(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-12-12
(54)【発明の名称】動力機械または作業機械の回転要素、特に電気モータのロータのための状態監視
(51)【国際特許分類】
H02K 11/25 20160101AFI20231205BHJP
【FI】
H02K11/25
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023532723
(86)(22)【出願日】2021-10-27
(85)【翻訳文提出日】2023-07-21
(86)【国際出願番号】 EP2021079856
(87)【国際公開番号】W WO2022117265
(87)【国際公開日】2022-06-09
(32)【優先日】2020-12-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】519290507
【氏名又は名称】プロ-マイクロン ゲーエムベーハー
【氏名又は名称原語表記】PRO-MICRON GMBH
【住所又は居所原語表記】Gottlieb-Daimler-Strasse 6 87600 Kaufbeuren Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100092565
【氏名又は名称】樺澤 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100112449
【氏名又は名称】山田 哲也
(74)【代理人】
【識別番号】100062764
【氏名又は名称】樺澤 襄
(72)【発明者】
【氏名】ヴンダーリヒ,ライナー
(72)【発明者】
【氏名】リーツラー,マンフレート
【テーマコード(参考)】
5H611
【Fターム(参考)】
5H611AA01
5H611BB01
5H611BB04
5H611PP05
5H611QQ04
5H611UA07
(57)【要約】
ケーシング部材(2,3)、その中に配置された各1つのステータ要素、およびロータ要素(4)を備える動力機械または作業機械が、ロータ(4)の状態パラメータを監視するための監視装置を有する。監視装置は、ロータ部分(4)に配置され、かつ結合素子および前記要素を接続する導体構造と、SAWセンサ素子を含むセンサユニット(8)と、問い合わせユニットとを含む。問い合わせユニットは、好適にはS-FSCW原理に従って動作する。問い合わせユニットは、問い合わせ信号を生成するための信号発生器と、信号発生器に接続された結合構造(9)とを有する。結合構造(9)は、ロータ要素(4)とステータ要素またはケーシング部材(2,3)の部分との間に形成された空隙に沿って、ロータ要素(4)が回転する際に結合要素により掃引される領域に配置されており、結合構造と結合素子との結合が空隙を跨ぐ信号伝送のために可能であるように配置されている。問い合わせユニットは、受信された応答信号を評価するための評価回路を有する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケーシング部材(2,3)と、該ケーシング部材(2,3)内に配置されたそれぞれ1つのステータ要素およびロータ要素(4)と、前記ロータ要素(4)の状態パラメータ、特に温度を監視するための監視装置とを備える動力機械または作業機械、特に電気モータ(1)であって、前記監視措置は、センサユニット(8)および問い合わせユニットを含み、前記センサユニット(8)は、前記ロータ要素(4)に配置されており、表面波原理に基づき、状態パラメータの状態値を検出するための少なくとも1つのSAWセンサ素子(11)と、結合素子(10)と、前記SAWセンサ素子(11)および前記結合素子(10)をアナログ電磁信号の伝送のために接続する導体構造(12)と、を有し、前記問い合わせユニットは、問い合わせ信号を生成するための信号発生器と、該信号発生器に接続されており、前記ステータまたは前記ケーシング部材(2,3)の部分に前記ロータ要素(4)に向いて配置された結合構造(9)と、および前記センサユニット(8)から受信された応答信号を評価するための評価回路と、を有し、前記結合構造(9)は、前記ロータ要素(4)と前記ステータ要素または前記ケーシング部材(2,3)の前記部分との間に形成された空隙に沿って、前記ロータ要素(4)が回転する際に前記結合要素(10)により掃引される領域と相関する領域に配置されており、当該相関は、前記結合構造と前記結合素子との結合が前記空隙を跨ぐ信号伝送のために可能であるように相関する、動力機械または作業機械、特に電気モータ(1)。
【請求項2】
前記SAWセンサ素子(11)は、伝搬時間遅延原理に従って動作するSAWセンサ素子(11)である、ことを特徴とする請求項1に記載の動力機械または作業機械、特に電気モータ(1)。
【請求項3】
前記問い合わせユニットは、S-FSCW原理に従って動作する問い合わせユニットである、ことを特徴とする請求項1または2に記載の動力機械または作業機械、特に電気モータ(1)。
【請求項4】
前記動力機械または作業機械は、前記ロータ要素(4)に永久磁石が配置された同期モータである、ことを特徴とする請求項1~3のいずれか一項に記載の動力機械または作業機械、特に電気モータ(1)。
【請求項5】
前記結合素子(10)は、前記ロータ(4)の軸方向端部にある前記ロータ要素(4)の表面に配置されている、ことを特徴とする請求項1~4のいずれか一項に記載の動力機械または作業機械、特に電気モータ(1)。
【請求項6】
前記結合素子(10)および前記結合構造(9)は、前記ステータ要素に対して相対的に前記ロータ要素(4)の可及的に大きな回転角範囲にわたって、前記結合素子(10)と前記結合構造(9)との間の結合が達成可能であり、評価可能な信号が受信可能であるように配置されている、ことを特徴とする請求項5に記載の動力機械または作業機械、特に電気モータ(1)。
【請求項7】
前記センサ素子(9)は、軸方向に長手に延びた形状を有し、前記ロータ要素(4)にある孔部(7)内にいずれにせよ部分的に沈められて、1つ又は複数のSAWセンサ素子(11)が前記孔部(7)の内部に配置されており、かつ前記結合素子(10)が前記ロータ要素(10)の表面に露出するように配置されている、ことを特徴とする請求項1~6のいずれか一項に記載の動力機械または作業機械、特に電気モータ(1)。
【請求項8】
前記センサユニット(8)は、SAWセンサ素子(11)を有し、かつ、特にペースト状の材料の孔部(7)内に埋め込まれており、前記材料は、高い熱伝導率を有し、かつ前記孔部(7)内における前記センサユニットの固定に作用する、ことを特徴とする請求項7に記載の動力機械または作業機械、特に電気モータ(1)。
【請求項9】
前記空隙は、20mm以下、特に15mm以下の寸法を有する、ことを特徴とする請求項1~8のいずれか一項に記載の動力機械または作業機械、特に電気モータ(1)。
【請求項10】
前記問い合わせユニット、特にその結合構造(9)、および前記センサユニット(8)の結合素子(10)は、時間的に変化する磁界により優勢的に決定された近接場通信が前記問い合わせユニットと前記センサユニット(8)との間で行われるように設計かつ整合されている、ことを特徴とする請求項9に記載の動力機械または作業機械、特に電気モータ(1)。
【請求項11】
前記問い合わせユニットと前記ロータ要素(4)の回転とは、当該問い合わせユニットが前記センサユニット(8)の問い合わせを、前記ロータ要素(4)の少なくとも2回の回転中に特定の周波数ポイントで繰り返し実行し、前記センサユニット(8)の問い合わせは、前記特定の周波数ポイントにおいて、前記ステータ要素に対して相対的に前記ロータ要素(4)が同じ回転角位置にあるときに行われるように同期化される、ことを特徴とする請求項1~10のいずれか一項に記載の動力機械または作業機械、特に電気モータ(1)。
【請求項12】
表面波原理に基づくSAWセンサ素子(11)と、結合素子(10)と、前記SAWセンサ素子(11)および前記結合素子(10)をアナログ電磁信号の伝送のために接続する導体構造(12)とをそれぞれ1つ備える少なくとも2つのセンサユニット(8)を有し、前記結合素子(10)は、信号伝送のために1つの問い合わせユニットの結合構造(9)と結合するように配置されており、前記問い合わせユニットは、少なくとも2つのセンサユニット(8)を異なる通信窓で問い合わせるように設計されている、ことを特徴とする請求項1~11のいずれか一項に記載の動力機械または作業機械、特に電気モータ(1)。
【請求項13】
動力機械または作業機械、特に電気モータ(1)、とりわけ同期モータの回転要素、特にロータ(4)の温度などの状態パラメータを監視するための監視装置であって、センサユニット(8)および問い合わせユニットを備え、前記センサユニット(8)は、表面波原理に基づき、前記状態パラメータの状態値を検出するための少なくとも1つのSAWセンサ素子(11)と、結合素子(10)と、前記SAWセンサ素子(11)および前記結合素子(10)をアナログ電磁信号の伝送のために接続する導体構造(12)と、を有し、前記問い合わせユニットは、問い合わせ信号を生成するための信号発生器と、該信号発生器と接続可能な結合構造(9)と、前記センサユニット(8)により受信された応答信号を評価するための評価回路と、を有し、前記センサユニット(8)は、前記センサユニット(8)の第1の長手端部にある前記結合素子(10)と、前記センサユニット(8)の前記第1の長手端部に対向する第2の長手端部にある前記SAWセンサ素子(11)と、それらの間にあって前記結合素子(10)および前記SAWセンサ素子(11)を長手方向に接続する導体構造(12)と、によって軸方向に長手に延びるよう形成されている、監視装置。
【請求項14】
前記問い合わせユニットは、S-FSCW原理に従って動作する問い合わせユニットである、ことを特徴とする請求項13に記載の監視装置。
【請求項15】
前記結合素子(10)、前記導体構造(12)、および前記SAWセンサ素子(11)は、1つの共通の基板(14)上に配置および/または形成されている、ことを特徴とする請求項13または14に記載の監視装置。
【請求項16】
前記SAWセンサ素子(11)は、伝搬時間遅延原理に従って動作するSAWセンサ素子(11)である、ことを特徴とする請求項13~15のいずれか一項に記載の監視装置。
【請求項17】
ちょうど1つの問い合わせユニットと、少なくとも2つ、特に2つ以上の、前記問い合わせユニットにより問い合わせ可能であり、その応答が個別に評価可能なセンサユニット(8)とを含む、請求項13~16のいずれか一項に記載の監視装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、動力機械または作業機械の回転要素、特に電気モータ、とりわけ同期モータのロータの温度などの状態パラメータを監視するための状態監視装置に関する。本発明はさらに、ケーシング部材と、ケーシング部材内に配置された各1つのステータ要素およびロータ要素と、ロータ要素の温度などの状態パラメータを監視すするための監視装置とを備える、動力機械または作業機械、特に電気モータに関する。
【背景技術】
【0002】
種々の適用において、特に動力機械または作業機械では、回転要素が固定の要素内に配置されている。このことは、発電機などの作業機械に対して、さらにモータまたはタービンなどの動力機械に対しても当てはまる。ここで、ロータがステータ内部に配置され、相応に電流が制御されてコイルに巻装された電気導体によって形成された交番磁界により回転軸を中心にする回転のために駆動される電気モータは特に重要である。この種の電気モータの特別の構造形式は、ロータに永久磁石が装着されている同期モータである。この種の同期モータは、特に電気車両、したがって特に電気自動車の分野で適用される。特にこの適用では、強いトルクを形成し、電気自動車の高い加速と走行速度を達成するために同期モータが高電力により駆動される。ここで問題なのは、公知のように、同期モータの大きな電力消費の際に発生する、その構成部材の、ここでは特に永久磁石が中に配置されたロータの構成部材の熱である。ここでは、ロータが臨界温度を上回ることを阻止することが重要であり、そうでなければ、永久磁石がその磁力を失い、またはそれどころか完全に消磁され、ひいては同期モータが修理不能な損傷を被る危険性があるからである。
【0003】
しかし非同期モータでも、ロータの温度監視が重要である。特にそこでは、ロータ内の短絡巻線の温度を知り、監視できることが望まれる。
【0004】
しかし一般的に、動力機械または作業機械のロータの温度の知識は別の理由からも重要であり、この温度を可及的に正確に知り、監視できることが望まれる。過度に高い温度は、ロータ要素の軸に追従する要素、特にベアリングを損傷することがある。例えば、ベアリング内の油脂は例えば約150℃から分解することがあり、このことはベアリング潤滑の消失につながり、ひいてはベアリング損傷の恐れを引き起こす。さらに、ロータが熱く、これに対してステータ要素がまだ格段に冷えている場合、ベアリング内でボールが過度に押し付けられることがあり、これは非常に大きな摩耗につながる。
【0005】
一般的に、温度上昇は縦方向膨張を引き起こし、このことは、別の要素の機能を損なうことがあり、例えば切削機械のスピンドルモータでは、加工精度が脅かされる。10Kの温度変化は、10ppm/Kの縦方向膨張の場合、軸長を100mmと仮定すれば10μmの縦方向膨張を引き起こす。この縦方向膨張を温度の正確な知識により知り、予測することは、種々の適用において、必要ないとしても非常に有利である。
【0006】
同期モータのロータの温度を監視する問題点も、従来技術ですでに取り組まれている。しかしながらここではロータ温度が直接測定されるのではなく、典型的には間接的に、シミュレーションまたは外挿に基づいて近似的に推定される。例えばこの種の方法および手順については、特許文献1、および特許文献2に記載されているが、この方法論がロータ温度の利用可能な決定を可能にしたとしても、ロータに存在する実際の温度を正確に決定することはできない。対応して、この方法論により動作する、同期モータに対する電力制御は、温度に対してある程度の安全マージンを常に計算に含めており、したがって同期モータは、典型的には、理論的に達成可能な最高出力以下に調節された最大出力により駆動される。これは、ロータ温度の間接的な決定方法のために適切な誤差を考慮し、上記の消磁過程が発生し得る臨界ロータ温度にいかなる状況でも到達しないこと、またはそれを超えないことを保証するためである。
【0007】
特許文献3は、SAW技術によってロータ温度を決定し、無線で読み出すことのできる、電気モータにおけるシステムを開示する。ここでの問い合わせは、FMCW原理(周波数変調連続波、Frequency Modulated Continuous Wave)に基づいており、センサユニットと問い合わせユニットとの間に十分に良好な信号接続が存在する幾何学的位置で問い合わせを実行するためには、対応してステータに対する相対的なロータの正確な位置検出が前提である。
【0008】
電気モータまたはタービンまたは発電機などの動力機械または作業機械のロータ要素の温度の他に、多くの場合、例えば加えられたトルクの値などの、他の状態パラメータの状態値を知ることも重要であり、また、これらの状態パラメータをその場で監視し、その状態値を直接的にロータ要素において測定できることも興味対象であり、それどころか重要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】欧州特許出願公開第3190697号明細書
【特許文献2】独国特許出願公開第102017207401号明細書
【特許文献3】欧州特許出願公開第2351992号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
この公知の従来技術から出発し、上記の問題点を背景にして、本発明の課題は、特に動力機械または作業機械における回転要素の特に温度などの状態パラメータの状態値を直接的測定によって決定する可能性、およびこれを可能にするセンサ系を、電気モータにおいても、例えばロータ要素の温度などの状態パラメータの状態値を決定するために設ける可能性を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この問題および課題に対して本発明は、一般的回転構成要素の、特に温度などの状態パラメータの監視、特に動力機械または作業機械の回転要素、とりわけ電気モータのロータの温度の監視を、測定による温度値の実際の決定の形態で可能にする解決策を提供することにより対処する。有利にはこの測定および検出は、環境条件に対して頑強であり、回転要素の回転数が高くても信頼性をもって可能であり、好適には問い合わせと回転要素の回転位置との正確な同期がなくても機能することが望ましい。
【0012】
そのために本発明の第1の態様により、請求項1に特定されるような、ケーシング部材、例えばモータケーシングと、ケーシング部材内に配置された各1つのステータ要素およびロータ要素と、状態パラメータ、特にロータ要素の温度を監視するための監視装置とを備える、特に電気モータなどの動力機械または作業機械が提供される。そのように構成された動力機械または作業機械の有利な発展形態は、従属請求項2から11に記載されている。さらなる態様では本発明により、例えば電気モータのロータなどの、特に動力機械または作業機械の回転要素、特にロータ要素の状態パラメータ、特に温度を監視するための、請求項13に特定されるような監視装置も提供される。このような監視装置の発展形態は、従属請求項14から17に特定されている。
【0013】
本発明によれば、ケーシング部材と、ケーシング部材内に配置された各1つのステータ要素およびロータ要素とを備える動力機械または作業機械は、ロータ要素の、温度または加えられるトルクのような状態パラメータを監視するための監視装置を有する。この監視装置は、センサユニットおよび問い合わせユニットを含む。センサユニットはロータ要素に配置されている。センサユニットは、表面波原理に基づく、状態パラメータの状態値を検出するための少なくとも1つのSAWセンサ素子と、結合素子と、SAWセンサ素子および結合素子をアナログ電磁信号の伝送のために接続する導体構造とを含む。ここでセンサユニットは、特に1つ以上のSAWセンサ素子を含むことができ、この場合、これら複数のSAWセンサ素子は特に1つの同じ結合素子に、対応の導体構造を介して接続することができる。問い合わせユニットは、問い合わせ信号を生成するための信号発生器を含む。この信号発生器とは結合構造が信号技術的接続されており、この結合構造は、ステータ要素に、またはケーシング部材のロータ要素に向いた部分に、すなわちロータ要素とステータ要素またはケーシング部材の部分との間に形成される空隙に沿って、ロータ要素の回転の際に結合素子により掃引される領域と相関する領域に配置されており、この相関は、結合構造と結合素子との結合が信号伝送のために可能であるように行われる。最終的に問い合わせユニットは、センサユニットにより受信された応答信号を評価するための評価回路を有する。ここで前述の結合構造の配置は、例えば対向することができるが、これは必須ではない。ここで好適には配置は、ロータ要素とステータ要素との間の可及的に大きな回転角が結合構造と結合素子との間の結合および信号伝送を可能にするように選択される。
【0014】
本発明の解決のさらなる態様では、例えば回転要素の、温度のような状態パラメータの状態値の直接的測定のために少なくとも1つのSAWセンサ素子が使用される。この形式のセンサは、一方では頑強であり、例えば多くの動力機械または作業機械、例えば電気モータ、タービンまたは高速回転発電機において達する高回転数(例えば電気モータにおいては20,000回転/分までの回転数)のような困難な条件下でも使用することもできる。さらに電気モータの内部だけでなく発電機においても、極端に大きな磁界、磁界勾配、並びに極端に急速な磁界の時間的変化が発生する。通常、典型的にはセンサにおいて使用されるこのような電子回路にとって、この境界条件はいずれにせよ非常に過酷であり、その使用が完全に除外されることがしばしばある一方で、SAWセンサ素子は、この極端な条件下でも使用することができ、監視すべき状態パラメータの状態値を確実に測定することができる。
【0015】
SAWセンサ素子は、すでに述べたように、基本的に任意の、そのようなセンサ素子により測定される状態パラメータの状態値を測定するように、例えば力、トルクを測定するように、または同様に温度を測定するように設計することができる。温度を測定することに関して、SAWセンサ素子は、SAW温度センサ素子とも称することができる。同様の称呼を、他の状態パラメータを監視するためのSAWセンサ素子に対して選択することができる。
【0016】
結合素子をSAWセンサ素子に接続する導体構造は、最も簡単な場合、結合素子とSAWセンサ素子との間の直接的電気接続とすることができ、例えば結合素子の端子がSAWセンサ素子の電気接点とハンダ付けされたハンダ個所とすることができる。しかし導体構造は、結合素子とSAWセンサ素子との間に配置された空間的な拡張要素とすることもできる。この場合、この導体構造の高周波特性は結合素子に整合しなければならず、これは、例えば典型的に使用され得る2.4GHzの周波数において高周波信号を送信し、SAWセンサ素子を問い合わせ、そこで表面波を励振あるいは入力結合し、結合素子からSAWセンサ素子に、およびそこから再び結合素子に伝送できるようにするためである。さらに導体構造は、SAWセンサ素子にも同調しなければならず、これは、そこで導体構造を介して運ばれた電磁信号を表面波に変換し、戻りの表面波をそこで再び高周波電磁信号の供給のために導体構造に導くことができるようにするためである。導体構造を巧妙に選択し設計すれば、ここでは場合により、結合素子、導体構造、およびSAWセンサ素子からなる接続システムであるセンサユニット全体の高周波特性の改善を獲得することですら可能である。
【0017】
SAWセンサ素子は格段に小型化して製造することもでき、それによりSAWセンサ素子を、ロータ要素に、例えば電気モータのロータに、タービンのタービンブレードに、または発電機の回転子に比較的問題なしに配置することができる。特にここでは、SAWセンサ素子をロータ要素の固体材料内に沈めて、例えばロータ要素の表面からその本体にドリルされた孔部の中に配置することも可能である。そのために例えば、そのようなロータ要素にいずれにせよ既存の孔部または他の開口部を製造側で、SAWセンサ素子のための収容部として使用することもできる。そのような沈められた収容部により、一方では例えば温度などの状態値の測定を、センシブルな領域でさらに目的どおりに、複数のSAWセンサ素子が使用される場合には複数の部分で行うことができ、他方では1つまたは複数のSAWセンサ素子がそのような孔部に保護されて配置され、例えば、ロータ要素の回転の際に発生し得る遠心力に対して特別に安全を確保する必要がない。動力機械または作業機械のロータ要素、例えば電気モータのロータは、典型的には電磁線を遮閉する金属材料から作製されているので、結合素子はロータ要素の表面領域に配置すべきである。SAWセンサ素子が孔部内に好適に沈められて配置されていれば、このときに孔部に進入する、結合素子と1つまたは複数のSAWセンサ素子との間の区間が、独立した構成部材として成形され、かつ単純な電気的接続のみにより形成されない導体構造によって橋絡され、場合によってはセンサユニットのコンポーネントが配置された支持体によって保護される。ここで1つまたは複数の導体構造は、前にすでに述べたように、結合素子により受信される、例えば2.4GHzの周波数帯域の範囲とすることのできる問い合わせ周波数の電磁信号を結合素子から1つまたは複数のSAWセンサ素子に導き、同様に1つまたは複数のSAWセンサ素子の信号応答を、この応答を結合構造に無線伝送するために、結合素子に戻り伝達するように設計および整合されている。
【0018】
センサユニットが孔部内に固定されている場合、このセンサユニットは、これがロータ要素の温度の監視に使用されるべき場合、1つ以上のSAWセンサ素子を有することができ、かつ孔部内で特に硬化可能なペースト状の材料に埋め込むことができ、この材料は、熱伝導率が高く、センサユニットを孔部内に固定する。このようにして、ロータ要素におけるセンサユニットの堅固な保持が、高回転数であってもその際に発生する力に抗して得られ、同時に温度の測定精度の向上も達成される。なぜなら、ロータ要素に加わる温度が、熱伝導率の高い材料に埋め込まれた1つまたは複数のSAWセンサ素子に非常に良好に伝達されるからである。ここで特にそのようなペースト状の充填材料または接着剤が使用可能であり、この材料は、一方ではセンサユニットを孔部内に、ロータ要素が高回転数でありその際に発生する遠心力があっても堅固に座すようにしっかり保持することを可能にし、他方では十分に大きな柔軟性を有するので、加熱の際にロータ要素の材料と、センサユニットの材料、特に1つまたは複数のSAWセンサ素子の結晶材料の熱膨張係数が異なることによる熱的緊張を補償し、特に1つまたは複数のSAWセンサ素子が何らかの損傷を受けることを回避する。
【0019】
ここで用語「高い熱伝導率」は、その材料がロータ要素の材料から1つまたは複数のSAW温度センサ素子への熱伝達を、そのような材料がない状態と比較して大幅に改善することを意味する。そのためにここで好適に使用される材料は、空気(その伝導率は約0.024W/mKである)よりも格段に高い熱伝導率を有し、好適には使用温度の重要な温度範囲において1W/mK以上の熱伝導率を有する。
【0020】
問い合わせユニットの結合構造も小さな構造サイズで実現できるから、この結合構造は、比較的狭い空間内で、例えば20mm以下、特に15mm以下、場合によってはさらに例えば7mm以下、またはそれどころか僅か2mmまでの寸法を有することのできる狭く寸法設定された空隙の領域内で、結合素子がロータ要素の回転の際に掃引する領域に対向する位置に配置することができ、その際に問い合わせユニットとセンサユニットとの通信を、結合構造と結合素子との間の無線信号伝送を介して、電気モータの構造および機能を損なうことなく確立することができる。
【0021】
したがって、前に記述した技術、および例えば電気モータのような動力機械または作業機械の特別の構造と前述のセンサ系とによって、例えばロータ要素の温度のような状態パラメータの状態値を直接的に測定することができ、その結果、計算およびシミュレーションによる近似的な決定に頼る必要がない。対応して、例えば温度測定の際に検出された温度の誤差範囲は格段に小さく、したがって、例えばそのように装備された電気モータを限界領域においてさらに高い出力で駆動することができ、臨界温度に達した場合の出力の低減を、この温度が実際に測定される際に初めて行えばよく、シミュレーションや他の検出パラメータからの計算的導出による間接的な温度推定に起因して安全マージンを見込んで前もって行う必要がない。ここで本発明者は、本発明に従って構成された電気モータは、温度を決定するためにシミュレーションまたは計算による間接的決定の間接的な方法に頼るモデルの電力上限を10%まで上回る範囲で運転可能であることを前提とする。
【0022】
センサユニットのSAWセンサ素子は、基本的に、共振器の原理または伝播時間遅延原理に従って動作するSAWセンサ素子(いわゆる遅延線SAW)の原理である2つの既知の原理のいずれかに基づくことができる。しかしながら、本発明者は、2番目に述べた構造および機能のSAWセンサ素子が本発明の実施に特によく適していることを発見した。
【0023】
特に有利には、問い合わせユニットは、S-FSCW原理(Switched-Frequency Stepped Continuous Wave、スイッチド周波数ステップ連続波)に従って動作するものであってよい。この原理は、例えば、非特許文献1(Sensors 2019, 19, 3077 に掲載された著者Gudrun Brucknerと Jo-chen Bardongによる記事「複数のSAW温度センサのワイヤレス読み取り」)で説明されており、この記事に参照された非特許文献2(「電気通信における表面音響波デバイス」(Hashimato,K.著、Springer Ferlag、ベルリン、ドイツ、2000年)でもさらに詳しく説明されている。この原理による問い合わせは、前にすでに述べたFMCWなどの問い合わせ方法と比較して時間が掛かる。しかしながら本発明者は、本発明による適用では、問い合わされた応答信号の十分な信号品質のために、従来技術で必要とされる、同期した問い合わせを行うための、固定されたセンサ素子ないし結合素子によるロータ要素の正確な位置決定が必要ないことを発見した。むしろ、問い合わせは、はるかに広い角度範囲にわたって、また反射信号を使用できる場合には、理想的には360°にわたって、すなわちロータ要素の任意の回転位置において行うことができる。発明者はまた、好ましくない信号対雑音比であっても使用可能な信号応答が可能であるが、そのような信号対雑音比ではFMCW原理に基づく問い合わせによるセンサ素子の読み出しがもはや不可能であることも発見した。これは、ロータ要素とステータ要素との間の相対位置のより広い角度範囲にわたって、ここで好ましく使用されるS-FSCW原理による問い合わせが可能であるという事実にも寄与する。さらに、段階的な問い合わせであるので、例えば金属の周囲やそこで発生する信号反射によって引き起こされる、システム内で発生する可能性のあるエコーをS-FSCWにより抑制することができ、このことは、照射とそれぞれの受信との間の待ち時間を相応に決定することによって行われ、この時間ではエコーが少なくとも大幅に沈静する。
【0024】
S-FSCW原理を使用すると、例えば段階的な問い合わせでのクリティカルな周波数を単純に無視し、これらの周波数では問い合わせパルスを送信しないことにより、場合による無線障害信号に対応することもできる。個別に選択された周波数を目的通りに繰り返し送信/受信することも、この原理では可能である。好ましく選択された原理のさらなる利点は、従来のWLAN技術で使用されるような比較的安価な標準構成部材により問い合わせ電子機器を構築できることである。このことは、問い合わせユニットでのダウンストリーム信号処理にも当てはまる。
【0025】
ここで問い合わせユニットは、欧州特許出願公開第3171291号明細書に記載のように構成し、そこに開示された原理に従って動作することができる。
【0026】
電気モータにおける本発明の実施に関して、基本的に、非同期モータでも同期モータでも、電気モータの種々の可能な形態でロータ温度の決定が重要であり得るが、ロータに永久磁石が配置された同期モータではこれが特に重要である。なぜならここでは、冒頭ですでに述べたように過度に高いロータ温度は、ロータにある永久磁石の部分的または完全な消磁を引き起こし、これによりモータの非可逆的な損傷および機能不全を引き起こし得るからである。まさに、実際に電気自動車の分野で使用されるそのような同期モータでは、本発明の構成が特に有利であり、本発明により電気モータの正確な出力制御が可能であり、この電気モータをさらに最大出力の限界領域にまで駆動することができ、それにより同じ構造形式の同期モータからより大きな出力を獲得することができ、あるいは所定の出力に達するために、典型的には安価な、単純に構成された同期モータを使用することができる。永久磁石の消磁が可及的に高い温度で始まるようにするため、電気モータに取り付けられる永久磁石には非常に希少で非常に高価なレアアースを含む合金が使用される。本発明が可能にするような、実際のロータ温度の正確な知識によって、電気モータに関して、同じ永久磁石で出力をさらに高めることができ、または別の合金から形成され、したがって安価な永久磁石により同じ出力を達成することができる。
【0027】
温度の監視の他に、同期モータにおいて別の状態パラメータの監視も非常に有利であり得る。
【0028】
センサユニットの配置に関して、結合素子がロータの軸方向端部にある表面に配置されるようなやり方でセンサユニットが支承されていると特に有利である。問い合わせユニットの結合構造は、この場合は通常、端面側のケーシング要素に、例えば電気モータなどの動力機械または作業機械のケーシングカバーに配置される。本発明者が認識したように、そのような配置は、問い合わせユニットの結合構造とセンサユニットの結合素子との間の無線通信接続をも、ロータの広い回転範囲、多くの場合270°以上の範囲にわたって、特に、これがS-FSCW原理の選択との組み合わせで問い合わせユニットのために接続される場合に可能にする。問い合わせが可能なこの広い回転範囲は有利であり、なぜなら、問い合わせ信号の送信から応答信号の受信までを、結合構造と結合素子との間に無線接続が連続して存在している時間帯内に行うべきであり、理想的には行わなければならないからである。特に回転数が高いと、このような時間帯は、ロータの広い回転角度にわたって結合構造と結合素子との間の接続が保証される場合にのみ十分に大きくなる。上で説明したような結合素子および結合構造の配置では、これらがロータ要素の回転軸に対して実質的に同じ半径方向距離に配置されると有利となり得る。多くの場合、このようにして結合構造と結合素子との間の理想的な結合をさらに支援することができる。関与する要素がステータ要素およびロータ要素に配置されている環境の構造および幾何形状に依存して、また場合により問い合わせユニットにより問い合わせされる複数のセンサが設けられていかどうかにも依存して、ロータ軸に対して異なる半径方向距離での別の配置も有利であり得る。これは特にこの配置が、良好な信号応答により可能になる問い合わせを、ロータ要素の広い回転角範囲にわたって特に良好にカバーできるようにする場合はなおさらである。
【0029】
電気モータなどの本発明の動力機械または作業機械では、空隙が前にすでに述べたように20mm以下の、特に15mm以下の寸法の小さな高さ広がりを有することができ、1~2mmの非常に小さな間隔に至るまで小さくすることができるから、問い合わせユニット、特にその結合構造およびセンサユニットの結合素子を、問い合わせユニットとセンサユニットとの間で、主に時間的に変化する磁界によって決定される近距離通信が行われるように設計し整合することができる。ここで空隙により形成される、結合構造と結合素子との間の間隔は、通常、典型的な無線通信の完全な電磁波が形成されるほどには大きくなく、むしろ有利には磁界(Bフィールド)により決定される近接場結合が観察され、これを利用しなければならない程度の大きさである。その点で、ここの結合素子と結合構造は、好適には従来の意味でのアンテナとしても構成されておらず、むしろ前に述べたような近接場伝送のために最適化されている。これにより、特に、構成部材としての結合要素および結合構造も小さな構造サイズで小型の構造に形成することができ、このことはそれらを、狭く寸法設定された空隙に配置することを初めて可能にする。
【0030】
そして高い回転数に到達すべき場合に、本発明の動力機械または作業機械において問い合わせユニットと回転要素の回転との同期が、問い合わせユニットがセンサユニットの問い合わせを、結合要素が結合構造と結合できる領域に存在する間に行うようにして取られる。ここで、このような同期はそれ自体公知のやり方で行うことができ、とりわけ典型的に公知の動力機械または作業機械、特に電気モータ、したがって特に同期モータでは、ロータ要素の角度位置がいずれにせよ監視されており、または角度位置を今現在呼び出される信号および情報から求めることができる。
【0031】
本発明の枠内で好適に使用される、S-FSCW原理による問い合わせ方法は、異なる周波数の例えば600の多数の周波数ポイントにおいてデータを検出する。そして、周波数空間と時空間との間で実行すべき変換、例えばフーリエ変換の使用可能な結果を獲得するために、検出された周波数ポイントのすべてを必要とするわけではない。特定の周波数ポイントでの測定を特定の、例えば位置センサにより、あるいは角度調節センサにより既知ないし検出された角度位置に空間的に割り当てることを介して、そして複数の回転において同じ角度位置での同じ周波数において反復測定することにより、この周波数ポイントに対する信号応答を平均化し、この周波数ポイントの情報量を増大することができる。これに対して、前に説明した測定の同期化がなければ、異なる角度位置において1つの周波数ポイントで反復測定を行う場合、それぞれの周波数ポイントに対して良好な位置と不利な位置が存在することとなり、そのため、そのようなポイントの情報量が少ないままとなる。これに対して同期化と平均化を行えば、情報量が大きい(問い合わせユニットにより得られる強力な信号)周波数ポイント、および信号の少ないそのような周波数ポイントが獲得される。そして評価方法は、好適には強力な信号応答を備える周波数ポイントの結果を、例えば大きな重み付けにより考慮することができ、そのようにして時間領域への変換が格段に改善され、この時間領域がさらに評価される。これに対する前提は、さらなる角度範囲にわたって、十分な結合、すなわち強力な信号応答、特に良好な信号対雑音比を備える多数の位置が存在することである。この方法により、そのような位置が少数しかない測定の場合よりも、特に良好で、それどころか場合により上記の解決策で得られる結合よりもさらに優れた、信号応答の強力な結合を伴うより良いデータ状況が得られる。
【0032】
したがって、ステータ要素に対する相対的なロータ要素の回転位置の検出との組み合わせによる本発明の方法によって、例えば600の周波数ポイントの測定である、多数回実行すべき測定ループ、いわゆる周波数スイープ全体のサンプリング周波数またはこの周波数の整数倍を、ロータ要素の回転周波数またはその整数倍と同期させることができ、または反復して実行された測定シーケンスの各個々の周波数ポイントを特定のロータ角度位置と同期させることができる。
【0033】
基本的に、1つの問い合わせユニットにより、1つの共通の結合構造にわたる単一のセンサユニットにある複数のセンサユニット、または複数のSAWセンサ素子をアドレシングし問い合わせることが可能である。その点で有利には、特に、本発明の動力機械または作業機械が少なくとも2つ、場合により3つ以上のセンサユニットを有し、これらセンサユニットが前記の原理に従って構成され、動作し、それらの結合素子が問い合わせユニットの結合構造と結合されてそれぞれ配置されていることを企図することができる。この場合、複数のセンサユニットの問い合わせは、異なる通信窓を介して行うことができる。異なる通信窓を介する問い合わせは、センサユニットが、例えばSAWセンサ素子上の反射器の異なる配置を介して、したがってSAWセンサ素子上での異なる信号伝搬時間を介する異なる時間ずれを伴って「応答する」ことを特に意味し、その結果、時間スペクトル内の応答信号を区別し、割り当てることができる。ここで例えば、ロータ要素の異なる個所にSAWセンサ素子を位置決めし、これらを対応の導体構造を介して所属の結合素子と接続して、センサユニットを形成することが可能である。例えば、異なる角度位置でロータ要素の同じ半径上に、異なるセンサユニットの結合素子を配置することができ、これらセンサユニットは異なる軸方向長さにわたって延び、ロータ要素の深さまで突出する。したがって異なる軸方向位置に異なるセンサユニットのSAWセンサ素子が配置される。このようにして、例えばロータ要素内の温度勾配または別の状態パラメータの状態値分布を決定することができ、例えば温度または別の状態パラメータを異なる敏感なポイントで決定などすることができる。SAWセンサ素子を備えるセンサユニットをステータ要素またはケーシング部材の領域に配置することも可能であり、それらの結合素子も、問い合わせユニットの結合構造と結合できるように配置することができる。このようにして、1つの同じ問い合わせユニットにより、例えばステータ温度などのステータの1つまたは複数の状態パラメータ、または例えば電気モータなどの動力機械または作業機械のさらなる要素の、温度などの状態パラメータを検出し、監視することができ、これにより、動作時に機械、例えば電気モータのより良い分析を獲得し、場合によりさらなるパラメータに基づく制御オプションを創出することができる。
【0034】
さらなる態様において本発明は、すでに述べたように、例えば電気モータ、特に同期モータなどの動力機械または作業機械の回転要素、特にロータ要素の温度などの状態パラメータを監視するための監視装置を提供する。この監視装置は一方でセンサユニットを、他方で問い合わせユニットを含む。センサユニットは、前にすでに述べたように、表面波原理に基づく、状態パラメータの状態値を検出するための少なくとも1つのSAWセンサ素子と、結合素子と、SAWセンサ素子および結合素子をアナログ電磁信号の伝送のために接続する導体構造とを含むユニットである。このセンサユニットは、別個の小型部品として構成されており、それに応じて使用することができ、特に電気モータのロータ、またはタービンロータなどの動力機械または作業機械の別のロータ要素などの回転要素に配置することができ、特にそこに取り付けられた孔部に沈められる。そのためにセンサユニットは、軸方向に長く延びるように構成されており、第1の長手側に結合素子を、対向する第2の長手側にSAWセンサ素子を有し、それらの間に、結合素子およびSAWセンサ素子を長手方向に接続する導体構造を有する。本発明の監視装置は、さらに問い合わせユニットを含み、問い合わせユニットは、問い合わせ信号を生成するための信号発生器、信号発生器に接続可能な結合構造、並びにセンサユニットにより受信された応答信号を評価するための評価回路を有する。このような監視装置は、すでに述べたように、特に電気モータなどの動力機械または作業機械の回転要素の状態パラメータの監視、例えば温度監視を行うのに特によく適し、そのために、前に記述したように電気モータなどの機械に組み込まれ、あるいはそこに取り付けられ、または配置される。センサユニットが1つ以上のSAWセンサ素子を含む場合、これらは、例えばSAW結晶上での共振器ないし反射器の形態および位置付けによって構想され、導体構造を介して、信号応答に伝搬時間差が生じるように結合素子と接続され、その結果、SAWセンサ素子の応答信号を別個に検出することができる。
【0035】
特に有利には、問い合わせユニットはS-FSCW原理に従って、この原理の適用について上ですでに説明した利点を伴って動作することができる。
【0036】
本発明の監視装置のセンサユニットでは、結合素子、導体構造および少なくとも1つのSAWセンサ素子を、とりわけ1つの共通の基板上に配置することができ、あるいはこれらの素子を1つの共通の基板上に形成することができる。このような基板は、とりわけ非強磁性の材料、例えばセラミック、プラスチック等とすることができる。このような共通の基板は、センサユニットに固有強度を付与し、センサユニットは比較的簡単に、例えば電気モータの回転要素、特にロータに取り付けられた孔部に沈められ、そこに組み込まれ固定される。
【0037】
基本的に共振器原理に従って動作するSAWセンサ素子も同様に可能であるが、前にすでに述べたように、伝搬時間遅延原理に従って動作するSAWセンサ素子(遅延線)が好ましい。
【0038】
監視装置は、有利にはちょうど1つの問い合わせユニットと、少なくとも2つ、特に2つ以上の、問い合わせユニットにより問い合わせ可能であり、その応答が個別に評価可能なセンサユニットとを含むことができる。この場合、これらセンサユニットはすべて、SAWセンサ素子、結合素子、およびこれら2つの素子を接続する導体構造を有する。センサユニットはすべて、温度などの同じ状態パラメータの状態値を測定するように構成することができる。しかしセンサユニットは、温度およびトルクなどの異なる状態パラメータの状態値を測定するように設計することもでき、したがって評価ユニットも異なる状態パラメータを監視装置により監視することができる。
【0039】
本発明のさらなる利点および特徴は、添付図面に基づく可能な実施形態の以下の説明から得られる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【
図1】本発明の監視装置の部品を備える分解図に電気モータの主要要素を概略的に示す図である。
【
図2】別の角度から見た
図1と同様の分解図である。
【
図3】
図1の電気モータのロータの端面側にある孔部内におけるセンサユニットの配置を示す拡大詳細図および分解図である。
【
図4】
図3と同様の図であるが、センサユニットが沈んで配置されている。
【
図5】孔部内のセンサユニットの配置を示す詳細断面図である。
【
図6】センサユニットの可能な第1の実施形態の分解図である。
【
図7】センサユニットの可能な第2の実施形態の分解図である。
【発明を実施するための形態】
【0041】
図面には本発明の可能な実施形態が、電気モータに実現された例で示されており、以下に詳細に説明する。ここで、本発明は電気モータにおける適用に限定されるものではなく、状態監視が適用される、回転要素を備える他のシステムにおいても、特にタービン、発電機等の他の動力機械または作業機械においても使用することができることを再度強調しておく。
【0042】
まず、
図1および
図2は、それぞれの分解図に、本発明により改善すべき作業機械の例としての電気モータの主要要素を示す。詳細に図示しないステータを格納するケーシングポット2、ケーシングポット2を閉鎖し、かつこれと共にモータケーシングを形成するケーシングカバー3、およびモータケーシング内に格納されたロータ4が示されている。ここに図示した電気モータ1は、特に同期モータであり、そのロータ4はここに詳細に図示しない永久磁石を含む。これらはロータ本体5内に配置されており、あるいは埋め込まれている。ロータ本体5は、端面側6からロータ本体に軸方向に案内された孔部7を有し、それらの開口部は、電気モータ1が組み立てられた状態でケーシングカバー3の方向を指す。センサユニット8が孔部7の1つに(部分的に)沈められて配置されている。ケーシングカバー3には、さらなる要素を備える詳細に図示されていない問い合わせユニットの結合構造9が配置されて固定されている。ロータ本体5の孔部7の1つにおけるセンサユニット8の配置が、
図3~5に再度詳細に図示されている。まず
図5において、孔部7内にその主要部分が延び沈められて配置されているセンサユニット8のさらなる構造が理解される。センサユニット8は、実質的に長手に延びるよう形成されており、第1の長手端部に配置された結合素子10、第2の長手端部に配置されたSAWセンサ素子11、およびこれら2つの素子、すなわち結合素子9とSAWセンサ素子11とを接続する導体構造12を備え、SAWセンサ素子は、例えばロータの温度監視のために使用されるSAW温度センサ素子とすることができる。導体構造12およびSAWセンサ素子11は、孔部7内に沈められて配置されており、結合素子10は、孔部7の外に、ここでは端面側6の表面上にある。ここで、ロータ4の回転軸13を基準にした結合素子10の半径方向位置は、同じ軸13を基準に見た問い合わせユニットの結合構造9の半径方向位置に対応する。組み立てられた状態で、電気モータ1のケーシングカバー3と、そこに配置された結合構造9およびロータ本体5の端面側6並びにそこに配置された、センサユニット8の結合素子10との間には狭い空隙が形成され、これは例えば10mmにすることができる。この空隙を跨いで結合構造9と結合素子10との間に、アナログ信号、特に高周波信号を伝送するための無線通信接続、特に近接場結合を形成することができ、したがって、結合構造9と接続された信号発生器を備える問い合わせ電子機器から、例えば2.4GHzの周波数の問い合わせ信号を結合素子10に伝送し、そこから導体構造12を介してSAWセンサ素子まで導くことができる。SAWセンサ素子11は、特に、いわゆる遅延線原理に従って動作し、状態パラメータの状態値、例えばSAWセンサ素子が曝されるロータ温度により決定される遅延をもって信号を導体構造12に沿って結合素子10に再び戻り伝送するような素子とすることができ、信号はそこから結合構造9への結合を介して問い合わせユニットに戻される。そして、信号は、結合構造9から問い合わせユニットの評価回路に達し、評価回路は設定された伝搬時間遅延からSAWセンサ素子11の場所に存在する状態パラメータの状態値、例えばそこに存在する温度を検出する。問い合わせユニットは、特に、S-FSCW原理に従って動作するユニットとすることができる。これによって、並びにセンサユニット8、特にその結合素子10の図示の位置、および結合構造9とここに実現された近接場結合とによって、結合構造9と結合素子10との間の結合を、ロータ4のさらなる回転範囲にわたって得ることが達成される。これは特に270°以上とすることができ、その結果、結合素子10が結合構造9との結合領域に存在する間に、問い合わせユニットから特にその結合構造9を介するセンサユニットへの信号問い合わせを開始し、応答信号を受信することができる。
【0043】
したがって、この配置により、状態パラメータの状態値、例えばロータ4の温度を実際の測定によって決定することができ、この値を続いて、電気モータ1の作動制御に、特に出力制御あるいは出力制限に使用することができる。温度をこのように正確に決定できる場合には、電気モータ1をさらに限界領域に入り込んで最大許容温度まで作動させることができ、これまで通常的に行われてきたロータ温度の推定やシミュレーションから生じる不正確さに対して、そのような大きなマージンを勘案する必要はない。
【0044】
図6と
図7には、どのようにセンサユニット8を形成できるかという2つの可能な変形例が示されている。
図6の変形例には基板要素14が示されており、この基板要素には一方でSAWセンサ素子11が、他方で結合素子10が固定されており、この結合素子を介してここに詳細に図示しない導体構造が案内されている。基板要素14はその点で電磁的信号接続を持っているが、しかし個々の素子に対して、機械的に安定したブリッジおよびホルダも構成する。ここで基板要素14は、ロータに何らかの作用を及ぼしたり、磁界形成に影響したりしないようにするため、特に非強磁性材料である。
【0045】
図7には択一的な構造が示されており、ここでは導体構造12が同芯導体ないし中空導体として構成されており、導電機能の他に機械的安定性および接続機能も引き受ける。SAWセンサ素子11および結合素子10は、それぞれ導体構造12の長手端部に接続されている。
【0046】
図に示した実施例とは異なり、ロータ4内に1つのセンサユニット8しか配置できないのではなく、同様の構造のセンサユニット8を2つ以上ロータ4内に、特に、ロータ4、正確にはロータ本体5の異なる軸方向深さでSAWセンサ素子11の位置に配置することができ、このようにして異なる位置で状態パラメータの状態値の測定、例えば温度測定を行うことができることをここに述べておく。これら複数のセンサユニットは全体として、1つの同じ問い合わせユニットにより、特に1つの同じ結合構造9を介して、特に異なる通信チャネルで問い合わせることができる。定置の要素、すなわちステータおよび/またはケーシングのうちの1つに、またはステータ巻線にも、対応のSAWセンサ素子11を配置することも可能であり、所属のセンサユニット8の結合素子10は、これが問い合わせユニットの結合構造9と結合され、対応して問い合わせユニットにより問い合わされ、読み出すことができるように配置される。
【0047】
ここで、問い合わせユニットの結合構造9は、必ずしも電気モータ1のケーシングカバー内に配置しなければならないわけではないことを述べておく。むしろ結合構造は、例えば、電気車両の駆動のために使用される電気モータのためにトランスミッションケーシングが設けられており、電気モータ1がトランスミッションを有する構造ユニット内に形成されている場合には、トランスミッションケーシング内に配置することもできる。
【符号の説明】
【0048】
1 電気モータ
2 ケーシングポット
3 ケーシングカバー
4 ロータ
5 ロータ本体
6 端面側
7 孔部
8 センサユニット
9 結合構造
10 結合素子
11 SAWセンサ素子
12 導体構造
13 ロータ軸
14 基板要素
【国際調査報告】