(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-12-08
(54)【発明の名称】モビリティマシン用のトランスミッションアセンブリ
(51)【国際特許分類】
B62M 9/134 20100101AFI20231201BHJP
B62M 9/132 20100101ALI20231201BHJP
【FI】
B62M9/134
B62M9/132
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023532423
(86)(22)【出願日】2021-11-26
(85)【翻訳文提出日】2023-07-25
(86)【国際出願番号】 EP2021083175
(87)【国際公開番号】W WO2022112504
(87)【国際公開日】2022-06-02
(32)【優先日】2020-11-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(32)【優先日】2020-11-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(32)【優先日】2020-11-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(32)【優先日】2020-11-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(32)【優先日】2020-11-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(32)【優先日】2020-12-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(32)【優先日】2020-12-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】503041177
【氏名又は名称】ヴァレオ アンブラヤージュ
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100127465
【氏名又は名称】堀田 幸裕
(72)【発明者】
【氏名】ジョナタン、カイヨー
(72)【発明者】
【氏名】ジャン、バティスト、シーグワルト
(72)【発明者】
【氏名】クリストフ、ローランス
(72)【発明者】
【氏名】カンタン、ドレ
(57)【要約】
本発明は、モビリティマシン(900)用のトランスミッションアセンブリ(700)であって、前記アセンブリは、電気モータ(400)と、ギアno.1と称される第1ギアと最高ギアとの間に複数個(k)のギア比を有するギアシフト装置(100)とを備え、前記電気モータ(400)は、前記ギアシフト装置(100)の少なくとも1つの出力ピニオン(30、Fi)に接続する、アセンブリに関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
モビリティマシン(900)用のトランスミッションアセンブリ(700)であって、
前記アセンブリは、電気モータ(400)と、ギアno.1と称される第1ギア比と最高ギアとの間に複数個(k)のギア比を有するギアシフト装置(100)と、を備え、
前記電気モータ(400)は、前記ギアシフト装置(100)の少なくとも1つの出力ピニオン(30、F
i)に接続する、アセンブリ。
【請求項2】
前記アセンブリは、減速ギア(300)を備え、
前記電気モータ(400)は、前記減速ギア(300)を介して前記ギアシフト装置の前記出力ピニオン(30、F
i)に接続する、請求項1に記載のアセンブリ。
【請求項3】
少なくとも1つのフリーホイール、特に前記電気モータ(400)に接続するフリーホイール(430)を備える、請求項1または2に記載のアセンブリ。
【請求項4】
前記フリーホイールの前記軸(Y)は、前記モータの前記軸(X
m)から離れている、請求項3に記載のアセンブリ。
【請求項5】
前記フリーホイール(430)は、前記第4ピニオン(44)に位置する、請求項4に記載のアセンブリ。
【請求項6】
前記ギアシフト装置は、2~12個のギア比、または5~9個のギア比を有する、請求項1~5のいずれかに記載のアセンブリ。
【請求項7】
前記ギアシフト装置は、ニュートラルギアも有し、
前記ニュートラルギアは、係合時に、前記モビリティマシン(900)を推進させるクランクセット(940)の運動を不可能にする、請求項1~6のいずれかに記載のアセンブリ。
【請求項8】
前記最高ギアの係合時は、前記ギアシフト装置(100)の出力速度は、前記ギアシフト装置(100)の入力速度よりも、3~6倍、特に4.5倍大きい、請求項1~7のいずれかに記載のアセンブリ。
【請求項9】
前記ギアシフト装置の2つの連続するギア比間の減速比におけるジャンプが、10%~50%、特に15%~40%、特に20%~40%である、請求項1~8のいずれかに記載のアセンブリ。
【請求項10】
モビリティマシン(900)用の制御ユニット(800)であって、
前記マシンは、前記マシンの推進力の少なくとも一部を確保するように構成された電気モータ(400)と、ギアno.1と称される第1ギア比とギアkと称される最高ギアとの間に複数個kのギア比を有するギアシフト装置(100)と、を備え、
前記制御ユニットは、前記電気モータ(400)および前記ギアシフト装置(100)のうちの少なくとも一方を制御するように構成される、制御ユニット(800)。
【請求項11】
少なくとも1つの車輪(950)を備えるクランクセット(940)を有するモビリティマシン(900)用のギアシフト装置(100)を収容可能なケーシング(600)であって、
前記ギアシフト装置(100)は、ギア(11、12、20、30、Fri、Fi)を備え、
前記ケーシングは、前記ギアシフト装置(100)の少なくとも前記ギア(11、12、20、30、Fri、Fi)を収容するための第1ハウジング(610)を備える、ケーシング(600)において、
前記ギアシフト装置へのトルク入力は、前記クランクセット(940)のシャフト(200p)を介して実施され、
前記ケーシングは、前記ギアシフト装置の前記ギアのための外気への通気口(655)を備える、
ことを特徴とする、ケーシング(600)。
【請求項12】
請求項1~10のいずれかに記載のトランスミッションアセンブリ、および/または請求項11に記載の制御ユニット、および/または請求項12に記載のケーシングを備える、モビリティマシン(900)。
【請求項13】
モビリティマシン(900)を制御するための方法であって、
前記マシンは、前記マシンの推進力の全部または一部を提供するように構成された電気モータ(400)と、ギアno.1と称される第1ギアとギアkと称される最高ギアとの間に複数個kのギア比を有するギアシフト装置(100)と、を備え、
k個の前記ギアの各々は、比(R
1、R
i、R
k)を有し、
前記ギアシフト装置は、比(R
sel)を有する選択されたギアに係合するように構成されたギアシフトアクチュエータ(150)を備え、
前記方法は、前記電気モータ(400)および前記ギアシフト装置(100)のうちの少なくとも一方を制御することを可能にする、方法。
【請求項14】
前記電気モータ(400)は、前記ギアシフト装置(100)の少なくとも1つの出力ピニオン(30、F
i)に接続する、請求項14に記載の方法。
【請求項15】
特にギアチェンジ要求に対応する信号に応じて、電気モータ(400)のトルクを強化する少なくとも1つのステップ(820)を備える、請求項14または15に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の分野は、「ソフト」モビリティと呼ばれるものの分野であり、より具体的には、電気推進力と筋肉の力とを組み合わせたモビリティマシン、例えば電動アシスト付き自転車の分野に関する。
【0002】
本発明は、特に、電動アシスト付きの町乗り自転車、マウンテンバイク、ツーリングバイク、およびカーゴバイクに関する。
【背景技術】
【0003】
自転車のような環境に配慮した交通機関は、一定の国々で長期に亘り支持されており、レジャーやスポーツのためにも、商業生活や商品および人間の輸送の必要性からも発展を続けている。電動アシストの有無にかかわらず、このタイプのモビリティマシンの性能および信頼性を向上させるとともに、その製造およびメンテナンスを容易にするニーズが存在している。
【0004】
自転車で移動する場合、動力が自転車に乗っている人(サイクリスト)により供給され、そして後輪を駆動するクランクセットの軸を中心として回転するクランクシステムを介して、一般的にはチェーンを介して、車輪に伝達される。
【0005】
自転車用の変速機は、先行技術から知られている。具体的には、FR2975367A1号公報は、変速機と、ギアを選択するためのスライドシャトルと、を有する自転車用のギアシフト装置を開示している。変速機の装置およびギアは、共通のケーシングに配置されている。ケーシングの種々の部品の接続部にシールが設けられている。モビリティマシン、特にクランクセットを動力源とするマシン用の変速機のギアの周囲における空気の通流を促進することが求められている。また、使用時および休止時のすべての状況において、自転車用の変速機におけるギアの潤滑油の漏れを回避することも求められている。
【0006】
物や人を輸送するための、クランクセットを動力源とする軽量の車両が多様化する中、信頼性が高く製造が容易な自動電気変速機も必要とされている。
【0007】
出願DE102009029655A1は、自転車の補助電気駆動装置を制御するための方法について記載している。補助電気駆動装置を制御するように制御ユニットが設けられることにより、ユーザにより加えられる動力成分と電気補助駆動装置により加えられる動力成分とから、標準的な駆動力が連続的に生成される。
【0008】
出願EP2480446A1は、補助電気駆動装置を有する自転車に関して、クランクセットの回転方向が後方に向かっている際にエネルギーを回収して蓄積することを目的とする方法を開示している。
【0009】
電動アシスト付き自転車の制御を促進し向上させることが求められている。
【0010】
また、電動アシスト付き自転車の使用中、特にブレーキモード時のエネルギーの回収を促進することも求められている。
【0011】
先行技術のマシン、特に既知の電動アシスト付き自転車に見られる問題は、負荷がかかった状態でのギアシフトである。このような状況は、特にサイクリストが坂を上り始めたとき、必要な力があまりに大きくなったり、ペダルを漕ぐ頻度(ペダル頻度)が少なすぎたりするため、ギアダウンの必要性を感じる場合に生じる。変速機は、これを通過する高いトルクを理由として、ギアチェンジできない場合がある。
【0012】
クランクセットを動力源とするモビリティマシン用の変速機におけるギアシフトを改良する必要性が存在している。
【発明の概要】
【0013】
これらの必要性に少なくとも部分的に応えるために、本発明の目的は、第1態様によれば、モビリティマシン用のトランスミッションアセンブリであって、
前記アセンブリは、特に前記マシンの推進力のためのエネルギーの一部を提供するように構成された電気モータと、ギアno.1と称される第1ギア比と最高ギアとの間に複数個のギア比を有するギアシフト装置と、を備え、前記電気モータは、前記ギアシフト装置の前記ギア比のうちの1つに対応する出力ピニオンに接続する、アセンブリである。
【0014】
モビリティマシンは、電動アシスト付きモビリティマシンである。電気モータは、特に、モビリティマシンの瞬時速度が閾値未満である場合に、推進力の一部を提供する。本発明の文脈において、「モビリティマシン」と「マシン」という用語は、互換的に使用される。
【0015】
一実施形態によれば、マシンは少なくとも1つの車輪を備える。マシンは、2つ、3つ、4つ、またはそれ以上の車輪を備え得る。
【0016】
本発明の文脈において、「ライダー」、「ユーザ」、「サイクリスト」という用語は同等である。
【0017】
マシンは、電動アシストの有無にかかわらず使用され得る。変形例において、モビリティマシンは、電動アシストを備えない。
【0018】
電気モータに接続するギアシフト装置の出力ピニオンは、ギアシフト装置のギア比のうちの1つに対応する。本発明の異なる実施形態によれば、電気モータは、出力ピニオンのうちの1つまたは別の1つに接続する。この選択は限定的ではない。
【0019】
有利には、本発明によるトランスミッションアセンブリは、以下の特徴のうちの1つまたは別の1つを単独で、または組み合わせて有する。
【0020】
‐トランスミッションアセンブリは、減速ギア(減速機)を備え、前記電気モータは、前記減速ギアを介して、特に前記減速ギアの複数のピニオンを介して、前記ギアシフト装置の前記出力ピニオンに接続する。複数のピニオンは、5つのピニオン、具体的には、電気モータと同軸の第1ピニオン、減速ギアの入力ピニオンであるとともに第1ピニオンに係合する第2ピニオン、減速ギアの出力ピニオンであるとともに第2ピニオンに回転に関して固定された第3ピニオンであって、第4ピニオンに係合する第3ピニオン、ギアシフト装置の出力ピニオンに係合するように構成された第5ピニオンであって、第4ピニオンに回転に関して固定された第5ピニオンを備え得る。
【0021】
‐トランスミッションアセンブリは、少なくとも1つのフリーホイールを備える。トランスミッションアセンブリは、電気モータに連結するフリーホイール、および/またはクランクセットに連結するフリーホイールを備え得る。
【0022】
‐特定例において、トランスミッションアセンブリは、電気モータに連結するフリーホイールを備え、フリーホイールの軸は、特に電気モータの軸から離れている。電気モータに連結するフリーホイールは、例えば、第4ピニオンに位置する。本実施形態は、第1および第2一次増倍ピニオンの速度が、モビリティマシンの閾値速度に対応する閾値以上である場合に特に有利である。閾値を超えると、電気モータは電力を供給しない。フリーホイールにより、第1および第2一次増倍ピニオンは電気モータに接続しなくなり、ユーザは減速ギアおよび電気モータの慣性に対抗するために追加の動力を提供する必要がなくなる。
【0023】
‐トランスミッションアセンブリは、電気モータおよびギアシフト装置の少なくとも一方を制御するように構成された制御ユニットを備える。種々の例示的な実施形態によれば、制御ユニットは、ブレーキシステム、照明システム、ロケーションおよび/またはナビゲーションシステム、ヒューマン‐マシンインターフェースシステムのうちの少なくとも1つを同様に制御するように構成されるが、このリストは限定的なものではない。
【0024】
‐トランスミッションアセンブリは、特にクランクセットの高さに位置するケーシングに収納される。
【0025】
‐前記ギアシフト装置は、2~12個のギア比、または5~9個のギア比を有する。
【0026】
‐最高ギアの係合時は、前記ギアシフト装置の出力速度は、前記ギアシフト装置の入力速度よりも、3~6倍、特に4.5倍大きい。
【0027】
‐前記ギアシフト装置の2つの連続するギア比間の減速比におけるジャンプが、10%~50%、特に15%~40%、特に20%~40%である。
【0028】
‐前記ギアシフト装置は、ニュートラルギアも有し、前記ニュートラルギアは、係合時に、前記モビリティマシンを推進させるクランクセットの運動を不可能にする。
【0029】
‐ギアシフト装置は、特に、
‐選択シャフトを中心として自由に回転するように構成された一連の入力ピニオンと、
‐特にモビリティマシンのクランクセットの軸を囲むように構成された中空シャフトに回転に関して固定された一連の出力ピニオンと、
‐選択されたギア比に係合するように構成されたギアシフトアクチュエータと、
を備える。
【0030】
ギアの各々は、ギアシフト装置の出力速度と入力速度との間に、特定の比を有する。
【0031】
ギアシフトアクチュエータは、有利には、ギア比に係合するための電気的手段、特にギアモータをも備える。トランスミッションアセンブリの制御ユニットは、例えば、ギアシフトアクチュエータのギアモータを制御するように構成される。
【0032】
ギアシフトアクチュエータは、ギアに係合するための機械的手段、例えば、出願FR2975367A1に記載されるような、選択シャフト200内で並進移動可能なシャトルも備える。
【0033】
別の態様によれば、本発明の目的は、モビリティマシン用のギアシフト装置を収容可能なケーシングであって、前記ケーシングは、前記ギアシフト装置の少なくともギアを収容するための第1ハウジングを備え、前記ケーシングは、第1ハウジングの外気への通気口を備えるケーシングである。
【0034】
本態様によれば、本発明は、モビリティマシンの使用時および休止時のすべての状況において、ギアシフト装置のギアの通気性を保持する。油漏れは、ケーシングのすべての向きにおいて回避される。
【0035】
ケーシングの最も一般的な向きは、
‐水平な道路での使用に対応する水平方向の向き、
‐モビリティマシンが前輪または後輪で吊り下げられて収納される場合に考えられる2つの鉛直方向の向き、
‐例えばサイクリストが自転車を車のルーフに乗せて運ぶ場合、または修理やメンテナンスのために自転車を上下逆さまにする場合等の上下逆さま、
‐例えばモビリティマシンが地面に置かれてペダル上にある場合等の、地面の傾斜に応じた状態、
である。
【0036】
有利には、本発明によるケーシングは、以下の特徴のうちの1つまたは別の1つを単独で、または組み合わせて有する。
【0037】
‐通気口は、第1ハウジングから離れたケーシングのキャビティに位置する。
【0038】
‐ケーシングのすべての向きについて、ギアシフト装置用のギア潤滑油の容積部に対応する第1ハウジング内部の容積部は、通気口の下方に位置する。
【0039】
‐前記ケーシングは、キャビティと第1ハウジングとの間に、特に空気の通流を可能にする少なくとも1つの通路を備える。通路は、通気口から離れている。有利には、ケーシングは、上側通路および下側通路を備える。
【0040】
‐ケーシングは、特にモビリティマシン用の、電気モータ、減速ギア、ギアシフトアクチュエータ、および/または制御ユニットを収容するための少なくとも1つの第2ハウジングを備える。
【0041】
‐キャビティは、単数または複数の第2ハウジングとは別個である。キャビティは、有利には中央にある。キャビティは、ケーシングにおいて、第1ハウジングと単数または複数の第2ハウジングとの間に位置する。
【0042】
キャビティは、ケーシングのどの向きにおいても、第1ハウジングにおける天然油高さがキャビティへの通路に達しないように配置される。したがって、キャビティが油で充填されることはない。第1ハウジングとキャビティとの間における空気の通流を可能にする単数または複数の通路により、場合によっては油が特定の向きにおいて通過し得る。しかしながら、油がキャビティに一時的に閉じ込められても、通路が重力によりキャビティからの排出が可能となる状態になればすぐに、油は第1ハウジングに戻るであろう。
【0043】
通気口は、キャビティのエリアにおいて、わずかでも油が溜まる可能性から離れたところに位置する。これにより、油の吸引が防止される。
【0044】
別の態様によれば、本発明は、モビリティマシン用の盗難防止方法に関する。前記マシンは、前記マシンの推進力の全部または一部を提供するように構成された電気モータと、ギアno.1と称される第1ギアと最高ギアとの間に複数個のギア比を有するギアシフト装置と、を備え、前記ギアの各々は、比を有し、前記ギアシフト装置は、係合時にモビリティマシンを推進させるクランクセットの運動を不可能にするニュートラルギアも有するとともに、ニュートラルギアから選択されたギア、およびギアno.1と最高ギアとの間の異なるギア比に係合するように構成されたギアシフトアクチュエータを備える。
【0045】
別の態様によれば、本発明は、モビリティマシン用の制御ユニットであって、
前記マシンは、前記マシンの推進力の全部または一部を確保するように構成された電気モータと、ギアno.1と称される第1ギアと最高ギアとの間に複数個のギア比を有するギアシフト装置と、を備え、
制御ユニットは、電気モータおよびギアシフト装置のうちの少なくとも一方を制御するように構成される、制御ユニットに関する。
【0046】
好適には、制御ユニットは、電気モータおよびギアシフト装置を制御するように構成される。
【0047】
制御ユニットは、モビリティマシンのユーザから指示を受信するように構成される。指示は、特に後退走行指示である。これは、速度において漸進的であってもよい。別の例において、指示は、回生ブレーキ指示である。他の例示的な実施形態によれば、指示は、「歩行者」アシストモードを起動させる指示、または、盗難防止機能をそれぞれ起動または解除するためのロックまたはロック解除である。
【0048】
特定の実施形態において、制御ユニットは、
‐ブレーキシステム、
‐照明システム、
‐ロケーションシステム、
‐ヒューマン‐マシンインターフェースシステム、
のうちの少なくとも1つを制御するようになされる。前記ヒューマン‐マシンインターフェースシステムは、ユーザに通知する、および/または前記ユーザのリクエストを考慮するようになされている。ヒューマン‐マシンインターフェースシステムは、特に、制御ユニットにギアチェンジ指示に対応する上述の信号を送信するように構成される。実施形態によれば、ヒューマン‐マシンインターフェースシステムは、制御ユニットから受信した情報をユーザに呈示することができる。
【0049】
有利には、制御ユニットは、クランクセットの位置を判定するための少なくとも1つの装置を備え得る、またはこれに接続し得る。クランクセットの位置を判定するための装置は、例えば、センサにより前記位置を測定するためのシステムである。
【0050】
変形例において、制御ユニットは、クランクセットの位置を判定するためのこのような装置を備え、計算によりクランクセットの位置を推定する。
【0051】
制御ユニットは、モビリティマシンの瞬時速度用のセンサ、加速度計、傾斜センサ、ペダルレートセンサ、サイクリストのトルクセンサ、及びモビリティマシンの姿勢を測定するためのセンサから選択される少なくとも1つのセンサを備え得る、またはこれに接続し得る。
【0052】
本願において、「ペダルレート」、「ペダル頻度」および「ペダル速度」という用語は、互換的に使用される。
【0053】
本願の文脈において、例えば電動アシスト付き自転車に関連する「クランクセット」という用語は、広義に理解されるべきであり、モビリティマシンのユーザにより供給されるトルクのあらゆる入力手段を表すように使用される。
【0054】
制御ユニットは、特に、本願に記載の方法を実施するように構成される。
【0055】
別の態様によれば、本発明は、モビリティマシン用のトランスミッションアセンブリにも関する。前記アセンブリは、本願に記載の電気モータと、ギアシフト装置と、制御ユニットと、を備える。
【0056】
別の態様によれば、本発明は、
‐ギアシフト装置と、
‐前記ギアシフト装置を制御するように構成された制御ユニットと、
を備えるモビリティマシン用の盗難防止システムであって、
前記ギアシフト装置は、
a.ギアno.1と称される第1ギア比と最高ギアとの間の複数個kのギア比であって、前記ギアの各々は、対応する前記ギアの係合時に、前記モビリティマシンのクランクセットに接続するように構成された入力シャフトと前記ギアシフト装置の出力シャフトとの間に特定の減速比を有する、ギア比と、
b.係合時に前記モビリティマシンを推進させるクランクセットの運動を不可能にするニュートラルギアと、
を有する、モビリティマシン用の盗難防止システムにも関する。
【0057】
本発明による盗難防止システムは、例えば、ユーザインターフェースに設定されたボタンまたはキーである制御要素を備え得る、またはこれに接続し得る。
【0058】
さらに別の態様によれば、本発明は、ギアシフト装置、および/または上述のトランスミッションアセンブリ、および/または上述の制御ユニット、および/またはケーシングを備えるモビリティマシンにも関する。
【0059】
モビリティマシンは、例えば、
‐クランクセットの位置を判定するためのセンサと、
‐クランクセットの回転速度用のセンサと、
‐モビリティマシンの速度用のセンサと、
‐モビリティマシンの加速度を測定するための加速度計と、
‐走行領域の傾斜を測定するための傾斜センサと、
‐ユーザが生成するトルクを測定するためのトルクセンサと、
から選択される少なくとも1つのセンサを備える。
【0060】
制御ユニットは、例えば、ユーザからの指示、および/または、センサおよび/またはロケーション/ナビゲーションシステムからのデータを受信するように構成される。ユーザからの指示は、特に、後退走行指示である。これは、速度において漸進的であってもよい。別の例において、指示は、回生ブレーキ指示である。
【0061】
さらに別の態様によれば、本発明は、上述のケーシングに収納されたギアシフト装置を有するモビリティマシンに関する。
【0062】
マシンは、電気モータおよび/またはギアシフト装置のアクチュエータに供給するためのバッテリまたは他の再充電可能な装置を備え得る。
【0063】
マシンは、特に、電気モータ、照明システム、クランクセット、ロケーションおよび/またはナビゲーションシステム、およびヒューマン‐マシンインターフェースシステムに供給するために必要なエネルギーを供給するためのバッテリ、または当業者に知られる他の再充電可能な装置を備える。
【0064】
別の態様によれば、本発明は、モビリティマシンを制御するための方法にも関する。前記マシンは、前記マシンの推進力の全部または一部を提供するように構成された電気モータと、ギアno.1と称される第1ギアと最高ギアとの間に複数個のギア比を有するギアシフト装置と、を備え、前記ギアの各々は、比を有し、前記ギアシフト装置は、比を有する選択されたギアに係合するように構成されたギアシフトアクチュエータを備え、前記方法は、特に前記電気モータおよび前記ギアシフト装置のうちの少なくとも一方を制御することを可能にする。
【0065】
モビリティマシンは、電動アシスト付きモビリティマシンである。モビリティマシンの瞬時速度が閾値未満である場合、電気モータは、モビリティマシンに対して、特に推進力の一部を供給する。本願の文脈において、「自転車」、「モビリティマシン」、および「マシン」は、互換的に使用される。
【0066】
本態様によれば、本発明により、特に電気自転車であるモビリティマシンのギアシフト装置を制御することができる。ギアシフト装置のギアチェンジは、スムースに実施され、ユーザによる作動は必要ない。
【0067】
より正確には、本発明による電動アシストモータの制御により、この同一のギアシフト装置のギアチェンジが容易になる。
【0068】
本発明によるこの制御方法により、電動アシストモータと自動適応ギアシフト装置とをクランクセットに組み込むことが可能になる。したがって、本発明により、サイクリストが自転車に適応するのではなく、自転車がサイクリストに適応する。本発明によって、ギアチェンジは自動となり、本発明による方法により、走行中であっても、最初にペダルを踏むときでも、サイクリストが必要とする電動アシストのレベルが瞬時に調整される。自動モードにおいて、制御ユニットは、アシストのレベルおよび最適なギア比を決定する。ユーザは、マニュアルモードに移行し、特に特定のギア比を選択するオプションを常に維持している。有利には、電気モータは、特にトルク伝達チェーンにおいてギアシフト装置の上流に配置されるとともに、例えばギアシフト装置の出力シャフトに接続している。
【0069】
特に指定がない限り、電気モータは、モビリティマシンの前進走行に対応する方向に回転するように構成される。本発明のある実施形態において、電気モータは、モビリティマシンの後退走行に対応する反対方向に回転する。
【0070】
電気モータがギアシフト装置の上流に位置しているため、モータトルクは、この同一のギアシフト装置を通過せずに生成され得る。ギアシフトアクチュエータは、電気モータによるさらなる阻止力なく作動し得る。
【0071】
電気モータのトルクを瞬時に最大制御することにより、ギアシフト装置の上流の伝達チェーンが加速され得る。これにより、同一装置の入力と出力との間の緊張が緩和される。この結果、ギアシフトアクチュエータが受ける阻止力が小さくなる。
【0072】
有利には、本発明による制御方法は、ギアシフト装置の制御または電気モータの制御に関する以下のステップのうちの1つまたは別の1つを単独で、または組み合わせて有する。
‐特にギアチェンジ要求に対応する信号に応じて、電気モータのトルクを強化する少なくとも1つのステップ。信号は、例えば、モビリティマシンのユーザからのギアチェンジ指示に対応する。変形例において、以下に説明するように、信号は、最適な比を計算するステップにより生じる。電気モータのトルクを強化するこのステップ(「ブースト」ステップとも称される)は、本発明による方法によれば、自動的にトリガされ得る。この自動的なトリガは、特に、特定時間に亘るモータパワーのピークに、サイクリストにがたつきを感じさせずに補足的なアシストを提供するように、制御ユニットが実施されるギアチェンジにさらなるアシストが必要であると判断した場合に行われる。
【0073】
電動アシスト付きマシンの場合、サイクリストが最も力を出していない瞬間にモータトルクを瞬時に最大適用することにより、ギアシフトアクチュエータがギアチェンジに進む瞬間にギアシフト装置における制約が最適に緩和され得る。同様に、位置センサまたは推定装置により、(サイクリストのトルクまたは速度の測定プロファイルを介して)時間の関数として瞬間最適比が定義され得る。
【0074】
本ステップの変形例において、本ステップは、例えば追越しや登坂を容易にするために、電気モータのトルクを瞬間的に強化することによる恩恵を受けたいというユーザからの(例えばハンドルバー制御要素を介した)指示に従って実施される。
【0075】
このような指示により、特に、あらかじめプログラミングされた持続時間、例えば10秒間に亘って動力を強化するステップがトリガされる。変形例において、例えばユーザインターフェースのボタンやレバーである制御要素を連続的に保持することにより、最大持続時間よりも少ないまま、ステップの有効持続時間が決定される。
【0076】
‐電気モータのトルクを減少させるステップ。上述のステップの前に、モータトルクをより大きく増加させる前に、モータトルクを減少させることが有利な場合がある。
【0077】
‐特に前記ギア比を選択するステップに続く、選択されたギア比をギアシフト装置により係合するステップ。本ステップにおいて、制御ユニットは、選択されたギアを示すユーザからの指示に基づいて、ギアシフトアクチュエータを制御する。好適な変形例において、指示は、制御ユニットが実施する計算の結果である。
【0078】
‐ギアシフト装置の最適なギア比を計算するステップ。
【0079】
‐ギアシフト装置の出力がクランクセットに接続しないニュートラルギアに係合するステップ。このようなニュートラルギアは、例えば、ユーザからの指示後に係合され得る。ユーザは、例えば、自転車を押すことを決めた場合、「歩行者」アシストモードを作動させることを決定し得る。この機能は、特に、荷物を運ぶ場合に有用である。
【0080】
‐回生ブレーキのステップ。ギアシフト装置は、特にニュートラルギアにある。車輪の運動により、発電機として機能する電気モータが回転し、バッテリが部分的に放電した場合にはこれが再充電される。変形例において、回生ブレーキステップの後に、制御ユニットがブレーキシステムを制御する機械的なブレーキステップが続く。
【0081】
‐電気モータを後退方向、すなわち、モビリティマシンの後退走行に対応する方向に制御するステップ。ギアシフト装置は、特にニュートラルギアにある。特定の実施形態において、ユーザは、後退しているマシンの横で歩行し得る。
【0082】
‐前輪または後輪であるマシンの少なくとも1つの車輪をブロックするステップ。このステップにより、非常に簡単に実施されるモビリティマシンのための盗難防止解決策が得られる。
【0083】
‐低バッテリを管理するステップ。例えば、バッテリ容量が終わりになった場合、本発明による方法をサポートする制御ユニットは、ギアシフト装置の第2ギア比に切り替わる。
【0084】
有利な実施形態において、本発明による方法は、適応性を有する(アダプティブである)。この特定の実施形態によれば、本発明による方法は、ユーザからの指示の形態だけでなく、乗車スタイルや道に関する制約の分析によってもユーザのニーズを収集する。
【0085】
ギアシフト装置のギアチェンジは、スムースに実施される。ユーザは、特に、ユーザ側で以降の作動が必要ない、変速システムの完全自動制御モードを選択し得る。
【0086】
本態様のさらに別のものによれば、本発明は、上述のトランスミッションアセンブリを使用して実施される、モビリティマシン用の回生ブレーキ方法に関する。回生ブレーキ方法は、特に、ニュートラルギアに係合するステップに続き得るモータブレーキのステップを備える。モータブレーキとは、本ステップにおいて、モータはもう車輪を駆動していないことを意味する。車輪は、モータを駆動し、電気モータに供給するバッテリまたは再充電可能な装置の再充電が可能となる。
【0087】
有利には、モータブレーキステップの後に、機械的ブレーキシステムが作動される機械的ブレーキステップが続く。
【0088】
モータブレーキステップにおいて、モータの速度は、トルクと逆である。
【0089】
本態様のさらに別のものによれば、本発明は、上述のトランスミッションアセンブリを使用して実施される、モビリティマシン用の後退走行方法に関する。後退走行方法は、特にニュートラルギアに係合するステップに続く、特に電気モータを後退方向に、すなわち、モビリティマシンの後退走行に対応する方向に制御するステップを備える。
【0090】
さらに別の態様によれば、本発明は、モビリティマシン用の盗難防止方法に関する。前記マシンは、前記マシンの推進力の全部または一部を提供するように構成された電気モータと、ギアno.1と称される第1ギアと最高ギアとの間に複数個のギア比を有するギアシフト装置と、を備え、前記ギアの各々は、比を有し、前記ギアシフト装置は、係合時にモビリティマシンを推進させるクランクセットの運動を不可能にするニュートラルギアも有するとともに、ニュートラルギアから選択されたギア、およびギアno.1と最高ギアとの間の異なるギア比に係合するように構成されたギアシフトアクチュエータを備える。
【0091】
具体的な状況の例
記載例において、電気モータは、48Vのブラシレス電気モータである。本発明は、モータのこの選択に限定されない。
【0092】
トルクが133Nm(ニュートン‐メートル)であるため、以下の例で使用するモータは、サイクリストの力を例えば8倍または9倍に増加させ得る。
【0093】
例1:坂道発進‐傾斜センサの実施形態
変形例において、制御ユニットは、加速度計を備えるか、加速度計または傾斜センサから信号を受信するように構成される。傾斜センサは、例えば、電気モータのケーシングに組み込まれる。したがって、制御ユニットは、モビリティマシンが位置している、または走行している勾配に関するリアルタイムの情報を受信する。
【0094】
登り勾配では、サイクリストは、自転車を動かすために高いトルクを提供しなければならない。発車時に、傾斜センサは、制御ユニットに、自転車が位置している勾配についての情報を提供する。
【0095】
ギアチェンジの際にギアシフト装置が耐え得る最大トルクを把握しつつ、制御ユニットは、ギアシフト装置のアクチュエータに、ギアシフト装置を最適ギアと称されるギア比に配置するように指示を与える。このギア比は、ユーザがペダルを踏む前から、ユーザトルクとサイクリストが行うペダル頻度との最適な組み合わせに対応する。
【0096】
例2:走行中のロケーションおよび/またはナビゲーションシステムによる傾斜の検出および予測
本例において、制御ユニットは、衛星測位センサ、および選択的にサイクリストのペダルを漕ぐ動作を特徴づけるために設けられたセンサ、例えばペダル頻度センサを備える、またはこれに接続している。
【0097】
衛星位置センサは、例えば、トランスミッションアセンブリも収容するケーシングに配置される。
【0098】
代替的に、衛星測位センサは、モビリティマシンのフレームに配置される。
【0099】
位置センサから受信した情報およびサイクリストのルートの予測から、および以降の計量の高度における変化から、制御ユニットは、予測されるペダルトルクが、ギアチェンジの際にギアシフト装置が耐え得るものよりも大きいかどうかを計算する。
【0100】
本方法は、特に、ギアシフト装置のギア比、すなわち、サイクリストが提供しなければならないトルクとペダル頻度との最適な組み合わせに対応する最適ギアを決定する。
【0101】
例3:駐車場(勾配14%)から出る際の荷物の運搬
本例において、モビリティマシンは、150kgの荷物を有する貨物自転車である。
【0102】
本発明において使用する電気モータにより、極端な状況でのモビリティマシンの操作を容易にするために、限られた時間だけ追加の電力が提供され得る。駐車場の傾斜は、そのきつい勾配のため、特に困難な都市環境を構成する。本発明により、貨物自転車を前進走行においても後退走行においても容易に使用することができる。上り坂を登る場合、本発明による方法により自動的に追加の電力が提供され、サイクリストは14%の勾配を楽に上ることができる。下り坂では、本発明により、特に、バッテリを再充電するように回生ブレーキ機能が作動する。
【0103】
本発明の特徴、詳細および利点は、図面を参照しつつ例示を目的として以下になされる説明を読むことで、より明瞭になるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0104】
【
図1】
図1は、本発明の態様の1つによるモビリティマシンの図である。
【
図2】
図2は、
図1のモビリティマシンのトランスミッションアセンブリを示す。
【
図3】
図3は、本発明の特定の実施形態についてのトルク経路の断面を示す。
【
図4】
図4は、本発明によるトランスミッションアセンブリを収容するケーシングを示す。
【
図4a】
図4aは、種々の向きにおける
図4のケーシングを概略的に示す。
【
図4b】
図4bは、種々の向きにおける
図4のケーシングを概略的に示す。
【
図4c】
図4cは、種々の向きにおける
図4のケーシングを概略的に示す。
【
図4d】
図4dは、種々の向きにおける
図4のケーシングを概略的に示す。
【
図5a】
図5aは、本発明の具体的な実施形態を示す。
【
図5b】
図5bは、本発明の具体的な実施形態を示す。
【
図7】
図7は、本発明の態様による制御方法の実施の概略図である。
【
図8】
図8は、本発明による制御方法の種々のステップをブロック図で示す。
【
図9】
図9は、本発明による制御方法の種々のステップをブロック図で示す。
【
図10】
図10は、本発明による制御方法の種々のステップをブロック図で示す。
【
図11】
図11は、本発明による方法の実施例の概略図である。
【
図12】
図12は、本発明による方法の実施例の概略図である。
【
図13】
図13は、サイクリストが提供すべき閾力と瞬時に利用可能なアシストのレベルとの関係を表す曲線を示す。
【
図14】
図14は、本発明の例示的な実施形態をグラフで示す。
【発明を実施するための形態】
【0105】
図1は、本発明の態様の1つによるモビリティマシン900を示す。ここで、マシン900は、回転軸X
mを有する電気モータ400を有する電動アシスト付き自転車である。前記電気モータは、前記マシンの推進力の一部を提供するように構成されている。
【0106】
電動アシストなしで走行する場合、動力が、自転車に乗っている人(サイクリスト)により供給され、チェーンを介して後輪を駆動するクランクセットの軸Xpを中心として回転する2つのペダルを介して、車輪950に伝達される。
【0107】
図3を参照して、電動アシスト使用時と非使用時のトルク経路について、以下に記述する。
【0108】
図1に示すように、マシン900は、制御ユニット800と複数のセンサ80とを有している。センサ80は、特にクランクセットに、自転車フレームに、または車輪に配置されている。制御ユニット800は、特に、電気モータ400およびギアシフト装置100の少なくとも一方を制御するように構成されている。
【0109】
ここで、マシン900は、バッテリ910の形態にあるエネルギー貯蔵装置と、照明システム920と、軸Xpを有するクランクセット940と、ロケーションおよび/またはナビゲーションシステム980と、情報を表示できる、および/または前記ユーザのリクエストを考慮できるタッチスクリーンを有するヒューマン‐マシンインターフェースシステム990と、をさらに有している。ヒューマン‐マシンインターフェースシステム990は、特に、ロケーションシステム908に接続し、ナビゲーションインターフェースとして機能する。本発明は、特定のヒューマン‐マシンインターフェースシステムに限定されず、当業者に知られる任意のシステムを備え得る。
【0110】
車輪950は、特にディスクブレーキ965を有するブレーキシステム960を備えている。
【0111】
マシン900は、
図2に示すトランスミッションアセンブリ700を有している。トランスミッションアセンブリ700は、ギアシフト装置100と、回転軸Xmを有する電気モータ400であって、マシンを推進するための電力の一部を供給するための電気モータ400と、を有している。
【0112】
図1および
図2に示すように、ギアシフト装置100は、
図4により詳細に示すケーシング600に収納されている。ここで、ケーシング600は、クランクセット940と同じ高さに配置されており、その軸はギアシフト装置100の出力軸X
3と一致している。
【0113】
ギアシフト装置100は、ギアNo.1として知られる第1ギアと、ギアkとして知られる最高ギアと、の間に、複数のk個のギア比を有している。
【0114】
図3に示すように、図示のギアシフト装置100は、
‐選択シャフト200の周囲を自由に回転するように構成された一連の入力ピニオン20と、
‐特にモビリティマシン900のクランクセット200pの軸を囲むように構成された中空のシャフト230に、回転に関して固定された一連の出力ピニオン30と、
‐選択されたギア比に係合するように構成されたギアシフトアクチュエータと、
を備えている。
【0115】
ギアシフトアクチュエータは、ギア比に係合するための機械的手段、例えばここでは中空の選択シャフト200内で並進移動可能なシャトル155と、ギア比に係合するための電気的手段、具体的には、ニュートラルギアに対応する位置P0とギア1~7に対応する位置P1~P7との間でシャトル155を移動させるギアモータと、を備えている。
【0116】
図3は、特に電動アシストがない状態でユーザが提供したトルクのトルク経路Cwuを実線で示している。トルク入力は、クランクセット940のシャフト200pを介して実施され、トルクは、第2一次増倍ピニオン12に係合する第1一次増倍ピニオン11を通過する。第1一次増倍ピニオン11は、クランクセットのシャフト200pに回転に関して固定されており、第2一次増倍ピニオン12は、一次シャフト200に回転に関して固定されている。クランクセットのシャフト200pと一次シャフト200との間には、永久減速比が存在する。
【0117】
一次シャフト200は、一連の出力ピニオン30に係合するように構成された一連の入力ピニオン20を支持している。入力ピニオン20および出力ピニオン30の個数は、ギアシフト装置のギア比の個数に対応し、ここでは7に等しい。本例において、選択されたギア比iに応じて、入力ピニオン20は、Fr1からFr7までのFriと記され、出力ピニオン30は、F1からF7までのFiと記されている。入力ピニオン20は自由に回転可能であり、出力ピニオン30は出力シャフト230に対して固定されている。したがって、すべての出力ピニオン30は、出力シャフト230を介してチェーンピニオン955に連結されている。
【0118】
本願の文脈において、「自由に」および「固定された」という用語は、「その軸に対して自由に回転可能である」、および「その軸に対して回転に関して固定されている」ということをそれぞれ意味している。
【0119】
第1一次増倍ピニオン11、第2一次増倍ピニオン12、入力ピニオンFr1~Fr7は、出力ピニオンF1~F7とともに、ここではギアシフト装置100のギアを形成している。
【0120】
トルクは、選択されたギア比iに対応する出力ピニオンFiに係合するフリーピニオンFriを通過する。
図3の例では、ギアno.1が選択されており、フリーピニオンFr
1が出力ピニオンF
1に係合する。ここでは、ギアno.1は、1という比に対応するが、この値は本発明を限定するものではない。
【0121】
最後に、トルクは、チェーンまたはベルトで連結されたリム955により車輪950に伝達される。
【0122】
同様に、電動アシストのトルク経路Cwaを、点線で示す。ユーザから来るトルクは、前述と同じである。しかしながら、今回は、電気モータ400からのものと組み合わされる。
【0123】
図示例において、電気モータ400は、ギアシフト装置100のギアno.1に対応する出力ピニオンF1に接続している。
【0124】
電気モータ400は、減速ギア(減速機)300の複数のピニオン40を介して出力ピニオンF1に接続している。記載例における複数のピニオン40は、5つのピニオン、すなわち、
‐電気モータ400と同軸の第1ピニオン41と、
‐第1ピニオンに係合する第2ピニオン42であって、減速ギア300の入力ピニオンである第2ピニオン42と、
‐減速ギア300の出力ピニオンである第3ピニオン43であって、第2ピニオン42に対して回転に関して固定された第3ピニオン43と、
‐第3ピニオン43に係合する第4ピニオン44と、
‐第3ピニオン43に係合する第5ピニオン45であって、第4ピニオンに対して回転に関して固定された第5ピニオン45と、
により形成されている。
【0125】
ギアシフトアクチュエータ150は、ギア比に係合するための機械的手段、例えば、ここでは中空の選択シャフト200内で並進移動可能なシャトル155と、ギア比に係合するための電気的手段、具体的には、異なるギア比に対応する位置Px間でシャトル155を移動させるためのギアモータと、を備えている。
【0126】
図3aに示す本発明の変形例において、トランスミッションアセンブリ700は、軸Yのフリーホイール430を備えている。前記フリーホイールは、電気モータ400に接続している。軸Yは、ここでは、電気モータの軸Xmから離れている。電気モータに接続したフリーホイールは、ここでは、軸Yと一致する軸Xの第4ピニオン44に配置されている。フリーホイールにより、ユーザが電気モータ400がもはや電力を供給しない閾値速度を超えてマシン900を駆動した場合、第1一次増倍ピニオン11および第2一次増倍ピニオン12は、電気モータ400にもはや接続しない。したがって、ユーザは、減速ギア300および電気モータ400の慣性に対抗すべく追加の動力を供給する必要はない。
【0127】
本発明の変形例において、ギアシフト装置100のニュートラルギア、すなわちギア0が係合し得る。この構成を
図3bに示す。シャトル155は、ニュートラルギアに対応する位置P
0にある。どのピニオンFriも出力ピニオンに係合せず、クランクセット940の運動は、車輪950の駆動を不可能にする。
【0128】
図4は、
図1のモビリティマシン900用のケーシング600をより詳細に示す。
【0129】
ケーシング600は、第1ハウジング610と、互いに離れている第2ハウジングと、を画定するケース660を備えている。第1ハウジング610は、ギアシフト装置100のギアを収容するように構成されている。第2ハウジング640、630、615および680は、モビリティマシンの、電気モータ400、減速ギア300、ギアシフトアクチュエータ150、および制御ユニット800をそれぞれ収容するように構成されている。第2ハウジング、特に、制御ユニット800を収納するように構成されたものは、好適にはシールされている。
【0130】
ギアシフト装置100を収容するケース660は、2つの横方向フランジ667により閉鎖されている。種々の第1および第2ハウジングがより明瞭に見えるように、ケーシング600を、
図4、
図5a~
図5dにおいて、空の状態で、1つのフランジ667のみを有するように示す。第1ハウジング610は、モビリティマシン900のクランクセットのスピンドルを受容するための2つの対面する孔を横方向フランジ667に有している。
【0131】
図4aおよび
図4dは、それぞれ前輪950または後輪950で吊り下げられた、例えば
図1からのモビリティマシン900である自転車に対応するケーシング600の向きを示す。
図5cにおけるケーシング600の向きは、平坦な道路上での走行に対応する。
【0132】
図5bにおけるケーシング600の向きは、車輪がクランクセット940に対して上方にある状態で、ペダルにより地面に置かれた自転車に対応する。レベルLは、モビリティマシンの種々の位置であって、ケーシング600の様々な向きに対応する位置におけるギアシフト装置100のギア用の潤滑油で充填された容積Viの表面に対応する。重力下において、油は、第1ハウジング610の下部の容積Viに位置する。油容積Viは、特に50ml~60mlである。
【0133】
ケーシングのこれらの向き、およびケーシング600のあらゆる他の向きについて図示のように、容積Viは、通気口655の下方に位置している。また、容積Viは、上側通路651および下側通路652の下方に位置することにより、油が第1ハウジング610とキャビティ650との間で流れることが防止されている。
【0134】
上述の実施形態は、電動アシスト自動車に関するものであるが、本発明は、モビリティマシンのタイプに限定されない。
【0135】
図5aは、後退走行実施中の本発明による制御方法Pを概略的に示す。ギアシフト装置100は、特にニュートラルギアにある。クランクセットは、電気モータ400にもギアシフト装置100の出力にも接続していない。ユーザは、ギアシフト装置100の入力トルクTpに対応するペダル速度Spでペダルを漕いでも、有用なトルクを供給していない。
【0136】
このとき、有用なトルクは、電気モータ400のみからもたらされる。ユーザUがペダルを漕いでも、クランクセット940の運動により生じるトルクは車輪に伝達されない。電気モータ400は、後退方向に回転し、車輪を後退方向に駆動する。ここで、速度およびトルクは負である。
【0137】
電気モータ400は、速度Smで回転している。これは、比Raを有する減速ギア300に関連付けられる。減速ギアの出力速度S’=Sm/Raであり、供給されるトルクは、モータトルクに減速ギア300の比を乗じた値に等しい。すなわち、T’m=Tm×Raである。
【0138】
図5bは、後退走行のためのユーザ指示に従う方法のステップをブロック図で示す。制御ユニット800は、最初にステップ803において、ギアシフト装置100によるニュートラルギアの係合を命令する。制御ユニットは、ギアシフト装置のフリーピニオン20が係合されないように、ギアシフト装置のアクチュエータ150を制御する。
【0139】
ギアシフト装置100がニュートラルギアになったら、制御ユニット800は、ステップ807において、モビリティマシン900を後退方向に推進するように電気モータ400を制御する。
【0140】
一実施形態において、トランスミッションアセンブリは、後退走行コマンド用センサに接続した電位差計を備えている。したがって、ユーザUは、後退走行時の最大速度まで、電気モータ400の速度を連続的に選択することができる。変形例において、ユーザUの指示に従って、後退走行時のモータの速度は、単数の値または複数の離散した値を取り得る。
【0141】
図6aは、回生ブレーキ実施中の本発明による制御方法Pを概略的に示す。ギアシフト装置100は、特にニュートラルギアにある。トルク経路のダイアグラムは、モータブレーキのステップの間、逆転している。車輪950の運動により、発電機として機能する電気モータ400が回転し、バッテリ910が完全に充電されるまでこれを充電することができる。速度およびトルクは、ここではいずれも反対である。回生ブレーキは、特に前進走行において、すなわち正の速度および負のモータトルクで、または後退走行において、すなわち負の速度および正のモータトルクで利用され得る。
【0142】
図6bは、ユーザUからのブレーキ指示に従う方法のステップを示す。制御ユニット800は、最初にステップ803において、ギアシフト装置100によるニュートラルギアの係合を命令する。制御ユニットは、ギアシフト装置のフリーピニオン20が係合されないように、ギアシフト装置のアクチュエータ150を制御する。
【0143】
ギアシフト装置100がニュートラルギアになったら、制御ユニット800は、ステップ805において、モータブレーキのために電気モータ400を制御する。
【0144】
【0145】
走行モードにおけるモビリティマシン900の動作中、ユーザは、ギアシフト装置100の入力トルクTpに対応するペダル速度Spでペダルを漕ぐ。比riを有する選択されたギア比Giの関数として、ギアシフト装置100の出力速度S’pは、比riで割ったペダル速度に等しい。すなわち、S’p=Sp/riである。
【0146】
電気モータ400は、速度Smで回転している。これは、比Raを有する減速ギア300に関連付けられる。減速ギアの出力速度S’m=Sm/Raであり、供給されるトルクは、モータトルクに減速ギア300の比を乗じた値に等しい。すなわち、T’m=Tm×Raである。
【0147】
図6は、後退走行のためのユーザ指示に従う方法のステップを示す。制御ユニット800は、最初にステップ803において、ギアシフト装置100によるニュートラルギアの係合を命令する。制御ユニットは、ギアシフト装置のフリーピニオン20が係合されないように、ギアシフト装置のアクチュエータ150を制御する。
【0148】
ギアシフト装置100がニュートラルギアになったら、制御ユニット800は、ステップ807において、モビリティマシン900を後退方向に推進するように電気モータ400を制御する。このとき、有用なトルクは、電気モータ400のみからもたらされる。ユーザUがペダルを漕いでも、クランクセット940の運動により生じるトルクは車輪に伝達されない。電気モータ400は、後退方向に回転し、車輪を後退方向に駆動する。一実施形態において、トランスミッションアセンブリは、後退走行コマンド用センサに接続した電位差計を備えている。したがって、ユーザUは、後退走行時の最大速度まで、電気モータ400の速度を連続的に選択することができる。変形例において、ユーザUの指示に従って、後退走行時のモータの速度は、単数の値または複数の離散した値を取り得る。
【0149】
図9は、後退走行実施中の
図4に対応する。ニュートラルポジションにあるギアシフト装置100は、電気モータ400に接続しておらず、ユーザは有用なトルクを供給していない。
【0150】
図7は、ユーザUからのブレーキ指示に従う方法のステップを示す。制御ユニット800は、最初にステップ803において、ギアシフト装置100によるニュートラルギアの係合を命令する。制御ユニットは、ギアシフト装置のフリーピニオン20が係合されないように、ギアシフト装置のアクチュエータ150を制御する。
【0151】
ギアシフト装置100がニュートラルギアになったら、制御ユニット800は、ステップ805において、モータブレーキのために電気モータ400を制御する。
【0152】
図8は、モビリティマシンの盗難防止機能を作動させるようにロックする指示に従う方法のステップを示す。制御ユニット800は、最初にステップ803において、ギアシフト装置100によるニュートラルギアの係合を命令する。制御ユニットは、ギアシフト装置のフリーピニオン20が係合されないように、ギアシフト装置のアクチュエータ150を制御する。
【0153】
ギアシフト装置100がニュートラルギアになったら、制御ユニット800は、マシンの車輪のうちの少なくとも一方をブロックするためのステップ809を実施する。
【0154】
図10に示すように、ニュートラル位置にあるギアシフト装置100は、電気モータ400に接続しておらず、トルク経路のダイアグラムは、モータブレーキのステップ805の間、逆転している。車輪950の運動により、発電機として機能する電気モータ400が回転し、バッテリ910が完全に充電されるまでこれを充電することができる。バッテリ910が完全に充電されたとき、または長時間に亘るブレーキ指示の間に、モータブレーキのステップ805の後に、制御ユニットがブレーキシステム960を制御する機械的ブレーキのステップ806が続く。
【0155】
本発明による方法は、サイクリストにより供給されるべき力の閾値Tp
0を、
図6に示す法則に従って、瞬時に利用可能なアシストレベルTmに恒久的に調整する。
【0156】
マシン900の使用中にセンサが確立した走行パラメータの関数として、サイクリストが図示の曲線より下方のゾーンにいる場合、サイクリストにより供給されるべき力の閾値Tp0が、利用可能なアシストレベルTmとなって曲線上にあるように、リアルタイムで調整される。
【0157】
図7に示す係合ギア比Giの関数としてクランクセット940の速度Spを与える曲線は、本発明による方法の3つの実施例に対応する。これらの例は、ギアシフト装置が7つのギア比を有する上述のマシン900に特に関するものである。各ギア比Giに対して、方法Pは、特に適応的に、R
1~R
7までのモビリティマシンの速度範囲R
iを規定する。
【0158】
実線で示す曲線E1は、ペダル速度範囲Spがおおよそ60rpm、例えば50rpm~70rpmである第1の例示的な実施例に対応する。これは、シフトアップに有利である。
【0159】
点線で示す曲線E2は、ペダル速度範囲Spがおおよそ70rpm、例えば60rpm~80rpmである第2の例示的な実施例に対応する。これは、シフトダウンに特に有利である。
【0160】
曲線E3は、速度範囲Spがおおよそ60rpmで、ギア比3で直接的に始動する第3の例示的な実施形態に対応する。
【0161】
ギアチェンジは常に間隔を置いて実施されるため、制御ユニットは、安定したギアで、サイクリストが必然的に、
‐範囲の中心にあるか(この場合、サイクリストが従うシフト法則は完璧に適応している)、
‐範囲の上縁に向かってオフセットしているか(この場合、本方法は、より高い速度範囲を提案する)、
‐範囲の下縁に向かってオフセットしているか(この場合、本方法はより低い速度範囲を提案する)、
を分析する。
【0162】
本発明による方法は、特に走行条件を考慮する。具体的には、走行ゾーンを登る場合、筋肉による力を低減するように、ペダル速度を上げる。
【国際調査報告】