(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-12-08
(54)【発明の名称】5’-O-フェニルアセチルウリジン及び治療上の使用
(51)【国際特許分類】
C07H 19/067 20060101AFI20231201BHJP
A61K 31/7072 20060101ALI20231201BHJP
A61P 1/16 20060101ALI20231201BHJP
A61P 25/00 20060101ALI20231201BHJP
【FI】
C07H19/067 CSP
A61K31/7072
A61P1/16
A61P25/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023532125
(86)(22)【出願日】2021-11-30
(85)【翻訳文提出日】2023-07-18
(86)【国際出願番号】 US2021061053
(87)【国際公開番号】W WO2022119784
(87)【国際公開日】2022-06-09
(32)【優先日】2020-12-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】501056821
【氏名又は名称】ウェルスタット セラピューティクス コーポレイション
(74)【代理人】
【識別番号】100107984
【氏名又は名称】廣田 雅紀
(74)【代理人】
【識別番号】100182305
【氏名又は名称】廣田 鉄平
(74)【代理人】
【識別番号】100096482
【氏名又は名称】東海 裕作
(74)【代理人】
【識別番号】100131093
【氏名又は名称】堀内 真
(74)【代理人】
【識別番号】100150902
【氏名又は名称】山内 正子
(74)【代理人】
【識別番号】100141391
【氏名又は名称】園元 修一
(74)【代理人】
【識別番号】100221958
【氏名又は名称】篠田 真希恵
(74)【代理人】
【識別番号】100192441
【氏名又は名称】渡辺 仁
(72)【発明者】
【氏名】ガルシア ガルシア ローランド アレジャンドロ
(72)【発明者】
【氏名】セイドフ ジョエル エー.
(72)【発明者】
【氏名】シンプソン デイヴィッド マイケル
(72)【発明者】
【氏名】ボン ボーステル レイド ウォーレン
【テーマコード(参考)】
4C057
4C086
【Fターム(参考)】
4C057BB02
4C057CC03
4C057DD01
4C057LL10
4C057LL18
4C086AA01
4C086AA02
4C086EA16
4C086MA01
4C086MA04
4C086MA52
4C086NA14
4C086ZA02
4C086ZA75
(57)【要約】
5’-O-フェニルアセチルウリジンは、対象にフェニル酢酸及びウリジンの両方を効果的に送達する。これは、肝性脳症及び肝臓の窒素サイクルについての遺伝性障害の治療に使用できる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
化合物、5’-O-フェニルアセチルウリジン。
【請求項2】
哺乳動物対象における状態を治療又は予防する方法であって、前記状態が、肝性脳症及び肝臓の窒素サイクルについての遺伝性障害からなる群から選択され、請求項1に記載の化合物の有効量を前記対象に投与するステップを含み、それにより前記状態を治療又は予防する、前記方法。
【請求項3】
投与が経口である、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
哺乳動物対象がヒト対象である、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
投与が経口である、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
有効量が、体表面積1平方メートルあたり1~5グラムであり、1日1、2又は3回投与される、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
哺乳動物対象における状態の治療又は予防における使用のための、請求項1に記載の化合物であって、前記状態が、肝性脳症及び肝臓の窒素サイクルについての遺伝性障害からなる群から選択される、前記化合物。
【請求項8】
哺乳動物対象に経口的に投与される、請求項7に記載の使用のための化合物。
【請求項9】
哺乳動物対象がヒト対象である、請求項7に記載の使用のための化合物。
【請求項10】
ヒト対象に経口的に投与される、請求項9に記載の使用のための化合物。
【請求項11】
体表面積1平方メートルあたり1~5グラムの用量で投与され、1日1、2又は3回投与される、請求項10に記載の使用のための化合物。
【請求項12】
哺乳動物対象における状態を治療又は予防するための医薬の製造における使用のための、請求項1に記載の化合物であって、前記状態が、肝性脳症及び肝臓の窒素サイクルについての遺伝性障害からなる群から選択される、前記化合物。
【請求項13】
医薬が哺乳動物対象への経口投与のために製剤化される、請求項12に記載の使用のための化合物。
【請求項14】
哺乳動物対象がヒト対象である、請求項12に記載の使用のための化合物。
【請求項15】
医薬がヒト対象への経口投与のために製剤化される、請求項14に記載の使用のための化合物。
【請求項16】
医薬が、体表面積1平方メートルあたり1~5グラムの用量での化合物の投与のために製剤化され、1日1、2又は3回投与される、請求項15に記載の使用のための化合物。
【請求項17】
薬学的に許容される担体と、哺乳動物対象における状態の治療又は予防に有効な量の請求項1に記載の化合物とを含む医薬組成物であって、前記状態が、肝性脳症及び肝臓の窒素サイクルについての遺伝性障害からなる群から選択される、前記医薬組成物。
【請求項18】
哺乳動物対象への経口投与のために製剤化される、請求項17に記載の医薬組成物。
【請求項19】
哺乳動物対象がヒト対象である、請求項17に記載の医薬組成物。
【請求項20】
ヒト対象への経口投与のために製剤化される、請求項19に記載の医薬組成物。
【請求項21】
体表面積1平方メートルあたり1~5グラムの用量での化合物の投与のために製剤化され、1日1、2又は3回投与される、請求項20に記載の医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
フェニル酢酸及びその前駆体フェニル酪酸は、肝性脳症及び窒素サイクルについての遺伝性障害(genetic disorder of the hepatic nitrogen cycle)などの状態における過剰なアンモニアの排除のための、アンモニアスカベンジャーとしてのフェニル酢酸の活性を利用して、重要な治療上の用途を有する。さらに、小胞体におけるタンパク質のミスフォールディングを軽減させるための分子シャペロンとしての、かつヒストン脱アセチル化の阻害剤としての、フェニル酢酸のさらなる活性が、各種他の疾患及び疾患モデルにおける治療上の恩恵のために活用されてきた。
【0002】
肝性脳症などの状態では、神経炎症及びミトコンドリア機能の減少も関与するため、過剰なアンモニアは疾患の発病及び進行における唯一の因子ではない。ピリミジンヌクレオシドのウリジンは、全身及び脳の両方において広い抗炎症活性を有し、ミトコンドリアの電子伝達及び酸化的リン酸化に欠陥を有する、ニューロンを含む細胞への支援をもたらす。経口2’,3’,5’-トリ-O-アセチルウリジンは、一部は経口ウリジンの用量制限性の副作用のために、経口ウリジン自体よりも効果的に血漿ウリジンを増大させる。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0003】
本発明は、化合物5’-O-フェニルアセチルウリジンを提供する。本発明は、対象における肝性脳症及び肝臓の窒素サイクルについての遺伝性障害からなる群から選択される状態を治療又は予防する方法であって、障害を治療するのに有効な一定量の本発明の化合物を対象に投与することを含む、方法を提供する。本発明は、肝性脳症及び肝臓の窒素サイクルについての遺伝性障害からなる群から選択される状態を治療若しくは予防することにおける使用のための、又は状態を治療若しくは予防するための医薬の製造のための、本発明の化合物も提供する。さらに本発明は、本発明の化合物と薬学的に許容される担体とを含む医薬組成物を提供する。
【0004】
化合物5’-O-フェニルアセチルウリジン(PAU,Phenylacetyluridine)は、経口的に投与されると、ウリジン自体よりも効果的に血漿ウリジンを増大させること、さらに、フェニル酢酸をフェニル酪酸(フェニル酢酸の不快なにおいにより薬物としてフェニル酢酸よりも好まれ、アンモニアスカベンジャーとしての使用のためFDAにより承認された前駆体)よりも効果的に血流に送達することが判明した。
【図面の簡単な説明】
【0005】
【
図1】5’-フェニルアセチルウリジンの経口投与後のマウスにおける血漿ウリジンを示すグラフである。
【
図2】5’-フェニルアセチルウリジンの経口投与後のマウスにおける血漿ウラシルを示すグラフである。
【
図3】5’-フェニルアセチルウリジンの経口投与後のマウスにおける血漿ウリジン+ウラシルを示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0006】
本明細書で使用される場合、移行句「含む(comprising)」はオープンエンドである。この用語を利用する請求項は、そのような請求項において列挙される要素に加えて要素を含有しうる。ゆえに、例えば、列挙される要素又はそれらの同等物が存在する限り、特許請求の範囲は、そこに具体的に列挙されない他の治療薬剤又は治療用ウイルス用量も含む治療レジメンと読み取ることができる。
【0007】
略語:
PAU又は5’-PAU:5’-O-フェニルアセチルウリド(Phenylacetyluride)、5’-フェニルアセチルウリジンとしても知られる
PA:フェニル酢酸(Phenylacetate)
PB:フェニル酪酸(Phenylbutyrate)
NaPB:フェニル酪酸ナトリウム(Sodium phenylbutyrate)
DMF:ジメチルホルムアミド(Dimethylformamide)
TLC:薄層クロマトグラフィー(Thin-layer chromatography)
DMSO:ジメチルスルホキシド(Dimethyl sulfoxide)
HPMC:ヒドロキシプロピルメチルセルロース(Hydroxypropylmethyl cellulose)
LPS:リポ多糖(Lipopolysaccharide)
TNF:組織壊死因子(Tissue necrosis factor)
【0008】
【0009】
ウリジン及びフェニル酢酸の同時送達に由来する治療上の恩恵をもたらすことに加えて、ウリジンは、フェニル酢酸又はその前駆体であるフェニル酪酸により引き起こされる代謝不均衡を弱めることができるため、フェニル酢酸と組み合わせてウリジンを使用することにより実現される重要な安全性要素がある。
【0010】
本発明の方法、使用のための化合物、使用、及び医薬組成物に従って、哺乳動物対象における、フェニル酢酸及びウリジンにより付与される恩恵の可能性を特徴とする任意の従来の障害が、治療又は予防可能である。そのような状態は、フェニル酢酸又はその前駆体フェニル酪酸のいくつかの既知の活性及び作用機序のうちのいずれかに基づき選択され、治療用量のウリジンにより付与される広い組織-神経保護及び組織保護活性も指し示される。一実施形態において、肝性脳症は5’-フェニルアセチルウリジンにより治療され、フェニル酢酸部分は、この状態に関連する過剰な循環及び組織アンモニアをスカベンジングし、ウリジンは、これも肝性脳症を特徴付ける神経炎症及びミトコンドリア機能障害に対し、直接的な神経保護活性をもたらす。全ての段階の重症度の肝性脳症は、重篤なクリーゼから最低限の臨床症状まで、5’-フェニルアセチルウリジンで治療される。重症の肝性脳症では、フェニルアセチルウリジン体表面積1平方メートルあたり1~最大9グラムの範囲の用量が、1日あたり1~3回投与され、用量は、特定の患者におけるアンモニア過剰の重症度に応じて選択される。
【0011】
右室不全及び肺高血圧症における肺動脈リモデリングは、心臓及び肺動脈に影響を及ぼす病的な代謝リモデリングを伴い、多くのがんにおけるWarburg効果と類似の過剰な好気性解糖を有する。フェニル酢酸はピルビン酸カルボキシラーゼを阻害し、病的な好気性解糖を部分的に軽減する。さらに、ウリジンは、圧負荷心筋における変力性を改善する。したがって、単一薬剤として、又はウリジン/フェニル酢酸比を調節するためウリジントリアセテートと組み合わせて、5’-フェニルアセチルウリジンは、いずれか一方の薬剤単独よりも、肺高血圧症における右室のより完全な保護をもたらす。右室不全は、原発性肺高血圧症の人々における主要な死因である。肺高血圧症の治療では、体表面積1平方メートルあたり1~5グラムの範囲の5’-フェニルアセチルウリジンの用量が、1日あたり1~3回投与される。
【0012】
本発明に従って、化合物は、任意の哺乳動物対象に投与されてよい。一実施形態において、哺乳動物対象はヒト対象である。本発明に従って、任意の従来の投与経路が利用されてよい。好ましくは、化合物は経口的に投与される。当業者は、特定の患者に対し投薬量を最適化するため用量を設定することができる。通例、化合物は、体表面積1平方メートルあたり1~5グラムの用量でヒト患者に経口的に投与される。通常、用量は1日あたり1~3回投与される。
【0013】
PBは一般的に、用量5~25g/日でナトリウム塩(Buphenyl(登録商標))として患者に投与される。ナトリウムは重量/重量で12%ナトリウムを含むため、したがって10g/日NaPB治療はナトリウム摂取量1.2gをもたらす。ナトリウムの推奨1日摂取量は2.3gであり、過剰なナトリウム摂取量は、高血圧症、心筋梗塞及び卒中の罹患率の増大に関連する(Strazzullo、D'Elia et al. 2009;Frieden and Briss 2010)。本発明の1つの目的は、過剰なナトリウム摂取量を添加しない形態のPBの生物的に活性な誘導体を提供することである。これは、ウリジンとのエステル結合により達成される。
【0014】
PBによるグルタミン欠乏は、尿素サイクル障害も過剰レベルのアンモニアも有しない哺乳動物においてさらなる代謝の欠陥となる。グルタミン欠乏及び結果として生じるアンモニア喪失は、ピリミジン合成にはグルタミンが必要であることから、ピリミジン(ウリジン及びシチジン)欠乏につながるおそれがある。ピリミジン合成は、グルタミン又は食物タンパク質のレベルにより変化しうる(Monks、Chisena et al. 1985;Nelson、Qureshi et al. 1993;Zaharevitz、Grubb et al. 1993)。ウリジンとエステル結合したPB関連誘導体の使用はウリジンを供給し、ゆえにウリジン欠乏を予防する。
【0015】
本発明は、本明細書で記載される本発明を例示するが限定しない以下の実施例を参照することにより、よりよく理解されるはずである。
[実施例]
【実施例1】
【0016】
5’-O-フェニルアセチルウリジンの調製
1. 2’,3’-O-シクロヘキシリデンウリジンの調製
【0017】
【0018】
ウリジン(50g、205ミリモル)を無水DMF(250mL)中に溶解させ、触媒量のパラ-トルエンスルホン酸(1.8グラム)を室温でアルゴン下で撹拌しながら添加した。20分後、31mL、つまり2.0当量の、1,1-ジメトキシシクロヘキサンを添加した。反応混合物を室温でアルゴン下で一晩撹拌した。反応の完了をTLC(EtOAc、Rf=0.2)により確認し、メタノール250mLを添加し、次いで2回蒸発させた。粗製反応混合物を、シリカゲル及び酢酸エチルを使用するフラッシュクロマトグラフィーにより精製し、所望の生成物33グラムを得た(50%収率)。1H NMR(400MHz,DMSO-d6)δ1.34~1.69(m,10H)、3.55(広幅s,2H)4.03~4.05(m,1H)、4.73(d,1H,J=3.6Hz)、4.86~4.88(m,1H)、5.06(s,OH)、5.61(d,1H,J=8.1Hz)、5.82(dd,1H,J=2.6,7.0Hz)、7.76~7.80(m,1H)、11.35(s,NH)
【0019】
2. 2’,3’-O-シクロヘキシリデン-5’-O-フェニルアセチルウリジンの調製
【0020】
【0021】
アルゴン下で、2’,3’-O-シクロヘキシリデンウリジン(26.0g、84.4ミリモル)を無水CH2Cl2250mL中に溶解させ、ピリジン125mLを添加し、混合物を0℃に冷却した。次いで、フェニルアセチルクロリド(16mL、1.2当量)を30分かけて液滴で添加した。反応混合物を0℃で4時間撹拌し、室温でさらに4時間撹拌した。反応の完了をTLC(EtOAc、Rf=0.6)により検証した。反応をメタノールでクエンチし、乾燥状態まで蒸発させた。残渣をEtOAc(500mL)中に溶解させ、0.1N HCl、0.05N HCl、水、飽和NaHCO3、最後に水で洗浄した。粗生成物を、シリカゲル及び50%EtOAc/ヘキサンを使用するフラッシュクロマトグラフィーにより精製し、所望の生成物30gを得た(85%収率)。1H NMR(400MHz,DMSO-d6)δ1.33~1.69(m,10H)、3.69(s,2H)、4.19~4.24(m,3H)、4.73~4.74(m,1H)、4.88(dd,1H,J=2.2,6.6Hz)、5.61(d,1H,J=8.1Hz)、5.77(d,1H,J=1.9Hz)、7.24~7.32(m,5H)、7.60(d,1H,J=8.1Hz)、11.42(s,NH)。
【0022】
3. 5’-O-フェニルアセチルウリジンの調製
【0023】
【0024】
2’,3’-O-シクロヘキシリデン-5’-O-フェニルアセチルウリジン(32.80g、77.1ミリモル)を、ギ酸及び水の1:1混合物300mL中に溶解させた。反応混合物を65~70℃で4時間加熱し、反応値TLC(酢酸エチル)の違いで出発物質の消費を確認した。水及びギ酸を真空下で蒸発により除去した。粗生成物を水(250mL)中に溶解させ、乾燥状態まで2回蒸発させた。シリカゲル及び酢酸エチルを使用するフラッシュクロマトグラフィーによる精製により、所望の生成物15.1グラム(56%)を得た。溶媒酢酸エチル/ヘキサン、エチルエーテル/ヘキサン、メタノール/ヘキサン、エタノール/ヘキサン、エタノール/エチルエーテル、アセトン/ヘキサン、エタノール/エチルエーテル、メタノール/エチルエーテルから生成物を再結晶させる試みは不成功であった。LC-MSによる分析は、λ230での総吸光度の92%が生成物と合致することを示した。1H NMR(400MHz,DMSO-d6)δ3.71(ABq,2H)、3.85~4.05(m,3H)、4.15~4.30(m,2H)、5.28(d,OH,J=5.1Hz)、5.43(d,OH,J=6.5Hz)、5.61(d,1H,J=8.1Hz)、5.72(d,1H,J=5.1Hz)、7.24~7.31(m,5H)、7.46(d,1H,J=8.1Hz)、11.35(s,NH)。融点55~57℃
【実施例2】
【0025】
5’-O-フェニルアセチルウリジン(PAU)の経口投与後の血漿ウリジン及びウラシル薬物動態
化学物質:HPMC(ヒドロキシプロピルメチルセルロース;SIGMA-Aldrich社製:cat番号H3785、CAS 9004-65-3)、5’-O-フェニルアセチルウリジン(PAU、lot 432-132)
媒体:水性HPMC(0.75%)を、経口投与のための懸濁媒体として使用した。
投薬製剤:PAUを0.75%HPMCに添加し、ホモジナイズして塊を排除した。懸濁液を所望の体積及び濃度に調整し、超音波処理して小さな残りの塊を微細な粒子に脱凝集させた。懸濁液を使用まで4℃で保存した。懸濁液を調製から24時間以内に使用した。
投薬:マウスに0.02ml/g体重で強制給餌して、用量587mg/Kg PAU(400mg/kgウリジンに対するモル当量)を与えた。
動物:メスCD-1マウス。
【0026】
【0027】
実験についての全体的な最初の設計は、PAUによりマウス6匹の群を強制給餌し、その後数回の時点で血液試料を得る(マウス3匹は2時点で失血させ(15及び60分)、別のマウス3匹は他の2時点で失血させた(30及び120分)ことを伴っていた。各実験は、血液ウリジンについてのベースラインを定めるため、マウス3匹でのHPMC(媒体のみ)時点を含んでいた。
【0028】
【0029】
血液試料を血漿分離チューブに収集し、これを血液収集直後に遠心処理し、一定分量の血漿をそれに続く処理のために凍結させた。その後血漿を除タンパクし、ウリジン及びウラシルを、UV吸光度検出及び質量分析を使用して、液体クロマトグラフィーにより定量化した。
【0030】
ウラシルはウリジンの酵素的分解における初めの生成物であるため、血流中へのウリジンの送達を、血漿ウリジン並びにウリジン及びウラシルの総量[ウリジン+ウラシル]をモニタリングすることにより評価した。マウスは、ヒトよりも迅速かつ広範に、投与されたウリジンをウラシルに変換し、ゆえにウリジン+ウラシルは、ウリジン単独の測定よりも、投薬及び薬物動態のヒトへの移行についての良好な指標をもたらす。
【0031】
PAUの投与後の血漿ウリジン、ウラシル及び[ウリジン+ウラシル]濃度が、それぞれ
図1、2及び3に示される。
【0032】
PAUの経口投与後の血流へのフェニル酢酸の送達も評価した。肝性脳症若しくは遺伝的窒素サイクル障害におけるアンモニアスカベンジャーとして、又はシャペロン若しくはヒストン脱アセチル化酵素阻害剤として、臨床ではフェニル酪酸ナトリウムが使用される。これは大部分が、肝臓においてベータ-酸化によりフェニル酢酸に代謝され、フェニル酢酸はフェニル酪酸の治療上の恩恵を媒介する。PAUを、200mg/kgフェニル酪酸ナトリウムと等モル用量で経口的に投与した。メスBALB/cマウス(n=群3~5匹)に、p.o.で試験化合物を施し、30分後に後眼窩から失血させて血漿を得た。PAU及びフェニル酪酸ナトリウム誘導体の比較バイオアベイラビリティを要約する表は、これらの化合物の等モルでの経口投与後の血清において得られる最大濃度(CMax)をバイオアベイラビリティの指標として指し示す。PAUの経口投与による血液循環へのウリジンの送達効率についての比較対象として、等モル用量のウリジンを使用した。
【0033】
【表3】
血漿濃度単位はマイクロモル/リットル(μM)である
NaPB = フェニル酪酸ナトリウム
PB = フェニル酪酸
PA = フェニル酢酸
PAU = 5’-O-フェニルアセチルウリジン
【0034】
経口PAUは、血漿フェニル酢酸濃度を上昇させるのに、等モル用量の経口フェニル酪酸ナトリウムよりも実質的に有効であり、投与後30分時点で3倍超の濃度の循環フェニル酢酸をもたらした。さらに、PAUは、等モル用量の経口ウリジンよりも良好に血漿ウリジン及びウラシルを増加させた。
【実施例3】
【0035】
5’-O-フェニルアセチルウリジン(PAU)の抗炎症効果
細菌細胞壁の構成成分リポ多糖(LPS)の注射は、炎症のモデルとして使用されてきた。炎症カスケードは、阻害されなければ細胞及び器官損傷につながるおそれがある。組織壊死因子α(TNFα)は炎症中に強力に誘導され、この応答を弱めることは、関節リウマチ、乾癬、血管炎及びアルツハイマー病を含む多数の疾患において保護的となりうる。
【0036】
メスBALB/cマウス41週齢(n=7~8/群)を、p.o.で媒体(0.75%HPMC)又はPAUで処理し、30分後にLPS(2.5mg/kg i.p.)を投与した。LPSから1時間後にマウスを屠殺し、血漿TNFαの測定のため血液を収集した。
【0037】
【表4】
+は、媒体対照と比較してp<0.05を示す。
【0038】
PAUは、血漿TNFαのLPS誘導性の増加における顕著な抗炎症効果をもたらす。
【国際調査報告】