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特表2023-552027負極極板、二次電池、電池モジュール、電池パックと電力消費装置
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  • 特表-負極極板、二次電池、電池モジュール、電池パックと電力消費装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-12-14
(54)【発明の名称】負極極板、二次電池、電池モジュール、電池パックと電力消費装置
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/133 20100101AFI20231207BHJP
   H01M 4/36 20060101ALI20231207BHJP
   H01M 4/587 20100101ALI20231207BHJP
【FI】
H01M4/133
H01M4/36 D
H01M4/587
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023501362
(86)(22)【出願日】2021-11-09
(85)【翻訳文提出日】2023-01-10
(86)【国際出願番号】 CN2021129506
(87)【国際公開番号】W WO2023082039
(87)【国際公開日】2023-05-19
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】513196256
【氏名又は名称】寧徳時代新能源科技股▲分▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】Contemporary Amperex Technology Co., Limited
【住所又は居所原語表記】No.2,Xingang Road,Zhangwan Town,Jiaocheng District,Ningde City,Fujian Province,P.R.China 352100
(74)【代理人】
【識別番号】100167689
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 征二
(72)【発明者】
【氏名】▲呂▼▲樹▼芹
(72)【発明者】
【氏名】李▲曉▼▲偉▼
(72)【発明者】
【氏名】裴振▲興▼
【テーマコード(参考)】
5H050
【Fターム(参考)】
5H050AA08
5H050BA17
5H050CA01
5H050CA08
5H050CA09
5H050CB07
5H050CB08
5H050CB09
5H050CB29
5H050DA03
5H050FA02
5H050HA01
5H050HA05
5H050HA12
5H050HA13
(57)【要約】
本出願には、負極極板、二次電池、電池モジュール、電池パックと電力消費装置が開示されている。本出願に開示される負極極板は、負極集電体と、前記負極集電体の少なくとも一つの表面に設置される活物質層とを含み、そのうち、前記活物質層は、第一の活物質層と、前記第一の活物質層の表面に設置される第二の活物質層とを含み、前記第一の活物質層は第一の活性材料を含み、前記第二の活物質層は第二の活性材料を含み、前記活物質層はα×CW≦CWを満たし、ここで、α:層間距離相対係数、
且つ1≦α≦1.12を示す。本出願の負極極板を使用して得られる二次電池は、電池のレート性能とエネルギー密度のいずれも良好に向上させることができる。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
負極集電体と、前記負極集電体の少なくとも一つの表面に設置される活物質層とを含む負極極板であって、前記活物質層は、第一の活物質層と、前記第一の活物質層の表面に設置される第二の活物質層とを含み、前記第一の活物質層は第一の活性材料を含み、前記第二の活物質層は第二の活性材料を含み、前記活物質層は、α×CW≦CWを満たし、ここで、
:第一の活性材料のd002ピークに対応する層間距離、単位:nm、
:第二の活性材料のd002ピークに対応する層間距離、単位:nm、
CW:単位面積当たりの負極集電体上に設置される第一の活物質層の質量、単位:g/m
CW:単位面積当たりの負極集電体上に設置される第二の活物質層の質量、単位:g/mを示す、負極極板。
【請求項2】
前記活物質層は、
を満たす、請求項1に記載の負極極板。
【請求項3】
ここで、
Da50:第一の活性材料の体積平均粒径、単位:μm、
Db50:第二の活性材料の体積平均粒径、単位:μmを示す、請求項1又は2に記載の負極極板。
【請求項4】
前記第一の活性材料の体積平均粒径Da50と第二の活性材料の体積平均粒径Db50は、
を満たす、請求項2又は3に記載の負極極板。
【請求項5】
前記第一の活性材料のd002ピークに対応する層間距離dの範囲は0.335~0.3362nmであり、前記第二の活性材料のd002ピークに対応する層間距離dの範囲は0.3356~0.38nmである、請求項2から4のいずれか1項に記載の負極極板。
【請求項6】
前記第一の活性材料の体積平均粒径Da50の範囲は8~20μmであり、前記第二の活性材料の体積平均粒径Db50の範囲は4~12μmである、請求項2から5のいずれか1項に記載の負極極板。
【請求項7】
単位面積当たりの負極集電体上に設置される第一の活物質層の質量CWの範囲は80~200g/mであり、単位面積当たりの負極集電体上に設置される第二の活物質層の質量CWの範囲は10~110g/mである、請求項2から6のいずれか1項に記載の負極極板。
【請求項8】
前記第一の活性材料は、天然黒鉛又は人造黒鉛材料であり、及び/又は、
前記第二の活性材料は、人造黒鉛材料である、請求項1から7のいずれか1項に記載の負極極板。
【請求項9】
前記第一の活性層及び/又は前記第二の活性層には、ソフトカーボン又はハードカーボンが含まれる、請求項1から8のいずれか1項に記載の負極極板。
【請求項10】
二次電池であって、請求項1から9のいずれか1項に記載の負極極板を含む、二次電池。
【請求項11】
電池モジュールであって、請求項10に記載の二次電池を含む、電池モジュール。
【請求項12】
電池パックであって、請求項10に記載の二次電池又は請求項11に記載の電池モジュールを含む、電池パック。
【請求項13】
電力消費装置であって、請求項10に記載の二次電池、請求項11に記載の電池モジュール、請求項12に記載の電池パックの少なくとも一つを含む、電力消費装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、リチウム電池の技術分野に関し、特に負極極板、二次電池、電池モジュール、電池パックと電力消費装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、リチウムイオン電池の応用範囲はますます広くなっており、例えば、リチウムイオン電池は水力、火力、風力、太陽光発電所などのエネルギー貯蔵電源システム、電動工具、電動自転車、電動バイク、電動自動車、軍事装備、航空宇宙などの多くの分野に広く応用されている。リチウムイオン電池の広範な応用により、現在の電池に対する総合性能の要求もますます高くなり、ますます多くの応用シナリオは、動力電池が高いエネルギー密度を備え、また良好な充放電特性を持つことを要求している。負極はリチウムイオン電池の最も重要な構成の一つとして、その設計は電池の性能発揮、特に電池の充電関連特性に直接影響する。どのように負極極板設計を最適化することによって、エネルギー密度と動力学性能を両立させる電池を得ることは、現在業界で一般的に直面している課題である。
【発明の概要】
【0003】
本出願の目的は、既存の需要に対して負極極板を提供することにある。本出願は、この負極極板を用いる二次電池、電池モジュール、電池パックと電力消費装置も提供している。本出願の発明者らは、負極に二層又は多層の活物質層を採用し、各層の活物質層の層間距離と塗布重量との関係を調整・制御することにより、より高いエネルギー密度とより良好な充放電の動力学性能を兼ねる電池負極を得ることができることを発見した。
【0004】
上記目的を達成するために、本出願の第1の態様は、負極集電体と、前記負極集電体の少なくとも一つの表面に設置される活物質層とを含む負極極板を提供し、前記活物質層は、第一の活物質層と、前記第一の活物質層の表面に設置される第二の活物質層とを含み、前記第一の活物質層は第一の活性材料を含み、前記第二の活物質層は第二の活性材料を含み、前記活物質層はα×CW≦CWを満たし、ここで、
:第一の活性材料のd002ピークに対応する層間距離、単位:nm、
:第二の活性材料のd002ピークに対応する層間距離、単位:nm、
CW:単位面積当たりの負極集電体上に設置される第一の活物質層の質量、単位:g/m
CW:単位面積当たりの負極集電体上に設置される第二の活物質層の質量、単位:g/m
【0005】
これによって、負極に二層又は多層の活物質層を採用し、各層の活物質層の層間距離と塗布重量との関係を調整・制御することにより、より高いエネルギー密度とより良好な充放電の動力学性能を兼ねる電池負極を得ることができる。より具体的には、本出願の発明者らは、負極極板の同一側の集電体上に二層の活物質層を塗布し、二層目の活物質層の活性材料の層間距離が第一の層の活物質層の活性材料の層間距離より大きく、リチウムイオンが正極から負極に移動する時、表層の材料層間距離が大きく、リチウムイオンの吸蔵インピーダンスが低いので、リチウムイオンは表層活性材料に速く吸蔵し、充電速度の大きすぎによる負極極板の表面におけるリチウムイオンの析出を避けることができることを発見した。負極活性材料の層間距離が大きいほど、材料の容量が低くなるため、二層目の活性材料の塗布重量が大きくなり、負極極板全体の容量に与える影響も大きくなる。負極極板の容量発揮と充電ウィンドウの性能を両立させるために、本出願は、二層目の活物質層の塗布重量を限定している。二層目の活物質層の活性材料の層間距離が大きいほど、その充電能力が高く、容量が低くなることを示し、それに応じて、塗布重量が小さいほど、良好な充電レベルを達成することができる。二層目の活物質層の活性材料の層間距離が相対的に小さい場合には、その充電能力が弱くなり、容量が大きくなり、この時、極板全体として良好な充電性能を持たせるために、極板全体の塗布重量に対する二層目の活物質層の塗布重量の割合を高くする必要がある。本出願の発明者らは予想外に、二層の活物質層構造を用いて、第一の層の活物質層の活性材料の層間距離が小さく、容量が大きく、極板及び電池が比較的高いエネルギー密度を有し、二層目の活物質層の活性材料の層間距離が大きく、負極極板の表層のリチウムの吸蔵インピーダンスが低下し、大レート充電時、負極表面へのリチウムイオンの堆積が回避され、電池の充電ウィンドウが向上することを発見した。そのため、上記関係を満たす活物質層を有する電池負極は、高エネルギー密度と良好な充放電の動力学性能とを兼ねる。
【0006】
【0007】
電池のエネルギー密度と充電性能を両立させ、一方の性能の過剰設計による他方の性能の不足という影響を回避するため、発明者らは実際のテスト効果に基づき、第一の活物質層と第二の活物質層の塗布重量と層間距離との関係をさらに限定した。この関係を満たす場合、負極極板及び電池のレート性能とエネルギー密度はいずれも良好に向上することができる。
【0008】
Da50:第一の活性材料の体積平均粒径、単位:μm、
Db50:第二の活性材料の体積平均粒径、単位:μm。
【0009】
各層の活物質層の層間距離及び粒径の大きさに応じて、活物質層の塗布重量を調整し、極板及び電池に急速充電性能及び高エネルギー密度を両立させる。
【0010】
本出願の任意の実施形態では、前記第一の活性材料の体積平均粒径Da50と第二の
【0011】
二層の活物質層における活性材料の粒径相対関係を規定することにより、動力学性能をさらに向上させ、二層目の塗布量が低い時の加工性能の実現に有利となる。
【0012】
本出願の任意の実施形態では、前記第一の活性材料のd002ピークに対応する層間距離dの範囲は0.335~0.3362nmであり、前記第二の活性材料のd002ピークに対応する層間距離dの範囲は0.3356~0.38nmである。
【0013】
本出願の任意の実施形態では、前記第一の活性材料の体積平均粒径Da50の範囲は8~20μmであり、前記第二の活性材料の体積平均粒径Db50の範囲は4~12μmである。
【0014】
本出願の任意の実施形態では、単位面積当たりの負極集電体上に設置される第一の活物質層の質量CWの範囲は80~200g/mであり、単位面積当たりの負極集電体上に設置される第二の活物質層の質量CWの範囲は10~110g/mである。
【0015】
本出願の任意の実施形態では、前記第一の活性材料は天然黒鉛又は人造黒鉛材料であり、及び/又は、前記第二の活性材料は人造黒鉛材料である。
【0016】
任意の実施形態では、前記第一の活性層及び/又は前記第二の活性層には、ソフトカーボン又はハードカーボンが含まれる。
【0017】
第2の態様によれば、本出願は、本出願の第1の態様の負極極板を含む二次電池を提供する。
【0018】
第3の態様によれば、本出願は、本出願の第2の態様の二次電池を含む電池モジュールを提供する。
【0019】
第4の態様によれば、本出願は、本出願の第2の態様の二次電池と第3の態様の電池モジュールのいずれか1つを含む電池パックを提供する。
【0020】
第5の態様によれば、本出願は、本出願の第2の態様の二次電池、第3の態様の電池モジュール、第4の態様の電池パックの少なくとも一つを含む電力消費装置を提供する。
【0021】
本出願の電池モジュール、電池パックと電力消費装置は、本出願が提供する二次電池を含むため、前記二次電池と少なくとも同じ優位性を有する。
【図面の簡単な説明】
【0022】
本出願の実施例の技術案をより明確に説明するために、以下は、本出願の実施例において使用される必要な図面を簡単に紹介する。自明なことに、以下に記述された図面は、本出願のいくつかの実施例に過ぎず、当業者にとって、創造的な労力を払わない前提で、図面に基づいて他の図面を得ることもできる。
図1】本出願の負極極板の一実施形態の概略図である。
図2】本出願の二次電池の一実施形態の概略図である。
図3】本出願の二次電池の一実施形態の概略図である。
図4】本出願の電池モジュールの一実施形態の概略図である。
図5】本出願の電池パックの一実施形態の概略図である。
図6図5の分解図である。
図7】本出願の二次電池を電源とする電力消費装置の一実施形態の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下では、図面を適当に参照しながら、本出願の負極極板、二次電池、電池モジュール、電池パックと電力消費装置を具体的に開示した実施形態を詳細に説明する。しかし、必要のない詳細な説明を省略する場合がある。例えば、周知の事項に対する詳細な説明、実際に同じである構造に対する重複説明を省略する場合がある。これは、以下の説明が不必要に長くなることを回避し、当業者に容易に理解させるためである。なお、図面及び以下の説明は、当業者に本出願を十分に理解させるために提供するものであり、特許請求の範囲に記載された主題を限定するためのものではない。
【0024】
本出願に開示される「範囲」は、下限及び上限の形式で限定され、所定範囲は、特定の範囲の境界を限定する1つの下限と1つの上限を選定することによって限定される。このように限定される範囲は、端値を含んでもよく含まなくてもよく、任意に組み合わせてもよく、即ち、任意の下限と任意の上限とを組み合わせて1つの範囲を形成してよい。例えば、特定のパラメータに対して60~120と80~110の範囲がリストアップされた場合、60~110と80~120の範囲として理解されることも想定できることである。なお、リストアップされた最小範囲値が1と2で、かつリストアップされた最大範囲値が3、4と5である場合、1~3、1~4、1~5、2~3、2~4と2~5の範囲の全ては想定できるものである。本出願において、別段の記載がない限り、数値範囲「a~b」は、aないしbの間の全ての実数の組み合わせを表す短縮表現であり、ここで、aとbはいずれも実数である。例えば、数値範囲「0~5」は、本明細書で「0~5」の間の全ての実数がリストアップされていることを意味し、「0~5」はこれら数値の組み合わせの短縮表示にすぎない。また、あるパラメータ≧2の整数であると記述している場合、このパラメータは例えば、整数2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12などであることを開示していることに相当する。
【0025】
特に説明されていない限り、本出願の全ての実施形態及び選択的な実施形態は、互いに組み合わせて新たな技術案を形成してもよい。
【0026】
特に説明されていない限り、本出願の全ての技術的特徴及び選択的な技術的特徴は、互いに組み合わせて新たな技術案を形成してもよい。
【0027】
特に説明されていない限り、本出願の全てのステップは、順次行われてもよく、ランダムに行われてもよく、好ましくは、順次行われる。例えば、前記方法がステップ(a)と(b)とを含むことは、前記方法が順次行われるステップ(a)と(b)とを含んでもよく、順次行われるステップ(b)と(a)とを含んでもよいことを表す。例えば、以上で言及した前記方法がステップ(c)をさらに含んでもよいことは、ステップ(c)が任意の順で前記方法に追加されてもよいことを表し、例えば、前記方法は、ステップ(a)、(b)と(c)を含んでもよく、ステップ(a)、(c)と(b)を含んでもよく、ステップ(c)、(a)と(b)などを含んでもよい。
【0028】
特に説明されていない限り、本出願で言及した「含む」と「包含」は、開放型を表し、閉鎖型であってもよい。例えば、前記「含む」と「包含」は、リストアップされていない他の成分をさらに含み又は包含してもよく、リストアップされた成分のみを含み又は包含してもよいことを表してもよい。
【0029】
特に説明されていない限り、本出願において、用語「又は」は包括的である。例えば、「A又はB」という用語は、「A、B、又はAとBの両方」を表す。より具体的には、Aが真であり(又は存在し)かつBが偽である(又は存在しない)条件と、Aが偽である(又は存在しない)がBが真である(又は存在する)条件と、また、AとBが共に真である(又は存在する)条件のいずれも「A又はB」を満たしている。
【0030】
二次電池
二次電池は、充電電池又は蓄電池とも呼ばれ、電池が放電後に通電の方式を通じて活性材料を活性化させて継続して使用する電池を指す。
【0031】
一般的には、二次電池は、正極極板と、負極極板と、セパレータと電解質とを含む。二次電池の充放電過程において、活性イオン(例えば、リチウムイオン)は、正極極板と負極極板との間で往復して吸蔵及び放出する。セパレータは、正極極板と負極極板との間に設置され、主に正負極の短絡を防止する作用を奏するとともに、活性イオンを通過させることができる。電解質は、正極極板と負極極板との間で、主に活性イオンを伝導する役割を果たす。
【0032】
[負極極板]
負極は、リチウムイオン電池の最も重要な構成の1つとして、その設計は電池の性能発揮、特に電池の充電相関特性に直接影響する。負極極板の設計を最適化することにより、エネルギー密度と動力学性能を両立させた電池をどのように実現するかは、現在の業界で一般的に直面している課題である。
【0033】
上記問題を解決するために、発明者らは多くの研究を行い、負極極板を提供した。本出願の負極極板は、二層又は多層の活物質層を採用し、各層の活物質層の層間距離と塗布重量との関係を調整・制御することにより、高いエネルギー密度と良好な充放電の動力学性能を兼ねることができる。
【0034】
本出願の負極極板は、負極集電体と、前記負極集電体の少なくとも一つの表面に設置される活物質層とを含み、そのうち、前記活物質層は、第一の活物質層と、前記第一の活物質層の表面に設置される第二の活物質層とを含み、前記第一の活物質層は第一の活性材料を含み、前記第二の活物質層は第二の活性材料を含み、前記活物質層はα×CW≦CWを満たし、ここで、
:第一の活性材料のd002ピークに対応する層間距離、単位:nm、
:第二の活性材料のd002ピークに対応する層間距離、単位:nm、
CW:単位面積当たりの負極集電体上に設置される第一の活物質層の質量、単位:g/mを示し、負極集電体の両面のいずれにも第一の活物質層と第二の活物質層を設ける場合、第一の活物質層の両面質量とし、
CW:単位面積当たりの負極集電体上に設置される第二の活物質層の質量、単位:g/mを示し、負極集電体の両面のいずれにも第一の活物質層と第二の活物質層を設ける場合、第二の活物質層の両面質量とする。
【0035】
これによって、本出願は、負極に二層又は多層の活物質層を採用し、各層の活物質層の層間距離と塗布重量との関係を調整・制御することにより、より高いエネルギー密度とより良好な充放電の動力学性能を兼ねる電池負極を得ることができる。より具体的には、本出願の発明者らは、負極極板の同一側の集電体上に二層の活物質層を塗布し、二層目の活物質層の活性材料の層間距離が第一の層の活物質層の活性材料の層間距離より大きく、リチウムイオンが正極から負極に移動する時、表層の材料層間距離が大きく、リチウムイオンの吸蔵インピーダンスが低いので、リチウムイオンは表層活性材料に速く吸蔵し、充電速度の大きすぎによる負極極板の表面におけるリチウムイオンの析出を避けることができることを発見した。負極活性材料の層間距離が大きいほど、材料の容量が低くなるため、二層目の活性材料の塗布重量が大きくなり、負極極板全体の容量に与える影響も大きくなる。負極極板の容量発揮と充電ウィンドウの性能を両立させるために、本出願は、二層目の活物質層の塗布重量を制限する。二層目の活物質層の活性材料の層間距離が大きいほど、その充電能力が高く、容量が低くなることを示し、それに応じて、塗布重量が小さいほど、良好な充電レベルを達成することができる。二層目の活物質層の活性材料の層間距離が相対的に小さい場合には、その充電能力が弱くなり、容量が大きくなり、この時、極板全体として良好な充電性能を得るために、極板全体の塗布重量に対する二層目の活物質層の塗布重量の割合を高くする必要がある。本出願の発明者らは、二層の活物質層構造を用いて、第一の層の活物質層の活性材料の層間距離が小さく、容量が大きく、極板及び電池が比較的高いエネルギー密度を有し、二層目の活物質層の活性材料の層間距離が大きく、負極極板の表層のリチウムの吸蔵インピーダンスが低下し、大レート充電時、負極表面へのリチウムイオンの堆積が回避され、電池の充電ウィンドウが向上することを発見した。そのため、上記関係を満たす活物質層を有する電池負極は、エネルギー密度と良好な充放電の動力学性能とを兼ねる。
【0036】
【0037】
第二の活物質層の重量は、層間距離及び第一の活物質層の重量に応じて調整され、全体として、負極極板が高いエネルギー密度と動力学性能を兼ねるために、第二の活物質層の塗布重量は、
を満たすべきである。
【0038】
本出願の発明者らは、負極極板上に塗布する活物質層の重量が小さいほど、活性材料の層間距離が大きくなり、極板及び電池の内部抵抗が低くなり、充放電性能が良くなるが、活物質層の重量が小さい、及び活性材料の層間距離が大きく、同じ電池容量では、箔材などの補助材料の使用量の増加及び材料の使用量の増加により、電池のエネルギー密度が低下することを発見した。電池のエネルギー密度と充電性能を両立させ、一方の性能の過剰設計による他方の性能の不足という影響を回避するため、発明者らは実際のテスト効果に基づき、第一の活物質層と第二の活物質層の塗布重量と層間距離との関係をさらに限定した。この関係を満たす場合、負極極板及び電池のレート性能とエネルギー密度はいずれも良好に向上することができる。
【0039】
Da50:第一の活性材料の体積平均粒径、単位:μm、
Db50:第二の活性材料の体積平均粒径、単位:μm。
【0040】
【0041】
いくつかの実施形態では、前記第一の活性材料の体積平均粒径Da50と第二の活性材料の体積平均粒径Db50は、
を満たす。
【0042】
二層の活物質層における活性材料の粒径相対関係を規定し、動力学性能をさらに向上させ、二層目の塗布量が低い時の加工性能の実現に有利となる。
【0043】
いくつかの実施形態では、前記第一の活性材料のd002ピークに対応する層間距離dの範囲は0.335~0.3362nmであり、前記第二の活性材料のd002ピークに対応する層間距離dの範囲は0.3356~0.38nmである。
【0044】
いくつかの実施形態では、前記第一の活性材料の体積平均粒径Da50の範囲は8~20μmであり、前記第二の活性材料の体積平均粒径Db50の範囲は4~12μmである。
【0045】
いくつかの実施形態では、単位面積当たりの負極集電体上に設置される第一の活物質層の質量CWの範囲は80~200g/mであり、単位面積当たりの負極集電体上に設置される第二の活物質層の質量CWの範囲は10~110g/mである。
【0046】
本出願では、材料の体積平均粒径D50は、本分野で公知の意味であり、本分野で既知の方法と機器を用いて測定してもよい。例えば、GB/T 19077-2016粒度分布レーザー回折法を参照して、レーザー粒度分析計(例えば、英国マルビンMastersizer 2000E)を用いて測定することができる。
【0047】
いくつかの実施形態では、前記負極極板は、導電剤及び接着剤をさらに含み、その種類と含有量が具体的に制限されず、実際の需要に応じて選択することができる。例示的に、導電剤は、超伝導性カーボン、カーボンブラック(例えば、アセチレンブラック、ケッチェンブラックなど)、カーボンドット、カーボンナノチューブ、グラフェン、及びカーボンナノファイバーのうちの1つ又は複数を含んでもよい。接着剤は、スチレンブタジエンゴム(SBR)、水溶性不飽和樹脂SR-1B、水性アクリル樹脂(例えば、ポリアクリル酸PAA、ポリメタクリル酸PMAA、ポリアクリル酸ナトリウムPAAS)、ポリアクリルアミド(PAM)、ポリビニルアルコール(PVA)、アルギン酸ナトリウム(SA)及びカルボキシメチルキトサン(CMCS)のうちの1つ又は複数を含んでもよい。他の選択的な助剤は、同じであってもよく、異なってもよく、例示的に、他の選択的な助剤は、増粘剤(例えば、カルボキシメチルセルロースナトリウムCMC-Na)、PTCサーミスタ材料などを含んでもよい。
【0048】
本出願の負極極板において、負極集電体は、金属箔シート又は複合集電体を採用してもよい。金属箔シートの例示として、銅箔を採用してもよい。複合集電体は、高分子材料基層及び高分子材料基層の少なくとも一つの表面上に形成された金属材料層を含んでもよい。例示的に、金属材料は、銅、銅合金、ニッケル、ニッケル合金、チタン、チタン合金、銀、銀合金のうちの一つ以上から選択されてもよい。例示的に、高分子材料基層は、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリスチレン(PS)、ポリエチレン(PE)などから選択されてもよい。
【0049】
いくつかの実施形態では、活物質層は、負極集電体の少なくとも一つの表面上に設置される。例えば、負極集電体は、その自体の厚さ方向において対向する2つの表面を有し、活物質層は、負極集電体の対向する2つの表面のいずれか1つ又は両者上に設置される。
【0050】
図1は、負極集電体及びその表面の活物質層を示し、図1に示す負極集電体の2つの表面のいずれかも第一の活物質層と第二の活物質層を有する。
【0051】
無論、本出願の負極極板10は、他の実施形態を有してもよく、例えば、負極極板10は、負極集電体11と、負極集電体のうちの一側に設置される第一の活物質層121と、第一の活物質層121上に設置される第二の活物質層122とから構成される。
【0052】
また、本出願の負極極板は、負極膜層以外のその他の追加機能層を除外するものではない。例えば、いくつかの実施形態では、本出願の負極極板は、負極集電体と第二の負極膜層との間に設置される導電性下引層(例えば、導電剤と接着剤とからなる)をさらに含んでもよい。別のいくつかの実施形態では、本出願の負極極板は、第一の負極膜層の表面を覆う保護層をさらに含む。
【0053】
いくつかの実施形態では、本出願の負極極板の製造方法は、
1.第一の活性材料を含むスラリーAと、第二の活性材料を含むスラリーBとを別々製造するステップと、
2.第一の活性材料の層間距離と第二の活性材料の層間距離から、CWとCWを計算するステップと、
3.スラリーAを集電体に塗布し、乾燥し、第一の活物質層を塗布した極板Aを得るステップと、
4.極板Aの表面にスラリーBを塗布し、乾燥し、そして冷間プレス、スリットを経て本出願に記載の負極極板を得るステップとを含んでもよく、
そのうち、第一の活物質層と第二の活物質層の塗布量は、それぞれCWとCWを満たす。
【0054】
いくつかの実施形態では、前記スラリーAは、第一の活性材料、導電剤、接着剤と増粘剤のうちの1つ以上を含む。
【0055】
いくつかの実施形態では、前記スラリーBは、第二の活性材料、導電剤、接着剤と増粘剤のうちの1つ以上を含む。
【0056】
具体的な負極の製造方法は、本出願による具体的な実施例を参照してもよく、ここではこれ以上説明しない。
【0057】
[正極極板]
二次電池は正極極板を含み、正極極板は、一般的には、正極集電体と、正極集電体の少なくとも1つの表面に設置され、かつ正極活性材料を含む正極膜層とを含む。例えば、正極集電体は、その自体の厚さ方向において対向する2つの表面を有し、正極膜層は、正極集電体の対向する2つの表面のいずれか1つ又は両者上に設置される。
【0058】
本出願の正極極板において、正極集電体は、金属箔シート又は複合集電体を採用してもよい。金属箔シートの例示として、正極集電体はアルミ箔を採用してもよい。複合集電体は、高分子材料基層及び高分子材料基層の少なくとも一つの表面上に形成された金属材料層を含んでもよい。例示的に、金属材料は、アルミ、アルミ合金、ニッケル、ニッケル合金、チタン、チタン合金、銀、銀合金のうちの一つ以上から選択されてもよい。例示的に、高分子材料基層は、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリスチレン(PS)、ポリエチレン(PE)などから選択されてもよい。
【0059】
本出願の正極極板において、正極膜層は正極活性材料を含み、正極活性材料は、本分野で公知の二次電池用の正極活性材料を採用してもよい。例示的に、正極活性材料は、リチウム遷移金属酸化物、オリビン構造のリチウム含有リン酸塩及びそれらの改質化合物のうちの1つ又は複数を含んでもよい。リチウム遷移金属酸化物の例示として、リチウムコバルト酸化物、リチウムニッケル酸化物、リチウムマンガン酸化物、リチウムニッケルコバルト酸化物、リチウムマンガンコバルト酸化物、リチウムニッケルマンガン酸化物、リチウムニッケルコバルトマンガン酸化物、リチウムニッケルコバルトアルミ酸化物及びそれらの改質化合物のうちの1つ又は複数を含んでもよいが、それらに限定されない。オリビン構造のリチウム含有リン酸塩の例示として、リン酸鉄リチウム、リン酸鉄リチウムと炭素との複合材料、リン酸マンガンリチウム、リン酸マンガンリチウムと炭素との複合材料、リン酸マンガン鉄リチウム、リン酸マンガン鉄リチウムと炭素との複合材料及びそれらの改質化合物のうちの1つ又は複数を含んでもよいが、それらに限定されない。本出願は、これらの材料に限定されるものではなく、二次電池の正極活性材料として使用されることができる他の従来の公知の材料を用いてもよい。これらの正極活性材料は、1つのみを単独で使用してもよいし、2つ以上を組み合わせて使用してもよい。
【0060】
本出願の正極極板において、上述各正極活性材料の改質化合物は、正極活性材料に対してドーピング改質をしたもの、表面被覆改質をしたもの、又は同時にドーピング改質と表面被覆改質をしたものであってもよい。
【0061】
本出願の正極極板において、正極膜層は、通常、正極活性材料と、選択的な接着剤と、選択的な導電剤とを含む。正極膜層は、通常、正極スラリーを正極集電体上に塗布し、乾燥、冷間プレスを経て形成される。正極スラリーは、通常、正極活性材料、選択的な導電剤、選択的な接着剤及び任意の他の成分を溶媒に分散させ、均一に攪拌して形成される。溶媒は、N-メチルピロリドン(NMP)であってもよいが、これに限定されない。例示的に、正極膜層に用いられる接着剤は、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニリデン-テトラフルオロエチレン-プロピレン三元共重合体、ポリフッ化ビニリデン-ヘキサフルオロプロペン-テトラフルオロエチレン三元共重合体、テトラフルオロエチレン-ヘキサフルオロプロペン共重合体、フッ素含有アクリレート樹脂のうちの1つ又は複数を含んでもよい。例示的に、正極膜層に用いられる導電剤は、超伝導性カーボン、アセチレンブラック、カーボンブラック、ケッチェンブラック、カーボンドット、カーボンナノチューブ、グラフェン、カーボンナノファイバーのうちの1つ又は複数を含んでもよい。説明すべきこととして、本出願に記載の各正極膜層の構成又はパラメータは、いずれも正極集電体の単一膜層の構成又はパラメータの範囲を示す。正極膜層が正極集電体の対向する2つの表面上に設置される場合、そのうちいずれかの表面上の正極膜層の構成又はパラメータが本出願を満たすと、本出願の保護範囲内にあるとみなす。
【0062】
[電解質]
電解質は、正極極板と負極極板との間で活性イオンを伝導する作用を果たす。本出願の二次電池は、電解質の種類に対して具体的に制限せず、需要に応じて選択することができる。例えば、電解質は、固体電解質及び液体電解質(即ち電解液)のうちの少なくとも1つから選択されてもよい。
【0063】
いくつかの実施形態では、電解質は、電解液を採用する。電解液は、電解質塩と溶媒とを含む。
【0064】
いくつかの実施形態では、電解質塩の種類は、具体的に制限されず、実際の需要に応じて選択することができる。例示的に、電解質塩は、LiPF(六フッ化リン酸リチウム)、LiBF(四フッ化ホウ酸リチウム)、LiClO(過塩素酸リチウム)、LiAsF(六フッ化ヒ酸リチウム)、LiFSI(リチウムビスフルオロスルホンイミド)、LiTFSI(リチウムビストリフルオロメタンスルホンイミド)、LiTFS(トリフルオロメタンスルホン酸リチウム)、LiDFOB(リチウムジフルオロ(オキサラト)ボレート)、LiBOB(リチウムビス(オキサラト)ボレート)、LiPO(ジフルオロリン酸リチウム)、LiDFOP(リチウムジフルオロビス(オキサラト)ホスフェート)及びLiTFOP(リチウムテトラフルオロ(オキサラト)ホスフェート)のうちの1つ又は複数から選択されてもよい。
【0065】
いくつかの実施形態では、溶媒の種類は、具体的に制限されず、実際の需要に応じて選択することができる。例示的に、溶媒は、エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)、メチルエチルカーボネート(EMC)、ジエチルカーボネート(DEC)、ジメチルカーボネート(DMC)、ジプロピルカーボネート(DPC)、メチルプロピルカーボネート(MPC)、エチルプロピルカーボネート(EPC)、ブチレンカーボネート(BC)、フルオロエチレンカーボネート(FEC)、ギ酸メチル(MF)、酢酸メチル(MA)、酢酸エチル(EA)、酢酸プロピル(PA)、プロピオン酸メチル(MP)、プロピオン酸エチル(EP)、プロピオン酸プロピル(PP)、酪酸メチル(MB)、酪酸エチル(EB)、1、4-ブチロラクトン(GBL)、スルホン(SF)、ジメチルスルホン(MSM)、メチルエチルスルホン(EMS)及びジエチルスルホン(ESE)のうちの1つ又は複数から選択されてもよい。
【0066】
いくつかの実施形態では、選択的に、溶媒は、非水系溶媒である。
【0067】
いくつかの実施形態では、電解液は、選択的に、添加剤をさらに含む。例えば、添加剤は、負極膜形成添加剤、正極膜形成添加剤を含んでもよく、電池の何らかの性能を改善できる添加剤、例えば、電池の過充電性能を改善する添加剤、電池の高温性能を改善する添加剤、電池の低温性能を改善する添加剤などを含んでもよい。
【0068】
[セパレータ]
電解液を採用する二次電池、及び固体電解質を採用するいくつかの二次電池には、セパレータがさらに含まれている。セパレータは、正極極板と負極極板との間に設置され、隔離の効果を果たす。本出願では、セパレータの種類に対して特に制限することはなく、よく知られている良好な化学的安定性と機械的安定性を有する任意の多孔質構造のセパレータを選択してもよい。いくつかの実施形態では、セパレータの材質は、ガラス繊維、不織布、ポリエチレン、ポリプロピレン及びポリフッ化ビニリデンのうちの一つ以上から選択されてもよい。セパレータは、単一層フィルムであってもよく、多層複合フィルムであってもよい。セパレータが多層複合フィルムである場合、各層の材料は同じであってもよく、異なってもよい。
【0069】
いくつかの実施形態では、正極極板、負極極板とセパレータは、巻回プロセス又は積層プロセスによって電極コンポーネントを製造することができる。
【0070】
いくつかの実施形態では、二次電池は、外装を含んでもよい。この外装は、上記電極コンポーネントと電解質のパッケージングに用いられてもよい。
【0071】
いくつかの実施形態では、二次電池の外装は、硬質ケース、例えば硬質プラスチックケース、アルミニウムケース、鋼製ケースなどであってもよい。二次電池の外装は、軟質バッグ、例えば袋式軟質バッグであってもよい。軟質バッグの材質は、プラスチック、例えば、ポリプロピレン(PP)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリブチレンサクシネート(PBS)等のうちの1つ又は複数であってもよい。
【0072】
本出願は、二次電池の形状に対して特に制限せず、それは円柱形、四角形又は他の任意の形状であってもよい。例えば、図2は、一例としての四角形構造の二次電池5である。
【0073】
いくつかの実施形態では、図3を参照すると、外装はケース51と蓋板53とを含んでもよい。ここでは、ケース51は底板及び底板に接続される側板を含むことができ、底板と側板は囲んで収容室を形成する。ケース51は、収容室に連通する開口を有し、蓋板53は、前記収容室を閉塞するように前記開口に覆設される。正極極板、負極極板及びセパレータは、巻回プロセス又は積層プロセスによって電極コンポーネント52を形成することができる。電極コンポーネント52は、前記収容室内にパッケージングされる。電解液は、電極コンポーネント52に浸み込んでいる。二次電池5に含まれる電極コンポーネント52の数は一つ又は複数であってもよく、需要に応じて調整してもよい。
【0074】
いくつかの実施形態では、二次電池を電池モジュールに組み立てもよく、電池モジュールに含まれる二次電池の数は複数であってもよく、具体的な数は、電池モジュールの応用と容量に基づいて選択してもよい。
【0075】
図4は、一例としての電池モジュール4である。図4を参照すると、電池モジュール4において、複数の二次電池5は、電池モジュール4の長さ方向に沿って順に配列して設けられてもよい。無論、他の任意の方式で配列してもよい。さらに、この複数の二次電池5を締め具によって固定してもよい。
【0076】
選択的に、電池モジュール4は、収容空間を有するハウジングをさらに含んでもよく、複数の二次電池5はこの収容空間に収容される。
【0077】
いくつかの実施形態では、上記電池モジュールをさらに電池パックに組み立てもよく、電池パックに含まれる電池モジュールの数は、電池パックの応用と容量に基づいて選択してもよい。
【0078】
図5図6は、一例としての電池パック1である。図5図6を参照すると、電池パック1には、電池ボックスと電池ボックスに設置された複数の電池モジュール4が含まれてもよい。電池ボックスは上部筐体2と下部筐体3とを含み、上部筐体2は下部筐体3に覆設され、電池モジュール4を収容するための密閉空間を形成する。複数の電池モジュール4は任意の方式で電池ボックスに配列することができる。
【0079】
電力消費装置
本出願の実施形態は、本出願による二次電池、電池モジュール、電池パック中の少なくとも一つを含む電力消費装置をさらに提供する。前記二次電池、電池モジュール又は電池パックは、前記電力消費装置の電源として用いられてもよく、前記電力消費装置のエネルギー貯蔵ユニットとして用いられてもよい。前記電力消費装置は、モバイルデバイス(例えば携帯電話、ノートパソコンなど)、電動車両(例えば純電気自動車、ハイブリッド電気自動車、プラグインハイブリッド電気自動車、電動自転車、電動スクーター、電動ゴルフカート、電動トラックなど)、電気列車、船舶と衛星、エネルギー貯蔵システムなどであってもよいが、それらに限らない。
【0080】
前記電力消費装置は、その使用上の需要に応じて二次電池、電池モジュール又は電池パックを選択してもよい。
【0081】
図7は、一例としての電力消費装置である。この電力消費装置は、純電気自動車、ハイブリッド電気自動車、又はプラグインハイブリッド電気自動車などである。この電力消費装置の高出力と高エネルギー密度の需要を満たすために、電池パック又は電池モジュールを採用してもよい。
【0082】
別の例としての電力消費装置は、携帯電話、タブレットパソコン、ノートパソコンなどであってもよい。この電力消費装置に、一般的には薄型化と軽量化が求められており、電源として二次電池を採用してもよい。
【0083】
実施例
以下の実施例は、本出願に開示された内容をより具体的に説明し、本出願の開示の範囲内で様々な修正及び変更が行われることが当業者に明らかであるため、これらの実施例は内容を説明するためにのみ使用される。別段の宣言がない限り、以下の実施例において報告されるすべての成分、パーセント、及び比率は重量に基づいて計算されるものであり、実施例において使用されるすべての試薬、第一の活性材料、第二の活性材料は、市販又は従来の方法による合成によって得られ、また、実施例において使用される機器はいずれも市販によって得られる。
【0084】
実施例1-9
実施例1-9の本出願の負極極板を含むリチウムイオン電池は、以下の方法で製造される。
【0085】
負極極板の製造
1.表1に基づき、第一の活物質層の第一の活性材料と、導電剤Super-Pと、接着剤SBRと、増粘剤CMCとを96:1:2:1の質量比に従って混合させ、溶媒である脱イオン水体系に十分に攪拌して均一に混合した後、スラリーAを得る。
【0086】
2.表1に基づき、第二の活物質層の第二の活性材料と、導電剤Super-Pと、接着剤SBRと、増粘剤CMCとを質量比96:1:2:1に従って混合させ、溶媒である脱イオン水体系に十分に攪拌して均一に混合した後、スラリーBを得る。
【0087】
3.表1に基づき、スラリーAをCu箔上に塗布してから乾燥し、第一の活物質層を塗布した極板Aを得る。
【0088】
4.表1に基づき、極板Aの表面にスラリーBを塗布し、乾燥し、そして冷間プレス、スリットを経て二層の活物質層を有する負極極板を得る。
【0089】
そのうち、第一の活物質層と第二の活物質層の塗布量は、それぞれCWとCWを満たす。
【0090】
正極極板の製造
正極活性材料LiFePOと、導電剤アセチレンブラックと、接着剤ポリフッ化ビニリデン(PVDF)とを質量比96:2:2に従って混合させ、溶媒N-メチルピロリドン(NMP)を加え、真空ミキサーの作用で体系が均一状態になるまで攪拌し、正極スラリーを得る。正極集電体アルミ箔上に正極スラリーを均一に塗布し、室温乾燥後、オーブンに移送して乾燥を継続し、そして冷間プレス、スリットを経て、正極極板を得る。
【0091】
電解液の製造
エチレンカーボネート(EC)と、メチルエチルカーボネート(EMC)と、ジエチルカーボネート(DEC)とを体積比1:1:1に従って混合して有機溶媒を得、続いて、十分に乾燥したリチウム塩LiPFを上記有機溶媒に溶解し、濃度1mol/Lの電解液を調製する。
【0092】
セパレータの製造
セパレータとしてポリエチレン膜を用いる。
【0093】
二次電池の製造
正極極板と、セパレータと、負極極板とを順次積層し、隔離作用を奏するようにセパレータを正極極板と負極極板との間に位置させ、そして巻回して電極コンポーネントを得る。電極コンポーネントを外装に置き、乾燥後に電解液を注入し、真空パッケージング、静置、化成、整形などの工程を経て二次電池を得る。
【0094】
比較例1-3
比較例1-3の二次電池の製造方法は、実施例1-13と類似しており、相違点は、負極極板の製造プロセスにあり、その詳細は表1に示すとおりである。
【0095】
テスト部分
エネルギー密度:25℃で、リチウムイオン電池を1Cの定電流で4.2Vまで充電し、そして4.2Vの定電圧で0.05C未満の電流まで充電し、そして0.1Cで2.8Vまで放電し、放電エネルギーQを得る。電池の質量をMとすると、エネルギー密度=Q/Mとなる。
【0096】
充電時間:25℃で、85%SOC時のリチウム析出ウィンドウレートを85%SOCまで定電流充電するための所要時間は、本出願に記載の充電時間である。
【0097】
【表1】
【0098】
本出願は、負極に二層又は多層の活物質層を採用し、各層の活物質層の層間距離と塗布重量との関係を調整・制御することにより、より高いエネルギー密度とより良好な充放電の動力学性能を兼ねる電池負極を得ることができる。
【0099】
表1に基づき、実施例1-9と比較例1-3とを比べると、負極に二層の活物質層を採用し、各層の活物質層の層間距離と塗布重量との関係を調整・制御することにより、よりエネルギー密度とより良好な充放電の動力学性能を兼ねる二次電池が得られることが分かる。簡単に言えば、本発明の方法により製造された負極材料は、いずれも充電時間≦75min、0.3Cエネルギー密度≧170Wh/kgを満たす。
【0100】
比較例1-3は、本出願の各層の活物質層の層間距離と塗布重量との間の関係を満たしておらず、具体的には、比較例1と本出願の実施例1とを比べると、比較例1の第二の活性材料には層間距離がより大きいハードカーボンが採用され、その容量密度は本出願の実施例1よりもはるかに低い。つまり、二層目の活物質層の活性材料の層間距離が大きいほど、その充電能力が高くなるが、容量が低くなり、エネルギー密度と充放電の動力学性能を両立できないことは明らかである。実施例1と比べると、比較例2では、層間距離相対係数αは、本出願の範囲(1≦α≦1.12)外であり、エネルギー密度と充放電の動力学性能を両立することもできない。実施例1と比べると、比較例3は単一層塗布であり、同一塗布量の前提で、単一層塗布はエネルギー密度と充放電の動力学性能を両立することができない。
【0101】
さらに、実施例1-3と比べると、実施例5のCW/(CW+CW)は本出願の範囲を超え、充放電の動力学性能が良好であるにもかかわらず、エネルギー密度との両立が不可能であり、逆に、実施例4のCW/(CW+CW)は本出願の範囲を超え、エネルギー密度が良好であるにもかかわらず、充放電の動力学性能との両立が不可能である。
【0102】
さらに、実施例1、実施例6、実施例7と比べると、実施例8と実施例9のDb50/Da50は、本出願の範囲外であり、エネルギー密度と充放電の動力学性能を両立することもできない。
【0103】
以上に記述されているのは、本出願の具体的な実施形態に過ぎず、本出願の保護範囲は、それに限らない。いかなる当業者が、本出願に掲示される技術的範囲内に、容易に想到できる変形又は置き換えは、いずれも、本出願の保護範囲内に含まれるべきである。このため、本出願の保護範囲は、特許請求の範囲の保護範囲を基準とすべきである。
【0104】
説明すべきこととして、本出願は上記実施形態に限定されない。上記実施形態は例示に過ぎず、本出願の技術案の範囲内で、技術思想と実質的に同一の構成を有し、同様な作用と効果を奏する実施形態は、いずれも本出願の技術範囲内に含まれるものとする。なお、本出願の主旨から逸脱しない範囲内で、実施形態に対して当業者が想到し得る様々な変形を実施し、実施形態における一部の構成要素を組み合わせて構築される他の形態も、本出願の範囲内に含まれるものとする。
【符号の説明】
【0105】
図面において、図面は、実際の縮尺通りに描かれてはいない。
1電池パック
2上部筐体
3下部筐体
4電池モジュール
5二次電池
51ケース
52電極コンポーネント
53蓋板。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
【国際調査報告】