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特表2023-551936電動車両用の一体型駆動系アセンブリ及び電動車両
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  • 特表-電動車両用の一体型駆動系アセンブリ及び電動車両 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-12-13
(54)【発明の名称】電動車両用の一体型駆動系アセンブリ及び電動車両
(51)【国際特許分類】
   F16H 57/04 20100101AFI20231206BHJP
   H02K 7/116 20060101ALI20231206BHJP
【FI】
F16H57/04 G
H02K7/116
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023533736
(86)(22)【出願日】2021-11-29
(85)【翻訳文提出日】2023-07-20
(86)【国際出願番号】 CN2021134023
(87)【国際公開番号】W WO2022116940
(87)【国際公開日】2022-06-09
(31)【優先権主張番号】202011399417.1
(32)【優先日】2020-12-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522218725
【氏名又は名称】ヴァレオ、パワートレイン、(ナンジン)、カンパニー、リミテッド
【氏名又は名称原語表記】VALEO POWERTRAIN (NANJING) CO., LTD.
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【弁理士】
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100127465
【弁理士】
【氏名又は名称】堀田 幸裕
(74)【代理人】
【識別番号】100202304
【弁理士】
【氏名又は名称】塙 和也
(72)【発明者】
【氏名】イェーチン、チン
(72)【発明者】
【氏名】チェン、カイ
(72)【発明者】
【氏名】スン、クオチアン
【テーマコード(参考)】
3J063
5H607
【Fターム(参考)】
3J063AA04
3J063BA15
3J063XD03
3J063XD23
3J063XD32
3J063XD64
3J063XH01
3J063XH23
5H607AA02
5H607BB01
5H607BB07
5H607CC03
5H607CC07
5H607DD03
5H607EE34
5H607EE36
(57)【要約】
本開示は、電動車両用の駆動系アセンブリに関する。駆動系システムは、電気モータと、電力インバータと、減速機と、単一の入口及び単一の出口を有する1つの冷却回路とを備える。冷却回路は、その中のすべての構成要素を潤滑及び冷却するために、一体型駆動系アセンブリ全体に流れる油を分配するように構成され、冷却回路は、電力インバータによって提供される少なくとも1つのパワースイッチングデバイスを冷却するように構成された冷却プレートの内側に配置された油分配通路を備え、分配通路を流れる油を案内するための少なくとも1つのバッフルが分配通路内に設けられ、冷却プレートに対応するカバーが、油分配通路を囲み、少なくとも1つのバッフルと密封式に接触するように設けられる。本開示はまた、上述が備えることによる一体型駆動系アセンブリを備える電動車両に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電動車両用の一体型駆動系アセンブリ(1)であって、
ロータとステータとを備える電気モータ(12)と、
前記電気モータ(12)に電気的に接続され、前記ステータに電気エネルギーを供給するように構成された電力インバータ(11)と、
前記電気モータ(12)に結合され、前記ロータによって提供されるトルクを受け取るように構成された減速機(13)と、
単一の入口(31)及び単一の出口(32)を有する1つの冷却回路(3)であって、前記冷却回路(3)が、その中のすべての構成要素を潤滑及び冷却するために前記一体型駆動系アセンブリ(1)全体にわたって流れる油を分配するように構成され、前記冷却回路(3)が、前記電力インバータ(11)によって提供される少なくとも1つのパワースイッチングデバイス(17)を冷却するように構成された冷却プレート(18)の内部に配置された油分配通路を備え、前記分配通路を通って流れる前記油を案内するための少なくとも1つのバッフル(15)が前記分配通路内に設けられ、前記冷却プレート(18)に対応するカバー(19)が、前記油分配通路を囲み、前記少なくとも1つのバッフル(15)と密封式で接触するように設けられる、冷却回路(3)と、を備える、駆動系アセンブリ。
【請求項2】
封止材料(20)が、前記カバー(19)の内面(191)と前記バッフル(15)の少なくとも1つの各々の一端(151)との間に設けられる、請求項1に記載の駆動系アセンブリ。
【請求項3】
前記カバー(19)の前記内面(191)に、封止材料(20)が配置されている、請求項2に記載の駆動系アセンブリ。
【請求項4】
前記油分配通路内に複数の冷却スパイク(16)が設けられ、前記冷却スパイク(16)が、高密度で前記油分配通路全体に配置される、請求項1に記載の駆動系アセンブリ。
【請求項5】
前記冷却スパイク(16)が、前記冷却プレート(18)及び前記カバー(19)上に設けられる、請求項4に記載の駆動系アセンブリ。
【請求項6】
前記少なくとも1つのパワースイッチングデバイス(17)が、前記パワースイッチングデバイスが両側から冷却され得るように、2つの冷却プレート(18)の間に配置される、請求項1に記載の駆動系アセンブリ。
【請求項7】
前記冷却回路(3)によって分配される前記油が、超低粘度油である、請求項1に記載の駆動系アセンブリ。
【請求項8】
前記冷却回路(3)を通る油の流れを制御するために前記入口(31)と連通するように構成されたオイルポンプ(4)をさらに備え、
前記オイルポンプ(4)が、前記電動車両側(2)に提供され、前記一体型駆動系アセンブリが前記電動車両に組み込まれたとき、又は前記オイルポンプ(4)が前記駆動系アセンブリ(1)と一体化されたときに、前記入口(31)に接続され、
前記オイルポンプ(4)が、容積式ポンプである、請求項1に記載の駆動系アセンブリ。
【請求項9】
前記出口(32)と、前記駆動系アセンブリ(1)から排出された前記油を冷却し、前記冷却された油を前記駆動系アセンブリ(1)内に移送するための前記オイルポンプ(4)との間に連通するように構成された放熱器(5)をさらに備える、請求項8に記載の駆動系アセンブリ。
【請求項10】
前記放熱器(5)が、前記駆動系アセンブリ(1)と一体化されているか、又は前記電動車両側(2)に提供される、請求項9に記載の駆動系アセンブリ。
【請求項11】
請求項1から10のいずれか一項に記載の前記一体型駆動系アセンブリ(1)を備える、電動車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示の実施形態は、概して、電動車両用の一体型駆動系アセンブリ、及び一体型駆動系アセンブリを備える電動車両に関する。
【背景技術】
【0002】
燃料効率の高い低排出ガス車両を設計及び構築する傾向は劇的に増加しており、この傾向は、環境に対する懸念並びに燃料コストの増加に対する懸念によって引き起こされている。この傾向の最先端は、BEV(「バッテリ電気自動車」)、HEV(「ハイブリッド電気自動車」)、PHEV(「プラグインハイブリッド電気自動車」)、航続距離延長EV、FCEV(「燃料電池電気自動車」)などの、比較的効率的な燃焼エンジンと電気駆動モータとを組み合わせた電動車両の開発であった。電動車両は、熱を発生させる構成要素、特に駆動系システムを含むことができる。過度の発熱は、性能の低下又は構成要素の損傷を引き起こす可能性がある。特に、高出力電動車両、例えば、電力が200kWより大きいBEV用の冷却ソリューションは、駆動系システム内に少なくとも2つの冷却回路、例えばモータ/減速機用の1つの油冷回路及びインバータ用の1つの水冷回路を含み、これは少なくとも2つのポンプを有する少なくとも2つの油圧回路を必要とするが、駆動系システム内の異なる構成要素を冷却するための異なる冷却剤を有する各冷却回路の配置はより複雑になり、コストが高くなる。しかしながら、この油冷式モータ及び減速機は、より高い性能及び効率を保証する。
【0003】
100kW未満の低出力では、モータを小型化する可能性がさらにあることによって利点が明らかであっても、高コストのために1つのシステムで油冷と水冷の両方を使用することを正当化することは困難になる。したがって、全システムに油冷のみを使用することは、インバータをオイルによって効率的に冷却することができる場合に魅力的な解決策となり得、これはインバータ冷却の従来の設計に伴う大きな問題を構成する。
【0004】
したがって、電動車両用の駆動系システムのための油冷設計の任意の改善が、少なくとも単純な構成、高効率及び低コストで提供され得ることが望ましいであろう。
【発明の概要】
【0005】
本発明の態様及び利点は、以下の説明に部分的に記載されるか、又は説明から明らかであり得るか、又は本発明の実施を通して習得され得る。
【0006】
本明細書に開示される一態様によれば、電動車両用の一体型駆動系アセンブリが提供される。駆動系アセンブリは、ロータとステータとを備える電気モータと、電気モータに電気的に接続され、ステータに電気エネルギーを供給するように構成された電力インバータと、電気モータに結合され、ロータによって提供されるトルクを受けるように構成された減速機とを備える。駆動系アセンブリは、単一の入口及び単一の出口を有する1つの冷却回路をさらに備える。冷却回路は、その中のすべての構成要素を潤滑及び冷却するために、一体型駆動系アセンブリ全体に流れる油を分配するように構成され、冷却回路は、電力インバータによって提供される少なくとも1つのパワースイッチングデバイスを冷却するように構成された冷却プレートの内側に配置された油分配通路を備え、分配通路を流れる油を案内するための少なくとも1つのバッフルが分配通路内に設けられ、冷却プレートに対応するカバーが、油分配通路を囲み、少なくとも1つのバッフルと密封式に接触するように設けられる。
【0007】
一実施形態では、封止材料は、カバーの内面とバッフルの少なくとも1つの各々の一端との間に設けられる。
【0008】
一実施形態では、封止材料がカバーの内面に配置される。
【0009】
一実施形態では、複数の冷却スパイクが油分配通路内に設けられ、冷却スパイクは、高密度で油分配通路の全体に配置される。
【0010】
一実施形態では、冷却スパイクは、冷却プレート及びカバー上に設けられる。
【0011】
一実施形態では、少なくとも1つのパワースイッチングデバイスは、パワースイッチングデバイスが両面から冷却され得るように、2つの冷却プレートの間に配置される。
【0012】
一実施形態では、冷却回路によって分配される油は超低粘度油である。
【0013】
一実施形態では、駆動系アセンブリは、冷却回路を通る油の流れを制御するために入口と連通するように構成されたオイルポンプをさらに備える。
【0014】
一実施形態では、オイルポンプは、電動車両側に提供され、一体型駆動系アセンブリが電動車両に取り付けられるとき、又はオイルポンプが駆動系アセンブリと一体化されるときに入口に接続される。
【0015】
一実施形態では、オイルポンプは容積式ポンプである。
【0016】
一実施形態では、駆動系アセンブリは、駆動系アセンブリから排出された油を冷却し、冷却された油を駆動系アセンブリに移送するために、出口とオイルポンプとの間で連通するように構成された放熱器をさらに備える。
【0017】
一実施形態では、放熱器は、駆動系アセンブリと一体化されるか、又は電動車両側に提供される。
【0018】
本明細書に開示された別の態様によれば、上述の一体型駆動系アセンブリを備える電動車両が提供される。
【0019】
本開示のこれら及び他の特徴、態様、及び利点は、以下の詳細な説明を参照してよりよく理解されるであろう。本明細書に組み込まれ、本明細書の一部を構成する添付の図面は、本発明の実施形態を例示し、説明と共に、本発明の原理を説明するのに役立つ。
【0020】
当業者に向けられた本発明の最良の形態を含む、本発明の完全かつ実施可能な開示が、添付の図面を参照して本明細書に記載されている。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本開示の例示的な態様による電動車両用の一体型駆動系アセンブリの概略図である。
図2】冷却プレート及び冷却プレート内に配置された油分配概略図の例示的な図である。
図3】1つの例示的な冷却プレート及びそのカバーを示す、本開示の例示的な態様による電力インバータの一部の概略図である。
図4A】電力インバータのパワースイッチングデバイス及び冷却プレートの1つの例示的な配置の概略図である。
図4B】電力インバータのパワースイッチングデバイス及び冷却プレートの1つの例示的な配置の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
ここで、本発明の実施形態を詳細に参照し、その1つ又は複数の例を添付の図面に示す。詳細な説明では、図面の特徴を参照するために数字及び文字の符号を使用している。図面及び説明における同様又は類似の符号は、本発明の同様又は類似の部品を指すために使用されている。本明細書で使用される場合、「1つの(a)」、「1つの(an)」、及び「その(the)」という用語は、文脈上他に明確に指示されない限り、要素の1つ又は複数が存在することを意味することを意図している。「備える(comprising)」、「含む(including)」、及び「有する(having)」という用語は、包括的であることを意図しており、列挙された要素以外の追加の要素が存在してもよいことを意味する。「第1の」及び「第2の」という用語は、ある構成要素を別の構成要素から区別するために交換可能に使用することができ、個々の構成要素の位置又は重要性を示すことを意図しない。
【0023】
ここで図面を参照すると、図面全体を通して同一の符号は同じ要素を示しており、図1は、本開示の一実施形態による駆動系アセンブリ1を示している。駆動系アセンブリ1は、一般に、電力インバータ(図示せず)、電気モータ12、及び減速機13と一体化されている。したがって、図示の駆動系アセンブリ1は単一のユニットである。
【0024】
電気モータ12は、同期モータ又は非同期モータとすることができる。同期モータである場合、それは巻線ロータ又は永久磁石ロータを含むことができる。電気モータによって供給されるピーク電力は、10KW~80KWの間、例えば40KW程度、公称供給電圧48V~400V、又はより高い電力では最大800Vとすることができる。高電圧供給に適合される電気モータの場合、この電気モータによって供給される公称電力は25KWであり得る。図示の実施形態では、電気モータ12は、永久磁石を有する同期モータであり、10KW~80KWのピーク電力を提供する。電気モータ12は、三相巻線を有するステータ、又は2本の三相巻線若しくは五相巻線の組み合わせを含むことができる。
【0025】
減速機13は、電気モータ12に結合されている。減速機13は、電気モータの高速、低トルクを低速、高トルクに変換することができる。減速機13は、例えば減速によるトルク増加のために、ギアの一方が電気モータ12によって駆動される、2つ以上のギアを備え得る。減速機は、電気モータの1つの伝動シャフト(図示せず)によって駆動される駆動ギアと、従動機械的負荷(図示せず、例えば、車両のホイールシャフト)に結合されたより大きな直径の別のギアとを連結する伝動シャフト、すなわち中間シャフトをさらに備えることができる。
【0026】
図示の実施形態では、電気モータ12及び減速機13は、高い熱容量を有するように設計されている。電力インバータは、電線によって電気モータ12に取り付けられ、電気モータ12の壁又は減速機13の壁又は電気モータ12及び減速機13の両方の壁に機械的に取り付けられる。電力インバータ11は、公称電圧の電気エネルギーを供給する電気エネルギー貯蔵ユニット(図示せず)によって供給される直流(「DC」)を、電気モータ2に使用される交流(「AC」)に変換する。電力インバータは、電界効果トランジスタ(「FET」)、金属酸化膜半導体電界効果トランジスタ(「MOSFET」)又は絶縁ゲートバイポーラトランジスタ(「IGBT」)などの少なくとも1つのパワースイッチングデバイス17(図4A及び図4Bに示すように)を備えることができる。公称供給電圧48Vの場合、パワースイッチングデバイスはMOSFETトランジスタとすることができる。高電圧に対応する供給電圧の場合、パワースイッチングデバイス17はIGBTとすることができる。
【0027】
図1を参照すると、電気モータ12は、1つのハウジング(図示せず)に収容され、減速機13は、別のハウジング(図示せず)に収容される。2つのハウジングは一体であってもよい。2つのハウジングは、例えばねじによって互いに堅固に固定され得る。ここでは、2つのハウジングの間に封止壁が設けられている。
【0028】
いくつかの実施形態では、駆動系アセンブリ1の外側への放熱のために冷却フィン(図示せず)を設けることができる。冷却フィンは、ハウジングの外面によって担持されてもよい。これらの冷却フィンは、例えば、ハウジングと一体に作られる。これらの冷却フィンは、ハウジングの外面を増大させることができ、したがってハウジングを介して駆動系アセンブリの外側への放熱を促進する。ハウジングの外面全体が冷却フィンを担持してもよい。冷却フィンは、列状に配置されてもよく、一定又は一定でないピッチが、2つの隣接する列の間に存在してもよい。これらの列はすべて同じ向きを有してもよく、有していなくてもよい。適切な場合には、同じフィンが、第1に一方のハウジングに延在し、第2に他方のハウジングに延在し得る。
【0029】
図示の実施形態では、冷却剤が流れる冷却回路3が、冷却剤を駆動系アセンブリ1全体に分配するために設けられている。冷却回路3を流れる冷却剤は、超低粘度の油であってよい。この種の超低粘度油の40°Cでの動粘度値は40未満であり、100°Cの動粘度値は10未満である。冷却回路3を介して駆動系アセンブリ全体を流れるこの種の超低粘度油を使用することにより、駆動系アセンブリに含まれるすべての構成要素をより低い圧力降下でより効率的に潤滑及び冷却することができる。
【0030】
冷却回路3は、駆動系アセンブリ1上に設けられる単一の入口31及び単一の出口32を備える。入口31は、冷却回路3に供給される超低粘度油の流れを必要な流量に制御するためオイルポンプ4と接続することができ、出口32は、冷却回路3から排出された加熱された油を冷却するため放熱器5と接続することができる。一方、放熱器5は、冷却された油をオイルポンプ4を介して駆動系アセンブリ1内に移送するためオイルポンプ4と接続され得る。図示の実施形態では、オイルポンプ4及び放熱器5は、電動車両側2に位置付けられる。駆動系アセンブリ1が電動車両に設置されると、入口31及び出口32は、電動車両側2のいくつかのホース6を介してオイルポンプ4及び放熱器5とそれぞれ流体連通し、それにより、超低粘度油は、動作中に冷却及び潤滑のために駆動系アセンブリ1全体にわたって自律的に流れることができる。
【0031】
一実施形態では、放熱器5は、駆動系アセンブリ1から加熱された油を受け取り、冷却された油を駆動系アセンブリに戻すために、駆動系アセンブリ1と一体化され得る。
【0032】
一実施形態では、オイルポンプ4は、電気ポンプ又は機械式ポンプであってもよく、駆動系アセンブリ1と一体化されてもよく、特に減速機13に機械的に一体化されてもよい。オイルポンプ4は、必要な流量、特に加速された流量を提供するための容積式ポンプとすることができる。冷却のために高い油圧を加えることができるようにするために、遠心ポンプの代わりに容積式ポンプが使用され、容積式ポンプはスイッチングデバイスから熱を引き出すヒートシンクを介して放熱能力を増加させる。
【0033】
一実施形態では、冷却回路3は、減速機13内に設けられた油リザーバ(図示せず)を備えることができ、油リザーバは、その中に必要な超低粘度油を保持するために使用され、これにより、駆動系アセンブリ1内の冷却及び潤滑用の油の最小流量を確保することができる。
【0034】
ここで図4A及び図4Bを参照すると、IGBTなどのパワースイッチングデバイス17は、電力インバータの一方の冷却プレート18の内側に配置された油分配通路内を流れる油によって片側冷却され得る。パワースイッチングデバイス17は、2つの冷却プレート18内を流れる油によって両面冷却されてもよく、すなわち、パワースイッチングデバイス及び冷却プレートはサンドイッチ構造として形成される。
【0035】
一実施形態では、直接冷却パワースイッチングデバイス17、すなわちIGBTモジュールでは、放熱グリース及び追加のアルミニウムヒートシンクが除去されるので、放熱熱抵抗を改善することができるように、パワースイッチングデバイス17は油と直接接触する。直接接触冷却の採用は、限定的にコストが増加するが、例えば、インバータに関連する油冷却を利用する小型化された油冷却モータの使用によって容易に補償され得る。
【0036】
一実施形態では、パワースイッチングデバイス17は、IGBTからの電力損失を低減することができるように所与のRPMから始まる全波又はDVPWMのモードで制御され、油冷却の使用を可能にする。
【0037】
このような構成により、電気モータ12は油によって冷却され、高トルクでの効率を大幅に改善する。油冷モータは、水冷モータよりも加熱状態で5%効率的であり得る。冷却プレート及び油によって放散される熱を制限して、IGBTを通って流れる電流を大幅に低減することができる。
【0038】
ここで図2を参照すると、電力インバータの内部に油分配通路が配置されている。具体的には、油分配通路は、電力インバータ内に配置された冷却プレート18内に位置付けられ、冷却プレート18の周囲及び内面181に沿って形成される。冷却プレート18の周囲は、図3に示すように、カバー19との封止接続のための溝21を提供する。補助伝熱要素は、追加の放熱を提供するように油分配通路内に設けられる。実施形態に示すように、補助伝熱要素は、冷却プレート18によって、特に冷却プレート18の内面181によって提供されるいくつかの金属スパイク16であってもよく、スパイク16は、内面から内部に油分配通路を封入するために使用するカバー19(図3に示すように)に向かって延在する。補助伝熱要素は、放熱材料、例えばアルミニウムで作られる。一実施形態では、金属スパイク16は、高密度の油分配通路で満たされ得る。高密度スパイクは、より高い圧力降下のために従来の遠心水ポンプ回路にとって重要な負担であるが、容積式オイルポンプは、より高い圧力降下をほとんど検知しない。金属スパイク16は、円形及び/又は正方形(図示せず)の横断面、又は油流F速度の改善を助ける他の形状を有することができる。オイルポンプが供給されることにより、油は、冷却プレート18の一方の側から他方の側へと分配通路を流れる。オイルポンプは、放熱を増加させるために油の流れFの速度を増加させるため加速された流量を提供する。
【0039】
さらに図2を参照すると、少なくとも1つのバッフル15が、油分配通路全体を流れる油の流れFを案内するために油分配通路内に設けられる。図示の実施形態では、油の流れFのためのチャネルが「S」字形状として形成され得るように、冷却プレート18の2つの反対の縁部から2つのバッフル15が延在している。しかしながら、本明細書に記載のバッフル15及びスパイク16の構成は、単なる例に過ぎないことを理解されたい。他の例示的な実施形態では、バッフル15は、油の流れFを良好に改善するように、冷却プレート18の異なる形状に応じて他の構成又は方向に配置することができる。
【0040】
ここで図3を参照すると、冷却プレート18及び対応するカバー19の例示的な構成を示す。カバーに関する従来の設計では、スパイク16が冷却プレート18上に設けられると同時に、カバー19は平板であってよい。カバーに関する本設計では、カバー19及び冷却プレート18は両方ともスパイク16を設けることができ、カバー19によって提供されるスパイクは冷却プレート18に向かって軸方向に延在し、一方で冷却プレートによって提供されるスパイクはカバー19に向かって軸方向に延在し、その結果、冷却プレート18及びカバー19からのスパイクは、スパイク16間の流路ギャップを狭めることができるように離間され、それによりスパイク16の周りの流速を増加させ、冷却プレート18の冷却性能をさらに高める。元の水冷回路に多数のスパイクがあったとしても、この両側のスパイクの分布により、油を使用して水と同様のレベルの冷却に到達することができる。
【0041】
さらに図3を参照すると、カバー19が冷却プレート18に対応しているときに、バッフル15は、油分配通路を囲むように密封式でカバー19と接触し、特に、封止材料20が、カバー19の内面191と各バッフル15の一方の自由端部151との間に設けられる。冷却プレート18の周囲によって提供される溝21にも封止材料20が塗布されている。封止材料をカバー上に配置することで、油の流れFがカバーと冷却プレートとの間を横切ることを可能にするギャップによって引き起こされるチャネル内の流速損失を回避するようにカバーと冷却プレートとの間のギャップを確実になくすことができる。カバー上に封止材料を有することにより、熱を効率的に放散するための必須の要因である冷却プレート上のスパイクの数を増加させることができるが、古典的な方法の冷却の周囲のように、封止材料をヒートシンク上に直接配置しなければならない場合、溝は大きな断面をとり、スパイクの数が減少する。
【0042】
上記の構成により、駆動系アセンブリの冷却及び潤滑の両方のためのただ1つの液体回路が達成される。さらに、高いスパイク密度を有する水冷と比較して、約10%高いだけの熱抵抗に達し得る。
【0043】
本明細書は、最良の形態を含む本開示の実施形態を開示するために、また、任意の装置又はシステムの製作及び使用並びに任意の組み込まれた方法の実行を含む本開示の実施形態の実施を当業者にとって可能にするために、例を使用する。本明細書に記載された実施形態の特許可能な範囲は、特許請求の範囲によって定義され、当業者が想到する他の例を含むことができる。そのような他の例は、それらが特許請求の範囲の文言と異ならない構造要素を有する場合、又はそれらが特許請求の範囲の文言と実質的に異ならない同等の構造要素を含む場合、特許請求の範囲内にあることが意図される。
図1
図2
図3
図4A
図4B
【国際調査報告】