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特表2023-551725静電チャック用の改善されたプラズマ耐性コーティング
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-12-12
(54)【発明の名称】静電チャック用の改善されたプラズマ耐性コーティング
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/3065 20060101AFI20231205BHJP
   C23C 14/06 20060101ALI20231205BHJP
   C23C 28/00 20060101ALI20231205BHJP
【FI】
H01L21/302 101G
C23C14/06 A
C23C28/00 B
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023533721
(86)(22)【出願日】2021-12-02
(85)【翻訳文提出日】2023-06-20
(86)【国際出願番号】 EP2021084017
(87)【国際公開番号】W WO2022117746
(87)【国際公開日】2022-06-09
(31)【優先権主張番号】63/120,497
(32)【優先日】2020-12-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】598051691
【氏名又は名称】エリコン・サーフェス・ソリューションズ・アクチェンゲゼルシャフト,プフェフィコーン
【氏名又は名称原語表記】OERLIKON SURFACE SOLUTIONS AG, PFAEFFIKON
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】カーク,マシュー・ポール
【テーマコード(参考)】
4K029
4K044
5F004
【Fターム(参考)】
4K029AA07
4K029AA24
4K029BA03
4K029BA17
4K029BA41
4K029BA43
4K029BA55
4K029BA58
4K029BB02
4K029BC01
4K029BD01
4K029BD03
4K029CA06
4K029CA13
4K029DA04
4K029DC03
4K029DC39
4K029EA01
4K029FA04
4K029FA05
4K029JA03
4K044AA11
4K044AB02
4K044BA10
4K044BA12
4K044BA18
4K044BB03
4K044BC02
4K044CA04
4K044CA12
4K044CA13
4K044CA71
5F004AA16
5F004BB22
5F004BB29
(57)【要約】
半導体構成要素を製造するためのプラズマ・エッチング・チャンバ内で使用されるデバイスを生産する方法であって、デバイスの基板を形成する本体を提供するステップと、第1のコーティングを本体の表面に適用するステップであって、第1のコーティングが、金属コート体を形成するために、金属及び/又は金属合金薄膜コーティング層を含む、ステップと、第2のコーティングを金属コート体上に適用するステップであって、第2のコーティングがセラミックコーティング層を含み、第2のコーティングが第1のコーティングと少なくとも部分的に重なる、ステップと、を含む方法。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体構成要素を製造するためのプラズマ・エッチング・チャンバ内で使用されるデバイスを生産する方法であって、
前記デバイスの基板を形成する本体を提供するステップと、
第1のコーティングを前記本体の表面に適用するステップであって、前記第1のコーティングが、金属コート体を形成するために、金属及び/又は金属合金薄膜コーティング層を含む、ステップと、
第2のコーティングを前記金属コート体上に適用するステップであって、前記第2のコーティングがセラミックコーティング層を含み、前記第2のコーティングが前記第1のコーティングと少なくとも部分的に重なる、ステップと、を含む方法。
【請求項2】
前記方法が、前記本体を製造するステップを含み、前記製造が、好ましくは前記本体の前記表面を研磨及び洗浄することによって、前記本体をアンコーティングすることを含み、特に前記表面を洗浄及び/又は活性化するためにプラズマ法及び/又はイオン衝撃が使用される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記製造が、前記本体をアルカリ性又は酸化性物質で処理して、前記本体の前記表面から既存のコーティングを溶解させることを含む、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
金属構成要素及びセラミック構成要素を含む介在コーティングが前記第1のコーティングと前記第2のコーティングとの間に適用されて、前記介在コーティングが、好ましくは、前記第1のコーティングとの界面においてより多い量の前記金属化合物から開始して、前記第2のコーティングとの界面においてより少ない量の前記金属化合物で終了する、前記金属構成要素の勾配を前記介在コーティング内で生成するために、前記金属構成要素の添加を連続的に減少させながら、前記セラミック構成要素を形成する反応性ガスの制御されたフィードを使用することによって適用され、特に、前記セラミック構成要素を形成する前記反応性ガスのフィード及び/又は前記金属化合物の添加が、少なくとも部分的に段階的に及び/又は少なくとも部分的に連続的に変量される、先行する請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記方法が、前記デバイスをマイクロ及び/又はナノ構造化するステップであって、マイクロ及び/又はナノ構造化によって導入される前記構造が、好ましくは、特に前記デバイスの前記本体に導入される格子構造の形態で作られる、ステップを含む、先行する請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
真空コーティング法が使用されて前記第1のコーティング及び/又は前記第2のコーティング及び/又は前記介在コーティングが適用され、好ましくはCVD又はPVD技術、特にマグネトロンスパッタリング技術が使用される、先行する請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記第1のコーティングとして、純金属層及び/又は純金属合金が前記本体の前記表面に適用され、前記金属層及び/又は前記金属合金が、以下の金属:Al、V、Ti、Hf、Y、Er、Sc、Ce、Laの金属のうちの少なくとも1つを含む、先行する請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
純セラミック層が前記第2のコーティングとして前記本体の前記表面に適用され、前記セラミック層が、好ましくは以下の:酸化物、窒化物、酸窒化物、ケイ酸塩、フッ化物、炭化物、酸フッ化物のうちの少なくとも1つを含み、特に前記セラミックを形成するための前記反応性ガスが、ゆっくりと供給され、ランピングされる、先行する請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
好ましくは先行する請求項のいずれか1項に記載の方法によって生産される、半導体構成要素を製造するためのプラズマ・エッチング・チャンバ内で使用されるデバイスであって、
前記デバイスの前記基板を形成する本体と、
前記本体の前記表面に適用されている第1のコーティングであって、金属及び/又は金属合金薄膜コーティング層を含む第1のコーティングと、
前記金属コート体上の第2のコーティングであって、前記第2のコーティングがセラミックコーティング層を含み、前記第2のコーティングが前記第1のコーティングと少なくとも部分的に重なる、第2のコーティングと、を備える、デバイス。
【請求項10】
前記デバイスが介在コーティングをさらに備え、前記介在コーティングが好ましくは前記層内に不均一に分布された金属構成要素及びセラミック構成要素を備える、請求項9に記載のデバイス。
【請求項11】
前記介在コーティング内の前記金属部分が、前記介在コーティングと前記第1のコーティングとの間の界面から開始して、前記介在コーティングと前記第2のコーティングとの間の界面まで連続的に減少し、同時に、前記層内の前記セラミック部分が、前記介在コーティングと前記第1のコーティングとの間の界面から開始して、前記介在コーティングと前記第2のコーティングとの間の界面まで連続的に増加して、前記金属構成要素と前記セラミック構成要素の互いに対する比が、好ましくは、少なくとも部分的に段階的に及び/又は少なくとも連続的に変化する、請求項10に記載のデバイス。
【請求項12】
前記第2のコーティング及び与えられた場合には前記介在コーティングが細孔を含み、前記細孔が好ましくは細孔入口及び細孔出口で異なる細孔直径を有し、前記第2のコーティングに隣接する前記細孔入口における前記細孔の直径が、前記第1のコーティングに隣接する前記細孔出口での直径より特に小さい、請求項9~11のいずれか1項に記載のデバイス。
【請求項13】
前記デバイスが、マイクロ及び/又はナノ構造化部品を備え、前記マイクロ及び/又はナノ構造化部品が、好ましくは、特に前記デバイスの前記本体に導入されるグリッド構造の形態で作られている、請求項9~12のいずれか1項に記載のデバイス。
【請求項14】
前記グリッド構造が、突起及び2つの隣り合う突起の間に配置された開口を含み、前記開口が、好ましくは、前記第2のコーティングに隣接する2つの隣り合う突起の間に配置された狭窄部を含み、前記開口の直径が、特に、前記狭窄部から前記開口内の前記グリッドの底部まで連続的に増大する、請求項13に記載のデバイス。
【請求項15】
前記セラミック最上層が、前記本体の表面上に部分的に適用され、前記セラミック最上層が、好ましくは、前記開口内の前記グリッドの底部まで延在せず、前記グリッドの底部が、金属コーティングでのみコーティングされている、請求項13又は14に記載のデバイス。
【請求項16】
前記第1のコーティングが、好ましくは以下の金属:Al、V、Ti、Hf、Y、Er、Sc、Ce、Laのうちの少なくとも1つを含む、純金属及び/又は金属合金薄膜である、請求項9~15のいずれか1項に記載のデバイス。
【請求項17】
前記第2のコーティングが、好ましくは以下の:酸化物、窒化物、酸窒化物、ケイ酸塩、フッ化物、炭化物、酸フッ化物のうちの少なくとも1つを含む、純セラミック層である、請求項9~16のいずれか1項に記載のデバイス。
【請求項18】
前記マイクロ及び/又はナノ構造化部品が周期的グリッド構造の形態で設計され、隣接する2つの突起間の距離が、好ましくは少なくとも幅200nm、特に少なくとも幅400nmである、請求項9~17のいずれか1項に記載のデバイス。
【請求項19】
前記デバイスが、その表面に沿って不均一にコーティングされ、前記第1及び/又は第2のコーティング及び/又は前記介在コーティングの層厚が、前記表面のいくつかの点において、他の点におけるよりも薄い、請求項9~18のいずれか1項に記載のデバイス。
【請求項20】
前記デバイスが、静電チャック又はハード・シャドウ・マスキング・デバイスである、請求項9~19のいずれか1項に記載のデバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体構成要素を製造するためのプラズマ・エッチング・チャンバ内で使用されるデバイスの生産方法に、並びに好ましくはそのような方法によって製造される、半導体構成要素を製造するためのプラズマ・エッチング・チャンバ内で使用されるデバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
半導体技術では、静電チャックのようなデバイスが一般に使用される。静電チャック(Eチャック)は、半導体デバイス製造に一般に使用されるセラミック相コーティング(酸化物、窒化物、ホウ化物、炭化物、酸窒化物など)を含む層系でコーティングされることが多い。そのようなEチャックは半導体エッチチャンバで使用され、エッチングプラズマが照射されるEチャックを保護するために、イオン衝撃及びハロゲンガスによるエッチングに耐性のコーティングによってそれらをコーティングする必要がある。
【0003】
到達技術水準
プラズマ耐性Eチャックを構築するための現在の到達技術水準は、例えばシリコンウェハが加工中に載置される最小接触面積(MCA)メサ構造を製作する方法である。このメサMCA構造の製作は、メサを所望の高さに残すのに十分な量の材料を除去するために、ポジ型ハードマスク(それはそのパターンをMCA構造の「高い」点に変換する)及びサブトラクティブ・アブレーション・プロセス(しばしばブラスト操作)が利用される。このプロセスは、微粒子汚染に関してある欠点を有し、半導体ダイの歩留まり損失を生じる。他の欠点としては、いくらかの生産使用後にEチャックを改修及び修復する能力が制限されていることが挙げられる。到達技術水準の改修は、ある量のベースセラミック材料を除去する研削/研磨ステップ及び前述のMCAパターンの再製作を含む。ベースセラミックの誘電特性の重要性のために、厚さの変化は、Eチャックの静電性能に悪影響を有する場合があり、性能劣化のために改修できる回数を制限する。
【0004】
しかし、新しい方法論によれば、MCAパターンは、前述の問題を回避する薄膜堆積によるアディティブプロセスにおいて逆マスクを用いて製作される。
【0005】
そのような薄膜堆積コーティングは、典型的には、PVD及びスプレー技術を含む様々な方法によって適用される酸化物、酸窒化物及び酸フッ化物からなる。これらのコーティングは低いエッチング速度を有するが、それらは使用又は場合によっては機械的摩耗により薄くなり、ある時点で交換する必要がある。(例えば引っかきにより)取り扱い中に損傷が発生した場合、コーティングの交換も必要となり得る。これが動機付けられるのは、典型的な構成要素のコストによって、及び場合によってはコーティングが薄くなりすぎる場合に(すなわち、静電チャック、Eチャックの機能のために)、誘電特性を維持する必要性によってである。したがって、改修が容易なエッチング耐性コーティングに対する必要性がある。
【0006】
グリットブラスティング又はラッピングなどの方法によるコーティングの機械的除去は、場合によっては実用的ではなく、又はそれらが適用されるたびに構成要素を損傷するという欠点を有する。これはとりわけ、上述のようなEチャック上のメサ構造のようなパターン化表面に当てはまる。したがって、化学的又は電気化学的方法によってコンフォーマルな方式でコーティングを選択的に除去することが非常に有利であろう。しかし、これらの方法は、残念ながら、ほとんどの化学物質に対して設計上不活性であるエッチング耐性コーティングにとってあまり効率的ではない。エッチング耐性コーティングが同様の化学的性質(すなわち、EチャックのAl/AlON表面上のAl/AlONコーティング)の基板上に適用される場合、この難題はさらに大きい。
【0007】
米国特許第10497598B2号は、セラミック構造要素と、セラミック構造要素上に配置された少なくとも1つの電極と、少なくとも1つの電極上に配置された表面誘電体層とを備える静電チャックを開示している。表面誘電体層は、少なくとも1つの電極上に直接配置された5ミクロン未満の厚さの非晶質アルミナの絶縁層と、酸窒化アルミニウムを含む少なくとも1つの誘電体層と少なくとも1つの酸化ケイ素及び酸窒化ケイ素を含む少なくとも1つの誘電体層とを含む、絶縁体の上に配置された誘電体層のスタックとを含む。
【0008】
米国特許第9761417B2号は、保護するために基板上に直接重なり、約1ミクロン~約10ミクロンの厚さを有するAlONのプラズマ耐性層と、AlON層に隣接して重なり、また約1ミクロン~約10ミクロンの厚さであるイットリアコーティングの最外プラズマ耐性層とで作られた2層コーティングを開示している。保護用のプラズマ耐性層は、半導体製造系内の構成要素である基板上に直接堆積され、石英、アルミナ、アルミニウム、鋼、金属又は合金とすることができる。AlON層とイットリア層の両方を基板上に堆積させて、パルス反応性物理蒸着による半導体製造中のプラズマ照射からそれを保護する。
【0009】
米国特許第10020218B2号は、埋め込み電極を含むAlN又はAlで作られたセラミック体と、セラミック体の表面に直接堆積された第1のセラミックコーティングと、第1のセラミックコーティング上の第2のセラミックコーティングであって、Al、AlN、Y、YAl12(YAG)及びAlONからなる群からの材料を含み、約5~30μmの厚さを有する第2のセラミックコーティングと、約0.5~2.0mmの直径及び約2~20ミクロンの厚さを有する、第2のセラミックコーティング上の複数の楕円形メサとを含む、静電チャックを開示している。
【0010】
米国特許第8206829B2号は、プラズマ耐性コーティング、及び静電チャックなどのプラズマチャンバ構成要素上にそのようなコーティングを形成する方法であって、プラズマ耐性コーティングが、基板に対して非ネイティブであり、イットリウム、イリジウム(Ir)、ロジウム(Rh)又はランタノイド、例えばエルビウム(Er)の酸化物、窒化物、ホウ化物、炭化物又はハロゲン化物の少なくとも1つを含むように形成された結晶性セラミックを含み、多孔度が1%を下回る、方法を開示している。プラズマ耐性コーティングは、基板とプラズマ耐性コーティングとの間に配置された介在層を介して基板の少なくとも一部の上に堆積され、介在層は、プラズマ耐性コーティング中の主構成成分以外の元素の酸化物、窒化物又は炭化物を含む。
【0011】
米国特許第9633884B2号は、プラズマ強化物理蒸着によって堆積されたY/Al又はYF/Alの混合物からなるプラズマ加工チャンバ用の静電チャックアセンブリを被覆するプラズマ耐性コーティングを開示している。著者らは、保護するためのEチャックと、Y及びAlの少なくとも1つを含み、標準プラズマ溶射を使用して形成されたプラズマ耐性コーティングとの間に設けられたアンダーコート層も開示している。
【0012】
米国特許第7732056B2号明細書は、アルミニウム構成要素の表面を陽極酸化して、陽極酸化された酸化アルミニウム層と、陽極酸化された酸化アルミニウム層上に直接堆積された酸化アルミニウムを含むスパッタ層とを形成することを含む、アルミニウム構成要素の表面にプラズマ耐性コーティングを提供する方法を開示している。
【0013】
米国特許出願公開第20190067069A1号は、セラミックベースの電極と、表面層とを備える静電チャックであって、表面層が複数の突起を備え、突起が、その形態が柱状又は粒状である組成物を含む、静電チャックを開示している。突起を形成する材料は、物理的に堆積された酸窒化アルミニウム(AlON)で完全に作ることができ、又はアルミナのような下にあるセラミックの上にある酸窒化アルミニウムのコーティングであり得る。突起に使用できる材料の他の例としては、イットリア(Y)、イットリウムアルミニウムガーネット(YAG)、アルミナ(Al)又は酸窒化アルミニウムを挙げることができる。
【0014】
上記のすべての特許は、ベースセラミックの表面上への機能性セラミック薄膜の直接堆積に基づく解決策を開示している。したがって、Eチャックの信頼性及び性能は、セラミック層の弾性に本質的に関連して、ベースセラミック構成要素に良好に接着する。しかし、セラミックコーティングは、それらの脆性機械的挙動のために、機械的誘導中に容易に割れやすいことが周知である。弱く不安定なコーティングの完全性は、早期のコーティング破壊及び壊滅的な膜の層間剥離さえも生じ、Eチャックの寿命及び性能を妨げる可能性がある。
【0015】
米国特許第7077918号は、セラミック又は金属ワークピースからコーティングを剥離する方法を記載している。剥離を容易にするために、少なくとも第1のクロム及び含アルミニウムコートがワークピース上に直接適用される。このコート上には、その大きな細孔構造で知られているAlCrの窒化物で作られた機能性層が堆積される。次いで、過マンガン酸塩溶液を用いて剥離を行う。この溶液はAlCrの窒化物を攻撃しないが、その大きな細孔を介してAlCr層が予想通りに攻撃される。しかし、プラズマ・エッチング・プロセスと比較してより微細な細孔及びより良好な保護を有するセラミック層を使用することにより、セラミック層の下に位置する金属層を壊すことは予想されない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
本発明の目的
本発明の目的は、先行技術に関連する1以上の困難を緩和又は克服することである。特に、本発明の目的は、プラズマ・エッチング・プロセスにおいて高い表面抵抗を有し、必要に応じて容易かつ迅速に表面更新することができ、コーティング材料の選択に関して大きな柔軟性を与える、デバイスの生産方法及びデバイスを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明の説明
これらの問題を克服するために、半導体構成要素を製造するためのプラズマ・エッチング・チャンバ内で使用されるデバイスを生産する方法が発明されている。
【0018】
したがって、本発明の第1の態様では、半導体構成要素を製造するためのプラズマ・エッチング・チャンバ内で使用されるデバイスを生産する方法であって、
デバイスの基板を形成する本体を提供するステップと、
第1のコーティングを本体の表面に適用するステップであって、第1のコーティングが、金属コート体を形成するために、金属及び/又は金属合金薄膜コーティング層を含む、ステップと、
第2のコーティングを金属コート体上に適用するステップであって、第2のコーティングがセラミックコーティング層を含み、第2のコーティングが第1のコーティングと少なくとも部分的に重なる、ステップと、を含む方法。
【0019】
これにより、デバイスは、好ましくは静電チャックとして設計され得る。さらに、第1及び/又は第2のコーティングは、デバイスの本体の表面に少なくとも部分的に適用され得る。第2のコーティングが第1のコーティングと少なくとも部分的に重なるという用語は、好ましくは、第2のコーティングが、第1のコーティングと第2のコーティングとの間の直接的な連結並びに間接的な連結を含む第1のコーティング上に少なくとも部分的に適用され得るという点で理解され得る。
【0020】
第1の態様の別の例では、方法は、本体を製造することを含み得て、製造は、好ましくは本体の表面を研磨及び洗浄することによって、本体をアンコーティングすることを含み得て、特に、表面を洗浄及び/又は活性化するためにプラズマ法及び/又はイオン衝撃が使用され得る。代替的又は累積的に、製造は、本体をアルカリ性又は酸化性物質で処理して、本体の表面から既存のコーティングを溶解させることを含み得る。
【0021】
第1の態様の別の例では、金属構成要素及びセラミック構成要素を含む介在コーティングが第1のコーティングと第2のコーティングとの間に適用され得て、介在コーティングは、好ましくは、第1のコーティングとの界面においてより多い量の金属化合物から開始して、第2のコーティングとの界面においてより少ない量の金属化合物で終了する、金属構成要素の勾配を介在コーティング内で生成するために、金属構成要素の添加を連続的に減少させながら、セラミック構成要素を形成する反応性ガスの制御されたフィードを使用することによって適用され得て、特に、セラミック構成要素を形成する反応性ガスのフィード及び/又は金属化合物の添加は、少なくとも部分的に段階的に及び/又は少なくとも部分的に連続的に変量され得る。言い換えれば、原子組成は、第1の層との界面付近の少なくともほぼ金属性から、第2のコーティングとの界面付近の少なくともほぼセラミックまで、深さとともに変化し得て、このような変化は、少なくとも部分的に段階的で、及び/又は少なくとも部分的に連続的であり得て、それにより勾配が形成される。
【0022】
したがって、本発明では、本発明の問題を解決するために、専用のベース又は介在層を使用する特別なコーティングアーキテクチャが提案される。この中間層の性質は、湿式化学法による効率的な脱コーティングを可能にするように選択される。湿式化学法の例は、すなわちアルカリ溶液又は酸化溶液を含み得る。溶液は中間層を溶解又は酸化し、エッチング耐性層の「リフトオフ」、すなわち除去をもたらす。
【0023】
中間層は、構成要素の表面へのエッチング耐性層の接着を促進する機能も有する。
したがって、本明細書では、Eチャック用の異なる基板材料に対する真空蒸着セラミックコーティングの接着強度を高める方法も開示される。これらの材料は、アルミニウム、ステンレス鋼、並びにAl、石英、Al/AlON及びALNなどの様々な種類のセラミックを含み得る。本発明によれば、これは薄い純金属層を堆積し、続いての純金属相からセラミック相コーティングへの漸進的遷移によって行われ得る。接着性の向上による最上機能性層は、攻撃的な用途のためのより堅牢な表面を提供することができ、次いでそのような中間層構造を有さない、より弱い結合の均質膜を提供することができる。
【0024】
本発明の目的は、それによって基材への均質セラミック膜の改修の際の不十分な接着及び容易な脱コーティングの問題を解決することである。接着強度を改善し、機能性エッチング耐性コーティングの脱コーティングを容易にするために、均質セラミック層が堆積される前の金属薄膜層又は層系の使用が提案される。
【0025】
好ましい実施形態によれば、金属ベースコーティングからセラミックベースコーティングへの漸進的遷移が実現され得る。堆積方法に応じて、プロセス安定性及び再現性もまた、金属ベースコーティングからセラミックベースコーティングへのこの漸進的遷移によって改善される。プロセス条件の急激な変化の代わりに、低速の遷移を用いて、コーティングがより構造的に堅牢かつ再現性にされ得る。
【0026】
驚くべきことに、Eチャックに使用されるような非常に緻密なセラミック層であっても、介在金属層によって剥離方法が容易になることが分かった。1つの考えられる説明は、セラミック層が、プラズマが進入できないほど十分に小さいが、剥離溶液が下にある金属ベースコーティングに進入してこれを攻撃するのに十分に大きい細孔を含み得ることであり得る。
【0027】
この説明に基づいて、本発明の好ましい実施形態によれば、デバイスの本体上の金属コーティングへの剥離剤の接触をさらに改善するために、エッチングチャンバ内で使用されるデバイスを形成する本体は、マイクロ構造化及び/又はナノ構造化され得る。これはアンコートされた本体を構造化することによって行われ得る。次いで、薄膜コーティングの上層は、ある範囲まで又はある量までのみ、構造の下部エリアと接触する。
【0028】
他方で、溶媒剤が本体の溝に容易に進入し得る場合、それによって金属コーティングを効果的に溶解させ、その結果、リフトオフ効果が起こり、セラミック層も除去される。
【0029】
これに基づいて、第1の態様のさらなる例では、方法は、デバイスをマイクロ及び/又はナノ構造化するステップであって、マイクロ及び/又はナノ構造化によって導入される構造が、好ましくは、特にデバイスの本体に導入され得る格子構造の形態で作られる、ステップを含み得る。
【0030】
ちょうど説明したように(及び上掲の例に限定されない)、この接着層構造を使用することにより、構成要素レベルの改修のためのコーティング除去の容易さがより容易にされる。化学的剥離法を使用して、金属ベース層の化学的攻撃によりセラミックコーティングをかなり容易に除去することができる。これはセラミック膜のアンダーカットによって簡単に作用し、基板表面からの膜脱離をもたらす。金属層を有さない均質セラミックコーティングの場合、化学物質が攻撃するそのような層はない。したがって、これらのタイプのコーティングの剥離ははるかに困難である。
【0031】
この改善された剥離が適用され得る1つの特定のエリアは、堆積されたセラミックコーティングをハード・シャドウ・マスキングから除去することである。例えば、このマスキングが静電チャック上にフィーチャを堆積させるために使用されている場合、マスキングは定期的に洗浄する必要がある。マスクのこの日常的剥離は、コーティング中の粒子につながる可能性がある、厚いコーティングの蓄積からの考えられるフレーキングを防止するために必要である。マスキングがAlのようなセラミック材料である場合、金属層の使用によって、マスクの剥離がより効率的かつ反復可能となる。
【0032】
正確で目標とする層の蓄積を確実にするために、真空コーティング法を使用して第1のコーティング及び/又は第2のコーティング及び/又は介在コーティングが適用され得て、好ましくはCVD又はPVD技術、特にマグネトロンスパッタリング技術が使用され得る。
【0033】
層の蓄積に関して、第1のコーティングとして、純金属層及び/又は純金属合金を本体の表面に適用され得て、金属層及び/又は金属合金は、以下の金属:Al、V、Ti、Hf、Y、Er、Sc、Ce、Laのうちの少なくとも1つを含み得る。
【0034】
さらに、第2のコーティングとしての層の蓄積に関して、純セラミック層が本体の表面に適用され得て、セラミック層は、好ましくは以下の:酸化物、窒化物、酸窒化物、ケイ酸塩、フッ化物、炭化物、酸フッ化物のうちの少なくとも1つを含み得て、特にセラミックを形成するための反応性ガスは、ゆっくりと供給され、ランピングされ得る。
【0035】
本発明の第2の態様では、好ましくは先行する請求項のいずれか1項に記載の方法によって生産される、半導体構成要素を製造するためのプラズマ・エッチング・チャンバ内で使用されるデバイスであって、デバイスの基板を形成する本体と、本体の表面に適用されている第1のコーティングであって、金属及び/又は金属合金薄膜コーティング層を含む第1のコーティングと、金属コート体上の第2のコーティングであって、第2のコーティングがセラミックコーティング層を含み、第1のコーティングと少なくとも部分的に重なる、第2のコーティングとを含む、デバイスが開示される。デバイスの基板を形成する本体は、アルミニウム、ステンレス鋼、及び/又はAl、石英、Al/AlON若しくはALNのような様々な種類のセラミックを含み得る。
【0036】
第2の態様の別の例では、デバイスは、第1のコーティングと第2のコーティングとの間に位置する介在コーティングをさらに含み得て、介在コーティングは、好ましくは層内に不均一に分布され得る金属構成要素及びセラミック構成要素を含む。
【0037】
介在コーティングに関して、介在コーティング内の金属部分は、介在コーティングと第1のコーティングとの間の界面から開始して、介在コーティングと第2のコーティングとの間の界面まで連続的に減少し得て、同時に、層内のセラミック部分は、介在コーティングと第1のコーティングとの間の界面から開始して、介在コーティングと第2のコーティングとの間の界面まで連続的に増加し得て、金属構成要素とセラミック構成要素の比は、好ましくは、少なくとも部分的に段階的に及び/又は少なくとも連続的に変化し得る。
【0038】
容易かつ迅速に表面更新される能力と組み合わされたプラズマ・エッチング・プロセスにおける高い表面抵抗を保証するために、第2のコーティング及び与えられた場合には介在コーティングは細孔を含み得て、細孔は好ましくは細孔入口及び細孔出口で異なる細孔直径を有し得て、第2のコーティングに隣接する細孔入口における細孔の直径は、第1のコーティングに隣接する細孔出口での直径より特に小さくてもよい。
【0039】
特に、デバイスの細孔を含むコーティングは、プラズマ・エッチング・プロセスにおけるプラズマが第2のコーティングに進入できないように設計され得るが、コーティングは、特に、剥離剤がコーティングに進入できるようにするのに、及び第1のコーティングを溶解できるようにするのに細孔が十分な大きさであるように設計され得る。
【0040】
第2の態様のさらなる例では、デバイスは、マイクロ及び/又はナノ構造化部品を含み得て、マイクロ及び/又はナノ構造化部品は、好ましくは、特にデバイスの本体に導入されるグリッド構造の形態であり得る。
【0041】
マイクロ及び/又はナノ構造化部品に関して、グリッド構造は、突起及び2つの隣り合う突起の間に配置された開口を含み得て、開口は、好ましくは、第2のコーティングに隣接する2つの隣り合う突起の間に配置された狭窄部を含み得て、開口の直径は、特に、狭窄部から開口内のグリッドの底部まで連続的に増大し得る。
【0042】
これにより、セラミック最上層は、好ましくは、開口内のグリッドの底部まで延在し得ず、グリッドの底部は、金属コーティングでのみコーティングされ得る。
【0043】
層の蓄積に関して、第1のコーティングは、好ましくは以下の金属:Al、V、Ti、Hf Y、Er、Sc、Ce、Laのうちの少なくとも1つを含む、純金属及び/又は金属合金薄膜であり得る。
【0044】
層の蓄積に関して、第2のコーティングは、好ましくは以下の:酸化物、窒化物、酸窒化物、ケイ酸塩、フッ化物、炭化物、酸フッ化物のうちの少なくとも1つを含む、純セラミック層であり得る。
【0045】
これにより、マイクロ及び/又はナノ構造化部品は、周期的グリッド構造の形態で設計され得て、2つの隣接する突起間の距離は、好ましくは少なくとも幅200nm、特に少なくとも幅400nmであり得る。特に好ましい実施形態によれば、2つの隣接する突起間の距離は、幅500nm超でもあり得る。
【0046】
第2の態様の別の例では、デバイスは、その表面に沿って不均一にコーティングされ得て、第1及び/又は第2のコーティング及び/又は介在コーティングの層厚は、表面のいくつかの点において、他の点におけるよりも薄くてもよい。
【0047】
好ましくは、グリッド構造を有するデバイスの一実施形態では、コーティング(第1及び/又は第2のコーティング及び/又は介在コーティング)は、その表面に沿って不均一に分布し得て、コーティング(第1及び/又は第2のコーティング及び/又は介在コーティング)は、好ましくは、突起のグリッドの上側で開口内の底部の領域のコーティングよりも厚い。
【0048】
好ましい実施形態によれば、デバイスは、静電チャック又はハード・シャドウ・マスキング・デバイスであり得る。
【0049】
本発明は、静電チャックで使用することができるが、本発明の概念は、半導体加工産業内及びまた他の産業内の両方でより広い適用性を有することを意図している。
【0050】
金属接着促進層、続いて均質セラミック層への遷移層を利用すると、最良の接着結果が得られることが見出された。この層構造は、必要に応じてコーティングの化学的剥離の容易さも改善する。
【0051】
次に本発明を、実施例に基づいて、図面を用いてより詳細に説明する。
図面の説明
【図面の簡単な説明】
【0052】
図1】現在の到達技術水準の解決策の断面図である。 (1)基板 (2)セラミックベース単層
図2】本発明の一実施形態の断面図を示し、フィルムスタックを生成するために作った層を示す。 (1)基板 (2)純金属層 (3)遷移層(純金属からセラミックへ) (4)セラミックベース層
図3】基板上に直接コーティングされたALON単層コーティングのスクラッチ試験を示す。基板材料はAlであり、コーティング厚は約21μmである。試験で明らかになったように、Lc破壊は34N負荷で検出される。
図4】本発明の一実施形態による、純アルミニウム接着層を有するコーティング及びALON機能性層に対する遷移のスクラッチ試験を示す。基板材料はAlであり、コーティング厚は約23μmである。試験で明らかになったように、Lc破壊は50N負荷で検出される。
図5】デバイスの本体に導入されたコーティングされた周期的矩形格子構造の一例を示す。
図6】剥離前のAl基板上に直接コーティングされたAlON膜を有するサンプルを示す。
図7】剥離後の図6によるAlON膜を有するサンプルを示す。
図8】剥離前に基板上に直接コーティングされた金属中間層上にコーティングされたAlON膜を有するサンプルを示す。
図9】剥離後の図8による金属中間層上にコーティングされたAlON膜を有するサンプルを示す。
【発明を実施するための形態】
【0053】
本発明の解決の詳細な説明
セラミックコーティングのための改善された接着層構造を生成するために、真空蒸着源を使用して、純金属層をEチャックの清浄な基板表面上に堆積させる。コーティングは、酸化物、窒化物、ホウ化物、炭化物、酸フッ化物並びにAl、V Ti Zr、Hf Y、Er、Sc、Ce、La及びAlONなどの材料のクラスを含むことができるが、これらに限定されない。基板表面は、金属の堆積前にプラズマ洗浄又はイオン衝撃によって洗浄又は活性化することができる。ある厚さの純金属層が堆積された後、反応性ガス(例えばO及び/又はN及び/又はフッ素含有ガス)がゆっくりと導入され、完全に化学量論的なセラミックコーティングが実現されるまで数分間の期間にわたってランピングさせる。この時点で、堆積は、機能性層が堆積されるしばらくの間継続させておく。
【0054】
より詳細な例を以下に示す。
実施例
この実施例の場合、ALON(酸窒化アルミニウム)コーティングをマグネトロン反応性スパッタリングを使用して堆積させた。金属ベース接着層及び遷移は、機能性ALONが堆積される前に生成された。以下のステップを行って、このフィルムを生成した:
1.Eチャックの研磨(4μm Ra)酸化アルミニウム表面を溶媒洗浄し、Eチャックをステンレス鋼蒸着系内の2軸回転遊星系に装填した。
【0055】
2.チャンバを低10E-05mbar範囲まで排気した。
3.DCフィラメント放電及びパルスDC基板バイアスを使用して、基板のアルゴン・プラズマ・エッチングを7分間行った。
【0056】
4.次いで、動作圧力を4.5E-3mbarに調整し、アルゴン流を180sccmに調節するとともに、ターボポンプ速度を調節した。
【0057】
5.次いで、パルスDC電力を、50%電力設定で開始し、次いで1分間で6kWまでランピングさせて、平衡化直径8インチ円形平面アルミニウムターゲット(純度99%)に供給した。
【0058】
6.純アルミニウム接着層を形成するために、6kWでのスパッタリングを10分間の継続時間にわたって続けた。
【0059】
7.次に、スパッタリングターゲットの動作カソード電圧は、純金属モードで約565Vであることを確認した。
【0060】
8.次いで、反応性ガスO及びNの閉ループ制御を使用し、放電電圧調節デバイスによる反応プロセスの制御を使用して、純アルミニウムから酸窒化アルミニウムへの遷移を生成した。このデバイスのソフトウェア制御によって、ユーザが反応性ガスのマスター/スレーブ制御を利用しながらランピング機能をプログラミングできるようになる。この場合、Nチャネルはマスターであり、Oはスレーブである。OのNに対する比は、3.5:6.5とした。次いで、カソード電圧が565V(純金属膜)から400V(完全酸窒化膜)の最終設定点まで着実に低下するように、反応性ガスを20分間にわたってこの設定比にてゆっくりとランピングさせる。この時点で、O/N比はなお固定され、堆積の継続時間中にスパッタリングカソード上の400V動作設定点を維持するために、調節デバイスにより、ガス流のわずかな調整が達成される。
【0061】
9.次いで、コーティングの機能性最上層が所望の厚さに達するまで、条件を一定に保持する。
【0062】
得られたコーティングは、厚さ約8ミクロンの純アルミニウム層、厚さ約8ミクロンの遷移勾配層、及び約21ミクロンの機能性最上層からなっていた。半径200μの円錐形ダイヤモンド・チップ・スクラッチ試験機を使用して、2つのコーティング間で接着強度を比較した。Lc2接着破壊が達成されるまで、長さ3mmのスクラッチを2N荷重増分で行った(図3図4)。接着層のない同じ条件下で堆積された単層ALONコーティングと比較して、この中間層構造の使用により接着値が実質的に改善された。
【0063】
純金属層は、基板材料に対する上層の結合を改善する。金属からセラミック層への遷移は、金属層と上機能性層との間の良好な結合を提供する。遷移層は、より軟質の純金属層とより硬質の機能性層との間にある硬度及びヤング率を有する介在層として作用する。この構造は、機能性層上で生じ得る任意の力又は応力により良好に耐えることができるより堅牢なコーティングを提供する。
【0064】
図5は、デバイスの本体101に導入されたコーティングされた周期的矩形格子構造の一例を示す。図5から分かるように、構造化本体101は、周期的矩形格子構造(格子周期500nm、充填率0.5)を備える。本体は、金属コーティング103でコーティングされている。aufシャドウイングが影響を及ぼすため、格子の上部のコーティング厚さは、溝のエリアの金属コーティングと比較してより厚い。図5が示すように、格子の開口部は、コーティングのために狭くなっている。これは、セラミックオーバーコート105(×エリアとして図5に示す)が溝の底に到達していないという効果を有する。事実上、図5においてhとして表す深さ領域には、金属コーティングのみが存在する。溝への開口部は「d」まで狭められる。これにより、エッチングプラズマの溝への進入が防止され、セラミックコーティング105はデバイスを完全に保護する。追加の効果として、構造化により、構造化本体101に対するコーティングの接着性が向上する。
【0065】
コーティングの化学的除去もまた、先行技術に含まれる均質型セラミックフィルムと比較して容易である。これは主に、剥離化学物質がコーティングを介して金属接着層を攻撃し、したがってコーティングの脱離を生じる能力のためである。
【0066】
金属中間層の適用時の剥離のプラスの効果を実証するために、2つのAl基板を円形状AlONセラミック膜でコーティングした。一方の基板上に厚いAlONセラミック膜をセラミック基材Al上に直接堆積させたのに対し、他方の試料上には、金属層を最初に試料上に堆積させ、続いて遷移勾配層を堆積させ、前述のように、最後に厚いセラミックAlON膜を堆積させた。
【0067】
コーティングの堆積後、10%NaOHアルカリ溶液を用いてセラミック膜の剥離を室温にて90分間試みた。図6は、剥離前の基板上にAlON膜が直接適用されたサンプルを示し、図7は、剥離後のサンプルを示す。図7から分かるように、円形セラミック膜は攻撃されるが、完全には除去されない。図8は、金属中間層上にAlON膜がコーティングされたサンプルを示し、図9は、剥離後のサンプルを示す。分かるように、円形セラミック膜は完全に除去されている。非常に興味深いことに、剥離後の新たにアンコートされたAl基板の表面に損傷(孔食、亀裂)は認められなかった。
【0068】
他の溶液を剥離に使用することができる。例えば、KOH溶液も良好に作用することが予想される。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
【国際調査報告】