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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-12-08
(54)【発明の名称】医用画像内の標識要素の抑制
(51)【国際特許分類】
   A61B 6/03 20060101AFI20231201BHJP
【FI】
A61B6/03 370F
A61B6/03 360T
A61B6/03 375
A61B6/03 360Q
A61B6/03 360B
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023529061
(86)(22)【出願日】2021-11-15
(85)【翻訳文提出日】2023-06-13
(86)【国際出願番号】 EP2021081632
(87)【国際公開番号】W WO2022106331
(87)【国際公開日】2022-05-27
(31)【優先権主張番号】63/115,950
(32)【優先日】2020-11-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】21159884.2
(32)【優先日】2021-03-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】590000248
【氏名又は名称】コーニンクレッカ フィリップス エヌ ヴェ
【氏名又は名称原語表記】Koninklijke Philips N.V.
【住所又は居所原語表記】High Tech Campus 52, 5656 AG Eindhoven,Netherlands
(74)【代理人】
【識別番号】110001690
【氏名又は名称】弁理士法人M&Sパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】ウィームカー ラファエル
(72)【発明者】
【氏名】ダナントワリ アマル チャンドラ
【テーマコード(参考)】
4C093
【Fターム(参考)】
4C093AA21
4C093AA22
4C093AA24
4C093AA26
4C093CA13
4C093CA21
4C093DA01
4C093FF03
4C093FF06
4C093FF16
4C093FF34
4C093FF36
(57)【要約】
医用画像内の標識要素の出現を低減するためのメカニズムである。これは、医用画像を処理して、標識要素のみを含む別個の抑制画像を生成することによって実現される。次に、医用画像と抑制画像とを組み合わせて、医用画像内の標識要素の出現が低減される。これは、組み合わせの前に、抑制画像を修正したり、組み合わせ中に、医用画像及び抑制画像に重み付けしたりすることで実現できる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
1つ以上の標識要素を有する医用画像に対して、標識要素を薄めることを実行するコンピュータ実施方法であって、前記コンピュータ実施方法は、
前記1つ以上の標識要素を有する前記医用画像を取得するステップであって、各標識要素は、造影剤を含む材料を表す前記医用画像の一部である、取得するステップと、
前記医用画像を処理して、前記医用画像の前記1つ以上の標識要素のみを含む抑制画像を生成するステップと、
処理済み医用画像を生成するために、前記医用画像と前記抑制画像とを組み合わせるステップであって、前記処理済み医用画像内では、前記1つ以上の標識要素の見かけの輝度が低減されて、前記医用画像と比較して、前記標識要素は薄められているが、完全に抑制されるわけではない、組み合わせるステップと、
を含む、コンピュータ実施方法。
【請求項2】
前記医用画像と前記抑制画像とを組み合わせるステップは、前記処理済み医用画像内の前記1つ以上の標識要素の見かけの輝度が、前記処理済み医用画像内の1つ以上の他の要素の見かけの輝度よりも小さくなるようにされる、請求項1に記載のコンピュータ実施方法。
【請求項3】
前記医用画像と前記抑制画像とを組み合わせるステップは、
前記抑制画像内の前記1つ以上の標識要素の見かけの輝度を低減するために、前記抑制画像を修正するステップと、
前記処理済み医用画像を生成するために、前記医用画像と修正された前記抑制画像とを組み合わせるステップと、
を含む、請求項1又は2に記載のコンピュータ実施方法。
【請求項4】
前記医用画像と前記抑制画像とを組み合わせるステップは、前記医用画像から、修正された前記抑制画像を減算するステップを含む、請求項3に記載のコンピュータ実施方法。
【請求項5】
前記医用画像と前記抑制画像とを組み合わせるステップは、前記医用画像と、修正された前記抑制画像とを一緒に乗算するステップを含む、請求項3又は4に記載のコンピュータ実施方法。
【請求項6】
前記抑制画像を修正するステップは、所定の量だけ又は所定の割合だけ、前記抑制画像内の標識要素を表す全てのピクセルの1つ以上のピクセルパラメータの値を減少するステップを含む、請求項3から5のいずれか一項に記載のコンピュータ実施方法。
【請求項7】
前記抑制画像を修正するステップは、前記抑制画像に対して平滑化操作を実行するステップを更に含む、請求項3から6のいずれか一項に記載のコンピュータ実施方法。
【請求項8】
前記医用画像と前記抑制画像とを組み合わせるステップは、組み合わせ中に、前記医用画像及び前記抑制画像に重み付けするステップを含む、請求項1から7のいずれか一項に記載のコンピュータ実施方法。
【請求項9】
前記医用画像は、結腸の医用画像であり、各標識要素は、前記結腸内の標識便を表している、請求項1から8のいずれか一項に記載のコンピュータ実施方法。
【請求項10】
前記医用画像は、コンピュータ断層撮影画像である、請求項1から9のいずれか一項に記載のコンピュータ実施方法。
【請求項11】
前記処理済み医用画像をディスプレイに表示するステップを更に含む、請求項1から10のいずれか一項に記載のコンピュータ実施方法。
【請求項12】
前記医用画像及び/又は前記医用画像によって表される1つ以上の解剖学的構造の1つ以上の特性を特定するために、機械学習方法を使用して、前記処理済み医用画像を更に処理するステップを更に含む、請求項1から11のいずれか一項に記載のコンピュータ実施方法。
【請求項13】
1つ以上の仮想医用画像を生成するためのコンピュータ実施方法であって、
1つ以上の標識要素を有する第1のベース医用画像を取得するステップと、
前記第1のベース医用画像とは異なるイメージングモダリティを使用して生成された第2のベース医用画像を取得するステップであって、前記第2のベース医用画像は、1つ以上の標識要素を有しており、前記第1のベース医用画像及び前記第2のベース医用画像は、1つ以上の仮想医用画像を生成するために一緒に使用可能である、取得するステップと、
処理済みの第1のベース医用画像を生成するために、請求項1から12のいずれか一項に記載のコンピュータ実施方法を実行することによって、前記第1のベース医用画像に対して標識要素抑制を実行するステップと、
処理済みの第2のベース医用画像を生成するために、請求項1から12のいずれか一項に記載のコンピュータ実施方法を実行することによって、前記第2のベース医用画像に対して標識要素抑制を実行するステップと、
1つ以上の仮想医用画像を生成するために、処理済みの前記第1のベース医用画像及び前記第2のベース医用画像を処理するステップと、
を含む、コンピュータ実施方法。
【請求項14】
コンピュータプログラムコード手段を含むコンピュータプログラムであって、前記コンピュータプログラムコード手段は、処理システムを有するコンピューティングデバイス上で実行されると、前記処理システムに、請求項1から13のいずれか一項に記載のコンピュータ実施方法の全てのステップを実行させる、コンピュータプログラム。
【請求項15】
1つ以上の標識要素を有する医用画像に対して、標識要素を薄めることを実行するための処理システムであって、
前記1つ以上の標識要素を有する前記医用画像を取得することであって、各標識要素は、造影剤を含む材料を表す前記医用画像の一部である、取得すること、
前記医用画像を処理して、少なくとも前記医用画像の前記1つ以上の標識要素を含む抑制画像を生成することと、
処理済み医用画像を生成するために、前記医用画像と前記抑制画像とを組み合わせることであって、前記処理済み医用画像内では、前記医用画像内の前記1つ以上の標識要素の見かけの輝度が低減されて、前記標識要素は薄められているが、完全に抑制されるわけではない、組み合わせることと、
を実行する、処理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医用イメージングの分野に関し、特に、医用画像内の標識要素の抑制に関する。
【背景技術】
【0002】
患者/個人の状態を評価するための医用画像の使用が増加している。医療処置では、患者/個人の医用画像内の非構造物体(便、何らかの流体/血液、又はボーラスなど)の識別を容易にするために、造影剤を使用することが合理的に一般的である。造影剤の使用の結果生じる非構造物体を表す画像の部分は、一般的に、画像の「標識要素」又は「造影剤標識要素」と呼ばれ、通常、身体の他の要素(骨、周囲組織など)を表す画像の部分よりも輝度が高い。
【0003】
画像内に標識要素が1つ以上存在していると、標識要素の近くの構造要素が(部分的に)隠されたり、医用画像内に明るいアーチファクトが生じるなどして、医用画像を見ている臨床医の妨げになることがある。標識要素を医用画像から事実上除去して、臨床医が画像を評価し易くする既知の抑制の概念がある。
【0004】
一例として、コンピュータ断層撮影(CT)イメージングプロセスの結腸内視鏡検査中に、造影剤の経口投与により結腸内の便残渣の標識が行われる。この造影剤標識を使用して、結腸壁や存在している可能性のあるポリープの視認性を高め、且つそれらが便残渣によって隠されないように、観察のために標識便残渣をデジタル抑制できる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
医用画像内の標識要素の抑制を向上させる要望が現在もある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、特許請求の範囲によって規定される。
【0007】
本発明の一態様による実施例によれば、1つ以上の標識要素を有する医用画像に対して、標識要素を薄めること(抑制)を実行するコンピュータ実施方法が提供される。
【0008】
コンピュータ実施方法は、1つ以上の標識要素を有する医用画像を取得するステップであって、各標識要素は、造影剤を含む材料を表す医用画像の一部である、取得するステップと、医用画像を処理して医用画像の1つ以上の標識要素のみを含む抑制画像を生成するステップと、処理済み医用画像を生成するために、医用画像と抑制画像とを組み合わせるステップであって、処理済み医用画像内では、1つ以上の標識要素の見かけの輝度が低減されて、医用画像と比較して、標識要素は薄められているが、完全に抑制されるわけではない、組み合わせるステップとを含む。
【0009】
本開示は、医用画像内の標識要素を完全に除去することなく、医用画像内の1つ以上の標識要素の輝度を低減することを提案する。これは、(標識要素を含む)抑制画像を生成し、抑制画像と医用画像とを適切に組み合わせることによって実現される。1つ以上の標識要素を含む抑制画像を使用すると、元の医用画像の内容に影響を与えることなく、抑制画像の操作、修正、及び/又は重み付けを行うことが可能になる。上記2つを組み合わせることで、標識要素の見かけの輝度、即ち、出現を低減しつつ、元の医用画像の特徴を保持できる。
【0010】
本開示は、標識要素が、削除される、消去される、又は完全に抑制されるのではなく、「薄く」される処理済み医用画像を事実上提供する。これにより、造影剤の使用により生じる影響を低減しつつ、標識要素の潜在的に価値のある(例えばコンテキスト上の理解などのための)情報の除去が回避される。具体的には、本発明は、標識要素の見かけの輝度を低減するための新しい画像処理技法を提案する。
【0011】
提案されるアプローチは、明るい標識要素によって「見えなく」されることなく、(医用画像内の)医学的構造内の嚢胞、病変、増殖、又は欠陥(ポリープや便残渣など)を特定し易くすることを促進する。更に、提案されるアプローチは、標識要素の元の場所に関する情報を(標識要素は完全に削除されるわけではないため)依然として伝達し、これは、抑制アーチファクト及び/又はストリークアーチファクトのコンテキスト上の理解を高めることを促進する。更に、標識要素を完全に削除するわけではないことによって、医用画像内の空気(気泡)の場所を特定できる。これらは、処理済み医用画像内の標識要素よりも更に低い輝度を有する領域として表されるためである。
【0012】
1つ以上の標識要素のみを含むように抑制画像を使用することで、(元の)医用画像内に描出される他の要素の輝度に影響を与えることなく、標識要素に修正を行うことができる。これにより、より具体的で、指向性のある輝度の修正が促進される。
【0013】
(医用画像とは別個である)抑制画像を使用すると、医用画像の画像処理の実行の柔軟性が増加される。具体的には、抑制画像を使用すると、より複雑で高度な画像処理技法を採用することが可能になる。
【0014】
例えば、抑制画像を使用することの1つの利点は、残っている曖昧な部分の見かけの輝度又は可視性をインタラクティブに変更することの容易さ及び速度が高まる点である。これは、例えば画像ボリューム全体の再処理を必要とすることなく、抑制画像のみが画像処理されればよいためである。
【0015】
別の利点は、医用画像を「オンザフライ」で変更できる点である。例えば同じ抑制画像を、従来のCTハウンスフィールド画像や、スペクトルCTからの仮想単一エネルギー画像や、別の派生画像(これらは全て、同じ関心領域を描出しており、抑制画像ではその標識要素が既に特定されている)と組み合わせることができる。
【0016】
更に別の利点は、医用画像との適用又は組み合わせの前に、例えば構造のサイズに関して抑制画像自体を更に処理できる点である。例えば細い構造は、太い構造よりも少なく薄くされる。又は、小さい構造は、太い構造よりも少なく薄くされる。
【0017】
本開示のコンテキストでは、「見かけの輝度」とは、ユーザに見える画像の要素の明度又は輝度のことである。したがって、より高い見かけの輝度を有する画像のピクセルは、より低い見かけの輝度を有する画像のピクセルよりも白く見える。輝度の概念は、画像処理の分野では確立されている。
【0018】
以下に記載するように、本開示では、医用画像と抑制画像とを組み合わせることで、標識要素の見かけの輝度を低減するための様々なメカニズムが構想されている。
【0019】
医用画像と抑制画像とを組み合わせるステップは、処理済み医用画像内の1つ以上の標識要素の見かけの輝度が、処理済み医用画像内の1つ以上の他の要素の見かけの輝度よりも小さいように構成され得る。
【0020】
したがって、処理済み医用画像内の標識要素の輝度は、医用画像内の非標識要素(即ち、造影剤を含む材料を表さない要素)の輝度よりも小さくされる。これにより、標識要素の潜在的に価値のある情報を完全には廃棄することなく、例えば評価又は解析のために、非標識要素の可視性が更に向上される。
【0021】
医用画像と抑制画像とを組み合わせるステップは、抑制画像内の1つ以上の標識要素の見かけの輝度を低減するために、抑制画像を修正するステップと、処理済み医用画像を生成するために、医用画像と修正された抑制画像とを組み合わせるステップとを含み得る。
【0022】
上記のコンピュータ実施方法は、医用画像と抑制画像とを組み合わせるステップが、医用画像から、修正された抑制画像を減算するステップを含むように適応され得る。
【0023】
任意選択で、医用画像と抑制画像とを組み合わせるステップは、医用画像と、修正された抑制画像とを一緒に乗算するステップを含む。
【0024】
抑制画像を修正するステップは、所定の量だけ又は所定の割合だけ、抑制画像内の標識要素を表す全てのピクセルの1つ以上のピクセルパラメータの値を減少するステップを含み得る。
【0025】
画像(2D画像及び3D画像の両方を含む)は、ピクセルから形成される。これらは、3D画像の場合は、ボクセルともラベル付けされる。各ピクセルは、当該ピクセルについての1つ以上の異なるピクセルパラメータの値を表す1つ以上のピクセル値を特定する。1つのピクセルに対するピクセルパラメータの数は、画像の形式によって異なる。例えばRGB画像は、1つのピクセルに対して少なくとも3つのピクセルパラメータを含み、CT画像は、1つのピクセルに対して単一のピクセルパラメータのみ(HU値を表す)を有している。
【0026】
ピクセルパラメータの値を所定の量だけ減少されることが提案される。したがって、異なるピクセルパラメータが異なる所定の量だけ減少されるが、全てのピクセルの同じピクセルパラメータに同じ減少が適用される。
【0027】
これにより、標識要素抑制画像の見かけの輝度を低減するための、又は抑制画像内の標識要素の出現を修正するための柔軟性のあるメカニズムが提供される。
【0028】
抑制画像を修正するステップは、抑制画像に対して平滑化操作を実行するステップを更に含み得る。抑制画像を平滑化すると、例えば処理済み医用画像の1つ以上の標識要素のエッジを他の要素とブレンドさせることによって、1つ以上の標識要素の視覚的出現を向上させる。
【0029】
医用画像と抑制画像とを組み合わせるステップは、組み合わせ中に、医用画像及び抑制画像に重み付けするステップを含み得る。これにより、医用画像内の標識要素の出現を低減又は修正できる、医用画像と抑制画像とを組み合わせるための別のメカニズムが提供される。
【0030】
医用画像は、結腸の医用画像であり、各標識要素は、結腸内の標識便を表している。提案されるアプローチは、結腸内の便の出現を低減するために特に有利であることが認識される。これは、標識便が、結腸内の欠陥、増殖、又は病気の可能性のある部位を隠すことで特に問題であることが認識されているためである。
【0031】
医用画像は、コンピュータ断層撮影(CT)画像であり得る。CT画像内の標識要素は、標識要素と非標識要素との輝度の差が大きいことから(画像解析中に)特に問題であることが認識されている。輝度の差が大きいと、標識画像の評価又は解析が著しく難しくなる。しかしながら、例えば磁気共鳴(MR)画像(例えば標識要素は、MRI造影剤を使用するMRイメージング中にその磁気応答が障害される要素を表す)、X線画像(例えば要素は放射線造影剤を使用して標識付けされる)、又は超音波画像(例えば超音波造影剤を使用する)などの他の医用画像モダリティを、提案されるアプローチを使用して処理できることが理解されるであろう。
【0032】
上記のコンピュータ実施方法は、処理済み医用画像をディスプレイに表示するステップを更に含み得る。或いは、処理済み医用画像を、例えば機械学習方法などを使用して処理して、医用画像によって表される潜在的な欠陥や、(医学的)懸念事項の領域を特定することもできる。当然ながら、処理済み医用画像は、例えばノイズ低減などの更なる処理が施されてもよい。したがって、上記の方法は、処理済み医用画像を更なる処理デバイスに出力するステップを含み得る。
【0033】
上記の方法は、医用画像及び/又は医用画像によって表される1つ以上の解剖学的構造の1つ以上の特性を特定するために、機械学習方法を使用して、処理済み医用画像を更に処理するステップを更に含み得る。
【0034】
1つ以上の仮想医用画像を生成するためのコンピュータ実施方法も提案される。このコンピュータ実施方法は、第1のベース医用画像を取得するステップであって、第1のベース医用画像は、1つ以上の標識要素を有する、取得するステップと、第1のベース医用画像とは異なるイメージングモダリティを使用して生成された第2のベース医用画像を取得するステップであって、第2のベース医用画像は、1つ以上の標識要素を有しており、第1のベース医用画像及び第2のベース医用画像は、1つ以上の仮想医用画像を生成するために一緒に使用可能である、取得するステップと、処理済みの第1のベース医用画像を生成するために、任意の前述の方法を実行することによって、第1のベース医用画像に対して標識要素抑制を実行するステップと、処理済みの第2のベース医用画像を生成するために、任意の戦術の方法を実行することによって、第2のベース医用画像に対して標識要素抑制を実行するステップと、1つ以上の仮想医用画像を生成するために、処理済みの第1のベース医用画像及び第2のベース医用画像を処理するステップとを含む。
【0035】
第1及び第2のベース医用画像は、患者の同じ関心領域をイメージングしている。例えば同じ仮想カメラ位置及び/又は方向を有しているが、異なるモダリティ(例えば画像を生成するために異なるエネルギーレベルを使用する)を使用して取得されている。
【0036】
コンピュータプログラムコード手段を含むコンピュータプログラム製品も提案される。コンピュータプログラムコード手段は、処理システムを有するコンピューティングデバイス上で実行されると、処理システムに、任意の前述の方法の全てのステップを実行させる。
【0037】
1つ以上の標識要素を有する医用画像に対して、標識要素抑制を実行するための処理システムも提案される。この処理システムは、1つ以上の標識要素を有する医用画像を取得することであって、各標識要素は、造影剤を含む材料を表す医用画像の一部である、取得すること、医用画像を処理して、少なくとも医用画像の1つ以上の標識要素を含む抑制画像を生成することと、処理済み医用画像を生成するために、医用画像と抑制画像とを組み合わせることであって、処理済み医用画像内では、医用画像内の1つ以上の標識要素の見かけの輝度が低減されて、標識要素は薄められているが、完全に抑制されるわけではない、組み合わせることと、を実行する。
【0038】
医用画像は、例えば医用画像データベースから、又は医用画像生成器(CTスキャナ、MRIスキャナなど)から取得され得る。処理済み医用画像は、(処理済み医用画像を表示するために)ディスプレイに、又は、例えば処理済み医用画像に対して更なる画像処理を実行するために、若しくは処理済み医用画像の内容を解析するために更なるプロセッサに出力され得る。
【0039】
処理システムは、任意の前述の方法を実行するように適応され、また、当業者は、それに応じて処理システムを適応させることができるであろう。
【0040】
本発明のこれらの及び他の態様は、以下に説明する実施形態から明らかになり、また、当該実施形態を参照して説明される。
【図面の簡単な説明】
【0041】
本発明を更に深く理解し、それがどのように実行されるかをより明確に示すために、ほんの一例として添付の図面を参照する。
【0042】
図1図1は、一実施形態による方法を示す。
図2図2は、一実施形態による方法を示す。
図3図3は、一実施形態による方法を経ている医用画像を示す。
図4図4は、一実施形態による方法を経ている別の医用画像を示す。
図5図5は、既存の方法と比較される、一実施形態による方法を経ている更に別の医用画像を示す。
図6図6は、処理システムを示す。
【発明を実施するための形態】
【0043】
本発明は、図を参照して説明される。
【0044】
詳細な説明及び具体的な実施例は、装置、システム、及び方法の模範的な実施形態を示しているが、説明のみを目的としたものであり、発明の範囲を限定することを意図したものではないことが理解されるべきである。本発明の装置、システム、及び方法のこれらの及び他の特徴、態様並びに利点は、次の説明、添付の特許請求の範囲、及び添付の図面からよりよく理解されるようになるであろう。図は単なる概略図であり、縮尺どおりに描かれていないことが理解されるべきである。また、図全体で同じ参照番号を使用して、同じ部分又は類似の部品を示すことが理解されるべきである。
【0045】
本発明は、医用画像内の標識要素の出現(appearance)を低減するためのメカニズムを提供する。これは、医用画像を処理して、標識要素のみを含む別個の抑制画像を生成することによって実現される。次に、医用画像と抑制画像とを組み合わせて、医用画像内の標識要素の出現が低減される。これは、組み合わせの前に、抑制画像を修正したり、組み合わせ中に、医用画像及び抑制画像に重み付けしたりすることで実現できる。
【0046】
本開示は、医用画像内の標識要素を他の要素から抽出して別個の抑制画像を形成でき、また、標識要素を他の要素から切り離して処理するために第2の別個の画像を使用することが有利であるという認識に基づいている。特に、別個の抑制画像を使用することで、より複雑で高度な画像処理技法を使用し易くなり、医用画像内の標識要素の見かけの輝度を調整する際のより大きい柔軟性(及びより少ない計算の複雑さ)を可能にすることが認識されている。
【0047】
(理解し易くし、潜在的に価値のある臨床情報が除去される可能性を低減するために)便を完全に除去する又は削除することなく、例えば結腸のCT画像内の標識便の出現を低減する実施形態を使用できる。
【0048】
標識要素の輝度や出現を(標識要素を完全に除去することなく)低減するための提案されるアプローチは、臨床医にとってより臨床的に関連性の高いデータを提供する、強調医用画像を生成できる。具体的には、減算アーチファクトが気付かれないままとなる可能性を低減しつつ、標識要素フリーの医用画像(臨床的により有用である)に非常に似た医用画像が生成される。
【0049】
図1は、本発明の一実施形態による方法100を示している。
【0050】
この方法は、医用画像150を取得するステップ110を含む。
【0051】
医用画像は、1つ以上の標識要素を含む任意の適切な医用画像であり得る。例えば、便を表す領域に標識が付けられている(例えばその領域の輝度が大きい)CT画像や、血液を表す領域に標識付けられているMR画像(「明るい血液」画像と呼ばれることもある)である。
【0052】
特に、医用画像150は患者の関心領域を表す。医用画像150は、2D画像、3D画像、及び/又は2D/3Dビデオ若しくはシネループからのフレームである。
【0053】
当業者であれば、1つ以上の標識要素を有する医用画像を取得するやり方を容易に理解するであろう。通常、造影剤又は造影媒体を使用して、医用画像内の、体内を移動する流体、異物、又は消化材料(ボーラス、チャイム、乳び、便、ふん便物質など)が強調表示される。
【0054】
したがって、標識要素は、造影剤/造影媒体の影響下で、造影剤/造影媒体の影響下にない場合よりも(医用画像内で)より大きい輝度を有して、より識別し易いように見える物質を表す。
【0055】
方法100は、ステップ120において医用画像150を処理して、抑制画像を生成する。抑制画像は、医用画像の標識要素のみを含む(例えば医用画像と同じ解像度の)画像である。したがって、抑制画像は、実質的に、標識要素のみが複製された医用画像のバージョンである。
【0056】
ステップ120は、いくつかのアプローチを使用して実行される。一般に、ステップ120は、医用画像内の任意の標識要素を識別し、この情報を使用して「抑制画像」を生成することを含む。この画像には標識要素が含まれているが、それ以外は、空白又はゼロにされている。
【0057】
例えばステップ120は、医用画像と同じ解像度を有する抑制画像を初期化し、標識要素に対応する医用画像のピクセルの識別し、これらのピクセルのピクセル値を抑制画像の対応するピクセルに複製することを含む。初期化された抑制画像は、ピクセルの全てのピクセル値に対して、所定の値(例えば0)を有していてもよい。
【0058】
別のアプローチでは、抑制画像を生成することは、医用画像を複製して(初期抑制画像を生成し)、標識要素に対応しない全てのピクセルのピクセル値を0に設定することを含む。
【0059】
一例では、標識要素は大きい輝度を有するものとして見えるので、抑制画像は、何らかの所定の閾値よりも大きい輝度を有する医用画像の全ての領域を識別することによって生成される。したがって、抑制画像は、単純な閾値化プロセスを使用して生成されてもよい。
【0060】
いくつかの実施例では、標識要素は、画像セグメンテーション技法を使用して識別される。エッジ検出アプローチ(標識要素は明確で明るいエッジを有するはずであるため)、モデルベースのセグメンテーション技法(国際特許公開WO2018/224363A1に開示されているようなものなど)、閾値化ベースのセグメンテーション技法(国際特許公開WO2007/046019A1に開示されているようなものなど)、又は深層学習アプローチ、即ち、1つ以上の畳み込みニューラルネットワーク(CNN)を利用するようなものといった機械学習方法を採用したアプローチなど、任意の適切な画像セグメンテーション技法を使用できる。
【0061】
当然ながら、これらの技法の組み合わせを使用してもよい。
【0062】
次に、方法100は、医用画像150と抑制画像を組み合わせて処理済み医用画像190を生成するプロセス130を実行する。プロセス130は、処理済み医用画像内の標識要素が、医用画像と比較して低減されているがゼロではない、1つ以上の標識要素の見かけの輝度を有するように構成されている。
【0063】
このプロセス130は、様々なアプローチのうちの1つを実行することで達成できる。
【0064】
一例では、医用画像と抑制画像とを直接組み合わせることができる。例えば平均化、乗算、又は医用画像から抑制画像を減算できる(例えばステップ135において)。この際に、標識要素の見かけの輝度を低減するために、医用画像及び/又は抑制画像は適切に重み付けされる。
【0065】
例えば医用画像と抑制画像とを組み合わせるステップで減算アプローチを使用するシナリオを考える。この場合、組み合わされた医用画像の各ピクセルのピクセル値は、医用画像の対応するピクセルの(重み付けされた)ピクセル値から減算した抑制画像の対応するピクセルの(重み付けされた)ピクセル値である。このシナリオでは、医用画像の全てのピクセル値がXで重み付けされ、抑制画像の全てのピクセル値がYで重み付けされている場合、医用画像の標識要素の結果として生じるピクセル値は、医用画像のピクセル値(Y-X)倍になる。これにより、医用画像と比較して標識要素の見かけの輝度が効果的に低減する。
【0066】
好ましい実施例では、プロセス130は、医用画像と抑制画像とを(減算又は乗算によって)組み合わせる前に、抑制画像の見かけの輝度を低減するステップ131を含む。これにより、処理済み画像内の標識要素の輝度をよりうまく制御できる。
【0067】
特に、抑制画像の見かけの輝度は、医用画像に対して減算又は乗算が行われると、標識要素の出現が低減されるがゼロではないように低減される。つまり、標識要素は、処理済み画像内に依然として可視ではあるが、輝度は小さくなる。
【0068】
見かけの輝度を低減するプロセスは、抑制画像のタイプによって異なる。例えば抑制画像が明度マップ(CTハウンスフィールド画像など)である場合、輝度を低減することは、単に各ピクセルの単一ピクセル値を減少させることである。別の例として、抑制画像がRGB画像の場合、輝度を低減することは、各ピクセルのR値、G値、及びB値を減少することか、及び/又は(存在する場合は)各ピクセルのアルファ値、即ち、α値(ピクセルの透明度を定義する)を調整することである。
【0069】
輝度の低減量は、例えば、ユーザの入力に応答したものであるか、又は所定のものであってもよい。好ましくは、輝度の低減量はユーザインターフェースでのユーザ入力に応答したものであり、ユーザが標識要素の見かけの輝度を制御できるようにする。抑制画像を使用することは、ユーザ入力に依存して輝度の低減量を決定する場合に特に有利である。これは、元の医用画像を完全に再処理することなく、処理済み医用画像を簡単に再生できるためである。
【0070】
いくつかの実施例では、抑制画像内の標識要素を表す全てのピクセルの1つ以上のピクセルパラメータの値が、所定の量だけ又は所定の割合だけ減少される。
【0071】
輝度の低減量は、抑制画像の全ピクセルで均一である必要はない。いくつかの実施例では、異なる標識要素が異なる量で輝度が低減される。例えば、細い標識要素は太い標識要素よりも輝度が少なく低減されたり(臨床医が細い標識要素を見逃す可能性を減らすため)、小さい標識要素は大きい標識要素よりも輝度が少なく低減される。
【0072】
したがって、抑制画像のピクセルの輝度の低減量は、ピクセルが属する標識要素のサイズや形状によって異なる。
【0073】
組み合わせるステップ130は、ステップ135において、医用画像から抑制画像を減算することによって、又は医用画像と抑制画像とを乗算することによって、抑制画像と医用画像とを組み合わせることを含む。
【0074】
好ましくは、プロセス130は、(医用画像と組み合わせる前に)抑制画像に対して平滑化操作を実行するステップ132を含む。イメージング平滑化操作は当業者にはよく知られており、抑制画像に1つ以上の平滑化フィルタを適用することを採用する。
【0075】
平滑化操作を使用すると、処理済み画像の標識要素と非標識要素との輝度の任意の鮮明な又は急激な変化の出現を低減することによって、処理済み医用画像の視覚的な出現が向上される。これにより、(例えばこれらの急激な勾配や変更における)処理済み医用画像内のアーチファクトの出現が低減され、処理済み医用画像によって表される関心領域の真の標識要素フリーの画像に近い表現が提供される。
【0076】
平滑化操作では、別個の抑制画像を使用する利点が更に示される。これは、平滑化操作が標識要素に対してのみ実行されるため、医用画像の他の部分の詳細を損なうこと(これは、医用画像全体に対して平滑化操作を実行する場合に発生する)なく、視覚的な出現が向上され、アーチファクトが減少するためである。
【0077】
組み合わせるステップ130では、他の処理ステップ(ノイズ除去、色付けなど)が実行されてもよい。これは、平滑化を実行するステップ132に加えて又は代わりに行ってもよい。
【0078】
したがって、抑制画像を使用すると、標識要素に対して追加の処理(平滑化やノイズ除去など)を実行して、医用画像の他の成分に影響を与えることなく、処理済み抑制画像170を生成できる。これにより、医用画像の他の成分に影響を与えることなく、標識要素を画像処理するための新しいメカニズムが提供される。
【0079】
別個の抑制画像を使用すると、同じ抑制画像を医用画像の異なるバージョン(同じ関心領域の医用画像であるが、異なるイメージングモダリティを使用して撮影されたものなど)に適用できるという利点もある。これにより、同じ関心領域の他の医用画像に対して生成された抑制画像を再利用又は転用することで、処理済み医用画像を生成する際の作業負荷を軽減できる。
【0080】
したがって、いくつかの実施形態では、特定の医用画像に対して抑制画像が生成される(及び任意選択で処理される)と、同じ抑制画像を、同じ関心領域の他の医用画像と組み合わせて、他の医用画像内の標識要素の輝度を低減できる。
【0081】
同様に、同じ抑制画像を、元の医用画像からの異なる派生画像(仮想非カルシウム医用画像、仮想非造影画像などの更に処理された医用画像など)と組み合わせることもできる。
【0082】
方法100は更に、更なる医用画像150B(医用画像150から派生した画像や医用画像150と同じ場所で撮影された画像)を取得するステップ183を含む。プロセス185において、更なる医用画像150Bと(処理済み)抑制画像170とが組み合わされる。これは、例えば、処理済みの更なる医用画像を生成するために、組み合わせプロセス130に類似している。
【0083】
したがって、抑制画像170は、元の医用画像から得られた画像など、他の医用画像と組み合わせるために再利用できる。
【0084】
本開示は、処理済み医用画像を生成するアプローチを提案する。このアプローチでは、医用画像から、医用画像の標識要素のみを含む抑制画像が生成される。これにより、抑制画像の再利用と、(抑制画像の画像処理による)標識要素の専用画像処理とが容易にされる。また、このアプローチにより、元の医用画像を完全に再処理することなく、処理済み医用画像内の標識要素の輝度の(例えば、組み合わせ中に、抑制画像の輝度を調整したり、抑制画像の重み付けを調整したりすることによる)簡単な調整が容易にされる。
【0085】
処理済み医用画像では、標識要素の輝度/出現は低減されているがゼロではない。これにより、臨床医は、標識要素と気泡とを区別し、処理済み医用画像内の標識要素に起因するアーチファクトの原因を特定する能力を依然として維持しつつ、標識要素によって「見えなく」されることなく、処理済み医用画像で表される解剖学的構造の不整合や特徴をより簡単に識別できる。
【0086】
処理済み医用画像は、ユーザインターフェースなどに表示されたり、更に処理されたり(機械学習方法を使用してなど)して、医用画像や医用画像で表される関心領域に関する1つ以上の特性が識別される。例えば機械学習方法を使用して、結腸の処理済み医用画像を更に処理して、結腸内に存在する1つ以上のポリープの存在や特性を特定できる。
【0087】
したがって、方法100は、処理済み医用画像を、例えばユーザインターフェースで表示するステップを含む。同様に、方法100は、例えば、医用画像及び/又は処理済み医用画像によって表される関心領域の特性決定、解析、及び/又は分類を実行するために医用画像を更に処理するステップを含む。
【0088】
いくつかの実施例では、この方法は、処理済み医用画像に対して、ノイズ除去などの更なる画像処理を実行するステップを含む。更なる処理済み医用画像は、ユーザインターフェースなどに表示される。
【0089】
当然ながら、この方法は、標識要素が完全に抑制される(つまり、処理済み医用画像内の標識要素の値が0になる)モードで動作するように構成されてもよい。このモードは、例えばユーザ入力に応答して切り替えることができる。
【0090】
図2は、仮想医用画像を生成する方法の適用を示している。特に、図2は、1つ以上の仮想医用画像を生成する方法200を示している。
【0091】
方法200は、1つ以上の標識要素を有する第1のベース医用画像291を取得するステップ210を含む。
【0092】
方法200は更に、第1のベース医用画像とは異なるイメージングモダリティを使用して生成された第2のベース医用画像292を取得するステップ220を含む。第2のベース医用画像は、1つ以上の標識要素を有している。第1及び第2のベース医用画像は、1つ以上の仮想医用画像を生成するために一緒に使用可能である。
【0093】
つまり、第1及び第2のベース医用画像は、それらを組み合わせて新しい仮想医用画像を合成できるように設計されている。
【0094】
ほんの一例として、第1のベース医用画像291は(放出されたX線の)第1のエネルギーレベルを使用して取得されたCT画像であり、第2のベース医用画像292は(放出されたX線の)第2の異なるエネルギーレベルを使用して取得されたCT画像である。これらの2つのベース画像は、異なる比率でブレンドされて、異なる仮想単一エネルギー画像が生成される。これにより、仮説上のエネルギーレベルを有する医用画像、即ち、その仮説上のエネルギーレベルのX線ビームでの取得からもたらされる医用画像と機能的に同等である医用画像が合成される。
【0095】
両方のベース医用画像は、同じ関心領域を表す。つまり、異なるが、異なるイメージングモダリティで撮影された同じ要素を含む。例えば、CT画像では、複数のエネルギーレベルのX線を使用して撮影される。
【0096】
次に、本開示で説明した方法100を各医用画像に対して実行して、それぞれの処理済みベース画像が生成される。したがって、方法200は、第1のベース医用画像291に対して標識要素抑制100を実行して、処理済みの第1のベース医用画像293を生成することと、第2のベース医用画像に対して標識要素抑制100を実行して、処理済みの第2のベース医用画像294を生成することとを含む。
【0097】
処理済みの第1のベース医用画像293及び第2のベース医用画像294は一緒に処理され、1つ以上の仮想医用画像250を生成又は合成する。ベース画像から仮想医用画像を合成するメカニズムは、当業者にはよく知られており、数あるプロセスの中でも分解プロセスが使用される。
【0098】
例えば、異なるエネルギーレベルを用いて取得された2つのベース(CT)医用画像から仮想単一エネルギー画像を生成する方法は、Matsumoto,Kazuhiro他によって「Virtual monochromatic spectral imaging with fast kilovoltage switching: improved image quality as compared with that obtained with conventional 120-kVp CT」(Radiology 259.1(2011):257-262)に、また、D’Angelo、Tommaso他によって「Dual energy computed tomography virtual monoenergetic imaging: technique and clinical applications」(The British journal of radiology 92.1098(2019):20180546)に説明されている。
【0099】
2つのベース医用画像から仮想医用画像を合成するための他のアプローチは、当業者には明らかであろう。
【0100】
したがって、医用画像内の標識要素の出現を低減するための提案されたアプローチを利用して、標識要素の出現が同様に低減される(ただしゼロではない)1つ以上の仮想画像を生成できることが理解されるであろう。
【0101】
図3は、例示的な医用画像300に対して一実施形態による方法を実行した場合の効果を示している。
【0102】
医用画像300は、結腸のCTハウンスフィールド画像であり、医用画像300の最も明るい領域で示されるように、複数の標識要素が含まれている。医用画像300が、本明細書に説明するアプローチ(例えば、図1を参照して説明した方法100に従って)の対象となる場合、処理済み医用画像350が生成される。
【0103】
処理済み医用画像350には標識要素がまだ含まれている(つまり、標識要素は削除されていない、又は非ゼロである)が、それらの見かけの輝度は低減されている。薄められた標識領域と気泡との差は、直感的に認識可能のままである。
【0104】
図4は、別の例示的な医用画像400に対して一実施形態による方法を実行した場合の効果を示している。
【0105】
医用画像400は、結腸のCTハウンスフィールド画像の別の例であり、医用画像400の最も明るい領域で示される複数の標識要素が含まれている。医用画像400には、造影剤材料の高い吸収による強いストリークアーチファクト(矢印で示す)が示されている。ビーム硬化アーチファクトは、結腸ひだや周囲の軟組織に擬似的に見える空洞につながる。
【0106】
処理済み医用画像450は、医用画像400に対して、図1を参照して説明した方法100などの本明細書に説明する方法を実行することからもたらされる。
【0107】
処理済み医用画像450内にストリークアーチファクトはまだ存在しているが、標識要素の元の位置がまだ可視である(標識要素の輝度が非ゼロであるため)ため、アーチファクトの原因が依然として示され/可視であるため、観察者には直感的である。
【0108】
したがって、提案されたアプローチは、臨床医を混乱させる及び/又は(不正確な診断をするように)ミスリードする画像内の潜在的なアーチファクトの原因に関する情報を提供することで、臨床医が正しい臨床判断を下すのを助けるのに有用な情報を保持する画像を提供する。
【0109】
図5は、医用画像500に対して本発明の実施形態による方法100を実行することと、先行技術の技法による方法590を実行することとの比較を示している。
【0110】
医用画像500が、先行技術の技法による方法590を使用して処理されると、全ての標識要素が医用画像から完全に削除され、第1の処理済み医用画像540が生成される。このプロセスは、標識要素の「抑制」と呼ばれる。
【0111】
医用画像500を、例えば図1を参照して説明したように、本発明の実施形態による方法100を使用して処理すると、標識要素の輝度は低減されるが、ゼロではない。このプロセスは、標識要素の「部分抑制」と呼ぶことができる。したがって、標識要素は除去されるのではなく、効果的に「薄め」られる。これにより、第2の処理済み医用画像550が生成される。
【0112】
第1の処理済み医用画像540では、標識要素を除去すると、クレンジングされた領域の境界にクレンジングアーチファクトが残る。これらのクレンジングアーチファクトは、臨床医をミスリードし、イメージングされた関心領域を真の表現を提供できない。
【0113】
第2の処理済み医用画像550では、部分抑制に起因する任意の表面アーチファクトの原因を容易に特定できる(例えばあまり明るくない標識要素の存在によって)。これにより、結腸の欠陥によるアーチファクトと臨床医をミスリードすることが回避され、代わりに、アーチファクトの存在と原因を特定するのに有用な臨床情報を臨床医に提供することで、患者の評価及び/又は診断のパフォーマンスを向上させる。
【0114】
図6は、一実施形態による処理配置600を示している。処理配置600は、それ自体が本発明の一実施形態である処理システム610を含む。
【0115】
処理システムは、1つ以上の標識要素を有する医用画像に対して、標識要素抑制を実行する。
【0116】
具体的には、処理システム610は、1つ以上の標識要素を有する医用画像を取得する。各標識要素は、造影剤を含む材料を表す医用画像の一部である。処理システム610は、(処理配置600の)メモリ620から、及び/又は直接スキャナ(図示せず)から医用画像を取得することもできる。
【0117】
処理システムは、医用画像を処理して、少なくとも、医用画像の1つ以上の標識要素を含む抑制画像を生成し、医用画像と抑制画像とを組み合わせて、医用画像内の1つ以上の標識要素の見かけの輝度が低減されているが、非ゼロである処理済み医用画像を生成する。
【0118】
したがって、処理システム610は、本明細書に説明する任意の方法を実行して、処理済み医用画像を生成する。
【0119】
処理配置600は更に、ディスプレイ630を含む。処理システムは、処理済み医用画像(及び任意選択で医用画像及び/又は抑制画像)をディスプレイ630に表示する。
【0120】
処理配置600は更に、更なるプロセッサ640を含む。更なるプロセッサは、処理済み医用画像の更なる処理(ノイズ除去、解析など)を実行する。更なるプロセッサによって生成される情報及び/又は画像(例えば更なる処理の結果)は、ディスプレイ630に表示され、更なるプロセッサはそれに応じて構成することができる。
【0121】
当業者であれば、本明細書で説明する方法を実行するための処理システムを容易に開発することができるであろう。したがって、フローチャートの各ステップは、処理システムによって実行される異なるアクションを表し、処理システムの対応するモジュールによって実行され得る。
【0122】
前述のように、システムは処理システムを使用してデータ処理を実効する。処理システムは、ソフトウェアやハードウェアを使用して、様々なやり方で実装して、必要な様々な機能を実行することができる。通常、処理システムは、ソフトウェア(例えばマイクロコード)を使用してプログラムされて、必要な機能を行う1つ以上のマイクロプロセッサを用いる。処理システムは、一部の機能を行うための専用ハードウェアと、他の機能を行うための1つ以上のプログラム済みマイクロプロセッサ及び関連回路との組み合わせとして実装できる。
【0123】
本開示の様々な実施形態に用いられ得る回路の例としては、従来のマイクロプロセッサ、特定用途向け集積回路(ASIC)、及びフィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0124】
様々な実装形態では、処理システムは、RAM、PROM、EPROM、及びEEPROM(登録商標)などの揮発性及び不揮発性コンピュータメモリなどの1つ以上の記憶媒体と関連付けられ得る。記憶媒体は、1以上の処理システム及び/又はコントローラ上で実行されると、必要な機能を実行する1つ以上のプログラムでエンコードされ得る。様々な記憶媒体は、処理システム又はコントローラ内で固定されていても、そこに保存されている1つ以上のプログラムを処理システムにロードできるように輸送可能であってもよい。
【0125】
したがって、コンピュータプログラムコード手段を含むコンピュータプログラム製品も提案される。コンピュータプログラムコード手段は、処理システムを有するコンピューティングデバイス上で実行されると、処理システムに、方法の全てのステップを実行させる。
【0126】
開示された実施形態の変形例は、図面、開示及び添付の特許請求の範囲の検討から、請求項に係る発明を実施する際に当業者によって理解され、実行され得る。特許請求の範囲において、語「含む」は、他の要素又はステップを排除するものではなく、単数形の要素は複数を排除するものではない。特定の手段が相互に異なる従属請求項に記載されているという単なる事実は、これらの手段の組み合わせを有利に使用することができないことを意味するものではない。
【0127】
単一のプロセッサ又は他のユニットが、特許請求の範囲に記載されているいくつかのアイテムの機能を果たしてもよい。コンピュータプログラムは、他のハードウェアと一緒に又はその一部として供給される、光記憶媒体又は固体媒体などの任意の適切な媒体に格納/配布することができるが、インターネット又は他の有線若しくはワイヤレス通信システムを介してなど他の形式で配布することもできる。
【0128】
「~するように適応されている」という用語が、特許請求の範囲又は説明で使用されている場合、「~するように適応されている」という用語は「~するように構成されている」という用語と同等であることを意図していることに留意されたい。特許請求の範囲における任意の参照符号は、範囲を限定するものと解釈されるべきではない。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
【国際調査報告】