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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-12-13
(54)【発明の名称】レンズクリアリング装置
(51)【国際特許分類】
   G03B 17/55 20210101AFI20231206BHJP
   H04N 23/55 20230101ALI20231206BHJP
   G03B 17/02 20210101ALI20231206BHJP
   G02B 1/14 20150101ALI20231206BHJP
   G02B 1/11 20150101ALI20231206BHJP
   G03B 15/00 20210101ALI20231206BHJP
【FI】
G03B17/55
H04N23/55
G03B17/02
G02B1/14
G02B1/11
G03B15/00 V
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023534085
(86)(22)【出願日】2021-12-02
(85)【翻訳文提出日】2023-07-04
(86)【国際出願番号】 IB2021061263
(87)【国際公開番号】W WO2022118259
(87)【国際公開日】2022-06-09
(31)【優先権主張番号】63/121,059
(32)【優先日】2020-12-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】516326117
【氏名又は名称】アダスカイ・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】ADASKY LTD
(74)【代理人】
【識別番号】100105131
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 満
(74)【代理人】
【識別番号】100105795
【弁理士】
【氏名又は名称】名塚 聡
(72)【発明者】
【氏名】レヴィ,ユンド
(72)【発明者】
【氏名】クパーマン,ヴィタリー
【テーマコード(参考)】
2H104
2K009
5C122
【Fターム(参考)】
2H104CC04
2K009AA02
2K009AA15
2K009CC01
5C122DA16
5C122EA02
5C122FB03
5C122FB17
5C122GE11
5C122HA84
(57)【要約】
複合レンズのための加熱可能な光学要素であって、光学要素は(i)複合レンズのための集束機能を提供し、(ii)加熱可能な光学要素に電気が印加されると抵抗加熱により加熱されるように適合される。加熱可能な光学要素を含む複合レンズは、カメラで用いることができ、加熱可能な光学要素はカメラの光センサから最遠位の光学要素である。こうしたカメラを動作させるための方法は、最遠位の要素の現在の状況を検出することと、最遠位の要素の検出された現在の状態に応答して最遠位の要素の加熱を制御するために電気の印加を制御することとを含む。
【選択図】 図1

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複合レンズのための加熱可能な光学要素であって、(i)前記複合レンズのための集束機能を提供し、かつ(ii)前記加熱可能な光学要素に電気が印加されると、抵抗加熱によって加熱されるように適合される、該光学要素。
【請求項2】
前記加熱可能な光学要素は複数のアイテムを含む前記複合レンズのアイテムとして含まれ、前記加熱可能な光学要素を含む前記複合レンズはセンサを有するカメラ内に配備され、前記センサに向けられる光は前記センサから遠位の前記複合レンズの第1の端部に入射し、前記センサに近位の第2の端部で前記複合レンズを出射し、前記加熱可能な光学要素は、前記センサに向けられる光が前記複合レンズに入射する、前記レンズから最も遠位の前記複合レンズのアイテムである、請求項1に記載の加熱可能な光学要素。
【請求項3】
前記センサは赤外線センサである、請求項2に記載の加熱可能な光学要素。
【請求項4】
前記加熱可能な光学要素がレンズである、請求項1に記載の加熱可能な光学要素。
【請求項5】
前記加熱可能な光学要素は、3オームセンチメートル(Ω・cm)以上40Ω・cm以下の抵抗率を有する材料で形成される、請求項1に記載の加熱可能な光学要素。
【請求項6】
前記加熱可能な光学要素は、低伝導性材料で形成される、請求項1に記載の加熱可能な光学要素。
【請求項7】
前記加熱可能な光学要素は、対象の波長に対して透明である、請求項1に記載の加熱可能な光学要素。
【請求項8】
前記加熱可能な光学要素は、前記加熱可能な光学要素の状態を検出するように適合された少なくとも1つのセンサに結合される、請求項1に記載の加熱可能な光学要素。
【請求項9】
前記加熱可能な光学要素上に配置された物質が、前記加熱可能な光学要素への電気の印加時に前記加熱可能な光学要素の抵抗加熱によって引き起こされる蒸発によって除去される、請求項1に記載の加熱可能な光学要素。
【請求項10】
前記加熱可能な光学要素は、ゲルマニウムを含む材料で形成される、請求項1に記載の加熱可能な光学要素。
【請求項11】
前記ゲルマニウムがドープされ、前記ゲルマニウムのドーピングの種類がN型ドーピング及びP型ドーピングからなる群のうちの1つである、請求項10に記載の加熱可能な光学要素。
【請求項12】
前記光学要素に電気を印加するように適合された2つの導電性パッドの少なくとも1つのセットをさらに備える、請求項1に記載の加熱可能な光学要素。
【請求項13】
前記2つの導電性パッドの各々は、前記加熱可能な光学要素の外縁に沿って配置される、請求項12に記載の加熱可能な光学要素。
【請求項14】
前記2つの導電性パッドの各々が、少なくとも1つの電源に結合されるように適合される、請求項12に記載の加熱可能な光学要素。
【請求項15】
前記2つの導電性パッドの各々は、前記加熱可能レンズが作製される材料とは異なる材料で作製される、請求項12に記載の加熱可能な光学要素。
【請求項16】
前記加熱可能な光学要素の少なくとも1つの表面が、少なくとも1つのコーティング層でコーティングされている、請求項1に記載の加熱可能な光学要素。
【請求項17】
前記少なくとも1つのコーティング層のそれぞれが、高耐久性コーティングおよび反射防止コーティングからなる群のうちの1つを含む、請求項16に記載の加熱可能な光学要素。
【請求項18】
光センサと、前記センサに光を供給する複合レンズとを備えるカメラであって、前記複合レンズは、前記光センサによって感知可能な光の少なくとも1つの波長に対して透明であるレンズである前記センサに対して最遠位の要素をさらに備え、前記最遠位の要素は前記カメラの周囲の環境に曝され、電気が印加されると加熱可能である、該カメラ。
【請求項19】
前記センサは赤外線センサである、請求項18に記載のカメラ。
【請求項20】
前記最遠位の要素に結合され、その現在の状態を検出する少なくとも1つのセンサと、
前記センサに結合されたコントローラであって、前記最遠位の要素の検出された現在の状態に基づいて、前記最遠位の要素への電気の印加を制御するように適合されたコントローラと、
をさらに含む、請求項18に記載のカメラ。
【請求項21】
前記現在の状態は、前記最遠位の要素の少なくとも1つの表面上に配置された物質の存在、および前記最遠位の要素の少なくとも1つの表面上に配置された物質の不存在からなる群のうちの1つである、請求項20に記載のカメラ。
【請求項22】
光センサと、前記センサに光を供給する複合レンズとを備えるカメラを動作させるための方法であって、前記複合レンズが、前記光センサによって感知可能な光の少なくとも1つの波長に対して透明であるレンズである前記センサに対して最遠位の要素をさらに備え、前記最遠位の要素は前記カメラの周囲の環境に曝され、電気が印加されると加熱可能であり、前記方法は、
前記最遠位の要素の現在の状態を検出することと、
前記最遠位の要素の検出された現在の状態に応答して前記最遠位の要素の加熱を制御するために電気の印加を制御することと、
を含む方法。
【請求項23】
前記センサが赤外線センサである、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記現在の状態が、前記最遠位の要素の少なくとも1つの表面上に配置された物質の存在、および前記最遠位の要素の少なくとも1つの表面上に配置された物質の不存在からなる群のうちの1つである、請求項22に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は2020年12月3日に出願された米国仮出願第63/121,059号の利益を主張し、その内容は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本開示は概してカメラレンズに関し、より具体的には、カメラ、例えば、サーマルカメラに使用されるレンズから氷及び結露を除去することに関する。
【背景技術】
【0003】
様々な気候及び環境で使用するためにカメラを設計するときに直面する主な問題のいくつかは、カメラの前での着氷及び曇りを含む。カメラレンズの着氷や曇りは、画像を捕捉することができない結果となる恐れがある。特に、赤外線カメラにおける結露によるレンズの曇り又は着氷は、画質の低下をもたらす可能性がある。高品質の画像を取り込むことができないことは、カメラが例えば、自動運転又は補助運転車両において、リアルタイムの応答及び正確なデータを必要とする活動に利用されるときには、特に重要になり得る。
【0004】
着氷及び曇りに対処するためのいくつかの既存の解決策は、レンズの近くに加熱要素を配備することと、着氷又は曇りに応答して加熱要素を作動させることとを含む。しかしながら、この加熱要素のこのような配備は、加熱要素が設置され維持されなければならないので、追加のエネルギー及びコストが必要となる。また、信号損失による画質の低下、例えば8~10%の低下もある。さらに、そのような加熱要素は、カメラ内の光学要素を拡大することを必要とする。加熱要素は均一な加熱を提供せず、加熱するのに長い時間を要し、しばしば、着氷及び曇りを除去するのに必要とされるよりも多くのエネルギーを利用する。いくつかの実装形態では、サイズの増加がカメラの設置を非実用的にし得る。
【0005】
別の既存の解決策は、抵抗加熱のための窓を設けることを含む。この窓は、外縁を有する透明部材と、透明部材の外縁上に配置され、少なくとも1つの電源に電気的に結合された少なくとも1組の2つの導電性パッドと、を備え、透明部材は第一材料で作製され、第一材料は低導電性材料であり、各導電性パッドは第二材料で作製され、少なくとも1つの電源から少なくとも1組の2つの導電性パッド及び透明部材を通して電気が伝わると抵抗加熱を介して透明部材上に配置された物質が除去される。これはいくつかの用途では有用であるが、そのような保護窓を使用することは追加の光学素子を追加のコストで追加し、また、例えば、8~10%の信号低減を引き起こし得る。また、広視野(FOV)レンズの場合、窓はより大きくなければならず、したがって、原材料コストのためにより高価にならざるを得ない。
したがって、上述の課題を克服する解決策を提供することが有利である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本開示のいくつかの例示的な実施形態の概要を以下に示す。この概要はそのような実施形態の基本的な理解を提供するために読者の便宜のために提供されるものであり、本開示の幅を完全に定義するものではない。この概要は、すべての企図される実施形態の包括的な概観ではなく、すべての実施形態の主要又は重要な要素を識別するものでも、いずれか又はすべての実施形態の範囲を定めるものでもない。その唯一の目的は、後に提示されるより詳細な説明の前置きとして、1つ又は複数の実施形態のいくつかの概念を簡略化された形で提示することである。便宜上、いくつかの実施形態という用語は、本明細書では本開示の単一の実施形態又は複数の実施形態を指すために使用され得る。
【課題を解決するための手段】
【0007】
開示される特定の実施形態は、複合レンズのための加熱可能な光学要素(又は、素子/element)を含み、加熱可能な光学要素は(i)複合レンズのための集束機能を提供し、(ii)加熱可能な光学要素への電気の印加時に抵抗加熱によって加熱されるように適合される。
【0008】
開示される特定の実施形態は、光センサと、光センサに光を供給する複合レンズとを備えるカメラを含み、複合レンズは光センサによって感知可能な光の少なくとも1つの波長に対して透明であるレンズである、センサに対して最遠位の要素をさらに備え、最遠位の要素はカメラの周囲の環境に曝され、そこに電気が印加されると加熱可能である。
【0009】
開示される特定の実施形態は、光センサと、光センサに光を供給する複合レンズとを備えるカメラを動作させるための方法を含み、複合レンズは、光センサによって感知可能な光の少なくとも1つの波長に対して透明であるレンズである、センサに対して最遠位の要素をさらに備え、最遠位の要素はカメラの周囲の環境に曝され、それに電気が印加されると加熱可能であり、上記方法は、最遠位の要素の現在の状態を検出することと、最遠位の要素の検出された現在の状態に応答して最遠位の要素の加熱を制御するために電気の印加を制御することと、を含む。
【図面の簡単な説明】
【0010】
開示された実施形態の前述の及び他の目的、特徴、及び利点は、添付の図面と併せて以下の詳細な説明から明らかになるであろう。
【0011】
図1図1は、一実施形態に係る加熱可能なレンズの正面図である。
【0012】
図2図2は、一実施形態による加熱可能なレンズの側面図である。
【0013】
図3図3は、一実施形態による加熱可能なレンズを含む赤外線カメラの等角図である。
【0014】
図4図4は、様々な開示される実施形態を説明するために利用される加熱可能なレンズ、フレックスPCB、及びコネクタの分解図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本明細書に開示される実施形態は、本明細書における革新的な教示の多くの有利な使用の例にすぎないことに留意することが重要である。一般に、本出願の明細書においてなされる記述は、必ずしも様々な請求される実施形態のいずれをも限定しない。さらに、いくつかの記述はいくつかの発明の特徴に適用され得るが、他のものには適用されない。一般に、特に明記しない限り、単数の要素は、一般性を失うことなく、複数であってもよく、逆もまた同様である。図面において、同様の番号は、いくつかの図を通して同様の部分を指す。
【0016】
本明細書に開示される実施形態は複合レンズ用の光学要素を含み、光学要素は複合レンズ光学部品の一部として集束機能を提供し、抵抗加熱も提供する。抵抗加熱は例えば、環境条件などの決定された条件に応答して制御されてもよい。いくつかの実施形態では、加熱可能なレンズがカメラの複合レンズの第一レンズ要素である。換言すれば、加熱可能なレンズは、カメラの画像センサから最も遠いレンズである。レンズが作製される材料は、関心のある波長に対して透明でもある低導電性材料であり得る。例えば、赤外線放射、特に長波長赤外線放射の場合、ゲルマニウムなどの材料を用いて加熱可能なレンズを形成し得る。いくつかの実施形態では、ダイヤモンド様炭素(DLC)コーティングを有するゲルマニウムを使用し得る。ゲルマニウムはドープされてもよく、例えば、N型又はP型であってよい。ドーピングの量は、ゲルマニウムの導電率を制御するために使用し得る。
【0017】
加熱可能なレンズは例えば、その外縁に沿って、少なくとも1組の2つの導電性パッドをそこに結合させてもよい。導電性パッドは、少なくとも1つの電気源に電気的に結合可能であり得る。導電性パッドは、加熱可能なレンズとは異なる材料で作製されてもよい。電気が導電性パッドに印加されるとき、加熱可能なレンズ上に配置された物質は、電気が加熱可能なレンズを介して少なくとも1つの電源から少なくとも1組の2つの導電性パッドを通って伝導されるときに、抵抗加熱を介して除去される。加熱可能なレンズの抵抗加熱は、加熱可能なレンズ上に配置された結露又は他の液体又は固体を蒸発させるのに十分であるように配置されてもよい。例えば、抵抗加熱は、加熱可能なレンズの着氷又は曇りを除去し得る。
【0018】
加熱可能なレンズはその状態を検出するために、1つ又は複数のセンサにさらに結合され得る。例えば、いくつかの実施形態では、温度センサを加熱可能なレンズに取り付けることができる。センサ出力、例えば、感知された温度の表示はコントローラに結合されてもよく、コントローラは温度表示に応答して加熱可能なレンズへの電気の供給を制御してもよい。したがって、コントローラは、加熱を介して除去し得る障害物が加熱可能なレンズ上に配置されているときを決定し、もしそうであれば、導電性パッドに、そして、加熱可能なレンズを通して電流を供給させ、それによって抵抗加熱を引き起こして、加熱可能なレンズ上に堆積又は形成された液体及び固体、例えば、氷、霧などが蒸発し、それによって加熱可能なレンズをクリアにすることを確実にするように構成され得る。
【0019】
有利には、開示される実施形態の原理が氷及び霧を除去し、信号劣化を低減し、コストを低減するための追加の別個の要素の必要性を排除する。さらに有利には、レンズ又はそれが含まれるデバイスの形状因子が任意の必要な追加の保護要素によって影響を受けない。加熱可能なレンズを通る電気の伝導のために、カメラの視野は、数秒又はその何分の一かで迅速にクリアされ得る。
【0020】
本明細書に開示される実施形態はまた、カメラ装置を含む。カメラ装置は、少なくとも1つの画像センサと複合レンズとを備え、複合レンズは画像スタック内に配置された少なくとも1つの加熱可能なレンズをその第一要素、すなわち、画像センサから最も遠位の要素として含む。加熱可能なレンズは例えば、その外縁に沿って、2つの導電性パッドの少なくとも1つのセットをそこに結合させてもよい。導電性パッドは、少なくとも1つの電気源に電気的に結合可能であり得る。導電性パッドは、加熱可能なレンズとは異なる材料で作製されてもよい。電気が導電性パッドに印加されると、電気が少なくとも1つの源から加熱可能なレンズを介して少なくとも1組の2つの導電性パッドを通って伝導されるときに、抵抗加熱を介して加熱可能なレンズ上に配置された物質が除去される。加熱可能なレンズはその状態を検出するために、1つ又は複数のセンサにさらに結合され得る。例えば、いくつかの実施形態では、温度センサを加熱可能なレンズに取り付けることができる。センサ出力、例えば、温度の表示はコントローラに結合することができ、コントローラは、温度表示に応答して加熱可能なレンズへの電気の供給を制御し得る。コントローラはカメラの内部にあってもよいし、カメラの外部にあってもよい。
【0021】
一実施形態では、カメラが例えば、自動車などの車両から画像又はビデオをキャプチャする際に使用するための赤外線カメラであり得る。カメラの既存の電気構成要素を使用して、エネルギー消費の低減及びカメラ構成要素の複雑さの低減を可能にし、それによって、効率的な加熱及びさらなるカメラの小型化を可能にし得る。
【0022】
図1は、一実施形態による抵抗加熱用の加熱可能なレンズ110の正面図を示す。加熱可能なレンズ110は例えば、凹状又は凸状であるか、又は光を曲げ又は集束させ得る何らかの部分を有する、複合レンズの一部として光学機能を提供するように成形される。少なくとも2つの導電性パッド、例えば、導電性パッド120-1及び120-2が、加熱可能なレンズ110に結合される、例えば、その上に取り付けられる。図1に示すように、加熱可能なレンズ110は外縁115を有する。導電性パッド120-1及び120-2の各々は加熱可能なレンズ110の少なくとも一部が導電性パッド120によって覆われず、したがって、露出され、それによって、光が露出部分を通過することを可能にするように、外縁115に沿って配置される。例示的な実装形態では、導電性パッド120-1及び120-2が加熱可能なレンズ110の対向する部分に配置され得る。
【0023】
導電性パッド120-1、120-2は、接続された電源(図示せず)から電気を導通させる。動作中、電気源からの電気は、加熱可能レンズ110を通して伝導される電気が加熱可能なレンズの抵抗加熱を介して、水滴などの液体、氷などの固体、又はその両方の加熱可能なレンズ110からの蒸発を引き起こすように、加熱可能なレンズ110を介して、導電性パッド120のうちの少なくとも1つ、たとえば導電性パッド120-1から少なくとも1つの他の導電性パッド120、たとえば導電性パッド120-2に送られる。一実施形態では加熱可能なレンズ110がN型ゲルマニウム(GE)半導体などの半導体材料から作製されるが、これに限定されない。
【0024】
加熱可能なレンズ110は、抵抗加熱を可能にするのに十分な抵抗性を有する。この目的のために、一実施形態では、加熱可能なレンズ110が例えば、メーカーによって3オームセンチメートル(Ω・cm)から40Ω・cm(両端値を含む)の間に設定され得る抵抗率を有する。この範囲の抵抗率はいくつかの用途において、例えば、赤外線カメラにおいて加熱可能なレンズ110を使用するときに好ましい場合がある。加熱可能なレンズ110のサイズ、加熱可能なレンズ110に電気を供給する電源、抵抗加熱に必要な温度、及び少なくともいくつかの開示された実施形態による他の要因に応じて、加熱可能レンズ110に他の抵抗率が利用されてもよいことに留意されたい。
【0025】
2つの導電性パッド120-1及び120-2が単に例示目的のために、開示された実施形態に限定されることなく、図1に示されていることに留意されたい。本明細書に記載される加熱可能レンズ110は、図1に示される特定の構成に限定されず、本開示の範囲から逸脱することなく、加熱可能レンズ110の任意の部分を覆う任意の数の組の導電性パッドを含み得る。導電性パッドの各セットは、2つの導電性パッドを含む。加熱可能なレンズ110は、円形である必要はない。
【0026】
図1には、温度センサ130も示されている。温度センサ130は、加熱可能なレンズ110の温度を確認するために使用され、必要な加熱量、したがって、導電性パッド120を介して印加されるべき電気量を随時決定する。温度センサ130の出力、例えば、温度の表示は任意の適切な回路であり得る、図示されないコントローラに結合されることができ、コントローラは温度表示に応答して加熱可能なレンズ110への電気の供給を制御し得る。したがって、コントローラは加熱を介してクリアにされ得る障害物が加熱可能レンズ110上に配置されるときを決定し、その場合には、導電性パッド120に、加熱可能なレンズ110を通して電流を供給させ、それによって、抵抗加熱を引き起こして、加熱可能なレンズ110上に堆積又は形成された液体及び固体、例えば、氷、霧などが蒸発し、それによって加熱可能なレンズ110をクリアにすることを確実にするように構成され得る。
【0027】
温度センサ130は、加熱可能なレンズ110を通る視界を妨害すること、ならびに加熱可能なレンズ110が一部となる複合レンズの他のレンズの視界を妨害することを回避するように配置されるべきである。温度センサ130は単に例示の目的のために、図1に示されており、開示された実施形態に限定されないことに留意されたい。温度センサ130は、本開示の範囲から逸脱することなく、任意の数の部分又は位置を含み得る。温度センサ130は、図1に示すような形状である必要はない。一実施形態では、温度センサ130が加熱可能なレンズ110の外面、すなわち、外部環境に面する部分に配置されてもよく、加熱可能なレンズ110がカメラの一部であるとき、画像センサから最も遠位にある。他の実施形態では、温度センサ130を、加熱可能なレンズ110の外面ではない表面に配置するか、最遠位表面における温度の表現が決定可能である限り他の場所に配置することができる。
【0028】
図2は、加熱可能なレンズ110の側面図を示す。図2に示されるように、加熱可能なレンズ110の側面図は、第一外面117及び第二外面119を含む。図2に示す例では、加熱可能なレンズ110は凸レンズである。しかしながら、上述のように、レンズは、光学設計仕様に従った任意の適切な形状であり得る。外面117及び119の各々は加熱可能なレンズ110への損傷から保護し、反射を低減するなどのためにコーティングされ得る。例示的な実装形態では第一外面117がひっかき傷を低減するために高耐久性コーティングでコーティングされてもよく、第二外面119はグレアを低減するために反射防止(AR)コーティングでコーティングされてもよい。高耐久性コーティングはダイヤモンドライクカーボンであり得るが、これに限定されない。
【0029】
例示的な実施形態では、高耐久性コーティングは、接着、湿度、及び適度な摩耗試験条件への曝露に耐えることができる。さらなる例では、接着試験条件がコーティング後にセロハンテープの接着面を外面117及び119の少なくとも一方に押し付けて除去することを含み得る。湿度試験は華氏120度の温度及び相対湿度95~100%を有する試験チャンバ内に加熱可能なレンズ110を配置することを含んでもよく、中程度の摩耗試験はコーティング後に表面117及び119のうちの少なくとも1つのそれぞれにわたって少なくとも50ストロークを擦ることを含み得る。
【0030】
図3は、一実施形態による加熱可能なレンズ110を含むカメラ300の等角図を示す。カメラ300はまた、サーマルコア310と、ケーブル320-1及び320-2とを含む。サーマルコア310は限定はしないが、複合レンズを含み得、加熱可能なレンズ110、光センサ、回路、及び電気コネクタを含む。サーマルコア310の構成要素の詳細は、それらがサーマルコア310のハウジングの内側に位置するという点で見えないので、図示されていない。サーマルコア310は、加熱可能なレンズ110である最も外側のレンズ要素の防曇又は除氷のための別個の加熱要素を必要としない。むしろ、電流は例えば、ケーブル320-1及び/又は320-2を通って延在し、加熱可能なレンズ110を通過し得る対応する電極又はワイヤによって、導電性パッド120に印加され得る。したがって、カメラ300のサイズ及び複雑さは、任意のレンズ要素から独立した防曇及び除氷のための加熱要素を実装するカメラと比較して低減される。さらに、別個の加熱要素を利用することに関連する他の熱的及び電気的損失、たとえば、伝導中の熱放散、加熱要素をオンにするために必要な電気、又は加熱要素をオンにすることを維持するために必要な電気などを最小限に抑えることができる。
【0031】
図4は、例えばカメラ300(図3)内に配置され得る加熱可能なレンズ110、フレックスPCB410、及びコネクタ420の例示的な分解図400である。カメラ300内に配備されるとき、コネクタ420はカメラ300の電源に電気的に結合されてもよく、電源コネクタ420を通してフレックスPCB410に電気が伝導されてもよい。そのような電気が伝導され、フレックスPCB410が導電性パッド120-1及び120-2に電気的に結合されると、導電性パッド120-1及び120-2ならびに加熱可能なレンズ110を介して電気が伝導され、それによって、加熱可能なレンズ110が抵抗加熱を介してウォームアップする。
【0032】
一実施形態では、フレックスPCB410はまた、温度センサ130に結合された1つ又は複数のワイヤを含み得る。これらのワイヤはまた、コネクタ420を通過してもよい。別の実施形態では、温度センサ130がフレックスPCB410上に取り付けられてもよい。
【0033】
上記では赤外線、例えば、長波長赤外線(LWIR)に関して説明したが、本開示の原理は他の波長範囲に適用されてもよい。
【0034】
本明細書に列挙されるすべての例及び条件付き言語は開示された実施形態の原理、及び当技術分野を促進するために本発明者によって貢献された概念を読者が理解するのを助けるための教育目的のためのものであり、そのような具体的に列挙された例及び条件に限定されないと解釈されるべきである。さらに、開示された実施形態の原理、態様、及び実施形態、ならびにそれらの特定の例を列挙する本明細書におけるすべての記述は、それらの構造的及び機能的等価物の両方を包含することが意図される。さらに、そのような等価物は現在知られている等価物及び将来開発される等価物、すなわち、構造にかかわらず同じ機能を実行する開発された任意の要素の両方を含むことが意図される。
【0035】
「第一」、「第二」などの名称を使用する本明細書における要素へのいかなる言及も、それらの要素の量又は順序を一般に限定しないことを理解されたい。むしろ、これらの呼称は一般に、2つ以上の要素又は要素のインスタンスを区別する便利な方法として本明細書で使用される。したがって、第一及び第二要素への言及は、2つの要素のみがそこで使用され得ること、又は第一要素が何らかの方法で第二要素に先行しなければならないことを意味しない。また、特に明記しない限り、要素のセットは、1つ又は複数の要素を含む。
【0036】
本明細書で使用される場合、句「のうちの少なくとも1つ」の後に、列挙された項目のいずれかが個別に利用され得ることを意味する項目のリストが続くか、又は列挙された項目のうちの2つ以上の任意の組合せが利用され得る。例えば、システムが「A、B、及びCの少なくとも1つ」を含むと記載されている場合、システムは、A単独、B単独、C単独、A及びBの組み合わせ、B及びCの組み合わせ、A及びCの組み合わせ、又はA、B、及びCの組み合わせを含み得る。
図1
図2
図3
図4
【国際調査報告】