放射線が照射されると、ピペットは、可視範囲の電磁放射線を放出する。蛍光材料の場合のように、正のストークスシフトの代わりに、負のストークスシフトを使用し、この場合、ピペットによって放出される電磁放射線の波長は、ピペットが吸収する電磁放射線の波長よりも短い。
【0065】
本発明の枠組みでは、「ピペットが吸収した電磁放射線と放出した電磁放射線との間に波長シフトを引き起こす材料」とは、この特性を有する有機または無機の分子または元素であると理解する。光増幅を引き起こす可能性のある有機分子は、典型的には、多環芳香族炭化水素(PAH)である。光増幅を引き起こす可能性のある無機材料は、通常、周期表のdブロックまたはfブロックにあるそのような元素のイオンである。これらのイオンの不完全なリストには、例として、Ln3+、Ti2+、Ni2+、Mo3+、Re4+、およびOs4+が含まれる。これらの分子は、ピペットの材料に組み込むことができる。これは、ピペットの製造過程の例えば押し出し機で、分子または元素がプラスチック材料に混合されるときに得られる。分子は、マトリクスに配置し、別々にピペットに使用することもできる。
【0066】
例示的な用途
ピペット補助具を備えたピペットを識別する利点には、ピペット補助具のピペットの充填容積を算出できることが含まれる。
【0067】
この利点により、とりわけピペット補助具の以下の3つの機能を利用することが可能になる。
【0068】
過剰充填の防止
ピペット補助具は、ホース接続部内の空気の体積流量を測定する流量センサを有する。ホース接続部内の空気は、実質的に圧縮されていないため、あるいは密度の変化が起こらないため、ホース接続部内の空気の体積流量は、ピペット内の液体の体積流量と基本的に同じである。これはつまり、ポンプによってホース接続部に運ばれる空気の量が、ピペットに引き込まれる液体の量と基本的に同じであることを意味する。空気の体積流量を補正するために、追加の湿度センサ、傾斜センサ、静水圧センサなどをピペット補助具に設置できる。測定した体積流量を積分することにより、どれだけの液体が運ばれたかを算出することが可能になる。この量は、以前に算出されたピペットの充填容積を超えてはならない。ピペットの充填容積は、ピペットの容積に基づいている。ピペット補助具によってピペットを識別すると、ピペットの充填容積に関する情報が得られる。よってピペット補助具は、充填容積に達した時に、ピペットに液体を引き込むのを停止できる。これにより、ピペットの過剰充填を防止し、実験技師は、充填プロセスを常時監視する必要なくピペットを充填できる。
【0069】
ピペット補助具の圧力調整
ピペット補助具を備えたピペットを識別することによって得られる別の利点は、ピペット補助具の圧力の調整である。ピペット補助具の圧力は、ピペット速度に影響する。周囲圧力とピペット補助具の圧力との差が大きいほど、ピペット速度は速い。ピペットの寸法には著しいばらつきがあるため、小さいピペットでピペット速度が速いほど不正確になるおそれがある。これには、実験技師側が小さなピペットでの変化に迅速に対応する必要があるが、これは、ピペット速度が速ければ困難なことがある。そのため、ピペット補助具は、ピペット速度が実験技師にとって快適な範囲内に収まるように、ピペットへの圧力を調整できる。
【0070】
連続排出
ピペットは、液体を受け入れ、排出するために使用される。これには液体を少量で均一に吐出することが必要であることが多い。ピペット補助具は、そのための機能を含むことができ、それによって所定の量を排出できる。この機能は、同じ量を繰り返し吐出するために、連続して繰り返すことができる。吐出する液体の量は、使用者が設定する必要がある、または設定できる。このように繰り返し排出するために、ピペット補助具にはホース接続部があり、ホース接続部は、ニードルバルブを迂回する。このホース接続部には制御バルブが接続される。制御バルブを開口することで、ホース接続部の真空が低下し、ポンプを操作することでピペット内の液体が排出される。ピペットによって排出される液体の量は、ホース接続部を通ってピペットに流れ込む空気の量と一致する。この空気流は、流量センサによって同時に算出される。上記に説明したように、流量速度を積分すると、運ばれる全体量が得られる。吐出する予定の量に達すると、制御バルブはピペット補助具によって自動で閉鎖し、ピペット内の液体の排出は停止される。そのため、制御バルブは、次の吐出のために再度開くことができ、吐出する予定の量を排出した後、再度閉じることができる。制御バルブを開く時点は、使用者が決定する。そのための別のボタンが制御要素にあるとすることができ、そのボタンで制御バルブを開く。制御要素の2つのボタンのいずれか1つを修正し、そのボタンでニードルバルブを制御することも構想でき、それによってこの修正したボタンを用いて制御バルブを開くことができる。ボタンの修正により、例えばボタンを円筒軸周りに回転させることも可能になる。
【0071】
具体的な実施形態を上記に説明したが、これらの可能性が相互に排他的でない限り、これらの可能な実施形態の異なる組み合わせを使用できることは明らかである。
【符号の説明】
【0072】
11 ピペット
13 ピペットの先端部(円錐状のテーパ)
15 急速細径化部
17 蛍光材料
19 ピペット第1開口部
21 ピペット第2開口部
23 ピペット補助具
25 受容部
26 取付台
27 ハンドル
29 制御要素
31 ボタン
32 センサ要素
33 放射線源
35 放射線検出器
37 制御ユニット
38 データ保存装置
39 操作器具/ポンプ
41 バッテリ
43 ニードルバルブ
44 バルブブロック
45 制御バルブ
47 第1ホース接続部
49 第2ホース接続部
51 第3ホース接続部
53 流量センサ
54 湿度センサ
55 圧力センサ
57 加速度センサ
59 ピストン
61 蓋
63 ピストンロッド
図1
図2
図3
図4
図5
【国際調査報告】