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特表2023-551522電気化学素子用分離膜及びそれを含む電気化学素子
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-12-08
(54)【発明の名称】電気化学素子用分離膜及びそれを含む電気化学素子
(51)【国際特許分類】
   H01M 50/434 20210101AFI20231201BHJP
   H01M 50/417 20210101ALI20231201BHJP
   H01M 50/451 20210101ALI20231201BHJP
   H01M 50/443 20210101ALI20231201BHJP
   H01M 50/446 20210101ALI20231201BHJP
   H01G 11/52 20130101ALI20231201BHJP
【FI】
H01M50/434
H01M50/417
H01M50/451
H01M50/443 M
H01M50/446
H01G11/52
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023532827
(86)(22)【出願日】2022-08-19
(85)【翻訳文提出日】2023-05-30
(86)【国際出願番号】 KR2022012454
(87)【国際公開番号】W WO2023022573
(87)【国際公開日】2023-02-23
(31)【優先権主張番号】10-2021-0109732
(32)【優先日】2021-08-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521065355
【氏名又は名称】エルジー エナジー ソリューション リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100188558
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(72)【発明者】
【氏名】ソ-ミ・ジョン
(72)【発明者】
【氏名】ミン-ジ・キム
(72)【発明者】
【氏名】ウォン-シク・ペ
(72)【発明者】
【氏名】ヨ-ジュ・ユン
(72)【発明者】
【氏名】ソ-ヨン・イ
【テーマコード(参考)】
5E078
5H021
【Fターム(参考)】
5E078AA09
5E078AB01
5E078CA02
5E078CA06
5E078CA07
5E078DA19
5H021CC04
5H021EE04
5H021EE22
5H021EE23
5H021EE32
5H021EE34
5H021HH00
5H021HH01
5H021HH03
5H021HH05
(57)【要約】
本発明は、電気化学素子用分離膜であって、前記分離膜は、多孔性基材、及び前記基材の少なくとも一側面に形成された多孔性コーティング層を含み、前記多孔性コーティング層は、バインダー樹脂、無機物粒子及びイオン性分散剤を含み、前記無機物粒子は、3以下のモース硬度(mohs)及び3g/cm以下の密度を有する板状の粒子aを含み、前記板状の粒子aはカオリン(Kaolin)を含むことを特徴とする、電気化学素子用分離膜を提供する。本発明に係る電気化学素子用分離膜は、薄型化及び軽量化を達成するとともに、熱収縮特性を改善し、圧力による分離膜の損傷を防止することができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気化学素子用分離膜であって
前記分離膜は、多孔性基材、及び前記基材の少なくとも一側面に形成された多孔性コーティング層を含み、
前記多孔性コーティング層は、バインダー樹脂、無機物粒子及びイオン性分散剤を含み、
前記無機物粒子は、3以下のモース硬度(mohs)及び3g/cm以下の密度を有する板状の粒子aを含み、
前記板状の粒子aはカオリン(Kaolin)を含むことを特徴とする、電気化学素子用分離膜。
【請求項2】
前記イオン性分散剤がアニオン性界面活性剤であることを特徴とする、請求項1に記載の電気化学素子用分離膜。
【請求項3】
前記イオン性分散剤がアンモニウムポリメタクリレート(Ammonium polymethacrylate)、アンモニウムポリアクリレート(Ammonium polyacrylate)、ナトリウムポリメタクリレート(Sodium polymethacrylate)、又はナトリウムポリアクリレート(Sodium polyacrylate)であることを特徴とする、請求項1に記載の電気化学素子用分離膜。
【請求項4】
前記カオリンが表面に水酸基を含んでいることを特徴とする、請求項1に記載の電気化学素子用分離膜。
【請求項5】
前記カオリンが無機物粒子100重量%に対して50重量%以上であることを特徴とする、請求項1に記載の電気化学素子用分離膜。
【請求項6】
前記イオン性分散剤が無機物粒子100重量%に対して0.3重量%~5重量%含まれることを特徴とする、請求項1に記載の電気化学素子用分離膜。
【請求項7】
前記板状の粒子aのアスペクト比が5~30であり、
前記アスペクト比が[長軸方向の長さ]/[長軸方向に直交する方向の幅]で定義される、請求項1に記載の電気化学素子用分離膜。
【請求項8】
前記板状の粒子の密度に対する前記多孔性コーティング層のパッキング密度の比率が0.45~0.8であり、
前記パッキング密度が前記多孔性コーティング層の単位体積当たりの重量で定義される、請求項1に記載の電気化学素子用分離膜。
【請求項9】
正極、負極、及び前記正極と前記負極との間に介在した分離膜を含む電気化学素子において、前記分離膜が請求項1~8のいずれか一項に記載の分離膜である、電気化学素子。
【請求項10】
前記電気化学素子がリチウム二次電池である、請求項9に記載の電気化学素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2021年8月19日に出願された韓国特許出願第10-2021-0109732号に基づく優先権を主張する。
【0002】
本発明は、電気化学素子用分離膜及びそれを含む電気化学素子に関する。
【背景技術】
【0003】
最近、エネルギー貯蔵技術への関心が益々高まっている。携帯電話、カムコーダ、ノートパソコン、さらには電気自動車のエネルギーまで適用分野が拡大するにつれて、電気化学素子の研究及び開発に向けた努力が次第に具体化されている。電気化学素子は、このような観点で最も注目されている分野であり、その中でも充放電が可能な二次電池の開発と高いエネルギー密度を有するリチウム二次電池は、関心の焦点となっている。最近では、このような二次電池を開発する上で安全性の確保に大きく注目している。
【0004】
現在生産中のリチウム二次電池では、正極と負極の短絡を防止するために、分離膜の基材としてポリオレフィン系高分子樹脂を用いた多孔性基材が使用されている。しかし、前記多孔性基材は、高温で収縮又は溶融して耐熱性が低いという問題がある。よって、内部/外部の刺激によって電池が高温に上昇する場合、分離膜の収縮や溶融などにより正極と負極とが互いに接触して短絡する可能性が高くなり、これにより電気エネルギーが急激に放出されて電池の爆発、発火がもたらされる。
【0005】
したがって、上述した問題点を解決するために、多孔性高分子基材の少なくとも一面に、無機物粒子とバインダー高分子とが混合されている多孔性コーティング層を形成して耐熱性を向上させる方法が広く用いられている。
【0006】
無機物粒子としては、主にアルミナ、ベーマイトなどの金属酸化物又は金属水酸化物が広く用いられているが、これらの無機物粒子は、電池の組立工程中に加わる圧力によって無機物粒子が多孔性基材を押して圧縮されながら多孔性基材の気孔構造が損傷するおそれがある。特に、無機物粒子の硬度が高い場合、多孔性基材の局所的な押圧による損傷が大きくなるおそれがある。このため、圧力による分離膜の損傷を防止する必要がある。
【0007】
また、分離膜として通常用いられるポリオレフィン系多孔性高分子基材は、材料的特性と延伸を含む製造工程上の特性により、150℃以上の温度で極度の熱収縮挙動を示すことにより、正極と負極間の短絡を引き起こす。このため、高温で分離膜が収縮することを防止する必要がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
そこで、本発明は、薄型化及び軽量化を達成するとともに、熱収縮特性を改善し、圧力による分離膜の損傷を防止することが可能な電気化学素子用分離膜及びそれを備えた電気化学素子を提供することを目的とする。本発明の他の目的及び利点は、特許請求の範囲に記載されている手段又は方法、及びこれらの組み合わせによって実現できることを容易に理解することができるだろう。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、下記の電気化学素子用分離膜及びそれを備えた電気化学素子によって、上記の課題を解決することができることを見出した。
【0010】
第1実施形態は、
電気化学素子用分離膜であって
前記分離膜は、多孔性基材、及び前記基材の少なくとも一側面に形成された多孔性コーティング層を含み、
前記多孔性コーティング層は、バインダー樹脂、無機物粒子及びイオン性分散剤を含み、
前記無機物粒子は、3以下のモース硬度(mohs)及び3g/cm以下の密度を有する板状の粒子aを含み、
前記板状の粒子aはカオリン(Kaolin)を含むことを特徴とする、電気化学素子用分離膜に関する。
【0011】
第2実施形態は、第1実施形態において、
前記イオン性分散剤がアニオン性界面活性剤であることを特徴とする、電気化学素子用分離膜に関する。
【0012】
第3実施形態は、第1実施形態において、
前記イオン性分散剤が、アンモニウムポリメタクリレート(Ammonium polymethacrylate)、アンモニウムポリアクリレート(Ammonium polyacrylate)、ナトリウムポリメタクリレート(Sodium polymethacrylate)、又はナトリウムポリアクリレート(Sodium polyacrylate)であることを特徴とする、電気化学素子用分離膜に関する。
【0013】
第4実施形態は、第1実施形態~第3実施形態において、
前記カオリンが表面に水酸基を含んでいることを特徴とする、電気化学素子用分離膜に関する。
【0014】
第5実施形態は、第1実施形態~第4実施形態のいずれか一つにおいて、
前記カオリンが無機物粒子100重量%に対して50重量%以上であることを特徴とする、電気化学素子用分離膜に関する。
【0015】
第6実施形態は、第1実施形態~第5実施形態のいずれか一つにおいて、
前記イオン性分散剤が無機物粒子100重量%に対して0.3重量%~5重量%含まれることを特徴とする、電気化学素子用分離膜に関する。
【0016】
第7実施形態は、第1実施形態~第5実施形態のいずれか一つにおいて、
前記板状の粒子aのアスペクト比が5~30であり、
前記アスペクト比が[長軸方向の長さ]/[長軸方向に直交する方向の幅]で定義される分離膜に関する。
【0017】
第8実施形態は、第1実施形態~第5実施形態のいずれか一つにおいて、
前記板状粒子の密度に対する前記多孔性コーティング層のパッキング密度の比率が0.45~0.8であり、
前記パッキング密度が前記多孔性コーティング層の単位体積当たりの重量で定義される、分離膜に関する。
【0018】
第9実施形態は、正極、負極、及び前記正極と前記負極との間に介在した分離膜を含む電気化学素子において、前記分離膜が第1実施形態~第8実施形態のいずれか一つに記載の分離膜である、電気化学素子に関する。
【0019】
第10実施形態は、第9実施形態において、
前記電気化学素子がリチウム二次電池である、電気化学素子に関する。
【発明の効果】
【0020】
本発明に係る電気化学素子用分離膜は、高温の熱による収縮を抑制して、向上した耐熱収縮率を示すことができる。また、電池の組立工程中に加わる圧力による変形を抑制して、向上した耐圧縮性を示すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
本明細書に添付される図面は、本発明の好適な実施形態を例示したものであり、前述した発明の内容と共に本発明の技術思想をより良く理解させる役割を果たすものであるため、本発明は、それらの図面に記載されている事項のみに限定されて解釈されるものではない。一方、本明細書に収録された図面における要素の形状、サイズ、縮尺又は比率などは、より明確な説明を強調するために誇張されることがある。
【0022】
図1】本発明の一実施形態に係る分離膜において、板状の粒子であるカオリン1とイオン性分散剤2が使用された場合の作用メカニズムを示す模式図である。
図2】実施例1の分離膜の断面のSEM画像である。
図3】比較例1の分離膜の断面のSEM画像である。
図4】比較例3の分離膜の断面のSEM画像である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明を詳細に説明する。本明細書及び請求の範囲で使用された用語又は単語は、通常的且つ辞書的な意味に限定されて解釈されてはならず、発明者はその発明を最善の方法で説明するために用語の概念を適切に定義することができるという原則に即して、本発明の技術的思想に合致する意味と概念で解釈されなければならない。
【0024】
本明細書全体において、ある部分がある構成要素を「含む」とすると、これは、特に反対の記載がない限り、他の構成要素を排除するのではなく、他の構成要素をさらに含むことができることを意味する。
【0025】
また、本明細書全体において使用される用語「約」又は「略」は、言及された意味に固有の製造及び物質許容誤差が提示されるとき、その数値で又はその数値に近い意味として使用され、本明細書の理解を助けるために正確又は絶対的な数値が言及された開示内容を非良心的な侵害者が不当に利用することを防止するために使用される。
【0026】
本明細書全体において、「A及び/又はB」の記載は、「A又はB又はこれらの両方とも」を意味する。
【0027】
本発明は、電気化学素子用分離膜に関する。
【0028】
本発明において、前記電気化学素子は、電気化学反応によって化学エネルギーを電気エネルギーに変換する装置であって、電気化学反応を行う全ての素子を含み、具体的な例を挙げると、あらゆる種類の一次電池、二次電池、燃料電池、太陽電池、又はスーパーキャパシタ素子などのキャパシタ(capacitor)などがある。特に、前記二次電池のうち、リチウム金属二次電池、リチウムイオン二次電池、リチウムポリマー二次電池又はリチウムイオンポリマー二次電池などを含むリチウム二次電池が好ましい。
【0029】
本発明において、分離膜は、多孔性基材と、前記基材の少なくとも一側面に形成された多孔性コーティング層と、を含むことができる。
【0030】
前記多孔性基材とは、負極と正極との電気的接触を遮断しながらイオンを通過させるイオン伝導性バリア(porous ion-conducting barrier)であって、内部に複数の気孔が形成された基材を意味する。これらの気孔は、相互連結された構造を持っており、基材の一方の面から他方の面へと気体又は液体が通過可能である。このような多孔性基材としては、シャットダウン(shut down)機能を付与するという観点から、熱可塑性樹脂を含む多孔性高分子フィルムが使用できる。ここで、シャットダウン機能とは、電池温度が高くなった場合に、熱可塑性樹脂が溶解して多孔性基材の孔を閉鎖することによりイオンの移動を遮断して、電池の熱暴走を防止する機能をいう。前記熱可塑性樹脂への非制限的な例としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブチレン、ポリペンテンなどのポリオレフィン樹脂が挙げられる。一方、前記熱可塑性樹脂は、シャットダウン機能の観点から、融点が200℃未満であることが好ましい。
【0031】
前記多孔性基材の厚さは、特に制限されないが、詳細には1~100μm、さらに詳細には5~50μm、又は5~30μmであり、多孔性基材に存在する気孔もやはり特に制限されないが、10~95%又は35~65%であることが好ましい。
【0032】
前記多孔性コーティング層は、前記基材の少なくとも一側面に形成されるものであって、バインダー樹脂、無機物粒子及びイオン性分散剤を含むことができる。
【0033】
本発明において、多孔性コーティング層は、前記無機物粒子が充填されて互いに接触した状態で前記バインダー樹脂によって互いに結着され、これにより、無機物粒子同士の間にインタースティシャルボリューム(interstitial volumes)が形成され、前記無機物粒子同士の間のインタースティシャルボリュームは、空きスペースとなり、気孔を形成する構造を備えることができる。また、本発明において、具体的には、前記多孔性コーティング層中の無機物粒子:バインダー樹脂の重量比は、97:3~55:45であってもよい。
【0034】
本発明において、前記バインダー樹脂は、無機物粒子間の結着力、及び多孔性コーティング層と電極との結着力を提供することができるものであれば、特に限定されるものではない。例えば、バインダー樹脂は、ポリビニリデンフルオリド-ヘキサフルオロプロピレン(polyvinylidene fluoride-co-hexafluoro propylene、PVDF-co-HFP)、ポリビニリデンフルオリド-トリクロロエチレン(polyvinylidene fluoride-co-trichloro ethylene)、ポリビニリデンフルオリド-クロロトリフルオロエチレン(polyvinylidene fluoride-co-chlorotrifluoro ethylene)、ポリ(メチル)メタクリレート、ポリエチル(メタ)アクリレート、ポリn-プロピル(メタ)アクリレート、ポリイソプロピル(メタ)アクリレート、ポリn-ブチル(メタ)アクリレート、ポリt-ブチル(メタ)アクリレート、ポリsec-ブチル(メタ)アクリレート、ポリペンチル(メタ)アクリレート、ポリ2-エチルブチルポリ(メタ)アクリレート、ポリ2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ポリn-オクチル(メタ)アクリレート、ポリイソオクチル(メタ)アクリレート、ポリイソノニル(メタ)アクリレート、ポリラウリル(メタ)アクリレート、ポリテトラデシル(メタ)アクリレート、ポリN-ビニルピロリジノン、ポリアクリロニトリル(polyacrylonitrile)、ポリビニルアセテート(polyvinylacetate)、ポリエチレン-コ-ビニルアセテート(polyethylene-co-vinyl acetate)、ポリエチレンオキシド(polyethylene oxide)、セルロースアセテート(cellulose acetate)、セルロースアセテートブチレート(cellulose acetate butyrate)、セルロースアセテートプロピオネート(cellulose acetate propionate)、シアノエチルプルラン(cyanoethylpullulan)、シアノエチルポリビニルアルコール(cyanoethylpolyvinylalcohol)、シアノエチルセルロース(cyanoethylcellulose)、シアノエチルスクロース(cyanoethylsucrose)、プルラン(pullulan)、カルボキシルメチルセルロース(carboxyl methyl cellulose)、アクリロニトリル-スチレン-ブタジエン共重合体(acrylonitrile-styrene-butadiene copolymer)及びポリイミド(polyimide)よりなる群から選択された1種又は2種以上の混合物であり得る。
【0035】
また、バインダー樹脂は、粒子状バインダー高分子樹脂であってもよい。例えば、アクリル系共重合体、スチレンブタジエンゴム、又はこれらの2種以上の混合物であってもよく、前記アクリル系共重合体は、エチルヘキシルアクリレート(ethylhexyl acrylate)とメチルメタクリレート(methyl methacrylate)の共重合体、ポリメチルメタクリレート(polymethylmethacrylate)、ポリエチルヘキシルアクリレート(polyethylhexyl acrylate)、ポリブチルアクリレート(polybutylacrylate)、ポリアクリロニトリル(polyacrlonitrile)、ブチルアクリレートとメチルメタクリレートの共重合体、又はこれらの2種以上の混合物を含むことができる。
【0036】
本発明において、前記無機物粒子は、板状の粒子aを含むことができる。
【0037】
本発明の一実施形態によれば、板状の粒子aは、モース硬度(mohs)が約3以下、密度が約3g/cm以下であり、好ましくはモース硬度が約2.3~2.7、密度は約2.5~2.8g/cmである。前記提示されたモース硬度及び密度を有する板状の粒子aを含むことにより、従来の分離膜よりも軽くて薄い厚さで分離膜を形成することができ、高いパッキング密度を示して優れた耐熱安全性を示すことができる。また、電池の組立工程中に加わる圧力によって分離膜の変形が緩和して優れた耐圧縮性を示すことができる。
【0038】
上記において、板状の粒子aのアスペクト比は、5~100、好ましくは5~30であり、前記アスペクト比は、[長軸方向の長さ]/[長軸方向に直交する方向の幅]で定義される。上記の範囲より大きいアスペクト比を有する場合、リチウムイオンが移動する経路が長くなり、分離膜の抵抗を増加させることができる。また、板状の粒子aは、多孔性コーティング層に平行な方向(面方向)に配列又は積層されてもよい。
【0039】
本発明の一実施形態によれば、前記板状の粒子aはカオリン(kaolin)を含むことができる。
【0040】
カオリンは、Al・2SiO・2HOの化学組成で表され、一般カオリン、メタカオリン(Meta kaolin)、焼成カオリン(Calcined kaolin)が存在する。本明細書におけるカオリンは、表面に水酸基(-OH基)を含んでいる一般カオリンを意味する。
【0041】
前記メタカオリンは、約500℃以上の温度で焼成して表面の水酸基をほぼ除去したものであり、前記焼成カオリンは、約900℃以上の温度で焼成して表面の水酸基を完全に除去したものであるが、本発明では、表面に水酸基を含んでいるカオリンが好ましく、メタカオリン及び/又は焼成カオリンは好ましくない。
【0042】
特に、本発明では、板状の一般カオリンと後述のイオン性分散剤との組み合わせによって高温の熱による収縮を抑制し、圧力による変形を抑制することができるという効果が現れる。これは、表面に水酸基(-OH基)が存在するカオリンとイオン性分散剤が共に使用されると、板状のカオリンが面方向に配列されるので、圧力が加わっても、カオリンによる多孔性基材の損傷が現れなくなる。
【0043】
しかし、高温で焼成段階を経たメタカオリンや焼成カオリンをイオン性分散剤と共に使用する場合には、粒子の電荷(charge)特性が変わってメタカオリン又は焼成カオリンが面方向に配列できないので、本発明において目的とする効果が現れなくなる。また、当業分野における通常使用される無機物粒子としてアルミナ、ベーマイトなどの金属酸化物を使用しても、電池の組立工程中に加わる圧力によって無機物粒子が多孔性基材を押して圧縮されながら多孔性基材の気孔構造が損傷したり、圧力によって分離膜が変形したりするので、本発明において目的とする効果が現れなくなる。
【0044】
また、本発明に一般カオリンと後述のイオン性分散剤を共に使用する場合、多孔性コーティング層において高いパッキング密度(Packing Density)を示すことができる。特に、本発明において、密度が約3g/cm以下、好ましくは密度が約2.5~2.8g/cmの板状の粒子であるカオリンを含みながらも、約1.1~1.5g/cm又は約1.1~1.3g/cmのパッキング密度を示すことができる。本発明において、パッキング密度は、多孔性コーティング層の単位体積当たりの重量で計算することができる。
【0045】
本発明において、高温の熱による収縮抑制と圧力による変形抑制効果は、板状の粒子の面方向配列程度によって決定できる。前記板状の粒子の面方向配列程度は、板状の粒子の密度に対する多孔性コーティング層のパッキング密度の比率([パッキング密度]/[密度])に比例して増加する傾向がある。一般に密度の大きい粒子を多孔性コーティング層に含む場合、大きな密度によりパッキング密度も高く現れる傾向がある。よって、多孔性コーティング層のパッキング密度のみで板状の粒子が面方向に配列されたと判断することはできず、前記板状の粒子固有の密度が考慮されるべきである。本発明では、相対的に小さい密度を有する粒子であるカオリン粒子を含みながらも、カオリン粒子が面方向に配列されて高いパッキング密度を示すことができる。このような場合、[パッキング密度]/[密度]は、0.45~0.80であってもよく、好ましくは0.46以上であってもよい。これにより、従来の分離膜よりも軽くて薄い厚さで分離膜を形成することができ、高いパッキング密度を示して優れた耐熱安全性を示すことができる。板状の粒子が前述のアスペクト比の範囲を超えるアスペクト比を有する場合、上記の範囲よりも大きい[パッキング密度]/[密度]の比率を有してもよく、このときは、リチウムイオンが移動する経路が長くなって分離膜の抵抗を増加させることができる。
【0046】
本発明の一実施形態によれば、前記板状の粒子aは、分離膜の耐熱特性を向上させるために、無機物粒子100重量%に対して30重量%以上又は50重量%以上含まれてもよい。
【0047】
本発明において、前記無機物粒子は粒子a以外の粒子を含むことができ、粒子a以外の無機物粒子は電気化学的に安定であれば特に限定されない。例えば、粒子a以外の無機物粒子は、適用される電気化学素子の作動電圧範囲(例えば、Li/Li+基準で0~5V)で酸化及び/又は還元反応が起こらないものであれば特に限定されず、非制限的な例としては、ZrO、BaTiO、Pb(Zr,Ti)O(PZT)、Pb1-xLaZr1-yTi(PLZT)、PB(MgNb2/3)O-PbTiO(PMN-PT)、ハフニア(HfO)、SrTiO、SnO、CeO、MgO、NiO、CaO、ZnO、ZrO、Y、Al、TiO2、AlOOH、Al(OH)、SiC、又はこれらの混合物などがある。一方、これに加えて、リチウムホスフェート(LiPO)、リチウムチタンホスフェート(LiTi(PO、0<x<2、0<y<3)、リチウムアルミニウムチタンホスフェート(LiAlTi(PO、0<x<2、0<y<1、0<z<3)、(LiAlTiP)系ガラス(glass)(0<x<4、0<y<13)、リチウムランタンチタネート(LiLaTiO、0<x<2、0<y<3)、リチウムゲルマニウムチオホスフェート(LiGe、0<x<4、0<y<1、0<z<1、0<w<5)、リチウムナイトライド(Li、0<x<4、0<y<2)、SiS系ガラス(LiSi、0<x<3、0<y<2、0<z<4)、P系ガラス(Li×、0<x<3、0<y<3、0<z<7)、又はこれらの2種以上の無機物粒子をさらに含むことができる
【0048】
本発明の一実施形態によれば、前記イオン性分散剤は、無機物粒子を分散させて多孔性コーティング層の形成時に固形分が凝集する現象を防ぐために投入される。特に、本発明では、分散剤としてイオン性分散剤を用いることにより、多孔性コーティング層に含まれる板状の粒子aを面方向に配列できる。これにより、高温の熱による収縮を抑制し、圧力による変形を抑制することができるという効果を示すことができる。本発明における面方向配列は、板状の粒子aの広い面を多孔性基材の面と略平行な方向に配列することを意味する。
【0049】
本発明において、イオン性分散剤は、板状の粒子aを面方向に配列させることができるものであれば、制限されずに使用できる。
【0050】
本発明において、板状の粒子aがカオリンを含む場合、前記イオン性分散剤は、アニオン性界面活性剤を使用することができる。
【0051】
図1は、板状の粒子であるカオリン1とイオン性分散剤2が使用された場合の作用メカニズムを示す模式図である。例えば、イオン性分散剤としてアニオン性界面活性剤が使用された場合の作用メカニズムについて説明する。
【0052】
カオリンの表面部分はほぼ負電荷(δ)を示し、エッジ(edge)部分はほぼ正電荷(δ)を示す。このため、アニオン界面活性剤がない場合、カオリンの表面の負電荷とエッジ部分の正電荷とが相互作用(interaction)するため、面方向に配列することができない。しかし、カオリンとアニオン界面活性剤を共に使用する場合には、アニオン界面活性剤がカオリンエッジ部分の正電荷と相互作用することにより、アニオン界面活性剤がカオリンの表面のエッジに吸着される。これにより、カオリンの表面の全体負電荷が増加し、カオリンの表面の負電荷とエッジ部分の正電荷とが相互作用することが抑制されるので、カオリンは面方向に配列される。
【0053】
板状の粒子である一般カオリンは、メタカオリンや焼成カオリンなどの他のカオリン、又は水酸化アルミニウムや水酸化マグネシウムなどの他の板状の金属水酸化物に比べて表面とエッジ部分の電荷差が大きいため、イオン性分散剤の使用の際に相対的に優れた面方向配列を示すことができる。これは、相対的にさらに高い[パッキング密度]/[密度]の比率で表すことができる。
【0054】
前記アニオン性界面活性剤は、イオン性又はイオン化可能な基としてアニオン性官能基を含む界面活性剤を意味する。例えば、アニオン性界面活性剤に含まれるアニオン性官能基は、-CO 、PO 3-、-SO 、-OSO 、-HPO 、-PO 2-、-HPO 、-PO 2-、-PO、又はこれらの2種以上の組み合わせを含むことができる。
【0055】
本発明の一実施形態において、このようなアニオン性界面活性剤としては、前記アニオン性官能基を含む金属塩を少なくとも1種含むことができる。前記金属塩としては、ナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩、マグネシウム塩などが挙げられ、これらのうちの1種以上を含むものであってもよい。しかし、これに特に限定されるものではない。例えば、前記アニオン性界面活性剤は、カルボン酸のナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩、マグネシウム塩、又はこれらの2種以上の組み合わせを含むことができる。その具体例としては、アンモニウムポリメタクリレート(Ammonium polymethacrylate)、アンモニウムポリアクリレート(Ammonium polyacrylate)、ナトリウムポリメタクリレート(Sodium polymethacrylate)、ナトリウムポリアクリレート(Sodium polyacrylate)などを挙げることができ、これらの2種以上を含むことができる。しかし、特にこれに限定されない。
【0056】
前記イオン性分散剤は、板状の粒子aの面方向配列のために、無機物粒子100重量%に対して0.3重量%~5重量%、又は0.5重量%~3重量%含まれてもよい。
【0057】
一方、本発明において、分離膜は、多孔性コーティング層の成分として、上述したバインダー樹脂、無機物粒子及びイオン性分散剤の他に、必要に応じて、難燃剤などのその他の添加剤をさらに含んでもよい。
【0058】
本発明の一実施形態に係る分離膜は、無機物粒子、バインダー樹脂及びイオン性分散剤を含む多孔性コーティング層形成用組成物を準備し、前記組成物を多孔性基材の少なくとも一面上に塗布し、これを乾燥させることにより製造できる。
【0059】
まず、多孔性コーティング層形成用組成物は、バインダー樹脂を溶媒に溶解させた高分子溶液を製造した後、前記高分子溶液に無機物粒子を添加し、これを分散させて製造することができる。前記無機物粒子は、予め所定の平均粒径を有するように破砕された状態で添加することができ、或いは、溶媒に無機物粒子を添加した後、無機物粒子をボールミル法等を用いて所定の粒径を有するように制御しながら破砕及び分散させて分散液を製造することができる。一方、本発明の一実施形態において、さらに、前記分散液中の溶媒を除いた固形分の濃度は、20wt%~70wt%の範囲で制御されることが好ましい。
【0060】
このとき、使用される溶媒の非制限的な例としては、アセトン、テトラヒドロフラン、塩化メチレン、クロロホルム、ジメチルホルムアミド、N-メチル-2-ピロリドン、メチルエチルケトン、シクロヘキサン、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、プロパノール及び水の中から選択された1種の化合物又は2種以上の混合物があり得る。
【0061】
前記多孔性コーティング層形成用組成物を前記多孔性基材にコーティングする方法は、特に限定されないが、スロットコーティング又はディップコーティング方法を用いることが好ましい。スロットコーティングは、スロットダイを介して供給された組成物が基材の前面に塗布される方式で、定量ポンプから供給される流量に応じてコーティング層の厚さの調節が可能である。また、ディップコーティングは、組成物入りのタンクに基材を浸漬してコーティングする方法であって、組成物の濃度及び組成物タンクから基材を取り出す速度に応じてコーティング層の厚さの調節が可能であり、より正確なコーティング厚さの制御のために浸漬後にメイヤーバーなどを介して後計量することができる。
【0062】
このように多孔性コーティング層形成用組成物がコーティングされた多孔性基材をオーブンなどの乾燥機を用いて乾燥させることにより、多孔性基材の表面に無機コーティング層を形成する。前記多孔性コーティング層は、多孔性基材の少なくとも一側面に形成されてもよく、両側面に形成されてもよい。
【0063】
本発明による分離膜の厚さは、特に制限されないが、5~50μm以下の範囲であってもよく、好ましくは5~20μm、又は10~16μmの範囲で向上した絶縁性及び耐熱安定性を示すことができる。
【0064】
本発明に係る電気化学素子は、正極、負極、及び前記正極と負極との間に介在した分離膜を含み、前記分離膜は、上述した本発明の一実施形態による分離膜である。
【0065】
本発明の分離膜と共に適用される電極としては、特に制限されず、当技術分野における公知の通常の方法に従って電極活物質を電極電流集電体に結着された形態で製造することができる。
【0066】
前記電極活物質のうち、正極活物質の非制限的な例としては、従来のリチウム二次電池の正極に使用できる通常の正極活物質が使用でき、特にリチウムマンガン酸化物、リチウムコバルト酸化物、リチウムニッケル酸化物、リチウム鉄酸化物、又はこれらを組み合わせたリチウム複合酸化物が使用されることが好ましい。
【0067】
負極活物質の非制限的な例としては、従来のリチウム二次電池の負極に使用できる通常の負極活物質が使用可能であり、特にリチウム金属又はリチウム合金、炭素、石油コーク(petroleum coke)、活性化炭素(activated carbon)、グラファイト(graphite)、又はその他の炭素類などのリチウム吸着物質などが好ましい。
【0068】
正極電流集電体の非制限的な例としては、アルミニウム、ニッケル又はこれらの組み合わせによって製造される箔などがあり、負極電流集電体の非制限的な例としては、銅、金、ニッケルもしくは銅合金、又はこれらの組み合わせによって製造される箔などがある。
【0069】
本発明の電気化学素子において使用できる電解液は、Aのような構造の塩であって、Aは、Li、Na、Kなどのアルカリ金属カチオン又はこれらの組み合わせからなるイオンを含み、Bは、PF 、BF 、Cl、Br、I、ClO 、AsF 、CHCO 、CFSO 、N(CFSO 、(CFSO などのアニオン、又はこれらの組み合わせからなるイオンを含む塩が、プロピレンカーボネート(PC)、エチレンカーボネート(EC)、ジエチルカーボネート(DEC)、ジメチルカーボネート(DMC)、ジプロピルカーボネート(DPC)、ジメチルスルホキシド、アセトニトリル、ジメトキシエタン、ジエトキシエタン、テトラヒドロフラン、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)、エチルメチルカーボネート(EMC)、ガンマブチロラクトン(γ-ブチロラクトン)又はこれらの混合物からなる有機溶媒に溶解又は解離したものがあるが、これに限定されない。
【0070】
前記電解液の注入は、最終製品の製造工程及び要求物性に応じて、電池製造工程中の適切な段階で行われることができる。すなわち、電池組立前又は電池組立最終段階などで適用できる。
【0071】
また、本発明は、電極組立体を含む電池を単位電池として含む電池モジュール、前記電池モジュールを含む電池パック、及び前記電池パックを電源として含むデバイスを提供する。前記デバイスの具体例としては、電気的モータによって動力を受けて動くパワーツール(power tool);電気自動車(Electric Vehicle、EV)、ハイブリッド電気自動車(Hybrid Electric Vehicle、HEV)、プラグインハイブリッド電気自動車(Plug-in Hybrid Electric Vehicle、PHEV)などを含む電気車;電気自転車(E-bike)、電気スクーター(E-scooter)を含む電気二輪車;電気ゴルフカート(electric golf cart);電力貯蔵用システム;などが挙げられるが、これに限定されるものではない。
【0072】
以下、本発明を具体的に説明するために実施例を挙げて詳細に説明する。しかし、本発明による実施例は、様々な他の形態に変形することができ、本発明の範囲は以下で説明する実施形態に限定されるものと解釈されてはならない。本発明の実施例は、当技術分野における通常の知識を有する者に本発明をより完全に説明するために提供されるものである。
【実施例
【0073】
下記の方法によって各実施例及び比較例の分離膜を製造した。
【0074】
実施例1
1)ポリエチレン多孔性フィルム(厚さ9μm、空隙率(Porosity)45%)を多孔性高分子基材として用意した。
【0075】
2)次に、板状のカオリン20g(アスペクト比20)、イオン性分散剤(アンモニウムポリアクリレート、ammonium polyacrylate)0.3g、0.5mmのジルコニアビーズ(zirconia bead)20gを、水:エタノールを95:5で混合した溶媒30gに入れ、ペイントシェーカーで2時間撹拌して無機物分散液を製造した。
【0076】
3)次に、前記無機物分散液に40%固形分のアクリル系バインダー(JSR社製、TRD202A)1g及び40%で水分散したアクリル系粒子型バインダー(アペックAP-0821、粒子径350nm)10gを入れ、振盪してコーティングスラリーを製造した。
【0077】
4)前記コーティングスラリーを200メッシュでフィルタリングし、バーコーター(bar coater)を用いてポリエチレン多孔性フィルムの一面にコーティングした後、乾燥機で乾燥させた。コーティング反対面にも同様の条件でもう一度コーティングして両面コーティング分離膜を製造した。
【0078】
これによる結果を表2に示す。
【0079】
実施例2及び比較例1~4
【0080】
下記表1に記載されているように無機物及び分散剤の種類を異ならせた以外は、実施例1と同様の方法で分離膜を製造した。これによる結果を表2に示す。
【0081】
【表1】
【0082】
【表2】
【0083】
表2から分かるように、実施例1及び2と比較例1~4を比較すると、製造された分離膜の厚さは、同等又は類似であったが、実施例1及び2に比べて、比較例1~4は圧力による変形が大きく発生するので、圧縮後の分離膜の厚さと製造された分離膜の厚さとの差が大きいことを確認することができた。
【0084】
また、実施例1及び2は、比較例1~3に比べて高いパッキング密度を示すことを確認することができる。ちなみに、比較例4の場合、実施例1に比べて高いパッキング密度を示すが、密度の大きいアルミナ粒子によって高いパッキング密度を示すもので、[パッキング密度]/[密度]の比率が相対的に低いことを確認することができた。
【0085】
また、圧縮前に分離膜の通気度を測定すると、むしろ実施例1及び2がさらに大きい通気度を示したが、圧縮後は、比較例1~4が実施例に比べてさらに大きい通気度を示すので、比較例1~4は、圧縮によって通気度が低下することを確認することができた。
【0086】
また、実施例1及び2は、比較例1~4に比べて製造された分離膜のMD方向及びTD方向に対する熱収縮率が小さいことを確認することができた。
【0087】
分離膜の物性評価
実施例及び比較例で製造された分離膜の物性評価は、以下の方法で行った。
【0088】
(1)厚さ
分離膜の厚さは、厚さ測定器(ミツトヨ社製、VL-50S-B)を用いて測定した。
【0089】
(2)通気度の測定
JIS P-8117に従って、ガーレー(Gurley)式の空気透過度計を用いて測定した。このとき、直径28.6mm、面積645mmを空気100ccが通過する時間を測定した。
【0090】
(3)熱収縮率の評価方法
5×5cmに切断した分離膜を135℃のコンベクションオーブン(Convection oven)で30分間保管した後、MD方向及びTD方向に対して変化した長さをそれぞれ測定した。
熱収縮率(%)={(収縮前の寸法-収縮後の寸法)/収縮前の寸法}×100
【0091】
(4)圧縮分離膜のサンプル製作
5×5cmに切断した分離膜の上/下部に、10×10cmに切断した離型PETを積層した。このとき、離型PETの離型面が分離膜に接触するようにした。PETと積層した分離膜を温度70℃、圧力5MPaの条件で10秒間ホットプレス(Hot press)して圧縮分離膜のサンプルを製作した。
図1
図2
図3
図4
【国際調査報告】