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特表2023-551871歯科器具を洗浄および消毒するためのシステムおよび方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-12-13
(54)【発明の名称】歯科器具を洗浄および消毒するためのシステムおよび方法
(51)【国際特許分類】
   A61C 19/00 20060101AFI20231206BHJP
   A61C 1/08 20060101ALI20231206BHJP
【FI】
A61C19/00 J
A61C1/08 S
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023533272
(86)(22)【出願日】2021-12-03
(85)【翻訳文提出日】2023-07-10
(86)【国際出願番号】 EP2021084229
(87)【国際公開番号】W WO2022117850
(87)【国際公開日】2022-06-09
(31)【優先権主張番号】20211659.6
(32)【優先日】2020-12-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】517313109
【氏名又は名称】ビエン - エア ホールディング ソシエテ アノニム
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】サルチ、ダビデ
(72)【発明者】
【氏名】ガリーナ、マルコ
(72)【発明者】
【氏名】シェーンベーヒラー、エドガー
【テーマコード(参考)】
4C052
【Fターム(参考)】
4C052AA10
4C052LL06
(57)【要約】
本発明は、歯科用または外科用のツール(600)を洗浄および/または消毒するためのシステム(1000)。システム(1000)は、蒸気発生器(100)および圧縮空気源(200)を備える。システム(1000)は、湿り蒸気(1)および圧縮空気(2)を、処理すべき歯科用または外科用のツール(600)の少なくとも1つのチャネル内に噴射するための流量調整装置(400)をさらに備える。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
歯科用または外科用のツール(600)を洗浄および/または消毒するためのシステム(1000)であって、
前記洗浄および/または消毒システム(1000)は、蒸気発生器(100)および圧縮空気源(200)を備え、
前記洗浄および/または消毒システム(1000)は、湿り蒸気(1)および圧縮空気(2)を、処理すべき前記歯科用または外科用のツール(600)の少なくとも1つのチャネル内に噴射するように設計された流量調整装置(400)をさらに備える、システム(1000)。
【請求項2】
洗浄および/または消毒すべき前記歯科用または外科用のツール(600)のための固定支持体(500)を備え、
前記固定支持体(500)には、モータ部品の代替としてカップリングノーズ(506)を有し、
前記湿り蒸気(1)と前記圧縮空気(2)との混合物(12)が、前記カップリングノーズ(506)を介して直接噴射可能になっていることを特徴とする、請求項1に記載の歯科用または外科用のツール(600)を洗浄および/または消毒するためのシステム(1000)。
【請求項3】
前記固定支持体(500)が密閉された筐体内に配置されることを特徴とする、請求項2に記載の歯科用または外科用のツール(600)を洗浄および/または消毒するためのシステム(1000)。
【請求項4】
前記筐体にはUVC光線による消毒システム(701)が備えられる、請求項3に記載の歯科用または外科用のツール(600)を洗浄および/または消毒するためのシステム(1000)。
【請求項5】
温度、圧力、湿り蒸気割合(10)および/または圧縮空気割合(20)のなかから選択される少なくとも1つの入力パラメータを決定することを可能にするユーザインターフェース(300)をさらに備えることを特徴とする、請求項1~4のいずれか一項に記載の歯科用または外科用のツール(600)を洗浄および/または消毒するためのシステム(1000)。
【請求項6】
前記流量調整装置(400)は、湿り蒸気(1)の出口用の第1のバルブ(401)と、圧縮空気(2)の出口用の第2のバルブ(402)とを備え、前記第2のバルブ(402)は自己調整されることを特徴とする、請求項1~5のいずれか一項に記載の歯科用または外科用のツール(600)を洗浄および/または消毒するためのシステム(1000)。
【請求項7】
前記流量調整装置(400)は、前記第2のバルブ(402)に接続されたバイパスチャネル(405)をさらに備え、前記バイパスチャネルは、歯科用または外科用の前記ツール(600)の回転部品の少なくとも一部を回転駆動する空気圧駆動システム(501)に補助圧縮空気流(F2’)を運ぶことを目的としていることを特徴とする、請求項6に記載の歯科用または外科用のツール(600)を洗浄および/または消毒するためのシステム(1000)。
【請求項8】
前記流量調整装置(400)は、第3のバルブ(403)を介して送出され得る、前記湿り蒸気(1)と前記圧縮空気(2)との混合物(12)を作るための混合チャンバ(404)をさらに備えることを特徴とする、請求項1~5のいずれか一項に記載の歯科用または外科用のツール(600)を洗浄および/または消毒するためのシステム(1000)。
【請求項9】
前記流量調整装置(400)は、処理すべき前記歯科用または外科用のツール(600)の少なくとも1つのチャネル内に前記湿り蒸気(1)および前記圧縮空気(2)を少なくとも部分的に同時に噴射するように設計されることを特徴とする、請求項1~8のいずれか一項に記載の歯科用または外科用のツール(600)を洗浄および/または消毒するためのシステム(1000)。
【請求項10】
請求項1~9のいずれか一項に記載の洗浄および/または消毒するためのシステム(1000)を使用して、歯科用または外科用のツール(600)を洗浄および/または消毒する方法であって、湿り蒸気(1)の第1の流れ(F1)を生成する第1のステップ(E1)と、圧縮空気(2)の第2の流れ(F2)を生成する第2のステップ(E2)とを含むことを特徴とする、方法。
【請求項11】
前記第1のステップ(E1)および前記第2のステップ(E2)を、少なくとも部分的に同時に行う、請求項10に記載の歯科用または外科用のツール(600)を洗浄および/または消毒する方法。
【請求項12】
前記湿り蒸気(1)は、液滴の形態の液相の少なくとも10%の水を含む、請求項10または11に記載の歯科用または外科用のツール(600)を洗浄および/または消毒する方法。
【請求項13】
前記湿り蒸気(1)と前記圧縮空気(2)との前記混合物(12)の有効圧力は、4.5バール未満である、請求項10~12のいずれか一項に記載の歯科用または外科用のツール(600)を洗浄および/または消毒する方法。
【請求項14】
圧縮空気(20)の分圧は、1.5~3バールであることを特徴とする、請求項10~13のいずれか一項に記載の歯科用または外科用のツール(600)を洗浄および/または消毒する方法。
【請求項15】
湿り蒸気(10)の分圧は、2~4バールであることを特徴とする、請求項10~14のいずれか一項に記載の歯科用または外科用のツール(600)を洗浄および/または消毒する方法。
【請求項16】
前記湿り蒸気(1)と前記圧縮空気(2)との前記混合物(12)のうちの湿り蒸気割合(10)は、50%よりも大きいことを特徴とする、請求項10~15のいずれか一項に記載の歯科用または外科用のツール(600)を洗浄および/または消毒する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、歯科医および歯科外科医などの医療分野の従事者のための器具および装置の分野に関するものである。より具体的には、本発明は、ハンドピースまたは歯科用タービンタイプの装置用の蒸気による洗浄および消毒のシステムおよび方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
歯科医、衛生士、および歯科外科医、ならびに歯内療法、歯周病、口腔外科、またはインプラント学の分野の他の医師は、様々な器具および装置を使用することが多く、その中で最も一般的なのは、ストレートハンドピース、コントラアングル(そのわずかな湾曲からそう呼ばれている)、およびエアタービンである。これらの装置は通常、ヘッドであって、回転子を収容し、フライス、切削、または研磨ツールに動きを伝達でき、患者の口に入るヘッドと、ハンドル、つまり歯科外科医が操作するコンポーネントとを含む。ストレートハンドピースとコントラアングルは、回転子の動作、ひいてはフライス、切断、または研磨ツールの動作に必要な機械的エネルギーを提供する電気モータ(マイクロモータ)に接続されている。エアタービンは、回転子を動かすための圧縮空気を供給するチューブに接続されているだけである。エアタービンをチューブに結合するシステムは、ハンドピースまたはコントラアングルをモータに結合できるカップリングシステムと非常によく似ている。
【0003】
モータ部分は、モータの伝達トルクを伝達したり、タービンを回転させる圧縮空気の流れ経路付けたりするために、標準化されたカップリングノーズを介してハンドピースに取り付けられ、同時に、ハンドピースとモータ部分は、通常、装置を冷却したり、使用中に動作領域にスプレーしたりするために、圧縮空気および/または水などの流体を内部に運ぶことができる、互いに接続された多数のチャネルをさらに備えている。冷却およびスプレーチャネルの構成の一例は、例えば特許文献1で述べられている。
【0004】
このような歯科用ハンドピースタイプの器具の洗浄および消毒では、通常、次の動作が自動的な順序で、または使用者の設定に従って実行される。
・まず、冷水、温水、または熱水での前洗浄、洗浄、またはすすぎ。
・続いて、化学物質を使用した洗浄および/または消毒。
・最後に、圧縮空気を印加することによる破片の除去および/または乾燥。
【0005】
特許文献2には、ハンドピースの洗浄および消毒にそのような方法を採用した解決策が記載されている。
【0006】
以下に説明するシーケンスの第2のステップの代わりに、またはこれに加えて、例えば特許文献3から、飽和または過熱蒸気を使用する洗浄および/または消毒方法がさらに知られている。これら2つの条件が満たされる場合、乾き蒸気と呼ばれる。
【0007】
その後、オイルと場合によっては空気、または両方の混合物を使用した最終潤滑ステップが提供され得る。
【0008】
特許文献4には、オートクレーブにおける歯科用ハンドピースの別の洗浄および滅菌の解決策が記載されており、それによると、モータ部分を置き換える固定支持体には、スプレーを蒸気または熱風でそれぞれ洗浄し、回転部分を油および熱風でそれぞれ洗浄するための別個のチャネルが設けられており、滅菌プロセスでは、ここでもオートクレーブ内で1.1bar(バール)の圧力条件下で122℃の乾き蒸気が使用される。
【0009】
従来技術で知られているこれらの解決策の主な欠点は、歯車やボールベアリングなどの中に固体および/または有機残留物(例えば、血液およびタンパク質)が蓄積する可能性があるため、装置内部の洗浄が満足のいくものではないことである。また、残留物の蓄積により、オートクレーブ内での蒸気滅菌を含む他の消毒および/または滅菌手順の効果がますます低下し、機械装置の老化が加速され、患者の過熱および火傷の危険にもつながる可能性がある。
【0010】
水を使用した洗浄手順の非効率性は、主に、水滴が装置内部の隙間およびくぼんだ領域に浸透できず、酵素またはアルカリ性の化学物質を添加すると、水滴が到達可能な残留物の溶解が促進される可能性があるが、空洞領域へのアクセスは改善されないという事実に関連している。
【0011】
飽和蒸気または過熱蒸気を使用する代替の洗浄手順が効果的でないのは、熱によってタンパク質の変性が引き起こされ、汚れおよびバイオフィルムが表面から溶解して剥がれるのをより困難にするという事実に関連している。
【0012】
さらに、(乾き蒸気タイプの)飽和蒸気または過熱蒸気の噴射による消毒は、装置の入口における蒸気の高圧および高温の状態が装置全体にわたって維持されないため、普遍的に効果があるわけではない。実際、(通常は装置の後部、洗浄および消毒用のモータ部分に代わるノズルの高さに位置する)入口と(装置のヘッドに位置する)出口との間の温度勾配により、装置の内面(特に、ヘッドの高さ)に蒸気の結露が発生し、これにより、歯科用装置の最も汚染された領域、まさに、患者の口に最も頻繁に接触し、したがって血液、唾液、およびそれらを由来とするその他の細菌コロニーの残留物がより見つかりやすい装置のヘッドの高さでの殺菌および防カビ能力は、強く制限される。
【0013】
また、高圧で飽和または過熱蒸気を繰り返し使用すると、ハンドピースの機械部品の劣化が加速される可能性がある。
【0014】
したがって、これらの既知の制限のない洗浄および消毒の解決策の必要性が存在する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】欧州特許第1,768,597号明細書
【特許文献2】米国特許第5,723,090号明細書
【特許文献3】米国特許出願公開第2012298151号明細書
【特許文献4】米国特許第6,368,556号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
本発明は、従来技術よりも効率的な洗浄および消毒のシステムおよび方法を提供することを目的とする。
【0017】
本発明の別の目的は、従来技術の解決策と比較して、処理すべき部品の機械部品に対する攻撃性が低い、洗浄および消毒のシステムおよび方法を提供することである。
【0018】
本発明のさらに別の目的は、洗浄および消毒に一般的に使用される化学物質の使用を最小限に抑える解決策を提供することである。
【0019】
最後に、本発明の目的は、装置内部の洗浄および消毒サイクルの継続時間を短縮することを可能にする新しい解決策を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0020】
これらの目的は、本発明によれば、歯科用または外科用のツールを洗浄および/または消毒するためのシステムであって、蒸気発生器と、圧縮空気源とを備え、洗浄および/または消毒システムは、湿り蒸気および圧縮空気を、処理すべき歯科用または外科用のツールの少なくとも1つのチャネル内に噴射するように設計された流量調整装置をさらに備える、システムによって達成される。
【0021】
本発明に従って提案される新しいシステムの利点は、処理すべきツール内部にバイオフィルム、血液、およびタンパク質の残留物が蓄積するのを回避して、歯科用装置の内部の効率的な自動洗浄を保証できるようにすることである。
【0022】
本発明に従って提案される新しいシステムの別の利点は、ヘッド(すなわち、ツールの前部)を含む、処理される歯科用装置全体の実質的に均一な消毒を保証できることである。
【0023】
本発明に従って提案される新しいシステムのさらなる利点は、ボールベアリングまたは接合部(Oリング)などの機械部品の経年劣化を制限し、高温消毒器または飽和蒸気または過熱蒸気消毒器を用いた従来の自動洗浄/消毒手順と比較して金属部品の腐食を最小限に抑えることである。
【0024】
本発明に従って提案される新しいシステムのさらに別の利点は、洗浄および消毒作業のための化学物質の使用を排除するか、いずれにしても最小限に抑えることである。
【0025】
本発明に従って提案される新しいシステムのさらに別の利点は、装置内部の洗浄/消毒サイクルの継続時間を短縮することである。
【0026】
好ましい一実施形態によれば、歯科用または外科用のツールを洗浄および/または消毒するためのシステムは、洗浄および/または消毒される歯科用または外科用のツールのための固定支持体を備え、固定支持体には、モータ部品の代替としてカップリングノーズが提供され、湿り蒸気と空気との混合物が、カップリングノーズを介して直接噴射可能である。
【0027】
このような解決策の利点は、ハンドピースのハンドルの後部に接続される所望の湿り蒸気と蒸気の流れを生成するモジュールを非常に簡単に追加するだけで、既存の洗浄および消毒装置に簡単に適合できることである。
【0028】
この好ましい実施形態の一変形例によれば、歯科用または外科用のツールを洗浄および/または消毒するためのシステムでは、固定支持体が密閉された筐体内に配置され、これにより、一方では、歯科用または外科用の装置から抽出された水および廃棄物を収集するためのトレイを容易に配置し、飛散のリスクなしにそれらを簡単に回収することが可能になり、他方では、微生物汚染物質が筐体の外部に排出されるのを避けるための空気濾過システムを追加することが可能になる。このようにして、洗浄と消毒の手順を健康の観点から最適化できる。
【0029】
この好ましい実施形態の別の一変形例によれば、歯科用または外科用のツール用の洗浄および/または消毒システムの筐体には、UVC光線による消毒システムが備えられる。
【0030】
このような変形例の利点は、筐体自体の消毒だけでなく、歯科用または外科用装置の外面の消毒も保証するため、同じ筐体内で同時にまたは連続して洗浄および消毒される装置間での相互汚染のリスクを回避できることである。
【0031】
別の好ましい一実施形態によれば、歯科用または外科用のツールを洗浄および/または消毒するためのシステムは、温度、圧力、湿り蒸気割合および/または圧縮空気割合の中から選択される少なくとも1つの入力パラメータを決定することを可能にするユーザインターフェースをさらに備える。
【0032】
このような解決策の利点は、洗浄/消毒されるシステムの機械的または電気的制約および/または洗浄/消毒前に実行される操作手順(歯科または外科)に従って、ひいては洗浄/消毒に続いてオートクレーブ内での後続の滅菌を実行する規制上の必要性に従って、所望の混合物を最大限に最適化できることである。
【0033】
別の好ましい一実施形態によれば、歯科用または外科用のツールを洗浄および/または消毒するための提案されたシステムの流量調整装置は、湿り蒸気の出口用の第1のバルブと、圧縮空気の出口用の第2のバルブとを備え、第2のバルブは自己調整される。
【0034】
このような解決策の利点は、システムコンポーネントの数を最小限に抑え、混合を実行するための専用チャンバを必要とせず、空気と蒸気の流れの各々がツールに個別に供給されることができることである。もう1つの利点は、処理すべきツールに噴射する前に、熱力学的平衡または準平衡(つまり、時間的には定常状態であるが、混合チャンバに連続的に到達する流れによって平衡状態から外れて維持される)にある空気と蒸気の混合物を達成する必要がないため、洗浄および消毒サイクルの効率を最大化できることである。
【0035】
この好ましい実施形態の一変形例によれば、歯科用または外科用のツールを洗浄および/または消毒するための提案されたシステムの流量調整装置は、前記第2のバルブに接続されたバイパスチャネルをさらに備え、バイパスチャネルは、処理すべき歯科用または外科用のツールの回転部品の少なくとも一部を回転駆動する空気圧駆動システムに補助圧縮空気流を運ぶことを目的としている。
【0036】
このような解決策の利点は、まず、ツールの通常可動部品の洗浄および消毒作業の効率を最適化し、次に、この目的のための専用のモータを必要とせずに部品を回転駆動するこの作業を実行し、したがって電力供給の観点から装置の複雑さとニーズを同時に最適化することである。
【0037】
別の好ましい一実施形態によれば、歯科用または外科用のツールを洗浄および/または消毒するための提案されたシステムの流量調整装置は、第3のバルブを介して送出され得る、湿り蒸気および空気の混合物を作るための混合チャンバをさらに備える。
【0038】
このような解決策の利点は、熱力学的に平衡または準平衡(つまり、時間的には定常状態だが、混合チャンバに連続的に到達する流れによって平衡状態から外れて維持される)で、洗浄および消毒される装置内部に均一な条件を課し、したがって、ニーズ(流速、消毒の有効性よりも洗浄の有効性を優先するなど)に応じて、温度、湿度、および圧力の条件を最適化することである。
【0039】
本発明はさらに、湿り蒸気の第1の流れを生成する第1のステップと、圧縮空気の第2の流れを生成する第2のステップとを含むことを特徴とする、本発明に係る洗浄および/または消毒するためのシステムを使用して、歯科用または外科用のツールを洗浄および/または消毒する方法に関するものである。
【0040】
このような洗浄および/または消毒方法の利点は、完全に連続した方法で順序付けられるか、または同時に実行される2つの変形例の間で、異なるステップを柔軟な方法で組み合わせることができることである。
【0041】
しかしながら、好ましい一実施形態によれば、本発明に係る歯科用または外科用のツールを洗浄および/または消毒する方法は、少なくとも部分的に同時に第1および第2のステップを使用する。したがって、処理サイクルの継続時間が短縮される。
【0042】
洗浄および/または消毒の方法の好ましい一実施形態によれば、湿り蒸気は、液滴の形態の液相の少なくとも10%の水を含む。
【0043】
この解決策の利点は、蒸気粒子が最もくぼんだアクセス不可能な部分に到達し、凝結して残留物を溶解し、バイオフィルムを剥離することができる一方で、低温での蒸気相中の水の濃度と水の粒子(「水滴」)の大きさにより、血液およびタンパク質を溶解し、バイオフィルム残留物を外部に移動させることが可能になるため、所望の洗浄特性と消毒特性の間の適切な妥協点を画定することである。
【0044】
本発明に係る洗浄および/または消毒方法の好ましい一実施形態によれば、処理されるツールを損傷しないように、湿り蒸気および空気の混合物の有効圧力は、4.5バール未満である。
【0045】
本発明に係る洗浄および/または消毒方法の好ましい一実施形態によれば、圧縮空気割合の分圧は、1.5~3バールである。したがって、空気の寄与のおかげで、蒸気の圧力を過度に高める必要がなく、均一な蒸気の流れを維持することが可能である。
【0046】
本発明に係る洗浄および/または消毒方法の好ましい一実施形態によれば、湿り蒸気の分圧は、2~4バールである。
【0047】
このような解決策の利点は、印加される圧力とともに蒸気の発生温度が上昇するため、表面の過度の加熱を引き起こすことなく装置を通る一定の流れを維持できることである。
【0048】
本発明に係る洗浄および/または消毒方法の好ましい一実施形態によれば、一般的に、空気の効果は混合物を冷却することであり、洗浄および消毒操作を実行するのに十分な温度値の範囲内(常に100℃程度)に維持したい場合、過剰な蒸気圧力および温度を生成する必要がないように、湿り蒸気および空気の混合物のうちの湿り蒸気割合は、常に50%よりも高い。
【0049】
他の利点および構成は、非限定的な例として与えられ添付の図面に示される、本発明を実装するための以下の実施形態の説明からより明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0050】
図1】本発明の好ましい一実施形態に係る洗浄および消毒装置の動作を示す図である。
図2図1の好ましい実施形態の一変形例に係る洗浄および消毒装置の動作を示す図である。
図3】本発明の別の好ましい一実施形態に係る洗浄および消毒装置の動作を示す図である。
図4】本発明に係る洗浄および消毒サイクルに対する複数の可能なシーケンスを示す図である。
図5】本発明に関連して、水と湿り蒸気の組み合わせが、ツールの内部の洗浄および消毒に使用される混合物の温度をどのように有利に下げることができるかを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0051】
最新技術によれば、消毒に関する蒸気(steam)または蒸気(vapor)の質は、湿度の程度に反比例し、逆に印加される圧力に正比例すると常に考えられてきた。実際、湿度はバクテリアに伝わる熱量を制限する可能性が高く、一方、蒸気に印加される圧力の利点の1つは、高圧の流体の機械的エネルギーと連動して、熱作用と機械的洗浄作用を組み合わせることができることであった。
【0052】
本発明の枠組みの中で、湿り蒸気と、蒸気および圧縮空気の混合物との特性評価における技術的進歩を用いて、蒸気中の水滴のサイズについてのより良い知識を獲得し、蒸気・水・空気の混合物の熱力学的均衡をより良く制御し、こうして、
1.機械的な洗浄動作、
2.有機残留物の化学的溶解、
3.金属表面からのバイオフィルムの穏やかな剥離、
4.後部からヘッドまで装置全体を通して均一な洗浄および消毒特性と、それによる温度と湿度の大幅な勾配の回避、
を同時に確保するために、これまで常に欠点として考えられてきた蒸気・水・空気の混合物の特性を利用してきた。
【0053】
確かに、蒸気と空気を混合する技術的実現可能性は、食塩水または他の物質をすでに含有している装置の滅菌プロセスの文脈におけるオートクレーブ技術においてすでに知られていたが、この場合の目的は、加圧されるコンポーネントの外側ケーシングを滅菌できるようにすることであり、蒸気の導入前に部分真空を作り出す必要がある一定の圧力環境が必要である。しかしながら、これらのシステムでは、過剰な圧力勾配および流れを正確に回避するために、空気と蒸気の混合が、準定常条件下で熱力学的平衡(同様の圧力と温度)に近い状態で実行される。
【0054】
以下では、湿り蒸気の使用が処理される部品の内部の洗浄および消毒プロセスの両方に不適当であるという技術的偏見を特に克服することができる方法と、圧力Pと温度Tの間に厳密な関係がある、後述する図5の飽和蒸気圧の曲線で示される飽和レベルまたはそれに近い飽和レベルであっても、蒸気の圧力と温度を別々に最適化する混合を実施できる方法が示される。
【0055】
図1は、処理される歯科用装置(ツール600)の内部に、原則としてハンドピースのハンドルに相当するそれらのカップリング部分(すなわち、それらの後部)から、湿り蒸気1を噴射することを目的とする、本発明の好ましい一実施形態に係る洗浄および消毒システム1000の動作図を示す。この好ましい実施形態によれば、結合部分は、密閉された筐体700内に配置された(すなわち、外部から隔離可能な)固定支持体500上に配置された標準的なカップリングノーズ506によって形成される。ここでは、筐体700の固定支持体500は、洗浄および消毒される単一のツールを配置するために提供される(本発明に係るシステムによって実行される動作の速度がこれを可能にする)が、その代わりに、規模の経済性の理由から、臨床治療の種類によって許可された場合(例えば、すべてのツールが同じ患者を治療するのに使用された場合)、同時に洗浄および消毒される複数のツールを配置することも可能であり得る。筐体700はまた、処理されるツールの各々の外側を消毒して相互の自己汚染を回避するために、UVC光線(紫外線のサブセット、スペクトル帯「C」)を使用する消毒システム701を含むことが好ましい。筐体700自体の洗浄プロセスを容易にするために、ツール600から抽出された水および廃棄物を収集するために、取り外し可能な収集トレイ702が提供される。また、微生物汚染物質が筐体の外に排出されるのを防ぐために、空気濾過システム(図示せず)を提供することもできる。
【0056】
本発明では、カップリング部分から歯科用装置内部に湿り蒸気2を挿入するのと同時に、またはその代わりに、圧縮空気1を挿入することが求められ、その後、空気と湿り蒸気の混合物12が、図の右側のツールヘッド600から出てくる。
【0057】
図1に示される動作図では、湿り蒸気1の第1の流れF1と圧縮空気の第2の流れF2は、ここでは固定支持体500上に設けられるカップリングノーズ506内部に位置する装置への送出ラインに到達するまでは分離されたままであることが分かる。したがって、2つの相のための混合チャンバは存在せず、そのため、提案された洗浄および消毒システム1000の実装が特に簡単になり、あまりかさばらない。湿り蒸気1の第1の流れF1は、空気の第2の流れF2に加えられ、例えば中央冷却チャネル601と、ツール600のヘッド近くの作業領域に空気および/または水を運ぶことを目的としている1つまたは複数のスプレーチャネル602とからなるツール600のチャネル内部に「複合」流F1+F2を生成する。したがって、処理されるツール600の入口において、値PvがPaの分圧とは潜在的に異なる分圧で送られる湿り蒸気1の第1の流れF1と、一般的に周囲温度(すなわち、約20度)に近い(すなわち、蒸気の温度よりもはるかに低く、むしろ摂氏100度に近い)温度でさらに噴射される圧縮空気の第2の流れF2との間に熱力学的平衡は存在しない。しかしながら、この平衡は、ツール600のヘッドで近づくことができ、このため、ツール600から現れる矢印のレベルで、湿り蒸気と空気の混合物12に対応する流れが符号FMによって示され、それに対して圧力値Peが印加されるはずである。この圧力値Peは、上流流量調整装置400のユーザインターフェース300で定義され得る圧力に対応し、混合物の有効圧力を定義する(すなわち、空気相と蒸気相の各々の分圧のみならず、混合物中のそれらのそれぞれの割合と体積も考慮する)。
【0058】
ユーザインターフェース300は、好ましくは、ボタンなどの制御部材またはタッチスクリーンなどの入力インターフェース、および設定を有効にする前に入力を確認するための表示モジュールも備える。記載される好ましい実施形態によれば、混合物中の蒸気および圧縮空気の割合に応じて、洗浄および消毒作業に適した温度を規定できる有効圧力値Peが選択されることが好ましい。それにもかかわらず、入力パラメータは、有効圧力値Peに限定されず、温度値T°を含めることもでき、圧縮空気割合20と湿り蒸気割合10に関連するパーセンテージを調整することもできる。
【0059】
流量調整装置400は、蒸気発生器100と、一体型または外部の圧縮空気源200と、湿り蒸気1の第1の流れF1が出口で生成される第1のバルブ401と、圧縮空気の第2の流れF2が出口で生成される第2のバルブ402とを備える。これらのバルブの各々の開閉は、例えば関連するセンサを使用するか、制御パラメータ(有効圧力Peまたは温度T°または蒸気の水分率)の関数として事前に定義されたプログラム可能なタイマーを単に使用して、制御ステップに従ってそれぞれ実行される。図1において、蒸気圧力制御ステップは、ステップS1と呼ばれ、圧縮空気圧力制御ステップは、S2と呼ばれる。しかしながら、この好ましい実施形態によれば、湿り蒸気と空気を含有する混合物12の有効圧力値Peを選択することによって、空気と湿り蒸気の所定の割合の場合、空気の分圧Paは、蒸気の分圧Pvによって自動的に定義されるため、第2の制御ステップS2は、実際には第1の制御ステップS1に依存していることがこの図から分かる。換言すれば、この場合、第2のバルブ402は、第1のバルブ401に応じて(それゆえ、2つの制御ステップS1、S2の間の接続を示す矢印、ならびに第2のバルブ402の第1のバルブ401に対する位置決めを示す点線の矢印に応じて)自己調整される。
【0060】
図2は、図1の第1の実施形態の一変形例からなる、本発明の洗浄および/または消毒システム1000の別の好ましい一実施形態を示す。簡単にするために、すべての共通要素を再度詳細に説明するわけではなく、特に、図の左側は完全に同一の流量調整装置400に関するものである。
【0061】
この変形例に従って提案される洗浄および/または消毒システム1000の改良は、第2のバルブ402の出口にバイパスチャネル405を提供することにあり、圧縮空気2を2つの別個のパイプに同時に送出できるようにし、一方は、圧縮空気の第2の流れF2をツールに運ぶための前のものと同一であり、これ以降もう一方は、ツールの特定の回転部品の駆動機能を果たすことを目的とした補助的な圧縮空気の流れF2’を運ぶ。したがって、第1のパイプが第2の圧縮空気の流れF2を第1の湿り蒸気の流れF1と共にカップリングノーズ506内部にもたらし、ツールのスプレーパイプ602および冷却チャネル601の中を通る間、生成された補助的な圧縮空気の流れF2’は、固定支持体500に機械的に接続された空気圧駆動装置501(例えば、プロペラタービン)を作動させるために、ツール取り付け装置のカップリングノーズ506に噴射される空気分圧と推測的に同一である値Paの空気分圧でバイパスチャネル405を介して送られる。圧縮空気の作用により、カップリングノーズサポート506がゆっくりと、したがって機械的リンク、ストレートハンドピースまたはコントラアングルのギアチェーンを介して、回転することが可能になる。そして、支持体500が、処理される複数のツール600を受容することを目的とした複数のカップリングノーズ506を備える場合、各々のカップリングノーズ506に専用の駆動装置501を提供すること、すなわち、各々のツール600のギアチェーンの各々を効果的に回転作動させることが、この場合、可能となるであろう。これを行うために、いくつかの運動チェーンを同じプロペラに機械的に並列に接続するか、あるいは、バイパスを介して対応するカップリングノーズ506に各々が接続されたプロペラに特定の空気流を供給することができる。
【0062】
上記の方法によれば、蒸気および空気は、洗浄/消毒されるツール500につながるパイプ内に直接噴射され、こうして熱力学的平衡にない混合物を生成する。この構成では必要な構成要素は少なくなるが、得られる混合物の均質性の点では最適ではない。
【0063】
以下では、洗浄/消毒されるツール500へのパイプ開口部から分離された混合チャンバを含むさらに好ましい一実施形態について説明する。この場合、湿り蒸気と空気の混合物12は、(成分の圧力と温度を1に近い比率、例えば0.7~1.3で釣り合わせることによって)熱力学的平衡に近いか、少なくとも準平衡の定常状態を達成することができ、これにより、空気と湿り蒸気を含有する混合物(飽和蒸気と懸濁状態の水滴または「液滴」の組み合わせ)だけでなく、懸濁状態にない液滴の形態の水も少なくとも部分的にツール内に噴射する前に、凝縮水の一部を場合により回収することができる。この場合、装置に噴射される混合物の圧力を調整するシステムの存在が必要であるが、洗浄/消毒用の混合物の流量をより正確に調整することも可能になる。
【0064】
図3は、そのような一実施形態の動作図を示す。前の図2に関しては、図1と異なる要素のみを詳細に説明し、共通のすべての要素については図1を参照する。
【0065】
図3の左側に見られるように、流量制御装置400と一体化された、または流量制御装置400の外部にある蒸気発生器100および圧縮空気源200は、湿り蒸気1の第1の流れF1および圧縮空気の第2の流れF2を2つの相の混合チャンバ404へ送出する。ここで、ユーザインターフェース300を介して選択できるのは、湿り蒸気と空気の混合物12の有効圧力Peであり、湿り蒸気と空気の混合物12に対応する第3の流れFMが、第3のバルブ403の出口で生成され、この湿り蒸気と空気の混合物の圧力の制御、および/または調節可能なパラメータによって定義されるプログラム可能な時間遅延の制御の第3のステップS3に続く。湿り蒸気と空気の混合物12のこの第3の流れFMは、カップリングノーズ506の高さで処理されるツールのパイプ(冷却チャネル601およびスプレーチャネル602)内に熱力学的平衡状態で導入される。この実施形態は、もはや空気圧の自己調整を伴わないため、より容易に制御可能であり、処理される装置(すなわち、ツール600、ひいてはツール自体)への流体供給ライン内部でより均質な混合物を得ることを可能にするが、混合チャンバの体積により、図1に関連して説明した第1の実施形態よりも空間要件の点で明らかにコンパクトではない。
【0066】
図示していないが、タービンの空気圧作用下で回転運動を生じさせるために、処理される1つまたは複数のツールの支持体に圧縮空気を直接供給することにより、図2に示されたものと同様の変形例をこの実装のモードに提供することができる。それにもかかわらず、バイパスチャネルは、混合チャンバ404の上流に配置されなければならない。
【0067】
図4は、湿り蒸気1と圧縮空気2の圧力プロファイルの3つの非限定的な例を示している。
・上図に対応する実施例(A)では、空気2と湿り蒸気1が連続的に、すなわち、時間的に重なり合うことなく次々に導入される、つまり、最初に歯科/外科用装置を冷却するために圧縮空気2が導入され、次に洗浄するために湿り蒸気1が導入され、その後、再度ツールを乾燥および冷却するために圧縮空気2が再度導入される。
・中央の図に対応する実施例(B)では、空気2と湿り蒸気1は、同時にではなく導入されるが、少なくとも部分的に時間的に重複して導入される。空気2と湿り蒸気1の圧力、ならびにそれらの間の比は、プロセス全体を通じて一定ではなく、説明したケースでは、この比率は1より小さい値から1より大きい値に変化する。
・下図に対応する実施例(C)では、空気2と湿り蒸気1は、略同時に(90%以上の時間的重複で)導入される。
【0068】
図4には、図1図3に示されるような、洗浄および/または消毒されるツールに直接的または間接的に噴射される湿り蒸気1の第1の流れF1の生成に対応する第1のステップE1と、同様に、圧縮空気2の第2の流れF2を生成するための第2のステップE2とが示されている。これら2つのステップは、必要に応じて相互に時間的に調整され得る。
【0069】
湿り蒸気1と空気2が同時の流れを介して生成される場合、湿り蒸気と空気を含む混合物12が実現され、その熱力学特性は次のように要約できる。
1.P=Pa+Pv:全圧力は2つの圧力の合計である。
2.Pe=PVv/(Vv+Va):湿り蒸気と空気の混合物12の有効圧力は、2つの流体(それぞれ空気と蒸気、それらの体積をVaとVvとする)の各々の体積に依存する係数分、全圧力に対して減少する。
【0070】
上記のこれら2つの関係は、温度を下げて高圧で蒸気を得ることが可能であることを示している。例えば、3バール(絶対圧)の蒸気の3分の2と1.5バール(絶対圧)の空気の1/3で構成される混合物は、約134℃で4.5バールの混合物を生成し、これは、消毒される装置の過度の加熱を引き起こすことなく消毒に理想的である一方、4.5バールの純粋な蒸気は150℃近くになるため、特定の機械部品に有害となる可能性がある。
【0071】
この例は図5に示されており、それぞれ飽和蒸気1と、飽和蒸気と圧縮空気を含有する混合物12の2つの飽和蒸気圧曲線を示している。これらの曲線の各々について、圧力Pと温度T°の間には厳密な関係があり、液相「L」と蒸気相「V」の間の相変化に対応する境界線に対応する。
・純粋な飽和蒸気に関するCVs曲線は、1バールの大気圧下で100℃から始まり、4.5バールの圧力下で150℃弱に達する[四角によって示されるこの曲線上の座標点(X1,Y1)]。
・66.6%に等しい湿り蒸気10の一部と、同じく33.3%に等しい圧縮空気20の一部とを含み、湿り蒸気と空気の混合物12を形成する混合物に関するCVm曲線は、大気圧下で約90℃から始まり、4.5バールの圧力下ではわずか134℃に達し[三角形で示されるこの曲線上の座標点(X3,Y3)]、この温度は、3バールの圧力下での飽和蒸気に相当する[円で示される先行する曲線CVs上の座標点(X2、Y2)]。
【0072】
したがって、33%の圧縮空気2を含む混合物の圧力温度曲線は、純粋な飽和蒸気CVsの曲線よりも約15℃低いことが容易に分かる。したがって、3バールの湿り蒸気と1.5バールの空気の混合物によって、過度に温度を上げる必要がなく、圧力を4.5バールまで高めることができ(したがって、洗浄の機械的効果を最大化でき)、通常の滅菌/消毒温度を大幅に超える(134℃に対して149℃)ことなく、同等の圧力を達成することはできない。CVs曲線から略下向きに傾斜するCVm曲線を指す矢印は、これら2つの曲線間のp-T°関係のシフトにより、この有益な温度低下がどのように達成できるかを示している。
【0073】
上記から、湿り蒸気を空気で「希釈」するこの技術を使用すると、それに応じて圧力を高め、混合物中の空気の寄与をさらに高める、すなわち圧縮空気割合20の割合を高めることによって、100℃に近い洗浄用の湿り蒸気と空気の混合物12を得ることが可能であることが理解されるであろう。しかしながら、効果的な消毒特性を維持するのに十分に高い温度を維持するが、処理されるツールに損傷を与える可能性のある高すぎる圧力を発生させることのない作業条件を維持するには、湿り蒸気20の割合が常に50%より大きい必要がある。同じ理由で、混合物の有効圧力Peは、4.5バール未満である必要があり、湿り蒸気割合10に対応する分圧は、常に4バール未満である必要がある。特に好ましい一実施形態によれば、湿り蒸気割合20の割合は、全混合物の50%~66%である。
【0074】
さらに、得られる湿り蒸気および空気の混合物12の洗浄特性を最大限に高めるために、液滴の形態の液相の少なくとも10%の水を含む湿り蒸気1を得ることが可能であり得る。換言すれば、混合物12の飽和蒸気圧を定義する曲線よりわずかに下、すなわち液相が再び優勢になると考えられる側になるであろう。下向きの矢印と「L」は、液相に向かう相変化の方向を示し、上向きの矢印と「V」は蒸気相に向かう相変化の反対方向を示し、乾き蒸気1’は、実際、飽和蒸気圧曲線の上方に位置する図全体の部分に対応する。
【0075】
本発明の範囲内で、洗浄/消毒段階に続いて、過熱乾き蒸気、または過熱乾き蒸気と圧縮空気の混合物の噴射によって実行される純粋な消毒ステップを追加することも可能であり、この混合物の特性は、図5に記載される手順に従って画定される。実際、効率的な洗浄の後、過熱乾き蒸気の消毒効率は大幅に改善され、通常は4.5バール未満、有利には3.5バール未満の適度な圧力値を使用して、処理される歯科用または外科用ツールをよりよく保存できる。
【0076】
有利には、洗浄および消毒装置は、硬度が許す場合には、蒸留水、脱塩水、または水道水で満たされる統合水タンクを備えることができる。この場合、タンクを充填する前に実行され得る洗浄/消毒の回数を最適化し(1日あたり30回の洗浄/消毒の割合で、1週間に1回の充填が最適である)、装置の寸法を最小限に抑えるために、水タンクの最適な容量は、0.3l~0.7lである。
【0077】
好ましい一実施形態に従って提案された新しいシステムの動作の詳細な説明は、コントラアングルまたはストレートハンドピース用のカップリングノーズの場合において行われた。洗浄および消毒するツールがタービンの場合、唯一の違いは、タービンカップリングの形をとるカップリングノーズの形状と、回転子を作動させる手段に関するものであり、この場合、加圧流体(湿り蒸気、圧縮空気、または2つの流体の混合物)が通過するだけで作動する。
【0078】
したがって、上記の説明から、処理される外科用歯科ツール600は、コントラアングル、ストレートハンドピース、またはタービンのいずれかとすることができることが理解されるであろう。
【0079】
さらに、本発明の文脈では、直接的または間接的に、すなわち、第2の空気流F2との事前の混合を介して、または混合せずに、処理されるツール600に噴射される第1の湿り蒸気流F1を生成するための蒸気発生器100について言及している。このような蒸気発生器100は、飽和湿り蒸気発生器に限定されず、ツールに噴射されるか、またはツールのヘッドから出る、結果として生じる蒸気流が湿り蒸気を含有するという条件で、少なくとも部分的に乾式蒸気発生器も含むことができ、本発明の基本的な考え方は、乾き蒸気のみではなく、洗浄および/または消毒作業に湿り蒸気をまさに使用することであることが理解されるであろう。
図1
図2
図3
図4(A)】
図4(B)】
図4(C)】
図5
【国際調査報告】