(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-12-13
(54)【発明の名称】扁平な可撓性要素を保持する位置決め装置および位置決め組立体ならびにシート材加工機械
(51)【国際特許分類】
B26D 7/01 20060101AFI20231206BHJP
B26D 7/08 20060101ALI20231206BHJP
B26D 7/00 20060101ALI20231206BHJP
B26D 7/06 20060101ALI20231206BHJP
B65H 9/00 20060101ALI20231206BHJP
【FI】
B26D7/01 Z
B26D7/08 D
B26D7/00 Z
B26D7/06 B
B65H9/00 B
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023532394
(86)(22)【出願日】2021-12-08
(85)【翻訳文提出日】2023-05-26
(86)【国際出願番号】 EP2021084748
(87)【国際公開番号】W WO2022122805
(87)【国際公開日】2022-06-16
(32)【優先日】2020-12-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】512159605
【氏名又は名称】ボブスト メックス ソシエテ アノニム
【氏名又は名称原語表記】Bobst Mex SA
【住所又は居所原語表記】Route de Faraz 3,CH-1031 MEX(VD),Switzerland
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100098475
【氏名又は名称】倉澤 伊知郎
(74)【代理人】
【識別番号】100130937
【氏名又は名称】山本 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100144451
【氏名又は名称】鈴木 博子
(74)【代理人】
【識別番号】100128428
【氏名又は名称】田巻 文孝
(72)【発明者】
【氏名】レア ティム
(72)【発明者】
【氏名】スタンバーグ ジェイド
(72)【発明者】
【氏名】ニューマン アメル
【テーマコード(参考)】
3C021
3F102
【Fターム(参考)】
3C021AA06
3C021BE02
3C021DA02
3C021DA03
3C021DA06
3C021DA14
3C021DA15
3C021DA17
3F102AA00
3F102AB02
3F102BB03
3F102DA11
(57)【要約】
扁平な可撓性要素、特にシート材を位置決め面上に保持する位置決め装置(38)が開示される。位置決め装置(38)は、本体(44)を有し、本体(44)は、駆動流体を本体(44)に供給する流体入口ポート(52)を有し、位置決め装置(38)は、駆動流体を本体(44)から排出する流体出口ポート(58)および扁平可撓性要素を吸引する吸引開口部(58)をさらに有する。循環チャネル(60)が流体入口ポート(52)と流体出口ポート(59)を結合し、吸引チャネル(70)が吸引開口部を循環チャネル(60)に結合する。吸引チャネル(70)は、ジェットポンプ(71)が形成されるように断面積減少区分(64)に隣接したところで循環チャネル(60)に結合されている。循環チャネル(60)のその長さ全体に沿うあらゆる断面(Sc)および/または吸引チャネル(70)のその長さ全体に沿うあらゆる断面(Ss)は、滑らかなリムを有する。加うるに、少なくとも1つのかかる位置決め装置(38)を含む位置決め組立体が提供される。さらに、少なくとも1つの位置決め組立体を有するシート材加工機械が提供される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
扁平な可撓性要素、特にシート材(12)を位置決め表面(46)上に保持する位置決め装置(38)であって、前記位置決め装置(38)は、
本体(44)を有し、前記本体は、駆動流体を前記本体(44)に供給する流体入口ポート(52)、前記駆動流体を前記本体(44)から排出する流体出口ポート(58)、および前記扁平可撓性要素を吸引する吸引開口部(50)を有し、前記吸引開口部(50)は、前記本体(44)の外面である前記位置決め表面(46)内に設けられ、
前記流体入口ポート(52)と前記流体出口ポート(58)を互いに結合する循環チャネル(60)を有し、前記循環チャネル(60)は、断面積が減少した区分(64)を有し、
前記吸引開口部(50)を前記循環チャネル(60)に結合する吸引チャネル(70)を有し、前記吸引チャネル(70)は、ジェットポンプ(71)が形成されるよう前記断面積減少区分(64)に隣接したところで前記循環チャネル(60)に結合されている、位置決め装置(38)において、
前記循環チャネル(60)のその長さ全体に沿うあらゆる断面(S
c)および/または前記吸引チャネル(70)のその長さ全体に沿うあらゆる断面(S
s)は、前記循環チャネル(60)のその長さ全体に沿うあらゆる断面(S
c)および/または前記吸引チャネル(70)のその長さ全体に沿うあらゆる断面(S
s)を画定する輪郭がコーナまたはキンクを備えていないことを意味する滑らかなリムを有する、位置決め装置(38)。
【請求項2】
前記循環チャネル(60)の長さに沿う前記循環チャネル(60)の前記断面(S
c)の道筋は、たった1つの不連続部(68)を有する、請求項1記載の位置決め装置(38)。
【請求項3】
前記吸引チャネル(70)の断面(S
s)は、前記吸引チャネル(70)の長さ全体に沿って連続的に変化している、請求項1または2記載の位置決め装置(38)。
【請求項4】
前記循環チャネル(60)の延長方向(E
c)は、前記循環チャネル(60)の長さ全体に沿って連続的に変化するとともに/あるいは前記吸引チャネル(70)の延長方向(E
s)は、前記吸引チャネル(70)の長さに沿って連続的に変化している、請求項1~3のうちいずれか一に記載の位置決め装置(38)。
【請求項5】
前記循環チャネル(60)は、曲がり部(62)、特にほぼ180°の曲がり部(62)を有する、請求項1~4のうちいずれか一に記載の位置決め装置(38)。
【請求項6】
前記流体入口ポート(52)および前記流体出口ポート(58)は、前記本体(44)の同一の端部に設けられている、請求項1~5のうちいずれか一に記載の位置決め装置(38)。
【請求項7】
前記循環チャネル(60)を側方に画定する壁の曲率半径(r)は、0.2mm~30mmまでの範囲内にあり、特に0.5mm~20mmである、請求項1~6のうちいずれか一に記載の位置決め装置(38)。
【請求項8】
前記循環チャネル(60)の長さの少なくとも60%、好ましくは少なくとも75%、より好ましくは少なくとも90%は、前記循環チャネル(60)の長さの残りの部分の断面積の少なくとも2倍である、請求項1~7のうちいずれか一に記載の位置決め装置(38)。
【請求項9】
洗浄流体入口ポート(54)が前記本体(44)に設けられている、請求項1~8のうちいずれか一に記載の位置決め装置(38)。
【請求項10】
洗浄流体チャネル(72)が前記洗浄流体入口ポート(54)を前記循環チャネル(60)または前記吸引チャネル(70)に流体結合し、前記洗浄流体チャネル(72)の断面は、その長さ全体に沿って滑らかなリムを有する、請求項1~9のうちいずれか一に記載の位置決め装置(38)。
【請求項11】
前記本体(44)は、アディティブ・マニュファクチャリングにより作られた部品である、請求項1~10のうちいずれか一に記載の位置決め装置(38)。
【請求項12】
前記循環チャネル(60)の断面積が減少した前記区分(64)は、実質的に円形の断面を有するノズル(66)を有する、請求項1~11のうちいずれか一に記載の位置決め装置(38)。
【請求項13】
扁平な可撓性要素、特にシート材(12)を保持表面(26)上に保持する位置決め組立体(24)であって、中央空気供給ダクト(30)を備えた基部(28)および請求項1~12のうちいずれか一に記載の少なくとも1つの位置決め装置(38)を含み、
前記位置決め装置(38)は、前記位置決め装置(38)の前記空気入口ポート(52)が前記中央空気供給ダクト(30)に流体結合されるとともに前記位置決め表面(46)が前記保持表面(26)を形成するよう前記基部(28)に取り付けられている、位置決め組立体(24)。
【請求項14】
シート材加工機械(10)であって、少なくとも1つの位置決め組立体(24)を有する、シート材加工機械(10)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、扁平な可撓性要素、特にシート材を位置決め表面上に保持する位置決め装置に関する。位置決め装置は、本体を有し、本体は、駆動流体を本体に供給する流体入口ポート、駆動流体を本体から排出する流体出口ポート、および扁平可撓性要素を吸引する吸引開口部を有する。吸引開口部は、本体の外面である位置決め表面内に設けられている。さらに、循環チャネルが流体入口ポートと流体出口ポートを互いに結合し、循環チャネルは、断面積が減少した区分を有する。吸引チャネルが吸引開口部を循環チャネルに結合し、吸引チャネルは、ジェットポンプが形成されるよう断面積減少区分に隣接したところで循環チャネルに結合されている。この関係で、「保持」するという用語は、また、シート材の減速およびその次の保持を意味するものと解されたい。
【0002】
本発明はまた、扁平な可撓性要素、特にシート材を保持表面上に保持する位置決め組立体であって、中央空気供給ダクトを備えた基部および上述した形式の少なくとも1つの位置決め装置を含む位置決め組立体に関する。位置決め装置は、位置決め装置の空気入口ポートが中央空気供給ダクトに流体結合されるとともに位置決め表面が保持表面を形成するよう基部に取り付けられている。
【0003】
さらに、本発明は、少なくとも1つのかかる位置決め組立体を有するシート材加工機械に関する。
【背景技術】
【0004】
シート材加工機械、上述した形式の位置決め組立体および位置決め装置が当該技術分野において知られている。場合によっては、位置決め装置は、タブレットとも呼ばれる。
【0005】
シート材加工機械、例えば紙または厚紙加工機械は、複数の加工ユニットまたはステーションを有する場合が多く、加工ユニットまたはステーションの各々において、ある特定の形式の処理がシート材に対して行われ、例えば、シート材は、裁断され、ストリッピングされまたはブランキングされる。通常、コンベヤシステムがかかる機械内に設けられ、その目的は、シート材を1つの加工ユニットから次の加工ユニットに移送することにある。
【0006】
対応の処理を正確なかつ信頼性の高い仕方で実施するために、加工ユニットの各々は、上述した形式の位置決め組立体を有する場合がある。位置決め組立体は、上述した形式の少なくとも1つの位置決め装置を含むのがよい。位置決め組立体および位置決め装置によって実施されるシート材の位置決めは、静的な場合があったり動的な場合があったりし、すなわち、シート材は、位置決め装置に当てて保持されている間、静止状態にありまたは動くことができる。第1の場合、位置決め装置は、保持装置とも呼ばれる場合がある。第2の場合、位置決め装置は、いわゆる吸引ブレーキとしてシート材を減速させるために用いられる場合がある。
【0007】
位置決め装置が吸引ブレーキとして用いられる場合、この位置決め装置は、シート材をワークステーションへの到達の際に最大供給速度から減速させ、それによりその後側部分を制動して吸引制動装置または吸引ブレーキとも呼ばれる場合がある吸引ベッドを用いることによってシート材導入段階中、シート材のある特定の扁平度を維持することが慣例である。かかる制動装置は、ワークステーションへの入口に密接して横断方向に設置されると、吸引を用いてシート材の後側部分を拘束することによってその機能を実行し、それと同時に、シート材は、その前側部分が前方に引っ張られているときに徐々に滑ることができる。特に、シート材が加工のためのワークステーションに到達すると、シート材の前縁を引っ張っているグリッパーバーがシート材を加工することができるようにするよう停止する。吸引ブレーキは、シート材と静止表面との間に摩擦力を生じさせるよう用いられ、それにより、シート材の後続部に制動作用をもたらし、その結果、シート材の慣性によってはシート材が腰折れすることがなく、しわくちゃになったりすることがなく、あるいは折り目が生じたりすることがないようにする。
【0008】
作用を説明すると、吸引ブレーキは、最初に、シート材と制動装置の作動面との間の空気を吸い出し、次に、シート材を装置の作動面に引き当てることによって、制動力としての役目を果たす拘束力をシート材に加える。理想的には、シート材と制動装置の作動面との間の空気を吸い出す最初の操作は、シート材の慣性の結果としてのシート材の変形を回避するようできるだけ迅速に達成される。これには、最大吸引力が必要である。
【0009】
第2の作動段階では、シート材は、制動装置の作動面に吸い付けられ、吸引孔を塞ぎ、吸引孔を通る空気流は、ゼロまで低下する。シート材は、依然として、この段階では減速中であり、加えられる制動力は、シート材を効果的に制動させることができるほど高くなければならず、それにより、シート材中のリプルの形成が回避されるとともにシート材が扁平な状態に保たれる。最適な性能および特にシート材の変形の回避を行うには、この第2の段階ではシート材の形式(例えば、シート材の材料の種類、およびその重量)ならびにシート材の裁断形状に基づいて吸引量を調節することが必要である。このことは、吸引を生じさせている気体の圧力および/または体積がこの第2の作動段階の要件に基づいて調節される必要のあることを意味しており、なお、これが第1の段階の要件と相反している場合があってもそうである。この作動段階で大きすぎる制動力を加えることにより、機械の作動停止や包装ブランクの損傷などが生じる場合がある。
【0010】
あらゆる場合において、加工されるべきシート材は、少なくとも1つの位置決め装置を含む位置決め組立体とコンベヤシステムのグリッパユニットとの間にまたがる。シート材は、これが機械の中に正確に位置決めされるよう位置決め表面上に保持される。シート材は、互いに結合された循環チャネルと吸引チャネルにより形成されるジェットポンプによって生じている吸引力によって対応の位置決め装置上に保持される。吸引開口部に関し、ジェットポンプは、アスピレータとして働いている。
【0011】
一般的に知られているように、吸引力は、吸引チャネル内に存在する流体の加速度で決まる。この流体は、循環チャネルを通って流れる駆動流体によって加速される。吸引力を大きくするには、吸引チャネル内の流体の加速度を高くする必要がある。これは、駆動流体を高い圧力状態で提供することによって達成できる。以上要約すると、大きな吸引力は、駆動流体の提供に当たって動力またはエネルギーの高いレベルを必要とする。
【0012】
国際公開第2011/064226(A1)号パンフレットは、シート状印刷基材を加工する装置であって、流体の流れをシート支持面およびベンチュリ形低圧源中に導入するための流体流れ発生器を有する装置を示している。ベンチュリ形低圧源は、入口から出口まで延びる第1の通路および第1の通路を吸引エンドポイントに結合する第2の通路を有する。第1の通路と第2の通路との連結部は、第1の通路内の直径方向流れ絞り部に隣接して配置されている。
【0013】
さらに、米国特許出願公開第2013/269817(A1)号明細書は、吸引パイプ出口部分、吸引パイプ入口部分、および吸引パイプ出口部分と吸引パイプ入口部分を互いに連結して流れを横方向から垂直方向に変化させる吸引パイプ曲がり部分を有するポンプ輸送ステーションのためのポンプ吸引パイプを開示している。それにより、吸引パイプ曲がり部分の垂直断面は、上流側から下流側に一様に増大している。
【0014】
さらに、米国特許出願公開第2018/274831(A1)号明細書は、吸引ラインを備えた冷媒圧縮機を開示している。吸引ラインは、圧縮機に向かう方向に一定の割合で減少している断面積を備えた幾何学的形状を有する。吸引ラインのこの幾何学的形状は、スワールの量、圧力損失量を減少させ、そして比較的一様な冷媒の流れを圧縮機中に提供するよう構成されている。
【0015】
国際公開第2017/137170(A1)号パンフレットは、インサートシートを装入する装置を示しており、長手方向バーが横部材に固定され、その結果、長手方向バーは、位置決め表面を形成するようになっている。長手方向バーは、位置決め表面に設けられている少なくとも1つの吸引オリフィスを備えた吸引ダクトを有する。吸引ダクトは、真空源に結合されるように構成されている。別の横方向ダクトが横部材に形成され、この横方向ダクトは、真空源を結合することができる横部材の横方向端部のところで開口する。
【0016】
さらに、国際公開第2014/067611(A1)号パンフレットは、シート状の各々が複数の吸引部材で構成された2つの一連の吸引部材を含むシート状の扁平な要素を保持する別の装置を示している。2つの一連の吸引部材と複数の吸引部材の両方は、これら部材相互間に特定の仕方でかつ互いに対して配列されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0017】
【特許文献1】国際公開第2011/064226(A1)号パンフレット
【特許文献2】米国特許出願公開第2013/269817(A1)号明細書
【特許文献3】米国特許出願公開第2018/274831(A1)号明細書
【特許文献4】国際公開第2017/137170(A1)号パンフレット
【特許文献5】国際公開第2014/067611(A1)号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
本発明の目的は、既知のシート材加工機械、位置決め組立体および位置決め装置をこれらのエネルギー効率に関して改良することにある。このことは、所与の吸引力レベルを駆動流体の提供にあたって比較的少量の動力またはエネルギーで達成されるはずであることを意味している。
【課題を解決するための手段】
【0019】
この課題は、循環チャネルのその長さ全体に沿うあらゆる断面および/または吸引チャネルのその長さ全体にわたるあらゆる断面が滑らかなリムを有することを特徴とする上述した形式の位置決め装置によって解決される。この関係で、断面は、循環チャネルの軸線または吸引チャネルの軸線に実質的に垂直であり、この軸線は、循環チャネルおよび/または吸引チャネルが曲がり部または湾曲部(カーブ)を有することができるので、局所軸線である。リムは、断面の外側輪郭と理解されるべきである。リムは、常時、閉じられた幾何学的形状である。リムが滑らかなので、リムは、コーナまたはキンクを備えておらず、実質的に真っ直ぐなセグメントを有するのがよい。数学的に説明すると、このことは、リムの第1の微分が連続であることを意味している。さらに、リムは、凸状であってもよく、あるいは凹状と凸状のセグメントを有してもよい。かくして、第1の変形例では、リムの曲率半径は、その方向または符号が変わらない。第2の変形例では、曲率半径は、その方向または符号が少なくとも2回変わる。具体的に説明すると、リムは、円、楕円形または卵の形をしている。その結果、循環チャネルおよび/または吸引チャネルの道筋または道筋に沿う望ましくない圧力損失を著しく減少する。その結果、既知の位置決め装置と比較して、吸引開口部のところに提供される吸引力の所与のレベルを維持するのに必要な動力またはエネルギーが少ない。変形例として、動力またはエネルギーの所与のレベルを用いると、吸引レベルの増大を提供することができる。これは、滑らかな断面がこれらチャネル内の流体の流れの摩擦力を減少させることに起因している。注目されるように、断面積が減少した区分内では、より正確に言えば、断面積が減少した区分の下流側では、圧力低下が望ましく、またジェットポンプの機能発揮にとって必要である。以上要するに、位置決め装置のエネルギー効率が高まる。
【0020】
位置決め表面は、その作動状態では、頂面であるのがよい。入口ポートは、位置決め装置の下面に設けられるのがよく、出口ポートは、その側面に設けられるのがよい。
【0021】
一実施形態によれば、循環チャネルの長さに沿う循環チャネルの断面の道筋は、たった1つの不連続部を有する。このことは、循環チャネルに沿って、その断面が急な段階的な仕方で1回だけ変化することを意味している。その上、断面は、当然のことながら、連続的に変化するのがよい。好ましくは、単一の不連続部が断面積減少区分の下流側の端のところに設けられる。具体的に説明すると、循環チャネルは、この不連続部に隣接したところで吸引チャネルに合体する。かくして、単一の不連続部の上流側および下流側のところでは、循環チャネルは、流体が循環チャネルを通って流れるときに比較的低い圧力損失が起こるように設計されている。これにより、位置決め装置のエネルギー効率がさらに高められる。
【0022】
一構成例では、吸引チャネルの断面は、吸引チャネルの長さ全体に沿って連続的に変化している。かくして、吸引チャネルは、不連続部を全く備えていない。その結果、吸引チャネルもまた、流体がこれを通って流れる際に比較的低い圧力損失が起こるように設計されている。
【0023】
具体的に説明すると、循環チャネルの延長方向は、循環チャネルの長さ全体に沿って連続的に変化している。追加的にまたは代替的に、吸引チャネルの延長方向は、吸引チャネルの長さに沿って連続的に変化する。このことは、循環チャネルおよび/または吸引チャネルが方向において急変化を生じることなく、滑らかな変化を呈することを意味している。また、この設計により、それぞれのチャネルを通って流れる流体について生じる圧力損失は、比較的小さい。
【0024】
循環チャネルは、曲がり部、特にほぼ180°の曲がり部を有するのがよい。かかる循環チャネルをヘアピンの形をしたものとして説明することができる。その結果、循環チャネルは、狭い空間内に位置決めされるのがよい。対応した位置決め装置は、コンパクトである。
【0025】
循環チャネルは、ほぼ90°の曲がり部をさらに有するのがよい。この曲がり部は、入口ポートに隣接したところに設けられるのがよい。かかる曲がり部は、入口ポートを流体供給部に容易に結合することができるよう入口ポートの配置を容易にする。
【0026】
一変形例によれば、流体入口ポートおよび流体出口ポートは、本体の同一の端部に設けられる。これらポートは、本体の同一の表面上に設けられるのがよいが、このことは、必ずしもそうであるとは限らない。一実施例によれば、入口ポートは、本体の下面に設けられるのがよく、出口ポートは、本体の側面に設けられるのがよい。特に、ヘアピン形の循環チャネルと組み合わせると、位置決め装置のコンパクトな設計が得られる。
【0027】
好ましくは、循環チャネルを側方に画定する壁の曲率半径は、0.2mm~30mmまでの範囲内にあり、特に0.5mm~20mmである。かかるチャネルは、特に滑らかである。その結果、循環チャネルが通って流れる流体の摩擦力が減少し、その結果、比較的小さな圧力損失が生じるに過ぎないようになっている。
【0028】
循環チャネルの長さの少なくとも60%、好ましくは少なくとも75%、より好ましくは少なくとも90%は、循環チャネルの長さの残りの部分の断面積の少なくとも2倍であることが可能である。好ましくは、残りの部分は、断面積減少区分を有する。上述したように、断面積減少区分は、ジェットポンプを形成する上で必要である。かくして、換言すると、断面積は、可能な限り長いものについては可能な限り大きく保たれる。これにより、循環チャネル中で生じる摩擦損失が減少する。好ましい実施例では、循環チャネルの長さのほぼ87%は、長さの残りの部分の断面積の少なくとも2倍である断面積を有する。この実施例では、この大きな断面積は、ほぼ30mm2である。
【0029】
洗浄流体入口ポートが本体に設けられるのがよい。このポートを通って、洗浄流体、例えば加圧空気が循環チャネルおよび/または吸引チャネルのうちの少なくとも幾つかの部分を洗浄するために本体に提供されるのがよい。循環チャネルおよび/または吸引チャネルを清浄な状態に保つことによって、位置決め装置は、長期間にわたり信頼性のある仕方で作動可能である。
【0030】
洗浄流体チャネルが洗浄流体入口ポートを循環チャネルまたは吸引チャネルに流体結合するのがよく、洗浄流体チャネルの断面は、その長さ全体に沿って滑らかなリムを有する。その結果、これまた、洗浄流体チャネルは、洗浄流体がこのチャネルを通って流れているときに生じる損失は比較的小さいものであるように設計される。かくして、高いエネルギー効率が、洗浄プロセスについても達成される。
【0031】
一実施形態によれば、本体は、アディティブ・マニュファクチャリングにより作られた部品である。換言すると、本体は、アディティブ・マニュファクチャリング技術、例えば3Dプリンティング技術によって製造される。かかる製造技術は、製造された部品、例えば本体に対する設計上の制約は極めて少ないことを意味している。その結果、特に、吸引チャネルおよび循環チャネルは、従来型製造技術の制約を考慮することなく、設計できる。かくして、特に、上述した特徴を有する吸引チャネルおよび循環チャネルを比較的低い労力で製造することができる。
【0032】
本体は、特に、アディティブ・マニュファクチャリング技術によって製造されることが設計されているといえる。本体は、好ましくは、特にその外面を形成する壁セグメントを有する。壁セグメント内において、吸引チャネルおよび/または循環チャネルを形成するチャネルセグメントを形成することができる。加うるに、本体は、支持セグメントを有するのがよい。壁セグメント、チャネルセグメントおよび支持セグメントは全て、実質的に等しい壁厚を有するのがよい。変形例として、厚さの差は、互いに対して±20%の範囲内でばらつきがあるに過ぎないと言える。
【0033】
循環チャネルの断面積が減少した区分は、実質的に円形の断面を有するノズルを有するのがよい。ノズルは、ジェットポンプの一部をなしており、このノズルは、吸引チャネル内の流体を加速するために用いられる。理想化された位置決め装置では、圧力降下がノズル内でのみ起こる。循環チャネルの残りの部分は、損失なしである。
【0034】
加うるに、課題は、上述した形式の位置決め組立体であって、本発明の少なくとも1つの位置決め装置を含む位置決め組立体によって解決される。位置決め装置と関連してすでに説明した理由により、この位置決め組立体をエネルギー効率のよい仕方で作動させることができる。
【0035】
さらに、位置決め装置の数および/または寸法は、位置決め装置の互いに異なる数または互いに異なる寸法の位置決め装置の組み合わせの結果として、位置決め組立体の所望の幅が得られるよう選択されるのがよい。この幅は、これがシート材加工機械の共通の幅に対応するよう選択されるのがよい。換言すると、位置決め組立体は、位置決め装置に関する限りモジュラーである。その結果、位置決め組立体は、互いに異なる形式のシート材加工機械に容易に適合可能である。
【0036】
その上、位置決め装置と関連して説明した全ての作用効果および利点は、位置決め組立体にも当てはまり、またその逆の関係が成り立つ。
【0037】
さらに、課題は、上述した形式のシート材加工機械であって、本発明の少なくとも1つの位置決め組立体を有するシート材加工機械によって解決される。位置決め組立体を非常にエネルギー効率のよい仕方で作動させることができるので、同じことがこれを装備したシート材加工機械に当てはまる。
【0038】
その上、位置決め装置および位置決め組立体と関連して説明した全ての作用効果および利点は、シート材加工機械にも当てはまり、またその逆の関係が成り立つ。
【0039】
添付の図に示された実施形態に関して本発明を説明する。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【
図1】本発明に係る幾つかの位置決め組立体を有する本発明のシート材加工機械を示す図であり、各位置決め組立体が本発明の少なくとも1つの位置決め装置を有する状態を示す図である。
【
図2】2つの位置決め装置を含む
図1の位置決め組立体の一部分を部分的に組み立てられた状態で示す図である。
【
図3】
図2の位置決め組立体の平面III矢視断面図である。
【
図5】
図2の位置決め装置のうちの1つの詳細Vを示す図である。
【
図6】
図5の位置決め装置の平面VI矢視断面図である。
【
図7】
図6の断面を含む
図5の位置決め装置の一部分の斜視図である。
【
図8】
図5の位置決め装置の平面VIII矢視断面図である。
【
図9】
図8の位置決め装置の平面IX矢視断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0041】
図1は、シート材加工機械10(以下、機械10)を示している。
【0042】
図1の実施例では、機械10は、シート材を裁断するために構成されており、この機械は、各々がシート材に対してある特定の処理を行う5つのユニットで構成されている。
【0043】
第1のユニットは、加工されるべきシート12を提供しまたは供給するフィーダユニット10aである。例示目的で、フィーダユニット10aにはシート12が1枚しか示されていない。
【0044】
第2のユニットは、シート12を裁断するために構成されているプラテンプレス14を有する。その結果、第2のユニットは、プラテンプレスユニット10bである。
【0045】
第3のユニットは、裁断シート12からある特定のくず要素をなくすために構成されているストリッピングユニット10cである。
【0046】
第4のユニットは、ブランキングユニット10dである。このユニットでは、裁断シート12の実際の所望の部分をこれから取り出してパイル16上に置く。
【0047】
第5のユニットは、くず排出ユニット10eであり、この第5のユニットは、裁断シート12のそれ以上のくず要素の除去に役立つ。
【0048】
シート12は、本質的に、複数のグリッパユニット22が取り付けられているコンベヤベルト20を含むコンベヤシステム18によって機械10を通って運ばれ、複数のグリッパユニットは、シート12を選択的に把持するよう構成されている。
【0049】
プラテンプレスユニット10b、ストリッピングユニット10cおよびブランキングユニット10dは、シート12を保持表面26上に保持する位置決め組立体24をさらに有する。
【0050】
図1に示す実施例では、保持表面26は、位置決め組立体24の頂面である。
【0051】
プラテンプレスユニット10b、ストリッピングユニット10cおよびブランキングユニット10dのうちの任意の1つでのシート12の加工中、シート12の前縁は、対応の把持ユニット22によって把持され、シート12の後縁は、対応の位置決め組立体24(走行方向Tを参照されたい)を保持される。
【0052】
【0053】
位置決め組立体は、中央空気供給ダクト30を備えた基部28を含む。
【0054】
かくして、加圧空気を中央空気供給ダクト30に通して基部28に供給することができる。
【0055】
基部28は、中央空気供給ダクト30と流体連通状態にある複数の流体出口ポート32をさらに有する。
【0056】
さらに、基部28は、洗浄流体入口ポート34を有する。かくして、洗浄流体を洗浄流体入口ポート34から位置決め組立体24に供給することができる。
【0057】
基部28は、洗浄流体入口ポート34と流体連通状態にある洗浄流体出口ポート36をさらに有する。
【0058】
図2に示す実施形態では、2つの位置決め装置38が締結手段40、例えばボルトまたはリベットによって基部28に取り付けられている。
【0059】
ガスケット42が基部28と位置決め装置38の各々との間に介在して設けられている。
【0060】
位置決め装置38のうちの1つについて
図3~
図9を参照して詳細に説明する。
図2に示す2つの位置決め装置38は実質的に同一なので、以下の説明は、これら位置決め装置の両方に当てはまる。
【0061】
位置決め装置38は、アディティブ・マニュファクチャリングにより製造された部品である本体44を有する。
【0062】
本体44の一方の外面は、位置決め表面46である。
【0063】
位置決め表面46は、保持表面26の一部をなしている。
【0064】
図2の記載では、位置決め表面46は、本体44の頂面である。
【0065】
本体44は、その外面でもある結合表面48を有する。
【0066】
結合表面48は、位置決め表面46と反対側に設けられており、かくして、
図2の記載では本体44の下面である。
【0067】
位置決め表面46には吸引開口部50が設けられている。これら吸引開口部50は、シート12が位置決め表面46上に保持されるようシート12を吸引するために構成されている。
【0068】
結合表面48には、駆動流体を本体44に供給する流体入口ポート52が設けられている(
図3および
図4参照)。
【0069】
加うるに、洗浄流体入口ポート54が結合表面48に設けられている(
図4参照)。
【0070】
本体44は、位置決め表面46と結合表面48を互いに結合する側面56をさらに有する。
【0071】
側面56には、駆動流体を本体44から排出する流体出口ポート58が設けられている(
図4および
図5参照)。
【0072】
流体入口ポート52および流体出口ポート58は、本体44の同一の端部に設けられている。
図4の記載では、これらポートは、本体44の上端部に設けられている。
【0073】
流体入口ポート52の各々は、循環チャネル60によって対応の流体出口ポート58に結合されている。換言すると、循環チャネル60は、それぞれの流体入口ポート52からそれぞれの流体出口ポート58まで延びている(
図8参照)。
【0074】
循環チャネル60は、全体がヘアピンのような形をしており、すなわち、循環チャネルはほぼ180°の曲がり部62を有する。
【0075】
曲がり部62の下流側では、循環チャネルは、断面積が減少した区分64を有する。
【0076】
区分64は、循環チャネル60を通って流れる駆動流体の流れを加速するためのノズル66を有する。
【0077】
ノズル66は、実質的に円形の断面を有する(
図9参照)。
【0078】
循環チャネル60のその長さに沿う断面Scを検討すると、この断面は、ノズル66の下流側端部のところに単一の不連続部68を有する。
【0079】
循環チャネル60の残りの区分では、断面Scが連続的に変化している。
【0080】
図面の記載を容易にするため、循環チャネル60の断面S
cのうちの幾つかだけが
図8に参照符号を付けた状態で示されている。
【0081】
この関係で、循環チャネル60の長さのほぼ87%は、循環チャネル60の長さの残りの部分の断面積の少なくとも2倍である断面積を有する。
【0082】
このことは、循環チャネル60が比較的大きく、しかも断面積減少区分64の外側の全ての区分に関して比較的大きくかつ比較的一様な断面積を有する。
【0083】
また、循環チャネル60の延長方向Ecは、循環チャネル60の長さ全体に沿って連続して変化し、すなわち、循環チャネル60には、コーナまたはキンクがない。
【0084】
さらに、循環チャネル60のその長さ全体に沿うあらゆる断面Scは、滑らかなリムを有し、すなわち、断面Scを画定する輪郭もまた、コーナまたはキンクを備えていない。
【0085】
特に、循環チャネル60を側方に画定する壁の曲率半径rは、0.5mm~20mmまでの範囲にある。
【0086】
図面の記載を容易にするため、循環チャネル60の曲率半径rのうちの幾つかだけ
図8では参照符号を付けられて示されている。
【0087】
また、本体44内には、吸引開口部50を循環チャネル60に結合する吸引チャネル70が設けられている。
【0088】
吸引チャネル70は、断面積減少区分64内の循環チャネル60を包囲していて、この吸引チャネルは、断面積減少区分64に隣接したところで循環チャネル60に結合されており、その結果、ジェットポンプ71が形成されるようになっている。
【0089】
より具体的に説明すると、吸引チャネル70は、不連続部68の位置のところで循環チャネル60にまっすぐ合体している。
【0090】
かくして、循環チャネル60を通って流れる駆動流体の流れは、ノズル66によって加速されるとともに吸引チャネル70内に存在している流体を加速し、その結果、シート12は、吸引開口部50により吸引されるようになっている。
【0091】
吸引チャネル70の断面Ssは、吸引チャネル70長さ全体に沿って連続的に変化している。吸引チャネル70の断面Ssの道筋は、不連続部を備えていない。
【0092】
この場合もまた、2つの代表的な断面S
sだけが
図5および
図9において参照符号を付けられて示されている。
【0093】
また、チャネル70の延長方向Esは、吸引チャネル70の長さ全体に沿って連続的に変化している。
【0094】
さらに、循環チャネル60と同様、吸引チャネル70のその長さ全体に沿うあらゆる断面Ssもまた、滑らかなリムを有する。
【0095】
注目されるように、吸引開口部50は全体としてD字形であるが、吸引開口部50の断面のリムおよびかくして吸引チャネル70の断面のリムは、キンクまたはコーナを備えていない。このことは、D字形の全てのコーナが丸くなっていることを意味している。
【0096】
さらに、洗浄流体ポート54を吸引チャネル70に流体結合する洗浄流体チャネル72が設けられている(
図7および
図9参照)。
【0097】
図示の実施例では、洗浄流体チャネル72は、その下流側端部のところで二又になっており、その結果、第1の洗浄流体チャネル部分72aおよび第2の洗浄流体チャネル部分72bは、吸引チャネル70に合体するようになっている。
【0098】
洗浄流体チャネル72は、その長さ全体に沿って滑らかなリムを有する断面を備えている。
【0099】
理解されるように、図と関連して説明した実施形態では、シート12は、扁平な可撓性要素の代表的な例として用いられている。このことは、機械10、位置決め組立体24および位置決め装置38もまた、任意他の扁平な可撓性要素と関連して使用することを意味している。
【国際調査報告】