(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-12-13
(54)【発明の名称】カンナビノイドカプセル化技術
(51)【国際特許分類】
A61K 31/352 20060101AFI20231206BHJP
A61K 31/05 20060101ALI20231206BHJP
A61K 9/48 20060101ALI20231206BHJP
A61K 47/28 20060101ALI20231206BHJP
A61K 47/36 20060101ALI20231206BHJP
A61K 47/14 20170101ALI20231206BHJP
A61K 47/02 20060101ALI20231206BHJP
A61P 25/00 20060101ALI20231206BHJP
【FI】
A61K31/352
A61K31/05
A61K9/48
A61K47/28
A61K47/36
A61K47/14
A61K47/02
A61P25/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2023550333
(86)(22)【出願日】2021-11-05
(85)【翻訳文提出日】2023-05-26
(86)【国際出願番号】 AU2021051313
(87)【国際公開番号】W WO2022094671
(87)【国際公開日】2022-05-12
(32)【優先日】2020-11-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】AU
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】518227865
【氏名又は名称】ゼリラ セラピューティクス オペレーションズ ピーティーワイ リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】タケチ,リュウ
(72)【発明者】
【氏名】マモ,ジョン
(72)【発明者】
【氏名】ムーラニアン,アーミン
(72)【発明者】
【氏名】マジンビ,マイムナ
(72)【発明者】
【氏名】ブルック,エミリー
(72)【発明者】
【氏名】アル-サラミ,ハニ
【テーマコード(参考)】
4C076
4C086
4C206
【Fターム(参考)】
4C076AA53
4C076AA95
4C076BB01
4C076CC01
4C076DD23
4C076DD37N
4C076DD46
4C076DD70N
4C076EE36
4C076FF34
4C086AA01
4C086AA02
4C086MA03
4C086MA05
4C086MA08
4C086MA37
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4C086NA11
4C086ZA01
4C086ZC75
4C206AA01
4C206AA02
4C206BA08
4C206CA19
4C206MA03
4C206MA05
4C206MA13
4C206MA57
4C206MA72
4C206NA05
4C206NA11
4C206ZA01
4C206ZC75
(57)【要約】
本発明は、組成物であって、1つ以上のカンナビノイドと、透過増強剤と、アルギネートポリマーと、を含み、1つ以上のカンナビノイド及び透過増強剤が、カプセル化される、組成物に関する。そのような組成物は、カンナビノイドの脳への送達が必要とされる、神経変性障害の治療において有用であり得る。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
組成物であって、
1つ以上のカンナビノイドと、
透過増強剤と、
アルギネートポリマーと、を含み、
前記1つ以上のカンナビノイド及び透過増強剤が、カプセル化される、組成物。
【請求項2】
前記1つ以上のカンナビノイド及び透過増強剤が、別々にカプセル化される、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記組成物が、1時間未満の前記1つ以上のカンナビノイドの脳透過についてのt
maxを有する、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項4】
前記1つ以上のカンナビノイドが、THC、THCV、CBD、CBN、CBG、CBC、及びCBND、又はそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される、請求項1~3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項5】
前記透過増強剤が、胆汁酸である、請求項1~4のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
胆汁酸が、デオキシコール酸である、請求項5に記載の組成物。
【請求項7】
前記アルギネートポリマーが、アルギン酸ナトリウムである、請求項1~6のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項8】
前記1つ以上のカンナビノイドの透過増強剤に対するモル比が、約20:1~約1:20である、請求項1~7のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項9】
カンナビノイド組成物を調製するためのプロセスであって、前記カンナビノイド組成物が、
1つ以上のカンナビノイドと、
透過増強剤と、
アルギネートポリマーと、を含み、
前記プロセスが、
前記1つ以上のカンナビノイドの水溶液と前記アルギネートポリマーとを混合して、エマルションを形成し、次いで前記エマルションを多価塩の水溶液中に投じて、カプセル化されたカンナビノイド粒子を形成することを含む、プロセス。
【請求項10】
前記1つ以上のカンナビノイド及び透過増強剤が、一緒にカプセル化される、請求項9に記載のプロセス。
【請求項11】
前記1つ以上のカンナビノイド及び透過増強剤が、別々にカプセル化される、請求項9に記載のプロセス。
【請求項12】
i)前記透過増強剤の水溶液と前記アルギネートポリマーとを混合して、エマルションを形成し、次いで前記エマルションを多価塩の水溶液中に投じて、カプセル化された透過増強剤粒子を形成する工程と、
ii)前記カプセル化された透過増強剤粒子を前記カプセル化されたカンナビノイド粒子と混合する工程と、を更に含む、請求項11に記載のプロセス。
【請求項13】
前記1つ以上のカンナビノイドが、中鎖トリグリセリド中に溶解された溶液として提供される、請求項9~12のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項14】
前記1つ以上のカンナビノイドが、THC、THCV、CBD、CBN、CBG、CBC、及びCBND、又はそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される、請求項9~13のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項15】
前記透過増強剤が、胆汁酸である、請求項9~14のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項16】
前記胆汁酸が、デオキシコール酸である、請求項15に記載のプロセス。
【請求項17】
前記アルギネートポリマーが、中粘度アルギン酸ナトリウムである、請求項9~16のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項18】
前記多価塩が、塩化カルシウムである、請求項9~17のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項19】
前記1つ以上のカンナビノイドの透過増強剤に対するモル比が、約20:1~約1:20である、請求項9~18のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項20】
1つ以上のカンナビノイドの脳透過を増強する方法であって、対象に有効量の請求項1~8のいずれか一項に記載の組成物を投与することを含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カプセル化されたカンナビノイド及び透過増強剤を、任意選択で1つ以上のテルペンとともに含む、組成物に関する。そのような組成物は、例えば、カンナビノイドに応答性である神経変性障害の治療における使用を見出し得る。
【背景技術】
【0002】
大麻の生物学的活性は少なくとも2500年間よく知られている。大麻の活性成分はカンナビノイドであり、これは、カンナビノイド受容体を介してその効果を発揮する大麻植物からの任意の化合物として定義される。大麻と最もよく関連付けられるカンナビノイドは(-)-trans-Δ9-テトラヒドロカンナビノール(THC)及びカンナビジオール(CBD)であるが、同定されている少なくとも142個の他のものが存在する。2つの既知のタイプのカンナビノイド受容体、CB1及びCB2が存在し、これらは、全身に位置している。CB1受容体は優勢に脳において見出され、一方、CB2受容体は主に免疫系において見出される。
【0003】
種々の状態の治療のためのカンナビノイドの使用についての研究が、多くの国における大麻使用を規制する法律の緩和に部分的に起因して、ここ数年にわたって増大している。本発明に特に関連するのは脳を冒す状態の治療である。
【0004】
以下のような多種多様な神経学的状態の治療のためのCBD及び/又はTHCを含む組成物が記載されている:アルツハイマー病、食欲不振、注意欠陥多動性障害(ADHD)、不安、自閉症、うつ病、てんかん、ハンチントン病、偏頭痛、悪心、疼痛、パーキンソン病、外傷後ストレス障害(PTSD)、発作、睡眠障害、及び嘔吐。
【0005】
CBDは本発明にとって特に関心のあるものである。CBDは、受容体CB1、CB2及び5-HT1Aに結合して、細胞活性を調節し、興奮毒性を阻害する。研究は、CBDの反復投与が、ミクログリア活性化の減少及び記憶欠損の減衰を介してアルツハイマー病の動物モデルにおいて神経保護的であり得ることを示す。更に、エンドカンナビノイドシステムの活性化は、血液脳関門(BBB)を形成する脳毛細血管の完全性を保ち、糖尿病のモデルにおいて治療効果を発揮することが示されている。
【0006】
CBDは、高度に親油性であり、光に感受性であり、ほとんどが十二指腸において分解され、これは、血漿及び組織における極めて低い経口バイオアベイラビリティに寄与している(それぞれおよそ6%及び1%)。CBDの慢性的使用は臨床的に良好な耐用性を示す一方で、その高い揮発性及び不安定性は研究及び薬物療法としての適応における使用についての制限をもたらす。低い経口バイオアベイラビリティのみを有する、そのような薬物を使用することの高い費用はまた、必要としている多くの人にとって法外であり得る。
【0007】
上記で概要を述べた問題の少なくとも1つを軽減する戦略、例えば、カンナビノイド、若しくはカンナビノイドの混合物を脳に送達して、神経学的状態を治療すること、又は脳などの臓器におけるカンナビノイドの滞留時間を延長すること、又は脳などの臓器におけるカンナビノイドの取り込みを増強すること、又はそのような状態のための費用効果がある治療を提供すること、又はカンナビノイド、若しくはカンナビノイドの混合物を光若しくは空気から保護すること、又は貯蔵若しくは投与の間の分解の量を低下させるか若しくは排除することができることの必要性が存在する。
【発明の概要】
【0008】
本発明は、透過増強剤と一緒に、カプセル化されたカンナビノイド又はカンナビノイドの混合物を含む組成物が、神経学的状態を治療するための脳への送達に好適であり得るか、又は少なくとも現在利用可能なソリューションに代わるものを提供し得るという発見に少なくとも部分的に基礎を置いている。
【0009】
一態様では、本発明は、組成物であって、1つ以上のカンナビノイドと、透過増強剤と、アルギネートポリマーと、を含み、1つ以上のカンナビノイド及び透過増強剤が、カプセル化される、組成物を提供する。
【0010】
別の態様では、本発明は、カンナビノイド組成物を調製するためのプロセスであって、カンナビノイド組成物が、
1つ以上のカンナビノイドと、
透過増強剤と、
アルギネートポリマーと、を含み、
プロセスが、
1つ以上のカンナビノイドの水溶液とアルギネートポリマーとを混合して、エマルションを形成し、次いでエマルションを多価塩の水溶液中に投じて、カプセル化されたカンナビノイド粒子を形成することを含む、プロセスを提供する。
【0011】
いくつかの実施形態では、透過増強剤は、1つ以上のカンナビノイドと一緒にカプセル化される。他の実施形態では、1つ以上のカンナビノイド及び透過増強剤は、別々にカプセル化され、プロセスは、透過増強剤の水溶液とアルギネートポリマーとを混合して、エマルションを形成し、次いでエマルションを多価塩の水溶液中に投じて、カプセル化された透過増強剤粒子を形成することによって透過増強剤をカプセル化する工程と、カプセル化されたカンナビノイド粒子とカプセル化された透過増強剤粒子とを合わせて、本発明の組成物を形成する工程と、を更に含む。
【0012】
本発明の他の態様は、本発明の特定の実施形態の以下の説明のレビューに際して当業者に明らかとなる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
本発明の態様及び利点の更なる理解のために、下記の添付の図面と併せて、以下の詳細な説明を参照するべきである。
【0014】
【
図1】血漿及び脳における、カンナビノイド、カンナビジオール(CBD)の平均濃度-時間曲線(a、c)を、曲線下面積(AUC)グラフ(b、d)として示される対応する累積濃度とともに示す。CBDをマウスに以下の製剤に従って5mg/kgの投薬量で経口投与した:カプセル化されたCBD(カプセル)、カプセル化されたCBD+カプセル化されたデオキシコール酸(4mg/kg)(カプセル+DCA)及び油とのCBD(ネイキッド)。各グラフについて、データは平均値±SEMバーを表す(各時点について治療群当たりn=3又は4)。一元配置ANOVAを使用する解析は統計的有意性を示さず、血漿及び脳のデータはそれぞれp=0.07及びp=0.67をもたらした。
【発明を実施するための形態】
【0015】
別段の定義がない限り、本明細書で使用される全ての技術及び科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者によって一般的に理解されるのと同じ意味を有する。本明細書に記載のものと同様又は同等の任意の方法及び材料が本発明の実行又は試験において使用され得るが、好ましい方法及び材料が記載される。本発明の目的のために、以下の用語が以下で定義される。
【0016】
冠詞「a」及び「an」は、1つの又は1つ超の(すなわち、少なくとも1つの)冠詞の文法的目的語を指すために本明細書で使用される。例として、「要素(an element)」は、1つの要素又は1つ超の要素を意味する。
【0017】
本明細書で使用される場合、「約」という用語は、言及される成分の量の小さな変動を包含する。例えば、用語「約98:2」の文脈における、用語「約98」は、「第2の成分と比較して97.5~98.4部の第1の成分」を意味する。したがって、上記の比率に対する小さな変動は本発明の範囲内である。他の文脈では、用語「約」は、参照の量(quantity)、レベル、値、寸法、サイズ、又は量(amount)に対して15%又は10%程度変動する量(quantity)、レベル、値、寸法、サイズ、又は量(amount)を意味することが適切であり得る。当業者は本発明の趣旨を踏まえて用語「約」の意味を認めることができる。
【0018】
本明細書で使用される場合、「及び/又は」という用語は、この用語の前の整数又は工程が、用語「及び」の通常の定義に従って、この用語の後に現れる整数又は工程を含み得ることを意味する。この用語はまた、この用語の後の整数又は工程が、用語「又は」の通常の定義に従って、この用語の前に現れる整数又は工程に代わるものとして含まれ得ることを意味し得る。
【0019】
実施形態の説明
一態様では、本発明は、組成物であって、1つ以上のカンナビノイドと、透過増強剤と、アルギネートポリマーと、を含み、1つ以上のカンナビノイド及び透過増強剤が、カプセル化される、組成物を提供する。
【0020】
本発明の組成物の利点は、脳による1つ以上のカンナビノイドの取り込みが、透過増強剤を含有しない組成物と比較して大いに増強されることである。本発明のようなカプセル化された組成物の他の利点は、1つ以上のカンナビノイド及び/又は透過増強剤が、光又は空気からの分解に対して大いに安定化されることである。更に、1つ以上のカンナビノイド又は透過増強剤が揮発性である場合、カプセル化は、カプセル化された材料のバリア性質に起因して、これらの材料の組成物からの消失を低下させる。
【0021】
本明細書で使用される場合、「カンナビノイド」という用語は、エンドカンナビノイドシステムが関与する活性を有する任意の分子を意味する。カンナビノイドは、天然に存在し得る、例えば、大麻植物において見出され得るか、又は合成的に生成され得る、例えば、天然に存在するカンナビノイドの誘導体であり得る。合成カンナビノイドの例としては、ナビロン及びリモナバンが挙げられる。
【0022】
現在までに、100個超のカンナビノイドが大麻植物において同定されている。これらのカンナビノイドの包括的なリストは、Mahmoud A.El Sohly and Waseem Gul,“Constituents of Cannabis Sativa.”(Handbook of Cannabis Roger Pertwee)(Ed.)Oxford University Press,2014;ISBN:9780199662685)において見出され得る。
【0023】
本発明の1つ以上のカンナビノイドは、カンナビゲロール(E)-CBG-C5、カンナビゲロールモノメチルエーテル(E)-CBGM-C5 A、カンナビゲロール酸A(Z)-CBGA-C5 A、カンナビゲロバリン(E)-CBGV-C3、カンナビゲロール酸A(E)-CBGA-C5 A、カンナビゲロール酸Aモノメチルエーテル(E)CBGAM-C5 A、カンナビゲロバリン酸A(E)-CBGVAC3A、(±)-カンナビクロメンCBC-C5、(±)-カンナビクロメン酸A CBCA-C5 A、(±)-カンナビバリクロメン、(±)-カンナビクロメンバリンCBCV-C3、(±)-カンナビクロメバリン酸A CBCVA-C3 A;(-)-カンナビジオールCBD-C5、カンナビジオールモノメチルエーテルCBDM-C5、カンナビジオール-C4 CBD-C4、(-)-カンナビジバリンCBDVC3、カンナビジオルコールCBD-C1、カンナビジオール酸CBDA-C5、カンナビジバリン酸CBDVA-C3;カンナビノジオールCBND-C5、カンナビノジバリンCBVD-C3;Δ9-テトラヒドロカンナビノールΔ9-THC-C5、Δ9-テトラヒドロカンナビノール-C4 Δ9-THC-C4、Δ9-テトラヒドロカンナビバリンΔ9-THCV-C3、Δ9-テトラヒドロカンナビオルコールΔ9-THCO-C1、Δ9-テトラヒドロカンナビノール酸A Δ9-THCA-C5 A、Δ9-テトラヒドロカンナビノール酸B Δ9-THCA-C5 B、Δ9-テトラヒドロカンナビノール酸-C4 A及び/若しくはB Δ9-THCA-C4 A及び/若しくはB、Δ9-テトラヒドロ-カンナビバリン酸A Δ9-THCVA-C3 A、Δ9-テトラヒドロカンナビオルコール酸A及び/若しくはB Δ9-THCOA-C1 A及び/若しくはB、(-)-Δ8-trans-(6aR,10aR)-Δ8-テトラヒドロカンナビノールΔ8-THC-C5、(-)-Δ8-trans-(6aR,10aR)-テトラヒドロカンナビノール酸A Δ8-THCA-C5 A、(-)-(6aS,10aR)-Δ9-テトラヒドロカンナビノール(-)-cis-Δ9-THC-C5;カンナビノールCBN-C5、カンナビノール-C4 CBN-C4、カンナビバリンCBV-C3、カンナビノールC2 CBN-C2、カンナビオルコールCBN-C1、カンナビノール酸A CBNA-C5 A、カンナビノールメチルエーテルCBNM-C5、(-)-(9R、10R)-trans-カンナビトリオール(-)-trans-CBT-C5、(+)-(9S,10S)-カンナビトリオール(+)-trans-CBT-C5、(±)-(9R,10S/9S,10R)-);カンナビトリオール(±)-cis-CBT-C5、(-)-(9R,10R)-trans-10-O-エチル-カンナビトリオール(-)-trans-CBT-OEt-C5、(±)-(9R,10R/9S,10S)-カンナビトリオール-C3(±)-trans-CBT-C3、8,9-ジヒドロキシ-Δ6a(10a)-テトラヒドロカンナビノール8,9-ジ-OH-CBT-C5、カンナビジオール酸AカンナビトリオールエステルCBDA-C5 9-OH-CBT-C5エステル、(-)-(6aR,9S,10S,10aR)-9,10-ジヒドロキシヘキサヒドロカンナビノール、カンナビリプソール、カンナビリプソール-C5、(-)-6a,7,10a-トリヒドロキシ-Δ9-テトラヒドロカンナビノール(-)-カンナビテトロール、10-オキソ-Δ6a(10a)テトラヒドロカンナビノールOTHC);(5aS,6S,9R,9aR)-カンナビエルソインCBE-C5、(5aS,6S,9R,9aR)-C3-カンナビエルソインCBE-C3、(5aS,6S,9R,9aR)-カンナビエルソン酸A CBEA-C5 A、(5aS,6S,9R,9aR)-カンナビエルソン酸B CBEA-C5 B;(5aS,6S,9R,9aR)-C3-カンナビエルソン酸B CBEA-C3 B、カンナビグレンドール-C3 OH-イソ-HHCV-C3、デヒドロカンナビフランDCBF-C5、カンナビフランCBF-C5)、(-)-Δ7-trans-(1R,3R,6R)-イソテトラヒドロカンナビノール、(±)-Δ7-1,2-cis-(1R,3R,6S/1S,3S,6R)-イソテトラヒドロカンナビバリン、(-)-Δ7-trans-(1R,3R,6R)-イソテトラヒドロカンナビバリン;(±)-(1aS,3aR,8bR,8cR)-カンナビシクロールCBL-C5、(±)-(1aS,3aR,8bR,8cR)-カンナビシクロール酸A CBLA-C5 A、(±)-(1aS,3aR,8bR,8cR)-カンナビシクロバリンCBLV-C3;カンナビシトランCBTC5;カンナビクロマノンCBCN-C5、カンナビクロマノン-C3 CBCN-C3、並びにカンナビクマロノンCBCON-C5、又はそれらの任意の組み合わせからなる群から選択され得る。
【0024】
いくつかの実施形態では、1つ以上のカンナビノイドは、透過増強剤と一緒に、1つ以上のテルペン有り又は無しでカプセル化され得る。これは、1つ以上のカンナビノイド、1つ以上のテルペン、及び透過増強剤が適正な比率で送達されることを確実にし、製造プロセスを単純化し得る。
【0025】
いくつかの実施形態では、1つ以上のカンナビノイドは、透過増強剤とは別にカプセル化され得る。1つ以上のテルペンは、存在する場合、1つ以上のカンナビノイドとともに、又は透過増強剤とともにカプセル化され得る。いくつかの実施形態では、1つ以上のカンナビノイド、1つ以上のテルペン、及び透過増強剤は、互いに別々にカプセル化され得る。成分を別々にカプセル化することの利点は、小さなサイズの粒子について、各粒子がより高い量の活性成分を含んで製剤化され得ることである。別々の粒子中に成分を提供することはまた、製剤化プロセスを単純化して、カンナビノイド対テルペン対透過増強剤の正しい比率を達成し得る。
【0026】
いくつかの実施形態では、1つ以上のカンナビノイドは、THC、THCV、CBD、CBN、CBG、CBC、及びCBND、又はそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される。一実施形態では、カンナビノイドは、CBDである。
【0027】
カンナビノイドが本質的に親油性であることは、当業者によって理解される。本発明を特定のカンナビノイド又はカンナビノイドの組み合わせに限定することは本発明者らの意図ではない。なぜなら、本明細書に記載のカプセル化技術は任意のカンナビノイドとともに作用することが予想されるからである。
【0028】
いくつかの実施形態では、1つ以上のカンナビノイドは、大麻植物においてカンナビノイドと並行して天然に産生されるものなどの、1つ以上のテルペンを更に含む組成物中に存在し得る。テルペンは、分子式C5H8を有する、イソプレンの単位に由来する。テルペンの基本的な分子式は、複数のイソプレン単位、すなわち、(C5H8)nであり、式中、nは連結されたイソプレン単位の数である。テルペノイドは、植物において、典型的には酸化プロセスを介して更に代謝されたテルペン化合物であり、したがって、通常少なくとも1つの酸素原子を含有する。テルペンという用語は、本明細書においてテルペノイドを含むように使用されている。
【0029】
大麻抽出物において、モノテルペン、モノテルペノイド、セスキテルペン及びセスキテルペノイドを含む、多数のテルペンが同定されている。いくつかの実施形態では、1つ以上のカンナビノイドは、アロアロマデンドレン、ヘキサン酸アリル、ベンズアルデヒド、(Z)-a-cis-ベルガモテン、(Z)-a-trans-ベルガモテン、β-ビサボロール、エピ-a-ビサボロール、β-ビサボレン、ボルネオール(竜脳)、cis-y-ビサボレン、ボメオールアセテート(bomeol acetate)(ボミルアセテート(bomyl acetate))、α-カジネン、カンフェン、樟脳、cis-カルベオール、カリオフィレン(β-カリオフィレン)、α-フムレン(α-カリオフィレン)、γ-カジネン、Δ-3-カレン、カリオフィレンオキシド、1,8-シネオール、シトラールA、シトラールB、シンナムエルデヒド(cinnameldehyde)、α-コパエン(アグライエン)、γ-クルクメン、β-シメン、β-エレメン、γ-エレメン、エチルデクジエノエート(ethyl decdienoate)、エチルマルトール、プロピオン酸エチル、エチルバニリン、ユーカリプトール、α-オイデスモール、β-オイデスモール、γ-オイデスモール、オイゲノール、cis-β-ファメセン(cis-β-famesene)((Z)-β-ファルネセン)、trans-α-ファルネセン、trans-β-ファメセン、trans-γ-ビサボレン、フェンコン、フェンコール(ノルボマノール、β-フェンコール)、ゲラニオール、α-グアイエン、グアイオール、アントラニル酸メチル、サリチル酸メチル、2-メチル-4-ヘプタノン、3-メチル-4-ヘプタノン、酢酸ヘキシル、イプスジエノール、酢酸イソアミル、レメノール、リモネン、d-リモネン(リモネン)、リノロール(linolool)(リナリルアルコール、β-リノロール)、α-ロンジピネン、メントール、γ-ムウロレン、ミルセン(β-ミルセン)、ネロリドール、trans-ネロリドール、ネロール、β-オシメン(cis-オシメン)、酢酸オクチル、α-フェランドレン、フィトール、α-ピネン(2-ピネン)、β-ピネン、プレゴン、サビネン、cis-サビネン水和物(cis-ツジャノール)、β-セリネン、α-セリネン、γ-テルピネン、テルピノレン(イソテルピン)、テルピネオール(α-テルピネオール)、テルピネオール-4-オール、α-テルピネン(テルピレン)、α-ツジェン(オリガネン)、バレンセン、バニリン、ビリジフロレン(レデン)、及びα-イランゲ(α-ylange)、又はそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される1つ以上のテルペンを更に含む組成物中に存在し得る。
【0030】
いくつかの実施形態では、カンナビノイドは、1つ超のカンナビノイドを含む組成物の形態である。いくつかの実施形態では、カンナビノイドは、1つ以上のカンナビノイド及び1つ以上のテルペンを含む組成物の形態である。いくつかの実施形態では、1つ以上のカンナビノイドは、大麻抽出物などの、植物抽出物の形態である。他の実施形態では、カンナビノイドは、天然に存在し、抽出物から単離されるか、又は合成的に生成される、単一のカンナビノイドである。更に他の実施形態では、カンナビノイドは、1つ以上のカンナビノイド及び1つ以上のテルペンを含むが、植物抽出物ではない組成物、例えば、特定のカンナビノイド及び特定のテルペンが選択され、所望の量で混合されて、組成物を形成する組成物の形態である。
【0031】
本明細書で使用される場合、「透過増強剤」という用語は、関門を有する臓器中への透過を改善又は増強する任意の物質を意味する。関門の例としては、血液脳関門(BBB)、血液脳脊髄液関門(BCSFB)、網膜及び小腸が挙げられる。いくつかの実施形態では、透過増強剤は、胆汁酸である。
【0032】
胆汁酸は、臓器又は組織中への透過のための透過増強剤として記載されている。胆汁酸は、肝臓(一次胆汁酸)又は結腸(二次胆汁酸)中のコレステロールから作られるステロイド構造である。Bile acids-chemistry,biosynthesis,analysis,chemical and metabolic transformations and pharmacology,(Eds Momir Mikov and John Paul Fawcett,2007;ISBN:O-12-045783-2)に記載されるような、多くの既知の胆汁酸が存在する。
【0033】
BBB透過性を改善し得る胆汁酸としては、デオキシコール酸(DCA)及び3α,7α-ジヒドロキシ-12-ケト-5α-コール酸などのコール酸のケト誘導体の塩、エステル、及び遊離酸が挙げられる。デオキシコール酸はケノデオキシコール酸の代謝物である。デオキシコール酸及び3α,7α-ジヒドロキシ-12-ケト-5α-コール酸の構造を以下に示す。
【化1】
デオキシコール酸3α,7α-ジヒドロキシ-12-ケト-5α-コール酸
【0034】
特定の胆汁酸によって本発明を制限することは本発明者らの意図ではない。なぜなら、膜の透過を増強する任意の胆汁酸が作用することが予想されるからである。胆汁酸は、両親媒性特性を有し、元来身体において界面活性剤として機能し、リン脂質膜の水溶性及び増加した流動性を促進する。一実施形態では、胆汁酸は、デオキシコール酸である。
【0035】
いくつかの実施形態では、透過増強剤は、脳中への透過を提供する。
【0036】
本明細書で使用される場合、「アルギネートポリマー」という用語は、塩、例えば、ナトリウム塩の形態である任意のアルギネートポリマーを意味する。
【0037】
アルギネートポリマーは、典型的には褐藻又はPseudomonas aeruginosaなどのいくつかの細菌からのバイオフィルムにおいて見出される多糖ポリマーである。ポリマーは、様々な配列又はブロックで一緒に共有結合された、2つのモノマー、(1-4)結合されたβ-D-マンヌロネート(M)及びα-L-グルロネート(G)で構成される。例えば、モノマーは、M又はGの連続的なブロック中に現れ得るか、又はM及びGモノマーは交互になり得る。様々な藻類又は細菌が様々な構成のアルギネートポリマーを産生する。アルギネートポリマーを形成する、藻類又は細菌中のM及びG残基は、遊離酸の形態、又は塩、例えば、ナトリウム塩、若しくはカリウム塩などの一価塩の形態、又はそれらの任意の組み合わせであり得る。その生物学的供給源からアルギネートを得るための抽出プロセスにおいて使用される化学物質は、アルギネートの塩形態を決定し得る。例えば、抽出プロセスにおいてナトリウム含有化学物質を使用するときに(水酸化ナトリウムなどの)、生成されるアルギネートポリマーは、優勢にナトリウム形態である。
【0038】
アルギン酸ナトリウムはいくつかの形態で市販されており、それらの構成はアルギネートの供給源並びにアルギネートを抽出及び精製するために使用されるプロセスに応じて変動する。例えば、アルギン酸ナトリウムは低粘度アルギン酸ナトリウム又は中粘度アルギン酸ナトリウムであり得る。アルギン酸カリウムもまた当該技術分野において知られている。本発明を特定のタイプ又は供給源のアルギネートに限定することは本発明者らの意図ではない。なぜなら、バリア層を形成し得る任意のアルギネートが好適であるからである。一実施形態では、アルギネートポリマーは、アルギン酸ナトリウムである。
【0039】
本明細書で使用される場合、「カプセル化された」という用語は、カンナビノイドなどの物質(テルペン又は透過増強剤有り又は無し)がアルギネートポリマーと混合され、得られた混合物が、粒子に形成され、アルギネートポリマーを安定化させるように処理されることを意味する。カプセル化された粒子はビーズ又はカプセルとして定義され得る。「粒子」という用語は、典型的には形状が球状であり得、マトリックス全体に分布した1つ以上の物質を有する、ビーズ又はカプセルを意味する。特徴的なコア又はシェルセクションは存在しなくてもよいか、又は様々な物質で作られたシェル構造によって囲まれた、1つ以上の物質を含む規定されたコアが存在し得る。
【0040】
理論によって縛られることを望むこと無しに、安定化には、高度に架橋されたアルギネートバリア層を形成するための、アルギネートポリマー中のナトリウムイオンと、Ca2+又はBa2+などの多価イオンとの間の交換反応が関与し得る。アルギネートは、多価イオンへの曝露に際して架橋を形成して、穏やかな水性条件下で安定なヒドロゲルポリマーを形成し得る。粒子のサイズ、及び交換する(例えば、ナトリウムイオンをカルシウムイオンと)ために使用される条件に応じて、コア中にアルギン酸ナトリウムを、そしてシェルとしてアルギン酸カルシウムを有する粒子が形成され得るか、又はアルギン酸カルシウムが粒子全体に存在し得る。ナトリウムイオンが部分的に又は完全に多価イオンに置き換えられたかどうかは本発明にとってほとんど重要ではない。なぜなら、両方の状況に、架橋に起因する分解に対して安定化されたアルギネートの形成が関与するからである。
【0041】
本明細書で使用される場合、「tmax」という用語は、カンナビノイドなどの物質が、脳などの、標的組織において最大濃度に達するために必要とされる時間を意味する。
【0042】
本明細書で使用される場合、「脳透過」という用語は、1つ以上のカンナビノイドなどの、活性化合物が血流中に吸収され、血液脳関門を通過し、脳に送達されたことを意味する。
【0043】
いくつかの実施形態では、脳組織における1つ以上のカンナビノイドのtmaxは、1時間未満である。tmaxは、1つ以上のカンナビノイドの経口摂取後に、脳組織においてカンナビノイドの最大濃度を達成するのにかかる時間の量の尺度であり、典型的には数分又は数時間のオーダーである。例えば、脳組織における1つ以上のカンナビノイドのtmaxは、1時間未満、又は0.9時間未満、又は0.8時間未満、又は0.7時間未満、又は0.6時間未満、又は0.5時間未満、又は0.4時間未満、又は0.3時間未満、又は0.2時間未満、又は0.1時間未満である。一実施形態では、脳組織における1つ以上のカンナビノイドのtmaxは、カプセル化されたDCAとともに、カプセル化されて投与されるときに、約0.7時間であり、ここで、カンナビノイドはCBDである。
【0044】
いくつかの実施形態では、1つ以上のカンナビノイドの透過増強剤に対するモル比は、約20:1~約1:20、又はその間の任意の有理数、例えば3.13:1であり得る。1つ超のカンナビノイドが存在する場合、透過増強剤のモル数と比較した、カンナビノイドのモルの和のモル比が使用される。1つ以上のカンナビノイドの透過増強剤に対するモル比は、約18:1~約1:1、又は約16:1~約1:1、又は約14:1~約1:1、又は約12:1~約1:1、又は約10:1~約1:1、又は約8:1~約1:1、又は約6:1~約1:1、又は約5:1~約1:1、又は約4:1~約1:1、又は約3:1~約1:1、又は約2:1~約1:1、又は約1:1~約18:1、又は約1:1~約16:1、又は約1:1~約14:1、又は約1:1~約12:1、又は約1:1~約10:1、又は約1:1~約8:1、又は約1:1~約6:1、又は約1:1~約5:1、又は約1:1~約4:1、又は約1:1~約3:1、又は約1:1~約2:1の範囲であり得る。一実施形態では、1つ以上のカンナビノイドの透過増強剤に対するモル比は、約3:1であり、ここで、カンナビノイドはCBDである。
【0045】
いくつかの実施形態では、1つ以上のカンナビノイドを含むカプセル化された粒子(1つ以上のテルペン若しくは透過増強剤有り若しくは無し)、カプセル化されたカンナビノイド粒子(1つ以上のテルペン有り若しくは無し)、又はカプセル化された透過増強剤粒子は、乾燥直後に、約100±50μm~約2000±50μmの範囲のサイズを有する。1つ以上のカンナビノイド(1つ以上のテルペン有り又は無し)が透過増強剤とは別にカプセル化される場合、粒子は同じサイズであり得るか又は異なり得る。粒子に最も好適なサイズは、粒子当たりにカプセル化される活性成分の量、及び治療される対象のサイズに関連する。特に、より小さな粒子はマウスなどのより小さな対象により好適である。なぜなら、それは噛まれること無しに容易に嚥下され得るからである。より大きな粒子はヒトにより好適であり得る。なぜなら、それは、なお嚥下されることができるが、粒子当たりのより大きな体積の活性成分を許容し得るからである。例えば、粒子のサイズは、約150±50μm~約2000±50μm、約200±50μm~約2000±50μm、約250±50μm~約2000±50μm、約300±50μm~約2000±50μm、約350±50μm~約2000±50μm、約400±50μm~約2000±50μm、約450±50μm~約2000±50μm、約500±50μm~約2000±50μm、約100±50μm~約1900±50μm、約100±50μm~約1800±50μm、約100±50μm~約1700±50μm、約100±50μm~約1600±50μm、約100±50μm~約1500±50μm、約100±50μm~約1400±50μm、約100±50μm~約1300±50μm、約100±50μm~約1200±50μm、約100±50μm~約1100±50μm、約100±50μm~約1000±50μm、約100±50μm~約900±50μm、約100±50μm~約800±50μm、約100±50μm~約700±50μm、約100±50μm~約600±50μm、約100±50μm~約500±50μm、約100±50μm~約400±50μm、約100±50μm~約300±50μm、及び約100±50μm~約200±50μmであり得る。一実施形態では、カプセル化されたカンナビノイド粒子又はカプセル化された透過増強剤粒子は、約400±50μmのサイズを有し、ここで、カンナビノイドはCBDであり、そして/又は透過増強剤はDCAである。
【0046】
別の態様では、本発明は、カンナビノイド組成物を調製するためのプロセスであって、カンナビノイド組成物が、
1つ以上のカンナビノイドと、
透過増強剤と、
アルギネートポリマーと、を含み、
プロセスが、
1つ以上のカンナビノイドの水溶液とアルギネートポリマーとを混合して、エマルションを形成し、次いでエマルションを多価塩の水溶液中に投じて、カプセル化されたカンナビノイド粒子を形成することを含む、プロセスを提供する。
【0047】
一実施形態では、カンナビノイド組成物を調製するためのプロセスは、1つ以上のカンナビノイド及び透過増強剤が、アルギネートポリマーと一緒に、混合されて、エマルションを形成し、次いで、1つ以上のカンナビノイド及び透過増強剤が多価塩への曝露後に一緒にカプセル化されるように、エマルションが投じられることを必要とする。
【0048】
別の実施形態では、カンナビノイド組成物を調製するためのプロセスは、1つ以上のカンナビノイドがアルギネートポリマーと一緒に混合されて、エマルションを形成し、透過増強剤がアルギネートポリマーと一緒に混合されて、別のエマルションを形成し、次いで、1つ以上のカンナビノイド及び透過増強剤が、多価塩への曝露後に、別々に、カプセル化されるように、エマルションが別々に投じられることを必要とする。
【0049】
いくつかの実施形態では、テルペンが存在する場合、それは、1つ以上のカンナビノイド及び透過増強剤が一緒にカプセル化されるときにそれらとともにカプセル化され得る。他の実施形態では、テルペンが存在する場合、それは、1つ以上のカンナビノイドとともにカプセル化され得るか、又は透過増強剤とともにカプセル化され得る(それが別々にカプセル化される場合)。
【0050】
カプセル化された粒子を形成するために使用される多価塩は、アルギネートポリマー中で、ナトリウム又はカリウムなどの一価カチオンを多価カチオンと交換することができる任意の塩であり得る。典型的な使用されるカチオンはカルシウム又はバリウムであり得る。対アニオンは、水溶液中で使用されるのに好適である任意のアニオンであり得る。典型的な対イオンは、ハロゲン化物又は硝酸塩である。ハロゲン化物は、フッ化物、塩化物、臭化物、又はヨウ化物であり得る。任意のそのような多価塩の適合性は、塩の水溶性、利用可能性、及び価格などのいくつかの要因に依存する。一実施形態では、多価塩は、塩化カルシウムである。
【0051】
いくつかの実施形態では、1つ以上のカンナビノイドは、有機可溶性油中に溶解された溶液として提供され得る。1つ以上のカンナビノイドは、1つ以上のテルペン有り又は無しで溶解され得る。例えば、大麻植物などから、1つ以上のカンナビノイドを抽出するために使用された油中に溶解された1つ以上のカンナビノイドを提供することが好都合であり得る。抽出油は、任意の食用油であり得、オリーブ油、ヘンプ油、ゴマ油、ヤシ油、植物油、キャノーラ油、ブドウ種子油、アーモンド油、及び中鎖トリグリセリド(MCT)油、又はそれらの組み合わせからなる群から選択され得る。いくつかの実施形態では、1つ以上のカンナビノイドは、固体粉末として、油無しで提供され得る。一実施形態では、1つ以上のカンナビノイドは、中鎖トリグリセリド中に溶解された溶液として提供される。
【0052】
別の態様では、本発明は、カンナビノイド組成物を調製するためのプロセスであって、カンナビノイド組成物が、
1つ以上のカンナビノイドと、
透過増強剤と、
アルギネートポリマーと、を含み、
プロセスが、
1つ以上のカンナビノイドの水溶液とアルギネートポリマーとを混合して、第1のエマルションを形成し、次いで第1のエマルションを多価塩の水溶液中に投じて、カプセル化されたカンナビノイド粒子を形成することと、
透過増強剤の水溶液とアルギネートポリマーとを混合して、第2のエマルションを形成し、次いで第2のエマルションを多価塩の水溶液中に投じて、カプセル化された透過増強剤粒子を形成することと、
カプセル化されたカンナビノイド粒子とカプセル化された透過増強剤粒子とを混合して、カプセル化されたカンナビノイド組成物を形成することとを含む、プロセスを提供する。
【0053】
別の態様では、本発明は、1つ以上のカンナビノイドの脳透過を増強する方法であって、対象に有効量の上記のような組成物を投与することを含む、方法を提供する。
【0054】
いくつかの実施形態では、脳組織における1つ以上のカンナビノイドの半減期(t1/2)は、1時間超である。半減期は、1つ以上のカンナビノイドの量がその初期値の半分に低下されるのにかかる時間の量の尺度である。例えば、脳組織における1つ以上のカンナビノイドの半減期は、1時間超、又は1.5時間超、又は2時間超、又は2.5時間超、又は3時間超、又は3.5時間超、又は4時間超、又は4.5時間超、又は5時間超、又は5.5時間超である。一実施形態では、脳組織における1つ以上のカンナビノイドの半減期は、カプセル化されたDCAとともに、カプセル化されて投与されるときに、約4.5時間であり、特にここで、カンナビノイドはCBDである。
【0055】
いくつかの実施形態では、カンナビノイドの脳透過は、透過増強剤と一緒に又は別々にカプセル化され得る1つ以上のカンナビノイドを含む組成物に起因して増強される。1つ以上のカンナビノイドは、1つ以上のテルペン有り又は無しでカプセル化され得る。増強の量は、カプセル化されたカンナビノイド及び透過増強剤(一緒に又は別々にのいずれかで、1つ以上のテルペン有り又は無しでカプセル化された)を介して送達されるときに脳において蓄積された1つ以上のカンナビノイドの総量を、透過増強剤無しでカプセル化されたカンナビノイドを介して、又は透過増強剤無しで非カプセル化カンカンナビノイドを介して送達されるときに脳において蓄積された1つ以上のカンナビノイドの総量に対して比較することによって定量化され得る。カンナビノイドの量は、例えば、Cmax、AUC0-t、又はAUC0-inf_obsを測定することによって定量化され得る。Cmaxは、カンナビノイドの摂取後に脳組織において達成されるカンナビノイドの最大濃度の尺度であり、この濃度に達するのにかかる時間の量に関係しない。AUC0-t及びAUC0-inf_obsは、カンナビノイドの摂取後に、脳中に存在するカンナビノイドの量が時間に対してプロットされるときの、ゼロから特定の時点(t)又はゼロから観測された無限大(inf_obs)までの曲線下面積の尺度である。
【0056】
いくつかの実施形態では、Cmaxに基づく、脳における1つ以上のカンナビノイドの増強の量は、1つ以上のカンナビノイドが透過増強剤とともに、カプセル化されて投与されるときに、透過増強剤無しでのカプセル化に対して、約200%~約300%、例えば、約210%~約300%、又は約220%~約300%、又は約230%~約300%、又は約240%~約300%、又は約250%~約300%、又は約260%~約300%、又は約270%~約300%、又は約200%~約290%、又は約200%~約280%、又は約200%~約270%、又は約200%~約260%の範囲内であり得る。一実施形態では、カンナビノイドがカプセル化されたCBDであるときに、Cmaxに基づく、脳におけるCBDの増強の量は、カプセル化されたDCAとは別に、カプセル化された形態で投与されるときに、DCA無しでのカプセル化に対して、約273%である。
【0057】
いくつかの実施形態では、Cmaxに基づく、脳における1つ以上のカンナビノイドの増強の量は、1つ以上のカンナビノイドが透過増強剤とともに、カプセル化されて投与されるときに、透過増強剤無しでの非カプセル化に対して、約100%~約200%、例えば、約110%~約200%、又は約120%~約200%、又は約130%~約200%、又は約140%~約200%、又は約150%~約200%、又は約160%~約200%、又は約100%~約190%、又は約100%~約180%、又は約100%~約170%、又は約100%~約160%、又は約100%~約150%、又は約100%~約140%の範囲内であり得る。一実施形態では、カンナビノイドがカプセル化されたCBDであるときに、Cmaxに基づく、脳におけるCBDの増強の量は、カプセル化されたDCAとは別に、カプセル化された形態で投与されるときに、DCA無しでの非カプセル化に対して、約149%である。
【0058】
いくつかの実施形態では、AUC0-tに基づく、脳における1つ以上のカンナビノイドの増強の量は、1つ以上のカンナビノイドが透過増強剤とともに、カプセル化されて投与されるときに、透過増強剤無しでのカプセル化に対して、約200%~約300%、例えば、約210%~約300%、又は約220%~約300%、又は約230%~約300%、又は約240%~約300%、又は約200%~約290%、又は約200%~約280%、又は約200%~約270%、又は約200%~約260%、又は約200%~約250%、又は約200%~約240%、又は約200%~約230%の範囲内であり得る。一実施形態では、カンナビノイドがカプセル化されたCBDであるときに、AUC0-tに基づく、脳におけるCBDの増強の量は、カプセル化されたDCAとは別に、カプセル化された形態で投与されるときに、DCA無しでのカプセル化に対して、約237%である。
【0059】
いくつかの実施形態では、AUC0-tに基づく、脳における1つ以上のカンナビノイドの増強の量は、1つ以上のカンナビノイドが透過増強剤とともに、カプセル化されて投与されるときに、透過増強剤無しでの非カプセル化に対して、約100%~約200%、例えば、約110%~約200%、又は約120%~約200%、又は約130%~約200%、又は約140%~約200%、又は約150%~約200%、又は約160%~約200%、又は約170%~約200%、又は約180%~約200%、又は約100%~約190%、又は約100%~約180%、又は約100%~約170%、又は約100%~約160%の範囲内であり得る。一実施形態では、カンナビノイドがカプセル化されたCBDであるときに、AUC0-tに基づく、脳におけるCBDの増強の量は、カプセル化されたDCAとは別に、カプセル化された形態で投与されるときに、DCA無しでの非カプセル化に対して、約178%である。
【0060】
本発明はここで以下の非限定的な実施例を参照することによってより十分に説明される。
【0061】
出発材料
代表的なカンナビノイドとしての、CBD(Miglyol 812N中14.5%w/wの可溶化抽出物)、及びMiglyol 812Nは、Zelira Therapeutics(Perth,Western Australia)によって提供された。中粘度アルギン酸ナトリウム(MVSA)、デオキシコール酸(DCA)及び塩化カルシウム(無水、98%)を、Sigma-Aldrich(St Louis,MO,USA)から購入した。製剤を、HPLCグレードの脱イオン水中で作製した。
【0062】
実施例1-カプセル化されたカンナビノイド製剤の調製
80mLのHPLCグレードの脱イオン水中1.5%w/vのMVSAを含有する溶液を一晩混合した。CBD(800μLのMiglyol 812N中109.24mg)を、空気及び光から保護しながらMVSA溶液に添加し、次いで3日間混合して、カンナビノイド-アルギネート製剤を生成した。これとは別に、DCA(10mg)をMVSAの溶液(80mLのHPLCグレードの脱イオン水中1.5%w/v)に添加し、一晩混合した。全ての混合物を同じ速度で室温で攪拌した。完全な乳化は、混合物の曇り又は粉末懸濁物の非存在のいずれかによって示された。
【0063】
CBD及びDCA製剤を、以下の条件下で、振動するEncapsulator B-390(BUCHI Labortechnik、Switzerland)を使用して、乳化直後に、別々にカプセル化した:振動数範囲2000Hz、空気圧950mbar、200μmノズル、及び最も堅い開始点から2回転に設定した流量調整弁。
【0064】
調製した製剤を100mM CaCl2浴中に投じ、これを、5mL/分の流量の、穏やかなボルテックスを用いて攪拌して、球状粒子を形成した。塩化カルシウム浴中での10分の後、粒子を、ふるいにかけ、脱イオン水ですすぎ、ストレーナー下で軽くたたいたペーパータオルを用いて乾燥させた。粒子を、ペトリ皿上に置き、覆い、37℃で2.5日間完全に乾燥させて、アルギン酸ナトリウムのマトリックス中の、アルギン酸カルシウムのコーティングでカプセル化されたCBD又はDCAを生成した。カプセル化された粒子を乾燥の48時間以内に分析し、実験のために使用した。
【0065】
カプセル化されたCBDの特徴付け
CBDロード及び粒子サイズを、それぞれ、HPLC(Prominence,Shimadzu LC-20AT液体クロマトグラファー、SIL-20Aオートサンプラー及びSPD-20A-UV/Vis検出器,Japan)並びに粒子分析器(Zetasizer 3000 HS及びMastersizer 2000,Malvern Instruments、Malvern,UK)を使用することによって決定した。簡潔に述べると、5mgのカプセル化された粒子を、かき混ぜ、PBS(pH8.5)中に20時間懸濁し、15分間13200rpmで10℃で遠心分離した。上清を、収集し、移動相混合物(アセトニトリル:水=75:25)で希釈した。遊離されたCBDを、以前に記載されたHPLCプロトコル(Mooranian et al.,Bile acid bio-nanoencapsulation improved drug targeted-delivery and pharmacological effects via cellular flux:6-months diabetes preclinical study.Sci Rep.2020,10,106)に従って決定した。カプセル化効率を、粒子内の理論的CBDロードと確認されたCBDロードとの間の関係として、公開された式を用いて(Wagle et al.,Micro-nano formulation of bile-gut delivery:rheological,stability and cell survival,basal and maximum respiration studies.Sci.Rep.2020,10,7715)、以下の式に従って決定した。
【数1】
【0066】
1.5%MVSA中のDCA粒子の形成は、全ての試みにわたって一貫していた。粒子は球状であり、乾燥直後のそのサイズは400±50μmであり、これは、マウスにおける経口摂取に好適であると考えられた。CBD粒子は乳白色であり、その外観は室温で30日間一貫したままであり、続いて、より長い期間にわたって徐々に変色し、粒子は、褐色になり、粗くなり、しわがよるようになった。乾燥プロセスの後、カプセル化されたCBDの98%超が、周囲の空気及び光への72時間の曝露の後にインタクトなままであり、これは、カプセル化による粒子の優れた保護を示す。このデータは、カプセル化プロトコルが、環境への曝露からのカンナビノイド及び透過増強剤の良好な保護を提供し、これが、研究状況における、並びに輸送及び貯蔵の間の長期間にわたる、商業的状況におけるその長期の使用を可能にすることを実証する。
【0067】
CBDのカプセル化効率は23±1.2%であると計算され、CBDロードは2.05±0.10%と見積もられた。カプセル化効率は、カプセル化されるべき理論的量と比較した、物質(CBDなどの)がどれだけ実際に粒子中にカプセル化されたかの尺度である。当業者は、所望であれば、例えば、中鎖トリジルセリド中に溶解された溶液としてではなく粉末形態のCBDを使用することによって、カプセル化効率を容易に調整することができる。
【0068】
実施例2-インビボ動物実験
Animal Resource Centre、WAから得た健常C57BL/6J野生型マウスを、温度制御された実験室において12時間の明暗サイクルで標準的な飼料及び水を自由提供して群飼した(14ヶ月、雌性、平均体重36±3g、n=45)。マウスを、CBD投与前に一晩絶食させた。実験を、承認された動物倫理プロトコルに従って行った。
【0069】
マウスを拘束し、油中5mg/kg重量のCBDを単独で(ネイキッド群)、カプセル化された粒子形態で(カプセル群)、又は追加の4mg/kg重量のDCA粒子とともに、カプセル化された粒子形態で(「カプセル+DCA」群)経口投与した。カンナビノイド含有組成物を、ラズベリージャム中で混合し、これは、嗜好性を改善した。同量のラズベリージャムを全てのマウスに与えて、治療変動性を制限した。屠殺の前に、マウスをイソフルランガスを用いて麻酔し、血液を心臓穿刺を介してEDTAコートチューブ中に得た。投与後0.3時間、1時間、及び3時間で、マウスを頸椎脱臼によって安楽死させ、脳を、収集し、直ちに瞬間凍結した。3匹のマウスを使用した、1時間でのカプセル及びネイキッド群を除いて、1群当たり1時点当たり4匹のマウスを使用した。血漿を遠心分離機によって収集した(2500g、10分、4℃)。サンプルを分析まで-80℃で貯蔵した。
【0070】
血漿及び脳組織中のCBDの濃度を、以前に記載されたプロトコル(Galettis,Development of a simple LCMSMS method for THC and metabolites in plasma,Asia-Pac.J.Clin.Oncol.2016,12,13-34)を使用して決定した。簡潔に述べると、血漿サンプルを解凍し、50μLを、重水素化内部標準を含有するアセトニトリル100μLに添加した。脳サンプル(500mg)を、3mmのスチールボールベアリングを有するTissue-Lyserを使用してメタノール(500μL)中でホモジナイズし、次いでサンプルを遠心分離し、50μLのホモジネートを、重水素化内部標準を含有するアセトニトリル100μLに添加した。血漿及び脳サンプルを、ボルテックスし、次いで遠心分離し、上清を、バイアルに移し、LCMSシステム(Shimadzu 8060,Shimadzu、Australia)に注入した。分析のために、Kinetex Biphenylカラム(50×3mm、2.6μm)を、0.1%ギ酸、アセトニトリル及び水を含有する溶媒を用いる、溶媒勾配とともに使用した。較正曲線は0.5~500ng/mLの範囲であり、定量限界は0.5ng/mLであった。
【0071】
結果を平均として表し、適用可能な場合、平均の標準誤差(SEM)を提供する。Graphpad Prism v7(Graphpad,Inc.、USA)を使用して、線形化log10スケールでの濃度-時間グラフを生成し、濃度曲線下面積(AUC)を計算した。治療群間の統計的有意性を、p<0.05の有意性で一元配置ANOVAを使用して決定した。
【0072】
薬物動態パラメータを、アドインプログラムPKSolver(Microsoft Excel 2010)を使用するMicrosoft Excelにおける確立されたモデルを使用して近似し、以下で中央値として表す。これらには、終末相半減期(t1/2)、最大濃度(Cmax)、Cmaxに達するまでの時間(tmax)、ゼロから特定の時間までの濃度曲線下面積(AUC0-t)、及びゼロから観測された無限大までの濃度曲線下面積(AUC0-inf_obs)が含まれた。
【0073】
図1は、DCA無しのCBD及び油(ネイキッド)と比較した、DCA有り又は無しでの、カプセル化された(カプセル+DCA又はカプセル)、5mg/kgのCBDを投与したマウスにおけるCBDの平均血漿及び脳濃度を、対応する濃度下面積(AUC)グラフと一緒に示す。データを、CBDカプセル化の即時性効果に焦点を合わせるために3時間にわたって3つの時点で集めた。
【0074】
経口投与後0.3時間で、カプセル群におけるCBDの血漿レベルはネイキッド群よりも2倍超高く(
図1a)、一方、カプセル+DCAマウスについてのそれは、おそらくより高い組織取り込みに起因して、これら2つの群の間であった。1時間後に、カプセル群マウスはCBDレベルの有意な低下を示し、ネイキッド群と同様の血漿CBD濃度に達した。対照的に、カプセル+DCAを与えたマウスの血漿CBD濃度は、驚くべきことに、CBDレベルのわずかな減少のみを示し、なおカプセル又はネイキッド群マウスよりも実質的に高かった。3時間後に、CBD血漿レベルは3つ全ての群にわたって同様であった。
【0075】
注目すべきことに、脳サンプルは、0.3時間後に、カプセル+DCAと比較して、カプセル及びネイキッド群の非常に低いCBD濃度を示した(
図1c)。CBDを透過増強剤、DCAと組み合わせて与えたときに(カプセル+DCA群)、平均脳CBD濃度は1048ng/mg組織であり、それぞれネイキッド及びカプセル群と比較して顕著な40及び30倍の増加であった。
【0076】
1時間後、及び3時間で、脳CBD濃度は3つ全ての群にわたって匹敵した(
図1c)。
【0077】
AUCグラフ(
図1b及び1d)は、経口投与後3時間にわたって、CBDの累積血漿濃度がカプセル群とネイキッド群との間で匹敵したことを示す。驚くべきことに、カプセル+DCA群マウスについての濃度は他の2つの群の濃度の2倍超であった(
図1b)。同様の結果を3時間後のCBDの脳濃度について得た(
図1d)。記載した傾向はAnovaを使用して統計的有意性に達しなかったが(血漿:p=0.07及び脳:p=0.67)、しかし、これは小さなサンプルサイズに起因し得る。
【0078】
MATLAB R2017aを使用して生成した薬物動態パラメータを表1に要約する。油中のCBDを与えたマウス(ネイキッド群)におけるCBDの血漿終末相半減期(t
1/2)は2.2時間であった。ネイキッド群マウスにおける血漿CBD濃度は経口投与後0.3時間でそのピークに達し、これは、7.7ng/mLであった。CBD油の血漿吸収プロファイルは、おそらく用量依存性である薬物動態パラメータの最小の変動を有してはいるが、公開された知見に匹敵した(Xu et al.,Pharmacokinetics of oral and intravenous cannabidiol and its antidepressant-like effects in chronic mild stress mouse model,Environ.Toxicol.Pharmacol.2019,70,103202)。表1から見られ得るように、C
max及びAUC
0-tによって示されるような血漿バイオアベイラビリティは、油中のCBDと比較して、CBDをアルギネート中にカプセル化したときに穏やかに増加した。血漿におけるCBDの量は、カプセル化された形態で摂取させたときに、C
maxに基づくと、42%(カプセル対ネイキッド)及び43%(カプセル+DCA対ネイキッド)増加した。血漿におけるCBDの量は、カプセル化された形態で摂取させたときに、AUC
0-tに基づくと、18%(カプセル対ネイキッド)及び29%(カプセル+DCA対ネイキッド)増加した。同じt
maxについて、カプセル化はネイキッドの油と同様の腸吸収速度を有し得るが、しかし、それは広範な初回通過代謝に対して保護して、CBDを周囲の毛細血管中に促進し得ると結論付けられ得る。
【表1】
【0079】
興味深いことに、CBDの血漿t1/2はネイキッド群マウスと比較してカプセル群マウスについて半分であり、これは、排泄及び/又は組織/細胞取り込みを介したクリアランスの増加を示唆する。血漿t1/2はカプセル+DCAマウスにおいて更により短く、これは、カプセル化されたDCAが存在したときの血漿からのCBDクリアランスの有意な増加を示す。
【0080】
血漿の結果と一致して、CBDの脳組織分析は、カプセルCBDを与えたマウスにおいて、tmaxがネイキッド群マウスの半分の1時間であったことを示し、これは、アルギネートを用いてカプセル化したときのCBDの有意により速い脳組織取り込みを示す。更に、CBDをDCAとともに投与したときに(カプセル+DCA群)、tmaxはネイキッド群マウスの3分の1であり、これはまた、有意により高いCmax、AUC0-t及びAUC0-inf_obsをもたらした。Cmaxに基づく、脳におけるCBDの量は、CBDをDCAとともに投与したときに、無しに対して273%増加し(カプセル+DCA対カプセル)、DCAとともに、カプセル化して投与したときに、DCA無しでの非カプセル化に対して149%増加した(カプセル+DCA対ネイキッド)。同様に、AUC0-tに基づく、脳におけるCBDの量は、CBDをDCAとともに投与したときに、無しに対して237%増加し(カプセル+DCA対カプセル)、DCAとともに、カプセル化して投与したときに、DCA無しでの非カプセル化に対して178%増加した(カプセル+DCA対ネイキッド)。
【0081】
上記のデータは、透過増強剤と組み合わせたときの、アルギネートカプセル化によるカンナビノイドの脳組織取り込みの顕著な増加を示す。更に、CBDカプセル+DCAを投与したマウスは実質的により長いt1/2を示し、これは、脳内のCBDの長期の保持を示す。
【0082】
まとめると、本研究は、アルギネートを用いたカプセル化が、CBDなどのカンナビノイドを酸化、光による分解、及び胃内の酸性消化から有効に保護し、GI管を通した吸収及び累積血漿バイオアベイラビリティを増強することを示す。更に、胆汁酸(DCAなどの)が脳内のカンナビノイドの取り込み及び保持を増加させることが初めて示された。したがって、DCAなどの胆汁酸は経口投与されたカンナビノイドの、特に神経変性障害の治療のための、神経保護有効性を有意に促進し得る。
【0083】
任意の先行技術刊行物が本明細書で言及される場合、そのような言及は、その刊行物がオーストラリア又は任意の他の国における、当該技術分野における一般常識の一部を形成することの承認を構成するものではないことを理解されたい。
【0084】
以下の特許請求の範囲において、そして先行する発明の説明において、文脈が明確な言語又は必要な暗示に起因して別段の要求をする場合を除き、「含む(comprise)」という単語又は「含む(comprises)」若しくは「含む(comprising)」などの変形は、包括的な意味で、すなわち、述べられた特徴の存在を特定するが本発明の種々の実施形態における更なる特徴の存在又は付加を排除しないように使用される。
【手続補正書】
【提出日】2022-09-05
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
組成物であって、
1つ以上のカンナビノイドと、
胆汁酸である透過増強剤と、
アルギネートポリマーと、を含み、
前記1つ以上のカンナビノイド及び透過増強剤が、カプセル化される、組成物。
【請求項2】
前記1つ以上のカンナビノイド及び透過増強剤が、別々にカプセル化される、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記組成物が、1時間未満の前記1つ以上のカンナビノイドの脳透過についてのt
maxを有する、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項4】
前記1つ以上のカンナビノイドが、THC、THCV、CBD、CBN、CBG、CBC、及びCBND、又はそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される、請求項1~3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項5】
胆汁
酸が、デオキシコール酸である、請求項1~4のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
前記アルギネートポリマーが、
アルギン酸
ナトリウムである、請求項
1~5
のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項7】
前記
1つ以上のカンナビノイドの透過増強剤に対するモル比が、約20:1~約1:20である、請求項1~6のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項8】
カンナビノイド組成物を調製するためのプロセスであって、前記カンナビノイド組成物が、
1つ以上のカンナビノイドと、
胆汁酸である透過増強剤と、
アルギネートポリマーと、を含み、
前記プロセスが、
前記1つ以上のカンナビノイドの水溶液と前記アルギネートポリマーとを混合して、エマルションを形成し、次いで前記エマルションを多価塩の水溶液中に投じて、カプセル化されたカンナビノイド粒子を形成することを含む、プロセス。
【請求項9】
前記1つ以上のカンナビノイド及び
胆汁酸が、一緒にカプセル化される、請求項
8に記載のプロセス。
【請求項10】
前記1つ以上のカンナビノイド及び胆汁酸が、別々にカプセル化される、請求項8に記載のプロセス。
【請求項11】
i)前記
胆汁酸の
水溶液と前記アルギネートポリマーとを混合して、エマルションを形成し、次いで前記エマルションを多価塩の水溶液中に投じて、カプセル化された胆汁酸粒子を形成する工程と、
ii)前記カプセル化された胆汁酸粒子を前記カプセル化されたカンナビノイド
粒子と混合する工程と、を更に含む、請求項
10に記載のプロセス。
【請求項12】
前記
1つ以上のカンナビノイド
が、中鎖トリグリセリド中に溶解された溶液として提供される、請求項
8~11
のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項13】
前記1つ以上のカンナビノイドが、
THC、THCV、CBD、CBN、CBG、CBC、及びCBND、又はそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される、請求項8~12のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項14】
前記
胆汁酸が、デオキシコール酸である、請求項8~13のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項15】
前記
アルギネートポリマーが、
中粘度アルギン酸
ナトリウムである、請求項
8~14のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項16】
前記
多価塩が、
塩化カルシウムである、請求項
8~15
のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項17】
前記
1つ以上のカンナビノイドの透過増強剤に対するモル比が、
約20:1~約1:20である、請求項
8~16のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項18】
1つ以上のカンナビノイドの脳透過を増強する方法であって、対象に有効量の請求項1~
7のいずれか一項に記載の組成物を投与することを含む、方法。
【国際調査報告】