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特表2023-551977マルチフィラメント繊維から作製される複合物を製造する方法及び装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-12-13
(54)【発明の名称】マルチフィラメント繊維から作製される複合物を製造する方法及び装置
(51)【国際特許分類】
   B29C 70/52 20060101AFI20231206BHJP
【FI】
B29C70/52
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023534151
(86)(22)【出願日】2021-11-26
(85)【翻訳文提出日】2023-06-05
(86)【国際出願番号】 FR2021052102
(87)【国際公開番号】W WO2022123139
(87)【国際公開日】2022-06-16
(31)【優先権主張番号】2012755
(32)【優先日】2020-12-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】514326694
【氏名又は名称】コンパニー ゼネラール デ エタブリッスマン ミシュラン
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100098475
【弁理士】
【氏名又は名称】倉澤 伊知郎
(74)【代理人】
【識別番号】100130937
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100144451
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 博子
(74)【代理人】
【識別番号】100196221
【弁理士】
【氏名又は名称】上潟口 雅裕
(72)【発明者】
【氏名】オルソマー デイヴィッド
(72)【発明者】
【氏名】デルフィーノ アントニオ
【テーマコード(参考)】
4F205
【Fターム(参考)】
4F205AA36
4F205AC05
4F205AD16
4F205AG14
4F205AK03
4F205AM28
4F205HA05
4F205HA27
4F205HA33
4F205HA37
4F205HB02
4F205HC02
4F205HK04
4F205HK05
(57)【要約】
重合性物質をベースとする組成物中に埋め込まれたマルチフィラメント繊維の束(20)を備える細長い複合要素を連続製造するプロセスであって、本ステップは、
-マルチフィラメント繊維の束を、最初のストランドが束の中心に配置され、他のストランドが最初のストランドの周りに位置決めされるように、各々が複数のマルチフィラメント繊維を備える複数の個別ストランドの形態に配列するステップと、
-マルチフィラメント繊維の配列を前進方向に送るステップと、
を含み、
前進方向に送るステップは、前進方向で、
-真空の作用による繊維の配列を脱ガスするステップと、
-繊維の配列に組成物を含浸させて、含浸ストランドを得るようにするステップと、
-最初の含浸ストランドを、組成物の部分重合を行う最初の金型に通すステップと、
-全てのストランドを最終金型に通して、シングルストランドにまとめるステップと、
-シングルストランドを放射線源に曝して付加重合を行い、当長い複合要素を得るようにするステップと、
を課するようにする。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
重合性物質をベースとする組成物中に埋め込まれたマルチフィラメント繊維の束(20)を備える細長い複合要素を連続製造するプロセスであって、
前記マルチフィラメント繊維の束を、最初のストランド(20a)が前記束の中心に配置され、他のストランドが前記最初のストランドの周りに位置決めされるように、各々が複数のマルチフィラメント繊維を備える複数の個別ストランドの形態に配列するステップと、
前記マルチフィラメント繊維の配列を前進方向に送るステップと、
を含み、
前記前進方向に送るステップは、前記前進方向で、
真空の作用による前記マルチフィラメント繊維の配列を脱ガスするステップと、
前記マルチフィラメント繊維の配列に前記組成物を含浸させて、含浸ストランドを得るようにするステップと、
最初の前記含浸ストランドを、前記組成物の部分重合を行う最初の金型(10a)に通すステップと、
全ての前記ストランドを最終金型(10f)に通して、シングルストランド(20f)にまとめるステップと、
前記シングルストランド(20f)を放射線源に曝して付加重合を行い、前記細長い複合要素を得るようにするステップと、
を課するようにする、プロセス。
【請求項2】
前記ストランドの前記配列と、少なくとも前記最初の金型及び前記最終金型を通る連続通過は、その出口で前記配列が最も広げられた含浸チャンバ(3)から始まって、縮小して前記シングルストランド(20f)を形成する前記最終金型に向かって、前記ストランドを収束させるように行われる、請求項1に記載のプロセス。
【請求項3】
前記マルチフィラメント繊維の配列は、中央ストランドと、前記中央ストランドを取り囲む少なくとも1つの中間層を形成するように位置決めされた複数の中間ストランドと、周辺ストランドの少なくとも1つの外層とを備え、前記中間ストランドの前記中間層の各々は、前記組成物の部分重合を行う中間金型を通過する、請求項1又は2に記載のプロセス。
【請求項4】
前記複合要素の断面は円形である、請求項1から3のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項5】
前記マルチフィラメント繊維は、ガラス繊維、炭素繊維、シリカ繊維、セラミック繊維及びこのような繊維の混合物から成る群から、好ましくはガラス繊維、炭素繊維及びこのような繊維の混合物から成る群から選択され、さらにより優先的には前記マルチフィラメント繊維は、ガラス繊維である、請求項1から4のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項6】
前記重合性物質は、熱硬化型、好ましくは熱架橋型、さらにより優先的にはビニルエステル系である、請求項1から5のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項7】
重合性有機物質をベースとする組成物中に埋め込まれたマルチフィラメント繊維の束(20)を備える細長い複合要素を連続的に製造するデバイス(1)であって、前記マルチフィラメント繊維の束の配列を、各ストランドが複数の繊維を備える複数の個別ストランドの形態で作り出して、最初のストランド(20a)が前記束の中心に配置されるようにすることのできる手段と、前記配列を脱ガスするための手段と、前記配列に重合性材料をベースとする組成物を含浸させるための手段と、前記最初のストランド(20a)を、その部分重合を目指して受け入れることのできる最初の金型と、前記ストランドの全てを受け入れてシングルストランド(20f)を形成することのできる少なくとも1つの最終金型(10f)と、照射デバイス(50)を用いて前記シングルストランドを重合させ、前記細長い複合要素を得るようにするための手段と、を備えるデバイス。
【請求項8】
前記最初の金型(10a)と前記最終金型(10f)との間に位置する少なくとも1つの中間金型(10b-10e)を備える、請求項7に記載のデバイス。
【請求項9】
前記最初の金型(10a)と前記中間金型(10b-10e)は、その中央部に、ストランド用の案内管(40)を含む環状紫外線ランプ(30)を備える、請求項8に記載のデバイス。
【請求項10】
前記環状ランプ(30)は、前記案内管(40)が貫通する中央開口部を備えた、複数の発光ダイオードを支持するための円板(32)と、さらにまた、前記発光ダイオードが放出する放射線を前記案内管の出口方向に送ることのできる反射体(33)と、前記ランプを冷却するための手段と、前記ランプに電力を供給するための手段と、を備える、請求項9に記載のデバイス。
【請求項11】
前記冷却手段は、水冷回路、及び/又は空気流又は窒素流を生成するためのデバイスを備える、請求項10に記載のデバイス。
【請求項12】
前記案内管(40)の各々の内部断面は、前記最初の金型(10a)と前記最終金型(10f)との間で上流側から下流側に向かって徐々に増大する、請求項9から11のいずれか一項に記載のデバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マルチフィラメント繊維に重合性組成物を含浸させることによって作り出される細長い複合材料の連続製造用プロセスに関し、より詳細には、重合性樹脂に埋め込まれた連続した一方向性マルチフィラメントガラス繊維を備えるGRC(ガラス-樹脂複合物)タイプなどの、シングルストランド形態の複合物を製造するためのプロセスに関する。
【背景技術】
【0002】
欧州特許第1174250号には、非常に長く細長い複合要素を製造するために、非常に長い繊維に樹脂を連続して含浸させるプロセス及び設備が記載されており、この複合物は、硬化樹脂母材に埋め込まれた補強繊維を備える。記載されるプロセスは、繊維保管リールから補強繊維の束を前進方向に送り、真空エンクロージャに通してから、繊維に樹脂を含浸させる含浸チャンバに通すようにするステップと、それに続く、プリプレグの樹脂の少なくとも一部の重合によってプリプレグの形状を予め安定させた後で含浸繊維が較正金型を通過するステップと、を備える。所定の形状及び所定の寸法の較正金型は、真空エンクロージャの入口と含浸チャンバの前にも存在する。設備は、繊維保管リールから繊維を前進方向に送るプルロールと、プリプレグを受け取るためのリールとを備える。
【0003】
機能的には十分であるが、この設備で製造される複合物の直径を、或る限界を超えて大きくすることは困難であることが分かっている。従って、大径の複合物を製造する必要性がある。
【0004】
この問題に対する1つの解決策は、上記タイプの繊維の連続製造のための設備で得られた、樹脂を含浸させた繊維の束を、繊維束の中心部で重合を得るためにオーブンにかけることであろう。しかしながら、このようなプロセスは、時間とエネルギを浪費することになる。
【0005】
欧州公開第1506085号及び米国公開第2015/318080号は、コード形態の複合材料を製造するために異なるプロセスを記載する。
【0006】
この問題に対する別の解決策が欧州特許第0290849号に記載されている。この文献によれば、樹脂を含浸させた繊維の束は、繊維束を樹脂の浴に通し、次に金型に通して紫外線に曝すことによる、引抜き成形で作り出される。繊維束の重合は、繊維束が紫外線を浴びながら、透明金型の長さを進む又は2つの漏れ止めノズルによって区切られた液状媒体中を進む間に、繊維束の外側から内側に向かって徐々に生じる。確かに繊維束の中心部でより良好な重合が可能となるが、このプロセスは非常に速度が遅く、工業プロセスの製造速度には適していない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】欧州特許第1174250号
【特許文献2】欧州公開第1506085号
【特許文献3】米国公開第2015/318080号
【特許文献4】欧州特許第0290849号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、上記文献の欠点を解消し、細長い複合材料の連続製造用設備に対して、マルチフィラメント繊維を重合させるためのプロセス及びデバイスに関する独自の解決策を提供して、高い生産性で大きな寸法の断面を有する複合物を得ることを可能することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この目的は、重合性物質をベースとする組成物中に埋め込まれたマルチフィラメント繊維の束を備える細長い複合要素を連続製造するプロセスを提供する本発明によって達成され、本ステップは、
-マルチフィラメント繊維の束を、最初のストランドが束の中心に配置され、他のストランドが最初のストランドの周りに位置決めされるように、各々が複数のマルチフィラメント繊維を備える複数の個別ストランドの形態に配列するステップと、
-マルチフィラメント繊維の配列を前進方向に送るステップと、
を含み、
前進方向に送るステップは、前進方向で、
-真空の作用によるマルチフィラメント繊維の配列を脱ガスするステップと、
-マルチフィラメント繊維の配列に組成物を含浸させて、含浸ストランドを得るようにするステップと、
-最初の含浸ストランドを、組成物の部分重合を行う最初の金型に通すステップと、
-全てのストランドを最終金型に通して、シングルストランドにまとめるステップと、
-シングルストランドを放射線源に曝して付加重合を行い、長い複合要素を得るようにするステップと、
を課するようにする。
【0010】
重合性物質をベースとする組成物に埋め込まれたマルチフィラメント繊維の束を備える細長い複合要素は、マルチフィラメント繊維を供給する1又は2以上のリールから連続して製造されて束を形成する非常に長い複合要素を意味し、この束が通り抜ける際にその繊維に対する重合性有機物質の含侵とその物質の重合とを連続して行うように送られる。
【0011】
換言すれば、本発明のプロセスでは、含浸させる束をマルチフィラメント繊維の複数ストランドから寄せ集め、異なるストランドの選択的且つ連続的な重合を行い、含浸させたマルチフィラメント繊維の重合を束の中心部で開始させ、その周辺部で完了させるようにする。これにより、マルチフィラメント繊維をベースとする細長い複合要素を得ることができ、その形状及び寸法は良好に制御されてその機械的特性は均一であり、その全長に亘ってそうである。好ましくは、付加重合が組成物の最終的な重合をもたらす。
【0012】
従って、本発明のプロセスは、大きな寸法の断面を有する複合要素を得ることを可能にし、これは高い製造速度で行われる。例示的に、GRC(ガラス-樹脂複合物)複合物の場合、本発明のプロセスを用いて、直径が約10と30mmとの間の断面を約50m/分の速度で得ることが可能である。
【0013】
本発明のプロセスは、上記の欧州特許第1174250号に記載されるプロセスに従って1回の動作で製造される同じ断面よりも高い形状精度を達成することを目的として、直径が0.5と10mmとの間の断面を備えた複合要素の製造に使用することも可能である。
【0014】
従って、束の中心部に部分的に重合させた核を生成することによって、次の層がこの核に良好に付着し、これにより、断面が良好に制御され且つ生産速度が高い最終複合物を取得できるようになることが認められた。なぜなら、実験室で行われた試験の間、樹脂は、従来の設備でのように、もはや重力の影響下で束の含浸させた繊維中を流動することはなく、実際にはそれどころか、繊維の異なる連続層は、最終金型を通過して複合物が最終重合した後でその形状が最終的に安定するまで、予め重合させた核に良好に付着することが分かったからである。例示的に、GRC(ガラス-樹脂複合物)複合物の場合、本発明のプロセスを用いて、直径が0.5と2.5mmとの間の円形断面を有する大きな(又は連続した)長さの細長い複合要素を、0.05mmの寸法公差、及び100と200m/分との間の速度で得ることが可能である。
【0015】
部分的に重合させた又は予め重合させた核とは、重合性物質をベースとする組成物中に埋め込まれたマルチフィラメント繊維の複合核であって、その重合度が完全重合の最大で数%、典型的には0.5と5%との間に達した時に停止させたものを意味すると理解される。重合度は、DSC(示差走査熱量測定)タイプの計器を用いて評価することができる。
【0016】
複合物の完全重合は、複合物をDSCタイプのデバイスで測定した時に、樹脂の重合度が100%に近い、典型的には95%を超える場合に得られる。
【0017】
ストランドの配列と、少なくとも最初及び最終金型を通る連続通過は、その出口で配列が最も広げられた含浸チャンバから始まって、縮小してシングルストランドを形成する最終金型に向かって、ストランドを収束させるように行われる。これにより、プロセスの開始時に束を複数のストランドに分割し、少なくとも中央ストランドを束の中心部に作用することのできる金型に通すことが可能になる。従って、束の段階的な重合が行われ、最初の重合段階は束の中心部で行われ、最終段階は、全てのストランドを最終シングルストランドに結合する時に、束に付加重合を受けさせることを目指して行われる。
【0018】
マルチフィラメント繊維の配列は、中央ストランドと、中央ストランドを取り囲む少なくとも1つの中間層を形成するように位置決めされた複数の中間ストランドと、周辺ストランドの少なくとも1つの外層とを備えることができ、この場合、中間ストランドの各中間層は、組成物の部分重合を行う中間金型を通過する。
【0019】
これにより、複数の段階を有する段階的な重合が可能となり、その結果、より大きな断面を有する複合物を作り出すことができる。
【0020】
複合要素の断面は、円形とすることができる。しかしながら、この断面は、特に金型の形状を適切に選択することによって、多角形、長円形、楕円形、管状などの何らかの他の形状をとることができる。
【0021】
マルチフィラメント繊維とは、束を形成するために並べて配列された複数の基本繊維を備える繊維を意味すると理解され、この基本繊維は一方向性で、互いに実質的に平行である。
【0022】
マルチフィラメント繊維は、ガラス繊維、炭素繊維、シリカ繊維、セラミック繊維及びこのような繊維の混合物から成る群から、好ましくはガラス繊維、炭素繊維及びこのような繊維の混合物から成る群から選択することができ、さらにより優先的にはマルチフィラメント繊維はガラス繊維とすることができる。これらの繊維は、マルチフィラメント繊維に重合性組成物を含浸させることによって作り出される細長い複合物を製造するために使用される。
【0023】
重合性物質は、熱硬化型、好ましくは熱架橋型、さらにより優先的にはビニルエステル系とすることができる。重合性物質とは、重量で、50%より大きい、好ましくは75%より大きい、さらにより優先的には90%より大きい有機物質を含む物質を意味すると理解される。従って、この物質は、例えば不飽和ポリエステル、ポリエポキシド、フェノール誘導体又はアミノプラストをベースとする熱重合性の高分子物質とすることができる。好ましくは、重合性物質が架橋される。それは、例えば、電離放射線で架橋させることのできる樹脂であり、例えば紫外又は紫外可視タイプの電離処理によって、最終重合を容易に誘発し制御することが可能である。架橋型重合性物質として、優先的にはポリエステル樹脂(不飽和ポリエステルをベースとする)、さらにより優先的にはビニルエステル樹脂が使用される。
【0024】
本発明の目的は、重合性有機物質をベースとする組成物中に埋め込まれたマルチフィラメント繊維の束を備える細長い複合要素を連続的に製造するデバイスで達成され、このデバイスは、マルチフィラメント繊維の束の配列を、各ストランドが複数の繊維を備える複数の個別ストランドの形態で作り出して、最初のストランドが束の中心に位置するようにすることのできる手段と、配列を脱ガスするための手段と、配列に重合性材料をベースとする組成物を含浸させるための手段と、最初のストランドを、その部分重合を目指して受け入れることのできる最初の金型と、全てのストランドを受け入れてシングルストランドを形成することのできる少なくとも1つの最終金型と、照射デバイスを用いてシングルストランドを重合させ、細長い複合要素を得るようにするための手段と、を備えている。
【0025】
本発明によるデバイスは、最初の金型と最終金型との間に位置する少なくとも1つの中間金型を備えることができる。
【0026】
最初の金型と中間金型は、その中央部に、ストランド用の案内管を含む環状紫外線ランプを備えることができる。
【0027】
環状ランプは、案内管が貫通する中央開口部を備えた、複数の発光ダイオード(LED)を支持するための円板と、さらにまた、発光ダイオード(LED)が放出する放射線を案内管の出口方向に送ることのできる反射体と、ランプを冷却するための手段と、ランプに電力を供給するための手段と、を備えることができる。
【0028】
冷却手段は、水冷回路、及び/又は空気流又は窒素流を生成するためのデバイスを備えることができる。水冷回路は、ランプの迅速且つ効率的な冷却を保証する。空気流又は窒素流を用いた冷却は、水冷回路の場合のように密封要素を必要としないため、実施するのが容易である。加えて、大気中酸素の存在が重合反応抑制剤として作用するため、窒素の存在は、繊維を取り囲む有機物質の表面重合を促進する。
【0029】
各案内管の内部断面は、最初の金型と最終金型との間で上流側から下流側に向かって徐々に増大することができる。これにより、束の中心部から徐々に、中央ストランドを囲む含浸繊維の様々な層を重合させることが可能となる。
【0030】
本発明のより良い理解は、以下の図に基づく説明の継続によって得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1】本発明の好ましい実施形態による、細長い複合要素を製造するためのデバイスの構成要素を示す斜視図である。
図2】本発明のデバイスに関する別の実施形態の主要な構成要素を示す斜視図である。
図3図2の特徴Aを拡大した断面図である。
図4図1のデバイスを拡大した斜視図である。
図5図4のデバイスの右側部分を拡大した図である。
図6】本発明のデバイスの金型形成部分の断面図である
図7図6の金型の一部を形成するランプの冷却回路の一部を形成する部品を拡大した斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
様々な図において、同一又は類似の要素には同じ参照番号を有する。従って、それらの説明を体系的に繰り返すことはない。
【0033】
図1は、非常に長く細長い複合要素を製造するためのデバイス1を図式的に示している。図示の例では、この複合物は、熱硬化性樹脂に埋め込まれたガラスフィラメントを備えるGRCシングルストランドである。このシングルストランドは、いずれかの公知の形状をとることができ、例えば、大きな直径の、例えば10から30mmまでの円柱形のシングルストランドとすることができ、従って円形状の断面を有する。本発明のデバイスでは、もちろん、長方形、長円形、又は他の断面を持つシングルストランドの製造も可能である。ガラスフィラメントは、各々が約5から30μmの平均直径を有する複数の単一ガラスフィラメントからそれぞれ形成される本質的に一方向性マルチフィラメント繊維の形態で存在する。樹脂が熱硬化性又は架橋性タイプであることは、樹脂が熱硬化性ポリマをベースとすることで重合可能又は硬化可能(光硬化性及び/又は熱硬化性)であることを意味すると理解される。樹脂のガラス転移温度Tgは、好ましくは160℃より高く、より優先的には170℃より高く、詳細には180℃より高い。
【0034】
図1では、デバイス1に入るマルチフィラメント繊維の束20が観察され、この束は、他の図では矢印Eによって図式的に表されており、矢印の方向は、それ自体は固定されているデバイス1に対する束の前進方向を示す。束20は、供給デバイス8の異なるリール9から連続的に巻き戻されたマルチフィラメント繊維の複数ストランドの形態で、入口プレート4を通って真空チャンバ2に入る。一般に、繊維は粗糸状態で、すなわち、リール上に並行して巻かれ、そのテクスコードで識別された繊維の集団として、送り出される。供給デバイス8を起点とする束は、デバイス1の出口に位置する駆動デバイス(後ほど説明するように、これは照射デバイス50の出口の後、実際にはさらに矢印Sの方向であると理解される)によって動かされながら、矢印Eの方向に進むことでデバイス1を通り抜ける。駆動デバイス(図示せず)は、例えば、複合要素をその軸に巻き付けることを可能にする電動牽引ドラムを備えるタイプのもの、或いは、複合要素の厚さに少なくとも等しい距離だけ離間して互いに向かい合う2つの電動ドラムを備え、それらが反対方向に回転して複合要素を摩擦によって並進移動で運び、2つのドラム間に位置する空間に通すタイプのものである。デバイス1は、真空チャンバ2、含浸チャンバ3、重合金型と呼ばれる2つの金型10a及び10b、最終的に得られるシングルストランド20fが通過する較正金型と呼ばれる最終金型10f、並びに最終ストランド用の照射デバイス50を連続的に備える。照射デバイス50は、最終金型10fから出て行くシングルストランドの付加的な、好ましくは最終的な重合を行う紫外線及び/又は赤外線デバイスを意味すると理解される。
【0035】
図2には、真空チャンバ2、含浸チャンバ3、並びに重合金型と呼ばれる複数の金型10aから10eを連続的に備える、本発明の別の実施形態によるデバイス1の主要構成要素が観察される。較正金型と呼ばれる最終金型10fと、本デバイスの出口の前に位置決めされる照射デバイス50も、図4で見ることができる。真空チャンバ2は、貫通孔を備えた剛性の入口プレート4と、プレート4の貫通孔と軸方向に対向して位置する貫通孔を同じく備えた剛性の分離プレート5とによって、軸方向に区切られている。複数のストランドに分かれている繊維は、それらをプレート4の様々なオリフィスに通すことによって真空チャンバに導入され、プレート5を貫通するオリフィスを通って真空チャンバから出て行くので、ストランドは、一方のプレートから他方のプレートへ直線状で互いに平行であるが、本デバイスの長手方向軸X-X’に平行である経路を移動する。真空チャンバは真空ポンプ(図示せず)に接続されており、この真空ポンプは、ストランドが通り抜ける直径よりも大きな直径を有する開口部を繊維が通過するにも拘わらず、真空チャンバ2内の圧力レベルを約0.1barに維持する。含浸チャンバ3は、中間プレート5と剛性の出口プレート6とによって区切られた密閉エンクロージャであり、中間プレート5の貫通孔と軸方向に対向して位置する貫通孔7を同じく備えている。オリフィス7の数は、束20を構成するストランドの数に対応する。含浸チャンバには、上部の入口パイプ(図示せず)を介して外部タンク(図示せず)を起点とする樹脂が供給され、含浸チャンバはまた、下部に樹脂排出用パイプ(図示せず)を備えている。含浸チャンバ3が完全に樹脂で充填されているので、真空室2から出た繊維は、直線状で互いに平行な経路を辿りながらそこを通過し、樹脂で完全に含浸される。
【0036】
当然のことながら、本発明のデバイス1を作動させる前に、含浸させるべき束の全ストランドを、保管リール9から出発して、プレート4、5及び6のオリフィスを通過しながら、全ての金型及び照射デバイス50を通り、マルチフィラメント繊維の予め確立された配列に従って束の全ストランドに確実に張力を付与する駆動手段に至るまで、通過させることが必要である。
【0037】
例示的に、図1、4及び5に示すデバイスを用いて、19mmの外径を有する円柱形の複合要素を得ることが望まれる場合には、マルチフィラメント繊維の約80本の基本束の配列が使用され、これら80本の基本束は各々4800Tex粗糸のリール9からデバイス内に到達する。80本の基本束の配列は次のように行われる、すなわち、直径が5.6mmの中央ストランドであって、それ自体は、4800Texの8リールに由来するマルチフィラメント繊維の基本束8本の集合体から構成される中央ストランドと、最初のストランドと同心の2つの付加列であって、各列の半径方向厚さが約3mmであり、各列が複数の同心ストランドを備え、第1の付加列が、4800Texの8リールに由来する基本束8本から構成される3本のストランドから成り、第2の付加列が、4800Texの8リールに由来する基本束8本から構成される6本のストランドから成る、2つの付加列とで作製され、その全体は明らかに、合計で4800Texの8+3×8+6×8=80リールとなる。
【0038】
含浸チャンバ3の下流側には、重合金型10aから10e及び最終較正金型10fがあり、全ての金型は、デバイスの長手方向軸X-X’である全く同一の軸に沿って位置決めされている。束20は、リール9を起点とする複数のストランドで構成され、これらのストランドがこのデバイスの様々な金型を確実に連続して通過するように意図されたストランドの配列を形づくる。ストランドの配列は、実質的にこのデバイスの軸に位置決めされた最初の金型10aを中央ストランドが通過するように編成され、様々な中間ストランドは、中央ストランドの軸と同軸に、中央ストランドを囲む連続した列に編成されており、全てのストランドが結合されるまで、金型10bから10eを通り抜ける時に徐々に収束し、最終金型10f(図4)を通過してシングルストランド20fを形成する。
【0039】
図4は、最初の金型10a、中間金型10b、及び最終較正金型10fを備える本デバイスの好ましい実施形態を示す。図5を参照すると、マルチフィラメント繊維の束20が、中央ストランド20aと、それと同心に位置決めされた周辺ストランドとを備えることがより良く観察される。中央ストランド20aは、その部分的な重合を確実にする最初の金型10aを通過するように意図されている。そこから出たストランドと周辺ストランド20aeは、結果として形成された新しいストランド20bの部分的な重合を確実にする中間金型10bを一緒に通過する。中間金型10bから出たストランド20bと残りの周辺ストランド20beは、それらを成形して最終ストランドを形成するようにする較正金型10fを一緒に通過した後、照射デバイス50で最終ストランド20fの最終的な重合が行われる。較正金型10fは、明確に規定された形状及び寸法を有する管体である。代替形態では、較正金型は重合金型タイプである。
【0040】
重合金型10aの構造について、図3及び図6を参照しながら説明する。この金型は長手方向軸A-A’の細長い形状を有し、環状ランプ30と、金型に入る繊維のストランドのための案内管40とを備える。ランプ及び案内管は、デバイス1に取り付けるためのフィン46を備えた2つの部品45a、45bの金型本体45に一緒に保持される。金型本体は、その出口端で、金型から出る束を次の金型に向けて導く管41により延長されている。環状ランプ30は、軸A-A’を中心とする環状形状の共通支持体32上でプリント回路を介して互いに接続された、紫外線を有する複数のLED31を備えた組立体である。環状ランプ30は、LEDが放出する放射線を案内管40の出口方向に送ることができる反射体33を備える。例示的に、環状ランプ30は、365と410nmとの間、優先的には385nmの波長で発光する複数の高出力LEDを備え、100と500Wとの間の最大消費電力を有し、その動作中に冷却を必要とする。図3に示す金型は、液体冷却回路(例えば水)を備え、一方、図6の金型は、空気又は窒素冷却回路を備える。図6に示す金型は、この目的で、金型を空気又は窒素の供給部に接続する入口34と、支持体32と熱接触する分配プレート36(図7)とを含む冷却回路35を備える。分配プレート36は、冷却ガス用のバッフルを形成する内壁を含む分配チャンバ38を備え、チャンバ及び金型内での冷却ガスの経路は、図6及び7において矢印を備えた線で表してある。プレート36はさらに、案内管40が貫通する中央オリフィス37と、ランプ30の電気接続部を受け入れるためのオリフィス39とを備える。分配プレート36を冷却するために使用されたガスは、その後、導管47を介してこのプレートから噴出して環状チャンバ48内に分配され、次に、部品40と45aの間にこの目的のために設けられた空間に引き継がれ、部品45b内に作られた空間内に矢印Gで示す方向に沿って最終的に同心円状に出て行くようになっている。従って、このガスの流れは、最初に第1に分配プレート36を冷却し、第2に部品45bの内部容積から懸濁液中の樹脂溶媒又は樹脂の微小突起物を断続的にパージする、より具体的には反射体33の清浄性を保証するという二重目的を有している。重合金型10aは、その長手方向軸A-A’がデバイス1の軸X-X’と同軸になるように、デバイス1内に位置決めされる。
【0041】
その一部が図3に示される金型は、反射体33の清浄性を保証するという同じ理由で、環状導管48に、次いで矢印Gの方向に沿って本体45の内部空間に通じる、ガス、空気又は窒素用の2つの利用可能な入口34を有する。図3に示す金型は、図6に示す金型に加えて、分配プレート(図示せず)に、次に冷却回路の循環及び温度維持用のシステムに戻る管路51につながる、冷却液の供給部49を備える。
【0042】
本発明のプロセスの第1のステップは、デバイス1への到達時に、束20を形成する複数の個別ストランドにおけるマルチフィラメント繊維の配列を作り出すことにあり、各ストランドは1又は2以上のマルチフィラメント繊維を備える。この配列は、最初のストランドが本デバイスの中心に、デバイスの軸X-X’に沿って位置決めされ、複数の周辺ストランドが最初のストランドの周りに位置決めされるように作り出される。このために、中央オリフィス及び複数の周辺オリフィスを含めて、ストランドが通過する複数のオリフィスを備える真空チャンバ2の入口プレート4が使用される。この配列は、その後、含浸チャンバ3との分離プレート5及び含浸チャンバ3の出口プレート6を通過する。含浸チャンバから出たストランドは、続いて、様々な金型10a、10b(実際、図2のデバイスでは10c、10d、10eさえも)を通過し、これらはそれぞれ通過するストランドの部分重合を保証する。最終金型10eから出て行く最後の中央ストランドは、最終金型10fを通過する。最終金型10fは、単に全てのストランドをその中心に集め、こうして得られたシングルストランド20fを、単一ストランドの最終的な重合を保証する照射デバイス50に通すことができるようにするだけである。代替形態では、最終金型10fは中間ダイと同じタイプであり、それを通過するシングルストランド20fの最終的な重合を行う。
【0043】
本発明の他の代替的な形態及び実施形態は、請求項に記載の本発明の範囲内で想定することができる。本発明のプロセスは、1つの同じ束の中に、他のタイプのマルチフィラメント繊維(実際には異なるタイプの繊維の場合でも)を使用することができる。
【0044】
さらに、本発明のスプライシングプロセス及びデバイスを熱重合性有機物質と共に使用することも想定することができる。
【0045】
また、本デバイスの入口に単一リールから束が送り出され、それが複数の個別ストランドに分離されることも可能な場合もある。
【符号の説明】
【0046】
1 デバイス
2 真空チャンバ
3 含浸チャンバ
4 入口プレート
5 分離プレート/中間プレート
6 出口プレート
8 供給デバイス
9 リール
10a 最初の金型
10b 中間金型
10f 最終金型/較正金型
20 マルチフィラメント繊維の束
20f シングルストランド
50 照射デバイス
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
【国際調査報告】