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特表2023-551961分離膜用共重合体およびこれを含む二次電池
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-12-13
(54)【発明の名称】分離膜用共重合体およびこれを含む二次電池
(51)【国際特許分類】
   C08F 220/56 20060101AFI20231206BHJP
   H01M 50/42 20210101ALI20231206BHJP
   H01M 50/434 20210101ALI20231206BHJP
   H01M 50/443 20210101ALI20231206BHJP
   H01M 50/446 20210101ALI20231206BHJP
【FI】
C08F220/56
H01M50/42
H01M50/434
H01M50/443 M
H01M50/446
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023534058
(86)(22)【出願日】2021-10-29
(85)【翻訳文提出日】2023-06-02
(86)【国際出願番号】 KR2021015438
(87)【国際公開番号】W WO2023074967
(87)【国際公開日】2023-05-04
(31)【優先権主張番号】10-2021-0142451
(32)【優先日】2021-10-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】519350498
【氏名又は名称】ハンソル ケミカル カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】HANSOL CHEMICAL CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】7-8F, 513, Teheran-ro, Gangnam-gu, Seoul 06169, Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】110001494
【氏名又は名称】前田・鈴木国際特許弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】イ, ゴ-ウン
(72)【発明者】
【氏名】チャン, ボ-オク
(72)【発明者】
【氏名】キム, ジン-ヨン
(72)【発明者】
【氏名】キム, スン-ホン
(72)【発明者】
【氏名】パク, ジュン
(72)【発明者】
【氏名】オ, セ-ウク
(72)【発明者】
【氏名】クォン, セ-マン
【テーマコード(参考)】
4J100
5H021
【Fターム(参考)】
4J100AJ02R
4J100AL08S
4J100AM02Q
4J100BA03S
4J100CA06
4J100FA03
4J100FA21
4J100JA43
5H021CC03
5H021EE06
5H021EE15
5H021EE20
5H021EE22
5H021EE23
5H021HH01
5H021HH07
(57)【要約】
本発明は、共重合体の全体重量100重量%を基準として、0重量%超過、15重量%以下のアクリロニトリル系の単量体単位、0重量%超過、5重量%以下の水酸基(-OH)を含むアクリレート系の単量体単位、80重量%超過、95重量%未満のアクリルアミド系の単量体単位、および0重量%超過、15重量%以下のアクリル酸系の単量体単位を含む共重合体とこれを含むスラリー組成物、分離膜および二次電池に関する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
共重合体の全体重量100重量%を基準として、0重量%超過、15重量%以下のアクリロニトリル系の単量体単位、0重量%超過、5重量%以下の水酸基(-OH)を含むアクリレート系の単量体単位、80重量%超過、95重量%未満のアクリルアミド系の単量体単位、および0重量%超過、15重量%以下のアクリル酸系の単量体単位を含む、
共重合体。
【請求項2】
前記共重合体は、下記化学式1で表される、
請求項1に記載の共重合体。
【化1】
前記化学式1において、
1~R3は、それぞれ独立して、水素、炭素数1~4の線状または分枝状炭化水素であり、
Mは、アルカリ金属、2級アミンおよび3級アミンからなるグループより選択されたいずれか1つ以上であり、
nは、0~500の整数であり、
m、l、xおよびyは、m+n+x+y=1である。
【請求項3】
前記化学式1のR1~R3は、それぞれ独立して、水素、メチル、エチルからなるグループより選択されたいずれか1つ以上を含む、
請求項2に記載の共重合体。
【請求項4】
前記化学式1のMは、下記化学式2~5の化合物からなるグループより選択されたいずれか1つ以上を含む、
請求項2に記載の共重合体。
【化2】
【化3】
前記化学式2および3において、
4~R6は、それぞれ独立して、炭素数1~6の線状または分枝状炭化水素である。
【化4】
【化5】
前記化学式4および5において、
1~L3は、それぞれ独立して、炭素数1~6のアルキレン(alkylene)基であり、
a~cは、それぞれ独立して、0~2の整数のいずれか1つである。
【請求項5】
前記共重合体は、ランダムまたはブロック共重合体である、
請求項1に記載の共重合体。
【請求項6】
前記共重合体の数平均分子量が5,000~1,000,000である、
請求項1に記載の共重合体。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか1項に記載の共重合体;および
無機粒子;を含む、
スラリー組成物。
【請求項8】
請求項7に記載のスラリー組成物を含む、
分離膜。
【請求項9】
請求項8に記載の分離膜を含む、
二次電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、共重合体およびこれを含むスラリー組成物、分離膜および二次電池に関する。
【背景技術】
【0002】
リチウム二次電池はエネルギー密度が高く、電気、電子、通信およびコンピュータ産業分野に広範囲に用いられており、携帯電子機器用の小型リチウム二次電池に続いて、ハイブリッド自動車、電気自動車などの高容量二次電池などへとその応用分野が広がっている。
【0003】
リチウムイオン二次電池は分離膜によって絶縁化されているが、内部あるいは外部の電池異常現象や衝撃によって正極と負極の短絡が発生して発熱および爆発の可能性があるので、分離膜の熱的/化学的安全性の確保は極めて重要である。
【0004】
現在、分離膜としてポリオレフィン系のフィルムが広く使用されているが、ポリオレフィンは、高温で熱収縮が激しく、機械的特性が弱いというデメリットがある。
【0005】
このようなポリオレフィン系分離膜の安定性向上のために、ポリオレフィン多孔性基材フィルムに無機物粒子とバインダーとからなる混合物をコーティングした多孔性分離膜が開発されている。
【0006】
すなわち、ポリオレフィン系分離膜の高温による熱収縮およびデンドライトによる電池の不安定性を抑制するために、多孔性分離膜基材の片面あるいは両面に無機物粒子をバインダーと共にコーティングすることにより、無機物粒子が基材の収縮率を抑制する機能を付与すると同時に、コーティング層によってより安全な分離膜を製造することができる。
【0007】
優れた電池特性の確保のために、コーティング層は、均一にコーティングされなければならないと同時に、基材との強い接着力が要求される。
【0008】
また、最近の高容量および高出力化に対応するためには、従来の分離膜の耐熱性をさらに改善する必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】大韓民国登録特許第10-1430975号
【特許文献2】大韓民国公開特許公報第10-2006-0072065号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
そこで、本発明は、共重合体を用いて耐熱性乃至接着性に優れたスラリー組成物を提供する。
【0011】
また、本発明は、前記スラリー組成物が適用されて耐熱性に優れた分離膜および前記分離膜が用いられた優れた性能の電池を提供する。
【0012】
これにより、電池抵抗および安定性に優れた電池を実現することができる。
【0013】
しかし、本願が解決しようとする課題は以上に言及した課題に制限されず、言及されていないさらに他の課題は以下の記載から当業者に明確に理解されるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本願の一態様は、共重合体の全体重量100重量%を基準として、0重量%超過、15重量%以下のアクリロニトリル系の単量体単位、0重量%超過、5重量%以下の水酸基(-OH)を含むアクリレート系の単量体単位、80重量%超過、95重量%未満のアクリルアミド系の単量体単位、および0重量%超過、15重量%以下のアクリル酸系の単量体単位を含む、
共重合体を提供する。
【0015】
本願の他の態様は、前記共重合体;および
無機粒子;を含む、
スラリー組成物を提供する。
【0016】
本願のさらに他の態様は、前記スラリー組成物を含む、
分離膜を提供する。
【0017】
本願のさらに他の態様は、前記分離膜を含む、
二次電池を提供する。
【発明の効果】
【0018】
本発明の共重合体は、スラリー組成物の分散安定性を向上させ、分離膜基材であるポリオレフィンフィルムとの接着力を高め、分離膜の耐熱性を改善させることができる。
【0019】
また、電池抵抗および安定性に優れた電池を実現することができる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、発明の具体的な実施例を通じて、発明の作用および効果をより詳述する。ただし、このような実施例は発明の例として提示されたものに過ぎず、これによって発明の権利範囲が定められるのではない。
【0021】
これに先立ち、本明細書および特許請求の範囲に使われた用語や単語は通常または辞書的な意味に限定して解釈されてはならず、発明者は自らの発明を最も最善の方法で説明するために用語の概念を適切に定義できるという原則に則り、本発明の技術的思想に符合する意味と概念で解釈されなければならない。
【0022】
したがって、本明細書に記載された実施例の構成は、本発明の最も好ましい一実施例に過ぎず、本発明の技術的思想をすべて代弁するものではないので、本出願時点においてこれらを代替できる多様な均等物と変形例が存在できることを理解しなければならない。
【0023】
本明細書において、単数の表現は文脈上明らかに異なる意味ではない限り、複数の表現を含む。本明細書において、「含む」、「備える」または「有する」などの用語は、実施された特徴、数字、段階、構成要素、またはこれらを組み合わせたものが存在することを指定しようとするものであって、1つまたはそれ以上の他の特徴や数字、段階、構成要素、またはこれらを組み合わせたものの存在または付加の可能性を予め排除しないことが理解されなければならない。
【0024】
本明細書において、数値範囲を示す「aないしb」および「a~b」における「ないし」および「~」は、≧aかつ≦bと定義する。
【0025】
本願の一態様は、共重合体の全体重量100重量%を基準として、0重量%超過、15重量%以下のアクリロニトリル系の単量体単位、0重量%超過、5重量%以下の水酸基(-OH)を含むアクリレート系の単量体単位、80重量%超過、95重量%未満のアクリルアミド系の単量体単位、および0重量%超過、15重量%以下のアクリル酸系の単量体単位を含むことができる。
【0026】
前記アクリロニトリル系の単量体は、例えば、アクリロニトリル(acrylonitrile)およびメタクリロニトリル(methacrylonitrile)からなるグループより選択されたいずれか1つ以上であってもよいが、これに限定されない。
【0027】
前記水酸基(-OH)を含むアクリレート系の単量体は、例えば、ヒドロキシメチルアクリレート(hydroxyl methyl acrylate)、ヒドロキシメチルメタクリレート(hydroxyl methyl methacrylate)、ヒドロキシエチルアクリレート(hydroxyl ethyl acrylate)、ヒドロキシエチルメタクリレート(hydroxyl ethyl methacrylate)、ヒドロキシプロピルアクリレート(hydroxyl propyl acrylate)、ヒドロキシプロピルメタクリレート(hydroxyl propyl methacrylate)、ヒドロキシイソプロピルアクリレート(hydroxyl isopropyl acrylate)、ヒドロキシイソプロピルメタクリレート(hydroxyl isopropyl methacrylate)、ヒドロキシブチルアクリレート(hydroxyl butyl acrylate)、ヒドロキシブチルメタクリレート(hydroxyl butyl methacrylate)、ヒドロキシsec-ブチルアクリレート(hydroxyl sec-butyl acrylate)、ヒドロキシsec-ブチルメタクリレート(hydroxyl sec-butyl methacrylate)、ヒドロキシtert-ブチルアクリレート(hydroxyl tert-butyl acrylate)、ヒドロキシtert-ブチルメタクリレート(hydroxyl tert-butyl methacrylate)およびポリエチレングリコールメタクリレート(polyethyleneglycol methacrylate)からなるグループより選択されたいずれか1つ以上であってもよいが、これに限定されない。
【0028】
前記アクリルアミド系の単量体単位は、例えば、アクリルアミド(acrylamide)、メタクリルアミド(methacrylamide)、N-エチルアクリルアミド(N-ethyl acrylamide)、エチルメタクリルアミド(N-ethyl methacrylamide)、N-プロピルアクリルアミド(N-propyl acrylamide)、N-イソプロピルアクリルアミド(N-isopropyl acrylamide)、N-イソプロピルメタクリルアミド(N-isopropyl methacrylamide)、N-ブチルアクリルアミド(N-butyl acrylamide)、N-ブチルメタクリルアミド(N-butyl methacrylamide)、N-sec-ブチルアクリルアミド(N-sec-butyl acrylamide)、N-sec-ブチルメタクリルアミド(N-sec-butyl methacrylamide)、N-ter-ブチルアクリルアミド(N-tert-butyl acrylamide)およびN-ter-ブチルメタクリルアミド(N-tert-butyl methacrylamide)からなるグループより選択されたいずれか1つ以上であってもよいが、これに限定されない。
【0029】
前記アクリル酸系の単量体単位は、例えば、アクリル酸(acrylic acid)およびメタクリル酸(methacrylic acid)からなるグループより選択されたいずれか1つ以上であってもよいが、これに限定されない。
【0030】
前記水酸基を含むアクリレート系の単量体とアクリル酸系の単量体とを同時に有する場合には、耐熱性を向上させることができる。
【0031】
これは、単量体の水酸基とカルボン酸基とが縮合反応して架橋構造が形成されるからである。
【0032】
したがって、カルボン酸基の含有量が固定されている時、水酸基を含むアクリレート系の単量体の含有量を高めると、架橋度が高くなって耐熱性が向上できるが、水酸基を含むアクリレート系の単量体の含有量が5重量%を超えると、粘度が極度に高くなってコーティング工程性に問題を引き起こすことがある。
【0033】
また、アクリルアミド系の単量体の含有量が高くなり、アクリル酸系の単量体の含有量が低くなるほど、耐熱性は向上するものの、電気抵抗が非常に高くなりうる。
【0034】
逆に、アクリルアミド系の単量体の含有量が低くなり、アクリル酸系の単量体の含有量が高くなるほど、電気抵抗は低くなるものの、耐熱性が低下しうる。
【0035】
これは、アクリル酸系の単量体のカルボキシル基のイオン伝導性向上効果が電気抵抗に影響を及ぼし、高いガラス転移温度を有するアクリルアミド系の単量体が耐熱性に影響を及ぼすからである。
【0036】
したがって、アクリル酸系の単量体およびアクリルアミド系の単量体の含有量が本発明の含有量範囲を上回るか、下回る場合、電気抵抗および耐熱性に問題が発生しうる。
【0037】
アクリロニトリル系単量体のシアノ基は、接着力および耐熱性を向上させることができる。また、シアノ基の高いイオン伝導性によって電気抵抗も低くなる。
【0038】
しかし、アクリロニトリル系単量体の含有量が本発明の含有量範囲を上回るか、下回る場合、接着力と耐熱性の向上幅が大きく減少しながら接着力と耐熱性がすべて低下しうる。
【0039】
一実施形態において、前記共重合体は、下記化学式1で表されてもよい。
【0040】
【化1】
前記化学式1において、
1~R3は、それぞれ独立して、水素、炭素数1~4の線状または分枝状炭化水素であり、
Mは、アルカリ金属、2級アミンおよび3級アミンからなるグループより選択されたいずれか1つ以上であり、
nは、0~500の整数であり、
m、l、xおよびyは、m+n+x+y=1である。
前記化学式1のm、l、xおよびyは、各単量体単位のモル分率に相当し、各単量体単位のモル分率の合計は、1になる。
【0041】
一実施形態において、前記化学式1のR1~R3は、それぞれ独立して、水素、メチルおよびエチルからなるグループより選択されたいずれか1つ以上を含むことができる。
【0042】
一方、前記化学式1のMがアルカリ金属の場合、Li、Naまたは、Kであってもよいが、これに限定されない。
【0043】
前記化学式1のMが2級アミンおよび3級アミンからなるグループより選択されたいずれか1つの場合、共重合体100重量部に対して0.05~0.4重量部含まれる。
【0044】
一実施形態において、前記化学式1のMは、下記化学式2~5の化合物からなるグループより選択されたいずれか1つ以上を含むことができる。
【0045】
【化2】
【0046】
【化3】
【0047】
前記化学式2および3において、
4~R6は、それぞれ独立して、炭素数1~6の線状または分枝状炭化水素である。
【0048】
【化4】
【0049】
【化5】
【0050】
前記化学式4および5において、
1~L3は、それぞれ独立して、炭素数1~6のアルキレン(alkylene)基であり、
a~cは、それぞれ独立して、0~2の整数のいずれか1つである。
【0051】
一実施形態において、前記共重合体は、合成工程によってランダムまたはブロック共重合体であってもよい。
【0052】
一実施形態において、前記共重合体の数平均分子量が5,000~1,000,000であってもよい。
【0053】
前記共重合体の数平均分子量が5,000未満の場合、共重合体の流動性が大きくなって分散性が低下し、分離膜の耐熱特性が低下することがある。数平均分子量が1,000,000以上の場合には、使用するのに粘度が過度に高く、分離膜の気孔を塞いで通気度と抵抗が低下しうる。
【0054】
本願の他の態様によるスラリー組成物は、前記共重合体および無機粒子を含むことができる。
【0055】
前記スラリー組成物の接着力は、80~86gf/mmであってもよい。
【0056】
前記無機粒子は、絶縁体粒子であれば制限なく使用可能であり、好ましくは、高誘電率絶縁体粒子であってもよい。
【0057】
前記無機粒子の具体例としては、Al23、AlOOH、SiO2、TiO2、ZrO2、ZnO、NiO、CaO、SnO2、Y23、MgO、BaTiO3、CaTiO3、SrTiO3、SiC、Li3PO4、Pb(Zr、Ti)O3(PZT)、(Pb、La)(Zr、Ti)O3(PLZT)、およびこれらの混合物が挙げられる。
【0058】
前記無機粒子は、大きさに特別な制限はないが、例えば、平均粒径が0.01μm~30μmであってもよく、より好ましくは0.1μm~10μmであってもよい。無機粒子の平均粒径が前記好ましい範囲未満の場合には、分散性が低くなり、前記好ましい範囲を超える場合には、コーティングされた後のコーティング層の厚さが厚くなって機械的物性が低下することがある。
【0059】
また、前記無機粒子は、形状に特別な制限がなく、例えば、球状または楕円形であるか、不定形であってもよい。
【0060】
本願の他の態様による分離膜は、前記スラリー組成物を含むことができる。
【0061】
前記分離膜の電気抵抗は、0.7~0.76mΩであってもよい。
また、前記分離膜の熱収縮率は、MD(Machine Direction、長手方向)およびTD(Transverse Direction、幅方向)方向においていずれも5%以下であった。
【0062】
前記スラリー組成物を多孔性基材フィルムの少なくとも一面にコーティングするか、前記スラリー組成物をフィルム状に製造して多孔性基材フィルムに貼り合わせて分離膜を製造することができる。
【0063】
一方、前記分離膜は、二次電池用分離膜として使用可能であり、例えば、リチウム二次電池用分離膜として使用可能である。
【0064】
分離膜製造の一例として、(a)前記共重合体を溶媒に溶解または分散させて高分子溶液を製造するステップと、(b)無機物粒子を、前記ステップ(a)の高分子溶液に添加および混合するステップと、(c)ポリオレフィン系分離膜基材の表面および基材中の気孔部の一部からなる群より選択された1種以上の領域を、前記ステップ(b)の混合物でコーティングおよび乾燥するステップとを含むことができる。
【0065】
まず、1)前記共重合体を適切な溶媒に溶解または分散させた高分子溶液形態で製造および用意する。
【0066】
溶媒としては、バインダーとして使用された前記共重合体と溶解度指数が類似し、沸点(boiling point)が低いものが好ましい。これは、均一な混合と後の溶媒除去を容易にするためである。使用可能な溶媒の非制限的な例としては、アセトン(acetone)、テトラヒドロフラン(tetrahydrofuran)、メチレンクロライド(methylene chloride)、クロロホルム(chloroform)、ジメチルホルムアミド(dimethylformamide)、N-メチル-2-ピロリドン(N-methyl-2-pyrrolidone、NMP)、シクロヘキサン(cyclohexane)、水、またはこれらの混合体などがある。さらに好ましくは、水に水分散した状態で使用することができる。
【0067】
2)製造された高分子溶液に無機物粒子を添加および分散させて無機物粒子および高分子混合物を製造する。
【0068】
高分子溶液および無機物粒子の分散工程を実施することが好ましい。この時、分散時間は、1~50時間が適切である。分散方法としては、通常の方法を用いることができ、特にボールミル(ball mill)法が好ましい。
【0069】
無機物粒子および高分子からなる混合物の組成は大きく制約はないが、これによって最終製造される本発明の有無機複合多孔性分離膜の厚さ、気孔の大きさおよび気孔度を調節することができる。
【0070】
すなわち、高分子(P)に対する無機物粒子(I)の比(ratio=I/P)が増加するほど、分離膜の気孔度が増加し、これは、同一の固形分含有量(無機物粒子の重量+高分子の重量)において分離膜の厚さが増加する結果をもたらす。また、無機物粒子間の気孔形成の可能性が増加して気孔の大きさが増加するが、この時、無機物粒子の大きさ(粒径)が大きくなるほど、無機物間の間隔(interstitial distance)が大きくなるので、気孔の大きさが増加する。
【0071】
3)製造された無機物粒子および高分子の混合物を、用意されたポリオレフィン系分離膜基材上にコーティングし、後に乾燥することにより、本発明の分離膜を得ることができる。
【0072】
この時、無機物粒子および高分子の混合物をポリオレフィン系分離膜基材上にコーティングする方法は、当業界にて知られた通常のコーティング方法を用いることができ、例えば、ディップ(Dip)コーティング、ダイ(Die)コーティング、ロール(roll)コーティング、コンマ(comma)コーティング、またはこれらの混合方式など多様な方式を用いることができる。また、無機物粒子および高分子の混合物をポリオレフィン系分離膜基材上にコーティングする時、前記分離膜基材の両面ともに実施することができ、または片面にのみ選択的に実施することができる。
前記分離膜を二次電池に用いる場合、分離膜基材のみならず、多孔性形態の活性層を通してリチウムイオンが伝達できるだけでなく、外部衝撃によって内部短絡が発生する場合には、前述した安全性向上効果を示すことができる。
【0073】
また、前記二次電池は、正極、負極、前記正極と負極との間に介在した前記分離膜および電解液を含むことができる。
【0074】
前記二次電池は、当業界にて知られた通常の方法によって製造することができ、その一実施例を挙げると、前記電極と分離膜を介在して組立て、後に組立体に電解液を注入して製造する。
【0075】
前記分離膜と共に適用される電極としては大きく制限はないが、正極活物質は、二次電池の正極に使用できる通常の正極活物質が使用可能であり、その非制限的な例としては、リチウムマンガン酸化物(lithiated magnesium oxide)、リチウムコバルト酸化物(lithiated cobalt oxide)、リチウムニッケル酸化物(lithiated nickel oxide)、またはこれらの組み合わせによって形成される複合酸化物などのようにリチウム吸着物質(lithium intercalation material)などがある。また、負極活物質は、従来の電気化学素子の負極に使用できる通常の負極活物質が使用可能であり、これらの非制限的な例としては、リチウム金属、またはリチウム合金とカーボン(carbon)、石油コークス(petroleum coke)、活性化カーボン(activated carbon)、グラファイト(graphite)またはその他のカーボン類などのようなリチウム吸着物質などがある。前述した両電極活物質を、それぞれ正極電流集電体、すなわちアルミニウム、ニッケル、またはこれらの組み合わせによって製造される箔(foil)、および負極電流集電体、すなわち銅、金、ニッケルあるいは銅合金、あるいはこれらの組み合わせによって製造される箔に結着させた形態で両電極を構成する。
【0076】
前記電解液は、A+B-のような構造の塩であって、A+は、Li+、Na+、K+のようなアルカリ金属陽イオンやこれらの組み合わせからなるイオンを含み、B-は、PF6 -、BF4 -、Cl-、Br-、I-、ClO4 -、AsF6 -、CH3CO2 -、CF3SO3 -、N(CF3SO22 -、C(CF2SO23 -のような陰イオンやこれらの組み合わせからなるイオンを含む塩が、プロピレンカーボネート(propylene carbonate、PC)、エチレンカーボネート(ethylene carbonate、EC)、ジエチルカーボネート(diethyl carbonate、DEC)、ジメチルカーボネート(dimethyl carbonate、DMC)、ジプロピルカーボネート(dipropyl carbonate、DPC)、ジメチルスルホキシド(dimethyl sulfoxide)、アセトニトリル(acetonitrile)、ジメトキシエタン(dimethoxyethane)、ジエトキシエタン(diethoxyethane)、テトラヒドロフラン(tetrahydrofuran)、N-メチル-2-ピロリドン(N-methyl-2-pyrrolidone、NMP)、エチルメチルカーボネート(ethyl methyl carbonate、EMC)、ガンマブチロラクトン(GBL)、またはこれらの混合物からなる有機溶媒に溶解および解離したものが好ましい。
【0077】
前記分離膜を電池に適用する工程としては、一般的な工程である巻取(winding)以外にも、分離膜と電極との積層(lamination)および折り畳み(folding)工程が可能である。
【実施例
【0078】
以下、実施例を用いて本願をより具体的に説明するが、本願がこれに制限されるものではない。
【0079】
[製造例1]共重合体の製造
反応容器に蒸留水650重量部と単量体混合物100重量部を入れて、高純度窒素気体を注入させながら60℃に昇温および撹拌させた。60℃で用意された反応容器に、分解型開始剤の過硫酸カリウムを単量体混合物100重量部に対して0.1~0.5重量部と単量体混合物をそれぞれ添加して、連続的な重合反応を進行させて共重合体を製造した。
【0080】
製造された共重合体に金属水酸化物(NaOH、LiOH、KOH)水溶液を添加した後、アミン系有機化合物を共重合体100重量部に対して0.05~0.5重量部添加して反応させることによりバインダー用共重合体を製造した。
【0081】
[製造例2]多孔膜コーティング用スラリーの製造
無機粒子(アルミナ、平均粒径0.5μm)と製造例1により製造されたバインダー用共重合体とを固形分重量比で96:4となるように混合した後、蒸留水を固形分濃度が35%となるように追加して混合した。この混合物をボールミル法またはメカニカル撹拌機により十分に分散してスラリーを製造した。
【0082】
[製造例3]分離膜の製造
ポリオレフィン多孔性基材(ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)など)に、製造例2により製造された多孔膜コーティング用スラリーを塗布して無機物コーティング層を形成する。コーティング方法としては、ディップ(dip)コーティング、ダイ(die)コーティング、グラビア(gravure)コーティング、コンマ(comma)コーティングなど多様な方式を用いることができる。
【0083】
また、コーティング後、温風、熱風、真空乾燥、赤外線乾燥などの方法で乾燥させ、乾燥温度範囲は50~85℃であった。
【0084】
前記無機物コーティング層の厚さは片面あるいは両面に0.5~6μmであり、厚さが0.5μm未満の場合には、分離膜の耐熱性が著しく減少する問題があり、厚さが6μmを超える場合には、分離膜の厚さが過度に厚くて電池のエネルギー密度を減少させ、抵抗を増加させることがあった。
【0085】
[実施例1~3および比較例1~5]
実施例1~3および比較例1~5は、下記表1に示しているように、単量体の組成比およびアミン系有機化合物の含有量を調節して、製造例1により製造された。
【0086】
使用された単量体は、アクリルアミド系の単量体としてアクリルアミド(AM)、アクリロニトリル系の単量体としてアクリロニトリル(AN)、アクリル酸系の単量体単位としてアクリル酸(AA)、および水酸基(-OH)を含むアクリレート系の単量体単位としてポリエチレングリコールメタクリレート(PEGMA)またはヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)が使用された。
【0087】
また、使用されたアミン系有機化合物は、トリエタノールアミン(triethanol amine、TA)であり、共重合体100重量部に対して0.2重量部が追加された。
【0088】
実施例1~3および比較例1~5により製造されたバインダー共重合体を用いて、製造例2および製造例3によりそれぞれ多孔膜コーティング用スラリーおよび分離膜を製造した。
【0089】
【表1】
【0090】
[評価例1]多孔膜コーティング用スラリーの接着力
実施例1~3および比較例1~5のバインダー用共重合体を用いて、製造例3により製造された分離膜を幅18mm、長さ100mmの大きさに裁断した。
【0091】
幅40mm、長さ100mmの面積のアクリルプレート(acryl plate)に、幅20mm、長さ40mmの面積の両面テープを貼り付けた。用意された分離膜を両面テープ上に貼り付けた後、ハンドローラー(hand roller)で軽く5回押した。前記作った試験片をUTM(20kgf Load cell)に装着して、分離膜の一側部分を引張強度機の上側クリップに、分離膜の一面に付いたテープを下側クリップに固定させ、100mm/minの速度で180゜剥離強度を測定した。サンプルあたり試験片を5個以上作製して測定し、その平均値を計算した。
【0092】
[評価例2]分離膜の熱収縮率
前記実施例1~3および比較例1~5のバインダー用共重合体を用いて、製造例3により製造された分離膜を横、縦の大きさが5×5cmの試料として用意し、前記試料を150℃のオーブンに1時間放置した後、収縮率を測定した。
【0093】
[評価例3]分離膜の電気抵抗
前記実施例1~3および比較例1~5のバインダー用共重合体を用いて、製造例3により製造された分離膜とリチウムメタル(Li metal)、SUS板をそれぞれ介在してコインセルタイプで電極組立体を用意した。
【0094】
用意された電極組立体はリチウム塩を含む電解液を注入し、封止してリチウム二次電池を製造した。
【0095】
製造された電池は、インピーダンス分析器(impedance analyzer)を用いてインピーダンスを測定し、その結果を下記表2に記載した。
【0096】
評価例1~3の評価結果を下記表2に示した。
【0097】
【表2】
【0098】
実施例1と2により、ヒドロキシル基を含む単量体の含有量が高くなるほど、熱収縮率が低くなって分離膜の耐熱性が向上することを確認することができた。
【0099】
また、実施例2のPEGMAの代わりに鎖がはるかに短いHEMAを同一の含有量で使用した実施例3は、架橋密度が高くなって、分離膜の耐熱性がさらに向上することを確認することができた。
【0100】
単量体としてアクリルアミドとアクリル酸のみを用いて製造した共重合体を用いた比較例1~3は、アクリルアミド系の含有量が高くなり、アクリル酸の含有量が低くなるほど、分離膜の耐熱特性は向上したものの、分離膜の電気抵抗が高くなることを確認することができる。
【0101】
比較例1~3の共重合体を用いる場合、実施例1~3の共重合体を用いる時に比べて接着力が非常に低下することを確認することができた。特に、比較例2および3の共重合体を用いる場合、分離膜の熱収縮率が大きくなって分離膜の耐熱性が低下することを確認することができた。
【0102】
単量体としてアクリルアミド、アクリロニトリルおよびアクリル酸のみを用いて製造した共重合体を用いた比較例4を、同一の含有量のアクリロニトリルとアクリル酸を含みかつ、アクリルアミドの一部をヒドロキシル基を含む単量体に変更した実施例1~3と比較すれば、分離膜の電気抵抗が高くなることを確認することができた。また、分離膜の熱収縮率が大きくなって分離膜の耐熱性が低下することを確認することができた。
【0103】
単量体としてアクリルアミド、アクリロニトリルおよびアクリル酸のみを用いて製造した共重合体を用いた比較例5を、同一の含有量のアクリルアミド、アクリル酸を含みかつ、アクリロニトリルの一部をヒドロキシル基を含む単量体に変更した実施例2および3と比較すれば、分離膜の電気抵抗が高くなり、接着力および分離膜の耐熱性が低下することを確認することができた。
【0104】
結果として、実施例のバインダー共重合体を用いて製造した分離膜は、優れた基材接着力と150℃で5%以内の優れた耐熱特性を有している。
【0105】
また、電池抵抗にも優れているので、高容量および急速充電に有利な分離膜特性を実現できることを確認することができる。
【0106】
本発明の範囲は、上記の詳細な説明よりは後述する特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲の意味および範囲、そしてその均等概念から導出されるすべての変更または変形された形態が本発明の範囲に含まれると解釈されなければならない。
【産業上の利用可能性】
【0107】
本発明の共重合体は、スラリー組成物の分散安定性を向上させ、分離膜基材であるポリオレフィンフィルムとの接着力を高め、分離膜の耐熱性を改善させることができる。
【0108】
また、電池抵抗および安定性に優れた電池を実現することができる。
【手続補正書】
【提出日】2023-06-02
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】請求項2
【補正方法】変更
【補正の内容】
【請求項2】
前記共重合体は、下記化学式1で表される、
請求項1に記載の共重合体。

【化1】


前記化学式1において、
1~R3は、それぞれ独立して、水素、炭素数1~4の線状または分枝状炭化水素であり 、
Mは、アルカリ金属、2級アミンおよび3級アミンからなるグループより選択されたいずれ か1つ以上であり、
nは、0~500の整数であり、
m、l、xおよびyは、m+n+x+y=1である。

【国際調査報告】