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特表2023-551807リサイクルプロセスのためのポリエステル廃棄物の原料精製
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-12-13
(54)【発明の名称】リサイクルプロセスのためのポリエステル廃棄物の原料精製
(51)【国際特許分類】
   C08J 11/08 20060101AFI20231206BHJP
   B29B 17/02 20060101ALI20231206BHJP
   C08G 63/90 20060101ALI20231206BHJP
   B29K 67/00 20060101ALN20231206BHJP
【FI】
C08J11/08 ZAB
B29B17/02
C08G63/90
B29K67:00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023530883
(86)(22)【出願日】2021-12-02
(85)【翻訳文提出日】2023-05-22
(86)【国際出願番号】 IB2021061239
(87)【国際公開番号】W WO2022118243
(87)【国際公開日】2022-06-09
(31)【優先権主張番号】63/120,354
(32)【優先日】2020-12-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】17/540,176
(32)【優先日】2021-12-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】390009531
【氏名又は名称】インターナショナル・ビジネス・マシーンズ・コーポレーション
【氏名又は名称原語表記】INTERNATIONAL BUSINESS MACHINES CORPORATION
【住所又は居所原語表記】New Orchard Road, Armonk, New York 10504, United States of America
(74)【代理人】
【識別番号】100112690
【弁理士】
【氏名又は名称】太佐 種一
(74)【代理人】
【識別番号】100120710
【弁理士】
【氏名又は名称】片岡 忠彦
(74)【復代理人】
【識別番号】100104880
【弁理士】
【氏名又は名称】古部 次郎
(74)【復代理人】
【識別番号】100118108
【弁理士】
【氏名又は名称】久保 洋之
(72)【発明者】
【氏名】ブレイタ、グレゴリー
(72)【発明者】
【氏名】アレン、ロバート、デヴィッド
【テーマコード(参考)】
4F401
4J029
【Fターム(参考)】
4F401AA08
4F401AA22
4F401AA24
4F401AD03
4F401AD07
4F401BB12
4F401CA56
4F401DA14
4F401EA55
4J029AB07
4J029BA03
4J029BA04
4J029BA05
4J029CB06A
4J029CC05A
4J029CF19
4J029KD02
4J029KD06
4J029KD09
4J029KD17
4J029KE13
4J029KG01
4J029KG03
4J029KH05
4J029KJ02
4J029LB07
4J029LB08
(57)【要約】
廃ポリエステル材料をジクロロメタン(DCM)で前処理して、再利用のための精製ポリエステルを生成する。精製ポリエステルは、任意のケミカルリサイクルまたはメカニカルリサイクルプロセスを通じて再利用することができる。廃ポリエステル材料が非ポリエステル汚染物質を含む場合、DCM処理したポリエステル材料は、DCMを含むスラリー、再利用のためのポリエステルモノマー生成物を含む固体成分、および廃液体成分を生成する。非ポリエステル汚染物質は、この液体成分の上面から濾過することができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリエステルを含む廃棄物をジクロロメタン(DCM)で処理することにより精製することと、
DCM処理した前記廃棄物から、リサイクルのために精製ポリエステルを回収することと、
を含む、方法。
【請求項2】
前記精製ポリエステルは、固体成分および液体成分を含み、当該液体成分の表面に汚染物質が浮遊し、当該液体成分の当該表面から濾過することにより当該汚染物質が除去される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記精製ポリエステルは、固体成分および液体成分を含み、当該精製ポリエステルから濾過によって汚染物質が除去される、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記廃棄物はさらに非ポリエステルポリマーを含み、当該非ポリエステルポリマーはリサイクルのために回収される、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記非ポリエステルポリマーは、ポリオレフィン、ポリウレタン、ポリイミド、ポリアミド、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記ポリオレフィンは、ポリエチレンもしくはポリプロピレンまたはその両方である、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記廃棄物は、アルミニウムもしくはアルミニウム含有フィルムまたはその両方を含み、当該アルミニウムもしくはアルミニウム含有フィルムまたはその両方はリサイクルのために回収される、請求項4に記載の方法。
【請求項8】
前記DCMは、非エステルポリマー、物理的な汚れもしくは垢またはその両方、着色剤、有機不純物、ならびに金属不純物およびイオン性不純物からなる群から選択される不純物を除去する、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記処理されるポリエステルは、リサイクルプロセスへの前洗浄済みポリエステル投入物として使用される、ポリエステルフレーク、ポリエステル生地もしくはポリエステル繊維またはその組み合わせを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記リサイクルプロセスは、ケミカルリサイクルプロセスまたはメカニカルリサイクルプロセスである、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記ケミカルリサイクルプロセスは、溶媒溶解、アルコール分解、加水分解、酸分解、加リン酸分解、アミノ分解、加安分解、および酵素分解からなる群から選択される、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記ケミカルリサイクルプロセスは、溶媒溶解を含む、請求項10に記載の方法。
【請求項13】
前記ケミカルリサイクルプロセスは、解糖解重合を含む、請求項10に記載の方法。
【請求項14】
ポリエステルテレフタレート(PET)を含む廃棄物をジクロロメタン(DCM)で処理することにより精製することと、
DCM処理した前記廃棄物から、リサイクルのために精製PETを回収することと、
を含む、方法。
【請求項15】
前記精製PETは、固体成分および液体成分を含み、当該液体成分の表面に汚染物質が浮遊し、当該液体成分から濾過することにより当該汚染物質が除去される、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記精製PETは、固体成分および液体成分を含み、当該精製PETから濾過によって汚染物質が除去される、請求項14に記載の方法。
【請求項17】
前記廃棄物はさらに非ポリエステルポリマーを含み、当該非ポリエステルポリマーはリサイクルのために回収される、請求項14に記載の方法。
【請求項18】
前記非ポリエステルポリマーは、ポリオレフィン、ポリウレタン、ポリイミド、ポリアミド、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記ポリオレフィンは、ポリエチレンもしくはポリプロピレンまたはその両方である、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記廃棄物は、アルミニウムもしくはアルミニウム含有フィルムまたはその両方を含み、当該アルミニウムもしくはアルミニウム含有フィルムまたはその両方はリサイクルのために回収される、請求項14に記載の方法。
【請求項21】
前記DCMは、非エステルポリマー、物理的な汚れもしくは垢またはその両方、着色剤、有機不純物、ならびに金属不純物およびイオン性不純物からなる群から選択される不純物を除去する、請求項14に記載の方法。
【請求項22】
前記処理されるポリエステルは、リサイクルプロセスへの前洗浄済みPET投入物として使用されるPETフレークを含む、請求項14に記載の方法。
【請求項23】
前記リサイクルプロセスは、ケミカルリサイクルプロセスまたはメカニカルリサイクルプロセスである、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記ケミカルリサイクルプロセスは、溶媒溶解を含む、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記ケミカルリサイクルプロセスは、解糖解重合を含む、請求項23に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般にリサイクルプロセスに関し、より具体的には、リサイクルプロセスの開始前にジクロロメタン(DCM)で廃ポリエステル原料(waste polyester feedstock)を精製する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
低品質のプラスチック廃棄物中に不純物が存在すると、プラスチック廃棄物のケミカルリサイクル(chemical recycling)およびメカニカルリサイクル(mechanical recycling)の効率および効果に問題を生じさせる。例えば、モノマーまたはポリマー供給流(feed stream)中に少量の不純物(染料、顔料、汚れ、異物または異種ポリマーなど)が存在すると、流入する原料の品質を大きく損ない、結果として改質ポリマー(reformed polymer)の機械的特性、光学特性、もしくはバリア特性またはその組み合わせを著しく低下させる可能性がある。
【0003】
ケミカルリサイクルは、廃プラスチックや廃繊維を原料として使用する。リサイクルプロセスでは、ポリマーを溶解し、もしくは新しいプラスチックの調製に使用するモノマーを生成し、またはその両方を行う。逐次重合(step growth polymerization)/縮合重合(condensation polymerization)によって新しい高分子量ポリエステルを生成するには、モノマーに非常に高い純度(99%超)が要求される。ケミカルリサイクルにおける継続的な課題は、低品質で組成が変動しやすい(compositionally fluctuating)原料をいかに回収して解重合およびモノマー精製を通じて処理し、縮合(または逐次)重合に必要な品質を有する最終生成物(モノマー)を作成するかである。現在、反応後精製(post reaction purification)は、活性炭およびイオン交換樹脂を用いた処理を通じた脱色および脱イオン化によって行われている。これらの技術を反応前蒸留(pre-reaction distillation)とともに用いることで、色を含む不純物の除去には概ね成功しているが、投入物の汚染や着色が多いほど、精製媒体(purification media)の再生頻度を高くする必要がある。使用済み活性炭または汚染活性炭を再活性化するプロセスは、一般的に熱分解(600~900℃の範囲の温度)であり、大きなエネルギーコストが発生する。さらに、イオン交換床(ion exchange bed)を再生する場合、希釈した酸または塩基で逆流洗浄(backflow washing)する必要があり、環境廃棄物もしくは追加処理の必要性またはその両方が発生する。
【0004】
メカニカルリサイクルは、厳しく洗浄された無色の投入物のみを使用できる。メカニカルリサイクルは異物に対する許容度がゼロであるため、選別プロセスにおいて大量のプラスチックが拒絶される。ポリエチレンテレフタレート(PET)ボトルの場合、ポリオレフィン(ボトルキャップ、リング、ラベルなど)が1%しか含まれていないPETボトルのバッチでも、メカニカルリサイクルには適さず、拒絶される。このような制限から、メカニカルリサイクルは回収率の低いリサイクルプロセスとなっている(57%未満)。
【発明の概要】
【0005】
一態様において、本発明は、ポリエステルを含む廃棄物をジクロロメタン(DCM)で処理することにより精製することと、DCM処理した前記廃棄物から、リサイクルのために精製ポリエステルを回収することと、を含む、方法に関する。
【0006】
別の態様において、本発明は、ポリエステルテレフタレート(PET)を含む廃棄物をジクロロメタン(DCM)で処理することにより精製することと、DCM処理した前記廃棄物から、リサイクルのために精製PETを回収することと、を含む、方法に関する。
【0007】
本発明の追加の態様もしくは実施形態またはその両方を、以下に記載する本発明の詳細な説明において、限定を目的とせずに提供する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
本特許または出願ファイルは、カラーで実行された少なくとも1つの図面を含む。カラー図面を含む本特許または特許出願公開の写しは、請求および必要な手数料の支払いを行うことで、特許庁より提供される。
【0009】
図1】PET汚染混合フレークをジクロロメタン(DCM)で前処理した結果得られた分離生成物を示す写真である(実施例1)。
図2】受け取ったPET汚染混合フレークと、DCMによる前処理によって回収したクリーンPET生成物との比較を、回収した除去ポリオレフィンおよび除去汚れとともに示す写真である(実施例2)。
図3A】PETカラーフレークをDCMで前処理した結果得られた生成物を示す写真である(実施例2)。
図3B】PETカラーフレークをDCMで前処理した結果得られた生成物を示す写真である(実施例2)。
図4】DCM処理したPETカラーフレークおよび汚染混合フレーク(実施例1および2)から得られた時系列DCM抽出物を示す写真である。
図5】PETクリーンカラーフレークのDCM前処理による色抽出をリアルタイムでプロットしたグラフである(実施例2)。
図6】DCM前処理を施した黒色ポリエステル生地の脱色を示す写真である(実施例5)。
図7】DCM前処理を行った場合と行わなかった場合の黒色ポリエステル生地の解重合を示す写真である(実施例7)。
図8】赤色の60/40綿/ポリエステル生地からの赤色着色料の除去を示す写真である(実施例8)。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、特許請求される発明の好ましい態様もしくは実施形態またはその両方であると現在考えられるものについて説明する。機能、目的、または構造におけるいかなる代替形態または変更も、添付の特許請求の範囲によって包含されることが意図されている。本明細書および添付の特許請求の範囲において使用される場合、単数形「ある(a)」、「ある(an)」および「その(the)」は、文脈上そうではないことが明らかでない限り、複数の指示対象を含む。本明細書および添付の特許請求の範囲において、用語「含む(comprise)」、「構成される(comprised)」、「含む(comprises)」、もしくは「含んでいる(comprising)」またはその組み合わせが使用される場合、明示的に記載された構成要素、要素、特徴、もしくはステップまたはその組み合わせが存在することを規定するが、1つ以上の構成要素、要素、特徴、もしくはステップまたはその組み合わせが存在したり、追加されたりすることを排除するものではない。
【0011】
本明細書において「メカニカルリサイクル」という用語は、ポリエステル廃棄物をチップ化し、再溶融および押出して、再成形用途に使用可能な、または直接新しい商品に形成されるリサイクルペレットを作ることによって、ポリエステル廃棄物の分子構造を維持するリサイクルプロセスを指す。メカニカルリサイクルでは、汚染されていない無着色の廃棄物流(waste streams)が求められる。これには、類似した材料のみが一緒にリサイクルされ、色内容が全くまたはほとんどないように、徹底した選別と洗浄が必要である。
【0012】
本明細書において、「ケミカルリサイクル」という用語は、プラスチックポリマーを化学的に元のモノマーに還元し、再重合して新しいプラスチック材料に作り変えることができるようにするプロセスを指す。ケミカルリサイクルでは、プラスチック廃棄物を原料に戻し、さらなるリサイクルに利用することができる。分別された単一流(single-stream)のプラスチック廃棄物を必要とするメカニカルリサイクルとは異なり、ケミカルリサイクルは、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリスチレン(PS)からなる使用済み混合プラスチック廃棄物流に使用することができる。ケミカルリサイクルは、メカニカルリサイクルに比べて、着色料や汚れの含有量の許容度が高い。ケミカルリサイクルプロセスには、特に限定されないが、溶媒溶解(solvent dissolution)プロセスおよび解重合(depolymerization)プロセスが含まれる。解重合リサイクル反応の例としては、特に限定されないが、アルコール分解(例えば、解糖およびメタノール分解)、加溶媒分解、加水分解、酸分解、加リン酸分解、アミノ分解、加安分解、酵素分解、およびオリゴマーまたはモノマーを生成する他の交換反応が挙げられる。補足すると、ポリエステルの解重合の場合、アルコール分解で、アルコール基がポリマーのエステル結合を切断するエステル交換反応(transesterification reaction)が起こる。
【0013】
本明細書において、「解糖解重合(glycolysis depolymerization)」という用語は、グリコールをポリマー鎖に挿入してエステル結合を破壊し、ヒドロキシルアルキル末端に置き換える解重合リサイクルプロセスを指す。解糖に使用されるグリコールの例としては、特に限定されないが、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、シクロヘキサンジメタノール、およびジプロピレングリコールが挙げられる。
【0014】
本明細書において、「溶媒溶解(solvent dissolution)」という用語は、溶媒を使用してポリマーを溶解し、他の材料から分離するケミカルリサイクルプロセスを指す。
【0015】
本明細書において、「濾過(filtering)」という用語は、液体から固体を分離する任意のプロセスを含むことを意味する。濾過プロセスの例としては、特に限定されないが、機械的濾過(スキミングなど)、重力を用いた一般的な濾過、真空濾過、低温濾過、高温濾過、およびこれらの組み合わせが挙げられる。
【0016】
本明細書では、ジクロロメタン(DCM)での処理を通じて、ポリエステル廃棄物試料(本明細書において「原料(feedstock)」とも呼ぶ)から複数の不純物を同時に除去する方法について説明する。ポリエステル原料の例としては、特に限定されないが、本明細書において上述したようなプラスチック廃棄物、および、ポリエステル繊維(fibers)もしくは生地(fabrics)またはその両方が挙げられる。ポリエステル繊維もしくは生地またはその両方は、衣類、糸、パイル、カーペットおよびカーペット繊維を含むことができる。当業者であれば理解できるように、ポリエステル繊維もしくは生地またはその両方は、プラスチック包装廃棄物に含まれるよりも多くの染料を含有している場合がある。DCMで処理した後、原料は任意のメカニカルリサイクルまたはケミカルリサイクルプロセス(特に限定されないが、溶媒溶解(solvent dissolution)および解糖(glycolysis)リサイクルプロセスを含む)に使用することができる。以下の説明では、ポリエチレンテレフタレート(PET)フレークを、例示的なポリエステル原料として参照する。ただし、本明細書に記載の精製方法は、任意のポリエステル原料に適用可能である。
【0017】
図面を参照すると、PETフレークを液体DCMで処理すると、PET/DCMスラリーが形成される。PET(1.38g/cm)とDCM(1.33g/cm)との十分な密度差から、PETフレークはスラリーの底に沈み、一方で、密度の低い不純物は浮遊し、表面から(例えば、スキミングによって)濾過することができる。そして、精製PET試料が残る(図1)。PETが着色されている場合、DCMは試料から染料と着色剤を除去する(図3~7)。DCMはまた、PETから汚れや垢を除去し、濾過によって容易に除去可能な懸濁状態にすることができる(図2)。汚れや垢はリサイクルプロセスに金属不純物やイオン性不純物を混入させることが知られているため、DCMを適用することによりPET原料をさらに精製することができる(図1、2)。精製後、PET試料はリサイクルプロセスに進むことができる。そして、DCMも、濾過および蒸発プロセス(例えば、40℃での低エネルギー蒸留など)を通じて、リサイクルして再利用することができる。
【0018】
DCM処理によってポリエステル原料から除去可能な不純物の例としては、特に限定されないが、非エステルポリマー、物理的な汚れもしくは垢またはその両方、着色剤、有機不純物、金属不純物およびイオン性不純物、ならびにこれらの組み合わせが挙げられる。有機不純物の非限定的な一例としては、アセトアルデヒドまたはそのアセタールが挙げられる。金属不純物の例としては、特に限定されないが、アルミニウムまたはアルミニウム含有フィルムや、ワイヤまたは粉末としての鉄および銅が挙げられる。ポリエステル原料中に存在する非エステルポリマーの例としては、特に限定されないが、ポリオレフィン(ボトルキャップに含まれる)、ポリアミド(例えば、ナイロン)、ポリイミド、ポリウレタン、およびポリ塩化ビニルなどのポリマーが挙げられる。これらの多くは、PETおよびDCMの密度よりも密度が低い。例えば、ポリオレフィンであるポリエチレン(PE)は、非晶質PEの場合で~0.85g/cm、結晶性PEの場合で~1.0g/cmの密度を有し、ポリオレフィンであるポリプロピレン(PP)は、0.895~0.92g/cmの密度を有し、ポリアミドナイロンは、~1.15g/cmの密度を有する。
【0019】
ポリエステル原料に対してDCM精製を行うことには多くの利点がある。例えば、DCMによる処理は、濾過、脱色、および脱金属/脱イオン化などの、ポリエステルリサイクルプロセスにおいて現在使用されている、高コストかつ多くの労力およびエネルギーを必要とする反応後もしくは処理後またはその両方の精製手順を最小化するかまたは取り除くことができる。さらに、ポリエステル原料から非エステルポリマーを除去するためにDCM精製を使用することで、反応器の汚染とその結果生じる停止時間を最小化するかまたは無くすことができる。また、DCM精製によってポリエステル原料から汚れもしくは垢またはその両方を除去することで、イオン交換などの精製媒体(purification media)の必要性も低減することができる。このように、DCMを適用することで、イオン交換媒体の再生が不要になる。イオン交換媒体の再生は、それ自体望ましくない廃棄物流を発生させる。さらに、DCM精製を適用してポリエステル原料から色を除去することで、炭素床(carbon bed)の再生の必要性を低減することができる。炭素床の再生は、通常~900℃の温度で行われる、多くの労力とコストのかかるプロセスである。
【0020】
一方で、ポリエステル原料から回収可能なDCMは、無制限に再利用可能であり、リサイクルプロセスに追加の廃棄物を発生させることはない。DCM精製によってポリエステル原料サンプルから不純物を除去することで、より清浄かつ効率的なリサイクルプロセスを実現することができる。DCMは、室温(実施例1、2、5、8)または任意の態様として昇温温度(実施例3、4、6、7)で濾過することにより、精製ポリマーから回収することができる。DCMのリサイクルは、活性炭の再生に必要なはるかに高い温度ではなく、約40℃(すなわち、DCMの沸点)での蒸留で行われる。
【0021】
本明細書に記載のDCM精製を任意のリサイクルプロセスとともに使用して、生成物の純度を高め、かつ処理コスト、時間、廃棄物および複雑さを低減することができる。
【0022】
一実施形態では、DCM精製は、アルコール分解解重合(alcoholysis depolymerization)リサイクルプロセスで使用される。アルコール分解解重合リサイクルプロセスの1つの非限定的な例として、米国特許第9,255,194号(Allenら)および米国特許第9,914,816号(Allenら)に記載されている揮発性触媒(VolCat:volatile catalyst)ケミカルリサイクルプロセスが挙げられる。一実施形態では、VolCatプロセスは、アルコールの沸点以上の温度にて反応器内で、ポリエステルを、アルコール溶媒および有機触媒(organocatalyst)で解重合(depolymerize)する。別の実施形態では、有機触媒は、アルコール溶媒の沸点よりも少なくとも50℃低い沸点を有し、解重合は、アルコール溶媒の沸点よりも高い温度で実行される。さらなる実施形態では、有機触媒は、アルコール溶媒の沸点よりも少なくとも50℃低い沸点を有し、解重合は、有機触媒の沸点よりも高い温度で実行される。別の実施形態では、ポリエステル投入物およびアルコール溶媒が、有機触媒の導入前に約200~250℃の反応温度まで加熱される。VolCat解重合からの反応生成物(Reaction products)は、ポリエステルからの単量体ジエステル(monomeric diesters)もしくはオリゴマージエステル(oligomeric diesters)またはその両方、ならびに、回収した有機触媒および過剰なアルコール溶媒であり、このうちの前者は再生ポリエステル製品への再利用を目的とし、後者は以後の解重合反応に再利用することもできる。
【0023】
別の実施形態では、VolCat反応は、化学反応器内で行われる。化学反応器は、オートクレーブ(autoclave)や押出反応器(extrusion reactor)などの圧力反応器であってもよいし、丸底フラスコなどの非加圧反応器であってもよい。さらなる実施形態では、解重合反応(加圧または非加圧で行われてもよい)、およびモノマー生成物の1つ以上の任意の精製工程は、バッチで実施されてもよいし、連続フロープロセスで実施されてもよいし、その両方で実施されてもよい。別の実施形態では、モノマー生成物の溶解度が限定された溶媒を使用して、解重合されたポリエステルモノマー生成物(バッチプロセスで得られたものであるか、連続フローで得られたものであるかを問わず)を精製してもよい。このような精製溶媒の非限定的な例としては、アルコールもしくは水またはその両方が挙げられる。精製にアルコールを使用する場合、アルコールは、解重合反応からの未反応アルコールであってもよいし、新たに導入された清浄アルコールであってもよい。さらなる実施形態では、VolCat反応から得られた回収モノマー生成物を使用して、新たなポリマー材料を製造してもよい。
【0024】
別の実施形態では、ポリエステルは、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリトリメチレンテレフタレート(PTT)、ポリエチレンフラノアート(PEF)、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される。さらなる実施形態では、アルコール溶媒は、グリコール溶媒もしくはジオール溶媒またはその両方である。別の実施形態では、アルコール溶媒は、1,2-エタンジオール(エチレングリコール、EG)、1,3-プロパンジオール(トリメチレングリコール)、1,4-ブタンジオール(テトラメチレングリコール)、1,5-ペンタンジオール(ペンチレングリコール)、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される。さらなる実施形態では、有機触媒は、アミン有機触媒もしくはそのカルボン酸塩またはその両方である。別の実施形態では、アミン有機触媒もしくはそのカルボン酸塩またはその両方のアミンは、3級アミンである。さらなる実施形態では、アミン有機触媒もしくはそのカルボン酸塩またはその両方は、トリエチルアミン(TEA)、テトラメチルエチレンジアミン(TMEDA)、ペンタメチルジエチレントリアミン(PMDETA)、トリメチルトリアザシクロノナン(TACN)、4-(N,N-ジメチルアミノ)ピリジン(DMAP)、1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン(DABCO)、N-メチルイミダゾール(NMI)、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される。別の実施形態では、アミン有機触媒もしくはそのカルボン酸塩またはその両方は、TEAもしくはそのカルボン酸塩またはその両方である。さらなる実施形態では、ポリエステル投入物はテレフタレートを含み、回収した解重合反応生成物はテレフタレートエステルモノマーを含む。別の実施形態では、ポリエステル投入物はPETを含み、回収したポリエステルモノマー生成物は、ビス(2-ヒドロキシエチル)テレフタレート(BHET)である。さらなる実施形態では、ポリエステル投入物はPETを含み、アルコールはEGであり、アミン有機触媒はTEAもしくはそのカルボン酸塩またはその両方であり、回収した反応生成物は未反応EG、TEA、およびBHETを含む。
【0025】
別の実施形態では、DCM精製を反応前蒸留(pre-reaction distillation)と組み合わせてもよい。後者はポリエステルから水分、残留DCM、および他の揮発性不純物を除去し、VolCatリサイクルプロセスの効率を向上させることができる。DCM精製をVolCatリサイクルプロセスの原料に適用することにより(反応前蒸留を行うか否かにかかわらず)、出力生成物を精製するための脱色剤およびイオン交換の使用の必要性を最小化することができ、VolCatリサイクルを実行するための処理時間とコストが低減される。
【0026】
本開示の種々の態様もしくは実施形態またはその両方を例示として説明してきたが、網羅的であることや、開示した実施形態に限定することを意図したものではない。当業者には明らかなように、記載した各実施形態の範囲および主旨から逸脱することなく、多くの変更および変形が可能である。本明細書で用いられる用語は、各態様もしくは実施形態またはその両方の原理、実際の用途、または市場で確認される技術に対する技術的な改善を最もよく説明するために、または、他の当業者が本明細書に開示する各態様もしくは実施形態またはその両方を理解できるように選択されたものである。
【0027】
<実施例>
以下の実施例は、本明細書に記載する本発明の態様および実施形態の製造方法および使用方法についての完全な開示を当業者に提供するために記載されるものである。量や温度などの変数に関して正確性を確保するための努力がなされているが、実験誤差および偏差も考慮すべきである。別段の記載がない限り、部は重量部、温度は摂氏温度、圧力は大気圧または大気圧付近である。すべての成分は、別段の記載がない限り、商業的に入手したものである。
【0028】
(実施例1:汚染混合PETフレークのDCM精製)
2.5kgのカーブサイド(curbside:道路脇回収)混合PETフレークを、12LのDCMとともに22Lのガラス反応器に加え、室温で穏やかに攪拌した。DCMは、攪拌前であっても、直ちに驚くべき量の色を帯びた。1時間後、2時間後、3時間後にDCMの試料を採取した。その後、液面から密度の低い物質をすくい取り、PE、PP、およびアルミニウム含有フィルムであることを確認した。汚染(dirty)PETの上または中に元々存在していた汚れや垢のほとんどは、DCM液中に放出され、液中から容易に濾過することができた。そして、清浄なPETフレークが残り、その後の濾過で容易に回収することができた。得られた生成物において、ポリオレフィンまたはPET中の色として残った着色物質はほとんどなかった。図1の1枚目は、DCM(色を吸収している)に浸漬されたPET、およびポリオレフィンとアルミホイルが浮かんでいる状態を示している。図1の2枚目は、DCM液の表面から浮遊物および汚れ/垢を金網スクリーンで除去する様子を示している。図1の3枚目は、残ったDCM液に浮遊する汚れ/垢を示している。図1の4枚目は、回収された精製PETフレークを示している。図2は、投入されたカーブサイド汚染混合PETフレーク(左)、精製PET(中央上)、回収されたポリオレフィンおよびアルミニウム(中央下)、ならびに濾過時に除去された汚れおよび垢(右)を示している。図4(右)は、3つのDCM溶液の時系列試料を示している。
【0029】
(実施例2:クリーンカラーPETフレークのDCM精製)
2.5kgのクリーンカラーPETフレーク(clean-color PET flake)を、12LのDCMとともに22Lのガラス反応器に加え、室温で穏やかに攪拌した。DCMは、攪拌前であっても、直ちに濃い色になった。DCMの試料を、1、2、3、4、5、6、および24時間後に採取し、その後、濾過によってPETフレークを回収した。図3Aは、DCM処理前(左)と処理後(右)のクリーンカラーPETフレークの一部を、DCMの蒸発後に抽出された染料および他の材料の一部(上、フラスコ内)とともに示したものである。図3Bは、DCM処理前(左)とDCM処理から回収後(右)のクリーンカラーフレークを示したものである。染料のほとんどは被処理材料から抽出されており、残っている青色着色料はほとんどが不溶性顔料で、解重合などの後続のリサイクルプロセスにて濾過によって容易に除去される。図4に、7つのDCM溶液の時系列試料(左)を示す。表1に、DCM精製前(左)と精製後(右)のクリーンカラーフレーク試料のCIEカラー測定値を示す。表1に示すように、元のPETをDCM精製することによって得られたPETは、L*が45.12から49.23に増加するとともに、a*が-9.22から-2.6(緑の減少)に、b*が+13.5から+2.91(黄色の減少)に低下して色が著しく減少し、光学品質が改善した。
【0030】
【表1】
【0031】
表2は、本明細書に記載のクリーンカラーPETフレークおよび実施例1のカーブサイド汚染混合PETフレークに使用したDCM液の時系列アリコートのCIEカラー測定値を示したものである。図5は、クリーンカラーPETフレークについて表2の色抽出データをプロットしたグラフである。表2および図5のデータから、脱色が2時間以内に起きていることが分かる。
【0032】
【表2】
【0033】
(実施例3:未処理クリーンカラーPETフレークの解糖(VolCat)解重合)
使用済みのクリーンカラーPETフレーク(1001g)およびEG(4501g)を、2ガロンのParr圧力反応器に入れ、窒素でパージした。この反応器は、攪拌機と、バルブによって反応器から隔離された圧力調整器を上部に備えた凝縮器と、凝縮器の下に設けられた300mLレシーバ(takeoff)と、触媒添加ビュレットとを備えていた。反応器を密閉し、反応混合物を攪拌(ツインブレード型インペラシャフトで200rpm)しながら約220℃の内部温度まで加熱した。この時、内圧が約~10psiであることが確認された。次に、触媒の上のヘッドスペース(headspace)を約30psiに加圧し、反応器内の圧力が上昇し始めるまでバルブを短時間開き、その時点でバルブを閉じることによって、触媒添加ビュレットを通じてTEA(52.6g)を添加した。この温度で反応物を1時間撹拌し、その時点で凝縮器のバルブを開き、凝縮器の調整器を通じて反応器の圧力を周囲圧力に達するまでゆっくりと下げ、触媒を含有する蒸留物(distillate)を周囲圧力にて180℃の温度まで回収した。次に、反応物を90℃まで冷却し、その時点において、珪藻土の緻密層(fine layer)で被覆されたポリプロピレンマットで反応物を濾過した。濾液(filtrate)を冷却した後、BHETをエチレングリコール中の厚い白色スラリーとして回収した。次に、このスラリーを真空濾過して固体のBHETを回収した。この固体のBHETを、歯科用ダム(dental dam)を当てて圧縮し、水ですすぎ、吸引乾燥し、その後65℃の真空オーブンで乾燥した。沈殿したスラリー、乾燥したBHET生成物、およびBHETの濾過後に得られた回収母液(mother liquor)について、色測定を実施した。
【0034】
(実施例4:前処理済みクリーンカラーPETフレークの解糖(VolCat)解重合)
実施例2の前処理済みクリーンカラーPETフレーク(1004g)およびEG(4505g)を、2ガロンのParr圧力反応器に入れ、窒素でパージした。この反応器は、攪拌機と、バルブによって反応器から隔離された圧力調整器を上部に備えた凝縮器と、凝縮器の下に設けられた300mLレシーバと、触媒添加ビュレットとを備えていた。反応器を密閉し、反応混合物を攪拌(ツインブレード型インペラシャフトで200rpm)しながら約220℃の内部温度まで加熱した。この時、内圧が約~10psiであることが確認された。次に、触媒の上のヘッドスペースを約30psiに加圧し、反応器内の圧力が上昇し始めるまでバルブを短時間開き、その時点でバルブを閉じることによって、触媒添加ビュレットを通じてTEA(53.0g)を添加した。実施例3に記載した残りのプロセス条件をここでも繰り返した。沈殿したスラリー、乾燥したBHET生成物、およびBHETの濾過後に得られた回収母液について、色測定を実施した。
【0035】
表3は、未処理のクリーンカラーフレーク(実施例3)および本明細書に記載のDCM前処理済みクリーンカラーフレークの解糖解重合から得られる生成物を比較したものである。ここでの生成物は、(i)EG母液中のBHET生成物を含むスラリー、(ii)分離された固体BHET、および(iii)液体母液である。表3に示すように、DCM前処理を施した生地は、L*が71.98から93.88に増加するとともに、a*が16.34から-0.73に低下(赤色の減少)し、b*が62.73から26.31に低下(黄色の減少)して、光学特性が大きく改善している。
【0036】
【表3】
【0037】
(実施例5:黒色ポリエステル生地のDCM精製)
ポリウレタンのデカールが付いた黒色ポリエステル生地の切断片50gを、500mLの三角フラスコ中で、250gのDCMとともに室温で撹拌した。液体はほとんどすぐに深紫色になった。1時間15分後に試料を濾過し、DCMで洗浄した後、吸引乾燥したところ、生地の重量は49.5gであった。ポリウレタンのデカールが生地から剥がれ、生地は水色に変色していることが確認された。反応から得られた抽出物は、DCMを蒸発させた後は濃い黒/紫色で、重量は1.9g(3.8%)であった。図6に、投入された黒色ポリエステル生地(左)、DCMによる脱色(左中央)、脱色後のポリエステル生地(右中央)、およびDCM蒸発後の回収染料(右)を示している。
【0038】
(実施例6:未処理黒色ポリエステル生地の解糖(VolCat)解重合)
50gの黒色ポリエステル生地、250gのEG、および3.6mLのTEAを、450mLのガラス製Parr反応器に攪拌(インペラを下に向けた)しながら密閉した。反応物を攪拌しながら220℃に加熱した。30分後、反応器を100℃に冷却し、ガラス繊維マットで濾過し、10gの活性炭で90℃にて30分間処理した。その後、溶液を珪藻土で再濾過し、室温まで冷却し、その間に結晶が形成された。BHET結晶を真空濾過し、歯科用ダムを用いて圧縮し、水ですすぎ、フィルタ上でまず真空乾燥し、次に65℃の真空オーブンで一晩乾燥させた。
【0039】
(実施例7:前処理済み黒色ポリエステル生地の解糖(VolCat)解重合)
25gの黒色ポリエステル生地、250gのEG、および3.6mLのTEAを、450mLのガラス製Parr反応器に攪拌(インペラを下に向けた)しながら密閉した。反応物を攪拌しながら220℃に加熱した。30分後、反応器を100℃に冷却し、ガラス繊維マットで濾過し、10gの活性炭で30分間処理した。その後、溶液を珪藻土で再濾過したところ、実施例4のものよりもはるかに明るい色であることが確認された。室温まで冷却した後、結晶が形成された。BHET結晶を真空濾過し、歯科用ダムを用いて圧縮し、水ですすぎ、フィルタ上でまず真空乾燥し、次に65℃の真空オーブンで一晩乾燥させた。図7に、(i)実施例4の未処理黒色ポリエステル生地(上)、および(ii)本明細書に記載の前処理済み黒色ポリエステル生地(下)のVolCat解重合を示す。得られたBHET生成物のCIEカラー値(図7、右端)に示すように、未処理の生地試料と前処理済みの生地試料との間で、白色度(L*)が91.5から95.7に改善し、赤色度(a*)が0.9から-0.2に減少し、黄色度(b*)が13.8から7.4に大きく減少している。
【0040】
(実施例8:赤色の60/40綿/ポリエステル生地のDCM精製)
71.3グラムの赤色の60/40綿/ポリエステル生地を、750グラムのDCM中で室温にて一晩転がした(rolled)。翌朝、生地を濾過し、次に絞ってDCMの大部分を除去し、75mLの追加のDCMで2回すすいだ。DCMをロータリーエバポレータで回収し、1.0gの赤色固体を得た。この生地を回収したDCMに再懸濁し、再び一晩転がした。この生地を再び濾過し、絞ってDCMの大部分を除去し、乾燥させた。ロータリーエバポレータでDCMを回収し、合計質量1.2gの赤色固体を得た。乾燥後の生地の重量は69.8gで、1.5g(2.1%)減少していた。図8に、受け取った状態の生地(左)、DCM処理で生地から抽出された着色剤(中央)、および処理後の生地(右)を示す。
図1
図2
図3A
図3B
図4
図5
図6
図7
図8
【手続補正書】
【提出日】2023-06-15
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0029
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0029】
(実施例2:クリーンカラーPETフレークのDCM精製)
2.5kgのクリーンカラーPETフレーク(clean-color PET flake)を、12LのDCMとともに22Lのガラス反応器に加え、室温で穏やかに攪拌した。DCMは、攪拌前であっても、直ちに濃い色になった。DCMの試料を、1、2、3、4、5、6、および24時間後に採取し、その後、濾過によってPETフレークを回収した。図3Aは、DCM処理前()と処理後()のクリーンカラーPETフレークの一部を、DCMの蒸発後に抽出された染料および他の材料の一部(上、フラスコ内)とともに示したものである。図3Bは、DCM処理前(左)とDCM処理から回収後(右)のクリーンカラーフレークを示したものである。染料のほとんどは被処理材料から抽出されており、残っている青色着色料はほとんどが不溶性顔料で、解重合などの後続のリサイクルプロセスにて濾過によって容易に除去される。図4に、7つのDCM溶液の時系列試料(左)を示す。表1に、DCM精製前(左)と精製後(右)のクリーンカラーフレーク試料のCIEカラー測定値を示す。表1に示すように、元のPETをDCM精製することによって得られたPETは、L*が45.12から49.23に増加するとともに、a*が-9.22から-2.6(緑の減少)に、b*が+13.5から+2.91(黄色の減少)に低下して色が著しく減少し、光学品質が改善した。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0032
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0032】
【表2】
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0039
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0039】
(実施例7:前処理済み黒色ポリエステル生地の解糖(VolCat)解重合)
25gの黒色ポリエステル生地、250gのEG、および3.6mLのTEAを、450mLのガラス製Parr反応器に攪拌(インペラを下に向けた)しながら密閉した。反応物を攪拌しながら220℃に加熱した。30分後、反応器を100℃に冷却し、ガラス繊維マットで濾過し、10gの活性炭で30分間処理した。その後、溶液を珪藻土で再濾過したところ、実施例のものよりもはるかに明るい色であることが確認された。室温まで冷却した後、結晶が形成された。BHET結晶を真空濾過し、歯科用ダムを用いて圧縮し、水ですすぎ、フィルタ上でまず真空乾燥し、次に65℃の真空オーブンで一晩乾燥させた。図7に、(i)実施例の未処理黒色ポリエステル生地(上)、および(ii)本明細書に記載の前処理済み黒色ポリエステル生地(下)のVolCat解重合を示す。得られたBHET生成物のCIEカラー値(図7、右端)に示すように、未処理の生地試料と前処理済みの生地試料との間で、白色度(L*)が91.5から95.7に改善し、赤色度(a*)が0.9から-0.2に減少し、黄色度(b*)が13.8から7.4に大きく減少している。
【手続補正4】
【補正対象書類名】図面
【補正対象項目名】図5
【補正方法】変更
【補正の内容】
図5
【国際調査報告】