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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-12-08
(54)【発明の名称】非水系レドックスフロー電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 8/18 20060101AFI20231201BHJP
   H01M 8/02 20160101ALI20231201BHJP
【FI】
H01M8/18
H01M8/02
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023530686
(86)(22)【出願日】2021-11-23
(85)【翻訳文提出日】2023-07-03
(86)【国際出願番号】 IB2021060847
(87)【国際公開番号】W WO2022112932
(87)【国際公開日】2022-06-02
(31)【優先権主張番号】102020000028295
(32)【優先日】2020-11-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IT
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】515063312
【氏名又は名称】イーエヌアイ ソシエタ ペル アチオニ
【氏名又は名称原語表記】ENI S.P.A.
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100230503
【弁理士】
【氏名又は名称】五百川 惟志
(72)【発明者】
【氏名】ルイジ アボンダンザ
(72)【発明者】
【氏名】ジュリアーナ シンペルナ
(72)【発明者】
【氏名】アレッサンドロ タッカ
【テーマコード(参考)】
5H126
【Fターム(参考)】
5H126AA03
5H126BB10
5H126FF05
5H126GG11
5H126GG17
5H126GG18
5H126GG19
5H126RR01
(57)【要約】
正極が配置され、非水系液体正極電解質が流される、正の区画と、
負極が配置され、非水系液体負極電解質が流される、負の区画と、
前記正の区画と前記負の区画との間に配置されるイオン交換膜と、
を備え、
前記非水系液体正極電解質は、少なくとも1つの有機溶媒中の銅トリフラートまたはテトラフルオロボラート錯体[Cu(I)またはCu(II)]の溶液を備え、
前記非水系液体負極電解質は、少なくとも1つの有機溶媒中の、一般式(I)を有する少なくとも1つのベンゾチアジアゾールの溶液を備え、
【化1】

ここで、同一であるかまたは互いに異なる、RおよびRは、水素原子を表し、または、C~C20、好ましくはC~C10の、直鎖もしくは分枝鎖、飽和もしくは不飽和のアルキル基を表し、または、-O-R基を表し、ここで、Rは、C~C20、好ましくはC~C10の、直鎖もしくは分枝鎖、飽和もしくは不飽和のアルキル基から選択され、または、Rは-(CHCOOR基から選択され、ここでRは、C~C20、好ましくはC~C10の直鎖もしくは分枝鎖、飽和もしくは不飽和のアルキル基から選択され、nは1~10で構成される整数であり、好ましくは1~8で構成される整数であり、または、Rは-(CHOR基から選択され、Rおよびnは、上記と同じ意味を有し、または、Rは、-(CHCHO)基から選択され、Rおよびnは、上記と同じ意味を有し、または、Rは、-(CHCN基から選択され、nは上記と同じ意味を有し、または、Rは、-(CHNR基から選択され、ここで、Rおよびnは、上記と同じ意味を有し、Rは、C~C20、好ましくはC~C10の直鎖もしくは分枝鎖のアルキル基から選択され、または、Rは、-(CHCONR基から選択され、ここで、R、Rおよびnは、飽和または不飽和で上記と同じ意味を有し、または、Rは、-(CHSi(R基から選択され、ここで、Rおよびnは、上記と同じ意味を有し、または、Rは、-(CHSi(OR基から選択され、ここで、Rおよびnは、上記と同じ意味を有し、ただし、RおよびRの少なくとも1つは水素とは異なり、RおよびRの少なくとも1つはフェニルの2位にある、非水系レッドクスフロー電池(RFB)。
当該非水系レドックスフロー電池(RFB)は、数時間(すなわち、1時間超)、中規模電力から高電力(例えば、約10kW~100MW)を必要とする装置、例えば、工業プラントまたは代替エネルギー源(太陽エネルギーもしくは風力エネルギーなど)からのエネルギーをその後の使用(例えば家庭用、または民生用もしくは商業用などの産業用)または販売のために貯蔵するための装置などにおいて、有利に使用され得る。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
非水系レッドクスフロー電池(RFB)であって、
正極が配置され、非水系液体正極電解質が流される、正の区画と、
負極が配置され、非水系液体負極電解質が流される、負の区画と、
前記正の区画と前記負の区画との間に配置されるイオン交換膜と、
を備え、
前記非水系液体正極電解質は、少なくとも1つの有機溶媒中の銅トリフラートまたはテトラフルオロボラート錯体[Cu(I)またはCu(II)]の溶液を備え、
前記非水系液体負極電解質は、少なくとも1つの有機溶媒中の、一般式(I)を有する少なくとも1つのベンゾチアジアゾールの溶液を備え、
【化1】

ここで、同一であるかまたは互いに異なる、RおよびRは、水素原子を表し、または、C~C20、好ましくはC~C10の、直鎖もしくは分枝鎖、飽和もしくは不飽和のアルキル基を表し、または、-O-R基を表し、ここで、Rは、C~C20、好ましくはC~C10の、直鎖もしくは分枝鎖、飽和もしくは不飽和のアルキル基から選択され、または、Rは-(CHCOOR基から選択され、ここでRは、C~C20、好ましくはC~C10の直鎖もしくは分枝鎖、飽和もしくは不飽和のアルキル基から選択され、nは1~10で構成される整数であり、好ましくは1~8で構成される整数であり、または、Rは-(CHOR基から選択され、Rおよびnは、上記と同じ意味を有し、または、Rは、-(CHCHO)基から選択され、Rおよびnは、上記と同じ意味を有し、または、Rは、-(CHCN基から選択され、nは上記と同じ意味を有し、または、Rは、-(CHNR基から選択され、ここで、Rおよびnは、上記と同じ意味を有し、Rは、C~C20、好ましくはC~C10の直鎖もしくは分枝鎖のアルキル基から選択され、または、Rは、-(CHCONR基から選択され、ここで、R、Rおよびnは、飽和または不飽和で上記と同じ意味を有し、または、Rは、-(CHSi(R基から選択され、ここで、Rおよびnは、上記と同じ意味を有し、または、Rは、-(CHSi(OR基から選択され、ここで、Rおよびnは、上記と同じ意味を有し、
ただし、RおよびRの少なくとも1つは水素とは異なり、RおよびRの少なくとも1つはフェニルの2位にある、
非水系レッドクスフロー電池(RFB)。
【請求項2】
前記銅トリフラートまたはテトラフルオロボラート錯体[Cu(I)またはCu(II)]は、テトラキスアセトニトリル銅(I)トリフラート[Cu(NCCH・CFSO]、銅(II)トリフルオロメタンスルホネート[Cu(CFSO]、テトラキスアセトニトリル銅(I)テトラフルオロボラート[Cu(NCCH・BF]、またはそれらの混合物から選択される、請求項1に記載の非水系レドックスフロー電池(RFB)。
【請求項3】
前記一般式(I)は、
同一であるかまたは互いに異なる、RおよびRが、水素原子を表し、または、-OR基を表し、ここで、Rは、-(CHCOOR基から選択され、RはC~C20、好ましくはC~C10の直鎖もしくは分枝鎖、飽和もしくは不飽和のアルキル基から選択され、nは1~10、好ましくは1~8で構成される整数であり、または、Rは、-(CHCHO)基から選択され、Rおよびnは、上記と同じ意味を有し、好ましくは、プロピルオキシカルボニルエチルオキシ基、メトキシカルボニルエチルオキシ基、メトキシエトキシエチルオキシ基を表し、
ただし、RおよびRの少なくとも1つは水素とは異なり、RおよびRの少なくとも1つはフェニルの2位にある、
請求項1または2に記載の非水系レッドクスフロー電池(RFB)。
【請求項4】
前記電解質は、リチウムテトラフルオロボラート(LiBF)、リチウムヘキサフルオロホスフェート(LiPF)、過塩素酸リチウム(LiClO)、メチルトリフルオロメタンスルホネート(LiCFSO)、リチウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド[Li(CFSON]、テトラエチルアンモニウムテトラフルオロボラート(TEABF)、テトラブチルアンモニウムテトラフルオロボラート(TBABF)、またはそれらの混合物から選択され、好ましくは、リチウムテトラフルオロボラート(LiBF)、テトラブチルアンモニウムテトラフルオロボラート(TBABF)から選択される、少なくとも1つの支持電解質を備える、請求項1から3のいずれか一項に記載の非水系レドックスフロー電池(RFB)。
【請求項5】
前記有機溶媒は、アセトニトリル、ジメチルアセトアミド、ジエチルカーボネート、ジメチルカーボネート、γ-ブチロラクトン(GBL)、プロピレンカーボネート(PC)、エチレンカーボネート(EC)、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)、フルオロエチレンカーボネート、N,N-ジメチルアセトアミド、またはそれらの混合物から選択され、好ましくは、これは、アセトニトリル、プロピレンカーボネート(PC)から選択される、請求項1から4のいずれか一項に記載の非水系レドックスフロー電池(RFB)。
【請求項6】
前記イオン交換膜は、
アミノ基を含有するスチレン-ジビニルベンゼンコポリマーまたはクロロメチルスチレン-ジビニルベンゼンコポリマーをベースとする膜、ポリ(エーテルエーテルケトン)をベースとする膜、4級ピリジン基を含有するジビニルベンゼン-ビニルピリジンコポリマーをベースとする膜、クロロメチル基およびアミノ基を含有する芳香族ポリスルホン系コポリマーをベースとする膜、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)をベースとする膜などのイオン交換膜、
テトラフルオロエチレンスルホネートをベースとするフルオロポリマー-コポリマーをベースとする膜、ポリ(エーテルエーテルケトン)をベースとする膜、ポリスルホンをベースとする膜、ポリエチレンをベースとする膜、ポリプロピレンをベースとする膜、エチレン-プロピレンコポリマーをベースとする膜、ポリイミドをベースとする膜、ポリフッ化ビニルをベースとする膜などの陽イオン交換膜、
などの高分子膜から選択される、請求項1から5のいずれか一項に記載の非水系レドックスフロー電池(RFB)。
【請求項7】
一般式(Ia)を有するベンゾチアジアゾールであって、
【化2】

ここで、同一であるかまたは互いに異なる、RおよびRは、水素原子を表し、または、C~C20、好ましくはC~C10の、直鎖もしくは分枝鎖、飽和もしくは不飽和のアルキル基を表し、または、-O-R基を表し、ここで、Rは、C~C20、好ましくはC~C10の、直鎖もしくは分枝鎖、飽和もしくは不飽和のアルキル基から選択され、または、Rは-(CHCOOR基から選択され、ここでRは、C~C20、好ましくはC~C10の直鎖もしくは分枝鎖、飽和もしくは不飽和のアルキル基から選択され、nは1~10で構成される整数であり、好ましくは1~8で構成される整数であり、または、Rは-(CHOR基から選択され、Rおよびnは、上記と同じ意味を有し、または、Rは、-(CHCHO)基から選択され、Rおよびnは、上記と同じ意味を有し、または、Rは、-(CHCN基から選択され、nは上記と同じ意味を有し、または、Rは、-(CHNR基から選択され、ここで、Rおよびnは、上記と同じ意味を有し、Rは、C~C20、好ましくはC~C10の直鎖もしくは分枝鎖、飽和もしくは不飽和のアルキル基から選択され、または、Rは、-(CHCONR基から選択され、ここで、R、Rおよびnは、上記と同じ意味を有し、または、Rは、-(CHSi(R基から選択され、ここで、Rおよびnは、上記と同じ意味を有し、または、Rは、-(CHSi(OR基から選択され、ここで、Rおよびnは、上記と同じ意味を有し、
ただし、RおよびRの少なくとも1つは水素とは異なり、RおよびRの少なくとも1つはフェニルの2位にある、
一般式(Ia)を有するベンゾチアジアゾール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非水系レドックスフロー電池(RFB)に関する。
【0002】
より詳細には、本発明は、正極が位置し非水系液体正極電解質が流される正の区画と、負極が位置し非水系液体負極電解質が流される負の区画と、正の区画と負の区画との間に位置するイオン交換膜とを備え、当該非水系液体正極電解質は、少なくとも1つの有機溶媒中の銅トリフラートまたはテトラフルオロボラート錯体[Cu(I)またはCu(II)]の溶液を備え、当該非水系液体負極電解質は、少なくとも1つの有機溶媒中の、下記に提供される特定の一般式(I)を有する少なくとも1つのベンゾチアジアゾールの溶液を備える、非水系レッドクスフロー電池(RFB)に関する。
【0003】
当該非水系レドックスフロー電池(RFB)は、数時間(すなわち、1時間超)、中規模電力から高電力(例えば、約10kW~100MW)を必要とする装置、例えば、工業プラントまたは代替エネルギー源(太陽エネルギーもしくは風力エネルギーなど)からのエネルギーをその後の使用(例えば家庭用、または民生用もしくは商業用などの産業用)または販売のために貯蔵するための装置などにおいて、有利に使用され得る。
【背景技術】
【0004】
レドックスフロー電池(RFB)は、その柔軟性と拡張性とによって、エネルギー貯蔵分野でますます有望な技術になりつつあるが、しかし何よりも、保存可能なエネルギーと供給される電力とが分離されているため、すべての他の二次電池とは異なり、環境への影響が低く、安全に動作する。
【0005】
レドックスフロー電池(RFB)は、1つ以上の電気活性種の溶液を含有する電解質を電気化学セルに流し、化学エネルギーを電気エネルギーに直接変換する一種の再充電電池である。当該電気化学セルは、通常、イオン交換膜によって分離された負の区画(または負の半電池)および正の区画(または正の半電池)からなる。これらの電解質を外部タンクに貯蔵することによって、電力成分(すなわち、当該電気化学セルの寸法および設計に依存する出力電力)およびエネルギー成分(すなわち、当該外部タンクの寸法、および当該外部タンクに含まれる電解質の濃度に依存する貯蔵エネルギー)は分離され、その応用における柔軟性の観点から純益を伴う。
【0006】
1つ以上の電気活性種の当該溶液の特徴は、例えば反応する電気活性種の溶液中の濃度、正もしくは負の区画(または半電池)内を移動する電子の数、および反応電位などの様々な要因に依存する、それらの高エネルギー密度である。
【0007】
ほとんどのレドックスフロー電池(RFB)は、無機電解質の水溶液を使用する。最近では、有機電解質もまた研究されており、酸化還元サイクルにおける安定性によって興味深いことが証明されている。このタイプのレドックスフロー電池(RFB)は有機試薬をベースにしており、エネルギー密度が高く、環境への影響が低く(重金属や腐食性溶液を使用していない)、低コストが特徴である。実際、バナジウムの価格は非常に高く、市場変動に大きく影響されるため、有機試薬を使用すると、流通が少数の国に集中し市場を支配する可能性がある元素の使用を避けることができる。さらに、水系は、水の小さな電気化学的安定性ウィンドウ(約1.2V)によって制限される。このため、電気化学的範囲がはるかに広い非水系フロー電池を開発するための多くの研究が進行中である。
【0008】
レドックスフロー電池(RFB)の動作の基本特性は、電解質中の反応種の安定性と溶解度(>0.5~1M)との両方に関係する。一般的に使用される溶媒は、アセトニトリル、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、またはそれらの混合物である。アセトニトリルは、サイクリックボルタンメトリーで最も一般的に使用されるものである。実際、これは可燃性で揮発性が非常に高いが、レドックスフロー電池(RFB)において形成され得る支持電解質および極性種を溶解することが可能である極性溶媒であり、また、特に広い電気化学的範囲(5V超)を有し、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、またはそれらの混合物は、可燃性が低いため非常に興味深いものである。
【0009】
非水溶媒を用いた最初のレドックスフロー電池(RFB)は、Singh P.の非特許文献1に報告されて以来、金属[Ru(acac),Ru(bpy),Fe(ppy),V(acac),Mn(acac)]と非金属(2,2,6,6-テトラメチルピペリジン1-オキシル(TEMPO)、N-メチルフタルイミド、キノキサリン、アントラキノン、ビオロゲン、ベンゾチアジアゾール)との両方の、多くのレドックス対が試みられてきた。
【0010】
例えば、本出願人に代わって発行された特許文献1は、非水系レッドクスフロー電池(RFB)であって、
正極が配置され、非水系液体正極電解質が流される、正の区画と、
負極が配置され、非水系液体負極電解質が流される、負の区画と、
正の区画と負の区画との間に配置されるイオン交換膜と、
を備え、
当該非水系液体正極電解質は、少なくとも1つの有機溶媒中の銅トリフラートまたはテトラフルオロボラート錯体[Cu(I)またはCu(II)]の溶液を備え、
当該非水系液体負極電解質は、少なくとも1つの有機溶媒中の、少なくとも1つのベンゾチアジアゾールまたはその誘導体の溶液を備える、
非水系レッドクスフロー電池(RFB)に関する。
【0011】
好ましくは、当該非水系液体負極電解質は、ベンゾチアジアゾール(1)の溶液を備える。
【化1】
【0012】
上記の非水系レドックスフロー電池(RFB)は、数時間(すなわち、1時間超)、中規模電力から高電力(例えば、約100kW~100MW)を必要とする装置、例えば、工業プラントまたは代替エネルギー源(太陽エネルギーもしくは風力エネルギーなど)からのエネルギーをその後の使用(例えば家庭用)または販売のために貯蔵するための装置などにおいて、有利に使用されると言われている。
【0013】
非特許文献2には、陰極液(非水系液体正極電解質)が式(II)を有する置換ジアルコキシベンゼンであり、
【化2】

陽極液(非水系液体負極電解質)が式(III)を有するベンゾチアジアゾールである、
【化3】

非水系レドックスフロー電池(RFB)が記載されており、
=H,CN;
=H,CH;CHO;F
=H;CH
=H,CN,
であり、
それらの安定性および酸化還元反応の結果として起こる劣化現象を研究する。しかし、Zhang J.らは、最も高い化学的安定性を示す陽極液/陰極液の対が存在する場合でも、このような非水系レドックスフロー電池(RFB)のライフサイクルは、非水系レドックスフロー電池(RFB)の区画間で反応生成物のクロスオーバーによる寄生反応によって大きく(ただしそれだけに限らない)制限されると報告している。彼らはまた、多くの場合、これらの非水系レドックスフロー電池(RFB)のサイクル性能は膜の選択性の低さによって強く影響されるようであると報告している。
【0014】
Zhao Y.らは、非特許文献3で、さまざまな支持電解質の効果を研究するために、非水系レドックスフロー電池(「RFB」)におけるモデル陽極液(水性液体負極電解質)として2,1,3-ベンゾチアジアゾール(BzNSN)を使用することを報告している。Zhao Y.らは、支持電解質の成分を変えると、2,1,3-ベンゾチアジアゾールの酸化還元電位と電気化学的安定性との両方が変化することを観察した。特に、支持電解質カチオンのサイズが増加するにつれて、2,1,3-ベンゾチアジアゾールの酸化還元電位がますます負になり、Liでの-1.63V vs Ag/Agから、Kやテトラエチルアンモニウムなどのより大きなカチオンでは-1.82V vs Ag/Agになることが観察された。さらに、より大きなカチオンはモデル化合物の電気化学的安定性を高めた。
【0015】
非特許文献4には、陰極液(非水系液体正極電解質)が式(II)を有する置換ジアルコキシベンゼンであり、
【化4】

陽極液(非水系液体負極電解質)が式(IV)を有するベンゾチアジアゾールである、
【化5】

非水系レドックスフロー電池(RFB)が記載されており、
ここで、R=H、CH、OCH、F、CFであり、酸化還元反応の結果として起こる安定性および劣化現象、特にアセトニトリル中のアニオンラジカルの寿命を研究している。これらの寿命とレドックスフロー電池(RFB)の安定性との間に矛盾が生じており、さらなる寄生反応の存在を示している。
【0016】
上記のことから、ベンゾチアジアゾールおよびその誘導体は、非水系レドックスフロー電池(RFB)において有効な酸化還元種であるにもかかわらず、そのような非水系レドックスフロー電池の充電段階中に形成されるラジカルの高い反応性が放電操作を難しくすることがわかる。実際、形成されたBTDラジカルは、正負の区画の間に位置する膜、または当該区画に存在するグラファイト電極に結合する傾向があり、寄生反応を引き起こす。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0017】
【特許文献1】国際特許出願第2018/007991号
【非特許文献】
【0018】
【非特許文献1】Singh P., in “Journal of Power Sources” (1984), Vol. 11, pg. 135-142
【非特許文献2】Zhang J. et al, “Journal of power sources” (2018), Vol. 397, pg. 214-222
【非特許文献3】Zhao Y. et al, “Journal of Material Chemistry A” (2020), DOI: 10.1039/D0TA02214D (「受理原稿」)
【非特許文献4】Huang J. et al, “Journal of Material Chemistry A” (2018), Vol. 6, pg. 6251-6254
【発明の概要】
【0019】
したがって、本出願人は、上記の欠点を持たず、それによって使用される非水系レドックスフロー電池(RFB)をより安定にすることが可能であるベンゾチアジアゾール誘導体を見つけるという問題に直面した。
【0020】
本出願人は、下記に示す特定の一般式(I)を有する特定のベンゾチアジアゾール誘導体が、それらが使用される非水系レドックスフロー電池(RFB)の充放電サイクル中に良好な化学的安定性を有し、したがって、当該非水系レドックスフロー電池(RFB)をより安定にすることが可能である。さらに、当該ベンゾチアジアゾール誘導体は、サイクリックボルタンメトリーによって測定される非常に良好な電気化学的特性、および使用される有機溶媒(特に、アセトニトリルおよびプロピレンカーボネート)に対する高い溶解性を有する。さらに、当該ベンゾチアジアゾール誘導体は、良好な性能、すなわち開回路での高い電位差(E°)および高いエネルギー密度(ρ)を有する非水系レドックスフロー電池(RFB)を提供することが可能である。
【0021】
したがって、本発明の目的は、非水系レッドクスフロー電池(RFB)であって、
正極が配置され、非水系液体正極電解質が流される、正の区画と、
負極が配置され、非水系液体負極電解質が流される、負の区画と、
正の区画と負の区画との間に配置されるイオン交換膜と、
を備え、
当該非水系液体正極電解質は、少なくとも1つの有機溶媒中の銅トリフラートまたはテトラフルオロボラート錯体[Cu(I)またはCu(II)]の溶液を備え、
当該非水系液体負極電解質は、少なくとも1つの有機溶媒中の、一般式(I)を有する少なくとも1つのベンゾチアジアゾールの溶液を備え、
【化6】

ここで、同一であるかまたは互いに異なる、RおよびRは、水素原子を表し、または、C~C20、好ましくはC~C10の、直鎖もしくは分枝鎖、飽和もしくは不飽和のアルキル基を表し、または、-O-R基を表し、ここで、Rは、C~C20、好ましくはC~C10の、直鎖もしくは分枝鎖、飽和もしくは不飽和のアルキル基から選択され、または、Rは-(CHCOOR基から選択され、ここでRは、C~C20、好ましくはC~C10の直鎖もしくは分枝鎖、飽和もしくは不飽和のアルキル基から選択され、nは1~10で構成される整数であり、好ましくは1~8で構成される整数であり、または、Rは-(CHOR基から選択され、Rおよびnは、上記と同じ意味を有し、または、Rは、-(CHCHO)基から選択され、Rおよびnは、上記と同じ意味を有し、または、Rは、-(CHCN基から選択され、nは上記と同じ意味を有し、または、Rは、-(CHNR基から選択され、ここで、Rおよびnは、上記と同じ意味を有し、Rは、C~C20、好ましくはC~C10の直鎖もしくは分枝鎖、飽和もしくは不飽和のアルキル基から選択され、または、Rは、-(CHCONR基から選択され、ここで、R、Rおよびnは、飽和または不飽和で上記と同じ意味を有し、または、Rは、-(CHSi(R基から選択され、ここで、Rおよびnは、上記と同じ意味を有し、または、Rは、-(CHSi(OR基から選択され、ここで、Rおよびnは、上記と同じ意味を有し、ただし、RおよびRの少なくとも1つは水素とは異なり、RおよびRの少なくとも1つはフェニルの2位にある、非水系レッドクスフロー電池(RFB)を提供する。
【0022】
本明細書および添付の特許請求の範囲において、他に断りがない限り、数値範囲の定義は常に両端の値を含む。
【0023】
本明細書および添付の特許請求の範囲において、用語「備える(備えている)」は、用語「実質的に~からなる」または「からなる」をも含む。
【0024】
本明細書および特許請求の範囲において、「C~C20アルキル基」という用語は、1~20個の炭素原子を有する飽和または不飽和の直鎖または分枝鎖のアルキル基を意味する。C~C20アルキル基の具体例は、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、t-ブチル、n-ペンチル、n-ヘキシル、n-ヘプチル、n-オクチル、n-デシル、n-ドデシルである。
【0025】
本発明の好ましい実施形態によれば、当該銅トリフラートまたはテトラフルオロボラート錯体[Cu(I)またはCu(II)]は、例えば、テトラキスアセトニトリル銅(I)トリフラート[Cu(NCCH・CFSO]、銅(II)トリフルオロメタンスルホネート[Cu(CFSO]、テトラキスアセトニトリル銅(I)テトラフルオロボラート[Cu(NCCH・BF]、またはそれらの混合物から選択され得る。
【0026】
本発明の好ましい実施形態によれば、当該一般式(I)は、
同一であるかまたは互いに異なる、RおよびRが、水素原子を表し、または、-OR基を表し、ここで、Rは、-(CHCOOR基から選択され、RはC~C20、好ましくはC~C10の直鎖もしくは分枝鎖、飽和もしくは不飽和のアルキル基から選択され、nは1~10、好ましくは1~8で構成される整数であり、または、Rは、-(CHCHO)基から選択され、Rおよびnは、上記と同じ意味を有し、好ましくは、これらは、プロピルオキシカルボニルエチルオキシ基、メトキシカルボニルエチルオキシ基、メトキシエトキシエチルオキシ基を表し、
ただし、RおよびRの少なくとも1つは水素とは異なり、RおよびRの少なくとも1つはフェニルの2位にある。
本発明の目的に有用な一般式(I)を有する化合物の具体例を表1に報告する。
【0027】
【表1】
【0028】
本発明の目的のために、銅(II)トリフラート錯体[Cu(II)]の溶液から出発する場合、一般式(I)を有する少なくとも1つのベンゾチアジアゾールを備える溶液は、負の区画に供給される前に、還元型(BTD・-)で一般式(I)を有するベンゾチアジアゾールを得るために還元されることに留意すべきである。
【0029】
上記の電解質は、少なくとも1つの支持電解質を含み得る。支持電解質は、負の区画内の電解質と正の区画内の電解質との間の荷電平衡を維持することが可能であるが、しかしながら、反応には関与しない。概して、支持電解質は、考慮される電位範囲にわたって化学的に不活性でなければならず、電流の通過に対する低い抵抗を確実にするために高いイオン伝導性を有しなければならず、かつ電極表面上の電子交換を妨げてはならない。
【0030】
本発明の一実施形態によれば、上記の電解質は、例えば、リチウムテトラフルオロボラート(LiBF)、リチウムヘキサフルオロホスフェート(LiPF)、過塩素酸リチウム(LiClO)、メチルトリフルオロメタンスルホネート(LiCFSO)、リチウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド[Li(CFSON]、テトラエチルアンモニウムテトラフルオロボラート(TEABF)、テトラブチルアンモニウムテトラフルオロボラート(TBABF)、またはそれらの混合物から選択される少なくとも1つの支持電解質を備える。リチウムテトラフルオロボラート(LiBF)、テトラブチルアンモニウムテトラフルオロボラート(TBABF)が好ましい。
【0031】
本発明の好ましい実施形態によれば、当該有機溶媒は、例えば、アセトニトリル、ジメチルアセトアミド、ジエチルカーボネート、ジメチルカーボネート、γ-ブチロラクトン(GBL)、プロピレンカーボネート(PC)、エチレンカーボネート(EC)、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)、フルオロエチレンカーボネート、N,N-ジメチルアセトアミド、またはそれらの混合物から選択され得る。アセトニトリル、プロピレンカーボネート(PC)が好ましい。
【0032】
本発明において、2つの区画間のコンタミネーションの問題を結果として伴うイオン交換膜を通した可能な拡散の問題を防止するために、正の区画と負の区画との両方に同じ溶媒を使用することが好ましいことに留意されたい。
【0033】
また、当該銅トリフラートまたはテトラフルオロボラート錯体[Cu(I)またはCu(II)]と使用される有機溶媒への良好な溶解度を有する一般式(I)を有する当該ベンゾチアジアゾールとの両方が、すなわち0.05M~2Mの範囲、好ましくは0.08M~1.5Mの範囲の溶解度を有することに留意されたい。
【0034】
本発明の好ましい実施形態によれば、当該イオン交換膜は、例えば、
例えばアミノ基を含有するスチレン-ジビニルベンゼンコポリマーまたはクロロメチルスチレン-ジビニルベンゼンコポリマーをベースとする膜、ポリ(エーテルエーテルケトン)をベースとする膜、4級ピリジン基を含有するジビニルベンゼン-ビニルピリジンコポリマーをベースとする膜、クロロメチル基およびアミノ基を含有する芳香族ポリスルホン系コポリマーをベースとする膜、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)をベースとする膜などのイオン交換膜、
例えばテトラフルオロエチレンスルホネートをベースとするフルオロポリマー-コポリマーをベースとする膜、ポリ(エーテルエーテルケトン)をベースとする膜、ポリスルホンをベースとする膜、ポリエチレンをベースとする膜、ポリプロピレンをベースとする膜、エチレン-プロピレンコポリマーをベースとする膜、ポリイミドをベースとする膜、ポリフッ化ビニルをベースとする膜などの陽イオン交換膜、
などの高分子膜から選択され得る。
【0035】
本発明において有利に使用され得、かつ市販されている陰イオン交換膜は、AstomのNEOSEPTA(登録商標)AMX、NEOSEPTA(登録商標)AHA、NEOSEPTA(登録商標)ACS、LanxessのIonac MA3475、DuPontのTeflon(登録商標)、FumatechのFumasept(登録商標)FAA-3である。
【0036】
本発明において有利に使用され得、かつ市販されている陽イオン交換膜は、AstomのNEOSEPTA(登録商標)CMX、NEOSEPTA(登録商標)CIMS、DuPontのNafion(登録商標)である。
【0037】
好ましくは、負極は、例えば白金、銅、アルミニウム、ニッケル、ステンレス鋼などの少なくとも1つの金属;または、例えばカーボンブラック、活性炭、アモルファスカーボン、グラファイト、グラフェン、ナノ構造カーボン材料などの少なくとも1つの炭素含有材料;またはそれらの混合物を備え得る。当該負極は、多孔質、溝付き、または平滑であり得る。
【0038】
好ましくは、正極は、例えば白金、銅、アルミニウム、ニッケル、ステンレス鋼などの少なくとも1つの金属、または、例えばカーボンブラック、活性炭、アモルファスカーボン、グラファイト、グラフェン、ナノ構造カーボン材料などの少なくとも1つの炭素含有材料、またはそれらの混合物を備え得る。当該正極は、多孔質、溝付き、または平滑であり得る。
【0039】
上に列挙した一般式(I)を有するベンゾチアジアゾールのいくつかは新規である。
【0040】
したがって、本発明のさらなる目的は、一般式(Ia)を有するベンゾチアジアゾールを提供することである。
【化7】

ここで、同一であるかまたは互いに異なる、RおよびRは、水素原子を表し、または、C~C20、好ましくはC~C10の、直鎖もしくは分枝鎖、飽和もしくは不飽和のアルキル基を表し、または、-O-R基を表し、ここで、Rは、-(CHCOOR基から選択され、ここでRは、C~C20、好ましくはC~C10の直鎖もしくは分枝鎖、飽和もしくは不飽和のアルキル基から選択され、nは1~10で構成される整数であり、好ましくは1~8で構成される整数であり、または、Rは-(CHOR基から選択され、Rおよびnは、上記と同じ意味を有し、または、Rは、-(CHCHO)基から選択され、Rおよびnは、上記と同じ意味を有し、または、Rは、-(CHCN基から選択され、nは上記と同じ意味を有し、または、Rは、-(CHNR基から選択され、ここで、Rおよびnは、上記と同じ意味を有し、Rは、C~C20、好ましくはC~C10の直鎖もしくは分枝鎖のアルキル基から選択され、または、Rは、-(CHCONR基から選択され、ここで、R、Rおよびnは、飽和または不飽和で上記と同じ意味を有し、または、Rは、-(CHSi(R基から選択され、ここで、Rおよびnは、上記と同じ意味を有し、または、Rは、-(CHSi(OR基から選択され、ここで、Rおよびnは、上記と同じ意味を有し、
ただし、RおよびRの少なくとも1つは水素とは異なり、RおよびRの少なくとも1つはフェニルの2位にある。
【0041】
一般式(I)を有するベンゾチアジアゾールは、当技術分野で知られている手順に従って合成され得る。特に、化合物(2)、(3)および(4)は、2-ヒドロキシフェニルボロン酸および4,7-ジブロモベンゾチアジアゾールから鈴木カップリングによって合成され、4,7-ジ(2-ヒドロキシフェニル)-ベンゾチアジアゾールが得られる。鈴木カップリングは、選択性が高く、さらにボロン酸誘導体は毒性がなく、取り扱いが容易で安定している。概して、当該鈴木カップリングは、例えば、テトラキストリフェニルホスフィンパラジウム(II)[Pd(PPh3)4]、[1,1’-ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン]ジクロロパラジウム(II)[Pd(dppf)Cl]、トリス(ジベンジリデンアセトン)-ジパラジウム(0)/トリス(o-トリル)ホスフィン[Pddba/P(o-tolyl)3]などのパラジウム系触媒によって触媒される。具体的には、テトラキス(トリフェニルホスフィン)-パラジウム(II)[Pd(PPh]は、例えばJi C.らによって「Dyes and Pigments」(2017)、Vol.140、203-211ページにおいて報告されているように使用された。鈴木カップリングは塩基性環境を必要とし、最も一般的に使用される塩基は、アルカリ金属炭酸塩(カリウム、ナトリウム、セシウム)、酢酸カリウム、リン酸カリウム、tert-酪酸カリウムであり、具体的には炭酸カリウムが使用された。鈴木カップリングは、純粋な有機溶媒またはこれらの混合物、例えば、ジオキサン、トルエン、テトラヒドロフラン、アセトニトリル、N,N-ジメチルホルムアミド、水、エチルアルコール、イソプロピルアルコールの存在下で行われ得る。具体的には、これは、ジオキサンと水との存在下で行われる。鈴木カップリングは概して不活性雰囲気中、70℃~100℃の温度で行われ、具体的には80℃~85℃で行われた。
【0042】
上記の鈴木カップリングから得られた4,7-ジ(2-ヒドロキシフェニル)-ベンゾチアジアゾールは、例えばGuy K.らによって「Journal of Medicinal Chemistry」(2009)、Vol.52、3892-3901ページに報告されているように、4-ブロモ酪酸エチルと反応させて化合物(2)を得るか、2-ブロモ酢酸エチルと反応させて化合物(3)を得るか、1-ブロモ-2-(2-メトキシエトキシ)エタンと反応させて化合物(4)を得るかによって、化合物(2)、(3)および(4)において、既知のウィリアムソンエーテル化反応によって変換される。ウィリアムソンエーテル化反応は、概して、塩基性環境(具体的には、炭酸カリウムの存在下で行われた)および双極性非プロトン性溶媒の存在下(具体的には、ジメチルホルムアミドの存在下で行われた)で行われる。単離された生成物は、シリカゲルクロマトグラフィーカラムによって精製され、反応収率は80%から95%の範囲であった。
【0043】
化合物(5)、(6)および(7)は、2-ヒドロキシフェニルボロン酸と4,7-ジブロモベンゾチアジアゾールとの間の鈴木カップリングについて上記で報告されたものと同様の方法で、4,7-ジブロモベンゾチアジアゾールおよび対応するジメトキシフェニルボロン酸から鈴木カップリングによって調製された対応するメトキシル誘導体から合成した。それは、例えば、Petronzi C.ら、「European Journal of Medicinal Chemistry」(2011)、Vol.46、488-496ページによって記載されるように、メトキシルエーテルがジクロロメタン中の1M溶液として市販されている製品である三臭化ホウ素との反応によって脱メチル化され、対応するヒドロキシルを提供し得ることは、文献において既知である。具体的には、4,7-ジ(2,6-ジメトキシフェニル)-ベンゾチアジアゾールから4,7-ジ(2,6-ヒドロキシフェニル)-ベンゾチアジアゾールが得られ、4,7-ジ(2,5-ジメトキシフェニル)-ベンゾチアジアゾールから4,7-ジ(2,5-ジヒドロキシフェニル)-ベンゾチアジアゾールが得られ、4,7-ジ(2,4-ジメトキシフェニル)-ベンゾチアジアゾールから4,7-ジ(2,4-ジヒドロキシフェニル)-ベンゾチアジアゾールが得られた。対応する化合物(5)、(6)および(7)は、塩基性環境下でのウィリアムソン反応による4-ブロモ酪酸エチルとの反応を介して、これらのジヒドロキシフェニルベンゾチアジアゾール誘導体から得られた。
【0044】
あるいは、一般式(I)を有するベンゾチアジアゾールは、例えば、Beverina L.らによって「Organic Letters」(2017)、Vol.19、654-657ページに記載されているように操作されるミセル合成によって合成され得る。これに関して、例えば、化合物(2)に関しては、2-(プロピルオキシカルボニルエチルオキシ)-1-ブロモベンゼンを出発原料として使用し、触媒として[1,1’-ビス(ジ-tert-ブチルホスフィノ)フェロセン-ジクロロ-パラジウム(II)[Pd(dtbpf)Cl]の存在下、トリエチルアミンによって塩基性とした環境下において、2%Kolliphorおよび10%トルエンを含有する90%水溶液からなる溶媒中でピナコールベンゾチアジアゾール-4,7-ジボロネートと反応させた(ミセル合成)。反応は、70℃、15分間行った。シリカゲルクロマトグラフィーカラムでの溶出後に生成物(2)が90%の収率で得られた。この反応の利点、(i)主な溶媒は水である有毒溶媒の減少、(ii)反応時間の減少、(iii)反応温度の減少、(iv)収率の増加、は非常に大きい。同様に、この合成経路を用いて化合物(7)を製造した。ここでも、ミセル合成によって、環境に優しい方法で目的の生成物を高収率で得ることが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0045】
図1図1は、本発明による非水系レドックスフロー電池(RFB)の一実施形態を概略的に表す図である。
図2図2[横軸は測定された電位(E)をボルト(V)で示し、縦軸はアンペア/cm(Acm-2)で測定された電流密度(J)を示す]は、アセトニトリルおよびプロピレンカーボネート中の上記の溶液[BTD]から、200mV/sの走査速度で得られたサイクリックボルタグラムを示す。
図3図3[横軸は測定された電位(E)をボルト(V)で示し、縦軸はアンペア/cm(Acm-2)で測定された電流密度(J)を示す]は、アセトニトリルおよびプロピレンカーボネート中の上記の溶液[化合物(2)]から、200mV/sの走査速度で得られたサイクリックボルタグラムを示す。
図4図4[横軸は測定された電位(E)をボルト(V)で示し、縦軸はアンペア/cm(Acm-2)で測定された電流密度(J)を示す]は、アセトニトリルおよびプロピレンカーボネート中の上記の溶液[化合物(3)]から、200mV/sの走査速度で得られたサイクリックボルタグラムを示す。
図5図5[横軸は測定された電位(E)をボルト(V)で示し、縦軸はアンペア/cm(Acm-2)で測定された電流密度(J)を示す]は、アセトニトリルおよびプロピレンカーボネート中の上記の溶液[化合物(4)]から、200mV/sの走査速度で得られたサイクリックボルタグラムを示す。
図6図6[横軸は測定された電位(E)をボルト(V)で示し、縦軸はアンペア/cm(Acm-2)で測定された電流密度(J)を示す]は、アセトニトリルおよびプロピレンカーボネート中の上記の溶液[化合物(5)]から、200mV/sの走査速度で得られたサイクリックボルタグラムを示す。
図7図7[横軸は測定された電位(E)をボルト(V)で示し、縦軸はアンペア/cm(Acm-2)で測定された電流密度(J)を示す]は、アセトニトリルおよびプロピレンカーボネート中の上記の溶液[化合物(6)]から、200mV/sの走査速度で得られたサイクリックボルタグラムを示す。
図8図8[横軸は測定された電位(E)をボルト(V)で示し、縦軸はアンペア/cm(Acm-2)で測定された電流密度(J)を示す]は、アセトニトリルおよびプロピレンカーボネート中の上記の溶液[化合物(7)]から、200mV/sの走査速度で得られたサイクリックボルタグラムを示す。
図9図9[横軸は測定された電位(E)をボルト(V)で示し、縦軸は測定された電流強度(i)をアンペア(A)で示す]は、上記の4,7-ジ[2-(プロピルオキシカルボニルエチルオキシ)フェニル]-ベンゾチアジアゾール溶液[実施例7で得られた化合物(2)]に対して実行された150回の連続酸化還元サイクルを示す。
図10図10[横軸は測定された時間を秒(t/s)で示す。縦軸は、測定された電流強度(i)をアンペア(A)で示す。]は、得られた充電/放電曲線を示す。
【発明を実施するための形態】
【0046】
ここで、下記に示す図1を参照して、一実施形態を通して本発明をより詳細に説明する。
【0047】
特に、図1は、本発明による非水系レドックスフロー電池(RFB)の一実施形態を概略的に表す図である。これに関連して、非水系レドックスフロー電池(RFB)1は、正極6が位置し、非水系液体正極電解質(図1には示されていない)が流される正の区画6aと、負極8が配置され、非水系液体負極電解質(図1には示されていない)が流される負の区画8aと、正の区画6aと負の区画8aとの間に位置するイオン交換膜7とを備える。
【0048】
正の区画6aは、運転サイクル中(すなわち、充放電段階中)に当該非水系液体正極電解質の供給および排出を可能にするように、入口パイプ3およびポンプ4a(例えば、蠕動ポンプ)ならびに出口パイプ5によって、少なくとも1つの有機溶媒中の銅トリフラートまたはテトラフルオロボラート錯体[Cu(I)またはCu(II)]の溶液を備える非水系液体正極電解質を収容するリザーバ2に接続されている。
【0049】
負の区画8aは、運転サイクル中(すなわち、充放電段階中)に当該非水系液体負極電解質の供給および排出を可能にするように、入口パイプ11およびポンプ4b(例えば、蠕動ポンプ)ならびに出口パイプ10によって、少なくとも1つの有機溶媒中の一般式(I)を有する少なくとも1つのベンゾチアジアゾールの溶液を備える非水系液体負極電解質を収容するリザーバ12に接続されている。
【0050】
電圧計9は、正極6および負極8に接続される。
【0051】
非水系レドックスフロー電池(RFB)1の充電段階中に、電圧計9によって正極と負極との間に電位差が印加され、一方同時に、非水系液体正極電解質がポンプ4aを介して正の電解質リザーバ2から正の区画6aに供給され、非水系液体負極電解質がポンプ4bを介して負の電解質リザーバ12から負の区画8aに供給される。正の区画6aに存在する当該非水系液体正極電解質は、正極6で酸化反応を経て、負の区画8aに存在する当該非水系液体負極電解質は、負極8で還元反応を経る。電荷の平衡のために、イオン交換膜7を通して、上記酸化還元反応に関与するイオンが逆方向に流れる。逆反応は、非水系レドックスフロー電池(RFB)1の放電段階中に起こる。上記の充電段階および放電段階は、下記のように概略的に表され得る。

負極:
【化8】

正極:
【化9】

電池:
【化10】

“carica”:充電
“scarica”:放電
BTD=一般式(I)を有するベンゾチアジアゾール、
Cu=銅
=電子
【0052】
運転サイクル中(すなわち、充放電段階中)、非水系液体正極電解質および非水系液体負極電解質の両方を、当該正および負の区画に連続的に供給するために、それぞれ正および負の区画内に連続的にポンプで汲み入れる。
【0053】
非水系レドックスフロー電池(RFB)1に蓄えられたエネルギーは、これが挿入されている装置を運転するために直接使用され得、またはピーク使用期間中に電力供給を補うために電気ネットワークに転送され得る。交流/直流(AC/DC)変換器(図1には示されていない)を、交流(AC)電源ネットワークへの、および交流(AC)電源ネットワークからのエネルギーの伝達を容易にするために必要に応じて使用され得る。
【0054】
本発明は、下記の実施例によってさらに説明されるが、これらは単なる例示を目的として提供されており、本発明を限定するものではない。
【実施例1】
【0055】
4,7-ジ[2-(メトキシカルボニルエチルオキシ)フェニル]-ベンゾチアジアゾール[化合物(3)]の合成
【化11】
【0056】
4,7-ジ(2-ヒドロキシフェニル)-ベンゾチアジアゾールの合成
【化12】
【0057】
メカニカルスターラー、温度計、冷却剤を備えた100mlの丸底フラスコ中において、不活性雰囲気中、室温(25℃)で撹拌しながら、4,7-ジブロモベンゾチアジアゾール(Aldrich)(990mg;3.37mmol)のジオキサン(Aldrich)中の0.08M溶液に、2-ヒドロキシフェニルボロン酸(Aldrich)(2g;9.1mmol)、炭酸カリウム(KCO)(Aldrich)(3.7g;27mmol)および蒸留水(12ml)を順番に加えた。3回の真空/窒素サイクルによって反応環境から酸素を除去した後、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(II)[Pd(PPh](Aldrich)(200mg;0.17mmol)を加えた。フラスコを85℃に予熱した油浴に浸漬し、撹拌しながら当該温度で20時間放置した。次いで、蒸留水(50ml)を加え、すべてをエチルエーテル(Aldrich)(3×100ml)で抽出した。得られた有機相を合わせ、飽和塩化ナトリウム水溶液(Aldrich)で中性になるまで洗浄し、硫酸ナトリウム(Aldrich)で無水化した。減圧下での蒸留によって溶媒を除去した後、得られた残留物をシリカゲルクロマトグラフィーカラム[溶離液:ヘプタン(Aldrich)/ジクロロメタン(Aldrich)/酢酸エチル(Aldrich)の91/6/3から82/12/6へ70/20/10への勾配]で溶離することによって精製し、986mgの4,7-ジ(2-ヒドロキシフェニル)-ベンゾチアジアゾールを得た(収率=91%)。
【0058】
4,7-ジ[2-(メトキシカルボニルエチルオキシ)フェニル]-ベンゾチアジアゾール[化合物(3)]の合成
【化13】
【0059】
メカニカルスターラー、温度計、冷却剤を備えた100mlの丸底フラスコにおいて、不活性雰囲気中、室温(25℃)で撹拌しながら、上記のように得られた4,7-ジ(2-ヒドロキシフェニル)-ベンゾチアジアゾール(157.22mg;0.49mmol)のN,N-ジメチルホルムアミド(DMF)(Aldrich)中の0.05M溶液に、炭酸カリウム(KCO)(Aldrich)(276mg;2mmol)、および5分後、2-ブロモ酢酸エチル(Aldrich)(220μl;334mg;2mmol)を加えた。フラスコを80℃に予熱した油浴に浸し、撹拌しながら当該温度で12時間放置した。次いで、蒸留水(100ml)を加え、すべてをエチルエーテル(Aldrich)(3×100ml)で抽出した。得られた有機相を合わせ、飽和塩化ナトリウム水溶液(Aldrich)で中性になるまで洗浄し、硫酸ナトリウム(Aldrich)で無水化した。減圧下での蒸留によって溶媒を除去した後、得られた残留物をシリカゲルクロマトグラフィーカラム[溶離液:ヘプタン(Aldrich)/ジクロロメタン(Aldrich)/酢酸エチル(Aldrich)の91/6/3から82/12/6への勾配]で溶離することによって精製し、229mgの4,7-ジ[2-(メトキシカルボニルエチルオキシ)フェニル]-ベンゾチアジアゾール[化合物(3)(収率=95%)]を得た。
【実施例2】
【0060】
4,7-ジ[2-(プロピルオキシカルボニルエチルオキシ)フェニル]-ベンゾチアジアゾール[化合物(2)]の合成
【化14】
【0061】
メカニカルスターラー、温度計、冷却剤を備えた100mlの丸底フラスコにおいて、不活性雰囲気中、室温(25℃)で撹拌しながら、実施例1に記載のように得られた4,7-ジ(2-ヒドロキシフェニル)-ベンゾチアジアゾール(986mg;3.06mmol)のN,N-ジメチルホルムアミド(DMF)(Aldrich)中の0.2M溶液に、炭酸カリウム(KCO)(Aldrich)(972mg;7.03mmol)、および5分後、4-ブロモ酪酸エチル(Aldrich)(970μl;1322mg;6.73mmol)を加えた。フラスコを80℃に予熱した油浴に浸し、撹拌しながら当該温度で12時間放置した。次いで、蒸留水(100ml)を加え、すべてを酢酸エチル(Aldrich)(3×100ml)で抽出した。得られた有機相を合わせ、飽和塩化ナトリウム水溶液(Aldrich)で中性になるまで洗浄し、硫酸ナトリウム(Aldrich)で無水化した。減圧下での蒸留によって溶媒を除去した後、得られた残留物をシリカゲルクロマトグラフィーカラム[溶離液:ヘプタン(Aldrich)/酢酸エチル(Aldrich)の80/20から70/30への勾配]で溶離することによって精製し、1300mgの4,7-ジ[2-(プロピルオキシカルボニルエチルオキシ)フェニル]-ベンゾチアジアゾール[化合物(2)(収率=80%)]を得た。
【実施例3】
【0062】
4,7-ジ[2-(2-(2-メトキシエトキシ)エトキシ)フェニル]-ベンゾチアジアゾール[化合物(4)]の合成
【化15】
【0063】
メカニカルスターラー、温度計、冷却剤を備えた100mlの丸底フラスコにおいて、不活性雰囲気中、室温(25℃)で撹拌しながら、実施例1に記載のように得られた4,7-ジ(2-ヒドロキシフェニル)-ベンゾチアジアゾール(260mg;0.81mmol)のN,N-ジメチルホルムアミド(DMF)(Aldrich)中の0.08M溶液に、炭酸カリウム(KCO)(Aldrich)(334mg;2.42mmol)、および5分後、1-ブロモ-2-(2-メトキシエトキシ)エタン(Aldrich)(323μl;440mg;2.42mmol)を加えた。フラスコを80℃に予熱した油浴に浸し、当該温度で12時間放置した。次いで、蒸留水(50ml)を加え、すべてを酢酸エチル(Aldrich)(3×50ml)で抽出した。得られた有機相を合わせ、飽和塩化ナトリウム水溶液(Aldrich)で中性になるまで洗浄し、硫酸ナトリウム(Aldrich)で無水化した。減圧下での蒸留によって溶媒を除去した後、得られた残留物をシリカゲルクロマトグラフィーカラム[溶離液:ヘプタン(Aldrich)/酢酸エチル(Aldrich)の80/20から70/30へ60/40への勾配]で溶離することによって精製し、340mgの4,7-ジ[2-(2-(2-メトキシエトキシ)エトキシ)フェニル]-ベンゾチアジアゾール[化合物(4)(収率=80%)]を得た。
【実施例4】
【0064】
4,7-ジ[2,6-ジ(プロピルオキシカルボニルエチルオキシ)フェニル]-ベンゾチアジアゾール[化合物(5)]の合成
4,7-ジ(2,6-ジメトキシフェニル)-ベンゾチアジアゾールの合成
【化16】
【0065】
メカニカルスターラー、温度計、冷却剤を備えた100mlの丸底フラスコ中において、不活性雰囲気中、室温(25℃)で撹拌しながら、4,7-ジブロモベンゾチアジアゾール(Aldrich)( 500 mg; 1.7mmol)のジオキサン(Aldrich)中の0.08M溶液に、2,6-ジメトキシフェニルボロン酸(Aldrich)(1000mg;4.6mmol)、炭酸カリウム(KCO)(Aldrich)(1.88g;13.6mmol)および蒸留水(7ml)を順番に加えた。3回の真空/窒素サイクルによって反応環境から酸素を除去した後、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(II)[Pd(PPh](Aldrich)(100mg;0.086mmolを加えた。フラスコを85℃に予熱した油浴に浸漬し、撹拌しながら当該温度で20時間放置した。次いで、蒸留水(50ml)を加え、すべてをエチルエーテル(Aldrich)(3×50ml)で抽出した。得られた有機相を合わせ、蒸留水で中性になるまで洗浄し、硫酸ナトリウム(Aldrich)で無水化した。減圧下での蒸留によって溶媒を除去した後、得られた残留物をシリカゲルクロマトグラフィーカラム[溶離液:ヘプタン(Aldrich)/ジクロロメタン(Aldrich)の100/0から95/5へ85/15への勾配]で溶離することによって精製し、460mgの4,7-ジ(2,6-ジメトキシフェニル)-ベンゾチアジアゾール(収率=66%)を得た。
【0066】
4,7-ジ(2,6-ジヒドロキシフェニル)-ベンゾチアジアゾールの合成
【化17】
【0067】
メカニカルスターラー、温度計、冷却剤を備えた100ml丸底フラスコにおいて、不活性雰囲気中、-78℃で撹拌しながら、上記のように得られた4,7-ジ(2,6-ジメトキシフェニル)-ベンゾチアジアゾール(439mg;1.07mmol)の無水ジクロロメタン (CHCl)(Aldrich)中の0.09M溶液に、無水ジクロロメタン(CHCl)(Aldrich)(16ml;16mmol)中の三臭化ホウ素(BBR)(Aldrich)の1M溶液をゆっくりと滴下して加えた。温度をゆっくりと自然に室温(25℃)まで上昇させた。混合物を-78℃に冷却した後、エタノール(Aldrich)(25ml)をゆっくり滴下した。次に、温度を室温(25℃)に戻し、減圧下での蒸留によって溶媒を除去した後、蒸留水(50ml)を加え、すべてを酢酸エチル(Aldrich)(3x50ml)で抽出した。得られた有機相を合わせ、塩化ナトリウム水溶液(Aldrich)で中性になるまで洗浄し、硫酸ナトリウム(Aldrich)で無水化した。得られた残留物をシリカゲルクロマトグラフィーカラム(溶離液:ヘプタン(Aldrich)/酢酸エチル(Aldrich)、比60/40(v/v))によって精製して、289.4mgの4,7-ジ(2,6-ジヒドロキシフェニル)-ベンゾチアジアゾール)(収率=77%)を得た。
【0068】
4,7-ジ[2,6-ジ(プロピルオキシカルボニルエチルオキシ)フェニル]-ベンゾチアジアゾール[化合物(5)]の合成
【化18】
【0069】
メカニカルスターラー、温度計、冷却剤を備えた100mlの丸底フラスコにおいて、不活性雰囲気中、室温(25℃)で撹拌しながら、上記のように得られた4,7-ジ(2,6-ジヒドロキシフェニル)-ベンゾチアジアゾール(289.4mg;0.82mmol)のN,N-ジメチルホルムアミド(DMF)(Aldrich)中の0.05M溶液に、炭酸カリウム(KCO)(Aldrich)(959mg;4.9mmol)、および5分後、4-ブロモ酪酸エチル(Aldrich)(704μl;1322mg;4.9mmol)を加えた。フラスコを80℃に予熱した油浴に浸し、攪拌しながら当該温度で12時間放置した。次いで、蒸留水(50ml)を加え、すべてを酢酸エチル(Aldrich)(3×50ml)で抽出した。得られた有機相を合わせ、蒸留水で中性になるまで洗浄し、硫酸ナトリウム(Aldrich)で無水化した。減圧下での蒸留によって溶媒を除去した後、得られた残留物をシリカゲルクロマトグラフィーカラム(溶離液:ヘプタン(Aldrich)/酢酸エチル(Aldrich)の70/30 v/vの比)で溶離することによって精製し、380mgの4,7-ジ[2,6-ジ(プロピルオキシカルボニルエチルオキシ)フェニル]-ベンゾチアジアゾール[化合物(5)(収率=57%)]を得た。
【実施例5】
【0070】
4,7-ジ[2,5-ジ(プロピルオキシカルボニルエチルオキシ)フェニル]-ベンゾチアジアゾール[化合物(6)]の合成
4,7-ジ(2,5-ジメトキシフェニル)ベンゾチアジアゾールの合成
【化19】
【0071】
メカニカルスターラー、温度計、冷却剤を備えた100mlの丸底フラスコ中において、不活性雰囲気中、室温(25℃)で撹拌しながら、4,7-ジブロモベンゾチアジアゾール(Aldrich)(700mg;2.4mmol)のジオキサン(Aldrich)中の0.08M溶液に、2,5-ジメトキシフェニルボロン酸(Aldrich)(1180mg;6.5mmol)、炭酸カリウム(KCO)(Aldrich)(2.65g;19.2mmol)および蒸留水(10ml)を順番に加えた。3回の真空/窒素サイクルによって反応環境から酸素を除去した後、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(II)[Pd(PPh](Aldrich)(140mg;0.121mmol)を加えた。フラスコを85℃に予熱した油浴に浸漬し、撹拌しながら当該温度で20時間放置した。次いで、蒸留水(100ml)を加え、すべてをエチルエーテル(Aldrich)(3×100ml)で抽出した。得られた有機相を合わせ、蒸留水で中性になるまで洗浄し、硫酸ナトリウム(Aldrich)で無水化した。減圧下での蒸留によって溶媒を除去した後、得られた残留物をシリカゲルクロマトグラフィーカラム[溶離液:ヘプタン(Aldrich)/ジクロロメタン(Aldrich)の100/0から95/5へ90/10へ85/15への勾配]で溶離することによって精製し、880mgの4,7-ジ(2,5-ジメトキシフェニル)-ベンゾチアジアゾールを得た(収率=90%)。
【0072】
4,7-ジ(2,5-ジヒドロキシフェニル)-ベンゾチアジアゾールの合成
【化20】
【0073】
メカニカルスターラー、温度計、冷却剤を備えた100ml丸底フラスコにおいて、不活性雰囲気中、-78℃で撹拌しながら、上記のように得られた4,7-ジ(2,5-ジメトキシフェニル)-ベンゾチアジアゾール(738mg;1.8mmol)の無水ジクロロメタン(CHCl)(Aldrich)中の0.09M溶液に、無水ジクロロメタン(CHCl)(Aldrich)(27ml;27mmol)中の三臭化ホウ素(BBR)(Aldrich)の1M溶液をゆっくりと滴下して加えた。温度をゆっくりと自然に室温(25℃)まで上昇させた。混合物を-78℃に冷却した後、エタノール(25ml)をゆっくり滴下した。次に、温度を室温(25℃)に戻し、減圧下での蒸留によって溶媒を除去した後、蒸留水(50ml)を加え、すべてを酢酸エチル(Aldrich)(3x50ml)で抽出した。得られた有機相を合わせ、塩化ナトリウム水溶液(Aldrich)で中性になるまで洗浄し、硫酸ナトリウムで無水化した。得られた残留物をシリカゲルクロマトグラフィーカラム(溶離液:ヘプタン(Aldrich)/酢酸エチル(Aldrich)、比60/40(v/v))によって精製して、557.4mgの4,7-ジ(2,5-ジヒドロキシフェニル)-ベンゾチアジアゾール)(収率=87.2%)を得た。
【0074】
4,7-ジ[2,5-ジ(プロピルオキシカルボニルエチルオキシ)フェニル]-ベンゾチアジアゾール[化合物(6)]の合成
【化21】
【0075】
メカニカルスターラー、温度計、冷却剤を備えた100mlの丸底フラスコにおいて、不活性雰囲気中、室温(25℃)で撹拌しながら、上記のように得られた4,7-ジ(2,5-ジヒドロキシフェニル)-ベンゾチアジアゾール(557.4mg;1.57mmol)のN,N-ジメチルホルムアミド(DMF)(Aldrich)中の0.1M溶液に、炭酸カリウム(KCO)(Aldrich)(1300mg;9.4mmol)、および5分後、4-ブロモ酪酸エチル(1.35ml;1322mg;9.4mmol)を加えた。フラスコを85℃に予熱した油浴に浸し、攪拌しながら当該温度で12時間放置した。次いで、蒸留水(50ml)を加え、すべてを酢酸エチル(Aldrich)(3×50ml)で抽出した。得られた有機相を合わせ、蒸留水で中性になるまで洗浄し、硫酸ナトリウム(Aldrich)で無水化した。減圧下での蒸留によって溶媒を除去した後、得られた残留物をシリカゲルクロマトグラフィーカラム(溶離液:ヘプタン(Aldrich)/酢酸エチル(Aldrich)の70/30 v/vの比)で溶離することによって精製し、888mgの4,7-ジ[2,5-ジ(プロピルオキシカルボニルエチルオキシ)フェニル]-ベンゾチアジアゾール[化合物(6)(収率=70%)]を得た。
【実施例6】
【0076】
4,7-ジ[2,4-ジ(プロピルオキシカルボニルエチルオキシ)フェニル]-ベンゾチアジアゾール[化合物(7)]の合成
4,7-ジ(2,4-ジメトキシフェニル)-ベンゾチアジアゾールの合成
【化22】
【0077】
メカニカルスターラー、温度計、冷却剤を備えた100mlの丸底フラスコ中において、不活性雰囲気中、室温(25℃)で撹拌しながら、4,7-ジブロモベンゾチアジアゾール(Aldrich)(705mg;2.4mmol)のジオキサン(Aldrich)中の0.08M溶液に、2,4-ジメトキシフェニルボロン酸(Aldrich)(1170mg;6.43mmol)、炭酸カリウム(KCO)(Aldrich)(6.5g;19.2mmol)および蒸留水(10ml)を順番に加えた。3回の真空/窒素サイクルによって反応環境から酸素を除去した後、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(II)[Pd(PPh3)4](Aldrich)(140mg;0.121mmol)を加えた。フラスコを85℃に予熱した油浴に浸漬し、撹拌しながら当該温度で20時間放置した。次いで、蒸留水(50ml)を加え、すべてをエチルエーテル(Aldrich)(3×50ml)で抽出した。得られた有機相を合わせ、蒸留水で中性になるまで洗浄し、硫酸ナトリウム(Aldrich)で無水化した。減圧下での蒸留によって溶媒を除去した後、得られた残留物をシリカゲルクロマトグラフィーカラム(溶離液:ヘプタン(Aldrich)/ジクロロメタン(Aldrich)の100/0から95/5へ90/10へ85/15へ80/20へ70/30への勾配)で溶離することによって精製し、832mgの4,7-ジ(2,4-ジメトキシフェニル)-ベンゾチアジアゾールを得た(収率=85%)。
【0078】
4,7-ジ(2,4-ジヒドロキシフェニル)-ベンゾチアジアゾールの合成
【化23】
【0079】
メカニカルスターラー、温度計、冷却剤を備えた100ml丸底フラスコにおいて、不活性雰囲気中、-78℃で撹拌しながら、上記のように得られた4,7-ジ(2,4-ジメトキシフェニル)-ベンゾチアジアゾール(330mg;0.8mmol)の無水ジクロロメタン(CHCl)(Aldrich)中の0.09M溶液に、無水ジクロロメタン(CHCl)(Aldrich)(12 ml;12mmol)中の三臭化ホウ素(BBR)(Aldrich)の1M溶液をゆっくりと滴下して加えた。温度をゆっくりと自然に室温(25℃)まで上昇させた。混合物を-78℃に冷却した後、エタノール(Aldrich)(25ml)をゆっくり滴下した。次に、温度を室温(25℃)に戻し、減圧下での蒸留によって溶媒を除去した後、蒸留水(50ml)を加え、すべてを酢酸エチル(Aldrich)(3x50ml)で抽出した。得られた有機相を合わせ、塩化ナトリウム水溶液(Aldrich)で中性になるまで洗浄し、硫酸ナトリウム(Aldrich)で無水化した。得られた残留物をシリカゲルクロマトグラフィーカラム(溶離液:ヘプタン(Aldrich)/酢酸エチル(Aldrich)、比60/40(v/v))によって精製して、270mgの4,7-ジ(2,4-ジヒドロキシフェニル)-ベンゾチアジアゾール)(収率=95%)を得た。
【0080】
4,7-ジ[2,4-ジ(プロピルオキシカルボニルエチルオキシ)フェニル]-ベンゾチアジアゾール[化合物(7)]の合成
【化24】
【0081】
メカニカルスターラー、温度計、冷却剤を備えた100mlの丸底フラスコにおいて、不活性雰囲気中、室温(25℃)で撹拌しながら、上記のように得られた4,7-ジ(2,4-ジヒドロキシフェニル)-ベンゾチアジアゾール(268mg;0.76mmol)のN,N-ジメチルホルムアミド(DMF)(Aldrich)中の0.076M溶液に、炭酸カリウム(KCO)(Aldrich)(626mg;4.54mmol)、および5分後、4-ブロモ酪酸エチル(Aldrich)(652μl;889mg;4.54mmol)を加えた。フラスコを80℃に予熱した油浴に浸し、撹拌しながら当該温度で12時間放置した。次いで、蒸留水(50ml)を加え、すべてを酢酸エチル(Aldrich)(3×50ml)で抽出した。得られた有機相を合わせ、蒸留水で中性になるまで洗浄し、硫酸ナトリウム(Aldrich)で無水化した。減圧下での蒸留によって溶媒を除去した後、得られた残留物をシリカゲルクロマトグラフィーカラム(溶離液:ヘプタン(Aldrich)/酢酸エチル(Aldrich)70/30 v/vの比)で溶離することによって精製し、490mgの4,7-ジ[2,4-ジ(プロピルオキシカルボニルエチルオキシ)フェニル]-ベンゾチアジアゾール[化合物(7)(収率=80%)]を得た。
【実施例7】
【0082】
4,7-ジ[2-(プロピルオキシカルボニルエチルオキシ)フェニル]-ベンゾチアジアゾール[化合物(2)]の合成-鈴木-ミセル合成
【化25】
【0083】
メカニカルスターラー、温度計、冷却剤を備えた100mlの丸底フラスコにおいて、不活性雰囲気中、室温(25℃)で撹拌しながら、Kolliphor(登録商標)EL(脱イオン水中の2重量%の溶液)(Aldrich)およびトルエン(Aldrich)の9:1(v/v)混合物4.5ml中の、2-(プロピルオキシカルボニルエチルオキシ)-1-ブロモベンゼン(Aldrich)(1000mg、3.5mmol)、ピナコール4,7-ベンゾチアジアゾールジボロネート(Aldrich)(630mg、1.62mmol)および[1,1’-ビス(ジ-tert-ブチルホスフィノ)フェロセン]-ジクロロパラジウム(II)[Pd(dtbpf)Cl](Aldrich)(24mg、0.037mmol)の懸濁液に、トリエチルアミン(TEA) (Aldrich)(1022mg、1.4ml、10mmol)を追加した。得られた反応混合物を70℃に加熱し、撹拌しながら当該温度で15分間保持した。次いで、蒸留水(50ml)を加え、すべてを酢酸エチル(Aldrich)(3×50ml)で抽出した。得られた有機相を合わせ、中性になるまで蒸留水で洗浄し、硫酸ナトリウム(Aldrich)で無水化した。減圧下での蒸留によって溶媒を除去した後、得られた残留物をシリカゲルクロマトグラフィーカラム(溶離液:ヘプタン(Aldrich)/酢酸エチル(Aldrich)、比80/20(v/v))によって精製し、797.8mgの4,7-ジ[2-(プロピルオキシカルボニルエチルオキシ)フェニル]-ベンゾチアジアゾール[化合物(2)(収率=90%)]を得た。
【実施例8】
【0084】
4,7-ジ[2,4-ジ(プロピルオキシカルボニルエチルオキシ)フェニル]-ベンゾチアジアゾール[化合物(7)]の合成-鈴木-ミセル合成
【化26】
【0085】
メカニカルスターラー、温度計、冷却剤を備えた100mlの丸底フラスコにおいて、不活性雰囲気中、室温(25℃)で撹拌しながら、Kolliphor(登録商標)EL(脱イオン水中の2重量%の溶液)(Aldrich)およびトルエン(Aldrich)の9:1(v/v)混合物4ml中の、2,4-(プロピルオキシカルボニルエチルオキシ)-1-ブロモベンゼン(Aldrich)(2400mg,5.8mmol)、ピナコール4,7-ベンゾチアジアゾールジボロネート(Aldrich)(1028mg,2.6mmol)および[1,1’-ビス(ジ-tert-ブチルホスフィノ)フェロセン]-ジクロロパラジウム(II)[Pd(dtbpf)Cl](Aldrich)(42mg,0.064mmol)の懸濁液に、トリエチルアミン(Aldrich)(1752mg,2.4ml,17.3mmol)を追加した。得られた反応混合物を70℃に加熱し、撹拌しながら当該温度で15分間保持した。
【0086】
次いで、蒸留水(100ml)を加え、すべてを酢酸エチル(Aldrich)(3×100ml)で抽出した。得られた有機相を合わせ、中性になるまで蒸留水で洗浄し、硫酸ナトリウム(Aldrich)で無水化した。減圧下での蒸留によって溶媒を除去した後、得られた残留物をシリカゲルクロマトグラフィーカラム(溶離液:ヘプタン(Aldrich)/酢酸エチル(Aldrich)、80/20から70/30へ65/35への勾配)によって精製し、2140mgの4,7-ジ[2,4-ジ(プロピルオキシカルボニルエチルオキシ)フェニル]-ベンゾチアジアゾール[化合物(7)(収率=100%)]を得た。
【実施例9】
【0087】
サイクリックボルタンメトリー測定
【0088】
サイクリックボルタンメトリー測定を、ガラス状炭素作用電極、白金対電極、および銀/塩化銀(Ag/AgCl)基準電極を有する3電極構成を有する半電池で実施した。酸化還元電位E°’ Ox/Redを、フォワードピーク(Epf)およびリターンピーク(Epr)の位置から得た。
【数1】

値を、溶媒間フェロセン/フェロセニウム(Fc/Fc)カップルに対して正規化した。
【0089】
評価は、10、20、50、70、100、および200mV/sの走査速度でAutolab PGSTAT 128N分析機器で実施した。全ての評価は室温(25℃)で3回行った。この目的のために、下記を含む溶液を使用した。
アセトニトリル(Aldrich)中のベンゾチアジアゾール(1)(Aldrich)(5x10-3M)およびテトラブチルアンモニウムテトラフルオロボラート(TBABF)(Aldrich)(0.1M)(負の区画の非水系液体負極電解質)(BTD)、
プロピレンカーボネート(Aldrich)中のベンゾチアジアゾール(1)(Aldrich)(5x10-3M)およびテトラブチルアンモニウムテトラフルオロボラート(TBABF)(Aldrich)(0.1M)(負の区画の非水系液体負極電解質)(BTD)、
アセトニトリル(Aldrich)中の4,7-ジ[2-(プロピルオキシカルボニルエチルオキシ)フェニル]-ベンゾチアジアゾール[実施例7で得られた化合物(2)](5x10-3M)およびテトラブチルアンモニウムテトラフルオロボラート(TBABF)(Aldrich)(0.1M)(負の区画の非水系液体負極電解質)(BTD)、
プロピレンカーボネート(Aldrich)中の4,7-ジ[2-(プロピルオキシカルボニルエチルオキシ)フェニル]-ベンゾチアジアゾール[実施例7で得られた化合物(2)](5x10-3M)およびテトラブチルアンモニウムテトラフルオロボラート(TBABF)(Aldrich)(0.1M)(負の区画の非水系液体負極電解質)[BTD(2)]、
アセトニトリル(Aldrich)中の4,7-ジ[2-(メトキシカルボニルエチルオキシ)フェニル]-ベンゾチアジアゾール[実施例1で得られた化合物(3)](5x10-3M)およびテトラブチルアンモニウムテトラフルオロボラート(TBABF)(Aldrich)(0.1M)(負の区画の非水系液体負極電解質)[BTD(3)]、
プロピレンカーボネート(Aldrich)中の4,7-ジ[2-(メトキシカルボニルエチルオキシ)フェニル]-ベンゾチアジアゾール[実施例1で得られた化合物(3)](5x10-3M)およびテトラブチルアンモニウムテトラフルオロボラート(TBABF)(Aldrich)(0.1M)(負の区画の非水系液体負極電解質)[BTD(3)]、
アセトニトリル(Aldrich)中の4,7-ジ[2-(2-(2-メトキシエトキシ)エトキシ)フェニル]-ベンゾチアジアゾール[実施例3で得られた化合物(4)](5x10-3M)およびテトラブチルアンモニウムテトラフルオロボラート(TBABF)(Aldrich)(0.1M)(負の区画の非水系液体負極電解質)[BTD(4)]、
プロピレンカーボネート(Aldrich)中の4,7-ジ[2-(2-(2-メトキシエトキシ)エトキシ)フェニル]-ベンゾチアジアゾール[実施例3で得られた化合物(4)](5x10-3M)およびテトラブチルアンモニウムテトラフルオロボラート(TBABF)(Aldrich)(0.1M)(負の区画の非水系液体負極電解質)[BTD(4)]、
アセトニトリル(Aldrich)中の4,7-ジ[2,6-ジ(プロピルオキシカルボニルエチルオキシ)フェニル]-ベンゾチアジアゾール[実施例4で得られた化合物(5)](5x10-3M)およびテトラブチルアンモニウムテトラフルオロボラート(TBABF)(Aldrich)(0.1M)(負の区画の非水系液体負極電解質)[BTD(5)]、
プロピレンカーボネート(Aldrich)中の4,7-ジ[2,6-ジ(プロピルオキシカルボニルエチルオキシ)フェニル]-ベンゾチアジアゾール[実施例4で得られた化合物(5)](5x10-3M)およびテトラブチルアンモニウムテトラフルオロボラート(TBABF)(Aldrich)(0.1M)(負の区画の非水系液体負極電解質)[BTD(5)]、
アセトニトリル(Aldrich)中の4,7-ジ[2,5-ジ(プロピルオキシカルボニルエチルオキシ)フェニル]-ベンゾチアジアゾール[実施例5で得られた化合物(6)](5x10-3M)およびテトラブチルアンモニウムテトラフルオロボラート(TBABF)(Aldrich)(0.1M)(負の区画の非水系液体負極電解質)[BTD(6)]、
プロピレンカーボネート(Aldrich)中の4,7-ジ[2,5-ジ(プロピルオキシカルボニルエチルオキシ)フェニル]-ベンゾチアジアゾール[実施例5で得られた化合物(6)](5x10-3M)およびテトラブチルアンモニウムテトラフルオロボラート(TBABF)(Aldrich)(0.1M)(負の区画の非水系液体負極電解質)[BTD(6)]、
アセトニトリル(Aldrich)中の4,7-ジ[2,4-ジ(プロピルオキシカルボニルエチルオキシ)フェニル]-ベンゾチアジアゾール[実施例8で得られた化合物(7)](5x10-3M)およびテトラブチルアンモニウムテトラフルオロボラート(TBABF)(Aldrich)(0.1M)(負の区画の非水系液体負極電解質)[BTD(7)]、
プロピレンカーボネート(Aldrich)中の4,7-ジ[2,4-ジ(プロピルオキシカルボニルエチルオキシ)フェニル]-ベンゾチアジアゾール[実施例8で得られた化合物(7)](5x10-3M)およびテトラブチルアンモニウムテトラフルオロボラート(TBABF)(Aldrich)(0.1M)(負の区画の非水系液体負極電解質)[BTD(7)]、
アセトニトリル(Aldrich)中の銅(II)トリフルオロメタンスルホン酸[Cu(CFSO](Aldrich)(5x10-4M)およびテトラブチルアンモニウムテトラフルオロボラート(TBABF)(Aldrich)(0.1M)(正の区画の非水系液体正極電解質)(Cuトリフラート)、
アセトニトリル(Aldrich)中のテトラキスアセトニトリル銅(I)テトラフルオロボラート[Cu(NCCH・BF](Aldrich)(5x10-4M)およびテトラブチルアンモニウムテトラフルオロボラート(TBABF)(Aldrich)(0.1M)(正の区画の非水系液体正極電解質)[Cu(I)テトラフルオロボラート]、
プロピレンカーボネート(Aldrich)中のテトラキスアセトニトリル銅(I)トリフラート[Cu(NCCH・CFSO](Aldrich)(5x10-4M)およびテトラブチルアンモニウムテトラフルオロボラート(TBABF)(Aldrich)(0.1M)(正の区画の非水系液体正極電解質)[Cu(I)]。
【0090】
得られた値を表2に示す。
【0091】
【表2】
【0092】
図2~8[横軸は測定された電位(E)をボルト(V)で示し、縦軸はアンペア/cm(Acm-2)で測定された電流密度(J)を示す]は、アセトニトリルおよびプロピレンカーボネート中の上記の溶液[BTDおよび化合物(2)~(7)]から、200mV/sの走査速度で得られたサイクリックボルタグラムを示す。
【0093】
例えば、アセトニトリル中の化合物(2)の溶液を考えると、次の式に従って計算すると、開回路では2.53Vの高い電位差(E°)が得られることがわかる。
E°=(E°)-(E°
ここで、
(E°)は、上記のように計算された(Cuトリフラート)の酸化還元電位であり、0.62 V vs (Fc/Fc)に等しくなる。
(E°)は、上記のように計算され、表2に報告されるさまざまな溶液の酸化還元電位である(実施例2は-1.91に等しい)。
【実施例10】
【0094】
サイクリックボルタンメトリーの安定性試験
【0095】
安定性試験は、実施例9と同じ電気化学セルを使用して実施した。
【0096】
この目的のために、
アセトニトリル(Aldrich)中の4,7-ジ[2-(プロピルオキシカルボニルエチルオキシ)フェニル]-ベンゾチアジアゾール[実施例2または7で得られた化合物(2)](1x10-3M)およびテトラブチルアンモニウムテトラフルオロボラート(TBABF)(Aldrich)0.1M(負の区画の非水系液体負極電解質)、
を含む溶液を使用した。
【0097】
図9[横軸は測定された電位(E)をボルト(V)で示し、縦軸は測定された電流強度(i)をアンペア(A)で示す]は、上記の4,7-ジ[2-(プロピルオキシカルボニルエチルオキシ)フェニル]-ベンゾチアジアゾール溶液[実施例7で得られた化合物(2)]に対して実行された150回の連続酸化還元サイクルを示す。サイクルが重ね合わせ可能であることがわかり、これは、寄生反応や重合反応による電極上への材料の堆積がなく、形成されたラジカルが安定していることを意味する。
【実施例11】
【0098】
非水系レドックスフロー電池(RFB)充放電試験[電解質:アセトニトリル中の4,7-ジ[2-(プロピルオキシカルボニルエチルオキシ)フェニル]-ベンゾチアジアゾール[化合物(2)]およびテトラキスアセトニトリルテトラフルオロボラート銅(I)[ Cu(NCCH・BF]]
【0099】
充放電試験は、約0.07cmに等しい表面積を有する2つの白金電極(Metrohm)間に配置された、約0.8cmに等しい表面積を有するTeflon(登録商標)膜(DuPont)を有する電気化学セルを使用して実施した。次いで、電気化学セルを組み立て、アルゴン(Ar)を含む容器内に密封した。
【0100】
この目的のために、
還元型のベンゾチアジアゾール[(BTD(2)・-)]を得るために、アルゴン(Ar)で脱気し、電気分解にかけられた、アセトニトリル(Aldrich)中の4,7-ジ[2-(プロピルオキシカルボニルエチルオキシ)フェニル]-ベンゾチアジアゾール[実施例7で得られた化合物(2)](1x10-3M)およびテトラブチルアンモニウムテトラフルオロボラート(TBABF)(Aldrich)(0.1M)(負の区画の非水系液体負極電解質)、
アルゴン(Ar)で脱気された、アセトニトリル(Aldrich)中のテトラキスアセトニトリル銅(I)テトラフルオロボラート[Cu(NCCH・BF](1x10-3M)およびテトラブチルアンモニウムテトラフルオロボラート(TBA BF)(Aldrich)(0.1M)(正の区画の非水系液体正極電解質)(Cuトリフラート)
を含む溶液が使用された。
【0101】
上記溶液6mlをそれぞれの区画に導入した。
【0102】
試験はポテンショスタット/ガルバノスタットAutolab PGSTAT 128N(Metrohom)を使用して室温(25℃)で実施された。
【0103】
充電および放電曲線を実行して、セル内の電解質の性能を評価した。試験は、2.5Vの充電電位と0.5Vの放電電位を印加する定電位モードで実行した。各電位は240秒間印加された。
【0104】
図10[横軸は測定された時間を秒(t/s)で示す。縦軸は、測定された電流強度(i)をアンペア(A)で示す。]は、得られた充電/放電曲線を示す。放電中、電子が負極[(BTD(2)・-)]から正極(Cu)に移動するため、電流は負の符号を有する。逆に、充電中は電流の符号は正になる。電流強度値は安定しているため、どちらの種も酸化還元サイクル(またはレドックスサイクル)中の安定性が良好であることが特徴である。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
【国際調査報告】