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特表2023-551560工具の作業深さを決定するための方法および工作物を加工するための工具
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-12-08
(54)【発明の名称】工具の作業深さを決定するための方法および工作物を加工するための工具
(51)【国際特許分類】
   B23B 51/10 20060101AFI20231201BHJP
   B23B 49/00 20060101ALI20231201BHJP
   B23C 9/00 20060101ALI20231201BHJP
   B23C 3/12 20060101ALI20231201BHJP
【FI】
B23B51/10 A
B23B49/00 A
B23C9/00 A
B23C3/12 C
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023533839
(86)(22)【出願日】2021-12-02
(85)【翻訳文提出日】2023-06-02
(86)【国際出願番号】 EP2021084027
(87)【国際公開番号】W WO2022117752
(87)【国際公開日】2022-06-09
(31)【優先権主張番号】20211983.0
(32)【優先日】2020-12-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】597099025
【氏名又は名称】マパル ファブリック フュール プラツィジョンズベルクゼウグ ドクトル.クレス カーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】クレス,ヨッヘン
【テーマコード(参考)】
3C022
3C036
3C037
【Fターム(参考)】
3C022DD03
3C022DD11
3C022DD19
3C022QQ01
3C036BB04
3C036BB12
3C037AA07
3C037FF01
(57)【要約】
本発明は、工具(3)の作業深さを決定するための方法であって、a)工具(3)と深さ決定装置(5)とを深さ設定装置(45)に配置する工程であって、・深さ決定装置(5)が、工具(3)に対して相対的に軸線方向に自由に運動させられるように、深さ決定装置(5)の組付け装置(13)が、工具(3)のシャフト(10)に設けられたクランプ領域(15)を少なくとも部分的に取り囲んで位置しており、・深さ決定装置(5)のストッパ面(17)が、深さ設定装置(45)の接触面(47)に当接していて、工具(3)の切れ刃(19)が、深さ設定装置(45)の制限ストッパ(49)に当接しているように配置する工程と、b0)深さ決定装置(5)に軸線方向で所定の圧縮力を加え、これによって、深さ決定装置(5)の少なくとも一部を接触面(47)に対して所定の圧縮量だけ弾性的に圧縮して、深さ決定装置(5)の圧縮状態を得る工程と、b)組付け装置(13)をシャフト(10)のクランプ領域(15)に深さ決定装置(5)の圧縮状態で固定し、これによって、組付け装置(13)をシャフト(10)のクランプ領域(15)に不動に組み付け、これによって、工具アセンブリ(1)を形成する工程と、c0)圧縮力を深さ決定装置(5)から解放する工程と、c)工具アセンブリ(1)を深さ設定装置(45)から取り出す工程とを含む、方法に関する。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
工具(3)の作業深さを決定するための方法であって、
a) 工具(3)と深さ決定装置(5)とを深さ設定装置(45)に配置する工程であって、
・ 前記深さ決定装置(5)が、前記工具(3)に対して相対的に軸線方向に自由に運動させられるように、前記深さ決定装置(5)の組付け装置(13)が、前記工具(3)のシャフト(10)に設けられたクランプ領域(15)を少なくとも部分的に取り囲んで位置しており、
・ 前記深さ決定装置(5)のストッパ面(17)が、前記深さ設定装置(45)の接触面(47)に当接していて、前記工具(3)の切れ刃(19)が、前記深さ設定装置(45)の制限ストッパ(49)に当接している
ように配置する工程と、
b0) 前記深さ決定装置(5)に軸線方向で所定の圧縮力を加え、これによって、前記深さ決定装置(5)の少なくとも一部を前記接触面(47)に対して所定の圧縮量だけ弾性的に圧縮して、前記深さ決定装置(5)の圧縮状態を得る工程と、
b) 前記組付け装置(13)を前記シャフト(10)の前記クランプ領域(15)に前記深さ決定装置(5)の前記圧縮状態で固定し、これによって、前記組付け装置(13)を前記シャフト(10)の前記クランプ領域(15)に不動に組み付け、これによって、工具アセンブリ(1)を形成する工程と、
c0) 前記圧縮力を前記深さ決定装置(5)から解放する工程と、
c) 前記工具アセンブリ(1)を前記深さ設定装置(45)から取り出す工程と
を含む、方法。
【請求項2】
工程b0)において前記所定の圧縮力を加えることに先だって、前記深さ決定装置(5)を弾性的に圧縮することになる分の前記圧縮量を規定し、前記圧縮力を、規定された前記圧縮量の関数として設定する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記接触面(47)は、
- 前記深さ設定装置(45)によって一体形に、または
- 前記深さ設定装置(45)に配置された接触距離要素(57)によって
提供されている、請求項1および請求項2の少なくとも一項に記載の方法。
【請求項4】
前記制限ストッパ(49)は、
- 前記深さ設定装置(45)によって一体形に、特に深さ設定凹部(55)もしくは深さ設定凸部によって、または
- 前記深さ設定装置(45)に配置されたストッパ距離要素(59)によって
提供されている、請求項1から請求項3の少なくとも一項に記載の方法。
【請求項5】
前記圧縮力を、
- 加圧ねじ(53)、空気圧および液圧の少なくとも1つによって、
- 前記組付け装置(13)に加える、
請求項1から請求項4の少なくとも一項に記載の方法。
【請求項6】
前記工具(3)として、穴あけ工具、フライス加工工具、面取り工具、皿座ぐり工具、座ぐり工具またはばり取り工具を使用する、請求項1から請求項5の少なくとも一項に記載の方法。
【請求項7】
工作物を加工するための工具(3)であって、好ましくは、該工具(3)は、請求項1から請求項6の少なくとも一項に記載の方法に使用されるように適合させられていて、
- 少なくとも1つの切れ刃(19)を有する工具ヘッド(9)と、
- シャフト(10)と
を備え、
- 前記シャフト(10)は、摩擦増大面(39)を備えたクランプ領域(15)を備える、
工具(3)。
【請求項8】
前記摩擦増大面(39)は、複数の凹部(41)または刻み付き面を備え、該凹部(41)または該刻み付き面は、好ましくは、前記クランプ領域(15)にフライス加工されているかまたは研削されている、請求項7に記載の工具(3)。
【請求項9】
前記複数の凹部(41)は、複数の周方向の溝(43)を含み、該溝(43)は、好ましくは、鋸歯輪郭を有する、請求項8に記載の工具(3)。
【請求項10】
前記工具ヘッド(9)は、前記工具(3)によって加工すべき工作物の凹部内に前記工具(3)をガイドするための、好ましくは、プラスチック、特にPEEKから製作されたかまたは複合材料から製作された挿入ピン(12)を備え、好ましくは、該挿入ピン(12)は、前記工具ヘッド(9)に取り付けられている、請求項7から請求項9の少なくとも一項に記載の工具(3)。
【請求項11】
前記工具(3)は、穴あけ工具、フライス加工工具、面取り工具、皿座ぐり工具、座ぐり工具およびばり取り工具のうちの少なくとも1つである、請求項7から請求項10の少なくとも一項に記載の工具(3)。
【請求項12】
前記工具(3)は、請求項13から請求項18の少なくとも一項に記載の深さ決定装置(5)と協働するように適合させられている、請求項7から請求項11の少なくとも一項に記載の工具(3)。
【請求項13】
深さ決定装置(5)であって、
- 請求項7から請求項12の少なくとも一項に記載の工具(3)の工具ヘッド(9)を少なくとも部分的に取り囲むように適合させられた切削ケージ(7)と、
- 少なくとも部分的に前記切削ケージ(7)内に配置されていて、該切削ケージ(7)と前記工具(3)との間の相対回転運動を可能にするように適合させられた周方向軸受装置(11)と、
- 前記工具(3)に設けられたクランプ領域(15)で前記工具(3)に不動に組み付けられるように適合させられた組付け装置(13)と
を備え、
- 前記切削ケージ(7)は、前記深さ決定装置(5)が前記工具(3)に取り付けられた際に前記工具(3)の切削深さを決定するように適合させられたストッパ面(17)を有する、
深さ決定装置(5)。
【請求項14】
前記切削ケージ(7)と前記組付け装置(13)との間に配置されていて、前記切削ケージ(7)と前記組付け装置(13)との間の相対回転運動を可能にするように適合させられた軸線方向軸受装置(21)をさらに備える、請求項13に記載の深さ決定装置(5)。
【請求項15】
前記周方向軸受装置(11)は、滑り軸受、特に軸受スリーブであり、および/または
前記軸線方向軸受装置(21)は、転がり軸受、特にスラスト玉軸受であるか、または滑り軸受である、
請求項13および請求項14の少なくとも一項に記載の深さ決定装置(5)。
【請求項16】
前記組付け装置(13)はクランプリング(23)を備える、請求項13から請求項15の少なくとも一項に記載の深さ決定装置(5)。
【請求項17】
前記深さ決定装置(5)は、前記ストッパ面と前記工具(3)の切れ刃との間の軸線方向距離を調整するための調整装置を有しない、請求項13から請求項16の少なくとも一項に記載の深さ決定装置(5)。
【請求項18】
前記切削ケージ(7)は、複数の半径方向のチップ開口(37)を有する、請求項13から請求項17の少なくとも一項に記載の深さ決定装置(5)。
【請求項19】
工具アセンブリ(1)であって、請求項13から請求項18の少なくとも一項に記載の深さ決定装置(5)と、工具(3)、特に請求項7から請求項12の少なくとも一項に記載の工具(3)とを備え、前記組付け装置(13)は、前記工具(3)に設けられた前記クランプ領域に不動に固定されている、工具アセンブリ(1)。
【請求項20】
前記工具アセンブリ(1)は、手持ち式工具駆動装置に連結されるように適合させられている、請求項19に記載の工具アセンブリ(1)。
【請求項21】
請求項19および請求項20lの少なくとも一項に記載の工具アセンブリ(1)を使用するための方法であって、前記工具アセンブリ(1)を航空機の表面を加工するために使用する、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、工具の作業深さを決定するための方法、工作物を加工するための工具、深さ決定装置、工具アセンブリおよびこのような工具アセンブリを使用するための方法に関する。
【0002】
各々の工具アセンブリは、例えば欧州特許第3033194号明細書に基づき公知である。このような工具アセンブリは、特に航空機部材の外板等に設けられた孔の領域に特定の作業、例えば面取り、皿座ぐり、座ぐりまたはばり取り作業を手動で行うために、特に手持ち式工具駆動装置と共に使用される。このような作業は、各々の航空機部材の表面から塗料を除去するために実施され、これによって、締結具、例えばボルトまたはねじを塗料の下側の金属構造に接触させ、ひいては、電気的に接地することができる。この種の作業は、実際に作業を行う人が誰であろうと、再現可能にかつ約10μm~20μmの軸線方向の精度を伴って達成されなければならない。したがって、工具アセンブリは、制限ストッパとして作用するストッパ面を工具の切れ刃に対して相対的な明確に規定された軸線方向位置に提供することによって工具の切削深さを客観的に決定するための深さ決定装置を有している。欧州特許第3033194号明細書に基づき公知の工具アセンブリは、比較的複雑な構造を有しており、したがって、高価である。さらに、公知の工具アセンブリには、工具の作業深さを決定するために、つまり、切れ刃に対するストッパ面の相対的な軸線方向位置を設定するために、扱いにくく複雑な方法が必要である。
【0003】
したがって、本発明の目的は、比較的廉価であり、特に、例えば切れ刃の摩耗および亀裂に起因して工具を交換する必要が生じた際に取り扱いやすい、工具の作業深さを決定するための方法、工作物を加工するための工具、深さ決定装置、工具アセンブリおよびこのような工具アセンブリの使用するための方法を提供することである。
【0004】
この目的は、本発明の技術的な教示、特に独立請求項の教示ならびに従属請求項および明細書に開示した好適な実施形態の教示を提供することによって達成される。
【0005】
この目的は、特に、工具の作業深さを決定するための方法であって、a)工具と深さ決定装置とを深さ設定装置に配置する工程であって、深さ決定装置が、工具に対して相対的に軸線方向に自由に運動させられるように、深さ決定装置の組付け装置が、工具のシャフトに設けられたクランプ領域を少なくとも部分的に取り囲んで位置しており、深さ決定装置のストッパ面が、深さ設定装置の接触面に当接していて、工具の切れ刃が、深さ設定装置の制限ストッパに当接しているように配置する工程と、b)組付け装置をシャフトのクランプ領域に固定し、これによって、組付け装置をシャフトのクランプ領域に不動に組み付け、これによって、工具アセンブリを形成する工程と、c)工具アセンブリを深さ設定装置から取り出す工程とを含む、方法を提供することによって達成される。したがって、工具の最大の切削深さである最大の作業深さが、接触面と制限ストッパとの間の軸線方向距離によって好適に決定される。なぜならば、この軸線方向距離が、ストッパ面と切れ刃との間の軸線方向距離を決定するからである。深さ設定装置は、工具の切削深さを設定するためのゲージとして用いられる。接触面と制限ストッパとを有する比較的単純な深さ設定装置を使用することによって、工具アセンブリの切削深さを、公知の工具アセンブリおよび各々の方法の場合よりも簡単かつ迅速に廉価に設定することができる。さらに、切削深さが深さ設定装置によって正確かつ確実に決定されるので、深さ決定装置自体が、当接面と切れ刃との間の軸線方向距離を調整するための調整装置を有する必要がなくなる。したがって、深さ決定装置と工具アセンブリとを構造および構成に関して簡単にすることができ、廉価にすることができる。
【0006】
好ましくは、組付け装置は、工程b)においてシャフトのクランプ領域に固定され、これによって、組付け装置がシャフトのクランプ領域に不動に取り付けられ、これによって、例えば、工具に対して相対的な深さ決定装置の更なる軸線方向の運動が防止される。しかしながら、好ましくは、工具が工作物に係合していない限り、好ましくは工具の工具ヘッド、特に工具ヘッドの肩部によって提供される遠位のストッパ、または幾つかの保持装置、例えば保持リングと、深さ決定装置によって提供される近位のストッパとの間で工具に対して相対的に軸線方向に自由に運動させられる、深さ決定装置の部材が存在していてよい。工具が工作物に係合している場合には、組付け装置が、近位の方向、つまり、組付け装置の位置を越えて工作物から離れる方向へのこういった部材の更なる相対的な軸線方向の運動を妨げる。遠位のストッパは、好ましくは、こういった部材が工具から落下することを防止している。
【0007】
深さ設定装置は接触面を有しており、この接触面は、好ましくは、深さ決定装置のストッパ面が接触面に当接することができるように適合させられており、さらに、深さ設定装置は制限ストッパを有しており、この制限ストッパは、工具の切れ刃が制限ストッパに当接することができるように適合させられている。
【0008】
制限ストッパは、好ましくは、切れ刃を工具軸線を中心として回転させることによって得られる仮想面に対して相補的である形状を有している。
【0009】
工具軸線は、特に工具の長手方向軸線または対称軸線または回転軸線である。軸線方向は、好ましくは、工具軸線に対して平行な方向または工具軸線に合致する方向である。周方向は、工具軸線を取り囲む方向、つまり、工具軸線を基準として周を描く方向である。半径方向は、工具軸線に対して直交している。
【0010】
作業深さまたは切削深さは、切れ刃が、これから加工すべき仮想の工作物に向かってシャフトから離れる方向にストッパ面からオフセットされている場合には、正の符号を有している。この場合には、切れ刃は、ストッパ面が工作物の被加工面に当接するかまたは被加工面に押し付けられるまで、被加工面内へと切削することになる。したがって、正の作業深さを設定するためには、制限ストッパが、接触面に対して相対的にシャフトから離れる方向にオフセットされている。しかしながら、作業深さまたは切削深さは、切れ刃が、仮想の工作物から離れる方向でシャフトに向かってストッパ面からオフセットされている場合には、負の符号を有していてもよい。この場合には、切れ刃は、ストッパ面が工作物の表面に当接するかまたは表面に押し付けられる時点まで、特にばりを除去するために、工作物の表面の上方で切削することになる。したがって、負の作業深さを設定するためには、制限ストッパが、接触面に対して相対的にシャフトに向かう方向にオフセットされている。
【0011】
特に、工程b)で組付け装置を固定することに先だって、工程b0)において、深さ決定装置に軸線方向で所定の圧縮力を加え、これによって、深さ決定装置の少なくとも一部を接触面に対して所定の圧縮量だけ弾性的に圧縮する。次いで、工程c)で工具アセンブリを深さ設定装置から取り出すことに先だって、工程c0)において、圧縮力を深さ決定装置から解放する。こうして、切削深さを最大の切削深さから、圧縮力によって決定された別の値に変化させることができ、これによって、それぞれ異なる切削深さを容易、廉価、確実かつ再現可能に選択することができる。
【0012】
特に、方法の基本的な機能性は以下の通りである。工程b0)で圧縮力を加えることに先だって、切れ刃は、制限ストッパに当接していて、ストッパ面は、接触面に当接しているが、組付け装置は、工具シャフトに対して相対的に軸線方向に自由に運動させられる。工程b0)で圧縮力が加えられると、深さ決定装置が部分的に圧縮され、組付け装置が、工具シャフトに対して相対的に軸線方向に変位させられる。この場合、実際の変位は圧縮力に左右される。圧縮力がまだ加えられている圧縮状態において、次いで、工程b)で組付け装置が工具シャフトのクランプ領域に不動に固定され、その後初めて、工程c0)で圧縮力が解放される。深さ決定装置が、圧縮量だけ圧縮状態から弾性的に弛緩する間、組付け装置に不動に連結された工具が、等しい圧縮量だけ持ち上げられ、切れ刃が制限ストッパから引き離される。この制限ストッパからの切れ刃の最終的な距離も圧縮量によって規定される。同時に、ストッパ面はまだ接触面上に位置している。したがって、ストッパ面に対して相対的な切れ刃の軸線方向位置が、加えられる圧縮力に応じて変化させられる。このことは、工具アセンブリの切削深さが、工程b0)において、明確に規定された所定の圧縮力を加えることによって、確実かつ容易に設定されることを意味している。特に、こうして、切削深さが正の符号を有しているか、負の符号を有しているかに左右されずに、切削深さの作業深さが、最大の切削深さに対して相対的に減じられる。なぜならば、まず、深さ決定装置を圧縮し、次いで、組付け装置を固定し、その後、圧縮力を解放することによって、切れ刃がストッパ面に対して相対的にシャフトの方向で移動させられるからである。したがって、接触面と制限ストッパとの距離によって初期に規定された切削深さの値がより小さくなる。特に、符号が正である場合には値の量が減少し、符号が負である場合には値の量が増加する。
【0013】
特に、深さ決定装置を弾性的に圧縮する分の圧縮量は、所定の圧縮力に左右されるかまたは所定の圧縮力によって決定される。
【0014】
好ましくは、深さ決定装置の弾性は、深さ設定装置の弾性よりも高い。つまり、言い換えると、深さ設定装置は、少なくとも接触面の領域において深さ決定装置よりも剛性である。最も好ましくは、圧縮力が加えられると、深さ決定装置だけが圧縮され、深さ設定装置は、接触面の領域において圧縮されない。好ましくは、深さ設定装置は、少なくとも接触面の領域において鋼から製作されていて、深さ決定装置はアルミニウムから製作されている。
【0015】
好適な実施形態では、工程b0)に先だって、深さ決定装置を弾性的に圧縮することになる分の圧縮量を規定し、圧縮力を、規定された圧縮量の関数として設定する。特に、圧縮量は、作業深さの変化を規定し、作業深さと同一であってすらよいので、まず、作業深さが規定され、次いで、この作業深さに応じて圧縮量が規定される。圧縮力は、特に、規定された圧縮量の関数として計算される。好ましくは、圧縮力が圧縮量の一次関数であるか、または逆に、圧縮量が圧縮力の一次関数である。代替的には、圧縮力は、規定された圧縮量に応じたデータセットまたはルックアップテーブルから取得される。特に、データセットまたはルックアップテーブルは、圧縮量の相応の値に割り当てられた圧縮力に対する値を含んでいる。
【0016】
好適な実施形態では、接触面は、深さ設定装置によって一体形に提供されている。したがって、接触面は、深さ設定装置に最も簡単にかつ明確に規定されて提供されている。
【0017】
代替的には、接触面は、深さ設定装置に配置された接触距離要素によって提供されている。この場合、好ましくは、この接触距離要素、特に接触距離要素の高さが、工具のための最大の切削深さひいては最大の作業深さを規定する。特にそれぞれ異なる高さを有する種々異なる接触距離要素を選択することによって、それぞれ異なる最大の作業深さを簡単に規定することができる。したがって、種々異なる深さ設定装置を使用する必要なしに、単に接触距離要素を変更することによって、作業深さを簡単にかつ高い費用対効果で調整することができ、さらには、圧縮力を加える必要すらなしに、作業深さを調整することもできるはずである。特に、接触距離要素を提供することによって、正の作業深さを規定することができる。
【0018】
好ましくは、接触距離要素は距離リング、最も好ましくは精密箔である。好ましくは、接触距離要素は、鋼を含んでいるかまたは鋼から製作されており、最も好ましくは、接触距離要素は鋼から成っている。好ましくは、接触距離要素は0.1mmの高さを有している。
【0019】
好適な実施形態では、制限ストッパは、深さ設定装置によって一体形に、特に正の切削深さ用の深さ設定凹部もしくは負の切削深さ用の深さ設定凸部によって提供されている。こうして、制限ストッパは、深さ設定装置に最も簡単にかつ明確に規定されて提供されている。特に、好ましくは、深さ設定凹部の深さまたは深さ設定凸部の高さが、工具の最大の切削深さひいては最大の作業深さを規定する。
【0020】
代替的には、制限ストッパは、深さ設定装置に配置されたストッパ距離要素によって提供されている。この場合、好ましくは、ストッパ距離要素、特にストッパ距離要素の高さが、工具のための最大の切削深さひいては最大の作業深さを規定する。特にそれぞれ異なる高さを有する種々異なるストッパ距離要素を選択することによって、それぞれ異なる最大の作業深さを簡単に規定することができる。したがって、種々異なる深さ設定装置を使用する必要なしに、単にストッパ距離要素を変更することによって、作業深さを簡単にかつ高い費用対効果で調整することができ、さらには、圧縮力を加える必要すらなしに、作業深さを調整することもできるはずである。特に、ストッパ距離要素を提供することによって、負の作業深さを規定することができる。
【0021】
好適な実施形態では、圧縮力を加圧ねじによってまたは空気圧式にまたは液圧式に加える。こうして、圧縮力を簡単、確実かつ再現可能に高い費用対効果で加えることができる。
【0022】
代替的または付加的には、圧縮力を、好ましくは、特に深さ決定装置の一部としての組付け装置に加える。代替的には、圧縮力を深さ決定装置の別の部材、好ましくは深さ決定装置の切削ケージに加える。圧縮力を組付け装置に加えることによって、特に圧縮量だけ圧縮力を加えたときに、組付け装置が工具シャフトに対して相対的に移動させられることが確実に保証される。しかしながら、組付け装置は、圧縮力が深さ決定装置の別の部材に加えられたときに工具シャフトに対して相対的に移動させることもできる。なぜならば、例えば、組付け装置が、この別の部材に有効に連結されていて、したがって、この別の部材と一緒に運動するか、または組付け装置が、この別の部材に重力によって下向きに押し付けられるからである。
【0023】
好適な実施形態では、工具として、穴あけ工具、フライス加工工具、面取り工具、皿座ぐり工具、座ぐり工具またはばり取り工具を使用する。上述した利点は、特にこのような工具に関して達成される。
【0024】
目的は、また、工作物を加工するための工具であって、好ましくは、本発明による方法または上述した好適な実施形態のうちの少なくとも1つの好適な実施形態による方法に使用されるように適合させられている、工具を提供することによっても達成される。工具は、少なくとも1つの切れ刃を有する工具ヘッドを備える。工具は、シャフトをさらに備える。このシャフトは、摩擦増大面を備えたクランプ領域を備える。工具に関して、好ましくは、作業深さを決定するための方法に関して上述した利点と同じ利点が達成される。
【0025】
クランプ領域が摩擦増大面を有しているということは、特に、クランプ領域、特に摩擦増大面における摩擦が、摩擦増大面の一部でない、特にクランプ領域の一部でないシャフトの別の表面領域よりも高いことを意味している。
【0026】
好適な実施形態では、摩擦増大面は、複数の凹部または刻み付き面を備える。これらの凹部または刻み付き面は、好ましくは、クランプ領域にフライス加工されているかまたは研削されている。フライス加工および研削は、比較的硬質の材料、例えば超硬合金、多結晶ダイヤモンド(PCD)または高速度鋼(HSS)に摩擦増大面を製作するための最も好適な方法である。工具は、好ましくは、超硬合金、多結晶ダイヤモンド(PCD)および高速度鋼から成る群から選択された材料を含んでいる。好ましくは、工具は、この群から選択された材料から成っているかまたは製作されている。
【0027】
好適な実施形態では、複数の凹部は、複数の周方向の溝を含む。これらの溝は、好ましくは、鋸歯輪郭を有する。特に、複数の凹部は、特に鋸歯輪郭を有する複数の周方向の溝である。複数の凹部としての複数の周方向の溝は、簡単かつ高い費用対効果で製作され、クランプ領域における摩擦を増大させるために極めて適している。
【0028】
好適な実施形態では、工具ヘッドは、工具によって加工すべき工作物の凹部内に工具をガイドするための挿入ピンを備える。この挿入ピンは、好ましくは、プラスチック、特にPEEKから製作されているかまたは複合材料から製作されている。好ましくは、挿入ピンは、工具ヘッドに取り付けられている。こうして、工具は、自体軽量である挿入ピンによって正確にガイドすることができ、工具によって加工された孔の表面に損傷を与えないように軟質の表面を有していて、製造に関して廉価である。
【0029】
好適な実施形態では、工具は、穴あけ工具、フライス加工工具、面取り工具、皿座ぐり工具、座ぐり工具およびばり取り工具から成る群から選択されている。上述した利点は、特にこのような工具に関して達成される。
【0030】
好適な実施形態では、工具は、本発明による深さ決定装置または以下に記載する好適な実施形態のうちの少なくとも1つの好適な実施形態による深さ決定装置と協働するように適合させられている。
【0031】
目的は、また、深さ決定装置であって、特に本発明による工具または上記にて開示した実施形態のうちの少なくとも1つの実施形態による工具の工具ヘッドを少なくとも部分的に取り囲むように適合させられた切削ケージを備える、深さ決定装置を提供することによっても達成される。この深さ決定装置は、少なくとも部分的に切削ケージ内に配置された周方向軸受(ラジアル軸受)装置をさらに備える。この周方向軸受装置は、切削ケージと工具との間の相対回転運動を可能にするように適合させられている。深さ決定装置は、工具に設けられたクランプ領域で工具に不動に組み付けられるように適合させられた組付け装置をさらに備える。切削ケージは、深さ決定装置が工具に取り付けられた際に工具の切削深さ、つまり、作業深さを決定するように適合させられたストッパ面を有する。深さ決定装置に関して、好ましくは、方法および工具に関して上述した利点と同じ利点が達成される。
【0032】
特に、切削ケージは、工具ヘッドを周方向でかつ好ましくは少なくとも部分的に軸線方向で取り囲んでいる。
【0033】
好適な実施形態では、深さ決定装置は、切削ケージと組付け装置との間に配置された軸線方向軸受(スラスト軸受)装置をさらに備える。この軸線方向軸受装置は、切削ケージと組付け装置との間の相対回転運動を可能にするように適合させられている。こうして、切削ケージと組付け装置との間の相対回転による摩耗および亀裂が、最も有効かつ好都合に減じられる。
【0034】
好適な実施形態では、周方向軸受装置は、滑り軸受、特に軸受スリーブであり、好ましくは、銅または複合材料から製作されている。この場合、周方向軸受装置は単純な構造を有することができ、比較的簡単かつ廉価に製造される。
【0035】
代替的または付加的には、軸線方向軸受装置は、転がり軸受、特にスラスト玉軸受である。この場合、軸線方向軸受装置は、特に、高信頼性であり、最小限の摩擦のため長寿命および低メンテナンス性を有している。代替的には、軸線方向軸受装置は、滑り軸受、特に軸受リング、好ましくは銅リングまたは複合材リングである。
【0036】
好適な実施形態では、組付け装置はクランプリングを備える。これは、特に、組付け装置の簡単かつ廉価で極めて確実な実施形態である。
【0037】
好ましくは、クランプリングは、周方向の間隙によって周方向で互いに離間させられた2つのリング端部を有している。これら2つのリング端部のうちの第1リング端部は貫通孔を有しており、2つのリング端部のうちの第2リング端部はねじ山を有しており、これによって、クランプねじが貫通孔を通過してねじ山に係合し、ねじがねじ山内で締め付けられると、リング端部同士を互いにより接近させることができ、ひいては、周方向の間隙を閉じることができる。好ましくは、組付け装置は、クランプリングと、貫通孔を通過してねじ山に係合するねじとを備えている。
【0038】
好適な実施形態では、深さ決定装置は、ストッパ面と工具の切れ刃との間の軸線方向距離を調整するための調整装置を有しない。その代わりに、作業深さを規定するために、深さ決定装置は、位置固定手段、特にクランプ手段としての組付け装置しか備えていない。深さ決定装置が調整装置を有している必要はない。なぜならば、工具の作業深さまたは切削深さが、好ましくは、本発明の方法または上記にて開示した方法の少なくとも1つの実施形態により設定されるからである。したがって、深さ決定装置は簡単な構造を有することができ、容易かつ廉価に製造することができる。
【0039】
好適な実施形態では、切削ケージは、複数の半径方向のチップ開口を有する。工具によって工作物の表面を加工する際、工具によって生じたチップは、チップ開口を通って実際の作業箇所から半径方向に離れるように搬送することができる。
【0040】
目的は、また、工具アセンブリであって、本発明による深さ決定装置または上記にて開示した実施形態のうちの少なくとも1つの実施形態による深さ決定装置と、工具、特に本発明による工具または上記にて開示した実施形態のうちの少なくとも1つの実施形態による工具とを備える、工具アセンブリを提供することによっても達成される。組付け装置は、工具に設けられたクランプ領域に不動に固定されている。工具アセンブリに関して、好ましくは、方法、工具および深さ決定装置に関して上述した利点と同じ利点が達成される。
【0041】
好適な実施形態では、工具アセンブリは、手持ち式工具駆動装置、特に空気圧式のガンドリルに連結されるように適合させられている。上述した利点は、特に、手持ち式工具駆動装置に関して達成される。
【0042】
目的は、また、本発明による工具アセンブリまたは上記にて開示した実施形態のうちの少なくとも1つの実施形態による工具アセンブリを使用するための方法であって、航空機の表面を加工するために使用される、方法を提供することによっても達成される。上述した利点は、特に、工具アセンブリが航空機の表面を加工するために使用される場合に達成される。
【0043】
本発明の別の態様によれば、深さ設定装置であって、深さ決定装置のストッパ面が当接することができるように適合させられた接触面を有し、工具の切れ刃が当接することができるように適合させられた制限ストッパをさらに備える、深さ設定装置が提供される。接触面と制限ストッパとは、工具の最大の作業深さを規定するように互いに相対的に配置されている。深さ設定装置に関して、方法、工具、深さ決定装置および工具アセンブリに関して上述した利点と同じ利点が達成される。
【0044】
好ましくは、深さ設定装置は、ストッパ面が接触面に当接している深さ決定装置に所定の加圧力を加えるように適合させられた加圧装置を有している。
【0045】
好ましくは、深さ設定装置は、予め設定された作業深さに応じて所定の加圧力を決定するように適合させられた制御装置を有している。この制御装置は、作業者が現在の作業深さを入力することができるように、入力手段、例えばキーボード、音声認識システム、タッチパッドもしくは別の入力感応面または制御パネルを有していてよい。好ましくは、制御装置は、所定の加圧力を、予め設定された作業深さの関数として計算するように適合させられている。代替的には、制御装置は、所定の加圧力を、予め設定された作業深さに応じたデータセットまたはルックアップテーブルから選択するように適合させられていてよい。好ましくは、制御装置は加圧装置に接続されており、これによって、この加圧装置が、所定の加圧力を加えるようになっている。
【0046】
深さ設定装置は、好ましくは、方法に関して上記にて暗示的に開示した少なくとも1つの特徴を備えている。
【0047】
好適な実施形態では、接触面は、深さ設定装置によって一体形に提供されている。したがって、接触面は、深さ設定装置に最も簡単にかつ明確に規定されて提供されている。
【0048】
代替的には、接触面は、深さ設定装置に配置された接触距離要素によって提供されている。特に、接触距離要素を提供することによって、正の作業深さを規定することができる。好ましくは、接触距離要素は距離リング、最も好ましくは精密箔である。好ましくは、接触距離要素は、鋼を含んでいるかまたは鋼から製作されており、最も好ましくは、接触距離要素は鋼から成っている。好ましくは、接触距離要素は0.1mmの高さを有している。
【0049】
好適な実施形態では、制限ストッパは、深さ設定装置によって一体形に、特に正の切削深さ用の深さ設定凹部もしくは負の切削深さ用の深さ設定凸部によって提供されている。こうして、制限ストッパは、深さ設定装置に最も簡単にかつ明確に規定されて提供されている。特に、好ましくは、深さ設定凹部の深さまたは深さ設定凸部の高さが、工具の最大の切削深さひいては最大の作業深さを規定する。
【0050】
代替的には、制限ストッパは、深さ設定装置に配置されたストッパ距離要素によって提供されている。特に、ストッパ距離要素を提供することによって、負の作業深さを規定することができる。
【0051】
制限ストッパは、好ましくは、深さ設定装置に関して使用すべき工具の切れ刃を工具の工具軸線を中心として回転させることによって得られる仮想面に対して相補的である形状を有している。
【0052】
好適な実施形態では、加圧装置は、加圧ねじを備えているかまたは空気圧式もしくは液圧式の加圧装置として実現されている。
【0053】
以下に、本発明を図面を参照しながらさらに詳しく説明する。
【図面の簡単な説明】
【0054】
図1】深さ決定装置および工具の第1実施形態を有する工具アセンブリの第1実施形態を示す図。
図2】深さ決定装置の第1実施形態の分解組立図。
図3図1に示した工具アセンブリの第1実施形態の工具を示す図。
図4】工具アセンブリの第2実施形態を示す図。
図5a】深さ設定装置の第1実施形態を使用して工具の作業深さを決定するための方法の実施形態を示す図。
図5b】深さ設定装置の第1実施形態を使用して工具の作業深さを決定するための方法の実施形態を示す図。
図5c】深さ設定装置の第1実施形態を使用して工具の作業深さを決定するための方法の実施形態を示す図。
図6】深さ設定装置の第2実施形態を示す図。
図7】深さ設定装置の第3実施形態を示す図。
図8】深さ設定装置の第4実施形態を示す図。
【0055】
図1には、工具3と深さ決定装置5とを備えた工具アセンブリ1の第1実施形態が示してある。深さ決定装置5は、図3に示した工具ヘッド9を、特に周方向および軸線方向で少なくとも部分的に取り囲むように適合させられた切削ケージ7を有している。軸線方向は、工具3および工具アセンブリ1の両方の長手方向軸線である軸線Aによって規定される方向である。さらに、軸線Aは、工作物を加工するために工具3を使用する際の工具3と工作物との間の相対回転軸線である。周方向は、軸線Aを同軸上に取り囲んでいる。半径方向は、軸線Aに対して直交している。
【0056】
工具アセンブリ1、特に工具3のシャフト10は、好ましくは、手持ち式工具駆動装置、特に空気圧式のガンドリルに連結されるように適合させられている。好ましくは、工具アセンブリ1は、航空機の表面を加工するために使用される。
【0057】
工具ヘッド9は、好ましくは、工具3によって加工すべき工作物の凹部または孔内に工具3をガイドするように適合させられた挿入ピン12を備えている。
【0058】
深さ決定装置5は、周方向軸受装置11を備えている。この周方向軸受装置11は、少なくとも部分的に切削ケージ7内に配置されていて、この切削ケージ7と工具3との間の相対回転運動を可能にするように適合させられている。さらに、深さ決定装置5は組付け装置13を備えている。この組付け装置13は、工具3に設けられたクランプ領域15で工具3に不動に組み付けられるように適合させられている。図1に示した状態では、組付け装置13が、工具3のクランプ領域15に不動に組み付けられている。
【0059】
切削ケージ7は、深さ決定装置5が工具3に取り付けられた際に工具3の切削深さを決定するように適合させられたストッパ面17を有している。組付け装置13を明確に規定された軸線方向位置で工具3に組み付けることによって、図3に示した工具3の切れ刃19に対して相対的な明確に規定された軸線方向位置が、ストッパ面17に対して規定され、ひいては、ストッパ面17と切れ刃19との間の軸線方向距離が、切削深さひいては作業深さを規定し、この深さだけ、切れ刃19が、工具3によって加工される工作物の表面内にまたは表面を越えて切削することができる。したがって、作業深さを規定するためには、組付け装置13と工具3との相対的な軸線方向位置が規定されなければならない。
【0060】
このことは、幾つかの実施形態において、工具3が工作物に係合していない限り、切削ケージ7を遠位のストッパ20(図3参照)と、組付け装置13により提供された近位のストッパとの間で軸線方向に自由に運動させることが可能であってよい場合でさえも依然として云えることである。工具3が工作物に係合し、最終的な作業深さに達すると、組付け装置13が、この組付け装置13によって規定された位置を越える切削ケージ7ひいてはストッパ面17の更なる接近運動を有効に制限する。
【0061】
本発明によって、特に、簡単であると共に費用対効果が高く、確実で再現可能な作業深さの設定が可能となる。
【0062】
第1実施形態では、深さ決定装置5は、好ましくは、軸線方向軸受装置21をさらに備えている。この軸受装置21は、切削ケージ7と組付け装置13との間に配置されていて、切削ケージ7と組付け装置13との間の相対回転運動を可能にするように適合させられている。
【0063】
図2には、図1に示した深さ決定装置5の第1実施形態の分解図が示してある。全ての図面において、同一の要素または機能的に同等の要素には同一の参照符号が付してあるため、いずれの場合にも、前述した説明を参照されたい。
【0064】
a)には、組付け装置13が、一部断面した平面図で示してあり、この平面図から、好ましくは、組付け装置13が、クランプリング23とクランプねじ25とを備えていることが明らかとなる。クランプリング23は、周方向の間隙31によって互いに離間させられた2つのリング端部27,29を有している。これら2つのリング端部27,29のうちの第1リング端部27は貫通孔33を有しており、2つのリング端部27,29のうちの第2リング端部29はねじ山35を有しており、これによって、クランプねじ25が貫通孔33を通過してねじ山35に係合し、クランプねじ25が締め付けられると、リング端部27,29同士を互いにより接近させることができ、ひいては、周方向の間隙31を閉じることができる。
【0065】
b)には、深さ決定装置5が分解組立図で示してある。周方向軸受装置11は、好ましくは、滑り軸受、特に軸受スリーブである。軸線方向軸受装置21は、好ましくは、転がり軸受、特にスラスト玉軸受である。代替的には、軸線方向軸受装置21は、滑り軸受、特に軸受リング、好ましくは銅リングまたは複合材リングである。
【0066】
切削ケージ7は、複数の半径方向のチップ開口37を有している。
【0067】
深さ決定装置5は、ストッパ面17と切れ刃19との間の軸線方向距離を調整するための調整装置を有していない。それどころか、軸線方向距離は、以下でさらに説明する方法に従って設定される。
【0068】
好ましくは、切削ケージ7はアルミニウムから製作されている。好ましくは、切れ刃19を備えた工具ヘッド9の少なくとも一部、好ましくは工具ヘッド9、好ましくは工具3は、高速度鋼から形成されており、代替的には、材料として多結晶ダイヤモンド(PCD)が使用されてよく、代替的には、材料として超硬合金が使用されてよい。組付け装置13、特にクランプリング23は、好ましくは鋼から製作されている。好ましくは、軸線方向軸受装置21は鋼から製作されている。好ましくは、周方向軸受装置11は銅から製作されている。挿入ピン12は、好ましくは、プラスチック、特にPEEKから製作されているかまたは複合材料から製作されている。
【0069】
図3には、図1に示した工具アセンブリ1の第1実施形態の工具3が示してある。クランプ領域15は摩擦増大面39を備えている。特に、摩擦は、クランプ領域15、特に摩擦増大面39でシャフト10の別の表面領域よりも大きい。
【0070】
好ましくは、摩擦増大面39は複数の凹部41を有しており、理解しやすくするために、これらの凹部41のうちの1つにだけ参照符号が付してある。代替的には、摩擦増大面39は、刻み付き面を備えていてもよいし、刻み付き面として実現されていてもよい。好ましくは、凹部41または刻み付き面は、クランプ領域15にフライス加工されているかまたは研削されている。
【0071】
工具3は、好ましくは、穴あけ工具、フライス加工工具、面取り工具、皿座ぐり工具、座ぐり工具またはばり取り工具である。
【0072】
b)には、摩擦増大面39が詳細に示してある。好ましくは、複数の凹部41は、好ましくは鋸歯輪郭を有する複数の周方向の溝43を含んでいるかまたは好ましくは複数の周方向の溝43である。
【0073】
c)には、好ましくは工具ヘッド9に取り付けることができる挿入ピン12が示してある。
【0074】
図4には、工具アセンブリ1の第2実施形態が示してある。この実施形態は、工具アセンブリ1が軸線方向軸受装置21を備えていない点で工具アセンブリ3の第1実施形態と特に大幅に異なっている。その代わりに、組付け装置13が、周方向軸受装置11に直接接触しているため、この周方向軸受装置11によって、工具3と切削ケージ7との間の相対回転が可能となるだけでなく、工具3に不動にクランプされた組付け装置13と、切削ケージ7との間の回転運動も直接可能となる。
【0075】
工具3の作業深さを決定するための方法の実施形態を図5を参照しながら説明する。なお、図5には、特に、深さ設定装置45の第1実施形態が示してある。
【0076】
a)に示したように、第1工程では、工具3と深さ決定装置5とは、深さ決定装置5、特に組付け装置13が、まだ工具3に対して相対的に軸線方向に自由に運動させられるように、組付け装置13が、クランプ領域15を少なくとも部分的に取り囲んで位置しているように、深さ設定装置45に配置される。同時に、ストッパ面17が、深さ設定装置45の接触面47に当接していて、切れ刃19が、深さ設定装置45の制限ストッパ49に当接している。好ましくは、挿入ピン12が、深さ設定装置45の収容孔50内に収容される。
【0077】
深さ決定装置5に圧縮力が加えられない限り、深さ決定装置5の上側の端部51と、接触面47との間の第1距離は、L1である。
【0078】
この状態において、第2工程では、組付け装置13をシャフト10のクランプ領域15にまさに固く組み付けることが可能となる。次いで、制限ストッパ49に対する接触面47の軸線方向距離によって、作業深さが、最大の作業深さとして規定される。しかしながら、作業深さは、好ましくは、以下のように説明する更なる工程により変化させられてよい。
【0079】
b)に示したように、代替的な第2工程では、所定の圧縮力が、深さ決定装置5に軸線方向で加えられ、これによって、深さ決定装置5の少なくとも一部、特に切削ケージ7が、所定の圧縮量だけ接触面47に対して弾性的に圧縮される。圧縮力が加えられていると、第1距離が、圧縮量だけ有効に短縮され、L1-Δzとなる。この場合、Δzが圧縮量である。ストッパ面17は、まだ接触面47に当接していて、切れ刃19は、まだ制限ストッパ49に当接している。
【0080】
圧縮力は、好ましくは、組付け装置13に、特に上側の端部51で加えられる。好ましくは、圧縮力は、加圧ねじ53、空気圧または液圧によって加えられる。
【0081】
好ましくは、圧縮力を加えることに先だって、深さ決定装置5を弾性的に圧縮することになる分の圧縮量Δzが規定され、規定された圧縮量Δzに応じて、特に規定された圧縮量Δzの関数として、圧縮力が設定される。
【0082】
この圧縮状態において、第3工程では、組付け装置13がクランプ領域15に固定され、これによって、組付け装置13がクランプ領域15に不動に組み付けられ、特にクランプされる。これによって、1つには、工具アセンブリ1が形成され、もう1つには、作業深さが特定される。
【0083】
第4工程では、圧縮力が深さ決定装置5から解放される。したがって、特に切削ケージ7がその初期の延在長さへと弾性的に弛緩し、これによって、第1距離が再びL1となる。同時に、組付け装置13が、工具のシャフト10に不動に固定されているので、c)に示したように、切れ刃19が、制限ストッパ49から圧縮量Δzだけ持ち上げられる。したがって、まだ接触面47に当接しているストッパ面17と、切れ刃19との軸線方向位置が、圧縮量Δzだけ変化させられる。こうして、工具3の作業深さまたは切削深さが、最大の作業深さから圧縮量Δzだけ変化させられる。
【0084】
最後に、工具アセンブリ1が深さ設定装置45から取り出される。
【0085】
図5に示した深さ設定装置45の第1実施形態では、接触面47が深さ設定装置45によって一体形に提供されている。また、制限ストッパ49も深さ設定装置45、特に深さ設定凹部55によって一体形に提供されている。
【0086】
第1実施形態による深さ設定装置45は、特に皿座ぐり工具として実現された工具3と共に使用されるように適合させられている。
【0087】
図6には、深さ設定装置45の第2実施形態が示してある。この第2実施形態は、特に、面取り工具、座ぐり工具またはばり取り工具として実現された工具3と共に使用されるように適合させられている。さらに、深さ設定装置45の第2実施形態は、接触面47が、深さ設定装置45に配置された接触距離要素57によって提供されている点で第1実施形態と異なっている。好ましくは、接触距離要素57は距離リングである。この場合、制限ストッパ49は深さ設定凹部55によって提供されていない。特に、深さ設定装置45のこの実施形態では、深さ設定凹部55が存在していない。
【0088】
図7には、深さ設定装置45の第3実施形態が示してある。この第3実施形態もまた、面取り工具、座ぐり工具またはばり取り工具としての工具3の実施形態と共に使用されるように適合させられている。しかしながら、この場合、第1実施形態と同様に、接触面47が深さ設定装置45によって一体形に提供されていて、制限ストッパ49が深さ設定凹部55によって一体形に提供されている。
【0089】
深さ設定装置45の別の実施形態では、制限ストッパ49が、深さ設定凸部またはストッパ距離要素によって提供されてよい。
【0090】
図8には、深さ設定装置45の第4実施形態が示してある。より簡単に表すために、図8では、切削ケージ7が省いてある。この第4実施形態では、制限ストッパ49が、深さ設定装置45に配置されたストッパ距離要素59によって提供されている。
図1
図2
図3
図4
図5a
図5b
図5c
図6
図7
図8
【国際調査報告】