(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-12-08
(54)【発明の名称】退避スペースを提供するための方法
(51)【国際特許分類】
G07C 9/22 20200101AFI20231201BHJP
【FI】
G07C9/22
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023530024
(86)(22)【出願日】2021-10-22
(85)【翻訳文提出日】2023-06-30
(86)【国際出願番号】 EP2021079412
(87)【国際公開番号】W WO2022106152
(87)【国際公開日】2022-05-27
(31)【優先権主張番号】102020007073.6
(32)【優先日】2020-11-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】598051819
【氏名又は名称】メルセデス・ベンツ グループ アクチェンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】Mercedes-Benz Group AG
【住所又は居所原語表記】Mercedesstrasse 120,70372 Stuttgart,Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100101856
【氏名又は名称】赤澤 日出夫
(72)【発明者】
【氏名】ザイラー,クリスティアン
【テーマコード(参考)】
3E138
【Fターム(参考)】
3E138AA01
3E138AA07
3E138AA11
3E138CC01
3E138GA02
3E138JA02
3E138JB16
3E138JC25
3E138JD09
(57)【要約】
本発明は、移動端末(2)上のアプリケーション(3)を介して退避要求を作動させている、保護を求める人のために、物体(1)に退避スペースを提供するための方法であって、物体(1)内の通信装置(5)は、無線通信を介して退避要求を受信し、その後、退避要求は、データベースシステム(7)内に保存され、移動端末(2)のデジタルIDに基づいて匿名で検証され、検証は、アクセス認証システム内の応答を含み、肯定的な検証が行われた後、退避スペースへのアクセスが許可され、物体(1)は、退避モードに切り替えられ、検証及び許可は、データベースシステム(7)に記録される、方法に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動端末(2)上のアプリケーション(3)を介した退避要求をトリガとする、保護を求める人のために、物体(1)に退避スペースを提供するための方法であって、
前記物体(1)内の通信装置(5)は、無線通信を介して前記退避要求を受信し、前記退避要求は、データベースシステム(7)内に保存され、前記移動端末(2)のデジタルIDに基づいて匿名で検証され、前記検証は、アクセス認証システム内の検索を含み、肯定的な検証が行われた後、前記退避スペースへのアクセスが許可され、前記物体(1)は、退避モードに切り替えられ、前記検証及び前記許可は、前記データベースシステム(7)に記録される、方法。
【請求項2】
前記アクセス認証システムは、集中型アクセス認証データベース(11)を含み、前記アクセス認証を前記集中型アクセス認証データベース(11)に照会するか、又は、前記保護を求める人の前記IDを、分散型識別システムから照会することを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
データベースシステム(7)及び/又は分散型識別システムとして、分散型台帳技術に基づく分散型システムが利用されることを特徴とする、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記退避スペースへの許可されたアクセス用開口部の閉鎖後、前記アクセス用開口部は、自動的にロックされ、前記退避スペースが能動的に利用されている場合、前記退避スペースの再許可は行われないことを特徴とする、請求項1、2又は3に記載の方法。
【請求項5】
前記アプリケーション(3)及び/又は前記移動端末(2)は、少なくとも1つのアクセスロックを介して保護されることを特徴とする、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記退避モードでは、前記物体(1)の利用可能な全てのセンサは、作動されて、前記センサが検出したデータは、ロギングされることを特徴とする、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記退避モードでは、操作ユニット(13)が前記退避スペース内で作動されるか、又は前記操作ユニット(13)の間接的な操作が、前記退避スペース内で特定された前記移動端末(2)上の前記アプリケーション(3)によって作動されることを特徴とする、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記操作ユニット(13)を介して、保護機能は、制御することができることを特徴とする、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記保護機能は、以下の機能:
-緊急通報の送信、
-車内照明又は外部照明の作動及び/又は非作動、
-アクセス用開口部のロック及び/又はロック解除、
-視覚的及び/又は聴覚的アラーム機能の起動、
-空調装置の調整並びに作動及び/又は非作動、
-内気循環制御装置の作動及び/又は非作動、
-カムフラージュ機能の作動及び/又は非作動、
のうちの少なくとも1つを含むことを特徴とする、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
物体(1)として、移動物体(1)、特に車両が利用されることを特徴とする、請求項1から9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記物体(1)は、前記退避モードでは、制限された機能範囲を提供することを特徴とする、請求項1から10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記物体(1)は、退避要求の受信後に少なくとも1つの信号を送出することを特徴とする、請求項1から11のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、保護を求める人のために物体に退避スペースを提供するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
緊急事態では、退避スペースは、乗員に対して保護及び防護を提供することができる。このような退避スペースは、一方では、建物に形成することができる。退避スペースは、他方では、移動式ユニット又は移動物体に設けられてもよい。退避スペースは、例えば、駐車車両であってもよく、駐車車両は、緊急事態では乗員のために保護及び防護を提供する。保護を求める人、又は英語でShelter-Seeking Personとも称する、窮地に陥っている人が車両付近にいる場合であっても、その車両が本人自身の車両でない限り、通常はその車両にアクセスすることはできない。すなわち、他者の車両は、保護を求める人に保護を提供することができない。
【0003】
特許文献1から、データ通信及び外部ユーザインタフェースによって人の識別が基本的に可能であることが今では公知である。ただし、この方法には、いわゆる「オンボーディング」、すなわち、通常は集中型サーバへの該当する人の登録、並びに正にこの人と、例えば、車両、建物などといった具体的な物体との間でリンクを確立することが必要である。それぞれのリンクのために保存されたこれらの特性によって初めて、物体へのアクセス、例えば、車両全体を利用する、建物内に入るなどの許可が可能になる。
【0004】
ただし、この方法は、その場合、例えば、複数の人による、車両又は建物の利用に関しては、利用人数が制限されていて、通常、極端に急には入れ替わらないことが理想的である。ただし、冒頭に記載したシナリオに関して、多数の人が、特定の車両へアクセスしようとして、多数のサーバ及び/又は車両でログインするはずであろうから、このような方法は、はるかに不適切である。ただし、この車両、又は人がログインしている、リーズナブルな費用で実現可能な複数の車両のうちの1台が、その人が緊急事態に遭遇しているときに間近にあることは、全くの偶然であろう。したがって、この方法は、物体、及びこの場合は特に車両などの移動可能物体を退避スペース又はパニックルームとして提供するためには利用できない。
【0005】
ただし、極めて多数の物体のために簡単かつ効率的に機能する退避スペースを提供するためのこのような方法は、人の安全性及び特に安全感の観点から望ましいであろう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】独国特許出願公開第102018010027号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そのため、本発明の課題は、保護を求める人のために物体にそのような退避スペースを提供するための方法を提示することであり、本方法は、窮地に陥っている人のために多数の物体への迅速なアクセスを簡単かつ効率的に可能にする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明によれば、本課題は、請求項1の特徴を有する方法によって解決される。本方法の有利な実施形態及び発展形態は、請求項1に関する従属請求項から明らかになる。
【0009】
保護を求める人のために物体に退避スペースを提供するための本発明による方法は、その人が、例えば、スマートフォンなどの移動端末のアプリケーションを介して退避要求を作動させることを企図している。物体内の通信装置は、無線通信を経由して、例えば、Bluetooth、Bluetooth Low Energy、WLAN又はNFCを介して、この退避要求を受信する。次いで、この退避要求は、物体の側でロギング及び記録のためにデータベースシステムに保存され、移動端末のデジタルIDに基づいて検証される。その検証は、この場合、集中型アクセス認証データベース又は分散型IDシステム内での検索を含む。その検証の結果が肯定的であった場合、退避スペースへのアクセスが許可される、すなわち、例えば、車両又は建物入口のドアがロック解除され、物体が退避モードに切り替えられる。その検証だけでなく許可もまたデータベースシステムに記録される。
【0010】
それにより、上記の特許文献1による原理に基づいて、最小限の「オンボーディング」労力で、緊急時に保護を求める人に対して、その退避モードを介して、退避スペース又はパニックルームとしての利用のために適切に構成されている対応する物体への極めて迅速なアクセスを有する可能性が実現されている。
【0011】
使用される移動端末のデジタルIDを1回限り提供するだけで十分であり、例えば、スマートフォンが対応するデータベースに登録されれば、このような退避方法及び退避システムが装備されている全ての物体へのアクセスが得られる。集中型アクセス認証データベースへのこのような1回限りの登録の代替として、保護を求める人のIDは、いわゆる「自己主権型ID」アプローチを介して、物体に連結されたサーバシステムが、この分散型IDシステム内での退避要求がなされた場合に、保護を求める人のIDに応じて照会される限りにおいて、分散して管理することができるであろう。したがって、関係する物体に的を絞って「オンボーディング」することは、管理の独自IDマネジメントシステム上ではもはや必要ないであろう。
【0012】
したがって、本発明による方法を介して、緊急時、退避スペースへのアクセスは、極めて簡単に、迅速かつ効率的に与えることができ、データベースシステム内のプロセスの対応する記録によって、不正な利用は、実際の緊急の場合と同様に記録されて、明確化され得るので、悪用の根本的な危険性を相当程度防ぐことができる。
【0013】
本方法の極めて有利な発展形態によれば、データベースシステムとして、又は本方法の極めて好都合な上述の実施形態によれば、分散型IDシステムを介して、分散型台帳技術に基づく分散型システムを利用することができる。したがって、類似の用途について冒頭に記載の背景技術からも原理的に公知の分散型台帳技術のこの利用に関して、プロセスのロギング及び保存は、ブロックチェーン内の様々なノードポイントで改ざんを防止して行われるので、極めて安全なロギング及び記録が可能であり、これらはほとんど変更することができず、そのために高信頼を得て、悪用の危険性を更に一段と最小化する。
【0014】
本発明による方法の極めて好都合な更なる実施形態は、その場合、例えば、ドアなどの許可されたアクセス用開口部の閉鎖後、このアクセス用開口部が自動的にロックされ、その結果したがって、退避スペースが安全な保護スペースを形成することを企図してもよい。その場合、更に、その退避スペースを実際に利用している場合は、その退避スペースの許可が再度行われないことが企図されている。それにより、必要とする安全性が保証されるため、他の人は、自身の側で対応するアプリケーションを利用することを介してそのスペースを新たに許可されることはできないので、場合によっては、先にそのスペースに避難していた保護を求める人を危険に晒したり又は危険に晒すおそれのある者は、そのスペースに入り込むことができないであろう。
【0015】
本発明による方法の極めて好都合な更なる実施形態は、ここで更に、アプリケーション及び/又はこのアプリケーションがインストールされている移動端末がアクセス制限を介してセキュリティ保護されることを企図している。アプリケーション又はそのアプリケーションを備えた移動端末全体のこのようなセキュリティ保護は、例えば、紛失した又は盗まれた移動端末を介して、退避スペースへのアクセスが奪取されて、盗まれた移動端末の所有者に転嫁される損害を引き起こす悪用を防止するために有意義かつ必要であってもよい。その場合、アクセスロックとして、スマートフォン分野で既知である様々な技術、例えば、顔認証、虹彩認証、指紋認証などを介したバイオメトリクスアクセスシステムが適している。個人識別番号(PIN)、パスワードなどの代替をここでも同様に考えられよう。
【0016】
本発明による方法の極めて決定的な態様及びそれにより正に特に重要かつ極めて有利な実施例は、更に、物体の退避モードでは、物体の全ての利用可能なセンサが作動され、その検出されたデータがロギングされることを企図している。対応するセンサは、その場合、例えば、カメラ及び/又はマイクロフォンであってもよい。物体及び退避スペースの構成に応じて、一方では、適用される規則に従ってのみ、退避スペースが確実に利用されていることを保証するために、他方では、その緊急事態を適切に記録し、必要な場合には、捜査目的で処理することができることを保証するために、緊急事態の間に発生した全てのイベントを記録することができる。物体の種別に応じて、その場合、カメラ、マイクロフォンなどの他に、別のセンサも作動させることができる。物体が、例えば、車両である場合、緊急事態をできる限り広範に記録するために、様々な周辺センサと同様に室内検出などを介した周辺検出を適切に作動させることができる。好適には、この周辺検出は、退避スペースを管理する組織の集中型サーバ内で行われてもよい。
【0017】
本発明による方法の極めて好都合な更なる実施形態は、更に、退避モードでは、退避スペース内の操作ユニット又はこの操作ユニットの間接的な操作性が、退避スペース内に位置付けられたそのような移動端末上のアプリケーションによって作動されることを企図している。本発明による方法の極めて好都合な発展形態に基づく操作ユニットのこの直接的又は間接的な操作によって、退避スペースにいる保護を求める人に、自身の要望及び/又は不安に応じて行動することができる選択肢を与えるように、対応する保護機能を制御することができる。
【0018】
その保護機能は、この場合、極めて有利な実施形態により、以下の機能のうちの少なくとも1つを含んでもよい。特に、この機能は、緊急通報の送信を含んでもよい。車内照明又は外部照明の作動及び/又は非作動も有意義であり得る。このように、例えば、操作ユニットを介して、又は移動端末上のアプリケーションを介して間接的に、そもそも退避スペースに人がいるかどうかを外側からは認識できないダークモードを設定することができる。保護を求める人にとって照明を点灯する方が有意義であると思われる場合、その人は、ブライトモードもまた選択することができ、特にその人は、退避スペース自体に対するダークモード及び周辺に対する最大限のブライトモードもまた選択することができる。上述の車両の場合、これは、例えば、周辺を照らし出し、場合によってはセンサデータの検出を向上させるために、車両の外部照明を最大限に作動させることである。同時に、室内を暗くしたままにして、その中で保護を求める人が退避所を探し出したこと、又は実際に車両の中に保護を求める人がいることを直接認識できないようにすることができる。加えて、可能であれば、カムフラージュ機能を作動させる又は非作動にすることができ、例えば、ブラインドを閉めたりすることができる。視覚的及び/又は聴覚的アラーム、例えば、物体が車両である場合、ホーン又はウインカーを作動させることも考えられよう。加えて、例えば、退避スペースへのガスや煙などの侵入を抑え、できる限り長時間耐え抜くことができるように、内気循環制御装置及び/又は空調装置を制御することができる。当然ながら、保護機能として、ドアなどのアクセス用開口部のロック及びロック解除もまた制御することができる。それにより、例えば、救助者が中に入ることができるか、又は緊急事態の終了後に保護スペースから出て戻るために、ドアを開けることができる。
【0019】
既に何度か述べたように、本発明による方法の極めて好都合な実施形態によれば、物体が、移動可能物体、特に車両として形成されていることが企図されていてもよい。原理的に考えることもできる、建物としての物体の形成の他に、車両としての物体の形成が特に有意義である。例えば、都市の多くの区域で、駐車車両は、ほとんど常に近くにあり、退避スペースとして極めて簡単かつ効率的に使用することができるであろう。これには、一方では、自家用車が該当するが、ここではしかし、多数の個人がシステムと協働することが前提となる。そのため、社用車、カープール、公共車両群、タクシーなどがそのシステム用に提供される場合も有意義であり得る。それらの車両は、ほとんど、車内に私物がほぼないため、いずれにせよ、様々な人が利用することができるように装備されている。そのため、物品などの盗難の危険性を減らすことができ、システムの受け入れは、このような車両の所有者の場合、車両を個人的に利用する場合より簡単に実現する。
【0020】
特に物体が車両として形成されている場合、ただし、それに限定されず、本発明による方法の極めて好都合な実施形態によれば、車両は、更に、退避モードでは制限された機能範囲で利用することができることが企図されていてもよい。その機能範囲は、適切に制限することができるので、必要な機能のみを直接的に提供する。退避要求を介して物体へのアクセスが行われている場合、不必要な機能は、適切に停止することができる。したがって、例えば、建物が物体である場合には隣接するスペース、車両が物体である場合はグローブボックスなどの、望まれていない領域に入り込むことや、車両を運転する可能性などを適切に阻止することができる。
【0021】
本発明による方法の極めて好都合な更なる実施形態によれば、更に、物体が、退避要求の受信後に信号を送出することが企図されていてもよい。このような信号は、例えば、退避要求がなされた場合に、退避スペースを備える最寄りの利用可能な物体が対応する位置にあることを示すための、物体の視覚的信号又は聴覚的信号であり得る。同様に、窮地に陥っている人を一方では助けるために、例えば、最寄りの利用可能な退避スペースが移動端末の左側前方30mにあることを矢印と距離表示によって表示することによって、移動端末のアプリケーションにのみ信号を送信するが、ただし、第三者に対しても認識可能な、選択した退避スペースへの指示なしで、これを可能にすることが考えられよう。
【0022】
本発明による方法の有利な更なる実施形態は、以下で図を参照して詳述されている実施例からも明らかとなる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】唯一の添付図は、その場合、本発明による方法の説明のための、可能な実施形態の仮定的シナリオを示す。
【発明を実施するための形態】
【0024】
その場合、図面での図示は、物体1を示す。物体1は、車両、建物、建物の一部、船舶、航空機などであってもよい。有意義に利用可能な全ての物体の共通点は、その場合、実質的に、それらの物体が特定の緊急事態において1人以上の人にとって信頼できる保護機能を提供できることにある。これは、特に、アクセスのロックであり得るが、現在の場所からの隔離、緊急通報の送信などでもあり得る。ここで図示された実施例の物体1は、以下では、例えば、車両1であってもよい。ここで図示されていない保護を求める人は、移動端末2、例えば、スマートフォン2を携帯している。このようなスマートフォン2に、その人は、緊急時に物体1、ここではしたがって、車両へのアクセスを作動させるアプリケーション3をインストール済みである。アプリケーション3を介して、オンボーディングプロセスでは、スマートフォン2の所有者のIDが確認されていて、その所有者のIDは、集中型バックエンドシステム4において既知である。アプリケーション3自体又はスマートフォン2は、アクセスロック、例えば、PIN保護及び/又は生体的特徴など介したセキュリティ保護を提供する。それにより、スマートフォンの所有者のIDが盗難によって悪用されるおそれはない。物体1、ここではしたがって、スマートフォン2の所有者に緊急時、退避スペースを提供する退避車両は、そのような場合に退避モードを支援するように、適切に構成されている必要がある。ここで、スマートフォン2を携行した人が車両1に接近し、アプリケーション3によって緊急の場合であるという信号が明確に発せられると、実質的に以下が起こる。
【0025】
-アプリケーション3は、例えば、Bluetooth、Bluetooth Low Energy、WLAN又はNFCなどの無線通信接続をして、車両1の通信モジュール5と通信する。
【0026】
-機械識別システム及びアクセスシステム6を介して、退避要求及びそれにより最終的に退避スペースへアクセスする要望が登録され、分散型データベースシステム7に匿名で保存される。分散型台帳技術の上に構築された、このような分散データベースシステム7において、更なる全ての関連イベントも、後で追跡可能なように、ただし、それぞれの人の関連データを除いて保存されるので、個人データの保護が如何なる場合でも保証される。
【0027】
-同時に、デジタルIDと共に、スマートフォン2の安全なメモリ8から個人識別システム9を介して集中型個人識別システム10に要求が送信される。これにより、集中型バックエンドシステムシステム4内の集中型アクセス認証データベース11が検索される。デジタルIDが集中型アクセス認証データベース11で既知であり、正当である場合、車両1への緊急時アクセスが行われるので、集中型バックエンドシステム4の集中型マシンIDシステム及びアクセスシステム12を経由して、ローカルマシン識別システム及びアクセスシステム6に報告が返される。このイベントもまた、データベースシステム7で適切に記録される。
【0028】
この肯定的に行われた検証の後、アクセス用開口部、例えば、車両1のドアがロック解除されるので、自身のスマートフォン2を携行した保護を求める人は、車両1を退避スペースとして利用することができる。退避スペースモード又はパニックルームモードは、車両1内で作動され、対応する緊急事態に対して最適化されている、車両1の制限された機能範囲のみを含む。コンセプトの実施に応じて、機能範囲は様々に変化し、任意で異なる境界パラメータも考慮されるので、例えば、様々な場所で、様々な時刻に、かつ/又は周囲の明るさに応じて異なる機能範囲が利用可能となる。例えば、このような退避モードは、以下の機能を含んでもよい。
【0029】
-車両ドアが閉じられると直ちに、その車両ドアは、自動的にロックされる。
【0030】
-車外から車両1内へのアクセスは、退避スペースとしての実際の利用のこの状態において、更なる退避要求によっても、もはや不可能である。
【0031】
-例えば、認証済み車両キーなどの、正当なアクセスを使用するアクセスは、ほとんどの実行を同様に不可能にすることもできる。直接的に制御可能な操作ユニット13としての情報システムとして、または間接的に制御可能なスマートフォン2のアプリケーション3を介して、退避スペース内にいる人がこれらの機能を制御可能にすることも考えられよう。それにより、例えば、認証済みアクセスに対するロックを、操作ユニット13での対応する作動によってオン又はオフに切り替えることができる。
【0032】
-例えば、このような操作ユニット13を介して、照明に関して制御することができるであろう。したがって、例えば、「ダーク」モードと「ブライト」モードとを切り替えのバリエーションとして規定できるであろう。次いで、「ダーク」モードによって、車両1の車内を車外より暗くするならば、例えば、暗がりにおいて、そもそも車両の室内に人がいるかどうかを認識することはできないであろう。「ブライト」モードによって、全ての外部照明をオンになるように切り替えれば、車両の周囲を最大限照明することができるであろう。
【0033】
-車両1の全てのカメラ、マイクロフォン及びセンサを作動させて、事象を後で簡単に復元することが可能になる。車両のカメラ及びマイクロフォンを含む利用可能なセンサによって、車両の周囲だけでなく車両の室内も記録したデータが、好適には、検出されたデータの保存によって記録される連続監視を可能にする。
【0034】
-車両1の室内から、例えば、情報システムの一部として実現され得る操作ユニット13を作動させることを介して、緊急通報システム14を作動させることができる。ここで、例えば、欧州内で予め規定されている、いわゆるeCallを介して、直接的な緊急通報を送信することができる。緊急通報の個別送信、例えば、警察又は消防の警報も、当然ながら考えられる。
【0035】
-退避スペースとして使用される車両1の室内に、可能な限り長時間、独立した空気供給を保証するために、車両1の装備に応じて、空調装置は、特別な内気循環モードに設定することができる。
【0036】
-更に、退避モードでは、情報システム内での作動によって、例えば、アラームシステムの吹鳴、車両1のライトの点滅、クラクションの作動など、視覚的及び/又は聴覚的アラームを作動させることができる。
【0037】
既に述べたように、その場合、全ての関連イベント、及び場合によっては車両1のセンサによって取得された値が、適切に検出され、かつ記録される。例えば、カメラ及びマイクロフォンなどのセンサからのデータは、そのために好適には自動化されて、短い時間間隔で保存される。そのデータは、集中型バックエンドシステム4に短い時間間隔で伝送することもできる。そのための前提は、ただし、インターネット接続が機能していることである。これが成立しない場合、該当するデータを適切に集中型バックエンドシステム4に送信するために、車両及び/又はスマートフォンのアプリケーションに、その該当するデータを一時保存することもできる。
【0038】
本方法を使用して、したがって、危険に直面した人のために、この人が通常は物体1へのアクセスを有していない場合であっても、例えば、車両などの任意の物体1を、救命いかだ又は退避場所として使用することができる。関連イベントは、ブロックチェーンベースのソリューションによって改ざんを防止して記録され、これにより、いずれにせよ、悪用は追跡可能かつ遡及可能である。これによって、起こり得る悪用のおそれが著しく低減する。特に、移動式社会サービス又は救急輸送などのための、例えば、タクシー、バス、ライトバン、ミニバス、配送車又は宅配車などの、私的な特性を有していない停車車両に対して、このモードでは、地方自治体の社会及び社会的互助にとって有益な付加価値を提供することができる。それらの停車車両は、他の救援の選択肢が近くにない又は救援人員が近くにいない場合に、安全な退避場所を提供する。
【図】
【国際調査報告】