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特表2023-551465自動車のブレーキシステムを作動させる方法
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  • 特表-自動車のブレーキシステムを作動させる方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-12-08
(54)【発明の名称】自動車のブレーキシステムを作動させる方法
(51)【国際特許分類】
   B60T 7/12 20060101AFI20231201BHJP
   B60T 13/74 20060101ALI20231201BHJP
   B60T 17/18 20060101ALI20231201BHJP
   B60T 8/96 20060101ALI20231201BHJP
【FI】
B60T7/12 A
B60T13/74 D
B60T17/18
B60T8/96
B60T7/12 B
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023532115
(86)(22)【出願日】2021-11-03
(85)【翻訳文提出日】2023-05-25
(86)【国際出願番号】 EP2021080463
(87)【国際公開番号】W WO2022117270
(87)【国際公開日】2022-06-09
(31)【優先権主張番号】102020215174.1
(32)【優先日】2020-12-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】591245473
【氏名又は名称】ロベルト・ボッシュ・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
(74)【代理人】
【識別番号】100177839
【弁理士】
【氏名又は名称】大場 玲児
(74)【代理人】
【識別番号】100172340
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 始
(74)【代理人】
【識別番号】100182626
【弁理士】
【氏名又は名称】八島 剛
(72)【発明者】
【氏名】ベールレ-ミラー,フランク
(72)【発明者】
【氏名】ヘール,ベンジャミン
【テーマコード(参考)】
3D048
3D049
3D246
【Fターム(参考)】
3D048BB02
3D048CC41
3D048HH18
3D048HH42
3D048QQ12
3D048RR02
3D048RR06
3D048RR17
3D048RR35
3D049BB02
3D049CC02
3D049CC07
3D049HH39
3D049HH40
3D049HH42
3D049HH45
3D049HH47
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3D049HH51
3D049QQ01
3D049RR02
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3D049RR08
3D049RR13
3D246BA02
3D246BA08
3D246DA02
3D246GA01
3D246GB04
3D246GB15
3D246GC09
3D246GC11
3D246GC16
3D246HA03A
3D246HA06A
3D246HA43B
3D246HA64A
3D246HA86C
3D246HA93B
3D246JB11
3D246JB12
3D246JB32
3D246LA02Z
3D246LA10Z
3D246LA12Z
3D246LA72Z
3D246MA16
3D246MA37
(57)【要約】
本発明は、自動車(1)のブレーキシステム(2)を作動させる方法に関し、ブレーキシステムは、少なくとも1つの常用ブレーキ(6)と、出力ロッド(10)を有する伝達装置(4)とを有し、該伝達装置によりブレーキ力が少なくとも1つの常用ブレーキ(6)に伝達され、さらにブレーキシステムは、少なくとも1つのパーキングブレーキ(12)を作動化するためのリリース装置(13)を有する少なくとも1つのパーキングブレーキ(12)を有する。出力ロッド(10)の位置調節ストローク(38)によって、少なくとも1つの常用ブレーキ(6)により自動車(1)に作用する減速が判定され、減速を考慮したうえで自動車(1)の停止が判定されたときに、操作されているリリース装置(13)のもとで少なくとも1つのパーキングブレーキ(12)が作動化されることによって、いっそう高い安全性と簡易化された具体化がもたらされる。さらに本発明は、このように作動するブレーキシステム(2)を有する自動車(1)に関する。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車(1)のブレーキシステム(2)を作動させる方法であって、
前記ブレーキシステム(2)は少なくとも1つの常用ブレーキ(6)を有する常用ブレーキ装置(3)を有し、
前記ブレーキシステム(2)は出力ロッド(10)を有するブレーキ伝達装置(4)を有し、該ブレーキ伝達装置により制動のためのブレーキ力が少なくとも1つの前記常用ブレーキ(6)に伝達され、
前記ブレーキシステム(2)は、少なくとも1つのパーキングブレーキ(12)と、少なくとも1つの前記パーキングブレーキ(12)を作動化するためのリリース装置(13)とを有するパーキングブレーキ装置(5)を有し、
前記出力ロッド(10)の位置調節ストロークに依存して、少なくとも1つの前記常用ブレーキ(6)によって及ぼされる前記自動車(1)の減速が判定され、
前記自動車(1)の最大で生じ得る速度が援用され、
最大で生じ得る速度を前提として、判定された減速および減速の時間幅を考慮したうえで、前記リリース装置(13)が操作される操作時点で自動車が停止しているか否かが判定され、
操作時点での前記自動車(1)の停止が判定されたときに、少なくとも1つの前記パーキングブレーキ(12)が作動化される、方法。
【請求項2】
前記ブレーキ力伝達装置(4)は少なくとも1つの前記常用ブレーキ(6)を操作するための操作部材(8)とリンクされ、それにより、前記ブレーキ力伝達装置(4)が前記出力ロッド(10)を前記操作部材(8)に依存して位置調節ストロークに沿って位置調節されるようになっていることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
操作時点での停止が判定されなかったとき、前記自動車(1)の停止が判定されたときに初めて少なくとも1つの前記常用ブレーキ(6)が作動化されることを特徴とする、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
操作時点での停止が判定されなかったとき、
少なくとも1つの前記常用ブレーキ(6)が所定のブレーキ力で操作され、
前記自動車(1)の停止が判定されたときに少なくとも1つの前記パーキングブレーキ(12)が作動化されることを特徴とする、請求項1から3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
操作時点での停止が判定されなかったとき、前記リリース装置(13)を引き続き操作するように要請するメッセージが利用者に出力されることを特徴とする、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
最大で生じ得る速度の援用は初期時点で既知となった前記自動車(1)の速度を考慮することを特徴とする、請求項1から5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記初期時点は前記自動車(1)のホイール回転数測定装置(15)が故障した時点であり、および/または前記自動車(1)が停止した時点であることを特徴とする、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
最大で生じ得る速度の援用は、前記自動車(1)の駆動装置の回転数に依存して、および前記自動車(1)の少なくとも1つの駆動されるホイール(7)への回転数の伝達に依存して、見積りによって行われることを特徴とする、請求項1から7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
ブレーキシステム(2)を有する自動車(1)において、
前記ブレーキシステム(2)は少なくとも1つの常用ブレーキ(6)を有する常用ブレーキ装置(3)を有し、
前記ブレーキシステム(2)は出力ロッド(10)を有するブレーキ力伝達装置(4)を有し、該ブレーキ力伝達装置は前記出力ロッド(10)によって制動のためのブレーキ力を少なくとも1つの前記常用ブレーキ(6)に伝達するように構成され、
前記ブレーキシステム(2)は、少なくとも1つのパーキングブレーキ(12)と、少なくとも1つの前記パーキングブレーキ(12)を作動化するためのリリース装置(13)とを有するパーキングブレーキ装置(5)を有し、
請求項1から8のいずれか1項に記載の方法に基づいて前記ブレーキシステム(2)を作動させるように構成された制御装置(32)を有する、自動車。
【請求項10】
前記ブレーキブースタ装置(4)は電気機械式に作動することを特徴とする、請求項9に記載の自動車。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車のブレーキシステムを作動させる方法に関し、ブレーキシステムはブレーキ伝達装置と電気式のパーキングブレーキ装置とを有する。さらに本発明は、このようにして作動するブレーキシステムを有する自動車に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車は、通常、走行中の制動に寄与し、ならびにいわゆるパーキングブレーキとしての役目を果たすブレーキシステムを有している。走行中の制動のためにブレーキシステムは、通常、以下においては常用ブレーキとも呼ぶブレーキシステムを含んでいる。
【0003】
パーキングブレーキ機能は、通常、ブレーキシステムの付属のパーキングブレーキ装置を通じて実現される。パーキングブレーキ装置はこの目的のために、少なくとも1つのパーキングブレーキを有している。パーキングブレーキの固定としても知られる、パーキングブレーキの作動化には、通常、リリース装置を通じて行われるトリガが前提となる。リリース装置はこの目的のために、利用者によって手動で操作可能なスイッチを有することができる。パーキングブレーキ装置によって自動車の固定が行われ、それにより、特にパーキング位置にあるときに自動車が動き出すことが防止される。この目的のために少なくとも1つのパーキングブレーキにより、自動車の少なくとも1つのホイールがロックするように制動される。
【0004】
安全上の理由から、パーキングブレーキ装置の作動化およびこれに伴って自動車の少なくとも1つのホイールをロックする制動は、自動車が停止しているときにのみ行われなければならない。この目的のために、従来技術から知られているパーキングブレーキ装置は、自動車のホイール回転数計測器を援用する。ホイール回転数計測器から供給されるデータの評価は、通常、自動車の制御ユニットで行われ、普通はESP制御ユニットで行われて、自動車の速度を判定し、そのようにして自動車の停止も確認する。リリース装置が以前からすでに操作されていたとしても、ホイール回転数計測器から供給されるデータが自動車の停止を推定させるときに初めて、パーキングブレーキ装置の作動化が行われる。
【0005】
その場合、ホイール回転数計測器および/またはホイール回転数計測器のデータを評価する制御ユニット、特にESP制御ユニットが故障したとき、パーキングブレーキ装置の作動化が中止されるという問題が生じる。そのようにして、自動車の走行中にパーキングブレーキ装置が作動化されるのを防止することが意図される。このことはパーキングブレーキ装置の利用性の低下、さらには利用性の欠如にまでつながる。これに加えてその結果として自動車が、パーキングブレーキ装置の必要な作動化および/または所望の作動化のもとでも、たとえば自動車を駐車するときにも動き出し、そのために移動してしまう可能性もある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
したがって本発明が取り組む課題は、上に述べた種類の自動車のブレーキシステムを作動させる方法について、ならびにそのような自動車について、特に向上した安全性を、同時に簡易な具体化のもとで有することを特徴とする、改良された実施形態または少なくとも異なる実施形態を提示することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この課題は、本発明によると独立請求項の対象物によって解決される。好ましい実施形態は、従属請求項の対象となっている。
【0008】
本発明が依拠する一般的な思想は、特に自動車のホイール回転数を用いて行われる自動車の停止検知が欠如したとき、パーキングブレーキ装置を作動化するために、ブレーキ伝達装置を用いて及ぼされるブレーキ力ならびにその結果として生じる自動車の減速すなわち負の加速度、および自動車の最大で生じ得る速度を援用して、最大で生じ得る速度ならびに減速と減速の時間幅を考慮したうえで自動車が停止しているか否かを判定することにあり、パーキングブレーキ機能がリリースされた時点で自動車の停止が判定されたときに初めて、パーキングブレーキ装置が作動化される。このようにして、自動車のホイール回転数に関する情報が欠如しているときでも、および/または自動車のホイール回転数の評価が欠如しているとき、たとえばESP制御ユニットが故障したときでも、自動車が停止しているときにパーキングブレーキ装置を作動化することが簡易かつ確実な方式で可能である。その結果として安全性と利用性が、同時に簡易かつ低コストな具体化のもとで向上する。
【0009】
本発明の思想は、自動車のブレーキシステムを作動させる方法において具体化される。ブレーキシステムは、常用ブレーキ装置と、ブレーキ伝達装置と、パーキングブレーキ装置とを含む。常用ブレーキ装置は、走行時に自動車を制動する役目を果たす少なくとも1つの常用ブレーキを有する。ブレーキ伝達装置は、制動のためのブレーキ力が出力ロッドによって少なくとも1つの常用ブレーキに伝達されるように少なくとも1つの常用ブレーキと結合された出力ロッドを有する。パーキングブレーキ装置は、自動車を固定するために少なくとも1つのパーキングブレーキを有する。さらにパーキングブレーキ装置は、少なくとも1つのパーキングブレーキを作動化するためのリリース装置を有する。本発明によると、自動車の停止を判定するために、出力ロッドの位置調節ストロークならびに自動車の最大で生じ得る速度が援用される。このとき位置調節ストロークに依存して、少なくとも1つの常用ブレーキによって及ぼされる自動車の減速が判定され、最大で生じ得る速度を前提として、減速の時間幅を考慮したうえで、リリース装置の操作時に自動車が停止しているか否かが判定される。すなわち、以下において操作時点とも呼ぶ、リリース装置が操作された時点で自動車が停止しているか否かが判定される。操作時点で停止が判定されると、少なくとも1つのパーキングブレーキが作動化される。
【0010】
本発明による方法が適用されるのが好都合なのは、たとえばホイール回転数測定装置が故障しているために、自動車の少なくとも1つのホイールの回転数を測定するためのホイール回転数測定装置のデータを利用できない場合であり、および/またはホイール回転数測定装置のデータの評価が可能でない場合であり、特に、データを評価する装置が損傷または故障している場合である。データを評価するこのような種類の装置は、特に自動車の制御ユニット、たとえばESP制御ユニットである。したがって本発明による方法は、特に、ESP制御ユニットが損傷および/または故障している場合に適用される。このように本発明による方法は、ESP制御ユニットが故障しているときにもパーキングブレーキ装置の利用を可能にする。
【0011】
それに応じて、上記の判定および/または最大の速度の援用は、ホイール回転数測定に関わりなく行われるのが好都合である。
【0012】
自動車の最大で生じ得る速度は、減速が始まる時点までに自動車が最大で到達し得る速度であるのが好都合である。
【0013】
最大で生じ得る速度として、原則として、自動車の最大で許容される速度を援用することができる。
【0014】
その代替として、最大で生じ得る速度を援用するために、直近に既知となった自動車の速度を考慮することができる。すなわちこのケースでは最大で生じ得る速度において、初期時点で既知となった自動車の速度が考慮される。
【0015】
初期時点は、自動車のホイール回転数測定装置が故障した時点であってよい。その代替または追加として初期時点は、自動車のESP制御ユニットが故障した時点であってよい。特に、それによって本発明による方法をリリースして実施することができる。
【0016】
自動車が停止した時点、およびこれに伴って速度がゼロの時点を初期時点として利用することも考えられる。このことは、たとえば少なくとも1つのパーキングブレーキが最後に作動化されたとき、および/または少なくとも1つのパーキングブレーキの最後の作動化後に最初に発進したときに成立し得る。
【0017】
最大の速度の援用は、特に、初期時点での速度を前提としたうえで、最大で生じ得る速度の見積りによって行うことができる。そのために特に、たとえば自動車の駆動装置によって、自動車で最大で生じ得る加速度を考慮することが考えられる。換言すると、最大速度が援用されるときには既存の手段によって、特に既存の駆動装置によって、自動車が最大の出力で加速されるものと想定することができる。その代替または追加として、走行中の勾配を考慮に入れることができる。同様に、場合により存在する自動車の座標とその変化、すなわち特にGPSデータとその変化を、最大の速度の援用のために考慮することも考えられる。
【0018】
上で説明したとおり、本発明に基づく各ステップはリリース装置の操作を考慮したうえで行われる。このことは特に、少なくとも1つのパーキングブレーキの作動化が、リリース装置の操作なしには行われない利点があるという帰結をもたらす。換言すると少なくとも1つのパーキングブレーキの作動化が、リリース装置の操作なしに起こることがないという利点がある。
【0019】
伝達装置は、ブレーキブースタおよび/または非人力ブレーキとして構成されていてよい。
【0020】
ブレーキブースタは原則として任意に構成されていてよい。たとえば真空で作動するブレーキブースタが考えられる。ブレーキブースタは、特に、少なくとも部分的に電気式に、好ましくは電気機械式に、作動するものであってよい。ブレーキ伝達装置は操作部材とリンクされていてよく、それにより、操作部材の操作が出力ロッドの位置調節につながり、それに伴って位置調節ストロークの変化につながり得る。
【0021】
操作部材は、走行中に自動車を制動するために通常は利用者によって、すなわち特に車両運転者によって、手動で操作される。操作部材は特にブレーキペダルなどである。
【0022】
少なくとも半自律式に走行する自動車では、自動車の制御装置を通じて操作部材を自律的に操作することもできる。
【0023】
少なくとも1つのパーキングブレーキのうちの少なくとも1つは、少なくとも1つの常用ブレーキのうちの1つに少なくとも部分的に相当することができる。
【0024】
少なくとも1つのパーキングブレーキが作動化しているとき、自動車の少なくとも1つのホイールがロックされ、すなわちこれを固定する。したがって、パーキングブレーキは当業者には「固定ブレーキ」としても知られている。このとき少なくとも1つのホイールのロックは、少なくとも1つのパーキングブレーキが不作動化されるまで行われるのが好都合である。不作動化も同じくリリース装置を通じて行うことができる。
【0025】
リリース装置は、少なくとも1つのパーキングブレーキを作動化するためのトリガとしての役目を果たす。すなわち少なくとも1つのパーキングブレーキの作動化は、リリース装置が操作されたときに初めてリリースされる。リリース装置の操作は、通常、自動車の利用者によって行われる。リリース装置はスイッチを有することができ、および/または自動車のギアシフトが「パーキング位置」へ位置調節されたときに操作されることができ、および/または自動車のイグニションが「オフ」位置に位置調節されたときに操作されることができる。
【0026】
少なくとも半自律式に走行する自動車では、自動車の制御装置を通じてリリース装置を自律的に操作することもできる。
【0027】
位置調節ストロークを通じての減速の決定は、ブレーキ伝達装置によって及ぼされるブレーキ力の判定を通じて行われるのが好ましい。すなわちブレーキ力が判定され、および/またはブレーキ伝達装置ですでに判定されているブレーキ力が援用される。このときブレーキ伝達装置によって少なくとも1つの常用ブレーキに伝達されるブレーキ力は位置調節ストロークに依存し、比較的大きい位置調節ストロークは比較的高いブレーキ力を帰結し、その逆でもあるのが好都合である。位置調節ストロークは、好都合にももともとブレーキ伝達装置で保存される、および/または存在している、ブレーキ伝達装置における重要な量なので、このようにして、もともと既知である位置調節ストロークを減速の判定のために援用することができる。本方法とその具体化がこのようにして簡易化される。
【0028】
少なくとも1つの常用ブレーキは流体で操作されるのが好ましい。このとき減速の判定は、当業者にはブレーキ圧としても知られる、流体によって及ぼされる圧力をベースとして行われるのが好ましい。出力ロッドを介して、ピストンが容積中でブレーキ液によって動かされ、そのようにして流体中で圧力が生成されるのが好ましい。このとき特に、ピストンと容積の所与の大きさに基づいてブレーキ圧を判定することができる。少なくとも1つの常用ブレーキは液圧式に、特にブレーキ液によって、操作されるのが好ましい。
【0029】
当然ながら、位置調節ストロークおよびこれに伴うブレーキ力の時間的変化が、減速の判定にあたって考慮される。換言すると位置調節ストロークとブレーキ力は、本件では、位置調節ストロークとブレーキ力の相応の時間的推移であると理解される。このことは、減速の時間的推移もそのつど判定されて考慮されることにつながる。ここでは例示として、それぞれ異なる位置調節ストロークでのブレーキプロセスを指摘しておく。たとえば少なくとも1つの常用ブレーキを、まず最初に第1のブレーキ力で、次いで第2のブレーキ力で操作することができる。このときそれぞれのブレーキ力とその時間幅について、対応する減速が考慮される。換言すると多段階のブレーキプロセスでは、それぞれのブレーキ段階について対応する減速が判定されて、それぞれ対応する時間幅とともに、自動車の停止の判定にあたって考慮される。
【0030】
さらに当然ながら最大の速度の援用は、最大の速度の考えられる上昇を考慮する。すなわち、たとえば自動車の停止前に自動車の加速が行われると、このことは最大で生じ得る速度の相応の上昇につながり、それにより、結果として最大で生じ得る速度の推移が考慮される。
【0031】
自動車の停止の判定は、最大で生じ得る速度を前提としたうえで、減速およびその時間幅から得られる自動車の現在の速度が判定されることによって行うことができる。すなわち、判定された現在の速度がリリース装置の操作時点での自動車の停止を意味しているか否かが判定される。このことが特に該当するのは、判定された現在の速度が操作時点でゼロだった場合である。すなわち少なくとも1つのパーキングブレーキが作動化されるのは、判定された現在の速度が自動車の停止を意味している場合である。
【0032】
その代替として自動車の停止を判定するために、最大で生じ得る速度を前提として、減速およびその時間幅を考慮したうえで自動車が停止している持続時間を判定することができる。リリース装置の操作がこの持続時間の満了とともに、またはその後に行われたとき、少なくとも1つのパーキングブレーキが作動化される。このことは、操作時点と初期時点との間の差異が持続時間よりも大きいときに、パーキングブレーキ装置が作動化されるように行うことができる。
【0033】
当然ながら停止を判定するために、現在の速度と持続時間とを両方とも考慮することもできる。
【0034】
上で述べたとおり、特に減速および最大で生じ得る速度の相応の推移がそのつど考慮される。このことは、現在の速度および/または持続時間が反復して判定されることによって具体化されていてよい。
【0035】
自動車の停止が判定される前にリリース装置が操作されたとき、すなわち、たとえば判定された速度が操作時点でゼロに等しくなく、および/または操作時点と初期時点との間の差異が持続時間よりも小さいとき、少なくとも1つのパーキングブレーキの作動化が行われないのが好都合である。このときには、停止が判定されるまで作動化を延期することができる。換言すると、自動車の停止が判定されたときに、少なくとも1つのパーキングブレーキが初めて作動化される。
【0036】
自動車の停止が判定される前にリリース装置が操作されたときには、自動車の減速、特に追加の減速が実行され、自動車の停止が判定されたときに、少なくとも1つのパーキングブレーキが初めて作動化され得る。このようにして、少なくとも1つのパーキングブレーキの作動化の延期の持続時間が短縮される。
【0037】
このとき少なくとも1つの常用ブレーキが所定のブレーキ力で操作されて、自動車の停止が判定されたときに、少なくとも1つのパーキングブレーキが作動化されるのが好ましい。
【0038】
その代替または追加として、自動車の停止が判定される前にリリース装置が操作されたとき、リリース装置を引き続き操作するように要請するメッセージが利用者に出力され得る。このとき自動車がリリース装置の操作中に、特に追加的に、好ましくは上記の所定のブレーキ力をもって、停止が判定されるまで減速されると好ましい。
【0039】
当然ながら本方法のほか、このようにして作動するブレーキシステムを有する自動車も本発明の範囲に含まれる。このとき自動車の該当する構成要素が相応に構成される。
【0040】
本方法を実施するために、自動車は相応に構成された制御装置を有することができる。特に、本発明による方法がコンピュータプログラム製品として制御装置に格納されることが考えられる。
【0041】
制御装置はESP制御ユニットの構成要素であってよく、またはこれに相当することができる。
【0042】
制御装置がESP制御ユニットとは別個である実施形態も考えられる。このようにして、ESP制御ユニットの考えられる故障時にもパーキングブレーキ機能が引き続き可能であり、したがって利用性がいっそう向上する。制御装置は、特に、自動車のマスタ制御ユニットである。このときマスタ制御ユニットは、特に、自動車の駆動装置を制御する役目も果たす。同様に、制御装置がブレーキ伝達装置の制御ユニットであってもよい。
【0043】
本発明のその他の重要な構成要件と利点は、従属請求項、図面、および図面を参照した付属の図面の説明から明らかとなる。
【0044】
当然ながら、上に述べた構成要件および以下にさらに説明する構成要件は、それぞれ記載されている組合せとしてだけでなく、それ以外の組合せでも、または単独でも、本発明の枠組みから外れることなく適用可能である。
【0045】
本発明の好ましい実施例が図面に示されており、以下の記述において詳しく説明する。同じ符号は同一または類似の、もしくは機能が同一の、コンポーネントに適用される。
【図面の簡単な説明】
【0046】
図1】ブレーキシステムを有する自動車の、大幅に簡略化した回路図状の図面を模式的に示す。
図2】ブレーキシステムを作動させる方法を説明するためのフローチャートを示す。
【発明を実施するための形態】
【0047】
自動車1は、例示として図1に大幅に簡略化して回路図状に図示するように、ブレーキシステム2を有している。ブレーキシステム2は、常用ブレーキ装置3と、ブレーキ伝達装置4と、パーキングブレーキ装置5とを含んでいる。常用ブレーキ装置3は、走行中に自動車1を制動する役目を果たす。この目的のために常用ブレーキ装置3は、自動車1の少なくとも1つのホイール7に対して作用する、以下においては常用ブレーキ6とも呼ぶ少なくとも1つのブレーキ6を有している。ここで図1には、純粋に例示として自動車1の2つのホイール7を見ることができ、純粋に例示として、常用ブレーキ装置3の操作時に付属のホイール7の一部に対して作用して自動車1を制動する、単一の常用ブレーキ6が図示されている。ブレーキ力を及ぼすために、ブレーキ伝達装置4の出力ロッド10が少なくとも1つの常用ブレーキ6と協同作用する。ブレーキ伝達装置4はたとえばブレーキブースタ35、特に電気機械式のブレーキブースタ35、または非人力ブレーキ36である。図示した実施例では、ブレーキ伝達装置4は、操作されたときに出力ロッド10の位置調節につながり得る操作部材8とリンクされている。図示した実施例では操作部材8は、図示しない利用者によって、矢印で示唆しているように操作されるブレーキペダル9である。図示した実施例の少なくとも1つの常用ブレーキ6は液圧で作動する。この目的のために常用ブレーキ6は、ブレーキ力を及ぼすために、シリンダ37に貯蔵されているブレーキ液によって付勢される。ブレーキ液による付勢のために、図示した実施例では、ピストン11がシリンダ37の中で案内されている。ここでは出力ロッド10がピストン11と結合されており、それにより、図1に示唆する位置調節ストローク38に沿った出力ロッドの位置調節が、シリンダ37の中でのピストン11の運動につながる。ピストン11は、制動をするために、ブレーキ力に相当する圧力をもってブレーキ液を常用ブレーキ6の方向に押圧し、この圧力は当業者にはブレーキ圧として知られている。すなわち常用ブレーキ6によって及ぼされるブレーキ力は、位置調節ストロークに依存する。特に、位置調節ストローク、ピストン11およびシリンダ37の大きさ、ならびに相応の容積が既知であれば、ブレーキ圧を判定することができる。さらに、ブレーキ圧およびこれに伴うブレーキ力により、自動車1の所与の条件の知見をもって、自動車1の減速すなわち負の加速度を判定することができる。
【0048】
パーキングブレーキ装置5は、自動車を特にパーキング位置のとき動かないように、たとえば走り出さないように、固定するための目的に寄与する。パーキングブレーキ装置5は、この目的のために自動車1の少なくとも1つのホイール7をロックする。この目的のためにパーキングブレーキ装置5は、以下においてはパーキングブレーキ12とも呼ぶ、当業者には固定ブレーキ12としても知られる少なくとも1つのブレーキ12を有している。少なくとも1つのパーキングブレーキ12は、作動化した状態にあるとき、自動車1の少なくとも1つのホイール7をロックする。図1に示す実施例では、純粋に例示として、パーキングブレーキ装置5の1つのパーキングブレーキ12を見ることができ、このパーキングブレーキ12は純粋に例示として、かつ図面を見やすくするために、常用ブレーキ6とは異なるホイール7と協同作用する。しかしながら、パーキングブレーキ12が少なくとも部分的に常用ブレーキ6に相当する実施形態も考えられる。少なくとも1つのパーキングブレーキ6を作動化するために、パーキングブレーキ装置5は、たとえば図示しない利用者が手動で操作することができるスイッチ14を有することができるリリース装置13を有している。リリース装置13が、すなわち図示した実施例では特にスイッチ14が、操作されて自動車1が停止していると、少なくとも1つのパーキングブレーキ6が作動化される。
【0049】
自動車1の停止を認識するために、標準動作では、自動車1の少なくとも1つのホイール7の回転数の検知を可能にするホイール回転数測定装置15が利用される。ホイール回転数測定装置15によって判定されたデータが、特に自動車1のESP制御ユニット17である付属の制御ユニット16で評価され、そのようにして、自動車1の現在の速度およびその帰結として自動車1の停止も決定される。
【0050】
特に自動車1の停止のこのような決定が可能でない場合、たとえばホイール回転数測定装置15および/または制御ユニット16が損傷および/または故障している場合、少なくとも1つのパーキングブレーキ6を作動化するために、次のように手順が進められる。
【0051】
自動車1の最大で生じ得る速度が援用される。さらに、ブレーキ伝達装置4の位置調節ストローク38が援用されて、少なくとも1つの常用ブレーキ6によって及ぼされる、自動車1の負の加速度である自動車1の減速を判定する。最大で生じ得る速度は、たとえば自動車1の最大で許容される速度であってよい。同様に、最大で生じ得る速度は、初期時点0での速度を前提とする見積りであってよく、たとえば自動車1の駆動装置31による自動車1の加速度、および/または勾配を考慮することができる。初期時点は、たとえばホイール回転数測定装置15および/または制御ユニット16が故障した時点であってよい。その代替として初期時点は、自動車1の既知となった停止、たとえばパーキングブレーキ装置5の作動化された状態であってよい。
【0052】
さらに、位置調節ストローク38に依存して自動車1の減速が判定される。
【0053】
そして最大で生じ得る速度と、判定された減速、ならびに減速の時間幅を用いて、以下においては操作時点とも呼ぶリリース装置13の操作の時点で自動車1が停止していたか否かが特定される。それが該当する限りにおいて、少なくとも1つのパーキングブレーキ6の作動化が行われ、それにより、自動車1の少なくとも1つのホイール7が少なくともロックされる。操作時点での停止が判定されなかったときは、停止が認識されるまで、少なくとも1つのパーキングブレーキ6の作動化を延期することができる。このとき自動車1の、特に追加の減速を能動的に実行することができ、および/または利用者にそのような実行を要請することができる。
【0054】
自動車1の停止の判定は、減速およびその時間幅のもとで、最大で生じ得る速度を前提として、自動車1の停止までに必要となる持続時間の判定を通じて行うことができる。その代替または追加として停止の判定は、減速およびその時間幅のもとで、最大で生じ得る速度を前提として、自動車1の現在の速度の判定を通じて行うことができる。
【0055】
パーキングブレーキ装置5を作動化するための上に説明した方法は、特に図2に示すフローチャートに従って行うことができ、図示した実施例では、判定された現在の速度が自動車1の停止の判定のために利用される。さらに、ここでは初期時点0での速度が既知であることが想定されている。
【0056】
本方法は初期時点0で、既知の速度をもって開始される。以下においては速度措置18とも呼ぶ方法措置18で、既知の速度が自動車1の現在の速度として規定される。現在の速度を前提としたうえで、以下においては最大化措置19とも呼ぶ方法措置19で、自動車1の最大で生じ得る加速度を考慮したうえで、自動車1の最大で生じ得る速度が見積られる。以下において比較措置20とも呼ぶ後続の方法措置20で、最大化措置19で見積られた最大で生じ得る速度がゼロであるか否か、すなわち自動車が停止しているか否かが比較される。それが該当する場合、すなわち見積られた最大で生じ得る速度がゼロである場合、自動車1の停止が判定されたものとみなされる。このことが特に与えられるのは、速度措置18における現在の速度がゼロであり、最大化措置19で考慮されるべき自動車1の加速度が生じていなかった場合である。以下においては第1の照会措置21とも呼ぶ後続の方法措置21で、リリース装置13の状態の照会が行われる。リリース装置13が操作されている限りにおいて、以下において作動化措置22とも呼ぶ後続の方法措置22で、少なくとも1つのパーキングブレーキ12の作動化が行われる。すなわち少なくとも1つのパーキングブレーキ12は、リリース装置13が操作されていて、判定された現在の速度がゼロである限りにおいて作動化される。
【0057】
比較措置20の結果がゼロとは相違する現在の速度であるとき、すなわち、判定された現在の速度によれば自動車1が停止していないとき、方法措置23でリリース装置13の状態が照会され、すなわち、リリース装置13が操作されているか否かが照会される。すなわち、この方法措置23も同じく照会措置23であり、以下においては第1の照会措置21との区別を明確にするために第2の照会措置23と呼ぶ。第2の照会措置21がリリース装置13の操作の欠如を明らかにしたときには、これに続いて、減速およびその結果としてこの場合の現在の速度が判定される。
【0058】
この目的のために方法措置24で、入力ロッド10の位置調節ストロークが判定および/または照会される。後続する方法措置25で、入力ロッド10の位置調節ストロークをベースとしてブレーキ圧の決定が行われる。すなわち方法措置25で、ブレーキ圧への位置調節ストロークの換算が行われる。後続する方法措置26で、ブレーキ圧をベースとして、このブレーキ圧により実現される自動車1の減速が判定される。さらに方法措置27で、減速の時間幅が判定ないし照会される。判定された減速ならびに時間幅を用いて、以下においては更新措置28とも呼ぶ後続する方法措置28で、比較措置18で判定された速度を前提として、減速および時間幅に基づいて帰結される現在の速度vが判定される。すなわち更新措置28では、現在の速度の更新が行われる。そして本方法は、更新措置26で判定された現在の速度をもって速度措置18へと戻り、この速度措置18は、更新措置26で判定され、最初の反復のときに前回規定された現在の速度すなわち初期時点での速度を置き換える。
【0059】
第2の照会措置23の結果がリリース装置13の操作された状態であり、すなわちリリース装置13が操作されており、現在の速度がゼロに等しくないとき、方法措置29で、入力ロッド10を所定の位置調節ストロークの分だけ位置調節することができる。したがってこの方法措置29は、能動的な常用ブレーキ措置29と呼ぶこともできる。引き続き本方法は方法措置24へと移行し、常用ブレーキ措置29で行われた入力ロッド10の所定の位置調節が相応に考慮される。図2に見て取ることができるように、常用ブレーキ措置29の実行前に方法措置30で、入力ロッド10の位置調節がすでに生じているか否かをチェックして、方法措置30でのチェックの結果が所定の値を上回っている場合にのみ、すなわち位置調節ストロークが所定の値よりも小さい場合にのみ、常用ブレーキ措置29を実行することが可能である。
【0060】
自動車1では、相応に構成された制御装置32を用いて本発明による方法が具体化される。このことは、制御装置32に格納されたコンピュータプログラム製品によって行うことができる。制御装置32は制御ユニット16とは別個であるのが好ましい。制御装置32は、特に自動車1のマスタ制御ユニット33である。制御装置32はこの目的のために、少なくとも1つのパーキングブレーキ12、リリース装置13、ブレーキ伝達装置4、および駆動装置31と相応に通信をするように接続される。
【符号の説明】
【0061】
1 自動車
2 ブレーキシステム
3 常用ブレーキ措置
4 ブレーキ伝達装置
5 パーキングブレーキ装置
6 常用ブレーキ
7 ホイール
8 操作部材
10 出力ロッド
12 パーキングブレーキ
13 リリース装置
15 ホイール回転数測定装置
32 制御装置
図1
図2
【国際調査報告】