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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-12-14
(54)【発明の名称】腫瘍特異的T細胞の検出方法
(51)【国際特許分類】
   C12Q 1/04 20060101AFI20231207BHJP
   C12N 5/078 20100101ALN20231207BHJP
【FI】
C12Q1/04
C12N5/078
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023516520
(86)(22)【出願日】2020-09-25
(85)【翻訳文提出日】2023-03-10
(86)【国際出願番号】 CN2020117952
(87)【国際公開番号】W WO2022061791
(87)【国際公開日】2022-03-31
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TRITON
(71)【出願人】
【識別番号】523089092
【氏名又は名称】蘇州爾生生物医薬有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】100130111
【弁理士】
【氏名又は名称】新保 斉
(72)【発明者】
【氏名】劉 密
【テーマコード(参考)】
4B063
4B065
【Fターム(参考)】
4B063QA01
4B063QQ08
4B063QQ79
4B063QR77
4B063QS33
4B063QX02
4B065AA92X
4B065AC14
4B065BB23
4B065CA24
4B065CA46
(57)【要約】
【課題】 腫瘍特異的T細胞の検出方法を提供することを課題とする。
【解決手段】 本発明は、腫瘍特異的T細胞の検出方法を開示し、腫瘍細胞又は腫瘍組織の全細胞を収集した後、遊離の全細胞を用いるか、細胞溶解物をナノ/マイクロ粒子に担持した後、末梢からの末梢免疫細胞と共培養し、癌特異性T細胞が活性化され後腫瘍特異的T細胞の特異的分子を検出することで、末梢血などの末梢組織における癌特異性T細胞の含有量を確認できる。本発明の全細胞溶解物成分は、水溶性成分及び非水溶性成分であり、遊離状態又はナノ粒子或いはマイクロ粒子に担持され、担持方法は全細胞の水溶性成分及び非水溶性成分が粒子の内部に別々に又は同時に内包され、及び/又は粒子の表面に別々に又は同時に担持されることである。検出方法は、フローサイトメトリー、酵素結合免疫スポット検定法、酵素結合免疫吸着検定法、金コロイド免疫クロマトグラフィー、遺伝子検出技術などである。
【選択図】 図8

【特許請求の範囲】
【請求項1】
腫瘍細胞、腫瘍組織の全細胞、腫瘍細胞溶解物成分、腫瘍組織の全細胞溶解物成分を含むアクチベーターを末梢免疫細胞とインキュベートし、次に腫瘍特異的T細胞の特異的分子を検出し、腫瘍特異的T細胞の検出を実現する工程を含む、腫瘍特異的T細胞の検出方法。
【請求項2】
腫瘍細胞、腫瘍組織の全細胞、腫瘍細胞溶解物成分、腫瘍組織の全細胞溶解物成分を含むアクチベーターを末梢免疫細胞とインキュベートし、次に腫瘍特異的T細胞の特異的分子を検出し、さらに末梢免疫細胞の数に対する腫瘍特異的T細胞の数の比率に従って腫瘍特異的T細胞の含有量を得る工程を含む、腫瘍特異的T細胞含有量の検出方法。
【請求項3】
前記溶解物成分が、水溶性溶解物成分及び/又は非水溶性溶解物成分であることを特徴とする、請求項1又は2に記載の検出方法。
【請求項4】
前記溶解物成分が、遊離溶解物成分又はマイクロ・ナノ粒子に担持された溶解物成分であることを特徴とする、請求項1又は2に記載の検出方法。
【請求項5】
前記溶解物成分が、マイクロ・ナノ粒子の内部及び/又は表面に担持されていることを特徴とする、請求項4に記載の検出方法。
【請求項6】
前記マイクロ・ナノ粒子の調製材料が、有機材料、無機材料又は生物材料であり、前記マイクロ・ナノ粒子がマイクロ粒子又はナノ粒子であることを特徴とする、請求項4に記載の検出方法。
【請求項7】
前記インキュベートの条件は、細胞が生存できる条件であることを特徴とする、請求項1又は2に記載の検出方法。
【請求項8】
前記腫瘍が、血液腫瘍及び固形腫瘍を含み、前記特異的分子がタンパク質、ポリペプチド、核酸、糖質又は脂質であることを特徴とする、請求項1又は2に記載の検出方法。
【請求項9】
末梢免疫細胞内の腫瘍特異的T細胞の検出におけるアクチベーターの応用であって、前記アクチベーターには、腫瘍細胞、腫瘍組織の全細胞、腫瘍細胞溶解物成分、腫瘍組織の全細胞溶解物成分が含まれることを特徴とする、応用。
【請求項10】
前記溶解物成分が、遊離溶解物成分又はマイクロ・ナノ粒子に担持された溶解物成分であることを特徴とする、請求項9に記載の応用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、免疫療法及び免疫検出の分野に属し、特に、全細胞に基づく腫瘍特異的T細胞の検出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
免疫技術は近年、特に癌免疫療法の分野において急速に発展している。癌に対する理解が深まるにつれ、癌の発生と進行を抑制する過程において、ヒトの免疫系と様々な免疫細胞が重要な役割を果たしていることが明らかになってきた。近年、PD-1抗体及びCAR-T細胞療法が相次いで承認されることで、臨床応用され、臨床効果も良好であるが、癌ワクチン及びPD-1抗体などの癌免疫療法は、一部の患者にしか効果がない。投薬前又は投薬時に免疫療法薬の有効性及び患者の予後をどのように判断できるかは非常に重要である。
【0003】
先行技術は、腫瘍特異的T細胞含有量の検出に有効に使用できる検出粒子、その調製方法は、それを含むキット、及びそれを利用して腫瘍特異的T細胞含有量の検出を実施する検出方法、試験対象サンプル中の活性化された腫瘍特異的T細胞から分泌される細胞分泌物、活性化された腫瘍特異的T細胞の増殖状態、又は活性化された腫瘍特異的T細胞の細胞表面マーカーうちのいずれか1種又は複数種に基づき該腫瘍特異的T細胞含有量の検出を実施する際に腫瘍特異的T細胞を活性化するために使用することを開示している。免疫療法は、癌特異的/関連抗原によって活性化されたT細胞によって腫瘍細胞を殺す免疫系に依存しているため、患者の体内の癌特異的T細胞の含有量は、免疫療法の有効性と密接に関連している。しかし、現在、患者の末梢血中の癌特異的T細胞の含有量を網羅的かつ正確に検出する有効な手段はない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、癌患者の予後に関する参照情報を提供できる末梢組織における腫瘍特異的T細胞及びその含有量を検出する方法を提供する。腫瘍特異的T細胞および腫瘍細胞、腫瘍組織の全細胞、腫瘍細胞溶解物成分、腫瘍組織の全細胞溶解物成分又は溶解物成分を担持したマイクロ・ナノ粒子は、共培養後に活性化され、いくつかの特異的分子を分泌又は発現し、分泌又は発現されたこれらの特異的分子を検出することで、腫瘍細胞特異性T細胞の含有量を測定でき、鍵となる技術はT細胞の活性化である。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、次のような技術的手段を講じる。腫瘍特異的T細胞の検出方法であって、アクチベーターを末梢免疫細胞とインキュベートし、次に腫瘍特異的T細胞の特異的分子を検出し、腫瘍特異的T細胞の検出を実現する工程を含む。
【0006】
腫瘍特異的T細胞含有量の検出方法であって、アクチベーターを末梢免疫細胞とインキュベートし、次に腫瘍特異的T細胞の特異的分子を検出し、さらに末梢免疫細胞の数に対する腫瘍特異的T細胞の数の比率に従って腫瘍特異的T細胞の含有量を得る工程を含む。
【0007】
本発明において、アクチベーターは、腫瘍細胞、腫瘍組織の全細胞、腫瘍細胞溶解物成分、腫瘍組織の全細胞溶解物成分、免疫アジュバントを含み、腫瘍細胞溶解物成分、腫瘍組織の全細胞溶解物成分中の溶解物成分は水溶性溶解物成分であり得、非水溶性溶解物成分であってもよく、好ましくは水溶性溶解物成分及び非水溶性溶解物成分である。
【0008】
本発明において、アクチベーターは、遊離細胞又は遊離溶解物成分であり得、マイクロ・ナノ粒子上に担持された溶解物成分であってもよく、好ましくは遊離溶解物成分又はマイクロ・ナノ粒子上に担持された溶解物成分であってもよく、溶解物はマイクロ・ナノ粒子の内部及び/又は表面に担持される。溶解物成分はマイクロ・ナノ粒子の内部及び/又は表面に担持される方法は、非共有結合吸着、静電相互作用、疎水性相互作用、水素結合相互作用、共有結合等を含むが、これらに限定されない。本発明は、水溶性成分を担持したマイクロ・ナノ粒子及び非水溶性成分を担持したマイクロ・ナノ粒子を同時に使用することができ、水溶性及び非水溶性の成分を同時に担持したマイクロ・ナノ粒子を使用してもよく、又は水溶性成分のみを担持したマイクロ・ナノ粒子を使用し、或いは非水溶性成分のみを担持したマイクロ・ナノ粒子を使用する。
【0009】
本発明において、インキュベートの条件は、細胞が生存できる条件、例えば4℃~60℃、好ましくは37℃であり、インキュベート時間は1~100時間、例えば5~70時間、好ましくは10~50時間である。
【0010】
本発明において、マイクロ・ナノ粒子は、有機材料、無機材料、又は合成高分子材料、天然高分子材料或いは無機材料などの生物材料であり得る。マイクロ・ナノ粒子はマイクロ粒子又はナノ粒子であり、ナノ粒子の粒径は1nm~1000nm、好ましくは30nm~800nm、より好ましくは50nm~600nmであり、マイクロ粒子の粒径は1μm~1000μm、好ましくは1μm~100μm、より好ましくは1μm~10μm、最も好ましくは1μm~5μmである。具体的にはマイクロ・ナノ粒子の調製方法は、溶媒揮発法、透析法、押出法、ホットメルト法などの先行技術であり、マイクロ・ナノ粒子の形状は、球形、楕円形、樽形、多角形、線形、ワーム形状、方形、三角形、蝶形、ディスク形などで、限定されない。
【0011】
本発明において、細胞溶解物成分をマイクロ・ナノ粒子に担持する方法は、ダブルエマルション法などの溶媒揮発法であり、細胞溶解物をマイクロ・ナノ粒子に担持した他の方法も用いることができる。具体的には、アクチベーターがマイクロ・ナノ粒子上に担持された細胞溶解物成分の場合、調製方法は水相溶液をマイクロ・ナノ粒子材料の有機相溶液に添加し、超音波又は攪拌或いは均質化処理に一次乳化剤溶液に加え、さらに超音波又は攪拌或いは均質化処理を経てから二次乳化剤溶液に加え、攪拌した後細胞溶解物成分を担持するマイクロ・ナノ粒子が得られ、アクチベーターとする。例えば次の工程を含み、工程(1):水相溶液を高分子材料の有機相溶液に添加し、超音波又は攪拌或いは均質化処理後に一次乳化剤溶液に加え、さらに超音波又は攪拌或いは均質化処理を経てから二次乳化剤溶液に加え、攪拌後に遠心分離し、ペレットを再懸濁して残渣を得る又は限外ろ過後で残渣を得る。
【0012】
工程(2):工程(1)の残渣を凍結乾燥してから分散液に分散させるか、工程(1)の残渣を分散液に分散させてから水相溶液を加え、混合後静置し、アクチベーターとするマイクロ・ナノ粒子が得られる。
【0013】
二次乳化剤溶液に添加し、攪拌後、遠心分離又は限外ろ過することで、内部に溶解物成分、或いは溶解物成分/免疫アジュバントを担持したマイクロ・ナノ粒子が得られる。さらに、上記内部に溶解物成分又は溶解物成分/免疫アジュバントを担持したマイクロ・ナノ粒子表面に、溶解物成分又は溶解物成分/免疫アジュバントを担持させる。
【0014】
上記の水相溶液は、溶解物成分溶液、又は溶解物成分/免疫アジュバント溶液であり、超音波はプローブ超音波或いはその他の超音波方法であり、攪拌は機械的攪拌、磁気攪拌等であり、均質化処理は高圧均質化処理或いは高せん断均質化処理等である。
【0015】
好ましくは、水相溶液が溶解物成分溶液の場合、タンパク質及びポリペプチドの濃度は、1ng/mLより高く、好ましくは1mg/mL~100mg/mLであり、水相溶液が溶解物成分/免疫アジュバント溶液の場合、タンパク質及びポリペプチド的濃度は、1ng/mLより高く、好ましくは1mg/mL~100mg/mLで、免疫アジュバントの濃度は0.01ng/mLより高く、好ましくは0.01mg/mL~20mg/mLである。高分子材料有機相溶液において、溶媒はDMSO、アセトニトリル、エタノール、クロロホルム、メタノール、DMF、イソプロパノール、ジクロロメタン、プロパノール、酢酸エチル等であり、好ましくはジクロロメタンであり、高分子材料の濃度は0.5mg/mL~5000mg/mLで、好ましくは100mg/mLである。一次乳化剤溶液は、10mg/mL~50mg/mL、好ましくは20mg/mLの濃度を有するポリビニルアルコール水溶液であることが好ましい。二次乳化剤溶液は、1mg/mL~20mg/mL、好ましくは5mg/mLの濃度を有するポリビニルアルコール水溶液であることが好ましい。分散液は、PBS緩衝液又は生理食塩水或いは純水である。
【0016】
好ましくは、攪拌が機械攪拌又は磁気攪拌の場合、攪拌速度は50rpmを上回り、攪拌時間は1分を上回り、例えば攪拌速度は50rpm~1500rpm、攪拌時間は0.5時間~5時間である。超音波処理の場合、超音波出力は、50W~500Wであり、時間が0.1秒を上回り、例えば2~200秒である。均質化処理の場合、高圧/超高圧ホモジナイザー又は高せん断ホモジナイザーを使用し、高圧/超高圧ホモジナイザーを使用する時の圧力は20psiを上回り、高せん断ホモジナイザーを使用する時の回転数は1000rpmを上回る。超音波又は攪拌或いは均質化処理でナノメートル化を行い、超音波時間の長さ又は攪拌速度或いは均質化処理の圧力及び時間は、調製されたナノ粒子のサイズを制御でき、大きすぎるか、小さすぎると、粒径の大きさの変化をもたらす。
【0017】
本発明において、水相溶液、高分子材料有機相溶液の体積比は、1:(1.1~5000)、好ましくは1:(1.5~500)であり、高分子材料有機相溶液、一次乳化剤溶液の体積比は1:(1.1~1000)、好ましくは1:(1.5~500)であり、一次乳化剤溶液、二次乳化剤溶液の体積比は1:(1.5~2000)、好ましくは1:(2~500)であり、分散液、水相溶液の体積比は1:10000~10000:1、好ましくは1:100~100:1、最も好ましくは1:30~30:1である。
【0018】
本発明において、癌細胞又は腫瘍組織の全細胞は遊離状態にある。前記腫瘍としては、内分泌系腫瘍、神経系腫瘍、生殖器系腫瘍、消化器系腫瘍、呼吸器系腫瘍、血液癌、皮膚癌、乳癌、肺癌、肝臓癌、胃癌、膵臓癌、脳癌 結腸癌、前立腺癌、直腸癌、頭頸部癌、腎臓癌、骨癌、鼻癌、膀胱癌、甲状腺癌、食道癌、子宮頸癌、卵巣癌、子宮癌、骨盤癌、精巣癌、陰茎癌、リンパ腫、舌癌、歯肉癌、網膜芽細胞腫、肉腫などの血液腫瘍及び固形腫瘍が挙げられる。
【0019】
本発明において非水溶性溶解物成分を溶解するための溶解補助剤は、尿素水溶液、グアニジン塩酸塩溶液、デオキシコール酸ナトリウム水溶液、SDS水溶液、グリセリン水溶液、アルカリ溶液、酸性溶液、タンパク質分解酵素水溶液、アルブミン水溶液、レシチン水溶液、無機塩水溶液、ポリエチレングリコールオクチルフェニルエーテル(Triton)水溶液、ジメチルスルホキシド(DMSO)、アセトニトリル、エタノール、メタノール、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)、プロパノール、イソプロパノール、ツイーン、酢酸、コレステロール、アミノ酸、グリコシド、コリンである。非水溶性溶解物成分は、溶解補助剤又は有機溶媒に溶解することができ、前記有機溶媒はDMSO、グリセロール、アセトニトリル、エタノール、メタノール、DMF、イソプロパノール、ジクロロメタン、プロパノール、酢酸エチルなどが挙げられる。
【0020】
本発明において、アクチベーターがT細胞を活性化した後、T細胞から分泌される特異的分子は、タンパク質、ポリペプチド、核酸、糖質(炭水化物)或いは脂質である。特異的分子は、発現後細胞膜、細胞質、オルガネラ又は核に位置することができ、腫瘍特異的T細胞は定性的又は定量的に検出されることができる。検出方法としては、フローサイトメトリー、酵素結合免疫スポット検定法、酵素結合免疫吸着検定法、金コロイド免疫クロマトグラフィー、遺伝子検出技術、マルチサイトカイン検出技術が挙げられるが、これらに限定されない。
【0021】
本発明の免疫アジュバントは、免疫増強剤又は免疫抑制剤であり、免疫増強剤又は免疫抑制剤の添加方法は、マイクロ・ナノ粒子内部のみに内包されること、マイクロ・ナノ粒子の表面にのみ担持されること、マイクロ・ナノ粒子内部に内包されると同時にマイクロ・ナノ粒子の表面に担持されることを含む。免疫増強アジュバントは、IFN-γ、IL-12 等の炎症誘発性細胞マーカーを分泌或いは発現できる免疫細胞の検出を強化するために用いられる。免疫抑制アジュバントは、IL-10などの抗炎症細胞マーカーを分泌或いは発現できる免疫細胞の検出を強化するために用いられる。
【発明の効果】
【0022】
本発明提供了一種採用遊離の全細胞成分或負載于粒子的全細胞裂解成分活性化末梢組織中癌特異性T細胞,従来の検出技術で活性化され癌特異性T細胞の含有量を検出し、癌免疫療法の有効性を裏付ける情報が得られる。先行技術では、ポリペプチド抗原で癌特異的T細胞を刺激・活性化する場合、活性化され、その後検出される癌特異的T細胞が不正確になり、その後の免疫療法の設計及び治療効果に影響を与える。本発明において、癌細胞又は組織の全細胞成分の遊離状態或いは全細胞成分をナノ/マイクロ粒子に担持し、癌特異的T細胞を活性化し、活性化された癌特異的T細胞の含有量を検出するために用いられ、検出された癌特異的T細胞含有量は、より広範かつ正確である。
【0023】
本発明の実施例又は先行技術における技術的手段をより明確に説明するため、以下、実施例又は先行技術の描写に必要な図面を簡単に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本発明のアクチベーターの調製の流れ図である。
図2】水溶性及び非水溶性の細胞成分を担持したマイクロ・ナノ粒子の概略構成図である。
図3】水溶性及び非水溶性の細胞成分を担持したマイクロ・ナノ粒子の概略構成図である。
図4】水溶性及び非水溶性の細胞成分を担持したマイクロ・ナノ粒子の概略構成図である。
図5】水溶性及び非水溶性の細胞成分を担持したマイクロ・ナノ粒子の概略構成図である。
図6】実施例1のメラノーマの実験結果を示すグラフである。
図7】実施例2の乳癌の実験結果を示すグラフである。
図8】実施例3のメラノーマの実験結果を示すグラフである。
図9】実施例4の肺癌の実験結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下の実験結果において、腫瘍増殖抑制実験のグラフの各データ点は平均値±標準誤差(mean±SEM)であり、その他の実験データ点は平均値±標準偏(mean±SD)であり、腫瘍増殖抑制実験の有意差解析にはANOVA法を用い、他の実験での有意差はt検定で解析する。* は、この群が対照群と比較してP<0.05で有意差があることを示す。**はこの群が対照群と比較してP<0.01で有意差があることを示す。***は、この群が対照群と比較してP<0.0001で有意差があることを示す。
【0026】
本発明は、末梢組織における腫瘍特異的T細胞の含有量を検出して、患者の予後を予測し、疾患の診断と治療に役立つ方法を開示する。当業者は、本明細書の内容を参照して、プロセス パラメータを適切に改善して達成できる。特筆すべきことは、全ての均等物による置換及び改良は当業者には自明であり、本発明に含まれると見なされる。本発明の方法及び製品は、好ましい実施形態を通じて説明され、当業者は、明らかに本発明の内容、精神、及び範囲から逸脱することなく、本明細書に記載された方法を改良或いは適切に変更及び組み合わせることで、本発明を実現及び応用することができる。
【0027】
本発明は、末梢組織における腫瘍特異的T細胞及びその含有量を検出する技術を開示する:アクチベーターを末梢免疫細胞と共にインキュベートし、次に腫瘍特異的T細胞の特異的分子を検出して、腫瘍特異的T細胞の検出を実現する。アクチベーターを末梢免疫細胞と共にインキュベートし、次に腫瘍特異的T細胞の特異的分子を検出し、さらに末梢免疫細胞の数に対する腫瘍特異的T細胞の数の比率に従って、腫瘍特異的T細胞の含有量が得られる。
【0028】
本発明は、腫瘍組織の全細胞又は腫瘍細胞を検出に使用する場合、次の3つの工程に分けることができる。(1)腫瘍細胞又は腫瘍組織を収集する工程、(2)腫瘍細胞又は腫瘍組織の全細胞を末梢組織のT細胞等免疫細胞を含有するサンプルと10分以上、例えば16時間共培養する工程、(3)フローサイトメトリー、酵素結合免疫スポット検定法(ELISPOT)、酵素結合免疫吸着検定法(ELISA)、マルチサイトカイン検出法等の方法でT細胞の活性化をマークする特異的分子を検出する工程。前記特異的分子は、T細胞外に分泌されることができるか、T細胞の表面に発現することができる或いはT細胞の内部に位置する。前記特異的分子は、タンパク質,核酸,糖質又は脂質であり得る。
【0029】
本発明は、癌細胞溶解物成分又は腫瘍組織溶解物成分を担持したナノ/マイクロ粒子を検出に使用する場合、次の4つの工程に分けることができる。(1)腫瘍細胞又は腫瘍組織を収集する工程、(2)腫瘍細胞溶解物成分又は腫瘍組織の全細胞溶解物成分を調製して、マイクロ・ナノ粒子に担持される工程、(3)溶解物成分を担持したマイクロ・ナノ粒子又は溶解物成分を末梢組織のT細胞等免疫細胞を含有するサンプルと10分以上、例えば16時間共培養する工程、(4)フローサイトメトリー、酵素結合免疫スポット検定法(ELISPOT)、酵素結合免疫吸着検定法(ELISA)、マルチサイトカイン検出法等の方法でT細胞の活性化をマークする特異的分子を検出する工程。前記特異的分子は、T細胞外に分泌されることができるか、T細胞の表面に発現することができる或いはT細胞の内部に位置する。前記特異的分子は、タンパク質,核酸,糖質又は脂質であり得る。
【0030】
本発明において、腫瘍細胞或いは腫瘍組織の全細胞は、溶解前又は(及び)溶解後に不活化又は(及び)変性する処理を経てから使用でき、溶解前又は(及び)溶解後に不活化又は(及び)変性する処理を経ずに直接使用することができる。不活化又は(及び)変性する処理方法としては、紫外線照射、高温加熱であり得、実際の使用過程では、放射線照射、高圧、凍結乾燥及びホルムアルデヒドなどの不活性化又は変性する処理方法も用いることができる。実際の応用過程で当業者が具体的な状況に応じて適切に調整することができることを当業者が理解できる。
【0031】
さらに、アクチベーターは、免疫抑制剤又は免疫増強剤である免疫アジュバントを含み、マイクロ・ナノ粒子内のみに内包されることができ、マイクロ・ナノ粒子内に内包されると同時にマイクロ・ナノ粒子の表面に担持され、又はマイクロ・ナノ粒子の表面のみに担持されることができる。
【0032】
図1は、本発明のアクチベーターの調製の流れ図である。全細胞を担持したマイクロ・ナノ粒子の概略構成図は、図2図5に示される。実際の使用過程では、特定の構造を持つマイクロ・ナノ粒子の1種を使用することも、異なる構造を持つ2種以上のマイクロ・ナノ粒子を同時に使用することもできる。図2では、マイクロ・ナノ粒子の表面及び内部に免疫アジュバントが含まれる。図3では、免疫アジュバントはマイクロ・ナノ粒子の内部にのみ分布している。図4では、マイクロ・ナノ粒子は外面にのみ免疫アジュバントが含まれる。図5では、マイクロ・ナノ粒子の内部及び外面に免疫アジュバントがない。図2の2a~2j、図3の6a~6j、図4の10a~10j及び図5の14a~14jにおけるマイクロ・ナノ粒子が担持する細胞又は組織成分内の水溶性成分或いは非水溶性成分は、マイクロ・ナノ粒子の内部に分布している場合、明らかな内核は形成されない。図2の3a~3j、図3の7a~7j、図4の11a~11j及び図5図15a~15jにおけるマイクロ・ナノ粒子が担持する細胞又は組織成分内の水溶性成分或いは非水溶性成分は、マイクロ・ナノ粒子の内部に分布している場合、内核部分が形成され、内核は調製プロセス中に生成されるか、ポリマー又は無機塩等の方法で形成されるものであり得る。図2の4a~4j、図3の8a~8j、図4の12a~12j、図5の16a~16jにおけるマイクロ・ナノ粒子が担持する細胞又は組織成分内の水溶性成分或いは非水溶性成分は、マイクロ・ナノ粒子の内部に分布している場合、複数の内核部分が形成され、内核は調製プロセス中に生成されるか、ポリマー又は無機塩等の方法で形成されるものであり得る。図2の5a~5j、図3の9a~9j、図4の13a~13j及び図5の17a~17jにおけるマイクロ・ナノ粒子が内包する細胞又は組織成分内の水溶性成分或いは非水溶性成分は、マイクロ・ナノ粒子の内部に分布している場合、形成された内核の外層に位置する。各図において、1は細胞又は組織成分内の水溶性成分、2は細胞又は組織成分内の非水溶性成分、3は免疫アジュバント、4はマイクロ・ナノ粒子、5はマイクロ・ナノ粒子内の内核部分を表す。aは、マイクロ・ナノ粒子の内部に内包されるもの及び表面に担持されるものがどちらも細胞又は組織成分内の水溶性成分、bは、マイクロ・ナノ粒子の内部に内包されるもの及び表面に担持されるものがどちらも細胞又は組織成分内の非水溶性成分、cは、マイクロ・ナノ粒子の内部に内包されるものが細胞又は組織成分内の非水溶性成分で、表面に担持されるものが細胞又は組織成分内の水溶性成分、dは、マイクロ・ナノ粒子の内部に内包されるもの細胞又は組織成分内の水溶性成分で、表面に担持されるものが細胞又は組織成分内の非水溶性成分、eは、マイクロ・ナノ粒子の内部に同時に内包されるのが細胞又は組織成分内の水溶性成分及び非水溶性成分で、マイクロ・ナノ粒子の表面にも同時に担持されるのが細胞又は組織成分内の水溶性成分及び非水溶性成分、fは、マイクロ・ナノ粒子の内部に同時同時に内包されるのが細胞又は組織成分内の水溶性成分及び非水溶性成分で、マイクロ・ナノ粒子の表面にのみ担持されるのが細胞又は組織成分内の水溶性成分、gは、マイクロ・ナノ粒子の内部に同時同時に内包されるのが細胞又は組織成分内の水溶性成分及び非水溶性成分で、マイクロ・ナノ粒子の表面にのみ担持されるのが細胞又は組織成分内の非水溶性成分、hは、マイクロ・ナノ粒子の内部にのみ内包されるのが細胞又は組織成分内の非水溶性成分で、マイクロ・ナノ粒子の表面に同時に担持されるのが細胞又は組織成分内の水溶性成分及び非水溶性成分、iは、マイクロ・ナノ粒子の内部にのみ内包されるのが細胞又は組織成分内の水溶性成分で、マイクロ・ナノ粒子の表面に同時に担持されるのが細胞又は組織成分内の水溶性成分及び非水溶性成分であることを表す。
【0033】
いくつかの実施形態では、まず細胞溶解物成分をマイクロ・ナノ粒子に内包すると共に免疫アジュバントを内包することができ、次に細胞溶解物成分をマイクロ・ナノ粒子の表面に担持させ、同時にマイクロ・ナノ粒子の表面に免疫アジュバントを担持させる。実際の応用では、溶解補助剤(8M尿素水溶液又は6Mグアニジン塩酸塩溶液)で腫瘍細胞又は腫瘍組織の全細胞を直接溶解した後、細胞溶解物成分を直接溶解してからマイクロ・ナノ粒子に担持させることができる。
【0034】
細胞溶解物成分をマイクロ・ナノ粒子に担持する方法は、溶媒揮発法であり、細胞溶解物成分をマイクロ・ナノ粒子に担持できる他の方法も使用できる。いくつかの実施形態において、ナノ粒子の調製は、溶媒揮発法におけるダブルエマルション法を用い、用いられるマイクロ・ナノ粒子の調製材料は有機ポリマーのポリ乳酸-グリコール酸共重合体(PLGA)などのポリマー材料であり、その分子量は24KDa~38KDaで、PLGA材料は生物分解性材料であり、ドレッシング材としてFDAによって承認され、マイクロ・ナノ粒子の調製材料に適する。用いられる免疫アジュバントは、poly(I:C)又はCpGである。
【0035】
好ましくは、工程(1)の残渣を凍結乾燥するのは、工程(1)の残渣を凍結乾燥保護剤の水溶液に再懸濁してから凍結乾燥する。凍結乾燥保護剤は、好ましくはトレハロース(Trehalose)又はスクロースで、濃度は2~8wt%、好ましくは3~6wt%である。
【0036】
本発明において、ナノ粒子の調製は、ダブルエマルション法を用い、実際の生産中では他の一般的に使用されるマイクロ・ナノ粒子調製方法を用いることもできる。マイクロ・ナノ粒子の調製材料は、PLGAであり、実際の応用ではマイクロ・ナノ粒子を調整できる他の材料を用いることもできる。本発明のいくつかの実施形態においてナノ粒子を用い、いくつかの実施形態においマイクロ粒子を用い、当業者は実際の応用では実際の状況に応じてマイクロ・ナノ粒子を用いることを選択することができる。本発明のいくつかの実施形態で用いられる検出方法は、フローサイトメトリーであり、いくつかの実施形態で用いられる検出方法は酵素結合免疫スポット検定法(ELISPOT)又は酵素結合免疫吸着検定法(ELISA)である。実際の応用では、実際の状況に応じてマルチサイトカイン検出方法などの他の方法で検出できる。本発明のいくつかの実施形態において、腫瘍特異的T細胞の特異的分子はインターフェロン-γ(IFN-γ)であり、実際の応用では他の任意の特異的分子を用い、分泌型又は膜結合型であり得、タンパク質、核酸、糖質、脂質である。本実施形態で検出された特異的サイトカインは炎症誘発性ものであり、実際の応用ではIL-10、TGF-βなどの抗炎症性サイトカインを用いることもできる。
【0037】
本発明において、免疫アジュバントとしてpoly(I:C)及びCpGを用い、実際の応用では免疫アジュバントを添加しなくてもよい又は免疫増強/抑制機能を有する任意の他の免疫アジュバント、例えばパターン認識受容体アゴニスト、BCG細胞壁骨格、BCGメタノール抽出残渣、BCGムラミルジペプチド、マイコバクテリウム・フレイ、ポリアクチンA、ミネラルオイル、ウイルス様粒子、免疫増強再構成インフルエンザウイルス粒子、コレラエンテロトキシン、サポニン及びその誘導体、バチルスカルメット-ゲラン(BCG)、レシキモド、チモシン、新生児ウシ肝活性ペプチド、イミキモド、多糖類、クルクミン、免疫アジュバントpoly ICLC、コリネバクテリウムパルバム、溶血性レンサ球菌製剤、コエンザイムQ10、レバミゾール、ポリシチジル酸、インターロイキン、インターフェロン、ポリイノシン酸、ポリアデニル酸、ミョウバン、リン酸アルミニウム、ラノリン、植物油、エンドトキシン、リポソームアジュバント、GM-CSF、MF59、二本鎖RNA、二本鎖DNA、水酸化アルミニウム、CAF01、高麗人参、レンゲなどの漢方薬の有効成分を添加できる。本発明において免疫アジュバントに関しては、添加してもしなくてもよいが、免疫アジュバントを添加する場合、免疫アジュバントは、微生物由来の免疫アジュバント、ヒト又は動物の免疫系の産物、自然免疫アゴニスト、獲得免疫アゴニスト、化学合成医薬品、真菌多糖類、漢方薬の少なくとも1種である。
【0038】
以下に本発明をさらに理解するため、本発明の実施例を参照しつつ本発明の実施例中の技術的手段を明確かつ詳細に説明するが、説明する実施例は本発明の一部の実施例であり、全ての実施例でないことは言うまでもない。本発明中の実施例に基づいて、当業者は創造性の活動をしない前提で得られた全ての他の実施例は、いずれも本発明の保護範囲に属する。
【0039】
特に断りのない限り、本発明の実施例で使用される具体的方法は、従来の方法であり、使用される材料、試薬などは商業的に入手することができる。本発明実施例にかかわるマイクロ・ナノ粒子構造、調製方法、末梢組織におけるT細胞との共培養方法、活性化されT細胞を検出する際に使用される戦略は代表的な方法にすぎず、他のマイクロ・ナノ粒子構造、調製方法、末梢組織におけるT細胞との共培養方法、活性化されT細胞を検出する際に使用される戦略も本発明に記載の方法を用いることができる。実施例は、いくつかの癌における本発明の応用を列挙するだけであるが、本発明は他の癌にも使用することができる。実施例で使用される具体的方法或いは材料について、当業者は、本発明の技術的思想に基づいて、既存の技術により従来の置き換えを行うことができ、本発明の実施例の具体的な記載に限定されない。
【実施例1】
【0040】
(メラノーマ荷瘤を有するマウスの末梢組織における癌特異的T細胞の検出)
本実施例は、マウスのメラノーマを癌モデルとして遊離癌細胞の全細胞溶解物を使用した末梢組織における腫瘍細胞特異性T細胞の検出、腫瘍細胞特異性T細胞の含有量の検出について説明する。マウスの末梢血は小さく、末梢血中の末梢免疫細胞の数は限られ、脾臓の血流は豊富で十分な末梢免疫細胞を含んでいるため、本実施例ではマウスの脾臓の末梢免疫細胞を使用して関連検出を実施し、脾臓内の免疫細胞は末梢免疫細胞に属し、末梢血中の免疫細胞も末梢免疫細胞に属する。臨床の実際の応用では、ヒト末梢血中の末梢免疫細胞を検出に使用できる。
【0041】
本実施例では、B16-F10マウスのメラノーマ細胞を腫瘍細胞モデルとした。まずB16-F10細胞を溶解して B16-F10細胞の溶解物成分を調製し、次に遊離の腫瘍細胞溶解物成分を末梢免疫細胞と一晩共培養し、最後に、フローサイトメトリーで腫瘍特異的T細胞の特異的分子γインターフェロンを解析した。具体的には次のとおりである。(1)腫瘍細胞の溶解及び各種成分の収集:B16-F10細胞を収集し、培地を除去して-80℃で凍結し、超純水を加えて凍結融解を3回繰り返し、同時に、溶解した細胞を破壊するため150Wの超音波処理を併用し、細胞が溶解した後、溶解物を12,000RPMの回転数で5分間遠心分離し、B16-F10の水溶性溶解物成分である上清を除去し、得られた沈渣に8M尿素水溶液を加えて溶解すると、B16-F10の非水溶性溶解物成分となる。
【0042】
(2)遊離の腫瘍細胞溶解物成分と末梢免疫細胞との共培養:6~8週齢の雌C57BL/6を選択して、メラノーマ荷瘤を有するマウスを用意する。0日目に、150,000個のB16-F10細胞を各マウスの右下背部の皮下に接種した。4日目、7日目、10日目、15日目、20日目に癌細胞の全細胞成分を担持したナノ癌ワクチン又はPBSをそれぞれ皮下注射した。実験では、マウスの腫瘍体積のサイズを6日目から3日ごとに記録した。腫瘍体積は、次の式で計算される。
【0043】
v=0.52×a×b
式中、vは腫瘍体積、aは腫瘍の長さ、bは腫瘍の幅である。18日目と24日目に、PBS群及びワクチン治療群のC57BL/6マウスを屠殺し、脾臓内の末梢免疫細胞を収集して並行実験を実施した。
【0044】
細胞を、10%FBSを含むDMEM培地に再懸濁し、4X10細胞/mLの濃度にし、次にその中に10%体積(培地に基づいた)の水溶性溶解物成分(40mg/mL)及び1%体積(培地に基づいた)の非水溶性溶解物成分(30mg/mL)を加え、37℃、5%COの条件で20時間インキュベートし、その後400gで遠心分離した後、インキュベートしたマウスの脾臓細胞を収集した。
【0045】
(3)フローサイトメトリーによる活性化され癌特異性T細胞の検出:非特異的担持を避けるため、まずFc blockで上記の収集されたマウスの脾臓細胞を処理する。次に、CD3抗体、CD4抗体、CD8抗体を用いてマウスの脾臓細胞を細胞外で染色し、細胞を固定し、細胞に透過処理を施した後FN-γ抗体を用いてマウスの脾臓細胞を細胞内で染色した。その後、FACS AriaTMIIIシステムでマウスの脾細胞を検出し、結果をFlowJo10ソフトウェアで解析した。活性化された後、IFN-γを分泌できるCD4T細胞の全てのCD4T細胞に対する割合及び活性化された後、IFN-γを分泌できるT細胞の全てのCD8T細胞に対する割合をそれぞれ解析した。
【0046】
(4)実験結果:図6は、上述の実験結果を示す。図aは、癌ワクチン治療の腫瘍増殖率に対する抑制効果の実験(n≧8)を示すものである。図bは、フローサイトメトリーによって解析された、腫瘍組織溶解物とのインキュベーション後の脾臓の末梢免疫細胞内の活性化された癌特異的CD8T細胞の脾臓内のCD8細胞に対する比率を示すものである。図cは、フローサイトメトリーによって解析された、腫瘍組織溶解物とのインキュベーション後の脾臓の末梢免疫細胞内の活性化された癌特異的CD4T細胞の脾臓末梢免疫細胞内のCD4細胞に対する比率を示すものである。図6に示すように、PBSブランク対照群と比較して、ワクチン治療群のマウスの末梢免疫細胞は、腫瘍細胞溶解物と共培養した後に活性化されたT細胞が有意に多くなり、癌ワクチンで治療されたマウスの末梢組織の癌特異的T細胞が有意に増加したことが示された。本発明に記載の遊離の全細胞は、癌患者の末梢血中の癌特異的T細胞の含有量の検出に使用できることが分かる。
【実施例2】
【0047】
(乳癌荷瘤を有するマウスの末梢組織における癌特異的T細胞の検出)
本実施例は、本実施例は、マウスの乳癌を癌モデルとして遊離癌細胞の全細胞溶解物を使用した末梢組織における腫瘍細胞特異性T細胞の検出、腫瘍細胞特異性T細胞の含有量の検出について説明する。マウスの末梢血は小さく、末梢血中の末梢免疫細胞の数は限られ、脾臓の血流は豊富で十分な末梢免疫細胞を含んでいるため、本実施例ではマウスの脾臓の末梢免疫細胞を使用して関連検出を実施する。臨床の実際の応用では、ヒト末梢血中の末梢免疫細胞を検出に使用できる。
【0048】
本実施例では、4T1マウスの乳腺腫瘍細胞を腫瘍細胞モデルとした。水溶性成分及び非水溶性成分を調製するため、まず腫瘍組織の全細胞を溶解し、次に遊離の腫瘍全細胞溶解物成分を末梢免疫細胞と一晩共培養し、最後に、フローサイトメトリーで腫瘍特異的T細胞の特異的分子γインターフェロンを解析した。
【0049】
(1)腫瘍組織の溶解と各種成分の収集:400,000個の4T1乳腺腫瘍細胞を各BALB/cマウスの背中に皮下接種し、接種した腫瘍が200mm~1500mmの体積に成長したときにマウスを屠殺し、腫瘍組織を摘出した。腫瘍組織を切り分けた後、すりつぶし、セルストレーナーを通して純水を加え、凍結融解を5回繰り返した。腫瘍組織の細胞を溶解した後、細胞溶解物を3000gの回転数で20分間遠心分離し、腫瘍組織の全細胞の水溶性成分である上清を除去し、得られた沈渣に8M尿素水溶液を添加し、沈渣を溶解することで非水溶性成分を得た。
【0050】
(2)遊離の全細胞成分と末梢免疫細胞との共培養:6~8週齢の雌BALB/cを選択して、乳腺腫瘍荷瘤を有するマウスを用意する。0日目に、400,000個のB16-F10細胞を各マウスの右下背部の皮下に接種した。4日目、7日目、10日目、15日目、20日目に癌細胞の全細胞成分を担持したナノ癌ワクチン又はPBSをそれぞれ皮下注射した。実験では、マウスの腫瘍体積のサイズを6日目から3日ごとに記録した。腫瘍体積は、次の式で計算される。
【0051】
v=0.52×a×b
式中、vは腫瘍体積、aは腫瘍の長さ、bは腫瘍の幅である。24日目に、ワクチン治療群及びPBS群のマウスを屠殺し、脾臓内の末梢免疫細胞を収集した。
【0052】
細胞を、10%FBSを含むRPMI 1640培地に再懸濁し、4X10細胞/mLの濃度にし、次にその中に5%体積(培地に基づいた)の水溶性成分(35mg/mL)及び1%体積(培地に基づいた)の8M尿素に溶解した非水溶性成分(35mg/mL)を加え、37℃、5%COの条件で18時間インキュベートし、その後400gで遠心分離した後、インキュベートしたマウスの脾臓細胞を収集した。
【0053】
(3)フローサイトメトリーによる活性化され癌特異性T細胞の検出:非特異的担持を避けるため、まずFc blockでマウスの脾臓細胞を処理する。次に、CD3抗体、CD4抗体、CD8抗体を用いてマウスの脾臓細胞を細胞外で染色し、細胞を固定し、細胞に透過処理を施した後FN-γ抗体を用いてマウスの脾臓細胞を細胞内で染色した。その後、FACS AriaTMIIIシステムでマウスの脾細胞を検出し、結果をFlowJo10ソフトウェアで解析した。活性化された後、IFN-γを分泌できるCD4T細胞の全てのCD4T細胞に対する割合及び活性化された後、IFN-γを分泌できるT細胞の全てのCD8T細胞に対する割合をそれぞれ解析した。
【0054】
(4)実験結果:図7は、上述の乳癌の実験結果を示す。図aは、癌ワクチン治療の腫瘍増殖率に対する抑制効果の実験(n≧9)を示すものである。図bは、腫瘍組織溶解物とのインキュベーション後の脾臓の末梢免疫細胞内の活性化された癌特異的CD8T細胞の脾臓末梢免疫細胞内のCD8細胞に対する比率を示すものである。図cは、腫瘍組織溶解物とのインキュベーション後の脾臓の末梢免疫細胞内の活性化された癌特異的CD4T細胞の脾臓末梢免疫細胞内のCD4細胞に対する比率を示すものである。
【0055】
図7に示すように、PBSブランク対照群と比較して、ワクチン治療群のマウスの末梢免疫細胞は、腫瘍細胞の全細胞溶解物と共培養した後に活性化されたT細胞が有意に多くなり、癌ワクチンで治療されたマウスの末梢組織の癌特異的T細胞が有意に増加したことが示された。本発明に記載の遊離の全細胞は、癌患者の末梢血中の癌特異的T細胞の含有量の検出に使用できることが分かる。
【実施例3】
【0056】
(メラノーマ腫瘍組織ライセート成分を担持したナノ粒子による末梢組織における癌特異的T細胞の活性化)
本実施例では、マウスメラノーマモデルを使用して、メラノーマ腫瘍組織の全細胞成分を内包したナノ粒子を調製し、該ナノ粒子を用いて末梢組織における癌特異的T細胞を活性化する方法を説明する。T細胞が活性化された後、酵素結合免疫吸着検定法(ELISA)で活性化された癌特異的T細胞の含有量を検出した。
【0057】
本実施例では、酵素結合免疫吸着検定法(ELISA)で活性化されT細胞から分泌されるIFN-γを検出するが、実際の応用では酵素結合免疫スポット検定法、フローサイトメトリー等その他の方法で活性化されT細胞から分泌される他の物質又は細胞膜の表面に発現される他の物質を検出することもできる。
【0058】
本実施例では、マウスのB16-F10メラノーマ細胞をC57BL/6マウスに移植した後、腫瘍組織を摘出し、腫瘍組織溶解物内の水溶性成分及び8M尿素に溶解した元の非水溶性成分をナノ粒子の内部及び表面に同時に担持する。次に、PLGAをナノ粒子フレームワーク材料として、腫瘍組織溶解物の水溶性成分及び非水溶性成分を担持したナノ粒子を溶媒揮発法で調製し、このナノ粒子により末梢組織における癌特異的腫瘍細胞を活性化した。
【0059】
(1)腫瘍組織の溶解と各種成分の収集:150,000個のB16-F10メラノーマ細胞を各C57BL/6マウスの背中に皮下接種し、接種した腫瘍が200mm~1500mmの体積に成長したときにマウスを屠殺し、腫瘍組織を摘出した。腫瘍組織を切り分けた後、すりつぶし、セルストレーナーを通して純水を加え、凍結融解を5回繰り返し、毎回150Wの超音波で2分間解凍した。腫瘍組織部位の細胞を溶解した後、腫瘍組織の細胞溶解物を100g超の回転数で5分間遠心分離し、腫瘍組織の全細胞の水溶性成分である上清を除去し、得られた沈渣に8M尿素水溶液を加えて沈渣を溶解することで本来の純水に不溶な非水溶性成分を8M尿素水溶液に可溶化することができる。上述で得られた腫瘍組織溶解物の水溶性成分及び8M尿素に溶解した元の非水溶性成分がナノ粒子調製の原料となる。
【0060】
(2)全細胞成分を担持したナノ粒子の調製:本実施例では、細胞成分を担持したナノ粒子及びブランクコントロールナノ粒子を溶媒揮発法におけるダブルエマルション法により調製し、用いたナノ粒子調製材料PLGAの分子量は24KDa~38KDaであり、調製方法は上記の通りである。また、本実施例では、4種のメラノーマポリペプチド抗原を担持したナノ粒子も調製し、用いられた4種のポリペプチド抗原は、それぞれMelan-A:26-35(L27:GILTV)、Melan-A:51-73(RR23:RNGYRALMDKSLHVGTQCALTRR)、gp100:25-33(EGSRNQDWL)及びgp100:44-59(WNRQLYPEWTEAQRLD)である。ナノ粒子を調製する際の各ポリペプチドの濃度はそれぞれ5mg/mLであった。具体的には以下の通りである。上記水溶性成分溶液(30mg/mL)及び非水溶性成分溶液(30mg/mL)200μLをPLGA(100mg)ジクロロメタン溶液1mLに加え、通常30秒間超音波処理を施してからポリビニルアルコール水溶液(20mg/mL)2.5mLと混合し、通常30秒間超音波処理を施した後、さらにポリビニルアルコール水溶液(5mg/mL)50mLと混合し、有機溶媒(ジクロロメタン)が揮発してなくなるまで通常通り攪拌し、その後、12000rpmで10分間遠心分離し、上清を除去し、沈渣をトレハロース水溶液(4wt%)20mLに再懸濁し、-80℃で凍結乾燥した後、生理食塩水10mLに再懸濁し、上記の水溶性成分溶液(30mg/mL)0.5mL及び非水溶性成分溶液(30mg/mL)0.5mLと混合し、60秒間静置することで、ナノ粒子の内部及び表面に溶解物成分を担持したアクチベーターを得た。
【0061】
ブランクナノ粒子、4種のメラノーマポリペプチド抗原を担持したナノ粒子の調製は上記のように調整するが、溶解物成分を添加しない、又は溶解物成分を置き換えるだけでよい。
【0062】
ナノ粒子の表面に溶解物成分を担持する前に、ナノ粒子の平均粒径は280nm程度で、ナノ粒子の表面に溶解物成分を担持した後に得られたナノ粒子の粒径が300nm程度であり、1mgあたりのPLGAナノ粒子に150μgの溶解物成分を担持する。ブランクコントロールナノ粒子の粒径は250nm程度である。ポリペプチド抗原を担持したナノ粒子の粒径は、290nm程度で、1mgあたりのPLGAナノ粒子ポリペプチド総担持量はポリペプチド抗原50μgである。
【0063】
(3)ナノ粒子による癌特異性T細胞の活性化:6~8週齢の雌C57BL/6を選択して、メラノーマ荷瘤を有するマウスを用意する。0日目に、150,000個のB16-F10メラノーマ細胞を各マウスの右下背部の皮下に接種した。4日目、7日目、10日目、15日目、20日目に癌細胞の全細胞成分を担持したナノ癌ワクチン又はPBSをそれぞれ皮下注射した。実験では、マウスの腫瘍体積のサイズを6日目から3日ごとに記録した。腫瘍体積は、次の式で計算される。
【0064】
v=0.52×a×b
式中、vは腫瘍体積、aは腫瘍の長さ、bは腫瘍の幅である。18日目と24日目に、PBS群及びワクチン治療群のマウスを屠殺し、脾臓内の末梢免疫細胞を収集した。
【0065】
細胞を、10%FBSを含むRPMI 1640培地に再懸濁し、5X10細胞/mLの濃度にする。サンプルに水溶性成分及び非水溶性成分を最終濃度300μg/mLで担持したナノ粒子又はポリペプチド抗原を最終濃度300μg/mLで担持したナノ粒子、或いは等量のブランクナノ粒子、若しくは等量の遊離の全細胞溶解物成分、又は等量の遊離ポリペプチド抗原をサンプルに加える。次に37℃(5%CO)インキュベーターで72時間培養した。その後400gで5分間遠心分離し、上清を除去し、ELISA法で上清液内のIFN-γの濃度を解析した。
【0066】
ELISA検出方法では、腫瘍特異的T細胞は、活性化され後IFN-γなどの特定の細胞分泌物を分泌する。この特定の細胞分泌物の濃度の高さは、活性化された癌特異性T細胞の含有量の多さを表す。
【0067】
(4)実験結果:図8は、上述のメラノーマの実験結果を示す。図aは、癌ワクチン治療の腫瘍増殖率に対する抑制効果の実験(n≧8)を示すものである。図bは、ELISA法で遊離腫瘍組織溶解物又は腫瘍組織溶解物を担持したナノ粒子とインキュベートした後、脾臟の末梢免疫細胞における活性化され癌T細胞の含有量を解析したものである。
【0068】
図8に示すように、PBSブランク対照群及びワクチン処理群内のブランクナノ粒作用群と比較して、ワクチン治療群のマウスの末梢免疫細胞は、遊離腫瘍組織の全細胞成分、又は腫瘍組織の全細胞成分を担持したナノ粒子、或いは遊離ポリペプチド抗原、若しくはポリペプチド抗原を担持したナノ粒子と共培養した後、活性化されたT細胞が有意に多くなる。これは、癌ワクチン治療を経たマウスの末梢組織における癌特異性T細胞の含有量が大幅に増加していることを示している。これから分かるように、本発明の遊離腫瘍組織の全細胞成分は癌患者の末梢血中の癌特異性T細胞の含有量の検出に使用できる。遊離腫瘍組織の全細胞成分及び遊離ポリペプチド抗原を使用してT細胞を刺激及び活性化する場合、遊離の全細胞成分はより多くのT細胞を刺激及び活性化することができる。全細胞溶解物成分を担持したナノ粒子及びポリペプチド抗原を担持したナノ粒子を使用してT細胞を刺激及び活性化する場合、全細胞溶解物成分を担持したナノ粒子はより多くのT細胞を刺激及び活性化することができ、かつ全細胞溶解物成分を担持したナノ粒子により刺激及び活性化されたT細胞は遊離全細胞溶解物成分により刺激及び活性化されたT細胞よりも多い。
【実施例4】
【0069】
(肺癌腫瘍組織溶解物成分及び免疫アジュバントがマクロ粒子に担持され、末梢組織における癌特異的T 細胞を活性化する)
本実施例は、マウスの肺癌で肺癌腫瘍組織溶解物成分及び免疫アジュバントを担持したマイクロ粒子及び肺癌腫瘍組織溶解物成分のみを担持したマイクロ粒子を調製して、末梢組織における腫瘍特異的T細胞を活性化し、酵素結合免疫スポット検定法(ELISPOT)で腫瘍特異的T細胞の含有量を検出することを説明する。本実施例は、それぞれ免疫アジュバントとしてのCpG又はpoly I:Cの効果、免疫アジュバントを添加した効果を試験した。
【0070】
本実施例は、酵素結合免疫スポット検定法(ELISPOT)で活性化され腫瘍特異的T細胞の特異的分子IFN-γを検出し、実際の応用ではフローサイトメトリー、ELISA等その他の方法で他の腫瘍特異的T細胞の特異的分子を検出することもできる。
【0071】
本実施例では、マウスのLLC肺腫瘍細胞をC57BL/6マウスに移植した後、腫瘍組織を摘出し、腫瘍組織溶解物内の水溶性成分及び6Mグアニジン塩酸塩に溶解した非水溶性成分を得、PLGAをマイクロ粒子フレームワーク材料として、腫瘍組織溶解物の水溶性成分又は非水溶性成分を担持したマイクロ粒子を溶媒揮発法で調製した。腫瘍組織溶解物内の水溶性成分及び非水溶性成分は、それぞれマイクロ粒子の内部及び表面に担持され、免疫アジュバントを含むマイクロ粒子において、免疫アジュバントはマイクロ粒子の内部にのみ内包される。このマイクロ粒子でマウスの末梢組織における腫瘍特異的T細胞を検出する。
【0072】
(1)腫瘍組織の溶解と各種成分の収集:2,000,000個のLLC肺腫瘍細胞を各C57BL/6マウスの背中に皮下接種し、接種した腫瘍が200mm~1500mmの体積に成長したときにマウスを屠殺し、腫瘍組織を摘出した。同じ大きさの腫瘍組織を切り分けた後、すりつぶし、セルストレーナーを通して純水を加え、従来の紫外線照射と加熱により腫瘍組織の全細胞を不活化と変性させ、凍結融解を5回繰り返し、毎回250Wの超音波で1分間解凍した。腫瘍組織の全細胞を溶解した後、細胞溶解物を5000rpm回転数で15分間遠心分離し、腫瘍組織の全細胞の水溶性成分である上清を除去し、得られた沈渣に6Mグアニジン塩酸塩溶液を加えて沈渣を溶解することで非水溶性成分を得た。
【0073】
(2)全細胞成分を担持したマイクロ粒子の調製:本実施例では、細胞成分を担持したマイクロ粒子及びブランクコントロールマイクロ粒子を溶媒揮発法におけるダブルエマルション法により調製し、用いたマイクロ粒子調製材料PLGAの分子量は24KDa~38KDaであり、調製方法は上記の通りである。具体的には以下の通りである。上記水溶性成分溶液(60mg/mL)150μL又は非水溶性成分溶液(10mg/mL)200μLをPLGA(100mg)ジクロロメタン溶液2mLに加え、150秒間通常攪拌処理を施してからポリビニルアルコール水溶液(15mg/mL)10mLと混合し、通常50秒間超音波処理を施した後、さらにポリビニルアルコール水溶液(8mg/mL)300mLと混合し、有機溶媒(ジクロロメタン)が揮発してなくなるまで通常通り攪拌し、その後、10000rpmで30分間遠心分離し、上清を除去し、沈渣をショ糖水溶液(5wt%)20mLに再懸濁し、-80℃で凍結乾燥した後、生理食塩水5mLに再懸濁し、上記の水溶性成分溶液(10mg/mL)3mL及び非水溶性成分溶液(40mg/mL)0.5mLと混合し、20分間静置することで、マイクロ粒子の内部及び表面に溶解物成分を担持したアクチベーターを得た。
【0074】
上記水溶性成分溶液(60mg/mL)150μL又は非水溶性成分溶液(10mg/mL)200μLを100μLの免疫アジュバント(CpG又はpoly I:C)溶液(0.25mg/mL) と混合した後、PLGA(500mg)ジクロロメタン溶液2mLに加え、150秒間通常攪拌処理を施してからポリビニルアルコール水溶液(15mg/mL)10mLと混合し、通常50秒間超音波処理を施した後、さらにポリビニルアルコール水溶液(8mg/mL)300mLと混合し、有機溶媒(ジクロロメタン)が揮発してなくなるまで通常通り攪拌し、その後、10000rpmで30分間遠心分離し、上清を除去し、沈渣をショ糖水溶液(5wt%)20mLに再懸濁し、-80℃で凍結乾燥した後、生理食塩水5mLに再懸濁し、上記の水溶性成分溶液(10mg/mL)2mL及び非水溶性成分溶液(40mg/mL)0.5mLと混合し、20分間静置することで、マイクロ粒子の内部及び表面に溶解物成分を担持したアクチベーターを得た。
【0075】
マイクロ粒子の表面に溶解物成分を担持する前に、マイクロ粒子の平均粒径は2.0μm程度で、マイクロ粒子の表面に溶解物成分を担持した後に得られたマイクロ粒子の粒径が2.1μm程度であり、1mgあたりのPLGAマイクロ粒子に160μgの溶解物成分を担持する。
【0076】
(3)マイクロ粒子による癌特異性T細胞の活性化:6~8週齢の雌C57BL/6を選択して、肺癌腫瘍荷瘤を有するマウスを用意する。0日目に、2,000,000個のLLC肺腫瘍細胞を各マウスの右下背部の皮下に接種した。4日目、7日目、10日目、15日目、20日目に癌細胞の全細胞成分を担持したナノ癌ワクチン又はPBSをそれぞれ皮下注射した。実験では、マウスの腫瘍体積のサイズを6日目から3日ごとに記録した。腫瘍体積は、次の式で計算される。
【0077】
v=0.52×a×b
式中、vは腫瘍体積、aは腫瘍の長さ、bは腫瘍の幅である。24日目にワクチン治療群及びPBS群のマウスを屠殺し、脾臓内の免疫細胞を収集した。
【0078】
細胞を、10%FBSを含むRPMI 1640培地に再懸濁し、5X10細胞/mLの濃度にする。上記の脾臓細胞100μLを、IFN-γ抗体a(capture antibody、コーティング抗体)でプレコートされ、培地で1時間以上ブロックされた96ウェルプレートに加えた。その中に水溶性成分を担持したマイクロ粒子25 μg及び非水溶性成分を担持したマイクロ粒子25μgを加え、37℃、5%COの条件で72時間インキュベートする。その後、細胞とマイクロ粒子の混合物を捨て、96ウェルプレートを洗浄してからIFN-γ抗体b(detection antibody、検出抗体)を加えて37℃(5%CO)のインキュベーターで2時間以上培養した。IFN-γ抗体bを含む溶液を捨て、96ウェルプレートを洗浄し、対応する方法で発色させ、96ウェルプレートの表面にスポットを形成させた。ELISPOTアナライザーでデータを読み取り、実験結果を解析した。
【0079】
ELISPOT検出方法において、腫瘍特異的T細胞は、活性化され後、分泌されるIFN-γなどの細胞分泌物が96ウェルプレートに内包された抗体aに結合し、抗体bを加えた後、二重抗体サンドイッチ構造になり、検出抗体に発色を助ける酵素を結合している。基質を添加して発色させると、活性化された各細胞の位置にスポットを形成する。1つのスポットの形成は、1つの活性化された腫瘍特異的T細胞を表すため、96ウェルプレート内の各ウェルに発色して形成されたスポットの数を測定することにより、検出対象となるサンプル中の腫瘍特異的T細胞の数を知ることができる。
【0080】
(4)実験結果:図9は、上述の肺癌の実験結果を示す。図aは、癌ワクチン治療の腫瘍増殖率に対する抑制効果の実験(n≧9)を示すものである。図bは、ELISPOT法で腫瘍組織溶解物を担持したマイクロ粒子とインキュベートした後、脾臟の末梢免疫細胞における活性化され癌T細胞の含有量を解析したものである。
【0081】
図9に示すように、PBSブランク対照群と比較して、ワクチン治療群のマウスの末梢免疫細胞は、腫瘍組織の全細胞成分を担持したマイクロ粒子、或いは腫瘍の全細胞成分と免疫アジュバントを担持したマイクロ粒子と共培養した後、活性化されたT細胞が有意に多くなる。免疫アジュバントとしてのCpG又は免疫アジュバントとしてのPoly(I:C)を問わず、末梢免疫細胞と共培養した後、腫瘍全細胞成分及び免疫アジュバントを担持したマイクロ粒子は、腫瘍全細胞成分を担持したマイクロ粒子に比べてより多くのT細胞を活性化する。以上の結果は、免疫アジュバントの添加によりより多くの癌抗原特異性T細胞を活性化できることを示している。これから、本発明の遊離の全細胞は癌患者の末梢血中の癌特異性T細胞の含有量の検出に使用されることができることが分かる。
【0082】
癌患者の末梢血などの末梢組織における癌特異性T細胞の含有量は、患者の予後と正の相関関係がある。本発明は、腫瘍細胞又は腫瘍組織の全細胞を収集した後、遊離の全細胞を用いるか、細胞溶解物をナノ/マイクロ粒子に担持した後、末梢からの末梢免疫細胞と共培養し、癌特異性T細胞が活性化され後腫瘍特異的T細胞の特異的分子を検出することで、末梢血などの末梢組織における癌特異性T細胞の含有量を確認できる。本発明の進歩性は、癌細胞、腫瘍組織の全細胞、癌細胞溶解物成分又は腫瘍組織の全細胞溶解物成分をアクチベーターとして末梢免疫細胞内の腫瘍特異的T細胞を検出することであり、関わる粒子担持、細胞インキュベート、特異的分泌物検出などは均しく当技術分野の先行技術である。
図1
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【国際調査報告】