(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-12-13
(54)【発明の名称】塩素化プロパン生成からの重質副生成物ストリームを処理するための方法
(51)【国際特許分類】
C07C 17/275 20060101AFI20231206BHJP
C07C 19/01 20060101ALI20231206BHJP
C07C 17/395 20060101ALI20231206BHJP
B01J 27/128 20060101ALI20231206BHJP
B01J 31/02 20060101ALI20231206BHJP
C07B 61/00 20060101ALN20231206BHJP
【FI】
C07C17/275
C07C19/01
C07C17/395
B01J27/128 Z
B01J31/02 102Z
C07B61/00 300
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023532763
(86)(22)【出願日】2021-09-29
(85)【翻訳文提出日】2023-05-30
(86)【国際出願番号】 US2021052638
(87)【国際公開番号】W WO2022115151
(87)【国際公開日】2022-06-02
(32)【優先日】2020-11-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】515160552
【氏名又は名称】ブルー キューブ アイピー エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】110003708
【氏名又は名称】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
(72)【発明者】
【氏名】マイヤーズ、ジョン・ディー.
【テーマコード(参考)】
4G169
4H006
4H039
【Fターム(参考)】
4G169AA02
4G169AA06
4G169BA21A
4G169BA21B
4G169BA49
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4G169BC29A
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4G169BE16A
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4G169BE37A
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4G169DA02
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4H006AA02
4H006AB84
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4H006BA18
4H006BA37
4H006BA53
4H006BD32
4H006BD52
4H006BD53
4H006BD81
4H006BD84
4H006EA02
4H039CA52
4H039CF10
(57)【要約】
塩素化プロペンの最終産出量を増加させ、金属触媒を除去するために、初期の塩素化プロパン形成反応からの重質副生成物ストリームを処理するためのプロセス。特に、本明細書に開示されるプロセスは、塩素化プロパンが触媒脱塩化水素反応において塩素化プロペンに転化される一方で、また、最終的な塩素化プロペン産出量を増加させるために、別個の副生成物ストリームを苛性物で処理して、金属触媒から金属を沈殿させ、任意の残りの塩素化プロパンを塩素化プロペンに転化する、一次ストリームを提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
塩素化プロペンを生成するためのプロセスであって、
第1の反応において、塩素化メタン、金属含有触媒、促進剤、及びアルケン又は塩素化アルケンを一緒に接触させて、クロロプロパン及び重質副生成物を含む粗クロロプロパン生成物を形成することと、
粗クロロプロパン生成物分離において、前記粗クロロプロパン生成物を軽質画分と重質画分とに分離することであって、前記軽質画分が、前記粗クロロプロパンからの前記クロロプロパンの少なくとも半分を含み、重質画分が、残りのクロロプロパン、前記重質副生成物、前記金属含有触媒、前記促進剤、並びに前記促進剤及び金属含有触媒から形成された任意の錯体を含む、分離することと、
第2の反応において前記重質画分の少なくとも一部分を水性塩基と接触させ、それによって、前記金属含有触媒から沈殿した金属を含む水性相、及び脱塩化水素反応を介して形成されたクロロプロペンを含む粗クロロプロペン生成物を含む有機相を形成することと、
前記水性相を前記有機相から分離することと、
を含む、プロセス。
【請求項2】
別個の脱塩化水素反応において、前記軽質画分をルイス酸触媒と接触させ、それによって、クロロプロペンを形成することを更に含む、請求項1に記載のプロセス。
【請求項3】
前記別個の脱塩化水素反応の前に、前記クロロプロパン以外の1つ以上の成分を除去するために、前記軽質画分が更に精製される、請求項2に記載のプロセス。
【請求項4】
前記第2の反応の前に、溶媒が前記重質画分に添加される、請求項1に記載のプロセス。
【請求項5】
前記重質画分及び/又は前記有機相の少なくとも一部分が、前記第1の反応又は前記粗クロロプロパン生成物分離に再循環される、請求項1に記載のプロセス。
【請求項6】
前記有機相を、前記クロロプロペンを含む脱塩化水素軽質画分と、前記促進剤、前記重質副生成物、及び前記クロロプロペンよりも高い沸点を有する化合物を含む脱塩化水素重質画分とに分離することを更に含む、請求項1に記載のプロセス。
【請求項7】
前記脱塩化水素重質画分の少なくとも一部分を前記第1の反応に再循環させること、前記脱塩化水素重質画分の少なくとも一部分を前記粗クロロプロパン生成物分離に再循環させること、前記脱塩化水素重質画分の少なくとも一部分を焼却すること、又はこれらの組合せのうちの1つ以上を更に含む、請求項6に記載のプロセス。
【請求項8】
前記脱塩化水素軽質画分を前記粗クロロプロパン生成物分離に再循環させることを更に含む、請求項1に記載のプロセス。
【請求項9】
前記沈殿した金属が金属水酸化物の形態である、請求項1に記載のプロセス。
【請求項10】
前記沈殿した金属を前記水性相から除去することを更に含む、請求項1に記載のプロセス。
【請求項11】
前記水性相及び有機相から除去した後に、前記沈殿した金属が溶媒で洗浄されるか、又は水性酸中に溶解される、請求項10に記載のプロセス。
【請求項12】
前記クロロプロパンが、1,1,1,3-テトラクロロプロパン、1,1,1,3,3-ペンタクロロプロパン、及びこれらの混合物の群から選択される、請求項1に記載のプロセス。
【請求項13】
前記クロロプロペンが、1,1,3-トリクロロプロペン、3,3,3-トリクロロプロペン、1,2,3-トリクロロプロペン、1,1,3,3-テトラクロロプロペン、1,3,3,3-テトラクロロプロペン、及びこれらの混合物の群から選択される、請求項1に記載のプロセス。
【請求項14】
前記クロロプロパンが1,1,1,3-テトラクロロプロパンを含む、請求項1に記載のプロセス。
【請求項15】
前記粗クロロプロパンが重質副生成物を含み、前記重質副生成物が1,1,1,3-テトラクロロプロパンよりも高い沸点を含有し、
前記粗クロロプロパン生成物分離が、前記重質副生成物を前記重質画分に分離することを含む、請求項1に記載のプロセス。
【請求項16】
前記クロロプロペンがトリクロロプロペンを含む、請求項15に記載のプロセス。
【請求項17】
クロロプロペンが、1,1,3-トリクロロプロペン、3,3,3-トリクロロプロペン、1,2,3-トリクロロプロペン、及びこれらの混合物の群から選択される、請求項16に記載のプロセス。
【請求項18】
前記粗クロロプロペンが脱塩化水素重質副生成物を含み、前記脱塩化水素重質副生成物が、1,1,3-トリクロロプロペン、3,3,3-トリクロロプロペン、1,2,3-トリクロロプロペン、及びこれらの混合物よりも高い沸点を有する化合物を含む、請求項17に記載のプロセス。
【請求項19】
前記クロロプロパンが1,1,1,3,3-ペンタクロロプロパンを含む、請求項1に記載のプロセス。
【請求項20】
前記粗クロロプロパンが重質副生成物を含み、前記重質副生成物が1,1,1,3,3-ペンタクロロプロパンよりも高い沸点を含有し、
前記粗クロロプロパン生成物分離が、前記重質副生成物を前記重質画分に分離することを含む、請求項19に記載のプロセス。
【請求項21】
前記クロロプロペンがテトラクロロプロペンを含む、請求項20に記載のプロセス。
【請求項22】
前記クロロプロペンが、1,1,3,3-テトラクロロプロペン、1,3,3,3-テトラクロロプロペン、及びこれらの混合物の群から選択される、請求項21に記載のプロセス。
【請求項23】
前記粗クロロプロペンが脱塩化水素重質副生成物を含み、前記脱塩化水素重質副生成物が、1,1,3,3-テトラクロロプロペン、1,3,3,3-テトラクロロプロペン、及びこれらの混合物よりも高い沸点を有する化合物を含む、請求項22に記載のプロセス。
【請求項24】
前記塩素化メタンが四塩化炭素である、請求項1に記載のプロセス。
【請求項25】
前記金属触媒が遷移金属触媒である、請求項1に記載のプロセス。
【請求項26】
前記金属触媒が、鉄金属、FeCl
3、又はこれら2つの組合せである、請求項1に記載のプロセス。
【請求項27】
前記促進剤がホスフェートを含む、請求項1に記載のプロセス。
【請求項28】
前記促進剤が、トリアルキルホスフェート又はトリアルキルホスファイトから選択される、請求項1に記載のプロセス。
【請求項29】
相間移動触媒が前記第2の反応において存在する、請求項1に記載のプロセス。
【請求項30】
前記相間移動触媒が、テトラアルキルアンモニウム化合物、テトラアルキルホスホニウム化合物、ピリジニウム塩、トリオクチルメチルアンモニウムクロリド(Aliquat 336)、ジオクチルジメチルアンモニウムクロリド、Arquad 2HT-75、ベンジルジメチルデシルアンモニウムクロリド、ベンジルジメチルテトラデシルアンモニウムクロリド、ジメチルジオクタデシルアンモニウムクロリド、ドデシルトリメチルアンモニウムクロリド、メチルトリオクチルアンモニウムクロリド、テトラブチルアンモニウムクロリド、テトラヘキシルアンモニウムクロリド、テトラオクチルアンモニウムクロリド、トリドデシルメチルアンモニウムクロリド、テトラメチルホスホニウムクロリド、テトラフェニルホスホニウムブロミド、トリヘキシルテトラデシルホスホニウムクロリド、及びこれらの組合せから選択される、請求項1に記載のプロセス。
【請求項31】
前記第2の反応における前記脱塩化水素反応が、45℃~100℃の温度及び0Pa(0psig)~1380kPa(200psig)の圧力で行われる、請求項1~30のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項32】
前記水性塩基がNaOHである、請求項1に記載のプロセス。
【請求項33】
前記重質画分に接触する前記水性塩基中に存在する前記NaOHが、1~20重量%で存在する、請求項1に記載のプロセス。
【請求項34】
前記重質画分に接触する前記水性塩基が、塩化リチウム、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化バリウム、塩化カルシウム、又はこれらの組合せからなる群から選択されるアルカリ金属又はアルカリ土類金属の塩化物塩を含む、請求項1に記載のプロセス。
【請求項35】
前記水性塩基の前記塩素化メタンに対するモル比が0.1~2.0である、請求項1に記載のプロセス。
【請求項36】
前記プロセスがバッチ又は連続プロセスである、請求項1に記載のプロセス。
【請求項37】
前記反応ステップのうちのいずれか1つが、ジェット撹拌反応器又は一連のジェット撹拌反応器内で行われる、請求項1に記載のプロセス。
【請求項38】
前記プロセスが、前記クロロプロペンを塩素化剤と接触させることを更に含む、請求項1に記載のプロセス。
【請求項39】
クロロプロパンストリームを処理するためのプロセスであって、
第1の反応において、テロゲン、金属含有触媒、促進剤、及びタキソゲンを一緒に反応させて、クロロプロパン及び重質副生成物を含む粗クロロプロパン生成物を形成することと、
前記粗クロロプロパン生成物を軽質ストリームと重質ストリームとに分割することであって、前記軽質ストリームが、前記クロロプロパンの大部分を含み、前記重質ストリームが、残りのクロロプロパン、前記重質副生成物、前記金属含有触媒、前記促進剤、並びに前記促進剤及び金属含有触媒から形成された任意の錯体を含む、分割することと、
前記重質ストリームを水性塩基と接触させて、前記金属含有触媒からの金属の水性相への沈殿、及び脱塩化水素反応からのクロロプロペンを含む粗クロロプロペン生成物の形成を生じさせることと、
前記水性相を前記有機相から分離することと、
を含む、プロセス。
【請求項40】
システムであって、
塩素化メタン、金属含有触媒、促進剤、及び塩化アルケン又は塩化ビニルの混合物を反応させて、クロロプロパンを含む粗クロロプロパン生成物を形成する、第1の反応器と、
前記粗クロロプロパン生成物が軽質画分と重質画分とに分離される分離器であって、前記軽質画分が、前記粗クロロプロパンからの少なくとも半分の前記クロロプロパンを含み、前記重質画分が、残りのクロロプロパン及び前記金属含有触媒、前記促進剤、並びに形成された前記促進剤と金属含有触媒との任意の錯体を含む、分離器と、
前記重質画分を水性塩基と接触させ、それによって、前記金属含有触媒から沈殿した金属化合物を含む水性相、及びクロロプロペンを含む粗クロロプロペン生成物を含む有機相を形成する、第2の反応器であって、前記粗クロロプロペン生成物が、脱塩化水素反応を介して形成される、第2の反応器と、
を備える、システム。
【請求項41】
前記水性相が前記有機相から分離される第2の分離器を更に備える、請求項40に記載のプロセス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
相互参照
本出願は、2020年11月30日に出願された米国仮特許出願番号第63/119,434号に基づく国際出願であり、これは、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
技術分野
本開示は、概して、クロロアルカンストリームを処理するための、特に副生成物ストリームの処理、並びにクロロアルケン及びの形成のためのプロセスに関する。
【背景技術】
【0003】
クロロアルケンは、農産物、冷却剤、医薬品、洗浄溶剤、発泡剤、ゴム、シリコン、及び冷却剤を含む多くの製品にとって有用な中間体である。かかるクロロアルケンを形成するために、概して、初期反応は、塩素化アルカンを含む中間生成物の形成のために行われる。次いで、これらのクロロアルカンは、クロロアルケンを生成するために後続の反応に供される。
【0004】
初期反応からの粗中間生成物は、触媒、重質塩素化副生成物、及び他の化合物を含む、クロロアルカン以外の成分を含み得る。分離プロセスは、クロロアルケンの形成のための後続の反応の前に、精製された中間生成物を得るために、粗中間生成物に対して実施され得る。これらの分離から様々な残留物ストリームが発生する場合があり、これらは再利用されるか、更に処理されるか、又は処分され得る。
【0005】
ここで、本技術の実装形態を、単なる例として、添付図面を参照して記載する。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】重質副生成物ストリームの苛性処理のためのプロセスの1つの例示的な実施形態の概略図である。
【
図2】重質副生成物ストリームの苛性処理のためのプロセスの1つの例示的な実施形態の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
詳細な説明
本開示の様々な実施形態が、以下で詳細に論じられる。本開示の概念は、様々な変更及び代替的な形態に影響を受けやすいが、その特定の実施形態は、図面において例として示されており、本明細書において詳細に説明される。しかしながら、開示された特定の形態に本開示の概念を限定する意図はなく、反対に、本開示及び添付される請求項に整合する全ての修正、等価物、及び代替物を網羅することが意図されることは、理解されるべきである。
【0008】
図面において、いくつかの構造的又は方法的特徴が、特定の配置及び/又は順序で示され得る。しかしながら、かかる特定の配置及び/又は順序は必要とされない場合があることは、理解されるべきである。むしろ、いくつかの実施形態において、かかる特徴は、例解的な図に示されるものとは異なる態様及び/又は順序で配置され得る。追加的に、特定の図における構造的又は方法的特徴の包含は、かかる特徴が全ての実施形態において必要とされることを意味することを意図されたものではなく、いくつかの実施形態においては含まれないか、又は他の特徴と組み合わされ得る。
【0009】
(I)序論
フルオロカーボンは数多くの製品に採用されている非常に有益な化合物であり、大半が冷却剤として使用されている。フルオロカーボンの形成への化学的経路において、数多くの中間化合物も調製される。これらの中間化合物は、それら自体が有益であるだけでなく、フルオロカーボンの調製における全体的なコストを削減するために、それらの調製のためのプロセスも有益である。コストを削減するために、それらの形成のためのより効率的かつ効果的なプロセスが求められる。かかる中間化合物としては、様々な塩素化アルカン及び塩素化アルケンが挙げられる。
【0010】
本明細書には、塩素化プロペンの最終産出量を増加させ、金属触媒を除去するために、初期の塩素化プロパン形成反応からの重質副生成物ストリームを処理するためのプロセスが開示される。特に、本明細書に開示されるプロセスは、塩素化プロパンが触媒脱塩化水素反応において塩素化プロペンに転化される一方で、また、最終的な塩素化プロペン産出量を増加させるために、別個の副生成物ストリームを苛性物で処理して、任意の残りの塩素化プロパンを塩素化プロペンに転化する、一次又は主ストリームを提供する。
【0011】
テロメリゼーションを介して初期反応を行って、塩素化プロパンを形成する。この反応から、望ましい塩素化プロパン中間体、並びに様々な重質副生成物及び残留反応成分を有する粗塩素化プロパン生成物が形成される。この粗塩素化プロパン生成物は、精製された塩素化プロパンを有する軽質画分、並びに重質副生成物及び残留反応成分を有する重質画分を生成するために、分離プロセスに供される。軽質画分中の塩素化プロパンは、塩素化プロパンよりも軽い成分を除去するために、更に精製され得る。したがって、精製された塩素化プロパンは、脱塩化水素反応において、ルイス触媒を使用して塩素化プロペンに転化される。重質画分は、典型的には、塩素化プロパン、及び塩素化プロパンよりも重い副生成物、及び金属触媒、促進剤、触媒と促進剤との錯体、又は他の反応生成物を含む初期反応からの他の残留成分を含有する。
【0012】
従来、この重質副生成物ストリームは、廃棄物ストリームとみなされる場合があり、処分のために焼却炉に供給されるか、又は触媒成分を初期反応に戻すために少なくとも部分的に再循環され得る。重質副生成物ストリームに関連する問題としては、(1)ストリーム中の錯体化されていない促進剤は最初の塩素化アルカン生成ステップ(例えば、テロメリゼーションステップ)に再循環されたときに触媒的に活性であるのに対して、金属触媒-促進剤錯体は比較的不活性であること、(2)重質副生成物ストリームの金属含有量は、規制要件のために焼却を介して処分することを困難にすること、及び(3)重質副生成物ストリームは依然として、収率損失を表し、焼却ストリームの体積を増加させる有意な量(30~70%)の有用な塩素化プロパン中間体生成物を含有し、それによって、焼却コストを増加させることが挙げられる。
【0013】
しかしながら、本明細書で開示されるように、この重質副生成物ストリームは、代わりに、少なくとも(1)ストリームからの任意の金属触媒の除去、及び(2)残留塩素化プロパンの塩素化プロペンへの転化を含む、多く肯定的な結果を達成するために処理される。処理は、重質画分を、水性塩基などの苛性物と接触させることを含み得る。これにより、金属触媒からの金属の沈殿を引き起こす水性塩基内の沈殿反応、及び塩素化プロパンが塩素化プロペンに転化される脱塩化水素反応がもたらされる。水性塩基の重質画分との接触はまた、水性相及び有機相の2つの相を形成する。金属は、水性相中に沈殿し、有機相は、クロロプロパン及び/又はクロロプロペン生成物、並びに重質副生成物を含有する。水性相は、有機相から分離され、更に処理されて、沈殿した金属を除去することができる。有機相はまた、クロロプロペン生成物を除去するために追加の分離に供され、及び/又は粗クロロプロパン生成物分離に再循環されてもよく、塩素化プロペン生成物は、塩素化プロパン中間生成物とともにオーバーヘッドで蒸留される。
【0014】
本開示の利益としては、より低い沸点の塩素化プロペン生成物は、処理された重質副生成物ストリームからの蒸留又は他の分離操作によって、より容易に回収され、ルイス酸触媒によるクロロプロパンの触媒脱塩化水素からの塩素化プロペン生成物と組み合わせることができることが挙げられる。利点は、望ましいクロロプロペン生成物に対する全体的な収率を増加させ、焼却しなければならない副生成物ストリームの体積を低減し、それによって、焼却コストを削減することをもたらす。
【0015】
本開示からもたらされる別の改善は、重質副生成物ストリーム中に残る塩素化プロパン生成物が、苛性脱塩化水素処理によって塩素化プロペンとして回収されるため、真空蒸留などの粗塩素化プロパン生成物分離のための要件を緩和して、より多くの塩素化プロパン生成物が重質副生成物ストリーム中に残ることを可能にすることができることである。蒸留の真空要件を低減することにより、資本及び運転コストが削減され、蒸留の温度を低減することにより、促進剤の熱分解が低減され、これにより、促進剤再利用の有効性が改善され、促進剤分解生成物によって引き起こされる塩素化プロパン生成反応システム(例えば、テロメリゼーション)における詰まりの問題を阻止することができる。
【0016】
本開示からもたらされる別の改善は、処理された重質副生成物ストリーム中に含有される錯体化されていない促進剤が、初期テロメリゼーション反応器内でより活性であることである。処理された重質副生成物ストリームの一部分は、初期反応器に直接再循環され得るか、又はそれは、粗クロロプロパン生成物分離に再循環され、次いで未処理の重質副生成物ストリームの一部分とともに初期反応器に再循環され得る。後者の場合、再循環された促進剤は、錯体化された促進剤及び錯体化されていない促進剤の両方を含む。かかる実施形態において、未処理の重質副生成物ストリームのみが再循環される場合よりも、より多くの量の錯体化されていない促進剤が初期反応器に再循環される。
【0017】
初期反応において形成される特定の塩素化プロパンは、1,1,1,3-テトラクロロプロパン及び/又は1,1,1,3,3-ペンタクロロプロパンであり得る。脱塩化水素反応から形成される塩素化プロペンは、どの塩素化プロパンが転化されているかに依存する。一般に、塩化物が除去され、二重結合が反応中に加えられる。例えば、1,1,1,3-テトラクロロプロパンは、1,1,3-トリクロロプロペン又は3,3,3-トリクロロプロペンのうちの1つ以上に転化され得、1,1,1,3,3-ペンタクロロプロパンは、1,1,3,3-テトラクロロプロペン及び1,3,3,3-テトラクロロプロペンのうちの1つ以上に転化され得る。
【0018】
(II)塩素化プロパン生成反応
本明細書に開示されるように、本プロセスは、テロメリゼーション反応であり得る塩素化プロパン生成反応から開始し得る。望ましい1つ以上の塩素化プロパンを生成するために、任意の方法が採用され得る。望ましい塩素化プロパンを形成するために、塩素化メタン、アルケン、又は塩素化アルケン、金属触媒、及び促進剤を含む反応混合物が形成され得る。これらの成分は一緒に反応して、望ましい塩素化プロパン生成物、並びに他の重質副生成物塩素化アルカン、金属触媒、促進剤、及び触媒と促進剤との錯体を含む粗塩素化プロパン生成物を形成する。反応を誘導するために、反応混合物は、撹拌及び加熱され得る。
【0019】
いくつかの方法では、塩素化プロパンの形成は、テロメリゼーション反応とみなされ得る。テロメリゼーション反応は、重合の形態とみなすことができ、フリーラジカル機構を伴い得る。テロメリゼーションは、テロメアを生成するために、テロゲンのタキソゲンとの反応を伴う。本開示によれば、塩素化メタンは、テロゲンとみなすことができ、アルケン及び/又は塩素化アルケンは、タキソゲンとみなすことができ、テロメリゼーションは、アルケン及び/又は塩素化アルケンよりも1つ多い炭素を有する前述の塩素化アルカンのうちの1つ以上を生成する。
【0020】
(a)塩素化プロパン
反応から形成された望ましい塩素化プロパンは、任意の塩素化プロパンであり得る。塩基性炭化水素は3つの炭素を有するが、1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、6つ以上の塩素原子を含む任意の数の塩素がプロピル骨格に結合され得る。特定の数の塩素原子は、4つ又は5つ含み得る。塩素は、プロパン炭化水素鎖内の第1、第2、又は第3の炭素上に位置付けられ得る。第1の炭素上に1つ、2つ、若しくは3つの塩化物、及び/又は第2の炭素上に1つ若しくは2つ、及び/又は第3の炭素上に1つ、2つ、若しくは3つ、又は前述の混合物があり得る。いくつかの例では、第1の炭素上に2つ又は3つの塩化物、及び第3の炭素上に1つ又は2つの塩化物があり得る。
【0021】
少なくとも1つの塩素化プロパンは、モノクロロプロパン、ジクロロプロパン、トリクロロプロパン、テトラクロロプロパン、ペンタクロロプロパン、ヘキサクロロプロパン、及びこれらの組み合わせのうちの1つ以上から選択され得る。トリクロロプロパン、テトラクロロプロパン、ペンタクロロプロパン、及びヘキサクロロプロパンの非限定的な例としては、1,1-ジクロロプロパン、1,2-ジクロロプロパン、1,3-ジクロロプロパン、1,1,1-トリクロロプロパン、1,1,2-トリクロロプロパン、1,2,2-トリクロロプロパン、1,2,3-トリクロロプロパン、1,1,1,2-テトラクロロプロパン、1,1,2,2-テトラクロロプロパン、1,1,1,3-テトラクロロプロパン、1,1,2,3-テトラクロロプロパン、1,1,3,3-テトラクロロプロパン、1,1,1,2,3-ペンタクロロプロパン、1,1,2,3,3-ペンタクロロプロパン、1,1,2,2,3-ペンタクロロプロパン、1,1,1,3,3-ペンタクロロプロパン、1,1,1,3,3,3-ヘキサクロロプロパン、1,1,2,2,3,3-ヘキサクロロプロパン、又はこれらの組み合わせが挙げられる。
【0022】
特定の塩素化プロパンとしては、1,1,1,3-テトラクロロプロパン(250fb)及び/又は1,1,1,3,3-ペンタクロロプロパン(240fa)が挙げられる。
【0023】
(b)塩素化メタン
反応は、例えば、ラジカルハロゲンなどの1つ又は2つのラジカル、特に塩化物を放出する分解可能な化合物を含むフリーラジカル反応を開始することが可能な第1の化合物を含む。この第1の化合物は、1つ、2つ、3つ、又は4つの塩化物を有するメタンなどの、任意の塩素化メタンを含み得る。塩素化メタンの例としては、塩化メチル(モノクロロメタン)、ジクロロメタン、クロロホルム(トリクロロメタン)、又は四塩化炭素のうちの1つ以上が挙げられる。特定の例としては、四塩化炭素が挙げられる。
【0024】
第1の化合物は、フッ化物、臭化物、又はヨウ化物などの塩化物に加えてハロゲンを含み得る。かかる化合物としては、例えば、ジクロロモノフルオロメタン、トリクロロフルオロメタン、ジフルオロクロロメタン、トリフルオロクロロメタン、ブロモクロロメタン、ジブロモクロロメタン、トリブロモクロロメタン、クロロヨードメタン、クロロジヨードメタン、クロロトリヨードメタン、ブロモクロロフルオロメタン、ブロモクロロジフルオロメタン、クロロジブロモフルオロメタン、ブロモクロロフルオロヨードメタン、ブロモクロロジヨードメタン、及びこれらの組み合わせが挙げられる。
【0025】
塩素化メタンは、液相であり得、反応のための溶媒として働き得る。金属触媒、促進剤、及び任意の相間移動触媒は、液相の一部であってもよく、例えば、同様に液相中に溶解又は混合されてもよい。
【0026】
(c)アルケン又はハロアルケン
第1の化合物は、第2の化合物と反応し、第2の化合物は、アルケン(オレフィンとも称される)又はハロアルケン(ハロゲン化アルケンとも称される)である。ハロアルケンのハロゲンは、塩化物、フッ化物、ヨウ化物、若しくは臭化物、又はこれらの組み合わせのうちの1つ以上を含み得る。特に、ハロアルケンは、クロロアルケンである。ハロアルケンは、1つ以上の塩化物を含み得、1つ以上の塩化物に加えて、1つ以上の他のハロゲンを含み得る。
【0027】
アルケン又はハロアルケンは、1~6つの炭素原子、例えば1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、又は6つの炭素を有し得、直鎖状、分岐状、又は環状であり得る。アルケンの非限定的な例は、エテン、プロペン、1-ブテン、2-ブテン、イソブテン、1-ペンテン、2-ペンテン、3-ペンテン、2-メチル-2-ブテン、2-メチル-1-ブテン、及び3-メチル-1-ブテンであり得る。ハロアルケンの非限定的な例は、クロロエテン(塩化ビニルとも称される)、臭化ビニル、フッ化ビニル、塩化アリル、フッ化アリル、1-クロロ-2-ブテン、1-フルオロ-2ブテン、3-クロロ-1-ブテン、3-フルオロ-1-ブテン、3-クロロ-1-ペンテン、3-フルオロ-1-ペンテン、及びこれらの組み合わせであり得る。特定の例では、アルケンはエテンであり、ハロアルケンはクロロエテン(モノクロレテン(monochlorethene))である。
【0028】
1つ以上の塩素化プロパンの形成のための反応は、触媒及び促進剤の存在下でクロロメタンをエチレン又は塩化ビニルと反応させることを含む。反応は、任意選択的に、相間移動触媒を含み得る。
【0029】
一般に、塩素化メタンは、過剰に使用されてもよい。一般に、アルケン及び/又はハロアルケンであり得る塩素化メタンの第2の化合物に対するモル比は、約0.1:1~約100:1、又は約0.5:1~約75:1、又は約0.9:1~約20:1、又は約1:1~約10:1、又は約1.2:1~約5:1、又は前述の組み合わせの範囲であり得る。
【0030】
アルケン又はハロアルケンは、気相中にあり、気相中での反応に導入され得る。アルケン又はハロアルケンは、塩素化メタンを有する液相と混和して、以下に更に記載されるように反応を実施してもよい。ジェット混合、エダクション、充填又はトレイ状吸収カラム、又は噴霧吸収器を含む、気体アルケン又はハロアルケンを塩素化液体反応混合物と混合する様々な方法を採用することができる。
【0031】
(d)触媒
塩素化プロパン生成反応は、金属触媒の存在下で実施され得る。本明細書における金属触媒という用語は、金属元素、金属塩、金属合金、又は金属を含有する他の形態若しくは化合物、又はこれらの組み合わせを指す。金属は、遷移金属又は遷移金属塩であり得る。本明細書で使用される場合、「遷移金属触媒」という用語は、遷移金属元素、遷移金属塩、遷移金属含有合金、又はこれらの組み合わせを指す。少なくとも1つの触媒中の遷移金属の非限定的な例としては、鉄及び銅が挙げられ得る。有用な触媒の特定の例としては、塩化鉄(FeCl2又はFeCl3)が挙げられる。当業者によって理解されるように、好適な金属の酸化状態は変動してもよく、例えば、(0)、(I)、(II)、及び(III)であってもよい。好適な遷移金属の非限定的な例は、銅(0)、銅(I)、銅(II)、鉄(0)、鉄(II)、及び鉄(III)であり得る。
【0032】
一実施形態において、少なくとも1つの触媒は、塩の形態であり得る。これらは、金属に対する対イオンとしての有機化合物を有する塩を含み得る。好適な金属塩の非限定的な例としては、アセテート、アセチアセトネート(acetyacetonates)、アルコキシド、ブチレート、カルボニル、二酸化物、ハロゲン化物、ヘキサノエート、水素化物、メシレート、オクタネート、ニトレート、ニトロシルハロゲン化物、ニトロシルニトレート、スルフェート、スルフィド、スルホネート、ホスフェート、及びこれらの組み合わせが挙げられ得る。好適な金属塩の非限定的な例としては、塩化銅、臭化銅、ヨウ化銅、塩化鉄、臭化鉄、ヨウ化鉄、臭化鉄、酸化銅、及び酸化鉄が挙げられ得る。
【0033】
合金の非限定的な例は、グライディングメタル(gliding metal)、青銅、マグネシウム青銅、スズ青銅、アルミニウム青銅、リン青銅、赤真鍮、真鍮、鋳鉄、銑鉄、鋼、工具鋼、及びウーツ鋼であり得る。
【0034】
可溶性金属塩又は金属錯体触媒の塩素化メタンに対するモル比は、約0~約0.1:1、又は約0.0001:1~約0.05:1、約0.0025:1~約0.01:1、又は約0.005:1~約0.008:1、又は約0.001:1~約0.007:1、又は前述の組み合わせの範囲であり得る。
【0035】
いくつかの実施形態において、触媒の少なくとも1つの金属成分は、固体であり、固体金属触媒の表面積の、少なくとも1つの塩素原子を含むハロゲン化メタンに対する比は、少なくとも0.1cm2/(g/時間)であり得る。別の実施形態において、触媒の表面積の、少なくとも1つの塩素原子を含むハロゲン化メタンに対する比は、少なくとも1.0cm2/(g/時間)である。
【0036】
固体金属触媒は、ホイル、シート、スクリーン、ウール、ワイヤ、ボール、プレート、パイプ、ロッド、バー、又は粉末の形態であり得る。様々な実施形態において、少なくとも1つの触媒は、支持体の表面上で固定化され得る。好適な支持体の非限定的な例は、アルミナ、シリカ、シリカゲル、珪藻土、炭素、及び粘土であり得る。
【0037】
固体金属触媒は、存在する場合、固定触媒床の一部であり得る。固体金属触媒は、カートリッジの一部であり得る。追加的に、固体金属触媒は、構造化又は非構造化パッキングの一部であってもよく、金属は、パッキング又は非構造化パッキングの一部である。固定床、カートリッジ、構造化パッキング、又は非構造化パッキングを使用して、触媒は含有され、容易に交換され得る。
【0038】
(e)促進剤
様々な実施形態において、促進剤は、第1の塩素化プロパン生成反応に採用され得る。促進剤は、リン含有化合物であり得る。リン含有化合物は、当業者が理解するように、金属触媒、特に遷移金属触媒と錯体を形成して、反応媒体中に可溶性である遷移金属リン含有化合物錯体を形成し得る。リン含有化合物の非限定的な例としては、トリアルキルホスフェート、トリアルキルホスファイト、若しくはこれらの組み合わせなどのアルキルホスフェート又はアルキルホスファイトが挙げられ得る。トリアルキルホスフェート及びトリアルキルホスファイトの好適な非限定的な例としては、トリエチルホスフェート、トリプロピルホスフェート、トリイソプロピルホスフェート、トリブチルホスフェート(「TBP」)、トリメチルホスファイト、トリエチルホスファイト、トリプロピルホスファイト、トリイソプロピルホスファイト、トリブチルホスファイト、及びトリ-tertブチルホスファイトが挙げられ得る。リン含有化合物は、トリアルキルホスフェート、すなわち、トリブチルホスフェートである。
【0039】
(f)反応条件
塩素化プロパン生成反応は、バッチモード又は連続モードで実行されてもよく、連続モードで実行されてもよい。連続モードでは、撹拌タンク反応器が使用されてもよく、又は理想的なプラグ流反応器の性能にアプローチするための一連の撹拌タンク反応器が利用されて、プロセスの全体的な効率を改善してもよい。当業者によって理解されるように、気体-液体-固体系の混合を改善するために、連続モードにおけるプロセスが様々な方法で撹拌され得る。
【0040】
一般に、ハロゲン化アルカンを調製するためのプロセスは、内部又は外部熱交換器を使用して約80℃~約140℃の温度を維持するために行われる。反応物及び生成物の一部分を沸騰又は蒸発させることによって、反応器の温度が部分的に維持され得る。反応の温度は、約80℃~約140℃、85℃~約130℃、90℃~約120℃、又は約95℃~約115℃に維持され得る。
【0041】
プロセスは、ほぼ大気圧(約14.7psi)~約200psiの圧力で行われてもよく、これにより、気体及び液体の量が好適な量であり、そのため反応が進行し、プロセスの反応速度を維持し得る。プロセスの好ましい圧力は、供給される反応物に依存し得る。タキソゲンがエチレンである実施形態において、プロセスの圧力は、大気圧(約14.7psi)~約200psi、約50psi~約150psi、又は約90psi~約130psiであり得る。タキソゲンがクロロエチレン(塩化ビニル)である実施形態において、プロセスの圧力は、ほぼ大気~約100psi、大気~約70psi、又は大気~約50psiであり得る。
【0042】
クロマトグラフィ(例えば、GC-ガスクロマトグラフィ)などの当業者に既知の任意の方法によって決定されるように、反応が完了するまでの十分な期間にわたって反応を進行させる。反応の持続時間、又は連続反応器内での滞留時間は、10時間未満、又は代替的に7時間未満、又は代替的に5時間未満、又は代替的に3時間未満であり得、5分、又は30分、又は1時間などの、反応が完了又はほぼ完了することを可能にするまでの十分な時間の下限であり得、約5分~約16時間、又は5分~約12時間、約10分~約10時間、約30分~約7時間、又は約1時間~約5時間の範囲であり得る。
【0043】
言及したように、塩素化メタンは、塩素化アルカン生成物、金属触媒、促進剤、及び任意の相間移動触媒とともに液相中にあってもよい。アルケン及び/又は塩素化アルケンは、気相であってもよく、及び/又は気相中での反応に導入されてもよい。気相及び液相は、反応を誘導するために接触又は混和され得、より多い混和物がより効果的な反応を容易にする。例えば、反応混合物は、液相へのガス吸収の増加のために混合又は撹拌され得る。反応器の液相内容物を十分に撹拌する非限定的な方法は、ジェット撹拌、エダクタ、インペラ、反応器中のバッフル、ノズル、噴霧ノズル、又はこれらの組み合わせであり得る。ジェット撹拌は、エダクタ及び/又はノズルを採用し得る。いくつかの例では、液相は、噴霧ノズルを通して気相にポンプ輸送され、液体噴霧中へのガスの吸収をもたらす。代替的に又は追加的に、ノズルは、液相の表面に位置付けられるか、又は気相を通って液相中に向けられ、それにより反応混合物の乱流の増加を提供し得るが、気相を通った液相中への吸収の増加も提供する。
【0044】
その第1及び第2の化合物の反応混合物は、本質的に乾燥しており、すなわち、それは、1000ppmを下回る水含有量を有する。より低い水濃度が望ましいが、必須ではない。
【0045】
(III)粗塩素化プロパンストリームの分離
粗塩素化プロパンの生成後、出口ストリームは、分離ユニット内での分離に供され得る。分離プロセスステップは、望ましい1つ以上の塩素化プロパンを1つ以上の重質副生成物及び他の反応成分から分離する。分離プロセスにおいて、望ましい塩素化プロパン及び低沸点化合物を第1のストリームに分離してもよく、重質副生成物、並びに触媒及び促進剤などの高沸点反応成分を第2のストリームに分離してもよい。第1のストリームは、軽質画分又は上部ストリームであり得、第2のストリームは、重質画分又は下部ストリームであり得る。したがって、これらは、沸点に従って又は他の特性に基づいて分離され得る。代替的に、望ましい塩素化プロパンよりも低く沸騰する成分は、最初に粗塩素化生成物から分離され得、次いで、望ましい塩素化プロパンは、重質画分から軽質画分に分離され得る。
【0046】
いくつかの分離プロセスステップは、粗生成物ストリーム中の塩素化プロパンのほとんど、及びほぼ全てが上部画分に分離され得るが、実際には、最終的に重質画分ストリームに分離される望ましい塩素化プロパンがある。これは、自然の非効率性、化学及び分離プロセスの複雑さ、コスト、並びに分離ユニットの調整に起因し得る。原因が何であれ、望ましい塩素化プロパンの全てが上部ストリームに分離されるわけではなく、少なくとも一部分が下部ストリームに分離される。本明細書に開示されるように、これらの塩素化プロパンは、水性塩基を用いた処理によって塩素化プロペンに転化され得る。したがって、粗塩素化プロパン生成物からの望ましい塩素化プロパンの大部分は、軽質画分に分離され、ルイス酸触媒との反応を介して塩素化プロペンに転化され、重質画分中の残りの塩素化プロパンは、水性塩基を介して塩素化プロペンに転化される。
【0047】
したがって、軽質画分は、粗生成物ストリームからの塩素化プロパンの少なくとも半分、又は代替的に、粗生成物ストリームからの塩素化プロパンの少なくとも半分超を有し得る。
【0048】
いくつかの実施形態において、粗生成物ストリームからの塩素化プロパンの大部分は、軽質画分に分離される。例えば、分離器の条件は、塩素化プロパンのほとんどが軽質画分に分離されるように設定され得る。したがって、軽質画分に分離された粗生成物ストリームからの塩素化プロパンの量は、約50%~約99%の範囲であり得る。かかる範囲は、粗生成物混合物中の塩素化プロパンの少なくとも70%、代替的に少なくとも90%、代替的に少なくとも95%、代替的に少なくとも99%、しかしながら100%未満を含み得、残りの塩素化プロパンは重質画分に分離される。
【0049】
重質画分は処理され、塩素化プロパンは処分されるのではなく塩素化プロペンに転化されるべきであるため、分離器は、より多くの量の塩素化プロパンが重質画分に分離されることを可能にするように、条件を緩和するように調節することができる。これにより、分離器が軽質画分中の多くの塩素化プロパンを回収する必要がないため、コストを節約することができる。したがって、粗ストリームからのより少ないパーセントの塩素化プロパンは、約50%~約90%、又は50%~70%のなどの軽質画分に分離され得、そうすると、軽質画分は、少なくとも50%、代替的に50%超、代替的に少なくとも55%、代替的に少なくとも60%、代替的に少なくとも70%、代替的に少なくとも75%、代替的に少なくとも80%、代替的に少なくとも85%の、粗生成物ストリームからの塩素化プロパンを有し得る。
【0050】
軽質画分自体は、50重量%超、代替的に少なくとも60重量%、代替的に少なくとも75重量%、代替的に少なくとも90重量%、代替的に少なくとも95重量%、代替的に少なくとも99重量%などの塩素化プロパン生成物でほとんど構成され得る。
【0051】
したがって、軽質画分は、望ましい塩素化プロパン以外の成分の残留物を有してもよく、これは、例えば、第1の反応からの残留塩素化メタン、第1の反応からのアルケン及び/又は塩素化アルケン、重質副生成物、並びに望ましい塩素化プロパン以外の他の塩素化アルカン又はアルケンであり得る。第1の反応からの残留塩素化メタン、アルケン、及び/又は塩素化アルケンは、50重量%未満、代替的に30重量%未満、代替的に10重量%未満、代替的に5重量%未満の軽質画分を構成し得る。重質副生成物は、5重量%未満、代替的に3重量%未満、代替的に2重量%未満、代替的に1重量%未満、代替的に0.5重量%未満の軽質画分を構成し得る。望ましい塩素化プロパン以外のこれらの成分を更に除去し、塩素化プロパン軽質画分を更に精製して、望ましい塩素化プロパンの濃度を増加させることができる。軽質画分から除去された任意の成分は、第1の反応に再循環されるか、又は処分され得る。
【0052】
分離ユニットは、フラッシュカラム又は多段蒸留カラムであり得る。一般に、分離ユニットは、軽質画分の蒸発を生じさせる可能な限り最も低い温度で動作することが好ましく、このため、ユニットは、好ましくは、真空下で実行される。より低い温度は、より少ない触媒及び/又は促進剤分解をもたらす。ユニットは、約70℃~約130℃、又は約90℃~約120℃、又は約95℃~約115℃の温度で動作し得る。ユニット内の圧力は、5torr~約50psi、約30torr~大気圧、又は約50torr~約200torrであり得る。より高い真空での操作は、資本及び運転コストを増加させる。したがって、中程度の真空で低温を維持するために、塩素化プロパン生成物の一部を、下部画分の最大約30重量%~約70重量%の下部重質画分中に残すことが望ましい。
【0053】
重質画分に分離される重質副生成物は、粗生成物ストリーム中の他の塩素化アルカン又は塩素化アルケンであり、これらは、望ましくないか、又は望ましい塩素化プロペンに転化されず、別様に処分され得る。重質副生成物は、望ましい塩素化プロパンよりも高い沸点を有するものである。軽質画分に分離される1つ以上の塩素化プロパンは、前に言及したものであり、特に、1,1,1,3-テトラクロロプロパン(250FB)及び/又は1,1,1,3,3-ペンタクロロプロパン(240fa)を含む。したがって、重質副生成物は、粗塩素化プロパンストリーム中にある望ましい塩素化プロパンよりも高い沸点を有するものである。したがって、1,1,1,3-テトラクロロプロパンが塩素化プロパンである場合、重質副生成物は、より大きい沸点を有するものであり、より多くの塩素及び/又はより多くの炭素を有するものを含む。これらは、例えば、テトラクロルペンタン(tetrachlorpentane)(1,1,1,5-及び/又は1,3,3,5-)及び/又は少量のペンタクロロプロパンを含む。1,1,1,3,3-ペンタクロロプロパン(240fa)が塩素化プロパンである場合、重質副生成物は、例えば、ヘキサクロロペンタン及び少量のヘキサクロロプロパンを含み得る。
【0054】
重質画分自体は、少なくとも30~70重量%、代替的に35~50重量%、又は代替的に少なくとも25重量%、代替的に少なくとも30重量%、代替的に少なくとも35重量%、代替的に少なくとも40重量%、代替的に少なくとも50重量%などの望ましい塩素化プロパンを含み得る。
【0055】
重質画分中の他の反応成分は、金属触媒、促進剤、金属触媒と促進剤との錯体、及び存在する場合、相間移動触媒を含む、第1の塩素化プロパン生成反応からの反応物、生成物、又は試薬を含み得る。重質画分はまた、軽質画分に分離しなかった残りのクロロプロパンを含む。
【0056】
分離は、分離ユニットによって実施され得る。この分離ユニットは、沸点に基づいて成分を分離することができる。分離ユニットは、蒸留カラム又はフラッシュユニットを含み得、真空又は1つの雰囲気下で行われ得る。様々な蒸留カラムがこのキャパシティー内で使用されてもよい。蒸留カラムは、単一又は多段蒸留カラム、及び/又は分割壁カラムであり得る。蒸留カラムは、側部抜出及び/又は底段、並びにこれらの組み合わせを含み得る。分離ユニットは、1つ又は2つ、又はそれ以上のサブ分離ユニットで構成され得る。分離ユニットは、再沸器を含み得る。いくつかの実施形態において、中間段からの出口ストリームを提供する側部抜出カラム若しくは蒸留カラム、又は分割壁カラム(分割壁カラム(DWC)は、3つ以上の構成成分の混合物を高純度生成物へと分離することが可能な、単一シェル型の完全に熱的に結合した蒸留カラムである)が、分離器として使用され得る。プロセスによって生成された様々な生成物ストリームの一部分は、再循環して反応器に戻されて、反応速度の上昇、効率の上昇、プロセスの全体的なコストの削減、望ましいハロゲン化アルカンの選択性の上昇、及び望ましいハロゲン化アルカンの収率の上昇を提供することができる。
【0057】
(IV)軽質画分ストリームの塩素化プロペンへの触媒脱塩化水素
分離ユニットからの上部ストリーム、特に軽質画分又は更に精製された軽質画分は、触媒を使用して脱塩化水素反応に供され得る。触媒は、ルイス酸触媒であり得、反応は、反応器容器内で実施され得る。ルイス酸触媒は、反応器に追加されることに先立って溶媒に溶解され得る。ルイス酸触媒は、均質又は不均質な触媒であり得る。様々な実施形態において、ルイス酸触媒は、ガリウム、鉄、アルミニウム、又はこれらの組み合わせを含む。これらのルイス酸触媒の非限定的な例は、ガリウム金属、ガリウム塩、ガリウム合金、鉄金属、鉄塩、鉄合金、アルミニウム、アルミニウム塩、アルミニウム合金、又はこれらの組み合わせであり得る。鉄は、Fe(I)、Fe(II)、及びFe(III)を含むその酸化状態のうちのいずれかにあってもよく、ガリウムは、Ga(I)、Ga(II)、及びGa(III)を含むその酸化状態のうちのいずれかを有してもよい。
【0058】
ガリウム、鉄、及び/又はアルミニウムの塩については、好適なアニオンとしては、アセテート、アセチアセトネート(acetyacetonates)、アルコキシド、ブチレート、カルボニル、二酸化物、ヘキソネート、水素化物、メシレート、オクタノエート、ニトレート、ニトロシルハロゲン化物、ニトロシルニトレート、スルフェート、スルフィド、スルホネート、ホスフェート、塩化物、フッ化物、ヨウ化物、臭化物、及びこれらの組み合わせを含む、有機アニオン又はハロゲン化物アニオンが挙げられる。特定の例のイオンは、塩化物である。
【0059】
特定の例示的な触媒としては、塩化鉄(FeCl3)、塩化ガリウム(GaCl3)、及び/又は塩化アルミニウム(AlCl3)が挙げられる。ルイス酸触媒の形態又は構成の非限定的な例は、液相中の溶解種、固体支持体、パッキング、非構造化パッキング、ホイル、シート、スクリーン、ウール、ワイヤ、ボール、プレート、パイプ、ロッド、バー、塩、又は粉体上に堆積した種であり得る。
【0060】
反応混合物中のルイス酸触媒の重量%(wt%)は、約0.0001重量%~約2.0重量%の範囲であり得る。反応は、無水であり得、100ppm未満の水であり得る。反応温度は、50~200℃、又は100~175℃、又は120~165℃であり得る。反応圧力は、20torr~200psig、30torr~大気圧、又は50torr~200torrであり得る。反応は、反応性蒸留として操作されてもよく、反応が進行するにつれて、HCl及び/又は塩素化プロペンなどの生成物は、オーバーヘッドストリームとして反応器から除去される。除去の程度は、動作温度及び圧力によって決定付けられる。
【0061】
塩素化プロパンの塩素化プロペンへの転化率は、少なくとも85%、又は少なくとも90%、又は少なくとも95%、又は少なくとも98%であり得る。クロロプロペンへの選択率は、少なくとも85%、又は少なくとも90%、又は少なくとも95%、又は少なくとも98%であり得る。
【0062】
第1の塩素化プロパン生成反応で採用される同じタイプの反応器及び混合方法が、触媒脱塩化水素反応に適用され得る。このように、反応は、炭素鋼、又はハステロイ、タンタル、若しくはガラスライニング反応器などの不活性材料で作製された反応器を含む任意の反応器中で実施され得る。ジェット撹拌、エダクタ、ノズル、インペラ、及び/又はバッフルは、内容物を撹拌又は混合して、効率的かつ完全な反応を誘発するために採用され得る。反応器は反応蒸留であってもよく、塩素化プロペン生成物、HCl副生成物、又はこれらの両方が連続的に蒸発され、液体反応混合物からオーバーヘッドで蒸留される。
【0063】
形成される塩素化プロペン生成物は、第1の塩素化プロパン生成反応においてどの塩素化プロパンが形成されたかに依存する。
【0064】
(V)下部ストリームの苛性脱塩化水素及び沈殿反応
(a)苛性物を用いた重質画分の処理
分離ユニットからの下部ストリーム、特に重質画分は、併発沈殿反応及び脱塩化水素反応のための水性塩基などの、苛性物で処理され得る。重質画分は、塩素化メタン又は他の好適な溶媒、特に四塩化炭素で希釈されてもよく、苛性物で事前に処理されてもよい。苛性処理は、(1)金属触媒からの金属が金属水酸化物として沈殿すること、及び(2)重質画分中の塩素化プロパンが1つ以上の塩素化プロペンに転化されることをもたらす。水性塩基の重質画分への添加は、水性相及び有機相を形成する。金属触媒からの金属は、水性相中に沈殿するのに対して、塩素化プロペンは、有機相中で形成される。水性相及び有機相は、その後、触媒又は促進剤を再使用し、別個のストリーム中で塩素化プロペンを生成するように分離され得る。
【0065】
重質画分ストリームの処理は、水性塩基を用いられ得る。塩基は、アルカリ金属又はアルカリ土類金属の水酸化物などの無機塩基であり得る。無機塩基は、アルカリ金属又はアルカリ土類金属の水酸化物であり得る。これらのアルカリ金属又はアルカリ土類金属塩基の非限定的な例は、LiOH、NaOH、KOH、Ba(OH)2、Ca(OH)2、Na2CO3、K2CO3、NaHCO3、KHCO3、又はこれらの組み合わせを含み得る。特に、アルカリ又はアルカリ土類金属塩基は、NaOH、KOH、又はこれらの組み合わせ、特にNaOHを含み得る。脱塩化水素反応の間、塩基は、重質画分中の化合物の塩素又は他のハロゲンのうちの1つ以上と反応し得、それによってアルカリ金属又はアルカリ土類金属の塩化物塩を形成し得る。本明細書に説明される脱塩化水素反応の結果として形成され得る特定の塩は、塩化ナトリウムである。
【0066】
水中の無機塩基の濃度は、5重量%~約50重量%の範囲であり得る。様々な実施形態において、脱塩化水素試薬の濃度は、5重量%~約50重量%、7重量%~約40重量%、9重量%~約30重量%、又は10重量%~約20重量%の範囲であり得る。特定の実施形態において、無機塩基の濃度は、5重量%~約12重量%の範囲であり得る。
【0067】
一般に、塩基の塩素化プロパンに対するモル比は、0.1:1.0~約2.0:1.0の範囲であり得る。様々な実施形態において、塩基の塩素化アルカンに対するモル比は、0.1:1.0~約2.0:1.0、又は1.0:1.0~約1.75:1.0、又は1.05:1.0~約1.3:1.0の範囲であり得る。第1の反応からの重質副生成物などの、脱塩化水素反応器への供給物中の他の成分が脱塩化水素される場合、これらの範囲は、塩基の、脱塩化水素することができる成分の合計に対するモル比にも当てはまり得る。
【0068】
塩素化プロパンの塩素化プロペンへの転化率は、少なくとも85%、又は少なくとも90%、又は少なくとも95%、又は少なくとも98%であり得る。クロロプロペンへの選択率は、少なくとも85%、又は少なくとも90%、又は少なくとも95%、又は少なくとも98%であり得る。
【0069】
プロセスの温度は、関与する化合物の濃度、選択された塩基のタイプ、及び塩基の濃度によって変動し得る。一般的に、プロセスの温度は、一般的に約20℃~約120℃、代替的に約45℃~約95℃、又は約55℃~約85℃であり得る。
【0070】
概して、圧力は、約0psig~約1000psig、約0psig~約500psig、又は約0psig~約200psig、又は約0psig~約40psigの範囲であり得る。本プロセスは、窒素、アルゴン又はヘリウムのような不活性雰囲気下で行われ得る。
【0071】
沈殿及び脱塩化水素プロセスは、バッチモード又は連続モードで実行され得る。本プロセスは、二相系の混合を改善するために、本明細書に開示される方法によって撹拌され得る。第1の塩素化プロパン生成反応で採用される同じタイプの反応器及び混合方法が、触媒脱塩化水素反応に適用され得る。このように、反応は、炭素鋼、又はハステロイ、タンタル、若しくはガラスライニング反応器などの不活性材料で作製された反応器を含む任意の反応器中で実施され得る。ジェット撹拌、エダクタ、ノズル、インペラ、及び/又はバッフルは、内容物を撹拌又は混合して、効率的かつ完全な反応を誘発するために採用され得る。ジェット混合は、新鮮な液体供給物、生成物廃液ストリーム、リサイクルストリーム、又はこれらの組み合わせを、少なくとも1つのノズルに供給することを含み得る。このジェット撹拌反応器システムにおいて、内部リサイクル、新鮮な供給物又はその両方を含む液体材料が、外部ポンプによって、反応器内へと垂直方向に、接線方向に又は径方向に導入される。
【0072】
反応は、反応が完了するまで十分な時間の間進行することが可能となり得る。
【0073】
いくつかの例において、苛性脱塩化水素は、相間移動触媒を利用し得る。相間移動触媒の非限定的な例は、四級アンモニウム塩、ホスホニウム塩、及びピリジニウム塩であり得る。いくつかの実施形態において、相間移動触媒は、四級アンモニウム塩であり得る。好適な塩の非限定的な例は、塩化物、臭化物、ヨウ化物、又は酢酸塩である。四級アンモニウム塩の非限定的な例としては、トリオクチルメチルアンモニウムクロリド(Aliquat(登録商標)336)、トリオクチルメチルアンモニウムブロミド、ジオクチルジメチルアンモニウムクロリド、ジオクチルジメチルアンモニウムブロミド、Arquad 2HT-75、ベンジルジメチルデシルアンモニウムクロリド、ベンジルジメチルデシルアンモニウムブロミド、ベンジルジメチルデシルアンモニウムヨージド、ベンジルジメチルテトラデシルアンモニウムクロリド、ジメチルジオクタデシルアンモニウムクロリド、ドデシルトリメチルアンモニウムクロリド、テトラブチルアンモニウムクロリド、テトラブチルアンモニウムブロミド、テトラブチルアンモニウムヨージド、テトラブチルアンモニウムアセテート、テトラヘキシルアンモニウムクロリド、テトラオクチルアンモニウムクロリド、トリドデシルメチルアンモニウムクロリド、テトラエチルアンモニウムクロリド、テトラエチルアンモニウムブロミド、テトラエチルアンモニウムヨージド、又はこれらの組み合わせが挙げられる。いくつかの実施形態において、1つよりも多い相間移動触媒が使用される。好ましい実施形態において、相間移動触媒は、トリオクチルメチルアンモニウムクロリド(Aliquat(登録商標)336)である。
【0074】
塩素化メタン、特に四塩化炭素は、苛性脱塩化水素の前に、重質画分に添加され得る。これは、相分離だけでなく、有機相から塩素化プロペン生成物を取り除くのに役立ち得る。
【0075】
相間移動触媒の量は、成分の総重量を基準にして約0.1重量%~約5.0重量%、代替的に約0.3重量%~約1重量%、又は0.4重量%~約0.7重量%の範囲であり得る。これらの濃度を達成するための相間移動触媒添加量は、存在する場合、第1の反応からの重質画分中の既存の量に依存する。
【0076】
(b)反応生成物
沈殿反応、及び水性塩基との接触からの脱塩化水素反応は、反応生成物の有機相を構成する粗塩素化プロペン生成物の形成をもたらす。粗塩素化プロペン生成物は、塩素化プロペン、並びに他の副生成物及び反応成分を含む。脱塩化水素反応生成物は、どの塩素化アルカンが反応に提供されたかに依存する。概して、脱塩化水素反応は、塩化物の損失、及び脱塩化水素される化合物中の二重結合の形成をもたらす。いくつかの実施形態において、テトラクロロプロパンの脱塩化水素は、トリクロロプロペンをもたらし、ペンタクロロプロパンの脱塩化水素は、テトラクロロプロペンをもたらし、ヘクスクロロプロパンの脱塩化水素は、ペンタクロロプロペンをもたらす。
【0077】
例示的な塩素化プロペン生成物としては、1,1,3-トリクロロプロペン、3,3,3-トリクロロプロペン、1,2,3-トリクロロプロペン、1,1,3,3-テトラクロロプロペン、1,3,3,3-テトラクロロプロペン、及びこれらの混合物が挙げられる。特に、1,1,1,3-テトラクロロプロパン(250fb)は、1,1,3-トリクロロプロペン又は3,3,3-トリクロロプロペンのうちの1つ以上に脱塩化水素する。1,1,1,3,3-ペンタクロロプロパン(240fa)は、1,1,3,3-テトラクロロプロペン、1,3,3,3-テトラクロロプロペンのうちの1つ以上に脱塩化水素する。
【0078】
望ましい塩素化プロペンに加えて、粗塩素化プロペン生成物は、他の塩素化アルカン及びアルケンを含む他の副生成物を含む。これは、望ましい塩素化プロペンよりも高い沸点を有するより重い成分を含み得る。更に、促進剤などの第1の塩素化アルカン生成反応からの残留成分、及び/又は相間移動触媒があり得る。
【0079】
塩素化プロパンの脱塩化水素に加えて、水性塩基による処理はまた、沈殿反応生成物を生成する。特に、第1の塩素化プロパン生成反応で採用される金属触媒からの金属は、水性相中に沈殿する。触媒からの金属は、塩基と反応して、金属水酸化物を形成する。したがって、沈殿の生成物は、金属触媒からの金属水酸化物を含み、そのため、形成された生成物は、金属触媒中で採用される金属に依存する。沈殿生成物の非限定的な例としては、水酸化鉄及び/若しくは水酸化銅、又は第1の塩素化プロパン生成反応において金属触媒として使用された他の合金若しくは金属が挙げられる。塩基との反応はまた、例えば、塩化ナトリウムなどのアルカリ金属又はアルカリ土類金属のハロゲン化物であり得る塩副生成物を形成する。
【0080】
(VI)苛性反応生成物の分離
水性塩基による処理は、水性相及び有機相を有するストリームを形成する。水性相は、金属塩化物及び有機相から沈殿した金属、又は塩素化プロパン、塩素化プロペン、及び重質副生成物、並びに使用される場合第1の反応からの促進剤及び相間移動触媒を含む粗塩素化プロペンを含む。水性相及び有機相は、互いに分離されてもよい。次いで、水性相及び有機相は、別個に処理又は処分され得る。水性相を処理して、金属水酸化物を水性相から除去することができる。例えば、固体金属水酸化物は、沈降、濾過、又は遠心分離などの従来の固体技法によって除去され得る。金属水酸化物のこの除去は、反応器内で、反応器からの除去後、及び/又は有機相からの水性相の分離後に行うことができる。
【0081】
金属水酸化物沈殿物は、触媒を生成するために使用され得るか、又は別様に処分され得る。代替的に、金属水酸化物は、水性相中に残され、混合物は廃水処理施設に送ることによって処分され得る。
【0082】
(VII)粗塩素化プロペン反応生成物の分離
有機相からの金属の除去は、粗塩素化プロペン反応生成物の成分の更なる処理、再循環、及び/又は焼却を容易にする。苛性反応からのこの出口ストリームは、第2の分離ユニットに供給され得る。第2の分離ユニットは、粗塩素化プロペンストリームを、精製された塩素化プロペンを有する軽質画分、及び重質画分に分離する。下部重質画分は、塩素化アルカン及びアルケンを含む重質副生成物を含む。これらの重質副生成物は、軽質画分中の望ましい塩素化プロペンを超える沸点を有する。重質画分はまた、第1の反応又は苛性物による反応に供給された促進剤及び任意の相間移動触媒などの、第1の塩素化アルカン生成反応からの反応成分を含む。軽質画分は、粗塩素化プロペン反応生成物よりも望ましい塩素化プロペンのより高い濃度を有し、少なくとも95%の塩素化プロペン、代替的に少なくとも96%の塩素化プロペン、代替的に少なくとも97%の塩素化プロペン、代替的に少なくとも98%の塩素化プロペン、代替的に少なくとも99%の塩素化プロペン、代替的に少なくとも99.9%の塩素化プロペン、代替的に少なくとも99.99%の塩素化プロペンを含み得る。
【0083】
重質画分は、焼却炉に提供されるなどして処分され得るか、又は第1の塩素化アルカン生成反応及び/若しくは第1の粗塩素化アルカン分離器に再循環され得る。軽質画分は、苛性脱塩化水素反応からの有機相中に溶解した水を含み得る。軽質画分を乾燥させて、水を除去してもよい。軽質画分は、提供され得るか、又は触媒脱塩化水素からのクロロプロペン反応生成物と組み合わされ得る。第1の粗塩素化アルカン分離器に提供される場合、その中の塩素化プロペンは、触媒脱塩化水素反応に送られる塩素化プロパンとともに、その分離器から軽質画分に分離される。
【0084】
この分離は、本明細書に先に記載されたものと同様の分離ユニットを採用して実施され得る。この分離ユニットは、沸点に基づいて成分を分離することができる。特に、分離ユニットは、蒸留カラム又はフラッシュユニットを含み得、真空又は雰囲気下で行われ得る。例示的な蒸留カラムは、単一若しくは多段蒸留カラム、及び/又は分割壁カラムを含む。分離ユニットは、蒸留カラム又はフラッシュユニットを含み得、真空又は大気圧下で行われ得る。
【0085】
(VIII)触媒脱塩化水素反応からの粗塩素化プロペン生成物の分離
触媒脱塩化水素に再び戻ると、言及したように、この反応は塩素化プロペン生成物を生成する。この塩素化プロペン生成物は、分離ユニットに提供され得る。分離ユニットに供給される前に、この塩素化プロペン生成物は、苛性脱塩化水素反応から得られた塩素化プロペンから分離される軽質画分と組み合わせてもよい。
【0086】
この分離器は、塩素化プロペンを更に精製し、精製された塩素化プロペンを有する軽質画分、及び重質副生成物を含む重質画分を生成し、かかる重質副生成物が、軽質画分中の塩素化プロペンよりも高い沸点を有する。
【0087】
例示的なプロセス
図1は、副生成物ストリームを処理することによって追加のクロロプロペンを生成するための例示的なプロセス100を例解する。示すように、塩素化メタン、この場合は四塩化炭素(「Tet」)、アルケン又はハロアルカン、この場合はエテン(オレフィン)、及び促進剤、この場合はTBPを含む初期供給物105は、金属触媒、この場合は鉄金属及び/又は塩化鉄(FeCl
3及び/又はFeCl
2)とともに、反応器110に供給される。反応器110はまた、鉄金属を含有し得る。エテンは気相に導入され、エテン、TBP、及びTetは液相である。気体及び液体は、ジェット撹拌を採用して反応器110内で混和され得る。成分は、第1の塩素化アルカン生成反応において反応器110内で反応する。反応の結果として、1つ以上の望ましい塩素化プロパンを有する粗塩素化プロパン生成物115が形成される。これらの望ましい塩素化プロパンは、例えば、1,1,1,3-テトラクロロプロパン(250fb)、又は塩化ビニルがエチレンの代わりに反応器110に供給される場合、1,1,1,3,3-ペンタクロロプロパン(240fa)であり得る。1,1,1,3-テトラクロロプロパン及び1,1,1,3,3-ペンタクロロプロパンの両方が一緒に生成されてもよく、又は一方若しくは他方が作製されてもよい。粗塩素化プロパン生成物115は、TBP、Tet、塩化鉄、塩化鉄とTBPとの錯体、及び重質副生成物などの他の反応成分を含む。
【0088】
粗塩素化プロパン生成物115中のこれらの重質副生成物は、望ましい1,1,1,3-テトラクロロプロパン及び1,1,1,3,3-ペンタクロロプロパン以外に1つ以上の炭素若しくは1つ以上の塩化物を有する塩素化アルカン並びに/又はアルケンを含む。これらの重質副生成物は、1つ以上の望ましい塩素化プロパンよりも高い沸点を有し得、1,1,1,5-ペンタクロロプロパン及び/若しくは1,3,3,5-ペンタクロロプロパンなどのテトラクロロペンタン、ペンタクロロプロパン、ヘキサクロロペンタン、ヘキサクロロペンタン、又はこれらの組み合わせを含み得る。
【0089】
次いで、粗塩素化プロパン生成物115は、分離ユニット120に提供される。分離ユニット120は、真空蒸留カラムであり得る。粗塩素化プロパン生成物115は、軽質画分125と重質画分130とに分離される。粗塩素化プロパン生成物115からの少なくとも半分の塩素化プロパンは、軽質画分125に分離される。軽質画分125は、より高い濃度の望ましい塩素化プロパンを含む精製されたストリームである。軽質画分125中の塩素化プロパンの濃度は、第1の反応における転化によって約50%の低さになり得るため、任意の残留反応成分又は重質副生成物(図示せず)を除去するために、軽質画分125は更に精製され得る。軽質画分125又は更に精製された軽質画分は、ルイス酸脱塩化水素触媒を有する触媒脱塩化水素反応器130に供給される。次いで、軽質画分125は、脱塩化水素反応に供され、塩素化プロパンは、粗塩素化プロペンストリーム195に転化される。粗塩素化プロペンストリーム195は、1,1,3-トリクロロプロペン、3,3,3-トリクロロプロペン、1,1,3,3-テトラクロロプロペン、1,3,3,3-テトラクロロプロペン、及びこれらの混合物などの望ましい塩素化プロペンを含む。粗塩素化プロペンストリーム195はまた、望ましい塩素化プロペンよりも高い沸点を有する重質副生成物を含む。
【0090】
重質画分135は、粗塩素化プロパン生成物115からの重質副生成物を含む。これらは、望ましい塩素化プロパンよりも高い沸点を有する塩素化アルカン及びアルケンを含む。追加的に、重質画分135はまた、TBP、塩化鉄、及びTBPと塩化鉄との錯体を含む、反応器110内での反応からの残余分を含む。重質画分135はまた、軽質画分125に分離されなかった残りの塩素化プロパンのうちのいずれかを含み、軽質画分125は、混合物の30~70重量%であり得る。単に処分されるのではなく、ストリームが塩素化プロペンを生成するように処理されるため、分離ユニット120の要件を緩和して、より多くの量の塩素化プロパンを重質画分135に渡すことを可能にし得る。重質画分135の一部分は、反応器110に戻る再循環ストリーム150中で再循環され得る。
【0091】
重質画分135は、苛性反応器145に提供される。水性塩基供給物150、この場合NaOHは、苛性反応器145に供給される。示していないが、相間移動触媒も採用され得る。この反応器内で、塩化鉄からの鉄が水性相で水酸化鉄として沈殿する沈殿反応が起こる。追加の副生成物NaClも、結果として脱塩化水素反応を生成される。水酸化鉄は、沈降、濾過、又は遠心分離することによって、出口ストリーム155を介して除去することができる。重質画分135からの鉄の除去は、その一部分が反応器110に再循環される場合、有機ストリームの触媒活性を改善し、また、その処分を容易にする。
【0092】
粗塩素化プロペンストリーム160は、苛性反応器145を出る。このストリームは、苛性反応器145内の反応によって生成された塩素化プロペン、及び重質副生成物を含む。ストリームはまた、TBP及びもしあれば、任意の相間移動触媒を含み、反応器110又は苛性反応器145に提供された。出口ストリーム160は、蒸留カラムであり得る分離ユニット165に供給される。塩素化プロペンは、軽質画分170に分離され、軽質画分170は、分離ユニット120に再循環され、及び/又は触媒反応器130から出る粗塩素化プロペンストリーム195に提供され得る。この粗塩素化プロペンストリーム195は、分離ユニット196に提供されてもよく、望ましい塩素化プロペンは、軽質画分197に分離され、軽質画分197中の塩素化プロペンよりも高い沸点を有するこれらの化合物などの重質副生成物は、重質画分198に分離される。
【0093】
分離ユニット165から重質画分180が抜き出される。重質画分180は、塩素化プロペンよりも高い沸点を有する重質副生成物を含む。この重質画分180の全て又は一部分は、反応器110又は分離ユニット120に再循環されてもよく、この重質画分180の全て又は一部分は、処分されてもよい。
【0094】
重質画分120を苛性反応器150内の水性塩基で処理することにより、鉄は、このストリームから除去され、塩素化プロパンは、より有用な塩素化プロペンに転化される。鉄の除去は、再循環により有用であるストリームの生成を可能にし、塩素化プロペンへの転化は、別様に処分されて使用されないストリームではなく、有用な生成物を生み出す。
【0095】
したがって、塩素化プロパンの塩素化プロペンへの一次転化は、触媒反応を使用して実施することができるが、触媒から金属を除去し、廃棄物ではなく、より有用な塩素化プロペン最終生成物を生成するように、重質副生成物ストリームは、苛性物で処理することによってより高い価値を有するようにされ得る。
【0096】
図2は、副生成物ストリームを処理することによって追加のクロロプロペンを生成するための例示的なプロセス200を例解する。
図2のプロセス200は、
図1のプロセスと同様であるが、より少ない再循環ステップを有する。示すように、塩素化メタン、Tet、アルケン又はハロアルケン、TBP、及び塩化鉄(FeCl
3)を含む初期供給物205は、反応器210に供給される。反応器210はまた、鉄金属を含有し得る。エテンは気相に導入され、エテン、TBP、及びTetは液相である。気体及び液体は、ジェット撹拌を採用して反応器210内で混和され得る。成分は、第1の塩素化アルカン生成反応において反応器210内で反応する。
【0097】
反応の結果として、1つ以上の望ましい塩素化アルカンを有する粗塩素化プロパン生成物215が形成される。粗塩素化プロパン生成物215は、TBP、Tet、塩化鉄、及び塩化鉄とTBPとの錯体などの他の反応成分を含む。
【0098】
次いで、粗塩素化プロパン生成物215は、分離ユニット220に提供される。分離ユニット220は、真空フラッシュ又は蒸留カラムであり得る。粗塩素化プロパン生成物215は、軽質画分225と重質画分230とに分離される。粗塩素化プロパン生成物215からの少なくとも半分の塩素化プロパンは、軽質画分225に分離される。
【0099】
軽質画分225は、より高い濃度の望ましい塩素化プロパンを含む精製されたストリームである。軽質画分125中の塩素化プロパンの濃度は、第1の反応における転化によって約50%の低さになり得るため、任意の残留反応成分又は重質副生成物(図示せず)を除去するために、軽質画分225は更に精製され得る。軽質画分225又は更に精製された軽質画分は、脱塩化水素ルイス酸触媒を有する触媒脱塩化水素反応器230に供給される。次いで、軽質画分225は、脱塩化水素反応に供され、塩素化プロパンは、粗塩素化プロペンストリーム240に転化される。粗塩素化プロペンストリーム240はまた、望ましい塩素化プロペンよりも高い沸点を有する重質副生成物を含む。この粗塩素化プロペンストリーム240は、分離ユニット270に提供されてもよく、望ましい塩素化プロペンは、軽質画分275に分離され、軽質画分275中の塩素化プロペンよりも高い沸点を有するこれらの化合物などの重質副生成物は、重質ストリーム280に分離される。
【0100】
重質画分235は、粗塩素化プロパン生成物215からの重質副生成物を含む。これらは、望ましい塩素化プロパンよりも高い沸点を有する塩素化アルカンを含む。追加的に、重質画分235は、TBP、塩化鉄、及びTBPと塩化鉄との錯体を含む、反応器210内での反応からの残余分を含む。重質画分235はまた、軽質画分225に分離されなかった残りの望ましいクロロプロパンのうちのいずれかを含み、軽質画分225は、混合物の30~70%であり得る。重質画分235の一部分は、反応器210に戻る再循環ストリーム232中で再循環され得る。
【0101】
重質画分235は、苛性反応器245に提供される。水性塩基供給物250、この場合NaOHは、苛性反応器245に供給される。示していないが、相間移動触媒も採用され得る。この反応器内で、塩化鉄からの鉄が水性相で水酸化鉄として沈殿する沈殿反応が起こる。追加の副生成物NaClも、脱塩化水素反応の結果として生成される。水酸化鉄は、沈降、濾過、又は遠心分離することによって、出口ストリーム255を介して除去することができる。重質画分235からの鉄の除去は、その一部分が反応器210に再循環される場合、有機ストリームの触媒活性を改善し、また、その処分を容易にする。
【0102】
粗塩素化プロペンストリーム260は、苛性反応器245を出る。このストリームは、苛性反応器245内の反応によって生成された塩素化プロペン、及び重質副生成物を含む。ストリームはまた、TBP及びもしあれば、任意の相間移動触媒を含み、反応器210又は苛性反応器245内に提供された。出口ストリーム260の一部分は分離ユニット220に再循環されてもよく、一方、残部は出口ライン265を介して処分されてもよい。代替的に(図示せず)、ストリーム260の一部分又は全ては、ストリーム240と組み合わされ得る。この実施形態において、分離器270からの重質ストリーム280は、反応器245及び230の両方からの組み合わされた重質成分を含む。次いで、重質ストリーム280は、分離器220又は反応器210に部分的に再循環することができ、残部は処分に送られる。
【0103】
本明細書で開示される、塩素化プロパン及び/又は塩素化プロペン、並びにクロロプロパン及び/又はクロロプロペンという用語は、モノ-、ジ-、トリ-、ペンタ-形態を包含し、化合物の全ての異性体及びプロパン又はプロペンのベース鎖を構成する炭化水素鎖に沿った塩化物の全ての位置を包含している。例えば、トリクロロプロペンという用語は、例えば1,1,3-トリクロロプロペン、2,3,3-トリクロロプロペン、シス-1,2,3-トリクロロプロペン、トランス-1,2,3-トリクロロプロペンを含む、シス及びトランスを含むトリクロロプロペンの全ての異性体を含む。同様に、トリクロロプロパンという用語は、1,2,3-トリクロロプロパンを含む、トリクロロプロパンの全ての異性体を含む。テトラクロロプロペンという用語は、1,1,2,3-テトラクロロプロペン及び2,3,3,3-テトラクロロプロペンを含む、テトラクロロプロペンの全ての異性体を含む。テトラクロロプロパンという用語は、1,1,2,3-テトラクロロプロパン及び1,2,2,3-テトラクロロプロパンを含む、テトラクロロプロパンの全ての異性体を含む。ペンタクロロプロパンという用語は、1,1,1,2,3-ペンタクロロプロパン、1,1,2,2,3-ペンタクロロプロパン、及び1,1,2,3,3-ペンタクロロプロパンを含む、ペンタクロロプロパンの全ての異性体を含む。
【実施例】
【0104】
本開示の理解を促進するために、特定の実施形態の以下の実施例が提供されるが、以下の実施例は、決して本開示の範囲を限定するものとして読まれるべきではない。
【0105】
実施例1:250fb生成からの重質画分の苛性処理
四塩化炭素及びエチレン、鉄金属、FeCl3、並びにリン酸トリブチル(「TBP」)を促進剤としてテロメリゼーション反応を行った。テロメリゼーションからの粗塩素化プロパン生成物を蒸留して、望ましい1,1,1,3-テトラクロロプロパン(250fb)生成物及びより軽い成分のほとんどを除去した。重質副生成物を有する残りの重質画分は、15.65gの重さであった。重質物のGC分析は、2.4重量%の1-クロロブタン、54.2重量%の250fb、1.6重量%のペンタクロロプロパン異性体、30.5重量%のテトラクロロペンタン異性体、8.6重量%のTBP(有機ベース)を示した。水性HClへの抽出による鉄分析、Fe(III)のFe(II)への還元、及び比色分析であるフェナントロリン錯体化法によるHClの分析は、1.6重量%のFeを示した。GC入口における破壊に起因して、TBP含有量が高かった可能性がある。
【0106】
この粗生成物ストリーム重質物を、21.8gの19.4%水性苛性物、10gの水、及び0.1gのAliquate 336(登録商標)相間移動触媒と混合した。62~68°で3.7時間撹拌した後、混合物を遠心分離して、9.9gの有機相、60gの透明水性相(いくつかの追加の水を添加した)、及び3.5gの沈殿水酸化鉄スラッジを回収した。
【0107】
有機相は、透明な濃い茶色で、自由流動性であった。有機相のGC分析は、0.2重量%のクロロブタン、12.6重量%の3,3,3-トリクロロプロペン、18.7重量%の1,1,3-トリクロロプロペン、4.9重量%の250fb、2.4重量%のペンタクロロプロパン異性体、32.0重量%のテトラクロロペンタン異性体、及び17.6重量%のTBPを示した。特定されていない成分のほとんどは、250fbよりも高温で沸騰する化合物であった(GCにおけるより長い保持時間)。TBPの増加は予想よりも大きく、高温及び多く鉄を有するGC入口でのTBP破壊によって引き起こされた、出発重質物材料中のTBP含有量の過少報告に起因する可能性が高い。
【0108】
処理した重質副生成物を蒸留して、トリクロロプロペン生成物のほとんどを除去して、4.2重量%の1,1,3-トリクロロプロペン、1.3重量%の250fb、46.0重量%のテトラクロロペンタン異性体、及び27.2重量%のTBPを含有する6.6gの最終有機ストリームを生成した。特定されていない成分の全て(21.3重量%)が250fbよりも高温で沸騰しており、その約3分の1(7.7重量%)は2つの主要なテトラクロロペンタン異性体よりも高温で沸騰していた。最終的に処理して蒸留した重質副生成物材料は、透明な濃い茶色であり、自由流動性であった。
【0109】
苛性処理からのスラッジの形態を有した沈殿した鉄をHCl中に溶解し、遠心分離し、0.5gの追加の有機相を回収した。HClを分析し、0.3gのFeを含有していた。苛性処理からの透明水性相は、2.2%のNaOHであり、GC分析によって検出可能な有機物を含有しなかった。水性相を酸性化して、水又はメタノールに容易に溶けない白色固体を沈殿させた。固体をメタノールで洗浄し、乾燥させ、0.04gの重さであった。固体のエネルギー分散型X線(EDX)分析は、それが59.4モル%の炭素、2.1モル%の窒素、10.9モル%のリン、1.4モル%の塩素、及び3.1モル%の鉄を含有することを明らかにした。C/Pの比は、固体が主にリン酸ジブチル及びリン酸モノブチルであることを示唆した。
【0110】
実施例2:純粋な240faの苛性処理
テロメリゼーション反応を行って、26gの1,1,1,3,3-ペンタクロロプロパン(240fa)(99.2モル%)を生成した。これを、27.4gの19.4重量%の水性NaOHと混合した。混合物を撹拌し、66℃の平均温度まで1.5時間加熱した。GC分析は、1,1,1,3,3-ペンタクロロプロパンの1.3重量%のみが、テトラクロロプロペンに脱塩化水素されていたことを示した。有機相に、相間移動触媒として0.117gのAliquat 336を添加した。混合物を撹拌し、更に3時間、65℃の平均温度まで加熱した。有機相を分離し、GCによって分析し、42.5モル%の1,1,3,3、-テトラクロロプロペン(1230ZA)、18.3モル%の別のテトラクロロプロペン異性体(1,3,3,3-テトラクロロプロペンと推定される)、及び38.1モル%の240faを含有することが見出された。これは、1,1,1,3,3-ペンタクロロプロパン生成からの重質物を苛性物で処理して、1,1,1,3-テトラクロロプロパン出発物質による実施例1と同様の結果を得ることができることを証明している。
【国際調査報告】