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特表2023-551790組換え微生物、その調製方法及びタガトースの生産におけるその使用
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  • 特表-組換え微生物、その調製方法及びタガトースの生産におけるその使用 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-12-13
(54)【発明の名称】組換え微生物、その調製方法及びタガトースの生産におけるその使用
(51)【国際特許分類】
   C12N 1/19 20060101AFI20231206BHJP
   C12N 1/21 20060101ALI20231206BHJP
   C12N 15/54 20060101ALI20231206BHJP
   C12N 15/61 20060101ALI20231206BHJP
   C12P 19/02 20060101ALI20231206BHJP
   C12N 9/16 20060101ALI20231206BHJP
   C12N 9/12 20060101ALI20231206BHJP
   C12N 9/90 20060101ALI20231206BHJP
   C12N 15/55 20060101ALI20231206BHJP
【FI】
C12N1/19 ZNA
C12N1/21
C12N15/54
C12N15/61
C12P19/02
C12N9/16 B
C12N9/12
C12N9/90
C12N15/55
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023528015
(86)(22)【出願日】2021-10-18
(85)【翻訳文提出日】2023-05-02
(86)【国際出願番号】 CN2021124427
(87)【国際公開番号】W WO2022095684
(87)【国際公開日】2022-05-12
(31)【優先権主張番号】202011224203.0
(32)【優先日】2020-11-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】517265912
【氏名又は名称】中国科学院天津工業生物技術研究所
(71)【出願人】
【識別番号】523166348
【氏名又は名称】天工生物科技(天津)有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【弁理士】
【氏名又は名称】林 一好
(74)【代理人】
【識別番号】100165157
【弁理士】
【氏名又は名称】芝 哲央
(74)【代理人】
【識別番号】100205659
【弁理士】
【氏名又は名称】齋藤 拓也
(74)【代理人】
【識別番号】100126000
【弁理士】
【氏名又は名称】岩池 満
(74)【代理人】
【識別番号】100185269
【弁理士】
【氏名又は名称】小菅 一弘
(72)【発明者】
【氏名】馬 延和
(72)【発明者】
【氏名】シー ティン
(72)【発明者】
【氏名】宋 雲洪
(72)【発明者】
【氏名】チャン ティン
(72)【発明者】
【氏名】李 運杰
【テーマコード(参考)】
4B064
4B065
【Fターム(参考)】
4B064AF02
4B064CC24
4B064DA03
4B064DA10
4B065AA19X
4B065AA24X
4B065AA26X
4B065AA26Y
4B065AA30X
4B065AA80X
4B065AB01
4B065AC14
4B065BA02
4B065CA20
4B065CA41
4B065CA44
(57)【要約】
遺伝子工学的に改変された組み換え微生物及びタガトースの生産におけるその使用、該組み換え微生物の調製方法、並びに、タガトース生産菌株及びタガトースの生産方法を提供する。該組み換え微生物は、グルコース又はグリセロールとグルコースを基質としてタガトースを生産することを可能とし、転化によるタガトースの生産効率が高く、多酵素精製プロセスのステップを不要としない。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
組換え微生物であって、
前記組換え微生物は野生型微生物と比べて、
(a)低下又は解消したホスホトランスフェラーゼ系(phosphotransferase system)のグルコース特異的トランスファータンパク質のタンパク質活性及び/又はそのコード遺伝子の発現レベル
(b)向上させたタガトース-6-リン酸エピメラーゼ(tagatose-6-phosphate epimerase)の酵素活性及び/又はそのコード遺伝子の発現レベル
(c)向上させたタガトース-6-リン酸ホスファターゼ(tagatose-6-phosphate phosphatase)の酵素活性及び/又はそのコード遺伝子の発現レベルの少なくとも1つに示される特徴を有する、前記組換え微生物。
【請求項2】
前記グルコース特異的トランスファータンパク質は、
(a)SEQ ID NO:1又はSEQ ID NO:3に示されるアミノ酸配列を含み、かつグルコース特異的トランスファータンパク質活性を有するポリペプチド(polypeptide)、
(a)SEQ ID NO:1又はSEQ ID NO:3に示されるアミノ酸配列について1つ又は複数のアミノ酸を置換、反復、欠失又は追加し、かつグルコース特異的トランスファータンパク質活性を有するポリペプチド、
(a)SEQ ID NO:2又はSEQ ID NO:4に示されるヌクレオチド配列によりコードされるポリペプチドのいずれか1項に示される群から選択され、
好ましくは、前記タガトース-6-リン酸エピメラーゼは、
(b)SEQ ID NO:5に示されるアミノ酸配列を含み、かつタガトース-6-リン酸エピメラーゼ活性を有するポリペプチド、
(b)SEQ ID NO:5に示されるアミノ酸配列について1つ又は複数のアミノ酸を置換、反復、欠失又は追加し、かつタガトース-6-リン酸エピメラーゼ活性を有するポリペプチド、
(b)SEQ ID NO:6に示されるヌクレオチド配列によりコードされるポリペプチドのいずれか1つに示される群から選択され、
好ましくは、前記タガトース-6-リン酸ホスファターゼは、
(c)SEQ ID NO:7又はSEQ ID NO:54に示されるアミノ酸配列を含み、かつタガトース-6-リン酸ホスファターゼ活性を有するポリペプチド、
(c)SEQ ID NO:7又はSEQ ID NO:54に示されるアミノ酸配列について1つ又は複数のアミノ酸を置換、反復、欠失又は追加し、かつタガトース-6-リン酸ホスファターゼ活性を有するポリペプチド、
(c)SEQ ID NO:8又はSEQ ID NO:55に示されるヌクレオチド配列によりコードされるポリペプチドのいずれか1つに示される群から選択される請求項1に記載の組換え微生物。
【請求項3】
前記組換え微生物は野生型微生物と比べて、
(d)向上させたグルコキナーゼ(glucokinase)の酵素活性及び/又はそのコード遺伝子の発現レベル、
(e)向上させたグルコース-6-リン酸イソメラーゼ(glucose-6-phosphate isomerase)の酵素活性及び/又はそのコード遺伝子の発現レベル、
(f)低下又は解消したフルクトース-6-リン酸キナーゼ(fructose-6-phosphate kinase)の酵素活性及び/又はそのコード遺伝子の発現レベル、
(g)低下又は解消したピルビン酸キナーゼ(pyruvate kinase)の酵素活性及び/又はそのコード遺伝子の発現レベル、
(h)低下又は解消したホスホグルコムターゼ(phosphoglucomutase)の酵素活性及び/又はそのコード遺伝子の発現レベル、
(i)低下又は解消したグルコース-6-リン酸デヒドロゲナーゼ(glucose-6-phosphate dehydrogenase)の酵素活性及び/又はそのコード遺伝子の発現レベル、
(j)低下又は解消したHPrキナーゼ(kinase)の酵素活性及び/又はそのコード遺伝子の発現レベルの少なくとも1つに示される特徴をさらに有する
請求項1又は2に記載の組換え微生物。
【請求項4】
前記グルコキナーゼは、
(d)SEQ ID NO:9又はSEQ ID NO:11に示されるアミノ酸配列を含み、かつグルコキナーゼ活性を有するポリペプチド、
(d)SEQ ID NO:9又はSEQ ID NO:11に示されるアミノ酸配列について1つ又は複数のアミノ酸を置換、反復、欠失又は追加し、かつグルコキナーゼ活性を有するポリペプチド、
(d)SEQ ID NO:10又はSEQ ID NO:12に示されるヌクレオチド配列によりコードされるポリペプチドのいずれか1つに示される群から選択され、
好ましくは、前記グルコース-6-リン酸イソメラーゼは、
(e)SEQ ID NO:13又はSEQ ID NO:15に示されるアミノ酸配列を含み、かつグルコース-6-リン酸イソメラーゼ活性を有するポリペプチド、
(e)SEQ ID NO:13又はSEQ ID NO:15に示されるアミノ酸配列について1つ又は複数のアミノ酸を置換、反復、欠失又は追加し、かつグルコース-6-リン酸イソメラーゼ活性を有するポリペプチド、
(e)SEQ ID NO:14又はSEQ ID NO:16に示されるヌクレオチド配列によりコードされるポリペプチドのいずれか1つに示される群から選択される
請求項3に記載の組換え微生物。
【請求項5】
前記組換え微生物は、大腸菌、コリネバクテリウム・グルタミカム(Corynebacterium glutamicum)、枯草菌(Bacillus subtilis)、乳酸菌又はサッカロマイセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)に由来する
請求項1~4のいずれか1項に記載の組換え微生物。
【請求項6】
野生型微生物内のホスホトランスフェラーゼ系のグルコース特異的トランスファータンパク質のコード遺伝子に対して遺伝子ノックアウト又はノックダウンを行うステップと、
タガトース-6-リン酸エピメラーゼ及びタガトース-6-リン酸ホスファターゼを発現させる組換え発現ベクターを前記組換え微生物に導入するステップ、又は、前記タガトース-6-リン酸エピメラーゼ及び前記タガトース-6-リン酸ホスファターゼをそれぞれ発現させる組換え発現ベクターを前記組換え微生物に導入するステップと、を含む
請求項1~5のいずれか1項に記載の組換え微生物の調製方法。
【請求項7】
前記組換え微生物内のグルコキナーゼのコード遺伝子の発現レベルを向上させるステップと、
前記組換え微生物内のグルコース-6-リン酸イソメラーゼのコード遺伝子の発現レベルを向上させるステップと、
前記組換え微生物内のフルクトース-6-リン酸キナーゼのコード遺伝子をノックアウト又はノックダウンするステップと、
前記組換え微生物内のピルビン酸キナーゼのコード遺伝子をノックアウト又はノックダウンするステップと、
前記組換え微生物内のホスホグルコムターゼのコード遺伝子をノックアウト又はノックダウンするステップと、
前記組換え微生物内のグルコース-6-リン酸デヒドロゲナーゼのコード遺伝子をノックアウト又はノックダウンするステップと、
前記組換え微生物内のHPrキナーゼのコード遺伝子をノックアウト又はノックダウンするステップとの少なくとも1つをさらに含む請求項6に記載の調製方法。
【請求項8】
請求項1~5のいずれか1項に記載の組換え微生物、又は請求項6又は7に記載の方法で調製された組換え微生物の、タガトースの生産における使用。
【請求項9】
タガトース生産菌株であって、
前記タガトース生産菌株は、請求項1~5のいずれか1項に記載の組換え微生物、又は請求項6又は7に記載の方法で調製された組換え微生物である、前記タガトース生産菌株。
【請求項10】
前記タガトース生産菌株は、グルコース又はグルコースとグリセロール(glycerol)を基質とし、
好ましくは、前記タガトース生産菌株は大腸菌、コリネバクテリウム・グルタミカム、枯草菌、乳酸菌又はサッカロマイセス・セレビシエに由来する
請求項9に記載のタガトース生産菌株。
【請求項11】
タガトースの生産方法であって、
グルコース又はグルコースとグリセロールを基質とし、請求項1~5のいずれか1項に記載の組換え微生物、請求項6又は7に記載の方法で調製された組換え微生物、又は請求項9~10のいずれか1項に記載のタガトース生産菌株を利用して発酵反応を行うステップを含む、前記タガトースの生産方法。
【請求項12】
前記発酵反応終了後、前記発酵反応液からタガトースを分離するステップをさらに含む
請求項11に記載のタガトースの生産方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、生物技術及び遺伝子工学の技術分野に属し、具体的には、組換え微生物、組換え微生物の調製方法及びタガトースの生産におけるその使用、並びにタガトース生産菌株及びタガトースの生産方法に関する。
【背景技術】
【0002】
タガトース(Tagatose)は天然に存在する希少なケトヘキソース(ketohexose)であり、アルドースのガラクトース(aldose galactose)の同分異性体でありながら、フルクトースのエピマー(epimer)でもある。タガトースは甘味特性がショ糖に似ており、カロリーがショ糖の3分の1程度で、低カロリー甘味料と呼ばれている。天然のタガトースは主に酸乳や粉ミルクなどの乳製品に含まれている。タガトースは、非常に新鮮でピュアな甘さを提供し、フルクトースに似た味の特徴を持つ。研究により、タガトースは低カロリー、低糖質指数、抗虫歯、抗酸化、プレバイオティクス(Prebiotics)、腸管機能改善、免疫調節、薬物前駆体(Prodrug)などの重要な生理機能を持ち、食品、飲料、医薬、健康維持などの分野に広く応用でき、巨大な経済価値を持つ[1]
【0003】
現在、タガトースの生産方法には主に化学合成法と生物転化法の2種類がある。化学合成法は、主としてガラクトース(galactose)を原料とし、アルカリ金属塩を触媒としてガラクトースを異性化してタガトース-金属水酸化物複合体沈殿を生成し、次に、酸を用いて中和してタガトースを得ることである。化学合成法は、エネルギー消費量が多く、副反応が多く、産物が複雑であるため、タガトースの分離と精製の過程が困難であり、酸、アルカリ、金属イオンの排出により化学汚染も生じやすい。
【0004】
化学合成法に比べ、生物転化法は、転化効率が高く、特異性が強く、副産物が少なく、精製ステップが簡単であるため、タガトースを生産する主要な手段となっている。生物転化法は、主にガラクチトール(Galactitol)又はガラクトースを原料とし、酵素又は微生物の触媒作用により対応する基質をタガトースに転化することである。しかし、ガラクチトールは、価格が高く、しかも入手されにくいため、工業的生産の原料として使用するのに適さない。ガラクトースを原料とし、異性化、脱塩、脱色、分離、濃縮、結晶化などのステップを経てタガトース純品を製造することはタガトースの主流の生産方法である。しかし、ガラクトースは完全にタガトースに転化できず、最終的に得られた産物はガラクトースとタガトースの混合物であり、複雑な分離プロセスによりそこからタガトース純品を分離する必要があり、プロセスの難度とコストを増加させ、一方、ガラクトースの価格が高いことの影響により、タガトースの生産コストが高くなっている[2-4]。そのため、どのようにタガトースの転化効率を確保すると同時に、タガトースを生産するプロセスのコストと難度を下げることは、現在解決すべき重要な課題である。
【0005】
特許文献1には、多酵素触媒転化によるタガトースの生産方法が開示されており、触媒用酵素は、ホスホフルクトキナーゼ(fructokinase)、6-ホスホタガートエピメラーゼ(6-PhosphoTagato epimerase)、6-ホスホタガートホスファターゼ(6-PhosphoTagato phosphatase)であり、フルクトースをタガトースに転化することができる。しかし、ホスホフルクトキナーゼがフルクトースをフルクトース6-リン酸(fructose 6-phosphate)に転化する過程を触媒するには、追加のATPを添加して、フルクトースに対して基質リン酸化を行う必要があるため、高価なATPを添加すると、タガトースの生産コストが高くなり、工業的な生産価値がない。
【0006】
特許文献2には、改良されたヘキスロン酸C4-エピメラーゼ(Hexuronate C4-epimerase)転化活性を有するヘキスロン酸C4-エピメラーゼ変異体が開示されており、ヘキスロン酸C4-エピメラーゼ変異体はフルクトースをタガトースに転化することができる。しかし、改変されたヘキスロン酸C4-エピメラーゼ変異体は依然として活性が低く、タガトースの転化効率が低く、工業的生産の需要を満たすことができないという問題がある。
【0007】
特許文献3には、デンプン、マルトデキストリン(maltodextrin)、スクロース等を基質として、これらを転化してタガトースを生産するプロセスに有用であるタガトース-6-リン酸ホスファターゼ(tagatose-6-phosphate phosphatase)が開示されている。しかし、このタガトース-6-リン酸ホスファターゼは依然として酵素活性が低く、実際の工業的生産における利用価値が低いという問題がある。
【0008】
特許文献4には、タガトースの調製方法が開示されており、デンプン又はデンプン誘導体を基質とし、α-グルカンホスホリラーゼ(a-glucan phosphatase)、ホスホグルコムターゼ(Phosphoglucomutase)、ホスホグルコースイソメラーゼ(Phosphoglucose isomarase)、タガトース-6-リン酸エピメラーゼ、タガトース-6-リン酸ホスファターゼ及び無機リン酸根イオンを添加して、多酵素分子マシンを構築し、多酵素触媒反応を行い、タガトースを得る。引用文献4の調製方法は、原料の転化率とタガトースの収率を向上させるが、タガトースを合成した後には複数の酵素の混合液からタガトースを精製する必要があり、精製プロセスのステップの数を増加し、その難度を向上させる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】[1] Oh D-K: Tagatose: properties,applications,and biotechnological processes. App. Microbiol. Biotechnol. 2007,76:1-8.
【非特許文献2】[2] Rhimi M,Aghajari N,Juy M,Chouayekh H,Maguin E,Haser R,Bejar S: Rational design of Bacillus stearothermophilus US100l-arabinose isomerase: Potential applications for d-tagatose production. Biochim. 2009,91:650-653.
【非特許文献3】[3] Oh H-J,Kim H-J,Oh D-K: Increase in d-tagatose production rate by site-directed mutagenesis of l-arabinose isomerase from Geobacillus thermodenitrificans. Biotechnol. Lett. 2006,28:145-149.
【非特許文献4】[4] Bosshart A,Hee CS,Bechtold M,Schirmer T,Panke S: Directed divergent evolution of a thermostable D-tagatose epimerase towards improved activity for two hexose substrates. ChemBi℃hem 2015,16:592-601.
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】WO2015016544A1
【特許文献2】CN109415715A
【特許文献3】WO2018004310A1
【特許文献4】CN106399427A
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
従来技術に存在する技術的課題、例えば、原料コストが高く、転化率が低く、多酵素精製ステップが必要であり、タガトースの生産プロセスが複雑であるという従来のタガトースの生産方法に存在する欠陥に鑑み、本開示は、グリセロール(glycerol)とグルコースを基質として転化し、タガトースを生産することができ、しかも、転化効率が高く、環境にやさしく、多酵素精製を必要とせず、生産コストが低いような利点があり、タガトースの工業的生産に好適である組換え微生物を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0012】
(1)組換え微生物であって、
前記組換え微生物は野生型微生物と比べて、
(a)低下又は解消したホスホトランスフェラーゼ系(phosphotransferase system)のグルコース特異的トランスファータンパク質のタンパク質活性及び/又はそのコード遺伝子の発現レベル、
(b)向上させたタガトース-6-リン酸エピメラーゼ(tagatose-6-phosphate epimerase)の酵素活性及び/又はそのコード遺伝子の発現レベル、
(c)向上させたタガトース-6-リン酸ホスファターゼ(tagatose-6-phosphate phosphatase)の酵素活性及び/又はそのコード遺伝子の発現レベルの少なくとも1つに示される特性を有する。
【0013】
(2)前記グルコース特異的トランスファータンパク質は、
(a)SEQ ID NO:1又はSEQ ID NO:3に示されるアミノ酸配列を含み、かつグルコース特異的トランスファータンパク質活性を有するポリペプチド(polypeptide)、
(a)SEQ ID NO:1又はSEQ ID NO:3に示されるアミノ酸配列について1つ又は複数のアミノ酸を置換、反復、欠失又は追加し、かつグルコース特異的トランスファータンパク質活性を有するポリペプチド、
(a)SEQ ID NO:2又はSEQ ID NO:4に示されるヌクレオチド配列によりコードされるポリペプチドのいずれか1つに示される群から選択され、
好ましくは、前記タガトース-6-リン酸エピメラーゼは、
(b)SEQ ID NO:5に示されるアミノ酸配列を含み、かつタガトース-6-リン酸エピメラーゼ活性を有するポリペプチド、
(b)SEQ ID NO:5に示されるアミノ酸配列について1つ又は複数のアミノ酸を置換、反復、欠失又は追加し、かつタガトース-6-リン酸エピメラーゼ活性を有するポリペプチド、
(b)SEQ ID NO:6に示されるヌクレオチド配列によりコードされるポリペプチドのいずれか1つに示される群から選択され、
好ましくは、前記タガトース-6-リン酸ホスファターゼは、
(c)SEQ ID NO:7又はSEQ ID NO:54に示されるアミノ酸配列を含み、かつタガトース-6-リン酸ホスファターゼ活性を有するポリペプチド、
(c)SEQ ID NO:7又はSEQ ID NO:54に示されるアミノ酸配列について1つ又は複数のアミノ酸を置換、反復、欠失又は追加し、かつタガトース-6-リン酸ホスファターゼ活性を有するポリペプチド、
(c)SEQ ID NO:8又はSEQ ID NO:55に示されるヌクレオチド配列によりコードされるポリペプチドのいずれか1つに示される群から選択される(1)に記載の組換え微生物。
【0014】
(3)前記組換え微生物は野生型微生物と比べて、
(d)向上させたグルコキナーゼ(glucokinase)の酵素活性及び/又はそのコード遺伝子の発現レベル、
(e)向上させたグルコース-6-リン酸イソメラーゼ(glucose-6-phosphate isomerase)の酵素活性及び/又はそのコード遺伝子の発現レベル、
(f)低下又は解消したフルクトース-6-リン酸キナーゼ(fructose-6-phosphate kinase)の酵素活性及び/又はそのコード遺伝子の発現レベル、
(g)低下又は解消したピルビン酸キナーゼ(pyruvate kinase)の酵素活性及び/又はそのコード遺伝子の発現レベル、
(h)低下又は解消したホスホグルコムターゼ(phosphoglucomutase)の酵素活性及び/又はそのコード遺伝子の発現レベル、
(i)低下又は解消したグルコース-6-リン酸デヒドロゲナーゼ(glucose-6-phosphate dehydrogenase)の酵素活性及び/又はそのコード遺伝子の発現レベル、
(j)低下又は解消したHPrキナーゼ(kinase)の酵素活性及び/又はそのコード遺伝子の発現レベルの少なくとも1つに示される特徴をさらに有する(1)又は(2)に記載の組換え微生物。
【0015】
(4)前記グルコキナーゼは、
(d)SEQ ID NO:9又はSEQ ID NO:11に示されるアミノ酸配列を含み、かつグルコキナーゼ活性を有するポリペプチド、
(d)SEQ ID NO:9又はSEQ ID NO:11に示されるアミノ酸配列について1つ又は複数のアミノ酸を置換、反復、欠失又は追加し、かつグルコキナーゼ活性を有するポリペプチド、
(d)SEQ ID NO:10又はSEQ ID NO:12に示されるヌクレオチド配列によりコードされるポリペプチドのいずれか1つに示される群から選択され、
好ましくは、前記グルコース-6-リン酸イソメラーゼは、
(e)SEQ ID NO:13又はSEQ ID NO:15に示されるアミノ酸配列を含み、かつグルコース-6-リン酸イソメラーゼ活性を有するポリペプチド、
(e)SEQ ID NO:13又はSEQ ID NO:15に示されるアミノ酸配列について1つ又は複数のアミノ酸を置換、反復、欠失又は追加し、かつグルコース-6-リン酸イソメラーゼ活性を有するポリペプチド、
(e)SEQ ID NO:14又はSEQ ID NO:16に示されるヌクレオチド配列によりコードされるポリペプチドのいずれか1つに示される群から選択されるポリペプチド(3)に記載の組換え微生物。
【0016】
(5)大腸菌、コリネバクテリウム・グルタミカム(Corynebacterium glutamicum)、枯草菌(Bacillus subtilis)、乳酸菌又はサッカロマイセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)に由来する(1)~(4)のいずれか1項に記載の組換え微生物。
【0017】
(6)野生型微生物内のホスホトランスフェラーゼ系のグルコース特異的トランスファータンパク質のコード遺伝子に対して遺伝子ノックアウト又はノックダウンを行うステップと、
タガトース-6-リン酸エピメラーゼ及びタガトース-6-リン酸ホスファターゼを発現させる組換え発現ベクターを前記組換え微生物に導入するステップ、又は、前記タガトース-6-リン酸エピメラーゼ及び前記タガトース-6-リン酸ホスファターゼをそれぞれ発現させる組換え発現ベクターを前記組換え微生物に導入するステップと、を含む(1)~(5)のいずれか1項に記載の組換え微生物の調製方法。
【0018】
(7)前記組換え微生物内のグルコキナーゼのコード遺伝子の発現レベルを向上させるステップと、
前記組換え微生物内のグルコース-6-リン酸イソメラーゼのコード遺伝子の発現レベルを向上させるステップと、
前記組換え微生物内のフルクトース-6-リン酸キナーゼのコード遺伝子をノックアウト又はノックダウンするステップと、
前記組換え微生物内のピルビン酸キナーゼのコード遺伝子をノックアウト又はノックダウンするステップと、
前記組換え微生物内のホスホグルコムターゼのコード遺伝子をノックアウト又はノックダウンするステップと、
前記組換え微生物内のグルコース-6-リン酸デヒドロゲナーゼのコード遺伝子をノックアウト又はノックダウンするステップと、
前記組換え微生物内のHPrキナーゼのコード遺伝子をノックアウト又はノックダウンするステップとの少なくとも1つをさらに含むステップ(6)に記載の調製方法。
【0019】
(8)(1)~(5)のいずれか1項に記載の組換え微生物、又は(6)又は(7)前記方法で調製された組換え微生物のタガトースの生産におけるその使用。
【0020】
(9)タガトース生産菌株であって、前記タガトース生産菌株は、(1)~(5)のいずれか1項に記載の組換え微生物、又は(6)又は(7)に記載の方法で調製された組換え微生物である。
【0021】
(10)前記タガトース生産菌株は、グルコース又はグルコースとグリセロール(glycerol)を基質とし、
好ましくは、大腸菌、コリネバクテリウム・グルタミカム、枯草菌、乳酸菌又はサッカロマイセス・セレビシエに由来する(9)に記載のタガトース生産菌株。
【0022】
(11)タガトースの生産方法であって、グルコース又はグルコースとグリセロールを基質とし、(1)~(5)のいずれか1項に記載の組換え微生物、(6)又は(7)に記載の方法で調製された組換え微生物、又は(9)~(10)のいずれか1項に記載のタガトース生産菌株を利用して発酵反応を行うステップを含む。
【0023】
(12)前記発酵反応終了後、前記発酵反応液からタガトースを分離するステップをさらに含む(11)に記載のタガトースの生産方法。
【発明の効果】
【0024】
一実施形態では、本開示は、ホスホトランスフェラーゼ系のグルコース特異的トランスファータンパク質活性を低下又は解消することにより、組換え微生物がグリセロールを基質として利用することに対するグルコースの抑制作用を低下又は解消し、グリセロールとグルコースを基質としてタガトースを生産することを可能とする組換え微生物を提供する。原料価格が低く、入手されやすく、タガトースの転化効率が高く、多酵素精製プロセスのステップを必要とせず、生産コストを低下させ、環境汚染を低減させ、工業的な応用化値が期待できる。
【0025】
一実施形態では、本開示による組換え微生物の調製方法は、調製過程が簡単で、実現されやすく、グルコースとグリセロールを基質としてタガトースを生産する組換え微生物を得ることができる。
【0026】
一実施形態では、本開示によるタガトース生産菌株は、グリセロールとグルコースを基質とし、これらのうち、グリセロールは炭素源として菌株内代謝を行って菌株の成長に用いられ、これにより、菌株が成長に適切な条件でグルコースを利用してタガトース合成を行い、収率の向上したタガトースが得られる。
【0027】
一実施形態では、本開示によるタガトースの生産方法は、組換え微生物又はタガトース生産菌株を用いて発酵してタガトースを生産するものであり、原料転化効率が高く、タガトース収率が高く、プロセスが簡素化し、コストが低下するという利点を有し、タガトースの工業的生産に適している。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】組換え微生物がグルコースとグリセロールを基質とし、タガトースを生産する代謝過程の概略図を示す。
図2A図2は、それぞれベクターpTKSCS、pTKRed、pACYCDuet、pETDuetのマップを示す。図2AはpTKSCSのベクターマップである。
図2B図2BはpTKRedのベクターマップである。
図2C図2CはpACYCDuetのベクターマップである。
図2D図2DはpETDuetのベクターマップである。
図3A図3は、それぞれベクターpSS及びpWB980のマップを示す。図3AはpSSのベクターマップである。
図3B図3BはpWB980のベクターマップである。
図4】タガトースを生産する大腸菌組み換え工学菌株YH6-2がグリセロールとグルコースを発酵してタガトースを生産することの高速液体クロマトグラムの分析結果を示す。
図5】タガトースを生産する枯草菌組み換え工学菌株YJ14-1がグリセロールとグルコースを発酵してタガトースを生産する高速液体クロマトグラムの分析結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0029】
定義
「一(a)」又は「一(an)」という用語は、「含む」という用語とともに、特許請求の範囲及び/又は明細書において使用される場合、「1つ」を意味することができるが、「1つ又は複数」、「少なくとも1つ」、「1つ以上」を意味することもできる。
【0030】
特許請求の範囲及び明細書において使用される場合、「包含」、「有する」、「含む」、又は「含有する」という用語は、含まれている又はオープンであることを意味し、引用されていない追加の構成要素又は方法ステップを除外しない。
【0031】
出願を通じて、「約」という用語は、1つの値がその値を測定するために使用される装置又は方法の誤差の標準偏差を含むことを意味する。
【0032】
開示されている内容は、単に代替物であること、及び「及び/又は」であるという用語「又は」の定義をサポートしているが、単に代替物であること、又は代替物が相互に排他的であることが明示的に示されていない限り、特許請求の範囲における「又は」という用語は、「及び/又は」を意味する。
【0033】
特許請求の範囲又は明細書において使用される場合、選択的/好ましい/好適「数値範囲」は、範囲の両端の数値端点と、前記数値端点に対して前記数値端点の中間に含まれているすべての自然数との両方を含む。
【0034】
本開示で使用される場合、他の有機又は無機触媒を使用することができるが、「転化(converting)」という用語は、1つの分子から別の分子への化学転化を、主として1つ又は複数のポリペプチド(酵素)によって触媒することを意味する。これはまた、所望の産物のモル量と基質の所定のモル量との間の比(%単位)を指すこともできる。
【0035】
本開示で使用される場合、「ポリペプチド」、「酵素」、「ポリペプチド又は酵素」、「ポリペプチド/酵素」という用語は同じ意味を有し、本開示では交換することができる。前述の用語はペプチド結合を介して多くのアミノ酸からなる重合体を意味し、リン酸基やホルミル基のような修飾を含む場合と含まない場合がある。
【0036】
本開示で使用される場合、「ホスホトランスフェラーゼ系のグルコース特異的トランスファータンパク質」という用語は、ホスホトランスフェラーゼ系(Phosphotransferase system、PTS)に関与するグルコース特異的トランスファータンパク質を意味する。PTS系は細菌、真菌、一部の古細菌に広く存在するが、動植物には存在しない。PTS系は生体の炭素代謝調節を媒介し、誘導物質排除(Inducer exclusion)現象が存在する。誘導物質排除とは、1つの好適な炭素源(例えば、PTS炭素源-グルコース)が輸送代謝を行うときに、他の好適ではない炭素源の吸収利用を阻害することである。大腸菌の例では、培地中にグルコースと他の炭素源(例えば、ラクトース、マルトース、グリセロールなど)が同時に存在する場合、グルコースが優先的に利用され、PTS系のグルコース特異的トランスファータンパク質間でリン酸基がカスケード移動し、グルコース特異的トランスファータンパク質の脱リン酸化が増加する。リン酸化されていないグルコース特異的トランスファータンパク質は、それぞれのトランスポーター又はキナーゼ(LacY、MalK、GlpKなど)に結合することにより、ラクトース、マルトースやグリセロールなどの炭素源の輸送及びリン酸化を抑制する。
【0037】
本開示で使用される場合、「6-ホスホタガートエピメラーゼ」とも呼ばれる「タガトース-6-リン酸エピメラーゼ」(Tagatose-6-phosphate 4-epimeras、T6PE)という用語は、フルクトース-6-リン酸とタガトース-6-リン酸との相互転化を触媒することができる。いくつかの実施形態では、本開示のタガトース-6-リン酸エピメラーゼはアグロバクテリウム・ツメファシエンス(Agrobacterium tumefaciens)に由来する。1つの具体的な実施形態において、本開示におけるタガトース-6-リン酸エピメラーゼは、Agrobacterium tumefaciensstr.C58株に由来する。
【0038】
本開示で使用される場合、「6-ホスホタガートホスファターゼ」とも呼ばれる「タガトース-6-リン酸ホスファターゼ」(Tagatose-6-phosphate phosphatase、T6PP)という用語は、タガトース-6-リン酸のタガトースへの転化を触媒することができる。いくつかの実施形態では、本開示のタガトース-6-リン酸ホスファターゼは、アルカエオグロブス属Archaeoglobus fulgidus、Archaeoglobus profundusに由来する。
【0039】
本開示で使用される場合、「グルコキナーゼ」(Glucokinase、glk)という用語は、ヘキソキナーゼアイソザイムの1種であり、グルコースがリン酸化されてグルコース-6-リン酸(Glucose6-phosphate、G6P)を生成するプロセスに関与し、このプロセスは1つのATPを消費してADPに転化し、Mg2+を必要とする。いくつかの実施形態では、本開示のグルコキナーゼは大腸菌由来であり、別のいくつかの実施形態では、グルコキナーゼは、コリネバクテリウム・グルタミカム、枯草菌、乳酸菌、又はサッカロミセス・セレビシエのような、グルコースを基質として糖代謝を行う菌株に由来することもできる。
【0040】
本開示で使用される場合、「6-ホスホグルコイソメラーゼ」とも呼ばれる「グルコース-6-リン酸イソメラーゼ」(Glucose-6-phosphate isomerase、G6PI、pgi)という用語は、細胞質及び細胞外液中に存在し、その主要な機能は、D-グルコース-6-リン酸とD-フルクトース-6-リン酸との間の転化を触媒することであり、解糖及び糖新生の重要な酵素であり、酵素活性に加えて細胞及び成長因子の活性を有する。いくつかの実施形態では、本開示のグルコース-6-リン酸イソメラーゼは大腸菌由来であり、いくつかの実施形態では、本開示のグルコース-6-リン酸イソメラーゼは枯草菌由来であり、他のいくつかの実施形態では、グルコース-6-リン酸イソメラーゼは、コリネバクテリウム・グルタミカム、乳酸菌、又はサッカロミセス・セレビシエのような、グルコースを基質として糖代謝を行う菌株に由来することもできる。
【0041】
本開示で使用される場合、グルコースホスホムターゼとも呼ばれる「ホスホグルコムターゼ」(Phosphoglucomutase、pgm)という用語は、グルコース-1-リン酸とグルコース-6-リン酸との相互転化を触媒することができ、糖代謝において重要な役割を果たす。いくつかの実施形態では、本開示のホスホグルコムターゼは、大腸菌由来であり、いくつかの実施形態では、本開示のホスホグルコムターゼは枯草菌由来であり、他のいくつかの実施形態では、ホスホグルコムターゼは、コリネバクテリウム・グルタミカム、乳酸菌、又はサッカロミセス・セレビシエのような、グルコースを基質として糖代謝を行う菌株に由来することもできる。
【0042】
本開示で使用される場合、「グルコース-6-リン酸デヒドロゲナーゼ」(Glucose 6-phosphatedehydrogenase)という用語は、NAD+又はNADP+を受容体とし、ドナーのCH-OH基に作用する酸化還元酵素である。この酵素は以下の酵素反応を触媒することができる。D-グルコース-6-リン酸+NADP=D-グルコン酸-1,5-ラクトン-6-リン酸+NADPH+H。グルコース-6-リン酸デヒドロゲナーゼは主にペントースリン酸経路に関与し、β-D-グルコースなど他の糖類にも緩やかに作用することができる。いくつかの実施形態では、本開示のグルコース-6-リン酸デヒドロゲナーゼは大腸菌由来であり、いくつかの実施形態では、本開示のグルコース-6-リン酸デヒドロゲナーゼは枯草菌由来であり、他の実施形態では、グルコース-6-リン酸デヒドロゲナーゼは、コリネバクテリウム・グルタミカム、乳酸菌、又はサッカロミセス・セレビシエのような、グルコースを基質として糖代謝を行う菌株に由来することもできる。
【0043】
本開示で使用される場合、6-ホスホフルクトキナーゼとも呼ばれる「フルクトース-6-ホスホキナーゼ」(Phosphofructokinase、pfk)という用語はフルクトース-6-リン酸に作用することができるキナーゼの1種であり、ホスホフルクトキナーゼ1(Phosphofructokinase-1、pfk-1)が作用するとフルクトース-1,6-二リン酸が得られ、ホスホフルクトキナーゼ2(Phosphofructokinase-2、pfk-2)が作用すると、フルクトース-2,6-二リン酸が得られる。いくつかの実施形態では、本開示のフルクトース-6-ホスホキナーゼは大腸菌由来であり、pfkA及びpfkBを含み、いくつかの実施形態では、本開示のフルクトース-6-ホスホキナーゼは、枯草菌由来であり、pfkAを含み、他のいくつかの実施形態では、グルコキナーゼは、コリネバクテリウム・グルタミカム、乳酸菌、又はサッカロミセス・セレビシエのような糖代謝を行う菌株に由来することもできる。
【0044】
本開示で使用される場合、「ピルビン酸キナーゼ」(Pyruvate kinase、PK)という用語は、ピルビン酸リントランスフェラーゼ、ホスホピルビン酸キナーゼとも呼ばれ、ホスホエノールピルビン酸(PEP)からADPへのリン酸基の転移反応を触媒し、1分子のピルビン酸と1分子のATPを生成する。ピルビン酸キナーゼはホスホエノールピルビン酸とADPをATPとピルビン酸に転化し、解糖過程における主要な速度制限酵素の1つである。いくつかの実施形態では、本開示のピルビン酸キナーゼは、大腸菌由来であり、pykA及びpykFを含む。他のいくつかの実施形態では、ピルビン酸キナーゼは、コリネバクテリウム・グルタミカム、枯草菌、乳酸菌、又はサッカロミセス・セレビシエのような菌株に由来することもできる。
【0045】
本開示で使用される用語「HPrキナーゼ」(HPrK)は、ホスホトランスフェラーゼ系(Phosphotransferase system、PTS)に関与する特異的トランスフェラーゼ要素を意味する。グルコースなどのPTS輸送糖類の存在下では、フルクトース-1,6-二リン酸がHprキナーゼ(HPrK)によるHPrの46位セリンのリン酸化を促進し、リン酸化産物P-Ser-HPrを生成する。リン酸化産物P-Ser-HPrは更にカタボライト制御タンパク質(CcpA)と結合し、結合産物はHprキナーゼのコード遺伝子の前のカタボライト応答素子(cre)領域と作用してカタボライト抑制効果を発揮し、細胞がグリセロールを細胞内に輸送して代謝を行うことができないようにする。
【0046】
本開示で使用される場合、「酵素活性」、「タンパク質活性」という用語は、本開示において同じ意味を有する「比活性」としても表現され、交換して使用することができる。これはポリペプチド(酵素、タンパク)1mg当たりの酵素活性(U/mg)、タンパク質活性(U/mg)を指す。
【0047】
本開示における用語「発現」は、転写、転写後修飾、翻訳、翻訳後修飾、及び分泌を含むがこれに限定されない、RNA産生及びタンパク質産生に関するあらゆるステップを含む。
【0048】
本開示における「コード遺伝子」という用語は、ある規則によってタンパク質の合成を指導することができるDNA分子を意味し、タンパク質のコード遺伝子がタンパク質合成を指導するプロセスは、一般に、二本鎖DNAをテンプレートとする転写プロセスと、mRNAをテンプレートとする翻訳プロセスとを含む。コード遺伝子はCDS配列(Coding Sequence)を含み、タンパク質をコードするmRNAの産生を指導することができる。本開示に係るコード遺伝子は、ホスホトランスフェラーゼ系のグルコース特異的トランスファータンパク質、タガトース-6-リン酸エピメラーゼ、タガトース-6-リン酸ホスファターゼ、グルコキナーゼ、グルコース-6-リン酸イソメラーゼ、フルクトース-6-リン酸キナーゼ、ピルビン酸キナーゼ、ホスホグルコムターゼ、グルコース-6-リン酸デヒドロゲナーゼ、HPrキナーゼ等のタンパク質及び該酵素のコード遺伝子を含む。
【0049】
本開示で使用される場合、「野生型」という用語は、自然界において発見され得る対象を指す。例えば、自然界の1つのソースから単離することができ、ヒトによって実験室で意図的に改変されていないポリペプチド、ポリヌクレオチド配列又は微生物が天然に存在する。本開示で使用される場合、「天然存在」と「野生型」は同義語である。
【0050】
本開示で使用される場合、「微生物」という用語は、肉眼では観測が困難な、細菌、真菌などを含む微小生物の総称である。微生物は表面積と体積との比が大きいため、外部環境と迅速に物質交換を行い、代謝産物を産生することができる。本開示の微生物は、特に、発酵培養により糖類、脂質、アミノ酸、ヌクレオチド等の代謝産物を生産し得る発酵微生物を指す。
【0051】
本開示で使用される場合、「組換え微生物」という用語は、遺伝子工学的手法で組換えられ、得られた改変微生物を意味する。実施形態には、組換え遺伝子の導入、微生物の内因性遺伝子のノックアウト、ノックダウン処理等の操作が含まれるが、これらに限定されない。ここで、「組換え遺伝子」という用語は、天然に存在しない遺伝子であり、組換え遺伝子は、発現制御配列に動作可能に連結されたタンパク質コード配列を含む。実施形態には、微生物に導入された外来遺伝子、異種プロモータに作動可能に連結された内因性タンパク質コード配列、及び改変されたタンパク質コード配列を有する遺伝子が含まれるが、これらに限定されない。組換え遺伝子は、微生物のゲノム上、微生物のプラスミド上、又は微生物のファージ上に保存されている。
【0052】
いくつかの実施形態では、組換え微生物における、低下又は解消したタンパク質活性、低下又は解消したタンパク質のコード遺伝子の発現レベル、低下又は解消した酵素活性、低下又は解消した酵素のコード遺伝子の発現レベルを有するものには、微生物の細胞に弱いプロモータ、弱いリボソーム結合部位を導入し、タンパク、酵素のコード遺伝子をノックアウト又はノックダウンし、タンパク、酵素のコード遺伝子にランダムな断片を挿入してタンパク、酵素の活性を失わせる、遺伝子工学的手法で改変して得られた組換え微生物が含まれる。
【0053】
いくつかの実施形態では、組換え微生物における、向上させたタンパク質活性、向上させたタンパク質のコード遺伝子の発現レベル、向上させた酵素活性、向上させた酵素のコード遺伝子の発現レベルを有するものには、微生物の細胞に強いプロモータ、強いリボソーム結合部位を導入し、非組み込み型のタンパク質、酵素の組換え発現ベクターを導入し、染色体組み込み型のタンパク質、酵素の組換え発現ベクターを導入する、遺伝子工学的手法で改変して得られた組換え微生物が含まれる。
【0054】
いくつかの実施形態では、本開示の組換え微生物は、野生型微生物として大腸菌を用いて、遺伝子工学的手法で改変された組換え菌株であり、いくつかの実施形態では、本開示の組換え微生物は、野生型微生物として枯草菌を用いて、遺伝子工学的手法で改変された組換え菌株であり、他のいくつかの実施形態では、本開示の組換え微生物は、野生型微生物としてコリネバクテリウム・グルタミカム、乳酸菌、又はサッカロミセス・セレビシエのような発酵菌株を用いて、遺伝子工学的手法で改変された組換え菌株であってもよい。
【0055】
本開示で使用される場合、「動作可能に連結される」という用語は、制御配列がポリヌクレオチドのコード配列に対して適切な位置に配置され、それにより、制御配列がこのコード配列の表現を指導するようになる構造を意味する。一例として、前記制御配列は、プロモータ及び/又はエンハンサーによりコードされた配列から選択されてもよい。
【0056】
本開示で使用される場合、「内因性」という用語は、生物又は細胞内で自然に発現又は生産されるポリヌクレオチド、ポリペプチド、又は他の化合物を意味する。すなわち、内因性ポリヌクレオチド、ポリペプチド又は他の化合物は、外因性ではない。例えば、細胞が自然界から最初に分離されたとき、細胞内には「内因性」のポリヌクレオチド又はポリペプチドが存在する。
【0057】
本開示で使用される場合、「外因性」という用語は、発現を必要とする特定の細胞又は有機体において天然に発見又は発現された任意のポリヌクレオチド又はポリペプチドを意味する。外因性ポリヌクレオチド、ポリペプチド又は他の化合物は内因性ではない。
【0058】
本開示で使用される場合、「アミノ酸突然変異」又は「ヌクレオチド突然変異」という用語は、「1つ又は複数のアミノ酸又はヌクレオチドの置換、反復、欠失、又は付加」を含む。本開示において、「突然変異」という用語は、ヌクレオチド配列又はアミノ酸配列の変化を意味する。1つの特定の実施形態では、「突然変異」という用語は「置換」を意味する。
【0059】
一実施形態では、本開示の「突然変異」は、「保存的突然変異」から選択されることができる。本開示において、「保存的突然変異」という用語は、タンパク質の機能を正常に維持することができる突然変異を意味する。保存的突然変異の代表的な例は保存的置換である。
【0060】
本開示で使用される場合、「保存的置換」という用語は、アミノ酸残基を類似の側鎖を有するアミノ酸残基に置換することを意味する。当分野では、類似の側鎖を有するアミノ酸残基ファミリーが定義されており、これには、塩基性側鎖(例えばリジン、アルギニン及びヒスチジン)、酸性側鎖(例えばアスパラギン酸とグルタミン酸)、非帯電極性側鎖(例えばグリシン、アスパラギン、グルタミン、セリン、スレオニン、チロシン、及びシステイン)、非極性側鎖(例えば、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニン、及びトリプトファン)、β-分岐鎖(例えば、スレオニン、バリン、及びイソロイシン)、及び芳香族側鎖(例えば、チロシン、フェニルアラニン、トリプトファン、及びヒスチジン)が含まれている。本開示で使用される場合、「保存的置換」は、通常、タンパク質の1つ又は複数の部位でアミノ酸を交換する。この置換は保存的であってもよい。保存的置換とみなされる置換としては、このほか、保存的突然変異には、遺伝子由来の個体差、株、種の違いなどに起因して自然に生じた突然変異も含まれる。
【0061】
本開示で使用される場合、「ポリヌクレオチド」という用語は、ヌクレオチドからなる重合体を意味する。ポリヌクレオチドは、個々の断片の形態であってもよく、また、少なくとも量又は濃度で1回単離されたヌクレオチド配列から誘導され、標準的な分子生物学的方法(例えば、クローニングベクターの使用)によって、配列及びその構成ヌクレオチド配列を認識、操作及び回復することができる、より大きなヌクレオチド配列構造の1つの構成要素であってもよい。ヌクレオチド配列がDNA配列(すなわち、A、T、G、C)で表される場合、RNA配列(すなわち、A、U、G、C)も含み、ここで、「U」が「T」に置換される。言い換えれば、「ポリヌクレオチド」とは、他のヌクレオチド(個々の断片又は断片全体)から取り除かれたヌクレオチド重合体、又は発現ベクター又は多重シストロン配列のような、より大きなヌクレオチド構造の構成要素又は成分であってもよい。ポリヌクレオチドはDNA、RNA及びcDNA配列を含む。「組換えポリヌクレオチド」は「ポリヌクレオチド」の1種である。
【0062】
本開示で使用される場合、「ベクター」という用語は、目的遺伝子を適切な宿主で発現させるために適切な制御配列に動作可能に連結されたDNA配列を含むDNA構築体を意味する。「組換え発現ベクター」とは、例えば、所望のポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを発現するためのDNA構造を指す。組換え発現ベクターは、例えば、i)プロモータ及びエンハンサーのような、遺伝子発現の調節作用を有する遺伝子要素の集合体;ii)mRNAに転写され、タンパク質に翻訳される構造又はコード配列;iii)適切な転写及び翻訳の開始と終了配列の転写サブユニットを含んでもよい。組換え発現ベクターは、任意の適切な方法で構築され得る。ベクターの性質は重要ではなく、プラスミド、ウイルス、ファージ及びトランスポゾンを含む任意のベクターを使用することができる。本開示のための可能なベクターは、染色体、非染色体及び合成DNA配列、例えば細菌プラスミド、ファージDNA、酵母プラスミド及びプラスミドとファージDNAとの組み合わせから誘導されるベクター、例えば、牛痘、アデノウイルス、ニワトリ痘、バキュロウイルス、SV40、及び疑似狂犬病などのウイルス由来のDNAを含むが、これらに限定されない。
【0063】
本開示で使用される場合、「形質導入」という用語は、当業者に一般的に理解されている意味、すなわち外因性DNAを宿主に導入するプロセスを意味する。前記形質転換方法は、細胞内に核酸を導入する任意の方法を含み、これらの方法には、エレクトロポレーション法、リン酸カルシウム(CaPO)沈殿法、リン酸カルシウム(CaPO)沈殿法、マイクロインジェクション(microinjection)法、ポリエチレングリコール(PEG)法、DEAE-グルカン法、陽イオンリポソーム法及び酢酸リチウム-DMSO法などが含まれるが、これらに限定されない。
【0064】
本開示で使用される場合、「タガトース収率」という用語は、当業者に一般的に理解されている意味、すなわち、タガトースを生成するために消費される基質の基質全体に占める割合である。本開示において、「タガトース収率」及び「基質転化率」は、互いに代替的に使用することができる。
【0065】
本開示の組換え微生物の培養は、ウェル付きプレート培養、フラスコ培養、バッチ培養、連続培養、流加培養等の従来の方法に基づいて行うことができるが、これらに限定されず、培地の温度、時間、pH等の種々の培養条件は実際の状況に応じて適切に調整することができる。
【0066】
別段に定義されていない限り、又は背景によって明確に示されていない限り、本開示におけるすべての科学用語及び技術用語は本開示の当業者が一般に理解するものと同じ意味を有する。
【0067】
タガトース生産菌株
1つの技術案では、本開示は、野生型微生物を遺伝子的に改変して、組換え微生物を得て、タガトースを生産する。
【0068】
1つの特定実施形態では、本開示に使用される組換え微生物は大腸菌、コリネバクテリウム・グルタミカム、枯草菌、乳酸菌又はサッカロマイセス・セレビシエに由来する。
【0069】
1つの特定実施形態では、本開示は大腸菌及び枯草菌を野生型微生物として、大腸菌及び枯草菌のそれぞれについて遺伝子工学的改変を行う。
【0070】
1つの特定実施形態では、本開示では、PTS系のグルコース特異的トランスファータンパク質の酵素活性を解消し、例えばPTS系のグルコース特異的トランスファータンパク質のコード遺伝子をノックアウトしたり、PTS系のグルコース特異的トランスファータンパク質のコード遺伝子にランダムな断片を導入したりすることにより、PTS系のグルコース特異的トランスファータンパク質の酵素活性を失わせる。
【0071】
1つの特定実施形態では、本開示において、PTS系のグルコース特異的トランスファータンパク質を解消する目的は、グリセロール基質の利用に対するグルコースの抑制作用を解消することであり、大腸菌又は枯草菌の組換え菌株はグリセロールとグルコースの両方を基質として利用し、これらのうち、グリセロールは炭素源として細胞に入って代謝されて菌株成長に用いられ、菌株は成長に適した条件でグルコースを炭素源として細胞に入れて、タガトース合成経路によりタガトースを合成することができる(図1)。
【0072】
1つの特定実施形態では、本開示において、グルコキナーゼ及びグルコース-6-リン酸イソメラーゼの酵素活性を向上させ、例えば強いプロモータを導入したりプラスミド遊離発現形式を採用したりすることにより、グルコキナーゼ及びグルコース-6-リン酸イソメラーゼのコード遺伝子の発現強度を高めるか、又は染色体組み込みによって他の物種に由来の、より高酵素活性のグルコキナーゼ及びグルコース-6-リン酸イソメラーゼのコード遺伝子を組み込む。
【0073】
1つの特定実施形態では、本開示において、フルクトース-6-リン酸キナーゼの酵素活性を解消し、例えばフルクトース-6-リン酸キナーゼのコード遺伝子をノックアウトしたり、フルクトース-6-リン酸キナーゼのコード遺伝子にランダムな断片を挿入したりすることにより、フルクトース-6-リン酸キナーゼの酵素活性を失わせる。
【0074】
1つの特定実施形態では、本開示において、タガトース-6-リン酸エピメラーゼ及びタガトース-6-リン酸ホスファターゼの酵素活性を向上させ、例えば強いプロモータ、強力なリボソーム結合部位、染色体組み込み又はプラスミド遊離発現形式によって 、タガトース-6-リン酸エピメラーゼ及びタガトース-6-リン酸ホスファターゼのコード遺伝子の発現強度を向上させる。
【0075】
1つの特定実施形態では、本開示において、ピルビン酸キナーゼの酵素活性を解消し、例えばピルビン酸キナーゼのコード遺伝子をノックアウトしたり、ピルビン酸キナーゼのコード遺伝子にランダムな断片を挿入したりすることにより、ピルビン酸キナーゼの酵素活性を失わせる。
【0076】
ホスホエノールピルビン酸(PEP)は、グリセロール代謝経路、すなわちグリセロールが細胞に入ってグリセロール-3-リン酸(G3P)を生成するステップにおいて、高エネルギーリン酸基を提供し、グリセロールからのG3Pの生成を促進し、グリセロールの代謝を速めるものであり、このようなステップは菌株がグリセロールに依存して成長することに寄与する。
【0077】
1つの特定実施形態では、本開示において、ホスホグルコムターゼの酵素活性を解消し、例えばホスホグルコムターゼのコード遺伝子をノックアウトしたり、ホスホグルコムターゼのコード遺伝子にランダムな断片を挿入したりすることにより、ホスホグルコムターゼの酵素活性を失わせる。
【0078】
1つの特定実施形態では、本開示において、グルコース-6-リン酸デヒドロゲナーゼの酵素活性を低下させ、例えばグルコース-6-リン酸デヒドロゲナーゼのコード遺伝子をノックアウトしたり、グルコース-6-リン酸デヒドロゲナーゼのコード遺伝子にランダムな断片を挿入したりすることにより、グルコース-6-リン酸デヒドロゲナーゼの酵素活性を失わせ、弱いプロモータ又は弱いリボソーム結合部位によってグルコース-6-リン酸デヒドロゲナーゼのコード遺伝子の転写発現レベルを低下させることによって、グルコース-6-リン酸デヒドロゲナーゼの酵素活性を低下させる。
【0079】
1つの特定実施形態では、本開示において、HPrキナーゼの酵素活性を解消し、例えばHPrキナーゼのコード遺伝子をノックアウトしたり、HPrキナーゼのコード遺伝子にランダムな断片を挿入したりすることにより、HPrキナーゼの酵素活性を失わせる。HPrキナーゼを解消する目的は、グリセロール基質の利用に対するグルコースの抑制作用を解消することである。
【0080】
タガトースを生産する大腸菌組み換え工学菌株の構築方法
1つの技術案では、本開示は、タガトースを生産する大腸菌組み換え工学菌株の構築方法を提供する。
【0081】
1つの特定実施形態では、本開示において、大腸菌Escherichia coliのPTS系のグルコース特異的トランスファータンパク質のコード遺伝子ptsGの上下流相同性アームを含有するプライマーを設計し、PCR技術によってベクターpTKSCS(図2A)のSceI-tet-SceI断片を増幅し、相同組換え断片を大腸菌MG1655(DE3)に形質転換し、λ-Red相同組換え技術によってPTS系のグルコース特異的トランスファータンパク質のコード遺伝子ptsG遺伝子をノックアウトして、組換え菌株YH1を得る。
【0082】
1つの特定実施形態では、本開示において、大腸菌Escherichia coliに由来のグルコキナーゼのコード遺伝子glcKと大腸菌Escherichia coliに由来のグルコース-6-リン酸イソメラーゼのコード遺伝子pgiを増幅し、これらを発現ベクターpACYCDuetに構築し、組換え発現ベクターpACYCDuet-glcK-pgiを得、組換え発現ベクターpACYCDuet-glcK-pgiを大腸菌YH1に形質転換して、組換え菌株YH2を得る。
【0083】
1つの特定実施形態では、本開示において、大腸菌Escherichia coliのフルクトース-6-リン酸キナーゼのコード遺伝子pfkAの上下流相同性アーム(arm)を含有するプライマーを設計し、PCR技術によってベクターpTKSCS(図2A)のSceI-tet-SceI断片を増幅し、相同組換え断片を組換え菌株YH2に形質転換し、λ-Red相同組換え技術によってフルクトース-6-リン酸キナーゼのコード遺伝子pfkA遺伝子をノックアウトし、組換え菌株YH3を得、組換え発現ベクターpACYCDuet-glcK-pgiを大腸菌YH3に形質転換して、組換え菌株YH3-1を得る。
【0084】
1つの特定実施形態では、本開示において、大腸菌Escherichia coliのピルビン酸キナーゼのコード遺伝子pykFの上下流相同性アームを含有するプライマーを設計し、PCR技術によってベクターpTKSCS(図2A)のSceI-tet-SceI断片を増幅し、相同組換え断片を組換え菌株YH3に形質転換し、λ-Red相同組換え技術によってピルビン酸キナーゼのコード遺伝子pykF遺伝子をノックアウトし、組換え菌株YH4を得、組換え発現ベクターpACYCDuet-glcK-pgiを大腸菌YH4に形質転換して、組換え菌株YH4-1を得る。
【0085】
1つの特定実施形態では、本開示において、大腸菌Escherichia coliのホスホグルコムターゼのコード遺伝子pgmの上下流相同性アームを含有するプライマーを設計し、PCR技術によってベクターpTKSCS(図2A)のSceI-tet-SceI断片を増幅し、相同組換え断片を組換え菌株YH4に形質転換し、λ-Red相同組換え技術によってホスホグルコムターゼのコード遺伝子pgm遺伝子をノックアウトし、組換え菌株YH5を得、組換え発現ベクターpACYCDuet-glcK-pgiを大腸菌YH5に形質転換して、組換え菌株YH5-1を得る。
【0086】
1つの特定実施形態では、本開示において、大腸菌Escherichia coliのグルコース-6-リン酸デヒドロゲナーゼのコード遺伝子zwfの上下流相同性アームを含有するプライマーを設計し、PCR技術によってベクターpTKSCS(図2A)のSceI-tet-SceI断片を増幅し、相同組換え断片を組換え菌株YH5に形質転換し、λ-Red相同組換え技術によってグルコース-6-リン酸デヒドロゲナーゼのコード遺伝子zwf遺伝子をノックアウトし、組換え菌株YH6を得、組換え発現ベクターpACYCDuet-glcK-pgiを大腸菌YH6に形質転換して、組換え菌株YH6-1を得る。
【0087】
1つの特定実施形態では、本開示において、Agrobacterium tumefaciens str. C58に由来のタガトース-6-リン酸エピメラーゼT6PEとアルカエオグロブス属Archaeoglobus fulgidus 及び/又はArchaeoglobus profundusに由来のタガトース-6-リン酸ホスファターゼT6PP遺伝子を増幅し、発現ベクターpETDuetに構築し、組換え発現ベクターpETDuet-T6PE-T6PPを得、組換え発現ベクターpETDuet-T6PE-T6PPを大腸菌MG1655(DE3)に形質転換して、組換え菌株MG1655-1を得る。
【0088】
1つの特定実施形態では、本開示において、タガトース-6-リン酸エピメラーゼT6PEとタガトース-6-リン酸ホスファターゼT6PP遺伝子を持つ組換え発現ベクターpETDuet-T6PE-T6PPを組換え菌株YH1に構築して、組換え菌株YH1-1を得る。
【0089】
1つの特定実施形態では、本開示において、タガトース-6-リン酸エピメラーゼT6PEとタガトース-6-リン酸ホスファターゼT6PP遺伝子を持つ組換え発現ベクターpETDuet-T6PE-T6PPを組換え菌株YH2に構築して、組換え菌株YH2-1を得る。
【0090】
1つの特定実施形態では、本開示において、タガトース-6-リン酸エピメラーゼT6PEとタガトース-6-リン酸ホスファターゼT6PP遺伝子を持つ組換え発現ベクターpETDuet-T6PE-T6PPを組換え菌株YH3-1に構築して、組換え菌株YH3-2を得る。
【0091】
1つの特定実施形態では、本開示において、タガトース-6-リン酸エピメラーゼT6PEとタガトース-6-リン酸ホスファターゼT6PP遺伝子を持つ組換え発現ベクターpETDuet-T6PE-T6PPを組換え菌株YH4-1に構築して、組換え菌株YH4-2を得る。
【0092】
1つの特定実施形態では、本開示において、タガトース-6-リン酸エピメラーゼT6PEとタガトース-6-リン酸ホスファターゼT6PP遺伝子を持つ組換え発現ベクターpETDuet-T6PE-T6PPを組換え菌株YH5-1に構築して、組換え菌株YH5-2を得る。
【0093】
1つの特定実施形態では、本開示において、タガトース-6-リン酸エピメラーゼT6PEとタガトース-6-リン酸ホスファターゼT6PP遺伝子の組換え発現ベクターpETDuet-T6PE-T6PPを組換え菌株YH6-1に構築して、組換え菌株YH6-2を得る。
【0094】
本開示のいくつかの特定実施形態では、組換え菌株BMG1655-1、YH1-1、YH2-1、YH3-2、YH4-2、YH5-2及びYH6-2は、タガトースを生産する大腸菌組み換え工学菌株として、グルコース又はグルコースとグリセロールの混合培地を発酵してタガトースを生産することができる。
【0095】
タガトースを生産する枯草菌組み換え工学菌株の構築方法
1つの技術案では、本開示は、タガトースを生産する枯草菌組み換え工学菌株の構築方法を提供する。
【0096】
1つの特定実施形態では、本開示において、枯草菌Bacillus subtilis 168ウラシルホスホリボシルトランスフェラーゼのコード遺伝子uppの上下流相同性アームを含有するプライマーを設計し、PCR技術によってウラシルホスホリボシルトランスフェラーゼのコード遺伝子uppの上下流相同性アームを増幅し、これを組み込みベクターpSSに構築して、組換え組み込みベクターpSS-upp-FRを得、組換え組み込みベクターpSS-upp-FRを枯草菌SCK6に形質転換し、次に、分子内相同組換え技術によって、ウラシルホスホリボシルトランスフェラーゼのコード遺伝子upp遺伝子がノックアウトされた組み換え工学菌株YJ8を得る。
【0097】
1つの特定実施形態では、本開示において、枯草菌Bacillus subtilis 168のPTS系のグルコース特異的トランスファータンパク質のコード遺伝子ptsGの上下流相同性アームを含有するプライマーを設計し、PCR技術によってPTS系のグルコース特異的トランスファータンパク質のコード遺伝子ptsGの上下流相同性アームを増幅し、これを組み込みベクターpSSに構築し、組換え組み込みベクターpSS-ptsG-FRを得て、組換え組み込みベクターpSS-ptsG-FRを枯草菌YJ8に形質転換し、次に、分子内相同組換え技術によって、PTS系のグルコース特異的トランスファータンパク質のコード遺伝子ptsGがノックアウトされた組み換え工学菌株YJ9を得る。
【0098】
1つの特定実施形態では、本開示において、枯草菌Bacillus subtilis 168のHPrキナーゼのコード遺伝子hprKの上下流相同性アームを含有するプライマーを設計し、PCR技術によってHPrキナーゼのコード遺伝子hprKの上下流相同性アームを増幅し、これを組み込みベクターpSSに構築し、組換え組み込みベクターpSS-hprK-FRを得、組換え組み込みベクターpSS-hprK-FRを枯草菌YJ9に形質転換し、次に、分子内相同組換え技術によって、HPrキナーゼのコード遺伝子hprKがノックアウトされた組み換え工学菌株YJ10を得る。
【0099】
1つの特定実施形態では、本開示において、枯草菌Bacillus subtilis 168に由来のグルコキナーゼのコード遺伝子glcKと枯草菌Bacillus subtilis 168に由来のグルコース-6-リン酸イソメラーゼのコード遺伝子pgiを増幅し、これを組み込みベクターpSS-ptsG-FRに構築し、組換え組み込みベクターpSS-ptsG-FR-glcK-pgiを得、組換え組み込みベクターpSS-ptsG-FR-glcK-pgiを枯草菌YJ10に形質転換し、次に、分子内相同組換え技術によって、グルコキナーゼのコード遺伝子glcK及びグルコース-6-リン酸イソメラーゼのコード遺伝子であるコード遺伝子pgiがゲノムに組み込まれた組み換え工学菌株YJ11を得る。
【0100】
1つの特定実施形態では、本開示において、枯草菌Bacillus subtilis 168フルクトース-6-リン酸キナーゼのコード遺伝子pfkAの上下流相同性アームを含有するプライマーを設計し、PCR技術によって、フルクトース6-リン酸キナーゼのコード遺伝子pfkAの上下流相同性アームを増幅し、これを組み込みベクターpSSに構築し、組換え組み込みベクターpSS-pfkA-FRを得、組換え組み込みベクターpSS-pfkA-FRを枯草菌YJ11に形質転換し、次に、分子内相同組換え技術によって、フルクトース-6-リン酸キナーゼのコード遺伝子pfkA遺伝子がノックアウトされた組み換え工学菌株YJ12を得る。
【0101】
1つの特定実施形態では、本開示において、枯草菌Bacillus subtilis 168ホスホグルコムターゼのコード遺伝子pgmの上下流相同性アームを含有するプライマーを設計し、PCR技術によってホスホグルコムターゼのコード遺伝子pgmの上下流相同性アームを増幅し、これを組み込みベクターpSSに構築し、組換え組み込みベクターpSS-pgm-FRを得、組換え組み込みベクターpSS-pgm-FRを枯草菌YJ12に形質転換し、次に、分子内相同組換え技術によって、ホスホグルコムターゼのコード遺伝子pgmがノックアウトされた組み換え工学菌株YJ13を得る。
【0102】
1つの特定実施形態では、本開示において、枯草菌Bacillus subtilis 168グルコース-6-リン酸デヒドロゲナーゼのコード遺伝子zwfの上下流相同性アームを含有するプライマーを設計し、PCR技術によってグルコース-6-リン酸デヒドロゲナーゼのコード遺伝子zwfの上下流相同性アームを増幅し、これを組み込みベクターpSSに構築し、組換え組み込みベクターpSS-zwf-FRを得、組換え組み込みベクターpSS-zwf-FRを枯草菌YJ13に形質転換し、次に、分子内相同組換え技術によって、グルコース-6-リン酸デヒドロゲナーゼのコード遺伝子zwfがノックアウトされた組み換え工学菌株YJ14を得る。
【0103】
1つの特定実施形態では、本開示において、Agrobacterium tumefaciens str. C58に由来のタガトース-6-リン酸エピメラーゼT6PEとアルカエオグロブス属Archaeoglobus fulgidus及び/又はArchaeoglobus profundusに由来のタガトース-6-リン酸ホスファターゼT6PP遺伝子を増幅し、これを発現ベクターpWB980に構築して、組換え発現ベクターpWB980-T6PE-T6PPを得、組換え発現ベクターpWB980-T6PE-T6PPを枯草菌SCK6に形質転換して、組換え菌株SCK6-1を得る。
【0104】
1つの特定実施形態では、本開示において、タガトース-6-リン酸エピメラーゼT6PEとタガトース-6-リン酸ホスファターゼT6PP遺伝子を持つ組換え発現ベクターpWB980-T6PE-T6PPを組換え菌株YJ8に構築して、組換え菌株YJ8-1を得る。
【0105】
1つの特定実施形態では、本開示において、タガトース-6-リン酸エピメラーゼT6PEとタガトース-6-リン酸ホスファターゼT6PP遺伝子を持つ組換え発現ベクターpWB980-T6PE-T6PPを組換え菌株YJ9に構築して、組換え菌株YJ9-1を得る。
【0106】
1つの特定実施形態では、本開示において、タガトース-6-リン酸エピメラーゼT6PEとタガトース-6-リン酸ホスファターゼT6PP遺伝子を持つ組換え発現ベクターpWB980-T6PE-T6PPを組換え菌株YJ10に構築して、組換え菌株YJ10-1を得る。
【0107】
1つの特定実施形態では、本開示において、タガトース-6-リン酸エピメラーゼT6PEとタガトース-6-リン酸ホスファターゼT6PP遺伝子を持つ組換え発現ベクターpWB980-T6PE-T6PPを組換え菌株YJ11に構築して、組換え菌株YJ11-1を得る。
【0108】
1つの特定実施形態では、本開示において、タガトース-6-リン酸エピメラーゼT6PEとタガトース-6-リン酸ホスファターゼT6PP遺伝子を持つ組換え発現ベクターpWB980-T6PE-T6PPを組換え菌株YJ12に構築して、組換え菌株YJ12-1を得る。
【0109】
1つの特定実施形態では、本開示において、タガトース-6-リン酸エピメラーゼT6PEとタガトース-6-リン酸ホスファターゼT6PP遺伝子を持つ組換え発現ベクターpWB980-T6PE-T6PPを組換え菌株YJ13に構築して、組換え菌株YJ13-1を得る。
【0110】
1つの特定実施形態では、本開示において、タガトース-6-リン酸エピメラーゼT6PEとタガトース-6-リン酸ホスファターゼT6PP遺伝子を持つ組換え発現ベクターpWB980-T6PE-T6PPを組換え菌株YJ14に構築して、組換え菌株YJ14-1を得る。
【0111】
本開示のいくつかの特定実施形態では、組換え菌株SCK6-1、YJ8-1、YJ9-1、YJ10-1、YJ11-1、YJ12-1、YJ13-1及びYJ14-1は、タガトースを生産する枯草菌組み換え工学菌株として、グルコース又はグルコースとグリセロールの混合培地を発酵してタガトースを生産することができる。
【0112】
タガトースの生産方法
1つの技術案では、本開示はタガトースの生産方法を提供する。
【0113】
1つの特定実施形態では、本開示によるタガトースの生産方法においては、
タガトース生産菌株を発酵培養するステップ(1)と、
発酵反応終了後、発酵反応液を収集して、これからタガトースを分離するステップ(2)と、を含んでもよい。
【0114】
上記の生産過程において、タガトース生産菌株は、グルコースとグリセロールを基質として、効率的に転化してタガトースを生産し、タガトースを高収率で得ることができる。本開示のタガトースの生産方法は、グルコースとグリセロールを基質とするので、原料が入手されやすく、価格が低く、多酵素分離プロセスを必要とせず、環境にやさしく、生産コストが低く、工業的な応用化値が期待できる。
【0115】
いくつかの実施形態では、タガトースを生産する大腸菌組み換え工学菌株を発酵培養する培地はLB培地(10g/Lペプトン、5g/L酵母抽出物、10g/L塩化ナトリウム、カナマイシン25ng/mL、アンピシリン100ng/mL)に、終濃度20g/Lのグルコースを加えたものである。
【0116】
いくつかの実施形態では、タガトースを生産する大腸菌組み換え工学菌株を発酵培養する培地はM9Y 培地(10g/L グリセロール、20g/L グルコース、6g/L NaHPO、0.5g/L NaCl、3g/L KHPO、1g/L NHCl、1mM MgSO、0.1mM CaCl、及び2g/L酵母抽出物)である。
【0117】
いくつかの実施形態では、タガトースを生産する枯草菌組み換え工学菌株を発酵培養する培地はSR培地(15g/Lペプトン、25g/L酵母抽出物、3g/L KHPO、カナマイシン25ng/mL)に、終濃度20g/Lのグルコースを加えたものである。
【0118】
いくつかの実施形態では、タガトースを生産する枯草菌組み換え工学菌株を発酵培養する培地はSR培地(15g/Lペプトン、25g/L酵母抽出物、3g/L KHPO、カナマイシン25ng/mL)に、終濃度20g/Lのグルコース及び20g/Lのグリセロールを加えたものである。
【0119】
いくつかの実施形態では、タガトース生産菌株の発酵培養条件として、37℃、200rmpの条件でタガトース生産菌株を12~24h培養する。
【0120】
いくつかの実施形態では、タガトースの分離方法は、濾過、脱色、脱塩、濃縮、結晶化及びHPLC検出を含むが、これらに限定されない本分野の常法であってもよい。
【0121】
本分野では、微生物を操縦する方法は、『分子生物学現代方法』(Online ISBN: 9780471142720, John Wiley and Sons, Inc.)、『微生物代謝工学:方法と手順』(Qiong Cheng Ed., Springer)や『システム代謝工学:方法と手順』(Hal S. Alper Ed., Springer)などの出版物に解釈されるように、知られているものである。
【0122】
本開示では、SEQ ID NO:1~SEQ ID NO:17、SEQ ID NO:54~SEQ ID NO:55に示されるヌクレオチド又はアミノ酸の番号の意味は以下のとおりである。
【0123】
SEQ ID NO:1に示される配列は大腸菌のグルコース特異的トランスファータンパク質のアミノ酸配列である。
【0124】
SEQ ID NO:2に示される配列は大腸菌のグルコース特異的トランスファータンパク質をコードするヌクレオチド配列である。
【0125】
SEQ ID NO:3に示される配列は枯草菌のグルコース特異的トランスファータンパク質のアミノ酸配列である。
【0126】
SEQ ID NO:4に示される配列は枯草菌のグルコース特異的トランスファータンパク質をコードするヌクレオチド配列である。
【0127】
SEQ ID NO:5に示される配列はアグロバクテリウム・ツメファシエンスタガトース-6-リン酸エピメラーゼのアミノ酸配列である。
【0128】
SEQ ID NO:6に示される配列はアグロバクテリウム・ツメファシエンスのタガトース-6-リン酸エピメラーゼをコードするヌクレオチド配列である。
【0129】
SEQ ID NO:7に示される配列はアルカエオグロブス属Archaeoglobus fulgidusのタガトース-6-リン酸ホスファターゼのアミノ酸配列である。
【0130】
SEQ ID NO:8に示される配列はアルカエオグロブス属Archaeoglobus fulgidusタガトース-6-リン酸ホスファターゼをコードするヌクレオチド配列である。
【0131】
SEQ ID NO:9に示される配列は大腸菌のグルコキナーゼのアミノ酸配列である。
【0132】
SEQ ID NO:10に示される配列は大腸菌のグルコキナーゼをコードするヌクレオチド配列である。
【0133】
SEQ ID NO:11に示される配列は枯草菌のグルコキナーゼのアミノ酸配列である。
【0134】
SEQ ID NO:12に示される配列は枯草菌のグルコキナーゼをコードするヌクレオチド配列である。
【0135】
SEQ ID NO:13に示される配列は大腸菌のグルコース-6-リン酸イソメラーゼのアミノ酸配列である。
【0136】
SEQ ID NO:14に示される配列は大腸菌のグルコース-6-リン酸イソメラーゼをコードするヌクレオチド配列である。
【0137】
SEQ ID NO:15に示される配列は枯草菌のグルコース-6-リン酸イソメラーゼのアミノ酸配列である。
【0138】
SEQ ID NO:16に示される配列は枯草菌のグルコース-6-リン酸イソメラーゼをコードするヌクレオチド配列である。
【0139】
SEQ ID NO:17に示される配列はSceI-tet-SceI断片のヌクレオチド配列である。
【0140】
SEQ ID NO:54に示される配列はアルカエオグロブス属Archaeoglobus profundusのタガトース-6-リン酸ホスファターゼのアミノ酸配列である。
【0141】
SEQ ID NO:55に示される配列はアルカエオグロブス属Archaeoglobus profundusのタガトース-6-リン酸ホスファターゼをコードするヌクレオチド配列である。
【0142】
実施例
本開示の他の目的、特徴、及び利点は、以下の詳細な説明から明らかになる。しかし、詳細な説明及び具体的な実施例(本開示の具体的な実施形態を示すが)は説明目的のためにのみ与えられるのであり、本開示の精神及び範囲内でなされた様々な変更及び修飾が、詳細な説明を読むと当業者にとって自明になることを理解すべきである。
【0143】
本実施例で使用される実験技術及び実験方法は、特別な説明がない限り、いずれも通常の技術的方法であり、例えば、以下の実施例において具体的な条件が明記されていない実験方法は、通常、Sambrookら、分子クローニング:実験室マニュアル(New York:Cold Spring Harbor Laboratory Press,1989)に記載された条件、又はメーカーが提案した条件に従ったものである。実施例において使用される材料、試薬等は、特別な説明がない限り、正規の商業ルートを通じて入手することができる。
【0144】
実施例1 大腸菌組換え菌株YH1の構築
(1)KEGGデータベースにおける、大腸菌MG1655に由来のPTS系のグルコース特異的トランスファータンパク質のコード遺伝子ptsGに従って、PTS系のグルコース特異的トランスファータンパク質のコード遺伝子ptsG上流65bp相同断片及び下流65bp相同断片を含むプライマー1とプライマー2を設計し、PCRによってpTKSCSベクターのSceI-tet-SceI断片(SceI-tet-SceI断片のヌクレオチド配列はSEQ ID NO:17に示される)を増幅し、ptsG遺伝子の上下流相同断片を含有する耐性断片1を得た。具体的なプライマー配列を以下に示す。
【0145】
プライマー1、配列はSEQ ID NO:18に示される:CAGGAGCACTCTCAATTATGTTTAAGAATGCATTTGCTAACCTGCAAAAGGTCGGTAAATCGCTGTACGGCCCCAAGGTCCAAACGGTGA
プライマー2、配列はSEQ ID NO:19に示される:GCCATCTGGCTGCCTTAGTCTCCCCAACGTCTTACGGATTAGTGGTTACGGATGTACTCATCCATCAGCGATTTACCGACCTTTTGCAGGTTAGCTTGGCTTCAGGGATGAGGCGCCATC
(2)大腸菌組換え菌株YH1の構築
大腸菌MG1655(DE3)コンピテント細胞(100μL)を調製し、Red組換えに必要なプラスミドpTKRed(温度感受性プラスミド)(図2B)をトランスフェクションし、スペクチノマイシン(spectinomycin)を含有する耐性プレートに塗布し、30℃で一晩培養した。その後、プレートから単一コロニーを選択して、スペクチノマイシンとIPTGを含有する液体LBに移し、30℃で培養し、pTKRedを含有するMG1655(DE3)エレクトロポレーションコンピテント(Electrocompetent)(100μL)を調製した。
【0146】
ステップ1で得られた断片1をエレクトロポレーションコンピテントと均一に混合し、電気ショック後、スペクチノマイシンとクロラムフェニコール(chloramphenicol)の二重抗体を含有するプレートに塗布し、30℃で30時間培養した。単一クローンを選択して、コロニーのPCR検証を行った結果(検証プライマーはプライマー3とプライマー4)、PCR産物のサイズが約1775bp(ゲノム上のptsG遺伝子上流断片、SceI-tet-SceI断片及びゲノム上のptsG遺伝子下流断片を含有する)の菌株は正しい二重交換菌株である。
【0147】
陽性クローンを選択して、スペクチノマイシン、IPTG及びアラビノース(arabinose)を含有するLB液体培地に接種し、8~12h培養し、その後、菌液を希釈してスペクチノマイシン、IPTG及びアラビノースを含有するプレートに塗布し、一晩培養した。このステップの目的はアラビノースでSceIの発現を誘導し、SceI認識部位を含有するDNAを切断し、陽性形質転換体の分子内の相同組換えを促進して、tet耐性断片を除去することである。複数の単一クローンをプレートから選択して、コロニーのPCRを再度行った結果(検証プライマーはプライマー3とプライマー4)、PCR産物が約382bpのDNAの形質転換体は陽性クローンであった。陽性クローンを抗体無し液体LBに接種し、37℃で8~12時間培養すると、pTKRedプラスミドを除去した。形質転換体PCRをシーケンシングに付して検証を行い、正しい菌株、すなわち、PTS系のグルコース特異的トランスファータンパク質のコード遺伝子がノックアウトされた大腸菌組み換え工学菌株、すなわち、PTS系グルコース特異的トランスファープロテアーゼ活性のない大腸菌組み換え工学菌株を保存し、YH1と命名した。具体的なプライマー配列を以下に示す。
【0148】
プライマー3、配列はSEQ ID NO:20に示される:CGTCAAACAAATTGGCACTG
プライマー4、配列はSEQ ID NO:21に示される:GAACGTCAATAACCTGTTCG
【0149】
実施例2 大腸菌組換え菌株YH2の構築
(1)組換え発現ベクターpACYCDuet-glk-pgiの構築
KEGGデータベースにおける、大腸菌に由来のグルコキナーゼのコード遺伝子glk及びグルコース-6-リン酸イソメラーゼのコード遺伝子pgiに従って、プライマーとしてプライマー5とプライマー6を設計してglkを増幅し、プライマー7とプライマー8を設計してpgiを増幅した。プライマー9とプライマー10を設計してプラスミド骨架pACYCDuet(図2C)を増幅し、simple cloning連結方式[5]によって組換え発現ベクターpACYCDuet-glcKを構築した。その後、さらに、プライマー11とプライマー12を設計してプラスミド骨架pACYCDuet-glkを増幅し、simple cloning方法によって組換え発現ベクターpACYCDuet-glk-pgiを得た。具体的なプライマー配列を以下に示す。
【0150】
プライマー5、配列はSEQ ID NO:22に示される:GTTTAACTTTAATAAGGAGATATACCATGACAAAGTATGCATTAGTCGGTG
【0151】
プライマー6、配列はSEQ ID NO:23に示される:
CGATTACTTTCTGTTCGACTTAAGCATTACAGAATGTGACCTAAGGTCTG
【0152】
プライマー7、配列はSEQ ID NO:24に示される:GTTAAGTATAAGAAGGAGATATACATATGAAAAACATCAATCCAACGCAG
【0153】
プライマー8、配列はSEQ ID NO:25に示される:TCAGCGGTGGCAGCAGCCTAGGTTAATTAACCGCGCCACGCTTTATAGCG
【0154】
プライマー9、配列はSEQ ID NO:26に示される:CAGACCTTAGGTCACATTCTGTAATGCTTAAGTCGAACAGAAAGTAATCG
【0155】
プライマー10、配列はSEQ ID NO:27に示される:CACCGACTAATGCATACTTTGTCATGGTATATCTCCTTATTAAAGTTAAAC
【0156】
プライマー11、配列はSEQ ID NO:28に示される:GCTATAAAGCGTGGCGCGGTTAATTAACCTAGGCTGCTGCCACCGCTGAG
【0157】
プライマー12、配列はSEQ ID NO:29に示される:
CTGCGTTGGATTGATGTTTTTCATATGTATATCTCCTTCTTATACTTAAC
【0158】
(2)大腸菌組換え菌株YH2の構築
【0159】
組換え発現ベクターpACYCDuet-glk-pgiを組換え菌株YH1に形質転換し、組換え菌株YH2を得た。
【0160】
実施例3 大腸菌組換え菌株YH3-1の構築
(1)pfkA遺伝子ノックアウト組換え断片の構築
KEGGデータベースにおける、大腸菌MG1655に由来のフルクトース-6-リン酸キナーゼのコード遺伝子pfkAに従って、pfkA上流65bp相同断片及び下流65bp相同断片のプライマー13とプライマー14を設計し、PCRによってpTKSCSベクター上のSceI-tet-SceI断片を増幅して、pfkA遺伝子の上下流相同断片を含有する耐性断片2を得た。具体的なプライマー配列を以下に示す。
【0161】
プライマー13、配列はSEQ ID NO:30に示される:CATTCCAAAGTTCAGAGGTAGTCATGATTAAGAAAATCGGTGTGTTGACAAGCGGCGGTGATGCGtacggccccaaggtccaaacggtga
【0162】
プライマー14、配列はSEQ ID NO:31に示される:GCCTTTTTCCGAAATCATTAATACAGTTTTTTCGCGCAGTCCAGCCAGTCACCTTTGAACGGACGCGCATCACCGCCGCTTGTCAACACACCGATttggcttcagggatgaggcgccatc
【0163】
(2)大腸菌組換え菌株YH3の構築
大腸菌YH2コンピテント細胞(100μL)を調製し、Red組換えに必要なプラスミドpTKRed(温度感受性プラスミド)をトランスフェクションし、スペクチノマイシンを含有する耐性プレートに塗布し、30℃で一晩培養した。その後、プレートから単一コロニーを選択して、スペクチノマイシンとIPTGを含有する液体LBに移し、30℃で培養し、pTKRedを含有するYH2エレクトロポレーションコンピテント(100μL)を調製した。
【0164】
ステップ1で得られた断片2をエレクトロポレーションコンピテントと均一に混合し、電気ショック後、スペクチノマイシンとクロラムフェニコールの二重抗体を含有するプレートに塗布し、30℃で30時間培養した。単一クローンを選択して、コロニーのPCR検証を行った結果(検証プライマーはプライマー15とプライマー16)、PCR産物サイズが約1757bp(ゲノム上のpfkA遺伝子上流断片、SceI-tet-SceI断片及びゲノム上のpfkA遺伝子下流断片を含有する)の菌株は正しい二重交換菌株であった。
【0165】
陽性クローンを選択して、スペクチノマイシン、IPTG及びアラビノースを含有するLB液体培地に移し、8~12h培養し、その後、菌液を希釈してスペクチノマイシン、IPTG及びアラビノースを含有するプレートに塗布し、一晩培養した。このステップの目的は、アラビノースでSceIの発現を誘導し、SceI認識部位を含有するDNAを切断し、陽性形質転換体の分子内の相同組換えを促進し、tet耐性断片を除去することである。複数の単一クローンをプレートから選択して、コロニーのPCRを再度行った結果(検証プライマーはプライマー15とプライマー16)、PCR産物が約364bpのDNAの形質転換体は陽性クローンであった。陽性クローンを抗体無し液体LBに接種し、37℃で8~12時間培養すると、pTKRedプラスミドを除去した。形質転換体PCRをシーケンシングに付して検証を行い、正しい菌株、すなわち、フルクトース6-リン酸キナーゼのコード遺伝子pfkAがノックアウトされた大腸菌組み換え工学菌株、すなわち、フルクトース6-リン酸キナーゼのコード遺伝子pfkAのない大腸菌組み換え工学菌株を保存し、YH3と命名した。具体的なプライマー配列を以下に示す。
【0166】
プライマー15、配列はSEQ ID NO:32に示される:CATTTGGCCTGACCTGAATC
【0167】
プライマー16、配列はSEQ ID NO:33に示される:CGAACGCCTTATCCGGCCTAC
【0168】
(3)大腸菌組換え菌株YH3-1の構築
組換え発現ベクターpACYCDuet-glk-pgiを組換え菌株YH3に形質転換し、組換え菌株YH3-1を得た。
【0169】
実施例4 大腸菌組換え菌株YH4-1の構築
(1)pykF遺伝子ノックアウト組換え断片の構築
KEGGデータベースにおける、大腸菌に由来のピルビン酸キナーゼのコード遺伝子pykFに従って、pykF上流65bp相同断片及び下流65bp相同断片のプライマー17とプライマー18を設計し、PCRによってpTKSCSベクター上のSceI-tet-SceI断片を増幅し、pykF遺伝子の上下流相同断片を含む耐性断片3を得た。具体的なプライマー配列を以下に示す。
【0170】
プライマー17、配列はSEQ ID NO:34に示される:AGACTGTCATGAAAAAGACCAAAATTGTTTGCACCATCGGACCGAAAACCGAATCTGAAGAGATGtacggccccaaggtccaaacggtga
【0171】
プライマー18、配列はSEQ ID NO:35に示される:CAAAAGCAATATTACAGGACGTGAACAGATGCGGTGTTAGTAGTGCCGCTCGGTACCAGTGCACCCATCTCTTCAGATTCGGTTTTCGGTCCGATttggcttcagggatgaggcgccatc
【0172】
(2)大腸菌組換え菌株YH4の構築
大腸菌YH3コンピテント細胞(100μL)を調製し、Red組換えに必要なプラスミドpTKRed(温度感受性プラスミド)をトランスフェクションし、スペクチノマイシンを含有する耐性プレートに塗布し、30℃で一晩培養した。その後、プレートから単一コロニーを選択して、スペクチノマイシンとIPTGを含有する液体LBに移し、30℃で培養し、pTKRedを含有するYH3エレクトロポレーションコンピテント(100μL)を調製した。
【0173】
ステップ1で得られた断片3をエレクトロポレーションコンピテントと均一に混合し、電気ショック後、スペクチノマイシンとクロラムフェニコールの二重抗体を含有するプレートに塗布し、30℃で30時間培養した。単一クローンを選択して、コロニーのPCR検証を行った結果(検証プライマーはプライマー19とプライマー20)、PCR産物サイズが約2310bp(ゲノム上のpykF遺伝子上流断片、SceI-tet-SceI断片及びゲノム上のpykF遺伝子下流断片を含有する)の菌株は正しい二重交換菌株であった。
【0174】
陽性クローンを選択して、スペクチノマイシン、IPTG及びアラビノースを含有するLB液体培地に移し、8~12h培養し、その後、菌液を希釈してスペクチノマイシン、IPTG及びアラビノースを含有するプレートに塗布し、一晩培養した。このステップの目的は、アラビノースでSceIの発現を誘導し、SceI認識部位を含有するDNAを切断し、陽性形質転換体の分子内の相同組換えを促進し、tet耐性断片を除去することである。複数の単一クローンをプレートから選択して、コロニーのPCRを再度行った結果(検証プライマーはプライマー15とプライマー16)、PCR産物が約364bpのDNAの形質転換体は陽性クローンであった。陽性クローンを抗体無し液体LBに接種し、37℃で8~12時間培養すると、pTKRedプラスミドを除去した。形質転換体PCRをシーケンシングに付して検証を行い、正しい菌株、すなわち、ピルビン酸キナーゼのコード遺伝子pykFがノックアウトされた大腸菌組み換え工学菌株、すなわち、ピルビン酸キナーゼのコード遺伝子pykFのない大腸菌組み換え工学菌株を保存し、YH4と命名した。具体的なプライマー配列を以下に示す。
【0175】
プライマー19、配列はSEQ ID NO:36に示される:AACTTCGGCACCAGACGTTG
【0176】
プライマー20、配列はSEQ ID NO:37に示される:TCTGAACGTCAGAAGACAGC
【0177】
(3)大腸菌組換え菌株YH4-1の構築
組換え発現ベクターpACYCDuet-glk-pgiを組換え菌株YH4に形質転換し、組換え菌株YH4-1を得た。
【0178】
実施例5 大腸菌組換え菌株YH5-1の構築
(1)pgm遺伝子ノックアウト組換え断片の構築
KEGGデータベースにおける、大腸菌に由来のホスホグルコムターゼのコード遺伝子pgmに従って、pgm上流65bp相同断片及び下流65bp相同断片のプライマー21とプライマー22を設計し、PCRによってpTKSCSベクター上のSceI-tet-SceI断片を増幅し、pgm遺伝子の上下流相同断片を含有する耐性断片4を得た。具体的なプライマー配列を以下に示す。
【0179】
プライマー21、配列はSEQ ID NO:38に示される:AAACGTTGCAGACAAAGGACAAAGCAATGGCAATCCACAATCGTGCAGGCCAACCTGCACAACAGtacggccccaaggtccaaacggtga
【0180】
プライマー22、配列はSEQ ID NO:39に示される:GTGTTTACGCGTTTTTCAGAACTTCGCTAACAATCTCAACCGCTTCTTTCTCAATCTGCTTGCGCTGTTGTGCAGGTTGGCCTGCACGATTGTGttggcttcagggatgaggcgccatc
【0181】
(2)大腸菌組換え菌株YH5の構築
大腸菌YH4コンピテント細胞(100μL)を調製し、Red組換えに必要なプラスミドpTKRed(温度感受性プラスミド)をトランスフェクションし、スペクチノマイシンを含有する耐性プレートに塗布し、30℃で一晩培養した。その後、プレートから単一コロニーを選択して、スペクチノマイシンとIPTGを含有する液体LBに移し、30℃で培養し、pTKRedを含有するYH4エレクトロポレーションコンピテント(100μL)を調製した。
【0182】
ステップ1で得られた断片4をエレクトロポレーションコンピテントと均一に混合し、電気ショック後、スペクチノマイシンとクロラムフェニコールの二重抗体を含有するプレートに塗布し、30℃で30時間培養した。単一クローンを選択して、コロニーのPCR検証を行った結果(検証プライマーはプライマー23とプライマー24)、PCR産物サイズが約2200bp(ゲノム上のpgm遺伝子上流断片、SceI-tet-SceI断片及びゲノム上のpgm遺伝子下流断片を含有する)の菌株は正しい二重交換菌株であった。
【0183】
陽性クローンを選択して、スペクチノマイシン、IPTG及びアラビノースを含有するLB液体培地に移し、8~12h培養し、その後、菌液を希釈してスペクチノマイシン、IPTG及びアラビノースを含有するプレートに塗布し、一晩培養した。このステップの目的は、アラビノースでSceIの発現を誘導し、SceI認識部位を含有するDNAを切断し、陽性形質転換体の分子内の相同組換えを促進し、tet耐性断片を除去することである。複数の単一クローンをプレートから選択して、コロニーのPCRを再度行った結果(検証プライマーはプライマー15とプライマー16)、PCR産物が約807bpのDNAの形質転換体は陽性クローンであった。陽性クローンを抗体無し液体LBに接種し、37℃で8~12時間培養すると、pTKRedプラスミドを除去した。形質転換体PCRをシーケンシングに付して検証を行い、正しい菌株、すなわち、ホスホグルコムターゼのコード遺伝子pgmがノックアウトされた大腸菌組み換え工学菌株、すなわち、ホスホグルコムターゼのコード遺伝子pgmのない大腸菌組み換え工学菌株を保存し、YH5と命名した。具体的なプライマー配列を以下に示す。
【0184】
プライマー23、配列はSEQ ID NO:40に示される:CGGTCAAAACGATTAAAGACAAG
【0185】
プライマー24、配列はSEQ ID NO:41に示される:CCAGTCGCCAGCTAATGATG
【0186】
(3)大腸菌組換え菌株YH5-1の構築
組換え発現ベクターpACYCDuet-glk-pgiを組換え菌株YH5に形質転換し、組換え菌株YH5-1を得た。
【0187】
実施例6 大腸菌組換え菌株YH6-1の構築
(1)zwf遺伝子ノックアウト組換え断片の構築
KEGGデータベースにおける、大腸菌に由来のグルコース-6-リン酸デヒドロゲナーゼのコード遺伝子zwfに従って、zwf上流65bp相同断片及び下流65bp相同断片のプライマー21とプライマー22を設計し、PCRによってpTKSCSベクター上のSceI-tet-SceI断片を増幅し、zwf遺伝子の上下流相同断片を含有する耐性断片5を得た。具体的なプライマー配列を以下に示す。
【0188】
プライマー25、配列はSEQ ID NO:42に示される:GTTAACTTAAGGAGAATGACATGGCGGTAACGCAAACAGCCCAGGCCTGTGACCTGGTCATTTTCtacggccccaaggtccaaacggtga
【0189】
プライマー26、配列はSEQ ID NO:43に示される:AAGCGCAGATATTACTCAAACTCATTCCAGGAACGACCATCACGGGTAATCATCGCCACCGAGGCGAAAATGACCAGGTCACAGGCCTGGGCTGTttggcttcagggatgaggcgccatc
【0190】
(2)大腸菌組換え菌株YH6の構築
大腸菌YH5コンピテント細胞(100μL)を調製し、Red組換えに必要なプラスミドpTKRed(温度感受性プラスミド)をトランスフェクションし、スペクチノマイシンを含有する耐性プレートに塗布し、30℃で一晩培養した。その後、プレートから単一コロニーを選択して、スペクチノマイシンとIPTGを含有する液体LBに移し、30℃で培養し、pTKRedを含有するYH5エレクトロポレーションコンピテント(100μL)を調製した。
【0191】
ステップ1で得られた断片5をエレクトロポレーションコンピテントと均一に混合し、電気ショック後、スペクチノマイシンとクロラムフェニコールの二重抗体を含有するプレートに塗布し、30℃で30時間培養した。単一クローンを選択して、コロニーのPCR検証を行った結果(検証プライマーはプライマー27とプライマー28)、PCR産物サイズが約2306bp(ゲノム上のzwf遺伝子上流断片、SceI-tet-SceI断片及びゲノム上のzwf遺伝子下流断片を含有する)の菌株は正しい二重交換菌株であった。
【0192】
陽性クローンを選択して、スペクチノマイシン、IPTG及びアラビノースを含有するLB液体培地に移し、8~12h培養し、その後、菌液を希釈してスペクチノマイシン、IPTG及びアラビノースを含有するプレートに塗布し、一晩培養した。このステップの目的はアラビノースでSceIの発現を誘導し、SceI認識部位を含有するDNAを切断し、陽性形質転換体の分子内の相同組換えを促進し、tet耐性断片を除去することである。複数の単一クローンをプレートから選択して、コロニーのPCRを再度行った結果(検証プライマーはプライマー27とプライマー28)、PCR産物が約913bpのDNAの形質転換体は陽性クローンであった。陽性クローンを抗体無し液体LBに接種し、37℃で8~12時間培養すると、pTKRedプラスミドを除去した。形質転換体PCRをシーケンシングに付して検証を行い、正しい菌株、すなわち、グルコース-6-リン酸デヒドロゲナーゼのコード遺伝子zwfがノックアウトされた大腸菌組み換え工学菌株、すなわち、グルコース-6-リン酸デヒドロゲナーゼのコード遺伝子zwfのない大腸菌組み換え工学菌株を保存し、YH6と命名した。具体的なプライマー配列を以下に示す。
【0193】
プライマー27、配列はSEQ ID NO:44に示される:GATTTGCTCAAATGTTCCAGC
【0194】
プライマー28、配列はSEQ ID NO:45に示される:GCAACATGCTTTTCAAAGAG
【0195】
(3)構築大腸菌組換え菌株YH6-1
組換え発現ベクターpACYCDuet-glk-pgiを組換え菌株YH6に形質転換し、組換え菌株YH6-1を得た。
【0196】
実施例7 大腸菌組換え菌株MG1655-1の構築
(1)組換え発現ベクターpETDuet-t6pe-t6ppの構築
KEGGデータベースにおける、Agrobacterium tumefaciens str. C58に由来のタガトース-6-リン酸エピメラーゼT6PEとアルカエオグロブス属Archaeoglobus fulgidus又はArchaeoglobus profundusに由来のタガトース-6-リン酸ホスファターゼT6PP遺伝子に従って、プライマー29とプライマー30を設計してt6peを増幅し、プライマー31とプライマー32を設計してt6ppを増幅した。プライマー33とプライマー34を設計して、プラスミド骨架pETDuet(図2D)を増幅し、simple cloning連結方式[5]によって組換え発現ベクターpETDuet-t6peを構築した。その後、さらに、プライマー35とプライマー36を設計して、プラスミド骨架pETDuet-t6peを増幅し、simple cloning方法によって組換え発現ベクターpETDuet-t6pe-t6ppを得た。具体的なプライマー配列を以下に示す。
【0197】
プライマー29、配列はSEQ ID NO:46に示される:GTTAAGTATAAGAAGGAGATATACATATGAACACCGAACATCCGCTGAAAAATG
【0198】
プライマー30、配列はSEQ ID NO:47に示される:CGGTGGCAGCAGCCTAGGTTAATTACTCGAGAATCAGTTTGAATTCACCG
【0199】
プライマー31、配列はSEQ ID NO:48に示される:GTTTAACTTTAAGAAGGAGATATACCATGTTCAAGCCGAAAGCGATCGCG
【0200】
プライマー32、配列はSEQ ID NO:49に示される:GATTACTTTCTGTTCGACTTAAGCATTAACGCAGCAGGCCCAGAAACTGCAG
【0201】
プライマー33、配列はSEQ ID NO:50に示される:CATTTTTCAGCGGATGTTCGGTGTTCATATGTATATCTCCTTCTTATACTTAAC
【0202】
プライマー34、配列はSEQ ID NO:51に示される:CGGTGAATTCAAACTGATTCTCGAGTAATTAACCTAGGCTGCTGCCACCG
【0203】
プライマー35、配列はSEQ ID NO:52に示される:CTGCAGTTTCTGGGCCTGCTGCGTTAATGCTTAAGTCGAACAGAAAGTAATC
【0204】
プライマー36、配列はSEQ ID NO:53に示される:CGCGATCGCTTTCGGCTTGAACATGGTATATCTCCTTCTTAAAGTTAAAC
【0205】
(2)大腸菌組換え菌株MG1655-1の構築
組換え発現ベクターpETDuet-t6pe-t6ppを大腸菌MG1655(DE3)に形質転換し、組換え菌株MG1655-1を得た。
【0206】
同様な方法によって、組換え発現ベクターpETDuet-t6pe-t6ppを大腸菌組換え菌株YH1、YH2、YH3-1、YH4-1、YH5-1、YH6-1に挿入し、タガトース6-リン酸エピメラーゼ及びタガトース6-リン酸ホスファターゼの酵素活性を向上させた大腸菌組換え菌株YH1-1、YH2-1、YH3-2、YH4-2、YH5-2、YH6-2を得た。
【0207】
実施例8 大腸菌組換え菌株MG1655-1のタガトース生産における使用
(1)大腸菌組換え菌株MG1655-1を用いたグルコース発酵によるタガトースの合成
LB培地(10g/Lペプトン、5g/L酵母抽出物、10g/L塩化ナトリウム、カナマイシン25ng/mL)100mLに、終濃度20g/Lのグルコースを加え、37℃、200rmpの条件で、大腸菌組換え菌株MG1655-1を12~24h培養し、発酵終了後、サンプルを14000rmpで20min遠心分離し、0.22μmの微孔性濾過膜で濾過し、濾液についてHPLCを行った。高速液体クロマトグラフィー分析は以下のような条件で行われた。器具:アジレント社製高速液体クロマトグラフ1200、分析カラム:HPX-87H、移動相:5mM HSO、流速:0.6mL/min、カラム温度:60℃、検出器:示差屈折率検出器、注入量:20μl。12h発酵後、タガトースの収率は1.0%であった。
【0208】
(2)大腸菌組換え菌株MG1655-1を用いたグルコースとグリセロールの発酵によるタガトースの合成
M9Y 培地(10g/L グリセロール、20g/L グルコース、6g/L NaHPO、0.5g/L NaCl、3g/L KHPO、1g/L NHCl、1mM MgSO、0.1mM CaCl、及び2g/L酵母抽出物)100mLを用いて、37℃、200rmpの条件で、大腸菌組換え菌株MG1655-1を12~24h培養し、発酵終了後、サンプルを14000rmpで20min遠心分離し、0.22μmの微孔性濾過膜で濾過し、濾液についてHPLCを行った。高速液体クロマトグラフィー分析は以下のような条件で行われた。器具:アジレント社製高速液体クロマトグラフ1200、分析カラム:HPX-87H、移動相:5mM HSO、流速:0.6mL/min、カラム温度:60℃、検出器:示差屈折率検出器、注入量:20μl。12h発酵後、タガトースの収率は1.0%であった。
【0209】
実施例9 大腸菌組換え菌株YH1-1のタガトース生産における使用
(1)大腸菌組換え菌株YH1-1を用いたグルコース発酵によるタガトースの合成
LB培地(10g/L ペプトン、5g/L酵母抽出物、10g/L 塩化ナトリウム、カナマイシン25ng/mL)100mLに、終濃度20g/Lのグルコースを加え、37℃、200rmpの条件で、大腸菌組換え菌株YH1-1を12~24h培養し、発酵終了後、サンプルを14000rmpで20min遠心分離し、0.22μmの微孔性濾過膜で濾過し、濾液についてHPLCを行った。高速液体クロマトグラフィー分析は以下のような条件で行われた。器具:アジレント社製高速液体クロマトグラフ1200、分析カラム:HPX-87H、移動相:5mM HSO、流速:0.6mL/min、カラム温度:60℃、検出器:示差屈折率検出器、注入量:20μl。12h発酵後、タガトースの収率は2.0%であった。
【0210】
(2)大腸菌組換え菌株YH1-1を用いたグルコースとグリセロールの発酵によるタガトースの合成
M9Y 培地(10g/Lグリセロール、20g/Lグルコース、6g/L NaHPO、0.5g/L NaCl、3g/L KHPO、1g/L NHCl、1mM MgSO、0.1mM CaCl、及び2g/L酵母抽出物)100mLを用いて、37℃、200rmpの条件で、大腸菌組換え菌株YH1-1を12~24h培養し、発酵終了後、サンプルを14000rmpで20min遠心分離し、0.22μmの微孔性濾過膜で濾過し、濾液についてHPLCを行った。高速液体クロマトグラフィー分析は以下のような条件で行われた。器具:アジレント社製高速液体クロマトグラフ1200、分析カラム:HPX-87H、移動相:5mM HSO、流速:0.6mL/min、カラム温度:60℃、検出器:示差屈折率検出器、注入量:20μl。12h発酵後、タガトースの収率は6.0%であった。
【0211】
実施例10 大腸菌組換え菌株YH2-1のタガトース生産における使用
(1)大腸菌組換え菌株YH2-1を用いたグルコース発酵によるタガトースの合成
LB培地(10g/Lペプトン、5g/L酵母抽出物、10g/L塩化ナトリウム、カナマイシン25ng/mL)100mLに、終濃度20g/Lのグルコースを加え、37℃、200rmpの条件で、大腸菌組換え菌株YH2-1を12~24h培養し、発酵終了後、サンプルを14000rmpで20min遠心分離し、0.22μmの微孔性濾過膜で濾過し、濾液についてHPLCを行った。高速液体クロマトグラフィー分析は以下のような条件で行われた。器具:アジレント社製高速液体クロマトグラフ1200、分析カラム:HPX-87H、移動相:5mM HSO、流速:0.6mL/min、カラム温度:60℃、検出器:示差屈折率検出器、注入量:20μl。12h発酵後、タガトースの収率は2.0%であった。
【0212】
(2)大腸菌組換え菌株YH2-1を用いたグルコースとグリセロールの発酵によるタガトースの合成
M9Y 培地(10g/L グリセロール、20g/Lグルコース、6g/L NaHPO、0.5g/L NaCl、3g/L KHPO、1g/L NHCl、1mM MgSO、0.1mM CaCl、及び2g/L酵母抽出物)100mLを用いて、37℃、200rmpの条件で、大腸菌組換え菌株YH2-1を12~24h培養し、発酵終了後、サンプルを14000rmpで20min遠心分離し、0.22μmの微孔性濾過膜で濾過し、濾液についてHPLCを行った。高速液体クロマトグラフィー分析は以下のような条件で行われた。器具:アジレント社製高速液体クロマトグラフ1200、分析カラム:HPX-87H、移動相:5mM HSO、流速:0.6mL/min、カラム温度:60℃、検出器:示差屈折率検出器、注入量:20μl。12h発酵後、タガトースの収率は8.0%であった。
【0213】
実施例11 大腸菌組換え菌株YH3-2のタガトース生産における使用
(1)大腸菌組換え菌株YH3-2を用いたグルコース発酵によるタガトースの合成
LB培地(10g/Lペプトン、5g/L酵母抽出物、5g/L塩化ナトリウム、カナマイシン25ng/mL、アンピシリン100ng/mL)100mLに、終濃度20g/Lのグルコースを加え、37℃、200rmpの条件で、大腸菌組換え菌株YH3-2を12~24h培養し、発酵終了後、サンプルを14000rmpで20min遠心分離し、0.22μmの微孔性濾過膜で濾過し、濾液についてHPLCを行った。高速液体クロマトグラフィー分析は以下のような条件で行われた。器具:アジレント社製高速液体クロマトグラフ1200、分析カラム:HPX-87H、移動相:5mM HSO、流速:0.6mL/min、カラム温度:60℃、検出器:示差屈折率検出器、注入量:20μl。12h発酵後、タガトースの収率は20%であった。
【0214】
(2)大腸菌組換え菌株YH3-2を用いたグルコースとグリセロールの発酵によるタガトースの合成
M9Y 培地(10g/L グリセロール、20g/L グルコース、6g/L NaHPO、0.5g/L NaCl、3g/L KHPO、1g/L NHCl、1mM MgSO、0.1mM CaCl、及び2g/L酵母抽出物)100mLを用いて、37℃、200rmpの条件で、大腸菌組換え菌株YH3-2を12~24h培養し、発酵終了後、サンプルを14000rmpで20min遠心分離し、0.22μmの微孔性濾過膜で濾過し、濾液についてHPLCを行った。高速液体クロマトグラフィー分析は以下のような条件で行われた。器具:アジレント社製高速液体クロマトグラフ1200、分析カラム:HPX-87H、移動相:5mM HSO、流速:0.6mL/min、カラム温度:60℃、検出器:示差屈折率検出器、注入量:20μl。12h発酵後、タガトースの収率は30%であった。
【0215】
実施例12 大腸菌組換え菌株YH4-2のタガトース生産における使用
(1)大腸菌組換え菌株YH4-2を用いたグルコース発酵によるタガトースの合成
LB培地(10g/L ペプトン、5g/L酵母抽出物、5g/L 塩化ナトリウム、カナマイシン25ng/mL、アンピシリン100ng/mL)100mLに、終濃度20g/Lのグルコースを加え、37℃、200rmpの条件で、大腸菌組換え菌株YH4-2を12~24h培養し、発酵終了後、サンプルを14000rmpで20min遠心分離し、0.22μmの微孔性濾過膜で濾過し、濾液についてHPLCを行った。高速液体クロマトグラフィー分析は以下のような条件で行われた。器具:アジレント社製高速液体クロマトグラフ1200、分析カラム:HPX-87H、移動相:5mM HSO、流速:0.6mL/min、カラム温度:60℃、検出器:示差屈折率検出器、注入量:20μl。12h発酵後、タガトースの収率は16%であった。
【0216】
(2)大腸菌組換え菌株YH4-2を用いたグルコースとグリセロールの発酵によるタガトースの合成
M9Y 培地(10g/L グリセロール、20g/L グルコース、6g/L NaHPO、0.5g/L NaCl、3g/L KHPO、1g/L NHCl、1mM MgSO、0.1mM CaCl、及び2g/L酵母抽出物)100mLを用いて、37℃、200rmpの条件で、大腸菌組換え菌株YH4-2を12~24h培養し、発酵終了後、サンプルを14000rmpで20min遠心分離し、0.22μmの微孔性濾過膜で濾過し、濾液についてHPLCを行った。高速液体クロマトグラフィー分析は以下のような条件で行われた。器具:アジレント社製高速液体クロマトグラフ1200、分析カラム:HPX-87H、移動相:5mM HSO、流速:0.6mL/min、カラム温度:60℃、検出器:示差屈折率検出器、注入量:20μl。12h発酵後、タガトースの収率は32%であった。
【0217】
実施例13 大腸菌組換え菌株YH5-2のタガトース生産における使用
(1)大腸菌組換え菌株YH5-2を用いたグルコース発酵によるタガトースの合成
LB培地(10g/L ペプトン、5g/L酵母抽出物、5g/L 塩化ナトリウム、カナマイシン25ng/mL、アンピシリン100ng/mL)100mLに、終濃度20g/Lのグルコースを加え、37℃、200rmpの条件で、大腸菌組換え菌株YH5-2を12~24h培養し、発酵終了後、サンプルを14000rmpで20min遠心分離し、0.22μmの微孔性濾過膜で濾過し、濾液についてHPLCを行った。高速液体クロマトグラフィー分析は以下のような条件で行われた。器具:アジレント社製高速液体クロマトグラフ1200、分析カラム:HPX-87H、移動相:5mM HSO、流速:0.6mL/min、カラム温度:60℃、検出器:示差屈折率検出器、注入量:20μl。12h発酵後、タガトースの収率は24%であった。
【0218】
(2)大腸菌組換え菌株YH5-2を用いたグルコースとグリセロールの発酵によるタガトースの合成
M9Y 培地(10g/Lグリセロール、20g/Lグルコース、6g/L NaHPO、0.5g/L NaCl、3g/L KHPO、1g/L NHCl、1mM MgSO、0.1mM CaCl、及び2g/L酵母抽出物)100mLを用いて、37℃、200rmpの条件で、大腸菌組換え菌株YH5-2を12~24h培養し、発酵終了後、サンプルを14000rmpで20min遠心分離し、0.22μmの微孔性濾過膜で濾過し、濾液についてHPLCを行った。高速液体クロマトグラフィー分析は以下のような条件で行われた。器具:アジレント社製高速液体クロマトグラフ1200、分析カラム:HPX-87H、移動相:5mM HSO、流速:0.6mL/min、カラム温度:60℃、検出器:示差屈折率検出器、注入量:20μl。12h発酵後、タガトースの収率は60%であった。
【0219】
実施例14 大腸菌組換え菌株YH6-2のタガトース生産における使用
(1)大腸菌組換え菌株YH6-2を用いたグルコース発酵によるタガトースの合成
LB培地(10g/Lペプトン、5g/L酵母抽出物、5g/L塩化ナトリウム、カナマイシン25ng/mL、アンピシリン100ng/mL)100mLに、終濃度20g/Lのグルコースを加え、37℃、200rmpの条件で、大腸菌組換え菌株YH6-2を12~24h培養し、発酵終了後、サンプルを14000rmpで20min遠心分離し、0.22μmの微孔性濾過膜で濾過し、濾液についてHPLCを行った。高速液体クロマトグラフィー分析は以下のような条件で行われた。器具:アジレント社製高速液体クロマトグラフ1200、分析カラム:HPX-87H、移動相:5mM HSO、流速:0.6mL/min、カラム温度:60℃、検出器:示差屈折率検出器、注入量:20μl。12h発酵後、タガトースの収率は41%であった。
【0220】
(2)大腸菌組換え菌株YH6-2を用いたグルコースとグリセロールの発酵によるタガトースの合成
M9Y 培地(10g/Lグリセロール、20g/Lグルコース、6g/L NaHPO、0.5g/L NaCl、3g/L KHPO、1g/L NHCl、1mM MgSO、0.1mM CaCl、及び2g/L酵母抽出物)100mLを用いて、37℃、200rmpの条件で、大腸菌組換え菌株YH6-2を12~24h培養し、発酵終了後、サンプルを14000rmpで20min遠心分離し、0.22μmの微孔性濾過膜で濾過し、濾液についてHPLCを行った。高速液体クロマトグラフィー分析は以下のような条件で行われた。器具:アジレント社製高速液体クロマトグラフ1200、分析カラム:HPX-87H、移動相:5mM HSO、流速:0.6mL/min、カラム温度:60℃、検出器:示差屈折率検出器、注入量:20μl。12h発酵後、タガトースの収率は79%であった。
【0221】
図4は大腸菌組換え菌株YH6-2がグルコースとグリセロールを発酵してタガトースを生産する高速液体クロマトグラフィーの分析結果を示し、大腸菌組換え菌株はグルコースとグリセロールの両方を利用して発酵し、タガトースを効率的に生産することができ、しかも、発酵反応液中の成分が簡単であり、タガトースの分離精製が容易である。
【0222】
実施例15 枯草菌組換え菌株YJ8の構築
(1)組換え組み込みベクターpSS-upp-FRの構築
KEGGデータベースにおける、枯草菌Bacillus subtilis 168に由来のウラシルホスホリボシルトランスフェラーゼのコード遺伝子upp遺伝子配列に従って、プライマーを設計し、PCRによって増幅しウラシルホスホリボシルトランスフェラーゼのコード遺伝子の上流500bp相同断片及び下流500bpの相同断片を得て、simple cloning連結方式によって組み込みベクターpSSに構築し、組換え組み込みベクターpSS-upp-FRを得た。
【0223】
(2)枯草菌組換え菌株YJ8の構築
枯草菌菌株SCK6スーパーコンピテント細胞[6](200μL)を調製し、組換え組み込みベクターpSS-upp-FR(1μg)と枯草菌菌株SCK6スーパーコンピテント細胞(200μL)とを均一に混合し、続いて、37℃シェーカーに入れて90min蘇生させ、菌液をクロラムフェニコール(5μg/mL)を含有する固体培地LB(酵母抽出物5g/L、ペプトン10g/L、塩化ナトリウム10g/L)に塗布し、37℃インキュベーターに入れて、14~16h培養した。
【0224】
クロラムフェニコール耐性プレートで成長している陽性単一交叉形質転換体コロニーを選択してコロニーのPCR検証を行い、PCR増幅の結果、1000bp DNA断片及び2000bp DNA断片の2本のバンド(1000bp DNA断片のサイズはベクターpSS-upp-FRにおけるベクター中のuppコード遺伝子の上下流相同性アームの断片のサイズであり、2000bp DNA断片のサイズはゲノムにおいてuppコード遺伝子の上流相同性アーム、uppコード遺伝子及びuppコード遺伝子の下流相同性アームを含む断片のサイズである)を得るものは陽性クローンであった。
【0225】
陽性クローンを選択して抗生物質を添加していないLB培地に移して8~12h培養し、その後、菌液200μLを遠心分離して上清を除去し、次に、無菌水を用いて再懸濁させて、5-FU基礎塩培地固体プレート(40%glucose 20.0ml/L、4%glutamine 50.0mL/L、0.5%histidine 10.0mL/L、1%vitamin B1 1.0mL/L、20mM 5-FU 500μL/L、10×spizizen 100.0mL/L、1000×微量元素1.0mL/L)に塗布し、37℃インキュベーターに入れて24h培養した。このステップの目的は、抗生物質を添加していないLB培地で培養することにより、陽性形質転換体の分子内の相同組換えを促進し、5-FU基礎塩培地でスクリーニング培養をし、uppがノックアウトされた目的形質転換体を得ることである。
【0226】
5-FU基礎塩培地固体プレートから複数のコロニーを選択して、さらにコロニーのPCR検証を行い、PCR増幅の結果、1000bpのDNA断片だけを有する形質転換体は陽性クローンであった。形質転換体をPCRシーケンシングして検証した結果、正しい菌株、すなわち、ウラシルホスホリボシルトランスフェラーゼのコード遺伝子がノックアウトされた枯草菌組み換え工学菌株、すなわち、ウラシルホスホリボシルトランスフェラーゼ酵素活性のない枯草菌組み換え工学菌株を保存し、YJ8と命名した。
【0227】
実施例16 枯草菌組換え菌株YJ9の構築
(1)組換え組み込みベクターpSS-ptsG-FRの構築
KEGGデータベースにおける、枯草菌Bacillus subtilis 168に由来のPTS系のグルコース特異的トランスファータンパク質のコード遺伝子ptsG遺伝子配列に従って、プライマーを設計し、PCRによって増幅し、PTS系のグルコース特異的トランスファータンパク質のコード遺伝子の上流500bpの相同断片及び下流500bpの相同断片を得、simple cloning連結方式によって組み込みベクターpSSに構築し、組換え組み込みベクターpSS-ptsG-FRを得た。
【0228】
(2)枯草菌組換え菌株YJ9の構築
枯草菌菌株YJ8スーパーコンピテント細胞(200μL)を調製し、組換え組み込みベクターpSS-ptsG-FR (1μg)と枯草菌菌株YJ8スーパーコンピテント細胞(200μL)とを均一に混合し、続いて、37℃シェーカーに入れて90min蘇生させ、菌液をクロラムフェニコール(5μg/mL)を含有する固体培地LB(酵母抽出物5g/L、ペプトン10g/L、塩化ナトリウム10g/L)に塗布し、37℃インキュベーターに入れて、14~16h培養した。
【0229】
クロラムフェニコール耐性プレートで成長している陽性単一交叉形質転換体コロニーを選択してコロニーのPCR検証を行い、PCR増幅の結果、1000bp DNA断片及び2000bp DNA断片の2本のバンド(1000bp DNA断片のサイズはベクターpSS-ptsG-FRにおけるベクター中のptsGコード遺伝子の上下流相同性アームの断片のサイズであり、2000bp DNA断片のサイズはゲノムにおいてptsGコード遺伝子の上流相同性アーム、ptsGコード遺伝子及びptsGコード遺伝子の下流相同性アームを含む断片のサイズである)を得るものは陽性クローンであった。
【0230】
陽性クローンを選択して抗生物質を添加していないLB培地に移して8~12h培養し、その後、菌液200μLを遠心分離して上清を除去し、次に、無菌水を用いて再懸濁させて、5-FU基礎塩培地固体プレート(40%glucose 20.0ml/L、4%glutamine 50.0mL/L、0.5%histidine 10.0mL/L、1%vitamin B1 1.0mL/L、20mM 5-FU 500μL/L、10×spizizen 100.0mL/L、1000×微量元素1.0mL/L)に塗布し、37℃インキュベーターに入れて24h培養した。このステップの目的は、抗生物質を添加していないLB培地で培養することにより、陽性形質転換体の分子内の相同組換えを促進し、5-FU基礎塩培地でスクリーニング培養をし、ptsGがノックアウトされた目的形質転換体を得た。
【0231】
5-FU基礎塩培地固体プレートから複数のコロニーを選択して、さらにコロニーのPCR検証を行い、PCR増幅の結果、1000bpのDNA断片だけを有する形質転換体は陽性クローンであった。形質転換体をPCRシーケンシングして検証した結果、正しい菌株、すなわち、PTS系のグルコース特異的トランスファータンパク質のコード遺伝子がノックアウトされた枯草菌組み換え工学菌株、すなわち、PTS系グルコース特異的トランスファープロテアーゼ活性のない枯草菌組み換え工学菌株を保存し、YJ9と命名した。
【0232】
実施例17 枯草菌組換え菌株YJ10の構築
(1)組換え組み込みベクターpSS-hprK-FRの構築
KEGGデータベースにおける、枯草菌Bacillus subtilis 168に由来のHPrキナーゼのコード遺伝子hprK遺伝子配列に従って、プライマーを設計し、PCRによって増幅し、HPrキナーゼのコード遺伝子の上流500bpの相同断片及び下流500bpの相同断片を得、simple cloning連結方式によって組み込みベクターpSSに構築し、組換え組み込みベクターpSS-hprK-FRを得た。
【0233】
(2)枯草菌組換え菌株YJ10の構築
枯草菌菌株YJ9スーパーコンピテント細胞(200μL)を調製し、組換え組み込みベクターpSS-hprK-FR(1μg)と枯草菌菌株YJ9スーパーコンピテント細胞(200μL)とを均一に混合し、続いて、37℃シェーカーに入れて90min蘇生させ、菌液をクロラムフェニコール(5μg/mL)を含有する固体培地LB(酵母抽出物5g/L、ペプトン10g/L、塩化ナトリウム10g/L)に塗布し、37℃インキュベーターに入れて、14~16h培養した。
【0234】
クロラムフェニコール耐性プレートで成長している陽性単一交叉形質転換体コロニーを選択してコロニーのPCR検証を行い、PCR増幅の結果、1000bp DNA断片及び2000bp DNA断片の2本のバンド(1000bp DNA断片のサイズはベクターpSS-hprK-FRにおけるベクター中のhprKコード遺伝子の上下流相同性アームの断片のサイズであり、2000bp DNA断片のサイズはゲノムにおいてhprKコード遺伝子の上流相同性アーム、hprKコード遺伝子及びhprKコード遺伝子の下流相同性アームを含む断片のサイズである)を得るものは陽性クローンであった。
【0235】
陽性クローンを選択して抗生物質を添加していないLB培地に移して8~12h培養し、その後、菌液200μLを遠心分離して上清を除去し、次に、無菌水を用いて再懸濁させて、5-FU基礎塩培地固体プレート(40%glucose 20.0ml/L、4%glutamine 50.0mL/L、0.5%histidine 10.0mL/L、1%vitamin B1 1.0mL/L、20mM 5-FU 500μL/L、10×spizizen 100.0mL/L、1000×微量元素 1.0mL/L)に塗布し、37℃インキュベーターに入れて24h培養した。このステップの目的は、抗生物質を添加していないLB培地で培養することにより、陽性形質転換体の分子内の相同組換えを促進し、5-FU基礎塩培地でスクリーニング培養をし、ptsGがノックアウトされた目的形質転換体を得ることである。
【0236】
5-FU基礎塩培地固体プレートから複数のコロニーを選択して、さらにコロニーのPCR検証を行い、PCR増幅の結果、1000bpのDNA断片だけを有する形質転換体は陽性クローンであった。形質転換体をPCRシーケンシングして検証した結果、正しい菌株、すなわち、HPrキナーゼのコード遺伝子がノックアウトされた枯草菌組み換え工学菌株、すなわち、HPrキナーゼ酵素活性のない枯草菌組み換え工学菌株を保存し、YJ10と命名した。
【0237】
実施例18 枯草菌組換え菌株YJ11の構築
(1)組換え組み込みベクターpSS-ptsG-FR-glcK-pgiの構築
KEGGデータベースにおける、枯草菌Bacillus subtilis 168に由来のグルコキナーゼのコード遺伝子glcK遺伝子配列と枯草菌Bacillus subtilis 168に由来のグルコース-6-リン酸イソメラーゼのコード遺伝子pgi遺伝子配列に従って、プライマーを設計してglcK遺伝子及びpgi遺伝子を増幅し、simple cloning連結方式によって組み込みベクターpSS-ptsG-FRに構築し、組換え組み込みベクターpSS-ptsG-FR-glcK-pgiを得た。
【0238】
(2)枯草菌組換え菌株YJ11の構築
枯草菌菌株YJ10スーパーコンピテント細胞(200μL)を調製し、組換え組み込みベクターpSS-ptsG-FR-glcK-pgi(1μg)と枯草菌菌株YJ10スーパーコンピテント細胞(200μL)とを均一に混合し、続いて、37℃シェーカーに入れて90min蘇生させ、菌液をクロラムフェニコール(5μg/mL)を含有する固体培地LB(酵母抽出物5g/L、ペプトン10g/L、塩化ナトリウム10g/L)に塗布し、37℃インキュベーターに入れて、14~16h培養した。
【0239】
クロラムフェニコール耐性プレートで成長している陽性単一交叉形質転換体コロニーを選択してコロニーのPCR検証を行い、PCR増幅の結果、2000bp DNA断片及び4000bp DNA断片の2本のバンド(2000bp DNA断片のサイズはゲノムにおいてptsGコード遺伝子の上流相同性アーム、ptsGコード遺伝子及びptsGコード遺伝子の下流相同性アームを含む断片のサイズであり、4000bp DNA断片のサイズはベクターpSS-ptsG-FR-glcK-pgiにおいてptsGコード遺伝子の上流相同性アーム、glcK遺伝子、pgi遺伝子及びptsG下流相同性アームを含む断片のサイズである)を得るものは陽性クローンであった。
【0240】
陽性クローンを選択して抗生物質を添加していないLB培地に移して8~12h培養し、その後、菌液200μLを遠心分離して上清を除去し、次に、無菌水を用いて再懸濁させて、5-FU基礎塩培地固体プレート(40%glucose 20.0ml/L、4%glutamine 50.0mL/L、0.5%histidine 10.0mL/L、1%vitamin B1 1.0mL/L、20mM 5-FU 500μL/L、10×spizizen 100.0mL/L、1000×微量元素1.0mL/L)に塗布し、37℃インキュベーターに入れて24h培養した。このステップの目的は、抗生物質を添加していないLB培地で培養することにより、陽性形質転換体の分子内の相同組換えを促進し、5-FU基礎塩培地でスクリーニング培養をし、glcK遺伝子及びpgi遺伝子がptsG遺伝子部位に組み込まれた目的形質転換体を得ることである。
【0241】
5-FU基礎塩培地固体プレートから複数のコロニーを選択して、さらにコロニーのPCR検証を行い、PCR増幅の結果、4000bpのDNA断片だけを有する形質転換体は陽性クローンであった。形質転換体をPCRシーケンシングして検証した結果、正しい菌株、すなわち、グルコキナーゼのコード遺伝子glcK遺伝子配列及びグルコース-6-リン酸イソメラーゼのコード遺伝子pgiがptsG部位に組み込まれた枯草菌組み換え工学菌株、すなわち、グルコキナーゼ及びグルコース-6-リン酸イソメラーゼの酵素活性を向上させた枯草菌組み換え工学菌株を保存し、YJ11と命名した。
【0242】
実施例19 枯草菌組換え菌株YJ12の構築
(1)組換え組み込みベクターpSS-pfkA-FRの構築
KEGGデータベースにおける、枯草菌Bacillus subtilis 168に由来のフルクトース-6-リン酸キナーゼのコード遺伝子pfkA遺伝子配列に従って、プライマーを設計し、PCRによって増幅し、フルクトース-6-リン酸キナーゼのコード遺伝子の上流500bpの相同断片及び下流500bpの相同断片を得、simple cloning連結方式によって組み込みベクターpSSに構築し、組換え組み込みベクターpSS-pfkA-FRを得た。
【0243】
(2)枯草菌組換え菌株YJ12の構築
枯草菌菌株YJ11スーパーコンピテント細胞(200μL)を調製し、組換え組み込みベクターpSS-pfkA-FR(1μg)と枯草菌菌株YJ11スーパーコンピテント細胞(200μL)とを均一に混合し、続いて、37℃シェーカーに入れて90min蘇生させ、菌液をクロラムフェニコール(5μg/mL)を含有する固体培地LB(酵母抽出物5g/L、ペプトン10g/L、塩化ナトリウム10g/L)に塗布し、37℃インキュベーターに入れて、14~16h培養した。
【0244】
クロラムフェニコール耐性プレートで成長している陽性単一交叉形質転換体コロニーを選択してコロニーのPCR検証を行い、PCR増幅の結果、1000bp DNA断片及び2000bp DNA断片の2本のバンド(1000bp DNA断片のサイズはベクターpSS-pfkA-FRにおけるベクター中のpfkAコード遺伝子の上下流相同性アームの断片のサイズであり、2000bp DNA断片のサイズはゲノムにおいてpfkAコード遺伝子の上流相同性アーム、pfkAコード遺伝子及びpfkAコード遺伝子の下流相同性アームを含む断片のサイズである)を得るものは陽性クローンであった。
【0245】
陽性クローンを選択して抗生物質を添加していないLB培地に移して8~12h培養し、その後、菌液200μLを遠心分離して上清を除去し、次に、無菌水を用いて再懸濁させて、5-FU基礎塩培地固体プレート(40%glucose 20.0ml/L、4%glutamine 50.0mL/L、0.5%histidine 10.0mL/L、1%vitamin B1 1.0mL/L、20mM 5-FU 500μL/L、10×spizizen 100.0mL/L、1000×微量元素1.0mL/L)に塗布し、37℃インキュベーターに入れて24h培養した。このステップの目的は、抗生物質を添加していないLB培地で培養することにより、陽性形質転換体の分子内の相同組換えを促進し、5-FU基礎塩培地でスクリーニング培養をし、pfkAがノックアウトされた目的形質転換体を得ることである。
【0246】
5-FU基礎塩培地固体プレートから複数のコロニーを選択して、さらにコロニーのPCR検証を行い、PCR増幅の結果、1000bpのDNA断片だけを有する形質転換体は陽性クローンであった。形質転換体をPCRシーケンシングして検証した結果、正しい菌株、すなわち、フルクトース-6-リン酸キナーゼのコード遺伝子がノックアウトされた枯草菌組み換え工学菌株、すなわち、フルクトース-6-リン酸キナーゼ酵素活性のない枯草菌組み換え工学菌株を保存し、YJ12と命名した。
【0247】
実施例20 枯草菌組換え菌株YJ13の構築
(1)組換え組み込みベクターpSS-pgm-FRの構築
KEGGデータベースにおける、枯草菌Bacillus subtilis 168に由来のホスホグルコムターゼのコード遺伝子pgm遺伝子配列に従って、プライマーを設計し、PCRによって増幅し、ホスホグルコムターゼのコード遺伝子の上流500bpの相同断片及び下流500bpの相同断片を得、simple cloning連結方式によって組み込みベクターpSSに構築し、組換え組み込みベクターpSS-pgm-FRを得た。
【0248】
(2)枯草菌組換え菌株YJ13の構築
枯草菌菌株YJ12スーパーコンピテント細胞(200μL)を調製し、組換え組み込みベクターpSS-pgm-FR (1μg)と枯草菌菌株YJ12スーパーコンピテント細胞(200μL)とを均一に混合し、続いて、37℃シェーカーに入れて90min蘇生させ、菌液をクロラムフェニコール(5μg/mL)を含有する固体培地LB(酵母抽出物5g/L、ペプトン10g/L、塩化ナトリウム10g/L)に塗布し、37℃インキュベーターに入れて、14~16h培養した。
【0249】
クロラムフェニコール耐性プレートで成長している陽性単一交叉形質転換体コロニーを選択してコロニーのPCR検証を行い、PCR増幅の結果、1000bp DNA断片及び2000bp DNA断片の2本のバンド(1000bp DNA断片のサイズはベクターpSS-pgm-FRにおけるベクター中のpgmコード遺伝子の上下流相同性アームの断片のサイズであり、2000bp DNA断片のサイズはゲノムにおいてpgmコード遺伝子の上流相同性アーム、pgmコード遺伝子及びpgmコード遺伝子の下流相同性アームを含む断片のサイズである)を得るものは陽性クローンであった。
【0250】
陽性クローンを選択して抗生物質を添加していないLB培地に移して8~12h培養し、その後、菌液200μLを遠心分離して上清を除去し、次に、無菌水を用いて再懸濁させて、5-FU基礎塩培地固体プレート(40%glucose 20.0ml/L、4%glutamine 50.0mL/L、0.5%histidine 10.0mL/L、1%vitamin B1 1.0mL/L、20mM 5-FU 500μL/L、10×spizizen 100.0mL/L、1000×微量元素1.0mL/L)に塗布し、37℃インキュベーターに入れて24h培養した。このステップの目的は、抗生物質を添加していないLB培地で培養することにより、陽性形質転換体の分子内の相同組換えを促進し、5-FU基礎塩培地でスクリーニング培養をし、pgmがノックアウトされた目的形質転換体を得ることである。
【0251】
5-FU基礎塩培地固体プレートから複数のコロニーを選択して、さらにコロニーのPCR検証を行い、PCR増幅の結果、1000bpのDNA断片だけを有する形質転換体は陽性クローンであった。形質転換体をPCRシーケンシングして検証した結果、正しい菌株、すなわち、ホスホグルコムターゼのコード遺伝子がノックアウトされた枯草菌組み換え工学菌株、すなわち、ホスホグルコムターゼ酵素活性のない枯草菌組み換え工学菌株を保存し、YJ13と命名した。
【0252】
実施例21 枯草菌組換え菌株YJ14の構築
(1)組換え組み込みベクターpSS-zwf-FRの構築
KEGGデータベースにおける、枯草菌Bacillus subtilis 168に由来のグルコース-6-リン酸デヒドロゲナーゼのコード遺伝子zwf遺伝子配列に従って、プライマーを設計し、PCRによって増幅し、グルコース-6-リン酸デヒドロゲナーゼのコード遺伝子の上流500bpの相同断片及び下流500bpの相同断片を得、simple cloning連結方式によって組み込みベクターpSSに構築し、組換え組み込みベクターpSS-zwf-FRを得た。
【0253】
(2)枯草菌組換え菌株YJ14の構築
枯草菌菌株YJ13スーパーコンピテント細胞(200μL)を調製し、組換え組み込みベクターpSS-zwf-FR(1μg)と枯草菌菌株YJ13スーパーコンピテント細胞(200μL)とを均一に混合し、続いて、37℃シェーカーに入れて90min蘇生させ、菌液をクロラムフェニコール(5μg/mL)を含有する固体培地LB(酵母抽出物5g/L、ペプトン10g/L、塩化ナトリウム10g/L)に塗布し、37℃インキュベーターに入れて、14~16h培養した。
【0254】
クロラムフェニコール耐性プレートで成長している陽性単一交叉形質転換体コロニーを選択してコロニーのPCR検証を行い、PCR増幅の結果、1000bp DNA断片及び2000bp DNA断片の2本のバンド(1000bp DNA断片のサイズはベクターpSS-pgm-FRにおけるベクター中のzwfコード遺伝子の上下流相同性アームの断片のサイズであり、2000bp DNA断片のサイズはゲノムにおいてzwfコード遺伝子の上流相同性アーム、zwfコード遺伝子及びzwfコード遺伝子の下流相同性アームを含む断片のサイズである)を得るものは陽性クローンであった。
【0255】
陽性クローンを選択して抗生物質を添加していないLB培地に移して8~12h培養し、その後、菌液200μLを遠心分離して上清を除去し、次に、無菌水を用いて再懸濁させて、5-FU基礎塩培地固体プレート(40%glucose 20.0ml/L、4%glutamine 50.0mL/L、0.5%histidine 10.0mL/L、1%vitamin B1 1.0mL/L、20mM 5-FU 500μL/L、10×spizizen 100.0mL/L、1000×微量元素 1.0mL/L)に塗布し、37℃インキュベーターに入れて24h培養した。このステップの目的は、抗生物質を添加していないLB培地で培養することにより、陽性形質転換体の分子内の相同組換えを促進し、5-FU基礎塩培地でスクリーニング培養をし、zwfがノックアウトされた目的形質転換体を得ることである。
【0256】
5-FU基礎塩培地固体プレートから複数のコロニーを選択して、さらにコロニーのPCR検証を行い、PCR増幅の結果、1000bpのDNA断片だけを有する形質転換体は陽性クローンであった。形質転換体をPCRシーケンシングして検証した結果、正しい菌株、すなわち、グルコース-6-リン酸デヒドロゲナーゼのコード遺伝子がノックアウトされた枯草菌組み換え工学菌株、すなわち、グルコース-6-リン酸デヒドロゲナーゼ酵素活性のない枯草菌組み換え工学菌株を保存し、YJ14と命名した。
【0257】
実施例22 枯草菌組換え菌株SKC6-1の構築
(1)組換え発現ベクターpWB980-T6PE-T6PPの構築
KEGGデータベースにおける、Agrobacterium tumefaciens str. C58に由来のタガトース-6-リン酸エピメラーゼT6PEとアルカエオグロブス属Archaeoglobus fulgidus又はArchaeoglobus profundusに由来のタガトース-6-リン酸ホスファターゼT6PP遺伝子に従って、プライマーを設計してPCRによって増幅し、タガトース-6-リン酸エピメラーゼ及びタガトース-6-リン酸ホスファターゼの遺伝子断片を得、simple cloning連結方式によって発現ベクターpWB980に構築し、組換え発現ベクターpWB980-T6PE-T6PPを得た。
【0258】
(2)枯草菌組換え菌株SCK6-1の構築
枯草菌菌株SCK6スーパーコンピテント細胞(200μL)を調製し、組換え発現ベクターpWB980-T6PE-T6PP(1μg)と枯草菌菌株SCK6スーパーコンピテント細胞(200μL)とを均一に混合し、続いて、37℃シェーカーに入れて90min蘇生させ、菌液をカナマイシン(25μg/mL)を含有する固体培地LB(酵母抽出物5g/L、ペプトン10g/L、塩化ナトリウム10g/L)に塗布し、37℃インキュベーターに入れて、14~16h培養した。カナマイシン耐性プレートで成長している陽性単一交叉形質転換体を選択してコロニーコロニーのPCR検証を行い、PCR増幅の結果、2000bpのDNA断片の形質転換体は陽性クローンであった。形質転換体をPCRシーケンシングして検証した結果、正しい菌株、すなわち、タガトース-6-リン酸エピメラーゼ及びタガトース6-リン酸ホスファターゼ酵素活性を向上させた枯草菌組み換え工学菌株を保存し、SCK6-1と命名した。
【0259】
以上と同じ方法によって、プラスミドpWB980-T6PE-T6PPを枯草菌組換え菌株YJ8、YJ9、YJ10、YJ11、YJ12、YJ13、YJ14に導入し、タガトース-6-リン酸エピメラーゼ及びタガトース-6-リン酸ホスファターゼ酵素活性を向上させた枯草菌組み換え工学菌株YJ8-1、YJ9-1、YJ10-1、YJ11-1、YJ12-1、YJ13-1、YJ14-1を得た。
【0260】
実施例23 枯草菌組み換え工学菌株SCK6-1のタガトース生産における使用
(1)枯草菌組み換え工学菌株SCK6-1を用いたグルコース発酵によるタガトースの合成
SR培地(15g/L ペプトン、 25g/L酵母抽出物、3g/L KHPO、カナマイシン25ng/mL)100mLに、終濃度20g/Lのグルコースを加え、37℃、200rmpの条件で、枯草菌組み換え工学菌株SCK6-1を12~24h培養し、発酵終了後、サンプルを14000rmpで20min遠心分離し、0.22μmの微孔性濾過膜で濾過し、濾液についてHPLCを行った。高速液体クロマトグラフィー分析は以下のような条件で行われた。器具:アジレント社製高速液体クロマトグラフ1200、分析カラム:HPX-87H、移動相:5mM HSO、流速:0.6mL/min、カラム温度:60℃、検出器:示差屈折率検出器、注入量:20μl。12h発酵後、タガトースの収率は1.0%であった。
【0261】
(2)枯草菌組み換え工学菌株SCK6-1を用いたグルコースとグリセロールの発酵によるタガトースの合成
SR培地(15g/Lペプトン、25g/L酵母抽出物、3g/L KHPO、カナマイシン25ng/mL)100mLに、終濃度20g/Lのグルコース、20g/Lのグリセロールを加え、37℃、200rmpの条件で、枯草菌組み換え工学菌株SCK6-1を12~24h培養し、発酵終了後、サンプルを14000rmpで20min遠心分離し、0.22μmの微孔性濾過膜で濾過し、濾液についてHPLCを行った。高速液体クロマトグラフィー分析は以下のような条件で行われた。器具:アジレント社製高速液体クロマトグラフ1200、分析カラム:HPX-87H、移動相:5mM HSO、流速:0.6mL/min、カラム温度:60℃、検出器:示差屈折率検出器、注入量:20μl。12h発酵後、タガトースの収率は1.0%であった。
【0262】
実施例24 枯草菌組み換え工学菌株YJ8-1のタガトース生産における使用
(1)枯草菌組み換え工学菌株YJ8-1を用いたグルコース発酵によるタガトースの合成
SR培地(15g/Lペプトン、25g/L酵母抽出物、3g/L KHPO、カナマイシン25ng/mL)100mLに、終濃度20g/Lのグルコースを加え、37℃、200rmpの条件で、枯草菌組み換え工学菌株YJ8-1を12~24h培養し、発酵終了後、サンプルを14000rmpで20min遠心分離し、0.22μmの微孔性濾過膜で濾過し、濾液についてHPLCを行った。高速液体クロマトグラフィー分析は以下のような条件で行われた。器具:アジレント社製高速液体クロマトグラフ1200、分析カラム:HPX-87H、移動相:5mM HSO、流速:0.6mL/min、カラム温度:60℃、検出器:示差屈折率検出器、注入量:20μl。12h発酵後、タガトースの収率は2.0%であった。
【0263】
(2)枯草菌組み換え工学菌株YJ8-1を用いたグルコースとグリセロールの発酵によるタガトースの合成
SR培地(15g/Lペプトン、25g/L酵母抽出物、3g/L KHPO、カナマイシン25ng/mL)100mLに、終濃度20g/Lのグルコース、20g/Lのグリセロールを加え、37℃、200rmpの条件で、枯草菌組み換え工学菌株YJ8-1を12~24h培養し、発酵終了後、サンプルを14000rmpで20min遠心分離し、0.22μmの微孔性濾過膜で濾過し、濾液についてHPLCを行った。高速液体クロマトグラフィー分析は以下のような条件で行われた。器具:アジレント社製高速液体クロマトグラフ1200、分析カラム:HPX-87H、移動相:5mM HSO、流速:0.6mL/min、カラム温度:60℃、検出器:示差屈折率検出器、注入量:20μl。12h発酵後、タガトースの収率は2.0%であった。
【0264】
実施例25 枯草菌組み換え工学菌株YJ9-1のタガトース生産における使用
(1)枯草菌組み換え工学菌株YJ9-1を用いたグルコース発酵によるタガトースの合成
SR培地(15g/Lペプトン、25g/L酵母抽出物、3g/L KHPO、カナマイシン25ng/mL)100mLに、終濃度20g/Lのグルコースを加え、37℃、200rmpの条件で、枯草菌組み換え工学菌株YJ9-1を12~24h培養し、発酵終了後、サンプルを14000rmpで20min遠心分離し、0.22μmの微孔性濾過膜で濾過し、濾液についてHPLCを行った。高速液体クロマトグラフィー分析は以下のような条件で行われた。器具:アジレント社製高速液体クロマトグラフ1200、分析カラム:HPX-87H、移動相:5mM HSO、流速:0.6mL/min、カラム温度:60℃、検出器:示差屈折率検出器、注入量:20μl。12h発酵後、タガトースの収率は2.3%であった。
【0265】
(2)枯草菌組み換え工学菌株YJ9-1を用いたグルコースとグリセロールの発酵によるタガトースの合成
SR培地(15g/Lペプトン、25g/L酵母抽出物、3g/L KHPO、カナマイシン25ng/mL)100mLに、終濃度20g/Lのグルコース、20g/Lのグリセロールを加え、37℃、200rmpの条件で、枯草菌組み換え工学菌株YJ9-1を12~24h培養し、発酵終了後、サンプルを14000rmpで20min遠心分離し、0.22μmの微孔性濾過膜で濾過し、濾液についてHPLCを行った。高速液体クロマトグラフィー分析は以下のような条件で行われた。器具:アジレント社製高速液体クロマトグラフ1200、分析カラム:HPX-87H、移動相:5mM HSO、流速:0.6mL/min、カラム温度:60℃、検出器:示差屈折率検出器、注入量:20μl。12h発酵後、タガトースの収率は2.5%であった。
【0266】
実施例26 枯草菌組み換え工学菌株YJ10-1のタガトース生産における使用
(1)枯草菌組み換え工学菌株YJ10-1を用いたグルコース発酵によるタガトースの合成
SR培地(15g/Lペプトン、25g/L酵母抽出物、3g/L KHPO、カナマイシン25ng/mL)100mLに、終濃度20g/Lのグルコースを加え、37℃、200rmpの条件で、枯草菌組み換え工学菌株YJ10-1を12~24h培養し、発酵終了後、サンプルを14000rmpで20min遠心分離し、0.22μmの微孔性濾過膜で濾過し、濾液についてHPLCを行った。高速液体クロマトグラフィー分析は以下のような条件で行われた。器具:アジレント社製高速液体クロマトグラフ1200、分析カラム:HPX-87H、移動相:5mM HSO、流速:0.6mL/min、カラム温度:60℃、検出器:示差屈折率検出器、注入量:20μl。12h発酵後、タガトースの収率は2.7%であった。
【0267】
(2)枯草菌組み換え工学菌株YJ10-1を用いたグルコースとグリセロールの発酵によるタガトースの合成
SR培地(15g/Lペプトン、25g/L酵母抽出物、3g/L KHPO、カナマイシン25ng/mL)100mLに、終濃度20g/Lのグルコース、20g/Lのグリセロールを加え、37℃、200rmpの条件で、枯草菌組み換え工学菌株YJ10-1を12~24h培養し、発酵終了後、サンプルを14000rmpで20min遠心分離し、0.22μmの微孔性濾過膜で濾過し、濾液についてHPLCを行った。高速液体クロマトグラフィー分析は以下のような条件で行われた。器具:アジレント社製高速液体クロマトグラフ1200、分析カラム:HPX-87H、移動相:5mM HSO、流速:0.6mL/min、カラム温度:60℃、検出器:示差屈折率検出器、注入量:20μl。12h発酵後、タガトースの収率は4.0%であった。
【0268】
実施例27 枯草菌組み換え工学菌株YJ11-1のタガトース生産における使用
(1)枯草菌組み換え工学菌株YJ11-1を用いたグルコース発酵によるタガトースの合成
SR培地(15g/Lペプトン、25g/L酵母抽出物、3g/L KHPO、カナマイシン25ng/mL)100mLに、終濃度20g/Lのグルコースを加え、37℃、200rmpの条件で、枯草菌組み換え工学菌株YJ11-1を12~24h培養し、発酵終了後、サンプルを14000rmpで20min遠心分離し、0.22μmの微孔性濾過膜で濾過し、濾液についてHPLCを行った。高速液体クロマトグラフィー分析は以下のような条件で行われた。器具:アジレント社製高速液体クロマトグラフ1200、分析カラム:HPX-87H、移動相:5mM HSO、流速:0.6mL/min、カラム温度:60℃、検出器:示差屈折率検出器、注入量:20μl。12h発酵後、タガトースの収率は3.0%であった。
【0269】
(2)枯草菌組み換え工学菌株YJ11-1を用いたグルコースとグリセロールの発酵によるタガトースの合成
SR培地(15g/Lペプトン、25g/L酵母抽出物、3g/L KHPO、カナマイシン25ng/mL)100mLに、終濃度20g/Lのグルコース、20g/Lのグリセロールを加え、37℃、200rmpの条件で、枯草菌組み換え工学菌株YJ11-1を12~24h培養し、発酵終了後、サンプルを14000rmpで20min遠心分離し、0.22μmの微孔性濾過膜で濾過し、濾液についてHPLCを行った。高速液体クロマトグラフィー分析は以下のような条件で行われた。器具:アジレント社製高速液体クロマトグラフ1200、分析カラム:HPX-87H、移動相:5mM HSO、流速:0.6mL/min、カラム温度:60℃、検出器:示差屈折率検出器、注入量:20μl。12h発酵後、タガトースの収率は5.0%であった。
【0270】
実施例28 枯草菌組み換え工学菌株YJ12-1のタガトース生産における使用
(1)枯草菌組み換え工学菌株YJ12-1を用いたグルコース発酵によるタガトースの合成
SR培地(15g/Lペプトン、25g/L酵母抽出物、3g/L KHPO、カナマイシン25ng/mL)100mLに、終濃度20g/Lのグルコースを加え、37℃、200rmpの条件で、枯草菌組み換え工学菌株YJ12-1を12~24h培養し、発酵終了後、サンプルを14000rmpで20min遠心分離し、0.22μmの微孔性濾過膜で濾過し、濾液についてHPLCを行った。高速液体クロマトグラフィー分析は以下のような条件で行われた。器具:アジレント社製高速液体クロマトグラフ1200、分析カラム:HPX-87H、移動相:5mM HSO、流速:0.6mL/min、カラム温度:60℃、検出器:示差屈折率検出器、注入量:20μl。12h発酵後、タガトースの収率は8.0%であった。
【0271】
(2)枯草菌組み換え工学菌株YJ12-1を用いたグルコースとグリセロールの発酵によるタガトースの合成
SR培地(15g/Lペプトン、25g/L酵母抽出物、3g/L KHPO、カナマイシン25ng/mL)100mLに、終濃度20g/Lのグルコース、20g/Lのグリセロールを加え、37℃、200rmpの条件で、枯草菌組み換え工学菌株YJ12-1を12~24h培養し、発酵終了後、サンプルを14000rmpで20min遠心分離し、0.22μmの微孔性濾過膜で濾過し、濾液についてHPLCを行った。高速液体クロマトグラフィー分析は以下のような条件で行われた。器具:アジレント社製高速液体クロマトグラフ1200、分析カラム:HPX-87H、移動相:5mM HSO、流速:0.6mL/min、カラム温度:60℃、検出器:示差屈折率検出器、注入量:20μl。12h発酵後、タガトースの収率は16.0%であった。
【0272】
実施例29 枯草菌組み換え工学菌株YJ13-1のタガトース生産における使用
(1)枯草菌組み換え工学菌株YJ13-1を用いたグルコース発酵によるタガトースの合成
SR培地(15g/Lペプトン、25g/L酵母抽出物、3g/L KHPO、カナマイシン25ng/mL)100mLに、終濃度20g/Lのグルコースを加え、37℃、200rmpの条件で、枯草菌組み換え工学菌株YJ13-1を12~24h培養し、発酵終了後、サンプルを14000rmpで20min遠心分離し、0.22μmの微孔性濾過膜で濾過し、濾液についてHPLCを行った。高速液体クロマトグラフィー分析は以下のような条件で行われた。器具:アジレント社製高速液体クロマトグラフ1200、分析カラム:HPX-87H、移動相:5mM HSO、流速:0.6mL/min、カラム温度:60℃、検出器:示差屈折率検出器、注入量:20μl。12h発酵後、タガトースの収率は16%であった。
【0273】
(2)枯草菌組み換え工学菌株YJ13-1を用いたグルコースとグリセロールの発酵によるタガトースの合成
SR培地(15g/Lペプトン、25g/L酵母抽出物、3g/L KHPO、カナマイシン25ng/mL)100mLに、終濃度20g/Lのグルコース、20g/Lのグリセロールを加え、37℃、200rmpの条件で、枯草菌組み換え工学菌株YJ13-1を12~24h培養し、発酵終了後、サンプルを14000rmpで20min遠心分離し、0.22μmの微孔性濾過膜で濾過し、濾液についてHPLCを行った。高速液体クロマトグラフィー分析は以下のような条件で行われた。器具:アジレント社製高速液体クロマトグラフ1200、分析カラム:HPX-87H、移動相:5mM HSO、流速:0.6mL/min、カラム温度:60℃、検出器:示差屈折率検出器、注入量:20μl。12h発酵後、タガトースの収率は35%であった。
【0274】
実施例30 枯草菌組み換え工学菌株YJ14-1のタガトース生産における使用
(1)枯草菌組み換え工学菌株YJ14-1を用いたグルコース発酵によるタガトースの合成
SR培地(15g/Lペプトン、25g/L酵母抽出物、3g/L KHPO、カナマイシン25ng/mL)100mLに、終濃度20g/Lのグルコースを加え、37℃、200rmpの条件で、枯草菌組み換え工学菌株YJ14-1を12~24h培養し、発酵終了後、サンプルを14000rmpで20min遠心分離し、0.22μmの微孔性濾過膜で濾過し、濾液についてHPLCを行った。高速液体クロマトグラフィー分析は以下のような条件で行われた。器具:アジレント社製高速液体クロマトグラフ1200、分析カラム:HPX-87H、移動相:5mM HSO、流速:0.6mL/min、カラム温度:60℃、検出器:示差屈折率検出器、注入量:20μl。12h発酵後、タガトースの収率は33%であった。
【0275】
(2)枯草菌組み換え工学菌株YJ14-1を用いたグルコースとグリセロールの発酵によるタガトースの合成
SR培地(15g/Lペプトン、25g/L酵母抽出物、3g/L KHPO、カナマイシン25ng/mL)100mLに、終濃度20g/Lのグルコース、20g/Lのグリセロールを加え、37℃、200rmpの条件で、枯草菌組み換え工学菌株YJ14-1を12~24h培養し、発酵終了後、サンプルを14000rmpで20min遠心分離し、0.22μmの微孔性濾過膜で濾過し、濾液についてHPLCを行った。高速液体クロマトグラフィー分析は以下のような条件で行われた。器具:アジレント社製高速液体クロマトグラフ1200、分析カラム:HPX-87H、移動相:5mM HSO、流速:0.6mL/min、カラム温度:60℃、検出器:示差屈折率検出器、注入量:20μl。12h発酵後、タガトースの収率は70%であった。
【0276】
図5は枯草菌組み換え工学菌株YJ14-1がグルコースとグリセロールを発酵してタガトースを生産することの高速液体クロマトグラフィーの分析結果を示し、枯草菌組み換え工学菌株はグルコースとグリセロールの両方を利用して発酵し、タガトースを効率的に生産することができ、しかも、発酵反応液中の成分が簡単であり、タガトースの分離精製が容易である。
【0277】
[5] You, C., Zhang, X. Z., & Zhang, Y. H. (2012). Simple cloning via direct transformation of PCR product (DNA Multimer) to Escherichia coli and Bacillus subtilis. Appl. Environ. Microbiol., 78(5), 1593-1595. doi:10.1128/AEM.07105-11.
【0278】
[6] Zhang, X. Z., & Zhang, Y. H. P. (2011). Simple, fast and high-efficiency transformation system for directed evolution of cellulase in Bacillus subtilis. Microb. Biotechnol., 4(1), 98-105. doi:10.1111/j.1751-7915.2010.00230.x.
【0279】
本明細書に開示されたすべての技術的特徴は、いかなる組合せ方法でも組み合わせることができる。本明細書に開示された各特徴は、同一、等価、又は類似の作用を有する他の特徴に置き換えられてもよい。したがって、特に断らない限り、開示されている各特徴は、等価又は類似の特徴の一連の例にすぎない。
【0280】
さらに、上記の説明から、当業者は、本開示の重要な特徴を本開示から容易に明らかにすることができ、本開示の精神及び範囲から逸脱することなく、様々な使用目的や条件に適合するように発明を多く修正することができ、したがって、このような修正も特許請求の範囲の範囲内に入ることも意図される。
図1
図2A
図2B
図2C
図2D
図3A
図3B
図4
図5
【配列表】
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【国際調査報告】