(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-12-13
(54)【発明の名称】多光子検出を用いたデュアルコム距離計測のための装置および方法
(51)【国際特許分類】
G01S 7/4861 20200101AFI20231206BHJP
G01S 17/18 20200101ALI20231206BHJP
G01C 3/06 20060101ALI20231206BHJP
【FI】
G01S7/4861
G01S17/18
G01C3/06 120Q
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023533798
(86)(22)【出願日】2021-12-01
(85)【翻訳文提出日】2023-07-28
(86)【国際出願番号】 GB2021053134
(87)【国際公開番号】W WO2022118014
(87)【国際公開日】2022-06-09
(32)【優先日】2020-12-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】391002306
【氏名又は名称】レニショウ パブリック リミテッド カンパニー
【氏名又は名称原語表記】RENISHAW PUBLIC LIMITED COMPANY
(74)【代理人】
【識別番号】110001243
【氏名又は名称】弁理士法人谷・阿部特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ニコラス ジョン ウェストン
(72)【発明者】
【氏名】デリック テルフォード レイド
(72)【発明者】
【氏名】ホリー ライト
【テーマコード(参考)】
2F112
5J084
【Fターム(参考)】
2F112AD01
2F112BA06
2F112CA12
2F112DA25
2F112DA28
2F112EA05
2F112FA03
2F112FA07
2F112FA21
2F112FA45
5J084AA05
5J084AD01
5J084BA03
5J084BA08
5J084BA36
5J084BA38
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5J084BB04
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5J084BB31
5J084BB40
5J084CA03
5J084CA27
5J084CA31
5J084CA49
5J084CA80
5J084EA04
5J084EA33
(57)【要約】
光学的距離測定装置または測距装置について記載されている。装置は、ゲートパルス列およびプローブパルス列を発生するための少なくとも1つの光パルス発生器(30,32;80,94;120,122;180,202;300,320)を含み、ゲートパルス列は、プローブパルス列とは異なる繰り返しレートを有する。ゲートパルスおよびプローブパルスは、異なるフリーランニング、モードロックレーザによって発生された超短レーザパルスであり得る。光学的プローブ構成はまた、プローブパルス列を1つまたは複数のオブジェクト(42、44、84、86、188、190、232、234、236、306、310)に向けて方向づけるために、および1つまたは複数のオブジェクトから戻される戻りプローブパルスを収集するためにも提供される。オブジェクトは、ターゲットオブジェクトおよびリファレンスオブジェクトを含み得る。装置は、多光子エフェクト検出器(58、104、140、210、324、330)を備え、ゲートパルス列と戻りプローブパルスの両方を多光子エフェクト検出器に向けるように構成される。装置は、工業検査、機械較正、位置測定などに使用し得る。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光学的距離測定装置であって、
ゲートパルス列およびプローブパルス列を生成するための少なくとも1つの光パルス発生器であって、前記ゲートパルス列は、前記プローブパルス列とは異なる繰り返しレートを有する、前記少なくとも1つの光パルス発生器と、
前記プローブパルス列を1つまたは複数のオブジェクトに向けて方向づけるため、および、前記1つまたは複数のオブジェクトから戻される戻りプローブパルスを収集するための光学的プローブ配置と、
を備え、
多光子エフェクト検出器を備え、前記ゲートパルス列と前記戻りプローブパルスの両方を多光子エフェクト検出器に向けて方向づけるように構成されることを特徴とする光学的距離測定装置。
【請求項2】
前記多光子エフェクト検出器は、前記ゲートパルスおよび前記プローブパルスの前記単一の光子の前記光子エネルギーよりも大きいバンドギャップを有する、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記多光子エフェクト検出器は、2光子エフェクト検出器を備え、ゲートパルス光子とプローブパルス光子との結合エネルギーは、前記2光子エフェクト検出器のバンドギャップよりも大きい、請求項1または2に記載の装置。
【請求項4】
前記多光子エフェクト検出器は、シリコンを含む、請求項1ないし3のいずれか一項に記載の装置。
【請求項5】
前記多光子エフェクト検出器は、複数の検出器素子を備える、請求項1ないし4のいずれか一項に記載の装置。
【請求項6】
前記多光子エフェクト検出器の前記出力を時間の関数として解析するための解析器を備える、請求項1ないし5のいずれか一項に記載の装置。
【請求項7】
少なくとも1つのピーク検出器および少なくとも1つのタイマを含む飛行時間モニタを備え、前記少なくとも1つのピーク検出器は、前記多光子エフェクト検出器の前記出力のピークを検出するように構成され、前記少なくとも1つのタイマは、前記検出されたピーク間の前記時間を測定するように構成される、請求項1ないし6のいずれか一項に記載の装置。
【請求項8】
前記少なくとも1つの光パルス発生器が、前記プローブパルス列を生成するためのプローブモードロックレーザと、前記ゲートパルス列を生成するための局所発振器モードロックレーザとを備える、請求項1ないし7のいずれか一項に記載の装置。
【請求項9】
前記プローブモードロックレーザおよび前記局所発振器モードロックレーザは、両方ともフリーランニングモードロックレーザである、請求項8に記載の装置。
【請求項10】
前記装置の前記光学的構成が、前記多光子エフェクト検出器における前記ゲートパルスおよび前記プローブパルスの光干渉を実質的に防止する、請求項1ないし9のいずれか一項に記載の装置。
【請求項11】
前記ゲートパルスは、前記多光子エフェクト検出器に到達するとき、前記戻りプローブパルスとは異なる偏光状態を有する、請求項10に記載の装置。
【請求項12】
前記ゲートパルスが、前記プローブパルスとは異なる光学波長を有する、請求項10または11に記載の装置。
【請求項13】
前記1つまたは複数のオブジェクトは、リファレンスオブジェクトおよび1つまたは複数の遠隔に位置するターゲットオブジェクトを含み、前記戻りプローブパルスは、前記リファレンスオブジェクトから戻されたリファレンスパルスおよび前記1つまたは複数の遠隔に位置するターゲットオブジェクトから戻されたターゲットパルスを含む、請求項1ないし12のいずれか一項に記載の装置。
【請求項14】
前記光学的プローブ配置は、前記プローブパルス列を含む入力プローブビームを複数のターゲットに向けて方向づけられた複数の出力プローブビームに分割するビームスプリッタを含み、前記光学的プローブ配置は、また、前記複数のターゲットのそれぞれからの戻りプローブパルスを収集する、請求項1ないし13のいずれか一項に記載の装置。
【請求項15】
光学的距離測定のための方法であって、
(i)プローブパルス列を発生することと、
(ii)ゲートパルス列を発生することであって、前記ゲートパルス列は、前記プローブパルス列とは異なる繰り返しレートで発生される、前記発生することと、
(iii)前記プローブパルス列を1つまたは複数のオブジェクトに向かって方向づけること、および、前記1つまたは複数のオブジェクトから戻される戻りプローブパルスを収集することと、
(iv)前記ゲートパルス列および前記戻りプローブパルスを検出器に向けて方向づけることであって、前記検出器は、多光子エフェクト検出を実行するように構成される、方向づけることと、
を含む光学的距離測定のための方法。
【請求項16】
多光子エフェクト検出器およびタイムスタンプ解析器を備える多光子エフェクト検出デバイスであって、前記タイムスタンプ解析器は、少なくとも1つのピーク検出器および少なくとも1つのタイマを備え、前記少なくとも1つのピーク検出器は、前記多光子エフェクト検出器の前記出力のピークを検出するように構成され、前記少なくとも1つのタイマは、前記検出されたピークの発生時間を測定するように構成される、多光子エフェクト検出デバイス。
【請求項17】
多光子エフェクト検出器の前記出力を解析する方法であって、多光子吸収事象から生じる多光子エフェクト検出器の前記出力における強度ピークを検出するステップと、そのような検出された強度ピークが発生する時間を測定するステップとを含む方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学的距離計測に関するものであり、より具体的には、多光子エフェクト検出を使用する光学的距離測定のための改良された装置および方法に関する。
【背景技術】
【0002】
光学的距離測定のための多くの技術が知られている。確度/精度、曖昧さ範囲、および更新レートの間の固有のトレードオフは、通常、そのような技術が高精度または広範囲の性能のいずれかに最適化されるように向けられていた。例えば、搬送波波長干渉法は、距離を決定するために光信号の変化する位相を分析することを含む。多波長干渉法(MWI)および周波数走査干渉法(FSI)などの精度に焦点を当てたキャリア波長干渉法技術は、ナノメートルレベルの分解能を達成することができるが、数ミリメートルよりも長い距離を測定するために遅い走査を必要とする。反対に、光検出および測距(light detection and ranging(LIDAR)は、単一のパルスの到着時間の差を記録して距離を決定するパルス飛行時間ベースの技術である。LIDARは、長い曖昧な範囲を素早く探査することができるが、最先端の光検出器の帯域幅が限られているため、この技術の解像度は数ミリメートルに制限される。
【0003】
米国特許出願公開第2011/0285980号明細書(特許文献1)には、高速な更新レートで長い曖昧さ範囲にわたる高精度の絶対距離測定が可能な、コヒーレント、デュアルコム距離計測システムが記載されている。添付の
図1に示すように(特許文献1の
図3も参照)、コヒーレント、デュアルコム距離計測技術は、ほぼ同一のパルス繰り返し周波数を有する2つのモードロックレーザー(周波数コムとも呼ばれる)を採用している。第1の周波数コムは、第1の繰り返しレート(f
rep-probe)で超短パルス列2を生成する、いわゆるプローブコムである。第2の周波数コムは、わずかに異なる繰り返しレート(f
rep-LO)で超短パルス列4を生成する、いわゆる局所発振器(LO)コムである。プローブコムによって生成された超短パルス列2は、ターゲットミラー6で反射され、透過性リファレンス光学系10の表面8からも部分的に反射される。ターゲットパルス12およびリファレンスパルス14は、プローブコムによって生成され、ターゲットミラー6およびリファレンス光学系10からそれぞれ戻ってくる超短パルス2の反射によって生じる。ターゲットおよびリファレンスパルスは、ビームスプリッタ16で超短パルス列4(例えば、LOコムによって生成される)と結合されて、検出器18に送られる。
【0004】
上記のように、2つの周波数コムの繰り返し周波数はわずかに異なり(Δf
repによって)、特許文献1の一実施形態では、プローブおよびLOコムは、それぞれ100.121MHzおよび100.106MHzの繰り返しレートを有する。したがって、LOパルスは、プローブコムからの戻りパルスを一時的にゲートして一連のインターフェログラム(interferograms)を作成するように作用する。特に、繰り返しレート(Δf
rep)の差で繰り返される一連のインターフェログラムの組を観測する。
図1への挿入物は、プローブパルスとLOパルスとの干渉に起因して検出器18で生じるインターフェログラムを示す。したがって、各インターフェログラムの組におけるリファレンスパルスとリファレンスパルスとの間の到着時間の差は、リファレンス光学系10とターゲットミラー6との間の距離の飛行時間測定を提供する。飛行時間測定の平均化は、測定の精度がλ/4を下回るまで繰り返され得、その時点でインターフェログラムの干渉位相解析を使用して、飛行時間測定により高い解像度の補正を提供することができる。例えば、特許文献1のシステムは、200μsの平均化における飛行時間情報を使用して、200μmの精度を有することが示された。干渉解析からの位相情報を加えることにより、総測定時間60msで、精度を5nmに向上させた。
【0005】
したがって、特許文献1に記載されているタイプのコヒーレント,デュアルコム距離計測は、任意の長さの絶対距離をうまく測定できることが判明した。したがって、この技術は、高精度、長い曖昧さの範囲、および迅速な更新レートで絶対距離を測定できるため、MWI、FSI、LIDAR、およびその他の一般的な代替手段よりも優れている。LOパルスによるプローブパルスの時間的ゲートはまた、他の技術における系統的なエラーにつながるスプリアス反射のリスクを排除する。
【0006】
代替の光学計測技術に対して様々な利点を有するにもかかわらず、特許文献1に記載されているタイプのコヒーレントデュアルコム計測は、多くの理由から、実験室調査から産業用途への移行がまだ行なわれていない。第1に、デュアルコム測定の飛行時間部分の精度は、コムからのタイミングジッタ(すなわち、パルスがコムキャビティを離れる速度の偏差)によって制限される。さらに、測定が干渉解析に引き渡されると、測定精度もコムからの位相ノイズによって制限される。このため、測定の不確実性を低減するためには、両方のコムの繰り返し周波数(frep)とキャリアエンベロープオフセット周波数(fCEO)のロックが必要であると考えられている。しかしながら、これには、複数の安定したリファレンス源を備えた複数のロックループを必要とするという欠点があり、システム全体が非常に複雑になり、製造コストが比較的高くなる。これは、コヒーレント,デュアルコム計測システムが産業計測用途に採用されていない主な理由の1つである。
【0007】
以前から、コヒーレント,デュアルコム計測システムの複雑さを軽減して、実際の用途での使用を可能にするための多くの試みが行われてきた。これらの変形システムのいくつかの例を以下に簡単に概説する。
【0008】
フリーランニングコム(free-running combs)を使用し、インターフェログラムから飛行時間情報のみを抽出する簡略化されたシステムが、Liu, et al.(Optics Express, 2011, Vol. 19, No.19)(非特許文献1)に記載されている。インターフェログラムから飛行時間データを抽出するために実行されるデータ解析は、生データのヒルベルト変換を取得して、各インターフェログラムのエンベロープを抽出することが含まれる。次に、各エンベロープにガウス関数またはsech関数を適合して、その中心点を決定する。そのようなシステムでは、飛行時間測定の精度は、インターフェログラムの中心点をどの程度正確に決定できるかによって制限される。おそらく、含まれる干渉縞が少なすぎるためにインターフェログラムが十分に定義されていない場合、ヒルベルト変換が失敗し、計算されたインターフェログラムのエンベロープが歪み、不正確な距離測定につながる。非特許文献1に記載されたシステムは、140μsの測定時間で2μmの精度を達成し、平均化により、精度は20msの取得時間で200nmに向上された。
【0009】
また、光相互相関の使用は、Zhang, H. et al,(Optics Express, 2014, 22 (6), pp.6597-6604)(非特許文献2)によっても実証されている。この配置では、インターフェログラムを、周期分極反転リン酸チタニルカリウム(PPKTP)結晶を通して、第2高調波信号を生成する。これにより、インターフェログラムのエンベロープに相当する強度の相互相関が生成される。この技術は、特許文献1に記載されている技術と同様の結果をもたらすことが証明されているが、PPKTP結晶は、システムに複雑さと追加費用をもたらす。
【0010】
Shi, H et al. (2015, CLEO: Science and Innovations, pp. SF2L-3, Optical Society of America)(非特許文献3)は、平衡光相互相関(BCC)として知られる、平衡検出でPPKTP結晶を使用することを含む別の技術を提示した。生成された2つの第2高調波生成信号は、平衡検出で収集され、S字形の信号を生成する。急な中央勾配のゼロクロス点は、リファレンスとターゲットのインターフェログラムの間の時間遅延を定量化する。理論的には、この技術は、信号の急な勾配がインターフェログラムのエンベロープの中心点の識別よりも高い精度でゼロクロスの識別を容易にすることができるため、魅力的である。しかし、平衡検出に必要な非常に正確な光学アライメントは、産業用途には非常に望ましくない。
【0011】
デュアルコム計測は、多くの用途に用いる可能性があると考えられてきたが、上記のようなさまざまな制約により、産業用途への応用が妨げられている。これは、上記の制限を克服するために複数の研究チームによって長年にわたって費やされてきたかなりの努力にもかかわらずである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】米国特許出願公開第2011/0285980号明細書
【特許文献2】米国特許第6195167号明細書
【非特許文献】
【0013】
【非特許文献1】Liu et al, Optics Express, 2011, Vol. 19, No.19
【非特許文献2】Zhang, H. et.al, Optics Express, 2014, 22(6), pp 6597-6604
【非特許文献3】Shi, H et al, 2015, CLEO: Science and Innovations, pp.SF2L-3, Optical Society of America
【発明の概要】
【0014】
本発明の第1の態様によれば、
ゲートパルス列およびプローブパルス列を発生するための少なくとも1つの光パルス発生器であって、ゲートパルス列は、プローブパルス列とは異なる繰り返しレートを有する、少なくとも1つの光パルス発生器と、
前記プローブパルス列を1つまたは複数のオブジェクトに向けて方向づけるため、および、1つまたは複数のオブジェクトから戻される戻りプローブパルスを収集するための光学的プローブ配置とを含み、
多光子エフェクト検出器を備え、ゲートパルス列と戻りプローブパルスの両方を多光子エフェクト検出器に向けて方向づけるように構成されることを特徴とする光学的距離測定装置が提供される。
【0015】
したがって、本発明の第1の態様は、1つまたは複数のオブジェクトの距離を測定するための光学的距離測定または測距装置を提供する。光学的距離測定装置は、様々な異なる用途で使用され得る。例えば、工業用オブジェクトの表面上の1つまたは複数の点の位置を測定するためのレーザトラッカーとして、座標測定機などを較正するために、機械の可動部品の相対位置を測定するためのエンコーダとして、または大規模な長さの計測などに使用することができる。
【0016】
装置は、ゲートパルス列およびプローブパルス列を生成する少なくとも1つの光パルス発生器を備える。以下に説明するように、ゲートパルスおよびプローブパルスは、好ましくは超短レーザパルスである。これらの超短レーザパルスは、2つの別々のモードロックレーザ、例えば、それぞれ、局所発振器モードロックレーザ、および、プローブモードロックレーザによって生成され得る。ゲートパルス列は、プローブパルス列とは異なる繰り返しレートで生成される。また、以下でより詳細に説明されるように、異なるパルス周波数(すなわち、異なる繰り返しレート)で生成されたパルス列は、パルス周波数間の差に等しい周波数で互いに時間的に一致(ビート)する。このようにして、プローブおよびゲートパルス列が結合されるときに、ゲートパルスは、プローブパルスをゲートするように作用する。
【0017】
装置の光学的プローブ配置は、少なくとも1つの光パルス発生器によって生成されるプローブパルス列を、1つ以上のオブジェクトに向けて方向づける。プローブパルス列は、光プローブビームを形成するものと考えられ得、光学プローブ構成は、プローブビームを所望の光路に沿って1つまたは複数のオブジェクトに向ける、または方向づける様々な光学コンポーネント(レンズ、ミラー、波長板、光学フィルタなど)を含み得る。光学的プローブ配置はまた、1つまたは複数のオブジェクトから戻される(反射される)戻りプローブパルスを収集するように構成される。戻りプローブパルスは、そのオブジェクトに入射するプローブパルスによってとられた同じ光路に沿ってオブジェクトから反射され得る。もちろん、プローブビームが複数の異なるオブジェクトから反射されるか、または部分的に反射されることが可能であろう。以下に記載される1つの好ましい実施形態では、光学的プローブ配置は、プローブパルスがリファレンスオブジェクト、およびターゲットオブジェクトの両方から戻されるように配置され得る。そのような例では、戻りプローブパルスは、ターゲットパルス列(すなわち、ターゲットオブジェクトから戻される)と共に、リファレンスパルス列(すなわち、リファレンスオブジェクトから戻される)を含み得る。
【0018】
ゲートパルス列および戻りプローブパルスは、両方とも多光子エフェクト検出器に向けられている。いわゆる多光子エフェクトは、2つまたはそれ以上の光子が一緒に(例えば、互いのフェムト秒以内に)検出器に到達することによって引き起こされる瞬間的な効果である。2つまたはそれ以上の光子が吸収され、検出器は結合された光子エネルギーに応答する。言い換えれば、2つまたはそれ以上の光子は、まるで1つの光子であるかのように一緒に吸収される。半導体材料を含む多光子エフェクト検出器の場合、一緒に吸収される多光子の結合エネルギーは、バンドギャップを横切るように単一の光電子を励起するのに十分であるため、検出可能な光電流を生成する。そのような多光子エフェクト検出器によって示される多光子吸収エフェクト応答は、一般的に強い非線形である。したがって、多光子吸収イベントが発生するとき(すなわち、ゲートパルスと戻りプローブパルスの同時到着により)生成される出力電気信号の強度のピークは、バックグラウンドレベル(例えば、ランダムな2光子事象、電気ノイズなど)と容易に区別できる。
【0019】
したがって、多光子エフェクト検出器は、プローブパルスとゲートパルスの(時間的に)一致する到達を検出する。上述したように、プローブおよびゲートパルスが多光子エフェクト検出器に同時に到達する周波数は、プローブおよびゲートパルス列の繰り返し周波数の差に等しい。多光子エフェクト検出器は、そのようなイベントの時間を決定することを可能にし、そこから距離(飛行時間)情報を得ることができる。例えば、ターゲットオブジェクト(すなわち、ターゲットパルス)およびリファレンスオブジェクト(すなわち、リファレンスパルス)の両方からの戻りパルスのゲートは、リファレンスおよびターゲットオブジェクト間の距離を測定することを可能にする。
【0020】
重要なことに、本発明による多光子エフェクトの使用(すなわち、ゲートパルスと戻りプローブパルスの両方の同時到達を検出すること)は、先行技術のシステムにみられる戻りプローブパルスがゲートパルスと光学的に干渉するという要件を除去する。これは、多光子吸収エフェクトが光干渉効果ではなくエネルギー効果であることによる。したがって、多光子エフェクト検出器の使用は、ゲートおよびプローブ光子が検出器で光学的に干渉しなければならないという従来技術のデュアルコムシステム(例えば、特許文献1に記載されている)に関連する本質的な要件をなくす。
【0021】
したがって、本発明は、生成されたインターフェログラムのエンベロープが正確に抽出されることを保証するために、各パルス内の電界の位相を制御する必要がない点で、特許文献1に記載されているもののような従来技術(干渉ベース)のシステムよりも有利である。これは、パルス生成器内に位相制御を実装する必要をなくすことができ、そのため、フリーランニングモードロックレーザを使用してゲートおよびプローブパルスを生成することができることを意味する。多光子エフェクト検出器の使用はまた、干渉ベースのシステムとは異なり、多光子エフェクト検出器に到達する光学波面の品質は、多光子吸収検出プロセスの分解能に最小限の影響を与えるため、戻りプローブパルスを光学的に増幅することを可能にする。さらに、ゲートパルスとプローブパルスが実質的に重複する波長を有する(これは光干渉を得るために必要である)ことを保証するための要件もなくなる。
【0022】
したがって、本発明は、特許文献1に記載された従来のタイプのデュアルコム距離測定システムよりも、複雑ではなく、より弾力性があり、製造するのにより安価である距離測定装置を提供する。特に、本発明の距離測定装置は、産業計測用途に非常に適していることが判明した。
【0023】
多光子エフェクト検出は、異なる技術分野で、干渉自己相関器を提供するために、以前に提案されていることに留意されたい。米国特許第6195167号明細書(特許文献2)は、2光子エフェクト検出器を使用して超短レーザパルスの持続時間を測定するための自己相関器を記載している。自己相関器は、干渉計を用いて親パルスから導出される相対的に遅延した娘パルスの組を測定するように配置される。そのような自己相関器デバイスは、超短レーザパルスを特徴付けるために(例えば、パルス形状、パルス持続時間などを測定するために)以前から使用されてきた。
【0024】
有利には、多光子エフェクト検出器は、ゲートおよびプローブパルスの単一光子の光子エネルギーよりも大きいバンドギャップを有する。光子エネルギーは、単一の光子によって運ばれるエネルギーであり、以下でより詳細に説明されるように、光子の電磁周波数に正比例し、したがって、等価的に、波長に反比例する。したがって、ゲートパルスおよびプローブパルスの波長は、好ましくは十分に長く(すなわち、そのようなパルスの周波数は十分に低い)、その結果、単一の光子のエネルギーが検出器バンドギャップよりも小さくなる。これは、多光子エフェクト検出器がゲートおよびプローブパルス列の単一の光子に対して実質的に非感受性であることを意味する(すなわち、そのような光子は、バンドギャップを横切るために光電子を励起するのに十分なエネルギーを持っていないため)。しかしながら、検出器は、バンドギャップよりも大きい結合エネルギーを有する2つまたはそれ以上の光子の(時間的に)一致した到達を検出する。
【0025】
有利には、多光子エフェクト検出器は、2光子検出器を含む。このような配置では、ゲートパルス光子(すなわち、ゲートパルスの光子)、およびプローブパルス光子(すなわち、プローブパルスの光子)の結合エネルギーは、好ましくは、2光子エフェクト検出器のバンドギャップよりも大きい。言い換えれば、2光子効果検出器がプローブ光子とゲート光子の両方を一緒に吸収するときに付与されるエネルギーは、光電子がバンドギャップを横切るのに十分な量励起するのに十分である。以下で説明するように、2光子吸収エフェクトは強い非線形(二次)効果である。
【0026】
2光子エフェクト検出は、単純化に有利であるが、多光子エフェクト検出器に一緒に到達する3つまたはそれ以上の光子が検出器バンドギャップよりも大きい結合エネルギーを有する多光子エフェクト検出を実施することができることに留意されたい。3光子検出の例を挙げると、多光子エフェクト検出器のバンドギャップは、2つの光子の結合エネルギーよりも大きい(すなわち、一緒に到達する2つの光子の結合エネルギーは、バンドギャップを横切るために光電子を励起するには不十分である)が、3つの光子の結合エネルギーよりも小さくなるように選択することができる。同様の考察は、より高次の多光子検出(例えば、4光子検出など)にも適用されるであろう。
【0027】
多光子エフェクト検出器は、半導体デバイスであり得る。例えば、発光ダイオード(LED)、フォトダイオード、アバランシェフォトダイオード、またはレーザーダイオードであることが可能である。多光子エフェクト検出器は、半導体材料を含むことができる。有利には、半導体材料は、ゲートパルスおよびプローブパルスの単一の光子のエネルギーよりも高いバンドギャップを有する。例えば、半導体材料は、シリコン、GaAsP、AlGaAs、InGaAs、Ge、GaN、InGaN、InGaAsP、GaP、InGaP、GaAs、またはPbSeを含むことができ、これらはすべて、光起電力検出器としての動作を可能にする。有利には、多光子エフェクト検出器は、シリコンを含む。中赤外域の光波長を持つゲートパルスやプローブパルスを使用するときは、シリコンが特に好ましい。例えば、ゲートおよびプローブパルスの波長が1110nmより大きく、2200nmより小さいとき、2光子エフェクト検出がシリコンベースの検出器を使用して可能である。シリコンベースの検出器は、比較的低コストで、使用が簡単であり、周囲温度で動作する能力を含んでいるため、有利である。半導体材料を含む検出器を使用する代替として、(例えば、多光子顕微鏡において使用されるように)蛍光色素を使用した多光子検出を実実施することが可能であろう。そのようなデバイスはまた、適切なバンドギャップ(エネルギーギャップとも呼ばれ得る)を有するように構成され得る。
【0028】
したがって、装置は、多光子エフェクト検出器、すなわち、多光子エフェクト検出を実施するために装置内に配置された検出器を含む。多光子エフェクトを提供または強化するために、いくつかの追加の構成要素が装置の一部として提供され得る。上述したように、検出器のバンドギャップは、好ましくは、ゲート/プローブパルスの光子エネルギーに対して適切であるように配置される。また、プローブおよびゲートパルスを検出器に焦点合わせするための装置内の要素も存在し得る。例えば、プローブおよびゲートパルスは、検出器上で少なくとも部分的に重複するように焦点を合わせされ得る。有利には、プローブおよびゲートパルスは、検出器上の実質的に同じ点に焦点を合わせられ得る(例えば、緊密に焦点を合わせられ得る)。好ましい実施形態では、戻りプローブパルスおよびゲートパルスは、(例えば、ビームスプリッタを使用して)結合され得、戻りプローブパルスおよびゲートパルスの合成されたビームは、共通の経路に沿って多光子エフェクト検出器へ伝達される。代替的に、ゲートパルスおよび戻りプローブパルスは、別個の光路に沿って検出器に伝達され得る。
【0029】
多光子エフェクト検出器は、単一の検出器素子を含み得る。言い換えれば、多光子エフェクト検出器は、単一のピクセルまたは単一のアクティブ領域を含み得る。代替的に、多光子エフェクト検出器は、複数の検出器素子を含み得る。複数の検出器素子は、例えば、直線または2次元アレイ内で、互いに空間的に分離され得る。そのような例では、ゲートパルス列は、(例えば、ビームスプリッタを使用して)分割され、検出器素子のそれぞれに向けられ得る。異なるオブジェクトから、または同じオブジェクト上の異なる点からの戻りプローブパルスは、そのとき、異なる検出器素子に方向づけられ得る。この例では、各検出器素子について電気信号が出力され得る。そして、以下でより詳細に記述するように、複数の距離の同時測定が可能である。
【0030】
有利には、装置は、多光子エフェクト検出器の出力を解析するための解析器を備える。解析器は、多光子エフェクト検出器の出力を時間の関数として解析し得る。解析器は、多光子エフェクト検出器によって出力される電気信号をデジタル化するためのディジタイザ(例えば、アナログ-デジタル変換器(ADC))を含み得る。解析器は、信号強度を時間の関数として関数に適合させ得る。例えば、ガウス関数が、信号強度データに適合され得る。その後、ゲートおよび戻りプローブパルスが一緒に検出器に到達した時間が、デジタル化された電気信号のピークから確立され得る。これにより、順次、飛行時間による距離測定を実行することを可能にできる。解析器は、信号処理および/または解析を実行するためのプロセッサを含み得る。多光子エフェクト検出器が複数の検出器素子を含む場合、各々の検出器素子からの信号は、この方法で分析され得る。
【0031】
都合の良いことに、この装置は、飛行時間モニタを含む。飛行時間モニタは、少なくとも1つのピーク検出器を含み得る。飛行時間モニタは、少なくとも1つのタイマを含み得る。したがって、少なくとも1つのピーク検出器は、多光子エフェクト検出器の出力におけるピークを検出するように構成され得る。少なくとも1つのタイマは、検出されたピーク間の時間を測定するように構成され得る。飛行時間モニタは、ピーク検出およびタイミング測定を実行するプロセッサを含み得る。戻りプローブパルスがリファレンスオブジェクトとターゲットオブジェクトから戻される場合、リファレンスおよびターゲットオブジェクトから戻されるプローブパルスが移動する光路長差に関連する検出されたピーク間の時間を確立できる。 これにより、リファレンスオブジェクトとターゲットオブジェクトとの間の距離を決定することが可能となる。このタイプの飛行時間モニタリングは、計算コストが少なく、したがって、時間の関数として信号強度データを収集してその後分析するよりも潜在的に高速である。
【0032】
オプションとして、飛行時間モニタは、少なくとも2つのタイマを含み得る。プローブパルスがリファレンスオブジェクトおよびターゲットオブジェクトから戻される場合、第1のタイマは、リファレンスオブジェクトおよびターゲットオブジェクトから戻されるピークの間の第1の時間間隔を測定し得る一方、第2のタイマは、ターゲットオブジェクトおよびリファレンスオブジェクトから戻されるピークの間の第2の時間間隔を測定し得る。リファレンスオブジェクトによって戻されるピークの間の時間間隔を測定し得る。これは、第1および第2のタイマによって測定された時間間隔を加算することによって行われ得る。リファレンスオブジェクトによって戻されるピーク間の時間間隔は、例えば、プローブと局所発振器コムとの間の繰り返しレートの差の任意の変化を補償するために、タイミングリファレンス信号として使用され得る。このようなタイミングリファレンス信号を用いることで、測定の不確実性を低減することができる。
【0033】
少なくとも1つの光パルス発生器は、複数の光パルス発生器を含み得る。複数の光パルス発生器のそれぞれは、超短レーザパルス列を生成し得る。好都合には、少なくとも1つの光パルス発生器は、プローブパルス列を生成するためのプローブモードロックレーザと、ゲートパルス列を生成するための局所発振器(LO)モードロックレーザとを含む。言い換えれば、2つの別々のモードロックレーザ(そのようなモードロックレーザは、周波数コムとも呼ばれる)は、プローブおよびゲートパルスを提供し得る。プローブおよびゲートパルス列は、好ましくは超短レーザパルスである。そのような超短レーザパルスの持続時間は、通常、ピコ秒またはフェムト秒のオーダーである。例えば、超短パルスは、1ピコ秒未満の持続時間を有し得る。代替的に、共通のレーザキャビティからプローブパルス列およびゲートパルス列を導出することが可能である(例えば、プローブパルスおよびゲートパルスの両方を生成するために単一の光パルス発生器が提供され得る)。
【0034】
有利には、プローブモードロックレーザおよび局所発振器モードロックレーザの両方は、いわゆる「フリーランニング」モードロックレーザである。言い換えれば、レーザによって放出される各パルスのエンベロープ内の電界の位相は、未知の方法で変化し得る(すなわち、位相制御ループがない)。これは、多光子エフェクト検出器がインターフェログラムの生成に依存せず、したがって、搬送波エンベロープ位相オフセットの任意の変化によって実質的に影響を受けないため、許容される。プローブパルスおよびゲートパルスを生成するために別々の光パルス発生器(例えば位相制御なしに)を使用できることは、先行技術のシステムに比べて大きな利点である。
【0035】
上記に概説したように、多光子エフェクト検出は、検出器における戻りパルスおよびゲートパルスの光干渉が存在することを必要としない。実際、戻りプローブパルスとゲートパルスとの間の光干渉は、装置の性能を低下させる可能性がある。ゲートおよび戻りパルスが光学的に干渉することを許された場合、検出器でインターフェログラムが収集されるが、干渉することを許されずにそれらが結合された場合、検出器はエンベロープのみを収集する。したがって、光干渉を最小限に抑えるか、または無しで、検出器でパルスを時間的に重複させることが好ましい。したがって、装置の光学的構成は、多光子エフェクト検出器におけるゲートパルスおよびプローブパルスの光干渉を実質的に防止するように配置されることが好ましい。これにより、干渉パターンの発生に関連する不不利益なしに、強度エンベロープを直接検出することができる。
【0036】
装置は、少なくとも1つの光パルス発生器から多光子エフェクト検出器まで様々なゲートおよびプローブパルスを導く様々な異なる光学部品(レンズ、波長板、ビームスプリッタ、ミラーなど)を含み得る。これらの光学部品は、ゲートおよび戻りプローブパルスが多光子エフェクト検出器に到達したときのゲートおよび戻りプローブパルスの実質的な光干渉を防止するように配置することができる。有利には、ゲートパルスは、多光子エフェクト検出器に到達したとき、戻りプローブパルスとは異なる偏波状態を有する。言い換えれば、ゲートおよび戻りプローブパルスの偏光状態を選択して、光干渉を防止または最小限に抑えることができる。例えば、ゲートおよび戻りプローブパルスは、検出器に到達すると実質的に直交する線形偏波を有するように構成され得る。代替的には、ゲートおよび戻りプローブパルスは、検出器に到達すると、異なる円偏波(例えば、左まわりおよび右まわりの円偏波)を有し得る。光干渉効果は、また、ゲートおよびプローブパルスの光学波長の適切な選択によって低減または最小化され得る。例えば、ゲートパルスとプローブパルスの光学波長帯域が異なる(例えば、重複しない)場合、そのようなパルス間に光干渉は生じない。また、光干渉を最小限に抑えるために、多光子エフェクト検出器上のゲートおよび戻りプローブパルスの入射角を制御することも可能であろう。
【0037】
プローブパルスは、1つまたは複数のオブジェクトに向けられ、そこから戻される。1つまたは複数のオブジェクトは、少なくとも1つのリファレンスオブジェクトを含み得る。有利には、単一のリファレンスオブジェクトが提供され得る。そのようなリファレンスオブジェクトは、装置の光学的配置の一部として提供され得る。例えば、装置の内部の光学部品であってもよい。リファレンスオブジェクトは、装置の別個のリファレンスアームに提供され得る。代替的に、リファレンスオブジェクトは、任意の非反射光が別の(例えば、ターゲット)オブジェクトに通過する部分反射部材を含み得る。リファレンスオブジェクトは、ミラーを含み得る。リファレンスオブジェクトは、ガラスくさび(glass wedge)または同様のもののような部分反射性(したがって部分透過性)の部品を含み得る。リファレンスオブジェクトは、本明細書ではリファレンスパルスと呼ばれる(すなわち、それらがリファレンスオブジェクトから戻されるため)戻りプローブパルスを生成する。プローブパルスは、(戻り)リファレンスパルスと同じ経路に沿ってリファレンスオブジェクトに入射し得る。装置の残りの部分に対するリファレンスオブジェクトの位置は、好ましくは不変である(すなわち、それは不変のリファレンスまたは基準位置を提供する)。
【0038】
1つまたは複数のオブジェクトは、1つまたは複数のターゲットオブジェクトを含み得る。ターゲットオブジェクトは、装置の残りの部分からの未知の距離を有し得る。したがって、1つまたは複数のオブジェクトは、1つまたは複数の遠隔に位置するターゲットオブジェクトを含み得る。例えば、ターゲットオブジェクト(複数のターゲットオブジェクト)は、装置の外部に位置し得る。ターゲットオブジェクトは、測定されるべきオブジェクトの表面を含み得る。例えば、工業部品の表面を直接測定することができる。代替的に、ターゲットオブジェクトは、別のオブジェクトに取り付けられ得る。例えば、ターゲットミラーまたは再帰反射器は、測定されるべき別の物品(すなわち、間接測定)に取り付けられ得る。各ターゲットオブジェクトは、本明細書ではターゲットパルスと呼ばれる(すなわち、それらがターゲットオブジェクトから戻されるため)戻りプローブパルスを生成する。また、通常、そのような連続したターゲットパルス列がターゲットオブジェクトによって戻されるが、オブジェクトに向けられたプローブパルスのすべてが戻され得るわけではないことに留意されたい(例えば、いくつかはターゲットを完全に外し得、いくつかはそれらの捕捉ができない方向に反射され得る)。ターゲットオブジェクトはまた、装置に対して移動し得、したがって、ターゲットパルスは、位置のスナップショットを提供し得る。経時的に測定された距離の変化は、装置に対するターゲットの速度を測定するためにも使用され得る。
【0039】
好ましい実施形態では、1つまたは複数のオブジェクトは、リファレンスオブジェクトおよび1つまたは複数の遠隔に位置するターゲットオブジェクトを含む。この実施形態では、戻りプローブパルスは、リファレンスオブジェクトから戻されたリファレンスパルスと、1つまたは複数の遠隔に位置するターゲットオブジェクトから戻されたターゲットパルスの両方を含む。ターゲットパルスと関連するリファレンスパルスの到着時間の差は、ターゲットおよびリファレンス面から戻されるパルスの経路長の差に関連する。基準オブジェクトが不変位置を有する場合、基準オブジェクトへの距離は、基準パルスと目標パルスの到着時間の差から決定することができる。
【0040】
装置は、自由空間(例えば、空気)を通してプローブパルスをターゲットオブジェクトに送信するように配置され得る。代替的に、プローブパルスは、水などの液体を介してオブジェクトに伝達することができる。ターゲットオブジェクトは、プローブパルスの光学波形を乱す粗面を有し得る(すなわち、その結果、装置によって収集されたターゲットパルスは、歪められた、または、乱された波面を有する。)。同様に、プローブパルスがターゲットオブジェクトへ、またはターゲットオブジェクトから通過する媒体は、プローブパルスの光学波面を乱し得る。例えば、そのような乱れは、プローブパルスを乱流空気を通過させることによって生じ得る。上記のようないくつかの状況では、戻りプローブパルスは、低強度であり得る(例えば、高レベルのプローブビーム減衰が存在し得る)。ターゲットパルスがターゲットから戻った後、多光子エフェクト検出器に到達する前に、ターゲットパルスを光学的に増幅することも、感度を向上させることが可能であろう。リファレンスパルスの増幅も提供することができる。例えば、ファイバ増幅器を使用することができる。そのような増幅プロセスは、また、光学波面の品質を低下させる可能性がある。インターフェログラムベースの配置の従来技術では、そのような光学波面の歪みは、得られる光干渉の質に深刻な影響を与えるであろう。しかしながら、本発明に係る多光子エフェクト検出を用いたときは、このような効果は、光干渉に基づかないため、影響ははるかに小さい。
【0041】
上記で概説したように、光学プローブ配置は、プローブビーム(すなわち、プローブパルス列)を1つまたは複数のオブジェクトに向け得る。これは、プローブパルスを単一のオブジェクト上の単一のターゲットに向けることを含み得る。装置はまた、複数のターゲットを測定するように構成することができ、そのようなターゲットは、異なるオブジェクト上、または同じオブジェクト上の異なる点にある。したがって、光学的プローブ配置は、プローブパルス列を含む入力プローブビームを複数の出力プローブビームに分割するビームスプリッタを含み得る。「分割」という用語は、最初のプローブビームの光強度が2つ以上の出力プローブビームに分割されることを意味する。したがって、それぞれの出力プローブビームは、入力プローブビームよりも低い強度ではあるが、完全なプローブパルス列を含む。次いで、各出力プローブビームは、複数のターゲットのうちの1つに向けられ得る。光学的プローブ配置は、好ましくは、また、それぞれの複数のターゲットからの戻りプローブパルスを収集するように構成される。
【0042】
上記のマルチターゲットの例では、各ターゲットからの戻りプローブパルスは、ゲートパルスと同じ多光子エフェクト検出器上の同じ点に向けられる単一のビームに結合され得る。そのような例では、検出された信号のピークは、異なるターゲットのそれぞれからの戻りプローブパルスに対応する。ターゲットが異なる距離にある場合、各ターゲットまでの距離を個別に計算することが可能であろう。
【0043】
代替的に、多光子エフェクト検出器は、上述のように、複数の能動素子または検出素子(例えば、ピクセルまたは領域)を含み得る。そのような例では、各ターゲットからの戻りプローブパルスは、複数の検出器要素のうちの異なるものに別々に向けられ得る。複数の多光子エフェクト検出器素子は、単一の基板上に形成された多画素センサアレイによって、または複数の物理的に分離された多光子エフェクト検出器素子(例えば、装置の異なるアームにおいて、互いに空間的に分離されたフォトダイオードのような)によって提供され得る。そのような例では、光学的プローブ配置はまた、ゲートパルス列を含む入力局所発振器ビームを複数の出力局所発振器ビームに分割する追加のビームスプリッタを含み得る。次いで、複数の検出器素子のそれぞれは、出力された局所発振器ビームと、複数のターゲットのうちの1つからの戻りプローブパルスの両方を受信し得る。次いで、各能動素子における多光子エフェクト検出は、それぞれのターゲットの距離に関連する。言い換えれば、各能動素子からの信号のピークは、単一のターゲットまでの距離の測定を可能にする。もちろん、リファレンスピークを提供するために(例えば、距離の飛行時間の計算を助けるために)、検出器要素のすべて、いくつか、または1つにリファレンスパルス列を向けることも可能であろう。1つの能動要素から生成されたリファレンスピークは、他の検出器要素を使用して検出されたターゲットピークのタイミングリファレンスとして使用され得ることに留意されたい。言い換えれば、飛行時間距離測定は、1つの能動要素によって検出されたリファレンスピーク(すなわち、リファレンスパルスの到達時間を示す)および異なる能動要素によって検出されたターゲットピーク(すなわち、ターゲットパルスの到達時間を示す)を使用して実行され得る。
【0044】
複数の目標距離を同時に測定する能力には、いくつかの利点がある。例えば、複数の別々のオブジェクトの距離を同時に測定することができる。単一のオブジェクト上の複数のターゲットポイントが同時に測定された場合、オブジェクトの方向(例えば、ピッチ、ロールまたはヨーを測定する)またはオブジェクトの形状に関するより多くの情報を確立することも可能であろう。オブジェクト上の複数の点が、または代替的に、連続的に測定することもできる。例えば、プローブビーム(すなわち、プローブパルス列)は、オブジェクト上の複数の点を測定するために、そのオブジェクトの表面をスキャン(例えば、ラスタ(rastered))することができる。このようにして、オブジェクトの3次元(3D)画像を構築することができる。
【0045】
有利には、光学的距離測定装置は、座標測定機(CMM)のような座標測位装置に設置するように構成される。CMMは、多関節型ロボットアームを含み得、光学的距離測定装置は、次いで、レーザトラッカーの距離測定部品として機能し得る。CMMは、検査対象物が配置されるベッドに対してクイルが移動するブリッジタイプのCMMであり得る。オブジェクトは、治具によってCMMのベッドに固定され得る。光学的距離測定装置は、プローブパルス列を放射する、および/または戻りパルスを収集するための光学ヘッド(例えば、光学的プローブ配置を含む)を有し得る。光学ヘッドは、CMMのクイルに取り付けられ得る。光学ヘッドは、Renishaw plc,Wotton-Under-Edge,Gloucestershire,UKによって販売されるREVO(登録商標)関節プローブヘッドなどの2軸回転プローブヘッドを介して、CMMのクイルに取り付けられ得る。装置の少なくとも1つの光パルス発生器は、CMMに隣接して配置され得、1つまたは複数の光ファイバを介して光ヘッドに接続され得る。
【0046】
便利なことに、光学的距離測定装置は、座標測位装置のような機械を較正するために使用し得る。座標測位装置は、CMM(例えば、ブリッジタイプCMM、ロボットアームなど)または工作機械などを含み得る。したがって、装置は、較正手順を実行するために機械に一時的に取り付けられ得る。そのような例では、1つまたは複数の再帰反射器またはミラーは、機械の可動部分に取り付けられ得る(例えば、複数のミラーは、CMMのクイルまたはアームに取り付けられ得る)。次いで、光学的距離測定装置は、機械の可動部分が空間内を移動するときに、ミラーの位置を測定し得る。次いで、光学的距離測定装置によって収集された高精度位置測定値を使用して、機械の内部測定デバイス(例えば、エンコーダ)によって取得された位置測定値を修正またはエラーマッピングすることができる。較正後、装置は機械から取り外し得る。
【0047】
代替的に、本発明の光学的距離測定装置を機械に組み込み得る。言い換えると、光学的距離測定装置は、位置エンコーダ等として機械に組み込まれ得る。これにより、機械の異なる部品の相対位置を(例えば、機械位置制御ループの一部として)測定することが可能になる。光学的距離測定装置は、電力が失われた場合に基準となる位置を確立する必要なく相対位置を測定できるという利点があり、したがって、より大きな機械に特に適している。
【0048】
本発明の光学的距離測定装置の他の多くの用途も可能であろう。例えば、モーションコントロールフィードバック要素としての大規模な製造および組み立て機械;治具および固定用治具のアライメントを含む大規模な生産施設の組み立て;土木工学による新しい建築物の測定、および隣接する地盤作業中の既存の建物の動きを監視するなど;ドック、橋、ダム、堤防を含む大規模な構造物の資産管理;一般的な測量;研究、教育、バーチャルツーリズムのための歴史的/考古学的遺跡および工芸品のキャプチャおよびモデリング;例えば大型光学望遠鏡のための幾何学的制御を可能にするフィードバックとしての大型機械および機器;のような大規模な長さ計測の用途に使用できる。この装置はまた、大規模な安全上重要な構造およびセンサの状態監視、ならびに、自律型ロボット、車両、宇宙(例えば、衛星追跡)および防衛用途のための地形/環境マッピングのためのセンサに使用することができる。
【0049】
本発明の光学的距離測定装置は、他の光学的距離測定装置とともに使用することができることに留意されたい。例えば、従来の同軸ライダー(coaxial lidar)配置を本発明の装置と並行して使用することができる。従来のライダー配置は、粗い測定値(例えば、1メートルまたは2メートル以内)を提供することができ、一方、本発明の装置は、より細かい(すなわち、はるかに高い分解能の)測定値を提供することができる。したがって、粗い測定値は、曖昧さの範囲を拡張するために使用され得る。例えば、本発明の光学距離測定装置は、約1mの曖昧さの範囲を与えるであろう約300MHzの局所発振器繰り返しレートを使用することができる。その後、標準のライダーを使用して、ターゲットがどの1mの範囲にあるかを決定することができる。そのような標準的なライダーシステムは、そのような解像度を達成するために3ns以上のタイミング分解能を必要とし、これは既製のライダー技術にとって非常に簡単である。
本発明の第2の態様によれば、
光学的距離測定のための方法であって
(i)プローブパルス列を発生することと、
(ii)ゲートパルス列を発生することであって、ゲートパルス列は、プローブパルス列とは異なる繰り返しレートで発生される、発生することと、
(iii)プローブパルス列を1つまたは複数のオブジェクトに向かって方向づけること、および、1つまたは複数のオブジェクトから戻される戻りプローブパルスを収集することと、
(iv)ゲートパルス列および戻りプローブパルスを検出器に向けて方向づけることであって、検出器は、多光子エフェクト検出を実行するように構成される、方向づけることと、
を含む光学的距離測定のための方法が提供される。
方法はまた、関連付けられた装置のコンテキストにおいて上述したステップのいずれかを含み得る。
【0050】
本発明のさらなる態様によれば、多光子エフェクト検出器およびタイムスタンプ解析器を含む多光子エフェクト検出デバイスが提供される。タイムスタンプ解析器は、少なくとも1つのピーク検出器および少なくとも1つのタイマを備え、少なくとも1つのピーク検出器は、多光子エフェクト検出器の出力におけるピークを検出するように構成され、少なくとも1つのタイマは、検出されたピークの発生時間を測定するように構成される。検出されたピーク間の時間は、距離の飛行時間測定値を確立するために測定され得る。解析器は、多光子エフェクト検出およびタイムスタンプ解析を提供するためのプロセッサを含み得る。デバイスの他の使用が可能であろう。
【0051】
本発明のさらなる態様によれば、多光子エフェクト検出器の出力を解析する方法であって、多光子吸収事象から生じる多光子エフェクト検出器の出力における強度ピークを検出するステップと、そのような検出された強度ピークが発生する時間を測定するステップとを含む方法がある。検出されたピーク間の時間を測定することができる。このようにして、飛行時間による距離測定を実行することができる。
【0052】
本発明のさらなる態様によれば、オブジェクトを検査するための光学測定プローブを含む座標測位装置が提供され、光学測定プローブは、少なくとも1つの周波数コムおよび多光子エフェクト検出器を含む。光学測定プローブは、本発明の第1の態様による距離測定装置を含み得る。
【0053】
本発明のさらなる態様によれば、座標測位装置(例えば、工作機械、座標測定機、ロボットなど)を較正するための較正装置が提供され、較正装置は、少なくとも1つの周波数コムおよび多光子エフェクト検出器を含む。較正装置は、本発明の第1の態様による距離測定装置を含み得る。
【0054】
本発明のさらなる態様によれば、機械(例えば、工作機械、座標測定機、ロボットなど)の2つの可動部品の相対距離を測定するための位置エンコーダが提供され、位置エンコーダは、少なくとも1つの周波数コムおよび多光子エフェクト検出器を含む。位置エンコーダは、本発明の第1の態様による距離測定装置を含み得る。
【図面の簡単な説明】
【0055】
つぎに、添付の図面を参照して、単に一例としてのみ本発明を説明する。
【0056】
【
図1】
図1は、米国特許出願公開第2011/0285980号明細書(特許文献1)に記載される従来技術のデュアルコム距離測定装置を示す図である。
【
図2】
図2は、多光子エフェクト検出器を含む本発明の距離測定装置を示す図である。
【
図3】
図3は、個別のリファレンス面アームを含む、
図2の装置の変形例を示す図である。
【
図4】
図4は、2光子信号において存在するリファレンスパルスとターゲットパルスを示す図である。
【
図5】
図5は、
図4の1組のターゲットおよびリファレンスパルスを、ターゲットパルスをより詳細に示す挿入図と共に示す図である。
【
図6】
図6は、2光子およびインターフェログラムに基づく測定値の両方を取得するための距離測定装置を示す図である。
【
図7】
図7aは、2光子パルスを示す図であり、
図7bは、インターフェログラムを示す図である。
【
図8】
図8は、インターフェログラム内の干渉パターンのばらつきが、エンベロープ中心を確立するのに不確実性をもたらす可能性があることを示す図である。
【
図9】
図9は、干渉測定および2光子ベースの測定に対するパルス繰り返しレートの影響を示す図である。
【
図10】
図10は、戻り信号を含む距離測定装置を示す図である。
【
図11】
図11は、複数のターゲットの同時測定のための距離測定装置を示す図である。
【
図12】
図12は、2光子事象の発生をタイミングするためのマイクロコントローラを有する距離測定装置を示す図である。
【
図13】
図13は、本発明の装置を使用した測定の平均時間の関数としてのアラン偏差を示す実験データである。
【
図14】
図14は、本発明の装置を使用した測定の距離(
図14a)および残差誤差(residural errors)(
図14b)を示す図である。
【
図15】
図15は、本発明の距離測定装置のさらなる実施形態を示す図である。
【
図16】
図16は、本発明の距離測定装置のさらなる実施形態を示す図である。
【
図18】
図18は、
図17の2つのライダータイマを使用して抽出されたタイミング情報を示す図である。
【
図19】
図19は、ライダータイマからタイミング信号が抽出される、
図17の配置の変形例を示す図である。
【
図20】
図20は、高速フォトダイオードを使用してタイミングリファレンスが抽出される
図19の配置の変形例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0057】
図2を参照すると、本発明の距離計測装置が示されている。装置は、プローブコム30および局所発振器(LO)コム32を含む。プローブコム30およびLOコム32は両方とも、SESAMモードロックされたエルビウムファイバレーザである。これらのレーザの出力は、時間領域では1/f
rep(f
repは、レーザの繰り返しレート)で区切られた超短パルスの列として、または規則的な間隔の周波数コムとして周波数領域で見ることができる。本実施形態では、プローブコム30は、78.87MHzの繰り返しレートを有し、LOコム32は、78.874MHzの繰り返しレートを有する。レーザ出力は、1557nmの波長を有し、20mW(3mWから)に光学的に増幅され、発生されたパルスは未知の偏光を有する。
【0058】
プローブコム30からのプローブパルス列は、未知の偏光を有し、したがって、偏光制御を提供するために、第1の4分の1波長板34および第1の半波長板36を通過させる。特に、プローブパルスは、p-偏光で第1の半波長板から出るので、第1の偏光ビームスプリッタキューブ(PBS)38を通って伝達される。次いで、プローブパルス列は、ガラスくさび42のリファレンス(背面)表面40から(部分的に)、またターゲットミラー44の表面から反射される。これは、ガラスくさび42およびターゲットミラー44の両方から反射パルスの列を生成し、これらの戻りパルスは、それぞれリファレンスパルスおよびターゲットパルスと呼ぶことができる。光路は、プローブパルスがリファレンスおよびターゲット表面に向かう途中と、偏光ビームスプリッタキューブ(PBS)に戻る際の両方で、第2の4分の1波長板46を通過するように構成されている。第2の4分の1波長板46を通るプローブパルスのこの二重通過は、パルスをs-偏光に変換し、その結果、パルスはPBS38で第2の偏光ビームスプリッタキューブ(PBS)48に向かって反射される。
【0059】
LOコム32は、また、未知の偏光を有するゲーティングパルス列を発生する。LOコム2からのゲーティングパルスは、第2の偏光ビームスプリッタキューブ(PBS)48に到達したときに、ゲーティングパルスにp-偏光を与えるように配置された第3の4分の1波長板50および第2の半波長板52を通過する。したがって、反射(プローブ)パルスは、直交する直線偏光を有するゲーティングパルスと第2のPBS11において出会うことが理解できる。直交偏光の使用は、プローブおよびゲーティングパルスの干渉を防止する。
【0060】
プローブおよびゲーティングパルス列は、1300nmの光学ロングパス(ハイパス)フィルタ54を通過して、コムからの吸収されないポンプ光およびフォトダイオード58が感度を持つプローブ光チャネルを通って装置に入射し得る迷光を遮断する。次に、プローブおよびゲーティングパルス列は、レンズ56によってシリコンフォトダイオード58上に焦点を合わせられる。フォトダイオード58は、hc/λより大きく、2hc/λより小さいバンドギャップを有するように選択され、hはプランク定数、cは光速、λはコムの波長である。この例では、シリコンフォトダイオード58のバンドギャップは1.11eVである。したがって、検出器バンドギャップは、周波数コムによって生成されるレーザ放射の光子エネルギーよりも大きく、これは、検出器が周波数コムによって発生される単一の光子に対して非感受性であることを意味する。しかしながら、フォトダイオード58に焦点を合わせたプローブパルスは、ゲートパルスと時間的に一致する場合、2光子吸収信号にピークを誘発する。特に、I(t)・I(t-τ)に比例する検出信号が発生され、τは、2つのパルス間の瞬時遅延(すなわち、プローブとゲーティングパルスとの間の遅延)である。2光子吸収エフェクトは、入力パワーに対する二次応答を有し、これは、ゲートパルス(すなわち、LOコムからの光子)がプローブパルス(すなわち、プローブコムからの光子)と十分な程度に時間的に一致するとき、フォトダイオードが検出可能な信号を生成することを意味する。
【0061】
フォトダイオード58によって検出された信号は、ディジタイザ62またはオシロスコープに表示される前に、電子ローパスフィルタ60を通過する。ローパスフィルタリングは、代替的に、ソフトウェアで、または機械的にさえ実行が可能であることに留意されたい。ローパスフィルタ60は、パルス繰り返し周波数が除去されるように、プローブコムの繰り返しレートの約半分のカットオフ周波数が選択される。これは、適切な周波数の電子バンドパスフィルタでも達成することができる。この例では、2光子信号を収集するためにシリコン(Si)フォトダイオードが使用されるが、すでに説明したように、多くの代替手段がある。単一光子エネルギーよりも大きく、光子エネルギーの2倍よりも小さいバンドギャップを有する任意の光センサは、2光子検出に使用することができる。例えば、フォトダイオード、アバランシェフォトダイオード、発光ダイオード(LED)、逆に使用されるレーザーダイオード、光電陰極または光電子増倍管などを使用することが可能である。
【0062】
プローブパルスとゲートパルスの実質的な同時到達を検出するために使用される2光子効果は、干渉に基づく効果ではないことに再度注意することが重要である。2光子吸収エフェクトは、偏光に依存せず、位相も一致しない。反対の偏光を有するレーザパルスの組み合わせは、それらの位相が相互作用できないことを意味するので、干渉はなく、結果として得られる強度プロファイルのエンベロープのみが検出される。これは、検出された信号が、次いで、コムのキャリア-エンベロープーオフセット周波数(fCEO)の変化に対して非感受性であるため、重要である。
【0063】
図2を参照して説明される装置は、デュアルコム距離測定装置において非線形2光子検出の原理をどのように実装するかの一例にすぎない。ここで、同じ原理を実装するために使用できる装置のいくつかの変形例について説明する。
【0064】
図3を参照して、代替の光学的配置の例を説明する。プローブコム80は、(非偏光)ビームスプリッタ82によって2つの経路に分割される超短プローブパルス列を発生する。第1の経路に沿って方向づけられるプローブパルスは、固定位置リファレンスミラー84から反射され、リファレンスパルス列(すなわち、リファレンスミラー84から反射されるプローブパルス)は、ビームスプリッタ82に戻される。第2の経路に沿って方向づけられるプローブパルスは、可動ミラー86のターゲット表面から反射され、ターゲットパルス列(すなわち、可動ミラー86から反射されるプローブパルス)は、ビームスプリッタ82に戻される。ターゲットおよびリファレンス(プローブ)パルス列は、偏光ビームスプリッタ92に到達するときに戻りプローブパルスにs-偏光を与えるように配置された4分の1波長板88および半波長板90を通過する前に、ビームスプリッタ82で再結合される。
【0065】
LOコム94は、LOパルスにp-偏光を与えるように配置された4分の1波長板96および半波長板98をさらに通過する超短ゲートパルス列を発生する。配置は、(s-偏光)プローブパルスおよび(p-偏光)ゲートパルスが、反対の偏光を有して、偏光ビームスプリッタキューブ92において出会うように構成されている。
図2を参照して概説された例のように、これは、ゲートおよびプローブパルスの間の実質的な光干渉を防止する。結合されたプローブおよびLOビームは、ビームスプリッタキューブ92からロングパスフィルタ100(再び、コムからの吸収されていないポンプ光を遮断するために)に向けられ、レンズ102によってシリコンフォトダイオード検出器104上に焦点を合わせられる。検出器104からの検出された電気信号は、ローパスフィルタ106を通して供給され、信号からパルス列を除去し、エンベロープ信号のみを伝達する。次いで、信号は、ディジタイザ108上で観察される。この実施形態では、リファレンスおよびターゲット反射(すなわち、検出器104に到達するプローブおよびLOパルス)は、等しい光学パワーを有し、したがって、検出されたエンベロープは等しい振幅を有する。したがって、
図3の配置は、低電力ビームを使用するときに有益であり得る(すなわち、
図2の配置におけるガラスくさび42からの反射は、ミラー84からの反射よりも弱いため)。
【0066】
図4および
図5を参照すると、
図2を参照して説明した距離測定装置を使用して収集された生データの例が示されている。特に、
図4および
図5は、時間の関数として、このような装置のフォトダイオード58からのフィルタリングされた電気信号を示す。
【0067】
図4に、一連の複数の組のエンベロープが示されている。強度信号の各ピークは、ゲートパルスとプローブパルスが検出器に一緒に到達するときに発生する2光子吸収エフェクトから生じる。
図4では、ターゲットおよびリファレンスエンベロープからのピークがほぼ重なっているが、より低い振幅のエンベロープ(すなわち、ガラスくさび42からのプローブパルスの反射から生じる)およびより高い振幅のエンベロープ(すなわち、ターゲット44からのプローブパルスの反射から生成される)は依然として見ることができる。
【0068】
図5は、
図4に示されるエンベロープの第1の組の(時間的な)拡大図を示す。左側のより低い強度ピークは、ガラスくさび42から戻されるリファレンスパルスから生じ、一方、右側のより高い強度ピークは、ターゲット44から戻されるターゲットパルスに起因する。
図5の挿入図は、ターゲットパルスから生じる強度ピークのさらなる(時間的な)拡大図である。
【0069】
リファレンスエンベロープとターゲットエンベロープとの間の到着時間の遅延は、ガラスくさび42(すなわち、リファレンス)とターゲットミラー44との間の距離に依存する。したがって、リファレンスおよびターゲットエンベロープの到着時間の遅延を識別することによって、飛行時間距離測定(すなわち、リファレンスとターゲットの間の距離を測定すること)を行うことができる。到着時間の遅延を確立するために、様々な異なる技術を使用することができる。例えば、エンベロープを関数に当てはめることで各エンベロープ(すなわち各強度ピーク)の中心点を導き出すことができ、フーリエ変換シフト解析を使って時間遅れを求めることができる等がある。しかしながら、十分に狭く明確に定義されたエンベロープが与えられる場合、単にピーク値の位置を使用することで十分であることが分かっている。これは、干渉計ベースの技術を使用するときに必要とされる複雑な解析と比較して、必要とされるデータ処理を非常に単純にすることができる。
【0070】
つぎに、
図6から
図9を参照して、従来技術のインターフェロメトリック技術と本発明の多光子エフェクト検出技術との比較を示す。
【0071】
図6は、インターフェロメトリックと多光子エフェクト検出デュアルコム計測との比較を可能とする装置を示す。
【0072】
プローブコム120およびLOコム122は、プローブおよびゲートパルスのほぼ同一の列を提供する。上述のように、プローブおよびLOコムは、非常にわずかに異なる繰り返しレートで動作する。プローブコム120からのプローブパルス列は、プローブパルスにs-偏光を与えるように構成された4分の1波長板124および半波長板126を通過する。次に、s-偏光プローブパルスは、適切に配置された第1の偏光ビームスプリッタ128から第2の偏光ビームスプリッタ130に向かって反射される。LOコム122からのゲーティングパルス列は、第2の偏光ビームスプリッタ130に到達するときにゲーティングパルスがp-偏光であるように配置される4分の1波長板132および半波長板134を通過する。その結果、プローブコム120およびLOコム122からのパルス列は、反対の偏光を有して第2の偏波ビームスプリッタ130において出会う。
【0073】
プローブおよびゲートパルスの結合したパルス列は、吸収されていないポンプ光を排除する1300nm光学ロングパスフィルタ138を介して、第2の偏光ビームスプリッタ130から非偏光ビームスプリッタ136に渡される。結合されたパルスビームは、(非偏光)ビームスプリッタ136によって2つに分割される。透過ビームは、装置の2光子検出分岐に渡され、一方で、反射されたビームは、干渉ベース検出分岐に向けられる。透過ビームは、レンズ142によってシリコン光検出器140上に焦点を合わせられる。シリコン光検出器140は、
図2および
図3を参照して上述した装置に従って、2光子検出のために構成される。反射されたビームは、レンズ148によってインジウムガリウムヒ素(InGaAs)光検出器146上に焦点を合わせられる前に、プローブパルスとゲートパルスの両方に一致する偏光を与える偏光子144を通過する。インジウムガリウムヒ素(InGaAs)光検出器146は、入射光の(単一光子)検出を可能にするバンドギャップを有する。特に、光検出器146は、同じ偏光のプローブおよびゲートパルスの同時到達によって形成される干渉パターンを収集することができる。
【0074】
(2光子)検出器140および(単一光子)光検出器146からの電気信号は、それぞれ電子ローパスフィルタ152および154を通過した後、ディジタイザ150によって受信される。したがって、ディジタイザ150は、シリコン光検出器140から2光子信号、およびInGaAs光検出器146から単一光子信号を受信する。
図3-
図5を参照して上述したように、2光子信号は、多光子吸収プロセス(すなわち、干渉効果に依存しない)によって形成される一連の強度エンベロープを提供する。対照的に、InGaAs光検出器146からの信号は、インターフェログラム(すなわち、ゲートおよびプローブ光子の光干渉の結果生じる強度パターン)のマッチングシーケンスを提供する。
【0075】
図7aおよび
図7bは、
図6を参照して上述した装置を使用して収集されたデータを示す。
図7aは、シリコン光検出器140から収集されたデータ(すなわち、2光子データ)を示し、
図7bは、InGaAs光検出器146から同時に収集されたデータ(すなわち、単一光子または干渉計データ)を示す。
【0076】
図7aを参照すると、非線形2光子検出技術を用いて(すなわち、光検出器140を用いて)収集された生データは、ガウス関数に容易に適合することが理解できる。したがって、強度ピークの中心を容易に抽出することができる。
【0077】
図7bは、InGaAs光検出器146を使用して収集されたインターフェログラムを示す。上述した従来技術のシステムによれば、生データ(線160としてプロットされる)は、電界の時間依存性を見ることができるインターフェログラムである。上述したように、ガウス関数(曲線164)がヒルベルト変換にフィットする前に、インターフェログラム(曲線162)のエンベロープを導出するために、ヒルベルト変換が必要である。このガウス適合は、インターフェログラムの中心点を推定することを可能にする。
【0078】
図7aおよび7bは、本発明による非線形2光子エフェクト検出を使用する利点のいくつかを示している。第一に、非線形2光子エフェクト検出は、強度エンベロープを直接収集し、ヒルベルト変換の必要性を排除することが分かっている。ヒルベルト変換の必要性を回避することで、データ解析プロセスが簡素化され、エンベロープの導出が不正確となるリスクが低減される。第2の利点は、2光子検出プロセスの強い非線形応答から生じる。
図7bのインターフェログラムのガウスフィットの最大半値の全幅は0.1msであるが、
図7aのエンベロープのガウスフィットの最大半値の全幅はわずか0.05msである。したがって、二光子吸収プロセスの二次応答は、はるかに顕著なピークを有するエンベロープをもたらすことが理解できる。これにより、同等のインターフェログラムの解析と比較して、ピークの中心点のより高い精度での決定を容易にする。
【0079】
次に
図8を参照して、2光子検出を使用するさらなる利点を説明する。上述したように、
図6を参照して説明される装置のプローブコム120およびLOコム122は、フリーランニングモードロックレーザであることを覚えておくべきである。このようなモードロックレーザによって発生される光パルスに関連付けられる電界の時間依存性は、キャリアと呼ばれる高速の正弦波発振に、よりゆっくりと変化するエンベロープ関数を乗じたものとして記述することができる。パルスが媒体を通して伝播するとき、キャリア波とエンベロープとの間の相対位置は、通常変化する。モードロックレーザでは、パルス列は、通常、レーザ共振器内を循環する単一のパルスから生成される。このパルスが出力カプラーに当たるたびに、その減衰したコピーが、レーザ出力として放出される。通常、往復ごとにキャリアエンベロープのオフセット位相には各往復において一定の変化があり、それは数百または数千ラジアンであることができる。したがって、放出された各パルスは、異なるキャリアエンベロープ位相を有することができる。上述したように、インターフェログラム解析に依存する従来技術のデュアルコムシステムでは、2つのコムによって発生されるパルスのキャリアエンベロープ位相において不変のオフセットを維持するために位相制御ループを提供する必要がある。この2つのコムのキャリアエンベロープオフセット周波数(f
CEO)をロックするための要件は、実装が複雑で産業用用途では実用的でないことが判明している。したがって、2光子検出を使用して可能であるフリーランニングコムの使用は、大きな利点を有することができる。
【0080】
図8を参照すると、InGaAs光検出器146によって生成された3つのインターフェログラム(すなわち、1光子信号)が、最上部のプロットに示されている。Si光検出器140によって生成された3つのエンベロープ(すなわち、2光子信号)が、最下部のプロットに示されている。各1光子信号(インターフェログラム)は、そのすぐ下に示されている2光子信号(エンベロープ)と同時に収集された。エンベロープ/インターフェログラムの関連する組は、3つの別々の時間に収集された。
【0081】
フリーランニングコムがプローブおよびLOパルス列を発生するために使用されたため、インターフェログラムの位相(すなわち、上側プロット)は、異なる時点で異なっている。言い換えれば、2つのコムのキャリアエンベロープオフセット周波数(fCEO)は、制御不能な方法で変化した。第1のインターフェログラム(左側)は複数のフリンジを有することが見られ、第2のインターフェログラム(中央)はより少ないフリンジを有するが、第3のインターフェログラム(右側)は非常に少ないフリンジを有する。したがって、ガウスフィットの品質、ひいては、任意のタイミング測定の精度は、2つの周波数コムのキャリアエンベロープ位相の制御不能な変化に応じて変化する。特に、少数のフリンジのみを示す例は、ある時点において不十分に定義されたインターフェログラムを得るリスクを示している。インターフェログラムエンベロープの中間点を決定するために使用されるデータ解析技術は、複数のフリンジを含むインターフェログラムと比較して、このような不十分に定義されたインターフェログラムを使用したより低い精度の距離測定を提供する可能性がある。
【0082】
インターフェログラムとは対照的に、非線形2光子検出によって収集されたエンベロープは、周波数コムの変化するキャリアエンベロープ位相によって影響されないことを理解することができる。これは、多光子吸収エフェクトが干渉効果ではないためである。したがって、非線形2光子検出は、干渉パターンのエンベロープを抽出することに依存する従来のデュアルコム計測技術に比べて、固有の利点を有する。非線形2光子検出では、コムの位相は検出された信号にとって重要でないため、完全に安定化されたコムの要件は、取り除かれる。したがって、非線形2光子検出の使用は、位相安定化周波数コムを使用する必要性を克服するために他者が以前に使用した上記の光相互相関または平衡相互相関技術(balanced cross-correlation techniques)よりもはるかに単純でより洗練された解決策である。
【0083】
次に
図9を参照すると、7組のインターフェログラム(最上部のグラフ)と2光子検出エンベロープ(最下部のグラフ)が示されている。各インターフェログラムは、そのすぐ下に示されている2光子検出エンベロープと同時に収集された。同時に収集されたインターフェログラムとエンベロープデータの各組は、関連するインターフェログラムのプロットの上に示されるプローブ/LOの繰り返しレート(Δf
rep)の差を使用して取得した。
【0084】
上記で説明したように、Δfrepの値は、LOパルスがプローブパルスをゲートするレート(すなわち、ビート周波数)を決定する。一般に、光子干渉エフェクトに基づく従来技術のデュアルコム計測では、より低いΔfrepの値は、より高い効果的な光サンプリングレートに対応し、これは、高い精度のデータ解析のための明確に定義されたインターフェログラムの生成を支援する。一方、より高いΔfrepの値は、より高速な更新レート(更新レート、TupdateはΔfrepの逆数に等しい)に対応し、したがって、測定距離の高速スキャンを可能にする。したがって、Δfrepの選択された値は、従来技術(干渉ベース)のデュアルコム計測における精度と更新レートとの間のトレードオフを課す。しかしながら、従来のデュアルコム計測では、信号の歪みを避けるために、Δfrepの値は、最終的にエイリアシング限界によって制約される。特に、エイリアシング限界(Δflim)は、式(1)であらわされる。
Δflim=f2
rep/2Δυ (1)
ここで 、frepはプローブコムのパルス繰り返しレートであり、Δυは、コムの周波数帯域幅である。周波数帯域幅(Δυ)は、式(2)で与えられる。
Δυ=c・Δλ/λ0
2 (2)
ここで、cは光速、Δλはコムの光帯域幅、λ0は中心波長である。
【0085】
本実施例では、プローブレーザの繰り返しレートは78.87MHzであり、中心波長は1557nmであり、光帯域幅(すなわち、パルスの絶対全幅)は約15nmであり、エイリアシング限界は約1.7kHzとなる。
【0086】
図9は、Δf
repが増加するとインターフェログラムの形状が明確でなくなり、Δf
repが近似エイリアシング限界を超えるとインターフェログラムが歪むことを明確に示している。しかしながら、非線形2光子検出によって同時に収集されたエンベロープは、Δf
repが増加しても形状が一貫しており、エイリアシング限界を超えても明確なままである。したがって、非線形2光子検出を使用して、更新レートは、測定精度を損なうことなく、上述のエイリアシング限界を超えることができる。非線形2光子検出のためのΔf
repの限界値が存在し、この限界値を超えると、プローブとLOパルスの相互通過が速すぎて、あまり明確でないエンベロープが生成されることに注意すべきである。しかしながら、デュアルコム計測で使用される任意のコムの組について、この値は、従来技術の(干渉ベース)技術の限界よりも大きくなるであろう。
【0087】
次に
図10を参照すると、乱流媒体を通る、および/または非協力的なターゲットまでの距離を測定するための本発明の代替的な実施形態が示されている。
【0088】
プローブコム180からの超短プローブパルス列は、ファイバサーキュレータ182にファイバ結合されている。プローブパルスは、第1のファイバコリメータ184を介してファイバサーキュレータ182を出る。プローブパルスは、ガラスくさび188の(背面)リファレンス表面186から部分的に、また、ターゲットミラー(または粗いターゲット)190から反射される。戻されたまたは反射されたプローブパルス(すなわち、リファレンス表面186およびターゲットミラー190から反射されたパルス)は、第1のファイバコリメータ184を介してファイバサーキュレータ182に結合される。これらの反射パルスは、第2のファイバコリメータ194を介してファイバを離れる前にファイバアンプ192を通過する。反射されたパルス列は、4分の1波長板196および半波長板198を通過し、これらは、パルスが偏光ビームスプリッタ200に到達するときにパルスにs-偏光を与えるように最適化される。LOコム202は、パルスが偏光ビームスプリッタ200に到達するときにパルスにp-偏光を与えるように最適化される4分の1波長板204および半波長板206を通過する超短ゲートパルス列を発生する。したがって、プローブコム180およびLOコム202からのパルスは、直交する偏光の状態で偏光波ビームスプリッタ200において出会う。
【0089】
偏光ビームスプリッタ200を出るプローブおよびゲートパルスの結合されたパルス列は、光学ハイパスフィルタ208を通過し(コムからの吸収されていないポンプ光を除去するために)、レンズ212によってSi光検出器210上に焦点を合わせられる。上述したように、Si光検出器210は、2光子エフェクト検出器を提供する。光検出器210によって生成された電気信号は、電子ローパスフィルタ214を通過してパルス列成分を除去し、ディジタイザまたはオシロスコープ216上で観察される。
【0090】
図10を参照して説明される実施形態は、反射(戻り)プローブ信号を光学的に増幅することが可能であるため有利である。これにより、より低強度のプローブパルスをターゲットに向けて方向づけることを可能とし、および/または、ターゲットの反射率をそうでなければ可能であったよりも低くすることができることを意味する。反射されたプローブパルスの光学的増幅の使用は、通常、干渉計ベースのシステムでは不可能であり、そのような増幅は、波面品質を変化させ、反射されたプローブパルスのキャリアエンベロープ位相特性を乱す。しかしながら、2光子検出配置は、超短パルスの位相特性に対するこのようないかなる妨害にも影響を受けない。
【0091】
次に
図11を参照して、複数のターゲットまでの距離を並行して決定することを可能にする
図2を参照して説明される装置の変形例について説明する。
図2の装置にも存在する装置の構成要素は、同様の参照番号が付与されている。
【0092】
図2の配置と共通して、プローブコム30によって発生されるプローブパルスは、第1の4分の1波長板34および第1の半波長板36を通過することによってp-偏光化される。p-偏光プローブパルス列は、ガラスくさび42のリファレンス表面によって部分的に反射される前に、第1の偏光ビームスプリッタ38および第2の4分の1波長板46を通過する。ガラスくさび42を通過するパルス列は、ターゲットビームを3つのターゲットビームに分散(分割)する分散光学素子(DOE)230を通過する。3つのターゲットビームのそれぞれは、第1、第2および第3のターゲットミラー232、234,および236のうちの1つから反射される。ミラーの代わりに再帰反射器を使用することによりプローブパルスの偏光状態を維持することも可能であろう。ガラスくさび42からの(すなわち、リファレンスパルス)および3つのターゲットミラーそれぞれからの(すなわち、3つのターゲットパルス列)反射は、4分の1波長板46を再び通過し、それによって、すべての戻りパルスはs-偏光になる。s-偏光の反射パルスは、第2の偏光ビームスプリッタ48でp-偏光のゲートパルスと出会い、結合されたビームは、レンズ56によってSi光検出器58上に焦点を合わせられる。検出器58からの電気信号は、ローパスフィルタリングされた後、ディジタイザ62に渡される。
【0093】
3つのターゲットパルス列(すなわち、3つのターゲットミラー232、234および236のそれぞれから反射されるもの)およびリファレンスパルス列(すなわち、くさび42からの反射)は、ゲートパルス列によってゲートされる。上記で説明したように、検出された強度信号のピークは、ゲートパルスとプローブパルスが検出器に一緒に到達するときに生じる。この配置では、4つのピークまたはエンベロープを含むセットが順番に繰り返される。4つのエンベロープの各セットは、リファレンスエンベロープ(すなわち、ガラスくさび42からのプローブパルスの反射から生じる)および3つのターゲットエンベロープ(すなわち、3つのターゲット232、234、および236のそれぞれからのプローブパルスの反射から生成される)を含む。リファレンスエンベロープに対する各ターゲットエンベロープの到着時間の差は、3つのターゲットのそれぞれまでの距離を測定することを可能にする。上記の3つのターゲットビームの使用は単なる例であり、もちろん、異なる数のターゲットビームで同様の配置を実装することが可能であることを覚えておくべきである。
【0094】
次に
図12を参照して、
図2を参照して説明される装置の変形例を説明する。光学的配置は、
図2を参照して説明したものと同じであるが、フォトダイオード58によって生成された電気信号は、信号ディジタイザを使用する代わりにタイマベースの配置を使用して解析される。
【0095】
特に、
図12は、電気ローパスフィルタ60を通過した後に、光検出器58からの電気信号を受信するマイクロコントローラ250を示す。マイクロコントローラ250は、第1および第2のタイマを含み、2光子エフェクト検出で発生する強度エンベロープの上昇および/または下降エッジをリアルタイムで検出することができる。(第1の)リファレンスエンベロープの到達は、第1のタイマをスタートさせるマイクロコントローラ250によって検出される。(第1の)ターゲットエンベロープの検出は、第1のタイマを停止し、第2のタイマをスタートする。その後の各エンベロープの到達は、実行中のタイマを停止し、他のタイマをスタートする。第1および第2のタイマによって記録された持続時間は、リファレンス光学素子とターゲット光学素子との間の距離の飛行時間を提供する。その結果、シンプルでリアルタイムのライダーシステム(lidar system)が完成する。
【0096】
この配置では、2光子検出の非線形応答であり、これは、エンベロープが容易に検出される(すなわち、タイマを開始/停止する)急峻な上昇勾配を有することを意味する。したがって、デュアルコム設定を使用する従来のライダーの変形例も提供される。2光子検出によって生成されるエンベロープの上昇勾配は、ライダーで通常検出される単一パルスの上昇勾配よりも急峻であり、それによってより高い解像度の範囲測定を提供する。そのようなタイマベースのシステムの使用は
図2を参照して上述した装置で使用されるディジタイザ62によって実行されるデータ解析よりも場合によっては好ましいこともあり得る。
【0097】
次に、
図13、14aおよび14bを参照して、本発明による距離計測装置を使用して行われた実験の結果を説明する。
【0098】
まず
図13を参照して、
図2を参照して上述したような装置を使用して、約12cm離れたリファレンスオブジェクトとターゲットオブジェクトとの間の距離を測定した。多数の距離測定が行われた。
図13は、測定対平均時間のアラン偏差(精度)を示している。
【0099】
上述したように、更新レートは、4kHzであったコムの繰り返しレートの差(Δfrep)に等しい。250μsの最小取得時間(繰り返しレートの差4kHzによって設定される)では、測定精度は17.8μmである。精度は、サンプル数の平方根としてスケールされ、0.1秒の平均化でμm以内(sub-μm)の精度に達する。1秒間の平均化の後、精度は150nmに達し、これは633nmHeNeレーザを用いた干渉計による測定に引き継ぐのに十分である。2秒間の平均化後、精度は93nmに達し、大気の変動によって課せられる10-7の不確実性の限界を下回る。
【0100】
図14を参照すると、計測技術の直線性と精度をテストするために、再度、
図2を参照して上述した装置を使用して、第2の実験が実施された。ターゲットミラーを平行移動ステージに取り付け、ターゲットミラーまでの距離を1cmの平行移動で、離散的ステップで測定した。測定値は、0.5sの平均化で記録された。レニショーXL-80(Renishaw XL-80)干渉測定システムも、ミラーの平行移動も測定し、グラウンドトゥルースデータを提供した。
【0101】
図14aは、ツゥルースデータ(truth data)に対する測定距離を示し、線形関係を示す。
図14bは、フィットした直線に対する測定値の残差を示しており、この技術が±4μmの精度を有することを示唆している。
【0102】
図15を参照して、本発明の距離計測装置のさらなる代替的な構成を説明する。以下に説明するように、本実施形態は、利用可能なレーザパワーを効率的に使用し、リファレンスパルスおよびターゲットパルスの検出のための別個の経路を有する。プローブコム300は、第1の偏光回転子304を介して第1の偏光ビームスプリッタ302に伝達される超短プローブパルス列(すなわち、プローブビームを形成する)を発生する。第1の偏光回転子304は、この例では、機械的に回転可能な半波長板であるが、代替的に、液晶セル、または偏光制御のための他の適切な手段を含むことができる。
【0103】
プローブビームのp-偏光成分は、第1の偏光ビームスプリッタ302を通過し、第1の4分の1波長板308を介してターゲットミラー306に向けて第1の経路に沿って方向づけられる。プローブビームのs-偏光成分は、第1の偏光ビームスプリッタ302によって反射され、第2の4分の1波長板312を介してリファレンスミラー310に向けて、第2の経路に沿って方向づけられる。ターゲットミラー306から反射されるプローブパルス(すなわち、ターゲットパルス列)、およびリファレンスミラー310から反射されるプローブパルス(すなわち、リファレンスパルス列)は、第1の偏光ビームスプリッタ302に戻り、それらは、第2の偏光ビームスプリッタ314に方向づけられる単一のビーム(すなわち、戻りパルス列)に結合される。
【0104】
LOコム320は、第2の偏光ビームスプリッタ314に向かって、機械的に回転可能な半波長板の形態である第2の偏光回転子322(これは、代替的に、液晶セルまたは偏光制御のための他の適切な手段を含むことができることに留意されたい)を通過する超短ゲートパルス列を発生する(すなわち、LOビームを形成する)。
【0105】
LOビームのp-偏光成分は、第1のシリコンフォトダイオード検出器324に向かって第2の偏光ビームスプリッタ314を通過する。プローブビームのs-偏光成分(すなわち、ターゲットパルス列)は、第2の偏光ビームスプリッタ314によって反射され、したがって、また、第1のシリコンフォトダイオード検出器324に向けて方向づけられる。上記の理由から、ハイパス光学フィルタ326およびレンズ328は、第2の偏光ビームスプリッタ314と第1のシリコンフォトダイオード検出器324との間に設けられている。したがって、直交する偏光のターゲットパルスおよびゲートパルスが第1のシリコンフォトダイオード検出器324に到達することが理解できる。
【0106】
LOビームのs-偏光成分は、第2の偏光ビームスプリッタ314から反射され、第2のシリコンフォトダイオード検出器330に向けて方向づけられる。プローブビームのp-偏光成分(すなわち、リファレンスパルス列)は、第2の偏光ビームスプリッタ314を通して伝達され、第2のシリコンフォトダイオード検出器330に向けて方向づけられる。上述の理由から、ハイパス光学フィルタ332およびレンズ334は、第2の偏光ビームスプリッタ314と第2のシリコンフォトダイオード検出器330との間に設けられ得る。便宜上、ビームステアリング(折り返し)ミラー336も設けられている。したがって、直交する偏光のリファレンスパルス、およびゲートパルスが第2のシリコンフォトダイオード検出器330に到達することが理解できる。
【0107】
第1のシリコンフォトダイオード検出器324、および第2のシリコンフォトダイオード検出器330からの検出された電気信号は、それぞれ第1および第2のローパスフィルタ342および344を介してマイクロコントローラ340に供給される。したがって、2光子エフェクトリファレンス信号、およびターゲット信号は、2つの別個のチャネルを介して検出されるが、マイクロコントローラ340は、単一の2光子エフェクト検出器のみが使用される上記のものと同様の解析を実行することができる。例えば、マイクロコントローラ340は、ライダータイプの配置を実装するために、ピーク検出を使用してタイマをスタートさせ得る。代替的に、収集された信号を解析して、信号(例えば、リファレンスおよびターゲット)ピークが発生する相対的な時間を決定する、アナライザが提供され得る。
【0108】
重要なことは、第1および第2の偏光回転子304および322の設置が、装置内の様々な光ビームの相対強度の制御を提供することである。特に、第1の偏光回転子304を調整することは、ターゲットミラー306、およびリファレンスミラー310に方向づけられるプローブビームの相対的な割合を制御する。言い換えれば、システムは、第1の偏光回転子304を使用してプローブビームの偏光を回転させることによって、リファレンスおよびターゲットアームのレーザパワーをバランスさせることができる。これにより、ターゲット、およびリファレンスパルスの相対強度を制御することができ、ターゲットから戻る光の量の変化を考慮することができる。例えば、ターゲットの反射率などの影響は、最良の測定信号を生成するために必要な光の量を変化させ得る。第2の偏光回転子322は、局所発振器ビームに同様の制御を提供し、それによって、第1および第2のフォトダイオード324および330によって受信されたLOビームの相対量を適切に制御(例えば、バランス)することを可能にする。
【0109】
図16を参照して、本発明の距離計測装置のさらなる代替的な構成を説明する。
【0110】
プローブコム400は、第1の半波長板404を介して第1の偏光ビームスプリッタ402に伝達される超短プローブパルス列(すなわち、プローブビームを形成する)を発生する。プローブビームのp-偏光成分は、第1の偏光ビームスプリッタ402を通過し、第1の4分の1波長板408を介してターゲットミラー406に向けて第1の経路に沿って方向づけられる。プローブビームのs-偏光成分は、第1の偏光ビームスプリッタ402によって反射され、第2の4分の1波長板412を介してリファレンスミラー340に向けて、第2の経路に沿って方向づけられる。ターゲットミラー406から反射されるプローブパルス(すなわち、ターゲットパルス列)、およびリファレンスミラー410から反射されるプローブパルス(すなわち、リファレンスパルス列)は、第1の偏光ビームスプリッタ402に戻り、それらは、第2の偏光ビームスプリッタ414に向けて方向づけられる単一のビーム(すなわち、戻りパルス列)に結合される。
【0111】
LOコム420は、第2の偏光ビームスプリッタ414に向かって第2の半波長板422を通過する(すなわち、LOビームを形成する)超短ゲートパルスを発生する。LOビームのp-偏光成分は、第1のシリコンフォトダイオード検出器424(すなわち、第1の多光子エフェクト検出器素子)に向かって第2の偏光ビームスプリッタ414を通過する。プローブビームのs-偏光成分(すなわち、ターゲットパルス列)は、第2の偏光ビームスプリッタ414によって反射され、したがって、また、第1のシリコンフォトダイオード検出器324に向けて方向づけられる。上記の理由から、ハイパス光学フィルタ426およびレンズ428は、第2の偏光ビームスプリッタ414と第1のシリコンフォトダイオード検出器424との間に設けられている。したがって、直交する偏光のターゲットパルスおよびゲートパルスが第1のシリコンフォトダイオード検出器424に到達することが理解できる。ハイパス光学フィルタ426、レンズ428、第1のシリコンフォトダイオード検出器424、および第1のローパスフィルタ442は、共にターゲット検出チャネル452を提供する。
【0112】
LOビームのs-偏光成分は、第2の偏光ビームスプリッタ414から反射され、第2のシリコンフォトダイオード検出器430(すなわち、第2の多光子エフェクト検出器素子)に向かって方向づけられる。プローブビームのp-偏光成分(すなわち、リファレンスパルス列)は、第2の偏光ビームスプリッタ414を通過して伝達され、第2のシリコンフォトダイオード検出器430に向けて方向づけられる。上述の理由から、ハイパス光学フィルタ432およびレンズ434は、第2の偏光ビームスプリッタ414と第2のシリコンフォトダイオード検出器430との間に設けられ得る。便宜上、ビームステアリング(折り返し)ミラー436も設けられている。したがって、直交する偏光のリファレンスパルス、およびゲートパルスが第2のシリコンフォトダイオード検出器430に到達することが理解できる。ハイパス光学フィルタ432、レンズ434、第2のシリコンフォトダイオード検出器430、および第2のローパスフィルタ444は、共にリファレンス検出チャネル450を提供する。
【0113】
リファレンス検出チャネル450およびターゲット検出チャネル452からの検出された電気信号は、ライダータイマ回路440に供給される。タイマ回路440は、ライダータイプの配置を実装するために、ピーク検出を使用してタイマクロック454をスタートさせる。特に、リファレンスチャネルからの信号は、タイマクロック454をスタートし、ターゲットチャネルからの信号は、ライダータイマクロックを停止する。タイマクロック454によって測定される時間差は、絶対距離に比例する。
【0114】
目標までの距離(d)は、次の式(3)により計算されることを覚えておくべきである。
【0115】
【0116】
これは次の式(4)のように書き換えることができる。
【0117】
【0118】
事実上、システムは、光速cをfrepLO/Δfrepの倍率で遅くし、これは、時間測定Δtは、高分解能の絶対距離測定値dを得るために、はるかに低い分解能を必要とすることを意味する。例えば、光の実効速度は、約2万倍遅くすることができ、「時間伸長(time-stretch)」要素とみなすことができる。
【0119】
最大測定レートがΔfrepの場合、曖昧さのない範囲はc/frepLOで与えられる。したがって、距離分解能、測定レート、および曖昧さのない範囲は、frepprobeおよびfrepLOの適切な選択によって調整することができる。
【0120】
各レーザについての繰り返しレートfrepは、レーザ共振器の長さによって設定される。曖昧さのない動作範囲(Lunamb)の長さは、式(5)によって示される局所発振器(LLO)の長さに関連する。
【0121】
【0122】
例えば、3mという曖昧さのない範囲内での動作を達成するためには、
【0123】
【0124】
のファイバレーザ発振器の共振器は、約2mの長さでなければならない。
【0125】
ここで
図17から
図19を参照すると、第1のリファレンスパルス、後続のターゲットパルス、および次のリファレンスパルスの間の時間を記録することがどのようにして可能であるか、および、どのように有利であるかを説明する。これは、2つのライダークロックまたはタイマを使用して達成することができる。特に、この情報により、ターゲットまでの距離だけでなく、隣接するリファレンスパルス間の時間からΔf
repも計算することが可能である。
【0126】
図17を参照すると、
図16に示される配置に光学的に非常に類似している実施形態が示されている。したがって、
図16を参照して説明された実施形態に存在する同じ構成要素を識別するために、同様の参照番号が使用される。
図17の実施形態の主な違いは、リファレンスおよびターゲット検出チャネル450および452から出力された信号が、両方とも第1のライダータイマ500および第2のライダータイマ502に供給されることである。これらのタイマ500および502は、マスタークロック504から導出された同じ時間基準を使用して動作する。LOコム420のタイミングもまた、マスタークロック504に由来する。
【0127】
第1のライダータイマ500は、リファレンスパルスによってスタートされ、ターゲットパルスによって停止され、リファレンス-ターゲット時間(tRT)を報告する。第2のライダータイマ502は、ターゲットパルスを基準にスタートされ、次のリファレンスパルスによって停止され、ターゲット-リファレンス時間(tTR)を報告する。
【0128】
図18を参照すると、
図17の2つのタイマを使用して取得されたタイミング情報が示されている。上のトレース(trace)はリファレンスアーム信号を示し、下のトレースはターゲットアーム信号を示す。リファレンス-ターゲット時間(t
RT)およびターゲット-リファレンス時間(t
TR)の値が、2つの一連のNパルスについて示されている。上記実施例で言及された時間差Δtは、t
RTに対応することに留意されたい。
【0129】
リファレンス-ターゲット時間(tRT)およびターゲット-リファレンス時間(tTR)の合計は、リファレンスパルス間の時間またはリファレンス-リファレンス時間(tRR)を与える。リファレンスミラー410は、可動ではないため、リファレンスパルスは、一定の時間間隔で発生する。これらの間隔の周期は、2つのレーザコム400および420が、異なる繰り返しレート率を考慮して、整列するまでにどれだけの時間がかかるかによって決定される。したがって、リファレンス-リファレンス時間(tRR)は、次の式(6)によって繰り返しレートにおける差に関連付けられる。
【0130】
【0131】
したがって、距離は式(7)から計算することができる。
【0132】
【0133】
tRTとtTRの両方が(すなわち、第1のライダータイマ500と第2のライダータイマ502によって)測定されるため、Δfrepの厳密な制御を必要とせずに距離dを確立することが可能である。
【0134】
図19を次に参照すると、
図16および
図17を参照して説明されたものと同様の配置である実施形態が示されている。したがって、
図16および
図17を参照して説明された実施形態にも存在する本実施形態に存在する同じ構成要素を識別するために、同様の参照番号が使用される。
【0135】
図19の装置は、Δf
repの値のドリフトを補償するためにリファレンスーリファレンス時間(t
RR)信号を直接使用するという点で、
図17の装置とは異なる。リファレンス-リファレンス時間(t
RR)は、位相同期ループ(PLL)コントローラ600によって、リファレンス検出チャネル450によって出力される信号から導出される。特に、t
RR時間を表す信号は、 高調波を選択するためにハイパスフィルタに直接供給され、そこから位相同期ループに送られ、そこでその周波数は何倍にもなる(この例ではk倍)。PLLコントローラ600によって導出された結果として生じるタイミング信号は、第1および第2のライダータイマ500および502によってクロック基準として使用される。このようにして、Δf
repにおける任意の変化は、基準クロックの「ティック(tick)」のレートを変化させ、その結果、距離測定における繰り返しレートの任意のそのような変化の影響を自動的に補償する。これは、プローブコム420の繰り返しレートを厳密に安定させる必要がないことを意味し、Δf
repが時間と共に多少ドリフトすることを許容する。
【0136】
次に
図20を参照すると、異なる方法でタイミング信号を導出する、
図19を参照して説明したものと同様の実施形態が示されている。したがって、
図16、
図17および
図19を参照して説明された実施形態にも存在する本実施形態に存在する同じ構成要素を識別するために、同様の参照番号が使用される。
【0137】
図20の装置は、プローブコム400によって生成された光のサンプルを第1の高速フォトダイオード702に向けて方向づける第1のガラスくさび700を含む。LOコム420によって生成された光のサンプルを第2の高速フォトダイオード706に向けて方向づける第2のガラスくさび704も提供される。タイミングコントローラ708は、第1および第2のフォトダイオード702および706から電気信号を受信する。タイミングコントローラ708は、各信号をバンドパスフィルタ処理して、無線周波数(r.f.)帯域内にある各信号のn次高調波を取得する。次いで、r.f.信号は混合され、任意のΔf
repのドリフトに追従するn.Δf
repを表すそれらのビート周波数が生成される。このn.Δf
rep信号は2乗され、LIDARタイマ500および502の基準クロックとして使用され、これにより、距離測定における任意のΔf
repのドリフトを補償することができる。
【0138】
図20を参照して説明された配置は、
図19を参照して説明された配置で生じ得る、測定中のリファレンスミラー410の位置の変化に対する感度が取り除かれる。もちろん、そのようなタイミング情報を様々な代替方法で抽出することは可能であろう。例えば、
図3を参照して上述した配置でのディジタイザ108によって受信された信号を解析して、そのようなタイミング情報を導出することができる。当業者はまた、他の技術が可能であることを認識するであろう。
【0139】
上記の実施形態は、本発明に従って実施することができる装置および方法の単なる例であることを覚えておくべきである。例えば、2光子検出が記載されているが、検出器に3つ以上の光子の同時到着を必要とする多光子エフェクト検出を実装することも可能であろう。さらに、ゲートパルスおよびプローブパルスが、上述した交差偏光配置に代わる方法で、互いに光学的に干渉することを防ぐことが可能であろう。例えば、プローブおよびLOコムは、異なる(例えば、重複しない)波長範囲のパルス列を出力することができ、または、検出器上のプローブおよびゲートパルスの入射角は、干渉効果を最小限にするように配置することができる。
【国際調査報告】