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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-12-08
(54)【発明の名称】非水膜乳化を使用した持続放出製剤
(51)【国際特許分類】
   A61K 9/52 20060101AFI20231201BHJP
   A61K 47/34 20170101ALI20231201BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20231201BHJP
   A61K 38/02 20060101ALI20231201BHJP
   A61P 27/02 20060101ALI20231201BHJP
【FI】
A61K9/52
A61K47/34
A61K39/395 N
A61K38/02
A61P27/02
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023530680
(86)(22)【出願日】2021-11-24
(85)【翻訳文提出日】2023-05-19
(86)【国際出願番号】 US2021060800
(87)【国際公開番号】W WO2022115588
(87)【国際公開日】2022-06-02
(31)【優先権主張番号】63/118,264
(32)【優先日】2020-11-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】597160510
【氏名又は名称】リジェネロン・ファーマシューティカルズ・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】REGENERON PHARMACEUTICALS, INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100111235
【弁理士】
【氏名又は名称】原 裕子
(74)【代理人】
【識別番号】100195257
【弁理士】
【氏名又は名称】大渕 一志
(72)【発明者】
【氏名】チェン、 ハンター
(72)【発明者】
【氏名】ツァオ、 イミン
【テーマコード(参考)】
4C076
4C084
4C085
【Fターム(参考)】
4C076AA61
4C076AA95
4C076CC10
4C076EE24H
4C076FF31
4C076GG12
4C084AA02
4C084BA22
4C084MA55
4C084NA12
4C084NA13
4C084ZA33
4C085AA14
4C085BB11
4C085EE01
4C085GG01
(57)【要約】
ポリマー及びポリマーコーティングされた微粒子を製造するための非水膜エマルジョン方法が提供される。いくつかの実施形態は、微粉化されたタンパク質粉末及びポリマーを炭化水素溶媒中で合わせて第1の非水溶液を形成し、第1の非水溶液を撹拌して懸濁液を形成し、懸濁液を分散ポンプ内に供給することによって、持続放出又は制御放出微粒子を製造する方法であって、懸濁液を、フルオロカーボン液体及びフッ素系界面活性剤を含む連続相に多孔質膜を介して注入して、フルオロカーボン中炭化水素エマルジョンを形成する、方法を提供する。炭化水素溶媒、フルオロカーボン液体、及びフッ素系界面活性剤を除去し、微粒子を収集する。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリマーコーティングされた微粒子を製造する方法であって、
微粉化タンパク質粉末及びポリマーを炭化水素溶媒中で合わせて、第1の非水溶液を形成することと、
前記第1の非水溶液を撹拌して、懸濁液を形成することと、
前記懸濁液を分散セルに供給することであって、前記懸濁液を、フルオロカーボン液体及びフッ素系界面活性剤を含む連続相の接流の下で、前記連続相に多孔質膜を介して注入して、フルオロカーボン中炭化水素エマルジョンを形成する、供給することと、
前記フルオロカーボン中炭化水素エマルジョンにヒドロフルオロエステルを添加することと、
前記炭化水素溶媒を除去して、硬化微粒子を提供することと、
前記フルオロカーボン液体を除去して、前記微粒子を単離することであって、前記微粒子が、ポリマーのマトリックス内に封入されたタンパク質を含む、除去することと、を含む、方法。
【請求項2】
前記フルオロカーボン液体中の前記微粒子を洗浄することによって、前記微粒子から残留フッ素系界面活性剤を除去するステップと、真空によって前記フルオロカーボンを除去するステップと、ポリエーテルスルホン膜フィルターを使用して前記微粒子を収集するステップと、を更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記フルオロカーボン液体が、ペルフルオロC5~C18化合物を含む、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記炭化水素溶媒が、ジクロロメタン、クロロホルム、トルエン、酢酸エチル、テトラヒドロフラン、又はこれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
フルオロカーボン溶液が、1,1,2,2,3,3,4,4,4-ノナフルオロ-N,N-ビス(1,1,2,2,3,3,4,4,4-ノナフルオロブチル)ブタン-1-アミンを含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記フッ素系界面活性剤が、ペルフルオロポリエーテル-b-ポリエチレングリコール-b-ペルフルオロポリエーテルを含む、請求項1~1のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記ポリマーが、ポリオルトエステル(POE)を含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記ポリマーが、ポリ乳酸及びポリ(乳酸-コ-グリコール酸)からなる群から選択される、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記ヒドロフルオロエステルが、2-(トリフルオロメチル)-3-エトキシドデカフルオロヘキサンである、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記膜が、親フッ素性コーティングされたステンレス鋼膜である、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記膜の細孔が、直径3~300μmである、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記フッ素系界面活性剤が、約0.1~5%w/vでフルオロカーボン液体中に存在する、請求項1~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
タンパク質粉末対ポリマー比が、0.1%~30%である、請求項1~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記微粉化粉末が、抗体若しくはその抗原結合断片、融合タンパク質、組換えタンパク質、又はそれらの断片若しくは切断バージョンから製造される、請求項1~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記融合タンパク質が、VEGFトラップ融合タンパク質又はその切断バージョンである、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記VEGFトラップ融合タンパク質が、アフリベルセプトである、請求項14又は15に記載の方法。
【請求項17】
前記懸濁液の供給が、0.1~1.0ml/分の速度である、請求項1~16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記懸濁液が、均質懸濁液である、請求項1~17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
前記微粒子が、単一コアシェル構造を含む、請求項1~18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
少なくとも1つの微粒子が、前記ポリマー内に分散された複数のコアを含む、請求項1~19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
前記微粒子が、ポリマーによって封入された単一コア構造の組み合わせを含む微粒子と、ポリマーによって封入されたマルチコア構造を含む微粒子と、を含む、請求項1~20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
前記微粒子が、1~200μmの直径を有する、請求項1~21のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
前記微粒子が、30~60μmの中央直径を有する、請求項1~22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
タンパク質粉末が、噴霧乾燥、エレクトロスプレー乾燥、可逆沈殿、噴霧凍結、マイクロテンプレート、又はこれらの組み合わせによって微粉化される、請求項1~23のいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
前記懸濁液が、均質化、ボルテックス、超音波処理、キャビテーション、撹拌、かき混ぜ、チャーニング、ウィスキング、振盪、乳化、又はこれらの組み合わせを使用して形成される、請求項1~24のいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
前記炭化水素溶媒が、蒸発によって除去される、請求項1~25のいずれか一項に記載の方法。
【請求項27】
前記フルオロカーボン液体が、真空濾過によって除去される、請求項1~25のいずれか一項に記載の方法。
【請求項28】
請求項1~27のいずれか一項に記載の方法によって製造された微粒子であって、持続放出微粒子である、微粒子。
【請求項29】
請求項28に記載の微粒子を含む、持続放出組成物。
【請求項30】
前記微粒子が、ポリマー表層(cortex)内にほとんど又はまったく細孔又はチャネルを有しない、請求項1~29のいずれか一項に記載の微粒子。
【請求項31】
ポリマー又はポリマーコーティングされた微粒子を製造する方法であって、
炭化水素溶液中に懸濁した1~30%w/wの全固体噴霧乾燥タンパク質を合わせて、第1の非水溶液を形成することと、
前記第1の非水溶液を撹拌して、懸濁液を形成することと、
前記懸濁液を分散ポンプに供給することであって、前記懸濁液を、フルオロカーボン液体及び0.1~5.0%w/vのフッ素系界面活性剤を含む連続相の接流の下で、前記連続相に多孔質膜を介して注入して、フルオロカーボン中炭化水素エマルジョンを形成する、供給することと、
前記炭化水素溶媒を除去して、硬化ポリマー又はポリマーコーティングされたマイクロスフェアを提供することと、
前記フルオロカーボン液体を除去して、前記微粒子を単離することであって、前記微粒子が、ポリマーのマトリックス内に封入されたタンパク質を含む、除去することと、を含む、方法。
【請求項32】
前記炭化水素溶媒を除去する前に、前記フルオロカーボン中炭化水素エマルジョンの前記フルオロカーボン液体にヒドロフルオロエステルを添加するステップを更に含む、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
前記炭化水素溶液が、周囲大気圧下又は真空下での蒸発によって除去される、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
前記硬化ポリマー又はポリマーコーティングされたマイクロスフェアが、真空濾過によって採取される、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
前記噴霧乾燥タンパク質が、抗体、組換えタンパク質、融合タンパク質、又はそれらの断片である、請求項31又は32に記載の方法。
【請求項36】
前記タンパク質が、VEGFトラップタンパク質又は切断VEGFトラップタンパク質である、請求項365に記載の方法。
【請求項37】
前記炭化水素溶液が、ジクロロメタン、クロロホルム、トルエン、酢酸エチル、テトラヒドロフラン、又はこれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項31に記載の方法。
【請求項38】
前記フルオロカーボン液体が、トリフルオロメチル)ビス(1,1,2,2,3,3,4,4,4-ノナフルオロブチル)アミンを含む、請求項31~37のいずれか一項に記載の方法。
【請求項39】
前記硬化微粒子を採取することを更に含む、請求項38に記載の方法。
【請求項40】
請求項31~39に記載の方法のいずれか1つによって製造された、微粒子。
【請求項41】
請求項40に記載の微粒子を含む、薬学的組成物。
【請求項42】
1つ以上の賦形剤を更に含む、請求項41に記載の薬学的組成物。
【請求項43】
前記薬学的組成物が、持続放出組成物である、請求項41に記載の薬学的組成物。
【請求項44】
前記薬学的組成物が、非経口投与のために製剤化される、請求項41~43のいずれか一項に記載の薬学的組成物。
【請求項45】
前記ヒドロフルオロエーテルが、4-エトキシ-1,1,1,2,2,3,3,4,5,6,6,6-ジデカフルオロ-5-(トリフルオロメチル)ヘキサンを含む、請求項3に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2020年11月25日に出願された米国出願第63/118,264号の優先権を主張し、参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本発明の態様は、一般に、薬物マイクロスフェア製剤及び膜乳化方法によって生成される非水エマルジョンシステムを使用してそれらを作製する方法に関する。
【背景技術】
【0003】
生物学的に関連する標的に対する治療用タンパク質の徐放送達は、がん、心血管疾患、血管病態、整形外科的障害、歯牙障害、創傷、自己免疫疾患、胃腸障害、及び眼疾患などの医学的病態の治療に望ましい。薬物の制御及び延長送達(extended delivery)のための生体適合性及び生分解性ポリマー並びに他の移植可能な送達デバイスが、数十年にわたって使用されてきた。例えば、いくつかのポリマーベースの送達デバイスでは、ポリマーが経時的に分解するにつれて、治療薬がゆっくりと放出される。
【0004】
徐放は、患者コンプライアンスのために望ましい場合がある。特に、注射回数を減らすことは有益であり得、特に、眼内治療薬の場合など、医師が注射を行う必要がある場合に有用である場合がある。できるだけ少ない注射で経時的に薬物を効果的に送達するための徐放製剤に対する医学的必要性は満たされていない。他の疾患、例えば、がん及び炎症疾患の場合、安定かつ効果的なタンパク質治療薬を含有する移植可能な徐放製剤の改善が必要である。
【0005】
抗体、受容体Fc融合タンパク質、トラップタンパク質及びミニトラップタンパク質などの治療用巨大分子は、分子を患者への投与に適したものとするだけでなく、保管中及び投与部位でそれらの安定性を維持するように製剤化されなければならない。例えば、水溶液中の治療用タンパク質(例えば、抗体及び融合タンパク質)は、溶液が適切に製剤化されていない限り、分解、凝集及び/又は望ましくない化学修飾を受けやすい。液体製剤中のタンパク質治療薬の安定性は、製剤中で使用される賦形剤の種類、並びにそれら賦形剤の量及び互いに対するそれら賦形剤の割合だけでなく、可溶性タンパク質の濃度にも依存する。治療用タンパク質製剤を調製する際には、安定性以外の考慮事項も考慮する必要がある。そのような追加の考慮事項の例としては、溶液の粘度、及び所与の製剤によって調節され得る治療用タンパク質の濃度が挙げられる。徐放のための治療用タンパク質を製剤化する場合、経時に保管及び生理学的温度で安定した状態を維持し、適切な濃度の抗体を含有し、かつ製剤が便利に患者に投与されることを可能にする他の特性を有する製剤に到達するために細心の注意を払わなければならない。
【0006】
いくつかの徐放製剤は、内部相分離、界面重合、多重エマルジョンの形成、高分子電解質の層ごとの吸着、及び軟質テンプレート技術を含む様々な封入方法を使用して製造される。水中油中水(W/O/W)の多重エマルジョンは、最も一般的な種類の多重エマルジョンであり、水性/親水性コアを水性懸濁液中に直接封入することを可能にする。残念なことに、水性エマルジョンシステムは、生物学的活性剤を徐放製剤内に封入するために使用される場合に特定の問題を有する。例えば、タンパク質の沈殿は、水性有機界面で生じ、それと同時にそれらの免疫反応性が低下する(Raghuvanshi,R.,et al.,Pharm Dev Technol,3(2):269-76(1998))。一部の水性エマルジョンシステムでは、水が有機相内に拡散し、タンパク質を加水分解することができる。加水分解後、タンパク質液滴が融合し始め、水性環境内へと脱出し、凝集又は沈殿する。硬化後、空隙及び水チャネルは、タンパク質が水性環境内へと脱出すると、微粒子中に出現する。
【0007】
水の存在が望ましくない場合には、通常の水性エマルジョンの代わりに非水エマルジョンを使用することができる。しかしながら、文献又は従来技術において非水エマルジョンに関する報告はほとんどない。2種類の炭化水素系非水エマルジョンシステムが知られている:(1)コポリマー(例えば、ヘキサン/ジメチルホルムアミド)をブロックすることによって安定化される2つの不混和性有機溶媒、及び(2)既存の界面活性剤を使用して水の代わりに使用される油不混和性極性溶媒(例えば、ホルムアミド、アセトニトリル)。これまで、パーフルオロ化油中水(W/F)エマルジョンは、広く研究され、単一細胞又は単一分子生体アッセイのための液滴ベースのマイクロ流体に適用されてきた。これらの研究において、PFPE-PEG-PFPEは、フルオロカーボン溶媒中の水滴を安定化させるためのフッ素系界面活性剤(FS)として使用されてきた。
【0008】
多くの非混和性溶媒対(通常は1つの極性溶媒と1つの非極性溶媒との対)が利用可能であるが、課題は、ポリマーマイクロスフェアの合成に好適な対を見つけることである。典型的な生分解性ポリマー、例えば、ポリ(ラクチド-コ-グリコリド)(PLGA)、ポリ乳酸(PLA)、ポリ(オルトエステル)(POE)は、クロロホルム、ジクロロメタン、酢酸エチルなどの中極性の溶媒にほとんど可溶性である。これにより、連続相の選択が制限される。加えて、プロセスとの適合性、毒性、安全性、及び残留溶媒は、それらの有機溶媒を使用することの懸念事項であり、医薬品として使用するためには考慮する必要がある。
【0009】
フルオロカーボンは、以下の一般的な特性のために、非水エマルジョンシステムにおける連続相として使用することができる。
1.フルオロカーボンは、「疎水性」でも「親水性」でもなく、ほとんどの有機(炭化水素)溶媒と混和性がなく、炭化水素液滴エマルジョンのための連続相として理想的である。
2.フルオロカーボンは、タンパク質及び他の親水性分子、炭化水素系ポリマー、及び有機賦形剤の非溶媒であり、すなわち、これらの種類の分子は、フルオロカーボンに可溶性ではない。
3.フルオロカーボンは、粘度が低い。
4.フルオロカーボンは、化学的に不活性であり、一般的に使用される炭化水素溶媒と比較して比較的毒性又は腐食性が低い場合がある。
5.フルオロカーボンは、揮発性でリサイクル可能である。
【0010】
以前の文献では、フルオロカーボンを含有する様々な種類のエマルジョンシステムが、マイクロ流体力学法によって作製されていることが報告されており、例えば、フルオロカーボン中水(W/F)、水中フルオロカーボン中水(W/F/W)二重エマルジョン、水/フルオロカーボン/油/水(W/F/O/W)三重エマルジョン、フルオロカーボン/炭化水素/水(F/H/W)二重エマルジョン、及び炭化水素/フルオロカーボン/水(H/F/W)二重エマルジョンである。これらのエマルジョンのうちのいくつかは、ポリマーマイクロスフェアの合成に使用されている。しかしながら、それらの全ては、分散相又は連続相として水を使用する水性ベースのエマルジョンシステムである。
【0011】
使用されるエマルジョンの種類にかかわらず、マイクロスフェア又は微粒子のサイズ分布は通常広く、広範なプロセス最適化及び制御戦略なしに、サイズを容易に制御して標的を満たすことはできない。したがって、広範なプロセス最適化及び制御戦略なしに、マイクロスフェアサイズ又は微粒子サイズを制御して、標的を満たす新たな方法を開発する必要性が依然として残っている。
【0012】
したがって、本発明の目的は、薬物製剤を製造するための非水膜エマルジョンシステム及び方法、並びにそれらの使用方法を提供することである。
【0013】
本発明の別の目的は、改善されたタンパク質の安定性、及び安定した徐放、及び制御されたサイズ分布を有する徐放製剤を提供することである。
【発明の概要】
【0014】
ポリマー及びポリマーコーティングされた微粒子を製造するための非水膜エマルジョン方法が提供される。いくつかの実施形態は、微粉化タンパク質粉末及びポリマーを炭化水素溶媒中で合わせて第1の非水溶液を形成し、第1の非水溶液を撹拌して懸濁液を形成し、懸濁液を分散セル内に供給することによって、持続放出又は制御放出微粒子を製造する方法であって、懸濁液を、フルオロカーボン液体及びフッ素系界面活性剤を含む連続相の接流の下で、当該連続相に多孔質膜を介して注入して、フルオロカーボン中炭化水素エマルジョンを形成する(膜乳化)、方法を提供する。本方法は、フルオロカーボン中炭化水素エマルジョンにヒドロフルオロエステルを添加するステップと、炭化水素相から炭化水素溶媒を除去して、硬化微粒子を提供するステップと、を更に含む。いくつかの実施形態では、炭化水素の除去を支援するために、ヒドロフルオロエステルとフルオロカーボンとの混合物をエマルジョンに添加する。いくつかの実施形態では、本方法は、続いて、追加の純粋なハイドロフルオロエステルをエマルジョンに添加することを含む。本方法は、フルオロカーボン液体を除去して、微粒子を単離することを更に含み、微粒子は、ポリマーのマトリックス内に封入されたタンパク質を含む。本方法は、任意選択的に、フルオロカーボン液体中の微粒子を洗浄して残留フッ素系界面活性剤を除去することと、フルオロカーボン液体を除去することと、例えば、真空濾過によって微粒子を採取することと、を含む。いくつかの実施形態では、真空濾過は、ポリエーテルスルホン膜フィルターを使用する。いくつかの実施形態では、タンパク質粉末は、抗体又はその抗原結合断片、融合タンパク質、又は組換えタンパク質から製造される。いくつかの実施形態では、タンパク質は、VEGFトラップタンパク質、例えばアフリベルセプトである。いくつかの実施形態では、エマルジョンは、バルク乳化によって形成される。
【0015】
いくつかの実施形態では、炭化水素溶媒は、ジクロロメタン、クロロホルム、トルエン、酢酸エチル、テトラヒドロフラン、又はこれらの組み合わせからなる群から選択される。
【0016】
いくつかの実施形態では、フルオロカーボン溶液は、1,1,2,2,3,3,4,4,4-ノナフルオロ-N,N-ビス(1,1,2,2,3,3,4,4,4-ノナフルオロブチル)ブタン-1-アミンを含む。
【0017】
いくつかの実施形態では、フッ素系界面活性剤は、ペルフルオロポリエーテル-b-ポリエチレングリコール-b-ペルフルオロポリエーテルである。いくつかの実施形態は、0.1~5.0%w/vのフッ素系界面活性剤、典型的には約0.5%w/vのフッ素系界面活性剤を有する。
【0018】
いくつかの実施形態では、ヒドロフルオロエステルは、2-(トリフルオロメチル)-3-エトキシドデカフルオロヘキサンである。
【0019】
いくつかの実施形態では、タンパク質粉末対ポリマー比は、0%~30%である。
【0020】
いくつかの実施形態では、多孔質膜は、ステンレス鋼膜であり、任意選択的に、親フッ素性コーティングされたステンレス鋼膜である。
【0021】
フルオロカーボン及び炭化水素液体は、周囲大気圧下又は真空下でフルオロカーボン及び炭化水素液体を蒸発させることによって除去することができる。いくつかの実施形態では、フルオロカーボン液体は、ヒドロフルオロエーテル(HFE)を含有する。いくつかの実施形態では、HFEを、非水エマルジョンに添加して、炭化水素をフルオロカーボン液体中に急速に抽出して、マイクロスフェア硬化を加速する。いくつかの実施形態では、タンパク質粉末は、微粉化タンパク質粉末である。いくつかの実施形態では、微粒子を洗浄して、微粒子上に残留しているあらゆる残留炭化水素溶媒、フルオロカーボン液体、フッ素系界面活性剤、又はこれらの組み合わせを除去する。例示的なフルオロカーボン液体としては、ペルフルオロC5~C18化合物が挙げられ、1,1,2,2,3,3,4,4,4-ノナフルオロ-N,N-ビス(1,1,2,2,3,3,4,4,4-ノナフルオロブチル)ブタン-1-アミンが挙げられるが、これに限定されない。例示的な炭化水素溶媒としては、ジクロロメタン、クロロホルム、酢酸エチル、及びこれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。例示的なフッ素系界面活性剤は、ペルフルオロポリエーテル-b-ポリエチレングリコール-b-ペルフルオロポリエーテル(PFPE-PEG-PFPE)トリブロックコポリマーである。例示的な生体侵食性ポリマーは、ポリオルトエステル(POE)である。いくつかの実施形態では、タンパク質は、抗体又はその抗原結合断片、融合タンパク質、又は組換えタンパク質である。いくつかの実施形態では、タンパク質は、噴霧乾燥VEGFトラップタンパク質である。いくつかの実施形態では、微粒子は、1.0~100μm、1.0~200μm、又は30~60μmの直径を有する。いくつかの実施形態では、開示される非水エマルジョン方法によって形成される微粒子は、流動性微粒子組成物である。開示される流動性微粒子組成物は、薬学的に許容される賦形剤、例えば、pH緩衝生理食塩水中に懸濁するか、又は中鎖トリグリセリドなどの油性ビヒクル中に懸濁することができる。流動性微粒子組成物は、例えば、27G針を有するシリンジを使用して、非経口的に投与することができる。いくつかの実施形態では、マイクロスフェア又は微粒子サイズ分布は10CV%未満である。いくつかの実施形態では、マイクロスフェアサイズ分布は10~20CV%である。
【0022】
別の実施形態は、炭化水素溶液中で1.0~30%w/wの全固体噴霧乾燥タンパク質を合わせて、第1の非水溶液を形成することと、第1の非水溶液を撹拌して、懸濁液を形成することと、懸濁液を分散セルに供給することであって、当該懸濁液を、フルオロカーボン液体及び0.1~5.0%w/vのフッ素系界面活性剤を含む連続相の接流の下で、当該連続相に多孔質膜を介して注入して、フルオロカーボン中炭化水素エマルジョンを形成する、供給することと、炭化水素溶媒を除去して、硬化ポリマー又はポリマーコーティングされたマイクロスフェアを提供することと、フルオロカーボン液体を除去して、微粒子を単離することであって、微粒子が、ポリマーのマトリックス内に封入されたタンパク質を含む、除去することと、によって、ポリマー又はポリマーコーティングされた微粒子を製造する方法を提供する。いくつかの実施形態では、懸濁液の供給は、0.1~1.0ml/分の速度である。いくつかの実施形態では、本方法は、フルオロカーボン中炭化水素エマルジョンのフルオロカーボン液体中に共溶媒としてヒドロフルオロエステルを添加して、炭化水素溶媒を分散相から連続相に抽出し、微粒子の硬化を加速するのを支援するステップを更に含む。
【0023】
いくつかの実施形態では、膜エマルジョンによって製造される微粒子は、微粒子のポリマー表面又は内部マトリックスにおいて、ほとんど又はまったく細孔又はチャネルを有しない。
【0024】
更に別の実施形態は、本明細書に開示される非水膜エマルジョン方法を使用して製造された、ポリマーコーティングされた微粒子を含有する薬学的組成物を提供する。
【0025】
いくつかの実施形態では、微粒子のサイズは、製剤組成及びプロセスパラメータを変化させることによって、所望の直径又はサイズに調整することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1A図1Aは、H/Fベースのバルクエマルジョンを介したブランクPOEマイクロスフェア製造のプロセスを示す図である(スキーム1)。
図1B図1Bは、FC-40の化学構造を示す。
図1C図1Cは、ペルフルオロポリエーテル/ポリ(エチレングリコール)トリブロックコポリマーであるフッ素系界面活性剤PFPE-PEG-PFPE(Pico-Surf(商標)1)の化学構造を示す。Pico-Surf(商標)1は、例えば、FC-40中5%(w/w)として市販されている。
図2図2Aは、H/Fエマルジョンを介して形成されたブランクPOEマイクロスフェアの顕微鏡写真である。図2Bは、低FS含有量で見出されるPOE凝集を示す顕微鏡写真である。
図3図3A図3B及び図3Cは、低、中、及び高均質化速度を有するH/Fエマルジョンを介して形成されるブランクPOEマイクロスフェアの顕微鏡写真である。
図4図4(スキーム2)は、S/H/Fベースのバルクエマルジョンを介したPOEマイクロスフェアにおけるSDP封入のプロセスを示す図である。
図5図5(スキーム3)は、タンパク質SDPの封入のためのフルオロカーボン中炭化水素エマルジョンシステムを示す図である。
図6図6A及び図6Bは、FC-40中に分散したPOE及び蛍光標識噴霧乾燥タンパク質(F-SDP)を含有する酢酸エチル液滴の蛍光画像である。F-SDPは、液滴内で元のサイズ及び形態を保持していることに注意されたい。緑色の蛍光画像は、グレースケールで表される。
図7図7Aは、VEGFトラップF-SDP封入マイクロスフェアの明視野顕微鏡写真である。図7Bは、VEGFトラップF-SDP封入マイクロスフェアの蛍光画像である(バー=20μm)。図7Cは、VEGFトラップF-SDP封入マイクロスフェアの蛍光画像である(バー=10μm)。緑色蛍光画像は、図7B及び7Cにおいてグレースケールで表される。
図8図8A図8Dは、水性環境に配置されたVEGFトラップF-SDP封入POEマイクロスフェアの蛍光画像である。F-SDPは、液滴内で元のサイズ及び形態を保持していることに注意されたい。緑色の蛍光画像は、グレースケールで表される。
図9図9は、非水エマルジョン方法におけるジクロロメタン(DCM)又は酢酸エチル(EtAc)を使用して製造される微粒子の体積密度(%)対サイズ(μm)の線グラフである。
図10図10A及び図10Bは、それぞれ10%及び30%w/wのVEGFトラップSDPが充填された微粒子の顕微鏡写真である。
図11図11A及び図11Bは、それぞれ10%及び30%w/wのSDPが充填されたVEGFトラップF-SDP封入POEマイクロスフェアの代表的な蛍光画像である。F-SDPは、液滴内で元のサイズ及び形態を保持していることに注意されたい。緑色の蛍光画像は、グレースケールで表される。
図12図12A及び図12Bは、5%w/wのSDP及び10%w/wのSDPが充填された微粒子の走査電子顕微鏡(SEM)画像である。
図13図13A及び図13Bは、Dv50が2.18μm及び5.63μmである噴霧乾燥タンパク質のSEM画像である。
図14図14A図14B及び図14Cは、PLAマイクロスフェア中に封入されたVEGF-トラップF-SDPの明視野、蛍光、及びSEM画像である。緑色蛍光画像は、図14Bにおいてグレースケールで表される。
図15図15A及び図15Bは、PLGAマイクロスフェア中に封入されたVEGF-トラップF-SDPの明視野及び蛍光画像である。緑色蛍光画像は、図15Bにおいてグレースケールで表される。
図16図16は、多孔質膜を介して炭化水素連続相に懸濁液が注入されたときのSDP懸濁液エマルジョン液滴の形成を示す図である。
図17図17は、膜エマルジョンを使用して微粒子を製造するための例示的な方法の図である。微粒子生成物のフロキュレーション及び凝集を防止するステップを示す、星でマークされたステップ。
図18図18は、水性及び非水エマルジョン方法を使用して製造されたマイクロスフェアのSEM画像を含み、マイクロスフェアが、非水方法を使用して滑らかな表面を有する一方で、水性方法を使用してマイクロスフェアが細孔及び水チャネルを有することを示す。
図19-1】図19は、水性及び非水エマルジョン方法を使用して製造されたタンパク質封入マイクロスフェアのSEM画像を含む。
図19-2】図19は、水性及び非水エマルジョン方法を使用して製造されたタンパク質封入マイクロスフェアのSEM画像を含む。
図20図20は、水性及び非水エマルジョン方法を使用して製造されたタンパク質封入マイクロスフェアの蛍光顕微鏡画像を含み、非水エマルジョン方法を使用して元のレーズン形状を保持しながら、水性エマルジョン方法を使用してSDPが再構成され、より大きな液滴に融合されることを示す。緑色の蛍光画像は、グレースケールで表される。
【発明を実施するための形態】
【0027】
I.定義
本明細書に記載の組成物及び方法、並びに記載される実験条件は変化し得るので、本開示は、これらに限定されないことを理解されたい。また、本開示の範囲は添付の特許請求の範囲によってのみ限定されるため、本明細書で使用される用語は、特定の実施形態を説明する目的のみのためであり、限定することを意図するものではないことも理解されるべきである。
【0028】
別段の定義がない限り、本明細書で使用される全ての技術用語及び科学用語は、本開示が属する技術分野の当業者によって一般的に理解されるものと同じ意味を有する。なお、本明細書に記載されるものと類似又は同等のあらゆる組成物、方法、及び材料は、本発明の実施又は試験に使用することができる。言及されている全ての刊行物は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0029】
本特許請求の範囲に記載の発明を説明する文脈において(特に特許請求の範囲の文脈において)、用語「a」、「an」、「the」、及び同様の指示対象の使用は、本明細書で別段の指示がなされるか、又は文脈によって明らかに矛盾しない限り、単数形及び複数形の両方を網羅するように解釈されるべきである。
【0030】
本明細書に示される全ての数値的限界及び範囲は、当該範囲又は限界の数値の周辺又はその間の全ての数値又は値を含む。本明細書に記載の範囲及び限界は、範囲又は限界によって定義され、包含される全ての整数、小数、及び分数値を明示的に表し、記載する。したがって、本明細書における値の範囲の列挙は、本明細書に別段の指示がない限り、範囲内に含まれる各別々の値を個別に参照する簡略法としての役割を果たすことを意図しているにすぎず、各別々の値は、本明細書に個別に列挙されているかのように本明細書に組み込まれる。
【0031】
用語「約」の使用は、記載された値を約+/-10%の範囲で上回る又は下回る値を表すように意図され、他の実施形態では、値は、記載された値を約+/-5%の範囲で上回る又は下回る値の範囲であってもよく、他の実施形態では、値は、記載された値を約+/-2%の範囲で上回る又は下回る値の範囲であってもよく、他の実施形態では、値は、記載された値を約+/-1%の範囲で上回る又は下回る値の範囲であってもよい。前述の範囲は、文脈によって明確にされることが意図され、更なる限定は示唆されない。本明細書に記載の全ての方法は、本明細書において別段示されない限り、又は文脈によって明らかに矛盾しない限り、任意の好適な順序で実施され得る。本明細書で提供される任意の及び全ての実施例、又は例示的な文言(例えば、「など」)の使用は、単に本発明をより良く明らかにすることを意図しており、請求項に別段の記載がない限り、本発明の範囲を限定するものではない。本明細書におけるいかなる文言も、請求項に記載されていない任意の要素が本発明の実施に不可欠であることを示していると解釈されるべきではない。
【0032】
「配合すること」は、圧縮せん断力及びキャビテーションを含む配合力を提供する。技術及び方法としては、均質化、ボルテックス、超音波処理、かき混ぜ、チャーニング、ウィスキング、振盪、乳化、撹拌及び/又はこれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。配合力の適用は、一定又は定期的であり得る。
【0033】
「マイクロスフェア」及び「微粒子」という用語は、互換的に使用される。
【0034】
「タンパク質」は、ペプチド結合によって互いに接合される2つ以上のアミノ酸残基を含む分子を指す。タンパク質は、ポリペプチド及びペプチドを含み、グリコシル化、脂質付着、硫酸化、グルタミン酸残基のガンマ-カルボキシル化、アルキル化、ヒドロキシル化、及びADP-リボシル化などの修飾も含み得る。タンパク質は、タンパク質ベースの薬物を含む、科学的又は商業的に関心のあるものである可能性があり、タンパク質としては、とりわけ、酵素、リガンド、受容体、抗体、及びキメラ又は融合タンパク質が挙げられる。タンパク質は、周知の細胞培養方法を使用して様々な種類の組換え細胞によって製造され、一般に、それがエピソームとして存在してもよいか、又は細胞のゲノムに組み込まれてもよい遺伝子操作技術(例えば、キメラタンパク質をコードする配列、又はコドン最適化配列、イントロンレス配列など)によって細胞に導入される。
【0035】
「抗体」は、ジスルフィド結合により相互接続された4つのポリペプチド鎖、2つの重(H)鎖、及び2つの軽(L)鎖からなる免疫グロブリン分子を指す。各重鎖は、重鎖可変領域(HCVR又はVH)及び重鎖定常領域を有する。重鎖定常領域は、CH1、CH2、及びCH3の3つのドメインを含む。各軽鎖は、軽鎖可変領域及び軽鎖定常領域を有する。軽鎖定常領域は、1つのドメイン(CL)からなる。VH及びVL領域は、フレームワーク領域(FR)と呼ばれる、より保存された領域が点在する、相補性決定領域(CDR)と呼ばれる、超可変性の領域に更に細分することができる。各VH及びVLは、以下の順序でアミノ末端からカルボキシ末端へと配置された3つのCDR及び4つのFRで構成される:FR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、FR4。「抗体」という用語は、任意のアイソタイプ又はサブクラスのグリコシル化及び非グリコシル化免疫グロブリンの両方への言及を含む。「抗体」という用語は、組換え手段によって調製、発現、作製又は単離された抗体分子、例えば、抗体を発現するようにトランスフェクトされた宿主細胞から単離された抗体を含む。抗体という用語はまた、2つ以上の異なるエピトープに結合することができるヘテロ四量体免疫グロブリンを含む二重特異性抗体を含む。二重特異性抗体は、概して、米国特許第8,586,713号(参照により本出願に組み込まれる)に記載されている。
【0036】
「Fc融合タンパク質」は、2つ以上のタンパク質(そのうちの1つは免疫グロブリン分子のFc部分であり、それ以外の場合、自然界では一緒に見られない)の一部又は全部を含む。抗体由来ポリペプチド(Fcドメインを含む)の様々な部分に融合した特定の異種ポリペプチドを含む融合タンパク質の調製については、例えば、Ashkenazi et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 88:10535,1991;Byrn et al.,Nature 344:677,1990;及びHollenbaugh et al.,“Construction of Immunoglobulin Fusion Proteins”,in Current Protocols in Immunology,Suppl.4,pages 10.19.1-10.19.11,1992に記載されている。「受容体Fc融合タンパク質」は、Fc部分に連結した受容体の1つ以上の細胞外ドメインを含み、これは、いくつかの実施形態では、ヒンジ領域、続いて免疫グロブリンのCH2ドメイン及びCH3ドメインを含む。いくつかの実施形態では、Fc融合タンパク質は、1つ以上のリガンドに結合する2つ以上の別個の受容体鎖を含む。例えば、Fc融合タンパク質は、例えば、IL-1トラップ又はVEGFトラップなどのトラップである。
【0037】
組換え的に製造される酵素及びミニトラップなどのFc部分を欠くタンパク質も、本発明に従って作製することができる。ミニトラップは、Fc部分の代わりに多量体化成分(MC)を使用するトラップタンパク質であり、米国特許第7,279,159号及び第7,087,411号に開示されている。
【0038】
「微粉化タンパク質粒子」又は「タンパク質粒子」は、低、非常に低、又はゼロに近い量の水(例えば、3重量%未満の水)を有するタンパク質の複数の分子を含有する粒子を意味する。本明細書で使用される場合、微粉化タンパク質粒子は、概して球形であり、2ミクロン~約35ミクロンの範囲のECDを有する。微粉化タンパク質粒子は、任意の特定のタンパク質実体に限定されず、治療用タンパク質の調製及び送達に適している。一般的な治療用タンパク質としては、とりわけ、可溶性受容体断片、抗体(IgGを含む)及び抗体の誘導体又は断片、Fc融合タンパク質を含む他のFc含有タンパク質、並びにVEGFトラップなどのトラップ型タンパク質(Huang,C.,Curr.Opin.Biotechnol.20:692-99(2009))を含む受容体-Fc融合タンパク質が挙げられる。
【0039】
II.炭化水素-フルオロカーボン膜エマルジョンを用いた微粒子製剤の製造
無水又は非水膜エマルジョンシステムを使用して薬学的組成物を製剤化するためのシステム及び方法が提供される。開示された無水膜エマルジョン方法は、親水性薬物分子を封入するときに、既存の水性エマルジョンシステムのいくつかの問題を克服する。例えば、本明細書に提供される、開示される無水エマルジョンシステムと既存の水性エマルジョンシステムとの比較研究は、水性エマルジョンシステムを使用して製造される製剤が、製造中に、エマルジョン液滴から水性連続相に薬物、例えば、タンパク質薬物を漏出させることを示す。エマルジョン液滴からの薬物のこの漏出により、低い封入有効性が得られる。本明細書に記載の開示される非水ベースの膜エマルジョン方法は、水性エマルジョンシステムと比較して封入有効性が増加した、タンパク質などの親水性薬物を含むがこれに限定されない薬物分子を封入し、元のタンパク質粒子構造、又はこれらの組み合わせを保持する。開示される無水膜エマルジョンシステム及び方法は、バルク方法(例えば、撹拌、均質化、超音波処理)及び他の従来の方法によって封入された薬物製剤を製造することができる。システム及び方法はまた、幅広いポリマー材料、固体ペイロード、及び乳化方法に適用することができる。以下の概要は、異なるエマルジョンテイクの比較の結果を示し、これらの結果は、非水エマルジョンシステムが水性エマルジョンシステムと比較して微粒子封入における有意な改善であることを実証している。
【表1】
【0040】
A.フルオロカーボン中炭化水素中固体(S/H/F)膜エマルジョン
膜乳化(ME)は、一般に、良好なサイズ制御及び狭いサイズ分布を可能にする粒子の高度に制御された製造のための比較的新しい技術である(G.T.Vladisavljevic and R.A.Williams,Adv.Colloid Interface Sci.,vol.113(1):1-20,(2005))。これまでに、シラス多孔質ガラス(Shirasu Porous Glass、SPG)、酢酸セルロース、ポリマー、陽極酸化アルミナ(anodic porous alumina)、及びシリコンマイクロチャネルなど、ME用に多くの種類の膜が開発されてきた。開示されたME法については、レーザードリルで開けた細孔を有するステンレス鋼膜が良好に機能し、Micropore Technologies(Redcar、UK)による市販の装置は、実験室研究プロセスを可能にし、またGMP製造へのスケールアップも可能にした。他の実施形態では、膜は、シラス多孔質ガラス(SPG)、酢酸セルロース、ポリマー、陽極酸化アルミナ、及びシリコンマイクロチャネルからなる群から選択される。ステンレス鋼の膜の厳しく制御された膜の細孔のサイズにより、限界を下回る全てのSDP粒子が膜を通過するようになる。曲がりくねった経路を有しない直管状チャネルは、SDPによるチャネル遮断の傾向を低減する。いくつかの実施形態では、膜は、フルオロカーボン中炭化水素(H/F)エマルジョンの製造との良好な適合性を提供する親フッ素性コーティングを有する。更に、ステンレス膜は、堅牢で、清掃が容易で、滅菌可能である。いくつかの実施形態では、細孔の直径は、3μm~300μmである。いくつかの実施形態では、細孔の直径は、10、15、20、25、30、35、40、45、又は50μmである。
【0041】
いくつかの実施形態は、微粉化されたタンパク質粉末及びポリマーを炭化水素溶媒中で合わせて第1の非水溶液を形成し、第1の非水溶液を撹拌して懸濁液を形成し、懸濁液を分散ポンプ内に供給することによって、持続放出又は制御放出微粒子を製造する方法であって、懸濁液を、フルオロカーボン液体及びフッ素系界面活性剤を含む連続相に多孔質膜を介して注入して、フルオロカーボン中炭化水素エマルジョンを形成する、方法を提供する。いくつかの実施形態では、懸濁液の供給は、0.1~1.0ml/分の速度である。本方法は、フルオロカーボン中炭化水素エマルジョンにヒドロフルオロエステルを添加するステップと、炭化水素溶媒を除去して、硬化微粒子を提供するステップと、を更に含む。いくつかの実施形態では、ヒドロフルオロエステルとフルオロカーボンとの混合物をエマルジョンに添加する。いくつかの実施形態では、本方法は、追加の純粋なハイドロフルオロエステルをエマルジョンに添加することを含む。本方法は、フルオロカーボン液体を除去して、微粒子を単離することを更に含み、当該微粒子は、ポリマーのマトリックス内に封入されたタンパク質を含む。本方法は、任意選択的に、フルオロカーボン液体中の微粒子を洗浄して残留フッ素系界面活性剤を除去することと、フルオロカーボン液体を除去することと、例えば、真空濾過によって微粒子を採取することと、を含む。いくつかの実施形態では、真空濾過は、ポリエーテルスルホン膜フィルターを使用する。いくつかの実施形態では、タンパク質粉末は、抗体又はその抗原結合断片、融合タンパク質、又は組換えタンパク質から製造される。いくつかの実施形態では、タンパク質は、VEGFトラップタンパク質、例えばアフリベルセプトである。いくつかの実施形態では、エマルジョンは、バルクエマルジョンによって形成される。いくつかの実施形態では、微粒子は、24時間後に15%未満のバースト、続いて薬物の直線的な持続放出を有する。
【0042】
いくつかの実施形態では、タンパク質粉末対ポリマー比は、0%~30%である。
【0043】
いくつかの実施形態では、炭化水素溶媒は、ジクロロメタン、クロロホルム、トルエン、酢酸エチル、テトラヒドロフラン、又はこれらの組み合わせからなる群から選択される。
【0044】
いくつかの実施形態では、フルオロカーボン溶液は、1,1,2,2,3,3,4,4,4-ノナフルオロ-N,N-ビス(1,1,2,2,3,3,4,4,4-ノナフルオロブチル)ブタン-1-アミンを含む。
【0045】
いくつかの実施形態では、フッ素系界面活性剤は、ペルフルオロポリエーテル-b-ポリエチレングリコール-b-ペルフルオロポリエーテルである。
【0046】
いくつかの実施形態では、ヒドロフルオロエステルは、2-(トリフルオロメチル)-3-エトキシドデカフルオロヘキサンである。
【0047】
いくつかの実施形態では、多孔質膜は、ステンレス鋼膜であり、任意選択的に、親フッ素性コーティングされたステンレス鋼膜である。
【0048】
フルオロカーボン及び炭化水素液体は、周囲大気圧下又は真空下でフルオロカーボン及び炭化水素液体を蒸発させることによって除去することができる。いくつかの実施形態では、フルオロカーボン液体は、ヒドロフルオロエーテル(HFE)を含有する。いくつかの実施形態では、HFEを、非水エマルジョンに添加して、炭化水素をフルオロカーボン液体中に急速に抽出して、マイクロスフェア硬化を加速する。いくつかの実施形態では、タンパク質粉末は、微粉化タンパク質粉末である。いくつかの実施形態では、微粒子を洗浄して、微粒子上に残留しているあらゆる残留炭化水素溶媒、フルオロカーボン液体、フッ素系界面活性剤、又はこれらの組み合わせを除去する。例示的なフルオロカーボン液体としては、ペルフルオロC5~C18化合物が挙げられ、1,1,2,2,3,3,4,4,4-ノナフルオロ-N,N-ビス(1,1,2,2,3,3,4,4,4-ノナフルオロブチル)ブタン-1-アミンが挙げられるが、限定されない。例示的な炭化水素溶媒としては、ジクロロメタン、クロロホルム、酢酸エチル、及びこれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。例示的なフッ素系界面活性剤は、ペルフルオロポリエーテル-b-ポリエチレングリコール-b-ペルフルオロポリエーテル(PFPE-PEG-PFPE)トリブロックコポリマーである。例示的な生体侵食性ポリマーは、ポリオルトエステル(POE)である。いくつかの実施形態では、タンパク質は、抗体又はその抗原結合断片、融合タンパク質、又は組換えタンパク質である。いくつかの実施形態では、タンパク質は、噴霧乾燥VEGFトラップタンパク質である。いくつかの実施形態では、微粒子は、1.0~100μm、1.0~200μm、又は30~60μmの直径を有する。いくつかの実施形態では、開示される非水エマルジョン方法によって形成される微粒子は、流動性微粒子組成物である。開示される流動性微粒子組成物は、薬学的に許容される賦形剤、例えば、pH緩衝生理食塩水中に懸濁するか、又は中鎖トリグリセリドなどの油性ビヒクル中に懸濁することができる。流動性微粒子組成物は、例えば、27G針を有するシリンジを使用して、非経口的に投与することができる。いくつかの実施形態では、マイクロスフェア又は微粒子サイズ分布は、10CV%%未満である。いくつかの実施形態では、マイクロスフェアサイズ分布は、10~20CV%である。
【0049】
別の実施形態は、炭化水素溶液中で1~30%w/wの全固体噴霧乾燥タンパク質を合わせて、第1の非水溶液を形成することと、第1の非水溶液を撹拌して、懸濁液を形成することと、懸濁液を分散ポンプに供給することであって、当該懸濁液を、フルオロカーボン液体及び0.1~5.0%w/vのフッ素系界面活性剤を含む連続相の接流の下で、当該連続相に多孔質膜を介して注入して、フルオロカーボン中炭化水素エマルジョンを形成する、供給することと、炭化水素溶媒を除去して、硬化ポリマー又はポリマーコーティングされたマイクロスフェアを提供することと、フルオロカーボン液体を除去して、微粒子を単離することであって、微粒子が、ポリマーのマトリックス内に封入されたタンパク質を含む、除去することと、によって、ポリマー又はポリマーコーティングされた微粒子を製造する方法を提供する。いくつかの実施形態では、本方法は、炭化水素溶媒の除去を支援するために炭化水素溶媒を除去する前に、フルオロカーボン中炭化水素エマルジョンのフルオロカーボン液体にヒドロフルオロエステルを添加するステップを更に含む。
【0050】
いくつかの実施形態では、膜エマルジョンによって製造される微粒子は、微粒子のポリマー表面又は内部マトリックスにおいて、ほとんど又はまったく細孔又はチャネルを有しない。
【0051】
更に別の実施形態は、本明細書に開示される非水膜エマルジョン方法を使用して製造された、ポリマーコーティングされた微粒子を含有する薬学的組成物を提供する。
【0052】
いくつかの実施形態では、微粒子のサイズは、製剤組成及びプロセスパラメータを変化させることによって、所望の直径又はサイズに調整することができる。
【0053】
炭化水素及びタンパク質溶液は、圧縮せん断力及びキャビテーションなどの配合力を加えることによって形成され得る。技術としては、均質化、ボルテックス、超音波処理、かき混ぜ、チャーニング、ウィスキング、振盪、乳化、撹拌及び/又はこれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。本方法は、エマルジョンをかき混ぜながら炭化水素溶媒及びフルオロカーボン液体を除去するステップを更に含む。炭化水素及びフルオロカーボン液体は、任意選択的に真空下での蒸発によって除去され得る。他の実施形態では、微粒子は、濾過によって採取され得る。炭化水素及びフルオロカーボン液体を除去することにより微粒子が硬化され、次いで、それらの微粒子を採取することができる。いくつかの実施形態では、HFEをフルオロカーボンに添加して、分散相からフルオロカーボン連続相に炭化水素を抽出して、より速い硬化プロセスを得ることを支援することができる。HFEは、フルオロカーボン及び炭化水素の両方と混和性であり、したがって、フルオロカーボン相における炭化水素の溶解度を高めるための共溶媒として機能することができる。非水エマルジョン方法によって製造される持続放出微粒子は、生分解性又は生体侵食性ポリマーのマトリックス内に封入されたタンパク質を含有する。いくつかの実施形態では、微粒子は、単一コアシェル構造を有する。他の実施形態では、微粒子は、ポリマー内に分散された複数のコアを有する。更に他の実施形態では、微粒子の集団は、ポリマー表層によって封入された単一コア構造を有する微粒子と、ポリマー表層内にマルチコア構造を有する微粒子と、を含む。フルオロカーボン液体は、FC-40を含むがこれらに限定されないペルフルオロC5~C18化合物であり得、炭化水素溶液は、酢酸エチル、クロロホルム、トルエン、酢酸エチル、テトラヒドロフラン、及びジクロロメタン又はこれらの組み合わせから選択される。いくつかの実施形態では、フッ素系界面活性剤は、Pico-Surf(商標)1として市販されているペルフルオロポリエーテル-b-ポリエチレングリコール-b-ペルフルオロポリエーテルである。いくつかの実施形態では、生体侵食性ポリマーは、POEである。他の実施形態では、ポリマーは、ポリ乳酸及びポリ(乳酸-コ-グリコール酸)からなる群から選択される。一般に、タンパク質は、抗体若しくはその抗原結合断片、融合タンパク質、組換えタンパク質、又はその断片若しくは切断バージョンである。典型的には、タンパク質は、例えば、噴霧乾燥、エレクトロスプレー乾燥、可逆沈殿、噴霧凍結、マイクロテンプレート、又はこれらの組み合わせによって微粉化される。いくつかの実施形態では、タンパク質は、VEGFトラップタンパク質又はその切断形態である。開示される方法で使用され得る他のタンパク質を以下に記載する。開示される方法によって製造される微粒子は、細孔又はチャネルをほとんど欠いているポリマー表層を有する。ポリマー表層は、穿孔されていない。いくつかの実施形態では、微粒子は、1~200μmの直径を有する。
【0054】
1.炭化水素溶媒
いくつかの実施形態では、炭化水素溶媒(炭化水素液体とも呼ばれる)は、ポリマー材料、例えば、生分解性又は生体侵食性ポリマーが炭化水素に可溶性であるように選択される。いくつかの実施形態では、炭化水素溶媒は、ジクロロメタン、クロロホルム、トルエン、酢酸エチル、テトラヒドロフラン、又はこれらの組み合わせからなる群から選択される。いくつかの実施形態では、炭化水素溶媒は、アセトニトリル、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、アセトン、エタノール、メタノール、ペンタン、プロパノール、ヘキサン、又はこれらの組み合わせを含有することができる。
【0055】
2.フッ素系液体
例示的なフッ素系液体は、Flourinert(商標)FC-40(平均MW=650g/mol)である1,1,2,2,3,3,4,4,4-ノナフルオロ-N,N-ビス(1,1,2,2,3,3,4,4,4-ノナフルオロブチル)ブタン-1-アミン(図1B)、Fluorinert(商標)FC-70(平均MW=821g/mol)、又はこれらの組み合わせを含むが、これらに限定されないフルオロカーボン液体である。いくつかの実施形態では、フルオロカーボン液体は、ヒドロフルオロエーテル(HFE)であるか、又はそれを含有する。例示的なHFEとしては、NOVEC(商標)7000(1-メトキシヘプタフルオロプロパン)、NOVEC(商標)7100(メトキシ-ノナフルオロブタン)、NOVEC(商標)7200(エトキシ-ノナフルオロブタン)、NOVEC(商標)7500(2-(トリフルオロメチル)-3-エトキシドデカフルオロヘキサンが挙げられるが、これらに限定されない。更に他の実施形態では、フルオロカーボン液体は、FC-40、FC-70、Novec(商標)7500、Novec(商標)7100、Novec(商標)7000、又はこれらの組み合わせを含有する。ある特定の実施形態では、第2の溶液は、フッ素系液体に加えて、フッ素系界面活性剤(FS)を含有する。例示的なFSは、Pico-Surf(商標)1として市販されているペルフルオロポリエーテル-b-ポリエチレングリコール-b-ペルフルオロポリエーテル(PFPE-PEG-PFPE)トリブロックコポリマーである。いくつかの実施形態では、フルオロカーボン液体又は第2の溶液は、FC-40及びPico-Surf(商標)1を含有する。
【0056】
いくつかの実施形態では、FSは、
【化1】
式中、n:約37、x+z:約6.0、y:約12.5、又はn=3.7、x+z:約3.6、y:約9.0である(Lee,M.et al.,Lab Chip.,7:14(3):509-13(2014))。
【0057】
いくつかの実施形態では、HFEは、以下の化学構造を有する:
【化2】
【0058】
プロセスでの使用に好適な他のHFEは、全ての水素原子がフッ素置換を伴わずに炭素上に存在し、エーテル酸素、すなわちRfORhによってフッ素化炭素から分離される分子のクラスである。HFEは、直鎖状、分岐状、若しくは環状、又はこれらの組み合わせ(アルキル環状脂肪族など)であり得、好ましくはエチレン系不飽和を含まず、合計で約4~約20個の炭素原子を有する分子構造を有する。かかるHFEは、本質的に純粋な化合物として、又は混合物として、知られており、容易に入手可能である。HFEの親油性及び親フッ素性のために、それらは、フルオロカーボン及び炭化水素の両方と混和性である。炭化水素/フルオロカーボンエマルジョンに添加すると、炭化水素をフルオロカーボン相に抽出し、硬化プロセスを加速するための共溶媒として作用することができる。
【0059】
いくつかの実施形態では、炭化水素溶媒、フルオロカーボン、又はその両方は、任意選択的にエマルジョンをかき混ぜている間に、任意選択的に真空下で蒸発によって除去される。いくつかの実施形態では、微粒子は、濾過することによって、任意選択的に真空下で濾過することによって、採取される。
【0060】
フルオロカーボン相におけるHFEのパーセンテージは、0~20%v/vであり得るが、一方、HFEパーセンテージを増加させると、炭化水素抽出率が増加する。しかしながら、HFEのパーセンテージは、マイクロスフェアのサイズ及び形態を制御することがより困難になる可能性があるため、高すぎてはならない。
【0061】
3.侵食性又は生分解性ポリマー
いくつかの実施形態では、ポリマーは、生分解性又は生体侵食性ポリマーである。いくつかの実施形態では、ポリマーは、分岐又は直鎖ポリエチレングリコール(PEG)、ポリ乳酸(PLA)、ポリグリコール酸(PGA)、ポリ乳酸-ポリグリコール酸コポリマー(PLGA)、ポリ-d,l-ラクチド-コ-グリコリド(PLGA)、PLGA-エチレンオキシドフマレート、ポリエチレングリコール1000にエステル化されたPLGA-アルファ-トコフェリルスクシネート(PLGA-TGPS)、ポリ無水物ポリ[1,6-ビス(p-カルボキシフェノキシ)ヘキサン](pCPH)、ポリ(ヒドロキシ酪酸-コヒドロキシ吉草酸)(PHB-PVA)、ポリエチレングリコール-ポリ(乳酸)コポリマー(PEG-PLA)、ポリ-ε-カプロラクトン(PCL)、ポリ-アルキル-シアノ-アクリレート(PAC)、ポリ(エチル)シアノアクリレート(PEC)、ポリイソブチルシアノアクリレート、ポリ-N-(2-ヒドロキシプロピル)メタクリルアミド(ポリ(HPMA))、ポリ-β-R-ヒドロキシブチレート(PHB)、ポリ-β-R-ヒドロキシアルカノエート(PHA)、ポリ-β-R-リンゴ酸、リン脂質-コレステロールポリマー、2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-ホスファチジルコリン/ポリエチレングリコール-ジステアロイルホスファチジルエタノールアミン(DOPC/PEG-DSPE)/コレステロール、多糖類、セルロース、エチルセルロース、メチルセルロース、アルギネート、デキストラン及びデキストランヒドロゲルポリマー、アミロース、イヌリン、ペクチン及びグアーガム、キトサン、キチン、ヘパリン、ヒアルロン酸、シクロデキストリン(CD)ベースのポリロタキサン及びポリ擬ロタキサン、ポリアスパルテート、ポリグルタメート、ポリルシン、ロイシン-グルタメートコポリマー、ポリブチレンスクシネート、ゼラチン、コラーゲン、フィブリン、フィブロイン、ポリオルトエステル、ポリオルトエステル-ポリアミジンコポリマー、ポリオルトエステル-ジアミンコポリマー、潜在酸を組み込んだポリオルトエステル、ポリ(エチレングリコール)/ポリ(ブチレンテレフタレート)コポリマー、並びにこれらの組み合わせ及びコポリマーからなる群から選択される。いくつかの実施形態では、ポリマーは、ポリ-ε-カプロラクトン(PCL)又はその誘導体若しくはコポリマーである。いくつかの実施形態では、ポリマーは、PLGA又はその誘導体若しくはコポリマーである。いくつかの実施形態では、ポリマーは、エチルセルロース又はその誘導体若しくはコポリマーである。いくつかの実施形態では、ポリマーは、ポリオルトエステル又はその誘導体若しくはコポリマーである。いくつかの実施形態では、ポリマーはポリエステルアミドである。
【0062】
本明細書で使用される場合、「ポリマー」という用語は、共有結合化学結合によって接続された繰り返しモノマーを含む巨大分子を指す。ポリマーは、生体適合性であり、生分解性侵食性である。生体適合性及び生分解性ポリマーは、天然又は合成であり得る。天然ポリマーとしては、ポリヌクレオチド、ポリペプチド、例えば、天然に存在するタンパク質、組換えタンパク質、ゼラチン、コラーゲン、フィブリン、フィブロイン、ポリアスパルテート、ポリグルタメート、ポリリジン、ロイシン-グルタメートコポリマー、並びに多糖類、例えば、セルロースアルギネート、デキストラン及びデキストランヒドロゲルポリマー、アミロース、イヌリン、ペクチン及びグアーガム、キトサン、キチン、ヘパリン、及びヒアルロン酸が挙げられる。合成の生体適合性又は生分解性ポリマーとしては、ポリ乳酸(PLA)、ポリグリコール酸(PGA)、ポリ乳酸-ポリグリコール酸コポリマー(PLGA)、ポリ-d,l-ラクチド-コ-グリコリド(PLGA)、PLGA-エチレンオキサイドフマレート、ポリエチレングリコール1000にエステル化されたPLGA-アルファ-トコフェリルスクシネート(PLGA-TGPS)、ポリ無水物ポリ[1,6-ビス(p-カルボキシフェノキシ)ヘキサン](pCPH)、ポリ(ヒドロキシ酪酸-コヒドロキシ吉草酸)(PHB-PVA)、ポリエチレングリコール-ポリ(乳酸)コポリマー(PEG-PLA)、ポリ-ε-カプロラクトン(PCL)、ポリ-アルキル-シアノ-アクリレート(PAC)、ポリ(エチル)シアノアクリレート(PEC)、ポリイソブチルシアノアクリレート、ポリ-N-(2-ヒドロキシプロピル)メタクリルアミド(ポリ(HPMA))、ポリ-β-R-ヒドロキシブチレート(PHB)、ポリ-β-R-ヒドロキシアルカノエート(PHA)、ポリ-β-R-リンゴ酸、リン脂質-コレステロールポリマー、2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-ホスファチジルコリン/ポリエチレングリコール-ジステアロイルホスファチジルエタノールアミン(DOPC/PEG-DSPE)/コレステロール、エチルセルロース、シクロデキストリン(CD)ベースのポリロタキサン及びポリ擬ロタキサン、ポリブチレンスクシネート(PBS)、ポリオルトエステル、ポリオルトエステル-ポリアミジンコポリマー、ポリオルトエステル-ジアミンコポリマー、分解速度を制御する(tom control rates of degradation)潜在酸を組み込んだポリオルトエステル、並びに、とりわけポリ(エチレングリコール)/ポリ(ブチレンテレフタレート)コポリマーが挙げられる。
【0063】
エチルセルロース(EC)は、薬学及び食品科学で使用される、よく知られており、容易に入手可能な生体材料である。これは、一部のグルコースヒドロキシル基をエチルエーテルに置き換えたセルロース誘導体である。マイクロスフェアの製造における生体適合性ポリマーとしてエチルセルロースを使用する方法を記載するMartinac et al.,J.Microencapsulation,22(5):549-561(2005)及びその中の参考文献を参照されたい。また、エチルセルロース及びエチルセルロースの誘導体を作製する方法の詳細な説明については、米国特許第4,210,529号(1980)及びその中の参考文献も参照されたい。
【0064】
ポリーd,l-ラクチド-コ-グリコリド(PLGA)はまた、組織工学及び医薬品送達システムにおいて使用される、よく知られている食品医薬品局(FDA)承認の生体適合性及び生分解性ポリマーである。PLGAは、グリコール酸及び乳酸モノマーを含むポリエステルである。PLGAの合成及びPLGAナノ粒子の製造の説明については、Astete and Sabliov,Biomater.Sci.Polym.Ed.,17(3):247-89(2006)及びその中の参考文献を参照されたい。
【0065】
ポリ-ε-カプロラクトン(PCL)は、薬物送達デバイスとしてヒトにおける使用についてFDAが承認した別の生体適合性及び生分解性ポリマーである。PCLは、体内で急速に加水分解して、無毒又は低毒性のヒドロキシカルボン酸を形成する、ε-カプロラクトンのポリエステルである。PCLの製造の説明については、Labet and Thielemans,Chemical Society Reviews 38:3484-3504(2009)及びその中の参考文献を参照されたい。送達システムとしてのPCLベースのマイクロスフェア及びナノスフェアの製造及び使用の説明については、Sinha et al.,Int.J.Pharm.,278(1):1-23(2004)及びその中の参考文献を参照されたい。
【0066】
ポリオルトエステル(POE)は、薬物送達用に設計された生体侵食性ポリマーである。一般に、ケテンアセタール、好ましくは環状ジケテンアセタール、例えば、3,9-ジメチレン-2,4,8,10-テトラオキサスピロ[5.5]-ウンデカンのポリマーであり、これは、グリコール縮合により重合してオルトエステル結合を形成する。ポリオルトエステル合成及び種々な種類の説明は、例えば、米国特許第4,304,767号に見出すことができる。ポリオルトエステルは、例えば、ヘキサントリオールをデカントリオールに置き換えるなど、様々な疎水性ジオール及びポリオールを入れ替えることによって、並びに、例えば、グリコリド、オクタン二酸などの潜在酸を骨格に添加して、pH感受性を増加させることによって、それらの薬物放出プロファイル及び分解速度を制御するように修飾することができる。POEのカスタム形態は、質量損失及び薬物放出を調整するために、POE骨格中にグリコール酸を含むことができる。ポリオルトエステルに対する他の修飾としては、官能性を増加させるためのアミンの組み込みが挙げられる。ポリオルトエステルの形成、説明、及び使用は、米国特許第5,968,543号、米国特許第4,764,364号、Heller and Barr,Biomacromolecules,5(5):1625-32(2004)、及びHeller,Adv.Drug.Deliv.Rev.,57:2053-62(2005)に記載されている。
【0067】
4.タンパク質薬物
いくつかの実施形態では、開示される無水エマルジョン方法及びシステムによって製造される微粒子製剤は、薬物を含む。例示的な薬物としては、タンパク質、融合タンパク質及びそれらの断片、抗体及びそれらの抗原結合断片、並びにリガンド結合ドメイン及びタンパク質が挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、タンパク質は、VEGFトラップタンパク質(例えば、アフリベルセプトであり、これは、例えば、米国特許第7,087,411号及び第7,279,159号(それらの全体が参照により本明細書に組み込まれる)に記載されるように、hIgG1のFcに融合されたVEGF受容体Flk1のIgドメイン3に融合されたVEGF受容体Flt1のIgドメイン2を含有する。いくつかの実施形態では、VEGFトラップタンパク質は、米国特許第7,396,664号(その全体が参照により組み込まれる)に記載されるようなVEGFトラップの切断形態である。
【0068】
いくつかの実施形態では、微粒子製剤中のタンパク質は、抗体、ヒト抗体、ヒト化抗体、キメラ抗体、モノクローナル抗体、多重特異性抗体、二重特異性抗体、抗原結合抗体断片、一本鎖抗体、ダイアボディ、トリアボディ若しくはテトラボディ、二重可変ドメイン免疫グロブリン(DVD-IG)と称される二重特異性四価免疫グロブリンG様分子、IgD抗体、IgE抗体、IgM抗体、IgG抗体、IgG1抗体、IgG2抗体、IgG3抗体、又はIgG4抗体である。いくつかの実施形態では、抗体は、IgG1抗体である。いくつかの実施形態では、抗体は、IgG2抗体である。いくつかの実施形態では、抗体は、IgG4抗体である。いくつかの実施形態では、抗体は、キメラヒンジを含む。更に他の実施形態では、抗体は、キメラFcを含む。いくつかの実施形態では、抗体は、キメラIgG2/IgG4抗体である。いくつかの実施形態では、抗体は、キメラIgG2/IgG1抗体である。いくつかの実施形態では、抗体は、キメラIgG2/IgG1/IgG4抗体である。
【0069】
いくつかの実施形態では、抗体は、抗プログラム細胞死1抗体(例えば、米国特許第9,987,500号に記載されるような抗PD1抗体)、抗プログラム細胞死リガンド-1(例えば、米国特許第9,938,345号に記載されるような抗PD-L1抗体)、抗Dll4抗体、抗アンジオポエチン-2抗体(例えば、米国特許第9,402,898号に記載されるような抗ANG2抗体)、抗アンジオポエチン様3抗体(例えば、米国特許第9,018,356号に記載の抗AngPtl3抗体)、抗血小板由来成長因子受容体抗体(例えば、米国特許第9,265,827号に記載されるような抗PDGFR抗体)、抗Erb3抗体、抗プロラクチン受容体抗体(例えば、米国特許第9,302,015号に記載されるような抗PRLR抗体)、抗補体5抗体(例えば、米国特許第9,795,121号に記載されるような抗C5抗体)、抗TNF抗体、抗上皮成長因子受容体抗体(例えば、米国特許第9,132,192号に記載されるような抗EGFR抗体又は第9,475,875号に記載されるような抗EGFRvIII抗体)、抗プロタンパク質コンバーターゼズブチリシンケキシン-9抗体(例えば、米国特許第8,062,640号又は米国特許第9,540,449号に記載されるような抗PCSK9抗体)、抗成長及び分化因子-8抗体(例えば、米国特許第8,871,209号又は第9,260,515号に記載されるような抗ミオスタチン抗体としても知られる抗GDF8抗体)、抗グルカゴン受容体(例えば、米国特許第9,587,029号又は第9,657,099号に記載されるような抗GCGR抗体)、抗VEGF抗体、抗IL1R抗体、インターロイキン4受容体抗体(例えば、米国特許出願公開第2014/0271681A1号、米国特許第8,735,095号又は第8,945,559号に記載されるような抗IL4R抗体)、抗インターロイキン6受容体抗体(例えば、米国特許第7,582,298号、第8,043,617号又は第9,173,880号に記載されるような抗IL6R抗体)、IL1抗体、抗IL2抗体、抗IL3抗体、抗IL4抗体、抗IL5抗体、抗IL6抗体、抗IL7抗体、抗インターロイキン33(例えば、米国特許第9,453,072号又は第9,637,535号に記載されるような抗IL33抗体)、抗呼吸器合胞体ウイルス抗体(例えば、米国特許第9,447,173号及び第10,125,188号並びに米国特許Appl.公開第2019/0031741A1号に記載されるような抗RSV抗体)、抗分化クラスター3(例えば、米国特許第9,657,102号に記載されるような抗CD3抗体)、抗分化クラスター20(例えば、米国特許第9,657,102号及びUS20150266966A1並びに米国特許第7,879,984号に記載されるような抗CD20抗体)、抗CD19抗体、抗CD28抗体、抗分化クラスター48(例えば、米国特許第9,228,014号に記載されるような抗CD48抗体)、抗Feld1抗体(例えば、米国特許第9,079,948号に記載)、抗中東呼吸器症候群ウイルス(例えば、米国特許第9,718,872号に記載されるような抗MERS抗体)、抗エボラウイルス抗体(例えば、米国特許第9,771,414号に記載)、抗ジカウイルス抗体、抗リンパ球活性化遺伝子3抗体(例えば、抗LAG3抗体又は抗CD223抗体)、抗神経成長因子抗体(例えば、米国特許出願公開第2016/0017029号(放棄)並びに米国特許第8,309,088及び第9,353,176号に記載されるような抗NGF抗体)、並びに抗タンパク質Y抗体からなる群から選択される。いくつかの実施形態では、二重特異性抗体は、抗CD3×抗CD20二重特異性抗体(米国特許第9,657,102号及びUS20150266966A1に記載)、抗CD3×抗ムチン16二重特異性抗体(例えば、抗CD3x抗Muc16二重特異性抗体)、及び抗CD3x抗前立腺特異的膜抗原二重特異性抗体(例えば、抗CD3x抗PSMA二重特異性抗体)からなる群から選択される。いくつかの実施形態では、目的のタンパク質は、アブシキシマブ、アダリムマブ、アダリムマブ-アット、アド-トラスツズマブ、アレムツズマブ、アリロクマブ、アテゾリズマブ、アベルマブ、バシリキシマブ、ベリムマブ、ベンラリズマブ、ベバシズマブ、ベズロトキシマブ、ブリナツモマブ、ブレンツキシマブ ベドチン、ブロダルマブ、ブロルシズマブ、カナキヌマブ、カプロマブ ペンデチド、セルトリズマブ ペゴル、セミプリマブ、セツキシマブ、デノスマブ、ジヌツキシマブ、デュピルマブ、デュルバルマブ、エクリズマブ、エロツズマブ、エミシズマブ-kxwh、エムタンシネアリロクマブ、エビナクマブ、エボロクマブ、ファシヌマブ、ゴリムマブ、グセルクマブ、イブリツモマブ チウキセタン、イダルシズマブ、インフリキシマブ、インフリキシマブ-アブダ、インフリキシマブ-dyyb、イピリムマブ、イキセキズマブ、メポリズマブ、ネシツムマブ、ネスバクマブ、ニボルマブ、オビルトキサキシマブ、オビヌツズマブ、オクレリズマブ、オファツムマブ、オララツマブ、オマリズマブ、パニツムマブ、ペンブロリズマブ、ペルツズマブ、ラムシルマブ、ラニビズマブ、ラクシバクマブ、レスリズマブ、リヌクマブ、リツキシマブ、サリルマブ、セクキヌマブ、シルツキシマブ、トシリズマブ、トシリズマブ、トラスツズマブ、トレボグルマブ、ウステキヌマブ、及びベドリズマブからなる群から選択される。
【0070】
いくつかの実施形態では、複合体中のタンパク質は、Fc部分及び別のドメイン、(例えば、Fc融合タンパク質)を含有する組換えタンパク質である。いくつかの実施形態では、Fc融合タンパク質は、Fc部分に連結された受容体の1つ以上の細胞外ドメインを含有する受容体Fc融合タンパク質である。いくつかの実施形態では、Fc部分は、ヒンジ領域、続いてIgGのCH2及びCH3ドメインを含む。いくつかの実施形態では、受容体Fc融合タンパク質は、単一のリガンド又は複数のリガンドのいずれかに結合する2つ以上の異なる受容体鎖を含有する。例えば、Fc融合タンパク質は、例えば、IL-1トラップ(例えば、hIgG1のFcに融合したIl-1R1細胞外領域に融合したIL-1RAcPリガンド結合領域を含有するリロナセプト、米国特許第6,927,044号(参照によりその全体が本明細書に組み込まれる))、又はVEGFトラップ(例えば、hIgG10のFcに融合したVEGF受容体Flt1のIgドメイン3に融合したVEGF受容体Flk1のIgドメイン2を含むアフリベルセプト若しくはziv-アフリベルセプト)などのトラップタンパク質である。他の実施形態では、Fc融合タンパク質は、Fc部分に連結した抗体の可変重鎖断片及び可変軽鎖断片などの1つ以上の抗原結合ドメインのうちの1つ以上を含有するScFv-Fc融合タンパク質である。
【0071】
いくつかの実施形態では、Fc部分を欠くタンパク質、例えば、組換え的に製造される酵素及びミニトラップもまた、本発明に従って作製され得る。ミニトラップは、Fc部分の代わりに多量体化成分(MC)を使用するトラップタンパク質であり、米国特許第7,279,159号及び7,087,411号に開示されている。
【0072】
いくつかの実施形態では、初期タンパク質は、乾燥粉末、例えば、微粉化された乾燥粉末の形態である。いくつかの実施形態では、タンパク質は、噴霧乾燥粉末(SDP)である。タンパク質溶液の代わりに噴霧乾燥タンパク質を使用することは、微粒子中のより高いタンパク質充填及び封入プロセス中のより良好なタンパク質安定性という利点を有する。いくつかの実施形態では、乾燥タンパク質分子は、封入プロセス及び保管条件全体の間、固体状態にとどまり、安定剤によって包囲されている。いくつかの実施形態では、封入噴霧乾燥タンパク質は、表面タンパク質の小さな部分のみが界面に曝露されるので、表面相互作用が最小限に抑えられている可能性があるため、高い回収率及び低い凝集(aggregates)を示す。いくつかの実施形態では、タンパク質は、封入の前に微粉化される。
【0073】
B.微粒子
いくつかの実施形態は、開示される非水膜エマルジョンシステムを使用して製造される薬学的組成物を提供する。いくつかの実施形態では、薬学的組成物は、ポリマー表層及び微粉化タンパク質コアを有する微粒子を含有する。いくつかの実施形態では、微粒子は、概ね球状である。微粒子及びタンパク質コアは、球状に近づくものもあれば、より不規則な形状になるものもあるであろう。したがって、本明細書で使用される場合、用語「直径」は、以下の各々及びいずれかを意味する:(a)微粒子若しくはタンパク質コアに外接する球体の直径、(b)微粒子若しくはタンパク質コアの境界内に収まる最大の球体の直径、(c)(a)の外接球体と(b)の限定球体との間の任意の測定値(2つの間の平均値を含む)、(d)微粒子若しくはタンパク質コアの最長軸の長さ、(e)微粒子若しくはタンパク質コアの最短軸の長さ、(f)長軸(d)の長さと短軸(e)の長さとの間の任意の測定値(2つの間の平均値を含む)、及び/又は(g)マイクロフロー撮像(MFI)、ナノ粒子トラッキング分析(NTA)によって決定されるような、又は静的光散乱法(SLS)、動的散乱法(DLS)、若しくはレーザー回折分析などの光散乱法による体積若しくは数平均直径としての、円相当径(「ECD」)。直径は、一般にマイクロメートル(μm又はミクロン)で表される。直径は、光学測定又は走査電子顕微鏡測定によって決定することができる。
【0074】
本開示の非水エマルジョン方法によって製造される微粒子は、低、非常に低、又はゼロに近い量の水(例えば、3重量%以下の水)を有するタンパク質の複数の分子である。本明細書で使用される場合、微粉化タンパク質粒子は、2ミクロン~約35ミクロン、又は2.0~50μm、又は5.0~15.0μm、30~60μm、又は約10μmの範囲のECDを有する。微粉化タンパク質粒子は、任意の特定のタンパク質実体に限定されず、上記のタンパク質を含む治療用タンパク質の調製及び送達に適している。
【0075】
例えば、タンパク質粒子は、噴霧乾燥、凍結乾燥及び粉砕、ジェット粉砕、非溶媒中の可逆沈殿、造粒、漸進的沈殿(US7,998,477(2011))、超臨界流体沈殿(US6,063,910(2000))、又は高圧二酸化炭素誘導粒子形成(Bustami et al.,Pharma.Res.17:1360-66(2000))によって微粉化されてもよい。本明細書で使用される場合、「噴霧乾燥」という用語は、噴霧乾燥機を使用することによって、スラリー又は懸濁液からミクロンサイズの粒子を含む乾燥粉末を製造する方法を意味する。噴霧乾燥機は、噴霧器又はスプレーノズルを使用して、懸濁液又はスラリーを制御されたドロップサイズのスプレーに分散させる。噴霧乾燥により、10~500μmのドロップサイズを生成することができる。溶媒(水又は有機溶媒)が乾燥すると、タンパク質物質は、ミクロンサイズの粒子に乾燥し、粉末状の物質を形成する。又は、タンパク質-ポリマー懸濁液の場合、乾燥中に、ポリマーは、タンパク質充填の周りのシェルを硬化させた。
【0076】
いくつかの実施形態では、微粉化タンパク質は、VEGFトラップタンパク質である。微粉化VEGFトラップタンパク質粒子の形成のための薬学的製剤は、約10mg/mL~約100mg/mLのVEGFトラップタンパク質、約1.0~約50mg/mLのタンパク質、約10mg/mL、約15mg/mL、約20mg/mL、約25mg/mL、約30mg/mL、約35mg/mL、約40mg/mL、約45mg/mL、約50mg/mL、約55mg/mL、約60mg/mL、約65mg/mL、約70mg/mL、約75mg/mL、約80mg/mL、約85mg/mL、約90mg/mL、約95mg/mL、又は約100mg/mLのVEGFトラップタンパク質を含有してもよい。
【0077】
いくつかの実施形態では、開示された非水膜エマルジョンシステムを使用して製造された微粒子は、ポリマー表層内にタンパク質粒子コアを含有し、約2μm~約70μm、約5μm~約65μm、約10μm~約60μm、約15μm~約55μm、約10μm~約50μm、約1.0μm~15μm、約20μm、約25μm、又は約30μmの範囲の直径を有する。サイズ変動は、大部分では、ポリマー表層の厚さを反映するが、タンパク質コアの直径は、ある程度サイズ変動に寄与し得る。
【0078】
いくつかの実施形態では、開示される非水エマルジョン方法によって形成される微粒子は、流動性微粒子組成物である。開示される流動性微粒子組成物は、薬学的に許容される賦形剤、例えば、pH緩衝生理食塩水中に懸濁することができる。流動性微粒子組成物は、例えば、27G針を有するシリンジなどのシリンジを使用して、非経口的に投与することができる。
【0079】
いくつかの実施形態では、微粒子は、タンパク質治療薬の逐次継続放出(time-release)又は徐放に有用である。いくつかの実施形態では、マイクロスフェア製剤は、硝子体内に、脈絡膜上に、又は皮下に注入される。例えば、VEGFトラップ微粒子は、例えば、血管性眼障害の治療のための硝子体又は脈絡膜上腔におけるVEGFトラップ治療用タンパク質の徐放、又は他の障害を治療するためのVEGFトラップの徐放のための皮下移植に有用であることが想定される。
【0080】
本発明の微粒子は、約37℃の生理学的水性環境において、少なくとも60、90、120、又は150日までの長期間にわたって、比較的一定の速度でタンパク質を放出する。いくつかの実施形態では、微粒子は、24時間後に15%未満のバースト、続いて薬物の直線的な持続放出を有する。
【0081】
いくつかの実施形態は、本明細書に開示される非水膜エマルジョン方法を使用して製造されるマイクロスフェアの組成物を提供し、当該組成物は、100mg超の噴霧乾燥タンパク質を含有する。いくつかの実施形態では、非水膜エマルジョン方法は、収率が90%超であり、99%超の純度を有し、かつ10%超のw/wの充填及び10%未満のバーストを有する微粒子を製造する。
【実施例
【0082】
実施例1:H/Fベースのバルクエマルジョンによるブランクマイクロスフェアの合成
材料及び方法
油及び水性ベースのエマルジョンシステムは、ポリマー微粒子又はナノ粒子の合成に頻繁に使用され、疎水性ポリマー材料は有機相に溶解され、水性連続相に分散される。しかしながら、水溶性ポリマー、例えばPEG、カルボキシメチルセルロース(CMC)、及び水の存在下で容易に加水分解するポリマーには、ポリ無水物、ポリ乳酸のような短い中間ブロックを有する脂肪族ポリエステル、及びポリ(グルタミン酸)のような特定のポリ(アミノ酸)が含まれるが、従来の水性ベースのエマルジョンシステムは、理想的ではない。以下の実施例は、上述の加水分解性又は水分解性ポリマー微粒子を製造するための開示されるH/Fエマルジョンシステムの有用性を実証する。いくつかの実施形態では、これらのポリマーは、最初に、極性溶媒(例えば、アセトニトリル、テトラヒドロフラン)及び極性の低い溶媒(例えば、DCM、クロロホルム)を含む炭化水素溶媒に溶解される。次いで、このポリマー溶液を、連続相、フルオロカーボン液体、例えば、FSを含むFC-40(例えば、Picosurf 1)に添加する。エマルジョンは、撹拌、ボルテックス又は他の配合方法によって作製される。エマルジョン液滴は、最終的に、炭化水素溶媒を蒸発又は抽出することによってポリマー球体に硬化される。
【0083】
特定の実施形態では、スキーム1(図1A)に例示されるように、H/Fバルクエマルジョンを介したブランクPOEマイクロスフェアの合成のために、DCM中の約10%、20%、30%及び40%w/vのPOE(200μL)を、0.5%w/wのFS Pico-Surf(商標)1(Sphere Fluidics)を含有するFC-40(2mL)に添加した。乳化は、ボルテックスによって達成した。エマルジョン液滴は、FC-40よりも軽く、溶液の上に浮遊した。アリコートを採取し、顕微鏡撮像のためにガラススライド上に落とした。マイクロスフェアを、真空下で3時間かき混ぜながら硬化させた。FC-40中の硬化ポリマー球体を、最初に0.22ミクロンのPES膜を通して真空濾過した。FC-40はフィルターを通過し、マイクロスフェアは保持された。次いで、マイクロスフェアを追加のFC-40で洗浄し、真空下で完全に乾燥させた。同じプロセスを用いた別の実施例では、DCM中の約30%w/vのPOEを炭化水素相において使用し、FC40中の約0.01%、0.1%、及び0.5%のFSをフルオロカーボン相において使用して、FS濃度の効果を評価した。
【0084】
結果
FSの存在により、炭化水素とフルオロカーボンとの混合物は、H/Fエマルジョンを形成することができた。一例では、DCMをH/FエマルジョンとしてFC-40(図1BのFC-40の構造を参照されたい)中に分散させ、PFPE-PEG-PFPEをFS(図1CのFSの構造を参照されたい)として使用した。FC-40フルオロカーボン相に、増加濃度のFSを添加した。試験により、DCM液滴の合体(coalescing)を防止するために、0.1~5%w/wのFSが必要であることが示された(図2A)。SFを0.1%w/w未満添加した場合、より広いサイズ分布が観察された。SFを使用しない場合、DCM液滴は安定しなかった。分散したDCM液滴はすぐに融合し、2つの相はすぐに分離するであろう。結果は、安定したH/Fエマルジョンを製造するために十分な量のFSを使用し、硬化プロセス中に連続的にかき混ぜて、ポリマーマイクロスフェアを成功裏に製造する必要があることを示した。(図2B)。
【0085】
DCM中にPOEを添加し、FC-40中でボルテックスすると、POEを含有する液滴が形成された。開放容器内又は真空下での周囲条件でのDCMの蒸発は、POEマイクロスフェアに硬化した液滴をもたらした(図2A及び2B)。マイクロスフェアのサイズは、有機相における液滴サイズ及びPOE含有量と関連していた。より高いPOE濃度は、より大きなマイクロスフェアサイズをもたらす(表1)。
【表2】
【0086】
実施例2:均質化速度の影響
材料及び方法
DCM中の30%又は40%w/vのPOE(1mL)を、0.5%(w/w)のFS FC-40を含むFC-40(9mL)に添加し、VWR 7mm×95mmの鋸波発生器プローブを有するVWRハンドヘルドホモジナイザー200で乳化し、3つの均質化速度、低(フルパワーの約50%)、中(フルパワーの約60%)、及び高(フルパワーの約70%)のうちの1つで乳化した。形成されたエマルジョンを真空下でかき混ぜた。形成されたマイクロスフェアを洗浄し、真空下で乾燥させた。
【0087】
結果
図3A~Cに示されるように、30% POEについて、低均質化速度は、より大きいマイクロスフェアサイズをもたらし、一方、高均質化速度は、より小さいサイズをもたらした(表2)。40%のPOEも、同じ傾向を示した。これらの結果は、均質化速度を調整することにより、マイクロスフェアサイズを制御できることを示している。
【表3】
【0088】
実施例3:S/H/Fベースのバルクエマルジョン方法によるPOEマイクロスフェア中のタンパク質SDP封入の一般的手順
材料及び方法
図4に示すように、バルクエマルジョン合成は、配合、乳化、硬化の3つのステップに分けることができる。生成物の特性はこれらの3つのステップで使用される異なったパラメータとして異なっているであろう。一般的な手順は、以下のように説明される。
【0089】
配合のために、10~35%w/vのPOEを含有する500μLの酢酸エチル中に、10%~30%w/wの総固体重量VEGFトラップSDP(又は蛍光撮像のための蛍光標識SDP(F-SDP))を、ボルテックス及びその後の5分間の超音波処理によって分散させた。次いで、これらの懸濁液を、0.1~0.5%w/wのFSを含む9.5mLのFC-40中に添加した。乳化は、ベンチトップホモジナイザーを使用した撹拌、ボルテックス、又は均質化によって達成することができる。エマルジョンの構造を図5に示す。乳化直後に、プロセス内アリコートを採取し、顕微鏡撮像のためにガラススライド上に落とした。周囲条件下での蒸発によりスライド上で液滴を硬化させた。マイクロスフェアを硬化させるために、以下の3つの方法のうちの1つを適用した:(a)開放容器内で溶液を周囲条件で一晩かき混ぜ、酢酸エチルの蒸発を可能にすることと、(b)溶液をより速い溶媒蒸発のために少なくとも2時間真空下でかき混ぜることと、(c)かき混ぜつつ、NOVEC7500、又はFC-40とNOVEC7500との混合物をエマルジョンに添加すること。HFEは、炭化水素相からフルオロカーボン相への酢酸エチルの抽出を支援し、急速な硬化プロセス(通常は数分以内)を可能にする共溶媒として作用する。
【0090】
最終的に、FC-40中の硬化ポリマー球体を、最初に0.22μmのPES膜を通して真空濾過した。FC-40はフィルターを通過し、マイクロスフェアは保持された。次いで、マイクロスフェアを追加のFC-40で洗浄し、真空下で完全に乾燥させた。
【0091】
生成物粉末を0.01%w/vのPVA溶液中に分散させることにより、液体サンプリングを伴うMalvern Mastersizer 3000を使用したレーザー回折分析によって、マイクロスフェアのサイズを測定した。生成物の形態を、走査電子顕微鏡(SEM)を使用して測定した。
【0092】
マイクロスフェアのタンパク質含有量を測定するために、所定量のマイクロスフェアを最初に200μLの酢酸エチルに溶解させ、次いで1つの純水で抽出し、水相を収集し、遠心分離して、濁り懸濁液を除去した。タンパク質の純度及び濃度を、SEC-UPLCにより測定した。
【0093】
バースト放出を測定するために、所定量のマイクロスフェアを1mLのPBS中で37℃で1時間インキュベートした。混合物を遠心分離し、上清をSEC-UPLCに供して、タンパク質濃縮を行った。
【0094】
結果
上記の結果は、十分なSFの存在により安定したH/Fエマルジョンである場合に形成を示した。この非水エマルジョンは、ブランクPOE球体を正常に生成することができる。この無水方法を再び使用して、SDPをPOEマイクロスフェアに組み込んだ。一例では、VEGFトラップF-SDP 10%w/wの総固体重量を、懸濁液として酢酸エチル(20%w/vのPOEを含む)中に導入し、FC-40中のこの懸濁液(0.5%w/wのFSを含有する)を、撹拌及びボルテックスによって配合した。乳化直後に、アリコートをガラススライド上に移して、顕微鏡撮像を行った。図6A及び図6Bに示されるように、FC-40中で酢酸エチルは液滴に分散し、SDP粒子は酢酸エチル液滴内に明確に閉じ込められていた。S/O/Wシステム(データは示さない)とは対照的に、タンパク質がフルオロカーボン連続相に漏出する兆候はなかった。このH/Fシステムにおいて重要なことは、液滴中のSDP粒子が、粉末状態において元の窪んだ形状を保持したことである。SDPを再構成するためのH/Fシステムには水がなかったため、SDPは元の固体粒子形態のままであった。硬化後、明るいファイルされた顕微鏡画像及び蛍光顕微鏡画像を通して、単一又は複数のSDP粒子を含有するPOEマイクロスフェアを明確に観察することができる(図7A、7B及び7C)。ガラススライド上の炭化水素及びフルオロカーボン溶媒の蒸発後、水を添加して、バースト放出及び封入品質を試験した。図8A~Dに示されるように、マイクロスフェア生成物を水中に配置した後、SDP封入POEマイクロスフェアは、完全性を保持した。タンパク質の即時放出は観察されず、SDP粒子の形状は同じままであり、これは、SDP粒子がポリマーマトリックスによって十分に保護され、水性環境から遮蔽されていることを示した。これらの結果は、H/Fエマルジョンが、タンパク質及び他の親水性薬物をポリマーマトリックス内に封入するための有効な解決策であり、バースト放出を最小限に抑えながら、高い封入効率、高収率を達成する可能性を有することを示す。これらは全て、水性ベースのW/O/W又はS/O/W方法を使用する場合の主要な課題である。
【0095】
本明細書に開示される手順は、POEマイクロスフェア中のタンパク質SDP封入のためのS/H/F非水ベースのバルクエマルジョン方法を使用する例である。この方法は、再現性があり、スケーラブルで、調整可能である。製剤及びプロセスにおけるパラメータを変化させることにより、生成物特性を調整及び制御することができる。それらのパラメータのうちのいくつかの効果が、実施例4に開示される。
【0096】
実施例4:炭化水素溶媒の効果
材料及び方法
ジクロロメタン又は酢酸エチルを炭化水素として使用して、実施例2に記載されるように微粒子を製造した。DCM中35%w/vのPOE、及び酢酸エチル中35%w/vのPOEを調製した。総固体重量が10%(10%)w/wのタンパク質粉末を、DCM中又は酢酸エチル中の0.5mLのPOE溶液中に懸濁させた。これらの懸濁液を、20mLのシンチレーションバイアル中の0.5%w/wのFSを含有する9.5mLのFC-40中に移した。これらの混合物を均質化して、エマルジョンを生成し、ハウス真空下で1.5時間かき混ぜた。形成されたマイクロスフェアを濾過によって単離し、FC-40で洗浄し、真空下で乾燥させた。
【0097】
結果
図9は、炭化水素溶媒の種類(ジクロロメタン又は酢酸エチルのいずれか)を除いて、同じ製剤及びプロセス条件を使用して製造された微粒子のサイズ分布を示す。いずれかの炭化水素を使用して製造された微粒子は、噴霧乾燥タンパク質の封入を示す。ジクロロメタンを使用すると、より大きな微粒子が生成される。以下の表3を参照されたい。結果は、同じ製剤及びプロセス条件下で、異なる炭化水素溶媒を使用すると、異なるサイズのマイクロスフェアが得られることを示唆した。DCMは、酢酸エチルよりも大きなマイクロスフェアサイズを生成した。したがって、マイクロスフェアサイズを制御するために、炭化水素溶媒を意図的に選択することができる。
【表4】
【0098】
実施例5:タンパク質充填量の影響
材料及び方法
タンパク質充填量のみを変化させて、実施例2に記載されるように微粒子を製造した。DCM中の35%のPOEを調製した。総固体重量が5%、10%及び30%w/wのタンパク質粉末を、DCM中の0.5mLのPOE溶液中に懸濁させた。これらの懸濁液を、20mLのシンチレーションバイアル中の0.5%w/wのFSを含有する9.5mLのFC-40中に移した。これらの混合物を約1分間均質化してエマルジョンを生成し、次いで、Novec7500とFC-40との1:1(v:v)混合物6mLを1分以内にエマルジョンに添加した。その後、更に1分間撹拌した後、形成されたマイクロスフェアを濾過によって単離し、FC-40で洗浄し、真空下で乾燥させた。
【0099】
結果
表4に示すように、製剤中のタンパク質粉末の量を増加させると、レーザー回折分析によって測定されたより大きなPOE微粒子サイズが得られ、また、タンパク質抽出実験、明視野及び共焦点蛍光顕微鏡法によって観察された最終POEマイクロスフェア生成物中のタンパク質充填も増加した。30%w/wのタンパク質粉末充填についての明視野画像は、10%w/wのタンパク質粉末よりも暗く、透明度が低いマイクロスフェアを示し、これは、より多くの薬物がマイクロスフェア生成物中に封入されていることを示している(図10A及び10B)。代表的な共焦点画像は、SDPが、マイクロスフェアの断面図から、POEマトリックス内に元の形態で封入されていることを確認した(図11A及び11B)。より多くのSDP粒子が、30%w/wの充填しているマイクロスフェア中で観察された。繰り返すが、封入されたSDPは、元の窪んだ形状を保持し、これは製造プロセス全体中にそれらが無傷であったことを示している。
【表5】
【0100】
図12A及び12Bは、5%w/wのSDP及び10%w/wのSDPが充填された微粒子の走査電子顕微鏡(SEM)画像である。
【0101】
実施例6:H/Fバルク乳化を使用したPOEマイクロスフェアへのSDPの封入に関する実験計画法(DOE)
材料及び方法
設計された空間における合成の重要な要因が最終生成物の特性に及ぼす影響を評価するために、DOE試験を実行した。設計された実験における10回の実行を、実施例2に記載の一般的手順に従って実行した。タンパク質粉末充填、タンパク質粉末粒子サイズ(Dv(50)サイズは2.2um及び5.6umであり、それぞれ図13A及び13BのSEM画像を参照されたい)、ポリマー濃度、及びHFE濃度は、以下の製剤及びプロセス条件を一定に保ちながら変化させた(例えば、炭化水素及びフルオロカーボン相の体積、均質化速度、FS濃度(表5))。マイクロスフェアサイズ(Dv50、レーザー回折によるスパン)、封入効率、1時間37℃でのバースト放出、SEM画像を含む測定された応答。
【0102】
結果
DOEの結果を表5に要約する。
【表6】
【0103】
マイクロスフェアサイズ(R=0.76)に対するカスタム設計されたDOE適合により、タンパク質粉末充填及びPOE濃度の主な影響が明らかとなった(p値<0.05、表6の相関結果を参照されたい)。加えて、バースト放出に対する適合(R=0.92)は、タンパク質粉末充填のみがバースト放出に有意に影響することを示す(p値<0.05、表7の相関結果を参照されたい)。結果は、製剤中のタンパク質粉末量を増加させると、最終生成物中のペイロードがより高くなるが、また、バースト放出パーセンテージを増加させることを示唆する。バースト放出は、表面吸着されたタンパク質粒子によって引き起こされる可能性が高い。ポリマーマイクロスフェア中に内在化されるタンパク質粉末の最大量は、所与のマイクロスフェアサイズの物理空間によって決定される。製剤懸濁液中のタンパク質粉末濃度を単に増加させるだけでは、この実施例では約30%w/wであった特定の閾値を超えて薬物封入を増加させることはない。
【表7】
【表8】
【0104】
実施例7.異なるタンパク質へのS/H/Fエマルジョンベースの封入方法の適用
開示されるH/Fベースのエマルジョンシステム及びプロセスは、異なるポリマー及び治療用タンパク質に適用可能なプラットフォーム技術であり得る。本発明の具体例では、組換えIgG4のタンパク質粉(MW:約145kDa)、組換えIgG1のタンパク質粉末(MW:約146kDa)、又は組換え融合タンパク質のタンパク質粉末(MW:約64kDa)を、実施例2と同様のプロセスによって、それぞれPOEマイクロスフェアに封入した。結果を表8に要約する。マイクロスフェア生成物中の封入されたタンパク質粉末の量を、抽出アッセイによって決定し、目標値と一致させた。タンパク質純度が組換え融合タンパク質、IgG1について保持されたか、又は封入プロセス後にIgG4についてわずかに低下した(2%未満)ことは、良好なプロセス適合性を示す。
【表9】
【0105】
PLGA及びPLAなどの他の生分解性ポリマーも、H/Fベースのエマルジョンに使用される。本発明の具体的な例では、実施例2に開示される同様の方法により、蛍光標識VEGFトラップF-SDPを、それぞれ、PLGA(ラクチド:グリコライド50:50、Mw:42~65kDa、Sigma Aldrich)及びPLA(アルキルエーテル末端、Mw:18,000~28,000、Sigma Aldrich)マイクロスフェア中に封入した。他のポリマー比及び分子量も使用することができる。明視野及び蛍光顕微鏡画像は、タンパク質粉末がポリマーマイクロスフェアの内部に首尾よく封入されたことを示した(PLAについては図14A~C、PLGAについては図15A~B)。
【0106】
実施例8:非水膜エマルジョン
表9に記載の材料を使用して膜エマルジョンを使用して微粒子を製造した。
【表10】
【0107】
膜乳化(ME)は、良好なサイズ制御及び狭いサイズ分布を可能にする粒子の高度に制御された製造のための比較的新しい技術である。これまでに、シラス多孔質ガラス(Shirasu Porous Glass、SPG)、酢酸セルロース、ポリマー、陽極酸化アルミナ(anodic porous alumina)、及びシリコンマイクロチャネルなど、ME用に多くの種類の膜が開発されてきた。開示されたプロセスについては、レーザードリルで開けた細孔を有するステンレス鋼膜が目的に最適であり、Micropore Technologies(Redcar、UK)による市販の装置が、実験室研究プロセスを可能にし、またGMP製造へのスケールアップも可能にすることを見出した。膜技術のいくつかの重要な特質は下記のものを含んでいる:1.厳しく制御された膜の細孔サイズにより、限界を下回る全てのSDPの粒子は、膜を通過することができる。2.曲がりくねった経路を有しない直管状チャネルは、SDPによるチャネル遮断の傾向を低減する。3.親フッ素性膜コーティングは、フルオロカーボン中炭化水素(H/F)エマルジョンの製造との良好な適合性を提供する。更に、ステンレス膜は、堅牢で、清掃が容易で、滅菌可能である。
【0108】
1つの実験について、ブランクPOEマイクロスフェア(RS001-バッチ1)又はタンパク質封入POEマイクロスフェア(RS001-バッチ2)を、従来の水性ベースのエマルジョンシステムを使用した膜乳化によって製造した。製造パラメータを、表10に列挙する。バッチ1では、DCM中10%w/w POE溶液を分散相として使用し、1%ポリビニルアルコール(PVA)を連続相(continues phase)として使用して、ブランクPOEマイクロスフェアを製造した。バッチ2では、サイズD50=2.2(D10=1.0、D90=3.8、スパン=1.24)のVEGFトラップSDP(1% Alex488標識VEGFトラップを含有する)についてマイクロ封入を実行した。SDPを、SDP:POE=9:1(重量による)のDCM中10w/w% POE溶液に添加した。混合物をボルテックスし、超音波処理浴中で5分間超音波処理して、均質な懸濁液を作製した。SDP懸濁液を10mLのBDシリンジに直ちに充填し、シリンジポンプによって駆動される0.8mL/分の速度でLDC-1分散セルに供給した。エマルジョンは、有機相が10VのDC電力(粘度に応じて約1,015rpm)を使用してかき混ぜながら30umの細孔を有する膜を完全に通過するときに生成された。形成されたエマルジョンを、キャップされていないビーカーに移し、一晩かき混ぜることなく周囲条件でマイクロスフェアに硬化させた。マイクロスフェア生成物を、最終的にMilliQ水で真空フィルター上で洗浄し、真空下で一晩乾燥させた。
【表11】
【0109】
別の実験について、ブランクPOEマイクロスフェア(バッチ3)又はタンパク質封入POEマイクロスフェア(バッチ4)を、新規の非水フルオロカーボン中炭化水素エマルジョンシステムを使用した膜乳化によって製造した。製造パラメータを、表11に列挙する。バッチ4aにおいて、上記VEGFトラップSDP(1% Alexa488標識VEGFトラップを含有する)を、生分解性又は生体侵食性ポリマーPOEを含有する炭化水素溶媒DCMに添加した。混合物をボルテックスし、超音波処理して、均質な懸濁液を形成した。SDP懸濁液を直ちにシリンジに充填し、シリンジポンプによってLDC-1分散セルに供給した。懸濁液を、タンパク質粉末粒子よりも大きい細孔サイズを有する多孔質膜を介して、フッ素系界面活性剤(例えば、Pico-Surf1)を含有するフルオロカーボン(例えば、FC-40)連続相に注入して、フルオロカーボン中炭化水素エマルジョン(図16に示す)を形成した。その後のマイクロスフェア硬化は、共溶媒としてフルオロカーボンにヒドロフルオロエステルであるNOVEC7500を添加することによって、形成されたエマルジョン液滴から炭化水素溶媒を除去することにより達成された。硬化マイクロスフェアを収集し、FC-40で洗浄して、余分なフッ素系界面活性剤を除去し、PESフィルターを含有する真空濾過を使用して乾燥させた。最後に、生成物を真空下で乾燥させ、残留溶媒を除去した。プロセス全体のフローチャートを図17に示す。
【表12】
【0110】
結果
図18に示されるように、従来の水性ベースのエマルジョンシステム(バッチ1)及び非水ベースのエマルジョンシステム(バッチ3)を介して製造されたブランクPOEマイクロスフェアのSEM画像は、両方の方法によって球状の微粒子が得られるが、表面形態が異なることを示す。水性ベースの方法は、プロセス中に水が存在するために高多孔質表面をもたらしたが、非水ベースの方法は、完全に無水プロセスに起因してはっきりとした細孔のない滑らかなマイクロスフェア表面をもたらした。
【0111】
VEGF-トラップSDPのPOEマイクロスフェアへのマイクロ封入に関する、両方法から得られた結果の比較を図19に示す。水性の膜乳化(バッチ3)によって良好な単分散マイクロスフェアが得られたが、表面は高多孔質であり、水チャネルを有する。非水膜乳化から得られたマイクロスフェアの単分散性は、水性バージョンよりも悪いが、プロセスパラメータを調整することによって更に改善することができる。更に、多くのSDPがPOEマイクロスフェアの表面に埋め込まれていることが観察される。これらの表面に位置するSDPは、マイクロスフェアが緩衝液中でインキュベートされた後のタンパク質のバースト放出に寄与し得る(表11及び12)。
【0112】
蛍光顕微鏡画像から、POEマイクロスフェア内部のタンパク質SDPの形態及び分布が明らかになった(図20)。バッチ3の場合、SDPは、封入プロセス中に水によって再構成され、マイクロスフェアの内部のより大きな液滴に融合された。反対に、バッチ4の場合、マイクロスフェアの内部に封入されたSDPは、水によるタンパク質の再構成がないため、SDPがプロセス後も完全性を維持したことを示す、元のレーズン形状の構造のままであった。
【0113】
バッチ3及びバッチ4の場合の封入効率(生成物中の測定されたタンパク質充填/理論的タンパク質充填)は、それぞれ35.0%及び80.7%であることが決定された(表12)。非水システムの場合の2倍超の封入効率は、水性システムと比較して、SDPが炭化水素液滴中でより良好に保持され、連続相への拡散がより少ないことを示唆する。POEマイクロスフェア中に封入されたタンパク質の純度(モノマーのパーセンテージ)を、サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)によって測定した。バッチ4は、封入プロセス全体の後にタンパク質純度の良好な保持を示した。
【表13】
【0114】
上述の明細書において、本発明は、その特定の実施形態に関連して記載されており、多くの詳細は、例示の目的のために提示されたが、本発明が、追加の実施形態の影響を受けやすく、本明細書に記載の詳細の一部が、本発明の基本原則から逸脱することなく、かなり変動し得ることは、当業者には明らかであろう。
【0115】
本発明は、その趣旨又は本質的な属性から逸脱することなく、他の特定の形態で具現化されてもよく、したがって、前述の明細書ではなく、本発明の範囲を示す添付の特許請求の範囲を参照する必要がある。
図1A
図1B
図1C
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19-1】
図19-2】
図20
【手続補正書】
【提出日】2023-05-26
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリマーコーティングされた微粒子を製造する方法であって、
微粉化タンパク質粉末及びポリマーを炭化水素溶媒中で合わせて、第1の非水溶液を形成することと、
前記第1の非水溶液を撹拌して、懸濁液を形成することと、
前記懸濁液を分散セルに供給することであって、前記懸濁液を、フルオロカーボン液体及びフッ素系界面活性剤を含む連続相の接流の下で、前記連続相に多孔質膜を介して注入して、フルオロカーボン中炭化水素エマルジョンを形成する、供給することと、
前記フルオロカーボン中炭化水素エマルジョンにヒドロフルオロエステルを添加することと、
前記炭化水素溶媒を除去して、硬化微粒子を提供することと、
前記フルオロカーボン液体を除去して、前記微粒子を単離することであって、前記微粒子が、ポリマーのマトリックス内に封入されたタンパク質を含む、除去することと、を含む、方法。
【請求項2】
前記フルオロカーボン液体中の前記微粒子を洗浄することによって、前記微粒子から残留フッ素系界面活性剤を除去するステップと、真空によって前記フルオロカーボンを除去するステップと、ポリエーテルスルホン膜フィルターを使用して前記微粒子を収集するステップと、を更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記フルオロカーボン液体が、ペルフルオロC5~C18化合物を含む、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記炭化水素溶媒が、ジクロロメタン、クロロホルム、トルエン、酢酸エチル、テトラヒドロフラン、又はこれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
フルオロカーボン溶液が、1,1,2,2,3,3,4,4,4-ノナフルオロ-N,N-ビス(1,1,2,2,3,3,4,4,4-ノナフルオロブチル)ブタン-1-アミンを含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記フッ素系界面活性剤が、ペルフルオロポリエーテル-b-ポリエチレングリコール-b-ペルフルオロポリエーテルを含む、請求項1~のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記ポリマーが、ポリオルトエステル(POE)を含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記ポリマーが、ポリ乳酸及びポリ(乳酸-コ-グリコール酸)からなる群から選択される、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記ヒドロフルオロエステルが、2-(トリフルオロメチル)-3-エトキシドデカフルオロヘキサンである、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記膜が、親フッ素性コーティングされたステンレス鋼膜である、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記膜の細孔が、直径3~300μmである、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記フッ素系界面活性剤が、約0.1~5%w/vでフルオロカーボン液体中に存在する、請求項1~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
タンパク質粉末対ポリマー比が、0.1%~30%である、請求項1~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記微粉化粉末が、抗体若しくはその抗原結合断片、融合タンパク質、組換えタンパク質、又はそれらの断片若しくは切断バージョンから製造される、請求項1~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記融合タンパク質が、VEGFトラップ融合タンパク質又はその切断バージョンである、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記VEGFトラップ融合タンパク質が、アフリベルセプトである、請求項14又は15に記載の方法。
【請求項17】
前記懸濁液の供給が、0.1~1.0ml/分の速度である、請求項1~16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記懸濁液が、均質懸濁液である、請求項1~17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
前記微粒子が、単一コアシェル構造を含む、請求項1~18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
少なくとも1つの微粒子が、前記ポリマー内に分散された複数のコアを含む、請求項1~19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
前記微粒子が、ポリマーによって封入された単一コア構造の組み合わせを含む微粒子と、ポリマーによって封入されたマルチコア構造を含む微粒子と、を含む、請求項1~20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
前記微粒子が、1~200μmの直径を有する、請求項1~21のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
前記微粒子が、30~60μmの中央直径を有する、請求項1~22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
タンパク質粉末が、噴霧乾燥、エレクトロスプレー乾燥、可逆沈殿、噴霧凍結、マイクロテンプレート、又はこれらの組み合わせによって微粉化される、請求項1~23のいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
前記懸濁液が、均質化、ボルテックス、超音波処理、キャビテーション、撹拌、かき混ぜ、チャーニング、ウィスキング、振盪、乳化、又はこれらの組み合わせを使用して形成される、請求項1~24のいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
前記炭化水素溶媒が、蒸発によって除去される、請求項1~25のいずれか一項に記載の方法。
【請求項27】
前記フルオロカーボン液体が、真空濾過によって除去される、請求項1~25のいずれか一項に記載の方法。
【請求項28】
請求項1~27のいずれか一項に記載の方法によって製造された微粒子であって、持続放出微粒子である、微粒子。
【請求項29】
請求項28に記載の微粒子を含む、持続放出組成物。
【請求項30】
前記微粒子が、ポリマー表層(cortex)内にほとんど又はまったく細孔又はチャネルを有しない、請求項1~29のいずれか一項に記載の微粒子。
【請求項31】
ポリマー又はポリマーコーティングされた微粒子を製造する方法であって、
炭化水素溶液中に懸濁した1~30%w/wの全固体噴霧乾燥タンパク質を合わせて、第1の非水溶液を形成することと、
前記第1の非水溶液を撹拌して、懸濁液を形成することと、
前記懸濁液を分散ポンプに供給することであって、前記懸濁液を、フルオロカーボン液体及び0.1~5.0%w/vのフッ素系界面活性剤を含む連続相の接流の下で、前記連続相に多孔質膜を介して注入して、フルオロカーボン中炭化水素エマルジョンを形成する、供給することと、
前記炭化水素溶媒を除去して、硬化ポリマー又はポリマーコーティングされたマイクロスフェアを提供することと、
前記フルオロカーボン液体を除去して、前記微粒子を単離することであって、前記微粒子が、ポリマーのマトリックス内に封入されたタンパク質を含む、除去することと、を含む、方法。
【請求項32】
前記炭化水素溶媒を除去する前に、前記フルオロカーボン中炭化水素エマルジョンの前記フルオロカーボン液体にヒドロフルオロエステルを添加するステップを更に含む、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
前記炭化水素溶液が、周囲大気圧下又は真空下での蒸発によって除去される、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
前記硬化ポリマー又はポリマーコーティングされたマイクロスフェアが、真空濾過によって採取される、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
前記噴霧乾燥タンパク質が、抗体、組換えタンパク質、融合タンパク質、又はそれらの断片である、請求項31又は32に記載の方法。
【請求項36】
前記タンパク質が、VEGFトラップタンパク質又は切断VEGFトラップタンパク質である、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
前記炭化水素溶液が、ジクロロメタン、クロロホルム、トルエン、酢酸エチル、テトラヒドロフラン、又はこれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項31に記載の方法。
【請求項38】
前記フルオロカーボン液体が、トリフルオロメチル)ビス(1,1,2,2,3,3,4,4,4-ノナフルオロブチル)アミンを含む、請求項31~37のいずれか一項に記載の方法。
【請求項39】
前記硬化微粒子を採取することを更に含む、請求項38に記載の方法。
【請求項40】
請求項31~39に記載の方法のいずれか1つによって製造された、微粒子。
【請求項41】
請求項40に記載の微粒子を含む、薬学的組成物。
【請求項42】
1つ以上の賦形剤を更に含む、請求項41に記載の薬学的組成物。
【請求項43】
前記薬学的組成物が、持続放出組成物である、請求項41に記載の薬学的組成物。
【請求項44】
前記薬学的組成物が、非経口投与のために製剤化される、請求項41~43のいずれか一項に記載の薬学的組成物。
【請求項45】
前記ヒドロフルオロエーテルが、4-エトキシ-1,1,1,2,2,3,3,4,5,6,6,6-ジデカフルオロ-5-(トリフルオロメチル)ヘキサンを含む、請求項3に記載の方法。
【国際調査報告】