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特表2023-551645がん治療における使用のためのマイコバクテリウム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-12-12
(54)【発明の名称】がん治療における使用のためのマイコバクテリウム
(51)【国際特許分類】
   A61K 35/74 20150101AFI20231205BHJP
   A61K 31/337 20060101ALI20231205BHJP
   A61K 31/7068 20060101ALI20231205BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20231205BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20231205BHJP
   C12N 1/20 20060101ALI20231205BHJP
   C07K 16/28 20060101ALI20231205BHJP
【FI】
A61K35/74 A
A61K31/337
A61K31/7068
A61K39/395 T
A61P35/00
C12N1/20 A
C07K16/28
A61K39/395 U
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023528117
(86)(22)【出願日】2021-11-10
(85)【翻訳文提出日】2023-07-10
(86)【国際出願番号】 GB2021052905
(87)【国際公開番号】W WO2022101619
(87)【国際公開日】2022-05-19
(31)【優先権主張番号】2017752.3
(32)【優先日】2020-11-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(31)【優先権主張番号】2104431.8
(32)【優先日】2021-03-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】516178402
【氏名又は名称】イモデュロン セラピューティクス リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】カンピンガ、ヤコブ
(72)【発明者】
【氏名】クレーン、トーマス
【テーマコード(参考)】
4B065
4C085
4C086
4C087
4H045
【Fターム(参考)】
4B065AA36X
4B065AC20
4B065CA44
4C085AA14
4C085DD62
4C085EE01
4C085GG02
4C086AA01
4C086AA02
4C086BA02
4C086EA17
4C086MA02
4C086MA03
4C086MA04
4C086MA66
4C086NA05
4C086ZB26
4C086ZB27
4C086ZC75
4C087AA01
4C087AA02
4C087BC55
4C087CA09
4C087MA02
4C087MA66
4C087NA05
4C087NA14
4C087ZB02
4C087ZB09
4C087ZB26
4C087ZB27
4C087ZC75
4H045AA10
4H045AA30
4H045BA09
4H045CA40
4H045DA76
4H045EA20
4H045FA74
(57)【要約】
本発明は、がん対象の治療、減少、阻害、又は制御に使用するための免疫調節薬を提供し、ここで、対象は、ECOGスケールにおける1-、2、3、又は4のパフォーマンスステータスを有するとして臨床的に分類されるか、2以上の化学療法レジメンに耐える年齢でない及び/又は耐えるのに十分に壮健でないと分類される。本発明はまた、1又は複数の追加の抗がん治療又は抗がん剤の使用、並びに使用のためのプロトコル及び投薬レジメンを記載する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象におけるがんの治療、減少、阻害、又は制御に使用するための非病原性の生存不能なマイコバクテリウム(Mycobacterium)であって、前記対象が、米国東海岸癌臨床試験グループ(ECOG)スケールにおける1-、2、3、又は4のパフォーマンスステータスを有するとして臨床的に分類されるヒト患者である、前記非病原性の生存不能なマイコバクテリウム。
【請求項2】
前記対象が、2以上の化学療法レジメンに耐える年齢でない及び/又は耐えるのに十分に壮健でないと分類され、任意に、ゲムシタビン及びnab-パクリタキセルを投与されるのに適格であると考えられる、ヒト患者である、請求項1に記載の非病原性の生存不能なマイコバクテリウム。
【請求項3】
前記ヒト患者が、少なくとも2人の臨床観察者によって、ECOGスケールにおける1、2、3、又は4のパフォーマンスステータスを有すると臨床的に分類され、ここで、矛盾する評価の場合は、最も高い(最悪の)評価が使用され、好ましくは、前記ヒト患者が、2(PS2)のパフォーマンスステータスを有すると臨床的に分類される、請求項1又は請求項2に記載の非病原性の生存不能なマイコバクテリウム。
【請求項4】
前記非病原性の生存不能なマイコバクテリウムが、受託番号NCTC 11659及びSRL172、SRP299、IMM-201、DAR-901などの関連する名称の下で寄託された株、並びにATCC 95051(Vaccae(商標))の下で寄託された株を含む、マイコバクテリウム・ワクカエ(M.vaccae);マイコバクテリウム・オブエンス(M.obuense)、マイコバクテリウム・パラゴルドネ(M.paragordonae)(株49061)、マイコバクテリウム・パラフォルトゥイタム(M.parafortuitum)、マイコバクテリウム・パラツベルクローシス(M.paratuberculosis)、マイコバクテリウム・ブルマエ(M.brumae)、マイコバクテリウム・オーラム(M.aurum)、マイコバクテリウム・インディカス・プラニイ(M.indicus pranii)、M.w、マイコバクテリウム・マンレセンシス(M.manresensis)、マイコバクテリウム・キョガエンス(M.kyogaense)(DSM 107316/CECT 9546の下で寄託)、マイコバクテリウム・フレイ(M.phlei)、マイコバクテリウム・スメグマティス(M.smegmatis)、マイコバクテリウム・ツベルクローシス(M.tuberculosis)青山B又はH37Rv、RUTI、MTBVAC、BCG、VPM1002BC、SMP-105、Z-100、及びこれらの組み合わせから選択され、好ましくは、ブダペスト条約の下、受託番号NCTC 13365として寄託されたマイコバクテリウム・オブエンスの株である、請求項1~請求項3のいずれか一項に記載の非病原性の生存不能なマイコバクテリウム。
【請求項5】
前記非病原性の生存不能なマイコバクテリウムが、加熱殺菌されている、請求項1~請求項4のいずれか一項に記載の非病原性の生存不能なマイコバクテリウム。
【請求項6】
前記非病原性の生存不能なマイコバクテリウムが、ラフ型変異体である、及び/又は画分、断片、細胞成分(sub-cellular component)、溶解物、ホモジネート、超音波処理物として、若しくは実質的に全細胞の形態で提示される、請求項1~請求項5のいずれか一項に記載の非病原性の生存不能なマイコバクテリウム。
【請求項7】
前記非病原性の生存可能なマイコバクテリウムが、第一選択治療として投与され、任意に、養子細胞療法、外科的療法、化学療法、放射線療法、ホルモン療法、チェックポイント阻害剤療法、メトホルミンなどの小分子療法、チロシンキナーゼ阻害剤療法などの受容体キナーゼ阻害剤療法、温熱治療、光線療法、高周波アブレーション療法(RFA)、抗血管新生療法、サイトカイン療法、寒冷療法、生物学的療法、HDAC阻害剤(例えば、OKI-179)、BRAF阻害剤、MEK阻害剤、EGFR阻害剤、VEGF阻害剤、P13Kデルタ阻害剤、PARP阻害剤、mTOR阻害剤、低メチル化剤、腫瘍溶解性ウイルス、TLRアゴニスト(リンタトリモドなどのTLR2アゴニスト、TLR3アゴニスト、TLR4アゴニスト、TLR7アゴニスト、TLR8アゴニスト、若しくはTLR9アゴニスト、又はMRx0518(4D Pharma)などのTLR5アゴニストを含む)、STINGアゴニスト(MIW815及びSYNB1891を含む)、ミファムルチド、及びGVAX又はCIMAvaxなどのがんワクチン、並びこれらの組み合わせから選択される1又は複数の治療剤又は治療手段の投与と同時に、別々に、又は順次に、前記対象に投与される、請求項1~請求項6のいずれか一項に記載の非病原性の生存不能なマイコバクテリウム。
【請求項8】
前記ヒト患者がまた、ベバシズマブ、シクロホスファミド、メトトレキサート、5-フルオロウラシル、ドキソルビシン、ムスチン、ビンクリスチン、プロカルバジン、プレドニゾロン、ブレオマイシン、ビンブラスチン、ダカルバジン、エトポシド、シスプラチン、エピルビシン、カペシタビン、ロイコボリン、フォリン酸、カルボプラチン、オキサリプラチン、ゲムシタビン、FOLFIRINOX、FOLFOX、mFOLFIRINOX、NALIRIFOX、パクリタキセル、nab-パクリタキセル、ペメトレキセド、イリノテカン、テモゾロミド、及びこれらの組み合わせから選択される1又は複数の細胞傷害性化学療法剤をさらに投与されているか、又は以前に投与されたことがあり、ここで、前記1又は複数の剤が、腫瘍内、動脈内、静脈内、血管内、胸膜内、腹腔内、気管内、鼻腔内、肺内、髄腔内、筋肉内、内視鏡的、病巣内、経皮的、皮下、領域的、定位的、経口的に、又は直接注射若しくは灌流によって投与され、任意に、前記ヒト患者が、部分奏効、又は安定(stable disease)を示した、請求項1~請求項7のいずれか一項に記載の非病原性の生存不能なマイコバクテリウム。
【請求項9】
前記ヒト患者が、ゲムシタビンを投与される、請求項8に記載の非病原性の生存不能なマイコバクテリウム。
【請求項10】
前記ヒト患者が、nab-パクリタキセルを、任意にゲムシタビンと組み合わせて、投与される、請求項9に記載の非病原性の生存不能なマイコバクテリウム。
【請求項11】
前記ヒト患者には、1又は複数のチェックポイント阻害剤も投与される、請求項1~請求項10のいずれか一項に記載の非病原性の生存不能なマイコバクテリウム。
【請求項12】
前記1又は複数のチェックポイント阻害剤が、CTLA-4、PD-1、PD-L1、PD-L2、B7-H3、B7-H4、B7-H6、A2AR、IDO、TIM-3、BTLA、VISTA、TIGIT、LAG-3、CD40、KIR、CEACAM1、GARP、PS、CSF1R、CD94/NKG2A、TDO、TNFR、DcR3、CD27、CD28、CD40、CD122、CD137、0X40、GITR、ICOS、及びこれらの組み合わせに対する、好ましくはCTLA-4、PD-1、又はPD-L1に対する、細胞、タンパク質、ペプチド、抗体、二重特異性抗体、ADC(抗体-薬物複合体)、Fab断片(Fab)、F(ab’)2断片、ダイアボディ、トリアボディ、テトラボディ、プロボディ、一本鎖可変領域断片(scFv)、ジスルフィド安定化可変領域断片(dsFv)、又はその他の抗原結合断片から選択される、請求項11に記載の非病原性の生存不能なマイコバクテリウム。
【請求項13】
前記1又は複数のチェックポイント阻害剤が、イピリムマブ、ニボルマブ、ペムブロリズマブ、アテゾリズマブ、BI 754091(抗PD-1)、バビツキシマブ(PSに対するIgG3 mab)、ビントラフスプアルファ、ドスタリマブ、デュルバルマブ、トレメリムマブ、スパルタリズマブ、アベルマブ、シンチリマブ、トリパリマブ、プロルゴリマブ(prolgolimab)、チスレリズマブ、カムレリズマブ、MGA012、MGD013(現在はテボテリマブとして知られている)、KN046(PD-L1/CTLA-4二重特異性抗体)、MGD019、エノブリツズマブ、MGD009、MGC018、MEDI0680、ミプテナリマブ(miptenalimab)(BI 754111、抗LAG-3)、ニモツズマブ、PDR001、FAZ053、TSR022、MBG453、レラトリマブ(BMS986016)、LAG525(IMP701)、IMP321(エフチラジモド アルファ)、REGN2810(セミプリマブ)、REGN3767、ペキシダルチニブ(PLX3397)、LY3022855、FPA008、BLZ945、GDC0919、エパカドスタット、エマクツズマブ(CSF-1Rを標的とするRG1755)、FPA150、インドキシモド、BMS986205、CPI-444、MEDI9447、PBF509、FS118(LAG-3及びPD-L1に対する二重特異性)、リリルマブ、Sym023、TSR-022、A2Ar阻害剤(例えば、EOS100850、AB928)、モナリズマブなどのNKG2A阻害剤、及びこれらの組み合わせから選択される、請求項11又は請求項12に記載の非病原性の生存不能なマイコバクテリウム。
【請求項14】
前記1又は複数のチェックポイント阻害剤が、治療的な量及び/又は期間未満の量及び/又は期間で投与される、請求項13に記載の非病原性の生存不能なマイコバクテリウム。
【請求項15】
前記非病原性の生存不能なマイコバクテリウムの投与が、前記1又は複数のチェックポイント阻害剤の投与の前及び/又は後である、請求項12~請求項14のいずれか一項に記載の非病原性の生存不能なマイコバクテリウム。
【請求項16】
前記がんが、例えば膵管腺癌(PDAC)又は膵臓神経内分泌腫瘍(PNET)など、膀胱がん(筋層非浸潤性膀胱がんを含む)、前立腺がん、肝臓がん、腎臓がん、肺がん、乳がん、結腸直腸がん、結腸がん、直腸がん、膵臓がん、脳がん(神経膠芽腫を含む)、肝細胞がん、リンパ腫、白血病、胃がん、子宮頸がん、卵巣がん、甲状腺がん、黒色腫、頭頸部がん、皮膚がん、軟部組織肉腫、及び/又は骨肉腫から選択され、任意に、前記がんが、MSI-high及び/又はMMR-欠損である、請求項1~請求項15のいずれか一項に記載の非病原性の生存不能なマイコバクテリウム。
【請求項17】
前記がんが、転移性である、請求項16に記載の非病原性の生存不能なマイコバクテリウム。
【請求項18】
前記がんが、(結節性病変を伴うか、又は伴わない)局在的に進行した膵臓がん、切除可能な膵臓がん、切除可能境界膵臓がん、切除不能な膵臓がん、チェックポイント抵抗性膵臓がん、化学療法抵抗性膵臓がん、少数転移性膵臓がん、膵管腺癌(PDAC)、及び好ましくは転移性膵管腺癌(mPDAC)から選択される膵臓がんである、請求項1~請求項17のいずれか一項に記載の非病原性の生存不能なマイコバクテリウム。
【請求項19】
非病原性の生存不能なマイコバクテリウムが、非経口経路、経口経路、舌下経路、経鼻経路、又は肺経路を介した投与用である、請求項1~請求項18のいずれか一項に記載の非病原性の生存不能なマイコバクテリウム。
【請求項20】
前記非経口経路が、皮下、皮内、節内、筋肉内、真皮下、腹腔内、静脈内、腫瘍近傍(peritumoral)、病変近傍(perilesional)、病巣内、又は腫瘍内、及びこれらの組み合わせから選択される、請求項19に記載の非病原性の生存不能なマイコバクテリウム。
【請求項21】
腫瘍内投与の後に皮内投与が続いて行われる、請求項20に記載の非病原性の生存不能なマイコバクテリウム。
【請求項22】
前記治療、減少、阻害、又は制御が、1又は複数のバイオマーカーの測定に基づいてモニターされる、請求項1~請求項21のいずれか一項に記載の非病原性の生存不能なマイコバクテリウム。
【請求項23】
前記1又は複数のバイオマーカーが、前立腺特異的抗原(PSA);癌胎児性抗原(CEA);CA19.9、PNR、INR、予後栄養指数(PNI);全身性免疫炎症指数(SII);及び全身性炎症スコア(SIS)のうちのいずれか1つ又は複数を含む、請求項22に記載の非病原性の生存不能なマイコバクテリウム。
【請求項24】
前記対象の前記パフォーマンスステータスが、前記がんの前記治療、減少、阻害、又は制御の間及び/又は後に、同じままであるか又は改善する、請求項1~請求項23のいずれか一項に記載の非病原性の生存不能なマイコバクテリウム。
【請求項25】
原発腫瘍を含む前記がんの前記治療、減少、阻害、又は制御が、(好ましくは治療の終了時及び/又は前記非病原性の生存不能なマイコバクテリウムの1回、2回、3回、4回、5回、若しくは6回、又はそれを超える投与の後に評価された場合に)(i)全生存期間、(ii)無増悪生存期間、(iii)無病生存期間、(iv)全奏効率、(v)原発腫瘍サイズ及び/又は転移性疾患の減少、(vi)炭水化物抗原19.9(CA19.9)及び癌胎児性抗原(CEA)又は腫瘍に応じたその他の抗原などの腫瘍抗原の循環レベル、(vii)栄養状態(体重、食欲、血清アルブミン)、(viii)疼痛制御又は鎮痛薬使用、(ix)CRP/アルブミン比、(x)生活の質の改善、(xi)除脂肪体重の維持、(xii)悪液質の可能性又は発生率の低下、又は(xiii)ctDNAの減少又は排除、のうちの1又は複数から選択される疾患状態及び疾患進行の1又は複数のマーカーにおける臨床的に意義のある改善をもたらす、請求項1~請求項24のいずれか一項に記載の非病原性の生存不能なマイコバクテリウム。
【請求項26】
対象におけるがんの治療、減少、阻害、又は制御に使用するための非病原性の生存不能なマイコバクテリウムであって、前記対象がヒト患者であり、前記非病原性の生存不能なマイコバクテリウムが、マイコバクテリウム・オブエンス(M.obuense)NCTC 13365であり、前記ヒト対象には、ヌクレオシド代謝阻害剤、好ましくはゲムシタビンが、同時に、別々に、又は順次に投与され、1又は複数のチェックポイント阻害剤、好ましくはペムブロリズマブがさらに投与され、前記対象が、米国東海岸癌臨床試験グループ(ECOG)スケールにおける1-、2、3、又は4のパフォーマンスステータスを有するとして臨床的に分類される、前記非病原性の生存不能なマイコバクテリウム。
【請求項27】
前記ヒト患者が、2以上の化学療法レジメンに耐える年齢でない及び/又は耐えるのに十分に壮健でないと分類されるが、ゲムシタビン及びnab-パクリタキセルを投与されるのに適格であると考えられる、請求項26に記載の非病原性の生存不能なマイコバクテリウム。
【請求項28】
対象のがんを治療、減少、阻害、又は制御する方法であって、前記対象がヒト患者であり、前記方法が、(i)1又は複数の治療剤及び/又はがん治療、並びに(ii)非病原性の生存不能なマイコバクテリウムを、対象に同時に、別々に、又は順次に投与することを含み、前記方法が、1又は複数の治療剤及び/又はがん治療の単独の投与と比較して治療有効性の向上をもたらし、前記ヒト患者が、米国東海岸癌臨床試験グループ(ECOG)スケールにおける1-、2、3、又は4のパフォーマンスステータスを有するとして臨床的に分類される、前記方法。
【請求項29】
前記ヒト患者が、2以上の化学療法レジメンに耐える年齢でない及び/又は耐えるのに十分に壮健でないと分類され、任意に、ゲムシタビン及びnab-パクリタキセルを投与されるのに適格であると考えられる、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
前記ヒト患者が、少なくとも2人の臨床観察者によって、ECOGスケールにおける1-、2、3、又は4のパフォーマンスステータスを有するとして臨床的に分類され、ここで、矛盾する評価の場合は、最も高い(最悪の)評価が使用され、好ましくは、前記ヒト患者が、2(PS2)のパフォーマンスステータスを有するとして臨床的に分類される、請求項28又は請求項29に記載の方法。
【請求項31】
前記非病原性の生存不能なマイコバクテリウムが、受託番号NCTC 11659及びSRL172、SRP299、IMM-201、DAR-901などの関連する名称の下で寄託された株、並びにATCC 95051(Vaccae(商標))の下で寄託された株を含む、マイコバクテリウム・ワクカエ(M.vaccae);マイコバクテリウム・オブエンス(M.obuense)、マイコバクテリウム・パラゴルドネ(M.paragordonae)(株49061)、マイコバクテリウム・パラフォルトゥイタム(M.parafortuitum)、マイコバクテリウム・パラツベルクローシス(M.paratuberculosis)、マイコバクテリウム・ブルマエ(M.brumae)、マイコバクテリウム・オーラム(M.aurum)、マイコバクテリウム・インディカス・プラニイ(M.indicus pranii)、M.w、マイコバクテリウム・マンレセンシス(M.manresensis)、マイコバクテリウム・キョガエンス(M.kyogaense)(DSM 107316/CECT 9546の下で寄託)、マイコバクテリウム・フレイ(M.phlei)、マイコバクテリウム・スメグマティス(M.smegmatis)、マイコバクテリウム・ツベルクローシス(M.tuberculosis)青山B又はH37Rv、RUTI、MTBVAC、BCG、VPM1002BC、SMP-105、Z-100、及びこれらの組み合わせから選択され、好ましくは、ブダペスト条約の下、受託番号NCTC 13365として寄託されたマイコバクテリウム・オブエンスの株である、請求項28~請求項30のいずれか一項に記載の方法。
【請求項32】
前記非病原性の生存不能なマイコバクテリウムが、加熱殺菌されている、請求項28~請求項31のいずれか一項に記載の方法。
【請求項33】
前記非病原性の生存不能なマイコバクテリウムが、ラフ型変異体である、及び/又は画分、断片、細胞成分(sub-cellular component)、溶解物、ホモジネート、超音波処理物として、若しくは実質的に全細胞の形態で提示される、請求項28~請求項32のいずれか一項に記載の方法。
【請求項34】
前記非病原性の生存不能なマイコバクテリウムが、第一選択治療として前記ヒト患者に投与され、任意に、養子細胞療法、外科的療法、化学療法、放射線療法、ホルモン療法、チェックポイント阻害剤療法、メトホルミンなどの小分子療法、チロシンキナーゼ阻害剤療法などの受容体キナーゼ阻害剤療法、温熱治療、光線療法、高周波アブレーション療法(RFA)、抗血管新生療法、サイトカイン療法、寒冷療法、生物学的療法、HDAC阻害剤(例えば、OKI-179)、BRAF阻害剤、MEK阻害剤、EGFR阻害剤、VEGF阻害剤、P13Kデルタ阻害剤、PARP阻害剤、mTOR阻害剤、低メチル化剤、腫瘍溶解性ウイルス、TLRアゴニスト(リンタトリモドなどのTLR2アゴニスト、TLR3アゴニスト、TLR4アゴニスト、TLR7アゴニスト、TLR8アゴニスト、若しくはTLR9アゴニスト、又はMRx0518(4D Pharma)などのTLR5アゴニストを含む)、STINGアゴニスト(MIW815及びSYNB1891を含む)、ミファムルチド、及びGVAX又はCIMAvaxなどのがんワクチン、並びにこれらの組み合わせ、好適にはチェックポイント阻害剤療法から選択される1又は複数の治療剤又は治療手段の投与と同時に、別々に、又は順次に、前記ヒト患者に投与される、請求項28~請求項33のいずれか一項に記載の方法。
【請求項35】
前記ヒト患者がまた、FOLFIRINOXなどの1又は複数の細胞傷害性化学療法剤をさらに投与されているか、又は以前に投与されたことがあり、任意に、前記対象が、FOLFIRINOX療法後に部分奏効又は安定(stable disease)を示した、請求項28~請求項34のいずれか一項に記載の方法。
【請求項36】
前記ヒト患者が、ゲムシタビンを投与される、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
前記ヒト患者が、nab-パクリタキセルを、任意にゲムシタビンと組み合わせて、投与される、請求項35に記載の方法。
【請求項38】
前記ヒト患者には、1又は複数のチェックポイント阻害剤も投与される、請求項28~請求項37のいずれか一項に記載の方法。
【請求項39】
前記1又は複数のチェックポイント阻害剤が、CTLA-4、PD-1、PD-L1、PD-L2、B7-H3、B7-H4、B7-H6、A2AR、IDO、TIM-3、BTLA、VISTA、TIGIT、LAG-3、CD40、KIR、CEACAM1、GARP、PS、CSF1R、CD94/NKG2A、TDO、TNFR、DcR3、CD27、CD28、CD40、CD122、CD137、0X40、GITR、ICOS、及びこれらの組み合わせに対する、好ましくはCTLA-4、PD-1、又はPD-L1に対する、細胞、タンパク質、ペプチド、抗体、二重特異性抗体、ADC(抗体-薬物複合体)、Fab断片(Fab)、F(ab’)2断片、ダイアボディ、トリアボディ、テトラボディ、プロボディ、一本鎖可変領域断片(scFv)、ジスルフィド安定化可変領域断片(dsFv)、又はその他の抗原結合断片から選択される、請求項38に記載の方法。
【請求項40】
前記1又は複数のチェックポイント阻害剤が、イピリムマブ、ニボルマブ、ペムブロリズマブ、アテゾリズマブ、BI 754091(抗PD-1)、バビツキシマブ(PSに対するIgG3 mab)、ビントラフスプアルファ、ドスタリマブ、デュルバルマブ、トレメリムマブ、スパルタリズマブ、アベルマブ、シンチリマブ、トリパリマブ、プロルゴリマブ、チスレリズマブ、カムレリズマブ、MGA012、MGD013(現在はテボテリマブとして知られている)、KN046(PD-L1/CTLA-4二重特異性抗体)、MGD019、エノブリツズマブ、MGD009、MGC018、MEDI0680、ミプテナリマブ(miptenalimab)(BI 754111、抗LAG-3)、ニモツズマブ、PDR001、FAZ053、TSR022、MBG453、レラトリマブ(BMS986016)、LAG525(IMP701)、IMP321(エフチラジモド アルファ)、REGN2810(セミプリマブ)、REGN3767、ペキシダルチニブ(PLX3397)、LY3022855、FPA008、BLZ945、GDC0919、エパカドスタット、エマクツズマブ(CSF-1Rを標的とするRG1755)、FPA150、インドキシモド、BMS986205、CPI-444、MEDI9447、PBF509、FS118(LAG-3及びPD-L1に対する二重特異性)、リリルマブ、Sym023、TSR-022、A2Ar阻害剤(例えば、EOS100850、AB928)、モナリズマブなどのNKG2A阻害剤、及びこれらの組み合わせから選択され、任意に、治療的な量及び/又は期間未満の量及び/又は期間で投与される、請求項39に記載の方法。
【請求項41】
前記非病原性の生存不能なマイコバクテリウムの投与が、前記1又は複数のチェックポイント阻害剤の投与の前及び/又は後である、請求項28~請求項40のいずれか一項に記載の方法。
【請求項42】
前記がんが、例えば膵管腺癌(PDAC)など、膀胱がん(筋層非浸潤性膀胱がんを含む)、前立腺がん、肝臓がん、腎臓がん、肺がん、乳がん、結腸直腸がん、結腸がん、直腸がん、膵臓がん、脳がん(神経膠芽腫を含む)、肝細胞がん、リンパ腫、白血病、胃がん、子宮頸がん、卵巣がん、甲状腺がん、黒色腫、頭頸部がん、皮膚がん、軟部組織肉腫、及び/又は骨肉腫から選択される、請求項28~請求項41のいずれか一項に記載の方法。
【請求項43】
前記がんが、転移性である、請求項28~請求項42のいずれか一項に記載の方法。
【請求項44】
前記がんが、(結節性病変を伴うか、又は伴わない)局在的に進行した膵臓がん、切除可能膵臓がん、切除可能境界膵臓がん、切除不能膵臓がん、チェックポイント抵抗性膵臓がん、化学療法抵抗性膵臓がん、少数転移性膵臓がん、膵管腺癌(PDAC)、及び好ましくは転移性膵管腺癌(mPDAC)から選択される膵臓がんである、請求項28~請求項43のいずれか一項に記載の方法。
【請求項45】
前記非病原性の生存不能なマイコバクテリウムが、非経口経路、経口経路、舌下経路、経鼻経路、又は肺経路を介した投与用である、請求項28~請求項44のいずれか一項に記載の方法。
【請求項46】
前記非経口経路が、皮下、皮内、節内、筋肉内、真皮下、腹腔内、静脈内、腫瘍近傍(peritumoral)、病変近傍(perilesional)、病巣内、又は腫瘍内、及びこれらの組み合わせから選択される、請求項45に記載の方法。
【請求項47】
腫瘍内投与の後に皮内投与が続いて行われる、請求項45又は請求項46のいずれか一項記載の方法。
【請求項48】
前記対象の前記パフォーマンスステータスが、前記治療方法の間及び/又は後に、同じままであるか、又は改善する、請求項28又は請求項47のいずれか一項に記載の方法。
【請求項49】
前記がんの前記治療、減少、阻害、又は制御が、(好ましくは手術後及び/又は治療終了時及び/又は前記非病原性の生存不能なマイコバクテリウムの1回、2回、3回、4回、5回、若しくは6回、又はそれを超える投与の後に評価された場合に)(i)全生存期間、(ii)無増悪生存期間、(iii)無病生存期間、(iv)全奏効率、(v)原発腫瘍サイズ及び/又は転移性疾患の減少、(vi)炭水化物抗原19.9(CA19.9)及び癌胎児性抗原(CEA)又は腫瘍に応じたその他の抗原などの腫瘍抗原の循環レベル、(vii)栄養状態(体重、食欲、血清アルブミン)、(viii)疼痛制御又は鎮痛薬使用、(ix)CRP/アルブミン比、(x)生活の質の改善、(xi)除脂肪体重の維持、(xii)悪液質の可能性又は発生率の低下、又は(xiii)ctDNAの減少又は排除、のうちの1又は複数から選択される疾患状態及び疾患進行の1又は複数のマーカーにおける臨床的に意義のある改善をもたらす、請求項1~請求項48のいずれか一項に記載の使用又は方法。
【請求項50】
原発腫瘍及び/又は非標的腫瘍を含む、前記がんの治療、減少、阻害、又は制御が、免疫関連効果判定基準(irRC)、iRECIST、REIST 1.1、又はirRECISTによって評価した場合に(好ましくは手術後及び/又は治療終了時及び/又は前記非病原性の生存不能なマイコバクテリウムの1回、2回、3回、4回、5回、若しくは6回、又はそれを超える投与の後に評価された場合に)、原発腫瘍の、腫瘍生検又は切除された原発腫瘍に存在する10%未満の生存腫瘍細胞によって実証されるほぼ完全な(subtotal)退縮、安定(stable disease)(SD)、完全奏効(CR)、又は部分奏効(PR);及び/又は1又は複数の非標的腫瘍の、腫瘍生検若しくは切除された転移性腫瘍に存在する10%未満の生存腫瘍細胞によって実証されるほぼ完全な(subtotal)退縮、安定(stable disease)(SD)、若しくは完全奏効(CR)をもたらす、請求項1~請求項49のいずれか一項に記載の使用又は方法。
【請求項51】
原発腫瘍及び/又は非標的腫瘍を含む、前記がんの前記治療、減少、阻害、又は制御が、(好ましくは手術後及び/又は治療終了時及び/又は前記非病原性の生存不能なマイコバクテリウムの1回、2回、3回、4回、5回、若しくは6回、又はそれを超える投与の後に評価された場合に)RECIST 1.1若しくはiRECISTによる無増悪生存期間の延長;RECIST 1.1若しくはiRECISTによる奏効期間(DoR)の延長;又はRECIST 1.1若しくはiRECISTによる奏効までの期間(TtR)の短縮をもたらす、請求項1~請求項50のいずれか一項に記載の使用又は方法。
【請求項52】
原発腫瘍及び/又は非標的腫瘍を含む、前記がんの前記治療、減少、阻害、又は制御が、(1)原発腫瘍又は原発がんから、前記原発腫瘍又は原発がんとは異なる1又は複数の他の部位、位置、又は領域へと生じる転移の形成又は確立を、減少又は阻害すること、(2)転移が形成又は確立された後、原発腫瘍又は原発がんとは異なる1又は複数の他の部位、位置、又は領域での転移の成長又は増殖を減少又は阻害すること、(3)転移が形成又は確立された後、さらなる転移の形成又は確立を減少又は阻害すること、(4)全生存期間を延長すること、(5)無増悪生存期間を延長すること、(6)病勢の安定化、(7)生活の質の向上、及びこれらの組み合わせを含む、請求項1~請求項51のいずれか一項に記載の使用又は方法。
【請求項53】
前記対象が、50歳以上、55歳以上、60歳以上、65歳以上、70歳以上、75歳以上、80歳以上、85歳以上、若しくは90歳以上、又はそれ以上の年齢のヒト患者である、請求項1~請求項52のいずれか一項に記載の使用又は方法。
【請求項54】
前記ヒト患者が、70歳以上である、請求項53に記載の使用又は方法。
【請求項55】
前記対象が、ECOGスケールにおける0、1、1-、2、2+、3、又は4のパフォーマンスステータスを有するとして臨床的に分類され、ヒト患者であり、70歳以上である、対象におけるがんの治療、減少、阻害、又は制御に使用するための非病原性の生存不能なマイコバクテリウム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、がん治療の分野に関する。特に、本発明は、マイコバクテリウム(Mycobacterium)調製物を使用して対象における腫瘍及び/又は転移の発生を予防、治療、又は阻害する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
進行がんを有するヒトでは、抗腫瘍免疫は、炎症促進性シグナル及び抗炎症性シグナル、免疫刺激性シグナル及び免疫抑制性シグナルの厳密に制御された相互作用のために無効であることが多い。例えば、抗炎症性シグナルの喪失は、慢性炎症及び長期の増殖性シグナル伝達をもたらす。興味深いことに、腫瘍細胞の増殖を促進及び抑制するサイトカインが腫瘍部位で産生される。腫瘍促進をもたらすのは、これらの様々なプロセスの効果の間の不均衡である。
【0003】
膵臓がんは、がん死の3番目に一般的な原因である。診断から死亡までの平均余命は、約6か月~12か月である。残念なことに、低い生存率は、がん発症の初期段階における症状の欠如に起因する。したがって、症状が現れるまでに、膵臓がんは既に転移し始めており、膵臓がんの治療に成功することは困難である。
【0004】
今日まで、膵臓がんなどのがんのための有効な免疫療法を開発しようとする試みに対する主な障壁は、がん部位で免疫抑制を中断し、免疫反応性の正常なネットワークを回復させることができないことであった。免疫療法の生理学的アプローチは、例えば、内因性腫瘍抗原が認識され、腫瘍細胞に対して効果的な細胞溶解応答が発現されるように、免疫反応性を正常化することである。腫瘍免疫監視が存在するかどうかは、かつては不明であったが、現在では、免疫系が新たにがん化した細胞を絶えずモニターし、排除すると考えられている。したがって、がん細胞は、攻撃を回避し(免疫編集)、阻害性シグナルの発現を上方制御するために、免疫圧に応答してそれらの表現型を変化させ得る。免疫編集及び他の破壊的プロセスを通して、原発腫瘍及び転移がんはそれら自体の生存を維持する。
【0005】
PD-1及び共阻害性受容体、例えば細胞傷害性Tリンパ球抗原4(CTLA-4)、B及びTリンパ球アテニュエーター(BTLA;CD272)、T細胞免疫グロブリン及びムチンドメイン-3(Tim-3)、リンパ球活性化遺伝子3(Lag-3;CD223)、並びにその他は、チェックポイント制御因子と呼ばれることが多い。それらは、分子「料金所」として作用し、細胞周期進行及び他の細胞内シグナル伝達プロセスを進めるべきかどうかを細胞外情報が指示することを可能にする。T細胞受容体(TCR)を介した特異的抗原認識に加えて、T細胞活性化は、共刺激受容体によって提供される正のシグナルと負のシグナルのバランスによって制御される。これらの表面タンパク質は、通常、TNF受容体又はB7スーパーファミリーのいずれかのメンバーである。活性化共刺激分子に対するアゴニスト抗体及び負の共刺激分子に対する遮断抗体は、T細胞刺激を増強して腫瘍破壊を促進し得る。
【0006】
PD-1に対して特異的な2つのリガンド、すなわち、プログラム死リガンド1(PD-L1、B7-H1又はCD274としても知られる)及びPD-L2(B7-DC又はCD273としても知られる)が、同定されている。PD-L1及びPD-L2は、マウス系及びヒト系の両方において、PD-1に結合するとT細胞活性化を下方制御することが示されている。抗原提示細胞(APC)及び樹状細胞(DC)上で発現されるPD-1とそのリガンドPD-L1及びPD-L2との相互作用は、活性化T細胞免疫応答を下方調節するための負の制御性刺激を伝達する。PD-1の遮断は、この負のシグナルを抑制し、T細胞応答を増幅する。
【0007】
PD-L1/PD-1シグナル伝達経路は、いくつかの理由でがん免疫回避の主要な機構である。第一に、最も重要なことに、この経路は、末梢に見られる活性化Tエフェクター細胞の免疫応答の負の制御に関与する。第二に、PD-L1はがん微小環境において上方制御され、PD-1は活性化腫瘍浸潤T細胞においても上方制御され、したがって阻害の悪循環を増強する可能性がある。第3に、この経路は、双方向シグナル伝達を介して自然免疫制御と適応免疫制御の両方に複雑に関与している。これらの因子により、PD-1/PD-L1複合体は、がんが免疫応答を操作し、それ自体の進行を促進することができる中心点となる。
【0008】
臨床治験で試験された最初の免疫チェックポイント阻害剤は、CTLA-4 mAbであるイピリムマブ(Yervoy、Bristol-Myers Squibb)であった。CTLA-4は、PD-1、BTLA、TIM-3、及びT細胞活性化のVドメイン免疫グロブリン制御因子(VISTA)も含む受容体の免疫グロブリンスーパーファミリーに属する。抗CTLA-4 mAbは、ナイーブ細胞及び抗原経験細胞の両方から「中断」を除去する強力なチェックポイント阻害剤である。治療は、CD8+T細胞の抗腫瘍機能を増強し、Foxp3+T制御性細胞に対するCD8+T細胞の割合を増加させ、T制御性細胞の抑制機能を阻害する。抗CTLA-4 mAb治療の主な欠点は、自己免疫毒性の発生である
【0009】
TIM-3は、疲弊したCD8+T細胞によって発現される別の重要な阻害性受容体として同定されている。がんのマウスモデルでは、最も機能不全の腫瘍浸潤CD8+T細胞が実際にPD-1及びTIM-3を共発現することが示されている。
【0010】
LAG-3は、エフェクターT細胞の機能を制限し、T制御性細胞の抑制活性を増強するように作用する、近年同定された別の阻害性受容体である。最近、PD-1及びLAG-3が、マウスにおいて腫瘍浸潤性T細胞によって広範囲に共発現され、PD-1及びLAG-3の併用遮断が、がんのマウスモデルにおいて強力な相乗的抗腫瘍免疫応答を誘発することが明らかになった。
【0011】
がん患者は、疾患が患者の日常生活能力にどの程度影響するかを確認するための標準的な基準に対して評価されることが多い。この評価は、患者のパフォーマンスステータス(PS)として知られている。最も一般的な標準化された評価は、米国東海岸癌臨床試験グループ(ECOG)によって開発され、1982年に発表された。ECOGスケールは、自身をケアする能力、日常活動及び歩行又は仕事などの身体能力に関して、患者の機能レベル又はパフォーマンスステータスを表す。また、がん治療中の介入の結果としての患者の機能レベルの変化を医療従事者が追跡する方法でもある。PS0のスコアは、疾患がないことを示し、PS5のスコアは死亡を示す。
【0012】
膵管腺癌(PDAC)は、診断時の年齢の中央値は71歳であり、より高齢の集団のがんである。2030年までに、西洋諸国のPDAC患者の70%が高齢患者(>70歳の年齢)になると予測されるだろう。PDACの症例の大部分に寄与しているにもかかわらず、高齢患者は臨床治験において一貫して十分に代表されておらず、転移性PDACのこの集団の治療は常に難題である。
【0013】
IMM-101は、自然免疫系及び適応免疫系を調節し、1型免疫応答を回復させ、2型免疫応答を下方制御し得るホウ酸緩衝生理食塩水中の懸濁液として通常は調製される、加熱殺菌マイコバクテリウム・オブエンス(Mycobacterium obuense)を含む治験用免疫調節薬である。膵臓がんのマウス遺伝子操作マウスモデルでは、IMM-101は生存期間を延長した。IMM-101はまた、末梢及び全身の腫瘍部位でT細胞及び細胞傷害性CD8+細胞の活性化を誘導した。延命効果は、中和抗体を使用した枯渇実験から、CD8+T細胞に由来することが実証されている。IMM-101は、樹状細胞(DC)のような自然免疫細胞上のtoll様受容体(TLR)1/2を含む病原体認識受容体(PRR)の定義された選択を活性化する微生物関連分子パターン(MAMP)を含む(Bazzi et al. 2017、Galdon et al. 2019)。未成熟DCのIMM-101活性化は、活性化cDC1の歪んだ成熟をもたらし、その活性化は、有効な腫瘍細胞死滅に必要なIFN-γ、パーフォリン及びグランザイム産生CTL(Galdon et al., 2019)の生成及び成熟によって定義される1型免疫応答を主に誘導する。IMM-101誘導性cDC1活性化はまた、活性化IFN-γ産生Th-1細胞であるNK細胞、NKT細胞、及びγδ-T細胞の生成をもたらし(Fowler et al., 2014;Galdon et al., 2019)、これらは異なる機構によって腫瘍細胞を死滅させることができる。活性化γδ-T細胞は、効率的な抗原提示細胞であり(Moser et al., 2017)、抗腫瘍応答をさらに高めることができる。IMM-101はまた、抗腫瘍応答を増強し、免疫抑制性M2マクロファージの形成を防ぐことができるM1マクロファージに成熟する単球を含む他の自然免疫細胞を活性化する(Bazzi et al. 2015)。
【0014】
膵臓がんマウスモデル(KPCとして知られているKras、p53、及びPdx-Creにおける変異)を使用する場合、ゲムシタビンとIMM-101の組み合わせは、肝臓及び腹膜における転移がんの形成を有意に減少させた。転移性膵臓がん患者を含む第II相治験では、ゲムシタビン治療へのIMM-101の追加により、全生存期間が4.4か月から7.0か月に有意に改善され、一部の長期生存者が見られた。さらに、IMM-101は、1型に偏った刺激を介して樹状細胞を刺激して、活性化表現型に成熟させることができた。CD103(+)樹状細胞は、完全な抗原をリンパ節に輸送し、腫瘍特異的CD8(+)T細胞をプライミングする唯一の抗原提示細胞であったので、この1型免疫応答はまた、免疫チェックポイント阻害剤(CPI)の最適な有効性の必要条件であることが示されている。インビボ骨髄由来細胞(BMDC)移植モデルを使用して、IMM-101処理樹状細胞(DC)の投与が、IFNガンマ及びIL-17を誘導し、DC抗原プロセシング及び提示能力を増強することが実証されている。PD-1抗体と組み合わせたIMM-101の投与は、抗PD-1単独と比較して、抗PD-1と組み合わせた腫瘍内CD8 T細胞/Treg比の有意な増加を通して、乳がん及び膵臓がんの同系モデルにおける腫瘍負荷を減少させることも実証された。
【0015】
これらの組み合わせは、膵臓がんを含む様々ながんの治療において有効性が実証されているが、それらの毒性プロファイルのために、有効な化学療法を受けるには脆弱すぎる、高齢すぎる、又は不適合であると考えられる患者に適した定義された治療レジメンが依然として不足している。
【0016】
欧州臨床腫瘍学会(ESMO)のガイドラインは、転移性膵管腺癌(mPDAC)及びECOG PSが0又は1の患者に、アルブミン結合パクリタキセル(Nab-P)と組み合わせたゲムシタビン(Gem)、又は注入5-フルオロウラシル(5-FU)、ロイコボリン/フォリン酸(LV)、イリノテカン、及びオキサリプラチン(FOLFIRINOX)による第一選択治療を受けることを推奨している。あまり適格でない患者(PS≦2)又は70歳を超える患者は一般に、ゲムシタビン単剤療法を、任意にnab-パクリタキセルと組み合わせて短期間(副作用のため)受けるか、又はより悪いPS又は併存症を有する患者における最良の支持療法を含む他のより毒性の低いレジメンが提供される。
【0017】
PS≦2又は70歳を超える患者が、いくつかの研究の焦点であった。最近、Macarullaらは(Pancreas. 2020;49(3):393-407)、転移性PDAC又はPS≦2であった局在的進行性PDACを有する患者において、nab-パクリタキセルと組み合わせたゲムシタビン(Gem/Nab-P)の異なるレジメンを評価した。100人を超える患者が評価され、治験は、28日ごとに1日目、8日目、及び15日目に投与される、100mg/m又は125mg/mのnab-パクリタキセルとゲムシタビン1000mg/mの用量で、Gem/Nab-Pが、これらの患者において十分に忍容性であると決定した。さらに、所見はより大きな患者群で検証されるべきままであるが、このレジメンは有効性を示した。
【0018】
したがって、FOLFIRINOX(フォリン酸、フルオロウラシル、イリノテカン塩酸塩、及びオキサリプラチンの組み合わせ)、nab-パクリタキセル(Abraxane(登録商標))+ゲムシタビンは、ECOGパフォーマンスステータスが0及び1しかない転移性膵管腺癌(mPDAC)患者にとって、好ましい第一選択治療である。これらの治療は、その毒性プロファイルのために、PS2以上のスコアを有する多くの国の患者には禁忌であることが多い。しかしながら、新規の転移性疾患を示す患者のほぼ50%は、より低いパフォーマンススコアであり、積極的介入に関して非常に限られた選択肢しかない。ゲムシタビンなどの単剤化学療法剤は、せいぜい、既に制限されている生活の質と患者の健康を悪化させる可能性がある毒性レジメンへの対処との間のトレードオフにおいて、中程度の利益をもたらす。患者のこの下位群は、これらの組み入れ基準及び除外基準のために、臨床治験環境では伝統的に十分に扱われていない。
【0019】
したがって、このようなPS1-、2、3、及び4の患者には、新規の忍容可能な併用療法が緊急に必要とされている。
【発明の概要】
【0020】
本発明は、ECOGスケールに従って臨床的に分類されるか、又は多数の化学療法レジメンに耐えるのに十分に適格ではないと分類される特定のクラスの患者に、マイコバクテリウム調製物を投与することによって、対象のがんを治療、減少、阻害、又は制御する有効な方法を提供する。
【0021】
本発明の第1の態様では、対象におけるがんの治療、減少、阻害、又は制御に使用するための非病原性の生存不能な全細胞マイコバクテリウムが提供され、ここで、前記対象は、ECOGスケールにおける1-、2、3、又は4のパフォーマンスステータスを有するとして臨床的に分類される。
【0022】
本発明の第2の態様では、対象におけるがんの治療、減少、阻害、又は制御に使用するための非病原性の生存不能な全細胞マイコバクテリウムが提供され、ここで、前記対象は、2以上の化学療法レジメンに耐える年齢でない及び/又は耐えるのに十分に壮健でないと分類され、任意に(optionally)、ゲムシタビン及びnab-パクリタキセルを投与されるのに適格であると考えられる、ヒト患者である。
【0023】
本発明の第3の態様では、対象におけるがんの治療、減少、阻害、又は制御に使用するための非病原性の生存不能なマイコバクテリウムが提供され、ここで、前記対象はヒト患者であり、非病原性の生存不能なマイコバクテリウムは、マイコバクテリウム・オブエンス(M.obuense)NCTC 13365であり、前記ヒト対象には、ヌクレオシド代謝阻害剤、好ましくはゲムシタビンが、同時に、別々に、又は順次に投与され、1又は複数のチェックポイント阻害剤、好ましくはペムブロリズマブがさらに投与され、対象が、米国東海岸癌臨床試験グループ(ECOG)スケールにおける、1-、2、3、又は4のパフォーマンスステータスを有するとして臨床的に分類される。
【0024】
本発明の第4の態様では、対象のがんを治療、減少、阻害、又は制御する方法が提供され、ここで、前記対象はヒト患者であり、前記方法は、(i)1又は複数の治療剤及び/又はがん治療、並びに(ii)非病原性の生存不能なマイコバクテリウムを、対象に同時に、別々に、又は順次に投与することを含み、前記方法は、1又は複数の治療剤及び/又はがん治療の単独の投与と比較して治療有効性の向上をもたらし、ヒト患者が、米国東海岸癌臨床試験グループ(ECOG)スケールにおける1-、2、3、又は4のパフォーマンスステータスを有するものとして臨床的に分類される。
【0025】
本発明の第5の態様では、対象のがんを治療、減少、阻害、又は制御する方法が提供され、ここで、前記対象はヒト患者であり、前記方法が、(i)1又は複数の治療剤及び/又はがん治療、並びに(ii)非病原性の生存不能なマイコバクテリウムを、対象に同時に、別々に、又は順次に投与することを含み、前記方法は、1又は複数の治療剤及び/又はがん治療の単独の投与と比較して治療有効性の向上をもたらし、前記ヒト患者は、米国東海岸癌臨床試験グループ(ECOG)スケールにおける1-、2、3、又は4のパフォーマンスステータスを有するものとして臨床的に分類され、前記ヒト患者は、2以上の化学療法レジメンに耐える年齢でない及び/又は耐えるのに十分に壮健でないと分類され、任意に、ゲムシタビン及びnab-パクリタキセルを投与されるのに適格であると考えられる。
【0026】
本発明の第6の態様では、対象におけるがんの治療、減少、阻害、又は制御に使用するための非病原性の生存不能なマイコバクテリウムが提供され、前記対象は、ECOGスケールにおける、0、1、1-、2、2+、3、4のパフォーマンスステータスを有するとして臨床的に分類され、ヒト患者であり、70歳以上である。
【0027】
したがって、本発明は、対象におけるがんの治療、減少、阻害、又は制御に使用するための病原性の生存不能な全細胞マイコバクテリウムを、前記マイコバクテリウムの投与によって前記がんを治療する方法と共に提供する。本発明者らは、予想外にも、ECOGスコア及び/又は年齢において以前に禁忌であった、特定のカテゴリーの患者へのマイコバクテリウムの投与が、化学療法的治療の過程で特に有効であることを見出した。これは、この群の患者が化学療法的治療に耐えるのに十分な能力又は耐性がないことを示唆する歴史的知見とは反対である。
【0028】
本発明は、以下の図面を参照して説明される。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1】IMM-101の治療スケジュールを示す図である。0週目、2週目及、び4週目に1mgを皮内投与、次いで8週目から0.5mgをQ3Wで皮内投与。ペムブロリズマブ;2週目から200mgをQ3WでIV投与。ゲムシタビン;実施例1において、2週目から21日ごとに1日目及び8日目に1000mg/mを静脈内投与。
図2】実施例2において、不良なパフォーマンスステータス(PS)、又は転移性膵管腺癌(mPDAC)を有する高齢患者における第一選択治療として、ゲムシタビン及びnab-パクリタキセル(Gem/Nab-P)と組み合わせたIMM-101の安全性及び有効性を調査する臨床治験の概略図を示す。
図3】本発明の組み合わせ、具体的にはマイコバクテリウム・オブエンスとチェックポイント阻害剤(抗PD-L1)であるアテゾリズマブの組み合わせのアジュバント(手術後)使用を、オキサリプラチンに不適格であるか又は前記薬剤を拒絶し、ECOGパフォーマンスステータスが0、1、又は2である、ステージIII、R0切除、MSI-high/dMMR患者の治療において調査する臨床治験の概略図を示す(実施例4を参照のこと)。
図4】本発明の組み合わせ、具体的にはマイコバクテリウム・オブエンスとチェックポイント阻害(抗PD-L1)であるアテゾリズマブとの組み合わせのネオアジュバント(術前)使用及びアジュバント(手術後)使用をペリアジュバントレジメンと共に、オキサリプラチンに不適格であるか又は前記薬剤を拒絶し、ECOGパフォーマンスステータスが0、1、又は2であるステージIIIの切除可能なMSI-high/dMMR患者の治療において調査する臨床治験の概略図/フローチャートを示す(実施例5を参照のこと)。
【発明を実施するための形態】
【0030】
本発明は、対象におけるがんの治療、減少、阻害、又は制御に使用するための非病原性の生存不能な全細胞マイコバクテリウムを提供し、ここで、対象は、ECOGスケールにおける1-、2、3、又は4のパフォーマンスステータスを有するとして臨床的に分類される。任意に、ヒト患者は、2以上の化学療法レジメンに耐える年齢でない及び/又は耐えるのに十分に壮健でないと分類される。ヒト患者はまた、ゲムシタビン及びnab-パクリタキセルを投与されるのに適格であると考えられ得る。これは、標準化された化学療法レジメンに耐えるのに適合しないと臨床的に分類された患者へのマイコバクテリウムの投与が、予想外に応答性であり、及び/又は化学療法的治療に耐えることができるという発見に基づいている。
【0031】
本発明がより容易に理解され得るように、特定の用語が最初に定義される。さらなる定義は、詳細な説明を通して記載される。
【0032】
「腫瘍」、「がん」、及び「新生物」という用語は互換的に使用されてよく、その成長、増殖、又は生存が、正常な対応細胞の成長、増殖、又は生存よりも大きい細胞又は細胞集団、例えば、細胞増殖障害又は細胞分化障害を指す。通常は、成長は制御されない。「悪性」という用語は、近くの組織の浸潤を指す。「転移」という用語は、対象内の他の部位、位置、又は領域への腫瘍、がん、又は新生物の拡散又は播種を指し、その部位、位置、又は領域は、原発腫瘍又は原発がんとは別個であり、及び/又はそれから離れている。
【0033】
「非転移性」という用語は、患者の原発腫瘍、結節、又はがんと比較して、2-デオキシ-2-[フッ素-18]フルオロ-D-グルコース(18F-FDG)を用いたCT、MRI、又は陽電子放射断層撮影法(PET)スキャンによって判定された場合に、遠隔転移又は残存疾患がないことを指す。
【0034】
用語「プログラム死1」、「プログラム細胞死1」、「タンパク質PD-1」、「PD-1」、及び「PD1」は、互換的に使用され、ヒトPD-1の変異体、アイソフォーム、種ホモログ、及びPD-1と少なくとも1つの共通エピトープを有する類似体を含む。「チェックポイント阻害剤」は、TNF受容体又はB7スーパーファミリーのいずれかのメンバーである表面タンパク質に作用する薬剤であり、CTLA-4、PD-1、PD-L1、PD-L2、B7-H3、B7-H4、B7-H6、A2AR、IDO、TIM-3、BTLA、VISTA、TIGIT、LAG-3、KIR、CD40、CEACAM1、GARP、PS、CSF1R、CD94/NKG2A、TDO、TNFR、DcR3、CD27、CD28、CD40、CD122、CD137、0X40、GITR、ICOS、及びこれらの組み合わせに対する、細胞、タンパク質、ペプチド、抗体、二重特異性抗体、ADC(抗体-薬物複合体)、Fab断片(Fab)、F(ab’)2断片、ダイアボディ、トリアボディ、テトラボディ、プロボディ、一本鎖可変領域断片(scFv)、ジスルフィド安定化可変領域断片(dsFv)、又はこれらの他の抗原結合断片から選択される、負の共刺激分子に結合する薬剤を含む。「遮断剤」は、上記の共刺激分子及び/又はこれらのそれぞれのリガンドに結合する薬剤である。「チェックポイント阻害剤」及び「遮断剤」は、全体を通して互換的に使用することができる。阻害剤は、好ましくは、表面タンパク質上の抗原部位を標的とする抗体又は抗原結合分子である。例えば、阻害剤は、PD-L1、又はPD-1若しくはCTLA-4上の抗原部位を標的とする抗体である。
【0035】
本明細書で使用される場合、「治療的な用量未満の用量」は、がんの治療のために単独で投与される場合、治療化合物(例えば、抗体)の用量又は治療手段又は治療期間が、治療化合物の通常の若しくは典型的な用量よりも低い又はより短い治療期間の治療若しくは治療手段を意味する。
【0036】
「治療有効量」という用語は、好ましくは疾患症状の重症度の減少、疾患症状のない期間の頻度及び持続期間の増加、又は疾患の罹患による機能障害若しくは能力障害の予防をもたらす、免疫調節薬と組み合わせたチェックポイント阻害剤を含む、1又は複数の治療剤又は治療手段の量として定義される。「有効量」又は「薬学的有効量」という用語は、所望の生物学的又は治療的な結果を提供するのに十分な量の薬剤を指す。その結果は、疾患の徴候、症状、又は原因のうちの1又は複数の減少、改善、緩和、軽減、遅延、及び/又は緩和、又は生物系の任意の他の所望の変化であり得る。がんに関して、有効量は、腫瘍を縮小させる及び/又は腫瘍の成長速度を低下及び/又は安定化させる(腫瘍成長を抑制するなど)又は他の望ましくない細胞増殖を予防若しくは遅延させるのに十分な量を含み得る。いくつかの実施形態では、有効量は、がん又は腫瘍の発生を遅延させるか、又は生存を延長するか、又は安定化を誘導するのに十分な量である。
【0037】
いくつかの実施形態では、治療有効量は、再発を予防又は遅延させるのに十分な量である。治療有効量は、1又は複数の投与で投与され得る。治療有効量の1又は複数の治療剤若しくは治療手段又はこれらの組み合わせは、(i)がん細胞の数を減少させる;(ii)腫瘍サイズを縮小させる;(iii)末梢器官へのがん細胞浸潤を阻害、遅延、ある程度遅らせる、好ましくは停止させる;(iv)腫瘍転移を阻害する(すなわち、ある程度遅らせる、好ましくは停止させる);(v)腫瘍成長を阻害する;(vi)腫瘍の発生及び/又は再発を予防又は遅延させる;及び/又は(vii)がんに関連する1又は複数の症状をある程度軽減する、のうちの1又は複数をもたらし得る。例えば、腫瘍の治療のため、「治療有効投与量」は、ベースライン測定値に対して約5%以上、例えば約10%以上、約20%、又は約60%以上の腫瘍縮小を誘導し得る。ベースライン測定値は、未処置対象に由来し得る。治療有効量の治療化合物は、対象の腫瘍サイズを減少させるか、そうでなければ症状を改善することができる。当業者は、対象のサイズ、対象の症状の重症度、及び選択された特定の組成物又は投与経路などの因子に基づいてそのような量を決定することができるであろう。
【0038】
「免疫応答」という用語は、例えば、リンパ球、抗原提示細胞、貪食細胞、顆粒球、及び上記細胞又は肝臓によって産生される可溶性高分子(抗体、サイトカイン、及び補体を含む)の作用であって、がん性細胞への選択的損傷、がん性細胞の破壊、又はがん性細胞の人体からの排除をもたらす作用を指す。
【0039】
「有効量」又は「薬学的有効量」という用語は、所望の生物学的又は治療的な結果を提供するのに十分な量の薬剤を指す。その結果は、がんの徴候、症状、又は原因のうちの1又は複数の減少、改善、緩和、軽減、遅延、及び/又は緩和、又は生物系の任意の他の所望の変化であり得る。がんに関して、有効量は、腫瘍を縮小させる及び/又は腫瘍の成長速度を低下させる(腫瘍成長を抑制するなど)、又は他の望ましくない細胞増殖を予防若しくは遅延させるのに十分な量を含み得る。いくつかの実施形態では、有効量は、がん又は腫瘍の発生を遅延させるか、生存を延長するか、又は安定化を誘導するのに十分な量である。好ましくは、治療有効性は、安定(stable disease)(SD)、標的腫瘍の完全奏効(CR)、又は部分奏効(PR);及び/又は1又は複数の非標的腫瘍の安定(SD)、部分奏効(PR)、若しくは完全奏効(CR)を含む、RECIST 1.1によって定義されるような、1又は複数の前記腫瘍の腫瘍サイズの減少又は安定化によって測定される。あるいは、治療有効性は、当業者に知られているように、免疫関連効果判定基準(irRC)、iRECIST、又はirRECIST、及び治療に対する応答を決定するために公知又は開発された他の測定基準によって評価される。
【0040】
「チェックポイント阻害剤」、「免疫調節薬」、又は「免疫療法」という用語は、本発明を実施する際の、細胞、ウイルス、溶解物、ベクター、遺伝子、mRNA、DNA、核酸、タンパク質、ポリペプチド、ペプチド、抗体、二重特異性抗体、多重特異性抗体、ADC(抗体-薬物複合体)、Fab断片(Fab)、F(ab’)2断片、ダイアボディ、トリアボディ、テトラボディ、プロボディ、一本鎖可変領域断片(scFv)、ジスルフィド安定化可変領域断片(dsFv)、又はこれらの他の抗原結合断片の使用をさらに含み得る。阻害剤は、好ましくは抗体である。
【0041】
本明細書で言及される「抗体」という用語は、全抗体及び任意の抗原結合断片(すなわち、「抗原結合部分」)又はその単鎖を含む。
【0042】
「生存不能(non-viable)」とは、マイコバクテリウムが、細胞死滅の特定の手段によって、微生物学的に不活性化されていることを意味する。そのような生存不能を可能にする又は強制する方法は、加熱殺菌、長期凍結乾燥(トレリスSA)、ガンマ線若しくは電子ビームによる照射、又はマイコバクテリアをホルムアルデヒドなどの化学物質にさらすことを含み得る。製造中のそのような調製は、生物が、生きている又は弱毒化した生物を送達することから知られている副作用に、関連していないことを意味するだろう。
【0043】
「処置」又は「治療」という用語は、状態(例えば、疾患)、状態の症状を治癒する、治す、緩和する、軽減する、変化させる、治療する、改善する、改良する、若しくは影響を与える目的で、又は症状、合併症、疾患の生化学的徴候の発症を予防する若しくは遅延させる、若しくは統計学的に有意な様式で疾患、状態、若しくは障害のさらなる発症を停止させる若しくは阻害する目的で、活性剤を投与することを指す。
【0044】
本明細書で使用される場合、「対象」又は「患者」という用語は、ヒト及び非ヒト動物を含むことを意図している。好ましい対象には、免疫応答の増強を必要とするヒト患者が含まれる。本方法は、T細胞媒介性免疫応答を増強することによって治療され得る障害を有するヒト患者を治療するのに特に適している。特定の実施形態において、本方法は、インビボでのがん細胞の治療に特に適している。
【0045】
本明細書で使用される場合、「同時投与」、「同時に(concurrently)」又は「同時の(simultaneous)」という用語は、投与が同日に行われることを意味する。「順次投与」、「順次に」、又は「別々の」という用語は、投与が異なる日に行われることを意味する。
【0046】
本明細書で定義される「同時」投与には、非病原性の生存不能なマイコバクテリウム、及びチェックポイント阻害剤療法を含む、1又は複数の治療剤又は治療手段を、互いに約2時間以内又は約1時間以内に、さらにより好ましくは同時に投与することが含まれる。
【0047】
「別々の」投与は、本明細書で定義されるように、非病原性の生存不能なマイコバクテリウム、及びチェックポイント阻害剤療法を含む、1又は複数の治療剤又は治療手段を、約12時間以上、約8時間以上、約6時間以上、約4時間以上、又は約2時間以上の間隔で投与することを含む。
【0048】
「順次」投与は、本明細書で定義されるように、非病原性の生存不能なマイコバクテリウム、及びチェックポイント阻害剤療法又は化学療法剤を含む、1又は複数の治療剤又は治療手段を、それぞれ複数のアリコート及び/又は用量で、及び/又は別々の時に投与することを含む。非病原性の生存不能なマイコバクテリウムは、チェックポイント阻害剤療法を含む、1又は複数の治療剤又は治療手段の投与前及び/又は投与後に患者に投与され得る。あるいは、非病原性の生存不能なマイコバクテリウムは、チェックポイント阻害剤療法を含む、1又は複数の治療剤又は治療手段による治療後に患者に適用され続ける。
【0049】
本明細書で使用される場合、「治療」は、原発腫瘍の退縮若しくは安定化、及び/又は1又は複数の転移がんの退縮若しくは安定化、又は1又は複数の転移若しくは微小転移の予防若しくは阻害を含む、新生物性疾患の予防、減少、制御、及び/又は阻害を包含する。
【0050】
代替形態(例えば、「又は」)の使用は、代替形態のいずれか1つ、両方、又はそれらの任意の組み合わせを意味すると理解されるべきである。本明細書で使用される場合、不定冠詞「a」又は「an」は、列挙された又は列挙された構成要素の「1又は複数」を指すと理解されるべきである。
【0051】
本明細書で使用される場合、「約」は、当業者によって決定される特定の値の許容され得る誤差範囲内を意味し、これは、値の測定又は決定方法、すなわち、測定システムの制限に部分的に依存するであろう。例えば、「約」は、当技術分野における実施ごとに1標準偏差以内又は1標準偏差を超えることを意味することができる。あるいは、「約」は、最大20%の範囲を意味することができる。特定の値が本出願及び特許請求の範囲に提供される場合、特に明記しない限り、「約」の意味は、その特定の値の許容され得る誤差範囲内にあると仮定すべきである。
【0052】
本発明の一部として、対象は、ECOGスケールにおける1-、2、3、又は4のパフォーマンスステータスを有するものとして分類される。ECOGスケールは、Zubrodスケール又はWHOスケールとしても知られており、したがって、そのような用語と交換可能である。「パフォーマンスステータス」及び「PS」はまた、全体を通して互換的に使用される。ECOGスケールは、以下の表に詳述されているように、PS0~PS5である。いくつかの実施形態では、PS1-の値は、PS1とPS2との間の整数及びステータスを表し、それにより、患者は、PS2ほど重度の行動の全ての態様を示しておらず、PS1として分類される行動の全ての態様を示していない。同様に、PS2+の指定は、PS2とPS3との間の整数及びステータスを表す。パフォーマンスステータスのさらなる臨床分類方法は、カルノフスキー尺度としても知られており、0~100であり、100は疾患の非存在であり、0は死亡である。
【0053】
パフォーマンスステータスを評価するためには、通常、2人の臨床観察者が必要である。2つのスコアの間に何らかの不一致がある場合は、最も高い(最悪の)評価が使用される。パフォーマンスステータスはまた、当業者に知られているように、患者の腫瘍負荷、疼痛レベル、及び他のパラメータに従って、臨床診療において割り当てられ得る。
【0054】

【表1】
【0055】
60以上のカルノフスキー尺度値は、PS2、3、4、又は5のECOGスケール読み取り値と同等であり得る。あるいは、マイコバクテリウムの投与の標的とされる対象又はヒト患者は、代替的に、2以上の化学療法レジメンに耐えるのに十分に壮健でないと分類され得る。2以上の化学療法レジメンに耐える年齢でない及び/又は耐えるのに十分に壮健でないと分類され、任意に、ゲムシタビン及びnab-パクリタキセルを投与されるのに適格であると考えられる、対象は、ECOGスケールにおけるPS2、3、若しくは4のスコア、好適にはPS2のスコアを有する対象若しくは患者と同等であるか、又はカルノフスキー尺度による60以上のスコア、例えば70のスコアを有する対象若しくはヒト患者と同等であると考えられ得る。
【0056】
本発明による化学療法レジメンは、単一の化学療法剤又は複数の化学療法剤の投与であり、任意に、他の治療剤と同時に、別々に、又は順次に投与される。レジメンは、1日に複数回、週に複数回、月に複数回、又は年に複数回繰り返されてもよい。化学療法剤は細胞傷害性であってよく、これにより1又は複数の細胞機構を妨害することによって細胞死を引き起こされる可能性があると定義される。
【0057】
マイコバクテリウム・ワクカエ及びマイコバクテリウム・オブエンスは、宿主において複雑な免疫応答を誘導することが示されている。これらの調製物による処置は、Th1及びマクロファージ活性化並びに細胞傷害性細胞活性を含む、自然免疫及び1型免疫を刺激する。それらはまた、免疫制御機構を介して不適切なTh2応答を独立して下方制御する。がんに関連して、IMM-101の観察された抗腫瘍効果が、膵臓がんモデルにおけるCD8+T細胞の枯渇によって、完全に抑止され得ることから、IFN-y産生CTLの形成は、IMM-101処置からの最も重要な結果である可能性が高い。
【0058】
マクロファージを活性化するIMM-101の能力は、炎症促進性マクロファージ由来サイトカイン(DCを1型免疫応答に偏向させるために必要なIL-12など)の放出を介してDCの活性化を補助するだけでなく、腫瘍関連免疫抑制性2型マクロファージを腫瘍攻撃性1型マクロファージに変化させるために重要であり得る。この後者の特徴は、同様の加熱殺菌されたマイコバクテリウム、マイコバクテリウム・インディカス・プラニイについて示された。
【0059】
IMM-101の重要な特徴は、DCを活性化し、cDC1(すなわち、1型免疫応答に必要とされるDC)として知られる樹状細胞のサブクラスに成熟させる能力である。十分な数のcDC1の活性化が、CPIが効果的であるための前提条件であることが示されている。
【0060】
高頻度マイクロサテライト不安定性(MSI)結腸直腸がんにおけるチェックポイント阻害剤の術前短時間投与は、高い割合の病理学的退縮を誘導することが示されている。最近提示された小規模な探索的第II相試験(Chalabi et al.2018, immunotherapy of cancer 29:8)では、CTLA-4抗体であるイピリムマブ及びPD-1抗体であるニボルムマブの6週間の術前投与は、完全又は完全に近い病理学的寛解をもたらすことが示され、ネオアジュバント治療がいくつかのがん症状に対して特に有効であり得ることを示唆している。
【0061】
本発明はまた、IMM-101を、他の化学療法剤を使用して、又は使用せずに、驚くほど好ましいネオアジュバント処置、又はアジュバント処置、又はペリアジュバント処置として使用して、腫瘍切除手術又はがんのチェックポイント阻害剤療法を受けることを意図した患者の好ましくない予後を改善するプロトコルを提供する。そのような患者には、結腸直腸がんを有する患者、又はマイクロサテライト不安定性(MSI)を伴うか、又は伴わない、ミスマッチ修復機能不全(dMMR)がんを有する患者が含まれ得る。
【0062】
本発明のさらなる態様では、がんは、PCRベースのアッセイによって測定される場合、及び/又はがんがDNAミスマッチ修復(MMR)タンパク質発現の分析のためのIHC染色される場合、高頻度マイクロサテライト不安定性(MSI)と判定される。本発明のある態様では、非病原性の生存不能なマイコバクテリウムは、全細胞の非病原性の加熱殺菌マイコバクテリウムを含む。本発明で使用するためのマイコバクテリア種の例としては、マイコバクテリウム・ワクカエ(M.vaccae)、マイコバクテリウム・サーモレジスティバイル(M.thermoresistibile)、マイコバクテリウム・フラベセンス(M.flavescens)、マイコバクテリウム・ドゥバリイ(M.duvalii)、マイコバクテリウム・フレイ(M.phlei)、マイコバクテリウム・オブエンス(M.obuense)、マイコバクテリウム・パラフォルトゥイタム(M.parafortuitum)、マイコバクテリウム・スファグニ(M.sphagni)、マイコバクテリウム・アイチエンス(M.aichiense)、マイコバクテリウム・ローデシア(M.rhodesiae)、マイコバクテリウム・ネオオーラム(M.neoaurum)、マイコバクテリウム・チューブエンス(M.chubuense)、マイコバクテリウム・トーカイエンス(M.tokaiense)、マイコバクテリウム・コモッセンス(M.komossense)、マイコバクテリウム・オーラム(M.aurum)、M.w、マイコバクテリウム・ツベルクローシス(M.tuberculosis)、マイコバクテリウム・ミクロティ(M.microti);マイコバクテリウム・アフリカナム(M.africanum);マイコバクテリウム・カンサシ(M.kansasii)、マイコバクテリウム・マリヌム(M.marinum);マイコバクテリウム・シミアエ(M.simiae);マイコバクテリウム・ガストリ(M.gastri);マイコバクテリウム・ノンクロモゲニカム(M.nonchromogenicum);マイコバクテリウム・テラエ(M.terrae);マイコバクテリウム・トリビアレ(M.triviale);マイコバクテリウム・ゴードナエ(M.gordonae);マイコバクテリウム・スクロフラセウム(M.scrofulaceum);イコバクテリウム・パラフィニカム(M.paraffinicum);マイコバクテリウム・イントラセルラーレ(M.intracellulare);マイコバクテリウム・アビウム(M.avium);マイコバクテリウム・ゼノピ(M.xenopi);マイコバクテリウム・アルセランス(M.ulcerans);マイコバクテリウム・ディエルンホフェリ(M.diernhoferi)、マイコバクテリウム・スメグマティス(M.smegmatis);マイコバクテリウム・サムノフェオス(M.thamnopheos);マイコバクテリウム・フラベセンス(M.flavescens);マイコバクテリウム・フォルトゥイタム(M.fortuitum);マイコバクテリウム・ペレグリナム(M.peregrinum);マイコバクテリウム・ケロネー(M.chelonei);マイコバクテリウム・パラツベルクローシス(M.paratuberculosis);マイコバクテリウム・レプラエ(M.leprae);マイコバクテリウム・レプラエムリウム(M.lepraemurium)、及びこれらの組み合わせが挙げられる。
【0063】
生存不能の非病原性マイコバクテリウムは、好ましくは、受託番号NCTC 11659及びSRL172、SRP299、IMM-201、DAR-901などの関連する名称の下で寄託された株、並びにATCC 95051(Vaccae(商標))の下で寄託された株を含む、マイコバクテリウム・ワクカエ(M.vaccae);マイコバクテリウム・オブエンス(M.obuense)、マイコバクテリウム・パラゴルドネ(M.paragordonae)(株49061)、マイコバクテリウム・パラフォルトゥイタム(M.parafortuitum)、マイコバクテリウム・パラツベルクローシス(M.paratuberculosis)、マイコバクテリウム・ブルマエ(M.brumae)、マイコバクテリウム・オーラム(M.aurum)、マイコバクテリウム・インディカス・プラニイ(M.indicus pranii)、M.w、マイコバクテリウム・マンレセンシス(M.manresensis)、マイコバクテリウム・キョガエンス(M.kyogaense)(DSM 107316/CECT 9546の下で寄託)、マイコバクテリウム・フレイ(M.phlei)、マイコバクテリウム・スメグマティス(M.smegmatis)、マイコバクテリウム・ツベルクローシス(M.tuberculosis)青山B又はH37Rv、RUTI、MTBVAC、BCG、VPM1002BC、SMP-105、ミファムルチド、又はZ-100、及びこれらの組み合わせから選択され、好ましくは、ブダペスト条約の下、受託番号NCTC 13365として寄託されたマイコバクテリウム・オブエンスの株である。
【0064】
別の最も好ましい実施形態では、生存不能なマイコバクテリウムは、NCTC 11569の下で寄託されたものを含むマイコバクテリウム・ワクカエ、又はNCTC 13365の下で寄託されたものなどのマイコバクテリウム・オブエンスである。より好ましくは、非病原性の生存不能なマイコバクテリウムはラフ型変異体である。好ましくは、非病原性の生存不能なマイコバクテリウムは加熱殺菌されている。
【0065】
本発明の好ましい実施形態では、非病原性の生存不能なマイコバクテリウムは、ラフ型変異体、好ましくはマイコバクテリウム・オブエンスのラフ型変異体である。
【0066】
本発明の他の実施形態では、非病原性の生存不能なマイコバクテリウムは、ラフ型変異体及び/又は全細胞、好ましくは、ブダペスト条約の下、受託番号NCTC 13365として寄託されたマイコバクテリウム・オブエンスのラフ型株である。
【0067】
本発明の別の実施形態では、非病原性の生存不能なマイコバクテリウムは、高圧滅菌、長期凍結乾燥、ホルムアルデヒドなどの化学的曝露、又はガンマ線照射若しくは電子ビームなどの照射などの熱によって不活性化されている。
【0068】
本発明の別の実施形態では、非病原性の生存不能なマイコバクテリウムは、生きた弱毒化形態のBCGを含まない。
【0069】
さらなる実施形態では、非病原性の生存不能なマイコバクテリウムは、ラフ型変異体である、及び/又は画分、断片、細胞成分(sub-cellular component)、溶解物、ホモジネート、超音波処理物として、若しくは実質的に全細胞の形態で提示される。
【0070】
本発明の好ましい実施形態では、非病原性の生存不能なマイコバクテリウム、好適にはマイコバクテリウム・オブエンスは、例えば、懸濁液中のマイコバクテリアの50%超又はそれ以上が、レーザー回折(例えば、D50値又は平均粒径)によって測定される場合、直径1~10ミクロン超であるような、実質的に全細胞の形態であるか、又は実質的な細胞溶解を誘導する高圧処理若しくは他の条件に曝されていない形態である。
【0071】
当業者によって理解されるように、例えば、マイコバクテリウム・オブエンスのラフ型変異体は、Roux et al. 2016, Open Biol 6: 160185に記載されるように、細胞表面結合糖ペプチド(GPL)を欠き、非運動性特性及び非バイオフィルム形成特性を有する特徴付けられたラフ型形態をもたらす。本発明において患者に投与されるマイコバクテリウムの量は、患者の免疫系が有効な免疫応答を開始することができるように、患者において防御免疫応答を誘発するのに十分であろう。
【0072】
患者に投与されるマイコバクテリウムの量は、患者の免疫系ががん又は腫瘍に対する有効な免疫応答を開始することができるように、患者において防御免疫応答を誘発するのに十分である。本発明のある実施形態では、本発明において使用するための生存不能なマイコバクテリウムの有効量を含む封じ込め手段が提供され、この有効量は、通常は、10個~1011個の生物、好ましくは10個~1010個の生物、より好ましくは10個~1010個の生物、さらにより好ましくは10個~10個の生物であってもよい。本発明における使用のための生存不能なマイコバクテリウムの有効量は、10個~1011個の生物、好ましくは10個~1010個の生物、より好ましくは10個~1010の生物、さらにより好ましくは10個~10個の生物であってもよい。最も好ましくは、本発明で使用するための生存不能な全細胞マイコバクテリウムの量は、10~10個の細胞又は生物である。
【0073】
通常は、本発明による組成物は、ヒト及び動物の使用のために10細胞~10個の細胞の用量で投与されてもよい。あるいは、用量は、0.0001mg~5mgであるか、又は0.001mg~5mgの生物、好ましくは0.01mg~2mgであるか、又は0.1mg~2mgの生物、例えば用量は、約0.5mg又は約1mgであるか、又は約0.5mg又は約1mgの生物である。用量は、懸濁液又は乾燥調製物のいずれかとして調製されてもよい。
【0074】
別の実施形態では、非病原性の生存不能なマイコバクテリウムは、参照により本明細書に組み込まれる国際公開第2021/136933号に開示されているように、複数のマイクロニードルを含むマイクロニードルデバイスを介してヒト患者の皮膚に投与される。本発明によって使用するための他の好ましいマイクロニードルデバイスとしては、ノースカロライナ州立大学(国際公開第2017/151727号に記載)、Debiojectマイクロニードル(Debiotech、スイス)、Micronject600(NaoPass、イスラエル、国際公開第2008/047359号に記載)、Nanopatch(Vaxxas、米国)、SOFUSA(国際公開第2017/189259号及び国際公開第2017/189258号に記載、Kimberly-Clark、米国)、Micron Biomedicalの溶解マイクロアレイ、及びMIMIX溶解制御放出マイクロアレイ(Vaxess、米国)が挙げられる。
【0075】
マイコバクテリウム・ワクカエ及びマイコバクテリウム・オブエンスは、宿主において複雑な免疫応答を誘導する。これらの調製物による処置は、Th1及びマクロファージ活性化並びに細胞傷害性細胞活性を含む、自然免疫及び1型免疫を刺激する。それらはまた、免疫制御機構を介して不適切なTh2応答を独立して下方制御する。これにより、免疫系の健康なバランスが回復する。
【0076】
本発明のある実施形態では、投与される非病原性の生存不能なマイコバクテリウムの量は、単位用量当たり0.0001mg~1mgであり、単位用量は、0日目、14日目のぞれぞれ(+/-1日、3日、又は5日以上)、及び任意に、30日目(+/-5日、7日、又は10日以上)又は45日目(+/-7日、10日、又は14日以上)での投与など、任意に、少なくとも7日以上離れた2回以上の別々の機会に投与される。
【0077】
いくつかの実施形態では、投与される非病原性の生存不能なマイコバクテリウムの量は、投与当たり0.0001mg~1mgであってよく、投与は、数日間、数週間、又は数か月間にわたって、同じ用量又は異なる用量で、1回、2回、3回、4回、5回、6回、10回、若しくは20回、又はそれ以上で投与され、好適には、マイコバクテリウムはマイコバクテリウム・オブエンスである。
【0078】
本発明の他の実施形態では、投与される非病原性の生存不能なマイコバクテリウムの量は、投与当たり0.0001mg~1mgであってよく、投与は、最初に一方の三角筋への1mgの注射、又はそれぞれの三角筋への0.5mgの2回の注射、又はそれぞれの三角筋への1.0mgの2回の注射を含み、7日後若しくは14日後、又はそれ以後に、0.5mg又は1.0mgのいずれかの第2の投与が続く。
【0079】
本発明の他の実施形態では、投与される非病原性の生存不能なマイコバクテリウムの量は、投与当たり0.0001mg~1mgであってよく、投与は、最初に一方の三角筋への1mgの注射、又はそれぞれの三角筋への0.5mgの2回の注射、又はそれぞれの三角筋への1.0mgの2回の注射を含み、7日後若しくは14日、又はそれ以後に、0.5mg又は1.0mgのいずれかの第2の投与が続く。
【0080】
本発明のある実施形態では、投与される非病原性の生存不能なマイコバクテリウムの量は、単位用量当たり0.0001mg~1mg、例えば約0.5mg~1mgであり、単位用量は、手術に先だって、少なくとも7日以上離れた2回以上の別々の機会に投与され、例えば、例えば、手術に対して(すなわち手術前)-35日目、-21日目、及び-5日目のそれぞれに投与され、任意に、-35日目の投与が1mg、-21日目の投与が0.5mg、及び-5日目の投与が0.5mgである。チェックポイント治療(例えば、抗PD-L1 mab、好適にはアテゾリズマブ、ペムブロリズマブ、又はセミプリマブ)は、前記手術(すなわち、手術前)に対して、同じ日に、又は前記マイコバクテリウムの単位用量の間、例えば-28日目及び-7日目に、投与されてもよい。
【0081】
さらなる実施形態では、非病原性の生存不能なマイコバクテリウムは、第一選択治療として、任意に、1又は複数の治療剤の投与又はがん治療と同時に、別々に、又は順次に、対象に投与される。第一選択治療は、一次治療としても知られており、通常は、最初の診断後の最初の処置又は治療として対象又は患者に投与される。他の治療剤としては、がんを治療し、がんを制御し、疼痛緩和を提供し、又は任意のがん関連病変に対して予防的に作用するために通常使用される任意の医薬品、例えば、ステロイド、ビスホスホネート、及びNSAIDなどが挙げられ得る。好ましくは、がん治療は、限定されるものではないが、外科手術、放射線療法(好ましくは、定位放射線療法(例えば、Cyberknife(登録商標))などの標的化放射線療法)、及び化学療法を含むことができる。化学療法としては、抗新生物剤、代謝拮抗剤、微小管阻害剤、ヌクレオシド代謝阻害剤、及び免疫原性剤の投与が挙げられ得るが、これらに限定されない。好ましい化学療法剤としては、FOLFIRINOX、Abraxane(登録商標)(nab-パクリタキセル)、ゲムシタビン、及びペムブロリズマブが、好ましくは複数の組み合わせが挙げられる。好ましくは、ヌクレオシド代謝阻害剤、最も好ましくはゲムシタビンが投与される。好ましくは、微小管阻害剤、最も好ましくはAbraxane(nab-パクリタキセル)が投与される。
【0082】
好ましい化学療法剤としては、それらに限定されないが、ベバシズマブ、シクロホスファミド、メトトレキサート、5-フルオロウラシル、ドキソルビシン、ムスチン、ビンクリスチン、プロカルバジン、プレドニゾロン、ブレオマイシン、ビンブラスチン、ダカルバジン、エトポシド、シスプラチン、エピルビシン、カペシタビン、ロイコボリン、フォリン酸、カルボプラチン、オキサリプラチン、ゲムシタビン、FOLFIRINOX、FOLFOX、FOLFIRI、mFOLFIRINOX、NALIRIFOX、パクリタキセル、nab-パクリタキセル、ペメトレキセド、イリノテカン、テモゾロミド、及びこれらの組み合わせから選択される1又は複数の細胞傷害性化学療法剤が挙げられ、ここで、前記1又は複数の剤は、腫瘍内、動脈内、静脈内、血管内、胸膜内、腹腔内、気管内、鼻腔内、肺内、髄腔内、筋肉内、内視鏡的、病巣内、経皮的、皮下、領域的、定位的、経口的に、又は直接注射若しくは灌流によって投与され、任意に、ヒト患者は部分奏効又は安定(stable disease)を示した。
【0083】
さらなる実施形態では、非病原性の生存不能な全細胞マイコバクテリウムは、ゲムシタビンとnab-パクリタキセルの両方の投与と同時に、別々に、又は順次に、任意に、以前のFOLFIRINOX、FOLFOX、FOLFIRI、mFOLFIRINOX、NALIRIFOX、又は同様の治療の後に、第一選択治療若しくは第二選択治療、又は維持治療として、対象に投与される。この維持治療は、転移性膵管腺癌を有する患者に特に適用可能である。
【0084】
さらなる実施形態では、非病原性の生存不能なマイコバクテリウムは、ゲムシタビン、及び任意に1又は複数のチェックポイント阻害剤(好適にはペムブロリズマブ)の投与と、同時に、別々に、又は順次に、任意に、FOLFIRINOX、FOLFOX、FOLFIRI、mFOLFIRINOX、NALIRIFOX、又は同様の治療の後に、第一選択治療若しくは第二選択治療、又は維持治療として、対象に投与される。この維持治療は、転移性膵管腺癌を有する患者に特に適用可能である。
【0085】
さらなる実施形態では、非病原性の生存不能なマイコバクテリウムは、ゲムシタビンとnab-パクリタキセルの両方の投与と同時に、別々に、又は順次に、任意に、以前のFOLFIRINOX、FOLFOX、FOLFIRI、mFOLFIRINOX、NALIRIFOX、又は同様の治療の下での部分奏効若しくは安定化の後に、第一選択治療若しくは第二選択治療、又は維持治療として、対象に投与される。この維持治療は、転移性膵管腺癌を有する患者に特に適用可能である。
【0086】
さらなる実施形態では、非病原性の生存不能なマイコバクテリウムは、ゲムシタビンと1又は複数のチェックポイント阻害剤(好適にはペムブロリズマブ)の両方の投与と同時に、別々に、又は順次に、任意に、FOLFIRINOX、FOLFOX、FOLFIRI、mFOLFIRINOX、NALIRIFOX、又は同様の治療の下での適切な応答の後に、第一選択治療若しくは第二選択治療、又は維持治療として、対象に投与される。この維持治療は、転移性膵管腺癌を有する患者に特に適用可能である。
【0087】
さらなる実施形態では、非病原性の生存不能なマイコバクテリウムは、ゲムシタビンと1又は複数のチェックポイント阻害剤(好適にはペムブロリズマブ)の両方の投与と同時に、別々に、又は順次に、任意に、FOLFIRINOX、FOLFOX、FOLFIRI、mFOLFIRINOX、NALIRIFOX、又は同様の治療の後に、第一選択治療若しくは第二選択治療、又は維持治療として、対象に投与される。この維持治療は、転移性膵管腺癌を有する患者に特に適用可能である。
【0088】
さらなる実施形態では、非病原性の生存不能なマイコバクテリウムは、ゲムシタビンとnab-パクリタキセルの両方の投与と同時に、別々に、又は順次に、任意に、FOLFIRINOX、FOLFOX、FOLFIRI、mFOLFIRINOX、NALIRIFOX、又は同様の治療の下での適切な応答の後に、第一選択治療若しくは第二選択治療、又は維持治療として、対象に投与される。この維持治療は、転移性膵管腺癌を有する患者に特に適用可能である。
【0089】
さらなる実施形態では、非病原性の生存不能なマイコバクテリウムは、ゲムシタビンと1又は複数のチェックポイント阻害剤(好適にはペムブロリズマブ)の両方の投与と同時に、別々に、又は順次に、任意に、FOLFIRINOX、FOLFOX、FOLFIRI、mFOLFIRINOX、NALIRIFOX、又は同様の治療の下での部分奏効又は安定化の後に、第一選択治療若しくは第二選択治療、又は維持治療として、対象に投与される。この維持治療は、転移性膵管腺癌を有する患者に特に適用可能である。
【0090】
好ましい実施形態では、非病原性の生存不能なマイコバクテリウムは、転移性膵管腺癌と最近診断された患者であって、アジュバント療法としての手術及び/又は放射線療法を除いて、いかなる薬剤による治療もまだ受けておらず、ECOGパフォーマンスステータス2を有するか、又は70歳を超えており、臨床医の意見では、ゲムシタビン及びnab-パクリタキセルを投与されるのに適格であると考えられる患者に対する第一選択治療として、対象に投与される。
【0091】
好ましい実施形態では、患者がPS2又は70歳以上であり、医師によってFOLFIRINOXに適さないと考えられる場合、FOLFIRINOX(又はFOLFOX、FOLFIRI、mFOLFIRINOX、NALIRIFOX、若しくは同様の治療)などの第一選択治療から現在有効に除外されている患者のためのレジメンが提供される。
【0092】
さらなる実施形態では、非病原性の生存不能なマイコバクテリウムは、ゲムシタビンとnab-パクリタキセルの両方の投与と同時に、別々に、又は順次に、第一選択治療若しくは第二選択治療、又は維持治療として対象に投与され、ここで、前記nab-パクリタキセルは、100~125mg/mの間の用量で提供され、約30分間にわたる静脈内注入として投与され、続いてゲムシタビン1000mg/mが、28日間サイクルの第1日目、第8日目、及び第15日目に、30分間の静脈内注入として投与される。この維持治療は、転移性膵管腺癌を有する患者に特に適用可能である。
【0093】
本発明は、固形がん又は非固形がんなどの新生物性疾患を治療するために使用され得る。本明細書で使用される場合、「治療」は、新生物性疾患の予防、減少、制御、及び/又は阻害を包含する。そのような疾患としては、肉腫、癌腫、腺癌、黒色腫、骨髄腫、芽細胞腫、神経膠腫、リンパ腫、又は白血病が挙げられる。例示的ながんとしては、例えば、肉腫、腺癌、黒色腫、神経(芽細胞腫、神経膠腫)、中皮腫及び細網内皮、リンパ腫瘍性疾患又は造血腫瘍性疾患(例えば、骨髄腫、リンパ腫、又は白血病)が挙げられる。いくつかの態様では、新生物、腫瘍、又は癌としては、肺腺癌、肺癌、びまん性胃癌又は間質性胃癌、結腸腺癌、前立腺腺癌、食道癌、乳癌、膵臓腺癌、卵巣腺癌、副腎腺癌、子宮内膜腺癌、又は子宮腺癌が含まれる。新生物、腫瘍、及びがんとしては、良性型、悪性型、転移性型、及び非転移性型が挙げられ、新生物、腫瘍、又はがんの任意のステージ(I、II、III、IV、又はV)又はグレード(G1、G2、G3など)、あるいは進行中、悪化中、安定化中、又は寛解中の新生物、腫瘍、がん、又は転移が含まれる。本発明を実施する開始時のがんは、ステージI、ステージII、ステージIII、ステージIV、又はステージVであると臨床的に定義される。
【0094】
本発明によって治療され得るがんとしては、膀胱、血液、骨、骨髄、脳、乳房、結腸、食道、胃腸、歯肉、頭部、腎臓、肝臓、肺、鼻咽頭、頸部、卵巣、前立腺、皮膚、胃、精巣、舌、又は子宮が挙げられるが、これらに限定されない。好ましくは、がんは、前立腺がん、肝臓がん、腎臓がん、肺がん、乳がん、結腸直腸がん、膵臓がん、脳がん、肝細胞がん、リンパ腫、白血病、胃がん、子宮頸がん、卵巣がん、甲状腺がん、黒色腫、頭頸部がん、皮膚がん、及び軟部組織肉腫、及び/又は他の形態の癌から選択される。腫瘍は、転移性腫瘍又は悪性腫瘍、最も好ましくは転移性腫瘍であってもよい。より好ましくは、がんが、膵臓がん、結腸直腸がん、前立腺がん、卵巣がんであり、最も好ましくは、がんが膵臓がんであり、最も好ましくは、がんが転移性膵臓がんである。
【0095】
本発明の非病原性の生存不能なマイコバクテリウムは、非経口経路、経口経路、舌下経路、経鼻経路、又は肺経路を介して投与され得る。さらに好ましくは、非経口経路は、皮下、皮内、真皮下、腹腔内、静脈内、腫瘍近傍(peritumoral)、病変近傍(perilesional)、病巣内、又は腫瘍内、及びこれらの組み合わせから選択される。好適には、腫瘍内投与の後に皮内投与が続いて行われてもよい。
【0096】
あるいは、病原性の生存不能なマイコバクテリウムは、マイコバクテリウム・オブエンスであり、対象は、ヌクレオシド代謝阻害剤、好ましくはゲムシタビンを同時に、別々に、又は順次に投与され、1又は複数のチェックポイント阻害剤、好ましくはペムブロリズマブがさらに投与され、ここで、対象は、ECOGスケールにおける2、3、又は4のパフォーマンスステータスを有するとして分類されるか、又は2以上の化学療法レジメン耐えるのに十分に適合していない(例えばPS1マイナス)として分類される。
【0097】
本発明の別の態様によれば、対象のパフォーマンスステータスは、前記がんの治療、減少、阻害、又は制御の間及び/又は後に、同じままであるか又は改善する。さらなる実施形態では、本発明による使用又は方法は、(1)原発腫瘍又は原発がんから生じる転移の、前記原発腫瘍又は原発がんとは異なる1又は複数の他の部位、位置、又は領域への形成又は確立を、減少又は阻害すること、(2)転移が形成された又は確立された後、原発腫瘍又は原発がんとは異なる1又は複数の他の部位、位置、又は領域での転移の成長又は増殖を減少又は阻害すること、(3)転移が形成又は確立された後、さらなる転移の形成又は確立を減少又は阻害すること、(4)全生存期間を延長すること、(5)無増悪生存期間を延長すること、(6)病勢の安定化、(7)生活の質の向上、及びこれらの組み合わせをもたらす。
【0098】
本発明のある実施形態では、対象におけるがんの治療、減少、阻害、又は制御に使用するための非病原性の生存不能なマイコバクテリウムが提供され、ここで、対象は、ECOGスケールにおける2、3、又は4のパフォーマンスステータスを有するとして臨床的に分類されるか、又は2以上の化学療法レジメンに耐えるのに十分に適合していないと分類され、治療上の利益が増強された強力で永続的な免疫応答を誘発する可能性があり、ここで、前記使用は、免疫関連効果判定基準(irRC)、iRECIST、REIST 1.1、又はirRECISTによって評価した場合に(好ましくは手術後及び/又は治療終了時及び/又は前記非病原性の生存不能なマイコバクテリウムの1回、2回、3回、4回、5回、若しくは6回、又はそれを超える投与の後に評価された場合に)、原発腫瘍の、腫瘍生検又は切除された原発腫瘍に存在する10%未満の生存腫瘍細胞によって実証されるほぼ完全な(subtotal)退縮、安定(stable disease)(SD)、完全奏効(CR)、又は部分奏効(PR);及び/又は1又は複数の非標的腫瘍の、腫瘍生検若しくは切除された転移性腫瘍に存在する10%未満の生存腫瘍細胞によって実証されるほぼ完全な退縮、安定(SD)、若しくは完全奏効(CR)をもたらす。
【0099】
本発明のある実施形態では、対象におけるがんの治療、減少、阻害、又は制御において使用するための非病原性の生存不能なマイコバクテリウム、又は本明細書に開示される本発明による方法が提供され、ここで、前記がんの治療、減少、阻害、又は制御は、(好ましくは手術後及び/又は治療終了時及び/又は前記非病原性の生存不能なマイコバクテリウムの1回、2回、3回、4回、5回、若しくは6回、又はそれを超える投与の後に評価された場合に)(i)全生存期間、(ii)無増悪生存期間、(iii)無病生存期間、(iv)全奏効率、(v)原発腫瘍サイズ及び/又は転移性疾患の減少、(vi)炭水化物抗原19.9(CA19.9)及び癌胎児性抗原(CEA)又は腫瘍に応じたその他の抗原などの腫瘍抗原の循環レベル、(vii)栄養状態(体重、食欲、血清アルブミン)、(viii)疼痛制御又は鎮痛薬使用、(ix)CRP/アルブミン比、(x)生活の質の改善、(xi)除脂肪体重の維持、(xii)悪液質の可能性又は発生率の低下、又は(xiii)ctDNAの減少又は排除、のうちの1又は複数から選択される疾患状態及び疾患進行の1又は複数のマーカーにおける臨床的に意義のある改善をもたらす。
【0100】
本発明のさらなる実施形態では、対象におけるがんの治療、減少、阻害、又は制御において使用するための非病原性の生存不能なマイコバクテリウム、又は本明細書に開示される本発明による方法が提供され、これにより、(好ましくは手術後及び/又は治療終了時及び/又は前記非病原性の生存不能なマイコバクテリウムの1回、2回、3回、4回、5回、若しくは6回、又はそれを超える投与の後に評価された場合に)RECIST 1.1若しくはiRECISTによる無増悪生存期間の延長;RECIST 1.1若しくはiRECISTによる奏効期間(DoR)の延長;又はRECIST 1.1若しくはiRECISTによる奏効までの時間(TtR)の短縮がもたらされる。
【0101】
本発明のある実施形態では、非病原性の生存不能なマイコバクテリウムとの併用療法におけるチェックポイント阻害剤の投与は、(i)irCR:測定可能であるか否かにかかわらず、全ての病変の完全な消失、及び新たな病変なし(最初に記録された日から4週間以上の反復的な継続評価によって確認される)、(ii)irPR:ベースラインと比較して>50%の腫瘍負荷の減少(最初の記録の4週間後以降の継続評価によって確認される)のうちの1又は複数を含む、(時点応答評価から導出され、腫瘍負荷量に基づく)irRCによる検出可能若しくは測定可能な改善又は全奏効を提供する。好ましくは、使用されるチェックポイント阻害剤は、CTLA-4、PD-1、又はPD-L1、及びこれらの組み合わせに対するものである。本発明のいくつかの実施形態では、初期段階のがんの治療、減少、阻害、又は制御は、1又は複数の追加の抗がん治療又は抗がん剤の投与をさらに含む。
【0102】
1又は複数の治療剤又は治療手段は、養子細胞療法、外科的療法、化学療法、放射線療法、ホルモン療法、チェックポイント阻害剤療法、メトホルミンなどの小分子療法、チロシンキナーゼ阻害剤療法などの受容体キナーゼ阻害剤療法、温熱治療、光線療法、高周波アブレーション療法(RFA)、抗血管新生療法、サイトカイン療法、寒冷療法、生物学的療法、HDAC阻害剤(例えば、OKI-179)、BRAF阻害剤、MEK阻害剤、EGFR阻害剤、VEGF阻害剤、P13Kデルタ阻害剤、PARP阻害剤、mTOR阻害剤、低メチル化剤、腫瘍溶解性ウイルス、TLRアゴニスト(リンタトリモドなどのTLR2アゴニスト、TLR3アゴニスト、TLR4アゴニスト、TLR7アゴニスト、TLR8アゴニスト、若しくはTLR9アゴニスト、又はMRx0518(4D Pharma)などのTLR5アゴニストを含む)、STINGアゴニスト(MIW815及びSYNB1891を含む)、ミファムルチド、及びGVAX又はCIMAvaxなどのがんワクチン、並びにこれらの組み合わせから選択されてもよい。
【0103】
本発明の別の実施形態では、1又は複数の治療剤又は治療手段は、国際公開第2013/07998号に記載されているように、免疫原性細胞死療法をもたらす。この治療は、アポトーシス(1型)、オートファジー(2型)、及びネクローシス(3型)を含む腫瘍免疫原性細胞死の誘導をもたらし、その際、細胞傷害性CD8+T細胞及びNK細胞の活性化を含む、免疫応答を誘導することと、樹状細胞に抗原を接近可能にすることを含む、標的として作用することの両方が可能な、腫瘍抗原の放出が存在する。免疫原性細胞死療法は、腫瘍を完全に除去又は根絶することを意図しないが、それにもかかわらず、いくらかの腫瘍細胞又は組織が壊死するようになるように、最適に近いレベル、すなわち非治癒的治療で実施されてもよい。
【0104】
当業者は、使用される技術、患者の年齢、疾患の状態、並びに腫瘍又は転移の具体的な大きさ及び位置に応じて、治療を達成するために必要な治療の程度を理解するであろう。特に好ましい処置としては、マイクロ波照射、定位的切除放射線(SABR)などの標的化放射線療法、塞栓術、寒冷療法、超音波、高強度集束超音波、サイバーナイフ、温熱療法、高周波アブレーション、凍結アブレーション、エレクトロトーム加熱、熱水注射入、アルコール注入、塞栓術、放射線曝露、光線力学的治療、レーザービーム照射、及びこれらの組み合わせが挙げられる。
【0105】
本発明のさらなる実施形態では、TLRアゴニストとしては、MRx0518(4D Pharma)、ミファムルチド(Mepact)、クレスチン(PSK)、IMO-2125(チルソトリモド)、CMP-001、MGN-1703(レフィトリモド)、エントリモド、リンタトリモド(Ampligen)、SD-101、GS-9620、イミキモド、レシキモド、MEDI4736、poly I:C、CPG7909、DSP-0509、VTX-2337(モトリモド)、MEDI9197、NKTR-262、G100、又はPF-3512676及びこれらの組み合わせが挙げられる。
【0106】
本発明のさらなる実施形態では、化学療法は、ベバシズマブ、シクロホスファミド、メトトレキサート、5-フルオロウラシル、ドキソルビシン、ムスチン、ビンクリスチン、プロカルバジン、プレドニゾロン、ブレオマイシン、ビンブラスチン、ダカルバジン、エトポシド、シスプラチン、エピルビシン、カペシタビン、ロイコボリン、フォリン酸、カルボプラチン、オキサリプラチン、ゲムシタビン、FOLFIRINOX、FOLFOX、mFOLFIRINOX、NALIRIFOX、パクリタキセル、nab-パクリタキセル、ペメトレキセド、イリノテカン、テモゾロミド、及びこれらの組み合わせから選択される1又は複数の細胞傷害性化学療法剤を含み、ここで、前記1又は複数の剤は、腫瘍内、動脈内、静脈内、血管内、胸膜内、腹腔内、気管内、鼻腔内、肺内、髄腔内、筋肉内、内視鏡的、病巣内、経皮的、皮下、領域的、定位的、経口的に、又は直接注射若しくは灌流によって投与され、任意に、前記ヒト患者は、部分奏効又は安定(stable disease)を示した。
【0107】
本発明のさらなる実施形態では、化学療法は、以前又は同時のFOLFIRINOX、FOLFOX、FOLFIRI、mFOLFIRINOX、NALIRIFOX、又は同様のレジメンを含み、さらに、前記レジメンは、前記ヒト患者を治療するために当業者に知られているように、そのようなレジメンの下で提供される1又は複数の成分の投与量及び/又はタイミング及び/又は持続時間の変更を必要とする。
【0108】
本発明のさらなる実施形態では、組み合わせ、例えば、非病原性の生存不能なマイコバクテリウムと組み合わせた、FOLFIRINOX、FOLFOX、FOLFIRI、mFOLFIRINOX、NALIRIFOX、又は同様のレジメンを用いた、又は用いない、ペムブロリズマブ及び/又はアテゾリズマブ、又はデュルバルマブ及び/又はトレメリムマブなどのチェックポイント阻害剤との組み合わせは、pMMR-MSI-Low CRC腫瘍、すなわちミスマッチ修復機能が維持された低頻度マイクロサテライト不安定性腫瘍の治療に適している。他の組み合わせとしては、非病原性の生存不能なマイコバクテリウムと併用でのアテゾリズマブ+ベバシズマブが挙げられる。
【0109】
本発明のさらなる実施形態では、組み合わせは、pMMR-MSI-Low腫瘍の治療に適しており、ここで、非病原性の生存不能なマイコバクテリウムは、RFA及び/又はEBRT及び/又はペムブロリズマブ;RFA及び/又はデュルバルマブ及び/又はトレメリムマブ;アテゾリズマブ及び/又はベバシズマブ及び/又はFOLFIRNOX、FOLFOX、FOLFIRI、mFOLFIRINOX、NALIRIFOX、若しくは同様のレジメン;アテゾリズマブ及び;ニボルマブ+イピリムマブ+コビメチニブ;アテゾリズマブ+コビメチニブ+ベバシズマブ;アテゾリズマブ+CEA-BTC抗体;ペムブロリズマブ+インドキシモド;ニボルマブ+エパカドスタット;デュルバルマブ+ペキシダルチニブの組み合わせのうちの1又は複数と組み合わせて投与される。
【0110】
本発明のさらなる実施形態では、組み合わせは、非病原性の生存不なマイコバクテリウムと組み合わせて、ペンブロリズマブ及び/又はアテゾリズマブ若しくはデュルバルマブ及び/又はトレメリムマブなどのチェックポイント阻害剤と併用での、例えばCRCを有する患者における高周波アブレーション(RFA)又は外部ビーム放射線療法(EBRT)のいずれかを含む。
【0111】
本発明のさらなる実施形態では、本明細書に開示されるアジュバント療法、ネオアジュバント療法、又はペリアジュバント療法は、ステージIIIのdMMR及び/又はMSI-High結腸直腸がん、又は結腸がん若しくは直腸がんを有する患者に適用され、前記患者は0(PS0)、1(PS1)又はPS1-又は2(PS2)のECOGパフォーマンスステータスを示す。
【0112】
本発明のさらなる実施形態では、本明細書に開示されるアジュバント療法、ネオアジュバント療法、又はペリアジュバント療法は、ECOGパフォーマンスステータスが0(PS0)、1(PS1)若しくはPS1-、又は2(PS2)を示す患者に適用され、前記パフォーマンスステータスの値は、手術後又は治療の終了時に評価された場合に、同じか又は改善されている。
【0113】
本発明のさらなる実施形態では、本明細書に開示されるアジュバント療法、ネオアジュバント療法、又はペリアジュバント療法は、ステージIIIのpMMR/MSI-Low結腸直腸がん、又は結腸がん若しくは直腸がん(すなわち、結腸直腸がん、又は結腸がん若しくは直腸がんを有する患者においてミスマッチ修復機能が維持された低頻度マイクロサテライト不安定性腫瘍)に適用され、前記患者のECOGパフォーマンスステータスは0(PS0)、1(PS1)若しくはPS1-、又は2(PS2)を示す。
【0114】
いくつかの好ましい実施形態では、1又は複数の追加の抗がん治療又は抗がん剤は、イピリムマブ、ニボルマブ、ペムブロリズマブ、アテゾリズマブ、BI 754091(抗PD-1)、バビツキシマブ(PSに対するIgG3 mab)、ビントラフスプアルファ、ドスタリマブ、デュルバルマブ、トレメリムマブ、スパルタリズマブ、アベルマブ、シンチリマブ、トリパリマブ、プロルゴリマブ(prolgolimab)、チスレリズマブ、カムレリズマブ、MGA012、MGD013(現在はテボテリマブとして知られている)、KN046(PD-L1/CTLA-4二重特異性抗体)、MGD019、エノブリツズマブ、MGD009、MGC018、MEDI0680、ミプテナリマブ(miptenalimab)(BI 754111、抗LAG-3)、ニモツズマブ、PDR001、FAZ053、TSR022、MBG453、レラトリマブ(BMS986016)、LAG525(IMP701)、IMP321(エフチラジモド アルファ)、REGN2810(セミプリマブ)、REGN3767、ペキシダルチニブ(PLX3397)、LY3022855、FPA008、BLZ945、GDC0919、エパカドスタット、エマクツズマブ(CSF-1Rを標的とするRG1755)、FPA150、インドキシモド、BMS986205、CPI-444、MEDI9447、PBF509、FS118(LAG-3及びPD-L1に対する二重特異性)、リリルマブ(lirilumab)、Sym023、TSR-022、A2Ar阻害剤(例えば、EOS100850、AB928)、モナリズマブなどのNKG2A阻害剤、及びこれらの組み合わせから選択される1又は複数のチェックポイント阻害剤を含んでいてもよく、任意に、治療的な量及び/又は期間未満の量及び/又は期間で投与される。
【0115】
本発明の他の実施形態では、腫瘍及び/又は転移を切除によって外科的に除去することができ、これにより、AJCC第8版に従って定義されるような腫瘍マージン、例えば、R0切除マージン(原発腫瘍部位に顕微鏡でがん細胞が観察されない);R1(がん細胞が原発腫瘍部位に顕微鏡的に存在する);又は、R2(原発性がん部位及び/若しくは局所リンパ節に肉眼的残存腫瘍が見られる)がもたらされる。
【0116】
さらなる実施形態では、本発明による組み合わせは、腫瘍切除後1日以内、2日以内、5日以内、10日以内、20日以内、30日以内、40日以内、50日以内、60日以内、又は70日以内に投与され、前記腫瘍切除は、好適には、R0切除、R1切除、又はR2切除(好ましくはR0)であり、任意に、前記切除後70日以内に引き続き投与される。
【0117】
さらなる実施形態では、腫瘍切除後70日以内に、アテゾリズマブの初回注入の投与の14±2日前に1.0mgの初期用量で、マイコバクテリウムを皮内に最初に投与し、続いて、前記アテゾリズマブ注入と同じ日又は異なる日に、1か月間にわたって2週間ごとの0.5mg又は1.0mgの用量でのマイコバクテリウムの投与、続いて、11か月間にわたって4週間ごとの0.5mg又は1.0mgの用量でのマイコバクテリウムの投与と組み合わせて、前記腫瘍切除後12か月の期間にわたって、2週間ごとに840mgの用量でアテゾリズマブを静脈内投与してもよく、好ましくは前記マイコバクテリウムは、マイコバクテリウム・オブエンス NCTC 13365である。
【0118】
さらなる実施形態では、腫瘍切除の35日前の1.0mgの用量でのマイコバクテリウムの皮内投与、続いて、腫瘍切除の21日前及び5日前の0.5mg又は1.0mgの用量でのマイコバクテリウムの投与と共に、腫瘍切除の28日前及び7日前に1200mgの用量でアテゾリズマブを静脈内投与してもよく、好ましくは前記マイコバクテリウムはマイコバクテリウム・オブエンス NCTC 13365である。
【0119】
さらなる実施形態では、本発明は、ヒト対象におけるネオアジュバント、アジュバント、又はペリアジュバントレジメンを含み、ここで、前記生存不能な非病原性のマイコバクテリウム及び1又は複数の追加の抗がん治療又は抗がん剤は、同じ投与経路又は異なる投与経路を介して、任意に、同じ時点又は異なる時点で投与され、ヒト対象は、手術後又は治療終了の5週間後以降に、病理学的に完全若しくは部分的/ほぼ完全な奏効若しくは腫瘍退縮を示す、及び/又は手術後若しくは治療終了の1年後、2年後、3年後、若しくは5年後、又はそれ以降に、無病生存期間(DFS)又は全生存期間(OS)の延長を示す、及び/又は生活の質(EORTC QLQ-C30及びPRO-CTCAEアンケートによって、4週間後、12週間後、次いで四半期ごとに評価)の改善を示し、及び/又は手術後若しくは治療終了の12か月後以降に、検出可能なctDNAを示さず、好ましくは前記Mycobacteriumは、マイコバクテリウム・オブエンス NCTC 13365である。
【0120】
循環腫瘍DNA(「ctDNA」)は、血流中で見られ、がん性細胞及び腫瘍に由来するDNAを指す。ctDNAの測定は、進行がんを有する患者の疾患状態をモニターするための有望な血液ベースのバイオマーカーとして浮上している。血中のctDNAの存在は、生物学的プロセス、すなわち腫瘍細胞のアポトーシス及び/又はネクローシスの結果であり、がん特異的変異を標的とすることによって異なるがんをモニターするために使用することができる。
【0121】
本発明の方法は、すぐには有効にならない場合がある。例えば、治療の後に、新生物、腫瘍、又はがんの細胞数又は質量が増加し得るが、所与の対象における腫瘍細胞の質量、サイズ、又は細胞数の最終的な安定化又は減少が続いて起こり得る。阻害、低減、減少、遅延、又は予防され得る新生物、腫瘍、がん、及び転移に関連するさらなる有害な症状及び合併症としては、例えば、悪心、食欲不振、嗜眠、疼痛、及び不快感が挙げられる。したがって、細胞過剰増殖性障害に関連する又はそれによって引き起こされる有害な症状又は合併症の重症度、持続時間、又は頻度の部分的又は完全な低下又は減少、対象の生活の質及び/又は幸福の改善(エネルギー、食欲、心理的幸福の増加など)は全ての、悪液質の可能性又は発生率の減少を含む、治療上の利益の具体的な非限定的な例である。
【0122】
非病原性の生存不能なマイコバクテリウム・ワクカエ及び/又はマイコバクテリウム・オブエンスによる処置は、自然免疫及び1型免疫の発生だけでなく、適切な免疫機能をより効率的に回復させる免疫制御を含む、より複雑な免疫を生じさせる。別の好ましい実施形態では、チェックポイント阻害剤は、治療的な量及び/又は期間未満の量及び/又は期間で投与される。
【0123】
別の実施形態では、チェックポイント阻害剤は、ペムブロリズマブであり、前記対象又は患者は、SP142免疫組織化学抗体アッセイを使用して測定した場合、前記がんに関連するミスマッチ修復欠損腫瘍を有し、及び/又は腫瘍細胞の少なくとも1%以上、2%以上、10%以上、20%以上、30%以上、40%以上、又は50%以上においてPD-L1発現を示す。
【0124】
さらなる実施形態では、阻害剤は、GA271(抗B7-H3ヒト化モノクローナル抗体、Macrogenics,Inc.)などのB7-H3に特異的に結合する抗体;又は、D-メチル-トリプトファン(Lunate)などのインドールアミン-2,3-ジオキシゲナーゼ(IDO)阻害剤である。
【0125】
本明細書を通して使用される「組み合わせ」という用語は、非病原性の生存不能なマイコバクテリウムの投与と同時に、別々に、又は順次にチェックポイント阻害剤を投与することを包含し得る。したがって、チェックポイント阻害剤及び非病原性の生存不能な全細胞マイコバクテリウムは、同じ又は別個の医薬製剤中に存在してよく、同時に又は異なる時間に投与されてもよい。
【0126】
したがって、非病原性の生存不能なマイコバクテリウム及びチェックポイント阻害剤は、同時に又は異なる時間に投与するための別々の薬剤として提供されてもよい。好ましくは、非病原性の生存不能なマイコバクテリウム及びチェックポイント阻害剤は、異なる時間に投与するための別々の薬剤として提供される。別々にかつ異なる時点で投与する場合、非病原性の生存不能なマイコバクテリウム又はチェックポイント阻害剤のいずれかを最初に投与してもよい。しかしながら、チェックポイント阻害剤を投与し、続いて非病原性の生存不能なマイコバクテリウムを投与することが好適である。さらに、両方を、同じ日又は異なる日に投与することができ、治療サイクル中に同じスケジュールを使用して又は異なるスケジュールで投与することができる。本発明のある実施形態では、治療サイクルは、非病原性の生存不能なマイコバクテリウムを、毎日、毎週、2週間ごと、又は毎月、チェックポイント阻害剤と同時に毎週投与することからなる。あるいは、非病原性の生存不能なマイコバクテリウムは、チェックポイント阻害剤の投与の前及び/又は後に投与される。本発明の別の実施形態では、非病原性の生存不能なマイコバクテリウムは、チェックポイント阻害剤の投与の前及び後に患者に投与される。すなわち、ある実施形態では、非病原性の生存不能なマイコバクテリウムは、前記チェックポイント阻害剤の前及び後に患者に投与される。投与の延期及び/又は投与の減量、並びにスケジュール調整は、治療に対する個々の患者の耐性に応じて必要に応じて行われる。あるいは、チェックポイント阻害剤の投与は、有効量の非病原性の生存不能なマイコバクテリウムの投与と同時に行われてもよい。
【0127】
本発明のある実施形態では、有効量の非病原性の生存不能なマイコバクテリウムを単回投与として投与することができる。あるいは、有効量の非病原性の生存不能なマイコバクテリウムは、複数回(反復)投与、例えば、2回以上、3回以上、4回以上、5回以上、10回以上、又は20回以上の反復投与で投与され得る。非病原性の生存不能なマイコバクテリウムは、チェックポイント阻害剤の約4週間~約1日前、例えば約4週間~1週間前、又は約3週間~1週間前、又は約3週間~2週間前に投与され得る。投与は、単回用量又は複数回用量で提示されてもよい。
【0128】
さらなる実施形態では、本発明は、免疫に対する以下の免疫刺激効果、すなわち、(i)免疫応答を増加させること、(ii)T細胞活性化を増加させること、(iii)細胞傷害性T細胞活性を増加させること、(iv)NK細胞活性を増加させること、(v)Th17活性を増加させること、(vi)T細胞抑制を緩和すること、(vii)炎症促進性サイトカイン分泌を増加させること、(viii)IL-2分泌を増加させること;(ix)T細胞によるインターフェロン-y産生を増加させること、(x)Th1応答を増加させること、(xi)Th2応答を低下させること、(xii)制御性T細胞(Treg)、骨髄由来抑制細胞(MDSC)、iMC、間葉系間質細胞、TIE2発現単球のうちの少なくとも1つを減少させること又は排除すること、(xiii)制御性細胞活性及び/又は骨髄由来抑制細胞(MDSC)、iMC、間葉系間質細胞、TIE2発現単球のうちの1又は複数の活性を減少させること、(xiv)M2マクロファージを減少させること又は排除すること、(xv)M2マクロファージ腫瘍形成促進活性を減少させること、(xvi)N2好中球を減少させること又は排除すること、(xvii)N2好中球の腫瘍形成促進活性を低下させること、(xviii)T細胞活性化の阻害を低下させること、(xix)CTL活性化の阻害を低下させること、(xx)NK細胞活性化の阻害を低下させること、(xxi)T細胞疲弊を逆転させること、(xxii)T細胞応答を増加させること、(xxiii)細胞傷害性細胞の活性を増加させること、(xxiv)抗原特異的記憶応答を刺激すること、(xxv)がん細胞のアポトーシス又は溶解を誘発すること、(xxvi)がん細胞に対する細胞傷害性又は細胞増殖抑制作用を刺激すること、(xxvii)がん細胞の直接死滅を誘導すること、及び/又は(xxviii)補体依存性細胞傷害性を誘導すること、及び/又は(xxix)抗体依存性細胞媒介性細胞傷害性を誘導すること、のうちの少なくとも1つの任意の組み合わせを媒介する生存不能なマイコバクテリウムを提供し、好ましくは、前記マイコバクテリウムはマイコバクテリウム・オブエンス NCTC 13365である。
【0129】
本発明のある実施形態では、非病原性の生存不能なマイコバクテリウムは、投与形態で患者に投与される薬物の形態であってもよい。特定の例における本発明による容器は、バイアル、アンプル、シリンジ、カプセル、錠剤、又はチューブであってもよい。いくつかの場合では、マイコバクテリアを、凍結乾燥し、投与前に再懸濁のために製剤化することができる。しかし、他の場合には、マイコバクテリアは、ある体積の薬学的に許容される液体に懸濁される。いくつかの実施形態では、薬学的に許容される担体に懸濁された単回単位用量のマイコバクテリアを含む容器であって、単位用量が約1×10~約1×1010個の生物を含む、容器が提供される。いくつかの実施形態では、懸濁マイコバクテリアを含む液体は、約0.1ml~10ml、又は約0.3ml~2ml、又は約0.5ml~2mlの体積で提供される。前述の組成物は、本明細書に記載の免疫療法用途のための理想的な単位を提供する。
【0130】
本発明の方法及び/又は組成物との関連で論じられる実施形態は、本明細書に記載される任意の他の方法又は組成物に関して使用され得る。したがって、1つの方法又は組成物に関する実施形態は、本発明の他の方法及び組成物にも適用され得る。いくつかの場合、非病原性の生存不能な全細胞マイコバクテリアが、対象上又は対象中の特定の部位に投与される。例えば、本発明によるマイコバクテリア組成物、例えば特にマイコバクテリウム・オブエンスを含むマイコバクテリア組成物は、腫瘍に隣接して、又はリンパ節、例えば腫瘍近傍(peritumoral)の組織を排出するリンパ節に隣接して投与され得る。したがって、特定の例では、マイコバクテリア組成物の投与部位は、後頸部リンパ節、扁桃リンパ節、腋窩リンパ節、鼠径部リンパ節、前頸部リンパ節、顎下リンパ節、頤下リンパ節、又は鎖骨上リンパ節の近くであってもよい。非病原性の加熱殺菌全細胞マイコバクテリウムは、がん又は腫瘍が患者に存在する期間にわたって、又はがんが退縮又は安定化するまで投与されてもよい。がん又は腫瘍が退縮又は安定化したら、非病原性の生存不能な全細胞マイコバクテリウムも患者に投与し続けることができる。
【0131】
本発明によるマイコバクテリア組成物は、通常は薬学的に許容される担体中に分散された、有効量のマイコバクテリアを含むことになる。「薬学的又は薬理学的に許容される」という語句は、必要に応じて、動物(例えば、ヒトなど)に投与した場合に、有害なアレルギー反応又は他の有害作用を引き起こさない分子実体及び組成物を指す。マイコバクテリアを含有する医薬組成物の調製は、当業者に公知であるだろう。さらに、動物(例えば、ヒト)への投与の場合、調製物は、無菌性、発熱原性、一般的な安全性及び純度の基準を満たすべきであることが理解されよう。本明細書に記載の薬理学的に許容される担体の具体例は、ホウ酸緩衝液又は滅菌生理食塩水(0.9% NaCl)である。本明細書で使用される場合、「薬学的に許容される担体」は、当業者に知られているように、全ての溶媒、分散媒体、コーティング、界面活性剤、酸化防止剤、防腐剤(例えば、抗菌剤、抗真菌剤)、等張剤、吸収遅延剤、塩、防腐剤、薬物、薬物安定剤、ゲル、結合剤、賦形剤、崩壊剤、潤滑剤、甘味剤、香味剤、染料、同様の材料、及びこれらの組み合わせを含む。
【0132】
別の実施形態では、非病原性の生存不能な全細胞マイコバクテリウムは、皮下、皮内、真皮下、腹腔内、静脈内、及び小胞内注射から選択される非経口経路を介して投与される。皮内注射は、免疫監視にアクセス可能であり、したがって、抗がん免疫応答を選択し、局所リンパ節で免疫細胞増殖を促進することができる真皮の層へのマイコバクテリア組成物の全割合の送達を可能にする。本発明のいくつかの実施形態では、マイコバクテリア組成物は、直接皮内注射によって投与され、場合によっては他の投与方法を使用してもよいことも企図される。したがって、特定の例では、本発明の非病原性の生存不能な全細胞マイコバクテリウムは、注射、注入、連続注入、静脈内、皮内、動脈内、腹腔内、病巣内、硝子体内、膣内、直腸内、局所、腫瘍内、筋肉内、腹腔内、皮下、結膜下、小胞内、粘膜内、心臓内、臍内、眼内、経口、頭蓋内、関節内、前立腺内、胸膜内、気管内、鼻腔内、節内、局所的、局在的、吸入(例えば、エアロゾル吸入)、病変近傍(perilesional)、腫瘍近傍(peritumoral)、経皮的、領域、定位、経口、又は直接注射若しくはカテーテルを介した灌流によって、洗浄液を介して、又は当業者に知られているように、他の方法又は前述の任意の組み合わせによって、投与することができる。
【0133】
本発明のさらなる実施形態は、対象のがんを治療、減少、阻害、又は制御する方法であって、ここで、前記方法は、対象に(i)1又は複数の治療剤及び/又はがん治療並びに(ii)非病原性の生存不能なマイコバクテリウムを同時に、別々に、又は順次に投与することを含み、前記方法は、1又は複数の治療剤及び/又はがん治療の単独の投与と比較して治療有効性の向上をもたらし、前記対象は、ECOGスケールにおける1-、2、3、又は4のパフォーマンスステータスを有するか、又は2以上の化学療法的レジメンに耐えるのに十分に適合しないとして臨床的に分類される。好ましくは、対象は、パフォーマンスステータス2(PS2)を有するとして分類される。
【0134】
本発明の他の態様では、本方法で使用される非病原性の生存不能なマイコバクテリウムは、マイコバクテリウム・ワクカエ、マイコバクテリウム・パラフォルトゥイタム、マイコバクテリウム・オーラム、マイコバクテリウム・インディカス・プラニイ、及びこれらの組み合わせ、最も好ましくはマイコバクテリウム・オブエンスである。好ましくは、非病原性の生存不能なマイコバクテリウムは加熱殺菌されている。好ましくは、非病原性の生存不能なマイコバクテリウムは、ラフ型変異体である。さらに好ましくは、生存不能なマイコバクテリウムは、第一選択治療として、任意に、1又は複数の治療剤又は治療手段の投与と同時に、別々に、又は順次に対象に投与される。
【0135】
本方法のいくつかの態様では、対象又は患者は、FOLFIRINOXなどの1又は複数の細胞傷害性化学療法剤を投与される。対象にはまた、ヌクレオシド代謝阻害剤、好ましくはゲムシタビンを投与され得る。好ましくは、対象は、ゲムシタビンと組み合わせて、微小管阻害剤、最も好ましくはnab-パクリタキセルを投与され得る。この方法のいくつかの態様では、対象にはまた、標的化放射線療法、例えば、定位的身体放射線療法(Cyberknife(登録商標))が施されることがある。
【0136】
使用又は方法のいくつかの態様では、ヒト患者は、緩和目的又は疼痛緩和目的で放射線療法を受ける。あるいは、ヒト患者に、治療目的又は/治癒目的で前記放射線療法を施してもよい。
【0137】
いくつかの実施形態では、チェックポイント阻害剤療法は、CTLA-4とCD40、CTLA-4とOX40、CTLA-4とIDO、OX-40とPD-L1、PD-1とOX-40、CD27とPD-L1、PD-1とCD137、PD-L1とCD137、OX-40とCD137、CTLA-4とIDO、PD-1とIDO、PD-L1とIDO、PD!とA2AR、PD-L1とA2AR、PD1とGITR、PD-L1とGITR、PD1とICOS、PD-L1とICOS、PD1とCD27、PD-L1とCD27、PD1とCD122、PD-L1とCD122、PD1とCSF1R、PD-L1とCSF1R、並びに他のそのような好適な組み合わせのうちのいずれか1つに対する、共刺激チェックポイント療法をさらに含んでいてもよい。
【0138】
好適な具体的な組み合わせとしては、アベルマブ+ウトミルマブ、ニボルマブ+ウレルマブ、ペムブロリズマブ+ウトミルマブ、アテゾリムマブ+MOXR0916±ベバシズマブ、アベルマブ+PF-04518600、デュルバルマブ+MEDI0562、ペムブロリズマブ+GSK3174998、トレメリムマブ+デュルバルマブ+MEDI6469、トレメリムマブ+MEDI0562、ウトミルマブ+PF-04518600、アテゾリムマブ+RO7009789、トレメリムマブ+CP870893、ニボルマブ+BMS986156、PDR001+GWN323、ニボルマブ+JTX-2011、アテゾリズマブ+GDC0919、イピリムマブ+エパカドスタット、イピリムマブ+インドキシモド、ニボルマブ+BMS986205、ペムブロリズマブ+エパカドスタット、アテゾリズマブ+CPI-444、デュルバルマブ+MEDI9447、PDR001+PBF509、ニボルマブ+バルリルマブ、アテゾリズマブ+バルリルマブ、ニボルマブ+NKTR-214、デュルバルマブ+ペキシダルチニブ(PLX3397)、デュルバルマブ+LY3022855、ニボルマブ+FPA008、ペムブロリズマブ+ペキシダルチニブ、PDR001+BLZ945、トレメリムマブ+LY3022855が挙げられる。
【0139】
さらなる実施形態では、チェックポイント阻害剤療法は遮断剤の投与を含み、ここで、前記遮断剤が、AMP-224(Amplimmune,Inc)、BMS-986016、又はMGA-271、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される抗体である。B7-DCIgとしても公知のAMP-224は、国際公開第2010/027827号及び国際公開第2011/066342号に記載されているPD-L2-Fc融合可溶性受容体である。
【0140】
さらなる実施形態では、チェックポイント阻害剤療法は遮断剤の投与を含み、ここで、前記遮断剤が、B7-H3に特異的に結合する抗体、例えばエノブリツズマブ(強力な抗腫瘍活性を有する、B7-H3に対する改変Fcヒト化IgG1モノクローナル抗体(Macrogenics,Inc.))、又はMGD009(T細胞上のCD3と標的細胞上のB7-H3の両方に結合し、T細胞を腫瘍部位に動員し、腫瘍根絶を促進することが見出されている、抗B7-H3二重親和性再標的化(DART)タンパク質)であるか、又はMGD009が、ヒト化DARTタンパク質である。MGC018は、デュオカルマイシンペイロード及び切断可能なペプチドリンカーを有する抗B7-H3抗体薬物複合体(ADC)である。
【0141】
いくつかの実施形態では、チェックポイント阻害剤療法は、DS-5573(Daiichi Sankyo,Inc.)、エノブリツズマブ(MacroGenics,Inc.)、及びオンブルタマブ[8H9](Y-mabs Therapeutics,Inc.)(放射性ヨウ素で標識されたB7-H3に対する抗体(I-131))からなる群から選択される抗B7-H3結合タンパク質の投与を含む。
【0142】
ある実施形態では、共刺激チェックポイント療法は細胞免疫系を上方制御し、ここで、前記共刺激チェックポイント療法は、CD27、OX40、GITR、又はCD137、及びこれらの組み合わせに対する、例えば、限定されないが、BMS-663513(ウレルマブ、抗CD137ヒト化モノクローナル抗体アゴニスト、Bristol-Myers Squibb)を含む、CD137アゴニスト;CD40に対するアゴニスト、例えばCP-870,893(抗CD40ヒト化モノクローナル抗体、Pfizer);OX40(CD134)アゴニスト(例えば、抗OX40ヒト化モノクローナル抗体、AgonOx及び米国特許第7,959,925号に記載されているもの)、及びAstra ZenecaのMEDI0562(ヒト化OX40アゴニスト);MEDI6469(マウスOX4アゴニスト);MEDI6383(OX40アゴニスト);又はCDX-1127(抗CD27ヒト化モノクローナル抗体、Celldex)などのCD27に対するアゴニストに対する、細胞、タンパク質、ペプチド、抗体、又はその抗原結合断片から選択される結合剤の投与を含む。好適な抗GITR抗体としては、TRX518(Tolerx)、MK-1248(Merck)、CK-302が挙げられ、本発明で使用するための好適な抗4-1BB抗体としては、PF-5082566(Pfizer)が挙げられる。
【0143】
本発明のある実施形態では、対象に、アミノ酸、酸化防止剤、脂肪、ビタミン、微量元素、ミネラル、微量栄養素、植物抽出物、植物化学物質、繊維、プレバイオティクス、プロバイオティクス、及び/又はこれらの組み合わせ、好ましくはビタミンD、ビタミンC、及び/又は亜鉛から選択される1又は複数の栄養補助食品をさらに投与する。ビタミンDは、マクロファージを含む免疫細胞において多面的効果を有してよく、様々な免疫細胞及び疾患におけるビタミンDの免疫調節的役割が実証されている。したがって、ビタミンDの好適な提示としては、パリカルシトールの経口又は注射製剤(例えば1mcgの経口);コレカルシフェロール、1週間当たり60,000IUの経口、又は300,000IUの単回注射;又は300,000IUのエルゴカルシフェロール注射が挙げられる。5-ヒドロキシビタミンDレベルは、本発明の非病原性の生存不能なマイコバクテリウムとの併用療法において、必要に応じてビタミンDを補充しながら、局所的な臨床診療に応じて、例えば12週間ごとに、頻繁にモニターされてもよい。プロトン性(高タンパク質含有量)液体(例えば、Ensure)の補充も想定される。
【0144】
新生物、腫瘍、及びがんには、良性、悪性、転移性、及び非転移性のタイプが含まれ、新生物、腫瘍、又はがんの任意のステージ(I、II、III、IV、又はV)又はグレード(G1、G2、G3など)、あるいは進行中、悪化中、安定化中、又は寛解中の新生物、腫瘍、がん、又は転移が含まれる。
【0145】
さらなる実施形態では、がんは、TNM分類系の下で、特に例えばT1~T4のT、及び任意にM0のMによって定義され、NはN0、N1、又はN2などの任意の分類であり得る。あるいは、前記がんは、ステージI、ステージII、又はステージIIIであるとして、臨床的に定義される。換言すれば、がんは初期段階であってもよく、及び/又は記録されたサイズ及び任意のサイズの成長によって定義される。
【0146】
本発明のさらに好ましい実施形態又は方法では、患者は、原発腫瘍から遠い任意の臓器に転移を示さないが、原発性新生物又は原発腫瘍の近くの1又は複数のリンパ節に転移を示してもよく、及び/又は1又は複数の近くの臓器に転移を示してもよい。あるいは、前記患者は、R2切除状態によって実証されるように、腫瘍切除手術後に肉眼的残存疾患を示さない。
【0147】
本発明のさらに好ましい実施形態又は方法では、ヒト患者は臨床的に非転移性と定義される。あるいは、ヒト患者は、(PETスキャンを介して)代謝的に活性な領域結節を示し、したがって、転移性であると考えられ、任意に、前記ヒト患者は肝臓又は肺の転移を示さない。又は、一部の患者は、腹膜転移を示すが、肝臓又は肺の転移を示さない、及びその並べ替えを示してもよい。
【0148】
本発明により治療され得るがんとしては、膀胱、血液、骨、骨髄、脳、乳房、結腸、食道、胃腸、歯肉、頭部、腎臓、肝臓、肺、鼻咽頭、頸部、卵巣、前立腺、皮膚、胃、精巣、舌、又は子宮が挙げられるが、これらに限定されない。
【0149】
さらに、がんは、具体的には、以下の組織型、すなわち、新生物、悪性癌;癌腫、未分化;巨細胞癌及び紡錘細胞癌;小細胞癌;乳頭癌;扁平上皮癌;リンパ上皮癌;基底細胞癌;毛母癌;移行上皮癌;乳頭状移行上皮癌;腺癌;ガストリノーマ、悪性胆管癌;肝細胞癌;肝細胞癌と胆管癌の混合癌;小柱腺癌;腺様嚢胞癌;腺性ポリープにおける腺癌;家族性大腸腺腫症;固形癌;カルチノイド腫瘍、悪性細気管支肺胞腺癌;乳頭腺癌;嫌色素性癌;好酸球癌;好酸性腺癌;好塩基球癌;明細胞腺癌;顆粒細胞癌;濾胞腺癌;乳頭腺癌及び濾胞腺癌;非被膜性硬化癌;副腎皮質癌;子宮内膜癌;皮膚付属器癌;アポクリン腺癌;皮脂腺癌;耳道腺癌;粘表皮癌;嚢胞腺癌;乳頭状嚢胞腺癌;乳頭漿液性嚢胞腺癌;粘液性嚢胞腺癌;粘液腺癌;印環細胞癌;浸潤性乳管癌;髄様癌;小葉癌;炎症性癌;乳房パジェット病;腺房細胞癌;腺扁平上皮癌;扁平上皮化生を伴う腺癌;胸腺腫、悪性卵巣間質腫瘍、悪性莢膜細胞腫、悪性顆粒膜細胞腫瘍、悪性アンドロブラストーマ、悪性セルトリ細胞癌;ライディッヒ細胞腫瘍、悪性脂質細胞腫瘍、悪性傍神経節腫、悪性乳房外傍神経節腫、悪性褐色細胞腫;糸球肉腫;悪性黒色腫;無色素性黒色腫;表在拡大型黒色腫;巨大色素性母斑中の悪性黒色腫;転移性黒色腫、悪性黒子、悪性黒子由来黒色腫、皮膚扁平上皮癌、結節性黒色腫、末端黒子型黒色腫、線維形成性黒色腫、類上皮細胞黒色腫;青色母斑、悪性肉腫;線維肉腫;線維性組織球腫、悪性粘液肉腫;脂肪肉腫;平滑筋肉腫;横紋筋肉腫;胎児性横紋筋肉腫;肺胞横紋筋肉腫;未分化多形性肉腫;間質肉腫;混合腫瘍;ミュラー管混合腫瘍;腎芽腫;肝芽腫;癌肉腫;間葉腫、悪性ブレンナー腫瘍、悪性葉状腫瘍、悪性滑膜肉腫;中皮腫、悪性未分化胚細胞腫;胎児性癌;悪性奇形腫;悪性卵巣甲状腺腫;絨毛癌;中腎腫、悪性血管肉腫;血管内皮腫、悪性カポジ肉腫;血管周皮腫、悪性リンパ管肉腫;骨肉腫;皮質近傍骨肉腫;軟骨肉腫;軟骨芽腫、悪性間葉性軟骨肉腫;骨の巨細胞腫瘍;ユーイング肉腫;歯原性腫瘍、悪性エナメル上皮歯芽肉腫;エナメル上皮腫、悪性エナメル上皮線維肉腫;松果体腫、悪性脊索腫;神経膠腫、悪性上衣腫;星細胞腫;原形質星状細胞腫;線維性星状細胞腫;星状芽細胞腫;多形神経膠芽腫;乏突起膠腫;乏突起芽腫;原始神経外胚葉;小脳肉腫;神経節芽細胞腫;神経芽細胞腫;網膜芽細胞腫;嗅覚神経原性腫瘍;髄膜腫、悪性神経線維肉腫;神経鞘腫、悪性顆粒細胞腫瘍、悪性リンパ腫;ホジキン病;ホジキン側肉芽腫;悪性リンパ腫、小リンパ球性悪性リンパ腫、びまん性大細胞;濾胞性悪性リンパ腫;菌状息肉症;他の特定の非ホジキンリンパ腫;悪性組織球症;多発性骨髄腫;肥満細胞肉腫;免疫増殖性小腸疾患;白血病;リンパ性白血病;形質細胞白血病;赤白血病;リンパ肉腫細胞性白血病;骨髄性白血病;好塩基球性白血病;好酸球性白血病;単球性白血病;肥満細胞性白血病;巨核芽球性白血病;骨髄肉腫;及び有毛細胞白血病であってもよいが、これらに限定されない。好ましくは、がんは、膀胱がん(筋層非浸潤性膀胱がんを含む)、前立腺がん、肝臓がん、腎臓がん、肺がん、乳がん、結腸直腸がん、結腸がん、直腸がん、膵臓がん、脳がん(神経膠芽腫を含む)、肝細胞がん、リンパ腫、白血病、胃がん、子宮頸がん、卵巣がん、甲状腺がん、黒色腫、頭頸部がん、皮膚がん、及び軟部組織肉腫、及び/又は他の形態の癌腫から選択される。
【0150】
腫瘍は、転移性又は悪性腫瘍、最も好ましくは転移性であってもよい。より好ましくは、がんは、膵臓がん、結腸直腸がん、前立腺がん、卵巣がんであり、最も好ましくは、がんは、例えば膵管腺癌(PDAC)などの膵臓がんであり、又は最も好ましくは、がんは、転移性膵管腺癌(mPDAC)を含む転移性膵臓がんである。
【0151】
本方法のいくつかの態様では、非病原性の生存不能なマイコバクテリウムは、非経口経路、経口経路、舌下経路、経鼻経路、又は肺経路を介して投与されて。さらに好ましくは、非経口経路は、皮下、皮内、真皮下、腹腔内、静脈内、腫瘍近傍(peritumoral)、病変近傍(perilesional)、病巣内、又は腫瘍内、及びこれらの組み合わせから選択される。好適には、腫瘍内投与の後に皮内投与が続いて行われる。
【0152】
本発明の別の実施形態では、1又は複数の治療剤又は治療手段は、非病原性の生存不能なマイコバクテリウムと同時に、別々に、又は順次に腫瘍内投与される。例えば、ゲムシタビンと非病原性の生存不能な全細胞マイコバクテリウムの両方を、RenovoCath(商標)RC120 Catheter(RenovoRx)を使用して動脈内輸送によって膵臓部位に送達する。RenovoCath(商標)RC120 Catheterは、2つの摺動可能な適合バルーンを使用して標的器官に供給する動脈の可変セグメントを単離するように設計された血管内マルチルーメン2ハンドルカテーテルである。近位閉塞バルーン及び遠位閉塞バルーンが膨張すると、カテーテルは部位を隔離して前記治療剤を特異的に送達する。別の好適な組み合わせは、非病原性の生存不能な全細胞マイコバクテリウムを酸化ハフニウムナノ粒子と一緒に腫瘍内投与し、続いて放射線療法によって活性化することである(NBTXR3、NanoBiotix,Inc.)。
【0153】
好ましくは、本方法で投与される非病原性の生存不能なマイコバクテリウムはマイコバクテリウム・オブエンスであり、対象には、ヌクレオシド代謝阻害剤、好ましくはゲムシタビンが、同時に、別々に、又は順次に投与され、1又は複数のチェックポイント阻害剤、好ましくはペムブロリズマブがさらに投与され、ここで、対象は、ECOGスケールにおける2、3、又は4のパフォーマンスステータス、好ましくはPS2を有するとして分類されるか、又は2以上の化学療法レジメンに耐える年齢でない及び/又は耐えるのに十分に壮健でないと分類される。
【0154】
さらなる実施形態では、患者はまた、本発明による治療又は方法の開始時にCOVID-19ワクチン接種を投与され、2回目の投与は、ワクチンに応じて、及びIMM-101、Gem/Nab-Pと次の投与との間に少なくとも1週間あることを確実にするために、6週間以上遅延される。通常、COVID-19ワクチン接種と任意の化学療法との間には5~7日間の期間がある。
【0155】
本発明の方法の別の態様によれば、対象のパフォーマンスステータスは、前記がんの治療、減少、阻害、又は制御の間及び/又は後に、同じままであるか又は改善する。さらなる実施形態では、本発明の方法は、1)転移する可能性がある又は転移する腫瘍細胞又はがん細胞の成長、増殖、移動性、又は浸潤性を低減又は阻害すること、2)原発腫瘍又は原発がんから生じる転移の、前記原発腫瘍又はがんとは異なる1又は複数の他の部位、位置、又は領域への形成又は確立を、減少又は阻害すること、3)転移が形成された又は確立された後、原発腫瘍又は原発がんとは異なる1又は複数の他の部位、位置、又は領域での転移の成長又は増殖を減少又は阻害すること、4)転移が形成された又は確立された後、さらなる転移の形成又は確立を減少又は阻害すること、5)全生存期間を延長すること、6)無増悪生存期間を延長すること、又は7)病勢の安定化のうちの1又は複数を含む。
【0156】
本発明の別の実施形態によれば、対象のパフォーマンスステータスは、前記がんの治療、減少、阻害、又制御の間及び/又は後に、同じままであるか又は改善する。例えば、患者は、PS2として本発明の治療を開始し、所望の治療若しくはレジメンを通して及び終了時、前記スコアを維持する可能性があり、又は患者は、PS2として本発明の治療を開始し、所望の1又は複数の治療若しくはレジメンを通して及び/又は終了時、PS1(-)、PS1、又はPS0など、改善されたパフォーマンススコアを示す可能性がある。
【0157】
本発明のある実施形態では、本明細書に開示される組み合わせ及び方法は、(好ましくは手術後若しくは治療終了の12か月後、及び/又は前記非病原性の生存不能なマイコバクテリウムの1回、2回、3回、4回、5回、若しくは6回、又はそれを超える投与の後に評価された場合に)(i)全生存期間、(ii)無増悪生存期間、(iii)全奏効率、(iv)転移性疾患の減少、(v)炭水化物抗原19.9(CA19.9)、癌胎児性抗原(CEA)、前立腺特異的抗原(PSA)、又は腫瘍に応じた他の好適なバイオマーカーなどの腫瘍抗原の循環レベル、(vii)栄養状態(体重、食欲、血清アルブミン)、(viii)全身性免疫炎症指数(SII)若しくは全身性炎症スコア(SIS)、(ix)疼痛制御又は鎮痛薬使用、又は(x)CRP/アルブミン比若しくは予後栄養指数(PNI)、好中球/リンパ球比(NLR)、又は(xi)生活の質の改善、又は(xii)ctDNAの減少又は排除のうちの1又は複数から選択される疾患状態及び疾患進行の1又は複数のマーカーにおける臨床的に意義のある改善をもたらす。
【0158】
いくつかの実施形態では、上記のリストから選択される疾患状態及び疾患進行の1又は複数のマーカーは、本発明の治療、減少、阻害、又は制御プロトコルのモニタリングのために測定されてもよい。いくつかの好ましい実施形態では、1又は複数のバイオマーカーは、前立腺特異的抗原(PSA);癌胎児性抗原(CEA);予後栄養指数(PNI);全身性免疫炎症指数(SII);又は好中球/リンパ球比(NLR)及び全身性炎症スコア(SIS)のうちのいずれか1つ又は複数を含んでいてもよい。
【0159】
本発明のある実施形態では、原発腫瘍及び/又は非標的腫瘍を含む、前記がんの治療、減少、阻害、又は制御が、(好ましくは手術後及び/又は治療終了時及び/又は前記非病原性の生存不能なマイコバクテリウムの1回、2回、3回、4回、5回、若しくは6回、又はそれを超える投与の後に評価された場合に)RECIST 1.1若しくはiRECISTによる無増悪生存期間の延長;RECIST 1.1若しくはiRECISTによる奏効期間(DoR)の延長;又はRECIST 1.1若しくはiRECISTによる奏効までの時間(TtR)の短縮をもたらす。任意に、前記奏効患者又は非奏効患者は、ヨーロッパ出身又はヨーロッパ外出身、例えば、東ヨーロッパ、西ヨーロッパ、若しくは中央ヨーロッパ、又はインド亜大陸若しくはアジアの出身である。
【0160】
本発明のある実施形態では、本明細書に開示される使用、組み合わせ及び方法は、治療を開始する前の3か月間に10%未満の体重減少を示す患者において、疾患状態及び疾患進行の1又は複数のマーカーの臨床的に意義のある改善をもたらす。
【0161】
本発明のさらなる実施形態では、本明細書に開示される使用、組み合わせ及び方法は、治療を開始する前1か月以内に15%以下の体重減少を示す患者において、疾患状態及び疾患進行の1又は複数のマーカーの臨床的に意義のある改善をもたらす。
【0162】
本発明のさらなる実施形態では、本明細書に開示される使用、組み合わせ及び方法は、握力など、患者の疾患状態、QoL、及び進行の1又は複数のマーカーの臨床的に意義のある改善をもたらす。握力は、参加者を直立させた状態で、デジタルダイナモメータ(TTM,Inc.、東京、日本)を使用して測定されてもよい。患者は、肩を内転させ中立的に回転させ、肘を完全に伸ばし、前腕及び手首は中立位置にあり、脚は肩の幅に開く。握力は、手術後及び/又は治療終了時及び/又は前記非病原性の生存不能なマイコバクテリウムの1回、2回、3回、4回、5回、若しくは6回、又はそれ以上の投与の3か月後以降に、維持又は改善されている。
【0163】
本発明のさらなる実施形態では、本明細書に開示される使用、組み合わせ及び方法は、血漿アルブミンレベルなど、患者の疾患状態、QoL、及び進行の1又は複数のマーカーの臨床的に意義のある改善をもたらす。本明細書において、前記血漿アルブミンレベルは、手術後及び/又は治療終了時及び/又は前記非病原性の生存不能なマイコバクテリウムの1回、2回、3回、4回、5回、若しくは6回、又はそれを超える投与の3か月後以降に測定された場合に、2~3g/dLの間(好ましくは、2.8g/dL若しくはそれに近い値)に維持されるか、又は増加している。
【0164】
本発明の最も好ましい実施形態では、対象におけるがんの治療、減少、阻害、又は制御に使用するための非病原性の生存不能なマイコバクテリウムが提供され、ここで、対象は、米国東海岸癌臨床試験グループ(ECOG)スケールにおける1-、2、3、又は4のパフォーマンスステータス、好適にはPS2を有すると臨床的に分類されるヒト患者であり、本明細書においては、対象は、50歳以上、55歳以上、60歳以上、65歳以上、70歳以上、75歳以上、80歳以上、85歳以上、若しくは90歳以上、又はそれ以上のヒト患者である。
【0165】
本発明の最も好ましい実施形態では、対象におけるがんの治療、減少、阻害、又は制御に使用するための非病原性の生存不能なマイコバクテリウムが提供され、ここで、対象は、米国東海岸癌臨床試験グループ(ECOG)スケールにおける1-、2、3、又は4のパフォーマンスステータス、好適にはPS2を有すると臨床的に分類されるヒト患者であり、ヒト患者は、70歳以上であり、任意に、ヒト患者は、ゲムシタビンを、任意に、nab-パクリタキセルと組み合わせて投与され、好ましくは2のパフォーマンスステータス(PS2)を有する。
【0166】
本発明の最も好ましい実施形態では、対象におけるがんの治療、減少、阻害、又は制御に使用するための非病原性の生存不能なマイコバクテリウムが提供され、ここで、対象は、ECOGスケールにおける0、1-、1、2、2+、3、4のパフォーマンスステータス、好適には0~2の間のPSを有すると臨床的に分類され、対象はヒト患者であり、70歳以上であり、任意に、ヒト患者は、ゲムシタビンを、任意に、nab-パクリタキセルと組み合わせて投与される。
【0167】
好ましくは、70歳以上の前記ヒト患者は、0、1、又は1-のパフォーマンスステータスを有する。
【実施例
【0168】
本発明を、以下の非限定的な実施例を参照してさらに説明する。
【0169】
実施例1
ECOGスケールにおける2のパフォーマンスステータスを有すると臨床的に分類されたか、又は2以上の化学療法レジメンに耐えるのに十分に適合していないと分類された患者、例えばPS1(-)、において、ペムブロリズマブ及び加熱殺菌された全細胞マイコバクテリウム・オブエンス(IMM-101)の調製物と組み合わせたゲムシタビンの安全性及び有効性を調査するための治験が開発された。この組み合わせは、一次評価項目として客観的奏効率(ORR)を使用して、このような低いパフォーマンスステータスを有する患者における転移性膵臓がんの第一選択治療として使用されるであろう。この治験はまた、CTCAE v5を使用した安全性プロファイルの評価、iRECISTを使用したORRの評価、奏効期間の評価、RECIST 1.1及びiRECISTを使用した無増悪生存期間(PFS)及び疾患制御率(DCR)、全生存期間(OS)を提供及び/又は決定し、腫瘍及び血液試料から生成された治療奏効の分子プロファイル及び仮定されたバイオマーカーをORR、PFS、OS及びDCRと相関させる。
【0170】
全体的な設計は、PS1-患者及びPS2患者に対して別々に、2つの単一群第II相3段階アプローチを使用し、これらは、PS1-患者及びPS2患者において、それぞれ30%以上及び20%以上の奏効率を検出するのに良好な検出力(PS1-について>87%;PS2について>88%)を有する。最大40人のPS1-患者及び40人のPS2患者が、募集される。
【0171】
一次評価項目は、RECIST 1.1によって評価されるORRである。6週間ごとにCTによって奏効を評価する。計画された無効性/有効性分析の前の患者の最小フォローアップは18週間(すなわち、第3の奏効評価時間後)であるが、実際にはほとんどの患者は中間分析の時点で18週間を超えるフォローアップを受ける。治験治療を開始する全ての患者は、奏効について評価可能であり、奏効率を計算するための分母の一部を形成する。二次評価項目は、安全性プロファイル(CTCAE v5を使用)、iRECISTによって評価されるORR、奏効期間(RECIST 1.1及びiRECISTによる)、RECIST 1.1及びiRECISTによって評価される無増悪生存期間(PFS)、OS、RECIST 1.1及びiRECISTによって評価されるDCRである。探索的評価項目には、ORR、PFS、OS、及びDCRと相関する治療応答性の分子プロファイル及びバイオマーカーを決定するための腫瘍及び血液試料の分析が含まれる。
【0172】
患者は以下のように投与される:IMM-101:0週目、2週目、及び4週目に1mgの皮膚内(ID)、次いで8週目から0.5mgのID Q3W;ペムブロリズマブ:2週目から200mgをIV Q3W;ゲムシタビン:2週目から21日ごとに1日目及び8日目に1000mg/m IV。
【0173】
治験設計プロトコルを図1に示す。
【0174】
実施例2
転移性膵管腺癌(mPDAC)及びPS2のECOGパフォーマンスステータスを有する患者における第一選択治療としてのゲムシタビン及びnab-パクリタキセルと組み合わせたIMM-101の安全性及び有効性を調査するために、さらなる治験が開発された。この治験は、最近mPDACと診断され、がんの治療をまだ受けていない患者についてのものである。約6~8か月の仮定された対照生存期間中央値、及び介入群における50%以上の予想される利益に基づいて、合計256の事象(死亡)を用いた治験は、5%の有意水準でHR=1の帰無仮説を棄却する90%の検出力を有する(この規模の治験はまた、介入群における40%以上の利益を検出する合理的な検出力[77%]を有する)。募集には少なくとも12か月を要し、フォローアップが2年であると仮定すると、約320人の無作為化患者で256の事象が予想される。320人の患者が募集される。
【0175】
この治験への参加に適格であるためには、患者は、0週目、1回目の来院、又は70歳を超える年齢で、2以下のECOG/WHOパフォーマンスステータスを有さなければならない。2のPS(年齢に関係なく)を有するか、又は70歳を超える(パフォーマンスステータスに関係なく)全ての患者が、この治験の候補となるだろう。ECOG PSは、現場の2名の治験責任医師によって実施され、矛盾する評価の場合は、最も高い(最悪の)評価が使用される。好適な患者は、治験責任医師の意見では、FOLFIRINOX投与に不適格であるが、Gem/Nab-Pの投与に適格であると考えられる。生殖系列変異(BRCA2、p16、ATM、STK11、PRSS1/PRSS2、SPINK1、PALB2など)を有する患者は、治験責任医師の裁量で治験に登録することができる。
【0176】
ビタミンDレベルは、スクリーニング時に全ての患者において測定され、正常範囲よりも低いレベルを有する患者は、治験薬の投与中にこれらのレベルを正常化するために補充される。患者は、以下によって定義されるように、適切な臓器機能に従って募集される。a.血清アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AST)及び血清アラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)が<2.5×正常値の上限(ULN)、又は肝転移の場合は、≦5×ULN;b.総血清ビリルビン<1.5ULN。ステント挿入後のビリルビン値が、1.5×ULN以下に低下し、胆管炎がない場合は、胆管ステントを有する患者を含めることができる。c.血清アルブミン≧2.8g/dL;d.ヘモグロビン≧9.0g/dl;e.白血球数(WBC)≧3,000/μL;f.絶対好中球数(ANC)≧1,500/μL;g.血小板≧100,000/μL;h.血清クレアチニン≦1.5ULN又はクレアチニンクリアランス>50mL/分(MDRD)。
【0177】
同意され、事前に無作為化されると、患者はスクリーニング検査を受ける。適格患者は、地理的地域(欧州対欧州外)、パフォーマンスステータス(0又は1対2)及び年齢群(70歳以下対70歳超)によって層別化した無作為化により、1:1の比でGem/Nab-P+IMM-101又はGem/Nab-P単独のいずれかに無作為化される。
【0178】
進行時及び治験からの除外時、及びPIの裁量で、IMM-101は、単独で、又は死亡若しくはIMM-101に関連すると考えられる忍容できない毒性が生じるまで他の治療と組み合わせて、毎月ベースで投与されてもよい。
【0179】
患者は、研究治験薬の成績を判断するために、イベントスケジュールに従って評価される。スクリーニングから最後のフォローアップ調査の来院まで、様々な検査評価、画像化、及び生活の質に関するアンケートを実施する。
【0180】
主な目的は、経験した有害事象(IMM-101の注射部位注射での局所忍容性を含む、臨床状態及び検査パラメータの変化)のプロファイルを調べることによって、mPDAC患者におけるゲムシタビン/nab-パクリタキセル±IMM-101の組み合わせの安全性及び忍容性を評価することである。さらなる主要な目的は、全生存期間(OS)を改善することである。
【0181】
主な目的は、mPDACにおける12か月投与での無増悪生存期間(PFS)を評価することである。PFSは、RECIST 1.1及びiRECIST原理を使用して評価されるだろう。12か月投与での全生存期間(OS)を評価することも意図されている。
【0182】
副次的目的は、RECIST 1.1及びiRECISTによって評価されるようなmPDAC患者における奏効時間(DoR)及び奏効期間(tTR)を評価することである。例えば免疫関連効果判定基準(irRC)を用いて、全奏効率(ORR)を評価すること;客観的奏効を有する患者の割合を評価すること;RECIST 1.1(例えば、各スキャン評価点で評価)に基づいてiRECIST原理に従った疾患制御(CR、PR、SD)の割合を評価及び決定すること;2年及び5年で評価されたPFS;2年及び5年でのOSである。生活の質アンケートC30(QLQ-C30)は、開始時、次いで4週間後、3か月後、6か月後、及び12か月後に完了されるだろう。
【0183】
探索目的は、血液試料及び可能な場合には生検試料についての異なる時点で評価された免疫学的変化を評価することである。評価項目は、細胞の関与、機能、又はサイトカイン/免疫メディエーター産生(例えば、サイトカイン及び抗体)、又は関連する可能性のある任意の他の臨床的又は免疫学的に関連するアッセイに基づく、免疫状態の1又は複数のマーカーの変化を含んでいてもよい。
【0184】
患者は以下のように投与される:IMM-101:IMM-101の0.1mLの皮内単回注射(各バイアルは10mg/mLを含有する);Gemzar(ゲムシンタイン):i.v.注入について1000mg/m;Abraxane:125mg/mのNab-パクリタキセル、i.v.注入。
【0185】
IMM-101は、三角筋を覆う皮膚への皮内注射によって投与され、各投与で腕を変える。
【0186】
IMM-101投与レジメン:IMM-101は、常に最初に、ゲムシタビン及びnab-パクリタキセルの投与の2週間前に投与される。
【0187】
IMM-101による投与レジメンは、最初の3回の投与について2週間ごとに1回用量の投与、続いて4週間の休止期間、次いで次の3回の投与について2週間ごとに1回用量の投与となる。投与される最初のIMM-101用量は、0.1mLである。これに続いて、0.05mL又は0.1mLのIMM-101をその後4週間ごとに12か月以降まで投与する。ゲムシタビンの最初の投与の3日前に最初のIMM-101投与を行う。
【0188】
ゲムシタビン/nab-パクリタキセルは、以下のように投与される:125mg/mのNab-パクリタキセル、約30分間にわたるi.v.注入、続いて28日間のサイクルのD1、D8、D15での30分間のi.v.注入として、1000mg/mのゲムシタビン。
【0189】
暫定安全性評価:IMM-101群の最初の30人の患者が3サイクルの投与(12週間)を受けた時点で、正式な早期安全性評価を実施する。データ安全性モニタリング委員会(DSMB)は、この段階の患者からのデータを評価し、その後に登録される全ての患者との分析のために最終的に統合される。DSMBの全ての手法を記述するために、特定のデータ安全モニタリング手順書(DSMC)が作成される。3サイクル/12週間後にこのコホートで増悪した毒性又は許容できない毒性が観察されない場合、治験で募集されたこれらの患者及びその後の患者は、許容できない毒性(用量制限毒性又はDLT)に基づいてモニターされる。
【0190】
中間解析:IMM-101群の30人の患者が3サイクルの投与を受けた後の早期安全性評価に加えて、320人目の患者が無作為化されたときに有効性についての正式な中間解析を行う。帰無仮説が棄却されない場合、治験はそのまま継続され、256人の死亡が発生したときに最終的な分析が行われる。
【0191】
実施例3
この治験は、本出願人に譲渡された米国特許第8,617,520号明細書に記載されており、結果は、Dalgeishらによって、「Randomised, open-label, phase II study of gemcitabine with and without IMM-101 for advanced pancreatic cancer」[Br. J. Cancer. 2016 Sep 27; 115(7): 789-796]と題する論文及び「Long term survival in IMAGE 1 (Immune Modulation And Gemcitabine Evaluation 1), a randomized, open-label phase II trial comparing gemcitabine with and without IMM-101 in advanced pancreatic cancer」; Angus George Dalgleish and The IMAGE 1 Trial Investigators; Journal of Clinical Oncology 2015 33:15_suppl, 3051-3051に発表された。
【0192】
要約すると、この治験は、進行膵臓がんを有する患者において、QoLを含む安全性及び忍容性;疾患の臨床徴候及び症状;全生存期間(OS)、無増悪生存期間(PFS)、及び全奏効率(ORR);腫瘍組織量及び免疫学的状態の選択されたマーカーについて、IMM-101(ホウ酸緩衝生理食塩水中の加熱殺菌全細胞マイコバクテリウム・オブエンスの懸濁液)と組み合わせたゲムシタビン(GEM)のゲムシタビン単独に対する効果を比較した。
【0193】
疾患結果:インフォームドコンセントを提供した患者は、適格性を確立するために最大28日間のスクリーニング期間に参加した。適格性が確認されたら、患者をIMM-101と共に化学療法(GEM)(実薬群)又は化学療法(GEM)単独(対照群)のいずれかを受けるように無作為化した(2:1)。
【0194】
ベースラインの世界保健機関(WHO)のパフォーマンスステータス(PS0~1対PS2)及び疾患の程度(局在的に進行した手術不能対転移性[原発腫瘍に関係なく]対播種性腹膜疾患対これらの任意の組み合わせ)によって無作為化を層別化した。次いで、患者は治験の投与段階に入った。
【0195】
組み合わせ投与レジメンは、最初の3回の投与については2週間ごと、続いて4週間の残りの期間、続いて次の3回の投与については2週間ごと、続いてその後4週間ごとに、腕を投与毎に変えての、三角筋を覆う皮膚へのIMM-101の0.1mlの単回皮内注射の投与を含み、化学療法をIMM-101の初回投与の少なくとも14日後に開始し、ここで、ゲムシタビンの投与は、4週間ごとに3週間連続して、最大12サイクル(すなわち、約48週間)、週に1回、30分かけて1000mg/mlで静脈内投与された。実対照薬群は、通常の標準ケア(最大12サイクルのゲムシタビン)を投与された。ゲムシタビンの投与は、膵臓がんについての通常の処方情報に従った。
【0196】
所定の転移性下位群(84%)において、OSは、IMM-101+GEMを有利に4.4か月から7.0か月に有意に改善された(HR,0.54,95% CI 0.33-0.87,P=0.01)。
【0197】
WHOパフォーマンスステータスが2である13名の患者を、IMM 101投与群(合計75人の患者;17.3% PS2)に無作為化した。IMM-101投与群では、PS2を有する患者は6人が男性であり、7人が女性であった。年齢範囲は45歳~75歳(中央値66)であった。治験期間は、0.5か月~46.5か月の範囲であり、7人の患者が少なくとも6か月間治験に参加した。対照群の3人のPS2患者は、57歳、67歳、及び83歳であった。1人は男性であり、2人は女性であった。治験期間は、1.9か月、2.4か月、及び6.4か月であった。WHO PS2を有するMM-101治療群の13人の患者のうちの2人が、治験を完了し(12サイクルの投与)、IMM-101-002A下位治験に登録され、そこでIMM-101の投与が継続された(患者1030及び患者1043)。IMM-101投与群のPS2の1人の患者は、奏効を示した(PR、初期進行後、患者1030)。4名の患者はSDのBORを有し、さらに6名の患者についてはBORはPDであり、2名の患者は奏効について評価不能であった。対照群では、BORは2人の患者についてPDであり、3人目は評価不能であった。
【0198】
最も注目すべきは、WHOパフォーマンスステータスが2であるIMM-101投与群の患者について、ITT分析セットのOS中央値が、7.5か月であったことである。これは、PS0~1下位群の中央値(6.4か月)よりも高かった。13人の患者のうち9人が、7か月以上間生存した。
【0199】
実施例4
オキサリプラチンレジメンが実行可能な治療選択肢ではないMSI-H/dMMRステージIII結腸直腸がんを有する患者において、加熱殺菌された全細胞マイコバクテリウム・オブエンス(IMM-101)の調製物と組み合わせたアテゾリズマブのアジュバント効果を調査する治験が開発された。
【0200】
投与される患者は、0~2のECOGステータスを有し、R0腫瘍切除を受けており、オキサリプラチンベースのアジュバント化学療法に対して不適格であるか又はそれを拒絶している、結腸又は直腸の病理学的ステージIIIの組織学的に確認された腺がんを示す。
【0201】
この治験は、IMM-101とアテゾリズマブとのアジュバント組み合わせが十分に忍容性であるかどうかを調査し、組み合わせの有効性シグナルを調査すること、並びにIMM-101とアテゾリズマブとのアジュバント組み合わせが3年無病生存率を有意に改善することができるかどうかを決定すること、並びに12か月のアジュバント投与後に検出可能なctDNAを有しない患者の割合として定義されるctDNA非含有率を推定することを求める。
【0202】
合計100人の患者が登録され、50人をコホートAとし、50人をコホートBとした。N=50のサンプルサイズは、実験的組み合わせ投与についての3年無病生存率の合理的に信頼できる推定値を提供すると考えられ、COLOPREDICT登録におけるステージIIIのdMMR腫瘍を有する患者のあらかじめ登録されたコホートに対する実際に観察された割合の測定を可能にする。
【0203】
コホートAは、アジュバント設定で、静脈内投与される840mgの用量のアテゾリズマブを、2週間ごとに12か月間投与される。
【0204】
コホートBは、アジュバント設定において、アテゾリズマブ投与開始の14±2日前に、1.0mgの1回初期用量のIMM-101が皮内投与される。次いで、IMM-101の0.5mg用量の2週間ごとの1か月間の皮内投与、及び続く0.5mg用量の4週間ごとの合計12か月間の皮内投与と組み合わせて、患者にアテゾリズマブを840mgの用量で2週間ごとに12か月間静脈内投与する。
【0205】
IMM-101の投与容量は、最初に0.1mL(1.0mg)であり、続いて0.05mL(0.5mg)であり、腕は投与ごとに変えて三角筋を覆う皮膚の皮内に投与される。治験責任医師は、皮内注射の技術において事前に適切に訓練されているであろう。
【0206】
IMM-101による以前の臨床経験は、この用量が安全で忍容性が高いことを示唆している。注射部位で発生する皮膚反応は、紅斑、局所腫脹、及び時折軽度の潰瘍形成を特徴とする。製品の既知の薬理学及び以前の臨床経験を考慮すると、全ての症状が予想されるものである。さらに、IMM-101を用いた安全性及び忍容性試験からのデータは、皮膚反応が経時的に満足に解決し、日常活動を損なわないことを明らかにした。
【0207】
治験において各患者に投与されるIMM-101の最初の投与の後に、予防措置として利用可能な蘇生施設での医学的監視下で、少なくとも2時間バイタルサインのモニタリングされる。患者は、治療の最後の投与後3年間フォローアップされ、一次評価項目は、3年間のマイルストーンでのDFS率の評価であり、二次評価項目は、治療終了後、1年、2年、及び5年でのDFS/OS、安全性、QoL、及び12か月でのctDNA非含有患者の割合を含む(図2を参照のこと)。
【0208】
患者選択基準には、9g/dL以上のヘモグロビン;2.5以下のAST(SGOT)/ALT(SGPT)値が含まれ、評価項目は、無作為化から3年後の任意の原因による死亡をさらに含む。
【0209】
実施例5
MSI-high/dMMR臨床ステージIIIの結腸直腸がんを有し、オキサリプラチンレジメンが投与5週間後の病理学的完全退縮(pCR)又はほぼ完全な退縮(10%未満の生存腫瘍細胞)の点、並びに無病生存期間及び全生存期間の点で実行可能な治療選択肢ではない患者において、IMM-101と併用する周術期/ペリアジュバントのアテゾリズマブの有効性評価するために、実施例4に対する探索的下位治験が開発された。
【0210】
合計20人の患者が登録され、投与される患者は、オキサリプラチンベースのアジュバント化学療法に対して不適格であるか又はそれを拒絶している、結腸又は直腸の組織学的に確認された臨床ステージIII腺がんを示し、0~2のECOGステータスであり、切除可能な原発腫瘍を有する。切除後、これらの患者は、実施例3のアジュバント療法(コホートB)をさらに12か月間受ける。
【0211】
具体的には、登録患者は、腫瘍切除手術の35日前の1.0mg用量のIMM-101の皮内投与、続いて切除手術の21日前及び5日前の0.5mg用量のIMM-101の投与と組み合わせて、1200mg用量のアテゾリズマブを腫瘍切除手術の28日前及び7日前に静脈内投与される。
【0212】
切除手術後70日以内に、患者は、アテゾリズマブ投与の開始の14±2日前に、1.0mgの1回初期用量のIMM-101が皮内投与される。これに続いて、実施例4のコホートBのアジュバント設定に従って、2週間ごとの1か月間及びそれに続く4週間ごとの合計12か月間の0.5mg用量のIMM-101と組み合わせて、840mg用量のアテゾリズマブが、2週間ごとに12か月間、静脈内投与される。
【0213】
患者は、治療の最後の投与後3年間フォローアップされ、一次評価項目は、3年間のマイルストーンでのDFS率の評価であり、二次評価項目は、治療終了後、1年、2年、及び5年でのDFS/OS、安全性、QoL、及び12か月でのctDNA非含有患者の割合を含む(図3を参照のこと)。患者選択基準には、9g/dL以上のヘモグロビン;2.5以下のAST(SGOT)/ALT(SGPT)値が含まれ、評価項目は、無作為化から3年後の任意の原因による死亡をさらに含む。
図1
図2
図3
図4
【国際調査報告】