(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-12-12
(54)【発明の名称】リン含有ZSM-5軟質オレフィン添加剤を用いたグリセリド油の接触分解
(51)【国際特許分類】
C10G 3/00 20060101AFI20231205BHJP
B01J 29/40 20060101ALI20231205BHJP
【FI】
C10G3/00 Z
B01J29/40 M
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023533405
(86)(22)【出願日】2021-06-24
(85)【翻訳文提出日】2023-07-19
(86)【国際出願番号】 IB2021055621
(87)【国際公開番号】W WO2022118090
(87)【国際公開日】2022-06-09
(32)【優先日】2020-12-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】503148834
【氏名又は名称】シェブロン ユー.エス.エー. インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】シェイ、ミンティン
(72)【発明者】
【氏名】リウ、テンフェイ
(72)【発明者】
【氏名】グローブ、リチャード エル.
(72)【発明者】
【氏名】マーホランド、マイケル ケイ.
【テーマコード(参考)】
4G169
4H129
【Fターム(参考)】
4G169AA02
4G169BA07A
4G169BA07B
4G169BA10A
4G169BB01A
4G169BB01B
4G169BD02A
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4H129BA03
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4H129NA22
4H129NA26
4H129NA30
4H129NA37
4H129NA43
(57)【要約】
リン含有ZSM-5軟質オレフィン添加剤を含む触媒組成物を用いたグリセリド油原料の接触分解のためのプロセスが提供される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
グリセリド油の接触分解のためのプロセスであって、
(a)前記グリセリド油を、少なくとも80重量%のリン含有ZSM-5軟質オレフィン添加剤を含む分解触媒と、炭化水素を含む生成物流を得る接触分解条件で接触させることと、
(b)前記生成物流から少なくとも1つの炭化水素留分を分離することと、を含む前記プロセス。
【請求項2】
前記リン含有ZSM-5軟質オレフィン添加剤は、
(a)25~50重量%のZSM-5と、
(b)P
2O
5として測定した3~15重量%のリンと、
(c)5~45重量%の粘土と、
(d)5~20重量%の結合剤と、を含む請求項1に記載のプロセス。
【請求項3】
前記分解触媒はさらに、大細孔モレキュラーシーブ成分を含む請求項1に記載のプロセス。
【請求項4】
前記大細孔モレキュラーシーブ成分は、*BEA骨格型ゼオライト及びFAU骨格型ゼオライトから選択される請求項3に記載のプロセス。
【請求項5】
前記分解触媒は、0.1~20重量%の前記大細孔モレキュラーシーブ成分を含む請求項3に記載のプロセス。
【請求項6】
前記グリセリド油は、少なくとも80重量%のトリグリセリドを含む請求項1に記載のプロセス。
【請求項7】
前記グリセリド油は、菜種油、菜種油、キャノーラ油、トール油、ヒマワリ油、大豆油、麻実油、綿実油、コーン油、オリーブ油、亜麻仁油、マスタード油、パーム油、ピーナッツ油、ヒマシ油、ココナッツ油、ツバキ油、ジャトロファ油、微生物油、動物性脂肪、魚油、ラード、獣脂、鯨油、食品産業からの再利用脂肪、及びこれらの任意の組み合わせから選択される請求項1に記載のプロセス。
【請求項8】
前記プロセスは流動接触分解プロセスである請求項1に記載のプロセス。
【請求項9】
前記接触分解条件は、450℃~650℃の温度、100kPa~1100kPaの圧力、3~12の触媒対油の質量比を含む請求項1に記載のプロセス。
【請求項10】
前記生成物流を1つ以上の炭化水素留分に分留することをさらに含む請求項1に記載のプロセス。
【請求項11】
前記1つ以上の炭化水素流は、軟質オレフィン及びガソリンから選択される請求項1に記載のプロセス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、グリセリド油の接触分解に関し、より詳細には、触媒としてリン含有ZSM-5軟質オレフィン添加剤を用いたトリグリセリド材料の接触分解に関する。
【背景技術】
【0002】
接触分解、特に流動接触分解(FCC)は、重質炭化水素原料をガソリン及び蒸留範囲留分などのより軽い製品に変換するために、日常的に用いられている。さらに、接触分解プロセスからの製品スレート中のプロピレン、エチレン、及び芳香族化合物(ベンゼン、トルエン、キシレンなど)などの石油化学成分の収量を高める必要性が増え続けている。
【0003】
FCC触媒は、多くの場合に、触媒活性である大細孔ゼオライト成分(たとえば、FAU骨格型ゼオライト)と他のゼオライトを含む添加剤との混合物である。これらの触媒は通常、約10~約50重量%の結晶性ゼオライト含有量を有し、残りはマトリックスまたは希釈剤である。大細孔成分は、接触分解反応からの一次生成物の分解を触媒して、燃料用のナフサ及び留出物及び化学原料用のオレフィンなどのきれいな生成物にする。従来の添加剤には、多くの場合、一次分解生成物(たとえば、ガソリンオレフィン)をC3及びC4オレフィンに選択的に変換してガソリンオクタンを向上させる中細孔ゼオライトであるリン活性化ZSM-5が含まれる。リンによる活性または選択性の向上は、ZSM-5の有効性を高めることが知られている。FCCプロセスへの添加剤は通常、触媒全体の10%以下の量である。
【0004】
化石燃料への依存性を減らすために、天然油などの再生可能な資源から燃料及び他の有用な材料を製造することが望ましい。天然油には主にグリセリド、特にトリグリセリドが含まれる。天然油は接触分解を受けやすいが、市販のFCC触媒などの従来の触媒を用いると、収量と生成物の分布が所望よりも少ない。
【0005】
本開示によれば、リン含有ZSM-5ベースの軟質オレフィン添加剤が、再生可能原料の接触分解に対する塩基触媒として使用でき、軟質オレフィン及び芳香族富化ナフサの驚くべき高い収量を示し、従来の大細孔FCC触媒と比べてガソリン留分のオクタンも向上することが判明した。
【発明の概要】
【0006】
一態様では、グリセリド油の接触分解プロセスが提供される。本プロセスは、(a)グリセリド油を、少なくとも80重量%のリン含有ZSM-5軟質オレフィン添加剤を含む分解触媒と、炭化水素を含む生成物流を得る接触分解条件で接触させることと、(b)生成物流から少なくとも1つの炭化水素留分を分離することと、を含む。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】例示的な実施形態による、セクション例における実験セットアップに対する概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
定義
用語「グリセリド油」は、本明細書で用いる場合、トリグリセリドを主成分として含む油または脂肪を指す。たとえば、トリグリセリド成分は、少なくとも50重量%のグリセリド油を含んでいてもよい。またグリセリド油は、モノグリセリド及び/またはジグリセリドを含んでいてもよい。グリセリド油には、植物油、海産油、及び動物油/脂肪が含まれ、これらには通常は、その未精製形態のリン脂質成分も含まれる。
【0009】
用語「トリグリセリド」は、3つの脂肪酸単位を伴うグリセロールのトリエステルを指す。トリグリセリド中に存在する脂肪酸単位は、互いに同じであってもよいし、異なっていてもよい。
【0010】
用語「脂肪酸」は、飽和または不飽和(シスまたはトランス、一価または多価不飽和)であり得る、4~28の炭素の鎖(通常は非分岐で偶数)を有する脂肪族モノカルボン酸を指すために用いられる。
【0011】
用語「炭化水素」は、炭素に結合した水素を含む化合物のクラスを指し、(i)飽和炭化水素化合物、(ii)不飽和炭化水素化合物、及び(iii)炭化水素化合物(飽和及び/または不飽和)の混合物(異なる数の炭素原子を有する炭化水素化合物の混合物を含む)を包含する。
【0012】
用語「Cn」は、分子当たりnの炭素原子(複数可)を有する炭化水素(複数可)を意味する。ここでnは正の整数である。本明細書で用いる場合、用語「Cn+」は、「n」以上の炭素原子を有する炭化水素によって規定される炭化水素組成物を指し、「n」は0よりも大きい整数である。これには、パラフィン、オレフィン、環状炭化水素、芳香族化合物、及びその異性体が含まれる。同様に、用語「Cn-」は、「n」以下の炭素原子を有する炭化水素によって規定される炭化水素組成物を指し、「n」は0よりも大きい整数である。これには、パラフィン、オレフィン、環状炭化水素、芳香族化合物、及びその異性体が含まれる。
【0013】
用語「軟質オレフィン」は、本明細書では、2~4の炭素原子を有するオレフィン(たとえば、エチレン、プロピレン、及びブチレン)を示すために用いる。
【0014】
用語「大細孔」は、少なくとも12の四面体原子の最大環サイズを有するモレキュラーシーブ骨格を意味し、「中細孔」は、少なくとも10の四面体原子の最大環サイズを有するモレキュラーシーブ骨格を意味し、用語「小細孔」は、少なくとも8の四面体原子の最大環サイズを有するモレキュラーシーブ骨格を意味する。
【0015】
用語「重量%」は、成分を含む材料の総重量に基づいた成分の重量パーセントを指す。非限定的な例では、材料100グラム中の成分10グラムは10重量%の成分である。
【0016】
グリセリド油
グリセリド油は、再生可能資源または生物源もしくは再生可能資源(複数)または生物源(複数)に由来し、ここでは、原油(鉱油)またはシェール油または石炭から得られるもの以外の原料を含むことを意味する。
【0017】
グリセリド油は、植物、動物、藻類、魚及び微生物学的プロセスに由来し得る。
【0018】
グリセリド油は、少なくとも50重量%(少なくとも60重量%、少なくとも70重量%、少なくとも80重量%、少なくとも90重量%、または少なくとも95重量%)のトリグリセリドを含む。またグリセリド油は、モノグリセリド及び/またはジグリセリド、遊離脂肪酸、及び天然源に由来する脂肪及び油中に通常は低レベルで存在する他の物質も含み得る。グリセリド油は、単一種類のトリグリセリドを含み得るが、より典型的には、2つ以上の異なるトリグリセリドの混合物を含む。
【0019】
代表的なグリセリド油としては、菜種油、菜種油、キャノーラ油、トール油、ヒマワリ油、大豆油、麻実油、綿実油、コーン油、オリーブ油、亜麻仁油、マスタード油、パーム油、ピーナッツ油、ヒマシ油、ココナッツ油、ツバキ油、ジャトロファ油、微生物源由来の油(遺伝子組み換えの可能性があり、少なくとも藻類、細菌、カビ及び糸状菌を含む)、動物性脂肪、魚油、ラード、獣脂、鯨油、食品産業からの再利用脂肪、及び油の任意の混合物が挙げられる。
【0020】
グリセリド油は、分解触媒と接触させるために、前処理して不純物を取り除いてもよい。前処理には、金属を取り除くためにグリセリド油を吸着剤に通すこと、沈降物を取り除くためにグリセリド油をろ過すること、または他のプロセスを含めることができる。
【0021】
分解触媒
本開示の分解触媒は、少なくとも80重量%(たとえば、少なくとも85重量%、少なくとも90重量%、少なくとも95重量%、または少なくとも99重量%)のリン含有ZSM-5軟質オレフィン添加剤を含む。
【0022】
軟質オレフィン製造のためのFCCプロセスで典型的に用いられる任意の従来のリン含有ZSM-5軟質オレフィン添加剤を、本開示において用いてもよい。
【0023】
リン含有ZSM-5軟質オレフィン添加剤には、(a)25~50重量%(たとえば、40~50重量%)のZSM-5ゼオライト、(b)3~15重量%(たとえば、5~10重量%)のリン(P2O5として測定する)、(c)5~40重量%(たとえば、10~20重量%)の粘土、及び(d)5~20重量%(たとえば、10~20重量%)の結合剤が含まれ得る。
【0024】
粘土は、カオリン、ハロイサイト、ベントナイト、及びこれらの任意の組み合わせからなる群から選択してもよい。いくつかの態様では、粘土はカオリンである。
【0025】
結合剤は、シリカゾル、アルミナゾル、疑ベーマイトアルミナ、バイヤライトアルミナ、ガンマアルミナ、及びこれらの任意の組み合わせからなる群から選択してもよい。
【0026】
好適なP/ZSM-5軟質オレフィン添加剤の例としては、Graceから市販されているもの(たとえば、OlefinsMax(登録商標)、OlefinsUltra(登録商標)、OlefinsUltra(登録商標)HZ、OlefinsUltra(登録商標)MZ及びOlefinsUltra(登録商標)XZ)、Johnson Mattheyから市販されているもの(たとえば、INTERCAT(商標)、PENTACAT(商標)HP、PROPYLMAX(商標)、SUPERZ(商標)、SUPERZエクセル、SUPERZEXCEED、ISOCAT(商標)、及びOCTAMAX(商標))、及びBASFから市販されているもの(たとえば、ZIPオレフィン添加剤)が挙げられる。
【0027】
分解触媒はさらに、リン含有ZSM-5軟質オレフィン添加剤に加えて、大細孔モレキュラーシーブ成分を含んでいてもよい。大細孔モレキュラーシーブ成分は、たとえば、*BEA骨格型ゼオライト(たとえば、ベータゼオライト)及び/またはFAU骨格型ゼオライト(たとえば、Yゼオライト)を含んでいてもよい。使用する場合、大細孔モレキュラーシーブ成分は通常、分解触媒の重量に基づいて、20重量%以下の量(たとえば、0.1~20重量%、または1~15重量%)で存在する。随意に、さらなるモレキュラーシーブ成分は、マトリックス、結合剤、及び/または粘土をさらに含んでいてもよい。
【0028】
分解触媒は、ミクロスフェアなどの成形された微粒子の形態であってもよい。記載されているように、「微粒子」は、0.1ミクロン~100ミクロンのサイズを有する粒子を指す。微粒子のサイズは、微粒子の最長距離に沿って測定した、粒子の一方の側から他方の側までの最大長さを指す。
【0029】
分解触媒は、原料を変換するための反応器内で用いる前に、蒸気と接触させることによって非活性化してもよい。蒸気処理の目的は、動作中のFCC再生器内で起こる熱水老化を加速して、平衡触媒を得ることである。蒸気処理によって、骨格からアルミニウムが取り除かれて、熱水及び熱的条件下で骨格の加水分解が起こる可能性があるサイトの数が減少する場合がある。このようにアルミニウムが取り除かれる結果、脱アルミニウムゼオライトにおける熱安定性及び熱水安定性が向上する。触媒は、5%~100%蒸気の雰囲気中で、少なくとも300℃(たとえば、300℃~800℃)の温度で、少なくとも1時間(たとえば、1時間~200時間)、蒸気処理に供してもよい。
【0030】
接触分解
触媒プロセスは、固定床、移動床、または流動床のいずれかとすることができ、原料の流れは、触媒の流れに対して並流または向流のいずれかであってもよい。本プロセスは、特に流動接触分解(FCC)プロセスに適用することができる。
【0031】
本開示のプロセスは、特に流動接触分解(FCC)に適用することができ、分解触媒は通常、微粉末である。この粉末は一般に供給原材料中に懸濁され、反応ゾーン内を上向きに推進される。原料を分解触媒と混合して流動化懸濁液をもたらし、高温で細長い反応器またはライザー内で分解して、より軽質の炭化水素生成物の混合物をもたらす。ガス状反応生成物及び使用済み触媒は、ライザーから、密閉されたストリッピング容器またはストリッパーの上部部分内に配置された分離器(たとえば、サイクロンユニット)まで排出され、反応生成物は生成物回収ゾーンまで搬送され、使用済み触媒はストリッパーの下部部分内の高密度な触媒床に入る。使用済み触媒を触媒再生器装置まで搬送する前に、使用済み触媒から同伴炭化水素を取り除くために、不活性ストリッピングガス(たとえば、蒸気)を触媒床に通して、そこで、このような炭化水素を脱着して生成物回収ゾーンまで搬送する。流動性触媒を、ライザーと再生器との間を連続的に循環させる。流動性触媒は、後者から前者へ熱を伝達する働きをし、それによって、吸熱である分解反応の必要な熱を供給する。
【0032】
通常、FCC変換条件には、450℃~650℃(たとえば、450℃~600℃、または500℃~575℃)のライザー上部温度、100kPa~1100kPa(たとえば、200kPa~400kPa)の圧力、3~12(たとえば、4~11、または5~10)の触媒対油の質量比、0.1~15秒(たとえば、0.2~10秒)の触媒滞留時間が含まれる。好適な再生温度には、100kPa~1100kPaの範囲の圧力において600℃~800℃の範囲の温度が含まれる。
【0033】
随意に1つ以上の分離及び/または他の精製プロセスに供された原油またはシェール油から通常は得られるものなどの鉱油成分を、グリセリド油原料と組み合わせてもよい。しかし、グリセリド油及び鉱油原料の異なる分解特性を考慮すると、通常は、バイオ原料分解専用の装置内で、すなわち、全体的にバイオ成分(複数可)からなる原料を用いて分解を行うことが好ましい。
【0034】
分解ステップから得られた、分解された再生可能な炭化水素を含む生成物流を、たとえば精留塔を用いて、1つ以上の炭化水素留分に分離してもよい。生成物流には、乾燥ガス(たとえば、水素、メタン、及びエタンのうちの1つ以上)、液化石油ガス(たとえば、プロパン及びブタンのうちの1つ以上)、軟質オレフィン(たとえば、エチレン、プロピレン、及びブチレンのうちの1つ以上)、ガソリン(沸点範囲がC5~221℃)、軽質循環油(沸点範囲が221℃+~343℃)及び重質循環油(沸点範囲が343℃+~最終沸騰温度)が含まれる。何らかのより重質炭化水素を反応器に再循環してもよい。
【0035】
いくつかの態様では、生成物流は、ASTM D2887によって決定される、30重量%~60重量%(たとえば、40重量%~50重量%)のガソリン沸点範囲炭化水素を含み得る。いくつかの態様では、ガソリン沸点範囲炭化水素は、少なくとも80重量%(たとえば、少なくとも85重量%、または85重量%~95重量%)のC6~C8芳香族化合物を含んでいてもよい。得られたガソリン留分は、高品質な再生可能ガソリン燃料及び/またはナフサ燃料として、またはこれらの燃料に対する混合成分として有用であり得る。
【0036】
いくつかの態様では、生成物流は、パラキシレン選択性が50%~99.9%(たとえば、60%~80%)のキシレンをキシレン留分内に含み得る。キシレン異性体の中で、パラキシレンは、合成繊維及び合成樹脂の製造における中間体であるテレフタル酸の製造において有用であるため、特に価値がある。
【0037】
いくつかの態様では、生成物流は、ASTM D2887によって決定される、少なくとも25重量%(25重量%~40重量%、または30重量%~40重量%)の軟質オレフィンを含み得る。再生可能なC3及びC4生成物オレフィンを石油化学装置またはアルキル化装置に送って、イソパラフィン(たとえば、イソブタン)と1つ以上の軟質オレフィン(通常、プロピレン及びブチレン)との反応によって、高オクタン価ガソリンを製造することができる。再生可能なエチレン生成物は、石油化学装置に送ってさらなる処理を行うことができる。
【0038】
炭化水素留分は、商用利用の前にさらなる処理を受けてもよい。このような処理の例として、水素化処理及び添加剤の添加を挙げてもよい。
【実施例】
【0039】
以下の例示的な実施例は、非限定的であることが意図されている。
【0040】
例
一連の実験室テストを、3つの異なる触媒:市販のリン含有ZSM-5ベースFCC添加剤、使用済みFCC平衡触媒(FCC ECAT)、ZSM-5添加剤及びFCC ECATの重量で50/50混合物を用いて、FCC条件下で大豆油または減圧軽油(VGO)の分解を研究するために行った。使用済みFCC ECATは、水素化処理供給原料を処理するFCC装置から得られ、総金属(Ni+V)含有量は500ppm未満、全表面積は185m2/g、単位セルサイズは24.34Åであった。使用前に、ZSM-5添加剤に、800℃での50%蒸気処理を24時間、施した。
【0041】
接触分解実験を、Advanced Cracking Evaluation(ACE)ModelC装置(Kayser Technologyにより製造)を用いて行った。ACEモデルC装置の概略図を
図1に示す。ACE装置内で用いた反応器は、1.6ccmIDの固定流動反応器であった。流動化ガスとして窒素を用いて、底部及び上部の両方から導入した。上部流動化ガスを用いて、三方バルブを介して較正済みシリンジ供給原料ポンプから注入された供給原料を運んだ。供給原料の接触分解は、大気圧及び975°Fで行った。各実験では、一定量の供給原料を、1.2g/分の速度で75秒間注入した。テストした各触媒に対して、触媒対油の質量比を7に維持した。75秒間の供給原料注入後、触媒を525秒間の窒素によりストリッピングした。
【0042】
接触分解及びストリッピングプロセスの間、液体生成物はガラス受取器に取り付けられたサンプルバイアル内に回収した。これは、反応器出口の端に配置され、-15℃に維持された。ガス状生成物は、1気圧のN2が予め充填された(12.6L)密閉したステンレス鋼容器内に回収した。供給原料注入が完了したらすぐに、ガス状生成物を60rpmで回転する電気撹拌器によって混合した。ストリッピング後に、均質性を確実にするために、ガス状生成物をさらに10分間混合した。そして、最終的なガス状生成物を、製油所ガス分析器(RGA)を用いて分析した。
【0043】
ストリッピングプロセスの完了後に、空気の存在下で、1300°Fでその場触媒再生を行った。再生排ガスは、CuOペレット(LECO社)が詰められた触媒コンバータを通過し、COを酸化してCO2にした。次に、再生排ガスを、触媒コンバータの下流に配置されたオンライン赤外線(IR)分析器によって分析した。分解プロセス中に堆積したコークスを、IR分析器によって測定したCO2濃度から計算した。
【0044】
前述したように、ガス状生成物(主にC1~C7炭化水素)をRGA内で分離した。RGAは、3つの検出器である、炭化水素用の炎イオン化検出器、窒素及び水素用の2つの熱伝導度検出器を備えたカスタマイズされたAgilent7890Bガスクロマトグラフ(GC)である。ガス生成物中の微量のCO及びCO2を定量化するために、メタナイザーもRGA上に取り付けた。ガス生成物は、乾燥ガス(C2炭化水素及びH2)と液化石油ガス(C3及びC4炭化水素)とに分類された。CO及びCO2は乾燥ガスから除外した。液体生成物の重量を計り、ASTM D2887を用いて模擬蒸留GC(Agilent6890)において分析した。液体生成物は、ガソリン(C5~430°F)、軽質循環油(430°F+~650°F)、及び重質循環油(650°F+)に分割された。ガス状生成物中のガソリン(C5+炭化水素)を液体生成物中のガソリンと組み合わせて、合計ガソリンとした。液体生成物中のライトエンド(C5-)も液体生成物から差し引いて、いくつかの経験的分布を用いてC3及びC4種に戻した。ほとんどの実験において、物質収支は98~101%であった。
【0045】
Agilent6890A(SeparationSystemsInc.)を用いた詳細な炭化水素分析(DHA)を、PONA(パラフィン、オレフィン、ナフテン、及び芳香族化合物)及びオクタン(RON及びMON)に対する液体生成物のガソリン部分に対しても行った。ガス状生成物中のガソリン部分に対するDHA分析は行わなかった。したがって、全体的なガソリン特性に対する調整は行わなかった。それにもかかわらず、DHAの結果によって、接触分解生成物の特性評価に対する貴重な情報が得られた。
表1
大豆油及びVGOの接触分解
【表1】
【0046】
結果は、大豆油の接触分解では、分解触媒配合物中のP/ZSM-5添加剤の量が増加するにつれて、軟質オレフィンならびにガソリン芳香族化合物の変換及び収量が増加したことを示した。P/ZSM-5添加剤によってVGO原料を分解すると、軟質オレフィン及びガソリンの変換及び収量が低下することが観察された。理論に拘束されるものではないが、ZSM-5の細孔サイズによって、VGO供給原料分子への活性サイトのアクセス可能性が制限されると考えられる。
【国際調査報告】