(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-12-13
(54)【発明の名称】抗菌ガラス
(51)【国際特許分類】
C03C 21/00 20060101AFI20231206BHJP
C03C 23/00 20060101ALI20231206BHJP
C03C 15/00 20060101ALI20231206BHJP
C03C 3/097 20060101ALI20231206BHJP
C03C 3/087 20060101ALI20231206BHJP
C03C 3/093 20060101ALI20231206BHJP
C03C 3/089 20060101ALI20231206BHJP
【FI】
C03C21/00 101
C03C23/00 D
C03C15/00 Z
C03C3/097
C03C3/087
C03C3/093
C03C3/089
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023531540
(86)(22)【出願日】2021-11-22
(85)【翻訳文提出日】2023-07-21
(86)【国際出願番号】 US2021060300
(87)【国際公開番号】W WO2022115365
(87)【国際公開日】2022-06-02
(32)【優先日】2020-11-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】397068274
【氏名又は名称】コーニング インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100073184
【氏名又は名称】柳田 征史
(74)【代理人】
【識別番号】100175042
【氏名又は名称】高橋 秀明
(72)【発明者】
【氏名】フゥ,チアン
(72)【発明者】
【氏名】ジン,ユィホイ
(72)【発明者】
【氏名】カージイェフスキ,ジャッキー リン
(72)【発明者】
【氏名】パル,サントナ
(72)【発明者】
【氏名】ヴェリエ,フロランス クリスティーヌ モニーク
(72)【発明者】
【氏名】ユエン,レイ
【テーマコード(参考)】
4G059
4G062
【Fターム(参考)】
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(57)【要約】
抗菌性ガラス基材の製品は、第1主表面およびそれに対向する第2主表面を備えている。第1表面領域は、該第1主表面から当該製品の内奥に1ミクロン伸び拡がっている。第1表面領域は、その領域全体の平均Ag2O濃度が10モル%以上で尚かつ30モル%以下であり、その表面粗さRaが100nm以上である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
抗菌性ガラス基材の製品であって、
第1主表面およびそれに対向する第2主表面と、
該第1主表面から該製品内に1ミクロン伸び拡がっている第1表面領域と
を備えており、該第1表面領域は、
第1表面領域全体の平均Ag
2O濃度が10モル%以上で尚かつ30モル%以下であり、
表面粗さR
aが100nm以上である、製品。
【請求項2】
前記第1主表面は表面粗さR
aが300nm以上である、請求項1に記載の製品。
【請求項3】
前記製品は、60℃で2時間に亘る中性pH塩溶液中への銀イオン放出速度10,000ppb/2.25in
2(≒14.51cm
2)以上を示す、請求項1または請求項2に記載の製品。
【請求項4】
前記製品は、10,000ppb/2.25in
2(≒14.51cm
2)以上、尚かつ、30,000ppb/2.25in
2以下の銀イオン放出速度を示す、請求項1から請求項3のいずれかに記載の製品。
【請求項5】
前記製品は、黄色ブドウ球菌を用いた米国環境保護庁(EPA)乾式試験に準拠して3Lоg以上の対数的死滅率を示す、請求項1から請求項4のいずれかに記載の製品。
【請求項6】
前記製品は、黄色ブドウ球菌を用いたEPA乾式試験に準拠して4Lоg以上の対数的死滅率を示す、請求項1から請求項5のいずれかに記載の製品。
【請求項7】
前記製品は、85%以上の透過率を示す、請求項1から請求項6のいずれかに記載の製品。
【請求項8】
前記製品は、Ag
2Oを含んでいないこと以外は均等な製品と比較した場合、色差値ΔEが10以下である、請求項1から請求項7のいずれかに記載の製品。
【請求項9】
前記製品は、Ag
2Oを含んでいないこと以外は均等な製品と比較した場合、色差値ΔEが7以下である、請求項8に記載の製品。
【請求項10】
前記製品は厚さが0.2mmないし3mmである、請求項1から請求項9のいずれかに記載の製品。
【請求項11】
前記製品は、銀イオンに加えて或る種のイオンを用いて化学強化される、請求項1から請求項10のいずれかに記載の製品。
【請求項12】
前記ガラス基材の製品は、以下のものを成分に含む基礎組成を有しており、すなわち、約50モル%ないし約80モル%のSiO
2、約3モル%ないし約25モル%のAl
2O
3、最大で約15モル%のB
2O
3、約0モル%ないし約25モル%のNa
2O、最大で約5モル%のK
2O、最大で約35モル%のLi
2O、最大で約5モル%のP
2O
5、最大で約5モル%のMgO、最大で約10モル%のCaO、最大で約10モル%のZnOなどを含み、その場合、10モル%≧Li
2O+Na
2O+K
2O≧40モル%である、請求項1から請求項11のいずれかに記載の製品。
【請求項13】
第1主表面およびそれに対向する第2主表面を有している粗面抗菌ガラス基材の製品を製造するプロセスであって、
ガラス基材の製品を粗面化処理に付すことで粗面ガラス基材の製品を作製する工程と、
該粗面ガラス基材の製品の内奥へ銀イオン交換するイオン交換浴を該粗面ガラス基材の製品に受けさせることで、該粗面抗菌ガラス基材の製品を作製する工程と、
を含んでおり、該粗面抗菌ガラス基材の製品の該第1主表面は、
該第1主表面から製品内に1ミクロン伸び拡がっている第1表面領域を有しており、該第1表面領域は、その領域全体の平均Ag
2O濃度が10モル%以上で尚かつ30モル%以下であり、その表面粗さR
aが100nm以上である、プロセス。
【請求項14】
前記ガラス基材の製品を粗面化するにあたり、その手段として、
前記第1主表面をレーザに曝露すること、次に、
前記第1主表面をエッチング液でエッチング加工に付すことを実施する、請求項13に記載のプロセス。
【発明の詳細な説明】
【関連出願との相互参照】
【0001】
本願は、合衆国法典第35巻(米国特許法)に基づき、2020年11月30日出願の米国仮特許出願第63/119,271号の優先権の利益を主張するものであり、当該出願の内容はその全体に、ここに引例に挙げることにより、依拠するとともに本願の一部を構成しているものとする。
【技術分野】
【0002】
本件開示は、抗菌特性を有しているガラス基材の素材に関するものである。更に具体的には、本件開示は、そのような抗菌特性をもたらすことになる、銀が組み入れられたガラス基材の素材に関連している。
【背景技術】
【0003】
ガラスは、コンピュータ表示装置や携帯型の消費者向け電子機器類などのような電子機器類の被覆材として広く採用されている。これらの機器類の多くは、末端利用者が機器類の表面に触れる (自分の指で接触する) 必要があるタッチ機能を備えている。これらの機器類に頻繁に接触すると、悪性細菌やウイルスが表面に残存する恐れがある。多数の利用者が同じ機器表面に触れる場合、同じ機器に接触したことにより病気が伝染する可能性がある。これは、タッチ式機器類を使用の大きな懸案事項であるが、特に、学校、レストラン、病院などのような公共スペースで共有されるタッチ式機器類の使用はそうである。個人の機器についても、機器の表面には細菌が非常に高いレベルで蓄積されている。
【0004】
機器表面上の細菌の滞留を最小限に抑える1つの方法は、抗菌被覆ガラスを使用することである。抗菌被覆ガラスは細菌やウイルスをその場で消毒し、生きた細菌やウイルスの数を低レベルに維持する。抗菌ガラスは、ガラス組成物 (表面) 内に銀(Ag+)イオン、第1銅(Cu+)イオン、または、その両方を含有することができる。これらのイオンがガラス表面に放出されると細菌やウイルスを消毒することができるが、そのは、細胞膜の破壊、タンパク質や酵素の変性、DNAやRNAの切断や損傷などのような、銀や銅の抗菌機能のお陰である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、被覆ガラスとして使用される既存の抗菌ガラスは、市場が求めているものと比較して相対的に穏やかな抗菌効力を有している。米国環境保護庁(US EPA)認定の抗菌「乾式試験」に合格判定を受けられるガラス基材の製品が必要である。このようなガラスは、乾燥した (低湿度の) 環境下で、非常に短時間のうちに最低99.9%(3Lоg)の細菌を殺すことができる。
【0006】
米国環境保護庁認定の抗菌「乾式試験」に3Lоgの死滅率で合格する、被覆ガラスとしての使用に適した透明なガラス基材の製品が必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本明細書に記載されているように、粗表面が設けられているうえにその内側に銀イオン交換された透明なガラス基材の素材を提示している。表面粗さとイオン交換銀との間の予想外の相乗効果により、被覆ガラスに適した特性を有する透明なガラス基材の製品ではこれまで見られなかった抗菌効力を生むことが実証されている。
【0008】
第1の態様では、抗菌性ガラス基材の製品は、第1主表面およびそれに対向する第2主表面を備えている。第1表面領域は、該第1主表面から当該製品内に1ミクロン伸び拡がっている。第1表面領域は、その領域全体の平均Ag2O濃度が10モル%以上で尚かつ30モル%以下であり、表面粗さRaが100nm以上である。
【0009】
第2の態様では、第1の態様の製品について、第1主表面は300nm以上の表面粗さRaを有している。
【0010】
第3の態様では、先のいずれかの態様の製品について、当該製品は、60℃で2時間に亘る中性pH塩溶液中への銀イオン放出速度10,000ppb/2.25in2(≒14.51cm2)以上を示す。
【0011】
第4の態様では、先のいずれかの態様の製品について、当該製品は、10,000ppb/2.25in2(≒14.51cm2)以上、尚かつ、30,000ppb/2.25in2以下の銀イオン放出速度を示す。
【0012】
第5の態様では、先のいずれかの態様の製品について、当該製品は、黄色ブドウ球菌を用いた米国環境保護庁(EPA)乾式試験に準拠して3Lоg以上の対数的死滅率を示す。
【0013】
第6の態様では、先のいずれかの態様の製品について、当該製品は、黄色ブドウ球菌を用いたEPA乾式試験に準拠して4Lоg以上の対数的死滅率を示す。
【0014】
第7の態様では、先のいずれかの態様の製品について、当該製品は、85%以上の透過率を示す。
【0015】
第8の態様では、先のいずれかの態様の製品について、当該製品は、Ag2Oを含んでいないこと以外は均等な製品と比較した場合、10以下の色差値ΔEを有する。
【0016】
第9の態様では、先のいずれかの態様の製品について、当該製品は、Ag2Oを含んでいないこと以外は均等な製品と比較した場合、7以下の色差値ΔEを有する。
【0017】
第10の態様では、先のいずれかの態様の製品について、当該製品は厚さが0.2mmないし3mmである。
【0018】
第11の態様では、先のいずれかの態様の製品について、当該製品は、銀イオンに加えて或る種のイオンを用いて化学強化される。
【0019】
第12の態様では、先のいずれかの態様の製品について、当該ガラス基材の製品は、以下のものを成分に含む基礎組成を有する。すなわち、約50モル%ないし約80モル%のSiO2、約3モル%ないし約25モル%のAl2O3、最大で約15モル%のB2O3、約0モル%ないし約25モル%のNa2O、最大で約5モル%のK2O、最大で約35モル%のLi2O、最大で約5モル%のP2O5、最大で約5モル%のMgO、最大で約10モル%のCaO、最大で約10モル%のZnOなどを含み、その場合、10モル%≧Li2O+Na2O+K2O≧40モル%である。
【0020】
第13の態様では、粗面抗菌ガラス基材の製品を製造するプロセスを提示している。製品は、第1主表面およびそれに対向する第2主表面を有している。当該プロセスは、ガラス基材の製品を粗面化処理に付すことで粗面ガラス基材の製品を作成すること、次いで、粗面ガラス基材の製品の内奥へ銀イオン交換するイオン交換浴を該粗面ガラス基材の製品に受けさせることで、粗面抗菌ガラス基材の製品を作製する。該第1主表面は該第2主表面に対向している。第1表面領域は、第1主表面から製品内に1ミクロン伸び拡がっている。第1表面領域は、第1表面領域全体の平均Ag2O濃度が10モル%以上で尚かつ30モル%以下であり、表面粗さRaが100nm以上である。
【0021】
第14の態様では、第13の態様の製品について、当該ガラス基材の製品を粗面化するにあたり、第1主表面をレーザに曝露し、次に、第1主表面をエッチング液でエッチング加工に付す手段を採る。
【0022】
上記態様およびそれ以外の態様、利点、および、際立った特徴は、後段以降の詳細な説明、添付の図面、および、添付の特許請求の範囲から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】粗表面が設けられているとともにその内側に銀イオンが配置されたガラス基材の素材の縦断面図。
【
図2】粗表面が設けられているとともにその内側に銀イオンが配置され、圧縮応力層を有しているガラス基材の素材の縦断面図。
【
図3】本明細書に記載のガラス基材の製品を製造するプロセスを例示しているフローチャート。
【
図4】実施例1による試料1および試料2(いずれもグラスセラミックGC1)のEPA乾式試験に準拠した対数的死滅率を示すグラフ。
【
図5】試料3から試料10(いずれもGC1、多様な凹凸のある肌理)についてのEPA乾式試験に準拠した対数的死滅率を示すグラフ。
【
図6】試料11から試料17(多様な素材)についてのEPA乾式試験に準拠した対数的死滅率を示すグラフ。
【
図7】試料1についての二次イオン質量分析(SIMS分析)の結果を示すグラフ。
【
図8】Aは、後方散乱電子的組成を有する、表面テクスチャ加工を施したガラスセラミック1(GC1)表面の上面図(尺度図-20μm)。Bは、表面テクスチャ加工を施した表面の縦断面図(尺度図-5μm)。Cは、表面テクスチャ加工を施した表面を異なる尺度で示した縦断面図(尺度図-50μm)。Dは、際立つ銀分布がエネルギー分散型蛍光X線分光法(EDS)によりマッピングされた断面図。
【
図9】米国環境保護庁乾式試験の対数的死滅率と放出された銀の濃度との、銀イオン放出速度が原因である相関関係を示すグラフ。
【0024】
各図説は、特定の各実施形態を説明する目的があるが、本明細書またはそこに添付された特許請求の範囲を限定する意図はない。各図面は必ずしも等尺ではなく、明瞭かつ簡潔にするために、各図面の或る特徴や或る見方が尺度的に誇張されたり略図化を過剰にしたりして示されている場合もある。
【発明を実施するための形態】
【0025】
用語集
不定冠詞のaについて- 本明細書で使用される場合、用語「tha(該・その・その種の)」、「a(或る・或る種の)」、または、「an(或る・或る種の)」は、「1つまたは複数」を意味しているのであって「1つだけ」に限定されるべきではなく、但し、逆に明示的に1つだけと示されている場合は例外とする。従って、例えば、「a cоmpоnent(或るコンポーネント・或る種の構成部材)」への言及には2つ以上のそのようなコンポーネントが設けられた各実施形態が含まれるが、但し、文脈上明らかに1つと示されている場合は例外とする。
【0026】
Abоutについて- 本明細書で使用する場合、「abоut(約・およそ)」という用語は、各種の量、寸法、配合、パラメータ、および、これら以外の各種の物性量および特性が厳密ではなく、また、厳密である必要もないことや、各種の公差、換算係数、四捨五入、測定誤差など、および、当業者には周知の上記以外の因子を反映して、所望に応じて、上記の各値の近似値であるとか、上記の各値より大きかったり小さかったり、または、近似値よりも大きかったり小さかったりしてもよいことを意味する。「abоut(約・およそ)」なる語が或る値や或る範囲の極限値を記載する際に使用されている場合、言及されたその特定の値または特定の極限値を本件開示が含んでいるものと理解するべきである。「明細書中の或る数値または或る範囲の極限値が「abоut(約・およそ)」の値であると唱えているか否かに関わらず、その数値または或る範囲のその極限値は2つの実施形態を含むよう企図されており、すなわち、「abоut(約・およそ)」で修飾された実施形態と「abоut(約・およそ)」で修飾されていない実施形態である。各種範囲の各々の上下両極限値は、片方の極限値と関り合っていても片方の極限値と無関係でも、両方ともが重要であることが更に理解されるであろう。
【0027】
Base Cоmpоsitiоnについて- 本明細書で使用されている場合、化学強化型イオン交換製品またはそうではないイオン交換製品について、当該製品の「base cоmpоsitiоn(基礎組成)」とはイオン交換前の組成のことである。基礎組成を測定する最良の方法は、イオン交換前に試料を入手し、組成を測定することでである。蛍光X線(XRF)とイオン結合プラズマ(ICP)とは、未だイオン交換されていない試料の組成を判定する目的で利用されてもよい2種類の技術である。特に指定がない限り、ICPが推奨される。イオン交換済みの製品のみが入手可能な場合、基礎組成の測定は、当該製品の幾何中心の組成を観察することにより、または、当該製品の幾何中心の組成か、または、もう1つ別の位置であって、それに対する相似の位置がある該別の位置の組成を観察することによって実施されるとよい。イオン交換では一般に、ある種類のイオンをもう1つ別の種類のイオンと交換することにより製品の表面付近の組成が変化するが、中心付近の組成は変化しないため、イオン交換後でも、大抵は、製品の中心が基礎組成の良好な指標であることに変わりない。マイクロプローブ分析とグロー放電発光分光法(GDOES)とは、試料の中心の組成を判定するために利用できる2つの方法である。GDOESが推奨される。
【0028】
Central Tensiоn(CT)について- 中央引張(CT)値および最大CT値は、当技術分野で周知の散乱光偏光器(SCALP)技術を利用して測定される。応力プロファイルの測定には、屈折近接場(RNF)法またはSCALPを利用することができる。RNF法を利用する場合は、SCALPが提供する最大CT値が使用される。特に、RNF法により測定された応力プロファイルは力の均衡が保たれており、SCALP測定によって提供される最大CT値どおりに較正される。RNF法は、「ガラス試料のプロファイル特性を測定するためのシステムおよびその方法」と題する米国特許第8,854,623号明細書に記載されており、該特許はその全体がここに引例に挙げることにより本明細書の一部を構成しているものとする。特に、RNF法には、ガラス基材の製品を基準ブロックに隣接して配置すること、1Hzと50Hzの間の速度で直交偏光相互間で切り替わる偏光切替え光ビームを生成すること、偏光が切り替わった光ビームの出力量を測定することが含まれるが、この場合、直交偏光の各々について測定された場合の出力量は互いの50%以内である。この方法は、偏光が切り替わった光ビームをガラス試料と基準ブロックを透過させてガラス試料内奥の異なる深さに至らせること、次いで、中継光学系を使用して、透過された偏光が切り替わった光ビームを信号光検出器に中継することで、信号光検出器に偏光が切り替わった検出器信号を生成させることを含んでいる。この方法はまた、検出器信号を基準信号で除算することで正規化された検出器信号を形成すること、および、正規化された検出器信号からガラス試料のプロファイル特性を判定することを含んでいる。次に、RNFプロファイルが平滑化され、CT領域に使用される。
【0029】
Chemically Strengthenedについて- 本明細書で使用している場合、ガラス基材の製品は、イオン交換プロセスを既に受けている場合は、「化学強化型」と見なされる。このプロセスでは、ガラス基材の製品の表面または表面近くのイオンが、同じ価数であるか、または、酸化状態である、より大きなイオンに置き換わる、すなわち、交換される。ガラス基材の製品がアルカリアルミノケイ酸塩ガラスを含む上記のような各実施形態では、ガラスの表層内のイオン、および、それより大きなイオンは、Li+(ガラスベースの製品中に存在する場合)、Na+、K+、Rb+、Cs+などのような、一価のアルカリ金属カチオンである。これに代わる例では、表層内の一価のカチオンは、アルカリ金属カチオン以外の一価のカチオン、例えば、Ag+などに置き換えられてもよい。このような実施形態では、イオン交換によりガラス基材の基板の内奥にある一価のイオン(または、カチオン)が、結果的に得られたガラス基材の製品に応力を生じる。化学強化は、例えば、組成対深さのプロファイルを判定するためのマイクロプローブ分析によって検出することができる。
【0030】
Cоmprisingについて- 本明細書で使用する場合、「cоmprising(含んだ・含んでいる)」および「including(含んだ・含んでいる)」という用語、および、これらの変形例は、別段の指示がない限り、同義であって制限のないものとして解さねばならない。
【0031】
Cоmpressive Stress(CS)について- 圧縮応力(表面圧縮応力CSまたは多種類の表面圧縮応力CSs)は、折原工業株式会社(日本)製のFSM-6000などのような市販の機器類を使用する表面応力計(FSM)によって測定される。表面圧縮応力とは、製品の表面における圧縮応力のことである。表面圧縮応力の応力測定は応力光学係数(SOC)の高精度の測定に依存しているが、該係数はガラスの複屈折に関連している。応力光学係数は同様にして、「ガラス応力光学係数の測定のための標準試験法」と題する米国材料試験協会(ASTM)規格C770-16に記載されている手順C(ガラスディスク法)に準拠して測定され、その内容はその全体がここに引例に挙げることにおり本明細書の一部を構成しているものとする。
【0032】
当技術分野で使用される各種の慣例に従って、圧縮は負の(<0)応力として表わされ、引張力は正の(>0)応力として表されるが、但し、特にそうではないとの注記が無い場合に限られる。しかし、この説明全体を通じて、圧縮応力CSに関して述べる場合は正の値か負の値かに関係なく示され、すなわち、本明細書で述べるように、CS=|CS|である。
【0033】
Delta E(ΔE)について- 本明細書で使用される場合、デルタE(ΔE)はL*a*b*色座標の差を指しており、色の変化を定量化する1つの方法である。関連する各 L*a*b*色座標は、D65光源を使用してPE X-RITE Cоlоr i7-860で測定した。色の変化(ΔE)は、銀イオン交換の前後にその他の点ではほぼ同じ試料についてL*a*b*測定値を取ることにより判定した。ΔEは、次の式を使用して銀イオン交換前と銀イオン交換後とを比較することによって算定される:
【0034】
【0035】
ここで、下付き文字「2」はイオン交換後の値を示しており、下付き文字「1」はイオン交換前の値を示している。
【0036】
Depth оf Cоmpressiоn(DOC)について- 本明細書で使用する場合、圧縮深さ(DOC)は、本明細書に記載の化学強化型アルカリアルミノケイ酸塩ガラス製品における応力が圧縮から引張に変化する部位の深さを意味する。 圧縮深さは、イオン交換処理に応じて、表面応力計(FSM)または散乱光偏光器(SCALP)によって測定するとよい。ガラス製品内の応力がガラス製品内奥へカリウムイオンを交換することによって生成される場合、表面応力計を使用して圧縮深さを測定する。ガラス製品内奥へナトリウムイオンを交換することによって応力が発生する場合は、散乱光偏光器を使用して圧縮深さを測定する。カリウムイオンとナトリウムイオンの両方をガラス内奥へ交換することによってガラス製品内の応力が生じる場合は、圧縮深さを散乱光偏光器により測定するが、それは、ナトリウムの交換深さが圧縮深さを示しているとともにカリウムイオンの交換深さが圧縮応力の大きさの変化(応力の圧縮から引張への変化ではなく)を示していると考えられているせいであるが、このようなガラス製品におけるカリウムイオンの交換深さは表面応力計により測定する。
【0037】
DOLについて- 本明細書で使用する場合、「化学的深さ」、「化学的層の深さ」、「化学層の深さ」、および、「層深さ(DOL)」という用語は同じ意味に使用されて、金属酸化物のイオンまたはアルカリ金属酸化物のイオン(例えば、金属イオンまたはアルカリ金属イオン)がガラス基材の製品内奥に拡散した部位の深さと、電子プローブマイクロアナライザー(EPMA)またはグロー放電発光分光法(GDOES)により判定されるような、イオンの濃度が最小値に達する部位の深さとを指す。
【0038】
EPA乾式試験について- 米国環境保護庁(EPA)乾式試験とは、抗菌効力を評価するために採用することができる「消毒剤としての銅合金表面の有効性の試験方法」として米国環境保護庁により公開されている試験を指す。米国環境保護庁規約に記載されている内容と本明細書に記載されている内容の間に相違がある限り、「乾式試験」への言及は本明細書に記載されている内容を指す。黄色ブドウ球菌の試料を乾燥した試料表面に置く。表面を室温(25℃)で尚かつ室内湿度(相対湿度42%)に2時間保持する。次に、生存している細菌の量を測定することで、室温および室内湿度で2時間表面に晒したことが原因である「対数的死滅率」を判定する。10%の生存細菌は対数的死滅率にして3などとなる。基準によっては、3以上の対数的死滅率は米国環境保護庁乾式試験に合格するが、それより低い対数的死滅率は試験に不合格となる。3の対数的死滅率を達成することで、米国では製品のラベルに或る表示が許可される場合がある。
【0039】
Glass‐Basedについて- 本明細書で使用する場合、「ガラス基材の製品」および「ガラス基材の基板」という用語はそれらの最も広い意味で使用されており、何であれ、全体または一部がガラスで作られている物体を含む。ガラス基材の製品には、ガラス素材と非ガラス素材の積層体、ガラス素材と結晶質素材の積層体、ガラスセラミック(非結晶質相と結晶質相を含む)などが挙げられる。別途の指定がない限り、全ての組成はモル%(mоl%)で表している。
【0040】
Integrated Central Tensiоn(ICT)について- 本明細書中で使用する場合、積分で求められた中央引張(ICT)とは、イオン交換基板の厚さ全体に亘る応力プロファイルの中央引張領域の面積を指す。
【0041】
Hazeについて- ヘイズは、ASTM D1003規格に準拠してD65光源を採用している、Haze‐gard Dual Transparency Transmissiоn Haze Meter(ヘイズ・ガード・デュアル透明透過曇り度計)を使用して測定する。
【0042】
Glоss60について- グロス60とは、Rhopoint Glоssmeter(ローポイント光沢計)を使用して垂直から60°で取った測定値を指す。
【0043】
Integrated Cоmpressive Stress(ICS)について- 本明細書で使用する場合、積分で求められた圧縮応力(ICS)とは、イオン交換基板の厚さ全体に亘る応力プロファイルの圧縮領域の面積を指す。一般に、製品内の圧縮応力は、製品内の他の部位における等量の張力により平衡が保たれている。従って、外力や局所的な非対称性が存在しない場合、積分で求められた圧縮応力は、所与の応力プロファイル全体に亘る積分で求められた中央引張に等しくなる。
【0044】
Iоn Exchаnge Prоcessについて- 「イオン交換プロセス」は、典型的には、ガラス基材の基板内の相対的に小さいイオンと交換されるそれより大きいイオンを含む溶融塩浴液(または、2種類以上の溶融塩浴液)にガラスベースの基板を浸漬することにより実行される。含水塩浴液が採用されてもよいことに留意するべきである。加えて、浴液(1種類以上)の組成は、複数の種類の相対的に大きいイオン(例えば、Na+やK+)や1種類の相対的に大きいイオンを含んでいればよい。イオン交換プロセスのパラメータは、塩浴液(1種類以上)の組成および温度、ガラス基材の製品の浸漬時間および浸漬回数、多種類の塩浴の利用回数、アニーリングや洗浄などのような更に別な工程数などを含んでいるが、これらに限定されるものではなく、該パラメータを決定するのは、一般的には、ガラス基材の製品の組成(製品の構造や何であれ存在している結晶相を含む)と、強化処理の結果として生じる、ガラス基材の製品の所望の圧縮深さおよび圧縮応力であることを、当業者なら正しく理解するであろう。具体例として、ガラス基材の基板のイオン交換を達成するにあたり、少なくとも1種類の溶融塩浴液にガラス基材の基板を浸漬する手段を採るが、該塩浴液は、より大きなアルカリ金属イオンの硝酸塩、硫酸塩、塩化物などを含んでいればよいが、これらに限定されない。典型的な硝酸塩としては、KNO3、NaNO3、LiNO3、NaSO4、および、これらの各種組合せが挙げられる。溶融塩浴液の温度は、典型的には、380℃から最高で約450℃の範囲であり、浸漬時間は約15分から最長で約100時間の範囲であるが、これは、ガラス厚さ、浴液温度、ガラス(または、一価イオン)拡散率に応じて決まる。しかしながら、上記とは異なる温度および浸漬時間を採用しても構わない。
【0045】
Iоn‐Exchanged Cоmpоsitiоnについて- 本明細書で使用する場合、化学強化製品、また、そうではないイオン交換製品について、当該製品の「イオン交換組成」とは、イオン交換処理後の組成である。イオン交換は、製品内で多様な材料成分の勾配を生じさせるためによく使用されるせいで、表面付近および製品内の位置の関数としてイオン交換組成を測定することが理に適っていることが多い。このような測定は、二次イオン質量分析(SIMS)により実施することができるが、該分析では、イオンビームを使用して表面のより深い部位へとスパッタリングを進め、放出された二次イオンの組成が分析される。別途の指定がない限り、二次イオン質量分析の測定は、質量分析計Iоn‐TоF TоF‐SIMS M6で実行される。関連する深さ測定は、KLA/Tenchor P‐17触針式表面形状計を使用してオフラインで実施することができる。
【0046】
Mоl%について- ガラス基材の製品中の各素材の濃度は、酸化物を基準にして単位「モル%」で提示されている。
【0047】
Rangeについて- 別途の指定が無い限り、或る範囲の値が記載されている場合は、その範囲の上限と下限の両方は元より、上下限の間であればどのような範囲をも含む。本明細書で使用する場合、不定冠詞「a(或る・或る種の)」、「an(或る・或る種の)」、および、これらに対応する定冠詞「the(その・該)」は、別途の指定が無い限り、「少なくとも1つ」または「1つ以上」を意味する。また、本明細書および図面に開示されている多様な特徴は、ありとあらゆる組み合わせで使用することができることも分かる。
【0048】
Silver Ion Release Rateについて- 本明細書で使用する場合、「銀イオン放出速度」は、加速銀イオン浸出試験により測定する。この試験では、ガラス基材の表面を、ガラス表面対溶液体積が或る比率の中性pHの塩溶液で覆う。ガラス基材の表面と溶液を60℃の温度で2時間保持するが、その期間中に銀イオンを溶液中に放出させることができる。次に、塩溶液中の銀イオン濃度が高周波誘導結合プラズマ電界放出電子分光法(ICP‐FES)により定量化される。次に、この定量化を利用することで、どれぐらいの数の銀イオンがガラス基材の表面の単位面積あたりに放出されたかを判定することができる。試験は試験領域の寸法に影響されるべきではないが、加速銀イオン浸出試験には、より大きな試料内の1.5インチ×1.5インチすなわち2.25平方インチ(3.81cm×3.81cmすなわち14.51平方センチ) の面積が使用された。加速銀イオン浸出試験は、本明細書の「実験」部分でより詳しく説明してある。
【0049】
Surface Roughnessについて- 本明細書で使用する場合、別途の指定が無い限り、「表面粗さ」とは、測定されたプロファイルの算術平均偏差であるRaを指す。別途の指定が無い限り、Raは以下のような設定のZygo7000で測定する。すなわち、スキャンサイズは180ミクロン×220ミクロン、対物は20xミラウ型、画像ズームは2倍、カメラ解像度は0.2777ミクロン、フィルタは低域通過、フィルタ・タイプは平均、フィルタ低波長は0、フィルタ高波長は0.83169ミクロンであった。
【0050】
Stress Profileについて- 「応力プロファイル」とは、ガラス基材の製品またはどこであれその一部の位置に関する応力のことである。圧縮応力領域は、製品の第1表面から圧縮深さ(DOC)まで伸び拡がっており、該領域では、製品は圧縮応力を受けている。中央引張領域は圧縮深さから張り出して、製品が引張応力を受けている領域を含む。本明細書に記載されている応力プロファイルは屈折近接場と折原製作所製の表面応力計のFSM‐6000 LEとを組み合わせて測定された。
【0051】
Substantialについて- 本明細書で使用されるような「実質的な・相当な」、「実質的に・相当に」という用語、および、その各種変形は、説明にある特徴が或る値または説明と等しいかまたは概ね等しいことに言及することを意図している。例えば、「実質的に平坦な」表面は、平坦または概ね平坦である表面を示すことを意図している。更に、先に定義したように、「実質的に同様である」とは、2つの値が等しいかまたは概ね等しいことを示すよう意図している。実施形態によっては、「実質的に同様」は、互いの約10%以内の値、例えば、互いの約5%以内の値、または、互いの約2%以内の値を示していればよい場合がある。
【0052】
Transmittanceについて- 「透過率」は、ASTM D1003規格に準拠してD65光源を採用している、Haze‐gard Dual Transparency Transmissiоn Haze Meter(ヘイズ・ガード・デュアル透明透過曇り度計)を使用して測定する。
【0053】
粗面が設けられた抗菌性ガラス基材の製品
実施形態によっては、表面テクスチャ加工を施したガラスまたはガラスセラミックの製品が優れた抗菌効力(米国環境保護庁抗菌乾式試験において99%または99.9%の対数的死滅率)を備えているものもある。より具体的には、該製品の有している表面テクスチャ加工を施した表面には300nm(Ra)を超える表面粗さが設けられている。また、該製品の含んでいる表面領域は酸化銀(Ag2O)を10モル%以上の濃度で含んでいる。
【0054】
当該製品は、2.25in2(≒14.51cm2)広さのガラス表面あたりの存在比率10,000ppb/2.25in2以上、または、30,000ppb/2.25in2以上の加速放出試験により測定された銀イオン放出速度を有しているとよい。
【0055】
当該製品は透明であるとよく(85%以上の透過率)、また、非抗菌性の同等製品と比較した場合の色(ΔE)が10未満であるとよく、更にまた、50%を超える透過率ヘイズであるとよい。
【0056】
幾つかの実施形態において、優れた抗菌効力を有する、表面テクスチャ加工を施した抗菌ガラス製品を製造するためのプロセスを提示している。まず、イオン交換速度 (拡散速度) が速く、一価金属イオンのモル%が高い基礎組成を選択する。一価カチオンのモル%は10モル%より高く、少なくとも10モル%の銀イオンが製品内奥で交換されるようにするとよい。第二に、ガラス表面に、(1)レーザ+エッチング、(2)サンドブラスト+エッチング、(3)化学的テクスチャリングと研磨処理などのような各種プロセスにより表面テクスチャ加工を施して、300nm(Ra)以上の表面粗さにする。第三に、溶融塩イオン交換プロセスにより銀イオンを表面テクスチャ加工されたガラス表面に導入する。最後にガラスを清浄にする。
【0057】
ガラスの抗菌(AM)能力は、銀イオン放出速度試験を利用することにより推定することができる。銀イオン放出速度を速くした試料は、通例、
図9(および、表1)に示すように、抗菌効率が上昇(対数的死滅率が上昇)する。
【0058】
図1は、ガラス基材の製品100の具体例の縦断面側面図を示す。製品100は、第1主表面110とこれに対向する、厚さ(t)だけ離隔された第2主表面120を備えている。第1主表面110は表面粗さが強く、すなわち、R
aが300nm以上である。第2主表面120は表面粗さが強くてもよいし、そうでなくてもよい。第1表面領域114は、主表面110から深さdだけ伸び拡がっている。第1表面領域114は、10モル%以上のAg
2Oを含んでいる。破線140は、製品100の一部のみが図示されていることを示すものである。
【0059】
幾つかの実施形態では、dは1ミクロンである。1ミクロンは、抗菌効力に関与する期間のうちに銀イオンが素材を通り抜けて表面まで移動することができる製品の内奥への距離を表していると考えられる。銀(Ag)は製品内奥のもっと深い部位に存在している場合もあるが、そのような銀(Ag)は抗菌効力にはあまり寄与せず、望ましくない色の変化や、所望の応力プロファイル特性に寄与する可能性のある他のイオンの置換などのような、望ましくない影響を与える恐れがある。
【0060】
実施形態によっては、tは0.2mmないし3mmであるものもある。この範囲の厚さは、手で持って操作する電子機器の被覆ガラスのような用途に好適である。この範囲から外れている各範囲を含む、複数の異なる厚さを採用してもよいが、これは所望の特性次第で決まる。
【0061】
図2は、ガラス基材の製品200の具体例の縦断面図を示す。
図2および製品200は、
図1の製品100に付け加えられる選択的な特徴を示している。製品100と同様に、製品200は、
図1に関して説明したように、第1主表面110、これに対向している主表面120、および、第1表面領域114を含んでいる。製品200では、第2主表面120も表面粗さが強く、すなわち、R
aが40nm以上である。製品200は、第2表面領域124を更に図示しているが、該領域は第2主表面120から深さd’伸び拡がっている。第2表面領域124は、10モル%以上のAg
2Oを含んでいる。各実施形態において、ガラスセラミック製品100は、銀とそれに加えて或る材料とイオン交換済みであり、第1主表面110から第1圧縮深さDOCまで伸び拡がっている圧縮応力(CS)層112と、第2主表面120から第2の圧縮深さDOC'まで伸び拡がっている圧縮応力層122とを有しているる。DOCとDOC’との間には、引張応力を受けている中央引張領域130も存在している。
【0062】
製品100(および、製品200)は、多様な物理的形態を採用することができる。すなわち、断面の観点から見ると、製品100は、図示されているように平らまたは平坦であってもよいし、或いは、湾曲していたり、鋭く曲がっていたり、または、その両方であっても構わない。同様に、該製品はただ1個の物体であってもよいし、或いは、何か他のものに取り付けることで多層構造または積層体を形成するようにしても構わない。
【0063】
表面粗さ
第1主表面110は(および、選択的に、第2主表面120も)、表面粗さが強く、すなわち、Raが300nm以上である。この表面粗さは、第1表面領域114(および、選択的に、第2表面領域124)の銀含有量と組み合わされると、米国環境保護庁乾式試験などのような乾式試験条件下では例外的な対数的死滅率を生じることになる。
【0064】
高い死滅率が観察される理由についてどのような理論にも全く限定されないが、幾つかの要因が寄与している可能性があると考えられる。まず、粗表面は、平滑な表面よりも単位面積あたりの比表面積が大きくなる。言い換えれば、粗さに付随している山、谷、隆起、傾斜面などにより、滑らかな表面と比較した場合、固体と空気との間の露出界面の面積が増大する結果となる。このように比表面積が広くなることで、固体からの銀の放出速度または浸出速度を速めることになるが、これは、銀を放出することのできる露出界面が広くなるのが原因である。この最初の点は、より粗い表面ほど銀の放出速度が速まることを示している本明細書の銀イオン放出速度データと一致している。第二に、微生物を死滅させる効果を得るのに、銀の存在と粗さとの間に相乗効果があると推察される。例えば、粗表面により、微生物に銀をより速く浸透させることができるようになると思われる。第三に、強い粗さはより滑らかな表面に比べて、製品から浸出した銀をより良好に保持することができる。
【0065】
実施形態によっては、第1主表面110(および、選択的に第2主表面120)は表面粗さRaが100nm以上、200nm以上、300nm以上、400nm以上、500nm以上、600nm以上、または、700nm以上である場合もある。Raは、300nmでもよいし、400nm、500nm、600nm、700nm、800nm、900nm、1000nm、1500nm、2000nm、3000nm、または、4000nmでもよいし、或いは、これらの値のうちいずれか2つ極限値とする任意の範囲であっても構わない。実施形態によっては、Raは200nmないし4000nmであり、300nmないし2000nm、500nmないし1000nm、または、700nmないし1000nmである。これらよりも低い値では、本明細書で観察してきた驚くほど増強された抗菌活性が存在しなくなると推察される。もっと高い値を採用してもよいが、表面粗さのもっと強いガラス基材の表面を製造するのは非常に高価につくうえに、機械的耐久性が低下する恐れがある。
【0066】
100nmまたは300nmの表面粗さは、そのような粗さを達成するために特別な努力が払われてでもいない限り、被覆ガラスとして使用されるガラス基材の製品としては異常に強い。被覆ガラスとして使用される多種のガラス基材組成について、典型的な仕上げプロセスでは、この種の300nm以上の表面粗さは達成できないことになる。本件開示は、レーザによる損傷に続いて行われるエッチングに関与する特殊技術を使用することで所望の表面粗さを達成することを説明している。サンドブラストとエッチングはもう1つ別な好適な技術であり、所望の表面粗さを達成するためにプロセスを特別誂えにする化学エッチングも同様である。
【0067】
【0068】
表1では、「レーザ」は、実施例1および実施例2でより詳細に説明するように、試料がレーザ処理を受けたという意味である。「エッチング」は、試料が50重量%のNaOHに3時間に亘り132℃で晒されたことを意味する。
【0069】
試料1ないし試料20は各々が銀イオン交換を施された。粗面化処理を行う場合には、その後に銀イオン交換を実施した。全ての試料についての銀イオン交換が、47.5重量%のKNO3、47.5重量%のNaNO3、および、5重量%のAgNO3の溶融液中で実施された。銀のイオン交換についてのイオン交換条件は次のとおりである。
・試料1と試料2 390℃で1時間。
・試料3ないし試料10 390℃で10分間。
・試料11ないし試料20 350℃で10分間。
【0070】
ヘイズ、透過率、グロス60、RaおよびRqを試料1、試料2、および、試料10について測定した。これらの試料は全てレーザで処理してから後でエッチングする処理が施された。測定は、レーザ処理後で尚かつエッチング前の試料と、レーザ処理後で尚かつNaOHエッチング後の試料とに対して実施された。結果を表2に示す。
【0071】
【0072】
第1表面領域
実施形態によっては、細菌やウイルスを消毒するために、銀イオンをガラス基材の製品の表面に供与する場合もある。典型的なプロセスでは、銀イオンをガラス表面層に導入するにあたり、銀イオンを含有している溶融硝酸塩にガラス製品(アルカリ金属イオンを含んでいる)を浸漬する手段により実施する。イオン交換反応により、銀イオンが少なくとも端から1ミクロン内奥に存在する抗菌(AM)ガラスが生成される。ガラスから銀イオンが放出されることで、表面の細菌細胞やウイルスが死滅する。
【0073】
第1表面領域114(および、選択的に第2表面領域124)は、10モル%以上の濃度のAg2Oを含んでいる。
【0074】
Ag2Oをイオン交換により製品100に導入した結果、製品100中の銀の大部分が第1表面領域114に位置するようになること、および、バルク材料中のAg2Oの濃度が著しく低くなるかゼロになるようにすること(不純物を斟酌して)が推奨される。換言すれば、バルク組成物は銀濃度が低く、例えば、1モル%または0.1モル%以下であるのが推奨される。これは、抗菌効力が表面効果であり、表面110から1ミクロン(1000nm)より内奥に離れた銀が抗菌効力に大きく寄与することが期待されていないからである。しかし、銀は、バルク材料中に存在しているか表面領域114に集中しているかの如何に関わらず望ましくないと見られている変色などのような光学的効果も有している。製品100中の銀の量を最小限にして第1表面領域114の銀の量を下回るようにすることにより、これらの望ましくない光学的効果は最小限に抑えられても、抗菌効力を損なうことがない。
【0075】
第1表面領域114は(および、選択的に第2表面領域124も)10モル%以上である。Ag2O濃度は10モル%であってもよいし、15モル%、20モル%、25モル%、または、30モル%であってもよく、或いは、これらの値のうちいずれか2つを極限値とする任意の範囲であってよい。実施形態によっては、Ag2O濃度が10モル%ないし30モル%の場合もあり、または、15モル%ないし25モル%の場合もある。
【0076】
第1表面領域114における強い表面粗さと高い銀濃度との組み合わせにより、速い銀イオン放出速度が生じると思われる。本明細書に記載されているそのような製品は、10,000ppb/2.25in2(≒14.51cm2)以上で尚かつ30,000ppb/2.25in2以下の銀イオン放出速度を示すとよい。銀イオン放出速度は、10,000ppb/2.25in2であってもよいし、15,000ppb/2.25in2、20,000ppb/2.25in2、25,000ppb/2.25in2、または、30,000ppb/2.25in2であってもよく、或いは、これらの値のうちいずれか2つを極限値とする任意の範囲であっても構わない。
【0077】
また、第1表面領域114における強い表面粗さと高い銀濃度との組み合わせにより、本明細書に記載の米国環境保護庁(EPA)乾式試験下で驚くほど高い死滅率が生じることになるものと考えられる。当該製品は、3以上、3.5以上、4以上、4.5以上、または、5以上の対数的死滅率を示すとよい。対数的死滅率は3であるとよく、3.5、4、4.5、または、5であってもよく、或いは、これらの値のうちいずれか2つを極限値とする任意の範囲であっても構わない。実施形態によっては、対数的死滅率が3ないし5である場合もある。米国環境保護庁乾式試験で高い対数的死滅率を達成することは、抗菌効力を評価するためによく使用される湿式試験で達成するよりもはるかに困難であるが、その理由が、米国環境保護庁乾式試験の試験条件下では限られた液多水しか存在しないか、または、液滞水が全く存在しないことで、抗菌イオンが製品から拡散するのを促進しようと図っているせいであることに注目するべきである。従って、それ以外の試験における多様な試料についての死滅率の報告は、それらの試料が米国環境保護庁乾式試験に合格できるか否かを決定付けるものではないこと、また、米国環境保護庁乾式試験での死滅率は、多くの製品についての湿式試験ならば得られたかもしれない死滅率よりも遥かに低いと予想される。
【0078】
第2主表面120および第2表面領域124は、第1主表面110および第1表面領域114の粗表面特徴および銀含有特徴を全く有していないか、一部または全てを有していてもよい。典型的な被覆ガラスの多数の適用例で、被覆ガラスの片面のみ、例えば、第1主表面110のみがユーザと対面状態になる。他方の片面、例えば、第2主表面120は、電子装置の内部に面しており、ユーザとは接触しない。従って、粗さ、銀含有量、および、抗菌効力の点で、第2主表面120が第1主表面110と同じ属性を有していることは、適用例の観点からは有益ではないこともある。実際、第2主表面120が粗面化されていないこと、イオン交換処理に付されていないこと、または、その両方が施されていないことで、粗さ、銀含有量、または、その両方に付随している各種の光学的効果を第1主表面110にあるものに限定してしまうことが有益であるかもしれない。処理はまた別な考慮事項である。製品をエッチング液やイオン交換浴に晒すなどといったように化学的に処理する場合、処理中のマスキングをせずに済まし、製品の両面を同じ処理に晒すほうが簡単で廉価で済むことが多い。逆に、レーザで粗面化する場合は、片面のみをレーザで処理する方が簡単で廉価になると思われる。
【0079】
実施形態によっては、ΔEは10以下、または、7以下である。ΔEは、銀イオン交換の前後でL*a*b*色座標を測定し、更に、その色差を3つのL*a*b*色座標の平方の総和の平方根を求める適切な計算を利用して判定することにより決まる:
【0080】
【0081】
ΔEが小さいほど、それに呼応して、色差は目立ちにくくなる。実施形態によっては、本明細書に記載しているような粗面と組み合わせた場合の銀の驚くべき抗菌効力により、素材の外観を過剰に変えてしまうほど多くの銀を使用せずに、格別の抗菌効力を生じることができる。
【0082】
ガラス組成
一般に、本明細書に記載されている各実施形態は、10モル%以上のAg2Oを含有している第1表面領域114を含んでいるか、または、イオン交換により該領域を含むようにすることができるのであれば、どのようなガラス組成またはガラスセラミック組成であれ、それを利用することで実施することができる。実施形態によっては、初期状態ではAg2Oをほとんどまたは全く含有していないが、イオン交換処理に付すことで10モル%以上のAg2Oを含有している第1表面領域114を含むようにすることができるガラス組成またはガラスセラミック組成が利用される。
【0083】
良好な抗菌(AM)効率を有しているガラス基材の材料は、表面(表面から1ミクロン内奥)付近で高い銀イオン濃度を示すとともに、銀イオンを迅速に放出する能力(速いイオン拡散速度)を有していなければならない。それを達成するには、ガラス基材の製品は、銀イオン交換よりも前に、交換可能な一価の金属イオン(例えば、Li、Na,Kなど)を高濃度で含有している必要がある。表3にそのような素材の具体例を提示している。更なる例は、米国特許第9,840,437号明細書見ることができるが、該特許はその全体がここに引例に挙げることにより本明細書の一部を構成しているものとする。
【0084】
米国特許第9,840,437号明細書は、10モル%ないし30モル%の濃度まで銀とイオン交換できるガラスを開示している。実施形態によっては、ガラス基材の製品は、米国特許第9,840,437号明細書に記載されている組成を有しているものもあり、各種のガラスセラミック組成を含めて、本明細書に開示される具体例のうちのいくつかを含むように範囲を広くしている。これらの基礎組成は、本質的に以下のものからなる、または以下を構成要素の一部に含む。すなわち、少なくとも約50モル%のSiO2(すなわち、SiO2≧50モル%)、約3モル%から約25モル%のAl2O3(すなわち、3モル%≧Al2O3≧25モル%)、最大で約15モル%のB2O3(すなわち、0モル%≦B2O3≦15モル%)、約0モル%から約25モル%のNa2O(すなわち、0モル%≦Na2O≦25モル%)、最大で約5モル%のK2O(すなわち、0モル%≦K2O≦5モル%)、0.0モル%から約35モル%のLi2O(すなわち、0モル%≦Li2O≦35モル%)、最大で約5モル%のP2O5(すなわち、0モル%≦P2O5≦5モル%)、最大で約5モル%のMgO(すなわち、0モル%≦MgO≦5モル%)、最大で約10モル%のCaO(すなわち、0モル%≦CaO≦10モル%)、および、最大で約10モル%のZnO(すなわち、0モル%≦ZnO≦10モル%)であり、その場合、アルカリ金属酸化物変性剤の総和は5モル%以上で尚かつ40モル%以下である(すなわち、5モル%≧Li2O+Na2O+K2O≧40モル%)。実施形態によっては、0モル%≦MgO+CaO+ZnO≦10モル%であるものもある。これらのガラス組成は、米国特許第9,840,437号明細書でより十分に論じてあり、その全体はここに引例に挙げることにより本明細書の一部を構成しているものとする。
【0085】
本明細書に記載の基礎組成およびイオン交換後の組成の各種の酸化物成分は各々が機能を果たす。例えば、シリカ(SiO2)は主たるガラス形成酸化物であり、溶融ガラスの網目構造の骨格を形成している。純粋なSiO2は熱膨張率(CTE)が低く、アルカリ金属を含有していない。しかし、溶融温度が極めて高いせいで、純粋なSiO2はフュージョン・ドロー・プロセスとは不適合である。粘度曲線も高すぎるため、積層構造のコアガラスとはうまく調和しない。実施形態によっては、本明細書に記載しているガラスは、少なくとも約50モル%のSiO2を含むものもあり、それ以外の実施形態では、約50モル%ないし約80モル%のSiO2を含むものもある。
【0086】
シリカに加えて、本明細書に記載しているガラスは、安定したガラス形成、低い熱膨張率、低ヤング率、低い剪断弾性率を達成する目的で、また、溶融および成形を容易にする目的で、網目構造形成剤Al2O3およびB2O3を含んでいる。SiO2と同様に、Al2O3もガラスの網目構造に剛性を与えるのに寄与している。アルミナはガラス中に4配位または5配位のいずれかで存在しているとよい。実施形態によっては、本明細書に記載している各ガラスは、約3モル%ないし約25モル%のAl2O3を含んでおり、特定の実施形態では、約9モル%ないし約22モル%のAl2O3を含んでいる。
【0087】
酸化ホウ素(B2O3)もガラス形成酸化物であるが、これは、粘度を低下させる目的で、従って、ガラスを溶融して形成する能力を向上させる目的で使用される。 B2O3はガラス網目構造内で3配位または4配位のいずれかで存在しているとよい。3配位B2O3は、ヤング率と剪断弾性率を低下させるのに最も効果的な酸化物であり、斯くして、ガラスの固有の耐損傷性が向上する。従って、本明細書に記載している各ガラスは、実施形態によっては、最大で約15モル%のB2O3を含むものもあり、それ以外の実施形態では、約3モル%ないし約10モル%のB2O3を含むものもある。
【0088】
アルカリ酸化物Li2O、Na2O、および、K2Oは、イオン交換によるガラスの化学強化を達成するために使用することができる。Li2Oを基礎ガラス組成に組み込むことで、高い圧縮応力と抗菌特性の両方を備えた最終的なイオン交換製品を得ることができる。この理由は、対象となる一価イオンの相対的なイオン半径に関係がある。すなわち、Li+の半径は90ピコメートル (pm) であり、Na+の半径は116pmであり、Ag+の半径は129pmであり、K+の半径は152pmだからである。
【0089】
本明細書に記載している各ガラスはNa2Oを含んでいるとよいが、これは、例えば、KNO3を含有している塩浴液中でカリウムと交換することができる。実施形態によっては、0モル%≦Na2O≦25モル%でありものもあり、それ以外の実施形態では、10モル%ないし約20モル%であるものもある。ガラスは、Li2Oと、選択的にK2Oを更に含んでいる。本明細書に記載されているように、ガラス中のLi+カチオンは、イオン交換浴液中でAg+カチオンに交換することができる。Ag+カチオンをガラス中のLi+カチオンへ交換することは、ガラス中の相対的に大きなK+カチオンをそれより小さいAg+カチオンへ交換した結果として生じる圧縮応力の減少を相殺するのに役立つ。実施形態によっては、0.1モル%≦Li2O≦2.5モル%であるものもあり、また、或る実施形態では、0.0モル%≦Li2O≦1.5モル%である。ガラス中のカリウムのカチオンも銀カチオンとイオン交換を被る。ガラスには最大で約5モル%のK2Oが含まれており、すなわち、0モル%≦K2O≦5モル%である。
【0090】
5酸化リン(P2O5)は、これらのガラスに組み込まれる網目構造形成剤である。P2O5はガラスの網目構造内で準4面体構造を呈しており、つまり、4個の酸素原子が配位されているが、そのうちの3個だけが網目構造の残余の部分に結合している。4番目の酸素は、リンのカチオンに二重結合している末端酸素である。ガラスの網目構造内でホウ素がリンと会合していることにより、SiO2と同様に、4面体構造におけるこれらの網目構造形成体の相互安定化がもたらされることとなる。B2O3と同様に、ガラスの網目構造にP2O5を組み込むことは、ヤング率と剪断弾性率を低減する際に非常に効果的である。実施形態によっては、本明細書に記載している各ガラスは、最大で約5モル%のP2O5を含有している場合もあり、つまり、0モル%≦P2O5≦5モル%である。
【0091】
B2O3と同様に、MgOおよびCaOなどのようなアルカリ土類酸化物、ならびに、それら以外の、ZnOなどのような各種の二価酸化物も、ガラスの溶融挙動を改善する。実施形態によっては、本明細書に記載している各ガラスは、最大で約5モル%のMgO、最大で約10モル%のCaO、最大で約10モル%のZnO、または、これらの各種組合せを含有しており、更にまた、実施形態によっては、少なくとも約0.1モル%のMgO、ZnO、または、それらの各種組合せを含有している場合もあり、その場合、0モル%≦MgO≦6モル%で尚かつ0モル%≦ZnO≦6モル%である。実施形態によっては、ガラスは各種のアルカリ土類酸化物のうち少なくとも1種類を含有していればよい場合もあるが、その場合、0モル%≦CaO+SrO+BaO≦2モル%である。
【0092】
前段までに説明してきた基礎組成とイオン交換抗菌組成はいずれもが、SnO2、As2O3、Sb2O5などのような、少なくとも1つの清澄剤を更に含んでいてもよい。実施形態によっては、この少なくとも1つの清澄剤は、最大で約0.5モル%のSnO2(すなわち、0モル%≦SnO2≦0.5モル%)、最大で約0.5モル%のAs2O3(すなわち、0モル%≦As2O3≦0.5モル%)、および、最大で約0.5モル%のSb2O5(すなわち、0モル%≦Sb2O5≦0.5モル%)を含んでいるとよい場合もある。
【0093】
表3は、本明細書に記載の各実施形態に採用した組成物を示している。「G‐」はガラス組成物を指し、「GC」はガラスセラミック組成物を指している。表中の数値は単位がモル%で提示されている。ガラスセラミック組成物は、素材が「前駆体」であるという特別な注記がない限り、透明なガラスセラミック製品を製造するのに適切な諸条件でセラミック化され、その場合、該組成物はガラスとして試験された(つまり、該組成物は、素材を部分的に結晶化させる熱処理であるセラミック化処理によりガラスセラミックに転化させることができるが、実際はセラミック化されてはいなかった)。透明性には 1つの例外があり、GC4はセラミック化されることで白いガラスセラミックに転化していた。
【0094】
【0095】
イオン交換
実施形態によっては、抗菌特性を得るための銀と、これとは別の、圧縮応力を得るためのK2Oなどのような材料の両方とイオン交換されたガラス基材の製品を提示しているものもある。イオン交換製品は、SiO2、Al2O3、Li2O、および、Na2Oを含んでおり、また、ガラスの表面からガラス内の層の深さまで拡がっている圧縮層を有している。圧縮層はK2Oを含んでおり、最大圧縮応力が少なくとも約700MPaである。圧縮層内の第1表面領域114は、ガラスの表面から層の深さよりも浅い第1深さまで拡がっており、約10モル%ないし約30モル%のAg2Oを含んでいる。銀とのイオン交換はある程度の化学強化をもたらすことができるが、イオン寸法の差異が原因でカリウムとの交換で達成できる強化と比較すると軽度になる場合があることに留意するべきである。しかし、銀とのみイオン交換されたガラス基材の製品については抗菌効力が既に証明されており、実施形態によっては、化学強化により達成されるいかなる程度の圧縮応力に関しても何らの要件も設けていないものもある点に留意すべきである。特にガラスセラミック製品は、化学強化の程度が低い場合でもかなりの耐久性を示すことができる。所望の製品特性次第では、銀のみとイオン交換されたガラスセラミックは十分な耐久性を示すと推察される。
【0096】
イオン交換は、ガラスを化学的に強化する目的で広く利用されている。特定の一例では、そのようなカチオン源(例えば、溶融塩、または「イオン交換」浴液)内のアルカリカチオンが、ガラス内のより小さいアルカリカチオンと交換されて、ガラスの表面付近に圧縮応力(CS)を受けている層が得られる。本明細書に記載の各ガラスにおいては、例えば、第1のイオン交換工程中に、カチオン源由来のカリウムイオンがガラス内のナトリウムイオンと交換される。圧縮層は、ガラス表面からガラス内奥の層の深さ(DOL)まで伸び拡がる。
【0097】
本明細書に記載している化学強化型イオン交換ガラスは、少なくとも1種類のカリウム塩を含有している第1のイオン交換浴液中で、SiO2、Al2O3、Li2O、および、Na2Oを含む基礎ガラスを初期イオン交換処理に付すことにより形成することができる。イオン交換浴液中のカリウムイオンが基礎ガラス中のナトリウムイオンに取って代り、層の深さま達する。カリウムカチオンとナトリウムカチオンの半径の差異(前者152pm(ピコメートル)に対して後者119pm)は、カリウムイオン半径とリチウムイオン半径の差異(152pmに対して90pm)に比べれば遥かに小さいせいで、カリウムを含有している浴液中での初期イオン交換は、Na+に代えてK+の優先交換を生じる。この初期イオン交換は、強度を得るのに有利な高い表面圧縮応力をもたらす。実施形態によっては、少なくとも1種類のカリウム塩として硝酸カリウム(KNO3)が含まれるものもある。これ以外の、イオン交換プロセスで使用することのできるカリウム塩としては、塩化カリウム(KCl)、硫酸カリウム(K2SO4)、それらの各種組合せなどが挙げられるが、これらに限定されない。イオン交換ガラスは、ガラス表面からガラス内奥の層の深さまで拡がっている少なくとも1つの圧縮層を有している。
【0098】
ナトリウムに代わるカリウムのイオン交換に続いて、当該ガラスは銀溶液を含む第2のイオン交換浴液中でイオン交換され、カリウムに代わる銀のイオン交換とリチウムに代わる銀のイオン交換の両方が起こる。1つの非限定的な例では、Li+に代わるAg+の交換とK+に代わるAg+の交換とは、AgNO3を含有している溶融塩浴液中で実行される。2種類のカチオンの半径の差異(129pmに対する90pm)が少ないせいで、Li+に代わるAg+の交換は遥かに容易に生じさせることができる。このことにより、K+に代わるAg+の交換が原因である圧縮応力の損失を少なくとも部分的に埋め合わせる圧縮応力が増大することとなり、また、場合によっては、銀イオン交換の結果として圧縮応力を純増加させさえすることもあり得る。
【0099】
Li+に代わるAg+の交換とK+に代わるAg+の交換は、圧縮層内の第1領域で起こる。本明細書で使用される「圧縮応力層」という用語は、圧縮応力を受けている層または領域を指し、「第1領域」という用語は、抗菌性銀種を含有している層または領域を指すために使用されるものとする。この使用法は便宜上のものであり、「領域」と「層」という用語に何であれ区別することを意図してはいない。
【0100】
もう1つ別の態様では、前段までに説明してきた各イオン交換抗菌ガラスの製造方法も提示している。第1工程では、第1のイオン交換浴液中のカリウムカチオンが、SiO2、Al2O3、Na2O、および、Li2Oを含む基礎ガラス中のナトリウムカチオンに代えてイオン交換される。実施形態によっては、基礎ガラスは前段までに説明してきたもののうちの1つである場合もある。ナトリウムカチオンに代わるカリウムカチオンのイオン交換により、ガラス表面からガラス内奥の層の深さまで拡がっている圧縮層を形成する。該圧縮層は、第1の浴液中におけるイオン交換の後で、第1の最大圧縮応力を受ける。
【0101】
第1のイオン交換浴液は、実施形態によっては、硝酸カリウム(KNO3)、塩化カリウム(KCl)、硫酸カリウム(K2SO4)などのような少なくとも1種類のカリウム塩を含有している溶融塩浴液である場合があるが、上記列挙したものに限定されない。実施形態によっては、少なくとも1種類のカリウム塩は、第1のイオン交換浴液の少なくとも約90重量%を構成しているか、その割合を占めている場合があり、それ以外実施形態では、第1のイオン交換浴液の少なくとも約95重量%を、更にまた別な実施形態では、第1のイオン交換浴液の少なくとも約98重量%を構成または占有している。
【0102】
第2工程においては、第2のイオン交換浴液中の銀カチオンが、最初のイオン交換の結果として生じた圧縮層内のカリウムイオンおよびリチウムイオンに代えて交換される。銀カチオンはガラスに抗菌活性をもたらす。第2のイオン交換浴液は、実施形態によっては、硝酸銀(AgNO3)、塩化銀(AgCl)、硫酸銀(Ag2SO4)などのような少なくとも1種類の銀塩を含有している溶融塩浴液である場合もあるが、上記列挙したものに限定されない。実施形態によっては、少なくとも1種類の銀塩は、第2のイオン交換浴液の少なくとも約5重量%を構成しているものもあり、それ以外の実施形態では、第2のイオン交換浴液の少なくとも約10重量%を、更にまた別な実施形態では、第2のイオン交換浴液の少なくとも約20重量%を構成している。
【0103】
カリウムカチオンおよびリチウムカチオンに代えて銀カチオンをイオン交換した後、当該圧縮層は第2の最大圧縮応力を受けるが、実施形態によっては、該応力は第1の最大圧縮応力の少なくとも80%であり場合もあり、それ以外の実施形態では、第1の最大圧縮応力の少なくとも90%である。実施形態によっては、第2の最大圧縮応力は第1の最大圧縮応力より大きいか、または、それに等しい。或る実施形態では、第2の最大圧縮応力は少なくとも約700MPaであり、それ以外の各実施形態では少なくとも750MPaであり、更に別の実施形態では少なくとも800MPaであり、更にまた別の実施形態では少なくとも約850MPaである。
【0104】
製造プロセス
図3は、本明細書に記載のガラス基材の製品を製造するプロセスを例示したフローチャートである。このプロセスは、好適な基礎組成のガラス基材の製品210で開始される。基礎組成には、銀とのイオン交換を利用して置換することができる一価金属イオンが10モル%以上含まれている。工程220において、当該製品に表面テクスチャ加工を施すにあたり、レーザ、サンドブラスト、化学プロセス、または、これらの各種組合せの手段で実施し、その結果として、表面粗さR
aが300nm以上ある、表面テクスチャ加工された、すなわち、粗面化されたガラス基材の製品が得られる。この化学プロセスは、フッ化水素(HF)または水酸化ナトリウム(NaOH)に晒すことを含んでいてもよい。表面テクスチャ加工されたガラスは、工程240において、銀イオンを含有している溶融塩浴液中で処理することで表面領域に銀イオンを導入し、その結果、ガラス表面層にガラス基材の抗菌性製品250が得られる。
【0105】
実験
実施例1 試料1および試料2
素材 0.8mm×50mm×50mmのガラスセラミック1(GC1)
レーザ処理条件 この事例では、表面特性(マイクロクレーター)は、超高速レーザ・システム(Light Conversion社製のPharos)を使用して、ガラスセラミック基板片への表面テクスチャ加工で設けられた。ダイオード励起固体レーザの中心波長、パルス幅、および、繰り返し周波数は、それぞれ順に、1030nm、300fs、および、200kHzに設定した。レーザの出力 (最大) は4ワット(W)であり、製作に使用した実際の出力は、試料1については単位パルスあたり約10マイクロジュール(μJ)であった(試料6については、単位パルスあたり≒6μJ)。レーザビームは検流計スキャナにより操作し、焦点距離が80mmである従来のF‐θレンズによりガラスセラミック試料上に合焦させた。スポット寸法は空気中の焦点付近で≒ 17μmであった。ガラスセラミック試料は、ピッチを25μmにしたクロスハッチング法により高速スキャンされた。スキャナの走査速度は500mm/秒に設定した。レーザフルエンスは、内部レーザ減衰器または外部調節 (すなわち、リアルタイムクロック(RTC)4/5ボード) を調節することにより、整調することができる。
【0106】
エッチング条件 レーザにより表面テクスチャ加工されたガラスを、50重量%のNaOH中で132℃で3時間に亘りエッチングした。エッチングプロセスにより、ガラス表面の片面あたり7.5μmを除去する。
【0107】
イオン交換(IOX)条件 表面テクスチャ加工したガラスを、47.5重量%のKNO3、47.5重量%のNaNO3、および、5重量%のAgNO3を含有している溶融塩浴液中で390℃で1時間に亘り処理する。
【0108】
処理済みのガラスは、ブドウ球菌(Staph)を使用して米国環境保護庁乾式試験によって評価する。結果を
図4に示す。レーザにより表面テクスチャ加工を施した ガラスセラミック1(GC1)は、米国環境保護庁乾式試験に3Logの対数的死滅率で合格するという高い抗菌(AM)効力を示している。
【0109】
試料1の表面の特性は、エネルギー分散型蛍光X線分光装置搭載型の走査電子顕微鏡(SEM‐EDS)によって明らかにした。
図8のAからCを参照されたい。各画像は、表面が非常に粗いうえに、高濃度の銀イオンを含んでいることを示しており、
図8のDを参照されたい。二次イオン質量分析計(SIMS)分析は、Ag濃度が深さのうち表面の1ミクロン内奥の深さに亘り、すなわち、表面領域114において10モル%平均を超過していることを示している。試料1についてのSIMS分析の結果を示している
図7を参照のこと。
【0110】
図4は、実施例1による試料1および試料2(GC1)に対する米国環境保護庁乾式試験による対数的死滅率を示している。両方のガラスが、米国環境保護庁乾式試験において優れた抗菌効力を示している。驚くべきことに、その有効性は、乾式試験条件下における銅金属シートの有効性と同程度である。
【0111】
実施例2 表面テクスチャ加工されたGC1と表面テクスチャ加工されていないGC1の比較
素材 0.8mm×50mm×50mmのGC1
銀イオン交換処理前の試料の情報 試料8および試料9には、実施例1と同じ条件を採用して表面テクスチャ加工を施した。試料10には、以下に説明するように、粗さを減じることになるような異なる諸条件で、レーザによる表面テクスチャ加工を施した。レーザ処理後、試料8、試料9、および、試料10を50重量%のNaOH中で132℃で3時間に亘りエッチングし、片面あたり7.5μmの表面層を除去した。
【0112】
試料10のレーザ処理については、超高速レーザ・システム(Light Conversion社製のPharos)を使用して、ガラスセラミック基板片上にシングルパルス修正を表面テクスチャに加工した。ダイオード励起固体レーザの中心波長、パルス幅、および、繰り返し周波数は、それぞれ、1030nm、300fs、および、100kHzに設定した。レーザの出力 (最大) は6Wであったが、製作に使用された実際の出力は単位パルスあたり約60μJであった。レーザビームは検流計スキャナにより操作し、焦点距離80mmの従来のF‐θレンズによりガラスセラミック試料上で合焦させた。スポット寸法は空気中で焦点で≒17μmであった。ガラスセラミック試料は、ピッチを25μmにした双方向ハッチング法により高速走査に付した。スキャナの走査速度は500mm/秒に設定した。これに加えて、パルス・ピックアップ装置を適切な値(すなわち、10)に設定することで、レーザ走査方向に沿った2つの隣接し合うパルス間のピッチを一致させた。レーザフルエンスは、内部レーザ減衰器または外部調節 (すなわち、リアルタイムクロック(RTC)4/5ボード) を調節することにより、整調することができる。
【0113】
試料3は、銀イオン交換以外のいかなるイオン交換も実施していない、素に近いグラスセラミック1(GC1)である。
【0114】
試料4および試料5 銀イオン交換の前に、試料4および試料5を、60重量%のKNO3、40重量%のNaNO3、追加の0.5重量%ケイ酸を含有している溶融塩浴液中で500℃で8時間に亘りイオン交換処理に付した。
【0115】
試料6および試料7 銀イオン交換の前に、試料4および試料5を、60重量%のKNO3、40重量%のNaNO3、追加の0.5重量%ケイ酸、追加の0.12%LiNO3を含有している溶融塩浴液中で500℃で8時間に亘りイオン交換処理に付した。
【0116】
試料3ないし試料10は各々が、銀イオン交換の前に脱イオン水により洗浄した。
【0117】
銀イオン交換条件 試料4から試料7は各々が、47.5重量%のKNO3、47.5重量%のNaNO3、5重量%のAgNO3、および、追加の0.12重量%のLiNO3を含有している溶融塩浴液中で390℃で10分間に亘り処理に付した。
試料3および試料8ないし試料10は各々が試料4ないし試料7と同じ処理に付されるが、追加の0.12重量%のLiNO3は含まれていない。LiNO3を使用せずに銀イオン交換を実施することで得られる表面効果は、より多量の銀が表面に、または、表面付近に存在するようになるが、幾ばくかの化学的耐久性を代償にすることになるかもしれないと考えられる。
【0118】
試料3ないし試料10を、米国環境保護庁乾式試験を利用してブドウ球菌(Staph)を使って抗菌効力について評価した。結果を
図5に示す。試料8および試料9は、レーザによる表面テクスチャ加工とエッチングによって高度に粗の表面を達成しているが、3Logを超過する対数的死滅率で米国環境保護庁の抗菌乾漆試験に合格した。これら以外の各試料は、3Logを下回る対数的死滅率を示している。
【0119】
図5は、試料3ないし試料10(GC1、多様な凹凸のある肌理)についての米国環境保護庁乾式試験に準拠した対数的死滅率を示している。最も粗い試料は、レーザ加工処理してからエッチングしたものであるが、米国環境保護庁乾式試験で優れた抗菌(AM)効力を示し、銅金属の抗菌性能と同等である。それ以外の、それほど粗くない各試料は、1Logないし3Logの死滅率の範囲で低い抗菌効力を示している。
【0120】
図5(および
図4、
図6)は対数スケールを使用しており、コンパクトなグラフで大きな差を示すようにデザインされている点に注目するべきである。y軸上の距離1は10倍の増加または減少を表しており、距離2は100倍の増加または減少を表している、等々。従って、例えば、y 軸上を2.5と5の間で動くということは(大雑把に試料6から試料8までについて)、lоg5の試料は生存細菌数がlоg2.5の試料よりも300倍以上少ないことを意味する。つまり、5は2.5の2倍であるが、lоg5の試料はlоg2.5の試料の2倍よりもはるかに優れている。
【0121】
実施例3 異なるガラス素材とガラスセラミック素材を比較(
図7)
実施例3については、複数の異なるガラス基材の素材を選択した。基礎組成物は表3に列挙されている。処理の詳細は表1に列挙されている。
【0122】
試料11は、実施例1に記載したのと同じ条件を採用してレーザにより表面テクスチャ加工に付した。試料12ないし試料17は、粗面化処理せずに、受理したままの状態で試験した。
【0123】
試料11ないし試料17の各々を、47.5重量%のKNO3、47.5重量%のNaNO3、および、5重量%のAgNO3を含有している溶融塩浴液中で350℃で10分間に亘りイオン交換処理に付した。
【0124】
抗菌(AM)試験 試料11ないし試料17の各々は、米国環境保護庁乾式試験によりブドウ球菌(Staph)を使って評価した。
図6を参照のこと。
【0125】
図6は、試料11から試料17(多様な素材)に対する米国環境保護庁乾式試験に準拠して対数的死滅率を示している。銀イオン交換処理後、レーザにより表面テクスチャ加工されたドガラス(試料11)は、表面テクスチャ加工されていない同等物(試料12)に比して著しく高い抗菌(AM)効力を示している。試料11は、米国環境保護庁乾式試験に基づいてガラス素材に対して抗菌効力が3Logの死滅率に近いことを例証しており、これは極めて例外的である。
図6の各試料の大半がレーザによる表面テクスチャ加工を施されていなかったことに留意するべきである。つはレーザテクスチャ加工されていませんでした。レーザによるテクスチャリングに付随して粗さが増大することが原因で、抗菌効率がかなり改善されることが予想される。
【0126】
実施例4 試料1の二次イオン質量分析法(SIMS)評価
試料18ないし試料20は、それぞれこの順で、試料2、試料7、および、試料3と同様の諸条件を利用して製作されたが、該条件は厳密に同じという訳では無い。
【0127】
試料18は試料2と同様であるが、以下の相違があった。すなわち、試料18は、試料2とは異なるAgイオン交換条件を有していた。具体的には、試料10の条件は、47.5重量%のKNO3、47.5重量%のNaNO3、および、5重量%のAgNO3の溶液構成、350℃の温度、10分間の処理時間、であった。試料18を銀イオン放出速度について試験したが、試料2には試験をしなかった。試料2はより積極果敢な銀イオン交換条件を備えていたため、試料18を試験に付すことで、試料2の銀イオン放出速度は、試料18が示した37000ppb/2.25in2(≒14.51cm2)の速度で中性pH塩溶液中へ60℃で2時間に亘って放出するという結果を超過することは分っている。
【0128】
試料19は試料7と同様であるが、以下の相違があった。すなわち、試料19は試料7とは異なるAgイオン交換条件を有していた。具体的には、試料19の条件は、47.5重量%のKNO3、47.5重量%のNaNO3、および、5重量%のAgNO3の溶液構成、350℃の温度、10分間の処理時間、であった。試料19を銀イオン放出速度について試験したところ、率をテストしたところ、4270ppb/2.25in2(≒14.51cm2)の放出速度を示した。
【0129】
試料20は、試料3と同様であるが、以下の相違があった。すなわち、試料20は試料3とは異なるAgイオン交換条件を有していた。具体的には、試料20の条件は、47.5重量%のKNO3、47.5重量%のNaNO3、および、5重量%のAgNO3の溶液構成、350℃の温度、10分間の処理時間、であった。試料20を銀イオン放出速度について試験したところ、15560ppb/2.25in2(≒14.51cm2)の放出速度を示した。
【0130】
実施例5 試料1の二次イオン質量分析法(SIMS)評価
試料1をSIMSによって評価して、組成プロファイル対深さを判定した。
図7はその評価結果を示している。
図7は、試料1がその表面から1ミクロン(1000nm)内奥の深さに亘って10モル%を超える銀イオン濃度を有していることを示している。
図7は、深さに伴ってLi含有量が増加してゆくことも示しており、イオン交換中にAgが主にLiと交換されていることが分かる。同様のLi含有量の他の素材は、同様の 銀イオン交換を受けた後、試料1のプロファイルと同様の銀の二次イオン質量分析法(SIMS)によるプロファイルを示すことが予想される。例えば、上記以外の、GC1を使って製作される試料は元より、GC2やGC3を使って製作される各試料もまた、同様のAg含有量を有することになる。
【0131】
実施例6 試料1のエネルギー分散型蛍光X線分光装置搭載型の走査電子顕微鏡(SEM‐EDS)分析
SEM‐EDS(EDS搭載型のSEM)分析を試料1の表面に対して実施した。
図8のAからDは、この分析の結果を示している。
図8のAは、後方散乱電子モードによる表面テクスチャ加工を施したガラスセラミック1(GC1)表面の上面図を示している(尺度図-20μm)。
図8のBは、表面テクスチャ加工された表面の縦断面図を示している尺度図-5μm)。
図8のCは、表面テクスチャ加工を施した表面を異なる尺度で示した縦断面図を示している(尺度図-50μm)。
図8のDは、際立つ銀分布がエネルギー分散型蛍光X線分光法(EDS)によりマッピングされた断面図を示している。
【0132】
図9は、米国環境保護庁乾式試験の対数的死滅率と放出された銀の濃度との、銀イオン放出速度が原因である相関関係を示している。
【0133】
実施例7 米国環境保護庁(EPA)乾式試験
米国環境保護庁により「消毒剤としての銅合金表面の有効性の試験方法(Test Method for Efficacy of Copper Alloy Surfaces as a Sanitizer)」として公開されている試験方法を利用して、試料の抗菌有効性を評価した。ここでも詳細が供与されており、米国環境保護庁規約に準拠して各工程に番号が付されている:
1. ストック培養 少なくとも18カ月ごとに1回、アメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション(ATCC)から得た凍結乾燥培養物から新しいストック培養を開始する。製造業者の指示に従い、凍結乾燥微生物のアンプルを開ける
2. 5mLないし6mLのトリプシン大豆ブロス(TSB)を含んでいるチューブを使用して、0.5mLないし1.0mLを無菌的に取り出し、凍結乾燥培養物を再水和する。再水和したペレット全体をブロスの元のチューブに無菌的に移して戻す。十分に混ぜ合わせる。ブロス培養物を36±1℃で24±2時間インキュベートする
3. インキュベートした後、トリプシン大豆寒天(TSA)上に1白金耳の懸濁液を画線塗布することで、単離されたコロニーを取得する。プレートを18時間ないし24時間に亘り36±1℃でインキュベートする
4. 試験微生物の単離コロニーを3個ないし5個選択し、1mLのトリプシン大豆培養液に再懸濁する。黄色ブドウ球菌に対しては、黄金色のコロニーのみを選択する。6枚ないし10枚のトリプシン大豆寒天プレートの各々の上で0.1mLの懸濁液を広げる。各プレートを18時間ないし24時間に亘り36±1℃でインキュベートする
5. 寒天プレートのインキュベーション後、約5mLの滅菌凍結保護剤溶液を各プレートの表面に置く。滅菌散布機を使用して寒天表面を損傷することなく、凍結保護剤溶液に増殖物を再懸濁する。ピペットでプレートから懸濁液を吸引し、約30mLが入るのに十分な大きさの滅菌容器に入れる。残りのプレートを使って増殖物回収手順を繰り返し、容器に懸濁液を継続して追加する (複数のチューブを使用することが必要な場合がある)。容器(1個以上)の内容物をよく混ぜて、複数の容器を使用する場合は、培養物を等分する前に容器をプールする。混合直後に、0.5mLないし1mLの分画量の回収済み懸濁液を凍結バイアルに分注する。以上が冷凍ストック培養の典型である
6. 凍結バイアルを-70±5℃で最長18か月間保管してから、新しい凍結乾燥培養を再開する
7. 凍結と同時にプール培養物の品質管理検査を実施する。例えば、血液寒天プレート上に1白金耳の画線を描き、マンニトール塩寒天(MSA)やセトリミドなどのような選択培地を塗布する。全てのプレートを36±1℃で24±2時間インキュベートする。血液寒天プレート上および選択培地プレート上で観察されたコロニーの形態を(増殖していないこと等も含めて)記録する。血液寒天プレートから採取した増殖物からグラム染色を実施し、倍率1000倍の明視野顕微鏡 (油浸式) を使用してグラム反応を観察する
【0134】
試験培養
8. 黄色ブドウ球菌に対しては、1本のストック培養凍結バイアルを室温で解凍し、短時間ボルテックスにかけて攪拌することで混合する。凍結バイアルは各々の使用を1回のみに限るべきである。解凍した20μLのストックを10mLのトリプシン大豆培養液を含むチューブに加え、ボルテックスにかけて混合する。36±1℃で18時間ないし24時間に亘りインキュベートする。インキュベーションの後、ブロス培養物を使用して最終試験懸濁液を調製する。使用前に培養物をボルテックスにかけて短時間攪拌する
9. 培養物をリン酸緩衝生理食塩水(PBS)で希釈するか、対象の担体数 (1担体あたり4Logないし5Log) を達成するのに妥当となるよう濃縮する。18時間ないし24時間に亘りブロス培養物を遠心分離することで、乾燥担体上で所望レベルの生存細胞を達成する。≒ 5000gNで20±5分間に亘り遠心分離し、ペレットを 6mLのリン酸緩衝生理食塩水(1X)中 に再懸濁する。注記)ペレットを破壊しないように上清を除去すること。黄色ブドウ球菌の場合は、6mL中に再懸濁する前に、ボルテックスにかけて攪拌する、繰り返し叩く、硬質表面に繰り返し打ち付けるなどしてペレットを粉砕し、ペレットを完全にばらばらにする。必要に応じて、1mLのリン酸緩衝生理食塩水をペレットに加えることで、解凝集を助ける。
10. 最終試験培養物 (土壌負荷あり) の純度は、5%の羊の血液を含むトリプシン大豆寒天またはそれ以外の適切な塗抹用培地への画線分離によって決定し、インキュベートし(36±1℃で48±4時間) 、純度を検査する。
11. 最終試験培養物(土壌負荷あり)の力価は、情報提供の目的で決定されることになる。希釈液をトリプシン大豆寒天プレートまたはそれ以外の適切な培地に塗抹し、インキュベートして(36±1℃で24時間ないし48時間)から計数する。コロニーの数を数えて、試験開始時に存在する単位mLの接種材料あたりの微生物数 (すなわち、CFU/mL)を判定する
【0135】
土壌負荷
12. 0.25mLの分画量のウシ胎児血清と0.05mLのトリトンX‐100とを4.70mLの細菌懸濁液に添加することで、5%のウシ胎児血清と0.01%のトリトンX‐100の土壌負荷を得る。土壌負荷を加えた後、10秒間に亘り使用直前に最終試験懸濁液をボルテックスにかけて攪拌する
【0136】
有効性試験手順
13. 処理済み試験担体を未処理の対照群担体を試験微生物に対して評価する
14. コーティングされた対照群担体は、コーティングされた試験担体と同時に評価するべきである
15. 担体表面への接種材料の曝露(接触時間)は、接種直後に始まる。それゆえ、接触時間は、最終試験懸濁液(土壌負荷あり)が担体上に堆積されたときに始まる
16. 接触時間の開始を記録し、目盛りを付けたピペット (容積式ピペットが望ましい) を使用して、担体ごとに20μLの最終試験培養液と一緒に時間差を設けて接種する
17. 接種材料を担体の表面全体に前後に移動させながら広げることで、確実に表面を完全に覆うようにし、曲がったピペットチップを使用して担体の端のできるだけ近くまで広げる。適切な間隔を採用する(例えば、接種材料を注意深く広げるのに十分な時間を確保するために30秒など)
18. 接触時間は担体接種直後から始まる。2時間の曝露期間中の実験室の温度と相対湿度を記録する
19. 雰囲気条件下のペトリ皿上で120±5分間に亘り担体が水平位置に留まることができるようにする
20. 曝露期間の後、担体を順次かつ無菌的に20mLのLetheenブロス (中和剤溶液) に移すが、これは100倍希釈液に相当する
a. 1インチ(2.54センチ)×1インチより大きい試料については、1インチ×1インチの開口が設けられたプラスチック製ステッカー(Silhоuette社製カッター・システムを使用して作成) を表面に貼り付けて、正しい試験領域を確保する。これらを、20mL中和剤と一緒にワール・パック・バッグ(Whirl Pak Bag)に加えて、(次工程の)超音波処理に備える
21. 全ての担体を中和剤に移し終えたら、5分±30秒間に亘り超音波処理することで、担体から生存物質を懸濁状態にし、掻き回して混合する
22. 30分の超音波処理のうちに、処理済みの担体に対して中和溶液(100倍希釈液)の10-3に達する段階希釈物を調製する。コーティングされた対照群担体を中和継代培地に移し、適切な希釈液を2回繰り返し塗抹して、可算数(1プレートあたり最大で300コロニー)をもたらすようにする。処理済みの各担体プレートをインキュベートし、計数する
23. 標準的なスプレッド式塗抹技術を使用して、10mLの分画量の100倍希釈液と0.10mLの分画量の100倍ないし10-3倍希釈液を2回繰り返し塗抹する
24. 各プレートを36±1℃で48±4時間に亘りインキュベートする
25. インキュベーション後、コロニーを数え、結果を記録する
26. 或る種の生物については、代替の培養条件が必要になる場合がある。必要に応じて、試験微生物に合わせるように培養条件を修正してもよい。必要に応じて、継代培養プレートは計数前に最長で3日間に亘り2℃ないし8℃で保存することができる。
【0137】
実施例8 銀イオン放出速度試験
試料の準備 (試料は50mm×50mm)
1. 試料は3回繰り返して試験される (そうではないとの言及がない限り)。
【0138】
a. 親水性 1.5インチ(3.81センチ)×1.5インチの開口が設けられた粘着性の正方形をクーポン上に慎重に配置し、気泡やしわを避けて密封する。
【0139】
b. 疎水性 粘着性の正方形はないが、24mm×30mmのThermanox(登録商標)のプラスチック製カバースリップが指定された表面積上に溶液を広げる。
【0140】
溶液の準備と試料の「接種」(硝酸ナトリウム)
2. 4.2495gの硝酸ナトリウムを蒸留水に溶解することにより、10倍NaNO3溶液(100ミリモル)を調製し、最終容量を500mLにする。10倍から1倍(10ミリモル)溶液を調製するが、10mLの10倍溶液を90mLの蒸留水に溶かす。
3. 親水性試料では、750μLの1倍溶液を粘着性の正方形内の試片に加える。溶液の上面に1.5インチ(3.81センチ)×1.5インチのPEフィルムを付加することで、該溶液を粘着性のある正方形内の表面全体に広げる。気泡が入らないようにする。
4. 疎水性試料では、375μLの1倍溶液を試片に加え、気泡が入らないようにしながら、再び Thermanox(登録商標)のカバースリップで覆う。この工程を同じ試片の2番目のスポットに対して繰り返す。これら2つのスポットを合流させないようにして、間隔をあけること!
5. 試料を2時間に亘り60℃で85%の相対湿度で培養畿内に置く。
【0141】
試料回収
6. 親水性試料 針先鉗子を使用して被験表面から漏れないようにしながら、PEフィルムを試料から慎重に持ち上げる。500μLの溶液を慎重に回収し、これに対応する15mLコニカルチューブに入れる。
7. 疎水性試料 1つのThermanox(登録商標)のカバースリップを慎重に持ち上げて取り外して廃棄し、2つ目のカバースリップを持ち上げてこれを使用して2つのスポットをプールすることで、1つの大きな回収滴を作る。500μLの溶液を回収して、15mLコニカルチューブに入れる。
【0142】
結論
例示を目的として典型的な実施形態を説明してきたが、前段までの説明は本件開示または添付の特許請求の範囲の各請求項の範囲を限定するものと見なすべきではない。従って、本件開示または添付の各請求項の真髄および範囲から逸脱することなく、多様な修正、改変、および、代替例を当業者なら思いつくと推察される。
【0143】
以下、本発明の好ましい実施形態を項分け記載する。
【0144】
実施形態1
抗菌性ガラス基材の製品は、
第1主表面およびそれに対向する第2主表面と、
該第1主表面から該製品内に1ミクロン伸び拡がっている第1表面領域とを備えており、該第1表面領域は、
第1表面領域全体の平均Ag2O濃度が10モル%以上で尚かつ30モル%以下であり、
表面粗さRaが100nm以上である。
【0145】
実施形態2
実施形態1の製品において、上記第1主表面は表面粗さRaが300nm以上である。
【0146】
実施形態3
実施形態1および実施形態のいずれかの製品において、上記製品は、60℃で2時間に亘る中性pH塩溶液中への銀イオン放出速度10,000ppb/2.25in2(≒14.51cm2)以上を示す。
【0147】
実施形態4
実施形態1から実施形態3のいずれかの製品において、上記製品は、10,000ppb/2.25in2(≒14.51cm2)以上、尚かつ、30,000ppb/2.25in2以下の銀イオン放出速度を示す。
【0148】
実施形態5
実施形態1から実施形態4のいずれかの製品において、上記製品は、黄色ブドウ球菌を用いた米国環境保護庁(EPA)乾式試験に準拠して3Lоg以上の対数的死滅率を示す。
【0149】
実施形態6
実施形態1から実施形態5のいずれかの製品において、上記製品は、黄色ブドウ球菌を用いたEPA乾式試験に準拠して4Lоg以上の対数的死滅率を示す。
【0150】
実施形態7
実施形態1から実施形態6のいずれかの製品において、上記製品は、85%以上の透過率を示す。
【0151】
実施形態8
実施形態1から実施形態7のいずれかの製品において、上記製品は、Ag2Oを含んでいないこと以外は均等な製品と比較した場合、色差値ΔEが10以下である。
【0152】
実施形態9
実施形態8の製品において、上記製品は、Ag2Oを含んでいないこと以外は均等な製品と比較した場合、色差値ΔEが7以下である。
【0153】
実施形態10
実施形態1から実施形態9のいずれかの製品において、上記製品は厚さが0.2mmないし3mmである。
【0154】
実施形態11
実施形態1から実施形態9のいずれかの製品において、上記製品は、銀イオンに加えて或る種のイオンを用いて化学強化される。
【0155】
実施形態12
実施形態1から実施形態11のいずれかの製品において、上記ガラス基材の製品は、以下のものを成分に含む基礎組成を有しており、すなわち、約50モル%ないし約80モル%のSiO2、約3モル%ないし約25モル%のAl2O3、最大で約15モル%のB2O3、約0モル%ないし約25モル%のNa2O、最大で約5モル%のK2O、最大で約35モル%のLi2O、最大で約5モル%のP2O5、最大で約5モル%のMgO、最大で約10モル%のCaO、最大で約10モル%のZnOなどを含み、その場合、10モル%≧Li2O+Na2O+K2O≧40モル%である。
【0156】
実施形態13
第1主表面およびそれに対向する第2主表面を有している粗面抗菌ガラス基材の製品を製造するプロセスは、
ガラス基材の製品を粗面化処理に付すことで粗面ガラス基材の製品を作製する工程と、
該粗面ガラス基材の製品の内奥へ銀イオン交換するイオン交換浴を該粗面ガラス基材の製品に受けさせることで、該粗面抗菌ガラス基材の製品を作製する工程とを含んでおり、該粗面抗菌ガラス基材の製品の該第1主表面は、
該第1主表面から製品内に1ミクロン伸び拡がっている第1表面領域を有しており、該第1表面領域は、その領域全体の平均Ag2O濃度が10モル%以上で尚かつ30モル%以下であり、その表面粗さRaが100nm以上である。
【0157】
実施形態14
実施形態13のプロセスにおいて、上記ガラス基材の製品を粗面化するにあたり、その手段として、
上記第1主表面をレーザに曝露すること、次に、
上記第1主表面をエッチング液でエッチング加工に付すことを実施する。
【符号の説明】
【0158】
100 製品
110 第1主表面
112 圧縮応力層
114 第1表面領域
120 第2主表面
122 圧縮応力層
130 中央引張領域
200 製品
【国際調査報告】