IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ユニバーシティ オブ ワイオミングの特許一覧 ▶ ピリ テクノロジーズ, エルエルシーの特許一覧

特表2023-551536石油回収増進のための方法および配合物
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-12-08
(54)【発明の名称】石油回収増進のための方法および配合物
(51)【国際特許分類】
   C09K 8/60 20060101AFI20231201BHJP
   C09K 23/18 20220101ALI20231201BHJP
   C09K 23/52 20220101ALI20231201BHJP
   C09K 23/42 20220101ALI20231201BHJP
【FI】
C09K8/60
C09K23/18
C09K23/52
C09K23/42
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023533231
(86)(22)【出願日】2021-11-30
(85)【翻訳文提出日】2023-07-31
(86)【国際出願番号】 US2021061208
(87)【国際公開番号】W WO2022115786
(87)【国際公開日】2022-06-02
(31)【優先権主張番号】63/119,429
(32)【優先日】2020-11-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】63/121,460
(32)【優先日】2020-12-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】518088978
【氏名又は名称】ユニバーシティ オブ ワイオミング
(71)【出願人】
【識別番号】523200516
【氏名又は名称】ピリ テクノロジーズ, エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】ピリ, モハマド
(72)【発明者】
【氏名】ラーハム, ユスラ
(72)【発明者】
【氏名】ゴール, ラミア
(72)【発明者】
【氏名】アルシャディ, マジアル
(72)【発明者】
【氏名】アクバラバディ, モルテザ
【テーマコード(参考)】
4D077
【Fターム(参考)】
4D077AA07
4D077AC01
4D077BA03
4D077BA14
4D077BA15
4D077DC02X
4D077DC02Y
4D077DC24X
4D077DC24Y
4D077DC42X
4D077DC42Y
4D077DD29X
4D077DD29Y
4D077DD32X
4D077DD32Y
4D077DE08X
4D077DE08Y
(57)【要約】
本開示の実施形態は、一般に、石油回収増進のための方法および配合物に関する。実施形態では、石油回収のための石油含有多孔質媒体を処理する方法は、石油含有多孔質媒体に本明細書に記載されている界面活性剤配合物を導入することを含む。方法は、例えば、湿潤性逆転または石油回収のために利用することができる。界面活性剤配合物も記載される。
【選択図】図11
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式:
を有する、界面活性剤A、
式:
(OCHCHOH (B)
を有する界面活性剤B、
またはそれらの組合せ
[式中、
、R、RおよびRの各々は、独立して、H、または1~40個の炭素原子を有するアルキル基であり、
は、1~40個の炭素原子を有するアルキル基であり、
nは、1~45であり、
Xは、ハライドである]
を含む、界面活性剤配合物。
【請求項2】
界面活性剤Aが存在する場合、R、RおよびRの各々が、メチルであり、Rが、4~20個の炭素原子を有するアルキル基であり、
界面活性剤Bが存在する場合、Rが、4~20個の炭素原子を有するアルキル基であるか、あるいは
それらの組合せである、
請求項1に記載の界面活性剤配合物。
【請求項3】
界面活性剤Aおよび界面活性剤Bが存在する、請求項2に記載の界面活性剤配合物。
【請求項4】
少なくとも1つの界面活性剤Aが存在し、
存在する各界面活性剤Aに関して、
が、独立して、4~18個の炭素原子を有する線状または分岐状アルキル基であり、
Xが、独立して、フルオリド、クロリド、ブロミドまたはヨージドである、
請求項2に記載の界面活性剤配合物。
【請求項5】
少なくとも1つの界面活性剤Aが存在し、
少なくとも1つの界面活性剤Aが、独立して、臭化トリメチルオクチルアンモニウム、塩化トリメチルオクチルアンモニウム、臭化ドデシルトリメチルアンモニウム、塩化ドデシルトリメチルアンモニウム、臭化セチルトリメチルアンモニウム、塩化セチルトリメチルアンモニウム、臭化トリメチルオクタデシルアンモニウムまたは塩化トリメチルオクタデシルアンモニウムである、
請求項2に記載の界面活性剤配合物。
【請求項6】
少なくとも1つの界面活性剤Bが存在し、
存在する各界面活性剤Bに関して、
が、独立して、4~15個の炭素原子を有する直鎖または分岐アルキル基であり、
nが、独立して、2.5~41である、
請求項2に記載の界面活性剤配合物。
【請求項7】
少なくとも1つの界面活性剤Bが存在し、
存在する各界面活性剤Bに関して
が、独立して、6~15個の炭素原子を有する直鎖または分岐アルキル基であり、
nが、独立して、1~20である、
請求項2に記載の界面活性剤配合物。
【請求項8】
少なくとも1つの界面活性剤Bが存在し、
存在する各界面活性剤Bに関して、
が、13個の炭素原子を有するアルキル基であり、nが、18である、
が、13個の炭素原子を有するアルキル基であり、nが、3、6、9、12または30である、
が、11個の炭素原子を有するアルキル基であり、nが、3、5、7または9である、
が、9~11個の炭素原子を有するアルキル基であり、nが、2.5、6または8である、または
が、12~14個の炭素原子を有するアルキル基であり、nが、5、9、15、20、31または41である、
請求項2に記載の界面活性剤配合物。
【請求項9】
少なくとも1つの界面活性剤Aが存在し、存在する各界面活性剤Aに関して、Rが、独立して、4~14個の炭素原子を有するアルキル基であり、Xが、独立して、ブロミドまたはクロリドであり、
少なくとも1つの界面活性剤Bが存在し、存在する各界面活性剤Bに関して、Rが、独立して、6~15個の炭素原子を有するアルキル基であり、nが、独立して、1~20である、
請求項2に記載の界面活性剤配合物。
【請求項10】
少なくとも1つの界面活性剤Aが存在し、各界面活性剤Aが、独立して、臭化セチルトリメチルアンモニウム、塩化トリメチルオクタデシルアンモニウム、塩化ドデシルトリメチルアンモニウムまたは臭化トリメチルオクチルアンモニウムであり、
少なくとも1つの界面活性剤Bが存在し、存在する各界面活性剤Bに関して、Rが、独立して、12~14個の炭素原子を有するアルキル基であり、nが、15である
請求項2に記載の界面活性剤配合物。
【請求項11】
少なくとも1つの界面活性剤Aが存在し、各界面活性剤Aが、独立して、臭化セチルトリメチルアンモニウム、塩化トリメチルオクタデシルアンモニウム、塩化ドデシルトリメチルアンモニウムまたは臭化トリメチルオクチルアンモニウムであり、
少なくとも1つの界面活性剤Bが存在し、存在する各界面活性剤Bに関して、Rが、独立して、9~11個の炭素原子を有するアルキル基であり、nが、8である
請求項2に記載の界面活性剤配合物。
【請求項12】
少なくとも1つの界面活性剤Aが存在し、各界面活性剤Aが、独立して、臭化セチルトリメチルアンモニウム、塩化トリメチルオクタデシルアンモニウム、臭化ドデシルトリメチルアンモニウム、塩化ドデシルトリメチルアンモニウム、臭化トリメチルオクチルアンモニウム、塩化トリメチルオクチルアンモニウムであり、
少なくとも1つの界面活性剤Bが存在し、存在する各界面活性剤Bに関して、Rが、13個の炭素原子を有するアルキル基であり、nが、18である
請求項2に記載の界面活性剤配合物。
【請求項13】
界面活性剤配合物が、ブラインをさらに含み、
界面活性剤A(存在する場合)界面活性剤B(存在する場合)の総量が、界面活性剤配合物の全重量に対して、約0.01重量%~約1重量%である、
請求項2に記載の界面活性剤配合物。
【請求項14】
石油含有多孔質媒体の湿潤性を逆転させる方法であって、
石油含有多孔質媒体に界面活性剤配合物を導入することであって、石油含有多孔質媒体が、弱水湿潤性または油湿潤性であり、界面活性剤配合物が、界面活性剤A、界面活性剤Bまたはそれらの組合せ:
(OCHCHOH (B)
[式中、
、RおよびRの各々はメチルであり、
およびRの各々は、独立して、4~20個の炭素原子を有するアルキル基であり、
nは、1~45であり、
Xは、フルオリド、クロリド、ブロミドまたはヨージドである]
を含む、界面活性剤配合物を導入することと、
石油含有多孔質媒体の湿潤性を、弱水湿潤状態または油湿潤状態から水湿潤状態に逆転させることと
を含む、方法。
【請求項15】
少なくとも1つの界面活性剤Aが存在し、存在する各界面活性剤Aに関して、Rが、独立して、4~14個の炭素原子を有するアルキル基であり、Xが、独立して、ブロミドまたはクロリドであり、
少なくとも1つの界面活性剤Bが存在し、存在する各界面活性剤Bに関して、Rが、独立して、6~15個の炭素原子を有するアルキル基であり、nが、独立して、1~20である、または
それらの組合せ
である、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
少なくとも1つの界面活性剤Aが存在し、存在する各界面活性剤Aが、臭化トリメチルオクチルアンモニウム、塩化トリメチルオクチルアンモニウム、臭化ドデシルトリメチルアンモニウム、塩化ドデシルトリメチルアンモニウム、臭化セチルトリメチルアンモニウム、塩化セチルトリメチルアンモニウム、臭化トリメチルオクタデシルアンモニウムまたは塩化トリメチルオクタデシルアンモニウムであり、
少なくとも1つの界面活性剤Bが存在し、存在する各界面活性剤Bに関して、Rが、独立して、9~14個の炭素原子を有するアルキル基であり、nが、8~18である
請求項14に記載の方法。
【請求項17】
石油回収のため、石油含有多孔質媒体を処理する方法であって、
石油含有多孔質媒体に界面活性剤配合物を導入することであって、界面活性剤配合物が、界面活性剤A、界面活性剤Bまたはそれらの組合せ:
(OCHCHOH (B)
[式中、
少なくとも1つの界面活性剤Aが存在し、存在する各界面活性剤Aに関して、R、RおよびRの各々はメチルであり、Rは、独立して、4~14個の炭素原子を有するアルキル基であり、Xは、独立して、ブロミドまたはクロリドである、または
少なくとも1つの界面活性剤Bが存在し、存在する各界面活性剤Bに関して、Rは、独立して、6~15個の炭素原子を有するアルキル基であり、nは、独立して、1~20である]
を含む、界面活性剤配合物を導入することと、
石油含有多孔質媒体から石油を回収することと
を含む、方法。
【請求項18】
少なくとも1つの界面活性剤Aが存在し、存在する各界面活性剤Aが、臭化トリメチルオクチルアンモニウム、塩化トリメチルオクチルアンモニウム、臭化ドデシルトリメチルアンモニウム、塩化ドデシルトリメチルアンモニウム、臭化セチルトリメチルアンモニウム、塩化セチルトリメチルアンモニウム、臭化トリメチルオクタデシルアンモニウムまたは塩化トリメチルオクタデシルアンモニウムである、または
少なくとも1つの界面活性剤Bが存在し、存在する各界面活性剤Bに関して、Rが、独立して、9~14個の炭素原子を有するアルキル基であり、nが、8~18である
請求項17に記載の方法。
【請求項19】
タイトオイル貯留層、在来型オイル貯留層、水圧破砕されたタイトオイル貯留層において、またはタイト多孔質媒体表面に行われる、請求項17に記載の方法。
【請求項20】
水圧破砕されたタイトオイル貯留層において行われ、導入操作の前に、
タイトオイル貯留層における岩石層において、破砕物を生成することと、
プロパントを投与することによって、破砕物を開口状態に支え、水圧破砕されたタイトオイル貯留層を形成させることと
をさらに含む、請求項19に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示の実施形態は、一般に、石油回収増進のための方法および配合物に関し、より詳細には、例えば、石油回収または湿潤性逆転のための石油含有多孔質媒体を処理するための方法および配合物に関する。
【背景技術】
【0002】
非在来型超タイト貯留層からの石油生産に直面する難題は、貯留層の複雑な鉱物学、および貯留層に存在する岩石の小さな間隙細孔のサイズである。存在する様々な多数の鉱物には、石英、長石、方解石(CaCO)および/またはドロマイト(MgCO)のような破砕性鉱物、ならびにクレイ、硬石膏、アパタイトおよび有機物などの不純物が含まれる。1~3nmから400~750nmまでの範囲の小さな間隙細孔サイズは、超タイト貯留層における流体の移動性に対する障壁として作用する、高い毛細管圧をもたらすおそれがあり、こうして、石油回収の妨げとなる。貯留層への浸透を増強する水平掘削および水圧破砕法は、障壁を部分的にしか克服しない。さらに、非在来型貯留層の大部分、すなわちシェールオイル、タイトオイル、オイルシェールなどは、油湿潤性炭酸塩~混成湿潤性炭酸塩として一般に分類される。貯留層の高油湿潤特性は、石油の回収を妨げる。
【0003】
化学的攻技法は、在来型貯留層からの石油生産を改善するために利用されてきた。例えば、界面活性剤は、石油とブラインとの間の界面張力(IFT)を低下させる石油回収増進剤(enhanced oil recovery agent)として使用されており、在来型貯留層における油滴(より小さな液滴)の表面積を増大して、石油生産量を高める。しかし、非在来型貯留層における化学的攻技法には、限界がある。化学的攻法が使用される場合、貯留層から生産される石油の量は、不十分である。
【0004】
例えば、石油含有多孔質媒体における、石油回収増進のための新規かつ改善された方法および配合物が必要とされている。
【発明の概要】
【0005】
本開示の実施形態は、一般に、石油回収増進のための方法および配合物に関し、より詳細には、例えば、石油回収または湿潤性逆転のための石油含有多孔質媒体を処理するための方法および配合物に関する。
【0006】
実施形態では、界面活性剤配合物が提供される。界面活性剤配合物は、界面活性剤A、界面活性剤Bまたはそれらの組合せ:
(OCHCHOH (B)
[式中、R、R、RおよびRはそれぞれ、独立して、H、または1~40個の炭素原子を有するアルキル基であり、Rは、1~40個の炭素原子を有するアルキル基であり、nは、1~45であり、Xは、ハライドである]
を含む。
【0007】
別の実施形態では、石油含有多孔質媒体の湿潤性を逆転させる方法が提供される。本方法は、石油含有多孔質媒体に界面活性剤配合物を導入することであって、石油含有多孔質媒体が、弱水湿潤性または油湿潤性であり、界面活性剤配合物が、界面活性剤A、界面活性剤Bまたはそれらの組合せ:
(OCHCHOH (B)
[式中、R、RおよびRはそれぞれ、メチルであり、RおよびRはそれぞれ、独立して、4~20個の炭素原子を有するアルキル基であり、nは、1~45であり、Xは、フルオリド、クロリド、ブロミドまたはヨージドである]
を含む、界面活性剤配合物を導入することを含む。本方法は、石油含有多孔質媒体の湿潤性を、弱水湿潤状態または油湿潤状態から水湿潤状態に逆転させることをさらに含む。
【0008】
別の実施形態では、石油回収のための石油含有多孔質媒体を処理する方法が提供される。本方法は、石油含有多孔質媒体に界面活性剤配合物を導入することであり、界面活性剤配合物が、界面活性剤A、界面活性剤Bまたはそれらの組合せ:
(OCHCHOH (B)
[式中、少なくとも1つの界面活性剤Aが存在し、存在する各界面活性剤Aに関して、R、RおよびRはそれぞれ、メチルであり、Rは、4~14個の炭素原子を有するアルキル基であり、Xは、独立して、臭化物イオンまたは塩化物イオンである;または少なくとも1つの界面活性剤Bが存在し、存在する各界面活性剤Bに関して、Rは、独立して、6~15個の炭素原子を有するアルキル基であり、nは、独立して、1~20である]
を含む、界面活性剤配合物を導入することを含む。本方法は、石油含有多孔質媒体から石油を回収することをさらに含む。
【0009】
本開示の上記の特徴が詳細に理解されることができるよう、その一部が添付の図面に例示されている実施形態を参照することによって、上に簡単に要約した本開示が、より具体的な説明され得る。しかし、添付の図面は、例示的な実施形態を例示するに過ぎず、したがって、その範囲を限定するとは見なされず、等しく有効な他の実施形態を承認し得ることに留意されたい。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1A】本開示の少なくとも1つの実施形態により有用な、Minnesota Northern Cream(MNC)試料から得られた例示的な後方散乱電子(BSE)画像を示す図である。
図1B図1AのMNC試料の走査電子顕微鏡(QEMSCAN(商標))鉱物学マップによる鉱物の定量的評価を示す図である。
図2】本開示の少なくとも1つの実施形態による、様々にエージングされたMNC露頭試料への、ブランクブラインの自発吸収による石油回収を示す例示的なデータを示すグラフである。
図3A】本開示の少なくとも1つの実施形態による、ブランクブラインを使用する、高温での、弱水湿潤性(WWW)MNCコアからの自発吸収による石油回収の例示的な画像を示す図である。
図3B】本開示の少なくとも1つの実施形態による、約0.1重量%の塩化トリメチルオクチルアンモニウム(TOAC)を使用する、高温でのWWW MNCコアからの石油回収の例示的な画像を示す図である。
図4A】本開示の少なくとも1つの実施形態による、様々な界面活性剤を使用する、WWW MNCコア試料からの自発吸収による石油回収率の例示的なデータを示すグラフである。
図4B】本開示の少なくとも1つの実施形態による、様々な界面活性剤を使用する、WWW MNCコア試料からの自発吸収による究極回収率の値の例示的なデータ(図4Aの近接図)を示すグラフである。
図5A】本開示の少なくとも1つの実施形態による、塩化物イオン頭部を有する界面活性剤を使用する、WWW MNCコア試料からの自発吸収による石油回収率の例示的なデータを示すグラフである。
図5B】本開示の少なくとも1つの実施形態による、WWW MNCコア試料からの究極回収率の値を例示する、図5Aの近接図である。
図5C】本開示の少なくとも1つの実施形態による、臭化物イオン頭部を有する界面活性剤を使用する、WWW MNCコア試料からの自発吸収による石油回収率の例示的なデータを示すグラフである。
図5D】本開示の少なくとも1つの実施形態による、WWW MNCコア試料からの究極回収率の値を例示する、図5Cの近接図である。
図6】本開示の少なくとも1つの実施形態による、界面活性剤または界面活性剤ブレンドを使用する、WWW MNCコア試料からの自発吸収による石油回収率の例示的なデータを示すグラフである。
図7A】本開示の少なくとも1つの実施形態による、例となる非イオン性界面活性剤としてトリデシルエトキシル化アルコール類を利用する、WWW MNCコアからの自発吸収による石油回収率の例示的なデータを示すグラフである。
図7B】本開示の少なくとも1つの実施形態による、例となる非イオン性界面活性剤としてポリ(オキシエチレン)アルコール類を利用する、WWW MNCコアからの自発吸収による石油回収率の例示的なデータを示すグラフである。
図7C】本開示の少なくとも1つの実施形態による、例となる非イオン性界面活性剤として二級アルコールエトキシレート類を利用する、WWW MNCコアからの自発吸収による石油回収率の例示的なデータを示すグラフである。
図8A】本開示の少なくとも1つの実施形態による、臭化物イオン頭部を有する例となる陽イオン性界面活性剤を利用する、OW MNCコアからの自発吸収による石油回収率の例示的なデータを示すグラフである。
図8B】本開示の少なくとも1つの実施形態による、塩化物イオン頭部を有する例となる陽イオン性界面活性剤を利用する、OW MNCコアからの自発吸収による石油回収の例示的なデータを示すグラフである。
図9A】本開示の少なくとも1つの実施形態による、例となる非イオン性界面活性剤としてトリデシルエトキシル化アルコール類を利用する、OW MNCコアからの自発吸収による石油回収率の例示的なデータを示すグラフである。
図9B】本開示の少なくとも1つの実施形態による、例となる非イオン性界面活性剤としてポリ(オキシエチレン)アルコール類を利用する、OW MNCコアからの自発吸収による石油回収率の例示的なデータを示すグラフである。
図9C】本開示の少なくとも1つの実施形態による、例となる非イオン性界面活性剤として二級アルコールエトキシレート類を利用する、OW MNCコアからの自発吸収による石油回収率の例示的なデータを示すグラフである。
図10A】本開示の少なくとも1つの実施形態による、選択された非イオン性界面活性剤を使用する、OW MNCコアからの自発吸収による石油回収率の例示的なデータを示すグラフである。
図10B】本開示の少なくとも1つの実施形態による、選択された陽イオン性界面活性剤を使用する、OW MNCコアからの自発吸収による石油回収率の例示的なデータを示すグラフである。
図11】本開示の少なくとも1つの実施形態による、例となる界面活性剤ブレンドを使用する、OW MNCコアからの自発吸収による石油回収率の例示的なデータを示すグラフである。
図12】本開示の少なくとも1つの実施形態による、常温および高温(80℃および120℃)における、非イオン性界面活性剤POE18の相挙動を示す、一連の例示的な画像を示す図である。
図13】本開示の少なくとも1つの実施形態による、常温(左側のパネル)および80℃(右側のパネル)における、塩化物イオン頭部を有する陽イオン性界面活性剤の相挙動を示す、一連の例示的な画像を示す図である。
図14】本開示の少なくとも1つの実施形態による、常温(左側のパネル)および80℃(右側のパネル)における、臭化物イオン頭部を有する陽イオン性界面活性剤の相挙動を示す、それぞれが、一連の例示的な画像を示す図である。
図15】本開示の少なくとも1つの実施形態による、常温における、臭化物イオン頭部を有する陽イオン性界面活性剤の溶解度を示す、一連の例示的な画像を示す図である。
図16A】本開示の少なくとも1つの実施形態による、様々な温度における、塩化トリメチルオクタデシルアンモニウム(TSAC)溶液の例示的な画像を示す図である。
図16B】本開示の少なくとも1つの実施形態による、高圧および高温での、TSAC溶液のクラフト点測定に関する、一連の例示的な画像を示す図である。
図17A】本開示の少なくとも1つの実施形態による、高圧および高温での、POE18溶液の曇り点測定に関する、一連の例示的な画像を示す図である。
図17B】本開示の少なくとも1つの実施形態による、高圧および高温での、POE18:TOABブレンドの曇り点測定に関する、一連の例示的な画像を示す図である(TOABは、臭化トリメチルオクチルアンモニウムである)。
図18A】本開示の少なくとも1つの実施形態による、塩化ドデシルトリメチルアンモニウム(DTAC)のCMC測定に関する例示的なデータを示すグラフである。
図18B】本開示の少なくとも1つの実施形態による、塩化セチルトリメチルアンモニウム(CTAC)のCMC測定に関する例示的なデータを示すグラフである。
図18C】本開示の少なくとも1つの実施形態による、塩化トリメチルオクタデシルアンモニウム(TSAC)のCMC測定に関する例示的なデータを示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
理解を促すため、図に共通する同一要素を表示するため、可能な場合、同一の参照番号が使用される。一実施形態の要素および特徴は、さらなる列挙なしに、他の実施形態において有益に組み込まれ得ることが企図される。
【0012】
本開示の実施形態は、一般に、石油回収増進のための方法および配合物に関し、より詳細には、例えば、石油回収または湿潤性逆転のための石油含有多孔質媒体を処理するための方法および配合物に関する。上で議論されている通り、油湿潤性貯留層からの回収は、厳格に制限される。本発明者らは、例えば、このような貯留層からの石油回収を改善するための、新規かつ改善された界面活性剤、界面活性剤配合物、ならびにこのような界面活性剤および界面活性剤配合物を使用する方法を見出した。一部の実施形態では、石油回収の改善は、本明細書に記載されている界面活性剤または界面活性剤配合物を使用して、油湿潤性または混成湿潤性多孔質媒体を一層の水湿潤状態に少なくとも一部、転化させることによって容易になり得る。
【0013】
本開示の目的の場合、および別段の指定がない限り、用語「アルキル」または「アルキル基」は互換的に、水素原子および炭素原子だけからなる基を指す。アルキル基は、置換されているもしくは非置換の、飽和もしくは不飽和の、直鎖もしくは分岐の、環式または非環式、芳香族または非芳香族、あるいはそれらの組合せであり得る。アルキル基のある数の炭素原子が、本明細書において指定されている場合、この数は、指定されている、正確な数の炭素原子または炭素原子の範囲を指すことが意図される。言い換えると、アルキル基に関してある数(またはその範囲)の炭素原子が指定されている場合、アルキル基がその指定された数の炭素原子を含むことを意図するのではなく、むしろアルキル基が指定された数を含むことが意図されている。例えば、アルキルが、4~8個の炭素原子を有するか、またはこれを含有すると指定される場合、12個の炭素原子を有するまたは含有するアルキル基は適格ではない;むしろ、4、5、6、7または8個の炭素原子を含有するアルキル基のみが適格である。CHCHO基の数およびアルキル基中のCH基の数を参照する「n」に同じ概念が適用される。
【0014】
一部の実施形態では、アルキル基の炭素原子数は、メチレン(CH)基の数に関連することができる。例えば、アルキル基が直鎖の場合、およびアルキル基が、13個の炭素原子を有する場合、メチレン基の数は、12個(1個のCH基を含む)と指定され得る。したがって、アルキル基が直鎖である場合、メチレン基の数は、炭素原子数(例えば、8個)マイナス1個(例えば、7個)と導くことができる。したがって、直鎖アルキル鎖に関して、本明細書において開示されている炭素原子の様々な数を使用して、式Q=S-1によりメチレン基の数を指定することができ、ここで、Sは、炭素原子数であり、Qは、メチレン基の数である。
【0015】
特定の異性体を指定しないアルキル基(例えば、ブチル)を言及する場合、すべての異性体(例えば、n-ブチル、イソ-ブチル、sec-ブチルおよびtert-ブチル)のすべてを明示的に開示する。例えば、4個の炭素原子を有するアルキル基を言及する場合、そのすべての異性体を明示的に開示する。化合物が、例えば、式または化学名において、該化合物の特定の異性体、エナンチオマーまたはジアステレオマーを指定しないように本明細書に記載されている場合、その記載は、記載されている化合物の各異性体およびエナンチオマーを、単独でまたは任意の組合せで含むことが意図されている。
【0016】
本明細書において開示されているある特定の分子は、1つまたは複数のイオン性基[プロトンが解離(例えば、-COOH)もしくは付加され得る(例えば、アミン)基、または四級化(例えば、アミン)され得る基]を含有してもよい。このような分子およびその塩のすべての可能なイオン性形態が、本明細書における開示において個々に含まれることが意図される。本明細書における化合物の塩に関すると、当業者は、所与の用途のための塩の調製に好適な、幅広い利用可能な対イオンの中から選択することができる。溶液中では、塩は、そのイオン性形態で存在することができる。
【0017】
界面活性剤
本開示の実施形態は、例えば、石油含有多孔質媒体から石油回収のための、または石油含有多孔質媒体の湿潤性逆転のための界面活性剤に関する。界面活性剤は、単独で使用され得るか、または界面活性剤配合物中で使用され得る。
【0018】
一部の実施形態では、界面活性剤は、式(A)
を有する
[式中、
、R、RおよびRはそれぞれ、独立して、Hまたはアルキル基であり、
Xは、ハライド(例えば、F、Cl、BrまたはI)、オキシド、炭酸塩、ニトレート、サルフェート、スルホネート、トシル(tosyl)、トリフルオロメテスルホネート(trifluoromethesulfonate)、ホスフェート、ホスホネート、ヒドロキシド、またはそれらの組合せである]。
【0019】
本開示の目的の場合、用語「式(A)の界面活性剤」および「界面活性剤A」は、互換的に使用される。1種または複数の式(A)の界面活性剤は、一部の実施形態によれば、一緒に利用され得る。少なくとも一実施形態では、R、R、RおよびRはそれぞれ、独立して、水素、または約1~約40個の炭素原子などの、任意の好適な数の炭素原子を有するアルキル基である。R、R、RおよびRはそれぞれ、独立して、置換されているもしくは非置換の、飽和もしくは不飽和の、直鎖もしくは分岐の、環式または非環式、および/あるいは芳香族もしくは非芳香族とすることができる。
【0020】
一部の例では、炭素原子数は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19または20であり得る。上記の数の各々の前に、語「約」、「少なくとも約」、「約・・・未満」または「約・・・超」が付くことができ、上述の数のいずれも、単独で使用されて、オープンエンド範囲を記載するか、または組み合わされて、クローズエンド範囲を記載することができる。例えば、炭素原子数は、約5~約10、約4~約12、約8~約10、約12以下、または約6以上であり得る。
【0021】
一部の実施形態では、R、RおよびRはそれぞれ、メチル基(CH)であり、Rは、直鎖または分岐アルキル基などのアルキル基である。Rは、約4~約20個の炭素原子、約4~約18個の炭素原子、約4~約12個の炭素原子、約6~約12個の炭素原子、約6~約10個の炭素原子、約8~約12個の炭素原子、約8~約10個の炭素原子、約8~約16個の炭素原子、約8個の炭素原子、約12個の炭素原子、約16個の炭素原子または約18個の炭素原子などの、約1~約20個である、ある数の炭素原子を有するアルキル基であり得る。一部の実施形態では、式(A)の界面活性剤中のRは、約7個、約11個、約15個または約17個のCH基を有するアルキル基であるか、または式(A)の界面活性剤中のRは、約8個、約12個、約16個または約18個の炭素原子を有するアルキル基である。
【0022】
一部の実施形態では、式(A)の界面活性剤は、臭化トリメチルオクチルアンモニウム(TOAB)、塩化トリメチルオクチルアンモニウム(TOAC)、臭化ドデシルトリメチルアンモニウム(DTAB)、塩化ドデシルトリメチルアンモニウム(DTAC)、臭化セチルトリメチルアンモニウム(CTAB、臭化ヘキサデシルトリメチルアンモニウムとしても知られている)、塩化セチルトリメチルアンモニウム(CTAC)、臭化トリメチルオクタデシルアンモニウム(TODAB)、塩化トリメチルオクタデシルアンモニウム(TSAC)、または任意の好適な量もしくは比のそれらの組合せを含む。式(A)の界面活性剤は、TOAB、TOAC、CTAB、TSAC、または任意の好適な量もしくは比でそれらの組合せを含むことができる。一部の実施形態では、式(A)の界面活性剤は、任意の好適な量または比のこのような界面活性剤の組合せを含めた、上記の界面活性剤のうちの1種または複数からなる群から選択される。
【0023】
1種または複数の界面活性剤は、式(B):
(OCHCHOH (B)
[式中、
は、アルキル基であり、
nは、約1~約45である、ゼロではない数である]
を有する界面活性剤を含むことができる。
【0024】
用語「式(B)の界面活性剤」および「界面活性剤B」は、互換的に使用される。1種または複数の式(B)の界面活性剤は、一部の実施形態によれば、一緒に利用され得る。式(B)のアルキル基Rは、置換されているもしくは非置換の、飽和もしくは不飽和の、直鎖もしくは分岐の、環式または非環式、芳香族または非芳香族であり得る。少なくとも一実施形態では、Rは、独立して、約1~約40個の炭素原子などの、任意の好適な数の炭素原子を有するアルキル基である。Rの炭素原子数は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19または20であり得る。上記の数の各々の前に、語「約」、「少なくとも約」、「約・・・未満」または「約・・・超」が付くことができ、上述の数のいずれも、単独で使用されて、オープンエンド範囲を記載するか、または組み合わされて、クローズエンド範囲を記載することができる。例えば、炭素原子の数は、約10個以下の炭素原子、約6~約8個の炭素原子または約7~約14個の炭素原子であり得る。一部の実施形態では、式(B)の界面活性剤中のRは、約4~約8個の炭素原子、約4~約11個の炭素原子、約9~約11個の炭素原子、約9~約14個の炭素原子、約10~約14個の炭素原子、約12~約14個の炭素原子、約9~約11個の炭素原子、約11個の炭素原子および/または約13個の炭素原子を含む、ある数の炭素原子を有するアルキル基であるか、または上記からなる群から選択される。一部の実施形態では、Rは、約4~約20個の炭素原子、約9~約11個の炭素原子、約11個の炭素原子、約13個の炭素原子、約9~約14個の炭素原子および/または約12~約14個の炭素原子を含むある数の炭素原子を有するアルキル基であるか、または上記からなる群から選択されるアルキル基である。
【0025】
少なくとも一実施形態では、式(B)の界面活性剤のnは、1、1.5、2、2.5、3、3.5、4、4.5、5、5.5、6、6.5、7、7.5、8、8.5、9、9.5、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44または45である。上記の数の各々の前に、語「約」、「少なくとも約」、「約・・・未満」または「約・・・超」が付くことができ、上述の数のいずれも、単独で使用されて、オープンエンド範囲を記載するか、または組み合わされて、クローズエンド範囲を記載することができる。例えば、nは、約10以下、約3~約6、約4~約8、約16~約20または約18であり得る。一部の実施形態では、式(B)の界面活性剤のnは、約2.5~約41、約2.5~約10、約3~約6、約3~約10、約15~約18、約10~約20、約2.5、約3、約5、約6、約7、約8、約9、約10、約12、約15、約18、約20、約30、約31または約41であるか、またはこれらからなる群から選択される。
【0026】
一部の実施形態では、および式(B)のRが、約9~約11個の炭素原子を有するアルキル基である場合、nは、約2.5、約6および/または約8であるか、またはこれらからなる群から選択される。一部の実施形態では、および式(B)のRが、約11個の炭素原子を有するアルキル基である場合、nは、約3、約5、約7および/または約9であるか、またはこれらからなる群から選択される。一部の実施形態では、および式(B)のRが、約13個の炭素原子を有するアルキル基である場合、nは、約6、約9、約12、約18および/または約30であるか、またはこれらからなる群から選択される。一部の実施形態では、および式(B)のRが、約12~約14個の炭素原子を有するアルキル基である場合、nは、約5、約9、約15、約20、約30および/または約40であるか、またはこれらからなる群から選択される。
【0027】
一部の実施形態では、式(B)の界面活性剤のnは、2.5~41、2.5~10、3~6、3~10、15~18、10~20、2.5、3、5、6、7、8、9、10、12、15、18、20、30、31および/または41であるか、またはこれらからなる群から選択される。上記の数の各々の前に、語「約」、「少なくとも約」、「約・・・未満」または「約・・・超」が付くことができ、上述の数のいずれも、単独で使用されて、オープンエンド範囲を記載するか、または組み合わされて、クローズエンド範囲を記載することができる。一部の実施形態では、およびRが、約9~約11個の炭素原子を有するアルキル基である場合、nは、約2.5、約6および/または約8であるか、またはこれらからなる群から選択される。一部の実施形態では、およびRが、約11個の炭素原子を有するアルキル基である場合、nは、約3、約5、約7および/または約9であるか、またはこれらからなる群から選択される。一部の実施形態では、およびRが、約13個の炭素原子を有するアルキル基である場合、nは、約3、約6、約9、約12、約18および/または約30であるか、またはこれらからなる群から選択される。一部の実施形態では、およびRが、約12~約14個の炭素原子を有するアルキル基である場合、nは、約5、約9、約15、約20、約30および/または約40であるか、またはこれらからなる群から選択される。
【0028】
一部の実施形態では、式(B)の界面活性剤において、
(1)Rは、約13個の炭素原子を有するアルキル基である、および/もしくはnは、約18である;
(2)Rは、約13個の炭素原子を有するアルキル基である、および/もしくはnは、約3、約6、約9、約12、約18または約30である;
(3)Rは、約11個の炭素原子を有するアルキル基である、および/もしくはnは、約3、約5、約7または約9である;
(4)Rは、約9~11個の炭素原子を有するアルキル基である、および/もしくはnは、約2.5、約6または約8である;および/または
(5)Rは、約12~14個の炭素原子を有するアルキル基である、および/もしくはnは、約5、約9、約15、約20、約31または約41である。
【0029】
一部の実施形態では、本明細書において説明されている式(B)の界面活性剤は、式(C)の界面活性剤:
CH(CH(OCHCHOH (C)
[式中、
mは、メチレン(CH)基の数であり、
nは、約1~約45などの式(B)の界面活性剤について記載されているものなどの、エチレンオキシド基の数である]
を包含する。
【0030】
一部の実施形態では、および式(C)の界面活性剤の場合、mは、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18または19などの、任意の好適な数である。上記の数の各々の前に、語「約」、「少なくとも約」、「約・・・未満」または「約・・・超」が付くことができ、上述の数のいずれも、単独で使用されて、オープンエンド範囲を記載するか、または組み合わされて、クローズエンド範囲を記載することができる。例えば、mは、約12、約10、約8~約10および/または約11~約13であるか、またはこれらからなる群から選択される。
【0031】
一部の実施形態では、および式(C)の界面活性剤に関すると、mは、約2.5、約3、約5、約6、約7、約8、約9、約12、約15、約18、約20、約30、約31および約41であるか、またはこれらからなる群から選択される。一部の実施形態では、式(C)の界面活性剤では、mは約12であり、nは約18である。一部の実施形態では、および式(C)の界面活性剤に関すると、mは、約12であり、nは、約3、約6、約9、約12、約18または約30である。一部の実施形態では、式(C)の界面活性剤では、mは約10であり、nは、約3、約5、約7または約9である。一部の実施形態では、式(C)の界面活性剤では、mは、約8~約10であり、nは、約2.5、約6または約8である。一部の実施形態では、式(C)の界面活性剤では、mは、約11~約13であり、nは、約5、約9、約15、約20、約31または約41である。
【0032】
(CH(CH)基は、置換されているもしくは非置換の、飽和もしくは不飽和の、直鎖もしくは分岐の、環式または非環式、芳香族または非芳香族であり得る。
【0033】
一部の実施形態では、式(C)の界面活性剤では、nは、1、1.5、2、2.5、3、3.5、4、4.5、5、5.5、6、6.5、7、7.5、8、8.5、9、9.5、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44または45である。上記の数の各々の前に、語「約」、「少なくとも約」または「約・・・未満」が付くことができ、上述の数のいずれも、単独で使用されて、オープンエンド範囲を記載するか、または組み合わされて、クローズエンド範囲を記載することができる。例えば、nは、約10未満、約3~約6、約4~約8、約16~約20または約18である。一部の実施形態では、式(C)の界面活性剤におけるnは、約2.5~約41、約2.5~約10、約3~約6、約3~約10、約15~約18、約10~約20、約2.5、約3、約5、約6、約7、約8、約9、約10、約12、約15、約18、約20、約30、約31および/または約41であるか、またはこれらからなる群から選択される。
【0034】
一部の実施形態では、式(B)の界面活性剤または式(C)の界面活性剤は、MAKON(登録商標)TD-n、BIO-SOFT(登録商標)N1-n、BIO-SOFT(登録商標)N91-nまたはTERGITOL(登録商標)15-S-n、またはそれらの組合せを含み、nは、本明細書の他の場所に定義されている。一部の実施形態では、式(B)の界面活性剤または式(C)の界面活性剤は、MAKON TD-nを含み、nは、3、6、9、12、18または30である。一部の実施形態では、式(B)の界面活性剤または式(C)の界面活性剤は、BIO-SOFT N1-nを含み、nは、3、5、7または9である。一部の実施形態では、式(B)の界面活性剤または式(C)の界面活性剤は、BIO-SOFT N91-nを含み、nは、2.5、6または8である。一部の実施形態では、式(B)の界面活性剤または式(C)の界面活性剤は、TERGITOL15-S-nを含み、nは、5、9、15、20、31または41である。一部の実施形態では、式(B)の界面活性剤または式(C)の界面活性剤は、ポリ(エチレングリコール)トリデシルエーテル(POE)を含み、nは、18である。上述の界面活性剤のいずれかの場合のnは、本明細書の他の場所に開示されている選択肢のいずれかであることができ、nは、一般に、OCHCH単位の数である。
【0035】
一部の実施形態では、式(B)の界面活性剤は、トリデシルエトキシル化アルコール類、ポリ(オキシエチレン)アルコール類および/または二級アルコールエトキシレート類を含むことができる。トリデシルエトキシル化アルコール類の例には、式CH(CH12(CHCHO)OHを有するポリ(エチレングリコール)トリデシルエーテル[式中、n=18である]および/またはCH(CH12(CHCHO)OH[式中、n=3、6、9、12、18および/または30である]が含まれる。ポリ(オキシエチレン)アルコール類の例には、式CH(CH10(CHCHO)OH[式中、n=3、5、7および/または9である]および/またはCH(CH8~10(CHCHO)OH[式中、n=2.5、6および/または8である]を有するアルコール類が含まれる。二級アルコールエトキシレート類の例には、式CH(CH11~13(CHCHO)OH[n=5、9、15、20、31および/または41である]を有するエトキシレート類が含まれる。他の非イオン性界面活性剤が企図される。
【0036】
界面活性剤配合物
本開示の実施形態はまた、界面活性剤配合物に関する。界面活性剤配合物は、石油含有貯留層または石油含有層に導入または添加されて、例えば、石油回収を増進することができる。一部の実施形態では、界面活性剤配合物を使用して、石油含有多孔質媒体を処理する、石油含有多孔質媒体の湿潤性を変更する、およびそれらの組合せを行うことができる。
【0037】
界面活性剤配合物は、1種または複数の界面活性剤および1種または複数の他の成分を含むことができる。本明細書において使用する場合、「配合物」は、配合物の成分(複数可)および/または配合物の2種以上の成分の反応生成物(複数可)を含むことができる。配合物は、配合物の1種または複数の成分のイオン(複数可)を含むことができる。本配合物は、任意の好適な混合プロセスによって調製することができる。
【0038】
一部の実施形態では、式(A)の界面活性剤は、界面活性剤配合物中に存在する。さらにまたは代替として、式(A)の界面活性剤は、界面活性剤配合物中に存在し、式(B)の界面活性剤は、界面活性剤配合物中に存在しない。さらにまたは代替として、式(B)の界面活性剤は、界面活性剤配合物中に存在する。さらにまたは代替として、式(B)の界面活性剤は、界面活性剤配合物中に存在し、式(A)の界面活性剤は、界面活性剤配合物中に存在しない。さらにまたは代替として、式(A)の界面活性剤と式(B)の界面活性剤の両方が、界面活性剤配合物中に存在する。
【0039】
一部の実施形態では、1種超の式(A)の界面活性剤、1種超の式(B)の界面活性剤、またはそれらの組合せが、界面活性剤配合物中で利用される。例えば、界面活性剤配合物は、2種の式(A)の界面活性剤および1種の式(B)の界面活性剤を含むことができる。別の例として、界面活性剤配合物は、1種の式(A)の界面活性剤および3種の式(B)の界面活性剤を含むことができる。多数の他の反復が企図される。
【0040】
一部の実施形態では、界面活性剤配合物は、式(A)の界面活性剤と式(B)の界面活性剤との組合せを含み、式(B)の界面活性剤のRは、12~14個の炭素原子を有するアルキル基であり、nは、15であり、式(A)の界面活性剤は、臭化セチルトリメチルアンモニウム、塩化トリメチルオクタデシルアンモニウム、塩化ドデシルトリメチルアンモニウム、臭化トリメチルオクチルアンモニウムまたはそれらの組合せを含む。しかし、このような組合せは、単に例示的なものに過ぎず、本明細書の他の場所に開示されている、任意の式(A)の界面活性剤および任意の式(B)の界面活性剤を、いずれかの様式で組み合わせることができる。例えば、式(B)の界面活性剤のRは、10~15個の炭素原子を有するアルキル基であり得、nは、12~18であり、この式(B)の界面活性剤は、本明細書において開示されている式(A)の界面活性剤のいずれかと組み合わせることができる。
【0041】
一部の実施形態では、界面活性剤配合物は、式(A)の界面活性剤と式(B)の界面活性剤との組合せを含み、式(B)の界面活性剤のRは、9~11個の炭素原子を有するアルキル基であり、nは、8であり、式(A)の界面活性剤は、臭化セチルトリメチルアンモニウム、塩化トリメチルオクタデシルアンモニウム、塩化ドデシルトリメチルアンモニウム、臭化トリメチルオクチルアンモニウムまたはそれらの組合せを含む。しかし、このような組合せは、単に例示的なものに過ぎず、本明細書の他の場所に開示されている、任意の式(A)の界面活性剤および任意の式(B)の界面活性剤を、いずれかの様式で組み合わせることができる。例えば、式(B)の界面活性剤のRは、7~13個の炭素原子を有するアルキル基であり得、nは、5~10であり、この式(B)の界面活性剤は、本明細書において開示されている式(A)の界面活性剤のいずれかと組み合わせることができる。
【0042】
一部の実施形態では、界面活性剤配合物は、式(A)の界面活性剤と式(B)の界面活性剤との組合せを含み、式(B)の界面活性剤のRは、13個の炭素原子を有するアルキル基であり、nは、18であり、式(A)の界面活性剤は、臭化セチルトリメチルアンモニウム、塩化トリメチルオクタデシルアンモニウム、臭化ドデシルトリメチルアンモニウム、塩化ドデシルトリメチルアンモニウム、臭化トリメチルオクチルアンモニウム、塩化トリメチルオクチルアンモニウムまたはそれらの組合せを含む。しかし、このような組合せは、単に例示的なものに過ぎず、本明細書の他の場所に開示されている、任意の式(A)の界面活性剤および任意の式(B)の界面活性剤を、いずれかの様式で組み合わせることができる。例えば、式(B)の界面活性剤のRは、9~15個の炭素原子を有するアルキル基であり得、nは、15~21であり、この式(B)の界面活性剤は、本明細書において開示されている式(A)の界面活性剤のいずれかと組み合わせることができる。
【0043】
一部の実施形態では、界面活性剤配合物は、式(A)の界面活性剤と式(B)の界面活性剤との組合せを含み、式(B)の界面活性剤のRは、13個の炭素原子を有するアルキル基であり、nは、18であり、式(A)の界面活性剤は、臭化トリメチルオクチルアンモニウム、塩化トリメチルオクチルアンモニウム、臭化ドデシルトリメチルアンモニウム、塩化ドデシルトリメチルアンモニウムまたはそれらの組合せを含む。
【0044】
1種または複数の界面活性剤は、例えば、界面活性剤配合物のpH、貯留層の状態などに応じて、それぞれ、独立して、そのイオン性形態または中性形態にあることができる。
【0045】
一部の実施形態では、界面活性剤配合物は、複数の界面活性剤、例えば、3種以上の界面活性剤などの2種以上の界面活性剤を含む。界面活性剤配合物の各界面活性剤の量は、任意の好適な量であり得る。一部の例では、式(A)の界面活性剤対式(B)の界面活性剤の体積比(v/v)は、体積比~体積比の範囲にあり、体積比対体積比はそれぞれ、体積比<体積比である限り、1:99、5:95、10:90、15:85、20:80、25:75、30:70、35:65、40:60、45:55、50:50、55:45、60:40、65:35、70:30、75:25、80:20、85:15、90:10、95:5または99:1である。上記の数の各々の前に、語「約」、「少なくとも約」、「約・・・未満」または「約・・・超」が付くことができ、上述の数のいずれも、単独で使用されて、オープンエンド範囲を記載するか、または組み合わされて、クローズエンド範囲を記載することができる。例えば、式(A)の界面活性剤対式(B)の界面活性剤の体積比は、約50:50、約40:60~約60:40、約25:75または約75:25である。一部の実施形態では、式(A)の界面活性剤対式(B)の界面活性剤の体積比は、約1:99~約99:1、約5:95~約95:5、約10:90~約90:10、約25:75~約75:25、約40:60~約60:40、約55:45~約45:55または約50:50である。他の比が企図される。
【0046】
一部の実施形態では、界面活性剤配合物は、式(A)の界面活性剤と式(B)の界面活性剤との組合せを含み、式(A)の界面活性剤は、臭化セチルトリメチルアンモニウムであり、式(B)の界面活性剤のRは、12~14個の炭素原子を有するアルキル基であり、nは、15であり、式(A)の界面活性剤対式(B)の界面活性剤の体積比は、約40:60~約60:40である。しかし、本明細書において開示されている任意の他の式(A)の界面活性剤のいずれも、この組合せに使用されてもよく、他の炭素原子数およびnの数を有する任意の他の式(B)の界面活性剤もまた、本明細書において企図される。さらに、これらの2種の界面活性剤の任意の他の体積比が使用されてもよい。例えば、一部の実施形態では、界面活性剤配合物は、式(A)の界面活性剤と式(B)の界面活性剤との組合せを含み、式(A)の界面活性剤は、臭化セチルトリメチルアンモニウムまたは塩化セチルトリメチルアンモニウムであり、式(B)の界面活性剤のRは、10~16個の炭素原子を有するアルキル基であり、nは、12~18であり、式(A)の界面活性剤対式(B)の界面活性剤の体積比は、約55:45~約45:55である。
【0047】
一部の実施形態では、界面活性剤配合物は、式(A)の界面活性剤と式(B)の界面活性剤との組合せ物を含み、式(A)の界面活性剤は、塩化トリメチルオクタデシルアンモニウムであり、式(B)の界面活性剤は、以下:(1)式(B)の界面活性剤のRは、13個の炭素原子を有するアルキル基であり、nは18である、または(2)Rは、9~11個の炭素原子を有するアルキル基であり、nは8である、2つの選択肢のいずれかであり、式(A)の界面活性剤対式(B)の界面活性剤の体積比は、約40:60~約60:40である。しかし、本明細書において開示されている他の式(A)の界面活性剤のいずれも、この組合せに使用されてもよく、他の炭素原子数およびnの数を有する任意の他の式(B)の界面活性剤もまた、本明細書において企図される。さらに、これらの2種の界面活性剤の任意の他の体積比が使用されてもよい。例えば、一部の実施形態では、界面活性剤配合物は、式(A)の界面活性剤と式(B)の界面活性剤との組合せ物を含み、式(A)の界面活性剤は、塩化トリメチルオクタデシルアンモニウムまたは臭化トリメチルオクタデシルアンモニウムであり、式(B)の界面活性剤は、以下:(1)式(B)の界面活性剤のRは、10~14個の炭素原子を有するアルキル基であり、nは15~22である、または(2)Rは、8~13個の炭素原子を有するアルキル基であり、nは6~10である、2つの選択肢のいずれかであり、式(A)の界面活性剤対式(B)の界面活性剤の体積比は、約45:55~約55:45である。
【0048】
一部の実施形態では、界面活性剤配合物は、任意の好適な量で、界面活性剤(例えば、1種または複数の界面活性剤)の総量を含む。界面活性剤配合物の総重量に対する、界面活性剤配合物中の界面活性剤の総量の重量%(wt%)は、wt~wtの範囲であり、wtおよびwtはそれぞれ、wt<wtである限り、0.01、0.02、0.03、0.04、0.05、0.06、0.07、0.08、0.09、0.1、0.11、0.12、0.13、0.14、0.15、0.16、0.17、0.18、0.19、0.2、0.22、0.24、0.26、0.28、0.3、0.32、0.34、0.36、0.38、0.4、0.45、0.5、0.55、0.6、0.65、0.7、0.75、0.8、0.85、0.9、0.95または1である。上記の数の各々の前に、語「約」、「少なくとも約」、「約・・・未満」または「約・・・超」が付くことができ、上述の数のいずれも、単独で使用されて、オープンエンド範囲を記載するか、または組み合わされて、クローズエンド範囲を記載することができる。例えば、界面活性剤配合物中の界面活性剤の量(重量%)は、約0.03以上、約0.08~約0.12、約0.3以下、または少なくとも約0.05である。上述の量のいずれも、単一界面活性剤(例えば、式(A)の界面活性剤だけ)に適用することができ、界面活性剤(例えば、式(A)の界面活性剤および式(B)の界面活性剤)の指定の組合せの総量、または界面活性剤配合物中に存在する界面活性剤すべての総量は、文脈から明白となろう。一部の実施形態では、界面活性剤配合物は、式(A)の界面活性剤の少なくとも1つ、および式(B)の界面活性剤の少なくとも1つを含み、式(A)の界面活性剤(存在する場合)および式(B)の界面活性剤(存在する場合)の総量は、界面活性剤配合物の総重量に対して、約0.01重量%~約1重量%である。界面活性剤配合物の総重量は、100重量%を超えない。
【0049】
一部の例では、界面活性剤配合物中の界面活性剤(例えば、1種または複数の界面活性剤)の総量は、界面活性剤配合物の総重量に対して、約0.01重量%~約5重量%など、約0.05重量%~約3重量%など、約0.075重量%~約1重量%など、約0.1重量%~約1重量%など、約0.2重量%~約0.9重量%など、約0.3重量%~約0.8重量%など、約0.4重量%~約0.7重量%など、約0.5重量%~約0.6重量%などの、任意の好適な量であり得る。少なくとも一実施形態では、界面活性剤配合物中の界面活性剤の総量は、約0.5重量%未満など、約0.25重量%未満など、約0.2重量%未満など、約0.15重量%未満など、約0.1重量%未満などの約1重量%未満であり得る。一層高いおよび一層低い総量の界面活性剤が、企図される。
【0050】
上記の通り、界面活性剤配合物は、界面活性剤(複数可)の他に1種または複数の他の成分を含むことができる。界面活性剤配合物の1種または複数の他の成分は、塩(例えば、NaCl、CaCl、MgCl、MgSO、NaSO)、ブライン(例えば、ブライン組成物または低塩濃度ブライン組成物)、ポリマー(例えば、ポリ(ビニルアルコール)、キサンタンガム、ポリアクリルアミド)、アルカリ物質(例えば、NaOHおよび/またはNaCO)、疎水性物質、アルコール(例えば、sec-ブチルアルコール)、補助界面活性剤(他の化学物質の中でアルコール類など)またはそれらの組合せ)を含むことができる。
【0051】
界面活性剤配合物は、ブライン組成物を含むことができる。本明細書において使用する場合、「組成物」は、組成物の成分(複数可)および/または組成物の2種以上の成分の反応生成物(複数可)を含むことができる。組成物は、組成物の1種または複数の成分のイオン(複数可)を含むことができる。組成物は、任意の好適な混合プロセスによって調製することができる。
【0052】
ブライン組成物は、1種または複数の塩を含む。1種または複数の塩は、陽イオンおよび陰イオンを含む。陽イオンおよび/または陰イオンは、単原子または多原子であり得る。単原子陽イオンは、アルカリ金属(例えば、Li、K、RbおよびCs)、アルカリ土類金属(例えば、Be、Mg、Ca、SrおよびBa)、遷移金属(Fe、Zn、Mn)またはそれらの組合せを含むことができる。多原子陽イオンは、アンモニウム(NR であり、Rはそれぞれ、独立して、Hまたはアルキルである)、ピリジニウムまたはそれらの組合せなどを含むことができる。陰イオンは、N、P、S、O、F、Cl、Br、Iまたはそれらの組合せなどの、元素の周期表の第15族~第17族からの1種または複数の元素を含むことができる。単原子陰イオンは、ハロゲン化物イオン(F、Cl、BrおよびI)、オキシドイオンまたはそれらの組合せを含むことができる。多原子陰イオンは、炭酸イオン、硝酸イオン、硫酸イオン、スルホン酸イオン、トシル、トリフルオロメテスルホネート、リン酸イオン、ホスホン酸イオン、水酸化物イオン、またはそれらの組合せを含むことができる。他のイオンが企図される。
【0053】
溶液または懸濁液中では、塩(複数可)は、1種または複数のイオンとして存在することがある。例えば、1種または複数の陰イオン(例えば、Cl、Br、I、Srなど)および1種または複数の陽イオン(例えば、Na、K、Ca、Mgなど)が、溶液または懸濁液中で存在することがある。
【0054】
例示的であるが、非限定的な塩の例としては、とりわけ、塩化ナトリウム(NaCl)、臭化ナトリウム(NaBr)、ヨウ化ナトリウム(NaI)、硫酸ナトリウム(NaSO)、塩化カリウム(KCl)、臭化カリウム(KBr)、ヨウ化カリウム(KI)、硝酸カリウム(KNO)、塩化カルシウム(CaCl)、臭化カルシウム(CaBr)、ヨウ化カルシウム(CaI)、硫酸カルシウム(CaSO)、酸化カルシウム(CaO)、塩化マグネシウム(MgCl)、硫酸マグネシウム(MgSO)および/またはMg(OH)が挙げられる。これらの塩の1種または複数は、水和物、例えば、六水和物であり得る。一部の実施形態では、ブライン組成物は、塩化カルシウム、塩化マグネシウムおよび/またはそれらのイオンを含む。一部の実施形態では、ブライン組成物は、塩化ナトリウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウムおよび/またはそれらのイオンを含む。
【0055】
ブライン組成物は、いずれの界面活性剤の存在も除いて、任意の好適な量の任意の好適な総溶解固形物(TDS)含有物を含むことができる。TDSは、上記の塩に基づくことができる。一部の実施形態では、ブライン組成物のTDS含有率(ppm)は、約10,000ppm~約1,000,000ppmである。少なくとも一実施形態では、ブライン組成物のTDS含有率は、TDS~TDSの範囲であり、TDS~TDS(ppm)の各々は、TDS<TDSである限り、10,000、20,000、30,000、40,000、50,000、60,000、70,000、80,000、90,000、100,000、120,000、140,000、160,000、180,000、200,000、220,000、240,000、260,000、280,000、300,000、320,000、340,000、360,000、380,000、400,000、420,000、440,000、460,000、480,000、500,000、520,000、540,000、560,000、580,000、600,000、620,000、640,000、660,000、680,000、700,000、720,000、740,000、760,000、780,000、800,000、820,000、840,000、860,000、880,000、900,000、920,000、940,000、960,000、980,000または1,000,000である。上記の数の各々の前に、語「約」、「少なくとも約」、「約・・・未満」または「約・・・超」が付くことができ、上述の数のいずれも、単独で使用されて、オープンエンド範囲を記載するか、または組み合わされて、クローズエンド範囲を記載することができる。例えば、ブライン組成物のTDS含有率(ppm)は、約100,000以上、約200,000~約400,000、約320,000以下、または少なくとも約300,000である。ブライン組成物の一層高いまたは一層低いTDS含有率(ppm)が、企図される。
【0056】
一部の実施形態では、ブライン組成物のTDS含有量(g/L)は、いずれの界面活性剤の存在も除いて、240、250、260、270、280、290、300、310、320、330、340、350、360、370、380、390または400である。上記の数の各々の前に、語「約」、「少なくとも約」、「約・・・未満」または「約・・・超」が付くことができ、上述の数のいずれも、単独で使用されて、オープンエンド範囲を記載するか、または組み合わされて、クローズエンド範囲を記載することができる。例えば、ブライン組成物のTDS含有量(g/L)は、約260以上、約310~約330、少なくとも約290または約320であり得る。ブライン組成物の一層高いまたは一層低いTDS含有量(g/L)が、企図される。
【0057】
一部の実施形態では、ブライン組成物は、いずれの界面活性剤の存在も除いて、任意の好適な総溶解固形物(TDS)含有物を含む低塩濃度ブライン組成物である。低塩濃度ブライン組成物のTDS含有率(ppm)は、約100ppm~約10,000ppmであり得る。少なくとも一実施形態では、低塩濃度ブライン組成物のTDS含有率は、TDS~TDSの範囲であり、TDS~TDS(ppm)の各々は、TDS<TDSである限り、100、150、200、250、300、350、400、450、500、550、600、650、700、750、800、850、900、950、1000、1100、1200、1300、1400、1500、1600、1700、1800、1900、2000、2100、2200、2300、2400、2500、2600、2700、2800、2900、3000、3100、3200、3300、3400、3500、3600、3700、3800、3900、4000、4100、4200、4300、4400、4500、4600、4700、4800、4900、5000、5100、5200、5300、5400、5500、5600、5700、5800、5900、6000、6100、6200、6300、6400、6500、6600、6700、6800、6900、7000、7100、7200、7300、7400、7500、7600、7700、7800、7900、8000、8100、8200、8300、8400、8500、8600、8700、8800、8900、9000、9100、9200、9300、9400、9500、9600、9700、9800、9900または10,000である。上記の数の各々の前に、語「約」、「少なくとも約」、「約・・・未満」または「約・・・超」が付くことができ、上述の数のいずれも、単独で使用されて、オープンエンド範囲を記載するか、または組み合わされて、クローズエンド範囲を記載することができる。例えば、低塩濃度ブライン組成物のTDS含有率(ppm)は、約100以上、約200~約2,000、約5,000以下、または少なくとも約400である。低塩濃度ブライン組成物の一層高いまたは一層低いTDS含有率(ppm)が、企図される。
【0058】
一部の実施形態では、低塩濃度ブライン組成物は、いずれの界面活性剤の存在を除いて、TDS含有量(g/L)を有し、いずれの界面活性剤の存在も除いて、0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1、1.5、2、2.5、3、3.5、4、4.5または5である。上記の数の各々の前に、語「約」、「少なくとも約」、「約・・・未満」または「約・・・超」が付くことができ、上述の数のいずれも、単独で使用されて、オープンエンド範囲を記載するか、または組み合わされて、クローズエンド範囲を記載することができる。例えば、低塩濃度ブライン組成物のTDS含有量(g/L)は、0.2~約0.5、約1以下、約0.5~約5であり得る。
【0059】
一部の実施形態では、ブラインのTDS含有率は、いずれの界面活性剤の存在も除き、約100,000ppm~約700,000ppmなど、約200,000ppm~約500,000ppmなど、約300,000ppm~約400,000ppmなどの約50,000ppm~約1,000,000ppmである。一部の実施形態では、ブライン組成物は、約40,000ppm未満など、約30,000ppm未満など、約20,000ppm未満など、約10,000ppm未満など、約5,000ppm未満など、約2,000ppm未満など、約1,500ppm未満など、約50ppm~約1,500ppmなど、約100ppm~約1,000ppmなど、約200ppm~約900ppmなど、約300ppm~約800ppmなど、約400ppm~約700ppmなど、約500ppm~約600ppmなどの約50,000ppm未満である、TDS含有率を有する。他の範囲が企図される。
【0060】
一部の実施形態では、ブライン組成物および/または低塩濃度ブライン組成物は、都市用水、海水、または他の資源からの水などの水を含む。
【0061】
方法
本開示の実施形態はまた、本明細書に記載されている界面活性剤または界面活性剤配合物を利用する方法に関する。界面活性剤または界面活性剤配合物は、石油含有多孔質媒体を処理する方法、石油含有多孔質媒体の湿潤性を変更する、変化させるまたは逆転させる方法、および石油含有多孔質媒体に由来する炭化水素(石油)を生産する方法と共に使用され得る。本明細書に記載されている界面活性剤または界面活性剤配合物を使用する他の方法が企図される。本明細書に記載されている方法の実施形態は、例えば、最先端に関連する改善された方法で、石油含有多孔質媒体からの石油回収、石油含有多孔質媒体からの石油回収増進、および/または石油含有多孔質媒体の湿潤性逆転を可能にすることができる。
【0062】
これらの方法はそれぞれ、一般に、界面活性剤または界面活性剤配合物を石油含有多孔質媒体に導入することを含む。界面活性剤または界面活性剤配合物を石油含有多孔質媒体に導入することは、石油含有多孔質媒体に、界面活性剤または界面活性剤配合物を接触させることを含む。一部の実施形態では、接触は、界面活性剤または界面活性剤配合物を、石油含有多孔質媒体の表面に接触するようにすることを含む。一部の実施形態では、接触は、界面活性剤または界面活性剤配合物を、石油含有多孔質媒体の細孔の内部に接触するようにすることを含む。一部の実施形態では、接触は、界面活性剤または界面活性剤配合物を、石油含有多孔質媒体の表面に吸着した物質に接触するようにすることを含む。一部の実施形態では、接触は、界面活性剤または界面活性剤配合物を、石油含有多孔質媒体の細孔の表面に吸着された物質、または細孔の内部に吸収された物質と接触するようにすることを含む。
【0063】
界面活性剤または界面活性剤配合物を石油含有多孔質媒体に導入することは、周囲条件または貯留条件で行うことができる。温度は、約20℃~約200℃など、約50℃~約150℃など、約75℃~約125℃などの約10℃~約250℃の範囲とすることができる。他の温度が企図される。圧力は、約15psi~約12000psiなど、約300psi~約10,000psiなど、約500psi~約8,000psiなど、約1,000psi~約6,500psiなど、約6,000psiなどの約0psi~約15,000psiの範囲とすることができる。
【0064】
添加剤注入システムなどの当分野で公知の好適な方法および装置が、界面活性剤または界面活性剤配合物を、石油含有多孔質媒体に導入するために利用され得る。本方法の実施の間に石油を回収することが望ましい場合、当分野において公知の好適な装置および方法(例えば、石油抽出装置)を利用して、石油含有多孔質媒体を回収、収集、抽出、または他には、これから石油を取り出すことができる。
【0065】
本明細書に記載されている方法は、非在来型貯留層および在来型貯留層に行うことができる。本方法は、様々な石油含有層および貯留層に行うことができる。このような層および貯留層は、石油含有多孔質媒体を含む。本方法は、一次、二次および/または三次回収操作などの回収操作がすでに施されたものなどの、層、貯留層および石油含有多孔質媒体に行うことができる。層、貯留層および石油含有多孔質媒体はまた、このような回収操作が未だ施されていないものを含むことができる。一部の実施形態では、石油含有多孔質媒体は、原油などの炭化水素を含む。一部の実施形態では、石油含有多孔質媒体は、原油を含む油湿潤性多孔質媒体を含む。
【0066】
一部の実施形態では、石油含有多孔質媒体は、任意の好適な石油含有多孔質媒体であり得る。例えば、石油含有多孔質媒体は、石英、方解石(CaCO)、長石、ドロマイト(MgCO)、シリカ、イライト、アパタイト、白雲母、ルチル、石膏、硬石膏、シャモサイト、クリノクロア、ジルコン、黒雲母、黄鉄鉱、カオリナイト、雲母鉱物、微量ミネラル、有機物またはそれらの任意の組合せを含むことができる。一部の例では、石油含有多孔質媒体は、タイト多孔質媒体を含む。一部の例では、石油含有多孔質媒体は、岩石を含む。一部の実施形態では、石油含有多孔質媒体は、石英、方解石、長石およびドロマイトを含む。一部の例では、石油含有多孔質媒体は、ドロマイトを含む。一部の例では、石油含有多孔質媒体は、油湿潤性多孔質媒体、混成湿潤性多孔質媒体または弱水湿潤性多孔質媒体を含む。一部の例では、石油含有多孔質媒体は、石英、方解石、長石、ドロマイト、イライト、アパタイト、白雲母、ルチル、石膏、硬石膏、シャモサイト、クリノクロア、ジルコン、黒雲母、黄鉄鉱、膨張クレイ、カオリナイト、雲母鉱物、微量ミネラルまたはそれらの任意の組合せを含む、油湿潤性多孔質媒体を含む。
【0067】
本明細書に記載されている方法は、非在来型貯留層および在来型貯留層に行うことができる。現在、非在来型貯留層の化学的攻法のための最先端方法には、限界があり、この方法を利用する場合、貯留層から生産される石油の量は不十分である。本明細書に記載されている方法の実施形態は、これらの問題および他の問題を克服する。
【0068】
一部の実施形態では、本明細書に記載されている方法は、タイトオイル貯留層中、在来型オイル貯留層中、水圧破砕されたタイトオイル貯留層中、および/またはタイト多孔質媒体表面に行うことができる。用語「タイト」は、石油、貯留層または石油回収に関して本明細書において使用される場合、技術の用語であり、本明細書において、その技術分野で認識されている定義と一致して使用される。例えば、タイト多孔質媒体は、非在来型貯留層、あるいは約50ミリダルシー(mD)未満、または一部の実施形態では、約2mDもしくは1mDの平均浸透率を有する低浸透性多孔質媒体に関して、通常、使用される用語である。
【0069】
一部の実施形態では、本明細書に記載されている方法は、タイト多孔質媒体、油湿潤性多孔質媒体、弱油湿潤性多孔質媒体、弱水湿潤性多孔質媒体および/または水湿潤性多孔質媒体で行われる。一部の実施形態では、多孔質媒体は、MNC炭酸塩露頭岩石を含む。
【0070】
一部の実施形態では、多孔質媒体は、任意の好適な細孔サイズを有する。例えば、一部の実施形態では、細孔サイズ(nm)は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、12、14、16、18、20、25、30、35、40、45、50、60、70、80、90、100、120、140、160、180、200、250、300、350、400、450、500、550、600、650、700、750、800、850、900、950または1000である。上記の数の各々の前に、語「約」、「少なくとも約」、「約・・・未満」または「約・・・超」が付くことができ、上述の数のいずれも、単独で使用されて、オープンエンド範囲を記載するか、または組み合わされて、クローズエンド範囲を記載することができる。例えば、および一部の実施形態では、細孔サイズは、約1nm~約3nm、約400nm~750nm、約300nm未満または少なくとも約450nmである。
【0071】
一部の例では、本明細書に記載されている方法は、水圧破砕されたタイトオイル貯留層において行われる。ここで、および界面活性剤または界面活性剤配合物を石油含有多孔質媒体に導入する前に、本方法は、タイトオイル貯留層中の岩石層における破砕物を生成すること、およびプロパントを投与することによって、破砕物を開口状態に支えることを含む。
【0072】
一部の実施形態では、石油含有多孔質媒体は、水湿潤性、高水湿潤性、弱水湿潤性、混成湿潤性、弱油湿潤性、高油湿潤性または油湿潤性であるとして特徴付けられる。通常、石油回収は、石油含有多孔質媒体が、範囲の水湿潤側にある場合に改善される。一部の実施形態では、界面活性剤または界面活性剤配合物を石油含有多孔質媒体に導入した後に、多孔質媒体を含有する石油の特徴を、前述の特性(例えば、油湿潤性)の1つまたは複数から異なる特性(例えば、水湿潤性)に変更する、変化させるおよび/または逆転させることができる。例えば、本方法は、石油含有多孔質媒体の、油湿潤状態から水湿潤状態への、またはその逆への湿潤性逆転(または変化)をもたらすことができる。別の例では、本方法は、石油含有多孔質媒体の、弱水湿潤状態から水湿潤状態への湿潤性逆転(または変化)をもたらすことができる。別の例では、本方法は、石油含有多孔質媒体の、非水湿潤状態から水湿潤状態への湿潤性逆転(または変化)をもたらすことができる。湿潤性の他の変化、変更または逆転が企図される。
【0073】
用語「湿潤性逆転」とは、より油湿潤性(ある範囲にある)である物体(例えば、多孔質媒体、岩石など)を一層の水湿潤性(ある範囲にある)に変更すること、または一層の水湿潤性(ある範囲にある)である物体を一層の油湿潤性(ある範囲にある)に変更することを指す。この点で、一層の油湿潤性である物体(例えば、多孔質媒体)は、油ならびに他の疎水性流体および物質によってより湿潤され易く、一層の水湿潤性である物体(例えば、多孔質媒体)は、水性流体によってより湿潤され易く、およびそれらの反対である。混成湿潤性物体(例えば、多孔質媒体)は、油湿潤性物体と水湿潤性物体との間のどこかで湿潤され易さを有する。同様に、弱水湿潤性(WWW)および高水湿潤性(SWW)は、ある範囲上の相対的な水湿潤性または油湿潤性の程度を指定する。このような用語は、当分野で認識されている用語である。用語「非水湿潤」とは、水によって優先的に湿潤されない任意の多孔質媒体を指す。
【0074】
本明細書に記載されている通り、石油含有多孔質媒体の油湿潤特性のために、最先端法および組成物を利用する石油の回収の取り組みが妨げられてきた。すなわち、油湿潤性貯留層および層での回収に限界がある。本明細書に記載されている実施形態は、これらの問題および他の問題を克服する。例えば、および本明細書に記載されている通り、界面活性剤(複数可)または界面活性剤配合物(複数可)を石油含有多孔質媒体(元々、油湿潤性混成湿潤状態)に導入することにより、石油含有多孔質媒体の水湿潤状態(例えば、WWW状態および/またはSWW状態)への転化がもたらされ、これによって、石油含有多孔質媒体から石油回収を増強することができる。
【0075】
界面活性剤(複数可)または界面活性剤配合物(複数可)と石油含有多孔質との間の接触は、自発吸収および石油生産を誘導することができる。理論によって拘泥されることを望むものではないが、いくつかの機構は、有機相と水性相との間の界面張力(IFT)の低下、および岩石の一層の水湿潤状態への湿潤性逆転を含めたこのような作用に寄与することができると考えられる。所望の場合、自発吸収を誘導することによって岩石マトリックスに到達するよう、石油回収のために利用される水圧破砕用流体または他の流体に、本明細書に記載されている界面活性剤(複数可)または界面活性剤配合物(複数可)を添加することができ、こうして、石油生産が増強される。
【0076】
本開示の実施形態は、以下の非限定例によってさらに理解され得る。以下の非限定例は、当業者に完全な開示、ならびに本開示の実施形態を作製する方法および使用する方法を提供するよう提示されており、本開示の実施形態の範囲を限定することを意図するものでない。
【実施例
【0077】
実施例は、例えば、石油含有タイト多孔質媒体において、石油回収および湿潤性逆転に及ぼす、界面活性剤の構造の影響、および界面活性剤(複数可)の影響を例示する。実施例はまた、流体/岩石相互作用に及ぼす界面活性剤の構造の影響、ならびに様々な条件(例えば、周囲条件、貯留条件)および様々なブラインの塩分濃度下で、例えば、弱水湿潤性および/または油湿潤性多孔質媒体における、湿潤性逆転のための界面活性剤組成物/配合物の特定を実証する。他の特徴が例示される。
【0078】
岩石試料:均一性および目標貯留層岩石に近い鉱物学であることが理由で、代表的な炭酸塩露頭試料として、Minnesota Northern Cream(MNC)を選択した。図1Aおよび図1Bに示されている通り、ドロマイトはその鉱物の約70%を構成し、石英がその粒子の約23%を占める。表1は、実施例に利用した、MNC露頭コア試料のいくつかの石油物理特性を示す。
【0079】
流体:貯留層原油を実施例に使用した。捕捉されている水および固形物を、約22℃で約1時間、約6,000rpmで遠心分離することによって、原油から分離した。次に、原油を約0.5μmの細孔サイズのフィルターを有するインラインフィルターに通してろ過した。原油の密度は、約6,000psiおよび約120℃において、インライン密度計を使用して、約0.7779g/cmと測定された。
【0080】
2種のタイプのブライン、すなわち「貯留ブライン」(「ブランクブライン」とも称する)および「低塩濃度ブライン」を実施例に使用した。貯留ブラインまたはブランクブラインを利用して、実施例のデータに使用した界面活性剤溶液のすべてを調製した。
【0081】
実施例に使用した貯留ブライン(「ブランクブライン」とも称する)は、約320,000ppmの全溶解固形物(TDS)を有し、概ね、塩化ナトリウム、塩化マグネシウムおよび塩化カルシウムを含有した。実施例の周囲条件(約14.7psiおよび約20℃)および実施例貯留条件(約6,000psiおよび約120℃)において、ブランクブラインおよび原油の密度を表2に一覧表示する。周囲条件および貯留条件における、ブランクブラインの密度は、それぞれ、約1.2101g/cmおよび約1.1654g/cmと求まった。周囲条件および貯留条件における原油の密度は、それぞれ、約0.8263g/cmおよび約0.7779g/cmと求まった。
【0082】
低塩濃度ブラインもまた、実施例のいくつかのパートにおいて使用した。低塩濃度ブラインは、約500ppmの塩濃度を有し、概ね、塩化マグネシウムおよび塩化カルシウムを含んだ。このような低塩濃度ブラインを、水圧破砕操作の間に使用される都市用水の代表として使用した。低塩濃度ブラインは、蒸留水に溶解した塩を溶解することによって調製した(抵抗率は、約0.208MΩ cmである)。
【0083】
表3は、実施例に使用した8種の陽イオン性界面活性剤を示す。界面活性剤を購入し、さらに精製することなく使用した。
【0084】
示されている通り、陽イオン性界面活性剤は、第四級アンモニウム化合物である。最初の4種の陽イオン性界面活性剤の化学式は、CH(CHN(CHClであり、次の4種は、CH(CHN(CHBrという式を有する。これらの陽イオン性界面活性剤の各1つに関して、アルキル基中のCH基の数(n)は、以下の値:7、11、15および17を有する。陽イオン性界面活性剤の成績は、例えば、対イオン/親水性頭部(塩化物イオン/臭化物イオン)と疎水性鎖の長さ(n)の両方に基づいて試験した。
【0085】
検討した陽イオン性界面活性剤は、様々な数のメチレン(CH)基を有する。TOAC、DTAC、CTACおよびTSACに関する疎水性(アルキル)鎖の炭素原子数は、それぞれ、8個の炭素原子(7個のメチレン炭素+1個のメチル炭素)、12個の炭素原子(11個のメチレン炭素+1個のメチル炭素)、16個の炭素原子(15個のメチレン炭素+1個のメチル炭素)および18個の炭素原子(17個のメチレン炭素+1個のメチル炭素)である。同様に、TOAB、DTAB、CTABおよびTODABに関する疎水性(アルキル)鎖の炭素原子数は、それぞれ、8個の炭素原子(7個のメチレン炭素+1個のメチル炭素)、12個の炭素原子(11個のメチレン炭素+1個のメチル炭素)、16個の炭素原子(15個のメチレン炭素+1個のメチル炭素)および18個の炭素原子(17個のメチレン炭素+1個のメチル炭素)である。
【0086】
表4は、実施例に使用した、20種の非イオン性界面活性剤-アルコールエトキシレート類を示している。表4において、nは、エチレンオキシド(EO)単位の数である。様々な界面活性剤ファミリーを選択する目的の1つは、成績(石油回収および湿潤性逆転)に及ぼす、親水性鎖長(エチレンオキシド(EO)単位の数)および疎水性鎖長の影響を調査することであった。
【0087】
表5は、実施例に利用した、様々な陽イオン性および非イオン性界面活性剤の陽イオン性-非イオン性ブレンドを示す。ブレンドは、個別の混合比で調製した。
【0088】
マイクロエマルション相挙動:異なる構造を有する界面活性剤のマイクロエマルション相挙動を、温度に関して検討した。相挙動に及ぼす界面活性剤疎水性鎖長の影響は、常温(約22℃)および高温(約80℃)で試験した。これらの実験の場合、ガラスピペットに約1:1の比のブライン/原油、または約1:1の比の界面活性剤溶液/原油を充填した。次に、これらのピペットをトーチで密封し、約24時間(h)、約250rpmの速度で振盪した。次に、これらのピペットを数日間、モニタリングし、画像を記録した。
【0089】
密度:2つの相(石油およびブライン;または石油および界面活性剤溶液)の密度を、Anton Paar製のDMA45密度計を使用して、大気圧および22℃で測定した。2つの相の密度を、インライン密度計(DMA HPM、Anton Paar)を使用して、貯留条件(120℃、6000psi)においてやはり測定した。
【0090】
表面/界面張力および接触角:例えば、試験した条件、試料の密度およびIFTが非常に低いかどうかに応じて、様々な方法を利用して、試料の表面張力および界面張力(IFT)を測定した。本方法は、キャプティブバブル/ライジングバブル法、ペンダントドロップ法およびスピンニングドロップ法を含んだ。
【0091】
キャプティブバブル/ライジングバブル法:キャプティブバブル/ライジングバブル法を利用して、貯留条件における、動的IFTおよび接触角を測定した。本方法は、以下の通り行った。ニードルを介して軽い方の相を注入し、重い方の相内に気泡を形成させた。2つの相間のIFTを、軸対称ドロップ形状解析(ADSA)により、Young-Laplace式を使用して、気泡の形状から計算した。測定に採用した最先端の界面張力および接触角(IFT/CA)装置が、Sarajiら、Wettability of Supercritical Carbon Dioxide/Water/Quartz Systems:Simultaneous Measurement of Contact Angle and Interfacial Tension at Reservoir Conditions、Langmuir、29巻(2013年)6856~6866頁によって記載および使用されている。この実験装置は、高温(最大で200℃)および高圧(最大で8000psi)で操作することができる。この装置は、ハステロイ測定用セル、電荷結合デバイス(CCD)カメラ、測定用セル内部の圧力を維持するためのデュアル-シリンダー5000シリーズハステロイQuizix製ポンプ、温度制御システム、およびセル内の温度を測定するための熱電対を含んだ。実験装置はまた、気泡の画像をキャプチャするためのLeica LASソフトウェアを備える、データ取得システム、および気泡の形状から界面張力を計算するためのADSAアルゴリズムを使用するIFT分析プログラムを含んだ。貯留条件におけるIFT測定に関すると、測定用セルに、Quizix製ポンプを使用して、ブライン相(または、試験した試料に応じて、界面活性剤溶液)を充填した。その後、セルを所望の圧力まで加圧し、測定用セルの周囲をしっかりと包んだ加熱ジャケットを使用して昇温した。圧力と温度の両方が安定すると、Quizix製ポンプを使用して、ニードルから石油を注入してセル内に液滴を形成した。接触角測定の場合、液滴をニードルから固体基材上に注入し、時間と共にいくつかの画像をキャプチャし、ImageJソフトウェアを使用してこれらの画像を分析することによってモニタリングした。
【0092】
ペンダントドロップ法:ペンダントドロップ法は、懸濁相の密度がバルク相の密度よりも高い場合に主に利用した。キャプティブバブル/ライジングバブル法に使用したデバイスと同じデバイスをペンダントドロップ法に使用する。この方法は、液/液および液/気系の界面張力および表面張力を決定するため、ニードルから懸濁させた液滴からなる。周囲条件において、界面活性剤溶液と空気との間の表面張力測定を使用して、陽イオン性界面活性剤の臨界ミセル濃度(CMC)を測定した。一部の例では、自発吸収速度は、界面活性剤濃度の向上、とりわけCMCを超えることに伴って、必ずしも向上しない。したがって、一般に、この測定は、この分野において通常、使用されるCMCであるCMC(約0.1重量%)より高い濃度で行った。
【0093】
スピニングドロップ法:スピニングドロップ法を利用して、超低IFT値を測定した。KRUSSスピニングドロップテンシオメータを含む機器を使用し、スピニングドロップ法は、以下の通り行った。キャピラリープラグから界面活性剤溶液を充填したキャピラリー管に、原油の液滴を放った。ガラスキャピラリー管を回転させながら、ソフトウェア制御した機器が、界面力と遠心力との間のバランスに依存する液滴形状を分析することによって、石油とブラインとの間のIFTを測定した。低回転速度では、IFTが主な力となり、液滴の形状は球体である。この場合、ソフトウェアは、Young-Laplace式を使用してIFTを計算する。角速度が高い場合、液滴は細長く(長さは、直径よりも少なくとも4倍である)、Vonnegutの式を使用して、IFTを計算する。
【0094】
周囲条件におけるクラフト点および曇り点温度:周囲条件において、クラフト点および曇り点温度を以下の通り決定した。約0.1重量%の界面活性剤溶液を含有する新しいブライン溶液を調製し、25mlのガラス製バイアルに注いだ。バイアルに栓をして、約22℃の初期温度で、水浴および/またはヒーター中に縦方向に置いた。水浴の温度を徐々に、約5℃の増分で、約22℃から約90℃まで昇温し、温度計でモニタリングした。各増分に関すると、ブラインが水浴で熱平衡(温度の安定化)に到達するのに少なくとも20分間、通常、かかった。曇り点およびクラフト点は、曇りが観察されたまたは消失した温度を記録することによって目視により決定した。ブライン溶液の画像は、各温度の安定化後に捕捉した。
【0095】
貯留条件におけるクラフト点および曇り点温度:貯留条件では、クラフト点および曇り点温度は、以下の通り決定した。上記のキャプティブバブル/ライジングバブル装置を使用して、貯留条件における界面活性剤の溶解度を検討した。上で議論したQuizix製ポンプを使用して、セルにブラインを充填し、これを加圧した。セルの周囲を包んだ加熱ジャケットを使用して、ブラインの温度を約100℃~120℃の温度まで徐々に昇温した。圧力は、特に示さない限り、6,000psiに設定した。このプロセスの間に、CCDカメラを使用して、各温度におけるブライン溶液の画像をキャプチャした。この溶液の相挙動の変化を観察するため、セルに挿入したIFTニードルおよび溶液内の視界を調べることによって溶液の透明度をモニタリングした。通常、ニードルは、透明な溶液中では目視可能であり、一部に曇りのある溶液中ではかすむと思われる。完全に濁りのある溶液中では、ニードルは、通常、キャプチャした画像では、検出不可能であると思われる。
【0096】
高温における自発吸収:これらの試験の場合、コア試料を調製してエージングした。エージング後、自発吸収試験を高温で行った。コア試料の調製/エージング、および自発吸収を決定する方法は、以下の通り行った。
【0097】
コア試料の調製:MNC炭酸塩コアプラグに穴を開けて、約2.4”(長さ)および約1.5”(直径)のサイズに裁断した。コアの表面から残留物を除去し、水道水ですすいだ。次に、このコアを約110℃で約3日間、オーブン中で乾燥した。乾燥コア試料の重量および寸法を取得した。コア試料の孔隙率および浸透率を自動化ヘリウムポロシメータおよび透磁率計を使用して測定した。それぞれ、少なくとも約24時間、および約5日間、乾燥MNCコアを室温で真空セルに置いた。次に、コア試料を約24~約72時間の期間、原油で真空飽和させた。
【0098】
コア試料のエージング:石油飽和コアをハステロイ耐圧容器に入れて、新しい原油に浸漬した。耐圧容器をハステロイキャップで固定し、オーブン内に入れた。容器の圧力およびオーブンの温度をそれぞれ、約100psiおよび約120℃に上昇させた。100%の石油飽和MNCコア試料に関するエージング期間を4週間とし、これは、一般に、弱水湿潤性岩石をもたらした。
【0099】
エージングの間の一層強力な湿潤性変化を確実にし、界面活性剤溶液を試験するため、自発吸収による、MNCコアにおける約20%のブランクブラインでの飽和を確立することからなる新規なエージング方法を採用した。これらのコアを油湿潤性MNC試験に使用した。試料を真空にして石油で飽和させた後、試料を秤量し、周囲条件で、個々の低精度ガラス製Amottセルに入れた。約20~25%のブラインを各コアに吸収させた後、再度、試料を秤量し、エージング用セルに入れて、貯留層原油に浸漬して、上述の条件で5週間、エージングした。このエージング法により、油湿潤性岩石を生成した。利用したエージング手順を表6に要約する。
【0100】
総合的に、MNC露頭炭酸塩における高い油湿潤性の場合の最も有効な方法を確立するため、異なるエージング方法を試験した。一部の状況において、貯留条件において、コアの石油飽和およびその後のエージング前に約20~25%の初期ブライン飽和を確立した場合に、一層の油湿潤状態への湿潤性変化が最良であった。
【0101】
貯留層温度における自発吸収:自発吸収試験のすべてを高温で行った。社内貯留層温度自発吸収装置は、University of WyomingにおけるPiri研究グループによって組み立てられた。ガラスドアを有する特注設計のオーブンをSheldon Manufacturing Companyから購入した。セルホルダーは、University of Wyomingにおいて設計および組み立てられて、10個のAmottセルを各オーブン内に安全に入れた。圧力解除弁を備えるマニホールドを構築して、約30~45psiの圧力を有するガラス製セル中の実験を可能にした。この圧力を適用して、高温でのセル内部の石油のエパポレーションを阻止した。各Amottセルを個々に、ニードル弁および圧力解除弁に1/16インチの高圧力および高温可撓性管により接続し、各セルの圧力を制御した。実験は約100℃および約45psiで行い、様々な分解能を有する2種のタイプのセルをこれらの実験に組み立てた。低分解能(0.1cmの精度)を、在来型露頭試料に使用した。高分解能(例えば、0.01cm精度)を、非在来型露頭試料に使用した。
【0102】
実施例に採用したエージング方法の有効性を評価するため、高温における自発吸収をブランクブラインおよび様々な手順を使用してエージングしたMNC露頭試料を使用して行った。最初の試験は、いかなるエージングも受けていない完全に石油で飽和させたMNCコアに行った一方、2番目の試験は、同じ岩石を使用したが、約120℃および約100psiにおいて5週間、石油中でエージングした。約5週間、上述の条件下、石油中でエージングする前に、約20%のブライン飽和を確立した、第3のタイプのエージングを含んだ。
【0103】
図2は、時間の関数としての回収率(%)に関する、様々にエージングしたMNC露頭試料へのブランクブラインの自発吸収に関する回収率結果を示す例示的なグラフである。実施例201および実施例202は、それぞれ、弱水湿潤(WWW)条件および高水湿潤(SWW)条件の場合の、通常通りにエージングしたMNCにおけるブラインによる自発吸収に関するデータを表す。実施例203および実施例204は、同じ実験の反復としての、油湿潤(OW)条件に関するデータを表す。通常通りにエージングしたMNCにおけるブラインの自発吸収により、概して、WWW条件(実施例201)とSWW条件(実施例202)との間に約9%の回収率の差異をもたらした。反対に、初期水飽和によるエージングは、OW条件を一般にもたらし、WWWコアから約24%、およびSWWコアと比較して約33%の回収率差異が生じた。したがって、および試験した条件では、後者のエージングは、岩石の湿潤性を通常のエージング(石油だけ)よりも油湿潤状態に変更するのに一層有効であることが総じて示された。さらに、このようなタイプのエージングからの回収率は、試験した条件に関して再現性があった。
【0104】
高温における弱水湿潤性(WWW)炭酸塩における自発吸収による石油回収を、様々な陽イオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤およびそれらのブレンドを使用して試験した。図3A図3B図4A図4B図5A~5D、図6および図7A~7Cは例示的であるが、非限定的な結果を例示する。図4A図4B図5A図5D図6および図7A図7Cにおいて、0.1重量%の界面活性剤または0.1重量%の界面活性剤ブレンドを含む溶液を、ブランクブラインを使用して作製した。
【0105】
エージング結果から、通常でエージングしたMNC露頭を弱水湿潤性炭酸塩と称した。図3Aは、ブランクブラインを使用して、高温で弱水湿潤性(WWW)MNCコアからの石油回収率を示す。図3Bは、TOAC溶液(ブランクブライン中の約0.1重量%のTOAC)を使用する、高温でのWWW MNCコアからの石油回収率を示している。
【0106】
図3Aは、油滴301が、ブランクブラインの存在下で、コア表面に広がり、大きな接触角を形成するので、ある程度の湿潤性変化がエージング後に起こっていることを示した。対照的に、および図3Bに示されている通り、湿潤性を逆転させる界面活性剤TOACの使用は、概して、広がりのない油滴301をもたらし、より小さな接触角を形成した。さらに、石油は、例えば、重力よりも毛細管力の方が優位であるため、向流の自発吸収を示したコアの側面のすべてから回収され、湿潤性逆転の発生を示した。
【0107】
ブランクブラインおよび低塩濃度ブラインに加え、8種の陽イオン性界面活性剤-TOAB、TOAC、DTAB、DTAC、CTAC、CTAB、TSACおよびTODABおよび非イオン性界面活性剤POE18を使用して、いくつかの試験を行った。例えば、高温におけるその安定性のために、図4Aに示されている通り、低塩濃度ブラインにより、一部の状況では、最も速い石油回収がもたらされた。しかし、図4Bに例示されている通り、最終的な石油生産量は、ブランクブラインのそれと同等であった。この結果は、低塩濃度ブラインのIFTが中程度に低いためであり得、吸収の早い段階で、細孔および気道の一層高い侵襲をもたらす。非イオン性POE18は、概して、最速回収速度を実現しない場合でさえも、最終的な石油生産量は、試験した条件下でこの界面活性剤を使用すると概して最高となった。
【0108】
陽イオン性界面活性剤の中で、最も短い疎水性鎖を有するTOABおよびTOACは、試験した条件下で、最も高い回収率を総じてもたらし、わずかに長いアルキル鎖を有するDTABおよびDTACがそれに続いた(図4B)。8種の陽イオン性界面活性剤は、一般に、小さな値(約6%)から大きな値(約42%)までの範囲の、様々な究極的な石油回収率をもたらした。これらの結果は、例えば、湿潤性が、エージングの間に、一般に効率よく変更されなかったので、ブランクブラインによる究極回収率と同等であった。油湿潤性MNCコア試料を用いて同じ実験を繰り返し、以下に記載されている通り、界面活性剤の成績を効率的に試験した。
【0109】
図5A図5Dは、様々な対イオンを有する、陽イオン性界面活性剤を利用する石油回収率に関する例示的なデータを示している。具体的には、図5Aおよび5Bは、塩化物の親水性頭部を有する陽イオン性界面活性剤を利用する石油回収率に関するデータを示しており、図5Cおよび5Dは、臭化物の親水性頭部を有する陽イオン性界面活性剤を利用する石油回収率に関するデータを示している。最短の疎水性尾部(8個の炭素原子、CH(CH)を有する、TOACおよびTOABは、試験した条件下で、最速および最高の石油生産量をもたらした。界面活性剤の疎水性が増大すると、多孔質媒体における石油の置換効率が低下した。
【0110】
試験した条件下での2番目に効果的な陽イオン性界面活性剤は、12個の炭素原子(CH(CH11)の疎水性鎖/尾部を有するもの、すなわちDTACおよびDTABであった。16個の炭素原子(CH(CH15)の疎水性鎖/尾部を有するCTABおよびCTACは、エージングしたMNC試料からの最低の石油生産量を一般にもたらした。CTABおよびCTACが、18個の炭素原子(CH(CH17)の最長疎水性尾部を有する界面活性剤、すなわちTSACおよびTODABを上回った。この結果は、これら2種の界面活性剤が実現した最小のIFTに起因した。さらに、塩化物イオン頭部を有する陽イオン性界面活性剤は、臭化物イオン頭部を有する陽イオン性界面活性剤よりも一般に成績が良かった。
【0111】
非イオン性界面活性剤POE18と4種の陽イオン性界面活性剤TOAC、TOAB、DTACおよびDTABのうちの1つとのブレンドを試験した。各陽イオン性界面活性剤を非イオン性界面活性剤と、約50:50v/vの体積比でブレンドした。図6は、純粋な界面活性剤溶液に対する、ブレンドを使用した石油回収率を示す。純粋なPOE18溶液は、概して、TOABおよびTOACよりも高い回収率を有した。純粋なTOACおよびTOAB溶液は、類似した究極回収率を概して生じたが、TOACは、例えば、TOABに比べて、IFTがより小さいため、石油生産は一層速かった。
【0112】
TOABは、POE18とブレンドした場合、一般に、TOACよりも優れていた。4種のブレンドのうち、TOAB-POE18(約50:50v/v)は、最速および最高の回収を概してもたらした。異なる体積比のTOAB-POE18、具体的には、約25:75v/vおよび約75:25v/vも試験した。約75:25v/vの体積比を有するTOAB-POE18混合物は、約50:50v/vの体積比を有するTOAB-POE18混合物よりも低くかつ遅い回収を概してもたらした。一方、TOAB(約25%)に対するPOE18(約75%)の体積比を増大すると、試験した配合物の中で、最速かつ最高の回収がもたらされた。POE18のIFT特徴付けにより、POE18が良好なIFT低下剤であることが示され、図6の結果は、TOABが、湿潤性逆転に一般に有効であることを示している。したがって、特定の比での湿潤性変化およびIFT低下の効果を組み合わせることによって、例えば、有益な回収結果を実現することができる。
【0113】
非イオン性界面活性剤ファミリーもまた、WWW MNC露頭試料を用いて試験し、例えば、自発吸収による、石油回収率に及ぼす親水性(エチレンオキシド(EO))と疎水性(アルキル)鎖長の両方の影響を検討した。図7A~7Cは、様々な例となる非イオン性界面活性剤およびブラインを利用する、自発吸収による石油回収率の例示的なデータを示す。具体的には、図7A図7Bおよび図7Cは、それぞれ、トリデシルエトキシル化アルコール類(13個の炭素原子からなる疎水性鎖を有する)、ポリ(オキシエチレン)アルコール類(11個または9~11個の炭素原子からなる疎水性鎖を有する)および二級アルコールエトキシレート類(12~14個の炭素原子からなる疎水性鎖を有する)を使用した石油回収率を示す。
【0114】
第1のファミリーは、トリデシルエトキシル化アルコール類であり、これまでに使用したPOE18はこれに属し、アルキル鎖に13個の炭素原子を有する。図7Aは、親水性鎖長(または、EO基の数)が約3から約6まで増加すると、石油回収が一層速くなり、石油回収率が約6%増大し、約48%究極回収率がもたらされた。これらのデータはまた、親水性がさらに増大すると、約9個のEO基で始まる回収率に悪影響を及ぼすおそれがあることを示した。
【0115】
BIO-SOFT N1-nおよびBIO-SOFT N91-nが属する、第2のファミリーであるポリ(オキシエチレン)アルコール類を検討して、界面活性剤の疎水性(アルキル)鎖の長さとその回収成績とを相互関連付けし、回収に及ぼす親水性EO基の効果を試験した。図7Bは、例となるポリ(オキシエチレン)アルコール類、BIO-SOFT N1(C11)タイプおよびBIO-SOFT N91(C9~11の混合物)タイプの回収率に関する例示的なデータを示す。BIO-SOFT N1タイプの場合、EO基の数が約7に増大すると、石油回収率が最大で約49%まで増加した一方、EO基の数が約9である場合、回収率は低下した。BIO-SOFT N91タイプに関すると、親水性度が増大すると、概ね、石油回収率を極限値まで増大した。ここで、N91-8(8個のEO基を有する)は、一般に、最速であるが、最低の回収率をもたらした。
【0116】
試験した非限定的な条件下では、BIO-SOFT N1-7およびBIO-SOFT N91-6は、各タイプのポリ(オキシエチレン)アルコール類において、最良の成績を収める界面活性剤であることが判明した。各タイプにおいて、最良の成績を収めた界面活性剤を比較した場合、データは、単一炭素鎖長(BIO-SOFT N1-7)(アルキル基中に11個の炭素原子を有する)を有する界面活性剤を使用すると、複数の炭素鎖長を有する界面活性剤(BIO-SOFT N91-6)(アルキル基中に9~11個の炭素原子を有する)よりも高い究極回収率をもたらしたことを示した。試験した第3のファミリーは、図7Cに示されている通り、12~14個の炭素の疎水性鎖および約5~約41個のエトキシル化単位を有する、二級アルコールエトキシレート類とした。自発吸収結果は、親水性鎖長を約EO=5から約EO=9にまで増大させると、最高究極回収率(約50%)をもたらしたことを示した。
【0117】
総合的に、および試験した条件下では、非イオン性界面活性剤は、概して、究極石油回収率に関してブラインよりも成績が良かった。ブラインに比較して回収が遅いことにより、湿潤性逆転が、概して有利であったことが示された。さらに、親水性EO鎖長の増大の石油回収率に及ぼす影響は、3種のファミリーの間で同等である。同様に、試験した非限定的な条件下では、3種のファミリーの各々に対する最良の成績を収めた界面活性剤は、同等の究極回収率をもたらし、疎水性(アルキル)鎖の炭素数を約11から約14まで増大させても、回収率はさらに増大し得ないことを示している。
【0118】
高温での油湿潤性炭酸塩における自発吸収による石油回収を、様々な陽イオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤およびそれらのブレンドを使用して試験した。図8A、8B、9A~9C、10A、10Bおよび11は、例示的であるが、非限定的な結果を例示する。試験した界面活性剤溶液は、ブランクブラインを使用して形成した。各界面活性剤溶液内の界面活性剤の重量%での量は、これらの図および/またはその議論において提示されている。
【0119】
図8Aおよび8Bは、それぞれ、臭化物イオンを有する陽イオン性界面活性剤(陽イオン性ファミリー1)および塩化物イオンを有する陽イオン性界面活性剤(陽イオン性ファミリー2)を使用して、油湿潤性(OW)MNCコア試料からの自発吸収による石油回収率の例示的なデータを示している。データは、界面活性剤を使用する回収率は、ブラインよりも優れていることを示しており、このことは、エージング後の油湿潤条件に対するコアの効率的な湿潤性変化があることを示している。この結果は、ブラインが界面活性剤のそれと同等である(上記)、WWW MNCからの回収率とは対照的である。低塩濃度ブラインの使用により、高い究極回収率がもたらされたが、概して、早期時点ではそれほど有効ではなかった。
【0120】
臭化物イオン含有界面活性剤に関すると(図8A)、アルキル基中の炭素原子数が増加すると、石油回収率は、概ね低くなった。このことは、そのアルキル基(CH(CH)中に8個の炭素原子を有するTOAB、およびそのアルキル基中に12個の炭素原子(CH(CH11)を有するDTABに関するデータによって示される。そのアルキル基中の18個の炭素原子(CH(CH17)の最長のアルキル基を有する界面活性剤TODABの使用は、このファミリーの中で最低の回収率を概ね示し、約7.8%である。そのアルキル基中に16個の炭素原子((CH(CH15)を有するCTABを使用すると、ブランクブラインの場合、約4.2%であるのに対して、約17.3%の最高究極回収率をもたらした。理論によって拘泥されることを望むものではないが、この結果は、CTABの高い乳化特性が理由である可能性があり、こうして、可溶化石油および遊離石油のどちらも、低精度Amott吸収セルから観察された。
【0121】
塩化物イオン含有界面活性剤に関すると(図8B)、アルキル基の炭素原子数が約8から約12に増大すると、回収率は概ね向上した。それでもやはり、回収率は、アルキル基が16個の炭素原子(CTAC、CH(CH15)を有する場合、やはり、概ね低下した。
【0122】
そのアルキル基中の12個の炭素原子((CH(CH11)を有するDTACを使用すると、最高の回収率を有さなかった場合でも、迅速な吸収が実現した。そのアルキル基中に18個の炭素原子(CH(CH17)という最長の疎水性鎖を有する界面活性剤TSACは、一部の状況では、塩化物イオンファミリーおよびすべての陽イオン性界面活性剤の中で最良であり、回収率は約19.37%であった。TSACは、良好な乳化特性を有することが観察されただけではなく、2種の陽イオン性ファミリーの中で、最低のIFT(約0.05mN/m)をもたらした。TOABおよびDTACは、回収率が一層低いにもかかわらず、最も安定な界面活性剤であり、最速の回収を生じた。
【0123】
図9A図9Cは、様々な非イオン性界面活性剤を使用する、OW MNCコア試料からの自発吸収による石油回収率に関する例示的なデータを示す。低塩濃度ブラインからの回収率は、約17%と高いという事実にも関わらず、低塩濃度ブラインは、3種のトリデシルエトキシル化アルコール界面活性剤(図9A)、2種のポリ(オキシエチレン)アルコール界面活性剤(図9B)および1種の二級アルコールエトキシレート界面活性剤(図9C)を上回った。界面活性剤(重量%で表示)は、320,000ppmの塩分濃度を有する貯留ブライン中ですべて調製した。データにより、本分野において注入するにはより高価であり得る低塩濃度ブライン(500ppm)の使用に頼ることなく、実際の貯留条件において、これらの界面活性剤を使用することに大きな利点があることが示された。
【0124】
図9Aに示されているトリデシルエトキシル化アルコール類のファミリーでは、その親水性鎖中に18個のEO基を有するMakon TD-18は、最高回収率(約20.3%)および最速回収の両方をもたらした。界面活性剤の親水性を約EO=3から約EO=9まで増大すると、回収率が増加する、および/またはある限界値(約EO=12)まで回収速度が向上し、それを超えると回収率は低下した。EO基の数が、約EO=18までさらに増加すると、優れた回収率をもたらし、約EO=30において再度、低下した。
【0125】
図9Bに示されているポリ(オキシエチレン)アルコール類のファミリーの場合、いくつかの炭素鎖長9~11(BIO-SOFT N91-n)(アルキル基中に9~11個の炭素原子)を有する界面活性剤は、回収量および速度の両方に関して、約11の単一炭素鎖長を有するもの(BIO-SOFT N1-n)よりも優れた。理論によって拘泥されることを望むものではないが、この結果は、多孔質媒体からの石油を可溶化してここから石油を引き離す際の、分岐状界面活性剤の有効性に起因していると考えられる。BIO-SOFT N91-nタイプでは、最低数のEO基(約EO=2.5)を有する界面活性剤は、最速回収を概ねもたらした一方、最高数のEO基(約EO=8)を有する界面活性剤は、最高究極回収率を概ねもたらした。BIO-SOFT N1-nタイプに関すると、最低数のEO基(約EO=3)を有する界面活性剤は、最高回収率および最速回収を概ねもたらした。EO基の数が増加すると、回収率の低下が観察された。
【0126】
図9Cに示されている第二級エトキシ化アルコール類の中で、最短(Tergitol15-S-5)および最長(Tergitol15-S-40、n=41)の親水性鎖長を有する界面活性剤は、最低の回収率をもたらした。このファミリーに関して、明確な構造-成績の相関関係は観察されなかった。しかし、Tergitol15-S-15(約15のEOを有する)は、最高回収率(約20.13%)および最速回収をもたらした。
【0127】
試験した非限定的な条件下では、非イオン性ファミリーの中で最良の成績の界面活性剤は、概ね、そのアルキル基中に13個の炭素原子および18個のEO基を有するMakon TD-18であった。Makon TD-18は、16という高い親水性-親油性バランス(HLB)、および約100℃よりも高い曇り点を有しており、これによって、高温で安定になるばかりではなく、界面活性剤のミセルが水性相中で分散されるタイプIのマイクロエマルションを形成する傾向になる。さらに、Makon TD-18は、高い塩濃度と高温の両方において、非常に良好な成績を概ね示す。
【0128】
図10Aおよび10Bは、それぞれ、様々な非イオン性界面活性剤および陽イオン性界面活性剤を使用する、OW MNCコア試料からの自発吸収による石油回収率の例示的なデータを示す。非イオン性ファミリーの場合(図10A)、4種の界面活性剤をブレンドするために選択した。究極回収量および速度を比較することによって、C13のものなどの単一炭素鎖数の界面活性剤(Makon TD-18およびPOE18)は、炭素原子の分布を含むもの(例えば、C12~14およびC9~11)よりも優れた成績を発揮した。陽イオン性ファミリーに関すると(図10B)、試験した条件下での塩化物イオンおよび臭化物イオンファミリーにおける最良のものおよび2番目に優れたものは、TSACおよびCTABであると決定した。一層高い究極回収率は、TSACおよびCTABのIFT低下能が理由であり得る。図10Aおよび図10Bに示されている界面活性剤は、一部の状況では、最良の成績を収める非イオン性界面活性剤および陽イオン性界面活性剤であった。
【0129】
結果として、および一部の例では、これらの非イオン性界面活性剤および陽イオン性界面活性剤のうちの1種または複数のブレンドを調製した。4種の陽イオン性界面活性剤および4種の非イオン性界面活性剤を最初に、約50:50の比でブレンドし、合計で16種のブレンドにした。続いて、一部の状況において、優れた成績を収めた50:50のブレンドを、約25:75および約75:25の比でブレンドし、回収率に及ぼす非イオン性界面活性剤と陽イオン性界面活性剤との比を検討した。非イオン性界面活性剤および陽イオン性界面活性剤のこのようなブレンドを使用する、OW MNCコア試料からの自発吸収による石油回収率を図11に示す。各ブレンドの界面活性剤溶液を作製した(ブランクブライン中に約0.1重量%)。自発吸収は、約100℃および約45psiで行った。
【0130】
図11では、破線は、自発吸収の間に乳化を受けた混合物を表す(ブランクブラインおよび低塩濃度ブライン試料を除く)。本明細書において、2種のタイプの石油、遊離石油および可溶化油を観察した。DTACは、界面活性剤の純粋な溶液としてTOABよりも概ね優れたが、DTACまたはTOABを非イオン性界面活性剤とブレンドした場合、反対の挙動が観察された。CTABまたはTSACのどちらか一方を有した混合物のほとんどすべてが、乳化することを実証した。これは、これら2種の陽イオン性界面活性剤の高い乳化能と低いIFTの両方による可能性がある。油湿潤性試料における約30%という最高究極回収率は、Tergitol 15-S-15:CTAB(約50:50v/v)の場合に見出された;しかし、2.95mlのうちの約1.75mlが可溶化油であった。データは、混合物/ブレンドのすべてが、石油回収の増強に良好な可能性があることを示したことを示した。以下の混合物/ブレンドは、湿潤性逆転およびIFT低下の組合せによって、石油回収率の増大に優れた可能性があることを示した:Tergitol 15-S-15:CTAB(約50:50v/v)、Tergitol 15-S-15:TSAC(約50:50v/v)、POE18:CTAB(約50:50v/v)、POE18:TSAC(約75:25v/v)、Makon TD-18:CTAB(約50:50v/v)およびMakon TD-18:TSAC(約50:50v/v)。
【0131】
それにもかかわらず、IFTは、これらの混合物によって顕著に低下し得る。IFTが低下した場合、エマルションの分離を回収後に行うことができる。異なる比を試験するため、乳化を示さなかった2種の約50:50ブレンド(BIO-SOFT N91-8:TOABおよびPOE18:TSAC)を約75:25v/vおよび約25:75v/vにおいて試験した。約50:50v/vの比では、POE18:TSACは、概して、乳化をなんら示さなかった。しかし、他の比では、非常に多量の可溶化油が観察され、自発吸収の読取りは不安定であった。一部の状況では、他の混合物(BIO-SOFT N91-8:TOAB)は、約75:25v/vおよび約25:75v/vの比では、同様に挙動しなかった。一部の状況では、最良の成績を収めた安定な混合物(例えば、乳化がほとんどまたは全くない)は、図11に示されている、約50:50v/vの比では、POE18:TSACおよびBIO-SOFT N91-8:TSACである。総合的に、この結果により、純粋な湿潤性変化は、一般に、安定な遊離石油しかもたらさないが、総合的な回収率は低くなり得ることが示された。一方、湿潤性変化およびIFT低下の組合せは、一層高い全回収率(遊離石油および可溶化油)をもたらし得るが、遊離石油の割合は、一部の状況では、かなり低い。
【0132】
石油/ブライン界面特性に及ぼす界面活性剤構造の影響もまた、以下に記載の、マイクロエマルション相挙動、界面活性剤水溶解度、動的表面/界面張力および接触角を検討することによって試験した。
【0133】
マイクロエマルション相挙動試験は、一般に、界面活性剤の安定性を特徴付けるために利用することができる。界面活性剤の相挙動は、温度、界面活性剤濃度および/またはブラインの塩濃度などの個別のパラメータに依存し得る。様々な界面活性剤に対する相挙動に及ぼす温度の影響を系統的に検討した。ここで、ブランクブラインおよび原油を含有するピペットで、相挙動試験を最初に行った。常温と同様に、温度を約80℃まで向上させても、相挙動は影響を受けず、マイクロエマルションの兆候も観察されなかった。この結果は、貯留層原油とブランクブラインとの間のIFTが高いことに起因し得る。温度および圧力が、貯留条件の方に向上すると、IFTは、以下にさらに記載されている通り、概ね向上した。
【0134】
それとは反対に、界面活性剤溶液の場合、温度の上昇は一般に、界面活性剤分子の安定性および溶解度に影響を及ぼし、エマルションを反転させるか、または一部の状況では、エマルションを破壊させる。昇温は、動的エネルギーレベルの向上のために、分子の動きを高め得る。それらの曇り点が相対的に低いために、非イオン性界面活性剤の安定性は、昇温によって低下する。100℃または120℃における自発吸収の間に、使用した非イオン性界面活性剤はすべて、最初の数時間の間、概して曇った後に、再度、一層、透明になった。図12は、常温および高温における、非イオン性界面活性剤POE18(ブランクブライン中の約0.1重量%)の相挙動を示す、例示的な一連の画像である。この画像により、温度を約80℃まで昇温すると、石油の移動が制限されることが示され、これは、恐らく、非イオン性POE18界面活性剤の安定性の低下による可能性がある。約120℃では、POE18は、さらに一層不安定になり、枠によって示されている通り、ブライン溶液から沈殿した。
【0135】
図13は、常温(左側のパネル)および約80℃(右側のパネル)における、塩化物イオン頭部を有する陽イオン性界面活性剤TOAC、DTAC、CTACおよびTSACの相挙動を示す、一連の例示的な画像である。図14はそれぞれ、常温(左側のパネル)および約80℃(右側のパネル)における、臭化物イオン頭部を有する陽イオン性界面活性剤TOAB、DTAB、CTABおよびTODABの相挙動を示す、一連の例示的な画像である。これらの試験の場合、各界面活性剤は、界面活性剤溶液(ブランクブライン中の約0.1重量%)に作製した。
【0136】
図13図14の両方において、界面活性剤のアルキル炭素原子数は、左から右に移動すると増加する。画像により、塩化物イオンまたは臭化物イオン頭部を有する両方の界面活性剤の群は、常温では、Winsor I型マイクロエマルション(油/水(o/w)マイクロエマルション)を一般に示すことが示された。Winsor I型マイクロエマルションは、油分子の移動により、ブライン相の黄色によって観察され得る;図13および14の画像の場合、黄色の強度は、ブライン相のより灰色の外観によって表示されている。例えば、ブライン相(常温)における黄色は、図13では、DTAC(CH(CH11N(CHCl)の場合に、図14では、DTAB(CH(CH11N(CHBr)の場合に容易に観察される。しかし、この効果は、温度を約80℃まで向上させると、それほど顕著ではない。この観察は、乳化剤の安定性は、温度と共にわずかに低下することを示し得る。
【0137】
図13図14の両方において、最短の疎水性頭部を有する界面活性剤TOAC(CH(CHN(CHCl)およびTOAB(CH(CHN(CHBr)は、温度によってそれほど影響を受けなかった。約16のアルキル炭素原子数から始め、常温および高温の両方の場合で、水性相への界面活性剤の溶解は、概ね、炭素数の増加と共に低下した。約80℃の高温において、最長の疎水性(アルキル)鎖を有する界面活性剤TSAC(CH(CH17N(CHCl)およびTODAB(CH(CH17N(CHBr)は、溶解度に乏しく、こうして、これらの界面活性剤は、石油とブラインとの間に相(約0.1cm)を形成した。
【0138】
非イオン性界面活性剤の親水性-親油性バランス(HLB)数および曇り点は、各界面活性剤が示す、相挙動、安定性およびマイクロエマルションのタイプを説明する一助となり得る。表7は、非イオン性界面活性剤の3つのファミリーに関するこれらのパラメータを一覧表示している。親水性鎖中のエトキシル化モル数(EO基)が増加すると、それらのHLBは向上する。これらの界面活性剤は、高いHLB(8~16)であるために親水性であり、これによって、これらの界面活性剤は、水に溶解する傾向があり、o/wエマルション(Winsor I型マイクロエマルション)を形成する。界面活性剤ミセルを水相中において分散状態を維持することは、Winsor III型マイクロエマルションを回避するための湿潤性逆転検討に一般に有用であり、これは、IFT低下による回収をもたらし得る。
【0139】
総合的に、陽イオン性界面活性剤によるマイクロエマルション相の挙動は、概して、Winsor I型の挙動を示した。この作用は、温度を約80℃まで昇温することによって軽減され得る。しかし、非イオン性界面活性剤は、高温で沈殿した。例えば、非イオン性界面活性剤ファミリーのHLBが高いために、非イオン性界面活性剤は、Winsor I型マイクロエマルション挙動になる傾向が一層高くなり得、これによって、一部の状況では、IFTを有意に低下させるその能力が低下し得る。これらの界面活性剤は、一部の状況では、湿潤性変化による回収の一層高い可能性を有した。
【0140】
陽イオン性界面活性剤の安定性および水溶解度/曇りに及ぼす疎水性(アルキル)鎖長の影響を、高圧および温度におけるクラフト点を測定することによって試験し、行った。図15は、左から右に炭素原子数を増加させた、臭化物イオン頭部を有する陽イオン性界面活性剤の溶液の一連の例示的な画像である-DTAB(左側のパネル)、CTAB(中央パネル)およびTODAB(右側のパネル)。これらの試験の場合、各界面活性剤は、界面活性剤溶液(ブランクブライン中の約0.1重量%)に作製した。画像は、約22℃でキャプチャした。結果は、周囲条件では、界面活性剤の溶解度/曇りは、アルキル鎖長の炭素原子を12個から18個まで増加させることによって低下し得ることを示した。
【0141】
塩化物イオン頭部がある界面活性剤の場合、類似挙動が観察され、約22℃において、TOACが最も透明で(図示せず)、TSACが、曇りが最も高かった。図16Aは、約22℃(左側のパネル)および約75℃(右側のパネル)における、TSAC界面活性剤溶液(ブランクブライン中の約0.1重量%)の例示的な画像を示す。撹拌しながら、TSAC界面活性剤溶液を昇温すると、この溶液は濁りがなくなり始め、温度が約75℃に到達すると、濁りのない状態を維持した。一旦、周囲条件に置くと、この溶液は、再度、曇り状態になり始めた。
【0142】
例えば、高温におけるTSAC界面活性剤溶液の挙動を観察するため、TSAC界面活性剤溶液を、約20℃~約120℃の様々な温度および約6,000psiの圧力において、溶液の写真を撮ることによって、IFTセル中でのモニタリングを行った。図16Bは、これらの温度間隔、および約40℃である、陽イオン性界面活性剤溶液が透明になり始める正確な温度(クラフト点)におけるTSAC溶液(ブランクブライン中の約0.1重量%)の一連の例示的な画像を示す。図16Bに使用したTSAC溶液を、約6,000psiの圧力に置いた。示されていないが、より短い疎水性鎖の界面活性剤を有する陽イオン性界面活性剤もまた、約20℃~約120℃の様々な温度および約6,000psiの圧力において画像化した。このようなより短い疎水性鎖の界面活性剤の場合、画像は、約20℃ではIFTセル中で透明であり、昇温している間、大きな変化は観察されなかった。
【0143】
ある種の非イオン性界面活性剤の曇り点は、高圧(約6,000psi)および高温で測定した。一部の状況では、非イオン性界面活性剤POE18は、完全に石油で飽和したMNC炭酸塩の場合、陽イオン性界面活性剤とブレンドした場合に、最良の結果をもたらしたので、非イオン性界面活性剤POE18をこの測定の標的とした。図17Aは、約6,000psiの圧力における、約22.4℃(左側のパネル)、約47.1℃(中央パネル)および約99.9℃(右側のパネル)での、POE18溶液(ブランクブライン中の約0.1重量%の濃度)の一連の例示的な画像を示している。POE18溶液は、約47.1℃の温度において曇り状態になり始め、したがって、約47.1℃を曇り点と判定した。3種の非イオン性界面活性剤ファミリーの曇り点を表7に表す。ファミリーの各々において、親水性EO基の数が多いほど、界面活性剤の曇り点は高くなり、水性相中で一層の可溶性となる。
【0144】
様々な陽イオン性-非イオン性ブレンドにおける、非イオン性界面活性剤の曇り点の上昇に及ぼす陽イオン性界面活性剤の影響を高温および高圧で検討し、例えば、ブレンドの安定性に関する優れた洞察を得た。陽イオン性のアルキル短鎖の界面活性剤TOABのクラフト点は、非常に小さく、この溶液は、周囲条件では、すでに透明であった。図17Bは、約6,000psiの圧力における、約21.4℃(左側のパネル)、約51.6℃(中央パネル)および約100℃(右側のパネル)での約75:25v/v POE18:TOABブレンド(ブランクブライン中の約0.1重量%の濃度)の一連の例示的な画像を示している。
【0145】
POE18:TOABブレンドの曇り点は、約51.6℃と求まった(図17B)。陽イオン性TOABは、混合物の曇り点が約5℃しか向上しないので、一部の例では、陽イオン性TOABは、ブレンドの安定性を大幅に改善しなかったと推論することができる。理論によって拘泥されることを望むものではないが、これは、非イオン性POE18に比べると、混合物中の陽イオン性TOABの百分率が低いことに起因し得る。さらに、および理論によって拘泥されることを望むものではないが、陽イオン性TOABは、その親水性頭部に1つの基だけ、およびその疎水性尾部に8個の炭素原子を有する。それとは反対に、POE18は、溶液中でのその挙動を支配的にし得る、18個の親水性エチレンオキシド単位および疎水性基上に12個の炭素原子を有する。
【0146】
様々な実験を行い、界面活性剤の動的表面張力/界面張力を試験した。以下にさらに議論されているこれらの実験は、臨界ミセル濃度(CMC)測定、様々な条件下での貯留ブライン/原油のIFT測定、周囲条件下での界面活性剤溶液/貯留層油の間のIFT測定、および貯留条件下での界面活性剤溶液/貯留層油の間のIFTの測定を含んだ。
【0147】
CMC測定を行い、例えば、界面における陽イオン性界面活性剤分子の挙動に及ぼす疎水性鎖長の影響を検討した。CMCは、濃度であって、それより高い濃度では表面張力がこれ以上低下しない、濃度のことである。ベースラインとして、ブランクブラインの表面張力は、約75.4mN/mと測定された。
【0148】
図18A図18Cは、塩化物イオン頭部および様々なアルキル鎖長を有する界面活性剤のCMC測定、および濃度に伴う表面張力の変化を図示する、例示的なデータを示している。具体的には、図18A、18Bおよび18Cは、DTAC、CTACおよびTSACに関する例示的な表面張力データを示している。表8は、DTAC、CTACおよびTSACの陽イオン性界面活性剤のCMCの測定値を一覧表示している。CMCの測定値により、12個の炭素原子(CH(CH11)から18個の炭素原子(CH(CH17)まで疎水性鎖尾部の長さが増大すると、臨界ミセル濃度が低下し得ることが示唆された。CMCの測定値はまた、界面活性剤のこの基の疎水性が増大すると、界面活性剤モノマーの一層早い自己凝集およびミセルの形成をもたらし得ることを示した。
【0149】
次に、様々な条件における貯留ブライン/原油のIFT測定を行った。IFT測定に関するベースラインとして、様々な条件においてペンダントドロップ技法を使用して、貯留層原油とブランクブラインとの間のIFTを測定し、結果を表9に示す。
【0150】
温度を約100℃まで、および圧力を約1,000psiまで向上させると、約21.8mN/mのIFTとなった。温度および圧力を実際の貯留条件までさらに向上させると、IFTが約7mN/m向上した。温度差は、わずか約20℃しかないので、上記の差異は、約1,000psiから約6,000psiへの圧力の向上に主に起因し得る。これ以降、貯留条件下、界面活性剤溶液/貯留層油の間のIFTの測定に採用した貯留条件は、約1,000psiおよび約100℃とした。
【0151】
周囲条件における界面活性剤溶液/貯留層油の間のIFTの測定を最初に行い、例えば、陽イオン性界面活性剤の界面特性に及ぼす疎水性鎖長の影響を試験した。これらの測定の場合、KRUSSスピニングドロップテンシオメータを使用した。表10は、周囲条件において、様々な界面活性剤溶液(ブランクブライン中の約0.1重量%)および貯留層原油の間のIFTに関する結果を示す。Δρは、密度の変化を指し、γは、界面活性剤溶液/貯留層油の間の界面張力を指す。
【0152】
表10が示す通り、界面活性剤における炭素原子の数が増加するにつれて、IFTの系統的な低下が存在する。言い換えると、この実施例における最短のアルキル鎖を有するTOACおよびTOABの使用は、最高のIFT値をもたらした一方、この実施例において最長のアルキル鎖を有するTSACおよびTODABの使用は、最低のIFT値をもたらした。実際に、界面活性剤の疎水性尾部が長くなるにつれて、界面活性剤のHLBは、一般に、低下する一方、疎水性が高くなる。したがって、水性相から石油-水の界面に界面活性剤が移動する傾向が広がる。一部の状況では、親水性頭部中の塩化物イオンは、IFTの低下に、臭化物イオンよりも効果的である一方、他の状況では、臭化物イオンは、湿潤性の逆転に一層有効であることが見出された。
【0153】
次に、完全な石油飽和MNCコアを使用する、約100℃における自発吸収試験を行った後に、ペンダントドロップ法を使用して、貯留条件における界面活性剤溶液/貯留層油の間のIFTを行い、例えば、自発吸収による回収の機構への洞察を得た。これらの実験の場合、非イオン性界面活性剤POE18を陽イオン性界面活性剤(TOAC、TOAB、DTACまたはDTAB)とブレンドし、完全に石油で飽和したMNCコアを用いて試験した。周囲条件におけるこれらの陽イオン性界面活性剤のスクリーニングにより、これらのブレンドは、CTAC、CTAB、TSACおよびTODABと比べて、一層高いIFT値を有することができることが示される。
【0154】
表11は、約100℃および約1,000psiにおいて測定した選択したIFTデータを示している。これらの界面活性剤およびブレンドのIFT測定に関すると、各々の溶液をブランクブライン中、0.1重量%を使用して調製した。
【0155】
陽イオン性界面活性剤TOABは、ブランクブラインに比べて、IFTを約7mN/m~約14.4mN/m低下させた一方、非イオン性POE18は、IFTを約12mN/m~約9.9mN/m低下させた。POE18:TOABのブレンドは、ブランクブラインに比べて、IFTを約11mN/m~約10.9mN/m低下させた。IFTの低下におけるPOE18の効果は、恐らく、約75%のブレンド溶液中では、その高い乳化能およびその存在のために一層、顕著である。POE18:TOABのブレンド(約75:25v/v)は、これらの非限定的な条件下では、IFTに関して最良の成績を示したので、これをさらなる実験に使用した。
【0156】
接触角の測定を行い、例えば、自発呼吸に及ぼす湿潤性変化の影響を検討した。接触角は、約100℃および約1,000psiにおいて、キャプチャバブル法を使用して、MNCエージング済み岩石基材(WWWシステム)表面においてIFTセルで測定した。これらの接触角測定が、表12に示されている。これらの界面活性剤およびブレンドの接触角測定に関しては、各々の溶液をブランクブライン中、0.1重量%を使用して調製した。
【0157】
貯留条件では、陽イオン性界面活性剤TOABは、接触角を約34.9°に低下させ、こうして、湿潤性が一層水湿潤条件へと変化した。反対に、非イオン性界面活性剤POE18は、IFTを約12mN/m顕著に低下させ、これによって、TOABよりも高い回収率をもたらした。これら2種の界面活性剤を一緒(約75%POE18対約25%TOAB)にすると、接触角を約108.4°まで低下させることによる中間湿潤性、およびIFTの約11mN/mの低下をもたらした。データにより、速い回収と効果的な回収の両方に関する優れた結果は、ある種の状況では、湿潤性逆転およびIFT低下の両方の効果が適切に存在する場合に実現し得ることが示された。
【0158】
総合的に、実施例は、様々な特徴を例示した。第1に、ブライン中の界面活性剤の安定性は、より短い疎水性尾部を有する界面活性剤では、より高くあることができ、一部の状況では、陽イオン性/非イオン性ブレンドの場合、高温ではさらに改善され得ない。一般に、陽イオン性界面活性剤のIFTとCMCのどちらも、その疎水性(アルキル)鎖長が増大すると低下し得る。陽イオン性界面活性剤の疎水性尾部サイズが増大することにより、界面活性剤は、石油/水の界面に移動することが可能となる。
【0159】
第2に、陽イオン性界面活性剤ファミリーのうち、その最短の疎水性尾部を有する界面活性剤の構造は、自発吸収による最高の石油回収率および最速の石油回収を示すことができる。TOABおよびTOACは、高いIFTである場合でさえも、ある種の状況では、恐らく、高温におけるその安定性のために、優れた成績を発揮することができる。OWコア試料の場合、疎水性鎖長の増大により、臭化物イオン頭部を有する陽イオン性界面活性剤の場合、回収率が低下し得、塩化物イオン頭部を有する陽イオン性界面活性剤の場合、反対となり得る。CTABおよびTSACは、恐らく、その高い乳化特性のために、最高の回収率という点で、優れた成績を発揮することができる。さらに、石油回収率は、OWとWWW MNCコア試料のどちらの場合も、臭化物イオンよりも塩化物イオンの方が親水性基を構成した場合に改善され得る。しかし、臭化物イオンは、ある種の状況では、望ましいものであり得る。
【0160】
第3に、非イオン性界面活性剤ファミリーのうち、EO基の範囲は、石油回収率を増大させることができる。より短い親水性鎖を有する非イオン性界面活性剤は、非常に多いEO基を有するものよりも高い究極回収率を示すことができる。反対に、一部の状況では、疎水性鎖長の増大により、回収率がさらに増大することはないように思われた。単一炭素鎖長(C13)および18個のEO基を有するMakon TD-18は、ブランクブラインと比較すると、回収率を約16%増大した。理論によって拘泥されることを望むものではないが、この界面活性剤の親水性(高いHLBを有する)は、大部分、IFT低下よりもむしろ湿潤性変化に基づいて、その回収を行ったと考えられる。低塩濃度ブラインもまた、石油回収率の増大に有効となり得る;しかし、低塩濃度ブラインの性能は、界面活性剤溶液の塩濃度が高いことおよび高温条件であることにも関わらず、各ファミリーに由来するいくつかの界面活性剤およびその組合せを上回った。
【0161】
第4に、実施例は、WWWコアまたはOWコアの場合に有用な様々な組成物を例示する。WWWコアの場合、約25:75v/vの比のTOAB:POE18は、ある種の状況下、陽イオン性/非イオン性界面活性剤ブレンドのうち、最高の石油回収率および最速の石油回収を概ね示した。理論によって拘泥されることを望むものではないが、POE18のIFT低減特性は、TOABの湿潤性変化特性と相まって、より優れた相乗的界面特性に寄与した可能性が高い。油湿潤エージング済みコアの場合、約30%の最高究極回収率は、ある種の場合、Tergitol15-S-15:CTAB(約50:50v/v)のブレンドによって、概ね実現された。一部の場合、最良の成績を収めた安定な混合物(乳化しない)は、POE18:TSAC(約50:50v/v)およびBIO-SOFT N91-8:TSAC(約50:50v/v)であったが、それらの総回収率は、湿潤性変化とIFT低下機構の両方を有する混合物ほど高くあり得ない。これらの2種の混合物は、一部の状況では、遊離石油を生成するが、可溶化石油を生成しないので、最良であることが見出された。
【0162】
本明細書に記載されている実施形態は、一般に、石油回収増進のための方法および組成物に関し、より詳細には、例えば、石油回収または湿潤性逆転のために石油含有多孔質媒体を処理するための方法および組成物に関する。
【0163】
実施形態の列挙
本開示は、とりわけ、以下の実施形態を提供し、その各々は、任意の代替実施形態を場合により含むと考えることができる:
【0164】
項目1.
式:
を有する、界面活性剤A
式(B):
(OCHCHOH (B)
を有する界面活性剤B
またはそれらの組合せ
[式中、R、R、RおよびRはそれぞれ、独立して、H、または1~40個の炭素原子を有するアルキル基であり、Rは、1~40個の炭素原子を有するアルキル基であり、nは、1~45であり、Xは、ハライドである]
を含む、界面活性剤配合物。
【0165】
項目2. 界面活性剤Aが存在する場合、R、RおよびRがそれぞれ、メチルであり、Rが、4~20個の炭素原子を有するアルキル基であり、
界面活性剤Bが存在する場合、Rは、4~20個の炭素原子を有するアルキル基である、または
それらの組合せが存在する、
項目1の界面活性剤配合物。
【0166】
項目3. 界面活性剤Aおよび界面活性剤Bが存在する、項目2または項目3の界面活性剤配合物。
【0167】
項目4. 少なくとも1つの界面活性剤Aが存在し、
存在する各界面活性剤Aに関して、
が、独立して、4~18個の炭素原子を有する直鎖または分岐アルキル基であり、
Xが、独立して、フルオリド、クロリド、ブロミドまたはヨージドである、
項目1~3のいずれか1つの界面活性剤配合物。
【0168】
項目5. 少なくとも1つの界面活性剤Aが存在し、
少なくとも1つの界面活性剤Aが、独立して、臭化トリメチルオクチルアンモニウム、塩化トリメチルオクチルアンモニウム、臭化ドデシルトリメチルアンモニウム、塩化ドデシルトリメチルアンモニウム、臭化セチルトリメチルアンモニウム、塩化セチルトリメチルアンモニウム、臭化トリメチルオクタデシルアンモニウムまたは塩化トリメチルオクタデシルアンモニウムである、項目1~4のいずれか1つの界面活性剤配合物。
【0169】
項目6. 少なくとも1つの界面活性剤Bが存在し、
存在する各界面活性剤Bに関して、
が、独立して、4~15個の炭素原子を有する直鎖または分岐アルキル基であり、
nが、独立して、2.5~41である、
項目1~5のいずれか1つの界面活性剤配合物。
【0170】
項目7. 少なくとも1つの界面活性剤Bが存在し、
存在する各界面活性剤Bに関して、
が、独立して、6~15個の炭素原子を有する直鎖または分岐アルキル基であり、
nが、独立して、1~20である、
項目1~6のいずれか1つの界面活性剤配合物。
【0171】
項目8. 少なくとも1つの界面活性剤Bが存在し、存在する各界面活性剤Bに関して、
が、約13個の炭素原子を有するアルキル基であり、nが、18である、
は、13個の炭素原子を有するアルキル基であり、nが、3、6、9、12もしくは30である、
が、11個の炭素原子を有するアルキル基であり、nが、3、5、7もしくは9である、
が、9~11個の炭素原子を有するアルキル基であり、nが、2.5、6もしくは8である、または
が、12~14個の炭素原子を有するアルキル基であり、nが、5、9、15、20、31もしくは41である、
項目1~7のいずれか1つの界面活性剤配合物、
【0172】
項目9. 少なくとも1つの界面活性剤Aが存在し、存在する各界面活性剤Aに関して、Rが、独立して、4~14個の炭素原子を有するアルキル基であり、Xが、独立して、ブロミドまたはクロリドであり、
少なくとも1つの界面活性剤Bが存在し、存在する各界面活性剤Bに関して、Rが、独立して、6~15個の炭素原子を有するアルキル基であり、nが、独立して、1~20である、
項目1~8のいずれか1つの界面活性剤配合物。
【0173】
項目10. 少なくとも1つの界面活性剤Aが存在し、各界面活性剤Aが、独立して、臭化セチルトリメチルアンモニウム、塩化トリメチルオクタデシルアンモニウム、塩化ドデシルトリメチルアンモニウムまたは臭化トリメチルオクチルアンモニウムであり、
少なくとも1つの界面活性剤Bが存在し、存在する各界面活性剤Bに関して、Rが、独立して、12~14個の炭素原子を有するアルキル基であり、nが、15である、
項目1~9のいずれか1つの界面活性剤配合物。
【0174】
項目11. 少なくとも1つの界面活性剤Aが存在し、各界面活性剤Aが、独立して、臭化セチルトリメチルアンモニウム、塩化トリメチルオクタデシルアンモニウム、塩化ドデシルトリメチルアンモニウムまたは臭化トリメチルオクチルアンモニウムであり、
少なくとも1つの界面活性剤Bが存在し、存在する各界面活性剤Bに関して、Rが、独立して、9~11個の炭素原子を有するアルキル基であり、nが、8である
項目1~10のいずれか1つの界面活性剤配合物。
【0175】
項目12. 少なくとも1つの界面活性剤Aが存在し、各界面活性剤Aが、独立して、臭化セチルトリメチルアンモニウム、塩化トリメチルオクタデシルアンモニウム、臭化ドデシルトリメチルアンモニウム、塩化ドデシルトリメチルアンモニウム、臭化トリメチルオクチルアンモニウム、塩化トリメチルオクチルアンモニウムであり、
少なくとも1つの界面活性剤Bが存在し、存在する各界面活性剤Bに関して、Rが、13個の炭素原子を有するアルキル基であり、nが、18である、
項目1~11のいずれか1つの界面活性剤配合物。
【0176】
項目13.
界面活性剤配合物が、ブラインをさらに含み、
界面活性剤A(存在する場合)および界面活性剤B(存在する場合)の総量が、界面活性剤配合物の総重量に対して、約0.01重量%~約1重量%である、
項目1~12のいずれか1つの界面活性剤配合物。
【0177】
項目14. 石油含有多孔質媒体の湿潤性を逆転させる方法であって、
石油含有多孔質媒体に界面活性剤配合物を導入することであって、石油含有多孔質媒体が、弱水湿潤性または油湿潤性であり、界面活性剤配合物が、界面活性剤A、界面活性剤Bまたはそれらの組合せ:
(OCHCHOH (B)
[式中、R、RおよびRはそれぞれ、メチルであり、RおよびRはそれぞれ、独立して、4~20個の炭素原子を有するアルキル基であり、nは、1~45であり、Xは、フルオリド、クロリド、ブロミドまたはヨージドである]
を含む、界面活性剤配合物を導入することと、
石油含有多孔質媒体の湿潤性を、弱水湿潤状態または油湿潤状態から水湿潤状態に逆転させることと
を含む、方法。
【0178】
項目15. 少なくとも1つの界面活性剤Aが存在し、存在する各界面活性剤Aに関して、Rが、独立して、4~14個の炭素原子を有するアルキル基であり、Xが、独立して、ブロミドまたはクロリドであり、
少なくとも1つの界面活性剤Bが存在し、存在する各界面活性剤Bに関して、Rが、独立して、6~15個の炭素原子を有するアルキル基であり、nが、独立して、1~20である、または
それらの組合せが存在する、
項目14の方法。
【0179】
項目16. 少なくとも1つの界面活性剤Aが存在し、存在する各界面活性剤Aが、臭化トリメチルオクチルアンモニウム、塩化トリメチルオクチルアンモニウム、臭化ドデシルトリメチルアンモニウム、塩化ドデシルトリメチルアンモニウム、臭化セチルトリメチルアンモニウム、塩化セチルトリメチルアンモニウム、臭化トリメチルオクタデシルアンモニウムまたは塩化トリメチルオクタデシルアンモニウムであり、
少なくとも1つの界面活性剤Bが存在し、存在する各界面活性剤Bに関して、Rが、独立して、9~14個の炭素原子を有するアルキル基であり、nが、8~18である、
項目14または項目15の方法。
【0180】
項目17. 石油回収のため、石油含有多孔質媒体を処理する方法であって、
石油含有多孔質媒体に界面活性剤配合物を導入することであって、界面活性剤配合物が、界面活性剤A、界面活性剤Bまたはそれらの組合せ:
(OCHCHOH (B)
[式中、
少なくとも1つの界面活性剤Aが存在し、存在する各界面活性剤Aに関して、R、RおよびRがそれぞれ、メチルであり、Rは、独立して、4~14個の炭素原子を有するアルキル基であり、Xは、独立して、ブロミドまたはクロリドであり、
少なくとも1つの界面活性剤Bが存在し、存在する各界面活性剤Bに関して、Rは、独立して、6~15個の炭素原子を有するアルキル基であり、nは、独立して、1~20である]
を含む、界面活性剤配合物を導入することと、
石油含有多孔質媒体から石油を回収することと
を含む、方法。
【0181】
項目18. 少なくとも1つの界面活性剤Aが存在し、存在する各界面活性剤Aが、臭化トリメチルオクチルアンモニウム、塩化トリメチルオクチルアンモニウム、臭化ドデシルトリメチルアンモニウム、塩化ドデシルトリメチルアンモニウム、臭化セチルトリメチルアンモニウム、塩化セチルトリメチルアンモニウム、臭化トリメチルオクタデシルアンモニウムまたは塩化トリメチルオクタデシルアンモニウムである、または
少なくとも1つの界面活性剤Bが存在し、存在する各界面活性剤Bに関して、Rが、独立して、9~14個の炭素原子を有するアルキル基であり、nが、8~18である、
項目17の方法。
【0182】
項目19. タイトオイル貯留層、在来型オイル貯留層、水圧破砕されたタイトオイル貯留層において、またはタイト多孔質媒体表面に行われる、項目17または項目18の方法。
【0183】
項目20. 水圧破砕されたタイトオイル貯留層において行われ、導入操作の前に、
タイトオイル貯留層における岩石層において、破砕物を生成することと、
プロパントを投与することによって、破砕物を開口状態に支え、水圧破砕されたタイトオイル貯留層を形成させることと
をさらに含む、項目17~19のいずれか1つの方法。
【0184】
上記の一般的な記載および特定の実施形態から明白な通り、実施形態の形態が例示および記載されているが、様々な修正が、本開示の趣旨および範囲から逸脱することなく行われ得る。したがって、本開示は、それらによって限定されることを意図するものではない。同様に、用語「含むこと(comprising)」は、用語「含むこと(including)」と同義と考えられる。同様に、配合物、組成物、要素または要素の群が、移行句「含む」の前に付く場合は常に、本発明者らはまた、その配合物、組成物、要素(単数)または要素(複数)の列挙の後に付く移行句「から実質的になる(consisting essentially of)」、「からなる(consisting of)」、「からなる群からから選択される(selected from the group of consisting of)」または「である(is)」を伴う、同じ配合物、組成物または要素の群もやはり企図し、それらと逆でもあり、例えば、用語「含む」、「から実質的になる」、「からなる」もまた、それらの用語の前に列挙されている要素の組合せものの積も含むことが理解される。
【0185】
本明細書において引用される参考文献は、その公開日または出願日の時点での技術水準を示すために、その全体が参照により本明細書に組み込まれており、この情報を本明細書において使用し、必要に応じて、先行技術に存在する特定の実施形態を除外することができることが意図されている。
【0186】
本開示の目的のために、および別段の指定がない限り、本明細書における発明を実施するための形態および特許請求の範囲内のすべての数値は、表示値に「約」または「ほぼ」を付すことによって修飾されており、当業者によって予想される実験誤差およびばらつきを考慮する。簡潔にするため、ある特定の範囲しか、本明細書において明示的に開示されていない。しかし、任意の下限値からの範囲を任意の上限値と組み合わせて、明示的に列挙されていない範囲を列挙することができ、同様に、任意の下限値からの範囲を他の任意の下限値と組み合わせて、明示的に列挙されていない範囲を列挙することができ、同じように、任意の上限値からの範囲を任意の他の上限値と組み合わせて、明示的に列挙されていない範囲を列挙することができる。さらに、範囲内には、明示的に列挙されていない場合でさえも、その両端点間のすべての点または個々の値が含まれる。したがって、あらゆる点または個々の値は、他の任意の点もしくは個々の値、または任意の他の下限値もしくは上限値と組み合わされた、独自の下限値または上限値として機能し、明示的に列挙されていない範囲を列挙することができる。
【0187】
本明細書において使用される場合、不定冠詞「a」または「an」は、特に断りのない限り、または文脈上明らかにそうでないことが示されない限り、「少なくとも1つ」を意味するものとする。例えば、「界面活性剤」を含む実施形態には、特に断りのない限り、または文脈上、1種の界面活性剤しか含まれないことが明確に示されない限り、1種、2種またはそれより多くの界面活性剤を含む実施形態が含まれる。
【0188】
前述したものは、本開示の実施形態を対象としているが、本開示の他の態様およびさらなる態様が、本開示の基本範囲から逸脱することなく考案することができ、その範囲は以下の特許請求の範囲によって決まる。
図1A
図1B
図2
図3A
図3B
図4A
図4B
図5A
図5B
図5C
図5D
図6
図7A
図7B
図7C
図8A
図8B
図9A
図9B
図9C
図10A
図10B
図11
図12
図13
図14
図15
図16A
図16B
図17A
図17B
図18A
図18B
図18C
【国際調査報告】