(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-12-13
(54)【発明の名称】二次電池用分離膜
(51)【国際特許分類】
H01M 50/451 20210101AFI20231206BHJP
H01M 50/414 20210101ALI20231206BHJP
H01M 50/426 20210101ALI20231206BHJP
H01M 50/42 20210101ALI20231206BHJP
H01M 50/497 20210101ALI20231206BHJP
H01M 50/434 20210101ALI20231206BHJP
H01M 50/446 20210101ALI20231206BHJP
【FI】
H01M50/451
H01M50/414
H01M50/426
H01M50/42
H01M50/497
H01M50/434
H01M50/446
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023534405
(86)(22)【出願日】2022-10-06
(85)【翻訳文提出日】2023-06-06
(86)【国際出願番号】 KR2022095127
(87)【国際公開番号】W WO2023059173
(87)【国際公開日】2023-04-13
(31)【優先権主張番号】10-2021-0132448
(32)【優先日】2021-10-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2022-0127529
(32)【優先日】2022-10-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521065355
【氏名又は名称】エルジー エナジー ソリューション リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100188558
【氏名又は名称】飯田 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(72)【発明者】
【氏名】ジ・ウン・キム
(72)【発明者】
【氏名】ドン・フン・ベ
(72)【発明者】
【氏名】ファン・ホ・シン
(72)【発明者】
【氏名】ジン・ヨン・シン
(72)【発明者】
【氏名】ヨ・ジュ・ユン
【テーマコード(参考)】
5H021
【Fターム(参考)】
5H021BB12
5H021CC04
5H021EE05
5H021EE06
5H021EE10
5H021EE15
5H021EE22
5H021EE23
5H021EE32
5H021HH01
5H021HH06
5H021HH07
(57)【要約】
本発明による二次電池用分離膜は、多孔性構造を有し、高分子材料からなる分離膜基材と、前記分離膜基材の少なくとも一面にコーティングされたコーティング層とを含み、前記コーティング層は、互いに混和性がある結晶性バインダー及び非結晶性バインダーを含み、前記結晶性バインダーは、第1結晶性バインダー及び第2結晶性バインダーを含み、非結晶性バインダーの含量は、前記コーティング層の固形分総重量に対して、1重量%超過乃至5重量%未満であるので、分離膜コーティング層内の抵抗が減少してイオン伝導度が向上する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
多孔性構造を有し、高分子材料からなる分離膜基材と、
前記分離膜基材の少なくとも一面にコーティングされたコーティング層と、
を含み、
前記コーティング層は、互いに混和性がある結晶性バインダー及び非結晶性バインダーを含み、
前記結晶性バインダーは、第1結晶性バインダー及び第2結晶性バインダーを含み、
非結晶性バインダーの含量は、前記コーティング層の固形分総重量に対して、1重量%超過乃至10重量%未満である、二次電池用分離膜。
【請求項2】
前記結晶性バインダー及び非結晶性バインダーは、非水系バインダーである、請求項1に記載の二次電池用分離膜。
【請求項3】
前記結晶性バインダーは、ポリビニリデンフルオライド(PVDF)系共重合体である、請求項1に記載の二次電池用分離膜。
【請求項4】
前記非結晶性バインダーは、アクリレート系ポリマーまたはその共重合体、ポリビニルピロリドン-ポリビニルアセテート共重合体、及びポリビニルアセテートからなる群から選択される1種以上である、請求項1に記載の二次電池用分離膜。
【請求項5】
前記結晶性バインダー及び前記非結晶性バインダーの総重量に対して、前記非結晶性バインダーの含量は5重量%超過乃至50重量%未満である、請求項1に記載の二次電池用分離膜。
【請求項6】
前記非結晶性バインダーの重量平均分子量は100万より小さい、請求項1に記載の二次電池用分離膜。
【請求項7】
前記分離膜を80℃で3時間熱処理する場合、前記分離膜の抵抗は1.00Ωより低い、請求項1に記載の二次電池用分離膜。
【請求項8】
前記二次電池用分離膜を電解液に含浸して熱処理したとき、表面に前記コーティング層内の無機物が露出される、請求項1に記載の二次電池用分離膜。
【請求項9】
請求項1から8のうちのいずれか一項に記載の二次電池用分離膜を正極と負極との間に介在して積層された電極組立体を含む、二次電池。
【請求項10】
前記二次電池用分離膜のコーティング層の表面にあるバインダーは電解液に溶解して正極及び負極の内部に移動して分布する、請求項9に記載の二次電池。
【請求項11】
請求項9に記載の二次電池を含む、電池モジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は2021年10月6日付の韓国特許出願第2021-0132448号及び2022年10月6日付の韓国特許出願第2022-0127529号に基づく優先権の利益を主張し、当該韓国特許出願の文献に開示されたすべての内容はこの明細書の一部として含まれる。
【0002】
本発明は二次電池用分離膜に関するものである。具体的には、分離膜コーティング層の抵抗が減少し、電極との接着力が向上した二次電池用分離膜に関するものである。
【背景技術】
【0003】
二次電池の構成要素のうち、分離膜は正極と負極との間に位置する多孔性構造を有する高分子膜を含むものであり、正極と負極とを隔離し、両極間の電気的短絡を防止する役割及び電解質及びイオンを通過させる役割を果たす。分離膜はそれ自体としては電池の電気化学的反応に参加しないが、電解液に対する濡れ性、多孔性の程度、熱収縮率などのような物理的性質が電池の性能及び安全性に影響を及ぼす。
【0004】
したがって、分離膜の物理的性質を強化するために、分離膜基材にコーティング層を追加し、前記コーティング層に多様な物質を付加することで、コーティング層の物性を変えるための多様な方法が試みられている。一例として、前記分離膜の機械的強度を向上させるために前記コーティング層に無機物を付加するか、または分離膜基材の難燃性及び耐熱性を向上させるための無機物または水和物を前記コーティング層に付加することができる。
【0005】
分離膜はラミネーション工程によって電極と接着されることができる。電極と分離膜との間の接着力を確保するために、分離膜のコーティング層組成物にバインダーを付加し、加湿相分離法によって前記バインダーをコーティング層の表面側に誘導することで、コーティング層の表面に接着層を形成することができる。
【0006】
一般に、バインダーの結晶化度によって電解液内でバインダーの挙動差が発生することになる。例えば、結晶化度の高いバインダーは電解液含浸率が低いので、移動性が低く、分離膜の抵抗が増加することになる。また、抵抗の高い分離膜を適用した電池は寿命性能が低下することがある。
【0007】
したがって、分離膜の抵抗を低め、電池の寿命を延ばすための多様な研究が実施されている。
【0008】
特許文献1の分離膜は、多孔性高分子基材の少なくとも一面上にコーティング層が形成されており、前記コーティング層は無機物粒子及びバインダー高分子を含み、前記バインダー高分子は無定形の接着性バインダー高分子と1種以上のフッ素系共重合体とを含み、前記無定形の接着性バインダー高分子の含量は、全体バインダー高分子含量100重量部に対して、50重量部~84重量部である。
【0009】
特許文献2の分離膜は、多孔性基材、及び前記多孔性基材の少なくとも一面に形成され、無機物粒子及びバインダーを含む多孔性コーティング層を含み、前記多孔性コーティング層の総重量に対するバインダーの重量が5重量%~40重量%であり、前記バインダーはフッ素系バインダー及びゴム系バインダーを含む。
【0010】
特許文献1及び特許文献2の分離膜は、抵抗は低く、分離膜と電極との接着力は向上する効果を現す。
【0011】
しかし、特許文献1及び特許文献2は、分離膜コーティング層に結晶性バインダーを含む場合、バインダーの結晶化度を低めることができる技術を開示してはいない。
【0012】
したがって、分離膜コーティング層に結晶性バインダーを含む分離膜の場合にも、分離膜の抵抗を減少させることができる技術が必要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】韓国公開特許第2020-0034470号公報
【特許文献2】韓国公開特許第2017-0138958号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明は前記のような問題を解決するためのものであり、分離膜コーティング層を構成するバインダーの移動性を向上させることで、抵抗が減少し、電極との接着力が向上した二次電池用分離膜を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
このような目的を達成するための本発明による二次電池用分離膜は、多孔性構造を有し、高分子材料からなる分離膜基材と、前記分離膜基材の少なくとも一面にコーティングされたコーティング層とを含み、前記コーティング層は、互いに混和性がある結晶性バインダー及び非結晶性バインダーを含み、前記結晶性バインダーは、第1結晶性バインダー及び第2結晶性バインダーを含み、非結晶性バインダーの含量は、前記コーティング層の固形分総重量に対して、1重量%超過乃至10重量%未満であり得る。
【0016】
前記結晶性バインダー及び非結晶性バインダーは非水系バインダーであってもよい。
【0017】
前記結晶性バインダーは、ポリビニリデンフルオライド(PVDF)系共重合体であってもよい。
【0018】
前記非結晶性バインダーは、アクリレート系ポリマーまたはその共重合体、ポリビニルピロリドン-ポリビニルアセテート共重合体、及びポリビニルアセテートからなる群から選択される1種以上であり得る。
【0019】
前記アクリレート系ポリマーまたはその共重合体は下記の化学式1で表示されるもの、またはメチルアクリレート、エチルアクリレート、ブチルアクリレート、2-エチルヘキシルアクリレート、メチルメタクリレート、及びエチルメタクリレートからなる群から選択されるいずれか1種以上であり得る。
【0020】
【0021】
前記結晶性バインダー及び前記非結晶性バインダーの総重量に対して、前記非結晶性バインダーの含量は5重量%超過乃至50重量%未満であり得る。
【0022】
前記非結晶性バインダーの重量平均分子量は100万より小さくてもよい。
【0023】
前記分離膜を80℃で3時間熱処理する場合、前記分離膜の抵抗は1.00Ωより低くてもよい。
【0024】
前記二次電池用分離膜を電解液に含浸して熱処理したとき、表面に前記コーティング層内の無機物が露出され得る。
【0025】
本発明は、前記二次電池用分離膜を正極と負極との間に介在して積層された電極組立体を含む二次電池を提供する。
【0026】
前記二次電池用分離膜のコーティング層の表面にあるバインダーは電解液に溶解して正極及び負極の内部に移動して分布することができる。
【0027】
また、本発明は、前記二次電池を含む電池モジュールを提供する。
【0028】
また、本発明は、前記技術的解決方法を多様に組み合わせた形態としても提供することができる。
【発明の効果】
【0029】
以上で説明したように、本発明による二次電池用分離膜は、コーティング層に結晶性バインダー及び非結晶性バインダーを含み、結晶性バインダーのみを含むよりは電解液内でバインダー溶解性が向上し、バインダー移動性が増加する。よって、分離膜の抵抗が減少し、イオン伝導度が向上する。
【0030】
また、本発明の二次電池用分離膜を電極とラミネーションして接着する場合、分離膜コーティング層表面のバインダーが電解液に溶解して電極の内部に均一に拡散するので、電池セルの抵抗が改善される効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【
図1】実施例1による分離膜を電解液に含浸する前のSEM写真である。
【
図2】実施例1による分離膜を25℃で電解液に含浸した後のSEM写真である。
【
図3】実施例1による分離膜を80℃で電解液に含浸した後のSEM写真である。
【
図4】実施例2による分離膜のDSC結果を示すグラフである。
【
図5】比較例1による分離膜のDSC結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、添付図面を参照して本発明が属する技術分野で通常の知識を有する者が本発明を容易に実施することができる実施例を詳細に説明する。ただし、本発明の好適な実施例に対する動作原理を詳細に説明するにあたり、関連した公知の機能または構成についての具体的な説明が本発明の要旨を不必要にあいまいにする可能性があると判断される場合にはその詳細な説明を省略する。
【0033】
また、図面全般にわたって類似の機能及び作用をする部分に対しては同じ図面符号を使う。明細書全般で、ある部分が他の部分と連結されていると言うとき、これは直接的に連結されている場合だけでなく、その中間に他の素子を挟んで間接的に連結されている場合も含む。また、ある構成要素を含むというのは、特に反対の記載がない限り、他の構成要素を除くものではなく、他の構成要素をさらに含むことができることを意味する。
【0034】
また、構成要素を限定するか付け加えて具体化する説明は、特別な制限がない限り、すべての発明に適用可能であり、特定の発明に限定されない。
【0035】
また、本発明の説明及び特許請求の範囲全般にわたって単数で表示したものは、別に言及しない限り、複数の場合も含む。
【0036】
また、本発明の説明及び特許請求の範囲全般にわたって「または」は、別に言及しない限り、「及び」を含むものである。したがって、「AまたはBを含む」はAを含むか、Bを含むか、またはA及びBの両者を含む3種の場合を意味する。
【0037】
また、本発明の説明及び特許請求の範囲全般にわたってコーティング層の固形分は、前記コーティング層から溶媒を除いた残りであり、コーティング層スラリーの製造の際、溶媒に付加する無機物、バインダー及び分散剤などがこれに相当することができる。
【0038】
以下、本発明をより詳細に説明する。
【0039】
本発明による二次電池用分離膜は、多孔性構造の高分子材料からなる分離膜基材、及び前記分離膜基材の少なくとも一面にコーティングされたコーティング層を含み、前記コーティング層は互いに混和性がある結晶性バインダー及び非結晶性バインダーを含み、前記結晶性バインダーは第1結晶性バインダー及び第2結晶性バインダーを含むことができる。
【0040】
このように、前記コーティング層に含まれる結晶性バインダーと非結晶性バインダーとが互いに混和する性質を有する。したがって、結晶性バインダーのみがある場合と比較するとき、結晶性バインダーと非結晶性バインダーとが混合される場合、バインダーの結晶化度が低くなって電解液に対する溶解性が増加することになる。よって、分離膜のコーティング層内の抵抗が減少することができるので、抵抗が低い分離膜を製造することができる。
【0041】
また、前記二次電池用分離膜と電極とがラミネーションされる場合、前記二次電池用分離膜のコーティング層の表面にあるバインダーが電解液に溶解して電極及び分離膜内に均一に位置するようになるので、電極と分離膜との間の接着力が向上し、抵抗が改善された二次電池を製造することができる。
【0042】
前記分離膜基材は、負極及び正極を電気的に絶縁させることで短絡を防止しながらもリチウムイオンは通過させる気孔を含むものであり、有機溶媒である電解液に対する耐性が高く、気孔の直径が微小な多孔質膜を使うことができる。前記分離膜基材としては、通常二次電池の分離膜材料として使用可能なものであれば、特別な制限なしに使用可能であり、例えばポリエチレン、ポリプロピレン及びポリブテンを含むポリオレフィン系、ポリ塩化ビニル、ポリエチレンテレフタレート、ポリシクロオレフィン、ポリエーテルスルホン、ポリアミド、ポリイミド、ポリイミドアミド、ポリアラミド、ナイロン、ポリテトラフルオロエチレン及びこれらの混合物またはこれらの共重合体などの樹脂を含むことができる。これらのうちでも、ポリオレフィン系樹脂は、コーティング層用スラリーの塗布性に優れ、二次電池用分離膜の厚さを小さくして電池内の電極活物質層の比を高めることで、体積当たりの容量を高めることができる。
【0043】
前記分離膜基材の厚さは1μm~100μm、詳細には1μm~30μmであり得、前記分離膜基材の気孔の直径は一般的に0.01μm~10μmであり得る。
【0044】
前記コーティング層は、分離膜基材の機械的物性及び絶縁性を向上させるための無機物、及び無機物粒子間の結合を維持させ、電極と分離膜との間の接着力を向上させるためのバインダーを含む。
【0045】
前記無機物は、コーティング層の厚さを均一に形成し、適用される二次電池の作動電圧範囲内で酸化及び/または還元反応が起きないものであれば、特に限定されない。特に、イオン伝達能力を有する無機物粒子を使う場合、電気化学素子内のイオン伝導度を高めて性能向上を図ることができる。また、無機物粒子として誘電率の高い無機物粒子を使う場合、液体電解質内の電解質塩、例えばリチウム塩の解離度増加に寄与して電解液のイオン伝導度を向上させることができる。
【0046】
前記無機物の一例として、リチウムイオン伝達能力、圧電性、及び難燃性のうちの少なくとも一特性を有する無機物を挙げることができる。
【0047】
前記リチウムイオン伝達能力が良い無機物は、リチウム元素を含むが、リチウムを保存せず、リチウムイオンを移動させる機能を有する無機物粒子を示すものであり、リチウムイオン伝達能力を有する無機物粒子は粒子構造の内部に存在する一種の欠陥(defect)によってリチウムイオンを伝達及び移動させることができる。したがって、電池内のリチウムイオン伝導度が向上し、よって電池性能の向上を図ることができる。
【0048】
前記リチウムイオン伝達能力を有する無機物粒子の例としては、リチウムホスフェイト、リチウムチタンホスフェイト、リチウムアルミニウムチタンホスフェイト、(LiAlTiP)xOy系ガラス、リチウムランタンチタネート、リチウムゲルマニウムチオホスフェイト、Li3Nのようなリチウムナイトライド(LixNy、0<x<4、0<y<2)、Li3PO4-Li2S-SiS2のようなSiS2系ガラス(LixSiySz、0<x<3、0<y<2、0<z<4)、LiI-Li2S-P2S5のようなP2S5系ガラス(LixPySz、0<x<3、0<y<3、0<z<7)またはこれらの混合物からなる群から選択される1種以上であり得るが、これに限定されるものではない。
【0049】
前記圧電性(piezoelectricity)を有する無機物粒子は、常圧では不導体であるが、一定の圧力が印加された場合、内部構造の変化によって電気が通る物性を有する物質を意味するものであり、誘電率が100以上の高誘電率特性を示すだけでなく、一定の圧力の印加によって引張または圧縮される場合、電荷が発生し、一側面は正に、反対側面は負にそれぞれ帯電することで、両側面の間に電位差が発生する機能を有する物質である。
【0050】
前記のような特徴を有する無機物粒子を使う場合、ローカルクラッシュ(Local crush)、ネール(Nail)などの外部衝撃によって正極と負極との内部短絡が発生する場合、分離膜にコーティングされた無機物粒子によって正極と負極とが直接接触しないだけでなく、無機物粒子の圧電性によって粒子内の電位差が発生することになり、これにより正極と負極との間の電子移動、すなわち微小な電流が流れることで、緩い電池電圧の減少及びこれによる安全性向上を図ることができる。
【0051】
前記圧電性を有する無機物粒子の例としては、BaTiO3、Pb(Zr、Ti)O3(PZT)、Pb1-xLaxZr1-yTiyO3(PLZT)(0<x<1、0<y<1)、Pb(Mg1/3Nb2/3)O3-PbTiO3(PMN-PT)、ハフニア(HfO2)またはこれらの混合物などがあるが、これに限定されるものではない。
【0052】
前記難燃性を有する無機物は、二次電池の過充電を防止するだけでなく、分離膜に難燃特性を付加するかまたは電池の内部温度が急激に上昇することを防止することができる。前記難燃性を有する無機物は、アンチモン含有化合物、金属酸化物、金属水酸化物または金属水和物、グアニジン系化合物、ホウ素含有化合物、及びスズ酸亜鉛化合物からなる群から選択される1種以上である。
【0053】
具体的には、前記アンチモン含有化合物は、三酸化アンチモン(Sb2O3)、四酸化アンチモン(Sb2O4)及び五酸化アンチモン(Sb2O5)から選択されるものであり;前記金属酸化物、金属水酸化物または金属水和物は、アルミナ(Al2O3)、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム(Al(OH)3)、アルミニウムオキシヒドロキシド(AlO(OH))及びCaO・Al2O3・6H2Oから選択されるものであり;前記グアニジン系化合物は、硝化グアニジン、スルファミン酸グアニジン、リン酸グアニジン、及びリン酸グアニル尿素からなる群から選択されるものであり;前記ホウ素含有化合物はH3BO3またはHBO2であり;前記スズ酸亜鉛化合物は、Zn2SnO4、ZnSnO3及びZnSn(OH)6から選択されるものである。
【0054】
前記無機物は、前記コーティング層の固形分の総重量に対して、10重量%以上乃至90重量%以下含まれることができる。前記無機物が10重量%未満含まれている場合、前記無機物を付加することによって得られる効果を得にくく、前記無機物が90重量%を超える場合、バインダーの含量があまりにも少ないので、無機物間の接着力低化によって無機物コーティング層が分離膜基材から脱離するかまたはコーティングの際に未コーティング領域が発生することがあるので、これも好ましくない。
【0055】
前記バインダーは結晶性バインダー及び非結晶性バインダーを含み、前記結晶性バインダーは第1結晶性バインダー及び第2結晶性バインダーを含む。すなわち、本発明の結晶性バインダーは2種の結晶性バインダーから構成される。
【0056】
前記結晶性バインダー及び非結晶性バインダーは非水系バインダーであり得る。
【0057】
前記結晶性バインダー及び非結晶性バインダーは溶媒に溶解して結晶性が変化するので、分離膜の抵抗が減少し、セル寿命性能が改善されることができる。一方、水系バインダーは水に溶解せずに分散される形態になるので、結晶性に変化が発生せず、抵抗減少効果を得にくい。
【0058】
前記第1結晶性バインダー及び第2結晶性バインダーは互いに異なるものであり、例えば、ポリビニリデンフルオライド-ヘキサフルオロプロピレン(polyvinylidene fluoride-hexafluoropropylene、PVDF-HFP)、ポリビニリデンフルオライド-トリフルオロエチレン(polyvinylidene fluoride-trifluoroethylene、PVDF=TrFE)、ポリビニリデンフルオライド-テトラフルオロエチレン(polyvinylidene fluoride-tetrafluoroethylene、PVDF-TFE)、ポリビニリデンフルオライド-トリクロロエチレン(polyvinylidene fluoride-trichloroethylene、PVDF-TCE)及びポリビニリデンフルオライド-クロロトリフルオロエチレン(polyvinylidene fluoride-chlorotrifluoroethylene、PVDF-CTFE)を含むポリビニリデンフルオライド系共重合体、ポリブチルアクリレート(polybutylacrylate)、ポリアクリロニトリル(polyacrylonitrile、PAN)、ポリエチレンビニルアセテート共重合体(polyethylene-co-vinylacetate)、ポリエチレンオキサイド(polyethyleneoxide)、ポリアリレート(polyarylate)、セルロースアセテート(cellulose acetate)、セルロースアセテートブチレート(cellulose acetate butyrate)、セルロースアセテートプロピオネート(cellulose acetate propionate)、シアノエチルプルラン(cyanoethylpullulan)、シアノエチルポリビニルアルコール(cyanoethylpolyvinylalcohol)、シアノエチルセルロース(cyanoethylcellulose)、シアノエチルスクロース(cyanoehylsucrose)、プルラン(pullulan)及びカルボキシルメチルセルロース(carboxylmethylcellulose)からなる群から選択されるいずれか1種またはこれらのうちの2種以上の混合物であるか共重合体であり得る。
【0059】
前記非結晶性バインダーは、アクリレート系ポリマー、ポリビニルピロリドンビニルアセテート共重合体(PVP-VAc)、ポリビニルアセテート(PVAc)、シアノエチルポリビニルアルコール(cyanoethyl polyvinyl alcohol、PVA-CN)、ポリブタジエン(polybutadiene)、スチレンブタジエンゴム(Styrene butadiene Rubber、SBR)、またはポリメチルメタクリレート(polymethylmethacrylate、PMMA)であり得る。
【0060】
前記非結晶性バインダーの含量は、前記コーティング層の固形分の総重量に対して、2重量%以上乃至5重量%以下であり得る。前記非結晶性バインダーの含量が、前記コーティング層固形分の総重量に対して、2重量%より少ない場合には、非結晶性バインダーの追加による結晶化度減少効果が低いので、電解液に対する溶解性減少効果が低い。よって、分離膜抵抗減少効果を得にくい。前記非結晶性バインダーの含量が、前記コーティング層固形分の総重量に対して、5重量%を超える場合には、電解液に溶解する非結晶性バインダーの含量が増加して電解液の粘度が増加することができるので、分離膜の抵抗が増加する問題がある。
【0061】
前記結晶性バインダー及び前記非結晶性バインダーの総重量に対して、前記非結晶性バインダーの含量は5重量%超過乃至50重量%未満であり得る。
【0062】
前記非結晶性バインダーの含量が、全体バインダーの重量に対して、5重量%以下の場合には、非結晶性バインダーの追加による結晶化度減少効果が低いので、電解液に対する溶解性減少効果が低い。したがって、分離膜抵抗減少効果を得にくい。前記非結晶性バインダーの含量が、全体バインダーの重量に対して、50重量%以上の場合には、電解液に溶解する非結晶性バインダーの含量が増加して電解液の粘度が増加することができるので、分離膜の抵抗が増加する問題がある。
【0063】
前記非結晶性バインダーの重量平均分子量は100万より小さくてもよい。前記非結晶性バインダーの重量平均分子量が100万以上の場合には、バインダーの重量平均分子量があまりにも大きいので、電解液に対する溶解性が減少し、抵抗が減少する効果が低くなり、電解液に溶解した一部の高分子量バインダーは電解液の粘度を増加させて分離膜の抵抗が増加することがあるので好ましくない。
【0064】
前記コーティング層は、無機物の分散性をもっと向上させるために、分散剤をさらに含むことができる。前記分散剤は、コーティング層スラリーの製造の際、バインダー内で無機物が均一な分散状態を維持するようにする機能を果たす。前記分散剤として使える物質の例としては、油溶性ポリアミン、油溶性アミン化合物、脂肪酸類、脂肪アルコール類、ソルビタン脂肪酸エステル、タンニン酸、及びピロガル酸からなる群から選択されるいずれか1種以上を挙げることができる。
【0065】
本発明による二次電池は、前記二次電池用分離膜を正極と負極との間に介在して積層された電極組立体を含み、前記電極組立体はリチウム塩含有非水系電解液に含浸されている構造を有することができる。
【0066】
前記二次電池用分離膜は、電解液溶解性に優れた非結晶性バインダーを含む。結晶性バインダーと非結晶性バインダーとが混和したコーティング層スラリーを分離膜基材にコーティングして高温処理すると、二次電池用分離膜のコーティング層の表面にあるバインダーが電解液に溶解する。このように電解液に溶解したバインダーは正極及び負極の内部に移動して分布するようになる。よって、前記二次電池用分離膜のコーティング層の表面にある混和したバインダーは分離膜と正極及び負極内に均一に位置するようになるので、コーティング層内の抵抗が減少し、電極と分離膜との間の接着力が向上することができる。
【0067】
前記正極は、例えば、正極集電体に、正極活物質粒子から構成された正極活物質と、導電材及びバインダーが混合された正極合剤とを塗布することで製造されることができ、必要に応じて、前記正極合剤に充填剤をさらに添加することができる。
【0068】
前記正極集電体は、一般的に3μm~500μmの厚さを有するように製造され、当該電池に化学的変化を引き起こさず、高導電性を有するものであれば特に限定されるものではなく、例えば、ステンレススチール、アルミニウム、ニッケル、チタン、及びアルミニウムまたはステンレススチールの表面にカーボン、ニッケル、チタンまたは銀で表面処理したもののうちから選択される1種を使うことができ、詳細にはアルミニウムを使うことができる。集電体は、その表面に微小な凹凸を形成することで正極活物質の接着力を高めることもでき、フィルム、シート、ホイル、ネット、多孔質体、発泡体、不織布体などの多様な形態が可能である。
【0069】
前記正極活物質は、例えば、前記正極活物質粒子の他に、リチウムニッケル酸化物(LiNiO2)などの層状化合物または1またはそれ以上の遷移金属に置換された化合物;化学式Li1+xMn2-xO4(ここで、xは0~0.33である)、LiMnO3、LiMn2O3、LiMnO2などのリチウムマンガン酸化物;リチウム銅酸化物(Li2CuO2);LiV3O8、LiV3O4、V2O5、Cu2V2O7などのバナジウム酸化物;化学式LiNi1-xMxO2(ここで、M=Co、Mn、Al、Cu、Fe、Mg、BまたはGaであり、x=0.01~0.3である)で表現されるNiサイト型リチウムニッケル酸化物;化学式LiMn2-xMxO2(ここで、M=Co、Ni、Fe、Cr、ZnまたはTaであり、x=0.01~0.1である)またはLi2Mn3MO8(ここで、M=Fe、Co、Ni、CuまたはZnである)で表現されるリチウムマンガン複合酸化物;化学式のLiの一部がアルカリ土類金属イオンに置換されたLiMn2O4;ジスルフィド化合物;Fe2(MoO4)3などから構成されることができるが、これらのみに限定されるものではない。
【0070】
前記導電材は、通常正極活物質を含む混合物の総重量に対して、0.1重量%~30重量%添加される。このような導電材は当該電池に化学的変化を引き起こさず、導電性を有するものであれば特に限定されるものではなく、例えば、天然黒鉛や人造黒鉛などの黒鉛;アセチレンブラック、ケッチェンブラック、チャネルブラック、ファーネスブラック、ランプブラック、サーマルブラックなどのカーボンブラック;炭素繊維や金属繊維などの導電性繊維;フッ化カーボン、アルミニウム、ニッケル粉末などの金属粉末;酸化亜鉛、チタン酸カリウムなどの導電性ウイスカー;酸化チタンなどの導電性金属酸化物;ポリフェニレン誘導体などの導電性材料などを使うことができる。
【0071】
前記正極に含まれるバインダーは活物質と導電材などの結合及び集電体に対する結合に役立つ成分であり、通常正極活物質を含む混合物の総重量に対して、0.1重量%~30重量%添加される。このようなバインダーの例としては、ポリフッ化ビニリデン、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロース(CMC)、澱粉、ヒドロキシプロピルセルロース、再生セルロース、ポリビニルピロリドン、テトラフルオロエチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-プロピレン-ジエンターポリマー、スチレン-ブタジエンゴム、フッ素ゴム、多様な共重合体などを挙げることができる。
【0072】
前記負極は負極集電体上に負極活物質を塗布して乾燥することで製作され、必要に応じて、前述した正極に含まれる成分を選択的にさらに含むこともできる。
【0073】
前記負極集電体は、一般的に3μm~500μmの厚さを有するように作られる。このような負極集電体は当該電池に化学的変化を引き起こさないながらも導電性を有するものであれば特に限定されるものではなく、例えば、銅、ステンレススチール、アルミニウム、ニッケル、チタン、焼成炭素、銅またはステンレススチールの表面にカーボン、ニッケル、チタン、銀などで表面処理したもの、アルミニウム-カドミウム合金などを使うことができる。また、正極集電体と同様に、表面に微小な凹凸を形成して負極活物質の結合力を強化させることもでき、フィルム、シート、ホイル、ネット、多孔質体、発泡体、不織布体などの多様な形態を使うことができる。
【0074】
前記負極活物質としては、例えば、難黒鉛化炭素、黒鉛系炭素などの炭素;LixFe2O3(0≦x≦1)、LixWO2(0≦x≦1)、SnxMe1-xMe’yOz(Me:Mn、Fe、Pb、Ge;Me’:Al、B、P、Si、周期表の1族、2族、及び3族元素、ハロゲン;0<x≦1;1≦y≦3;1≦z≦8)などの金属複合酸化物;リチウム金属;リチウム合金;ケイ素系合金;スズ系合金;SnO、SnO2、PbO、PbO2、Pb2O3、Pb3O4、Sb2O3、Sb2O4、Sb2O5、GeO、GeO2、Bi2O3、Bi2O4、及びBi2O5などの金属酸化物;ポリアセチレンなどの導電性高分子;Li-Co-Ni系材料などを使うことができる。
【0075】
前記リチウム塩含有非水系電解液は電解液とリチウム塩とからなり、前記電解液としては、非水系有機溶媒、有機固体電解質、無機固体電解質などを使う。
【0076】
前記非水系有機溶媒としては、例えば、N-メチル-2-ピロリジノン、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、ブチレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチレンカーボネート、ガンマ-ブチロラクトン、1,2-ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン(franc)、2-メチルテトラヒドロフラン、ジメチルスルホキシド、1,3-ジオキソラン、ホルムアミド、ジメチルホルムアミド、ジオキソラン、アセトニトリル、ニトロメタン、ギ酸メチル、酢酸メチル、リン酸トリエステル、トリメトキシメタン、ジオキソラン誘導体、スルホラン、メチルスルホラン、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン、プロピレンカーボネート誘導体、テトラヒドロフラン誘導体、エーテル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチルなどの非プロトン性有機溶媒を使うことができる。
【0077】
前記有機固体電解質としては、例えば、ポリエチレン誘導体、ポリエチレンオキサイド誘導体、ポリプロピレンオキサイド誘導体、リン酸エステルポリマー、ポリアジテーションリシン(agitation lysine)、ポリエステルスルフィド、ポリビニルアルコール、ポリフッ化ビニリデン、イオン性解離基を含む重合体などを使うことができる。
【0078】
前記無機固体電解質としては、例えば、Li3N、LiI、Li5NI2、Li3N-LiI-LiOH、LiSiO4、LiSiO4-LiI-LiOH、Li2SiS3、Li4SiO4、Li4SiO4-LiI-LiOH、Li3PO4-Li2S-SiS2などのLiの窒化物、ハロゲン化物、硫酸塩などを使うことができる。
【0079】
前記リチウム塩は前記非水系電解質に溶解しやすい物質であり、例えば、LiCl、LiBr、LiI、LiClO4、LiBF4、LiB10Cl10、LiPF6、LiCF3SO3、LiCF3CO2、LiAsF6、LiSbF6、LiAlCl4、CH3SO3Li、(CF3SO2)2NLi、クロロボランリチウム、低級脂肪族カルボン酸リチウム、4フェニルホウ酸リチウム、イミドなどを使うことができる。
【0080】
また、本発明は、前記二次電池を単位セルとして含む電池モジュール及び電池パックを提供し、前記電池モジュールまたは電池パックを含むデバイスを提供する。
【0081】
前記デバイスの具体的な例としては、コンピュータ、携帯電話、動力工具(power tool)などの小型デバイスと、電池的モーターによって動力を受けて動く動力工具(power tool);電気自動車(Electric Vehicle、EV)、ハイブリッド電気自動車(Hybrid Electric Vehicle、HEV)、プラグインハイブリッド電気自動車(Plug-in Hybrid Electric Vehicle、PHEV)などを含む電気車;電気自転車(E-bike)、電気スクーター(E-scooter)を含む電気二輪車;電気ゴルフカート(electric golf cart);電力貯蔵用システムなどの中大型デバイスを挙げることができるが、これに限定されるものではない。
【0082】
前記電池モジュール、電池パック、デバイスの構造などは当該分野に公知となっているので、本明細書ではそれについての詳細な説明を省略する。
【0083】
以下では、本発明の実施例を参照して説明するが、これは本発明のより容易な理解のためのものであり、本発明の範疇がそれによって限定されるものではない。
【0084】
<実施例1>
二次電池用分離膜のコーティング層スラリーを製造するために、ヘキサフルオロプロピレン含量が15%であり、重量平均分子量が40万であるポリビニリデンフルオライド-ヘキサフルオロプロピレン(PVDF-HFP)14重量%、クロロトリフルオロエチレンの含量が20%であり、重量平均分子量が45万であるポリビニリデンフルオライド-クロロトリフルオロエチレン(PVDF-CTFE)4重量%、アクリレート系ポリマー2重量%、無機物としてアルミナ(Al2O3)79重量%、及び分散剤として分子量1,700のタンニン酸1重量%をアセトンに投入して混合する。
【0085】
前記アクリレート系ポリマーのガラス転移温度は26℃であり、重量平均分子量は20万である。
【0086】
相対湿度40%の条件で前記コーティング層スラリーをポリオレフィン系分離膜基材にディップコーティング法でコーティングして分離膜を製造した。コーティング層の厚さは8μmであり、コーティング層スラリーのローディング量は13.5g/m2である。
【0087】
<実施例2>
前記実施例1で、アクリレート系ポリマーの代わりに、ポリビニルピロリドンビニルアセテート共重合体を使ったことを除き、前記実施例1と同様な方法を使って分離膜を製造した。
【0088】
<実施例3>
前記実施例1で、アクリレート系ポリマーの代わりに、ポリビニルアセテートを使ったことを除き、前記実施例1と同様な方法を使って分離膜を製造した。
【0089】
<比較例1>
前記実施例1で、アクリレート系ポリマーを省略し、ポリビニリデンフルオライド-ヘキサフルオロプロピレンを15重量%含み、ポリビニリデンフルオライド-トリクロロエチレンを5重量%含むことを除き、前記実施例1と同様な方法を使って分離膜を製造した。
【0090】
<比較例2>
前記実施例1で、ポリビニリデンフルオライド-ヘキサフルオロプロピレンを15重量%含み、アクリレート系ポリマーを1重量%含むことを除き、前記実施例1と同様な方法を使って分離膜を製造した。
【0091】
<比較例3>
前記実施例1で、ポリビニリデンフルオライド-ヘキサフルオロプロピレンを8重量%含み、ポリビニリデンフルオライド-トリクロロエチレンを2重量%含み、アクリレート系ポリマーを10重量%含むことを除き、前記実施例1と同様な方法を使って分離膜を製造した。
【0092】
<比較例4>
前記実施例1で、アクリレート系ポリマーのガラス転移温度が30℃であり、重量平均分子量は120万であることを除き、前記実施例1と同様な方法を使って分離膜を製造した。
【0093】
<実験例1>結晶化度測定
TA instrument社の示差走査熱量計(DSC)であるDiscovery DSC250を使って実施例1~実施例3及び比較例1~比較例4で製造された分離膜の結晶化度を測定した。
【0094】
零下60℃~250℃の範囲内で10℃/minの速度で加熱-冷却-加熱を実施して測定した温度分布からピーク温度及び熱量を分析した。結晶化度は下記のような計算式によって計算した。このように計算された結晶化度は下記の表1に示し、実施例2及び比較例1のDSC結果を
図4及び
図5のそれぞれに示した。
【0095】
【0096】
前記式で、ΔHmはバインダーの溶融熱である。
【0097】
<実験例2>電解液に対する溶解度(solvation、%)
前記実施例1~実施例3及び前記比較例1~比較例4で製造された分離膜を横*縦のサイズが5cm*5cmになるように準備し、初期分離膜の重さ(A)を測定した。
【0098】
電解液として1MのLiPF6を含み、エチレンカーボネート(EC)とエチルメチルカーボネート(EMC)の体積比が3:7になるように混合された電解液を準備した。前記分離膜を下記のような条件で前記電解液に浸漬し、電解液で分離した。
-24時間25℃で浸漬
-24時間80℃で浸漬
【0099】
前記分離膜をエタノールで洗浄してフィルタリングした後、60℃で乾燥した後、乾燥された分離膜の重さ(B)を測定した。
【0100】
分離膜バインダーの溶解度は下記のような式で計算し、その結果を下記の表1に示した。
【0101】
【0102】
また、実施例1の分離膜を電解液に含浸させる前(A)、常温(25℃)で24時間含浸させた後(B)、及び80℃で3時間処理した後(C)のSEM写真を測定した結果のそれぞれを
図1~
図3に示した。
【0103】
図1は実施例1による分離膜を電解液に含浸する前のSEM写真であり、
図2は実施例1による分離膜を25℃で電解液に含浸した後のSEM写真であり、
図3は実施例1による分離膜を80℃で電解液に含浸した後のSEM写真である。
【0104】
図1~
図3を参照すると、
図1と
図2とを比較すると、
図2に示した分離膜(B)は電解液がバインダー鎖の間に入ってバインダーの体積が増加した状態であり、表面にあるPVDF-HFPが電解液に膨潤(swelling)されて表面が平坦化した状態を示す。
【0105】
図3に示した高温(80℃)で熱処理した分離膜(C)は、コーティング層の表面にあるバインダーが溶解してコーティング層内の無機物が露出された状態を示している。よって、このような分離膜を電極とラミネーションする場合、電解液に溶解したバインダーが分離膜コーティング層及び電極の内部に均一に拡散することで、分離膜の抵抗が減少するだけでなく、電池セルの抵抗が減少することができることが分かる。
【0106】
<実験例3>分離膜抵抗(Ω)
分離膜の抵抗を測定するために、分離膜及び電解液をケースに入れて密封してコインセルを製造した。
【0107】
前記電解液は、1MのLiPF6とエチレンカーボネート(EC)とエチルメチルカーボネート(EMC)との体積比が3:7になるように構成した。
【0108】
Solartron analytical EISを使用し、周波数(Frequency)100,000~10,000Hz、Ac Amplitude 10mAの条件で前記コインセルの抵抗を測定し、その結果を下記の表1に示した。
【0109】
【0110】
本発明による分離膜は、コーティング層組成物として非結晶性バインダーを含むので、バインダー全体の結晶化度が低くなって電解液に対する溶解性が増加するようになるので、分離膜コーティング層内の抵抗が低くなる。
【0111】
前記表1を参照すると、実施例で製造された分離膜は、比較例で製造された分離膜に比べて低い抵抗を有することが示される。特に、実施例で製造された分離膜の抵抗減少効果は80℃でより大きくなることを示していることが分かる。
【0112】
一方、電解液内のバインダー溶解度は25℃では溶解度向上の効果が低い一方で、80℃では実施例で製造された分離膜のバインダー溶解度が比較例で製造された分離膜に比べて著しく向上した結果を確認することができる。
【0113】
具体的には、非結晶性バインダーが含まれていない比較例1、及び非結晶性バインダーが少量付加された比較例2は80℃でバインダー溶解度が著しく減少することが測定される。よって、非結晶性バインダーが所定の含量以上含まれることが好ましことが分かる。
【0114】
一方、非結晶性バインダーが多量含まれた比較例3は80℃でバインダー溶解度が実施例より高く現れているが、分離膜抵抗は25℃及び80℃のいずれでもより高く現れているので、分離膜抵抗の増加によってイオン伝導度減少による電池セルの寿命低下の問題が発生し得る。よって、非結晶性バインダーの含量が高くなることのみからは二次電池用分離膜として適用することが優秀であると評価しにくい。
【0115】
非結晶性バインダーの重量平均分子量が120万である比較例4の場合には、80℃でバインダー溶解度が著しく減少し、分離膜抵抗も若干高く測定されるので、非結晶性バインダーの重量平均分子量も高温でバインダー溶解度に影響を及ぼすことが分かる。
【0116】
したがって、本発明による分離膜は非結晶性バインダーを特定の含量範囲で含むので、非結晶性バインダーを含んでいない従来の分離膜に比べて分離膜抵抗に優れる効果があるだけではなく、高温(80℃)でバインダー溶解度が著しく向上する効果を得ることができるので、イオン伝導度が増加して電池セルの寿命特性が向上することができる。このように、実施例の分離膜は、80℃で3時間熱処理する場合、前記分離膜の抵抗が1.00Ωより低く現れているので、抵抗が著しく減少した分離膜を提供することができる。
【0117】
図4は実施例2による分離膜のDSC結果を示すグラフであり、
図5は比較例1による分離膜のDSC結果を示すグラフである。
【0118】
図4及び
図5を参照すると、結晶性バインダーのみ含まれた比較例1の分離膜では第1結晶性バインダー及び第2結晶性バインダーの結晶ピークがそれぞれ現れているが、結晶性バインダーと非結晶性バインダーとが混和した実施例2の場合、第1結晶性バインダー及び第2結晶性バインダーの結晶ピークが小さくなり、全体的にバインダーの結晶化度が減少するので、結晶ピーク温度が比較例1より低く現れている。
【0119】
このように、本発明による分離膜コーティング層は結晶性バインダー及び非結晶性バインダーを含むので、分離膜の抵抗が減少し、セル寿命性能が改善された二次電池を提供することができる。
【0120】
本発明が属する分野で通常の知識を有する者であれば前記内容に基づいて本発明の範疇内で多様な応用及び変形をなすことが可能であろう。
【国際調査報告】