(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-12-13
(54)【発明の名称】材料の焼成のためのプロセス及び方法
(51)【国際特許分類】
C04B 2/12 20060101AFI20231206BHJP
B01D 53/62 20060101ALI20231206BHJP
B01D 53/81 20060101ALI20231206BHJP
【FI】
C04B2/12
B01D53/62 ZAB
B01D53/81
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023533293
(86)(22)【出願日】2021-10-11
(85)【翻訳文提出日】2023-07-20
(86)【国際出願番号】 AU2021051183
(87)【国際公開番号】W WO2022115897
(87)【国際公開日】2022-06-09
(32)【優先日】2020-12-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】AU
(32)【優先日】2021-08-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】AU
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523044297
【氏名又は名称】ケイリクス リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】シーツ、マーク
(72)【発明者】
【氏名】ヴィンセント、アダム
(72)【発明者】
【氏名】トムセン、サイモン
(72)【発明者】
【氏名】ギル、マシュー
(72)【発明者】
【氏名】ホジソン、フィリップ
【テーマコード(参考)】
4D002
【Fターム(参考)】
4D002AA09
4D002BA03
4D002BA04
4D002DA05
4D002DA16
4D002DA31
4D002DA47
(57)【要約】
複数の縦型反応器管を備える粉末材料を焼成するためのシステムであって、落下する粉末は、反応器管の外部加熱壁からの放射によって加熱ゾーンの周囲で加熱され、粉末の焼成プロセスは、ガスを放出する反応、又は相変化を誘発する反応であってもよく、反応器管を通過する間の落下する粉末の粒子の平均速度は、1.0m/秒以下であり、各管の粉末材料流束は、好ましくは0.5~1kg・m
-2・s
-1の範囲であり、加熱ゾーンの長さは、10~35mの範囲である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の縦型反応器管を備える粉末材料を焼成するためのシステムであって、
落下する粉末は、反応器管の外部加熱壁からの放射によって加熱ゾーンの周囲で加熱され、粉末の焼成プロセスは、ガスを放出する反応、又は相変化を誘発する反応であってもよく、反応器管を通過する間の落下する粉末の粒子の平均速度は、1.0m/秒以下であり、各管の粉末材料流束は、好ましくは0.5~1kg・m
-2・s
-1の範囲であり、加熱ゾーンの長さは、10~35mの範囲である、システム。
【請求項2】
粉末材料が、加熱されるとガスを放出する化合物又は鉱物を含み、ガスは、二酸化炭素、蒸気、塩化水素などの酸性ガス、及びアンモニアなどのアルカリガスの群から選択される少なくとも1つである、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
鉱物が、石灰石又はドロマイトである、請求項2に記載のシステム。
【請求項4】
化合物がシリカ及び粘土を含み、粉末材料がポルトランドセメント製造用の原料セメント粉である、請求項3に記載のシステム。
【請求項5】
粉末材料の粒子体積分布が、直径250μm未満が90%、0.1μm超が10%に制限される、請求項1に記載のシステム。
【請求項6】
放出されたガスが、焼成粉末の流れに逆らって管内を上方に向かって流れ、ガスがシステムの上部で排出される、請求項1に記載のシステム。
【請求項7】
放出されたガス及びシステムに導入されたガスが、焼成粉末の流れと共に反応器管内を下方に向かって流れ、ガスがシステムの底部で排出される、請求項1に記載のシステム。
【請求項8】
内管が各管内に配置され、粉末材料が排出されたガスと共に反応環内を下方に向かって流れ、反応器の底部では、ガスの流れが反転して内管を通って上方に向かって流れ、放出されたガス及びシステムに導入されたガスが、システムの上部で排出される、請求項1に記載のシステム。
【請求項9】
排出されたガス中に同伴される粉末材料が分離され、システムに再注入される、請求項6~8のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項10】
注入された粉末が、システム内に注入される前にガス-粉末予熱器システム内で予熱される、請求項6~9のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項11】
ガス-粉末予熱器システムが、低温粉末材料が高温の上昇ガス中を落下し、上昇ガスによって加熱される1つ以上の耐火物加熱管であり、予熱管を通過する間の粉末の平均速度が0.5m/秒以下である、請求項10に記載のシステム。
【請求項12】
システムの底部から排出された粉末が、ガス-粉末冷却システムで冷却される、請求項6~9のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項13】
ガス-粉末冷却システムが、高温の粉末材料が低温上昇ガス中を落下する1つ以上の耐火物冷却管であり、冷却管を通過する間の粉末の平均速度が0.5m/秒以下である、請求項12に記載のシステム。
【請求項14】
管の壁を外部から加熱するための外部加熱システムが、燃焼器と炉が一体化されたシステムであり、システムの加熱ゾーン下方の温度プロファイルの制御を可能にする、請求項1に記載のシステム。
【請求項15】
外部加熱システムが、システムの加熱ゾーンの下方の温度プロファイルの制御を可能にする無炎燃焼システムである、請求項14に記載のシステム。
【請求項16】
外部加熱システムの燃料が、天然ガス、合成ガス、都市ガス、発生炉ガス、及び水素の群から選択される少なくとも1つのガスであり、燃焼ガスが、外部加熱システムの煙道ガスから加熱された空気、酸素、又はそれらの混合物である、請求項14又は15に記載のシステム。
【請求項17】
煙道ガス中のCO
2が、再生燃焼後CO
2捕捉システムを用いて抽出され、このシステムは、アミン吸着剤システム、重炭酸塩吸着剤システム、及びカルシウムルーピングシステムからなる群から選択される少なくとも1つである、請求項14~16のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項18】
外部加熱システムが電気炉であり、電力は、システムがその一部である生産プラント内の高温ガス流から生成されるか、又はグリッドから抽出され、システムの加熱ゾーンの下方の温度プロファイルの制御を可能にするように構成される、請求項1に記載のシステム。
【請求項19】
外部加熱システムが、請求項14、15及び18に記載の外部加熱システムのいずれか1つの組合せであり、これは、各管の異なるセグメント又は異なる管に適用することができ、システムの操作では、焼成された材料の連続生産を維持しながら、このような外部加熱システムの可変の組合せを使用することができる、請求項1に記載のシステム。
【請求項20】
粉末材料が、いくつかの深さで反応器管に注入される、請求項1に記載のシステム。
【請求項21】
各管が、直列に取り付けられた複数のセグメントに分割され、各セグメントで放出又は導入されたガスは、セグメント間のガスブロックを使用してそのセグメントから引き抜かれる、請求項1に記載のシステム。
【請求項22】
上側のセグメントでの焼成中に放出されたガスの分圧は、低い分圧で新たな平衡を達成するために分圧降下によって反応がさらに進行するように、下のセグメントで低下させることができ、これは、上側のセグメントからの部分的に焼成された粉末に蓄積された熱エネルギーが焼成に使用されるように、下側のセグメントの壁温度の降下を含む、請求項21に記載のシステム。
【請求項23】
各セグメントの壁温度が、各セグメントから放出されるガスが所望の純度の特定のガスとなるように、各セグメントにおいて上部セグメントから順に上昇し、反応工程の触媒反応及び/又は反応工程中の材料の焼結を促進するために、他のガスを各セグメントに添加し得る、請求項21に記載のシステム。
【請求項24】
システムが、マグネサイトから耐火物ブロック用の焼結MgOを製造する、請求項23に記載のシステム。
【請求項25】
システムが、石灰石又はマグネサイトからCa(OH)
2、又はMg(OH)
2を生成する、請求項23に記載のシステム。
【請求項26】
システムが、電池前駆体の酸化状態を制御する、請求項23に記載のシステム。
【請求項27】
各管がいくつかのセグメントに分割され、各セグメントで放出又は導入されたガスは、セグメント間のガスブロックを使用してそのセグメントから引き抜かれ、高温ガス流がセグメントに導入され、そのセグメントにおけるガス及び粒子の熱エネルギーを高めて、外部加熱によって提供される熱エネルギーを増強する、請求項1に記載のシステム。
【請求項28】
ガス流が、可燃性燃料と、燃焼用の酸素又は空気とを含み、そのセグメントにおける燃焼を誘発し、そのセグメントにおけるガス及び粒子の熱エネルギーを高めて、そのセグメント又は他のセグメントにおける外部加熱によって提供される熱エネルギーを増強する、請求項27に記載のシステム。
【請求項29】
燃焼による温度上昇が、セグメントの底部に形成された粉末床でその後に起こる焙焼反応又はクリンカーリング反応に典型的な粒子-粒子間反応又は粒子間反応を誘発するのに十分であり、発熱反応から放出されるエネルギーは、粉末床の温度を維持又は上昇させることができ、その結果、誘発された反応が粉末床での滞留時間中に十分に完了する、請求項27に記載のシステム。
【請求項30】
ガス-粉末予熱器システムの予熱温度が650~800℃の範囲であり、焼成中に放出されるガスの分圧が15kPa未満であるため、粉末材料が部分的に焼成され、次いで、粒子の表面エネルギーが十分に低下するように焼結されることにより、粒子がその後結合して凝集する傾向が減少する、請求項10に記載のシステム。
【請求項31】
材料が、石灰石であり、焼成された材料、又は焼成された材料と他の鉱物との混合物が、材料の顆粒を製造するために後処理システムに導入され、顆粒が粉末を撹拌することによって形成され、ガス環境が二酸化炭素を含み、造粒機システムの温度が、石灰とCO
2との再結合が抑制される650~800℃の範囲にある、請求項1に記載のシステム。
【請求項32】
材料が、システムに熱を供給するために鋼製反応器壁を使用して第1のセグメントで最初に焼成され、各セグメントで放出又は導入されたガスは、この第1のセグメントと下側のセグメントとの間のガスブロックを使用してそのセグメントから引き抜かれ、その結果、異なるガスの第2のガス流が第2のセグメントに注入され、第1のセグメントからの焼成粉末がガスと反応して新しい材料化合物を生成するように、第2のセグメントの反応器壁を通る熱伝達が制御される、請求項1に記載のシステム。
【請求項33】
粉末材料が、石灰石CaCO
3、又はドロマイトCaCO
3・MgCO
3であり、第1のセグメントからの焼成生成物が、石灰CaO又はドロマイトCaO・MgOであり、排出されたガスはCO
2であり、第2のセグメントに注入されるガスは蒸気H
2Oであり、温度は、消石灰が第2のセグメントから排出されるように、壁を通して熱を除去することによって制御され、システム内の管の直径は、滞留時間によって熱伝達と反応速度が最小のセグメント長さでバランスするように選択される、請求項32に記載のシステム。
【請求項34】
消石灰又はドライム生成物が、周囲空気中のCO
2と高い反応性を有して、CaCO
3又はMgCO
3・CaCO
3を改質し、この生成物が、循環系において周囲空気からCO
2を除去するためにシステムに再導入され、この生成物が、再生可能燃料と共に使用され、燃焼CO
2の捕捉を伴う場合、システムが、カーボンネガティブな排出量の生成物を生成する、請求項33に記載のシステム。
【請求項35】
反応器管を振動させて、システムの壁に付着した固体物質の蓄積を除去する、請求項1に記載のシステム。
【請求項36】
外部加熱システムから各管への熱が、耐火物壁によって分離されるため、プラントは、耐火物材料の使用と、ガス及び放射を含むエネルギー分配を通じて、任意の数の管を用いて効率的に動作させることができ、これにより、温度プロファイルが、金属管の熱応力とシステムによるエネルギー消費に関連する望ましい範囲内に制御されるように、任意の管の放射への露出と熱の対流伝達が制御される、請求項1に記載のシステム。
【請求項37】
予熱器セグメント及び/又は冷却セグメントが、中央予熱器から各管への予熱された材料の分配を必要とし、この分配は、Lバルブ、各管への粉末の制御された分配を提供するように設計されたLバルブのアセンブリ、各管からの高温焼成材料を中央冷却システムに集める凝集システム、及びキルンなどの中央後続処理システムからなる群のうちの少なくとも1つによって達成され、凝集は、材料の連続的な流れを提供するために高温焼成粉末の流れが制御されるガススライドのシステムによって達成される、請求項36に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、広義には、連続プロセスにおいて材料を焼成する手段に関し、本明細書で説明される焼成は、材料を加熱することによって誘発される反応又は相変化、あるいはその両方である。
【0002】
材料を焼成するために開発されてきたプロセスは数多くあり、それらは特定の材料を特定の燃料で処理するために開発されてきた。本発明の開示は、間接加熱を用いて粉末材料の反応のためにエネルギーを提供する、フラッシュ焼成として知られる高速焼成の手段に関する。
【背景技術】
【0003】
焼成のための先行技術のほとんどは、燃焼ガスによる材料の直接加熱を使用するが、一方で、間接加熱は、一般に外部燃焼器から鋼管を介した放射熱伝達によって反応器の壁から熱を伝達する。間接加熱プロセスには一般に3つの用途があり、すなわち、(a)短い滞留時間と反応器内の温度制御により内部焼結が低減されるため、直接加熱よりも高い反応性を有する焼成材料を製造すること、及び/又は(b)焼成生成物が燃焼不純物によって汚染されないように、燃焼プロセスを反応プロセスから分離すること、及び/又は(c)例えば酸化状態の制御によって、反応を制御できるように、燃焼プロセス及び反応プロセスからガスを分離すること、及び/又は(d)酸化物を生成する焼成反応としてCO2を放出する炭酸塩材料を処理すること(これにより、プロセスCO2ガスを純粋なガス流として捕捉できるようになる)がある。
【0004】
CO2の捕捉に関して、そのような焼成プロセスからの排出源は2つある。第1の供給源は、炭素ベースの燃料の燃焼から放出されるCO2であり、本明細書では「燃焼CO2」と呼ばれる。第2の供給源は、反応プロセス、一般に炭酸塩材料から生じる「プロセスCO2」である。低排出量の焼成プロセスは、燃焼CO2とプロセスCO2の両方を削減することを目的としている。ライフサイクル分析では、再生可能電力、つまり排出原単位(emissions intensity)の低い電力を使用することが、燃料面でのCO2排出量を削減する手段となる。排出量を削減するための世界的な取り組みは、焼成生成物が、燃料CO2とプロセスCO2の両方を含む生成物1トンあたりのCO2排出量のトン数である排出原単位によって判断されるようになると予測されている。焼成プロセスで製造された生成物の排出原単位を削減する必要がある。
【0005】
燃焼CO2排出量を削減する方法は、数多く確立されている。燃焼排出(combustion emissions)を削減する1つの方法は、風力、太陽光、その他のプロセスから生成される「再生可能電力」を使用して、焼成炉を間接的に加熱することである。再生可能電力の発電コストは急速に低下しており、コモディティ製品として手の届く価格になる可能性がある。その他の方法では、低排出量のガス燃焼プロセスを使用する。1つの方法は、水素などの炭素ベースでない燃料を使用する方法であり、例えば、水の「電気分解」に由来する燃料、あるいはCO2を除去するために「燃焼前」捕捉によって処理された炭素ベースの燃料の使用、のいずれかに由来する燃料を使用する方法である。別の方法は、CO2を除去するために、アミン、重炭酸塩、金属酸化物、ハイドロタルサイトなどの吸着剤を用い、「燃焼後」捕捉と呼ばれるプロセスで、炭素ベースの燃料の燃焼から出る煙道ガスを処理する方法である。別の方法は、容易に捕捉されるCO2の割合が高い煙道ガスを生成するための「オキシ燃料燃焼」と呼ばれるプロセスで、炭素ベースの燃料の燃焼に空気の代わりに酸素を使用する方法である。当業者であれば、燃焼排出を、再生可能電力、又は電気分解、又は燃焼前捕捉、又は燃焼後捕捉、又はオキシ燃料燃焼、又はこれらの組合せを使用することによって削減することができることは明らかであろう。燃焼ガスを使用するほとんどの焼成プロセスでは、高温の煙道ガスが、直接加熱によって材料に直接エネルギーを伝達するために使用される。そのため、プロセス排出(process emissions)は煙道ガスと混合され、プロセスCO2の抽出によりプロセス排出を削減するためのコストと複雑さが増大する。一方、間接加熱は、プロセスCO2を純粋なガス蒸気として捕捉するだけでなく、熱を供給するために上記の低排出量の方法のいずれかを使用できるため、排出量を削減する柔軟性も提供する。
【0006】
焼成時にプロセス排出を生成する材料は、石灰石CaCO3、ドロマイトMgCO3・CaCO3、マグネサイトMgCO3などの炭酸塩材料、ポルトランドセメント製造用の原料セメント粉に必要とされるような鉱物の混合物である。ここで、炭酸塩鉱物には、泥灰土や他の混合金属炭酸塩(シデライトFeCO3を含む)などの不純な石灰石、及び特定の酸化物材料の製造のために製造される合成炭酸塩化合物(例えば、金属や電池材料の製造における中間体として製造される炭酸マンガンMnCO3を含む)、並びに分解してCO2を生成する有機材料が含まれる場合がある。さまざまな工業的目的のために、焼成によって処理される広範な材料があり、これらはプロセスCO2を生成する。
【0007】
気候変動を緩和するため、材料の焼成からの排出を削減するために、プロセスCO2排出と燃焼CO2排出のいずれか、好ましくはその両方を捕捉する必要がある。例えば、セメント業界は、数多くの方法、及び数多くのCO2捕捉方法を通じて、石灰石の焼成からのCO2排出量を削減しようとしており、前者の方法には、バイオマス、廃棄物、及び再生可能電力を燃料として使用することが含まれ、後者の方法には、アミン捕捉、オキシ燃料燃焼、カルシウムルーピング、及び直接分離として本明細書に記載されるプロセスが含まれる。排出量削減のための最も望ましい解決策は、CO2の捕捉が最も低いコスト(回避されるCO2排出量1トンあたり1ドル)で達成されるプロセスである。提案されている捕捉プロセスの多くでは、アミン法やオキシ燃料法など、新たな化学的及び物理的プロセスが必要とされるため、CO2捕捉のコストがかなり高くなる。カルシウムルーピングでは、高い質量流量とエネルギー回収が使用の障害となっている。これらの各プロセスに共通するテーマは、その導入によって複雑さとコストが増大するということである。代替的なアプローチである直接分離は、Sceatsらによる国際公開第2015/077818号「Process and Apparatus for Manufacture of Portland Cement」及びその中の参考文献に記載されているように、追加のエネルギー・ペナルティ又は新しい材料の使用なしで、プロセスCO2の捕捉を提供する。このアプローチでは、焼成炉の間接加熱が使用されるため、炭酸塩鉱物の処理からのプロセスガス流が、微量成分の揮発による少量の不純物を含むプロセスCO2となる。間接加熱を用いて炭酸塩材料を焼成する一般的なアプローチは、Sceatsらによる国際公開第2016/077863号「Process and Apparatus for Manufacture of Calcined Compounds for Production of Calcined Products」及びその中の参考文献に記載されており、そこでは、間接加熱プロセスが、異なる材料及び電力セグメントを含む複数の反応器セグメントの使用に拡張されている。
【0008】
国際公開第2015/077818号、及び国際公開第2016/077863号、並びにそれらの中の参考文献に記載されている直接分離反応器に関連する発明は、間接加熱フラッシュ焼成プロセスであり、この焼成プロセスのタイムスケールは、一般に10~50秒の範囲であることに留意されたい。国際公開第2015/077818号、及び国際公開第2016/077863号、並びにそれらの中の参考文献には、一般に、投入粒子サイズが典型的には約100ミクロン未満であるという一般的な要件が含まれており、そのため、この滞留時間内に反応器内で酸化物に変換される炭酸塩の割合として本明細書で定義される焼成の程度は、焼成生成物の用途に十分である。直接分離反応器における焼成プロセスを制御する変数の一つは、壁温度分布であるため、通常は、滞留時間とこの壁温度の平均値とを反応器設計の重要な変数として参照する。直接分離反応器では、粒子は重力下で下方に向かって流れることが好ましく、滞留時間は粒子サイズ分布(PSD)の終端速度と関連しており、重力下で落下する粒子の加速度は、ガス流の方向に依存するガス-粒子摩擦によってバランスする。
【0009】
反応器の滞留時間及び温度に関して、一般に、材料の焼成度は、好ましくは少なくとも95%、最も好ましくは少なくとも97%以上である。しかし、セメント粉の場合は、それよりも低くなり、約85%になり得る。これは、クリンカー製造にロータリーキルンを使用する場合など、後続のクリンカー化プロセスで吸熱負荷が必要になる場合があるためである。材料の所望の焼成度を達成するために、反応器セグメント内の滞留時間と温度を制御することができる直接分離プロセスが必要とされている。本開示の発明は、部分的には、直接分離反応器の滞留時間と温度を増加させることを対象とする。
【0010】
PSDに関しては、測定された累積体積分布から3つの数値、すなわち粒子の10体積%がd10未満である直径としてのd10、50体積%がd50未満である直径としてのd50、及び90体積%がd90未満である直径としてのd90を定義することが有用である。炭酸塩材料の焼成粉末には多くの用途があり、最も好ましいd50サイズは約100ミクロンを超え、これについては、上記で言及した先行技術に記載されている。具体的には、生成物は、0.1~300ミクロンの約d10~d90の範囲をカバーしており、各生成物は、この範囲内の所定のPSDを有している。
【0011】
d50が100ミクロンを超える粉末材料は、d50がより小さい材料よりも取り扱いが容易であり、その生成物は特定の粉末用途で一般的に使用されている。このような粉末原料をこの範囲で製造できるように、直接分離技術を拡張する必要がある。
【0012】
他の用途では、ミリメートルサイズの範囲の顆粒の形態、好ましくは混合材料の顆粒の形態の材料が必要であり、特に、鉱物処理における適用(鉄、アルミニウム、マグネシウムのような金属の製造のためのスラグ化など、ガス流中へのそのような生成物の同伴が望ましくない場合)、及びセメント製造における適用(クリンカーを形成するための後続のプロセス工程で、顆粒中の結合した粒子間の反応によりクリンカー形成が生じる場合)、及び耐火物生成物における適用(焼結の前にブリケットが製造される場合)では、それらが必要である。このような造粒材料の製造を可能にするために、直接分離技術を拡張する必要があり、これには直接分離技術を造粒生成物の製造に統合することも含まれる。
【0013】
当業者であれば、焼成された材料のPSDは、多くの用途でかなり異なることが理解できるであろう。具体的には、そのような生成物の製造に伴う排出量を削減する必要があるため、直接分離反応器を適用して、広範囲の粒子サイズ直径の炭酸塩材料を処理する必要がある。大きな粒子は、小さな粒子よりも、直接分離反応器を通ってより速く落下するため、大きな粒子の滞留時間は、小さな粒子に比べて短くなる。場合によっては、この所望の焼成度を達成するために、上記で言及した先行技術に記載されている直接分離反応器の長さを延長することが実際的である場合がある。しかし、一般的には、よりコンパクトな直接分離反応器を使用することが好ましい。本開示の発明は、直接分離反応器に関して、これまでに開示されたものよりも大きな粒子を処理することができる焼成プロセスを対象としている。
【0014】
国際公開第2015/077818号、及び国際公開第2016/077863号に記載されている直接分離反応器は、単一管反応器として記載されており、投入材料は通常、1時間あたり8~10トン程度である。セメントなどの大規模な製造プロセスの場合、反応器を1時間あたり約200トン程度にスケールアップすることが望ましい。このようなスケールアップに直接分離反応器を適応させ、プロセスの利点を大量生産に提供できるようにする必要がある。
【0015】
本開示の発明は、主として炭酸塩材料、特に石灰石及びセメント原料粉の焼成におけるCO2排出量の削減を対象としているが、当該発明は、反応が相変化であるか、又は反応がCO2以外のガスを放出する他の材料の焼成にも適用することができる。このような焼成プロセスの例には、蒸気の生成による水分及び水和水の除去、硫黄化合物、アンモニア、及び塩酸などの酸性ガスの揮発が含まれる。
【0016】
本出願につながるプロジェクトは、助成契約第654465号及び第884170号の下で、欧州連合の研究・イノベーションプログラム「Horizon2020」から資金提供を受けている。
(背景)
【0017】
本開示に記載される発明は、主に、直接分離反応器内で炭酸カルシウム(CaCO3)を含む材料を焼成して石灰(CaO)を生成することを観察し、理解することから得られたものである。本明細書に記載されるそのような発明は、そのような材料を処理するための、国際公開第2015/077818号、及び国際公開第2016/077863号、並びにそれらの中の文献の改良であると考えることができる。さらに、開示された発明は、直接分離反応器に適用して、プロセスをスケールアップしたり、直接分離反応器の工業プロセスへの統合を促進したり、任意の目的のために直接分離反応器で他の材料を処理したりすることができる。
【0018】
当業者であれば、石灰石、ドロマイト及びセメント粉を含む炭酸カルシウム含有材料の処理では、焼成したての石灰粒子が「粘着性」であること理解するであろう。この特性についての初期の言及は、ライムバーナ(lime burners)の歴史的な文献にあり、その結果は、大量のCaOを製造する現代の製造プロセスの設計に影響を与えている。このテーマについては非常に多くの文献があり、以下に要約する。
【0019】
石灰の粘着性は、粒子の凝集体の形成、低温表面上の堆積物の形成、材料の床の粘着特性、及び生成物の搬送の課題に関連している。粘着性の物理的原因は、粒子内を移動する焼成反応フロントで生成されるCaO粒の高い表面エネルギーと関連している。理論に制限されるものではないが、焼成反応によって、サイズが20nm程度で、表面積が100m2/gを超えるCaO粒が生成される。これらの小さな粒は高い表面エネルギーを有しており、高温での焼結プロセスによって自然に減少する。このプロセスでは、粒はオストワルド熟成として知られるプロセスによって100nmを超えるまで成長し、隣接するCaO粒の間にネックが形成され、続いてこれらのネックを通してCaOが拡散することによって開始され、小さな粒は大きな粒に吸収される。この粗の粗大化プロセスにより、粒のサイズが大きくなるにつれて表面エネルギーが低下する。粒と粒の間にある細孔の観点から見ると、5~10nmのメソ細孔から100nmを超えるマクロ細孔へと気孔率が移動している。文献には、このような焼結は、温度だけでなく、CO2及びH2Oの分圧によっても焼結速度が増加するさまざまなメカニズムを通じて行われ、これは、焼結がこれらのガスによって触媒されるためである、と記載されている。この触媒作用により、CaOはミクロン単位の長さスケールで急速に移動できるようになる。CaOの拡散は、セラミックスやセメント製造などのプロセス、鉱物のスラグ化、及び後述するフラッシュ焼成への影響にとって重要である。
【0020】
このような石灰粒子の「粘着性」の原因は、衝突する粒子間、又は表面上に付着した粒子間、又は床に充填された粒子間でもネックが成長することであり、表面エネルギーが低下する。粒子内の粒が物理的に焼結するプロセスは、物理的に接触している粒子の接着と区別できない。セラミックス、セメント、及びスラグ化プロセスに関する文献では、「焼結」という言葉は粒子内及び粒子間のプロセスに適用される。本発明において、粘着性の関連する態様は、反応器を通る凝集体の処理が、個々の粒子とは著しく異なる程度に、焼成プロセス中に粒子が付着する「凝集」のプロセスであり、さらに、凝集体が付着する「カスケード凝集」のプロセスが発生することである。理論に制限されるものではないが、(a)凝集体は、ガス粒子の摩擦を最小化するために直接分離反応器内で生成される粒子のクラスター内の粒子-粒子衝突から形成されること、(b)凝集体は、クラスター内の粒子間の衝突速度を増加させるガス-粒子乱流がより強い条件下で、より容易に形成されること、(c)付着の強さとその持続性は焼結プロセスの結果であること、(d)凝集体の持続性が焼成プロセスに与える影響は大きい可能性があること、が理解される
【0021】
直接分離反応器に関連することとして、CaO焼結に関する先行技術には、CO2によるCaOの触媒焼結も記載されており、この場合、焼結の初期段階は、約800℃を超える温度及び約5kPaを超えるCO2分圧で30秒以内に起こる。この焼結時間は、CO2分圧が100kPa程度で温度が900℃程度である直接分離反応器で典型的に使用される10~50秒の滞留時間に匹敵するので、このような直接分離反応器で生成されたCaOは焼結されて表面積が約20m2/g未満になると予想するのが妥当である。これは直接分離反応器で確認されている。焼結は、反応器内で粒子の滞留時間に起こるので、粒子間の「粘着性」の影響も明らかであり、CO2の存在下でCaOを生成する材料の処理における直接分離反応器の性能に影響を与える可能性があることが予想される。
本開示は、悪影響を軽減する発明、又はその影響を利用して新規材料を製造する発明に焦点を当てている。
【0022】
本発明の1つの目的は、石灰の粘着性の影響を制御するために、直接分離管反応器の設計を最適化する1つ以上の手段を提供することである。
【0023】
本発明の別の目的は、直接分離反応器をより大きな生産能力にスケールアップする手段を提供することである。
【0024】
本発明の別の目的は、直接分離反応器を工業用途に統合するための本発明の使用について説明することであり、具体的な用途としては、ポルトランドセメント、鉄、アルミニウム、マグネシウム金属の製造が挙げられる。
【0025】
本発明の別の目的は、これらの発明を他の材料の処理に適用することであり、操作及び複雑さの観点からプロセスを簡略化したり、材料の特性を改善したりすることが利点となる。
【0026】
本明細書全体にわたる先行技術のいかなる議論も、そのような先行技術が広く知られていること、又は当該分野における共通の一般知識の一部を形成していることを認めるものとして決して考慮されるべきではない。
(サマリー)
本特許の発明は、一般に、直接分離技術の改良に関連する。
(a)このような発明には、落下する粉末が管の外部加熱壁からの放射によって主に加熱される1つ以上の反応器管を含む粉末材料の焼成のためのシステムが含まれ、粉末の焼成プロセスは、ガスを放出する反応、相変化を誘発する反応、又はその両方である反応であってもよく、反応器管を通過する間の粉末の平均速度は、1.0m/秒以下、好ましくは0.2m/秒以下であり、各管の粉末材料流束は、好ましくは0.5~1kg・m-2・s-1の範囲であり、加熱ゾーンの長さは10~35mの範囲である。
(b)粒子とガスの向流を用いて、100μmを超える大きな粒子を処理する手段;
(c)粒子とガスの並流を用いてガス粒子の乱流を低減することにより、凝集及びクラスター化を低減する手段;
(d)直接分離反応器からの焼成粒子流を冷却し、周囲粒子流を加熱する、向流管システムを用いて直接分離反応器に粒子を注入するための、手段であって、石灰の場合、粒子が直接分離反応器に注入されるときに凝集及びファウリングを抑制するために、予熱システムを用いて粒子を部分的に焼成し不動態化する、手段;
(e)密接に統合された燃焼炉セグメント、さまざまな燃料を用いた無炎燃焼器、及び電力加熱を使用して、反応器壁を効率的に外部加熱する手段であって、炭素ベースの燃料の場合、燃焼後プロセスを使用してCO2を捕捉し、エネルギー消費とCO2排出を最小限にする、手段。
(f)セグメント化された管を使用して、(i)プロセスガス圧力の切り替えによるプロセスエネルギー消費の最適化、(ii)高温ガス及び燃料/空気の注入、及び(iii)最適化された化学反応のシーケンスによる生成物の製造(例えばCaCO3からCa(OH)2の製造)、を可能にする、手段。
(g)CO2中のCaOからの粘着性を利用して石灰を熱造粒する手段であって、石灰を他の鉱物と混合することを含み、その造粒体(顆粒)を、スラグ化又はクリンカー化が重要な工業プロセス(CaOを用いた鉄、アルミニウムの製造、ドライムMgO・CaOからのマグネシウム金属の製造など)で使用し得るようにする、手段。
(h)多数の管を用いてプロセスをスケールアップする手段。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0027】
解決すべき第1の課題は、CaOを含む粒子、特にCO2の存在下でCaO粒子を生成する材料を処理するための直接分離反応器を最適化することである。
【0028】
解決すべき第2の課題は、プロセスをより大きなスループットにスケールアップするために直接分離反応器を最適化することである。
【0029】
解決すべき第3の課題は、直接分離反応器を多くの工業プロセスに統合することである。
【0030】
解決すべき第4の課題は、広範な材料を焼成するための直接分離反応器の改良である。
【課題を解決するための手段】
【0031】
本発明の第1の態様では、直接分離反応器に注入された粒子のCaO誘発凝集体の形成を減少させ、熱が伝達される金属表面のファウリングを減少させ、これらの粒子の床が輸送のための流動化に抵抗する傾向を減少させる、いくつかの方策が記載されている。3つの解決策が記載されている。第1の解決策は、より大きな粒子を焼成すると凝集が減少するという観察を利用して、より大きなCaO粒子を処理することである。第2の解決策は、粒子間の衝突頻度を最小化することによって、CaO粒子の凝集を減少させるものである。第3の解決策は、衝突時にこのようなCaO粒子が固着する傾向を減少させることである。
【0032】
本発明の第2の態様では、第1の態様に記載された発明を使用して、後続のプロセスで使用するための材料の顆粒を必要とする生成物を製造するために、直接分離反応器から製造されたCaO粒子の凝集を促進する手段が記載されている。このようなプロセスには、直接分離反応器で製造された焼成セメント粉からのポルトランドセメントの製造、直接分離反応器で製造されたドライムMgO・CaOからのピジョンプロセスを使用したマグネシウム金属の製造、直接分離反応器で製造された低排出量の石灰顆粒の製造(例えば、ケイ酸塩などの不純物を除去するために鉄鋼やアルミニウムの製造で使用されるスラグ化プロセスへの注入用)が含まれる。
【0033】
本発明の第3の態様では、直接分離反応器を工業プロセスに統合するためのいくつかの方策が記載されている。これらの方策には、廃熱を利用した投入粉末の予熱手段、粉末の反応器への注入手段、反応器壁への熱供給手段、反応器からのプロセスガス流の抽出手段、排気ガス中の固形物の損失の最小化手段、及び生成物を冷却する方策が含まれる。この態様の主な必要性は、一般に周囲条件で供給される材料を処理するのに必要なエネルギーを最小限に抑え、好ましくは最小限のエネルギー消費で、必要な条件で粉末生成物及び排気ガス流を供給する方策を提供することである。
【0034】
本発明の第4の態様では、直接分離反応器を使用するシステムの生産能力のスケールアップを可能にするいくつかの方策が記載されている。直接分離反応器管の直径には、粒子とガスの混合物への放射の浸透深さに関連して、合理的な制限がある。したがって、生産能力のスケールアップは、主に管のアレイを通じて行われる。スケールアップの方策には、予熱された固形物を多数の管に分配する手段、燃焼器から炉内の別々の管で粉末を加熱する手段、及び後続の処理のために反応器管から粉末流とガス流を集合させる手段が含まれる。この態様の主な必要性は、一般に周囲条件で提供される材料を処理するのに必要なエネルギーを最小限に抑え、好ましくは最小限のエネルギー消費で、必要な条件で粉末生成物及び排気ガス流を提供し、規模の経済を達成する方策を提供することである。
【0035】
本発明の第5の態様では、直接分離反応器を製造プロセスに統合することを促進する特定のプロセス工程が提案され、主な用途はセメントクリンカーの製造である。
【0036】
本発明の第6の態様では、複数の縦型反応器管を備える粉末材料を焼成するためのシステムであって、落下する粉末は、反応器管の外部加熱壁からの放射によって加熱ゾーンの周囲で加熱され、粉末の焼成プロセスは、ガスを放出する反応、又は相変化を誘発する反応であってもよく、反応器管を通過する間の落下する粉末の粒子の平均速度は、1.0m/秒以下であり、各管の粉末材料流束は、好ましくは0.5~1kg・m-2・s-1の範囲であり、加熱ゾーンの長さは、10~35mの範囲である、システムに関する。
【0037】
好ましくは、粉末材料は、加熱されるとガスを放出する化合物又は鉱物を含み、ガスは、二酸化炭素、蒸気、塩化水素などの酸性ガス、及びアンモニアなどのアルカリガスの群から選択される少なくとも1つである。
【0038】
好ましくは、鉱物は、石灰石又はドロマイトである。
【0039】
好ましくは、化合物はシリカ及び粘土を含み、粉末材料はポルトランドセメント製造用の原料セメント粉である。
【0040】
好ましくは、粉末材料の粒子体積分布は、直径250μm未満が90%、0.1μm超が10%に制限される。
【0041】
好ましくは、放出されたガスは、焼成粉末の流れに逆らって管内を上方に向かって流れ、ガスはシステムの上部で排出される。
【0042】
好ましくは、放出されたガス及びシステムに導入されたガスは、焼成粉末の流れと共に反応器管内を下方に向かって流れ、ガスはシステムの底部で排出される。
【0043】
好ましくは、内管が各管内に配置され、粉末材料は、放出されたガスと共に反応環内を下方に向かって流れ、反応器の底部では、ガスの流れが反転して内管を通って上方に向かって流れ、放出されたガス及びシステムに導入されたガスは、システムの上部で排出される。
【0044】
好ましくは、排出されたガス中に同伴される粉末材料は分離され、システムに再注入される。
【0045】
好ましくは、注入された粉末は、システム内に注入される前にガス-粉末予熱器システム内で予熱される。
【0046】
好ましくは、ガス-粉末予熱器システムは、低温粉末材料が高温の上昇ガス中を落下し、上昇ガスによって加熱される1つ以上の耐火物加熱管であり、予熱管を通過する間の粉末の平均速度は0.5m/秒以下である。
【0047】
好ましくは、システムの底部から排出された粉末は、ガス-粉末冷却システムで冷却される。
【0048】
好ましくは、ガス-粉末冷却システムは、高温の粉末材料が低温上昇ガス中を落下する1つ以上の耐火物冷却管であり、冷却管を通過する間の粉末の平均速度が0.5m/秒以下である。
【0049】
好ましくは、管の壁を外部から加熱するための外部加熱システムは、燃焼器と炉が一体化されたシステムであり、システムの加熱ゾーン下方の温度プロファイルの制御を可能にする。
【0050】
好ましくは、外部加熱システムは、システムの加熱ゾーンの下方の温度プロファイルの制御を可能にする無炎燃焼システムである。
【0051】
好ましくは、外部加熱システムの燃料は、天然ガス、合成ガス、都市ガス、発生炉ガス、及び水素の群から選択される少なくとも1つのガスであり、燃焼ガスは、外部加熱システムの煙道ガスから加熱された空気、酸素、又はそれらの混合物である。
【0052】
好ましくは、煙道ガス中のCO2は、再生燃焼後CO2捕捉システムを用いて抽出され、このシステムは、アミン吸着剤システム、重炭酸塩吸着剤システム、及びカルシウムルーピングシステムからなる群から選択される少なくとも1つである。
【0053】
好ましくは、外部加熱システムは電気炉であり、電力は、システムがその一部である生産プラント内の高温ガス流から生成されるか、又はグリッドから抽出され、システムの加熱ゾーンの下方の温度プロファイルの制御を可能にするように構成される。
【0054】
好ましくは、外部加熱システムは、請求項14、15及び18に記載の外部加熱システムのいずれか1つの組合せであり、これは、各管の異なるセグメント又は異なる管に適用することができ、システムの操作では、焼成された材料の連続生産を維持しながら、このような外部加熱システムの可変の組合せを使用することができる。
【0055】
好ましくは、粉末材料は、いくつかの深さで反応器管に注入される。
【0056】
好ましくは、各管は、直列に取り付けられた複数のセグメントに分割され、各セグメントで放出又は導入されたガスは、セグメント間のガスブロックを使用してそのセグメントから引き抜かれる。
【0057】
好ましくは、上側のセグメントでの焼成中に放出されたガスの分圧は、低い分圧で新たな平衡を達成するために分圧降下によって反応がさらに進行するように、下のセグメントで低下させることができ、これは、上側のセグメントからの部分的に焼成された粉末に蓄積された熱エネルギーが焼成に使用されるように、下側のセグメントの壁温度の降下を含む。
【0058】
好ましくは、各セグメントの壁温度は、各セグメントから放出されるガスが所望の純度の特定のガスとなるように、各セグメントにおいて上部セグメントから順に上昇し、反応工程の触媒反応及び/又は反応工程中の材料の焼結を促進するために、他のガスを各セグメントに添加し得る。
【0059】
好ましくは、システムは、マグネサイトから耐火物ブロック用の焼結MgOを製造する。
【0060】
好ましくは、システムは、石灰石又はマグネサイトからCa(OH)2又はMg(OH)2を生成する。
【0061】
好ましくは、システムは、電池前駆体の酸化状態を制御する。
【0062】
好ましくは、各管はいくつかのセグメントに分割され、各セグメントで放出又は導入されたガスは、セグメント間のガスブロックを使用してそのセグメントから引き抜かれ、高温ガス流がセグメントに導入され、そのセグメントにおけるガス及び粒子の熱エネルギーを高めて、外部加熱によって提供される熱エネルギーを増強する。
【0063】
好ましくは、ガス流は、可燃性燃料と、燃焼用の酸素又は空気とを含み、そのセグメントにおける燃焼を誘発し、そのセグメントにおけるガス及び粒子の熱エネルギーを高めて、そのセグメント又は他のセグメントにおける外部加熱によって提供される熱エネルギーを増強する。
【0064】
好ましくは、燃焼による温度上昇は、セグメントの底部に形成された粉末床でその後に起こる焙焼反応又はクリンカー化反応に典型的な粒子-粒子間反応又は粒子間反応を誘発するのに十分であり、発熱反応から放出されるエネルギーは、粉末床の温度を維持又は上昇させることができ、その結果、誘発された反応が粉末床での滞留時間中に十分に完了する。
【0065】
好ましくは、ガス-粉末予熱器システムの予熱温度が650~800℃の範囲であり、焼成中に放出されるガスの分圧が15kPa未満であるため、粉末材料が部分的に焼成され、次いで、粒子の表面エネルギーが十分に低下するように焼結されることにより、粒子がその後結合して凝集する傾向が減少する。
【0066】
好ましくは、材料が、石灰石であり、焼成された材料、又は焼成された材料と他の鉱物との混合物が、材料の顆粒を製造するために後処理システムに導入され、顆粒が粉末を撹拌することによって形成され、ガス環境が二酸化炭素を含み、造粒機システムの温度が、石灰とCO2との再結合が抑制される650~800℃の範囲にある。
【0067】
好ましくは、材料が、システムに熱を供給するために鋼製反応器壁を使用して第1のセグメントで最初に焼成され、各セグメントで放出又は導入されたガスは、この第1のセグメントと下側のセグメントとの間のガスブロックを使用してそのセグメントから引き抜かれ、その結果、異なるガスの第2のガス流が第2のセグメントに注入され、第1のセグメントからの焼成粉末がガスと反応して新しい材料化合物を生成するように、第2のセグメントの反応器壁を通る熱伝達が制御される。
【0068】
好ましくは、粉末材料が、石灰石CaCO3、又はドロマイトCaCO3・MgCO3であり、第1のセグメントからの焼成生成物が、石灰CaO又はドロマイトCaO・MgOであり、排出されたガスはCO2であり、第2のセグメントに注入されるガスは蒸気H2Oであり、温度は、消石灰が第2のセグメントから排出されるように、壁を通して熱を除去することによって制御され、システム内の管の直径は、滞留時間によって熱伝達と反応速度が最小のセグメント長さでバランスするように選択される。
【0069】
好ましくは、消石灰又はドライム生成物は、周囲空気中のCO2と高い反応性を有して、CaCO3又はMgCO3・CaCO3を改質し、この生成物が、循環系において周囲空気からCO2を除去するためにシステムに再導入され、この生成物が、再生可能燃料と共に使用され、燃焼CO2の捕捉を伴う場合、システムが、カーボンネガティブな排出量の生成物を生成する。
【0070】
好ましくは、反応器管を振動させて、システムの壁に付着した固体物質の蓄積を除去する。
【0071】
好ましくは、外部加熱システムから各管への熱は、耐火物壁によって分離されるため、プラントは、耐火物材料の使用と、ガス及び放射を含むエネルギー分配を通じて、任意の数の管を用いて効率的に動作させることができ、これにより、温度プロファイルが、金属管の熱応力とシステムによるエネルギー消費に関連する望ましい範囲内に制御されるように、任意の管の放射への露出と熱の対流伝達が制御される。
【0072】
好ましくは、予熱器セグメント及び/又は冷却セグメントは、中央予熱器から各管への予熱された材料の分配を必要とし、この分配は、Lバルブ、各管への粉末の制御された分配を提供するように設計されたLバルブのアセンブリ、各管からの高温焼成材料を中央冷却システムに集める凝集システム、及びキルンなどの中央後続処理システムの群からなる群のうちの少なくとも1つによって達成され、凝集は、材料の連続的な流れを提供するために高温焼成粉末の流れが制御されるガススライドのシステムによって達成される。
【0073】
課題に対する解決策は、これらの多くの態様から導き出すことができる。
【0074】
本発明のさらなる形態は、明細書の記載及び図面から明らかになるであろう。
【0075】
本発明の実施形態は、単なる例として、図面と併せて以下の記述から、当業者により良く理解され、容易に明らかになるであろう:
【図面の簡単な説明】
【0076】
【
図1】直接分離反応器における好ましくは大きな粒子の滞留時間が、粒子の終端速度を低下させるためのプロセスガス流の向流によって延長される、例示的な実施形態の概略図である。CaO誘発粒子-粒子結合による望ましくない影響は、結合する傾向が低い十分に大きな粒子を使用することによって軽減される。
【0077】
【
図2】小さな粒子を好ましくは焼成するための例示的な実施形態の概略図であり、CaO誘発粒子-粒子結合は、粒子とプロセスガスの並流を使用することによって制限され、分離器によって反応器の底部でガス-粒子分離が起こる。
【0078】
【
図3】小さな粒子を好ましくは焼成するための例示的な実施形態の概略図であり、CaO誘発粒子-粒子結合は、中央管を備えた直接分離反応器設計を使用することによって制限され、環状部の下方を流れる粒子とガスの低乱流の並流で反応が起こり、プロセスガスは中央管を通って排出され、ガス-粒子分離は、ガス流の方向の反転によって反応器の底部で起こる。
【0079】
【
図4】小さな粒子を好ましくは焼成するための例示的な実施形態の概略図であり、反応器への注入前に、部分的な予備焼成、制御された凝集及び焼結が行われることにより、CaO誘発粒子-粒子結合は、
図1~
図3に記載された設計よりもさらに減少する。
【0080】
【
図5】凝集の影響を緩和するために、粉末がいくつかの深さで反応器ゾーンに注入される図である。
【0081】
【
図6】
図1~
図5の直接分離反応器構成のいずれかからの粉末排気を撹拌して、所望のサイズの凝集体の球を生成する概略的な実施形態であり、顆粒の圧縮強度は、特定の用途に対して十分に強い。
【0082】
【
図7】第1の反応器セグメントからの部分的に焼成された粉末が、第2の反応器セグメントに注入され、ガス流が第2の反応器セグメントに注入される例示的な実施形態の概略図である。
【0083】
【
図8】セメントクリンカーの製造に特に適用するための例示的な実施形態の概略図であり、直接分離反応器からの粉末排気はいくつかの工程で処理され、落下する粉末を直接加熱することにより粉末をフラッシュ加熱して、クリンカー化反応を開始するのに十分なエネルギーを提供することによりセメントクリンカーを生成し、反応器の底部で加熱されたものが移動床に落下し、移動床で発熱性クリンカー化反応が進行し、移動床がさらに加熱され、その床でクリンカーが急速に形成される。この一般的なプロセスの他の工業用途について説明する。
【0084】
【
図9】石灰石を処理するための
図1の向流直接分離反応器の例示的な実施形態の概略例であり、炉熱は無炎の再生燃焼プロセスによって提供され、燃料はバイオマスから生成された合成ガスであり、CO
2は煙道ガスから抽出され、生成物固体及びプロセスガスの流れからの熱は、向流熱交換器を使用して投入された粉末を予熱するために使用される。この実施形態の意図は、このシステムが、完全なプロセス及び燃焼CO
2の捕捉によって高い熱効率を提供し、全体としてカーボンネガティブな排出量の生成物を提供できることを示すことである。
【0085】
【
図10】
図1~
図10のいずれかの反応器が単一の炉に収容されている直接分離反応器のモジュールの例示的な実施形態の概略図であり、管の放射及び対流カップリングは炉内の耐火物要素の使用によって制御され、生成物の予熱及び冷却の大部分は、各管について
図10に記載の補助装置を使用して行われる。
【0086】
【
図11】
図1~
図11のいずれかの反応器が単一の炉に収容されている直接分離反応器のモジュールの例示的な実施形態の概略図であり、管の放射及び対流カップリングが炉内の耐火物要素の使用によって制御され、材料の予熱及び後処理は、モジュール規模のシステムを使用して行われ、そのようなモジュール規模のシステムから管へ、又は管から、予熱された粉末及び焼成粉末を分配する必要がある。
【発明を実施するための形態】
【0087】
次に、本発明の好ましい実施形態を、添付の図面及び非限定的な実施例を参照して説明する。
【0088】
CaO凝集体の減少に関連する第1の態様に関して、以下に考察されるガス-粒子流体力学の知識に基づいて、その原理が開発されている。以下に記載するすべての実施形態において、粒子は重力に逆らって直接分離反応器を流下する。
【0089】
凝集体の形成を抑制するための好ましいアプローチは、一定の質量流量で平均粒子サイズを大きくすることである。基本的な理論的根拠は、粒子の数密度が大幅に減少するため、粒子と粒子の衝突率が低下し、さらに粒子-粒子衝突による運動量が十分に大きいため、衝突時に生成されるCaOのネックの強度が不十分で破壊されてしまい、衝突した粒子が固着せずに反発する。直接分離反応器に関する先行技術では、一般に粒子は20μm程度、一般に100μm未満と考えられている。本明細書に開示される発明の目的は、粒子サイズを約250μmまで大きくすることである。このような大きな粒子で達成することができる、焼成度を低下させる要因が3つある。第1に、粒子の質量が大きいため終端速度が速くなり、粒子の滞留時間が短縮される;第2に、平均表面積が減少するため、高温壁からの粒子による放射の吸収が減少する;第3に、気孔率が低い多くの材料では、反応フロントが粒子の表面から中心に移動するのにかかる時間は、粒子が大きいほど長くなる。1つの解決策は、単純に反応器の長さを長くして滞留時間を長くすることである。しかし、多くの場合、この解決策は現実的ではない。別の解決策は、反応器の壁温度を高くして熱伝達速度を速くすることである。しかし、多くの場合、反応器管の鋼は高温に耐えることができない。鋼の強度が失われ、腐食メカニズムが加速するためである。新しい鋼は、そのような影響を軽減する可能性がある。
【0090】
別の解決策を
図1に示す。滞留時間は、反応で生成される上昇ガスに対するガス粒子の摩擦によって粒子の終端速度が低下する向流構成を使用することによって短縮することができる。
図1では、向流を有する直接分離反応器が記載されており、粉末供給物101がロータリーバルブ102によって反応器システムに注入され、注入管103から反応器管104に入る。落下する粉末105は、プルーム状で、向流によるガス-粒子熱伝達によって反応ゾーン107から上昇する高温の上昇プロセスガス流106によって、反応温度に向かって加熱される。冷却されたガスは、分離板108と接線方向ガスエジェクタ管109とを含むシステムによって、同伴粉末から分離され、冷却されたプロセスガス流110が得られる。このガス流中の粉末は、サイクロン/フィルターシステム(図示せず)によって抽出され、反応器に再注入される。反応器内で加熱された粉末111は、上昇するガスに逆らってゆっくりと落下し、反応ゾーン107に入り、そこで反応器壁からの放射によって加熱される。熱は炉112内で発生し、鋼壁113が加熱され、その熱が反応器内のガスと粒子に流れ、所望の反応を誘発する。加熱ゾーンの長さは、反応が所望の程度まで完了するのに十分な長さである。落下する高温の焼成粉末は反応器コーン114に集められ、高温の焼成粉末床115を形成し、これは排気バルブ116によって反応器から抽出され、この排気バルブはフラップバルブのシステムであってもよく、焼成粉末流117が得られる。この構成の利点は、落下する粒子と上昇する高温ガスとの間の熱伝達によって粒子を加熱されるため、プロセスが外部の熱交換器にそれほど依存せずに高い熱効率を達成できることである。このような質量とサイズの粒子は、原則として反応器から容易に排出されるため、多くの場合、このアプローチは効果的とは思えない可能性があることに留意されたい。しかし、大きな粒子の後流では、落下する粒子の背後に強いガス渦を示すことが知られており、粒子がクラスターを形成する傾向があり、これによりガス粒子の摩擦が最小限に抑えられ、クラスターは上昇するガスに逆らって管を下って流れる。さらに、同伴粒子を反応器に再注入することで、反応器内に蓄積された粒子の質量は、粒子がクラスターとして組織化され、上昇するガスを突破するのに十分な質量密度を有する点まで成長する。高い質量流量では、粒子のクラスター化は十分であり、クラスター間の粒子の高速交換により、クラスターの運動量がより層流状態をもたらし、大規模な乱流が抑制される可能性があり、さらに、粒子が壁に向かって流れる勢いによってファウリングの成長が抑制され、ガス-粒子間の摩擦が最小限に抑えられるという利点もある。さらに、粒子が反応器の加熱ゾーンに注入されない場合、プロセスガスは生成されないことに留意されたい。したがって、粒子が反応器を流下しなければならない条件が常に形成される。
図1の構成の1つの効果は、反応器を通る質量流に脈動が発生する可能性があることであり、そのような影響は、反応器及びサイクロン/フィルターの設定によって制御し得る。
図1の構成の別の利点は、反応器の底部への粒子流がガス流の影響を受けないことであり、反応器の床内の大きな粒子が小さな粒子のように顕著な凝集を受けないため、反応器からの粒子の搬送及び輸送が阻害されないことである。このような凝集を抑制するには、好ましくは高温の蒸気又は空気を底部に少量注入することができることが見出された。CO
2ガス流中の蒸気又は空気は、標準的なプロセスを使用して、圧縮プロセス中に凝縮又は除去される。これらのガスはプロセスガス流の10%未満であることが好ましく、5%未満であることが最も好ましい。このような高温のガスは、粉末の滞留時間を調整することもでき、ガスが好ましくは蒸気又は空気である場合、分圧の低下は、焼成反応の平衡圧の低下によって焼成度を高める可能性がある。さらに、炭酸塩の焼成の場合、反応器底部でのCO
2の置換により、反応器底部の床に残留する粒子の凝集を低減して流動化を促進し、ラットホール(rat-holing)のような影響を低減することができる。
【0091】
図1の構成の別の利点は、大きな粒子間の粒子-粒子結合の強度が低いため、熱伝達を制限する管表面のファウリングが、小さな粒子で観察されるよりも少ないことである。実験によると、管の垂直面は小さな粒子と大きな粒子の両方に対して自浄作用があり、コーティングされた表面の一部は高温で剥がれ落ちることから、粒子間結合の強度は厚いコーティングを支えるには十分弱く、ファウリングの厚さは典型的には1mm未満であることが示唆される。コーティングの厚さ(内側の鋼壁と露出したコーティング表面との間の温度降下によって測定される)は、粒子流束が増加するにつれて減少することが見出され、これは、コーティングを取り除く固体の高い運動量によって生じる剪断力の増加から予想されることである。これは、以下に開示するすべての構成の特徴である。しかしながら、その厚さは、本明細書に記載された実施形態に依存し、凝集の抑制は、コーティング厚さを薄くすること相関することが分かる。
【0092】
図1のこの構成は、一般に、大きな粒子が凝集する傾向がほとんどない材料の焼成に適用できることに留意されたい。滞留時間が長くなり、向流でのクラスター化による粉末の損失が少ないことは、一般に利点である。プロセスがパイロ処理の相変化である用途では、底部にガスを注入すると滞留時間が増加する可能性があり、そのガスは相変化を触媒するものとして選択することができる。一例は、リチウムを抽出するためのα-スポジュメンからβ-スポジュメンへの処理であり、触媒は水蒸気である。
【0093】
投入される粉末の粒子サイズを大きくすることができない場合が多く、そのため
図1の実施形態のアプローチは不可能である。小さな粒子が直接分離反応器に注入されると、焼成によってCaOが形成されるときに遭遇する複数の影響が生じ得ることが観察されている。これらには、高温の鋼製反応器表面のファウリングの増加が含まれ、壁から反応器の大部分への放射熱伝達に対する抵抗が生じ、反応器の底部に集められた粉末の流れに対する抵抗が増加し、反応器内で形成された大きな凝集物が反応器内を十分な速度で落下し、焼成度が低下する。上述したように、これらの影響はすべて、焼成中に生じる石灰の粘着性に起因すると考えられる。最大数mmサイズの石灰の大きな顆粒が形成される場合があり、この場合、凝集体の凝集によってこのサイズの大きな凝集体が形成されるため、「カスケード凝集」と呼ばれる。他の条件では、凝集体のサイズはより小さく、例えば約100~150μmである。そのような条件が見つかり、そのような凝集体の焼成によって所望の焼成度が達成される可能性はあるが、限定された凝集からのカスケード凝集の発生を管理することは困難であり、これは品質管理にとって望ましくない。
【0094】
凝集を低減するための原理は、全ての長さスケールにおいてガス粒子流の乱流を最小化することである。なぜなら、高い乱流は、粒子-粒子及び粒子-壁の衝突頻度を最大化し、乱流の抑制により凝集体の形成が制限されるからである。
図2及び
図3の実施形態は、乱流を最小化することによって凝集を制御できる例を示している。
図2は、プロセスガス流が反応器の底部で排出される並流システムを示しており、
図3は、プロセスガス流が中央管を通して排出され、それによりガス流が反応器の上部で排出されるシステムを示している。
【0095】
図2では、並流を有する直接分離反応器が記載されており、粉末供給物201がロータリーバルブ202によって注入管203に注入され、反応器管204に入る。落下する粉末205は、プルーム状で、ガスと粒子を加熱する鋼製反応器壁206からの放射によって反応温度に向かって加熱され、熱は外部炉207内で発生し、鋼製壁が加熱される。加熱された粉末208は、反応器の奥深くに落下して反応ゾーン209に入り、ここで、壁からの放射熱が吸収され、所望の反応を誘発する。反応が進行するにつれて、高温プロセスガス210は、並流によって反応器を通して粒子を加速する。加熱ゾーンの長さは、反応が所望の程度まで完了するのに十分な長さである。焼成粉末211と高温プロセスガス212は、反応器の底部から排出される。これらのガスと粒子の流れは、反応器コーン213、ガスエジェクタ管214及び粉末床215によって分離され、高温プロセスガス蒸気216を反応器から排出させ、粉末を粉末床に堆積させる慣性分離器として作用する。高温の粉末流217は、フラップバルブのシステムであってもよい排気バルブ218によって反応器から排出される。このガス流中の粉末は、サイクロン/フィルターシステム(図示せず)によって抽出され、反応器に再注入される。
【0096】
図3では、並流を有する直接分離反応器が記載されており、粉末供給物301がロータリーバルブ302によって注入管303に注入され、反応器管304に入る。落下する粉末305は、プルーム状で、偏向キャップ306によって偏向され、吊り下げ中央管307によって形成された反応環に入る(その懸濁液は特定されていない)。落下する粉末308は、炉310によって加熱された鋼壁309からの放射によって環状部内の反応温度に向けて加熱される。加熱された粉末311は反応器の奥深くに落下して反応ゾーン312に入り、そこで壁からの放射熱が吸収され、所望の反応を誘発する。反応が進行するにつれて、高温プロセスガス313は、並流によって反応器を通して粒子を加速する。加熱ゾーンの長さは、環状部内で反応が所望の程度まで完了するのに十分な長さである。ガスと粒子の流れは、反応器コーン314によって分離され、粉末床315が高温プロセスガス蒸気316を中央管307に強制的に送り込み、ガスエジェクタ管317を通って反応器から排出され、粉末は焼成粉末床に堆積される。高温粉末流317は、フラップバルブのシステムであってもよい排気バルブ319によって反応器から排出される。ガス流317中の粉末は、サイクロン/フィルターシステム(図示せず)によって抽出され、反応器に再注入される。
【0097】
図1と
図3の本質的な違いは、
図3では、ガス流と粉末流を分離するための物理的障壁があることである。
図1では、粉末が、反応器の外壁付近で好ましくは流下する傾向があることに留意されたい。なぜなら、その領域ではガス粒子の摩擦が最も低いことが基本原理から知られているからである。
【0098】
図3の中央管の1つの相対的な利点は、上昇するガス流の速度が高いので、微粉を分離するための反応器上部のサイクロンのサイズが慣性分離器よりも小さくなり、粒子が上部の反応器に再注入されるが、反応器底部にある大きな慣性分離器の効率は低く、微粉を分離するにはサイクロン/フィルターが必要となる。別の利点は、中央管が高温の外部管からの放射を吸収でき、この管がそのエネルギーをガス粒子流に再放射できるため、正味の熱伝達率を最適化できることである。別の利点は、反応器の上部から排出される高温のCO
2の流れを利用して、例えばサイクロンで投入粉末の流れを部分的に予熱できることである。この態様については、統合の最適化に関して以下で別途検討する。中央管の別の利点は、環状部の管の端部近傍に旋回要素を追加し、内側管の入口近傍にブレードの旋回要素を追加することによって、底部での抽出効率を高めることができることである。これらの要素の両方が、反応器底部の円錐の上方のガスに付加的な流れパターンを形成し、中央管の下方の領域における粒子とガスの分離効率を高める。それにもかかわらず、底部でのガス粒子の分離は、これらの選択肢のいずれを使用しなくても、十分に効果的である。
図3の中央管は、有孔であってもよいし、吊り下げセグメントから構成されていてもよい。また、その管内では、ブレードを使用してガスを旋回させ、同伴粉末をインラインエジェクタによってガス流から環状部内に抽出できるようにしてもよい。
図3の実施形態が好ましいのは、このような選択肢を提供できるからである。凝集とそれに伴う影響を緩和するための追加の選択肢もある。粒子反応表面の焼結については前述の通りである。そのような表面の1つが粒子の外表面であり、最初にこの表面で反応フロントが発達し、焼成の開始と共にこの表面が焼結し始めるので、その時点から粒子を結合する傾向が弱まる。直接分離反応器の多くの構成では、粒子は反応器に注入する前に予熱される。
図4は、予熱プロセスを使用して、表面を部分的に焼成及び焼結することにより、外部粒子表面をある程度不動態化することができる例示的な実施形態を示す。
【0099】
当業者であれば、CO
2の分圧を下げることにより、焼成を開始する温度を下げることができることを理解するであろう。また、当業者であれば、粉末の予熱は、予熱器内で制御された程度まで表面焼成が開始されるように、低CO
2ガス流を用いて管理できことを理解するであろう。
図4では、予熱/焼成/焼結システムの予熱セグメントが記載されている。後述するように、焼成温度未満の温度の粉末供給物401は、ロータリーバルブ402によって注入管403に注入され、この注入管403は、粒子を耐火物でライニングされた熱交換反応器管404に送り込み、プルーム状で、注入された落下する粉末405が得られる。高温の蒸気/空気流406は、後述するように、粉末を予熱し、限られた程度で固体の焼成を誘発し、焼成された粒子を焼結させるのに十分に高い温度を有しており、接線方向ガス注入管407を用いてシステムの底部に注入され、旋回ガス流408として上方に向かって流れる。上昇するガス流と粉末流が向流で移動する際に、両者の間で熱交換が行われ、システムの注入条件は、大規模な乱流を低減するように設計されており、粒子とガス間の熱伝達を最適化することができる。上昇するガス流は、分離板409と接線方向ガスエジェクタ管410のシステムを通ってガス排気411に排出される。冷却されたガス流411中の粉末は、サイクロン/フィルターシステム(図示せず)によって抽出され、反応器に再注入される。落下する加熱粉末412は、コーン414内に床413を形成する。高温の粉末排気415は、フラップバルブのシステムであってもよい排気バルブ416を使用してシステムから排出される。投入温度及び質量流量は、CaO材料の焼成度が好ましくは10%未満、最も好ましくは5%未満となるようなものであり、床における粉末の滞留時間は、粉末流415における粉末の焼結が、表面層の粘着性により、焼成炉に投入されたときに粒子が凝集する傾向が減少する時間である。
【0100】
表面上のCaOの焼結は、予熱された粉末を高温CO
2ガスの一部に移送することによって加速することができ、前述の触媒焼結を加速することができ、粉末は、供給ホッパー内での粉末の保持時間によってある程度不動態化される。別の選択肢として、粉末を不動態化するために、予熱された予備焼成粒子の床に少量の蒸気を注入することもできる。理論に制限されるものではないが、CaOの焼結は、蒸気中ではCO
2よりも速く起こり、Ca(OH)
2を形成する蒸気の反応は、材料の温度を約580℃以上に維持することによって抑制できる。ほとんどの場合、粉末の予熱は、利用可能なエネルギーによって約720℃に制限されるため、この条件は満たされる可能性がある。この実施形態の第2の特徴は、反応器の下方のいくつかの点で、予熱された粉末を反応器に注入することである。このアプローチの意図は、反応器内の高い位置で粒子密度を下げ、それらの位置での凝集速度を低下させることである。このような実施形態は、
図5に示されており、この図では、
図1と同様の向流を有する直接分離反応器が記載されており、粉末供給物501が、ロータリーバルブ502によって、注入管システム503に注入され、反応器管504に入る。本実施形態の反応器管システムは、1つの管を有する
図1と比較して、3本の同心管から構成されている。管の長さは異なるため、粉末は異なる高さで反応器内に放出される。このような各管からの落下する粉末505は、向流によるガス-粒子熱伝達によって反応ゾーン507から上昇する高温の上昇プロセスガス流506によって反応温度に向かって加熱される。冷却されたガスは、分離板508と接線方向ガスエジェクタ管509を含むシステムによって、同伴粉末から分離され、冷却されたプロセスガス流510が得られる。このガス流中の粉末は、サイクロン/フィルターシステム(図示せず)によって抽出され、反応器に再注入される。反応器内の各管からの加熱された粉末蒸気511は蓄積し、上昇するガスに逆らってゆっくりと落下し、反応ゾーン507に入り、そこで反応器壁からの放射によって加熱され、鋼壁513を加熱する炉512内で熱が発生し、その熱が反応器内のガス及び粒子に流れて、所望の反応を誘発する。加熱ゾーンの長さは、反応が所望の程度まで完了するのに十分な長さである。落下する高温の焼成粉末は、反応器コーン514に集められ、高温の焼成粉末床515を形成し、これは排気バルブ516によって反応器から抽出され、排気バルブはフラップバルブのシステムであってもよく、焼成粉末流517が得られる。
【0101】
焼結によって達成される凝集の抑制の程度は、CO
2又はH
2Oが表面に結合し、十分に高い温度でCaOの速い表面移動が促進されるため、限界がある可能性があることに留意されたい。この特性は、直接分離反応器で生成される低排出量の石灰の場合、新しい材料や用途の製造に利用できる可能性がある。石灰石の顆粒(石灰)は、現在、シリカやその他の不純物を除去するためのスラグ化剤として、広範囲の高温熱分解冶金プロセスで使用されていることに留意されたい。これらのプロセスでは、粉砕した石灰石を使用することが多かったが、石灰石からCaOへの焼成による吸熱負荷が非常に大きいため、石灰を使用するのが一般的である。これらのプロセスでは、細かい石灰粉末は使用されない。なぜなら、このようなパイロ処理では、石灰粒子がガス流に同伴されるためであり、mmサイズの石灰顆粒が好ましく使用される。直接分離反応器が低排出量の石灰を製造できることは興味深いが、上記で説明したように粒子サイズに制限がある。しかし、実験的観察によれば、これらの反応器から生産された生石灰は、容易に球状にして顆粒にすることができ、これを熱処理して、このようなプロセスで使用するのに必要な強度を有する顆粒を生成し得る。
図6の実施形態例は、このようなプロセスが、どのようにしてそのような顆粒を生成することができるかを示している。
図6は、粉末601とCO
2含有ガス602が加熱回転ドラム603に注入される造粒機システムであり、加熱回転ドラム603は加熱要素604によって加熱され、CaOが再炭酸化されない十分に高い温度で顆粒605を生成する。これらの顆粒の特性は、本質的に多孔質であることである。したがって、第2の用途は、固定床でSO
xやCO
2のようなガスを捕捉するためにこのような顆粒を使用することであり、そのようなプロセスにおけるこれらの顆粒の性能は、粒子の内部でCaOの反応性が、高排出石灰を使用する従来のプロセスで製造された石灰よりも高いという事実によって向上する。別の例では、CaO材料の顆粒は、強度が高く、多孔質で浸透性があり、H
2O、SO
x、CO
2、Cl
2、H
2S、その他のガスや金属蒸気を、亀裂を生じることなく吸収するために使用することができる。さらなる例では、CaOの高い表面反応性を利用して、粉末混合物の顆粒を製造することができる。例えば、顆粒は、鉄鋼製造用の鉄鉱石やアルミナ製造用のカオリンなどのケイ酸塩含有鉱物で構成することができ、顆粒中のCaOは、適切な条件下で、スラグ化プロセスによってケイ酸カルシウムを形成する後続プロセスで使用することができる。マグネシウム金属の場合、CaO含有材料は、フェロシリコンのような還元剤と混合されたドライムの場合があり、加熱するとマグネシウム蒸気とカルシウム-鉄ケイ酸塩スラグを形成する。このような全ての場合において、顆粒は、CaOの移動がスラグ形成を促進する緊密な接触を提供する。上記の先行技術は、直接分離反応器が異なるゾーンにセグメント化される可能性があることを認識している。一例として、直接分離反応器からの粉末を処理して反応プロセスを完了させる後処理セグメントがある。反応が完了に近づくにつれて反応速度が遅くなるため、焼成反応を完了するまでの滞留時間が非常に長くなる場合があることが理解されている。生成物や用途によっては、非常に高い焼成度が要求されることもある。
図7は、反応器の長さを延長する代わりに、焼成の目標を達成するために使用され得る実施形態を示している。
図7では、一般的な2セグメント直接分離反応器が記載されており、この反応器では、第1の反応器セグメントは
図1のものと同様であり、第1の反応器セグメントの下にある第2の反応器セグメントは、以下に記載するいくつかの異なる設計によって焼成反応を完了するために使用され、2つのセグメントはガスブロックによって分離されている。ガスブロックは、高い質量流の粉末によって作動し、ガス-粒子摩擦によって、第2のセグメントから第1のセグメントへのガスの流れを実質的に抑制する。粉末供給物701は、ロータリーバルブ702によって注入管703から反応器管704に注入される。落下する粉末705は、プルーム状で、向流による気体-粒子熱伝達によって第1の反応ゾーンセグメント707から上昇する高温の上昇プロセスガス流706によって反応温度に向かって加熱される。冷却されたガスは、分離板708と接線方向ガスエジェクタ管709を含むシステムによって、同伴粉末から分離され、冷却されたプロセスガス流710が得られる。このガス流中の粉末は、サイクロン/フィルターシステム(図示せず)によって抽出され、反応器に再注入される。反応器内の加熱された粉末711は、上昇するガスに逆らってゆっくりと落下し、反応ゾーンに入り、そこで反応器壁からの放射によって加熱され、鋼壁713を加熱する炉712内で熱が発生し、その熱が反応器内のガスと粒子に流れて、所望の反応を誘発する。加熱ゾーンの長さは、反応が中間の所望の程度まで完了するのに十分であり、焼成された中間粉末714は、粉末が濃縮されるコーン715に落下し、ガスブロック716に流入して第2の反応器セグメント717に落下する。本実施形態の材料及び操作モードに応じた組成を有するガス流718は、この反応器セグメントに注入され、そこで粉末と相互作用し、流れ719として反応器セグメントから排出される。ガスブロックの効率は、2つの反応器セグメントにわたるガスの圧力降下によって設定される。反応器セグメントの壁温度は、用途によって必要であれば、外部加熱炉又は冷却セグメント720によって制御することができる。所望の反応はこのセグメントで完了し、焼成粉末721が得られる。これは反応器コーン722に集められ、高温の焼成粉末床723を形成し、これはフラップバルブのシステムであってもよい排気バルブ724によって反応器から抽出され、焼成粉末流725が得られる。
【0102】
反応が不完全であるCaOの生成の場合、部分的に焼成された粉末714の温度は、約895℃をわずかに上回る。
図7の実施形態の1つの使用法では、第1のセグメント内のCO
2分圧は、約103kPaであり、空気又は蒸気718を注入することによって約10kPaに低下し、それにより、粉末が第2のセグメントに移送されたときに反応が開始する。焼成は、粉末内の熱を消費することによって、又は炉720から必要に応じて追加の熱を加えることによって、完了することができる。同じ考慮事項が、MgOの生成にも当てはまる。蒸気を使用する場合、温度は、関連する水和温度より高く維持しなければならない。
【0103】
図7のシステム実施形態の別の例では、第2のセグメントは、中間材料714を焼結するために使用される。具体的な例では、中間体は、供給物701としてのMgCO
3の焼成によって生成されたMgOであり、ガス718は蒸気であり、これはMgOに触媒作用を及ぼし、工業用途に望ましいMgOの表面積を与えるために使用される。蒸気がない場合、比表面積は約250~350m
2/gより大きくなる可能性があり、蒸気がある場合、比表面積は約10m
2/g未満に減少する可能性がある。
【0104】
図7のシステム実施形態の別の例では、ガス718は、空気又は酸素と可燃性材料のとの混合物であってもよく、可燃性材料は、一般に、無炎燃焼によって反応して反応のための熱を生成する合成ガスなどのガスである。この操作モードは、好ましくは、可燃性材料の自己発火温度を超える粉末供給物714の高温によって促進される。
【0105】
第2のセグメントは、単一セグメント反応器の底部に空気と燃料を注入することによって、反応器の第1段に直接統合することができることに留意されたい。この場合、プロセスガスの濃度プロファイルは、ガスの相互拡散によって緩和され、分圧降下によって誘発される焼成反応によってガスが反応器内で上昇するにつれて増加する。
【0106】
図7の別の実施形態例では、第2のセグメントに注入されるガス718は、第1のセグメントで生成された焼成中間粉末714と反応する成分を有する。このアプローチでは、第1のセグメントは、第2のセグメントにおけるガスと粉末との反応が所望の焼成生成物725を生成し得るように、十分に高い焼成度を達成するように操作されることが好ましい。さらに、炉/冷却器720の操作モードは、例えば、吸熱反応のための熱供給や発熱反応のための熱除去など、必要な反応条件を確立するように設定される。具体的な例としては、焼成中間体714が石灰石の前駆体701からのCaOであり、注入ガス718が蒸気であり、炉/冷却システム720が冷却モードで作動し、生成物725が消石灰Ca(OH)
2である場合が挙げられる。720で回収された熱は、プロセス全体に必要なエネルギー需要を低減するために、プロセスフロー全体で利用され得る。同じ考慮事項が、MgOからMg(OH)
2の生成にも当てはまる。
【0107】
電池及び触媒材料の製造のための一般的な例は、所望の反応が、前駆体710から生成された中間体718の還元プロセス又は酸化プロセスのいずれかであり、適切な還元ガス又は酸化ガス718を使用し、所望の生成物725のために所望の反応を誘発するように温度を設定することによって達成されるものである。
【0108】
当業者であれば、
図7のマルチセグメントの例示的実施形態によって説明される原理が、任意の焼成反応、又は一対の反応、又は焼結反応であって、ガスが所望のプロセスに適切な組成を有する反応に適用され得ることを理解するであろう。
【0109】
ポルトランドセメントの製造プロセスは、いくつかの段階で行われる。直接分離反応器について記載された先行技術には、プロセスの初期段階、すなわちセメント原料粉の焼成が直接分離反応器内で行われ、その段階の性能は、本開示に記載される発明によって改善される可能性があるプロセスが記載されている。第2段階はロータリーキルンで行われ、焼成粉がキルンに注入され、炎によって約1450℃に加熱され、主なセメント質材料であるビーライトとエーライトを形成するクリンカー化反応が活性化される。ロータリーキルンからの熱損失が大きく、クリンカー化反応の発熱エネルギーが有効に利用されないため、セメントプラントの熱効率は、典型的には約60%以下であることに留意されたい。
図8の実施形態は、このプロセスの改良を対象としている。この実施形態では、均一燃焼反応によって直接分離反応器から排出される粉末の温度を上昇させるために、燃焼ガスと空気/酸素の注入がどのように使用されるかが記載されている。
図8の実施形態の適用では、上昇する反応空気と燃料の向流を利用して、粉末を約1260℃以上の温度に加熱する、耐火物ライニングセグメント内のプロセスが示されている。
図8では、予熱されたセメント粉からクリンカーを製造するための具体的な2セグメント直接分離反応器が記載されており、直接分離反応器セグメント内でクリンカーを形成するアプローチが採用されている。このアプローチでは、ガス蒸気を分離するためにフラップバルブを使用する選択肢が使用される。約720℃に予熱されたセメント粉801は、ロータリーバルブ802を使用して注入管803に注入され、反応器管804に供給される。落下する予熱された粉末805は、プルーム状で、向流によるガス-粒子熱伝達によって第1の反応ゾーンセグメント807から上昇する高温の上昇CO
2プロセスガス流806によって反応温度に向かって加熱される。冷却されたガスは、分離板808と接線方向ガスエジェクタ管809を含むシステムによって、同伴粉末から分離され、801とほぼ同じ温度の冷却されたプロセスガス流810が得られる。このガス流中の粉末は、サイクロン/フィルターシステム(図示せず)によって抽出され、反応器に再注入される。反応器内で加熱された粉末811は、上昇するガスに逆らってゆっくりと落下し、反応ゾーンに入り、そこで反応器壁からの放射によって加熱される。熱は炉812内で発生し、鋼壁813が加熱され、その熱が反応器内のガスと粒子に流れ、所望の反応を誘発する。加熱ゾーンの長さは、反応が中間の所望の程度まで完了するのに十分であり、焼成されたセメント粉の粉末814は、粉末が濃縮されるコーン815に落下し、フラップバルブ816によって供給されて、第2の反応器セグメント817に落下する。燃料流818と酸素/空気流819がこの反応器セグメントに注入され、そこで無炎燃焼を受けて粉末820を加熱する。反応器壁821は耐火物管である。燃焼プロセスでは、粉末822を約1260℃の温度に加熱し、ビーライトを形成するためのクリンカー化反応の開始が示される。高温の粒子は、ゆっくりと移動する床内の縦型キルンセグメント823に落下する。ここでは、粒子-粒子接触により発熱性クリンカー反応が進行し、放出された熱により温度が約1450℃以上に上昇し、床の滞留時間が約30分以下の場合にエーライトが形成される。発熱はこのセグメントで完了し、クリンカー顆粒が得られる。排気バルブ824は、高温のクリンカー顆粒825を縦型キルンから排出し、そこで従来の格子冷却器(図示せず)を用いて空気で冷却する。当業者であれば、熱損失が大きい従来のキルンプロセスとは異なり、発熱反応によって粉が加熱されるため、
図8がエネルギー効率の高いプロセスを示していることを理解するであろう。
【0110】
工業プロセスの高いエネルギー効率は重要な要素である。反応器に関しては、直接分離反応器を使用することにより、所与の焼成度に対する熱エネルギー効率は影響を受けない。熱損失は、反応器の炉と燃焼器セグメントを取り囲む耐火物スキンを通る熱損失に関連する。この実施形態では、本発明は、燃焼器-炉構の成の考察に拡張される。熱伝達にとって重要な要素は、温度と、鋼製反応器壁及び炉の耐火物へ対流熱交換であり、鋼製反応器壁を通る放射熱伝達を最適化することである。一般に、これは、高いガス流速とガスの渦を使用する既知の技術によって最適化される。直接分離反応器は、別個の燃焼器ボックスを使用し、高温煙道ガスを、これらの望ましい特性を与える方法で反応器管を取り囲む炉に配管することによって操作することができ、高温煙道ガス排気は、燃焼用の空気を予熱するために使用することができる。しかし、高温ガスのダクト接続と分配は望ましくない。
図9では、石灰石を処理するための例示的な実施形態が、異なるアプローチを示している。選択された燃料はバイオマスからの合成ガスであり、燃焼後CO
2捕捉システムを使用して、CO
2流が隔離された場合のカーボンネガティブな生成物を示す(図示せず)。一般的に言えば、必要な空気量を減らすために、燃焼器、炉、及び空気回収プロセスを密接に統合することが望ましい。
図9の実施形態は、回復無炎システムのアレイを適用して、煙道ガス体積流量を低減できることを示している。このようなシステムでは、燃焼器と炉が一体化されており、炎がなく、混合ガスの流速が速いことから、ガスの温度は均一である。再生式無炎燃焼器の熱効率は非常に高く、炎がないためNOxの発生が最小限に抑えられる。このようなシステムを分散して使用すると、管に沿った温度の制御が可能になり、管内での焼成プロセスの最適化が可能になる。
図9の実施形態では、直接分離反応器を使用するシステムが記載されており、約125μmのd
50に粉砕された石灰石供給物901を処理し、石灰902に処理する。反応器システムは、第1の粉末予熱器セグメント903、第2の粉末予熱器セグメント904、直接分離反応器セグメント905、及び粉末冷却器セグメント906の3つのセグメントを有する。第1の粉末予熱器セグメントでは、石灰石プロセスの高温CO
2流907は、第1の粉末予熱器セグメント903の向流熱交換耐火物ライニング管の底部に注入され、その中に周囲温度の石灰石粉末901が注入され、冷却されたCO
2ガス流910と、床に形成される部分的に加熱された石灰石911が得られる。床からの部分的に加熱された石灰石911は、第2の粉末予熱セグメント904の熱交換耐火物ライニング管の上部に注入され、そこで後述する粉末冷却器セグメント906からの熱風流912によって加熱され、予熱された石灰石913は、床に形成される。必要に応じて、この空気流の温度をダクトヒーター(図示せず)により上昇させ、予熱された石灰石の温度を約930℃の石灰石の焼成開始温度又はその付近にすることができる。冷却された空気流914は排気されるが、以下に説明する煙道ガス用の燃焼後CO
2捕捉システム915に低級熱を供給するために使用することもできる(図示せず)。予熱された石灰石913は、ここでは
図1の向流システムとして示されている直接分離反応器セグメント905に注入され、予熱された石灰石とほぼ同じ程度で排出される処理されたCO
2907の純粋な流れと、高温の石灰粉末916が得られる。直接分離反応器は、ガス化装置920内でバイオマス918と空気919から形成される高温の合成ガス流917の燃焼によって加熱される。ガス化装置では、合成ガスと灰921が分離される。ガス化プロセスで生成されたタールは、高温の合成ガス蒸気に再注入することができる。直接分離反応器セグメント903の鋼管922は、多数の再生火炎燃焼システムによる高温の合成ガスの燃焼によって加熱され、鋼管922のうちの1つは、熱交換器924内の燃焼器からの高温の煙道ガスによって予熱された空気923を注入し、煙道ガス蒸気925を冷却して熱効率の高い燃焼プロセスを実現する。そのガス流からのCO
2は、燃焼後CO
2捕捉システム915に注入され、そこでCO
2926が抽出され、直接分離ガス蒸気910と混合されて、圧縮及び液化用のCO
2蒸気927が得られる(図示せず)。
【0111】
化石燃料燃焼ガスからのCO
2排出は、焼成生成物のCO
2排出原単位(emissions intensity)に大きく寄与する。石灰とセメントの場合、石炭のような典型的な固形化石燃料を使用すると、燃焼排出量は総排出量の約35%になる。燃焼排出を削減する一つのアプローチは、バイオ燃料を使用し、直接分離反応器と組み合わせて使用することである。バイオ燃料は、一般にバイオマスと呼ばれる固形燃料であり、既知の技術を用いて合成ガスにガス化することができ、
図9の構成で使用することができる。統合ガス化プロセスガス化プロセスは、バイオマスを蒸気/空気中で加熱して可燃性揮発性物質を放出し、フライアッシュを含む灰分をその残留炭素と共に分離して燃焼させ、間接加熱プロセスで揮発のための熱を供給するという既知の技術を用いて実施される。高温の揮発性物質は、予熱された空気を用いて無炎燃焼器内で燃焼される。このプロセスでは、ガスには、合成ガスだけでなく、タール前駆体も含まれることがある。これは、タール前駆体が燃焼するためである。つまり、ガスがタール凝縮プロセスより上に維持されるため、タール前駆物質を除去するコストのかかるプロセスが不要となり、燃料は予熱されるだけでなく、燃焼のための高いLHVも有する。ガス流からフライアッシュの除去が行われ、これは、炉の鋼壁上にシリカのガラス状堆積物が形成されるのを最小限に抑えるためである。
図9の燃焼後捕捉プロセスでは、アミン、重炭酸塩、ハイドロタルサイトのいずれかを使用することができる。
【0112】
上述の実施形態、及び
図1~
図9の例によって例示される実施形態は、単一管に基づく反応器に関連する。反応器の直径を拡大することによる処理のスケールアップは、粒子とプロセスガスによる高温壁からの熱の吸収によって制限され、質量流量は、壁の熱伝達能力と、反応器管内での粒子の滞留時間に影響を及ぼすプロセスガス中の粒子の関与によって制限される。一般に、直径約2mの反応器を通過する質量流量は、5~10トン/時の範囲である。反応器の高さは、プロセスの反応速度と壁からの熱伝達率に依存し、通常10~30mである。したがって、プロセスのスケールアップとは、管の数を増やすことである。しかし、反応器管のアレイの設計には工夫があり、本明細書ではそれらについて説明する。
図10は、スケールアップされたシステムの例示的な実施形態であり、実施形態では4本として示されている管が炉に組み入れられ、どの管も隣接する管への影響を最小限に抑えて停止できるように、管と管との間の耐火物の量が最小限に抑えられている。非動作管の温度は十分に低いので、その管に歪みが生じる心配はなく、操作する管の設定点は、生成物の焼成度やその他のプロセス変数を維持するように調整することができる。この条件は、モジュール内で達成され、どの管も操作可能であり、各管内のプロセスの流れは、管と管との間の許容可能な既知の熱的カップリングで変化させることができる。
図10の実施形態では、耐火物は、モジュールの投入燃料ガス及び煙道ガス分配システムに統合するために提供される積層された鋳造ブロックから構築することができ、無炎燃焼器が示されている。鋳造ブロックは、耐火物の質量を最小限に抑え、建設と交換のコストを最小限に抑えるように設計されている。この実施形態では、高温のガスや粉末の輸送を最小限に抑えるため、各管が、独自の予熱及び後処理システムを備えている。
図10の実施形態は、耐火物103に統合された4つの直接分離反応器1,2,3,4の反応器モジュール102の概略図である。このシステムは、低温粉末や低温ガス蒸気の輸送は既知の技術であり、これらのプロセスフローを最低温度にすることでコストと課題を削減できるというコンセプトに基づいている。この実施形態では、周囲粉末104、気体燃料源105、及び周囲空気106が投入されている。直接分離反応器は、
図1の実施形態と
図9の燃焼器に基づいている。したがって、投入粉末は、低温粉末コンベア107によってホッパー104から各反応器に別個のラインを通って、各段階1予熱器PH1-1,2,3,4に搬送され、各直接分離反応器セグメントDS-1,2,3,4からプロセスCO
2108を冷却し、中央CO
2クリーン/アップ圧縮機システム109に送られる。反応器燃焼器からの煙道ガス110は、流入空気流で回復した後、燃焼後捕捉プラント111に導かれ、燃焼CO
2流112(次いで圧縮される)、及び煙道ガスを生成する。セメント粉の製造の場合、各反応器からの高温の粉末流は、以下の
図11の実施形態で説明するエアスライドによってロータリーキルンに移送することができる。
【0113】
図10に示したようないくつかのモジュールを使用して、さらにスケールアップすることができる。このアプローチの利点は、操作不能になる可能性のある管を、他の管が継続して操作できる間に、交換することができ、また、そのような管を試運転することができ、その操作を予熱、焼成、冷却の各段階で最適化して、仕様に適合する焼成生成物を供給できることである。
【0114】
粉末及びガス蒸気の予熱及び後処理に使用される補助装置は、単一のモジュールにスケールアップすることで、スケールアップの利点が得られる可能性がある。このようなアプローチには高温ガスと粉末の分配が必要だが、このようなスケーリングの利点を達成するために使用できるアプローチは数多くある。このようなシステムは
図11に示されており、4本の管のモジュールには、単一の予熱器スタックがあり、任意の数の管を供給できる制御機能を備えた1:4のLバルブ分配システムを使用して、予熱された粉末が、管に均一に分配され;焼成された粉末流は、同様の制御を備えた4:1の加熱空気スライドシステムを使用して収集され;高温CO
2流は、後処理及び圧縮のために単一のCO
2蒸気を得るために組み合わされる。このような熱回収システムは、セメント工場での懸濁サイクロンの使用から規模を拡大することが知られている。この実施形態では、組み合わされたCO
2流中の熱を使用して、サイクロンスタックの第1段で粉末を予熱する。セメントを製造する場合、熱風スライドが、高温の焼成粉を単一のロータリーキルン(図示せず)に供給する。
図11の実施形態は、耐火物113に統合された4つの直接分離反応器1,2,3,4の反応器モジュール111を使用するシステムの概略図である。このシステムは、高温粉末や高温ガス蒸気の輸送は既知の技術であり、これらの要素にかかる高いコストと課題は、各反応器が別個のシステムを必要とする
図10の実施形態ではなく、大規模な予熱器と冷却器を使用することによって相殺されるというコンセプトに基づいている。この実施形態では、予熱された粉末114、ガス状燃料源115、及び周囲空気116が投入されている。直接分離反応器は、
図1の実施形態と
図9の燃焼器に基づいている。高温の粉末の場合、各管への流量を制御する手段は、熱風118で流動化するLバルブ流動床117を使用することであり、各コンベア管内の各熱損失は耐火物管によって最小限に抑えられる。各管用の予熱された粉末のコンベアシステムは、空気式の場合、塩析を避けるために急傾斜になっている。各反応器DS1、DS2、DS3、DS4は、高温プロセスCO
2流を生成し、これは高温CO
2流119及び高温煙道流120は集約され、これらは耐火物でコーティングされたパイプ(図示せず)を通して粉末用の中央予熱器に搬送される。各管からの焼成粉末流Cal1、Cal2、Cal3、Cal4は、管のシステムによって搬送され、一例として、搬送は耐火物で囲まれた傾斜熱風スライド121によって達成される。凝集した高温焼成材料122は、一般に、粉末冷却システム(図示せず)又はセメント製造の場合はロータリーキルンシステムに注入される。
【0115】
本発明を特定の例を参照して説明したが、本発明は、本明細書に記載された広範な原理及び本発明の精神に従いつつ、他の多くの形態で具体化され得ることが当業者には理解されるであろう。
【0116】
本発明及び記載された好ましい実施形態は、具体的には、産業上利用可能な少なくとも1つの特徴を含む。
【国際調査報告】