(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-12-08
(54)【発明の名称】グロボ系列抗原による免疫モジュレーションによる活動性がん免疫療法
(51)【国際特許分類】
A61K 39/00 20060101AFI20231201BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20231201BHJP
A61P 35/04 20060101ALI20231201BHJP
A61P 11/00 20060101ALI20231201BHJP
A61P 37/04 20060101ALI20231201BHJP
A61K 39/39 20060101ALI20231201BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20231201BHJP
【FI】
A61K39/00 H
A61P35/00
A61P35/04
A61P11/00
A61P37/04
A61K39/39
A61K45/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023530188
(86)(22)【出願日】2021-11-19
(85)【翻訳文提出日】2023-07-14
(86)【国際出願番号】 US2021072513
(87)【国際公開番号】W WO2022109601
(87)【国際公開日】2022-05-27
(32)【優先日】2020-11-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】516080655
【氏名又は名称】オービーアイ ファーマ,インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】弁理士法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ライ,ミン-タイン
(72)【発明者】
【氏名】ユー,チュン-ダー・トニー
(72)【発明者】
【氏名】チェン,イー-ジュ
(72)【発明者】
【氏名】リー,ウェイ-ハン
(72)【発明者】
【氏名】ヤン,チュエ-ハオ
(72)【発明者】
【氏名】ツァオ,チュン-イエン
(72)【発明者】
【氏名】シェ,チャン-リン
(72)【発明者】
【氏名】オウ,チェン-チー
(72)【発明者】
【氏名】ツァイ,チェン-エン
【テーマコード(参考)】
4C084
4C085
【Fターム(参考)】
4C084AA19
4C084MA02
4C084MA66
4C084NA05
4C084NA14
4C084ZB09
4C084ZB26
4C085AA03
4C085BB01
4C085EE03
4C085EE06
4C085FF18
4C085GG01
(57)【要約】
本開示は、がん患者用の能動免疫療法の方法であって、グロボ系列抗原(すなわち、グロボH、SSEA-3及びSSEA-4)に対するワクチンを投与することを含む方法を提供する。具体的には、方法は、がんを有する患者においてグロボH-CRM197(OBI-833/821)を投与することを含む。本開示は、免疫療法の処置候補として適しているがん患者を選択する方法も提供する。例示的な免疫応答は、疾患の予防、疾患の発病の遅延、症状の重症度の減少、病的状態の減少及び死亡の遅延を含むがこれらに限定されない疾患の重症度の減少を特徴とすることができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象における進行性の胃がん、肺がん、結腸直腸がん又は乳がんを処置するための方法であって、治療有効量のグロボ系列抗原ワクチン、及び/又はグロボ系列抗原ワクチンとの交差反応剤を、当該処置を必要とする対象に投与することを含む方法。
【請求項2】
グロボ系列抗原ワクチンが、担体タンパク質とコンジュゲートしたグロボ系列抗原を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
グロボ系列抗原が、グロボH、SSEA-4又はSSEA-3から選択される抗原を含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
担体タンパク質が、DT-CRM197(ジフテリア毒素交差反応性物質197)を含む、請求項2に記載の方法。
【請求項5】
グロボ系列抗原ワクチンが、医薬組成物として投与される、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
医薬組成物が、OBI-833ワクチン及びOBI-821アジュバントを含む、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
対象がヒトである、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
治療有効量が1000μg未満である、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
投与手順が、筋肉注射、皮下注射、静脈注射、腹腔内注射、動脈内注射、関節滑液嚢内注射又は胸腔内注射を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
ワクチンが、1週間~5年以上の時間間隔で断続的に投与される、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
ワクチンが、1週間ごとに1回、2週間ごとに1回、3週間ごとに1回、4週間ごとに1回、5週間ごとに1回、6週間ごとに1回、7週間ごとに1回、8週間ごとに1回、9週間ごとに1回、10週間ごとに1回、11週間ごとに1回又は12週間ごとに1回で投与される、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
がんが、転移性又は非転移性である、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
グロボ系列抗原ワクチン又はグロボ系列抗原ワクチンとの交差反応剤が、1つ以上の抗増殖剤と組み合わせて患者に投与される、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
抗増殖剤が、シクロホスファミド、オピエート、顆粒球コロニー刺激因子(GCSF)、エストロゲン阻害剤、アロマターゼ阻害剤、下垂体ダウンレギュレーター、タモキシフェン選択的エストロゲン受容体モジュレーター、ラロキシフェン、エストロゲン受容体ダウンレギュレーター、抗凝固剤、酵素、造血増殖因子、抗悪性腫瘍剤、代謝拮抗剤、種々の細胞傷害剤、ビンカアルカロイド、エピポドフィロトキシン、アルキル化剤、タキサン、抗腫瘍性抗生物質、カンプトテシン、ニトロソウレア、HER1/EGFRチロシンキナーゼ阻害剤、VEGFタンパク質阻害剤、HER-2/ErbB2阻害剤、インターフェロン、インターロイキン、モノクローナル抗体、グルココルチコイドステロイド、ゲフィチニブ、イコチニブ、エルロチニブ、オシメルチニブ、アファチニブ、ダコミチニブ、ロシレチニブ、オルムチニブ、アルモネルチニブ、アルフルチニブ、AC0010、BPI-7711、タルロキシチニブ、TAK-788、EAI045、BLU-945、ナザルチニブ、ナコチニブ、マベレルチニブ、ポジオチニブ、DBPR112、ドセタキセル、ゲムシタビン、シスプラチン、カルボプラチン、パクリタキセル、トラスツズマブ、テモゾロミド、タモキシフェン、ドキソルビシン、オキサリプラチン、ボルテゾミブ、スーテント、レトロゾール、イマチニブメシル酸塩、MEK阻害剤、フルベストラント、ロイコボリン(フォリン酸)、ラパマイシン、ラパチニブ、ロナファルニブ、ソラフェニブ、ゲフィチニブ、イリノテカン、チピファルニブ、クレモホールフリー、パクリタキセル、バンデタニブ、クロランムブシル、テムシロリムス、パゾパニブ、カンホスファミド、チオテパ、シクロスホスファミド、5-フルオロウラシル(5-FU)、ビノレルビン、ノバントロン、テニポシド、エダトレキサート、ダウノマイシン、アミノプテリン、カペシタビン、イバンドロネート、トポイソメラーゼ阻害剤RFS2000、ジフルオロメチルオルニチン(DMFO)、タモキシフェン、ラロキシフェン、ドロロキシフェン、4-ヒドロキシタモキシフェン、トリオキシフェン、ケオキシフェン、オナプリストン、トレミフィンクエン酸塩、4(5)-イミダゾール、アミノグルテチミド、酢酸メゲストロール、エキセメスタン、ホルメスタニー、ファドロゾール、ボロゾール、レトロゾール、アナストロゾール、フルタミド、ニルタミド、ビカルタミド、ロイプロリド、ゴセレリン、トロキサシタビン(α-1,3-ジオキソランヌクレオシドシトシンアナログ)、脂質キナーゼ阻害剤、オブリメルセン、アンギオザイム、アロベクチン、ロイベクチン、バキシド、アルデスロイキン、ルートテカン、アバレリックス、ベバシズマブ、アレムツズマブ、ベバシズマブ、セツキシマブ、パニツムマブ、リツキシマブ、ペルツズマブ、トラスツズマブ、トシツモマブ、ゲムツズマブ又はオゾガマイシンから選択される、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
方法が、グロボ系列抗原相互作用をモジュレートすることによって、腫瘍体積を減少させること、及び/又は対象の生存を改善することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
生存が、全生存期間(OS)及び/又は無進行生存(PFS)を含む、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
グロボ系列抗原相互作用のモジュレーションが、以下:
(a)腫瘍殺滅のための抗体依存性細胞傷害(ADCC)及び補体依存性細胞傷害(CDC)の誘導、又は
(b)抗体依存性細胞傷害(ADCC)及び補体依存性細胞傷害(CDC)媒介腫瘍細胞殺滅を誘発するための抗グロボ系列抗原IgM/IgG免疫応答の誘導
のうちの1つ以上をさらに含む、請求項15に記載の方法。
【請求項18】
対象における免疫応答を誘導/増強するための方法であって、免疫原性剤及び/又は免疫原性剤との交差反応剤を対象に投与することを含む方法。
【請求項19】
免疫原性剤が、担体タンパク質とコンジュゲートしたグロボ系列抗原である、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
グロボ系列抗原が、グロボH、SSEA-4又はSSEA-3を含む、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
担体タンパク質が、DT-CRM197(ジフテリア毒素交差反応性物質197)を含む、請求項19に記載の方法。
【請求項22】
免疫原性剤が、OBI-833及び関連バリアントである、請求項18に記載の方法。
【請求項23】
対象がヒトである、請求項18に記載の方法。
【請求項24】
免疫応答が、細胞性免疫又は体液性免疫である、請求項18に記載の方法。
【請求項25】
免疫応答が、IgG、IgM又はB細胞/T細胞媒介応答を含む、請求項18に記載の方法。
【請求項26】
肺がんを治療するための方法であって、
(a)2回以上(例えば、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12回以上)ワクチンを投与すること、
(b)2回の連続する投与の間の時間間隔及び/若しくは投与量レジメンを調整すること、
(c)投与経路を調整すること、及び/若しくは投与の注射位置を変更すること、又は
(d)上記の任意の組合せによって、各投与が抗体免疫応答を増加させること、及び/若しくは抗原-抗体結合親和性を増加させること
から選択される経路によって、治療有効量のグロボH-DT CRM197(ジフテリア毒素交差反応性物質197)複合糖質ワクチンを、当該治療を必要とする患者に投与することを含む方法。
【請求項27】
注射が、免疫応答ブースター剤の追加によって変更及び/又は補足され得る、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
免疫応答が、細胞性免疫又は体液性免疫である、請求項26に記載の方法。
【請求項29】
免疫応答が、IgG、IgM又はB細胞/T細胞媒介応答を含む、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
細胞が、B細胞又はT細胞である、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
肺がんが、小細胞肺がん(SCLC)又は非小細胞肺がん(NSCLC)である、請求項26に記載の方法。
【請求項32】
ワクチンが、OBI-833であり、OBI-821アジュバントをさらに含む、請求項26に記載の方法。
【請求項33】
がん治療を必要とするがん治療に適した患者を識別するための方法であって、
(a)有効量のグロボ系列抗原ワクチンを患者に投与すること、
(b)患者の免疫応答を評価すること、
(c)各患者におけるグロボ系列抗原の発現を決定すること、及び
(d)免疫応答の指標及びグロボ系列抗原の発現に基づいて患者の適合性を分類することであって、指標が、回復の良好な予後を有する患者を示すこと
を含む方法。
【請求項34】
グロボ系列抗原ワクチンが、担体タンパク質にコンジュゲートしたグロボ系列抗原を含む、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
グロボ系列抗原が、グロボH、SSEA-4又はSSEA-3を含む、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
担体タンパク質が、DT-CRM197(ジフテリア毒素交差反応性物質197)を含む、請求項34に記載の方法。
【請求項37】
グロボ系列抗原ワクチンが、医薬組成物として投与される、請求項33に記載の方法。
【請求項38】
医薬組成物が、OBI-833ワクチン及びOBI-821アジュバントを含む、請求項37に記載の方法。
【請求項39】
がんが、乳がん、肺がん、食道がん、直腸がん、胆管がん、肝臓がん、頬側がん、胃がん、腸がん、結腸がん、上咽頭がん、腎臓がん、前立腺がん、卵巣がん、子宮頸がん、子宮内膜がん、膵臓がん、精巣がん、膀胱がん、頭頸部がん、口腔がん、神経内分泌がん、副腎がん、甲状腺がん、骨がん、胆嚢がん、中咽頭がん、喉頭がん、皮膚がん、基底細胞癌、扁平上皮癌、黒色腫又は脳腫瘍である、請求項33に記載の方法。
【請求項40】
免疫応答の指標が、IgG力価、IgM力価、無進行生存(PFS)及び/又は全生存期間(OS)の評価を含む、請求項33に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、がん患者の免疫療法のための方法であって、グロボ系列抗原(グロボH、SSEA-4及びSSEA-3)に対する免疫療法剤を患者に投与することを含む方法に関する。
【背景技術】
【0002】
がん免疫療法
細胞免疫学及び腫瘍-宿主免疫相互作用の態様における最近の進歩により、転移性がんを有する患者において腫瘍サイズを縮小できる効果的な免疫に基づく治療法の開発がもたらされた。現在、がん免疫療法に対する3つの主なアプローチである、エフェクター細胞を刺激すること及び/又は調節細胞を阻害することによる免疫反応の非特異的刺激、がんワクチンとして知られている特異的抗腫瘍反応を増強する能動免疫化、並びに養子免疫療法としても知られている、抗腫瘍抗体又は抗腫瘍活性を有する活性化免疫細胞の受動移入がある(DeVitaら、2008)。
【0003】
がん免疫療法は、適切に訓練された免疫系によってプロセシングされ、提示されると、腫瘍特異的抗原が認識され得るという理論に基づく。悪性細胞は一般に、それらを正常な細胞の対応物と区別する、それらの細胞表面上の大きく異常なタンパク質及び糖鎖モチーフの出現を特徴とする(Rabinovichら、1994)。免疫系の細胞性又は体液性エフェクターによって認識される腫瘍関連抗原の識別により、がん治療に新たな展望が開かれた。過去20年間に、いくつかのモノクローナル抗体が、がんの受動免疫療法に対する規制当局の承認を得るために十分な有効性及び安全性のデータを提供してきた。これらには、エドレコロマブ(Mab17-1A)、リツキシマブ(抗CD20)、トラスツズマブ(ハーセプチン)、ゲムツザマブゾガマイシン(gemtuzamab zogamicin)(Mylotarg)及びアレムツズマブ(CAMPATH-1、抗CD52)が含まれる。
【0004】
最近、GD2に対するキメラモノクローナル抗体であるch14.18が、第III相試験において高リスク神経芽細胞腫患者の生存率を改善することが示され、これは糖鎖抗原を標的とする最初の有効な抗がん抗体となった(Yuら、2010)。これらのモノクローナル抗体を用いた受動免疫療法に加えて、ヒトがんの能動免疫療法は、ペプチド及び糖鎖腫瘍関連抗原を標的とする急速に成長している実験領域である。バイオテクノロジー及び医薬品産業は、最近になってやっとがんワクチンの開発に成功した。2006年に、ガーダシルが米国で承認され、これは、子宮頸がん及び性器疣贅の原因となるヒトパピローマウイルスに対する最初のがん予防ワクチンである。2007年7月に、Northwest Biotherapeuticsは、スイスにおいて脳がんのためのその個別化治療ワクチン(DCVax(登録商標)-Brain)の承認を得た。2009年4月に、ロシア保健省(Russian Ministry of Public Health)は、疾患再発について中程度のリスクの腎臓がん患者の処置におけるOncophage(登録商標)(ビテスペン)の使用に関する登録証明書を発行した(http://www.antigenics.com/news/2008/0408.phtml)。これらの成功例は、乳がん、胃がん、肺がん、結腸直腸がん、卵巣がん、膵臓がん及び可能性のある他のがんの種類などの固形腫瘍に対する免疫療法標的としてのグロボHの開発を再確認すること後押ししている。
【0005】
アジュバント免疫化試験では、主要標的は、全ての残存腫瘍を見かけ上切除した後も長期間存続する可能性がある少数の腫瘍細胞又は初期の微小転移からなる「微小残存病変」である(Zhangら、1996;Zhangら、1997a;Zhangら、1997b;Zhangら、1998)。治療ワクチンを用いた能動免疫療法は、腹腔、血液及びリンパ系から残存腫瘍細胞を排除し、微小転移を阻害するために、腫瘍抗原に対する十分な力価の抗体を誘導することによって微小残存病変を標的とし、再発を予防するための優れた戦略である。しかしながら、がん抗原に対する免疫応答は、がん患者において抑制されている(Sotomayorら、1996;Pawelecら、1997;Khong及びRestifo 2002)。過去数年間に、天然のがん抗原を模倣する抗原を合成する方法が開発されており(Musselliら、2001)、この抗原は、担体として強力な免疫原にコンジュゲートされ、確実に免疫応答を引き起こし得るアジュバントとして免疫刺激分子と同時投与される。
【0006】
ヒト腫瘍細胞によるマウスの免疫化によって得られる、より腫瘍に限定されたモノクローナル抗体の多くは、細胞表面で発現される糖鎖抗原に対する指向性を有している(Menardら、1983;Zhangら、1997a)。細胞表面糖鎖は、正常な発生及び分化の異なる段階に特徴的であり、これらのプロセス中に、異なる糖鎖が組織及び細胞に特異的に発現される。いくつかの糖鎖抗原(Livingston 1995a;Livingstonら、1997;Livingston及びRagupathi 1997)は、免疫療法のための有望な標的であることが証明されている。免疫刺激分子にコンジュゲートした糖鎖抗原に対する免疫化は、体液性抗体応答、主にIgM抗体応答を引き起こす。これらの抗体は、補体依存性細胞傷害(CDC)、炎症及び細網内皮系による腫瘍細胞の食作用(オプソニン作用)を誘導することが知られている。
【0007】
CDCに加えて、ヒトにおけるサブクラスIgG1及びIgG3のIgG抗体は、抗体依存性細胞媒介細胞傷害(ADCC)も誘導することができる。これらは、様々なマウス実験において十分に立証されている残存腫瘍細胞及び全身又は腹腔内の微小転移の根絶に理想的に適している。能動免疫療法のための標的として選択されている糖鎖抗原には、グロボH(Ragupathiら、1997;Slovinら、1999;Allenら、2001;Gilewskiら、2001)、GM2(Whiteら、1991;Livingstonら、1994a;Livingstonら、1994b;Livingston 1995b;Hellingら、1995;Chapmanら、2000a;Chapmanら、2000b)、GD2(Livingston 1998)、GD3(Hellingら、1994;McCafferyら、1996;Ragupathiら、2000)、sTn(MacLeanら、1993;Longeneckerら、1993;Longeneckerら、1994;Sandmaierら、1999)及びTn(Allenら、2001)が含まれる。
【0008】
シアリル-Tn(sTn)は、多くのヒトがん細胞のMUC1ムチン上で発現する二糖腫瘍関連抗原であり、より進行性の疾患と関連する。Theratope(登録商標)ワクチン(Biomira,Inc.、Edmonton、Alberta、カナダ及びMerck KGaA、Darmstadt、ドイツ)は、細菌に由来する免疫刺激剤(アジュバント)Detox(商標)と組み合わせたKLH(キーホールリンペットヘモシアニン)にコンジュゲートした合成STn抗原からなるがんワクチンである。転移性乳がんを有する1,030人の女性におけるTheratope(登録商標)ワクチン(sTn-KLH)対KLHの第III相試験では、Theratope(登録商標)ワクチンが最小限の毒性で耐容性が良好であることが示された。最も一般的な副作用は、注射部位における硬結及び紅斑であった。この試験の結果は、疾患進行までの時間及び全生存期間の主要エンドポイントを満たさなかったが、その後の事後解析では、内分泌処置及びTheratope(登録商標)ワクチン処置を同時に受けた女性は、内分泌療法のみを受けた女性と比べて有意な全生存期間の利点があったことが示された(Ibrahimら、2013)。
【0009】
本発明の有用なグリカンは、腫瘍関連糖鎖抗原(TACA)を含む。細胞表面スフィンゴ糖脂質(GSL)グロボHは、様々ながん細胞系で高度に発現される抗原性糖鎖のファミリーのメンバーである。本発明において有用な他のグロボHスフィンゴ糖脂質アナログは、SSEA-3(又はGb5)、SSEA-4、Gb3又はGb4であり得る。
図1(A)は、シグナル伝達、細胞クロストーク及び細胞接着におけるGSLの役割を示した。さらに、
図1(B)は、グロボ系列抗原の合成経路を示した(Zhangら、2019)。
【0010】
固形腫瘍におけるグロボH発現
がん細胞は、宿主細胞表面の大部分に共通ではない特有の腫瘍関連糖鎖抗原(TACA)を含有する。細胞表面糖鎖抗原の発現レベルは、多くの場合、発がん性への形質転換時に有意に増加する(Zhangら、1997a;Zhangら、1997b)。したがって、TACAは、特定の形態のがんの処置のための標的化免疫療法アプローチの可能性をもたらす。TACAの中でも、糖脂質の末端六糖部分であるグロボHの免疫原性の可能性に大きな関心が集まっている。グロボHは、乳がん、卵巣がん、子宮内膜がん、胃がん、結腸がん、膵臓がん、肺がん及び前立腺がんなどの上皮がんにおいて高度に発現し(Zhangら、1997b)、それは、糖脂質として、及びおそらく糖タンパク質としてがん細胞表面上に発現する(Miottiら、1989)。
図2は、グロボHが、免疫抑制、血管新生又は腫瘍生存シグナル伝達の促進などの、発がん性への形質転換に重要な役割を果たしていることを示す。
【0011】
グロボHはまた、一部の正常な管腔表面上で、より低いレベルで発現する(Zhangら、1998)。しかしながら、抗原は主に、分泌境界における頂端細胞、すなわち免疫監視がアクセスできないと思われる部位に局在化する。以下で論じられる第I相試験では、正常な上皮組織の分泌境界において発現したグロボH抗原は、抗体が誘発されると寛容も自己免疫も誘導せず、抗原が免疫系から隔離されていることを示唆している。
【0012】
最近の研究では、グロボH及びグロボ系列のステージ特異的胚抗原3(SSEA-3)及びステージ特異的胚抗原4(SSEA-4)が、上皮がん細胞及び対応するがん性幹細胞上で発現することが示されている(Changら、2008b;Louら、2014)。SSEA-3(Gb5)は、グロボHの五糖前駆体であり、ステージ特異的胚抗原SSEA-3としても知られている。最近まで、SSEA-3及びSSEA-4は、胚発生段階の間、幹細胞においてのみ観察され得るヒト胚性幹細胞に対するマーカーとして知られていた(Changら、2008b;Louら、2014)。がん幹細胞上でのグロボH、SSEA-3及びSSEA-4の発見は、原則として、グロボHタンパク質コンジュゲート免疫療法が、がん細胞だけでなく、がん幹細胞も根絶の標的とすることを示唆している。また、同じ研究では、41個中25個の乳がん検体(61.0%)においてグロボHが発現し、40個中31個(77.5%)の様々な腫瘍においてSSEA-3が発現することも明らかになった(Changら、2008a)。
図3は、グロボHが複数の上皮がん細胞系で発現し、グロボHの発現レベルが25%~100%であることを示した。
【0013】
グロボHと同様に、正常組織におけるSSEA-3及びSSEA-4の発現は主に、免疫系へのアクセスが制限されている上皮の分泌境界であったことは注目に値する(Changら、2008b)。グロボH-KLH及びグロボH-CRM197でマウスを免疫化すると、グロボH、SSEA-3及びSSEA-4と反応する抗体が誘導され、グロボHベースのワクチンが、グロボH、SSEA-3及びSSEA-4を発現する腫瘍細胞を標的とすることが示唆される(Huangら、2013)。
【0014】
最近のデータでは、グロボH、SSEA-3及びSSEA-4(いわゆるグロボ系列TACA)が、様々な固形腫瘍種類由来のヒトがん検体で高度に発現することが示されている。これらのデータは、グロボHが80個中73個の乳がん検体で発現し(91.3%)、SSEA-3が79個中79個(100%)の腫瘍で発現し、SSEA-4が80個中80個(100%)で発現することを示す(Dr.A.Yu、台湾、未公表のデータ)。また、この研究では、胃がん検体において、グロボHが74個中71個(95.9%)で発現し、SSEA-3が79個中76個(96.2%)で発現し、SSEA-4が81個中72個(88.9%)で発現することも示された。さらに、このデータはまた、肺がん試料中のグロボ系列の高発現も明らかにし、解析した試料の中で、グロボHは61個中61個(100%)で発現し、SSEA-3は63個中62個(98.4%)で発現し、SSEA-4は62個中61個(98.4%)で発現した。(Chang Gung Memorial Hospital、台湾のDr.A.Yuによる公表のために提出されたデータ)
【0015】
乳がんにおいて23個中14個(60.9%)、肺がんにおいて20個中13個(65.0%)、胃がんにおいて6個中6個(100%)、結腸がんにおいて7個中6個(85.7%)、膵臓がんにおいて8個中6個(75.0%)、及び食道がん細胞系において2個中2個(100%)のグロボH発現を含む、14種の腫瘍種類由来の134個のヒトがん細胞系の中で、グロボH発現は134個中88個(65.7%)で検出され、SSEA-3発現は134個中38個(28.4%)で検出され、SSEA-4発現は134個中96個(71.6%)で検出された(Louら、2014)。
【0016】
この第1相臨床試験において、提案された計画は、進行性/転移性の不治の胃がん、乳がん、結腸直腸がん又は肺がんを有する対象を登録し、その後、グロボ系列TACAの発現レベルを査定することである。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0017】
【非特許文献1】DeVitaら、2008
【非特許文献2】Rabinovichら、1994
【非特許文献3】Yuら、2010
【非特許文献4】http://www.antigenics.com/news/2008/0408.phtml
【非特許文献5】Zhangら、1996
【非特許文献6】Zhangら、1997a
【非特許文献7】Zhangら、1997b
【非特許文献8】Zhangら、1998
【非特許文献9】Sotomayorら、1996
【非特許文献10】Pawelecら、1997
【非特許文献11】Khong及びRestifo 2002
【非特許文献12】Musselliら、2001
【非特許文献13】Menardら、1983
【非特許文献14】Livingston 1995a
【非特許文献15】Livingstonら、1997
【非特許文献16】Livingston及びRagupathi 1997
【非特許文献17】Ragupathiら、1997
【非特許文献18】Slovinら、1999
【非特許文献19】Allenら、2001
【非特許文献20】Gilewskiら、2001
【非特許文献21】Whiteら、1991
【非特許文献22】Livingstonら、1994a
【非特許文献23】Livingstonら、1994b
【非特許文献24】Livingston 1995b
【非特許文献25】Hellingら、1995
【非特許文献26】Chapmanら、2000a
【非特許文献27】Chapmanら、2000b
【非特許文献28】Livingston 1998
【非特許文献29】Hellingら、1994
【非特許文献30】McCafferyら、1996
【非特許文献31】Ragupathiら、2000
【非特許文献32】MacLeanら、1993
【非特許文献33】Longeneckerら、1993
【非特許文献34】Longeneckerら、1994
【非特許文献35】Sandmaierら、1999
【非特許文献36】Miottiら、1989
【非特許文献37】Changら、2008b
【非特許文献38】Louら、2014
【非特許文献39】Changら、2008a
【非特許文献40】Huangら、2013
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0018】
(発明の要旨)
したがって、本開示は、グロボ系列抗原が、広範囲のがんにおいて異常に発現するが、正常細胞においては異常に発現しないという発見に基づく。グロボ系列抗原を発現するがんには、肉腫、皮膚がん、白血病、リンパ腫、脳がん、神経膠芽腫、肺がん、乳がん、口腔がん、頭頸部がん、上咽頭がん、食道がん、胃がん、肝臓がん、胆管がん、胆嚢がん、膀胱がん、膵臓がん、腸がん、結腸直腸がん、腎臓がん、子宮頸がん、子宮内膜がん、卵巣がん、精巣がん(testical cancer)、頬側がん、中咽頭がん、喉頭がん及び前立腺がんが含まれるが、これらに限定されない。
【0019】
本開示の態様及び実施形態は、免疫療法によってがんに罹患している対象を治療するための方法であって、免疫応答(IgG及び/又はIgM)の誘導/モジュレートに有用なグロボ系列抗原標的化免疫原性剤(例えば、OBI-833/OBI-821)を、当該治療を必要とする対象に投与することを含み、対象の生存が改善されるように、グロボ系列抗原相互作用をモジュレートすることによって生存(全生存期間及び/又は無進行生存を含む)を改善することを含む方法を提供する。この治療用組成物は、がん細胞などの損傷又は異常細胞による危険から免疫系を介して、身体それ自体を保護する生まれつきの能力をブーストするためのがんワクチンとして作用することが部分的に想定されている。
【0020】
一態様では、本開示は、対象における進行性/転移性の胃がん、肺がん、結腸直腸がん又は乳がんを治療するための方法であって、治療有効用量のグロボ系列抗原ワクチン、及び/又はグロボ系列抗原ワクチンとの交差反応剤を、当該治療を必要とする対象に投与することを含む方法を提供する。
【0021】
一実施形態では、本開示は、グロボ系列抗原ワクチンが、担体タンパク質とコンジュゲートしたグロボ系列抗原を含む、方法を提供する。
【0022】
一実施形態では、本開示は、選択されるグロボ系列抗原が、グロボHである、方法を提供する。
【0023】
一実施形態では、本開示は、担体タンパク質が、DT-CRM197(ジフテリア毒素交差反応性物質197)を含む、方法を提供する。
【0024】
一実施形態では、本開示は、グロボ系列ワクチンが、医薬組成物として投与される、方法を提供する。
【0025】
一実施形態では、本開示は、医薬組成物が、OBI-833/OBI-821を含む、方法を提供する。
【0026】
一実施形態では、免疫原性剤は、OBI-833及び関連するバリアントを含み得る。
【0027】
ある特定の実施形態では、免疫応答は、グロボH系列抗原/腫瘍に対するIgG(サブクラスIgG1、IgG2、IgG3、IgG4を含む)、IgM、CTL(細胞傷害性リンパ球)を含み得る。
【0028】
特許又は出願ファイルは、カラーで作成された少なくとも1つの図面を含む。カラー図面を含む本特許又は特許出願公報のコピーは、請求及び必要な手数料の支払いにより米国特許商標局によって提供される。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図1】グロボ系列抗原の概略図である。(A)腫瘍の発生及び生存に関与する特有のクラスのスフィンゴ糖脂質(GSL)。(B)グロボ系列抗原。初期胚発生の間のステージ特異的発現、多能性胚SCに対するマーカー及びEMTとの関連。
【
図2】グロボHが、がんの生存及び進行においてどのように重要な役割を果たすかの概略図である。
【
図3】異なるがんにおけるグロボH発現レベルの概略図である。(A)14種のがんの種類のグロボH発現比。(B)肺がん、食道がん及びトリプルネガティブ乳がん(TNBC)におけるグロボH発現の説明。
【
図4】OBI-833(グロボHがんワクチン)の概略図である。
【
図5】OBI-833によるグロボH標的化の概略図である。
【
図6A】OBI-833/OBI-821研究薬物混合使用説明書の概略図である。(A)OBI-833 10μg+OBI-821 100μg。
【
図6B】OBI-833/OBI-821研究薬物混合使用説明書の概略図である。(B)OBI-833 30μg+OBI-821 100μg。
【
図6C】OBI-833/OBI-821研究薬物混合使用説明書の概略図である。(C)OBI-833 100μg+OBI-821 100μg。
【
図7】OBI-833第1相臨床試験設計(OBI-833-001研究)の図である。
【
図8】OBI-833-001のCDC結果の概略図である。(A)用量漸増段階。コホート1:OBI-833(10μgのグロボH/100μgのOBI-821)。コホート2:OBI-833(30μgのグロボH/100μgのOBI-821)。コホート3:OBI-833(100μgのグロボH/100μgのOBI-821)。(B)コホート拡大段階(30μgのグロボH/100μgのOBI-821)。
【
図9】OBI-833-001のADCC結果の概略図である。(A)用量漸増段階。コホート1:OBI-833(10μgのグロボH/100μgのOBI-821)。コホート2:OBI-833(30μgのグロボH/100μgのOBI-821)。コホート3:OBI-833(100μgのグロボH/100μgOBI-821)。(B)コホート拡大段階(30μgのグロボH/100μgのOBI-821)。
【
図10】OBI-833-001用量漸増段階における免疫応答の図である。(A)抗グロボH IgM応答(B)抗グロボH IgG応答。コホート1:OBI-833(10μgのグロボH/100μgのOBI-821)。コホート2:OBI-833(30μgのグロボH/100μgのOBI-821)。コホート3:OBI-833(100μgのグロボH/100μgのOBI-821)。
【
図11】肺がん(NSCLC)コホート患者におけるグロボH発現の図である。Hスコアの計算は次の通りである:(1+強度を有する細胞のパーセンテージ)×1+(2+強度を有する細胞のパーセンテージ)×2+(3+強度を有する細胞のパーセンテージ)×3。Hスコアの範囲は0~300である。
【
図12】OBI-833-001コホート拡大段階における免疫応答(30μgのグロボH/100μgのOBI-821)の図である。(A)抗グロボH IgM応答(B)抗グロボH IgG応答。
【
図13】OBI-833-001コホート拡大段階における免疫応答(30μgのグロボH/100μgのOBI-821)の図である。(A)抗SSEA3 IgM応答(B)抗SSEA3 IgG応答。
【
図14】OBI-833-001コホート拡大段階における免疫応答(30μgのグロボH/100μgのOBI-821)の図である。(A)抗SSEA4 IgM応答(B)抗SSEA4 IgG応答。
【
図15】OBI-833-001用量漸増段階及びコホート拡大段階における全生存期間(OS)のカプラン・マイヤープロットの概略図である。
【
図16】OBI-833-001用量漸増段階及びコホート拡大段階における無進行生存(PFS)のカプラン・マイヤープロットの概略図である。
【
図17】EGFR TKl及びOBI-833処置期間に対するスイマープロットの概略図である。
【
図18】NSCLC患者の腫瘍応答時間の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
本発明は、がん又は感染病などの疾患に苦しむ対象の免疫療法のための方法であって、内因性応答の活性化を刺激して又は内因性応答の抑制を阻害して内因性免疫応答を増強する化合物又は薬剤の治療有効量を含む組成物を対象に投与することを含む方法に関する。さらに具体的には、本開示は、がんに苦しむ対象において内因性免疫応答を増強し、それによって患者を処置するための方法であって、治療有効量の免疫原性剤を対象に投与することを含む方法を提供する。
【0031】
略字及び用語の定義の一覧表
ADCC:抗体依存性細胞媒介細胞傷害
AE:有害事象
ALC:絶対リンパ球数
ALK:未分化リンパ腫キナーゼ
ALT(SGPT):血清グルタミン酸ピルビン酸トランスアミナーゼ
ANCA:抗好中球細胞質抗体
AST(SGOT):血清グルタミン酸オキサロ酢酸トランスアミナーゼ
BUN:血中尿素窒素
CDC:補体依存性細胞傷害
CA:がん抗原
CEA:癌胎児抗原
CNS:中枢神経系
CR:完全奏功
CRF:症例報告書
CRM197:交差反応物質197と呼ばれるジフテリア毒素(DT)の活性及び非毒性型
CT:コンピュータ断層撮影法
CTC:循環性腫瘍細胞
CTCAE:有害事象用の一般用語基準
CYFRA21-1:サイトケラチンフラグメント21-1
DLT:用量規制毒性
ECG:心電図
ECOG:東海岸癌臨床試験グループEF駆出率
EGFR:上皮増殖因子受容体
ESR:赤血球沈降速度
FACS:蛍光標識細胞分取
FDA:食品医薬品局
Gb5:グロボH前駆Gb5、ステージ特異的胚性抗原-3(SSEA-3)とも呼ばれる
GCSF:顆粒球コロニー刺激因子
GM-CSF:顆粒球マクロファージコロニー刺激因子HBV B型肝炎ウイルス
HCC:肝細胞癌
HCV:C型肝炎ウイルス
HIV:ヒト免疫不全ウイルス
ICF:同意説明文書
ICH-GCP:医薬品規制調和国際会議-優良臨床試験基準IHC免疫組織化学
IRB:施設内審査委員会
KLH:キーホールリンペットヘモシアニン
LDH:乳酸デヒドロゲナーゼ
LVEF:左室駆出率
mAb:モノクローナル抗体
MRI:磁気共鳴画像法
MSKCC:メモリアルスローンケタリングがんセンター
MUGA:マルチゲート収集スキャン
NCI:米国国立がん研究所
NK:ナチュラルキラー細胞
NKT:ナチュラルキラーT細胞
NOAEL:無毒性量
NSCLC:非小細胞肺がん
OS:全生存期間
PBS:リン酸緩衝食塩水
PD:進行性疾患
PD-1:プログラム死-1
PD-L1:プログラム死-リガンド1
PET:ポジトロン放出断層撮影
PR:部分奏功
RBC:赤血球数
RECIST:固形癌効果判定基準
RF:リウマトイド因子
SAE:重篤有害事象(複数可)
SC:皮下の
SD:安定疾患
SOP:標準作業手続き
SSEA:ステージ特異的胎児抗原
SSEA-3:グロボH前駆Gb5、ステージ特異的胚性抗原-3とも呼ばれる
SSEA-4:シアリルGb5、ステージ特異的胚性抗原-4とも呼ばれる
TKI:チロシンキナーゼ阻害剤
ULN:正常上限
WBC:白血球数
WHO:世界保健機構
【0032】
定義
「ベースライン値」は、それぞれのパラメーターについてのベースライン値が治験薬の第1回の投与に先立つ最後のノンミッシング評価として定義されることを意味する。
【0033】
「研究終了」は、治験薬の最後の皮下投与から12週間(用量漸増段階)又は24週間(コホート拡大段階)後を意味する。
【0034】
「登録対象」は、臨床試験に参加するのに適格であると分かっており、ICFに署名しており、適格性についてスクリーニングすることができた全ての対象を意味する。
【0035】
「スクリーニングを受けた対象」は、臨床試験に参加するのに適格であるかどうかを検査するために、ICFに署名してスクリーニング評価を受けた対象全てを意味する。
【0036】
「治験用医薬品(IMP)」は、「既に販売許可を持つが、認可された形態とは異なるやり方で使用される若しくは組み立てられる(処方される又は包装される)、又は未認可表示で使用される場合、又は認可された形態についてさらに情報を得るために使用される場合の製品を含む、試験される又は臨床試験での参照として使用される活性物質又はプラセボの剤形」[per EC Directive 2001/20/EC definition of IMP in Article 2(d)]。
【0037】
本明細書で使用される「投与する」は、以下の特徴:1)2回又はそれよりも多い回数(例えば、3、4、5、6、7、8、9、10回又はそれよりも多い回数)ワクチンを投与する;2)投与ごとに免疫応答が増加する(上記参照)[力価-IgG及び/若しくはIgM Ab量、並びに/又は親和性/結合活性を増やす;グロボH抗原コンジュゲートのグロボH部分の免疫原性が低い部位へのAbの導入(例えば、コンジュゲート中で接近しにくいことがあるグロボH抗原の部分)]を含むことができる投与レジメンの実施形態を意味する。
【0038】
本明細書で使用される場合、「処置」とは、処置されている個体又は細胞の自然経過を変更しようと企てる臨床的介入のことであり、予防のために又は臨床病理の経過中に実施することができる。処置の所望の効果は、疾患の発生又は再発を予防すること、症状の軽減、疾患の任意の直接的又は間接的病理学的結果の減弱、炎症及び/又は組織/臓器損傷を予防する又は減少させること、疾患の進行速度を減らすこと、疾患状態の寛解又は緩和、並びに軽快又は改善された予後を含む。一部の実施形態では、本発明の抗体は、疾患又は傷害の発症を遅延させるために使用される。
【0039】
「有効量」とは、所望の治療結果又は予防結果を達成するのに必要な投与量で、及び必要な期間効果的な量のことである。
【0040】
本発明の物質/分子の「治療有効量」は、個体の疾病状態、年齢、性別、及び体重、並びに個体において所望の応答を誘発する物質/分子の能力などの要因によって変動する場合がある。治療有効量は、物質/分子のいかなる毒性効果又は有害効果よりも治療的に有益な効果のほうが勝る量でもある。「予防有効量」とは、所望の予防結果を達成するのに必要な投与量で、及び必要な期間効果的な量のことである。典型的には、しかし、必ずしもそうではないが、予防用量は、疾患に先立って又は疾患の初期段階で対象において使用されるので、予防有効量は治療有効量よりも少ないと考えられる。
【0041】
「有害事象」(AE)毒性は、米国国立がん研究所のがん療法評価プログラムにより開発された、US NCI共有毒性基準、バージョン4により測定される。容認できない毒性についての基準は、局所皮膚反応、発熱、寒気、発汗、蕁麻疹、及び/又は掻痒症を除く、あらゆる≧グレード4毒性を含むべきである。なぜならば、これらは抗体/アジュバンド投与の共通の副作用であり、可逆的であり、補助的管理により制御されるからである。理論的には、皮膚、関節、腎臓、又は他の徴候により示される免疫複合体病が発生する可能性があるが、これらは、マウスタンパク質への事前曝露がなければまれであるはずである。これらは、影響を受けた対象での治療を停止する目安になるが、新たな対象は増やし続けてもよい。有害事象は、無作為化の日付から治験薬の使用に関係しているとみなされようとそうでなかろうと、追跡調査期間で続けている対象についての無作為化から2年まで、対象が体験する任意の物理的又は臨床変化又は疾患である。これは、新しい病気の発症及び既存の状態の悪化を含む。処置期間中に処置をやめる対象については、有害事象は研究処置の最後の投薬後28日間ずっと記録されるべきである(OBI-822/OBI-821又は対照)。
【0042】
「抗体」(Ab)、「抗体(複数可)」(Abs)及び「免疫グロブリン」(Ig)は、同じ構造特徴を有する糖タンパク質である。抗体は特定の抗原に対する結合特異性を示すが、免疫グロブリンは、抗体と一般に抗原特異性を欠く他の抗体様分子の両方を含む。後者の種類のポリペプチドは、例えば、リンパ系では低レベルで、骨髄腫により増加したレベルで産生される。用語「抗体」及び「免疫グロブリン」は最も広い意味で互換的に使用され、モノクローナル抗体(例えば、完全長又は無傷のモノクローナル抗体)、ポリクローナル抗体、一価抗体、多価抗体、多特異的抗体(例えば、所望の生物活性を示す限り二特異的抗体)を含み、ある特定の抗体断片(本明細書ではさらに詳細に説明される)も含むことがある。抗体は、キメラ、ヒト、ヒト化及び/又は親和性成熟していることが可能である。
【0043】
「可変」及び「相補性決定領域」(CDR)
用語「可変」とは、可変ドメインのある特定の部分が抗体間で配列が大幅に異なるという事実のことであり、その特定の抗原に対するそれぞれの特定の抗体の結合及び特異性において使用される。しかし、変異性は抗体の可変ドメイン全体を通じて均等に分散しているのではない。変異性は、軽鎖と重鎖可変ドメイン両方において相補性決定領域(CDR)又は高頻度可変領域と呼ばれる3つのセグメントに集中している。可変ドメインのより高度に保存された部分はフレームワーク(FR)と呼ばれる。天然の重及び軽鎖の可変ドメインはそれぞれ4つのFR領域を含み、主にベータシート立体配置を取り、3つのCDRで接続され、この3つのCDRがループを形成して、ベータシート構造を接続し、一部の場合に、ベータシート構造の一部を形成する。それぞれの鎖中のCDRはFR領域により極めて近接して互いに保持され、もう一方の鎖由来のCDRと一緒に、抗体の抗原結合部位の形成に寄与する(Kabatら、Sequences of Proteins of Immunological Interest、第5版、National Institute of Health、Bethesda、Md.(1991年)参照)。定常ドメインは、抗原に抗体を結合させることに直接関与してはいないが、抗体依存性細胞傷害への抗体の関与などの種々のエフェクター機能を示す。抗体のパパイン消化により、「Fab」断片と呼ばれ、それぞれが単一の抗原結合部位を有する2つの同一の抗原結合性断片、及び残渣「Fc」断片が生じ、「Fc」の名称は容易に結晶化する能力を反映している。ペプシン処理により、2つの抗原結合部位を有しそれでも抗原と架橋結合することができるF(ab’)2断片が得られる。
【0044】
「Fv」は、完全抗原認識及び抗原結合部位を含有する最小抗体断片である。2本鎖Fv種では、この領域は、固く締まった非共有結合の1つの重鎖及び1つの軽鎖可変ドメインダイマーからなる。一本鎖Fv種では、1つの重鎖及び1つの軽鎖可変ドメインは、柔軟なペプチドリンカーにより共有結合させることができるので、軽及び重鎖は、2本鎖Fv種の構造に類似する「ダイマー」構造で会合できる。それぞれの可変ドメインの3つのCDRが相互作用してVH-VLダイマーの表面上で抗原結合部位を限定するのはこの立体配置においてである。合わせて、6つのCDRが抗体に抗原結合特異性を与える。しかし、単一可変ドメイン(又は抗原に対して特異的な3つのCDRのみを含むFvの半分)でさえ抗原を認識してこれに結合する能力を有するが、全結合部位よりも低い親和性で結合する。
【0045】
Fab断片は、軽鎖の定常ドメイン及び重鎖の第1の定常ドメイン(CH1)も含有する。Fab’断片はFab断片とは、抗体ヒンジ領域由来の1つ以上のシステインを含む重鎖CH1ドメインのカルボキシ末端での少数の残基の付加が異なる。Fab’-SHは、定常ドメインのシステイン残基(複数可)が遊離のチオール基を有するFab’の本明細書での呼称である。F(ab’)2抗体断片は最初は間にヒンジシステインを有する対になったFab’断片として産生された。
【0046】
任意の脊椎動物種由来の抗体(免疫グロブリン)の「軽鎖」は、その定常ドメインのアミノ酸配列に基づいて、カッパ(κ)及びラムダ(λ)と呼ばれる2つのはっきり異なるタイプのうちの1つに割り当てることができる。
【0047】
重鎖の定常ドメインのアミノ酸配列に応じて、抗体(免疫グロブリン)は、異なるクラスに割り当てることができる。免疫グロブリンには5つの主要なクラス:IgA、IgD、IgE、IgG及びIgMがあり、これらのクラスのうちのいくつかは、サブクラス(アイソタイプ)、例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1、及びIgA2にさらに分けられる場合がある。免疫グロブリンの異なるクラスに対応する重鎖定常ドメインは、それぞれ、α、δ、ε、γ、及びμと呼ばれる。免疫グロブリンの異なるクラスのサブユニット構造及び三次元立体配置は周知であり、例えば、Abbasら、Cellular and Mol.Immunology、第4版(2000年)に広く記載されている。抗体は、抗体と1つ以上の他のタンパク質又はペプチドとの共有又は非共有結合により形成される、もっと大きな融合分子の一部でもよい。
【0048】
本明細書で使用される場合、「単離された抗体」は、同定されており、その自然環境の成分から分離されている及び/又は回収されている「単離された」抗体を含むことができる。その自然環境の汚染成分は、抗体についての研究、診断又は治療的使用を妨げると考えられる物質であり、酵素、ホルモン、及び他のタンパク質性又は非タンパク質性溶質を含む場合がある。一実施形態では、抗体は、(1)例えば、ローリー法により決定される抗体の95重量%より大きい、及び一部の実施形態では、99重量%より多いまで、(2)例えば、スピニングカップ配列決定装置を用いてN末端の少なくとも15残基若しくは内部アミノ酸配列を得るのに十分な程度まで、又は(3)例えば、クーマシーブルー若しくは銀染色を使用して還元若しくは非還元条件下でSDS-PAGEによる同質になるまで精製される。単離された抗体は、抗体の自然環境の少なくとも1つの成分が存在しないので、組換え細胞内で抗体をインサイチュで含む。しかし、通常、単離された抗体は少なくとも1つの精製段階により調製される。
【0049】
本明細書で使用される用語「モノクローナル抗体」(mAb)とは、実質的に均一な抗体の集団から得られる抗体のことであり、例えば、その集団を含む個々の抗体は、少量存在する場合がある考えうる天然に存在する突然変異を除いて同一である。したがって、修飾語「モノクローナル」は、別々の抗体の混合物ではないという抗体の特性を示す。そのようなモノクローナル抗体は典型的には、標的に結合するポリペプチド配列を含む抗体を含み、標的結合ポリペプチド配列は、複数のポリペプチド配列からの単一の標的結合ポリペプチド配列の選択を含む工程により得られた。例えば、選択工程は、ハイブリドーマクローン、ファージクローン又は組換えDNAクローンのプールなどの複数のクローンからの唯一のクローンの選択が可能である。選択された標的結合配列は、例えば、標的に対する親和性を改善する、標的結合配列をヒト化する、細胞培養でのその産生を改善する、その免疫原性をインビボで減少する、多特異性抗体を作り出す、等のためにさらに変更できること、及び変更された標的結合配列も本発明のモノクローナル抗体であることは理解されるべきである。典型的には異なる決定基(エピトープ)に対する指向性を有する抗体を含むポリクローナル抗体製剤とは対照的に、モノクローナル抗体製剤のそれぞれのモノクローナル抗体は抗原上の単一の決定基に対する指向性を有する。その特異性に加えて、モノクローナル抗体製剤は、典型的には他の免疫グロブリンにより汚染されていない点で有利である。修飾語「モノクローナル」は、抗体の実質的に均一な集団から得られるという抗体の特性を示しており、いずれか特定の方法による抗体の産生を要求していると解釈されるべきではない。例えば、本発明に従って使用されるモノクローナル抗体は、例えば、ハイブリドーマ法(例えば、Kohlerら、Nature、256:495頁(1975年);Harlowら、Antibodies:A Laboratory Manual、(Cold Spring Harbor Laboratory Press、第2版.1988年);Hammerlingら、in:Monoclonal Antibodies and T-Cell hybridomas 563~681頁(Elsevier、N.Y.、1981年));組換えDNA法(例えば、米国特許第4,816,567号参照)、ファージディスプレイ技術(例えば、Clacksonら、Nature、352:624~628頁(1991年);Marksら、J.Mol.Biol.222:581~597頁(1992年);Sidhuら、J.Mol.Biol.338(2):299~310頁(2004年);Leeら、J.Mol.Biol.340(5):1073~1093頁(2004年);Fellouse、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 101(34):12467~12472頁(2004年);及びLeeら、J.Immunol.Methods 284(1-2):119~132頁(2004年)参照)、並びにヒト免疫グロブリン配列をコードするヒト免疫グロブリン遺伝子座又は遺伝子の部分又は全てを有する動物においてヒト又はヒト様抗体を産生するための技術(例えば、WO98/24893;WO96/34096;WO96/33735;WO91/10741;Jakobovitsら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 90:2551頁(1993年);Jakobovitsら、Nature 362:255~258頁(1993年);Bruggemannら、Year in Immunol.7:33頁(1993年);米国特許第5,545,807号;米国特許第5,545,806号;米国特許第5,569,825;米国特許第5,625,126;米国特許第5,633,425号;米国特許第5,661,016号;Marksら、Bio.Technology 10:779~783頁(1992年);Lonbergら、Nature 368:856~859頁(1994年);Morrison、Nature 368:812~813頁(1994年);Fishwildら、Nature Biotechnol.14:845~851頁(1996年);Neuberger、Nature Biotechnol.14:826頁(1996年)及びLonberg and Huszar、Intern.Rev.Immunol.13:65~93頁(1995年)参照)を含む種々の技法により作製してもよい。
【0050】
「ヒトモノクローナル抗体」(HuMAb):「ヒトモノクローナル抗体」は、ヒトが産生する抗体のアミノ酸配列に一致するアミノ酸配列を有する及び/又は本明細書で開示されるヒト抗体を作製するための技法のいずれかを使用して作製されたmAbである。ヒト抗体のこの定義は、非ヒト抗原結合残基を含むヒト化抗体を特に除外する。
【0051】
「ヒト化抗体」:非ヒト(例えば、マウス)抗体の「ヒト化」型は、非ヒト免疫グロブリンに由来する最小配列を含有するキメラ抗体である。一実施形態では、ヒト化抗体は、レシピエントの高頻度可変領域由来の残基が、所望の特異性、親和性、及び/又は能力を有するマウス、ラット、ウサギ又は非ヒト霊長類などの非ヒト種(ドナー抗体)の高頻度可変領域由来の残基により置き換えられているヒト免疫グロブリン(レシピエント抗体)である。一部の例では、ヒト免疫グロブリンのフレームワーク領域(FR)残基が対応する非ヒト残基で置き換えられている。さらに、ヒト化抗体は、レシピエント抗体にもドナー抗体にも見出されない残基を含む場合がある。これらの改変は抗体性能をさらに洗練するために行われる。一般に、ヒト化抗体は、高頻度可変ループの全て又は実質的に全てが非ヒト免疫グロブリンの高頻度可変ループに一致しており、FRの全て又は実質的に全てがヒト免疫グロブリン配列のFRである少なくとも1つ、典型的には2つの可変ドメインの実質的に全てを含む。ヒト化抗体は、任意選択的に、免疫グロブリン定常領域(Fc)、典型的にはヒト免疫グロブリンの定常領域の少なくとも一部も含む。さらに詳細には、Jonesら、Nature 321:522~525頁(1986年);Riechmannら、Nature 332:323~329頁(1988年);及びPresta、Curr.Op.Struct.Biol.2:593~596頁(1992年).以下のレビュー記事:Vaswani and Hamilton、Ann.Allergy、Asthma&Immunol.1:105~115頁(1998年);Harris、Biochem.Soc.Transactions 23:1035~1038頁(1995年);Hurle and Gross、Curr.Op.Biotech.5:428~433頁(1994年)及びそこで引用された参考文献も参照されたい。
【0052】
「キメラ抗体」:本明細書のモノクローナル抗体は特に、重鎖及び/又は軽鎖の一部が、特定の種由来の又は特定の抗体クラス若しくはサブクラスに属する抗体中の対応する配列と同一である又は類似しており、鎖(複数可)の残りが別の種由来の又は別の抗体クラス若しくはサブクラスに属する抗体中の対応する配列と同一である又は類似している「キメラ」抗体、並びに所望の生物活性を示す限りそのような抗体の断片を含む(米国特許第4,816,567号;及びMorrisonら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 81:6851~6855頁(1984年))。
【0053】
「抗原結合性部分」又は「抗原断片」:「抗原断片」は、無傷の抗体の一部のみを含み、その部分は、無傷の抗体中に存在する場合その部分と通常関連している機能の少なくとも1つ、及び大半又は全ても保持する。一実施形態では、抗体断片は、無傷の抗体の抗原結合部位を含み、したがって、抗原に結合する能力を保持する。
【0054】
別の実施形態では、抗体断片、例えば、Fc領域を含む抗体断片は、FcRn結合、抗体半減期調節、ADCC機能及び補体結合などの、無傷の抗体中に存在する場合にFc領域に通常関連する生物機能のうちの少なくとも1つを保持する。一実施形態では、抗体断片は、無傷の抗体に実質的に類似するインビボ半減期を有する一価抗体である。例えば、そのような抗体断片は、断片にインビボ安定性を与えることができるFc配列に連結された抗原結合アームを含む場合がある。
【0055】
用語「がん」及び「がん性の」とは、典型的には未制御細胞成長/増殖を特徴とする哺乳動物における生理的状態のことである又はこれを記述する。がんの例は、癌腫、リンパ腫(例えば、ホジキンリンパ腫及び非ホジキンリンパ腫)、芽細胞腫、肉腫、及び白血病を含むがこれらに限定されない。そのようながんのもっと具体的な例は、扁平上皮がん、小細胞肺がん、非小細胞肺がん、肺の腺癌、肺の扁平上皮癌、腹膜のがん、肝細胞がん、消化器がん、膵臓がん、神経膠芽腫、子宮頚がん、卵巣がん、肝臓がん、膀胱がん、肝細胞腫、乳がん、結腸癌、結腸直腸がん、子宮内膜又は子宮癌、唾液腺癌、腎臓がん、肝臓がん、前立腺がん、外陰がん、甲状腺がん、肝細胞癌、白血病及び他のリンパ増殖性障害、並びに種々のタイプの頭頚部がんを含む。「腫瘍」とは、本明細書で使用される場合、悪性であれ良性であれ、全ての腫瘍性細胞成長及び増殖、並びに全ての前がん状態及びがん細胞及び組織のことである。用語「がん」、「がん性の」、「細胞増殖性障害」、「増殖性障害」、及び「腫瘍」は、本明細書で言及される場合、相互排他的ではない。
【0056】
「免疫応答」とは、侵入病原体、病原体、がん性若しくは他の異常な細胞に感染した細胞若しくは組織、又は自己免疫若しくは病的炎症の場合は、正常ヒト細胞若しくは組織への選択的ターゲティング、これらへの結合、損傷、これらの破壊、及び/若しくは脊椎動物身体からのこれらの除去をもたらす、免疫系の細胞(例えば、Tリンパ球、Bリンパ球、ナチュラルキラー(NK)細胞、マクロファージ、好酸球、マスト細胞、樹状細胞及び好中球)及びこれらの細胞のいずれか又は肝臓により産生される可溶性巨大分子(Ab、サイトカイン、及び補体を含む)の作用のことである。
【0057】
「免疫調節剤」とは、免疫応答を調節する物質、薬剤、シグナル伝達経路又はその成分のことである。免疫応答を「調節する」、「改変する」又は「モジュレートする」とは、免疫系の細胞での又はそのような細胞の活性での任意の変更のことである。そのような制御は、種々の細胞型の数の増加若しくは減少、これらの細胞の活性の増加若しくは減少、又は免疫系内部で起こることがある他の任意の変化により示されうる免疫系の刺激又は抑制を含む。抑制性と刺激性免疫調節剤の両方が同定されており、その一部はがん微小環境において増強された機能を有する場合がある。
【0058】
「免疫療法」とは、免疫応答を誘導する、増強する、抑制する又は他の方法で改変することを含む方法により、疾患に苦しむ、又は疾患を罹患する若しくは疾患の再発を被るリスクのある対象を処置することである。
【0059】
対象の「処置」又は「治療」とは、疾患に伴う症状、合併症、状態又は生化学的兆候の発病、進行、発生、重症度又は再発を反転させる、緩和する、軽快させる、阻害する、速度を遅くする又は予防する目的で対象に対して実施される任意のタイプの介入若しくは過程、又は活性剤の投与のことである。
【0060】
「内在性免疫応答を増強する」とは、対象において既存の免疫応答の有効性又は効能を増加することを意味する。有効性及び効能のこのような増加は、例えば、内在性宿主免疫応答を抑制する機構を克服することにより、又は内在性宿主免疫応答を増強する機構を刺激することにより、達成しうる。
【0061】
「対象」は、任意のヒト又は非ヒト動物を含む。
【0062】
本発明のAbなどの薬物又は治療剤の「治療有効量」又は「治療有効投与量」は、単独で又は別の治療剤と組み合わせて使用される場合、発病から対象を防御する又は疾患症状の重症度の減少、疾患症状がない期間の頻度及び持続期間の増加、又は疾患苦悩による障害若しくは無力の予防により証明される疾患後退を促進する薬物のいずれかの量である。疾患後退を促進する治療剤の能力は、臨床試験中のヒト対象において、ヒトでの有効性を予測する動物モデル系において、又はインビトロアッセイでの薬剤の活性をアッセイすることによりなどの、当業者に公知の様々な方法を使用して評価することができる。
【0063】
「がん退縮を促進する」とは、有効量の薬物を単独で又は抗悪性腫瘍薬と組み合わせて投与することにより、腫瘍成長若しくはサイズの減少、腫瘍の壊死、少なくとも1つの疾患症状の重症度の減少、疾患症状のない期間の頻度及び持続期間の増加、又は疾患苦悩による障害若しくは無力の予防がもたらされることを意味する。さらに、処置に関する用語「効果的な」及び「有効性」は薬理学的有効性と生理的安全性の両方を含む。薬理学的有効性とは、患者においてがん縮退を促進する薬物の能力のことである。生理的安全性とは、薬物の投与から生じる毒性、又は細胞、器官及び/若しくは生物レベルでの他の有害生理的作用(有害作用)のレベルのことである。
【0064】
「免疫関係」応答パターンとは、がん特異的免疫応答を誘導することにより又は天然の免疫過程を改変することにより抗腫瘍効果を生じる免疫治療剤で処置されたがん患者で多く観察される臨床応答パターンのことである。この応答パターンは、腫瘍負荷の増加又は新たな病変の出現に続く有益な治療効果を特徴とし、この新たな病変の出現は、伝統的な化学療法剤の評価において疾患進行として分類され、薬物失敗と同義であると考えられる。したがって、免疫治療剤の評価は、標的疾患に対するこれらの薬剤の効果を長期にわたりモニターすることを必要とする場合がある。
【0065】
薬物の治療有効量は、「予防有効量」を含み、これは、がんを発症する(例えば、前悪性状態にある対象)又はがんの再発を被るリスクのある対象に単独で又は抗悪性腫瘍薬と組み合わせて投与されると、がんの発症又は再発を抑制する薬物の任意の量である。好ましい実施形態では、予防有効量は、がんの発症又は再発を完全に予防する。がんの発症又は再発を「抑制する」とは、がんの発症若しくは再発の可能性を減らす、又はがんの発症又は再発を完全に予防することを意味する。
【0066】
「腫瘍浸潤性炎症細胞」は、典型的には対象での炎症応答に関与し、腫瘍組織に浸潤する任意のタイプの細胞である。そのような細胞は、腫瘍浸潤リンパ球(TIL)、マクロファージ、単球、好酸球、組織球及び樹状細胞を含む。
【0067】
本発明から産生される免疫原性剤及び抗体は、1つのAb若しくはAbの組合せ、又はその抗原結合部分(複数可)、及び薬学的に許容される担体を含有する組成物、例えば、医薬組成物の構成要素となる場合がある。本明細書で使用される場合、「薬学的に許容される担体」は、ありとあらゆる溶媒、分散媒、コーティング、抗菌剤及び抗真菌剤、等張及び吸収遅延剤、並びに生理的に適合する同類のものを含む。好ましくは、担体は静脈内、筋肉内、皮下、非経口、背骨又は上皮投与(例えば、注射又は注入により)に適している。本発明の医薬組成物は、1つ以上の薬学的に許容される塩、抗酸化剤、水性及び非水性担体、並びに/又は保存剤、湿潤剤、乳化剤及び分散剤などのアジュバンドを含んでもよい。
【0068】
好ましい対象は、免疫応答の増強を必要とするヒト患者を含む。本明細書で開示される免疫療法は、免疫応答を増強することにより処置することができる障害を有するヒト患者を処置するのに特に適している。ある特定の実施形態では、方法は、感染病原体により引き起こされる疾患に苦しんでいる対象の処置用に用いられる。好ましい実施形態では、方法は、がんに苦しんでいる、又はがんに苦しむリスクがある対象の処置用に用いられる。
【0069】
「がん免疫療法」 - 本明細書で使用される場合、がん免疫療法は、転移性がんを有する患者において腫瘍サイズを減らすことができる免疫ベースの治療を含むことができるがこれに限定されない。現在、がん免疫療法には3つの主なアプローチである、エフェクター細胞を刺激すること及び/又は調節細胞を抑制することによる免疫反応の非特異的刺激、がんワクチンとして知られている特異的抗腫瘍反応を増強する能動免疫、及び養子免疫治療としても知られている、抗腫瘍抗体又は抗腫瘍活性を有する活性化免疫細胞の受動移入(DeVitaら、2008年)がある。
【0070】
「併用療法」 - ある特定の実施形態では、本明細書で考察される免疫調節剤は、重大な全身毒性なしで腫瘍負荷を減らすのに効果的であり免疫応答の有効性を改善するように作用しうる1つ以上の抗増殖/化学療法剤と組み合わせて使用してもよい。薬剤は、同時投与併用療法及び/又は同時処方併用療法として組み合わせることができる。
【0071】
2種以上の薬物が、ある投与計画又は投与形態で一緒に使用される併用療法は、典型的には、(i)最小交差耐性を有する薬物を組み合わせることにより獲得耐性が生じる頻度を減少する、(ii)副作用がより少ない有効性を達成する、すなわち、治療指数を増やすように、非重複毒性及び類似する治療プロファイルを有する薬物の用量を下げる、(iii)細胞周期段階又は増殖特性を変更するなどの別の薬物の使用を通じて1つの薬物の作用に対して細胞を感作させる、並びに(iv)2種の薬物の生物活性の相加性、又は相加性よりも大きな効果を利用することにより増強された効力を達成する、のうちの1つ以上の目標を有する(Pegram,M.ら、(1999年)Oncogene 18:2241~2251頁;Konecny,G.ら、(2001年)Breast Cancer Res.and Treatment 67:223~233頁;Pegram,M.ら、(2004年)J.of the Nat.Cancer Inst.96(10):739~749頁;Fitzgeraldら、(2006年)Nature Chem.Biol.2(9):458~466頁;Borisyら、(2003年)Proc.Natl.Acad.Sci.100(13):7977~7982頁)。レーベ相加性(Chou,T.C.and Talalay,P.(1977年)J.Biol.Chem.252:6438~6442頁;Chou,T.C.and Talalay,P.(1984年)Adv.Enzyme Regul.22:27~55頁;Berenbaum,M.C.1989年)Pharmacol.Rev.41:93~141)及びブリス独立性/相乗作用(Bliss,C.I.(1956年)Bacteriol.Rev.20:243~258頁;Grecoら、(1995年)Pharmacol.Rev.47:331~385頁)は、50%標的阻害を達成するのに必要な薬物の用量であり及び最も単純な場合にはKiに等しいIC50などのパラメーターに基づく単剤療法と比べて併用療法の予想される用量応答関係を計算するために使用される方法である。
【0072】
「化学療法剤」は、作用機序とは無関係に、がんの処置に有用である化学化合物である。化学療法剤の種類は、アルキル化剤、代謝拮抗薬、紡錘体毒植物性アルカロイド、細胞傷害性/抗腫瘍抗生物質、トポイソレラーゼ阻害剤、抗体、光増感剤、及びキナーゼ阻害剤を含むがこれらに限定されない。化学療法剤は、「標的療法」及び従来の化学療法で使用される化合物を含む。化学療法剤の例は、エルロチニブ(TARCEVA(登録商標)、Genentech/OSI Pharm.)、ドセタキセル(TAXOTERE(登録商標)、Sanofi-Aventis)、5-FU(フルオロウラシル、5-フルオロウラシル、CAS No.51-21-8)、ゲムシタビン(GEMZAR(登録商標)、Lilly)、PD-0325901(CAS No.391210-10-9、Pfizer)、シスプラチン(シス-ジアミン、ジクロロ白金(II)、CAS No.15663-27-1)、カルボプラスチン(CAS No.41575-94-4)、パクリタキセル(TAXOL(登録商標)、Bristol-Myers Squibb Oncology、Princeton、N.J.)、トラスツズマブ(HERCEPTIN(登録商標)、Genentech)、テモソロミド(4-メチル-5-オキソ-2,3,4,6,8-ペンタアザビシクロ[4.3.0]ノナ-2,7,9-トリエン-9-カルボキサミド、CAS No.85622-93-1、TEMODAR(登録商標)、TEMODAL(登録商標)、Schering Plough)、タモシキフェン((Z)-2-[4-(1,2-ジフェニルブト-1-エニル)フェノキシ]-N,N-ジメチル-エタンアミン、NOLVADEX(登録商標)、ISTUBAL(登録商標)、VALODEX(登録商標))、及びドキソルビシン(ADRIAMYCIN(登録商標))、Akti-1/2、HPPD、及びラパマイシンを含む。
【0073】
化学療法剤のもっと多くの例は、オキサリプラチン(ELOXATIN(登録商標)、Sanofi)、ボルテゾミブ(VELCADE(登録商標)、Millennium Pharm.)、スーテント(SUNITINIB(登録商標)、SU11248、Pfizer)、レトロゾール(FEMARA(登録商標)、Novartis)、イマチニブメシル酸塩(GLEEVEC(登録商標)、Novartis)、XL-518(MEK阻害剤、Exelixis、WO 2007/044515)、ARRY-886(Mek阻害剤、AZD6244、Array BioPharma、Astra Zeneca)、SF-1126(PI3K阻害剤、Semafore Pharmaceuticals)、BEZ-235(PI3K阻害剤、Novartis)、XL-147(PI3K阻害剤、Exelixis)、PTK787/ZK 222584(Novartis)、フルベストラント(FASLODEX(登録商標)、AstraZeneca)、ロイコボリ(フォリン酸)、ラパマイシン(sirolimus、RAPAMUNE(登録商標)、Wyeth)、ラパニチブ(TYKERB(登録商標)、GSK572016、Glaxo Smith Kline)、ロナファーニブ(SARASAR(商標)、SCH 66336、Schering Plough)、ソラフェニブ(NEXAVAR(登録商標)、BAY43-9006、Bayer Labs)、ゲフィチニブ(IRESSA(登録商標)、AstraZeneca)、イリノテカン(CAMPTOSAR(登録商標)、CPT-11、Pfizer)、ティピファニブ(ZARNESTRA(商標)、Johnson&Johnson)、ABRAXANE(商標)(クレモフォールフリー)、パクリタキセルのアルブミン操作ナノ粒子製剤(American Pharmaceutical Partners、Schaumberg、Il)、バンデタニブ(rINN、ZD6474、ZACTIMA(登録商標)、AstraZeneca)、クロラムブシル、AG1478、AG1571(SU 5271;Sugen)、テムシロリムス(TORISEL(登録商標)、Wyeth)、パゾパニブ(GlaxoSmithKline)、カンホスファミド(TELCYTA(登録商標)、Telik)、チオテパ及びシクロホスファミド(CYTOXAN(登録商標)、NEOSAR(登録商標)、);ブスルファン、インプロスルファン及びピポスルファンなどのアルキルスルホン酸塩;ベンゾドーパ、カルボクオン、メツレドーパ、及びウレドーパなどのアジリジン;エチレンイミン並びにアルトレタミン、トリエチレンメラミン、トリエチレンホスホルアミド、トリエチレンチオホスホルアミド及びトリメチロメラミンを含むメチラメラミン;アセトゲニン(特に、ブラタシン及びブラタシノン);カンプトテシン(合成類似物トポテカンを含む);ブリオスタチン;カリスタチン;CC-1065(そのアドゼレシン、カルゼレシン及びビゼレシン合成類似物を含む);クリプトフィシン(特に、クリプトフィシン1及びクリプトフィシン8);ドラスタチン;デュオカルマイシン(合成類似物、KW-2189及びCB1-TM1を含む);エリュテロビン;パンクラチスタチン;サルコジクチイン;スポンジスタチン;クロラムブシル、クロルナファジン、クロロホスファミド、エストラムスチン、イホスファミド、メクロレタミン、メクロレタミンオキシド塩酸塩、メルファラン、ノベンビチン、フェネステリン、プレドニムスチン、トロホスファミド、ウラシルマスタードなどのナイトロジェンマスタード;カルムスチン、クロロゾトシン、フォテムスチン、ロムスチン、ニムスチン、及びラニムスチンなどのニトロソウレア;エンジイン抗生物質(例えば、カリケアミシン、カリケアミシンガンマ1I、カリケアミシンオメガI1などの抗生物質(Angew Chem.Intl.Ed.Engl.(1994年)33:183~186頁);ダイネミシン、ダイネミシンA;クロドロン酸などのビフォスフォネート;エスペラミシン;並びにネオカルジノスタチンクロモフォア及び関連色素タンパク質エンジイン抗生物質発色団、アクラシノマイシン、アクチノマイシン、オースラマイシン、アザセリン、ブレオマイシン、カクチノマイシン、カラビシン、カミノマイシン、カルジノフィリン、クロモマイシン、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、デトルビシン、6-ジアゾ-5-オキソ-L-ノルロイシン、モルホリノ-ドキソルビシン、シアノモルホリノ-ドキソルビシン、2-ピロリノ-ドキソルビシン及びデオキシドキソルビシン、エピルビシン、エソルビシン、イダルビシン、マーセロマイシン、マイトマイシンCなどのマイトマイシン、マイコフェノール酸、ノガラマイシン、オリボマイシン、ペプロマイシン、ポルフィロマイシン、ピューロマイシン、クエラマイシン、ロドルビシン、ストレプトニグリン、ストレプトゾシン、ツベルシジン、ウベニメクス、ジノスタチン、ゾルビシン、メトトレキサート及び5-フルオロウラシル(5-FU)などの代謝拮抗剤;デノプテリン、メトトレキサート、プテロプテリン、トリメトレキサートなどの葉酸類似物;フルダラビン、6-メルカプトプリン、チアミプリン、チオグアニンなどのプリン類似物;アンシタビン、アザシチジン、6-アザウリジン、カルモフール、シタラビン、ジデオキシウリジン、ドキシフルリジン、エノシタビン、フロクソウリジンなどのピリミジン類似物;カルステロン、プロピオン酸ドロモスタノロン、エピチオスタノール、メピチオスタン、テストラウトンなどのアンドロゲン;アミノグルテチミド、ミトタン、トリロスタンなどのアンチアドレナル(anti-adrenals);フロリニン酸などの葉酸補充剤(folic acid replenisher);アセグラトン;アルドホスファミドグリコシド;アミノレブリン酸;エニルウラシル;アムサクリン;ベストラブシル;ビサントレン;エダトラキセート;デフォファミン;デメコルシン;ジアジクオン;エフロルニチン;酢酸エリプチニウム;エポチロン;エトグルシド;硝酸ガリウム;ヒドロキシウレア;レンチナン;ロニダイニン;マイタンシン及びアンサマイトシンなどのマイタンシノイド;ミトグアゾン;ミトキサントロン;モピダンモール;ニトラエリン;ペントスタチン:フェナメット;ピラルビシン;ロソキサントロン;ポドフィリン酸;2-エチルヒドラジド;プロカルバジン;PSK(登録商標)多糖類複合体(JHS Natural Products、Eugene、Oreg.);ラゾキサン;リゾキシン;シゾフィラン;スピロゲルマニウム;テヌアゾン酸;トリアジクオン;2,2’,2’’-トリクロロトリエチルアミン;トリコテセン(T-2トキシン、ベラキュリンA、ロリジンA及びアングイジン);ウレタン;ビンデシン;ダカルバジン;マンノムスチン;ミトブロニトール;ミトラクトール;ピポブロマン;ガシトシン;アラビノシド(Ara-C);シクロホスファミド;チオテパ;6-チオグアニン;メルカプトプリン;メトトレキサート;シスプラチン及びカルボプラチンなどのプラチナ類似物;ビンブラスチン;エトポシド(VP-16);イホスファミド;ミトキサントロン;ビンクリスチン;ビノレルビン(NAVELBINE(登録商標));ノバントロン;テニポシド;エダトレキサート;ダウノマイシン;アミノプテリン;カペシタビン(XELODA(登録商標)、Roche);イバンドロン酸、CPT-11;トポイソメラーゼ阻害剤RFS2000;ジフルオロメチルオルニチン(DMFO);イコチニブ;オシメルチニブ;アファチニブ;ダコミチニブ;ロシレチニブ;オルムチニブ;アルモネルチニブ;アルフルチニブ;AC0010;BPI-7711;タロキソチニブ;TAK-788;EAI045;BLU-945;ナザルチニブ;ナコチニブ;マベレルチニブ;ポジオチニブ;DBPR112;レチノイン酸などのレチノイド;並びに上記のいずれかの薬学的に許容される塩、酸及び誘導体を含む。
【0074】
(i)例えば、タモキシフェン(NOLVADEX(登録商標);クエン酸タモキシフェン)、ラロキシフェン、ドロロキシフェン、4-ヒドロキシタモキシフェン、トリオキシフェン、ケオキシフェン、LY117018、オナプリストン、及び;FARESTON(登録商標)(クエン酸トレミフェン)を含む、抗エストロゲン及び選択的エストロゲン受容体調節薬(SERM)などの腫瘍上でホルモン作用を調節する又は阻害するように機能する抗ホルモン剤;(ii)例えば、4(5)-イミダゾール、アミノグルテチミド、MEGASE(登録商標)(酢酸メゲストロール)、AROMASIN(登録商標)(エキセメスタン;Pfizer)、ホルメスタイン、ファドロゾール、RIVISOR(登録商標)(ボロゾール)、FEMARA(登録商標)(レトロゾール;Novartis)、及びARIMIDEX(登録商標)(アナストロゾール;AstraZeneca)などの副腎においてエストロゲン産生を調節する酵素アロマターゼを阻害するアロマターゼ阻害剤;(iii)フルタミド、ニルタミド、ビカルタミド、ロイプロリド、及びゴセレリンなどの抗アンドロゲン薬;並びにトロキサシタビン(1,3-ジオキソランヌクレオシド類似物);(iv)MEK阻害剤などのタンパク質キナーゼ阻害剤(WO2007/044515);(v)脂質キナーゼ阻害剤;(vi)アンチセンスオリゴヌクレオチド、特に、異常な細胞増殖に関係しているシグナル伝達経路において遺伝子、例えば、オブリメルセン(GENASENSE(登録商標)、Genta Inc.)などのPKC-アルファ、Raf及びH-Rasの発現を阻害するオリゴヌクレオチド;(vii)VEGF発現阻害剤(例えば、ANGIOZYME(登録商標))及びHER発現阻害剤などのリボザイム;(viii)遺伝子療法ワクチンなどのワクチン、例えば、ALLOVECTIN(登録商標)、LEUVECTIN(登録商標)、及びVAXID(登録商標);PROLEUKIN(登録商標)rIL-2;LURTOTECAN(登録商標)などのトポイソメラーゼ1阻害剤;ABARELIX(登録商標)rmRH;(ix)ベバシズマブ(AVASTIN(登録商標)、Genentech)などの抗血管新生剤;並びに上記のいずれかの薬学的に許容される塩、酸及び誘導体も「化学療法剤」の定義に含まれる。
【0075】
アレムツヅマブ(Campath)、ベバシズマブ(AVASTIN(登録商標)、Genentech)などの治療抗体;セツキシマブ(ERBITUX(登録商標)、Imclone);パニツムマブ(VECTIBIX(登録商標)、Amgen)、リツキシマブ(RITUXAN(登録商標)、Genentech/Biogen Idec)、ペルツズマブ(OMNITARG(商標)、2C4、Genentech)、トラスツズマブ(HERCEPTIN(登録商標)、Genentech)、トシツモマブ(Bexxar、Corixia)、及び抗体薬物コンジュゲートであるゲムツズマブオゾガマイシン(MYLOTARG(登録商標)、Wyeth)も「化学療法剤」の定義に含まれる。
【0076】
本発明の免疫原性/治療剤と組み合わせた化学療法剤としての治療可能性のあるヒト化モノクローナル抗体は、アレムツズマブ、アポリズマブ、アゼリズマブ、アトリズマブ、バピネウズマブ、ベバシズマブ、ビバツズマブメルタンシン、カンツズマブメルタンシン、セデリズマブ、セルトリズマブペゴル、シドフシツズマブ、シドツズマブ、ダクリズマブ、エクリズマブ、エファリズマブ、エプラツズマブ、エルリズマブ、フェルリズマブ、フォントリズマブ、ゲムツズマブオゾガマイシン、イノツズマブオゾガマイシン、イピリムマブ、ラベツズマブ、リンツズマブ、マツズマブ、メポリズマブ、モダビズマブ、モトビズマブ、ナタリズマブ、ニモツズマブ、ノロビズマブ、ヌマビズマブ、オクレリズマブ、オマリズマブ、パリビズマブ、パスコリズマブ、ペクフシツズマブ、ペクツズマブ、ペルツズマブ、ペクセリズマブ、ラリビズマブ、ラニビズマブ、レスリビズマブ、レスリズマブ、レシビズマブ、ロベリズマブ、ルピリズマブ、シブロツズマブ、シプリズマブ、ソンツズマブ、タカツズマブテトラキセタン、タドシズマブ、タリズマブ、テフィバズマブ、トシリズマブ、トラリズマブ、トラスツズマブ、ツコツズマブセルモロイキン、ツクシツズマブ、ウマビズマブ、ウルトキサズマブ、及びビシリズマブのうちの1つ以上を含む又は除外することができる。
【0077】
「標準治療法」は、薬物若しくは薬物の組合せ、放射線療法(RT)、手術又は医療従事者により適切であると認識され、受け入れられ、及び/又はある種の患者、疾患若しくは臨床状況用に広く使用されている他の医療介入を含む処置過程である。様々な種類のがんに対する標準治療法は当業者には周知である。例えば、米国の21の主要がんセンターの連合である、全米総合がんセンターネットワーク(NCCN)は、多種多様ながんに対する標準治療処置に関する詳細な最新の情報を提供するNCCN腫瘍学臨床実践ガイドライン(NCCNガイドライン)を発行している(NCCN GUIDELINES、2013年参照)。
【0078】
本明細書で使用される場合、本開示の追加の態様は、用量漸増、患者コホート、安全性、及び薬物動態/薬力学分析に関係する態様及び要因を含む。
【0079】
大きく見ると、免疫系は自然免疫と適応免疫に分けることができる。自然免疫は、2つのうちでより原始的であり、非特異的防御、当該の物理的バリア(例えば、皮膚)、非特異的防御細胞(例えば、マクロファージ)及び種々のサイトカイン(例えば、IL-1)を含む。一般には、ワクチンは、特定の病原体又は疾患に対して自然免疫を上方調節しないが、ワクチンに添加されたアジュバンドは非特異的に自然免疫を活性化することがあり、これにより今度は適応免疫応答が改善される場合がある。適応免疫は、体液性(例えば、抗体)と細胞性(例えば、細胞傷害性T細胞)免疫応答にさらに分けることができる。体液性免疫応答のエフェクター細胞は、もっぱら適応免疫を専門にする細胞(例えば、T及びBリンパ球)を含むが、自然免疫の細胞は重要な機能(例えば、抗原提示)を提供する。したがって、例えば、ウイルスに対する抗体産生の誘導には、いくつかの細胞型の一連の複雑な相互作用が必要だと考えられる。単純化すれば、これらの相互作用は、樹状細胞によるウイルス成分(例えば、ウイルスのエンベロープタンパク質)の捕捉と加工が含まれ、これは今度は、提示された抗原に特異的なT細胞に提示されると考えられる。提示された抗原により活性化された後、T細胞は、ウイルス特異的B細胞が侵入病原体に対する抗体を産生するのを「支援する」と考えられる。
【0080】
寛容
免疫系は宿主抗原を認識する能力を有するが、通常はそのような応答は観察されない(すなわち、免疫系は自己に寛容を示す)ことが認識されて久しい。この自己への寛容は、「正常」並びに腫瘍抗原を含む。
【0081】
一態様では、本開示は、腫瘍抗原グロボHに対する免疫系の寛容を破壊することができるワクチンを特徴とする。
【0082】
寛容は、中枢性及び/又は末梢性寛容から生じることができる。中枢性寛容は、自己を認識するT及びBリンパ球の成熟を妨害する。自己寛容は絶対ではなく、抗自己抗体を産生する一部のB細胞が正常な個人で見つかることがある。しかし、B細胞活性化の不可欠な成分である自己抗原に対する抗自己T細胞ヘルプを欠くため、自己に対する抗体はめったに見られない。末梢性寛容は、自己に対する免疫応答の進行中の活発な抑制であり、主にTreg細胞により維持されると考えられている。Treg細胞は、正常な抗原も腫瘍抗原も含む自己抗原に対するT細胞ヘルプの誘導を妨げると考えられている。
【0083】
増加する抗体力価:一部の実施形態では、本発明の組成物及び方法は、閾値力価よりも上の抗体応答を生み出すことによる臨床効果を特徴とする。閾値力価より下では、抗腫瘍応答は有意義な臨床効果を生み出すのに不十分でありうる。
【0084】
抗グロボH抗体の増加する親和性:一部の実施形態では、本開示の方法は、グロボHコンジュゲートを患者へ2、3、4、5、6、7、8、9、又は10又はそれよりも多い回数投与することを特徴とする。
【0085】
IgGサブクラスの増大:T細胞ヘルプは、B細胞を誘導して重鎖クラス及びサブクラスの発現を切り替えさせることができる。ヒトでは、4種のIgGサブクラス、IgG1、IgG2、IgG3及びIgG4がある。それぞれのIgGサブクラスは、その他のサブクラスとそのサブクラスを区別する生物学的エフェクター機能を有する。4種のサブクラス全ての発現は、抗グロボH応答の腫瘍殺滅活性を最大限度にすることがある。
【0086】
OBI-833(グロボH-CRM197コンジュゲートワクチン)免疫学的プロファイル
最近の研究により、グロボH並びにSSEA-3及びSSEA-4などの一部のグリカンの発現が乳がん細胞及び乳がん幹細胞(BCSC)上で観察されることが明らかにされた(Changら、2008b;Huangら、2013年;Louら、2014年)。こういった知見は全てが、これらのがん特異的グリカンに基づく炭水化物ベースのワクチンの開発についての理論的根拠を支持している。とりわけ、最近の研究は、グロボH-CRM197ワクチンがより多くのIgG抗体を誘発することを示しており、この抗体はSSEA-3及びSSEA-4を含むグロボH及びグロボシリーズエピトープに対してより選択性が高く、これらのエピトープは全てが乳がん細胞及び乳がん幹細胞上で特に過剰発現されており、SSEA-4が最もレベルが高かった(>90%)(Changら、2008b)。
【0087】
グロボHは、OBI Pharma、Inc.により後援されたUS BB-IND 14,719下でOBI-822/OBI-821についての進行中のPhase II/Phase III臨床試験を含む少数の臨床試験において能動免疫療法の標的として評価されてきた。CRM-197(ジフテリア毒素変異体)ワクチンにコンジュゲートしたグロボHを設計する理論的根拠は、腫瘍特異的炭水化物抗原は、プロセシングされ、適切に訓練された免疫系に提示されると、認識することができるという理論に基づいている。これらの炭水化物抗原に対する免疫化は、体液性免疫応答を生じる。これらの抗体は、補体媒介細胞傷害(CDC)、炎症、及び細網内皮系による腫瘍細胞の食作用(オプソニン化)を誘導することで知られている。CDCに加えて、ヒトのサブクラスIgG1及びIgG3のIgG抗体は、抗体依存性細胞媒介細胞傷害(ADCC)も誘導することができる。これらの抗体は、腫瘍細胞及び全身転移の根絶に理想的に適しており、これによりOBI-833が潜在的がんワクチンとして使用される見込みがある。
【0088】
OBI-833は、担体タンパク質としての、交差反応物質197(CRM197)と呼ばれる不活性及び非毒性の形型のジフテリア毒素(DT)に共有結合している炭水化物腫瘍抗原であるグロボHを含む糖タンパク質コンジュゲートである。これは、強力な免疫刺激アジュバンドであるCRM-197にコンジュゲートした、天然のがん抗原であるグロボ-Hを同時投与することによりがん細胞に対する免疫応答を誘発することが意図されている。OBI-833ワクチンの詳細は、PCT公開番号:WO2014/107652に開示されている通りである。
【0089】
OBI-821は、キラヤ・サポナリア(Quillaja saponaria)(QS)モリナの木の樹皮に由来するサポニンベースのアジュバンドである。OBI-821は、物理化学的データの比較に基づくとQS-21に構造的に類似している。OBI-821とQS-21の両方が異性体の混合物として存在する。OBI-821は、OBI-833に対する体液性抗体応答を増強することができる免疫アジュバンドとしての役割を果たす。OBI-821アジュバンドの詳細はPCT公開番号:WO2019/191317に開示されている通りである。
【0090】
抗原/アジュバントの組合せの免疫原性の可能性を特徴付けるために、OBI-833/OBI-821を、免疫原性研究、LL/2担腫瘍マウスモデル研究、及びゲムシタビンとの併用療法研究を含む、3つの薬理学的研究において試験した。OBI-833及びOBI-821の構造を
図4に示す。
【0091】
薬理学的研究では、OBI-833/OBI-821による能動免疫療法が、インビボマウスモデルにおいて抗グロボH IgM及びIgG応答を効果的に刺激できることが示された。OBI-833/OBI-821をワクチン接種したマウスは、インビボ皮下グロボH陽性腫瘍移植モデルにおける腫瘍成長率を有意に阻害することができる。また、標準的な化学療法剤であるゲムシタビンによる処置、それに続くOBI-833/OBI-821によるワクチン接種は、OBI-833/OBI-821によって誘導される抗グロボH IgM及びIgG抗体の産生に影響を及ぼさなかったことも観察された。提案されているOBI-833/OBI-821概念実証(POC)機構を
図5に示す。
【実施例】
【0092】
出願人らの本開示並びに肯定的な免疫原性応答及び治療効果を裏付ける例示的なデータまで、がん臨床試験におけるOBI-821と併用したグロボHワクチンOBI-833を含む、実施例のセクションにおいて証明しているように、アジュバントとしてのOBI-821の使用の成功に関連する、本明細書に開示される免疫調節剤の効果的な使用に関する決定的な実証/報告はこれまでになかった。
【0093】
試験の概要:グロボHは、がんにおいて高度に発現されることが見出された糖脂質である。第2相試験におけるグロボH-CRM-197コンジュゲートであるOBI-833、及びアジュバントであるOBI-821による能動免疫療法は、グロボH発現がん細胞に対するインビトロ結合及び細胞傷害性を媒介することができるグロボH特異的抗体を誘導した。本開示は、進行性/転移性の胃がん、肺がん、結腸直腸がん又は乳がんを有する対象におけるOBI-833/OBI-821の安全性、耐容性及び免疫原性の実証を提供する。さらに、本開示は、非小細胞肺がんを有する対象におけるOBI-833/OBI-821の皮下投与後の体液性免疫応答(抗グロボH/抗SSEA3/抗SSEA4 IgG及びIgM産生)を含む免疫原性の実証も提供する。
【0094】
OBI-833第1相臨床試験設計(OBI-833-001)についての概要及び理論的根拠
化合物名:OBI-833(グロボH-CRM197)及びOBI-821(アジュバント)[OBI-833/OBI-821]
研究表題:進行性/転移性の胃がん、肺がん、結腸直腸がん又は乳がんの対象におけるOBI-833(グロボH-CRM197)の用量漸増及びコホート拡大を伴う能動免疫療法の安全性、耐容性及び有効性を評価するための非盲検研究
開発段階:米国及び台湾-多国籍第I相用量漸増及びコホート拡大研究のアーム
【0095】
目的:
(a)進行性/転移性の胃がん、肺がん、結腸直腸がん又は乳がんを有する対象におけるOBI-833/OBI-821の安全性及び耐容性を査定すること
(b)OBI-833/OBI-821の皮下投与後の体液性免疫応答(抗グロボH IgG及びIgM産生)を評価すること
(c)OBI833/OBI-821の臨床有効性を評価すること(RECIST 1.1基準に従う)
エンドポイント:
(a)主要:安全性及び耐容性
全ての安全性エンドポイント(毒性及び処置中に発生した有害事象[TEAE]、臨床検査室での査定、バイタルサイン測定、身体検査及び心電図[ECG])は、安全性集団に対する記述統計によって解析した。ベースラインからの変化を、臨床検査室での査定、バイタルサイン測定、身体検査及びECGについても要約した。
(b)副次:免疫応答(抗グロボH IgG及びIgM産生)及び腫瘍応答
【0096】
免疫応答:
免疫応答集団を、免疫学的データの全ての解析に使用した。用量コホートごとの各評価時点でのグリカンチップ法によって決定した、グロボHに対するIgG及びIgM抗体の濃度を、記述統計を使用して要約した。各時点での対象ごとの抗グロボH IgG及びIgMに対する免疫応答を、各用量コホート及びコホート拡大段階によってプロットした。
【0097】
探索的免疫応答:
用量コホートごとの各評価時点でのグリカンチップ法によって決定した、グロボH、SSEA-4及びSSEA-3に対するIgG及びIgM抗体の濃度を、必要に応じてがんの種類によって、又はベースライン(1週目)でのグロボH IHC結果によって要約した。各IgGタイプについての最大応答、最大応答までの時間及び応答曲線下面積を、潜在的な用量応答関係の査定を支援するために決定することができる。用量コホートごとの各評価時点での他のバイオマーカー(ADCC及びCDC)の探索的解析の結果を、記述統計を使用して要約した。血液試料をその時点で採取して、以下の抗体及びバイオマーカーを測定することによって他の免疫応答又は細胞性免疫応答を評価した:
・抗グロボH、抗SSEA-3及び抗SSEA-4抗体産生の免疫応答のモニタリング。
・CTC(台湾の選択された施設内)
・ADCC及びCDC
・T細胞及びB細胞の免疫応答(台湾の選択された施設内)[コホート拡大段階のみ]
・B/T細胞免疫ゲノム解析(台湾の選択された施設内)
・エクスビボ免疫原性解析(台湾の選択された施設内)
・Cobas上皮増殖因子受容体(EGFR)突然変異検査(台湾の選択された施設内)
【0098】
副次腫瘍応答エンドポイント
腫瘍応答集団を腫瘍応答データに使用した。固形腫瘍における応答査定基準(RECIST)1.1を解析のためのガイドラインとして使用した。腫瘍応答の結果を各評価時点で要約し、研究全体の間の最良の腫瘍応答を、記述統計を使用して用量コホートごとに提示した。
【0099】
追跡した最後の生存状況を、各カテゴリーにおける頻度及び全対象のパーセンテージで要約した。最初の投与日と、電子症例報告書(cCRF)レコードで最後に判明した日との間の間隔(月単位)として定義される生存フォローアップの期間の合計を、記述統計を使用して要約した。カプラン・マイヤー法を使用して全生存期間も推定した。
【0100】
臨床有効性の測定
全身CTスキャン(胸部、腹部及び骨盤)をスクリーニング時に実施し、ベースラインスキャンとして使用した。全身CTスキャンをスクリーニング検査から4週間以内に実施した場合、この以前に実施したスキャンをベースラインスキャンとして使用することができる。CT評価のデータが、予定された訪問の前の6週間以内に入手可能であった場合、CTの評価は治験責任医師の裁量に基づいて実施されない場合がある。予定外の腫瘍評価も治験責任医師の裁量で実施することができる。研究期間の間に腫瘍を評価するために使用される方法論は、ベースライン/スクリーニングで使用される方法論と一致しなければならない。CTスキャンが禁忌である対象については、代わりにMRIを実施することができる。腫瘍負荷は、測定可能(標的病変)又は測定不能(非標的病変)のいずれかとして分類した。
【0101】
生存及び対象の状況
対象が死亡する、フォローアップ不能になっている、又は同意を撤回することがない限り、生存している全ての対象を、研究の終了/早期終了の訪問後、電話連絡又は対象のクリニック訪問により、最長48週間で8週間ごとに(用量漸増段階)、又は最長24週間で12週間ごとに(コホート拡大段階)生存状況についてフォローアップした。
【0102】
設計:
非盲検、非ランダム化用量漸増及びコホート拡大試験。
【0103】
用量群及び処置:
この研究は、用量漸増段階及びコホート拡大段階からなる。標準的な3+3試験設計を、OBI-833/OBI-821の用量漸増段階のために使用する。OBI-833の投薬を3つのコホートに分ける:
(a)コホート1:OBI-833(10μgのグロボH/100μgのOBI-821)
(b)コホート2:OBI-833(30μgのグロボH/100μgのOBI-821)
(c)コホート3:OBI-833(100μgのグロボH/100μgのOBI-821)
用量漸増段階の対象の全てが、OBI-833/OBI-821の5回の注射を完了したら、OBI科学委員会が、用量漸増段階の対象の全ての安全性、有効性及び免疫応答データの正当性を示し、肺がん(非小細胞肺がん、NSCLC)におけるコホート拡大段階についての用量レベルとして30μgのOBI-833を推奨した。最大14人のNSCLC対象をコホート拡大段階に登録する。
【0104】
投与経路:皮下(sc)
投薬頻度及び研究期間:
[用量漸増段階]
用量漸増段階における各対象に、1、2、3、4、6、8、12、16、20及び24週目(それぞれ1、2、3、4、5、6、7、8、9及び10回目の訪問)に合計10用量のOBI-833/OBI-821を皮下に与えた。
【0105】
処置後、対象を、最後の投与から12週間後(すなわち、36週目)である研究の終了まで4週間ごとに安全性及び免疫応答について継続的に査定した。その後、対象を、研究の終了から最大12カ月後まで8週間ごとに生存について追跡した。
【0106】
[コホート拡大段階]
コホート拡大段階では、疾患進行まで、又は最後の対象が初回用量の研究処置を受けてから最長1年後まで、対象に、1、2、3、4、6、8、12、16、20、24週目、及びその後8週間ごと(1、2、3、4、5、6、7、8、9、10回目の訪問、及びその後8週間ごと)にOBI-833/OBI-821を与えた。疾患進行のために処置を中止した対象については、対象を、最後の投与から24週間後である研究の終了まで、8週間ごとに安全性及び免疫応答について継続的に査定した。
【0107】
対象は、疾患進行後、治験責任医師の裁量で処置を継続した。以下の臨床状況は、疾患進行後の継続注射に適合した(FDA業界向けガイダンス、2011):
(a)対象は、その他の全ての研究プロトコールの適格基準を継続して満たした。
(b)全ての薬物関連毒性がベースラインレベルまで解消された。
(c)対象のパフォーマンスステータスの悪化なし。
(d)疾患進行(例えば、CNS転移)の重篤な合併症を防ぐために差し迫った介入を遅らせなかった。
【0108】
疾患進行後、適格であり、注射を継続する意思がある対象については、その対象を、さらに3回の注射のために8週間ごと(これは疾患進行後合計24週間である)にOBI-833/OBI-821で処置して、臨床及び免疫応答を査定した。その後、研究の終了後の対象を生存についてフォローアップした。
【0109】
用量制限毒性(DLT):
用量漸増段階における事象は、それがOBI-833/OBI-821の投与後最初の6週間以内に発生し、以下の基準を満たした場合、対象が用量制限毒性(DLT)を有しているとみなされることを意味する:
少なくとも治験薬に関連している可能性があると考えられる何らかのグレード3又はグレード4の毒性。
【0110】
選択基準:
組み入れ基準:
(a)対象≧21歳
(b)[用量漸増段階]
組織学的又は細胞学的に確認された胃がん、肺がん、結腸直腸がん又は乳がんの診断が記録されている
【0111】
[コホート拡大段階]
組織学的又は細胞学的に確認されたグロボH陽性NSCLCの診断
(c)[用量漸増段階]
少なくとも1つの一連の抗がん標準治療に応答せず、そのために標準処置がもはや効果的でなくなった、又は許容できなくなった、再発又は転移性の不治の疾患を有する対象。
【0112】
[コホート拡大段階]
抗がん治療(すなわち、化学療法又は標的化療法又は単独若しくは組合せのいずれかのPD-1/PD-L1アンタゴニスト)の少なくとも1回のレジメン後、安定疾患(SD)又は部分奏効(PR)状況を達成し、許可された標的又はPD-1/PD-L1療法を除いて利用可能な標準処置がない、転移性NSCLCを有する対象。
【0113】
(d)測定可能な疾患(すなわち、RECIST、バージョン1.1[Eisenhauer2009]に従う少なくとも1つの測定可能な病変を示す)。
【0114】
(e)[用量漸増段階]
用量漸増段階における中枢神経系(CNS)転移又は活動性CNS転移に関連する可能性がある神経学的症状の既往なし。
【0115】
[コホート拡大段階]
研究薬物処置前の少なくとも4週間に無症候性CNS転移を有する対象
(f)パフォーマンスステータス:ECOG≦1
(g)臓器機能の要件-対象は以下に定義される適正な臓器機能を有しなければならない:
アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AST)/アラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)≦正常上限(ULN)の3倍
AST/ALT≦ULN(正常上限)の3倍
AST/ALT≦ULNの5倍[内在する肝転移を伴う]
総ビリルビン≦ULNの2.0倍
血清クレアチニン≦ULNANCの1.5倍≧1500/μL
絶対好中球数(ANC)≧1500/μL
血小板>100,000/μL
(h)妊娠の可能性のある対象は、処置の間及び研究の終了まで許容可能な避妊方法を使用することに同意しなければならない。妊娠の可能性のない対象(すなわち、永久に不妊化した、閉経後)も研究に含めることができる。閉経後は、別の医学的原因がなく、12カ月月経がないことと定義した。
(i)施設のガイドラインに従って書面による同意説明文書を理解する能力及び署名する意思。
【0116】
選択基準:
除外基準:
(a)内在する進行性/転移性のがんに対して標準的な化学療法、ホルモン療法又は標的化療法を受けていない患者。
(b)登録時に妊娠中又は授乳中の対象。
(c)脾臓摘出術を受けた対象。
(d)用量漸増段階において、既知の、又は臨床的に明確な症候性のCNS転移を有する対象。
(e)HIV感染症、活動性B型肝炎感染症又は活動性C型肝炎感染症を有する対象。
(f)iv/経口ステロイド又は免疫抑制療法若しくは免疫調節療法を必要とする何らかの自己免疫障害又は他の障害を有する対象。
【0117】
例えば、1型若年発症糖尿病、関節リウマチに対する抗体陽性、グレーブス病、橋本甲状腺炎、狼瘡、強皮症、全身性血管炎、溶血性貧血、免疫介在性血小板減少症、クローン病、潰瘍性大腸炎又は乾癬など。
【0118】
(g)進行中若しくは活動性の感染症、症候性鬱血性心不全(NYHA>2)、不安定狭心症、心不整脈又は研究要件の遵守を制限する精神病/社会的状況を含む、何らかの既知の制御不能な併発する病気を有する対象。
(h)[用量漸増段階]
IP処置前の4週間以内に以下の医薬のいずれかを服用した対象:
化学療法剤
免疫療法[mAb、インターフェロン、サイトカイン(GCSFを除く)]
免疫抑制剤(例えば、シクロスポリン、ラパマイシン、タクロリムス、リツキシマブ、アレムツズマブ、ナタリズマブなど)。
【0119】
CT/MRIスキャンにおける予防的単回使用又は承認された適応症におけるその他の1回の使用を除く、IV/経口ステロイド。IV/経口ステロイド投与と、OBI-833/OBI-821の初回投与との間の間隔は、薬理学的持続時間又は投与されたステロイドの5半減期のいずれか長い方を超えなければならない。吸入及び局所ステロイドの使用は許可される。
【0120】
別の治験薬
[コホート拡大段階]
IP処置前の4週間以内に以下の医薬のいずれかを服用した対象:
化学療法剤
免疫療法[インターフェロン、サイトカイン](PD-1/PD-L1アンタゴニストを除く)
免疫抑制剤(例えば、シクロスポリン、ラパマイシン、タクロリムス、リツキシマブ、アレムツズマブ、ナタリズマブ、シクロホスファミドなど)。
【0121】
CT/MRIスキャンにおける予防的単回使用又は承認された適応症における他の1回の使用を除く、IV/経口ステロイド。IV/経口ステロイド投与と、OBI-833/OBI-821の初回投与との間の間隔は、薬理学的持続時間又は投与されたステロイドの5半減期のいずれか長い方を超えなければならない。吸入及び局所(注射部位を除く)ステロイドの使用は許可された。
【0122】
別の治験薬
(i)悪性腫瘍による胸水及び/又は腹水を有し、2週間ごと又はそれ以上の頻度で穿刺を必要とする対象。
【0123】
(j)研究薬物のいずれかの活性又は不活性成分に対していずれかの既知の重度のアレルギー(例えば、アナフィラキシー)を有する対象。
【0124】
研究の査定及び評価:
[用量漸増段階]
(a)腫瘍状態の確認:全身CTスキャン(胸部、腹部及び骨盤)をスクリーニング時に実施し、次いで研究の終了まで12週間ごとに実施した。
(b)安全性及び毒性(有害事象)を、各訪問時、すなわち、1、2、3、4、6、8、12、16、20、24、28、32及び36週目(研究の終了)に査定した。
(c)血液学、血清化学及び尿解析を、各訪問時、すなわち、1、2、3、4、6、8、12、16、20、24、28、32及び36週目に行った。
(d)抗グロボH IgG及びIgMに対する免疫学検査を、1、3、4、6、8、12、16、20、24、28、32及び36週目に行った。
(e)腫瘍特異的抗原検査(登録した全ての対象に対するCEA)を、処置前及び研究の終了まで12週間ごとに実施した。
【0125】
[コホート拡大段階]
(a)腫瘍状態の確認:全身CTスキャン(胸部、腹部及び骨盤)を、スクリーニング時、12、24週目に実施し、次いで疾患進行まで、又は最後の対象が初回用量の研究処置を受けてから最長1年後まで8週間ごとに実施した。疾患進行後の継続注射の対象について、対象は、研究の終了まで8週間ごとに腫瘍評価を実施した。
(b)安全性及び毒性(有害事象)を、研究の終了まで各訪問時に査定した。
(c)血液学、血清化学及び尿解析を、研究の終了まで各訪問時に行った。
(d)抗グロボH IgG及びIgMに対する免疫学検査を、1、3、4、6、8、12、16、20、24週目、及びその後、研究の終了まで毎回の訪問時に行った。
(e)腫瘍特異的抗原検査(選択された施設内の登録された全ての対象に対するCEA及びCYFRA21-1)を、スクリーニング時、12、24週目、その後、疾患進行及び研究訪問の終了まで8週間ごとに実施した。
【0126】
[探索的解析]
[用量漸増段階]
以下のバイオマーカーに対する探索的検査を、1、3、4、6、8、12、16、20、24、28、32及び36週目に行った:
(a)グロボH、SSEA-3、SSEA-4及びPD-L1に対するIHC(1週目;元の手術検体のパラフィン化材料由来)
(b)抗グロボH、抗SSEA-3及び抗SSEA-4抗体産生の免疫応答のモニタリング。
(c)CTC(1、6及び28週目のみ)
(d)ADCC及びCDC
(e)T細胞及びB細胞の応答(12、16、20及び24週目)
【0127】
[コホート拡大段階]
以下のバイオマーカーに対する探索的検査を、スクリーニング時、1、2、3、4、6、8、12、16、20、24週目、及びその後、研究の終了まで8週間ごとに行った:
(a)グロボH、SSEA-3、SSEA-4及びPD-L1に対するIHC(スクリーニング;元の手術検体の新たに調製した材料(推奨)又はパラフィン化材料由来)
(b)抗グロボH、抗SSEA-3及び抗SSEA-4抗体産生のモニタリングした免疫応答。
(c)CTC(1、8、64週目及び研究の終了/早期終了)
(d)ADCC及びCDC
(e)T細胞及びB細胞の応答(8週目又はその後PTP1まで)(抗グロボH、抗SSEA-3又は抗SSEA-4 IgGのいずれかが血清中で20μg/mlに達した後、4回継続した訪問)
(f)B/T細胞免疫ゲノム解析(スクリーニング、6、12、20、64週目、及び1回目の疾患進行から8週間後まで8週間ごと)
(g)エクスビボ免疫原性解析(スクリーニング訪問)
(h)Cobas EGFR突然変異検査を、台湾の選択された施設内で既知のEGFR突然変異を有する全ての対象に対して、1週、12週、40週、及び処置後期間1、及び研究の終了時に行った。Cobas EGFR突然変異検査を、PD以外の早期終了対象に対して早期終了訪問時に行った。
【0128】
研究管理:
[用量漸増段階]
(a)用量漸増段階の低用量コホートにおける最初の3人又は6人の対象へのOBI-833/OBI-821の5回の注射(すなわち、5回目の訪問、6週目)の完了後、最初の3人のうちDLTを発症した対象が存在しなかった場合、又は最初の6人のうちDLTを発症した対象が2人未満だった場合、次に高用量のコホートへの登録を開始することができる。
(b)いずれかのDLTを発症した全ての対象は研究処置を中止した。
(c)研究から離脱した時にグレード3又は4の臨床的異常又は臨床検査異常を有した全ての対象を、基礎疾患のために改善する可能性が低い場合を除いて、グレード2以下に解消するまで追跡した。
(d)用量漸増段階において最初の6人のうちDLTを発症した対象が1人より多く存在した場合、データ安全性モニタリング委員会による完全な審査まで用量漸増を一時停止した。用量低減の推奨は、DSMBによる新たな安全性データの議論から生じた。用量低減がコホート1(10μgのコホート)の対象に必要とされる場合、研究を一時的に停止し、新たな安全性データの解析に基づくDSMBの推奨によって正当性が示された場合、用量低減することなくコホート1の対象をさらに登録するためにのみ再開することができた。データ安全性モニタリング委員会は、対象の安全性、リスク/利益をモニタリングし、用量漸増、用量低減、研究の終了を決定する際に治験依頼者を支援するために設立された。
(e)用量漸増段階から早期に離脱した患者は置き換えられた。置き換えを満たすために、対象は次の基準を満たした:
1)用量漸増段階の間に合計5回のOBI-833/OBI-821の注射を受けていない、かつ
2)5回の注射を完了しなかった理由は、関連する有害事象又はDLTの発症以外であった(例えば、不履行又は同意の撤回)。
(f)OBI科学委員会は、全ての用量漸増段階の対象の安全性、有効性及び免疫応答データの正当性を示し、肺がん(NSCLC)におけるコホート拡大段階についての用量レベルとして30μgのOBI-833を推奨した。
【0129】
[コホート拡大段階]
(a)患者は、疾患進行、耐えられない毒性、同意の撤回まで、又は最後の対象が初回用量の研究処置を受けてから最長1年後まで処置された。次いで患者は処置後期間及びフォローアップ段階に入った。
(b)対象は、疾患進行後、治験責任医師の裁量により処置を継続することができる。以下の臨床状況は、疾患進行後の継続注射に適合した:
対象は、その他の全ての研究プロトコールの適格基準を継続して満たす。
【0130】
全ての薬物関連毒性がベースラインレベルまで解消された。
【0131】
対象のパフォーマンスステータスの悪化なし。
【0132】
疾患進行(例えば、CNS転移)の重篤な合併症を防ぐために差し迫った介入を遅らせなかった。
【0133】
疾患進行のために処置を中止した対象については、最後の投与から24週間後である研究の終了まで8週間ごとに安全性及び免疫応答について対象を継続的に査定した。疾患進行後、適格であり、注射を継続する意思がある対象については、その対象を、さらに3回の注射のために8週間ごと(これは疾患進行後合計24週間である)にOBI-833/OBI-821で処置して、臨床及び免疫応答を査定した。その後、対象を、研究の終了から最長24週間後まで12週間ごとに生存についてフォローアップした。
【0134】
毒性学
OBI-833/OBI-821ワクチンの安全性を、非GLPの4週間の反復投与ラットの毒性学研究において最初に査定し、この研究では、2用量(30μg又は90μgのグロボHに相当する)のOBI-833/OBI-821を、4週間、Sprague Dawleyラットに皮下注射により週に1回投与した。OBI-833/OBI-821は、副作用を観察せず、良好な耐容性を示した。
【0135】
計画されている第I相臨床試験においてがん患者への10回の皮下注射を査定するために、11週目に中間解析を伴うGLPの17週の反復投与ラットの毒性学研究である、OBI-833/OBI-821のさらなる毒性学研究を行った。試験物であるOBI-833、及びアジュバントであるOBI-821の潜在的な毒性を、17週間(投薬段階)、Sprague Dawleyラットへの週に1回の皮下注射による別々の投与について、又は共製剤化として評価した。さらに、投薬段階後、4週間の回復期間において、いずれかの効果の可逆性、持続性又は発生の遅延を評価した。毒性学研究におけるOBI-833/OBI-821の用量(30μg及び100μgのグロボH、並びに100μgのOBI-821に相当)を、第I相研究において計画されている臨床用量範囲に基づいて選択した。11週間、ラットへの週に1回のアジュバントOBI-821と組み合わせたOBI-833の投与によって引き起こされた唯一の観察は、アジュバントにより注射部位に生じた局所刺激の最小限の増強であった。注射部位の刺激は臨床的には1週間以内に解消され、顕微鏡的には投与後3週間以内に解消された。
【0136】
毒性学研究では、OBI-833/OBI-821のワクチン/アジュバントの組合せの安全性及び免疫原性が実証され、ワクチンが、kgあたりの体重に基づいて、提案された臨床用量を超える用量で良好な耐容性であることが示された。ラットにおける4週間の非GLP及び17週間のGLP反復投与の毒性研究の11週の中間解析で認められた全ての所見は有害とはみなされず、アジュバントであるOBI-821に対する炎症/免疫刺激応答による可能性が高かった。
【0137】
非臨床薬理学
OBI-833は、担体タンパク質としての、交差反応性物質197(CRM197)と呼ばれる不活性及び非毒性の形態のジフテリア毒素(DT)に共有結合している糖鎖腫瘍抗原であるグロボHを含む糖タンパク質コンジュゲートである。これは、強力な免疫刺激性アジュバントであるCRM-197とコンジュゲートした、天然のがん抗原であるグロボHを同時投与することによって、がん細胞に対する免疫応答を誘発することが意図されている。
【0138】
OBI-821は、キラヤ・サポナリア(Quillaja saponaria)(QS)モリーナ(Molina)の木の樹皮に由来するサポニンベースのアジュバントである。OBI-821は、物理化学データの比較に基づくと、QS-21と構造的に類似している。OBI-821及びQS-21の両方は、異性体の混合物として存在する。OBI-821は、OBI-833に対する体液性抗体応答を強化することができる免疫学的アジュバントとして機能する。
【0139】
抗原/アジュバントの組合せの免疫原性の可能性を特徴付けるために、OBI-833/OBI-821を、免疫原性研究、LL/2担腫瘍マウスモデル研究、及びゲムシタビンとの併用療法研究を含む、3つの薬理学的研究において検査した。
【0140】
薬理学的研究では、OBI-833/OBI-821による能動免疫療法が、インビボマウスモデルにおいて抗グロボH IgM及びIgG応答を効果的に刺激できることが示された。OBI-833/OBI-821をワクチン接種したマウスは、インビボでの皮下グロボH陽性腫瘍移植モデルにおける腫瘍成長速度を有意に阻害することができる。また、標準的な化学療法剤であるゲムシタビンによる処置、それに続くOBI-833/OBI-821によるワクチン接種は、OBI-833/OBI-821によって誘導される抗グロボH IgM及びIgG抗体の産生に影響を及ぼさなかったことも観察された。全体として、これらの非臨床的薬理学研究は、OBI-833/OBI-821の臨床研究を裏付ける十分な理論的根拠を提供した。
【0141】
試験設計についての理論的根拠
臨床試験の主な目的は、進行性/転移性の不治の胃がん、肺がん、結腸直腸がん又は乳がんを有する対象におけるOBI-833/OBI-821の安全性及び耐容性を調査することであった。一方、体液性免疫応答、すなわち、OBI-833/OBI-821の投与後の抗グロボH IgG及びIgM産生を、この研究の副次目的として評価した。腫瘍組織試料中のグロボH、SSEA-3、SSEA-4、PD-L1発現、抗グロボH、抗SSEA-3、抗SSEA-4抗体、CTC、ADCC、CDCなどの他の免疫応答の探索的解析を必要に応じて行った。
【0142】
用量漸増段階における対象のOBI-833/OBI-821の5回の注射を完了したら、OBI科学委員会が、用量漸増段階の対象の全ての安全性、有効性及び免疫応答データの正当性を示し、コホート拡大のために30μg用量のOBI-833及び肺がん(非小細胞肺がん)を推奨した。最大14人の肺がんの対象をコホート拡大段階に登録した。
【0143】
OBI-833/OBI-821は、OBI-833-001研究の用量漸増段階において遅延した抗体応答を示した。この状況では、処置が有効になるのに十分な時間が経過する前に臨床的進行が発生する場合がある。そのため、疾患進行後の継続的な注射が、この問題に対処する潜在的なアプローチであった。したがって、無症候性の臨床的進行及び/又はさらなる進行(例えば、新たに発症した中枢神経系(CNS)転移)によって生命を脅かす合併症を引き起こす可能性が低い臨床的進行は、治験責任医師の裁量によりOBI-833/OBI-821の継続投与を可能にすることができ、対象は、その後の処置について十分に情報が与えられるべきである(FDA業界向けガイダンス、治療用がんワクチンのための臨床的検討(Clinical Considerations for Therapeutic Cancer Vaccines)、2011年)。
【0144】
開始用量の理論的根拠
このファースト・イン・ヒューマン(First in Humans)臨床試験における最初に計画された開始用量は、アジュバントである100μgのOBI-821と組み合わせた10μgのOBI-833(グロボH同等物)であった。ラットでの17週間の毒性学研究において査定された最も高い用量である、100μgのOBI-833と100μgのOBI-821を週に11回SC注射した後に報告されたNOAELに基づいて、この用量のOBI-833/OBI-821(100μg/100μg)を、提案された第I相臨床研究において予測される最も高いヒト用量として選択した。この提案された投薬計画は、感染性疾患適応症に対する予防用及び治療用ワクチンについての発生毒性研究に関するFDAガイダンス、並びにワクチンアジュバント及びアジュバント化ワクチンの非臨床査定に関する提案されたWHO2013ガイドラインと一致した。
【0145】
適格基準
組み入れ基準
(a)対象≧21歳
(b)[用量漸増段階]
組織学的又は細胞学的に確認された胃がん、肺がん、結腸直腸がん又は乳がんの診断が記録されている
【0146】
[コホート拡大段階]
組織学的又は細胞学的に確認されたグロボH陽性NSCLCの診断
(c)[用量漸増段階]
少なくとも1つの一連の抗がん標準治療に応答せず、そのために標準処置がもはや効果的でなくなった、又は許容できなくなった、再発又は転移性の不治の疾患を有する対象。
【0147】
[コホート拡大段階]
抗がん治療(すなわち、化学療法又は標的化療法又は単独若しくは組合せのいずれかのPD-1/PD-L1アンタゴニスト)の少なくとも1回のレジメン後、安定疾患(SD)又は部分奏効(PR)状況を達成し、許可された標的又はPD-1/PD-L1療法を除いて利用可能な標準処置がない、転移性NSCLCを有する対象。
(d)測定可能な疾患(すなわち、RECIST、バージョン1.1[Eisenhauer2009]に従う少なくとも1つの測定可能な病変を示す)。
(e)[用量漸増段階]
用量漸増段階における中枢神経系(CNS)転移又は活動性CNS転移に関連する可能性がある神経学的症状の既往なし。
【0148】
[コホート拡大段階]
研究薬物処置前の少なくとも4週間に無症候性CNS転移を有する対象
(f)パフォーマンスステータス:ECOG≦1
(g)臓器機能の要件-対象は以下に定義される適正な臓器機能を有しなければならない:
AST/ALT≦ULN(正常上限)の3倍
AST/ALT≦ULNの5倍[内在する肝転移を伴う]
総ビリルビン≦ULNの2.0倍
血清クレアチニン≦ULNの1.5倍
ANC≧1500/μL
血小板>100,000/μL
(h)妊娠の可能性のある対象は、処置の間及び研究の終了まで許容可能な避妊方法を使用することに同意しなければならない。妊娠の可能性のない対象(すなわち、永久に不妊化した、閉経後)も研究に含めることができる。閉経後は、別の医学的原因がなく、12カ月月経がないことと定義した。
(i)施設のガイドラインに従って書面による同意説明文書を理解する能力及び署名する意思。
【0149】
除外基準
(a)内在するがんに対して標準的な化学療法、ホルモン療法又は標的化療法を受けていない患者。
(b)登録時に妊娠中又は授乳中の対象。
(c)脾臓摘出術を受けた対象。
(d)用量漸増段階において、既知の、又は臨床的に明確な症候性のCNS転移を有する対象。
(e)HIV感染症、活動性B型肝炎感染症又は活動性C型肝炎感染症を有する対象。
(f)IV/経口ステロイド又は免疫抑制療法若しくは免疫調節療法を必要とする何らかの自己免疫障害又は他の障害を有する対象。
【0150】
例えば、1型若年発症糖尿病、関節リウマチに対する抗体陽性、グレーブス病、橋本甲状腺炎、狼瘡、強皮症、全身性血管炎、溶血性貧血、免疫介在性血小板減少症、クローン病、潰瘍性大腸炎又は乾癬など。
【0151】
(g)進行中若しくは活動性の感染症、症候性鬱血性心不全(NYHA>2)、不安定狭心症、心不整脈又は研究要件の遵守を制限する精神病/社会的状況を含む、何らかの既知の制御不能な併発する病気を有する対象。
【0152】
(h)[用量漸増段階]
IP処置前の4週間以内に以下の医薬のいずれかを服用した対象:
化学療法剤
免疫療法[mAb、インターフェロン、サイトカイン(GCSFを除く)]
免疫抑制剤(例えば、シクロスポリン、ラパマイシン、タクロリムス、リツキシマブ、アレムツズマブ、ナタリズマブなど)。
【0153】
CT/MRIスキャンにおける予防的単回使用又は承認された適応症におけるその他の1回の使用を除く、IV/経口ステロイド。IV/経口ステロイド投与と、OBI-833/OBI-821の初回投与との間の間隔は、薬理学的持続時間又は投与されたステロイドの5半減期のいずれか長い方を超えなければならない。吸入及び局所ステロイドの使用は許可される。
【0154】
別の治験薬。
【0155】
[コホート拡大段階]
IP処置前の4週間以内に以下の医薬のいずれかを服用した対象:
化学療法剤
免疫療法[インターフェロン、サイトカイン](PD-1/PD-L1アンタゴニストを除く)
免疫抑制剤(例えば、シクロスポリン、ラパマイシン、タクロリムス、リツキシマブ、アレムツズマブ、ナタリズマブ、シクロホスファミドなど)。
【0156】
CT/MRIスキャンにおける予防的単回使用又は承認された適応症における他の1回の使用を除く、IV/経口ステロイド。IV/経口ステロイド投与と、OBI-833/OBI-821の初回投与との間の間隔は、薬理学的持続時間又は投与されたステロイドの5半減期のいずれか長い方を超えなければならない。吸入及び局所ステロイド(注射部位を除く)の使用は許可された。
【0157】
別の治験薬。
【0158】
(i)悪性腫瘍による胸水及び/又は腹水を有し、2週間ごと又はそれ以上の頻度で穿刺を必要とする対象。
(j)研究薬物のいずれかの活性又は不活性成分に対していずれかの既知の重度のアレルギー(例えば、アナフィラキシー)を有する対象。
【0159】
処置計画
対象の登録及び用量漸増手順
これは、2つの段階:用量漸増段階及びコホート拡大段階を伴う第I相、非盲検、非ランダム化研究であった。両方の段階は、OBI-833の安全性及び耐容性を査定した。
【0160】
標準的な3+3試験設計を、OBI-833/OBI-821の用量漸増段階のために使用した。OBI-833の投薬を3つのコホートに分ける:
コホート1:OBI-833(10μgのグロボH/100μgのOBI-821)
コホート2:OBI-833(30μgのグロボH/100μgのOBI-821)
コホート3:OBI-833(100μgのグロボH/100μgのOBI-821)
用量漸増段階では、10μg用量のコホート(コホート1)の最初の3人の対象を、少なくとも24時間の間隔をあけて順次登録した。これらの対象のいずれにもDLTが観察されなかった場合、試験を進めて、対象を30μg用量のコホート(コホート2)に登録する。コホート1の最初の3人の対象のうちの1人がDLTを発症した場合、追加の3人の対象をさらに登録する。6人の対象のうちの2人未満(すなわち、6人の対象のうちの1人だけ)がDLTを発症した場合、30μgへの用量漸増を進める。6人の対象のうちの1人より多くがDLTを発症した場合、研究を一時的に停止し、新たな安全性データの解析に基づくDSMBの推奨によって正当性を示された用量低減をすることなくコホート1の対象をさらに登録するためにのみ再開することができる。
【0161】
30μg用量のコホート(コホート2)では、最初に3人の患者を登録した。これらの対象のいずれにもDLTが観察されなかった場合、試験を進めて、対象を100μg用量のコホート(コホート3)に登録する。コホート2の最初の3人の対象のうちの1人がDLTを発症した場合、追加の3人の対象をさらに登録する。6人の対象のうちの2人未満(すなわち、6人の対象のうちの1人だけ)がDLTを発症した場合、100μgへの用量漸増を進める。6人の対象のうちの1人より多くがDLTに罹患している場合、データ安全性モニタリング委員会が安全性データを審査して、研究を一時停止するべきか、又は最大6人の対象を完了するために以前の10μgのコホートに段階的に下げるべきであるかを推奨する。
【0162】
100μg用量のコホート(コホート3)では、最初に3人の対象をこのコホートに登録した。コホート3の最初の3人の対象のうちの1人がDLTを発症した場合、追加の3人の対象をさらに登録する。最初の3人のいずれも、又は6人の対象のうちの2人未満が、100μgの用量レベルでDLTを経験しない場合、この用量が漸増段階についての最大用量となる。6人の対象のうちの1人より多くが、この用量レベルでDLTを経験した場合、研究を一時的に停止し、DSMBが安全性データを審査して、最大6人の対象を完了するために研究を30μgに段階的に下げるべきかどうかを推奨する。
【0163】
用量漸増段階における対象のOBI-833/OBI-821の5回の注射を完了したら、OBI科学委員会は、全ての用量漸増段階の対象の安全性、有効性及び免疫応答データの正当性を示し、コホート拡大のために30μg用量のOBI-833を推奨した。
【0164】
OBI科学委員会はまた、全ての用量漸増段階の対象のデータ及び前臨床有効性のデータを調査して、OBI-833/OBI-821処置から恩恵を受けるがんの種類を査定した。OBI科学委員会は、SD又はPR腫瘍状態を有する肺がん(非小細胞肺がん)対象を、予備抗腫瘍活性査定に登録することを決定した。最大14人の対象をコホート拡大段階に登録した。
【0165】
このように、研究に登録される対象の総数には柔軟性があり、最大数で18人の対象を用量漸増段階に登録することができ、最大数で14人の対象をコホート拡大段階に登録することができた。合計で最大32人の対象をこの第I相研究に登録することができた。
【0166】
新たな安全性データによって正当性が示されたので、用量変更を検討した。元の手術検体由来の新たに調製した材料又はパラフィン化材料を使用して、対象の腫瘍生検/組織試料を1週目に採取して、データ解析の目的のために、グロボH、SSEA-3、SSEA-4及びPDL-1の発現レベルを検査した。IHCデータは、用量漸増段階のための適格性基準に関するものではないが、グロボH+NSCLC対象のみをコホート拡大段階に登録した。
【0167】
この研究に参加する資格のある対象を、対象が用量漸増段階に登録するために記録された時点で非盲検であった用量のコホートに登録した。
【0168】
用量漸増段階における各対象について、最大10用量のOBI-833(10、30又は100μgのグロボHに相当)/OBI-821(100μg)を、1、2、3、4、6、8、12、16、20及び24週目(それぞれ1、2、3、4、5、6、7、8、9及び10回目の訪問)に皮下投与した。用量漸増段階から早期に離脱した患者は置き換えられた。置き換えを満たすために、対象は次の基準を満たさなければならない:1)用量漸増段階の間に合計5回のOBI-833/OBI-821の注射を受けていない、及び2)5回の注射を完了しなかった理由は、関連する有害事象又はDLTの発症以外であった(例えば、不履行又は同意の撤回)。
【0169】
コホート拡大段階では、患者を、1、2、3、4、6、8、12、16、20、24週目、及び疾患進行、耐えられない毒性、同意の撤回、又は最後の対象が初回用量の研究処置を受けてから最長1年後まで8週間ごとに皮下処置した。対象は、治験責任医師の裁量により疾患進行後、処置を継続することができる。以下の臨床状況は、疾患進行後の継続注射に適合した(FDA業界向けガイダンス、2011):
対象は、その他の全ての研究プロトコールの適格基準を継続して満たす。
【0170】
全ての薬物関連毒性がベースラインレベルまで解消された。
【0171】
対象のパフォーマンスステータスの悪化なし。
【0172】
疾患進行(例えば、CNS転移)の重篤な合併症を防ぐために差し迫った介入を遅らせなかった。
【0173】
疾患進行のために処置を中止した対象については、最後の投与から24週間後である研究の終了まで8週間ごとに安全性及び免疫応答について対象を継続的に査定した。疾患進行後、適格であり、注射を継続する意思がある対象については、その対象を、さらに3回の注射のために8週間ごと(これは疾患進行後合計24週間である。)にOBI-833/OBI-821で処置して、臨床及び免疫応答を査定した。その後、対象を、研究の終了から最長24週間後まで12週間ごとに生存についてフォローアップした。
【0174】
1週目を、治験薬の最初のsc投与を伴う訪問として定義した。血液試料を、時間及び事象スケジュール(表1及び2)に示されている様々な週で定期的な血液検査(安全性評価の一部)及び免疫応答の査定のために採取した。研究薬物の最後の投与後、対象を、最後の用量投与から12又は24週間後である研究の終了(「研究の終了」)まで用量漸増段階では4週間ごと、又はコホート拡大段階では8週間ごとに安全性及び免疫応答について査定した。疾患進行後に注射を継続する資格のある対象には、予測可能なリスク又は不快感及び他の代替処置選択肢について十分に情報が与えられた。
【0175】
OBI-833/OBI-821の投与スケジュール及び手順
各用量の投与について、OBI-833薬物製品のバイアル及びOBI-821薬物製品のバイアルを使用した。注射前に2つの成分を混合することによって投薬溶液を調製した。OBI-833/OBI-821の各用量レベルについての混合に関する指示を例1に示す。
【0176】
(a)用量漸増段階では、登録された対象を、1、2、3、4、6、8、12、16、20及び24週目(1回目の訪問~10回目の訪問)に最大で10用量のOBI-833/OBI-821(sc)で処置した。コホート拡大段階では、対象を疾患進行まで処置した。
(b)10μgのOBI-833/100μgのOBI-821、30μgのOBI-833/100μgのOBI-821又は100μgのOBI-833/100μgのOBI-821混合物の用量を、漸増段階においてそれぞれのコホート1、2及び3に従って皮下注射し、コホート拡大段階では30μgのOBI-833/100μgのOBI-821であった。
(c)OBI-833/OBI-821の組合せの投与は、混合後2時間以内に完了すべきである。
(d)腕(左又は右)に対する皮下注射(sc)が好ましい。
(e)腋窩リンパ節を切除した場合、同じ腕への注射を避ける。
(f)両側(左及び右)の腋窩リンパ節を切除した場合、注射を大腿部(左又は右)にすることができる。
(g)局所反応が生じた場合、注射部位の刺激を最小限に抑えるために、注射部位を腕及び大腿部の周りで回転させる、又は交互に動かす。
【0177】
研究手順
スクリーニング段階-治験薬の初回投薬前(スクリーニング訪問)
署名済みの同意説明フォームを、研究プロトコールの完全な説明後、かついずれかの研究関連手順を行う前に適切に取得した。
【0178】
用量漸増段階では、スクリーニング/ベースライン査定を、治験薬の初回投薬前の28日以内に行うことになっていた。全ての登録/適格性評価は、治験薬の初回投薬前に実施されなければならない。
【0179】
(a)人口統計を記録する。
(b)重大な病歴、他の基礎疾患/状態及び過去12カ月間の履歴を取得した。
(c)確認された適格性基準(全ての組み入れ基準を満たし、除外基準を有しない)。
(d)バイタルサイン(血圧、呼吸数、脈拍及び体温)、身長、体重及びECOGパフォーマンスステータスを含む身体検査を実施した。
(e)尿妊娠検査を行った。陽性の結果の場合、対象は研究に適格ではなかった。
(f)定期的な尿検査-pH、タンパク質、グルコース、比重、ケトン、ビリルビン及びウロビリノーゲンを行った。尿沈渣の解析(RBC、WBC、上皮円柱、硝子円柱及び細菌)は任意選択的であった。
(g)ヘモグロビン、ヘマトクリット、WBC、RBC、血小板、分画、RF及びESRを含む血液学的検査を行った。
(h)ナトリウム、カリウム、塩化物、カルシウム、マグネシウム、BUN、クレアチニン、ALT、AST、アルカリホスファターゼ、総タンパク質、アルブミン、総ビリルビン、LDH、アミラーゼ、リパーゼ、コレステロール、トリグリセリド、コルチゾール、T3、T4、フリーT4及びTSHを含む血清化学解析を行った。
(i)HBV(例えば、HBsAg、HBeAg、並びに臨床的に必要な場合、HBcAb及び/又はHBV DNA)、HCV(例えば、抗HCV)検査を行った。病歴データが入手できない場合、HIV検査を行った。任意選択的な検査(例えば、ウイルス負荷)は、臨床検査の結果及びフォローアップ訪問時の疑わしい活動性感染症に対する治験責任医師の臨床判断に基づいて指示されていてもよい。抗ウイルス剤は、ウイルス感染症の処置及び管理のために許可された。しかしながら、インターフェロン療法は許可されておらず、必要な場合、対象を研究から除外する必要があった。
(j)12誘導ECGを実施する。
(k)腫瘍評価を実施する:
全身CTスキャン(胸部、腹部及び骨盤)をスクリーニング時に実施し、ベースラインスキャンとして使用した。全身CTスキャンがスクリーニング検査(患者が同意書に署名した日付)前の4週間以内に実施されている場合、この以前に実施されたスキャンをベースラインスキャンとして使用することができる。
RECIST 1.1基準に基づいて応答を査定する病変を識別し、記録すること。
イメージングは、研究施設の放射線科医又は委任された治験責任医師によって評価された。
コホート拡大段階では、安定疾患(SD)状態のために少なくとも6週間の間隔を必要とし、部分奏効(PR)状態のために少なくとも4週間の間隔を必要とした。
(l)併用薬の使用を記録した。
(m)臨床検査評価の再検査を実施した:再検査は、対象の臓器機能又は状態を再確認するために最初の臨床検査から1週間後に(又は治験責任医師の判断により)許可され得る。しかしながら、評価は治験薬の初回投薬前の指定されたスクリーニング期間内に行うことを必要とした。
(n)処置前の腫瘍特異的抗原検査を実施した:登録された全ての対象に対するCEA。
【0180】
コホート拡大段階では、スクリーニング/ベースライン査定を治験薬の初回投薬前の35日以内に行った。全ての登録/適格性評価は、治験薬の初回投薬前に実施されなければならない。
【0181】
(a)免疫組織化学によってグロボH、SSEA-3、SSEA-4及びPD-L1の発現について検査された原発部位(及び可能であれば遠隔転移)の腫瘍生検/組織試料を入手した。新鮮な検体が好ましいが、ほとんどの対象は、過去の腫瘍組織検体を入手すべきであり、それを検査のために中央検査室に提出することができる。腫瘍組織試料が入手できない場合、新鮮な腫瘍組織試料を取得した。コホート拡大段階では、グロボH発現を検査するために新鮮な/保存した腫瘍生検が不可欠であった。
(b)人口統計を記録する。
(c)重大な病歴、他の基礎疾患/状態及び過去12カ月間の履歴を取得した。
(d)確認された適格性基準(全ての組み入れ基準を満たし、除外基準を有しない)。
(e)バイタルサイン(血圧、呼吸数、脈拍及び体温)、身長、体重及びECOGパフォーマンスステータスを含む身体検査を実施した。
(f)尿妊娠検査を行った。陽性の結果の場合、対象は研究に適格ではない。
(g)定期的な尿検査-pH、タンパク質、グルコース、比重、ケトン、ビリルビン及びウロビリノーゲンを行った。尿沈渣の解析(RBC、WBC、上皮円柱、硝子円柱及び細菌)は任意選択的であった。
(h)ヘモグロビン、ヘマトクリット、WBC、RBC、血小板、分画、RF及びESRを含む血液学的検査を行った。
(i)ナトリウム、カリウム、塩化物、カルシウム、マグネシウム、BUN、クレアチニン、ALT、AST、アルカリホスファターゼ、総タンパク質、アルブミン、総ビリルビン、LDH、アミラーゼ、リパーゼ、コレステロール、トリグリセリド、コルチゾール、T3、T4、フリーT4及びTSHを含む血清化学解析を行った。
(j)HBV(例えば、HBsAg、HBeAg、並びに臨床的に必要な場合、HBcAb及び/又はHBV DNA)、HCV(例えば、抗HCV)検査を行った。病歴データが入手できない場合、HIV検査を行った。任意選択的な検査(例えば、ウイルス負荷)は、臨床検査の結果及びフォローアップ訪問時の疑わしい活動性感染症に対する治験責任医師の臨床判断に基づいて指示されていてもよい。抗ウイルス剤は、ウイルス感染症の処置及び管理のために許可された。しかしながら、インターフェロン療法は許可されておらず、必要な場合、対象を研究から除外した。
(k)12誘導ECGを実施する。
(l)腫瘍評価を実施する:
全身CTスキャン(胸部、腹部及び骨盤)をスクリーニング時に実施し、ベースラインスキャンとして使用した。全身CTスキャンがスクリーニング検査(患者が同意書に署名した日付)の4週間以内に実施されている場合、この以前に実施されたスキャンをベースラインスキャンとして使用することができる。
RECIST 1.1基準に基づいて応答を査定する病変を識別し、記録すること。
イメージングは、研究施設の放射線科医又は委任された治験責任医師によって評価された。
コホート拡大段階では、安定疾患(SD)状態のために少なくとも6週間の間隔を必要とし、部分奏効(PR)状態のために少なくとも4週間の間隔を必要とした。
(m)併用薬の使用を記録した。
(n)臨床検査評価の再検査を実施する:再検査は、対象の臓器機能又は状態を再確認するために最初の臨床検査から1週間後に(又は治験責任医師の判断により)許可され得る。しかしながら、評価は治験薬の初回投薬前の指定されたスクリーニング期間内に行うことを必要とした。
(o)処置前の腫瘍特異的抗原検査を実施した:選択された施設内の登録された全ての対象に対するCEA及びCYFRA21-1。
(p)台湾の選択された施設内のB/T細胞免疫ゲノムの探索的解析及びエクスビボ免疫原性解析のために採取した血液試料。
【0182】
処置期間:1週目-1回目の訪問
適格な対象を、対象が登録に適格であった時点で現在登録していた割り当てられたコホート/投薬量に従って初回用量の治験薬で処置した。
【0183】
用量漸増段階におけるコホート1では、OBI-833(10μgのグロボHに相当)/OBI-821(100μg)を皮下(sc)投与した。コホート2に登録された対象には、OBI-833(30μgのグロボHに相当)/OBI-821(100μg)を皮下(sc)投与し、一方、コホート3の対象には、OBI-833(100μgのグロボHに相当)/OBI-821(100μg)を皮下(sc)投与した。コホート拡大のために、OBI-833(30μgのグロボHに相当)/OBI-821(100μg)を投与した。
【0184】
以下の査定を1週目(以下に指定した訪問)の間に行った:
(a)治験薬の投与前にバイタルサイン(血圧、呼吸数、脈拍及び体温)及び体重を含む身体検査を実施した。
(b)治験薬の投与前に定期的な尿検査-pH、タンパク質、グルコース、比重、ケトン、ビリルビン及びウロビリノーゲンを行った。尿沈渣の解析(RBC、WBC、上皮円柱、硝子円柱及び細菌)は任意選択的である。
(c)治験薬の投与前にヘモグロビン、ヘマトクリット、WBC、RBC、血小板、分画、RF及びESRを含む血液学的検査を行った。
(d)治験薬の投与前にナトリウム、カリウム、塩化物、カルシウム、マグネシウム、BUN、クレアチニン、ALT、AST、アルカリホスファターゼ、総タンパク質、アルブミン、総ビリルビン、LDH、アミラーゼ、リパーゼ、コレステロール、トリグリセリド、コルチゾール、T3、T4、フリーT4及びTSHを含む血清化学解析を行った。
(e)治験薬の投与前に抗グロボH IgG及びIgM力価の測定のために血液試料を採取した。
(f)用量漸増段階のみについて:免疫組織化学によってグロボH、SSEA-3、SSEA-4及びPD-L1の発現について検査された原発部位(及び可能であれば遠隔転移)の腫瘍生検/組織試料を入手した。新鮮な検体が好ましいが、ほとんどの対象は、過去の腫瘍組織検体を入手すべきであり、それを検査のために中央検査室に提出することができる。腫瘍組織試料が入手できない場合、新鮮な腫瘍組織試料を治験薬の投与前に取得すべきである。しかしながら、腫瘍生検が不可能であり得る場合、対象は組織試料を提出することを必要としなかった。
(g)治験薬の投与前に以下のバイオマーカーの探索的解析のために血液試料を採取した:
抗グロボH、抗SSEA-3及び抗SSEA-4抗体産生の免疫応答をモニタリングした。
CTC(台湾の選択された施設内のみ)
ADCC及びCDC
(h)治験薬を皮下投与した。
(i)併用薬の使用を記録した。
(j)治験薬の投与後にNCI CTCAE v4.0によって評価された有害事象をモニタリングし、記録した。
(k)コホート拡大段階においてCobas EGFR突然変異検査で解析される既知のEGFR突然変異を有する対象について血液試料を採取した。
2週目~4週目(2回目の訪問~4回目の訪問)の処置期間
治験薬を、2、3及び4週目(それぞれ2、3及び4回目の訪問)に皮下投与した。
【0185】
以下の査定を、2~4週目(以下に指定した2回目の訪問~4回目の訪問)の間に行った:
(a)2、3及び4週目(2、3及び4回目の訪問)に治験薬の投与前にバイタルサイン(血圧、呼吸数、脈拍及び体温)及び体重を含む身体検査を実施した。
(b)治験薬の投与前に定期的な尿検査-pH、タンパク質、グルコース、比重、ケトン、ビリルビン及びウロビリノーゲンを行った。2、3及び4週目(2、3及び4回目の訪問)の治験薬の投与前の尿沈渣の解析(RBC、WBC、上皮円柱、硝子円柱及び細菌)は任意選択的であった。
(c)2、3及び4週目(2、3及び4回目の訪問)に治験薬の投与前にヘモグロビン、ヘマトクリット、WBC、RBC、血小板、分画、RF及びESRを含む血液学的検査を行った。
(d)2、3及び4週目(2、3及び4回目の訪問)に治験薬の投与前にナトリウム、カリウム、塩化物、カルシウム、マグネシウム、BUN、クレアチニン、ALT、AST、アルカリホスファターゼ、総タンパク質、アルブミン、総ビリルビン、LDH、アミラーゼ、リパーゼ、コレステロール、トリグリセリド、コルチゾール、T3、T4、フリーT4及びTSHを含む血清化学解析を行った。
(e)3及び4週目(3及び4回目の訪問)に治験薬の投与前に抗グロボH IgG及びIgMの測定のために血液試料を採取した。
(f)3及び4週目(3及び4回目の訪問)に治験薬の投与前に以下のバイオマーカーの探索的解析のために血液試料を採取した:
抗グロボH、抗SSEA-3及び抗SSEA-4抗体産生の免疫応答をモニタリングした。
【0186】
ADCC及びCDC
(g)用量漸増段階についてのみ4週目(4回目の訪問)に治験薬の投与前に12誘導ECGを実施した。
(h)2、3及び4週目(2、3及び4回目の訪問)に治験薬を皮下投与した。
(i)2、3及び4週目(2、3及び4回目の訪問)に併用薬の使用を記録した。
(j)2、3及び4週目(2、3及び4回目の訪問)にNCI CTCAE v4.0によって評価された有害事象をモニタリングし、記録した。
【0187】
処置期間:6週目~24週目(5回目の訪問~10回目の訪問)又は疾患進行
【0188】
[用量漸増段階]
治験薬を、6、8、12、16、20及び24週目(それぞれ5回目の訪問~10回目の訪問)に皮下投与した。
【0189】
以下の査定をこれらの週(又は訪問)に行った:
(a)6、8、12、16、20及び24週目(5回目の訪問~10回目の訪問)にバイタルサイン(血圧、呼吸数、脈拍及び体温)及び体重を含む身体検査を実施し、評価は治験薬の投与前に実施した。
(b)定期的な尿検査-pH、タンパク質、グルコース、比重、ケトン、ビリルビン及びウロビリノーゲンを行った。6、8、12、16、20及び24週目(5回目の訪問~10回目の訪問)の尿沈渣の解析(RBC、WBC、上皮円柱、硝子円柱及び細菌)は任意選択的であり、評価は治験薬の投与前に実施した。
(c)6、8、12、16、20及び24週目(5回目の訪問~10回目の訪問)にヘモグロビン、ヘマトクリット、WBC、RBC、血小板、分画、RF及びESRを含む血液学的検査を行い、評価は治験薬の投与前に実施した。
(d)6、8、12、16、20及び24週目(5回目の訪問~10回目の訪問)にナトリウム、カリウム、塩化物、カルシウム、マグネシウム、BUN、クレアチニン、ALT、AST、アルカリホスファターゼ、総タンパク質、アルブミン、総ビリルビン、LDH、アミラーゼ、リパーゼ、コレステロール、トリグリセリド、コルチゾール、T3、T4、フリーT4及びTSHを含む血清化学解析を行い、評価は治験薬の投与前に実施した。6、8、12、16、20及び24週目(5回目の訪問~10回目の訪問)に抗グロボH IgG及びIgM力価の測定のために血液試料を採取し、試料は治験薬の投与前に採取した。
(e)6、8、12、16、20及び24週目(5回目の訪問~10回目の訪問)に治験薬の投与前に以下のバイオマーカーの探索的解析のために血液試料を採取した:
抗グロボH、抗SSEA-3及び抗SSEA-4抗体産生の免疫応答をモニタリングした。
【0190】
ADCC及びCDC
(f)6週目(5回目の訪問)に治験薬の投与前に以下のバイオマーカーの探索的解析のために血液試料を採取した:
CTC(台湾の選択された施設内のみ)
(g)12、16、20及び24週目(7回目の訪問~10回目の訪問)に治験薬の投与前に探索的細胞性免疫応答のために血液試料を採取した:
台湾の選択された施設内のT細胞及びB細胞免疫応答
(h)12及び24週目(それぞれ7回目の訪問及び10回目の訪問)に治験薬の投与前に、必要な場合、12週間ごとにCTスキャンを含む、RECIST 1.1基準に従って腫瘍評価を実施した。
(i)12及び24週目(それぞれ7回目の訪問及び10回目の訪問)に12週間ごとに腫瘍特異的抗原検査(登録された全ての対象に対するCEA)を実施した。
(j)12及び20週目(それぞれ7回目の訪問及び9回目の訪問)のみに12誘導ECGを実施し、評価は治験薬の投与前に実施した。
(k)6、8、12、16、20及び24週目(5回目の訪問~10回目の訪問)に治験薬を皮下投与した。
(l)訪問ごと(5回目の訪問~10回目の訪問)に併用薬の使用を記録した。
(m)訪問ごと(5回目の訪問~10回目の訪問)にNCI CTCAE v4.0によって評価された有害事象をモニタリングし、記録した。
【0191】
[コホート拡大段階]
治験薬を、6、8、12、16、20、24週目、及びその後、疾患進行まで8週間ごとに皮下投与した。
【0192】
(a)6、8、12、16、20、24週目、及び疾患進行まで8週間ごとにバイタルサイン(血圧、呼吸数、脈拍及び体温)及び体重を含む身体検査を実施し、評価は治験薬の投与前に実施した。
(b)定期的な尿検査-pH、タンパク質、グルコース、比重、ケトン、ビリルビン及びウロビリノーゲンを行う。6、8、12、16、20、24週目、及び疾患進行まで8週間ごとの尿沈渣の解析(RBC、WBC、上皮円柱、硝子円柱及び細菌)は任意選択的であり、評価は治験薬の投与前に実施した。
(c)6、8、12、16、20、24週目、及び疾患進行まで8週間ごとにヘモグロビン、ヘマトクリット、WBC、RBC、血小板、分画、RF及びESRを含む血液学的検査を行い、評価は治験薬の投与前に実施した。
(d)6、8、12、16、20、24週目、及び疾患進行まで8週間ごとにナトリウム、カリウム、塩化物、カルシウム、マグネシウム、BUN、クレアチニン、ALT、AST、アルカリホスファターゼ、総タンパク質、アルブミン、総ビリルビン、LDH、アミラーゼ、リパーゼ、コレステロール、トリグリセリド、コルチゾール、T3、T4、フリーT4及びTSHを含む血清化学解析を行い、評価は治験薬の投与前に実施した。6、8、12、16、20、24週目、及び疾患進行まで8週間ごとに抗グロボH IgG及びIgM力価の測定のために血液試料を採取し、試料は治験薬の投与前に採取した。
(e)6、8、12、16、20、24週目、及び疾患進行まで8週間ごとに治験薬の投与前に以下のバイオマーカーの探索的解析のために血液試料を採取した:
抗グロボH、抗SSEA-3及び抗SSEA-4抗体産生の免疫応答をモニタリングした。
【0193】
ADCC及びCDC
(f)用量漸増段階:6週目(5回目の訪問)又はコホート拡大段階:8、64週目(6、15回目の訪問)に治験薬の投与前に以下のバイオマーカーの探索的解析のために血液試料を採取した:
CTC(台湾の選択された施設内のみ)
(g)抗グロボH、抗SSEA-3又は抗SSEA-4血清濃度が、20μeg/mlに達した場合にのみ、4回連続した訪問で治験薬の投与前(8週目(6回目の訪問)又はその後)に探索的細胞性免疫応答のために血液試料を採取した:
台湾の選択された施設内のT細胞及びB細胞の免疫応答
(h)6、12、20、64週目、及び1回目の疾患進行から8週間後まで8週間ごと(5、7、9、15回目の訪問、及び1回目の疾患進行から8週間後まで8週間ごと)に治験薬の投与前に、以下のバイオマーカーの探索的解析のために血液試料を採取した:
台湾の選択された施設内のB/T細胞免疫ゲノム解析
(i)12、24週目及び疾患進行まで8週間ごとに治験薬の投与前に、必要な場合、12週間ごとにCTスキャンを含む、RECIST 1.1基準に従って腫瘍評価を実施した。
(j)12、24週目に12週間ごとに、及び疾患進行まで8週間ごとに腫瘍特異的抗原検査(選択された施設内の登録された全ての対象に対するCEA及びCYFRA21-1)を実施した。
(k)12週目及び最後の注射又は疾患進行から8週間後に12誘導ECGを実施し、評価は治験薬の投与前に実施した。
(l)6、8、12、16、20、24週目、及び疾患進行まで8週間ごとに治験薬を皮下投与した。
(m)疾患進行まで訪問ごとに併用薬の使用を記録した。
(n)疾患進行まで訪問ごとにNCI CTCAE v4.0によって評価された有害事象をモニタリングし、記録した。
(o)Cobas EGFR突然変異検査で解析される既知のEGFR突然変異を有する対象について12及び40週目に血液試料を採取した。
【0194】
処置後期間~研究の終了まで:用量漸増段階では28週目~36週目(11回目の訪問~13回目の訪問);コホート拡大段階では疾患進行後
以下の査定を、治験薬の最後の皮下投与から12週間(用量漸増段階)又は24週間(コホート拡大段階)後である研究の終了(「研究の終了」)まで用量漸増段階では4週間ごと又はコホート拡大段階では8週間ごとに行った。
【0195】
(a)バイタルサイン(血圧、呼吸数、脈拍及び体温)及び体重を含む身体検査を実施した。
(b)定期的な尿検査-pH、タンパク質、グルコース、比重、ケトン、ビリルビン及びウロビリノーゲンを行った。尿沈渣の解析(RBC、WBC、上皮円柱、硝子円柱及び細菌)は任意選択的であった。
(c)ヘモグロビン、ヘマトクリット、WBC、RBC、血小板、分画、RF及びESRを含む血液学的検査を行った。
(d)ナトリウム、カリウム、塩化物、カルシウム、マグネシウム、BUN、クレアチニン、ALT、AST、アルカリホスファターゼ、総タンパク質、アルブミン、総ビリルビン、LDH、アミラーゼ、リパーゼ、コレステロール、トリグリセリド、コルチゾール、T3、T4、フリーT4及びTSHを含む血清化学解析を行った。
(e)抗グロボH IgG及びIgM力価の測定のために血液試料を採取した。
(f)以下のバイオマーカーの探索的解析のために血液試料を採取した:
抗グロボH、抗SSEA-3及び抗SSEA-4抗体産生の免疫応答をモニタリングした。
【0196】
ADCC及びCDC
(g)用量漸増段階:28週目(11回目の訪問)又はコホート拡大段階:研究の終了に以下のバイオマーカーの探索的解析のために血液試料を採取した:
CTC(台湾の選択された施設内のみ)
(h)抗グロボH、抗SSEA-3又は抗SSEA-4血清濃度が、20μg/mlに達した場合にのみ、4回連続した訪問で治験薬の投与前(最後の注射から8週間後;PTP1)に探索的細胞性免疫応答のために血液試料を採取した:
台湾の選択された施設内のT細胞及びB細胞の免疫応答
(i)コホート拡大段階:1回目の疾患進行から8週間後に以下のバイオマーカーの探索的解析のために血液試料を採取した:
B/T細胞免疫ゲノム解析(台湾の選択された施設内のみ)
(j)用量漸増段階では36週目(13回目の訪問)又はコホート拡大段階での疾患進行後の継続した注射の対象では訪問ごとにRECIST 1.1基準に従って腫瘍評価を実施した。
(k)選択された施設内で用量漸増段階では36週目(13回目の訪問)又はコホート拡大段階では研究の終了の訪問時に腫瘍特異的抗原検査(登録された全ての対象に対するCEA)を実施した(CEA及びCYFRA21-1)。
(l)表1及び2に記載した訪問時に12誘導ECGを実施した。
(m)訪問ごとに併用薬の使用を記録した。
(n)訪問ごとにNCI CTCAE v4.0によって評価された有害事象をモニタリングし、記録した。
(o)コホート拡大段階での疾患進行後、継続注射の対象について訪問ごとに治験薬を皮下投与した。
(p)コホート拡大段階におけるCobas EGFR突然変異検査で解析される既知のEGFR突然変異を有する対象について処置後期間1及び研究の終了時に血液試料を採取した。
【0197】
フォローアップ期間(研究の終了後最長12カ月、すなわち44~84週目)
対象が研究外基準を満たさない限り、生存している全ての対象を、用量漸増段階では8週間ごと又はコホート拡大段階では12週間ごとに、それぞれ研究の終了/早期終了の訪問後、最長48週間又は24週間、電話連絡又は対象のクリニック訪問により生存状況についてフォローアップした。
【0198】
早期終了
処置後期間の継続を除いて、疾患進行以外の何らかの理由のために研究処置又は査定を早期に終了した対象は、研究の中止前に以下の査定のために早期終了の訪問を完了することのみを必要とする、又はフォローアップ段階へ進む。処置後期間へ継続する意思のない疾患進行性の対象はEoS訪問を実施する。EoS/EoT前の1週間以内に臨床検査データが入手可能であった場合、臨床検査は免除されてもよい。その後、生存している対象は、コホート拡大段階では12週間で最長24週間、電話連絡又は対象のクリニックの訪問によって生存状況を追跡するためにフォローアップ期間に入る。
【0199】
(a)身体検査を実施し、バイタルサイン(血圧、呼吸数、脈拍及び体温)、体重を測定した。
(b)定期的な尿検査-pH、タンパク質、グルコース、比重、ケトン、ビリルビン及びウロビリノーゲンを行った。尿沈渣の解析(RBC、WBC、上皮円柱、硝子円柱及び細菌)は任意選択的であった。
(c)ヘモグロビン、ヘマトクリット、WBC、RBC、血小板、分画、RF及びESRを含む血液学的検査を行った。
(d)ナトリウム、カリウム、塩化物、カルシウム、マグネシウム、BUN、クレアチニン、ALT、AST、アルカリホスファターゼ、総タンパク質、アルブミン、総ビリルビン、LDH、アミラーゼ、リパーゼ、コレステロール、トリグリセリド、コルチゾール、T3、T4、フリーT4及びTSHを含む血清化学解析を行った。
(e)抗グロボH IgG及びIgM力価の測定のために血液試料を採取した。
(f)以下のバイオマーカーの探索的解析のために血液試料を採取した:
抗グロボH、抗SSEA-3及び抗SSEA-4抗体産生の免疫応答をモニタリングした。
【0200】
CTC(台湾の選択された施設内のみ)
【0201】
ADCC及びCDC
(g)12誘導ECGを実施した。
(h)必要な場合、CTスキャンを含む、RECIST 1.1基準に従って腫瘍評価を実施した。
(i)腫瘍特異的抗原検査(選択された施設内の登録された全ての対象に対するCEA及びCYFRA21-1)を実施した。
(j)NCI CTCAE v4.0によって評価された有害事象を記録した。
(k)併用薬の使用を記録した。
(l)疾患進行以外の理由で研究処置又は査定を(研究の終了前に)中止した対象を、疾患進行までクリニック訪問によって疾患状態についてフォローアップした。処置後期間において定義されたものと同じ査定を行った。
(m)PD以外の早期終了の対象についてEGFRを解析した。
【0202】
他の研究手順
腫瘍組織試料(及び可能であれば組織学/病理学報告)を、1週目に治験薬の投与前に採取し、中央検査室に提出して、免疫組織化学によってグロボH、SSEA-3、SSEA-4及びPD-L1の発現レベル、並びに肺、胃、結腸直腸又は乳房の腫瘍で発現している可能性がある他の腫瘍マーカーを検査した。対象の腫瘍生検/組織試料を、グロボH、SSEA-3、SSEA-4及び/又はPD-L1の発現レベルを検査するために採取し、これは、データ解析の目的のために1週目に行い、用量漸増段階における適格性基準のためではなかったことに留意されたい。グロボH並びにSSEA-3、SSEA-4及び/又はPD-L1などの他の腫瘍マーカーを検査するために腫瘍生検/組織試料はコホート拡大対象については必須であり、データ解析の目的のためであった。グロボH発現レベルを収集し、適格性についてスクリーニング訪問時に検査した。
【0203】
血液試料を、表1及び2に示した様々な訪問時に採取し、免疫応答を検出し、バイオマーカーによって腫瘍応答をモニタリングするために社内のグリカンチップ及び定量的ELISAを使用して、体液性及び細胞性媒介免疫応答、並びにワクチンの免疫原性に対する科学研究又は免疫学的解析を実施する目的で保存した。
【0204】
これらの検査は、抗グロボH IgG及びIgM産生の測定を含んだ。以下のような様々なバイオマーカーの探索的解析のために血液試料も採取した:
(a)抗グロボH、抗SSEA-3及び抗SSEA-4抗体産生の免疫応答をモニタリングした。
(b)CTC(台湾の選択された施設内のみ)
(c)ADCC及びCDC
(d)T細胞及びB細胞の免疫応答(台湾の選択された施設内)
(e)B/T細胞免疫ゲノム解析(台湾の選択された施設内)
(f)エクスビボ免疫原性解析(台湾の選択された施設内)
(g)Cobas EGFR突然変異検査(台湾の選択された施設内)
OBI Pharma,Incの監督の下で、契約した検査室によって認定されたアッセイを使用して組織及び血液試料を解析した。
【0205】
特定の腫瘍生物学に対する免疫療法の処置応答及び治療機構を査定するために、血液及び腫瘍試料を、特定の腫瘍生物学に対する抗腫瘍免疫機構をさらに探索するために現在及び関連する将来の研究のために保存した。
【0206】
臨床試験の間及び臨床試験の終了の後に将来の研究を実施した。これは、がん処置における重要な発見及びブレイクスルーにつながるさらなる問題及び仮説を潜在的に引き起こす可能性のある何らかの傾向又は結果に起因する場合がある。
【0207】
毒性の管理及び処置の中止
一般的な管理
バイタルサイン(血圧、呼吸数、脈拍及び体温)及び注射部位の検査を、治験薬の各注射後、0~5分、15~30分、次いで2時間(±30分)でモニタリングした。
【0208】
用量漸増段階のコホートでは、最初の3人の対象は、初回用量の治験薬注射後に入院し、バイタルサイン及び注射部位の検査を、治験薬の注射後、以下の時点でモニタリングした:0~5分、15~30分、2時間(±30分)、4時間(±30分)、6時間(±30分)、就寝前及び退院前。
【0209】
薬物誘発毒性の管理
患者に対するリスクを、慎重な臨床モニタリング及び検査室の安全性パラメーターの査定によって軽減した。
【0210】
この研究で予想された最も可能性の高い副作用は、能動免疫療法の直接効果としての注射部位の局所皮膚反応、発熱、悪寒及び発汗であった。これらの副作用は治療を必要とすることはほとんどないが、かゆみ止めを、症状がある場合にのみ使用することができる。必要に応じて、発熱及び疼痛を抑制するためにNSAIDを使用してもよいが、ステロイドは禁止されている。かゆみ止め又はステロイドの前投薬は禁止されている。これらの症状にもかかわらず、研究処置を継続した。
【0211】
軽度から中等度の真皮浮腫及び紅斑が動物研究において観察されたが、これらは有害効果とみなされなかった。治験責任医師は、通常の実務に従ってこれらの状態を処置した。対象は、体液の排出、皮膚の損傷を伴う注射部位の反応、並びに濃い藍色の変色及び腫脹を経験した場合、治験責任医師に通知するように指示された。
【0212】
あまり一般的ではないが、より重篤なアレルギー反応には、重篤な気管支けいれん及びアナフィラキシーが含まれる。これらの状態の存在下で、処置は直ちに中止され、対象は、必要に応じて、エピネフリン、ステロイド、酸素、ボリュームサポート又は他の気管支拡張剤及び支持療法で処置された。研究処置は中止され、対象は、継続してモニタリングされ、研究から離脱することができる。
【0213】
低レベルのグロボHが上皮細胞によって発現されるため、自己免疫障害が発生する場合がある。しかしながら、グロボHの発現は、内腔境界の頂端上皮細胞に限定されており、この部位には免疫系がアクセスできないようであるので、自己免疫障害の可能性はまれである。皮膚、関節、腎臓又はその他の変化により示される免疫複合体疾患が発生する可能性があるが、それらは、グロボHへの以前の曝露がなければ、まれであるはずである。
【0214】
重度の上皮細胞損傷に関連する頻繁な毒性の証拠があった場合、処置を中止した。いずれかのSAEが、免疫抑制療法(例えば、シクロスポリン、ラパマイシン、タクロリムス、リツキシマブ、アレムズツマブ、ナタリズマブ、iv/経口ステロイドなど)又は免疫調節療法(例えば、血漿交換療法、静注免疫グロブリン)の使用を必要とする場合、対象は、処置を終了し、疾患進行、早期終了又は研究の終了までフォローアップされ続けなければならない。
【0215】
用量制限毒性の定義及び管理
用量漸増段階における事象は、OBI-833/OBI-821の投与後最初の6週間以内に発生し、以下の基準を満たす場合、用量制限毒性(DLT)とみなされた。
【0216】
少なくとも治験薬に関連している可能性があると考えられるグレード3又はグレード4の何らかの毒性。
【0217】
DLTを発症した対象はいずれも研究処置を終了した。
【0218】
研究から離脱した時にグレード3又は4の臨床的異常又は臨床検査異常を有した全ての対象を、基礎疾患のために改善する可能性が低い場合を除いて、グレード2以下に解消するまで追跡した。
【0219】
最初の3人のうちのいずれかの対象がDLTを発症した場合、又は最初の6人のうちの1人より多くの対象がDLTを発症した場合、データ安全性モニタリング委員会による完全な審査まで用量漸増を一時停止した。新たな安全性データによって正当性が示された場合、次の用量コホートに対して50%の用量低減などの用量変更を考慮することができる。用量低減がコホート1(10μgのコホート)の対象に必要とされる場合、研究を一時的に停止した。データ安全性モニタリング委員会が新たな安全性データを審査し、研究を再開し、用量低減せずにコホート1の対象の登録を継続できるかどうかを指示した。
【0220】
個別の対象の研究処置(OBI-833/OBI-821)中止のガイドライン
以下に列挙したグレード3以上の免疫関連AE又は緊急SAEの事象において、対象は研究薬物処置を中止する必要があった。データ安全性モニタリング委員会は、これらの事象の通知を受けており、様々な保健当局への安全性報告は、各国のそれぞれの保健機関のガイドラインに従う。
【0221】
自己免疫疾患には、重度のギラン・バレー症候群(GBS)又は慢性炎症性脱髄性多発性神経炎(CIDP)が含まれるが、これらに限定されない。
【0222】
脳症又は何らかのその他の重大なCNS障害。
【0223】
挿管及び/又は人工呼吸器のサポートを必要とするアナフィラキシー又は呼吸不全。
【0224】
緊急介入及び悪性高血圧、重要臓器障害を引き起こすショック、重度の心不整脈などの生命を脅かす結果に関する適応症。
【0225】
重度の虚血及び血管性神経障害を引き起こす血管炎。
【0226】
重度の腎障害を引き起こす腎炎。
【0227】
重度の肝機能障害を引き起こす肝炎。
【0228】
副腎不全-生命を脅かす副腎クリーゼ。
【0229】
重度の膵炎。
【0230】
グレード4以上の甲状腺機能亢進症又は甲状腺機能低下症を引き起こす甲状腺炎。
【0231】
自己免疫性溶血性貧血。
【0232】
並びに治験責任医師及び医療モニターの意見による、研究薬物に起因する何らかの他の潜在的な生命を脅かす又は機能障害を引き起こす有害事象。
【0233】
緊急性又は重篤とみなされず、研究処置中止を必要としなくてもよい免疫関連AEには、以下が含まれ得る:
腫瘍部位又は流入領域リンパ節における局所抗腫瘍反応に起因する可能性がある炎症。これには、腫瘍切除の部位又は放射線療法に曝露された部位における炎症反応が含まれる。
【0234】
治験薬投与に関係なく、研究処置中止基準を満たさない毒性が発生した場合:
治験薬の投与は最長で2週連続遅らせてもよい。
【0235】
治験薬の投与を2週連続より長く遅らせた事象では、その後、治験責任医師は、治験依頼者の医療モニターと協議して継続処置の妥当性について議論した。
【0236】
データ安全性モニタリング委員会は、対象の安全性、リスク/利益、用量漸増、用量低減及び研究の終了をモニタリングする際に治験依頼者を支援するために設立された。
【0237】
研究中に許可及び禁止された処置
研究中に許可された処置
[用量漸増段階]
(a)鎮痛剤:非ステロイド系抗炎症薬(NSAID)、NSAID以外の鎮痛剤(アスピリンなど)、及びアヘン剤を疼痛コントロールのために使用することができる。
(b)医師が必要と判断した場合、GCSF及び造血増殖因子が用量漸増段階において許可された。
(c)抗ヒスタミン剤(H1及びH2)及び充血除去剤:セチリジンHCl、フェキソフェナジンHCl、レボセチリジン及びプソイドエフェドリン。
(d)制吐及びかゆみ止め治療。
(e)ビスホスホネートによる治療(例えば、骨転移を処置するため)は、治験責任医師の裁量であった。
【0238】
[コホート拡大段階]
(a)鎮痛剤:非ステロイド系抗炎症薬(NSAID)、NSAID以外の鎮痛剤(アスピリンなど)、及びアヘン剤を疼痛コントロールのために使用することができる。
(b)抗ヒスタミン剤(H1及びH2)及び充血除去剤:ジフェンヒドラミン、ヒドロキシジン、シメチジン、ラニチジン、ファモチジン、セチリジンHCl、フェキソフェナジンHCl、レボセチリジン及びプソイドエフェドリン。
(c)制吐(例えば、オンダンセトロン)及びかゆみ止め(例えば、ジフェンヒドラミン又はヒドロキシジン)治療。
(d)ビスホスホネートによる治療(例えば、骨転移を処置するため)は、治験責任医師の裁量である。
(e)EGFR/ALKTKI(例えば、ゲフィチニブ、エルロチニブ、アファチニブ及びクリゾチニブ)、EGFR mAb(ネシツムマブ)、ベバシズマブ及びPD-1/PD-L1阻害剤(例えば、ペンブロリズマブ及びニボルマブ)
【0239】
研究中の禁止された処置
以下の処置が、研究の終了まで研究の処置中及び処置後期間に禁止された。
【0240】
[用量漸増段階]
(a)抗がん処置:他の抗がん治療は研究中許可されなかった。他の化学療法薬剤、化学療法剤、能動又は受動免疫療法のリストには、以下が含まれるが、これらに限定されなかった:
化学療法剤:代謝拮抗剤、アルキル化剤、ビンカアルカロイド、エピポドフィロトキシン、タキサン、カンプトテシン、抗腫瘍抗生物質、ニトロソウレア葉酸アナログ代謝阻害剤及び種々の細胞傷害剤。
【0241】
手術
放射線療法
(b)生物剤:モノクローナル抗体、インターフェロン及びインターロイキン
(c)免疫療法:シクロスポリン、ラパマイシン、タクロリムス、リツキシマブ、アレムツズマブ、ナタリズマブなど。
(d)ステロイド:CT/MRIスキャンにおける予防的単回使用又は承認された適応症におけるその他の1回の使用を除く、iv/経口ステロイド。iv/経口ステロイド投与と、OBI-833/OBI-821の初回投与との間の間隔は、薬理学的持続時間又は投与されたステロイドの5半減期のいずれか長い方を超えなければならない。
【0242】
吸入及び局所ステロイドの使用は許可された。
【0243】
(e)チロシンキナーゼ阻害剤
(f)代替及び補完薬は免疫系に影響を及ぼすことがある。
(g)その他の治験薬
【0244】
[コホート拡大段階]
(a)抗がん処置:化学療法薬剤、能動又は受動免疫療法のリストには、以下が含まれるが、これらに限定されなかった:
化学療法剤:代謝拮抗剤、アルキル化剤、ビンカアルカロイド、エピポドフィロトキシン、タキサン、カンプトテシン、抗腫瘍抗生物質、ニトロソウレア葉酸アナログ代謝阻害剤及び種々の細胞傷害剤。EGFR/ALK TKIは許可される。
【0245】
手術
放射線療法
(b)生物剤:インターフェロン、インターロイキン、デノスマブ(RANKL阻害剤)、GCSF及び造血増殖因子
(c)免疫療法:シクロスポリン、ラパマイシン、タクロリムス、リツキシマブ、アレムツズマブ、ナタリズマブ、シクロホスファミドなど(PD-1/PD-L1アンタゴニストを除く)。
(d)ステロイド:CT/MRIスキャンにおける予防的単回使用又は承認された適応症におけるその他の1回の使用を除く、iv/経口ステロイド。iv/経口ステロイド投与と、OBI-833/OBI-821の初回投与との間の間隔は、薬理学的持続時間又は投与されたステロイドの5半減期のいずれか長い方を超えなければならない。
【0246】
局所(注射部位を除く)及び吸入ステロイドの使用は許可された
【0247】
(e)代替及び補完薬は免疫系に影響を及ぼすことがある。
(f)その他の治験薬
(g)疾患進行後に処置を継続した対象は、承認された全ての抗がん治療の併用を許可された。
【0248】
治験薬情報
OBI-833(グロボH-CRM197)
配合:
OBI-833は、使い捨ての2mLの琥珀色のホウケイ酸ガラス血清バイアル中の滅菌凍結乾燥粉末薬物製品として供給される。各バイアルは、リン酸カリウム緩衝生理食塩水、スクロース及びポリソルベート80とともにCRM197と結合した150μgのグロボHを含有する。薬物製品の外観仕様は、凍結乾燥ケーキ/粉末である。OBI-833薬物製品の復元溶液は透明な液体である。
【0249】
供給源及び薬理学:
OBI-833は、交差反応性物質197(CRM197)と呼ばれる不活性及び非毒性の形態のジフテリア毒素(DT)である担体タンパク質に共有結合している、糖鎖腫瘍抗原であるグロボHを含む複合糖質である。
【0250】
グロボH-CRM197(DT)によるマウスの免疫化は、グロボH、SSEA-3及びSSEA-4と反応する抗体を誘導し、グロボHベースのワクチンが、グロボH、SSEA-3及びSSEA-4を発現する腫瘍細胞を標的とすることを示唆している。より具体的には、グロボH、SSEA-3及びSSEA-4は、乳がん、肝細胞がん(HCC)、肺がん、口腔がん、胃がん及び膵臓がんのヒト組織内で発現することが見出されているため、OBI-833/OBI-821の免疫化から生成された抗グロボH、SSEA-3及びSSEA-4抗体は、上述のがんの種類における腫瘍細胞を標的とすることができると仮定される。
【0251】
OBI-821
配合:
OBI-821は、125μgのOBI-821、リン酸ナトリウム緩衝生理食塩水及びトレハロースを含有する個別の2mLの琥珀色のホウケイ酸ガラス血清バイアル中の凍結乾燥粉末/ケーキである。
【0252】
供給源及び薬理学:
OBI-821は、キラヤ・サポナリアモリーナの木の樹皮に由来するサポニンベースのアジュバントである。OBI-821は精製されたサポニンであり、別のアジュバントであるQS-21に関する文献に見出される記述と構造的に類似している。OBI-821は異性体の混合物として存在する。主な成分はOBI-821-V1Aとして指定され、バランスは密接に関連したアナログの群である。
【0253】
OBI-821は、担体タンパク質にコンジュゲートした糖鎖腫瘍抗原に対する抗原特異的抗体を含む、様々な免疫学的活性を刺激することが示されている。OBI-821はまた、サブユニット抗原ワクチンへの主要組織適合遺伝子複合体(MHC)制限クラスI細胞傷害性Tリンパ球の誘導、及び抗原特異的細胞増殖を増強する。
【0254】
臨床試験材料(CTM)の供給、パッケージング、標識付け及び保管
全てのCTMは、OBI Pharmaによって供給され、適切な安全性、保管条件下に維持しなければならない。治験薬の容器に標識付けされている使用期限後にCTMを使用してはならない。
【0255】
治験薬の供給
OBI-833(150μgのグロボHに相当)及びOBI-821(125μg)は、別個の使い捨てバイアルで提供される。OBI-821は、各注射時(混合後2時間以内)にOBI-833と混合される。注射後、残りのOBI-833/OBI-821混合物は再利用できない。
【0256】
各注射用量は、10μg、30μg又は100μgのグロボH等価物を含有する100μgのOBI-821及びOBI-833の混合物からなる。OBI-833薬物製品は水中で復元され、復元されたOBI-821とすぐに混合される。新たなに合わせられたOBI-833/OBI-821混合物は、皮下注射により投与される。実施例1は、注射用のOBI-833及びOBI-821の調製及び混合の詳細な手順である。
【0257】
治験薬保管
OBI-833及びOBI-821は、別個の使い捨てバイアルで提供される。OBI-821は注射時にOBI-833と混合される。OBI-833及びOBI-821の両方の薬物製品のバイアルについて推奨される保管温度は2~8℃である。
【0258】
研究エンドポイント
主要エンドポイント
主要エンドポイントは、有害事象、臨床検査値の変化並びにバイタルサイン及び身体検査結果の変化によって評価されるOBI-833/OBI-821の安全性及び耐容性である。
【0259】
副次エンドポイント
(a)抗グロボH IgG及びIgM産生によって評価された免疫応答。
(b)RECIST 1.1基準に従った腫瘍応答。
【0260】
安全性評価
(a)毒性及び有害事象を、皮下用量のOBI-833/OBI-821免疫化後にNCI CTCAE v4.0によって評価した。
(b)安全性及び毒性を、対象が受けたOBI-833/OBI-821の用量及び少なくとも1用量のOBI-833/OBI-821を受けた全ての対象によって評価した。全ての対象をフォローアップするためにあらゆる努力が払われるべきであり、処置からの離脱にかかわらず、研究終結又は対象の死亡まで全ての予定された査定が実施されるべきである。
(c)研究の終了/早期終了時に持続するいずれかの臨床的に重大な異常は、解消するまで、又は臨床的に安定したエンドポイントに達するまで治験責任医師によって追跡された。
【0261】
安全変数
(a)毒性及び有害事象(NCI CTCAE v4.0によって評価した)。
(b)安全性臨床検査(尿検査、血液学及び血清化学)。
(c)バイタルサイン(血圧、呼吸数、脈拍及び体温)。
(d)肝臓及び腎臓の機能。
(e)身体検査。
(f)ECG。
【0262】
応答基準
RECIST 1.1による腫瘍応答についての基準:
RECIST 1.1を、この研究の解析のためのガイドラインとして使用した。画像を、胸部、腹部及び骨盤領域から撮影した。ベースライン/スクリーニング腫瘍負荷を、画像化された身体系に含まれる臓器系全体を査定することによって取得した。この腫瘍負荷を、測定可能(標的病変)又は測定不能(非標的病変)として分類した。このベースライン/スクリーニングを確立する目的は、処置中の応答のその後の評価を可能にすることである。
【0263】
腫瘍病変の測定可能性についての定義
測定可能:
腫瘍病変は、以下の最小サイズで少なくとも一次元(測定面の最長径が記録される)で正確に測定されなければならない。
【0264】
(a)CTスキャンにより10mm(CTスキャンのスライス厚は2.5mm~5mmであることが推奨される)。
(b)臨床検査による10mmのノギス測定(ノギスで正確に測定できない病変は、測定不能として記録すべきである)。
(c)胸部X線により20mm。
(d)悪性リンパ節:
病理学的に拡大し、測定可能であるとみなされるには、リンパ節は、CTスキャンによって評価した場合、短軸で15mm未満でなければならない(CTスキャンのスライス厚は2.5mm~5mmであることが推奨される)。ベースラインにおいて、及びフォローアップの間、短軸のみが測定され、追跡された。リンパ節測定に関する情報については、以下の「標的及び非標的病変のベースライン文書化」に関する注記も参照されたい。以前に放射線を照射された領域、又は他の局所領域療法を受けた領域にある腫瘍病変は、通常、病変の進行が実証されていない限り、測定可能とはみなされない。
【0265】
測定不能:
小さな病変(最長径10mm未満又は10mm以上~15mm未満の短軸を有する病理学的リンパ節)及び完全に測定不能な病変を含む、全て他の病変。
【0266】
完全に測定不能とみなされる病変には、軟膜疾患、腹水、胸水又は心外膜液、炎症性乳房疾患、皮膚又は肺のリンパ管性障害、再現性のあるイメージング技術によって測定できない身体検査によって特定された腹部腫瘤/腹部臓器肥大が含まれる。
【0267】
腫瘍病変の記録
1つより多い測定可能な病変がベースラインで存在する場合、全ての障害のある臓器を代表する最大で合計5個までの病変(及び臓器あたり最大で2個の病変)の全ての病変は、標的病変として特定されなければならず、ベースラインで測定された(これは、対象が、1つ又は2つのみの障害のある臓器部位を有する場合、それぞれ最大で2つ及び4つの病変を記録したことを意味する)。
【0268】
全ての標的病変についての直径の合計(非結節性病変では最長、結節性病変では短軸)を計算し、ベースライン合計直径として報告した。リンパ節が合計に含まれる場合、上記のように、短軸のみが合計に追加される。ベースライン合計直径を、疾患の測定可能な寸法でいずれかの客観的な腫瘍退縮をさらに特徴付けるための参照として使用した。
【0269】
病理学的リンパ節を含む全ての他の病変(又は疾患部位)は、非標的病変として特定されるべきであり、ベースラインでも記録されるべきである。測定は必要とせず、これらの病変は、「存在」、「不在」、又はまれな症例では「明確な進行」として追跡されるべきである。
【0270】
さらに、同じ臓器に関与する複数の非標的病変を症例記録フォーム上の単一の項目として記録することが可能である(例えば、「多発性骨盤リンパ節肥大」又は「多発性肝転移」)。
【0271】
応答査定
標的病変
(a)完全奏効(CR):全ての標的病変の消失。いずれの病理学的リンパ節(標的又は非標的にかかわらず)も、短軸が10mm未満に縮小していなければならない。
(b)部分奏効(PR):ベースラインの合計直径を参照として考慮して、標的病変の直径の合計が少なくとも30%減少する。
(c)安定疾患(SD):研究の間の最小の合計直径を参照として考慮して、PRに適格となるのに十分な縮小も、PDに適格となるのに十分な増加もない。測定値は、研究登録後、最低6週間の間隔で少なくとも1回SD基準を満たさなければならない。
(d)進行性疾患(PD):研究中の最小の合計を参照として考慮して、標的病変の直径の合計が少なくとも20%増加する(これは、研究中の最小の場合のベースラインの合計を含む)。20%の相対的な増加に加えて、合計はまた、少なくとも5mmの絶対的増加を実証しなければならない。(注記:1つ以上の新たな病変の出現も進行とみなされる)。
(e)各時点で、新たな病変の存在又は不在を評価した。
【0272】
非標的病変
(a)完全奏効(CR):全ての非標的病変の消失及び腫瘍マーカーレベルの正常化。全てのリンパ節は、非病理学的なサイズ(10mm未満の短軸)でなければならない。
(b)安定疾患(SD):1つ以上の非標的病変の持続及び/又は正常限界を超える腫瘍マーカーレベルの維持。
(c)進行性疾患(PD):既存の非標的病変の明確な進行。(注記:1つ以上の新たな病変の出現も進行とみなされる)。全体応答の状況を表1に列挙する。
【0273】
【0274】
プロトコール治療から除外するための基準及び研究中止基準
プロトコール治療から除外するための基準
対象は、以下の理由のいずれかのために治験薬による研究処置を中止した:
(a)用量漸増段階におけるRECIST 1.1基準に基づく疾患進行の証拠。
(b)不遵守。
(c)対象が自発的に彼/彼女の同意を撤回した。
(d)対象がDLTを発症する。
(e)異常な医学的状況:治験責任医師の意見において、ウェルビーイングのために中止すべきである対象、又はこのプロトコールによって処方された処置が、対象の健康に有害である時にはいつでも、対象は研究から離脱することができる。この事象では、離脱のための理由は明確に文書化されなければならない。
(f)対象が処置期間中に妊娠した場合又は授乳を必要とする場合。
(g)疾患進行ではなくプロトコール治療を中止している対象は、研究の終了の訪問を完了する必要がある。
(h)生存している全ての対象は、電話連絡又は対象のクリニック訪問により、最長24週間で12週間ごとに生存状況についてフォローアップされた。
【0275】
研究中止基準
(a)死亡。
(b)フォローアップ不能:治験責任医師又は研究スタッフが、4週間の期間にわたって少なくとも2回対象に接触しようとして失敗した後、次いで対象はフォローアップ不能とみなされる場合がある。
(c)同意の撤回:対象が自発的に研究から離脱することを決定し、フォローアップ情報の収集を拒否する。
【0276】
統計的考察
目標標本サイズ
最大数18人の対象を用量漸増段階に登録することができ、最大数14人の対象をコホート拡大段階に登録することができる。最大で合計32人の対象をこの第I相研究に登録することができる。研究についての標本サイズは、統計的考察によって決定されたものではない。研究は、その後の研究についての用量選択を容易にするために潜在的な用量応答関係を査定するためにパイロット及び探索的な性質のものであると考えられる。
【0277】
安全性及び毒性
MedDRA(国際医薬用語集(Medical Dictionary for Regulatory Affairs))と併用したUS NCI共通毒性基準バージョン4.0によって等級分けされた毒性を利用して、研究処置の安全性プロファイルを査定した。
【0278】
統計的方法
解析セット
(a)安全性集団は、少なくとも1用量の治験薬を受け、少なくとも1回の投与後安全性評価を受けた対象の群である。
(b)DLT査定集団は、安全性集団における対象を含み、以下の基準を満たした対象を除外した:5回の注射を完了しなかった理由が、用量漸増段階における関連するAE又はDLTの発症以外(例えば、不遵守又は同意の撤回)であった。
(c)免疫応答集団は、少なくとも1用量の治験製品を受け、抗グロボH IgG又はIgMを産生した対象の群である。
(d)腫瘍応答集団は、少なくとも1用量の治験製品を受けた全ての登録された対象を含む。
【0279】
早期終了及び欠損値
全ての利用可能なデータを表示し、データ解析に利用した。研究処置を早期終了した対象をまとめた。早期終了した対象のリストには、終了の日付及び理由が付けられた。欠損データは、任意の推定値又は帰属値に置き換えられない。
【0280】
ベースライン
表1及び2-処置期間及び処置後期間に詳述されているように、臨床所見、臨床検査査定、バイタルサイン、身体検査、ECG及びパフォーマンスステータスについてのベースラインを、登録時に査定した。
【0281】
安全性解析
有害事象
有害事象は、初回用量の研究薬物の投与の日時に若しくはその後に始まった場合、又は初回用量の研究薬物の投与の前に存在し、研究中に重症度が増加した場合、処置下での発現(TEAE)とみなした。
【0282】
有害事象(AE)は、標準的な国際医薬用語集(Medical Dictionary for Regulatory Activities)(MedDRA)辞書を使用してコード化され、器官別大分類及び優先使用語及び事象によって分類された。TEAEは、対象全体の頻度及び割合、器官別大分類及び優先使用語によってまとめられた。全ての事象、CTCグレードによる事象、及び研究薬物との関係による事象について個別の要約が与えられた。全てのAEはデータ一覧で提供された。
【0283】
研究中に死亡した対象をまとめて、リスト化した。重篤な有害事象(SAE)を有する対象をまとめて、リスト化した。中止に至った又は薬物用量の変更に至ったAEをまとめた。
【0284】
臨床検査パラメーター
各臨床検査解析を、記述統計の平均(標準偏差)、中央値(範囲、最小、最大)を使用してまとめた。ベースラインからの変化もまとめる。著しく異常な臨床検査値の発生率が提供された。
【0285】
他の安全性パラメーター
バイタルサイン、ECG、併用薬及び研究薬物曝露などの他の安全性パラメーターを、要約表及び記述統計によってまとめた。
【0286】
免疫応答解析
用量コホートごとの各評価時点でのELISAによって決定された抗グロボH IgG及びIgM力価の結果を、記述統計を使用してまとめた。ベースライン(1週目)からの変化もまとめる。各IgGタイプについての最大応答、最大応答までの時間及び応答曲線下面積を、潜在的な用量応答関係の査定を支援するために決定することができる。
【0287】
免疫応答も、必要に応じて固形腫瘍がんの種類に基づいて、又はベースライン(1週目又はスクリーニング)におけるグロボH、SSEA-3、SSEA-4及びPD-L1抗原のIHC結果に基づいて解析し、まとめることができる。
【0288】
他のバイオマーカーの探索的解析
用量コホートごとの各評価時点における他のバイオマーカー(抗SSEA-3、抗SSEA-4抗体、CTC、ADCC、CDC)の探索的解析の結果を、記述統計を使用してまとめた。ベースライン(1週目)からの変化もまとめる。細胞性免疫応答(B細胞及びT細胞)を、8週目の後、血清抗グロボH、抗SSEA-3又は抗SSEA-4 IgGのいずれかが20μg/mlに達した後、4回の連続訪問について解析した。B/T細胞免疫ゲノム解析を、スクリーニング時、6、12、20、64週目、及び1回目の疾患進行から8週間後まで8週間ごとに行った。エクスビボ免疫原性解析を、スクリーニング訪問時に行った。抗グロボH、抗SSEA-3及び抗SSEA-4抗体を、定量的ELISA及びグリカンアレイによって査定した。Cobas EGFR突然変異検査を、台湾の選択された施設内で既知のEGFR突然変異を有する全ての対象について1、12、40週目、及び処置後期間1に行った。
【0289】
有害事象及び重篤な有害事象
臨床試験からの安全性情報のタイムリーで正確及び完全な報告及び解析は、対象、治験責任医師及び治験依頼者の保護に極めて重要であり、世界中の規制機関によって義務付けられている。治験依頼者は、安全性情報の適切な報告を確実にするために、世界中の規制要件に準拠した標準操作手順(SOP)を確立しており、OBI Pharma,Inc.又はその関連会社が支援する全ての臨床試験は、これらの手順に従って行われた。
【0290】
治験責任医師及び/又は委任された現場スタッフは、有害事象(AE)又は重篤な有害事象(SAE)の定義を満たす事象を検出、文書化、及び報告する責任を負う。研究中に、コホート安全性査定が存在する場合、治験責任医師又は現場スタッフは、全てのAE及びSAEを検出、文書化及び報告する責任を負った。AE及びSAEを、OBI-833/OBI-821の投薬の開始から研究の終了まで収集した。
【0291】
有害事象
ICHガイドラインに基づくと、有害事象(AE)は、医薬製品を投与された臨床研究の対象における何らかの望ましくない医療上の出来事として定義されている。AEは必ずしも処置と因果関係があるとは限らない。したがって、AEは、治験薬に関連するか否かにかかわらず、医薬製品の使用に一時的に関連する何らかの好ましくなく、意図しない兆候(異常所見を含む)、症状又は疾患である可能性がある。これには、新たに発症する又はベースライン状態から重症度若しくは頻度が悪化する又は臨床検査の異常を含む診断手順の異常な結果であるいずれかの出来事が含まれる。
【0292】
処置関連AE
有害事象(AE)及び毒性を、研究全体を通じて評価し、国立がん研究所のがん治療査定プログラム(Cancer Therapy Evaluation Program)より開発されたUS NCI共通毒性基準、バージョン4.0に従って等級分けした。許容できない毒性についての基準は、局所皮膚反応、発熱、悪寒、発汗、蕁麻疹及び/又はそう痒症を除く、あらゆるグレード4の毒性が含むべきである。なぜなら、これらは抗体/アジュバント投与の一般的な副作用であり、可逆的であり、補助的管理によって制御されるからである。理論的には、皮膚、関節、腎臓又は他の徴候により示される免疫複合体疾患が発生する可能性があるが、これらは、マウスタンパク質への事前曝露がなければ、まれであるはずである。これらは影響を受けた対象の治療を中止する目安であったが、新たな対象は増やし続けてもよい。
【0293】
一般に、グレード1(軽度)及びグレード2(中等度)の有害事象は許容されると考えられる。グレード3のAEは、重度ではあるが、主要な臓器及び臓器の機能に関与する可逆的又は医学的に管理可能な状態である。グレード4のAEは生命を脅かす結果であり、緊急介入が必要とされる。
【0294】
あらゆる有害事象は、対象の医療記録及びeCRFに記録されなければならない。発症日及び終了日、重症度、持続期間、治験薬投与に対する影響(例えば、中止)、治験薬との関係並びにAEの処置のための任意の他の薬物の投与を、各有害事象について記録した。
【0295】
対象は、有害事象の証拠について治験責任医師又は彼/彼女の指名された人によって質問及び/又は検査を受けた。有害事象の出来事の可能性に関する対象への質問は、「あなたの最後の訪問からどのような感じでしたか?」のように一般化された。特定の有害事象の存在又は不在について対象に求めるべきではない。
【0296】
予想される有害事象
グロボHに関するこれまでの報告及び臨床研究では、薬物関連の重篤な有害効果は示されていなかった。有害効果は一般に軽度から中等度であり、最も一般的な有害効果は軽度のインフルエンザ様症状及び皮下注射部位における一時的な局所皮膚反応であった。しかしながら、全ての免疫療法及びワクチンと同様に、アレルギー又は自己免疫反応の可能性が発生する場合がある。免疫療法処置による重篤な毒性が発生した場合、処置中止手順のガイドラインに従う必要がある。
【0297】
処置との関係の評価
治験責任医師は、以下のガイドラインを使用して、入手可能な情報に基づいて、あらゆる有害事象と治験薬の使用との関係を評価しなければならない:
(a)関係なし:
治験薬の投与と時間的な関係はない。ネガティブ脱チャレンジ(negative dechallenge)及び再チャレンジの情報を有する場合がある。典型的には、外部要因(例えば、合併症、環境要因又は他の医薬若しくは化学物質)によって説明される。
(b)関係する可能性が低い:
因果関係がありそうもない治験薬の投与との時間的な関係があり、他の医薬、化学物質又は基礎疾患によってもっともらしい説明が提供される。
(c)関係する可能性が高い:
治験薬の投与に対して合理的な時系列があるが、併発疾患又は他の医薬若しくは化学物質によっても説明できる。処置離脱に関する情報が不足している又は不明瞭である場合がある。
(d)おそらく関係がある:
治験薬の投与に対して合理的な時系列があり、併発疾患又は他の医薬若しくは化学物質に起因する可能性が低く、離脱(脱チャレンジ)時に臨床的に合理的な応答が続く。
(e)明らかに関係がある:
治験薬の投与に対して妥当な時間的関係で発生し、併発疾患又は他の医薬若しくは化学物質では説明できない。処置の離脱に対する応答は臨床的に妥当でなければならない。
【0298】
重篤な有害事象
ICHガイドラインに基づくと、SAEは、任意の用量における何らかの望ましくない医療上の出来事として定義されている:
(a)死亡に至る。
(b)生命を脅かす(対象は事象の時に死亡のリスクがあった。これは、より重篤な場合に死亡を引き起こした可能性があると仮定される事象を指すものではない。
(c)持続的又は重大な身体障害/不能状態に至る。
(d)入院患者の入院を必要とする又はER訪問の延長(24時間以上)に至る。
(e)先天性異常/出生異常に至る。
(f)医学的に重要である*。
【0299】
*直ちに生命を脅かす可能性がない又は死亡若しくは入院(24時間以上)に至る可能性がないが、対象を危険にさらす可能性がある又は上記の定義に挙げた転帰の1つを防ぐために介入を必要とする可能性があるいずれかの重要な医療事象。
【0300】
研究の終了までに解消しなかった又は対象の研究への参加を中止しても解消しなかった全てのSAEは、以下のいずれかが発生するまで追跡されなければならない:
(a)事象が解消する
(b)事象が安定する
(c)ベースライン値/ステータスが利用可能な場合、事象はベースラインに戻る
(d)事象は、研究処置以外の別の薬剤又は研究の実施に無関係な要因に起因する可能性がある
(e)いずれかの追加情報を入手できる可能性が低くなる(対象又は医療従事者が追加情報を提供することを拒否し、フォローアップの取り組みによる相当な注意の実証後にフォローアップ不能になる)
【0301】
対象の臨床研究への参加の過程の間に発生する入院を必要とする(又は入院の延長に至る)あらゆる事象は、以下のための入院を除いてSAEとして報告されなければならない。
【0302】
(a)AEの不在下での社会的理由
(b)研究への登録前に計画されていた手術又は処置(CRFに文書化されなければならない)
(c)疾患の処置のための待機的入院(例えば、治験薬の初回投与で処置される対象)
疾患進行はAE又はSAEの用語として記録されるべきではなく、代わりに、疾患進行/有効性の欠如に起因する臨床的続発症の兆候及び症状が、SAEの定義を満たす場合に報告された。
【0303】
重篤な有害事象の報告
OBI Pharma,Inc.又はその指名された人は、治験責任医師が事象を認識してから24時間以内に、薬物関連とみなされる又は予想されるか否かにかかわらず、全ての重篤な有害事象の出来事を通知されなければならない。この報告の時間枠は、新しい情報更新のための重篤な有害事象のフォローアップ報告にも適用される。
【0304】
重篤な有害事象(SAE)は、最初の投薬日から開始して処置後期間の最後のフォローアップ訪問まで、OBI Pharma,Inc.又はその指名された人への即時の通知を必要とする。処置期間中に治療を離脱した対象については、重篤な有害事象は、研究製品の最後の投与後28日間ずっとOBI Pharma,Inc.に報告されなければならない。
【0305】
しかしながら、上記で定義した報告期間後に何らかの重篤な有害事象が発生した場合、因果関係が疑われる場合には認識してから24時間以内に報告する必要がある。
【0306】
保健当局に関しては、全ての重篤な有害事象報告が提出され、地方規制に従った。
【0307】
治験依頼者(OBI Pharma Inc.)は、米国公衆衛生法(USA Public Health Service Act)、連邦食品・医薬品・化粧品法(Federal Food,Drug,and Cosmetic Act)、及び連邦規則集(Code of Federal Regulations)(CFR)の適用部分を遵守する責任も負う。これらの責任には、(1)情報を最初に受け取った後、7暦日以内のファックスによる、製品の使用に関連する何らかの予期せぬ致命的又は生命を脅かす有害な経験の報告[21 CFR 312.32(c)(2)];(2)情報を最初に受け取った後、15暦日以内の書面での、重篤及び予期せぬことの両方である製品の使用に関連する何らかの有害な経験の報告[21 CFR 312.32(c)(1)];及び年次進捗状況報告書の提出(21 CFR 312.33)が含まれる。
【0308】
妊娠
対象が研究期間中に妊娠していることが後で判明した場合、研究処置は適切な方法で永久に中止された。
【0309】
治験責任医師は、この事象を認識してから24時間以内に、OBI Pharma,Inc.又はその指名された人に通知しなければならない。
【0310】
妊娠事象は、最初の投薬日から開始して処置後期間の最後のフォローアップ訪問まで、OBI Pharma,Inc.又はその指名された人への即時の通知を必要とする。処置期間中に研究を離脱した対象については、妊娠事象は、研究製品の最後の投与から28日後までにOBI Pharma,Inc.に報告されなければならない。
【0311】
さらに、治験責任医師は、周産期及び新生児転帰を含む、妊娠の経過に関するフォローアップ情報を、OBI Pharma,Inc.又はその指名された人に報告しなければならない。
【0312】
データ安全性モニタリング委員会
データ安全性モニタリング委員会は、対象の安全性、リスク/利益をモニタリングし、用量漸増、用量変更及び研究の終了を決定する際に治験依頼者を支援するために設立された。
【0313】
研究の投与及びモニタリング
治験審査委員会の承認
この提案された研究は、適切に構成された治験審査委員会(IRB)の承認を得なければならない。治験責任医師は、プロトコール、プロトコールの修正、同意説明フォーム、募集資料及び対象に提供すべき任意の他の書面による情報についてIRBから書面による日付のある承認を得る。
【0314】
同意説明フォーム
各対象(又は法的に権限を与えられた代表者)は、研究の性質が十分に説明された後、現地の要件に従って書面による同意を与えなければならない(及び他の現地で必要な文書に署名しなければならない)。あらゆる研究に関連する活動を実施する前に同意フォームに署名しなければならない。使用される同意フォームは、治験依頼者及び審査するIEC/IRBの両方によって承認されなければならない。同意説明は、ヘルシンキ宣言の最新改訂版、現在の医薬品規制調和国際会議(ICH)及び医薬品の臨床試験の実施に関する基準(Good Clinical Practice)(GCP)のガイドライン、並びにOBI Pharma,Inc.又はその指名された人の方針に従わなければならない。
【0315】
治験責任医師又は施設の方針及び手順に従って同意を得ている人は、潜在的な対象又はその法定代理人に、試験の目的、方法、合理的に予想される利益及び潜在的な危険性、並びに対象が経験する可能性がある不快感について説明しなければならない。対象には、試験に参加しない自由があること、及びいつでも参加の同意を撤回できることが知らせられた。対象は、参加を拒否した場合、どの代替処置が利用可能であるか、及びそのような拒否が将来の処置に不利益をもたらすものではないことを告げられた。最後に、対象は、彼らの記録が、所管官庁及び権限保持者によって検査される可能性があるが、個人情報は極秘として扱われ、公表されることはないことを告げられた。対象には質問をする機会が与えられなければならない。この説明の後、かつ試験に登録する前に、同意は、対象又は彼/彼女の法定代理人の日付のある署名によって適切に記録されるべきである。対象及び彼/彼女の法定代理人が読むことができない場合、同意プロセスは施設の方針及び手順に従って行われた。
【0316】
対象は、同意説明フォームの署名した日付のあるコピーを受け取らなければならない。署名した同意説明フォーム(修正された同意を含む)のコピーは、研究参加前に対象に渡さなければならない。治験責任医師は、各対象の署名された同意フォームをファイルに保管し、モニターによる審査及び規制機関による検査のためにいつでもすぐに利用できるようにしなければならない。
【0317】
研究の実施及びモニタリング
研究の全ての態様は、ICH及び医薬品の臨床試験の実施に関する基準のガイドラインの下で実施した。これは、治験依頼者が指定した資格のある個人によってモニタリングされた。モニタリングは、医薬品の臨床試験の実施に関する基準及び適用される政府規制を遵守するための標準操作手順に従って実施された。治験責任医師は、モニターが臨床的供給品、調剤及び保管場所、並びに研究対象の臨床ファイルにアクセスすることに同意し、要請があればモニターを支援することに同意する。
【0318】
症例報告書
この研究からのデータは、指定された開発業務受託機関(CRO)を介して治験依頼者によって採用された検証済みの電子データキャプチャ(EDC)システムを使用して電子症例報告書(eCRF)に入力された。現場担当者は、eCRFの完了に対して詳細なトレーニングを受ける。入力された全てのデータは中心の場所で電子的にレビューされ、いずれかの矛盾又は釈明は、現場での日常的な臨床モニタリングの間に修正された。データベースに入力された併用薬は、WHO薬物参照リストを使用してコード化された。有害事象は、国際医薬用語集(MedDRA)の用語を使用してコード化された。全ての適用されるeCRFの完了を確実にし、治験依頼者が指定したCROによる使用説明書に従って全てのeCRFをレビューし、承認することは治験責任医師の責任である。
【0319】
品質管理及び品質保証
正確で、完全で、信頼性の高いデータを保証するために、OBI Pharma,Inc.又はその代表者は、定期的なモニタリング訪問を実施して、プロトコール及びGCPが遵守されていることを確認する。モニターはソース文書をレビューし、eCRFに記録されたデータが正確であることを確認する。現場は、IRBによる審査及び/又はOBI Pharma,Inc.若しくはその代表者によって実施される品質保証の監査を受ける場合がある。
【0320】
薬物アカウンタビリティ
現場で受領した全ての研究薬物が、研究全体にわたって目録を作成され、数を計算され、試験センターファイルに維持される薬物アカウンタビリティフォームに記録されることを保証するのは、臨床治験責任医師の責任である。薬物アカウンタビリティは、現場でのモニタリング訪問の間、モニターによって検証された。研究薬物は、温度仕様に従ってアクセスが制限された場所に保管された。
【0321】
治験責任医師は、治験依頼者が容器の目録を作成するまで、全ての元の容器が施設の方針に従って保持及び保管されていることを確認する。施設の方針に従って許容できない場合、元の容器は保持及び保管されない。治験依頼者によって別段に指示されない限り、治験責任医師は、研究の終了時に、施設管理者による指示に従って、研究薬物の全ての保持された容器を治験依頼者に返却することに同意する。医療センターの薬剤師又は治験責任医師によって指定された権限のある担当者が、薬物アカウンタビリティ記録に記入する。全ての入力は判読可能であり、完全でなければならない。
【0322】
OBI Pharma,Inc.又はその指名された人は、返却された又は未使用の研究薬物の空又は満杯の元の容器の適切な処分を保証する。適切な文書は維持される。OBI Pharma,Inc.が試験施設での破棄を許可した場合、治験責任医師は、施設の破棄の方針及びOBI Pharma,Inc.が提供するいずれかの使用説明書に従って、適用される規制方針を遵守して材料が破棄されることを保証しなければならない。
【0323】
研究の完了/中止/終了
以下の状況は研究完了とみなされる:
(a)センターでの試験の成功した完了。
(b)試験に必要な数の対象が動員された。
【0324】
研究の終了は、妥当な理由があり、終了予定前に十分な通知が与えられるという条件で、治験依頼者又は治験責任医師によっていつでも行うことができる。
【0325】
治験依頼者がこのような措置を取る理由には、以下が含まれ得るが、これらに限定されない:
(a)治験責任医師が、プロトコール、治験依頼者の手順又はGCPガイドラインを遵守しなかった、
(b)倫理的な懸念、
(c)安全性及び/又は毒性に関する懸念、
(d)有効性の欠如を示唆する十分なデータ、
(e)治験責任医師による対象の不適切な動員。
【0326】
[実施例1]
皮下投与のためのOBI-833及びOBI-821の混合指示
保管条件:OBI-833及びOBI-821のバイアルは両方とも2~8℃で保管されるべきである。
【0327】
研究コホート
コホート1:OBI-833(10μgのグロボH/100μgのOBI-821)
コホート2:OBI-833(30μgのグロボH/100μgのOBI-821)
コホート3:OBI-833(100μgのグロボH/100μgのOBI-821)
治験薬:
オレンジ色のバイアル(OBI-821)
内容物:リン酸ナトリウム緩衝生理食塩水中の125μgのOBI-821及びトレハロース。処置時に、注射器を使用して、0.5mL又は0.9mLの注射用水をオレンジ色のバイアル(OBI-821)に添加してOBI-821溶液を得る:バイアルを4~5回穏やかに反転させることによってバイアル(オレンジ色のバイアル))の内容物を完全に溶解する。バイアルは激しく振るべきではない。3つのコホートについての薬物混合手順に従って、OBI-821は、WFIで復元された後、注射のために直ちにOBI-833と混合される。
【0328】
【0329】
緑色のバイアル(OBI-833)
内容物:リン酸カリウム緩衝生理食塩水、スクロース及びポリソルベート80とともにCRM197と結合した150μgのグロボH。処置時に、注射器を使用して、それぞれのコホートに応じて、1.2mL又は2.0mLの注射用水を緑色のバイアルに添加して、OBI-833溶液を得る。バイアルを4~5回穏やかに反転させることによってバイアル(緑色のバイアル)の内容物を完全に溶解する。バイアルは激しく振るべきではない。3つのコホートについての薬物混合手順に従って、OBI-833は、WFIで復元された後、注射のために直ちにOBI-821と混合される。
【0330】
【0331】
処置時に、緑色のバイアル(OBI-833)の内容物及び適切な量の注射用水を以下の表に従って引き出し、オレンジ色のバイアル(OBI-821)に移す。バイアルを4~5回穏やかに反転させることによってオレンジ色のバイアル(OBI-821)の内容物を混合する。バイアルは激しく振るべきではない。この時点で、オレンジ色のバイアル(OBI-821)は、処置剤(OBI-833とOBI-821)を含有し、研究対象への注射の準備が整う。注射用処置剤を含有するオレンジ色のバイアル(OBI-821)から適切な体積を引き出す。
【0332】
【0333】
図6は、コホート1、コホート2及びコホート3における研究薬物の混合手順を示す。微生物の成長の可能性を最小限に抑えるために、組み合わせた製品の投与は復元から2時間以内に行うべきであることが強く推奨される。復元から2時間以内に投与が不可能な場合、組み合わせた製品は、施設の薬局の標準操作手順に従って破棄し、薬物アカウンタビリティ記録に文書化すべきである。
【0334】
表5は、用量漸増段階及びコホート拡大段階の間に禁止される併用薬を示した。
【0335】
【0336】
米国東海岸がん臨床試験グループ(ECOF)パフォーマンス
これらの尺度及び基準は、対象の疾患がどのように進行しているかを評価し、疾患が対象の日常生活の能力にどのような影響を及ぼすかを評価し、適切な処置及び予後を決定するために医師及び研究者によって使用される。これらは医療専門家がアクセスできるようにここに含まれる。これらは、医療専門家がアクセスできるように表6に含まれる。
【0337】
【0338】
[実施例2]
OBI-833-001第1相研究の用量漸増段階の結果
図7は、OBI-833-001臨床研究の設計スキーマ(用量漸増段階及びコホート拡大段階)を示す。用量漸増段階の研究目的は、安全性及び最適な用量の選択である。コホート拡大段階の研究目的は有効性である。
【0339】
US及びTWプロトコールにおいてSOCを有しない再発性/転移性の不治の胃がん、肺がん、結腸直腸がん又は乳がん患者。転移性肺がん及び乳がんを有する患者の場合、少なくとも1回のレジメンの抗がん治療後にCR/PR/SDを達成した対象は、台湾のプロトコールにおいて維持ホルモン療法及び/又は標的療法が許可される。用量漸増段階に登録された患者の詳細を表7に記載した。スクリーニングされた16人の対象のうち、11人の対象が用量漸増相に登録された:コホート1の4人の対象(10μgのOBI833/100μgのOBI-821)、コホート2の3人の対象(30μgのOBI833/100μgのOBI-821)、及びコホート3の4人の対象(100μgのOBI833/100μgのOBI-821)。5件のスクリーニング失敗のうちの4件は、組み入れ/除外基準を満たしていないためであり、1件のスクリーニング失敗はスクリーニングプロセスの間の死亡によるものであった。コホート1では、1人の対象は安定疾患を有し、2人の対象は最良の腫瘍応答として進行性疾患を有した。コホート2の3人全ての対象は最良の腫瘍応答として進行性疾患を有した。コホート3では、1人の対象は安定疾患を有し、1人の対象は最良の腫瘍応答として進行性疾患を有した。
【0340】
【0341】
10μg用量群の4人の患者、30μg用量群の3人の患者及び100μg用量群の4人の患者を含む、合計11人の患者が登録された。
図8はCDCの結果を示し、
図9はADCCの結果を示す。これらは両方とも、OBI-833がCDC及びADCCの効果を誘導できることを示した。
図10は、用量漸増段階における免疫応答を示す。ベースラインでは、用量漸増段階における全ての対象の抗グロボH IgMレベルは1.0μg/mLの検出限界を下回っていた。コホート1の1人を除く全ての対象が、研究訪問時に少なくとも1回、検出可能な抗グロボH IgMレベルを示し、コホート2(範囲:0.746μg/mL~1.773μg/mL)及びコホート3(範囲:1.206μg/mL~2.870μg/mL)のレベルと比較して、コホート1では3週目の訪問から8週目の訪問までで最も高い幾何平均の抗グロボH IgMレベルであった(範囲:1.984μg/mL~3.805μg/mL)。
【0342】
ベースラインでは、用量漸増段階における全ての対象の抗グロボH IgGレベルは、2.0μg/mLの検出限界を下回っていた。5人の対象(コホート1では3人の対象及びコホート3では2人の対象)は、研究訪問中に少なくとも1回、検出可能な抗グロボH IgGレベルを示した。抗グロボH IgGは、コホート2の3人全ての対象において検出されなかった。コホート1での3週目の訪問から8週目の訪問までの幾何平均の抗グロボH IgGレベル(範囲:1.242μg/mL~2.918μg/mL)は、コホート3のレベル(範囲:1.343μg/mL~2.103μg/mL)と同等であった。留意すべきことに、用量漸増段階におけるコホート1の1人の対象及びコホート3の1人の対象のみが、12週目の訪問後の処置期間及び/又は処置後期間に残った。抗グロボH IgGレベルは、コホート1の対象(対象001-001)では32週目の訪問時に91.18μg/mLの高さまで増加した。
【0343】
[実施例3]
OBI-833-001の第1相研究のコホート拡大段階の結果
少なくとも1回の治療レジメン後にSD又はPRを達成したグロボH陽性、転移性NSCLCを有する患者。標的化療法又は抗PD-1/PD-L1療法を受けた患者では、OBI-833が継続中の治療に追加された。コホート拡大段階に登録された14人のNSCLC患者の詳細を表8に記載する。スクリーニングされた24人の対象のうち、14人の対象がコホート拡大段階に登録された。全てのスクリーニングの失敗は、組み入れ/除外基準を満たしていないことによるものであった。コホート拡大段階では、最良の腫瘍応答として完全奏効又は部分奏効を達成した対象はいなかった。1人の対象(対象034-005)は、任意のベースライン後のRECIST査定の前に死亡した。8人の対象は、研究の終了時に進行性疾患の全体的なRECIST応答を有した。5人の対象は、研究の終了時に安定疾患の全体的なRECIST応答を有した。これらの5人の対象のうちの1人(対象034-012)は、12週目及び24週目の訪問時に安定疾患の全体的なRECIST応答を有し、処置後1の訪問時に進行性疾患に悪化した。さらなる腫瘍応答は、処置後2及び研究の終了(最後の注射)の訪問時に安定疾患であった。1人の対象(対象034-010)は、12週目の訪問時(7回目の訪問;85日目)に安定疾患であると報告された。しかしながら、88日目の骨スキャンの報告では、複数の新たな骨病変が明らかになった。したがって、治験責任医師は、研究における対象の最終的な腫瘍応答を進行性疾患として評価した。
【0344】
【0345】
図11は、24人のNSCLC患者の間のグロボH発現レベル(Hスコア)を示す。Hスコアの計算:(1+強度を有する細胞の%)×1+(2+強度を有する細胞の%)×2+(3+強度を有する細胞の%)×3。Hスコアの範囲は0~300である。
図11は、NSCLC患者の50%が、100のHスコアカットオフにおいてグロボH陽性であることを示した。これは、肺がんが、グロボHを高度に発現するがんであることを意味する。
【0346】
図12は、コホート拡大段階における抗グロボH IgM/IgGの免疫応答を示す。ベースラインでは、コホート拡大段階における全ての対象の抗グロボH IgMレベルは、2.16μg/mLの抗グロボH IgMを有した1人の対象(対象034_004)を除いて、1.0μg/mLの検出限界を下回った。1人を除く全ての対象は、研究訪問中に少なくとも1回、検出可能な抗グロボH IgMレベルを示し、幾何平均の抗グロボH IgMレベルは、3週目の訪問から48週目の訪問までで3.616μg/mL~7.389μg/mLの範囲であった。留意すべきことに、対象034_004の抗グロボH IgMレベルは、3週目の訪問で242.81μg/mL及び4週目の訪問で233.15μg/mLまで劇的に増加し、その後、後の数週間で徐々に減少した。抗グロボH IgMレベルは、48週目の訪問後、ほとんどが減少し、一定のままであった。ベースラインでは、コホート拡大段階における全ての対象の抗グロボH IgGレベルは、2.0μg/mLの検出限界を下回った。2人を除く全ての対象は、研究訪問中に少なくとも1回、検出可能な抗グロボH IgGレベルを示し、幾何平均の抗グロボH IgGレベルは、3週目の訪問での1.743μg/mLから48週目の訪問での13.351μg/mLまで徐々に増加した。留意すべきことに、コホート拡大段階における4人未満の対象が、56週目以降の処置期間及び/又は処置後期間に残った。対象034_004の抗グロボH IgGレベルは、56週目の訪問での65.52μg/mLから最後の訪問での120.84μg/mLまで増加し続けた。
【0347】
図13は、コホート拡大段階における抗SSEA3 IgM/IgGの免疫応答を示す。ベースラインでは、それぞれ、1.01μg/mL及び1.47μg/mLの抗SSEA3 IgMレベルを有した2人の対象(対象034_014及び016_002)を除いて、全ての対象の抗SSEA3 IgM及びIgGレベルは検出限界を下回った。幾何平均の抗SSEA3 IgMレベルは、3週目の訪問から48週目の訪問までで2.048μg/mL~5.285μg/mLの範囲であり、幾何平均の抗SSEA3 IgGレベルは、3週目の訪問から48週目の訪問までで1.601μg/mL~9.013μg/mLの範囲であった。
【0348】
図14は、コホート拡大段階における抗SSEA4 IgM/IgGの免疫応答を示す。ベースラインでは、1.17μg/mLの抗SSEA4 IgMレベルを有した1人の対象(対象034_004)を除いて、全ての対象の抗SSEA4 IgM及びIgGレベルは検出限界を下回った。幾何平均の抗SSEA4 IgMレベルは、3週目の訪問から48週目の訪問までで0.872μg/mL~1.348μg/mLの範囲であり、幾何平均の抗SSEA4 IgGレベルは、3週目の訪問から48週目の訪問までで1.131μg/mL~1.924μg/mLの範囲であった。
【0349】
図15は、OBI-833-001用量漸増段階及びコホート拡大段階における全生存期間(OS)を示し、
図16は、OBI-833-001用量漸増段階及びコホート拡大段階における無進行生存(PFS)を示す。コホート1及びコホート3では各々3人の対象、並びにコホート2では3人全ての対象が研究中に死亡し、生存フォローアップの平均(SD)持続期間は、コホート1では9.1(8.76)カ月、コホート2では7.0(5.32)カ月、及びコホート3では6.5(7.86)カ月であった。カプラン・マイヤー法で推定された死亡までの時間の中央値は、コホート1では16.3カ月、コホート2では4.2カ月、及びコホート3では2.9カ月であった。人月あたりの死亡発生率は、コホート1(人月あたり0.082の死[95%CI:0.017、0.240])で最も低く、続いてコホート3(人月あたり0.116の死[95%CI:0.024、0.339])、及びコホート2(人月あたり0.143の死であった。2人の対象が研究中に死亡し、生存フォローアップの平均(SD)持続期間は13.7(9.17)カ月であった。死亡までの時間の中央値は、少数の死のためにカプラン・マイヤー法では推定できなかった。人月あたりの死亡発生率は、コホート拡大段階について人月あたり0.010の死(95%CI:0.001、0.038)であった。
【0350】
さらに、表9は、OBI-833が、標的化療法又は抗PD-1/PD-L1療法を受けている患者に対してCDC及びADCCの効果も誘導できることを示す。ほとんどの患者において、抗グロボH IgGが誘発され、ADCCの効果が観察された。
【0351】
【0352】
最後に、
図17は、EGFR TKI(チロシンキナーゼ阻害剤)及びOBI-833処置期間(1~30カ月)に対するスイマープロットを示す。これは、EGFR TKIで処置された11人の患者のうちの7人が、6か月以上にわたってSDを有したことを示す。これらのうちで、2人の患者は2年超の間処置されている。他方で、
図18は、NSCLC患者の経時的な腫瘍応答を示す。これらのうちで、1人の患者の腫瘍サイズは、OBI-833処置の16カ月後に27%減少し、別の患者において血漿EGFR突然変異荷重は、8.57から0に大幅に減少した。
【0353】
結論として、この研究では、完全奏効又は部分奏効として最良の腫瘍応答を達成した対象はいなかった。しかしながら、用量漸増段階においてコホート1の1人の対象及びコホート3の1人の対象、並びにコホート拡大段階において9人の対象が、最良の腫瘍応答として(永続的な)安定疾患を有した。この研究の結果は、NSCLC患者におけるOBI-833/OBI-821の安全性、免疫応答及び予備的な臨床有効性を実証することができた。
【0354】
参考文献
【0355】
【0356】
本発明の特定の態様を説明し、例示してきたが、そのような態様は本発明の例示に過ぎず、添付の特許請求の範囲に従って解釈されるように本発明を限定するものとして考慮されるべきではない。本明細書で引用される全ての刊行物及び特許出願は、各個々の刊行物又は特許出願が、全ての目的のためにその全体が参照により組み込まれることが具体的かつ個別に示されているかのように、全ての目的のためにそれらの全体が参照により本明細書に組み込まれる。上述の発明は、理解を明確に目的で例示及び実施例によってある程度詳細に説明されているが、本発明の教示に照らして、添付の特許請求の範囲の趣旨又は範囲から逸脱することなく特定の変更及び修正を行うことができることは当業者には容易に明らかであろう。
【国際調査報告】