(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-12-13
(54)【発明の名称】水性ワックス分散物を含むビチューメン用添加剤ならびに発泡ビチューメンを得るその使用
(51)【国際特許分類】
C08L 91/06 20060101AFI20231206BHJP
C08L 21/00 20060101ALI20231206BHJP
C08K 5/05 20060101ALI20231206BHJP
E01C 7/18 20060101ALI20231206BHJP
【FI】
C08L91/06
C08L21/00
C08K5/05
E01C7/18
【審査請求】未請求
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2023520434
(86)(22)【出願日】2021-11-02
(85)【翻訳文提出日】2023-06-02
(86)【国際出願番号】 EP2021080417
(87)【国際公開番号】W WO2022090577
(87)【国際公開日】2022-05-05
(32)【優先日】2020-11-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】501186162
【氏名又は名称】サゾル ジャーマニー ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】110001461
【氏名又は名称】弁理士法人きさ特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】ボッツ,トーステン
(72)【発明者】
【氏名】グロース-マティー,ズザン
(72)【発明者】
【氏名】エルカース カーステン
(72)【発明者】
【氏名】ジョーンズ,ベン
【テーマコード(参考)】
2D051
4J002
【Fターム(参考)】
2D051AG01
2D051AG15
2D051AH03
4J002AC00X
4J002AC06X
4J002AC07X
4J002AC08X
4J002AC09X
4J002AE03W
4J002BP01X
4J002EC017
4J002ED036
4J002EF027
4J002EF057
4J002EN027
4J002EN036
4J002EN107
4J002FD206
4J002FD316
4J002GL00
4J002GT00
4J002HA07
(57)【要約】
本発明は、水中に分散されたワックスであって、水は連続相中にあり、ワックスは分散相中にあり;フィッシャー-トロプシュワックスと、石油系ワックス、ポリオレフィンワックスまたはそれらの混合物を含む群から選ばれた1種類以上の炭化水素ワックスを含むワックスと;乳化剤と、を含むビチューメン用添加剤に関する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水中に分散されたワックスであって、前記水は連続相中にあり、前記ワックスは分散相中にあり;
フィッシャー-トロプシュワックスと、石油系ワックス、ポリオレフィンワックスおよびそれらの混合物の群から選ばれた1種類以上の炭化水素ワックスとを含むワックスと;
乳化剤と、
を含むビチューメン用添加剤。
【請求項2】
前記ビチューメン用添加剤は、αオレフィン、脂肪酸、脂肪族アルコール、脂肪酸のエステル、アミドワックス、またはそれらの混合物をさらに含む、請求項1に記載のビチューメン用添加剤。
【請求項3】
前記ビチューメン用添加剤は、前記ビチューメン用添加剤の総質量を基準として5重量%~95重量%の前記ワックス、好ましくは30重量%~70重量%の前記ワックスを含む、請求項1または請求項2に記載のビチューメン用添加剤。
【請求項4】
前記ビチューメン用添加剤は、前記ビチューメン用添加剤の総質量を基準として、0.2重量%~10重量%の前記乳化剤、好ましくは1重量%~6重量%の前記乳化剤を含む、請求項1~3の何れか一項に記載のビチューメン用添加剤。
【請求項5】
前記ビチューメン用添加剤は、エラストマー、前記ビチューメン用添加剤の総質量を基準として、好ましくは1重量%~70重量%の前記エラストマー、好ましくは20重量%~50重量%の前記エラストマーを含む、請求項1~4の何れか一項に記載のビチューメン用添加剤。
【請求項6】
前記乳化剤は、陰イオン乳化剤、陽イオン乳化剤、非イオン乳化剤、またはそれらの混合物である、請求項1~5の何れか一項に記載のビチューメン用添加剤。
【請求項7】
前記ワックスは、石油スラックワックスおよびフィッシャー-トロプシュワックスを含み、好ましくは、前記フィッシャー-トロプシュワックスと前記石油スラックワックスとの前記混合物の総質量に対してそれぞれ、
20重量%~80重量%の前記石油スラックワックスと;
20重量%~80重量%の前記フィッシャー-トロプシュワックスと、
を含む、請求項1~6の何れか一項に記載のビチューメン用添加剤。
【請求項8】
前記フィッシャー-トロプシュワックスは、以下の特性、
50℃以上、好ましくは60℃以上、より好ましくは70℃と110℃との間、もっとも好ましくは75℃と82℃との間のASTM D938による凝固点と;
5重量%未満、好ましくは2重量%未満のASTM D7211-06によるMEK-オイル含有量と;
3mm
2/秒~15mm
2秒、好ましくは5mm
2/秒~10mm
2/秒、より好ましくは7mm
2/秒~9mm
2/秒のASTM D7042-11による100℃における動粘度と;
30 1/10mm未満、好ましくは10 1/10mm未満のASTM D1321による25℃における針入度と;
80重量%超のn-アルカン含有量と、
を有する、請求項1~7の何れか一項に記載のビチューメン用添加剤。
【請求項9】
前記石油スラックワックスは、以下の特性、
65℃未満のASTM D938による凝固点と;
5重量%超、好ましくは15重量%超のASTM D7211-06によるMEK-オイル含有量と;
3.5mm
2/秒~10mm
2/秒、好ましくは5mm
2/秒~10mm
2/秒、より好ましくは6mm
2/秒~8mm
2/秒のASTM D7042-11による100℃における動粘度と;
50 1/10mm超のASTM D1321による25℃における針入度と;
70重量%未満、好ましくは40重量%未満のn-アルカン含有量と、
を有する、請求項1~8の何れか一項に記載のビチューメン用添加剤。
【請求項10】
発泡ビチューメン組成物を製造する方法であって、ビチューメン発泡装置中の原料ビチューメンに請求項1~9の何れか一項に記載のビチューメン用添加剤を加え、それによって前記発泡ビチューメンを製造するステップを含む方法。
【請求項11】
前記ビチューメン用添加剤は、前記原料ビチューメンの総質量を基準として0.1重量%~10重量%、好ましくは2重量%~6重量%の量で前記原料ビチューメンに加えられる、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
アスファルトミックスを製造する方法であって、アスファルトミキサー中の骨材に原料ビチューメンと請求項1~9の何れか一項に記載のビチューメン用添加剤とを加え、それによって前記アスファルトミックスを製造するステップを含む方法。
【請求項13】
前記原料ビチューメンは、
a.前記ビチューメン用添加剤を前記骨材に加える前に前記骨材に加えられるか;または
b.前記ビチューメン用添加剤を前記骨材に加えた後に前記骨材に加えられるか;または
c.前記ビチューメン用添加剤を前記骨材に加えると同時に前記骨材に加えられる、
請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記原料ビチューメンは、前記原料ビチューメンが前記アスファルトミキサー中で前記ビチューメン用添加剤と接触すると発泡する、請求項12または13に記載の方法。
【請求項15】
前記ビチューメン用添加剤は、ビチューメン発泡装置中で前記原料ビチューメンに加えられ、それによって発泡ビチューメン組成物を形成し、前記発泡ビチューメン組成物は、次に前記アスファルトミキサー中で前記骨材に加えられる、請求項12~14の何れか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記発泡ビチューメンは、請求項11~13の何れか一項によって製造される、請求項12~15の何れか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記アスファルトミックスは、ウォームミックスアスファルトである、請求項12~16の何れか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記骨材は、リサイクルアスファルト舗装材または再生アスファルト舗装材(RAP)を含む、請求項12~17の何れか一項に記載の方法。
【請求項19】
請求項10または請求項11に従って取得可能な発泡ビチューメン組成物。
【請求項20】
請求項12~18の何れか一項に記載の方法によって取得可能なアスファルトミックス。
【請求項21】
アスファルトミックス、好ましくはウォームミックスアスファルトを製造するための、請求項10または請求項11に記載の方法によって入手可能な発泡ビチューメン組成物の使用。
【請求項22】
ビチューメン組成物、好ましくは発泡ビチューメン組成物を製造するための、請求項1~9の何れか一項に記載のビチューメン用添加剤の使用。
【請求項23】
請求項12~18の何れか一項に記載の方法によって入手可能なアスファルトミックスの、舗装材のための使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ビチューメン用添加剤と、ビチューメン組成物と、発泡ビチューメンを製造する方法と、アスファルトミックスを製造する方法と、前記方法におけるビチューメン用添加剤の使用と、に関する。
【背景技術】
【0002】
ビチューメンは、粘弾的な特性を有する天然に得られる有機化合物の混合物である。ビチューメンは、典型的には原油の真空蒸留から得られ、非極性溶媒中に多量に溶解可能である粘着性の不揮発性物質である。
【0003】
ビチューメンは、建築用途、例えば屋根用コーティング、ビチューメンブランク等において広く用いられるが、ビチューメンにとってもっとも重要な用途の1つは、道路舗装材向けアスファルト中の石骨材用バインダーとしての使用である。
【0004】
ビチューメン系アスファルト製品の性能を向上させるために、多くの場合、フィラー(例えば消石灰、セメント、カーボンブラック)、増量剤(例えば硫黄、リグニン)、ゴム、エラストマー型ポリマー、プラストマー型ポリマー、樹脂、繊維(例えばロックウール、セルロース)、酸化防止剤、炭化水素、再生剤(rejuvenators)、ストリッピング防止剤、オルガノシラン、界面活性剤および廃棄材料(例えば再生アスファルト舗装材(reclaimed asphalt pavement)(RAP))のような種々の添加剤または調整剤が用いられている。
【0005】
ワックスは、一般に、アスファルトミックスおよび道路舗装材の耐久性を向上させる助けとなるので、ビチューメン用の適当な添加剤として公知である。種々の温度におけるビチューメンの粘度などの様々な特性を調整するために、パラフィンワックス、フィッシャー-トロプシュワックスおよびワックス混合物などの炭化水素ワックスが用いられてきた。
【0006】
ワックスは、一般に、40℃を超える滴融点を有し、わずかな圧力で磨くことができ、20℃において捏和可能であるかまたは硬質~脆弱および透明~不透明であり、40℃を超えると分解せずに融解し、典型的には50℃と90℃の間、例外的な事例では最高200℃で融解し、ペーストまたはゲルを形成し、熱および電気の不良導体である化学組成物と定義される。
【0007】
ワックスは、様々な基準によって、例えば起源によって分類することができる。起源によれば、ワックスは、2つの主な群である天然ワックスと合成ワックスとに分けることができる。天然ワックスは、さらに化石ワックス(例えば石油ワックス)と非化石ワックス(例えば動物ワックスおよび植物ワックス)とに分類することができる。石油ワックスは、巨大結晶ワックス(パラフィンワックス)と微結晶ワックス(マイクロワックス)とに分類することができる。合成ワックスは、部分合成ワックス(例えばアミドワックス)と全合成ワックス(例えばポリオレフィンワックスまたはフィッシャー-トロプシュワックス)とに分類することができる。
【0008】
パラフィンワックスは、例えば原油の真空蒸留を起源とするものであってよく、透明、無臭であり食品接触用に精製することができる。パラフィンワックスは、主としてある範囲のn-アルカンを含有するが、イソアルカンおよびいくつかのシクロアルカンも含有する。元の石油系すなわち原油系ワックス(石油スラックワックス)は、短鎖かつ高分岐のアルカン(「オイル」)を大量に含み、前記ワックスが脱オイルされるとき除去することができる。脱オイルによって種々の分布および品質のパラフィンワックスを得ることができる。石油スラックワックスとは、5%~30%の範囲のオイル含有量を有するパラフィンワックスである。石油スラックワックスは、例えば蒸留、脱色および水素化処理によってさらに精製されて石油系精製ワックスとされることがある。
【0009】
マイクロワックスは、例えば、石油真空蒸留残留物の脱アスファルト、脱芳香族および脱オイルを起源としてよく、分岐アルカンおよび環状アルカンを多く含み、一般に50%未満のn-アルカンを含有する。
【0010】
合成フィッシャー-トロプシュワックスは、合成ガス(COおよびH2)からアルカンへの触媒フィッシャー-トロプシュ合成を起源とする。この合成ルートは、直鎖炭化水素と、メチル分岐を有する直鎖炭化水素と、を含み、好ましくは環状炭化水素を含まない、炭化水素の混合物に至る。石油系パラフィンワックスとフィッシャー-トロプシュワックスとの間には、例えば結晶化特性およびレオロジー挙動に関して異なる特性を有するものを生む結果となる差異がある。合成ワックスの別の供給源は、オレフィン系モノマーのオリゴマー化または重合とおそらくそれに続く水素化処理とから得られる炭化水素であるポリオレフィンワックスである。
【0011】
アスファルトミックスおよび道路舗装材は、品質および保全を確実にするために、国内および国際間の規制および標準に従って厳しく管理されている。最終製品としてのアスファルトミックスの性能を向上させることを目的とすることを別にすると、多くの規制および標準の1つの重要な推進力は、道路舗装工事時のビチューメン温度の低下である。温度が低くなれば道路舗装工事へのエネルギー投入量が減り、従って関連するカーボンフットプリントが減る。プロセス温度の120℃への低下でさえ消費エネルギーの25%の節減を生む結果となる。約100トン/時で稼働する典型的ホットミックス製造プラントの場合、この節減量は、時間あたり約130m3の天然ガス(または約130kgの燃料)の節減に置き換えられる(非特許文献1)。
【0012】
温度の低下は、ビチューメンヒューム(bitumen fume)および他の気体放出物を減らす。このことは、下記に示されるように工事従事者の健康を保護する。
ホットアスファルト混合物およびウォームアスファルト混合物の排出物測定
ホットアスファルト混合物(混合温度160~175℃)
ウォームアスファルト混合物(混合温度110~120℃
CO2(mg/m3) -25%
CO(mg/m3) -30%
NOx(mg/m3当量NO2) -25%
塵埃(mg/m3) -88%
(上記非特許文献1から)
【0013】
その結果、より低い温度で運転するウォームミックスアスファルト(warm mix asphalt)(WMA)プロセスを志向するグローバルな傾向が高まりつつある。
【0014】
よって、道路建設時により低いビチューメン温度が用いられることを可能にするビチューメン用添加剤が望まれよう。
【0015】
ビチューメン温度を低下させるための周知かつ非常に有効な一手段は、発泡によるものである。しかし、典型的にはビチューメンが発泡するときアスファルト品質が低下するので、この手段には不利な点がある。
【0016】
発泡ビチューメンは、従来法ではホットビチューメンに少量の水(例えばおよそ2~5重量%)を加えることによって製造される。ホットビチューメンに注入されると水は急激に蒸発し、飽和蒸気雰囲気中でのビチューメンの発泡を引き起こす。ビチューメンは、元の体積の20~30倍に膨張させることができる。
【0017】
ビチューメン発泡プロセスの強度および有効性は、発泡装置中の基本的な物理的条件、例えば圧力および温度を制御することによって向上させることができる。アスファルトミックス製造プラントまたは試験室プラントにおいてビチューメン発泡は、およそ180℃の温度および5バールゲージ(g)前後の圧力を有するホットビチューメン中に水が注入される膨張チャンバー中で行われる。こうして製造された発泡ビチューメンは、ノズルを通って膨張チャンバーから抜け出し、直ちに骨材と混合することができる。発泡ビチューメンは、次いでビチューメンで処理/被覆されて道路舗装用アスファルトを形成する。
【0018】
ビチューメンの発泡は、重要な物理的パラメータを変化させると同時にビチューメンのより大きな表面積を可能にし、骨材のビチューメンコーティングの向上をもたらす。発泡ビチューメンはまた、粘度を低下させ、骨材中により容易に分散する。重要な点として、発泡ビチューメンは、100℃をかなり下回る温度で取り扱うことができる。
【0019】
特許文献1は、ビチューメン発泡体を製造する方法に関する。この方法は、ビチューメンと前記ビチューメンに実質的に不溶性である液体とを含むエマルジョンの温度を上げるステップを含む。発泡ビチューメンを製造するためにエマルジョンは高圧環境から低圧環境に放出され、それによって前記エマルジョンは、低圧環境への放出後に発泡する。
【0020】
特許文献2は、残渣油、アスファルト油または分画油を含有する油相と、連続油相中に分散された界面活性剤を含有する水相と、を含む油中水タイプのアスファルト発泡剤に関する。
【0021】
特許文献3は、ホットビチューメンに、気体または液体キャリア中に細かく分散されたポリマービチューメンバインダーを加えるステップと、粒状添加剤を収容する混合用機械にこのブレンドを導入するステップと、によるビチューメンブレンドの製造に関する。好ましくは、液体キャリアとのポリマーの乳化物、懸濁物または分散物が形成され、この混合物は、次にホットビチューメンの流れに加えられ、その後にブレンドは、混合用機械に導入される。
【0022】
特許文献4は、鉱物ミックスに発泡アスファルトが加えられ、合成F-Tワックスが、好ましくは2.0~3.5%の量で液体アスファルトに加えられ、混合後に発泡し;続いて、100℃を超えないように加熱された鉱物ミックスと組み合わされることを特徴とする温度低下技術を用いるアスファルトコンクリートの製造のためのプロセスに関する。
【0023】
舗装材、例えば道路舗装材に適したアスファルト品質を維持する発泡ビチューメンは、有利であろう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0024】
【特許文献1】国際公開第2000/068302号(A1)
【特許文献2】中国特許出願公開第104861674号(A)
【特許文献3】ドイツ特許第3834950号(C1)
【特許文献4】ポーランド特許出願公開第398906号(A)
【非特許文献】
【0025】
【非特許文献1】L.グランプル(Grampre)、J.A.ゴンザレス・レオン(Gonazales Leon)、G.バレト(Barreto)、「化学添加剤法(chemical additivation)によるウォームアスファルト混合物:現場試験および試験室検討(Warm asphalt mixtures by chemical additivation:field tests and laboratory studies)4」、コングレス・ユーロアスファルト・アンド・ユーロビチューメン(Congress Eurasphalt & Eurobitumen)21.-23.2008年5月、コペンハーゲン)。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】TL Asphalt-StB 07/13によるアスファルトバインダーコースミックスAC16-B S骨材相対評価(grading)曲線を示す。
【発明を実施するための形態】
【0027】
ビチューメン用添加剤
本発明によれば、
水中に分散されたワックスであって、水は連続相中にあり、ワックスは室温で分散相中にあり;
フィッシャー-トロプシュワックスと、石油系ワックス、ポリオレフィンワックス、またはそれらの混合物を含む群から選ばれた1種類以上の炭化水素ワックスと、を含むワックスと;
乳化剤と、
を含むビチューメン用添加剤が提供される。
【0028】
石油系ワックスは、石油スラックワックス、精製された石油ワックス、精製されていない石油ワックス、またはそれらの混合物のことがある。好ましくは、石油系ワックスは、石油スラックワックスである。
【0029】
任意選択として、ビチューメン用添加剤は、αオレフィン、脂肪酸、脂肪族アルコール、脂肪酸のエステル、アミドワックス、またはそれらのあらゆる混合物をさらに含むことがある。
【0030】
ビチューメン用添加剤は、エラストマーを含むことがある。
【0031】
ビチューメン用添加剤は、ビチューメン用添加剤の総質量を基準として約5重量%~約95重量%のワックス、好ましくは約30重量%~約70重量%のワックスを含むことがある。
【0032】
ビチューメン用添加剤は、ビチューメン用添加剤の総質量を基準として約0.2重量%~約10重量%の乳化剤、好ましくは約1重量%~約6重量%の乳化剤を含むことがある。
【0033】
ビチューメン用添加剤は、ビチューメン用添加剤の総質量を基準として約1重量%~約70重量%のエラストマー、好ましくは約20重量%~約50重量%のエラストマーを含むことがある。
【0034】
好ましくは、ワックスは、フィッシャー-トロプシュワックスと石油スラックワックスとの混合物である。
【0035】
ワックスがフィッシャー-トロプシュワックスと石油スラックワックスとの混合物である場合、ワックスは、フィッシャー-トロプシュワックスと石油スラックワックスとの混合物の総質量に対してそれぞれ、
20重量%~80重量%の石油スラックワックスと;
20重量%~80重量%のフィッシャー-トロプシュワックスと、
を含むかまたはからなる。
【0036】
フィッシャー-トロプシュワックスは、以下の特性、
50℃以上、好ましくは60℃以上、より好ましくは70℃と110℃との間、もっとも好ましくは75℃と82℃との間のASTM D938による凝固点と;
5重量%未満、好ましくは2重量%未満のASTM D7211-06によるMEK-オイル含有量と;
3mm2/秒~15mm2秒、好ましくは5mm2/秒~10mm2/秒、より好ましくは7mm2/秒~9mm2/秒のASTM D7042-11による100℃における動粘度と;
30 1/10mm未満、好ましくは10 1/10mm未満のASTM D1321による25℃における針入度と;
80重量%超のn-アルカン含有量と、
を有することがある。
【0037】
石油スラックワックスは、以下の特性、
65℃未満のASTM D938による凝固点と;
5重量%超、好ましくは15重量%超のASTM D7211-06によるMEK-オイル含有量と;
3.5mm2/秒~10mm2/秒、好ましくは5mm2/秒~10mm2/秒、より好ましくは6mm2/秒~8mm2/秒のASTM D7042-11による100℃における動粘度と;
50 1/10mm超のASTM D1321による25℃における針入度と;
70重量%未満、好ましくは40重量%未満のn-アルカン含有量と、
を有することがある。
【0038】
乳化剤は、陰イオン乳化剤、陽イオン乳化剤、非イオン乳化剤、または何れかのそれらの混合物のことがある。陽イオン乳化剤が好ましい。好ましくは、乳化剤は、アミン系陽イオン乳化剤である。
【0039】
エラストマーは、スチレン-ブタジエンゴム(SBR)ポリマー、ブタジエン-アクリルニトリルポリマー、イソプレンポリマー、クロロプレンポリマー、スチレン-イソプレンポリマー、スチレン-エチレン/ブチレンポリマー、スチレン-ブタジエン-スチレン(SBS)ポリマー、ラテックス分散物、または何れかのそれらの混合物のことがある。
【0040】
スチレン-ブタジエンゴム(SBR)ポリマーは、水(水が連続相である)中のスチレン-ブタジエンゴム(SBR)ポリマー分散物の形で提供されることがある。スチレン-ブタジエン-スチレン(SBS)ポリマーは、水(水が連続相である)中のスチレン-ブタジエン-スチレン(SBS)ポリマー分散物の形で提供されることがある。
【0041】
発泡ビチューメン組成物を製造する方法
本発明の別の側面によれば、発泡ビチューメン組成物を製造する方法であって、
ビチューメン発泡装置中で原料ビチューメンに上記で定義されたビチューメン用添加剤を加え、それによって発泡ビチューメンを製造するステップ、
を含む方法が提供される。
【0042】
本明細書において「上記の」または「上記で定義された」が参照されるとき、これは、それより前に言及された好ましい実施形態を含むことを意味する。
【0043】
本方法は、バッチモードまたは連続モードで実施されることがある。
【0044】
発泡ビチューメンは、ランスまたはノズルを介してビチューメン発泡装置から放出されることがある。発泡ビチューメンは、骨材または骨材ミックスを被覆または処理し、それによって舗装材、例えば道路舗装材用のアスファルトまたはアスファルトミックスを製造するために用いられることがある。
【0045】
ビチューメン発泡装置中のビチューメンは、約100℃~約200℃の範囲の温度、好ましくは約120℃~約180℃の範囲の温度のことがある。
【0046】
ビチューメン発泡装置は、約2バールゲージ(g)~約10バール(g)の範囲の圧力、好ましくは約4バール(g)~約8バール(g)の範囲の圧力で運転されることがある。
【0047】
ビチューメン用添加剤は、原料ビチューメンの総質量を基準として約0.1重量%~約10重量%、好ましくは約2重量%~約6重量%の量で原料ビチューメンに加えられることがある。
【0048】
発泡ビチューメンは、原料ビチューメンの原料体積に対して約1.5倍~約50倍、好ましくは約2倍~約30倍の体積を有することがある。言い換えると、原料ビチューメンに対する発泡ビチューメンの体積膨張は、約1.5倍~約50倍、好ましくは約2倍~約30倍のことがある。
【0049】
発泡ビチューメンは、約4秒~約60秒、好ましくは約15秒~約40秒の発泡半減期を有することがある。有利な点として、本発明の方法によって製造された発泡ビチューメンは、典型的なアスファルトミックスバッチサイクルタイムと同様な発泡半減期を有する。
【0050】
アスファルトミックスを製造する方法
本明細書において、「アスファルト」または「アスファルトミックス」とは、鉱物骨材とビチューメンバインダーとの混合物を意味すると理解される。
【0051】
本発明の別の側面によれば、アスファルトミックスを製造する方法であって、
アスファルトミキサー中で骨材に原料ビチューメンと上記で定義されたビチューメン用添加剤とを加え、それによってアスファルトミックスを製造するステップ、
を含む方法が提供される。
【0052】
骨材は、リサイクルアスファルト舗装材または再生アスファルト舗装材(RAP)を含むか、またはリサイクルアスファルト舗装材または再生アスファルト舗装材(RAP)からなることがある。
【0053】
本方法は、バッチモードまたは連続モードで実行されることがある。
【0054】
アスファルトミキサーは、パグミルのことがある。
【0055】
原料ビチューメンは、骨材にビチューメン用添加剤を加える前に骨材に加えられることがある。
【0056】
原料ビチューメンは、骨材にビチューメン用添加剤を加えた後に骨材に加えられることがある。
【0057】
原料ビチューメンは、骨材にビチューメン用添加剤を加えると同時に骨材に加えられることがある。
【0058】
原料ビチューメンは、アスファルトミキサー中で原料ビチューメンがビチューメン用添加剤と接触すると発泡することがある。
【0059】
代替実施形態において、ビチューメン用添加剤は、ビチューメン発泡装置中で原料ビチューメンに加えられ、それによって発泡ビチューメン組成物を発生させることがあり、発泡ビチューメン組成物は、次にアスファルトミキサー中で骨材に加えられることがある。
【0060】
発泡ビチューメンは、上記に記載された方法によって製造されることがある。
【0061】
アスファルトミックスは、ウォームミックスアスファルトのことがある。
【0062】
アスファルトミックスは、アスファルトミキサーからトラックまたはサイロに荷卸しされることがある。アスファルトミックスは、舗装材、例えば道路または他の舗装材用に用いられることがある。
【0063】
典型的に、アスファルトミックスは、トラックに積載され、建設現場に運搬され、そこでアスファルトミックスは、アスファルト表面を得るために舗装機械を用いて表面に施用され、アスファルト表面は、次にローラーで圧密される。
【0064】
アスファルトミキサーは、約90℃~約230℃の範囲の温度、好ましくは約110℃~約180℃の範囲の温度で操作されることがある。
【0065】
ビチューメン用添加剤は、骨材に加えられる原料ビチューメンの総質量を基準として約0.1重量%~約10重量%、好ましくは約2重量%~約6重量%の量で骨材に加えられることがある。
【0066】
有利な点として、本発明の方法は、アスファルト混合プラントにおいて既存のビチューメン発泡装置および/または既存のアスファルトミキサーを利用し、かつビチューメン用添加剤は、既存の液体添加剤計量投入システムを用いてアスファルトミキサー中に直接加えることができる。従って、本発明の方法は、あったとしても最小限の装置変更と、使用者にとって低いコストと、で実施することができる。
【0067】
本発明のこれらの方法は、アスファルトミックスのインサイチュ同時調整(すなわち同時のワックス調整およびエラストマー調整)のために、ビチューメン用添加剤によってエラストマーがワックスとともにビチューメンに加えられることを簡便に可能にする。エラストマー調整は、アスファルトの低温可撓性が向上することを可能にし、その結果、亀裂抵抗が高くなり、疲労挙動が改善される。ワックス調整は、より低いアスファルトの粘度、従ってより良い作業性を可能にすると同時に、より低い温度のアスファルト混合作業を可能にする。さらに、ビチューメン用添加剤として加えられたワックスは、ビチューメン発泡体が収縮した後にウォームミックスの利点を付与する。
【0068】
本発明のこれらの方法は、アスファルト品質を犠牲にすることなくビチューメン発泡の有利な効果を組み合わせるという利点を有する。発泡が用いられない場合には、本発明は、アスファルト混合温度を低下させるための簡単かつ有効な手段を提供する。
【0069】
ビチューメン組成物
本発明の別の側面によれば、ビチューメン組成物であって、
ビチューメンと;
上記で定義されたビチューメン用添加剤と、
を含むビチューメン組成物が提供される。
【0070】
ビチューメン組成物は、上記に記載された方法によって製造されることがある。
【0071】
ビチューメン組成物は、発泡ビチューメン組成物のことがある。
【0072】
アスファルトミックス
本発明の別の側面によれば、アスファルトミックスであって、
ビチューメンと;
上記で定義されたビチューメン用添加剤と;
骨材と、
を含むアスファルトミックスが提供される。
【0073】
アスファルトミックスは、上記に記載された方法によって製造されることがある。
【0074】
骨材は、リサイクルアスファルト舗装材または再生アスファルト舗装材(RAP)からなるかまたはを含むことがある。
【0075】
好ましくは、アスファルトミックスは、ウォームミックスアスファルトである。
【0076】
ビチューメン組成物の使用
本発明の別の側面によれば、アスファルトミックスを製造する、ビチューメン組成物または発泡ビチューメン組成物の使用が提供される。
【0077】
ビチューメン組成物または発泡ビチューメン組成物は、上記に記載された方法によって製造されることがある。
【0078】
アスファルトミックスは、上記に記載された方法によって製造されることがある。好ましくは、アスファルトミックスは、上記に記載されたウォームミックスアスファルトである。
【0079】
ビチューメン用添加剤の使用
本発明の別の側面によれば、ビチューメン組成物を製造するための、上記で定義されたビチューメン用添加剤の使用が提供される。
【0080】
ビチューメン組成物は、発泡ビチューメン組成物のことがある。発泡ビチューメン組成物は、上記に記載されたとおりのことがある。
【0081】
アスファルトミックスの使用
本発明の別の側面によれば、舗装材のための、アスファルトミックスの使用が提供される。
【0082】
アスファルトミックスは、上記に記載された方法によって製造されることがある。好ましくは、アスファルトミックスは、上記に記載されたウォームミックスアスファルトである。
【0083】
実験結果
ビチューメン用添加剤の調製
基本ビチューメン用添加剤
60重量%のフィッシャー-トロプシュワックスおよび商品名サソビットレダックス(SASOBIT REDUX)で入手可能な40重量%の石油スラックワックスを含むワックスと乳化剤とを水に加え、100℃および220バール(g)で運転されるAPV-タイプ試験室高圧ホモジェナイザー中ですべての成分をホモジナイズすることによって、本発明による基本ビチューメン用添加剤を調製した。基本ビチューメン用添加剤の成分(ワックス、乳化剤と水)を195秒~240秒間循環させた後に取り出し、プレート熱交換器を用いて25℃に冷却した。
【0084】
陰イオン乳化剤(陰イオンビチューメン用添加剤)または陽イオン乳化剤(陽イオンビチューメン用添加剤)のどちらかを用いる基本ビチューメン用添加剤を以下のように製造した。
【0085】
陰イオンビチューメン用添加剤 50重量% 水
45.68重量% ワックス
0.11重量% Na2SO4
2.2重量% C18~C22脂肪酸
1.01重量% ジエタノールアミン
1.0重量% 商品名エミュラン(EMUL
AN)AT 9で入手可能な脂肪族アルコー
ルエトキシレート(9EO)
粘度 23℃で44mPa秒
【0086】
陽イオンビチューメン用添加剤 50重量% 水
47.66重量% ワックス
1.4重量% 商品名ディノラム(DINO
RAM) 42 Eで入手可能なN-C16-
C22-アルキルトリメチレンジアミン
0.7%酢酸(60%)
0.24% ジシクロヘキシルアミン
粘度:23℃で50mPa秒
【0087】
基本ビチューメン用添加剤の貯蔵安定性を評価した。陰イオンビチューメン用添加剤と陽イオンビチューメン用添加剤との両方が室温で4週間以上の間、貯蔵安定あることを見いだした。
【0088】
エラストマー/ビチューメン用添加剤
陰イオンビチューメン用添加剤を商品名ブトナール(BUTONAL)NS 177、ブトナール NX 1129およびブトナール 5126 Xで入手可能なアスファルト用途向けの高固形分スチレン-ブタジエンゴム(SBR)ラテックス分散物と混合することによって、エラストマーを含む3種類のビチューメン用添加剤(エラストマー/ワックス分散物)を調製した。SBRラテックス分散物と陰イオンビチューメン用添加剤との1対1(1:1)質量比が適合し、室温で2週間を超えて貯蔵安定であることを見いだした。
【0089】
ビチューメン発泡検討
ビチューメン発泡検討およびアスファルト製造検討のために陰イオン基本ビチューメン用添加剤と陽イオン基本ビチューメン用添加剤との両方を用いた。ビチューメン発泡検討のために水を用いて陰イオンおよび陽イオンの基本ビチューメン用添加剤を33.33重量%ワックス含有量に希釈した。
【0090】
ビルトゲン(WIRTGEN)WLB 10 S試験室ビチューメン発泡プラントを用いて発泡ビチューメンを調製した。脱塩されたビチューメンであり、従って発泡用途に適していると業界において公知であるとの理由で、商品名アクアルト(AQUALT)70/100で入手可能なビチューメンをビチューメン発泡研究のために用いた。
【0091】
希釈した基本ビチューメン用添加剤を、ビチューメンの質量に対して5重量%の濃度でビチューメン発泡プラントに供給した。ビチューメン用添加剤は、室温で加えた。発泡プロセス時のビチューメンの温度は170℃であった。
【0092】
参照用の水発泡ビチューメン実験を行ない、本発明の陰イオンビチューメン用添加剤と陽イオンビチューメン用添加剤とを用いて発泡したビチューメンと比較した。標準化手順ドイツ道路および輸送調査連合(German Road and Transportation Association)の「Merkblatt fuer Kaltrecycling in situ im Strassenoberbau、2005」(Forschungsgesellschaft fuer Strassen-und Verkehrswesen(FGSV))によって膨張率および発泡半減期を決定した。
【0093】
陰イオンおよび陽イオンのビチューメン用添加剤を用いて発泡したビチューメンの発泡膨張率は、水発泡ビチューメンの場合の32倍と比較して3~6倍の範囲であることを見いだした。
【0094】
発泡体安定性(発泡体半減期として秒数で表される)は、水発泡ビチューメンの場合の6秒から陰イオンビチューメン用添加剤で発泡したビチューメンでは15秒に、陽イオンビチューメン用添加剤で発泡したビチューメンでは39秒に増加した。
【0095】
本発明者らは、本発明のビチューメン用添加剤によって付与されたビチューメン発泡体半減期の伸張は、ビチューメンの潤滑性および作業性が向上するので、アスファルトミックスの製造において発泡体膨張率の低下より実用的に重要であると考えている。
【0096】
詳しくは、長くなったビチューメン発泡体半減期は、発泡ビチューメンと骨材との混合時にバッチアスファルト混合プラントにおいて、典型的なバッチ混合継続時間(20~30秒)と等しいかまたは上回りさえする長くなった継続時間にわたってビチューメンの潤滑性および作業性を向上させた(アスファルトライトファーデン「Splittmastixasphalt」、ドイツアスファルトフェアバント(Deutscher Asphaltverband e.V.、2000)が、そのようなことは6秒の半減期しかなかった水発泡ビチューメンでは起らない。
【0097】
アスファルトミックスの調製物
参照ホットミックスアスファルトを調製するために用いたビチューメンは、標準的かつ広く用いられているビチューメンである商品名AZALT 70/100で入手可能な舗装グレードビチューメンであった。すべての他のアスファルトミックスは、既に記述したアクアルト70/100で調製した。アザルト70/100とアクアルト70/100とは、比較可能な参照を得るために、同じ製造業者からのものである。
【0098】
温度制御され、加熱されたGZM-30試験室アスファルトミキサー(製造業者 バウストッフ-プリュフシステーメベニグセン(Bauerstoff-Pruefsysteme Wennigsen)GmbH)中で、ドイツ規制TL アスファルト-StB 07/13を、アスファルトバインダーコースミックス AC 16 B Sに適用して、いくつかのアスファルトミックスA~Fを調製した。ビチューメン含有量は4.5重量%であり、骨材含有量は95.5重量%であった。骨材タイプは玄武岩であり、フィラーは石灰岩(炭酸カルシウム)であった。
【0099】
図1は、TL Asphalt-StB 07/13によるアスファルトバインダーコースミックスAC16-B S骨材相対評価(grading)曲線を示し、X軸に粒径を示し、Y軸に重量百分率スクリーンアンダーサイズを示す。
【0100】
参照ホットミックスアスファルトを商品名アザルト70/100(A)で入手可能なビチューメンと混合し、150℃で圧密し、水発泡ビチューメンで調製した参照アスファルト(B)を120℃で混合し、様々なビチューメン用添加剤(B、C)を有するアスファルトミックスも120℃で混合した。
【0101】
本発明の方法の一実施形態によれば、本ビチューメン用添加剤は、アスファルトミキサーに直接加える。最初に、ミキサー中のホット骨材にビチューメンを加えた。直後に、120℃でビチューメン用添加剤を加えた(E)。
【0102】
さらに、比較を目的として、商品名サソビットリダックス(SASOBIT REDUX)で入手可能なワックスをビチューメンと混合し、次にワックスとビチューメンとの混合物を120℃でアスファルトミキサーに加えた(F)。表1は、製造した様々なアスファルトミックスA~Fと対応する混合温度とを示す。
【0103】
【0104】
【0105】
発泡しないアスファルトミックスEおよびFが添加物のない添加物の内アスファルトミックスAより30℃低い温度で混合されたことが直ちに明らかである。
【0106】
次に、すべてのアスファルトミックスA~Fを混合温度で圧密し、同時に圧密抵抗測定を行った。表2は、アスファルトミックスA~Fのそれぞれのアスファルト特性を示す。
【0107】
【0108】
未発泡アスファルトミックス
結果は、本発明のビチューメン用添加剤の結果として実現された向上した、顕著に低下した混合温度が圧縮抵抗に悪影響を及ぼさないことを示している。ホットミックス参照(A)と比較して、30℃しか低くない温度におけるワックスの添加(F)は、同じ圧縮抵抗という結果となった。実際、アスファルトミキサーへの陽イオンビチューメン用添加剤の直接添加(E)によって、わずかに低くなった圧縮抵抗が得られた。
【0109】
表2は、EとFとが非常に似た特性を有することを示している。Fに優るEの利点は、投入技法にある。ビチューメン用添加剤(E)は、簡単な液体投入システムを用いて環境温度で典型的なアスファルトミキサー中に簡単に加えることができる。ワックスの直接添加(F)は、追加の努力とより高いコストの装置を必要とする。固形ワックストローチのための計量投入システムまたは加熱された液体計量投入システムを含む融解ワックス貯蔵のための加熱された融解用タンク。あるいは、ワックス(F)は、ビチューメンと予備ブレンドしてもよい。このことも、加熱および撹拌される余分なビチューメンタンクを必要とする。
【0110】
発泡アスファルトミックス:
発泡アスファルトミックス中でビチューメン用添加剤を用いる利点は、混合温度におけるよりも最終アスファルトの特性に見ることができる。
【0111】
水(B)によるビチューメン発泡は、高くなった圧縮抵抗という結果となった。このことは、発泡のためにビチューメン用添加剤(C、D)が用いられたとき、有利に強く低下した。もっとも低い圧縮抵抗は、陽イオンワックスエマルジョン(D)を用いて発泡したビチューメンで見いだされた。
【0112】
すべての発泡ビチューメンアスファルト(B、C、D)は、ホットミックス参照(A)に対して低下した密度、引張抵抗および水感度を有したが、当業者は、多くの場合、顕著に低下した混合温度を考慮するとこれらのことは些細なトレードオフであるシナリオに直面する。ここでも、陽イオンビチューメン用添加剤(D)を用いて発泡したビチューメンから製造されるアスファルトのためのもっとも良好な性能。
【0113】
混合温度の低下
本発明者らは、次に、よりよく本発明の温度低下潜在力をもっと良好に評価するために、一連の新しいアスファルトミックスを調製した。3種類すべてのミックスは、同じ骨材および調製方法を用いた。それらの間の唯一の差異は、混合温度である。他のバッチの骨材が用いられたので、これらの3種類の新しいミックスは、ミックスA~Fと比較するためのものではない。そうではなく、互いの比較が意図される。
【0114】
ミックスG、HおよびIは、上記に示したように最善の性能のミックスを与えた陽イオンビチューメン用添加剤(アスファルトミックス(D)中に用いられる)を用いて発泡させたビチューメンを用いて種々の混合温度で製造された。ミックスG、HおよびIのそれぞれの場合のアスファルト特性を表3に示す。
【0115】
【0116】
結果は、150℃(G)から120℃(H)への30℃の混合温度低下を示す。これは、圧縮抵抗の顕著な増加をもたらさず、従ってアスファルト混合における温度低下潜在力に対する本発明のビチューメン用添加剤の有益な効果を示している。示された間接引張強さにおける低下は、低下した混合温度を考慮すればいかにも当業者が引き受ける用意のあるトレードオフである。
【0117】
結果は、120℃から100℃へのさらに望ましい温度低下がアスファルトの間接引張強さに強く影響を及ぼさないことも示している。再び、今回は水感度に関して小さなトレードオフがある。
【0118】
結論
これらの結果は、ビチューメン発泡のために本ビチューメン用添加剤を成功裡に用いることができることを示している。純水によるビチューメン発泡と比較すると本発明のビチューメン用添加剤を用いる本発明の方法によるビチューメン発泡は、より低い圧縮抵抗と、より良好な圧縮と、より良好な水感度という結果を生む。
【0119】
第2に、本発明の方法による、アスファルトミキサー中への本ビチューメン用添加剤の直接添加は、ワックスだけの投入と同程度の性能という結果を生む。便利な点として、本発明のビチューメン用添加剤は、先行技術において公知のワックス添加剤のための追加の計量投入システムを設置する必要なく既存の液体添加剤注入システムを用いてアスファルトミキサー中に計量投入することができる。
【0120】
便利な点として、任意選択としてエラストマーを含むビチューメン用添加剤は、それから製造されるアスファルトの特性を向上させるためにアスファルト同時調整、すなわちワックスとエラストマーとの両方での同時のアスファルト調整を可能にする。
【手続補正書】
【提出日】2022-10-02
【手続補正2】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水中に分散されたワックスであって、前記水は連続相中にあり、前記ワックスは分散相中にあり;
フィッシャー-トロプシュワックスおよ
び1種類以上の炭化水素ワックスを含むワックスと;
陽イオン乳化剤と、
を含むビチューメン用添加剤
であって、
前記1種類以上の炭化水素ワックスは、石油スラックワックスであり;
前記ワックスは、前記フィッシャー-トロプシュワックスと前記石油スラックワックスとの混合物の総質量に対してそれぞれ、
20重量%~80重量%の前記石油スラックワックスと;
20重量%~80重量%の前記フィッシャー-トロプシュワックスと、
を含み、
前記フィッシャー-トロプシュワックスは、以下の特性、
50℃以上のASTM D938による凝固点と;
5重量%未満のASTM D7211-06によるMEK-オイル含有量と;
3mm
2
/秒~15mm
2
秒のASTM D7042-11による100℃における動粘度と;
30 1/10mm未満のASTM D1321による25℃における針入度と;
80重量%超のn-アルカン含有量と、
を有し;
前記石油スラックワックスは、以下の特性、
65℃未満のASTM D938による凝固点と;
5重量%超のASTM D7211-06によるMEK-オイル含有量と;
3.5mm
2
/秒~10mm
2
/秒のASTM D7042-11による100℃における動粘度と;
50 1/10mm超のASTM D1321による25℃における針入度と;
70重量%未満のn-アルカン含有量と、
を有し;
前記ビチューメン用添加剤は、前記ワックス分散物の総質量を基準として30重量%~70重量%のワックスを含む、
ビチューメン用添加剤。
【請求項2】
前記ビチューメン用添加剤は
、脂肪族アルコー
ルをさらに含む、請求項1に記載のビチューメン用添加剤。
【請求項3】
前記ビチューメン用添加剤は、
前記ワックス分散物の総質量を基準として0.2重量%~10重量%の前記乳化剤、好ましくは1重量%~6重量%の前記乳化剤を含む、請求項1
または請求項2に記載のビチューメン用添加剤。
【請求項4】
前記ビチューメン用添加剤は、
前記ワックス分散物の総質量を基準としてエラストマー、好ましくは1重量%~70重量%の前記エラストマー、好ましくは20重量%~50重量%の前記エラストマーを含む、請求項1~
3の何れか一項に記載のビチューメン用添加剤。
【請求項5】
前記フィッシャー-トロプシュワックスは、以下の特性、
60℃以上
、好ましくは70℃と110℃との間、
より好ましくは75℃と82℃との間のASTM D938による凝固点と;
2重量%未満のASTM D7211-06によるMEK-オイル含有量と;
5mm
2/秒~10mm
2/秒
、好ましくは7mm
2/秒~9mm
2/秒のASTM D7042-11による100℃における動粘度と;
10 1/10mm未満のASTM D1321による25℃における針入度と;
80重量%超のn-アルカン含有量と、
を有する、請求項1~
4の何れか一項に記載のビチューメン用添加剤。
【請求項6】
前記石油スラックワックスは、以下の特性、
65℃未満のASTM D938による凝固点と;
15重量%超のASTM D7211-06によるMEK-オイル含有量と;
5mm
2/秒~10mm
2/秒
、好ましくは6mm
2/秒~8mm
2/秒のASTM D7042-11による100℃における動粘度と;
50 1/10mm超のASTM D1321による25℃における針入度と;
40重量%未満のn-アルカン含有量と、
を有する、請求項1~
5の何れか一項に記載のビチューメン用添加剤。
【請求項7】
ウォームアスファルトミックスを製造する方法であって、
アスファルトミキサー中の骨材に原料ビチューメンと請求項1~
6の何れか一項に記載のビチューメン用添加剤とを加え、それによって前記
ウォームアスファルトミックスを製造する
ステップであって、前記原料ビチューメンは、
a.前記ビチューメン用添加剤を前記骨材に加える前に前記骨材に加えられるか;または
c.前記ビチューメン用添加剤を前記骨材に加えると同時に前記骨材に加えられる、
ステップを含む方法。
【請求項8】
前記ビチューメン用添加剤は、前記原料ビチューメンの総質量を基準として0.1重量%~10重量%、好ましくは2重量%~6重量%の量で前記原料ビチューメンに加えられる、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記原料ビチューメンは、前記原料ビチューメンが前記アスファルトミキサー中で前記ビチューメン用添加剤と接触すると発泡する、請求項
7または
請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記添加剤は、液体添加剤計量投入システムを用いて前記アスファルトミキサーに直接加えられる、請求項7~9の何れか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記ビチューメン用添加剤は、ビチューメン発泡装置中で前記原料ビチューメンに加えられ、それによって発泡ビチューメン組成物を形成し、前記発泡ビチューメン組成物は、次に前記アスファルトミキサー中で前記骨材に加えられる、請求項
7~
9の何れか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記骨材は、リサイクルアスファルト舗装材(RAP)または再生アスファルト舗装材を含む、請求項
7~
11の何れか一項に記載の方法。
【請求項13】
ウォームミックスアスファルトを製造するための、請求項
11の方法によって入手可能な発泡ビチューメン組成物の使用。
【請求項14】
発泡ビチューメン組成物を製造するための、請求項1~
6の何れか一項に記載のビチューメン添加剤の使用。
【手続補正書】
【提出日】2023-06-05
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水中に分散されたワックスであって、前記水は連続相中にあり、前記ワックスは分散相中にあり;
フィッシャー-トロプシュワックスおよび1種類以上の炭化水素ワックスを含むワックスと;
陽イオン乳化剤と、
を含むビチューメン用添加剤であって、
前記1種類以上の炭化水素ワックスは、石油スラックワックスであり;
前記ワックスは、前記フィッシャー-トロプシュワックスと前記石油スラックワックスとの混合物の総質量に対してそれぞれ、
20重量%~80重量%の前記石油スラックワックスと;
20重量%~80重量%の前記フィッシャー-トロプシュワックスと、
を含み、
前記フィッシャー-トロプシュワックスは、以下の特性、
50℃以上のASTM D938による凝固点と;
5重量%未満のASTM D7211-06によるMEK-オイル含有量と;
3mm
2/秒~15mm
2秒のASTM D7042-11による100℃における動粘度と;
30 1/10mm未満のASTM D1321による25℃における針入度と;
80重量%超のn-アルカン含有量と、
を有し;
前記石油スラックワックスは、以下の特性、
65℃未満のASTM D938による凝固点と;
5重量%超のASTM D7211-06によるMEK-オイル含有量と;
3.5mm
2/秒~10mm
2/秒のASTM D7042-11による100℃における動粘度と;
50 1/10mm超のASTM D1321による25℃における針入度と;
70重量%未満のn-アルカン含有量と、
を有し;
前記ビチューメン用添加剤は、
前記ビチューメン用添加剤の総質量を基準として30重量%~70重量%のワックスを含む、
ビチューメン用添加剤。
【請求項2】
前記ビチューメン用添加剤は、脂肪族アルコールをさらに含む、請求項1に記載のビチューメン用添加剤。
【請求項3】
前記ビチューメン用添加剤は、
前記ビチューメン用添加剤の総質量を基準として0.2重量%~10重量%の前記乳化剤、好ましくは1重量%~6重量%の前記乳化剤を含む、請求項1または請求項2に記載のビチューメン用添加剤。
【請求項4】
前記ビチューメン用添加剤は、
前記ビチューメン用添加剤の総質量を基準としてエラストマー、好ましくは1重量%~70重量%の前記エラストマー、好ましくは20重量%~50重量%の前記エラストマーを含む、請求項1~3の何れか一項に記載のビチューメン用添加剤。
【請求項5】
前記フィッシャー-トロプシュワックスは、以下の特性、
60℃以上、好ましくは70℃と110℃との間、より好ましくは75℃と82℃との間のASTM D938による凝固点と;
2重量%未満のASTM D7211-06によるMEK-オイル含有量と;
5mm
2/秒~10mm
2/秒、好ましくは7mm
2/秒~9mm
2/秒のASTM D7042-11による100℃における動粘度と;
10 1/10mm未満のASTM D1321による25℃における針入度と;
80重量%超のn-アルカン含有量と、
を有する、請求項1~4の何れか一項に記載のビチューメン用添加剤。
【請求項6】
前記石油スラックワックスは、以下の特性、
65℃未満のASTM D938による凝固点と;
15重量%超のASTM D7211-06によるMEK-オイル含有量と;
5mm
2/秒~10mm
2/秒、好ましくは6mm
2/秒~8mm
2/秒のASTM D7042-11による100℃における動粘度と;
50 1/10mm超のASTM D1321による25℃における針入度と;
40重量%未満のn-アルカン含有量と、
を有する、請求項1~5の何れか一項に記載のビチューメン用添加剤。
【請求項7】
ウォームアスファルトミックスを製造する方法であって、
アスファルトミキサー中の骨材に原料ビチューメンと請求項1~6の何れか一項に記載のビチューメン用添加剤とを加え、それによって前記ウォームアスファルトミックスを製造するステップであって、前記原料ビチューメンは、
a.前記ビチューメン用添加剤を前記骨材に加える前に前記骨材に加えられるか;または
c.前記ビチューメン用添加剤を前記骨材に加えると同時に前記骨材に加えられる、
ステップを含む方法。
【請求項8】
前記ビチューメン用添加剤は、前記原料ビチューメンの総質量を基準として0.1重量%~10重量%、好ましくは2重量%~6重量%の量で前記原料ビチューメンに加えられる、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記原料ビチューメンは、前記原料ビチューメンが前記アスファルトミキサー中で前記ビチューメン用添加剤と接触すると発泡する、請求項7または請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記添加剤は、液体添加剤計量投入システムを用いて前記アスファルトミキサーに直接加えられる、請求項7~9の何れか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記ビチューメン用添加剤は、ビチューメン発泡装置中で前記原料ビチューメンに加えられ、それによって発泡ビチューメン組成物を形成し、前記発泡ビチューメン組成物は、次に前記アスファルトミキサー中で前記骨材に加えられる、請求項7~9の何れか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記骨材は、リサイクルアスファルト舗装材(RAP)または再生アスファルト舗装材を含む、請求項7~11の何れか一項に記載の方法。
【請求項13】
ウォームミックスアスファルトを製造するための、請求項11の方法によって入手可能な発泡ビチューメン組成物の使用。
【請求項14】
発泡ビチューメン組成物を製造するための、請求項1~6の何れか一項に記載のビチューメン添加剤の使用。
【国際調査報告】