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特表2023-551881回転可能な2つの工具を用いてワークピースをロボット支援により加工する工作機械
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  • 特表-回転可能な2つの工具を用いてワークピースをロボット支援により加工する工作機械 図1
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  • 特表-回転可能な2つの工具を用いてワークピースをロボット支援により加工する工作機械 図5
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-12-13
(54)【発明の名称】回転可能な2つの工具を用いてワークピースをロボット支援により加工する工作機械
(51)【国際特許分類】
   B23Q 5/04 20060101AFI20231206BHJP
   B24B 41/04 20060101ALI20231206BHJP
【FI】
B23Q5/04 510F
B24B41/04
B23Q5/04 510H
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023533349
(86)(22)【出願日】2021-11-30
(85)【翻訳文提出日】2023-07-31
(86)【国際出願番号】 EP2021083583
(87)【国際公開番号】W WO2022117568
(87)【国際公開日】2022-06-09
(31)【優先権主張番号】102020131967.3
(32)【優先日】2020-12-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】515315521
【氏名又は名称】フェルロボティクス コンプライアント ロボット テクノロジー ゲーエムベーハー
【氏名又は名称原語表記】Ferrobotics Compliant Robot Technology GmbH
(74)【代理人】
【識別番号】110000718
【氏名又は名称】弁理士法人中川国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ナデラー ロナルド
【テーマコード(参考)】
3C034
【Fターム(参考)】
3C034AA13
3C034AA19
3C034BB01
3C034BB22
3C034BB92
(57)【要約】
【課題】
少ない工具交換で、又は、工具を交換することなく複数の工程を実施できる。
【解決手段】
ホルダ(32)と、前記ホルダ(32)に支持され、第1の工具(12)の収容部を有する第1のシャフト(46)と、前記ホルダ(32)に支持され、第2の工具(13)の収容部を有する第2のシャフト(56)と、第1のフリーホイールクラッチ(45)を介して直接的又は間接的に前記第1のシャフト(46)に機械的に結合されるとともに第2のフリーホイールクラッチ(55)を介して直接的又は間接的に前記第2のシャフト(56)に機械的に結合された第1の駆動シャフト(34、34’)と、を有する工作機械が開示される。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ホルダ(32)と、
前記ホルダ(32)に支持され、第1の工具(12)の収容部を有する第1のシャフト(46)と、
前記ホルダ(32)に支持され、第2の工具(13)の収容部を有する第2のシャフト(56)と、
第1のフリーホイールクラッチ(45)を介して直接的又は間接的に前記第1のシャフト(46)に機械的に結合されるとともに第2のフリーホイールクラッチ(55)を介して直接的又は間接的に前記第2のシャフト(56)に機械的に結合された第1の駆動シャフト(34、34’)と、
を有する工作機械。
【請求項2】
前記第1のフリーホイールクラッチ(45)及び前記第2のフリーホイールクラッチ(55)は、前記第1の駆動シャフト(34、34’)が第1の方向に回転するときに前記第1のシャフト(46)が駆動され、前記第1の駆動シャフト(34、34’)が第2の方向に回転するときに前記第2のシャフト(56)が駆動されるように構成された請求項1に記載のシャフトカップリング。
【請求項3】
前記第1の駆動シャフト(34、34’)に直接的又は間接的に連結され、前記第1の駆動シャフト(34、34’)を駆動可能なモータ(10)をさらに備える請求項1又は請求項2に記載の工作機械。
【請求項4】
前記第1の駆動シャフト(34)は、前記第1のフリーホイールクラッチ(45)によって前記第1のシャフト(46)に結合され、前記第2のフリーホイールクラッチ(55)によって前記第2のシャフト(56)に結合されるモータシャフトである請求項3に記載の工作機械。
【請求項5】
前記第1の駆動シャフトが、第1の及び第2のベルト駆動装置によって第1の及び第2のシャフト(46、56)に結合されており、
フリーホイールクラッチ(45、55)が、前記ベルト駆動装置の入力側又は出力側に配置されている請求項1乃至請求項3の何れか一項に記載の工作機械。
【請求項6】
第2の駆動シャフト(33)に接続されたモータ(10)と、
前記第2の駆動シャフト(33)と前記第1の駆動シャフト(34、34’)とを結合する少なくとも1つのベルト(41、51)と、
を更に有する請求項1に記載の工作機械。
【請求項7】
前記第2の駆動シャフト(33)は、伸縮シャフトである請求項6に記載の工作機械。
【請求項8】
前記第1の駆動シャフトが、ベルト(41、51)によってそれぞれ駆動される2つの部分シャフト(34、34’)を有する請求項1乃至請求項7の何れか一項に記載の工作機械。
【請求項9】
前記ホルダ(32)に結合され、前記ホルダ(32)に力を及ぼすように構成されたアクチュエータ(20)を更に有する請求項1乃至請求項8の何れか一項に記載の工作機械。
【請求項10】
前記第2のシャフト(56)から非対称に突出する第1の部材(62)と、
前記ホルダ(32)に対して不動であり、前記第2のシャフト(56)がアクティブ駆動されていないときに前記第1の部材(62)ひいては前記第2のシャフト(56)を基準位置に保持するように適合された第2の部材(58)と、
を更に有する請求項1乃至請求項9の何れか一項に記載の工作機械。
【請求項11】
前記第1の部材(62)が強磁性体であり、前記第2の部材(58)が磁石であるか、その逆である請求項10に記載の工作機械。
【請求項12】
前記第2の部材は、摩擦ライニング又はラッチローラを有する請求項10に記載の工作機械。
【請求項13】
駆動装置と、
第1の工具を搭載するための取付部を有する第1のシャフトと、
第2の工具の搭載するための取付部を有する第2のシャフトと、
を有し、
前記駆動装置は、第1のフリーホイールクラッチを介して前記第1のシャフトに直接的又は間接的に結合され、第2のフリーホイールクラッチを介して前記第2のシャフトに結合され、前記駆動装置は、回転方向に応じて前記第1のシャフト又は前記第2のシャフトを駆動する
工作機械。
【請求項14】
請求項1乃至請求項12の何れか一項に記載の工作機械を用いてワークピースをロボット支援により加工する方法であって、
第1のシャフト(46)に搭載された第1の回転工具(12)を用いて前記ワークピースを加工するステップと、
前記工作機械を回転させ、駆動装置又は前記第1の駆動シャフト(34、34’)の回転方向を変更するステップと、
前記第2のシャフト(46)に搭載された第2の回転工具(13)を用いて前記ワークピースを加工するステップと、
を有する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロボット支援による表面加工用の工作機械に関する。
【背景技術】
【0002】
ロボット支援表面処理では、工作機械(例えば、研削機械、穴開け機械、フライス機械、研磨機械等)をマニピュレータ、例えば産業用ロボットでガイドする。その際に、工作機械とマニピュレータのいわゆるTCP(Tool Center Point)とを、さまざまな方法で結合することができる。マニピュレータは通常、TCPの位置と姿勢を実質的に自由に調整し、工作機械を例えばワークピースの表面に平行な軌道で動かすことができる。産業用ロボットは通常、位置制御され、これにより目的の軌道に沿ってTCPが正確に移動される。
【0003】
ロボット支援の研削、研磨又は他の表面処理工程において良好な結果を得るためには、多くの場合で加工力(研削力)の制御が必要となるが、従来の産業用ロボットでは十分な精度を得ることが困難な場合が多い。産業用ロボットはアームが大きく重いため、慣性質量が大きく、制御器(クローズドループ制御)では加工力の変動に素早く反応することができない。この問題を解決するために、マニピュレータのTCPと工作機械の間にマニピュレータのTCPと工作機械を結合させることができる、産業用ロボットに比べて小型の(そして、軽い)リニアアクチュエータを配置することができる。表面加工では、リニアアクチュエータは加工力(工具とワークピースの接触力)のみを制御し、マニピュレータは位置制御されてリニアアクチュエータとともに工作機械を目的の軌道に沿って移動させる。力制御により、加工するワークピースの位置や形状の不正確さ、マニピュレータの軌道の不正確さを(一定の範囲内で)リニアアクチュエータが補正することができる。しかし、前述のリニアアクチュエータがなくても、力/トルク制御によって加工力を調整できるロボットがある。一部の装置では、工作機械の比較的重い駆動装置 (電気モータや圧縮空気モータなど)と実際の工具(研削板など)が機械的に切り離されている。これは、研削機械の比較的重い駆動装置がマニピュレータにしっかりと接続されており、(回転)工具が取り付けられている工作機械の比較的軽い部分のみがリニアアクチュエータによって移動(力制御)されることを意味する。この目的のために、例えば特許文献1に記載されているように、回転工具が伸縮シャフトを介して駆動装置に接続されることができ、その内容全体が参照により本説明に組み込まれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許出願公開第2019/0232502A1号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
多くの表面仕上げ工程では、異なる工程間で工具を交換する必要がある。工具の交換は、ロボット支援による半自動または全自動で行うことができる。この目的のために、例えば摩耗した工具を自動的に交換したり、例えば研削板を研磨板に交換したりすることができる工具交換ステーションが知られている。ロボット支援による自動工具交換が可能とはいえ、頻繁な工具交換は加工時間を増加させる。
【0006】
本発明者は、少ない工具交換で済むようにし、特に、工具を交換することなく複数の工程(例えば、研削とそれに続く研磨)を実施できるようにする改良型工作機械を開発することを課題とした。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題は、請求項1に記載の装置によって解決される。異なる実施形態およびさらなる発展は従属請求項の主題である。
【0008】
以下では、ロボット支援によるワークピースの加工に使用できる工作機械について記載される。一実施形態によれば、この工作機械は、ホルダと、ホルダに支持され、第1の工具の収容部を有する第1のシャフトと、ホルダに支持され、第2の工具の収容部を有する第2のシャフトと、を有している。この工作機械は、さらに、第1のフリーホイールクラッチを介して(直接的又は間接的に)第1のシャフトに機械的に結合されるとともに第2のフリーホイールクラッチを介して第2のシャフトに機械的に結合された第1の駆動シャフトを有する。特定の実施形態では、第1のフリーホイールクラッチ及び第2のフリーホイールクラッチは、駆動シャフトが第1の方向に回転するときに第1のシャフトが駆動され、駆動シャフトが第2の方向に回転するときに第2のシャフトが駆動されるように構成されている。
【0009】
更に他の実施形態では、工作機械は、駆動装置と、第1の工具を搭載するための取付部を有する第1のシャフトと、第2の工具を搭載するための取付部を有する第2のシャフトと、を有する。前記駆動装置は、第1のフリーホイールクラッチを介して第1のシャフトに直接的又は間接的に結合され、第2のフリーホイールクラッチを介して第2のシャフトに結合され、前記駆動装置は、回転方向に応じて第1のシャフト又は第2のシャフトを駆動する。さらに、工作機械によるワークのロボット支援加工をする対応する方法についても記載される。
【発明の効果】
【0010】
少ない工具交換で、又は、工具を交換することなく複数の工程を実施できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】ロボット支援による表面加工用の工作機械の一例を示す斜視図であり、工作機械は、対向する2つの側面に2つの回転工具を収容することができる。
【0012】
図2】更なる実施形態による工作機械の簡略断面図(縦断面)である。
【0013】
図3図2の実施形態を変更・拡張したものを示す図であり、工具は偏心シャフトによって駆動される。
【0014】
図4図2の実施形態の変形例を示す図である。
【0015】
図5】工具が取り付けられているシャフトをモータが直接駆動する別の実施形態を示している。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図示の例を用いて、各種の実施態様をより詳細に説明する。図示は必ずしも縮尺通りではなく、本発明は図示された態様に限定されるものではない。むしろ、発明の根底にある原理を説明することに重点が置かれている。
【0017】
例えばワークピースの表面を自動的に加工するために、工作機械を軌道に沿って移動させるロボットやマニピュレータは、それ自体知られている。ワークピースのロボット支援加工においてプロセス力は重要な役割を果たしているため、さまざまな力制御の概念が開発されている。プロセス力は、機械加工プロセス中の回転工具とワークピースの間の力、たとえば研削加工中の研削板とワークピース表面の間の力である。
【0018】
ここで説明される実施形態は、とりわけ、例えば特許文献1に記載されているような、リニアアクチュエータによる力制御に適している。いくつかの実施形態では、回転工具は工作機械の前側に取り付けられ、一方、回転工具の駆動装置(例えば電気モータ)は工作機械の後側に取り付けられる。工作機械の後側は、ロボット/マニピュレータにも接続されている。前側と後側の間には、上述のリニアアクチュエータがある。回転運動を伝達するために、工作機械の後側のモータと工作機械の前側の工具との間に伸縮シャフトが配置されており、アクチュエータの偏位の変化を補償することができる。別の実施形態では、モータは工作機械の前側に配置される。この場合、伸縮シャフトは必要ない。
【0019】
なお、ここで説明する概念は、統合されたリニアアクチュエータなしの工作機械でも使用できることに注意すべきである。統合されたリニアアクチュエータが使われない場合には、伸縮シャフトは必要ない。この場合、力の制御はロボット・マニピュレータ自体で直接行う(力・トルク制御を有するロボット)か、リニアアクチュエータを工作機械に組み込まずにロボットと工作機械の間に配置する。ここで説明する例示的な実施形態は、実質的に、モータによって駆動されるシャフト(伸縮シャフトまたは通常のシャフトまたはモータシャフト)と2つの異なる回転可能な工具との結合に関する。
【0020】
図1は、一体化されたリニアアクチュエータと伸縮シャフトを有する工作機械の一例を示したもので、工作機械の前側のみが示されており、リニアアクチュエータは概略的に描かれているだけである。工作機械の前側は本質的にホルダ32を備え、ホルダ32は、例えば、取付プレート、取付フレーム、ハウジング部品などであり得る。ホルダ32は、互いにしっかりと接続され、(例えば、一緒に取付フレームを形成する)いくつかの部品から構成され得る。例えば、図1に示す例では、プレート32’およびシリンダピン32”がホルダ32の部品である。工作機械の後側には、たとえばロボット/マニピュレータのTCP(ツールセンターポイント)に接続される取付プレート (図示せず)を設けることもできる。概略的にのみ示されているリニアアクチュエータ20は、モータ10も取り付けられている工作機械の後側を工作機械の前側のホルダ32に結合する。リニアアクチュエータ20は、例えば、複動空気圧シリンダおよびリニアガイドを含むことができる。
【0021】
図1に示される伸縮シャフト33は、シャフトの一端で、例えばボールベアリングによってホルダ32(取付プレート)上に取り付けられる。伸縮シャフトの他方のシャフト端は、モータ10のモータシャフトに直接的または間接的に結合される。伸縮シャフト33はベルト41、51を介してシャフト34、34’を駆動し、図示の例ではシャフト34、34’は伸縮シャフト33と実質的に平行に配置されている(回転軸が平行であればシャフトは平行である)。シャフト34、34’は、ホルダ32に(例えば、プレート32’及びホルダ32の取付プレートに)軸支されている。伸縮シャフト33及びシャフト34、34’は、工具12、13を駆動できる駆動シャフトである。
【0022】
シャフト34、34’は、第1の工具12および第2の工具13に結合され、これらを駆動する。2つの工具12、13は、例えば、2つの異なる研削板、研削板と研磨板、フライスと研削板、または別の対の工具であってもよい。両方のシャフト34、34’はベルトも用いてシャフト33によって駆動されるので、シャフト34、34’は常に同期して動くが、ベルト駆動装置の異なる伝達比により異なる回転数を有するように構成することもできる。したがって、いくつかの実施形態では、シャフト34、34’の代わりに、単一のベルトによって駆動される単一のシャフトを設けてもよい。回転工具12、13へのシャフト34の結合は、図2に概略的に示されており、以下でより詳細に説明される。
【0023】
図2は、伸縮シャフト33(モータ10に連結された駆動シャフト)がホルダ32に回転自在に軸支されたベアリング331(ボールベアリングやニードルベアリングなど)を示している。図2には、シャフト34をホルダ32又はプレート32’にそれぞれ軸支するベアリング342、341も示されている。この場合、上述したように、シャフト33とシャフト34とを結合するために必要なベルト41は1本だけである。シャフト46及びシャフト56はシャフト34と同軸に配置され、シャフト46と、シャフト34の第1の端部とが第1のフリーホイールクラッチ45によって結合され、シャフト56とシャフト34の第2の端部は第2のフリーホイールクラッチ55によって結合されている。工具12、13は、シャフト46、56の外端(すなわちフリーホイールクラッチ45、55の反対側)に取り付けることができる(図1も参照)。
【0024】
フリーホイールクラッチ(オーバーランニングクラッチ)45、55は、例えば、スリーブフリーホイール/フリーホイールスリーブ(ドローカップローラクラッチ)として構成することができる。スリーブフリーホイールはワンウエイクラッチで、通常はクランプランプ、プラスチックケージ、圧力スプリング、ニードルローラを備えた薄肉の非切断アウターカップで構成されている。スリーブフリーホイールはトルクを一方向にのみ伝達し、半径方向のスペースを節約する。フリーホイールはベアリング付き、又は、ベアリングなしで利用できる。スリーブフリーホイールは通常、アイドリング摩擦モーメント(オーバーランニング摩擦トルク)が比較的低い。スリーブフリーホイール及び他のフリーホイールクラッチはそれ自体既知であり、様々な製造業者(例えば、シェフラー(Schaeffler)社)から市販されている。したがって、これらについては、ここではこれ以上説明しない。
【0025】
フリーホイールクラッチ45、55は、シャフト33、34が左に回転すると、シャフト46(第1の工具シャフト)がフリーホイールクラッチ45を介して駆動される一方、フリーホイールクラッチ55が空転し、シャフト56(第2の工具シャフト)に大きなトルクを伝達しないように取り付けられている。シャフト33、34が右に回転すると事態は逆になる。すなわち、シャフト56は、フリーホイールクラッチ55を介して駆動される一方、フリーホイールクラッチ45なアイドル状態であり、シャフト46に大きなトルクを伝達しない。アイドリング時には、フリーホイールクラッチ45、55は摩擦トルクまでのトルクしか伝達できない。
【0026】
ワークピースのロボット支援による機械加工では、ワークピースは、最初に、シャフト46に取り付けられた第1の研削板(例えば、工具12)を用いて機械加工され得る。モータ10(図1参照)、したがってシャフト33、34も左回りに回転する。工具を交換し、例えばシャフト56に取り付けられた第2の研削板(例えば工具13)を用いて工作物を加工するために、ロボットは、工作機械を回転させ(シャフト33の回転軸に直交する平面内にある回転軸の周りで180°回転)、モータ10の回転方向を逆転させるだけでよい。第2の研削板によるワークピースの加工中、モータ10は右回りに回転する。他の実施形態では、すべての回転方向が逆であってもよい。上述したように、シャフト34は2つに分割することができる。この場合、(図1の例のように)2本のベルトが必要になる。この場合、2つのベルトドライブの伝達比は異っても良い。
【0027】
図3は、図2の例を変更/拡張したものである。この変更/拡張は、シャフト46とシャフト56に対して同様に関係するものである。簡単のため、図3ではシャフト56を有する工作機械の部分のみを示している。この実施形態では、シャフト56は、例えば偏心研削器や軌道研削機械で一般的なように、その外端が偏心シャフト57に結合されている。偏心シャフトを備えた研削機械はそれ自体公知であるため、ここではこれ以上説明しない。
【0028】
さらに、図3の例では、フラグ、タブ、又は、非対称にシャフト56から突出する他の部材61がシャフト56に接続されている。特に、部材61は、シャフト56の周りに延びるリング62又はスリーブ上に配置することができる。リング62は、部材61の角度位置を調整できるようにするために、任意の角度位置でシャフト56にクランプすることができる。部材61(フラグ)の近傍に磁石58、特に永久磁石を配置することができる。部材61が強磁性材料(例えば、フェライト系工具鋼)で作られている場合、磁石58は部材61を引き付け、従ってシャフト56を規定の角度位置に引き付ける。この角度位置は基準位置ともみなすことができる(図3(a)を参照、フラグ61と磁石58は互いに直接対向している)。磁石58と部材61の配置は、フリーホイールクラッチ55のアイドリング時の摩擦トルクがシャフトをこの規定位置から回転させるのに十分でないような寸法となるようにすることができる。これにより、モータ10が左に回転するとき、シャフト56は静止し、フリーホイールクラッチ55のアイドリング時の摩擦トルクにより回転しないことが保証される。モータ10が左回りに回転しているときにシャフト56が意図せず回転すると、例えば、工具13に付着した材料(例えば、粉塵粒子、研磨剤など)が工具13から飛び散る可能性がある。これは、磁石58により防止される。同じことが、モータが右回りに回転している際のシャフト46と工具12にも当てはまる。磁石58と部材61の配置は、偏心シャフトのない機械にも有用である。
【0029】
永久磁石58に加えて、または永久磁石58の代替として、工作機械は、シャフト56の特定の角度位置を検出できるように配置されたセンサ60を有することができる。センサ60は、例えば、部材61又はシャフト56が基準位置にあることを本質的に検出する光学センサ(例えば、反射光バリア)、又は他の近接センサであり得る。シャフト56が基準位置にあるとき、偏心シャフト57も基準位置にあり、工具13を自動的に交換する場合に有利となり得る。
【0030】
シャフト46(図3には図示せず)も、非対称に突出する部材を備えたリングを有し得る。この部材は、シャフトを基準位置に引き込み、フリーホイールクラッチ45がアイドリング時にシャフト46がアイドリング時の摩擦トルクによって回転するのを防ぐために、磁石によって引きつけられる。基準位置を検出するセンサを設けることもできる。不必要な繰り返しを避けるために、図3の上述の説明が参照される。他の例示的な実施形態では、磁石58の代わりに、摩擦ライニング又は、1つ又は複数のラッチローラが設けられ、各シャフト46、56がそれぞれのフリーホイールクラッチのアイドリング時の摩擦トルクによって回転しないようにすることができる。
【0031】
図4は、図2の例の変形例を示している。この例では、図1と同様に2つのベルト41、51が使用されているが、フリーホイールスリーブ45、55は、図1の例と比べてベルトドライブの反対側に配置されている。ただし、メカニズムの機能は上で説明した例と本質的に同じである。フリーホイールクラッチ45、55は、シャフト33(例えば、伸縮シャフト又は通常の駆動シャフト又はモータシャフト)に取り付けられ、シャフト33が左回りに回転すると、フリーホイールスリーブ45がトルクを伝達することができ、その結果、シャフト46(第1の工具シャフト)がベルト41を介して駆動され、一方、フリーホイールスリーブ55はアイドル状態となる。シャフト33が右回りに回転すると、状況は逆転する。この場合、フリーホイールスリーブ55のみがトルクを伝達することができ、シャフト56はベルト41を介して駆動される一方、フリーホイールスリーブ45は、アイドル状態となる。フリーホイールスリーブ45、55の外側にベルトプーリを配置することができる。シャフト33の回転方向に応じて、一方又は他方のベルトプーリがシャフト33により回転する。図4の例では、シャフト33、46、56は一端で支持されるだけでなく(図4、ベアリング331、341、342参照)、簡単のため図4には明示されていないが、別の場所で支持されてもよいことが理解される。
【0032】
図5は、図2の例を変更した実施形態を示している。この例では、駆動シャフト33とベルト駆動は、工具シャフト46と56を直接(ギヤなしで)駆動するモータ10に置き換えられている。この場合、シャフト34は、モータハウジングの両側から突出するモータシャフトである。モータシャフトの両端は、フリーホイールクラッチ45及び55によって、工具が取り付けられる工具シャフト46及び56に結合されている。この実施形態では、フリーホイールクラッチ45及び55は、図2の実施形態と同様に作動し、上記説明が参照される。
【0033】
図5からわかるように、この例では伸縮シャフトは必要ない。モータ10は工作機械の前側に搭載・支持される。それにも関わらず、リニアアクチュエータ20は、工作機械の前側(ホルダ32)と工作機械の後側(明示的に示されていない)との間に配置することができる。そして、工作機械の後側は、ロボットのTCPに取り付けることができる。
【0034】
以下は、本明細書に記載される実施形態のいくつかの態様の要約であり、これは網羅的なリストではなく、例示的な要約に過ぎない。一実施形態は、ロボット支援によるワークピースの加工に使用できる工作機械に関する。工作機械は、ホルダと、ホルダに支持され、第1の工具(例えば研削板12)の収容部を有する第1のシャフト(図2、シャフト46参照)と、ホルダに支持され、第2の工具(例えば研磨板13)の収容部を有する第2のシャフト(図2、シャフト56参照)とを有する。工作機械は、第1のフリーホイールクラッチを介して第1のシャフトに(直接的又は間接的に)機械的に結合されるとともに第2のフリーホイールクラッチを介して第2のシャフトに機械的に結合される(図2、スリーブフリーホイール45及び55を参照)(少なくとも)1つの駆動シャフト(図2、伸縮シャフト33及びシャフト34、または図1、部分シャフト34及び34’を参照)をさらに有する。
【0035】
駆動シャフトは、第1及び第2のベルト駆動(例えば図4、ベルト41、51参照)によって、第1及び第2の(工具)シャフトに結合することができる。フリーホイールクラッチは、ベルト駆動装置の入力側(図4参照)または出力側(図2参照)に配置することができる。
【0036】
第1のフリーホイールクラッチと第2のフリーホイールクラッチは、互いに反対方向に駆動軸に結合されている。これは、常にフリーホイールクラッチの一方がアイドル状態であることを意味する。したがって、2つのフリーホイールクラッチは、駆動シャフトが第1の方向に回転するときに第1のシャフトが駆動され、駆動シャフトが第2の方向に回転するときに第2のシャフトが駆動されるように配置される。一実施形態では、工作機械は、第1の駆動シャフトに直接的に又は間接的に結合され、第1の駆動シャフトを駆動するモータ(図1、モータ10参照)を有する。図1及び図2では、伸縮シャフト33が駆動シャフトとして見なされる。伸縮シャフト33は例えば、モータシャフトと同軸に機械的に接続され得る。モータ10は、ベルト(または任意の他の伝達手段)を介して間接的にシャフト34(または部分シャフト34及び34’)にも結合されているため、シャフト34は駆動の一部と見なすことができ、結果として駆動シャフトと見なすことができる。
【0037】
一実施形態では、モータは駆動シャフトに直接、機械的に接続され(図1参照、駆動シャフト33はモータシャフトと同軸)、この駆動シャフトはギアボックス、特にベルト駆動を介して少なくとも1つのさらなる駆動シャフトに接続される(図2参照、シャフト34、または図1参照、部分シャフト34及び34’)。この更なる駆動シャフトは、2つの部分シャフト(図1参照、部分シャフト34、34’)を有し、これらは両方ともモータによって駆動される。モータは工具12と13の両方を駆動する。ドライブトレインの分離は、様々な実施形態において、異なる位置で行われ得る。他の実施形態では、シャフト34はモータ(例えば、電気モータ又は圧縮空気モータ、図5を参照)のシャフトであってもよい。
【0038】
一実施形態では、リニアアクチュエータが工作機械のホルダに接続されている。この場合、一方の駆動シャフトを伸縮シャフトとして構成することができる(図1参照)。アクチュエータは、特に加工力を調整するために使用される。工具シャフトが支持・搭載されている工作機械の前側にモータを取り付ける場合は、伸縮シャフトは必要ない(例えば、図5を参照)。
【0039】
一実施形態によれば、工作機械は、第2のシャフト(図3、シャフト56参照)から非対称に突出する第1の要素(例えば強磁性フラグ)と、ホルダに対して不動な第2の部材(例えば磁石)とを備える。第2の部材は、第2のシャフトがアクティブに駆動されないとき(すなわち、関連するフリーホイールクラッチがアイドル状態であるとき)に、第1の部材ひいては第2のシャフトを基準位置に保持するのに適している。あるいは、(シャフトに接続され、シャフトとともに回転する)第1の部材を磁石とし、(ホルダに対して静止している)第2の部材を強磁性体とすることもできる。いくつかの実施形態では、第2の部材は摩擦ライニング又はラッチローラを有する。
【0040】
別の実施形態は、工作機械によるワークピースのロボット支援加工方法に関し、この方法では、モータは、回転方向に応じて、2つのフリーホイールクラッチによって第1の工具または第2の工具のいずれかを駆動することができる。この方法は、工作機械の第1のシャフトに搭載された第1の回転工具でワークピースを加工するステップと、工作機械を回転させ、工作機械の駆動シャフトの回転方向を変えるステップと、工作機械の第2のシャフトに搭載された第2の回転工具でワークピースを加工するステップとを含む。
【符号の説明】
【0041】
10…モータ
12…第1の工具
13…第2の工具
20…アクチュエータ
32…ホルダ
34、34’…駆動シャフト
46、56…シャフト
45、55…フリーホイールクラッチ
58…磁石
62…リング
図1
図2
図3
図4
図5
【国際調査報告】