(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-12-13
(54)【発明の名称】アンジェルマン症候群の治療のための組成物及びその使用
(51)【国際特許分類】
A61K 35/76 20150101AFI20231206BHJP
C12N 7/01 20060101ALI20231206BHJP
C12N 15/864 20060101ALI20231206BHJP
C12N 15/12 20060101ALI20231206BHJP
C12N 15/52 20060101ALI20231206BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20231206BHJP
A61P 25/18 20060101ALI20231206BHJP
A61P 25/02 20060101ALI20231206BHJP
A61P 25/14 20060101ALI20231206BHJP
A61P 25/08 20060101ALI20231206BHJP
A61P 25/28 20060101ALI20231206BHJP
A61P 25/00 20060101ALI20231206BHJP
A61K 47/59 20170101ALI20231206BHJP
A61K 9/10 20060101ALI20231206BHJP
A61K 48/00 20060101ALI20231206BHJP
A61K 38/53 20060101ALN20231206BHJP
【FI】
A61K35/76
C12N7/01 ZNA
C12N15/864 100Z
C12N15/12
C12N15/52 Z
A61P43/00 105
A61P25/18
A61P25/02
A61P25/14
A61P25/08
A61P25/28
A61P25/00
A61K47/59
A61K9/10
A61K48/00
A61K38/53
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023533671
(86)(22)【出願日】2021-12-01
(85)【翻訳文提出日】2023-08-01
(86)【国際出願番号】 US2021061346
(87)【国際公開番号】W WO2022119890
(87)【国際公開日】2022-06-09
(32)【優先日】2020-12-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2021-04-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】502409813
【氏名又は名称】ザ・トラステイーズ・オブ・ザ・ユニバーシテイ・オブ・ペンシルベニア
(74)【代理人】
【識別番号】110000741
【氏名又は名称】弁理士法人小田島特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】パーシバル,ジャスティン
(72)【発明者】
【氏名】シュミッド,ラルフ
(72)【発明者】
【氏名】ウイルソン,ジェームス・エム
【テーマコード(参考)】
4B065
4C076
4C084
4C087
【Fターム(参考)】
4B065AA95X
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4C087ZA06
4C087ZA15
4C087ZA18
4C087ZA22
(57)【要約】
UBE3Aコード配列を含むベクターゲノムを有するrAAVが提供される。また、ニューロンにUBE3A発現が欠損している患者における、アンジェルマン症候群(AS)の1つ以上の症状を治療するための方法であって、UBE3Aをコードする核酸配列を有するrAAVを送達することを含む、方法も提供される。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アンジェルマン症候群(AS)の治療に有用な組換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)のストックを含む組成物であって、前記rAAVが、AAVカプシドと、その中にパッケージングされたベクターゲノムと、を含み、前記ベクターゲノムが、
(a)AAV5’逆位末端反復(ITR)、
(b)配列番号9、又はそれと少なくとも95%同一のUBE3Aアイソフォーム1タンパク質をコードする配列(配列番号2)を含む、UBE3A核酸配列であって、前記核酸配列が、ヒト細胞において前記UBE3Aタンパク質の発現を調節する調節要素に操作可能に連結している、UBE3A核酸配列、
(c)(b)の前記UBE3Aの発現を指示する調節要素、及び
(d)AAV3’ITR、を含む、組成物。
【請求項2】
前記調節要素が、ニューロン特異的プロモーターを含む、請求項1に記載の組成物
【請求項3】
前記ニューロン特異的プロモーターが、シナプシンプロモーターである、請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
前記シナプシンプロモーターが、配列番号12の核酸配列を有する短縮されたプロモーターである、請求項3に記載の組成物。
【請求項5】
前記調節要素が、構成的プロモーターを含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
前記調節要素が、1つ以上のエンハンサー及び1つ以上のイントロンを更に含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項7】
前記調節配列が、miR182及び/又はmiR183から選択される後根神経節におけるmiRの1つ以上の標的化配列を更に含み、前記標的化配列が、前記UBE3A核酸配列に操作可能に連結されている、請求項1~6のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項8】
前記調節配列が、miR182及び/又はmiR183から選択される後根神経節におけるmiRの1つ以上の標的化配列を更に含み、前記標的化配列が、前記UBE3A核酸配列の下流に位置する、請求項1~7のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項9】
前記調節配列が、miR183の4つの標的化配列を更に含み、前記標的化配列が、前記UBE3A核酸配列の下流に位置する、請求項1~8のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項10】
前記調節配列が、配列番号11の4つのコピーを含む、請求項1~9のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項11】
前記AAVカプシドが、AAVhu68カプシドである、請求項1~10のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項12】
前記AAVカプシドが、配列番号14又は配列番号16の核酸配列の発現から生成されるAAVhu68カプシドである、請求項1~10のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項13】
前記AAVカプシドが、AAVrh91カプシドである、請求項1~10のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項14】
前記AAVカプシドが、配列番号17又は配列番号19の核酸配列の発現から生成され
るAAVrh91カプシドである、請求項1~10のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項15】
生理学的に適合する担体、緩衝液、アジュバント、及び/又は希釈剤を更に含む水性懸濁液である、請求項1~14のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項16】
アンジェルマン症候群を有する患者の治療に使用するための、請求項1~15のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項17】
アンジェルマン症候群の1つ以上の症状であって、任意選択的に、発育遅延、知的障害、重度の言語障害、運動失調、及び/又はてんかんのうちの1つ以上から選択される、症状の治療に使用するための、請求項1~15のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項18】
アンジェルマン症候群を治療する方法であって、それを必要とする患者に、請求項1~15のいずれか一項に記載の組成物を投与することを含む、方法。
【請求項19】
ニューロンにUBE3A発現が欠損している患者における、アンジェルマン症候群の1つ以上の症状を治療するための方法であって、前記方法が、請求項1~15のいずれか一項に記載の組成物を送達することを含む、方法。
【請求項20】
前記症状が、発育遅延、知的障害、重度の言語障害、運動失調、及び/又はてんかんのうちの1つ以上から選択される、請求項18又は19に記載の方法。
【請求項21】
前記組成物が、前記患者に髄腔内送達される、請求項1~15のいずれか一項に記載の組成物、請求項16若しくは17に記載の使用、又は請求項18~20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
前記患者が、少なくとも1×10
10~1×10
13GC/kgの前記rAAVを注射される、請求項1~15のいずれか一項に記載の組成物、請求項16若しくは17に記載の使用、又は請求項18~20のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
アンジェルマン症候群(AS)は、世界中の50万人に影響を及ぼす稀な遺伝性疾患である。ASの主な症状としては、知的障害、運動機能障害、運動失調、失語症、重度の発作、及び特徴的な挙動特徴が挙げられる。ASを有するほとんどの個体は、分解のために標的とするユビキチンを基質に連結するHECT E3ユビキチンリガーゼをコードする、母系遺伝のUBE3A対立遺伝子の機能喪失を呈する。AS症例のうちの65~70%は、母系染色体15q11~q13のデノボ欠失を含むクラスI変異から生じる[Angelman H.,Puppet’ children.A report on three cases,Dev Med Child Neurol,1965,7:681-88、Mertz LG et al.,Angelman syndrome in Denmark.Birth incidence,genetic findings,and age at diagnosis,Am J Med Genet A,2013,161A(9):2197-2203,epub August 2,2013、Clayton-Smith J.,and Laan L.,Angelman
syndrome:a review of the clinical and genetic types,J Med Genet,2003,40(2):87-95,pub February 1,2003、Khatri N and Man H,The Autism and Angelman Syndrome Protein Ube3A/E6AP:The Gene,E3 Ligase Ubiquination Targets and Neurobiological Functions,Front Mol Neurosci,2009,12(109):1-12,epub April 30,2019]。
【0002】
マウスにおける3つのUBE3Aアイソフォームについて記載されており、アイソフォーム2及び3がマウスにおける主要なUBE3Aスプライスバリアントとして同定されている。(Valluy,J.et al.,A coding-independent
function of an alternative Ube3a transcript during neuronal development,Nat Neurosci,2015,18(5):666-673,epub April 13,2015、Trezza RA et al.,Loss of nuclear UBE3a causes electrophysiological and behavioral deficits in mice and is associated
with Angelman syndrome,Nat Neurosci,2019,22(8):1235-1247,epub June 24,2019、Zampeta FI et al.,Conserved UBE3a subcellular distribution between human and mice is
facilitated by non-homologous isoforms,Hum Mol Genet,2020,29(18):3032-3043,epub
September 2,2020)。hUBE3Aアイソフォーム1の喪失は、「軽度の」アンジェルマン症候群を有する個人に生じ(Sadhwani,A et al.,Two Angelman families with unusually advanced neurodevelopment carry a start codon variant in the most highly expressed
UBE3a isoform,Am J Med Genet A,2018,176(7):1641-1647,epub May 7,2018)、依然として核hUB
E3Aアイソフォーム3及び細胞質hUBE3Aアイソフォーム2を発現する。
【0003】
現在、ASの治療法は存在しない。現在の治療は、緩和的であり、発作を含む医学的問題及び進行に関する問題の管理に焦点を当てている。治療選択肢が存在しないことは、ASの新規治療に対する重要な満たされていないニーズを強調している。
【発明の概要】
【0004】
UBE3A-アイソフォーム1に基づく、有用かつ耐容性の高い新規のアデノ随伴ウイルス(AAV)に基づく遺伝子置き換え療法が本明細書で提供される。組成物及び方法は、アンジェルマンの動物モデルにおいて評価されるように、アンジェルマン症候群(AS)に関連する運動欠陥及び挙動欠陥を緩和することができる。一実施形態では、組成物は、ASの治療に有用な組換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)のストックを含み、rAAVが、AAVカプシドと、その中にパッケージングされたベクターゲノムと、を含み、当該ベクターゲノムが、(a)AAV5’逆位末端反復(ITR)、(b)配列番号9、又はそれと95%同一のUBE3Aアイソフォーム1タンパク質をコードする配列(配列番号2)を含む、UBE3A核酸配列であって、核酸が、ヒト細胞においてUBE3Aタンパク質の発現を調節する調節要素に操作可能に連結している、UBE3A核酸配列、(c)(b)のUBE3Aの発現を指示する調節要素、及び(d)AAV3’ITRを含む。ある特定の実施形態では、調節要素は、ニューロン特異的プロモーターを含む。ある特定の実施形態では、ニューロン特異的プロモーターは、シナプシンプロモーターである。ある特定の実施形態では、シナプシンプロモーターは、配列番号12の核酸配列を有する短縮されたプロモーターである。ある特定の実施形態では、調節要素は、構成的プロモーターを含む。ある特定の実施形態では、調節要素は、1つ以上のエンハンサー及び1つ以上のイントロンを更に含む。ある特定の実施形態では、調節配列は、miR182(配列番号20)及び/又はmiR183(配列番号11)の1つ以上の標的化配列を更に含み、当該標的化配列は、UBE3A核酸配列に操作可能に連結されている。ある特定の実施形態では、調節配列は、miR182及び/又はmiR183から選択されるmiRの1つ以上の標的化配列を更に含み、当該標的化配列は、UBE3A核酸配列の下流に位置する。ある特定の実施形態では、調節配列は、miR183の4つの標的化配列を更に含み、当該標的化配列は、UBE3A核酸配列の下流に位置する。ある特定の実施形態では、調節配列は、配列番号11の4つのコピーを含む。ある特定の実施形態では、AAVカプシドは、AAVhu68カプシドである。ある特定の実施形態では、AAVカプシドは、配列番号14又は配列番号16の核酸配列の発現から生成されるAAVhu68カプシドである。ある特定の実施形態では、AAVカプシドは、AAVrh91カプシドである。ある特定の実施形態では、AAVカプシドは、配列番号17又は配列番号19の核酸配列から発現されるAAVrh91カプシドである。ある特定の実施形態では、組成物は、生理学的に適合する担体、緩衝液、アジュバント、及び/又は希釈剤を更に含む水性懸濁液である。
【0005】
ある特定の実施形態では、本明細書に記載の組成物は、アンジェルマン症候群を有する患者の治療における使用に有用である。ある特定の実施形態では、本明細書で提供される組成物は、アンジェルマン症候群の1つ以上の症状の治療に有用であり、任意選択的に、症状が、発育遅延、知的障害、重度の言語障害、運動失調、及び/又はてんかんのうちの1つ以上から選択される。ある特定の実施形態では、本明細書で提供される発現カセットの送達を介して、ニューロンにUBE3A発現が欠損している患者におけるアンジェルマン症候群(AS)の1つ以上の症状を治療するための方法が提供される。ある特定の実施形態では、発現カセットは、発育遅延、知的障害、重度の言語障害、運動失調、及び/又はてんかんのうちの1つ以上から選択される症状を治療する。ある特定の実施形態では、組成物は、患者への髄腔内送達のために提供される。ある特定の実施形態では、患者は、少なくとも1×1010~1×1013GC/kgの操作されたUBE3Aコード配列を
担持するrAAVを注射される。
【0006】
ある特定の実施形態では、本方法は、発育遅延、知的障害、重度の言語障害、運動失調、及び/又はてんかんのうちの1つ以上を含む、アンジェルマン疾患の症状の改善を提供する。
【0007】
これらの方法及び組成物の他の態様及び利点が、以下の詳細な説明において更に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1A-1C】後根神経節の発現及び毒性を調節するための、miR配列を含まない発現カセット及びベクターゲノムの概略図を提供する。
図1Aは、5’AAV逆位末端反復(ITR)及び3’AAV ITRがhUBE3A-アイソフォーム1の発現カセットに隣接する、ベクターゲノムの概略図を提供する。発現カセットは、修飾されたシナプシンプロモーター制御下の操作されたhUBE3A-アイソフォーム1コード配列(852アミノ酸をコードする;配列番号2)を含有する。hUBE3Aコード配列は、Ube3Aリガーゼ(AZUL)のアミノ末端ジンクフィンガー、HECTドメイン及びRCC1様ドメイン2(HERC2)、E6タンパク質結合ドメイン(E6BD)、並びにE6-APカルボキシル末端相同領域(HECT)、並びにSV40ポリAを含む。
図1Bは、AAV ITRがhUBE3A-アイソフォーム2の発現カセットに隣接する、ベクターゲノムの概略図を提供する。コードされたアイソフォーム2タンパク質は、875アミノ酸長(配列番号6)である。
図1Cは、AAV ITRがhUBE3A-アイソフォーム3の発現カセットに隣接する、ベクターゲノムの概略図を提供する。コードされたアイソフォーム3タンパク質は、872アミノ酸長(配列番号21)である。
【
図2A-2B】非ヒト霊長類(NHP)における、miR183(4xmiR183)標的配列の4つのコピーを含む(薄い丸印)か、又は4xmiR183配列を含まない(濃い配列)、rAAVhu68.UBE3A-アイソフォーム1のベクター生体分布及びmRNA発現の評価の結果を示す。
図2Aは、小脳、尾状核、海馬、前頭皮質、後頭皮質、髄質、頭頂皮質、側頭皮質、視床、頸髄DRG、胸髄DRG、腰髄DRG、頸髄脊髄、胸髄脊髄、腰髄脊髄におけるゲノムコピー(GC)/二倍体ゲノムで測定した、NHPにおけるUBE3Aアイソフォーム1ベクターの生体分布を示す。
図2Bは、NHPの脊髄及びDRGにおける、miR183(4xmiR183)標的配列の4つのコピーを含む(薄い丸印)か、又は4xmiR183配列を含まない(濃い配列)、rAAVhu68.UBE3A-アイソフォーム1で治療後の、UBE3Aアイソフォーム1 mRNA発現を示す。
図2Cは、小脳、尾状核、海馬、前頭皮質、後頭皮質髄質、頭頂皮質、側頭皮質、視床、頸髄DRG、胸髄DRG、腰髄DRG、頸髄脊髄、胸髄脊髄、腰髄脊髄、大脳(陰性対照)におけるUBE3Aアイソフォーム1を示す。
【
図3A-3B】(3~4歳の)アカゲザルにおいて、AAVhu68-UBE3A-アイソフォーム1±4xmiR183ベクターが、顕著な後根神経節(DRG)毒性を引き起こさないことを示す。hUBE3A-1(群1)又はhUbe3a-1-4xmiR183(群2)ベクターは、3×10
13GC/動物の用量での大槽(ICM)投与の35日後のアカゲザルにおいて、顕著なAAV誘導性後根神経節毒性を引き起こさない。DRG関連毒性は、群1動物192285の脊髄及び末梢神経においてのみ観察された。両群にわたって、動物のDRGは、普通であり(
図3A)、散発的な最小限の単核細胞浸潤(
図3B、丸印)のみを有し、神経変性の証拠は存在しなかった(3/3匹の動物、群1;3/3匹の動物、群2)。
【
図4A-4B】(3~4歳の)アカゲザルの末梢神経におけるrAAVhu68.シナプシン-UBE3Aアイソフォーム1の影響を示す。後肢神経における最小限の局所性軸索障害の影響(矢印)。
図4Aは、末梢神経における動物AAVhu68.シナプシン-UBE3Aアイソフォーム1を示す。
図4Bは、動物192275及び192297が、前肢の右正中神経に軽度の多巣性軸索障害(矢印)及び単核細胞浸潤(楕円)を呈した192285を呈したこと示す。
【
図5】治療されたUBE3A
m-/p+新生児マウスにおけるUBE3Aタンパク質陽性ニューロンの定量化を示す。治療は、脳室内(ICV)を介した1×10
11GC/動物の用量でのAAV-PHP.B-hSyn-UBE3A-アイソフォーム1の投与で構成される。皮質、海馬、視床、視床下部、及び中脳において、(それぞれのWT組織におけるUBE3A陽性ニューロンに正規化して)ニューロンの42~68%がUBE3Aタンパク質を発現した。
【
図6】治療されたUBE3A
m-/p+新生児マウスにおけるUBE3Aタンパク質陽性ニューロンの定量化を示す。治療は、脳室内(ICV)を介した1×10
10GC/動物の用量でのAAV-PHP.B-hSyn-UBE3A-アイソフォーム1の投与を含んでいた。皮質、海馬、視床、視床下部、及び中脳において、(それぞれのWT組織におけるUBE3A陽性ニューロンに正規化して)ニューロンの20~50%がUBE3Aタンパク質を発現した。
【
図7A-7I】(NHP-1、-2、-3;35日間の研究において)3匹の治療された非ヒト霊長類由来の後根神経節(頸髄、胸髄、及び腰髄セグメント)における、操作されたヒトUBE3Aアイソフォーム1(hUBE3A-1)転写物局在化の蛍光画像を示す。治療は、大槽(ICM)経路を介した3×10
13GC/動物の用量でのAAV-PHP.B-hSyn-UBE3A-アイソフォーム1の投与を含んでいた。目的の領域の画像を様々な倍率で撮影し、20倍の倍率の画像を提示している。
図7Aは、NHP-1由来の後根神経節の頸髄セグメントにおける、操作されたhUBE3A-1転写産物局在化の蛍光画像を示す。
図7Bは、NHP-2由来の後根神経節の頸髄セグメントにおける、操作されたhUBE3A-1転写産物局在化の蛍光画像を示す。
図7Cは、NHP-3由来の後根神経節の頸髄セグメントにおける、操作されたhUBE3A-1転写産物局在化の蛍光画像を示す。
図7Dは、NHP-1由来の後根神経節の胸髄セグメントにおける、操作されたhUBE3A-1転写産物局在化の蛍光画像を示す。
図7Eは、NHP-2由来の後根神経節の胸髄セグメントにおける、操作されたhUBE3A-1転写産物局在化の蛍光画像を示す。
図7Fは、NHP-3由来の後根神経節の胸髄セグメントにおける、操作されたhUBE3A-1転写産物局在化の蛍光画像を示す。
図7Gは、NHP-1由来の後根神経節の腰髄セグメントにおける、操作されたhUBE3A-1転写産物局在化の蛍光画像を示す。
図7Hは、NHP-2由来の後根神経節の腰髄セグメントにおける、操作されたhUBE3A-1転写産物局在化の蛍光画像を示す。
図7Iは、NHP-3由来の後根神経節の腰髄セグメントにおける、操作されたhUBE3A-1転写産物局在化の蛍光画像を示す。
【
図8】AAV-PHP.B-hSyn-hUBE3A-iso1を用いたICV注射後のUBE3A
m-/p+及び野生型マウスの脳における、操作されたUBE3Aアイソフォーム1の発現を示す。
【
図9A-9B】新生児野生型又はAS(UBE3A
m-/p+)マウスに、動物当たり1×10
11ゲノムコピー(GC)の用量でAAV-PHP.B-シナプシン-UBE3A-アイソフォーム1又はアイソフォーム2ベクターのいずれかを脳室内(ICV)注射した後、8~10週齢で実施した運動協調性挙動試験の結果を示す。
図9Aは、AAV-PHP.B-シナプシン-UBE3A-アイソフォーム1での治療後の、WT及びASマウスにおける運動協調性を示す。
図9Bは、AAV-PHP.B-シナプシン-UBE3A-アイソフォーム2での治療後の、WT及びASマウスにおける運動協調性を示す。
【
図10A-10D】新生児野生型又はAS(UBE3A
m-/p+)マウスに、動物当たり1×10
11ゲノムコピー(GC)の用量でAAV-PHP.B-シナプシン-UBE3A-アイソフォーム1又はアイソフォーム2ベクターのいずれかを脳室内(ICV)注射した後、8~10週齢で実施した巣構築能力挙動試験の結果を示す。
図10Aは、AAV-PHP.B-シナプシン-UBE3A-アイソフォーム1での治療後の、WT及びASマウスにおける巣構築スコアを示す。
図10Bは、AAV-PHP.B-シナプシン-UBE3A-アイソフォーム1での治療後の、WT及びASマウスによる未使用の巣材のパーセンテージを示す。
図10Cは、AAV-PHP.B-シナプシン-UBE3A-アイソフォーム2での治療後の、WT及びASマウスにおける巣構築スコアを示す。
図10Dは、AAV-PHP.B-シナプシン-UBE3A-アイソフォーム2での治療後の、WT及びASマウスによる未使用の巣材のパーセンテージを示す。
【
図11A-11D】新生児野生型又はAS(UBE3A
m-/p+))マウスに、動物当たり1×10
11ゲノムコピー(GC)の用量でAAV-PHP.B-シナプシン-UBE3A-アイソフォーム1ベクターを脳室内(ICV)注射した後、8~10週齢で実施したキャットウォーク(歩長及び歩行改善)挙動試験の結果を示す。
図11Aは、AAV-PHP.B-シナプシン-UBE3A-アイソフォーム1での治療後の、WT及びASマウスにおける右後(RH)肢の歩長を示す。
図11Bは、AAV-PHP.B-シナプシン-UBE3A-アイソフォーム1での治療後の、WT及びASマウスにおける左後(LH)肢の歩長を示す。
図11Cは、AAV-PHP.B-シナプシン-UBE3A-アイソフォーム1での治療後の、WT及びASマウスにおける右後(RH)肢の歩長を示す。
図11Dは、AAV-PHP.B-シナプシン-UBE3A-アイソフォーム1での治療後の、WT及びASマウスにおける左後(LH)肢の歩長を示す。
【
図12A-2C】大槽(ICM)経路を介した、3×10
13GC/動物の用量でのAAV-hu68-hSyn-UBE3A-アイソフォーム1での治療後35日後のNHPの後根神経節(drg)における毒性研究の結果を示す(病理学的グレードを0~5でスコアリングしてプロットした)。
図12Aは、NHPのDRGの頸髄セグメントにおけるスコア化された病理学的グレードを示す。
図12Bは、NHPのDRGの胸髄セグメントにおけるスコア化された病理学的グレードを示す。
図12Cは、NHPのDRGの腰髄セグメントにおけるスコア化された病理学的グレードを示す。
【
図13A-13C】大槽(ICM)経路を介した、3×10
13GC/動物の用量でのAAV-hu68-hSyn-UBE3A-アイソフォーム1での治療後35日後のNHPの脊髄における毒性研究の結果を示す(病理学的グレードを0~5でスコアリングしてプロットした)。
図13Aは、NHPの脊髄の頸髄セグメントにおけるスコア化された病理学的グレードを示す。
図13Bは、NHPの脊髄の胸髄セグメントにおけるスコア化された病理学的グレードを示す。
図13Cは、NHPの脊髄の腰髄セグメントにおけるスコア化された病理学的グレードを示す。
【
図14】大槽(ICM)経路を介した、3×10
13GC/動物の用量でのAAV-hu68-hSyn-UBE3A-アイソフォーム1での治療後35日後のNHPの末梢神経における毒性研究の結果を示す(軸索変性症病理学的グレードを0~5でスコアリングしてプロットした)。
【
図15A-15C】大槽(ICM)経路を介した、3×10
13GC/動物の用量でのAAV-hu68-hSyn-UBE3A-アイソフォーム1での治療後14日及び35日後の末梢神経伝導研究の結果を示す。
図15Aは、左正中神経のm/秒として測定される速度を示す。
図15Bは、mV単位でピークツーピーク(PP)振幅を測定した、AAV-hu68-hSyn-UBE3A-アイソフォーム1での治療後14及び35日後の末梢神経伝導研究の結果を示す。
図15Cは、mV単位で負のピーク(NP)振幅を測定した、AAV-hu68-hSyn-UBE3A-アイソフォーム1での治療後14日及び35日後の末梢神経伝導研究の結果を示す。
【
図16A-16B】WT組織におけるUBE3A陽性ニューロンに対して正規化された、皮質、海馬、視床、視床下部、及び中脳における陽性ニューロンパーセントとしてプロットした、治療されたUBE3A
m-/p+新生児マウスにおけるUBE3Aアイソフォーム1又はアイソフォーム2タンパク質陽性ニューロンの定量化を示す。治療は、脳室内(ICV)を介した1×10
11GC/動物の用量でのAAV-PHP.B-hSyn-UBE3A-アイソフォーム1又はアイソフォーム2の投与を含んでいた。
図16Aは、治療後のマウスの皮質、海馬、視床、視床下部、及び中脳における、UBE3Aアイソフォーム1陽性ニューロンのパーセントを示す。
図16Bは、治療後のマウスの皮質、海馬、視床、視床下部、及び中脳における、UBE3Aアイソフォーム2陽性ニューロンのパーセントを示す。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本明細書で提供されるのは、(例えば、rAAV媒介性遺伝子置き換え療法を介して)送達された場合、アンジェルマン症候群の症状を治療するレベルでUB3Aアイソフォーム1を発現する、操作されたUBE3A-アイソフォーム1コード配列を含有する発現カセットである。ある特定の実施形態では、発現カセットにおける調節要素は、後根神経節(DRG)発現及び/又は毒性を調節するために、最大8つ、例えば、4~8つのmiR183配列を含む。ある特定の実施形態では、これらのDRG脱標的化配列は、高レベルでの発現時及び/又は全身送達が意図される場合に使用するために選択される。他の実施形態では、髄腔内送達が利用される場合に、これらの配列が含まれる。
【0010】
一実施形態では、発現カセットは、標的ヒト細胞においてUBE3Aタンパク質の発現を調節する調節要素に操作可能に連結された、操作されたUBE3Aコード(核酸配列)を含む。ある特定の実施形態では、UBE3Aコード配列は、UBE3Aアイソフォーム1タンパク質をコードし、配列番号2に再現される。hUBE3Aアイソフォーム1タンパク質は、Ube3Aリガーゼ(AZUL)のアミノ末端ジンクフィンガー、HECTドメイン及びRCC1様ドメイン2(HERC2)、E6タンパク質結合ドメイン(E6BD)、並びにE6-APカルボキシル末端相同領域(HECT)を含む、いくつかのドメインを含む。好適には、操作されたUBE3Aアイソフォーム1コード配列は、配列番号9の核酸配列、又はそれに対して少なくとも95%同一のUBE3Aアイソフォーム1タンパク質をコードする配列(配列番号2)である。ある特定の実施形態では、配列は、完全長の配列番号9と100%同一である。他の実施形態では、配列は、配列番号9と少なくとも95%同一、少なくとも97%同一、少なくとも98%同一、少なくとも99%同一、99.5%同一である。ある特定の実施形態では、UBE3Aアイソフォーム1コード配列は、5’又は3’末端で切断され、UBE3Aアイソフォーム1タンパク質のカルボキシ又はN末端の切断を生じる。
【0011】
ある特定の実施形態では、配列番号6に再現される、UBE3Aアイソフォーム2タンパク質をコードするUBE3Aコード配列。hUBE3Aアイソフォーム2タンパク質は、Ube3Aリガーゼ(AZUL)のアミノ末端ジンクフィンガー、HECTドメイン及びRCC1様ドメイン2(HERC2)、E6タンパク質結合ドメイン(E6BD)、並びにE6-APカルボキシル末端相同領域(HECT)を含む、いくつかのドメインを含む。好適には、操作されたUBE3Aアイソフォーム2コード配列は、配列番号10の核酸配列、又はそれに対して少なくとも95%同一のUBE3Aアイソフォーム2タンパク質をコードする配列(配列番号6)である。ある特定の実施形態では、配列は、完全長の配列番号10と100%同一である。他の実施形態では、配列は、配列番号10と少なくとも95%同一、少なくとも97%同一、少なくとも98%同一、少なくとも99%同一、99.5%同一である。ある特定の実施形態では、UBE3Aアイソフォーム2コード配列は、5’又は3’末端で切断され、UBE3Aアイソフォーム2タンパク質のカルボキシ又はN末端の切断を生じる。ある特定の実施形態では、配列番号21(UNIPROT ID No:Q05086-3)に再現される、UBE3Aアイソフォーム3タンパク質をコードするUBE3aコード配列。
【0012】
ある特定の実施形態では、発現カセットは、UBE3Aコード配列を含み、任意選択的に、UBE3Aコード配列が、シグナルペプチドと、機能的UBE3Aタンパク質とを含む、融合タンパク質をコードする。ある特定の実施形態では、発現カセットは、UBE3Aコード配列を含み、任意選択的に、UBE3Aコード配列が、機能的UBE3Aタンパ
ク質に融合された取り込みペプチドを含む、融合タンパク質をコードする。ある特定の実施形態では、任意選択的に、UBE3Aコード配列が、シグナルペプチド及び/又は取り込みペプチドに融合されたUBE3Aタンパク質を含む、融合タンパク質をコードする、発現カセットUBE3Aコード配列。いくつかの実施形態では、発現カセットは、UBE3Aコード配列を含み、任意選択的に、シグナルペプチド及び/又は取り込みペプチドが、UBE3Aコード配列の5’又は3’のいずれかに位置して、UBE3Aタンパク質のN末端にシグナルペプチド及び/若しくは取り込みペプチドを含む融合タンパク質、UBE3Aタンパク質のC末端にシグナルペプチド及び/若しくは取り込みペプチドを含む融合タンパク質、又はUBE3Aタンパク質のN末端にシグナルペプチドを含む融合タンパク質、又はUBE3Aタンパク質のC末端にシグナルペプチド若しくは取り込みペプチドを含む融合タンパク質、又はそれらの組み合わせをもたらす。ある特定の実施形態では、シグナルペプチドは、結合免疫グロブリンタンパク質(BiP)シグナルペプチドである。ある特定の実施形態では、シグナルペプチドは、ガウシアシグナルペプチドである。参照によりその全体が本明細書に組み込まれる、米国特許第9,279,007B2((対応する国際特許出願第2012/071422号、結合免疫グロブリンタンパク質(BiP)シグナルペプチド)、同第10,874,750B2(対応する国際特許出願第2019/213180A1号、結合免疫グロブリンタンパク質(BiP)シグナルペプチド及びガウシアシグナルペプチド)も、参照されたい。ある特定の実施形態では、任意選択的に、UBE3Aは、発現、分泌、及び細胞取り込みを向上させるペプチドを含む、融合タンパク質である。ある特定の実施形態では、任意選択的に、UBE3Aは、シスタチンペプチド配列であるペプチドを含む、融合タンパク質である。参照によりその全体が本明細書に組み込まれるUS9,567,369も参照されたい。ある特定の実施形態では、任意選択的に、UBE3Aは、HIV TATkペプチド(例えば、TATk28、TATk11)からの誘導体であるペプチドを含む、融合タンパク質である。参照によりそれらの全体が本明細書に組み込まれる、WO2015/128746A2(US10,907,138B2)、WO2018/005617A2(US2021/0268072)、WO2019/108924A2、WO2020/250081A1、及びWO2021/087282A1も参照されたい。ある特定の実施形態では、ペプチドは、IGF2ペプチドである。参照によりその全体が本明細書に組み込まれるWO2021/072372も参照されたい。ある特定の実施形態では、任意選択的に、UBE3Aは、ペネトラチン、R6W3、HIV TAT、HIV TATk及びpVECから選択される細胞取り込み配列を含むペプチドを含む、融合タンパク質である。ある特定の実施形態では、任意選択的に、UBE3Aは、インスリン、GDNF、及びIgKから選択される分泌配列を含むペプチドを含む、融合タンパク質である。参照によりその全体が本明細書に組み込まれるWO2019/006107も参照されたい。
【0013】
ある特定の実施形態では、UBE3Aアイソフォーム1発現カセットは、遺伝子置き換え療法単独としての送達のために選択される。ある特定の実施形態では、UBE3Aアイソフォーム1発現カセットは、1つ以上の他の活性成分を含むレジメン(例えば、短期又は長期酵素補充療法及び/又は基質枯渇療法)における遺伝子置き換え療法としての送達のために選択される。
【0014】
一実施形態では、組成物は、UBE3Aアイソフォーム1の発現カセットを含む、ベクターを含む。好適なベクター及びベクターゲノムは、本明細書に記載されている。
【0015】
他の実施形態では、組換えパルボウイルスベクター(例えば、組換えアデノ随伴ウイルス)のストックが提供される。rAAVは、AAVカプシドと、その中にパッケージングされたベクターゲノムと、を含み、当該ベクターゲノムが、(a)AAV5’逆位末端反復(ITR)、(b)配列番号9、又はそれと95%同一のUBE3Aアイソフォーム1タンパク質をコードする配列(配列番号2)を含む、UBE3A核酸配列であって、核酸
が、ヒト細胞においてUBE3Aタンパク質の発現を調節する調節要素に操作可能に連結している、UBE3A核酸配列、(c)(b)のUBE3Aの発現を指示する調節要素、及び(d)AAV3’ITRを含む。望ましいAAVカプシドは、中枢神経系(CNS)における所望の細胞を標的とするAAVhu68及びAAVrh91を含む。
【0016】
ある特定の実施形態では、rAAVは、AAVカプシドと、その中にパッケージングされたベクターゲノムと、を含み、当該ベクターゲノムが、(a)AAV5’逆位末端反復(ITR)、(b)任意選択的に、ペプチド(例えば、シグナル又は取り込みペプチド)、(c)配列番号9、又はそれと95%同一のUBE3Aアイソフォーム1タンパク質をコードする配列(配列番号2)を含む、UBE3A核酸配列であって、核酸配列が、ヒト細胞においてUBE3Aタンパク質の発現を調節する調節要素に操作可能に連結している、UBE3A核酸配列、(d)任意選択的に、ペプチド(調節及び/又は取り込みペプチド)、(e)(b)のUBE3Aの発現を指示する調節要素、及び(f)AAV3’ITRを含む。ある特定の実施形態では、シグナルペプチドは、BiPシグナルペプチドである。参照によりその全体が本明細書に組み込まれるUS9,279,007B2((対応する国際特許出願第2012/071422号)及びUS10,874,750B2(対応する国際特許出願第2019/213180A1号)も参照されたい。ある特定の実施形態では、調節ペプチドは、IGFペプチドである。参照によりその全体が本明細書に組み込まれるWO2021/072372も参照されたい。ある特定の実施形態では、シグナルペプチドは、インスリン、GDNF、及びIgKから選択される分泌配列を含む、分泌シグナルペプチドである。ある特定の実施形態では、ペネトラチン、R6W3、HIV
TAT、HIV TATk、及びpVECから選択される細胞取り込み配列を含む、取り込みペプチド。参照によりその全体が本明細書に組み込まれるWO2019/006107も参照されたい。
【0017】
ある特定の実施形態では、UBE3Aは、任意選択的に、本明細書に記載のシグナルペプチド及び/又は取り込みペプチドを含む、融合タンパク質である。ある特定の実施形態では、シグナルペプチド及び/又は取り込みペプチドは、アミノ(N)末端又はカルボキシ(C)末端のいずれかに位置する。ある特定の実施形態では、シグナルペプチドは、アミノ(N)末端に位置する。ある特定の実施形態では、取り込みペプチドは、N末端又はC末端のいずれかに位置する。
【0018】
本明細書で使用される場合、rAAVの「ストック」は、rAAVの集団を指す。脱アミド化に起因するカプシドタンパク質の不均一性にもかかわらず、ストック内のrAAVは、同一のベクターゲノムを5つ共有することが予想される。ストックは、例えば、選択されたAAVカプシドタンパク質及び選択された産生系に特徴的な不均一な脱アミド化パターンを有するカプシドを有するrAAVを含み得る。ストックは、単一の産生系から産生され得るか、又は産生系の複数の実行からプールされ得る。本明細書に記載されるものを含むが、これらに限定されない様々な産生系が選択され得る。
【0019】
本明細書で別途定義されない限り、本明細書で使用される技術用語及び科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者によって、及び本出願で使用されている多くの用語に対して当業者に一般的な手引きを提供する公開された文書を参照することによって、一般的に理解されているものと同じ意味を有する。
【0020】
本明細書で使用される場合、「疾患」、「障害」、及び「状態」は、対象における異常な状態を示すために互換的に使用される。一実施形態では、疾患は、アンジェルマン症候群(AS)である。
【0021】
本明細書で使用される場合、「患者」又は「対象」は、ヒト、獣医学用動物又は農業用
動物、家庭用動物又は愛玩動物、並びに通常臨床研究に使用される動物を含む、男性又は女性の哺乳動物を互換的に意味する。一実施形態では、これらの方法及び組成物の対象は、ヒト患者である。一実施形態では、これらの方法及び組成物の対象は、男性又は女性のヒトである。
【0022】
本明細書及び特許請求の範囲全体を通して使用される場合、「含む(comprising)」、「含有する(containing)」、「含む(including)」という用語、及びその変形は、他の成分、要素、整数、ステップなどを含む。逆に、「構成する(consisting)」という用語及びその変形は、他の成分、要素、整数、ステップなどを除外する。
【0023】
「a」又は「an」という用語は、1つ以上を指し、例えば、「ニューロン(a neuron)」は、1つ以上のニューロンを表すと理解されることを留意されたい。したがって、「1つ(a)」(又は「1つ(an)」)、「1つ以上」、及び「少なくとも1つ」という用語は、本明細書では互換的に使用される。
【0024】
本明細書で使用される場合、「約」という用語は、別途指定されない限り、与えられた参照からプラス又はマイナス10%の変動を意味する。
【0025】
ある特定の場合では、「E+#」という用語は、指数を指すために使用される。例えば、5E10は、5×1010である。これらの用語は、互換的に使用され得る。
【0026】
本明細書に記載の核酸配列は、通常の分子生物学技術を使用してクローニングすることができるか、又はDNA合成によってデノボで生成することができる。本明細書に記載のUBE3A遺伝子の態様をコードする核酸配列は、組み立てられ、例えば、非ウイルス送達系(例えば、RNAに基づく系、裸のDNAなど)を生成するために、又はパッケージング宿主細胞内でウイルスベクターを生成するために、及び/又は対象の宿主細胞に送達するために、任意の好適な遺伝子要素、例えば、裸のDNA、ファージ、トランスポゾン、コスミド、エピソームなどに配置され、それらに担持される配列を宿主細胞に導入する。一実施形態では、遺伝子要素は、ベクターである。一実施形態では、遺伝子要素は、プラスミドである。かかる操作された構築物を作製するために使用される方法は、核酸操作における当業者に既知であり、遺伝子工学、組換え工学、及び合成技術を含む。例えば、Green and Sambrook,Molecular Cloning:A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Press,Cold Spring Harbor,NY(2012)を参照されたい。
【0027】
発現カセット
本明細書で使用される場合、「発現カセット」とは、生物学的に有用な核酸配列と、核酸配列(例えば、タンパク質、酵素、又は他の有用な遺伝子産物、mRNAなどをコードする遺伝子cDNA)及びその遺伝子産物の転写、翻訳、並びに/若しくは発現を指示又は調節する、それと操作可能に連結された調節配列と、を含む、核酸分子を指す。本明細書で使用される場合、「操作可能に連結された」配列は、核酸配列と連続又は非連続である調節配列及びトランス又はシス核酸配列で作用する調節配列の両方を含む。かかる調節配列は、典型的には、例えば、プロモーター、エンハンサー、イントロン、コザック配列、ポリアデニル化配列、及びTATAシグナルのうちの1つ以上を含む。発現カセットは、他の要素の中で、遺伝子配列の上流(5’~)の調節配列、例えば、プロモーター、エンハンサー、イントロンなどのうちの1つ以上、及びエンハンサー、又は遺伝子配列の下流(3’~)の調節配列、例えば、ポリアデニル化部位を含む3’非翻訳領域(3’UTR)のうちの1つ以上を含有し得る。ある特定の実施形態では、調節配列は、遺伝子産物の核酸配列と操作可能に連結され、調節配列は、介在する核酸配列、すなわち、5’非翻
訳領域(5’UTR)によって、遺伝子産物の核酸配列から分離される。ある特定の実施形態では、発現カセットは、1つ以上の遺伝子産物の核酸配列を含む。いくつかの実施形態では、発現カセットは、モノシストロン性又はバイシストロン性発現カセットであり得る。他の実施形態では、「導入遺伝子」という用語は、標的細胞に挿入される外因性供給源からの1つ以上のDNA配列を指す。典型的には、かかる発現カセットは、ウイルスベクターを生成するために使用することができ、ウイルスゲノムのパッケージングシグナルに隣接する本明細書に記載される遺伝子産物のコード配列、及び本明細書に記載のものなどの他の発現制御配列を含有する。特定の実施形態では、ベクターゲノムは、2つ以上の発現カセットを含有し得る。
【0028】
いくつかの実施形態では、コード配列を含む核酸分子は、UBE3Aコード配列であり、プロモーターを更に含み、他のそれらの調節配列を含み得る。ある特定の実施形態では、発現カセットは、ウイルスベクター(例えば、ウイルス粒子)を生成するために使用され、ウイルスゲノムのパッケージングシグナルに隣接する本明細書に記載のUBE3Aのコード配列、及び本明細書に記載のものなどの他の発現制御配列を含有する。いくつかの実施形態では、ウイルスベクターは、AAVウイルスベクターであり、パッケージングシグナルが、5’AAV逆位末端反復(ITR)及び3’AAV ITRである。任意選択的に、発現カセット(及びベクターゲノム)は、例えば、後根神経節(drg)毒性及び/又は軸索変性症を低減するために、UTRに1つ以上のdrg-miRNA標的化配列を含み得る。例えば、2019年12月20日に出願され、現在WO2020/132455として公開されている、PCT/US2019/67872、2020年5月12日に出願された、米国仮特許出願第63/023593号、及び2020年6月12日に出願された、米国仮特許出願第63/038488号を参照されたく、全てが“Compositions for Drg-Specific Reduction of Transgene Expression”と題され、その全体が本明細書に組み込まれる。
【0029】
本明細書で使用される場合、「操作可能に連結された」又は「操作可能に会合された」という用語は、目的の遺伝子に連続している発現制御配列又は調節要素、及びトランスで、又は離れて作用して目的の遺伝子を制御する発現制御配列の両方を指す。
【0030】
本明細書に記載される場合、調節要素は、限定されないが、プロモーター、エンハンサー、転写因子、転写終結因子、スプライシング及びポリアデニル化シグナル(ポリA)などの効率的なRNAプロセシングシグナル、細胞質mRNAを安定化させる配列、例えば、ウッドチャック肝炎ウイルス(WHP)転写後調節因子(WPRE)、翻訳効率を向上させる配列(すなわち、コザックコンセンサス配列)を含む。
【0031】
一実施形態では、発現カセットは、UBE3Aを送達するための、遺伝子置き換え系の1つ以上の要素をコードする配列の発現を指示する調節要素を含む。一実施形態では、調節要素は、1つ以上のプロモーターを含む。ある特定の実施形態では、発現カセットは、構成的プロモーター又は調節的プロモーターを含む。ある特定の実施形態では、プロモーターは、組織特異的(例えば、ニューロン特異的)プロモーターである。ある特定の実施形態では、好適なプロモーターとしては、限定されないが、伸長因子1アルファ(EF1アルファ)プロモーター(例えば、Kim DW et al,Use of the human elongation factor 1 alpha promoter
as a versatile and efficient expression
system.Gene.1990 Jul 16;91(2):217-23を参照されたい)、シナプシン1プロモーター(例えば、Kugler S et al,Human synapsin 1 gene promoter confers highly neuron-specific long-term transgene
expression from an adenoviral vector in the adult rat brain depending on the transduced area.Gene Ther.2003 Feb;10(4):337-47を参照されたい)、本明細書の実施例に提供されるものなどの短縮されたシナプシンプロモーター(例えば、コード配列については配列番号12を参照されたい)、ニューロン特異的エノラーゼ(NSE)プロモーター(例えば、Kim J et al,Involvement of cholesterol-rich lipid rafts in interleukin-6-induced neuroendocrine differentiation of LNCaP prostate cancer cells.Endocrinology.2004 Feb;145(2):613-9.Epub 2003 Oct 16を参照されたい)、又はCB6プロモーター(例えば、Large-Scale Production of Adeno-Associated Viral Vector Serotype-9 Carrying the Human Survival Motor Neuron Gene,Mol Biotechnol.2016 Jan;58(1):30-6.doi:10.1007/s12033-015-9899-5を参照されたい)が挙げられ得る。他の好適なプロモーターとしては、(C)サイトメガロウイルス(CMV)初期エンハンサー要素、(A)プロモーター、ニワトリベータアクチン遺伝子の第1のエクソン及び第1のイントロン、並びに(G)ウサギベータグロビン遺伝子のスプライスアクセプターを含む、CAGプロモーターが挙げられる。例えば、Alexopoulou,Annika N.,et al.BMC cell biology 9.1(2008):2を参照されたい。望ましさは低いが、ウイルスプロモーター、構成的プロモーター、誘導性プロモーター、調節可能なプロモーターなどの他のプロモーター(例えば、WO2011/126808及びWO2013/04943を参照されたい)、又は生理学的キューに応答するプロモーターを使用してもよく、本明細書に記載のベクターに利用してもよい。ある特定の実施形態では、発現カセットは、U6プロモーターを含む。別の実施形態では、調節要素は、エンハンサーを含む。更なる実施形態では、エンハンサーは、APBエンハンサー、ABPSエンハンサー、アルファmic/bikエンハンサー、TTRエンハンサー、en34エンハンサー、ApoEエンハンサー、CMVエンハンサー、又はRSVエンハンサーのうちの1つ以上から選択される。なお別の実施形態では、調節要素は、イントロンを含む。更なる実施形態では、イントロンは、CBA、ヒトベータグロビン、IVS2、SV40、bGH、アルファ-グロブリン、ベータ-グロブリン、コラーゲン、オボアルブミン、又はp53から選択される。一実施形態では、調節要素は、ポリAを含む。更なる実施形態では、ポリAは、合成ポリA、又は本明細書の実施例で提供されるものなどのウシ成長ホルモン(bGH)、ヒト成長ホルモン(hGH)、SV40(例えば、コード配列については配列番号13を参照されたい)、ウサギβ-グロビン(RGB)、若しくは修飾されたRGB(mRGB)からのものである。別の実施形態では、調節要素は、WPRE配列を含み得る。更に別の実施形態では、調節要素は、コザック配列を含む。
【0032】
ある特定の実施形態では、発現カセットは、配列番号22の核酸配列、又はそれと少なくとも約90%同一の、配列番号2のアミノ酸配列を含むUBE3Aをコードする配列を含む。ある特定の実施形態では、発現カセットは、配列番号23の核酸配列、又はそれと少なくとも約90%同一の、配列番号4のアミノ酸配列を含むUBE3Aをコードする配列を含む。ある特定の実施形態では、発現カセットは、配列番号24の核酸配列、又はそれと少なくとも約90%同一の、配列番号6のアミノ酸配列を含むUBE3Aをコードする配列を含む。ある特定の実施形態では、発現カセットは、配列番号25の核酸配列、又はそれと少なくとも約90%同一の、配列番号8のアミノ酸配列を含むUBE3Aをコードする配列を含む。
【0033】
「発現」という用語は、本明細書で最も広い意味で使用され、RNAの産生、タンパク質の産生、又はRNA及びタンパク質の両方の産生を含む。RNAに関して、「発現」又は「翻訳」という用語は、特に、ペプチド又はタンパク質の産生に関する。発現は、一過性又は安定であり得る。
【0034】
発現カセットは、任意の好適な送達システムを介して送達することができる。好適な非ウイルス送達系は、当該技術分野において既知であり(例えば、Ramamoorth and Narvekar.J Clin Diagn Res.2015 Jan;9(1):GE01-GE06、参照により本明細書に組み込まれる)、当業者によって容易に選択され得、例えば、裸のDNA、裸のRNA、デンドリマー、PLGA、ポリメタクリレート、無機粒子、脂質粒子(脂質ナノ粒子若しくはLNP)又はキトサンベースの製剤を含み得る。
【0035】
一実施形態では、ベクターは、非ウイルスプラスミドであり、例えば、ミセル、リポソーム、カチオン性脂質-核酸組成物、ポリグリカン組成物、並びに他のポリマー、脂質、及び/又はコレステロール系-核酸コンジュゲート、並びに本明細書に記載のものなどの他の構築物を含む、様々な組成物及びナノ粒子と結合される、その記載の発現カセット、例えば、「裸のDNA」、「裸のプラスミドDNA」、RNA、及びmRNAを含む。例えば、X.Su et al,Mol.Pharmaceutics,2011,8(3),pp 774-787、ウェブ公開:2011年3月21日、WO2013/182683、WO2010/053572、及びWO2012/170930を参照されたく、これらは全て参照により本明細書に組み込まれる。
【0036】
本明細書で提供されるのは、遺伝子置き換え系の1つ以上の要素をコードする核酸配列を含む組成物、及び機能的UBE3Aを置き換えるためにそれを使用する方法である。
【0037】
任意選択的に、発現カセットは、非翻訳領域にmiRNA標的配列を含み得る。miRNA標的配列は、導入遺伝子発現が望ましくない、及び/又は導入遺伝子発現のレベルの低減が望ましい細胞に存在するmiRNAによって特異的に認識されるように設計される。特定の実施形態では、miRNA標的配列は、3’UTR、5’UTR、及び/又は3’UTRと5’UTRの両方に位置する。いくつかの実施形態では、miRNA標的配列は、発現カセットの調節配列に操作可能に連結される。ある特定の実施形態では、発現カセットは、DRG特異的miRNA標的配列の少なくとも2つのタンデム反復を含み、少なくとも2つのタンデム反復は、少なくとも第1のmiRNA標的配列と、同じ又は異なり得る少なくとも第2のmiRNA標的配列とを含む。ある特定の実施形態では、タンデムmiRNA標的配列は、連続的であるか、又は1~10個の核酸のスペーサーによって分離されており、当該スペーサーが、miRNA標的配列ではない。
【0038】
ある特定の実施形態では、ベクターゲノム又は発現カセットは、miR-183(又はmiRNA183)標的配列である、少なくとも1つのmiRNA標的配列を含有する。ある特定の実施形態では、ベクターゲノム又は発現カセットは、
(配列番号11)を含むmiR-183標的配列を含有し、miR-183シード配列に相補的な配列には、下線が引かれている。ある特定の実施形態では、ベクターゲノム又は発現カセットは、miR-183シード配列に100%相補的である配列を、2つ以上のコピー(例えば、2又は3つのコピー)含有する。ある特定の実施形態では、miR-183標的配列は、約7ヌクレオチド~約28ヌクレオチド長であり、miR-183シー
ド配列に少なくとも100%相補的である少なくとも1つの領域を含む。ある特定の実施形態では、miR-183標的配列は、配列番号11に部分的に相補性な配列を含有し、したがって、配列番号11と整列させた場合、1つ以上のミスマッチがある。ある特定の実施形態では、miR-183標的配列は、配列番号11に整列させた場合、少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、又は10個のミスマッチを有する配列を含み、ミスマッチは非連続的であり得る。ある特定の実施形態では、miR-183標的配列は、100%相補的な領域を含み、その領域はまた、miR-183標的配列の長さの少なくとも30%を構成する。ある特定の実施形態では、100%相補的な領域は、miR-183シード配列と100%の相補性を有する配列を含む。ある特定の実施形態では、miR-183標的配列の残りは、miR-183と少なくとも約80%~約99%の相補性を有する。ある特定の実施形態では、発現カセット又はベクターゲノムは、切断された配列番号11、すなわち、配列番号11の5’末端若しくは3’末端のいずれか又は両方で、少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、又は10ヌクレオチドを欠く配列を含む、miR-183標的配列を含む。ある特定の実施形態では、発現カセット又はベクターゲノムは、導入遺伝子及び1つのmiR-183標的配列を含む。更に他の実施形態では、発現カセット又はベクターゲノムは、少なくとも2つ、3つ、又は4つのmiR-183標的配列を含む。
【0039】
ある特定の実施形態では、ベクターゲノム又は発現カセットは、miR-182標的配列である少なくとも1つのmiRNA標的配列を含有する。ある特定の実施形態では、ベクターゲノム又は発現カセットは、AGTGTGAGTTCTACCATTGCCAAA(配列番号20)を含む、miR-182標的配列を含有する。ある特定の実施形態では、ベクターゲノム又は発現カセットは、miR-182シード配列に100%相補的である配列の2つ以上のコピー(例えば、2又は3つのコピー)を含有する。ある特定の実施形態では、miR-182標的配列は、約7ヌクレオチド~約28ヌクレオチド長であり、miR-182シード配列に少なくとも100%相補的である少なくとも1つの領域を含む。特定の実施形態では、miR-182標的配列は、配列番号20に部分的に相補的な配列を含有し、したがって、配列番号20と整列させた場合、1つ以上のミスマッチがある。ある特定の実施形態では、miR-183標的配列は、配列番号20に整列させた場合、少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、又は10個のミスマッチを有する配列を含み、ミスマッチは非連続的であり得る。ある特定の実施形態では、miR-182標的配列は、100%相補的な領域を含み、その領域はまた、miR-182標的配列の長さの少なくとも30%を構成する。ある特定の実施形態では、100%相補的な領域は、miR-182シード配列と100%の相補性を有する配列を含む。ある特定の実施形態では、miR-182標的配列の残りは、miR-182と少なくとも約80%~約99%の相補性を有する。ある特定の実施形態では、発現カセット又はベクターゲノムは、切断された配列番号20(すなわち、配列番号20の5’末端若しくは3’末端のいずれか又は両方で、少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、又は10ヌクレオチドを欠く配列)を含む、miR-182標的配列を含む。ある特定の実施形態では、発現カセット又はベクターゲノムは、導入遺伝子と、1つのmiR-182標的配列とを含む。更に他の実施形態では、発現カセット又はベクターゲノムは、少なくとも2つ、3つ、又は4つのmiR-182標的配列を含む。
【0040】
「タンデム反復」という用語は、2つ以上の連続するmiRNA標的配列の存在を指すために本明細書で使用される。これらのmiRNA標的配列は、連続的であり得、すなわち、一方の3’末端が、介在配列なしで、次の配列の5’末端のすぐ上流にあるように、又はその逆で、互いの後に直接的に配置され得る。別の実施形態では、miRNA標的配列のうちの2つ以上が、短いスペーサー配列によって分離されている。本明細書で使用される場合、「スペーサー」は、2つ以上の連続するmiRNA標的配列の間に位置する、例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、又は10ヌクレオチド長の任意の選択さ
れた核酸配列である。ある特定の実施形態では、スペーサーは、1~8ヌクレオチド長、2~7ヌクレオチド長、3~6ヌクレオチド長、4ヌクレオチド長、4~9ヌクレオチド、3~7ヌクレオチド、又はより長い数値である。好適には、スペーサーは、非コード配列である。ある特定の実施形態では、スペーサーは、4つの(4)ヌクレオチドであり得る。ある特定の実施形態では、スペーサーは、GGATである。ある特定の実施形態では、スペーサーは、6つの(6)ヌクレオチドである。ある特定の実施形態では、スペーサーは、CACGTG又はGCATGCである。
【0041】
ある特定の実施形態では、タンデム反復は、2つ、3つ、4つ以上の同じmiRNA標的配列を含有する。ある特定の実施形態では、タンデム反復は、少なくとも2つの異なるmiRNA標的配列、少なくとも3つの異なるmiRNA標的配列、又は少なくとも4つの異なるmiRNA標的配列などを含む。特定の実施形態では、タンデム反復は、2つ又は3つの同じmiRNA標的配列、及び異なる第4のmiRNA標的配列を含有し得る。ある特定の実施形態では、発現カセットには、少なくとも2つの異なるセットのタンデム反復が存在し得る。例えば、3’UTRは、導入遺伝子のすぐ下流のタンデム反復と、UTR配列と、UTRの3’末端に近接する2つ以上のタンデム反復と、を含有し得る。別の例では、5’UTRは、1つ、2つ以上のmiRNA標的配列を含有し得る。別の例では、3’は、タンデム反復を含有し得、5’UTRは、少なくとも1つのmiRNA標的配列を含有し得る。ある特定の実施形態では、発現カセットは、導入遺伝子の終止コドンの約0~20ヌクレオチド以内で開始する、2つ、3つ、4つ以上のタンデム反復を含有する。他の実施形態では、発現カセットは、導入遺伝子の終止コドンから少なくとも100~約4000ヌクレオチドでmiRNAタンデム反復を含有する。
【0042】
参照により本明細書に組み込まれ、参照により本明細書に組み込まれる2018年12月21日に出願された米国仮米国特許出願第62/783,956に対する優先権を主張する、現在WO2020/132455として公開されている、2019年12月20日に出願されたPCT/US19/67872を参照されたい。また、それらの全てが参照により本明細書に組み込まれる、2020年5月12日に出願された米国特許出願第63/023,593号、2020年6月12日に出願された米国特許出願第63/038,488号、2020年6月24日に出願された米国特許出願第63/043,562号、2020年9月16日に出願された米国特許出願第63/079,299号、及び2021年2月22日に出願された米国仮特許出願第63/152,042号、及び国際特許出願第PCT/US21/32003号も参照されたい。
【0043】
任意選択的に、発現カセットは、本明細書に記載のシグナルペプチド及び/又は取り込みペプチドを含む融合タンパク質である、UBE3Aタンパク質をコードするUBE3Aコード配列を含み得る。ある特定の実施形態では、シグナルペプチド及び/又は取り込みペプチドは、UBE3Aコード配列の5’又は3’のいずれかに位置する。
【0044】
操作されたhUBE3A-アイソフォーム1コード配列を含むベクターゲノム、例えば、配列番号1(hSyn.hUbe3a-1.GSco.4XmiRNA183.SV40(miR183標的配列を含む))及び配列番号3(miRを含まないhSyn.hUbe3a-1.GSco.SV40)が、本明細書で提供される。
【0045】
操作されたhUBE3A-アイソフォーム2コード配列を含むベクターゲノム、例えば、配列番号5(hSyn.hUbe3a-2.GSco.4XmiRNA183.SV40(miR183標的配列を含む))及び配列番号7(miRを含まないhSyn.hUbe3a-2.GSco.SV40)が、本明細書で示される。
【0046】
本明細書に記載の発現カセットにおける組成物が、本明細書にわたって記載される組成
物及び方法に適用されるように意図されることを理解されたい。
【0047】
ベクター
ある特定の実施形態では、UBE3Aをコードする発現カセットは、ベクター又はウイルスベクターによってニューロンに送達され、その多くは、当該技術分野で既知であり、かつ利用可能である。一実施形態では、提供されるのは、本明細書に記載のUBE3A標的化遺伝子を含むベクターである。一実施形態では、本明細書に記載の発現カセットを含むベクターが提供される。一実施形態では、ベクターは、非ウイルスベクターである。更なる実施形態では、非ウイルスベクターは、プラスミドである。別の実施形態では、ベクターは、ウイルスベクターである。ウイルスベクターとしては、ボカウイルス、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス(AAV)、ヘルペスウイルス、レンチウイルス、レトロウイルス、又はパルボウイルスを含むが、これらに限定されない、遺伝子療法に好適な任意のウイルスが挙げられる。しかしながら、理解を容易にするために、アデノ随伴ウイルスが、例示的なウイルスベクターとして本明細書で言及される。したがって、一実施形態では、核酸配列と、そのための調節要素に操作可能に連結された発現カセットの1つ以上の要素と、を含む、アデノ随伴ウイルスベクターが提供される。
【0048】
本明細書で使用される「ベクター」は、核酸配列の複製又は発現のために適切な標的細胞に導入することができる核酸配列を含む、生物学的部分又は化学的部分である。ベクターの例としては、組換えウイルス、プラスミド、リポプレックス、ポリマーソーム、ポリプレックス、デンドリマー、細胞透過性ペプチド(CPP)コンジュゲート、磁性粒子、又はナノ粒子が挙げられるが、これらに限定されない。一実施形態では、ベクターは、機能的な遺伝子産物をコードする外因性又は異種の操作された核酸を有する核酸分子であり、そのため、適切な標的細胞に導入することができる。かかるベクターは、好ましくは、1つ以上の複製起点、及び組換えDNAを挿入することができる1つ以上の部位を有する。例えば、薬剤耐性遺伝子をコードするベクターは、多くの場合、ベクターを含む細胞を、含まない細胞から選択することができる手段を有する。一般的なベクターには、プラスミド、ウイルスゲノム、及び「人工染色体」が含まれる。ベクターの生成、産生、特徴評価、又は定量化の従来の方法は、当業者には利用可能である。
【0049】
本明細書で使用される場合、組換えウイルスベクターは、所望の細胞を標的とする任意の好適なウイルスベクターである。したがって、本明細書に記載の組換えウイルスベクターは、好ましくは、中枢神経系(例えば、脳)の細胞を含む、アンジェルマン症候群に罹患した細胞及び組織のうちの1つ以上を標的化する。実施例は、例示的な組換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)を提供する。しかしながら、他の好適なウイルスベクターとしては、例えば、組換えアデノウイルス、組換えボカウイルスなどの組換えパルボウイルス、ハイブリッドAAV/ボカウイルス、組換え単純ヘルペスウイルス、組換えレトロウイルス、又は組換えレンチウイルスが挙げられ得る。好ましい実施形態では、これらの組換えウイルスは、複製欠陥である。
【0050】
「複製欠損」ウイルス又はウイルスベクターは、合成又は人工ウイルス粒子であって、目的の遺伝子を含有する発現カセットが、ウイルスカプシド又はエンベロープ中にパッケージングされ、ウイルスカプシド又はエンベロープ内にパッケージングされた任意のウイルスゲノム配列が、複製欠損でもある、すなわち、それらが、後代ビリオンを産生することができないが、標的細胞に感染する能力を保持することができるものを指す。一実施形態では、ウイルスベクターのゲノムは、複製に必要とされる酵素をコードする遺伝子を含まない(ゲノムは、人工ゲノムの増幅及びパッケージングに必要とされるシグナルに隣接して目的の遺伝子のみを含有する「ガットレス(gutless)」であり得る)が、これらの遺伝子は、産生中に供給され得る。したがって、後代ビリオンによる複製及び感染は、複製に必要とされるウイルス酵素の存在下以外で生じ得ないので、遺伝子療法におけ
る使用のために安全であると考えられる。かかる複製欠損ウイルスは、アデノ随伴ウイルス(AAV)、アデノウイルス、レンチウイルス(組み込み又は非組み込み)、又は別の好適なウイルス源であり得る。
【0051】
「プラスミド」又は「プラスミドベクター」は、一般に、本明細書では、ベクター名の前及び/又は後に小文字のpで示される。本発明に従って使用することができるプラスミド、他のクローニング及び発現ベクター、それらの特性、並びにそれらの構築/操作方法は、当業者には容易に明らかである。一実施形態では、その上に担持される配列を導入する、本明細書に記載のベクターゲノム又は本明細書に記載の発現カセットの要素は、ウイルスベクターを生成するため、及び/又は宿主細胞、例えば、裸のDNA、ファージ、トランスポゾン、コスミド、エピソームなどへの送達のために有用であり、好適な遺伝子要素(ベクター)内へと操作される。選択されるベクターは、トランスフェクション、エレクトロポレーション、リポソーム送達、膜融合技法、高速DNAコーティングペレット、ウイルス感染、及びプロトプラスト融合を含む、任意の好適な方法によって送達され得る。かかる構築物を作製するために使用される方法は、核酸操作における当業者に既知であり、遺伝子工学、組換え工学、及び合成技法が挙げられる。例えば、Sambrook et al,Molecular Cloning:A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Press,Cold Spring
Harbor,NYを参照されたい。
【0052】
本明細書で互換的に使用される「導入遺伝子」又は「目的の遺伝子」という用語は、本明細書に記載の発現カセット、rAAVゲノム、組換えプラスミド、又は産生プラスミド、ベクター、又は宿主細胞におけるプロモーター及び/又は他の調節要素の制御下にある、外因性及び/又は操作されたタンパク質をコードする核酸配列を意味する。
【0053】
核酸配列又はタンパク質を説明するために使用される場合、「異種」という用語は、核酸又はタンパク質が、それが発現される宿主細胞若しくは対象とは異なる生物又は同じ生物の異なる種に由来していることを意味する。「異種」という用語は、プラスミド、発現カセット、若しくはベクターにおけるタンパク質又は核酸と関連して使用される場合、タンパク質又は核酸が、問題となるタンパク質又は核酸が天然には互いに同じ関係で認められない別の配列若しくはサブ配列で存在することを示す。
【0054】
本明細書で使用される場合、「宿主細胞」という用語は、ベクター(例えば、組換えAAV)が産生プラスミドから産生されるパッケージング細胞株を指し得る。代替的に、「宿主細胞」という用語は、本明細書に記載の遺伝子産物の発現が望まれる任意の標的細胞を指し得る。したがって、「宿主細胞」は、任意の手段、例えば、エレクトロポレーション、リン酸カルシウム沈殿、マイクロインジェクション、形質転換、ウイルス感染、トランスフェクション、リポソーム送達、膜融合技術、高速DNAコーティングペレット、ウイルス感染、及びプロトプラスト融合によって細胞に導入された外因性又は異種DNAを含有する原核細胞又は真核細胞(例えば、ヒト細胞又は昆虫細胞)を指す。本明細書のある特定の実施形態では、「宿主細胞」という用語は、本明細書に記載される組成物のインビトロ評価のための様々な哺乳動物種の細胞の培養物を指す。本明細書の他の実施形態では、「宿主細胞」という用語は、ウイルスベクター又は組換えウイルスを生成及びパッケージングするために使用される細胞を指す。更なる実施形態では、「宿主細胞」という用語は、ニューロン、例えば、CNSのニューロンである。
【0055】
本明細書で使用される場合、「標的細胞」という用語は、異種核酸配列又はタンパク質の発現が所望される任意の標的細胞を指す。ある特定の実施形態では、標的細胞は、CNSのニューロン、特に、変異若しくは欠損母系UBE3A対立遺伝子を有するニューロン、又はUBE3A発現を欠くニューロンである。
【0056】
本明細書で使用される場合、「ベクターゲノム」は、ウイルス粒子を形成するパルボウイルス(例えば、rAAV)カプシドの内側にパッケージングされた核酸配列を指す。かかる核酸配列は、AAV逆位末端反復配列(ITR)を含有する。本明細書の例では、ベクターゲノムは、最低限でも、5’から3’へと、AAV5’ITR、コード配列、及びAAV3’ITRを含有する。AAV2からのITR、カプシドとは異なる供給源AAV、又は全長ITR以外が選択され得る。ある特定の実施形態では、ITRは、産生中のrep機能又はトランス相補性AAVを提供するAAVと同じAAV供給源由来である。更に、他のITR、例えば、自己相補的(scAAV)ITRが使用され得る。更に、ベクターゲノムは、遺伝子産物の発現を指示する調節配列を含有する。ベクターゲノムの好適な成分が本明細書でより詳細に考察される。一例では、「ベクターゲノム」は、最低限でも、5’から3’へと、ベクター特異的配列と、標的配列においてその発現を指示する調節制御配列に操作可能に連結されたUBE3Aをコードする核酸配列)とを含有し、ベクター特異的配列が、ベクターゲノムをウイルスベクターカプシド又はエンベロープタンパク質に特異的にパッケージングする末端反復配列であり得る。例えば、AAV逆位末端反復は、AAV及びある特定の他のパルボウイルスカプシドにパッケージングするために利用される。レンチウイルスの長い末端反復は、レンチウイルスベクターへのパッキングが所望される場合に利用され得る。同様に、他の末端反復(例えば、レトロウイルス長末端反復)などが選択され得る。
【0057】
本明細書で提供されるUBE3Aアイソフォーム1をコードするベクターゲノムとしては、例えば、配列番号1(AAV2-5’ITR-hSyn.hUbe3a-1.GSco.4XmiRNA183.SV40-AAV2-3’ITR)、配列番号3(AAV2-5’ITR-hSyn.hUbe3a-1.GSco.SV40-AAV2-3’ITR)が挙げられる。
【0058】
本明細書で使用される「AAV」という用語は、天然に存在するアデノ随伴ウイルス、当業者には利用可能であり、かつ/又は本明細書に記載の組成物及び方法の観点において利用可能であるアデノ随伴ウイルス、並びに人工AAVを指す。アデノ随伴ウイルス(AAV)ウイルスベクターは、AAVタンパク質カプシドを有するAAVヌクレアーゼ(例えば、DNase)耐性粒子であり、その中にパッケージングされる発現カセットは、標的細胞に送達するためのAAVの逆位末端反復配列(ITR)に隣接している。ヌクレアーゼ耐性組換えAAV(rAAV)は、AAVカプシドが完全に構築されていることを示し、これらのパッケージングされたベクターゲノム配列を、産生プロセスから存在し得る汚染核酸を除去するために設計される、ヌクレアーゼインキュベーション工程の際の分解(消化)から保護する。多くの場合、本明細書に記載のrAAVは、DNase耐性である。
【0059】
以下の実施例では、クレードFアデノ随伴ウイルスは、AAVhu68である。WO2018/160582を参照されたく、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。他の実施形態では、別のAAVカプシドは、異なるクレード、例えば、クレードA、B、C、D、若しくはEから、又はこれらのクレードのいずれかからも外れたAAV供給源から選択される。例えば、別の好適なカプシドは、AAVrh91である。参照により本明細書に組み込まれる、2020年11月5日に出願されたWO2020/223231、2020年8月14日に出願された米国特許出願第63/065,616号、及び2020年11月4日に出願された米国特許出願第63/109,734号、国際特許出願第PCT/US21/55436号を参照されたい。ある特定の実施形態では、カプシド脱アミド化が低減しているAAVカプシドが選択され得る。例えば、ともに2019年2月27日に出願され、参照によりそれらの全体が組み込まれる、PCT/US19/19804及びPCT/US18/19861を参照されたい。また、参照により本明細書に組み
込まれる、2020年4月29日に出願されたPCT/US20/030266、現在公開されているWO2020/223231、及び2021年8月13日に出願された国際出願第PCT/US21/45945号も参照されたい。
【0060】
他の実施形態では、AAVカプシドの供給源は、数十種の、天然に存在し利用可能なアデノ随伴ウイルス、並びに操作されたAAV又は人工AAVのうちのいずれかのうちの1つであり得る。AAVカプシドは、60個のカプシド(cap)タンパク質サブユニット、VP1、VP2、及びVP3で構成され、選択されるAAVに応じて、およそ1:1:10~1:1:20の比で二十面体対称に配置される。上述のAAVウイルスベクターのカプシドの供給源として、様々なAAVが選択され得る。例えば、米国特許出願公開第2007/0036760-A1号、米国特許出願公開第2009/0197338-A1号、EP1310571を参照されたい。また、WO2003/042397(AAV7及び他のサルAAV)、米国特許第7790449号及び米国特許第7282199号(AAV8)、WO2005/033321及びUS7,906,111(AAV9)、並びにWO2006/110689及びWO2003/042397(AAVrh10)も参照されたい。これらの文献は、AAVを生成するために選択され得る他のAAVも記載し、参照により組み込まれる。ヒト又は非ヒト霊長類(NHP)から単離又は操作され、十分に特徴付けられたAAVのうち、ヒトAAV2は、遺伝子導入ベクターとして開発された最初のAAVであり、種々の標的組織及び動物モデルにおける効率的な遺伝子導入実験に広く使用されている。別途指定されない限り、本明細書に記載のAAVカプシド、ITR、及び他の選択されるAAV成分は、限定されないが、AAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9、AAV8bp、AAV7M8、及びAAVAnc80として一般に特定されているAAVを含む、任意のAAVの中から容易に選択され得る。例えば、参照により本明細書に組み込まれる、WO2005/033321を参照されたい。一実施形態では、AAVカプシドは、AAV9カプシド又はそのバリアントである。ある特定の実施形態では、カプシドタンパク質は、rAAVベクターの名称で「AAV」という用語の後の数値又は数値と文字との組み合わせによって指定される。また、参照によりそれらの全体が本明細書に組み込まれる“Novel Adeno-Associated Virus(AAV)Vectors,AAV Vectors Having Reduced Capsid Deamidation And Uses Therefor”と各々題され、2019年2月27日に出願されたPCT/US19/19804及びPCT/US19/19861を参照されたい。
【0061】
ITR又は他のAAV成分は、当業者に利用可能な技術を使用して、AAVから容易に単離又は操作され得る。かかるAAVは、学術的、商業的、又は公的供給源(例えば、American Type Culture Collection、Manassas,VA)から単離、操作、又は入手することができる。代替的に、AAV配列は、文献又は例えばGenBank、PubMedなどのデータベースで利用可能であるような公開された配列を参照することによって、合成又は他の好適な手段を通して操作され得る。AAVウイルスは、従来の分子生物学的な技術によって操作することができ、これらの粒子を、核酸配列の細胞特異的送達のため、免疫原性を最小限に抑えるため、安定性及び粒子寿命を調整するため、効率的な分解のため、核への正確な送達のためなどに最適化することを可能にする。
【0062】
本明細書で使用される場合、「rAAV」及び「組換えAAVベクター」という用語は、互換的に使用され、限定されないが、カプシドタンパク質と、その中にパッケージングされるベクターゲノムとを含むAAVを意味し、ベクターゲノムが、AAVとは異種の核酸を含む。rAAVとしては、「擬似型rAAV」が挙げられ、ウイルスベクターが、異なるAAVカプシドタンパク質のカプシドにパッケージングされる1つのAAV(例えば
、AAV2)の逆位末端反復を含有するベクターゲノムを含有する。一実施形態では、カプシドタンパク質は、非天然に存在するプシドである。かかる人工カプシドは、選択されたAAV配列(例えば、vp1カプシドタンパク質の断片)を、同じAAVの非隣接部分である異なる選択されたAAVからか、非AAVウイルス供給源からか、又は非ウイルス供給源から得ることができる異種配列と組み合わせて使用して、任意の好適な技術によって生成され得る。選択される遺伝子要素は、トランスフェクション、エレクトロポレーション、リポソーム送達、膜融合技術、高速DNAコーティングペレット、ウイルス感染、及びプロトプラスト融合を含む任意の好適な方法によって送達され得る。かかる構築物を作製するために使用される方法は、核酸操作における当業者に既知であり、遺伝子工学、組換え工学、及び合成技法を含む。例えば、Green and Sambrook,Molecular Cloning:A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Press,Cold Spring Harbor,NY(2012)を参照されたい。
【0063】
本明細書で使用される場合、vpカプシドタンパク質を指すために使用される場合、「異種」という用語又はその任意の文法的な変形は、例えば、異なる改変アミノ酸配列を有するvp1、vp2、又はvp3モノマー(タンパク質)を有する、同じではない要素からなる集団を指す。配列番号15は、AAVhu68 vp1タンパク質のコードされたアミノ酸配列を提供する。vp1、vp2、及びvp3タンパク質(代替的にアイソフォームと称される)に関連して使用される「異種」という用語は、カプシド内のvp1、vp2、及びvp3タンパク質のアミノ酸配列の違いを指す。AAVカプシドは、予測されたアミノ酸残基の修飾を有する、vp1タンパク質内、vp2タンパク質内、及びvp3タンパク質内に亜集団を含有する。これらの亜集団は、最低限でも、ある特定の脱アミド化アスパラギン(N又はAsn)残基を含む。例えば、ある特定の亜集団は、アスパラギン-グリシン対に少なくとも1つ、2つ、3つ、又は4つの高度に脱アミド化されたアスパラギン(N)位置を含み、任意選択的に、他の脱アミド化アミノ酸を更に含み、脱アミド化が、アミノ酸変化及び他の任意選択的な修飾を生じる。
【0064】
本明細書で使用される場合、vpタンパク質の「亜集団」は、別途指定されない限り、少なくとも1つの定義された共通の特徴を有し、少なくとも1つの群メンバーから、参照群の全てのメンバーよりも少ないメンバーからなるvpタンパク質の群を指す。例えば、vp1タンパク質の「亜集団」は、別途指定されない限り、組み立てられたAAVカプシドにおいて、少なくとも1つのvp1タンパク質であり、全てのvp1タンパク質よりも少ない。vp3の「亜集団」は、別途指定されない限り、組み立てられたAAVカプシドにおいて、1つのvp3タンパク質から、全てのvp3タンパク質よりも少なくてもよい。例えば、組み立てられたAAVカプシドにおいて、vp1タンパク質は、vpタンパク質の亜集団であり得、vp2タンパク質は、vpタンパク質の別の亜集団であり得、vp3はなお、vpタンパク質の更なる亜集団である。別の例では、vp1、vp2、及びvp3タンパク質は、例えば、少なくとも1つ、2つ、3つ、又は4つの高度脱アミド化アスパラギン、例えば、アスパラギン-グリシン対で異なる修飾を有する亜集団を含有し得る。
【0065】
一態様では、本明細書で提供されるのは、AAVベクターであって、AAVカプシドと、発現カセットと、を含み、発現カセットが、UBE3A遺伝子の1つ以上の要素をコードする核酸配列、及び宿主細胞においてUBE3A遺伝子の要素の発現を指示する調節要素を含む、AAVベクターである。AAVベクターは、AAV ITR配列も含む。
【0066】
ITRは、ベクター産生の際にゲノムの複製及びパッケージングを担う遺伝子要素であり、rAAVを生成するために必要とされる唯一のウイルスシス要素である。一実施形態では、ITRは、カプシドを供給するものとは異なるAAV由来である。好ましい実施形
態では、利便性のため、及び規制当局の承認を促進させるために使用され得る、AAV2由来のITR配列、又はその欠失バージョン(ΔITR)。しかしながら、他のAAV供給源に由来するITRが選択され得る。ITRの供給源がAAV2由来であり、AAVカプシドが別のAAV供給源由来である場合、得られるベクターは、擬似型と称され得る。典型的には、AAVベクターゲノムは、AAV5’ITRと、遺伝子産物をコードする核酸配列と、任意の制御性配列と、AAV3’ITRと、を含む。しかしながら、これらの要素の他の構成も好適であり得る。一実施形態では、自己相補性AAVが使用される。D配列及び末端分離部位(trs)が欠失している、ΔITRと称される5’ITRの短縮されたバージョンについてが記載されている。ある特定の実施形態では、ベクターゲノムは、130塩基対の短縮されたAAV2 ITRを含み、ここで、外部「a」要素は欠失している。短縮されたITRは、内部A要素をテンプレートとして使用して、ベクターDNA増幅中に145塩基対の野生型長に戻される。他の実施形態では、完全長AAV5’及び3’ITRが使用される。
【0067】
一実施形態では、調節配列は、総rAAVベクターゲノムが、約2.0~約5.5キロ塩基のサイズであるように選択される。一実施形態では、調節配列は、総rAAVベクターゲノムが、約2.9~約5.5キロ塩基のサイズであるように選択される。一実施形態では、調節配列は、総rAAVベクターゲノムが約2.9kbのサイズであるように選択される。一実施形態では、rAAVベクターゲノムは、天然AAVゲノムのサイズに近似することが望ましい。したがって、一実施形態では、調節配列は、総rAAVベクターゲノムが約4.7kbのサイズであるように選択される。別の実施形態では、総rAAVベクターゲノムは、約5.2kb未満のサイズである。ベクターゲノムのサイズは、プロモーター、エンハンサー、イントロン、ポリAなどを含む調節配列のサイズに基づいて操作され得る。参照により本明細書に組み込まれるWu et al.,Mol Ther,Jan 2010,18(1):80-6を参照されたい。
【0068】
ある特定の実施形態では、本明細書で提供されるのは、アンジェルマン症候群(AS)を有する対象の治療のためのCNS指向性療法として有用なrAAVであって、rAAVが、AAVカプシドと、その中にパッケージングされるベクターゲノムと、を含み、当該ベクターゲノムが、(a)AAV5’逆位末端反復(ITR)、(b)宿主細胞において発現を指示する調節要素に操作可能に連結された、UBE3Aをコードする配列、(c)発現を指示する調節要素、及び(d)AAV3’ITRを含む、rAAVである。ある特定の実施形態では、本明細書で提供されるのは、アンジェルマン症候群(AS)を有する対象の治療のためのCNS指向性療法として有用なrAAVであって、rAAVが、AAVカプシドと、その中にパッケージングされるベクターゲノムと、を含み、当該ベクターゲノムが、(a)AAV5’逆位末端反復(ITR)、(b)宿主細胞において発現を指示する調節要素に操作可能に連結された、UBE3Aをコードする配列、(c)任意選択的に1つのペプチド/複数のペプチド(例えば、シグナルペプチド及び/又は取り込みペプチド)、(d)発現を指示する調節要素、及び(e)AAV3’ITRを含む、rAAVである。一実施形態では、rAAVは、CNSの細胞に対してトロピズムを有し(例えば、AAVhu68カプシド又はAAVrh91カプシドを担持するrAAV)、及び/又はニューロン特異的発現制御要素(例えば、シナプシンプロモーター)を含有する。一態様では、ウイルスベクターの生成に有用なベクター(例えば、プラスミド)である構築物が提供される。一実施形態では、AAV5’ITRは、AAV2 ITRであり、AAV3’ITRは、AAV2 ITRである。一実施形態では、rAAVは、本明細書に記載のAAVカプシドを含む。一実施形態では、rAAVは、AAVhu68カプシドを含む。他の実施形態では、rAAVは、AAVrh91カプシドを含む。配列番号18は、AAVrh91 vp1タンパク質のコードされたアミノ酸配列を提供する。
【0069】
本明細書に記載の組換えアデノ随伴ウイルス(AAV)は、既知である技術を使用して
生成することができる。例えば、WO2003/042397、WO2005/033321、WO2006/110689、US7588772B2を参照されたい。かかる方法は、AAVカプシドをコードする核酸配列と、機能的rep遺伝子と、AAV逆位末端反復(ITR)に隣接する本明細書に記載の発現カセットと、発現カセットをAAVカプシドタンパク質にパッケージングすることを可能にするように機能する適切なヘルパーと、を含有する宿主細胞を培養することを含む。また、本明細書で提供されるのは、AAVカプシドをコードする核酸配列と、機能的rep遺伝子と、記載のベクターゲノムと、発現カセットをAAVカプシドタンパク質にパッケージングすることを可能にするように機能する適切なヘルパーと、を含有する宿主細胞である。一実施形態では、宿主細胞は、HEK293細胞である。これらの方法は、参照により本明細書に組み込まれるWO2017/160360A2に更に詳細に記載されている。
【0070】
当業者に利用可能なrAAVを産生する他の方法を利用してもよい。好適な方法としては、限定されないが、バキュロウイルス発現系又は酵母を介した産生が挙げられ得る。例えば、Robert M.Kotin,Large-scale recombinant adeno-associated virus production.Hum Mol Genet.2011 Apr 15;20(R1):R2-R6.Published online 2011 Apr 29.doi:10.1093/hmg/ddr141、Aucoin MG et al.,Production of adeno-associated viral vectors in insect cells using triple infection:optimization
of baculovirus concentration ratios.Biotechnol Bioeng.2006 Dec 20;95(6):1081-92、SAMI S.THAKUR,Production of Recombinant
Adeno-associated viral vectors in yeast.Thesis presented to the Graduate School
of the University of Florida,2012、Kondratov O et al.Direct Head-to-Head Evaluation of Recombinant Adeno-associated Viral Vectors Manufactured in Human versus Insect Cells,Mol Ther.2017 Aug 10.pii:S1525-0016(17)30362-3.doi:10.1016/j.ymthe.2017.08.003.[Epub ahead of print]、Mietzsch M et al,OneBac 2.0:Sf9 Cell Lines for Production of AAV1,AAV2,and AAV8 Vectors
with Minimal Encapsidation of Foreign DNA.Hum Gene Ther Methods.2017 Feb;28(1):15-22.doi:10.1089/hgtb.2016.164.、Li L et
al.Production and characterization of novel recombinant adeno-associated virus replicative-form genomes:a eukaryotic source of DNA for gene transfer.PLoS One.2013 Aug 1;8(8):e69879.doi:10.1371/journal.pone.0069879.Print 2013、Galibert L et al,Latest developments in the large-scale production of adeno-associated virus vectors in insect cells toward the treatment of neuromuscular diseases.J Invertebr Pathol.2011 Jul;107 Suppl:S80-93.doi:10.1016/j.jip.2011.05.008、及びKotin RM,Larg
e-scale recombinant adeno-associated virus production.Hum Mol Genet.2011 Apr 15;20(R1):R2-6.doi:10.1093/hmg/ddr141.Epub 2011 Apr 29を参照されたい。
【0071】
高塩濃度での2ステップアフィニティクロマトグラフィー精製、続いて、アニオン交換樹脂クロマトグラフィーを使用して、ベクター薬物産生物を精製し、空のカプシドを除去する。これらの方法は、参照により本明細書に組み込まれる、“Scalable Purification Method for AAV9”と題されたWO2017/160360、及び“Scalable Purification Method for AAV1”と題されたWO2017/100674により詳述されている。簡潔に言うと、パッケージングされたゲノム配列を有するrAAV粒子をゲノム欠損AAV中間体から分離するための方法は、組換えAAV9又はAAVウイルス粒子及びAAVカプシド中間体を含む懸濁物を高速液体クロマトグラフィーに供することを含み、AAV9ウイルス粒子及びAAV中間体が、rAAV9では約10.2又はAAV1では約9.8のpHで平衡化された強アニオン交換樹脂に結合され、約260及び約280での紫外吸光度で溶出液をモニタリングしながら、塩勾配に供される。この方法では、AAV完全カプシドは、A260/A280の比が感染ポイントに到達すると溶出する画分から回収される。一例では、アフィニティクロマトグラフィーステップでは、選択されたAAV血清型を効率的に捕捉するAAV特異的樹脂に、ダイアフィルトレーションされた産生物を適用してもよい。これらのイオン性条件下での、かなりのパーセンテージの残留細胞DNA及びタンパク質は、カラムの中を流れ、AAV粒子は、効率的に捕捉される。
【0072】
rAAVの特徴評価又は定量化のための従来の方法は、当業者に利用可能である。空及び充填粒子の含有量を算出するために、選択された試料(例えば、本明細書の実施例では、イオジキサノール勾配で精製された調製物、ここで、GCの数=粒子の数)についてのVP3バンド体積が、ロードされたGC粒子に対してプロットされる。得られた線形方程式(y=mx+c)を用いて、試験物品ピークのバンド体積中の粒子の数を算出する。次いで、ロードした20μL当たりの粒子の数(pt)に50を掛けて、粒子(pt)/mLを得る。Pt/mLをGC/mLで割り算し、ゲノムコピーに対する粒子の比率(pt/GC)を得る。Pt/mL~GC/mLは、空pt/mLを与える。空pt/mLをpt/mLで割り、100を掛け算することによって、空粒子のパーセンテージを得る。一般に、空のカプシド及びパッケージされたゲノムを含むAAVベクター粒子をアッセイするための方法は、当該技術分野において既知である。例えば、Grimm et al.,Gene Therapy(1999)6:1322-1330、Sommer et
al.,Molec.Ther.(2003)7:122-128を参照されたい。変性カプシドについて試験するために、本方法は、治療されたAAVストックを、3つのカプシドタンパク質を分離することが可能な任意のゲルからなるSDS-ポリアクリルアミドゲル電気泳動(例えば、緩衝液中に3~8%のトリス酢酸塩を含有する勾配ゲル)に供することと、次いで、試料材料が分離されるまでゲルを試行することと、ナイロン又はニトロセルロース膜、好ましくはナイロンの上でゲルをブロッティングすることと、を含む。次いで、抗AAVカプシド抗体を、変性したカプシドタンパク質に結合する一次抗体として、好ましくは、抗AAVカプシドモノクローナル抗体、最も好ましくは、B1抗AAV-2モノクローナル抗体(Wobus et al.,J.Viral.(2000)74:9281-9293)を使用する。次いで、一次抗体に結合し、一次抗体、より好ましくは、抗体に共有結合した検出分子を含有する抗IgG抗体、最も好ましくは、西洋ワサビペルオキシダーゼに共有結合したヒツジ抗マウスIgG抗体との結合を検出するための手段を含む、二次抗体が使用される。一次抗体と二次抗体との間の結合を半定量的に決定するために、結合を検出するための方法、好ましくは、放射性アイソトープ放射、電磁放射、又は比色変化を検出することができる検出方法、最も好ましくは、化学発光検出
キットが使用される。例えば、SDS-PAGEでは、カラムフラクションからの試料を取って、還元剤(例えば、DTT)を含有するSDS-PAGE充填緩衝液中で加熱することができ、カプシドタンパク質は、プレキャスト勾配ポリアクリルアミドゲル(例えば、Novex)中で分解された。銀染色は、SilverXpress(Invitrogen、CA)を製造業者の説明書に従って使用して、あるいは他の好適な染色方法、すなわち、SYPROルビー又はクマシー染色を使用して実施され得る。一実施形態では、カラムフラクション中のAAVベクターゲノム(vg)の濃度は、定量的リアルタイムPCR(Q-PCR)によって測定することができる。試料は希釈され、DNase I(又は別の好適なヌクレアーゼ)で消化されて、外因性DNAが除去される。ヌクレアーゼの不活性化後、試料は、更に希釈され、プライマー及びプライマー間のDNA配列に特異的なTaqMan(商標)蛍光発生プローブを用いて増幅される。規定レベルの蛍光(閾値サイクル、Ct)に到達するのに必要とされるサイクル数は、Applied Biosystems Prism 7700配列検出システム上で各試料について測定される。AAVベクター中に含有されるものと同一の配列を含有するプラスミドDNAを用いて、Q-PCR反応における標準曲線を生成する。試料から得られたサイクル閾値(Ct)の値を使用して、プラスミド標準曲線のCt値に対してそれを正規化することによって、ベクターゲノム力価を決定する。デジタルPCRに基づくエンドポイントアッセイも使用可能である。
【0073】
一態様では、広域スペクトル血清プロテイナーゼ、例えば、プロテイナーゼK(例えば、Qiagenから購入可能)を利用する最適化q-PCR方法が使用される。より具体的には、最適化されたqPCRゲノム力価アッセイは、DNase I消化の後に、試料がプロテイナーゼKバッファーで希釈され、プロテイナーゼKで治療され、続いて熱不活性化されることを除き、標準的なアッセイと同様である。好適には、試料は、試料サイズと等しい量のプロテイナーゼKバッファーで希釈される。プロテイナーゼK緩衝液は、2倍以上に濃縮され得る。典型的に、プロテイナーゼK治療は、約0.2mg/mLであるが、0.1mg/mL~約1mg/mLで変動し得る。治療ステップは、一般に、約55℃で約15分間、実施されるが、より低い温度(例えば、約37℃~約50℃)でより長時間(例えば、約20分間~約30分間)、又はより高い温度(例えば、最高約60℃)でより短時間(例えば、約5~10分間)実施され得る。同様に、熱失活は、一般に、約95℃で約15分間であるが、温度は低下され得(例えば、約70~約90℃)、時間は延長され得る(例えば、約20分間~約30分間)。次いで、試料は希釈され(例えば、1000倍)、標準的なアッセイで記載されるように、TaqMan分析に供される。
【0074】
加えて又はあるいは、ドロップレットデジタルPCR(ddPCR)を使用してもよい。例えば、ddPCRによる一本鎖及び自己相補性AAVベクターゲノム力価を決定するための方法が記載されている。例えば、M.Lock et al,Hu Gene Therapy Methods,Hum Gene Ther Methods.2014 Apr;25(2):115-25.doi:10.1089/hgtb.2013.131.Epub 2014 Feb 14を参照されたい。
【0075】
カプシドタンパク質のvp1、vp2、及びvp3間の比を決定するための方法も利用可能である。例えば、Vamseedhar Rayaprolu et al.,Comparative Analysis of Adeno-Associated Virus Capsid Stability and Dynamics,J Virol.2013 Dec;87(24):13150-13160、Buller RM,Rose JA.1978.Characterization of adenovirus-associated virus-induced polypeptides in KB cells.J.Virol.25:331-338、及びRose
JA,Maizel JV,Inman JK,Shatkin AJ.1971.S
tructural proteins of adenovirus-associated viruses.J.Virol.8:766-770を参照されたい。
【0076】
本明細書に記載のベクターにおける組成物が、本明細書にわたって記載される他の組成物及び方法に適用されるように意図されることを理解されたい。
【0077】
組成物
提供されるのは、ASを治療することを必要とする対象においてそれを行うための投与に好適な水性懸濁物であって、当該懸濁物が、水性懸濁液と、本明細書に記載の調節要素に操作可能に連結されたUBE3A遺伝子をコードする、操作された核酸配列を含むベクターと、を含む、水性懸濁物である。一実施形態では、治療有効量の当該ベクターが、懸濁液に含まれる。
【0078】
核酸
ある特定の実施形態では、薬学的組成物は、UBE3Aアイソフォーム1をコードする核酸と、非ウイルス送達系と、を含む、発現カセットを含む。これとしては、例えば、裸のDNA、裸のRNA、無機粒子、脂質又は脂質様粒子、キトサンに基づく製剤、及び当該技術分野で既知であり、例えば、上に引用されるRamamoorth and Narvekarによって記載されている)他のものが挙げられ得る。他の実施形態では、薬学的組成物は、ウイルスベクター系にUBE3A遺伝子を含む発現カセットを含む、懸濁物である。ある特定の実施形態では、薬学的組成物は、非複製ウイルスベクターを含む。好適なウイルスベクターには、例えば、組換えアデノウイルス、組換えレンチウイルス、組換えボカウイルス、組換えアデノ随伴ウイルス(AAV)、又は別の組換えパルボウイルスなどの任意の好適な送達ベクターが含まれ得る。ある特定の実施形態では、ウイルスベクターは、UBE3Aアイソフォーム1の送達を必要とする患者においてそれを行うための組換えAAVである。ある特定の実施形態では、ウイルスベクターは、UBE3aアイソフォーム3の送達を必要とする患者においてそれを行うための組換えAAVである。
【0079】
一実施形態では、組成物は、対象への送達に好適な最終製剤を含み、例えば、生理的に適合するpH及び塩濃度まで緩衝された水性液体懸濁液である。任意選択的に、1つ以上の界面活性剤が製剤中に存在する。別の実施形態では、組成物は、対象への投与のために希釈される濃縮物として輸送され得る。他の実施形態では、組成物は、凍結乾燥され、投与時に再構築されてもよい。
【0080】
一実施形態では、懸濁物は、水性懸濁液中に溶解される界面活性剤、防腐剤、賦形剤、及び/又は緩衝剤を更に含む。一実施形態では、緩衝液は、PBSである。緩衝生理食塩水、界面活性剤、約100mMの塩化ナトリウム(NaCl)~約250mMの塩化ナトリウムに相当するイオン強度まで調整された生理学的に適合する塩若しくは塩の混合物、又は同等のイオン濃度まで調整された生理学的に適合する塩のうちの1つ以上を含むものを含む、様々な好適な溶液が既知である。好適な界面活性剤、又は界面活性剤の組み合わせは、ポロキサマーの中から、すなわち、ポリオキシエチレン(ポリ(エチレンオキシド))の2つの親水性鎖に隣接するポリオキシプロピレン(ポリ(プロピレンオキシド))の中心疎水性鎖で構成される非イオン性トリブロックコポリマー、SOLUTOL HS
15(マクロゴール-15ヒドロキシステアレート)、LABRASOL(ポリオキシカプリル酸グリセリド)、ポリオキシ10オレイルエーテル、TWEEN(ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル)、エタノール、及びポリエチレングリコールから選択され得る。一実施形態では、製剤は、ポロキサマーを含有する。pHは、6.5~8.5、又は7~8.5、又は7.5~8の範囲であり得る。脳脊髄液のpHは約7.28~約7.32であるため、髄腔内送達では、この範囲内のpHが望ましいものであり得、一方、静脈内送達のためには、6.8~約7.2のpHが望ましいものであり得る。しかしな
がら、他の送達経路では、最も広い範囲内の他のpH、及びこれらの部分範囲が選択され得る。
【0081】
加えて提供されるのは、薬学的組成物であって、薬学的に許容される担体と、本明細書に記載の調節要素に操作可能に連結されたUBE3Aの1つ以上の成分をコードする核酸配列を含むベクターと、を含む、薬学的組成物である。本明細書で使用される場合、「担体」としては、任意の及び全ての溶媒、分散媒体、ビヒクル、コーティング、希釈剤、抗菌剤及び抗真菌剤、等張剤及び吸収遅延剤、緩衝液、担体溶液、懸濁物、コロイドなどが挙げられる。薬学的活性物質に対するかかる媒体及び薬剤の使用は、当該技術分野において周知である。補足活性成分を組成物中に組み込むこともできる。「薬学的に許容される」という語句は、宿主に投与されると、アレルギー又は同様の有害反応を生じない分子実体及び組成物を指す。本発明の組成物を好適な宿主細胞に導入するために、リポソーム、ナノカプセル、微粒子、ミクロスフェア、脂質粒子、小胞などの送達ビヒクルが使用され得る。特に、UBE3A導入遺伝子を送達するrAAVベクターは、脂質粒子、リポソーム、小胞、ナノスフィア、又はナノ粒子などのいずれかにカプセル化された送達のために製剤化され得る。一実施形態では、治療有効量の当該ベクターが、薬学的組成物に含まれる。好適な担体は、ベクターが向けられる適応症を考慮して、当業者により容易に選択され得る。例えば、1つの好適な担体としては、生理食塩水が挙げられ、様々な緩衝溶液(例えば、リン酸緩衝生理食塩水)とともに製剤化され得る。他の例示的な担体としては、滅菌生理食塩水、ラクトース、スクロース、リン酸カルシウム、ゼラチン、デキストラン、寒天、ペクチン、ピーナッツ油、ゴマ油、及び水が挙げられる。担体の選択は、本発明の制限ではない。防腐剤又は化学的安定剤などの他の従来の薬学的に許容される担体。好適な例示的な防腐剤には、クロロブタノール、ソルビン酸カリウム、ソルビン酸、二酸化硫黄、没食子酸プロピル、パラベン、エチルバニリン、グリセリン、フェノール、及びパラクロロフェノールが含まれる。好適な化学的安定剤には、ゼラチン及びアルブミンが含まれる。
【0082】
「薬学的に許容される」という語句は、宿主に投与されると、アレルギー又は類似の有害反応を生じない分子実体及び組成物を指す。
【0083】
本明細書で使用される場合、「投薬量」又は「量」という用語は、治療の過程で対象に送達される総投薬量若しくは総量、又は単一単位(又は複数単位若しくは分割投薬量)投与で送達される投薬量若しくは量を指し得る。
【0084】
任意の好適な経路又は異なる経路の組み合わせによって、本明細書に記載の水性懸濁液又は薬学的組成物を必要とする対象にそれを送達するように設計される。一実施形態では、薬学的組成物は、本明細書に記載の発現カセット又はベクターと、脳室内(ICV)、髄腔内(IT)、大槽内、又は静脈内(IV)の投与経路を介した送達に好適な製剤緩衝液とを含む。あるいは、他の投与経路(例えば、経口、吸入、鼻腔内、気管内、動脈内、眼内、筋内、及び他の非経口経路)が選択され得る。
【0085】
本明細書で使用される場合、「髄腔内送達」又は「髄腔内投与」という用語は、脊柱管への、より具体的には、脳脊髄液(CSF)へ到達するようにクモ膜下腔内への注射を介した、薬物の投与経路を指す。髄腔内送達としては、腰髄穿刺、脳室内、側脳室内(icv)、後頭下/槽内、及び/又はC1-2穿刺が挙げられ得る。例えば、材料は、腰髄穿刺によって、クモ膜下腔空間全体にわたって拡散させるために導入され得る。別の例では、注射は、大槽内(嚢内マンガ;ICM)であり得る。嚢内送達は、ベクター拡散を増加させ、かつ/又は投与によって引き起こされる毒性及び炎症を低減し得る。例えば、Christian Hinderer et al,Widespread gene transfer in the central nervous system of
cynomolgus macaques following delivery of AAV9 into the cisterna magna,Mol Ther
Methods Clin Dev.2014;1:14051.Published
online 2014 Dec 10.doi:10.1038/mtm.2014.51を参照されたい。本明細書で使用される場合、「大槽内送達」又は「大槽内投与」という用語は、脳室の脳脊髄液への、又は小脳延髄槽内への直接的な薬物の投与経路、より具体的には、後頭下穿刺を介した、又は大槽内への直接的な注射若しくは永久的に配置されたチューブを介した薬物の投与経路を指す。
【0086】
一態様では、本明細書で提供されるのは、本明細書に記載されるベクターを製剤緩衝液中に含む薬学的組成物である。ある特定の実施形態では、複製欠損ウイルス組成物は、ヒト患者に対して、範囲内の全ての整数又は小数の量、及び好ましくは1.0×1012GC~1.0×1014GCの範囲を含む、(体重70kgの平均対象を治療するには)約1.0×109GC~約1.0×1016GCの範囲にある量の複製欠損ウイルスを含有するように、投薬量単位で製剤化される。一実施形態では、組成物は、範囲内の全ての整数又は小数を含む、用量当たり少なくとも1×109、2×109、3×109、4×109、5×109、6×109、7×109、8×109、又は9×109GCを含有するように製剤化される。別の実施形態では、組成物は、範囲内の全ての整数又は小数を含む、用量当たり少なくとも1×1010、2×1010、3×1010、4×1010、5×1010、6×1010、7×1010、8×1010、又は9×1010GCを含有するように製剤化される。別の実施形態では、組成物は、範囲内の全ての整数又は小数を含む、用量当たり少なくとも1×1011、2×1011、3×1011、4×1011、5×1011、6×1011、7×1011、8×1011、又は9×1011GCを含有するように製剤化される。別の実施形態では、組成物は、範囲内の全ての整数又は小数を含む、用量当たり少なくとも1×1012、2×1012、3×1012、4×1012、5×1012、6×1012、7×1012、8×1012、又は9×1012GCを含有するように製剤化される。別の実施形態では、組成物は、範囲内の全ての整数又は小数を含む、用量当たり少なくとも1×1013、2×1013、3×1013、4×1013、5×1013、6×1013、7×1013、8×1013、又は9×1013GCを含有するように製剤化される。別の実施形態では、組成物は、範囲内の全ての整数又は小数を含む、用量当たり少なくとも1×1014、2×1014、3×1014、4×1014、5×1014、6×1014、7×1014、8×1014、又は9×1014GCを含有するように製剤化される。別の実施形態では、組成物は、範囲内の全ての整数又は小数を含む、用量当たり少なくとも1×1015、2×1015、3×1015、4×1015、5×1015、6×1015、7×1015、8×1015、又は9×1015GCを含有するように製剤化される。一実施形態では、ヒトへの適用のために、用量は、範囲内の全ての整数又は少数を含む、用量当たり1×1010~約1×1012GCの範囲であり得る。
【0087】
一実施形態では、本明細書に記載されるrAAVを製剤緩衝液中に含む薬学的組成物が提供される。一実施形態では、rAAVは、約1×109ゲノムコピー(GC)/mL~約1×1014GC/mLで製剤化される。更なる実施形態では、rAAVは、約3×109GC/mL~約3×1013GC/mLで製剤化される。なお更なる実施形態では、rAAVは、約1×109GC/mL~約1×1013GC/mLで製剤化される。一実施形態では、rAAVは、少なくとも約1×1011GC/mLで製剤化される。
【0088】
これらの用量及び濃度の送達のために好適な体積は、当業者によって決定され得る。例えば、約1μL~150mLの体積が選択されてもよく、成人にはより高体積が選択される。典型的には、新生児のために、好適な容量は、約0.5mL~約10mL、より年長の乳児のために、約0.5mL~約15mLが選択され得る。幼児のために、約0.5m
L~約20mLの容量が選択され得る。小児のために、最大約30mLの容量が選択され得る。10代前半及び10代のために、最大約50mLの容量が選択され得る。更に他の実施形態では、患者は、約5mL~約15mLの容量での髄腔内投与を受け得、これが選択されるか、又は約7.5mL~約10mLを受け得る。他の好適な容量及び投薬量が、決定され得る。投薬量は、任意の副作用に対する治療的利益のバランスをとるために調整され、かかる投薬量は、組換えベクターが用いられる治療用途に応じて変動し得る。
【0089】
AAVウイルスベクターの場合、ゲノムコピー(「GC」)の定量化は、水性懸濁液又は薬学的組成物中に含有される用量の尺度として使用され得る。当該技術分野で既知の任意の方法を使用して、本発明の複製欠損ウイルス組成物のゲノムコピー(GC)数を決定することができる。AAVのGC数滴定を行うための1つの方法は、以下の通りである。精製されたAAVベクター試料は、まずDNaseで処理され、非カプシド化AAVゲノムDNA又は産生プロセスからの汚染プラスミドDNAを排除する。次いで、DNase耐性粒子を熱処理して、カプシドからゲノムを放出させる。次いで、ウイルスゲノムの特定の領域(通常はポリAシグナル)を標的化するプライマー/プローブセットを使用して、放出されたゲノムをリアルタイムPCR又は定量的PCRによって定量化する。複製欠損ウイルス組成物は、ヒト患者に対して、約1.0×109GC~約1.0×1015GCの範囲、好ましくは1.0×1012GC~1.0×1014GCの範囲にある量の複製欠損ウイルスを含有する投薬量単位で製剤化され得る。好ましくは、製剤中の複製欠損ウイルス組成物の濃度は、約1.0×109GC、約5.0×109GC、約1.0×1010GC、約5.0×1010GC、約1.0×1011GC、約5.0×1011GC、約1.0×1012GC、約5.0×1012GC、約1.0×1013GC、約5.0×1013GC、約1.0×1014GC、約5.0×1014GC、又は約1.0×1015GCである。AAV GC数の滴定を実施するための代替的な又は追加の方法は、例えば、参照により本明細書に組み込まれる、M.Lock et al,Hum Gene Ther Methods.2014 Apr;25(2):115-25.doi:10.1089/hgtb.2013.131.Epub 2014 Feb 14に記載のoqPCR又はデジタルドロップレットPCR(ddPCR)を介した方法である。
【0090】
本明細書に記載の薬学的組成物における組成物が、本明細書にわたって記載される他の組成物、レジメン、態様、実施形態、及び方法に適用されるよう意図されることを理解されたい
【0091】
方法
ある特定の実施形態では、発現カセット、核酸、又はウイルス若しくは非ウイルスベクターが、医薬品の調製に使用される。ある特定の実施形態では、アンジェルマン症候群の治療を必要とする対象において、アンジェルマン症候群を治療するためのその使用が提供される。
【0092】
本明細書で使用される場合、「治療」又は「治療すること」という用語は、UBE3A欠損又はアンジェルマン症候群(AS)の1つ以上の症状を軽減する目的で、本明細書に記載される1つ以上の化合物又は組成物を対象に投与することを包含すると定義される。したがって、「治療」は、所与の対象において、ASの発生若しくは進行を低減すること、疾患を予防すること、疾患の症状の重症度を低減すること、その進行を遅延させること、疾患の症状を除去すること、疾患の進行を遅らせること、又は療法の有効性を増加させること、のうちの1つ以上を含み得る。
【0093】
記載の療法は、所望の結果、すなわち、アンジェルマン症候群(AS)又はその1つ以上の症状の治療を達成するために、UBE3Aアイソフォーム1発現を提供する。かかる
症状としては、限定されないが、知的障害、言語障害、運動失調、てんかん、発作障害、小頭症、精神運動遅延、及び反射亢進を伴う筋緊張低下のうちのより多くのうちの1つが挙げられ得る(例えば、参照により本明細書に組み込まれる、Buiting K et
al.,Angelman syndrome-insight into a rare neurogenetic disorder,Nat Rev Neurol,2016,12(10):584-593,epub September 12,2016を参照されたい)。本明細書に記載されるように、所望の結果は、発育遅延、知的障害、重度の言語障害、運動及びバランスに関する問題を含む神経物理学的合併症を減少させるか、又は排除することを含み得る。
【0094】
本明細書で提供される組成物の「治療有効量」は、所望の結果を達成するか、又は治療目標に到達するために、対象に送達される。一実施形態では、ASを治療するための治療目標は、患者のニューロンにおける又はニューロンの集団におけるUBE3Aアイソフォーム1発現を、正常範囲内であるか、又は非ASレベルである機能レベルまで復元することである。別の実施形態では、ASの治療のための治療目標は、UBE3Aアイソフォーム1発現を、正常レベル若しくは非ASレベルの、又は治療前のUBE3A発現レベルと比較して、少なくとも約99%、約95%、約90%、約85%、約80%、約75%、約70%、約65%、約60%、約55%、約50%、約45%、約40%、約45%、約40%、約35%、約30%、約25%、約20%、約15%、約10%、約5%、約2%、約1%まで増加させることである。UBE3Aアイソフォーム1を送達することによって機能を100%未満の活性レベルまで救済された患者は、任意選択的に、更なる治療を受けてもよい。別の実施形態では、ASの治療のための治療目標は、選択された集団におけるニューロンの約60%、約55%、約50%、約45%、約40%、約45%、約40%、約35%、約30%、約25%、約20%、約15%、約10%、約5%、約2%、又は約1%を含む標的ニューロンの割合で、UBE3Aアイソフォーム1発現を増加させることである。
【0095】
ある特定の実施形態では、本明細書で提供されるのは、UBE3Aアイソフォーム1を提供する発現カセット、ベクター、又はrAAVを必要とする対象に投与し、ニューロンにおいて機能的UBE3Aアイソフォーム1の発現を生じることによって、ASを治療する方法である。ある特定の実施形態では、本方法は、UBE3Aアイソフォーム1(配列番号2のアミノ酸配列)を発現する核酸配列を送達することを含む。
【0096】
ある特定の実施形態では、本明細書で提供されるのは、UBE3aアイソフォーム1を提供する発現カセット、ベクター、又はrAAVを必要とする対象に投与し、ニューロンにおいて機能的UBE3aアイソフォーム1の発現を生じることによる、酵素補充の方法である。ある特定の実施形態では、本方法は、UBE3aアイソフォーム1(配列番号2のアミノ酸配列)を発現する核酸配列を送達することを含む。ある特定の実施形態では、本明細書で提供されるのは、UBE3aアイソフォーム3を提供する発現カセット、ベクター、又はrAAVを必要とする対象に投与し、ニューロンにおいて機能的UBE3aアイソフォーム3の発現を生じることによる、酵素補充の方法である。ある特定の実施形態では、本方法は、UBE3aアイソフォーム3(配列番号21のアミノ酸配列)を発現する核酸配列を送達することを含む
【0097】
本明細書に記載される遺伝子療法は、ウイルス性であるか、又は非ウイルス性であるかにかかわらず、他の治療(二次療法)、すなわち、対象の(患者の)診断及び状態のための標準的なケアと併せて使用され得る。本明細書で使用される場合、「二次療法」という用語は、ASの治療のために本明細書に記載される遺伝子療法と組み合わせることができる療法を指す。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の遺伝子療法は、ASの治療のための1つ以上の二次療法、例えば、抗けいれん剤又は食事制限(例えば、ケトジェニッ
ク及び低血糖)の投与と組み合わせて投与される。二次療法は、ASのこれらの症状を予防し、停止し、又は緩和するのに役立つ任意の療法であり得る。二次療法は、上に記載の組成物の投与の前、投与と同時、又は投与の後に投与することができる。対象は、彼らの担当医の裁量によって、遺伝子療法治療の前に、及びそれと同時に、彼らの標準的なケア治療を継続することを許可されてもよい。代替として、医師は、遺伝子療法治療を投与する前に標準的なケア療法を停止し、任意選択的に、遺伝子療法の投与後に併用療法として標準的なケア療法を再開することを選び得る。別の実施形態では、本明細書に記載される遺伝子療法を、当該技術分野で日常的である遺伝子型分析又は遺伝子スクリーニングと組み合わせることができ、UBE3A遺伝子の核酸配列における1つ以上の変異を特定するためのPCRの使用を含み得る。上述されるように、人生の初期(例えば、1~3ヶ月)にASの症状を示す対象、並びに人生の後期にASを有すると診断された対象は、本明細書に記載の組成物及び方法の意図されるレシピエントである。
【0098】
「投与すること」又は「投与経路」とは、薬学的担体又は賦形剤の有無にかかわらず、本明細書に記載の組成物を対象に送達することである。投与経路は、所望される場合、組み合わされてもよい。いくつかの実施形態では、投与は、周期的に繰り返される。連続的な投与は、数日間、数週間、数ヶ月間、又は数年の間隔からの複数の投与の時間ギャップを意味し得る。一実施形態では、本明細書に記載の組成物は、それを必要とする対象に1回以上投与される。一実施形態では、複数回の投与は、数日間、数週間、数ヶ月又は数年間離れている。一実施形態では、1回、2回、3回、又はそれ以上再投与することが許される。かかる再投与は、同じ種類のベクター、又は異なるベクターによるものであってもよい。更なる実施形態では、本明細書に記載のベクターは、単独で、又は患者の診断及び状態のための標準的なケアと組み合わせて使用され得る。本明細書に記載の核酸分子及び/又はベクターは、単一の組成物又は複数の組成物で送達されてもよい。任意選択的に、2つ以上の異なるAAV、又は複数のウイルスが送達され得る[例えば、WO2011/126808及びWO2013/049493を参照されたい]。
【0099】
一実施形態では、遺伝子療法のための本明細書に記載の発現カセット、ベクター、又は他の組成物は、患者当たり単回用量として送達される。一実施形態では、対象は、治療有効量の本明細書に記載の組成物を送達される。本明細書で使用される場合、「治療有効量」は、発現カセット若しくはベクター、又はそれらの組み合わせの量を指す。
【0100】
一実施形態では、発現カセットは、ベクターゲノムにおいて、範囲内の全ての整数又は小数及びエンドポイントを含む、脳質量のグラム当たり約1×109GC~脳質量のグラム(g)当たり約1×1013ゲノムコピー(GC)の量で送達される。別の実施形態では、投薬量は、脳質量1グラム当たり1×1010GC~脳質量1グラム当たり約1×1013GCである。特定の実施形態では、患者に投与されるベクターの用量は、少なくとも約1.0×109GC/g、約1.5×109GC/g、約2.0×109GC/g、約2.5×109GC/g、約3.0×109GC/g、約3.5×109GC/g、約4.0×109GC/g、約4.5×109GC/g、約5.0×109GC/g、約5.5×109GC/g、約6.0×109GC/g、約6.5×109GC/g、約7.0×109GC/g、約7.5×109GC/g、約8.0×109GC/g、約8.5×109GC/g、約9.0×109GC/g、約9.5×109GC/g、約1.0×1010GC/g、約1.5×1010GC/g、約2.0×1010GC/g、約2.5×1010GC/g、約3.0×1010GC/g、約3.5×1010GC/g、約4.0×1010GC/g、約4.5×1010GC/g、約5.0×1010GC/g、約5.5×1010GC/g、約6.0×1010GC/g、約6.5×1010GC/g、約7.0×1010GC/g、約7.5×1010GC/g、約8.0×1010GC/g、約8.5×1010GC/g、約9.0×1010GC/g、約9.5×1010GC/g、約1.0×1011GC/g、約1.5×1011GC/g、約2.0×
1011GC/g、約2.5×1011GC/g、約3.0×1011GC/g、約3.5×1011GC/g、約4.0×1011GC/g、約4.5×1011GC/g、約5.0×1011GC/g、約5.5×1011GC/g、約6.0×1011GC/g、約6.5×1011GC/g、約7.0×1011GC/g、約7.5×1011GC/g、約8.0×1011GC/g、約8.5×1011GC/g、約9.0×1011GC/g、約9.5×1011GC/g、約1.0×1012GC/g、約1.5×1012GC/g、約2.0×1012GC/g、約2.5×1012GC/g、約3.0×1012GC/g、約3.5×1012GC/g、約4.0×1012GC/g、約4.5×1012GC/g、約5.0×1012GC/g、約5.5×1012GC/g、約6.0×1012GC/g、約6.5×1012GC/g、約7.0×1012GC/g、約7.5×1012GC/g、約8.0×1012GC/g、約8.5×1012GC/g、約9.0×1012GC/g、約9.5×1012GC/g、約1.0×1013GC/g、約1.5×1013GC/g、約2.0×1013GC/g、約2.5×1013GC/g、約3.0×1013GC/g、約3.5×1013GC/g、約4.0×1013GC/g、約4.5×1013GC/g、約5.0×1013GC/g、約5.5×1013GC/g、約6.0×1013GC/g、約6.5×1013GC/g、約7.0×1013GC/g、約7.5×1013GC/g、約8.0×1013GC/g、約8.5×1013GC/g、約9.0×1013GC/g、約9.5×1013GC/g、又は約1.0×1014GC/g脳質量である。
【0101】
ある特定の実施形態では、レジメンは、遺伝子編集系を含む組成物を含む、追加の治療を含み得る。例えば、“Compositions and uses for Treatment of Angelman Syndrome”と題された、2020年4月28日に出願された米国特許出願第63/016,712号、及び2020年11月25日に出願された米国特許出願第63/118,299号を参照されたい。この治療は、本明細書に記載の遺伝子置き換え療法での治療の前であってもよく、初期の治療に利用されたものとは異なるカプシドを有するベクターを利用してもよい。当業者によって、更に他のAAVカプシドの組み合わせが選択され得る。
【0102】
ある特定の実施形態では、治療レジメンは、UBE3Aアイソフォーム1とUBE3Aアイソフォーム3との同時発現を含み得る。ある特定の実施形態では、治療薬は、(例えば、アイソフォーム3及び/又はアイソフォーム1酵素との)AAV.hUBE3A-アイソフォーム1及びhUBE3A酵素補充療法の併用療法を含み得る。ある特定の実施形態では、治療レジメンは、AAV.hUBE3A-アイソフォーム1遺伝子療法ベクター及び免疫調節レジメンとの同時療法を含み得る。かかる免疫調節レジメンとしては、例えば、限定されないが、グルココルチコイド、ステロイド、抗代謝剤、T細胞阻害剤、マクロライド(例えば、ラパマイシン又はラパログ)、及びアルキル化剤、抗代謝剤、細胞傷害性抗生物質、抗体、又はイムノフィリンに対して活性な薬剤を含む細胞分裂阻害剤などの免疫抑制剤が挙げられ得る。免疫抑制剤には、ナイトロジェンマスタード、ニトロソウレア、白金化合物、メトトレキサート、アザチオプリン、メルカプトプリン、フルオロウラシル、ダクチノマイシン、アントラサイクリン、マイトマイシンC、ブレオマイシン、ミトラマイシン、IL-2受容体(CD25)特異的抗体又はCD3特異的抗体、抗IL-2抗体、シクロスポリン、タクロリムス、シロリムス、IFN-β、IFN-γ、オピオイド、又はTNF-α(腫瘍壊死因子-α)結合剤を含み得る。ある特定の実施形態では、免疫抑制療法は、遺伝子療法投与の前に開始され得る。かかる療法は、同じ日に2つ以上の薬物(例えば、プレドニゾロン、ミコフェノール酸モフェチル(MMF)、及び/又はシロリムス(すなわち、ラパマイシン))の同時投与を含み得る。これらの薬物のうちの1つ以上は、遺伝子療法投与後に、同じ用量又は調整された用量で継続され得る。かかる療法は、必要に応じて、約1週間、約15日間、約30日間、約45日間、60日間、又はそれ以上であり得る。更に他の同時治療薬は、例えば、抗AAV抗体を枯渇させる
(したがって、試験する患者への、選択されたAAVカプシドの閾値レベルを超える抗体の投与を可能にし得る)のに有用であると記載されている抗IgG酵素、並びに/又は、例えば、“Compositions and Methods for Treatment of Gene Therapy Patients”と題された2020年6月17日に出願された米国仮特許出願第63/040,381号に記載されている抗FcRN抗体の送達、並びに/又はa)ステロイド若しくはステロイドの組み合わせ、及び/若しくは(b)IgG切断酵素、c)Fc-IgE結合の阻害剤、(d)Fc-IgM結合の阻害剤、(e)Fc-IgA結合の阻害剤、及び/若しくは(f)ガンマインターフェロンのうちの1つ以上を含み得る。
【0103】
一般に、本方法は、調節配列の制御下で、UBE3A遺伝子置き換え(発現)系の1つ以上の要素をコードする核酸配列を担持する組換えアデノ随伴ウイルス(AAV)を含む、薬学的に有効量の組成物、及び薬学的に許容される担体を必要とする哺乳動物対象に投与することを含む。一実施形態では、かかる方法は、哺乳動物対象においてASを治療し、遅延させ、又はその進行を停止するために設計される。
【0104】
一実施形態では、本明細書に記載されるベクター、rAAV、水性懸濁液、又は薬学的組成物を、それを必要とする対象に投与することによる、ASを治療する方法が提供される。一実施形態では、rAAVは、約1×1010~約1×1015ゲノムコピー(GC)/kg体重で送達される。ある特定の実施形態では、対象はヒトである。一実施形態では、rAAVは、1回より多く投与される。更なる実施形態では、rAAVは、数日間、数週間、数ヶ月又は数年間に分けて投与される。
【実施例】
【0105】
ここで、以下の実施例を参照しながら、本発明が説明される。これらの実施例は例示のみを目的として提供され、いかなる方式でも本発明がこれらの実施例に限定されると解釈されるべきではなく、むしろ、本明細書で提供される教示の結果として明らかになるありとあらゆる変形を包含すると解釈されるべきである。
【0106】
アンジェルマン症候群(AS)は、世界中の約50万人に影響を及ぼす稀な神経発達障害である。ASは、知的及び身体障害、睡眠中の発作及び障害、並びに腸機能を特徴とする。これらの欠陥の多くは、母系遺伝性のユビキチンタンパク質リガーゼE3A(UBE3A)対立遺伝子の喪失によって引き起こされる。現在、ASの治療選択肢は限られている。AAVに基づく遺伝子置き換え療法は、UBE3Aアイソフォーム発現を回復させ、ASの重症度を緩和するための有望な戦略の代表である。しかしながら、UBE3A遺伝子は3つのアイソフォームをコードし、どのUBE3Aアイソフォームが最も有効な候補となるかは現在のところ不明である。我々は、操作されたヒトUBE3Aアイソフォームを送達するAAVベクターの有効性を、ASのマウスモデル(UBE3Am-/p+)において比較することによって、この不確実性に対処する。ウェスタンブロッティング及び免疫組織化学分析は、新生児対照及びASマウスへのAAV-UBE3Aヒトアイソフォーム1及び2ベクターの脳室内注射が、堅牢なタンパク質発現を生じたことを示した。アイソフォーム1置き換えは、ASマウスにおいて、用量依存的様式で、歩行、巣構築能力、及び運動協調性を顕著に改善した。アイソフォーム1とは異なり、アイソフォーム2は、ASマウスにおいて巣構築能力及び運動協調性を更に損なう。非ヒト霊長類における毒性研究は、大槽に高用量のAAV-UBE3Aアイソフォーム1ベクターを注射しても顕著な有害作用は認められなかったことを示唆している。まとめると、これらのデータは、AAV-UBE3Aアイソフォーム1ベクターが、有望な安全性プロファイルによって、最も治療的に有効であることを示唆する。これらの前臨床所見は、ASの遺伝子置き換え療法の開発における重要な前進を示す。
【0107】
実施例1-修飾されたヒトシナプシンプロモーターの指示の下での、操作されたhUBE3Aアイソフォーム1及び操作されたhUBE3Aアイソフォーム2コード配列
マウスにおける研究の第1のセットでは、修飾されたヒトシナプシン(hSyn)プロモーター(配列番号12)の制御下にある操作されたヒトUBE3Aアイソフォーム1(配列番号9)又はUBE3Aアイソフォーム2(配列番号10)導入遺伝子を含有する一連のプラスミドを操作した。転写安定性を促進するために、SV40ポリアデニル化配列(配列番号13)を含めた。プロモーター-導入遺伝子-SV40構築物は、逆位末端反復(ITR)に隣接させた。プラスミドを、C57BL6/Jマウスの中枢神経系のニューロン及びグリアを堅牢に形質導入するAAV9バリアントである、PHP.Bにパッケージングした。
【0108】
修飾されたヒトシナプシンプロモーターのコード配列を、配列番号12に提供する。
【0109】
生じたベクターゲノムは、配列番号3(hSyn.hUbe3a-1.GSco.SV40)及び配列番号7(アイソフォーム2hSyn.hUbe3a-2.GSco.SV40)に再現する。
【0110】
AAVPHP.Bカプシド(US9,585,971)を、パッケージング宿主細胞において、3重トランスフェクション技術を使用して、AAV2 repコード配列及びPHP.B VP1コード配列を含むトランスプラスミド中に生成し、ベクターゲノムを含有するシスプラスミド及びパッケージング宿主細胞によって提供されない必要なアデノウイルスヘルパー機能を発現するトランスプラスミドとともに同時トランスフェクトする。
【0111】
実施例2-マウス及びNHPへのhUBE3AのrAAV媒介性送達
A.成体マウス脳におけるhUBE3Aアイソフォーム1及び2の発現試験
野生型成体マウスの脳にAAV-PHP.B-シナプシン-UBE3Aアイソフォーム1及びAAV-PHP.B-シナプシン-UBE3A-アイソフォーム2ベクターを(脳室内-ICV)注射し、ウエスタンブロットによって導入遺伝子発現を定量化することによって、最も発現の高いものを同定した(
図8)。
【0112】
方法:成体野生型WT(UBE3Am+/p+)及びUBE3A KO/null(UBE3Am-/p+)同腹仔にレトロオービタル(IV)注射によって送達される5×1011GC/マウス。ウェスタンブロッティングのために注射14日後に脳を採取した。次いで、最適な発現のために、完全に無傷のITRを含むプラスミドにcDNAをサブクローニングした。
【0113】
B.最も治療的に有効なAAV-UBE3Aアイソフォームベクターの決定
ASのマウスモデルにおいて運動欠陥及び挙動欠陥を救済するのに、最も発現の高いAAV-PHP.B-シナプシン-UBE3A-アイソフォーム1(アイソフォーム1)及びAAV-PHP.B-シナプシン-UBE3A-アイソフォーム2(アイソフォーム2)ベクターの能力を直接比較した。新生児野生型又はAS(UBE3A
m-/p+)マウスに、動物当たり1×10
11ゲノムコピーの用量で、アイソフォーム1又はアイソフォーム2ベクターのいずれかを脳室内(ICV)注射した。挙動試験(8~10週齢)、試験順序:(1)キャットウォーク、(2)自発運動、(3)ロータロッド、(4)巣構築。2ヶ月後、アイソフォーム2ではなくアイソフォーム1を注射されたASマウスは、歩行(歩長
図11A~11D)、巣構築能力(
図10A及び10B)、及び運動協調性(
図9A及び9B)において統計的に顕著な改善を示した。実際、アイソフォーム2の発現は、ASマウスにおける巣構築能力の欠陥を悪化させた(
図10C及び10D)。動物当たり1×10
10ゲノムコピーの低用量でのアイソフォーム1の注射は、有効性が低かったが、ASマウスにおける巣構築能力を改善した。また、野生型マウスにおけるアイソフォ
ーム1又は2の過剰発現は、いくつかの挙動領域に悪影響を有したことが観察され、UBE3Aアイソフォーム発現の厳密な制御の重要性を示した。要約すると、直接試験は、核UBE3Aアイソフォーム1ベクターが、ASマウスにおける挙動欠陥を低減することにおいて、細胞質アイソフォーム2ベクターよりも高い治療能力を有することを示した。操作されたヒトUBE3Aアイソフォーム1タンパク質の発現及び局在化は、野生型、UBE3A
m-/p+マウス、及び治療されたUBE3A
m-/p+マウスからの矢状方向の脳セクション(すなわち、皮質、海馬、視床、視床下部、中脳)において、ニューロンマーカーNeuN及び核での同時染色による免疫蛍光画像によって確認した。Visiopharmソフトウェアを使用して、異なる脳領域におけるUBE3Aアイソフォーム1(
図5及び6)及びUBE3Aアイソフォーム2(
図7)タンパク質陽性ニューロンの割合(パーセンテージ)を決定及び定量化した(
図5及び6)。
【0114】
1×10
10GC用量では、AAV-PHP.B-hSyn-UBE3A-アイソフォーム1投与は、野生型内因性UBE3Aアイソフォーム発現の約50%を達成し、自発運動、運動協調性、又は巣構築における挙動欠陥に顕著な影響を及ぼさず、歩行異常をいくらか改善した。
図5は、治療されたUBE3A
m-/p+マウスにおけるUBE3Aタンパク質陽性ニューロンの定量化を示す(統計分析:平均±SD、対応のないスチューデントt検定)。治療は、脳室内(ICV)を介した1×10
10GC/動物の用量でのAAV-PHP.B-hSyn-UBE3A-アイソフォーム1の投与を含んでいた。
【0115】
1×10
11GCの高用量では、AAV-PHP.B-hSyn-UBE3A-アイソフォーム1投与は、野生型内因性UBE3Aアイソフォーム発現の約100%を達成し、巣構築能力を顕著に改善した(
図10A)。Deacon RMJ,2006,Assessing nest building in mice,Nat Protoc 1(3):1117-9の方法に従って実施すると、治療されたUBE3A
m-/p+マウスは、巣を構築するのに顕著に多くの巣材料を使用した(
図10B)。UBE3A-アイソフォーム1投与は、活動低下状態に影響を及ぼさなかったが、UBE3A
mp+マウスにおいて、以前公開された歩行異常と比較して正常化した(Heck et al.,Analysis of cerebellar function in Ube3a-deficient mice reveals genotype-specific
behaviors,2008,Hum Mol Genetics,17(14):2181-2189;epub April 15,2008に記載されるように歩長を評価した)。アイソフォーム2投与(
図9B)ではなくUBE3A-アイソフォーム1投与(
図9A)は、UBE3A
m-/p+マウスにおける運動協調生欠陥を顕著に低減した。
図6は、治療されたUBE3A
m-/p+マウスにおけるUBE3Aタンパク質陽性ニューロンの定量化を示す(統計分析:対応のないt検定)。治療は、脳室内(ICV)を介した1×10
11GC/動物の用量でのAAV-PHP.B-hSyn-UBE3A-アイソフォーム1の投与で構成される。
図5からのタンパク質発現の定量化を、以下の表1に要約する。
【表1】
【0116】
UBE3A-アイソフォーム置き換えの治療効果:アイソフォーム1:(i)歩長を正
常化する(臨床的に関連する歩行欠陥)、(ii)運動協調性を改善する、(iii)巣構築挙動を改善する、(iv)UBE3欠損(UBE3Am-/p+)マウスの自発運動低下状態に影響を及ぼさない。アイソフォーム2:(i)巣構築挙動を損ない、(ii)自発運動低下状態(アイソフォーム1のように)又は運動協調性に影響を及ぼさない。
【0117】
加えて、上述のデータは、堅牢なUBE3Aアイソフォーム1タンパク質発現が、いくつかの脳領域のニューロンの大部分に見られたことを示す。UBE3Aアイソフォーム1タンパク質発現は、用量依存性を示し、1×1010GC/動物に対して、1×1011GC/動物で治療された動物では、UBE3A陽性ニューロンがより高いパーセンテージであった。
【0118】
ASマウスにおける前臨床研究は、AAV-PHP.B-シナプシン-UBE3A-アイソフォーム1が良好に発現し、ASマウスにおける運動及び挙動欠陥を緩和することを示した。次に、ヒトに対する免疫系及び脳構造の類似性を理由に、アカゲザルにおける高用量でのその安全性プロファイルを評価することによって、アイソフォーム1ベクターの治療潜在性を調査した。まず、AAV-hu68-シナプシン-UBE3A-アイソフォーム1ベクターを生成した。AAVhu68はまた、非ヒト霊長類において良好に機能する、社内で開発されたAAV9バリアントである。3匹のアカゲザル(NHP-1、NHP-2、NHP-3)の大槽の脳脊髄液に、AAVhu68-hSyn-UBE3A-アイソフォーム1ベクターを3×10
13GC/動物の高用量で注射した。35日後、サルを捕獲し、導入遺伝子発現、免疫応答、及び有害作用について評価した。ケージ側面評価からは、臨床的に著しい状態又は神経学的懸念を有した動物はなかった。血液化学検査は、治療されたサルでは正常な凝固、肝臓及び腎臓機能を示した。髄質、並びに頭頂及び側頭皮質を含むいくつかの脳領域に低レベルの、並びに脊椎の後根神経節に高いレベルのアイソフォーム1ベクターを観察した(
図2A)。加えて、脊椎の後根神経節を含むいくつかの脳領域において、低発現のヒトUBE3A-アイソフォーム1 mRNAを検出した(
図2B及び2C)。操作されたヒトUBE3Aアイソフォーム1転写産物の局在化を、3匹の治療されたNHP由来の後根神経節(頸髄、胸髄、及び腰髄セグメント)の蛍光画像によって確認した。UBE3Aアイソフォーム1転写産物局在化を、操作されたヒト配列に特異的なRNAscopeプローブ(
図7A~7I)を使用して決定し、DAPI(核)で対比染色した。目的の領域の画像を様々な倍率で撮影し、20倍の倍率の画像を提示している。
図7A~7Iは、(NHP;35日間の研究において)3匹の治療された非ヒト霊長類由来の後根神経節(頸髄、胸髄、及び腰髄セグメント)における、操作されたヒトUBE3Aアイソフォーム1(hUBE3A-1)転写物局在化の蛍光画像を示す。治療は、大槽(ICM)経路を介した3×10
13GC/動物の用量でのAAV-hu68-hSyn-UBE3A-アイソフォーム1の投与を含んでいた。目的の領域の画像を、20倍の倍率で示す。
図7Aは、NHP-1由来の後根神経節の頸髄セグメントにおける、操作されたhUBE3A-1転写産物局在化の蛍光画像を示す。
図7Bは、NHP-2由来の後根神経節の頸髄セグメントにおける、操作されたhUBE3A-1転写産物局在化の蛍光画像を示す。
図7Cは、NHP-3由来の後根神経節の頸髄セグメントにおける、操作されたhUBE3A-1転写産物局在化の蛍光画像を示す。
図7Dは、NHP-1由来の後根神経節の胸髄セグメントにおける、操作されたhUBE3A-1転写産物局在化の蛍光画像を示す。
図7Eは、NHP-2由来の後根神経節の胸髄セグメントにおける、操作されたhUBE3A-1転写産物局在化の蛍光画像を示す。
図7Fは、NHP-3由来の後根神経節の胸髄セグメントにおける、操作されたhUBE3A-1転写産物局在化の蛍光画像を示す。
図7Gは、NHP-1由来の後根神経節の腰髄セグメントにおける、操作されたhUBE3A-1転写産物局在化の蛍光画像を示す。
図7Hは、NHP-2由来の後根神経節の腰髄セグメントにおける、操作されたhUBE3A-1転写産物局在化の蛍光画像を示す。
図7Iは、NHP-3由来の後根神経節の腰髄セグメントにおける、操作されたhUBE3A-1転写産物局在化の蛍光画像を示す。
【0119】
免疫応答は最小限であり、ELISPOT分析は、予想されるように、hu68カプシドに対する中等度の免疫応答を示した。最後に、後根神経節(DRG)毒性は、非ヒト霊長類及び潜在的にヒトにおいて、中枢神経系指向性及び高用量AAVの土台となる問題である。しかしながら、軽度のDRG(
図12~12C)及びニューロン毒性は、1匹の動物の脊髄(
図13A~13C)及び末梢神経(
図13A~13C)でのみ観察された。要約すると、これらの所見は、AAVhu68-hSyn-UBE3A-アイソフォーム1ベクターの高用量ICM送達が、非ヒト霊長類において良好に耐容されたことを示唆する。加えて、このデータセットからの結論は、pPCR分析と一致して、堅牢なUBE3Aアイソフォーム1転写産物局在化が全てのDRGセグメントで検出することができたことである。治療されたNHPでは、堅牢な導入遺伝子DRG発現にもかかわらず、顕著なAAV毒性は存在しない。
【0120】
実施例3-アカゲザルにおけるhUBE3Aアイソフォーム1±miR183標的配列の安全性及び発現を調査するNHPパイロット研究
非ヒト霊長類及びヒトにおける高用量AAV誘導性DRG毒性に関する懸念を理由に、同時に、DRGにおけるアイソフォーム1タンパク質発現を下方制御し、したがって、DRG毒性を緩和するために、マイクロRNA戦略を用いた。miR183標的部位を導入遺伝子の3’UTR(この場合、UBE3A-アイソフォーム1)に含めることは、脳内の標的ニューロンへの治療的導入遺伝子発現を維持しながら、DRGの感覚ニューロンにおけるアイソフォーム1導入遺伝子mRNAのRISC複合体媒介性分解を選択的に促進する。最も高発現の操作されたアイソフォーム1又はアイソフォーム2の3’末端とSV40ポリアデニル化部位との間に、miR183結合部位の4つのコピーを挿入し、AAVhu68カプシドにパッケージングした。配列番号11は、miRNA183(又はmiR183)標的化配列の1つのコピーの配列を提供する。この方式で、AAV-hu68-シナプシン-UBE3A-アイソフォーム1-4xmiR183を生成した。AAVhu68カプシドを、パッケージング宿主細胞において、3重トランスフェクション技術を使用して、AAV2 repコード配列及び配列番号14のhu68 VP1コード配列を含むトランスプラスミド中に生成し、ベクターゲノムを含有するシスプラスミド及びパッケージング宿主細胞によって提供されない必要なアデノウイルスヘルパー機能を発現するトランスプラスミドとともに同時トランスフェクトする。
【0121】
4×miR183カセットを含めることは、成体野生型又は1×1011GC/動物の用量で静脈内注射されたASマウスにおいて、UBE3A-アイソフォーム1又はアイソフォーム2タンパク質発現に顕著な影響を及ぼさなかった。
【0122】
次に、アカゲザルにおけるrAAVhu68-シナプシン-UBE3A-アイソフォーム1-4xmiR183ベクターの安全性及び発現プロファイルを、以前に分析したrAAVhu68-シナプシン-UBE3A-アイソフォーム1-miR183ベクターと比較した。AAV-hu68-シナプシン-UBE3A-アイソフォーム1-4xmiR183を3×10
13GC/動物で3匹のサルの大槽に注射し、35日後に分析のためにサルを捕獲した。全ての動物は、研究期間中、臨床的に普通の状態であった。予想されるように、髄質などのいくつかの脳領域で、低レベルのアイソフォーム1-miR183ベクターが観察され、後根神経節及び脊髄においてレベルはより高かった。加えて、後根神経節及び脊髄では、低いヒトアイソフォーム1-miR183 mRNA発現を検出したが、これは多くの場合、アイソフォーム1と同等であった。アイソフォーム1のように、アイソフォーム1-miR183は、非ヒト霊長類において良好に耐容され、免疫原性はわずかであり、凝固、肝臓及び腎臓機能に影響を及ぼさなかった。同様に、アイソフォーム1-miR183で治療したサルでは、顕著なDRG又はニューロン毒性は観察されなかった。
図3A~3Bを参照されたい。末梢神経におけるrAAVhu68.シナプシン-
UBE3A-アイソフォーム1の影響を、
図4A~4Bに示す。
【0123】
ベクター生体分布及びmRNA発現を評価し、
図2A~2Cに示した。
【0124】
要約すると、これらの所見は、AAVhu68-hSyn-UBE3A-アイソフォーム1-miR183ベクターの高用量ICM送達が、非ヒト霊長類において良好に耐容されたことを示唆する。このベクターは、非ヒト霊長類では有用ではないが、ヒト臨床試験で行う場合、DRG及びニューロン毒性を緩和するのに有用であり得る。
【表2-1】
【表2-2】
【表2-3】
【表2-4】
【表2-5】
【表2-6】
【表2-7】
【表2-8】
【表2-9】
【表2-10】
【表2-11】
【表2-12】
【表2-13】
【0125】
本明細書で引用される全ての文書は、参照により本明細書に組み込まれる。「21-9579PCT_SeqListing_ST25」という名前で本明細書とともに提出された配列表、並びにその中の配列及びテキストは、参照により組み込まれる。2020年12月1日に出願された米国仮出願第63/119,860号、及び2021年4月26日に出願された米国仮出願第63/179,807号は、参照により本明細書に組み込まれる。本発明は、特定の実施形態を参照して説明されているが、本発明の趣旨から逸脱することなく修正を行うことができることが理解されるであろう。かかる修正は、添付の特許請求の範囲内にあることが意図される。
【配列表】
【国際調査報告】