(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-12-13
(54)【発明の名称】動力電池充電の方法及び電池管理システム
(51)【国際特許分類】
H02J 7/00 20060101AFI20231206BHJP
H01M 10/44 20060101ALI20231206BHJP
H02J 7/04 20060101ALI20231206BHJP
【FI】
H02J7/00 S
H01M10/44 P
H02J7/04 B
H02J7/00 Y
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023532404
(86)(22)【出願日】2021-09-08
(85)【翻訳文提出日】2023-05-26
(86)【国際出願番号】 CN2021117307
(87)【国際公開番号】W WO2023035158
(87)【国際公開日】2023-03-16
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】513196256
【氏名又は名称】寧徳時代新能源科技股▲分▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】Contemporary Amperex Technology Co., Limited
【住所又は居所原語表記】No.2,Xingang Road,Zhangwan Town,Jiaocheng District,Ningde City,Fujian Province,P.R.China 352100
(74)【代理人】
【識別番号】100159329
【氏名又は名称】三縄 隆
(72)【発明者】
【氏名】黄 ▲珊▼
(72)【発明者】
【氏名】李 世超
(72)【発明者】
【氏名】李 ▲海▼力
(72)【発明者】
【氏名】▲趙▼ ▲微▼
(72)【発明者】
【氏名】▲謝▼ ▲嵐▼
【テーマコード(参考)】
5G503
5H030
【Fターム(参考)】
5G503AA01
5G503BA01
5G503BB02
5G503CA11
5G503FA06
5H030AA06
5H030AS08
5H030BB01
5H030BB21
(57)【要約】
本出願の実施例は、動力電池充電の方法及び電池管理システムを提供し、該方法は、動力電池の充電過程において、該動力電池の負極電位を取得することと、該負極電位と予め設定された電位との差が安全閾値以下である場合、該動力電池を放電するように制御することとを含む。本出願の実施例の方法及び電池管理システムは、動力電池の安全性を向上させることができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
動力電池の充電過程において、前記動力電池の負極電位を取得することと、
前記負極電位と予め設定された電位との差が安全閾値以下である場合、前記動力電池を放電するように制御することとを含む、ことを特徴とする動力電池充電の方法。
【請求項2】
前記の、前記負極電位と予め設定された電位との差が安全閾値以下である場合、前記動力電池を放電するように制御することは、
前記負極電位と前記予め設定された電位との差が安全閾値以下である場合、充電電流を0にするよう要求するための第1の充電要求情報を充電スタンドに送信することと、
収集した前記動力電池の実際充電電流が電流閾値以下である場合、前記動力電池を放電するように制御することとを含む、ことを特徴とする請求項1に記載の動力電池充電の方法。
【請求項3】
前記動力電池充電の方法は、
前記第1の充電要求情報が送信された持続時間が第1の時間間隔以上である場合、前記動力電池の放電を停止するように制御することをさらに含む、ことを特徴とする請求項2に記載の動力電池充電の方法。
【請求項4】
前記動力電池充電の方法は、
前記動力電池を放電するように制御する持続時間が第2の時間間隔以上である場合、前記動力電池の放電を停止するように制御することをさらに含む、ことを特徴とする請求項1又は2に記載の動力電池充電の方法。
【請求項5】
前記動力電池充電の方法は、
前記動力電池の放電を停止するように制御する場合、充電マッチングテーブルに基づき、充電スタンドに第2の充電要求情報を送信することをさらに含み、前記第2の充電要求情報は、前記動力電池を充電するよう前記充電スタンドに要求するためのものである、ことを特徴とする請求項3又は4に記載の動力電池充電の方法。
【請求項6】
電池管理システムであって、
動力電池の充電過程において、前記動力電池の負極電位を取得するための取得モジュールと、
前記負極電位と予め設定された電位との差が安全閾値以下である場合、前記動力電池を放電するように制御するための制御モジュールとを含む、ことを特徴とする電池管理システム。
【請求項7】
前記制御モジュールは、具体的に、
前記負極電位と前記予め設定された電位との差が安全閾値以下である場合、充電電流を0にするよう要求するための第1の充電要求情報を充電スタンドに送信し、
収集した前記動力電池の実際充電電流が電流閾値以下である場合、前記動力電池を放電するように制御するために用いられる、ことを特徴とする請求項6に記載の電池管理システム。
【請求項8】
前記制御モジュールは、さらに、
前記第1の充電要求情報が送信された持続時間が第1の時間間隔以上である場合、前記動力電池の放電を停止するように制御するために用いられる、ことを特徴とする請求項7に記載の電池管理システム。
【請求項9】
前記制御モジュールは、さらに、
前記動力電池を放電するように制御する持続時間が第2の時間間隔以上である場合、前記動力電池の放電を停止するように制御するために用いられる、ことを特徴とする請求項6又は7に記載の電池管理システム。
【請求項10】
前記電池管理システムは、
前記動力電池の放電を停止するように制御する場合、充電マッチングテーブルに基づき、充電スタンドに第2の充電要求情報を送信するための通信モジュールをさらに含み、前記第2の充電要求情報は、前記動力電池を充電するよう前記充電スタンドに要求するためのものである、ことを特徴とする請求項8又は9に記載の電池管理システム。
【請求項11】
動力電池の電池管理システムであって、メモリとプロセッサとを含み、前記メモリは、命令を記憶するためのものであり、前記プロセッサは、前記命令を読み取り、且つ前記命令に基づいて請求項1~5のいずれか一項に記載の動力電池充電の方法を実行するためのものである、ことを特徴とする電池管理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、電池技術分野に関し、特に動力電池充電の方法及び電池管理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
時代の発展とともに、電気自動車は、その高い環境保全性、低騒音、低使用コストなどの利点により、大きな市場将来性を有し、省エネルギーと排出削減を効果的に促進することができ、社会の発展と進歩に寄与する。
【0003】
電気自動車及びその関連分野にとって、電池技術は、その発展に関する重要な要素であり、特に電池の安全性は、電池関連製品の発展と応用に影響を与え、一般の人々の電気自動車に対する受け入れ度にも影響を与える。そのため、如何にして動力電池の安全性を向上させるかは、解決の待たれる技術課題となっている。
【発明の概要】
【0004】
本出願の実施例は、動力電池の安全性を向上させることができる動力電池充電の方法及び電池管理システムを提供する。
【0005】
第1の態様によれば、動力電池充電の方法を提供し、該方法は、動力電池の充電過程において、該動力電池の負極電位を取得することと、該負極電位と予め設定された電位との差が安全閾値以下である場合、該動力電池を放電するように制御することとを含む。
【0006】
安全閾値を設定することによって、負極電位と予め設定された電位との差が該安全閾値以下である場合、BMSは、動力電池を放電するように制御し、つまり、BMSは、負極電位が予め設定された電位に達する前に動力電池を放電するように制御し、負極表面におけるリチウム金属の析出を回避することができ、それによって動力電池の安全性能を向上させることができる。
【0007】
一可能な実現形態では、該負極電位と予め設定された電位との差が安全閾値以下である場合、該動力電池を放電するように制御することは、該負極電位と該予め設定された電位との差が該安全閾値以下である場合、充電電流を0にするよう要求するための第1の充電要求情報を充電スタンドに送信することと、収集した該動力電池の実際充電電流が電流閾値以下である場合、該動力電池を放電するように制御することとを含む。
【0008】
収集した動力電池の実際充電電流が電流閾値以下である場合に、動力電池を放電するように制御することは、動力電池放電による電池リチウム析出に対する抑制効果を向上させることに有利である。
【0009】
一可能な実現形態では、該方法は、該第1の充電要求情報が送信された持続時間が第1の時間間隔以上である場合、該動力電池の放電を停止するように制御することをさらに含む。
【0010】
一可能な実現形態では、該方法は、該動力電池を放電するように制御する持続時間が第2の時間間隔以上である場合、該動力電池の放電を停止するように制御することをさらに含む。
【0011】
動力電池を一定時間内に放電するように制御することは、リチウム析出を抑制する前提で、充電効率への影響を可能な限り軽減できると同時に、長時間の放電に起因する異常な充電コネクタ抜きを回避することができる。
【0012】
一可能な実現形態では、該方法は、該動力電池の放電を停止するように制御する場合、充電マッチングテーブルに基づき、充電スタンドに第2の充電要求情報を送信することをさらに含み、該第2の充電要求情報は、該動力電池に対して充電するよう該充電スタンドに要求するためのものである。
【0013】
第2の態様によれば、電池管理システムを提供し、該システムは、動力電池の充電過程において、該動力電池の負極電位を取得するための取得モジュールと、該負極電位と予め設定された電位との差が安全閾値以下である場合、該動力電池を放電するように制御するための制御モジュールとを含む。
【0014】
一可能な実現形態では、該制御モジュールは、具体的に、該負極電位と該予め設定された電位との差が該安全閾値以下である場合、充電電流を0にするよう要求するための第1の充電要求情報を充電スタンドに送信し、収集した該動力電池の実際充電電流が電流閾値以下である場合、該動力電池を放電するように制御するために用いられる。
【0015】
一可能な実現形態では、該制御モジュールは、さらに、該第1の充電要求情報が送信された持続時間が第1の時間間隔以上である場合、該動力電池の放電を停止するように制御するために用いられる。
【0016】
一可能な実現形態では、該制御モジュールは、さらに、該動力電池を放電するように制御する持続時間が第2の時間間隔以上である場合、該動力電池の放電を停止するように制御するために用いられる。
【0017】
一可能な実現形態では、該電池管理システムは、該動力電池の放電を停止するように制御する場合、充電マッチングテーブルに基づき、充電スタンドに第2の充電要求情報を送信するための通信モジュールをさらに含み、該第2の充電要求情報は、該動力電池を充電するよう該充電スタンドに要求するためのものである。
【0018】
第3の態様によれば、電池管理システムを提供し、該システムは、メモリとプロセッサとを含み、該メモリは、命令を記憶するためのものであり、該プロセッサは、該命令を読み取り、且つ該命令に基づいて上記第1の態様と第1の態様の任意の可能な実現形態における方法を実行するためのものである。
【0019】
第4の態様によれば、コンピュータプログラムを記憶するための読み取り可能な記憶媒体を提供し、該コンピュータプログラムは、上記第1の態様と第1の態様の任意の可能な実現形態における方法を実行するためのものである。
【図面の簡単な説明】
【0020】
本出願の実施例の技術案をより明確に説明するために、以下では、本出願の実施例で使用する必要がある図面を簡単に説明するが、明らかなことに、以下に説明する図面は、本出願のいくつかの実施例に過ぎず、当業者にとっては、創造的な労力を支払うことなく、図面に基づいて他の図面を入手することができる。
【
図1】本出願の実施例が適用可能な電池システムの概略的ブロック図である。
【
図2】本出願の実施例に開示された動力電池充電の方法の概略的ブロック図である。
【
図3】本出願の実施例に開示された極分け一次RC等価回路モデルの概略図である。
【
図4】本出願の実施例に開示された動力電池充電の方法の概略的フローチャートである。
【
図5】本出願の実施例に開示された電池管理システムの概略的ブロック図である。
【
図6】本出願の実施例に開示された電池管理システムの別の概略的ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面と実施例を参照して本出願の実施形態をさらに詳細に説明する。以下の実施例の詳細な説明と図面は、本出願の原理を例示的に説明するために使用されるが、本出願の範囲を限定するために使用されるべきではなく、即ち本出願は、説明された実施例に限定されない。
【0022】
本出願の記述において、指摘すべきこととして、特に説明されていない限り、「複数」は、二つ以上を意味し、「上」、「下」、「左」、「右」、「内」、「外」などの用語により示される方位又は位置関係は、示された装置又は素子が特定の方位を有しなければならず、特定の方位で構成及び操作されなければならないことを示したり、暗示したりするのではなく、本出願を容易に説明し、説明を簡略化するためのものに過ぎず、本出願の限定として理解されるべきではない。なお、「第1」、「第2」、「第3」などの用語は、説明のみを目的として使用されており、相対的な重要性を示したり、暗示したりするものとして理解されるべきではない。「垂直」は、厳密な意味での垂直ではないが、誤差の許容範囲内である。「平行」は、厳密な意味での平行ではないが、誤差の許容範囲内である。
【0023】
以下の説明に現れる方位詞は、いずれも図に示されている方向であり、本出願の特定の構造を限定するものではない。本出願の記述において、さらに説明すべきこととして、明確に指定及び限定されていない限り、「取り付け」、「繋がり」、「接続」という用語は、広義に理解されるべきであり、例えば、固定接続であってもよく、着脱可能な接続、又は一体的な接続であってもよく、直接接続されることであってもよく、中間媒体を介して間接的に接続されることであってもよい。当業者にとって、本出願における上記用語の特定の意味は、特定の状況に従って理解することができる。
【0024】
新エネルギー分野において、動力電池は、電力消費装置、例えば車両、船舶又は宇宙航空機などの主要な動力源として、その重要性は、言うまでもない。現在、市販されている動力電池の多くは、充電可能な二次電池(Rechargeable battery)であり、最も一般的なものは、リチウムイオン電池又はリチウムイオンポリマー電池である。
【0025】
一般的には、リチウムイオン電池の充電過程において、リチウムイオンは正極から放出されて負極に吸蔵されるが、いくつかの異常状態の発生(例えば、低温で電池を充電し、又は、過大な充電レートや充電電圧で電池を充電するなど)により、正極から放出されたリチウムイオンが負極に吸蔵されなくなると、リチウムイオンは負極表面に析出することしかできず、それにより一層の灰色の物質が形成され、該現象は、リチウム析出と呼ばれる。
【0026】
リチウム析出は、電池性能の低下、サイクル寿命の大幅な短縮を引き起こすだけでなく、さらに電池の急速充電容量を制限し、且つ燃焼や爆発などの悲惨な結果をもたらす可能性もある。
【0027】
これに鑑みて、本出願の実施例は、動力電池充電の方法を提供し、動力電池のリチウム析出問題の解決に有利であり、それにより動力電池の性能を向上させる。
【0028】
図1は、本出願の実施例が適用可能な電池システム100を示す。該電池システム100は、動力電池110と電池管理システム(BMS:battery management system)120とを含んでもよい。
【0029】
具体的には、該動力電池110は、少なくとも一つの電池モジュールを含んでもよく、それは、電気自動車のためにエネルギーと動力を提供することができる。電池の種類から言うと、該動力電池110は、リチウムイオン電池、リチウム金属電池、鉛蓄電池、ニッケルカドミウム電池、ニッケル水素電池、リチウム硫黄電池、リチウム空気電池又はナトリウムイオン電池などであってもよく、本出願の実施例では、具体的に限定しない。電池の規模から言うと、本出願の実施例では、動力電池110における電池モジュールは、電池セル/電池単体(battery cell)であってもよく、組電池又は電池パック(battery pack)であってもよく、本出願の実施例では、具体的に限定しない。
【0030】
なお、該動力電池110のインテリジェント管理及びメンテナンスを行い、電池故障の発生を防止し、電池の耐用年数を延ばすために、電池システム100に、一般的にはBMS120がさらに設置されており、該BMS120は、動力電池110に接続され、動力電池110のパラメータをモニタリングして収集するためのものであり、且つBMS120は、該パラメータに基づいて動力電池110に対する制御と管理を実現してもよい。
【0031】
例として、該BMS120は、動力電池110の電圧、電流と温度などのパラメータをモニタリングするために用いられてもよい。ここで、BMS120は、動力電池110の総電圧と総電流、動力電池110における単一の電池セルの電圧と電流、及び動力電池110における少なくとも一つの測温点の温度などをリアルタイムに収集することができる。上記パラメータのリアルタイムで、迅速で、正確な測定は、BMS120が正常に動作する基礎である。
【0032】
任意選択的に、BMS120は、該収集した動力電池110のパラメータに基づいて、さらに動力電池110の荷電状態(SOC:state of charge)、健康状態(SOH:state of health)、パワー状態(SOP:state of power)などの様々なパラメータを推定してもよい。
【0033】
さらに、BMS120は、動力電池110の様々なパラメータを取得した後に、該様々なパラメータに基づいて動力電池110に対する様々な制御と管理を実現してもよい。
【0034】
例えば、BMS120は、SOC、電圧、電流などのパラメータに基づいて動力電池110に対する充放電制御を実現し、動力電池110の正常なエネルギー供給と放出を確保してもよい。
【0035】
また例えば、BMS120は、さらに温度などのパラメータに基づいて、放熱ファン又は加熱モジュールなどのアセンブリを制御して、動力電池110の熱管理を実現してもよい。
【0036】
さらに例えば、BMS120は、電圧、SOHなどのパラメータに基づいて、動力電池110が正常な動作状態にあるかどうかを判断して、動力電池110の故障診断と警報を実現してもよい。
【0037】
任意選択的に、
図1に示すように、電池システム100は、充電機器101及び電力消費機器102と接続を確立して、動力電池100の充放電を実現してもよい。
【0038】
任意選択的に、該充電機器101は、充電スタンドを含んでもよいが、それに限らず、充電機と呼ばれてもよい。
【0039】
任意選択的に、該電力消費機器102は、動力自動車又は外部機器を含んでもよいが、それらに限らない。
【0040】
図2は、本出願の一実施例に開示された動力電池充電の方法200の概略的ブロック図を示す。任意選択的に、本出願の実施例における動力電池は、
図1に示す動力電池110であってもよく、該方法200は、
図1に示す電池システム100におけるBMS120に応用されてもよく、換言すれば、該方法200は、
図1に示す電池システム100におけるBMS120によって実行されてもよい。具体的には、
図2に示すように、該方法200は、以下の一部又はすべての内容を含む。
【0041】
S210:該動力電池の充電過程において、該動力電池の負極電位を取得する。
【0042】
S220:該負極電位と予め設定された電位との差が安全閾値以下である場合、該動力電池を放電するように制御する。
【0043】
理解すべきこととして、電極とは、一般的には電池において電解質溶液との酸化還元反応が起こる位置を指す。電極は、正と負に分けられ、一般的には正極は、陰極であり、電子を得て、還元反応が起こり、負極は、陽極であり、電子を失って酸化反応が起こる。つまり、負極電位は、陽極電位と呼ばれてもよいが、正極電位は、陰極電位と呼ばれてもよい。
【0044】
通常の場合、動力電池の充電過程において、動力電池の負極電位は、徐々に低下し、動力電池の負極電位が予め設定された電位までに低下すると、リチウム金属の析出を引き起こす。該予め設定された電位は、リチウム析出電位と呼ばれてもよく、即ちリチウムが析出する臨界電位である。黒鉛負極体系のリチウムイオン電池を例にすると、リチウムイオン電池は、充電過程において電極の分極が発生し、即ち負極電位が低下するが、正極電位が上昇し、負極電位が0V(vs Li/Li+)まで低下するとき、負極表面にリチウム金属が析出し、電池の性能に支障を与え、ひいては熱暴走などの事故を引き起こす恐れもある。
【0045】
出願人の発見によると、動力電池の充電過程において、動力電池を放電するように制御することにより、リチウム金属の吸蔵を促進し、析出したリチウム金属の持続的な蓄積を抑制することができる。しかしBMSにより動力電池を放電するように制御するのに一定の反応時間を要し、例えば、BMSは、まず動力電池への充電を停止するよう充電スタンドとネゴシエートする必要がある可能性があり、それから動力電池は、放電開始する。そのため、動力電池の負極電位が予め設定された電位に達する場合にのみ、BMSが動力電池を放電するように制御すれば、負極表面には依然としてリチウム金属の析出を引き起こす可能性があり、それにより電池の性能に支障を与える。
【0046】
本出願の実施例では、安全閾値を設定することによって、負極電位と予め設定された電位との差が該安全閾値以下である場合、BMSは、動力電池を放電するように制御し、つまり、BMSは、負極電位が予め設定された電位に達する前に動力電池を放電するように制御し、動力電池放電する前に負極表面にリチウム金属が析出することを回避することができ、それによって電池の安全性能を向上させることができる。
【0047】
任意選択的に、本出願の実施例では、該安全閾値は、大きすぎてはならず、即ちBMSは、動力電池の負極電位が予め設定された電位まで十分に低下しないときに動力電池を放電するように制御してはならない。この場合、負極表面におけるリチウム金属の析出を回避できるが、充電効率に影響を与える。任意選択的に、該安全閾値は、電池の性能、充電速度の重要及び安全需要などの面に基づいて設定されてもよく、例えば、安全閾値は、5mv、10mv又は15mvなどであってもよい。
【0048】
任意選択的に、本出願の実施例では、該安全閾値の設定は、さらに負極電位取得の正確度、即ち該負極電位の誤差を考慮してもよい。
【0049】
S210では、動力電池の負極電位の取得に対して具体的に限定しない。例えば、負極電位予測モデルによって電池の負極電位を予測して取得してもよく、又は基準電極を有する三電極電池の実測によって取得してもよい。
【0050】
一実施例では、両電極の電池について、BMSは、負極電位予測モデルによって、電池の正極と負極とを分け、電池の充電過程における負極電位と正極電位の変化の法則を正確にシミュレートすればよい。例えば、等価回路モデル、電気化学モデル、及び等価回路と電気化学との結合モデルなどを採用してもよい。
【0051】
別の実施例では、BMSは、さらに基準電極を有する三電極電池の負極電位と基準電極の電位を収集して電池の負極電位を取得してもよく、ここで、三電極電池とは、従来の両電極電池の正極と負極に加えて、一つの基準電極を新たに追加したものを指す。該基準電極は、例えばリチウム金属基準電極、リチウム合金基準電極又は銅線原位置リチウムメッキ基準電極などである。
【0052】
具体的に、BMSは、三電極電池の極分け等価モデルを構築してもよく、該極分け等価モデルは、正極パラメータと負極パラメータとを含んでもよく、それによって該三電極電池の外部特性と内部特性を反映し、負極電位の正確な予測を容易にする。ここで、極分け等価モデルは、Rintモデル、極分け一次RC等価回路モデル、極分け二次RC等価回路モデルなどを含んでもよい。
【0053】
図3は、本出願の実施例による極分け一次RC等価回路モデルの概略図を示す。
図3に示すように、Utは、全電池の端子電圧であり、UcaとUanは、それぞれ正極の基準電極に対する電位と負極の基準電極に対する電位である。OCVcaとOCVanは、それぞれ正極の開回路電圧と負極の開回路電圧を表し、Rca_0とRan_0は、それぞれ正極のオーム抵抗と負極のオーム抵抗を表し、Uca_pとUan_pは、それぞれ正極の分極電圧と負極の分極電圧を表し、Rca_pとRan_pは、それぞれ正極の分極抵抗と負極の分極抵抗を表し、Cca_pとCan_pは、それぞれ正極の分極電気容量と負極の分極電気容量を表し、Iは、電流を表す。Uca_p’とUan_p’は、それぞれUca_pとUan_pの導関数を表す。
【0054】
まず、実測によって正極の開回路電圧OCVcaと負極の開回路電圧OCVanを取得し、そして公式(1)~(5)に基づき、さらに最適化アルゴリズム、例えば最小二乗法、遺伝的アルゴリズムなどと結び付けてモデルパラメータRca_0、Ran_0、Rca_p、Ran_p、Cca_pとCan_pを標定し、最後に拡張カルマンフィルタアルゴリズム、比例-積分-微分(PID:Proportion Integral Differential)アルゴリズム又はルーエンバーガー観測器などを利用して負極電位を予測してもよい。
Ut = Uca - Uan (1)
Uca = OCVca + I *Rca_0+Uca_p (2)
Uan = OCVan + I *Ran_0+Uan_p (3)
Uca_p’ = I/Cca_p - Uca_p/(Rca_p*Cca_p) (4)
Uan_p’ = I/Can_p - Uan_p/(Ran_p*Can_p) (5)
【0055】
以下、拡張カルマンフィルタアルゴリズムを利用して負極電位を予測する実施例について簡単に紹介する。拡張カルマンフィルタアルゴリズムは、主に状態方程式(6)と観測方程式(7)から構成され、さらに再帰方程式(8)~(12)と結び付けて時間と状態を反復更新して状態の推定を実現する。
【0056】
【0057】
ここで、Xは、推定すべき状態量であり、Uは、制御可能な入力量であり、Yは、出力量であり、QとRは、それぞれ系統誤差と測定誤差を表し、Pは、誤差を推定する共分散行列であり、下付き文字kは、k時刻の変数を表し、上付き文字Tは、行列を転置することを表す。A、B、CとDは、係数行列である。
【0058】
X、A、B、C、Q、Rの値を上記方程式に代入すれば、
【0059】
【0060】
負極電位予測方程式によって負極電位を取得することができる。
【0061】
【0062】
ここで、SOCは、アンペア時積分法によって取得されてもよい。
【0063】
任意選択的に、本出願の実施例では、BMSは、動力電池を放電するように制御し、動力電池の放電電流の大きさや時間長などのパラメータは、固定されてもよく、リアルタイムに調整されてもよい。
【0064】
一例では、BMSは、同じ放電パラメータに基づいて動力電池を放電するように制御してもよく、例えば、該放電パラメータは、電流大きさ10A、放電時間長20sと固定して設定されてもよい。
【0065】
別の例では、BMSは、リアルタイムに確定した放電パラメータに基づいて動力電池を放電するように制御してもよく、例えば、動力電池の状態パラメータに基づいて動力電池の放電パラメータを確定してもよい。動力電池の状態パラメータは、例えば温度、SOC及びSOHなどを含んでもよい。
【0066】
任意選択的に、動力電池のSOCが位置するSOC区間に基づいて、動力電池の放電パラメータを確定してもよい。通常の場合、動力電池のSOCが大きいほど、電池リチウム析出のリスクも高くなる。BMSは、異なるSOC区間に対応する放電時間長及び/又は放電電流大きさを事前に設定してもよい。例えば、高SOC区間に対応する放電時間長は、低SOC区間に対応する放電時間長より大きくてもよい。また例えば、高SOC区間に対応する放電電流大きさは、SOC区間に対応する放電電流大きさより大きくてもよい。
【0067】
動力電池の状態パラメータに基づいて動力電池の放電パラメータを動的に調整することにより、リチウム析出と充電速度との間の関係のバランスをよりよくとることができ、それによって急速且つ安全な充電をよりよく実現することができる。
【0068】
説明すべきこととして、動力電池の放電パラメータを確定することと、動力電池を放電するように制御することとは、互いに干渉しない二つの独立したステップとみなされてもよい。つまり、動力電池の放電パラメータを確定することと、動力電池を放電するように制御することとの間に、必然的な時系列の関係はない。先に動力電池の放電パラメータを確定する場合、確定した放電パラメータに基づいて動力電池を放電するように制御し、後で動力電池の放電パラメータを確定する場合、その前に確定された放電パラメータに基づいて動力電池を放電するように制御する。
【0069】
任意選択的に、本出願の実施例では、該方法200は、該負極電位と予め設定された電位との差が該安全閾値以下である場合、充電電流を0にするよう要求するための第1の充電要求情報を充電スタンドに送信することと、収集した動力電池の実際充電電流が電流閾値以下である場合、動力電池を放電するように制御することとをさらに含む。
【0070】
一般的には、BMSと充電スタンドとの物理的接続を完了して電源を投入した後、低圧補助電源をオンにし、ハンドシェイク起動段階に入ってハンドシェイクメッセージを送信し、さらに絶縁監視を行う。絶縁監視が終了した後、ハンドシェイク識別段階に入って、両方は、識別メッセージを送信して、動力電池と充電スタンドの必要な情報を確定してもよい。充電ハンドシェイク段階を完了した後、充電スタンドとBMSは、充電パラメータ設定段階に入る。この段階で、充電スタンドは、BMSに充電スタンドの最大出力能力のメッセージを送信してもよく、それによりBMSは、充電スタンドの最大出力能力に基づいて充電できるかどうかを判断することができる。充電パラメータ設定段階を完了した後、充電スタンドとBMSは、充電段階に入ってもよい。
【0071】
動力電池の充電過程において、BMSは、充電スタンドに電池充電需要を送信し、そして充電スタンドは、電池充電需要に応じて充電電圧と充電電流を調整することで、充電過程が正常に行われることを確保してもよい。例として、該電池充電需要において充電要求電流が運ばれる。そして、充電スタンドは、BMSにより送信された充電要求電流に基づいて動力電池に電流を出力し、BMSは、動力電池の充電電流、即ち本出願の実施例における実際充電電流を収集してもよい。
【0072】
本出願の実施例では、該第1の充電要求情報は、電池充電需要と類似し、ただ該電池充電需要において運ばれる充電要求電流が0であり、つまり、該第1の充電要求情報は、充電電流を0にするよう充電スタンドに要求するためのものである。充電スタンドは、該第1の充電要求情報を受信すると、動力電池に出力する充電電流を0にするように制御する。BMSが充電スタンドに第1の充電要求情報を送信した後、動力電池の実際充電電流が徐々に減少するため、充電スタンドに第1の充電要求情報を送信した後、BMSがすぐに動力電池を放電するように制御すれば、放電による電池リチウム析出に対する抑制効果を低下させる恐れがある。
【0073】
一例では、動力電池の実際充電電流をリアルタイムに収集することによって、実際充電電流が電流閾値以下になる場合のみ、動力電池を放電するように制御する。例えば、該電流閾値は、50Aである。
【0074】
別の例では、充電スタンドに第1の充電要求情報を送信してから予め設定された時間後に動力電池を放電するように制御してもよく、該予め設定された時間は、BMSが充電スタンドに第1の充電要求情報を送信してから、動力電池の実際充電電流が電流閾値に低下するまでの時間長に基づいて取得した経験値であってもよい。
【0075】
任意選択的に、本出願の一実施例では、該方法200は、第1の充電要求情報送信済みの持続時間が第1の予め設定された時間間隔以上である場合、動力電池の放電を停止するように制御することをさらに含む。
【0076】
例えば、BMSが充電スタンドに第1の充電要求情報を送信するときにタイマーを起動してもよく、該タイマーの時間長は、該第1の予め設定された時間間隔であってもよく、該タイマーがタイムアウトすると、動力電池の放電を停止するように制御する。例えば、該タイマーの時間長は、60sであってもよく、つまり該第1の予め設定された時間間隔は、60sである。
【0077】
また例えば、BMSが充電スタンドに第1の充電要求情報を送信するときに計時を開始してもよく、計時時間長が第1の予め設定された時間間隔に達すると、動力電池の放電を停止するように制御する。例えば、該第1の予め設定された時間間隔は、60sである。
【0078】
任意選択的に、本出願の別の実施例では、該方法200は、動力電池を放電するように制御する持続時間が第2の予め設定された時間間隔以上である場合、動力電池の放電を停止するように制御することをさらに含む。
【0079】
例えば、BMSが動力電池を放電するように制御する開始時刻にタイマーを起動してもよく、該タイマーの時間長は、第2の予め設定された時間間隔であってもよく、該タイマーがタイムアウトする場合のみ、動力電池の放電を停止するように制御する。例えば、該タイマーの時間長は、20sであってもよく、つまり該第2の予め設定された時間間隔は、20sである。
【0080】
また例えば、BMSが動力電池を放電開始するように制御するときに計時を開始してもよく、計時時間長が第2の予め設定された時間間隔に達すると、動力電池の放電を停止するように制御する。例えば、該第2の予め設定された時間間隔は、20sである。
【0081】
理解すべきこととして、該第1の予め設定された時間間隔と該第2の予め設定された時間間隔は、設定されてもよい。
【0082】
動力電池を一定時間内に放電するように制御することは、リチウム析出を抑制する前提で、充電効率への影響を可能な限り軽減できると同時に、長時間の放電に起因する異常な充電コネクタ抜きを回避することができる。
【0083】
任意選択的に、本出願の実施例では、該方法200は、動力電池の放電を停止するように制御する場合、充電マッチングテーブルに基づき、充電スタンドに第2の充電要求情報を送信することをさらに含み、該第2の充電要求情報は、動力電池を充電するよう充電スタンドに要求するためのものである。
【0084】
具体的には、BMSは、動力電池の放電を停止するように制御する場合、充電マッチングテーブルに基づき、充電スタンドに第2の充電要求情報を送信してもよく、該第2の充電要求情報は、以上に説明された電池充電需要と類似し、該第2の充電要求情報において運ばれる充電要求電流が0ではなく、即ち動力電池に電流を出力するよう充電スタンドに要求する。つまり、BMS内部に充電マッチングテーブルが記憶されており、該充電マッチングテーブルは、充電要求電流と動力電池の様々な状態パラメータとの対応関係を含んでもよく、BMSは、動力電池の放電を停止するように制御するとき、動力電池の現在の状態パラメータに基づき、該充電マッチングテーブルから対応する充電要求電流を取得し、且つ第2の充電要求情報によって充電スタンドに送信してもよい。例えば、BMSは、充電マッチングテーブルから現在SOCに対応する充電要求電流を取得してもよい。充電スタンドは、該第2の充電要求情報を受信すると、動力電池に0でない充電電流を出力し、即ち動力電池に対して充電を行う。さらにBMSは、ステップ210及びステップ220を繰り返して実行してもよい。
【0085】
任意選択的に、本出願の実施例では、該方法200は、動力電池が満充電状態又は充電コネクタ抜き状態にあるとき、該動力電池を放電するように制御することをさらに含む。
【0086】
動力電池が満充電状態又は充電コネクタ抜き状態にある場合、このとき、動力電池の現在状態ではリチウム析出のリスクがあるかどうかを知らないため、動力電池を放電するように制御することによって、動力電池のリチウム析出リスクがある場合にリチウム析出を抑制することができ、それにより動力電池の安全性を向上させることができる。
【0087】
説明すべきこととして、動力電池の放電対象は、例えば
図1に示す電力消費機器102であってもよく、充電スタンドであってもよく、本出願の実施例では、これに対して限定しない。
【0088】
図4は、本出願の実施例による動力電池充電の方法400の概略的フローチャートを示す。
図4に示すように、該方法400は、BMSによって実行されてもよく、そして該方法400は、以下の一部又はすべての内容を含んでもよい。
【0089】
S401:動力電池が充電状態にあるか否かを判断する。
【0090】
S402:S401において動力電池が充電状態にあると判断した場合、BMSは、動力電池の負極電位をリアルタイムに収集し、例えば、上記三電極電池の実測を採用して動力電池の負極電位を取得する。
【0091】
任意選択的に、S401において動力電池が充電状態ではないと判断した場合、ステップS409を実行する。
【0092】
S403:(負極電位-予め設定された電位)が安全閾値以下であるかを判断し、該安全閾値は、例えば10mvである。
【0093】
S404:S403における判断の結果が肯定であれば、充電要求電流が0である電池充電需要を充電スタンドに送信するとともに、動力電池の実際充電電流をリアルタイムに収集して計時を開始する。
【0094】
任意選択的に、S403における判断の結果が否定であれば、戻ってステップS402を実行する。
【0095】
S405:動力電池の実際充電電流が50Aより小さいかを判断する。
【0096】
S406:S405における判断の結果が肯定であれば、動力電池を10Aの電流大きさで放電するように制御する。
【0097】
任意選択的に、S405における判断の結果が否定であれば、戻ってステップS404を実行する。
【0098】
S407:動力電池の放電時間長が20s以上であるか、又はステップS404における計時の時間長が60s以上であるかを判断する。
【0099】
S408:S407における判断の結果が肯定であれば、動力電池の放電を停止するように制御するとともに、充電マッチングテーブルに従って、動力電池に対して充電するよう充電スタンドに要求し、即ちステップS401の実行に戻る。
【0100】
任意選択的に、S407における判断の結果が否定であれば、戻ってステップS406を実行する。
【0101】
S409:S401において動力電池が非充電状態にあると判断した場合、動力電池が満充電状態又は充電コネクタ抜き状態にあるか否かを判断する。
【0102】
S410:S409において動力電池が満充電状態又は充電コネクタ抜き状態にあると判断した場合、動力電池を10Aの電流大きさで20s放電するように制御する。
【0103】
任意選択的に、S409において動力電池が満充電状態又は充電コネクタ抜き状態ではないと判断した場合、方法400を終了する。
【0104】
理解すべきこととして、本出願の各実施例において、上記各プロセスの番号の大きさは、実行順番の前後を意味するものではなく、各プロセスの実行順番は、その機能と内在論理によって確定されるべきであり、本出願の実施例の実施プロセスを限定するものではない。
【0105】
以上は、本出願実施例の動力電池充電の方法について詳細に説明したが、以下では
図5と
図6を結び付けて本出願実施例の電池管理システムを詳細に説明する。方法の実施例に説明された技術特徴は、以下の装置の実施例にも適する。
【0106】
図5は、本出願の実施例による電池管理システム500の概略的ブロック図を示す。
図5に示すように、該電池管理システム500は、
動力電池の充電過程において、該動力電池の負極電位を取得するための取得モジュール510と、
該負極電位と予め設定された電位との差が安全閾値以下である場合、該動力電池を放電するように制御するための制御モジュール520とを含む。
【0107】
本出願の実施例では、安全閾値を設定することによって、負極電位と予め設定された電位との差が該安全閾値以下である場合、BMSは、動力電池を放電するように制御し、つまり、BMSは、負極電位が予め設定された電位に達する前に動力電池を放電するように制御し、動力電池の放電前に負極表面にリチウム金属が析出することを回避することができ、それによって電池の安全性能を向上させることができる。
【0108】
任意選択的に、本出願の実施例では、該制御モジュール520は、具体的に、該負極電位と該予め設定された電位との差が該安全閾値以下である場合、充電電流を0にするよう要求するための第1の充電要求情報を充電スタンドに送信し、収集した該動力電池の実際充電電流が電流閾値以下である場合、該動力電池を放電するように制御するために用いられる。
【0109】
任意選択的に、本出願の実施例では、該制御モジュール520は、さらに、該第1の充電要求情報が送信された持続時間が第1の時間間隔以上である場合、該動力電池の放電を停止するように制御するために用いられる。
【0110】
任意選択的に、本出願の実施例では、該制御モジュール520は、さらに、該動力電池を放電するように制御する持続時間が第2の時間間隔以上である場合、該動力電池の放電を停止するように制御するために用いられる。
【0111】
任意選択的に、本出願の実施例では、該電池管理システム500は、該動力電池の放電を停止するように制御する場合、充電マッチングテーブルに基づき、充電スタンドに第2の充電要求情報を送信するための通信モジュールをさらに含み、該第2の充電要求情報は、該動力電池に対して充電するよう該充電スタンドに要求するためのものである。
【0112】
理解すべきこととして、本出願の実施例による電池管理システム500は、本出願の方法実施例におけるBMSに対応してもよく、そして電池管理システム500における各ユニットの上記と他の操作及び/又は機能は、それぞれ
図2と
図4に示す方法における電池管理システムの該当するフローを実現するためのものであり、簡潔のために、ここでは説明を省略する。
【0113】
図6は、本出願の別の実施例による電池管理システム600の概略的ブロック図を示す。
図6に示すように、電池管理システム600は、プロセッサ610とメモリ620とを含み、ここで、メモリ620は、命令を記憶するためのものであり、プロセッサ610は、前記命令を読み取り、且つ前記命令に基づいて前述の本出願の各実施例の方法を実行するためのものである。
【0114】
ここで、メモリ620は、プロセッサ610から独立した一つの単独なデバイスであってもよく、プロセッサ610に統合されてもよい。
【0115】
任意選択的に、
図6に示すように、該電池管理システム600は、送受信機630をさらに含んでもよく、プロセッサ610は、充電スタンドなどの他の機器と通信するように該送受信機630を制御することができる。具体的には、他の機器に情報やデータを送信し、又は他の機器により送信された情報やデータを受信することができる。
【0116】
本出願の実施例は、コンピュータプログラムを記憶するための読み取り可能な記憶媒体をさらに提供し、前記コンピュータプログラムは、前述の本出願の各実施例の方法を実行するためのものである。
【0117】
当業者であれば理解できるように、本明細書に開示された実施例を結び付けて記述された様々な例のユニット及びアルゴリズムステップは、電子ハードウェア又はコンピュータソフトウェアと電子ハードウェアとの組み合わせで実現されることが可能である。これらの機能は、ハードウェア方式で実行されるか、ソフトウェア方式で実行されるかは、技術案の特定の応用及び設計拘束条件によるものである。当業者は、各特定の応用に対して異なる方法を使用して、記述された機能を実現することができるが、このような実現は、本出願の範囲を超えていると考えるべきではない。
【0118】
当業者が明確に理解できるように、記述の利便性及び簡潔性のために、以上に記述されたシステム、装置、及びユニットの具体的な作動プロセスは、前記方法の実施例における対応するプロセスを参照すればよい。ここでは説明を省略する。
【0119】
本出願により提供されたいくつかの実施例では、理解すべきこととして、開示されたシステム、装置及び方法は、他の方式によって実現されてもよい。例えば、以上に記述された装置の実施例は、単なる例示的なものであり、例えば、前記ユニットの区分は、単なる論理的機能区分であり、実際に実現するとき、他の区分方式があってもよい。例えば、複数のユニット又はアセンブリは、別のシステムに結合されてもよく、又は統合されてもよく、又はいくつかの特徴が無視されてもよく、又は実行されなくてもよい。また、表示又は討論された同士間の結合又は直接結合又は通信接続は、いくつかのインターフェース、装置又はユニットによる間接的結合又は通信接続であってもよく、電気的、機械的又は他の形式であってもよい。
【0120】
前記分離された部品として説明されるユニットは、物理的に分離されてもよく、又は物理的に分離されなくてもよく、ユニットとして表示される部品は、物理的なユニットであってもよく、又は、物理的なユニットでなくてもよい。すなわち、一つの場所に位置してもよく、又は複数のネットワークユニットに分布されてもよい。実際の必要に応じて、そのうちの一部又は全部のユニットを選択して、本実施例の方案の目的を実現することができる。
【0121】
また、本出願の各実施例における各機能ユニットは、一つの処理ユニットに統合されてもよく、各ユニットが物理的に単独に存在してもよく、二つ以上のユニットが一つのユニットに統合されてもよい。
【0122】
前記機能は、ソフトウェア機能ユニットの形式で実現され、且つ独立した製品として販売又は使用される場合、一つのコンピュータ読み取り可能な記憶媒体に記憶されてもよい。このような理解を踏えて、本出願の技術案は、実質には、又は従来技術に寄与した部分又は該技術案に関する部分がソフトウェア製品の形式によって表われてもよい。該コンピュータソフトウェア製品は、一つの記憶媒体に記憶され、一台のコンピュータ機器(パソコン、サーバ、又はネットワーク機器などであってもよい)に本出願の各実施例に記載の方法のすべて又は一部のステップを実行させるための若干の命令を含む。前述の記憶媒体は、Uディスク、モバイルハードディスク、リードオンリーメモリ(ROM:Read-Only Memory)、ランダムアクセスメモリ(RAM:Random Access Memory)、磁気ディスク又は光ディスクなどの、プログラムコードを記憶できる様々な媒体を含む。
【0123】
以上の内容は、本出願の具体的な実施形態に過ぎないが、本出願の保護範囲はこれに限定されず、当業者であれば、本出願に開示された技術的範囲内に、容易に想到できる変形又は置換は、いずれも、本出願の保護範囲内に含まれるべきである。そのため、本出願の保護範囲は、特許請求の範囲の保護範囲に準じるべきである。
【符号の説明】
【0124】
100 電池システム
101 充電機器
102 電力消費機器
110 動力電池
120 電池管理システム(BMS)
200 動力電池充電の方法
500、600 電池管理システム
510 取得モジュール
520 制御モジュール
610 プロセッサ
620 メモリ
630 送受信機
【手続補正書】
【提出日】2023-05-26
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0037
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0037】
任意選択的に、
図1に示すように、電池システム100は、充電機器101及び電力消費機器102と接続を確立して、動力電池
110の充放電を実現してもよい。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0075
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0075】
任意選択的に、本出願の一実施例では、該方法200は、第1の充電要求情報送信済みの持続時間が第1の時間間隔以上である場合、動力電池の放電を停止するように制御することをさらに含む。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0076
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0076】
例えば、BMSが充電スタンドに第1の充電要求情報を送信するときにタイマーを起動してもよく、該タイマーの時間長は、該第1の時間間隔であってもよく、該タイマーがタイムアウトすると、動力電池の放電を停止するように制御する。例えば、該タイマーの時間長は、60sであってもよく、つまり該第1の時間間隔は、60sである。
【手続補正4】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0077
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0077】
また例えば、BMSが充電スタンドに第1の充電要求情報を送信するときに計時を開始してもよく、計時時間長が第1の時間間隔に達すると、動力電池の放電を停止するように制御する。例えば、該第1の時間間隔は、60sである。
【手続補正5】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0078
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0078】
任意選択的に、本出願の別の実施例では、該方法200は、動力電池を放電するように制御する持続時間が第2の時間間隔以上である場合、動力電池の放電を停止するように制御することをさらに含む。
【手続補正6】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0079
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0079】
例えば、BMSが動力電池を放電するように制御する開始時刻にタイマーを起動してもよく、該タイマーの時間長は、第2の時間間隔であってもよく、該タイマーがタイムアウトする場合のみ、動力電池の放電を停止するように制御する。例えば、該タイマーの時間長は、20sであってもよく、つまり該第2の時間間隔は、20sである。
【手続補正7】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0080
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0080】
また例えば、BMSが動力電池を放電開始するように制御するときに計時を開始してもよく、計時時間長が第2の時間間隔に達すると、動力電池の放電を停止するように制御する。例えば、該第2の時間間隔は、20sである。
【手続補正8】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0081
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0081】
理解すべきこととして、該第1の時間間隔と該第2の時間間隔は、設定されてもよい。
【手続補正9】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
動力電池の充電過程において、前記動力電池の負極電位を取得することと、
前記負極電位と予め設定された電位との差が安全閾値以下である場合、前記動力電池を放電するように制御することとを含む
、動力電池充電の方法。
【請求項2】
前記の、前記負極電位と予め設定された電位との差が安全閾値以下である場合、前記動力電池を放電するように制御することは、
前記負極電位と前記予め設定された電位との差が安全閾値以下である場合、充電電流を0にするよう要求するための第1の充電要求情報を充電スタンドに送信することと、
収集した前記動力電池の実際充電電流が電流閾値以下である場合、前記動力電池を放電するように制御することとを含む
、請求項1に記載の動力電池充電の方法。
【請求項3】
前記動力電池充電の方法は、
前記第1の充電要求情報が送信された持続時間が第1の時間間隔以上である場合、前記動力電池の放電を停止するように制御することをさらに含む
、請求項2に記載の動力電池充電の方法。
【請求項4】
前記動力電池充電の方法は、
前記動力電池を放電するように制御する持続時間が第2の時間間隔以上である場合、前記動力電池の放電を停止するように制御することをさらに含む
、請求項1又は2に記載の動力電池充電の方法。
【請求項5】
前記動力電池充電の方法は、
前記動力電池の放電を停止するように制御する場合、充電マッチングテーブルに基づき、充電スタンドに第2の充電要求情報を送信することをさらに含み、前記第2の充電要求情報は、前記動力電池を充電するよう前記充電スタンドに要求するためのものである
、請求項3又は4に記載の動力電池充電の方法。
【請求項6】
電池管理システムであって、
動力電池の充電過程において、前記動力電池の負極電位を取得するための取得モジュールと、
前記負極電位と予め設定された電位との差が安全閾値以下である場合、前記動力電池を放電するように制御するための制御モジュールとを含む
、電池管理システム。
【請求項7】
前記制御モジュールは、具体的に、
前記負極電位と前記予め設定された電位との差が安全閾値以下である場合、充電電流を0にするよう要求するための第1の充電要求情報を充電スタンドに送信し、
収集した前記動力電池の実際充電電流が電流閾値以下である場合、前記動力電池を放電するように制御するために用いられる
、請求項6に記載の電池管理システム。
【請求項8】
前記制御モジュールは、さらに、
前記第1の充電要求情報が送信された持続時間が第1の時間間隔以上である場合、前記動力電池の放電を停止するように制御するために用いられる
、請求項7に記載の電池管理システム。
【請求項9】
前記制御モジュールは、さらに、
前記動力電池を放電するように制御する持続時間が第2の時間間隔以上である場合、前記動力電池の放電を停止するように制御するために用いられる
、請求項6又は7に記載の電池管理システム。
【請求項10】
前記電池管理システムは、
前記動力電池の放電を停止するように制御する場合、充電マッチングテーブルに基づき、充電スタンドに第2の充電要求情報を送信するための通信モジュールをさらに含み、前記第2の充電要求情報は、前記動力電池を充電するよう前記充電スタンドに要求するためのものである
、請求項8又は9に記載の電池管理システム。
【請求項11】
動力電池の電池管理システムであって、メモリとプロセッサとを含み、前記メモリは、命令を記憶するためのものであり、前記プロセッサは、前記命令を読み取り、且つ前記命令に基づいて請求項1~5のいずれか一項に記載の動力電池充電の方法を実行するためのものである
、電池管理システム。
【国際調査報告】