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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-12-13
(54)【発明の名称】透析液フィルタ
(51)【国際特許分類】
   A61M 1/16 20060101AFI20231206BHJP
   A61M 1/28 20060101ALI20231206BHJP
   A61M 1/36 20060101ALI20231206BHJP
【FI】
A61M1/16 190
A61M1/28 105
A61M1/16 179
A61M1/36 165
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023533649
(86)(22)【出願日】2021-12-01
(85)【翻訳文提出日】2023-07-24
(86)【国際出願番号】 US2021061379
(87)【国際公開番号】W WO2022119908
(87)【国際公開日】2022-06-09
(31)【優先権主張番号】63/120,316
(32)【優先日】2020-12-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】391028362
【氏名又は名称】ダブリュ.エル.ゴア アンド アソシエイツ,インコーポレイティド
【氏名又は名称原語表記】W.L. GORE & ASSOCIATES, INCORPORATED
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100128495
【弁理士】
【氏名又は名称】出野 知
(74)【代理人】
【識別番号】100208225
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 修二郎
(74)【代理人】
【識別番号】100144417
【弁理士】
【氏名又は名称】堂垣 泰雄
(72)【発明者】
【氏名】ジェイムズ アール.ハンラハン
(72)【発明者】
【氏名】ケビン ジェイ.メイブ
(72)【発明者】
【氏名】シャイレシュ ピー.ビデート
【テーマコード(参考)】
4C077
【Fターム(参考)】
4C077AA05
4C077AA06
4C077BB01
4C077BB02
4C077CC08
4C077EE03
4C077GG12
4C077MM07
(57)【要約】
本開示の種々の態様は、透析液から老廃物を除去するためのフィルタを含む装置、システム、及び方法に関する。フィルタは、透析液を貫流させるように構成された1又は2以上のフィルタ材料から成る多重層を含むことができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
透析液から老廃物を除去するためのフィルタであって、
該フィルタは、透析液を貫流させるように構成された、1又は2以上のフィルタ材料から成る多重層を含み、
該フィルタ材料の各々は、ソーベント粒子が充填された多孔性ポリオレフィンを含み、かつ
該フィルタ材料の少なくとも1層は、ウレアーゼを含有する粒子を含む
ことを特徴とするフィルタ。
【請求項2】
前記1又は2以上のフィルタ材料が、クレアチニンを吸収するための付加的な粒子を含む、請求項1に記載のフィルタ。
【請求項3】
前記1又は2以上のフィルタ材料が、重金属を吸収するための付加的な粒子を含む、請求項1又は2に記載のフィルタ。
【請求項4】
前記1又は2以上のフィルタ材料が、アンモニアを吸収するための付加的な粒子を含む、請求項1~3のいずれか1項に記載のフィルタ。
【請求項5】
前記多重層が第1層と、第2層と、第3層とを少なくとも含み、前記第2層が前記第1層と前記第3層の間に配置されている、請求項1~4のいずれか1項に記載のフィルタ。
【請求項6】
前記第1層が、前記多重層を貫流する前記透析液に応じて第1直径を有する分子を保持するように構成されており、前記第2層が、前記多重層を貫流する前記透析液に応じて第2直径を有する分子を保持するように構成されており、そして前記第3層が、前記多重層を貫流する前記透析液に応じて第3直径を有する分子を保持するように構成されている、請求項5に記載のフィルタ。
【請求項7】
前記第1層が、物理反応及び化学反応の少なくとも一方によって分子を保持するように構成されており、前記第2層が、物理反応及び化学反応の少なくとも一方によって分子を保持するように構成されており、そして前記第3層が、物理反応及び化学反応の少なくとも一方によって分子を保持するように構成されている、請求項6に記載のフィルタ。
【請求項8】
前記第1層が、吸着及び吸収の少なくとも一方によって分子を保持するように構成されており、前記第2層が、吸着及び吸収の少なくとも一方によって分子を保持するように構成されており、そして前記第3層が、吸着及び吸収の少なくとも一方によって分子を保持するように構成されている、請求項6に記載のフィルタ。
【請求項9】
前記第1層、前記第2層及び前記第3層の少なくとも1つが、前記多重層を貫流する前記透析液に応じて、前記老廃物を非老廃物に変換するように構成されている、請求項5に記載のフィルタ。
【請求項10】
前記第1層、前記第2層及び前記第3層の少なくとも1つが、前記多重層を貫流する前記透析液に応じて第1直径を有する分子を保持し、そして前記多重層を貫流する前記透析液に応じて第2直径を有する分子を保持するように構成されている、請求項5に記載のフィルタ。
【請求項11】
前記1又は2以上のフィルタ材料が、尿酸を吸収するための付加的な粒子を含む、請求項1~10のいずれか1項に記載のフィルタ。
【請求項12】
前記1又は2以上のフィルタ材料が、マクログロブリンを吸収するための付加的な粒子を含む、請求項1~11のいずれか1項に記載のフィルタ。
【請求項13】
前記1又は2以上のフィルタ材料が、ホスフェートを吸収するための付加的な粒子を含む、請求項1~12のいずれか1項に記載のフィルタ。
【請求項14】
前記1又は2以上のフィルタ材料が、中型の有機老廃分子を吸収するための付加的な粒子を含む、請求項1~13のいずれか1項に記載のフィルタ。
【請求項15】
前記1又は2以上のフィルタ材料が、フッ化物を吸収するための付加的な粒子を含む、請求項1~14のいずれか1項に記載のフィルタ。
【請求項16】
前記1又は2以上のフィルタ材料が、クロラミンを吸収するための付加的な粒子を含む、請求項1~15のいずれか1項に記載のフィルタ。
【請求項17】
前記ポリオレフィンがPTFEを含む、請求項1~16のいずれか1項に記載のフィルタ。
【請求項18】
前記ポリオレフィンがPEを含む、請求項1~17のいずれか1項に記載のフィルタ。
【請求項19】
前記1又は2以上のフィルタ材料から成る多重層が、透析システム内に取り付けられている、請求項1~18のいずれか1項に記載のフィルタ。
【請求項20】
透析液から老廃物を除去するためのフィルタであって、
該フィルタは、透析液を貫流させるように構成された、1又は2以上のフィルタ材料から成る多重層を含み、
該フィルタ材料の各々は、ソーベント粒子が充填された多孔性ポリオレフィンを含み、かつ
該フィルタ材料の少なくとも1層は、尿素を処理するための材料を含有する粒子を含む
ことを特徴とするフィルタ。
【請求項21】
前記尿素を処理するための材料がウレアーゼを含む、請求項20に記載のフィルタ。
【請求項22】
前記尿素を処理するための材料が尿素を物理吸着する、請求項20に記載のフィルタ。
【請求項23】
透析液から老廃物を除去するためのフィルタであって、
該フィルタは、透析液を貫流させるように構成されたフィルタカートリッジを含み、
該フィルタカートリッジは、1又は2以上のフィルタ材料から成る多重層を含み、
該フィルタ材料の各々は、ソーベント粒子が充填された多孔性ポリオレフィンを含み、かつ
該フィルタ材料の少なくとも1層は、尿素を処理するための材料を含有する粒子を含む
ことを特徴とするフィルタ。
【請求項24】
前記フィルタは、前記透析液が前記フィルタカートリッジを通る単一パスで再生又は浄化されるように構成されている、請求項23に記載のフィルタ。
【請求項25】
透析液の使用を介して老廃物を除去する透析システムであって、
該システムは、透析液を相互作用させるように構成された、1又は2以上のフィルタ材料から成る多重層を有するフィルタを含み、
該フィルタ材料の各々は、ソーベント粒子が充填された多孔性ポリオレフィンを含み、かつ
該フィルタ材料の少なくとも1層は、尿素を処理するための材料を含有する粒子を含む
ことを特徴とする透析システム。
【請求項26】
前記尿素を処理するための材料がウレアーゼを含む、請求項25に記載の透析システム。
【請求項27】
前記多孔性ポリオレフィンがePTFEを含む、請求項25に記載の透析システム。
【請求項28】
前記フィルタが、透析液を貫流させるように構成されたフィルタカートリッジの内部に収納されている、請求項25に記載の透析システム。
【請求項29】
前記フィルタは、前記透析液が前記フィルタカートリッジを通る単一パスで完全に再生されるように構成されている、請求項28に記載の透析システム。
【請求項30】
前記透析システムがポータブル透析システムを構成する、請求項25に記載の透析システム。
【請求項31】
前記透析システムがウェアラブル透析システムを構成する、請求項30に記載の透析システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2020年12月2日付けで出願された仮出願第63/120,316号の優先権を主張する。これはあらゆる目的のためにその全体を参照することにより、本明細書中に援用される。
【0002】
本開示は大まかに言えば、老廃物を濾過し除去することに向けた装置、システム、及び方法に関する。より具体的には、開示は、透析老廃物流中に使用するためのフィルタに向けた装置、システム、及び方法に関する。
【背景技術】
【0003】
血液透析及び腹膜透析のような透析は、一般には腎臓機能の損失を治療するためにある。これらの治療において、単回の血液透析治療中に血液を透析するために、大量の、例えば約120リットルの透析液が消費される。治療は数時間持続することが可能であり、そして1週間当たり約3又は4回、治療センターで実施することができる。腹膜透析(PD)に際しては、患者は持続携行式腹膜PDを用いて1日当たり3~4回の透析液交換を実施するか、又は患者自身を一晩自動装置に接続しなければならず、交換毎に新鮮な透析液が必要となる。透析液を浄化し再循環するPDシステムであれば、大量の透析溶液を使用する必要性を減らすことになり、そして接続及び遮断の回数が少なければ少ないほど、腹膜炎のリスクを潜在的に小さくできるはずである。
【0004】
透析液体積を少なくし、且つ/又は透析システム内の処理を改善することが有益と言える。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
1実施態様(「実施態様1」)によれば、透析液から老廃物を除去するためのフィルタは、透析液を貫流させるように構成された、1又は2以上のフィルタ材料から成る多重層を含み、該フィルタ材料の各々は、ソーベント粒子が充填された多孔性ポリオレフィンを含み、かつ、該フィルタ材料の少なくとも1層は、ウレアーゼを含有する粒子を含む。
【0006】
実施態様1のフィルタにさらに付加される別の実施態様(「実施態様2」)によれば、前記1又は2以上のフィルタ材料が、クレアチニンを吸収するための付加的な粒子を含む。
【0007】
実施態様1又は2のフィルタにさらに付加される別の実施態様(「実施態様3」)によれば、前記1又は2以上のフィルタ材料が、重金属を吸収するための付加的な粒子を含む。
【0008】
実施態様1~3のいずれか1つのフィルタにさらに付加される別の実施態様(「実施態様4」)によれば、前記1又は2以上のフィルタ材料が、アンモニアを吸収するための付加的な粒子を含む。
【0009】
実施態様1~4のいずれか1つのフィルタにさらに付加される別の実施態様(「実施態様5」)によれば、前記多重層が第1層と、第2層と、第3層とを少なくとも含み、前記第2層が前記第1層と前記第3層との間に配置されている。
【0010】
実施態様5のフィルタにさらに付加される別の実施態様(「実施態様6」)によれば、前記第1層が、前記多重層を貫流する透析液に応じて第1直径を有する分子を保持するように構成されており、前記第2層が、前記多重層を貫流する透析液に応じて第2直径を有する分子を保持するように構成されており、そして前記第3層が、前記多重層を貫流する透析液に応じて第3直径を有する分子を保持するように構成されている。
【0011】
実施態様6のフィルタにさらに付加される別の実施態様(「実施態様7」)によれば、前記第1層が、物理反応及び化学反応の少なくとも一方によって分子を保持するように構成されており、前記第2層が、物理反応及び化学反応の少なくとも一方によって分子を保持するように構成されており、そして前記第3層が、物理反応及び化学反応の少なくとも一方によって分子を保持するように構成されている。
【0012】
実施態様6のフィルタにさらに付加される別の実施態様(「実施態様8」)によれば、前記第1層が、吸着及び吸収の少なくとも一方によって分子を保持するように構成されており、前記第2層が、吸着及び吸収の少なくとも一方によって分子を保持するように構成されており、そして前記第3層が、吸着及び吸収の少なくとも一方によって分子を保持するように構成されている。
【0013】
実施態様5のフィルタにさらに付加される別の実施態様(「実施態様9」)によれば、前記第1層、前記第2層及び前記第3層の少なくとも1つが、前記多重層を貫流する前記透析液に応じて、前記老廃物を前記非老廃物に変換するように構成されている。
【0014】
実施態様5のフィルタにさらに付加される別の実施態様(「実施態様10」)によれば、前記第1層、前記第2層及び前記第3層の少なくとも1つが、前記多重層を貫流する透析液に応じて第1直径を有する分子を保持し、そして前記多重層を貫流する透析液に応じて第2直径を有する分子を保持するように構成されている。
【0015】
実施態様1~10のいずれか1つのフィルタにさらに付加される別の実施態様(「実施態様11」)によれば、前記1又は2以上のフィルタ材料が、尿酸を吸収するための付加的な粒子を含む。
【0016】
実施態様1~11のいずれか1つのフィルタにさらに付加される別の実施態様(「実施態様12」)によれば、前記1又は2以上のフィルタ材料が、マクログロブリンを吸収するための付加的な粒子を含む。
【0017】
実施態様1~12のいずれか1つのフィルタにさらに付加される別の実施態様(「実施態様13」)によれば、前記1又は2以上のフィルタ材料が、ホスフェートを吸収するための付加的な粒子を含む。
【0018】
実施態様1~13のいずれか1つのフィルタにさらに付加される別の実施態様(「実施態様14」)によれば、前記1又は2以上のフィルタ材料が、中型の有機老廃分子を吸収するための付加的な粒子を含む。
【0019】
実施態様1~14のいずれか1つのフィルタにさらに付加される別の実施態様(「実施態様15)によれば、前記1又は2以上のフィルタ材料が、フッ化物を吸収するための付加的な粒子を含む。
【0020】
実施態様1~15のいずれか1つのフィルタにさらに付加される別の実施態様(「実施態様16)によれば、前記1又は2以上のフィルタ材料が、クロラミンを吸収するための付加的な粒子を含む。
【0021】
実施態様1~16のいずれか1つのフィルタにさらに付加される別の実施態様(「実施態様17)によれば、前記ポリオレフィンがPTFEを含む。
【0022】
実施態様1~17のいずれか1つのフィルタにさらに付加される別の実施態様(「実施態様18)によれば、前記ポリオレフィンがPEを含む。
【0023】
実施態様1~18のいずれか1つのフィルタにさらに付加される別の実施態様(「実施態様19)によれば、1又は2以上のフィルタ材料から成る前記多重層が透析システム内に取り付けられている。
【0024】
1実施態様(「実施態様20」)によれば、透析液から老廃物を除去するためのフィルタは、透析液を貫流させるように構成された、1又は2以上のフィルタ材料から成る多重層を含み、該フィルタ材料の各々は、ソーベント粒子が充填された多孔性ポリオレフィンを含み、かつ、該フィルタ材料の少なくとも1層は、尿素を処理するための材料を含有する粒子を含む。
【0025】
実施態様20のフィルタにさらに付加される別の実施態様(「実施態様21」)によれば、前記尿素を処理するための材料がウレアーゼを含む。
【0026】
実施態様20のフィルタにさらに付加される別の実施態様(「実施態様22)」によれば、前記尿素を処理するための材料が、尿素の物理吸着を実施する。
【0027】
1実施態様(「実施態様23)」によれば、透析液から老廃物を除去するためのフィルタは、透析液を貫流させるように構成されたフィルタカートリッジを含み、該フィルタカートリッジは、1又は2以上のフィルタ材料から成る多重層を含み、該フィルタ材料の各々は、ソーベント粒子が充填された多孔性ポリオレフィンを含み、かつ、該フィルタ材料の少なくとも1層は、尿素を処理するための材料を含有する粒子を含む。
【0028】
実施態様23のフィルタにさらに付加される別の実施態様(「実施態様24)」によれば、前記フィルタは、前記透析液がフィルタカートリッジを通る単一パスで再生又は浄化されるように構成されている。
【0029】
1実施態様(「実施態様25)」によれば、透析液の使用を介して老廃物を除去する透析システムは、透析液を相互作用させるように構成された、1又は2以上のフィルタ材料から成る多重層を有するフィルタを含み、該フィルタ材料の各々は、ソーベント粒子が充填された多孔性ポリオレフィンを含み、かつ、該フィルタ材料の少なくとも1層は、尿素を処理するための材料を含有する粒子を含む。
【0030】
実施態様25のフィルタにさらに付加される別の実施態様(「実施態様26)」によれば、前記尿素を処理するための材料がウレアーゼを含む。
【0031】
実施態様25のフィルタにさらに付加される別の実施態様(「実施態様27)」によれば、前記多孔性ポリオレフィンがePTFEを含む。
【0032】
実施態様25のフィルタにさらに付加される別の実施態様(「実施態様28)」によれば、前記フィルタが、透析液を貫流させるように構成されたフィルタカートリッジの内部に収納されている。
【0033】
実施態様28のフィルタにさらに付加される別の実施態様(「実施態様29)」によれば、前記フィルタは、前記透析液がフィルタカートリッジを通る単一パスで完全に再生されるように構成されている。
【0034】
実施態様25のフィルタにさらに付加される別の実施態様(「実施態様30)」によれば、前記透析システムがポータブル透析システムを含む。
【0035】
実施態様30のフィルタにさらに付加される別の実施態様(「実施態様31)」によれば、前記透析システムがウェアラブル透析システムを含む。
【0036】
先行の実施態様は一例に過ぎず、本開示によって他の形で提供される発明概念のうちのいずれかの概念の範囲を制限するか又は狭くするように読まれるべきではない。数多くの例が開示されるが、さらに他の実施態様が下記詳細な説明から当業者に明らかになる。下記詳細な説明は実例を示し記述する。したがって、図面及び詳細な説明は事実上限定的なものではなく事実上事例的なものとみなされるべきである。
【0037】
添付の図面は、本開示のさらなる理解のために含まれ、そして本明細書中に組み込まれ、且つ本明細書の一部を構成し、実施態様を例示し、そして記載内容と一緒に、本開示の原理を説明するのに役立つ。
【図面の簡単な説明】
【0038】
図1A図1Aは、1実施態様に基づく血液透析システム及びフィルタの例を示すダイアグラムである。
図1B図1Bは、1実施態様に基づく腹膜透析システム及びフィルタの例を示すダイアグラムである。
図2図2は、1実施態様に基づくフィルタ及びフィルタカートリッジの例を示す図である。
図3図3は、1実施態様に基づくフィルタ層の例を示す図である。
図4図4は、1実施態様に基づくフィルタ層の例を示す走査電子顕微鏡(SEM)画像である。
【発明を実施するための形態】
【0039】
詳細な説明
定義及び用語
本開示は、限定的に読まれるようには意図されない。例えば、本出願において使用される用語は、当業者がこのような用語を帰属させるであろう意味に照らして幅広く読まれるべきである。
【0040】
不正確を表す用語に関しては、「約(about)」及び「ほぼ(approximately)」を互いに置き換え可能に用いることにより、表明された測定値を含み、且つ表明された測定値にかなり近い任意の測定値をも含む測定値を意味する。表明された測定値にかなり近い測定値は、当業者によって理解され容易に突き止められるようなかなり僅かな量だけ、表明された測定値から逸脱している。このような逸脱は、例えば測定誤差、測定及び/又は製造設備較正の差、測定値の読み出し及び/又は設定に際してのヒューマンエラー、他の構成部分と関連する測定値の差を考慮した性能及び/又は構造パラメータ、具体的には実施シナリオを最適化するために行われる微調整、人又は機械による物体の不正確な調整及び/又は操作、及び/又はこれに類するものに帰することができる。当業者がこのようなかなり僅かな差の値を容易には突き止められないと判断される場合には、「約(about)」及び「ほぼ(approximately)」は表明された値のプラス又はマイナス10%を意味するものと理解することができる。
【0041】
種々の実施態様の説明
当業者には明らかなように、所期機能を発揮するように構成された任意の数の方法及び装置によって、本開示の種々の態様を実現することができる。なお、本明細書中に言及される添付の図面は必ずしも原寸に比例するものではなく、本開示の種々の態様を例示するために誇張されることもある。その点において、図面は制限的なものと解釈されるべきではない。
【0042】
本開示の種々の態様は大まかに言えば、使用済み透析液から老廃物を除去するためのフィルタを含む装置、システム、及び方法に関する。フィルタはある特定の事例では、透析システム内で使用され、フィルタを通る透析液の高い流量を維持することができる。フィルタはまた、数多くの(例えば従来のフィルタと比較して高い吸収容量)、そして種々様々な毒素を透析液から効果的に濾過する高い容量を含み得る。フィルタは施設用透析システム、ポータブル家庭用透析システム、又はウェアラブル透析システムとともに使用されてよい。
【0043】
図1Aは、1実施態様に基づく血液透析システム100及びフィルタ102の例を示すダイアグラムである。システム100は、1つ又は2つ以上のポンプ(図示せず)を含んでよい。ポンプは血液及び透析液を、システム100を通るように駆動する。血液及び透析液はシステム100を貫流し、ダイアライザ104を通るように圧送され、この場所で老廃物が血液から除去され、透析液によって収集される。血液及び透析液は患者の血液を連続的に浄化するために連続ループ状に流れる。新たな透析液を、システムを通るように圧送するのとは異なり、使用済み透析液はフィルタ102を通される。この場所で、透析液は浄化されダイアライザ104へ向かって戻される。血液透析システムはまた1つ又は2つ以上のセンサ、モニタ、検出器、空気トラップ、又は流体ディスペンサ(図示せず)を含有してよい。
【0044】
さらに詳しく後述するように、フィルタ102は、透析液が当該フィルタ材料と相互作用するのを可能にするように構成された1又は2以上のフィルタ材料から成る多重層を含んでよい。各フィルタ材料は、ソーベント粒子が充填された多孔性ポリマー、例えば多孔性ポリオレフィン(例えばePTFE)を含み、またフィルタ材料の少なくとも1つの層は粒子を含むことができる。粒子は、尿素を処理するための材料(例えばウレアーゼ)を含有してよい。他の事例では、フィルタ102は、粒子を充填された多孔性ポリオレフィンに加えて、又はこの代わりに、多孔性ポリマー(フィルタ材料粒子を含む)充填層又は官能価多孔性ポリオレフィン(例えばPTFE)を含んでよい。フィルタ102は、透析液が当該フィルタカートリッジを貫流するのを可能にするように構成されたフィルタカートリッジ内部に収納されていてよい。フィルタ102は、透析液がフィルタ102を通る単一パスで再生又は浄化されるように構成されていてよい。
【0045】
さらに詳細に後述するフィルタ102は、透析液から毒素を吸着、吸収、又は他の形で除去する粒子を充填された多孔性ポリオレフィンから成る多重層を含んでよい。フィルタ102は極めて効率的であるので、透析液を清浄化後にシステム100を通して再循環させることができる。ある特定の事例では、フィルタ102は、単一又は複数の透析治療サイクル全体を通して、伝統的な透析治療と比較してより小さな体積の透析液を使用し、そして再使用するのを可能にする。フィルタ102は例えば、伝統的な透析治療と比較して25分の1オーダーまで透析液体積を低減可能にする。透析液の体積低減を可能にするフィルタ102は、伝統的な透析治療と比較して、システム100のコスト、サイズ、及び重量を大幅に低減することができる。
【0046】
粒子を充填された多孔性ポリオレフィンから成る多重層を含むフィルタ102は、高容量及び毒素の高効率の除去を可能にする。フィルタ102の層は例えば、種々異なる毒素を吸着、吸収、又は他の形で除去するように構成されていてよい。例えば、1つの層は、大型分子を吸着、吸収、又は他の形で除去するように構成されていてよいのに対して、別の層は、異なるサイズ又はタイプの分子を透析液から吸着、吸収、又は他の形で除去するように構成されていてよい。加えて、フィルタ102は、透析液中の異なる又は同様の毒素を標的にするフィルタ102を含む複数のフィルタ102又はカートリッジを含んでもよい。
【0047】
多孔性ポリオレフィンから成る多重層を含むフィルタ102は、システム100を通る透析液流の低い圧力降下を容易にする。ポリオレフィンの多孔性は、血液からの老廃物除去を遅くすることなしに、透析液流を維持する。
【0048】
図1Bは、1実施態様に基づく、フィルタ102を組み込んだ腹膜システム100の例を示すダイアグラムである。腹膜システム100はダイアライザを使用せず、透析液を患者内へ注入する。フィルタ102は、上記低減と同様の透析液体積の低減を可能にする。新たな透析液を患者内へ注入するのとは異なり、透析液はフィルタ102に通して再循環させることができる。これにより、透析液体積の低減が可能になる。腹膜透析システムはまた1つ又は2つ以上のセンサ、モニタ、検出器、空気トラップ、又は流体ディスペンサ(図示せず)を含有してよい。
【0049】
いずれの事例においても、透析システム100はポータブル透析システムであってよい。フィルタ102による高容量の毒素除去は、上記のように、透析液体積を大幅に低減するのを可能にする。透析液体積及びフィルタ102のサイズが低減されることにより、ある特定の事例において、システム100は家庭用システム又はウェアラブル透析システムであることが可能になる。
【0050】
図2は、1実施態様に基づくフィルタ102及びフィルタカートリッジ208の例を示す図である。上記のように、フィルタ102は、透析液から老廃物を除去するために使用されてよい。図示のように、フィルタ102は、多重層210,212,214を含み、フィルタカートリッジ208内部に配置されている。多重層210,212,214は、透析液が当該多重層210,212,214を貫流するのを可能にするように構成された1又は2以上のフィルタ材料を含み、各フィルタ材料は、ソーベント粒子を充填された多孔性ポリオレフィンを有する。さらに、フィルタ102材料から成る少なくとも1つの層は、尿素を酵素的に取り除くためにウレアーゼを含有し得る粒子を含む。さらに、層210,212,214の1又は2以上のフィルタ材料は、アンモニアを除去するための付加的な粒子を含んでよい。使用済み透析液は、フィルタカートリッジ208内へ流入し、そしてフィルタカートリッジ208を貫流することができる。フィルタカートリッジ208内には多重層210,212,214のそれぞれが含まれている。そしてフィルタカートリッジ208からは清浄な透析液が流出する。
【0051】
ある特定の事例では、層210,212,214の1又は2以上のフィルタ材料は、クレアチニンを吸収するための付加的な粒子を含む。加えて、層210,212,214の1又は2以上のフィルタ材料は、重金属を吸収するための付加的な粒子を含んでもよい。
【0052】
フィルタ102は1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、6つ、7つ、8つ、及びこれを上回る数の、ソーベント粒子を充填された多孔性ポリオレフィンを有するフィルタ材料から成る層を含んでよい。層は同じ又は異なるソーベント粒子を含んでよい。ある特定の事例では、フィルタ102の多重層210,212,214は、第1層210と、第2層212と、第3層214とを含む。第2層212は、第1層210と第3層214との間に配置されている。上述のように、層210,212,214は同じ又は異なるソーベント粒子を含んでよい。ある特定の事例では、第1層210は、多重層210,212,214を貫流する透析液に応じて第1直径を有する分子を保持するように構成されている。第2層212は、多重層210,212,214を貫流する透析液に応じて第2直径を有する分子を保持するように構成されていてよい。加えて、第3層214は、多重層210,212,214を貫流する透析液に応じて第3直径を有する分子を保持するように構成されていてよい。
【0053】
ある特定の事例では、第1層210、第2層212、及び/又は第3層214は、多重層を貫流する透析液に応じて第1直径を有する分子を保持し、そして多重層を貫流する透析液に応じて第2直径を有する分子を保持するように構成されている。第1層210、第2層212、及び/又は第3層214は、第1直径及び第2直径の分子に加えて、第3直径を有する分子を保持するように構成されていてもよい。多重層210,212,214のうちの1つ又は2つ以上は、直径が異なる分子を保持するように構成された、単一の層内部に配置された粒子を含んでよい。
【0054】
ある特定の事例では、第1層210は、物理反応(例えば吸着)及び化学反応(例えば吸収)によって分子を保持するように構成されており、且つ/又は第1層210は、第1層210を貫流する透析液に応じて、老廃物を非老廃物に変換するように構成されている。ある特定の事例では、第1層210は、物理反応(例えば吸着)、化学反応(例えば吸収)によって分子をそれぞれ別個に保持し、そして老廃物を非老廃物に変換する種々異なる粒子を含んでよい。他の事例では、第1層210は、第1層210が物理反応(例えば吸着)、化学反応(例えば吸収)によって分子を保持するべく構成されるように、又は第1層210が老廃物を非老廃物に変換するべく構成されるように、単一のタイプの粒子を含んでよい。
【0055】
ある特定の事例では、第2層212は、物理反応(例えば吸着)、化学反応(例えば吸収)によって分子を保持するように構成され、且つ/又は第2層212は、第2層212を貫流する透析液に応じて老廃物を非老廃物に変換するように構成されている。ある特定の事例では、第2層212は、物理反応(例えば吸着)、化学反応(例えば吸収)によって分子をそれぞれ別個に保持し、そして老廃物を非老廃物に変換する種々異なる粒子を含んでよい。他の事例では、第2層212は、第2層212が物理反応(例えば吸着)、化学反応(例えば吸収)によって分子を保持するべく構成されるように、又は第2層212が老廃物を非老廃物に変換するべく構成されるように、単一のタイプの粒子を含んでよい。
【0056】
ある実施態様では、第3層214は、物理反応(例えば吸着)及び化学反応(例えば吸収)によって分子を保持するように構成されており、且つ/又は第3層214は、第3層214を貫流する透析液に応じて、老廃物を非老廃物に変換するように構成されている。ある特定の事例では、第3層214は、物理反応(例えば吸着)、化学反応(例えば吸収)によって分子をそれぞれ別個に保持し、そして老廃物を非老廃物に変換する種々異なる粒子を含んでよい。他の事例では、第3層214は、第3層214が物理反応(例えば吸着)、化学反応(例えば吸収)によって分子を保持するべく構成されるように、又は第3層214が老廃物を非老廃物に変換するべく構成されるように、単一のタイプの粒子を含んでよい。
【0057】
ある特定の事例では、第1層210、第2層212、及び/又は第3層214のうちの1つ又は2つ以上の層内に含まれる1又は2以上のフィルタ材料は、尿酸を吸収するための付加的な粒子を含んでよい。加えて、第1層210、第2層212、及び/又は第3層214のうちの1つ又は2つ以上の層内に含まれる1又は2以上のフィルタ材料は、マクログロブリンを吸収するための付加的な粒子を含んでよい。さらに、第1層210、第2層212、及び/又は第3層214のうちの1つ又は2つ以上の層内に含まれる1又は2以上のフィルタ材料は、ホスフェートを吸収するための付加的な粒子を含んでよい。さらに、第1層210、第2層212、及び/又は第3層214のうちの1つ又は2つ以上の層内に含まれる1又は2以上のフィルタ材料は、中型の有機老廃分子を吸収するための付加的な粒子を含んでよい。第1層210、第2層212、及び/又は第3層214のうちの1つ又は2つ以上の層内に含まれる1又は2以上のフィルタ材料は、中型の有機老廃分子を吸収するための付加的な粒子を含んでよい。第1層210、第2層212、及び/又は第3層214のうちの1つ又は2つ以上の層内に含まれる1又は2以上のフィルタ材料は、クロラミンを吸収するように構成されてもよい付加的な粒子を含んでよい。加えて、第1層210、第2層212、及び/又は第3層214のうちの1つ又は2つ以上の層内に含まれる1又は2以上のフィルタ材料は、ウレアーゼを含んでよい。ある特定の事例では、第1層210、第2層212、及び/又は第3層214のうちの1つ又は2つ以上の層内に含まれる1又は2以上のフィルタ材料は、尿素の物理吸着を実施してよい。
【0058】
ある特定の事例では、特定の分子が他の分子よりも前に保持又は浄化されるように、第1層210、第2層212、及び第3層214は配置されていてよい。例えば、第1層210は、第1タイプの分子を保持するように構成されてよく、第2層212は、第2タイプの分子を保持するように構成されてよく、そして第3層214は、第3タイプの分子を保持するように構成されてよい。ある特定の事例では、より大きい分子がより小さい分子の濾過よりも前に濾過されるように、第1層210、第2層212、及び第3層214は配置されていてよい。例えば、第3層214は第2層212よりも大きい分子を保持するように構成されてよく、そして第2層212は第1層210よりも大きい分子を保持するように構成されてよい。他の事例では、より小さい分子が最初に濾過されるように、第1層210、第2層212、及び第3層214は配置されていてよい。例えば、第3層214は第2層212よりも小さい分子を保持するように構成されてよく、そして第2層212は第1層210よりも小さい分子を保持するように構成されてよい。
【0059】
多重層210,212,214が積み重ねられた層状形態を成して配置されるか、又は螺旋テープ形態を成して配置されるように、多重層210,212,214はフィルタカートリッジ208内部に形成されてよい。こうして、多重層210,212,214は、フィルタカートリッジ208の形状に一致してよい。上記のように、フィルタカートリッジ208、及び1又は2以上のフィルタ材料から成る多重層210,212,214は、透析システム(例えば図1A~Bに示されたシステム100)内に取り付けられる。フィルタ102は、透析液がフィルタカートリッジ208を通る単一パスで再生又は浄化されるように構成されていてよい。
【0060】
システムは透析液を、フィルタ102を通して再循環させてよく、使用される透析液体積の低減を可能にする(120リットル超と比較して5~10リットル)。透析センターの場合、1治療セッションは3~4時間であり、1週間に3~4セッション行われる。フィルタ102を使用するシステムは、所定の長さの時間にわたって(例えば患者の睡眠中)、定常治療を可能にする。定常治療は、毒素の一貫した濾過を容易にし、患者が透析センターに通う場合に生じる治療間の時間を短くすることができる。
【0061】
図3は、1実施態様に基づくフィルタ層318の例を示す図である。フィルタ層318は、上に詳述したような、透析液から老廃物を除去するためのフィルタ内へ組み入れられる1つ又は2つ以上の層として使用されてよい。フィルタ層318は、ソーベント粒子320を充填された多孔性ポリオレフィンを含んでよい。ある特定の事例では、ポリオレフィンはPTFEであってよい。ポリオレフィンはPEであってもよい。
【0062】
ポリオレフィンから形成されたフィルタ層318は、ポリオレフィンがポリマーフィブリル322及びノード324の間に形成された微孔を含む点で有利であり得る。ソーベント粒子320は、ポリマーフィブリル322及びノード324の間の孔内部に含有されてよい。図4は、フィルタ層の例を示す走査電子顕微鏡(SEM)画像であり、ポリマーフィブリル322及びノード324の間の孔内部に含有されたソーベント粒子320を示している。
【0063】
フィルタ材料中の使用に適した好適な材料の一例としては、ポリオレフィン、微多孔性ポリエチレン、及び延伸フルオロポリマーメンブレン、例えば延伸ポリテトラフルオロエチレン(ePTFE)、又は他の多孔性合成ポリマー材料が挙げられる。このようなフィルタ材料はPTFEホモポリマー、PTFEのブレンド、延伸改質PTFE、及び/又はPTFEの延伸コポリマーを含むことができる。参照されるように、フィルタ材料は微多孔性構造(例えばマトリックス内部に複数の空間を画定するフィブリルのマトリックスを含むePTFE材料)を有してよい。
【0064】
本出願の発明を全般的に、そして具体的な実施態様に関連して上記のように説明してきた。当業者には明らかなように、開示の範囲を逸脱することなしに、種々の改変及び変更を実施態様において加えることができる。したがって、本発明の改変形及び変更形が添付の請求項及びこれらの同等物の範囲に含まれるのであれば、実施態様はこれらの改変形及び変更形に範囲が及ぶものとする。
図1A
図1B
図2
図3
図4
【国際調査報告】