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特表2023-551767結核、非結核抗酸菌感染疾患、及び潜在性結核診断用バイオマーカー及びその用途
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  • 特表-結核、非結核抗酸菌感染疾患、及び潜在性結核診断用バイオマーカー及びその用途 図1
  • 特表-結核、非結核抗酸菌感染疾患、及び潜在性結核診断用バイオマーカー及びその用途 図2a
  • 特表-結核、非結核抗酸菌感染疾患、及び潜在性結核診断用バイオマーカー及びその用途 図2b
  • 特表-結核、非結核抗酸菌感染疾患、及び潜在性結核診断用バイオマーカー及びその用途 図3
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-12-13
(54)【発明の名称】結核、非結核抗酸菌感染疾患、及び潜在性結核診断用バイオマーカー及びその用途
(51)【国際特許分類】
   G01N 33/53 20060101AFI20231206BHJP
   C07K 14/435 20060101ALN20231206BHJP
   C07K 16/18 20060101ALN20231206BHJP
【FI】
G01N33/53 D
C07K14/435 ZNA
C07K16/18
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023524574
(86)(22)【出願日】2021-10-01
(85)【翻訳文提出日】2023-04-20
(86)【国際出願番号】 KR2021013479
(87)【国際公開番号】W WO2022092595
(87)【国際公開日】2022-05-05
(31)【優先権主張番号】10-2020-0139445
(32)【優先日】2020-10-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2021-0052816
(32)【優先日】2021-04-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523141921
【氏名又は名称】インダストリー‐ユニバーシティー コーぺレーション ファンデーション ハンヤン ユニバーシティ エリカ キャンパス
【住所又は居所原語表記】55, Hanyangdaehak-ro Sangnok-gu, Ansan-si Gyeonggi-do 15588 Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】100112874
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邊 薫
(72)【発明者】
【氏名】ヤン チュル‐スー
【テーマコード(参考)】
4H045
【Fターム(参考)】
4H045AA10
4H045AA11
4H045AA30
4H045BA10
4H045CA40
4H045DA75
4H045DA76
4H045EA50
4H045EA52
(57)【要約】
本発明は、結核、非結核抗酸菌感染疾患、及び潜在性結核診断用バイオマーカー及びその用途に関し、より詳しくは、結核、非結核抗酸菌感染疾患又は潜在性結核菌株感染時に示されるルビコン(Rubicon)タンパク質の差等的なリン酸化態様に基づいた結核、非結核抗酸菌感染疾患、及び潜在性結核の診断技術に関する。本発明によれば、ルビコンタンパク質の発現増加を介して結核診断が可能であり、ルビコンタンパク質の差等的なリン酸化検出を介して結核、非結核抗酸菌感染疾患だけでなく潜在性結核を区別し、正確な診断が可能であるを試験的に究明したところ、本発明に係る新規の診断用バイオマーカーは、結核の疑われる患者又は類似症状を示す患者の血液試料から早期に活動性結核、非結核抗酸菌感染疾患、及び潜在性結核の有無を正確に診断するこで、隔離及び治療、管理の側面などで極めて便利に活用されることができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
序列番号1のアミノ酸序列からなるルビコン(Rubicon)タンパク質の567番から625番のアミノ酸領域において、1つ以上のリン酸化された残基を含む、結核、非結核抗酸菌感染疾患、及び潜在性結核診断用バイオマーカー組成物。
【請求項2】
前記リン酸化された残基は、S577、S581、S583及びS585からなる群より選択されることを特徴とする、請求項1に記載のバイオマーカー組成物。
【請求項3】
序列番号1のアミノ酸序列からなるルビコン(Rubicon)タンパク質の567番から625番のアミノ酸領域において、1以上のリン酸化された残基を検出できる製剤を含む結核、非結核抗酸菌感染疾患、及び潜在性結核診断用組成物。
【請求項4】
前記製剤は、前記アミノ酸領域内のリン酸化された残基を含むペプチド断片に特異的に結合する抗体であることを特徴とする、請求項3に記載の診断用組成物。
【請求項5】
前記抗体は、リン酸化されたS577、S581、S583及びS585からなる群より選択されるいずれか1つのセリン残基を含むペプチド断片に特異的に結合することを特徴とする、請求項4に記載の診断用組成物。
【請求項6】
前記請求項3~請求項5のいずれか一項に記載の組成物を含む、結核、非結核抗酸菌感染疾患、及び潜在性結核診断用キット。
【請求項7】
被検者由来の生物学的な試料から序列番号1のアミノ酸序列からなるルビコン(Rubicon)タンパク質の567番から625番のアミノ酸領域で1以上のリン酸化された残基を検出するステップを含む、結核、非結核抗酸菌感染疾患、及び潜在性結核診断のための情報提供方法。
【請求項8】
前記リン酸化された残基の検出結果、
i)S581及びS585残基のいずれか1つ以上のリン酸化が検出される場合に結核として診断し、
ii)S577残基のリン酸化が検出される場合、非結核抗酸菌感染疾患として診断し、
iii)S583残基のリン酸化が検出される場合、潜在性結核として診断するステップをさらに含むことを特徴とする、請求項7に記載の情報提供方法。
【請求項9】
前記リン酸化された残基の検出は、ウエスタンブロッティング(western blotting)、放射免疫分析法(radioimmunoassay;RIA)、放射免疫拡散法(radioimmunodiffusion)、酵素免疫分析法(ELISA)、免疫沈降法(immunoprecipitation)、フローサイトメトリー(flow cytometry)、免疫蛍光染色法(immunofluorescence)、オクタロニー免疫拡散法(ouchterlony immunodiffusion)、補体固定分析法(complement fixation assay)、及びプロテインチップ(protein chip)からなる群より選択される1種以上の方法によって実行されることを特徴とする、請求項7に記載の情報提供方法。
【請求項10】
ルビコン(Rubicon)タンパク質の567番から625番のアミノ酸領域でリン酸化された残基を含むペプチドをヒトを除いた哺乳動物に注入した後抗血清を取得するステップと、
前記収得された抗血清を精製するステップを含む、ルビコンタンパク質の567番から625番のアミノ酸領域内のリン酸化された残基検出用抗体の製造方法。
【請求項11】
前記ペプチドは、リン酸化されたS577、S581、S583及びS585からなる群より選択されるいずれか1つのセリン残基を含むことを特徴とする、請求項10に記載の製造方法。
【請求項12】
請求項10に記載の方法によって製造された、ルビコンタンパク質の567番から625番のアミノ酸領域内のリン酸化された残基の検出用抗体。
【請求項13】
ルビコン(Rubicon)遺伝子のmRNA又は前記遺伝子が暗号化するタンパク質レベルを測定する製剤を含む、結核診断用組成物。
【請求項14】
前記mRNAレベルを測定できる製剤は、前記遺伝子に相補的に結合するセンス及びアンチセンスプライマー又はプローブであることを特徴とする、請求項13に記載の結核診断用組成物。
【請求項15】
前記タンパク質レベルを測定できる製剤は、前記タンパク質に特異的に結合する抗体又はアプタマーであることを特徴とする、請求項13に記載の結核診断用組成物。
【請求項16】
請求項13~請求項15のいずれか一項に記載の組成物を含む結核診断用キット。
【請求項17】
被検者由来の生物学的な試料でルビコン(Rubicon)遺伝子のmRNA又は前記遺伝子が暗号化するタンパク質レベルを測定するステップと、
正常対照群と比較して、前記被検者のルビコンmRNA又はタンパク質レベルが増加される場合に結核として診断するステップを含む、結核診断のための情報提供方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、結核、非結核抗酸菌感染疾患、及び潜在性結核診断用バイオマーカー及びその用途に関し、より詳しくは、結核、非結核抗酸菌感染疾患又は潜在性結核菌株の感染時に示されるルビコン(Rubicon)タンパク質の差等的なリン酸化態様に基づいた結核、非結核抗酸菌感染疾患及び潜在性結核の診断技術に関する。
【背景技術】
【0002】
結核(tuberculosis)は、結核菌複合体(Mycobacterium tuberculosis complex)に属する細菌によって発生する疾患として、結核により2018年基準の全世界約1、000万人(人口10万人当り130人)の患者が発生し、約150万人(人口10万人当り20人)が死亡した。韓国における結核の発生率は人口10万人当り66人であって、全世界202ヶ国のうち85位(OECD36個の会員国のうち1位)、死亡率は人口10万人当り4.8人であって、全世界99位(OECD会員国のうち2位)を記録した。結核菌は主に肺を侵犯して肺結核を起こすが、肺以外に腎臓、脳、脊椎、リンパ線、泌尿生殖系などを侵犯して様々な症状を示す肺外感染を起こすこともある。肺結核は初期には無症状の場合も多いが、時間が経過するにつれて咳、発熱、体重減少、夜間発汗、食欲不振などのような全身症状が伴い、結核菌は、伝染性肺結核患者の飛沫核(結核菌が含まれている微細な唾の唾液)が空気を通じて他人の呼吸器に伝播されて伝染され得る。
【0003】
しかし、結核菌に感染しても全てが結核症状を見せたり伝染性を有することはないため、結核は、活動性結核(active tuberculosis)と潜在性結核(latent tuberculosis)という2種類のタイプに分類される。活動性結核とは、結核菌が体内で活動して結核症状を示し、伝染性があって隔離及び治療が必要な状態である。これに対して、潜在性結核とは、結核菌が実際に体内で活動せず、特別な症状を見せないで伝染性のない状態である。しかし、伝染性の結核患者と接触した人だけでなく、ヒト免疫欠乏ウイルス(Human ImmunodeficiencyVirus;HIV)感染者、免疫抑制剤の服用者、腫瘍壊死因子(Tumor Necrosis Factor;TNF)拮抗剤使用者、及び最近2年以内に結核感染が確認された場合などの結核発症の高危険群は、潜在性結核の診断を受けた場合に活動性結核に進行する可能性があり、潜在性結核の治療が必要である。
【0004】
非結核抗酸菌(nontuberculous mycobacterium;NTM)は感染頻度が次第に増加しており、類型に応じて肺疾患、リンパ節炎、皮膚・軟組織・骨感染症、播種性疾患に分類されるが、90%以上は肺疾患として現れる。韓国の場合、非結核抗酸菌による肺疾患の半分以上はマイコバクテリウムアビウム複合体(Mycobacterium avium complex;MAC)感染によって誘発され、迅速成長菌であるマイコバクテリウムアブセッサス(Mycobacterium abscessus;MAB)が20-30%を占めしており、2番目にありふれた原因菌として報告されている。多くのNTMは、自然水と土壌などの自然環境に広く分布し、病原性が低いことからヒトの感染危険が少ないが、損傷した免疫システムを有する人々にとって前記肺疾患は蔓延した疾患として発生率及び重要性が急激に増加しており、ほとんどは徐々に進行されるが、完治させることは困難である。多くの非結核抗酸菌の肺疾患患者は、結核に類似の臨床症状及び映像所見で来院するため、伝染性のある結核と初期に鑑別及び診断することが治療及び隔離の有無、電波管理の側面において極めて重要である。
【0005】
既存の非結核抗酸菌肺疾患の診断は、喀痰検査で菌が同定されれば確診されるが、培養検査に約2ヵ月という長い時間がかかり、隔離の必要な結核と映像医学的に鑑別されないという問題がある。ここで、結核及び非結核抗酸菌肺疾患を鑑別診断できる方法として、前記結核菌及び非結核菌の菌株を同時に検出する分子診断方式が多く研究されてきた。しかし、未だに簡便かつ効率的に結核、非結核抗酸菌感染疾患及び潜在性結核まで診断できるバイオマーカーの開発は微々たる実状である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記のような背景下で、本発明者は、結核、非核抗酸菌感染症及び潜在性結核菌株に感染される際に、ルビコン(Rubicon)タンパク質のS-R領域でそれぞれ差等的なリン酸化の様相が現れることを確認することで、結核、非核抗酸菌感染症及び潜在性結核の有無を効率的かつ同時に鑑別して診断できるバイオマーカーを発掘し、これにより本発明を完成した。
ここで、本発明は、結核、非結核抗酸菌感染疾患、及び潜在性結核診断用バイオマーカー組成物を提供することを目的とする。
また、本発明は、結核、非結核抗酸菌感染疾患、及び潜在性結核診断用組成物及び前記組成物を含む診断用キットを提供することを他の目的とする。
また、本発明は、結核、非結核抗酸菌感染疾患、及び潜在性結核診断のための情報提供方法を提供することを更なる目的とする。
また、本発明は、ルビコンタンパク質のリン酸化された残基検出用抗体の製造方法及び前記方法で製造された抗体を提供することを更なる目的とする。
また、本発明は、ルビコン(Rubicon)遺伝子のmRNA又は前記遺伝子が暗号化するタンパク質レベルを測定する製剤を含む、結核診断用組成物及び前記組成物を含む結核診断用キットを提供することを更なる目的とする。
また、本発明は、被検者由来の生物学的な試料でルビコン(Rubicon)遺伝子のmRNA又は前記遺伝子が暗号化するタンパク質レベルを測定するステップを含む結核診断のための情報提供方法を提供することを更なる目的とする。
しかし、本発明が達成しようとする技術的な課題は、以上で言及した課題に制限されず、言及されない更なる課題は、下記の記載により当業者にとって明確に理解できるものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記のような本発明の目的を達成するために、本発明は、序列番号1のアミノ酸序列からなるルビコン(Rubicon)タンパク質の557、581、583、及び585番目のセリン(Serine)残基を結核、非結核抗酸菌感染疾患、及び潜在性結核鑑別診断のためのバイオマーカーとして提供する。
また、本発明は、序列番号1のアミノ
酸序列からなるルビコンタンパク質の567番から625番のアミノ酸領域で1つ以上のリン酸化された残基を含む、結核、非結核抗酸菌感染疾患、及び潜在性結核診断用バイオマーカー組成物を提供する。
本発明の一実現例として、前記リン酸化された残基は、S577、S581、S583及びS585からなる群より選択されることができる。
また、本発明は、序列番号1のアミノ酸序列からなるルビコンタンパク質の567番から625番のアミノ酸領域でリン酸化された残基を検出できる製剤を含む、結核、非結核抗酸菌感染疾患、及び潜在性結核診断用組成物を提供する。
また、本発明は、前記組成物を含む、結核、非結核抗酸菌感染疾患、及び潜在性結核診断用キットを提供する。
【0008】
本発明の一実現例として、前記製剤は、前記アミノ酸領域内のリン酸化された残基を含むペプチド断片に特異的に結合する抗体であり得る。
本発明の他の実現例として、前記抗体は、リン酸化されたS577、S581、S583及びS585からなる群より選択されるいずれか1つのセリン残基を含むペプチド断片に特異的に結合することができる。
また、本発明は、被検者由来の生物学的な試料から序列番号1のアミノ酸序列からなるルビコンタンパク質の567番から625番のアミノ酸領域でリン酸化された残基を検出するステップを含む結核、非結核抗酸菌感染疾患、及び潜在性結核診断のための情報提供方法、すなわち結核、非結核抗酸菌感染疾患、及び潜在性結核診断方法を提供する。
【0009】
本発明の一実現例として、前記リン酸化された残基の検出結果、i)S581及びS585残基のいずれか1つ以上のリン酸化が検出される場合に結核として診断し、ii)S577残基のリン酸化が検出される場合、非結核抗酸菌感染疾患として診断し、及びiii)S583残基のリン酸化が検出される場合、潜在性結核として診断するステップをさらに含むことができる。
本発明の他の実現例として、前記リン酸化された残基の検出は、ウエスタンブロッティング(western blotting)、放射免疫分析法(radioimmunoassay;RIA)、放射免疫拡散法(radioimmunodiffusion)、酵素免疫分析法(ELISA)、免疫沈降法(immunoprecipitation)、フローサイトメトリー(flow cytometry)、免疫蛍光染色法(immunofluorescence)、オクタロニー免疫拡散法(ouchterlony immunodiffusion)、補体固定分析法(complement fixation assay)、及びプロテインチップ(protein chip)からなる群より選択される1種以上の方法によって実行されることができる。
また、本発明は、ルビコンタンパク質の567番から625番のアミノ酸領域でリン酸化された残基を含むペプチドをヒトを除いた哺乳動物に注入した後に抗血清を取得するステップと、前記収得された抗血清を精製するステップとを含む、ルビコンタンパク質の567番から625番のアミノ酸領域内のリン酸化された残基検出用抗体の製造方法を提供する。
【0010】
本発明の一実現例として、前記ペプチドは、リン酸化されたS577、S581、S583及びS585からなる群より選択されるいずれか1つのセリン残基を含むことができる。
また、本発明は、前記製造方法によって製造された抗体を提供する。
また、本発明は、ルビコン遺伝子のmRNA又は前記遺伝子が暗号化するタンパク質レベルを測定する製剤を含む、結核診断用組成物及び前記組成物を含む結核診断用キットを提供する。
本発明の一実現例として、前記mRNAレベルを測定できる製剤は、前記遺伝子に相補的に結合するセンス及びアンチセンスプライマー、又はプローブであってもよい。
【0011】
本発明の他の実現例として、前記タンパク質レベルを測定できる製剤は、前記タンパク質に特異的に結合する抗体又はアプタマーであってもよい。
また、本発明は、被検者由来の生物学的な試料でルビコン遺伝子のmRNA又は前記遺伝子が暗号化するタンパク質レベルを測定するステップと、正常対照群と比較して前記被検者のルビコンmRNA又はタンパク質レベルが増加している場合、結核として診断するステップを含む、結核診断のための情報提供方法を提供する。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、Rubiconタンパク質の発現増加を介して結核診断が可能であり、Rubiconタンパク質の差等的なリン酸化検出を介して結核、非結核抗酸菌感染疾患だけでなく潜在性結核を区別し、正確な診断ができることを試験的に究明し、本発明に係る新規の診断用バイオマーカーを用いて結核の疑われる患者又は類似症状を示す患者の血液試料から早期に活動性結核、非結核抗酸菌感染疾患、及び潜在性結核の有無を正確に診断することで、隔離及び治療、管理の側面などで極めて便利に活用できるのであろう。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1は、ルビコン(Rubicon)タンパク質の構造、及びp22phoxとの相互作用時にリン酸化されるS-R領域(aa567-625)内のセリン(S)残基を示す。
図2a図2は、結核患者の検体及びマイコバクテリア菌株別のRubicon S-R領域の差等的なリン酸化を確認した結果として、図2aは、様々な類型の結核患者由来の血清試料でRubiconタンパク質レベル及びRubicon S-R領域内のセリン残基のリン酸化(pS577、pS581、pS583、pS585)の有無を比較分析した免疫ブロッティング及びELISA結果であり(HC:結核非感染者、E-TB:活動性結核患者-初治療、C-TB:活動性結核患者-治療完了、CR-TB:慢性難治性結核患者-治療失敗)、図2bは、健康なヒト由来の末梢血液単核球に様々なマイコバクテリア菌株を感染させた後Rubicon S-R領域内のセリン残基のリン酸化態様を比較分析した免疫ブロッティング結果、及びRubiconタンパク質レベルを測定したELISA結果を示す(結核菌:MTB Rv及びMTB Ra、ワクチン結核菌:BCG、非病原性結核菌:M.Smeg、非結核抗酸菌:M.abs及びM.avium)。
図2b図2は、結核患者の検体及びマイコバクテリア菌株別のRubicon S-R領域の差等的なリン酸化を確認した結果として、図2aは、様々な類型の結核患者由来の血清試料でRubiconタンパク質レベル及びRubicon S-R領域内のセリン残基のリン酸化(pS577、pS581、pS583、pS585)の有無を比較分析した免疫ブロッティング及びELISA結果であり(HC:結核非感染者、E-TB:活動性結核患者-初治療、C-TB:活動性結核患者-治療完了、CR-TB:慢性難治性結核患者-治療失敗)、図2bは、健康なヒト由来の末梢血液単核球に様々なマイコバクテリア菌株を感染させた後Rubicon S-R領域内のセリン残基のリン酸化態様を比較分析した免疫ブロッティング結果、及びRubiconタンパク質レベルを測定したELISA結果を示す(結核菌:MTB Rv及びMTB Ra、ワクチン結核菌:BCG、非病原性結核菌:M.Smeg、非結核抗酸菌:M.abs及びM.avium)。
図3図3は、図1に示すS-R領域内の各セリン残基のリン酸化を介して感染有無を診断できるマイコバクテリア菌株を記載して示す。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明は、ルビコン(Rubicon)タンパク質のS-R領域内の差等的なリン酸化に基づいた結核、非結核抗酸菌感染疾患、及び潜在性結核診断用途、及びRubiconの結核診断用途に関する。
【0015】
以下、本発明を詳しく説明する。
【0016】
本発明は、序列番号1のアミノ酸序列からなるルビコン(Rubicon)タンパク質の567番から625番のアミノ酸領域で1つ以上のリン酸化された残基を含む結核、非結核抗酸菌感染疾患、及び潜在性結核診断用バイオマーカー組成物を提供する。
【0017】
本発明の「ルビコン(Run/cysteine-rich-domain-containing-Beclin1-interacting autophagy protein;Rubicon)」は、オートファジー(autophagy)関連のタンパク質であって、TLR2(Toll-like receptor2)の刺激によってROS生成に関与するNOX複合体(NADPH oxidase complex)の構成要素のうちの1つであるp22phoxタンパク質に結合し、NOXの酵素活性を増加させてROSの生成を促進させ、NF-κB信号を活性化させて炎症性サイトカインの分泌を促進させることで炎症反応を促進し、ファゴソーム(phagosome)内に流入した細菌(bacteria)の増殖を抑制することにおいて重要な役割を果たすものと知られている。ルビコン(Rubicon)は、序列番号1に表示されるアミノ酸序列から構成され、ここで、前記序列番号1に表示されるアミノ酸序列と70%以上、好ましくは80%以上、より好ましくは90%以上、最も好ましくは95%、96%、97%、98%、99%以上の序列の相同性を有するアミノ酸序列を含むことができる。
【0018】
前記ルビコン(Rubicon)タンパク質の567番から625番のアミノ酸領域は、セリン(Serine)アミノ酸残基が豊富に存在するS-R(Serine-Rich)領域を含むものである。
【0019】
本発明において、前記リン酸化された残基は、好ましくは、S577、S581、S583及びS585からなる群より選択されてもよい。
【0020】
また、本発明は、序列番号1のアミノ酸序列からなるルビコン(Rubicon)タンパク質の567番から625番のアミノ酸領域でリン酸化された残基を検出できる製剤を含む結核、非結核抗酸菌感染疾患、及び潜在性結核診断用組成物を提供する。
【0021】
また、本発明は、前記組成物を含む結核、非結核抗酸菌感染疾患、及び潜在性結核診断用キットを提供する。
【0022】
本発明において、前記結核は、好ましくは活動性結核、より好ましくは活動性肺結核であってもよく、治療が必要であったり治療がうまく進まない難治性肺結核を全て含むことができる。また、前記結核は、好ましくはMycobacterium tuberculosis(MTB)、より好ましくはMTB H37Rv又はMTB H37Ra感染によって誘発されたものであるが、これに限定されることはない。
【0023】
本発明において、前記非結核抗酸菌感染疾患は、非結核抗酸菌の感染により誘発され得る疾患を全て含んでもよく、好ましくは肺疾患、リンパ節炎、皮膚・軟組織・骨感染症又は播種性疾患であってもよく、より好ましくは非結核抗酸菌肺疾患であってもよく、最も好ましくはMycobacteroides abscessus又はMycobacterium avium subsp.avium感染によって誘発されたものであるが、これに限定されることはない。
【0024】
本発明において、前記潜在性結核は結核菌に感染されているものの、実際に体内で活動しておらず、特別な症状を見せないで伝染性のない状態を全て含み、好ましくは、Mycobacterium bovis BCG又はMycobacterium smegmatisに感染した状態であってもよいが、これに限定されることはない。
【0025】
本発明で使用される用語、「診断(diagnosis)」とは、広い意味で患者の病の実態を全ての面にわたって判断することを意味する。判断の内容は、病名、病因、病型、軽重、病床の詳細な様態、及び合併症の有無などである。本発明において、診断は、結核、非結核抗酸菌感染疾患又は潜在性結核の発症の有無及び進行段階のレベルなどを判断することにある。
【0026】
本発明において、前記リン酸化された残基を検出できる製剤は、前記アミノ酸領域内のリン酸化されたアミノ酸残基を含むペプチド断片に特異的に結合する抗体であってもよい。
【0027】
本発明で使用される用語、「抗体」は、免疫学的に特定の抗原と反応性を有する免疫グロブリン分子を含み、単クローン(monoclonal)抗体及び多クローン(polyclonal)抗体の全てを含む。また、前記抗体は、キメラ抗体(例えば、ヒト化ミュリン抗体)及び異種結合抗体(例えば、二重特異性抗体)のような遺伝工学によって生産された形態を含む。
【0028】
本発明者は、自体にRubiconタンパク質のS-R領域(aa567-625)内のリン酸化を特異的に検出できる抗体を製造するために差等的にリン酸化された残基を含む特定のペプチド断片を用いて、ウサギからこれに対する抗体を最初に生産及び精製した(実施形態1-3参照)。
【0029】
ここで、本発明は、ルビコン(Rubicon)タンパク質の567番から625番のアミノ酸領域でリン酸化された残基を含むペプチドをヒトを除いた哺乳動物に注入した後抗血清を取得するステップと、前記収得された抗血清を精製するステップを含むルビコンタンパク質の567番から625番のアミノ酸領域内のリン酸化された残基検出用抗体の製造方法を提供する。
【0030】
また、本発明は、前記製造方法で製造されたルビコンタンパク質の567番から625番のアミノ酸領域内のリン酸化された残基の検出用抗体を提供する。
【0031】
本発明において、前記ペプチドは、好ましくはリン酸化されたS577、S581、S583及びS585からなる群より選択されるいずれか1つのセリン残基を含むものである。したがって、本発明の前記検出用抗体は、前記リン酸化されたセリン残基のいずれか1つを含むペプチド断片、好ましくは、前記リン酸化されたセリン残基のいずれか1つに特異的に結合することができる。
【0032】
前記ヒトを除いた哺乳動物は、本発明に係る前記抗体を生産できるものであれば特に制限されないが、好ましくはウサギであってもよい。
【0033】
前記精製は、カラム親和性精製方法を使用することができるが、当技の術分野で抗血清から所望する抗体を精製する方法で利用可能にものであれば、特に制限されず、当業者が適切に選択して利用可能である。
【0034】
本発明における結核、非結核抗酸菌感染疾患、及び潜在性結核診断用キットは、分析方法に適する一種類又はそれ以上の他の構成要素の組成物、溶液、又は装置から構成される。例えば、前記キットは、Rubiconタンパク質内のリン酸化された残基を検出できる分析方法であれば、その方法が特に制限されず、好ましくは、抗体を用いてリン酸化された残基の検出及び確認可能な方法を利用することができ、より好ましくは、本発明に係る検出用抗体を含むことができる。
【0035】
本発明者は、実施形態によってルビコン(Rubicon)S-R領域内の差等的なリン酸化を介して結核、非結核抗酸菌感染疾患、及び潜在性結核を区別して診断できることを確認した。
【0036】
本発明の一実施形態において、各結核患者の検体から採取した血清試料に対して免疫ブロッティングを実施した結果、活動性結核患者-初治療血清の試料ではRubicon(S581)及びRubicon(S585)リン酸化が検出され、薬物治療に失敗した慢性難治性結核患者由来の血清試料ではRubicon(S581)リン酸化が検出されたことを確認した。これに対して、結核非感染者及び活動性結核が治療された患者では、リン酸化が検出されなかった(実施形態2-1参照)。
【0037】
本発明の他の実施形態において、健康な人の末梢血液単核球にマイコバクテリア菌株別Rubicon S-R領域内の差等的なリン酸化態様を比較分析した。具体的に、結核菌であるMTB、非結核抗酸菌(NTM)、結核ワクチン菌株BCG及び非病原性の結核菌株をそれぞれ感染させた結果、前記S-R領域内のセリン残基のリン酸化態様がそれぞれ異なるように示されることが確認された(実施形態2-2参照)。
【0038】
したがって、前記本発明の実施形態結果を介してRubicon S-R領域内の差等的なリン酸化態様を確認することで、MTB感染による結核、非結核抗酸菌感染疾患及び潜在性結核の有無を鑑別し診断可能であることを立証できる。
【0039】
ここで、本発明は、被検者由来の生物学的な試料から序列番号1のアミノ酸序列からなるルビコン(Rubicon)タンパク質の567番から625番のアミノ酸領域において、リン酸化された残基を検出するステップを含む結核、非結核抗酸菌感染疾患、及び潜在性結核診断のための情報提供方法を提供する。
【0040】
本発明で使用される用語「結核、非結核抗酸菌感染疾患、及び潜在性結核診断のための情報提供方法」は診断のための予備的なステップとして、結核、非結核抗酸菌感染疾患及び潜在性結核の診断のために必要な客観的な基礎情報を提供するものであり、医師の臨床学的な判断又は所見は除外される。
【0041】
本発明において、前記リン酸化されたアミノ酸残基の検出結果、
i)S581及びS585残基のいずれか1つ以上のリン酸化が検出される場合に結核として診断し、ii)S577残基のリン酸化が検出される場合に非結核抗酸菌感染疾患として診断し、及びiii)S583残基のリン酸化が検出される場合に潜在性結核として診断するステップをさらに含んでもよい。
【0042】
本発明において、前記被検者由来の生物学的な試料は、組織、細胞、全血、血液、血清、唾液、喀痰、脳脊髄液、及び尿などを含んでもよく、好ましくは、細胞、全血、血液又は血清であってもよいが、被検者のRubiconタンパク質のS-R領域内のリン酸化を検出できる試料であれば、これに制限されない。
【0043】
前記リン酸化された残基の検出は、ウエスタンブロッティング(western blotting)、放射免疫分析法(radioimmunoassay;RIA)、放射免疫拡散法(radioimmunodiffusion)、酵素免疫分析法(ELISA)、免疫沈降法(immunoprecipitation)、フローサイトメトリー(flow cytometry)、免疫蛍光染色法(immunofluorescence)、オクタロニー免疫拡散法(ouchterlony immunodiffusion)、補体固定分析法(complement fixation assay)及びプロテインチップ(protein chip)からなる群より選択される1種以上の方法によって実行されてもよい。
【0044】
一方、本発明者は、実施形態によって各結核患者由来の血清試料でRubiconタンパク質の発現レベルをウエスタンブロット及びELISAを介して分析した。その結果、活動性結核患者-初治療(E-TB)及び薬物治療に失敗した慢性難治性結核患者(CR-TB)の血清ではRubiconタンパク質の発現が増加した一方、結核非感染者(HC)及び治療された結核患者(C-TB)の血清では前記タンパク質の発現が増加しないことを確認した(実施形態2-1及び図2a参照)。
【0045】
ここで、本発明の他の様態として、本発明は、ルビコン(Rubicon)遺伝子又は前記遺伝子が暗号化するタンパク質を含む結核診断用バイオマーカー組成物を提供する。
【0046】
また、本発明は、ルビコン(Rubicon)遺伝子のmRNA又は前記遺伝子が暗号化するタンパク質レベルを測定する製剤を含む結核診断用組成物を提供する。
【0047】
また、本発明は、前記組成物を含む結核診断用キットを提供する。
【0048】
本発明において、前記mRNAレベルを測定できる製剤は、前記遺伝子に相補的に結合するセンス及びアンチセンスプライマー、又はプローブであってもよい。
【0049】
本発明で使用される用語、「プライマー(Primer)」とは、DNA合成の起始点となる短い遺伝子の序列として、診断、DNAシークエンシングなどに利用する目的で合成されたオリゴヌクレオチドを意味する。前記プライマーは、通常15~30塩基対の長さで合成して使えるが、使用の目的に応じて変わり、周知の方法でメチル化、キャップ化などに変形させ得る。
【0050】
本発明で使用される用語、「プローブ(Probe)」とは、酵素化学的な分離精製又は合成過程を経て製造された数塩基ないし数百塩基の長さのmRNAと特異的に結合される核酸を意味する。放射性の同位元素や酵素などを標識してmRNAの存在有無を確認することができ、周知の方法でデザインし変形させて使用することができる。
【0051】
本発明において、前記タンパク質レベルを測定できる製剤は、前記タンパク質に特異的に結合する抗体又はアプタマーであってもよい。
【0052】
本発明の結核診断用キットは、分析方法に適切な一種類又はそれ以上の異なる構成要素組成物、溶液又は装置から構成される。
【0053】
また、本発明は、被検者由来の生物学的な試料でルビコン(Rubicon)遺伝子のmRNA又は前記遺伝子が暗号化するタンパク質レベルを測定するステップと、正常対照群と比較して前記被検者のルビコンmRNA又はタンパク質レベルが増加されている場合に結核として診断するステップとを含む、結核診断のための情報提供方法を提供する。
【0054】
本発明で使用される用語「結核診断のための情報提供方法」は、診断のための予備的なステップとして、結核の診断のために必要な客観的な基礎情報を提供し、医師の臨床学的な判断又は所見は除外される。
【0055】
前記被検者由来の生物学的な試料は、組織、細胞、全血、血液、血清、唾液、喀痰、脳脊髄液及び尿などを含むが、これに制限されることはない。
【0056】
前記mRNAレベルは、当業界に知られている通常の方法で重合酵素連鎖反応(PCR)、逆転写重合酵素連鎖反応(RT-PCR)、リアルタイム重合酵素連鎖反応(Real-time PCR)、RNase保護分析法(RNase protection assay;RPA)、マイクロアレイ(microarray)及びノーザンブロッティング(northern blotting)からなる群より選択される1種以上の方法によって測定されるが、これに制限されることはない。
【0057】
前記タンパク質レベルは、当業界に知られている通常の方法でウエスタンブロッティング(western blotting)、放射免疫分析法(radioimmunoassay;RIA)、放射免疫拡散法(radioimmunodiffusion)、酵素免疫分析法(ELISA)、免疫沈降法(immunoprecipitation)、フローサイトメトリー(flow cytometry)、免疫蛍光染色法(immunofluorescence)、オクタロニー免疫拡散法(ouchterlony immunodiffusion)、補体固定分析法(complement fixation assay)及びプロテインチップ(protein chip)からなる群より選択される1種以上の方法によって測定されるが、これに制限されることはない。
【0058】
以下、本発明の理解を助けるために好適な実施形態を提示する。しかし、下記の実施形態は、本発明をより容易に理解するために提供されるものに過ぎず、下記の実施形態によって本発明の内容が限定されることはない。
【実施形態】
【0059】
実施形態1.試験準備及び試験方法
1-1.試験対象者及び試料準備
本発明において、盆唐ソウル大病院の呼吸器内科で結核非感染者、初治療中である活動性結核患者、治療済みの活動性結核患者、及び治療に失敗した難治性結核患者の血液の供与を受けた後、血清を分離し試験を行った。
【0060】
また、健康な人の末梢血液は、大韓赤十字社の京畿道血液院(水原)から研究用血液を購入して行った。準備された血液をリン酸緩衝液(phosphate buffered saline;PBS)と同量で混合した後、Ficoll Histopaque(MP Biomedicals、catalog number:091692254)上に重複させ、1500rpmで30分間遠心分離して白血球層を分離及び末梢血液単核球(peripheral blood mononuclear cell;PBMC)を分離した。
【0061】
1-2.様々なマイコバクテリア菌の培養
本発明の実施形態で利用したマイコバクテリア菌株であるMycobacterium tuberculosis(MTB)ヒト型H37Rv(ATCC 27294)、Mycobacterium tuberculosisヒト型H37Ra(ATCC 25177)、Mycobacterium bovis BCG(ATCC 35737)、Mycobacterium smegmatis(ATCC 700084)、Mycobacteroides abscessus(ATCC 19977)及びMycobacterium avium subsp.avium(ATCC 25291)を確保し、サターン培地で37℃条件下で4~6週間に表面培養して準備した。
【0062】
1-3.ルビコン(Rubicon)S-R領域内のリン酸化検出用の抗体製造
本発明者は、図1に示したようなRubiconタンパク質のS-R(Serine-Rich)領域(aa567-625)内のリン酸化を特異的に検出するための抗体を製造しようと試み、そのために前記領域内のリン酸化される部位を含むペプチドを用いてAntagene Inc.(アメリカ)を介してルビコンリン酸化抗体を生産及び精製した。
【0063】
簡単に、リン酸化部位が変形された10mgの各ペプチドをkeyhole Limpets Hemocyanin(KLH)と結合させた後ウサギ2匹に注入した。次に、抗体製造の免疫標準プロトコルを用いて70日後にウサギ2匹から抗血清を収得した。次に、100ml以上の収得された抗血清を用いて2つのカラム親和性の精製を進めることで、2匹のウサギから5-10mgを取得し、精製されたリン酸化特異的抗体を収得し、ここで精製された抗体は、ELISAを介してリン酸化されていない部位に対して交差反応を示していないことが確認された(データは提示していない)。前記Rubiconリン酸化特異的抗体製造に利用された各ペプチド序列は下記の通りである。
1)Cys-FSSRD(p)SAQLSDSGSA(S577)
2)Cys-RDSAQL(p)SDSGSADEV(S581)
3)Cys-FSSRDSAQLSD(p)SGSA(S583)
4)Cys-RDSAQLSDSG(p)SADEV(S585)
【0064】
前記過程を介して本発明では、関連する研究グループのうち唯一のRubicon S-R領域内のリン酸化媒介p22phoxとの相互作用のメカニズム究明を通したマウス由来のリン酸化特異的-ペプチドを利用した非商用化抗体を製造及び確保した。
【0065】
実施形態2.結核患者の検体及びマイコバクテリア菌株別Rubicon S-R領域の差等的なリン酸化の確認
【0066】
2-1.結核患者の検体別Rubicon S-R領域内のセリン残基の差等的なリン酸化の確認
本発明者は、上記の実施形態1-1により各結核患者から血液が供与されて血清(serum)試料を準備した後、それぞれのRubicon抗体及び上記の実施形態1-3で製造したRubiconセリン(Serine;S)残基のリン酸化検出抗体を用いて免疫ブロッティング及びELISAを実施した。
【0067】
免疫ブロッティングは、下記の過程により行われる。具体的に、各サンプルをSDS-ポリアクリルアミドゲルの電気泳動(SDS-polyacrylamide gel electrophoresis;SDS-PAGE)で変成させ、PVDF膜(Bio-Rad)に移動させた。次に、前記PVDF膜を特定の1次抗体、好ましくは、Rubicon抗体又はRubiconセリン残基のリン酸化特異的抗体と反応させた後、1次抗体に特異的に結合する2次抗体と反応させてから、抗体結合を化学発光(ECL;Millipore)によって視覚化し、Vilber chemiluminescence analyzer(Fusion SL 3;Vilber Lourmat)で信号を検出した。ELISAは、製造者が推奨したプロトコルによりヒトRubicon(RUBCN)ELISA Kit(Abbexa)で細胞培養の上清液と正常人及び結核患者由来の血清でRubiconタンパク質のレベルを測定した。
【0068】
その結果、図2aに示すように、活動性結核患者-初治療(early pulmonary TB patients;E-TB)及び薬物治療に失敗した慢性難治性結核患者(chronic refractory pulmonary TB patients;CR-TB)の血清では免疫ブロッティング及びELISAを介してRubiconタンパク質の発現が増加したことが確認された。
【0069】
また、Rubiconセリン残基のリン酸化態様を比較した結果、活動性結核患者-初治療(E-TB)及び慢性難治性結核患者-治療失敗(CR-TB)の血清試料でRubicon(S581)リン酸化が共通に観察された。さらに、活動性結核患者-初治療ではRubicon(S585)リン酸化も共に観察された。これに対して、結核非感染者(Healthy Control;HC)及び活動性結核患者-治療完了(cured pulmonary TB patients;C-TB)の場合には、前記Rubicon S-R領域内のセリン残基のリン酸化が生じないことが確認された。
【0070】
2-2.マイコバクテリア菌株別Rubicon S-R領域内のセリン残基の差等的なリン酸化の確認
さらに、本発明者は、上記の実施形態1-1で取得された健康なヒト由来の末梢血液単核球に実施形態1-2で培養した様々なマイコバクテリア菌株を感染させた後、Rubicon S-R領域内のセリン残基のリン酸化態様を比較分析した。
【0071】
その結果、図2bから分かるように、マイコバクテリアを感染させた場合には全てRubiconタンパク質の発現が増加したことが分かった。また、リン酸化態様を観察した結果、結核菌であるMTB H37Rvを感染させた場合にはRubicon(S581)及びRubicon(S585)リン酸化が確認され、2種の非結核抗酸菌(NTM)の肺疾患誘発菌株(M.abscessus及びM.avium)をそれぞれ感染させた場合にはRubicon(S577)リン酸化が検出され、ワクチン菌株BCG及び非病原性の結核菌であるM.smegmatisをそれぞれ感染させた場合にはRubicon(S583)リン酸化が確認された。
【0072】
したがって、前記結果は、Rubiconタンパク質の発現増加を通じて結核診断が可能であり、Rubicon S-R領域内の差等的なリン酸化の態様を確認することによりMTB感染による肺結核、非結核抗酸菌感染疾患及び潜在性結核の有無を診断可能であることを立証できる。
【0073】
前記で前述した本発明の説明は例示のためのもので、本発明が属する技術分野の通常の知識を有する者は、本発明の技術的な思想や必須の特徴を変更しなくて異なる具体的な形態に容易に変形可能であることを理解できるのであろう。したがって、以上で記述した実施形態は全ての面で例示的なものであり、限定的ではないことを理解しなければならない。
【産業上の利用可能性】
【0074】
本発明は、結核、非結核抗酸菌感染疾患、及び潜在性結核を正確かつ迅速に鑑別して診断できるバイオマーカーを提供し、結核原因菌の迅速な診断が必要な現場で臨床診断のために用いられる。
【0075】
[配列表]
<110> Industry-University Cooperation Foundation Hanyang University ERICA Campus
<120>Biomarker for diagnosing tuberculosis, nontuberculous mycobacterium infection and latent tuberculosis and use thereof
<130>P4302
<160> 1

<210> SEQ ID NO:1
<211> Length 972
<212> Type PRT
<213> Homo sapiens_Rubicon
<400> Sequence 1
Met Arg Pro Glu Gly Ala Gly Met Glu Leu Gly Gly Gly Glu Glu Arg Leu Pro Glu Glu Ser Arg Arg Glu His Trp Gln Leu Leu Gly Asn Leu Lys Thr Thr Val Glu Gly Leu Val Ser Thr Asn Ser Pro Asn Val Trp Ser Lys Tyr Gly Gly Leu Glu Arg Leu Cys Arg Asp Met Gln Ser Ile Leu Tyr His Gly Leu Ile Arg Asp Gln Ala Cys Arg Arg Gln Thr Asp Tyr Trp Gln Phe Val Lys Asp Ile Arg Trp Leu Ser Pro His Ser Ala Leu His Val Glu Lys Phe Ile Ser Val His Glu Asn Asp Gln Ser Ser Ala Asp Gly Ala Ser Glu Arg Ala Val Ala Glu Leu Trp Leu Gln His Ser Leu Gln Tyr His Cys Leu Ser Ala Gln Leu Arg Pro Leu Leu Gly Asp Arg Gln Tyr Ile Arg Lys Phe Tyr Thr Asp Ala Ala Phe Leu Leu Ser Asp Ala His Val Thr Ala Met Leu Gln Cys Leu Glu Ala Val Glu Gln Asn Asn Pro Arg Leu Leu Ala Gln Ile Asp Ala Ser Met Phe Ala Arg Lys His Glu Ser Pro Leu Leu Val Thr Lys Ser Gln Ser Leu Thr Ala Leu Pro Ser Ser Thr Tyr Thr Pro Pro Asn Ser Tyr Ala Gln His Ser Tyr Phe Gly Ser Phe Ser Ser Leu His Gln Ser Val Pro Asn Asn Gly Ser Glu Arg Arg Ser Thr Ser Phe Pro Leu Ser Gly Pro Pro Arg Lys Pro Gln Glu Ser Arg Gly His Val Ser Pro Ala Glu Asp Gln Thr Ile Gln Ala Pro Pro Val Ser Val Ser Ala Leu Ala Arg Asp Ser Pro Leu Thr Pro Asn Glu Met Ser Ser Ser Thr Leu Thr Ser Pro Ile Glu Ala Ser Trp Val Ser Ser Gln Asn Asp Ser Pro Gly Asp Ala Ser Glu Gly Pro Glu Tyr Leu Ala Ile Gly Asn Leu Asp Pro Arg Gly Arg Thr Ala Ser Cys Gln Ser His Ser Ser Asn Ala Glu Ser Ser Ser Ser Asn Leu Phe Ser Ser Ser Ser Ser Gln Lys Pro Asp Ser Ala Ala Ser Ser Leu Gly Asp Gln Glu Gly Gly Gly Glu Ser Gln Leu Ser Ser Val Leu Arg Arg Ser Ser Phe Ser Glu Gly Gln Thr Leu Thr Val Thr Ser Gly Ala Lys Lys Ser His Ile Arg Ser His Ser Asp Thr Ser Ile Ala Ser Arg Gly Ala Pro Glu Ser Cys Asn Asp Lys Ala Lys Leu Arg Gly Pro Leu Pro Tyr Ser Gly Gln Ser Ser Glu Val Ser Thr Pro Ser Ser Leu Tyr Met Glu Tyr Glu Gly Gly Arg Tyr Leu Cys Ser Gly Glu Gly Met Phe Arg Arg Pro Ser Glu Gly Gln Ser Leu Ile Ser Tyr Leu Ser Glu Gln Asp Phe Gly Ser Cys Ala Asp Leu Glu Lys Glu Asn Ala His Phe Ser Ile Ser Glu Ser Leu Ile Ala Ala Ile Glu Leu Met Lys Cys Asn Met Met Ser Gln Cys Leu Glu Glu Glu Glu Val Glu Glu Glu Asp Ser Asp Arg Glu Ile Gln Glu Leu Lys Gln Lys Ile Arg Leu Arg Arg Gln Gln Ile Arg Thr Lys Asn Leu Leu Pro Met Tyr Gln Glu Ala Glu His Gly Ser Phe Arg Val Thr Ser Ser Ser Ser Gln Phe Ser Ser Arg Asp Ser Ala Gln Leu Ser Asp Ser Gly Ser Ala Asp Glu Val Asp Glu Phe Glu Ile Gln Asp Ala Asp Ile Arg Arg Asn Thr Ala Ser Ser Ser Lys Ser Phe Val Ser Ser Gln Ser Phe Ser His Cys Phe Leu His Ser Thr Ser Ala Glu Ala Val Ala Met Gly Leu Leu Lys Gln Phe Glu Gly Met Gln Leu Pro Ala Ala Ser Glu Leu Glu Trp Leu Val Pro Glu His Asp Ala Pro Gln Lys Leu Leu Pro Ile Pro Asp Ser Leu Pro Ile Ser Pro Asp Asp Gly Gln His Ala Asp Ile Tyr Lys Leu Arg Ile Arg Val Arg Gly Asn Leu Glu Trp Ala Pro Pro Arg Pro Gln Ile Ile Phe Asn Val His Pro Ala Pro Thr Arg Lys Ile Ala Val Ala Lys Gln Asn Tyr Arg Cys Ala Gly Cys Gly Ile Arg Thr Asp Pro Asp Tyr Ile Lys Arg Leu Arg Tyr Cys Glu Tyr Leu Gly Lys Tyr Phe Cys Gln Cys Cys His Glu Asn Ala Gln Met Ala Ile Pro Ser Arg Val Leu Arg Lys Trp Asp Phe Ser Lys Tyr Tyr Val Ser Asn Phe Ser Lys Asp Leu Leu Ile Lys Ile Trp Asn Asp Pro Leu Phe Asn Val Gln Asp Ile Asn Ser Ala Leu Tyr Arg Lys Val Lys Leu Leu Asn Gln Val Arg Leu Leu Arg Val Gln Leu Cys His Met Lys Asn Met Phe Lys Thr Cys Arg Leu Ala Lys Glu Leu Leu Asp Ser Phe Asp Thr Val Pro Gly His Leu Thr Glu Asp Leu His Leu Tyr Ser Leu Asn Asp Leu Thr Ala Thr Arg Lys Gly Glu Leu Gly Pro Arg Leu Ala Glu Leu Thr Arg Ala Gly Ala Thr His Val Glu Arg Cys Met Leu Cys Gln Ala Lys Gly Phe Ile Cys Glu Phe Cys Gln Asn Glu Asp Asp Ile Ile Phe Pro Phe Glu Leu His Lys Cys Arg Thr Cys Glu Glu Cys Lys Ala Cys Tyr His Lys Ala Cys Phe Lys Ser Gly Ser Cys Pro Arg Cys Glu Arg Leu Gln Ala Arg Arg Glu Ala Leu Ala Arg Gln Ser Leu Glu Ser Tyr Leu Ser Asp Tyr Glu Glu Glu Pro Ala Glu Ala Leu Ala Leu Glu Ala Ala Val Leu Glu Ala Thr
図1
図2a
図2b
図3
【配列表】
2023551767000001.app
【国際調査報告】