(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-12-12
(54)【発明の名称】パワーエレクトロニクスモジュール
(51)【国際特許分類】
H05K 9/00 20060101AFI20231205BHJP
C08L 101/00 20060101ALI20231205BHJP
C08K 3/013 20180101ALI20231205BHJP
C08L 67/03 20060101ALI20231205BHJP
C08L 81/02 20060101ALI20231205BHJP
C08L 69/00 20060101ALI20231205BHJP
C08L 67/00 20060101ALI20231205BHJP
C08L 77/00 20060101ALI20231205BHJP
C08K 3/08 20060101ALI20231205BHJP
C08K 3/04 20060101ALI20231205BHJP
C08K 7/06 20060101ALI20231205BHJP
C08L 23/12 20060101ALI20231205BHJP
C08J 5/00 20060101ALI20231205BHJP
【FI】
H05K9/00 W
C08L101/00
C08K3/013
C08L67/03
C08L81/02
C08L69/00
C08L67/00
C08L77/00
C08K3/08
C08K3/04
C08K7/06
C08L23/12
C08J5/00 CER
C08J5/00 CEZ
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023528023
(86)(22)【出願日】2021-11-09
(85)【翻訳文提出日】2023-07-05
(86)【国際出願番号】 US2021058596
(87)【国際公開番号】W WO2022103739
(87)【国際公開日】2022-05-19
(32)【優先日】2020-11-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2021-08-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】500100822
【氏名又は名称】ティコナ・エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100129458
【氏名又は名称】梶田 剛
(72)【発明者】
【氏名】サブラモニアン,スレシュ
(72)【発明者】
【氏名】バンサル,プラブッダ
(72)【発明者】
【氏名】ヤン,ヨン-チュル
(72)【発明者】
【氏名】チョイ,スヒ
(72)【発明者】
【氏名】ウォルフ,アルノ
【テーマコード(参考)】
4F071
4J002
5E321
【Fターム(参考)】
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(57)【要約】
少なくとも1つの電力変換器を収容するハウジングを含むパワーエレクトロニクスモジュールが提供される。ハウジングは、ポリマーマトリクス内に分布した電磁障害充填剤を含むポリマー組成物を含む。ポリマーマトリクスは、ISO 75-2:2013に従って約40℃以上1.8MPaの荷重で求めて荷重撓み温度を有する熱可塑性ポリマーを含む。さらに、組成物は、ASTM D4935-18に従って30MHzの周波数および3ミリメートルの厚さで求めて、約25デシベル以上の電磁障害遮蔽有効度を示す。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの電力変換器を収容するハウジングを含むパワーエレクトロニクスモジュールであって、前記ハウジングは、ポリマーマトリクス内に分布した電磁障害充填剤を含むポリマー組成物を含み、前記ポリマーマトリクスは、ISO 75-2:2013に従って1.8MPaの荷重で求めて約40℃以上の荷重撓み温度を有する熱可塑性ポリマーを含み、さらに、前記組成物は、ASTM D4935-18に従って30MHzの周波数および3ミリメートルの厚さで求めて、約25デシベル以上の電磁障害遮蔽有効度を示す、前記パワーエレクトロニクスモジュール。
【請求項2】
前記ポリマー組成物が、約100kHz~約1.5GHzの周波数範囲にわたって3ミリメートルの厚さで約25デシベル以上の平均電磁障害遮蔽有効度を示す、請求項1に記載のパワーエレクトロニクスモジュール。
【請求項3】
前記ポリマー組成物が、約30MHz~約100MHzの周波数範囲にわたって3ミリメートルの厚さで約25デシベル以上の平均電磁障害遮蔽有効度を示す、請求項1に記載のパワーエレクトロニクスモジュール。
【請求項4】
前記ポリマー組成物が、約150kHz~約30MHzの周波数範囲にわたって3ミリメートルの厚さで約25デシベル以上の平均電磁障害遮蔽有効度を示す、請求項1に記載のパワーエレクトロニクスモジュール。
【請求項5】
前記ポリマー組成物が、約1.5GHz~約10GHzの周波数範囲にわたって1.6ミリメートルの厚さで約25デシベル以上の平均電磁障害遮蔽有効度を示す、請求項1に記載のパワーエレクトロニクスモジュール。
【請求項6】
前記ポリマー組成物が、ASTM D257-14に従って求めて約25,000Ω・cm以下の体積抵抗率を示す、請求項1に記載のパワーエレクトロニクスモジュール。
【請求項7】
前記ポリマー組成物がASTM D257-14に従って求めて約1,000Ω・cm以下の体積抵抗率を示す、請求項1に記載のパワーエレクトロニクスモジュール。
【請求項8】
前記ポリマー組成物が、ASTM E 1461-13に従って求めて約1W/m・K以上の面内熱伝導率を示す、請求項1に記載のパワーエレクトロニクスモジュール。
【請求項9】
前記ポリマーマトリクスが前記組成物の約30重量%~約99重量%を構成する、請求項1に記載のパワーエレクトロニクスモジュール。
【請求項10】
前記熱可塑性ポリマーが約10℃以上のガラス転移温度を有する、請求項1に記載のパワーエレクトロニクスモジュール。
【請求項11】
前記熱可塑性ポリマーが約140℃以上の溶融温度を有する、請求項1に記載のパワーエレクトロニクスモジュール。
【請求項12】
前記熱可塑性ポリマーが芳香族ポリマーを含む、請求項1に記載のパワーエレクトロニクスモジュール。
【請求項13】
前記芳香族ポリマーが芳香族ポリエステルである、請求項12に記載のパワーエレクトロニクスモジュール。
【請求項14】
前記芳香族ポリエステルが、ポリ(エチレンテレフタレート)、ポリ(1,4-ブチレンテレフタレート)、ポリ(1,3-プロピレンテレフタレート)、ポリ(1,4-ブチレン2,6-ナフタレート)、ポリ(エチレン2,6-ナフタレート)、ポリ(1,4-シクロヘキシレン ジメチレン テレフタレート)、またはそれらの組合せである、請求項13に記載のパワーエレクトロニクスモジュール。
【請求項15】
前記芳香族ポリマーがポリアリーレンスルフィドである、請求項12に記載のパワーエレクトロニクスモジュール。
【請求項16】
前記芳香族ポリマーが芳香族ポリカーボネートである、請求項12に記載のパワーエレクトロニクスモジュール。
【請求項17】
前記芳香族ポリマーがサーモトロピック液晶ポリマーである、請求項12に記載のパワーエレクトロニクスモジュール。
【請求項18】
前記芳香族ポリマーが芳香族ポリアミドである、請求項12に記載のパワーエレクトロニクスモジュール。
【請求項19】
前記熱可塑性ポリマーが脂肪族ポリマーを含む、請求項1に記載のパワーエレクトロニクスモジュール。
【請求項20】
前記脂肪族ポリマーが脂肪族ポリアミドを含む、請求項19に記載のパワーエレクトロニクスモジュール。
【請求項21】
前記脂肪族ポリマーがプロピレンポリマーを含む、請求項19に記載のパワーエレクトロニクスモジュール。
【請求項22】
前記電磁障害充填剤が前記組成物の約1重量%~約70重量%を構成する、請求項1に記載のパワーエレクトロニクスモジュール。
【請求項23】
前記電磁障害充填剤が金属を含む、請求項1に記載のパワーエレクトロニクスモジュール。
【請求項24】
前記金属がステンレス鋼を含む、請求項23に記載のパワーエレクトロニクスモジュール。
【請求項25】
前記電磁障害充填剤が前記組成物の約4重量%~約20重量%を構成する、請求項23に記載のパワーエレクトロニクスモジュール。
【請求項26】
前記電磁障害充填剤が炭素材料を含む、請求項1に記載のパワーエレクトロニクスモジュール。
【請求項27】
前記炭素材料が炭素繊維、カーボン粒子またはそれらの組合せを含む、請求項26に記載のパワーエレクトロニクスモジュール。
【請求項28】
前記電磁障害充填剤が前記組成物の約30重量%~約60重量%を構成する、請求項26に記載のパワーエレクトロニクスモジュール。
【請求項29】
前記電磁障害充填剤が粒子、フレーク、繊維またはそれらの組合せを含む、請求項1に記載のパワーエレクトロニクスモジュール。
【請求項30】
電磁障害充填剤が複数の長尺繊維を含んでいる、請求項1に記載のパワーエレクトロニクスモジュール。
【請求項31】
前記長尺繊維が離れており、実質上類似の方向に並んでいる、請求項30に記載のパワーエレクトロニクスモジュール。
【請求項32】
前記ポリマー組成物が熱伝導性充填剤をさらに含む、請求項1に記載のパワーエレクトロニクスモジュール。
【請求項33】
前記ポリマーが強化用繊維をさらに含む、請求項1に記載のパワーエレクトロニクスモジュール。
【請求項34】
前記強化用繊維がガラス繊維を含む、請求項33に記載のパワーエレクトロニクスモジュール。
【請求項35】
前記ハウジングが、基体であってそれから延在する側壁を含む基体、および前記側壁によって支持された任意選択のカバーを含む、請求項1に記載のパワーエレクトロニクスモジュール。
【請求項36】
前記基体、側壁、カバーまたはその組合せが前記ポリマー組成物を含んでいる、請求項35に記載のパワーエレクトロニクスモジュール。
【請求項37】
前記電力変換器がインバーター、整流器、電圧変換器またはそれらの組合せを含む、請求項1に記載のパワーエレクトロニクスモジュール。
【請求項38】
請求項1に記載のパワーエレクトロニクスモジュールを含む電気自動車。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
[0001]本出願は、2020年11月10日に出願された米国特許仮出願第63/111,823号、および2021年8月20日に出願された米国特許仮出願第63/235,264号の利益を主張し、これらは、その全体が参照によって本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
[0002]パワーエレクトロニクスモジュール(power electronics module)はしばしば、1つまたは複数の負荷に電力を供給するための1つまたは複数の電力供給用電源からの8電力を変換および/または調節するための電力変換器、例えば、インバーター、整流器、電圧変換器など、ならびにそれらの組合せ(例えば縦列インバーター/整流器ユニット)を含む。インバーターは、例えば、AC負荷への供給電力に使用するために直流(DC)を交流(AC)に変換する。電気自動車では、例えば、直流電源を一般にバッテリー、またはバッテリーを組み込んだ電源システム、または直接若しくは回転エネルギー変換器から得ることができる。インバーターは1つまたは複数の電動機の運転のためにこの電力を交流波形に変換するために用いられ、電動機は、車両を推し進める動力伝達装置要素を駆動する役目をする。同様に、整流器は、ACをDCに変換し、電圧変換器は、他方で、DCおよび/またはAC電圧を上げ下げする。電気的な車両において用いられた場合、パワーエレクトロニクスモジュールがしばしば遭遇する問題の1つは、特に150kHz~30MHzの極めて低い周波数帯においてそれらが相当な量の電磁障害(「EMI」)を受けやすくおよび/または発生し得るということである。この点に関して、IEC CISPR 36:2020などの様々な商業規格がEMIの電気自動車試験に開発されている。これらの規格を満たすのを支援するために、電力変換器はしばしば、外部環境からそれらを保護するだけでなくEMI遮蔽としても働くアルミニウムハウジング内に配置される。不幸にして、そのようなコンポーネントは、モジュールに対して相当なコストおよび重量を付加しかねず、自動車産業はより小さく軽量のコンポーネントを必要とし続けるので電気自動車に用いられた場合、特に不利になる。
【0003】
[0003]したがって、追加のEMI遮蔽を必要としないパワーエレクトロニクスモジュールに対する必要性が現在存在する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の一実施形態によると、少なくとも1つの電力変換装置(例えばインバーター、整流器、電圧変換器など)を収容するハウジングを含むパワーエレクトロニクスモジュールが開示される。ハウジングは、ポリマーマトリクス内に分布した電磁障害充填剤を含むポリマー組成物を含む。ポリマーマトリクスは、ISO 75-2:2013に従って1.8MPaの荷重で求めて約40℃以上の荷重撓み温度を有する熱可塑性ポリマーを含む。さらに、組成物は、ASTM D4935-18に従って30MHzの周波数および3ミリメートルの厚さで求めて約25デシベル以上の電磁障害遮蔽有効度(electromagnetic interference shielding effectiveness)を示す。
【0005】
[0004]本発明の他の特徴および態様は以下により詳しく述べられる。
[0005]本発明の完全で実施可能な開示が、当業者にとってそれらの最良の様式を含め、添付の図への参照を含む本明細書の残りの部分により詳細に記載される。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】[0006]本発明のパワーエレクトロニクスモジュールの一実施形態の分解斜視図である。
【
図2】[0007]車両駆動装置システムで使用される本発明のパワーエレクトロニクスモジュールの一実施形態のある機能的な回路類のブロックダイヤグラムである。
【
図3】[0008]車両駆動装置システムで使用される本発明のパワーエレクトロニクスモジュールの一実施形態のダイヤグラムである。
【
図4】[0009]インバーター駆動およびコンバーター駆動を含む本発明の、パワーエレクトロニクスモジュールの一実施形態のある機能的な回路のブロックダイヤグラムである。
【
図5】インバーター駆動およびコンバーター駆動を含む本発明の、パワーエレクトロニクスモジュールの一実施形態のある機能的な回路のブロックダイヤグラムである。
【
図6】[0010]本発明のポリマー組成物を形成するために使用されてもよいシステムの一実施形態の模式図である。
【
図7】[0011]
図6に示されるシステムにおいて用いられてもよい含浸ダイの断面図である。
【
図8】[0012]30MHz~1.5GHzの周波数範囲にわたり試料1(3mmの厚さ)について遮蔽有効度(「SE」)を示すグラフである。
【
図9】[0013]30MHz~1.5GHzの周波数範囲にわたり試料2~4(3mmの厚さ)について遮蔽有効度(「SE」)を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0007】
[0014]本議論は例示の実施形態のみの説明であって、本発明のより広範な態様を限定するようには意図されないことは、当業者に理解されるはずである。
[0015]概して言えば、本発明は、ハウジング内に電力変換器(例えばインバーター、整流器、電圧変換器など、ならびにそれらの組合せ)を含むパワーエレクトロニクスモジュールを対象とする。ハウジングは、ポリマーマトリクス内に分布したEMI遮蔽充填剤を含むポリマー組成物を含む。ポリマーマトリクスは、ISO 75-2:2013に従って1.8MPaの荷重で求めて約40℃以上、幾つかの実施形態において約50℃以上、幾つかの実施形態において約60℃以上、幾つかの実施形態において約80℃~約250℃、幾つかの実施形態において約100℃~約200℃の荷重撓み温度(「DTUL」)によって反映されるような比較的高度の耐熱性を有する高性能熱可塑性ポリマーを含む。
【0008】
[0016]ポリマー組成物の成分の特定の性質および濃度の注意深い選択によって、本発明者らは、結果として得られる組成物がEMIに対して高度の遮蔽有効度を示すことができることを発見した。とりわけ、EMI遮蔽有効度(「SE」)は、ASTM D4935-18に従って30MHzなどの低周波で求めて約25デシベル(dB)以上、幾つかの実施形態において約30dB以上、幾つかの実施形態において約35dB~約100dBであってもよい。殊に、EMI遮蔽有効度は、約100kHZ~約1.5GHz、幾つかの実施形態において約100kHz~約100MHz、幾つかの実施形態において約30MHz~約100MHzの低周波範囲にわたって安定性を持続し得ることが発見された。幾つかの事例において、良好な遮蔽有効度は、約150kHz~約30MHzなどの極めて低い周波数範囲にわたって達成することができる。当然のことながら、EMI遮蔽有効度は、またより高い周波数範囲、例えば、約1.5GHz以上、幾つかの実施形態において約1.5GHz~約18GHz、幾つかの実施形態において約1.5GHz~約10GHz、幾つかの実施形態において約2GHz~約9GHzにわたり安定性を持続し得る。EMI遮蔽有効度は、また、約0.5~約10ミリメートル、幾つかの実施形態において約0.8~約5ミリメートル、幾つかの実施形態において約1~約4ミリメートル(例えば1、1.5、1.6または3ミリメートル)などの様々な異なるコンポーネント厚さについて所望される範囲内にあってもよい。これらの低周波範囲および/または厚さ範囲内では、例えば、平均のEMI遮蔽有効度は、約25dB以上、幾つかの実施形態において約30dB以上、幾つかの実施形態において約35dB~約100dBであってもよい。同様に、最小のEMI遮蔽有効度は、約25dB以上、幾つかの実施形態において約30dB以上、幾つかの実施形態において約35dB~約100dBであってもよい。
【0009】
[0017]良好なEMI遮蔽有効度を示すことに加えて、組成物はまた、ASTM D257-14に従って求めて比較的低い体積抵抗率、例えば、約25,000Ω・cm以下、幾つかの実施形態において約20,000Ω・cm以下、幾つかの実施形態において約10,000Ω・cm以下、幾つかの実施形態において約5,000Ω・cm以下、幾つかの実施形態において約1,000Ω・cm以下、幾つかの実施形態において約50~約800Ω・cmを示してもよい。ポリマー組成物はまた熱伝導性であってもよく、したがって、ASTM E 1461-13に従って求めて約1W/m・K以上、幾つかの実施形態において約3W/m・K以上、幾つかの実施形態において約5W/m・K以上、幾つかの実施形態において約7~約50W/m・K、幾つかの実施形態において約10~約35W/m・Kの面内熱伝導率を示してもよい。組成物は、また、ASTM E 1461-13に従って求めて約0.3W/m・K以上、幾つかの実施形態において約0.5W/m・K以上、幾つかの実施形態において約0.40W/m・K以上、幾つかの実施形態において約1~約15W/m・K、幾つかの実施形態において約1~約10W/m・Kの厚さ方向熱伝導率を示してもよい。
【0010】
[0018]従来は、良好なEMI遮蔽有効度、ならびに低体積抵抗率および/または熱伝導率を示すポリマー組成物は、また十分な機械的性質を有しないと考えられていた。しかしながら、ポリマー組成物は優れた機械的性質をなお維持することができることが発見された。例えば、ポリマー組成物は、ISO試験No.179-1:2010(ASTM D256-10e1と技術的に同等物)に従って様々な温度、例えば、約-50℃~約85℃の温度範囲内(例えば23℃)で測定して約20kJ/m2以上、幾つかの実施形態において約30~約80kJ/m2、幾つかの実施形態において約40~約60kJ/m2のシャルピーノッチ無し衝撃強度を示してもよい。引張および曲げ機械的性質もまた良好であり得る。例えば、ポリマー組成物は、約50MPa以上、300MPa、幾つかの実施形態において約80~約500MPa、幾つかの実施形態において約85~約250MPaの引張強度;約0.1%以上、幾つかの実施形態において約0.2%~約5%、幾つかの実施形態において約0.3%~約2.5%の引張破壊歪み;および/または約3,500MPa~約30,000MPa、幾つかの実施形態において約6,000MPa~約28,000MPa、幾つかの実施形態において約8,000MPa~約25,000MPaの引張弾性率を示してもよい。引張特性は、ISO試験No.527-1:2019(ASTM D638-14と技術的に同等物)に従って様々な温度で、例えば、約-50℃~約85℃の温度範囲内(例えば23℃)で求められてもよい。ポリマー組成物はまた、約100~約500MPa、幾つかの実施形態において約130~約400MPa、幾つかの実施形態において約140~約250MPaの曲げ強度;約0.5%以上、幾つかの実施形態において約0.6%~約5%、幾つかの実施形態において約0.7%~約2.5%の曲げ破壊歪み;および/または、約4,500MPa~約60,000MPa、幾つかの実施形態において約5,000MPa~約55,000MPa、幾つかの実施形態において約5,500MPa~約50,000MPaの曲げ弾性率を示してもよい。曲げ特性は、ISO試験No.178:2019(ASTM D790-17と技術的に同等物)に従って様々な温度で、例えば、約-50℃~約85℃(例えば23℃)の温度範囲内で求められてもよい。
【0011】
[0019]本発明の様々な実施形態が、ここでより詳細に記載される。
I.ポリマーマトリクス
A.熱可塑性ポリマー
[0020]ポリマーマトリクスは通常、組成物の約30重量%~約99重量%、幾つかの実施形態において約35重量%~約90重量%、幾つかの実施形態において約40重量%~約80重量%を構成する。ポリマーマトリクスは一般に、上記に注目したような高度の耐熱性を有する1種または複数の高性能熱可塑性ポリマーを用いる。高度の耐熱性を示すことに加えて、また通常、熱可塑性ポリマーは、約10℃以上、幾つかの実施形態において約20℃以上、幾つかの実施形態において約30℃以上、幾つかの実施形態において約40℃以上、幾つかの実施形態において約50℃以上、幾つかの実施形態において約60℃~約320℃などの高いガラス転移温度を有する。半結晶性または結晶性ポリマーが用いられる場合、高性能ポリマーはまた、約140℃以上、幾つかの実施形態において約150℃~約400℃、幾つかの実施形態において約200℃~約380℃などの高溶融温度を有していてもよい。当業界でよく知られているように、示差走査熱量測定法(「DSC」)を使用して、ISO 11357-2:2020(ガラス転移)および11357-3:2018(溶融)によって求めて、ガラス転移および溶融温度が求められてもよい。
【0012】
[0021]この目的にとって適切な高性能熱可塑性ポリマーは、例えば、ポリオレフィン(例えばエチレンポリマー、プロピレンポリマーなど)、ポリアミド(例えば脂肪族、半芳香族または芳香族ポリアミド)、ポリエステル、ポリアリーレンアスルフィド、液晶ポリマー(例えば全芳香族ポリエステル、ポリエステルアミドなど)、ポリカーボネート、ポリエーテル(例えばポリオキシメチレン)など、ならびにそれらのブレンドを含んでいてもよい。ポリマー系の正確な選択は、様々な因子、例えば、組成物内に含まれる他の充填剤の性質、組成物が形成および/または加工される方式、ならびに意図した適用の特定の要件に依存する。
【0013】
[0022]芳香族ポリマーは、例えば、ポリマーマトリクスにおいて使用するために特に適している。芳香族ポリマーは、本質的に実質上非晶質、半結晶性または結晶性であってもよい。適切な半結晶性芳香族ポリマーの一例は、例えば芳香族ポリエステルであり、それは、4~20炭素原子、幾つかの実施形態において8~14炭素原子を有するものなどの少なくとも1種のジオール(例えば、脂肪族および/または脂環式)と少なくとも1種の芳香族ジカルボン酸との縮合生成物であってもよい。適切なジオールは、例えば、ネオペンチルグリコール、シクロヘキサンジメタノール、2,2-ジメチル-1,3-プロパンジオールおよび式HO(CH2)nOH[式中、nは2~10の整数である。]の脂肪族グリコールを含んでいてもよい。適切な芳香族ジカルボン酸は例えば、イソフタル酸、テレフタル酸、1,2-ジ(p-カルボキシフェニル)エタン、4,4’-ジカルボキシジフェニルエーテルなど、ならびにそれらの組合せを含んでいてもよい。縮合環もまた、例えば、1,4-または1,5または2,6-ナフタレン-ジカルボン酸中に存在することができる。そのような芳香族ポリエステルの特定の例は例えば、ポリ(エチレンテレフタレート)、ポリ(1,4-ブチレンテレフタレート)(PBT)、ポリ(1,3-プロピレンテレフタレート)(PPT)、ポリ(1,4-ブチレン2,6-ナフタレート)(PBN)、ポリ(エチレン2,6-ナフタレート)(PEN)、ポリ(1,4-シクロヘキシレン ジメチレン テレフタレート)(PCT)、ならびに前述のものの混合物を含んでいてもよい。
【0014】
[0023]芳香族ポリエステル(例えばポリエチレンテレフタレート)の誘導体および/またはコポリマーも用いられてもよい。一実施形態において、例えば、改質する酸および/または改質するジオールはそのようなポリマーの誘導体を形成するために使用されてもよい。本明細書において使用される場合、「改質する酸」および「改質するジオール」という用語は、それぞれポリエステルの酸およびジオールの繰り返し単位の一部を形成することができ、その結晶性を低減するかまたはポリエステルを非晶質にするためにポリエステルを改質することができる化合物を定義するよう意図される。改質する酸成分の例は、イソフタル酸、フタル酸、1,3-シクロヘキサンジカルボン酸、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸、2,6-ナフタレン(naphthaline)ジカルボン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、セバシン酸、スベリン酸、1,12-ドデカン二酸など含むが、これらに限定されない。実際上、それらの官能性酸誘導体、例えば、ジカルボン酸のジメチル、ジエチルまたはジプロピルエステルを使用することがしばしば好ましい。これらの酸の無水物または酸ハライドも、実用的な場合には用いられてもよい。改質するジオール成分の例は、ネオペンチルグリコール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,2-シクロヘキサンジオール、1,4-シクロヘキサンジオール、1,2-シクロヘキサンジメタノール、1,3-シクロヘキサンジメタノール、2,2,4,4-テトラメチル1,3-シクロブタンジオール、Z,8-ビス(ヒドロキシメチルトリシクロ-[5.2.1.0]-デカン[式中、Zは3、4または5を表す];1,4-ビス(2-ヒドロキシエトキシ)ベンゼン、4,4’-ビス(2-ヒドロキシエトキシジフェニルエーテル[ビス-ヒドロキシ-エチルビスフェノールA]、4,4’-ビス(2-ヒドロキシエトキシ)ジフェニルスルフィド[ビス-ヒドロキシ-エチルビスフェノールS]および鎖中に1個または複数の酸素原子を含むジオール、例えばジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコールなどを含んでもよいが、しかしこれらに限定されない。一般に、これらのジオールは、2~18炭素原子、幾つかの実施形態において、2~8炭素原子を含む。脂環式ジオールは、それらのシスまたはトランス配置において、または両形態の混合物として用いることができる。
【0015】
[0024]例えば上記の芳香族ポリエステルは、ISO 75-2:2013に従って1.8MPaの荷重で求めて、通常、約40℃~約80℃、幾つかの実施形態において約45℃~約75℃、幾つかの実施形態において約50℃~約70℃のDTUL値を有する。芳香族ポリエステルは同様に通常、例えば、ISO 11357-2:2020によって求めて、約30℃~約120℃、幾つかの実施形態において約40℃~約110℃、幾つかの実施形態において約50℃~約100℃のガラス転移温度、ならびに例えばISO 11357-2:2018に従って求めて、約170℃~約300℃、幾つかの実施形態において約190℃~約280℃、幾つかの実施形態において約210℃~約260℃の溶融温度を有する。芳香族ポリエステルはまた、例えばISO 1628-5:1998に従って求めて、約0.1dl/g~約6dl/g、幾つかの実施形態において約0.2~約5dl/g、幾つかの実施形態において約0.3~約1dl/gの固有粘度を有していてもよい。
【0016】
[0025]ポリアリーレンスルフィドもまた適切な半結晶性芳香族ポリマーである。ポリアリーレンスルフィドはホモポリマーであってもコポリマーであってもよい。例えば、ジハロ芳香族化合物の選択的な組合せは、少なくとも2つの異なる単位を含むポリアリーレンスルフィドコポリマーをもたらすことができる。例えば、p-ジクロロベンゼンがm-ジクロロベンゼンまたは4,4’-ジクロロジフェニルスルホンと組み合わせて使用される場合、下式の構造を有するセグメントを含むポリアリーレンスルフィドコポリマーを形成することができる:
【0017】
【0018】
および下式の構造を有するセグメント:
【0019】
【0020】
または下式の構造を有するセグメント:
【0021】
【0022】
[0026]ポリアリーレンスルフィドは、直鎖、半直鎖、分岐または架橋していてもよい。直鎖ポリアリーレンスルフィドは通常、80モル%以上の反復単位-(Ar-S)-を含む。そのような直鎖ポリマーはまた、少量の分岐単位または架橋単位を含んでもよいが、しかし、分岐単位または架橋単位の量は通常、ポリアリーレンスルフィドの合計モノマー単位の約1モル%未満である。直鎖ポリアリーレンスルフィドポリマーは、前述の反復単位を含むランダムコポリマーまたはブロックコポリマーであってもよい。半直鎖ポリアリーレンスルフィドは、同様に、3以上の反応性官能基を有する少量の1種または複数のモノマーがポリマーへ導入された架橋構造または分岐構造を有していてもよい。例として、半直鎖ポリアリーレンスルフィドを形成するのに使用されるモノマー成分は、分岐ポリマーを調製する際に利用することができる1分子当たり2以上のハロゲン置換基を有するある量のポリハロ芳香族化合物を含むことができる。そのようなモノマーは、式R’Xn[式中、各Xは塩素、臭素およびヨウ素から選択され、nは整数3~6であり、R’は、最大約4個のメチル置換基を有することができる原子価nの多価芳香族ラジカルであり、R’中の炭素原子の総数は6~約16の範囲内である。]によって表すことができる。半直鎖ポリアリーレンスルフィドを形成するのに用いることができる1分子当たり2を超える置換されたハロゲンを有する幾つかのポリハロ芳香族化合物の例としては、1,2,3-トリクロロベンゼン、1,2,4-トリクロロベンゼン、1,3-ジクロロ-5-ブロモベンゼン、1,2,4-トリヨードベンゼン、1,2,3,5-テトラブロモベンゼン,ヘキサクロロベンゼン、1,3,5-トリクロロ-2,4,6-トリメチルベンゼン、2,2’,4,4’-テトラクロロビフェニル、2,2’,5,5’-テトラ-ヨードビフェニル、2,2’,6,6’-テトラブロモ-3,3’,5,5’-テトラメチルビフェニル、1,2,3,4-テトラクロロナフタレン、1,2,4-トリブロモ-6-メチルナフタレンなど、およびそれらの混合物を含む。
【0023】
[0027]例えば、上記のポリアリーレンスルフィドは通常、ISO 75-2:2013に従って1.8MPaの荷重で求めて、約70℃~約220℃、幾つかの実施形態において約90℃~約200℃、幾つかの実施形態において約120℃~約180℃のDTUL値を有する。同様に通常、ポリアリーレンスルフィドは、例えば、ISO 11357-2:2020によって求めて、約50℃~約120℃、幾つかの実施形態において約60℃~約115℃、幾つかの実施形態において約70℃~約110℃のガラス転移温度、ならびに、例えばISO 11357-3:2018に従って求めて約220℃~約340℃、幾つかの実施形態において約240℃~約320℃、幾つかの実施形態において約260℃~約300℃の溶融温度を有する。
【0024】
[0028]上記に示されるように、実質上明瞭な融点温度がない非晶性ポリマーもまた用いられてもよい。適切な非晶性ポリマーは例えば、通常、式-R1-O-C(O)-O-の反復構造のカーボネート単位を含む芳香族ポリカーボネートを含んでいてもよい。R1基の総数の少なくとも一部(例えば60%以上)は芳香族部分を含み、その残部は脂肪族、脂環式または芳香族であるので、ポリカーボネートはその点で芳香族である。一実施形態において、例えば、R1は、C6~30芳香族基であってもよく、すなわち、少なくとも1個の芳香族部分を含む。通常、R1は一般式HO-R1-OHのジヒドロキシ芳香族化合物、例えば、下記参照の特定の式を有するものに由来する:
HO-A1-Y1-A2-OH
[式中、
A1およびA2は独立して単環二価芳香族基であり;
Y1は、単結合、またはA2からA1を分離する1個もしくは複数の原子を有する架橋基である。]。特定の一実施形態において、ジヒドロキシ芳香族化合物は、以下の式(I)に由来し得る:
【0025】
【0026】
[式中、
RaおよびRbはそれぞれ独立して、ハロゲンまたはC1~12アルキル基、例えば、各アリーレン基のヒドロキシ基に対してメタに配置されたC1~3アルキル基(例えばメチル)であり;
pおよびqはそれぞれ独立して0~4(例えば1)であり;
Xaは、2個のヒドロキシ置換芳香族基を接続する架橋基を表し、ここで、各C6アリーレン基の架橋基およびヒドロキシ置換基は、C6アリーレン基の互いに対して、オルト、メタまたはパラ(とりわけパラ)に配置されている。]。
【0027】
[0029]一実施形態において、Xaは、式-C(Rc)(Rd)-[式中、RcおよびRdはそれぞれ独立して、水素、C1~12アルキル、C1~12シクロアルキル、C7~12アリールアルキル(arylalcyl)、C7~12ヘテロアルキルまたは環状C7~12ヘテロアリールアルキル、または式-C(=Re)-{式中、Reは二価C1~12炭化水素基である。}の基である。]の置換または非置換のC3~18シクロアルキリデン、C1~25アルキリデンであってもよい。このタイプの例示の基は、メチレン、シクロヘキシルメチレン、エチリデン、ネオペンチリデンおよびイソプロピリデン、ならびに2-[2.2.1]-ビシクロヘプチリデン、シクロヘキシリデン、シクロペンチリデン、シクロドデシリデンおよびアダマンチリデンを含む。Xaが置換シクロアルキリデンである特定の例は、以下の式(II)のシクロヘキシリデン架橋アルキル置換ビスフェノールである:
【0028】
【0029】
[式中、
Ra’およびRb’はそれぞれ独立して、C1~12アルキル(例えば、メチルなどのC1~4アルキル)であり、場合によって、シクロヘキシリデン架橋基に対してメタ配置されていてもよく;
RgはC1~12アルキル(例えばC1~4アルキル)またはハロゲンであり;
rおよびsはそれぞれ独立して1~4(例えば1)であり;
tは0~10、例えば0~5である。]。
【0030】
[0030]シクロヘキシリデン架橋ビスフェノールは、1モルのシクロヘキサノンとの2モルのo-クレゾールの反応生成物であってもよい。別の実施形態において、シクロヘキシリデン架橋ビスフェノールは、1モルの水素化イソホロン(例えば1,1,3-トリメチル-3-シクロヘキサン-5-オン)との2モルのクレゾールの反応生成物であってもよい。そのようなシクロヘキサン含有ビスフェノール、例えば1モルの水素化イソホロンとの2モルのフェノールの反応生成物は、高いガラス転移温度および高い熱変形温度を有するポリカーボネートポリマーを製造するのに役立つ。
【0031】
[0031]別の実施形態において、Xaは、C1~18アルキレン基、C3~18シクロアルキレン基、縮合C6~18シクロアルキレン基または式-B1-W-B2-[式中、B1およびB2は独立してC1~6アルキレン基であり、WはC3~12シクロアルキリデン基またはC6~16アリーレン基である。]の基であってもよい。
【0032】
[0032]Xaはまた以下の式(III)の置換C3~18シクロアルキリデンであってもよい:
【0033】
【0034】
[式中、
Rr、Rp、RqおよびRtはそれぞれ独立して、水素、ハロゲン、酸素またはC1~12有機基であり;
Iは、直接結合、炭素または二価の酸素、硫黄または-N(Z)-{式中、Zは、水素、ハロゲン、ヒドロキシ、C1~12アルキル、C1~12アルコキシまたはC1~12アシルである。}であり;hは0~2であり;
jは1または2であり;
iは0または1であり;
kは0~3であり、ただし、Rr、Rp、RqおよびRtの一緒になった少なくとも2つは、縮合した脂環式、芳香族またはヘテロ芳香環である。]。
【0035】
[0033]他の有用な芳香族ジヒドロキシ芳香族化合物は以下の式(IV)を有するものを含む:
【0036】
【0037】
[式中、
Rhは、独立してハロゲン原子(例えば臭素)、C1~10ヒドロカルビル(例えばC1~10アルキル基)、ハロゲン置換C1~10アルキル基、C6~10アリール基またはハロゲン置換C6~10アリール基であり;nは0~4である。]。
【0038】
[0034]式(I)のビスフェノール化合物の特定の例は、例えば、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)メタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)エタン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン(以下「ビスフェノールA」または「BPA」)、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ブタン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)オクタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)n-ブタン、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-1-メチルフェニル)プロパン、1,1-ビス(4-ヒドロキシ-t-ブチルフェニル)プロパン、3,3-ビス(4-ヒドロキシフェニル)フタリミジン、2-フェニル-3,3-ビス(4-ヒドロキシフェニル)フタリミジン(PPPBP)、および1,1-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)シクロヘキサン(DMBPC)を含む。特定の一実施形態において、ポリカーボネートは、式(I)においてA1およびA2のそれぞれがp-フェニレンであり、Y1がイソプロピリデンであるビスフェノールAに由来する直鎖ホモポリマーであってもよい。
【0039】
[0035]適切な芳香族ジヒドロキシ化合物の他の例としては以下を含んでもよいが、しかしこれらに限定されない:4,4’-ジヒドロキシビフェニル、1,6-ジヒドロキシナフタレン、2,6-ジヒドロキシナフタレン、ビス(4-ヒドロキシフェニル)メタン、ビス(4-ヒドロキシフェニル)ジフェニルメタン、ビス(4-ヒドロキシフェニル)-1-ナフチルメタン、1,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)エタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-1-フェニルエタン、2-(4-ヒドロキシフェニル)-2-(3-ヒドロキシフェニル)プロパン、ビス(4-ヒドロキシフェニル)フェニルメタン、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3-ブロモフェニル)プロパン、1,1-ビス(ヒドロキシフェニル)シクロペンタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)イソブテン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)シクロドデカン、trans-2,3-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-2-ブテン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)アダマンタン、α,α’-ビス(4-ヒドロキシフェニル)トルエン、ビス(4-ヒドロキシフェニル)アセトニトリル、2,2-ビス(3-メチル-4-ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(3-エチル-4-ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(3-n-プロピル-4-ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(3-イソプロピル-4-ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(3-sec-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(3-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(3-シクロヘキシル-4-ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(3-アリル-4-ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(3-メトキシ-4-ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、1,1-ジクロロ-2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)エチレン、1,1-ジブロモ-2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)エチレン、1,1-ジクロロ-2,2-ビス(5-フェノキシ-4-ヒドロキシフェニル)エチレン4,4’-ジヒドロキシベンゾフェノン、3,3-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-2-ブタノン、1,6-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-1,6-ヘキサンジオン、エチレングリコールビス(4-ヒドロキシフェニル)エーテル、ビス(4-ヒドロキシフェニル)エーテル、ビス(4-ヒドロキシフェニル)スルフィド、ビス(4-ヒドロキシフェニル)スルホキシド、ビス(4-ヒドロキシフェニル)スルホン、9,9-ビス(4-ヒドロキシフェニル)フルオレン(9,9-bis(4-hydroxyphenyl)fluorine)、2,7-ジヒドロキシピレン、6,6’-ジヒドロキシ-3,3,3’,3’-テトラメチルスピロ(ビス)インダン(「スピロビインダンビスフェノール」)、3,3-ビス(4-ヒドロキシフェニル)フタルイミド、2,6-ジヒドロキシジベンゾ-p-ジオキシン、2,6-ジヒドロキシチアントレン、2,7-ジヒドロキシフェノキサチン、2,7-ジヒドロキシ-9,10-ジメチルフェナジン、3,6-ジヒドロキシジベンゾフラン、3,6-ジヒドロキシジベンソチオフェン、および2,7-ジヒドロキシカルバゾール、レゾルシノール、置換レゾルシン化合物、例えば、5-メチルレゾルシノール、5-エチルレゾルシノール、5-プロピルレゾルシノール、5-ブチルレゾルシノール、5-t-ブチルレゾルシノール、5-フェニルレゾルシノール、5-クミルレゾルシノール、2,4,5,6-テトラフルオロレゾルシノール、2,4,5,6-テトラブロモレゾルシノールなど;カテコール;ヒドロキノン;置換ヒドロキノン、例えば、2-メチルヒドロキノン、2-エチルヒドロキノン、2-プロピルヒドロキノン、2-ブチルヒドロキノン、2-t-ブチルヒドロキノン、2-フェニルヒドロキノン、2-クミルヒドロキノン、2,3,5,6-テトラメチルヒドロキノン、2,3,5,6-テトラ-t-ブチルヒドロキノン、2,3,5,6-テトラフルオロヒドロキノン、2,3,5,6-テトラブロモヒドロキノンなど、ならびにそれらの組合せ。
【0040】
[0036]例えば、上記の芳香族ポリカーボネートは、通常、ISO 75-2:2013に従って1.8MPaの荷重で求めて、約80℃~約300℃、幾つかの実施形態において約100℃~約250℃、幾つかの実施形態において約140℃~約220℃のDTUL値を有する。ガラス転移温度はまた、例えばISO 11357-2:2020によって求めて約50℃~約250℃、幾つかの実施形態において約90℃~約220℃、幾つかの実施形態において約100℃~約200℃であってもよい。そのようなポリカーボネートはまた、例えばISO 1628-4:1998に従って求めて、約0.1dl/g~約6dl/g、幾つかの実施形態において約0.2~約5dl/g、幾つかの実施形態において約0.3~約1dl/gの固有粘度を有していてもよい。
【0041】
[0037]上記参照のポリマーに加えて、高結晶性芳香族ポリマーもまたポリマー組成物において用いられてもよい。そのようなポリマーの特に適切な例は液晶ポリマーであり、これは、型の小さな空間を効果的に充填することを可能にする高い結晶化度を有する。液晶ポリマーは、一般に、それらが棒状の構造を持ち、溶融状態(例えばサーモトロピックネマチック状態)において結晶性挙動を示すことができる限りにおいて「サーモトロピック」として分類される。そのようなポリマーは、通常、ISO 75-2:2013に従って1.8MPaの荷重で求めて、約120℃~約340℃、幾つかの実施形態において約140℃~約320℃、幾つかの実施形態において約150℃~約300℃のDTUL値を有する。ポリマーはまた、約250℃~約400℃、幾つかの実施形態において約280℃~約390℃、幾つかの実施形態において約300℃~約380℃などの比較的高い溶融温度を有する。当業界で公知のように、そのようなポリマーは1種または複数のタイプの反復単位から形成されてもよい。
【0042】
[0038]液晶ポリマーは例えば、通常、ポリマーの約60モル%~約99.9モル%、幾つかの実施形態において約70モル%~約99.5モル%、幾つかの実施形態において約80モル%~約99モル%の量の1種または複数の芳香族エステル反復単位を含んでいてもよい。芳香族エステル反復単位は、一般に以下の式(V)によって表されてもよい:
【0043】
【0044】
[式中、
環Bは、置換または非置換の六員アリール基(例えば1,4-フェニレンまたは1,3-フェニレン)、置換もしくは非置換の五もしくは六員アリール基に縮合した置換もしくは非置換の六員アリール基(例えば2,6-ナフタレン)、または置換もしくは非置換の五もしくは六員アリール基に連結した置換もしくは非置換の六員アリール基(例えば4,4-ビフェニレン)であり;
Y1およびY2は、独立してO、C(O)、NH、C(O)HNまたはNHC(O)である。]。
【0045】
[0039]通常、Y1およびY2の少なくとも1つはC(O)である。そのような芳香族エステル反復単位の例は、例えば、芳香族ジカルボン酸反復単位(式Vにおいて、Y1およびY2はC(O)である)、芳香族ヒドロキシカルボン反復単位(式VにおいてY1はOであり、Y2はC(O)である。)、ならびにそれらの様々な組合せを含んでいてもよい。
【0046】
[0040]例えば、芳香族ジカルボン酸、例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸、ジフェニルエーテル-4,4’-ジカルボン酸、1,6-ナフタレンジカルボン酸、2,7-ナフタレンジカルボン酸、4,4’-ジカルボキシビフェニル、ビス(4-カルボキシフェニル)エーテル、ビス(4-カルボキシフェニル)ブタン、ビス(4-カルボキシフェニル)エタン、ビス(3-カルボキシフェニル)エーテル、ビス(3-カルボキシフェニル)エタンなど、ならびにアルキル、アルコキシ、アリールおよびそれらのハロゲン置換基、およびそれらの組合せに由来する芳香族ジカルボン酸反復単位が用いられてもよい。特に適切な芳香族ジカルボン酸は、例えば、テレフタル酸(「TA」)、イソフタル酸(「IA」)、および2,6-ナフタレンジカルボン酸(「NDA」)を含んでいてもよい。用いられる場合、芳香族ジカルボン酸(例えばIA、TAおよび/またはNDA)に由来する反復単位は通常、ポリマーの約5モル%~約60モル%、幾つかの実施形態において約10モル%~約55モル%、幾つかの実施形態において約15モル%~約50モル%を構成する。
【0047】
[0041]芳香族ヒドロキシカルボン酸、例えば4-ヒドロキシ安息香酸;4-ヒドロキシ-4’-ビフェニルカルボン酸;2-ヒドロキシ-6-ナフトエ酸;2-ヒドロキシ-5-ナフトエ酸;3-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸;2-ヒドロキシ-3-ナフトエ酸;4’-ヒドロキシフェニル-4-安息香酸;3’-ヒドロキシフェニル-4-安息香酸;4’-ヒドロキシフェニル-3-安息香酸など、ならびにアルキル、アルコキシ、アリールおよびそれのハロゲン置換基、およびそれらの組合せに由来する芳香族ヒドロキシカルボキシル反復単位もまた用いられてもよい。特に適切な芳香族ヒドロキシカルボン酸は4-ヒドロキシ安息香酸(「HBA」)および6-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸(「HNA」)である。用いられる場合、ヒドロキシカルボン酸(例えば、HBAおよび/またはHNA)に由来する反復単位は通常、ポリマーの約10モル%~約85モル%、幾つかの実施形態において約20モル%~約80モル%、幾つかの実施形態において約25モル%~約75%を構成する。
【0048】
[0042]他の反復単位もポリマーにおいて用いられてもよい。ある実施形態において、例えば、芳香族ジオール、例えば、ヒドロキノン、レゾルシノール、2,6-ジヒドロキシナフタレン、2,7-ジヒドロキシナフタレン、1,6-ジヒドロキシナフタレン、4,4’-ジヒドロキシビフェニル(または4,4’-ビフェノール)、3,3’-ジヒドロキシビフェニル、3,4’-ジヒドロキシビフェニル、4,4’-ジヒドロキシビフェニルエーテル、ビス(4-ヒドロキシフェニル)エタンなど、ならびにアルキル、アルコキシ、アリールおよびそれらのハロゲン置換基、およびそれらの組合せに由来する反復単位が用いられてもよい。特に適切な芳香族ジオールは例えば、ヒドロキノン(「HQ」)および4,4’-ビフェノール(「BP」)を含んでいてもよい。用いられる場合、芳香族ジオール(例えば、HQおよび/またはBP)に由来する反復単位は通常、ポリマーの約1モル%~約30モル%、幾つかの実施形態において約2モル%~約25モル%、幾つかの実施形態において約5モル%~約20%を構成する。反復単位、例えば、芳香族アミド(例えばアセトアミノフェン(「APAP」))および/または芳香族アミン(例えば4-アミノフェノール(「AP」))、3-アミノフェノール、1,4-フェニレンジアミン、1,3-フェニレンジアミンなどに由来するものも用いられてもよい。用いられる場合、芳香族アミド(例えばAPAP)および/または芳香族アミン(例えばAP)に由来する反復単位は、通常、ポリマーの約0.1モル%~約20モル%、幾つかの実施形態において約0.5モル%~約15モル%、幾つかの実施形態において約1モル%~約10%を構成する。また、様々な他のモノマーの反復単位がポリマーに組み込まれてもよいことは理解されるはずである。例えばある実施形態において、ポリマーは非芳香族モノマー、例えば、脂肪族または脂環式ヒドロキシカルボン酸、ジカルボン酸、ジオール、アミド、アミンなどに由来する1種または複数の反復単位を含んでいてもよい。当然のことながら、他の実施形態において、ポリマーは、非芳香族(例えば、脂肪族または脂環式)モノマーに由来する反復単位がないという点で「全芳香族」であってもよい。
【0049】
[0043]特定の一実施形態において、液晶ポリマーは、4-ヒドロキシ安息香酸(「HBA」)およびテレフタル酸(「TA」)および/またはイソフタル酸(「IA」)、ならびに様々な他の任意選択の成分に由来する反復単位から形成されてもよい。4-ヒドロキシ安息香酸(「HBA」)に由来する反復単位は、ポリマーの約10モル%~約80モル%、幾つかの実施形態において約30モル%~約75モル%、幾つかの実施形態において約45モル%~約70%を構成してもよい。テレフタル酸(「TA」)および/またはイソフタル酸(「IA」)に由来する反復単位は同様に、ポリマーの約5モル%~約40モル%、幾つかの実施形態において約10モル%~約35モル%、幾つかの実施形態において約15モル%~約35%を構成してもよい。4,4’-ビフェノール(「BP」)および/またはヒドロキノン(「HQ」)に由来する反復単位も、ポリマーの約1モル%~約30モル%、幾つかの実施形態において約2モル%~約25モル%、幾つかの実施形態において約5モル%~約20%の量で用いられてもよい。他の可能な反復単位は、6-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸(「HNA」)、2,6-ナフタレンジカルボン酸(「NDA」)および/またはアセトアミノフェン(「APAP」)に由来するものを含んでいてもよい。ある実施形態において、例えば、HNA、NDAおよび/またはAPAPに由来する反復単位は、用いられる場合、それぞれ、約1モル%~約35モル%、幾つかの実施形態において約2モル%~約30モル%、幾つかの実施形態において約3モル%~約25モル%を構成してもよい。
【0050】
[0044]当然のことながら、芳香族ポリマーの他に、脂肪族ポリマーもまた、ポリマーマトリクス中の高性能熱可塑性ポリマーとしての使用に適切であり得る。一実施形態において、例えば、一般に主鎖中にCO-NH連結を有し、脂肪族ジアミンと脂肪族ジカルボン酸の縮合によって、ラクタムの開環重合、またはアミノカルボン酸の自己縮合によって得られるポリアミドが用いられてもよい。例えば、ポリアミドは、通常4~14炭素原子を有する脂肪族ジアミンに由来する脂肪族反復単位を含んでいてもよい。そのようなジアミンの例としては、直鎖脂肪族アルキレンジアミン、例えば、1,4-テトラメチレンジアミン、1,6-ヘキサンジアミン、1,7-ヘプタンジアミン、1,8-オクタンジアミン、1,9-ノナンジアミン、1,10-デカンジアミン、1,11-ウンデカンジアミン、1,12-ドデカンジアミンなど;分岐脂肪族アルキレンジアミン、例えば2-メチル-1,5-ペンタンジアミン、3-メチル-1,5ペンタンジアミン、2,2,4-トリメチル-1,6-ヘキサンジアミン、2,4,4-トリメチル-1,6-ヘキサンジアミン、2,4-ジメチル-1,6-ヘキサンジアミン、2-メチル-1,8-オクタンジアミン、5-メチル-1,9-ノナンジアミンなど;ならびにそれらの組合せを含む。脂肪族ジカルボン酸は例えば、アジピン酸、セバシン酸などを含んでいてもよい。そのような脂肪族ポリアミドの特定の例は、例えば、ナイロン-4(ポリ-α-ピロリドン)、ナイロン-6(ポリカプロアミド)、ナイロン-11(ポリウンデカンアミド)、ナイロン-12(ポリドデカンアミド)、ナイロン-46(ポリテトラメチレンアジポアミド)、ナイロン-66(ポリヘキサメチレンアジポアミド)、ナイロン-610、およびナイロン-612を含む。ナイロン-6およびナイロン-66は特に適切である。
【0051】
[0045]また、芳香族(芳香族モノマー単位だけを含有する、は脂肪族及び芳香族モノマー単位の両方である)であると考えられるようにポリアミド中に芳香族モノマー単位を含ませることは可能であると理解されるべきである。芳香族ジカルボン酸の例は例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸、2,7-ナフタレンジカルボン酸、1,4-ナフタレンジカルボン酸、1,4-フェニレンジオキシ二酢酸、1,3-フェニレンジオキシ二酢酸、ジフェン酸、4,4’-オキシ二安息香酸、ジフェニルメタン-4,4’-ジカルボン酸、ジフェニルスルホン-4,4’-ジカルボン酸、4,4’-ビフェニルジカルボン酸などを含んでいてもよい。特に適切な芳香族ポリアミドは、ポリ(ノナメチレンテレフタルアミド)(PA9T)、ポリ(ノナメチレンテレフタルアミド/ノナメチレンデカンジアミド)(PA9T/910)、ポリ(ノナメチレンテレフタルアミド/ノナメチレンドデカンジアミド)(PA9T/912)、ポリ(ノナメチレンテレフタルアミド/11-アミノウンデカンアミド)(PA9T/11)、ポリ(ノナメチレンテレフタルアミド/12-アミノドデカンアミド)(PA9T/12)、ポリ(デカメチレンテレフタルアミド/11-アミノウンデカンアミド)(PA10T/11)、ポリ(デカメチレンテレフタルアミド/12-アミノドデカンアミド(PA10T/12)、ポリ(デカメチレンテレフタルアミド/デカメチレンデカンジアミド)(PA10T/1010)、ポリ(デカメチレンテレフタルアミド/デカメチレンドデカンジアミド)(PA10T/1012)、ポリ(デカメチレンテレフタルアミド/テトラメチレンヘキサンジアミド)(poly(decamethyleneterephlhalamide/tetramethylenehexanediamide))(PA10T/46)、ポリ(デカメチレンテレフタルアミド/カプロラクタム)(PA10T/6)、ポリ(デカメチレンテレフタルアミド/ヘキサメチレンヘキサンジアミド)(PA10T/66)、ポリ(ドデカメチレンテレフタルアミド/ドデカメチレンドデカンジアミド)(poly(dodecamethylene Ierephthalamide/dodecamelhylenedodecanediarnide))(PA12T/1212)、ポリ(ドデカメチレンテレフタルアミド/カプロラクタム)(PA12T/6)、ポリ(ドデカメチレンテレフタルアミド/ヘキサメチレンヘキサンジアミド)(PA12T/66)などを含んでいてもよい。
【0052】
[0046]ポリアミド組成物において用いられるポリアミドは通常、本質的に結晶性また半結晶性であり、したがって測定可能な溶融温度を有する。組成物が、結果として得られる部品にかなりの程度の耐熱性を与えることができるように、溶融温度は比較的高くてもよい。例えば、ポリアミドは、約220℃以上、幾つかの実施形態において約240℃~約325℃、幾つかの実施形態において約250℃~約335℃の溶融温度を有していてもよい。ポリアミドはまた、約30℃以上、幾つかの実施形態において約40℃以上、幾つかの実施形態において約45℃~約140℃などの比較的高いガラス転移温度を有していてもよい。ガラス転移および溶融温度は、示差走査熱量測定法(「DSC」)を使用して、ISO試験No.11357-2:2020(ガラス転移)および11357-3:2018(溶融)によって求められように、当業界でよく知られているように求められてもよい。
【0053】
[0047]プロピレンポリマーはまたポリマーマトリクスで使用される適切な脂肪族高性能ポリマーであってもよい。ポリマーマトリクスにおいて一般に、例えば、プロピレンホモポリマー(例えば、シンジオタクチック、アタクチック、アイソタクチックなど)、プロピレンコポリマーなどの、様々なプロピレンポリマーまたはプロピレンポリマーの組合せのうちのいずれが用いられてもよい。一実施形態において、例えば、アイソタクチックまたはシンジオタクチックホモポリマーであるプロピレンポリマーが用いられてもよい。一般に「シンジオタクチック」という用語は、メチル基のかなりの部分(すべてではないにしても)がポリマー鎖に沿って反対側に交互にあるタクティシティーを指す。他方では、一般に「アイソタクチック」という用語は、メチル基のかなりの部分(すべてではないにしても)がポリマー鎖に沿って同じ側にあるタクティシティーを指す。なお他の実施形態において、α-オレフィンモノマーとのプロピレンのコポリマーが用いられてもよい。適切なα-オレフィンモノマーの特定の例としては、エチレン、1-ブテン;3-メチル-1-ブテン;3,3-ジメチル-1-ブテン;1-ペンテン;1個または複数のメチル、エチルまたはプロピル置換基を有する1-ペンテン;1個または複数のメチル、エチルまたはプロピル置換基を有する1-ヘキセン;1個または複数のメチル、エチルまたはプロピル置換基を有する1-ヘプテン;1個または複数のメチル、エチルまたはプロピル置換基を有する1-オクテン;1個または複数のメチル、エチルまたはプロピル置換基を有する1-ノネン;エチル、メチルまたはジメチル置換の1-デセン;1-ドデセン;およびスチレンを含んでいてもよい。そのようなコポリマーのプロピレン含有率は、約60モル%~約99モル%、幾つかの実施形態において約80モル%~約98.5モル%、幾つかの実施形態において約87モル%~約97.5モル%であってもよい。α-オレフィン含有率は、同様に約1モル%~約40モル%、幾つかの実施形態において約1.5モル%~約15モル%、幾つかの実施形態において約2.5モル%~約13モル%の範囲であってもよい。
【0054】
[0048]適切なプロピレンポリマーは通常、ISO 75-2:2013に従って1.8MPaの荷重で求めて約80℃~約250℃、幾つかの実施形態において約100℃~約220℃、幾つかの実施形態において約110℃~約200℃のDTUL値を有するものである。そのようなポリマーのガラス転移温度は同様に、例えばISO 11357-2:2020によって求めて約10℃~約80℃、幾つかの実施形態において約15℃~約70℃、幾つかの実施形態において約20℃~約60℃であってもよい。さらに、そのようなポリマーの溶融温度は、例えばISO 11357-3:2018によって求めて約50℃~約250℃、幾つかの実施形態において約90℃~約220℃、幾つかの実施形態において約100℃~約200℃であってもよい。
【0055】
[0049]オキシメチレンポリマーはまた、ポリマーマトリクスにおいて使用される適切な脂肪族高性能ポリマーであってもよい。オキシメチレンポリマーは、1種または複数のホモポリマー、コポリマーまたはそれらの混合物のいずれかであってもよい。ホモポリマーは、ホルムアルデヒドまたは、ホルムアルデヒドの環状オリゴマーなどのホルムアルデヒドの同等物の重合により調製される。コポリマーは、ポリオキシメチレン組成物を調製するのに一般に使用される1種または複数のコモノマーを含むことができる。共通して使用されるコモノマーは、2~12炭素原子のアルキレンオキシドを含む。コポリマーが選択されれば、コモノマーの量は通常、20重量パーセント以下、幾つかの実施形態において15重量パーセント以下、幾つかの実施形態において、約2重量パーセントである。コモノマーはエチレンオキシドおよびブチレンオキシドを含むことができる。ホモポリマーおよびコポリマーは以下であることが好ましい:1)末端ヒドロキシ基が化学反応によって末端封止されて、エステルまたはエーテル基を形成したもの;または2)完全には末端封止されていないが、しかしコモノマー単位からの幾つかの遊離ヒドロキシ末端を有するコポリマー。典型的な末端基は、いずれかの事例において、アセテートおよびメトキシである。
【0056】
B.EMI充填剤
[0050]上記に示されるように、EMI充填剤もまたポリマーマトリクス内に分布する。EMI充填剤は一般に、所望の程度の電磁障害遮蔽を提供することができる電気伝導性材料から形成される。ある実施形態において、例えば、材料は金属、例えば、ステンレス鋼、アルミニウム、亜鉛、鉄、銅、銀、ニッケル、金、クロムなど、ならびにそれらの合金または混合物;炭素(例えば炭素繊維、カーボン粒子、例えば、グラファイト、カーボンナノチューブ、カーボンブラックなど)を含んでいてもよい。EMI充填剤はまた、様々な異なる形態、例えば、粒子(例えば鉄の粉末)、フレーク(例えばアルミニウムフレーク、ステンレス鋼フレークなど)または繊維を有していてもよい。
【0057】
[0051]EMI充填剤は例えば、繊維を含んでいてもよい。繊維は、それらの質量に比較して高い引張強度を有していてもよい。例えば、繊維の引張強度は、例えばASTM D4018-17に従って求めて通常約500~約10,000MPa、幾つかの実施形態において約600MPa~約4,000MPa、幾つかの実施形態において約800MPa~約2,000MPaである。繊維は、約1~約200マイクロメートル、幾つかの実施形態において約1~約150マイクロメートル、幾つかの実施形態において約3~約100マイクロメートル、幾つかの実施形態において約5~約50マイクロメートルの平均直径を有していてもよい。繊維は細断または摩砕された連続フィラメントであってもよい。ある実施形態において、例えば、繊維は、同様に約0.1~約15ミリメートル、幾つかの実施形態において約0.5~約12ミリメートル、幾つかの実施形態において約1~約10ミリメートルの範囲にあってもよい繊維の体積平均長を有する、細断された繊維であってもよい。
【0058】
[0052]ある実施形態において、繊維は、主として金属(例えばステンレス鋼繊維)から、または金属で被覆されたコア材料から形成されたような金属を含んでいてもよい。金属コーティングを用いる場合、コア材料は本質的に伝導性または絶縁性材料から形成されてもよい。例えば、コア材料は、炭素、ガラスまたはポリマーから形成されてもよい。そのような繊維の一例はニッケル被覆炭素繊維である。EMI充填剤は、また炭素材料を含む繊維を含んでいてもよい。用いられる場合、そのような炭素繊維は高い固有熱伝導率、例えば、約200W/m・K以上、幾つかの実施形態において約500W/m・K以上、幾つかの実施形態において約600W/m・K~約3,000W/m・K、幾つかの実施形態において約800W/m・K~約1,500W/m・K、ならびに約20μΩ-m未満、幾つかの実施形態において約10μΩ-m未満、幾つかの実施形態において約0.05~約5μΩ-m、幾つかの実施形態において約0.1~約2μΩ-mの低い固有電気抵抗率(単一フィラメント)を示してもよい。炭素繊維、例えば、セルロース、リグニン、ポリアクリロニトリル(PAN)およびピッチから得られた炭素繊維の性質は変動してもよい。ピッチ系炭素繊維は、ポリマー組成物中で使用するのに特に適している。そのようなピッチ系繊維は、例えば、縮合多環式炭化水素化合物(例えばナフタレン、フェナントレンなど)、縮合複素環式化合物(例えば石油系ピッチ、石炭系ピッチなど)などに由来してもよい。光学異方性ピッチ(「メソフェーズピッチ」)を用いることは、ピッチがサーモトロピッククリスタルを形成することができ、ピッチが組織され、直鎖状の鎖を形成することが可能になり、それによってそれらの結晶構造により本質的によりシート状の繊維をもたらすそういうものとして、特に望ましいことであり得る。とりわけ、そのようなモルフォロジーを有する繊維は、より高度の固有熱伝導率を有し得る。S.ChwastiakらによってCarbon19,357-363(1981)において開示された用語および方法によって定義され説明されるように、メソフェーズピッチは、通常、90重量%を超えるメソフェーズ、幾つかの実施形態において、およそ100重量%のメソフェーズピッチを含む。そのようなピッチ系炭素繊維は当業界で知られている様々な技法のうちのいずれかを使用して形成されてもよい。例えば、ピッチ系繊維は、約250℃以上、幾つかの実施形態において約250℃~約350℃などの、未加工のピッチ材料の軟化点より上の温度で高純度メソフェーズピッチを溶融紡糸することによって形成されてもよい。次いで、溶融紡糸された繊維は、不純物を除去する様々な熱処理ステップ、例えば、架橋を開始し不純物を除去する酸化/プレ炭化、無機元素を除去する炭化、および/または結晶領域の整列および配向を改善する黒鉛化に供してもよい。そのような熱処理ステップは一般に、約400℃~約2,500℃などの高温、および不活性雰囲気中で行われる。そのような技法の例は、例えば、Nishihataらへの米国特許第8,642,682号およびSanoらへの米国特許第7,846,543号に記載されている。
【0059】
[0053]EMI充填剤は通常、組成物の約1重量%~約70重量%、幾つかの実施形態において約1.5重量%~約65重量%、幾つかの実施形態において約4重量%~約60重量%の量で存在する。当然のことながら、正確な量のEMI充填剤は、一般に充填剤(例えば伝導度)の性質、ならびに組成物中の他の成分の性質に依存する。例えば、金属(例えばステンレス鋼)を含んで形成されたものなどの高伝導性のEMI充填剤を用いる場合、比較的少量の、例えば、組成物の約1重量%~約40重量%、幾つかの実施形態において約2重量%~約30重量%、幾つかの実施形態において約4重量%~約20重量%のEMI充填剤が用いられてもよい。同様に、炭素材料(例えば炭素繊維またはカーボン粒子)を含むものなどの伝導度の比較的低い程度のEMI充填剤を用いる場合、比較的多量、例えば、組成物の約10重量%~約70重量%、幾つかの実施形態において約20重量%~約65重量%、幾つかの実施形態において約30重量%~約60重量%のEMI充填剤が用いられてもよい。
【0060】
[0054]所望の場合、EMI充填剤および下記の他の成分(例えば熱伝導性充填剤、難燃剤、安定剤、強化用(reinforcing)繊維、顔料、滑剤など)は、一緒に溶融ブレンドされてポリマーマトリクスを形成してもよい。原料は、材料を分散ブレンドする溶融ブレンド装置に同時にまたは順に供給されてもよい。バッチおよび/または連続溶融ブレンド技法が用いられてもよい。例えば混合機/混練機、バンバリーミキサー、Farrel連続混合機、単軸押出機、二軸押出機、ロールミルなどが材料をブレンドするために利用されてもよい。1つの特に適切な溶融ブレンド装置は、同方向回転二軸押出機(例えばWerner & Pfleiderer Corporation of Ramsey,N.J.から入手可能なZSK-30二軸押出機)である。そのような押出機は供給および放出ポートを含み、高強度の分配的および分散的混合を提供することができる。
【0061】
[0055]しかしながら、ある実施形態において、EMI充填剤は他の技法を使用して、ポリマーマトリクスと組み合わせてもよい。特定の一実施形態において、例えば、EMI充填剤は「長尺繊維」の形態であってもよく、それは一般に、連続的でなく、約1~約25ミリメートル、幾つかの実施形態において約1.5~約20ミリメートル、幾つかの実施形態において約2~約15ミリメートル、幾つかの実施形態において約3~約12ミリメートルの長さを有する繊維、フィラメント、ヤーンまたはロービング(例えば繊維の束)を指す。繊維の公称直径(例えばロービング内の繊維の直径)は、約1~約40マイクロメートル、幾つかの実施形態において約2~約30マイクロメートル、幾つかの実施形態において約5~約25マイクロメートルの範囲であってもよい。所望の場合、繊維は、単繊維タイプまたは異なるタイプの繊維を含むロービング(例えば繊維の束)の形態をしていてもよい。各ロービング中に含まれる繊維の数は、一定であっても、またはロービングごとに変動してもよい。通常、ロービングは、約1,000の繊維~約50,000の個別繊維、幾つかの実施形態において約2,000~約40000の繊維を含んでいてもよい。
【0062】
[0056]一般に、様々な異なる技法のいずれも、ポリマーマトリクスにそのような長尺繊維を組み込むために用いられてもよい。長尺繊維は、ポリマーマトリクス内にランダムに分布してもよく、または代替として、整列して分布してもよい。一実施形態において、例えば、連続繊維は、ストランドを形成するために最初にポリマーマトリクスへ含浸させられてもよく、その後冷却され、次に、結果として得られた繊維が長尺繊維としての所望の長さを有するようにペレットへ細断される。そのような実施形態において、ポリマーマトリクスおよび連続繊維(例えばロービング)は通常、含浸ダイを通して引抜成形されて繊維とポリマーの間で所望の接触を達成する。引抜成形は、また繊維が離れており、同じまたは実質上類似の方向、例えば、ペレットの主軸(例えば長さ)と平行な縦方向に並ぶことを確実にするのを助けることができ、それがさらに機械的性質を増強する。
図6を参照すると、例えば、引抜成形プロセス10の一実施形態が示され、ここで、ポリマーマトリクスが押出機13から含浸ダイ11に供給され、一方で連続繊維12は引抜装置18によってダイ11を通して引き抜かれて複合構造体14を生成する。通常の引抜装置(puller devices)としては、例えばキャタピラー引抜機および往復引抜機を挙げることができる。任意選択であるが、複合構造体14はまた、押出機16に取り付けられたコーティングダイ15(それを通してコーティング樹脂が塗布されて被覆構造体17を形成する)を通して引き抜くこともできる。
図6に示されるように、被覆構造体17は、次に引抜機集合体18によって引き抜かれ、長尺繊維強化(reinforced)組成物を形成するために構造体17を望ましいサイズに切断するペレタイザー19に供給される。
【0063】
[0057]引抜成形プロセス中に使用される含浸ダイの性質を選択的に変化させて、ポリマーマトリクスと長尺繊維との間に良好な接触を達成するのを助けることができる。適切な含浸ダイシステムの例は、Hawleyへの再発行特許第32,772号;Reganらへの第9,233,486号;およびEastepらへの第9,278,472号に詳細に記載されている。
図7を参照すると、例えばそのような適切な含浸ダイ11の一実施形態が示されている。示されるように、ポリマーマトリクス127は、押出機(図示せず)を介して含浸ダイ11に供給されてもよい。とりわけ、ポリマーマトリクス127は、バレルフランジ128を通して押出機から出て、ダイ11のダイフランジ132に導入することができる。ダイ11は、下側ダイ半体136と噛合する上側ダイ半体134を含む。連続繊維142(例えばロービング)は、リール144から供給ポート138を通してダイ11の上側ダイ半体134に供給される。同様に、連続繊維146もリール148から供給ポート140を通して供給される。マトリクス127は、上側ダイ半体134および/または下側ダイ半体136内に搭載されたヒーター133によって、ダイ半体134および136の内側で加熱される。ダイは一般に、熱可塑性ポリマーの溶融および含浸を引き起こすのに十分な温度で作業される。通常は、ダイの作業温度はポリマーマトリクスの融点よりも高い。このように処理されると、連続繊維142および146はマトリクス127中に埋め込まれる。次に、混合物は、含浸ダイ11を通して引き抜かれて繊維強化組成物152を生成する。所望の場合、圧力センサー137によって含浸ダイ11付近の圧力を検知して、スクリューシャフトの回転速度、またはフィーダーの供給量を制御することによって、押出速度に対する制御を発揮させることを可能にすることもあり得る。
【0064】
[0058]含浸ダイ内では、繊維が一連の衝突帯域に接触することが一般に望ましい。これらの帯域において、ポリマー溶融物が繊維を通して横方向に流れて剪断および圧力を生成させることができ、これにより含浸の程度が大きく増大する。これは、高い繊維含有率のリボンから複合体を形成する場合に特に有用である。通常は、ダイは、十分な程度の剪断および圧力を生成するために、ロービング当たり少なくとも2、幾つかの実施形態においては少なくとも3、幾つかの実施形態においては4~50の衝突帯域を含む。それらの特定の形態は変化してもよいが、衝突帯域は、通常は湾曲した突出部、ロッドなどのような湾曲した表面を有する。衝突帯域はまた、通常、金属材料で製造される。
【0065】
[0059]
図7は、突出部182の形態の多数の衝突帯域を含む含浸ダイ11の一部の拡大概略図を示す。本発明は、場合によって機械方向と同軸であってよい複数の供給ポートを使用して実施することができることは理解されるべきである。使用される供給ポートの数は、ダイ内で一度に処理される繊維の数に伴って変化してもよく、供給ポートは、上側ダイ半体134または下側ダイ半体136内に搭載されてもよい。供給ポート138は、上側ダイ半体134内に搭載されたスリーブ170を含む。供給ポート138は、スリーブ170内に摺動可能に搭載されている。供給ポート138は、ピース172および174として示される少なくとも2つのピースに分割される。供給ポート138は、長手方向に貫通する孔176を有する。孔176は、上側ダイ半体134から離隔した直円柱状コーン開口として造形されてもよい。繊維142は、孔176を通過し、上側ダイ半体134と下側ダイ半体136との間の通路180に入る。また、通路210が回旋状の経路をとるように、一連の突出部182が上側ダイ半体134および下側ダイ半体136内に形成される。突出部182によって繊維142および146が少なくとも1つの突出部上を通過して、通路180の内部のポリマーマトリクスがそれぞれの繊維と十分に接触するようになる。このようにして、溶融ポリマーと繊維142および146との間の十分な接触が確実になる。
【0066】
[0060]含浸をさらに容易にするために、繊維はまた、含浸ダイ内に存在している間、張力下に維持されてもよい。張力は、例えば、繊維のトウあたり約5~約300ニュートン、幾つかの実施形態において約50~約250ニュートン、幾つかの実施形態において約100~約200ニュートンの範囲であってよい。さらに、繊維はまた、剪断を増大させるために、曲がりくねった進路で衝突帯域を通過させてもよい。例えば、
図7に示される実施形態において、繊維は正弦波型の通り道で衝突帯域を横切る。ロービングが1つの衝突帯域から別の衝突帯域へ横切る角度は、一般に剪断を増大させるのに十分に高いが、繊維を破断する過剰な力を引き起こすほどは高くない。したがって、例えばこの角度は約1°~約30°、幾つかの実施形態においては約5°~約25°の範囲であってよい。
【0067】
[0061]上記に示され記載された含浸ダイは、本発明において用いられてもよい種々の可能な構成の1つにすぎない。例えば、別の実施形態において、繊維はポリマー溶融物の流れの方向に対してある角度に位置するクロスヘッドダイ中に導入されてもよい。繊維がクロスヘッドダイを通って移動し、ポリマーが押出機バレルから出る位置に到達すると、ポリマーは強制的に繊維と接触させられる。二軸押出機などの任意の他の押出機の設計も使用されてよいことも理解されるべきである。なおさらに、場合によって、繊維の含浸を補助するために他の構成要素も用いられてもよい。例えば、ある実施形態において、「ガスジェット」集合体を用いて、それぞれが最大24,000本もの繊維を含んでいてよい個々の繊維の束またはトウを、合体したトウの全幅にわたって均一に拡げるのを助けることができる。これは、リボン内の強度特性の均一な分布を達成するのを助ける。そのような集合体は、出口ポートを通過する移動している繊維トウ上に概して垂直に衝突する圧縮空気または他のガスの供給部を含むことができる。次に、拡げられた繊維束は、上記のように、含浸のためにダイ中に導入されてもよい。
【0068】
[0062]熱伝導性充填剤、強化用繊維、安定剤、酸化防止剤、滑剤などの、以下に参照されるような他の原料もまた、長尺繊維と組み合わせて組成物に組み込まれてもよい。例えば
図7に示す実施形態において、そのような成分をポリマーと予め組み合わせてポリマーマトリクス127が形成されてもよい。代替として、繊維含浸中に追加の成分がポリマーマトリクス中に組み込まれてもよい。これらの選択肢にもかかわらず、追加の成分をポリマーマトリクス中に組み込むために特に有効な技法は、ポリマーマスターバッチを使用し、これをその後に組み合わせて最終組成物を形成して、成分のより良好な増強されたブレンドを可能にすることを伴う。例えば、高い割合の長尺繊維を含む第1のマスターバッチ(例えば、ペレット、ストランドなど)が形成されてもよい。例えば、長尺繊維は、第1のマスターバッチの約20重量%~約70重量%、幾つかの実施形態において約40重量%~約60重量%を構成してもよく、ポリマー(複数可)は、第1のマスターバッチの約20重量%~約70重量%、幾つかの実施形態において約40重量%~約60重量%を構成してもよい。また、長尺繊維を概して含まず、組成物において用いられる追加の成分(複数可)の実質的に全部を含む第2のマスターバッチ(例えば、ペレット、ストランドなど)が使用されてもよい。例えば、長尺繊維は、第2のマスターバッチの約10重量%以下、幾つかの実施形態において0重量%~約5重量%を構成してもよい。同様に、追加の成分(複数可)は、第2のマスターバッチの約10重量%~約40重量%、幾つかの実施形態において約20重量%~約30重量%を構成してもよく、ポリマー(複数可)は、第1のマスターバッチの約20重量%~約70重量%、幾つかの実施形態において約40重量%~約60重量%を構成してもよい。
【0069】
[0063]形成されたら、第1のマスターバッチは第2のマスターバッチと組み合わせられてもよい。例えば、マスターバッチは、バレル(例えば円筒形バレル)内に回転可能に搭載されて収容されている少なくとも1つのスクリューを含み、スクリューの長さに沿って供給区画、および供給区画の下流に位置する溶融区画を画定してよい押出機に別々にまたは組み合わせて供給されてもよい。押出機の1つまたは複数の区画は、通常は、例えば約200℃~約450℃、幾つかの実施形態において約210℃~約350℃、幾つかの実施形態において約220℃~約350℃の温度範囲内で加熱されて組成物を形成する。スクリューの速度は、所望の滞留時間、剪断速度、溶融加工温度などを達成するように選択されてもよい。例えば、スクリュー速度は、約50~約800回転/分(rpm)、幾つかの実施形態において約70~約150rpm、幾つかの実施形態において約80~約120rpmの範囲であってよい。また、溶融ブレンド中のみかけ剪断速度は、約100秒-1~約10,000秒-1、幾つかの実施形態において約500秒-1~約5000秒-1、幾つかの実施形態において約800秒-1~約1200秒-1の範囲であってよい。みかけ剪断速度は、4Q/πR3(式中、Qはポリマー溶融物の体積流量(「m3/秒」)であり、Rは溶融ポリマーが流れる毛細管(例えば押出機ダイ)の半径(「m」)である)に等しい。
【0070】
C.他の成分
[0064]上記に注目された成分に加えて、ポリマーマトリクスはまた様々な他の成分を含んでいてもよい。そのような任意選択の成分の例は例えば、熱伝導性充填剤、強化用繊維、衝撃改質剤、相溶化剤、微粒子充填剤(例えばタルク、雲母など)、安定剤(例えば抗酸化剤、紫外線安定剤など)、難燃剤、滑剤、色素、流動調整剤、顔料、ならびに性質および加工性を増強するために添加される他の材料を含んでいてもよい。
【0071】
[0065]一実施形態において、例えば、熱伝導性充填剤は、組成物の通常、約5重量%~約40重量%、幾つかの実施形態において約10重量%~約35重量%、幾つかの実施形態において約15重量%~約30重量%の量でポリマーマトリクス内に分布してもよい。熱伝導性充填剤は、高い固有熱伝導率、例えば、約50W/m・K以上、幾つかの実施形態において約100W/m・K以上、幾つかの実施形態において約150W/m・K以上を有していてもよい。そのような材料の例は例えば、窒化ホウ素(BN)、窒化アルミニウム(AlN)、窒化マグネシウムケイ素(MgSiN2)、グラファイト(例えば膨張グラファイト)、炭化ケイ素(SiC)、カーボンナノチューブ、カーボンブラック、金属酸化物(例えば酸化亜鉛、酸化マグネシウム、酸化ベリリウム、酸化ジルコニウム、酸化イットリウムなど)、金属粉体(例えばアルミニウム、銅、青銅、黄銅など)など、ならびにそれらの組合せを含んでいてもよい。グラファイトは、本発明の組成物において使用するのに特に適している。実際、ある実施形態において、グラファイトは、ポリマー組成物に用いられる熱伝導性充填剤の大半、例えば、熱伝導性充填剤の約50重量%以上、幾つかの実施形態において約70重量%以上、幾つかの実施形態において約90重量%~100重量%(例えば100重量%)を構成してもよい。
【0072】
[0066]熱伝導性充填剤は様々な形態、例えば、微粒子材料、繊維などで提供されてもよい。例えば、ISO 13320:2009に従ってレーザー回折技法(例えばHoriba LA-960粒度分布分析機を用いて)を使用して求めて、例えば、約1~約100マイクロメートル、幾つかの実施形態において約2~約80マイクロメートル、幾つかの実施形態において約5~約60マイクロメートルの範囲の平均サイズ(例えば直径または長さ)を有する微粒子材料が用いられてもよい。ある実施形態において、それが、比較的高いアスペクト比(例えば平均厚さで除した平均長または直径)、例えば、約4:1以上、幾つかの実施形態において約8:1以上、幾つかの実施形態において約10:1~約2000:1を有するので、微粒子材料は「フレーク」形状を有していてもよい。平均厚さは、例えば約10マイクロメートル以下、幾つかの実施形態において約0.01マイクロメートル~約8マイクロメートル、幾つかの実施形態において約0.05マイクロメートル~約5マイクロメートルであってもよい。ある実施形態において、熱伝導性微粒子材料は、所望のサイズを有する個々の小板の形態であってもよい。それにもかかわらず、上記に注目した所望の平均サイズを有する熱伝導性材料の凝集体もまた適切であってもよい。そのような凝集体は一般に、例えばファンデルワールス力などの弱い化学結合を介して、特定の配向がなく、または高い秩序様式で一緒に凝集された個々の粒子を含む。適切な六方晶窒化ホウ素凝集体の例としては、例えば、名称UHP-2(Showa Denko)およびPT-450(Momentive Performance Materials)の下で販売されているものを含む。熱伝導性微粒子材料はまた大きい比表面積を有していてもよい。比表面積は、例えば約0.5m2/g以上、幾つかの実施形態において約1m2/g以上、幾つかの実施形態において約2~約40m2/gであってもよい。比表面積は、一般に当業界で知られており、Brunauer,EmmetおよびTeller(J.Amer.Chem.Soc.,vol.60,Feb.,1938,pp.309-319)によって記載されているように、吸着ガスとして窒素を用いて物理的気体吸着方法(B.E.T.法)などの標準方法に従って求めることができる。微粒子材料はまた、例えばASTM B527-15に従って求めて、約0.2~約1.0g/cm3、幾つかの実施形態において約0.3~約0.9g/cm3、幾つかの実施形態において約0.4~約0.8g/cm3の粉末タップ密度を有していてもよい。
【0073】
[0067]強化用繊維はまた、機械的性質を改善するのを支援するために用いられてもよい。しばしば電子部品中で使用するのに望ましい絶縁性を維持するのを支援するために、強化用繊維はまた、一般に、本質的に絶縁材料、例えば、ガラス、セラミック(例えばアルミナまたはシリカ)、アラミド(例えばKevlar(登録商標))、ポリオレフィン、ポリエステルなど、ならびにそれらの混合物から形成されてもよい。ガラス繊維は、例えば、Eガラス、Aガラス、Cガラス、Dガラス、ARガラス、Rガラス、S1ガラス、S2ガラスなど、およびそれらの混合物が特に適切である。強化用繊維は、例えば、そのような繊維が、ポリマーマトリクスの形成中に高性能ポリマー(複数可)と溶融ブレンドされる場合、ランダムに分布した繊維の形態をしていてもよい。代替として、強化用繊維は長尺繊維の形態であってよく、上記の方式でポリマーマトリクスに含浸されてもよい。それとは関係なく、強化用繊維の体積平均長は、約1~約400マイクロメートル、幾つかの実施形態において約50~約400マイクロメートル、幾つかの実施形態において約80~約250マイクロメートル、幾つかの実施形態において約100~約200マイクロメートル、幾つかの実施形態において約110~約180マイクロメートルであってもよい。繊維はまた、約10~約35マイクロメートル、幾つかの実施形態において約15~約30マイクロメートルの平均直径を有していてもよい。用いられる場合、強化用繊維は通常、組成物の約1重量%~約25重量%、幾つかの実施形態において約2重量%~約20重量%、幾つかの実施形態において約5重量%~約15重量%を構成する。
【0074】
[0068]衝撃改質剤はまた、組成物の全体的な性質を改善するのを支援し得る。一実施形態において、例えば、ポリブタジエンは、可撓性を改善するのを支援する高性能ポリマー(例えば芳香族ポリカーボネート)と組み合わせて、相溶化剤として用いられてもよい。そのようなブレンドが用いられる場合、高性能ポリマー(複数可)は、例えば、ブレンドの約40重量%~約95重量%、幾つかの実施形態において約60重量%~約92重量%、幾つかの実施形態において約70重量%~約90重量%、ならびに全ポリマー組成物の約30重量%~約75重量%、幾つかの実施形態において約35重量%~約70重量%、幾つかの実施形態において約40重量%~約65重量%を構成してもよい。同様に、衝撃改質剤(複数可)(例えばポリブタジエン)は、ブレンドの約5重量%~約60重量%、幾つかの実施形態において約8重量%~約40重量%、幾つかの実施形態において約10重量%~約30重量%、ならびに全ポリマー組成物の約1重量%~約25重量%、幾つかの実施形態において約2重量%~約20重量%、幾つかの実施形態において約3重量%~約15重量%を構成してもよい。適切なポリブタジエンポリマーは、Brambrinkらへの米国特許出願公開第2016/028061号に記載され、例えば、スチレンモノマー(例えばスチレン、α-メチルスチレン、アルキル置換スチレンなど)、および/またはニトリルモノマー(例えばアクリロニトリル、メタクリロニトリル、アルキル置換アクリロニトリルなど)と組み合わせてブタジエンモノマーを含むコポリマーを含んでいてもよい。例えば、ブタジエンコポリマーは、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン(「ABS」)などの、スチレンおよび/またはアクリロニトリルでグラフト化されたブタジエンゴムであってもよい。
【0075】
II.パワーエレクトロニクスモジュール
[0069]上記に示されるように、ポリマー組成物は一般に、ハウジング内に電力変換器(例えばインバーター、整流器、電圧変換器など、ならびにそれらの組合せ)を含むパワーエレクトロニクス(power electronic module)モジュールにおいて用いられる。とりわけ、ハウジングはポリマー組成物を含む。ハウジングは、例えば、基体から延在する側壁を含む基体を含んでいてもよい。電子部品(複数可)が収容され外部の環境から保護される内部を画定するために、基体の側壁にカバーが支持されていてもよい。モジュールの特定の構成には無関係に、本発明のポリマー組成物が、ハウジングおよび/またはカバーのすべてまたは一部を形成するために使用されてもよい。一実施形態において、例えば、本発明のポリマー組成物が、ハウジングの基体および側壁を形成するために使用されてもよい。そのような実施形態において、カバーは、本発明のポリマー組成物または金属成分(例えばアルミ板)などの異なる材料から形成されてもよい。ポリマー組成物は一般に、様々な異なる造形技法を使用して、ハウジングまたはハウジングの一部を形成するために用いられてもよい。適切な技法は例えば、射出成形、低圧射出成形、押出圧縮成形、ガス射出成形、発泡射出成形、低圧ガス射出成形、低圧発泡射出成形、ガス押出圧縮成形、発泡押出圧縮成形、押出成形、発泡押出成形、圧縮成形、発泡圧縮成形、ガス圧縮成形などを含んでもよい。例えば、組成物が注入されてもよい型を含む射出成形システムが用いられてもよい。ポリマーマトリクスが先に凝固しないように、射出機内の時間が制御され最適化されてもよい。サイクル時間に到達し、バレルが排出するように満たされたら、ピストンが型穴に組成物を注入するために使用されてもよい。圧縮成形システムもまた用いられてもよい。射出成形でのように、所望の用品への組成物の造形また型内に生じる。組成物は、任意の公知技法を使用して、例えば、自動ロボットアームで掴むことによって圧縮型に装入されてもよい。凝固を可能にするために、所望の時間、型の温度が、ポリマーマトリクスの凝固温度またはその上の温度に維持されてもよい。次いで、成形物は、それを溶融温度のそれより下の温度に至らせることにより凝固されてもよい。結果として得られた生成物は脱型されてもよい。各成形プロセスのサイクル時間は、ポリマーマトリクスに適し、十分な接着を達成し、プロセス全体の生産性を高めるように調節されてもよい。組成物の独特の性質により、比較的薄い造形ハウジング部分(例えば射出成形部品)は容易にそれから形成することができる。例えば、そのようなハウジング部分は、約10ミリメートル以下、幾つかの実施形態において約8ミリメートル以下、幾つかの実施形態において約6ミリメートル以下、幾つかの実施形態において約0.4~約5ミリメートル、幾つかの実施形態において約0.8~約4ミリメートル(例えば0.8、1.2または3ミリメートル)の厚さを有していてもよい。
【0076】
[0070]パワーエレクトロニクスモジュールは種々様々の用途に使用されてもよい。例えば、エレクロトニクスモジュールは自動車(例えば電気自動車)において用いられてもよい。
図2~3は、自動車で使用されるパワーエレクトロニクスモジュールの例示の用途を図示する。
図2の説明において、例えば、車両駆動装置54、例えば、自動車または他の移動用途のための駆動装置が提供される。車両駆動装置54は、一連の追加的な支持、制御、フィードバックおよび他の相互に関係するコンポーネントに加えて
図2の機能回路を含んでもよく、一般に車両の駆動に必要な電力を提供する電源56を含む。典型的な用途において、電源56は1つまたは複数のバッテリー、発電機または交流発電機、燃料電池、ユーティリティ供給源、交流発電機、電圧調整器などを含んでいてもよい。電源56は通常、直流の形態の電力を、直流導体58を介してパワーエレクトロニクスモジュール10に印加する。制御回路60は、パワーエレクトロニクスモジュール、例えば、速度制御、トルク制御、加速度、制動などの動作の調節のための制御信号を提供する。そのような制御信号に基づいて、パワーエレクトロニクスモジュール10は、
図2において参照番号20で全体として示されるように出力導体に沿って交流波形を出力する。次いで、出力電力は、参照番号62で全体として示されるように車両駆動トレインに印加される。当業者に認識されるように、そのような駆動トレインは通常、パワーエレクトロニクスモジュール10によって印加される信号の周波数および電力レベルに基づいて回転して駆動される1つまたは複数の交流電動機を含む。車両駆動トレインはまた、回転する1つまたは複数のアウトプットシャフト64を駆動するように究極的に設計された動力伝達エレメント、軸、歯車列などを含んでいてもよい。車両、駆動トレインおよびパワーエレクトロニクスモジュールのいずれも動作特性を検知するためのセンサー回路66が提供される。センサー回路66は通常、速度、トルク、電力レベル、温度、冷却剤の流速などの調整用などのそのような信号を収集し、制御回路にそれらを印加する。
【0077】
[0071]
図3は、パワーエレクトロニクスモジュール10のさらなる用途を図示する。全体として参照番号68によって指定されたシステムにおいて、隔室(bays)72に分割されてもよい格納装置70が提供される。各隔室内では、様々なコンポーネントが搭載されプロセスの動作の調節のために相互に連結される。一般に参照番号74で指定されたコンポーネントは、隔室内に搭載され、交流バス76を介して電力を受ける。制御網78は、コンポーネント74およびパワーエレクトロニクスモジュール10の動作の調節のための制御信号を適用する。格納装置70などの格納装置は、例えば、自動車、多目的車、輸送車または他の車両の1つまたは複数の駆動トレインの駆動のためなどの様々な設置に含まれてもよい。
【0078】
[0072]上記に言及されたように、様々な回路構成がパワーエレクトロニクスモジュール中へ設計されてもよい。回路構成は個々の用途それぞれの特定の要件に広く依存して変動する。しかし、頑丈で緻密な包装を熱管理とともに必要とするパワーエレクトロニクスデバイスを含む、ある例示の回路構成が現在目論まれている。そのような例示の2つの回路は
図4~5に説明されている。
図4において、回路は、バス76からの交流電力を入来電力線18に対応するDCバスに沿った出力のための直流電力に変換する整流回路80を含む。インバーター回路82は直流出力を受け、直流出力を所望の周波数および振幅の交流波形に変換する。次いで、交流電力は外向きの導体20を介して負荷に印加されてもよい。フィルターおよび記憶回路84は、バスに印加された電力を平滑化し調節するために直流バスにわたって結合されてもよい。制御回路86は、整流器およびインバーター回路の動作を調節する。
図5の例において、インバーター(図示せず)は入来交流電力を受けて、電力スイッチ88に外向きの波形を供給する。ACスイッチの設定は、固定周波数入来電力18を、負荷に対する印加のために制御された周波数の外向きの電力20に効果的に変換する。しかしながら、
図4~5の特定の回路は単なる例示であり、パワーエレクトロニクス回路のいずれの範囲も本技法に従ってモジュール中への組み込みに適合し得ることは心に留めるべきである。
【0079】
[0073]
図1は、パワーエレクトロニクスモジュール10のための例示の物理的構成を図示する。
図1の実施形態において、回路集合体92は、カバー96によって囲まれたハウジング部分94を含むハウジング内に位置する。制御およびドライバー回路もまた、そのような回路の冷却を含むパワーエレクトロニクス回路の動作の調節のために熱支持体に配置される。
図1の実施形態において、モジュールは特に、車両用途のためのインバーター駆動として動作するように構成される。入来直流電力は、導体18を介して受け、導体20を介して三相波形出力に変換される。
図1の実施形態において、ハウジング部分94は、制御信号を内側で受け、ハウジングから送信されることを可能にするように設計されている制御インターフェース98を提示する。制御インターフェースは、
図1で図示されるようにハウジングの最下側に、またはハウジングの他の位置に提供されてもよい。所望の場合、ハウジング部分94および/またはカバー96のすべてまたは一部は、本発明のポリマー組成物から形成されてもよい。
【0080】
[0074]電力インターフェースは、
図1において一般に参照番号100で指定され、回路集合体92間の送信電力のために提供される。様々な構成を提供することができ、現在、モジュール10を外部回路とインターフェースすることが目論まれている。
図1の実施形態において、例えば、電力インターフェース100は、5つの導体-すなわち、2つの直流導体および3つの交流導体-が、回路集合体から直接に、プラグイン配列などでインターフェースされることが可能になる。制御および電力インターフェースに加えて、冷却剤を受け循環するための冷却剤インターフェース102が提供されてもよい。例証の実施形態において、ハウジング部分94は、回路集合体92が配置される空洞104を含む。導体106は回路集合体92に直流電力を送り、一方、導体108は、回路集合体92からのAC波形を負荷に対する印加のために送る。導体106および108が延在するインターフェースプレート110が提供される。所望の場合には、モジュールによって電流出力に関するフィードバックを行なうために外向き電力導体108のおよそ2つに並べた電流センサー112などのセンサーが集合体に組み込まれてもよい。当業者によって認識されるように、他のタイプのおよび幾つものセンサーが用いられてもよく、ハウジング内に、コネクタ集合体内、または回路集合体自体内のいずれにも組み込まれてよい。
【0081】
[0075]決して必須ではないが、回路集合体92はパワーエレクトロニクス回路14が配置される熱支持体12を含んでいてもよい。熱支持体12は、その上に搭載された様々なコンポーネントについて、機械的および電気的両方で支持体を改善するように設計された様々な特徴を組み込んでもよい。これらの機能の一部は、
図1の実施形態の事例のように熱支持体に直接組み込まれてもよく、または追加されてもよい。
図1に示すように、この実施形態において非金属材料から製造されるフレーム114は、熱支持体12に嵌まり、熱支持体に搭載されたコンポーネントは、フレームに少なくとも部分的に取り囲まれる。フレームは、導体106および108用の、および絶縁またはポッティング媒体を受ける熱支持体12に支持された周囲の回路用の両方のインターフェースとして役立つ。
図1の実施形態において、端子116はフレーム114に形成され、絶縁材料からのフレームの成形中にフレーム内に埋め込まれてもよい。端子のための好ましい構成はより完全に以下に記載される。セパレーター118は、端子に結合された導体を互いから孤立させるために部分的に端子116を取り囲む。
【実施例】
【0082】
[0076]本発明は、以下の実施例を参照してより良好に理解されてもよい。
試験方法
[0077]熱伝導率:面内方向および厚さ方向の熱伝導率の値は、ASTM-E1461-13に従って求められる。
【0083】
[0078]電磁傷害(「EMI」)遮蔽:EMI遮蔽有効度は、ASTM-D4935-18に従って、30MHz~1GHzの範囲の周波数範囲(例えば30MHz、50MHzまたは100MHz)で求められてもよい。試験される部品の厚さは、例えば、1ミリメートル、1.5ミリメートル、1.6ミリメートルまたは3ミリメートルと変動してもよい。試験は、同軸伝送線の拡大部分であり、Electro-Metricsのような種々の製造業者から入手できるEM-2107A標準試験装置を用いて実施されてもよい。測定データは、平面波(遠方界EM波)による遮蔽有効度に関係し、それから磁場および電場に関する近傍界値が推測されてもよい。
【0084】
[0079]表面/体積抵抗率:表面および体積抵抗率の値は、一般にASTM D257-14に従って求められる。例えば、標準試験片(例えば1メートル立方)が2つの電極間に配置されてもよい。電圧は60秒間印加されてもよく、抵抗が測定さてもよい。表面抵抗率は、電位勾配(V/m)の単位電極長さ当たりの電流(A/m)との商であり、概して絶縁材料の表面に沿った漏れ電流に対する抵抗を表す。電極の4つの端部が正方形を画定するので、商における長さは、約分されて表面抵抗率はオームで報告されるが、オーム/スクエアというより説明的な単位も普通に見られる。体積抵抗率はまた、材料中の電流に平行な電位勾配と電流密度との比として求められてもよい。SI単位においては、体積抵抗率は1メートル立方の材料の対向面間の直流抵抗(Ω-m)に数値的に等しい。
【0085】
[0080]引張弾性率、引張応力、および破断時引張伸び:引張特性は、ISO試験No.527-1:2019(ASTM-D638-14と技術的に同等)に従って試験されてもよい。長さ170/190mm、厚さ4mmおよび幅10mmを有するイヌ骨形状の試験片試料で、弾性率および強度の測定が行われてもよい。試験温度は-30℃、23℃または80℃であってよく、試験速度は1または5mm/分であってよい。
【0086】
[0081]曲げ弾性率、破断時曲げ伸びおよび曲げ応力:曲げ特性は、ISO178:2019(ASTM-D790-17と技術的に同等)に従って試験されてもよい。この試験は64mmの支持材スパンで行われてもよい。試験は、未切断のISO-3167多目的棒材の中央部分で行われてもよい。試験温度は-30℃、23℃または80℃であってよく、試験速度は2mm/分であってよい。
【0087】
[0082]シャルピー衝撃強度:シャルピー特性は、ISO179-1:2010(ASTM-D256-10,方法Bと技術的に同等)に従って試験されてもよい。この試験は、タイプ1の試験片サイズ(長さ80mm、幅10mmおよび厚さ4mm)を用いて行われてもよい。試験片は、一枚歯フライス盤を用いて多目的棒材の中央部分から切り出されてもよい。試験温度は-30℃、23℃または80℃であってよい。
【0088】
[0083]荷重撓み温度(DTUL):荷重撓み温度は、ISO75-2:2013(ASTM-D648-07と技術的に同等)に従って求められてもよい。とりわけ、長さ80mm、幅10mmおよび厚さ4mmを有する試験片試料が、規定荷重(最大外繊維応力)が1.8メガパスカルである沿層方向(edgewise)3点曲げ試験にかけられてもよい。試験片は、0.25mm(ISO試験No.75-2:2013としては0.32mm)歪むまで温度を2℃/分で上昇させるシリコーン油浴中に降下させてもよい。
【0089】
実施例1
[0084]試料1は、ナイロン6,6およそ85~90重量%、ステンレス鋼長尺繊維10重量%および他の添加剤0~5重量%を含む、市販されているポリマー組成物である。第1および第2のポリマーペレットの組合せから組成物を形成する。とりわけ、第1のペレットは、ステンレス鋼長尺繊維50重量%および樹脂成分50重量%を含む長尺繊維ペレットであり、本明細書において記載の引抜成形プロセスを使用して形成する。第2のペレットは、スチール繊維を含まず、樹脂成分を残りの100重量%含み、押出機で成分を溶融加工することによって形成される。第1および第2のペレットを一緒に転動させてドライブレンドを形成し、次いで、電力変換器に使用される造形部品に射出成形する。
【0090】
実施例2
[0085]試料2は、ナイロン6,6ではなく熱可塑性ポリマーとしてポリブチレンテレフタレート(PBT)を用いる以外は、実施例1において記載のものと同様な方式で形成された市販されている組成物である。
【0091】
実施例3
[0086]試料3は、ナイロン6,6ではなく熱可塑性ポリマーとして芳香族ポリカーボネート(PC)を用いる以外は、実施例1において記載のものと同様な方式で形成された市販されている組成物である。
【0092】
実施例4
[0087]試料4は、ナイロン6,6ではなく熱可塑性ポリマーとしてプロピレンポリマーを用いる以外は、実施例1において記載のものと同様な方式で形成された市販されている組成物である。
【0093】
実施例5
[0088]試料5は、ナイロン6,6ではなく熱可塑性ポリマーとしてポリフェニレンスルフィド(PPS)を用いる以外は、実施例1において記載のものと同様な方式で形成された市販されている組成物である。
【0094】
実施例6
[0089]試料6は、ポリアリーレンスルフィドが組成物の75~80重量%の量存在し、ステンレス鋼長尺繊維が組成物の20重量%の量、存在するという点を除いて、実施例5において記載のものと同様な方式で形成された市販されている組成物である。
【0095】
実施例7
[0090]試料7は、ポリフェニレンスルフィド(PPS)をおよそ35~50重量%、グラファイトを40~55重量%およびガラス繊維を10重量%含む、市販されているポリマー組成物である。押出機で成分を溶融加工することにより組成物を形成する。次いで、結果として得られた組成物を、電力変換器に使用される造形部品に射出成形する。
【0096】
実施例8
[0091]試料8は、ポリアミドの混合物(20重量%のナイロン6および80重量%のナイロン6,6)をおよそ75~80重量%、炭素繊維を20重量%および他の添加剤を0~5重量%を含む、市販されているポリマー組成物である。押出機で成分を溶融加工することにより組成物を形成する。次いで、結果として得られた組成物を電力変換器に使用される造形部品に射出成形する。
【0097】
実施例9
[0092]試料9は、ポリブチレンテレフタレート(PBT)をおよそ80~85重量%、炭素繊維を15重量%および他の添加剤を0~5重量%含む、市販されているポリマー組成物である。押出機で成分を溶融加工することにより組成物を形成する。次いで、結果として得られた組成物を電力変換器に使用される造形部品に射出成形する。
【0098】
実施例10
[0093]試料10は、サーモトロピック液晶ポリマー(LCP)をおよそ30~40重量%、およびメソフェーズピッチ系炭素繊維を60~70重量%含む、市販されているポリマー組成物である。押出機で成分を溶融加工することにより組成物を形成する。次いで、結果として得られた組成物を電力変換器に使用される造形部品に射出成形する。
【0099】
[0094]本明細書において記載の機械的性質、熱的性質および電気的性質に関して試料1~10を試験した。結果は、下表1~3に述べる。
【0100】
【0101】
【0102】
【0103】
[0095]
図8~9は、また30MHz~1.5GHzの周波数範囲にわたり試料1~4(3mmの厚さ)について遮蔽有効度(「SE」)を示す。
[0096]本発明のこれらおよび他の修正および変形は、本発明の趣旨および範囲から逸脱することなく、当業者によって実施することができる。さらに、種々の実施形態の複数の態様は、全体的にまたは部分的に交換することができることが理解されるべきである。さらに、当業者であれば、上記の記載が単に例示の目的であり、添付の特許請求の範囲にさらに記載される本発明を限定することは意図しないことを認識するであろう。
【国際調査報告】