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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-12-12
(54)【発明の名称】蛍光センサー
(51)【国際特許分類】
   C07D 491/107 20060101AFI20231205BHJP
   G01N 33/483 20060101ALI20231205BHJP
   G01N 33/50 20060101ALI20231205BHJP
   G01N 33/15 20060101ALI20231205BHJP
   G01N 21/64 20060101ALI20231205BHJP
   C07C 211/31 20060101ALI20231205BHJP
   C07C 327/18 20060101ALI20231205BHJP
   C09K 11/06 20060101ALI20231205BHJP
   C07D 495/10 20060101ALI20231205BHJP
   C07D 311/16 20060101ALI20231205BHJP
   C07D 491/16 20060101ALI20231205BHJP
   C07D 231/56 20060101ALI20231205BHJP
   C07D 307/885 20060101ALI20231205BHJP
   C07D 215/40 20060101ALI20231205BHJP
   C07D 239/48 20060101ALI20231205BHJP
   C07D 311/14 20060101ALI20231205BHJP
   C07D 517/10 20060101ALI20231205BHJP
   C07C 309/50 20060101ALI20231205BHJP
【FI】
C07D491/107
G01N33/483 C
G01N33/50 Z
G01N33/15 Z
G01N21/64 Z
C07C211/31 CSP
C07C327/18
C09K11/06
C09K11/06 645
C09K11/06 620
C07D495/10
C07D311/16
C07D491/16
C07D231/56 Z
C07D307/885
C07D215/40
C07D239/48
C07D311/14
C07D517/10
C07C309/50
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023528762
(86)(22)【出願日】2021-11-12
(85)【翻訳文提出日】2023-06-30
(86)【国際出願番号】 AU2021051345
(87)【国際公開番号】W WO2022099374
(87)【国際公開日】2022-05-19
(31)【優先権主張番号】2020904179
(32)【優先日】2020-11-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】AU
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.MATLAB
(71)【出願人】
【識別番号】500026418
【氏名又は名称】ザ・ユニバーシティ・オブ・シドニー
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】弁理士法人栄光事務所
(72)【発明者】
【氏名】ニュー,エリザベス
(72)【発明者】
【氏名】ミッチェル,リンダ
(72)【発明者】
【氏名】シェン,クララ
【テーマコード(参考)】
2G043
2G045
4C050
4C071
4H006
【Fターム(参考)】
2G043AA01
2G043BA16
2G043CA04
2G043DA06
2G043FA06
2G043KA02
2G043NA01
2G045AA25
2G045AA40
2G045CA26
2G045CB03
2G045CB07
2G045CB11
2G045DA80
2G045FB12
4C050AA04
4C050AA08
4C050BB04
4C050BB07
4C050CC07
4C050CC18
4C050DD08
4C050EE01
4C050FF01
4C050FF05
4C050GG03
4C050GG04
4C050HH01
4C050HH04
4C071AA04
4C071BB01
4C071CC11
4C071CC21
4C071EE07
4C071FF23
4C071HH18
4C071JJ01
4C071LL05
4H006AA03
4H006AB99
(57)【要約】
本発明は、式Iの化合物またはその塩もしくは溶媒和物、それを含む組み合わせ、その使用および方法、ならびにそれを含むキットに関する。
【化1】

【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式Iの化合物またはその塩もしくは溶媒和物。
【化1】

[式中:
XはOまたはS;
YはO、Si、Se、およびGeから選択され;
およびRは独立してNまたはOであり;
~Rは、独立して、存在しないかまたはHもしくはC~Cアルキルである。]
【請求項2】
式Iaの化合物である、式Iの化合物またはその塩もしくは溶媒和物。
【化2】
【請求項3】
請求項1または2に記載の化合物と1つ以上の追加の発蛍光性化合物とを含む組み合わせ。
【請求項4】
以下を含む、組み合わせ。
- 請求項1または請求項2に記載の化合物;ならびに
- 以下から選択される1つ以上の化合物またはその塩もしくは溶媒和物:
式IIの化合物:
【化3】

式IIIの化合物:
【化4】

式IVの化合物:
【化5】

式Vの化合物
【化6】

式VIの化合物:
【化7】

式VIIIの化合物:
【化8】

式IXの化合物:
【化9】

式XIの化合物:
【化10】

式XIIの化合物:
【化11】

式XIIIの化合物:
【化12】

式XVIIIの化合物:
【化13】

および
式XIXの化合物:
【化14】
【請求項5】
さらに:
【化15】

から選択される1つ以上の化合物、またはその塩もしくは溶媒和物を含む、請求項4に記載の組み合わせ。
【請求項6】
式I、好ましくはIaの化合物、ならびに式II~VI、VIII、XII、およびXIIIの化合物から選択される1つ以上の化合物、またはその塩もしくは溶媒和物を含む、請求項4または5に記載の組み合わせ。
【請求項7】
式I、好ましくはIaの化合物、ならびに式II~VI、IX、XI、XVIII、およびXIXの化合物から選択される1つ以上の化合物、またはその塩もしくは溶媒和物を含む、請求項4または5に記載の組み合わせ。
【請求項8】
式I、好ましくはIaの化合物、および式II~VIの化合物、またはその塩もしくは溶媒和物を含む、請求項3~7のいずれか1項に記載の組み合わせ。
【請求項9】
検査サンプル中の白金錯体または白金錯体の組み合わせを検出するための、請求項1もしくは2に記載の化合物または請求項3~8のいずれか1項に記載の組み合わせの使用。
【請求項10】
以下を含む、検査サンプル中の白金錯体を検出するための方法。
- 白金錯体を含むことが疑われる検査サンプルを、請求項1もしくは2に記載の化合物または請求項3~8のいずれか1項に記載の組み合わせと接触させること;
- 前記検査サンプルを、式Iの化合物または前記組み合わせの化合物を励起するために十分な光源に暴露すること;および
- 蛍光の存在が前記検査サンプル中の白金錯体の存在を示す、式Iの化合物または前記組み合わせの化合物からの蛍光を検出すること。
【請求項11】
以下を含む、検査サンプル中の白金錯体を同定するための方法。
- 白金錯体を含むことが疑われる検査サンプルを提供すること;
- 前記検査サンプルを、請求項3~8のいずれか1項に記載の組み合わせと接触させること;
- 前記検査サンプルを、前記組み合わせの化合物を励起するために十分な光源に暴露すること;
- 前記組み合わせの化合物からの蛍光応答パターンを検出すること;
- 前記検査サンプルの蛍光応答パターンを、それぞれが金属イオン錯体を含む1つ以上の参照サンプルからの蛍光応答パターンの形態をした参照データセットと比較して、前記検査サンプルおよび前記1つ以上の参照サンプルの間に蛍光応答パターンの違いがあるかどうかを同定すること;ならびに
- 前記検査サンプル中の白金錯体のアイデンティティを決定すること。
【請求項12】
以下を含む、検査サンプル中の白金錯体の濃度を決定するための方法。
- 白金錯体を含む検査サンプルを提供すること;
- 前記検査サンプルを請求項3~8のいずれか1項に記載の組み合わせと接触させること;
- 前記検査サンプルを、前記組み合わせの化合物を励起するために十分な光源に暴露すること;
- 前記組み合わせの化合物からの蛍光応答パターンを検出すること;
- 前記検査サンプルの蛍光応答パターンを、それぞれがある濃度の白金錯体を含む1つ以上の参照サンプルからの蛍光応答パターンの形態をした参照データセットと比較して、前記検査サンプルおよび前記1つ以上の参照サンプルの間に蛍光応答パターンの違いがあるかどうかを同定すること;ならびに
- 前記検査サンプル中の白金錯体の蛍光応答パターンが、同じ濃度を有する前記参照サンプルの蛍光応答パターンと同じとなる、前記検査サンプル中の白金錯体の濃度を決定すること。
【請求項13】
さらに、多変量解析を用いて前記蛍光応答パターンを分析することを含む、請求項11または12に記載の方法。
【請求項14】
前記検査サンプルが白金錯体以外の1つ以上の金属錯体を含む、請求項9に記載の使用または請求項10~13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
1つ以上の他の金属錯体が1つ以上の他の白金錯体を含む、請求項14に記載の使用または方法。
【請求項16】
前記検査サンプルが生体サンプルである、請求項9~15のいずれか1項に記載の使用または方法。
【請求項17】
前記生体サンプルが血清、血漿、唾液、涙液、尿、および組織から選択される、請求項16に記載の使用または方法。
【請求項18】
以下を含む、白金含有薬剤を含む治療計画を受けている対象者において白金含有薬剤の濃度をモニタリングするための方法。
- 治療計画の間に対象者から得られる生体サンプルを提供すること;および
- 請求項10~15のいずれか1項に記載の方法に従って生体サンプル中の白金含有薬剤の濃度を決定すること。
【請求項19】
前記白金含有薬剤が抗癌薬剤である、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
請求項1もしくは2に記載の化合物または請求項3~8のいずれか1項に記載の組み合わせを含むキット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、検査サンプル中の白金錯体を検出するための新規の蛍光センサー、それを含む組み合わせ、およびそれの使用を含む方法に関する。
関連出願
【0002】
本願は豪州仮特許出願第2020904179号の優先権を主張し、これの内容全体は参照によってここに組み込まれる。
【背景技術】
【0003】
白金および白金錯体は医学、産業、および環境汚染における重要な化学薬品である。
【0004】
例えば、白金に基づく薬剤は、現行にて最も広く使われているクラスの癌化学療法剤の1つである。世界的に承認されている3つの錯体:シスプラチン、オキサリプラチン、およびカルボプラチンは、大部分の癌の型、特に固形腫瘍を治療するために単独または組み合わせでのどちらかで用いられる。癌の治療には有効だが、白金に基づく化学療法に付随する副作用は重大であり、治療中の課題を作り出す。特に、主要な副作用、例えば腎毒性、骨髄抑制、および神経毒性は、多くの場合には減量をやむなくするほど重大であり、治療の有効性を低減させる。治療中の患者において白金レベルを直接的にモニタリングすることで、結果として生じる毒性をモニタリングするよりもむしろ、投与量および全体的な治療計画のより有効な改変を可能にし得る。
【0005】
ヒトサンプル中の白金レベルの定量化は、グラファイトファーネス原子吸光分析(GF-AAS)によって従来達成されてきた。より最近では、これはより低い検出限界を有する誘導結合プラズマ質量分析(ICP-MS)によって取って代わられている。ICP-MSは極めて有感かつ信頼できる技術だが、白金濃度全体についての情報しか提供せず、酸化状態または配位環境については報告し得ない。これらの特徴に対する有感は、スペシエーションを理解し、活性な薬剤と蛋白質に結合し大部分は不活性な白金化学種を区別するために重要である。他の技術、例えば核磁気共鳴(NMR)、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)、およびX線吸収端近傍構造(XANES)は構造情報を提供し得るが、これは有感または装置の使い易さが犠牲になる。
【0006】
蛍光センシングは、その高い有感および比較的使い易い計装に起因して、生物学において金属を研究するための新たに出現したツールである。白金錯体を研究するための少数の報告された蛍光センサーがある。しかしながら、これらのセンサーは用途が限定されている。センサーは典型的には1つのアナライトに対する高い選択性に向けて設計されており、検出することができるアナライトの数は限定される。さらに、潜在的な薬剤候補として開発中である数が増加中の白金錯体は、錯体ごとに選択性を達成することを継続課題にしている。追加された困難は、血液などの錯体の生体マトリックスにおいて高い選択性を達成することである。
【0007】
よって、錯体サンプルを包含するサンプルにおいて白金錯体を検出するための代替的なセンサーおよび方法の必要がある。
【0008】
本明細書におけるいずれかの従来技術の参照は、この従来技術がいずれかの管轄における一般常識の一部を形成するか、またはこの従来技術が当業者によって理解されること、関連すると見なされること、および/もしくは他の従来技術と組み合わせられることを合理的に予想され得るという承認または示唆ではない。
【発明の概要】
【0009】
本発明は、式Iの化合物が、白金錯体を包含する金属錯体の発蛍光性センサーとして機能することができ、錯体サンプルを包含するサンプルにおいて白金錯体を検出するために有用であり得るという発見に少なくとも部分的に基づいている。
【0010】
従って、本発明は、式Iの化合物またはその塩もしくは溶媒和物を提供する。
【0011】
【化1】
【0012】
[式中:
XはOまたはSであり;
YはO、Si、Se、およびGeから選択され;
およびRは独立してNまたはOであり;
~Rは、独立して、存在しないかまたはHもしくはC~Cアルキルである。]
【0013】
好ましい実施形態において、式Iの化合物は式Iaの化合物またはその塩もしくは溶媒和物である。
【0014】
【化2】
【0015】
式Iの化合物は1つ以上の他の発蛍光性センサーとの組み合わせで用いられ得る。従って、本発明は、式Iの、好ましくは式Iaの化合物、またはその塩もしくは溶媒和物、1つ以上の追加の発蛍光性センサーを含む組み合わせをもまた提供する。好ましくは、1つ以上の追加の発蛍光性センサーは本明細書に記載されるものから選択される。
【0016】
従って、本発明は、以下を含む組み合わせをもまた提供する:
- 式Iの化合物、またはその塩もしくは溶媒和物;ならびに
- 以下から選択される発蛍光性センサーである1つ以上の化合物:
式IIの化合物:
【0017】
【化3】
【0018】
式IIIの化合物:
【0019】
【化4】
【0020】
式IVの化合物:
【0021】
【化5】
【0022】
式Vの化合物:
【0023】
【化6】
【0024】
式VIの化合物:
【0025】
【化7】
【0026】
式VIIIの化合物:
【0027】
【化8】
【0028】
式IXの化合物:
【0029】
【化9】
【0030】
式XIの化合物:
【0031】
【化10】
【0032】
式XIIの化合物:
【0033】
【化11】
【0034】
式XIIIの化合物:
【0035】
【化12】
【0036】
式XVIIIの化合物:
【0037】
【化13】
【0038】
および
式XIXの化合物:
【0039】
【化14】
【0040】
またはその塩もしくは溶媒和物。
【0041】
いくつかの実施形態において、組み合わせは、式I、好ましくはIaの化合物、ならびに式II~VI、VIII、XII、およびXIIIの化合物から選択される1つ以上の化合物、またはその塩もしくは溶媒和物を含む。
【0042】
いくつかの実施形態において、組み合わせは、式I、好ましくはIaの化合物、ならびに式II~VI、IX、XI、XVIII、およびXIXの化合物から選択される1つ以上の化合物、またはその塩もしくは溶媒和物を含む。
【0043】
好ましい実施形態において、組み合わせは式Iの化合物および式II~VIの化合物またはその塩もしくは溶媒和物を含む。
【0044】
また、本発明は、検査サンプル中の1つ以上の白金錯体を検出するための、式I、好ましくはIaの化合物、またはその塩もしくは溶媒和物の使用、あるいは式I、好ましくはIaの化合物、ならびに式II~VI、VIII、IX、XI~XIII、XVIII、およびXIXの化合物の1つ以上、またはその塩もしくは溶媒和物の組み合わせの使用を提供する。好ましくは、使用には、検査サンプル中の白金錯体を検出するための式I~VIの化合物が関わる。
【0045】
また、本発明は、検査サンプル中の白金錯体を検出するための方法を提供し、方法は以下を含む:
- 白金錯体を含むことが疑われる検査サンプルを、式Iの化合物、またはその塩もしくは溶媒和物、あるいは式I、好ましくはIaの化合物、ならびに式II~VI、VIII、IX、XI~XIII、XVIII、およびXIXの化合物の1つ以上、またはその塩もしくは溶媒和物の組み合わせと接触させること;
- 検査サンプルを、式I、好ましくはIaの化合物、または化合物の組み合わせを励起するために十分な光源に暴露すること;ならびに
- 蛍光の存在が検査サンプル中の白金錯体の存在を示す、式Iの化合物または化合物の組み合わせからの蛍光を検出すること。
【0046】
また、本発明は、検査サンプル中の白金錯体を同定するための方法を提供し、方法は以下を含む:
- 白金錯体を含むことが疑われる検査サンプルを提供すること;
- 検査サンプルを、式I、好ましくはIaの化合物、ならびに式II~VI、VIII、IX、XI~XIII、XVIII、およびXIXの化合物の1つ以上、またはその塩もしくは溶媒和物の組み合わせと接触させること;
- 検査サンプルを、化合物の組み合わせを励起するために十分な光源に暴露すること;ならびに
- 化合物の組み合わせからの蛍光応答パターンを検出すること;
- 検査サンプルの蛍光応答パターンを、それぞれが金属イオン錯体を含む1つ以上の参照サンプルからの蛍光応答パターンの形態をした参照データセットと比較して、検査サンプルおよび1つ以上の参照サンプルの蛍光応答パターンの違いがあるかどうかを同定すること;ならびに
検査サンプル中の白金錯体のアイデンティティ(独自性)を決定すること。
【0047】
また、本発明は、検査サンプル中の白金錯体の濃度を決定するための方法を提供し、方法は以下を含む:
- 白金錯体を含む検査サンプルを提供すること;
- 検査サンプルを、式I、好ましくはIaの化合物、ならびに式II~VI、VIII、IX、XI~XIII、XVIII、およびXIXの化合物の1つ以上、またはその塩もしくは溶媒和物の組み合わせと接触させること、
- 検査サンプルを、化合物の組み合わせを励起するために十分な光源に暴露すること;
- 化合物の組み合わせからの蛍光応答パターンを検出すること;
- 検査サンプルの蛍光応答パターンを、それぞれがある濃度の白金錯体を含む1つ以上の参照サンプルからの蛍光応答パターンの形態をした参照データセットと比較して、検査サンプルおよび1つ以上の参照サンプルの間に蛍光応答パターンの違いがあるかどうかを同定すること;ならびに
- 検査サンプル中の白金錯体の蛍光応答パターンが、同じ濃度を有する参照サンプルの蛍光応答パターンと同じとなる、検査サンプル中の白金錯体の濃度を決定すること。
【0048】
また、本発明は、白金含有薬剤を含む治療計画を受けている対象者において白金含有薬剤の濃度をモニタリングするための方法を提供し、方法は以下を含む:
- 治療計画の間に対象者から得られる生体サンプルを提供すること;および
- 本明細書に記載される白金錯体の濃度を決定するための方法に従って、生体サンプル中の白金含有薬剤の濃度を決定すること。
【0049】
また、本発明は、式I、好ましくはIaの化合物、またはその塩もしくは溶媒和物、あるいは式I、好ましくはIaの化合物、ならびに式II~VI、VIII、IX、XI~XIII、XVIII、およびXIXの化合物の1つ以上、またはその塩もしくは溶媒和物の組み合わせを含むキットを提供する。好ましくは、キットは本明細書に記載される方法に従う使用のためである。任意に、キットは、本明細書に記載される化合物、または化合物の組み合わせを利用するための書面の取扱説明書をもまた含む。
【0050】
本明細書において用いられるときには、文脈が別様に要求するところを例外として、用語「含む(comprise)」および用語の変形、例えば「含む(comprising)」、「含む(comprises)」、および「含まれる(comprised)」は、さらなる添加剤、成分、物、またはステップを排除することを意図しない。
【0051】
本発明のさらなる態様および前述のパラグラフに記載されている態様のさらなる実施形態は、付随する図面を参照して例として与えられている次の記載から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0052】
図1】蛍光センサーアレイによって測定された蛍光シグナルからアナライトのキャラクタリゼーションへの変換を示す概略図。
図2】HEPES緩衝液(20mM、pH7.4)によって希釈されたDMF(2%v/v)中の9つの金属イオン(50μM)にセンサー分子S1~S9(10μM)を用いた蛍光センサーアレイの蛍光応答パターン(I/I-1)。a)正規化された強度およびb)得られた最初の3因子の三次元LDAスコアプロットとして提示されている。図2aのセンサーS1~S9は次の通り図示されている:S1-黒色のバー;S2-灰色のバー;S3-白色のバー;S4-格子縞のバー;S5-横縞のバー;S6-右対角縞のバー;S7-水玉模様のバー;S8-左対角縞のバー;S9-積み木パターンのバー。図2bの金属イオンは次の通り図示されている:Ni(II)-黒色の丸;Cu(II)-濃灰色の丸;Zn(II)-淡灰色の丸;Fe(III)-白色の丸;Co(II)-黒色の菱形;Pb(ll)-濃灰色の菱形;Cd(II)-淡灰色の菱形;Hg(II)-白色の菱形;Pt(II)-黒色の三角形。
図3】HEPES緩衝液(20nM、pH7.4)によって希釈されたDMF(2%v/v)中の8つの白金錯体(200μM)によるS1~S6(200μM)の蛍光応答パターン(I/I-1)。図3のセンサーS1~S6は次の通り図示されている:S1-黒色のバー;S2-灰色のバー;S3-白色のバー;S4-格子縞のバー;S5-横縞のバー;S6-右対角縞のバー。
図4】HEPES緩衝液(20mM、pH7.4)によって希釈されたDMF(2%v/v)中の7つの白金錯体(200μM)によるS1~S6(200μM)の蛍光応答パターン(I/I-1)のLDAから得られた最初の3因子の三次元スコアプロット。図4の白金錯体は次の通り図示されている:シスプラチン-黒色の丸;トランスプラチン-灰色の丸;[PtCl(en)]-白色の丸;フェナントリプラチン-黒色の菱形;[PtCl(NH]Cl-灰色の菱形;K[PtCl]-白色の菱形;オキサリプラチン-黒色の三角形。
図5A】HEPES緩衝液(20mM、pH7.4)によって希釈されたDMF(2%v/v)中のS1~S6(200μM)ならびにa)7つの白金錯体および未知のクラスとしてのピリプラチンならびにb)7つの白金錯体および第8のクラスとしてのピリプラチンの蛍光応答パターン(I/I-1)のLDAから得られた最初の3因子の三次元スコアプロット。c)HADデンドログラムで提示されている、HEPES緩衝液(20mM、pH7.4)によって希釈されたDMF(2%v/v)中の8つの白金錯体に対するS1~S6(200μM)の蛍光応答パターン(I/I-1)。図5cの灰色のエリアは、異なる白金立体配置に対応する3つの主要なクラスターに相当する。図5aおよび5bの白金錯体は次の通り図示されている:シスプラチン-黒色の丸;トランスプラチン-灰色の丸;[PtCl(en)]-白色の丸;フェナントリプラチン-黒色の菱形;[PtCl(NH]Cl-灰色の菱形;K[PtCl]-白色の菱形;オキサリプラチン-黒色の三角形;ピリプラチン-灰色の三角形。
図5B】HEPES緩衝液(20mM、pH7.4)によって希釈されたDMF(2%v/v)中のS1~S6(200μM)ならびにa)7つの白金錯体および未知のクラスとしてのピリプラチンならびにb)7つの白金錯体および第8のクラスとしてのピリプラチンの蛍光応答パターン(I/I-1)のLDAから得られた最初の3因子の三次元スコアプロット。c)HADデンドログラムで提示されている、HEPES緩衝液(20mM、pH7.4)によって希釈されたDMF(2%v/v)中の8つの白金錯体に対するS1~S6(200μM)の蛍光応答パターン(I/I-1)。図5cの灰色のエリアは、異なる白金立体配置に対応する3つの主要なクラスターに相当する。図5aおよび5bの白金錯体は次の通り図示されている:シスプラチン-黒色の丸;トランスプラチン-灰色の丸;[PtCl(en)]-白色の丸;フェナントリプラチン-黒色の菱形;[PtCl(NH]Cl-灰色の菱形;K[PtCl]-白色の菱形;オキサリプラチン-黒色の三角形;ピリプラチン-灰色の三角形。
図6A】PBS緩衝液(20mM、pH7.4、46%v/v)およびヒト血漿(50%v/v)によって希釈されたDMF(4%v/v)中のS1~S6(10μM)の蛍光応答パターン(I/I-1)のLDAから得られた最初の3因子の三次元スコアプロット。a)シスプラチン(0.5~5μM)、b)オキサリプラチン(0.5~5μM)、またはc)シスプラチンおよびオキサリプラチン両方(各0.5~5μM)をスパイクされた。それぞれ図6aおよび6bのシスプラチンおよびオキサリプラチンの濃度は次の通り図示されている:0.5μM(100ppb)-黒色の球;1μM(200ppb)-濃灰色の球;2μM(400ppb)-淡灰色の球;5μM(1000ppb)-白色の球。図6cのシスプラチンおよびオキサリプラチンの濃度は次の通り図示されている:シスプラチン0.5~1μM(100~200ppb)-黒色の球;シスプラチン2~5μM(400~1000ppb)-濃灰色の球;オキサリプラチン0.5~1μM(100~200ppb)-淡灰色の球;オキサリプラチン2~5μM(400~1000ppb)-白色の球。
図6B】PBS緩衝液(20mM、pH7.4、46%v/v)およびヒト血漿(50%v/v)によって希釈されたDMF(4%v/v)中のS1~S6(10μM)の蛍光応答パターン(I/I-1)のLDAから得られた最初の3因子の三次元スコアプロット。a)シスプラチン(0.5~5μM)、b)オキサリプラチン(0.5~5μM)、またはc)シスプラチンおよびオキサリプラチン両方(各0.5~5μM)をスパイクされた。それぞれ図6aおよび6bのシスプラチンおよびオキサリプラチンの濃度は次の通り図示されている:0.5μM(100ppb)-黒色の球;1μM(200ppb)-濃灰色の球;2μM(400ppb)-淡灰色の球;5μM(1000ppb)-白色の球。図6cのシスプラチンおよびオキサリプラチンの濃度は次の通り図示されている:シスプラチン0.5~1μM(100~200ppb)-黒色の球;シスプラチン2~5μM(400~1000ppb)-濃灰色の球;オキサリプラチン0.5~1μM(100~200ppb)-淡灰色の球;オキサリプラチン2~5μM(400~1000ppb)-白色の球。
図7】pH7.4の20mMのPBS緩衝液中の臨床シスプラチンおよびオキサリプラチンサンプルによるS1~6(10μM)の蛍光応答パターン(I/I-1)。a)得られた最初の3因子の三次元LDAスコアプロットおよびb)95%信頼楕円(点線)ありの得られた最初の2因子の二次元LDAスコアプロットとして提示されている。図7aのシスプラチンおよびオキサリプラチンの濃度は次の通り図示されている:シスプラチン<200ppb-黒色の球;シスプラチン>200ppb-濃灰色の球;オキサリプラチン<200ppb-淡灰色の球;オキサリプラチン>200ppb-白色の球。図7bの濃度は次の通り図示されている:低(35~65ppb)-白色の丸;中(90~120ppb)-灰色の丸;高(140~230ppb)-黒色の丸。
図8A】同じ17人の患者から収集された51サンプルについての20mMのPBS緩衝液中の臨床オキサリプラチンによるS1~6(10μM)の蛍光応答パターン(I/I-1)。ベースライン、中間、および最終時点において収集され、a)得られた最初の2因子の二次元LDAスコアプロットとして提示され、治療サイクル1、治療サイクル6、治療の2週後、および治療の4週後において収集され、b)得られた最初の3因子の三次元LDAスコアプロットおよびc)95%信頼楕円(点線)ありの得られた最初の2因子の二次元LDAスコアプロットとして提示されている。図8aのサンプルは次の通り図示されている:ベースライン-黒色の丸;中間-灰色の丸;最終-白色の丸。図8bおよび8cのサンプルは次の通り表されている:サイクル1-黒色の丸;サイクル6-灰色の丸;治療の2週後-黒色の菱形;治療の4週後-灰色の菱形。
図8B】同じ17人の患者から収集された51サンプルについての20mMのPBS緩衝液中の臨床オキサリプラチンによるS1~6(10μM)の蛍光応答パターン(I/I-1)。ベースライン、中間、および最終時点において収集され、a)得られた最初の2因子の二次元LDAスコアプロットとして提示され、治療サイクル1、治療サイクル6、治療の2週後、および治療の4週後において収集され、b)得られた最初の3因子の三次元LDAスコアプロットおよびc)95%信頼楕円(点線)ありの得られた最初の2因子の二次元LDAスコアプロットとして提示されている。図8aのサンプルは次の通り図示されている:ベースライン-黒色の丸;中間-灰色の丸;最終-白色の丸。図8bおよび8cのサンプルは次の通り表されている:サイクル1-黒色の丸;サイクル6-灰色の丸;治療の2週後-黒色の菱形;治療の4週後-灰色の菱形。
【発明を実施するための形態】
【0053】
本発明は、式Iの化合物またはその塩もしくは溶媒和物を提供する。
【0054】
【化15】
【0055】
[式中:
XはOまたはSであり;
YはO、Si、Se、およびGeから選択され;
およびRは独立してNまたはOであり;
~Rは、独立して、存在しないかまたはHもしくはC~Cアルキルである。]
【0056】
式Iのいくつかの実施形態においては、次の1つ以上が当てはまる:
XはOである;
YはOである;
および/またはRはNである;
および/またはRおよび/またはRおよび/またはRはエチルである。
【0057】
好ましい実施形態において、式Iの化合物は式Iaの化合物またはその塩もしくは溶媒和物である。
【0058】
【化16】
【0059】
本明細書において用いられる用語「アルキル」は直鎖または分岐炭化水素基を言う。適当なところでは、アルキル基は指定された数の炭素原子を有し得る。例えばC1~6アルキルであって、これは1、2、3、4、5、または6つの炭素原子を線形または分岐配置で有するアルキル基を包含する。好適なアルキル基の例は、メチル、エチル、n-プロピル、i-プロピル、n-ブチル、i-ブチル、t-ブチル、n-ペンチル、2-メチルブチル、3-メチルブチル、4-メチルブチル、n-ヘキシル、2-メチルペンチル、3-メチルペンチル、4-メチルペンチル、5-メチルペンチル、2-エチルブチル、および3-エチルブチルを包含するが、これらに限定されない。
【0060】
好適な塩は、薬学的に許容される無機酸、例えば塩酸、硫酸、リン酸、硝酸、炭酸、ホウ酸、スルファミン酸、および臭化水素酸の塩、または薬学的に許容される有機酸、例えば酢酸、プロピオン酸、酪酸、酒石酸、マレイン酸、ヒドロキシマレイン酸、フマル酸、リンゴ酸、クエン酸、乳酸、ムチン酸、グルコン酸、安息香酸、コハク酸、シュウ酸、フェニル酢酸、メタンスルホン酸、トルエンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、サリチル酸、スルファニル酸、アスパラギン酸、グルタミン酸、エデト酸、ステアリン酸、パルミチン酸、オレイン酸、ラウリン酸、パントテン酸、タンニン酸、アスコルビン酸、および吉草酸の塩を包含するが、これらに限定されない。
【0061】
塩基の塩は:薬学的に許容されるカチオン、例えば:ナトリウム、カリウム、リチウム、カルシウム、マグネシウム、亜鉛、アンモニウム、およびアルキルアンモニウムによって形成されるもの;トリエチルアミンから形成されるもの;アルコキシアンモニウム塩、例えばエタノールアミンによって形成される塩;ならびにエチレンジアミン、コリン、またはアミノ酸、例えばアルギニン、リジン、またはヒスチジンから形成される塩を包含するが、これらに限定されない。
【0062】
塩基性の窒素含有基は、薬剤、例えば低級アルキルハロゲン化物、例えばメチル、エチル、プロピル、およびブチルクロリド、ブロミド、およびヨージド;硫酸ジメチルおよびジエチルのような硫酸ジアルキル;ならびに他によって第四級化(quarternised)され得る。
【0063】
式Iの化合物および本発明の他の化合物の塩または他の誘導体は溶媒和物の形態で提供され得る。溶媒和物は化学量論または非化学量論量どちらかの溶媒を含有し、薬学的に許容される溶媒、例えば水、アルコール、例えばメタノール、エタノール、またはイソプロピルアルコール、DMSO、アセトニトリル、ジメチルホルムアミド(DMF)、および同類による結晶化のプロセスの間に形成され、溶媒和物は、非共有的な結合によってまたは結晶格子中の孔を占めることによってどちらかで結晶格子の一部を形成し得る。溶媒が水であるときには水和物が形成され、溶媒がアルコールであるときにはアルコール和物が形成される。本発明の化合物の溶媒和物は、本明細書に記載されるプロセスの間に便利に調製または形成され得る。一般的には、本明細書において提供される化合物および方法の目的では、溶媒和形態は非溶媒和形態と同等と考えられる。
【0064】
本明細書において用いられる用語「フルオロフォア」は、励起後に発光する化学的な部分を言う。いずれかの好適なフルオロフォアが用いられ得る。好適なフルオロフォアは、ローダミンおよびその誘導体、例えばローダミンB、ローダミン6G、ローダミン123、テトラメチルローダミン、およびシリコンローダミン、フルオレセインおよびその誘導体、ならびにクマリンおよびその誘導体を包含するが、これらに限定されない。
【0065】
式Iの化合物はローダミンBの誘導体であり、400~600nmの間の可視範囲の蛍光を見せる。有利には、実施例において示される通り、式Iの化合物は異なる金属錯体ともまた交差反応性であり、白金を包含する金属イオンの異なる配位圏に対して有感である。よって、式Iの化合物は白金錯体を検出するための発蛍光性センサーとして有用であり得る。
【0066】
式I、好ましくはIaの化合物は、発蛍光性センサーである1つ以上の他の化合物との組み合わせで用いられ得る。1つ以上の発蛍光性センサーは、いずれかの発蛍光性センサー、好ましくは、異なる金属錯体との交差反応性を見せ、かつ当分野において公知のものを包含する金属イオンの異なる配位圏に対して有感であるものであり得るということは了解されるであろう。いくつかの実施形態において、1つ以上の他の発蛍光性センサーは次の化合物またはその塩もしくは溶媒和物から選択される:
【0067】
【表1A】
【0068】


【表1B】
【0069】


【表1C】
【0070】
式I、好ましくは式Iaの化合物は、他の発蛍光性センサーの2つ以上、3つ以上、4つ以上、5つ以上、6つ以上、7つ以上、8つ以上、または9つ以上との組み合わせで用いられ得る。いくつかの実施形態において、式I、好ましくはIaの化合物は、他の発蛍光性センサーの1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、6つ、7つ、8つ、9つ、10個、11個、12個、13個、14個、15個、16個、17個、18個、または全てとの組み合わせで用いられ得る。
【0071】
従って、本発明は、以下を含む組み合わせを提供する:
- 式I、好ましくはIaの化合物、またはその塩もしくは溶媒和物;ならびに
- 式II~VI、VIII、IX、XI~XIII、XVIII、およびXIXの化合物から選択される1つ以上の化合物、またはその塩もしくは溶媒和物。
【0072】
いくつかの実施形態において、組み合わせは、式Iの化合物と式II~VI、VIII、IX、XI~XIII、XVIII、およびXIXの化合物の2つ以上、3つ以上、4つ以上、5つ以上、6つ以上、7つ以上、8つ以上、9つ以上、10個以上、または全ての11個とを含む。いくつかの実施形態において、組み合わせは、式Iの化合物、式Ilの化合物、式IIIの化合物、式IV、IV、およびXIの化合物の1つ、式V、VI、XVIII、およびXIXの化合物の2つ、式VIIIの化合物、式XIIの化合物、ならびに式XIIIの化合物を含む。いくつかの実施形態において、組み合わせは、式Iの化合物、式IIの化合物、式IIIの化合物、式IVの化合物、式Vの化合物、式VIの化合物、式VIIIの化合物、式XIIの化合物、および式XIIIの化合物を含む。いくつかの実施形態において、組み合わせは、式Iの化合物、式Ilの化合物、式IIIの化合物、式IV、IV、およびXIの化合物の1つ、ならびに式V、VI、XVIII、およびXIXの化合物の2つを含む。
【0073】
いくつかの実施形態において、組み合わせは、式Iの化合物と式II~VIの化合物から選択される1つ以上の化合物とを含む。いくつかの実施形態において、組み合わせは、式Iの化合物と式II~VIの化合物の2つ以上、3つ以上、4つ以上、または全ての5つとを含む。
【0074】
いくつかの実施形態において、組み合わせは、さらに、式VII、X、XIV~XVII、およびXXの化合物から選択される1つ以上の化合物、またはその塩もしくは溶媒和物を含む。
【0075】
いくつかの実施形態において、組み合わせは、式Iの化合物ならびに式II~VI、VIII、XII、およびXIIIの化合物、とりわけ式IAの化合物ならびに式II~VI、VIII、XII、およびXIIIの化合物、またはその塩もしくは溶媒和物を含む。いくつかの実施形態において、組み合わせは、本質的に、式I~VI、VIII、XII、およびXIIIの化合物、とりわけ式IAの化合物ならびに式II~VI、VIII、XII、およびXIIIの化合物、またはその塩もしくは溶媒和物からなる。この文脈において、用語「本質的に~からなる」は、組み合わせが、式I~VI、VIII、XII、およびXIII、またはその塩もしくは溶媒和物のみを組み合わせの中の発蛍光性センサーとして包含するということを意味する。式IAならびに式II~VI、VIII、XII、およびXIIIの化合物は、本明細書においてはそれぞれセンサーS3、S1、S2、およびS4~S9ともまた言われる。
【0076】
好ましい実施形態において、組み合わせは、式Iの化合物および式II~VIの化合物、とりわけ式IAの化合物および式II~VIの化合物、またはその塩もしくは溶媒和物を含む。いくつかの実施形態において、組み合わせは、本質的に、式I~VIの化合物、とりわけ式IAの化合物および式II~VIの化合物、またはその塩もしくは溶媒和物からなる。この文脈において、用語「本質的に~からなる」は、組み合わせが、式I~VIまたはその塩もしくは溶媒和物のみを組み合わせの中の発蛍光性センサーとして包含するということを意味する。式IAおよび式II~VIの化合物は、本明細書においてはそれぞれセンサーS3、S1、S2、S4、S5、およびS6ともまた言われる。
【0077】
式Iの化合物および本明細書に記載される組み合わせの方法および使用において、各化合物は、その化合物の蛍光が検出されるために十分な量で用いられ得る。各化合物の量は、既知の場合には、分析されるべきサンプル中に存在する金属イオン錯体(単数または複数)の量に依存して好適に選択され得る。いくつかの実施形態において、式Iの化合物は約0.1μMから約10μMの量で存在する。いくつかの実施形態において、組み合わせの各化合物は独立して約0.1μMから約10μMの量で存在する。
【0078】
センサーS1~S9は350~600nmの間の可視範囲の蛍光を見せる:実施例において示される通り、S1は480nmの最大励起波長を有し、S2~4は545nmの最大励起波長を有し、S5は380nmの最大励起波長を有し、S6~S7は445nmの最大励起波長を有し、S8~S9は280nmの最大励起波長を有する。さらに、実施例において示される通り、センサーS1~S6は種々の金属イオンの異なる配位圏に対して有感である。センサーS1~S4はローダミンおよびフルオレセインフルオロフォアに基づき、これらはフルオロフォアのターンオン/オフ挙動を担うスピロラクタムモチーフによって改変されている。スピロラクタム環の反応に基づく開環は、オフからオンの蛍光性の状態の遷移を許す。硫黄などのソフトな原子が結合ポケットに存在しかつ最適な結合部位サイズがあるときに、開環は白金錯体によって増強される。よって、センサーS1~S4はほぼ全ての白金錯体の存在下において増強された蛍光シグナルを生ずる。蛍光シグナルは錯体の配位圏、配位子置換活性、およびサイズによってもまた影響される。センサーS5およびS6はクマリン誘導体であり、これらは、内部電荷移動(ICT)機構を経過し得る電子求引性のラクトンを有するパイ系を原因として蛍光性である。芳香族系上の置換基はこのプロセスを増大(e供与性)または減少(e求引性)どちらかをさせ、帰結として蛍光を増強または消光し得る。これらの置換基との相互作用もまたクマリンフルオロフォアの蛍光にインパクトを及ぼし得る。有利には、実施例において示される通り、センサーS1~S6は、生体、環境、および産業ソースからの白金および他の金属イオンを包含する種々の金属イオンと交差反応することができ、各金属イオンアナライトについて固有の蛍光応答または「指紋」を生じ得る。よって、例えば図1に例示される通り、組み合わせの化合物は、検査サンプル中の白金錯体を検出、同定、または定量するための蛍光センサーまたはプローブとして有用であり得る。
【0079】
従って、本発明は、検査サンプル中の白金錯体を検出するための、式Iの化合物またはその塩もしくは溶媒和物、あるいは本明細書に記載される組み合わせの使用を提供する。
【0080】
また、本発明は、検査サンプル中の白金錯体を検出するための方法を提供し、方法は以下を含む:
- 白金錯体を含むことが疑われる検査サンプルを、式Iの化合物またはその塩もしくは溶媒和物と接触させること;
- 検査サンプルを、式Iの化合物を励起するために十分な光源に暴露すること;および
- 蛍光の存在が検査サンプル中の白金錯体の存在を示す、式Iの化合物からの蛍光を検出すること。
【0081】
また、本発明は、検査サンプル中の白金錯体を検出するための方法を提供し、方法は以下を含む:
- 検査サンプルを、本明細書に記載される式I、好ましくはIaの化合物、ならびに式II~VI、VIII、IX、XI~XIII、XVIII、およびXIXの化合物の1つ以上の組み合わせと接触させること;
- 検査サンプルを、組み合わせの化合物を励起するために十分な光源に暴露すること;ならびに
- 蛍光の存在が検査サンプル中の白金錯体の存在を示す、組み合わせの化合物からの蛍光を検出すること;
式Iの化合物および1つ以上の他の発蛍光性センサー化合物からの蛍光は、一緒になって、白金錯体についての蛍光応答パターンを提供する。
【0082】
検査サンプルは、錯体サンプル、すなわち、金属イオン錯体である2つ以上のアナライトの混合物を含有するサンプルであり得る。いくつかの実施形態において、検査サンプルは白金錯体と白金金属錯体以外の1つ以上の金属錯体とを含む。いくつかの実施形態において、1つ以上の他の金属錯体は1つ以上の他の白金錯体を含む。有利には、実施例において示される通り、式Iの化合物および本明細書に記載される組み合わせは、他の白金錯体を包含する他の金属イオン錯体から白金錯体を判別することができる。
【0083】
検査サンプルは生体サンプル、環境サンプル、または産業サンプルであり得る。いくつかの実施形態において、検査サンプルは、生体サンプル、例えばヒトから得られたサンプルである。好適な生体サンプルの例は血清、血漿、唾液、涙液、尿、および組織を包含する。有利には、実施例において示される通り、式Iの化合物および本明細書に記載される組み合わせは、血漿などの錯体の生体サンプル中の白金錯体を検出、同定、および定量することができる。いくつかの実施形態において、検査サンプルは、環境サンプル、例えば水域または土壌域から得られたサンプルである。環境サンプルは1つ以上の金属イオンによって汚染され得る。好適な環境サンプルの例は水および土を包含する。
【0084】
検査サンプルは白金錯体を含むことが疑われ得る。つまり、検査サンプルが白金錯体を含むかどうかは既知または未知であり得る。従って、本発明は、白金錯体が検査サンプル中に存在するかどうかを検出するための方法をもまた提供する。
【0085】
本明細書において用いられる用語「白金錯体を検出する」は、検査サンプル中の白金錯体を同定することおよび白金錯体の濃度を定量または決定することを包含する。式Iの化合物および本明細書に記載される組み合わせは、生体、環境、または産業ソースなどのソースから得られた検査サンプル中の白金錯体を同定および/または定量するために有用であり得る。
【0086】
従って、本発明は、検査サンプル中の白金錯体を同定するための、式Iの化合物またはその塩もしくは溶媒和物、あるいは式Iの化合物ならびに本明細書に記載される式II~IV、VIII、IX、XI~XIII、XVIII、およびXIXの化合物の1つ以上の組み合わせの使用を提供する。
【0087】
また、本発明は、検査サンプル中の白金錯体を同定するための方法を提供し、方法は以下を含む:
- 白金錯体を含むことが疑われる検査サンプルを提供すること;
- 検査サンプルを、式Iの化合物またはその塩もしくは溶媒和物と接触させること;
- 検査サンプルを、式Iの化合物を励起するために十分な光源に暴露すること;
- 式Iの化合物からの蛍光応答を検出すること;
- 検査サンプルの蛍光応答を、それぞれが金属イオン錯体を含む1つ以上の参照サンプルからの蛍光応答の形態の参照データセットと比較して、検査サンプルおよび1つ以上の参照サンプルの間に蛍光応答の違いがあるかどうかを同定すること;ならびに
- 検査サンプル中の白金錯体アイデンティティを決定すること。
【0088】
また、本発明は、検査サンプル中の白金錯体を同定するための方法を提供し、方法は以下を含む:
- 白金錯体を含むことが疑われる検査サンプルを提供すること;
- 検査サンプルを、式Iの化合物、ならびに本明細書に記載される式II~VI、VIII、IX、XI~XIII、XVIII、およびXIXの化合物の1つ以上の組み合わせと接触させること;
- 検査サンプルを、組み合わせの化合物を励起するために十分な光源に暴露すること;
- 組み合わせの化合物からの蛍光応答パターンを検出すること;
- 検査サンプルの蛍光応答パターンを、それぞれが金属イオン錯体を含む1つ以上の参照サンプルからの蛍光応答パターンの形態をした参照データセットと比較して、検査サンプルおよび1つ以上の参照サンプルの間に蛍光応答パターンの違いがあるかどうかを同定すること;ならびに
- 検査サンプル中の白金錯体のアイデンティティを決定すること。
【0089】
いくつかの実施形態において、方法は、さらに、それぞれが金属イオン錯体を含む1つ以上の参照サンプルからの蛍光応答パターンの形態をした参照データセットを提供することを含む。1つ以上の参照サンプルは、好ましくはそれぞれが、他の参照サンプルのものとは異なる金属イオン錯体を含むということは了解されるであろう。
【0090】
参照データセットは、それぞれが金属イオン錯体を含む1つ以上の参照サンプルの蛍光応答パターン(単数または複数)についてのデータを含有する。この文脈において、1つ以上の参照サンプル中の金属イオン錯体(単数または複数)の化学構造(アイデンティティ)は既知である。参照データセットは、それぞれが金属イオン錯体を含有する1つ以上の参照サンプルを式Iの化合物または本明細書に記載される組み合わせと接触させることと、式Iの化合物または組み合わせの化合物からの各参照サンプルの蛍光応答パターンを検出することとによって得られ得る。
【0091】
検査サンプル中の白金錯体の化学構造(アイデンティティ)は既知または未知であり得る。さらに、検査サンプル中の白金錯体の化学構造は1つ以上の参照サンプルの金属イオン錯体(単数または複数)と同じであり得るかまたは異なり得る。検査サンプルの蛍光応答パターンが1つ以上の参照サンプル中の金属イオン錯体の蛍光応答パターンと同じである場合には、白金錯体は、その参照サンプルの金属イオンの構造である「既知の」構造を有することが決定される。検査サンプルの蛍光応答パターンが1つ以上の参照サンプル中の金属イオン錯体(単数または複数)の蛍光応答パターンとは異なる場合には、白金錯体は、参照サンプル中の金属イオン錯体のそれぞれとは異なる「未知の」構造を有することが決定される。
【0092】
検査サンプルは白金錯体以外の1つ以上の金属錯体を含み得る。従って、本発明は、検査サンプル中の1つ以上の他の金属錯体からある白金錯体を判別するための方法をもまた提供する。1つ以上の他の金属錯体は1つ以上の他の白金錯体を含み得る。従って、本発明は、検査サンプル中の1つ以上の他の白金錯体からある白金錯体を判別するための方法をもまた提供する。
【0093】
検査サンプルが白金錯体以外の1つ以上の金属錯体を含む実施形態において、1つ以上の他の金属錯体はそれぞれが式Iの化合物または組み合わせの化合物と相互作用して、白金錯体の対応する蛍光応答または蛍光応答パターンとは異なる蛍光応答または蛍光応答パターンを提供する。
【0094】
有利には、実施例において示される通り、式Iの化合物および本明細書に記載される組み合わせの化合物は、他の白金錯体を包含する他の金属イオン錯体からある白金錯体を判別することができ、白金を包含する種々の金属イオンの配位環境に対する有感もまた呈する。式Iの化合物および本明細書に記載される組み合わせが、錯体の生体、環境、および産業サンプルを包含する検査サンプル中のいずれかの白金錯体を検出、同定、および定量するために有用であり得るということは了解されるであろう。
【0095】
複数のアナライトおよびセンサーを含有するアレイに基づく感知システムは、多くの場合には大きい多次元データセットを生ずる。データは多変量解析を用いることによってデコンボリューションされ得る。多変量解析は、当分野において公知の統計プログラム、例えばSPSS、BioVinci、R、またはMatlabを用いて実行され得る。有利には、多変量統計技術は、データセットの次元を削減することならびにトレンドおよび予測可能性の同定を許すことによってデータの視覚化を改善し得る。好適な技術の例は主成分分析(PCA)および線形判別分析(LDA)を包含する。PCAは、データを最も良好に分離する主成分(因子)を抽出し、最も多大な判別に寄与しかつ依然として分散のほとんどを説明するセンサー要素を同定することを助ける。LDAは、データの異なるクラス間の距離を最大化し、この情報をより少数の次元に濃縮する変数の直交的な線形結合のセットを構築する分類技術である。ひとたび初期モデルが訓練されると、独立したデータの第2のセットが、アレイの正解率を検証するために訓練マトリックスによって試験され、その後に、未知のデータを分類するために用いられ得る。好適な技術の他の例は、階層クラスター分析(HCA)、人工ニューラルネットワーク、および線形変換(回帰)技術、例えば減少主軸(RMA)回帰を包含する。
【0096】
従って、好ましい実施形態において、本発明の方法は、さらに、多変量解析を用いて蛍光応答パターンを分析することを含む。いくつかの実施形態において、多変量解析は、主成分分析(PCA)、線形判別分析(LDA)、階層クラスター分析(HCA)、人工ニューラルネットワーク、および減少主軸(RMA)回帰、とりわけPCAおよびLDAから選択される。
【0097】
実施例において示される通り、多変量解析技術は、例えば、1つ以上の検査サンプルにおいて、異なる白金錯体を包含する異なる金属イオン錯体、および異なる濃度の金属イオン錯体を分類するために有用であり得る。式Iの化合物または本明細書に記載される組み合わせの化合物は、多変量解析のための訓練マトリックスを提供するために用いられ得る。これは、本明細書に記載される1つ以上の参照サンプルからの蛍光応答パターンの形態をした参照データセットに基づく。従って、本発明は、多変量解析のための参照データセットを提供するための、式Iの化合物またはその塩もしくは溶媒和物、あるいは式Iならびに本明細書に記載される式II~IV、VIII、IX、XI~XIII、XVIII、およびXIXの1つ以上の化合物の組み合わせの使用を提供する。本発明は、さらに、多変量解析のための訓練マトリックスを提供するための方法を提供し、本明細書に記載される1つ以上の参照サンプルからの蛍光応答パターンの形態をした参照データセットを提供することと、訓練マトリックスを提供するために多変量解析を用いて参照データセットを分析することとを含む。
【0098】
また、本発明は、検査サンプル中の白金錯体の濃度を決定するために、式Iの化合物またはその塩もしくは溶媒和物、あるいは式Iの化合物、ならびに本明細書に記載される式II~IV、VIII、IX、XI~XIII、XVIII、およびXIXの化合物の1つ以上の組み合わせの使用を提供する。
【0099】
また、本発明は、検査サンプル中の白金錯体の濃度を決定するための方法を提供し、方法は以下を含む:
- 白金錯体を含む検査サンプルを提供すること;
- 検査サンプルを、式Iの化合物またはその塩もしくは溶媒和物と接触させること;
- 検査サンプルを、式Iの化合物を励起するために十分な光源に暴露すること;
- 式Iの化合物からの蛍光応答を検出すること;
- 検査サンプルの蛍光応答を、それぞれがある濃度の白金錯体を含む1つ以上の参照サンプルからの蛍光応答の形態をした参照データセットと比較して、検査サンプルおよび1つ以上の参照サンプルの間に蛍光応答パターンの違いがあるかどうかを同定すること;ならびに
- 検査サンプル中の白金錯体の蛍光応答が、同じ濃度を有する参照サンプルの蛍光応答と同じとなる、検査サンプル中の白金錯体の濃度を決定すること。
【0100】
また、本発明は、検査サンプル中の白金錯体の濃度を決定するための方法を提供し、方法は以下を含む:
- 白金錯体を含む検査サンプルを提供すること;
- 検査サンプルを、式Iの化合物、ならびに本明細書に記載される式II~IV、VIII、IX、XI~XIII、XVIII、およびXIXの化合物の1つ以上の組み合わせと接触させること;
- 検査サンプルを、組み合わせの化合物を励起するために十分な光源に暴露すること;
- 組み合わせの化合物からの蛍光応答パターンを検出すること;
- 検査サンプルの蛍光応答パターンを、それぞれがある濃度の白金錯体を含む1つ以上の参照サンプルからの蛍光応答パターンの形態をした参照データセットと比較して、検査サンプルおよび1つ以上の参照サンプルの間に蛍光応答パターンの違いがあるかどうかを同定すること;ならびに
- 検査サンプル中の白金錯体の蛍光応答パターンが、同じ濃度を有する参照サンプルの蛍光応答パターンと同じとなる、検査サンプル中の白金錯体の濃度を決定すること。
【0101】
いくつかの実施形態において、方法は、さらに、それぞれがある濃度の白金錯体を含む1つ以上の参照サンプルからの蛍光応答パターンの形態をした参照データセットを提供することを含む。1つ以上の参照サンプルは、好ましくはそれぞれが、他の参照サンプルのものとは異なる濃度の白金錯体を含むということは了解されるであろう。
【0102】
参照データセットは、それぞれがある濃度の白金錯体を含む1つ以上の参照サンプルの蛍光応答パターン(単数または複数)についてのデータを含有する。この文脈において、1つ以上の参照サンプル中の白金錯体の濃度は既知である。参照データセットは、それぞれがある濃度の白金錯体を含有する1つ以上の参照サンプルを、式Iの化合物または本明細書に記載される組み合わせと接触させることと、式Iの化合物または組み合わせの化合物からの各参照サンプルの蛍光応答パターンを検出することとによって得られ得る。
【0103】
式Iの化合物と、式Iの化合物ならびに本明細書に記載される式II~IV、VIII、IX、XI~XIII、XVIII、およびXIXの化合物の1つ以上の組み合わせとは、ある時期に渡ってあるソースから得られる白金錯体の濃度をモニタリングするために有用であり得る。
【0104】
従って、本発明は、ある時期に渡ってあるソースからの白金錯体の濃度をモニタリングするための方法を提供し、方法は以下を含む:
- 本明細書に記載される白金錯体の濃度を決定するための方法に従って、ある時点のソースから得られた検査サンプル中の白金錯体の濃度を決定すること。
【0105】
方法は、さらに、ソースからの検査サンプルを得ることを含み得る。
【0106】
式Iの化合物および本明細書に記載される組み合わせは、治療計画のクールに渡って対象者の白金含有薬剤の濃度をモニタリングするために有用であり得る。
【0107】
従って、本発明は、白金含有薬剤を含む治療計画を受けている対象者において白金含有薬剤の濃度をモニタリングするための方法を提供し、方法は以下を含む:
- 治療計画の間に対象者から得られる生体サンプルを提供すること;および
- 本明細書に記載される白金錯体の濃度を決定するための方法に従って、生体サンプル中の白金含有薬剤の濃度を決定すること。
【0108】
方法は、さらに、治療計画の間に対象者から生体サンプルを得ることを含み得る。
【0109】
白金含有薬剤は、対象者の疾患を治療するためのいずれかの好適な白金含有薬剤であり得る。いくつかの実施形態において、白金含有薬剤は抗癌薬剤である。好適な抗癌薬剤の例はシスプラチン、オキサリプラチン、およびカルボプラチン、ならびに新たな候補薬剤を包含する。
【0110】
有利には、実施例において示される通り、式Iの化合物および本明細書に記載される組み合わせは、化学療法治療の間に癌患者から得られる血漿などの錯体サンプルを用いて、白金抗癌薬剤の濃度をモニタリングすることができる。白金含有薬剤の濃度を決定することより、生体サンプル中の薬剤の濃度に基づく薬剤からの毒性の尤度の同定または予測を可能にし得る。従って、方法は、さらに、サンプル中の薬剤の濃度に基づいて、対象者における白金含有薬剤からの毒性の尤度を同定または予測することを含み得る。
【0111】
加えて、方法は、さらに、生体サンプル中の薬剤の濃度に基づいて、治療計画の間に対象者に投与しようとする白金含有薬剤の用量を調整することを含み得る。例えば、白金含有薬剤の濃度が対象者における所望の治療応答には低すぎることが分かった場合には、薬剤の用量を好適に増大し得る。他方で、白金含有薬剤の濃度が毒性に至り得るレベルであることが分かった場合には、薬剤の用量は適切に減少し得る。
【0112】
よって、本発明は、有利には、治療計画の間の対象者における抗癌薬剤などの白金薬剤の直接的なモニタリングを可能にさせる。これによって、薬剤の用量は、(例えば用量制限毒性を原因とするよりもむしろ)薬剤の所望の濃度範囲を然るべく達成するように調整され得る。
【0113】
また、本発明は、式Iの化合物、とりわけ式IAの化合物、またはその塩もしくは溶媒和物、あるいは本明細書に記載される式Iの化合物、とりわけ式IAの化合物、ならびに式II~IV、VIII、IX、XI~XIII、XVIII、およびXIXの化合物、とりわけ式II~VIの化合物の1つ以上の組み合わせを含むキットを提供する。キットは、検査サンプル中の白金錯体を検出するため、検査サンプル中の白金錯体を同定するため、検査サンプル中の白金錯体の濃度を決定するため、検査サンプル中の白金錯体の濃度をモニタリングするため、または本明細書に記載される通り白金含有薬剤を含む治療計画を受けている対象者において白金含有薬剤の濃度をモニタリングするためであり得る。
【0114】
本発明のキットは、さらに、センサーに基づくアレイを行うために用いられる構成要素を含み得る。いくつかの実施形態において、キットは、さらに、蛍光に基づくアレイのためのマイクロプレート、例えば96ウェルマイクロプレートまたは384ウェルマイクロプレートを含む。これらの実施形態において、式Iの化合物または本明細書に記載される組み合わせの化合物は、別々にマイクロプレートに提供され得る。代替的には、式Iの化合物または組み合わせの化合物はマイクロプレートの1つ以上のウェルに包含され得る。組み合わせのケースでは、マイクロプレートは組み合わせの各化合物を別々のウェルに包含し得る。代替的には、マイクロプレートは組み合わせの2つ以上の化合物を一緒に単一のウェルに包含し得、好ましくは、ここで2つ以上の化合物はそれぞれが異なるフルオロフォアを含有する。これは、同じフルオロフォアを有する(よって、類似の波長の蛍光を見せ得る)単一のウェル上の2つ以上の化合物の蛍光を独立して検出することが困難であり得るからである。例えば、式I~VIの化合物を含む組み合わせのケースでは、好ましくは式I、III、およびIVの化合物(ローダミンフルオロフォア)は単一のウェル上に一緒には包含されず、式VおよびVIの化合物(クマリンフルオロフォア)は単一のウェル上に一緒には包含されない。
【0115】
いくつかの実施形態において、キットはさらに1つ以上の金属イオン錯体を含み、これらは参照サンプルを調製するために用いられ得る。これらの実施形態において、1つ以上の金属錯体は別々にマイクロプレートに提供され得る。代替的には、1つ以上の金属錯体はマイクロプレートの1つ以上の別々のウェル上に存在し得る。
【0116】
いくつかの実施形態において、キットはさらに溶媒を含み、これはキットの化合物および/または参照サンプルの金属イオン錯体を溶解するために用いられ得る。好適な溶媒の例はジメチルスルホキシド(DMSO)およびジメチルホルムアミド(DMF)を包含する。
【0117】
いくつかの実施形態において、キットは、さらに、アレイを行うための緩衝液を含む。好適な緩衝液の例は(4-(2-ヒドロキシエチル)-1-ピペラジン-エタンスルホン酸)(HEPES)およびリン酸緩衝生理食塩水(PBS)を包含する。
【0118】
本発明を実施するために有用なキットは、さらに、任意に共通のパッケージまたは容器に一緒にパッケージ化された本明細書に記載される方法を実行するための取扱説明書(例えば印刷された取扱説明書)をもまた含み得る。
【0119】
本明細書において開示および定義される発明は、言及されるかまたは本文もしくは図面から明白な個別の特徴の2つ以上の全ての代替的な組み合わせに及ぶということは理解されるであろう。これらの異なる組み合わせの全ては本発明の種々の代替的な態様を構成する。
【実施例
【0120】
本発明を限定しない例(単数または複数)としてさらに記載する。多くの改変が本発明の趣旨および範囲から逸脱することなしになされ得るということは本発明の分野の業者には理解されるであろう。
【0121】
本発明の実施は、別様に示されない限り、当分野の技能のうちの従来の有機合成、分析、および分子キャラクタリゼーション技術を使用する。かかる技術は当業者には周知であり、文献中に詳しく説明されている。
【0122】
蛍光センサーおよび白金錯体の合成のための化学薬品はシグマアルドリッチおよびアルファエイサーから購入した。HEPES緩衝液およびPBS緩衝液粉末はシグマアルドリッチから購入し、ミリQ水を用いて作った。生成物はフラッシュカラムクロマトグラフィーによって精製した。記載される通り溶媒によって溶出するDavisil230-400メッシュキーゼルゲル60シリカを用いた。溶媒は市販のソースから購入し、PureSolv499-5MD溶媒精製システム(イノベティブテクノロジー(Innovative Technology)Inc)によって精製した。
【0123】
プロトン核磁気共鳴分光法(H-NMR)スペクトルは300KにおいてブルカーのAvance-300を用いて300mHzの周波数で記録した。炭素核磁気共鳴分光法(13C-NMR)スペクトルはブルカーのAvance-400によって75MHzの周波数で記録した。低分解能エレクトロスプレーイオン化(ESI)質量分析(MS)はブルカーのAmaZon-SLイオントラップ質量分析計によって行った。高分解能質量分析はブルカーのApex-qE-7Tフーリエ変換イオンサイクロトロン共鳴質量分析計によって行った。
例1.式IAの化合物の合成
【0124】
式IAの化合物(本明細書のS3)を次の手順を用いて合成した。2MのNaOH(3mL)中のメチルカルバムイミドチオエートヘミサルフェート(500mg、3.6mmol)の溶液に、トルエン(5mL)および二炭酸ジ-tert-ブチル(0.39g、2.20mmol)を追加した。反応混合物を60℃に加熱し、16hに渡って撹拌した。有機層を分離し、ブラインによって洗浄し(20mL)、乾燥し(NaSO)、溶媒を減圧蒸発して、生成物(0.33g、1.7mmol)をオフホワイトの固体として与えた。H-NMR(300MHz,CDCl):δ7.51(brs,1H),2.46(s,3H),1.51(s,9H).13C-NMR(75MHz,CDCl):δ173.0,161.7,79.9,28.2,13.5.LRMS(ESI):[M+H](C14S)m/z計算:191.0実測[M+H]:191.0、実測[M-t-Bu+H]:135.0.
【0125】
ローダミンB(100mg、0.21mmol)および塩化チオニル(0.30mL、4.11mmol)の溶液を室温で2hに渡って撹拌した。酸塩化物をジエチルエーテルによって沈殿し、濾過し、エーテルによって洗浄した。粘稠な油を10mLの乾燥MeCN中に溶解し、MeCN(3mL)中のboc保護2-メチル-2-チオシュードウレア(45mg、0.24mmol)、KCO(150mg、1.09mmol)の溶液に滴下した。反応混合物を室温で16hに渡って撹拌した。生成物をシリカプラグによって濾過し(50:50のEtOAc:ヘキサン)、溶媒を減圧蒸発して、青紫色の油を与えた。生成物をCHCl(6mL)中に再溶解し、トリフルオロ酢酸(1mL)を追加した。反応を室温で1hに渡って撹拌し、溶媒を減圧除去し、生成物をフラッシュクロマトグラフィー(SiO、2:98のMeOH:CHCl)を用いて精製して、淡ピンク色の固体(48mg、0.093mmol)を産生した。H-NMR(500MHz;CDCl):δ7.93(d,J=7.5Hz,1H),7.47(td,J=7.4Hz,1.1Hz,1H),7.42(td,J=7.5Hz,1.0Hz,1H),7.01(d,J=7.5Hz,1H),6.52(d,J=8.8Hz,2H),6.39(d,J=2.6Hz,2H),6.26(dd,J=8.9Hz,2.6Hz,2H),3.33(q,J=7.2Hz,8H),2.13(s,3H),1.16(t,J=7.3Hz,12H).13C-NMR(125MHz,CDCl):δ12.8,14.3,44.4,67.0,97.9,106.6,107.9,123.8,124.3,127.9,128.1,128.4,128.5,134.5,149.0,152.9,154.2,169.2;HRMS(ESI):[M+H](C3033S)m/z計算:514.2402実測[M+H]:514.2477.
例2.他の発蛍光性センサーの合成
【0126】
式IIの化合物(本明細書のS1)を、最初にフルオレセインヒドラジドを与えるためのアミド化、それからCSおよびKOHの存在下における加熱によって、フルオレセインから2ステップで合成した。その後の酸性化が最終生成物を与えた。
【0127】
式Xの化合物を次の手順を用いて合成した。インダゾール(0.69g、5.80mmol)をエタノール(10mL)中において水酸化カリウム(0.34g、5.80mmol)の存在下で10minに渡って撹拌した。これの後に、二硫化炭素(0.45mL、7.54mmol)を滴下し、明橙色の沈殿の迅速な形成を有した。沈殿を濾過によって分離し、水中に再懸濁した。懸濁液を2MのHClによってpH4に酸性化し、沈殿を生じた。これを爾後に濾過し、冷エタノールによって洗浄して、1H-インダゾール-1-カルボジチオ酸を薄い橙色の粉末(0.87g、78%)として与えた;mp220℃(報告された値なし).δH(300MHz;DMSO-d)9.15(d,1H,J8.5),8.31(s,1H),7.89(d,1H,J8.5),7.64(t,1H,J14),7.41(t,1H,J14)ppm.δC(300MHz;DMSO-d)218.0,139.1,134.9,127.1,126.8,122.2,120.9,117.9ppm.υmax(ニート):1738,1610,1268,1008,908,849cm-1.λmax(log10ε)(DMSO)360(3.88),325(3.98).m/z(LREI):[M+H]計算:194.00、実測:193.78.
【0128】
式XIVの化合物を次の手順を用いて合成した。ベンジルアミン(1.35g、12.6mmol)を、メタノール(40mL)中の2-アミノ-1-シクロペンテン-1-カルボジチオ酸(ACDA、2.0g、12.6mmol)の溶液に追加した。反応混合物を室温で48hに渡って撹拌し、これの後に、水を反応フラスコに追加し、混合物を直ちに濾過した。濾液を0℃に冷却し、2MのHClによって中和して、結晶質の黄色の沈殿を与えた。これをその後に濾過し、冷メタノールによって洗浄した。生成物をメタノールによって再結晶化して、2-(ベンジルアミノ)シクロペンタ-1-エンカルボジチオ酸を乾燥黄色針状物(1.8g、57%)として生じた;mp100℃(文献値98~99℃[98]).δH(300MHz;DMSO-d)12.44(br.s,1H),7.36~7.16(m,5H),4.61(d,2H,J6.0),4.05(br.s,1H),2.76(t,2H,J7.5),2.67(t,2H,J7.0),1.71(quin,2H,J7.5)ppm.δC(75MHz;DMSO-d)192.2,168.1,137.6,128.8,128.7,128.4,127.4,127.3,24.3,34.9,33.0ppm.υmax(ニート):3325(br),3029,2545,1584,1485,1375,1326,1275,1007,921,875cm-1.λmax(log10ε)(DMSO)400(4.45),305(3.97).m/z(LREI):[M+H]計算:250.07、実測:249.90.
【0129】
式XXの化合物を次の手順を用いて合成した。中間体化合物3,6,12,15-テトラチア-9-モノアザヘプタデカンをゼン(Zeng)ら(Journal of the American Chemical Society,第128巻(2006年):p.10-11)に記載されている手順を用いて合成し、さらなる精製なしにその後の反応に用いた。3,6,12,15-テトラチア-9-モノアザヘプタデカン(660mg、2.1mmol)をエタノール(30mL)中においてホルムアルデヒド(過剰、1mL)の存在下で60℃で1hに渡って撹拌した。それから、4-メチルウンビリフェロン(350mg、2.0mmol)を追加し、反応混合物を加熱して還流させ、12hに渡って撹拌がなされた。反応混合物を減圧蒸発し、それからクロロホルム(200mL)に溶かし、水(100mL)およびブライン(75mL)によって順に洗浄し、乾燥し(NaSO)、減圧蒸発した。生成物をシリカによるフラッシュクロマトグラフィーによって精製し、メタノール-ジクロロメタン(1:9)によって溶出して、8-((ビス(2-((2-(エチルチオ)エチル)チオ)エチル)アミノ)メチル)-7-ヒドロキシ-4-メチル-2H-クロメン-2-オンを淡橙色の油(590mg、59%)として与えた。δH(400MHz;DMSO-d)7.58(d,1H,J9.0),6.78(d,1H,J9.0),54 6.11(s,1H),4.68(s,2H),3.68~3.65(m,4H),3.55~3.42(m,12H),2.69~2.58(m,4H),2.36(s,3H),1.17(t,6H,J7.5)ppm.δC(100MHz;DMSO-d)160.7,160.3,154.2,154.0,126.4,125.7,113.1,112.7,112.4,65.5,60.0,55.3,32.0~31.1,19.0,15.6ppm.υmax(ニート):3215(br),2972,2975,1719,1600,1578,1384,1367,1065,928,845cm-1.λmax(log10ε)(DMSO)340(4.23).m/z(LRAPCI):[M+H]計算:502.16、実測:502.36.
【0130】
式IIIの化合物(本明細書のS2)を、コラノフスキー(Kolanowski)ら(Sensors and Actuators B,2018年,第255巻,p.2721-2724)に記載されている手順を用いて合成した。式IVの化合物(本明細書のS4)を、シ(Shi)ら(Chem. Commun.,2008年,p.1856-1858)に記載されている手順を用いて合成した。式VIの化合物(本明細書のS6)を、クアー(Kuar)ら(Chem. Commun.,2015年,第51巻,p.10510-10513)に記載されている手順を用いて合成した。式VIIの化合物を、スミス(Smith)ら(Analyst,2019年,第144巻(1),p.230-236)に記載されている手順を用いて合成した。式VIIIの化合物を、ローダミン6Gの代わりにローダミンBを用いたことを例外として、キム(Kim)ら(Org. Lett.,2010年,第12巻(22),p.5342-5345)に記載されている手順を用いて合成した。式IXの化合物を、チェン(Chen)ら(Tetrahedron,2010年,第66巻,p.4016-4021)に記載されている手順を用いて合成した。式XIの化合物を、カイ(Kai)ら(Sensors Actuators B Chem.,2014年,第202巻,p.252-256)に記載されている手順を用いて合成した。式XVIの化合物を、マカス(Macas)ら(Polyhedron,第21巻(2002年):p.1229-1234)に記載されている手順を用いて合成した。式XVIIの化合物を、サフィン(Safin)(Dalton Trans.,2013年,第42巻,p.4757-4763)に記載されている手順を用いて合成した。式XVIIIの化合物を、リー(Lee)ら(Organic Letters,第10巻(2008年):p.213-216)に記載されている手順を用いて合成した。式XIXの化合物を、バグ(Bag)およびバラドワジ(Bharadwaj)(The Journal of Physical Chemistry B,第109巻(2005年):p.4377-4390)に記載されている手順を用いて合成した。
【0131】
式Vの化合物(本明細書のS5)、式XIIの化合物(本明細書のS8)、式XIIIの化合物(本明細書のS9)、および式XVの化合物を、シグマアルドリッチから購入した。
例3.白金化合物の合成
【0132】
白金錯体シスプラチン、トランスプラチン、[PtCl(en)]、フェナントリプラチン、[PtCl(NH]Cl、K[PtCl]、オキサリプラチン、およびピリプラチンを、先に報告された方法によって合成した:ダーラ(Dhara),シス[Pt(NHCl]の合成のための迅速な方法(A Rapid Method for the Synthesis of Cis[Pt(NH3)2Cl2]),Indian J. Chem.,1970年,第8巻,p.193-194;カウフマン(Kauffman),シスおよびトランスジクロロアミン白金(II)(Cis- and Trans-Dichloroammine-Platinum (II)),1963年,VII,p.239-245;チョパデ(Chopade)ら,ジメチルピラゾールに基づくセレン配位子を含有する白金(II)錯体の合成、キャラクタリゼーション、構造、および細胞傷害性(Synthesis, Characterization, Structures and Cytotoxicity of Platinum(II) Complexes Containing Dimethylpyrazole Based Selenium Ligands),Inorganica Chim. Acta,2015年,第427巻,p.72-80;パク(Park),Gら,際立った力価および細胞活性プロファイルを有する単官能基性DNA結合白金抗癌薬剤候補フェナントリプラチン(Phenanthriplatin, a Monofunctional DNA-Binding Platinum Anticancer Drug Candidate with Unusual Potency and Cellular Activity Profile),Proc. Natl. Acad. Sci. U. S. A.,2012年,第109巻(30),p.11987-11992;およびモリタ(Morita)ら,トリアミンクロロ白金(II)塩化物(Triamminechloroplatinum(II) Chloride),Inorg. Synth.,1983年,第22巻,p.124-125。
例4.蛍光アレイの手順
【0133】
蛍光分光法をベンチトップパーキンエルマーEnspireマルチモードプレートリーダーによって行った。金属塩または金属錯体のストック溶液をセンサーS1~S9またはS1~S6およびDMFと平底黒色ポリプロピレン96ウェルマイクロプレート上で混合して多次元アレイを作り出すことによって、アレイを調製した。各センサー-金属またはセンサー-錯体溶液の5レプリケートを用いた。4つの励起波長をセンサーS1~S9の最大励起波長に基づいて選択した:280nm、380nm、480nm、445nm、および545nmであって、それぞれ発光強度範囲300~500nm、400~600nm、500~650nm、465~600nm、565~700nmを有する。アナライトに対する蛍光応答を積分発光強度を用いて決定し、各センサーについて、分析のために応答を正規化するために、アナライトを含有しない対照のウェルを包含した。
【0134】
多次元データの解釈を容易化するために、次元削減を用いてデータをデコンボリューションした。主成分分析(PCA)および線形判別分析(LDA)をIBMのSPSS-Statistics25を用いて行った。各アナライトに対する正規化された積分発光応答を多変量解析に付した。入力されたアナライトをグループ化変数として、各センサーの蛍光応答を独立変数とした。次元削減をPCAを用いて選択変数なしで行った。これの間には、抽出された主成分数はスクリープロットに基づいた。ここでは、値はバリマックス回転を経過し、固有値>1が保持された。分類をLDAを用いて決定した。アナライトのクラスをグループ化変数として用い、全てのグループは等しいとして分類された。データは最初の2つの判別関数の領域マップおよび正準スコアプロットによって解釈した。混同行列を用いて分類正解率を決定し、リーブワンアウトまたはジャックナイフ交差検証ルーチンを用いて検証した。
例5.蛍光アレイのためのセンサーの同定
【0135】
検査サンプル中の白金錯体を検出するために有用なセンサーを同定するために、式I~XXの化合物から選択されたセンサーを用いてアレイを実施した。センサーを例4に記載されている手順を用いて試験し、得られたデータはLDAを用いて解析した。式I~VI、VIII、XII、およびXIIIの化合物(センサーS1~S9)の組み合わせ、特に式I~VIの化合物(センサーS1~S6)の組み合わせは、最も良好な判別に寄与しながら依然として分散のほとんどを説明することが同定された。S1~S9は400~600nmの間の可視範囲の強度の蛍光を有することが見出された:S1は480nmで励起され、S2~4は545nmで励起され、S5は380nmで励起され、S6~S7は445nmで励起され、S8~S9は280nmで励起される。センサーS1~S9をその後の実験に用いた。
例6.他の金属錯体からの白金錯体の判別
【0136】
いくつかの重金属を包含する種々の金属イオンを含有するサンプル中の白金錯体をセンサーアレイが判別することができるかどうかを評価するために、センサーS1~S9を、例4に記載されている手順を用いて重金属イオンを包含する種々の金属イオンに対してスクリーニングした。アレイ上の各プローブ(10μM)を、9つの金属イオン(50μM)、つまりNi(II)、Cu(II)、Zn(II)、Fe(III)、Co(II)、Pb(II)、Cd(II)、Hg(II)、およびPt(II)によって、20mMのHEPES、pH7.4中においてスクリーニングした。アレイの蛍光スペクトルを記録した。各金属イオンによる6つのセンサーの応答は各別個のパターンを生成し、このパターンは多変量解析を用いて明確化された。
【0137】
図2aは、蛍光の消光および増強両方を包含する9つの金属イオンに対する各センサーの指紋応答を例示する。結果は、金属イオンに対するセンサーの良好な交差反応性および蛍光応答を示す。
【0138】
センサーS1~S9および金属イオンからの応答をPCAに付した。サンプルのクラスのいくらかのクラスタリングが観察され、LDAなどの教師あり技術が良好な判別正解率を有し得るということを示した。
【0139】
図2bは、センサーS1~S9について最初の3成分のスコアのLDAスコアプロットを例示する。LDAプロットはPCAと比較して削減された次元においてより多くの分散を捕捉し、抽出された最初の3因子は分散の99%に相当した。加えて、LDAモデルは、リーブワンアウト交差検証ルーチンを用いて、98%の正解率および93%の正解率で全ての金属レプリケートを正しく分類することができた。因子1はほぼ全ての分散(91.7%)に相当した。これはHg(II)イオンの歪んだローディングを原因とし得る。
【0140】
センサー対アナライト比を改善するために、アレイ上のセンサー数が削減され得るかどうかを調査した。LDA結果を用いて、どのセンサーが最も少なく判別に寄与しているのかを決定した。これをするためには、LDAの最初の3因子への各センサーのローディングである。なぜなら、最初の3因子は分散の99.5%に相当したからである。より高い因子へのより多大なローディングは、センサーがより多く判別に寄与しているということを示し得る。
【0141】
9センサーシステムのローディングスコアを抽出し、強い因子ローディングを有するセンサーを同定した。S1、S2、およびS4は因子1について高い係数を有し、S3およびS5は因子2について高い係数を有し、S6およびS9は因子3について高い係数を有した。対照的に、S7もS8も最初の3因子について高い係数を有さなかった。S9は因子3に良好にローディングしたが、この因子は分散の0.5%のみに相当し、センサーは実質的に白金イオンに対する応答を実証しなかった。それゆえに、センサーアレイシステムは6つのセンサーS1~S6まで削減され、それからその金属イオン判別能力について検討された。
【0142】
センサーS1~S6についてのPCAプロットからの最初の3成分のスコアは、分散の83.2%がこれらの因子単独によって説明され得るということを示した。初期の記述統計は、S2およびS4が強く相関し得るということを示唆した。どちらのセンサーの除去もより不良な標本妥当性をもたらし、よって、両方はその後の判別分析のために保持された。
【0143】
LDAプロットはデータのより良好なクラスタリングを示し、解析は全ての9つの金属イオンを93%の分類正解率で識別し得た(91%が交差検証された)。重要なことに、アレイはPt(II)レプリケートの全てを8つの他の金属イオンから正しく分類および判別することができた。これは注目に値した。なぜなら、生物学的な金属および重金属を判別するアレイに基づく感知システムはあるが、これらはめったにPt(II)を包含しないからである。
【0144】
図2bのLDAプロットは、Hg(II)が金属イオンの残りから離れてクラスタリングすることを示す。これは驚くべきことではなかった。なぜなら、S4は報告されたHg(II)センサーであり、水銀に対するその固有の応答は第1判別スコアを歪ませるように見えるからである。LDAデータのさらなる取り調べは、S2およびS4両方が最も高いローディングを因子1に有するということを例証した。どちらのセンサーを除去することも正解率を有意には左右せず、交差検証された分類正解率は91%に留まり、Hg(II)は依然として他の金属から離れてクラスタリングした。両方のセンサーの除去は分類正解率を87%まで削減した。これらの結果は、アレイに基づく感知におけるその選択的なセンサーが判別スコアに影響し得るということを示唆する。
【0145】
この実験の結果は、S1~S9、特にS1~S6を含むセンサーアレイが、錯体サンプル中のニッケル、銅、亜鉛、および鉄などの他の生物学に関連する金属から白金を識別するために有用であり得るということを示す。
例7.検査溶液中の種々の白金錯体の判別
【0146】
センサーアレイが検査溶液中の特定の白金錯体を同定することができるかどうかを評価するために、種々の白金錯体を含有する検査溶液を例4に記載されている手順を用いてS1~S6センサーアレイによって評価した。アレイ上の各センサー(200μM)を、7つの白金錯体(200μM)、つまりシスプラチン、トランスプラチン、[PtCl(en)]、フェナントリプラチン、[PtCl(NH]Cl、K[PtCl]、およびオキサリプラチンによって、20mMのHEPES、pH7.4中において試験した。アレイの蛍光スペクトルを記録した。各白金錯体による6つのセンサーの応答は各別個のパターンを生成し(図3)、このパターンは多変量解析を用いて明確化された。
【0147】
最初の3成分のスコアのPCAプロットはクラス同士のいくらかの分離を示し、データ内における望ましいばらつきを示した。重要なことに、6つのセンサーの相関行列は、全てのプローブが全て強く相関するわけではなく、全てのセンサーがアレイの識別力に寄与するということを示した。これは、全ての6つのセンサーをアレイ上に包含することが有益であり得るということを示唆する。
【0148】
図4は得られた最初の3因子のLDAプロットを例示する。最初の2つの正準スコアのLDAプロットはクラス同士のいくらかの重なりを明らかにし、これらは第3の因子を抽出することによってより良好に分離された。交差検証によるジャックナイフ分類は、ケースの100%が正しく分類されるということを明らかにした。
【0149】
この実験の結果は、検査溶液中の異なる構造の7つの白金錯体がセンサーアレイを用いて識別されることができたということを実証している。結果は、センサーアレイが錯体サンプル中の種々の白金錯体を検出、判別、および同定するために有用であり得るということを示す。
例8.未知の白金錯体の同定.
【0150】
S1~S6センサーアレイが未知の白金錯体を分類する能力を評価するために、例7で試験された「既知の」白金錯体について取得されたデータを訓練セットとして用いて、「未知の」白金錯体、つまりピリプラチンを調べた。ピリプラチンは「既知の」白金錯体フェナントリプラチンに最も類似であり、これもまたヘテロ環式配位子を有する単官能基性錯体である。アッセイは例7に記載されている手順を用いて実施した。
【0151】
図5aは、グループ化されていないケースがLDAによって処理されたときの最初の3因子のLDAプロットを例示し、図5bは、8つの白金錯体があるということを指定してデータが再処理されたときのLDAプロットを例示する。グループ化されていないケースがLDAによって処理されたときには、ピリプラチンの全てのレプリケートはフェナントリプラチンとして分類された。しかしながら、データが再処理されたときには、結果はピリプラチンを第8のクラスとして正しく分類した。
【0152】
起こっている反応の型を理解するために、各センサーおよび白金錯体の間の5レプリケートの応答の平均をHCAによって処理した。図5cはHCAの結果を提示するデンドログラムである。クラスター同士は類似性に基づいてペアリングされた。第1のクラスターはピリプラチンおよびフェナントリプラチンの間であり、先の訓練アレイ実験と整合する。二次クラスターはシス立体配置を非シス立体配置から分離し、これらのクラスターはヘテロ環式の単官能基性錯体とは別々である。それゆえに、この分析は、アレイが配位圏に対して有感であり、これらの相互作用がアレイの判別力に寄与し得るということを示唆し得る。
【0153】
この実験の結果は、検査溶液中の異なる構造の白金錯体がセンサーアレイを用いて識別されることができたということを実証している。結果は、錯体の配位環境に対するアレイの有感と類似の錯体同士を識別する能力とをもまた実証している。結果は、センサーアレイが錯体サンプル中の種々の白金錯体を検出、判別、および同定するために有用であり得るということを示す。アレイが白金錯体同士を判別する有感は、アレイが経時的な白金錯体の存在、代謝、および運命をモニタリングするために有用であり得るということをもまた示唆する。
例9.スパイク血漿サンプル中の白金薬剤濃度を決定する
【0154】
S1~S6センサーアレイが錯体の生体サンプル中の白金錯体の存在を検出および定量するために用いられ得るかどうかを評価するために、センサーアレイを、例4に記載されている手順を用いて、白金含有薬剤、つまりシスプラチンまたはオキサリプラチンをスパイクされたヒト血漿サンプルを用いて試験した。アレイの蛍光スペクトルを記録した。各白金薬剤による6つのセンサーの応答は各別個のパターンを生成し、これは多変量解析を用いて明確化された。血液血漿サンプル中の白金濃度はICP-MSによって確認された。
【0155】
最初に、白金薬剤それぞれを0.5μMおよび5μMの間の濃度で試験した。これは化学療法治療の間に癌患者に投与される濃度範囲に類似である。4つの濃度の各白金薬剤による6つのセンサーの応答に対して行われたLDAは、シスプラチンについては79%の正しい分類(32%が交差検証された)、オキサリプラチンについては80%の正しい分類(30%が交差検証された)を示した。
【0156】
追加の蛍光測定の包含が分類正解率を改善し得るかどうかを評価するために、センサーアレイを実施し、4つの励起波長において6つのセンサーを試験した。4つの励起波長は6つのセンサーの最大励起波長に基づいて選択した:380nm、445nm、480nm、および545nmであって、それぞれ発光強度範囲400~550nm、465~600nm、500~650nm、565~700nmを有する。これは多変量解析のために利用可能な24個の蛍光測定を提供した。ゼロ発光強度を有するデータを除去する最適化研究およびPCAを、追加の測定によって行って、どの追加分の測定が判別を改善するために用いられ得るのかを同定した。21個の測定はシスプラチンおよびオキサリプラチン両方について改善された分類正解率(100%の正しい分類)を与えた。PCA出力を細かく調べることによって、100%の正しい分類を保持しながら、高い相関、類似のローディング、および低い共通性を有する変数を順次除去した。11個未満の測定変数が用いられたときには、分類正解率は100%よりも下に落ちることが見出された。交差検証された正解率はそれぞれシスプラチンおよびオキサリプラチンでは13および14個の変数でピークになることが見出された。
【0157】
一貫性のために、14個の最適化された操作変数をその後の実験のために選択した。図6aおよび6bは、それぞれシスプラチンおよびオキサリプラチンで、最適化された系を用いて得られた最初の3因子のLDAプロットを例示する。結果は、100%の分類正解率で、試験されたシスプラチンおよびオキサリプラチンの全ての濃度の良好な判別を示す。これらの結果は、センサーアレイが錯体の生体サンプル中の白金錯体の濃度を決定するために有用であり得るということを示す。
【0158】
結果は、薬剤の型および濃度両方に従って多変量解析を用いてさらに評価された。この分析では、シスプラチンおよびオキサリプラチンを別々にかつ各薬剤について2つの濃度範囲0.5~1μMおよび2~5μMにグループ化した。応答はLDAを用いて分類され、90%の正しい分類(74%の交差検証された正解率)を明らかにした。図6cに示される通り、また、三次元LDAスコアプロットはシスプラチンおよびオキサリプラチンの重ならないクラスターを例証した。
【0159】
これらの結果は、濃度範囲に対する有感を包含し、センサーアレイが異なる白金薬剤を判別する能力を実証している。これは、臨床的な結論が特定の濃度よりもむしろ濃度範囲に基づいてなされ得る臨床用途にとって有用である。それゆえに、ヒト血漿中の高、中、および低濃度の白金化学療法薬剤を識別することができる技術は、臨床的なおよび治療上の薬剤モニタリング用途にとって有益であり得る。
例10.臨床血漿サンプル中の白金薬剤濃度を決定する.
【0160】
センサーアレイがPt(II)濃度に基づいて生体サンプルを識別するために用いられ得るかどうかを評価するために、センサーアレイを、化学療法治療の種々のステージにおいて白金含有薬剤によって治療された癌患者から取られた血漿サンプルによって試験した。
【0161】
72個の血漿血液サンプルを収集した。61はオキサリプラチンによって治療された患者から、11はシスプラチンによって治療された患者からである。所定の白金に基づく癌治療サイクルを受けることに先立って、患者血液サンプルを日常的な血液検査と併せて収集した。サンプルを室温において10minに渡って3500rpmで遠心し、その後に、-80℃での保存のためのEDTAマイクロチューブに小分けした。
【0162】
血液血漿サンプル中の総白金濃度を決定するために、サンプルを解凍し、50μLの血漿を100μLの37%分析グレード塩酸中において3日に渡って室温で消化した。サンプルをボルテックスし、遠心し、それから超純水によってハミルトンのオートダイリューターを用いて100pptから1ppmの濃度範囲に希釈した。ICP-MS測定を、標準モードで作動するパーキンエルマーNexion300X質量分析計によって、測定された全ての要素について10sの積分時間で、かつ10ppbのRh/Ir内部標準溶液を用いて行った。
【0163】
オキサリプラチンサンプルは濃度が0から504ppbの範囲であることが見出され、シスプラチンサンプルは濃度が30から1450ppbの範囲であった。アレイ調製の間に、サンプルを2倍希釈した。よって、濃度はオキサリプラチンでは0から252ppb、シスプラチンでは15から1725ppbの範囲であることが予想された。濃度の多様な範囲は白金薬剤および濃度両方に対するアレイの有感の評価を可能にさせた。
【0164】
図7aは、シスプラチンまたはオキサリプラチン(oxalplatin)どちらかに対応するアレイの出力およびデータの分類を例示する。データは100%の正解率で正しく分類され、30%がLOO(リーブワンアウト)交差検証された。低いLOO交差検証スコアは各グループ化内の多様な濃度を原因とし得る。交差検証スコアはあまり高正解率ではないが、データのいくらかはかろうじて濃度境界のどちらかの側に位置するということを考えると、LDAアルゴリズム、これが全てのデータを識別することができるわけではないということは全く驚くべきことではなかった。これをさらに実証するために、近い重なりを有さない臨床データの30サンプルのサブセットを選択した。各クラスに10サンプル、各クラス間に20ppbのギャップであった。それから、アレイは93%の正しい分類および47%のLOO交差検証でデータを分類することができた。図7bは最初の2因子の二次元LDAスコアプロットを例示する。96%の正しい分類を達成した同じ濃度範囲内の25個のサンプルを用いて、かつこのサブセットを訓練セットとして用いて、これらの範囲内の11個の未知のサンプルは64%の正解率で分類された。
【0165】
結果は、センサーアレイが濃度に対して有感であり、100ppb未満の白金錯体の濃度を判別することができ得ることを示している。結果は、センサーアレイが錯体サンプル中の白金錯体の濃度を判別するために有用であり得るということを示す。
【0166】
最後に、センサーアレイがそれらの収集時間に基づいてサンプル同士を識別することができるかどうかを評価するために、センサーアレイを臨床オキサリプラチンサンプルによって試験した。61個のオキサリプラチンサンプルのうち、51は同じ17人の患者からであり、ベースライン、中間、および最終時点において収集された。アレイ測定は配位環境に対して有感であることが示されており、よって、ある時期の後に血液中に存在することが蓋然的である白金薬剤の異なる状態に対して有感であり得る。
【0167】
時点あたりの分類されたサンプルについてのアレイの結果を図8aに示す。アレイは収集時点に基づいてサンプルの70%を正しく分類することができ、45.1%のLOO交差検証であった。結果は、センサーアレイが異なる時点で得られたサンプル同士を判別するために有用であり得るということを示している。
【0168】
また、臨床サンプルを治療サイクルに基づいて評価した。患者の第1の治療サイクル後、6サイクルの治療後、および治療の完了の2~4週後のサンプルをLDAによって分析し、収集時間に従ってグループ化した。LDAスコアプロットを図8bおよび8cに例示する。LDAは収集時間に従って80%の正解率(46%の交差検証された正解率)で39個のサンプルを分類した。これは、治療のステージに依存して血流中の白金の状態には類似性があり得るということを示唆する。臨床サンプルのICP-MS結果は治療ステージおよびPt(II)濃度の間の自明な相関を示さなかったが、センサーアレイはこれらの時点に基づいてサンプルを判別することができた。これは、同じステージにおけるサンプル同士をつないでいる他の因子、例えば経時的な結合したおよび未結合の白金薬剤の比があり得るということを示唆し、配位環境に対して有感である分析技術を用いることの利点を強調している。
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図6A
図6B
図7
図8A
図8B
【国際調査報告】