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特表2023-551575セラミック物品及びそれを作製する方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-12-08
(54)【発明の名称】セラミック物品及びそれを作製する方法
(51)【国際特許分類】
   C04B 38/00 20060101AFI20231201BHJP
   B01J 37/04 20060101ALI20231201BHJP
   B01J 37/08 20060101ALI20231201BHJP
   B01J 37/00 20060101ALI20231201BHJP
   B01J 32/00 20060101ALI20231201BHJP
【FI】
C04B38/00 303Z
B01J37/04 102
B01J37/08
B01J37/00 D
B01J32/00
C04B38/00 304Z
【審査請求】有
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2023536820
(86)(22)【出願日】2021-12-17
(85)【翻訳文提出日】2023-06-28
(86)【国際出願番号】 US2021073005
(87)【国際公開番号】W WO2022147407
(87)【国際公開日】2022-07-07
(31)【優先権主張番号】63/199,441
(32)【優先日】2020-12-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】593150863
【氏名又は名称】サン-ゴバン セラミックス アンド プラスティクス,インコーポレイティド
【氏名又は名称原語表記】SAINT-GOBAIN CERAMICS AND PLASTICS, INC.
【住所又は居所原語表記】One New Bond Street, Worcester, MA 01615, United States of America
(74)【代理人】
【識別番号】100196449
【弁理士】
【氏名又は名称】湯澤 亮
(72)【発明者】
【氏名】トンプソン,マシュー,ジェイ.
(72)【発明者】
【氏名】ジマンスキー,トーマス
(72)【発明者】
【氏名】イェイツ,ランドール,クレイトン
(72)【発明者】
【氏名】ラルフ,ジェームス,エム.
【テーマコード(参考)】
4G019
4G169
【Fターム(参考)】
4G019FA15
4G019GA04
4G169AA01
4G169AA03
4G169AA08
4G169AA11
4G169BA01A
4G169BA01B
4G169BA05B
4G169BA13A
4G169BA13B
4G169BC31A
4G169BC32A
4G169BC68A
4G169BC72A
4G169BC75A
4G169BD03B
4G169BD05B
4G169DA05
4G169EA02Y
4G169EA04Y
4G169EA06
4G169EA11
4G169EB18X
4G169EB18Y
4G169EC02X
4G169EC02Y
4G169EC06X
4G169EC06Y
4G169EC07X
4G169EC07Y
4G169EC30
4G169FA01
4G169FA02
4G169FB05
4G169FB33
4G169FB67
4G169FC08
(57)【要約】
【解決手段】 連続マトリックスと、複数の離散領域としてマトリックス内に分布した分散相と、を含む、触媒担体などのセラミック物品が開示される。マトリックス及び離散領域は、異なる染料浸透試験値を有する。本開示はまた、セラミック物品を作製及び特徴付ける方法、並びにセラミック物品を含む触媒体に関する。
【選択図】図2C

【特許請求の範囲】
【請求項1】
セラミック物品であって、
(a)複数の第1のアルミナ粒子及び複数の第2のアルミナ粒子を含む、アルミナ粒子の硬質形成物であって、両方の複数の粒子が、前記硬質形成物全体にわたってランダムに分布し、
1)前記第2のアルミナ粒子が、5原子パーセント以下のZnI染料浸透試験値を有し、前記第1のアルミナ粒子が、前記第2のアルミナ粒子のZnI染料浸透試験値の少なくとも2倍のZnI染料浸透試験値を有し、
2)前記硬質形成物が、総断面積を有し、各複数の粒子が、前記総断面積の一部を占有し、前記第2のアルミナ粒子の断面積が、前記総断面積の5%~50%である、硬質形成物と、
(b)前記第1及び第2のアルミナ粒子上に分散された触媒活性金属と、を含む、セラミック物品。
【請求項2】
前記第1のアルミナのZnI染料浸透試験値が、前記第2のアルミナのZnI染料浸透試験値よりも少なくとも3倍大きい、請求項1に記載の物品。
【請求項3】
前記第1のアルミナのZnI染料浸透試験値が、前記第2のアルミナのZnI染料浸透試験値よりも少なくとも4倍大きい、請求項1に記載の物品。
【請求項4】
前記第1のアルミナのZnI染料浸透試験値が、10原子パーセントよりも大きい、請求項1に記載の物品。
【請求項5】
前記第1のアルミナのZnI染料浸透試験値が、15原子パーセントよりも大きい、請求項1に記載の物品。
【請求項6】
前記第2のアルミナの染料浸透試験値が、3原子パーセント以下である、請求項1に記載の物品。
【請求項7】
前記第1のアルミナの染料浸透試験値と前記第2のアルミナの染料浸透試験値との比が、少なくとも2:1である、請求項1に記載の物品。
【請求項8】
前記第2のアルミナ粒子の断面積が、前記総断面積の8%~40%である、請求項1に記載の物品。
【請求項9】
前記第2のアルミナ粒子の断面積が、前記総断面積の10%~30%である、請求項1に記載の物品。
【請求項10】
約0.2cm/g~約0.6cm/gの総細孔容積を更に含む、請求項1に記載の物品。
【請求項11】
前記総細孔容積が、約0.3cm/g~約0.5cm/gである、請求項10に記載の物品。
【請求項12】
前記総細孔容積が、約0.35cm/g~約0.5cm/gである、請求項10に記載の物品。
【請求項13】
前記触媒活性金属が、銀、白金、パラジウム、ニッケル、及び銅からなる群から選択される、請求項1に記載の物品。
【請求項14】
アルミナ粒子の硬質形成物と、前記粒子と接触している触媒活性金属と、を含む、セラミック物品の製造ためのプロセスであって、前記プロセスが、
(a)既知の重量及び約0.2~100ミクロンのd50粒径を有する複数の第1のαアルミナ粒子を提供することと、
(b)既知の重量を有し、溶融アルミナ及び板状アルミナからなる群から選択される、複数の第2のαアルミナ粒子を提供することであって、前記第2のアルミナ粒子が、約5~400ミクロンのd50粒径を有し、前記第1のアルミナ粒子のd50粒径と前記第2のアルミナ粒子のd50粒径との比が、1:4~1:40であり、前記第1のアルミナの重量と前記第2のアルミナの重量との比が、1:1~15:1である、提供することと、
(c)前記複数のアルミナ粒子を混合し、それによって混合物を形成することであって、前記粒子が、前記混合物全体にランダムに分布している、混合することと、
(d)前記混合物を複数の可鍛性物品に形成することと、
(e)前記アルミナ粒子の焼結温度まで前記可鍛性物品を加熱し、それによって各可鍛性物品をアルミナ粒子の硬質形成物に形成することであって、各複数の粒子中の前記粒子が、前記硬質形成物全体にわたってランダムに分布している、加熱することと、
前記第1及び第2のアルミナ粒子上に触媒活性金属を堆積させることと、を含む、プロセス。
【請求項15】
前記第1のアルミナの重量と前記第2のアルミナの重量との比が、1:1~10:1である、請求項14に記載のプロセス。
【請求項16】
前記第1のアルミナの重量と前記第2のアルミナの重量との比が、1:1~5:1である、請求項14に記載のプロセス。
【請求項17】
前記第1のアルミナ粒子のd50粒径と前記第2のアルミナ粒子のd50粒径との比が、1:5~1:20である、請求項14に記載のプロセス。
【請求項18】
前記第1のアルミナ粒子のd50粒径と前記第2のアルミナ粒子のd50粒径との比が、1:8~1:15である、請求項14に記載のプロセス。
【請求項19】
前記第2のアルミナ粒子が、約10~200ミクロンのd50粒径を有する、請求項14に記載のプロセス。
【請求項20】
前記第2のアルミナ粒子が、約40~150ミクロンのd50粒径を有する、請求項14に記載のプロセス。
【請求項21】
前記複数の第1のアルミナ粒子が、1.0m/g~20.0m/gの表面積を有する、請求項14に記載のプロセス。
【請求項22】
前記複数の第1のアルミナ粒子が、1.0m/g~5.0m/gの表面積を有する、請求項14に記載のプロセス。
【請求項23】
前記複数の第1のアルミナ粒子が、1.0m/g~2.0m/gの表面積を有する、請求項14に記載のプロセス。
【請求項24】
前記複数の第2のアルミナ粒子が、0.01m/g~2.00m/gの表面積を有する、請求項14に記載のプロセス。
【請求項25】
前記複数の第2のアルミナ粒子が、0.10m/g~0.50m/gの表面積を有する、請求項14に記載のプロセス。
【請求項26】
前記複数の第2のアルミナ粒子が、0.14m/g~0.30m/gの表面積を有する、請求項14に記載のプロセス。
【請求項27】
前記第2のアルミナ粒子が、本質的に溶融アルミナからなる、請求項14に記載のプロセス。
【請求項28】
前記第2のアルミナ粒子が、溶融アルミナからなる、請求項14に記載のプロセス。
【請求項29】
前記第2のアルミナ粒子が、本質的に板状アルミナからなる、請求項14記載のプロセス。
【請求項30】
前記第2のアルミナ粒子が、板状アルミナからなる、請求項14に記載のプロセス。
【請求項31】
前記第2のアルミナ粒子が、本質的に板状アルミナ及び溶融アルミナからなる、請求項14記載のプロセス。
【請求項32】
前記第2のアルミナ粒子が、板状アルミナ及び溶融アルミナからなる、請求項14に記載のプロセス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、概して、連続マトリックスを形成する複数の第1のアルミナ粒子と、マトリックス内に分散された複数の第2のアルミナ粒子と、を含む、セラミック物品に関し、第1及び第2の複数のアルミナ粒子は、異なる染料浸透試験値を有する。本開示はまた、セラミック物品の表面上に触媒活性材料を組み込んだ触媒に関する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0002】
触媒は、概して、担体、典型的にはセラミック材料から作製されたセラミック物品に、触媒活性材料、例えば金属を含浸させることによって作製されている。特定の態様では、担体に対する触媒活性材料の重量比が高すぎる触媒は、望ましくない場合がある。例えば、触媒が、触媒活性材料の充填量が多いために長い寿命を有する場合であっても、反応器内の単位容積当たりの触媒充填量が少ないことが所望される反応器内で使用する場合、触媒は非常に高価となり、経済的に成り立たなくなる場合がある。したがって、セラミック担体の構造が触媒体中の活性触媒材料の充填量を調節することを可能にする触媒用セラミック担体が当該技術分野において必要とされている。
【0003】
本開示は、アルミナ粒子の硬質形成物を含むセラミック物品に関する。硬質形成物は、複数の第1のアルミナ粒子及び複数の第2のアルミナ粒子を含む。両方の複数の粒子は、硬質形成物全体にランダムに分布している。第2のアルミナ粒子は、5原子パーセント以下のZnI染料浸透試験値を有し、第1のアルミナ粒子は、第2のアルミナ粒子のZnI染料浸透試験値の少なくとも2倍のZnI染料浸透試験値を有する。硬質形成物は、総断面積を有する。各複数の粒子は、総断面積の一部を占有し、第2のアルミナ粒子の断面積は、総断面積の5%~50%である。
【0004】
一部の態様では、セラミック物品の実施形態は、連続マトリックス(すなわち、第1のアルミナ粉末)のZnI染料浸透試験値よりも低い、分散相(すなわち、第2のアルミナ粉末)のZnI染料浸透試験値を有する。一実施形態は、第1のアルミナ粒子の染料浸透試験値と第2のアルミナの染料浸透試験値との比が少なくとも2:1であるセラミック物品に関する。一実施形態は、染料浸透試験値が、走査型電子顕微鏡(scanning electron microscopy、SEM)及びエネルギー分散型X線分光法(energy dispersive X-ray spectroscopy、EDS)のうちの1つ以上を含む方法によって得られる、セラミック物品に関する。一実施形態は、浸透試験値がZnI染料浸透試験によって判定されるセラミック物品に関する。一実施形態は、連続マトリックスを形成する複数の第1のアルミナ粒子が、10原子パーセント以上のZnI染料浸透試験値を有するセラミック物品に関する。一実施形態は、分散相を形成する複数の第2のアルミナ粒子が、5原子パーセント以下のZnI染料浸透試験値を有するセラミック物品に関する。
【0005】
一部の態様では、セラミック物品の実施形態は、約0.2cm/g~約0.7cm/gである総細孔容積を有する。一実施形態は、総細孔容積が約0.3cm/g~約0.6cm/gであるセラミック物品に関する。一実施形態は、セラミック物品の総細孔容積が約0.35cm/g~約0.5cm/gであるセラミック物品に関する。一実施形態は、総表面積が約0.4m/g~約3m/gであるセラミック物品に関する。一実施形態は、総表面積が約0.4m/g~約1.5m/gであるセラミック物品に関する。一実施形態は、総表面積が約0.5m/g~約0.85m/gであるセラミック物品に関する。
【0006】
本開示はまた、本明細書に記載されるセラミック物品上に堆積された金属を含む金属系触媒体に関する。一実施形態は、金属が銀である触媒体に関する。一実施形態は、セラミック物品上に堆積された銀を含む触媒体に関し、セラミック物品は、連続アルミナマトリックスと、複数の離散領域として連続アルミナマトリックス内に分布された分散アルミナ相と、を含み、物品は、0.3cm/g~0.6cm/gの総細孔容積と、0.5m/g~0.85m/gの総表面積と、を有し、連続アルミナマトリックスは、10%以上のZnI染料浸透試験値を有し、分散アルミナ相は、5原子パーセント以下のZnI染料浸透試験値を有し、分散アルミナ相は、セラミック物品の断面積の5%~50%を覆う。
【0007】
一実施形態は、第1の複数のアルミナ粒子及び第2の複数のアルミナ粒子がα-アルミナを含む、セラミック物品の作製するための方法に関する。一実施形態は、第2の複数のアルミナ粒子が溶融アルミナを含む、セラミック物品の作製するための方法に関する。一実施形態は、第2の複数のアルミナ粒子が板状アルミナを含む、セラミック物品の作製するための方法に関する。一実施形態は、結合材料を含むセラミック物品を作製するための方法に関し、結合材料はケイ酸マグネシウムである。
【図面の簡単な説明】
【0008】
前述の概要、並びに本発明の以下の詳細な説明は、添付の図面と併せて読めばよりよく理解されるであろう。
図1図1は、分散相の量の関数としてのセラミック物品の表面積及び吸水率を示す。
図2A図2Aは、それぞれ100倍、250倍及び500倍の倍率での本発明の物品の微細構造を示す。
図2B図2Bは、それぞれ100倍、250倍及び500倍の倍率での本発明の物品の微細構造を示す。
図2C図2Cは、それぞれ100倍、250倍及び500倍の倍率での本発明の物品の微細構造を示す。
図3A図3Aは、エポキシ中にマウントされ、断面化され、1μm仕上げまで研磨された本発明の物品のSEM画像を示す。
図3B図3Bは、エポキシ中にマウントされ、断面化され、1μm仕上げまで研磨された本発明の物品のSEM画像を示す。
図4A図4Aは、ZnI染料浸透試験のためのエネルギー分散型X線分光法(EDS)データ処理を示す。
図4B図4Bは、ZnI染料浸透試験のためのエネルギー分散型X線分光法(EDS)データ処理を示す。
図5A図5Aは、本発明の別の実施形態のEDSデータを示す。
図5B図5Bは、本発明の別の実施形態のEDSデータを示す。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本開示は、概して、触媒担体用途を含む様々な用途において、例えば、エチレンオキシドを生成するためのエチレンの直接酸化において使用される触媒のための触媒担体として使用され得るセラミック物品に関する。本明細書に記載されるセラミック物品は、少なくとも複数の第1のアルミナ粒子及び複数の第2のアルミナ粒子を含む。本開示はまた、第1のアルミナ粒子及び第2のアルミナ粒子から物品を作製する方法に関する。
【0010】
いかなる特定の理論にも束縛されることを望むものではないが、本明細書に記載されるように、担体上に充填される活性触媒材料の量をどのように調節するかという問題を解決する触媒担体を作製するためのセラミック物品を提供することができ、それによって、例えば、反応器中の容積基準でより低い触媒の充填が望ましい場合に、より経済的に競争力のある触媒を提供することができると考えられる。本明細書に説明されるように、銀含浸触媒全体にわたる高密度(すなわち、低多孔度)領域の追加は、触媒が、低多孔度領域を含有しないがそれ以外は同一の触媒において可能であるよりも高い作業速度をシミュレートすることを可能にし、それによって、反応器の生成速度を維持しながら、反応器中の銀の量の低減を可能にする。一部の実施形態では、かかる調節は、触媒系、例えば、エチレン酸化(ethylene oxidation、EO)触媒系における高い作業速度をシミュレートし得る。担体中に大きな高密度/低多孔度領域を導入することによって、活性触媒材料が浸透することができない領域が担体中に存在することになる。しかしながら、大きな高密度/低多孔度領域を取り囲むマトリックス領域では、吸水率と表面積との比は保存されたままであり、マトリックス領域中の活性触媒材料の予想される濃度及び粒径が維持される。マトリックス領域における吸水率と表面積との比を維持することによって、担体上の活性触媒材料の総充填量が低減されても、大きな高密度/低多孔度領域なしで作製された担体と比較して、初期触媒性能が維持されることが予想される。触媒の予想寿命が比較的短い場合、より少ない量の活性触媒材料、例えば銀を使用することは、経済的利点を提供し、その結果、より多い量の活性触媒材料は触媒の寿命にわたって利点を提供しなくなる。加えて、担体に使用されるアルミナの収縮は、製造中の担体の熱処理中に1以上のアルミナ粒子の周囲にクラックが入るのを回避するように好適に適合されることが望ましい。いかなるクラックによっても導入される多孔性は、マトリックス相の吸水率と表面積との比を変化させる可能性があり、これは、本発明によって導入される利点の一部を低下させる効果を有する可能性がある。
【0011】
一実施形態は、セラミック物品に関し、物品は、複数の第1のアルミナ粒子を含む連続マトリックスと、複数の第2のアルミナ粒子を含む分散相と、を含む。第2のアルミナ粒子は、連続マトリックス内に分布しており、複数の離散領域として説明され得る。分散相は、連続マトリックスとは異なるZnI染料浸透試験値を有し、セラミック物品の断面において、分散相は、セラミック物品の断面積の約8%~約40%を占有する。
【0012】
本明細書中で使用される場合、「比」という用語は、特定の特徴(例えば、重量、粒径、原子パーセント、表面積、断面積の一部など)の第1の量と、同じ特徴の第2の量との間の数的関係として定義される。次に、複数の例示的な例を提供する。第1の例では、100グラムの総質量を有し、第1のアルミナ及び第2のアルミナからなり、第1のアルミナの量が95グラムであり、第2のアルミナの量が5グラムである、2つのアルミナ粉末の混合物において、第1のアルミナと第2のアルミナとの比は、95:5である。便宜上、この比は19:1と記述することができる。各アルミナの量が総アルミナの百分率として表される場合、第1のアルミナの百分率は95重量パーセントであり、第2のアルミナの百分率は5重量パーセントである。第2の例では、第1のアルミナのd50粒径が10ミクロンであり、第2のアルミナのd50粒径が150ミクロンである場合、その比は10:150であり、これは1:15に単純化することができる。この比は、第2のアルミナのd50粒径が第1のアルミナのd50粒径より15倍大きいことを必要とする。第3の例では、第1のアルミナの表面積が5m/gであり、第2のアルミナの表面積が0.5m/gである場合、その比は5:0.5であり、10:1と記述することができる。この比は、第1のアルミナの表面積が第2のアルミナの表面積よりも10倍大きいことを必要とする。第4の例では、物品の総断面積が10cmであり、物品の総断面積が8cmを占有する第1の粉末及び2cmを占有する第2の粉末のみからなる場合、第1及び第2の粉末がそれぞれ占有する断面積の比は8:2であり、これは4:1と記述することができる。この比は、第1の粉末によって占有される断面積が、第2の粉末によって占有される断面積よりも4倍大きいことを必要とする。百分率で表すと、第1の粉末は総断面積の80パーセントを占有し、第2の粉末は総断面積の20パーセントを占有する。第5の例では、物品の総断面積が10cmであり、総断面積が5cmを占有する第1の粉末及び5cmを占有する第2の粉末のみからなる場合、第1及び第2の粉末がそれぞれ占有する断面積の比は5:5であり、1:1と記述することができる。百分率で表すと、第1の粉末は総断面積の50パーセントを占有し、第2の粉末は総断面積の50パーセントを占有する。第6の例では、物品の総断面積が20cmであり、総断面積が19.0cmを占有する第1の粉末及び1.0cmを占有する第2の粉末のみからなる場合、第1及び第2の粉末がそれぞれ占有する断面積の比は19:1である。百分率で表すと、第1の粉末は総表面積の95パーセントを占有し、第2の粉末は総表面積の5パーセントを占有する。したがって、当該第1のアルミナ粒子の断面積と当該第2のアルミナ粒子の断面積との比が1.0:1.0~19.0:1.0である実施形態では、第1のアルミナの断面積は総断面積の50%~95%であり、第2のアルミナの断面積は総断面積の50%~5%である。
【0013】
本明細書に記載される発明の一実施形態は、複数の第1のアルミナ粒子及び複数の第2のアルミナ粒子を含むアルミナ粒子の硬質形成物を含むセラミック物品である。両方の複数の粒子は、硬質形成物全体にランダムに分布している。第2のアルミナ粒子は、5原子パーセント以下のZnI染料浸透試験値を有し、第1のアルミナ粒子は、第2のアルミナ粒子のZnI染料浸透試験値の少なくとも2倍のZnI染料浸透試験値を有する。各複数の粒子は、硬質形成物の総断面積の一部を占有する。第2のアルミナ粒子は、セラミック物品の断面積の約8%~約40%、より好ましくは全体の10%~30%を覆う。触媒活性金属は、第1及び第2のアルミナ粒子上に分散される。
【0014】
本明細書に記載される発明の別の実施形態は、アルミナ粒子と、粒子と接触している触媒活性金属との硬質形成物を含む物品の製造のためのプロセスである。このプロセスは以下のステップを含む。既知の重量及び約0.2~100ミクロンのd50粒径を有する複数の第1のαアルミナ粒子を提供する。既知の重量を有し、溶融アルミナ及び板状アルミナからなる群から選択される、複数の第2のαアルミナ粒子を提供する。第2のアルミナ粒子は、約5~400ミクロンのd50粒径を有する。第1のアルミナ粒子のd50粒径と第2のアルミナ粒子のd50粒径との比は、1:4~1:40である。第2のアルミナの重量に対する第1のアルミナの重量の比は、1:1~19:1である。複数のアルミナ粒子を混合し、それによって、粒子が混合物全体にランダムに分布している混合物を形成する。混合物を複数の可鍛性物品に形成する。アルミナ粒子の焼結温度まで可鍛性物品を加熱し、それによって各可鍛性物品をアルミナ粒子の硬質形成物に形成し、各複数の粒子中の粒子は、硬質形成物全体にわたってランダムに分布している。第1及び第2のアルミナ粒子上に触媒活性金属を堆積させる。
【0015】
本明細書で使用される場合、連続マトリックスは、物品全体にわたって任意の方向に、少なくとも分散相中の最長粒子よりも長い距離にわたって、比較的変化しない形態特性を有するセラミック物品の部分を指す。物品の断面を見ると、連続マトリックスは、分散相の別の粒子にめったに接触しない個々の独立した粒子として見える分散相の離散領域を取り囲むように見える。連続マトリックスの定義は、特定の配合物において、マトリックス中にギャップを導入し得る孔が含まれ得るにもかかわらず、適用される。図2Cを参照すると、領域212は連続マトリックスの一部であり、領域206は分散相の離散領域であり、領域218は細孔領域である。この定義は、特定の倍率で、非常に限定された(高倍率の)視野に起因して、マトリックスの領域が連続的に見えない場合があるという高倍率の視覚的検査技術の不適切な選択によって適用されるものであり、否定されることはない。
【0016】
本明細書で使用される場合、分散相は、概して島状であり、包含する連続マトリックスに対して隔離されている離散領域を指す。分散相のこの定義は、一部の分散領域が、他の分散領域に隣接、接触、又は焼結され得るにもかかわらず適用される(例えば、分散相の隣接離散領域302及び304を示す、図3Aを参照)。対照的に、図5Aに示すように、領域501は連続マトリックスの一部であり、領域502は分散相中の離散領域である。
【0017】
断面の分散相被覆率は、100倍~250倍の倍率で測定することができるが、任意の他の好適な倍率を使用することができる。一部の実施形態では、断面積は、約0.6mm~約1.5mmの第1の寸法と、約0.45mm~約1mmの第2の寸法と、を有する、一部の実施形態では、第1の寸法は、長さであり得、第2の寸法は、幅であり得る。一部の実施形態では、セラミック物品の断面において、複数の離散領域の大部分は、約10μm~約150μmの最長寸法を有するように見える。いかなる特定の理論にも束縛されることを望むものではないが、サイズは、離散領域の任意のサイズ、例えば、フェレ径(例えば、Henk G.Merkus,Particle Size Measurements:Fundamentals,Practice,Quality;1 January 2009;Springer,p.15)を含むことができる。
【0018】
浸透試験値は、以下に記載されるZnI溶液浸透試験を用いて判定される。分散相のZnI染料浸透試験値は、連続マトリックスのZnI染料浸透試験値よりも低い。概して、ZnI染料浸透試験値は、ZnI含有溶液を使用してセラミック物品をZnI染料浸透試験に供することによって得られる。例えば、物品を溶液中に沈めることによって、セラミック物品をZnI溶液と接触させると、溶液はセラミック物品中に吸収される。この溶液には、一旦セラミック物品に吸収されると、様々な分析方法によって物品に吸収されたものとして確認され得る化合物が含まれる。
【0019】
概して、浸透試験値を判定するために使用されるZnIは、適切な溶媒、例えば、水に溶解される。得られたZnI溶液にセラミック物品の1つ以上の試料を導入する。任意選択的に、セラミック材料を含む溶液を真空に供することができ、これにより、セラミック物品への溶液のより良好な浸透を確実にすることができる。溶液から試料を取り出した後、乾燥を用いて溶媒を除去し、セラミック物品中に埋め込まれたZnIを残す。乾燥した試料は、ポリマー又は樹脂材料中に試料を固定することによってマウントされる。試料は、必要に応じて、研磨、切断、又はその両方を行って、セラミック物品の平滑な断面を得ることができる。セラミック物品試料を炭素コーティングし、次いで走査型電子顕微鏡(SEM)及び/又はエネルギー分散型X線分光法によって分析する。連続マトリックス及び分散相中の浸透試験材料の量を計算することによって、それぞれの領域の浸透試験値を計算することができる。
【0020】
一部の実施形態では、浸透試験値の差は少なくとも5%である。他の実施形態では、浸透試験値の差は、少なくとも5.1%、少なくとも5.2%、少なくとも5.3%、少なくとも5.4%、少なくとも5.5%、少なくとも5.6%、少なくとも5.7%、少なくとも5.8%、少なくとも5.9%、少なくとも6%、少なくとも6.1%、少なくとも6.2%、少なくとも6.3%、少なくとも6.4%、少なくとも6.5%、少なくとも6.6%、少なくとも6.7%、少なくとも6.8%、少なくとも6.9%、少なくとも7%、少なくとも7.1%、少なくとも7.2%、少なくとも7.3%、少なくとも7.4%、少なくとも7.5%、少なくとも7.6%、少なくとも7.7%、少なくとも7.8%、少なくとも7.9%、少なくとも8%、少なくとも8.1%、少なくとも8.2%、少なくとも8.3%、少なくとも8.4%、少なくとも8.5%、少なくとも8.6%、少なくとも8.7%、少なくとも8.8%、少なくとも8.9%、少なくとも9%、少なくとも9.1%、少なくとも9.2%、少なくとも9.3%、少なくとも9.4%、少なくとも9.5%、少なくとも9.6%、少なくとも9.7%、少なくとも9.8%、少なくとも9.9%、又は少なくとも10%である。
【0021】
一部の実施形態では、第1のアルミナのZnI染料浸透試験値は、第2のアルミナのZnh染料浸透値よりも少なくとも3倍大きい。
【0022】
一部の実施形態では、第1のアルミナのZnI染料浸透試験値は、第2のアルミナのZnI染料浸透値よりも少なくとも4倍大きい。
【0023】
一部の実施形態では、分散相の染料浸透試験値に対する連続マトリックスの染料浸透試験値の比は、少なくとも2.0である。他の実施形態では、分散相の染料浸透試験値に対する連続マトリックスの浸透試験値の比は、少なくとも2.1、少なくとも2.2、少なくとも2.3、少なくとも2.4、少なくとも2.5、少なくとも2.6、少なくとも2.7、少なくとも2.8、少なくとも2.9、少なくとも3、少なくとも3.1、少なくとも3.2、少なくとも3.3、少なくとも3.4、少なくとも3.5、少なくとも3.6、少なくとも3.7、少なくとも3.8、少なくとも3.9、少なくとも4、少なくとも4.1、少なくとも4.2、少なくとも4.3、少なくとも4.4、少なくとも4.5、少なくとも4.6、少なくとも4.7、少なくとも4.8、少なくとも4.9、又は少なくとも5である。
【0024】
一部の実施形態では、連続マトリックスは、10%より高いZnI浸透試験値を有する。他の実施形態では、連続マトリックスは、少なくとも10%、少なくとも11%、少なくとも12%、少なくとも13%、少なくとも14%、少なくとも15%、少なくとも16%、少なくとも17%、少なくとも18%、少なくとも19%、少なくとも20%、少なくとも21%、少なくとも22%、少なくとも23%、少なくとも24%、少なくとも25%、少なくとも26%、少なくとも27%、少なくとも28%、少なくとも29%、少なくとも30%、少なくとも31%、少なくとも32%、少なくとも33%、少なくとも34%、少なくとも35%、少なくとも36%、少なくとも37%、少なくとも38%、少なくとも39%、少なくとも40%、少なくとも41%、少なくとも42%、少なくとも43%、少なくとも44%、少なくとも45%、少なくとも46%、少なくとも47%、少なくとも48%、少なくとも49%、又は少なくとも50%のZnI浸透試験値を有する。
【0025】
一部の実施形態では、分散相は、5%以下のZnI染料浸透試験値を有する。他の実施形態では、分散相は、1%未満、1.1%未満、1.2%未満、1.3%未満、1.4%未満、1.5%未満、1.6%未満、1.7%未満、1.8%未満、1.9%未満、2%未満、2.1%未満、2.2%未満、2.3%未満、2.4%未満、2.5%未満、2.6%未満、2.7%未満、2.8%未満、2.9%未満、3%未満、3.1%未満、3.2%未満、3.3%未満、3.4%未満、3.5%未満、3.6%未満、3.7%未満、3.8%未満、3.9%未満、4%未満、4.1%未満、4.2%未満、4.3%未満、4.4%未満、4.5%未満、4.6%未満、4.7%未満、4.8%未満、又は4.9%未満のZnI染料浸透試験値を有する。
【0026】
一部の実施形態では、セラミック物品は、約0.2cm/g~約0.7cm/gの総細孔容積を有する。一部の実施形態では、セラミック物品は、約0.3cm/g~約0.6cm/gの総細孔容積を有する。一部の実施形態では、セラミック物品は、約0.35cm/g~約0.5cm/gの総細孔容積を有する。担体の総細孔容積、メジアン細孔径、及び細孔径分布は、液体水銀を担体の細孔に押し込む従来の水銀圧入ポロシメトリー装置によって測定され得る。水銀をより小さい細孔に押し込むためには、より大きな圧力が必要であり、圧力増分の測定値は、浸透した細孔の容積増分に対応し、したがって増分容積中の細孔のサイズに対応する。アルミナの細孔径分布及び細孔容積は、Micromeritics Model 9520 Autopore IV(130°の水銀接触角、0.480N/mの表面張力を有する水銀、及び適用される水銀圧縮についての補正)を使用して、689Paで開始し、次いで4.1×10Paに増加させる水銀圧入ポロシメトリーによって測定することができる。最低100個のデータ点が適切である。本明細書で使用される場合、メジアン細孔径は、総細孔容積の50%が当該点よりも小さい(又は大きい)細孔において見出される細孔径分布における点に対応する細孔径を意味すると理解される。
【0027】
他の実施形態では、セラミック物品は、0.20cm/g、約0.21cm/g、約0.22cm/g、約0.23cm/g、約0.24cm/g、約0.25cm/g、約0.26cm/g、約0.27cm/g、約0.28cm/g、約0.29cm/g、0.30cm/g、約0.31cm/g、約0.32cm/g、約0.33cm/g、約0.34cm/g、約0.35cm/g、約0.36cm/g、約0.37cm/g、約0.38cm/g、約0.39cm/g、0.40cm/g、約0.41cm/g、約0.42cm/g、約0.43cm/g、約0.44cm/g、約0.45cm/g、約0.46cm/g、約0.47cm/g、約0.48cm/g、約0.49cm/g、0.50cm/g、約0.51cm/g、約0.52cm/g、約0.53cm/g、約0.54cm/g、約0.55cm/g、約0.56cm/g、約0.57cm/g、約0.58cm/g、約0.59cm/g、約0.60cm/g、約0.61cm/g、約0.62cm/g、約0.63cm/g、約0.64cm/g、約0.65cm/g、約0.66cm/g、約0.67cm/g、約0.68cm/g、約0.69cm/g、又は約0.70cm/gの細孔容積を有し得る。
【0028】
一部の実施形態では、セラミック物品は、約0.4m/g~約3m/gの総表面積を有する。一部の実施形態では、セラミック物品は、約0.4m/g~約1.5m/gの総表面積を有する。一部の実施形態では、セラミック物品は、約0.5m/g~約0.85m/gの総表面積を有する。
【0029】
ここで、セラミック物品の表面積を測定するために使用される方法を説明する。ガス収着分析器を使用して、77°Kで液体窒素を使用して5点を測定するブルナウアー-エメット-テラー(Brunauer-Emmett-Teller、BET)法に従って、各セラミック物品の比表面積(Specific Surface Area、SSA)(本明細書では「表面積」とも称される)を判定した。この方法は、II型又はIV型の窒素収着等温線を有する熱安定性材料のSSAを判定するために使用することができる。この手順は、国際純正応用化学連合(International Union of Pure and Applied Chemistry、IUPAC)によって設定されたガイドラインに従い、これはまた、以下に参照されるASTM及びISO標準に組み込まれる:Thommes,M.et al.,Physisorption of gases,with special reference to the evaluation of surface area and pore size distribution(IUPAC技術報告書).Pure Appl.Chem.,87(9-10)(2015),pp.1051-1069.Stephen Brunauer,P.H.Emmett,and Edward Teller,Adsorption of Gases in Multimolecular Layers.J.Am.Chem.Soc.1938,60,2,309-319.ASTM D3663-20 and ASTM C1069-09.ISO 9277:2010。
【0030】
本出願に含まれる表面積測定は、Micromeritics ASAP 2420又はASAP 2460を使用して、最大レベルまで充填された20ccバルブを有する試験管を使用して行った。試料を250℃で2時間脱気し、次いで冷却し、窒素を再充填した。次いで、試料管を分析ポートに充填し、BET分析を実行した。表面積は、BET式によって計算した。計算は、以下の相対圧力:0.100、0.125、0.175、0.225、及び0.270P/Poを目標として、0.05~0.30の範囲の相対圧力(P/Po)でのN2収着の5つのデータ点を使用して行った。
【0031】
他の実施形態では、セラミック物品は、約0.5m/g、約0.6m/g、約0.7m/g、約0.8m/g、約0.9m/g、約1m/g、約1.1m/g、約1.2m/g、約1.3m/g、約1.4m/g、約1.5m/g、約1.6m/g、約1.7m/g、約1.8m/g、約1.9m/g、約2m/g、約2.1m/g、約2.2m/g、約2.3m/g、約2.4m/g、約2.5m/g、約2.6m/g、約2.7m/g、約2.8m/g、約2.9m/g、又は約3.0m/gの総表面積を有する。
【0032】
本明細書中で使用される場合、担体の「吸水率」は、以下のプロセスを使用して判定された。化学天秤を使用して、2つの100グラムロットの担体を秤量した。各ロットの乾燥重量を記録し、合わせたロットの総乾燥重量(dry weight、DW)を計算した。各ロットを、それぞれ長さ80mm×幅60mm×高さ70mmの2つのステンレス鋼スイングバケットのうちの1つに入れた。バスケットは、0.889mm(0.035インチ)の直径を有し、Eppendorf North America(Hauppauge,New York,USA)から入手可能なEppendorf Swing Basket Rotor A-4-62遠心分離機での使用に好適なワイヤを使用して、10メッシュステンレス鋼スクリーンから構築された。充填されたワイヤバスケットを真空チャンバ内に配置し、真空を25mmHgまで2分間引いた。担体が完全に覆われるまで、担体に水を注いだ。真空を再び25mmHgまで引き、2分間保持した。真空を解除し、チャンバを大気圧に戻し、2分間そのままにした。充填したワイヤバスケットをEppendorf Swing Basket Rotor A-4-62遠心分離機に入れ、充填したバスケットを300回転/分(revolutions per minute、rpm)で1分間の総スピン時間スピンさせた。担体をバスケットから空にして、重量が予め記録されている単一の浅いパンに移した。組み合わせたロットの遠心分離重量(centrifuge weight、CW)を、その上に充填された担体を有するパンを秤量し、パンの重量を減算することによって計算した。吸水率は、遠心分離重量(CW)から乾燥重量(DW)を減算して差を得、次いで、これを乾燥重量(DW)で除算し、100を乗算することによって判定した。
【0033】
本明細書で使用される場合、粉末の充填密度は、以下のように判定される。100mLのメスシリンダーを使用して、メスシリンダー(A)を0.01g単位で秤量し、次にそれを自動タップ付き密度分析器のプラットフォーム上に置き、それを固定する。ある容積の試料をメスシリンダーの容量に加える。1000回のタッピングに対してカウンタを設定し、タッピングを開始する。1000回のタップが完了したら、試料の容積(V)を読み取り、記録する。容積は、0.5mL以内で測定されるべきである。試料及びメスシリンダー(B)を0.01g単位で秤量する。次いで、タップ充填密度は、粉末の重量(B-A)を記録された容積Vで除算したものとして計算することができる。
【0034】
一実施形態では、セラミック物品は、連続アルミナマトリックスと、複数の離散領域としてマトリックス内に分布した分散アルミナ相と、を含み、セラミック物品は、0.3cm/g~0.6cm/gの総細孔容積と、0.5cm/g~0.85cm/gの総表面積と、を有し、複数の離散領域の大部分はそれぞれ、約10μm~約150μmのサイズを有し、連続アルミナマトリックスは、10%以上のZnI染料浸透試験値を有し、分散アルミナ相は、5%以下のZnI染料浸透試験値を有し、約0.6mm~約1.5mmの第1の寸法及び約0.45mm~約1mmの第2の寸法を有するセラミック物品の断面において、分散アルミナ相は、断面積の5%~50%、より好ましくは8%~40%、更により好ましくは10%~30%を占有する。
【0035】
本開示はまた、本明細書に記載されるセラミック物品上に堆積された金属を含む触媒に関する。一実施形態は、金属が、本明細書に記載のセラミック物品上に堆積された銀である触媒に関する。本開示は、担体を作製するために使用される第1のアルミナ粉末の量と第2のアルミナ粉末の量との間の比を変動させることによって、物品上に充填される金属の量を調節する方法に関する。分散相は連続マトリックスよりも多孔性が低いので(分散相のより低いZnI浸透試験値に反映されるように)、分散相は連続マトリックスよりも低い金属触媒充填量を有する。したがって、セラミック物品中の連続マトリックスに対する分散相の比を増加させることによって、金属触媒の充填量を減少させることができ、逆に、セラミック物品中の連続マトリックスに対する分散相の比を減少させることによって、金属触媒の充填量を増加させることができる。
【0036】
本発明の物品を製造するために、特定の物理的及び化学的特性、具体的には、第1及び第2のアルミナの表面積及びd50粒径は、制御及び調整され得る。本発明の物品の製造に有用な粉末は、表1及び以下の説明の情報を指針として用いて選択することができる。
【0037】
【表1】
好ましくは、第1のアルミナ粉末は、0.2~100ミクロン、より好ましくは2~20ミクロン、最も好ましくは5~10ミクロンのd50粒径を有するαアルミナである。第1のアルミナ粉末は、最高焼成温度が約1600℃であり、表面積が1~20m/g、好ましくは1~5m/g、より好ましくは1~2m/gであるプロセスで製造され得る。第1のアルミナ粉末は、粒子の内部多孔性及び粒子の幾何学的表面積によって寄与される表面積の尺度である、その総表面積に有意に寄与する内部多孔性を含み得る。第1のアルミナ粉末は、溶融アルミナ又は板状アルミナであるべきではない。本明細書で使用される場合、板状アルミナは、1,650℃を超える温度に加熱された酸化アルミニウムとして定義され、タブレット状結晶から構成される。本明細書で使用されるように、溶融アルミナは、電気アーク炉内で溶解され、冷却され、破砕され、所望の形状に再鋳造された焼成アルミナとして定義される。焼成アルミナは、1,050℃を超える温度で加熱されて、ほぼすべての化学的に結合した水を除去した酸化アルミニウムである。
【0038】
好ましくは、第2のアルミナは、板状アルミナ及び溶融アルミナからなる群から選択されるαアルミナである。第2のアルミナ粉末は、溶融アルミナの場合のように、最高焼成温度がアルミナの融点より高くあり得るか、又は板状アルミナの場合のように、アルミナの融点よりわずかに低くあり得るプロセスで作製されたαアルミナである。第2のアルミナのd50粒径は、5~400ミクロン、より好ましくは10~200ミクロン、最も好ましくは40~150ミクロンであり得る。第2のアルミナ粉末は、アルミナの融点付近又は融点より高い温度で焼成されているため、第2のアルミナ粉末は、非常に小さい内部多孔性を有する。内部多孔性の欠如は、総表面積に寄与する内部多孔性が存在しないため、同様の粒径の第1のアルミナ粉末よりも低い総表面積をもたらす。粒径を低減させるための粉砕プロセスに供されていない第2のアルミナ粉末は、0.2~2.0m/g、好ましくは0.10~0.50m/g、より好ましくは0.14~0.30m/gの表面積を有する。
【0039】
第2のアルミナのd50粒径に対する第1のアルミナのd50粒径の比を選択することは、第1及び第2のアルミナ粉末から作製される物品の総表面積を制御するために使用され得る。原則として、第1のアルミナ粉末の粒径は、第2のアルミナ粉末の粒径よりもはるかに小さくなければならない。好ましくは、第1のアルミナのd90は、第2のアルミナのd10未満であるべきである。より好ましくは、第1のアルミナのd95は、第2のアルミナのd05未満であるべきである。更により好ましくは、第1のアルミナのd99は、第2のアルミナのd01よりも小さくあるべきである。好ましくは、第1及び第2のアルミナの粒径分布は、単峰性であるべきである。
【0040】
より具体的には、第1のアルミナ粉末のd50粒径対第2のアルミナ粉末のd50粒径の比は、1:4~1:40、好ましくは1:5~1:20、より好ましくは1:8~1:15であり得る。これらの比は、第2のアルミナ粉末のd50粒径が、第1のアルミナ粉末のd50粒径の40倍以下、好ましくは20倍以下、より好ましくは15倍以下であるべきであることを示している。この比はまた、第2のアルミナ粉末のd50粒径が、第1のアルミナ粉末のd50粒径よりも少なくとも4倍、好ましくは少なくとも5倍、より好ましくは少なくとも8倍大きくなければならないことを示す。
【0041】
第1及び第2のアルミナ粉末の絶対d50粒径及びそれらの比に加えて、第1のアルミナ及び第2のアルミナ粉末の表面積を使用して、本発明の物品を作製するのに有用な粉末を選択し得る。原則として、第1のアルミナ粉末のグラム当たりの表面積は、第2のアルミナ粉末のグラム当たりの表面積よりもはるかに大きくなければならない。より具体的には、第1のアルミナ粉末の表面積対第2のアルミナ粉末の表面積の比は、7:1~15:1、好ましくは5:1~10:1、より好ましくは4:1~5:1であり得る。これらの比は、第1のアルミナ粉末の表面積が、第2のアルミナ粉末の表面積の15倍以下、好ましくは10倍以下、より好ましくは5倍以下であるべきであることを示している。この比はまた、第1のアルミナ粉末の表面積が、第2のアルミナ粉末の表面積よりも少なくとも7倍、好ましくは少なくとも5倍、より好ましくは少なくとも4倍大きくなければならないことを示す。
【0042】
第2のアルミナの粒子は、本明細書では分散相と称されることがあり、連続マトリックス相全体にランダムに分布している。第2のアルミナ粒子は、本発明の物品の所望の倍率でのSEM顕微鏡写真において目に見える第2のアルミナの粒子の少なくとも70%が、他の第2のアルミナ粒子に接触しているように見えない場合、連続相を形成していないと考えられる。第2のアルミナ粒子は、第2のアルミナ粒子を完全に又は部分的に取り囲む複数の第1のアルミナ粒子によって、他の第2のアルミナ粒子から物理的に隔離されているように見える場合がある。
【0043】
アルミナのタイプ、特定のd50so粒径及びそれらの比に加えて、第1及び第2の粉末の重量比は、第2のアルミナ粒子の断面積が、物品の総断面積の少なくとも5~50%、より好ましくは8%~40%、更により好ましくは10%~30%であることを確実にするように制御され得る。第1のアルミナ粉末の第2のアルミナ粉末に対する重量比は、15:1~1:1であり得る。14:1、12:1、10:1、8:1、7:1、6:1、5:1、4:1、3:1及び2:1の中間比が実現可能である。
【0044】
一実施形態は、第1のアルミナ粉末が少なくとも85重量パーセントのα-アルミナであり得るセラミック物品の作製するための方法に関する。より好ましくは、第1のアルミナ粉末は、少なくとも90重量パーセント、95重量パーセント、又は99重量パーセントのαアルミナであり得る。一実施形態は、第2のアルミナ粉末が、溶融アルミナのみ、板状アルミナのみ、又は板状アルミナと溶融アルミナとの混合物であり得る、セラミック物品を作製するための方法に関する。
【0045】
本明細書に記載されるように、粒径は、Horiba粒子LA-950レーザ散乱粒径分布分析器を使用してレーザ散乱によって判定される。分析器は、0.01ミクロン~3000ミクロンの範囲の粒径及び分布を測定するために、Mie散乱理論の原理を使用する。本明細書で「d50」と称されるメジアン粒径は、記載されたメジアン粒径よりも大きい粒子と小さい粒子の球相当容積が等しい粒径を表す。この方法は、3滴の10%Darvan(登録商標)溶液を添加すること、超音波処理によって粒子を分散させること、したがって、二次粒子を一次粒子に分解することを含む。この超音波処理は、d50値の更なる変化が認められなくなるまで継続され、これは、Horiba LA-950粒径分析器を使用する場合、典型的には、1~5分間の超音波処理を必要とする。
【0046】
一部の実施の形態では、セラミック物品を作製するための方法は、結合材料、例えば、ケイ酸マグネシウムの使用を含む。所望される場合、セラミック物品を調製する際に、1つ以上の任意の添加剤が含まれ得る。例えば、成形体の形成を容易にするため、及び/又は得られるセラミック物品の1つ以上の特性を変化させるために、1つ以上の添加剤を含むことが望ましい場合がある。好適な添加剤としては、結合剤(例えば、ポリオレフィンオキシド、セルロース、アルカリ土類金属化合物、例えば、マグネシウムシリケート及びカルシウムシリケート、並びにアルカリ金属化合物)、押出助剤(例えば、ワセリン、水素化油、合成アルコール、合成エステル、グリコール、デンプン、ポリオレフィンオキシド、ポリエチレングリコール、及びそれらの混合物)、溶媒(例えば、水)、解膠酸(例えば、ギ酸、酢酸、及び/又はプロパン酸などの1~約5個の炭素原子を含有する単官能性脂肪族カルボン酸)、1~約5個の炭素原子を含有するハロゲン化単官能性脂肪族カルボン酸(例えば、モノ-、ジ-及びトリクロロ酢酸など)、融剤、結合剤、分散剤、「細孔形成剤」としても知られる燃焼材料、強度向上添加剤などが挙げられるが、これらに限定されない多種多様な既知の担体添加剤のいずれかが挙げられ得る。例えば、調製方法及び得られるセラミック物品の所望の特性を考慮して、好適な添加剤を適切な量で選択することは、当業者の能力の範囲内である。
【0047】
一部の実施形態では、本プロセスは、ギ酸の使用を含む。ギ酸は、混合物中の粒子の分散を安定化させるように機能し得る。一部の実施形態では、ギ酸は、約1%(w/w%)、約1.5%(w/w%)、約2%(w/w%)、約2.5%(w/w%)、約3%(w/w%)、約3.5%(w/w%)、約4%(w/w%)、約4.5%(w/w%)、約5%(w/w%)、約5.5%(w/w%)、約6%(w/w%)、約6.5%(w/w%)、約7%(w/w%)、又は約7.5%(w/w%)で混合物に添加される。
【0048】
一部の実施形態では、混合物は、1つ以上の熱分解性材料を更に含む。混合物は、約2%(w/w%)~約40%(w/w%)、又は約5%(w/w%)~約30%(w/w%)の範囲の量の熱分解性材料を含有し得る。熱分解性材料は、細孔形成剤として機能し得る。本明細書で使用される場合、熱分解性材料は、粒子形態の固体である。熱分解性材料は、加熱ステップの前にアルミナ粉末と、例えば、少なくとも2つの異なるタイプのアルミナの生素地混合物と混合される。熱分解性材料の個々の粒子は、混合物中の多数の小さな空間を占有する。熱分解性材料の個々の粒子は、加熱ステップ及び/又は焼結ステップの間に熱分解によって除去され、それによって担体を形成するセラミック物品中に細孔を残す。細孔はまた、セラミック物品全体にわたって分布した複数の空隙として説明することもできる。一部の実施形態では、熱分解性材料の使用によって作製される細孔の大部分は、連続マトリックス内に包含される。例えば、熱分解性材料の使用によって作製された細孔の少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、又は少なくとも90%が、連続マトリックス内に包含される。
【0049】
熱分解性材料は、セラミック物品を作製するために使用される他の成分のいずれにも可溶性であるべきではない。同様に、熱分解性材料は、他の成分のいずれも溶解すべきでない。熱分解性材料は、加熱ステップの前に容積を占有し、材料によって占有された空間は、加熱ステップが完了した後も概して占有されないままであるため、材料は細孔形成剤として機能する。本発明のプロセスにおいて有用な熱分解性材料は、典型的には有機材料である。好適には、有機材料の化学式は、炭素及び水素を含む。熱分解性材料は、合成材料若しくは天然材料又はそれらの混合物であり得る。好ましくは、熱分解性材料は、アルミナ粉末の焼結温度以下の分解温度を有する有機材料であり得る。これにより、熱分解性材料が、アルミナ粉末の焼結前又は焼結と同時に少なくとも部分的に除去されることが確実となる。分解を促進するために、熱分解可能な材料の化学式は、好ましくは、炭素、水素、及び酸素を含み得る。分解温度は、酸素の存在によって低下され得る。
【0050】
一部の実施形態では、混合物は、バーンアウト中に細孔の形成をもたらす1つ以上の天然に存在する熱分解性材料を更に含む。本明細書で使用される場合、天然に存在する熱分解性材料は、配合物中にポリマーを含まず、他の加工助剤を含まない。むしろ、天然に存在する熱分解性材料は、成形体の成形を容易にするために、及び/又は得られるセラミック物品の多孔性を変化させるために、セラミック物品を調製する場合に任意選択的に含まれるバーンアウト材料を指す。典型的には、バーンアウト材料は、乾燥、焼成、及び/又は焼結中にバーンアウト、昇華、又は揮発される。好適なバーンアウト材料の例としては、ピーカン、カシュー、クルミ、ピーチ、アプリコット、及びフィルバートなどのナッツの粉砕された殻が挙げられるが、これらに限定されない。当該技術分野において既知の任意の他の天然に存在する熱分解性材料を使用することができる。一部の実施の形態では、得られたセラミック物品における0.1mL/g以下の細孔容積は、バーンアウト材料の使用によるものである。一部の実施形態では、天然に存在する熱分解性材料は混合物中に含まれない。
【0051】
熱分解性材料は、合成材料であり得る。合成材料は、ポリマー材料であり得る。いかなる特定の理論にも束縛されることを望むものではないが、本明細書で使用される場合、合成材料は、天然に存在する熱分解性材料を含まないことが企図される。ポリマー材料は、懸濁重合を含む乳化重合を使用して形成され得、この場合、熱分解性材料として直接使用可能な微粒子状のポリマーが得られるので好ましいことが多い。好ましくは、ポリマー材料は、アニオン重合を使用して形成され得る。ポリマー材料は、オレフィンポリマー及びコポリマー、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリビニルアルコール、エチレン-酢酸ビニル、及びエチレン-ビニルアルコールコポリマー、ジエンポリマー及びコポリマー、例えば、ポリブタジエン、EPDMゴム、スチレン-ブタジエンコポリマー、及びブタジエン-アクリロニトリルゴム、ポリアミド、例えば、ポリアミド-6及びポリアミド-66、ポリエステル、例えば、ポリエチレンテレフタレートであり得る。好ましくは、ポリマー材料は、ポリオレフィンなどの炭化水素ポリマー、より好ましくはポリプロピレンであり得る。
【0052】
熱分解可能な材料は、個々の粒子のサイズを特定の粒径範囲に制限するために、スクリーニングされるか又は他の方法で選別され得る。所望される場合、第1の粒径範囲内の粒子を有する第1の熱分解性材料を、第2の粒径範囲内の粒子を有する第2の熱分解性材料と組み合わせて、多孔質セラミック物品中の細孔径の多峰性分布を得ることができる。粒径範囲の制限は、担体の多孔質セラミック物品中に形成される細孔のサイズによって判定される。
【0053】
一部の実施形態では、混合物は、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、塩化ビニルコポリマー、酢酸ビニルコポリマー、オレフィンポリマー、オレフィンコポリマー、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリビニルアルコール、エチレン-酢酸ビニルコポリマー、エチレン-ビニルアルコールコポリマー、ジエンポリマー、ジエンコポリマー、ポリブタジエン、エチレンプロピレンジエンモノマー(ethylene propylene diene monomer、EPDM)ゴム、スチレン-ブタジエンコポリマー、ブタジエンアクリロニトリルゴム、ポリアミド、ポリアミド-6、ポリアミド-66、ポリエステル、ポリエチレンテレフタレート、炭化水素ポリマー、ポリオレフィン、及びポリプロピレンから選択される1つ以上のポリマー又はコポリマーを更に含む。1つ以上のポリマー又はコポリマーは、潤滑剤及び/又は細孔形成剤として機能し得る。
【0054】
担体本体は、噴霧乾燥、凝集、又はプレスなどの任意の好都合な形成プロセスによって混合物から形成され得、好ましくは混合物の押出によって形成される。適用可能な方法については、例えば、米国特許第5,145,824号、同第5,512,530号、同第5,384,302号、同第5,100,859号、及び同第5,733,842号を参照することができ、これらはそれぞれ、参照により本明細書に組み込まれる。かかる成形プロセス、特に押出を容易にするために、混合物は、2~25%w/w、好ましくは5~15%w/wの加工助剤と好適に配合され得る。「押出助剤」という用語によっても言及される加工助剤は、例えば、「Kirk-Othmer Encyclopedia of Chemical Technology,」4th edition,Volume 5,p.610.に記載されているように、当該技術分野において既知である。好適な加工助剤は、典型的には、液体又はグリース状物質、例えば、ワセリン、水素化油、合成アルコール、合成エステル、グリコール、又はポリオレフィンオキシドである。ホウ酸もまた、例えば、0.5%w/w%までの量で、より典型的には、0.01~0.5%w/w%の量で、この混合物に添加され得る。すべての配合重量は、混合物中のアルミナ及びジルコニアなどのセラミックの総重量に基づく。
【0055】
一部の実施形態では、本プロセスは、焼成及び/又は焼結の前に混合物を押し出すことを更に含む。一部の実施形態では、本プロセスは、焼成及び/又は焼結の前に、混合物を1つ以上の個別の物体に形成することを更に含む。例えば、混合物は、担体に形成され得る。概して、担体のサイズは、それらが堆積される反応器の寸法によって判定される。しかしながら、概して、円筒、球、ドーナツなどの形態の担体を使用することが非常に好都合であることが分かっている。円筒は、中実状若しくは中空状、直線状、又は屈曲状であり得、それらは、4~20mm、典型的には5~15mmの長さ、4~20mm、典型的には5~15mmの外径、及び0.1~6mm、典型的には0.2~4mmの内径を有し得る。円筒は、0.5~2、典型的には0.8~1.2の範囲の長さ対外径の比を有し得る。
【0056】
形成された部品は、円筒形、球形、環状、又はマルチローブなどの様々な形状で生成することができる。例えば、成形ペレットは、ペーストの連続ロッドを押し出し、次いでロッドを所望のサイズのペレットに切断することによって形成され得る。ペーストを好適な形状のダイを通して押し出し、次いで、ロッドを一定の断面のペレットに切断することによって、「ワゴンホイール」などの任意の所望の構成のリングベースの形状の構造体、又は、例えば、マルチローブ構造体及び小さいハニカムなどの一定の断面を有する任意の他の押出形状が形成され得る。成形物品はまた、大きなハニカムモノリスの形態であり得る。しかしながら、押出/プレスするプロセスは、これらの形状に限定されない。部品は、約0.8~約25mmの外径、又は非円形の場合は平均幅を有し得るが、他のサイズが形成され得る。米国特許出願公開第2012/0171407号を参照することができ、これは、マルチローブキャリアの更なる説明のために、参照により本明細書に組み込まれる。追加的に、セラミック物品キャリアのサイズは、概して限定されず、触媒反応器、例えば、エチレン酸化反応器での使用に好適な任意のサイズを含み得る。例えば、セラミック物品キャリアは、5~15ミリメートルの長さ、5~15mmの外径、及び0.2~4mmの内径を有する円筒形状であり得、一部の実施形態では、セラミック物品キャリアは、0.8~1.2の長さ対外径比を有し得る。追加的に、セラミック物品キャリアは、1~7mmの壁厚を有する中空円筒の形状であり得る、例えば、セラミック物品キャリアが用いられる触媒反応器の種類及び構成、例えば、触媒反応器内の管の長さ及び内径を考慮して、セラミック物品キャリアの好適な形状及びサイズを選択することは、本開示の利益を享受する当業者の能力の範囲内である。
【0057】
一部の実施形態では、本プロセスは、成形体を乾燥させることを更に含む。形成された成形体を乾燥させて、存在する場合には、存在する水の少なくとも一部を除去し得る。水は、後述する加熱ステップの間に蒸気に変換され、成形体の物理的完全性に悪影響を及ぼす可能性がある。乾燥は、混合物の調製及び混合物の複数の成形体への任意の成形の後に行うことができる。乾燥ステップは、オーブン又はキルンの熱プロファイルを制御することによって加熱ステップと組み合わせることができる。乾燥は、20℃~400℃、又は30℃~300℃で、典型的には約100時間まで、好ましくは約5分~約50時間の期間にわたって行うことができる。典型的には、乾燥は、混合物が2%w/w未満の水を含有する程度まで行われる。
【0058】
焼成及び/又は焼結は、概して、十分に高い温度で、十分に長い時間にわたって、約100時間までの時間にわたって、好ましくは約5分~約50時間にわたって行われる。一部の実施形態では、焼成及び/又は焼結は、少なくとも2種類のアルミナの混合物の少なくとも50%、又は少なくとも75%、又は少なくとも85%、又は少なくとも90%、又は少なくとも95%を焼結するのに十分な、1以上の温度、1以上の圧力、及び1以上の期間で行われ得る。一部の実施形態では、本プロセスは、混合物を少なくとも1200℃の温度で加熱することを含む。一部の実施形態では、本プロセスは、混合物を1600℃までの温度で加熱することを含む。一部の実施形態では、本プロセスは、約1200℃~約1600℃の温度で混合物を加熱することを含む。焼成及び/又は焼結は、空気、窒素、アルゴン、ヘリウム、二酸化炭素、水蒸気などを含むがこれらに限定されない任意の好適な雰囲気中で行われ得る。成形体が有機バーンアウト材料を更に含む実施形態では、加熱及び/又は焼成のうちの少なくとも1つは、酸素含有雰囲気中などの酸化雰囲気中で少なくとも部分的に又は完全に行われる。本明細書で使用される場合、焼成及び/又は焼結は、粉末粒子から作製及び形成された未焼成体を焼成及び固化するプロセスを意味する。粒子は、隣接する粒子に結合して、アルミナ粒子の強固な形成物を形成する。空隙は、粒子間及び/又は粒子内に存在し、集合的にセラミック物品の多孔性に寄与し得る。
【0059】
焼成及び/又は焼結後、得られたセラミック物品は、活性触媒材料の堆積前に、任意選択的に洗浄及び/又は処理され得る。同様に、所望される場合、セラミック物品を形成するために使用される任意の原料は、焼成及び/又は焼結の前に洗浄及び/又は処理され得る。洗浄及び/又は処理のための当該技術分野で公知の任意の方法は、かかる方法が得られる担体又は触媒の性能に悪影響を及ぼさない限り、本開示に従って使用され得る。かかる方法に関する記載については、米国特許第6,368,998号、同第7,232,918号、同第7,741,499号、及び国際公開第2007/092022号(これらは各々、本明細書中に参考として援用される)が参照される。洗浄が所望される場合、洗浄は、典型的には、15℃~120℃の範囲の温度で、約100時間まで、好ましくは約5分~約50時間の期間にわたって行われる。洗浄は、連続式又はバッチ式のいずれかで行うことができる。好適な洗浄溶液の例としては、水、例えば、脱イオン水、1以上の塩、例えば、アンモニウム塩を含む水溶液、アミン溶液、例えば、エチレンジアミン、水性有機希釈剤、及びこれらの組み合わせを挙げることができるが、これらに限定されない。同様に、好適な水溶液は、酸性、塩基性、又は中性であり得る。洗浄溶液の容積は、セラミック物品の初期湿潤点に達するまでセラミック物品が含浸されるようなものであり得る。代替的に、より大きい容積が使用され得、溶液の余剰は、例えば、遠心分離によって、湿潤セラミック物品から除去され得る。更に、任意の洗浄及び/又は処理ステップに続いて、触媒物品の堆積前に、セラミック物品を乾燥又は焙焼することが好ましい。例えば、セラミック物品は、空気流中で、例えば、約80℃~約400℃の温度で、十分な時間乾燥され得る。
【0060】
形成されたセラミック物品は、触媒として直接使用することもできるし、成形体の形成中又は形成後に触媒活性物質の溶液を含浸させ、場合によっては好適な後処理によって活性化した後に触媒担体として使用することもできる。好適な触媒活性物質としては、元素周期表のVB族、VIIIB族及びIB族からのものなどの遷移金属元素、例えば、バナジウム、金、白金族金属などが挙げられる。一部の実施形態では、金属は、例えば、銀、コバルト、ルテニウム、及び/又は鉄を含む触媒活性金属である。特に、銀が好ましい金属である。担体が使用され得る例示的な用途としては、直接エチレン酸化が挙げられるが、セラミック物品は、任意の用途で使用されることが企図される。
【実施例
【0061】
エポキシ化反応に使用するための担体を製造するプロセスは、参照により本明細書に組み込まれる米国特許第5,100,859号明細書及び米国特許第6,831,037号明細書を含む多数の刊行物に記載されている。例えば、米国特許第5,100,859号の第2欄第6行から第6欄第43行までの開示を参照されたい。以下の実施例は、本発明の一部の実施形態を更に詳細に記載する。これらの実施例は、例示の目的のみのために提供されており、本発明を限定すると考えられるべきではない。担体Aは比較例である。担体B、C、D、及びEは、本明細書に記載の本発明の実施形態である。
【0062】
担体A(比較例)
本開示における比較担体である担体Aは、米国特許第5,100,859号(Gerdes)に開示されている担体Lに関するその教示に従って、以下の変更を加えて調製した。比較担体Aに使用した唯一のアルミナ粉末は、7.7ミクロンのd50粒径、1.4m/gの表面積、0.78g/ccの充填密度を有し、本明細書では第1の複数のアルミナ粒子と称する。第1の複数のアルミナ粒子を、ジルコニア、ケイ酸マグネシウム、クルミ殻粉、ホウ酸、及び押出助剤と組み合わせた。第1の複数のアルミナ粒子、ジルコニア、ケイ酸マグネシウム、及びクルミ殻粉の組み合わせは、本明細書では担体Aの乾燥混合物として定義される。水、ホウ酸、及び押出助剤との乾燥混合物の合わせた重量は、本明細書では、担体Aの湿潤混合物として定義され、これは押出成形され、乾燥及び焼成された中空円筒を形成した。担体Aにおいて、第1の複数のアルミナ粒子は、担体全体にわたって単一の連続マトリックス相を形成した。担体Aは分散相を含有しなかった。セラミック物品、担体、又は支持体と称され得る焼成された円筒の物理的及び化学的特性は、上述の分析技術を使用して判定された。担体Aの吸水率は48.7g/gであり、表面積は0.78mであった。
【0063】
担体B(本発明の一実施形態)
本発明の一実施形態である担体Bは、担体Aの乾燥混合物の10重量パーセントを、本明細書では第2の複数のアルミナ粒子と称される等質量の複数の溶融アルミナ粒子で置き換え、それによって担体Bの乾燥混合物を形成したことを除いて、直前に記載した比較担体Aを作製するために使用したプロセスに従うことによって作製した。第2の複数のアルミナ粒子は、119.7ミクロンのd50、0.2m/gの表面積、及び2.1g/ccの充填密度を有していた。担体Bの乾燥混合物を、水、ホウ酸、及び押出助剤と組み合わせて、担体Bの湿潤混合物を作製し、次いで、押出成形して中空円筒を形成し、これを乾燥させ、焼成した。焼成したシリンダーの物理的及び化学的特性を測定した。担体Bの吸水率は46.70g/gであり、表面積は0.74mであった。
【0064】
担体C(本発明の一実施形態)
本発明の一実施形態である担体Cは、担体Aの乾燥混合物の25重量パーセントを、本明細書では第2の複数のアルミナ粒子と称される等質量の複数の溶融アルミナ粒子で置き換え、それによって担体Cの乾燥混合物を形成したことを除いて、上述の担体Aを作製するために使用したプロセスに従うことによって作製した。第2の複数のアルミナ粒子は、119.7ミクロンのd50、0.2m/gの表面積、及び2.1g/ccの充填密度を有していた。担体Cの乾燥混合物を、水、ホウ酸、及び押出助剤と組み合わせて、担体Cの湿潤混合物を作製し、次いで、押出成形して中空円筒を形成し、これを乾燥させ、焼成した。焼成したシリンダーの物理的及び化学的特性を測定した。担体Cの吸水率は42.86g/gであり、表面積は0.63mであった。
【0065】
担体D(本発明の一実施形態)
本発明の一実施形態である担体Dは、担体Aの乾燥混合物の40重量パーセントを、本明細書では第2の複数のアルミナ粒子と称される等質量の複数の溶融アルミナ粒子で置き換え、それによって担体Dの乾燥混合物を形成したことを除いて、上述の担体Aを作製するために使用したプロセスに従うことによって作製した。第2の複数のアルミナ粒子は、119.7ミクロンのd50、0.2m/gの表面積、及び2.1g/ccの充填密度を有していた。担体Dの乾燥混合物を、水、ホウ酸、及び押出助剤と組み合わせて、担体Dの湿潤混合物を作製し、次いで、押出成形して中空円筒を形成し、これを乾燥させ、焼成した。焼成したシリンダーの物理的及び化学的特性を測定した。担体Dの吸水率は37.70g/gであり、表面積は0.53mであった。
【0066】
担体E(本発明の一実施形態)
本発明の一実施形態である担体Eは、担体Aの乾燥混合物の50重量パーセントを、本明細書では第2の複数のアルミナ粒子と称される等質量の複数の溶融アルミナ粒子で置き換え、それによって担体Eの乾燥混合物を形成したことを除いて、上述の担体Aを作製するために使用したプロセスに従うことによって作製した。第2の複数のアルミナ粒子は、119.7ミクロンのd50、0.2m/gの表面積、及び2.1g/ccの充填密度を有していた。担体Eの乾燥混合物を、水、ホウ酸、及び押出助剤と組み合わせて、担体Eの湿潤混合物を作製し、次いで、押出成形して中空円筒を形成し、これを乾燥させ、焼成した。焼成したシリンダーの物理的及び化学的特性を測定した。担体Eの吸水率は35.64g/gであり、表面積は0.43mであった。
【0067】
図1は、担体の表面積及び吸水率が担体中の分散相アルミナの量に依存することを示している。曲線101は、担体の表面積と、担体Aの乾燥混合物の百分率として計算された分散相の重量パーセントとの関係を示している。曲線102は、担体の吸水率と、担体Aの乾燥混合物の百分率として計算された分散相の重量パーセントとの関係を示している。
【0068】
図2A図2Cは、本発明のセラミック物品の微細構造を示している。後方散乱電子(back-scattered electron、BSE)顕微鏡画像は、第1のアルミナ粉末(それぞれ、図2A図2B、及び図2Cの領域208、210、及び212)中に分布した第2のアルミナ粉末相(それぞれ、図2A図2B、及び図2Cの領域202、204、及び206)を示している。第2のアルミナ粉末の粒径は、第1のアルミナ粉末の粒径よりも著しく大きい。図2Aの倍率は、100倍である。図2Bの倍率は、250倍である。図2Cの倍率は、500倍である。
【0069】
図3A及び図3Bは、エポキシマウントされ、1ミクロン仕上げまで研磨されたセラミック物品の研磨断面における分散相粒子の識別を示している。SPIスパッタコーターを使用して、帯電を防止するために試料を金コーティングした。Zeiss Merlin SEMを使用して、2 keVの加速電圧及び100pAのビーム電流を使用して画像を生成した。使用されるSEMのタイプは、決定的に重要ではないが、分散相を識別及び単離するための画像分析ソフトウェアに好適な画像を生成することが可能である必要がある。SEM画像は、より大きいサイズの希釈剤粒子(図3A参照)については100倍の倍率で、より小さいサイズの希釈剤粒子については250倍の倍率で得て、各画像において≧100の粒子数を得る。画像分析ソフトウェアを使用して、分散相粒子を識別し、単離し、分離した。図3B参照されたい。National Institutes of Health and the Laboratory for Optical and Computational Instrumentationで開発され、imageJ.netでダウンロード可能なオープンソース画像処理プログラムであるimageJソフトウェアを使用して、各画像中の分散相の総被覆面積、並びに各画像のフェレ平均粒径を判定する分析を行った。使用される画像解析ソフトウェアのタイプは重要ではなく、当業者であれば、分散相を識別及び単離するのに必要な画像操作に精通しているであろう。分散相の面積被覆率を、担体Eからの4つの画像及び担体Cからの1つの画像について判定した。これらの画像からの分散相の面積被覆率は、9~23%の範囲であると判定された。表2のデータは、担体Cの面積被覆率が9.1パーセントであり、担体Eの4つの画像の面積被覆率が約20パーセントであったことを示している。
【0070】
【表2】
ZnI染料浸透試験値は、以下のZnI溶液浸透試験を用いて判定した。最初に、220gのZnIを20℃の1,000mLの水に入れ、それによってZnI溶液を形成した。セラミック物品の試料5gを100mLのZnI溶液に導入した。溶液中のセラミック物品の試料を保持する容器を、真空下の容器に20時間入れた。試料を溶液から取り出し、50℃で24時間、次いで110℃で最低2時間乾燥させた。乾燥した試料を、水の再吸収を避けるために乾燥オーブンから取り出して30分以内にエポキシ樹脂中にマウントした。エポキシの硬化後、試料を3ミクロン仕上げまで研磨し、100℃の乾燥オーブン中に保持した。
【0071】
Hitachiによって製造されたSEM、モデルS4300及びOxford Instrumentsによって製造されたEDS検出器、X-MaxN 150検出器を使用するシステムモデルAztec SEM、及びAztecバージョン3.3 SP1ソフトウェアを使用して、アルミナ粒子上のヨウ化物の分布を特徴付けた。研磨された試料は、帯電を防ぐために炭素被覆された。SEM-EDS画像は、表3に示すパラメータの範囲内で撮影した。
【0072】
【表3】
第2のアルミナ粒子のうちの少なくとも1つと、第1のアルミナ粒子の同等の面積と、を含む、手動で選択された面積を使用して、EDSデータを収集した。次いで、EDSソフトウェアは、それぞれの領域におけるヨウ素及び亜鉛の濃度を生成することができた。浸透量を比較するためにヨウ素濃度と亜鉛濃度の両方を使用され得るが、ヨウ素の方が好ましかった。
【0073】
分散相中の1つの粒子である第2のアルミナ粒子の面積は、図4Aの領域402として輪郭が描かれている。EDSを使用して、領域402におけるヨウ素の量を判定した。図4Bは、図4AにおけるZnIの位置を示すEDS画像である。図4Bの暗領域は、ZnIの欠如を示し、明領域は、ZnIの存在を示している。図4Aにおいて領域401として識別される、マトリックス相の相当面積中のヨウ素の量も判定した。各相で回収されたヨウ素の量は、所定の相におけるヨウ化物浸透の量を表す。表4は、2つの異なる担体Dの実施例からの分析データを示している。表4において、分散相中のヨウ素の量は0.43原子パーセントであり、一方マトリックス相中のヨウ化物の量は14.68原子パーセントであった。分散相中に存在するヨウ素の量は、マトリックス相中のヨウ素の量よりもはるかに少なく、本発明のセラミック物品が触媒担体として使用するために製造される場合、同じアルミナ粒子上に堆積される銀などの触媒活性金属の量と相関すると考えられる。
【0074】
【表4】
【0075】
表4において、百分率は原子量パーセントを意味する。
【0076】
溶融アルミナ粒子は、ZnIによって浸透されない。SEM画像は、図5Aに示されるように、連続的なマトリックス全体にわたって分布した、明らかにより大きく、貫通できない粒子を示している。粒子502、504、及び506を参照されたい。図5Bは、図5AにおけるZnIの位置を示すEDS画像である。図5Bの暗い領域は、ZnIの欠如を示し、明るい領域は、ZnIの存在を示している。ZnI染料浸透試験は、マトリックス相中に分布された不浸透相を作り出す能力を実証する。
【0077】
実施形態
実施形態1.セラミック物品であって、
(a)複数の第1のアルミナ粒子及び複数の第2のアルミナ粒子を含む、アルミナ粒子の硬質形成物であって、両方の複数の粒子が、硬質形成物全体にわたってランダムに分布し、
1)当該第2のアルミナ粒子が、5原子パーセント以下のZnI2染料浸透試験値を有し、当該第1のアルミナ粒子が、当該第2のアルミナ粒子のZnI2染料浸透試験値の少なくとも2倍のZnI2染料浸透試験値を有し、
2)当該硬質形成物が、総断面積を有し、各複数の粒子が、総断面積の一部を占有し、当該第2のアルミナ粒子の断面積が、総断面積の5%~50%である、硬質形成物と、
(b)当該第1及び第2のアルミナ粒子上に分散された触媒活性金属と、を含む、セラミック物品。
【0078】
実施形態2.当該第1のアルミナのZnI2染料浸透試験値が、当該第2のアルミナのZnI2染料浸透試験値よりも少なくとも3倍大きい、実施形態1に記載の物品。
【0079】
実施形態3.当該第1のアルミナのZnI2染料浸透試験値が、当該第2のアルミナのZnI2染料浸透試験値よりも少なくとも4倍大きい、実施形態1に記載の物品。
【0080】
実施形態4.当該第1のアルミナのZnI2染料浸透試験値が、10原子パーセントよりも大きい、実施形態1に記載の物品。
【0081】
実施形態5.当該第1のアルミナのZnI2染料浸透試験値が、15原子パーセントよりも大きい、実施形態1に記載の物品。
【0082】
実施形態6.当該第2のアルミナの染料浸透試験値が、3原子パーセント以下である、実施形態1に記載の物品。
【0083】
実施形態7.当該第1のアルミナの染料浸透試験値と当該第2のアルミナの染料浸透試験値との比が、少なくとも2:1である、実施形態1に記載の物品。
【0084】
実施形態8.当該第2のアルミナ粒子の断面積が、総断面積の8%~40%である、実施形態1に記載の物品。
【0085】
実施形態9.当該第2のアルミナ粒子の断面積が、総断面積の10%~30%である、実施形態1に記載の物品。
【0086】
実施形態10.約0.2cm3/g~約0.6cm3/gの総細孔容積を更に含む、実施形態1に記載の物品。
【0087】
実施形態11.総細孔容積が、約0.3cm3/g~約0.5cm3/gである、実施形態10に記載の物品。
【0088】
実施形態12.総細孔容積が、約0.35cm3/g~約0.5cm3/gである、実施形態10に記載の物品。
【0089】
実施形態13.当該触媒活性金属が、銀、白金、パラジウム、ニッケル、及び銅からなる群から選択される、実施形態1に記載の物品。
【0090】
実施形態14.アルミナ粒子の硬質形成物と、当該粒子と接触している触媒活性金属と、を含む、セラミック物品の製造ためのプロセスであって、当該プロセスが、
(a)既知の重量及び約0.2~100ミクロンのd50粒径を有する複数の第1のαアルミナ粒子を提供することと、
(b)既知の重量を有し、溶融アルミナ及び板状アルミナからなる群から選択される、複数の第2のαアルミナ粒子を提供することであって、当該第2のアルミナ粒子が、約5~400ミクロンのd50粒径を有し、第1のアルミナ粒子のd50粒径と第2のアルミナ粒子のd50粒径との比が、1:4~1:40であり、当該第1のアルミナの重量と当該第2のアルミナの重量との比が、1:1~15:1である、提供することと、
(c)当該複数のアルミナ粒子を混合し、それによって混合物を形成することであって、当該粒子が、混合物全体にランダムに分布している、混合することと、
(d)当該混合物を複数の可鍛性物品に形成することと、
(e)当該アルミナ粒子の焼結温度まで当該可鍛性物品を加熱し、それによって各可鍛性物品をアルミナ粒子の硬質形成物に形成することであって、各複数の粒子中の粒子が、硬質形成物全体にわたってランダムに分布している、加熱することと、
(f)当該第1及び第2のアルミナ粒子上に触媒活性金属を堆積させることと、を含む、プロセス。
【0091】
実施形態15.当該第1のアルミナの重量と当該第2のアルミナの重量との比が、1:1~10:1である、実施形態14に記載のプロセス。
【0092】
実施形態16.当該第1のアルミナの重量と当該第2のアルミナの重量との比が、1:1~5:1である、実施形態14に記載のプロセス。
【0093】
実施形態17.第1のアルミナ粒子のd50粒径と第2のアルミナ粒子のd50粒径との比が、1:5~1:20である、実施形態14に記載のプロセス。
【0094】
実施形態18.第1のアルミナ粒子のd50粒径と第2のアルミナ粒子のd50粒径との比が、1:8~1:15である、実施形態14に記載のプロセス。
【0095】
実施形態19.当該第2のアルミナ粒子が、約10~200ミクロンのd50粒径を有する、実施形態14に記載のプロセス。
【0096】
実施形態20.当該第2のアルミナ粒子が、約40~150ミクロンのd50粒径を有する、実施形態14に記載のプロセス。
【0097】
実施形態21.当該複数の第1のアルミナ粒子が、1.0m2/g~20.0m2/gの表面積を有する、実施形態14に記載のプロセス。
【0098】
実施形態22.当該複数の第1のアルミナ粒子が、1.0m2/g~5.0m2/gの表面積を有する、実施形態14に記載のプロセス。
【0099】
実施形態23.当該複数の第1のアルミナ粒子が、1.0m2/g~2.0m2/gの表面積を有する、実施形態14に記載のプロセス。
【0100】
実施形態24.当該複数の第2のアルミナ粒子が、0.01m2/g~2.00m2/gの表面積を有する、実施形態14に記載のプロセス。
【0101】
実施形態25.当該複数の第2のアルミナ粒子が、0.10m2/g~0.50m2/gの表面積を有する、実施形態14に記載のプロセス。
【0102】
実施形態26.当該複数の第2のアルミナ粒子が、0.14m2/g~0.30m2/gの表面積を有する、実施形態14に記載のプロセス。
【0103】
実施形態27.当該第2のアルミナ粒子が、本質的に溶融アルミナからなる、実施形態14に記載のプロセス。
【0104】
実施形態28.当該第2のアルミナ粒子が、溶融アルミナからなる、実施形態14に記載のプロセス。
【0105】
実施形態29.当該第2のアルミナ粒子が、本質的に板状アルミナからなる、実施形態14に記載のプロセス。
【0106】
実施形態30.当該第2のアルミナ粒子が、板状アルミナからなる、実施形態14に記載のプロセス。
【0107】
実施形態31.当該第2のアルミナ粒子が、板状アルミナ及び溶融アルミナから本質的になる、実施形態14に記載のプロセス。
【0108】
実施形態32.当該第2のアルミナ粒子が、板状アルミナ及び溶融アルミナからなる、実施形態14に記載のプロセス。
【0109】
他に定義されない限り、本明細書中で使用されるすべての技術用語及び科学用語は、本発明が属する分野の当業者によって概して理解されるのと同じ意味を有する。本明細書中で言及されるすべての特許及び刊行物は、その全体が参考として援用される。
【0110】
範囲が、例えば、分子量又は化学式などの物理的又は化学的特性を記載するために本明細書で使用される場合、範囲及びその中の特定の実施形態のすべての組み合わせ及び部分的組み合わせが含まれることが意図される。数又は数値範囲に言及する場合の「約」という用語の使用は、言及される数又は数値範囲が、実験的変動性の範囲内(又は統計的実験誤差の範囲内)の近似値であり、したがって、数又は数値範囲が変動し得ることを意味する。変動は、典型的には、記載された数又は数値範囲の0%~5%である。
【0111】
「含む(comprising)」、「から本質的になる(consisting essentially of)」及び「からなる(consisting of)」という移行句は、添付の特許請求の範囲において、元の形態及び補正された形態で使用される場合、記載されていない更なる特許請求の範囲の要素又はステップが存在する場合、それらが特許請求の範囲から除外されることに関して、特許請求の範囲を定義する。「含む(comprising)」という用語は、包括的又はオープンエンドであることが意図され、いかなる追加の列挙されていない要素、方法、ステップ、又は材料も除外しない。「からなる(consisting of)」という用語は、特許請求の範囲において指定されたもの以外の任意の要素、ステップ、又は材料を除外し、後者の場合、指定された材料に通常付随する不純物を除外する。「から本質的になる(consisting essentially of)」という用語は、特許請求の範囲を、指定された要素、ステップ、又は材料、及び特許請求される発明の基本的かつ新規な特徴に実質的に影響を及ぼさないものに限定する。本発明を具体化する本明細書中に記載されるすべての化合物、組成物、配合物、及び方法は、代替の実施形態では、移行句「含む(comprising)」、「から本質的になる(consisting essentially of)」、及び「からなる(consisting of)」のいずれかによって、より具体的に定義され得る。「含む(comprising)」という用語(及び「含む(comprise)」若しくは「含む(comprises)」又は「有する(having)」若しくは「含む(including)」などの関連用語)は、例えば、記載された特徴「からなる(consist of)」又は「から本質的になる(consist essentially of)」任意の組成物、方法又はプロセスの一実施形態などの実施形態を含む。

図1
図2A
図2B
図2C
図3A
図3B
図4A
図4B
図5A
図5B
【手続補正書】
【提出日】2023-06-28
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
セラミック物品であって、
(a)複数の第1のアルミナ粒子及び複数の第2のアルミナ粒子を含む、アルミナ粒子の硬質形成物であって、両方の複数の粒子が、前記硬質形成物全体にわたってランダムに分布し、
1)前記第2のアルミナ粒子が、5原子パーセント以下のZnI染料浸透試験値を有し、前記第1のアルミナ粒子が、前記第2のアルミナ粒子のZnI染料浸透試験値の少なくとも2倍のZnI染料浸透試験値を有し、
2)前記硬質形成物が、総断面積を有し、各複数の粒子が、前記総断面積の一部を占有し、前記第2のアルミナ粒子の断面積が、前記総断面積の5%~50%である、硬質形成物と、
(b)前記第1及び第2のアルミナ粒子上に分散された触媒活性金属と、を含む、セラミック物品。
【請求項2】
前記第1のアルミナのZnI染料浸透試験値が、前記第2のアルミナのZnI染料浸透試験値よりも少なくとも3倍大きい、請求項1に記載の物品。
【請求項3】
前記第1のアルミナのZnI染料浸透試験値が、前記第2のアルミナのZnI染料浸透試験値よりも少なくとも4倍大きい、請求項1に記載の物品。
【請求項4】
前記第1のアルミナのZnI染料浸透試験値が、10原子パーセントよりも大きい、請求項1に記載の物品。
【請求項5】
前記第1のアルミナのZnI染料浸透試験値が、15原子パーセントよりも大きい、請求項1に記載の物品。
【請求項6】
前記第2のアルミナのZnI染料浸透試験値が、3原子パーセント以下である、請求項1に記載の物品。
【請求項7】
前記第1のアルミナのZnI染料浸透試験値と前記第2のアルミナの染料浸透試験値との比が、少なくとも2:1である、請求項1に記載の物品。
【請求項8】
前記第2のアルミナ粒子の断面積が、前記総断面積の8%~40%である、請求項1に記載の物品。
【請求項9】
前記第2のアルミナ粒子の断面積が、前記総断面積の10%~30%である、請求項1に記載の物品。
【請求項10】
0.2cm/g~0.6cm/gの総細孔容積を更に含む、請求項1に記載の物品。
【請求項11】
前記総細孔容積が、0.3cm/g~0.5cm/gである、請求項10に記載の物品。
【請求項12】
前記総細孔容積が、0.35cm/g~0.5cm/gである、請求項10に記載の物品。
【請求項13】
前記触媒活性金属が、銀、白金、パラジウム、ニッケル、及び銅からなる群から選択される、請求項1に記載の物品。
【請求項14】
アルミナ粒子の硬質形成物と、前記粒子と接触している触媒活性金属と、を含む、請求項1に記載のセラミック物品の製造のためのプロセスであって、前記プロセスが、
(a)既知の重量及び0.2~100ミクロンのdso粒径を有する複数の第1のαアルミナ粒子を提供することと、
(b)既知の重量を有し、溶融アルミナ及び板状アルミナからなる群から選択される、複数の第2のαアルミナ粒子を提供することであって、前記第2のアルミナ粒子が、5~400ミクロンのd50粒径を有し、前記第1のアルミナ粒子のd50粒径と前記第2のアルミナ粒子のd50粒径との比が、1:4~1:40であり、前記第1のアルミナの重量と前記第2のアルミナの重量との比が、1:1~15:1である、提供することと、
(c)前記複数のアルミナ粒子を混合し、それによって混合物を形成することであって、前記粒子が、前記混合物全体にランダムに分布している、混合することと、
(d)前記混合物を複数の可鍛性物品に形成することと、
(e)前記アルミナ粒子の焼結温度まで前記可鍛性物品を加熱し、それによって各可鍛性物品をアルミナ粒子の硬質形成物に形成することであって、各複数の粒子中の前記粒子が、前記硬質形成物全体にわたってランダムに分布している、形成することと、前記第1及び第2のアルミナ粒子上に触媒活性金属を堆積させることと、を含む、プロセス。
【請求項15】
前記第1のアルミナの重量と前記第2のアルミナの重量との比が、1:1~10:1である、請求項14に記載のプロセス。
【請求項16】
前記第1のアルミナの重量と前記第2のアルミナの重量との比が、1:1~5:1である、請求項14に記載のプロセス。
【請求項17】
前記第1のアルミナ粒子のdso粒径と前記第2のアルミナ粒子のd50粒径との比が、1:5~1:20である、請求項14に記載のプロセス。
【請求項18】
前記第1のアルミナ粒子のd50粒径と前記第2のアルミナ粒子のdso粒径との比が、1:8~1:15である、請求項14に記載のプロセス。
【請求項19】
前記第2のアルミナ粒子が、10~200ミクロンのdso粒径を有する、請求項14に記載のプロセス。
【請求項20】
前記第2のアルミナ粒子が、40~150ミクロンのdso粒径を有する、請求項14に記載のプロセス。
【請求項21】
前記複数の第1のアルミナ粒子が、1.0m/g~20.0m/gの表面積を有する、請求項14に記載のプロセス。
【請求項22】
前記複数の第1のアルミナ粒子が、1.0m/g~5.0m/gの表面積を有する、請求項14に記載のプロセス。
【請求項23】
前記複数の第1のアルミナ粒子が、1.0m/g~2.0m/gの表面積を有する、請求項14に記載のプロセス。
【請求項24】
前記複数の第2のアルミナ粒子が、0.01m/g~2.00m/gの表面積を有する、請求項14に記載のプロセス。
【請求項25】
前記複数の第2のアルミナ粒子が、0.10m/g~0.50m/gの表面積を有する、請求項14に記載のプロセス。
【請求項26】
前記複数の第2のアルミナ粒子が、0.14m/g~0.30m/gの表面積を有する、請求項14に記載のプロセス。
【請求項27】
前記第2のアルミナ粒子が、本質的に溶融アルミナからなる、請求項14に記載のプロセス。
【請求項28】
前記第2のアルミナ粒子が、溶融アルミナからなる、請求項14に記載のプロセス。
【請求項29】
前記第2のアルミナ粒子が、本質的に板状アルミナからなる、請求項14記載のプロセス。
【請求項30】
前記第2のアルミナ粒子が、板状アルミナからなる、請求項14に記載のプロセス。
【請求項31】
前記第2のアルミナ粒子が、本質的に板状アルミナ及び溶融アルミナからなる、請求項14記載のプロセス。
【請求項32】
前記第2のアルミナ粒子が、板状アルミナ及び溶融アルミナからなる、請求項14に記載のプロセス。

【国際調査報告】