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特表2023-551601横方向に配向された磁石を備えた音響トランスデューサ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-12-08
(54)【発明の名称】横方向に配向された磁石を備えた音響トランスデューサ
(51)【国際特許分類】
   H04R 11/02 20060101AFI20231201BHJP
   B06B 1/04 20060101ALI20231201BHJP
【FI】
H04R11/02
B06B1/04 S
【審査請求】未請求
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2023550719
(86)(22)【出願日】2021-11-09
(85)【翻訳文提出日】2023-07-06
(86)【国際出願番号】 FI2021050756
(87)【国際公開番号】W WO2022101547
(87)【国際公開日】2022-05-19
(31)【優先権主張番号】20206132
(32)【優先日】2020-11-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FI
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523171711
【氏名又は名称】ピーエス・オーディオ・デザイン・オイ
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ペトリ・ソロネン
(72)【発明者】
【氏名】ペッテリ・ルーッカネン
【テーマコード(参考)】
5D021
5D107
【Fターム(参考)】
5D021AA12
5D107AA03
5D107BB08
5D107CC08
(57)【要約】
トランスデューサは、電気信号を機械的振動に変換する。トランスデューサは、上部(401)、下部(402)、上部(401)内の外側永久磁石手段(403)および上カバー(406)、ならびに下部(402)内の内側永久磁石手段(404)および下カバー(407)を備えている。カバー(406、407)は、磁性材料を含んでいる。少なくとも1つのコイル(408)は、電流の影響の下で、トランスデューサの軸線(405)の方向において動的磁力を生成するように構成されている。外側および内側永久磁石手段(403、404)は、互いに少なくとも部分的に同じ高さにある。内側永久磁石手段(404)は、軸線(405)により近い空間を占有している。外側および内側永久磁石手段(403,404)の対極の名称とされた磁極は、互いに向き合っている。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気信号を機械的振動に変換するためのトランスデューサであって、該トランスデューサは、
上部(401)および下部(402)と、
前記上部(401)内に配置された外側永久磁石手段(403)および前記下部(402)内に配置された内側永久磁石手段(404)と、
前記上部(401)内の上カバー(406)および前記下部(402)内の下カバー(407)であって、前記上カバーおよび下カバー(406、407)は磁性材料を含み、前記外側永久磁石手段および内側永久磁石手段(403、404)の周りに一体となって少なくとも部分的な筐体を形成した、上カバー(406)および下カバー(407)と、
前記筐体内に配置された少なくとも1つのコイル(408)であって、該コイル(408)を通じて流れる電流の影響の下で、前記トランスデューサの軸線(405)の方向に動的磁力を生じるように構成された少なくとも1つのコイル(408)と、
を備え、
前記外側永久磁石手段および内側永久磁石手段(403、404)は、前記軸線(405)の方向において互いに少なくとも部分的に同じ高さにあり、前記内側永久磁石手段(404)は、前記外側永久磁石手段(403)よりも前記軸線(405)に近い空間を占有しており、
前記外側永久磁石手段および内側永久磁石手段(403、404)の対極の名称とされた磁極は、前記軸線(405)に直交した方向において互いに向き合っている、トランスデューサ。
【請求項2】
前記上カバー(406)はU字形状断面を有し、且つ該U字形状断面に直交して延びた相互に平行な第1の対の直線外側端縁を含み、
前記外側永久磁石手段(403)は第1の対の外側永久磁石(601、602)を備え、これらの各々は、前記U字形状断面の内側の前記直線外側端縁のそれぞれ1つに沿って延びており、各々の外側永久磁石は、前記内側永久磁石手段(404)に向かって同じ第1の磁極を有し、
前記内側永久磁石手段(404)は第1の対の内側永久磁石(603、604)を備え、これらの各々は、前記外側永久磁石(601、602)のそれぞれ1つに対して平行に延びており、各々の内側永久磁石は、前記外側永久磁石手段(403)に向かって同じ第2の磁極を有する、請求項1に記載のトランスデューサ。
【請求項3】
前記上カバー(406)は、相互に平行な前記第1の対の直線外側端縁と同じ平面内であるが異なった方向に延びた、相互に平行な第2の対の直線外側端縁を備え、
前記外側永久磁石手段(403)は第2の対の外側永久磁石(801、802)を備え、これらの各々は前記第2の対の直線外側端縁のそれぞれに沿って延びており、
前記内側永久磁石手段(404)は第2の対の内側永久磁石(803、804)を備え、これらの各々は前記第2の対の直線外側端縁のそれぞれに対して平行に延びている、請求項2に記載のトランスデューサ。
【請求項4】
前記外側永久磁石手段(403)は、前記内側永久磁石手段(404)の周りに永久磁石(901)の外側リムを備え、該外側リムの各外側永久磁石は、前記内側永久磁石手段(404)に向かって同じ第1の磁極を有し、
前記内側永久磁石手段(404)は、前記外側永久磁石手段(403)の内側に永久磁石の内側リムを備え、該内側リムの各内側永久磁石は、前記外側永久磁石手段(403)に向かって同じ第2の磁極を有する、請求項1から3のいずれか一項に記載のトランスデューサ。
【請求項5】
前記コイル(408)は前記下部(402)内に配置されている、請求項1から4のいずれか一項に記載のトランスデューサ。
【請求項6】
前記コイル(408)は、前記軸線(405)の方向に直交した平面内において、前記内側永久磁石手段(404)を取り囲んでいる、請求項5に記載のトランスデューサ。
【請求項7】
前記下カバー(407)は、平坦で且つ前記軸線(405)の方向に直交した平面内において広がっており、前記コイル(408)と前記内側永久磁石手段(404)との組み合わされた集合体と等しい距離だけ前記軸線(405)から離れるように延びている、請求項5または6に記載のトランスデューサ。
【請求項8】
前記上カバー(406)は、前記軸線(405)の周りに1つ以上の開口部(605)を備えている、請求項1から7のいずれか一項に記載のトランスデューサ。
【請求項9】
前記下部(402)は磁性材料の層(2001)を備え、該層は、前記軸線(405)に直交した方向において、前記内側永久磁石手段の2つの内側永久磁石(603、604)を互いから離間している、請求項1から8のいずれか一項に記載のトランスデューサ。
【請求項10】
第1の構造部(501)および第2の構造部(502)を備えた電子デバイスと、
少なくとも1つの、請求項1から9のいずれか一項に記載のトランスデューサであって、前記電子デバイスの第1の構造部(501)に取り付けられた前記トランスデューサの上部(401)、および前記電子デバイスの第2の構造部(502)に取り付けられた前記トランスデューサの下部(402)を備えた、少なくとも1つのトランスデューサと、
前記電子デバイスの一部として、可聴周波数の電気信号を前記トランスデューサの少なくとも1つの前記コイル(408)に送信するように構成された電気回路と、
を備えている、音響を生成するための手段。
【請求項11】
第1の構造部および第2の構造部(501、502)を備えた電子デバイスであって、少なくとも前記第1の構造部は、使用者が触れられるようにアクセス可能である、電子デバイスと、
少なくとも1つの、請求項1から9のいずれか一項に記載のトランスデューサであって、前記電子デバイスの第1の構造部(501)に取り付けられた前記トランスデューサの上部(401)、および前記電子デバイスの第2の構造部(502)に取り付けられた前記トランスデューサの下部(402)を備えた、少なくとも1つのトランスデューサと、
前記電子デバイスの一部として、電気信号を前記トランスデューサの少なくとも1つの前記コイル(408)に送信するように構成された電気回路と、
を備えている、使用者が感じるための触覚効果を生成するための手段。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は全体的に、電気信号を例えば可聴周波数である機械的振動に変換する音響トランスデューサまたは触覚トランスデューサに関する。本発明は特に、電気デバイスの1つ以上の面を変換部として作用させるために使用されることが可能な音響トランスデューサまたは触覚トランスデューサに関する。
【背景技術】
【0002】
図1は、電子装置に取り付けられていない既知の音響トランスデューサそのものを、部分的に切断した不等角投影図により示している。図2は、図1において断面が形成された面と同じ面に沿った、同じ既知の音響トランスデューサの断面図を示しており、電子装置への取り付けを概略的に示している。この種の音響トランスデューサは、例えば特許文献1から知られている。
【0003】
図1および図2の既知の音響トランスデューサは、水平ギャップ103により互いに離間された上部101および下部102を備えている。上部は、その頂面において、電気デバイスの第1の構造部201に取り付けられている。第1の構造部201は一般的に、例えばディスプレイパネルのような、電子デバイスの一般的に視認可能なまたは少なくともアクセス可能な部分である。その頂面202は、使用者に視認可能または少なくともアクセス可能であり、これにより頂面202は周囲空気との界面を構成している。音響トランスデューサの下部102は、その底面において、電子デバイスの第2の構造部203に取り付けられている。第2の構造部203は、例えば電子デバイスの構造的支持フレームの一部とされ得る。第1の構造部201および第2の構造部203の構造的関係は、上部101と下部102との間の水平ギャップ103を維持することに寄与している。ギャップ103は、弾性的な非磁性材料によって満たされてもよく、その材料は上部101と下部102との間の接着結合を形成し得る。
【0004】
第1の永久磁石104は上部101内に配置され、第2の永久磁石105は下部102内に配置されている。図1および図2に示された実施形態においては、第1の永久磁石104は比較的平坦な円筒形状を有し、第2の永久磁石105は比較的平坦な環状形状を有する。第1の永久磁石104および第2の永久磁石105の磁極は、反発構成となるように配向されており、これによりそれらは同様の名称の極(S極またはN極のいずれか)が互いに向き合っている。したがって、互いに対向した同様の名称の磁極から生じた静的磁力は、上部101と下部102とを常に互いに遠ざけるように押す。
【0005】
音響トランスデューサは、上カバー106および下カバー107を備え、それらの両方がカップ形状であり、磁性材料製である。上カバー106および下カバー107の磁性は第1の永久磁石104および第2の永久磁石105の磁力線を集中させて案内し、これにより、結果的に静的磁力の誘引が水平ギャップ103の端縁に生じる。
【0006】
コイル108は、下部102において第2の永久磁石105を包囲している。フラットケーブル109は、電子デバイス内の別の場所に配置された電子回路(図示略)からコイル108へと導電性接続を提供している。コイル108を通じて流れる電流の変化は、先に説明した静的磁場と足し合わされる動的磁場を誘起し、上部101を下部102に対して垂直に移動させる。したがって、第1の構造部201の構造的剛性は、第2の構造部203の構造的剛性よりも弱く、上部101の電磁的に誘起された垂直移動は、第1の構造部201の振動モードへと変換され、続いて第1の構造部201に周囲の空気へと可聴音を放出させる。要するに、音響トランスデューサは、第1の構造部201を平面ラウドスピーカのように作動させる。
【0007】
図3は、別の既知の音響トランスデューサを示している。音響トランスデューサは、上部301および下部302を備えている。図1および図2の実施形態と同様に、音響トランスデューサの上部301は電子デバイスの第1の構造部に取り付けられ、下部302は電子デバイスの第2の構造部に取り付けられ得る。第1の永久磁石303は上部301内に配置され、第2の永久磁石304は下部302内に取り付けられている。同様に名付けられた、第1の永久磁石303および第2の永久磁石304の磁極は、軸線305の方向において互いに向き合っている。結果的に、第1の永久磁石303と第2の永久磁石304との間の基本的な静的磁気相互作用は、軸線305の方向にける反発力である。
【0008】
図3の音響トランスデューサは、上部301の上カバー部306および下部302の下カバー部307を備えている。上カバー部306および下カバー部307は磁性材料を含んでおり、最も重要な結果として、上カバー部306および下カバー部307は、第1の永久磁石303および第2の永久磁石304の磁力線の大部分をそれらの材料内に閉じ込めることである。環状のコイル308はその筐体内に配置され、コイルを通じて流れる電流の影響の下で、軸線305の方向に動的磁力を生じさせる。
【0009】
図3の実施形態においては、上カバー306の端縁と下カバー307の端縁との間の離間ギャップ309は、軸線305の方向に原則的に向けられている。フラットケーブル310は、環状コイル308を信号源に接続している。
【0010】
図1から図3の音響トランスデューサが、音響振動を生成することに極めて効果的である一方で、それらの構造的解決策は、構造を垂直方向に非常に薄くすることを許容していない。例えばスマートフォンのような非常に薄い携帯型電子デバイスに適合するために、音響トランスデューサをより薄くすることができる技術的解決策が歓迎されるだろう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】欧州特許出願公開第3 603 110号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
前述の先行技術の欠点を除いた、音響トランスデューサまたは触覚トランスデューサ、および音響信号または触覚信号を生成するための手段を提供することが、目的とされる。
【課題を解決するための手段】
【0013】
第1の態様によれば、電気信号を機械的振動に変換するためのトランスデューサが提供されている。トランスデューサは、上部、下部、上部内に配置された外側永久磁石手段、および下部内に配置された内側永久磁石手段を備えている。上カバーは上部内に配置され、下カバーは下部内に配置されている。上カバーおよび下カバーは、磁性材料を含んでいる。それらのカバーは一体となって、外側永久磁石手段および内側永久磁石手段の周りの筐体を少なくとも部分的に形成している。少なくとも1つのコイルがその筐体内に配置されており、このコイルを通じて流れる電流の影響の下で、軸線の方向において動的磁力を生成するように構成されている。これらの外側永久磁石手段および内側永久磁石手段は、軸線の方向において互いに少なくとも部分的に同じ高さにある。この内側永久磁石手段は、前述の外側永久磁石手段よりも軸線により近い領域を占有している。外側永久磁石手段および内側永久磁石手段の対極の名称とされた磁極は、軸線に直交した方向において互いに向き合っている。
【0014】
実施形態によれば、上カバーはU字形状断面を有し、このU字形状断面に直交して延びた、相互に平行な第1の対の直線外側端縁を備えている。したがって、外側永久磁石手段は第1の対の外側永久磁石を備え、各外側永久磁石は、U字形状断面の内側の直線外側端縁のそれぞれ1つに沿って延び、且つ各外側永久磁石は、内側永久磁石手段に向かって同じ第1の磁極を備え得る。内側永久磁石手段は第1の対の内側永久磁石を備え、各内側永久磁石は、外側永久磁石のそれぞれ1つに平行に延び、且つ各内側永久磁石は、外側永久磁石手段に向かって同じ第2の磁極を備え得る。このことは、磁石の所望の構成が、比較的容易に製造可能な、比較的少数の構造部分と共に達成され得るといった利点を含んでいる。
【0015】
実施形態によれば、相互に平行な第1の対の直線外側端縁と同じ平面内であるが異なった方向に延びた、相互に平行な第2の対の直線外側端縁を備えている。したがって、外側永久磁石手段は第2の対の外側永久磁石を備え、各外側永久磁石は、第2の対の直線外側端縁のそれぞれに沿って延び得る。内側永久磁石手段は第2の対の内側永久磁石を備え、各内側永久磁石は、第2の対の外側永久磁石のそれぞれに対して平行に延び得る。このことは、構造がより高度な対称性を示すように形成可能であり、これにより動作の安定性と効率との間のバランスが良くなるように導き得るという利点を含んでいる。
【0016】
実施形態によれば、外側永久磁石手段は、内側永久磁石手段の周りに永久磁石の外側リムを備え、この外側リムの各外側永久磁石は、内側永久磁石手段に向かって同じ第1の磁極を備えている。したがって、内側永久磁石手段は、外側永久磁石手段の内側に永久磁石の内側リムを備え、この内側リムの各内側永久磁石は、外側永久磁石手段に向かって同じ第2の磁極を備え得る。このことは、非常に高度な軸対称性が達成されることが可能であるといった利点を含んでいる。
【0017】
実施形態によれば、コイルは下部内に配置されている。このことは、下部が、電子回路が配置された電子デバイスの一部に取り付けられた場合に、電流のコイルへの伝導を実行することが比較的容易であるといった利点を含んでいる。
【0018】
実施形態によれば、コイルは、軸線の方向に直交した平面内において、内側永久磁石手段を取り囲んでいる。このことは、コイルを通じた電流により生じた動的磁力が、トランスデューサ構造の他の部分に対して非常に有利に配置されるといった利点を含んでいる。
【0019】
実施形態によれば、下カバーは、平坦で且つ軸線の方向に直交した平面内において広がっており、コイルと内側永久磁石手段との組み合わされた集合体と等しい距離だけ軸線から離れるように広がっている。このことは、構造的な支持と、磁場の方向と、上部と下部との間の空隙の寸法と、の間において良好なバランスが達成されるといった利点を含んでいる。
【0020】
実施形態によれば、上カバーは、軸線の周りに1つ以上の開口部を備えている。このことは、トランスデューサ構造内の静的磁力の強度および効果が最適化されることが可能であるといった利点を含んでいる。
【0021】
実施形態によれば、下部は磁性材料の層を備え、この層は、軸線に直交した方向において、内側永久磁石手段の2つの内側永久磁石を互いから離間している。このことは、磁力線が、最適な方法において2つの内側永久磁石の周りに導かれることが可能であるといった利点を含んでいる。
【0022】
第2の態様によれば、音を発生するための手段が提供されている。この手段は、第1の構造部および第2の構造部を備えた電子デバイスと、少なくとも1つの、先に記載されたようなトランスデューサと、を備えている。トランスデューサの上部は電子デバイスの第1の構造部に取り付けられており、トランスデューサの下部は電子デバイスの第2の構造部に取り付けられている。電子デバイスの一部として、可聴周波数の電気信号を、トランスデューサの少なくとも1つのコイルに送信するように構成された電気回路が存在している。
【0023】
第3の態様によれば、使用者が感じるための触覚効果を生成する手段が提供されている。この手段は、第1の構造部および第2の構造部を備えた電子デバイスを備え、その少なくとも第1の構造部は、使用者が触れるようにアクセス可能である。この手段は、少なくとも1つの、先に記載されたようなトランスデューサを備えている。トランスデューサの上部は、電子デバイスの第1の構造部に取り付けられており、トランスデューサの下部、は電子デバイスの第2の構造部に取り付けられている。電子デバイスの一部として、電気信号をトランスデューサの少なくとも1つのコイルに送信するように構成された電気回路が存在している。
【0024】
本発明のさらなる理解を提供するために含まれ、本明細書の一部を構成する添付図面は、本発明の実施形態を示し、説明とともに本発明の原理を説明することを補助している。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】既知のトランスデューサを示した図である。
図2】既知のトランスデューサを示した図である。
図3】既知のトランスデューサを示した図である。
図4】実施形態によるトランスデューサを示した図である。
図5図4のトランスデューサの断面を示した図である。
図6】実施形態によるトランスデューサを示した分解図である。
図7】実施形態による磁石およびコイルの配置を示した図である。
図8】別の実施形態による磁石およびコイルの配置を示した図である。
図9】別の実施形態による磁石およびコイルの配置を示した図である。
図10】シミュレーションジオメトリを示した断面図である。
図11】シミュレートされた磁場を示した図である。
図12】別のシミュレートされた磁場を示した図である。
図13】別のシミュレートされた磁場を示した図である。
図14】別のシミュレートされた磁場を示した図である。
図15】別のシミュレートされた磁場を示した図である。
図16】別のシミュレートされた磁場を示した図である。
図17】実施形態によるトランスデューサの断面を示した図である。
図18】実施形態によるトランスデューサの断面を示した図である。
図19】実施形態によるトランスデューサの断面を示した図である。
図20】実施形態によるトランスデューサの断面を示した図である。
図21】実施形態によるトランスデューサを示した分解図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本記載は、永久磁石および永久磁石手段との用語を使用している。永久磁石との用語は、磁気的に「強力な」磁性体材料の単一片を意味しており、磁化されて、結果的に異なった磁性であるN極およびS極を有する。永久磁石手段との用語は、永久磁石のアセンブリを意味しており、そのアセンブリは、1つのみの永久磁石から成り得るが、以下に説明された最も実際的な実施形態においては、2つ以上の永久磁石から成る。
【0027】
図4は、電気信号を機械的振動に変換するためのトランスデューサを示した不等角断面図である。図4において選択された視界は、図1から図3における視界に相当し、これにより図4は、基本的に円筒形の対称形状であるトランスデューサを半分に切断する平面に沿った断面を示している。円筒形の対称形状であるトランスデューサは、原則的な特徴ではなく、ここではより直接的に、図1から図3のものと比較するために使用されている。
【0028】
図4のトランスデューサは、上部401および下部402を備えている。「上」または「下」のような方向に言及した用語は、ここでは、トランスデューサが図中に示された位置を参照するのみにおいて使用されており、それらは、実際の実施形態において、対応する部分の実際の外観または方向をいかなる形でも制限するものではない。外側永久磁石手段403は、上部401内に配置されている。同様に、内側永久磁石手段404は、下部402内に配置されている。上部401、下部402、外側永久磁石手段403、および内側永久磁石手段404は、図4の実施形態においては、すべてが軸線405に関して円筒形の対称形状である。
【0029】
上カバー406は上部401に配置され、下カバー407は下部402に配置されている。上カバー406および下カバー407は、磁性材料を含んでいる。それらは共に、外側永久磁石手段403および内側永久磁石手段404の周りに少なくとも部分的な筐体を形成している。筐体が少なくとも部分的であることは、筐体が連続的である必要がないことを意味しており、ギャップおよび開口部が形成されてもよく、それらを通じて、トランスデューサの少なくとも一方の永久磁石手段および/または他の内部部品が可視化され得る。筐体の役割は、磁場を特定の空間領域内に閉じ込めることに関連しており、そのことは本明細書において後により詳細に論じられる。
【0030】
トランスデューサは、前述の筐体内に配置された少なくとも1つのコイル408を備えている。図4の実施形態においては、コイルは、比較的平坦なトロイドの全体的な輪郭を有し、内側永久磁石手段404を取り囲んでいる。コイル408は、コイル408を通じて流れる電流の影響の下で、軸線405の方向に動的磁力線を生じるように構成されている。
【0031】
永久磁石が垂直軸の方向に積層した構成とされた図1から図3との差として、図4の実施形態においては、外側永久磁石手段403および内側永久磁石手段404は、軸線405の方向において互いに少なくとも部分的に同じ高さにある。換言すると、一方が軸線405に直交した平面を描いている場合、その平面が軸線405に沿って特定の高さ範囲内に配置されている場合、そのような平面は、外側永久磁石手段403および内側永久磁石手段404の両方と交差している。「外側」および「内側」という名称は、内側永久磁石手段404が、外側永久磁石手段403よりも軸線405により近い空間を占有しているという事実に由来している。
【0032】
外側永久磁石手段403および内側永久磁石手段404の対極の名称とされた極は、前述の軸線405に直交した方向において互いに向き合っている。換言すると、外側永久磁石手段403の内側がN極の極性である場合、内側永久磁石手段404の外側は、それとは逆にS極の極性である。図4の実施形態においては、外側永久磁石手段403および内側永久磁石手段404は、両方が個々に1つのみの環状形状永久磁石から成り、外側永久磁石手段403の環状形状の永久磁石の内側端縁が、一方の磁極である場合、内側永久磁石手段404の環状形状の永久磁石の外側端縁は、他方の磁極である。
【0033】
音響効果および/または触覚効果を生じさせるための手段内の上部401および下部402の全体的な役割は、図5に概略的に示されている。電子デバイスが、第1の構造部501および第2の構造部502を備えていることが想定される。トランスデューサの上部401は第1の構造部501に取り付けられており、音響トランスデューサの下部402は、電子デバイスの第2の構造部502に取り付けられている。上部401および下部402は、何らかの方法で互いに取り付けられる必要はなく、電子デバイスのそれぞれの構造部への取り付けが十分な精度で位置合わせされていれば十分であり、これにより電子デバイスが組み立てられると、トランスデューサの各部は、互いに対して最終的な位置となる。
【0034】
フレキシブル回路基板409または他の導電体手段の一部は、電子デバイス内の他の場所において生じた電気信号をトランスデューサに伝導するために設けられ得る。ここで、構造部501および502は、それら自身がデバイスの電子操作において何らかの役割を有する必要はないが、それらは例えば単なる構造パネル、または十分に剛性を有する他の構成要素とすることができることが理解され得る。そのような場合、「電子」デバイスであるデバイスは、どこかに、内側永久磁石手段および外側永久磁石手段により設定された磁場と相互作用し、最終的に、(構造部501および502の一方が周囲の媒体内において縦振動に変換したために)可聴の振動、および/または(造部501および502の一方が、使用者が感じるためにアクセス可能であるために)触覚の振動を生成する交流電流をコイル408に導くことが可能な回路があるようなものであると理解されなければならない。
【0035】
図6は、実施形態によるトランスデューサを分解図において示している。図5に示された断面図は、先の図4に関連した第1のものであり、図6の実施形態が円筒形の対称形状でないとしても、図6の実施形態に等しく応用可能であることが理解される。
【0036】
図6の実施形態においては(図4の実施形態のように)、上カバーは406U字形状の断面を有する。図6においては、上カバーは、U字形状断面に直交して延びた、相互に平行な2つの直線外側端縁を備えている。これらの直線外側端縁の一方は、図6においてページの中央から右端に向かって延びている。図6の実施形態においては、これまでに全体的に参照符号403により示された外側永久磁石手段は、一対の外側永久磁石601および602を備えている。組み立てられた構成において、これらの各々は、先に記載された直線外側端縁のそれぞれの一方に沿って、U字形状断面の内側において延びている。外側永久磁石601および602の各々は内向きに、すなわち、組み立てられた構成において内側永久磁石手段に向かって同じ磁極を有する。図6においては、これは、外側永久磁石601および602の各々のS極である。
【0037】
図6の実施形態においては、これまでに全体的に参照符号404により示された内側永久磁石手段は、一対の内側永久磁石603および604を備えている。これらの各々は、外側永久磁石601および602のそれぞれ1つに対して平行に延びている。内側永久磁石603および604は、組み立てられた構成において、両方がそれぞれの外側永久磁石に向かって(または一般的に、外側永久磁石手段に向かって)、ここではN極である同じ磁極を有する。
【0038】
上カバー406は、図6において軸線405の周りの開口部605のような、1つ以上の開口部を備え得る。上カバー406に開口部を備えることで、トランスデューサの上部と下部との間の特に静的磁力に影響を与えることが可能である。そのような開口部の最適な数および形状は、実験およびシミュレーションにより見出され得る。
【0039】
一対の外側永久磁石601および602ならびに一対の内側永久磁石603および604が、どのように互いに隣り合って、コイル408のそれぞれのセクションにより離間されているかは、図7に見られている。図7は、図6に示された種類のトランスデューサの上カバー406が省略された上面を示した図である。フレキシブル回路基板または他の導電体手段も、コイル408を信号源に接続するために使用されているが、図の明確化のために、図6および図7においては両方とも省略されている。
【0040】
図8は、図7に類似して外側カバーが無い上面を示しているが、わずかに異なった実施形態である。図8において上カバーは示されていないが、ある意味において図6における実施形態と同様であると仮定され、前述の第1の対と同じ平面内であるが、異なった方向(ここでは直交している)に延びている、相互に平行な直線外側端縁の第2の対を備えている。図6においては、これら第2の直線端縁の一方は、ページの中央から左端に向かって延びているように見られる。
【0041】
図8においては、トランスデューサの外側永久磁石手段は、第2の対の外側永久磁石801および802を備えている。これらは、上カバーの第2の対の直線外側端縁のそれぞれ1つに沿った方向に沿って延びている。また、内側永久磁石手段は第2の対の内側永久磁石803および804を備え、これらの各々は、第2の対の外側永久磁石801および802のそれぞれに対して平行に延びている。
【0042】
図9は、さらなる実施形態によるトランスデューサの類似した上面を示している。図9においては、外側永久磁石手段は全体で8つの外側永久磁石を備えており、それらのうちの1つが参照符号901により特定されて例として示されている。内側永久磁石手段は対応した数(ここでは8つ)の内側永久磁石を備え、それらのうちの1つが参照符号902により特定されて例として示されている。外側永久磁石および内側永久磁石は、コイルの対向側において互いに向き合っている。前述の他の実施形態と同様に、外側永久磁石および内側永久磁石の対極の名称とされた磁極が、互いに向き合っている。
【0043】
ある意味において、図9の実施形態は先に示された図7および図8の原理の外挿として考えられ得る。外側永久磁石手段は、内側永久磁石手段の周りに永久磁石の外側リムを備えている。その外側リム内の各外側永久磁石は、内側永久磁石手段に向かった同じ第1の磁極(ここではS極)を備えている。それと同様に、内側永久磁石手段は、外側永久磁石手段の内側に永久磁石の内側リムを備え、その内側リム内の各内側永久磁石は、外側永久磁石手段に向かった同じ第2の磁極(ここではN極)を備えている。
【0044】
図10はシミュレーションジオメトリを図示しており、ここでは、外側永久磁石手段403、内側永久磁石手段404、上カバー406、下カバー407、コイル408、および例えば電気信号をコイル408に伝導するために使用されるフレキシブル回路基板であり得る誘電体層409の一部の断面が見られている。シミュレーションジオメトリは、図5に示されたような2分の1の断面である。対称性により、そのような2分の1の磁場を考慮すれば十分である。
【0045】
図11から図16はシミュレーション結果であり、矢印の行列は、計算された各点における磁場の方向およびおおよその大きさを示している。上のライン、すなわち図11図12、および図13はシリーズを構成しており、図11は永久磁石手段の磁場のみを示しており、図12はコイルを流れる電流の磁場のみを示しており、図13はこれらの重ね合わせを示している。下のライン、すなわち図14図15、および図16は、類似したシリーズを示しており、図15において、コイル内を流れる電流が図12とは逆方向になっていることのみが異なっている。
【0046】
シミュレーションは、上カバーおよび下カバーの磁性材料が、磁場のかなりの割合をどのように閉じ込めているかを、とりわけ示している。トランスデューサの構造の外側に逸脱する任意の磁束は、任意の所望の操作、すなわち最終的に可聴信号および/または触覚効果を生じさせる振動の生成に磁束を利用することが困難になるという意味で損失となるので、このことは有利である。
【0047】
重ね合わせである図13および図16は、永久磁石の磁場およびコイルに流れる電流の磁場の組み合わせ効果が、振動の発生に応じた力を生じさせることとなる磁場の集中領域を、どのようにして生じさせるかということを示している。ここで、トランスデューサの下部は、例えば構造体のようなベースデバイスの比較的高剛性の部分に固定して取り付けられていると仮定され得る。トランスデューサの上部は、ベースデバイスの比較的より柔軟な他の部分に固定して取り付けられ、これによりトランスデューサ内に生じた力の影響の下で移動することが可能とされ得る。
【0048】
これまでに述べた実施形態は、コイル408がトランスデューサの下部に配置されているという共通の特徴を備えている。トランスデューサの下部が、信号を生成する電子回路のための構造的支持も提供するベースデバイスのそのような部分に固定して取り付けられた場合、少なくともコイルに電気信号を送信するといった観点から、このことは有利になり得る。また、これまでに述べた実施形態においては、コイルは、トランスデューサの軸線に直交した平面内において内側永久磁石手段を取り囲んでいる。
【0049】
また、永久磁石手段に関連して、ならびに上部および下部に関連して、コイルの配置に関して他の方法も可能である。いくつかの代替的な実施形態は、図17から図19に示されている。図17の実施形態においては、コイル408は上部内に配置されており、外側永久磁石手段403の内側に固定して取り付けられている。そうでなければ、構造は図5の構造に類似している。図18の実施形態においても、コイルは上部内に配置されているが、外側永久磁石手段の外側である。図19の実施形態においては、コイルは下部内に配置されており、内側永久磁石手段404の内側である。
【0050】
ここに示された任意の実施形態は、上カバー内、例えば軸線の周りの中間領域に1つ以上の開口部を追加的に備え得る。これまでに指摘したように、そのような1つ以上の開口部は、トランスデューサの上部と下部との間の静的磁力の強さおよび効果を微細に調整するために使用され得る。例として、外部からの任意の不測の大きい相対移動が生じた場合に、トランスデューサの上部および下部が互いに磁気的に途切れないことを確実にするために、誘引方向において強すぎる静的磁力を回避することは、有利となり得る。
【0051】
ここに示されたコイルの代替的な配置は、トランスデューサが1つよりも多くのコイルを備えることが可能であり、2つ以上のコイルが、ここに記載された可能なコイルの配置の組み合わせのいずれかにおいて配置されることが可能であるとも解釈され得る。
【0052】
コイル408が下部402内に配置され、且つ軸線405の方向に直交した平面内において内側永久磁石手段404を取り囲んだ実施形態においては、平坦で且つコイル408と内側永久磁石手段404との組み合わされた集合体と等しい距離だけ軸線405から離れるように延びた下カバー407を備えることが、有利になり得る。下カバー407のそのような外形および寸法は図4図5、および図20に見られており、図10から図16のシミュレーションジオメトリにも見られている。ここで、コイル408と内側永久磁石手段404との組み合わされた集合体と等しい距離だけ軸線405から離れるように下カバー407が延びることは、特にトランスデューサのそれらの部分に適用され、外側永久磁石はそこに直接隣接し、コイル408および内側永久磁石手段404に面している。そのような寸法の利点は、下カバー407を最適な方法において磁場を閉じ込めることに寄与させ、一方でそれと同時に、軸線の方向におけるそれらの相対移動を可能にする上カバーと下カバーとの間の十分な空隙を許容することに関連している。
【0053】
図20は追加の可能な機能を示しており、下部は、2つの内側永久磁石603および604を互いから離間した磁性材料の層2001を備えている。図20においては、2つの内側永久磁石603および604は、先の図6における内側永久磁石と同様に細長いと仮定される。したがって、層2001は内側永久磁石の長手方向に延び、2つの内側永久磁石603および604を、それらの長さの少なくともかなりの割合にわたって離間している。磁性材料のそのような離間層は、磁場の方向において有利な効果を有し得る。磁性材料の層2001は、下カバー407の大部分を構成した平坦部分に溶接または他の方法により取り付けられた磁性材料の別個の部分とされ得る。代替として、例えば、下カバーが、背中合わせに一体に溶接、はんだ付け、または接着された、L字形断面の2つの部分から成るように、平坦部分と同じ材料の部分であってもよい。
【0054】
図21は、実施形態によるトランスデューサの分解図を示している。図21のトランスデューサは、上部401および下部402を備えている。上部内の上カバー406は、一平面(架空の平面2101参照)においてU字形状断面を備えているが、他の直交した平面(図21の架空の平面2102参照)においてU字形状断面を備えていない。上カバー406および下部402内の下カバー407は、両方が磁性材料を含んでいる。それらは一体となって、組み立てられた構成において外側永久磁石および内側永久磁石の周りに、少なくとも部分的に筐体を形成している。筐体が平面2101に沿った断面において観察された場合、上カバー406の端部が、平面2101に沿った断面において、U字の2つの直線のブランチを構成した屈曲端縁を備えていないので、平面2102に沿ったそれぞれの断面よりも、より囲いのあるものになる。
【0055】
ある実施形態においては、上カバー406は、図6および図21に示された実施形態の中間バージョンである形状を有し得る。例えば、図21においては屈曲端縁の無い上カバーの端部は、側面ほど下方に達しない小さな屈曲端縁を備え得る。
【0056】
図21のトランスデューサはコイル408を備え、組み立てられた構成において、コイルは、上カバー406および下カバーが外側永久磁石および内側永久磁石の周りを画定した筐体内に配置されている。これまでに指摘したように、筐体はその端部においていくらか開放されており、筐体内に配置されるコイル408は主に、上カバー406の屈曲端縁に対して平行に延びた、コイル408のそれらのセクションを参照している。コイル408は、自身を通じて流れる電流の影響の下で、トランスデューサの軸線405の方向に動的磁力を生じるように構成されている。
【0057】
上部401内の外側永久磁石手段は一対の外側永久磁石601および602を備え、各外側永久磁石が、上カバー406のU字形状断面の内側のそれぞれの直線外側端縁に沿って延びている。下部402内の内側永久磁石手段は一対の内側永久磁石603および604を備え、各内側永久磁石が、外側永久磁石601および602のそれぞれ1つに対して平行に延びている。組み立てられた構成においては、一対の外側永久磁石601および602ならびに一対の内側永久磁石603および604は、軸線405の方向において互いに少なくとも部分的に同じ高さにある。名称が示唆しているように、内側永久磁石603および604は、外側永久磁石601および602よりも軸線405に近い空間を占有している。外側永久磁石および内側永久磁石の対極の名称とされた磁極は、(平面2101において観察した場合)軸線405に直交した方向において互いに向き合っている。
【0058】
コイル408は、図21においてはトランスデューサの下部402内に配置されている。組み立てられた構成においては、コイルは、軸線405の方向に直交した平面内において一対の内側永久磁石603および604を取り囲んでいる。下カバー407は全体的に平坦であるが、2つの磁性材料の層2103および2104を備えており、それらの層は、軸線405の方向に直交した方向において内側永久磁石603および604を互いから離間している。2つの層2103および2104は、下カバー407の板状材料に幅広のH字形状の切り込みを入れ、そのように形成された2つのフラップを他の平坦な外側カバー407の平面の外側に曲げることによって形成されている。
【0059】
ここで、2つの層2103と2104との間の空きスペースなど、下部の中央に空きスペースがあることは、トランスデューサの動作に関して有利な目的には何ら寄与しないことが理解され得る。空きスペースは、下カバー407を製造するために比較的有利な方法の1つであるので、図21の実施形態においてのみ生じている。空間の節約が優先的である場合、内側永久磁石603と604との間の空きスペースが排除された、図20のような構造を目指すことがより良好とされ得る。
【0060】
上カバー406は、静的磁力を微細に調節するために、軸線405の周りに1つ以上の開口部605を備えている。内側永久磁石603および604を互いから離間した磁性材料の層2103および2104も、磁場を方向付ける役割を有する。
【0061】
図21のトランスデューサのさらに特別な特徴は、下部407のベースプレートが、その細長い形状の端部において上カバー406よりもかなり遠くまで延びていることである。端部の一方においてこのように延びた部分は、図21において参照符号2105により示されている。これらの延びた部分において、穴またはスロットは穴2106として例示されており、下部402を電子デバイスの構造部に取り付けることに役立ち、電子デバイス内において、図21のトランスデューサは音響効果および/または触覚効果を生じる。他の多くの種類の取付デザインが、下部407のそのように延びた部分を利用するように形成され得る。
【0062】
すべての実施形態において、磁石の横方向配置、すなわちトランスデューサの垂直軸線に直交した方向において互いに向き合った外側磁石および内側磁石を備えていることは、それらを互いに上下に積み重ねるよりも、図1から図3のトランスデューサのような従来技術によるトランスデューサと比較して、垂直方向に大幅に薄いトランスデューサを形成することが可能である。
【0063】
本発明の基本的な思想が多様な方法において実施され得ることは、技術の発展と共に当業者に自明である。したがって、本発明およびその実施形態は、前述の例に限定されるものではなく、特許請求の範囲内において変化し得る。一例として、上記でそれぞれ単一の材料で形成されていると開示されている上カバーおよび下カバーなどの部品は、2つ以上の部品として形成されることが可能である。より大きい壁厚さが必要であれば、より厚いビレットよりも、一体に溶接された2つ以上の層の金属材料を使用することが、より有利となり得る。
【符号の説明】
【0064】
101、301、401 ・・・上部
102、302、402 ・・・下部
103 ・・・水平ギャップ
104、303 ・・・第1の永久磁石
105、304 ・・・第2の永久磁石
106、406 ・・・上カバー
107、407 ・・・下カバー
108、308 ・・・コイル
109、310 ・・・フラットケーブル
201、501 ・・・第1の構造部
202、502 ・・・頂面
203 ・・・第2の構造部
306 ・・・上カバー部
307 ・・・下カバー部
309 ・・・離間ギャップ
403 ・・・外側永久磁石手段
404 ・・・内側永久磁石手段
405 ・・・軸線
406 ・・・上カバー
408 ・・・コイル
409 ・・・フレキシブル回路基板(誘電体層)
601、602、801、802、901 ・・・外側永久磁石
603、604、803、804、902 ・・・内側永久磁石
605 ・・・開口部
2001 ・・・磁性材料の層
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
【手続補正書】
【提出日】2022-08-09
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気信号を機械的振動に変換するためのトランスデューサであって、該トランスデューサは、
上部(401)および下部(402)と、
前記上部(401)内に配置された外側永久磁石手段(403)および前記下部(402)内に配置された内側永久磁石手段(404)と、
前記上部(401)内の上カバー(406)および前記下部(402)内の下カバー(407)であって、前記上カバーおよび下カバー(406、407)は磁性材料を含み、前記外側永久磁石手段および内側永久磁石手段(403、404)の周りに一体となって少なくとも部分的な筐体を形成した、上カバー(406)および下カバー(407)と、
前記筐体内に配置された少なくとも1つのコイル(408)であって、該コイル(408)を通じて流れる電流の影響の下で、前記トランスデューサの軸線(405)の方向に動的磁力を生じるように構成された少なくとも1つのコイル(408)と、
を備え、
前記外側永久磁石手段および内側永久磁石手段(403、404)は、前記軸線(405)の方向において互いに少なくとも部分的に同じ高さにあり、前記内側永久磁石手段(404)は、前記外側永久磁石手段(403)よりも前記軸線(405)に近い空間を占有しており、
前記外側永久磁石手段および内側永久磁石手段(403、404)の対極の名称とされた磁極は、前記軸線(405)に直交した方向において互いに向き合っており、
前記外側永久磁石手段(403)は、前記内側永久磁石手段(404)の周りに永久磁石(901)の外側リムを備え、該外側リムの各外側永久磁石は、前記内側永久磁石手段(404)に向かって同じ第1の磁極を有し、
前記内側永久磁石手段(404)は、前記外側永久磁石手段(403)の内側に永久磁石の内側リムを備え、該内側リムの各内側永久磁石は、前記外側永久磁石手段(403)に向かって同じ第2の磁極を有する、トランスデューサ。
【請求項2】
前記上カバー(406)はU字形状断面を有し、且つ該U字形状断面に直交して延びた相互に平行な第1の対の直線外側端縁を含み、
前記外側永久磁石手段(403)は第1の対の外側永久磁石(601、602)を備え、これらの各々は、前記U字形状断面の内側の前記直線外側端縁のそれぞれ1つに沿って延びており、各々の外側永久磁石は、前記内側永久磁石手段(404)に向かって同じ第1の磁極を有し、
前記内側永久磁石手段(404)は第1の対の内側永久磁石(603、604)を備え、これらの各々は、前記外側永久磁石(601、602)のそれぞれ1つに対して平行に延びており、各々の内側永久磁石は、前記外側永久磁石手段(403)に向かって同じ第2の磁極を有する、請求項1に記載のトランスデューサ。
【請求項3】
前記上カバー(406)は、相互に平行な前記第1の対の直線外側端縁と同じ平面内であるが異なった方向に延びた、相互に平行な第2の対の直線外側端縁を備え、
前記外側永久磁石手段(403)は第2の対の外側永久磁石(801、802)を備え、これらの各々は前記第2の対の直線外側端縁のそれぞれに沿って延びており、
前記内側永久磁石手段(404)は第2の対の内側永久磁石(803、804)を備え、これらの各々は前記第2の対の直線外側端縁のそれぞれに対して平行に延びている、請求項2に記載のトランスデューサ。
【請求項4】
前記コイル(408)は前記下部(402)内に配置されている、請求項1からのいずれか一項に記載のトランスデューサ。
【請求項5】
前記コイル(408)は、前記軸線(405)の方向に直交した平面内において、前記内側永久磁石手段(404)を取り囲んでいる、請求項に記載のトランスデューサ。
【請求項6】
前記下カバー(407)は、平坦で且つ前記軸線(405)の方向に直交した平面内において広がっており、前記コイル(408)と前記内側永久磁石手段(404)との組み合わされた集合体と等しい距離だけ前記軸線(405)から離れるように延びている、請求項またはに記載のトランスデューサ。
【請求項7】
前記上カバー(406)は、前記軸線(405)の周りに1つ以上の開口部(605)を備えている、請求項1からのいずれか一項に記載のトランスデューサ。
【請求項8】
前記下部(402)は磁性材料の層(2001)を備え、該層は、前記軸線(405)に直交した方向において、前記内側永久磁石手段の2つの内側永久磁石(603、604)を互いから離間している、請求項1からのいずれか一項に記載のトランスデューサ。
【請求項9】
第1の構造部(501)および第2の構造部(502)を備えた電子デバイスと、
少なくとも1つの、請求項1からのいずれか一項に記載のトランスデューサであって、前記電子デバイスの第1の構造部(501)に取り付けられた前記トランスデューサの上部(401)、および前記電子デバイスの第2の構造部(502)に取り付けられた前記トランスデューサの下部(402)を備えた、少なくとも1つのトランスデューサと、
前記電子デバイスの一部として、可聴周波数の電気信号を前記トランスデューサの少なくとも1つの前記コイル(408)に送信するように構成された電気回路と、
を備えている、音響を生成するための手段。
【請求項10】
第1の構造部および第2の構造部(501、502)を備えた電子デバイスであって、少なくとも前記第1の構造部は、使用者が触れられるようにアクセス可能である、電子デバイスと、
少なくとも1つの、請求項1からのいずれか一項に記載のトランスデューサであって、前記電子デバイスの第1の構造部(501)に取り付けられた前記トランスデューサの上部(401)、および前記電子デバイスの第2の構造部(502)に取り付けられた前記トランスデューサの下部(402)を備えた、少なくとも1つのトランスデューサと、
前記電子デバイスの一部として、電気信号を前記トランスデューサの少なくとも1つの前記コイル(408)に送信するように構成された電気回路と、
を備えている、使用者が感じるための触覚効果を生成するための手段。
【国際調査報告】