(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-12-13
(54)【発明の名称】材料の薄膜が堆積される圧電結晶のパラメータを測定するための測定装置および方法、ならびにそのような装置を備えた薄膜堆積システムおよびそのようなシステムを制御するための方法
(51)【国際特許分類】
G01R 27/02 20060101AFI20231206BHJP
G01N 5/02 20060101ALI20231206BHJP
G01R 27/26 20060101ALI20231206BHJP
【FI】
G01R27/02 Z
G01N5/02 A
G01R27/26 L
G01R27/26 C
G01R27/26 Q
G01R27/26 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023533372
(86)(22)【出願日】2021-11-09
(85)【翻訳文提出日】2023-07-28
(86)【国際出願番号】 EP2021081124
(87)【国際公開番号】W WO2022117294
(87)【国際公開日】2022-06-09
(32)【優先日】2020-12-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CH
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】518031387
【氏名又は名称】エヴァテック・アーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ピーター・ホルン
(72)【発明者】
【氏名】エドモンド・シュンゲル
(72)【発明者】
【氏名】アドリアン・ヘルデ
【テーマコード(参考)】
2G028
【Fターム(参考)】
2G028BB20
2G028CG02
2G028CG06
2G028CG07
2G028CG08
2G028CG14
(57)【要約】
本発明は、材料の薄膜が(真空下で)堆積される圧電結晶(1)のパラメータを測定するための測定装置(u)を対象とし、2つの離間した電極(2、2’)を有する前記結晶(1)と、結晶(1)上に材料の前記膜が堆積され、指定された出力周波数で発振信号を生成するように適合された周波数発生器(3)と、前記発振信号を駆動信号として前記結晶(1)の前記電極(2、2’)の1つに適用し、前記駆動信号に応答して結晶出力信号を提供するように適合された測定増幅器(4)と、前記結晶出力信号をダウンコンバートし、同相出力信号および直交出力信号を提供するように適合された直交復調器と、前記同相出力信号および前記直交出力信号に基づいて、前記結晶(1)の1つまたは複数のパラメータを決定するように適合された計算ユニット(7)と、を備える。さらに、本発明は、対応する測定方法、ならびにそのような装置(u)を備えた薄膜堆積システム(真空チャンバを備える)およびそのようなシステムを制御する方法に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
材料の薄膜が堆積される圧電結晶のパラメータを測定するための測定装置(u)であって、
- 2つの離間した電極(2、2’)を有する前記圧電結晶(1)であって、その結晶(1)上に材料の前記膜が堆積され、前記結晶(1)は、例えば、1MHzから100MHzの範囲、より具体的には2MHzから7MHzの範囲、最も具体的には5MHzから6MHzの範囲の基本共振周波数(膜がその上に堆積されていない場合)を有し、前記結晶(1)は特にATカット水晶である、前記圧電結晶(1)と、
- 指定された出力周波数で発振信号を生成するように適合された周波数発生器(3)と、
- 前記発振信号を駆動信号として前記結晶(1)の前記電極(2、2’)の1つに適用し、前記駆動信号に応答して結晶出力信号を提供するように適合された測定増幅器(4)と、
- 前記結晶出力信号をダウンコンバートし、同相出力信号および直交出力信号を提供するように適合された直交復調器であって、前記同相出力信号および直交出力信号は、特にデジタル信号である、直交復調器と、
- 特に、材料の前記膜が前記結晶(1)上に堆積されるとき、特に複数の異なる周波数における前記同相出力信号および前記直交出力信号に基づいて、例えば、前記結晶の基本共振周波数、前記結晶の1つまたは複数の高調波共振周波数、前記結晶の1つまたは複数の非調和共振周波数、または前記結晶の前記基本共振周波数より上もしくは下の1つまたは複数の周波数で、前記結晶の1つまたは複数のパラメータを決定するように適合された計算ユニット(7)と、を含む、測定装置(u)。
【請求項2】
前記結晶の前記パラメータは、
- 結晶直列抵抗(Rm)、
- 結晶直列容量(Cm)、
- 結晶直列インダクタンス(Lm)、
- 並列アドミタンス(Y
0)、
- 結晶品質係数(Q)であり、
かつ/または前記計算ユニット(7)はさらに、前記結晶(1)上に堆積された材料の前記膜の厚さまたは質量、および/または前記同相出力信号および前記直交出力信号に基づく、前記結晶(1)上に堆積された材料の前記膜の前記厚さまたは質量の増加率を決定するように適合されている、請求項1に記載の装置(u)。
【請求項3】
- 特に並列容量(C
0)、特に、前記同相出力信号および前記直交出力信号に基づく信号から前記並列アドミタンス(Y
0)のコンダクタンス値(G
0)を減算して、補償された同相出力信号を提供することによって、前記同相出力信号および前記直交出力信号に基づくさらなる信号から前記並列アドミタンス(Y
0)のサセプタンス値(B
0)を減算して、補償された直交出力信号を提供することによって、それぞれ前記並列アドミタンス(Y
0)の影響を数値的に補償するように適合された補償ユニット(8)をさらに含む、請求項1または2に記載の装置(u)。
【請求項4】
- 前記周波数発生器(3)への入力として周波数制御信号を生成するように適合された周波数制御ユニット(9)をさらに含み、
前記周波数制御信号は、前記結晶(1)が共振周波数で動作するように適合され、前記共振周波数は、前記結晶(1)上に堆積された材料の前記膜の前記厚さまたは質量に依存し、
前記周波数制御信号は、以下の制御変数、すなわち
- 前記補償された直交出力信号の逆正接を前記補償された同相出力信号で除算した結果得られる位相であって、前記結晶(1)を前記共振周波数で動作させるために特にゼロに駆動され、特にCORDICプロセッサによって計算される、位相、
- 前記補償された直交出力信号を前記補償された同相出力信号で、特に前記補償された同相出力信号の大きさで除算した結果得られる正接であって、前記結晶(1)を前記共振周波数で動作させるために特にゼロに駆動される、正接、
- 前記補償された直交出力信号を、二乗された前記補償された同相出力信号と二乗された前記補償された直交出力信号との和で除算して得られるインピーダンスの虚数部であって、前記結晶(1)を前記共振周波数で動作させるために特にゼロに駆動される、虚数部
の1つに基づいて決定される、請求項3に記載の装置(u)。
【請求項5】
- 前記同相出力信号および/または前記直交出力信号に基づいて、前記発振信号の振幅を増幅するために前記周波数発生器(3)に適用される振幅制御信号を生成するように適合された振幅制御ユニット(10)をさらに含む、請求項1から4のいずれか一項に記載の装置(u)。
【請求項6】
- 前記周波数発生器(3)は、周波数制御入力を備えた直交発振器(3)であり、前記周波数制御信号が適用され、前記発振信号として同相信号と、前記周波数制御信号に応じて同じ出力周波数を有する90°位相シフトされた直交信号とを提供するように適合され、
- 前記測定増幅器(4)は、前記同相信号を前記駆動信号として前記結晶(1)の前記電極(2、2’)の一方に適用し、
前記直交復調器は、
- 前記同相信号と前記結晶出力信号とを乗算し、中間同相出力信号を提供するように適合されている、同相信号ミキサ(5)と、
- 前記直交信号を前記結晶出力信号と乗算し、中間直交出力信号を提供するように適合された直交信号ミキサ(5’)と、
- 前記中間同相出力信号をローパスフィルタリングし、前記同相出力信号を提供するように適合されている、同相信号フィルタ(6)と、
- 前記中間直交出力信号をローパスフィルタリングし、前記直交出力信号を提供するように適合された直交信号フィルタ(6’)と、を含む、請求項1から5のいずれか一項に記載の装置(u)。
【請求項7】
- 前記同相および/または前記直交出力信号の信号振幅に依存し、また任意選択で前記測定増幅器(4)の出力インピーダンスに依存して、前記同相および前記直交出力信号をスケーリングするように適合されたスケーリングユニット(11)をさらに含み、前記スケーリングされた同相および直交信号は、前記測定増幅器(4)および前記電極(2、2’)を有する前記結晶(1)を含む回路のアドミタンスを表すようにする、請求項1から6のいずれか一項に記載の装置(u)。
【請求項8】
- 前記同相出力信号および前記直交出力信号に対する前記測定増幅器(4)の周波数応答の影響を等化するように適合されたイコライザ(12)をさらに含む、請求項1から7のいずれか一項に記載の装置(u)。
【請求項9】
前記等化は、前記駆動信号が開回路、短絡、および基準インピーダンスにそれぞれ適用されるときの、前記同相出力信号および前記直交出力信号の測定に基づいて決定される較正データに基づいており、前記基準インピーダンスは、特に本質的に50オームの抵抗である、請求項8に記載の装置(u)。
【請求項10】
前記並列アドミタンス(Y
0)は、前記結晶(1)の前記共振周波数よりも低い周波数で測定された前記同相出力信号および前記直交出力信号に基づき、さらに、前記結晶(1)の前記共振周波数よりも高い周波数で測定された前記同相出力信号および前記直交出力信号に基づいて決定される、請求項2から9のいずれか一項に記載の装置(u)。
【請求項11】
基板(d)上に材料の薄膜を堆積するための真空コーティングシステム(t)の形態の薄膜堆積システムであって、前記システム(t)は、請求項1から10のいずれか一項に記載の測定装置(u)を含み、プロセスチャンバ(a)と、前記基板(d)を受け入れるように適合された基板ホルダ(b)と、蒸発源(f)、および真空ポンプ(J)と、をさらに含み、前記測定装置(u)の前記結晶(g)は、前記基板ホルダ(b)に近接して配置され、例えば、前記基板ホルダ(b)の周囲、または前記基板ホルダ(b)の周辺、または前記基板ホルダ(b)に隣接し、前記蒸発源(f)に適用される制御信号は、前記結晶(g)上に堆積された材料の前記膜の前記決定された厚さおよび/または前記結晶上(g)に堆積された材料の前記膜の前記厚さの前記決定された増加率に基づき、前記制御信号は、特に、前記蒸発源(g)に適用される電力レベルを制御する、薄膜堆積システム。
【請求項12】
以下の要素、すなわち
- 基板ヒータ(c)、
- シャッタ(h)、
- 真空バルブ(i)、
- プロセスガス入口(k)、
- 例えばグロー放電電極の形態の補助プラズマ源またはイオン源(m)
のうちの少なくとも1つをさらに含み、
前記制御信号または前記結晶(g)上に堆積された材料の前記膜の前記決定された厚さおよび/または前記結晶(g)上に堆積された材料の前記膜の前記厚さの前記決定された増加率に基づいて、さらなる制御信号が、前記要素の少なくとも1つを制御するために適用される、請求項11に記載のシステム(t)。
【請求項13】
基板(d)上に材料の薄膜を堆積するための、原子層堆積(ALD)システム(t’)またはプラズマ強化原子層堆積(PEALD)システム(t’’)の形態の薄膜堆積システムであって、前記システム(t’、t’’)は、請求項1から10のいずれか一項に記載の測定装置(u)を含み、プロセスチャンバ(a)と、前記基板(d)を受け入れるように適合された基板ホルダ(b)と、前記プロセスチャンバ(a)に導入される前駆体ガスの流れを制御するように適合された、関連する前駆体ガスバルブおよび関連する前駆体ガスポンプを備えた前駆体ガス入口(n)と、および/または、前記プロセスチャンバ(a)に導入される反応性ガスの流れを制御するように適合された、関連する反応性ガスバルブおよび関連する反応性ガスポンプを備えた反応性ガス入口と、プラズマ強化原子層堆積システムの場合はプラズマ源と、をさらに含み、前記測定装置(u)の前記結晶(g)は、前記基板ホルダ(b)に近接して配置され、例えば、前記基板ホルダ(b)の周囲、または前記基板ホルダ(b)の周辺、または前記基板ホルダ(b)に隣接し、
- 前記前駆体ガスの前記流れ、
- 前記反応性ガスの前記流れ、
- ALDサイクルの数、各ALDサイクル中、前記前駆体ガスが前記プロセスチャンバ(a)に導入され、続いて前記反応性ガスが前記プロセスチャンバ(a)に導入され、
- プロセス時間、例えばALDサイクルの継続時間、
- 前記前駆体ガスおよび/または前記反応性ガスの温度、
- 前記基板の温度
のうちの少なくとも1つは、前記結晶(g)上に堆積された材料の前記膜の前記決定された厚さ、および/または前記結晶(g)上に堆積された材料の前記膜の前記厚さの前記決定された増加率に基づく、薄膜堆積システム。
【請求項14】
材料の薄膜が堆積される圧電結晶のパラメータを測定するための測定方法であって、
- 2つの離間した電極(2、2’)を備えた圧電結晶(1)上に材料の前記薄膜を堆積させるステップであって、前記結晶(1)は例えば1MHzから100MHzの範囲、より具体的には2MHzから7MHzの範囲、最も具体的には5MHzから6MHzの範囲の基本共振周波数を有し、前記結晶(1)は特にATカット水晶である、ステップと、
- 指定された出力周波数で発振信号を生成するステップと、
- 前記発振信号を、測定増幅器(4)を介して前記結晶(1)の前記電極の1つに駆動信号として適用し、前記駆動信号に応答して結晶出力信号を提供するステップと、
- 前記結晶出力信号を直交復調して、ダウンコンバートされたデジタル同相出力信号およびデジタル直交出力信号を提供するステップと、
- 前記同相出力信号および前記直交出力信号に基づいて、特に、複数の異なる周波数、例えば前記結晶の基本共振周波数において、前記結晶の1つまたは複数の高調波共振周波数において、前記結晶の1つまたは複数の非調和共振周波数、または前記結晶の前記基本共振周波数より上もしくは下の1つまたは複数の周波数で前記結晶の1つまたは複数のパラメータを決定するステップと、を含む、測定方法。
【請求項15】
前記結晶の前記パラメータは、
- 結晶直列抵抗(Rm)、
- 結晶直列容量(Cm)、
- 結晶直列インダクタンス(Lm)、
- (前記結晶の)並列アドミタンス(Y
0)、
- 結晶品質係数(Q)であり、
および/またはさらに、前記結晶(1)上に堆積された材料の前記膜の前記厚さまたは質量および/または前記同相出力信号および前記直交出力信号に基づく、前記結晶(1)上に堆積された材料の前記膜の前記厚さまたは質量の前記増加率を決定するステップを含む、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
- 特に、前記同相出力信号および前記直交出力信号に基づく信号から前記並列アドミタンス(Y
0)のコンダクタンス値(G
0)を減算して、補償された同相出力信号を提供することによって、前記同相出力信号および前記直交出力信号に基づくさらなる信号から前記並列アドミタンス(Y
0)のサセプタンス値(B
0)を減算して、補償された直交出力信号を提供することによってそれぞれの前記並列アドミタンス(Y
0)、特に並列容量(C
0)の影響を数値的に補償/除去するステップをさらに含む、請求項14または15に記載の方法。
【請求項17】
- 前記周波数を生成するための周波数制御信号を生成するステップをさらに含み、
前記周波数制御信号は、前記結晶(1)が共振周波数で動作するように適合され、前記共振周波数は、前記結晶(1)上に堆積された材料の前記膜の前記厚さに依存し、前記周波数制御信号は、以下の制御変数、すなわち
- 前記補償された直交出力信号の逆正接を前記補償された同相出力信号で除算した結果得られる位相であって、前記結晶(1)を前記共振周波数で動作させるために特にゼロに駆動され、特に、CORDICプロセッサによって計算される、位相、
- 前記補償された直交出力信号を前記補償された同相出力信号で、特に前記補償された同相出力信号の大きさで除算した結果得られる正接であって、前記結晶(1)を前記共振周波数で動作させるために特にゼロに駆動される、正接、
- 前記補償された直交出力信号を、二乗された前記補償された同相出力信号と二乗された前記補償された直交出力信号との和で除算して得られるインピーダンスの虚数部であって、前記結晶(1)を前記共振周波数で動作させるために特にゼロに駆動される、虚数部
の1つに基づいて決定される、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
- 前記同相出力信号および/または前記直交出力信号に基づいて、前記発振信号の振幅を増幅するための振幅制御信号を生成するステップをさらに含む、請求項14から17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
前記発振信号は同相信号であり、前記方法は、
- 前記同相信号に対して90°位相シフトされた直交信号を前記指定された出力周波数で生成するステップをさらに含み、
- 前記同相信号は、前記測定増幅器(4)を介して前記駆動信号として前記結晶(1)の前記電極(2、2’)の前記一方に適用され、
前記直交復調は、
- 前記同相信号と前記結晶出力信号とを乗算し、中間同相出力信号を提供するステップと、
- 前記直交信号と前記結晶出力信号とを乗算し、中間直交出力信号を提供するステップと、
- 前記中間同相出力信号をローパスフィルタリングして、前記同相信号を提供するステップと、
- 前記中間直交出力信号をローパスフィルタリングして、前記直交出力信号を提供するステップと、を含む、請求項14から18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
- 前記同相および/または前記直交出力信号の信号振幅に依存し、また任意選択で前記測定増幅器(4)の出力インピーダンスに依存して、前記同相および前記直交出力信号をスケーリングするステップをさらに含み、前記スケーリングされた同相および直交信号は、前記測定増幅器(4)および前記電極(2、2’)を有する前記結晶(1)を含む回路のアドミタンスを表すようにする、請求項14から19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
- 前記同相出力信号および前記直交出力に対する前記測定増幅器(4)の周波数応答の影響を等化するステップをさらに含む、請求項14から20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
前記等化は、前記駆動信号が開回路、短絡、および基準インピーダンスにそれぞれ適用されるときの、前記同相出力信号および前記直交出力信号の測定に基づいて決定される較正データに基づき、前記基準インピーダンスは、特に本質的に50オームの抵抗である、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
- 前記結晶(1)の前記共振周波数よりも低い周波数で測定された前記同相出力信号および前記直交出力信号に基づき、さらに、前記結晶(1)の前記共振周波数よりも高い周波数で測定された前記同相出力信号および前記直交出力信号に基づいて前記並列アドミタンス(Y
0)を決定するステップをさらに含む、請求項15から22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
検索手順をさらに含み、その間に、前記結晶の複数の共振周波数、特に基本共振周波数および第1の非調和共振周波数は、特に前記直交出力信号および/または前記同相出力信号の分析に基づいて、指定された周波数範囲内で決定される、請求項13から23のいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
請求項14から24のいずれか一項に記載の測定方法を用いて、請求項11または12に記載の真空コーティングシステム(t)を制御するための制御方法であって、
- 前記結晶(g)を前記基板ホルダ(b)に近接して、例えば、前記基板ホルダ(b)の周囲、または前記基板ホルダ(b)の周辺、または前記基板ホルダ(b)に隣接して配置するステップと、
- 前記結晶(g)上に堆積された材料の前記膜の前記決定された厚さに基づいて、および/または前記結晶(g)上に堆積された材料の前記膜の前記厚さの前記決定された増加率に基づいて蒸発源(f)に制御信号を適用するステップであって、前記制御信号は、特に、前記蒸発源(f)に適用される電力レベルを制御する、ステップと、を含む、制御方法。
【請求項26】
前記制御信号、または前記結晶(g)上に堆積された材料の前記膜の前記決定された厚さに基づいて、および/または前記結晶(g)上に堆積された材料の前記膜の前記厚さの前記決定された増加率に基づいて、さらなる制御信号を適用するステップをさらに含み、以下の要素、すなわち
- 基板ヒータ(c)、
- シャッタ(h)、
- 真空バルブ(i)、
- プロセスガス入口(k)、
- 例えばグロー放電電極の形態の補助プラズマ源またはイオン源(m)
の少なくとも1つを制御する、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
請求項14から24のいずれか一項に記載の測定方法を使用し、請求項13に記載の原子層堆積システム(t’)またはプラズマ強化原子層堆積システム(t’’)を制御するための制御方法であって、
- 結晶(g)を前記基板ホルダ(b)に近接して、例えば、前記基板ホルダ(b)の周囲、または前記基板ホルダ(b)の周辺、または前記基板ホルダ(b)に隣接して配置するステップを含み、
さらに、
- 前記結晶(g)上に堆積された材料の前記膜の前記決定された厚さに基づいて、および/または前記結晶(g)上に堆積された材料の前記膜の前記厚さの前記決定された増加率に基づいて、前記前駆体ガスバルブおよび/または前記前駆体ガスポンプに制御信号を適用して、前記プロセスチャンバに導入される前駆体ガスの流れを制御するステップ、
- 前記結晶(g)上に堆積された材料の前記膜の前記決定された厚さに基づいて、および/または前記結晶(g)上に堆積された材料の前記膜の前記厚さの前記決定された増加率に基づいて、前記反応性ガスバルブおよび/または前記反応性ガスポンプに制御信号を適用して、前記プロセスチャンバに導入される反応性ガスの流れを制御するステップ、
- ALDサイクルの数を制御するステップであって、各ALDサイクル中に前記前駆体ガスが前記プロセスチャンバに導入され、続いて前記反応性ガスが、前記結晶(g)上に堆積された材料の前記膜の前記決定された厚さおよび/または前記結晶(g)上に堆積された材料の前記膜の前記厚さの前記決定された増加率に基づいて、前記プロセスチャンバに導入される、ステップ、のうちの少なくとも1つを含む、制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、材料の薄膜が(真空下で)堆積される圧電結晶のパラメータを測定するための測定装置および方法に関し、また、そのような装置を備えた薄膜堆積システム(真空チャンバを備える)およびそのようなシステムを制御する方法にも関する。
【背景技術】
【0002】
いわゆる水晶微量天秤法(QCM)は、真空下で基板上に堆積される材料の薄膜の厚さを監視するために一般的に使用される。これにより、その表面上に材料の薄膜も堆積される水晶の質量変化は、水晶の共振周波数の変化に基づいて決定される。膜厚を決定できる精度は、音響特性などの圧電結晶の特定のパラメータの精度に依存し、例えば、バターワース・ヴァン・ダイク等価回路のその運動抵抗(散逸損失を定量化)、容量(剛性に反比例)、およびインダクタンス(質量に比例)で表され、測定された共振周波数に基づいて導き出すことができる。既知の測定装置は、共振周波数に同調されたアナログ位相ロックループを採用している。多くの場合、デシベル(dB)単位の振幅と共振周波数での位相角(つまり、極座標)が例えば発振回路のアドミタンスのデカルト座標(つまり、実数部と虚数部)を決定するために使用され、圧電結晶のパラメータを決定し、それに基づいて膜厚を計算する。残念ながら、これにより膜厚の値がかなり不正確になることがよくある。もう1つの問題は、水晶に堆積した膜が厚くなると運動抵抗の値が増加し、その結果共振周波数での振動の減衰が大きくなる、つまり共振ピークの振幅が減少することである。同時に、共振周波数付近の位相応答曲線がより平坦になるため、例えば雑音の多い条件下で共振周波数を追跡することがより困難になる。これは、電極容量、ケーブル容量、および測定回路の入力容量などにより、並列容量が大きい場合に特に顕著である。その結果、並列容量によって水晶の使用時間が制限されるため、並列容量が大きいと水晶をより頻繁に交換する必要がある。水晶を交換するには、通常、真空コーティングシステムを排気する必要があるため、真空コーティングシステムは基板の処理の間にのみ実行できる。排気が必要ない場合でも、稼働プロセス中に水晶を交換すると問題が発生し、水晶の交換中はプロセスを監視できず、その後、新しい水晶の測定膜厚が基板上に堆積された膜の現在の厚さと(オフセットにより)一致しないためである。
【0003】
したがって、既知の測定装置で現在可能であるよりも高い精度で圧電結晶のパラメータを決定できる必要がある。さらに、真空下で基板上に堆積される材料の薄膜の厚さを監視するための水晶の使用時間を増やす必要もある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、材料の薄膜が堆積される圧電結晶のパラメータを測定することができる、特により正確なパラメータ値を得ることができる改良された測定装置を提供することである。この目的は、請求項1に記載の測定装置によって達成される。
【0005】
それに応じて、本発明の目的は、材料の薄膜が堆積される圧電結晶のパラメータを測定するための、特により正確なパラメータ値を得るための改良された方法を提供することである。この目的は、請求項14に記載の測定方法によって達成される。
【0006】
本発明のさらなる目的は、真空下で基板上に堆積される材料の薄膜の厚さを監視するための水晶の使用時間を増やすことである(そして同等に、水晶上に堆積される材料の最大許容膜厚を増加させる)。この目標は、それぞれ請求項3および16に記載の測定装置および方法によって達成される。
【0007】
本発明のさらに別の目的は、特に基板上に材料の薄膜をより正確に堆積できる、改良された薄膜堆積システム、より具体的には、水晶の使用時間が増加する、つまり、水晶を交換する頻度が減る(同等に、水晶上に堆積される材料の最大許容膜厚を増加させる)、薄膜堆積システムを提供することである。このような真空コーティングシステムおよびそのような(プラズマ強化)原子層堆積(ALD/PEALD)システムは、それぞれ請求項11および13に記載されている。
【0008】
それに応じて、本発明の別の目的は、基板上への材料の薄膜のより正確な堆積を可能にする薄膜堆積システムを制御するための改良された制御方法、より具体的には、水晶の使用時間を増やすことができる、つまり、水晶の交換頻度を減らすことができる、改良された制御方法を提供することである。このような方法は、真空コーティングシステムおよびALD/PEALDシステムについてそれぞれ請求項25および27に指定されている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明による装置、システム、および方法の特定の実施形態は、従属請求項に記載されている。
【0010】
本発明は、材料の薄膜が堆積される圧電結晶のパラメータを測定するための測定装置であって、
- 2つの離間した電極を備えた前記圧電結晶であって、その結晶(および/または電極)上に材料の前記膜が堆積され、前記結晶は、例えば、1MHzから100MHzの範囲、より具体的には2MHzから7MHzの範囲、最も具体的には5MHzから6MHzの範囲の基本共振周波数(膜がその上に堆積されていない場合)を有し、前記結晶は特にATカット水晶である、前記圧電結晶と、
- 指定された出力周波数で発振信号を生成するように適合された周波数発生器と、
- 前記発振信号を駆動信号として前記結晶の前記電極の1つに適用し、前記駆動信号に応答して結晶出力信号を提供するように適合された測定増幅器と、
- 前記結晶出力信号を(ベースバンドに)ダウンコンバートし、同相出力信号および直交出力信号を提供するように適合された直交復調器であって、前記同相および直交出力信号は特にデジタル信号である、直交復調器と、
- 特に、材料の前記膜が、特に複数の異なる周波数で、前記同相出力信号および前記直交出力信号に基づいて、前記結晶(および/または前記電極)上に堆積されるとき、例えば、前記結晶の基本共振周波数、前記結晶の1つまたは複数の高調波共振周波数、前記結晶の1つまたは複数の非調和共振周波数、または前記結晶の前記基本共振周波数よりも高いもしくは下の1つまたは複数の周波数において、前記結晶の1つまたは複数のパラメータを決定するように適合された計算ユニットと、を含む測定装置を提供する。
【0011】
装置の一実施形態では、前記結晶の前記パラメータは次のとおりである。
- 結晶直列抵抗、
- 結晶直列容量、
- 結晶直列インダクタンス、
- (結晶の)並列アドミタンス、
- 結晶の品質係数であり、
および/または前記計算ユニットはさらに、前記結晶(および/または電極)上に堆積された材料の前記膜の厚さまたは質量および/または前記同相出力信号および前記直交出力信号に基づく、前記結晶(および/または電極)上に堆積された材料の前記膜の前記厚さまたは質量の増加率を決定するように適合されている。
【0012】
さらなる実施形態では、装置はさらに、
- 特に、前記同相出力信号および前記直交出力信号に基づく信号から前記並列アドミタンスのコンダクタンス値を減算して、補償された同相出力信号を提供することによって、前記同相出力信号および前記直交出力信号に基づくさらなる信号から前記並列アドミタンスのサセプタンス値を減算して、補償された直交出力信号を提供することによって、それぞれ前記(結晶の)並列アドミタンス、特に並列容量の影響を数値的に補償/除去するように適合された補償ユニットを備える。
【0013】
さらなる実施形態では、装置はさらに、
- 前記周波数発生器への入力として周波数制御信号を生成するように適合された周波数制御ユニットを備え、
前記周波数制御信号は、前記結晶が(結晶の)共振周波数で動作するように適合され、前記共振周波数は、前記結晶上に堆積された材料の前記膜の前記厚さまたは質量に依存し、
ここで、前記周波数制御信号は、以下の制御変数のうちの(少なくとも)1つに基づいて決定される。
- 前記補償された直交出力信号の逆正接を前記補償された同相出力信号で除算した結果得られる位相であって、前記位相は、前記共振周波数で前記結晶を動作させるために特にゼロに駆動され、前記位相は特にCORDIC(座標回転デジタルコンピュータ)プロセッサによって計算される、位相と、
- 特に、前記補償された同相出力信号の大きさによって、前記補償された直交出力信号を前記補償された同相出力信号で割った結果得られる正接であって、前記正接は、前記結晶を前記共振周波数で動作させるために特にゼロに駆動される、正接と、
- 前記補償された直交出力信号を、二乗された補償同相出力信号と二乗された補償直交出力信号との和で除算して得られるインピーダンスの虚数部であって、前記インピーダンスの前記虚数部は、前記結晶を前記共振周波数で動作させるために特にゼロに駆動される、インピーダンスの虚数部である。
【0014】
さらなる実施形態では、装置は
- 前記同相出力信号および/または前記直交出力信号に基づいて、前記発振信号の振幅を増幅するために、前記周波数発生器に適用される振幅制御信号を生成するように適合された振幅制御ユニットをさらに備える。
【0015】
例えば、水晶が新しいとき、すなわちその上に材料が堆積されていないとき、例えば測定された高レベルの同相出力信号に応答して、発振信号の振幅は減少する。逆に、水晶が長期間使用されたとき、すなわち材料の厚い膜がその上に堆積されたとき、例えば測定された低レベルの同相出力信号に応答して、発振信号の振幅は増加する。このようにして、信号対雑音比(SNR)は、水晶上に堆積された材料の膜の厚さに関係なく、本質的に一定に保つことができる。
【0016】
装置のさらなる実施形態では、
- 前記周波数発生器は、前記周波数制御信号が適用される周波数制御入力を備えた直交発振器であり、前記周波数制御信号に応じて、前記発振信号としての同相信号と、同じ出力周波数(例えば、ミリヘルツ分解能で4~7MHzの範囲内)を有する90°位相シフトされた直交信号とを提供するように適合され、
- 前記測定増幅器は、前記同相信号を前記駆動信号として前記結晶の前記電極の1つに適用し、
前記直交復調器は、
- 前記同相信号と前記結晶出力信号とを乗算し、中間同相出力信号を提供するように適合されている同相信号ミキサと、
- 前記直交信号を前記結晶出力信号と乗算し、中間直交出力信号を提供するように適合された直交信号ミキサと、
- 前記中間同相出力信号を(例えば、1kHzから10kHzの範囲の「カットオフ」/3dB周波数で)ローパスフィルタリングし、前記同相出力信号を提供するように適合された同相信号フィルタ(前記結晶出力信号の実数部を表す)と、
- 前記中間直交出力信号を(例えば、1kHzから10kHzの範囲の「カットオフ」/3dB周波数で)ローパスフィルタリングし、前記直交出力信号を提供するように適合された直交信号フィルタ(前記結晶出力信号の虚数部を表す)と、を含む。
【0017】
さらなる実施形態では、装置は、
- スケーリング/変換された同相および直交信号は、前記測定増幅器および前記電極を有する前記結晶を含む回路のアドミタンスを表すように、前記同相および/または前記直交出力信号の信号振幅に応じて、また任意選択で前記測定増幅器の出力インピーダンスに応じて、前記同相および前記直交出力信号をスケーリング/変換するように適合されたスケーリング/変換ユニットをさらに備える。
【0018】
さらなる実施形態では、装置は、
- 前記同相出力信号および前記直交出力信号に対する前記測定増幅器の周波数応答の影響を等化/補償するように適合されたイコライザ(/歪み補正/補償ユニット)さらに備える。
【0019】
装置のさらなる実施形態では、前記等化は、前記駆動信号が開回路、短絡、および基準インピーダンスにそれぞれ適用されるときの、前記同相出力信号および前記直交出力信号の測定に基づいて決定される較正/補償データに基づいており、特に、前記基準インピーダンスは基本的に50オームの抵抗である。
【0020】
装置のさらなる実施形態では、前記並列アドミタンスは、前記結晶の前記共振周波数よりも低い周波数(例えば、少なくとも1MHz、例えば4.5MHz)で測定された前記同相出力信号および前記直交出力信号に基づいて、さらに、前記結晶の前記共振周波数よりも高い周波数(例えば、少なくとも500kHz、例えば6.5MHz)で測定された前記同相出力信号および前記直交出力信号に基づいて決定される。
【0021】
さらなる実施形態では、装置は以下のうちの1つまたは複数を特徴とする:
- 前記出力周波数は4MHzから6MHzの範囲にある。
- 前記出力周波数はミリヘルツ(mHz)範囲の精度で調整可能である。
- 前記出力周波数は、ダイレクトデジタルシンセサイザー(DDS)または数値制御発振器(NCO)によって生成される。
【0022】
さらに、本発明は、基板上に材料の薄膜を堆積するための真空コーティングシステムの形態の薄膜堆積システムに関し、前記システムは、前述の測定装置を備え、プロセスチャンバ、前記基板を受け入れるように適合された基板ホルダ、蒸発源、および(高)真空ポンプをさらに備え、前記測定装置の結晶は、前記基板ホルダのすぐ近く、例えば前記基板ホルダの周囲、または前記基板ホルダの周辺上、または前記基板ホルダに隣接して配置され、前記蒸発源に適用される制御信号は、前記結晶(および/または電極)上に堆積された材料の前記膜の前記決定された厚さおよび/または前記結晶上に堆積された材料の前記膜の前記厚さの前記決定された増加率に基づく。前記制御信号は、特に、前記蒸発源に適用される電力レベルを制御する。
【0023】
一実施形態では、システムは、以下の要素のうちの少なくとも1つをさらに備え、
- 基板ヒータ、
- シャッタ、
- (高)真空バルブ、
- プロセスガス入口、
- 補助プラズマ源またはイオン源、例えばグロー放電電極の形態、
ここで、前記制御信号、または前記結晶(および/または電極)上に堆積された材料の前記膜の前記決定された厚さおよび/または前記結晶上に堆積された材料の前記膜の前記厚さの前記決定された増加率に基づくさらなる制御信号は、前記要素の少なくとも1つを制御するために適用される。
【0024】
さらに、本発明は、基板上に材料の薄膜を堆積するための、原子層堆積システムまたはプラズマ強化原子層堆積システムの形態の薄膜堆積システムを対象とし、前記システムは、前述の測定装置を備え、プロセスチャンバと、前記基板を受け入れるように適合された基板ホルダと、プロセスチャンバに導入される前駆体ガスの流れを制御するように適合された、関連する前駆体ガスバルブおよび関連する前駆体ガスポンプを備えた前駆体ガス入口と、および/または、プロセスチャンバに導入される反応性ガス(または第2のタイプの前駆体)の流れを制御するように適合された、関連する反応性ガスバルブおよび関連する反応性ガスポンプを備えた反応性ガス入口と、プラズマ強化原子層堆積システムの場合、プロセスチャンバ内にプラズマを生成するためのプラズマ源と、をさらに備え、前記測定装置の結晶は、前記基板ホルダのすぐ近く、例えば前記基板ホルダの周囲、または前記基板ホルダの周辺上、または前記基板ホルダに隣接して配置され、以下のうちの少なくとも1つは、前記結晶(および/または電極)上に堆積された材料の前記膜の前記決定された厚さ、および/または前記結晶上に堆積された材料の前記膜の前記厚さの前記決定された増加率に基づく。
- 前記前駆体ガスの前記流れ、
- 前記反応性(または前記第2のタイプの前駆体)ガスの前記流れ、
- 多数のALDサイクルであって、各ALDサイクル中、前記前駆体ガスがプロセスチャンバに導入され、続いて前記反応性(または前記第2のタイプの前駆体)ガスがプロセスチャンバに導入される、多数のALDサイクル、
- プロセス時間、例えばALDサイクルの継続時間、
- 前記前駆体ガスおよび/または前記反応性ガスの温度、
- 前記基板の温度、
- プロセスチャンバへのプラズマガスの流れ(プラズマ強化原子層堆積システムの場合)、
- 前記プラズマ源に適用される電力、特にプラズマを維持するために高電圧DC電源によって適用される電圧(プラズマ強化原子層堆積システムの場合)。
【0025】
さらに、本発明は、材料の薄膜が堆積される圧電結晶のパラメータを測定するための測定方法を対象とし、
- 2つの離間した電極を備えた圧電結晶上に材料の前記薄膜を堆積するステップであって、前記結晶は、例えば、1MHzから100MHzの範囲、より具体的には2MHzから7MHzの範囲、特に5MHzから6MHzの範囲の基本共振周波数(膜がその上に堆積されていない場合)を有し、前記結晶は特にATカット水晶である、ステップと、
- 指定された出力周波数(例えば、ミリヘルツ分解能で4MHz~7MHzの範囲)で発振信号を生成するステップと、
- 前記発振信号を測定増幅器を介して前記結晶の前記電極の1つに駆動信号として適用し、前記駆動信号に応答して結晶出力信号を提供するステップと、
- 前記結晶出力信号を直交復調して、(ベースバンドに)ダウンコンバートされたデジタル同相出力信号およびデジタル直交出力信号を提供するステップと、
- 特に複数の異なる周波数において、例えば、前記結晶の基本共振周波数、前記結晶の1つまたは複数の高調波共振周波数、前記結晶の1つまたは複数の非調和共振周波数、または前記結晶の前記基本共振周波数よりも高いもしくは下の1つまたは複数の周波数において、前記同相出力信号および前記直交出力信号に基づいて、前記結晶の1つまたは複数のパラメータを決定するステップと、を含む。
【0026】
この方法の一実施形態では、前記結晶の前記パラメータは以下のとおりである、
- 結晶直列抵抗、
- 結晶直列容量、
- 結晶直列インダクタンス、
- (結晶の)並列アドミタンス、
- 結晶の品質係数、
および/またはさらに、前記結晶(および/または電極)上に堆積された材料の前記膜の前記厚さまたは質量および/または前記同相出力信号および前記直交出力信号に基づく前記結晶(および/または電極)上に堆積された材料の前記膜の前記厚さまたは質量の前記増加率を決定するステップを含む。
【0027】
さらなる実施形態では、この方法はさらに、
- 特に並列容量、特に、前記同相出力信号および前記直交出力信号に基づく信号から前記並列アドミタンスのコンダクタンス値を減算して、補償された同相出力信号を提供することによって、前記同相出力信号および前記直交出力信号に基づくさらなる信号から前記並列アドミタンスのサセプタンス値を減算して、補償された直交出力信号を提供することによって、それぞれの前記(結晶の)並列アドミタンスの影響を数値的に補償/除去するステップを含む。
【0028】
さらなる実施形態では、この方法は、
- 前記周波数を生成するための周波数制御信号を生成するステップをさらに含み、前記周波数制御信号は、前記結晶が共振周波数で動作するように適合され、前記共振周波数は、前記結晶上に堆積された材料の前記膜の前記厚さに依存し、
ここで、前記周波数制御信号は、以下の制御変数、すなわち
- 前記補償された直交出力信号の逆正接を前記補償された同相出力信号で除算した結果得られる位相であって、前記共振周波数で前記結晶を動作させるために特にゼロに駆動され、特に、CORDICプロセッサによって計算される、位相、
- 前記補償された直交出力信号を前記補償された同相出力信号で、特に前記補償された同相出力信号の大きさで除算した結果得られる正接であって、前記結晶を前記共振周波数で動作させるために特にゼロに駆動される、正接、
- 前記補償された直交出力信号を、二乗された補償同相出力信号と二乗された補償直交出力信号との和で除算して得られるインピーダンスの虚数部であって、前記インピーダンスの前記虚数部は、前記結晶を前記共振周波数で動作させるために特にゼロに駆動される、虚数部
のうちの(少なくとも)1つに基づいて決定される。
【0029】
さらなる実施形態では、この方法はさらに、
- 前記同相出力信号および/または前記直交出力信号に基づいて、前記発振信号の振幅を増幅するための振幅制御信号を生成するステップを含む。
【0030】
本方法のさらなる実施形態では、前記発振信号は同相信号であり、本方法はさらに、
- 前記同相信号に対して90°位相シフトされた直交信号を前記指定された出力周波数(例えば、ミリヘルツ分解能で4MHzから7MHzの範囲内)で生成するステップを含み、
- 前記同相信号は、前記測定増幅器を介して前記駆動信号として前記結晶の前記電極の一方に適用され、
前記直交復調は、
- 前記同相信号と前記結晶出力信号とを乗算し、中間同相出力信号を提供するステップと、
- 前記直交信号と前記結晶出力信号とを乗算し、中間直交出力信号を提供するステップと、
- 前記中間同相出力信号をローパスフィルタリング(例えば、1kHzから10kHzの範囲の「カットオフ」/3dB周波数で)して、前記同相信号(前記結晶出力信号の実数部を表す)を提供するステップと、
- 前記中間直交出力信号をローパスフィルタリング(例えば、1kHzから10kHzの範囲の「カットオフ」/3dB周波数で)して、前記直交出力信号(前記結晶出力信号の虚数部を表す)を提供するステップと、を含む。
【0031】
さらなる実施形態では、この方法はさらに、
- スケーリング/変換された同相および直交信号は、前記測定増幅器(4)および前記電極を有する前記結晶を含む回路のアドミタンスを表すように、前記同相および/または前記直交出力信号の信号振幅に依存し、任意選択で前記測定増幅器の出力インピーダンスに依存して、前記同相および前記直交出力信号をスケーリング/変換するステップを含む。
【0032】
さらなる実施形態では、この方法はさらに、
- 前記同相出力信号および前記直交出力に対する前記測定増幅器の周波数応答の影響を等化/補償するステップを含む。
【0033】
この方法のさらなる実施形態では、前記等化/補償は、前記駆動信号がそれぞれ開回路、短絡、および基準インピーダンスに適用されたときの前記同相出力信号および前記直交出力信号の測定に基づいて決定された較正/補償データに基づいており、前記基準インピーダンスは、特に本質的に50オームの抵抗である。
【0034】
さらなる実施形態では、この方法はさらに、
- 前記結晶の前記共振周波数よりも低い周波数(例えば、少なくとも1MHz、例えば4.5MHz)で測定された前記同相出力信号および前記直交出力信号に基づいて、さらに、前記結晶の前記共振周波数よりも高い周波数(例えば、少なくとも500kHz、例えば6.5MHz)で測定された前記同相出力信号および前記直交出力信号に基づいて前記並列アドミタンスを決定するステップを含む。
【0035】
さらなる実施形態では、この方法はさらに検索手順を含み、この間、特に前記直交出力信号および/または前記同相出力信号の分析に基づいて、前記結晶の複数の共振周波数、特に基本共振周波数および第1の非調和共振周波数が、指定された周波数範囲内で決定される。
【0036】
さらに、本発明は、前述の測定方法を使用して、前述の真空コーティングシステムを制御するための制御方法を対象とし、
- 結晶を基板ホルダの近傍、例えば前記基板ホルダの周囲、または前記基板ホルダの周辺上、または前記基板ホルダに隣接して配置するステップと、
- 前記結晶上に堆積された材料の膜の決定された厚さ、および/または前記結晶上に堆積された材料の前記膜の前記厚さの前記決定された増加率に基づいて、制御信号を蒸発源に適用するステップであって、前記制御信号は、特に、前記蒸発源に適用される電力レベルを制御する、ステップと、を含む。
【0037】
一実施形態では、方法は、制御信号または前記結晶上に堆積された材料の前記膜の前記決定された厚さおよび/または前記結晶上に堆積される材料の前記膜の前記厚さの前記決定された増加率に基づいて、さらなる制御信号を適用するステップをさらに含み、以下の要素の少なくとも1つを制御する。
- 基板ヒータ、
- シャッタ、
- (高)真空バルブ、
- プロセスガス入口、
- 補助プラズマ源またはイオン源、例えばグロー放電電極の形態。
【0038】
さらに、本発明は、前述の測定方法を使用し、前述した原子層堆積システムまたはプラズマ強化原子層堆積システムを制御するための制御方法を対象とし、
- 結晶を基板ホルダに近接して、例えば前記基板ホルダの周囲、または前記基板ホルダの周辺上、または前記基板ホルダに隣接して配置するステップを含み、
さらに、次のステップのうちの少なくとも1つを含み、
- 前記結晶上に堆積された材料の膜の決定された厚さおよび/または前記結晶上に堆積された材料の前記膜の前記厚さの前記決定された増加率に基づき、前駆体ガスバルブおよび/または前駆体ガスポンプに制御信号を適用して、プロセスチャンバに導入される前駆体ガスの流れを制御するステップと、
- 前記結晶上に堆積された材料の膜の決定された厚さおよび/または前記結晶上に堆積された材料の前記膜の前記厚さの前記決定された増加率に基づき、制御信号を反応性ガスバルブおよび/または反応性ガスポンプに適用して、プロセスチャンバに導入される反応性ガス(または第2のタイプの前駆体)の流れを制御するステップと、
- ALDサイクルの数を制御するステップであって、各ALDサイクル中、前記結晶上に堆積された材料の膜の決定された厚さおよび/または前記結晶上に堆積された材料の前記膜の前記厚さの前記決定された増加率に基づき、前記前駆体ガスがプロセスチャンバに導入され、続いて前記反応性(または前記第2のタイプの前駆体)ガスがプロセスチャンバに導入される、ステップと、
- 前記結晶上に堆積された材料の膜の決定された厚さおよび/または前記結晶上に堆積された材料の前記膜の前記厚さの前記決定された増加率に基づいて、プロセスチャンバへのプラズマガスの流れを制御するステップ(プラズマ強化原子層堆積システムの場合)と、
- 前記結晶上に堆積された材料の膜の決定された厚さ、および/または前記結晶上に堆積された材料の前記膜の前記厚さの前記決定された増加率に基づき(プラズマ強化原子層堆積システムの場合)、前記プラズマ源に適用される電力、特にプラズマを維持するために高電圧DC電源によって適用される電圧を制御するステップと、を含む。
【0039】
それに応じて、本発明は、前述の測定方法を使用して、以前に指定されたとおり、真空コーティングシステム、原子層堆積システム、またはプラズマ強化原子層堆積システムの形態の薄膜堆積システムを制御するための、前述の測定装置の使用を対象とし、前述の2つの制御方法のいずれかのステップを含む。
【0040】
上述の実施形態の組み合わせにより、さらに具体的な実施形態が得られ得ることが特に指摘される。
【0041】
本発明は、以下のことを示す添付図面を参照しながら、非限定的な特定の実施形態によって以下にさらに説明される。
【0042】
図面において、同様の参照符号は同様の部分を指す。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【
図1】本発明による測定装置のブロック図(いくつかの任意選択のブロックを含む)である。
【
図2】本発明による真空コーティングシステムの概略図である。
【
図3】a)は本発明による原子層堆積システムの概略図であり、b)は本発明によるプラズマ強化原子層堆積システムの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0044】
基板の領域上に堆積される材料の薄膜の厚さは、既知の領域上に堆積される材料の重量から決定することができる。したがって、膜厚の測定は、基板の領域に堆積された材料の量の計量に基づいて行うことができる。前に述べたように、水晶などの圧電結晶は、この目的のための微量天秤として使用できる。これにより、水晶に堆積した材料の重量が、水晶のバターワース・ヴァン・ダイク等価回路の直列運動抵抗R
m、容量C
m、インダクタンスL
mや品質係数Qなどの水晶のパラメータに基づいて決定できる(これはR
m、C
m、L
mに関連する)。水晶に堆積する材料の重量が変化すると、水晶のパラメータが変化し、特に水晶の共振周波数の変化につながる。水晶のこれらのパラメータを測定できる精度によって、これらのパラメータに基づいて得られる膜厚の精度が決まる。本発明の目的は、材料の薄膜が堆積される圧電結晶のパラメータを改善された精度で測定するための測定装置を提供することである。本発明による測定装置のブロック図を
図1に示す。
【0045】
図1の測定装置uの中央部分は、圧電水晶1と測定増幅器4からなる結晶発振器である。2つの電極2、2’が水晶1の対向面に取り付けられ、一方の電極2は測定増幅器4に接続され、他方の電極2’は接地(すなわち基準電位)に接続される。周波数発生器3の出力信号(例えば直交発振器の0°位相/同相信号)は、測定増幅器4を介して駆動信号として水晶1に取り付けられた電極2に適用される。駆動信号の周波数は通常、水晶1の共振周波数に設定され、通常は2MHzから7MHzの範囲内、例えば6MHzの周波数に設定される。この駆動信号に応答して、結晶発振器は(結晶)出力信号を提供する。水晶の所望のパラメータは、後続の信号処理によってこの出力信号から決定できる。
【0046】
共振周波数(または複数の周波数)は、特定の周波数走査範囲(例えば、2MHzから7MHz)にわたって周波数発生器3の出力周波数を掃引し、その周波数(または複数の周波数)を特定することによって最初に決定することができ、(結晶)出力信号に共振ピークが発生する。
【0047】
水晶の所望のパラメータを決定するために、測定増幅器4からの(結晶)出力信号は、直交復調器によってベースバンド(すなわち、0Hz)にダウンコンバートされる。直交復調器は、測定増幅器4からの出力信号が周波数発生器(直交発振器)3の0°位相/同相信号と乗算される同相ブランチを備えて、つまり、同相ミキサ5を使用して結晶発振器を駆動するために使用され、その後同相ローパスフィルタ6でフィルタリングされた同じ信号、通常、1kHz~10kHzの範囲の「カットオフ」/3dB周波数を有する。直交復調器はさらに直交ブランチを備えており、そこでは測定増幅器4からの出力信号が周波数発生器(直交発振器)3の90°位相シフト/直交信号と直交ミキサ5’で乗算され、その後、直交ローパスフィルタ6’でフィルタリングされ、通常、1kHzから10kHzの範囲の「カットオフ」/3dB周波数も有する。ベースバンド信号は、数値的に処理できるデジタル信号である。以下に、デジタルベースバンド信号を実現するためのさまざまな代替手段を示す。
【0048】
ベースバンドのI/同相(実数部)およびQ/直交(虚数部)出力信号は、次いで、任意選択で、同相および/または直交出力信号の信号振幅に依存し、任意選択で測定増幅器4の出力インピーダンスに依存して、同相および直交出力信号をスケーリング(または変換)するように適合されたスケーリング(または変換)ユニットを通過し、その結果、スケーリングされた(または変換された)同相信号と直交信号が合わせて(測定増幅器4と、電極2、2’を備えた水晶1とを備える)結晶発振回路の(複素数値の)アドミタンス(Y=G+jB、コンダクタンスGとサセプタンスBは、スケーリングユニットの出力における同相(実数部)および直交(虚数部)信号によって与えられる)を表す。
【0049】
ベースバンドI/同相(実数部)およびQ/直交(虚数部)出力信号、またはスケーリングユニットのスケーリングされた同相(実数部、G)およびスケーリングされた直交(虚数部、B)出力信号は、次に、任意選択で、同相出力信号および直交出力信号に対する測定増幅器の周波数応答の影響を等化/補償するように適合されたイコライザ(または歪み補正または補償)ユニットを通過する。等化は、発振回路が開回路モード、短絡モード、および基準インピーダンスで動作しているときの同相出力信号と直交出力信号の測定に基づいて決定された較正データに基づき、それにより基準インピーダンスは、例えば50オームの抵抗である。
【0050】
前述したように、電極容量、配線容量、および測定回路の入力容量などによる並列容量C0(またはより一般的には並列アドミタンスY0)の値が高いと、水晶の使用時間が制限される。並列容量C0は水晶に堆積される材料には依存しないため、膜厚の測定に水晶を使用する前にC0を決定でき、決定されたC0の値は、膜厚の測定に水晶を使用する際に補償できる。これは、本発明によれば、同相出力信号および直交出力信号に基づく信号から並列アドミタンスY0のコンダクタンス値G0を減算して、補償された同相出力信号を提供することによって、同相出力信号および直交出力信号に基づくさらなる信号から並列アドミタンスY0のサセプタンス値B0を減算して、補償された直交出力信号を提供することによって、並列アドミタンスY0(より具体的には並列容量C0)の影響を数値的に補償/除去するように適合された補償ユニット8によって達成される。この補償は、周波数発生器(直交発振器)3によって生成される発振信号の周波数にも依存する。並列アドミタンスY0(=G0+jB0)は、水晶1の共振周波数よりも低い周波数で測定された同相出力信号と直交出力信号に基づいて、さらに、水晶1の共振周波数よりも高い周波数で測定された同相出力信号および直交出力信号に基づいて決定される。並列アドミタンスY0は、通常、材料の薄膜が堆積される圧電結晶のパラメータを測定するために測定装置uを使用する前に決定される。
【0051】
次いで、水晶1の所望のパラメータが、同相出力信号および直交出力信号に基づいて、特に、並列アドミタンスY0の(任意の)補償後、特に、スケーリングユニット11およびイコライザ12のそれぞれによる(任意の)スケーリングおよび/または(任意の)等化の後でも計算ユニット7によって(特に材料の膜が水晶1上に堆積されているとき)決定される。計算ユニット7は、水晶1上に堆積された材料の膜の厚さおよび/または同相出力信号および直交出力信号に基づいて、または水晶1のパラメータに基づいて、水晶1上に堆積された材料の膜の厚さの増加率を決定するように適合させることもできる。
【0052】
位相ロックループ(PLL)は、水晶1のパラメータを決定するために、出力信号が共振周波数で結晶発振器を駆動する周波数発生器の周波数を制御するために使用される(水晶1上に堆積された材料の膜の厚さ)。周波数制御ユニット9によって生成される周波数出力信号を調整するために使用される制御信号を生成するための多くの代替手段が存在し、この制御信号は周波数発生器(直交発振器)3および並列アドミタンス/容量補償ユニット8に供給される。制御信号計算/計算ユニット13によって計算される制御信号は、補償された直交出力信号の逆正接を補償された同相出力信号で除算した結果として得られる位相信号であり得、これにより、水晶1を所望の共振周波数で動作させるために、周波数制御ユニット9によって位相がゼロに駆動される。位相は、例えば、CORDICプロセッサを使用して計算できる。あるいは、制御信号計算/計算ユニット13によって計算される制御信号は、補償された直交出力信号を補償された同相出力信号で、特に補償された同相出力信号の大きさで除算した結果得られる正接であってもよい。これにより、水晶1を所望の共振周波数で動作させるために、周波数制御ユニット9によって正接がゼロに駆動される。さらに有利な代替案として、制御信号計算/計算ユニット13によって計算される制御信号は、二乗された補償同相出力信号と二乗された補償直交出力信号の和による補償された直交出力信号の除算から得られるインピーダンスの虚数部であり得、これにより、水晶1を所望の共振周波数で動作させるために、インピーダンスの虚数部が周波数制御ユニット9によってゼロに駆動される。
【0053】
任意選択で、振幅制御ユニット10は、同相出力信号および/または直交出力信号に基づいて発振信号の振幅を増幅するために周波数発生器3に適用される振幅制御信号を生成する。例えば、水晶1が新しいとき、すなわちその上に材料が堆積されていないとき、発振信号の振幅は、例えば高いレベルを有する測定された同相出力信号に応じて減少する(水晶1上に材料が存在しない場合には共振ピークが大きいため)。逆に、水晶1が長期間使用されたとき、すなわち、水晶1の上に材料の厚い膜が堆積されたとき、発振信号の振幅は、例えば測定された低いレベルの同相出力信号に応答して増加する(水晶1上に存在する材料の層により共振ピークが小さくなったため)。
【0054】
提案された測定装置の多くの異なる技術的実装が可能である。例えば、例えば分解能はミリヘルツ(mHz)範囲内の2MHz~7MHzの範囲内の周波数発生器3の周波数出力信号を調整できるようにするため、ダイレクトデジタルシンセサイザー(DDS)または数値制御発振器(NCO)の使用が提案されている。これは、直交発振器3の同相出力信号と直交出力信号の間で正確に90°の位相差を達成するためにも有益である。測定増幅器4はアナログ回路として実装される。ミキサ5、5’およびローパスフィルタ6、6’は、アナログまたはデジタル回路として実装することができる。ミキサ5、5’およびローパスフィルタ6、6’がアナログ回路として実装される場合、ダウンコンバートされたベースバンド同相信号および直交信号は、例えば30kHz未満(例えば10kHz)の低速でサンプリングされ、例えば16ビットの分解能でデジタル化(アナログからデジタルに変換)される。他のブロック7~12は、特にプログラマブルロジックまたはプログラマブルプロセッサ(マイクロコントローラなど)を使用して、デジタル的に実装されることが好ましい。ミキサ5、5’およびローパスフィルタは、例えばデジタル乗算器およびデジタル(FIR)フィルタを使用してデジタル回路として実装することもできるが、プログラマブルプロセッサ(マイクロコントローラなど)を使用してソフトウェアで実装することもできる。すべてのデジタルコンポーネント、例えば、ブロック3および5~13、特に直交発振器3、乗算器5、5’およびフィルタ6、6’などの高速コンポーネント(例えば、1MHzを超えるサンプリングレートで処理されている場合)はすべて、単一のフィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)内に実装され得る。高度なFPGAには、ソフトウェア/ファームウェアのブロック7~13などの低速機能(例えば、100kHz未満のサンプリングレートで処理される)を実行できるマイクロコントローラ(プログラマブルロジックとともに)も含まれ得る。しかし、これらの機能を実行するマイクロコントローラをFPGAから分離することもできる。水晶出力信号の直交復調がデジタル的に実行される場合、水晶1の所望のパラメータを非常に正確に決定することができ、これにより、水晶出力信号は、例えば1MHzを超える高速でサンプリングされ、例えば16ビットの精度でアナログからデジタルに変換される。ローパスフィルタ6、6’の出力において、サンプリングレートは、例えば10kHzに低減/デシメートされる。これにより、デジタル同相および直交ベースバンド信号の信号対雑音比(SNR)が大幅に増加する(例えば、20~30dB)。完全なデジタル処理、つまり、ベースバンドの同相および直交信号の代わりに水晶出力信号をデジタル化し、したがって、達成可能なより高いSNR、およびそれに伴う水晶1の所望のパラメータを決定できる精度の向上の観点から、好ましい。
【0055】
本発明のさらなる態様によれば、特に水晶の使用時間が増加する場合に、基板上に材料の薄膜をより正確に堆積できる、改良された薄膜堆積システムが提供される。つまり、水晶の交換頻度が少なくなる。
【0056】
基板d上に材料の薄膜を堆積するための真空コーティングシステムtの形態のこのような薄膜堆積システムの概略図が
図2に示されている。システムtは、プロセスチャンバaを備え、プロセスチャンバa内には、基板dを受け入れるように適合された基板ホルダbが蒸発源fの反対側に配置されている。一定レベルの電力(および/または熱)を蒸発源fに適用することによって、蒸発源fは、基板d上に堆積される材料を含む蒸気プルームeを生成する。プロセスチャンバaは、基板d上に材料の薄膜を堆積する前に、プロセスチャンバa内を(高)真空にするために、(高)真空バルブiを介して(高)真空ポンプJによって排気される。前述のような測定装置uの水晶gは、基板ホルダbのすぐ近く、例えば前記基板ホルダbの周囲、または基板ホルダbの周辺、または基板ホルダbに隣接して配置され、基板dの単位面積と同じまたは類似の量の材料が水晶gの単位面積に堆積されるようにする。水晶gが、基板d上に堆積される材料を含む蒸気プルームeにさらされることが少ない(/多い)場合、したがって、少なくなった(/多くなった)材料が、基板dの単位面積と同様に、結晶gの単位面積に堆積される場合、これは、基板d上に堆積された材料の膜の厚さを計算するとき、水晶g上に堆積された材料の膜の決定された厚さに適切な補償係数を適用することにより、測定ユニットuによって計算される。蒸発源fに適用される制御信号は、水晶g上に堆積される材料の膜の決定された厚さおよび/または水晶g上に堆積される材料の膜の厚さの決定された増加率に基づく(または、水晶gの決定されたパラメータに基づく)。制御信号は特に、蒸発源gに適用される電力レベルを制御する。システムtは、プロセスガス入口kおよびシャッタhをさらに備えることができる。入口kを通るプロセスガスの流れは、水晶g上に堆積される材料の膜の決定された厚さおよび/または水晶g上に堆積される材料の膜の厚さの決定された増加率に基づいて制御することができる(または、水晶gの決定されたパラメータに基づく)。同様に、シャッタhの開閉時間も水晶g上に堆積された材料の膜の決定された厚さおよび/または水晶g上に堆積された材料の膜の厚さの決定された増加率に基づいて(または水晶gの決定されたパラメータに基づく)制御できる。
【0057】
基板d上に材料の薄膜を堆積するための原子層堆積(ALD)システムt’の形態のそのような薄膜堆積システムの概略図を
図3a)に示す。システムt’は、基板dを受け入れるように適合された基板ホルダbが内部のプロセスチャンバaを備え、プロセスチャンバaに導入され、その後プロセスチャンバaから汲み出される前駆体ガスおよび/または反応性ガスの流れが基板d上を流れるように配置される。前駆体ガスおよび/または反応性ガスは、プロセスチャンバaに導入されその後プロセスチャンバaから汲み出される前駆体ガスおよび/または反応性ガスの流れを制御するように適合された関連するガスバルブおよび関連するガスポンプを備えた1つまたは複数のガス入口nを介してプロセスチャンバaに導入される。プロセスチャンバaに導入された前駆体ガスおよび/または反応性ガスは、基板dと化学的に反応するため、材料の薄膜が基板d上に堆積される。前述のような測定装置uの水晶gは、基板ホルダbのすぐ近く、例えば前記基板ホルダbの周囲、または基板ホルダbの周辺、または基板ホルダbに隣接して配置され、基板dの単位面積よりも水晶gの単位面積に同一または類似の量の材料が堆積されるようにする。水晶gが前駆体ガスおよび/または反応性ガスにさらされることが少なく(/より多く)、したがって水晶gの単位面積に堆積される材料が基板dの単位面積よりも少ない(/より多い)場合、これは、基板d上に堆積した材料の膜の厚さを計算するときに、水晶g上に堆積した材料の膜の決定された厚さに適切な補償係数を適用することによって、測定ユニットuによって計算される。i)前駆体ガスの流れ、ii)反応性ガスの流れ、iii)前駆体ガスおよび/または基板dの温度、およびiv)ALDサイクル数のうちの少なくとも1つ(これにより、各ALDサイクル中に、前駆体ガスがプロセスチャンバaに導入され、次にプロセスチャンバaから再び汲み出され、続いて反応性ガスがプロセスチャンバaに導入され、次にまたプロセスチャンバaから汲み出される)は、水晶g上に堆積される材料の膜の決定された厚さおよび/または水晶g上に堆積される材料の膜の厚さの決定された増加率に基づいて制御される(または水晶gの決定されたパラメータに基づいている)。上述したALDシステムt’では、基板dは、異なる前駆体ガスおよび/または反応性ガスにさらされている間、同じプロセスチャンバa内に留まる。あるいは、ALDシステムは複数(例えば2つ)のプロセスチャンバを備え得、それらの間で基板が搬送され、その中で基板が前駆体ガスおよび/または反応性ガスの特定の1つにさらされる。
【0058】
基板d上に材料の薄膜を堆積するためのプラズマ強化原子層堆積(PEALD)システムt’’の形態のそのような薄膜堆積システムの概略図を
図3b)に示す。システムt’’は、内部にプロセスチャンバaを備え、基板dを受け入れるように適合された基板ホルダbは、プロセスチャンバaに導入され、その後プロセスチャンバaから汲み出される前駆体ガスおよび/または反応性ガスの流れが基板d上を流れるように配置される。前駆体ガスおよび/または反応性ガスは、プロセスチャンバaに導入されその後プロセスチャンバaから汲み出される前駆体ガスおよび/または反応性ガスの流れを制御するように適合された関連するガスバルブおよび関連するガスポンプを備えた1つまたは複数のガス入口nを介してプロセスチャンバaに導入される。さらに、システムt’’はプラズマ源を備え、プラズマガスpがプロセスチャンバaに導入され、例えばシャワーヘッドsを備えた電極を介して基板dに向かって分配される。これにより、電力を適用してプラズマガスpを点火することにより、基板dの近傍にプラズマaが形成され、例えば、高電圧DCまたはRF電源rによる。前述のような測定装置uの水晶gは、基板ホルダbのすぐ近く、例えば前記基板ホルダbの周囲、または基板ホルダbの周辺、または基板ホルダbに隣接して配置され、基板dの単位面積よりも水晶gの単位面積に同一または類似の量の材料が堆積されるようにする。水晶gが前駆体ガスおよび/または反応性ガスにさらされることが少なく(/より多く)、したがって水晶gの単位面積に堆積される材料が基板dの単位面積よりも少ない(/より多い)場合、これは、基板d上に堆積された材料の膜の厚さを計算する際に、水晶g上に堆積された材料の膜の決定された厚さに適切な補償係数を適用することによって、測定ユニットによって計算される。i)前駆体ガスの流れ、ii)反応性ガスの流れ、iii)ALDサイクル数(これにより、各ALDサイクル中に、前駆体ガスがプロセスチャンバaに導入され、次にプロセスチャンバaから再び汲み出され、続いて反応性ガスがプロセスチャンバaに導入され、次にまたプロセスチャンバaから汲み出される)、iv)プロセスチャンバaへのプラズマガスの流れ、およびv)プラズマに適用される電力、例えば、プラズマを維持するために高電圧DC電源rによって適用される電圧のうちの少なくとも1つは、水晶g上に堆積される材料の膜の決定された厚さおよび/または水晶g上に堆積される材料の膜の厚さの決定された増加率に基づいて制御される(または水晶gの決定されたパラメータに基づいている)。
【符号の説明】
【0059】
1 圧電/水晶
2、2’ 電極(石英製)
3 周波数発生器、直交発振器
4 測定増幅器
5 同相信号ミキサ
5’ 直交信号ミキサ
6 同相ローパスフィルタ
6’ 直交ローパスフィルタ
7 計算ユニット(厚さおよび結晶パラメータ用)
8 並列アドミタンス/容量補償ユニット
9 周波数制御ユニット
10 振幅制御ユニット
11 スケーリング/変換ユニット(→アドミタンス)
12 歪み補正ユニット(イコライザ)
13 制御信号計算ユニット
a プロセス/真空チャンバ
b 基板ホルダ
c 基板ヒータ
d 基板
e 蒸気プルーム
f 蒸発源
g 圧電/水晶
h シャッタ
i (高)真空バルブ
J (高)真空ポンプ
k プロセスガス入口
L 電源
m 補助プラズマ源またはイオン源、グロー放電電極
n 前駆体ガス入口
o ポンプ
p プラズマガス入口
q プラズマ
r 高電圧DC電源
s シャワーヘッド付き電極
t 真空コーティングシステム、薄膜堆積システム
t’ 原子層堆積システム
t’’ プラズマ強化原子層堆積システム
u 測定装置
GND 接地、基準電位
B サセプタンス
B0 並列サセプタンス
C0 並列容量
Cm 結晶直列容量
G コンダクタンス
G0 並列コンダクタンス
Lm 結晶直列インダクタンス
Q 結晶の品質係数
Rm 結晶直列抵抗
Y アドミタンス
Y0 並列アドミタンス
【国際調査報告】