(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-12-13
(54)【発明の名称】風力タービン構成要素を風力タービンタワーに取り付けるためのデバイスおよび方法
(51)【国際特許分類】
F03D 80/00 20160101AFI20231206BHJP
F03D 13/30 20160101ALI20231206BHJP
【FI】
F03D80/00
F03D13/30
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023532202
(86)(22)【出願日】2021-11-23
(85)【翻訳文提出日】2023-07-18
(86)【国際出願番号】 EP2021082690
(87)【国際公開番号】W WO2022112250
(87)【国際公開日】2022-06-02
(32)【優先日】2020-11-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】BE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520282638
【氏名又は名称】ディーム・オフショア・ベーエー・エヌ・ヴェー
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ディーター・ヴィム・ヤン・ラバウト
(72)【発明者】
【氏名】フィクトル・アレクサンデル・ハーネンブルグ
【テーマコード(参考)】
3H178
【Fターム(参考)】
3H178AA20
3H178AA22
3H178AA43
3H178BB77
3H178CC23
3H178CC25
3H178DD67X
(57)【要約】
記載されているのは、風力タービンの構成要素を風力タービンタワーに配置するためのデバイスである。デバイスは、吊り上げ手段の吊り上げフックから吊り下げられ、持ち上げケーブルが設けられる吊り上げフレームを備え、それによって、構成要素は吊り上げフレームにおいて持ち上げられる。吊り上げフレームは、吊り上げフックに対する吊り上げフレームの第1の位置において、持ち上げられた構成要素の重心と、吊り上げフレームの重心とが、吊り上げフックを通じて延び、それらの重心を含まない鉛直平面の両側に位置付けられるように具現化される。本発明は、同様に、発明されたデバイスを利用する方法に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
連結部を有し、連結フランジなどの前記連結部に対して偏って位置する重心を有する風力タービン構成要素を風力タービンタワーに取り付ける取り付けるためのデバイスであって、前記デバイスは、吊り上げ手段の吊り上げフックから吊り下げられ、1つまたは複数の持ち上げケーブルが設けられる吊り上げフレームを備え、それによって、前記構成要素は前記吊り上げフレームにおいて持ち上げられ、前記吊り上げフレームは、前記吊り上げフックに対する前記吊り上げフレームの第1の位置において、持ち上げられた前記構成要素の前記重心と、前記吊り上げフレームの重心とが、前記吊り上げフックを通じて延び、それらの前記重心を含まない鉛直平面の両側に位置付けられるように、具現化され、前記吊り上げフレームは、前記風力タービンタワーの周囲部と係合するように構成される係合手段が下側に設けられる下向きに垂れ下がる案内フレーム部を備える、デバイス。
【請求項2】
前記吊り上げフレームは、前記吊り上げフックを通じて延びる前記鉛直平面に対して非対称である、請求項1に記載のデバイス。
【請求項3】
前記吊り上げフレームはその重心の側方において重くされる、請求項1または2に記載のデバイス。
【請求項4】
前記デバイスは、吊り下げられた前記吊り上げフレームを前記吊り上げフックに対して前記第1の位置と第2の位置との間で移動させるように構成され、両方の位置が含まれる位置決め手段をさらに備え、前記第2の位置において、前記吊り上げフレームの前記重心は、鉛直方向において前記吊り上げフックと一列にされる、請求項1から3のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項5】
前記位置決め手段は、前記吊り上げフレームを前記吊り上げフックに対して前記第1の位置から前記第2の位置へと移動させるように構成される、請求項4に記載のデバイス。
【請求項6】
前記吊り上げフレームは2本の持ち上げケーブルを備え、前記2本の持ち上げケーブルは、前記構成要素の前記重心の両側に位置付けられる位置で前記構成要素に係合する、請求項1から5のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項7】
前記吊り上げフレームは、吊り上げ点において前記吊り上げ手段の前記吊り上げフックから吊り下げられ、前記位置決め手段は、前記吊り上げ点を、前記吊り上げフレームに沿って、好ましくは実質的に水平の方向において変位させるように構成される、請求項4から6のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項8】
前記吊り上げフレームは、吊り上げ点において前記吊り上げ手段の前記吊り上げフックから吊り下げられ、前記位置決め手段は、前記吊り上げフレームの滑動可能質量を、前記吊り上げフレームに沿って、前記吊り上げ点に対して、好ましくは実質的に水平の方向において滑動させるように構成される、請求項4から7のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項9】
前記吊り上げフレームは、2本の吊り上げケーブルを使用して、2つの吊り上げ点において前記吊り上げ手段の前記吊り上げフックから吊り下げられ、前記位置決め手段は、前記吊り上げフックの位置を、前記吊り上げフレームに対して、好ましくは実質的に水平の方向において変化させるために、前記2本の吊り上げケーブルの一方を締めるように構成される、請求項4から8のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項10】
前記係合手段は、前記風力タービンタワーの周囲の180°以下の周囲角度にわたって延びる周囲部と係合するように構成される、請求項1から9のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項11】
前記係合手段は、緩衝器、ローラ、車輪、キャタピラ軌道、吸引カップ、支持ストラップ、およびそれらの組み合わせから選択される、請求項1から10のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項12】
前記風力タービンの前記構成要素は、ナセル、風力タービンブレード、および/またはロータを含む、請求項1から11のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項13】
風力タービンの構成要素を、海において利用可能な風力タービンタワーに配置するために、船舶に設けられ、特に浮体式プラットフォームに設けられる、請求項1から12のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項14】
風力タービンの構成要素を風力タービンタワーに取り付け、前記構成要素の連結フランジなどの連結部を前記風力タービンタワーに連結するための方法であって、前記構成要素の重心が前記連結部に対して偏って位置し、前記方法は、
請求項1から13のいずれか一項に記載のデバイスを提供するステップと、
前記吊り上げフレームを前記吊り上げ手段の吊り上げフックから吊り下げるステップと、
前記構成要素を前記吊り上げフレームの1つまたは複数の持ち上げケーブルに取り付けるステップと、
前記構成要素を前記吊り上げフレームで持ち上げるステップであって、前記吊り上げフックに対する前記吊り上げフレームの第1の位置において、持ち上げられた前記構成要素の重心と、前記吊り上げフレームの重心とが、前記吊り上げフックを通じて延び、それらの前記重心を含まない鉛直平面の両側に位置付けられる、ステップと、
持ち上げられた前記構成要素を、前記吊り上げ手段を用いて、前記風力タービンタワーの近傍へと持って行くステップと、
前記風力タービンタワーの周囲部を、下向きに垂れ下がる案内フレーム部と係合させるステップと、
前記構成要素を前記風力タービンタワーに配置するステップと、
前記構成要素の連結部を前記風力タービンタワーに連結するステップと、
前記構成要素を前記吊り上げフレームから結合解除するステップと、
前記吊り上げフレームを取り外すステップと
を含む、方法。
【請求項15】
吊り下げられた前記吊り上げフレームは、前記吊り上げフックに対して前記第1の位置と第2の位置との間で、両方の位置が含まれる前記位置決め手段を用いて移動させられ、前記第2の位置において、前記吊り上げフレームの前記重心は、鉛直方向において前記吊り上げフックと一列にされる、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記吊り上げフレームは、前記位置決め手段を用いて、前記吊り上げフックに対して前記第1の位置から前記第2の位置へと移動させられる、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
2本の持ち上げケーブルが、前記構成要素の前記重心の両側に位置付けられる位置で前記構成要素に係合する、請求項14から16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記吊り上げフレームは、吊り上げ点において、前記吊り上げ手段の前記吊り上げフックから吊り下げられ、前記吊り上げ点は、好ましくは前記構成要素が前記風力タービンタワーに配置された後、前記吊り上げフレームに沿って、好ましくは実質的に水平の方向において変位させられる、請求項14から17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
前記吊り上げフレームは、吊り上げ点において、前記吊り上げ手段の前記吊り上げフックから吊り下げられ、前記吊り上げフレームの滑動可能質量が、好ましくは前記構成要素が前記風力タービンタワーに配置された後、前記吊り上げフレームに沿って、前記吊り上げ点に対して、好ましくは実質的に水平の方向において滑動させられる、請求項14から18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
前記吊り上げフレームは、2本の吊り上げケーブルを使用して、2つの吊り上げ点において前記吊り上げ手段の前記吊り上げフックから吊り下げられ、前記2本の吊り上げケーブルの一方が、例えばウインチで締められ、前記吊り上げフレームに対する前記吊り上げフックの位置は、好ましくは実質的に水平の方向において変化させられる、請求項14から19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
前記吊り上げフックの前記位置は、前記吊り上げフックが鉛直方向において前記吊り上げフレームの前記重心と一列にされるように変化させられる、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記係合手段は、前記風力タービンタワーの周囲の180°以下の周囲角度にわたって延びる周囲部と係合する、請求項14から21のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
前記風力タービンの前記構成要素は、例えば、ナセル、風力タービンブレード、および/またはロータを含む、請求項14から22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
前記構成要素は風力タービンブレードを含み、前記風力タービンブレードは、前記風力タービンのハブに、実質的に水平の位置で取り付けられる、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記構成要素は風力タービンブレードを含み、前記風力タービンブレードは、前記風力タービンのハブに、鉛直方向に対して実質的に0°の角度で取り付けられる、請求項23に記載の方法。
【請求項26】
前記構成要素は、船舶から、特に浮体式プラットフォームから、海において利用可能な風力タービンタワーに沖合で取り付けられる、請求項14から25のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、風力タービンの構成要素を風力タービンタワーに取り付けるためのデバイスに関する。本発明は、同様に、そのデバイスが使用される、風力タービンの構成要素を風力タービンタワーに取り付けるための方法に関する。本発明は、詳細には、ナセル、風力タービンブレード、または、風力タービンの完成したロータを、風力タービンタワーに取り付けるためのデバイスおよび方法に関する。
【0002】
風力タービンタワーへの取り付けは、ナセルが取り付けらえるときなど、構成要素を風力タービンタワーに直接的に配置および取り付けすること、または、風力タービンブレードが、風力タービンタワーにすでに取り付けられているナセルに取り付けられるときなど、構成要素を、風力タービンタワーにすでに配置されている他の構成要素に取り付けることを意味すると理解される。風力タービン構成要素を取り付ける目的のために、この構成要素には、風力タービンタワーに存在する第2の連結フランジに取り付けられ得る連結フランジが設けられる。
【0003】
本発明は、海(沖合)において風力タービンの構成要素を配置する状況の中で主に明らかにされるが、本発明によるデバイスおよび方法は、陸上(地上)においても使用することができる。本発明の利点は、風力タービン構成要素が海において取り付けられるとき、特に、浮体式プラットフォームなど、取り付けが浮いているデバイスから行われるときに、最も明確に現れる。
【背景技術】
【0004】
陸上または沖合において建築、保守、または修理される高い構造物の数が増えている。典型的な例は、風力タービンタワーまたはマストに配置され、発電機などの電気機械機器のための筐体を形成するゴンドラ(またはナセル)を備える風力タービン(以下において、WTGとも称される)である。ナセルには、いくつかの風力タービンブレードが配設されるハブが設けられており、これらが一緒にロータを形成する。風力タービンブレードは、風の運動エネルギーをナセルのシャフトの回転移動へと変換し、その回転移動は発電機によって電気エネルギーへと変換される。
【0005】
このような大きい構造の構成要素を配置する際、構成要素は、先行技術に従って、昇降クレーンによって持ち上げられ、構造のためにすでに利用可能な支持構造に、または、構造のすでに配置された構成要素に、配置および取り付けられる。風力タービンの場合、支持構造は、例えば、適切な基礎に配置された風力タービンタワーを備え得る。
【0006】
船舶に取り付けられた沖合昇降クレーンによって、風力タービン構成要素を昇降する際、構成要素の移動は、ピッチ、ヨー、ロール、高潮、揺れ、うねりなど、船舶自体の移動によって引き起こされる。例えば風力タービンブレードなど、大きくて細長い構成要素の昇降および配置は、風荷重によっても妨げられる可能性がある。風力タービンブレードは、具体的には、ボルト連結を用いてハブに取り付けられる必要があり、これは、風力タービンタワーにすでに設置されたハブに対する風力タービンブレードの正確な位置決めを要求する。海底に固定されたタービンタワー、または任意選択で、浮いている風力タービンタワーといった、沖合の基礎における浮いている船舶からの風力タービンのナセルを取り付ける際、吊り上げ手段によって持ち上げられたナセルと基礎との間の相対移動も、ナセルを受入連結フランジと合わせるために制御されなければならない。
【0007】
あるタービン、具体的には、直接駆動のタービンでは、ナセル組立体(つまり、ブレードの設置もない)の重心が、タワーの上側とナセルとの間のフランジ境界面の外側に位置決めされる。別の言い方をすれば、風力タービン構成要素の重心が、この場合、構成要素の連結フランジに対して偏って配置される。このような構成要素を設置する際、構成要素の連結フランジが、風力タービンタワーの上方側、具体的には、受入連結フランジの上方側と接触するとき、荷重が吊り上げフックから連結フランジへと伝達されるときに不安定な配置が生じる可能性がある。この理由のため、(永久的な)フランジ連結がもたらされるまで追加の支持が必要な可能性がある。これは、2つの連結フランジのボルト連結が所定位置になる後まで、構成要素の全重量を風力タービンタワーへと伝達しないことによる知られている手法で達成され得る。これは、第1のフランジ接触からの完全な荷重伝達までの期間が、(永久的な)ボルト動作が行われることを考慮しなければならないことを意味する。そのため、この移行の状況がある時間にわたって続く可能性がある。この以降の状況の期間は、特に設置または取り付けが浮いている船舶から実施されるとき、重要な危険因子である。昇降クレーンを伴う船舶は、実際、構成要素が吊り下げられる吊り上げフックの連続した移動をもたらす連続的な環境影響に曝される可能性がある。
【0008】
上記の理由のため、この曝されることを、1.第1のフランジ接触とフランジ係止との間の期間を短縮すること、もしくは、2.より大きな度合いへの吊り上げフックの移動を吊り上げデバイスに吸収させることのいずれか、または、それら2つの組み合わせによって少なくとも部分的に低減することが望ましい。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
そのため、本発明の目的は、吊り上げ手段で持ち上げられた風力タービン構成要素と風力タービンタワーとの間の相対移動が先行技術における場合よりも良好に制御できる、風力タービン構成要素が風力タービンタワーに配置および取り付けできるデバイスおよび方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この目的は、請求項1による特徴を有するデバイスを提供することで、本発明に従って達成される。連結フランジなどの連結部を伴い、連結部に対して偏って位置する重心を伴う風力タービン構成要素を風力タービンタワーに取り付けるためのデバイスが、吊り上げ手段の吊り上げフックから吊り下げられ、1つまたは複数の持ち上げケーブルが設けられる吊り上げフレームを備え、それによって、構成要素は吊り上げフレームにおいて持ち上げられ、吊り上げフレームは、吊り上げフックに対する吊り上げフレームの第1の位置において、持ち上げられた構成要素の重心と、吊り上げフレームの重心とが、吊り上げフックを通じて延び、それらの重心を含まない鉛直平面の両側に位置付けられるように、具現化される。
【0011】
発明されたデバイスは、風力タービンタワーへの構成要素の全重量の荷重伝達が、1回の動作で、フランジ境界面における即時の固定もなしで、実施できるように設計され、吊り上げフレームは、構成要素の不安定な重心位置の結果としての傾きモーメントを相殺するために、構成要素の望ましくない傾く移動のためのつり合い錘として作用する。持ち上げケーブルと吊り上げフレームの重心との相対的な位置のため、発明されたデバイスは、構成要素が実質的に安定している間に、吊り上げフレームおよびスリングまたは持ち上げケーブルの位置および配向を変化させることで、すべての方向(鉛直および水平)においてのクレーン先端の移動または吊り上げフックのモーメントの吸収を可能にする。
【0012】
発明されたデバイスのさらなる利点は、知られているデバイスが、決定されている風速および波のうねりまでしか展開できない一方で、作業を相当により不都合な条件で行わせられることである。これによって、風力タービンの組み立て時間が相当に短縮できる。
【0013】
本発明によれば、吊り上げフレームは、吊り上げフックに対する吊り上げフレームの第1の位置において、持ち上げられた構成要素の重心と、吊り上げフレームの重心とが、吊り上げフックを通じて延び、持ち上げケーブルによって定められる平面に対して垂直に延びる鉛直平面の両側に位置付けられるように、具現化される。重心の位置は、傾きに抗する所望のモーメントを発生させることができるようにするために必要である。この方策は異なる形態を取ることができる。したがって、実施形態では、吊り上げフレームが、吊り上げフックを通じて延びる鉛直平面に対して非対称であることにおいて、デバイスを特徴付けることが可能である。他の実施形態は、デバイスは、吊り上げフレームがその重心の側方において重くされること、または、その側方において下向きに垂れ下がる部品を有することで特徴付けることができる。下向きに垂れ下がる部品を有する実施形態は、後でさらに明らかにされるように、追加的な利点を有する。
【0014】
デバイスのさらに改善された実施形態は、吊り下げられた吊り上げフレームを吊り上げフックに対して第1の位置と第2の位置との間で移動させるように構成され、両方の位置が含まれる位置決め手段をさらに備え、第2の位置において、吊り上げフレームの重心は、鉛直方向において吊り上げフックと一列にされる。この実施形態は、吊り上げフレームを、2つの末端(第1および第2)の間にある位置へと持って行くことを可能にする。ここで、吊り上げフレームを通じて延びる、吊り上げフレームの重心から鉛直平面までの水平距離は、ゼロまで短縮でき、それによって、吊り上げフレームの重心は、鉛直方向において吊り上げフックと一列にされる。
【0015】
位置決め手段が、吊り上げフレームを吊り上げフックに対して第1の位置から第2の位置へと移動させるように構成される点において、本発明の実施形態によるデバイスを特徴付けることも可能である。この実施形態では、中間位置において固定のないことが可能である。
【0016】
先に述べられた改善された実施形態は、構成要素が風力タービンタワーに配置され、2つの連結フランジが互いと(永久的に)連結された後、持ち上げケーブルのうちの1つまたは複数の取り外しを簡単にする。
【0017】
デバイスのさらなる実施形態において、吊り上げフレームは2本の持ち上げケーブルを有し、2本の持ち上げケーブルは、構成要素の重心の両側に位置付けられる位置で構成要素に係合する。これは、吊り上げフレームにおける構成要素のより安定した吊り下げを提供する。そうでない場合、1本の持ち上げケーブルを提供すること、または、逆に3本以上の持ち上げケーブルを提供することも、可能である。
【0018】
吊り上げフックから吊り下げられた吊り上げフレームは、位置決め手段を使用して、異なる方法で、吊り上げフックに対して第1の位置から第2の位置へと移動させることができる。
【0019】
したがって、実施形態では、吊り上げフレームが、吊り上げ点において吊り上げ手段の吊り上げフックから吊り下げられ、位置決め手段が、吊り上げ点を、吊り上げフレームに沿って、好ましくは実質的に水平の方向において変位させるように構成される点において、デバイスを特徴付けることが可能である。
【0020】
他の実施形態では、吊り上げフレームが、吊り上げ点において吊り上げ手段の吊り上げフックから吊り下げられ、位置決め手段が、吊り上げフレームの滑動可能質量を、吊り上げフレームに沿って、吊り上げ点に対して、好ましくは実質的に水平の方向において滑動させるように構成される点において、デバイスが特徴付けられる。
【0021】
なおも他の実施形態では、デバイスは、吊り上げフレームが、2本の吊り上げケーブルを使用して、2つの吊り上げ点において吊り上げ手段の吊り上げフックから吊り下げられ、位置決め手段が、吊り上げフックの位置を、吊り上げフレームに対して、好ましくは実質的に水平の方向において変化させるために、2本の吊り上げケーブルの一方を締めるように構成されるという特徴を有する。
【0022】
すでに先に述べられているように、吊り上げフレームは、例えば、吊り上げフレームに下向きに垂れ下がる構成要素を提供することで、その重心の側方において重くされ得る。吊り上げフレームが、風力タービンタワーの周囲部と係合するように構成される係合手段が下側に設けられる下向きに垂れ下がる案内フレーム部を備える実施形態によるデバイスは、吊り上げフレームが、風力タービンタワーに対して制御できない移動を行うことから防止される、または少なくとも抑制されるという追加的な利点を有する。吊り上げフレームのこの複数の点での吊り下げのおかげで、吊り下げフレームの可能な位置および配向を制限することができ、この方法で吊り下げられた吊り上げフレームは衝撃吸収装置として機能することができる。
【0023】
係合手段を用いて風力タービンタワーの周囲部における支持側において支持する案内フレーム部を利用することで、持ち上げ構成要素は、言わば、風力タービンタワーに一時的に柔軟に連結され、それによって、風力タービンタワーに対する持ち上げ構成要素の相対移動が低減される。
【0024】
先に述べられている実施形態によるデバイスの係合手段は、望まれる場合、風力タービンタワーの周囲の180°以下の周囲角度を通じて延びる周囲部と係合するように構成され得る。係合手段の適切な実施形態は、緩衝器、ローラ、車輪、キャタピラ軌道、吸引カップ、支持ストラップ、およびそれらの組み合わせから選択され得る。
【0025】
本発明によるデバイスを、追加の補助手段なしで適用することが可能である。しかしながら、補助デバイス、具体的には、船舶に設けられた引っ張り線を伴うタッガーウインチを適用することが必須である場合があり、船舶は吊り上げ手段も備える。引っ張り線を使用する場合、吊り上げられた構成要素は係合させられ、さらに制御下において保つことができる。この引っ張り線は、利用可能なタッガーウインチを用いて締められる、または繰り出される。
【0026】
本発明によるデバイスは、好ましくは海に存在する風力タービンタワーに風力タービンの構成要素を取り付けるのに特に適しており、その構成要素は、実施形態では、ナセル、風力タービンブレード、および/またはロータを含む。
【0027】
本発明の他の態様によれば、風力タービンの構成要素を風力タービンタワーに取り付け、構成要素の連結フランジなどの連結部を風力タービンタワーに連結するための方法が、この目的のために提供され、構成要素の重心が連結部に対して偏って位置し、その方法は、
- 前述の請求のいずれか1つによるデバイスを提供するステップと、
- 吊り上げフレームを吊り上げ手段の吊り上げフックから吊り下げるステップと、
- 構成要素を吊り上げフレームの1つまたは複数の持ち上げケーブルに取り付けるステップと、
- 構成要素を吊り上げフレームで持ち上げるステップであって、吊り上げフックに対する吊り上げフレームの第1の位置において、持ち上げられた構成要素の重心と、吊り上げフレームの重心とが、吊り上げフックを通じて延び、それらの重心を含まない鉛直平面の両側に位置付けられる、ステップと、
- 持ち上げられた構成要素を、吊り上げ手段を用いて、風力タービンタワーの近傍へと持って行くステップと、
- 構成要素を風力タービンタワーに配置するステップと、
- 構成要素の連結部を風力タービンタワーに連結するステップと、
- 構成要素を吊り上げフレームから結合解除するステップと、
- 吊り上げフレームを取り外すステップと
を含む。
【0028】
好ましい方法は、吊り下げられた吊り上げフレームが、吊り上げフックに対して第1の位置と第2の位置との間で、両方の位置が含まれる位置決め手段を用いて移動させられ、第2の位置において、吊り上げフレームの重心が、鉛直方向において吊り上げフックと一列にされることにおいて特徴付けられる。
【0029】
さらなる実施形態は、吊り上げフレームが、位置決め手段を用いて、吊り上げフックに対して第1の位置から第2の位置へと移動させられる方法を提供する。
【0030】
なおも他の実施形態による方法では、2本の持ち上げケーブルが、構成要素の重心の両側に位置付けられる位置で構成要素に係合する。
【0031】
他の実施形態では、吊り上げフレームは、吊り上げ点において、吊り上げ手段の吊り上げフックから吊り下げられ、吊り上げ点は、好ましくは構成要素が風力タービンタワーに配置された後、吊り上げフレームに沿って、好ましくは実質的に水平の方向において変位させられる、および/または、吊り上げフレームは、吊り上げ点において、吊り上げ手段の吊り上げフックから吊り下げられ、吊り上げフレームの滑動可能質量が、好ましくは構成要素が風力タービンタワーに配置された後、吊り上げフレームに沿って、吊り上げ点に対して、好ましくは実質的に水平の方向において滑動させられる、および/または、吊り上げフレームは、2本の吊り上げケーブルを使用して、2つの吊り上げ点において吊り上げ手段の吊り上げフックから吊り下げられ、2本の吊り上げケーブルの一方が、例えばウインチで締められ、吊り上げフレームに対する吊り上げフックの位置は、好ましくは実質的に水平の方向において変化させられる方法が提供される。
【0032】
上記の2本の吊り上げケーブルを使用する実施形態では、吊り上げフックの位置は、吊り上げフックが鉛直方向において吊り上げフレームの重心と一列にされるように変化させられる。
【0033】
発明された方法のさらに改善された実施形態では、吊り上げフレームは、下側に係合手段が設けられ、それによって風力タービンタワーの周囲部が係合させられる下向きに垂れ下がる案内フレーム部を備える。ここで、係合手段は、風力タービンタワーの周囲の180°以下の周囲角度を通じて延びる周囲部と係合することができる。
【0034】
発明された方法であれば、風力タービンの構成要素は、例えば、ナセル、風力タービンブレード、および/またはロータを含み得る。
【0035】
方法の実施形態では、構成要素は風力タービンブレードを含み、風力タービンブレードは、風力タービンのハブに、実質的に水平の位置で取り付けられる。この位置は、3時の位置とも称される。
【0036】
他の実施形態は、構成要素が風力タービンブレードを含み、風力タービンブレードが、風力タービンのハブに、鉛直方向に対して実質的に0°の角度で取り付けられる方法に関する。この位置は、6時の位置とも称される。
【0037】
デバイスが、構成要素から構築される風力タービンの海での配置のために適用されている場合、作業は、好ましくは、(浮いている)船舶から、または、より大きな安定性を提供するジャッキアッププラットフォームから、行われる。そのため、風力タービンタワーはすでに海に存在する。
【0038】
ここで、本発明は、添付の図を参照してより詳細に明らかにされるが、それに限定されることはない。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【
図1A】本発明の実施形態による吊り上げフレームで持ち上げられた風力タービンのナセルの概略的な斜視図である。
【
図1B】
図1Aに示された本発明の実施形態の概略的な側面図である。
【
図2A】ナセルが風力タービンタワーに配置される状況での
図1Aに示された実施形態の概略的な斜視図である。
【
図2B】
図2Aに示された本発明の実施形態の概略的な側面図である。
【
図3】ナセルが風力タービンタワーに配置され、吊り上げフレームが本発明の実施形態による位置決め手段を備える状況での
図2Bに示された実施形態の概略的な側面図である。
【
図4】ナセルが風力タービンタワーに配置され、吊り上げフレームが本発明の他の実施形態による位置決め手段を備える状況での
図2Bに示された実施形態の概略的な側面図である。
【
図5】ナセルが風力タービンタワーに配置され、吊り上げフレームが本発明のなおも他の実施形態による位置決め手段を備える状況での
図2Bに示された実施形態の概略的な側面図である。
【
図6】デバイスの実施形態による吊り上げフレームにおいて実質的に水平の位置で持ち上げられる風力タービンの風力タービンブレードの概略的な側面図である。
【
図7】デバイスの実施形態による吊り上げフレームにおいて実質的に鉛直の位置で持ち上げられる風力タービンの風力タービンブレードの概略的な側面図である。
【
図8A】デバイスの他の実施形態による吊り上げフレームで持ち上げられた風力タービンのナセルの概略的な斜視図である。
【
図8B】
図8Aに示された本発明の実施形態の概略的な側面図である。
【
図9A】ナセルが風力タービンタワーに配置される状況での
図8Aに示された実施形態の概略的な斜視図である。
【
図9B】
図9Aに示された本発明の実施形態の概略的な側面図である。
【
図10】ナセルが風力タービンタワーに配置され、吊り上げフレームが本発明の実施形態による位置決め手段を備える状況での
図9Bに示された実施形態の概略的な側面図である。
【
図11】ナセルが風力タービンタワーに配置され、吊り上げフレームが本発明の他の実施形態による位置決め手段を備える状況での
図9Bに示された実施形態の概略的な側面図である。
【
図12】ナセルが風力タービンタワーに配置され、吊り上げフレームが本発明のなおも他の実施形態による位置決め手段を備える状況での
図9Bに示された実施形態の概略的な側面図である。
【
図13】デバイスの実施形態による吊り上げフレームにおいて実質的に鉛直の位置で持ち上げられる風力タービンの風力タービンブレードの概略的な側面図である。
【
図14】デバイスの実施形態による吊り上げフレームにおいて実質的に鉛直の位置で持ち上げられる風力タービンの風力タービンブレードの概略的な側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0040】
同じまたは同様の構成要素は、図において同じ符号で指示されている。
【0041】
図1Aを参照すると、本発明の実施形態によるデバイス1が示されており、デバイス1は、タービンのナセル2を風力タービンタワー3(
図2A参照)に取り付けるように構成されている。ナセル2には、風力タービンブレードが配設され得る開口21を伴うハブ20が設けられている。ナセル2の下側に設けられているのは連結フランジ22である。連結フランジ22を使用することで、ナセル2は、例えば、風力タービンタワー3の上方側に存在する受入フランジ(図示されていない)に連結フランジ22を結合することで、風力タービンタワー3の上方側に連結させることができる。
【0042】
デバイス1は、吊り上げフック11を伴う吊り上げブロックからの吊り上げケーブル9で吊り下げられた吊り上げフレーム13を備え、吊り上げフック11はさらに、例えば昇降クレーンなど、吊り上げ手段(図示されていない)の吊り上げケーブル12から吊り下げられる。ナセル2は、持ち上げケーブル(10a、10b)を使用して、吊り上げフレーム13において吊り下げられる。図示されている実施形態では、吊り上げフレーム13は、下向きに垂れ下がる側方梁材13bが外側の端にしっかりと連結されている上方梁材13aを備える。吊り上げケーブル9は、吊り上げ点14において吊り上げフレーム13の上方梁材13aに係合する。
【0043】
図1Bによれば、ナセル2の重心W
nacelleは、連結フランジ22に対して偏って位置する。吊り上げフレーム13は、吊り上げフック11に対する吊り上げフレーム13の図示されている第1の位置において、持ち上げられたナセル2の重心W
nacelleと、吊り上げフレーム13の重心W
toolとが、吊り上げフック11を通じて延び、それら重心W
toolおよびW
nacelleを含まない鉛直平面110の両側に位置付けられるように、下向きに垂れ下がる側方梁材13bで具現化されている。吊り上げフック11を通じて延びる鉛直平面110は、吊り上げフレーム13の上方梁材13aおよび側方梁材13bによって形成された平面に対して垂直である平面として
図1Bに示されている。側方梁材13bの存在のため、吊り上げフレーム13は、吊り上げフック11を通じて延びる鉛直平面110に対して非対称であり、その重心W
toolの側方においてさらに重くされる。
【0044】
以下の距離が
図1Bにおいてさらに指示されている。
l
1: 吊り上げ点14から第1の持ち上げケーブル10aまでの実質的に水平の距離。
l
2: 吊り上げ点14から吊り上げフレームの重心W
toolまでの実質的に水平の距離。
l
3: 第1の持ち上げケーブル10aからナセル2の重心W
nacelleまでの実質的に水平の距離。
l
4: (
図2Bに照らして)ナセル2の重心W
nacelleから風力タービンタワー3の支え31の縁までの実質的に水平の距離。
【0045】
Fhubは持ち上げケーブル10aにおける力であり、Lcraneは吊り上げ力である。
【0046】
図2Aおよび
図2Bを参照すると、ナセル2が吊り上げフレーム13の介入で風力タービンタワー3に配置され、風力タービンタワー3における支持部に配置された状況が示されている。支持部は支え31によって概略的に示されている。この状況において、吊り上げフレーム13とナセル2との間の第2の持ち上げケーブル10bは、指示されているような所の予モーメントにおいて、解放されて弛むことになる。吊り上げ点14は不動とされておらず、例えば波の作用の影響などによる昇降クレーン先端の移動によって引き起こされる移動を受けることになることが、ここでは考慮されるべきである。一方、ナセル2は、風力タービンタワー3の対応する受入フランジ(図示されていない)上に連結フランジ22がある状態で取り付けられなければならない。この目的のために、2つのフランジは互いに対してできるだけ静止して保持される必要がある。発明されたデバイス1はこれを可能にする。
図2Bに示されている状況において、ナセル2は、重心W
nacelleが連結フランジ22および支え31に対して偏って位置するため、反時計回り111に回転しようとする。発明された吊り上げフレーム13は、吊り上げフレーム13が、回転111に対抗する吊り上げ点14の周りでの対抗トルク112を発生させることができることで、これを防止する。この対抗トルク112はW
tool・l
2に等しい。これは、第1の持ち上げケーブル10aがしっかりと引っ張られたままであることも意味する。
【0047】
図3を参照すると、デバイス1のさらに向上させられた実施形態が示されている。
図3によれば、ナセル2は、ボルトなどを用いて、ここまでに風力タービンタワー3に連結フランジ22で固定されている。これは、第2の持ち上げケーブル10bを取り外しさせることもできる。実際、この第2の持ち上げケーブル10bは
図3ではもはや見られない。
【0048】
ここで、ナセル2から吊り上げフレーム13を安全に解放することができるようにするために、吊り上げケーブル9から吊り下げられた吊り上げフレーム13を、吊り上げフック11に対して、
図1および
図2に示されている第1の位置Aと第2の位置Bとの間で移動させるように構成されており、両方の位置(A、B)が含まれる位置決め手段(140、150、160)が提供される。第2の位置Bにおいて、吊り上げフレーム13の重心W
toolは鉛直方向において吊り上げフック11と一列にされる。この位置において、重心W
toolは実際に鉛直平面110に位置する。図示されている実施形態では、位置決め手段は、吊り上げ点14を、上方梁材13aに沿って、Aで指示された位置からBで指示された位置へと変位させるための手段140を備える。これらの手段140は、例えば、上方梁材13aに沿って移動させることができる台車を備え得るが、任意の他の適切な形態を取ることも可能である。吊り上げ手段13の重心W
toolが、吊り上げフック11(または吊り上げ点14)と一列にされたこの位置にあるため、対抗トルク112は実質的にゼロである。これは、吊り上げフレーム13を下降させることで、図示されているように、第1の持ち上げケーブル10aを解放することを可能にする。この後、第1の持ち上げケーブル10aはナセル2から簡単な手法で結合解除させることができる。これによって、風力タービンタワー3へのナセル2の取り付けが完了させられる。
【0049】
デバイス1の他の実施形態では、位置決め手段(140、150、160)は、吊り上げフレーム13の滑動可能質量151を、吊り上げ点14に対して、吊り上げフレーム13の上方梁材13aに沿って、好ましくは実質的に水平の方向152において滑動させることで、吊り上げフレーム13を、吊り上げフック11に対して、重心Wtoolが吊り上げフック11と一列にされない第1の位置Aから、重心Wtoolが吊り上げフック11と一列にされる第2の位置Bへと移動させるように構成されている手段150を備える。これによって、重心Wtoolは、吊り上げフック11(または吊り上げ点14)と一列にされる位置Bへと変位させられる。これは、先に記載されているのと同じ効果、つまり、対抗トルク112のゼロの状況を提供する。
【0050】
同じ目的を伴うデバイス1のなおも他の実施形態が
図5に示されている。この実施形態では、位置決め手段(140、150、160)は、吊り上げフレーム13を、吊り上げフック11に対して、重心W
toolが吊り上げフック11と一列にされない第1の位置Aから、重心W
toolが吊り上げフック11と一列にされる第2の位置Bへと移動させるようにここでも構成されている手段160を備える。この実施形態では、吊り上げフレーム13は、2つの吊り上げ点(14、14a)において2つの吊り上げケーブル(9、9a)を伴う吊り上げフック11から吊り下げられる。この実施形態では、位置決め手段160は、吊り上げフック11の位置を、吊り上げフレーム13に対して、実質的に水平の方向において変化させるために、2本の吊り上げケーブルの一方、具体的には、位置Aにおいて弛んでいる吊り上げケーブル9aを、締めるように構成されている。吊り上げケーブル9aを締めることで、吊り上げフレーム13の重心W
toolは、この方法では、吊り上げフック11と一列にさせることができる。吊り上げケーブル9aは、例えばウインチ162で、吊り上げケーブル9aを引っ張り161とさせる任意の適切な手法で締められ得る。ここでも、これは、先に記載されているのと同じ効果、つまり、対抗トルク112のゼロの状況を有する。
【0051】
図6は、風力タービンタワー3にすでに存在するナセルの開口21(三角形の支えによって概略的に表されている)において風力タービンブレード5を実質的に水平の位置に配設し、風力タービンブレード5を開口21に固定するように構成されている吊り上げフレーム13の実施形態を示している。風力タービンブレード5の重心W
bladeは、ここでも、ナセル2へのその連結フランジ、または他の適切な連結部に対して、偏って位置決めされている。これによって、風力タービンブレード5は、結合される風力タービンブレード5の外端50が自由である場合、吊り下げ点14に対して方向111に傾く可能性がある。この移動に対抗するために、吊り上げフレーム13は、例えば、すべてがしっかりと連結されている、上方梁材13aに隣接した側方梁材13bと、水平に延びる下方梁材13cとを設けることで、その重心W
toolが風力タービンブレード5の重心W
bladeと異なる鉛直平面110の側に位置するように具現化される。この実施形態の動作は、風力タービンブレード5が1本だけの持ち上げケーブル10を用いて吊り上げフレーム13で持ち上げられるという違いを伴って、先に記載されているものとさらに同様である。吊り上げフレーム13が、好ましくは、この実施形態においても先に記載されている位置決め手段(140、150、160)を備えることは、明らかである。
【0052】
図7は、風力タービンブレード5が実質的に鉛直の位置において吊り上げフレームで持ち上げられるなおも他の実施形態を示している。動作は、
図6の状況で記載されているのとさらに同じである。
【0053】
図8Aを参照すると、吊り上げフレーム13は、一方の側において下向きに垂れ下がる側方梁材13bに連結され、他方の側において、風力タービンタワー3の周囲部3aと係合するための係合手段15が設けられる案内フレーム24がさらに設けられている。
【0054】
図8Aおよび
図9Aにおいて示された実施形態では、係合手段25が、風力タービンタワー3の周囲方向30において配置され、案内フレーム24において配設された支持ストラップを備える。これは、複数の支持ストラップとすることもでき、または、例えばローラとすることもできる。案内フレーム24自体は、実質的に水平に延び、水平に延びる横断梁材24cに連結される2つの側方アーム(24a、24b)を備える。案内フレーム24は、望まれる場合、一方の側において吊り上げ梁材13bに枢動可能に連結され得る。係合手段25は、風力タービンタワー3の周囲の180°などの周囲角度を通じて延びる周囲部3aと係合するように構成されている。
【0055】
この実施形態の動作は、1つの違いを伴って、すでに上記で詳細に説明されている。
図9Bおよび
図10~
図12において概略的に示されているように、ナセル2は、タービンタワー3の上部の近傍へと持って行かれ、支持ストラップ25の形態での係合手段が、係合される風力タービンタワー3の周囲部3aの一部分に位置付けられる。次に、周囲部3aが支持ストラップ15によって係合させられ、望まれる場合、案内フレーム24は、(移動する)ナセル2と(安定した)風力タービンタワー3との間の相対移動と共に、いくらかの減衰を伴って変位することができる。これは、ナセル2と風力タービンタワー3との間の相対移動をより小さく保つのを助け、これは、ナセル2の連結フランジ22と風力タービンタワー3の対応するフランジとの間で接触させるのを簡単にする。
【0056】
さらに、
図8B、
図9B、
図10、
図11、および
図12に示されている方法ステップは、動作に関して、それぞれ
図1B、
図2B、
図3、
図4、および
図5において先に記載されているような方法ステップに対応しており、構成要素は同じ符号で指示されている。不必要な繰り返しを防ぐために、関連する図の記載が参照させられる。
【0057】
さらに、ナセル2への風力タービンブレード5の取り付けについて
図13および
図14に示されている方法ステップも、動作に関して、それぞれ
図6および
図7において先に記載されているような方法ステップに対応しており、構成要素は同じ符号で指示されている。不必要な繰り返しを防ぐために、関連する図の記載がここでも参照させられる。
【符号の説明】
【0058】
1 デバイス
2 ナセル
3 風力タービンタワー
3a 周囲部
5 風力タービンブレード
9、9a 吊り上げケーブル
10a 第1の持ち上げケーブル
10b 第2の持ち上げケーブル
11 吊り上げフック
12 吊り上げケーブル
13 吊り上げフレーム、吊り上げ手段
13a 上方梁材
13b 側方梁材
14、14a 吊り上げ点
14 吊り下げ点
15 係合手段、支持ストラップ
20 ハブ
21 開口
22 連結フランジ
24 案内フレーム
24a、24b 側方アーム
24c 横断梁材
25 係合手段、支持ストラップ
30 周囲方向
31 支え
50 外端
110 鉛直平面
111 反時計回り、回転、方向
112 対抗トルク
140 位置決め手段、変位させるための手段
150 位置決め手段
151 滑動可能質量
152 実質的に水平の方向
160 位置決め手段
161 引っ張り
162 ウインチ
A 第1の位置
B 第2の位置
Fhub 持ち上げケーブル10aにおける力
Lcrane 吊り上げ力
l1 吊り上げ点14から第1の持ち上げケーブル10aまでの水平の距離
l2 吊り上げ点14から吊り上げフレームの重心Wtoolまでの水平距離
l3 第1の持ち上げケーブル10aからナセル2の重心Wnacelleまでの水平距離
l4 ナセル2の重心Wnacelleから支え31の縁までの水平距離
Wblade 風力タービンブレード5の重心
Wnacelle ナセル2の重心
Wtool 吊り上げフレーム13の重心
【国際調査報告】