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特表2023-552014フィルタ用基板の加工方法、基板及びTC-SAWフィルタ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-12-14
(54)【発明の名称】フィルタ用基板の加工方法、基板及びTC-SAWフィルタ
(51)【国際特許分類】
   H03H 3/08 20060101AFI20231207BHJP
   H03H 9/25 20060101ALI20231207BHJP
   H03H 9/64 20060101ALI20231207BHJP
【FI】
H03H3/08
H03H9/25 C
H03H9/64 Z
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022574148
(86)(22)【出願日】2021-09-01
(85)【翻訳文提出日】2023-05-30
(86)【国際出願番号】 CN2021115877
(87)【国際公開番号】W WO2023028906
(87)【国際公開日】2023-03-09
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520273108
【氏名又は名称】福建晶安光電有限公司
【氏名又は名称原語表記】FUJIAN JING’ AN OPTOELECTRONICS CO., LTD
【住所又は居所原語表記】Photoelectric Industrial Park, Hengshan Village, Hutou Town, Anxi County, Quanzhou, Fujian 362411, China
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】林 彦甫
(72)【発明者】
【氏名】林 仲和
(72)【発明者】
【氏名】楊 勝裕
(72)【発明者】
【氏名】枋 明輝
(72)【発明者】
【氏名】黄 世維
【テーマコード(参考)】
5J097
【Fターム(参考)】
5J097AA21
5J097AA28
5J097AA32
5J097BB11
5J097EE08
5J097EE09
5J097FF04
5J097HA03
5J097KK07
5J097KK09
(57)【要約】
【解決手段】本出願はフィルタ用基板の加工方法、フィルタ用基板及びTC-SAWフィルタを提供する。
フィルタ用基板の加工方法は、凸同心円構造を有する支持層基板を加工することであって、前記凸同心円構造は、中心が突起しており、少なくとも2層の円環構造を有し、前記円環構造は、前記中心から外へ高さが徐々に低くなっており、前記支持層基板における凸同心円構造を有する側を圧電ウエハと接合して複合基板を得ること、及び前記複合基板中の圧電層を予定厚さ範囲に減厚した後その表面を研磨すること、を含む。本出願は、凸同心円形貌を有する支持層基板を使用して、圧電層の研磨難易度を明らかに下げて、厚さが基本的に一致する圧電層基板を得ることができて、均一性が良好な圧電層薄膜を得て、圧電層薄膜のフィルタチップの歩留まりが大幅に向上する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
凸同心円構造を有する支持層基板を加工することであって、前記凸同心円構造は、中心が突起しており、少なくとも2層の円環構造を有し、前記円環構造は、前記中心から外へ高さが徐々に低くなっていること、
前記支持層基板における凸同心円構造を有する側を圧電ウエハと接合して複合基板を得ること、及び、
前記複合基板中の圧電層を予定厚さ範囲に減厚した後その表面を研磨すること、を含む、ことを特徴とするフィルタ用基板の加工方法。
【請求項2】
前記の凸同心円構造を有する支持層基板を加工することは、
前記支持層基板を予定の厚さに加工し、または予定の厚さの支持層基板を使用すること、
前記支持層基板の正面から下へ且つ前記支持層基板の側面から前記中心向きの方向へ第1回の減厚作業を行い、中心円柱構造を得ること、
第1回の減厚作業と同じ方法を使用して複数回の減厚作業を行い、予定の数の層を有する円環構造を得ること、及び
前記支持層基板の正面及び裏面に対して両面研磨を行い、総厚さ偏差が予定数値より小さい超平坦基板を得ること、を含む、ことを特徴とする請求項1に記載の加工方法。
【請求項3】
前記支持層基板の正面から下へ且つ前記支持層基板の側面から前記中心向きの方向へ第1回の減厚作業を行うことは、
2000♯~6000♯であって中心軸と前記支持層基板の中心軸との角度が0.5°~2°の研磨ホイールを選択して使用して減厚作業を行うことを含み、
前記減厚作業において、基材表面の加工ダメージ層を4~10μmに制御する、ことを特徴とする請求項2に記載の加工方法。
【請求項4】
前記支持層基板の正面及び裏面に対して両面研磨を行うことは、上盤面と、内歯車と、下盤面を備える両面研磨装置を使用して、前記支持層基板を研磨することを含み、前記上盤面は、研磨パッドが設置されており且つ前記支持層基板の正面を研磨することに使用し、前記下盤面は、研磨パッドが設置されており且つ前記支持層基板の裏面を研磨することに使用し、
前記上盤面の回転速度は15~25rpm/minであり、内歯車の回転速度は、15~25rpm/minであり、下盤面の回転速度は30~50rpm/minであり、研磨圧力は60~200g/cmである、ことを特徴とする請求項2に記載の加工方法。
【請求項5】
前記複合基板の厚さ均一性は4%~10%である、ことを特徴とする請求項1~請求項4のいずれかに記載の加工方法。
【請求項6】
前記凸同心円構造中の円環構造と円環構造との間の高度差が0.3μm未満であり、前記支持層基板の最大高度値が1μm未満である、ことを特徴とする請求項5に記載の加工方法。
【請求項7】
前記複合基板中の圧電層を予定厚さ範囲に減厚した後その表面を研磨することは、
減厚装置で前記圧電層を10~20μmに減厚した後、調整可能式エアーパッド研磨で前記圧電層を厚さが5μm未満になるよう研磨することを含む、ことを特徴とする請求項6に記載の加工方法。
【請求項8】
前記支持層基板の材料は、スピネル、ポリサファイヤ、単結晶サファイア、高抵抗ケイ素、SiC、ALN、石英のいずれかである、ことを特徴とする請求項7に記載の加工方法。
【請求項9】
請求項1~請求項8のいずれかに記載の加工方法を使用して製造されたことを特徴とするフィルタ用基板。
【請求項10】
請求項1~請求項8のいずれかに記載の加工方法を使用して製造された基板を含み、前記基板の表面に交差指形変換器が搭載されており、前記基板の厚さ均一性は10%未満である、ことを特徴とするTC-SAWフィルタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、フィルタ技術分野に関し、具体的には、フィルタ用基板の加工方法、基板及びTC-SAWフィルタに関する。
【背景技術】
【0002】
従来のSAW(表面弾性波)フィルタ技術には、品質係数のQ値が低く(<1000)、且つ周波数が作業温度の変化に伴ってシフトする特性が存在するので、周波数帯域がますます混みあっていく5G時代の無線周波の端末のフィルタに対する要求を満足しにくくなっており、従って、従来のSAWフィルタは、高周波数で且つ温度特性が安定した温度補償式SAWフィルタ(TC-SAW)へ発展する必要がある。SAWデバイスが温度の変化に影響されやすいことは大きな問題であり、温度が上がると、その基板材料の剛性が小さくなり、音速も下がり、フィルタ作業周波数は外部温度の変化に伴ってある程度のシフトが生じる。現在有効な代案は、複合式の基板を採用する案であり、該案は、主に常温接合の方法を使用して高真空及び高圧で圧電層(ニオブ酸リチウム(LN)/タンタル酸リチウム(LT)ウエハ)を基材(スピネル(Spinel)、ポリサファイヤ(Poly-Sapphire、Poly-SA)、単結晶サファイア(Sapphire、SA)、ケイ素スライスなど)と接合し、そして、減厚研磨技術によって基材にある圧電層の厚さを15~30μmに減少させて、TC-SAWに必要とされる複合基板に形成する。該タイプの基板を使用して製造されたTC-SAWデバイスは、高いQ値と、低い周波数温度係数(TCF)との特徴を備え、フィルタの性能が非常に高められた。
【0003】
通信における需要が高周波数側に発展し続けるのに伴って、圧電層の厚さは薄くなっていくが、圧電層の厚さが5μm未満になると、加工技術の問題により、基板の圧電層の厚さの差異が大きくなり、図1に示されるように、加工後、その厚さ範囲が2.5μm~3.4μmで差異が明白であって、フィルタの特性に非常に大きな差異が生じるので、圧電層の厚さ均一性が重要視され始めている。
【0004】
今、業界内で製造される基板の圧電層の厚さ均一性は、約20~40%(仮に、目標厚さを3μmとして、実際に完成した厚さ範囲が2.1μm~3.6μmであって3μmの70%及び120%であり、それぞれ30%及び20%の差であるので、厚さ均一性は20%~30%である)であって、900MHzのフィルタにおいては周波数シフトの影響が±1000ppmを超え、1800MHzのフィルタにおいては周波数シフトの影響が±2000ppmを超え、それはフィルタチップの歩留まりが非常に低くなることにつながる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従って、如何に圧電層の厚さ均一性を改善するかが、この研究分野の重点になっている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
そこで、本出願の実施例の目的は、圧電層の厚さ均一性を改善する加工方法を提供して、フィルタチップの歩留まりを上げることに使用することにある。
【0007】
第1のアスペクトによれば、凸同心円構造を有する支持層基板を加工することであって、前記凸同心円構造は、中心が突起しており、少なくとも2層の円環構造を有し、前記円環構造は、前記中心から外へ高さが徐々に低くなっていること、
前記支持層基板における凸同心円構造を有する側を圧電ウエハと接合して複合基板を得ること、及び、
前記複合基板中の圧電層を予定厚さ範囲に減厚した後その表面を研磨することを含むフィルタ用基板の加工方法を提供する。
【0008】
1種の実施方法において、前記の凸同心円構造を有する支持層基板を加工することは、
前記支持層基板を予定の厚さに加工し、または予定の厚さの支持層基板を使用すること、
前記支持層基板の正面から下へ且つ前記支持層基板の側面から前記中心向きの方向へ第1回の減厚作業を行い、中心円柱構造を得ること、
第1回の減厚作業と同じ方法を使用して複数回の減厚作業を行い、予定の数の層を有する円環構造を得ること、及び
前記支持層基板の正面及び裏面に対して両面研磨を行い、総厚さ偏差が予定数値より小さい超平坦基板を得ることを含む。
【0009】
1種の実施方法において、前記支持層基板の正面から下へ且つ前記支持層基板の側面から前記中心向きの方向へ第1回の減厚作業を行うことは、
2000♯~6000♯であって中心軸と前記支持層基板の中心軸との角度が0.5°~2°の研磨ホイールを選択して使用して減厚作業を行うこを含み、
前記減厚作業において、基材表面の加工ダメージ層を4~10μmに制御する。
【0010】
1種の実施方法において、前記支持層基板の正面及び裏面に対して両面研磨を行うことは、上盤面と、内歯車と、下盤面を備える両面研磨装置を使用して、前記支持層基板を研磨することを含み、前記上盤面は、研磨パッドが設置されており且つ前記支持層基板の正面を研磨することに使用し、前記下盤面は、研磨パッドが設置されており且つ前記支持層基板の裏面を研磨することに使用し、
前記上盤面の回転速度は15~25rpm/minであり、前記内歯車の回転速度は、15~25rpm/minであり、前記下盤面の回転速度は30~50rpm/minであり、研磨圧力は60~200g/cmである。
【0011】
本出願において、前記複合基板の厚さ均一性は4%~10%である。
【0012】
1種の実施方法において、前記凸同心円構造中の円環構造と円環構造との間の高度差が0.3μm未満であり、前記支持層基板の最大高度値が1μm未満である。
【0013】
1種の実施方法において、前記複合基板中の圧電層を予定厚さ範囲に減厚した後その表面を研磨することは、
減厚装置で前記圧電層を10~20μmに減厚した後、調整可能式エアーパッド研磨で前記圧電層を厚さが5μm未満になるよう研磨することを含む。
【0014】
1種の実施方法において、前記支持層基板の材料は、スピネル、ポリサファイヤ、単結晶サファイア、高抵抗ケイ素、SiC、ALN、石英のいずれかである。
【0015】
本出願の第2のアスペクトによれば、上記の加工方法のいずれかを使用して製造されたフィルタ用基板を提供する。
【0016】
本出願の第3のアスペクトによれば、上記の加工方法のいずれかを使用して製造された基板を含み、前記基板の表面に交差指形変換器が搭載されており、前記基板の厚さ均一性は10%未満であるTC-SAWフィルタを提供する。
【発明の効果】
【0017】
本出願の前記フィルタ用基板の加工方法が有する有益な効果を利用すれば、
1.圧電層の厚さ均一性を4%~10%に制御して、総厚さ偏差がTHK_max-THK_min<0.3μmとなるようにでき、
2.該基板で製造されたフィルタは、均一な周波数温度係数(TCF)を有し、上下限の差が2ppm/℃未満となるようにでき、
3.フィルタに良好な周波数シフトを備えさせ、900MHzの周波数シフトが±500ppm未満になるよう制御でき、1800MHzの周波数シフトが±1000ppm未満になるよう制御できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
本出願の実施例の技術方案をはっきり説明するために、以下、実施例において使用される図面を簡単に説明する。以下の図面は、本出願のいくつかの実施例を示すに過ぎず、範囲を限定するものではなく、本技術分野における通常の知識を有する者にとって、創造性の手間をかけなくても、これらの図面に従って他の関連する図面を取得することもできることを理解されたい。
図1】TC-SAWフィルタの構造を示す模式図である。
図2】複合基板の従来の加工方法の流れを示す図である。
図3】従来の加工方法を使用して製造されたLiTaO3(LT)タンタル酸リチウム圧電層の膜厚の分布図である。
図4】本出願の実施例により示されたフィルタ用基板の加工方法のフロー図である。
図5】本出願の実施例により示された支持層基板の断面を示す模式図である。
図6】本出願の実施例により示された調整可能式エアーパッド研磨装置の研磨区域分布図である。
図7】比較例のサファイアの形貌を示す図である。
図8】比較例の研磨後のLT膜厚の分布図である。
図9】実施例の研磨後のLT膜厚の分布図である。
図10】比較例(左)と実施例(右)と周波数温度係数の分布状況比較図である。
図11図4の方法に対応する加工の流れを示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本出願の実施例の目的、技術方案、及び利点をより明確に説明するために、以下、本発明の実施例の添付図面を組み合わせて、本出願の実施例における技術方案に対して明確且つ完全に説明する。説明する実施例は、本出願の一部の実施例であり、すべての実施例ではないことが明らかであろう。通常、添付図面に描きまた示す本出願の実施例の部品は各種異なる配置でレイアウト及び設計をすることができる。
【0020】
従って、以下、添付図面中に提供した本出願の実施例の詳細説明は、本出願の保護範囲に対していかなる制限も構成せず、単に本出願の選択された実施例を示すのみである。本出願の実施例に基づき、当業者が創造性のある働きをしないことを前提として得られるすべての他の実施例は、本出願に係る請求の範囲に属する。
【0021】
図1は、TC-SAWフィルタの構造を示す模式図を示す。図1を参照すると、TC-SAWフィルタは、圧電層10と、支持層20と、交差指形変換器30とを備える。圧電層10と支持層20とは、複合基板を構成している。
【0022】
図2は、複合基板の従来の加工方法の流れを示す。図2を参照すると、複合基板の加工方法は、(1)支持層20と圧電層10とをそれぞれ製造し、(2)室温条件で支持層20と圧電層10とを接合し、(3)圧電層10に減厚を行い、(4)支持層20に対して調整可能式エアーパッド研磨を行って、生産に必要の厚さに減厚し、(5)完成品を得る。
【0023】
上記の加工方法で得られた複合基板は、上下表面において高低点の落差がいずれも1μm以上である。
【0024】
図3は、従来の加工方法を使用して製造されたLiTaO(LT)タンタル酸リチウム圧電層10の膜厚の分布を示し、図3によると、LT圧電層10の最も薄い点が2.54μmであり、最も厚い点が3.51μmである。LT圧電層10の目標厚さが3μmであり、実際に完成した厚さ範囲が2.54μm~3.51μmであって3μmの84.7%及び117%であり、それぞれの差が15.3%及び17%であり、したがって厚さの均一性は15.3%~17%である。厚さ偏差は15%以上にあり、要求される目標の厚さ偏差が10%未満である点からみると、厚さには明らかな不均一が生じている。
【0025】
本出願に使用する複合基板の加工方法は、複合基板の厚さ偏差を10%未満にさせることができる。以下、本出願における複合基板の加工方法を詳しく説明する。
【0026】
図4は、本出願の実施例により示されたフィルタ用基板の加工方法のフロー図であり、図11は、図4の方法に対応する加工の流れを示す模式図である。図4及び図11を参照すると、以下のステップを含む。
【0027】
S101: 凸同心円構造を有する支持層基板100を加工する。
【0028】
本出願の加工方法において、支持層基板100中の凸同心円構造の特点は、中心が突起しており、少なくとも2層の円環構造を有し、且つ円環構造は、中心から外へ高さが徐々に低くなっており、多層のケーキ状になっている。支持層基板100において凸同心円構造に加工する側を支持層基板100の正面に定義すると、その反対面を支持層基板100の裏面と定義する。
【0029】
1種の実施可能な方法において、凸同心円構造を有する支持層基板100を加工する方法は、
a.支持層基板100を予定の厚さに加工し、または予定の厚さの支持層基板100を使用する。支持層基板100の厚さは、凸同心円構造の断面の最大高度である。支持層基板100の断面を示す図5を参照する。図中、2は支持層基板100の厚さであって、すなわち、凸同心円構造の断面の最大高度である。
【0030】
b.支持層基板100の正面から下へ且つ支持層基板100の側面から中心向きの方向へ第1回の減厚作業を行い、中心円柱構造を得る。
【0031】
該ステップにおいて、1種の実施方法として、減厚作業に2000♯~6000♯であって中心軸と支持層基板100の中心軸との角度が0.5°~2°の研磨ホイールを選択して使用して減厚作業を行う。減厚作業において、基材表面の加工ダメージ層を4~10μmに制御する。
【0032】
c.第1回の減厚作業と同じ方法を使用して複数回の減厚作業を行い、予定の数の層を有する円環構造を得る。図5を参照すると、1は凸同心円構造中の各層の円環構造の間の高度の落差を示し、また、図5では各層の円環構造と支持層基板100の中心軸線との距離差を更に示す。
【0033】
ステップCが完成した後、支持層基板100中の凸同心円構造は、初歩的に中心対象構造を有し、TTV(総厚さ偏差)が1.5μm以下である。
【0034】
d.支持層基板100の正面及び裏面に対して両面研磨を行い、総厚さ偏差が予定数値より小さい超平坦基板を得る。
【0035】
該ステップにおいて、1種の実施方法として、支持層基板100の正面及び裏面に対して両面研磨を行うことは、
上盤面と、内歯車と、下盤面を備える両面研磨装置を使用して、支持層基板100を研磨することを含む。上盤面は、研磨パッドが設置されており、研磨パッドは、支持層基板100の正面を研磨することに使用する。下盤面は、研磨パッドが設置されており、下盤面の研磨パッドは、支持層基板100の裏面を研磨することに使用する。
【0036】
上盤面の回転速度は15~25rpm/minであり、内歯車の回転速度は、15~25rpm/minであり、下盤面の回転速度は30~50rpm/minであり、研磨圧力は60~200g/cmである。
【0037】
両面研磨により支持層基板100のTTVを更に最適化し、且つ同心円構造が同心円上凸構造に加工される。
【0038】
上記の支持層基板100の加工方法によって、本出願における支持層基板100は、層と層との間の高度差が0.3μm以下であり、支持層基板100の最大厚さの値は1μm以下である必要がある。
【0039】
本出願において、支持層基板100の材料は、スピネル(Spinel)、ポリサファイヤ(Poly-Sapphire、Poly-SA)、単結晶サファイア、高抵抗ケイ素、SiC、ALN、石英などのいずれかを選択して使用することができる。
【0040】
S102:支持層基板100における凸同心円構造を有する側を圧電ウエハ200と接合して複合基板を得る。
【0041】
凸同心円構造が製造された支持層基板100を圧電ウエハ200と接合する。1つの実施例において、圧電ウエハ200の初期厚さは150μmである。接合後の圧電ウエハ200は圧電層を構成する。
【0042】
S103:複合基板中の圧電層を予定厚さ範囲に減厚した後その表面を研磨する。
【0043】
該ステップにおいて、減厚装置で圧電層を10~20μmに減厚した後、調整可能式エアーパッド研磨で圧電層を厚さが5μm未満に研磨する。
【0044】
図6は、調整可能式エアーパッド研磨装置の研磨区域分布図を示す。図6を参照すると、601、602、603三つの区域が同心円の形式で分布し、それぞれに異なる研磨圧力を設置することができ、更に凸同心円構造に対して研磨操作を行うことが実現できる。
【0045】
以下、比較例及び実施例を具体的に比較して説明する。
【0046】
比較例:
まず、普通加工のサファイア基板を支持層とし、NIDEK(FT-900)を使用してサファイア基板の形貌の測定を行ったところ、サファイア基板のTTVが1.19μmであり、形貌が非同心円であることがわかった。図7は比較例におけるサファイアの形貌図を示す。そしてサファイア及びLTウエハを室温且つ高真空で接合を行い、接合後、減厚装置を使用してLTの厚さを4.5μmに減少してから、LTの厚さを3.0μmになるよう研磨し、研磨した後Flimmetrics(F-54)膜厚測定器を使用してLTの厚さを測定した。図8は比較例における研磨されたLT膜厚の分布を示す。図8に示されデータによれば、そのLTの厚さ均一性は約35.3%である。
【0047】
上記の複合基板の製造の流れは図2に示される従来の複合基板の加工流れを参照したものであるので、調整可能式エアーパッド研磨がサファイア基板の偏心した形貌に対処することができなく、最終完成品、圧電層の厚さに明らかな差異があることが見える。
【0048】
実施例:
一般のサファイアウエハを取って、上記の凸同心円構造の支持層基板を加工する方法を使用して、サファイアウエハを加工した。サファイアウエハに対して減厚を行う際、減厚除去量は、減厚される前のTTVによって決まり、例えば、減厚される前のTTV=9μmである場合、減厚除去量は9μmより大きいことが必要とされ、それはTTVを改善できることを意味し、減厚した後、NIDEK(FT-900)を使用してサファイアの正面の形貌の測定を行ったところ、TTV=1.01μmであり、形貌は同心円である。
【0049】
そして、室温且つ高真空でサファイアをLT(タンタル酸リチウム、LiTaO)圧電層に接合し、接合した後、減厚装置を使用してLT圧電層の厚さを4.5μmに減厚してから、LT圧電層の厚さを3.0μmになるよう研磨し、研磨した後、Flimmetrics(F-54)膜厚測定装置を使用して、LT圧電層の厚さの測定を行ったところ、図9は実施例の研磨されたLT膜厚の分布図を示し、図9を参照すると、LT圧電層の厚さ均一性は約9.2%であった。
【0050】
本出願のフィルタ用基板の加工方法を使用して得た複合基板において、圧電層の厚さ均一性を10%未満にすることができる原因は、支持層基板の圧電層と接合する側に凸同心円構造を設置し、凸同心円構造における各層は中心対称性を有し、圧電層を支持層基板に接合して且つ減厚作業を行う際に、圧電層の支持層基板に対する応力は中心に位置する円柱構造に主に集中し、中心円柱構造以外の円環構造に対しては、その応力の分布がより均一であるので、研磨減厚操作時の抗力を減らすことができて、よって厚さが基本的に一致する圧電層基板を得ることができるからである。本出願の加工方法で製造した圧電層の厚さ偏差は10%以内であり、一部の実施例において、厚さ偏差は5%以内であり得る。
【0051】
図10に比較例(左)と実施例(右)と周波数温度係数の分布状況を示す。図10によれば、実施例における複合基板は、周波数温度係数(TCF)の分布が皆17ppm/℃であって均一である。同時に実施例は、より良好なフィルタ周波数シフトを更に有し、それぞれ900MHZ及び1800MHzに応用すると理想的な性能を達成することができる。
【0052】
上記の加工方法を使用して異なる材料で製造された複合基板に対するテストにより、上記の加工方法を使用して得られた複合基板が以下の特点を有することがわかる。
1.圧電層の厚さ均一性が4%~10%にあり、総厚さ偏差がTHK_max-THK_min<0.3μmであり、
2.均一な周波数温度係数(TCF)を有し、上下限の差が2ppm/℃未満であり、
3.良好なフィルタ周波数シフトを備え、900MHzの周波数シフトを±500ppm未満に制御でき、1800MHzの周波数シフトを±1000ppm未満に制御できる。
【0053】
上記の技術方法によれば、本出願は、凸同心円形貌を有する支持層基板を使用することにより、圧電層の研磨難易度を明らかに下げて、厚さが基本的に一致する圧電層基板を得ることができて、よって均一性が良好な圧電層薄膜が得られ、ひいては圧電層薄膜のフィルタチップの歩留まりが大幅に向上する。
【0054】
本出願の第2のアスペクトにおいて、上記の加工方法を使用して製造されたフィルタ用基板を提供する。
【0055】
本出願の第3のアスペクトにおいて、TC-SAWフィルタを提供する。図1を参照すると、TC-SAWフィルタは、上記の加工方法を使用して製造された基板を含む。基板の表面には交差指形変換器が搭載されている。基板の厚さ均一性は10%未満である。基板は、支持層と圧電層とを含み、交差指形変換器は圧電層に設置されている。
【0056】
以上は、本出願の好ましい実施例にすぎず、本出願はこれらに限定されるものではなく、本発明が属する技術分野における通常の知識を有する者にとって、本出願は各種の変更及び変化があり得る。本出願の最も広い解釈の精神および原則内にある限り、全ての修飾、均等変換改良などが本出願の保護範囲内に包含されるものとする。
図1
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図10
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【国際調査報告】