(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-12-11
(54)【発明の名称】廃リチウム二次電池正極材からリチウム前駆体の回収方法
(51)【国際特許分類】
H01M 10/54 20060101AFI20231204BHJP
C22B 7/00 20060101ALI20231204BHJP
C22B 26/12 20060101ALI20231204BHJP
C01G 53/00 20060101ALI20231204BHJP
【FI】
H01M10/54
C22B7/00 C
C22B26/12
C01G53/00 A
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023533893
(86)(22)【出願日】2021-11-30
(85)【翻訳文提出日】2023-06-07
(86)【国際出願番号】 KR2021017806
(87)【国際公開番号】W WO2022119262
(87)【国際公開日】2022-06-09
(31)【優先権主張番号】10-2020-0166203
(32)【優先日】2020-12-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】308007044
【氏名又は名称】エスケー イノベーション カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】SK INNOVATION CO.,LTD.
【住所又は居所原語表記】26, Jong-ro, Jongno-gu, Seoul 110-728 Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【氏名又は名称】林 一好
(72)【発明者】
【氏名】ホン スクジョン
(72)【発明者】
【氏名】パク ジユン
(72)【発明者】
【氏名】ユン ジョンベ
(72)【発明者】
【氏名】イ スンオク
(72)【発明者】
【氏名】キム ジミン
(72)【発明者】
【氏名】ソン スンレル
【テーマコード(参考)】
4G048
4K001
5H031
【Fターム(参考)】
4G048AA03
4G048AA04
4G048AB01
4G048AC06
4G048AD03
4G048AE05
4K001AA34
4K001BA22
4K001CA06
4K001DB22
5H031EE01
5H031EE03
5H031HH06
5H031RR02
(57)【要約】
本発明は、a)廃リチウム二次電池正極材を尿素(Urea)と混合して第1混合物を製造するステップと、b)前記第1混合物を焼成して第2混合物を製造するステップと、c)前記第2混合物を水洗処理して水酸化リチウムを得るステップと、を含む、リチウム前駆体の回収方法を提供する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)廃リチウム二次電池正極材を尿素(Urea)と混合して第1混合物を製造するステップと、
b)前記第1混合物を焼成して水酸化リチウムを含む第2混合物を製造するステップと、
c)前記第2混合物を水洗処理してリチウム前駆体を分離するステップと、
を含む、リチウム前駆体の回収方法。
【請求項2】
前記焼成温度は450℃~600℃である、請求項1に記載のリチウム前駆体の回収方法。
【請求項3】
前記b)ステップは、不活性ガス雰囲気で行われる、請求項1に記載のリチウム前駆体の回収方法。
【請求項4】
前記水洗処理は20℃~90℃で行われる、請求項1に記載のリチウム前駆体の回収方法。
【請求項5】
前記水洗処理により水酸化リチウム水溶液が生成される、請求項1に記載のリチウム前駆体の回収方法。
【請求項6】
前記c)ステップは、水酸化リチウムを結晶化するステップをさらに含む、請求項1に記載のリチウム前駆体の回収方法。
【請求項7】
前記正極材100重量部に対して、前記尿素5~50重量部を混合する、請求項1に記載のリチウム前駆体の回収方法。
【請求項8】
前記正極材は、下記化学式1で表される、請求項1に記載のリチウム前駆体の回収方法。
[化学式1]
Li
xNi
aCo
bM
(1-a-b)O
y
(化学式1中、MはMn、Na、Mg、Ca、Ti、V、Cr、Cu、Zn、Ge、Sr、Ag、Ba、Zr、Nb、Mo、Al、Ga、およびBからなる群から選択され、0<x≦1.1、2≦y≦2.02、0.5≦a≦1、0≦b≦0.5である)。
【請求項9】
前記廃リチウム二次電池正極材からの水酸化リチウムの回収率が50%以上である、請求項1に記載のリチウム前駆体の回収方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、廃リチウム二次電池正極材からリチウム前駆体の回収方法に関する。
【背景技術】
【0002】
リチウム二次電池市場が情報技術(Information Technology、IT)機器用電池、電気自動車、エネルギー貯蔵装置(ESS)などの多様な分野に拡大するにつれ、その需要が日々増加している傾向にある。需要の増加に伴い、廃リチウム二次電池の量も日々増加している。
【0003】
リチウム二次電池の原価の60%以上を正極材が占めており、このような正極としては、可逆性に優れ、低い自己放電率、高容量、高エネルギー密度を有し、合成に容易なリチウムコバルト酸化物(LiCoO2)が用いられている。また、高価なコバルトの使用量を減らすために、Ni、Mnなどが共に含まれたリチウムニッケルコバルトマンガン酸化物(Li(Ni、Co、Mn)O2)や、リチウムマンガン酸化物(LiMnO2)、リチウム鉄リン酸化物(LiFePO4)のような複合酸化物の形態で用いられている。上記のような正極材には約5~7%のリチウムが含まれており、廃リチウム二次電池正極材からリチウム化合物を回収する方法に多くの関心が集まっている。
【0004】
従来の廃リチウム二次電池正極材を用いてリチウムをリサイクルする技術としては、廃正極材を塩酸、硫酸、および硝酸などの強酸で抽出した後にアルカリで中和させ、コバルト、ニッケルなどを水酸化物として沈殿させて回収する工程と、過酸化水素の存在下で硫酸または硝酸で正極材を溶解させた後、中和沈殿法で金属を分離回収する工程が一般的に用いられてきた。しかし、前記抽出工程時に強酸を用いなければならないため、大気中への蒸発による深刻な環境汚染や、特に酸による設備の腐食などの問題が非常に深刻である。
【0005】
上記の問題を解決するために、廃正極材と炭素粉末を単純に混合し、酸化雰囲気または還元雰囲気下で熱処理してリチウムおよびコバルト、ニッケルなどを回収する方法が紹介されたが、600℃以上の高温熱処理によるコストの問題や、強酸を用いた回収方法に比べて浸出効率が低下し、その結果、リチウムの回収率が低いという問題がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、廃リチウム二次電池正極材から低温で水酸化リチウムを高い収率で回収する方法を提供しようとする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、
a)廃リチウム二次電池正極材を尿素(Urea)と混合して第1混合物を製造するステップと、
b)前記第1混合物を焼成して水酸化リチウムを含む第2混合物を製造するステップと、
c)前記第2混合物を水洗処理してリチウム前駆体を分離するステップと、を含む、リチウム前駆体の回収方法を提供する。
【0008】
一態様によると、前記焼成温度は450℃~600℃であってもよい。
一態様によると、前記b)ステップは、不活性ガス雰囲気で行われてもよい。
一態様によると、前記水洗は20℃~90℃で行われてもよい。
【0009】
一態様によると、前記水洗処理により水酸化リチウム水溶液が生成されてもよい。
一態様によると、前記c)ステップは、水酸化リチウムを結晶化するステップをさらに含んでもよい。
【0010】
一態様によると、前記正極材100重量部に対して、前記尿素5~50重量部を混合してもよい。
一態様によると、前記正極材は、下記化学式1で表されてもよい。
【0011】
[化学式1]
LixNiaCobM(1-a-b)Oy
【0012】
(化学式1中、MはMn、Na、Mg、Ca、Ti、V、Cr、Cu、Zn、Ge、Sr、Ag、Ba、Zr、Nb、Mo、Al、Ga、およびBからなる群から選択され、0<x≦1.1、2≦y≦2.02、0.5≦a≦1、0≦b≦0.5である)。
【0013】
一態様によると、前記廃リチウム二次電池正極材からの水酸化リチウムの回収率が50%以上であってもよい。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係る廃リチウム二次電池正極材からのリチウム前駆体の回収方法は、尿素を還元剤として用い、600℃以下の低温でも高い収率で水酸化リチウムを回収できるという利点がある。
また、硫酸などの強酸を用いなくても効率的に水酸化リチウムを回収することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の一実施形態に係るリチウム前駆体の回収方法を説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の利点および特徴、そしてそれらを達成する方法は、添付図面と共に詳細に後述している実施形態を参照すれば明らかになるであろう。ただし、本発明は、以下に開示される実施形態に限定されるものではなく、互いに異なる多様な形態で実現できるものであり、本実施形態は、単に本発明の開示が完全になるようにし、本発明が属する技術分野における通常の知識を有する者に発明の範囲を完全に知らせるために提供されるものであり、本発明は、請求項の範囲により定義されるだけである。以下、添付図面を参照して、本発明を実施するための具体的な内容について詳しく説明する。図面に関係なく同一の部材番号は、同一の構成要素を指し、「および/または」は、言及されたアイテムのそれぞれおよび1つ以上の全ての組み合わせを含む。
【0017】
他の定義がなければ、本明細書で用いられる全ての用語(技術および科学的用語を含む)は、本発明が属する技術分野における通常の知識を有する者に共通に理解できる意味として用いられてもよい。明細書の全体にわたって、ある部分がある構成要素を「含む」とする際、これは、特に反対の記載がない限り、他の構成要素を除くのではなく、他の構成要素をさらに含んでもよいことを意味する。また、単数形は、語句において特に言及しない限り、複数形も含む。
【0018】
本明細書において、層、膜、領域、板などの部分が他の部分の「上部に」または「上に」存在するとする際、これは、他の部分の「真上に」存在する場合だけでなく、その間にまた他の部分が存在する場合も含む。
【0019】
本明細書で用いられる用語「前駆体」は、電極活物質に含まれる特定の金属を提供するために前記特定の金属を含む化合物を包括的に指すものとして用いられる。
【0020】
従来はノートパソコン、スマートフォンなどのIT機器用電池がリチウム二次電池市場をリードしていたが、近年、電気自動車市場の急成長に伴い、高容量リチウム二次電池が市場をリードしている傾向にある。このような高容量リチウム二次電池市場の急成長の傾向に合わせて、リチウム二次電池の容量を高めることができるニッケルと合成が容易な水酸化リチウムが主原料として用いられている。具体的に、ニッケルは、高温でリチウムと円滑に合成が行われないという特性がある。そこで、炭酸リチウムよりも融点が低い水酸化リチウムをニッケルと合成してニッケルの含量を高めた「ハイニッケル」正極材の合成が容易であるため、水酸化リチウムを高容量リチウム二次電池の主原料として用いる傾向にある。
【0021】
本発明は、前記高容量リチウム二次電池市場の傾向に合わせて、廃リチウム二次電池正極材から水酸化リチウムを含むリチウム前駆体を回収する方法を提供する。具体的に、前記回収方法は、a)廃リチウム二次電池正極材を尿素(Urea)と混合して第1混合物を製造するステップと、b)前記第1混合物を焼成して水酸化リチウムを含む第2混合物を製造するステップと、c)前記第2混合物を水洗処理してリチウム前駆体を分離するステップと、を含み、低温で高い収率で水酸化リチウムを回収できるという利点がある。
【0022】
前記a)ステップは、廃リチウム二次電池正極材と固体還元剤として尿素を混合するステップであり、前記a)ステップ前に廃リチウム二次電池から正極材を得るステップをさらに含んでもよい。
【0023】
前記廃リチウム二次電池は、正極、負極、および前記正極と前記負極との間に介在したセパレータを含み、前記正極および負極は、正極または負極集電体上にコーティングされた正極または負極活物質層をそれぞれ含んでもよい。この際、前記廃リチウム二次電池は、再使用(充放電)が不可能なリチウム二次電池、例えば、長時間の使用により充放電性能が著しく低下したリチウム二次電池、または物理的衝撃や化学反応により破壊されたリチウム二次電池を含んでもよい。
【0024】
前記廃リチウム二次電池から正極を分離し、廃正極を回収してリチウムまたはリチウム誘導体を回収してもよい。前記廃正極は、正極集電体および正極活物質層を含み、前記正極活物質層は、正極活物質、導電材、およびバインダーを含んでもよい。具体的に、前記導電材は、黒鉛、カーボンブラック、グラフェン、カーボンナノチューブなどの炭素系物質を含んでもよく、前記バインダーは、ビニリデンフルオライド-ヘキサフルオロプロピレンコポリマー(PVDF-co-HFP)、ポリビニリデンフルオライド(polyvinylidenefluoride、PVDF)、ポリアクリロニトリル(polyacrylonitrile)、ポリメチルメタクリレート(polymethylmethacrylate)を含んでもよい。
【0025】
前記回収された廃正極は、100~500℃、好ましくは350~450℃の酸化雰囲気で熱処理を行ってもよい。これにより、前記正極活物質層に含まれた導電材およびバインダーを実質的に全て除去することができ、非限定的には95重量%以上除去することができる。
【0026】
前記熱処理を行った廃正極は、粉砕処理により、正極集電体を脱着させ、粉末状に製造されてもよい。具体的に、廃正極の粉砕後、5~100μmのメッシュスクリーニング(mesh screening)を用いて正極材を得てもよい。この際、前記粉砕は、ボールミル(ball mill)を用いてもよいが、これに制限されない。
【0027】
上述した過程により実質的に正極集電体成分が除去され、前記導電材およびバインダーに由来の炭素系成分が90重量%以上除去された正極材を得ることができる。
前記正極材は、例示的に下記化学式1で表されてもよい。
【0028】
[化学式1]
LixNiaCobM(1-a-b)Oy
【0029】
(化学式1中、MはMn、Na、Mg、Ca、Ti、V、Cr、Cu、Zn、Ge、Sr、Ag、Ba、Zr、Nb、Mo、Al、Ga、およびBからなる群から選択され、0<x≦1.1、2≦y≦2.02、0.5≦a≦1、0≦b≦0.5である)。
【0030】
前記a)ステップは、前記正極材100重量部に対して、前記尿素5~50重量部、好ましくは7~30重量部、より好ましくは10~25重量部を混合して第1混合物を製造してもよい。この際、前記混合は、溶媒などの液状物質の添加による混合ではなく、乾式混合であってもよく、流動層反応器内で行ってもよい。具体的に、前記混合過程は、15~90℃、好ましくは25~50℃で1~3時間行ってもよい。上述した条件で製造された第1混合物を焼成および水洗処理することで、正極材が十分に還元され、水酸化リチウムへの転化率を高め、前記c)ステップ後に高い収率で水酸化リチウムを回収することができる。
【0031】
前記b)ステップは、a)ステップで製造された第1混合物を焼成して第2混合物を製造するステップであり、450~600℃、好ましくは470~600℃、より好ましくは500~550℃で、1~4時間、好ましくは2~3時間行ってもよい。この際、前記焼成過程は、不活性ガス雰囲気で行われてもよく、非限定的な例として、前記不活性ガスは、アルゴンまたは窒素を含んでもよい。具体的に、反応器の内部に上述した不活性ガスをパージ(purging)する方式により不活性ガス雰囲気に置換してもよい。上記条件での焼成過程を経た後、c)ステップを行う場合、50%以上の回収率で水酸化リチウムを回収することができる。この際、回収は、廃リチウム二次電池正極材からの水酸化リチウムの回収率を指し、具体的に、回収前の正極材中のリチウムの全含量を分析して100%基準とし、回収された水酸化リチウム中のリチウムの含量を分析して水酸化リチウムの回収率を計算した値であってもよい。
【0032】
前記b)ステップで製造された第2混合物は、水酸化リチウム(LiOH)および遷移金属含有混合物を含んでもよい。前記遷移金属含有混合物は、遷移金属および遷移金属含有酸化物を含んでもよく、前記遷移金属は、ニッケル、コバルト、マンガンなどを含んでもよい。この際、前記遷移金属含有混合物の遷移金属は、前記正極材であるリチウム複合酸化物が前記b)ステップの焼成過程により水酸化リチウムに転化する過程で、前記遷移金属成分が分離して形成されたものであってもよい。
【0033】
前記c)ステップは、b)ステップで製造された第2混合物を水洗(water washing)処理するステップであり、20~90℃、好ましくは20~60℃で行ってもよい。具体的に、前記水洗処理のための水洗液として蒸留水、純水、または軟水を用いて行ってもよい。この際、前記第2混合物および水洗液は、10g/L~500g/Lの固液比で混合してもよい。前記水洗工程は1回~3回繰り返されてもよく、1回の水洗工程の工程時間は30分~2時間であってもよい。上記条件にて、前記第2混合物から水酸化リチウムを含む水溶液を分離することができる。前記第2混合物中の遷移金属含有混合物は、前記水溶液に沈殿することができるため、濾過処理により、高純度の水酸化リチウムを含むリチウム前駆体を得ることができる。
【0034】
一方、前記沈殿分離した遷移金属含有混合物は、酸溶液で処理し、各遷移金属塩形態の前駆体を形成することができる。非限定的な例として、前記酸溶液として硫酸を用い、遷移金属前駆体としてNiSO4、MnSO4、およびCoSO4をそれぞれ回収することができる。
【0035】
前記c)ステップは、前記分離した水溶液中の水酸化リチウムを結晶化するステップをさらに含んでもよい。具体的に、前記水溶液を濃縮する過程により結晶状の水酸化リチウムを得てもよい。前記濃縮方法は、減圧濃縮、凍結濃縮、蒸発濃縮、加熱濃縮、沈殿濃縮、逆浸透濃縮など、水溶液中で結晶状のものを得る濃縮方法として使用可能なものであれば制限なく選択して用いてもよい。
【0036】
図1は、本発明の一実施形態に係る廃リチウム二次電池からリチウム前駆体を回収するフローチャートを示す図である。
図1に示すように、廃リチウム二次電池正極材を準備するステップ(S10)、前記正極材を還元剤としての尿素と混合するステップ(S20)、前記混合された正極材および尿素を焼成するステップ(S30)、前記焼成された生成物を水洗するステップ(S40)、および前記水洗処理された取得物を結晶化するステップ(S50)を経ることで、廃リチウム二次電池正極材から水酸化リチウムを得ることができる。前記過程により50%以上、好ましくは70%~90%の回収率で水酸化リチウムを回収することができる。
【0037】
以下、本発明について実施例を挙げて詳細に説明するが、これらは本発明をより詳細に説明するためのものであって、本発明の権利範囲が下記の実施例により限定されるものではない。
【0038】
実施例
実施例1
ステップ1:廃リチウム二次電池正極材の準備
廃リチウム二次電池から分離した廃正極を400℃で3時間熱処理した後、ミリングにより粉砕した後、80μmのメッシュサイズの篩を通して濾過し、粉末状の正極材を得た。この際、前記正極は、LiNi0.8Co0.1Mn0.1O2正極活物質、Denka black導電材、およびPVDFバインダーを92:5:3の重量比で含む正極活物質層を含む。
【0039】
ステップ2:廃リチウム二次電池正極材からリチウム前駆体を回収するステップ
前記ステップ1で得られた正極材10gおよび尿素(Urea)2gを乾式混合した後、窒素雰囲気および450℃の条件で2時間焼成して予備前駆体混合物を得た。次に、前記予備前駆体混合物を回収し、回収された混合物の重量に対して19倍重量の蒸留水を追加した後、蒸留水に溶解したリチウムの濃度を分析し、得られた各リチウム化合物の含量を測定して下記表1にまとめた。
【0040】
評価例:廃リチウム二次電池から水酸化リチウムの収率の評価
(実施例2~7)
実施例1のステップ2において、焼成温度を450℃の代わりに下記表1に記載された温度で行ったことを除いては同様に行った。
【0041】
(比較例1~2)
実施例1のステップ2において、尿素の代わりに固体炭素(カーボンブラック、Denka)を用い、焼成温度を下記表1に記載された温度で行ったことを除いては同様に行った。
【0042】
水酸化リチウム重量XRD(X-Ray Diffraction Spectroscopy)分析
実施例1~7および比較例1~2により得られた取得物に対してXRD分析を行い、XRD結果に基づいてリートベルト法(Rietveld method)による結晶構造の解釈から物質の含量を求め、下記表1にまとめた。
【0043】
【0044】
表1中、リチウム転化率は、反応前の正極材中のリチウムの全含量に対する水洗過程で得られる水溶液中のリチウムの含量割合を意味し、前記炭酸リチウム、水酸化リチウム、および酸化リチウムの含量(重量%)は、前記ステップ2で得られた予備前駆体混合物の全重量に対する含量であり、水酸化リチウムの回収率は、回収前の正極材中のリチウムの全含量に対する回収された水酸化リチウム中のリチウムの含量を意味する。
【0045】
表1に示すように、還元剤として尿素を用いた実施例1~6は、還元剤として固体炭素を用いた比較例1~2に比べて、高い水酸化リチウムの回収率を示した。特に、焼成温度が450℃以上、具体的には450~600℃の焼成条件では、焼成温度の増加に伴って水酸化リチウムの含量が増加する傾向を示し、いずれも50%以上の高い水酸化リチウムの回収率を示したことを確認することができる。一方、焼成温度が450℃未満である場合(実施例7)には、水酸化リチウムの含量が減少した結果を示したため、好ましい焼成温度が450~600℃であることが分かる。
【0046】
一方、固体炭素を還元剤として用いた比較例1の場合には、実施例1と同様の条件で焼成過程を行ったが、回収された取得物中の水酸化リチウムおよび炭酸リチウムの含量が0を示した。すなわち、固体炭素を還元剤として用いる場合、450℃の温度では水酸化リチウムが全く生成されず、リチウム転化率も6%と非常に低いことが分かる。
【0047】
固体炭素を還元剤として用い、840℃の焼成温度で行った比較例2の場合には、予備前駆体として酸化リチウムを得、追加工程により最終的に49%の回収率で水酸化リチウムを得ることができたが、本発明の実施例に比べて遥かに高温を必要とすることを確認することができる。
【国際調査報告】