(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-12-13
(54)【発明の名称】液体金属及び合金の定量化学分析の方法及び装置
(51)【国際特許分類】
G01N 21/71 20060101AFI20231206BHJP
【FI】
G01N21/71
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023533709
(86)(22)【出願日】2021-12-02
(85)【翻訳文提出日】2023-07-14
(86)【国際出願番号】 EP2021084060
(87)【国際公開番号】W WO2022117768
(87)【国際公開日】2022-06-09
(32)【優先日】2020-12-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521523198
【氏名又は名称】ディーティーイー イーエイチエフ
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100098475
【氏名又は名称】倉澤 伊知郎
(74)【代理人】
【識別番号】100130937
【氏名又は名称】山本 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100144451
【氏名又は名称】鈴木 博子
(72)【発明者】
【氏名】グドムンドソン スヴェイン ヒンリク
(72)【発明者】
【氏名】レオッソン クリスチャン
【テーマコード(参考)】
2G043
【Fターム(参考)】
2G043AA01
2G043BA02
2G043BA03
2G043CA02
2G043EA08
2G043FA06
2G043HA05
2G043KA08
2G043KA09
(57)【要約】
レーザ誘起ブレークダウン分光法(LIBS)を用いて液体金属又は合金試料中の元素を測定するための、改良された方法及び装置である。本装置はパルス励起レーザとレーザ経路チャネル、レーザ励起光学系、レーザと試料の相互作用によって生成されたプラズマからの発光を受け取るための受光光学系、装置ヘッドの平らな底面から上部に伸びる開放底のチャンバと、を備える装置ヘッド及び好ましくは、開放底のチャンバへガスを供給するためのガスチャネルを備える。レーザ及びレーザ励起光学系は、装置ヘッドが試料表面から1mm~10mmの範囲の距離にあるとき、パルス励起レーザの焦点は試料表面より下に集束された励起レーザビームの1レイリー長より長い距離にあるように構成される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザ励起ブレークダウン分光法(LIBS)を用いて、液体金属又は合金試料中の1又はそれ以上の元素を測定する方法であって、
-分析対象の液体金属又は合金の試料を準備することと、
-試料表面上に装置ヘッドを配置することであって、前記装置ヘッドはパルス励起レーザから伝達された光を受けて集束するよう配置されたレーザ励起光学系、前記試料からの発光を受け取るための受光光学系、及び前記レーザ励起光学系がその中を通してレーザ光を導く開放底のチャンバであって、前記装置ヘッドの実質的に平らな底面から上部に延びる前記開放底のチャンバを備える、前記配置することと、
-前記レーザ励起光学系が前記励起レーザからのパルスを、前記試料表面より下で、集束された前記レーザビームの1レイリー長より長い距離にある焦点に焦点合わせするように前記試料表面からの距離に前記装置ヘッドを配置することと、
-試料体積の部分をアブレートし前記液体金属上にプラズマを生成するために十分な光エネルギーを用いて前記励起光学系を通る1又はそれ以上のレーザパルスを前記試料上に放射することと、
-生成されたプラズマから前記受光光学系を通って放射された光を受け取り、検出器へ伝達して、検知された光のスペクトルデータを記録することと、
-前記スペクトルデータを分析して、1又はそれ以上の元素の量の決定を得ることと、
を備える方法。
【請求項2】
前記レーザ励起光学系は、前記レーザ焦点が適切に配置されるとき、前記装置ヘッドの底面が前記試料表面から1mm~10mmの範囲及び好ましくは1mm~5mmの範囲の距離にあるように、前記装置ヘッド内に配置される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記開放底のチャンバを通してガスの流れを供給して、前記チャンバ内の実質的に不活性な雰囲気と、前記開放底のチャンバから前記試料表面と前記開放底のチャンバ付近の前記装置ヘッドの底面との間の実質的に層流のガスと、を維持することを備える、前記請求項の1又は2に記載の方法。
【請求項4】
レーザ励起チャネルが、前記パルス励起レーザから前記開放底のチャンバへ延びており、発光受光チャネルが前記開放底のチャンバから前記レーザ受光光学系へ延びている、請求項1~3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
ガスの流れが、前記レーザ励起チャネル及び前記発光受光チャネルのガス注入口を通して供給され、前記チャネルを通り且つ前記開放底のチャンバに向かい及び通過するガス流を形成する、請求項3又は4に記載の方法。
【請求項6】
前記試料付近に熱源を提供することと、少なくとも前記分析の前の期間を含む期間の間、前記熱源を用いて前記試料を加熱することを備え、好ましくは、熱が測定期間にわたって加えられる、請求項1~5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
前記熱源は、試料るつぼの下に配置された実質的に平らな誘導発熱体を備える、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記試料の表面をすくい取るステップが測定前に適用される、請求項1~7のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
レーザ誘起ブレークダウン分光法(LIBS)を用いて液体金属又は合金試料中の1又はそれ以上の元素を測定するための装置であって、
-パルス励起レーザと、
-装置ヘッドと、を備え、前記装置ヘッドは、
レーザ経路チャネルと、
前記レーザ経路チャネル内に配置されるレーザ励起光学系と、
試料プラズマからの発光を受け取るための受光光学系と、
前記装置ヘッドの実質的に平らな底面から上部に延びる開放底のチャンバであって、前記レーザ経路チャネルが前記チャンバへ延びる、前記開放底のチャンバと、
前記開放底のチャンバへガスを供給するための少なくとも一つのガスチャネルと、を備え、
前記パルス励起レーザとレーザ励起光学系は、前記装置ヘッドが試料表面から1mm~10mmの範囲の距離にあるとき、前記パルス励起レーザの焦点が、試料表面より下で、集束された励起レーザビームの1レイリー長より長い距離にあるように、
構成されている、装置。
【請求項10】
前記開放底のチャンバが0.5cm
2~3cm
2の範囲の断面積と、5mm~15mmの範囲の高さを有する、請求項9に記載の装置。
【請求項11】
前記装置が測定位置にあるとき、前記実質的に平らな底面から下方へ延びて、前記液体金属の表面に接触又は貫通する1又はそれ以上のピン又は他の別個の構造部材を備える、請求項9に記載の装置。
【請求項12】
前記試料表面をすくい取るためのスクレーパを備える、請求項9に記載の装置。
【請求項13】
前記試料を受け取り保持する試料るつぼを備える、請求項9に記載の装置。
【請求項14】
前記試料へ熱を提供するための熱源を備え、前記熱源は、好ましくは前記試料るつぼの下に配置された、実質的に平らな誘導発熱体を備える誘導熱源である、請求項9に記載の装置。
【請求項15】
前記実質的に平らな底面に耐熱層を備え、前記耐熱層は前記開放底のチャンバと同心の穴を有し、その穴は前記チャンバの断面と同一のサイズ及び形を有するか、又はより小さいか大きいサイズを有する、請求項9~14のいずれかに記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はスペクトル分析の分野であり、特に、高精度分析のための非没入型機器を用いて液体金属及び合金を分析するためのレーザ誘起ブレークダウン分光(LIBS)方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
溶融金属の直接的な化学分析は金属及び合金の生産、鋳造、及び再生利用において重大な関心事である。現今の技術では、少数の特定の不純物の分析は、固体電子化学プローブを使用して大量の液体金属の中で実施することができるが、合金化又は微量元素のより広範囲に渡る化学分析は、溶融金属の表面で実施されるスペクトル測定を使用して得ることができる。そのような技術の一つが、レーザ誘起ブレークダウン分光法、LIBSであり、液体金属の分析に適しているとしてしばしば提案される。LIBSは、原子発光分光法技術であり、レーザパルスが試料を励起するために使用され、励起したエネルギー状態の物質で構成されたプラズマを生成し、その後の緩和中にプラズマから放射された光を検出し、これは、試料中の元素特有の狭いスペクトル輝線を含む。
【0003】
原子発光のスペクトル分析に続く小体積の物質のレーザ励起は固相、液相、又は気相の試料の元素分析のために迅速で万能な方法を提供する。そのような技術はわずかな、又は全く試料の準備を必要としないと一般的に考えられている。それにも関わらず、定量分析の面ではLIBSは現在まで工業分析において成功は限定的であり、スパーク発光分光器(スパーク OES又はアークスパーク OES)、誘導結合プラズマ発光分光法(ICP-AES)及び誘導結合プラズマ質量分析法(ICP-MS)のような他の元素分析技術よりも劣っていると一般的に考えられてきた。最初に述べた技術は特に固体の導電性試料の表面に適用されるが、ある場合では表面分析と元の溶融物の実際の化学組成の間で最も良い一致を得るために特定の深さまで加工されてきた。金属を分析する際、他の二つの手法では、典型的には、大量の固体試料が化学的に溶解され、その後誘導結合プラズマに導入される。
【0004】
LIBSを用いて液体金属の化学組成を決定する種々のアプローチが先行技術において提案されてきた。EP184590は高出力のパルスレーザを用いて、垂直方向に動いていることがある流動体の照射表面からの発光スペクトルを測定することによって流動体を分析する方法と装置を開示している。静止していない表面の問題は0.95≦L≦1.05の関係が適用されるような十分に長い焦点距離を有する集束レンズを使用することで対処され、ここでLはレンズと測定される表面との間の変化する距離を表す。つまり、その表面は入射方向の焦点深度を定義する集束レーザビームのいわゆるレイリー長内に維持される。EP184590で提供されている例では、170cmの焦点距離のレンズが使用されていて、その文献には、100cm~200cmの焦点距離のレンズの使用は、測定される物質の表面の10cm~20cmの範囲の垂直方向の動きを許容できるであろうと述べている。同じ理由で、レーザ集束光学系の凹状の鏡に類似した焦点距離を有する凹状の鏡が光の集束に使用される。分析結果は、不特定の試料について開示され、0.018%から0.40%の濃度範囲にある元素(Si、Mn、Cr、Ni)の含有量を分析し、「従来の方法」からの8%、11%、10%、12%の相対偏差を表している。
【0005】
アラゴン他(Applied Spectroscopy、53(10)、1999、1259-1267)はLIBSを使用した固体鋼試料の炭素含有量の分析を開示しているが、液体及び気体の試料も本技術で分析可能であることを述べている。報告された精度は150ppm~1100ppmの範囲の炭素含有量において10%であり、検知限度は250ppmである。サンプリング点に対して励起レーザの焦点の位置を変化させることによりLIBS信号へ作用することの影響が議論されている。この論文における結論は、LIBS信号の強度を最適化するためには、ビーム焦点は試料表面より少し下であるが、依然としてレイリー長内に置くべきということである。
【0006】
ライ他(Review of Scientific Instruments、73(10)、2002、3589-3599)は炉内の溶融物の中の溶融合金の元素組成のその場のオンライン測定のための光ファイバーLIBSセンサを開示している。本センサはマルチモード光ファイバーを通るレーザエネルギの伝達に基づいている。ファイバーからのレーザ放射は、コリメートレンズと集束レンズを保持する特別に設計されたステンレススチールホルダーによって、コリメートされ、最終的に、炉内のアルミニウム溶融物の内部に集束される。原子発光は同一のステンレスホルダーによって収集される。本設定は集束レンズの焦点にある溶融物の表面を保持することを目的としている。
【0007】
WO2007/012440は液体金属からプローブを保護するセラミックチューブが設けられたプローブを使用した液体金属を分析するためのLIBSベースの方法を開示している。ガス圧力がプローブの入口を経由し供給されているガスの流れによってチューブ内に適用され、また、ガスはパージガスの流れと共にパージされることで槽の表面の不純物を除去するために使用されている。液体金属の槽内へと延びる液中配管システムが、使用され、これは液中管のケーシング内部の溶融金属の凸メニスカスの原因となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】EP184590
【特許文献2】WO2007/012440
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】Aragon他著、Applied Spectroscopy、(米)、1999、Vol.53、No.10、p.1259-1267
【非特許文献2】Rai他著、Review of Scientific Instruments、(米)、2002、Vol.73、No.10、p.3589-3599
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
現在、アルミニウム工場、鋼製錬所などのような金属生産産業における、正確な元素分析は一般的には異なる生産工程段階で液体金属の試料を取得することと、金属を凝固することと、研究設備を使用して固体試料を分析すること、とを含む。しかしながら、それは溶融金属の正しい化学組成を正確に表す高精度な定量化でその場で液体金属の元素組成を分析するのに非常に有利であろう。しかしながら、現在まで、液体金属表面で実施される分光測定を記載する先行技術は、LIBS分析を含むものを含め、上述の研究技術に匹敵するだけの十分に高レベルな測定精度を証明していない。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は特許請求の範囲並びに以下の説明において特定される。本発明は特にLIBSのような少ない試料容量を用いた表面測定を使用して得ることができる液体金属又は合金試料中の複数の元素の定量測定による装置及び方法を説明する。本発明の特徴は、測定結果が試料中のバルク濃度を表す微量不純物又は合金化元素の濃度の値を提供することを確実にすることである。本方法は、例えば実験室分析のため固体金属試料を鋳造する必要なく、これらに限定されないが、アルミニウム工場、製鉄所、シリコン及びフェロシリコン工場などのような冶金産業や、液体金属又は合金の正確な定量分析が望まれる本質的な他の産業における工程管理及び/又は品質管理に特に有用である。
【0012】
本発明は、バルク濃度を表す、溶融金属表面で実施される元素の定量分析が行われる適切な測定状況を、確実にする改良された方法及び装置を提供する。これは先行技術によって記述された方法及び装置を使用した液体金属分析で、達成されてきたものより大幅に優れた精度を有した結果を提供する。本発明の適用は、液体金属中の微小元素の表面分析と対応する固体試料のバルク分析との間の0.9999を超える相関係数(ピアソンr)と、低い検出限界(LOD)と、高い測定再現性とを提供することが示されている。下記の本明細書で説明される特徴及び詳細な実施形態は、概して本発明の方法及び装置の両方に言及する。
【0013】
本発明の方法は、LIBS技術を適用した従来の方法を改良している新規な特徴の組み合わせに基づき、その組み合わせはLIBSベースの方法について従前達成され報告された精確さ及び正確さ(総称「精度」)を大幅に高める。
【0014】
本発明の主な態様はレーザ誘起ブレークダウン分光法(LIBS)を用いて液体金属又は合金試料中の1又はそれ以上の元素を測定する方法であって、
-分析対象の液体金属又は合金の試料を準備することと、
試料表面上に装置ヘッドを配置することであって、前記装置ヘッドはパルス励起レーザから伝達された光を受けて集束するよう配置されたレーザ励起光学系、
前記試料からの発光を受け取るための受光光学系、
及び前記レーザ励起光学系がその中を通してレーザ光を導く開放底のチャンバであって、
前記装置ヘッドの実質的に平らな底面から上部に延びる前記開放底のチャンバを備える、前記配置することと、
-前記レーザ励起光学系が、前記励起レーザからのパルスを、前記試料表面より下で、レーザパルスのレイリー長より長い距離にある焦点に焦点合わせするように、前記試料表面からの距離に前記装置ヘッドを配置し、試料表面を励起レーザビームの適正焦点の外側に効果的に配置することと、
-試料体積の部分をアブレートし、前記液体金属表面上にプラズマを生成するために十分な光エネルギーを用いて前記励起光学系を通る1又はそれ以上のレーザパルスを前記試料上に放射することと、
-生成されたプラズマから前記受光光学系を通って放射された光を受け取り、検出器へ伝達して、検知された光のスペクトルのデータを記録することと、
-前記スペクトルデータを分析して、1又はそれ以上の元素の量の決定を得ることと、
を備える方法。
【0015】
もう一つの態様は、LIBSを用いて合金試料又は液体金属中の1又はそれ以上の元素を測定するための装置を提供し、例えば、特に本発明の方法を実施するための装置であって、
-パルス励起レーザと、を備え、
-装置ヘッドと、を備え、前記装置ヘッドは
レーザ経路チャネルと、
前記レーザ経路チャネル内に配置されるレーザ励起光学系と、
試料表面で生成されたプラズマからの発光を受けとるための受光光学系と、
前記装置ヘッドの実質的に平らな底面から上部に延びる開放底のチャンバであって、レーザ経路チャネルが前記チャンバへ延びる、前記開放底のチャンバと、
少なくとも前記レーザパスチャネルを通り前記開放底のチャンバへガスを供給するための少なくとも一つのガスチャネルと、を備え、
前記パルス励起レーザとレーザ励起光学系は、前記装置ヘッドが試料表面から1mm~10mmの範囲の距離にあるとき、前記パルス励起レーザの焦点が、試料表面より下で、集束されたレーザのレイリー長、ZR、を超える深さにあるように構成されている。つまり、レーザ励起光学系から試料表面までの距離dは、レイリー長以上が差し引かれたfと表される励起光学系の焦点距離、d<(f-ZR)未満であるが、一般的には焦点距離の半分より大きい、d>(f/2)。本装置のこの特徴は、特にプラズマの生成を安定化させること、及び集束ビームのレイリー長(±ZR)の付近又はその範囲内で一般的に発生する集束レーザと周囲環境との間の有害な相互作用が試料表面にレーザパルスが到達する前に生じるのを防ぐことという目的に役立つ。選択されたレーザと励起光学系のためのレイリー長は、周知の物理方程式から計算することができ、及び/又はビームパスに沿うパルスレーザビームの断面プロファイルを測定することによって測定することができる。一般的に、レイリー長、したがって本発明によって特定される試料表面から適切なビーム焦点までの距離は、励起光学系とレーザビームの両方の特性に依存する。
【0016】
サンプリング点に対して励起レーザの焦点位置を変化させることによってLIBS信号に及ぼされる影響は、例えば、アラゴン他(上述記載)を含む従来技術で議論されている。この論文の中で、LIBS信号の強度を最適化するために、ビーム焦点は試料表面のわずかに下であるが、依然としてレイリー長内に置かれるべきであるというのが結論である。同一の一般的な結論は先行技術では幅広くみることができ、すなわち励起ビーム焦点は試料表面と厳密に一致するべきである。この方式において全体のLIBS信号を最大化する必要性が、いくつかの場合において、例えば検知光学系がプラズマ励起点から離れて配置されるとき、放出される放射物の非効率な検知によって課される。
【0017】
逆に本発明によれば、検知光学系が励起光学系から分離され、低減する信号の影響に対抗するため、及び試料表面よりさらに下にビーム焦点を置くことにより提供される増大した測定安定性の利点を実現するために、サンプリング点近くに置かれることは有利である。これは高温の液体金属を測定するときに特に重要であり得る。
【0018】
先行技術は測定プローブを記載しており、そこでは励起レーザがプローブとは別個に配置され、マルチモード光ファイバーを使ってこれに接続されている。これは、例えば、ライ他(上述記載)により記載されているプローブにおけるように、パルスレーザ光がファイバーの入力端をアブレートすることなくファイバーと結合することを要し、ここではファイバーのファセット(面)はこの理由のために意図的に結合するレンズのフォーカス範囲外に配置されている。結果として、これはまた、物理的にファイバーに結合され、プローブへ伝達することができるエネルギーを制限する。さらに、マルチモード干渉はビーム品質の低下を招き、試料表面でアブレーションのための閾値を超えるためには、プローブ内における励起ビームの強力な焦点合わせ又は集光が要求される。低パルスエネルギー、モード干渉、及び強力なフォーカシングは、プローブが没入型か非没入型かどうかに関係なく、全てファイバー結合プローブ方法の不安定性に寄与する。
【0019】
本発明の方法は、これらに限定されないが、液体状のアルミニウム、アルミニウム合金、スチール、スチール合金、鉄、鉄合金、銅、亜鉛、鉛やその他の金属及び金属合金のような様々の金属及び金属合金に適用することが可能であり、前述の工業環境及び用途で非常に有用である。
【0020】
本発明の方法及び装置は、特定の元素の分析に限定されるものではなく、金属又は合金試料中の主成分、又は溶存ガスを含む微量成分の両方の濃度の決定に使用することができる。従って、いくつかの実施形態では、方法及び/又は装置は、液体金属又は合金試料中のアルミニウム、ケイ素、リン、硫黄、塩化物、カルシウム、マグネシウム、ナトリウム、チタン、バナジウム、クロム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛、ジルコニウム、ニオブ、モリブデン、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、銀、カドミウム、錫、アンチモン、ウォルフラム、レニウム、イリジウム、プラチナ、金、水銀、鉛及びビスマスから選ばれる1又はそれ以上の元素の真のバルク濃度を決定するためのものである。本発明の方法はまた、他の或る分析方法での検知が難しい、水素、リチウム、ベリリウム、ホウ素及び炭素のような非常に軽い不純物元素を定量化するのに適している。
【0021】
本測定装置は、試料からの原子発光を生成し受光するための適切な励起及び検知手段を備える。これはデュアル共線又は非共線パルス、複合LIBS/放電方法等を含めたLIBS、従来のLIBS方法の使用などを含む、しかしこれに限定されない本技術で知られているプラズマ励起方法論のすべてのバリエーションなどを含み、これに限定されない。
【0022】
好ましい実施形態では、スペクトル分析はLIBS方法に基づいており、1又はそれ以上のレーザパルスが順次に励起光学系を通って試料表面へ導かれ、試料から放出された光が受光光学系によって受光され、検知された光のスペクトル情報を記録するための検知部に伝達される。最適な光学系検知方法及びそれに続く検知された放射の処理は、当業者に知られている通りである。そして、スペクトル情報から1又はそれ以上の放出ピークが分析され、1又はそれ以上の元素の定量的測定を得るために、一般的に校正値と比較される。好ましくは、本装置は検出器からのスペクトルデータを受け取り、処理をするコンピューターを備える。本コンピューターは、スペクトルの正規化、関連するピークの割り当て又は選定、信号強度の計算、及び基準値と比較し校正することを含む、データの処理を行うように有利にプログラムされている。
【0023】
任意の所与の実施形態において、励起光学系と受光光学系は、完全に分離するか、部分的に同一の光学素子を備えていてもよい。本発明の重要な特徴は、好ましくは実質的に一定の試料温度を維持し、プラズマにアブレーションされる試料の一部が試料の全容量を代表するように、好ましくは同時に試料の均質性を確保するために液体金属の十分な内部運動を維持しながら、励起手段及び受光光学系が、個々の励起イベントごとに試料表面から所定の距離に正確に位置決めされることである。
【0024】
好ましい実施形態で使用されているパルス励起レーザは、一般的に現在のLIBS構成で使用されているような従来タイプである。よって、本レーザは、一般的な実施形態では、約200nmから約3000nmの範囲の波長を有する。本発明によれば、安定した励起条件が確保され、液体金属試料の十分に大きく再現可能な体積が励起中にアブレーションされるように、且つ、このアブレーションされた試料の部分の化学組成が試料全体の組成を表しているように、光学励起は構成されている。本発明の他の側面に加え、これは、1ns~20nsの持続時間を有すレーザパルスに対して、個々のパルスのエネルギーが10mJ~500mJの範囲であることを要する。一般的に、レーザパルスのエネルギーは、試料表面のレーザフルエンス又は流束量がアブレーションのための閾値を超えるように選ばれなければならず、パルスエネルギーの正確な値は、励起波長、パルス持続時間、励起光学系からの距離、及びアブレーションされる物質を含む多数の要因に依存する。
【0025】
装置ヘッドは、レーザ励起チャネルがパルス励起レーザから開放底のチャンバへ一般的に垂直に延びるように、適切に構成することができる。発光受光チャンネルは、開放底のチャンバからレーザ受光光学系まで延びることができる。発光受光チャンネルを垂直から例えば約45°のような角度で(そして発光受光光学系の光軸に平行に)配置することが有用であることが分かっている。いくつかの実施形態では、不活性ガスの流れはガスチャネルを通して、レーザ励起チャネル内と発光受光チャネル内の両方に位置する開口部へと送られる。従って、受光光学系は、試料表面に対して、約30°から、約35°から、約40°から、約45°から、約75°まで、約70°まで、約65°まで、約60°まで、約55°まで、約50°までの範囲のような、約30°~75°の範囲の角度を中心とする光円錐を受光するように配置されるレンズを備えてもよい。
【0026】
受光光学系は、好ましくは、装置ヘッドが正確に配置されるとき、約5mmから、又は約10mmから、又は約15mmから、又は20mmから、又は約25mmから、又は約30mmから、約100mmまで、又は約90mmまで、又は約80mmまで、又は約75mmまで、又は約60mmまで、又は約50mmまで、又は約40mmまでの範囲のような、約5mmから約100mmの範囲のような、試料表面からの適切な距離に配置されるように、適切に構成される。
【0027】
いくつかの実施形態では、受光光学系は、一より多いレンズで構成され、レンズは、好ましくはレーザパルスと試料表面の接点周りに放射状に配置される。従って、受光光学系は、試料表面に対して、同一又は異なる角度で配置される多数のレンズで構成することができる。1又はそれ以上の受光光学系によって集光された光は、ファイバー光学系又は他の光伝達手段を介して、同一の分光計又は異なる分光計(例えば、多数のレンズ内の各レンズが光をそれぞれの分光計へ伝達することができる)に伝達することができる。いくつかの実施形態では、そのような複数の分光計は、各分光計が限られた波長範囲で放射を集め、複数の分光計が全体として全ての所望の波長範囲をカバーするように構成される。いくつかの実施形態では、分光検知も1又はそれ以上の適切な帯域フィルター及び光学センサを使用する、選択された波長帯の検出を備えてもよい。
【0028】
装置ヘッドは、測定中に試料表面に面する底面を備え、この表面は、上述のように開放底のチャンバを備え、これは検出される試料の一部を一般的にプラズマプルームの形で収容するためのチャンバであり、サンプリング点を取り囲む閉じ込め及び安定した環境条件を提供する。
【0029】
いくつかの実施形態では、好ましくは不活性ガスの流れは、供給源から1又はそれ以上のガスチャネルを通って、開放底のチャンバへと供給され、前述のチャンバ内の不活性雰囲気及び好ましくはわずかな超過圧力と、開放底のチャンバから開放底のチャンバ近くにおいて試料表面と装置ヘッドの底面との間に好ましくはガスの実質的な層流を維持する。これは、プラズマの領域とそのすぐ近くに、アルゴン、ヘリウム、又は窒素のようなガスの一定で及び実質的な層流があることを意味する。従って、ガスチャネルは、好ましくは、そこを通るガス層流を維持するように、サイズ決め及び形状付けされ、例えば、流量とガスチャネルが約2300又はそれ未満のレイノルズ数を有すように構成される。
【0030】
好ましくは、1又はそれ以上のガスチャネルは、ガス供給源からの好ましくは不活性ガスの流れを運ぶためにチャンバ内に開放部を有する。これは、周囲雰囲気に対するチャンバ及びガスチャネル内のわずかな超過圧力を維持し、サンプリング点上に実質的に連続し、一貫し、非反応性ガスの環境を確保し、塵、煙並びに励起光の光路及び試料表面上のレーザパルス衝突からのガス、粒子、飛沫等から検出光学系(共通チャネルでもよい)への光路を保護する。装置ヘッドの底面は、隣接する試料表面からの熱に耐えなければならず、好ましくはセラミック又は低い熱伝導率を有する他の耐熱材料を備える。装置ヘッド内及び特に底部近くに、これに限定されないが、冷却液又は冷却ガスのためのチャネルのような冷却手段を適用することができる。
【0031】
開放底のチャンバは、ある幾何学的形状に限定されず、いくつかの実施形態では、例えば、10mm~20mmの範囲の直径又は1cm2~3cm2の範囲の水平断面を有する概略円筒形状を有する。チャンバは、限定されないが、正方形、六角形、八角形又は他の断面形状を有することができる。チャンバの高さは、レーザによって生成されるプラズマを収容できるようなものである。いくつかの実施形態では、チャンバの高さは、5mmから12mm又は5mmから10mmの範囲などの5mm~15mmの範囲であり、例えば、5mm、6mm、8mm又は10mm、である。
【0032】
チャンバの開放底(入口)はチャンバの壁と同一の断面を有することができ、又は底(チャンバの穴)はチャンバ本体自体より、小さい断面積を有することができる。従って一実施形態では、チャンバは例えば、10mm、12mm、15mmのような10mm~15mmの直径の断面を有し、装置ヘッドの底部層は例えば、2mm、3mm又は4mmだけ小さい、2mm~4mm小さい直径の同心の穴を有する。この底部層の厚さは例えば、約1mm、1.5mm、2mm、2.5mm、3mm、又は4mmのような、厚さ1mm~6mmの範囲、又は1mm~4mmの範囲のような、1mm~10mmの範囲とすることができる。
【0033】
いくつかの実施形態では、装置ヘッドの底面は、好ましくは、例えば、高温耐性のあるセラミック層のような、耐熱性のある層である断熱層を備える。底面の底部は、開放底のチャンバと同心の穴を有し、穴は、同一のサイズ及び形状であり、チャンバの断面と同じサイズ及び形状を有するか、又は、より小さい又は大きいサイズを有し、上述の開放底のチャンバの選択的な狭い底の穴として構成することができる。従って、このような耐熱層内の穴は、その一部が主チャンバ自体よりも狭い入口を規定するように構成することができる。入口開口部は、耐熱層と同じ厚さ又はより小さい厚さを有することができ、例えば層は4mm~12mmの範囲の厚さを有することができる一方、チャンバへの入口開口部は、例えば1、2、3、4又は5mmなどの1mm~6mmの範囲の厚さを有することができ、入口開口部の上方で、耐熱層は、本実施形態の主チャンバの一部を形成することになる。
【0034】
試料のハンドリングは、有利には、例えば、これに限定されないが、分析対象の液体金属又は合金の供給源に隣接するロボットアームを使用して行うことができ、ロボットアームがるつぼ又は他の液体収容物を保持して、適切な量の試料をすくい上げることなどによって材料の一部を得る。ロボットアームによって保持されるるつぼは、そのあと試料るつぼとして使用されることができるるつぼであることができ、又は、他の実施形態ではロボットアームは、取得した試料を別の指定の試料るつぼへ注ぐために使用することができる。液体金属の試料は、例えば、人間オペレータが、還元セル、混合炉、保持炉等から金属を抽出するための試料ひしゃくを使用することによって、試料るつぼに手動で導入されることもでき、試料ひしゃくは、いくつかの実施形態では測定中に試料を保持する試料るつぼとして使用することもできる。
【0035】
いくつかの実施形態では、試料るつぼは有利には電磁誘導手段の近傍へ持ち込まれ、これは、同時に加熱及び攪拌効果を提供する。そのような実施形態では、本発明の重要な特徴は、試料と加熱及び攪拌手段の間の結合が、前記元素分析を実行するのに適した期間中、所望の温度を維持し且つ液体金属試料の均質化を確保しながら、表面の動きを最小化するように構成され制御される。測定が実施される間の期間は、ここでは測定期間と呼ばれる。測定期間の間、液体金属試料は、誘導場の供給源に近接して維持され、二つの間の適切な結合が確保される。好ましい実施形態では、供給源は、試料るつぼの下に配置される実質的に平らで円形の誘導素子を備える。
【0036】
例えば液体金属がこぼれることに対する保護のために、発熱体は、セラミック表面又は他の適切な耐熱材料からの表面のような天板又は同様の平坦な表面内に適切に配置されることができ、測定期間中の誘導発熱体からバルク金属溶液までの最小距離は、誘導発熱体とその駆動力の正確な構成に依存し、例えば10mm~50mmの範囲にあることができる。
【0037】
他の実施形態では、加熱は、伝導加熱のような誘導加熱以外の方法で供給することができ、有利には、試料中にかなりの程度の対流を提供するように構成される。
【0038】
いくつかの実施形態では、試料るつぼは、リザーバとして配置され、試料を接続されたダクト又は開口部を介してリザーバに供給することができ、同じ又は別のダクト又は開口部を介してリザーバから供給することができる。このようなリザーバは、例えば、生産設備内の流れから、又は炉などからの導管として、溶融金属を導くことができる専用の試料ループ上に配置することができる。好ましくは、ダクト又は開口部は、分析中に貯蔵器を通る金属の流れを止めるためにゲートバルブ等で閉じることができる。
【0039】
本明細書で使用される”試料るつぼ”という用語は、一般に、上述の状況及び同様の場合を参照し、つまり、高温に耐えることができ、液体金属を保持できる任意の容器を言及し、及び任意のサイズの試料るつぼを参照することができる。さらに、試料るつぼは、特定の形又は材料に特定されず、しかし、その寸法は測定装置に関して、液体金属試料の正確な操作及び位置決めを可能にするように選択されなければならない。試料るつぼは、分析される特定の液体金属又は合金に対するヒートショックへの耐性がありノンウェッティングであることが有利である。
【0040】
本発明の好ましい実施形態では、LIBS測定は、装置ヘッドが液体金属試料の表面上方の所定の距離に配置されるように、全体として測定装置を動かすこと、又は本明細書で装置ヘッドと呼ばれる装置の可動部を動かすこと、又は試料容器を動かすこと、又はそれら両方によって、試料容器に対して配置される非接触式の測定装置を使用して、試料表面上で実施される。本装置は測定期間の間、測定点の周囲において及び測定点をおおって、好ましくは不活性ガスの実質的な層流を可能にするように構成されるべきである。
【0041】
試料るつぼは、実質的に上向きに開口しており、これは、るつぼ内の試料表面の十分な部分が励起手段に対して露出されるべきであり、励起に起因する試料からの発光の一部が受光光学系に到達しなければならないことを意味している。試料容器のサイズと形状に応じて、容器の上端はいくつかの実施形態では、実質的に試料表面全体が露出されるように完全に開口されてもよく、他の実施形態では、上端は部分的に閉じられていて、限定されないが、例えば30%、40%、50%、60%、又は75%閉じられるが、試料表面への必要なアクセスの上記基準を満足する。
【0042】
液体金属試料の一貫し実質的に一定な温度が分析の間、保証されることが、本方法の前提であり、前記温度は金属又は合金の融点より高い。これは、好ましい実施形態では、試料容器が能動的に連続的に又は周期的に加熱されることを伴う。いくつかの実施形態では、能動的な加熱は試料分析の直前に、つまり、試料プラズマからの発光スペクトルが感知/記録される前に、止められる。本発明のいくつかの実施形態では、試料は、例えば少なくとも600℃より上、少なくとも700℃より上、少なくとも800℃より上、少なくとも1000℃より上、又は少なくとも1200℃又はより高温より上、他例えば約1600℃より上、のような少なくとも400℃より上の温度に加熱され、維持される。分析の間の試料の消耗の最適温度は、特に、分析される特定の種類の金属又は合金の融点に依存する。
【0043】
非限定的な例として、純粋なアルミニウムは660℃の融点を有し、かくして本発明の文脈では、試料の最適な温度は、約680℃から又は約700℃から、約780℃まで、約760℃まで又は約750℃までの範囲のように、約660℃から約960℃までの範囲にあってもよい。他の金属及び合金については、より高い温度が溶融状態に試料を維持するために必要であり、例えば、鋼は種類及びグレードに応じて1370℃~1540℃の範囲に融点を有し、したがって、本発明のいくつかの非限定的な実施形態では、試料は約1400℃より上、約1500℃より上、又は約1600℃より上のような上記範囲内又はそれ以上の温度まで加熱される。好ましい実施形態では、溶融金属の温度は、試料容器自体において、例えば、シース熱電対を使用してモニターされる。液体金属の温度は、また間接的に、又は非接触光学式温度測定を使用することによってモニターすることができる。
【0044】
試料容器は、加熱手段の構成、試料を取得するために使用される方法などに応じた適切な体積の試料を収容するために異なるサイズを有すことができる。いくつかの実施形態では、試料容器内に置かれる試料の体積は、約50mLから又は約100mLから、約1000mLまで、約500mLまで、約300mLまで、約250mLまで、約200mLまで、又は約100mLまでで、例えば、50mL~500mL、100mL~300mLの範囲であり、例えば、約100mL、約150mL、又は約200mLである。分光分析の対象となる液体金属の実際の体積が比較的非常に小さくても(すなわち、照射され、検出される発光を発する実際の体積/面積)、より大きい全体の試料体積は、安定した試料温度を維持することと、誘導加熱を伴う実施形態について、誘導場によって生成される体積力による内部運動及び試料の変形が原因の表面の不安定性を同時に最小にしながら、加熱及び攪拌手段の最適な相互作用を確保することが重大である。試料容器は、好ましくは、そこに収容される試料の所望の最大量に応じたサイズにされる。さらに、試料容器の形状は、潜在的に有害なレーザ及び測定中にサンプリング点から脱出するプラズマの放射を遮断するように、適切に選択し構成することができる。
【0045】
ある実施形態では、試料容器の加熱は、液体金属又は合金の隣接する供給源の表面に容器を接触させて配置することによって提供され、例えば、試料が取得されるトラフ内である。これは、試料容器が、このような加熱効果を伝達するように適切に構成されており、容器を表面に向けて移動させ、及び/又は少なくとも一定期間容器を表面と所望の接触状態に維持するように適切に構成された移動可能なプラットフォーム(例えば、伸びる可動アーム、フック等)上に配置されていることを意味する。このような実施形態では、加熱手段が、試料の実質的に化学的均質性を維持するのに十分な液体金属中の或る程度の対流を引き起こすのに十分な温度勾配を試料中に導入することが有利である。
【0046】
好ましい実施形態では、化学分析の正確さ及び精確さが最適化されるのが、本発明の方法と装置の利点である。分析の精度を確保するため、試料採取、試料調整、及び分析を含むステップが、異なる試料の分析に対して実質的に同様の方法で行われることが好ましく、つまり、同一又は実質的に同じ量の液体金属を採取して試料容器に入れ、試料を同一又は実質的に同じ温度に保持し、測定中又は測定直前において、引き起こされる内部運動が実質的に同じ程度となる。さらに、サンプリング点の位置とその近傍環境、すなわちサンプリング点及びその直上並びに光励起の経路に沿った局所的な雰囲気は、実質的に同様に維持される。また、一貫性を維持することは、同じ試料の繰り返し分析、並びに異なる試料の分析の間の両方において、励起及び検出手段と試料表面との間の同一の又は実質的に同じ所定の距離で連続的な分析を実行することを要求する。これを達成するために、上述のステップは、好ましくは、本発明の好ましい実施形態のために本明細書で記述されているように自動化される。
【0047】
いくつかの実施形態では、分析のために液体金属試料を準備する方法は、試料の最表面層を除去するステップを付加的に備えており、特に、試料はサンプリングと分析の間に待機する必要があり、表面にクラスト又はフィルムが形成される。いくつかの実施形態では、これは好ましくは非濡れ性材料の機械的スクレーパ、特に分析直前に金属の表面に沿って移動する自動スクレーパで、又は試料が固定スクレーパに対して移動することによって、表面を掬い取ることによって行われる。スクレーパは、実質的に平坦な底面から液体金属試料内に延びて、測定ヘッドの一部として備えることができ、スクレーピング機能は、測定を実行する前に測定ヘッドを水平に移動させることによって実行することができる。スクレーパは、別個の部材として配置することもできる。いくつかの実施形態では、スクレーピングは、試料るつぼをスクレーパを越えて移動させることによって実行される。いくつかの実施形態では、表面層の除去は、実際の分析に先立って、測定点で試料表面に衝突するレーザパルスなどの励起方法を用いて、単独で又は機械的スキミングに加えて達成することができる。このような「クリーニングパルス」からの発光もまた表面汚染の存在及び化学的性質を決定するために、有利にモニターすることができる。「クリーニングパルス」は、LIBS測定を実施するために使用されるプラズマ励起パルスとは異なるパルスエネルギーを有するように構成することができる。
【0048】
本発明の重要な特徴は、一方の励起手段及び/又は受光光学系の特定の部分と他方の試料表面との間に所定の距離を確保することである。しかしながら、これが技術的に実現可能なのは、液体試料の場合、同時に液体表面の動きを最小限に抑えることができる場合である。本発明は、代表する測定値を保証するために、分析の間、内部運動、並びに実質的に一定の試料温度を維持することが重要であることを教示する。これらの条件は、±100μmより少なく、好ましくは±50μmより少なく、及び、さらに好ましくは±25μmより少なく変化する距離で、測定プロセスを通して、試料表面が励起及び/又は検知手段との固定関係に維持されることを確保しながら、同時に満足させることができるのが、本発明の方法の利点である。
【0049】
試料表面までの適切な距離をさらに確保するため、受光光学系は、試料表面から所定の距離に測定毎に正確に配置されるべきである。これは、好ましくは、試料容器の開口部を通って試料表面に向けられる装置ヘッド内の距離センサを有することにより行われる。距離センサからの出力は、所望の値へ距離を調整するため、装置ヘッド、受光光学系及び/又は試料容器の動きを移動機構により制御する制御ユニットへ伝達される。いくつかの実施形態では、装置ヘッドの正確な位置決めは、装置ヘッド又はその可動内部ユニット又は可動プラットフォームを動かすための適切な歯車機構と協働するサーボモータを使用することによって達成される。ステップモータを含む、電磁コイル又は他の並進運動手段を使用してもよい。距離センサと制御ユニットは、有利には、動的に作動するように構成することができ、例えば、試料の操作、処理及び分析の間、センサは連続的に作動し、試料表面までの距離を測定し、センサからのフィードバックに基づいて、制御ユニットが必要に応じて実質的に連続的に距離を調整する。
【0050】
一実施形態では、測定ヘッドは、1又はそれ以上のピン又は類似の離散構造の特徴を備え、これは測定ヘッドの実質的に平らな底面から延び、測定ヘッドが測定位置に配置されたとき、液体金属試料の表面に接触し又は貫通し、これは液体金属試料の表面上の垂直方向の波動を低減することを目的としていて(例えば、融点に近い純粋なアルミニウムの場合、1000mN/mまでの高い表面張力を示すことがある)、前記波動は例えば、液体金属試料の誘導運動、先に試料表面に衝突したレーザパルスから伝播する衝撃波、開放底のチャンバからのガスの流れ、又は外部の機械振動に関連する。
【0051】
サンプリングされる箇所(すなわち、試料の励起が起こる液体表面上の箇所)及びその真上の局所的環境/雰囲気は、繰り返される測定の間実質的に一貫している。LIBS測定の場合、これは例えば、試料と相互作用するときにレーザパルスの一貫したエネルギーを確保することによって、好ましい実施形態では、不活性雰囲気条件がサンプリング点、及びその周辺で維持されることを確保することによって達成されるが、これらに限定されない。したがって、好ましい実施形態では、最も一般的にはアルゴンのような不活性ガスの流れが、下記に説明される通り、チャンバのような開放底空間を通って、サンプリングのポイントに適用される。本発明の枠組みの中で、装置ヘッドからの任意のガスの流れが実質的に層流であり、著しくは液体金属の表面を摂動させず、本発明によって確保される状態を乱さないことが重要である。
【0052】
要約すると本発明の装置は、測定装置を構成し、以下のように液体金属試料に作用する手段を備えており、
-最表面層は、分析前に金属試料から除去することができる
励起光学系を以下のように構成され、
-試料表面が、適切なビーム焦点の1レイリー長以上手前に配置される
-試料表面が、測定ヘッドの実質的に平らな底部に対して正確に位置付けられ配置される
分析の間、以下を保証し、
-試料の温度が、実質的に一定である
-分析の間の液体金属の表面運動が最小化される
-実質的に層流ガス流が、光ビーム経路内の安定した状態を維持するため、及びレーザ誘起プラズマの発達のために提供される
及び、いくつかの実施形態では、以下を保証し、
-液体金属中の内部運動が、十分に維持される
また金属のサンプリングと処理は、好ましくは、液体金属の加熱及び攪拌手段並びに測定装置に関して、試料の一貫し且つ正確な位置決めのために自動化される。本装置は、いくつかの実施形態では、例えば、金属製造又は処理プラントのオープントラフ、保持炉、合金炉又は溶融処理るつぼの付近のような、固定された場所で使用されるために構成されるがこれに限定されるものではない。他の実施形態では、装置は容易に輸送又は携行できるように構成され、例えば、あるサンプリングポイントから他のサンプリングポイントへ運ぶことができるプラットフォーム上に構成される。
【0053】
当業者であれば、以下に説明する図面は、説明のためだけのものであることを理解できる。図面は、本発明の教示の範囲をいかなる方法でも限定することを意図していない。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【
図1】
図1は、試料に対する光学系及びレーザビームの幾何学的配置を示す。
【
図2】
図2は、層流ガス流がどのように本発明の装置ヘッド及び装置ヘッドと試料表面の間を通って提供されるかを示す。
【
図3】
図3は、レーザビーム経路及び発光検知のための経路に配置されたガス流を伴う実施形態を示す。
【
図4】
図4は、試料の均質性を高めるために試料に誘導加熱を適用する実施形態を示す。
【
図5】
図5は、誘導加熱手段への結合を減少させることによってどのように表面の不安定性が低減されるのかを示す測定結果を示す。
【
図6】
図6は、距離測定センサが装置ヘッドに配置される実施形態を示す。
【
図7】
図7は、どのように耐熱性の底板が装置ヘッドの底部に配置されるかを示す。
【
図8】
図8は、試料表面の垂直方向の波動を減らすために試料表面に触れる、装置ヘッドから延びるピンを有する実施形態を示す。
【
図9】
図9は、試料るつぼの下に配置される平らな誘導発熱体を有する、本発明の実施形態の概略図を示す。
【
図10】
図10は、試料るつぼが液体金属の流れに配置されることにより加熱される実施形態を示す。
【
図11】
図11は、液体金属試料が入口及び出口バルブを有する流路(チャネル)内のリザーバへ集められる本発明の実施形態を示す。
【
図12】
図12は、測定前に最表層を除去するための機械スクレーパの動きを示す。
【
図13】
図13は、トレーサブルな標準で校正されたOESシステムで取得された濃度測定値と本発明の特徴を実行するLIBS測定値との間の相関関係を示す。
【
図14】
図14は、液体アルミニウム中のいくつかの微量元素及び合金元素の本発明の特徴を用いた繰り返し測定値の相対標準偏差(%RSD)を、同一の溶融物からサンプリングした固体アルミニウムのOESシステムにおける測定の相対標準偏差と比較して示す。
【発明を実施するための形態】
【0055】
本発明は、本発明の一般的な概念の全体的な範囲を限定するものと解釈すべきではない添付の図面を参照して、さらに詳細に説明される。以下では、本発明の例示的な実施形態について、図を参照しながら説明する。これらの例は、本発明の範囲を限定することなく、本発明のさらなる理解を提供するために提供される。
【0056】
以下の説明では、本発明の実施形態を例示するのに役立ついくつかの特定の特徴が説明され、これは請求項によって別に定義される。同様に、一連のステップが説明され、当業者であれば、文脈で要求されない限り、ステップの順序は、結果として得られる構成とその効果にとって重要ではないことを理解するであろう。さらに、ステップの順序とは関係なく、説明したステップの一部又は全部の間に、ステップ間の時間遅延の有無が存在し得ることが当業者には明らかであろう。
【0057】
図1は本発明の本質的な幾何学的配置を示しており、パルスレーザビーム1と、集束レーザビームの焦点距離fを定義する集束要素2を備えるレーザ励起光学系との間の相互作用を示している。本(仮想の)焦点は試料23の内部に配置されて示されており、理想のビームの場合、焦点から両方向に1レイリー長Z
Rだけ延びるレイリー範囲を有している。実験的に、レイリー長は、ビームウエストからビームの断面積がそのウエストと比較して2倍である位置(焦点の両側)までのビームの入射方向に沿った距離として従来から定義される。
【0058】
レーザパルスは試料と相互作用して試料体積の一部分をアブレートし、その部分はここには破線(正確な比率ではない)で描かれており、液体表面上にプラズマプルーム3(正確な比率ではない)を生成する。
【0059】
図2は、どのようにガス流れ4(一般的には不活性ガス)がレーザビーム経路10、開放底のチャンバ5を通って流れて、プラズマプルーム3とチャンバ5の付近の装置ヘッド6の底面7を通過するのかを概略的に示している。底面は、好ましくは、るつぼ8内に保持された試料23の表面から約2mm~3mmの距離に維持される。
【0060】
図3は検知光学系(図示せず)へ向けて導く、別個の発光検知経路11の可能な構成を示しており、好ましくは、不活性ガスも、ガス経路12を通して発光検知経路11へ、さらにはレーザ発光経路10へ導かれる。
【0061】
図4は、誘導発熱体9が、試料を保持するるつぼ8の下に配置された実施形態を示す。誘導発熱体は実質的に平らな要素を形成する同心コイルの断面として示されている。るつぼ内の試料23との誘導結合は、概略的に示されている試料内の攪拌効果を生成し、試料の均質性を高める。試料の下に実質的に平らな要素を配置すること、及び誘導電力及び試料と平らな要素との間の距離を適切に調整することは、攪拌効果が測定の間に試料表面の過度な垂直運動を引き起こさないことを確保する。
【0062】
図5は誘導的に試料を加熱することの効果を示すグラフであり、誘導加熱手段との結合を減らすことにより、どのように表面の不安定性が低減されるかを示している。LIBS装置は説明のため、本発明による試料調整により配置され、試料るつぼの下に配置された平らな誘導発熱体を使用した誘導加熱によって試料るつぼを加熱し、るつぼと発熱体の間の距離を変化させる。
【0063】
グラフは、液体アルミニウムの試料と誘導発熱体との間の結合の関数として、表面の不安定性と温度降下の測定値の結果を示している。誘導体は、金属の融点を超える一定の固定温度を維持するように設定される。その後、試料を保持するるつぼは、各分光測定の開始時に誘導体から一定の距離離れるように移動される。表面の垂直運動(平均値からの標準偏差として示される)及び誘導電磁界との結合の減少による温度降下が記録される測定間隔は、30秒続く。試料るつぼの底部と誘導体の頂部との間の距離が小さい(5mm又はそれ未満)とき、試料の表面はより乱され、40μmから最も近く測定された距離(1mm)に対して90μm~100μmまでの表面の変動が観察された。逆に、試料の温度は、測定期間中に5mmで約10℃低下すると、比較的安定を維持する。距離がさらに増加するに連れて、表面の垂直運動は低減されるが、温度は測定期間の間により低下し、最大距離15mmで20℃近くにまでなる。斜線部分は、表面の垂直運動と温度降下とを同時に最小化する最適な適切な測定条件を本発明が確保する、特定の発熱体及びるつぼ構成のための適切な動作範囲を規定する。
【0064】
図6は、一方の発光と他方の励起及び受光光学系との間の正確及び精密な距離を確保するために距離測定を適用する本発明の実施形態を示す。距離測定センサ20は、装置ヘッド6内に配置され、装置ヘッドと試料表面との間の距離を検知する。距離センサは、試料表面までの正確な所定の距離を設定又は維持するための移動アクチュエータ(図示せず)を用いて装置ヘッドの垂直位置を調整する制御ユニットへ信号を伝達する。
【0065】
図7は、どのように耐熱性の底板35が装置ヘッド6の底部に配置されているかを簡略化した図で示す。その板は、開放底のチャンバ5への入口開口部36を形成し、入口開口部はチャンバに同心であるが、チャンバの壁よりわずかに小さい直径/断面を有する。
【0066】
図8は、本発明の任意選択の特徴であるピン15を示し、装置ヘッド底面から延び、装置ヘッドが測定位置にあるときに液体金属の表面に接触又は貫通する。実際の実施形態では、そのような特徴の数と形状は異なってもよい。本特徴の目的は、液体金属試料の表面の波の垂直運動に作用させることである。類似の特徴は、液体金属表面に接触させ又は内部に浸して、測定ヘッドと試料るつぼの互いに対する同時の水平運動を利用することによって、測定直前に表面から酸化膜又は鉱滓膜を除去するためのスクレーパの機能を実行するために使用可能である。
【0067】
図9は、本発明に従うシステムの概略的な例を示し、試料るつぼ8がハンドル24を有し、液体金属の試料23を収容する円筒ラドル(ひしゃく)の基本形状で示されている。るつぼの下には、るつぼから一定の距離にある円形及び平らな誘導発熱体9が示されている。装置ヘッド6は、試料るつぼ上に記載されており、不活性ガスのための供給経路12が設けられている。装置ヘッドは、試料表面へレーザビームを集束し方向づけ、且つ試料表面で生成されたプラズマから放出された放射物を受け取り伝達するための光学系を取り囲んでいる。熱電対30は試料の温度を測定する。
【0068】
図10は、試料るつぼ8が液体金属40の流れ内に配置されることによって加熱される実施形態を示す。これは例えば、液体金属の試料を集め、その後抽出し、測定中に静止位置にるつぼを保持するために、流れにるつぼを浸すための液体金属のトラフに隣接した移動手段(図示せず)に試料ラドルを取り付けることによって行われることができ、好ましくは、装置ヘッド6もまた、ヘッドが試料の上方へ適切に配置され、そのあとトラフから離れることができるように可動アーム又は可動プラットフォームに配置される。
【0069】
図11は、試料るつぼ8がリザーバとして構成される代替の実施形態を示しており、リザーバ内にダクト41、42を通って試料が供給可能である。ダクトは、有利には、製造設備内のような液体金属を保持するトラフ又は炉へ接続されて配置することができる。ダクト42は、リザーバの両側に1つずつ、2つのフラップ43、44を備えて示されており、これらは、測定前及び測定中にリザーバを通る流れを止めるために、リザーバの両側のダクトを閉鎖することができるそれぞれのゲートバルブの形式のゲートを表している。リザーバるつぼの下には、誘導発熱体9が示されている。
【0070】
図12は、測定の直前の液体金属試料23の表面をすくい取るためスクレーパ50を使用する原理を示し、試料表面に対するスクレーパの動きがあるように、スクレーパは表面にわたって動かされ、又は代替的に試料るつぼが動かされる。スクレーパは、装置に搭載され、又は別パーツとして構成することができる。
【0071】
図13は、本発明を用いて実施した液体アルミニウム中の3つの微量元素のLIBS測定と、同じ溶融試料から鋳造した固体試料の対応するOES測定との相関を示す。すべてのケースで相関係数(ピアソンr)は0.9995を超え、これは、相関が測定濃度の1%のオーダーのLIBS及びOES測定におけるランダム測定誤差によってのみ制限されることを示唆する。両方の場合における測定標準偏差は、図中のシンボルのサイズとほぼ同じかより小さい。
【0072】
図14は、本発明(白丸)を使用して液体アルミニウム(パネル(a))及びAlSi7Mg0.3アルミニウム合金(パネル(b))中で測定された表示濃度における10元素(ケイ素、鉄、銅、マンガン、ニッケル、クロム、チタン、ガリウム、及びアンチモン又はマグネシウム)の相対測定標準偏差を示す。比較のために、ASTMサンプリング及び測定基準E1251に従って、同じ融液から準備された対応する固体試料(黒四角)のOES測定で観察されたランダム誤差を図に示す。ほとんどの元素において、液体金属の測定値のランダム誤差は、対応する固体試料で観察される誤差よりも小さい。この違いは、凝固中の偏析が試料の均質性に大きな影響を与えることが知られている合金の場合により顕著である。
【国際調査報告】