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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-12-12
(54)【発明の名称】肥厚アリューロンを有する穀物粒
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/113 20100101AFI20231205BHJP
   A01H 5/10 20180101ALI20231205BHJP
   C12N 15/29 20060101ALI20231205BHJP
   A01H 6/46 20180101ALI20231205BHJP
   C07K 14/415 20060101ALI20231205BHJP
   C12N 15/82 20060101ALI20231205BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20231205BHJP
   C12N 5/04 20060101ALI20231205BHJP
   C12Q 1/6888 20180101ALI20231205BHJP
   A23L 7/10 20160101ALI20231205BHJP
   A21D 13/06 20170101ALI20231205BHJP
   A23L 7/135 20160101ALI20231205BHJP
   A23L 2/38 20210101ALI20231205BHJP
   C12G 3/021 20190101ALI20231205BHJP
   A23L 7/109 20160101ALI20231205BHJP
   A23L 23/00 20160101ALI20231205BHJP
   A23L 2/52 20060101ALI20231205BHJP
【FI】
C12N15/113 Z
A01H5/10 ZNA
C12N15/29
A01H6/46
C07K14/415
C12N15/82 Z
C12N5/10
C12N5/04
C12Q1/6888 Z
A23L7/10 Z
A21D13/06
A23L7/135
A23L2/38 J
C12G3/021
A23L7/109 A
A23L23/00
A23L2/00 F
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023533403
(86)(22)【出願日】2021-11-30
(85)【翻訳文提出日】2023-07-26
(86)【国際出願番号】 AU2021051425
(87)【国際公開番号】W WO2022115902
(87)【国際公開日】2022-06-09
(31)【優先権主張番号】2020904452
(32)【優先日】2020-12-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】AU
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TRITON
(71)【出願人】
【識別番号】317002869
【氏名又は名称】コモンウェルス サイエンティフィック アンド インダストリアル リサーチ オーガナイゼーション
(71)【出願人】
【識別番号】518174891
【氏名又は名称】インスティテュート オブ ボタニー,チャイニーズ アカデミー オブ サイエンシズ
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【弁理士】
【氏名又は名称】林 一好
(74)【代理人】
【識別番号】100165157
【弁理士】
【氏名又は名称】芝 哲央
(74)【代理人】
【識別番号】100205659
【弁理士】
【氏名又は名称】齋藤 拓也
(74)【代理人】
【識別番号】100126000
【弁理士】
【氏名又は名称】岩池 満
(74)【代理人】
【識別番号】100185269
【弁理士】
【氏名又は名称】小菅 一弘
(72)【発明者】
【氏名】リウ チュン-ミン
(72)【発明者】
【氏名】リー ドン-チー
(72)【発明者】
【氏名】ウー シャオ-バー
(72)【発明者】
【氏名】ヤオ シュエ-フェン
(72)【発明者】
【氏名】リウ ジン-シン
(72)【発明者】
【氏名】ユー ロナルド チュン-ワイ
(72)【発明者】
【氏名】ホウィット クリスピン アレクサンダー
(72)【発明者】
【氏名】ラーキン フィリップ ジョン
【テーマコード(参考)】
2B030
4B023
4B025
4B032
4B036
4B046
4B063
4B065
4B115
4B117
4H045
【Fターム(参考)】
2B030AA02
2B030AB02
2B030AD08
2B030CA14
2B030CB02
4B023LC09
4B023LE19
4B023LE30
4B023LP20
4B025LB02
4B025LG01
4B025LP20
4B032DB01
4B032DB05
4B032DB13
4B032DG20
4B036LC06
4B036LF03
4B036LG01
4B036LH22
4B046LA01
4B046LG26
4B063QA01
4B063QA18
4B063QQ04
4B063QQ42
4B063QR55
4B065AA88X
4B065AA88Y
4B065AB01
4B065AC14
4B065BA02
4B065CA24
4B065CA41
4B115AG02
4B117LC04
4B117LG12
4B117LG13
4B117LG14
4B117LG16
4H045AA10
4H045BA10
4H045CA31
4H045EA01
4H045EA05
4H045FA74
(57)【要約】
本発明は、アリューロンと、胚と、デンプン性胚乳と、低減されたレベル及び/又は活性のミトコンドリア一本鎖DNA結合(mtSSB)ポリペプチド、RECA3ポリペプチド、又はTWINKLEポリペプチドと、を含む、穀物粒に関する。本発明の穀粒又はそれからのアリューロンは、改善された栄養特性を有し、したがって、ヒト及び動物飼料製品に特に有用である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アリューロンと、胚と、デンプン性胚乳と、対応する野生型穀物粒に対して低減されたレベル及び/又は活性の少なくとも1つのミトコンドリアポリペプチドと、を含む、穀物粒であって、レベル及び/又は活性が低減した前記ミトコンドリアポリペプチドが、ミトコンドリア一本鎖DNA結合(mtSSB)ポリペプチド、RECA3ポリペプチド、及びTWINKLEポリペプチドのうちの少なくとも1つである、穀物粒。
【請求項2】
前記穀粒が、遺伝的変動を含み、前記遺伝的変動が、前記対応する野生型穀物粒に対して、前記穀粒内の前記少なくとも1つのミトコンドリアポリペプチドのレベル及び/又は活性を低減する、請求項1に記載の穀粒。
【請求項3】
前記遺伝的変動が、
(i)内在性遺伝子内の変異であって、前記内在性遺伝子が、前記ミトコンドリアポリペプチドをコードし、それによって、前記変異が、前記低減されたレベル及び/若しくは活性のミトコンドリアポリペプチドをもたらす、変異、又は
(ii)サイレンシングRNA分子をコードする外来性ポリヌクレオチドであって、前記サイレンシングRNA分子及び/若しくは前記サイレンシングRNA分子から産生されるプロセシングされたRNA分子が、前記内在性遺伝子の発現を低減し、好ましくは、前記外来性ポリヌクレオチドが、前記サイレンシングRNA分子をコードするDNA領域を含み、前記サイレンシングRNA分子が、穀類植物の発達中の穀粒内で発現されるプロモーターに動作可能に連結されており、前記プロモーターが、好ましくは、少なくとも受粉時と受粉後30日目との間の時点で発現される、外来性ポリヌクレオチドを含む、請求項2に記載の穀粒。
【請求項4】
前記遺伝的変動が、
(a)前記ミトコンドリアポリペプチドをコードする内在性遺伝子のRNA転写物の、改変されたスプライシング、好ましくは、低減されたスプライシングをもたらす、スプライス部位変異であって、前記スプライス部位変異が、好ましくは、スプライス部位における単一ヌクレオチド置換であり、より好ましくは、配列番号4のヌクレオチド番号2126に対応する位置におけるアデニンヌクレオチドである、スプライス部位変異、
(b)前記ミトコンドリアポリペプチドをコードする前記内在性遺伝子内の欠失若しくは挿入、好ましくは、前駆穀類植物細胞の変異誘発によって導入された欠失、
(c)前記ミトコンドリアポリペプチドをコードする内在性遺伝子のタンパク質コード領域内の中途翻訳終止コドン、
(d)内在性遺伝子内の変異であって、前記内在性遺伝子が、前記ミトコンドリアポリペプチドをコードし、これにより、前記内在性遺伝子が、野生型ポリペプチドに対して低減された活性を有するポリペプチドをコードし、好ましくは、前記変異が、前記内在性遺伝子内のヌクレオチド置換であり、それによって、前記変異を含む前記内在性遺伝子が、配列番号3に対してアミノ酸置換を有するポリペプチドをコードする、変異、又は
(e)内在性遺伝子内の変異であって、前記内在性遺伝子が、前記ミトコンドリアポリペプチドをコードし、これにより、前記変異を有する前記遺伝子が発現されたときに、前記遺伝子が、対応する野生型遺伝子に対して低減されたレベルの前記ポリペプチドを産生する、変異を含む、請求項2又は3に記載の穀粒。
【請求項5】
前記遺伝的変動が、導入された遺伝的変動である、請求項2~4のいずれか一項に記載の穀粒。
【請求項6】
前記遺伝的変動についてホモ接合性である、請求項2~5のいずれか一項以上に記載の穀粒。
【請求項7】
肥厚アリューロンを有する、請求項1~6のいずれか一項に記載の穀粒。
【請求項8】
肥厚アリューロンを、受粉後20日目に有する、請求項7に記載の穀粒。
【請求項9】
前記肥厚アリューロンが、少なくとも2つ、少なくとも3つ、少なくとも4つ、若しくは少なくとも5つの細胞層、約3つ、約4つ、約5つ、若しくは約6つの細胞層、又は2つ~8つ、2つ~7つ、2つ~6つ、2つ~5つ、若しくは3つ~5つの細胞層、又は2~8、2~7、若しくは2~6の細胞層数を含む、請求項7又は8に記載の穀粒。
【請求項10】
(a)前記穀粒が、対応する野生型穀物粒と比較して、各々重量基準で、以下:
i)より高い脂肪含有量、
ii)より高い灰含有量、
iii)より高い繊維含有量、
iv)より低いデンプン含有量、
v)より高いミネラル含有量であって、好ましくは、前記ミネラル含有量が、カルシウム、鉄、亜鉛、カリウム、マグネシウム、リン、及び硫黄のうちの1つ以上又は全ての含有量である、より高いミネラル含有量、
vi)より高い抗酸化物質含有量、
vii)より高いフィテート含有量、
viii)ビタミンB3、B6、及びB9のうちの1つ以上又は全てのより高い含有量、
ix)より高いスクロース含有量、
x)より高い中性非デンプン多糖含有量、並びに
xi)より高い単糖含有量のうちの1つ以上又は全てを含むこと、
(b)前記穀粒が、対応する野生型穀物粒と比較して、より高い程度の白亜性を含むこと、
(c)前記穀粒が、対応する野生型穀物粒と比較して、より高いアリューロン細胞数を含むこと、
(d)前記穀粒が、全穀粒又は胴割れ穀粒であること、
(e)前記穀粒が、対応する野生型穀物粒の発芽率に対して、約40~約100%である発芽率を有すること、
(f)前記穀粒が、対応する野生型穀物粒と比較して、発芽中に増加したα-アミラーゼ活性を有すること、
(g)前記穀粒が、対応する野生型穀物粒と比較して、不規則な形状のデンプン顆粒のより緩い充填を有すること、並びに
(h)前記穀粒が、対応する野生型穀物粒と比較して、ほぼ同じ長さ、幅、厚さ、タンパク質レベル、及び穎花形態のうちの1つ以上又は全てを有することのうちの1つ以上を更に特徴とする、請求項1~9のいずれか一項以上に記載の穀粒。
【請求項11】
もはや発芽することができないように加工されており、好ましくは、熱処理によって加工されており、より好ましくは、調理されている、請求項1~10のいずれか一項以上に記載の穀粒。
【請求項12】
前記ポリペプチドが、発達中の穀粒の発達中の胚乳、種皮、アリューロン、及び胚のうちの1つ以上又は全てにおいて発現される、請求項1~11のいずれか一項に記載の穀粒。
【請求項13】
前記穀粒の外層が着色されている、請求項1~12のいずれか一項に記載の穀粒。
【請求項14】
米穀粒、コムギ穀粒、オオムギ穀粒、トウモロコシ穀粒、モロコシ穀粒、又はカラスムギ穀粒である、請求項1~13のいずれか一項に記載の穀粒。
【請求項15】
米穀粒である、請求項1~14のいずれか一項に記載の穀粒。
【請求項16】
玄米穀粒又は黒米穀粒である、請求項15に記載の穀粒。
【請求項17】
前記野生型穀粒が、mtSSBポリペプチドを含み、前記mtSSBポリペプチドが、配列番号3若しくは15~39のうちのいずれか1つで提供されるアミノ酸配列、又は配列番号3若しくは15~39のうちのいずれか1つ以上と少なくとも75%同一であるアミノ酸配列を含む、請求項1~16のいずれか一項に記載の穀粒。
【請求項18】
前記mtSSBポリペプチドが、mtSSB-1aポリペプチドである、請求項17に記載の穀粒。
【請求項19】
前記野生型穀粒が、mtSSB-1aポリペプチドを含み、前記mtSSB-1aポリペプチドが、配列番号3若しくは15~23のうちのいずれか1つで提供されるアミノ酸配列、又は配列番号3若しくは15~23のうちのいずれか1つ以上と少なくとも75%同一であるアミノ酸配列を含む、請求項18に記載の穀粒。
【請求項20】
前記野生型穀粒が、mtSSB-1aポリペプチドを含み、前記mtSSB-1aポリペプチドが、配列番号3で提供されるアミノ酸配列、又は配列番号3と少なくとも75%同一であるアミノ酸配列を含む、請求項18又は19に記載の穀粒。
【請求項21】
前記穀粒が、内在性遺伝子を含み、前記内在性遺伝子が、短縮型mtSSBポリペプチド、好ましくは、短縮型mtSSB-1aポリペプチドをコードする、請求項1~20のいずれか一項に記載の穀粒。
【請求項22】
前記短縮型mtSSBポリペプチドが、配列番号8、配列番号9、配列番号10から選択されるアミノ酸配列、又はそれらのうちのいずれか1つの短縮型バージョンからなる、請求項21に記載の穀粒。
【請求項23】
低減されたmtSSB活性が、
i)低減された、一本鎖DNAに結合する能力、
ii)低減された、RECA3ポリペプチドに結合する能力、及び
iii)低減された、TWINKLEポリペプチドに結合する能力のうちの1つ以上又は全てである、請求項1~22のいずれか一項に記載の穀粒。
【請求項24】
前記野生型穀粒が、RECA3ポリペプチドを含み、前記RECA3ポリペプチドが、配列番号61、67、69、71、73、75、77、若しくは79のうちのいずれか1つで提供されるアミノ酸配列、又は配列番号61、67、69、71、73、75、77、若しくは79のうちのいずれか1つ以上と少なくとも75%同一であるアミノ酸配列を含む、請求項1~23のいずれか一項に記載の穀粒。
【請求項25】
前記低減されたRECA3ポリペプチド活性が、
i)低減された、mtSSBポリペプチドに結合する能力、及び
ii)低減されたリコンビナーゼ活性のうちの1つ又は両方である、請求項1~24のいずれか一項に記載の穀粒。
【請求項26】
前記野生型穀粒が、TWINKLEポリペプチドを含み、前記TWINKLEポリペプチドが、配列番号64、80、82、84、86、88、90、92、94、若しくは96のうちのいずれか1つで提供されるアミノ酸配列、又は配列番号64、80、82、84、86、88、90、92、94、若しくは96のうちのいずれか1つ以上と少なくとも75%同一であるアミノ酸配列を含む、請求項1~25のいずれか一項に記載の穀粒。
【請求項27】
前記低減されたTWINKLEポリペプチド活性が、
i)低減された、mtSSBポリペプチドに結合する能力、及び
ii)低減されたヘリカーゼ活性のうちの1つ又は両方である、請求項1~26のいずれか一項に記載の穀粒。
【請求項28】
変異型ミトコンドリア一本鎖DNA結合(mtSSB)ポリペプチド、変異型RECA3ポリペプチド、又は変異型TWINKLEポリペプチドであって、それぞれ、対応する野生型ミトコンドリア一本鎖DNA結合(mtSSB)ポリペプチド、RECA3ポリペプチド、又はTWINKLEポリペプチドのアミノ酸配列とは異なるアミノ酸配列を有し、前記対応する野生型ポリペプチドと比較して低減された活性を有し、好ましくは、請求項3~5のいずれか一項に記載の遺伝的変動を含む穀類植物の内在性遺伝子によってコードされている、変異型mtSSBポリペプチド、変異型RECA3ポリペプチド、又は変異型TWINKLEポリペプチド。
【請求項29】
請求項28に記載のポリペプチド、好ましくは、請求項3~5のいずれか一項に記載の遺伝的変動を含む穀類植物の内在性遺伝子をコードする、ポリヌクレオチド。
【請求項30】
穀類植物の穀粒内に存在するときに、ミトコンドリア一本鎖DNA結合(mtSSB)ポリペプチド、RECA3ポリペプチド、又はTWINKLEポリペプチドをコードする遺伝子の発現を低減する、単離及び/又は外来性ポリヌクレオチド。
【請求項31】
穀類植物の発達中の穀粒内の遺伝子の発現を、少なくとも受粉時と受粉後30日目との間の時点で低減するために使用されるときの、請求項30に記載のポリヌクレオチド。
【請求項32】
請求項29~31のいずれか一項に記載のポリヌクレオチドをコードする核酸構築物及び/又はベクターであって、前記核酸構築物又はベクターが、前記ポリヌクレオチドをコードするDNA領域を含み、前記ポリヌクレオチドが、プロモーターに動作可能に連結されており、前記プロモーターが、穀類植物の発達中の穀粒内で、少なくとも受粉時と受粉後30日目との間の時点で発現される、核酸構築物及び/又はベクター。
【請求項33】
請求項29~31のいずれか一項に記載のポリヌクレオチド、又は請求項32に記載の核酸構築物及び/若しくはベクターを含む、細胞、組織、器官、植物部分、又は植物。
【請求項34】
前記ポリヌクレオチド、核酸構築物又はベクターが、前記細胞、組織、器官、植物部分、又は植物のゲノム内に、好ましくは、核ゲノム内に組み込まれている、請求項33に記載の植物細胞、組織、器官、植物部分、又は植物。
【請求項35】
対応する野生型穀類植物細胞に対して低減されたレベル及び/又は活性の少なくとも1つのミトコンドリアポリペプチドを含む、穀類植物細胞、それからの種子又は組織であって、レベル及び/又は活性が低減した前記ミトコンドリアポリペプチドが、ミトコンドリア一本鎖DNA結合(mtSSB)ポリペプチド、RECA3ポリペプチド、及びTWINKLEポリペプチドのうちの少なくとも1つである、穀類植物細胞、それからの種子又は組織。
【請求項36】
胚乳、種皮、アリューロン、若しくは胚細胞であるか、又はこれを含む、請求項35に記載の細胞、それからの種子又は組織。
【請求項37】
アリューロン細胞である、請求項35に記載の細胞、それからの種子又は組織。
【請求項38】
請求項1~10又は12~27のいずれか一項に記載の穀粒を産生し、かつ/あるいは請求項28に記載のポリペプチド、請求項29~31のいずれか一項に記載のポリヌクレオチド、請求項32に記載の核酸構築物及び/若しくはベクター、又は請求項33~37のいずれか一項に記載の細胞、種子若しくは組織のうちの1つ以上又は全てを含む、穀類植物。
【請求項39】
(a)対応する野生型植物とほぼ同じ高さを有すること、
(b)前記植物が、稔性雄及び雌であること、並びに
(c)前記植物が、穀粒成熟の遅延を示すことのうちの1つ以上又は全てを特徴とする、請求項38に記載の穀類植物。
【請求項40】
圃場で成長する、少なくとも100個の請求項38又は39に記載の穀類植物の集団。
【請求項41】
請求項33~37のいずれか一項に記載の細胞を産生する方法であって、請求項2~5のいずれか一項で定義される遺伝的変動、請求項29~31のいずれか一項に記載のポリヌクレオチド、又は請求項32に記載の核酸構築物及び/若しくはベクターを、細胞、好ましくは、穀類植物細胞内に導入するステップを含む、方法。
【請求項42】
請求項38若しくは39に記載の穀類植物又はそれからの穀粒を産生する方法であって、
i)請求項2~5のいずれか一項で定義される遺伝的変動、請求項29~31のいずれか一項に記載のポリヌクレオチド、又は請求項32に記載の核酸構築物及び/若しくはベクターを、穀類植物細胞内に導入するステップと、
ii)前記遺伝的変動又はポリヌクレオチドを含む穀類植物を、ステップi)から得られた細胞から得るステップと、
iii)任意選択で、穀粒をステップii)の前記植物から収穫するステップであって、前記穀粒が、前記遺伝的変動を含むか又は前記ポリヌクレオチド、核酸構築物若しくはベクターについてのトランスジェニックである、収穫するステップと、
iv)任意選択で、1世代以上の子孫植物を前記穀粒から産生するステップであって、前記子孫植物が、前記遺伝的変動を含むか又は前記ポリヌクレオチド、核酸構築物若しくはベクターについてのトランスジェニックである、産生するステップと、を含み、
それによって、前記穀類植物又は穀粒を産生する、方法。
【請求項43】
請求項38若しくは39に記載の穀類植物又はそれからの穀粒を産生する方法であって、
i)内在性遺伝子に対する変異を穀類植物細胞内に導入するステップであって、前記内在性遺伝子が、ミトコンドリア一本鎖DNA結合(mtSSB)ポリペプチド、RECA3ポリペプチド、又はTWINKLEポリペプチドをコードし、これにより、前記細胞が、対応する野生型穀類植物細胞に対して低減されたレベル及び/又は活性の前記ミトコンドリア一本鎖DNA結合(mtSSB)ポリペプチド、RECA3ポリペプチド、又はTWINKLEポリペプチドを有する、導入するステップと、
ii)穀類植物をステップi)の細胞から得ることであって、前記穀類植物が、前記内在性遺伝子の前記変異を含む、得るステップと、
iii)任意選択で、穀粒をステップii)の前記植物から収穫するステップであって、前記穀粒が、前記変異を含む、収穫するステップと、
iv)任意選択で、1世代以上の子孫植物を前記穀粒から産生するステップであって、前記子孫植物が、前記変異を含む、産生するステップと、を含み、
それによって、前記穀類植物又は穀粒を産生する、方法。
【請求項44】
請求項38若しくは39に記載の穀類植物又は請求項1~27のいずれか一項に記載の穀粒を選択する方法であって、
i)穀類植物の集団又は穀粒をスクリーニングするステップであって、前記穀類植物の集団又は穀粒の各々が、前駆穀類植物細胞、穀粒、又は植物の変異誘発処理から得られたものであり、前記穀類植物の集団又は穀粒を、請求項1~10若しくは12~27のいずれか一項に記載の穀粒の産生について、又はミトコンドリア一本鎖DNA結合(mtSSB)ポリペプチド、RECA3ポリペプチド、若しくはTWINKLEポリペプチドをコードする遺伝子内の変異の存在についてスクリーニングするステップと、
ii)穀類植物をステップ(i)の前記集団から選択するステップであって、前記穀類植物が、請求項1~10若しくは12~27のいずれか一項に記載の穀粒を産生するか又は変異を前記遺伝子内に含む、選択するステップと、を含み、
それによって、前記穀類植物又は穀粒を選択する、方法。
【請求項45】
請求項38又は39に記載の穀類植物を選択する方法であって、
i)1つ以上の子孫植物を穀物粒から産生するステップであって、前記穀物粒が、2つの親穀類植物の交雑に由来したものである、産生するステップと、
ii)ステップi)の前記1つ以上の子孫植物を、請求項1~10又は12~27のいずれか一項に記載の穀粒の産生についてスクリーニングするステップと、
iii)前記穀粒を産生する子孫植物を選択するステップと、を含み、
それによって、前記穀類植物を選択する、方法。
【請求項46】
ステップii)が、
i)子孫植物からのDNAを含む試料を、前記遺伝的変動について解析すること、
ii)子孫植物から得られた穀粒のアリューロンの厚さを解析すること、及び
iii)前記穀粒又はその一部分の栄養含有量を解析することのうちの1つ以上又は全てを含む、請求項45に記載の方法。
【請求項47】
ステップiii)が、
i)子孫植物を選択することであって、前記子孫植物が、前記遺伝的変動についてホモ接合性である、選択すること、
ii)子孫植物を選択することであって、前記子孫植物の穀粒が、対応する野生型穀物粒と比較して増加したアリューロン厚さを有する、選択すること、
iii)子孫植物を選択することであって、前記子孫植物の穀粒又はその一部分が、対応する野生型穀物粒又はその一部分と比較して変更された栄養含有量を有する、選択することのうちの1つ以上又は全てを含む、請求項45又は46に記載の方法。
【請求項48】
i)2つの親穀類植物を交雑することであって、好ましくは、前記親穀類植物のうちの1つが、請求項1~10若しくは12~27のいずれか一項に記載の穀粒を産生する、交雑すること、又は
ii)ステップi)からの1つ以上の子孫植物を、請求項1~10若しくは12~27のいずれか一項に記載の穀粒を産生しない最初の親穀類植物と同じ遺伝子型の植物と、前記最初の親穀類植物の前記遺伝子型の大部分を有するが請求項1~10若しくは12~27のいずれか一項に記載の穀粒を産生する植物を産生するのに十分な回数戻し交雑すること、及び
iii)請求項1~10又は12~27のいずれか一項に記載の穀粒を産生する子孫植物を選択することを更に含む、請求項45~47のいずれか一項に記載の方法。
【請求項49】
請求項42~48のいずれか一項に記載の方法を使用して産生される穀類植物。
【請求項50】
細胞、穀類植物、又は穀物粒などの植物部分を産生するための、請求項29~31のいずれか一項に記載のポリヌクレオチド、又は請求項32に記載の核酸構築物及び/若しくはベクターの使用。
【請求項51】
請求項1~27のいずれか一項に記載の穀粒を産生するために使用されるときの、請求項50に記載の使用。
【請求項52】
請求項1~10又は12~27のいずれか一項に記載の穀粒を産生する穀類植物を同定するための方法であって、
i)核酸試料を穀類植物から得るステップと、
ii)前記試料を遺伝的変動の存在又は非存在についてスクリーニングするステップであって、前記遺伝的変動が、対応する野生型穀類植物と比較して、前記植物内のミトコンドリア一本鎖DNA結合(mtSSB)ポリペプチド、RECA3ポリペプチド、又はTWINKLEポリペプチドの活性のレベルを低減する、スクリーニングするステップと、を含む、方法。
【請求項53】
前記遺伝的変動が、
a)ポリヌクレオチドを発現する核酸構築物又はそれによってコードされた前記ポリヌクレオチドであって、穀類植物内に存在するときに、ミトコンドリア一本鎖DNA結合(mtSSB)ポリペプチド、RECA3ポリペプチド、又はTWINKLEポリペプチドをコードする遺伝子の発現を低減する、ポリヌクレオチドを発現する核酸構築物又はそれによってコードされた前記ポリヌクレオチド、及び
b)遺伝子又はそれによってコードされたmRNAであって、低減された活性を有する、変異型ミトコンドリア一本鎖DNA結合(mtSSB)ポリペプチド、RECA3ポリペプチド、又はTWINKLEポリペプチド、好ましくは、短縮型mtSSBポリペプチド、RECA3ポリペプチド、又はTWINKLEポリペプチドを発現する、遺伝子又はそれによってコードされたmRNAのうちの1つ又は両方である、請求項52に記載の方法。
【請求項54】
前記遺伝的変動の存在が、前記穀類植物の穀粒が、前記遺伝的変動を欠く対応する穀類植物と比較して、肥厚アリューロンを有することを示す、請求項52又は53に記載の方法。
【請求項55】
請求項1~10又は12~27のいずれか一項に記載の穀粒を産生する穀類植物を同定するための方法であって、
i)穀粒を穀類植物から得るステップと、
ii)前記穀粒又はその一部分を、
a)肥厚アリューロン、
b)前記穀粒内の、ミトコンドリア一本鎖DNA結合(mtSSB)ポリペプチド、RECA3ポリペプチド、若しくはTWINKLEポリペプチドの量及び/又は活性、並びに
c)前記穀粒内の、ミトコンドリア一本鎖DNA結合(mtSSB)ポリペプチド、RECA3ポリペプチド、又はTWINKLEポリペプチドをコードする遺伝子によってコードされたmRNAの量のうちの1つ以上についてスクリーニングするステップと、を含む、方法。
【請求項56】
請求項28、38、又は39のいずれか一項に記載の穀類植物を同定する、請求項52~55のいずれか一項に記載の方法。
【請求項57】
穀類植物部分を産生する方法であって、
a)請求項28、38又は39のいずれか一項に記載の穀類植物又は少なくとも100個の前記穀類植物を圃場で成長させることと、
b)前記穀類植物部分を前記穀類植物又は複数の穀類植物から収穫することと、を含む、方法。
【請求項58】
穀粒から得られる加工穀粒、又は粉、ふすま、全粒粉、麦芽、デンプン、若しくは油を製造する方法であって、
a)請求項1~27のいずれか一項に記載の穀粒を得ることと、
b)前記穀粒を加工して、前記加工穀粒、粉、ふすま、全粒粉、麦芽、デンプン、又は油を製造することと、を含む、方法。
【請求項59】
請求項1~27のいずれか一項に記載の穀粒、又は請求項28、38、若しくは39のいずれか一項に記載の穀類植物から、あるいは前記遺伝的変動を含む前記穀粒又は穀類植物の一部分から製造される、製品。
【請求項60】
前記遺伝的変動、前記ポリヌクレオチド、前記核酸構築物又は前記ベクター、及び前記肥厚アリューロンのうちの1つ以上又は全てを含む、請求項59に記載の製品。
【請求項61】
前記一部分が、調理された、煮沸された、湯引かれた、焙煎された、ベーキングされた、精白された、割られた、膨化した、製粉された、又は薄片にされた穀粒又はふすまである、請求項59又は60に記載の製品。
【請求項62】
前記製品が、食品成分、飲料成分、食品製品、又は飲料製品である、請求項59~61のいずれか一項に記載の製品。
【請求項63】
i)前記食品成分若しくは飲料成分が、焙煎された穀粒、精白された穀粒、割られた穀粒、膨化した穀粒、製粉された穀粒、薄片にされた穀粒、全粒粉、粉、ふすま、デンプン、麦芽、及び油からなる群から選択されるか、又は
ii)前記食品製品が、加工穀粒、調理された穀粒、煮沸された穀粒、かゆ、発酵若しくは無発酵パン、パスタ、ヌードル、動物飼料、朝食用シリアル、スナック食品、ケーキ、ペーストリ、及び粉ベースのソースを含有する食品からなる群から選択されるか、又は
iii)前記飲料製品が、茶、包装された飲料、若しくはエタノールを含む飲料である、請求項62に記載の製品。
【請求項64】
請求項62又は63に記載の食品又は飲料成分を調製する方法であって、請求項1~27のいずれか一項に記載の穀粒又は前記穀粒からのふすま、粉、全粒粉、麦芽、デンプン、若しくは油を加工して、前記食品又は飲料成分を製造することを含む、方法。
【請求項65】
請求項62又は63に記載の食品又は飲料製品を調製する方法であって、好ましくは、請求項1~27のいずれか一項に記載の穀粒を調理する、煮沸する、焙煎する、又は薄片にすることによって、あるいは前記穀粒又は前記穀粒からのふすま、粉、全粒粉、麦芽、デンプン、若しくは油を、別の食品又は飲料成分と混合することによって、穀粒を加工することを含む、方法。
【請求項66】
動物飼料若しくは食品としての、又は動物摂取のための飼料若しくはヒト摂取のための食品を製造するための、請求項1~27のいずれか一項に記載の穀粒又はその一部分、あるいは請求項28、38、若しくは39のいずれか一項に記載の穀類植物又はその一部分の使用。
【請求項67】
請求項28に記載のポリペプチド、請求項29~31のいずれか一項に記載のポリヌクレオチド、請求項32に記載の核酸構築物及び/若しくはベクター、又は請求項33~37のいずれか一項に記載の細胞のうちの1つ以上と、1つ以上の許容可能な担体、好ましくは、別の食品成分と、を含む、組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アリューロンと、胚と、デンプン性胚乳と、低減されたレベル及び/又は活性のミトコンドリア一本鎖DNA結合(mtSSB)ポリペプチド、RECA3ポリペプチド、又はTWINKLEポリペプチドと、を含む、穀物粒に関する。本発明の穀粒又はそれからのアリューロンは、改善された栄養特性を有し、したがって、ヒト及び動物飼料製品に特に有用である。
【背景技術】
【0002】
世界的に、コムギ、米、トウモロコシ、並びにより少ない程度でオオムギ、カラスムギ、及びライムギなどの穀物粒が、穀粒のデンプン含有量からのヒトカロリー摂取量の主要な供給源である。穀物粒はまた、タンパク質、ビタミン、ミネラル、及び食物繊維などの他の栄養構成要素の供給において重要である。穀粒の異なる部分は、これらの栄養構成要素について異なって寄与する。デンプンは、穀物粒のデンプン性胚乳内に貯蔵されており、他の栄養構成要素は、胚及びふすま内により集中している(Buri et al.,2004)。しかしながら、ふすまは、しばしば、食品における使用前に除去され、特に、米において除去され、次いで、米は、白米として食べられる。
【0003】
穀物粒は、母性配偶体と父性配偶体との間の重複受精事象から発達する。花粉管からの2つの精子細胞のうちの一方は、卵子と融合して、接合体を産生し、接合体は、胚に発達し、他方の精子細胞は、雌性配偶体の二倍体中央細胞と融合して、一次胚乳核を産生し、一次胚乳核から、遺伝的三倍体胚乳が発達する。したがって、アリューロンを含む胚乳は、三倍体であり、母性一倍体ゲノムの2つのコピーと、父性一倍体ゲノムの1つのコピーと、を有する。双子葉種子内では、胚乳は、発達中の胚によって消費され、米などの単子葉植物内では、胚乳は、存続して、成熟穀粒の大部分を構成する。
【0004】
穀類の成熟胚乳は、異なる特徴を有する4つの細胞型、すなわち、デンプン顆粒及び貯蔵タンパク質の豊富な含有量によって特徴付けられるデンプン性胚乳と、デンプン性胚乳のほとんどを包囲する1つの細胞層の厚さをより頻繁に有する表皮様アリューロンと、主要な母性脈管構造の上の種子の基部における輸送細胞と、穀粒発達の早期に胚のための裏層を形成するが、その後、胚とデンプン性胚乳とを接続する胚柄のみを包囲し得る胚包囲細胞の層と、を有する(Becraft et al.,2001a)。胚は、デンプン性胚乳内の空洞内に形成される。したがって、穀類アリューロン組織は、穀物粒内の胚乳の最外層を含み、デンプン性胚乳及び胚の一部分を包囲する。
【0005】
アリューロン細胞は、アリューロン細胞の形態、生化学的組成、及び遺伝子発現プロファイルによって、デンプン性胚乳細胞と区別される(Becraft and Yi,2011)。アリューロン細胞は、概して、油及びタンパク質に富み、種子発芽中に胚乳貯蔵の動員を可能にする酵素を分泌する。各々のアリューロン細胞は、繊維状細胞壁内に封入されており、繊維状細胞壁は、胚乳細胞壁よりも厚く、様々な比のアラビノキシラン及びベータグルカンから主に構成されており、高度に自家蛍光である。アリューロン層は、穀類内でアントシアニンでしばしば着色されている、胚乳の唯一の層である。
【0006】
穀類アリューロンは、コムギ及び野生型トウモロコシ内で、1つの細胞層の厚さのみを有し(Buttrose 1963、Walbot,1994)、ほとんど、1つの細胞層の厚さを有するが、米内の胚乳の背側領域内で、最大3つの細胞層の厚さを有し(Hoshikawa,1993)、野生型オオムギ内で、3つの細胞層の厚さを有する(Jones,1969)。通常の胚乳内で、アリューロンは、非常に規則的であり、細胞分裂のパターンは、高度に組織化されている。野生型成熟アリューロン細胞は、高密度な細胞質を有するほぼ立方体の断面を有し、高密度な細胞質は、顆粒、小さい液胞、及び封入体を含み、顆粒、小さい液胞、及び封入体は、タンパク質、脂質、及びフィチンから、又はタンパク質プラス炭水化物から作製されている。成熟穀物粒内で、アリューロンは、休眠性乾燥形態であるが、依然として生存している唯一の胚乳組織である。吸水の際に、胚は、ジベレリンを産生し、ジベレリンは、アリューロンによるアミラーゼ及び他のヒドロラーゼの合成を誘導し、アミラーゼ及び他のヒドロラーゼは、デンプン性胚乳内に放出されて、貯蔵化合物を分解して、実生苗への胚の早期成長のための糖及びアミノ酸を形成する。
【0007】
穀物粒内のアリューロン発達の調節は、Becraft and Yi(2011)によって概説されている。複数のレベルの遺伝的調節が、アリューロン細胞運命、分化、組織を制御し、多くの遺伝子が、プロセスに関与しており、これらの遺伝子のうちのいくつかのみが同定されている。例えば、トウモロコシ欠陥穀粒1(dek1)機能喪失型変異体は、アリューロン層を有さず、これは、野生型Dek1ポリペプチドが、外側細胞層をアリューロンとして特定するために必要とされることを示す(Becraft et al.,2002)。Dek1ポリペプチドは、大きい膜内在性タンパク質であり、膜内在性タンパク質は、21個の膜貫通ドメインと、活性カルパインプロテアーゼを含有する細胞質ドメインと、を有する。トウモロコシ内の別の遺伝子であるCRINKLY4(CR4)は、受容体キナーゼをコードし、受容体キナーゼは、アリューロン運命の正調節因子として機能し、cr4変異体は、低減されたアリューロンを有する(Becraft et al.,2001b)。
【0008】
穀物粒変異体内の肥厚アリューロンのいくつかの事例が、文献で報告されているが、多指向性効果又は農学的及び産生問題のため、いずれも有用であると判明されていない。
【0009】
Shen et al.(2003)は、過剰アリューロン層1(sal1)遺伝子内のトウモロコシ変異体の同定を報告しており、異なる変異体内で、sal1遺伝子は、通常の単一層の代わりに、2つ~3つの層又は最大7つの層のアリューロン細胞を有した。SAL1ポリペプチドが、クラスE液胞局在タンパク質として同定された。ホモ接合性sal1-1変異型穀粒は、発芽することができなかった欠陥胚を有し、はるかに低減されたデンプン性胚乳を有した。sal1-2アレルについてホモ接合性であったより完全でない変異体は、2つの細胞層のアリューロンを示した。しかしながら、変異型植物は、野生型の30%のみの高さまで成長し、低減された根量を有し、結実に乏しかった(Shen et al.2003)。これらの植物は、農学的に有用でなかった。
【0010】
Yi et al.(2011)は、トウモロコシ内の厚アリューロン1(thk1)変異体の同定を報告した。変異型穀粒は、多層アリューロンを示した。しかしながら、変異型穀粒は、良好に発達した胚を欠き、播種されたときに発芽しなかった。野生型Thk1遺伝子は、Thk1ポリペプチドをコードし、Thk1ポリペプチドは、トウモロコシ内のアリューロン発達のために必要とされるDek1ポリペプチドの下流で作用した(Becraft et al.,2002)。
【0011】
トウモロコシ余剰細胞層(Xcl)遺伝子変異体が、葉形態へのXcl遺伝子変異の効果によって同定された。Xcl遺伝子変異は、二重アリューロン層及び多層葉表皮を産生した(Kessler et al.,2002)。Xcl変異は、半顕性変異であり、半顕性変異は、トウモロコシ内の細胞分裂及び分化パターンを破壊して、異常な光沢のある外観を有する厚い狭い葉を産生した。
【0012】
disorgal1及びdisorgal2(dil1及びdil2)遺伝子内のトウモロコシ変異体は、可変数の層を有し不規則な形状及びサイズの細胞を有するアリューロンを示した(Lid et al.,2004)。しかしながら、ホモ接合性dil1及びdil2変異型穀粒は、低減されたデンプン蓄積に起因して収縮し、成熟変異型穀粒は、低い速度で発芽し、生存植物に発達しなかった。
【0013】
オオムギ内で、elo2変異体は、同様に、アリューロン層の無秩序な細胞及び不規則性を示し、これは、異常な並層細胞分裂からもたらされた(Lewis et al.,2009)。植物はまた、葉表皮内の増加した細胞層を示し、隆起し歪んだ細胞を表皮上に有した。重要なことに、ホモ接合性変異型植物は、矮化されて、野生型の60%未満の穀粒重量を産生し、穀粒産生に有用ではなかった。
【0014】
米内で、種子貯蔵タンパク質の発現を制御する2つの転写因子もまた、アリューロン細胞運命に影響する(Kawakatsu et al.,2009)。DOF亜鉛フィンガー転写因子クラス内にある米プロラミンボックス結合因子(RPBF)ポリペプチドをコードする遺伝子の共抑制構築物による発現の低減は、大きい無秩序な細胞からなる散発性多層アリューロンをもたらした。種子貯蔵タンパク質発現及び蓄積の有意な低減もあり、デンプン及び脂質が、実質的に低減されたレベルで蓄積された。トウモロコシDek1、CR4、及びSAL1遺伝子の米相同体の発現もまた、低減され、これは、RPBF及びRISBZ1因子が、これらの遺伝子と同じ調節経路内で動作したことを示した。
【0015】
より最近では、変異型ROS1a遺伝子が、米内で肥厚アリューロンをもたらすことができることが判定された(WO2017/083920)。
【0016】
農業的にも有用である植物、特に、米植物からの、肥厚アリューロンを有する穀物粒が必要とされている。
【発明の概要】
【0017】
本発明者らは、穀物粒内のアリューロン発達に影響する、多数の遺伝子及びそれらによってコードされたタンパク質を同定した。
【0018】
したがって、一態様では、本発明は、アリューロンと、胚と、デンプン性胚乳と、対応する野生型穀物粒に対して低減されたレベル及び/又は活性の少なくとも1つのミトコンドリアポリペプチドと、を含む、穀物粒であって、レベル及び/又は活性が低減したミトコンドリアポリペプチドが、ミトコンドリア一本鎖DNA結合(mtSSB)ポリペプチド、RECA3ポリペプチド、及びTWINKLEポリペプチドのうちの少なくとも1つである、穀物粒を提供する。
【0019】
好ましい実施形態では、穀粒は、遺伝的変動を含み、遺伝的変動は、対応する野生型穀物粒に対して、穀粒内の少なくとも1つのミトコンドリアポリペプチドのレベル及び/又は活性を低減する。この実施形態の一例では、穀粒は、2つ以上の遺伝的変動を含み、2つ以上の遺伝的変動は、対応する野生型穀物粒に対して、穀粒内の少なくとも1つのミトコンドリアポリペプチドのレベル及び/又は活性を低減する。この実施形態の別の例では、穀粒は、2つ以上の遺伝的変動を含み、2つ以上の遺伝的変動は、対応する野生型穀物粒に対して、穀粒内のミトコンドリアポリペプチドのうちの2つ又は3つのレベル及び/又は活性を低減する。
【0020】
一実施形態では、遺伝的変動は、内在性遺伝子内の変異であって、内在性遺伝子が、ミトコンドリアポリペプチドをコードし、それによって、変異が、低減されたレベル及び/又は活性のミトコンドリアポリペプチドをもたらす、変異を含む。
【0021】
一実施形態では、遺伝的変動は、サイレンシングRNA分子をコードする外来性ポリヌクレオチドであって、サイレンシングRNA分子及び/又はサイレンシングRNA分子から産生されるプロセシングされたRNA分子が、内在性遺伝子の発現を低減し、好ましくは、外来性ポリヌクレオチドが、サイレンシングRNA分子をコードするDNA領域を含み、サイレンシングRNA分子が、穀類植物の発達中の穀粒内で発現されるプロモーターに動作可能に連結されており、プロモーターが、好ましくは、少なくとも受粉時と受粉後30日目との間の時点で発現される、外来性ポリヌクレオチドを含む。
【0022】
一実施形態では、遺伝的変動は、ミトコンドリアポリペプチドをコードする内在性遺伝子のRNA転写物の、改変されたスプライシング、好ましくは、低減されたスプライシングをもたらす、スプライス部位変異であって、スプライス部位変異が、好ましくは、スプライス部位における単一ヌクレオチド置換であり、より好ましくは、配列番号4のヌクレオチド番号2126に対応する位置におけるアデニンヌクレオチドである、スプライス部位変異を含む。
【0023】
一実施形態では、遺伝的変動は、ミトコンドリアポリペプチドをコードする内在性遺伝子内の欠失又は挿入、好ましくは、前駆穀類植物細胞の変異誘発によって導入された欠失を含む。
【0024】
一実施形態では、遺伝的変動は、ミトコンドリアポリペプチドをコードする内在性遺伝子のタンパク質コード領域内の中途翻訳終止コドンを含む。
【0025】
一実施形態では、遺伝的変動は、内在性遺伝子内の変異であって、内在性遺伝子が、ミトコンドリアポリペプチドをコードし、これにより、内在性遺伝子が、野生型ポリペプチドに対して低減された活性を有するポリペプチドをコードし、好ましくは、変異が、内在性遺伝子内のヌクレオチド置換であり、それによって、変異を含む内在性遺伝子が、配列番号3に対してアミノ酸置換を有するポリペプチドをコードする、変異を含む。
【0026】
一実施形態では、遺伝的変動は、内在性遺伝子内の変異であって、内在性遺伝子が、ミトコンドリアポリペプチドをコードし、これにより、変異を有する遺伝子が発現されたときに、遺伝子が、対応する野生型遺伝子に対して低減されたレベルのポリペプチドを産生する、変異を含む。例えば、遺伝的変動は、遺伝子の発現の低減されたレベルをもたらすスプライス部位変異を含むか、又はこの遺伝子は、遺伝子の低減された発現をもたらす、遺伝子のプロモーター内の変異を含む。
【0027】
一実施形態では、遺伝的変動は、導入された遺伝的変動である。
【0028】
一実施形態では、穀粒は、遺伝的変動についてヘテロ接合性である。一実施形態では、穀粒は、遺伝的変動についてホモ接合性である。
【0029】
好ましい実施形態では、穀粒は、肥厚アリューロンを有する。一実施形態では、穀粒は、肥厚アリューロンを、受粉後20日目に有する。一実施形態では、肥厚アリューロンは、少なくとも2つ、少なくとも3つ、少なくとも4つ、若しくは少なくとも5つの細胞層、約3つ、約4つ、約5つ、若しくは約6つの細胞層、又は2つ~8つ、2つ~7つ、2つ~6つ、2つ~5つ、若しくは3つ~5つの細胞層、又は2~8、2~7、若しくは2~6の細胞層数を含む。
【0030】
一実施形態では、穀粒は、対応する野生型穀物粒と比較して、各々重量基準で、以下:
i)より高い脂肪含有量、
ii)より高い灰含有量、
iii)より高い繊維含有量、
iv)より低いデンプン含有量、
v)より高いミネラル含有量であって、好ましくは、ミネラル含有量が、カルシウム、鉄、亜鉛、カリウム、マグネシウム、リン、及び硫黄のうちの1つ以上又は全ての含有量である、より高いミネラル含有量、
vi)より高い抗酸化物質含有量、
vii)より高いフィテート含有量、
viii)ビタミンB3、B6、及びB9のうちの1つ以上又は全てのより高い含有量、
ix)より高いスクロース含有量、
x)より高い中性非デンプン多糖含有量、並びに
xi)より高い単糖含有量のうちの1つ以上又は全てを含む。
【0031】
一実施形態では、穀粒は、対応する野生型穀物粒と比較して、より高い程度の白亜性を含む。
【0032】
一実施形態では、穀粒は、対応する野生型穀物粒と比較して、より高いアリューロン細胞数を含む。
【0033】
一実施形態では、穀粒は、全穀粒又は胴割れ穀粒である。
【0034】
一実施形態では、穀粒は、対応する野生型穀物粒の発芽率に対して、約40~約100%である発芽率を有する。
【0035】
一実施形態では、穀粒は、対応する野生型穀物粒と比較して、発芽中に増加したα-アミラーゼ活性を有する。
【0036】
一実施形態では、穀粒は、対応する野生型穀物粒と比較して、不規則な形状のデンプン顆粒のより緩い充填を有する。
【0037】
一実施形態では、穀粒は、対応する野生型穀物粒と比較して、ほぼ同じ長さ、幅、厚さ、タンパク質レベル、及び穎花形態のうちの1つ以上又は全てを有する。
【0038】
一実施形態では、穀粒は、もはや発芽することができないように加工されており、好ましくは、熱処理によって加工されており、より好ましくは、調理されている。
【0039】
一実施形態では、ポリペプチドは、発達中の穀粒の発達中の胚乳、種皮、アリューロン、及び胚のうちの1つ以上又は全てにおいて発現される。
【0040】
一実施形態では、穀粒の外層が着色されている穀粒。
【0041】
本発明の穀物粒の例としては、米穀粒、コムギ穀粒、オオムギ穀粒、トウモロコシ穀粒、モロコシ穀粒、又はカラスムギ穀粒が挙げられるが、これらに限定されない。一実施形態では、穀粒は、米穀粒である。一実施形態では、穀粒は、玄米穀粒又は黒米穀粒である。
【0042】
一実施形態では、野生型穀粒は、mtSSBポリペプチドを含み、mtSSBポリペプチドは、配列番号3若しくは15~39のうちのいずれか1つで提供されるアミノ酸配列、又は配列番号3若しくは15~39のうちのいずれか1つ以上と少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、若しくは少なくとも99%同一であるアミノ酸配列を含む。
【0043】
一実施形態では、mtSSBポリペプチドは、mtSSB-1aポリペプチドである。一実施形態では、野生型穀粒は、mtSSB-1aポリペプチドを含み、mtSSB-1aポリペプチドは、配列番号3若しくは15~23のうちのいずれか1つで提供されるアミノ酸配列、又は配列番号3若しくは15~23のうちのいずれか1つ以上と少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、若しくは少なくとも99%同一であるアミノ酸配列を含む。
【0044】
一実施形態では、野生型穀粒は、mtSSB-1aポリペプチドを含み、mtSSB-1aポリペプチドは、配列番号3で提供されるアミノ酸配列、又は配列番号3と少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、若しくは少なくとも99%同一であるアミノ酸配列を含む。
【0045】
一実施形態では、野生型穀粒は、mtSSBポリペプチドを含み、mtSSBポリペプチドは、以下のモチーフ:FRGVHRAI(I/L)CGKVGQ(V/A)P(V/L)QKILRNG(R/H)T(V/I)T(V/I)FT(V/I)GTGGMFDQR(配列番号45)、P(K/M)PAQWHRI(A/S)(V/I)H(N/S)(D/E)(配列番号46)、AVQ(K/Q)L(V/T)KNS(A/S)VY(V/I)EG(D/E)IE(T/I)R(V/I)YND(配列番号47)、及びIC(L/V/I)R(R/G)DGKI(配列番号48)のうちの1つ以上又は全てを含む。
【0046】
一実施形態では、穀粒は、内在性遺伝子を含み、内在性遺伝子は、短縮型mtSSBポリペプチド、好ましくは、短縮型mtSSB-1aポリペプチドをコードする。一実施形態では、短縮型mtSSBポリペプチドは、C末端短縮されている。一実施形態では、短縮型mtSSBポリペプチドは、200個のアミノ酸未満の長さである。本発明の穀物粒の短縮型mtSSBポリペプチドの例としては、配列番号8、配列番号9、配列番号10から選択されるアミノ酸配列からなるもの、又はそれらのうちのいずれか1つの短縮型バージョンが挙げられるが、これらに限定されない。
【0047】
一実施形態では、低減されたmtSSB活性は、
i)低減された、一本鎖DNAに結合する能力、
ii)低減された、RECA3ポリペプチドに結合する能力、及び
iii)低減された、TWINKLEポリペプチドに結合する能力のうちの1つ以上又は全てである。
【0048】
一実施形態では、野生型穀粒は、RECA3ポリペプチドを含み、RECA3ポリペプチドは、配列番号61、67、69、71、73、75、77、若しくは79のうちのいずれか1つで提供されるアミノ酸配列、又は配列番号61、67、69、71、73、75、77、若しくは79のうちのいずれか1つ以上と少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、若しくは少なくとも99%同一であるアミノ酸配列を含む。
【0049】
一実施形態では、野生型穀粒は、RECA3ポリペプチドを含み、RECA3ポリペプチドは、配列番号61で提供されるアミノ酸配列、又は配列番号61と少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、若しくは少なくとも99%同一であるアミノ酸配列を含む。
【0050】
一実施形態では、低減されたRECA3ポリペプチド活性は、
i)低減された、mtSSBポリペプチドに結合する能力、及び
ii)低減されたリコンビナーゼ活性のうちの1つ又は両方である。
【0051】
一実施形態では、野生型穀粒は、TWINKLEポリペプチドを含み、TWINKLEポリペプチドは、配列番号64、80、82、84、86、88、90、92、94、若しくは96のうちのいずれか1つで提供されるアミノ酸配列、又は配列番号64、80、82、84、86、88、90、92、94、若しくは96のうちのいずれか1つ以上と少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、若しくは少なくとも99%同一であるアミノ酸配列を含む。
【0052】
一実施形態では、野生型穀粒は、TWINKLEポリペプチドを含み、TWINKLEポリペプチドは、配列番号64で提供されるアミノ酸配列、又は配列番号64と少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、若しくは少なくとも99%同一であるアミノ酸配列を含む。
【0053】
一実施形態では、低減されたTWINKLEポリペプチド活性は、
i)低減された、mtSSBポリペプチドに結合する能力、及び
ii)低減されたヘリカーゼ活性のうちの1つ又は両方である。
【0054】
また、変異型ミトコンドリア一本鎖DNA結合(mtSSB)ポリペプチド、変異型RECA3ポリペプチド、又は変異型TWINKLEポリペプチドであって、それぞれ、対応する野生型ミトコンドリア一本鎖DNA結合(mtSSB)ポリペプチド、RECA3ポリペプチド、又はTWINKLEポリペプチドのアミノ酸配列とは異なるアミノ酸配列を有し、対応する野生型ポリペプチドと比較して低減された活性を有し、好ましくは、本発明の遺伝的変動を含む穀類植物の内在性遺伝子によってコードされている、変異型mtSSBポリペプチド、変異型RECA3ポリペプチド、又は変異型TWINKLEポリペプチドが提供される。
【0055】
別の態様では、本発明は、本発明の変異型ミトコンドリア一本鎖DNA結合(mtSSB)ポリペプチド、RECA3ポリペプチド、又はTWINKLEポリペプチド、好ましくは、本発明の遺伝的変動を含む穀類植物の内在性遺伝子をコードする、ポリヌクレオチドを提供する。
【0056】
一実施形態では、ポリヌクレオチドは、穀類植物の穀粒内で発現されるプロモーターに動作可能に連結されている。
【0057】
更なる態様では、本発明は、穀類植物の穀粒内に存在するときに、ミトコンドリア一本鎖DNA結合(mtSSB)ポリペプチド、RECA3ポリペプチド、又はTWINKLEポリペプチドをコードする遺伝子の発現を低減する、単離及び/又は外来性ポリヌクレオチドを提供する。
【0058】
一実施形態では、ポリヌクレオチドは、穀類植物の穀粒内で発現されるプロモーターに動作可能に連結されている。
【0059】
また、穀類植物の発達中の穀粒内の遺伝子の発現を、少なくとも受粉時と受粉後30日目との間の時点で低減するために使用されるときの、上記の態様のポリヌクレオチドが提供される。
【0060】
当業者は、標的遺伝子の発現を低減するために使用され得る異なるタイプのポリヌクレオチド、及びどのようにこれらのポリヌクレオチドが設計され得るかを十分に認識している。例としては、二本鎖RNA(dsRNA)分子若しくはそのプロセシングされたRNA産物、マイクロRNA、アンチセンスポリヌクレオチド、センスポリヌクレオチド、又は触媒ポリヌクレオチドが挙げられるが、これらに限定されない。
【0061】
一実施形態では、ポリヌクレオチドは、dsRNA分子又はそのプロセシングされたRNA産物であり、dsRNA分子又はそのプロセシングされたRNA産物は、少なくとも19個、少なくとも20個、又は少なくとも21個の連続したヌクレオチドを含み、少なくとも19個、少なくとも20個、又は少なくとも21個の連続したヌクレオチドは、穀類ミトコンドリア一本鎖DNA結合(mtSSB)ポリペプチド、RECA3ポリペプチド、若しくはTWINKLEポリペプチド(ここで、チミン(T)は、ウラシル(U)である)をコードする遺伝子の補体と少なくとも95%同一であるか、又は穀類ミトコンドリア一本鎖DNA結合(mtSSB)ポリペプチド、RECA3ポリペプチド、若しくはTWINKLEポリペプチドをコードするmRNAの補体と少なくとも95%同一である。例えば、一実施形態では、ポリヌクレオチドは、dsRNA分子又はそのプロセシングされたRNA産物であり、dsRNA分子又はそのプロセシングされたRNA産物は、少なくとも19個の連続したヌクレオチドを含み、少なくとも19個の連続したヌクレオチドは、配列番号1の補体(ここで、チミン(T)は、ウラシル(U)である)と少なくとも95%同一であるか、又は配列番号3として提供されるアミノ酸配列を含むmtSSBポリペプチドをコードするmRNAの補体と少なくとも95%同一である。
【0062】
別の実施形態では、dsRNA分子は、マイクロRNA(miRNA)前駆体であり、かつ/又はそのプロセシングされたRNA産物は、miRNAである。
【0063】
別の態様では、本発明は、本発明のポリヌクレオチドをコードする核酸構築物及び/又はベクターであって、核酸構築物又はベクターが、ポリヌクレオチドをコードするDNA領域を含み、ポリヌクレオチドが、プロモーターに動作可能に連結されており、プロモーターが、穀類植物の発達中の穀粒内で、少なくとも受粉時と受粉後30日目との間の時点で発現される、核酸構築物及び/又はベクターを提供する。
【0064】
別の態様では、本発明は、本発明のポリヌクレオチド、又は本発明の核酸構築物及び/若しくはベクターを含む、細胞、組織、器官、植物部分、又は植物を提供する。
【0065】
一実施形態では、ポリヌクレオチド、核酸構築物又はベクターは、細胞、組織、器官、植物部分、又は植物のゲノム内に、好ましくは、核ゲノム内に組み込まれている。
【0066】
別の態様では、本発明は、対応する野生型穀類植物細胞に対して低減されたレベル及び/又は活性の少なくとも1つのミトコンドリアポリペプチドを含む、穀類植物細胞、それからの種子又は組織であって、レベル及び/又は活性が低減したミトコンドリアポリペプチドが、ミトコンドリア一本鎖DNA結合(mtSSB)ポリペプチド、RECA3ポリペプチド、及びTWINKLEポリペプチドのうちの少なくとも1つである、穀類植物細胞、それからの種子又は組織を提供する。
【0067】
一実施形態では、細胞、それからの種子又は組織は、胚乳、種皮、アリューロン、若しくは胚細胞であるか、又はこれを含む。
【0068】
一実施形態では、細胞は、アリューロン細胞である。
【0069】
別の態様では、本発明は、本発明の穀粒を産生し、かつ/あるいは本発明のポリペプチド、本発明のポリヌクレオチド、本発明の核酸構築物及び/若しくはベクター、又は本発明の細胞、種子若しくは組織のうちの1つ以上又は全てを含む、穀類植物を提供する。
【0070】
一実施形態では、本発明の植物は、対応する野生型植物とほぼ同じ高さを有する。
【0071】
一実施形態では、本発明の植物は、稔性雄及び雌である。
【0072】
一実施形態では、本発明の植物は、穀粒成熟の遅延を示す。
【0073】
また、圃場で成長する、少なくとも100個の本発明の穀類植物の集団が提供される。
【0074】
別の態様では、本発明は、本発明の細胞を産生する方法であって、本発明の遺伝的変動、本発明のポリヌクレオチド、又は本発明の核酸構築物及び/若しくはベクターを、細胞、好ましくは、穀類植物細胞内に導入するステップを含む、方法を提供する。
【0075】
別の態様では、本発明は、本発明の穀類植物又はそれからの穀粒を産生する方法であって、
i)本発明の遺伝的変動、本発明のポリヌクレオチド、又は本発明の核酸構築物及び/若しくはベクターを、穀類植物細胞内に導入するステップと、
ii)遺伝的変動又はポリヌクレオチドを含む穀類植物を、ステップi)から得られた細胞から得るステップと、
iii)任意選択で、穀粒をステップii)の植物から収穫するステップであって、穀粒が、遺伝的変動を含むか又はポリヌクレオチド、核酸構築物若しくはベクターについてのトランスジェニックである、収穫するステップと、
iv)任意選択で、1世代以上の子孫植物を穀粒から産生するステップであって、子孫植物が、遺伝的変動を含むか又はポリヌクレオチド、核酸構築物若しくはベクターについてのトランスジェニックである、産生するステップと、を含み、
それによって、穀類植物又は穀粒を産生する、方法を提供する。
【0076】
別の態様では、本発明は、本発明の穀類植物又はそれからの穀粒を産生する方法であって、
i)内在性遺伝子に対する変異を穀類植物細胞内に導入するステップであって、内在性遺伝子が、ミトコンドリア一本鎖DNA結合(mtSSB)ポリペプチド、RECA3ポリペプチド、又はTWINKLEポリペプチドをコードし、これにより、細胞が、対応する野生型穀類植物細胞に対して低減されたレベル及び/又は活性のミトコンドリア一本鎖DNA結合(mtSSB)ポリペプチド、RECA3ポリペプチド、又はTWINKLEポリペプチドを有する、導入するステップと、
ii)穀類植物をステップi)の細胞から得ることであって、穀類植物が、内在性遺伝子の変異を含む、得るステップと、
iii)任意選択で、穀粒をステップii)の植物から収穫するステップであって、穀粒が、変異を含む、収穫するステップと、
iv)任意選択で、1世代以上の子孫植物を穀粒から産生するステップであって、子孫植物が、変異を含む、産生するステップと、を含み、
それによって、穀類植物又は穀粒を産生する、方法を提供する。
【0077】
別の態様では、本発明は、本発明の穀類植物又は本発明の穀粒を選択する方法であって、
i)穀類植物の集団又は穀粒をスクリーニングするステップであって、穀類植物の集団又は穀粒の各々が、前駆穀類植物細胞、穀粒、又は植物の変異誘発処理から得られたものであり、穀類植物の集団又は穀粒を、本発明の穀粒の産生について、又はミトコンドリア一本鎖DNA結合(mtSSB)ポリペプチド、RECA3ポリペプチド、若しくはTWINKLEポリペプチドをコードする遺伝子内の変異の存在についてスクリーニングするステップと、
ii)穀類植物をステップ(i)の集団から選択するステップであって、穀類植物が、本発明の穀粒を産生するか又は変異を遺伝子内に含む、選択するステップと、を含み、
それによって、穀類植物又は穀粒を選択する、方法を提供する。
【0078】
別の態様では、本発明は、本発明の穀類植物を選択する方法であって、
i)1つ以上の子孫植物を穀物粒から産生するステップであって、穀物粒が、2つの親穀類植物の交雑に由来したものである、産生するステップと、
ii)ステップi)の1つ以上の子孫植物を、本発明の穀粒の産生についてスクリーニングするステップと、
iii)穀粒を産生する子孫植物を選択するステップと、を含み、
それによって、穀類植物を選択する、方法を提供する。
【0079】
一実施形態では、ステップii)は、子孫植物からのDNAを含む試料を、遺伝的変動について解析することを含む。
【0080】
一実施形態では、ステップii)は、子孫植物から得られた穀粒のアリューロンの厚さを解析することを含む。
【0081】
一実施形態では、ステップii)は、穀粒又はその一部分の栄養含有量を解析することを含む。
【0082】
一実施形態では、ステップiii)は、子孫植物を選択することであって、子孫植物が、遺伝的変動についてホモ接合性である、選択することを含む。
【0083】
一実施形態では、子孫植物の穀粒が、対応する野生型穀物粒と比較して増加したアリューロン厚さを有する、子孫植物を選択するステップiii)。
【0084】
一実施形態では、子孫植物の穀粒又はその一部分が、対応する野生型穀物粒又はその一部分と比較して変更された栄養含有量を有する、子孫植物を選択するステップiii)。
【0085】
一実施形態では、方法は、
i)2つの親穀類植物を交雑することであって、好ましくは、親穀類植物のうちの1つが、本発明の穀粒を産生する、交雑すること、又は
ii)ステップi)からの1つ以上の子孫植物を、本発明の穀粒を産生しない最初の親穀類植物と同じ遺伝子型の植物と、最初の親穀類植物の遺伝子型の大部分を有するが本発明を産生するのに十分な回数戻し交雑すること、及び
iii)本発明の穀粒を産生する子孫植物を選択することを更に含む。
【0086】
また、本発明の方法を使用して産生される穀類植物が提供される。
【0087】
また、細胞、穀類植物、又は穀物粒などの植物部分を産生するための、本発明のポリヌクレオチド、又は本発明の核酸構築物及び/若しくはベクターの使用が提供される。
【0088】
一実施形態では、使用は、本発明の穀粒を産生するための使用である。
【0089】
更なる態様では、本発明は、本発明の穀粒を産生する穀類植物を同定するための方法であって、
i)核酸試料を穀類植物から得るステップと、
ii)試料を遺伝的変動の存在又は非存在についてスクリーニングするステップであって、遺伝的変動が、対応する野生型穀類植物と比較して、植物内のミトコンドリア一本鎖DNA結合(mtSSB)ポリペプチド、RECA3ポリペプチド、又はTWINKLEポリペプチドの活性のレベルを低減する、スクリーニングするステップと、を含む、方法を提供する。
【0090】
一実施形態では、遺伝的変動は、
a)ポリヌクレオチドを発現する核酸構築物又はそれによってコードされたポリヌクレオチドであって、穀類植物内に存在するときに、ミトコンドリア一本鎖DNA結合(mtSSB)ポリペプチド、RECA3ポリペプチド、又はTWINKLEポリペプチドをコードする遺伝子の発現を低減する、ポリヌクレオチドを発現する核酸構築物又はそれによってコードされたポリヌクレオチド、及び
b)遺伝子又はそれによってコードされたmRNAであって、低減された活性を有する、変異型ミトコンドリア一本鎖DNA結合(mtSSB)ポリペプチド、RECA3ポリペプチド、又はTWINKLEポリペプチド、好ましくは、短縮型mtSSBポリペプチド、RECA3ポリペプチド、又はTWINKLEポリペプチドを発現する、遺伝子又はそれによってコードされたmRNAのうちの1つ又は両方である。
【0091】
一実施形態では、遺伝的変動の存在は、穀類植物の穀粒が、遺伝的変動を欠く対応する穀類植物と比較して、肥厚アリューロンを有することを示す。
【0092】
別の態様では、本発明は、本発明の穀粒を産生する穀類植物を同定するための方法であって、
i)穀粒を穀類植物から得るステップと、
ii)穀粒又はその一部分を、
a)肥厚アリューロン、
b)穀粒内の、ミトコンドリア一本鎖DNA結合(mtSSB)ポリペプチド、RECA3ポリペプチド、若しくはTWINKLEポリペプチドの量及び/又は活性、並びに
c)穀粒内の、ミトコンドリア一本鎖DNA結合(mtSSB)ポリペプチド、RECA3ポリペプチド、又はTWINKLEポリペプチドをコードする遺伝子によってコードされたmRNAの量のうちの1つ以上についてスクリーニングするステップと、を含む、方法を提供する。
【0093】
一実施形態では、方法は、本発明の穀類植物を同定する。
【0094】
更なる態様では、本発明は、穀類植物部分を産生する方法であって、
a)本発明の穀類植物又は少なくとも100個のこのような穀類植物を圃場で成長させることと、
b)穀類植物部分を穀類植物又は複数の穀類植物から収穫することと、を含む、方法を提供する。
【0095】
更なる態様では、本発明は、穀粒から得られる加工穀粒、又は粉、ふすま、全粒粉、麦芽、デンプン、若しくは油を製造する方法であって、
a)本発明の穀粒を得ることと、
b)穀粒を加工して、加工穀粒、粉、ふすま、全粒粉、麦芽、デンプン、又は油を製造することと、を含む、方法を提供する。
【0096】
また、本発明の穀粒若しくは本発明の穀類植物から、又は遺伝的変動を含む当該穀粒若しくは穀類植物の一部分から製造される製品が提供される。
【0097】
一実施形態では、製品は、遺伝的変動、ポリヌクレオチド、核酸構築物又はベクター、及び肥厚アリューロンのうちの1つ以上又は全てを含む。
【0098】
一実施形態では、一部分は、調理された、煮沸された、湯引かれた、焙煎された、ベーキングされた、精白された、割られた、膨化した、製粉された、又は薄片にされた穀粒又はふすまである。
【0099】
一実施形態では、製品は、食品成分、飲料成分、食品製品、又は飲料製品である。
【0100】
一実施形態では、食品成分又は飲料成分は、焙煎された穀粒、精白された穀粒、割られた穀粒、膨化した穀粒、製粉された穀粒、薄片にされた穀粒、全粒粉、粉、ふすま、デンプン、麦芽、及び油からなる群から選択される。
【0101】
一実施形態では、食品製品は、加工穀粒、調理された穀粒、煮沸された穀粒、かゆ、発酵若しくは無発酵パン、パスタ、ヌードル、動物飼料、朝食用シリアル、スナック食品、ケーキ、ペーストリ、及び粉ベースのソースを含有する食品からなる群から選択される。
【0102】
一実施形態では、飲料製品は、茶、包装された飲料、又はエタノールを含む飲料である。
【0103】
更なる態様では、本発明は、本発明の食品又は飲料成分を調製する方法であって、本発明の穀粒又は穀粒からのふすま、粉、全粒粉、麦芽、デンプン、若しくは油を加工して、食品又は飲料成分を製造することを含む、方法を提供する。
【0104】
更なる態様では、本発明は、本発明の食品又は飲料製品を調製する方法であって、好ましくは、本発明の穀粒を調理する、煮沸する、焙煎する、又は薄片にすることによって、あるいは本発明の穀粒又は穀粒からのふすま、粉、全粒粉、麦芽、デンプン、若しくは油を、別の食品又は飲料成分と混合することによって、穀粒を加工することを含む、方法を提供する。
【0105】
また、動物飼料若しくは食品としての、又は動物摂取のための飼料若しくはヒト摂取のための食品を製造するための、本発明の穀粒若しくはその一部分、又は本発明の穀類植物若しくはその一部分の使用が提供される。
【0106】
別の態様では、本発明は、本発明のポリペプチド、本発明のポリヌクレオチド、本発明の核酸構築物及び/若しくはベクター、又は本発明の細胞のうちの1つ以上と、1つ以上の許容可能な担体、好ましくは、別の食品成分と、を含む、組成物を提供する。
【0107】
本明細書のいずれの実施形態も、別途具体的に記載されない限り、任意の他の実施形態に準用すると解釈される。
【0108】
本発明の範囲は、本明細書に記載される具体的な実施形態によって限定されず、具体的な実施形態は、例示のみの目的で意図されている。機能的に均等な製品、組成物、及び方法は、明らかに、本明細書に記載される本発明の範囲内である。
【0109】
本明細書全体にわたって、別途具体的に記載されない限り又は文脈により別途必要とされない限り、単一ステップ、物質の組成物、ステップの群、又は物質の組成物の群への言及は、これらのステップ、物質の組成物、ステップの群、又は物質の組成物の群のうちの1つ及び複数(すなわち、1つ以上)を包含すると解釈される。
【0110】
本発明は、以下の非限定的な実施例によってかつ添付の図を参照して、以下に記載される。
【図面の簡単な説明】
【0111】
図1】ta1-1成熟穎花は、厚アリューロン表現型を示した。野生型(ZH11、A)及びta1-1(B)の成熟穎花;ZH11(C)及びta1-1(D)成熟穎花の横断面;ZH11(E)及びta1-1(F)成熟穎花のルゴール染色、矢印は、アリューロンを指す;DAP5日目(G)、DAP10日目(I)、DAP30日目(K)のZH11の穎花準超薄切片、及びDAP5日目(H)、DAP10日目(J)、DAP30日目(L)のta1-1の穎花準超薄切片のPAS及びクーマシーブリリアントブルー(G-250)染色。バー=A及びBにおいて2mm、C、D、E、及びFにおいて1mm、G、H、I、J、K、及びLにおいて20μm。DAP:受粉後の日数。
図2】穎花の異なる位置における野生型及びta1-1の成熟穀粒内のアリューロン細胞層の平均数。値は、平均±SD(n=15)を表し、**P<0.01。
図3】穀粒乾燥重量の経時変化の解析。DAP:受粉後の日数。データは、平均±SD(n=10)を示し、**P<0.01。
図4】ZH11(野生型)及びta1-1成熟穎花の栄養素含有量。成熟穎花内の総タンパク質(A)、粗脂質(B)、食物繊維(C)、カルシウム(D)、鉄(E)、亜鉛(F)、ビタミンB2(G)、及びビタミンB3(H)含有量が測定された。平均±SEMとして示されるデータ、n=3、(*、P<0.05;**、P<0.01)。
図5】吸水後の発芽した穀粒からのta1-1胚乳及びアリューロンのα-アミラーゼ活性アッセイ。より暗いバーは、ta1-1穀粒についてである。スチューデントt検定によって判定された場合、ZH11とta1との間の差は有意であった。*P<0.05、**P<0.01。各々のバーは、3つの試料の平均を表した。
図6】米の染色体5にマッピングされたIndelマーカーを示す、TA1マップベースのクローニング。各々の線形マップは、直上のマップからのセグメントの拡大を表す。nは、マッピングプロセスの各々の段階において使用された組換え体の数を示す。Indel=番号で同定された挿入又は欠失。各々の垂直線の下の数字は、Indelマーカーとta1-1変異との間の組換え体の数を示す。Mb、100万個の塩基対、Kb、1000個の塩基対。最下の線は、TA1遺伝子の概略図であり、塗りつぶし長方形ボックスは、タンパク質コード領域内のエクソン(アラビア数字1~6)を表し、線は、タンパク質コード領域内のイントロン(ローマ数字I~V)を表す。G~Aと標識された矢印は、厚アリューロン表現型の要因であるta1-1アレル内のG~A点変異の位置を示す。
図7】野生型TA1 cDNA(ZH11)の対応する領域のヌクレオチド配列(配列番号11)と比較しての、ta1 I、ta1 II、及びta1 IIIと標識された異なるta1-1 RNAから産生されたcDNAの領域の3つのヌクレオチド配列(配列番号12~14)のアライメント。この領域は、変異型ta1-1遺伝子からの転写物の選択的スプライシングに関与していた。
図8】野生型TA1ポリペプチド配列(ZH11、配列番号3)と比較しての、ta1-1穀粒内で産生された3つの異なるRNAから翻訳されたポリペプチドの予測アミノ酸配列(配列番号8、9、及び10)。
図9】野生型OsTA1ポリペプチド(配列番号3)のアミノ酸配列と、Zea mays(配列番号16)、Sorghum bicolor(配列番号17)、オオムギHordeum vulgare(配列番号18)、コムギTriticum aestivum(配列番号19)、Brachypodium distachyon(配列番号20)、Arabidopsis thaliana(配列番号15)、及びポプラ(配列番号21)内の相同体のアミノ酸配列とのアライメント。また、関連米配列(OsTA1L;配列番号24)が、アライメントにおいて使用された。9つの配列内の完全に保存されたアミノ酸は、アスタリスクで示され、ほとんど保存されたアミノ酸は、セミコロンで示され、同様のアミノ酸は、ドットで示される。一本鎖DNA結合(SSB)ドメインは、実バーによって示され、ミトコンドリア輸送ペプチド(MTP)を除去するための予測切断部位は、矢印によって示される。
図10】異なる米組織内のTA1遺伝子の相対発現レベル。SAM:茎頂分裂組織、DAP:受粉後の日数。全ての発現レベルは、アクチン遺伝子に正規化される。各々の試料についての3つの複製が作製され、平均±SDとして示された。
図11】ビオチン標識された45個のヌクレオチドのssDNA分子をプローブとして使用する、ssDNAへの6xHis-TA1タンパク質結合(レーン2)。非標識ssDNAを、2×(レーン3)、20×(レーン4)、及び200×(レーン5)において、競合相手ssDNAとして付加することは、移動度シフトされたビオチン標識ssDNAの量を、TA1タンパク質の存在下で漸進的に減らした。
図12】6xHis-TA1及びその変異型形態6xHis-ta1-1ポリペプチド(短縮型TA1ポリペプチド)が、ssDNAへのこれらの結合を、EMSA実験によって、ビオチン標識された45個のヌクレオチドのssDNA分子をプローブとして使用して検査するために使用された。2μgの組換えTA1タンパク質が、図11に関するアッセイを実行するために使用され、2μg、4μg、及び8μgの組換え6xHis-ta1-1ポリペプチドの勾配が、同じ条件下で使用された。
図13】異なる発達段階における米穎花のアリューロン及び胚内のTA1の発現。pTA1:TA1-GUSトランスジェニック植物からの穎花が、GUS活性について、DAP5日目(A及びG)、DAP7日目(B及びH)、DAP9日目(C及びI)、DAP11日目(D及びJ)、DAP18日目(E及びK)、及びDAP24日目(F及びL)に染色された。C、D、I、及びJにおける矢印は、アリューロン細胞層を示す。バー=A、B、C、D、E、及びFにおいて0.2cm、バー=G、H、I、J、K、及びLにおいて0.1cm。DAP:受粉後の日数。
図14】A.DAP15日目での、野生型と比較しての、発達中のta1-1穀粒のアリューロン細胞の各々の切片内のミトコンドリアの数(n=10)。B.DAP11日目での野生型及びta1-1アリューロン内のATP含有量。データは、平均±SDとして示される。n=3;**は、P<0.01を示す。
図15】RNAiを使用する、米内のRecA3及びTWINKLE遺伝子の下向き調節。上部パネルは、RecA3及びTWINKLE遺伝子についての概略マップを示し、エクソンが、黒ボックスとして示され、イントロンが、ボックス間の線として示される。RNAi構築物のために選択された遺伝子の領域(エクソンのみ)が示される。b及びc。定量的RT-PCRが、3つの形質転換された米植物の穀粒内のmRNAレベルを、RNAi構築物の各々について測定するために使用され、これは、低減された発現を、選択された植物の各々内で示した。
図16】異なる植物種、主に、穀類からのmtSSBタンパク質の系統発生解析。タンパク質配列は、ClustalWでアライメントされ、系統発生は、MEGA7で、近隣結合法を使用して生成された。
図17】いくつかの穀類を含む異なる植物種からのTWINKLEタンパク質の系統発生解析。タンパク質配列は、ClustalWでアライメントされ、系統発生は、MEGA7で、近隣結合法を使用して生成された。
【0112】
配列表の鍵
配列番号1-野生型米TA1遺伝子のヌクレオチド配列、遺伝子座Os05g43440。ヌクレオチド1~1024、TA1プロモーター及び5’UTR;1025~1027、ATG翻訳開始コドン;タンパク質コード領域は、ヌクレオチド1025~1094、1176~1339、1425~1633、1771~1871、2127~2186、及び2353~2369である。ヌクレオチド1095~1175、イントロン1;1340~1424、イントロン2;1634~1770、イントロン3;1872~2126、イントロン4;2187~2352、イントロン5。翻訳終止は、ヌクレオチド2367~2369である。
【0113】
配列番号2-TAG終止コドンを含む野生型TA1遺伝子のcDNAのタンパク質コード領域のヌクレオチド配列。
【0114】
配列番号3-野生型TA1(OsmtSSB)ポリペプチドのアミノ酸配列。
【0115】
配列番号4-米ta1-1(変異型)遺伝子のヌクレオチド配列、遺伝子座Os05g43440。ta1-1変異は、イントロン4の最後のヌクレオチドであるヌクレオチド2126(G2126A)にある。ヌクレオチド1~1024、TA1プロモーター及び5’UTR;1025~1027、ATG翻訳開始コドン;タンパク質コード領域は、ヌクレオチド1025~1094、1176~1339、1425~1633、1771~1871、2127~2186、及び2353~2369である。ヌクレオチド1095~1175、イントロン1;1340~1424、イントロン2;1634~1770、イントロン3;1872~2126、イントロン4;2187~2352、イントロン5。翻訳終止は、ヌクレオチド2367~2369である。
【0116】
配列番号5-翻訳開始ATGから野生型TA1終止コドンTAGまでのta1-1 I cDNAのヌクレオチド配列。
【0117】
配列番号6-翻訳開始ATGから野生型TA1終止コドンTAGまでのta1-1 II cDNAのヌクレオチド配列。
【0118】
配列番号7-翻訳開始ATGから野生型TA1終止コドンTAGまでのta1-1 III cDNAのヌクレオチド配列。
【0119】
配列番号8-ta1-1 Iポリペプチドの予測アミノ酸配列。
【0120】
配列番号9-ta1-1 IIポリペプチドの予測アミノ酸配列。
【0121】
配列番号10-ta1-1 IIポリペプチドの予測アミノ酸配列。
【0122】
配列番号11-野生型TA1遺伝子からのcDNAの領域のヌクレオチド配列。
【0123】
配列番号12-ta1-1遺伝子からのcDNA Iの領域のヌクレオチド配列。
【0124】
配列番号13-ta1-1遺伝子からのcDNA IIの領域のヌクレオチド配列。
【0125】
配列番号14-ta1-1遺伝子からのcDNA IIIの領域のヌクレオチド配列。
【0126】
配列番号15-Arabidopsis thaliana内のTA1相同タンパク質のアミノ酸配列。
【0127】
配列番号16-Zea mays内のTA1相同タンパク質のアミノ酸配列。
【0128】
配列番号17-Sorghum bicolor内のTA1相同タンパク質のアミノ酸配列。
【0129】
配列番号18-Hordeum vulgare内のTA1相同タンパク質のアミノ酸配列。
【0130】
配列番号19-TamtSSB-1aの予測アミノ酸配列;Triticum aestivum内のD。
【0131】
配列番号20-Brachypodium distachyon内のTA1相同タンパク質のアミノ酸配列。
【0132】
配列番号21-ポプラ、Populus trichocarpa内のTA1相同タンパク質のアミノ酸配列。
【0133】
配列番号22-TamtSSB-1aの予測アミノ酸配列;Triticum aestivum内のB。
【0134】
配列番号23-Setaria italica内のSimtSSB-1aの予測アミノ酸配列。
【0135】
配列番号24-Oryza sativa内のTA1様(OsmtSSB-1b)タンパク質のアミノ酸配列。
【0136】
配列番号25-Setaria italica内のSimtSSB-1bの予測アミノ酸配列。
【0137】
配列番号26-Hordeum vulgare、亜種vulgare内のHvmtSSB-1bの予測アミノ酸配列。
【0138】
配列番号27-TamtSSB-1bの予測アミノ酸配列;Triticum aestivum内のA。
【0139】
配列番号28-TamtSSB-1bの予測アミノ酸配列;Triticum aestivum内のB。
【0140】
配列番号29-TamtSSB-1bの予測アミノ酸配列;Triticum aestivum内のD。
【0141】
配列番号30-Oryza sativa、Japonica群内のOsmtSSB-2の予測アミノ酸配列。
【0142】
配列番号31-Arabidopsis thaliana内のAtmtSSB-2の予測アミノ酸配列。
【0143】
配列番号32-Sorghum bicolor内のSbmtSSB-2の予測アミノ酸配列。
【0144】
配列番号33-Zea mays内のZmmtSSB-2の予測アミノ酸配列。
【0145】
配列番号34-Setaria italica内のSimtSSB-2の予測アミノ酸配列。
【0146】
配列番号35-Hordeum vulgare、亜種vulgare内のHvmtSSB-2の予測アミノ酸配列。
【0147】
配列番号36-TamtSSB-2の予測アミノ酸配列;Triticum aestivum内のA。
【0148】
配列番号37-TamtSSB-2の予測アミノ酸配列;Triticum aestivum内のB。
【0149】
配列番号38-TamtSSB-2の予測アミノ酸配列;Triticum aestivum内のD。
【0150】
配列番号39-Populus trichocarpa内のPtmtSSB-2の予測アミノ酸配列。
【0151】
配列番号40-Mus musculus内のMmmtSSBの予測アミノ酸配列。
【0152】
配列番号41-Homo sapiens内のHsmtSSBの予測アミノ酸配列。
【0153】
配列番号42-Drosophila melanogaster内のDmmtSSBの予測アミノ酸配列。
【0154】
配列番号43-Saccharomyces cerevisiae内のScmtSSBの予測アミノ酸配列。
【0155】
配列番号44-Escherichia coli内のEcmtSSBの予測アミノ酸配列。
【0156】
配列番号45-アミノ酸モチーフ;42aa。
【0157】
配列番号46-アミノ酸モチーフ;14aa。
【0158】
配列番号47-アミノ酸モチーフ;24aa。
【0159】
配列番号48-アミノ酸モチーフ;9aa。
【0160】
配列番号49-TA1発現パターンを解析するために使用されるヌクレオチド配列。ヌクレオチド1~3208は、TA1プロモーター及び5’UTRを含有した;3209~3211、ATG翻訳開始コドン;タンパク質コード領域は、ヌクレオチド3209~3278、3360~3523、3609~3817、3955~4055、4311~4370、及び4537~4553である。ヌクレオチド3279~3359、イントロン1;3524~3608、イントロン2;3818~3954、イントロン3;4056~4310、イントロン4;4371~4536、イントロン5。翻訳終止及び以下のGUSタンパク質コード領域は、この配列内に含まれない。
【0161】
配列番号50-ta1マッピングのための分子マーカーIndel 559を検出するためのフォワードプライマーのヌクレオチド配列。
【0162】
配列番号51-ta1マッピングのための分子マーカーIndel 559を検出するためのリバースプライマーのヌクレオチド配列。
【0163】
配列番号52-ta1マッピングのための分子マーカーIndel 548を検出するためのフォワードプライマーのヌクレオチド配列。
【0164】
配列番号53-ta1マッピングのための分子マーカーIndel 548を検出するためのリバースプライマーのヌクレオチド配列。
【0165】
配列番号54-ta1マッピングのための分子マーカーIndel 562を検出するためのフォワードプライマーのヌクレオチド配列。
【0166】
配列番号55-ta1マッピングのための分子マーカーIndel 562を検出するためのリバースプライマーのヌクレオチド配列。
【0167】
配列番号56-ta1マッピングのための分子マーカーIndel 583を検出するためのフォワードプライマーのヌクレオチド配列。
【0168】
配列番号57-ta1マッピングのための分子マーカーIndel 583を検出するためのリバースプライマーのヌクレオチド配列。
【0169】
配列番号58-TA1及びta1-1遺伝子の転写物を検出するためのフォワードプライマーのヌクレオチド配列。
【0170】
配列番号59-TA1及びta1-1遺伝子の転写物を検出するためのリバースプライマーのヌクレオチド配列。
【0171】
配列番号60-EMSA実験において使用されるプローブのヌクレオチド配列。
【0172】
配列番号61-米RECA3 DNA修復タンパク質、Oryza sativa、Japonica群のアミノ酸配列。
【0173】
配列番号62-米RECA3遺伝子、Oryza sativa、Japonica群、品種Nipponbare染色体1のヌクレオチド配列。
【0174】
配列番号63-米RECA3遺伝子、ミトコンドリアRECA3、Oryza sativa、Japonica群、品種NipponbareについてのcDNAのヌクレオチド配列。
【0175】
配列番号64-米TWINKLE葉緑体/ミトコンドリアDNA修復タンパク質、Oryza sativa、Japonica群のアミノ酸配列。
【0176】
配列番号65-米TWINKLE遺伝子、Oryza sativa、Japonica群、品種Nipponbare染色体6のヌクレオチド配列。
【0177】
配列番号66-Oryza sativa、Japonica群、品種Nipponbareからの米TWINKLE遺伝子、葉緑体/ミトコンドリアについてのcDNAのヌクレオチド配列。タンパク質コード領域は、ヌクレオチド153~2321である。
【0178】
配列番号67-RECA3 DNA修復タンパク質、ミトコンドリア、Brachypodium distachyonのアミノ酸配列。
【0179】
配列番号68-RECA3遺伝子、ミトコンドリアRECA3、Brachypodium distachyonについてのcDNAのヌクレオチド配列。タンパク質コード領域は、ヌクレオチド196~1482である。
【0180】
配列番号69-RECA3 DNA修復タンパク質、ミトコンドリア、Sorghum bicolorのアミノ酸配列。
【0181】
配列番号70-モロコシRECA3遺伝子、ミトコンドリアRECA3、Sorghum bicolorについてのcDNAのヌクレオチド配列。タンパク質コード領域は、ヌクレオチド230~1510である。
【0182】
配列番号71-トウモロコシRECA3 DNA修復タンパク質、ミトコンドリア、Zea maysのアミノ酸配列。
【0183】
配列番号72-トウモロコシRECA3遺伝子、ミトコンドリアRECA3、Zea maysについてのcDNAのヌクレオチド配列。タンパク質コード領域は、ヌクレオチド59~1333である。
【0184】
配列番号73-オオムギRECA3 DNA修復タンパク質、ミトコンドリア、Hordeum vulgare、亜種vulgareのアミノ酸配列。
【0185】
配列番号74-オオムギRECA3遺伝子、ミトコンドリアRECA3、Hordeum vulgare、亜種vulgareについてのcDNAのヌクレオチド配列。タンパク質コード領域は、ヌクレオチド122~1408である。
【0186】
配列番号75-コムギRECA3 DNA修復タンパク質、ミトコンドリア、Triticum aestivum品種のアミノ酸配列。
【0187】
配列番号76-Triticum aestivum、品種Chinese SpringからのコムギRECA3遺伝子についてのcDNAのヌクレオチド配列。タンパク質コード領域は、ヌクレオチド112~1416である。
【0188】
配列番号77-Aegilops tauschii、亜種tauschiiからのRECA3 DNA修復タンパク質、ミトコンドリアのアミノ酸配列。
【0189】
配列番号78-Aegilops tauschii、亜種tauschiiからのミトコンドリアRECA3をコードするRECA3遺伝子についてのcDNAのヌクレオチド配列。タンパク質コード領域は、ヌクレオチド129~1427である。
【0190】
配列番号79-Triticum turgidum、亜種durumからのRECA3 DNA修復タンパク質、ミトコンドリアのアミノ酸配列。
【0191】
配列番号80-Brachypodium distachyonからのTWINKLE相同タンパク質、葉緑体/ミトコンドリアのアミノ酸配列。
【0192】
配列番号81-Brachypodium distachyonからの葉緑体/ミトコンドリアTWINKLEタンパク質をコードするTWINKLE遺伝子についてのcDNAのヌクレオチド配列。タンパク質コード領域は、ヌクレオチド132~2300である。
【0193】
配列番号82-Sorghum bicolorからのTWINKLE相同タンパク質、葉緑体/ミトコンドリアのアミノ酸配列。
【0194】
配列番号83-Sorghum bicolorからの葉緑体/ミトコンドリアTWINKLEタンパク質をコードするTWINKLE遺伝子についてのcDNAのヌクレオチド配列。タンパク質コード領域は、ヌクレオチド154~2436である。
【0195】
配列番号84-Zea maysからのTWINKLE相同タンパク質、葉緑体/ミトコンドリアのアミノ酸配列。
【0196】
配列番号85-Zea maysからの葉緑体/ミトコンドリアTWINKLEタンパク質をコードするTWINKLE遺伝子についてのcDNAのヌクレオチド配列。タンパク質コード領域は、ヌクレオチド144~2351である。
【0197】
配列番号86-Aegilops tauschii、亜種tauschiiからのTWINKLE相同タンパク質、葉緑体/ミトコンドリアのアミノ酸配列。
【0198】
配列番号87-Aegilops tauschii、亜種tauschii、転写物バリアントX1からの葉緑体/ミトコンドリアTWINKLEタンパク質をコードするTWINKLE遺伝子についてのcDNAのヌクレオチド配列。タンパク質コード領域は、ヌクレオチド32~2209である。
【0199】
配列番号88-Panicum hallii、アイソフォームX1からのTWINKLE相同タンパク質、葉緑体/ミトコンドリアのアミノ酸配列。
【0200】
配列番号89-Panicum hallii、転写物バリアントX1からの葉緑体/ミトコンドリアTWINKLEタンパク質をコードするTWINKLE遺伝子についてのcDNAのヌクレオチド配列。タンパク質コード領域は、ヌクレオチド100~2343である。
【0201】
配列番号90-Setaria viridis、アイソフォームX1からのTWINKLE相同タンパク質、葉緑体/ミトコンドリアのアミノ酸配列。
【0202】
配列番号91-Setaria viridis、転写物バリアントX1からの葉緑体/ミトコンドリアTWINKLEタンパク質をコードするTWINKLE遺伝子についてのcDNAのヌクレオチド配列。タンパク質コード領域は、ヌクレオチド70~2346である。
【0203】
配列番号92-Nicotiana tabacumからのTWINKLE相同タンパク質、葉緑体/ミトコンドリアのアミノ酸配列。
【0204】
配列番号93-Nicotiana tabacumからの葉緑体/ミトコンドリアTWINKLEタンパク質をコードするTWINKLE遺伝子についてのcDNAのヌクレオチド配列。タンパク質コード領域は、ヌクレオチド103~2199である。
【0205】
配列番号94-Solanum tuberosumからのTWINKLE相同タンパク質、葉緑体/ミトコンドリアのアミノ酸配列。
【0206】
配列番号95-Solanum tuberosumからの葉緑体/ミトコンドリアのTWINKLEタンパク質をコードするTWINKLE遺伝子についてのcDNAのヌクレオチド配列。タンパク質コード領域は、ヌクレオチド92~2176である。
【0207】
配列番号96-Solanum lycopersicum、アイソフォームX1からのTWINKLE相同タンパク質、葉緑体/ミトコンドリアのアミノ酸配列。
【0208】
配列番号97-Solanum lycopersicum、転写物バリアントX1からの葉緑体/ミトコンドリアTWINKLEタンパク質をコードするTWINKLE遺伝子についてのcDNAのヌクレオチド配列。タンパク質コード領域は、ヌクレオチド138~2228である。
【0209】
配列番号98-TILLINGアッセイにおいて使用されるTA1-1Fプライマー。
【0210】
配列番号99-TILLINGアッセイにおいて使用されるTA1-1Rプライマー。
【発明を実施するための形態】
【0211】
一般的な技法及び定義
別途具体的に定義されない限り、本明細書で使用される全ての技術及び科学用語は、(例えば、細胞培養、分子遺伝学、植物分子生物学、タンパク質化学、及び生化学における)当業者によって一般的に理解される意味と同じ意味を有すると解釈される。
【0212】
別途示されない限り、本発明で使用される組換えタンパク質、細胞培養、及び免疫学的技法は、当業者に周知の標準的な手順である。このような技法は、J.Perbal,A Practical Guide to Molecular Cloning,John Wiley and Sons(1984)、J.Sambrook et al.,Molecular Cloning:A Laboratory Manual,Cold Spring Harbour Laboratory Press(1989)、T.A.Brown(editor),Essential Molecular Biology:A Practical Approach,Volumes 1 and 2,IRL Press(1991)、D.M.Glover and B.D.Hames(editors),DNA Cloning:A Practical Approach,Volumes 1-4,IRL Press(1995及び1996)、及びF.M.Ausubel et al.(editors),Current Protocols in Molecular Biology,Greene Pub.Associates and Wiley-Interscience(1988、現在までの全ての更新を含む)、Ed Harlow and David Lane(editors)Antibodies:A Laboratory Manual,Cold Spring Harbour Laboratory,(1988)、及びJ.E.Coligan et al.(editors)Current Protocols in Immunology,John Wiley & Sons(現在までの全ての更新を含む)などの供給源の文献全体にわたって記載及び説明されている。
【0213】
「及び/又は」という用語、例えば、「X及び/又はY」は、「X及びY」又は「X又はY」のいずれかを意味すると理解され、両方の意味又はいずれかの意味の明白な支持を提供すると解釈される。
【0214】
本明細書で使用される場合、「約」という用語は、反して記載されない限り、指定される値の+/-10%、より好ましくは、+/-5%、より好ましくは、+/-2.5%、更により好ましくは、+/-1%を指す。「約」という用語は、正確な指定される値を含む。
【0215】
本明細書全体にわたって、「含む(comprise)」という語、又は「含む(comprises)」若しくは「含むこと(comprising)」などの変形は、記載される要素、整数、若しくはステップ、又は要素、整数、若しくはステップの群の包含を意味するが、任意の他の要素、整数、若しくはステップ、又は要素、整数、若しくはステップの群の除外を意味しないと理解される。
【0216】
選択された定義
「アリューロン」及び「アリューロン層」という用語は、互換的に本明細書で使用される。アリューロン層は、穀物粒の胚乳の最外層であり、内側のデンプン性胚乳とは異なり、デンプン性胚乳と、胚の一部分と、を包囲する。したがって、アリューロン層を構成する細胞は、穀粒のデンプン構成要素である胚乳の最外細胞である。アリューロンは、技術的には胚乳の一部分であり、しばしば、周囲胚乳と称されるが、穀粒が精白されるときに、例えば、米穀粒が製粉されて「白米」が製造されるときに、アリューロンは、ふすまの果皮及び種皮層とともに除去されるため、実用的な観点から、ふすまの一部分と考えられる。デンプン性胚乳の細胞とは異なり、アリューロン細胞は、穀粒成熟において依然として生存している。アリューロン層は、ミネラル、ビタミンA及びB群ビタミンなどのビタミン、植物化学物質、並びに繊維を含む穀物粒の栄養価の重要な部分である。
【0217】
本発明の穀粒のいずれかの1つの断面点において、断面内のいずれかの単一点において又は断面間で観察される細胞層は、ある程度変動し得ることに少なくとも部分的に起因して、本発明の実施形態は、一連の数の「細胞層」に関する。より具体的には、例えば、7つの細胞層を有するアリューロンは、内側のデンプン性胚乳全体を包囲する7つの層を有さなくてもよいが、内側のデンプン性胚乳の少なくとも一部分、好ましくは、デンプン性胚乳の少なくとも半分を包囲する7つの層を有する。
【0218】
本発明の穀粒のアリューロンに関して使用されるときに、「肥厚」という用語は、本発明の穀粒を対応する野生型穀物粒と比較するときに使用される相対用語である。この文脈において、本発明の穀粒は、遺伝子改変を含み、遺伝子改変は、遺伝子改変を欠く野生型穀粒に対して肥厚アリューロンをもたらす。本発明の穀粒のアリューロンは、対応する野生型穀物粒のアリューロンと比較して増加した細胞数及び/又は増加した細胞層数、好ましくは、両方を有する。それによって、アリューロンは、μmで測定された場合、例えば、顕微鏡法によって判定された場合、増加した厚さを有する。一実施形態では、厚さは、少なくとも50%、好ましくは、少なくとも100%増加し、500%又は600%と同程度に増加し得、各々の百分率は、対応する野生型穀物粒のアリューロンの厚さに対してである。一実施形態では、増加は、50%~100%、又は100%~200%、又は200%~300%、又は300%~400%若しくは500%である。一実施形態では、各々の百分率増加又は増加の百分率の範囲は、少なくとも穀粒の腹側にわたる、好ましくは、全穀粒にわたる平均増加である。好ましい実施形態では、アリューロン層の厚さは、穀粒の断面全体にわたって判定される。一実施形態では、アリューロンの厚さは、少なくとも穀粒の腹側における解析によって判定される。別の実施形態では、本発明の穀粒の肥厚アリューロンは、対応する野生型穀物粒の細胞と比較して、様々なサイズ及び不規則な配向の細胞を含み、対応する野生型穀物粒において、アリューロンは、概して、規則的に配向された長方形細胞を有する。「肥厚アリューロン」のこれらの特徴の組み合わせの全てが企図される。
【0219】
ポリペプチド
「ポリペプチド」及び「タンパク質」という用語は、概して、互換的に本明細書で使用され、ペプチド結合と連結されたアミノ酸のポリマーを意味する。
【0220】
本明細書で使用される場合、対応する野生型穀物粒に対して「低減されたレベル」の少なくとも1つのミトコンドリアポリペプチドという用語又は同様の語句は、タンパク質の総量が低減されるという相対用語である。これは、当技術分野の標準的な技法によって、例えば、ポリペプチドをコードする遺伝子の一部分又は全体の欠失によって達成され得、これは、ポリペプチドを欠く穀粒をもたらす。このような変異は、ヌル変異である。一実施形態では、タンパク質のレベル/量は、対応する野生型穀物粒と比較して、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも99%低減される又は完全に欠ける。
【0221】
本明細書で使用される場合、対応する野生型穀物粒内の対応するポリペプチドに対して「低減された活性」の少なくとも1つのミトコンドリアポリペプチドという用語又は同様の語句は、特定のタンパク質活性の総量が低減されるという相対用語である。一実施形態では、タンパク質の活性は、対応する野生型穀物粒と比較して、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも99%低減される又は完全に消失する。この事例では、タンパク質の総量は、対応する野生型穀粒と比較して、本発明の穀粒内でほぼ同じであることができるが、本発明の穀粒内のポリペプチドは、対応する野生型穀粒内の対応するポリペプチドと比較して、少なくとも1つのアミノ酸の差を有し、これにより、本発明の穀粒内のタンパク質機能が低減される。
【0222】
本明細書で使用される場合、「ミトコンドリア一本鎖DNA結合ポリペプチド」又は「mtSSB」という用語は、一本鎖DNAに結合し、穀物粒のミトコンドリア内に見出され得るタンパク質のファミリーのメンバー、及び改変され、それによって、低減された結合活性を有する又は結合活性を有しない相同タンパク質を指す。野生型タンパク質は、改変されたタンパク質が行い得るように、一本鎖DNAへの結合を介して、DNA複製、組換え、及び修復において役割を果たす。穀物粒のミトコンドリアは、典型的には、mtSSB-1a、mtSSB-1b、及びmtSSB-2と称される、mtSSBの3つの異なるサブファミリーを有するが、いくつかの穀類は、2つのサブファミリー、すなわち、mtSSB-1及びmtSSB-2のみを有する。本発明者らは、野生型に対して、穀物粒内のmtSSB-1a又はmtSSB-1結合活性を低減することは、アリューロン厚さの増加をもたらすことを見出した。mtSSBポリペプチドは、野生型穀類植物内に見出されるこのようなポリペプチド、並びに人工的に産生されるか又は自然に見出されるそのバリアントを含み、一本鎖DNA結合活性DNA活性を有してもよく又は有さず、これは、ある一本鎖DNA結合活性を有するが、対応する野生型mtSSBポリペプチドと比較して低減されたレベルで有するmtSSBポリペプチドを含む。本明細書で実証されるように、野生型mtSSB-1aポリペプチドは、ssDNAに結合するのみでなく、2つの他のミトコンドリアポリペプチド、すなわち、TWINKLE及びRECA3にも結合する。一実施形態では、低減された活性を有するmtSSBバリアントを含む本発明のmtSSBポリペプチドは、TWINKLEポリペプチドに結合する。一実施形態では、低減された活性を有するmtSSBバリアントを含む本発明のmtSSBポリペプチドは、RECA3ポリペプチドに結合する。一実施形態では、本発明のmtSSBポリペプチドは、mtSSBのオリゴマー、特に、ホモ二量体を形成することが可能である。一実施形態では、野生型穀粒mtSSBポリペプチドは、配列番号3若しくは15~39のうちのいずれか1つで提供されるアミノ酸配列、又は配列番号3若しくは15~39のうちのいずれか1つ以上と少なくとも75%同一であるアミノ酸配列を含む。好ましい実施形態では、野生型穀粒mtSSBポリペプチドは、配列番号3、16~20若しくは23のうちのいずれか1つで提供されるアミノ酸配列、又は参照配列の完全長に沿って、配列番号3、16~20若しくは23のうちのいずれか1つ以上と少なくとも75%同一であるアミノ酸配列を含む。
【0223】
本明細書に開示される野生型mtSSBは、典型的には、ミトコンドリア標的ペプチド(MTP)をN末端において含むときに、200個~215個のアミノ酸残基の長さを有し、MTPによる切断後に、170個~190個の残基の長さを有する。本発明の変異型mtSSBポリペプチドは、MTPを有して、mtSSB遺伝子内の挿入の非存在下で、最大215個のアミノ酸残基の長さであってもよいが、変異型mtSSBポリペプチドが、中途翻訳終結変異を含む変異型遺伝子によってC末端短縮又はコードされている場合、より短く、更にはるかに短くてもよい。一実施形態では、本発明のmtSSBポリペプチドは、DNA結合ドメインの少なくとも一部分を欠き、例えば、アミノ酸GKIを、DNA結合ドメインのC末端において欠く(例えば、図8を参照されたい)。
【0224】
一実施形態では、本発明の穀粒は、少なくとも1つのmtSSBポリペプチドを有し、少なくとも1つのmtSSBポリペプチドは、対応する野生型mtSSBポリペプチドのアミノ酸配列とは異なる配列を有するか又は野生型mtSSBポリペプチドを欠く。関連する実施形態では、本発明の穀粒は、内在性遺伝子を有し、内在性遺伝子は、少なくとも1つの(変異型)mtSSBポリペプチドをコードし、少なくとも1つの(変異型)mtSSBポリペプチドが、穀粒内で発現されないか又は不安定であり、穀粒内に蓄積しない場合でも、この変異型ポリペプチドは、対応する野生型mtSSBポリペプチドのアミノ酸配列とは異なる配列を有する。
【0225】
本明細書で使用される場合、「対応する野生型mtSSBポリペプチドのアミノ酸配列とは異なる配列を有する」という用語又は同様の語句は、本発明のかつ/又は本発明の穀粒内のmtSSBポリペプチドのアミノ酸配列が、mtSSBポリペプチドが由来しかつ/又は最も密接に関連する、自然に存在するタンパク質のアミノ酸配列とは異なるという比較用語である。一実施形態では、mtSSBポリペプチドのアミノ酸配列は、対応する野生型アミノ酸配列に対して、1つ以上の挿入、欠失、又はアミノ酸置換(又はこれらの組み合わせ)を有し得る。mtSSBポリペプチドは、対応する野生型mtSSBポリペプチドに対して、2つ、3つ、4つ、5つ、又は6つ~10個のアミノ酸置換を有し得る。好ましい実施形態では、mtSSBポリペプチドは、C末端短縮されており、例えば、野生型mtSSBポリペプチドのC末端14個のアミノ酸、又は20個のアミノ酸、又は21個のアミノ酸以上を欠く(例えば、表4を参照されたい)。このような短縮型mtSSBポリペプチドは、例えば、mtSSB遺伝子であって、mtSSB遺伝子が由来する野生型mtSSB遺伝子に対して、中途翻訳終止コドンをタンパク質オープンリーディングフレーム内に含む、mtSSB遺伝子によってコードされてもよく、又は変異型遺伝子であって、野生型RNA転写物とは異なってスプライシングされたRNA転写物を産生する、変異型遺伝子、例えば、スプライス部位変異を含む遺伝子によってコードされてもよい。別の実施形態では、低減された活性を有するmtSSBポリペプチドは、対応する野生型ポリペプチドに対して、単一挿入、単一欠失、又は単一アミノ酸置換のみを有する。この文脈において、「単一挿入」及び「単一欠失」は、複数(例えば、2つ、3つ、4つ、5つ、6つ、7つ、8つ、9つ、10個以上)の連続したアミノ酸が、それぞれ、挿入されている又は欠失している場合を含み、「対応する野生型ポリペプチド」とは、バリアントが由来する野生型ポリペプチド及び/又はバリアントが最も密接に関連する自然ポリペプチドを意味する。実施例13に実証されるように、このような変異は、タンパク質のコード領域内のいずれかの位置、好ましくは、mtSSBポリペプチドのDNA結合ドメインをコードする遺伝子の領域内のいずれかの位置にあることができる。
【0226】
本明細書で使用される場合、「mtSSBポリペプチド活性」という用語又はその変形は、野生型mtSSBポリペプチド又はそのバリアントの少なくとも1つの生物学的作用を指す。一例では、この用語は、一本鎖DNAへのポリペプチド又はそのオリゴマーの結合の強度又はその欠如を指す。したがって、一実施形態では、短縮型mtSSBポリペプチドなどの本発明のmtSSBポリペプチドは、野生型mtSSBポリペプチド、例えば、配列番号3又は15~39のうちのいずれか1つで提供されるアミノ酸配列を含むものと比較して、低減された一本鎖DNA結合活性を有するか又は一本鎖DNA結合活性を有しない。この文脈において、比較は、既知のmtSSBポリペプチド配列とのアミノ酸アライメントによって判定された場合、本発明のmtSSBポリペプチドに最も近い配列である野生型mtSSBポリペプチドとの比較、又は本発明のmtSSBポリペプチドが変異によって由来する野生型mtSSBポリペプチドとの比較である。一実施形態では、本発明のmtSSBポリペプチドは、DNA結合ドメインの少なくとも一部分を欠くか(図9を参照されたい)、又は一本鎖DNAに、対応する野生型mtSSBポリペプチド(例えば、配列番号3で提供されるものなど)よりも弱く結合する(C末端短縮型バリアントなどの)バリアントDNA結合ドメインを有する。一例では、この用語は、本発明のTWINKLEポリペプチドへのポリペプチド又はそのオリゴマーの結合の強度又はその欠如を指す。一例では、この用語は、本発明のRECA3ポリペプチドへのポリペプチド又はそのオリゴマーの結合の強度又はその欠如を指す。
【0227】
低減された一本鎖DNA結合活性は、当該技術分野の標準的なアッセイを使用することによって容易に判定され得る。例えば、一本鎖DNA結合は、(ゲル移動度シフトアッセイとしても既知の)電気泳動移動度シフトアッセイ、例えば、Farr et al.(2004)及びCiesielski et al.(2016)に記載されているもの、又は好ましくは、本明細書の実施例1及び9に記載されるものを使用して測定され得る。このようなアッセイにおいて、一本鎖DNA基質及びポリペプチドが、反応混合物に付加され、一本鎖DNA基質及びポリペプチドがタンパク質-DNA複合体内にアセンブルするかを判定するために使用されるゲル電気泳動。
【0228】
本明細書で使用される場合、「ミトコンドリア一本鎖DNA結合ポリペプチド-1a」、「mtSSB-1a」、又は「TA1」という用語及びそれらの変形は、mtSSBのサブファミリーであって、mtSSBのサブファミリーの野生型タンパク質が、例えば、配列番号3若しくは15~23のうちのいずれか1つで提供されるアミノ酸配列、又は参照配列の完全長に沿って、配列番号3若しくは15~23のうちのいずれか1つ以上と少なくとも75%同一であるアミノ酸配列を含む、mtSSBのサブファミリーを指す。これらの用語の変形には、mtSSB-1aポリペプチドが含まれ、mtSSB-1aポリペプチドは、ポリペプチドをコードする内在性遺伝子内の変異の結果として、低減されたssDNA結合活性を有するか又はssDNA結合活性を欠く。一実施形態では、野生型OsmtSSB-1aポリペプチドは、以下のモチーフ:配列番号3のアミノ酸73~114に対応するFRGVHRAI(I/L)CGKVGQ(V/A)P(V/L)QKILRNG(R/H)T(V/I)T(V/I)FT(V/I)GTGGMFDQR(モチーフI、配列番号45)、配列番号3のアミノ酸122~135に対応するP(K/M)PAQWHRI(A/S)(V/I)H(N/S)(D/E)(モチーフII、配列番号46)、配列番号3のアミノ酸141~164に対応するAVQ(K/Q)L(V/T)KNS(A/S)VY(V/I)EG(D/E)IE(T/I)R(V/I)YND(モチーフIII、配列番号47)、及び配列番号3のアミノ酸176~184に対応するIC(L/V/I)R(R/G)DGKI(モチーフIV、配列番号48)のうちの1つ以上又は全てを有する。低減されたOsmtSSB-1aポリペプチド活性を有するポリペプチドの例としては、配列番号8、配列番号9、若しくは配列番号10として記載のアミノ酸配列又はその短縮型バージョンを有するもの、あるいは参照配列の完全長に沿って、配列番号8、配列番号9、又は配列番号10として記載のアミノ酸配列のうちの1つ以上と少なくとも75%同一であるアミノ酸配列を有するものが挙げられる。
【0229】
本明細書で使用される場合、「ミトコンドリア一本鎖DNA結合ポリペプチド-1b」又は「mtSSB-1b」という用語及びそれら変形は、mtSSBのサブファミリーであって、mtSSBのサブファミリーの野生型タンパク質が、例えば、配列番号24~29のうちのいずれか1つで提供されるアミノ酸配列、又は参照配列の完全長に沿って、配列番号24~29のうちのいずれか1つ以上と少なくとも75%同一であるアミノ酸配列を含む、mtSSBのサブファミリーを指す。mtSSB-1aポリペプチドは、mtSSB-1bポリペプチドのセット内に含まれない。
【0230】
本明細書で使用される場合、「ミトコンドリア一本鎖DNA結合ポリペプチド-2」又は「mtSSB-2」という用語及びそれらの変形は、mtSSBのサブファミリーであって、mtSSBのサブファミリーの野生型タンパク質が、例えば、配列番号30~39のうちのいずれか1つで提供されるアミノ酸配列、又は参照配列の完全長に沿って、配列番号30~39のうちのいずれか1つ以上と少なくとも75%同一であるアミノ酸配列を含む、mtSSBのサブファミリーを指す。mtSSB-1aポリペプチドは、mtSSB-2ポリペプチドのセット内に含まれない。
【0231】
本明細書で使用される場合、「TWINKLE」という用語は、野生型穀物粒のミトコンドリア内に見出され得、かつヘリカーゼ活性を有するタンパク質ファミリー及びその変異型バリアントを指す。野生型TWINKLEタンパク質は、ミトコンドリアDNA複製において役割を果たす。ヘリカーゼは、ヌクレオチド三リン酸(NTP)加水分解からのエネルギーを使用して、二本鎖DNAの巻き戻しを触媒する。本発明者らは、穀物粒内、好ましくは、米穀粒内の野生型TWINKLE活性を低減する(が、排除しない)ことが、アリューロン厚さの増加をもたらすことを見出した(実施例15を参照されたい)。TWINKLEポリペプチドは、野生型穀類植物内に見出されるこのようなポリペプチド及び人工的に産生されるか又は自然に見出されるそのバリアントを含み、いずれもヘリカーゼ活性を有するか又は有さず、これは、あるヘリカーゼ活性を有するが、対応する野生型TWINKLEポリペプチドと比較して低減されたレベルで有するTWINKLEポリペプチドを含む。この文脈において、比較は、アミノ酸アライメントによって判定された場合、本発明のTWINKLEポリペプチドに最も近い配列である野生型TWINKLEポリペプチドとの比較、又は本発明のTWINKLEポリペプチドが変異によって由来する野生型TWINKLEポリペプチドとの比較である。一実施形態では、TWINKLEポリペプチドは、mtSSBポリペプチドに結合する。一実施形態では、TWINKLEポリペプチドは、ヘリカーゼ活性を有する。一実施形態では、TWINKLEポリペプチドは、TWINKLEポリペプチドの多量体を形成することが可能である。TWINKLEは、典型的には、以下の5つの保存ヘリカーゼモチーフ:(1)NTPリン酸を安定化するH1/Walker Aモチーフ、(2)NTP結合/加水分解に関与するH1a、(3)結合NTPの配置及び安定化並びに結合Mg2+イオンの安定化のために必要とされるアルギニンフィンガー及び塩基スタック残基を含有するH2/Walker Bモチーフ、(4)H1aとともにNTP結合/加水分解に関与するH3、及び(5)DNA結合に寄与するH4を有する。更に、多くのTWINKLEヘリカーゼのC末端領域は、レプリソーム内の他の因子との相互作用のために必要とされる。一実施形態では、TWINKLEポリペプチドは、配列番号64、80、82、84、86、88、90、92、94、若しくは96のうちのいずれか1つで提供されるアミノ酸配列、又は参照配列の完全長に沿って、配列番号64、80、82、84、86、88、90、92、94、若しくは96のうちのいずれか1つ以上と少なくとも75%同一であるアミノ酸配列を含む。
【0232】
低減されたヘリカーゼ活性は、当該技術分野の標準的なアッセイを使用することによって容易に判定され得る。例えば、ヘリカーゼ活性は、ADP、無機ホスホネート、及び/又は一本鎖DNAなどのヘリカーゼ反応産物の量を測定することによって判定され得る。これらのアッセイにおいて、蛍光標識タンパク質は、標的分子、例えば、ADP、無機ホスホネート、又は一本鎖DNAを検出する(Toseland et al.,2010)。一例では、二本鎖DNA巻き戻しが、ヘリカーゼ活性を判定するために測定され得る。この測定は、フルオロフォア(例えば、Cy3)及び消光剤(例えば、ダブシル)対を使用し、フルオロフォア及び消光剤対は、二本鎖の末端において配置され、1つが、DNAの各々の鎖上に配置される。ヘリカーゼ誘導性DNA巻き戻しの際に、フルオロフォア及び消光剤は、互いに分離されて、蛍光の増加をもたらす(Toseland et al.,2010)。別の例では、短い5’一本鎖DNAオーバーハングを有する部分的に二本鎖DNA基質からなるヘリカーゼ基質が産生される(Korhonen et al.,2003)。ヘリカーゼ反応は、ヘリカーゼ基質及びポリペプチドを含有する反応緩衝液中で実行される。次いで、塩基対基質及び一本鎖DNA産物の分画量が、単離され得、ゲル電気泳動によって解析され得る。
【0233】
本明細書で使用される場合、「RECA3」という用語は、野生型穀物粒のミトコンドリア内に見出され得、ミトコンドリアDNA内の不適切な組換え事象の発生の低減を助長する植物組換え体関連タンパク質のサブファミリー及びそれらの変異型バリアントを指す。理論によって束縛されることを望まないが、現在の証拠は、RECA3が、監視機構に関与し、監視機構が、短い反復間の変換事象を指示しつつ、組換え依存性複製が長い反復で開始されることを可能にすることを示唆する(Shedge et al.,2007)。本発明者らは、穀物粒内、好ましくは、米穀粒内の野生型RECA3活性を低減する(が、排除しない)ことが、アリューロン厚さの増加をもたらすことを見出した。RECA3ポリペプチドは、野生型穀類植物内に見出されるこのようなポリペプチド及び人工的に産生されるか又は自然に見出されるそのバリアントを含み、いずれもリコンビナーゼ活性を有するか又は有さず、これは、あるリコンビナーゼ活性を有するが、対応する野生型RECA3ポリペプチドと比較して低減されたレベルで有するRECA3ポリペプチドを含む。一実施形態では、RECA3ポリペプチドは、mtSSBポリペプチドに結合する。一実施形態では、RECA3ポリペプチドは、リコンビナーゼ活性を有する。RECA3ポリペプチドは、典型的には、RecA/RAD51ドメインを有し、RecA/RAD51ドメインは、2つの高度に保存されたコンセンサスモチーフであるWalker A及びWalker Bを含み、Walker A及びWalker Bは、ATPアーゼ内に存在し、ATP結合及び加水分解活性を付与する。一実施形態では、RECA3ポリペプチドは、配列番号61、67、69、71、73、75、77、若しくは79として記載のアミノ酸配列、又は参照配列の完全長に沿って、配列番号61、67、69、71、73、75、77、若しくは79のうちのいずれか1つ以上と少なくとも75%同一であるアミノ酸配列を含む。
【0234】
低減されたリコンビナーゼ活性は、当該技術分野の標準的なアッセイを使用することによって容易に判定され得る。一例では、フルオロフォア標識一本鎖DNA基質及びポリペプチドが、反応混合物中でインキュベートされる(Silva et al.,2017)。蛍光消光効果は、リコンビナーゼ結合の際に発生する。蛍光の解析は、蛍光分光法を使用して実行され得る。別の例では、リコンビナーゼ活性は、鎖融合(又は「Dループ」)アッセイを使用して測定され得る(Jayathilaka et al.,2008)。このアッセイにおいて、ポリペプチドは最初に、放射標識一本鎖DNAオリゴヌクレオチド上にアセンブルすることが可能にされる。次いで、ホモロジー含有スーパーコイル標的プラスミドが付加され、これらの2つは、「Dループ」と称されるホモロジー依存性接合分子を形成することが可能にされる。Dループタンパク質は、単離され得、ゲル電気泳動及び蛍光イメージングによって解析され得る。
【0235】
本明細書で使用される場合、「実質的に精製されたポリペプチド」又は「精製されたポリペプチド」という用語は、ポリペプチドが天然状態で会合している脂質、核酸、他のペプチド、及び他の混入分子から少なくとも部分的に分離されたポリペプチドを意味する。好ましくは、実質的に精製されたポリペプチドは、ポリペプチドが自然に会合している他の構成要素を少なくとも90%含まない。一実施形態では、本発明のポリペプチドは、自然発生穀類mtSSB、TWINKLE、又はRECA3ポリペプチドとは異なるアミノ酸配列を有し、すなわち、上記で定義されるアミノ酸配列バリアントである。
【0236】
本発明の穀粒、植物、及び宿主細胞は、本発明のバリアントポリペプチドをコードする変異を含む内在性遺伝子、又は本発明のポリペプチドをコードする外来性ポリヌクレオチドを含み得る。これらの事例では、穀粒、植物、及び細胞は、変異型又は組換えポリペプチドを産生する。この文脈において、「変異型」という用語は、ポリペプチドが最も密接に関連する又は変異によって由来する野生型ポリペプチドとは異なるアミノ酸配列であるポリペプチドを意味する。変異型ポリペプチドは、変異型ポリペプチドが最も密接に関連する及び/又は由来する野生型ポリペプチドと比較して、異なるレベルで又は異なる細胞内で又は異なるタイミングで発現され得る。ポリペプチドの文脈において、「組換え」という用語は、細胞によって産生されたときに外来性ポリヌクレオチドによってコードされるポリペプチドであって、細胞又は前駆細胞内に、組換えDNA又はRNA技法、例えば、形質転換などによって導入されている、ポリペプチドを指す。一実施形態では、組換えポリペプチドは、野生型ポリペプチドと同一のアミノ酸配列であるが、組換えポリペプチドは、野生型ポリペプチドと比較して、異なるレベルで又は異なる細胞内で又は異なるタイミングで発現され得る。代替の実施形態では、組換えポリペプチドは、組換えポリペプチドが最も密接に関連する又は由来する野生型ポリペプチドとは異なるアミノ酸配列である。同様に、この組換えポリペプチドは、野生型ポリペプチドと比較して、異なるレベルで又は異なる細胞内で又は異なるタイミングで発現され得る。典型的には、細胞は、変更された量のポリペプチドの産生を引き起こす非内在性遺伝子を含む。一実施形態では、「組換えポリペプチド」は、植物細胞内の外来性(組換え)ポリヌクレオチドの発現によって作製されるポリペプチドである。
【0237】
ポリペプチドの%同一性は、GAP(Needleman and Wunsch,1970)解析(GCGプログラム)によって、ギャップ生成ペナルティ=5及びギャップ伸長ペナルティ=0.3で判定される。一実施形態では、クエリ配列は、少なくとも150個のアミノ酸の長さであり、GAP解析は、2つの配列を少なくとも150個のアミノ酸の領域にわたってアライメントする。一実施形態では、クエリ配列は、少なくとも175個のアミノ酸の長さであり、GAP解析は、2つの配列を少なくとも175個のアミノ酸の領域にわたってアライメントする。一実施形態では、クエリ配列は、少なくとも200個のアミノ酸の長さであり、GAP解析は、2つの配列を少なくとも200個のアミノ酸の領域にわたってアライメントする。一実施形態では、クエリ配列は、少なくとも300個のアミノ酸の長さであり、GAP解析は、2つの配列を少なくとも300個のアミノ酸の領域にわたってアライメントする。一実施形態では、クエリ配列は、少なくとも400個のアミノ酸の長さであり、GAP解析は、2つの配列を少なくとも400個のアミノ酸の領域にわたってアライメントする。一実施形態では、クエリ配列は、少なくとも500個のアミノ酸の長さであり、GAP解析は、2つの配列を少なくとも500個のアミノ酸の領域にわたってアライメントする。一実施形態では、クエリ配列は、少なくとも600個のアミノ酸の長さであり、GAP解析は、2つの配列を少なくとも600個のアミノ酸の領域にわたってアライメントする。一実施形態では、クエリ配列は、少なくとも700個のアミノ酸の長さであり、GAP解析は、2つの配列を少なくとも700個のアミノ酸の領域にわたってアライメントする。更により好ましくは、GAP解析は、2つの配列をこれらの配列の長さ全体にわたってアライメントする。
【0238】
定義されるポリペプチドに関しては、上記で提供される%同一性数値よりも高い%同一性数値が好ましい実施形態を包含することが理解されよう。したがって、適用可能な場合、最小%同一性数値の観点から、ポリペプチドは、関連する指定される配列番号と少なくとも75%、より好ましくは、少なくとも80%、より好ましくは、少なくとも85%、より好ましくは、少なくとも90%、より好ましくは、少なくとも91%、より好ましくは、少なくとも92%、より好ましくは、少なくとも93%、より好ましくは、少なくとも94%、より好ましくは、少なくとも95%、より好ましくは、少なくとも96%、より好ましくは、少なくとも97%、より好ましくは、少なくとも98%、より好ましくは、少なくとも99%、より好ましくは、少なくとも99.1%、より好ましくは、少なくとも99.2%、より好ましくは、少なくとも99.3%、より好ましくは、少なくとも99.4%、より好ましくは、少なくとも99.5%、より好ましくは、少なくとも99.6%、より好ましくは、少なくとも99.7%、より好ましくは、少なくとも99.8%、更により好ましくは、少なくとも99.9%同一であるアミノ酸配列を含むことが好ましい。
【0239】
本明細書で使用される場合、「アミノ酸番号に対応する位置における」という語句又はその変形は、1つ以上の特定のアミノ酸配列の文脈において、周囲のアミノ酸と比較して、アミノ酸の相対位置を指す。いくつかの実施形態では、本発明のポリペプチドは、欠失又は置換変異を有し得、欠失又は置換変異は、例えば、配列番号3に対してアライメントされたときに、アミノ酸の相対配置を変更する。2つの密接に関連するタンパク質間の対応するアミノ酸位置を判定することは、当業者の能力の範囲内に十分ある。
【0240】
mtSSB、TWINKLE、及びRECA3ポリペプチドの保存されたアミノ酸は、野生型ポリペプチド、例えば、本明細書に記載されるものについてのアミノ酸配列をアライメントすることによって容易に同定され得る。例えば、米OsmtSSB-1a(TA1)アミノ酸配列(配列番号3)は、他の種からのmtSSB-1aポリペプチドとアライメントされてもよく、又は更に、米若しくは他の種、特に、植物種、例えば、Arabidopsis thaliana(配列番号15)、Sorghum bicolor(配列番号17)、Hordeum vulgare(配列番号18)、Triticum aestivum(配列番号19及び22)、Brachypodium distachyon(配列番号20)、及びPopulus trichocarpa(配列番号21)からのmtSSBポリペプチドとアライメントされてもよい(例えば、図9を参照されたい)。
【0241】
本発明のポリペプチドのアミノ酸配列変異体は、変異誘発物質でのランダム変異誘発、続いて、ポリペプチドをコードする内在性遺伝子内の変異体についての変異誘発された集団のスクリーニング、又は標的変異誘発、例えば、遺伝子編集ツールでの標的変異誘発のいずれかによる、前駆穀類植物細胞の変異誘発、例えば、穀類の種子の変異誘発によって調製され得る。アミノ酸配列変異体はまた、適切なヌクレオチド変化を本発明の核酸内に導入することによって調製され得る。このような変異体は、例えば、アミノ酸配列内の残基の欠失、挿入、又は置換を含み、欠失、挿入、又は置換は、野生型ポリペプチドの長さに沿っていずれかの位置で発生することができる。欠失、挿入、及び置換の組み合わせは、最終ペプチド産物が所望の特徴を有する限り、最終構築物に到達するようになされ得る。好ましいアミノ酸配列変異体は、参照野生型ポリペプチドに対して、1つ、2つ、3つ、4つ、又は10個未満のアミノ酸変化のみを有する。本発明の変異型ポリペプチドは、対応する野生型自然発生ポリペプチド、例えば、配列番号8、配列番号9、若しくは配列番号10として記載のアミノ酸配列であるポリペプチド又はその短縮型バージョン、あるいは参照配列の完全長に沿って、配列番号8、配列番号9、又は配列番号10として記載のアミノ酸配列のうちの1つ以上と少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、好ましくは、少なくとも90%、又はより好ましくは、少なくとも95%同一であるアミノ酸配列を有するポリペプチドと比較して、「低減された活性」を有する。
【0242】
変異型(変更された)ポリペプチドは、当該技術分野で既知のいずれかの技法を使用して、例えば、指向性進化又は合理的設計戦略を使用して調製され得る。変異した/変更されたDNAに由来する産物は、産物が低減された活性を有するかを判定するために、本明細書に記載される技法を使用して容易にスクリーニングされ得、例えば、TILLINGによってスクリーニングされ得る(実施例1を参照されたい)。例えば、方法は、変異した/変更されたDNAを発現するトランスジェニック植物を産生することと、i)アリューロン厚さへの変異した/変更されたDNAの効果、及びii)mtSSB、TWINKLE、又はRECA3遺伝子が変異した/変更されたかを(例えば、実施例13に記載される方法を使用して)判定することと、を含み得る。したがって、本発明のポリペプチド及びポリヌクレオチドは、ポリペプチド及びポリヌクレオチドの生物学的効果を判定するためのスクリーニングアッセイにおいて使用され得る。
【0243】
アミノ酸配列変異体の設計において、変異部位の位置及び変異の性質は、改変される特徴に依存する。変異のための部位は、例えば、(1)非保存的アミノ酸選択で置換すること、(2)標的残基を欠失させること、又は(3)位置する部位に隣接する他の残基を挿入することによって、個別に又は連続して改変され得る。
【0244】
アミノ酸配列欠失は、概して、約1つ~15個の残基、より好ましくは、約1つ~10個の残基、及び典型的には、約1つ~5つの連続した残基の範囲である。
【0245】
置換変異体は、ポリペプチド分子内の少なくとも1つのアミノ酸残基が除去されており、異なる残基がその代わりに挿入されている。ある活性を維持すること又はある活性を低減することが望ましくない場合、非保存的置換を、特に、関連するタンパク質ファミリー内で高度に保存されたアミノ酸位置において行うことが好ましい。保存的置換の例が、表1に示され、したがって、非保存的置換は、表1に示されないものである。
【表1】
【0246】
一実施形態では、変異型/バリアントポリペプチドは、自然発生ポリペプチドと比較して、1つ又は2つ又は3つ又は4つのアミノ酸変化を有する。好ましい実施形態では、変化は、本明細書で提供される異なるmtSSB、TWINKLE、又はRECA3ポリペプチドの間で高度に保存されたモチーフのうちの1つ以上内、特に、既知の保存構造ドメイン内にある。当業者が認識しているように、このような変化は、細胞又は穀物粒内で発現されたときにポリペプチドの活性を低減するために、合理的に予測され得る。
【0247】
本発明のポリペプチドの一次アミノ酸配列は、密接に関連する酵素との比較に基づいて、そのバリアント/変異体を設計するために使用され得る。当業者が理解するように、密接に関連するタンパク質のうちで高度に保存された残基の変更は、より低度に保存された残基の変更よりも、活性を低減する可能性が高い。この文脈において、一連の供給源からのmtSSB、TWINKLE、又はRECA3タンパク質のアミノ酸配列のアライメントが、より高度に保存されたアミノ酸残基及びより低度に保存されたアミノ酸残基を同定するために使用される。
【0248】
ポリヌクレオチド及び遺伝子
本発明は、様々なポリヌクレオチドを指す。本明細書で使用される場合、「ポリヌクレオチド」又は「核酸」又は「核酸分子」は、DNA又はRNAであり得るヌクレオチドのポリマーを意味し、ゲノムDNA、mRNA、cRNA、dsRNA、及びcDNAを含む。これは、細胞、ゲノム、又は合成起源のDNA又はRNA、例えば、自動シンセサイザにおいて作製されるDNA又はRNAであり得、本明細書で定義される特定の活性を実行するために、炭水化物、脂質、タンパク質、若しくは他の材料と組み合わされてもよく、蛍光若しくは他の基で標識されてもよく、又は固体支持体に取り付けられてもよく、あるいは当業者に周知の、自然に見出されない1つ以上の改変されたヌクレオチドを含んでもよい。ポリマーは、一本鎖であってもよく、本質的に、二本鎖であってもよく、又は部分的に、二本鎖であってもよい。本明細書で使用される場合、塩基対合とは、G:U塩基対を含む、ヌクレオチド間の標準的な塩基対合を指す。「相補的」とは、2つのポリヌクレオチドが、2つのポリヌクレオチドの長さの一部分に沿って、又は一方若しくは両方の完全長に沿って塩基対合(ハイブリダイゼーション)することが可能であることを意味する。「ハイブリダイゼーションされたポリヌクレオチド」とは、ポリヌクレオチドが実際に、ポリヌクレオチドの補体に塩基対合されていることを意味する。「ポリヌクレオチド」という用語は、「核酸」という用語と互換的に本明細書で使用される。本発明の好ましいポリヌクレオチドは、本発明のポリペプチドをコードする。
【0249】
「単離されたポリヌクレオチド」とは、ポリヌクレオチドが自然に見出される場合、ポリヌクレオチドが天然状態で会合している又は連結されているポリヌクレオチド配列から少なくとも部分的に分離されたポリヌクレオチドを意味する。好ましくは、単離されたポリヌクレオチドは、ポリヌクレオチドが自然に見出される場合、ポリヌクレオチドが自然に会合している他の構成要素を少なくとも90%含まない。好ましくは、ポリヌクレオチドは、例えば、2つのより短いポリヌクレオチド配列を、自然に見出されない様式で共有結合することによって、自然発生ポリヌクレオチドでない(キメラポリヌクレオチド)。
【0250】
本発明は、遺伝子活性の低減、並びにキメラ遺伝子の構築及び使用を含む。本明細書で使用される場合、「遺伝子」という用語は、タンパク質コード領域を含む又は細胞内で転写されているが翻訳されていないいずれかのデオキシリボヌクレオチド配列、及び関連する非コード領域及び調節領域を含む。このような関連する領域は、典型的には、5’及び3’末端の両方の上のコード領域又は転写された領域に隣接して、いずれの側でも約2kbの距離にわたって位置する。これに関して、遺伝子は、所与の遺伝子と自然に会合しているプロモーター、エンハンサー、終結及び/若しくはポリアデニル化シグナルなどの制御シグナル、又は異種制御シグナルを含み得、この場合、遺伝子は、「キメラ遺伝子」と称される。コード領域の5’に位置しmRNA上に存在する配列は、5’非翻訳配列と称される。コード領域の3’又は下流に位置しmRNA上に存在する配列は、3’非翻訳配列と称される。「遺伝子」という用語は、遺伝子のcDNA及びゲノム形態の両方を包含する。
【0251】
「アレル」は、細胞内、個別の植物内、又は集団内の(遺伝子などの)遺伝子配列の1つの特定の形態を指し、特定の形態は、遺伝子の配列内の少なくとも1つのバリアント部位、頻繁に、2つ以上のバリアント部位の配列内の同じ遺伝子の他の形態とは異なる。異なるアレル間で異なるこれらのバリアント部位における配列は、「バリアンス」又は「多型」と称される。本明細書で使用される場合、「多型」は、植物の異なる種、品種、系、又は個体の、本発明の遺伝子座におけるアレル間のヌクレオチド配列内の変動を指す。「多型位置」は、配列差が発生する、遺伝子の配列内の事前選択されたヌクレオチド位置である。いくつかの場合、遺伝的多型は、遺伝子によってコードされたポリペプチド内のアミノ酸配列変動を引き起こし、したがって、多型位置は、ポリペプチドの配列内の所定の位置における、アミノ酸配列内の多型の位置をもたらすことができる。他の事例では、多型領域は、遺伝子の非ポリペプチドコード領域内、例えば、プロモーター領域内にあり得、それによって、遺伝子の発現レベルに影響し得る。典型的な多型は、欠失、挿入、又は置換である。これらは、単一ヌクレオチド(単一ヌクレオチド多型又はSNP)又は2つ以上のヌクレオチドを含み得る。
【0252】
本明細書で使用される場合、「変異」は、植物又はその一部分内の表現型変化をもたらす多型である。この文脈において、一次表現型変化は、野生型(非変異型)形態に対する穀物粒のアリューロンの肥厚である。当該技術分野で既知であるように、いくつかの多型は、サイレントであり、例えば、タンパク質コード領域内の単一ヌクレオチド変化であり、これは、遺伝コードの冗長性に起因して、コードされたポリペプチドのアミノ酸配列を変化させない。二倍体植物は、典型的には、単一遺伝子の1つ又は2つの異なるアレルを有するが、遺伝子の両方のコピーが同一である場合、すなわち、植物がアレルについてホモ接合性である場合、1つのアレルのみを有する。多倍体植物は、概して、いずれかの特定の遺伝子の2つ以上のホメオログを有する。例えば、六倍体コムギは、A、B、及びDゲノムと称される3つの(しばしば「ゲノム」と称される)サブゲノムを有し、したがって、六倍体コムギの遺伝子のほとんどの3つのホメオログを有し、1つのホメオログをA、B、及びDゲノムの各々内に有する。
【0253】
「遺伝子」という用語は、本明細書で定義されるポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を指す。遺伝子は、内在性自然発生遺伝子であってもよく、又は本明細書で定義される、遺伝的変動、好ましくは、導入された遺伝的変動を含んでもよい。本発明の穀粒内のポリペプチドをコードする遺伝子は、イントロンを有し得るか又は有しない場合がある。一例では、本発明の穀粒は、米からであり、OsmtSSB-1a遺伝子の少なくとも1つのアレルは、OsmtSSB-1aポリペプチドをコードし、OsmtSSB-1aポリペプチドは、対応する野生型米植物(例えば、配列番号3で提供されるアミノ酸の配列を含むもの)からのOsmtSSB-1aポリペプチドと比較して低減されたOsmtSSB-1aポリペプチド活性を有する。低減されたOsmtSSB-1aポリペプチド活性を有するこのようなOsmtSSB-1aポリペプチドの例としては、配列番号8、配列番号9、又は配列番号10で提供されるアミノ酸からなるアミノ酸配列を有するもの若しくはその短縮型バージョン、又は配列番号8、配列番号9、又は配列番号10に記載のアミノ酸配列のうちの1つ以上と少なくとも75%、少なくとも90%、若しくは好ましくは、少なくとも95%同一であるが、より長くないアミノ酸配列を有するもののうちの1つ以上が挙げられる。
【0254】
一実施形態では、遺伝的変動は、本明細書に記載される野生型ミトコンドリアポリペプチドをコードする内在性遺伝子の発現を低減する。本明細書で使用される場合、「内在性遺伝子の発現を低減する」という語句又はその変形は、本明細書で定義される機能的ポリペプチドをコードする遺伝子の発現を(部分的に)低減又は完全に防止するいずれかの遺伝的変動を指す。このような遺伝的変動は、遺伝子のプロモーター領域内の変異であって、例えば、遺伝子編集を使用して、ヌクレオチドを遺伝子のプロモーターから欠失させる若しくは置換することによって、遺伝子の転写を低減する、変異、又はイントロンスプライシング変異であって、スプライシングの量又は位置を変更してmRNAを形成する、イントロンスプライシング変異を含む。
【0255】
転写された領域を含有する遺伝子のゲノム形態又はクローンは、遺伝子の「エクソン」に対して相同又は異種のいずれかであり得る「イントロン」又は「介在領域」又は「介在配列」と称される非コード配列で中断され得る。本明細書で使用される場合、「イントロン」は、遺伝子のセグメントであって、一次RNA転写物の一部分として転写されているが、成熟mRNA分子内に存在しない、セグメントである。イントロンは、核又は一次転写物から除去又は「スプライシング除去」され、したがって、メッセンジャーRNA(mRNA)内に存在しない。本明細書で使用される場合、「エクソン」は、RNA分子が翻訳されていない場合、成熟mRNA又は成熟RNA分子内に存在するRNA配列に対応するDNA領域を指す。mRNAは、新生ポリペプチド内のアミノ酸の配列又は順序を特定するように、翻訳中に機能する。「遺伝子」という用語は、本明細書に記載される本発明のタンパク質の全て又は一部分をコードする合成又は融合分子、及び上記のうちのいずれか1つに相補的ヌクレオチド配列を含む。遺伝子は、細胞内の染色体外維持に、又は好ましくは、宿主ゲノム内への組み込みに適切なベクター内に導入され得る。
【0256】
本明細書で使用される場合、「キメラ遺伝子」とは、結合していることが自然に見出されない共有結合した配列を含むいずれかの遺伝子を指す。典型的には、キメラ遺伝子は、一緒に自然に見出されない調節及び転写又はタンパク質コード配列を含む。したがって、キメラ遺伝子は、異なる供給源に由来する調節配列及びコード配列、又は同一の供給源に由来するが、自然に見出される様式とは異なる様式で編成されている調節配列及びコード配列を含み得る。一実施形態では、遺伝子のタンパク質コード領域は、遺伝子に異種であるプロモーター又はポリアデニル化/終結領域に動作可能に連結されており、それによって、キメラ遺伝子を形成する。代替の実施形態では、ポリヌクレオチドをコードする遺伝子は、穀類植物の穀粒内に存在するときに、穀粒内のポリペプチドの産生及び/又は活性を下向き調節し、この遺伝子は、ポリヌクレオチドに異種であるプロモーター又はポリアデニル化/終結領域に動作可能に連結されており、それによって、キメラ遺伝子を形成する。
【0257】
「内在性」という用語は、調査対象の植物と同じ発達段階における改変されていない穀類植物内に通常存在する又は産生される物質を指すために本明細書で使用される。「内在性遺伝子」とは、生物のゲノム内の自然の位置における天然遺伝子を指す。本明細書で使用される場合、「組換え核酸分子」、「組換えポリヌクレオチド」又はそれらの変形は、組換えDNA技術によって構築又は改変された核酸分子を指し、これは、改変された内在性遺伝子である核酸分子であって、改変された内在性遺伝子が、遺伝子編集技術によって、例えば、TALENS又はCRISPR技術によって変異している、核酸分子を含む「異質ポリヌクレオチド」又は「外来性ポリヌクレオチド」又は「異種ポリヌクレオチド」という用語などは、遺伝子編集技術を含む実験的操作によって細胞のゲノム内に導入されたいずれかの核酸を指す。
【0258】
異質又は外来性遺伝子は、非天然生物内に挿入された遺伝子、天然宿主内の新しい位置内に導入された天然遺伝子、キメラ遺伝子、又は遺伝子編集技術によって改変された内在性遺伝子であり得る。「トランスジーン」は、形質転換手順によってゲノム内に導入された遺伝子である。「遺伝子改変された」という用語は、より広く、形質転換又は形質導入によって遺伝子を細胞内に導入することのみでなく、細胞内の遺伝子を変異させること、例えば、遺伝子編集技術によって挿入、欠失、又は置換を内在性遺伝子内に導入すること、及びこれらの行為が行われた細胞若しくは生物内又は前駆細胞若しくは生物内の遺伝子の調節を変更する又は変えることも含む。
【0259】
更に、ポリヌクレオチド(核酸)の文脈において、「外来性」という用語は、ポリヌクレオチドを自然に含まない細胞内に存在するときのポリヌクレオチドを指す。細胞は、コードされたポリペプチドの産生の変更された量をもたらす非内在性ポリヌクレオチドを含む細胞、例えば、内在性ポリペプチドの発現を増加させる外来性ポリヌクレオチド、又は天然状態でポリペプチドを産生しない細胞であり得る。本発明のポリペプチドの増加した産生は、「過剰発現」とも本明細書で称される。本発明の外来性ポリヌクレオチドは、ポリヌクレオチドが存在するトランスジェニック(組換え)細胞若しくは無細胞発現系の他の構成要素から分離されていないポリヌクレオチド、及びこのような細胞若しくは無細胞系内で産生され、その後、少なくともいくつかの他の構成要素から精製されて分離されたポリヌクレオチドを含む。外来性ポリヌクレオチド(核酸)は、自然に存在する連続した伸長のヌクレオチドであってもよく、又は外来性ポリヌクレオチド(核酸)は、結合して単一ポリヌクレオチドを形成する、異なる(自然発生及び/又は合成)供給源からの2つ以上の連続した伸長のヌクレオチドを含んでもよい。典型的には、このようなキメラポリヌクレオチドは、少なくともオープンリーディングフレームを含み、オープンリーディングフレームは、本発明のポリペプチドをコードし、本発明のポリペプチドは、対象の細胞内のオープンリーディングフレームの転写の駆動に好適なプロモーターに動作可能に連結されている。
【0260】
ポリヌクレオチドの%同一性は、GAP(Needleman and Wunsch,1970)解析(GCGプログラム)によって、ギャップ生成ペナルティ=5及びギャップ伸長ペナルティ=0.3で判定される。一実施形態では、クエリ配列は、少なくとも450個のヌクレオチドの長さであり、GAP解析は、2つの配列を少なくとも450個のヌクレオチドの領域にわたってアライメントする。一実施形態では、クエリ配列は、少なくとも525個のヌクレオチドの長さであり、GAP解析は、2つの配列を少なくとも525個のヌクレオチドの領域にわたってアライメントする。一実施形態では、クエリ配列は、少なくとも600個のヌクレオチドの長さであり、GAP解析は、2つの配列を少なくとも600個のヌクレオチドの領域にわたってアライメントする。一実施形態では、クエリ配列は、少なくとも900個のヌクレオチドの長さであり、GAP解析は、2つの配列を少なくとも900個のヌクレオチドの領域にわたってアライメントする。一実施形態では、クエリ配列は、少なくとも1,200個のヌクレオチドの長さであり、GAP解析は、2つの配列を少なくとも1,200個のヌクレオチドの領域にわたってアライメントする。一実施形態では、クエリ配列は、少なくとも1,500個のヌクレオチドの長さであり、GAP解析は、2つの配列を少なくとも1,500個のヌクレオチドの領域にわたってアライメントする。一実施形態では、クエリ配列は、少なくとも1,800個のヌクレオチドの長さであり、GAP解析は、2つの配列を少なくとも1,800個のヌクレオチドの領域にわたってアライメントする。一実施形態では、クエリ配列は、少なくとも2,100個のヌクレオチドの長さであり、GAP解析は、2つの配列を少なくとも2,100個のヌクレオチドの領域にわたってアライメントする。更により好ましくは、GAP解析は、2つの配列をこれらの配列の長さ全体にわたってアライメントする
【0261】
定義されるポリヌクレオチドに関しては、上記で提供される%同一性数値よりも高い%同一性数値が好ましい実施形態を包含することが理解されよう。したがって、適用可能な場合、最小%同一性数値の観点から、ポリヌクレオチドは、関連する指定される配列番号と少なくとも75%、より好ましくは、少なくとも80%、より好ましくは、少なくとも90%、より好ましくは、少なくとも91%、より好ましくは、少なくとも92%、より好ましくは、少なくとも93%、より好ましくは、少なくとも94%、より好ましくは、少なくとも95%、より好ましくは、少なくとも96%、より好ましくは、少なくとも97%、より好ましくは、少なくとも98%、より好ましくは、少なくとも99%、より好ましくは、少なくとも99.1%、より好ましくは、少なくとも99.2%、より好ましくは、少なくとも99.3%、より好ましくは、少なくとも99.4%、より好ましくは、少なくとも99.5%、より好ましくは、少なくとも99.6%、より好ましくは、少なくとも99.7%、より好ましくは、少なくとも99.8%、更により好ましくは、少なくとも99.9%同一であるポリヌクレオチド配列を含むことが好ましい。%同一性は、参照配列の完全長に沿って計算されることが好ましい。一実施形態では、本発明のポリヌクレオチドは、参照ポリヌクレオチドを越えて、5’末端、3’末端、又は両方の末端において伸長する。
【0262】
本発明はまた、オリゴヌクレオチドの使用、例えば、本発明のポリヌクレオチドについてのスクリーニングの方法における、又は本発明のポリペプチドをコードする方法におけるオリゴヌクレオチドの使用に関する。本明細書で使用される場合、「オリゴヌクレオチド」は、最大50個のヌクレオチドの長さのポリヌクレオチドである。このようなオリゴヌクレオチドの最小サイズは、本発明の核酸分子上のオリゴヌクレオチドと相補的配列との間の安定したハイブリッドの形成に必要とされるサイズである。これらは、RNA、DNA、又はいずれかの組み合わせ若しくは誘導体であることができる。オリゴヌクレオチドは、典型的には、10個~30個のヌクレオチド、一般的には、15個~25個のヌクレオチドの長さの比較的短い一本鎖分子である。増幅反応においてプローブ又はプライマーとして使用されたときに、このようなオリゴヌクレオチドの最小サイズは、標的核酸分子上のオリゴヌクレオチドと相補的配列との間の安定したハイブリッドの形成に必要とされるサイズである。好ましくは、オリゴヌクレオチドは、少なくとも15個のヌクレオチド、より好ましくは、少なくとも18個のヌクレオチド、より好ましくは、少なくとも19個のヌクレオチド、より好ましくは、少なくとも20個のヌクレオチド、更により好ましくは、少なくとも25個のヌクレオチドの長さである。プローブとして使用される本発明のオリゴヌクレオチドは、典型的には、放射性同位体、酵素、ビオチン、蛍光分子、又は化学発光分子などの標識とコンジュゲートされる。
【0263】
本発明は、例えば、核酸分子を同定するためのプローブ若しくは核酸分子を産生するためのプライマーとして、又は遺伝子編集のためのガイド配列として使用され得るオリゴヌクレオチドを含む。プローブ及び/又はプライマーは、本発明のポリヌクレオチドの相同体を他の種からクローニングするために使用され得る。更に、当該技術分野で既知のハイブリダイゼーション技法もまた、ゲノム又はcDNAライブラリをこのような相同体についてスクリーニングするために使用され得る。
【0264】
本発明のポリヌクレオチド及びオリゴヌクレオチドは、ストリンジェントな条件下で、配列番号1、2、4~7、11~14、49~60、62、63、65、66、68、70、72、74、76、78、81、83、85、87、89、91、93、95、又は97として提供される配列のうちの1つ以上にハイブリダイゼーションするものを含む。本明細書で使用される場合、ストリンジェントな条件は、(1)洗浄のために低イオン強度及び高温を使用する条件、例えば、0.015MのNaCl/0.0015Mのクエン酸ナトリウム/0.1%のNaDodSOを50℃で使用する条件、(2)ハイブリダイゼーション中に、ホルムアミドなどの変性剤、例えば、0.1%ウシ血清アルブミンとの50%(vol/vol)ホルムアミド、0.1%フィコール、0.1%ポリビニルピロリドン、750mMのNaClとのpH6.5での50mMのリン酸ナトリウム緩衝液、75mMのクエン酸ナトリウムを42℃で使用する条件、又は(3)50%ホルムアミド、5×SSC(0.75MのNaCl、0.075Mのクエン酸ナトリウム)、50mMのリン酸ナトリウム(pH6.8)、0.1%ピロリン酸ナトリウム、5×デンハート溶液、超音波処理サケ精子DNA(50g/ml)、0.1%のSDS、及び10%デキストラン硫酸を42℃で0.2×SSC及び0.1%のSDS中で使用する条件である。
【0265】
本発明のポリヌクレオチドは、自然発生分子と比較して、1つ以上の変異を有し得、1つ以上の変異は、ヌクレオチド残基の欠失、挿入、又は置換である。変異体は、自然発生(すなわち、自然供給源から単離されたもの)又は(例えば、部位指向性変異誘発を核酸に実行することによる)合成のいずれかであり得る。本発明のポリヌクレオチド又はオリゴヌクレオチドのバリアントは、本明細書で定義される参照ポリヌクレオチド若しくはオリゴヌクレオチド分子、好ましくは、内在性遺伝子の穀類ゲノムに近い穀類ゲノムの様々なサイズの分子、及び/又はこの穀類ゲノムにハイブリダイゼーションすることが可能である分子を含む。例えば、バリアントは、ヌクレオチドが依然として標的領域にハイブリダイゼーションする限り、追加のヌクレオチド(例えば、1つ、2つ、3つ、4つ以上)、又はより少ないヌクレオチドを含み得る。更に、いくつかのヌクレオチドは、オリゴヌクレオチドが標的領域にハイブリダイゼーションする能力に影響することなく置換され得る。加えて、本明細書で定義される特定のオリゴヌクレオチドがハイブリダイゼーションする植物ゲノムの領域に、近くに、例えば、50個のヌクレオチド以内でハイブリダイゼーションするバリアントが、容易に設計され得る。特に、これは、同じポリペプチド又はアミノ酸配列をコードするがヌクレオチド配列が遺伝コードの冗長性によって変動するポリヌクレオチドを含む。「ポリヌクレオチドバリアント」及び「バリアント」という用語は、自然発生アレルバリアントを含む。
【0266】
遺伝的変動
本明細書で使用される場合、「遺伝的変動」という用語は、穀粒の1つ以上の細胞、好ましくは、発達中の穀粒の発達中の胚乳、種皮、アリューロン、及び胚のうちの少なくとも1つ以上又は全てにおける細胞、より好ましくは、本発明の発達中の穀粒又は植物若しくはその一部分の種皮、アリューロン、及び胚のうちの1つ以上又は全てにおける細胞が、遺伝子改変を有し、遺伝子改変が、人間によって導入されてもよく、又は穀類植物内で自然発生してもよい(例えば、交雑されて本発明の植物を産生する)ことを指す。穀粒は、2つ、3つ、4つ以上の遺伝的変動を、同じ又は異なる遺伝子内で含み得る。一例では、mtSSB遺伝子は、2つの遺伝的変動を含み、2つの遺伝的変動は、穀物粒内のmtSSBポリペプチドレベル及び/又は活性を低減する。別の例では、穀物粒は、穀物粒内のmtSSBポリペプチドレベル及び/若しくは活性を低減する、mtSSB遺伝子内の遺伝的変動、及び/又は穀物粒内のTWINKLEポリペプチドレベル及び/若しくは活性を低減する、TWINKLE遺伝子内の遺伝的変動、及び/又は穀物粒内のRECA3ポリペプチドレベル及び/若しくは活性を低減する、RECA3遺伝子内の遺伝的変動を含む。好ましい実施形態では、穀粒又は植物若しくはその一部分内の全ての細胞は、導入された遺伝的変動を含む。一実施形態では、本発明の細胞、穀粒、又は植物は、1つ以上の遺伝的変動についてホモ接合性である。代替の実施形態では、本発明の細胞、穀粒、又は植物は、1つ以上の遺伝的変動についてヘテロ接合性である、又は1つの遺伝的変動についてヘテロ接合性であり、別の遺伝的変動についてホモ接合性である。当業者が理解するように、多くの異なるタイプの遺伝子改変がなされ得、例えば、ポリペプチドをコードする内在性遺伝子内の変異であって、遺伝子のタンパク質コード領域内にあってもよく、又はプロモーターなどの発現エレメント内にあってもよい、変異、例えば、内在性遺伝子の活性を低減する、遺伝子編集によって導入された変異、又はTILLINGを使用して変異を導入することと、低減されたポリペプチド活性を有する穀粒を産生する植物のために選択することとによって導入された変異があるが、これらに限定されない。代替として、遺伝子改変は、外来性ポリヌクレオチドをコードする導入された核構築物であって、外来性ポリヌクレオチドが、遺伝子の発現、例えば、dsRNA分子若しくはマイクロRNAなどの発現を低減する、核構築物、又は外来性ポリヌクレオチドをコードする核構築物であって、外来性ポリヌクレオチドが、ポリペプチドをコードし、ポリペプチドのアミノ酸配列が、対応する野生型ポリペプチドのアミノ酸配列とは異なるアミノ酸配列を有し、ポリペプチドが、対応する野生型ポリペプチドと比較して低減されたポリペプチド活性を有する、核構築物を含む。
【0267】
変異誘発
本発明の植物は、変異誘発後に産生及び同定され得る。これは、いくつかの市場において望ましい非トランスジェニック植物を提供し得る。
【0268】
変異体は、自然発生(すなわち、自然供給源から単離されたもの)又は(例えば、変異誘発を核酸に実行することによる)合成又は誘導のいずれかであることができる。概して、前駆穀類植物細胞、組織、種子、又は植物は、単一又は複数の変異、例えば、ヌクレオチド置換、欠失、付加、及び/又はコドン改変をもたらすために変異誘発に供され得る。本出願の文脈において、「誘導変異」は、人工的に誘導された遺伝的変動であって、化学、放射線、又は生物学ベースの変異誘発、例えば、トランスポゾン又はT-DNA挿入からもたらされ得る、遺伝的変動である。いくつかの実施形態では、変異は、遺伝子を完全に不活性化する、ヌル変異、例えば、ナンセンス変異、フレームシフト変異、挿入変異、又はスプライス部位バリアントである。ヌクレオチド挿入誘導体は、単一又は複数のヌクレオチドの5’及び3’末端融合並びに配列内挿入を含む。挿入ヌクレオチド配列バリアントは、1つ以上のヌクレオチドがヌクレオチド配列内に導入されるものであり、これは、ランダム挿入と、得られた産物の好適なスクリーニングとによって得られ得る。欠失バリアントは、1つ以上のヌクレオチドが配列から除去されていることによって特徴付けられる。好ましくは、変異型遺伝子は、野生型遺伝子に対して、ヌクレオチドの配列の単一挿入又は欠失のみを有する。置換ヌクレオチドバリアントは、配列内の少なくとも1つのヌクレオチドが除去されており異なるヌクレオチドがこの代わりに挿入されているものである。野生型遺伝子に対する変異型遺伝子内の置換によって影響されるヌクレオチドの好ましい数は、最大10個のヌクレオチド、より好ましくは、最大9つ、8つ、7つ、6つ、5つ、4つ、3つ、若しくは2つのヌクレオチド、又は1つのヌクレオチドのみである。このような置換は、置換がコドンによって定義されるアミノ酸を変化させないという点で、「サイレント」であり得る。代替として、保存的置換は、1つのアミノ酸を別の同様の作用アミノ酸に変更するように設計される。典型的な保存的置換は、表1に従ってなされるものである。
【0269】
本明細書で使用される場合、「変異」という用語は、遺伝子の活性に影響しないサイレントヌクレオチド置換を含まず、したがって、遺伝子活性に影響する遺伝子配列内の変更のみを含む。「多型」という用語は、このようなサイレントヌクレオチド置換を含むヌクレオチド配列内のいずれかの変化を指す。
【0270】
いくつかの実施形態では、穀物粒は、mtSSB遺伝子、TWINKLE遺伝子、若しくはRECA3遺伝子の少なくとも一部分、又はこのような遺伝子内のフレームシフト若しくはスプライス部位変動の非保存的置換欠失を含む。
【0271】
いくつかの実施形態では、1つ以上の変異体は、配列番号45~48に記載のアミノ酸配列を含む保存モチーフなどの保存モチーフをコードするmtSSBポリペプチドをコードする遺伝子の保存領域内にある。いくつかの実施形態では、1つ以上の変異が、OsmtSSB-1aのDNA結合ドメインをコードするOsmtSSB-1aの領域内にある。
【0272】
変異誘発は、化学的又は放射線手段、例えば、EMS又はアジ化ナトリウムによって達成され得る(Zwar and Chandler,1995)。化学的変異誘発は、ヌクレオチド置換が欠失よりも好都合である傾向がある。重イオンビーム(HIB)照射は、新しい植物品種を産生するための変異育種に有効な技法として既知であり、例えば、Hayashi et al.(2004)及びKazama et al.(2008)を参照されたい。イオンビーム照射は、DNA損傷の量及びDNA欠失のサイズを判定する生物学的効果についての2つの物理条件、線量(gy)及びLET(線エネルギー付与、keV/um)を有し、これらは、変異誘発の所望の程度に従って調整され得る。HIBは、変異体の収集物を産生し、変異体の収集物の多くは欠失を含み、これらは、mtSSB遺伝子内の変異についてスクリーニングされ得る。同定される有用な変異体は、変異誘発ゲノム内の非連結変異の効果を除去し、したがって、低減するために、反復親としての非変異型植物と戻し交雑され得る。
【0273】
部位特異的変異体の産生において有用な生物学的薬剤は、内在性修復機構を刺激するDNA内の二本鎖切断を含む酵素を含む。これらは、エンドヌクレアーゼ、亜鉛フィンガーヌクレアーゼ、トランスポザーゼ、及び部位特異的リコンビナーゼを含む。亜鉛フィンガーヌクレアーゼ技術は、Le Provost et al.(2009)、Durai et al.(2005)、及びLiu et al.(2010)で概説されている。
【0274】
変異体の単離は、変異誘発植物又は種子をスクリーニングすることによって達成され得る。例えば、穀類植物の変異誘発集団は、厚アリューロンについて又は遺伝子のうちの1つの低減された発現について、RT-PCRによってスクリーニングされてもよく、あるいは遺伝子のうちの1つの変異について、直接、又はPCR若しくはヘテロ二本鎖ベースのアッセイによってスクリーニングされてもよく、あるいはタンパク質の低減について、ELISA又はウエスタンブロット解析によってスクリーニングされてもよい。代替として、変異は、EMSなどの薬剤で変異誘発された集団においてTILLINGなどの技法を使用して(Slade and Knauf,2005)、又は変異誘発プールのディープシークエンシングによって同定され得る。次いで、このような変異は、変異体を所望の遺伝的背景の植物と交雑することと、本来望ましくない親背景を削除するのに好適な回数の戻し交雑を実行することとによって、所望の遺伝的背景内に導入され得る。
【0275】
変異は、植物内に、変異誘発によって直接導入されていてもよく、又は2つの親植物の交雑であって、2つの親植物のうちの1つは、導入された変異を含んだ、交雑によって間接的に導入されていてもよい。改変された植物は、トランスジェニックであってもよく、又は非トランスジェニックであってもよい。変異誘発を使用して、低減されたmtSSB-1aレベル若しくは活性を有するか、又はmtSSB-1aを本質的に有しない非トランスジェニック植物が産生され得る。本発明はまた、植物から産生される穀粒又は他の植物部分、及び所望の特徴を有する植物を産生するために使用され得る、植物のいずれかの繁殖材料、例えば、培養された組織又は細胞にわたる。本発明は、このような植物又はこのような植物によって産生される穀粒を産生又は同定する方法に明白にわたる。
【0276】
TILLING
本発明の植物は、例えば、本明細書の実施例13に記載されるように、TILLING(ゲノム内の誘導性局所損傷の標的化(Targeting Induced Local Lesions IN Genomes))として既知のプロセスを使用して産生され得る。第1のステップでは、新規の単一塩基対変化などの導入された変異は、種子(又は花粉)を化学的変異誘発物質で処理することと、次いで、植物を、変異を安定して遺伝する世代に進行させることとによって、植物の集団において誘導される。これは、典型的には、M2世代である。DNAは、個別の植物又は植物の小さいプールから抽出され、種子は、集団の全てのメンバーから貯蔵されて、経時的に繰り返しアクセスされ得る資源を作製する。
【0277】
TILLINGアッセイのために、PCRプライマーは、対象の単一遺伝子標的、例えば、mtSSB-1a、TWINKLE、又はRECA3をコードする遺伝子を特異的に増幅するように設計される。標的が、遺伝子ファミリーのメンバー、又は多倍体ゲノムの一部分、例えば、六倍体若しくは四倍体コムギ内の多倍体ゲノムの一部分である場合、特異性は、特に重要である。次に、染料標識プライマーが、複数の個体のプールされたDNAからのPCR産物を増幅するために使用され得る。これらのPCR産物は、変性させ、再アニールされて、ミスマッチ塩基対の形成を可能にする。ミスマッチ又はヘテロ二本鎖は、自然発生単一ヌクレオチド多型(SNP)(すなわち、集団からのいくつかの植物が同じ多型を保有する可能性がある)及び誘導SNP(すなわち、稀な個別の植物のみが変異を示す可能性がある)の両方を表す。ヘテロ二本鎖形成後に、ミスマッチDNAを認識及び切断するCelIなどのエンドヌクレアーゼの使用は、TILLING集団内の新規のSNPを発見するための鍵である。
【0278】
この手法を使用して、何千もの植物が、いずれかの遺伝子内又はゲノムのいずれかの特定の領域内の単一塩基変化及び小さい挿入又は欠失(1~30bp)を有するいずれかの個体を同定するためにスクリーニングされ得る。アッセイされるゲノム断片のサイズは、0.3~1.6kbの範囲であることができる。8倍プーリング、(SNP検出がノイズに起因して問題になる断片の末端を差引く)1.4kbの断片、及び1アッセイ当たり96個のレーンで、この組み合わせは、ゲノムDNAの最大100万個の塩基対が単一アッセイ当たりスクリーニングされることを可能にし、これは、TILLINGを高スループット技法にする。
【0279】
TILLINGは、Slade and Knauf(2005)及びHenikoff et al.(2004)に更に記載されている。
【0280】
変異の効率的な検出を可能にすることに加えて、ハイスループットTILLING技術は、自然多型の検出に理想的である。したがって、未知の相同DNAを既知の配列へのヘテロ二本鎖化によって調べることにより、多型部位の数及び位置が判明する。ヌクレオチド変化並びに小さい挿入及び欠失の両方が、同定され、これは、少なくともある反復数の多型を含む。これは、Ecotillingと称されている(Comai et al.,2004)。
【0281】
各々のSNPは、いくつかのヌクレオチド内のSNPのおおよその位置によって記録される。したがって、各々のハプロタイプは、ハプロタイプの移動度に基づいてアーカイブされ得る。配列データは、ミスマッチ切断アッセイのために使用される同じ増幅DNAのアリコートを使用して、比較的小さい増分労力で得られ得る。単一反応のための左又は右のシークエンシングプライマーは、多型へのシークエンシングプライマーの近接度によって選択される。シークエンシャーソフトウェアは、複数のアライメントを実行し、塩基変化を発見し、これは、各々の場合、ゲルバンドを確認した。
【0282】
Ecotillingは、ほとんどのSNP発見のために現在使用されている方法であるフルシークエンシングよりも安価に実行され得る。変異誘発植物からのDNAのプールではなく、生態型DNAのアレイを収容するプレートがスクリーニングされ得る。検出は、ほぼ塩基対解像度を有するゲル上にあり、バックグラウンドパターンは、レーンにわたって均一であるため、同一のサイズのバンドが、マッチされ得、したがって、SNPが、単一ステップで発見及び遺伝子型判定され得る。このように、SNPの究極のシークエンシングは、単純かつ効率的であり、スクリーニングのために使用される同じPCR産物のアリコートがDNAシークエンシングに供され得るということによって、より単純かつ効率的にされる。
【0283】
部位特異的ヌクレアーゼを使用するゲノム編集
ゲノム編集は、本明細書で定義されるポリペプチドをコードする遺伝子を改変するために使用され得る。ゲノム編集は、非特異的DNA切断モジュールに融合した配列特異的DNA結合ドメインから構成されている操作されたヌクレアーゼを使用する。これらのキメラヌクレアーゼは、誘導された切断を修復するために細胞の内在性細胞DNA修復機構を刺激する標的DNA二本鎖切断を誘導することによって、効率的かつ正確な遺伝子改変を可能にする。このような機構は、例えば、エラープローン非相同末端結合(NHEJ)及びホモロジー指向性修復(HDR)を含む。
【0284】
伸長ホモロジーアームを有するドナープラスミドの存在下で、HDRは、存在する遺伝子を修正又は置き換えるための単一又は複数のトランスジーンの導入をもたらすことができる。ドナープラスミドの非存在下では、NHEJ媒介修復は、遺伝子破壊を引き起こす標的の小さい挿入又は欠失変異をもたらす。
【0285】
本発明の方法において有用な操作されたヌクレアーゼは、亜鉛フィンガーヌクレアーゼ(ZFN)、転写活性化因子様(TAL)エフェクターヌクレアーゼ(TALEN)、及びCRISPR-Cas9又はCas12型部位特異的ヌクレアーゼを含む。
【0286】
典型的に、ヌクレアーゼコード遺伝子は、プラスミドDNA、ウイルスベクター、又はインビトロ転写mRNAによって、細胞内に送達される。蛍光サロゲートレポーターベクターの使用はまた、ZFN-、TALEN-、又はCRISPR改変細胞の富化を可能にする。
【0287】
複雑なゲノムは、しばしば、意図されたDNA標的と同一又は高度に相同である配列の複数のコピーを含有し、これは、潜在的に、オフターゲット活性及び細胞毒性をもたらす。これに対処するために、構造(Miller et al.,2007、Szczepek et al.,2007)及び選択ベース(Doyon et al.,2011、Guo et al.,2010)の手法が、最適化された切断特異性及び低減された毒性を有する改善されたZFN及びTALENヘテロ二量体を産生するために使用され得る。
【0288】
本発明の好ましい実施形態による、ZFNによる遺伝的組換え又は変異を標的とするためには、2つの9bpの亜鉛フィンガーDNA認識配列が、宿主DNA内で同定されなければならない。これらの認識部位は、互いに対して逆の配向であり、約6bpのDNAによって分離されている。次いで、ZFNは、標的遺伝子座でDNAに特異的に結合する亜鉛フィンガー組み合わせを設計及び産生することと、次いで、亜鉛フィンガーをDNA切断ドメインに連結することとによって産生される。
【0289】
転写活性化因子様(TAL)エフェクターヌクレアーゼ(TALEN)は、TALエフェクターDNA結合ドメイン及びエンドヌクレアーゼドメインを含む。
【0290】
TALエフェクターは、植物病原性細菌のタンパク質であって、病原体によって植物細胞内に注入され、植物細胞内で、核に移動し、特定の植物遺伝子を活性化するための転写因子として機能する、タンパク質である。TALエフェクターの一次アミノ酸配列は、TALエフェクターが結合するヌクレオチド配列を指示する。したがって、標的部位は、TALエフェクターについて予測され得、TALエフェクターは、特定のヌクレオチド配列に結合する目的で操作及び産生され得る。
【0291】
TALエフェクターコード核酸配列に融合した配列は、ヌクレアーゼ又はヌクレアーゼの一部分、典型的には、FokIなどのII型制限エンドヌクレアーゼからの非特異的切断ドメインをコードする配列である(Kim et al.,1996)。他の有用なエンドヌクレアーゼは、例えば、HhaI、HindIII、Nod、BbvCI、EcoRI、BglI、及びAlwIを含み得る。いくつかのエンドヌクレアーゼ(例えば、FokI)が二量体としてのみ機能するということは、TALエフェクターの標的特異性を増強するために利用され得る。例えば、いくつかの場合、各々のFokI単量体は、異なるDNA標的配列を認識するTALエフェクター配列に融合することができ、2つの認識部位が近接しているときにのみ、非活性単量体を一緒にさせて、機能的酵素を作製する。DNA結合がヌクレアーゼを活性化することを必要とすることによって、高度に部位特異的制限酵素が作製され得る。
【0292】
配列特異的TALENは、細胞内に存在する事前に選択された標的ヌクレオチド配列内の特定の配列を認識することができる。したがって、いくつかの実施形態では、標的ヌクレオチド配列は、ヌクレアーゼ認識部位についてスキャンされ得、特定のヌクレアーゼが、標的配列に基づいて選択され得る。他の場合、TALENは、特定の細胞配列を標的にするように操作され得る。
【0293】
CRISPRを使用するゲノム編集(遺伝子編集)
エンドヌクレアーゼは、一本鎖又は二本鎖切断を、ゲノムDNA内に、配列特異的な様式で、すなわち、定義されるヌクレオチド配列を標的にする様式で産生するために使用され得る。真核細胞内のゲノムDNA切断は、非相同末端結合(NHEJ)又はホモロジー指向性修復(HDR)経路を使用して修復される。NHEJは、変異の産生をもたらす不完全な修復をもたらし得、しばしば、短い欠失、例えば1つ~30個の塩基対をもたらし得る。対照的に、HDRは、外来性供給修復DNAテンプレートを使用することによって、正確な遺伝子挿入を可能にすることができる。転写活性化因子様エフェクターヌクレアーゼ(TALEN)及び亜鉛フィンガーヌクレアーゼが依然として有用であるが、CRISPR関連(Cas)タンパク質は、著明な関心を得ており、CRISPR-Cas系は、ゲノム改変のためのより単純な汎用性のあるより安価なツールを提供する(Doudna and Charpentier,2014)。
【0294】
CRISPR-Cas系は、様々なヌクレアーゼ又はヌクレアーゼの組み合わせを使用して、2つの主要なグループに分類される。クラス1CRISPR-Cas系(I型、III型、及びIV型)内で、エフェクターモジュールは、多タンパク質複合体からなり、クラス2系(II型、V型、及びVI型)は、1つのエフェクタータンパク質のみを使用する(Makarova et al.,2015)。Casは、隣接するCRISPR遺伝子座に結合している又はこの近くに又はこの付近に局在する遺伝子を含む。Haft et al.(2005)は、Casタンパク質ファミリーの概説を提供する。
【0295】
ヌクレアーゼは、合成小ガイドRNA(sgRNA又はgRNA)によってガイドされ、合成小ガイドRNAは、tracRNAを含み得るか、又は含まない場合があり、tracRNAは、2つの遺伝子への、すなわち、エンドヌクレアーゼ及びsgRNAへのCRISPR-Cas系の単純化をもたらす(Jinek et al.2012)。sgRNAは、典型的には、U3又はU6小核RNAプロモーターなどのPolIIIプロモーターの調節制御下にある。sgRNAは、概して、CRISPR RNA(crRNA)スペーサー及び反復配列、並びにCasエフェクタータンパク質を複合体のために一緒に含んで、標的ヌクレオチド配列内に存在するプロトスペーサー隣接モチーフ(PAM)を認識する。sgRNAは、配列ホモロジーによる標的化のための特定の遺伝子及び遺伝子の一部分を認識する。プロトスペーサー隣接モチーフ(PAM)は、ゲノム内の潜在的なCRISPR-Cas標的の数を制限する標的部位に隣接するが、ヌクレアーゼの拡大はまた、使用可能なPAMの数を増加させる。Casヌクレアーゼは、crRNA空間と相補的標的ヌクレオチド配列との間の塩基対合によって活性化される。gRNAを設計するために使用可能な多数のウェブツールがあり、ウェブツールは、CHOPCHOP(http://chopchop.cbu.uib.no)、CRISPR設計https://omictools.com/crispr-design-tool、E-CRISP http://www.e-crisp.org/E-CRISP/、及びGeneious又はBenchling https://benchling.com/crisprを含む。
【0296】
一例では、約17個、18個、19個、又は20個のヌクレオチドのガイドRNA(gRNA)標的配列、直ぐに続いて、3つのヌクレオチドのPAM(プロトスペーサー隣接モチーフ)配列が、本明細書で定義されるポリペプチド、好ましくは、mtSSB-1若しくはmtSSB-1aポリペプチド、TWINKLEポリペプチド、又はRECA3ポリペプチドのうちの1つ以上をコードする遺伝子にのcDNA配列から同定される。
【0297】
CRISPR-Cas系は、遺伝子編集のための植物遺伝子の改変において最も頻繁に採用されており、これは、しばしば、RNAガイド性Streptococcus pyogenes Cas9などのCas9エフェクタータンパク質又は複数の植物種内の最適化された配列バリアントを使用する(Luo et al.,2016)。Luo et al.(2016)は、多数の研究の概要を述べており、これらの研究において、遺伝子は、様々な植物種内で成功裏に標的とされて、内在性遺伝子オープンリーディングフレーム及び/又はプロモーター内のindel及び機能喪失型変異体表現型を生じさせる。xCas9などの改変Cas9は、バリアントPAM配列が必要とされる場合の使用のために使用可能である(Hu et al.,2018)。植物細胞上の細胞壁に起因して、細胞内へのCRISPR-Cas機構の送達及び成功裏のトランスジェニック再生は、典型的には、Agrobacterium tumefaciens感染(Luo et al.,2016)又はプラスミドDNA粒子衝突若しくは微粒子銃送達を使用してきた。穀類形質転換に好適なベクターとしては、pCXUNcas9(Sun et al,2016)又はAddgeneから入手可能なpYLCRISPR/Cas9Pubi-H(Ma et al.,2015、受入番号KR029109.1)が挙げられる。
【0298】
代替のCRISPR-Cas系は、多数であり、エフェクター酵素を含み、エフェクター酵素は、ヌクレアーゼRuvCドメインを含有するが、Cas12酵素を含むHNHドメインを含有せず、Cas12酵素は、Cas12a、Cas12b、Cas12f、Cpf1、C2c1、C2c3、及び操作された誘導体を含む。植物内で、Prevotella及びFrancisellaからのCpf1は、Cas9の代替として成功裏に使用されている。Cpf1は、二本鎖切断を、ねじれ型様式でPAM遠位位置において作製し、より小さいエンドヌクレアーゼであることは、ある種について利点を提供し得る(Begemann et al.,2017)。他のCRISPR-Cas系は、Cas13、Cas13a(C2c2)、Cas13b、Cas13cを含むRNAガイド性リボヌクレアーゼを含む。代替のCRISPR-Cas系は、変異を内在性植物遺伝子内に産生する文脈で設計及び適用される複合ヌクレアーゼ及びエフェクター系、例えば、CRISPR TiD系(Osakabe et al.,2020)を含み、又は複合ヌクレアーゼ及び修復酵素、例えば、Anzalone et al,(2019)によって記載されているプライム編集系は、DNA切断後に発生する細胞修復及び配列挿入を厳密に制御することができる。
【0299】
配列挿入又は組み込み
CRISPR-Cas系は、ゲノム内への配列の挿入についての相同修復を指示するための核酸配列の提供と組み合わされ得る。植物トランスジーンの標的ゲノム組み込みは、同じ遺伝子座におけるトランスジーンの逐次的付加を可能にする。この「シス遺伝子スタッキング」は、後続の育種労力を、単一遺伝子座として遺伝する全てのトランスジーンで大きく単純化する。標的部位のCRISPR/Cas9切断と結合しているときに、トランスジーンは、隣接配列ホモロジーによって容易にされるホモロジー指向性修復によって、この遺伝子座内に組み込まれ得る。この手法は、リンケージドラッグなしで新しいアレルを迅速に導入するために、又は自然に存在しないアレルバリアントを導入するために使用され得る。
【0300】
ニッカーゼ
CRISPR-Cas II系は、2つの酵素切断ドメイン、すなわち、RuvCドメイン及びHNHドメインを有するCas9ヌクレアーゼを使用する。変異は、二本鎖切断を一本鎖切断に変更し、ニッカーゼ又はヌクレアーゼ不活性化Cas9と称される技術バリアントをもたらすことが示されている。RuvCサブドメインは、非相補的DNA鎖を切断し、HNHサブドメインは、gRNAに相補的なこのDNA鎖を切断する。ニッカーゼ又はヌクレアーゼ不活性化Cas9は、gRNAによって指示されるDNA結合能力を保持する。サブドメイン内の変異、例えば、D10A変異又はH840A変異を有するS.pyogenes Cas9ヌクレアーゼは、当該技術分野で既知である。
【0301】
ゲノム塩基編集又は改変
塩基エディタは、シトシンデアミナーゼをCas9ドメインと融合させることによって作製されてきた(WO2018/086623)。デアミナーゼを融合することによって、塩基エディタは、gRNAによって指示される配列標的を使用して、DNA内のシチジンの脱アミノ化による標的シチジン(C)からウラシル(U)への置換を行う。次いで、細胞のミスマッチ修復機構は、UをTで置き換える。好適なシチジンデアミナーゼとしては、APOBEC1デアミナーゼ、活性化誘導性シチジンデアミナーゼ(AID)、APOBEC3G、及びCDA1が挙げられる。更に、Cas9-デアミナーゼ融合は、一本鎖切断を産生するためのニッカーゼ活性を有する変異型Cas9を含み得る。ニッカーゼタンパク質は、ホモロジー指向性修復の促進において潜在的により効率的であることが示唆されている(Luo et al.,2016)。
【0302】
ベクターフリーゲノム編集又はゲノム改変
より最近では、Cas9/sgRNAリボヌクレオタンパク質を使用するベクターフリー手法を使用するための方法は、オフターゲット事象を成功裏に低減することが記載されている。方法は、プロトプラストなどの細胞内に形質転換されるCas9リボヌクレオタンパク質(RNP)のインビトロ発現を必要とする。これは、宿主ゲノム内に組み込まれているCas9コード配列に依存せず、それによって、ランダムでの部位内へのCas9遺伝子の組み込みで発生し得る望ましくない非特異的切断を低減する。短い隣接配列のみが、安定したCas9及びsgRNA安定したリボヌクレオタンパク質をインビトロで形成するために必要とされる。Woo et al.(2015)は、予めアセンブルされたCas9/sgRNAタンパク質/RNA複合体を、産生し、Arabidopsisのプロトプラスト、米、レタス、及びタバコ内に導入し、最大45%の標的変異誘発頻度を再生植物内で観察した。RNPのインビトロ導入は、双子葉植物(Woo et al.,2015)及び単子葉植物トウモロコシ(Svitashev et al.,2016)及びコムギ(Liang et al.,2017)を含むいくつかの種内で実証された。CRISPR-Cas9インビトロ転写物又はリボヌクレオタンパク質を使用する植物のゲノム編集は、Liang et al.(2018)及びLiang et al.(2019)に記載されている。
【0303】
遺伝子挿入のための方法
植物胚は、組み込みの部位を標的とするCas9遺伝子及びsgRNA遺伝子で、DNA修復テンプレートとともに衝撃され得る。DNA修復テンプレートは、合成されたDNA断片、127量体ポリヌクレオチド以上であり得、各々が、挿入される対象の遺伝子をコードする。例えば、衝撃された細胞は、組織培地上で成長する。DNAは、CTAB DNA抽出法を使用して、再生植物のカルス又は葉組織から抽出され、PCRによって解析されて、遺伝子組み込みが確認される。T1子孫植物は、対象の挿入遺伝子を含有することが確認された植物から選択され得る。
【0304】
方法は、ドナーDNA及びエンドヌクレアーゼと称される対象のDNA配列を植物細胞内に導入することを含む。エンドヌクレアーゼは、切断を標的部位内に産生し、これは、ドナーDNAのホモロジーの第1及び第2の領域が、ホモロジーのこれらの対応するゲノム領域との相同組換えを行うことを可能にする。切断されたゲノムDNAは、DNA配列のアクセプターとして作用する。ドナーとゲノムとの間のDNAの得られた交換は、植物ゲノム内の標的部位内の鎖切断内へのドナーDNAの対象のポリヌクレオチドの組み込みをもたらし、それによって、本来の標的部位を変更し、変更されたゲノム配列を産生する。
【0305】
ドナーDNAは、当該技術分野で既知のいずれかの手段によって導入され得る。例えば、標的部位を有する植物が提供される。ドナーDNAは、Agrobacterium媒介形質転換又は微粒子銃粒子衝撃を含む既知の形質転換方法によって、植物に提供され得る。RNAガイド性Cas又はCpf1エンドヌクレアーゼは、標的部位において切断され、ドナーDNAは、植物ゲノム内に挿入される。
【0306】
相同組換えは、植物の体細胞内で低頻度で発生するが、プロセスは、選択されたエンドヌクレアーゼ標的部位における二本鎖切断(DSB)の導入によって増加する/刺激されると考えられる。
【0307】
RNA干渉
RNA干渉(RNAi)は、遺伝子の発現を特異的に低減するのに特に有用であり、これは、遺伝子がタンパク質をコードする場合、特定のタンパク質の低減された産生をもたらす。理論に束縛されることを望まないが、Waterhouse et al.(1998)は、dsRNA(二本鎖RNA)がタンパク質産生を低減するために使用され得る機構のためのモデルを提供している。この技術は、対象の遺伝子のmRNA又はその一部分と本質的に同一である配列を含有するdsRNA分子の存在に依存する。好都合には、dsRNAは、組換えベクター又は宿主細胞内の単一プロモーターから産生され得、センス及びアンチセンス配列は、非関連配列に隣接し、非関連配列は、センス及びアンチセンス配列がハイブリダイゼーションして、dsRNA分子を形成することを可能にし、dsRNA分子は、ループ構造を形成する非関連配列を有する。好適なdsRNA分子の設計及び産生は、特に、Waterhouse et al.(1998)、Smith et al.(2000)、WO99/32619、WO99/53050、WO99/49029、WO01/34815、WO19/051563、及びWO20/024019を考慮すれば、当業者の能力の範囲内に十分ある。
【0308】
一例では、本明細書で定義されるポリペプチド、好ましくは、mtSSB-1若しくはmtSSB-1aポリペプチド、TWINKLEポリペプチド、又はRECA3ポリペプチドのうちの1つ以上をコードする遺伝子とホモロジーを有する少なくとも部分的に二本鎖RNA産物の合成を指示するDNAが導入される。したがって、DNAは、センス及びアンチセンス配列の両方を含み、センス及びアンチセンス配列の両方は、RNA内に転写されたときに、ハイブリダイゼーションして、二本鎖RNA領域を形成することができる。本発明の一実施形態では、センス及びアンチセンス配列は、スペーサー領域によって分離されており、スペーサー領域は、イントロンを含み、イントロンは、RNA内に転写されたときに、スプライシング除去される。この編成は、遺伝子サイレンシングのより高い効率をもたらすことが示されている(Smith et al.,2000)。二本鎖領域は、1つ又は2つのDNA領域のいずれかから転写された1つ又は2つのRNA分子を含み得る。二本鎖分子の存在は、内在性系からの応答をトリガーし、内在性系は、標的遺伝子からの二本鎖RNA及び相同RNA転写物の両方を破壊して、標的遺伝子の活性を効率的に低減又は排除すると考えられる。
【0309】
ハイブリダイゼーションするセンス及びアンチセンス配列の長さは各々、少なくとも19個の連続したヌクレオチド、好ましくは、少なくとも30個、少なくとも32個、少なくとも40個、又は少なくとも50個の連続したヌクレオチド、より好ましくは、少なくとも100個又は少なくとも200個の連続したヌクレオチドであるべきである。概して、標的遺伝子mRNAの領域に対応する100個~1000個のヌクレオチドの配列が使用される。遺伝子転写物全体に対応する完全長配列が使用され得る。標的転写物とのセンス配列の同一性の程度(したがって、同様に、標的転写物の補体とのアンチセンス配列の同一性)は、少なくとも85%、少なくとも90%、又は95~100%であるべきであり、好ましくは、標的配列と同一である。もちろん、RNA分子は、分子を安定化するように機能し得る非関連配列を含んでもよい。RNA分子は、RNAポリメラーゼII又はRNAポリメラーゼIIIプロモーターの制御下で発現され得る。後者の例としては、tRNA又はsnRNAプロモーターが挙げられる。
【0310】
好ましい低分子干渉RNA(「siRNA」)分子は、標的mRNAの約19個~25個の連続したヌクレオチドと同一であるヌクレオチド配列を含む。好ましくは、siRNA配列は、ジヌクレオチドAAで開始し、約30~70%(好ましくは、30~60%、より好ましくは、40~60%、より好ましくは、約45%~55%)のGC含有量を含み、例えば、標準的なBLAST検索によって判定された場合、これが導入される生物のゲノム内の標的以外のいずれかのヌクレオチド配列との高い百分率同一性を有しない。
【0311】
一実施形態では、dsRNAは、WO2019/051563に記載されているように、「ledRNA」構造を含み、かつ/又はWO2020/024019に記載されているように、G:U塩基対を含む。
【0312】
本発明に有用なdsRNAは、通例の手順を使用して容易に産生され得る。
【0313】
マイクロRNA
(miRNAと略される)マイクロRNAは、非コードRNA分子であり、非コードRNA分子は、概して19個~25個のヌクレオチド(一般的に、植物内で約20個~24個のヌクレオチド)の長さを有し、これらは、不完全な幹ループ構造を形成するより大きい前駆体に由来する。miRNAは、典型的には、発現が低減される標的mRNAの領域に完全に相補的であるが、完全に相補的である必要はない。
【0314】
miRNAは、標的メッセンジャーRNA転写物(mRNA)内の相補的配列に結合し、これは、通常、翻訳抑制又は標的分解及び遺伝子サイレンシングをもたらす。人工miRNA(amiRNA)は、当該技術分野で周知のように、対象のいずれかの遺伝子の発現を低減するための自然miRNAに基づいて設計され得る。
【0315】
植物細胞内で、miRNA前駆体分子は、主に核内でプロセシングされると考えられる。(1つ以上の局所二本鎖又は「ヘアピン」領域と、mRNAの通常の5’「キャップ」及びポリアデニル化テールと、を含有する)pri-miRNAは、短いmiRNA前駆体分子にプロセシングされ、短いmiRNA前駆体分子はまた、ステムループ又はフォールドバック構造を含み、「pre-miRNA」と称される。植物内で、pre-miRNAは、異なるDICER様(DCL)酵素によって切断され、miRNA:miRNA*二本鎖が得られる。核からの輸送前に、これらの二本鎖は、メチル化される。
【0316】
細胞質内で、miRNA:miRNA二本鎖からのmiRNA鎖は、標的認識のための活性RNA誘導性サイレンシング複合体(RISC)内に選択的に組み込まれる。RISC複合体は、配列特異的遺伝子抑制を発揮する特定のサブセットのArgonauteタンパク質を含有する(例えば、Millar and Waterhouse,2005、Pasquinelli et al.,2005、Almeida and Allshire,2005を参照されたい)。
【0317】
本発明に有用なマイクロRNAは、通例の手順を使用して容易に産生され得る。例えば、OsmtSSB-1a amiRNA(人工マイクロRNA)構築物の設計は、Fahim et al.(2012)に記載されている一般的な方法に基づき得る。WMD3ソフトウェア(www.wmd3.weigelworld.org/)が、OsmtSSB-1a遺伝子内の好適なamiRNA標的を同定するために使用され得る。amiRNA標的は、以下の4つの基準:1)5’末端においてATに富み、3’末端においてGCに富む配列を使用することによる相対5’不安定性、2)1位におけるU及び切断部位におけるA(10位と11位との間)、3)それぞれ1~9位及び13~21位における最大1つ及び4つのミスマッチ、並びに4)amiRNAが標的RNAにハイブリダイゼーションするときに、-30kcal mol-1未満の予測自由エネルギー(ΔG)を有すること(Ossowski et.al.,2008)に従って選択される。発現の遺伝子特異的低減のために、候補amiRNA配列は、OsOsmtSSB-1aの全ての相同体のアライメントの際に最も低いホモロジーを示す領域内で選択され、したがって、OsmtSSB-1a相同体及びホメオログの発現のオフターゲット低減についての潜在性を低減する。米miR395の前駆体(Guddeti et al.,2005、Jones-Rhoades and Bartel,2004、Kawashima et al.,2009)が、amiRNA配列の挿入のためのamiRNA骨格として選択され得る。例えば、構築物を設計及び作製するために、miR395内の5つの内在性miRNA標的は、mtSSB、TWINKLE、又はRECA3ノックダウンのための5つのamiRNA標的によって置き換えられる。
【0318】
共抑制
遺伝子は、ゲノム内に既に存在する関連内在性遺伝子及び/又はトランスジーンの発現を抑制することができ、これは、ホモロジー依存性遺伝子サイレンシングと称される現象である。ホモロジー依存性遺伝子サイレンシングの事例のほとんどは、2つのクラスに分類され、2つのクラスは、トランスジーンの転写のレベルで機能するもの、及び転写後に動作するものである。
【0319】
転写後ホモロジー依存性遺伝子サイレンシング(すなわち、共抑制)は、トランスジェニック植物内のトランスジーン及び関連内在性又はウイルス遺伝子の発現の喪失を記述する。トランスジーン転写物が豊富であり、概して、トランスジーン転写物がmRNAプロセシング、局在化、及び/又は分解のレベルでトリガーされると考えられるときに、共抑制は、しばしば発生するが、必ずしもそうではない。どのように共抑制が機能するかを説明するためのSevera1モデルが存在する(Taylor,1997を参照されたい)。
【0320】
共抑制は、遺伝子又はその断片の余分なコピーを、コピーの発現のためのプロモーターに対してセンス配向で植物内に導入することを含む。センス断片のサイズ、標的遺伝子領域とのセンス断片の一致、及び標的遺伝子とのセンス断片の配列同一性の程度は、当業者によって判定され得る。いくつかの事例では、遺伝子配列の追加のコピーは、標的植物遺伝子の発現に干渉する。共抑制手法を実施する方法について、WO97/20936及びEP0465572を参照されたい。
【0321】
アンチセンスポリヌクレオチド
「アンチセンスポリヌクレオチド」という用語は、内在性ポリペプチドをコードする特定のmRNA分子の少なくとも一部分に相補的であり、mRNA翻訳などの転写後事象に干渉することが可能であるDNA又はRNA分子を意味すると解釈される。アンチセンス方法の使用は、当該技術分野で周知である(例えば、G.Hartmann and S.Endres,Manual of Antisense Methodology,Kluwer(1999)を参照されたい)。植物におけるアンチセンス技法の使用は、Bourque(1995)及びSenior(1998)によって概略されている。Bourque(1995)は、どのようにアンチセンス配列が遺伝子不活性化の方法として植物系内で使用されてきたかの多数の例を列挙している。Bourqueはまた、部分的な阻害が、系の測定可能な変化をもたらす可能性がより高いため、任意の酵素活性の100%阻害を達成することは必要でないことがあると述べている。Senior(1998)は、アンチセンス法が現在、遺伝子発現を操作するための非常に確立された技法であると述べている。
【0322】
一実施形態では、アンチセンスポリヌクレオチドは、生理学的条件下でハイブリダイゼーションする、すなわち、(完全に又は部分的に一本鎖である)アンチセンスポリヌクレオチドは、少なくとも、二本鎖ポリヌクレオチドを、内在性mtSSB、TWINKLE、又はRECA3ポリペプチドをコードするmRNAで、通常の条件下で、細胞内に形成することが可能である。
【0323】
アンチセンス分子は、構造遺伝子に対応する配列を含んでもよく、又は遺伝子発現若しくはスプライシング事象の制御をもたらす配列のために含んでもよい。例えば、アンチセンス配列は、内在性遺伝子の標的コード領域、若しくは5’非翻訳領域(UTR)、若しくは3’-UTR、又はこれらの組み合わせに対応し得る。アンチセンス配列は、転写中又は転写後にスプライシング除去され得るイントロン配列に部分的に相補的であり得、好ましくは、標的遺伝子のエクソン配列のみに相補的であり得る。UTRの概してより大きい分岐を鑑みて、これらの領域を標的にすることは、遺伝子阻害のより大きい特異性を提供する。
【0324】
アンチセンス配列の長さは、少なくとも19個の連続したヌクレオチド、好ましくは、少なくとも30個又は少なくとも50個のヌクレオチド、より好ましくは、少なくとも100個、200個、500個、又は1000個のヌクレオチドであるべきである。遺伝子転写物全体に相補的な完全長配列が使用され得る。長さは、最も好ましくは、100個~2000個のヌクレオチドである。標的転写物とのアンチセンス配列の同一性の程度は、少なくとも90%、より好ましくは、95~100%、典型的には、100%同一であるべきである。もちろん、アンチセンスRNA分子は、分子を安定化するように機能し得る非関連配列を含んでもよい。
【0325】
核酸構築物
本発明は、本発明のポリヌクレオチド又は本発明に有用なポリヌクレオチドを含む核酸構築物、並びにこれらを含有するベクター及び宿主細胞、それらの産生及び使用の方法、並びにそれらの使用を含む。
【0326】
本発明は、動作可能に接続又は連結されたエレメントに言及する。「動作可能に接続された」又は「動作可能に連結された」などとは、機能的関係におけるポリヌクレオチドエレメントの結合を指す。典型的には、動作可能に接続された核酸配列は、連続して連結されており、2つのタンパク質コード領域を結合する必要がある場合、連続しており、読み取りフレーム内にある。RNAポリメラーゼが、2つのコード配列を単一RNA内に転写するときに、コード配列は、別のコード配列に「動作可能に接続されており」、RNAは、翻訳された場合、次いで、両方のコード配列に由来するアミノ酸を有する単一ポリペプチド内に翻訳される。コード配列は、発現された配列が最終的にプロセシングされて所望のタンパク質を産生する限り、互いに連続している必要はない。
【0327】
本明細書で使用される場合、「シス作用配列」、「シス作用エレメント」、又は「シス調節領域」若しくは「調節領域」という用語あるいは同様の用語は、発現可能な遺伝子配列に対して適切に配置され接続されたときに、遺伝子配列の発現を少なくとも部分的に調節することが可能である、ヌクレオチドのいずれかの配列を意味すると解釈される。当業者は、シス調節領域が、転写又は転写後レベルでの遺伝子配列の発現及び/又は細胞型特異性及び/又は発達特異性のレベルを活性化、サイレンシング、増強、抑制、又はそうでなければ変更することが可能であり得ることを認識している。本発明の好ましい実施形態では、シス作用配列は、発現可能な遺伝子配列の発現を増強又は刺激する活性化因子配列である。
【0328】
プロモーター又はエンハンサーエレメントを転写可能なポリヌクレオチドに「動作可能に接続する」とは、転写可能なポリヌクレオチド(例えば、タンパク質コードポリヌクレオチド又は他の転写物)をプロモーターの調節制御下に置き、次いで、プロモーターが、このポリヌクレオチドの転写を制御することを意味する。異種プロモーター/構造遺伝子組み合わせの構築において、概して、プロモーター又はそのバリアントを、転写可能なポリヌクレオチドの転写開始部位からある距離をおいて配置し、この距離は、このプロモーターと、プロモーターが自然状況で制御するタンパク質コード領域、すなわち、プロモーターが由来する遺伝子との間の距離とほぼ同じであることが好ましい。当該技術分野で既知であるように、この距離のある変動は、機能の喪失なく許容され得る。同様に、調節配列エレメント(例えば、オペレータ、エンハンサーなど)の制御下に置かれる転写可能なポリヌクレオチドに対する調節配列エレメントの好ましい配置は、エレメントの自然状況でのエレメントの配置、すなわち、エレメントが由来する遺伝子の配置によって定義される。
【0329】
本明細書で使用される場合、「プロモーター」又は「プロモーター配列」とは、対象の細胞内の転写の開始及びレベルを制御する、遺伝子の領域、概して、RNAコード領域の上流(5’)を指す。「プロモーター」は、TATAボックス及びCCAATボックス配列などの古典的ゲノム遺伝子の転写調節配列、並びに発達及び/若しくは環境刺激に応答して又は組織特異的若しくは細胞型特異的な様式で遺伝子発現を変更する追加の調節エレメント(すなわち、上流活性化配列、エンハンサー、及びサイレンサー)を含む。プロモーターは、通常、プロモーターが発現を調節する構造遺伝子の上流に配置されているが、必ずしもそうではない(例えば、いくつかのPolIIIプロモーター)。更に、プロモーターを含む調節エレメントは、通常、遺伝子の転写の開始部位の2kb以内に配置されている。プロモーターは、追加の特異的調節エレメントを含有し得、追加の特異的調節エレメントは、開始部位により遠位に位置して、細胞内の発現を更に増強し、かつ/又は追加の特異的調節エレメントが動作可能に接続された構造遺伝子の発現のタイミング又は誘導性を変更する。
【0330】
「構成的プロモーター」とは、植物などの生物の多く又は全ての組織内の動作可能に連結された転写配列の発現を指示するプロモーターを指す。本明細書で使用される場合、構成的という用語は、遺伝子が全ての細胞型内で同じレベルで発現されることを必ずしも示さないが、レベルのある変動がしばしば検出可能であるが、遺伝子が広範囲の細胞型内で発現されることを示す。本明細書で使用される場合、「選択的発現」とは、例えば、植物の、ほぼ排他的に特定の器官、例えば、胚乳、胚、葉、果実、塊茎、又は根内の発現を指す。好ましい実施形態では、プロモーターは、米植物などの穀類植物の穀粒内で選択的又は優先的に発現される。したがって、選択的発現は、植物が経験する条件の大部分又は全ての下での植物の多く又は全ての組織内の発現を指す構成的発現と対照的であり得る。
【0331】
選択的発現はまた、特定の植物組織内の、器官内の、又は発達段階における遺伝子発現の産物の区画化をもたらし得る。プラスチド、サイトゾル、液胞、又はアポプラスト空間などの特定の細胞内位置における区画化は、必要とされる細胞区画への輸送に適切なシグナル、例えば、シグナルペプチドを遺伝子産物の構造内に含めることによって達成されてもよく、又は半自律性オルガネラ(プラスチド及びミトコンドリア)の場合、適切な調節配列を有するトランスジーンをオルガネラゲノム内に直接組み込むことによって達成されてもよい。
【0332】
「組織特異的プロモーター」又は「器官特異的プロモーター」は、例えば、植物内の、多くの他の組織又は器官に対して、好ましくは、全ての他の組織又は器官ではなくてもほとんどの他の組織又は器官に対して、1つの組織又は器官内で優先的に発現されるプロモーターである。典型的には、プロモーターは、特定の組織又は器官内で、他の組織又は器官内でよりも10倍高いレベルで発現される。
【0333】
好適であり、当該技術分野で周知の穀類内の種子特異的発現をもたらすプロモーターを含む、本発明のための種子特異的プロモーター。好適である顕著なプロモーターは、オオムギLPT2若しくはLPT1遺伝子プロモーター(WO95/15389及びWO95/23230)、又はWO99/16890に記載されているプロモーター(オオムギホルデイン遺伝子からのプロモーター)である。他のプロモーターは、Broun et al.(1998)、Potenza et al.(2004)、US2007/0192902、及びUS2003/0159173によって記載されているものを含む。一実施形態では、種子特異的プロモーターは、種子の定義される部分、例えば、胚乳、好ましくは、発達中のアリューロン内で優先的に発現される。更なる実施形態では、種子特異的プロモーターは、種子発芽後に発現されない又は低レベルでのみ発現される。
【0334】
一実施形態では、プロモーターは、少なくとも開花時と開花後30日目との間の時点で活性である又はこの期間全体中に活性である。このようなプロモーターの例は、OsmtSSB-1a遺伝子プロモーター、TWINKLEプロモーター、RECA3プロモーター、又はTA2プロモーターである(WO2017/083920)。
【0335】
本発明によって企図されるプロモーターは、形質転換される宿主植物の原産であってもよく、又は領域が宿主植物内で機能的である代替の供給源に由来してもよい。単子葉植物内で機能的である多数のプロモーターは、当該技術分野で周知である、プロモーター活性を評価するための非限定的な方法は、Medberry et al.(1992及び1993)、Sambrook et al.(1989、上記)、及びUS5,164,316によって開示されている。
【0336】
代替として又は加えて、プロモーターは、誘導性プロモーター又は発達的に調節されたプロモーターであり得、誘導性プロモーター又は発達的に調節されたプロモーターは、導入されたポリヌクレオチドの発現を、穀類植物の適切な発達段階において駆動することが可能である。使用され得る他のシス作用配列は、転写及び/又は翻訳エンハンサーを含む。エンハンサー領域は、当業者に周知であり、ATG翻訳開始コドン及び隣接配列を含むことができる。含まれている場合、開始コドンは、配列全体が翻訳される場合には、配列全体の翻訳を確実にするために、異質又は外来性ポリヌクレオチドに関連するコード配列の読み取りフレームと一致すべきである。翻訳開始領域は、転写開始領域の供給源から、又は異質若しくは外来性ポリヌクレオチドから提供され得る。配列はまた、転写を駆動するために選択されたプロモーターの供給源に由来し得、mRNAの翻訳を増加させるように特異的に改変され得る。
【0337】
本発明の核酸構築物は、転写終結配列を含み得る約50個~1,000個のヌクレオチド塩基対の3’非翻訳配列を含み得る。3’非翻訳配列は、転写終結シグナルを含有し得、転写終結シグナルは、ポリアデニル化シグナル及びmRNAプロセシングをもたらすことが可能であるいずれかの他の調節シグナルを含み得るか、又は含まない場合がある。ポリアデニル化シグナルは、mRNA前駆体の3’末端へのポリアデニル酸路の付加のために機能する。ポリアデニル化シグナルは、基準の形態5’AATAAA-3’とのホモロジーの存在によって一般的に認識されるが、変動は珍しくない。好適な3’非翻訳配列の例は、Agrobacterium tumefaciensのオクトピンシンターゼ(ocs)遺伝子又はノパリンシンターゼ(nos)遺伝子からのポリアデニル化シグナルを含有する3’転写非翻訳領域である(Bevan et al.,1983)。好適な3’非翻訳配列はまた、リブロース-1,5-ビスホスフェートカルボキシラーゼ(ssRUBISCO)遺伝子などの植物遺伝子に由来してもよいが、当業者に既知の他の3’エレメントもまた、使用されてもよい。
【0338】
転写開始部位とコード配列の開始との間に挿入されたDNA配列、すなわち、非翻訳5’リーダー配列(5’UTR)が翻訳及び転写される場合、5’UTRは、遺伝子発現に影響し得るため、特定のリーダー配列もまた、使用され得る。好適なリーダー配列は、異質又は内在性DNA配列の最適な発現を指示するように選択される配列を含むものを含む。例えば、このようなリーダー配列は、好ましいコンセンサス配列を含み、コンセンサス配列は、例えば、Joshi(1987)によって記載されているように、mRNA安定性を増加又は維持することができ、翻訳の不適切な開始を防止することができる。
【0339】
ベクター
本発明は、遺伝子構築物の操作又は転移のためのベクターの使用を含む。「キメラベクター」とは、例えば、プラスミド又は植物ウイルスに由来する核酸分子であって、プラスミド又は植物ウイルス内に挿入又はクローニングされ得る、核酸分子、好ましくは、DNA分子を意味する。ベクターは、好ましくは、二本鎖DNAであり、1つ以上の固有の制限部位を含有し、標的細胞若しくは組織又はその前駆細胞若しくは組織を含む定義される宿主細胞内での自律複製が可能であってもよく、あるいはクローニングされた配列が再現可能であるように、定義される宿主のゲノム内への組み込みが可能であってもよい。したがって、ベクターは、自律複製ベクター、すなわち、染色体外実体として存在するベクターであり得、ベクターの複製は、染色体複製、例えば、線状又は閉環状プラスミド、染色体外エレメント、ミニ染色体、又は人工染色体とは独立している。ベクターは、自己複製を確実にするためのいずれかの手段を含有し得る。代替として、ベクターは、細胞内に導入されたときに、レシピエント細胞のゲノム内に組み込まれるベクターであって、ベクターが組み込まれた染色体と一緒に複製される、ベクターであり得る。ベクター系は、宿主細胞のゲノム内に導入される全DNAを一緒に含有する、単一ベクター若しくはプラスミド、2つ以上のベクター若しくはプラスミド、又はトランスポゾンを含み得る。ベクターの選択は、典型的には、ベクターが導入される細胞とのベクターの適合性に依存する。ベクターはまた、選択マーカー、例えば、抗生物質耐性遺伝子、除草剤耐性遺伝子、又は好適な形質転換体の選択のために使用され得る他の遺伝子を含み得る。このような遺伝子の例は、当業者に周知である。
【0340】
本発明の核酸構築物は、プラスミドなどのベクター内に導入され得る。プラスミドベクターは、典型的には、原核及び真核細胞内の発現カセットの容易な選択、増幅、及び形質転換を提供する追加の核酸配列を含み、例えば、pUC由来ベクター、pSK由来ベクター、pGEM由来ベクター、pSP由来ベクター、pBS由来ベクター、又は1つ以上のT-DNA領域を含有するバイナリベクターを含む。追加の核酸配列は、ベクターの自律複製を提供するための複製起点、選択可能なマーカー遺伝子、好ましくは、抗生物質又は除草剤耐性をコードする選択可能マーカー遺伝子、核酸構築物内でコードされた核酸配列又は遺伝子を挿入するための複数の部位を提供する固有の複数のクローニング部位、並びに原核及び真核細胞(特に植物)細胞の形質転換を増強する配列を含む。
【0341】
「マーカー遺伝子」とは、異なる表現型を、マーカー遺伝子を発現する細胞に付与し、したがって、このような形質転換された細胞が、マーカーを有しない細胞と区別されることを可能にする遺伝子を意味する。選択可能マーカー遺伝子は、選択剤(例えば、除草剤、抗生物質、放射線、熱、又は未形質転換細胞を損傷する他の処理)に対する耐性に基づく「選択」を可能にする形質を付与する。スクリーニング可能マーカー遺伝子(又はレポーター遺伝子)は、観察又は試験による、すなわち、「スクリーニング」(例えば、β-グルクロニダーゼ、ルシフェラーゼ、GFP、又は未形質転換細胞内に存在しない他の酵素活性)による同定を可能にする形質を付与する。マーカー遺伝子及び対象のヌクレオチド配列は、連結されている必要はない。
【0342】
形質転換体の同定を容易にするために、核酸構築物は、望ましくは、異質若しくは外来性ポリヌクレオチドとして又はこれに加えて、選択可能又はスクリーニング可能マーカー遺伝子を含む。マーカーが、選択の植物細胞と組み合わせて機能的(すなわち、選択的)である限り、マーカーの実際の選択は重要ではない。例えば、US4,399,216に記載されているように、非連結遺伝子の共形質転換もまた、植物形質転換における効率的なプロセスであるため、マーカー遺伝子及び対象の異質又は外来性ポリヌクレオチドは、連結されている必要はない。
【0343】
細菌選択可能マーカーの例は、アンピシリン、エリスロマイシン、クロラムフェニコール、又はテトラサイクリン耐性、好ましくは、カナマイシン耐性などの抗生物質耐性を付与するマーカーである。植物形質転換体の選択のための例示的な選択可能マーカーは、ヒグロマイシンB耐性をコードするhyg遺伝子、カナマイシン、パロモマイシン、G418に対する耐性を付与するネオマイシンホスホトランスフェラーゼ(nptII)遺伝子、例えば、EP256223に記載されているように、グルタチオン由来除草剤に対する耐性を付与するラット肝臓からのグルタチオン-S-トランスフェラーゼ遺伝子、例えば、WO87/05327に記載されているように、過剰発現の際に、ホスフィノトリシンなどのグルタミンシンターゼ阻害剤に対する耐性を付与するグルタミンシンターゼ遺伝子、例えば、EP275957に記載されているように、選択剤ホスフィノトリシンに対する耐性を付与するStreptomyces viridochromogenesからのアセチルトランスフェラーゼ遺伝子、例えば、Hinchee et al.(1988)によって記載されているように、N-ホスホノメチルグリシンに対する耐性を付与する5-エノールピルビルシキミ酸-3-リン酸シンターゼ(EPSPS)をコードする遺伝子、例えば、WO91/02071に記載されているように、ビアラホスに対する耐性を付与するbar遺伝子、ブロモキシニルに対する耐性を付与するKlebsiella ozaenaeからのbxnなどのニトリラーゼ遺伝子(Stalker et al.,1988)、メトトレキサートに対する耐性を付与するジヒドロ葉酸レダクターゼ(DHFR)遺伝子(Thillet et al.,1988)、イミダゾリノン、スルホニルウレア、若しくは他のALS阻害化学物質に対する耐性を付与する変異型アセト乳酸シンターゼ遺伝子(ALS)(EP154,204)、5-メチルトリプトファンに対する耐性を付与する変異型アントラニル酸シンターゼ遺伝子、又は除草剤に対する耐性を付与するダラポンデハロゲナーゼ遺伝子を含むが、これらに限定されない。
【0344】
好ましいスクリーニング可能マーカーは、様々な発色基質が既知であるβ-グルクロニダーゼ(GUS)酵素をコードするuidA遺伝子、発色基質が既知である酵素をコードするβ-ガラクトシダーゼ遺伝子、カルシウム感受性生物発光検出において使用され得るエクオリン遺伝子(Prasher et al.,1985)、緑色蛍光タンパク質遺伝子(Niedz et al.,1995)又はその誘導体、生物発光検出を可能にするルシフェラーゼ(luc)遺伝子(Ow et al.,1986)、及び当該技術分野で既知の他のものを含むが、これらに限定されない。本明細書で使用される場合、「レポーター分子」とは、分子の化学的性質によって、解析的に同定可能なシグナルを提供する分子であって、解析的に同定可能なシグナルが、タンパク質産物への参照によるプロモーター活性の判定を容易にする、分子を意味する。
【0345】
好ましくは、核酸構築物は、ゲノム内に、例えば、本発明の植物又は細胞のゲノム内に安定して組み込まれる。したがって、核酸は、分子がゲノム内に組み込まれることを可能にする適切なエレメントを含むか、又は構築物は、植物細胞の染色体内に組み込まれ得る適切なベクター内に置かれる。
【0346】
本発明の一実施形態は、組換えベクターを含み、組換えベクターは、本発明の少なくとも1つのポリヌクレオチド分子を含み、本発明の少なくとも1つのポリヌクレオチド分子は、核酸分子を宿主細胞内に送達することが可能であるいずれかのベクター内に挿入される。このようなベクターは、異種核酸配列、すなわち、本発明の核酸分子に隣接して自然に見出されず、好ましくは、核酸分子が由来する種以外の種に由来する核酸配列を含有する。ベクターは、RNA又はDNAのいずれか、原核細胞又は真核細胞のいずれかであることができ、典型的には、ウイルス又はプラスミドである。
【0347】
植物細胞の安定したトランスフェクションに好適な、又はトランスジェニック植物の確立に好適な多数のベクターは、例えば、Pouwels et al.,Cloning Vectors:A Laboratory Manual,1985,上記1987、Weissbach and Weissbach,Methods for Plant Molecular Biology,Academic Press,1989、及びGelvin et al.,Plant Molecular Biology Manual,Kluwer Academic Publishers,1990に記載されている。典型的に、植物発現ベクターは、例えば、5’及び3’調節配列の転写制御下の1つ以上のクローニングされた植物遺伝子、並びに顕性選択可能マーカーを含む。このような植物発現ベクターはまた、プロモーター調節領域(例えば、誘導性若しくは構成的発現、環境的若しくは発達的に調節された発現、又は細胞若しくは組織特異的発現を制御する調節領域)、転写開始部位、リボソーム結合部位、RNAプロセシングシグナル、転写終結部位、及び/又はポリアデニル化シグナルを含有することができる。
【0348】
mtSSB、TWINKLE、又はRECA3ポリペプチドのレベルは、穀類植物内のタンパク質をコードする遺伝子の発現のレベルを減少することによって変えられ得、これは、増加したアリューロン厚さをもたらす。遺伝子の発現レベルは、1細胞当たりのコピー数を変更することによって、例えば、コード配列と、コード配列に動作可能に接続されており、細胞内で機能的である転写制御エレメントと、を含む、合成遺伝子構築物を導入することによって、変えられ得る。複数の形質転換体が、トランスジーン組み込み部位の近傍における内在性配列の影響から生じるトランスジーン発現の好ましいレベル及び/又は特異性を有するものについて選択及びスクリーニングされ得る。トランスジーン発現の好ましいレベル及びパターンは、増加したアリューロン厚さをもたらすものである。代替として、変異誘発種子の集団又は育種プログラムからの植物の集団が、増加したアリューロン厚さを有する個別の系統についてスクリーニングされ得る。
【0349】
組換え細胞
本発明の別の実施形態は、組換え細胞を含み、組換え細胞は、変異型内在性遺伝子、例えば、遺伝子編集によって改変された遺伝子、又は本発明の1つ以上の組換え分子で形質転換された宿主細胞若しくはその子孫細胞を含む。遺伝子編集を含む様々なタイプの変異誘発は、上記のものであり、組換え細胞を産生するために使用され得る。細胞内への核酸分子の形質転換は、核酸分子が細胞内に挿入され得るいずれかの方法によって達成され得る。形質転換技法は、トランスフェクション、エレクトロポレーション、マイクロインジェクション、リポフェクション、吸着、及びプロトプラスト融合を含むが、これらに限定されない。組換え細胞は、依然として単細胞であってもよく、又は組織、器官、若しくは多細胞生物、例えば、トランスジェニック植物に成長してもよい。本発明の形質転換核酸分子は、依然として染色体外であってもよく、又は形質転換核酸分子の発現される能力が保持される様式で、形質転換細胞の染色体内の1つ以上の部位内に組み込まれてもよい。好ましい宿主細胞は、植物細胞、より好ましくは、穀物粒細胞である。
【0350】
遺伝的変動を有する植物
本明細書で名詞として使用される場合、「植物」という用語は、植物全体を指し、植物界のいずれかのメンバーを指すが、形容詞として使用される場合、植物内に存在する、又は植物から得られる、又は植物に由来する、又は植物に関連するいずれかの物質、例えば、植物器官(例えば、葉、茎、根、花)、単一細胞(例えば、花粉)、種子、及び植物細胞などを指す。根及び苗条が出芽した小植物及び発芽した種子もまた、「植物」の意味に含まれる。本明細書で使用される場合、「植物部分」という用語は、植物から得られ植物のゲノムDNAを含む1つ以上の植物組織又は器官を指す。植物部分は、植生構造(例えば、葉、茎)、根、花器官/構造、(胚、子葉、及び種皮を含む)種子、植物組織(例えば、維管束組織、及び基本組織など)、細胞及びその子孫を含む。本明細書で使用される場合、「植物細胞」という用語は、植物から得られる又は植物内の細胞を指し、植物に由来するプロトプラスト又は他の細胞、配偶子産生細胞、及び全植物に再生する細胞を含む。植物細胞は、培養物内の細胞、すなわち、インビトロの細胞であり得る。「植物組織」とは、植物内の又は植物から得られる分化組織(「外植体」)、又は未成熟若しくは成熟胚に由来する未分化組織、種子、根、苗条、果実、塊茎、花粉、及びカルスなどの、培養物内の植物細胞の様々な形態の集合を意味する。種子内の又は種子からの例示的な植物組織は、子葉、胚及び胚軸、又は胚盤、胚乳、若しくはアリューロンである。したがって、本発明は、植物及び植物部分、並びにこれらを含む製品を含む。
【0351】
「穀粒」及び「種子」という用語は、互換的に本明細書で使用される。「穀粒」とは、文脈に従って、植物内の成熟穀粒、植物内の発達中の種子、収穫された穀粒を指してもよく、あるいは例えば、製粉若しくは精白などの加工後の穀粒であって、穀粒のほとんどが無傷のままである、加工後の穀粒、又は吸水若しくは発芽後の穀粒を指してもよい。成熟穀粒は、一般的に、約18~20重量%未満、典型的には、約8~12重量%の含水量を有する。一実施形態では、発達中の本発明の穀粒は、少なくとも受粉後(DAP)約10日目である。一実施形態では、発達中の本発明の種子は、受粉時と受粉後30日目との間の種子であり、この種子は、植物内に含まれてもよく、又は切除されてもよい。
【0352】
本明細書で使用される場合、「トランスジェニック植物」とは、本明細書で定義されるように、1つ以上の遺伝的変動を有する植物であって、同じ種、変種、又は品種の野生型植物内に見出されない1つ以上の外来性ポリヌクレオチドを含有する植物を指す。すなわち、トランスジェニック植物(形質転換植物)は、トランスジェニック植物が形質転換前に含有しなかった遺伝物質(トランスジーン)を含有する。トランスジーンは、植物細胞若しくは別の植物細胞若しくは非植物供給源から得られる若しくはこれに由来する遺伝子配列、又は合成配列を含み得る。典型的には、トランスジーンは、ヒト操作によって、例えば、形質転換などによって植物内に導入されているが、当業者が認識するように、任意の方法が使用され得る。トランスジーンは、好ましくは、植物の核ゲノム内に安定して組み込まれている。トランスジーンは、同じ種内で自然発生するが、再編成された順序で、又はエレメント、例えば、アンチセンス配列の異なる編成で発生する配列を含み得る。このような配列を含有する植物は、「トランスジェニック植物」に本明細書で含まれる。
【0353】
「非トランスジェニック植物」は、組換えDNA技法による遺伝物質の導入によって遺伝子改変されていない植物である。
【0354】
本明細書で使用される場合、「野生型」とは、本発明により改変されていない細胞、ポリペプチド、遺伝子、組織、穀粒、又は植物を指す。野生型細胞、組織、又は植物は、内在性遺伝子の発現のレベル、本発明のポリペプチド又は他のポリペプチドの量、外来性核酸、又は形質改変の程度及び性質、特に、アリューロン厚さの表現型を、本明細書に記載されるように改変された細胞、組織、穀粒、又は植物と比較するために、対照として使用され得る。
【0355】
本明細書で使用される場合、「対応する野生型」穀類植物又は穀粒という用語又は同様の語句は、本発明の穀類植物又は穀粒の遺伝子型の少なくとも75%、より好ましくは、少なくとも95%、より好ましくは、少なくとも97%、より好ましくは、少なくとも99%、更により好ましくは、99.5%を含むが、各々が植物若しくは穀粒内のポリペプチドの活性を低減する(導入された変異などの)遺伝的変動及び/又は肥厚アリューロンを含まない穀類植物又は穀粒を指す。好ましい実施形態では、本発明の穀物粒又は植物は、1つ以上の(導入された変異などの)遺伝的変動を除いて、野生型穀物粒又は植物対して同質遺伝子穀粒又は植物である。好ましくは、対応する野生型植物又は穀粒は、本発明の植物/穀粒の前駆体と同じ品種若しくは変種のもの若しくはこれからのもの、又は1つ以上の遺伝子改変を欠きかつ/若しくは肥厚アリューロンを有しない、しばしば「分離体」と称される同胞植物系統のもの若しくはこれからのものである。一実施形態では、本発明の米植物又は穀粒は、野生型米品種Zhonghua 11(ZH11)の遺伝子型と50%未満同一である遺伝子型を有する。ZH11は、1986年から市販されている。
【0356】
本発明の文脈で定義されるように、トランスジェニック植物は、本発明により遺伝子改変された穀類植物の子孫を含み、子孫は、遺伝的変動、例えば、対象の変異又はトランスジーンを含む。このような子孫は、一次トランスジェニック植物の自家受精によって、又はこのような植物を別の穀類植物と交雑することによって得られ得る。これは、概して、所望の植物又はその穀粒内の本明細書で定義される少なくとも1つのタンパク質の産生を変えることである。トランスジェニック植物部分は、トランスジーンを含むトランスジェニック植物の全ての部分及び細胞、例えば、培養組織、カルス、及びプロトプラスト、好ましくは、穀粒などを含む。
【0357】
本明細書で使用される場合、「穀類」は、一般的に草と称されるPoaceae科のいずれかの植物であって、この植物の穀粒の可食構成要素のために栽培される、植物を指す。したがって、穀類は、単子葉顕花植物の1つの科である。本発明の穀類植物/穀粒の例としては、米、コムギ、オオムギ、ライムギ、トウモロコシ、モロコシ、カラスムギ、及びライコムギが挙げられるが、これらに限定されない。
【0358】
本明細書で使用される場合、「米」という用語は、Oryza属の植物の系、変種、又は品種を含むいずれかの植物又はその一部分であって、この植物の穀粒の可食構成要素のために栽培される、植物又はその一部分を指す。米の植物は、Oryza sativa種のものであることが好ましい。
【0359】
本明細書で使用される場合、「玄米」とは、ふすま層及び胚(胚芽)を含むが、通常収穫中に除去された外皮を含まない米の全穀粒を意味する。すなわち、玄米は、アリューロン及び胚を除去するために精白されていない。「茶色」は、ふすま層内の茶色又は黄褐色の色素の存在を指す。玄米は、全穀粒と考えられる。本明細書で使用される場合、「白米」(精白米)とは、ふすま及び胚芽が除去された米穀粒、すなわち、本質的に、全米穀粒の残りのデンプン性胚乳を意味する。米穀粒のこれらのクラスの両方は、短、中、又は長穀粒の形態になり得る。白米と比較して、玄米は、タンパク質、ミネラル、及びビタミンのより高い含有量、並びに玄米のタンパク質含有量中のより高いリジン含有量を有する。
【0360】
本明細書で使用される場合、「コムギ」という用語は、Triticum属の植物の系、変種、又は品種を含むいずれかの植物又はその一部分であって、この植物の穀粒の可食構成要素のために栽培される、植物又はその一部分を指し、これは、その前駆体、及び他の種との交雑によって産生されるその子孫を含む。コムギは、42個の染色体から構成されたAABBDDのゲノム構成を有する「六倍体コムギ」、及び28個の染色体から構成されたAABBのゲノム構成を有する「四倍体コムギ」を含む。六倍体コムギは、T.aestivum、T.spelta、T.macha、T.compactum、T.sphaerococcum、T.vavilovii、及びそれらの種間交雑を含む。六倍体コムギの好ましい種は、(「パンコムギ」とも称される)T.aestivum、亜種aestivumである。四倍体コムギは、(デュラムコムギ又はTriticum turgidum、亜種durumとも本明細書で称される)T.durum、T.dicoccoides、T.dicoccum、T.polonicum、及びそれらの種間交雑を含む。加えて、「コムギ」という用語は、六倍体又は四倍体Triticum種の潜在的な前駆体、例えば、AゲノムについてのT.uartu、T.monococcum、又はT.boeoticum、BゲノムについてのAegilops speltoides、及びDゲノムについての(Aegilops squarrosa又はAegilops tauschiiとしても既知の)T.tauschiiを含む。特に好ましい前駆体は、Aゲノムのものであり、更により好ましくは、Aゲノム前駆体は、T.monococcumである。本発明における使用のためのコムギ品種は、上記で列挙される種のうちのいずれかに属し得るが、これらに限定されない。また、従来の技法によって、Triticum種を親として(ライムギ[Secale cereale]などの)非Triticum種との性交雑において使用して産生される植物が包含され、これは、Triticaleを含むが、これに限定されない。
【0361】
本明細書で使用される場合、「オオムギ」という用語は、Hordeum属の植物の系、変種、又は品種を含むいずれかの植物又はその一部分であって、この植物の穀粒の可食構成要素のために栽培される、植物又はその一部分を指し、これは、その前駆体、及び他の種との交雑によって産生されるその子孫を含む。植物は、Hordeum vulgare種のものであることが好ましい。
【0362】
本明細書で使用される場合、「着色された」は、非定型色を含む穀粒を指す。例としては、黒米、赤米、赤コムギ、紫米、紫オオムギ、及び紫トウモロコシが挙げられる。黒米及び赤米の各々は、色素、特に、アントシアニジン及びアントシアニンをアリューロン層内に含有する。着色された米は、着色されていない米よりも高いリボフラビン含有量を有するが、同様のチアミン含有量を有する。「黒米」は、アントシアニンの濃度に起因して、黒色又はほぼ黒色のふすま層を有し、調理の際に深い紫色になり得る。(「紫黒米」としても既知の)「紫米」は、黒米の短穀粒バリアントであり、ここで定義されるように、黒米に含まれる。紫米は、調理されていない状態で紫色であり、調理されたときに深い紫色である。「赤米」は、ふすまに赤色/くり色を与える様々なアントシアニンを含有し、これらのアントシアニンは、シアニジン-3-グルコシド(クリサンテミン)及びペオニジン-3-グルコシド(オキシコシシ-アニン(oxycoccicy-anin)))を含む。
【0363】
これらのタイプの穀物粒の各々は、発芽を防止するように処理され得、例えば、調理(煮沸)によって又は乾燥加熱(焙煎)によって処理され得る。例えば、玄米及び着色された米は、典型的には、所望の食感に依存して、10~40分間調理され、白米は、典型的には、12~18分間調理される。調理又は加熱は、穀粒内の抗栄養因子、例えば、トリプシン阻害剤、オリザシスタチン、及びヘムアグルチニン(レクチン)などのレベルを、これらのタンパク質の変性によって低減するが、フィテート含有量のレベルを低減しない。穀物粒はまた、当該技術分野で既知のように、調理前に水中に浸漬されてもよく、又はより長い時間ゆっくり調理されてもよい。穀物粒はまた、割られてもよく、煮沸されてもよく、又は熱安定化されてもよい。穀物粒のこれらの形態の各々は、加工穀粒のクラスに含まれ、加工穀粒は、発芽することができず、生存植物を産生するために使用されることがない。ふすまは、ふすまを安定化するために、例えば、約6分間100℃で蒸気処理され得る。
【0364】
一実施形態では、本発明の穀粒は、対応する野生型穀物粒と比較して、穀粒成熟の遅延を有する。本発明の植物は、野生型植物に対して低減された結実度(%)を有し得、結実度は、成熟穀粒成長段階において種子によって満たされた、植物内の小花の百分率を計算することを伴う。
【0365】
一実施形態では、本発明の穀粒は、対応する野生型穀物粒と比較して、減少した発芽能を有する。例えば、穀粒は、28℃で12時間の明/12時間の暗サイクル下で湿度制御なしで、グロースチャンバ内で培養されたときに、対応する野生型穀物粒の発芽能の約50%を有する。本明細書で使用される場合、「発芽」という用語は、小根が種皮を通って可視的に出芽したときとして定義される。
【0366】
一実施形態では、本発明の植物は、配列番号3として提供されるアミノ酸の配列を有するOsmtSSB-1aポリペプチドを含む同質遺伝子植物などの野生型親変種に対して、通常の植物高さ、稔性(雄及び雌)、種子長さ、種子幅、及び種子厚さのうちの1つ以上又は全てを有する。一実施形態では、本発明の穀粒は、野生型親変種に対して、通常の植物高さ、稔性(雄及び雌)、種子長さ、種子幅、及び種子厚さのうちの1つ以上又は全てを有する穀類植物を産生することが可能である。本明細書で使用される場合、「通常」という用語は、本発明の植物と同じ条件下で成長した野生型親変種内の同じ形質を測定することによって判定され得る。一実施形態では、通常であるために、本発明の植物は、野生型親変種と比較して、定義される特徴のレベル/数などの+/-20%、より好ましくは、+/-10%、より好ましくは、+/-5%、更により好ましくは、+/-2.5%を有する。
【0367】
本発明の文脈で定義される場合、トランスジェニック植物は、本発明の少なくとも1つのポリペプチドの産生を所望の植物又は植物器官内で引き起こすための組換え技法を使用して遺伝子改変された植物(並びにこの植物の一部分及び細胞)及びこの植物の子孫を含む。トランスジェニック植物は、当該技術分野で既知の技法、例えば、A.Slater et al.,Plant Biotechnology-The Genetic Manipulation of Plants,Oxford University Press(2003)、及びP.Christou and H.Klee,Handbook of Plant Biotechnology,John Wiley and Sons(2004)に概略的に記載されている技法などを使用して産生され得る。
【0368】
好ましい実施形態では、本発明の植物は、導入された遺伝的変動、遺伝子、若しくは核酸構築物(トランスジーン)、又は変異の各々全てについてホモ接合性であり、このため、本発明の植物の子孫は、所望の表現型について分離しない。トランスジェニック植物はまた、例えば、ハイブリッド種子から成長したF1子孫などにおいて、導入された遺伝的変動、遺伝子、又は核酸構築物についてヘテロ接合性であり得る。このような植物は、当該技術分野で周知の、雑種強勢などの利点を提供し得る。
【0369】
一実施形態では、本発明の植物を選択する方法は、植物からのDNA試料を、少なくとも1つの「他の遺伝子マーカー」について解析することを更に含む。本明細書で使用される場合、「他の遺伝子マーカー」は、植物の所望の形質に連結されたいずれかの分子であり得る。このようなマーカーは、当業者に周知であり、形質、このような耐病性、収量、植物形態、穀粒質、休眠形質、穀粒色、種子内のジベレリン酸含有量、植物高さ、及び粉色などを決定する遺伝子に連結された分子マーカーを含む。このような遺伝子の例は、Rht遺伝子であり、Rht遺伝子は、半矮性成長習性、したがって、耐倒伏性を決定する。
【0370】
細胞内への遺伝子の直接送達のための以下の4つの一般的な方法:(1)化学的方法(Graham et al.,1973)、(2)物理的方法、例えば、マイクロインジェクション(Capecchi,1980)、エレクトロポレーション(例えば、WO87/06614、US5,472,869、5,384,253、WO92/09696、及びWO93/21335を参照されたい)、及び遺伝子銃(例えば、US4,945,050及びUS5,141,131を参照されたい)、(3)ウイルスベクター(Clapp.1993、Lu et al.,1993、Eglitis et al.,1988)、並びに(4)受容体媒介機構(Curiel et al.,1992、Wagner et al.,1992)が記載されている。
【0371】
使用され得る加速方法は、例えば、マイクロプロジェクタイル衝撃などを含む。核酸分子を植物細胞に送達する形質転換するための方法の一例は、マイクロプロジェクタイル衝撃である。この方法は、Yang et al..Particle Bombardment Technology for Gene Transfer.Oxford Press.Oxford.England(1994)によって概説されている。核酸でコーティングされ得、推進力によって細胞内に送達され得る非生物学的粒子(マイクロプロジェクタイル)。例示的な粒子としては、タングステン、金、及び白金などから構成された粒子が挙げられる。マイクロプロジェクタイル衝撃は、単子葉植物を再現可能に形質転換する有効な手段であることに加えて、マイクロプロジェクタイル衝撃の利点は、特に、プロトプラストの単離もAgrobacterium感染の感受性も必要とされないことである。本発明での使用に好適な粒子送達システムは、ヘリウム加速PDS-1000/He銃であるBio-Rad Laboratoriesから入手可能である。衝撃のために、未成熟胚又は未成熟胚に由来する標的細胞、例えば、胚盤若しくはカルスが、固体培地上に配置され得る。
【0372】
別の代替の実施形態では、プラスチドが、安定して形質転換され得る。高等植物内のプラスチド形質転換について開示されている方法は、選択可能マーカーを含有するDNAの粒子銃送達、及び相同組換えによるプラスチドゲノムへのDNAの標的化を含む(US5,451,513、US5,545,818、US5,877,402、US5,932479、及びWO99/05265)。
【0373】
Agrobacterium媒介転移は、DNAが全植物組織内に導入され得、それによって、プロトプラストからの無傷の植物の再生の必要性をバイパスするため、遺伝子を植物細胞内に導入するための広く適用可能なシステムである。DNAを植物細胞内に導入するための、Agrobacterium媒介植物組み込みベクターの使用は、当該技術分野で周知である(例えば、US5,177,010、US5,104,310、US5,004,863、US5,159,135を参照されたい)。更に、T-DNAの組み込みは、少ない再編成をもたらす比較的正確なプロセスである。転移されるDNAの領域は、境界配列によって定義され、介在DNAは、通常、植物ゲノム内に挿入される。
【0374】
Agrobacterium形質転換法を使用して形成されるトランスジェニック植物は、典型的には、単一遺伝子座を1つの染色体上に含有する。このようなトランスジェニック植物は、付加遺伝子についてヘミ接合性であると称され得る。付加構造遺伝子についてホモ接合性であるトランスジェニック植物、すなわち、2つの付加遺伝子を含有し、1つの遺伝子を染色体対の各々の染色体上の同じ遺伝子座において含有するトランスジェニック植物がより好ましい。ホモ接合性トランスジェニック植物は、単一付加遺伝子を含有する独立した分離個体トランスジェニック植物を性交雑(自家受粉)することと、産生された種子の一部分を発芽させることと、得られた植物を対象の遺伝子について解析することとによって得られ得る。
【0375】
細胞形質転換の他の方法もまた、使用されてもよく、花粉内への直接DNA転移によって、植物の生殖器官内へのDNAの直接注入によって、又は未成熟胚の細胞内へのDNAの直接注入、続いて、乾燥した胚の再水和によって、DNAを植物内に導入することを含むが、これらに限定されない。
【0376】
単一植物プロトプラスト形質転換体からの又は様々な形質転換された外植体からの植物の再生、発達、及び栽培は、当該技術分野で周知である(Weissbach et al.,Methods for Plant Molecular Biology,Academic Press,San Diego,(1988))。この再生及び成長プロセスは、典型的には、形質転換された細胞の選択のステップ、これらの個別化された細胞を、胚発達の通常の段階にわたって、根付いた小植物段階にわたって培養するステップを含む。トランスジェニック胚及び種子は、同様に再生される。したがって、得られた根付いたトランスジェニック苗条は、その後、土壌などの適切な植物成長培地に植えられる。
【0377】
異質外来性遺伝子を含有する植物の発達又は再生は、当該技術分野で周知である。好ましくは、再生された植物は、自家受粉されて、ホモ接合性トランスジェニック植物を提供する。そうでなければ、再生された植物から得られた花粉が、農業的に重要な系統の採種栽培植物と交雑される。逆に、これらの重要な系統の植物からの花粉は、再生された植物を受粉するために使用される。所望の外来性核酸を含有する本発明のトランスジェニック植物は、当業者に周知の方法を使用して栽培される。
【0378】
トランスジェニック細胞及び植物内のトランスジーンの存在を確認するために、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)増幅又はサザンブロット解析が、当業者に既知の方法を使用して実行され得る。トランスジーンの発現産物は、産物の性質に依存して、様々な方法のうちのいずれかで検出され得、ウエスタンブロット及び酵素アッセイを含む。タンパク質発現を定量化し、異なる植物組織内の複製を検出するための特に有用な1つの方法は、GUSなどのレポーター遺伝子を使用することである。トランスジェニック植物が得られた際に、トランスジェニック植物は、成長させて、所望の表現型を有する植物組織又は部分を産生し得る。植物組織又は植物部分は、収穫され得、かつ/又は種子は、収集され得る。種子は、所望の特徴を有する組織又は部分を有する追加の植物を成長させるための供給源として機能し得る。
【0379】
マーカー支援選択
マーカー支援選択は、古典的な育種プログラムにおいて反復親と戻し交雑するときに必要とされるヘテロ接合性植物を選択する、十分認識された方法である。各々の戻し交雑世代における植物の集団は、戻し交雑集団において1:1の比で通常存在する対象の遺伝子についてヘテロ接合性であり、分子マーカーが、遺伝子の2つのアレルを区別するために使用され得る。DNAを、例えば、若い苗条から抽出することと、特定のマーカーで、遺伝子移入された望ましい形質について試験することとによって、エネルギー及び資源がより少ない植物に集中しつつ、更なる戻し交雑のための植物の早期選択がなされる。戻し交雑プログラムを更に迅速化するために、未成熟種子(開花後25日目)からの胚は、完全種子成熟を可能にするのではなく、切除され、滅菌条件下で栄養培地上で成長させてもよい。3つの葉の段階におけるDNA抽出、及びmtSSB、TWINKLE、又はRECA3活性を変更し、増加したアリューロン厚さを植物に付与する少なくとも1つの遺伝的変動の解析と組み合わせて使用される、「胚レスキュー」と称されるこのプロセスは、所望の形質を保有する植物の迅速な選択を可能にし、植物は、反復親との後続の更なる戻し交雑のために、温室又は圃場で成熟まで養育され得る。
【0380】
当該技術分野で既知のいずれか分子生物学的技法を、本発明の方法において使用し得る。このような方法は、核酸増幅、核酸シークエンシング、好適に標識されたプローブでの核酸ハイブリダイゼーション、一本鎖高次構造解析(SSCA)、変性剤濃度勾配ゲル電気泳動法(DGGE)、ヘテロ二本鎖解析(HET)、化学的切断解析(CCM)、触媒核酸切断、又はこれらの組み合わせの使用を含むが、これらに限定されない(例えば、Lemieux,2000、Langridge et al.,2001を参照されたい)。本発明はまた、(例えば)mtSSB、TWINKLE、又はRECA3遺伝子のアレルに連結された多型を検出するための分子マーカー技法の使用であって、mtSSB、TWINKLE、又はRECA3遺伝子が、それぞれ、mtSSB、TWINKLE、又はRECA3活性を変更し、増加したアリューロン厚さを植物に付与する、使用を含む。このような方法は、制限断片長多型(RFLP)、RAPD、増幅断片長多型(AFLP)、及びマイクロサテライト(単純配列反復、SSR)多型の検出又は解析を含む。密接に連結されたマーカーは、当該技術分野で周知の方法によって、例えば、Langridge et al.(2001)によって概説されているバルク分離個体解析などによって容易に得られ得る。
【0381】
一実施形態では、マーカー支援選択のための連結された遺伝子座は、本発明のポリペプチドをコードする遺伝子から少なくとも1cM、又は0.5cM、又は0.1cM、又は0.01cM以内である。
【0382】
「ポリメラーゼ連鎖反応」(「PCR」)は、複製コピーが、「上流」及び「下流」プライマーからなる「プライマーの対」又は「プライマーのセット」と、重合の触媒、例えば、DNAポリメラーゼ、及び典型的には、熱安定性ポリメラーゼ酵素と、を使用して、標的ポリヌクレオチドから作製される、反応である。PCRのための方法は、当該技術分野で既知であり、例えば、「PCR」(M.J.McPherson and S.G Moller(editors),BIOS Scientific Publishers Ltd,Oxford,(2000))で教示されている。PCRは、増加したアリューロン厚さを植物にmtSSB、TWINKLE、又はRECA3遺伝子又はアレルを発現する植物細胞から単離されたmRNAを逆転写することから得られたcDNA上で実行され得る。しかしながら、PCRが、植物から単離されたゲノムDNA上で実行される場合、PCRは、概して、より容易である。
【0383】
プライマーは、配列特異的な様式で標的配列にハイブリダイゼーションしPCR中に伸長することが可能であるオリゴヌクレオチド配列である。アンプリコン若しくはPCR産物、又はPCR断片若しくは増幅産物は、プライマー及び新たに合成された標的配列コピーを含む伸長産物である。マルチプレックスPCRシステムは、プライマーの複数のセットを含有し、プライマーの複数のセットは、2つ以上のアンプリコンの同時産生をもたらす。プライマーは、標的配列に完全にマッチしてもよく、又はプライマーは、特定の標的配列内への制限酵素又は触媒核酸認識/切断部位の導入をもたらし得る内部ミスマッチ塩基を含有してもよい。プライマーはまた、アンプリコンの捕捉又は検出を容易にするために、追加の配列を含有し得、かつ/又は改変若しくは標識ヌクレオチドを含有し得る。DNAの熱変性、プライマーの相補的配列へのプライマーのアニーリング、及びポリメラーゼでのアニールされたプライマーの伸長の反復サイクルは、標的配列の指数関数的増幅をもたらす。標的又は標的配列又はテンプレートという用語は、増幅された核酸配列を指す。
【0384】
ヌクレオチド配列の直接シークエンシングのための方法は、当業者に周知であり、例えば、Ausubel et al.,(上記)及びSambrook et al.,(上記)で見出され得る。シークエンシングは、任意の好適な方法、例えば、ジデオキシシークエンシング、化学シークエンシング、又はそれらの変形によって実施され得る。直接シークエンシングは、特定の配列のいずれかの塩基対内の変動を判定する利点を有する。
【0385】
穀粒加工
肥厚アリューロンに起因して、本発明の穀物粒、並びにそれからの粉及びふすまは、改善された栄養含有量を有する。単離されたアリューロン組織は、低レベルのデンプン及び果皮を含有すべきであり、ヒトの栄養のために穀粒の生理学的に有益な物質の大部分を表す。例えば、本発明の穀粒及び/又はそれからの産生される粉は、対応する野生型穀物粒及び/又はそれからの産生される粉と比較して、各々重量基準で、以下:
i)より高い脂肪含有量、例えば、野生型よりも、少なくとも約10%、少なくとも約20%、若しくは少なくとも約30%、又は約30%高く、最大約50%まで高い脂肪含有量、
ii)より高い灰含有量、例えば、野生型よりも、少なくとも約5%、少なくとも約10%、少なくとも約15%、若しくは少なくとも約20%、又は約20%高く、最大約25%まで高い灰含有量、
iii)より高い繊維含有量、例えば、野生型よりも、総繊維が少なくとも約70%、少なくとも約80%、若しくは少なくとも約94%、又は約94%高く、最大約150%まで高い繊維含有量、
iv)より低いデンプン含有量、例えば、対応する野生型穀物粒のデンプン含有量に対して、約1重量%~約10重量%低減されたデンプン含有量、
v)より高いミネラル含有量、例えば、野生型よりも、約少なくとも10%、少なくとも15%、少なくとも20%、又は少なくとも約25%高く、最大約40%まで高いミネラル含有量であって、好ましくは、ミネラル含有量が、亜鉛(例えば、野生型よりも、少なくとも約10%又は少なくとも約15%高く、最大約30%まで高い)、鉄(例えば、野生型よりも、少なくとも約2.5%又は少なくとも約5%高く、最大約10%まで高い)、カリウム(例えば、野生型よりも、少なくとも約20%又は少なくとも約25%高く、最大約40%まで高い)、マグネシウム(例えば、野生型よりも、少なくとも約18%又は少なくとも約23%高く、最大約40%まで高い)、リン(例えば、野生型よりも、少なくとも約17%又は少なくとも約22%高く、最大約40%まで高い)、及び硫黄(例えば、野生型よりも、少なくとも約5%又は少なくとも約10%高く、最大約20%まで高い)のうちの1つ以上又は全ての含有量である、より高いミネラル含有量、
vi)より高い抗酸化物質含有量、例えば、野生型よりも、総フェノール化合物が、少なくとも約20%、少なくとも約25%、若しくは少なくとも約30%多く、かつ/又は抗酸化能が、少なくとも約35%若しくは少なくとも約46%多く、最大約60%まで高い抗酸化物質含有量、
vii)より高いフィテート含有量、例えば、野生型よりも、少なくとも約10%又は少なくとも約15%高く、最大約25%まで高いフィテート含有量、
viii)ビタミンB3(例えば、少なくとも5%又は少なくとも9%)、B6(例えば、野生型よりも、少なくとも100%又は少なくとも120%高く、最大約200%まで高い)、及びB9(例えば、野生型よりも、少なくとも50%又は少なくとも61%高く、最大約100%まで高い)のうちの1つ以上又は全てのより高い含有量、
ix)より高いスクロース含有量、例えば、野生型よりも、少なくとも60%又は少なくとも76%高く、最大約100%まで高いスクロース含有量、
x)より高い中性非デンプン多糖含有量、例えば、野生型よりも、少なくとも約38%又は少なくとも約48%高く、最大約80%まで高い中性非デンプン多糖含有量、
xi)より高い単糖含有量(例えば、アラビノース、キシロース、ガラクトース、グルコース含有量)、例えば、野生型よりも、少なくとも約42%又は少なくとも約59%高く、最大約100%まで高い単糖含有量、並びに
xii)同様の窒素レベルのうちの1つ以上又は全てを含む。
【0386】
穀粒のこれらの栄養構成要素の各々は、実施例1及び4に概説されるような通例の技法を使用して判定され得る。
【0387】
一実施形態では、穀粒は、対応する野生型穀物粒と比較して、穀粒の総デンプン含有量中のアミロースの増加した割合を含む。このような穀粒を産生する方法は、例えば、WO2002/037955、WO2003/094600、WO2005/040381、WO2005/001098、WO2011/011833、及びWO2012/103594に記載されている。
【0388】
一実施形態では、本発明の穀粒は、対応する野生型穀物粒と比較して、穀粒の総脂肪酸含有量中のオレイン酸の増加した割合及び/又はパルミチン酸の減少した割合を含む。このような穀粒を産生する方法は、例えば、WO2008/006171及びWO2013/159149に記載されている。
【0389】
更なる実施形態では、本発明の穀粒又は植物は、ROS1aポリペプチドをコードするROS1a遺伝子と、1つ以上の遺伝的変動と、を更に含み、1つ以上の遺伝的変動は各々、対応する野生型植物と比較して、植物内の少なくとも1つのROS1a遺伝子の活性を低減する。このような穀粒及び植物は、WO2017/083920に記載されている。好ましくは、このような穀粒又は植物は、それぞれ、米穀粒又は米植物である。
【0390】
本発明の穀粒/種子、又は本発明の他の植物部分は、当該技術分野で既知のいずれかの技法を使用して、食品成分、食品又は非食品製品を製造するために加工され得る。
【0391】
本明細書で使用される場合、「他の食品又は飲料成分」という用語は、食品又は飲料の一部分として提供されるときに、動物による摂取に好適な任意の物質、好ましくは、ヒトによる摂取に好適な任意の物質を指す。例としては、水を除いて、他の植物種からの穀粒、砂糖などが挙げられるが、これらに限定されない。
【0392】
一実施形態では、製品は、全穀粒粉、例えば、超微細製粉された全穀粒粉、又は穀粒の約100%から作製される粉などである。全穀粒粉は、精粉構成物(精粉又は精粉)、及び粗分(超微細製粉された粗分)を含む。
【0393】
精粉は、例えば、洗浄された穀粒を粉砕及びふるい分けすることによって調製される粉であり得る。精粉の粒子サイズは、98%以上が、「212マイクロメートル(U.S.金網70)」と指定される織金網の開口よりも大きくない開口を有する布を通過する粉として記載される。粗分は、ふすま及び胚芽のうちの少なくとも1つを含む。例えば、胚芽は、穀粒内に見出される胚植物である。胚芽は、脂質、繊維、ビタミン、タンパク質、ミネラル、及び植物栄養素、例えば、フラボノイドを含む。ふすまは、いくつかの細胞層を含み、有意な量の脂質、繊維、ビタミン、タンパク質、ミネラル、及び植物栄養素、例えば、フラボノイドを有する。更に、粗分は、アリューロン層を含み得、アリューロン層もまた、脂質、繊維、ビタミン、タンパク質、ミネラル、及び植物栄養素、例えば、フラボノイドを含む。アリューロン層は、技術的には胚乳の一部分と考えられるが、ふすまと同じ特徴のうちの多くを示し、したがって、典型的には、製粉プロセス中に、ふすま及び胚芽とともに除去される。アリューロン層は、タンパク質、ビタミン、及び植物栄養素、例えば、フェルラ酸を含有する。
【0394】
更に、粗分は、精粉構成物とブレンドされ得る。粗分は、全穀粒粉を形成するために、精粉構成物と混合され得、したがって、精粉と比較して増加した栄養価、繊維含有量、及び抗酸化能を有する全穀粒粉を提供する。例えば、粗分又は全穀粒粉は、精粉又は全穀粒粉に取って代わる様々な量で、ベイクド食品、スナック製品、及び食品製品において使用され得る。本発明の全穀粒粉(すなわち、超微細製粉された全穀粒粉)はまた、消費者に、消費者の自家製ベイクド製品における使用のために直接市販され得る。例示的な実施形態では、全穀粒粉の顆粒化プロファイルは、全穀粒粉の粒子の98重量%が、212マイクロメートル未満である、顆粒化プロファイルである。
【0395】
更なる実施形態では、全穀粒粉及び/又は粗分のふすま及び胚芽内に見出される酵素は、全穀粒粉及び/又は粗分を安定化するために不活性化される。安定化は、蒸気、熱、放射線、又は他の処理を使用して、ふすま及び胚芽層内に見出される酵素を不活性化するプロセスである。安定化された粉は、粉の調理特徴を保持し、より長い貯蔵寿命を有する。
【0396】
追加の実施形態では、全穀粒粉、粗分、又は精粉は、食品製品の構成要素(成分)であり得、食品製品を製造するために使用され得る。例えば、食品製品は、ベーグル、ビスケット、パン、バンズ、クロワッサン、ダンプリング、イングリッシュマフィン、マフィン、ピタパン、クイックブレッド、冷蔵/冷凍生地製品、生地、ベイクドビーンズ、ブリトー、チリ、タコス、タマレス、トルティーヤ、ポットパイ、準備済みシリアル、準備済み食品、スタッフィング、電子オーブン加熱可能食品、ブラウニー、ケーキ、チーズケーキ、コーヒーケーキ、クッキー、デザート、ペーストリ、スイートロール、キャンディーバー、パイクラスト、パイフィリング、ベビーフード、ベーキングミックス、バッター、ブレッディング、グレービーミックス、肉増量剤、肉代用品、調味料ミックス、スープミックス、グレービー、ルー、サラダドレッシング、スープ、サワークリーム、ヌードル、パスタ、ラーメンヌードル、チャーメンヌードル、ローミーヌードル、アイスクリーム含有物、アイスクリームバー、アイスクリームコーン、アイスクリームサンドイッチ、クラッカー、クルトン、ドーナッツ、エッグロール、押し出しスナック、果物及び穀粒バー、電子オーブン加熱可能スナック製品、栄養バー、パンケーキ、パーベイクドベーカリー製品、プレッツェル、プディング、グラノーラベースの製品、スナックチップ、スナックフード、スナックミックス、ワッフル、ピザクラスト、動物食品又はペットフードであり得る。好ましい食品製品は、調理された米、米かゆ、米ヌードル、及び加工米穀粒を含有するバーであり、好ましい飲料は、米茶である。本明細書の実施例19を参照されたい。
【0397】
代替の実施形態では、全穀粒粉、精粉、又は粗分は、栄養補助食品の構成要素であり得る。例えば、栄養補助食品は、食事に付加される製品であり得、1つ以上の追加の成分を含有し、典型的には、ビタミン、ミネラル、ハーブ、アミノ酸、酵素、抗酸化物質、ハーブ、スパイス、プロバイオティクス、エキス、プレバイオティクス、及び繊維を含む。本発明の全穀粒粉、精粉、又は粗分は、ビタミン、ミネラル、アミノ酸、酵素、及び繊維を含む。例えば、粗分は、濃縮された量の食物繊維、並びに他の必須栄養素、例えば、保健食に必須であるB-ビタミン、セレン、クロム、マンガン、マグネシウム、及び抗酸化物質を含有する。例えば、22グラムの本発明の粗分は、繊維の個体の1日推奨摂取量の33%を送達する。栄養補助食品は、個体の全体的な健康を支援するいずれかの既知の栄養成分を含み得、例として、ビタミン、ミネラル、他の繊維構成要素、脂肪酸、抗酸化物質、アミノ酸、ペプチド、タンパク質、ルテイン、リボース、オメガ3脂肪酸、及び/又は他の栄養成分が挙げられるが、これらに限定されない。補助食品は、以下の形態:インスタント飲料ミックス、準備済み飲料、栄養バー、ウエハース、クッキー、クラッカー、ゲルショット、カプセル、チュー、チュアブル錠、及びピルで送達され得るが、これらに限定されない。一実施形態は、繊維補助食品を、風味付きシェイク又は麦芽タイプ飲料の形態で送達するが、この実施形態は、小児のための繊維補助食品として特に魅力的であり得る。
【0398】
追加の実施形態では、製粉プロセスは、多穀粒粉又は多穀粒粗分を作製するために使用され得る。例えば、1つのタイプの穀粒からのふすま及び胚芽は、粉砕され、別のタイプの穀類の粉砕された胚乳又は全穀粒穀粉とブレンドされ得る。代替として、1つのタイプの穀粒のふすま及び胚芽は、粉砕され、別のタイプの穀粒の粉砕された胚乳又は全穀粒粉とブレンドされ得る。本発明は、1つ以上の穀粒のふすま、胚芽、胚乳、及び全穀粒粉のうちの1つ以上のいずれかの組み合わせを混合することを包含することが企図される。この多穀粒手法は、カスタム粉を作製するために、かつ複数のタイプの穀物粒の質及び栄養含有量を利用して1つの粉を作製するために使用され得る。
【0399】
本発明の全穀粒粉、粗分、及び/又は穀粒製品は、当該技術分野で既知のいずれかの製粉プロセスによって製造され得ることが企図される。例示的な実施形態は、穀粒を、単一の流れで、穀粒の胚乳、ふすま、及び胚芽を別個の流れに分離することなく粉砕することを含む。洗浄及びテンパリングされた穀粒は、第1の通過粉砕機、例えば、ハンマミル、ローラーミル、ピンミル、インパクトミル、ディスクミル、エアーアトリションミル、又はギャップミルなどに搬送される。粉砕後に、穀粒は、排出され、ふるいに搬送される。更に、本発明の全穀粒粉、粗分、及び/又は穀粒製品は、多数の他のプロセス、例えば、発酵、インスタンタイジング、押し出し、カプセル封入、トースティング、又は焙煎などによって改変又は増強され得ることが企図される。
【実施例
【0400】
実施例1.一般的な材料及び方法
スダンレッド溶液での染色によるアリューロンの観察
1gのスダンレッドIVを50mlのポリエチレングリコール溶液(平均分子量400、Sigma、カタログ番号202398)に付加し、90℃で1時間インキュベートし、等容積の90%グリセロールと混合することによって、染色溶液を調製した。各々の穀粒の果実皮(内穎及び外穎)を除去した後に、成熟米穀粒を、蒸留水中で5時間インキュベートし、次いで、レザーブレードを使用して横方向又は縦方向に薄切した。切片を、スダンレッド溶液中で、室温で24~72時間染色した。次いで、切片を、ルゴール染色溶液(Sigma、32922)で、室温で20分間対比染色し、解剖顕微鏡下で観察した(Sreenivasulu,2010)。
【0401】
エバンスブルーでのアリューロンの染色
0.1gのエバンスブルー(Sigma、E2129)を100mlの蒸留水中に溶解させることによって、エバンスブルー染色溶液を調製した。各々の穀粒の果実皮を除去した後に、成熟米穀粒を、レザーブレードを使用して横方向に薄切した。切片を、蒸留水中で、室温で30分間インキュベートし、染色を、付加し、室温で2分間放置した。次いで、染色溶液を廃棄し、切片を、蒸留水で2回洗浄し、解剖顕微鏡下で観察した。
【0402】
米胚乳の光学顕微鏡観察
米穀粒を、ホルマリン酢酸アルコール(FAA)溶液(60%エタノール、33%のH2O、5%氷酢酸、及び2%ホルムアルデヒド;v/v/v/v)中に固定し、1時間脱気し、70%、80%、95%、次いで100%エタノールを含有する一連のアルコール溶液中で脱水し、LR白色樹脂(Electron Microscopy Sciences、14380)によって浸透させ、24時間60℃で重合した。ミクロトーム薄切を、Leica UC7ミクロトームを使用して行った。切片を、0.1%トルイジンブルー溶液(Sigma、T3260)中で、室温で2分間染色し、次いで、蒸留水で2回洗浄し、光学顕微鏡法によって検査した。代替として、切片を、0.01%カルコフロールホワイト溶液(Sigma、18909)中で、室温で2分間染色し、光学顕微鏡法によって、UV励起(励起365nm及び発光約440nm)で検査した。
【0403】
過ヨウ素酸シッフ(PAS)試薬及びクーマシーブルーでの染色
スライド上の固定された切片を、予備加熱された0.4%過ヨウ素酸(Sigma、375810)中で、57℃で30分間インキュベートし、次いで、蒸留水中で3回すすいだ。シッフ試薬(Sigma、3952016)を適用し、スライドを、室温で15分間インキュベートし、次いで、蒸留水中で3回すすいだ。次いで、切片を、1%クーマシーブルー(R-250、Thermo Scientific、20278)中で、室温で2分間インキュベートし、蒸留水中で3回すすいだ。30%、50%、60%、75%、85%、95%、及び100%エタノールを有する一連のアルコール溶液を、各々2分間使用して、切片の脱水を達成し、続いて、各々のスライドを、50%キシレン及び100%キシレン溶液(Sigma、534056)中で、各々2分間透明化した。次いで、カバーガラスに、Eukitt(登録商標)急硬性封入剤(Fluka、03989)を載せ、切片を光学顕微鏡下で観察した。
【0404】
DNA抽出及びPCR条件
植物葉試料からのDNA抽出のために、以下の2つの方法:より純粋でないDNA試料を提供するための迅速なDNA抽出方法、及びKim et al.(2016)から修正された、より純粋なDNAのためのより広範なDNA抽出方法を使用した。第1の方法において、2mmの直径を有する4つのガラスビーズ(Sigma、273627)、1~2mgの米葉組織、及び150μlの抽出緩衝液(10mMのトリス、pH9.5、0.5mMのEDTA、100mMのKCl)を、96ウェルPCRプレートの各々のウェルに付加した。プレートを密封し、混合物を、Mini-Beadbeater-96ミキサ(GlenMills、1001)を使用して1分間ホモジナイズした。プレートを3000rpmで5分間遠心分離した後に、抽出されたDNAを含有する上清のアリコートを、PCR反応において使用した。
【0405】
第2の方法において、0.2gの葉試料各々を、2つの2mm直径のガラスビーズとともに1.5mlのEppendorfチューブ内で、液体窒素中で10分間冷却した。次いで、試料を、Mini-Beadbeater-96において、1分間ホモジナイズし、次いで、600μlのDNA抽出緩衝液(2%のSDS、0.4MのNaCl、2mMのEDTA、10mMのトリス-HCl、pH8.0)を、各々のチューブに付加し、混合物を、65℃で1時間インキュベートした。混合物を冷却した後に、450μlの6MのNaClを、各々のチューブに付加した。チューブを、ボルテックスし、12000rpmで20分間遠心分離した。各々の上清を、新しいチューブに移し、DNAを、等容量の2-プロパノールを使用して、-20℃で1時間沈殿させた。DNAを、2400rpmで4℃で20分間遠心分離することによって回収し、ペレットを、75%エタノールで2回洗浄した。ペレットを、室温で風乾し、各々を、10ng/μlのリボヌクレアーゼ(Thermo Scientific、EN0201)を含有する600μlの蒸留水中に再懸濁し、PCR反応において使用した。
【0406】
PCR反応において、Taqポリメラーゼ(Thermo Scientific、K0171)を含有する5μlの2×PCR緩衝液、5’及び3’オリゴヌクレオチドプライマー、並びに1μlのDNA試料を、10μlの総容積で使用した。増幅を、30秒間94℃、30秒間55℃、及び30秒間72℃の35サイクルを使用して実行した。増幅産物を、ゲル電気泳動によって、3%アガロースゲルを使用して解析した。対照PCR反応において、親野生型Japonica米変種であるホモ接合性Zhonghua 11(ZH11)植物又は穀粒からのDNA調製物、野生型Indica米変種としてのホモ接合性NJ6植物からのDNA調製物、並びにZH11及びNJ6からのDNAの混合物を使用した。
【0407】
ta1アレルの遺伝子マッピングのために、遺伝子マーカーについてのPCR増幅は、以下のプライマー対(5’から3’の配列):Indel 559(染色体5上の25位、149位、249位)、フォワードプライマーTTATCAGCTTCTCGGTTCATCCAA(配列番号50)、リバースプライマーAAACAGGGTTAGCAATTTCGTTTT(配列番号51);Indel 548(染色体5上の25位、265位、533位、フォワードプライマーTCTGTCCCATATATACAACCG(配列番号52)、リバースプライマーATTTGTGTTTCAATCCTATATA(配列番号53);Indel 562(染色体5上の25位、237位、218位)、フォワードプライマーGGTCCTTTCAAACACTCCACA(配列番号54)、リバースプライマーCCAACTTTGCCTTAGCATTCA(配列番号55);Indel 583(染色体5上の25位、265位、326位)、フォワードプライマーACTACTCCCTATTTCTGTATTCACT(配列番号56)、リバースプライマーGAGCGTCATGGTTCACCTCTT(配列番号57)を使用した。
【0408】
TILLINGアッセイ
TILLINGアッセイにおいて使用されたプライマーは、以下のヌクレオチド配列:TA1-1F:CATTCATAATGACCAGCTAGGTGCT(配列番号98)、及びTA1-1R:GAGTTGAAACATGCCTGTACTCCTG(配列番号99)を有した。ExTaqでのPCR増幅を、以下の反応条件:1kbのアンプリコン長さ毎に、2分間95℃;20秒間94℃、30秒間68℃の8回のサイクル(1サイクル当たり1℃減少)、及び60秒間72℃、続いて、1kbのアンプリコン長さ毎に、20秒間94℃、30秒間60℃、及び60秒間72℃の35回のサイクル、並びに72℃で5分間の最終伸長で実行した。野生型及び試験試料からのPCR産物を、混合し、完全変性-遅いアニーリングプログラムに供して、ヘテロ二本鎖を、以下の条件下:変性のための10分間99℃、続いて、サイクル各々70℃で20秒間での開始及び1サイクル当たり0.3℃減少の70回の漸減サイクル、次いで、15℃で保持して変性PCR産物を再アニールしてヘテロ二本鎖を形成することで形成した。アニールされたPCR産物のCelI消化を、CelI緩衝液(10mMのHEPES、pH7.5、10mMのKCl、10mMのMgSO、0.002%のTriton X-100、及び0.2μg/mLのウシ血清アルブミン(BSA)、4μLのPCR産物、並びにPCR産物がEx Taqによって重合された場合、1単位のCelI(10単位/μL)、又はPCR産物がKODによって重合された場合、20単位のCelIを含有する15μLの反応混合物中で、45℃で15分間実行し、続いて、2μLの0.5MのEDTA(pH8.0)を付加して反応を停止した。代替として、消化を、MBN緩衝液(20mMのビス-トリス、pH6.5、10mMのMgSO、0.2mMのZnSO、0.002%のTriton X-100、及び0.2μg/mLのBSA)中の4μLのPCR産物及び2単位のマングビーンヌクレアーゼ(MBN、10単位/μL、カタログ番号M0250S;New England Biolabs、USA)を含有する15μLの反応混合物中で、60℃で30分間実行し、続いて、2μLの0.2%のSDSを付加して反応を停止した。
【0409】
総CelI消化PCR産物を、2%アガロースゲル中で電気泳動して、変異を検出した。
【0410】
高解像度DNA融解曲線(HRM)解析
若葉組織(2mm×2mm)を、10mMのトリス(pH9.5)、0.5mMのEDTA、100mMのKClを含有する150μLの溶解緩衝液で、ガラスビーズ(2mmの直径)を使用して、96ウェルプレートのウェル内でホモジナイズし、DNA抽出について上記のようにホモジナイズした。PCR反応を、10μLの容積の以下:5μLの2×マスターミックス(Roche、カタログ番号04909631001)、10μMのフォワードプライマー、10μMのリバースプライマー、1.0μLの25mMのMgCl、1.5μLのDNAテンプレートで実行した。混合物を、95℃で10分間サイクルし、次いで、10秒間95℃の45回のサイクルに供して、53℃で15秒間及び72℃で15秒間アニールした。次いで、以下の変性プログラム:95℃60秒間、40℃60秒間、65℃1秒間、97℃1秒間;勾配4.4℃/秒、持続時間60秒間、ターゲット温度95℃。
【0411】
TA1の一本鎖DNA結合機能研究
以下に記載されるように、TA1遺伝子産物を、ミトコンドリア標的一本鎖DNA結合(mtSSB)タンパク質として同定した。一本鎖DNA(ssDNA)の結合におけるTA1ポリペプチドの機能を研究するために、6xHisタグと融合した精製組換えTA1タンパク質を、電気泳動移動度シフトアッセイ(EMSA)によって解析して、ssDNAへの精製組換えTA1タンパク質の親和性を判定した。
【0412】
E.coli内のHisタグ付きTA1タンパク質の発現
成熟TA1タンパク質についての621bpのタンパク質コード領域(配列番号2)を、PCRによって増幅し、pET-30aベクター(Novagen、カタログ番号69909-3)中にクローニングし、pET-30a上のプロモーターに対する遺伝子挿入物の所望の配向を確認した。この構築物を、pET-30a-TA1と称した。pET-30a-TA1は、発現されたTA1ポリペプチドのN末端において翻訳融合してニッケルカラムへの結合を可能にする、pET-30aベクターに由来する6xHisタグを含有した。組換えTA1を、Transetta(DE3)化学成分E.coli細胞(Transgen、カタログ番号CD801)内で発現し、LB培地中で一晩成長させた。細胞を、1×SDSローディング緩衝液(12mMのトリス pH6.8、5%グリセロール、0.4%のSDS、1%のβ-メルカプトエタノール、0.02%ブロモフェノールブルー)中で100℃で5分間加熱することによって溶解させた。可溶性タンパク質を、電気泳動によって、SDS-PAGEゲル(Bio-Rad)上で分画し、PVDF膜(Bio-Rad)に移した。次いで、組換えタンパク質を、ウエスタン解析によって、6xHisタグに対するモノクローナル抗体(Marine Biological Laboratory)を使用して可視化した。
【0413】
解析方法
穀粒、食品成分、及び食品試料内の近似物及び他の主要構成物を、標準的な方法を使用して、例えば、以下に記載されるように判定した。
【0414】
穀粒含水量を、Association of Official Analytical Chemists(AOAC)法925.10に従って測定した。簡潔には、約2gの穀粒試料を、恒量まで、オーブン内で130℃で約1時間乾燥させた。
【0415】
灰含有量を、AOAC法923.03に従って測定した。水分判定のために使用された試料を、マッフル炉内で520℃で15時間灰にした。
【0416】
穀粒、食品成分、及び食品試料のタンパク質含有量
タンパク質含有量を、AOAC法992.23に従って測定した。簡潔には、総窒素を、デュマ燃焼法によって、自動窒素分析計(Elementar Rapid N cube、Elementar Analysensysteme GmbH、Hanau,Germany)を使用して解析した。穀粒又は食品試料のタンパク質含有量(g/100g)を、窒素含有量に6.25を乗じることによって推定した。
【0417】
糖、デンプン、及び他の多糖
総デンプン含有量を、McCleary et al.(1997)の酵素法を使用するAOAC法996.11に従って測定した。
【0418】
糖の量を、AOAC法982.14に従って測定した。簡潔には、単糖を、水性エタノール(80%エタノール)で抽出し、次いで、アセトニトリル:水(75:25v/v)を移動相として使用するポリアミン結合高分子ゲルカラムを使用するHPLCによって、蒸発光散乱検出器を使用して定量化した。
【0419】
総中性非デンプン多糖(NNSP)を、若干修正された、Theander et al.(1995)のガスクロマトグラフィー手順によって測定し、ガスクロマトグラフィー手順は、1Mの硫酸での2時間の加水分解、続いて、遠心分離を含んだ。
【0420】
フラクタン(フラクトオリゴ糖)を、AOAC法999.03によって詳述されている方法によって解析した。簡潔には、フラクトオリゴ糖を、水中に抽出し、続いて、スクラーゼ/マルターゼ/インベルターゼ混合物で消化した。次いで、得られた遊離糖を、水素化ホウ素ナトリウムで還元し、フルクタノースでフルクトース/グルコースに消化した。遊離されたフルクトース/グルコースを、p-ヒドロキシ安息香酸ヒドラジン(PAHBAH)を使用して測定した。
【0421】
繊維含有量
総食物繊維(TDF)を、AOAC法985.29に従って測定し、可溶性及び不溶性繊維(SIF)を、AOAC法991.43に従って測定した。簡潔には、TDFを、Prosky et al.(1985)の重量測定技法によって、AOAC法985.29に詳述されているように判定し、SIFを、重量測定技法によって、AOAC 991.43に記載されているように判定した。
【0422】
総脂質
5gの粉の試料を、1%クララーゼ40000(Southern Biological、MC23.31)とともに、45℃で1時間インキュベートした。脂質を、複数回の抽出によって、試料からクロロホルム/メタノール中に抽出した。別個の相への遠心分離後に、クロロホルム/メタノール画分を除去し、101℃で30分間乾燥させて、脂質を回収した。残った残留物の質量は、試料内の全脂質を表した(AOAC法983.23)。
【0423】
脂質の脂肪酸プロファイル
脂質を、AOAC法983.23に従って、製粉された粉からクロロホルム中に抽出した。内部標準としてヘプタデカン酸のアリコートを付加した後に、脂質を含有するクロロホルム画分の一部分を、窒素流下で蒸発させた。残留物を、乾燥メタノール中の1%硫酸中に懸濁し、混合物を、50℃で16時間加熱した。混合物を、水で希釈し、ヘキサンで2回抽出した。組み合わされたヘキサン溶液を、Florisilの小さいカラム上にロードし、カラムを、ヘキサン及び脂肪酸メチルエステルで洗浄し、次いで、ヘキサン中の10%エーテルで溶出した。溶出液を、蒸発させて乾燥させ、残留物を、イソオクタン中に溶解させて、GC上に注入した。脂肪酸メチルエステルを、標準的な脂肪酸の混合物に対して定量化した。GC条件:カラム SGE BPX70 30m×0.32mm×0.25μm;注入 0.5μL;注入器 250°C;15:1のスプリット;流量 1.723ml/分の定流量;オーブン 0.5分間150°C、10°C/分で180°Cまで、1.5°C/分で220°Cまで、30°C/分で260°Cまで、総実行時間33分;検出器 280°CでのFID。
【0424】
抗酸化物質活性(ORAC-H)
親水性抗酸化物質活性(ORAC-H)を、Wolbang et al.(2010)によって記載されているように修正された、Huang(2002a及び2002b)の方法に従って判定した。試料を、親油性抗酸化物質について抽出し、続いて、親水性抗酸化物質を、100mgの試料を、2mLのマイクロチューブ内に3回秤量することによって抽出した。次いで、1mLのヘキサン:ジクロロメタン(50:50)を付加し、2分間激しく混合し、13,000rpmで2分間10℃で遠心分離した。上清をガラスバイアルに移し、ペレットを、更なる2mLのヘキサン:ジクロロメタンミックスで再抽出した。次いで、混合及び遠心分離ステップを反復し、上清を同じガラスバイアルに移した。ペレットからの残留溶媒を、穏やかな窒素流下で蒸発させた。次いで、1mLのアセトン:水:酢酸ミックス(70:29.5:0.5)を付加し、試料を、2分間激しく混合した。次いで、混合物を、上記のように遠心分離し、上清を、ORAC-Hプレートアッセイにおいて使用した。試料を、必要に応じて、リン酸緩衝液で希釈した。曲線下面積(AUC)を計算し、Trolox標準についてのAUC値に対して比較した。ORAC値を、μMのTrolox当量/g試料として報告する。
【0425】
フェノール
総フェノール含有量、並びに遊離、コンジュゲート、及び結合状態におけるフェノールを、抽出後に、若干修正された、Li et al.(2008)によって記載されている方法に従って判定した。簡潔には、遊離フェノールを、ガラスバイアル(8mlの容量)内で10分間超音波処理することによって2mLの80%メタノール中に抽出した後に、100mgの試料内で判定した。上清を、第2のガラスバイアルに移し、残留物の抽出を反復した。組み合わされた上清を、窒素下で蒸発させて乾燥させた。2mLの2%酢酸を付加して、pHを約2に調整し、次いで、3mLの酢酸エチルを付加して、振盪しながらフェノールを2分間抽出した。バイアルを、2000×gで5分間10℃で遠心分離した。上清を、清浄なガラスバイアルに移し、抽出を、更に2回反復した。組み合わされた上清を、窒素下37℃で蒸発させた。残留物を、2mLの80%メタノール中に溶解させ、冷蔵した。
【0426】
コンジュゲートされたフェノールについての試料を、初期の80%メタノール抽出のための遊離フェノールアッセイについて処理した。この時点で、2.5mLの2Mの水酸化ナトリウム及び磁気棒を、ガラスバイアル内の蒸発させた上清に付加し、次いで、ガラスバイアルを、窒素で充填し、堅固にキャップを閉めた。バイアルを、混合し、撹拌しながら110℃で1時間加熱した。試料を、氷上で冷却した後に、3mLの酢酸エチルで、振盪によって2分間抽出した。バイアルを、2000×gで5分間10℃で遠心分離した。上清を廃棄し、pHを、12MのHClで約2に調整した。フェノールを、遊離フェノールについて記載されるように、3×3mLの酢酸エチルアリコートを使用して抽出した。上清を、組み合わせ、窒素下で37℃で蒸発させて乾燥させ、残留物を、2mLの80%メタノール中に取り込み、冷蔵した。
【0427】
結合したフェノールを、遊離フェノールのメタノール抽出後の残留物から測定した。2.5mLの2Mの水酸化ナトリウム及び磁気棒を、残留物に付加した後に、バイアルを、窒素で充填し、堅固にキャップを閉めた。バイアルを、混合し、撹拌しながら110℃で1時間加熱した。試料を、氷上で冷却した後に、3mLの酢酸エチルで、振盪によって2分間抽出した。バイアルを、2000×gで5分間10℃で遠心分離した。上清を廃棄し、pHを、12MのHClで約2に調整した。フェノールを、遊離フェノールについて記載されるように、3×3mLの酢酸エチルアリコートで抽出した。上清を、組み合わせ、窒素下で37℃で蒸発させて乾燥させ、残留物を、2mLの80%メタノール中に取り込み、冷蔵した。
【0428】
総フェノールを、100mgの試料を使用して、200μLの80%メタノールを付加して試料を湿らせた後に加水分解することによって判定した。2.5mLの2Mの水酸化ナトリウム及び磁気棒を付加した後に、バイアルを、窒素で充填し、堅固にキャップを閉めた。バイアルを、混合し、撹拌しながら110℃で1時間加熱した。試料を、氷上で冷却した後に、3mLの酢酸エチルで、振盪によって2分間抽出した。バイアルを、2000×gで5分間10℃で遠心分離した。上清を廃棄し、pHを、12MのHClで約2に調整した。フェノールを、遊離フェノールについて記載されるように、3×3mLの酢酸エチルアリコートで抽出した。上清を、組み合わせ、窒素下で37℃で蒸発させて乾燥させ、残留物を、4mLの80%メタノール中に取り込み、冷蔵した。
【0429】
処理された/抽出された試料内のフェノールの量を、フェノールの判定のためのフォリンシオカルトアッセイを使用して測定した。0、1.56、3.13、6.25、12.5、及び25μg/mLでの没食子酸標準物を使用して、標準曲線を調製した。1mLの標準物を、4mLのガラスチューブに付加した。試験試料について、100μLの完全に混合された試料アリコートを、4mLのガラスチューブ内の900μLの水に付加した。次いで、100mLのフォリンシオカルト試薬を、各々のチューブに付加し、各々のチューブを直ちにボルテックスした。700μLの1Mの炭酸水素ナトリウム溶液を、2分後に付加し、次いで、ボルテックスによって混合した。各々の溶液を、室温で暗所で1時間インキュベートし、次いで、吸光度を765nmで読み取った。結果を、μgの没食子酸当量/g試料で表した。
【0430】
フィテート
粉試料のフィテート含有量の判定は、AOAC Official Methods of Analysis(1990)に記載されているように、Harland and Oberleasの方法に基づいた。簡潔には、0.5gの粉試料を、秤量し、2.4%のHClで、回転輪(30rpm)を使用して1時間室温で抽出した。次いで、混合物を、2000×gで10分間遠心分離し、上清を、抽出し、milli-Q水で20倍に希釈した。アニオン交換カラム(500mg Agilent Technologies)を、真空マニホールド上に置き、製造業者の説明書に従って使用するためにコンディショニングした。次いで、希釈された上清を、カラム上にロードし、非フィテート種を、0.05MのHClで洗浄することによって除去した。次いで、フィテートを、2MのHClで溶出した。収集された溶出物を、加熱ブロックを使用して消化した。試料を冷却し、容積を、milli-Q水で最大10mLにした。リンレベルを、分光光度法によって、モリブデン酸、スルホン酸着色法を使用して、640nmでの吸光度読み取りで判定した。フィテートを、以下の式を使用して計算した:
フィテート(mg/g)=P conc*V1*V2/(1000*試料重量*0.282)
式中、P concは、分光光度法によって判定された場合、リンの濃度(μg/mL)であり、V1は、最終溶液の容積であり、V2は、抽出されたフィテート溶液の容積であり、0.282は、リンからフィテートへの変換係数である。
【0431】
総ミネラル含有量の推定
試料の全ミネラル含有量を、灰アッセイによって、AOAC法923.03及び930.22を使用して測定した。約2gの粉を、540℃で15時間加熱し、次いで、灰残留物の質量を秤量した。0.5gの全粒粉試料を、チューブブロック消化を使用して、8Mの硝酸で、140℃で8時間消化した。次いで、亜鉛、鉄、カリウム、マグネシウム、リン、及び硫黄含有量を、誘導結合プラズマ原子発光分析(ICP-AES)を使用して、Zarcinas(1983a及び1983b)に従って解析した。
【0432】
ミネラルを、CSIRO、Urrbrae,Adelaide South Australia、Waite Analytical Service(University of Adelaide、Waite,South Australia)、及びDairy Technical Services(DTS、North Melbourne,Victoria)において解析した。要素を、CSIROにおいて、硝酸溶液での消化後に、誘導結合プラズマ発光分析(ICP-OES)によって、又はDTSにおいて、希硝酸及び過酸化水素での消化後に、若しくは硝酸/過塩素酸溶液での消化後に、ICP-AESによって判定した。
【0433】
ビタミン
ビタミンB3(ナイアシン)、B6(ピリドキシン)、及び総フォレート解析を、DTS及びNational Measurement Institute(NMI)によって実行した。ナイアシンを、AOAC Methods 13th Ed(1980)43.045によって、Lahey,et al.(1999)に従って測定した。ピリドキシンを、Mann et al.(2001)に従って測定した。方法は、ピリドキシン(ピリドキソール)内へのリン酸化及び遊離ビタミンB6形態のプレカラム変換を組み込んだ。酸性ホスファターゼ加水分解を使用して、脱リン酸化し、続いて、グリオキシル酸でFe2+の存在下で脱アミノ化して、ピリドキサミンをピリドキサールに変換した。次いで、ピリドキサールを、水素化ホウ素ナトリウムによってピリドキシンに還元した。
【0434】
葉酸を、VitaFast葉酸キットに従って、製造業者の説明書を使用して、又はAOAC法2004.05に従って測定した。
【0435】
実施例2.厚アリューロン(ta)変異体の単離及び特徴付け
変異誘発米集団の確立及び栽培
野生型米品種Zhonghua 11(ZH11)からの約8000個の(M0穀粒と称する)穀粒を、60mMのメタンスルホン酸エチル(EMS)での処理によって、標準的な条件を使用して変異誘発させた。変異誘発穀粒を、圃場に播種し、得られた植物を、栽培して、M1穀粒を産生した。M1穀粒を、収穫し、次いで、圃場に播種して、M1植物を産生した。8925個の穂を、1327個の個別のM1植物から収穫した。これらの植物から、各々の穂から少なくとも4つの穀粒を含む、36,420個のM2穀粒がスクリーニングされた。
【0436】
半穀粒の染色による変異体スクリーニング
M2米穀粒の果実皮(内穎及び外穎)を除去した。36,420個の穀粒の各々を、横方向に二分した。胚を含有する半分を、後続の発芽のために96ウェルプレート内に保存し、胚を有しない各々の半穀粒を、エバンスブルーで染色し、解剖顕微鏡下で観察して、野生型に対して肥厚アリューロンを有する変異型穀粒を検出した。染色は、エバンスブルーが、非生存細胞、例えば、デンプン性胚乳の細胞などのみに浸透及び染色することができ、色変化が、生存アリューロン層内で観察されないという原理に基づいた。初期のエバンスブルー染色及び組織学的解析から、アリューロン厚さの有意な増加を示す個別の穀粒、及び種子の腹側アリューロンの有意な肥厚を示す穀粒が観察された。他の穀粒は、アリューロン厚さの増加を示したが、より少ない程度であった。各々の種子の腹側の未染色領域を、アリューロン層の厚さについて特に検査した。また、穀粒の背側におけるアリューロン層の厚さの増加を有するバリアントを観察した。断面全体にわたってアリューロン層の厚さの有意な増加を有するバリアントのみを、更なる解析のために選択した。
【0437】
野生型の半穀粒と比較して、エバンスブルーでの未染色領域がより厚い半穀粒を選択した。検査された36,420個の穀粒のうち、アリューロン厚さにおいて差を有する219個の穀粒(0.60%)が同定及び選択された。これらは、140個の個別のM1植物からの162個の穂から得られ、したがって、大部分が、独立した変異体を表した。特に、厚アリューロン1(ta1)と称される遺伝子内に変異を有する1つの変異型穀粒を、以下に記載するように同定し更に特徴付けた。対応する野生型遺伝子を、TA1と称し、この名称を本明細書で使用する。変異型アレルを、TA1遺伝子内の最初に同定された変異として、ta1-1と称した。
【0438】
推定変異型系統を維持するために、各々の対応する有胚半穀粒を、1%のBacto寒天(Bacto、214030)で固化させた半強度MS塩培地(Murashige and Skoog,1962)を含有する培地上で発芽させ、25℃で1500~2000ルクスの光強度下で、16時間の明/8時間の暗サイクルで培養した。小植物を、2つ~3つの小葉の段階において土壌に移し、得られた植物を、成熟まで成長させた。対応する有胚半穀粒の発芽及び栽培の際に、115個の種子(52.5%の生存率)を成長させて、成熟稔性植物を産生した。
【0439】
全般的な農学的形質においてほとんど又は全く欠陥を示さない候補変異型植物、例えば、野生型親変種に対して通常の植物高さ、稔性(雄及び雌稔性)、穀粒サイズ、及び1,000個の穀粒重量であり、肥厚アリューロン形質の安定した遺伝を示す候補変異型植物を、同定、選択、及び更に解析した。これらのうち、3つ~5つの細胞層をアリューロンの少なくとも一部分内に示したM3世代の穀粒を選択し、詳細に解析し、M3世代の穀粒は、ta1-1変異型アレルを有した。野生型ZH11穀粒は、予想とおりに、1つ~2つの細胞層のアリューロンを穀粒のほとんどの周りに示した。
【0440】
ta1-1変異型穀粒の組織学的解析
野生型ZH11及びホモ接合性ta1-1変異型植物からの発達中の穀粒を、研究し、受粉後(DAP)1~30日目の形態変化について比較した。米穀粒の登熟期は、乳穀粒段階、生地穀粒段階、及び成熟穀粒段階の3つの段階を有すると言える。生地穀粒段階において、野生型穂内の穀粒は、緑色から黄色に変化し始め、続いて、軸と穎花とを接続する小胞組織が徐々に破壊する。ta1-1穂内の穀粒は、色の変化が遅延した。また、米穀粒の横断面の顕微鏡検査は、ta1-1変異型穀粒内の白亜性(不透明感)の程度の増加を示した。次いで、走査電子顕微鏡法(SEM)を使用して、デンプン性胚乳の中央部分内のデンプン顆粒組織の構造を研究した。野生型穀粒内では、デンプン顆粒は、堅固に充填されており、滑らかな表面及び規則的な形状を示し、ta1-1穀粒内では、不規則な形状のデンプン顆粒のより緩い充填が観察された。要約すると、穀粒成熟の遅延、穀粒の白亜性の程度の増加、及びデンプン顆粒構造の増加の少なくとも3つの変化が、ta1-1変異を有する植物及び穀粒において観察された。
【0441】
DAP6、7、8、9、10、12、15、18、21、24、27、及び30日目の発達中の変異型及び野生型穀粒を、エバンスブルーで染色し、アリューロン層を、光学顕微鏡法によって検査した。発達中のアリューロン層の厚さにおける有意差は、最大DAP10日目まで、野生型穀粒とta1-1変異型穀粒との間で観察されなかった。DAP10日目後に、ta1-1変異体のアリューロン層は、野生型穀粒内のアリューロン層よりも厚く、差は、DAP約20日目で最大に達した。図1は、デンプン性胚乳を強調するルゴール試薬での種子切片の染色(図1、パネルE及びF)、並びに種子の準超薄切片のPAS及びクーマシーブリリアントブルー(G-250)染色を示して、3つの発達時点での野生型(ZH11)及びta1-1変異体内のアリューロンの発達を実証する。
【0442】
野生型及びta1-1変異型穀粒(DAP30日目)を、薄切(1μm)、染色、及び光学顕微鏡法によって、組織学的差について更に検査した。核酸を青色に染色し多糖を紫色に染色する0.1%トルイジンブルーで染色した後に、単一層の大きい規則的に配向された長方形細胞が、野生型アリューロン内で観察された。対照的に、ta1-1変異型穀粒の切片は、3つ~5つの細胞層のアリューロン層を有し、細胞はまた、様々なサイズ及び不規則な配向を有した。これらの観察は、ta1-1穀粒内の肥厚アリューロンが、主に、個別のアリューロン細胞の拡大ではなく、細胞層の数の増加によって引き起こされたことを示した。
【0443】
蛍光細胞壁染色である0.01%カルコフロールホワイトでの更なる染色は、野生型穀粒とta1-1変異型穀粒との間の細胞壁厚さにおける差を、アリューロン層内で示さなかった。野生型及びta1-1穀粒の両方について、アリューロン細胞の細胞壁は、デンプン性胚乳内の細胞壁よりも厚かった。
【0444】
成熟野生型及びta1-1穀粒を、横方向に薄切し、実施例1に記載されるように、PASで染色した。各々の遺伝子型の15個の穀粒について、穀粒の背側、上側、側、下側、及び腹側位置におけるアリューロンの厚さを、細胞層の数として計算し、計数し、統計的に解析した。結果を、図2に示す。野生型及び変異型穀粒の両方について、細胞層の数は、成熟穀粒の5つの異なる位置において均一でなかったが、全ての位置において、変異型穀粒についての細胞層の数は、野生型穀粒についてよりも有意に多かった(P<0.01)ことが観察された。
【0445】
植物成長及び発達中の登熟を、穀粒乾燥重量をDAP3、6、9、12、18、26、34、及び42日目に測定することによって検査し、野生型穀粒と比較した。結果(図3)は、ta1-1穀粒について、低減された登熟を示した。
【0446】
ta1変異型植物及び穀粒の農学的特徴の解析
野生型(ZH11)植物と3世代にわたって圃場で戻し交雑して、BC3F3世代を得、それによって、変異誘発処理から生じ得た追加の非連結変異を除去して、ta1-1変異型植物を、いくつかの農学的形質について解析した。ta1-1変異型植物及び穀粒は、野生型植物及び穀粒と比較して、植物高さ、長さ、幅、及び厚さに関する穀粒サイズ、並びに穎花形態において有意に異ならなかった(表2)。対照的に、野生型植物は、98.90%の結実度を示し、ホモ接合性ta1-1変異型植物は、89.32%の結実度の減少を示した。結実度を、成熟穀粒段階によって種子によって満たされた、植物内の小花の百分率として計算した。また、ta1-1変異型穀粒は、28℃で12時間の明/12時間の暗サイクル下で湿度制御なしで、グロースチャンバ内で培養されたときに、野生型穀粒の97.3%の発芽能と比較して、49.8%の発芽能の減少を示した。発芽を、小根が種皮を通って可視的に出芽したときとして定義した。
【表2】
【0447】
実施例3.ta1-1変異の遺伝子解析
交雑を行って、ta1変異の遺伝的制御、特に、変異が顕性又は潜性であるか、並びに変異が雄及び雌親の一方又は両方から遺伝したかを判定した。2つの遺伝子実験を実行して、厚アリューロン表現型が母性的に決定されたかを判定した。第一に、試験交雑を、母性ホモ接合性ta1-1植物と野生型ZH11植物からの花粉との間で実行した。F2子孫穀粒を得た。F2穀粒のうち、24.1%(n=1093)は、厚アリューロン表現型を示し、これは、F2集団内の潜性核コード変異のメンデル遺伝について予測された3:1(野生型:変異型)比と一致する。F1種子の98.7%(n=218)は、野生型アリューロン表現型を有することが観察されたが、種子の残りの1.3%は、スコア化するのが困難であったが、F2世代における野生型アリューロンを有すると判明された。第二に、相互交雑を、野生型植物に雌親として適用された、ta1-1植物からの花粉を使用して実行した。相互交雑から、F1種子の99.7%(n=325)が、野生型アリューロン表現型を示した。これらのデータは、ta1-1の厚アリューロン表現型が、変異型アレルが野生型アレルに対して潜性であった単一核遺伝子によって制御されたことを示した。
【0448】
実施例4.ta1-1変異型穀粒内の栄養構成要素の解析
変異型穀粒の組成を、特に、栄養的に重要な構成要素について測定するために、ZH11及びホモ接合性ta1-1植物を、圃場で同時に同じ条件下で成長させた。全粒粉又は玄米粉とも本明細書で称される全穀粒粉の試料を、植物から収穫された穀粒から調製し、実施例1に記載される方法を使用して、組成解析のために使用した。粉の近似分析の結果を、表3に示し、二重反復測定値の平均を示す。
【0449】
近似分析は、ta1-1変異型粉内の総脂肪含有量の約30%の増加を示した。総窒素解析は、ta1-1変異型穀粒と野生型穀粒との間のタンパク質レベルの有意な変化を示さなかった。除湿された粉試料の燃焼後に残された材料の量を測定した灰アッセイは、野生型に対して、ta1-1穀粒内で20%の増加を実証した。総繊維レベルは、ta1-1穀粒内で約94%増加した。デンプン含有量は、野生型に対して、ta1-1穀粒内で5%減少した。これらのデータは、ta1-1変異体内のアリューロン層の厚さの増加が、アリューロンに富む栄養素、例えば、脂質、ミネラル、及び総食物繊維のレベルの増加を、種子のサイズを変化させることなく引き起こしたことを実証した。これらの変化及び他の変化をより詳細に理解するために、広範な解析を、以下のように行った。
【表3】
【0450】
更なる組成解析を、図4に記録し、更なる組成解析は、玄米粉内のタンパク質、食物繊維、カルシウム、鉄、亜鉛、ビタミンB2、及びビタミンB3の統計的に有意な増加を確認した。
【0451】
ミネラル
ミネラル含有量を測定するために、誘導結合プラズマ(ICP)を原子発光分析(AES)技法と組み合わせたICP-AESを使用した(実施例1)。これは、ミネラル含有量を測定するための標準的な方法であり、単一解析における多数の要素の高感度高スループット定量化を提供した。解析から得られたデータは、ta1-1変異型穀粒が、13.9mg/kgから15.68mg/kgに約15%増加した亜鉛レベルを有したことを示した。圃場で成長したta1-1全穀粒粉の同じ試料内で、鉄は、12.43mg/kgから13.03mg/kgに5%増加した。
【0452】
また、カリウム、マグネシウム、リン、及び硫黄の増加が、観察され、それぞれ、約26%、23%、22%及び10%増加した。これらの結果は、ta1-1穀粒内の灰含有量の増加と一致し、これは、ほとんどミネラルを測定した。
【0453】
抗酸化物質
抗酸化物質は、動物組織内の酸化のマイナス効果に対抗することが可能である生体分子であり、したがって、酸化ストレス関連疾患、例えば、炎症、心血管疾患、がん、及び老化関連障害から保護する(Huang,2005)。
【0454】
ta1-1変異型及び野生型米穀粒から得られた全粒粉内の抗酸化能を、実施例1に記載されるように、酸素ラジカル吸収能(ORAC)アッセイによって測定した。ORACアッセイにおいて、抗酸化能は、AAPH(2,2’-アゾビス(2-アミジノ-プロパン)二塩酸塩)によって産生される合成フリーラジカルに対する、内在性ラジカル捕捉生体分子と酸化可能分子蛍光プローブフルオレセインとの間のきっ抗動力学によって表される。抗酸化能を、穀粒についての分子プローブフルオレセインの蛍光分解速度論を表す運動曲線(AUC)下面積とトロロクス標準物によって生成されたAUCとの比較によって計算した(Prior、2005)。抗酸化能を定量化するための代替の手法は、フォリン-シオカルト試薬(FCR)の使用による手法であり、これは、食品試料内の総フェノール化合物の低減する抗酸化能を測定することによって、抗酸化能を表した。FCRアッセイは、比較的単純、好都合、かつ再現可能であった。しかしながら、より時間のかかるORACアッセイは、より生物学的に関連する活性を測定した。抗酸化物質は、広範囲なポリフェノール、還元剤、求核試薬を含むため、FCR及びORACの両方による測定は、総抗酸化能のより良好なカバレッジを提供し、総抗酸化能をより包括的に表すことができる。Prior(2005)によって報告されているように、FCRアッセイ及びORAC測定の結果は、通常一致する。
【0455】
FCR及びORACアッセイの両方は、野生型ZH11全穀粒粉に対して、ta1-1変異型全穀粒粉からの粉の増加した抗酸化能を示した。ORACは、ta1-1変異型穀粒内の抗酸化能の約46%の増加、及び総フェノールの30%の増加を実証した。
【0456】
フィテート
適切なリンを有する条件下で成長したときに、米穀粒内の総リン含有量の約70%が、フィテート又はフィチン酸の形態である(ミオ-イノシトール-1,2,3,4,5,6-六リン酸)。食物フィテートはまた、強力な抗酸化物質として健康に有益な役割を果たし得る(Schlemmer、2009)。総フィテート解析は、野生型ZH11穀粒と比較して、約10.8mg/gから約12.4mg/gへの増加である、ta1-1穀粒内のフィテート含量の約15%増加を示した。
【0457】
Bビタミン
ta1-1粉内のビタミンB3(ナイアシン)、B6(ピリドキシン)、及びB9(フォレート)のレベルは、野生型粉内のものよりも、それぞれ、約9%、120%、及び61%高かった。アリューロンは、胚乳よりもビタミンB3、B6、及びB9に富むことが既知であり(Calhoun,1960)、このため、ta1-1変異型穀粒内のアリューロン厚さの増加は、これらのビタミン及びおそらく他のビタミンについてのより強力なシンクをもたらした可能性があった。
【0458】
炭水化物
重量基準での、ta1-1穀粒のデンプン含有量の6%減少があった。対照的に、スクロースレベルは、変異型穀粒内で76%増加した。野生型に対して、中性非デンプン多糖(NNSP)は、48%増加し、NNSPの単糖構成要素(アラビノース、キシロース、ガラクトース、グルコース)は全て、42%~59%増加した。
【0459】
結論
栄養解析は、圃場で成長したta1-1穀粒から産生された全穀粒粉、したがって、全穀粒の粉の、脂質及び繊維などの多量栄養素、少なくとも鉄、亜鉛、カリウム、マグネシウム、リン、及び硫黄レベルを含むミネラルなどの微量栄養素、B3、B6、及びB9などのBビタミン、抗酸化物質、並びにフェノール化合物及びフィテートなどのアリューロン関連生体分子を含む、アリューロンに富む栄養素のほとんどが、野生型粉に対して有意に増加したことを示した。また、遊離スクロースの有意な増加があった。これらの栄養素及び微量栄養素の増加に付随して、重量基準で、相対百分率として、ta1-1変異体内のデンプン含有量の小さい減少があった。
【0460】
実施例5.ta1-1変異型穀粒のα-アミラーゼ活性アッセイ
穀類種子発芽中に、吸水後にアリューロン層から産生されるα-アミラーゼは、根及び苗条の成長のためのエネルギーを提供する、代謝可な糖への胚乳デンプンの加水分解において、重要な役割を果たす(Akazawa and Hara-Mishimura,1985、Beck and Ziegler,1989)。ta1変異型穀粒は、増加したアリューロン細胞層を有したため、発芽した米穀粒のα-アミラーゼ活性を、数日間にわたってアッセイした。アミラーゼ活性測定キット(Sigma、MAK009)を使用して、アッセイを行い、詳細な方法は、以下のようであった。
【0461】
試料調製
100mgの発芽した米穀粒を、各々解剖して、実生苗を除去した。残りの胚乳及びアリューロン組織を、0.5mLのアミラーゼアッセイ緩衝液中でホモジナイズし、混合物を、13,000gで10分間遠心分離して、不溶性材料を除去した。1~50μLの試料を、96ウェルプレートの1ウェル当たりに付加し、各々の試料を、アミラーゼアッセイ緩衝液で50μLの容積にした。正対照のために、5μLのアミラーゼ正対照溶液を、使用し、アミラーゼアッセイ緩衝液で50μLに調整した。1ウェル当たり0、2、4、6、8、10μLの2mMのニトロフェノール標準物から構成された標準物を、50μLの容積にして、0、4、8、12、16、及び20nmol/ウェルの標準物を産生した。
【0462】
アッセイ反応
1.マスター反応ミックスを、50mLのアミラーゼアッセイ緩衝液と50mLのアミラーゼ基質ミックスとを混合することによって調製した。
【0463】
2.100μLのマスター反応ミックスを、試料、標準物、及び正対照ウェルの各々に付加して、各々の試料をピペッティングによって混合した。
【0464】
3.2~3分後(Tinitial)に、吸光度を、405nmで測定し、(A405)initialと称した。
【0465】
4.プレートを、25℃でインキュベートして、吸光度(A405)を5分毎に測定した。プレートを、インキュベーション中に光から保護した。
【0466】
5.最も活性な試料の値が、最も高い標準物(20nmol/ウェル)の値よりも大きくなるまで、測定値を取った。この時点で、最も活発な試料は、標準曲線の線形範囲の端の付近にあった。
【0467】
6.酵素活性を計算するために使用された最終吸光度測定値[(A405)final]は、最も活性な試料が標準曲線の線形範囲の端の付近になる直前の時点での値であった。ペナルチメート読み取りの時間を、Tfinalと称した。
【0468】
0ニトロフェノール標準物について得られた最終測定値(A405)finalを、標準物及び試料の(A405)final測定値から減算することによって、修正を背景について行った。TinitialからTfinalへの吸光度の変化を、以下のように計算した:ΔA405=(A405)final-(A405)initial
【0469】
各々の試料のΔA405を、標準曲線と比較して、アミラーゼによってTinitialからTfinalの間に産生されたニトロフェノール(B)の量を判定した。試料のアミラーゼ活性を、以下の式によって判定した:
アミラーゼ活性=B×試料希釈因子
(反応時間)×V
B=TinitialとTfinalとの間で産生されたニトロフェノールの量(nmol)
反応時間=Tfinal-Tinitial(分)
V=ウェルに付加された試料容積(mL)
【0470】
各々の試料についてのアミラーゼ活性を、nmol/分/mL(ミリ単位)として報告した。アミラーゼの1単位は、エチリデン-pNP-G7を切断して1.0μmolのp-ニトロフェノールを25℃で1分毎に産生したアミラーゼの量であった。
【0471】
アッセイの結果(図5)は、発芽したta1-1穀粒が、ZH11と比較してより高いα-アミラーゼ活性を、3日目以降から有し、増加の程度が、経時的に増加し、吸水の開始後(DAG)7日目に最大であったことを示した。
【0472】
実施例6.遺伝子マッピング及び配列解析によるTA1遺伝子及びta1-1変異の同定
遺伝子マッピングのためのSSR及びIndelマーカーの同定及び使用
遺伝子マッピングのために、植物のF2集団を、Japonica変種であるZH11の遺伝的背景内のta1-1変異を含有する植物と、Indica変種であるNJ6の植物との間の遺伝的交雑から産生した。ZH11とNJ6との間で多型であり、次いで、遺伝子マッピングにおいて使用され得る遺伝子マーカーを同定するために、のPCR実験のセットを、ホモ接合性ZH11植物、ホモ接合性NJ6植物、及びDNAの1:1混合物からの葉DNA試料上で実行した。ゲル電気泳動によるPCR産物の解析は、ZH11、NJ6、及び混合物からの産物の比較を可能にして、多型マーカーを同定した。別個のZH11及びNJ6 DNAでの増幅が、別々の異なる増幅産物を示し、混合されたDNAが、両方の産物の組み合わせを示した場合にのみ、プライマー対を、遺伝子マッピングのために選択した。それによって、54個の挿入欠失多型(INDEL)及び70個の短い配列反復(SSR)多型を含む合計124個のプライマー対を選択した。これらの遺伝子マーカーを、約3~4Mbpの間隔で、米ゲノムに沿って分布させ、遺伝子マッピングのための良好なカバレッジを与えた。
【0473】
ta1-1アレルの遺伝子マッピングのために、F2集団からの132個の植物を、124個の多型マーカーでスコア化した。アリューロン表現型についてのマッピング集団内の個別のF2植物のホモ接合性又はヘテロ接合性を、各々のF2植物から得られたF3子孫穀粒の表現型決定によって慎重に評価した。葉DNAを、実施例1に記載されるように抽出した。PCR増幅を、実施例1に記載されるように行い、産物を、ゲル電気泳動によって、3%アガロースを介して分離した。結果から、ta1遺伝子座は、染色体5上のマーカーIndel 537とIndel 541との間に位置し(図6)、これは、米のゲノム配列から、約400kbの物理的距離に対応するものであったと結論された。
【0474】
別の8000個のF2植物を、このマーカーの対でスクリーニングした。組換えをIndel 537マーカーとIndel 541マーカーとの間に示した1076個の個体を同定及び選択した。これらの組換え植物を表現型決定したときに、それによって、ta1遺伝子座を、Indel 562マーカーとIndel 583マーカーとの間に位置する28kbの領域にマッピングした(図6)。
【0475】
ta1-1変異型植物内のこの領域のヌクレオチド配列を得、ヌクレオチド配列を野生型配列と比較し、それによって、ta1-1アレルに対応する変異を同定するために、ゲノム領域に隣接するプライマーを設計し、DNAシークエンシングを実施した。ゲノムDNA配列の比較は、米ゲノム配列(EnsemblPlants)上でOs05g0509700とアノテートされた遺伝子内のシークエンシングされた領域内の単一ヌクレオチド多型(SNP)を同定した。この遺伝子は、染色体5の位置:25、254、990~25、259、747にあり、リバース鎖を、ミトコンドリアssDNA結合タンパク質とアノテートした。Japonica遺伝子Os05g0509700に連結されたタンパク質について、同じ遺伝子を、UniPARCゲノム配列内で、LOC_Os05g43440とアノテートした。単一ヌクレオチドG(野生型)からA多型を、Japonica変種のEnsemblPlants米ゲノム配列を参照して、ヌクレオチド位置Chr5:25257622において同定した。配列番号4を参照して、このヌクレオチド置換G2126Aは、染色体5内の遺伝子Os05g0509700のエクソン4とエクソン5との間のイントロンIVの最後のヌクレオチドであった(図6、最下の線)。イントロン番号付けを、Os05g0509700のタンパク質コード領域アノテーションから行ったが、遺伝子の5’-UTR内の長いイントロンを含まない。変異は、スプライス部位内のイントロンの最後のヌクレオチドを含むので、本発明者らには、変異がTA1遺伝子のスプライシングの破壊を含むと思われた。以下に記載される後続の実験は、この多型がta1-1変異であることが確認した。
【0476】
この実験はまた、ta1-1変異が、異なる遺伝的背景、例えば、Indica変種内に導入され得、依然として厚アリューロン表現型を付与したことを示した。
【0477】
実施例7.ta1-1変異の性質
ta1-1遺伝子の発現及びスプライシングを解析するために、実施例1に記載されるように、RNAを葉から抽出し、ta1-1植物からの穀粒を発達させた。RNAを、組み合わせ、逆転写し、個別のcDNAのヌクレオチド配列を得た。3つの異なるcDNA配列を、ta1-1 cDNAから得、ta1-1 cDNA I、II、及びIIIと称し、ta1-1 cDNA I、II、及びIIIは、各々、ZH11からの野生型cDNA配列とは異なる配列を有した。ta1-1 cDNAヌクレオチド配列と野生型cDNA(配列番号2)との比較は、ヌクレオチド位置2126におけるイントロンIV内のGからA多型(G2126A)が、ta1-1穀粒内の3つの異なる成熟mRNAと会合していたことを示した。この解析及び以下に記載される更なる解析から、本発明者らは、ta1転写物の選択的スプライシングのため、これらのバリアントが生じたと結論した。
【0478】
3つのta1-1転写物を、RT-PCRによって、変異部位、したがって、選択的スプライシング領域に及ぶオリゴヌクレオチドプライマー(配列番号58及び配列番号59)を使用して更に解析した。次いで、PCR産物を、回収し、Bluntベクター中にクローニングし、続いて、個別のクローンのヌクレオチドシークエンシングを行った。図7は、野生型cDNA配列とアライメントされた、変異部位に及ぶcDNAの領域のアライメントされた配列を示す。cDNA I、II、及びIIIは、エクソン4の終了まで、すなわち、イントロンIVの開始まで、野生型cDNAと同一のヌクレオチド配列を有したが、次いで、cDNA I内のイントロンIVの最後の31個のヌクレオチドの挿入、又はエクソン5配列の欠失(cDNA II)、又はエクソン5の開始からの単一ヌクレオチドの欠失(cDNA III)のいずれかで相違したことが観察された。ta1-1 cDNA I(配列番号12)は、31bpの挿入をエクソン5の直前に有したため、このcDNAは、ポリペプチド(配列番号8)をコードし、ポリペプチド(配列番号8)は、野生型TA1タンパク質(配列番号3)のアミノ酸配列に対して、アミノ酸位置182位における翻訳フレームシフトからもたらされ、193位における中途翻訳終止コドンをもたらした。ta1-1 cDNA II(配列番号13)は、エクソン5全体の欠失を有したため、このcDNAは、ポリペプチド(配列番号9)をコードし、ポリペプチド(配列番号9)は、アミノ酸位置182位における翻訳フレームシフトからもたらされ、186位における中途翻訳終止をもたらした。ta1-1 cDNA III(配列番号14)は、エクソン5内の最初のGヌクレオチドの欠失を有したため、このcDNAは、ポリペプチド(配列番号10)をコードし、ポリペプチド(配列番号10)は、野生型TA1タンパク質に対して、182位における翻訳フレームシフトからもたらされ、185位アミノ酸における中途翻訳終止をもたらした。図8で、予測完全長アミノ酸配列を、野生型TA1配列と比較した。
【0479】
ta1-1 I、II、及びIII cDNAの相対存在量は、それぞれ、総転写物の67%、29%、及び4%であった。野生型転写物は、cDNA解析によって、ta1-1変異型植物の葉及び発達中の穀粒内で検出されず、本発明者らは、変異型植物内の野生型mRNAの非存在から、この野生型スプライシングが消失したと結論した。以下に記載される以下の実験からのデータによって確認されたこれらのデータから、ta1-1遺伝子のイントロンIV内の多型が、変化、すなわち、この植物及びその穀粒内のta1-1変異を引き起こしたと結論された。また、変異は、野生型TA1遺伝子に対して、ta1-1遺伝子のRNA転写物のスプライシングパターンの変化をもたらし、それによって、ta1-1アレルについてのta1変異体表現型を引き起こしたと結論された。
【0480】
米ゲノムの染色体5内のOs05g0509700位における遺伝子は、ミトコンドリア標的一本鎖DNA結合タンパク質をコードするArabidopsis thaliana mtSSB-1遺伝子(AtmtSSB-1)の相同体である米mtSSB-1a遺伝子(OsmtSSB-1a)とアノテートされている(Edmondson et al.,2005)。
【0481】
野生型米mtSSB-1a(TA1)遺伝子のヌクレオチド配列を、配列番号1として提供し、配列番号1は、1024個のヌクレオチドのプロモーター及び5’-UTR(非翻訳領域)、5つのイントロンを含むヌクレオチド1025~2369からのタンパク質コード領域、並びに411個のヌクレオチドの3’-UTRを含む。5つのイントロンのヌクレオチド位置を、配列番号1のレジェンドで提供する。野生型TA1(OsmtSSB-1a)遺伝子に対応するcDNAのヌクレオチド配列を、配列番号2として提供し、206個のアミノ酸のコードされた野生型TA1ポリペプチドのアミノ酸配列を、配列番号3として提供する。
【0482】
野生型米TA1ポリペプチド内の構造特徴の説明
米TA1遺伝子がOsmtSSB-1aと同じであることを見出した後に、OsTA1(OsmtSSB-1a)ポリペプチドアミノ酸配列を検査した。配列番号3のアミノ酸73~184に対応する1つの典型的な一本鎖DNA結合ドメインを同定した(図9)。アミノ酸配列を、概して、被子植物の代表的なもの、すなわち、Zea mays(配列番号16)、Sorghum bicolor(配列番号17)、Hordeum vulgare(配列番号18)、Triticum aestivum(配列番号19)、及び穀類に関連するモデル単子葉植物であるBrachypodium distachyon(配列番号20)、モデル双子葉植物であるArabidopsis thaliana(配列番号15)、及びモデル樹木であるポプラ(配列番号21)である7つの他の植物種のゲノムによってコードされた最も相同の配列と比較した(実施例12を参照されたい)。十分にアセンブルされアノテートされたゲノム配列が、これらの種について入手可能であった。mtSSBアミノ酸配列がアライメントされたときに(図9)、SSBドメインは、N末端及びC末端隣接配列よりも、高度に保存されており、OsTA1のSSBドメインの112個のアミノ酸にわたって少なくとも80%の同一性を有したことが明らかであった。配列番号3の完全長との全体的なアミノ酸配列同一性は、単子葉植物TA1配列について、少なくとも60%であり、少なくとも79%を含んだ。図9に示される9つのTA1ポリペプチドについてのSSBドメインは、配列番号3のアミノ酸73~114に対応する保存アミノ酸モチーフFRGVHRAI(I/L)CGKVGQ(V/A)P(V/L)QKILRNG(R/H)T(V/I)T(V/I)FT(V/I)GTGGMFDQR(モチーフI、配列番号45)、配列番号3のアミノ酸122~135に対応するP(K/M)PAQWHRI(A/S)(V/I)H(N/S)(D/E)(モチーフII、配列番号46)、配列番号3のアミノ酸141~164に対応するAVQ(K/Q)L(V/T)KNS(A/S)VY(V/I)EG(D/E)IE(T/I)R(V/I)YND(モチーフIII、配列番号47)、及び配列番号3のアミノ酸176~184に対応するIC(L/V/I)R(R/G)DGKI(モチーフIV、配列番号48)を含んだ。これら4つのモチーフは、ポプラ配列を除いてスペーシングが各々のモチーフ間にあるとおり、アライメントされたTA1配列のうちの全ての9つ内で完全に保存されていた(図9)。4つのモチーフ及び4つのモチーフのスペーシングは、植物内のTA1ポリペプチドの完全な機能のために必要とされる可能性があったと結論された。
【0483】
OsmtSSB-1aアミノ酸配列(配列番号3)を、Mitofatesソフトウェアで、植物設定を使用して解析したときに、ミトコンドリアプロテアーゼ切断部位を、配列番号3のアミノ酸28とアミノ酸29との間で予測して(図9)、米細胞内のミトコンドリア内への侵入の際に除去されて178個のアミノ酸の成熟ポリペプチドを産生する、ポリペプチドのN末端における28個のアミノ酸のミトコンドリア輸送ペプチドの存在を予測した。この予測部位を、AtmtSSB-1のArabidopsis配列についての予測と比較して、1つのアミノ酸残基内にアライメントした(Edmondson et al.,2005)。
【0484】
野生型OsTA1(OsmtSSB-1a)ポリペプチドのDNA結合ドメインの最後の3つのアミノ酸(GKI)が、ta1-1 cDNA I、II、及びIIIの予測翻訳産物(図6)、並びにDNA結合ドメイン後のTA1ポリペプチドのC末端領域から欠損していたことが見出された。
【0485】
実施例8.米内のTA1遺伝子の発現
発達中の穀粒の一部分、具体的には、胚、デンプン性胚乳、及びアリューロンを含む異なる米組織内のTA1遺伝子の発現を解析するために、実験を実施した。第1の実験において、TA1 mRNAを、インサイツハイブリダイゼーションによって、Brewer et al.(2006)によって記載されているように、米組織切片内で検出した。簡潔には、様々な米組織を、真空浸透後に、FAA固定剤中で、8時間4℃で固定し、段階的な一連のエタノール、続いて一連のキシレンを使用して脱水し、実施例1に記載されるように、Paraplast Plus(Sigma-Aldrich)中に包埋した。8μmの厚さのミクロトーム切片を、Probe-On Plus顕微鏡スライド(Fisher)上に載せた。
【0486】
ハイブリダイゼーションシグナルから、TA1遺伝子は、発達中の穀粒の種皮、アリューロン組織、及び胚内で発現されるが、維管束内で発現されないと結論された。TA1はまた、発達中の花序内で発現されたが、葉及び茎内で発現されなかった。
【0487】
リアルタイム逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(RT-PCR)を使用して、異なる植物組織内の相対発現レベルをアッセイした。発現レベルを、同じ組織内の構成的に発現される遺伝子であるアクチン遺伝子の発現に正規化した。驚くべきことに、結果は、花粉内で最も高い相対発現を示し、続いて、胚、茎頂分裂組織、及びアリューロン組織内の相対発現を示した(図10)。活性成長組織内のTA1の特異的発現は、細胞分裂に関与し得ると考えられた。予測SSBタンパク質として、TA1タンパク質は、これらの活性成長組織内で、DNA複製、組換え、転写、及びDNA修復中に、一本鎖DNAを保護し、他の関連タンパク質を動員するように機能すると考えられた。
【0488】
実施例9.TA1タンパク質のssDNA結合活性
TA1融合タンパク質の精製
TA1ポリペプチドのDNA結合活性をインビトロで試験するために、6xHisタグをN末端において有する組換えTA1融合タンパク質(6xHis-TA1)を、実施例1に記載されるように、E.coli内の発現ベクターから産生した。6xHisタグを組み込んで、ニッケルカラムへの結合による融合タンパク質の迅速かつ単純な精製を可能にした。融合タンパク質を発現するE.coli細胞を、液体窒素中で凍結し氷上で解凍し30分間超音波処理(10秒間隔で5秒のパルス)することによって破壊した。6xHis-TA1タンパク質を、リン酸カリウム緩衝液中での40%硫酸アンモニウム塩沈殿によって富化した。沈殿したタンパク質を、再懸濁し、リン酸ナトリウム緩衝液(50mMのNaPO4、500mMのNaCl、pH7.8)に対して一晩透析した。次いで、タンパク質を、ニッケルカラム(Bio-Rad)上にロードし、10mMのイミダゾールを含有するリン酸ナトリウム緩衝液で広範囲に洗浄して、非結合タンパク質を除去した。精製された6xHis-TA1タンパク質を、リン酸ナトリウム緩衝液中のイミダゾールの10~500mMの直線勾配を使用して、カラムから単離した。各々の画分内のタンパク質濃度を、分光光度法によって判定し、試料を、SDS-PAGEによって分離し、続いて、クーマシーブルーによって染色した。精製された6xHis-TA1タンパク質を、貯蔵緩衝液(50mMのトリス-HCl pH7.4、1mMのEDTA、1mMのDTT、0.2MのNaCl、50%(v/v)グリセロール)に移し、-80℃で貯蔵した。
【0489】
電気泳動移動度シフトアッセイ(EMSA)
ssDNAへの精製された6xHis-TA1タンパク質の親和性を、EMSA(Thermo、カタログ番号20148X)を使用して、Reddy et al.(2001)によって概略的に記載されているように判定した。45個のヌクレオチドの一本鎖オリゴヌクレオチド(配列番号60)を、3’末端において、ビオチン化CTP(Thermo、カタログ番号89818)で、製造業者の説明書に従って標識した。組換え6xHis-TA1タンパク質(2μg)を、750アトモルのビオチン標識オリゴヌクレオチドに付加し、混合物を、室温で10分間インキュベートした。6xHis-TA1タンパク質を欠いた対照試料を、図11のレーン1に適用した。別個の反応を、60bpの二本鎖DNA(dsDNA;Thermo EMSAキットからの対照断片)の存在下で実施して、移動度シフトがssDNAに特異的であるかを判定した。結合反応産物を、電気泳動によって、0.5×TBE(Bio-Rad)中の5%天然ポリアクリルアミドゲル中で分離し、ナイロン膜(Bio-Rad)に移した。DNAバンドを、ストレプトアビジンコンジュゲートホースラディッシュペルオキシダーゼ(Thermo)を使用して可視化した。図11に示されるように、ssDNAに結合した6xHis-TA1タンパク質及び結合が、未標識ssDNAとの競合によって減った。dsDNAは、一本鎖DNA(ssDNA)へのTA1タンパク質の結合を競合せず、これは、タンパク質が、一本鎖DNA結合(SSB)タンパク質というこのタンパク質の名称と一致して、ssDNAに特異的であることを示した。
【0490】
変異型ta1-1 Iポリペプチドが、ssDNAに結合する能力を保持したかを検査するために、ta1-1 cDNA Iによってコードされた予測ポリペプチドをコードし、6xHisタグをN末端において有し、E.coli内で発現された類似の遺伝子構築物を作製した。対応するmRNAが、変異型ta1-1遺伝子からの顕性スプライシング転写物であり、ta1-1遺伝子からの総転写の約70%を表すため、cDNA I配列を選択した。変異型6xHis-ta1-1融合ポリペプチドを、野生型6xHis-TA1タンパク質についての方法と同じ方法で精製した。精製された6xHis-ta1-1 I融合ポリペプチドを、EMSA実験において、対応する野生型タンパク質についての上記のように使用して、ssDNAへの野生型及び変異型ポリペプチドの結合を比較した。結合実験は、変異型(短縮型)ポリペプチドが、ssDNAに結合したが、野生型TA1タンパク質と比較して、低減された効率のみで、約3~4倍減少した効率でssDNAに結合したことを示した(図12)。TA1及びその短縮型形態(6xHis-ta1-1 I)の両方が、ssDNAプローブに結合することができたが、6xHis-TA1の結合活性は、その短縮型形態(6xHis-ta1-1 I)よりも高く、2μgの6xHis-TA1は、シフトされたプローブの強度が8μgの短縮型6xHis-ta1-1 Iポリペプチドと同様であった。本発明者らは、このデータから、少なくともta1-1 Iポリペプチドが、あるSSB活性を保持し、ta1-1アレルが、ヌルアレルでなかったと結論した。ta1-1遺伝子は、活性が野生型TA1遺伝子に対して少なくとも67%低減されたと考えられた。
【0491】
実施例10.ta1-1変異体の相補性解析
TA1遺伝子内の変異が、ta1-1変異体内で見出される肥厚アリューロン及び関連する表現型の要因であったという結論を強化するために、2つの相補性実験を実行した。第1の実験において、天然TA1プロモーターを含むTA1遺伝子の野生型コピーを、Agrobacterium媒介形質転換によって、ta1-1変異型植物内に導入した。導入されるDNA配列を、一連のオリゴヌクレオチドプライマーを使用して、ZH11ゲノムDNAから増幅し、次いで、バイナリベクターpPLV15内にアセンブルした。このベクターはまた、ハイグロマイシン耐性遺伝子を、選択可能マーカー遺伝子として含有した。形質転換のためのプラスミド、及び対照プラスミド(空ベクター)を、各々Agrobacterium tumefaciens系EHA105内に導入し、これらを使用して、ta1-1米レシピエント細胞を、Nishimura et al.(2006)に記載されている方法を使用して形質転換した。合計53個のT0トランスジェニック植物を、野生型TA1遺伝子での形質転換から再生した。これらの植物を、土壌に移し、グロースチャンバ内で成熟まで成長させた。PCRを使用して、ヒグロマイシン耐性遺伝子の存在について試験したときに、34個の形質転換体系統を確認し、ヒグロマイシン遺伝子を保有する形質転換体系統を選択した。これらを成熟まで成長させ、穀粒(T1種子)を各々の植物から収穫した。PCRアッセイによって実証された場合、これらの植物の各々は、野生型TA1遺伝子を含有するベクターからのT-DNAを含有した。
【0492】
これらの植物から収穫された穀粒を、エバンスブルーで染色することによって、アリューロン表現型について検査した。8つの独立した形質転換植物を試験し、これらの全てが、野生型のような通常のアリューロンを有する穀粒を産生し、これは、導入された遺伝子の正発現、したがって、ta1-1変異の相補性を示した。結論として、これにより、TA1遺伝子内の変異が変異体表現型を引き起こしたことが判明した。
【0493】
第2の相補性実験において、かつTA1プロモーターからの発現の観察を可能にするために、第2の遺伝子構築物を調製し、形質転換のために使用した。この構築物は、TA1タンパク質コード配列が野生型米ゲノムから単離された後に翻訳融合したGUSレポーター配列を含んだ。遺伝子構築物は、4,550個のヌクレオチドのDNA断片(配列番号49として提供されるヌクレオチド配列)を含み、このヌクレオチドDNA断片は、順に、TA1遺伝子のプロモーターを含有すると考えられた3208bpの上流配列、イントロンの全てを含むTA1タンパク質コード領域全体、次いで、TA1配列のC末端に翻訳融合したGUSレポーターコード領域、最後に、nos 3’ポリアデニル化/転写終結領域を含有した。このGUS翻訳融合は、TA1-GUS融合タンパク質が発現されたか、及び形質転換植物のどの組織内で発現されたかを試験するように設計された。
【0494】
この第2の構築物を、上記のように、Agrobacterium媒介形質転換によって、ta1-1植物内に導入した。発達中の種子を含む形質転換された植物の様々な組織を、GUS活性のために染色した。トランスジェニック植物のアリューロン及び胚内のTA1-GUS融合遺伝子の発現パターンを、図13に示す。GUS活性は、トランスジェニック植物の発達中の米穀粒のアリューロン及び胚内で、特に、DAP5~11日目に観察された。GUSの強い発現が、依然として、胚内で、DAP18及び24日目に観察され、より弱い発現が、アリューロン内で、これらの時点で観察された。非常に低いレベルの発現のみが、胚乳内で見出された。
【0495】
また、天然TA1プロモーターの制御下でTA1-GUS融合ポリペプチドをコードする遺伝子構築物が、ta1-1変異に相補的であり、通常の野生型アリューロン表現型を有する植物を得た。これは、ta1-1植物内で同定された変異が、厚アリューロン表現型の要因であることが更に確認した。また、TA1ポリペプチドへのGUS融合C末端は、TA1機能を損なわなかったと結論された。
【0496】
実施例11.TA1タンパク質の細胞内局在
野生型米TA1ポリペプチド(配列番号3)のタンパク質コード領域、及びCaMV35Sプロモーターの制御下でのベクター内の緑色蛍光タンパク質(GFP)、及びnos 3’ポリアデニル化領域/転写終結因子に翻訳融合した、植物細胞内で一過性発現するように設計されている遺伝子構築物を作製した。次いで、この構築物を、タバコ葉内に導入して、融合タンパク質の細胞内局在を、融合タンパク質のGFP蛍光を介して判定した。導入された融合遺伝子の発現を可能にするために数日後に、GFPシグナルの局在を、MitoTrackerのミトコンドリア特異的染色のものと比較した。共焦点蛍光顕微鏡法によって、葉表皮細胞内の構築物から発現されたTA1-GFP融合タンパク質が、MitoTracker染色と共局在していることが観察された。TA1タンパク質は、TA1タンパク質の代替の名称であるOsmtSSB-1aと一致して、ミトコンドリア局在を提供したN末端ミトコンドリア輸送ペプチド(MTP)を有したと結論された。これらのデータ及び結論は、MTP配列の存在に関する、実施例7に記載される解析と一致した。
【0497】
実施例12.ta1米アリューロン内のミトコンドリア機能及びエネルギー恒常性
野生型TA1タンパク質のミトコンドリア局在、及び発達中の穀粒内の細胞のミトコンドリア内のSSBタンパク質としての野生型TA1タンパク質の明らかな機能を鑑みて、本発明者らは、発達中のta1-1穀粒のアリューロン内のミトコンドリアを検査した。透過電子顕微鏡法によるDAP15日目でのアリューロン細胞の検査は、変異型穀粒内のミトコンドリアが異常な形状及び形態を有したことを示した。ミトコンドリアは、野生型アリューロン内のより細長い形状と比較して、より環状の形状であり、同じ内部構造を有さず、異なる十分に発達したクリステを有した。
【0498】
ミトコンドリアの数を、ta1-1及び野生型穀粒のDAP15日目の穎花のアリューロン細胞の各々の切片内で計数した。また、DAP11日目の野生型及びta1-1アリューロン内のATP含有量を測定した。結果(図14)は、ta1アリューロン細胞内のミトコンドリアの数が、野生型と比較して増加したが、ATP含有量が、有意に低減されたことを示した。
【0499】
更に、ta1-1穀粒のトランスクリプトームを野生型と比較したときに、解糖、酸化リン酸化、及びクエン酸回路に関与する多数の遺伝子が、ta1-1穀粒内で上向き調節されていることが観察された。
【0500】
本発明者らは、これらのデータから、発達中の穀粒の細胞が、変異型ta1遺伝子、及びmtSSBタンパク質の関連する低減された機能を補償しようとするため、TA1遺伝子の変異が、ミトコンドリア機能の欠陥をもたらし、ミトコンドリア機能の欠陥が、ミトコンドリア及び上向き調節された遺伝子の数の増加に関連し、この増加が、ミトコンドリア機能に関連したと結論した。
【0501】
実施例13.TA1遺伝子内の追加の変異型アレルについてのスクリーニング
TA1遺伝子の可能なノックアウト(ヌル)変異を含む更なる変異を提供するために、CRISPR-Cas9遺伝子編集法を、以下のように使用した。4つの別個のCRISPR構築物を、Dr.Yaoguang Liu(School of Life Science,South China Agricultural University、China)によって提供されたベクターpYLCRISPR/Cas9-MHを改変することによって作製した。最初に、20個のヌクレオチドの4つの領域であって、4つの領域の各々の直後に、3つのヌクレオチドのPAM(プロトスペーサー隣接モチーフ)配列を有する、4つの領域を、TA1 cDNAヌクレオチド配列から、潜在的ガイドRNA(gRNA)標的配列として同定した。Casg1、Casg2、Casg3、及びCasg4と称されるgRNA標的を、それぞれ、第2の(g1及びg2)、第3の(g3)、及び第4の(g4)エクソン内の変異を産生する目的で選択した。次いで、gRNA標的がgRNA骨格内に組み込まれており、米からのU3プロモーターによって駆動されるgRNA標的構築物を合成した。合成されたDNAを、制限酵素BsaIを使用して切除し、pYLCRISPR/Cas9-MHベクター内に挿入した。次いで、合成遺伝子構築物を、単離し、Agrobacterium系EHA105内に形質転換した。米の形質転換を、Nishimura et al.(2006)による方法によって実行した。トランスジェニック米植物を、形質転換されたカルスから再生した。変異型植物の種子を、成熟穎花を薄切することによって、種子のアリューロン表現型について検査して、アリューロン層細胞数を解析した。
【0502】
表4は、CRISPR/Cas9法を使用して産生された少なくとも13個の独立した系統を含む28個の系統内のTA1変異を列挙する。これらの系統の全ては、タンパク質コード領域内のフレームシフト変異を有し、フレームシフト変異は、中途翻訳終結を引き起こした終止コドンをもたらし、このため、ヌル変異であった。重要なことに、変異型系統の全ての種子は、厚アリューロン表現型を示した。変異型系統のうちのいくつかの穀粒は、加えて、野生型に対して、白亜色の胚乳、低減された結実、及び低減された1000個の穀粒の重量のうちの1つ以上を含む他の表現型変化を有した。TA1遺伝子のヌルアレル(配列番号1、配列番号3をコードする、及び相同TA1遺伝子)が、厚アリューロン及び関連する表現型を付与したと結論された。米及び穀類を含む他の植物における遺伝子編集技法の現在の効率で、CRISPR又はTALENSを使用するものなどの遺伝子編集は、厚アリューロン表現型を得るための好ましい方法である。
【表4】
【0503】
実施例14.TA1タンパク質は、RECA3及びTWINKLEポリペプチドと会合する
SSBタンパク質は、DNA複製、密接に関連する又は同一の染色体間の相同組換え、及びDNA修復において重要な役割を有する。細菌内で、RecAタンパク質は、相同鎖交換を触媒し、SSBタンパク質は、おそらく、DNA鎖分離を安定化させることによって、反応を増強する。ミトコンドリアSSBタンパク質は、植物細胞内の複数のミトコンドリアゲノムの複製及び組換えにおいて同様の役割を有すると考えられる(Edmondson et al.,2005)。ミトコンドリアDNA複製は、複数の核コードタンパク質を必要とし、核コードタンパク質は、植物オルガネラDNAポリメラーゼ又はPOPとして既知のDNAポリメラーゼ(Moriyama and Sato,2014)、RNAプライマーを合成するために作用するプライマーゼ、ジャイレースとも称されるDNAトポイソメラーゼ、mtSSB、及びTWINKLEとしても既知の、二本鎖DNAを巻き戻すヘリカーゼを含む。ミトコンドリアに局在する、植物内のTWINKLE酵素は、プリマーゼ及びヘリカーゼ活性の両方を有し、E.coli DNAポリメラーゼIによって伸長された少なくとも15個のヌクレオチドの長さのRNAプライマーを高分子量DNAに合成することが可能である(Diray-Arce et al.,2013)。
【0504】
被子植物の複数のミトコンドリア染色体は、しばしば、特に、関与する反復配列を再編成し組換えて、多様な配列重複、反転、欠失、及び挿入を産生する(Gualberto and Newton,2017)。いくつかの核遺伝子は、ミトコンドリアDNA組換え及びゲノム安定性を制御することが既知である。通常、これらの遺伝子は、DNA複製、組換え、又は修復の忠実度に影響するタンパク質をコードし、これらの遺伝子内の変異体は、しばしば、ミトコンドリアDNAの組換えられた代替の構成の蓄積をもたらす。これらのタンパク質は、細菌内のRecAと同様に鎖交換を触媒するリコンビナーゼを含む。Arabidopsis thalianaは、3つのRecA様タンパク質(RECA1~RECA3)を有する(Shedge et al.,2007)。RECA1は、全ての植物内で保存されており、プラスチドを標的にする。RECA2は、顕花植物及びコケ内に存在し、ミトコンドリア及びプラスチドの両方を標的にする。対照的に、RECA3タンパク質は、ミトコンドリアのみを標的にする。Arabidopsis thaliana内で、recA2及びrecA3変異の両方が、中間サイズの反復にわたって異所性組換えの増加をトリガーする。recA2変異は、通常、早期実生段階において致死的であり、recA3ノックアウト植物は、通常、第1世代において表現型的に通常であるが、後続の世代において効果を示すことができる。
【0505】
したがって、本発明者らは、TWINKLE及びRECA3が米内でTA1と同じプロセスに関与し得るかを試験した。米TWINKLE及びRECA3配列を、クエリとしてArabidopsis配列で検索することによって、米ゲノム配列から同定した。米タンパク質のアミノ酸配列、これらのタンパク質をコードする遺伝子のヌクレオチド配列、及びこれらの遺伝子についてのcDNAのタンパク質コード配列のヌクレオチド配列を、配列番号61~66として提供する。
【0506】
一連の実験において、TWINKLE及びRECA3タンパク質とTA1との相互作用が示された。1つの実験において、スプリット黄色蛍光タンパク質(YFP)アッセイを、融合タンパク質をコードする構築物の対との共形質転換によって、タバコ葉内で実行した。各々の対において、一方は、YFPのN末端半分をコードし、他方は、YFPのC末端半分をコードした。一方の構築物は、キメラ遺伝子p35S:TA1-nYPFを有し、他方は、p35S:RECA3-cYFP又はp35S:TWINKLE-cYPFのいずれかを有した。形質転換された細胞を、共焦点顕微鏡下で検査した。蛍光ドットが、細胞質内で観察された。この染色及びミトコンドリア特異的染色から、TA1タンパク質は、RECA3及びTWINKLEの両方と相互作用し、全ての3つが、ミトコンドリア内に局在すると結論された。
【0507】
また、TA1とRECA3及びTWINKLEとのインビボ相互作用を、ポリペプチドのうちの一方を特異的に回収し他方のポリペプチドが共沈殿する免疫沈降実験によって実証した。これを行うために、タグ付きタンパク質の一過性発現のために、構築物p35S:TA1-MYCを、p35S:RECA3-HA構築物又はp35S:TWINKLE-HA構築物のいずれかとともに、タバコ葉内に共浸透させた。総タンパク質を、浸透した組織から抽出し、共免疫沈降に供し、得られたタンパク質画分を、ウエスタンブロットを使用して試験した。別の実験において、スプリットルシフェラーゼアッセイを、浸透したタバコ葉内で実施して、TA1がRECA3及びTWINKLEの両方と相互作用することを示した。
【0508】
これらの実験の各々から、本発明者らは、TA1タンパク質が、RECA3及びTWINKLEタンパク質と会合し、これらが、ミトコンドリア内に局在したと結論した。
【0509】
実施例15.RECA3又はTWINKLE遺伝子の下向き調節は、米内で肥厚アリューロンを産生する
TA1タンパク質がミトコンドリア内のRECA3及びTWINKLEと会合したことを示す観察を鑑みて、本発明者らは、米内のRECA3及びTWINKLEをコードする遺伝子の発現の低減もまた、穀粒内のより厚いアリューロンをもたらすかを試験した。これを、RecA3及びTWINKLE遺伝子の発現を低減するために、RNA干渉(RNAi)を使用して試験した。RNAi構築物を作製するために、RecA3及びTWINKLE遺伝子の各々の領域を選択し、この領域を使用して、ヘアピンRNAを発現する逆方向反復構築物を作製した。これらの構築物を、標準的な方法を使用する野生型米のAgrobacterium媒介形質転換のために使用し、形質転換体を選択した。qRT-PCRによって示された場合、穀粒内の遺伝子の低減された発現を有する植物を選択した(図15)。3つの系統を、各々の構築物について選択した。
【0510】
選択された系統からの穎花を、顕微鏡法によって、横断面によるPASで染色されたアリューロン厚さについて検査したときに、トランスジェニック穎花の全てが、野生型と比較して肥厚アリューロンを有したことが観察された。RecA3及びTWINKLE遺伝子についてより低減された系統は、より影響され、アリューロンの少なくともいくつかのゾーンにおいて2~8層の範囲であるより厚いアリューロンを有した。また、トランスジェニック穀粒のデンプン性胚乳が、白亜色又は不透明な外観を有したことが観察された。
【0511】
これらの実験に基づいて、本発明者らは、TA1-RECA3/TWINKLE複合体によって媒介されるアリューロン細胞層内のエネルギー恒常性の調節を記載するモデルを開発した。これは、穀粒発達中のmtDNAの非正統的組換えを抑制し、したがって、サブアリューロン細胞運命の分化を決定し、サブアリューロン細胞運命の分化において、野生型穀粒内のデンプン性胚乳の最外側細胞を形成する細胞が、代わりに、アリューロン細胞としての同一性を保持して、肥厚アリューロンをもたらす。
【0512】
実施例16.他の穀類内の米TA1遺伝子の相同体
一本鎖DNA結合(SSB)タンパク質は、DNA複製、相同組換え、及びDNA修復において重要な役割を果たす(Moriyama and Sato,2014)。細菌内で、RecAタンパク質は、相同鎖交換を触媒し、SSBタンパク質は、この反応を増強する(McEntee et al.1980、Steffen and Bryant 2001)。ミトコンドリア標的一本鎖DNA結合タンパク質(mtSSB)をコードする植物遺伝子は、Arabidopsis thalianaにおいて特徴付けられており、これは、RecA、SSB、又はミトコンドリアDNA(mtDNA)組換えに関与する他のタンパク質のミトコンドリア標的相同体が植物内に存在するという最も早期の直接的証拠であった(Edmondson et al.,2005)。配列番号3をクエリとして使用して、A.thaliana SSB遺伝子である、以下それぞれAtmtSSB-1及びAtmtSSB-2と称されるAt4g11060及びAt3g18580を、The Arabidopsis Information Resource(TAIR)データベース(http://www.arabidopsis.org)におけるArabidopsisゲノムのBLAST検索によって同定した。AtmtSSB-1ポリペプチドは、配列番号3の完全長と66%同一のアミノ酸配列であり、AtmtSSB-2ポリペプチドは、はるかにより少なく相同であり、26%の同一性であった(表5)。したがって、A.thalianaは、2つのmtSSB遺伝子を有する。At4g11060は、28個の残基の推定ミトコンドリア標的ペプチド(MTP)を含む、201個のアミノ酸(配列番号15)のタンパク質をコードする。At3g18580は、23個の残基の推定MTPを含む、217個のアミノ酸(配列番号31)のタンパク質をコードする。また、モデル樹木種Populus trichocarpa(ポプラ)は、2つのmtSSB配列、すなわち、PtmtSSB-1(配列番号21)及びPtmtSSB-2(配列番号39)を有した。
【0513】
米(Oryza sativa、Japonica群)ゲノムは、(OsTA1=OsmtSSB-1aをコードする)Os05g0509700に関連する2つの他の遺伝子、すなわち、Rice Genome Annotation Project(RGAP)データベース(http://rice.plantbiology.msu.edu/)における米ゲノム及びアミノ酸配列のBLAST検索によって同定された、以下それぞれOsmtSSB-1b及びOsmtSSB-2と称されるOs04g0363700及びOs01g0642900を有することが観察された。OsmtSSB-1bは、配列番号3の完全長と72%の同一性でOstmtSSB-1aに近い配列であり、OstmtSSB-2は、より少なく相同であり、32%の同一性であった。Ostmt-SSB-1bは、OsTA1様又はOsTA1Lとも本明細書で称される。したがって、米は、3つのmtSSB遺伝子を有する。AtmtSSBタンパク質と同様に、OsmtSSBポリペプチドの全ての3つが、SSBドメインを有し、これは、OsmtSSB-1bについて、検査された植物TA1ポリペプチド配列の全てに存在するモチーフI~IVを含んだ。
【0514】
表5は、一連の相同植物ポリペプチドとの米TA1(OsmtSSB-1a;配列番号3)ポリペプチド及びOsTA1Lのアミノ酸配列同一性を提供する。図7は、これらの植物配列のうちのいくつかのアライメントを示す。検査された2つの双子葉種は、単子葉種のうちのいくつかと同様に、各々2つのmtSSB配列のみを有し、他の単子葉種は、OsTA1に最も近いもの(少なくとも80%同一)及びOsTA1Lにより近い配列のものを含む3つのmtSSB配列を有した。全体的に、植物mtSSB-1配列は、配列番号3と少なくとも60%の同一性を有し、mtSSB-2配列は、配列番号3と32%以下の同一性を有した。
【0515】
図16は、他の植物種、主に、穀類種からのTA1(OsmtSSB-1a)ポリペプチドの相同体の関連性を示す系統発生樹を提供する。各々の場合、最も相同のアミノ酸配列は、配列番号3の完全長に沿って、配列番号3と少なくとも60%同一であった。解析において使用されたアミノ酸配列は、OsTA1に最も関連するmtSSB-1又はmtSSB-1a配列についての配列番号15~23、OsTA1よりもOsTA1Lに密接に関連するmtSSB-1b配列についての配列番号24~29、及びmtSSB-2配列についての配列番号30~39として提供される。
【0516】
本発明者らは、植物種が、2つ又は3つのmtSSB配列を有し、これらの全てが、機能的であることが予想され、これは、ある程度の機能的冗長性を提供すると結論した。この解析は、異なるmtSSB遺伝子の組織特異性には取り組まなかった。
【表5】
【0517】
実施例17.他の植物種内の米RECA3及びTWINKLE遺伝子の相同体
配列番号61(米RECA3ポリペプチド)をクエリとして使用して、様々な穀類及び関連する単子葉植物、並びにいくつかの双子葉植物からの相同アミノ酸配列を、配列データベースのBLAST検索によって同定した。異なる植物種内のRECA3ポリペプチドの高度な配列保存に起因して、相同配列を容易に同定した。ポリペプチドは、ミトコンドリア又はプラスチド転座のためのN末端シグナル配列を含む長さが、425個~435個のアミノ酸残基であった(表6)。また、これらのRECA3タンパク質をコードする遺伝子についての対応するcDNA配列を同定した(表6)。穀類及び草RECA3ポリペプチドは、配列番号61の完全長と少なくとも80%同一のアミノ酸配列であり、双子葉植物からのRECA3ポリペプチドは、より少なく相同であり、配列番号61と67~72%同一であった。アミノ酸配列の各々は、ミトコンドリア標的ペプチド(MTP)をN末端において含むと推定され、これは、ポリペプチドがミトコンドリアに転座するにつれて切断除去されると予測された。
【0518】
本発明者らは、植物種が、野生型RECA3配列を有し、野生型RECA3配列が、ミトコンドリア内で機能的であり、サイレンシングRNAによる変異誘発又は下向き調節によって改変され得ると結論した。
【0519】
また、配列番号64(米TWINKLEポリペプチド)をクエリとして使用して、様々な単子葉植物及び双子葉植物からの相同アミノ酸配列を、配列データベースのBLAST検索によって同定した。同様に、異なる植物種内のTWINKLEポリペプチドの高度な配列保存に起因して、相同配列を容易に同定した。ポリペプチドは、ミトコンドリア又はプラスチド転座のためのN末端シグナル配列を含む長さが、695個~761個のアミノ酸残基であった(表7)。また、これらのRECA3タンパク質をコードする遺伝子についての対応するcDNA配列を同定した(表7)。これらの植物種のうちの多くについて、複数のcDNA配列を同定し、これは、おそらく、遺伝子からの転写物の選択的スプライシングを示す。穀類及び草RECA3ポリペプチドは、配列番号64の完全長と少なくとも77%同一のアミノ酸配列であり、双子葉植物からのRECA3ポリペプチドは、より少なく相同であり、配列番号64と67~75%同一であった。アミノ酸配列の各々は、ミトコンドリア標的ペプチド(MTP)をN末端において含むと推定され、これは、ポリペプチドがミトコンドリアに転座するにつれて切断除去されると予測された。
【0520】
図17は、穀類種を含む他の植物種からの米TWINKLEポリペプチドの相同体の関連性を示す系統発生樹を提供する。各々の場合、最も相同のアミノ酸配列は、配列番号64の完全長に沿って、配列番号64と少なくとも60%同一であった。本発明者らは、植物種が、ミトコンドリア内で機能的である野生型TWINKLE配列を有すると結論した。
【表6】
【表7】
【0521】
実施例18.黒米内へのta1変異の育種
「黒米」は、外層であるふすま及び外皮がアントシアニンで着色された米穀粒を記載するために使用される用語である。これらの色素は、実際に、深い紫色であり、黒色でないが、色素の高濃度は、穀粒を黒色又は濃い灰色に見せる。色素は、強力な抗酸化物質であり、抗酸化物質は、様々な健康利益を有すると考えられる(Yao et al.,2013)。
【0522】
ta1変異型アレルを異なる遺伝的背景内に導入するために、黒米変種Zixiangnuo 1306を最初に、反復親として選択した。この変種は、Japonica米であり、TA1遺伝子についての野生型である。この変種は、中国のより北部地域において成長させるのに好適であり、良好な耐寒性、塩類土壌への耐性、及び耐病性を有する。成熟において、Zixiangnuo 1306の葉の数は、約15であり、植物高さは、理想的な範囲で、70~85cmであり、葉色は、濃い緑色であり、実生苗及び植物は、芳香性である。1ミュー当たりの穀粒の総数は、約100であり、結実度は、少なくとも85%である。内穎の色は、穂の始まりにおいて緑色であり、穀粒が登熟段階に達したときに薄紫色であり、成熟において銀白色である。1000個の成熟穀粒の重量は、典型的には、約23gである。概して、1ミュー当たりの収量は、良好であり、300~400kgであり、理想的な成長条件下で、450kg/ミュー超に達する。穀粒のデンプンのアミロース含有量は、約5~6%であり、調理された穀粒は、食べられるときに柔らかい食感であると考えられる。
【0523】
ta1-1アレルを導入するために、交雑を、雌親としてのta1-1アレルを保有するZhonghua 11植物と、雄親としてのZixiangnuo 1306(TA1)の植物との間で行った。次いで、交雑からのF1子孫植物を、2世代にわたって反復親としてZixiangnuo 1306の植物と戻し交雑して、BC2F1戻し交雑子孫植物の集団を確立した。これらの植物のうちのいくつかを、自家受粉して、BC2F2植物を産生し、BC2F2植物から、BC2F3子孫を同定し、ta1-1アレルについてホモ接合性であるBC2F3子孫を選択した。この育種プログラムにおいて、TA1及びta1-1アレルを、実施例1に記載されるように、PCR産物の酵素消化(2014~17年)によって、又は高解像度DNA融解曲線(HRM、2018年~現在)によって検出した。アリューロン層肥厚を、米穀粒の断面におけるアリューロン層を観察することによって監視した。ta1-1についてホモ接合性である4つの遺伝的に安定した系統を得、Zhongzi1、Zhongzi2、Zhongzi3、Zhongzi4と称した。これらの系統は、上記のZixiangnuo 1306の好ましい特徴のほとんど、例えば、イモチ耐病性及び導入されたta1-1アレルによって付与された肥厚アリューロンを遺伝した。
【0524】
新しい変種を、圃場で成長させ、一連のパラメータを測定され、野生型と比較した。データを、表8に示す。これらの試験における野生型変種(WT)は、Zixiangnuo 1306であった。
【0525】
Zhongzi ta1変異型穀粒の栄養組成を、一連の栄養素について判定し、TA1遺伝子及び通常のアリューロンを有する野生型Zhonghua 11(ZH11)、又は肥厚アリューロンを有するZH11遺伝的背景内のta1-1である野生型Zixiangnuo 1306(黒米、TA1)及びZhongzi(黒米、ta1)と比較した。ta1黒米は、タンパク質、食物繊維、ミネラル、及びビタミンBを含む、測定された栄養素の全ての量が有意により高いことが観察された。鉄、亜鉛、及びビタミンB6の増加は、特に、本発明者らにとって印象的で驚くべきものであった。
【0526】
したがって、黒米変種内のta1変異を有するこれらのZhongzi高栄養米変種を産生するための成功裏の育種は、より栄養のある米食品及び飲料のために使用され得る新しい米変種を提供した。
【表8(1)】
【表8(2)】
【0527】
Zhongzi ta1変異型穀粒の栄養組成を、一連の栄養素について判定し、TA1遺伝子及び通常のアリューロンを有する野生型Zhonghua 11(ZH11)、又は肥厚アリューロンを有するZH11遺伝的背景内のta1-1である野生型Zixiangnuo 1306(黒米、TA1)及びZhongzi(黒米、ta1)と比較した。ta1黒米は、タンパク質、食物繊維、ミネラル、及びビタミンBを含む、測定された栄養素の全ての量が有意により高いことが観察された(表9)。鉄、亜鉛、及びビタミンB6の増加は、特に、本発明者らにとって印象的で驚くべきものであった。
【0528】
したがって、黒米変種内のta1変異を有するこれらのZhongzi高栄養米変種を産生するための成功裏の育種は、より栄養のある米食品及び飲料のために使用され得る新しい米変種を提供した。
【表9】
【0529】
実施例19.ta1変異型米からの食品及び飲料の製造
肥厚アリューロンを有する米穀粒は、当量の野生型米で作製された対応する成分、食品、又は飲料に対して増加した栄養素量を有する、食品成分、飲料成分、並びに食品及び飲料の製造に有用であると考えられた。したがって、様々な食品及び飲料を調製し、ヒトボランティアによって質、香り、味について試験した。これに使用された米穀粒は、変種Zhongzi1、Zhongzi2、Zhongzi3、及びZhongzi4(実施例18)であった。収穫後の米穀粒は、11.65%の含水量及び760g/Lの密度を有した。
【0530】
焙煎された米穀粒及び黒米茶
米茶を、全穀粒を浸漬することと、全穀粒をある期間焙煎する(ベーキングする)ことと、次いで、穀粒を沸騰水中に浸漬する(漬ける又は茶を入れる)こととによって調製した。焙煎温度及び時間を試験するための1つの実験において、50gの穀粒の試料を、水中に14時間浸漬し、排水し、米穀粒を、異なる条件下で焙煎した(表10)。結果は、焙煎温度を約210℃で6分間超保ったときに、焙煎された穀粒の香りが、強く好ましかったことを示した。香りは、ヒトのボランティアによって、発酵ソースを連想させると考えられた。焙煎温度が180℃超であり、時間が3.5分間超であったときに、顆粒の香りは、より低い温度又はより少ない時間でよりも明白であった。ボランティアは、粒子完全性及び香りによれば、焼飯の強い感覚を有する特有の「特別な焼けた」香りを有すると、香りを記述した。
【表10】
【0531】
黒米茶を作製するために、黒米穀粒を、沸騰水中に10分間浸漬し、次いで排水した。50gを、異なる条件下での焙煎試験のために、毎回秤量した。焙煎された黒米穀粒の香りは、柔らかく焼けた香りがないと記述された。粒子完全性及び香りの評価によれば、試料T2の米穀粒が最良であった。
【0532】
Zhongzi1、Zhongzi2、Zhongzi3、及びZhongzi4の穀粒試料を、180℃で3.5分間焙煎した。茶を入れるために、6gの焙煎された米穀粒の試料を、150mLの沸騰水に10分間付加した。茶を入れる前後の穀粒の色及び味、並びに得られた飲料の色及び味を、7人のボランティアの官能パネルによって評価した。Zhongzi1、Zhongzi2、及びZhongzi3穀粒試料の各々は、茶を入れる前に強い香り及び風味を提供し、茶を入れた後に最良の茶色を提供した。Zhongzi1穀粒の味及び粒子完全性は、Zhongzi2と同様であった。Zhongzi4の香りは、茶を入れる前後により魅力的でなく、一部のボランティアによって「乏しい」と記述され、得られた茶の色は、茶を入れた後に最も薄かった。
【0533】
米かゆ
米かゆを、100gの黒米穀粒を水中に少なくとも1時間、最大16時間浸漬することによって調製した。16時間の浸漬が、1時間と比較して推奨された。米穀粒を、水で2回すすぎ、次いで、1Lの水中で90分間、電気調理器において調理した。かゆを試食したボランティアは、かゆが、硬すぎでも柔らかすぎでもなく、好ましい味及び「特別な香り」を有し、小児及び成人、例えば、腸の不快感を患う成人に好適であると記述した。
【0534】
幼児のための食品として好適な黒米ペーストを作製するために、500gの米穀粒を、90℃で60分間焙煎した。焙煎された穀粒を、粉砕し、次いで、ふるいにかけて(100メッシュ)、微細な製粉を製造した。20gの黒米粉の試料を、100mLの沸騰水中に浸漬し、黒米ペーストが製造されるまで混合した。米ペーストを試食したボランティアは、米ペーストを、食べるのに好都合なファーストフードであるだけでなく、乳児に好適であるとみなした。米ペーストは、ボランティアが予想したよりも甘くなかった。
【0535】
調理された米穀粒
50gの黒米穀粒を、200gの白米と混合し、2回の水で2回すすぎ、60分間300~350mLの水で、電気調理器において調理した。黒米穀粒は、白米と同じ程度に均一に調理されていた。黒米は、調理後に、依然として深い色であり、柔らかい食感、及び「特別な香り」と記述された味及び香りを有した。
【0536】
米バー
500gの黒米穀粒を、90℃で少なくとも60分焙煎し、粉砕し、ふるいにかけ(100メッシュ)、チョコレートバー製造機を使用して、バーに成形する。これは、固有の味を有する、摂取に好適な食品としてバーを製造する。
【0537】
黒米油
黒米穀粒を、製粉し、製粉から製造された、果皮及びアリューロン層を含むふすまを、精白された穀粒から分離する。油を、コールドプレスによって、ふすまから製造して、米ふすま油を製造する。油は、野生型米からの米ふすま油に対して比較的高いレベルの抗酸化物質及びオリザノールを含有する。
【0538】
本出願は、2020年12月1日に出願されたAU2020/904452からの優先権を主張し、この全体の内容は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0539】
具体的な実施形態に示されるように、広範に記載される本発明の趣旨又は範囲から逸脱することなく、本発明に多数の変形及び/又は修正が本発明になされてもよいことが、当業者には理解されよう。したがって、本実施形態は、全ての点において例示的であり、限定的ではないと考えられる。
【0540】
本明細書で考察されかつ/又は参照される全ての刊行物は、これらの全体が本明細書に組み込まれる。
【0541】
本明細書に含まれる文書、行為、材料、装置、又は物品などのいずれの考察も、本発明のための文脈を提供する目的のみである。これらの事項のうちのいずれか又は全てが、本出願の各々の請求項の優先日よりも前に存在したように、先行技術基礎の一部分を形成する、又は本発明に関連する分野における一般的知識であったということを認めるとして解釈されるべきでない。
【0542】
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【配列表】
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【国際調査報告】