(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-12-14
(54)【発明の名称】ポリオレフィン配合物
(51)【国際特許分類】
C08L 23/04 20060101AFI20231207BHJP
C08K 5/07 20060101ALI20231207BHJP
H01B 7/02 20060101ALI20231207BHJP
【FI】
C08L23/04
C08K5/07
H01B7/02 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023524702
(86)(22)【出願日】2021-10-25
(85)【翻訳文提出日】2023-04-21
(86)【国際出願番号】 US2021056438
(87)【国際公開番号】W WO2022093682
(87)【国際公開日】2022-05-05
(32)【優先日】2020-10-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】502141050
【氏名又は名称】ダウ グローバル テクノロジーズ エルエルシー
(71)【出願人】
【識別番号】590002035
【氏名又は名称】ローム アンド ハース カンパニー
【氏名又は名称原語表記】ROHM AND HAAS COMPANY
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100095360
【氏名又は名称】片山 英二
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【氏名又は名称】大森 規雄
(72)【発明者】
【氏名】ユー、シンディ
(72)【発明者】
【氏名】ムワサメ、ポール エム.
(72)【発明者】
【氏名】ユー、ドーツァイ
(72)【発明者】
【氏名】ムコパディヤーイ、スクリット
(72)【発明者】
【氏名】ラオ、ユエンチャオ
(72)【発明者】
【氏名】パーソン、ティモシー ジェイ.
(72)【発明者】
【氏名】リー、ダーチャオ
(72)【発明者】
【氏名】グー、ジュンシ
(72)【発明者】
【氏名】コーゲン、ジェフリー エム.
【テーマコード(参考)】
4J002
5G309
【Fターム(参考)】
4J002BB031
4J002BB051
4J002BB151
4J002EE036
4J002EK037
4J002EK047
4J002FD018
4J002FD039
4J002FD099
4J002FD139
4J002FD147
4J002FD206
4J002GQ01
5G309RA05
(57)【要約】
架橋性ポリオレフィン配合物は、(A)ポリエチレンポリマーと、(B)本明細書で定義される式(I)のアリールケトンとを含む。それから作製された生成物、それらを作製及び使用する方法、並びにそれらを含有する物品。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
伝導性コアと、前記伝導性コアを少なくとも部分的に被覆する絶縁層と、を備える被覆導体であって、前記絶縁層の少なくとも一部が、(A)ポリエチレンポリマーと、(B)式(I)のアリールケトンと、を含む架橋性ポリオレフィン配合物を含み、
【化1】
(式中、R
1~R
6は各々、水素原子(H)であるか、
又はR
1及びR
2、若しくはR
3及びR
4、若しくはR
4及びR
5、若しくはR
5及びR
6は、それらが結合している式(I)中の炭素原子と一緒に結合して、縮合6員アリール環を形成し、R
1~R
6のうちの残りの4つは各々、Hであるか、又はR
2、R
3、及びR
4は、それらが結合している式(I)中の炭素原子及び式(I)中の最も近接する橋頭炭素原子と2つの縮合6員アリール環を形成するように一緒に結合し、R
1、R
5、及びR
6は各々、Hであり、R
A.及びR
Bのうちの一方は、式-C(=O)-R
7の基であり、R
A及びR
Bのうちの他方は、Hであるか、又はR
Aは、式-C(=O)-R
7の基であり、R
B及びR
1は、それらが結合している式(I)中の炭素原子と一緒に結合して、縮合6員アリール環を形成し、R
2及びR
6は、上で定義した通りであり;R
7は、非置換(C
1~C
40)ヒドロカルビル基である)、前記(A)ポリエチレンポリマーが、前記(A)ポリエチレンポリマーの重量に基づいて、それぞれ、51~100重量パーセント(重量%)のエチレン由来構成単位及び49~0重量%のアルファオレフィン由来構成単位を含み、前記架橋性ポリオレフィン配合物が、前記架橋性ポリオレフィン配合物の総重量に基づいて、30.0~99.9重量%の前記(A)ポリエチレンポリマー及び前記架橋性ポリオレフィン配合物の総重量に基づいて、0.1~3.0重量%の前記(B)アリールケトンを含む、被覆導体。
【請求項2】
前記(B)アリールケトンが、(Ia)又は(Ib):
【化2】
(式中、R
1~R
7及びR
Bは、独立して、式(I)について定義した通りである)である、請求項1に記載の被覆導体。
【請求項3】
前記(B)アリールケトンが、式(Ia-1)、(Ia-2)、又は(1a-3):
【化3】
(式中、各R
7は独立して、式(I)について定義した通りである)のアリールケトンである、請求項1又は2に記載の被覆導体。
【請求項4】
前記(B)アリールケトンが、式(Ib-1):
【化4】
(式中、R
7は、独立して、式(I)について定義した通りである)のアリールケトンである、請求項1又は2に記載の被覆導体。
【請求項5】
R
7が、非置換(C
1~C
5)アルキル基又は非置換(C
6~C
40)アルキル基である、請求項1~4のいずれか一項に記載の被覆導体。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか一項に記載の被覆導体であって、前記(A)ポリエチレンポリマーが、100重量%のエチレン由来構成単位を含み、(A1)低密度ポリエチレン単独重合体であるか、又は前記(A)ポリエチレンポリマーが、51~99.9重量%のエチレン由来構成単位及び49~0.1重量%のアルファ-オレフィン由来構成単位を含み、(A2)エチレン/アルファ-オレフィンコポリマーである、被覆導体。
【請求項7】
少なくとも1つの添加剤を更に含み、各添加剤が、独立して、(C)有機過酸化物、(D)スコーチ防止剤、(E)酸化防止剤、(F)充填剤、(G)難燃剤、(H)ヒンダードアミン安定剤、(I)トリー抑制剤、(J)メチルラジカル捕捉剤、(K)架橋助剤、(L)成核剤、(M)着色剤、及び添加剤(C)~(M)のうちのいずれか2つ以上の組み合わせ、からなる群から選択される、請求項1~6のいずれか一項に記載の被覆導体。
【請求項8】
伝導性コアと、前記伝導性コアを少なくとも部分的に被覆する絶縁層とを含む硬化被覆導体であって、前記絶縁層の少なくとも一部が、架橋ポリオレフィン生成物を含み、前記硬化被覆導体が、請求項1~7のいずれか一項に記載の被覆導体を、前記(A)ポリエチレンポリマーを架橋するような硬化条件に供し、それによって、前記架橋ポリオレフィン生成物を作製することを含む方法によって作製される、硬化被覆導体。
【請求項9】
電気を伝送する方法であって、前記伝導性コアを通る電気の流れを発生させるように、請求項8に記載の被覆導体の前記伝導性コア全体に電圧を印加することを含む、方法。
【請求項10】
請求項1~9のいずれか一項に記載の発明であって、前記架橋性ポリオレフィン配合物が、電圧安定剤を含まない前記(A)ポリエチレンポリマーに比べて絶縁破壊強度値エータ、ηが少なくとも+5パーセント(%)改善(増加)し、本明細書に記載される絶縁破壊強度試験方法及びワイブル統計法に従ってワイブル統計を使用して、故障確率値が63.2%の場合の前記絶縁破壊強度値エータ、ηが求められる、発明。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
当該技術分野における特許及び特許出願公開としては、欧州特許第0111043(A1)号、欧州特許第2886595号、英国特許第1461331(A)号、米国特許第3482033号、米国特許第3941759号、米国特許第3981856号、米国特許第4495311号、米国特許第6696154((B2)号、米国特許第7351744(B2)号、米国特許第8680399(B2)号、米国特許第9133320(B2)号、米国特許第9343198(B2)号、米国特許出願公開第2015/0267036(A1)号、米国特許出願公開第20160096950(A1)号、米国特許出願公開第20160276061(A1)号、米国特許出願公開第20160304699(A1)号、米国特許出願公開第20160312007(A1)号、米国特許出願公開第20190233627(A1)号、米国特許出願公開第2020/0115477(A1)号、国際公開第2001008166号、国際公開第2010028721(A1)号、国際公開第2012044521号、国際公開第2014172107(A1)号、及び国際公開第2014209661(A1)号が挙げられる。
【0002】
序論
Markus Jarvidらの米国特許出願公開第2016/0304699(A1)号及びVillgot Englundらの米国特許第9,133,320(B2)号は、ベンジル型電圧安定剤を含む中/高/超高電圧ケーブルのためのポリオレフィン組成物に言及している。
【0003】
絶縁導電体は、典型的には、絶縁層で被覆された伝導性コアを備える。伝電性コアは、中実又は撚り合わされたもの(例えば、ワイヤの束)であってもよい。いくつかの絶縁導電体はまた、半導電性層(複数可)及び/又は保護ジャケット(例えば、巻線、テープ、若しくはシース)などの1つ以上の追加の要素を含有し得る。例は、低電圧(「LV」、>0~<5キロボルト(kV))、中電圧(「MV」、5~<69kV)、高電圧(「HV」、69~230kV)、及び超高電圧(「EHV」、>230kV)の電力ケーブル及びその送電/配電用途において使用するためのものを含む、被覆された金属ワイヤ及び電力ケーブルである。電力ケーブルの評価には、AEIC/ICEA仕様規格及び/又はIEC試験方法を使用することができる。
【発明の概要】
【0004】
本発明者らは、高電圧電力ケーブルの大部分が、ホストポリマーと、1つ以上の添加剤、例えば、1つ以上の酸化防止剤、着色剤、及びヒンダードアミン安定剤とを含む絶縁材料で構成される絶縁層を含有することを認識した。絶縁材料の絶縁破壊強度(絶縁耐力としても知られている)によって、特定の電圧での電力ケーブルの性能に関する工業規格を満たすために必要な絶縁層がどの程度の厚さであるかが決定される。他の全ての条件が同じであれば、絶縁材料がより高い絶縁破壊強度を有することによって、同じ絶縁破壊強度で絶縁層をより薄く、ひいては、ケーブルをより細くすることが可能になる。ケーブルがより細いと、有利なことに、所与の絶縁破壊強度を実現するために使用する単位ケーブル長当たりのケーブル質量をより少ない量にすることができる。次に、これによって、有用なことに、標準サイズのケーブルロールに巻き付けることができるケーブルの長さが増加する。次に、ケーブルがより長いと、2本以上のより細いケーブルを互いに接続するのに必要な接合部又は継ぎ目の数が減少する。あるいは、絶縁材料がより高い絶縁破壊強度を有することによって、同じ厚さを有する絶縁層、ひいては、同じ太さのケーブルで、より高い絶縁破壊強度が可能になる。同じ太さのケーブルがより高い絶縁破壊強度を有すると、有利なことに、そのケーブル形状でより高い電圧を伝送することが可能になる。より高い電圧で電力を伝送すると、エネルギー損失が低減される。
【0005】
本発明者らは、有益な電圧安定化効力を有するアリールケトン類を見出した。ホストポリオレフィンポリマーにこれらのアリールケトンのうちの1つ以上を配合した場合、得られる架橋性ポリオレフィン配合物は、(B)アリールケトンを含まないホストポリオレフィンに比べて増加した絶縁破壊強度を有する。いくつかの実施形態では、本発明の配合物の絶縁破壊強度は、有利なことに、ベンジル及び/又はベンジル誘導体を含有する比較配合物よりも大きい。本発明者らは、以下の実施形態を企図する。
【0006】
(A)ポリエチレンポリマー及び(B)式(I)のアリールケトンを含む架橋性ポリオレフィン配合物:
【0007】
【化1】
(式中、R
1~R
6は各々、水素原子(H)であるか、又はR
1及びR
2、若しくはR
3及びR
4、若しくはR
4及びR
5、若しくはR
5及びR
6は、それらが結合している式(I)中の炭素原子と一緒に結合して、縮合6員アリール環を形成し、R
1~R
6のうちの残りの4つは各々、Hであるか、又はR
2、R
3、及びR
4は、それらが結合している式(I)中の炭素原子及び式(I)中の最も近接する橋頭炭素原子と2つの縮合6員アリール環を形成するように一緒に結合し、R
1、R
5、及びR
6は各々、Hであり、R
A.及びR
Bのうちの一方は、式-C(=O)-R
7の基であり、R
A及びR
Bのうちの他方は、Hであるか、又はR
Aは、式-C(=O)-R
7の基であり、R
B及びR
1は、それらが結合している式(I)中の炭素原子と一緒に結合して、縮合6員アリール環を形成し、R
2~R
6は、上で定義した通りであり、R
7は、非置換(C
1~C
40)アルキル基である)。
【0008】
配合物を作製するように、(A)ポリエチレンポリマーを(B)式(I)のアリールケトンと接触させることを含む、架橋性ポリオレフィン配合物の作製方法。
【0009】
架橋ポリオレフィン生成物を製造する方法であって、(A)ポリエチレンポリマーを架橋するように配合物を硬化条件に供し、それによって、架橋ポリオレフィン生成物を作製することを含む方法。
【0010】
上記方法によって作製される、架橋ポリオレフィン生成物。
【0011】
架橋性ポリオレフィン配合物及び/又は架橋ポリマー生成物を含む製品。
【0012】
絶縁破壊強度の試験方法については後述する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】絶縁破壊強度を測定するための試験サンプルの形状の図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
「発明の概要」及び「要約書」は、参照により本明細書に援用される。以下に実施形態を記載するが、そのうちのいくつかは、参照を容易にするために付番された態様として記載される。
【0015】
態様1.(A)ポリエチレンポリマーと、(B)式(I)のアリールケトンと、を含む架橋性ポリオレフィン配合物であって:
【0016】
【化2】
(式中、R
1~R
6は各々、水素原子(H)であるか、又はR
1及びR
2、若しくはR
3及びR
4、若しくはR
4及びR
5、若しくはR
5及びR
6は、それらが結合している式(I)中の炭素原子と一緒に結合して、縮合6員アリール環を形成し、R
1~R
6のうちの残りの4つは各々、Hであるか、又はR
2、R
3、及びR
4は、それらが結合している式(I)中の炭素原子及び式(I)中の最も近接する橋頭炭素原子と2つの縮合6員アリール環を形成するように一緒に結合し、R
1、R
5、及びR
6は各々、Hであり、R
A.及びR
Bのうちの一方は、式-C(=O)-R
7の基であり、R
A及びR
Bのうちの他方は、Hであるか、又はR
Aは、式-C(=O)-R
7の基であり、R
B及びR
1は、それらが結合している式(I)中の炭素原子と一緒に結合して、縮合6員アリール環を形成し、R
2~R
6は、上で定義した通りであり、R
7は、非置換(C
1~C
40)ヒドロカルビル基である)、当該(A)ポリエチレンポリマーが、当該(A)ポリエチレンポリマーの重量に基づいて、それぞれ、51~100重量パーセント(重量%)のエチレン由来構成単位及び49~0重量%のアルファオレフィン由来構成単位を含み、当該架橋性ポリオレフィン配合物が、当該架橋性ポリオレフィン配合物の総重量に基づいて、30.0~99.9重量%の当該(A)ポリエチレンポリマー及び当該架橋性ポリオレフィン配合物の総重量に基づいて、0.1~3.0重量%の当該(B)アリールケトンを含む、架橋性ポリオレフィン配合物。架橋性ポリオレフィン配合物は、下記の添加剤(C)~(M)を含むか又はからなる0、1、2、3、又はそれ以上の任意選択的な添加剤を更に含んでいてもよい。成分(A)、(B)、及びなんらかの任意選択的な添加剤を含む架橋性ポリオレフィン配合物の総重量は、100.0重量%である。架橋性ポリオレフィン配合物は、(B)アリールケトンを含まない架橋された(A)ポリエチレンポリマーに比べて増加した絶縁破壊強度を有する。(A)ポリエチレンポリマーは、以下の態様6に記載されるか又は「(A)ポリエチレンポリマー」の章に後述される、その実施形態のうちのいずれか1つであってよい。
【0017】
態様2.当該(B)アリールケトンが、式(Ia)又は(Ib):
【0018】
【化3】
(式中、R
1~R
7及びR
Bは、独立して、式(I)について定義された通りである)のアリールケトンである、態様1に記載の架橋性ポリオレフィン配合物。いくつかの態様では、(B)アリールケトンは、式(Ia)のものであるか、あるいは、(B)アリールケトンは、式(Ib)のものである。式(Ia)のいくつかの態様では、R
1~R
6及びR
8は各々、Hである。式(Ia)のいくつかの態様では、R
1及びR
2、若しくはR
3及びR
4、若しくはR
4及びR
5、若しくはR
5及びR
6は、それらが結合している式(Ia)中の炭素原子と一緒に結合して、縮合6員アリール環を形成し、R
1~R
6のうちのうちの残りの4つは各々、Hであり、R
Bは、Hである。式(Ia)のいくつかの態様では、R
2、R
3、及びR
4は、それらが結合している式(Ia)中の炭素原子及び式(Ia)中の最も近接する橋頭炭素原子と2つの縮合6員アリール環を形成するように一緒に結合し、R
1、R
5、及びR
6は各々、Hであり、R
BはHである。式(Ia)のいくつかの態様では、R
B及びR
1は、それらが結合している式(Ia)中の炭素原子と一緒に結合して、縮合6員アリール環を形成し、R
2~R
6は、Hである。式(Ib)のいくつかの態様では、R
1~R
6は各々、Hである。式(Ib)のいくつかの態様では、R
1及びR
2、若しくはR
3及びR
4、若しくはR
4及びR
5、若しくはR
5及びR
6は、それらが結合している式(Ib)中の炭素原子と一緒に結合して、縮合6員アリール環を形成し、R
1~R
6のうちの残りの4つは各々、Hである。式(Ib)のいくつかの態様では、R
2、R
3、及びR
4は、それらが結合している式(Ib)中の炭素原子及び式(Ib)中の最も近接する橋頭炭素原子と2つの縮合6員アリール環を形成するように一緒に結合し、R
1、R
5、及びR
6は各々、Hである。式(Ia)及び(Ib)の前述の態様では、各R
7は、独立して、非置換(C
1~C
40)アルキル基である。
【0019】
態様3.当該(B)アリールケトンが、式(Ia-1)、(Ia-2)、又は(1a-3):
【0020】
【化4】
(式中、各R
7は、独立して、式(I)について定義した通りである)のアリールケトンである、態様1又は2に記載の架橋性ポリオレフィン配合物。いくつかの実施形態では、(B)アリールケトンは、式(Ia-1)又は(Ia-2)のものであるか、あるいは、(B)アリールケトンは、式(Ia-1)又は(Ia-3)のものであるか、あるいは、(B)アリールケトンは、式(Ia-2)又は(Ia-3)のものであるか、あるいは、(B)アリールケトンは、式(Ia-1)のものであるか、あるいは、(B)アリールケトンは、式(Ia-2)のものであるか、あるいは、(B)アリールケトンは、式(Ia-3)のものである。
【0021】
態様4.当該(B)アリールケトンが、式(Ib-1):
【0022】
【化5】
(式中、R
7は、独立して、式(I)について定義した通りである)のアリールケトンである、態様1又は2に記載の架橋性ポリオレフィン配合物。
【0023】
態様5.R7が、非置換(C1~C5)アルキル基又は非置換(C6~C40)アルキル基である、態様1~4のいずれか1つに記載の架橋性ポリオレフィン配合物。いくつかの実施形態では、R7は、非置換(C1~C5)アルキル基である。いくつかの実施形態では、R7は、メチル又はエチルである。いくつかの実施形態では、R7は、メチル(すなわち、-CH3)である。
【0024】
態様6.態様1~5のいずれか1つに記載の架橋性ポリオレフィン配合物であって、当該(A)ポリエチレンポリマーが、100重量%のエチレン由来構成単位を含み、(A1)低密度ポリエチレンホモポリマー(low-density polyethylene homopolymer、LDPE)であるか、又は当該(A)ポリエチレンポリマーが、51~99.9重量%のエチレン由来構成単位及び49~0.1重量%のアルファ-オレフィン由来構成単位を含み、(A2)エチレン/アルファ-オレフィンコポリマーである、配合物。(A2)エチレン/アルファ-オレフィンコポリマーは、エチレン/1-ブテンコポリマー、エチレン/1-ヘキセンコポリマー、エチレン/1-オクテンコポリマー、又はそれらのいずれか2つのブレンドであってよい。いくつかの態様では、(A)ポリエチレンポリマーは、エチレン/1-ブテンコポリマーである(A2)エチレン/アルファ-オレフィンコポリマーであるか、あるいは、(A2)は、エチレン/1-ヘキセンコポリマーである。いくつかの態様では、(A)ポリエチレンポリマーは、低密度ポリエチレン(LDPE)ポリマーからなる。LDPEポリマーは、金属系重合触媒の非存在下で、かつ少量のフリーラジカル開始剤(例えば、過酸化物又はO2)及び連鎖移動剤(chain transfer agent、CTA)の存在下で、高圧反応器内でエチレンを重合させることによって作製される。CTAは、プロピレンであってもよく、これは高圧反応器内でエチレン及びプロピレンの総重量に対して1重量%で使用してよい。LDPEポリマーは、0.910~0.930g/cm3の密度及び1.0~5g/10分のメルトインデックス(I2)を有し得る。LDPEポリマーは、実施例に記載のLDPE-1であってよい。
【0025】
態様7.少なくとも1つの添加剤を更に含み、各添加剤が、独立して、(C)有機過酸化物、(D)スコーチ防止剤、(E)酸化防止剤、(F)充填剤、(G)難燃剤、(H)ヒンダードアミン安定剤、(I)トリー抑制剤、(J)メチルラジカル捕捉剤、(K)架橋助剤、(L)成核剤、(M)着色剤(例えば、カーボンブラック又は二酸化チタン)、及び添加剤(C)~(M)のうちのいずれか2つ以上の組み合わせ、からなる群から選択される、態様1~6のいずれか1つに記載の架橋性ポリオレフィン配合物。成分(A)、(B)、及び少なくとも1つの添加剤(C)~(M)を含む架橋性ポリオレフィン配合物の総重量は、100.0重量%である。いくつかの実施形態では、架橋性ポリオレフィン配合物は、(C)有機過酸化物及び(E)酸化防止剤を更に含むか、あるいは、架橋性ポリオレフィン配合物は、(C)有機過酸化物、(E)酸化防止剤、及び(K)架橋助剤を更に含むか、あるいは、架橋性ポリオレフィン配合物は、(C)有機過酸化物、(E)酸化防止剤、及び(M)着色剤を更に含むか、あるいは、架橋性ポリオレフィン配合物は、(C)有機過酸化物、(E)酸化防止剤、(K)架橋助剤、及び(M)着色剤を更に含む。いくつかの実施形態では、架橋性ポリオレフィン配合物は、成分(A)、(B)、及び成分(C)~(M)から選択される1つ以上の添加剤からなる。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの添加剤は、成分(C)~(M)のうちの1つを除いて全てからなる群から選択される(すなわち、(C)~(M)のうちの1つは群から除外される)。それぞれ、1つ以上の添加剤(C)~(M)の総量は、架橋性ポリオレフィン配合物の0.1~69重量%、あるいは0.1~20重量%、あるいは0.1~10重量%、あるいは0.1~5.0重量%であり得、成分(A)及び(B)の総量は、架橋性ポリオレフィン配合物の99.9~31重量%、あるいは99.9~80重量%、あるいは99.9~90重量%、あるいは99.9~95.0重量%であり得る。いくつかの態様では、架橋性ポリオレフィン配合物は、後述する本発明の実施例のいずれか1つである。架橋性ポリオレフィン配合物は、(B)アリールケトンを含まない架橋された(A)ポリエチレンポリマーに比べて増加した絶縁破壊強度を有する。いくつかの実施形態では、架橋性ポリオレフィン配合物は、(C)有機過酸化物を含む。
【0026】
態様8.当該配合物を作製するように、当該(A)ポリエチレンポリマーを当該(B)式(I)のアリールケトンと接触させることを含む、態様1~7のいずれか1つに記載の架橋性ポリオレフィン配合物の作製方法。配合物は、成分(A)及び(B)の不均一又は均一なブレンドであってよい。接触工程は、成分(A)及び(B)を互いに接触させることを含む(以前は接触していなかった状態から)。接触工程は、接触した(A)及び(B)を一緒に混合して、それらの均一な混合物を形成することを更に含んでいてもよい。いくつかの実施形態では、方法は、任意選択的な添加剤(C)~(M)のうちの少なくとも1つを(A)及び(B)と混合することを更に含む。混合は、成分(B)及び任意選択で1つ以上の添加剤(C)~(M)を成分(A)の溶融物中に溶融ブレンドすることを含んでいてよい。溶融ブレンドは、ポリオレフィン及び添加剤を溶融混合するように構成された押出機で行ってよい。得られた溶融ブレンドをダイを通して押し出してストランドを形成し、次いで、ペレット化してペレットの形態の架橋性ポリオレフィン配合物を得ることができる。あるいは、架橋性ポリオレフィン配合物を含む製造物品を形成するように設計されたダイを通して溶融ブレンドを押し出してもよい。
【0027】
態様9.架橋ポリオレフィン生成物を製造する方法であって、当該(A)ポリエチレンポリマーを架橋するように、態様1~7のいずれか1つに記載の又は態様8に記載の方法によって作製された架橋性ポリオレフィン配合物を硬化条件に供し、それによって、架橋ポリオレフィン生成物を作製することを含む、方法。硬化条件は、配合物を紫外線に曝露すること又は配合物を(C)有機過酸化物及び、任意選択で、(K)架橋助剤と共に加熱することを含み得る。方法の実施形態は、(A)ポリエチレンポリマーを架橋するように、(C)有機過酸化物及び、任意選択で、(K)架橋助剤を含む態様1~7のいずれか1つに記載の架橋性ポリオレフィン配合物の実施形態を加熱し、それによって、架橋ポリオレフィン生成物を作製することを含み得る。(K)架橋助剤を使用しない場合、架橋は、(A)ポリオレフィンポリマーの分子間に共有炭素-炭素結合を形成することを含む。(K)架橋助剤が含まれる場合、架橋は、(A)ポリオレフィンポリマーの分子間に共有炭素-炭素結合を形成すること、及び(K)架橋助剤の分子と(A)ポリオレフィンポリマーの分子との間に共有炭素-炭素結合を形成することを含む。
【0028】
態様10.態様9に記載の方法によって作製される、架橋ポリオレフィン生成物。架橋ポリオレフィン生成物は、(B)アリールケトンを含まない架橋された(A)ポリエチレンポリマーに比べて増加した絶縁破壊強度を有する。架橋ポリオレフィン生成物は、(A)ポリエチレンポリマー又は(A)ポリエチレンポリマーと(K)架橋助剤との組み合わせ及び(B)式(I)のアリールケトンを架橋することによって作製される(A’)架橋(網状構造化)ポリエチレンポリマーを含み得る。架橋ポリオレフィン生成物は、以下から選択される少なくとも1つの添加剤を更に含んでいてもよい:(E)酸化防止剤、(F)充填剤、(G)難燃剤、(H)ヒンダードアミン安定剤、(I)トリー抑制剤、(J)メチルラジカル捕捉剤、(L)成核剤、及び(M)着色剤(例えば、カーボンブラック又は二酸化チタン)。架橋ポリオレフィン生成物は、(B)アリールケトンを含まない架橋された(A)ポリエチレンポリマーに比べて増加した絶縁破壊強度を有する。
【0029】
態様11.態様1~7のいずれか1つに記載の架橋性ポリオレフィン配合物又は態様10に記載の架橋ポリオレフィン生成物の造形品を含む、製造物品。いくつかの態様では、製造物品は、コーティング、フィルム、シート、押出物品(ペレットではない)、及び射出成形物品から選択される。例えば、被覆導体、電力の伝送又は通信用のワイヤ及びケーブルの絶縁層、農業用フィルム、自動車部品、容器、食品包装、衣装袋、食料雑貨入れ袋、頑丈な袋、工業用シート、パレット及びシュリンクラップ、袋、バケツ、冷凍庫用容器、蓋、おもちゃ。製造物品は、(B)アリールケトンを含まない架橋ホストポリオレフィンに比べて増加した絶縁破壊強度を有する。
【0030】
態様12.伝導性コアと、当該伝導性コアを少なくとも部分的に被覆する絶縁層と、を備える被覆導体であって、当該絶縁層の少なくとも一部が、態様1~7のいずれか1つに記載の架橋性ポリオレフィン配合物又は態様11に記載の架橋ポリオレフィン生成物を含む、被覆導体。被覆導体及びその絶縁層は、増加した絶縁破壊強度を有する。伝導性コアは、近位端及び遠位端を有し、その少なくとも一端が絶縁層を含んでいなくてもよいワイヤであってよい。
【0031】
態様13.電気を伝送する方法であって、伝導性コアを通る電気の流れを発生させるように態様12に記載の被覆導体の伝導性コア全体に電圧を印加することを含む、方法。
【0032】
態様14.態様1~13のいずれか1つに記載の発明であって、当該架橋性ポリオレフィン配合物が、電圧安定剤を含まない(A)ポリエチレンポリマーに比べて絶縁破壊強度値エータ、ηが少なくとも+5パーセント(%)改善(増加)し、本明細書に記載される絶縁破壊強度試験方法に従ってワイブル統計を使用して、故障確率値が63.2%の場合の当該絶縁破壊強度値エータ、ηが求められる、発明。いくつかの実施形態では、電圧安定剤を含まない(A)ポリエチレンポリマーと比べた(例えば、実施例で後述する比較例0(CE0)と比べた)本発明の絶縁破壊強度値エータ、η(故障確率値63.2%の場合)の改善(増加)は、少なくとも+5%、あるいは少なくとも+25%、あるいは少なくとも+31%、あるいは少なくとも+34%、あるいは少なくとも+38%、あるいは少なくとも48%、あるいは少なくとも+53%である。いくつかの実施形態では、電圧安定剤を含まない(A)ポリエチレンポリマーと比べた(例えば、CE0と比べた)本発明の絶縁破壊強度値エータ、η(故障確率値63.2%の場合)の改善は、最大75%、あるいは最大+65%、あるいは最大+59%、あるいは最大54%であることを更に特徴とする。いくつかの実施形態では、電圧安定剤を含まない(A)ポリエチレンポリマーと比べた(例えば、CE0と比べた)本発明の絶縁破壊強度値η(故障確率値63.2%の場合)の改善は、+5%~+54%、あるいは+31%~+54%、あるいは+34%~+54%、あるいは+48%~+54%である。いくつかの実施形態では、電圧安定剤を含まない(A)ポリエチレンポリマーと比べた(例えば、CE0と比べた)本発明の絶縁破壊強度値エータ、η(故障確率値63.2%の場合)の改善は、+38%±5%、あるいは+50%±9%である。あるいは、本発明の絶縁破壊強度の改善は、18.49(18.5)kV/mmのエータ、η(故障確率値63.2%の場合)と比べた前述の百分率値のうちのいずれか1つであってもよい。いくつかの実施形態では、架橋性ポリオレフィン配合物から作製された架橋ポリオレフィン生成物は、絶縁破壊強度値エータ、η(故障確率値63.2%の場合)における前述の本発明の改善のうちのいずれか1つを有する。前述の絶縁破壊強度改善率値エータη(故障確率値63.2%の場合)は、いずれも後述する絶縁破壊強度試験方法に従って求められる。いくつかの実施形態では、値エータ、η(故障確率値63.2%の場合)は、下記絶縁破壊強度試験方法及びワイブル統計法に従って求められる90%信頼水準ベータ、βによって更に特徴付けられる。
【0033】
被覆導体は、近位端及び遠位端を有する電力ケーブルであってもよく、電気は、伝導性コアを通って近位端から遠位端に流れてもよく、又はその逆であってもよい。伝導性コアは、ワイヤであってもよい。電力ケーブルは、中電圧(medium-voltage、MV)、高電圧(high-voltage、HV)、又は超高電圧(extra-high-voltage、EHV)電力ケーブルであってよい。電力ケーブルは、送電用途において有用である。
【0034】
(A)ポリエチレンポリマー。エチレン及び0、1、又はそれ以上の他のオレフィン官能性モノマーの重合から誘導される少なくとも5、あるいは10~200,000の構成単位を独立して含むポリエチレン巨大分子で構成される。(A)ポリエチレンポリマーは、0.870~0.975グラム/立方センチメートル(g/cm3)、あるいは0.890~0.930g/cm3(例えば、LDPE又はLLDPE)、あるいは0.910~0.930g/cm3(例えば、LDPE又はLLDPE)、あるいは0.931~0.945g/cm3(例えば、MDPE)、あるいは0.945~0.970g/cm3(例えば、HDPE)の密度を有し得、全てASTM D792-13、方法Bに従って測定される。
【0035】
ポリエチレンは、ホモポリマー又はコポリマーであってよい。ホモポリマーは、エチレンのみを重合させることによって作製される。コポリマーは、少なくとも2つの異なるオレフィンモノマー(そのうちの1つはエチレンである)を重合させることによって作製される。コポリマーは、エチレン及び1つのオレフィンモノマーを重合させることによって作製されるバイポリマー、エチレン及び2つの異なるオレフィンモノマーを重合させることによって作製されるターポリマー、又はエチレン及び3つの異なるオレフィンモノマーを重合させることによって作製されるテトラポリマーであり得る。コポリマーであるポリオレフィンは、ブロックコポリマー又はランダムコポリマーであり得る。
【0036】
(A)ポリエチレンポリマーを作製するために使用されるオレフィン官能性モノマーの例は、エチレン、プロペン、(C4~C20)アルファ-オレフィン、環状アルケン(例えば、ノルボルネン)、ジエン(例えば、1,3-ブタジエン)、不飽和カルボン酸エステル、及びオレフィン官能性加水分解性シランである。(C4~C20)アルファ-オレフィンの例は、1-ブテン、1-ヘキセン、又は1-オクテン等の(C4~C8)アルファ-オレフィン、及び(C10~C20)アルファ-オレフィンである。ジエンの例は、1,3-ブタジエンである。不飽和カルボン酸エステルの例は、アクリル酸アルキル、メタクリル酸アルキル、及びカルボン酸ビニル(例えば、酢酸ビニル)である。オレフィン官能性加水分解性シランの例は、ビニルトリアルコキシシラン、ビニルトリス(ジアルキルアミノ)シラン、及びビニル(トリオキシモ)シランである。
【0037】
いくつかの実施形態では、(A)ポリエチレンポリマーは、エチレン系ポリマーである。エチレン系ポリマーは、51~100重量%のエチレンの重合から誘導されたエチレン単位と、49~0重量%の1つ、あるいは2つのオレフィン官能性モノマー(コモノマー)の重合から誘導されたコモノマー単位と、を含む。コモノマーは、プロピレン、(C4~C20)アルファ-オレフィン、及び1,3-ブタジエンから選択され得る。(C4~C20)アルファ-オレフィンは、1-ブテン、1-ヘキセン、又は1-オクテン等の(C4~C8)アルファ-オレフィンであり得る。
【0038】
好適なエチレン系ポリマーの例は、ポリエチレンホモポリマー、エチレン/(C4~C20)アルファ-オレフィンコポリマー、エチレン/プロピレンコポリマー、エチレン/プロピレン/ジエンモノマー(ethylene/propylene/diene monomer、EPDM)コポリマー、例えば、エチレン/プロピレン/1,3-ブタジエンターポリマー、及びエチレン/1-ブテン/スチレンコポリマーである。好適なエチレン/(C4~C20)アルファ-オレフィンコポリマーの例は、エチレン/1-ブテンコポリマー、エチレン/1-ヘキセンコポリマー、及びエチレン/1-オクテンコポリマーである。エチレン系ポリマーは、超低密度ポリエチレン(ultra-low-density polyethylene、ULDPE)、極低密度ポリエチレン(very low-density polyethylene、VLDPE)、直鎖低密度ポリエチレン(linear low-density polyethylene、LLDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、中密度ポリエチレン(medium-density polyethylene、MDPE)、高密度ポリエチレン(high-density polyethylene、HDPE)、又は超高密度ポリエチレン(ultra-high-density polyethylene、UHDPE)であり得る。エチレン系ポリマーの多くは、The Dow Chemical Companyによって、AFFINITY、ATTANE、DOWLEX、ENGAGE、FLEXOMER、又はINFUSEのような商品名で販売されている。他のエチレン系ポリマーは、TAFMER、EXCEED、及びEXACT等の商品名で他の供給業者によって販売されている。LDPE及びLLDPEは、異なる重合条件下でどのように作製されるかによって組成的に異なる。すなわち、LDPEは、高圧重合反応器において、フリーラジカル開始剤(過酸化物又はO2)の存在下で、オレフィン重合触媒なしで作製されるが、LLDPEは、標準圧力重合反応器において、オレフィン重合触媒の存在下で、フリーラジカル開始剤の非存在下で作製される。
【0039】
いくつかの実施形態では、(A)ポリエチレンポリマーは、1つのエチレン系ポリマーのみ(例えば、LLDPEのみ、又はLDPEのみ、又はMDPEのみ、又はHDPEのみ)のポリマーからなる。いくつかの実施形態では、(A)ポリエチレンポリマーは、LDPEからなる。(A)ポリエチレンポリマーがLDPEからなる場合、いくつかのそのような実施形態では、架橋性ポリオレフィン配合物は、LDPE以外のいかなる有機ポリマーも含んでいなくてもよい。
【0040】
他の実施形態では、(A)ポリエチレンポリマーは、2つ以上の異なるエチレン系ポリマーのブレンドを含む。いくつかの実施形態では、ブレンドの2つ以上の異なるエチレン系ポリマーは、少なくとも1つのLDPEを含む。
【0041】
架橋性ポリオレフィン配合物は、60.0~99.9重量%の(A)ポリエチレンポリマー、あるいは、70.0~99.9重量%の(A)ポリエチレンポリマー、あるいは、80.0~99.9重量%の(A)ポリエチレンポリマー、あるいは、90.0~99.9重量%の(A)ポリエチレンポリマー、を、全て架橋性ポリオレフィン配合物の総重量に基づいて含み得る。
【0042】
式(I)、(Ia)、又は(Ib)のいくつかの実施形態では、R1~R7は各々、Hであり、(B)アリールケトンが式(Ia)のものである場合、これは下記式(Ia-1)の(B)アリールケトンであり、(B)アリールケトンが式(Ib)のものである場合、これは上記式(Ib-1)の(B)アリールケトンである。いくつかの実施形態では、R1及びR2は、それらが結合している式(I)、(Ia)、又は(Ib)中の炭素原子と一緒に結合して、1つの縮合6員アリール環を形成し、残りのR3~R6は各々、Hである。いくつかの実施形態では、R3及びR4は、それらが結合している式(I)、(Ia)、又は(Ib)中の炭素原子と一緒に結合して、1つの縮合6員アリール環を形成し、残りのR1、R2、R5、及びR6は各々、Hである。いくつかの態様では、R4及びR5は、それらが結合している式(I)、(Ia)、又は(Ib)中の炭素原子と一緒に結合して、1つの縮合6員アリール環を形成し、残りのR1~R3及びR6は各々、Hであり、これは、上記式(Ia-2)の(B)アリールケトンである。いくつかの実施形態では、R5及びR6は、それらが結合している式(I)、(Ia)、又は(Ib)中の炭素原子と一緒に結合して、1つの縮合6員アリール環を形成し、残りのR1~R4は各々、Hである。いくつかの態様では、R2、R3、及びR4は、それらが結合している式(I)、(Ia)、又は(Ib)中の炭素原子と一緒に結合して、2つの縮合6員アリール環を形成し、R1、R5、及びR6は各々、Hであり、これは、上記式(Ia-3)の(B)アリールケトンである。
【0043】
架橋性ポリオレフィン配合物及びそれから作製される架橋ポリオレフィン生成物は、式(I)の(B)アリールケトン以外のいかなる電圧安定剤化合物も含んでいなくてもよい。
【0044】
架橋性ポリオレフィン配合物及びそれから作製される架橋ポリオレフィン生成物は、それぞれ、0.1~3.0重量%の(B)式(I)のアリールケトン、あるいは、0.2~2.0重量%の(B)式(I)のアリールケトン、あるいは、0.3~1.4重量%の(B)式(I)のアリールケトン、あるいは、0.4~1.2重量%の(B)式(I)のアリールケトン、あるいは、0.45~1.04重量%の(B)式(I)のアリールケトン、あるいは、0.5±0.1重量%の(B)式(I)のアリールケトン、あるいは、1.0±0.2重量%の(B)式(I)のアリールケトンを、全て架橋性ポリオレフィン配合物の総重量又は架橋ポリオレフィン生成物の総重量に基づいて含有し得る。
【0045】
構成成分(C)有機過酸化物:炭素原子、水素原子、及び2つ以上の酸素原子を含有し、少なくとも1つの-O-O-基を有するが、但し、2つ以上の-O-O-基があるとき、各-O-O-基は、1つ以上の炭素原子を介して、別の-O-O-基に間接的に結合していることを条件とする分子、又はかかる分子の集合。成分(A)、(B)、及び(C)を含む架橋性ポリオレフィン配合物を(C)有機過酸化物の分解温度以上の温度に加熱することを含む硬化のために、(C)有機過酸化物を架橋性ポリオレフィン配合物に添加してよい。(C)有機過酸化物は、式RO-O-O-RO[式中、各ROは、独立して、(C1~C20)アルキル基であるか、又は(C6~C20)アリール基である]のモノペルオキシドであってもよい。各(C1~C20)アルキル基は独立して、非置換であるか、又は1つ若しくは2つの(C6~C12)アリール基で置換されている。各(C6~C20)アリール基は、非置換であるか、又は1~4つの(C1~C10)アルキル基で置換されている。あるいは、(C)は、式RO-O-O-R-O-O-RO[式中、Rは、(C2~C10)アルキレン、(C3~C10)シクロアルキレン、又はフェニレンなどの二価炭化水素基であり、各ROは、上に定義されている通りである]のジペルオキシドであってもよい。(C)有機過酸化物は、ビス(1,1-ジメチルエチル)ペルオキシド、ビス(1,1-ジメチルプロピル)ペルオキシド、2,5-ジメチル-2,5-ビス(1,1-ジメチルエチルペルオキシ)ヘキサン、2,5-ジメチル-2,5-ビス(1,1-ジメチルエチルペルオキシ)ヘキシン、4,4-ビス(1,1-ジメチルエチルペルオキシ)吉草酸、ブチルエステル、1,1-ビス(1,1-ジメチルエチルペルオキシ)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、ベンゾイルパーオキサイド、tert-ブチルペルオキシベンゾエート、ジ-tert-アミルペルオキシド(「DTAP」)、ビス(アルファ-t-ブチル-ペルオキシイソプロピル)ベンゼン(「BIPB」)、イソプロピルクミルt-ブチルペルオキシド、t-ブチルクミルペルオキシド、ジ-t-ブチルペルオキシド、2,5-ビス(t-ブチルペルオキシ)-2,5-ジメチルヘキサン、2,5-ビス(t-ブチルペルオキシ)-2,5-ジメチルヘキシン-3,1,1-ビス(t-ブチルペルオキシ)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、イソプロピルクミルクミルペルオキシド、ブチル4,4-ジ(tert-ブチルペルオキシ)バレレート、又はジ(イソプロピルクミル)ペルオキシド、又はジクミルペルオキシドであり得る。(C)有機過酸化物は、ジクミルペルオキシドであり得る。いくつかの態様では、2つ以上の(C)有機過酸化物のブレンドのみ、例えば、t-ブチルクミルペルオキシドとビス(t-ブチルペルオキシイソプロピル)ベンゼンとの20:80(重量/重量)ブレンド(例えば、Arkemaより市販のLUPEROX D446B)が使用される。いくつかの態様では、少なくとも1つの、あるいは各(C)有機過酸化物は、1つの-O-O-基を含有する。(C)有機過酸化物は、担体混合物の、あるいは架橋性ポリオレフィン配合物の0.29~0.44重量%、あるいは0.30~39重量%、あるいは0.30~0.37重量%であり得る。
【0046】
任意選択的な成分(D)スコーチ抑制剤:早期硬化を阻害する分子、又はかかる分子の集合体。スコーチ抑制剤の例は、ヒンダードフェノール、半ヒンダードフェノール、TEMPO、TEMPO誘導体、1,1-ジフェニルエチレン、2,4-ジフェニル-4-メチル-1-ペンテン(アルファ-メチルスチレンダイマー又はAMSDとしても知られている)、及び米国特許第6277925(B1)号の第2欄、62行目~第3欄、46行目に記載されているアリル含有化合物である。いくつかの態様では、架橋性ポリオレフィン配合物及び架橋ポリオレフィン生成物は、(D)を含まない。存在する場合、(D)スコーチ抑制剤は、架橋性ポリオレフィン配合物の0.01~1.5重量%、あるいは0.05~1.2重量%、あるいは0.1~1.0重量%であり得る。
【0047】
任意選択的な成分(E)酸化防止剤:酸化を阻害する有機分子、又はかかる分子の集合体。(E)酸化防止剤は、架橋性ポリオレフィン配合物及び/又は架橋ポリオレフィン生成物に酸化防止特性を付与するように機能する。好適な(E)の例は、ビス(4-(1-メチル-1-フェニルエチル)フェニル)アミン(例えば、NAUGARD445)、2,2’-メチレン-ビス(4-メチル-6-t-ブチルフェノール)(例えば、VANOX MBPC)、2,2’-チオビス(2-t-ブチル-5-メチルフェノール(CAS番号90-66-4、4,4’-チオビス(2-t-ブチル-5-メチルフェノール)(4,4’-チオビス(6-tert-ブチル-m-クレゾール)としても知られている)、CAS番号96-69-5、市販のLOWINOX TBM-6)、2,2’-チオビス(6-t-ブチル-4-メチルフェノール(CAS番号90-66-4、市販のLOWINOX TBP-6)、トリス[(4-tert-ブチル-3-ヒドロキシ-2,6-ジメチルフェニル)メチル]-1,3,5-トリアジン-2,4,6-トリオン)(例えば、CYANOX1790)、ペンタエリスリトールテトラキス(3-(3,5-ビス(1,1-ジメチルエチル)-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート(例えば、IRGANOX1010、CAS番号6683-19-8)、3,5-ビス(1,1-ジメチルエチル)-4-ヒドロキシベンゼンプロパン酸2,2’-チオジエタンジイル(thiodiethanediyl)エステル(例えば、IRGANOX1035、CAS番号41484-35-9)、ジステアリルチオジプロピオネート(「DSTDP」)、ジラウリルチオジプロピオネート(例えば、IRGANOX PS800)、ステアリル3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート(例えば、IRGANOX1076)、2,4-ビス(ドデシルチオメチル)-6-メチルフェノール(IRGANOX1726)、4,6-ビス(オクチルチオメチル)-o-クレゾール(例えば、IRGANOX1520)、及び2’,3-ビス[[3-[3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル]プロピオニル]]プロピオノヒドラジド(IRGANOX1024)である。いくつかの態様では、(E)は、4,4’-チオビス(2-t-ブチル-5-メチルフェノール)(4,4’-チオビス(6-tert-ブチル-m-クレゾール)としても知られている)、2,2’-チオビス(6-t-ブチル-4-メチルフェノール、トリス[(4-tert-ブチル-3-ヒドロキシ-2,6-ジメチルフェニル)メチル]-1,3,5-トリアジン-2,4,6-トリオン、ジステアリルチオジプロピオネート、又はジラウリルチオジプロピオネート、又はこれらのいずれか2つ以上の組み合わせである。組み合わせは、トリス[(4-tert-ブチル-3-ヒドロキシ-2,6-ジメチルフェニル)メチル]-1,3,5-トリアジン-2,4,6-トリオンとジステアリルチオジプロピオネートであり得る。いくつかの態様では、架橋性ポリオレフィン配合物及び架橋ポリオレフィン生成物は、(E)を含まない。存在する場合、(E)酸化防止剤は、架橋性ポリオレフィン配合物の0.01~1.5重量%、あるいは0.05~1.2重量%、あるいは0.1~1.0重量%であり得る。
【0048】
任意選択的な構成成分(F)充填剤:ホスト材料の空間を占め、任意選択的にホスト材料の機能に影響を与える、微細に分割された微粒子の固体又はゲル。(F)充填剤は、焼成粘土、有機粘土、又はCabot CorporationからCAB-O-SILの商品名で市販されているものなどの疎水化ヒュームドシリカであってもよい。(F)充填剤は、難燃効果を有し得る。いくつかの態様では、架橋性ポリオレフィン配合物及び架橋ポリオレフィン生成物は、(F)を含まない。存在する場合、(F)充填剤は、架橋性ポリオレフィン配合物の1~40重量%、あるいは2~30重量%、あるいは5~20重量%であり得る。
【0049】
(F)充填剤に関しては、いくつかの態様では、架橋性ポリオレフィン配合物は、酸化アルミニウム、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、シリカ、二酸化チタン、及びそれらの混合物からなる群から選択される無機充填剤を、20重量%以上含有しないか、あるいは15重量%以上含有しないか、あるいは10重量%以上含有しないか、あるいは含まない。いくつかの態様では、架橋性ポリオレフィン配合物は、Alを含有する固体、Caを含有する固体、Mgを含有する固体、Siを含有する固体、Tiを含有する固体、及びそれらの混合物からなる群から選択されるいかなる無機充填剤も、20重量%以上含有しないか、あるいは15重量%以上含有しないか、あるいは10重量%以上含有しないか、あるいは含まない。いくつかの態様では、架橋性ポリオレフィン配合物は、シルセスキオキサン、あるいは成分(B)を除く任意のシロキサンを含まない。いくつかの態様では、架橋性ポリオレフィン配合物は、シルセスキオキサン及び上述の無機充填剤の群のうちのいずれか1つを含まない。誤解を避けるために、「無機充填剤」という用語には、カーボンブラックは含まれていない。
【0050】
任意選択的な成分(G)難燃剤:燃焼を阻害する分子若しくは物質、又はかかる分子の集合体。(G)は、ハロゲン化化合物又はハロゲンを含まない化合物であり得る。(G)ハロゲン化(G)難燃剤の例は、有機塩化物及び有機臭化物であり、有機塩化物の例は、クロレンド酸誘導体及び塩素化パラフィンである。有機臭化物の例は、デカブロモジフェニルエーテル、デカブロモジフェニルエタン、臭素化ポリスチレン、臭素化カーボネートオリゴマー、臭素化エポキシオリゴマー、テトラブロモフタル酸無水物、テトラブロモビスフェノールA、及びヘキサブロモシクロドデカンなどのポリマー性臭素化化合物である。典型的には、ハロゲン化(G)難燃剤は、その効率を向上させるために相乗剤と組み合わせて使用される。相乗剤は、三酸化アンチモンであり得る。ハロゲンを含まない(G)難燃剤の例は、無機鉱物、有機窒素膨張性化合物、及びリン系膨張性化合物である。無機鉱物の例は、水酸化アルミニウム及び水酸化マグネシウムである。リン系膨張性化合物の例は、有機ホスホン酸、ホスホネート、ホスフィネート、ホスホナイト、ホスフィナイト、ホスフィンオキシド、ホスフィン、ホスファイト、リン酸塩、窒化塩化リン、アミドリン酸エステル、リン酸アミド、ホスホン酸アミド、ホスフィン酸アミド、メラミン、並びにメラミンポリホスフェート、メラミンピロホスフェート及びメラミンシアヌレートを含むそれらのメラミン誘導体、並びにこれらの材料のうちの2つ以上の混合物である。例には、フェニルビスドデシルホスフェート、フェニルビスネオペンチルホスフェート、フェニルエチレン水素ホスフェート、フェニルビス-3,5,5’トリメチルヘキシルホスフェート)、エチルジフェニルホスフェート、2エチルヘキシルジ(p-トリル)ホスフェート、ジフェニル水素ホスフェート、ビス(2-エチル-ヘキシル)パラ-トリルホスフェート、トリトリルホスフェート、ビス(2-エチルヘキシル)-フェニルホスフェート、トリ(ノニルフェニル)ホスフェート、フェニルメチル水素ホスフェート、ジ(ドデシル)p-トリルホスフェート、トリクレシルホスフェート、トリフェニルホスフェート、トリフェニルホスフェート、ジブチルフェニルホスフェート、2-クロロエチルジフェニルホスフェート、p-トリルビス(2,5,5’-トリメチルヘキシル)ホスフェート、2-エチルヘキシルジフェニルホスフェート、及びジフェニル水素ホスフェートが含まれる。米国特許第6,404,971号で記載されているリン酸エステルの種類は、リン系難燃剤の例である。追加の例には、ビスフェノールAジホスフェート(BAPP)(Adeka Palmarole)及び/又はレゾルシノールビス(ジフェニルホスフェート)(Fyroflex RDP)(Supresta、ICI)などの液体ホスフェート、ポリリン酸アンモニウム(APP)、ピペラジンピロホスフェート、及びピペラジンポリホスフェートなどの固体リンが含まれる。ポリリン酸アンモニウムは、しばしば、メラミン誘導体などの難燃性共添加剤と共に使用される。Melafine(DSM)(2,4,6-トリアミノ-1,3,5-トリアジン、微細粉砕メラミン)もまた有用である。いくつかの態様では、架橋性ポリオレフィン配合物及び架橋ポリオレフィン生成物は、(G)を含まない。存在する場合、(G)は、架橋性ポリオレフィン配合物の0.01~70重量%、あるいは0.05~40重量%、あるいは1~20重量%の濃度であり得る。
【0051】
任意選択的な構成成分(H)ヒンダードアミン安定剤:少なくとも1つの立体的にかさ高い有機基に結合し、劣化又は分解の阻害剤として機能する塩基性窒素原子を含有する分子、又はかかる分子の集合体。(H)は、立体的障害アミノ官能基を有し、酸化的分解を阻害し、(C)有機過酸化物を含有する架橋性ポリオレフィン配合物の実施形態の貯蔵寿命を延ばすこともできる化合物である。好適な(H)の例は、ブタン二酸ジメチルエステル、4-ヒドロキシ-2,2,6,6-テトラメチル-1-ピペリジン-エタノールを有するポリマー(CAS番号65447-77-0、市販のLOWILITE62)、及びN,N’-ビスホルミル-N,N’-ビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジニル)-ヘキサメチレンジアミン(CAS番号124172-53-8、市販のUvinul 4050H)である。いくつかの態様では、架橋性ポリオレフィン配合物及び架橋ポリオレフィン生成物は、(H)を含まない。存在する場合、(H)ヒンダードアミン安定剤は、架橋性ポリオレフィン配合物の0.001~1.5重量%、あるいは0.002~1.2重量%、あるいは0.002~1.0重量%、あるいは0.005~0.5重量%、あるいは0.01~0.2重量%、あるいは0.05~0.1重量%であり得る。
【0052】
任意選択的な成分(I)トリー抑制剤:水及び/若しくは電気トリーイングを阻害する分子、又はかかる分子の集合体。トリー抑制剤は、水トリー抑制剤又は電気トリー抑制剤であり得る。水トリー抑制剤は、電界と湿気又は水分との複合効果にさらされるとポリオレフィンを劣化させるプロセスである、水トリーイングを阻害する化合物である。電圧安定剤とも呼ばれる電気トリー抑制剤は、部分的な放電に起因する固体電気絶縁における電気的前駆破壊プロセスである、電気トリーイングを阻害する化合物である。電気トリーイングは、水がない場合に発生し得る。水トリーイング及び電気トリーイングは、コーティングがポリオレフィンを含有する、コーティングされた導体を含む電気ケーブルについての問題である。(I)は、ポリ(エチレングリコール)(PEG)であり得る。いくつかの態様では、架橋性ポリオレフィン配合物及び架橋ポリオレフィン生成物は、(I)を含まない。存在する場合、(I)トリー抑制剤は、架橋性ポリオレフィン配合物の0.01~1.5重量%、あるいは0.05~1.2重量%、あるいは0.1~1.0重量%であり得る。
【0053】
任意選択的な成分(J)メチルラジカル捕捉剤:メチルラジカルと反応する分子、又はかかる分子の集合体。(J)は、架橋性ポリオレフィン配合物又は架橋ポリオレフィン生成物中のメチルラジカルと反応する。(J)は、2,2,6,6-テトラメチル-1-ピペリジニル-N-オキシル、又は1,1-ジアリールエチレンの「TEMPO」誘導体であり得る。TEMPO誘導体の例は、4-アクリルオキシ-2,2,6,6-テトラメチル-1-ピペリジニル-N-オキシル(CAS番号21270-85-9、「アクリレートTEMPO」)、4-アリルオキシ-2,2,6,6-テトラメチル-1-ピペリジニル-N-オキシル(CAS番号217496-13-4、「アリルTEMPO」)、ビス(2,2,6,6-テトラメチル-1-ピペリジニル-N-オキシル)セバケート(CAS番号2516-92-9、「ビスTEMPO」))、N,N-ビス(アクリロイル-4-アミノ)-2,2,6,6-テトラメチル-1-ピペリジニル-N-オキシル(CAS番号1692896-32-4、「ジアクリルアミドTEMPO」)、及びN-アクリロイル-4-アミノ-2,2,6,6-テトラメチル-1-ピペリジニル-N-オキシル(CAS番号21270-88-2、「モノアクリルアミドTEMPO」)である。1,1-ジアリールエチレンの例は、1,1-ジフェニルエチレン及びアルファ-メチルスチレンである。いくつかの態様では、架橋性ポリオレフィン配合物及び架橋ポリオレフィン生成物は、(J)を含まない。存在する場合、(J)メチルラジカル捕捉剤は、架橋性ポリオレフィン配合物の0.01~1.5重量%、あるいは0.05~1.2重量%、あるいは0.1~1.0重量%であり得る。
【0054】
任意選択的な成分(K)架橋助剤:骨格又は環の部分構造、並びにそれに結合した1つ、あるいは2つ以上のプロペニル、アクリレート、及び/若しくはビニル基を含有する分子であって、当該部分構造が、炭素原子及び任意選択で窒素原子で構成される分子、又はそのような分子の集合体。(K)架橋助剤は、ケイ素原子を含まない。(K)架橋助剤は、次の制約(i)~(v)のうちのいずれか1つによって説明されるようなプロペニル官能性の従来の助剤であり得る:(i)(K)が、2-アリルフェニルアリルエーテル、4-イソプロペニル-2,6-ジメチルフェニルアリルエーテル、2,6-ジメチル-4-アリルフェニルアリルエーテル、2-メトキシ-4-アリルフェニルアリルエーテル、2,2’-ジアリルビスフェノールA、O,O’-ジアリルビスフェノールA、又はテトラメチルジアリルビスフェノールAであること、(ii)(K)が、2,4-ジフェニル-4-メチル-1-ペンテン又は1,3-ジイソプロペニルベンゼンであること、(iii)(K)が、トリアリルイソシアヌレート(「TAIC」)、トリアリルシアヌレート(「TAC」)、トリアリルトリメリテート(「TATM」)、N,N,N’,N’,N”,N”-ヘキサアリル-1,3,5-トリアジン-2,4,6-トリアミン(「HATATA」、N2,N2,N4,N4,N6,N6-ヘキサアリル-1,3,5-トリアジン-2,4,6-トリアミンとしても知られる)、トリアリルオルトホルメート、ペンタエリスリトールトリアリルエーテル、トリアリルシタレート、又はトリアリルアクロネートであること、(iv)(K)が、(i)におけるプロペニル官能性助剤のうちの任意の2つ混合物であること。あるいは、(K)は、トリメチロールプロパントリアクリレート(「TMPTA」)、トリメチロールプロパントリメチルアクリレート(「TMPTMA」)、エトキシル化ビスフェノールAジメタクリレート、1,6-ヘキサンジオールジアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、トリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌレートトリアクリレート、及びプロポキシ化グリセリルトリアクリレートから選択されるアクリレート官能性架橋助剤であってもよい。あるいは、(K)は、少なくとも50重量%の1,2-ビニル含有量を有するポリブタジエン、及びトリビニルシクロヘキサン(「TVCH」)から選択されるビニル官能性架橋助剤であってもよい。あるいは、(K)は、米国特許第5,346,961号又は米国特許第4,018,852号に記載されている架橋助剤であってもよい。あるいは、(K)は、前述の架橋助剤の組み合わせ又はそのうちの任意の2つ以上であってもよい。いくつかの態様では、架橋性ポリオレフィン配合物及び架橋ポリオレフィン生成物は、(K)を含まない。存在する場合、(K)架橋助剤は、架橋性ポリオレフィン配合物の0.01~4.5重量%、あるいは0.05~2重量%、あるいは0.1~1重量%、あるいは0.2~0.5重量%であり得る。
【0055】
任意選択的な成分(L)成核剤:ポリオレフィンポリマーの結晶化速度を向上させる有機又は無機添加剤。(L)の例は、炭酸カルシウム、二酸化チタン、硫酸バリウム、超高分子量ポリエチレン、フタル酸水素カリウム、安息香酸化合物、安息香酸ナトリウム化合物、ビシクロ[2.2.1]ヘプタン-2,3-ジカルボン酸二ナトリウム、モノグリセリン酸亜鉛、及び1,2-シクロヘキサンジカルボン酸、カルシウム塩、ステアリン酸亜鉛である。いくつかの態様では、架橋性ポリオレフィン配合物及び架橋ポリオレフィン生成物は、(L)を含まない。存在する場合、(L)は、架橋性ポリオレフィン配合物の0.01~1.5重量%、あるいは0.05~1.2重量%、あるいは0.1~1.0重量%の濃度であり得る。
【0056】
任意成分(M)着色剤(例えば、カーボンブラック又はTiO2)。カーボンブラック:高い表面積対体積比を有するが、活性炭のそれよりも低い、微結晶化形態の準結晶炭素。カーボンブラックの例は、ファーネスカーボンブラック、アセチレンカーボンブラック、導電性カーボン(例えば、カーボンファイバー、カーボンナノチューブ、グラフェン、グラファイト、及び膨張グラファイト小板)である。いくつかの態様では、架橋性ポリオレフィン配合物及び架橋ポリオレフィン生成物は、(M)を含まない。存在する場合、(M)は、架橋性ポリオレフィン配合物の0.01~40重量%、あるいは0.05~35重量%、あるいは0.1~20重量%、あるいは0.5~10重量%、あるいは1~5重量%であり得る。
【0057】
更に、架橋性ポリオレフィン配合物は、独立して、担体樹脂、潤滑剤、加工助剤、スリップ剤、可塑剤、界面活性剤、エキステンダー油、酸捕捉剤、及び金属不活性化剤から選択される1つ以上の他の任意選択的な添加剤を更に含んでいてもよい。
【0058】
架橋ポリオレフィン生成物はまた、(C)有機過酸化物の反応のアルコールとケトンとの副生成物などの硬化副生成物も含有し得る。架橋性ポリオレフィン配合物が(E)酸化防止剤などのなんらかの任意選択的な添加剤又は成分のうちの1つ以上を更に含有する場合、架橋ポリオレフィン生成物は、(E)などの任意選択的な添加剤若しくは成分のうちのいずれか1つ以上、又は架橋性ポリオレフィン配合物の硬化中にそれから形成される1つ以上の反応生成物も含有し得る。架橋ポリオレフィン生成物は、分割固体形態又は連続形態であり得る。分割固体形態は、顆粒、ペレット、粉末、又はそれらの任意の2つ以上の組み合わせを含み得る。連続形態は、成形部品(例えば、射出成形部品)又は押出成形部品(例えば、コーティングされた導体又はケーブル)であり得る。
【0059】
コーティングされた導体。コーティングされた導体は、絶縁された導電体であり得る。絶縁された導電体は、低電圧(「LV」、>0~<5キロボルト(kV))、中電圧(「MV」、5~<69kV)、高電圧(「HV」、69~230kV)、又は超高電圧(「EHV」、>230kV)のデータ伝送及び送電/配電用途に使用するための電力ケーブルを含む、コーティングされた金属ワイヤ又は電気ケーブルであり得る。「ワイヤ」は、例えば、銅又はアルミニウムなどの伝導性金属などの伝導性材料の単一の撚り線又はフィラメントを意味する。「ケーブル」と「電力ケーブル」は同義語であり、シース、ジャケット(保護外側ジャケット)、又はコーティングと称され得る被覆内に配置された少なくとも1つのワイヤを含む絶縁された導電体を意味する。絶縁導電体は、中電圧、高電圧、又は超高電圧用途に使用するために設計及び構成され得る。好適なケーブル設計の例は、米国特許第5,246,783号、同第6,496,629号、及び同第6,714,707号に示されている。
【0060】
絶縁導電体は、導体/伝送コアと、導体/伝送コアを外部環境から保護及び絶縁するためにその周囲に配置された外側単層被覆又は外側多層被覆とを含み得る。導体/伝送コアは、1つ以上の金属ワイヤで構成されてもよい。導体/伝送コアが2つ以上の金属ワイヤを収容するとき、金属ワイヤは個別のワイヤ束に細分されてもよい。導体/伝送コア内の各ワイヤは、束ねられているか束ねられていないかに関わらず、絶縁層で個々にコーティングされてもよく、及び/又は個別の束が絶縁層でコーティングされてもよい。単層被覆又は多層被覆(例えば、単層若しくは多層コーティング、又はシース)は主に、日光、水、熱、酸素、他の伝導性材料(例えば、短絡防止のため)、及び/又は他の腐食性物質(例えば、化学ガス)などの外部環境から導体/伝送コアを保護又は絶縁するように機能する。
【0061】
ある絶縁導電体から次の絶縁導電体への単層又は多層被覆は、それぞれの意図された使用に応じて異なって構成され得る。例えば、断面で見ると、絶縁された導電体の多層被覆は、その最内層からその最外層まで次の構成要素を有するように順次構成されてもよい:内側半導体層、架橋ポリオレフィン生成物(本発明の架橋生成物)を含む架橋ポリオレフィン絶縁層、外側半導体層、金属シールド、及び保護シース。層及びシースは、円周方向及び同軸方向(長手方向)に連続している。金属シールド(接地)は、同軸方向に連続しており、円周方向には連続(層)又は不連続(テープ又はワイヤ)のいずれかである。意図する用途に応じて、絶縁光ファイバ用の多層被覆は、半導体層及び/又は金属シールドを省略してもよい。外側半導体層は、存在する場合、架橋ポリオレフィン層に結合される又は架橋ポリオレフィン層から剥離可能な過酸化物架橋半導体生成物で構成され得る。
【0062】
いくつかの態様では、被覆導体を作製する方法であって、導体/伝送コア上に架橋性ポリオレフィン配合物の層を備えるコーティングを押し出して、被覆されたコアを得ることと、架橋性ポリオレフィン配合物を硬化するのに適した連続加硫(CV)条件で構成されたCV装置に当該被覆されたコアを通して、被覆導体を得ることとを含む、方法である。CV条件には、温度、雰囲気(例えば、窒素ガス)、及びCV装置を通るライン速度又は通過期間が含まれる。好適なCV条件では、CV装置を出るコーティングされた導体を得ることができ、コーティングされた導体は、架橋ポリオレフィン層の層を硬化することによって形成された架橋ポリオレフィン層を含有する。
【0063】
導電する方法。本発明の導電する方法は、絶縁された導電体の実施形態を含む本発明のコーティングされた導体を使用することができる。また、絶縁された導電体を備える本発明のコーティングされた導体を使用して、データを伝送する方法も企図される。
【0064】
絶縁破壊強度(絶縁耐力):電気絶縁性材料が絶縁破壊事象を経験することなく、すなわち、導電性になることなく耐えることができる最大電界(印加された電圧を電極分離距離で除したもの)。標準的な電極分離距離を用いてボルトで表される。
【0065】
本明細書の任意の化合物、組成物、配合物、材料、混合物、又は反応生成物は、H、Li、Be、B、C、N、O、F、Na、Mg、Al、Si、P、S、Cl、K、Ca、Sc、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Ga、Ge、As、Se、Br、Rb、Sr、Y、Zr、Nb、Mo、Tc、Ru、Rh、Pd、Ag、Cd、In、Sn、Sb、Te、I、Cs、Ba、Hf、Ta、W、Re、Os、Ir、Pt、Au、Hg、Tl、Pb、Bi、ランタノイド、及びアクチノイドからなる群から選択される化学元素のうちのいずれか1つを含まないものであり得るが、但し、化合物、組成物、配合物、材料、混合物、又は反応生成物が本質的に必要とする化学元素(例えば、ポリエチレンに必要なC及びH、又はアルコールに必要なC、H、及びO)は除外されない。
【0066】
あるいは、異なる実施形態に先行する。ANSIは、American National Standards Instituteの組織(Washington,D.C.,USAに本部)である。ASMEは、American Society of Mechanical Engineers(New York City,New York,USAに本部)である。ASTMは、標準化組織ASTM International(West Conshohocken,Pennsylvania,USA)である。いずれの比較例も、例示目的のためにのみ使用され、先行技術ではない。「~を含まない」又は「~を欠いている」とは、完全な不在、あるいは検出不可能を意味している。IECは、国際電気標準会議(3 rue de Varemb,Case postale 131,CH-1211,Geneva 20,Switzerland、http://www.iec.ch.)である。IUPAC(International Union of Pure and Applied Chemistry)は、国際純正応用化学連合(IUPAC Secretariat(Research Triangle Park,North Carolina,USA))である。元素の周期表は、2018年5月1日のIUPAC版である。「May」は、必須ではなく、許可された選択肢を与える。「動作可能な(operative)」は、機能的に可能又は有効であることを意味する。「任意選択的な(任意選択的に)」とは、存在しない(又は除外される)か、あるいは存在する(又は含まれる)ことを意味する。特性は、標準の試験方法及び条件を使用して測定することができる。範囲は、端点、サブ範囲、及びその中に含まれる全体及び/又は小数の値を含むが、但し、整数の範囲は、小数を含まない。室温:23℃±1℃。
【0067】
特に明記しない限り、本明細書で使用される用語の定義は、2014年2月24日付のIUPAC Compendium of Chemical Technology(「Gold Book」)2.3.3版から得られる。
【0068】
密度は、ASTM D792-13、変位によるプラスチックの密度及び比重(相対密度)のための標準試験方法、方法B(水以外の液体、例えば、液体の2-プロパノール中の固体プラスチックを試験するための)に従って測定される。結果を、立方センチメートル当たりのグラム単位(g/cm3又はg/cc)で報告する。
【0069】
メルトインデックス(I2)は、ASTM D1238-04(190℃、2.16kg)、押出プラトメーターによる熱可塑性樹脂のメルトフローレートの標準試験方法に従って、以前は「条件E」として知られており、I2としても知られている190℃/2.16キログラム(kg)の条件を使用して測定される。結果を、10分当たりに溶出したグラム単位(g/10分)又は1.0分当たりのデシグラム(dg/1分)での等量で報告する。10.0dg=1.00g。
【0070】
本発明の実施形態はまた、以下の絶縁破壊強度試験方法を含む。明確にするために、方法の説明をセクション1~3に分割する。セクション1では、試験アセンブリを調製するために使用される材料を扱う。セクション2では、絶縁層を表す試験プラークを調製し、試験アセンブリを調製するための手順を扱う。試験アセンブリは、試験板(絶縁層)が導体ディスクの間に配置されている、絶縁層を表す試験板と2枚の導体ディスクとのサンドイッチを含む。セクション3では、漸増する試験電圧を試験アセンブリに印加し、絶縁層における絶縁破壊事象を検出する手順を扱う。
【0071】
セクション1:絶縁破壊強度試験方法(材料):導体は、複数の直径40ミリメートル(mm)のアルミニウムディスク及び複数の直径29mmのアルミニウムディスクであり、各ディスクの厚さは75マイクロメートルである。サンドイッチの全厚が350~500マイクロメートルとなるように、試験絶縁層を導体間に挟む。破壊後、Alディスクを除去し、破壊の位置で絶縁層の厚さを測定する。
【0072】
セクション2:絶縁破壊強度試験方法(電極及び試験プラークを試験アセンブリに組み立てる手順)。2段階熱成形プロセスで試験絶縁層のサンプルを調製する。工程1:ポリマーペレットを秤量する。秤量したペレットを圧縮型(8インチ×8インチの正方形の圧縮成形フレーム、厚さ約150~約900マイクロメートル)に入れる。ポリマーペレットを約7ポンド/平方インチ(psi)下で140℃になるまで3分間予熱する。同じ温度下で、約382psiの高圧に切り替え、3分間保持する。同じ圧力下で、得られたポリマープラークを約15分以内に室温まで冷却する。工程2:厚さ75マイクロメートルのアルミニウムシートから直径29mm及び40mmの複数の伝導性アルミニウム(Al)ディスクを切り抜く。伝導性Alディスクをプラーク(工程1で調製)の上下に置き、直径29mmのディスクを一方の側に、直径40mmのディスクを反対側に置く。2枚の伝導性Alディスクは互いに対向し、互いにほぼ同心円状に配置される。9対のこのような伝導性Alディスクの3×3アレイを、8インチ×8インチのポリマープラークの各側に間隔を空けて配置する。得られたアセンブリを、工程1と同じ圧縮型内において、同じプロトコル下で熱圧縮する。次いで、アセンブリを2つの黄銅電極の間に配置して、試験アセンブリを得る。各試験アセンブリは、9対の上部及び下部黄銅電極と、9対の上部及び下部伝導性Alディスクと、当該9対の上部及び下部伝導性Alディスクの間に挟まれた単一のプラークとを有する。
【0073】
試験アセンブリの部分1を
図1に示す。各試験アセンブリは、9つの部分1を有する。試験アセンブリの部分1は、それぞれ9対の上部黄銅電極11及び下部黄銅電極15のうちの1つと、それぞれ9対の上部伝導性Alディスク21及び下部伝導性Alディスク25のうちの1枚と、単一プラーク30の部分とを含む(
図1)。黄銅電極11及び15の各対は、電流を供給し、絶縁破壊を検出し、そこでの電圧を測定するように構成された装置(図示せず)と電気通信している。このような装置は周知であり、例えば、ASTM D149-20,Standard Test Method for Dielectric Breakdown Voltage and Dielectric Strength of Solid Electrical Insulating Materials at Commercial Power Frequencies;及びIEC 243-1,Methods of Test for Electrical Strength of Solid Insulating Materials Part 1:Tests at Power Frequenciesを参照されたい。黄銅電極11及び15は、それぞれ、その伝導性Alディスク21及び25の対に電流を印加するために使用される。上部伝導性Alディスク21は、独立して、下面22及び上面23を有し、そのディスク厚は、それらの間の距離(すなわち、22から23までの距離)である。下部伝導性Alディスク25は、独立して、下面27及び上面26を有し、そのディスク厚は、それらの間の距離(すなわち、26から27までの距離)である。プラーク30の異なる部分は、それぞれ、離間している異なる対の伝導性Alディスク21及び25の間に挟まれている。伝導性Alディスク21と25との間のプラーク30の厚さは、上部伝導性Alディスク21の下面22と下部伝導性Alディスク25の上面26との間の距離である。プラーク30の各部分は、独立して、上面31を有する。以下のセクション3における絶縁破壊強度の判定に使用されるプラーク30の部分の厚さTは、下部伝導性Alディスク25の上面26とプラーク30の上面31との間の距離である。この厚さTは、
図1において「}T」によって示され、セクション3において参照される絶縁破壊事象によって形成されるチャネルの位置で測定される。
【0074】
セクション3:絶縁破壊強度試験方法:試験電圧を増加させながら交流電流(AC)を試験アセンブリに印加し、絶縁破壊事象を検出する手順。上記で調製したアセンブリを絶縁油中に浸漬し、それを上部及び底部で黄銅電極と接触させる。電圧を印加する。破壊事象が起こるまで、500V/S(ボルト/秒、50Hz)の速度で電圧を徐々に増加させると、ポリマーを貫通するチャネルが形成される。破壊事象は、電流の突然の増加として検出される。電流事象におけるこのジャンプが起こったときに印加されたキロボルト(V)を記録する。このような破壊事象は、絶縁層に印加された電圧によってチャネルが形成されることに起因する。チャネルの位置における絶縁層の厚さを測定し、以下の実際の絶縁破壊強度の計算において絶縁厚さとして使用する:Eact=V/T(式中、Vは、キロボルト(kV)単位の破壊電圧であり、Tは、チャネルにおいて測定されたミリメートル(mm)単位の絶縁厚さであり、Eactは、キロボルト/ミリメートル(kV/mm)単位の実際の破壊強度である)。報告目的のために、以下の表では、実際の破壊強度Eactを、1.016ミリメートル(mm、40ミルに等しい)の厚さに対して正規化し、正規化破壊強度EとしてkV/mmで報告する。正規化絶縁破壊強度Eは、式1に従って算出される(式1):E=(V/T)*(T/T0)^(1/2)(式1)(式中、^(1/2)は、平方根を示し、Vは、破壊事象が起こったときに印加されたキロボルトであり、各Tは、絶縁層(プラーク、破壊の位置)の厚さの測定値であり、T0は、T/T0が破壊強度値を1.016mm厚に対して正規化するように、1.016mm厚(40ミルに相当)である)。絶縁破壊事象が起こる電圧を記録する。添加剤の有り無し両方で同じポリマーの破壊電界強度を比較することによって、電圧安定剤の有効性を評価する。
【0075】
本発明の絶縁破壊強度試験方法において、絶縁破壊事象が起こる電圧は、絶縁層の厚さに依存して変化する。kV/mmの単位を有する正規化絶縁破壊強度Eを、下記ワイブル統計法に従って周知の2パラメータワイブル統計を用いて解析する。
【0076】
ワイブル統計法。式2
【0077】
【数1】
に従って2パラメータワイブル統計法によってサイズNの試験サンプルセットについてエータ、η、及びベータ、βの絶縁破壊強度値を求める。Eは、上述のように求められた正規化電界強度(kV/mm)である。F(E)は、正規化電界強度Eで故障したサンプルセットのサンプルの累積分率である。適切な曲線当てはめを得るために、工程(1)及び(2)に従ってセットの各サンプルの中央値ランクを算出することによって、サンプルNのセットのF(E)を求める。(1)(サイズNのサンプルセットについて)1からNの昇順で、故障時の正規化電界強度Eをランク付けする;(2)ベルナード近似を用いて、式3:MR=F(E)=(i-0.3)/(N+0.4)(式3)(式中、iは1~Nの範囲である)(例えば、N=9の場合、第1のサンプルはi=1であり、第2のサンプルはi=2であり、以下同様)に従って各サンプルiの中央値ランク(MR)を決定する。グラフでは、y軸に1~99のスケールで累積分率F(E)の値をプロットし、それに対して、x軸には5~100kV/mm(又は値Eがプロットされるのに好都合であればどのような範囲でも)のスケールで正規化電界強度Eの値をプロットする。サンプルNのセットの累積分率F(E)及びEが分かると、式2に基づいて曲線当てはめを行って、エータ、η及びベータ、βの値が得られる。エータ、ηは、サンプルの63.2%が故障した電界強度に等しい。ベータ、βは、サンプルNの全て(100%)が故障した正規化電場強度Eの範囲に関連する。他の全ての条件が同じであれば、β値が高いほど、試験サンプルNが故障する電界(filed)強度の範囲が狭くなる。例えば、第1のサンプルセット(N=9)の第1のベータ、βは、第1のサンプルセットの全てのサンプルがE 16kV/mm~E 29kV/mmの範囲内(最低E 16kV/mmと最高E 29kV/mmとの間で13kV/mmの値幅)にある場合、第2のサンプルセットの全てのサンプルがE 16kV/mm~E 30kV/mmの範囲内(最低E 16kV/mmと最高E 30kV/mmとの間で14kV/mmの値幅)にある第2のサンプルセット(N=9)の第2のベータ、βよりも高くなる。
【0078】
CE0のベースライン値に比べた改善又は減少を求めるために使用される絶縁破壊強度値は、63.2%の故障確率値に対して予測される値エータ、ηであり、上記ワイブル統計を使用して正規化電界強度E値から求められる。また、上記ワイブル統計を使用して得られた90%信頼水準(上限及び下限)ベータ、β、値、bも報告する。他の全ての条件が同じであれば、β値が高いほど、試験サンプルNが故障する電界(filed)強度の範囲が狭くなり、したがって、90%信頼水準におけるEの範囲が狭くなる。
【0079】
絶縁層の厚さを含む他の全ての条件が同じであれば、絶縁破壊強度が生じる電圧が高いほど、絶縁材料の絶縁破壊強度は大きくなる。その絶縁破壊事象が起こる17個の対照プラーク(N=153又は155)の電圧に比べた、絶縁破壊事象が起こる試験プラーク(N=8又は9)の電圧の増加率(改善)又は減少率(劣化)を求める。増加率が大きいほど、絶縁破壊強度の改善が大きい。減少率が大きいほど、絶縁破壊強度の劣化が大きい。
【実施例】
【0080】
ポリエチレンポリマー(A)-1:低密度ポリエチレンホモポリマー-1(LDPE-1)。金属系重合触媒の非存在下でかつ少量(例えば、0.3~0.4重量%)のフリーラジカル開始剤(例えば、過酸化物又は過酸化物の混合物又はO2)及び1重量%のプロピレンである連鎖移動剤の存在下で、高圧反応器内においてエチレンを重合させることによって、LDPE-1を予め作製した。LDPE-1は0.920g/cm3の密度及び2.0g/10分のメルトインデックスを有する。
【0081】
本発明のアリールケトン(B)-1:R7がメチルである式(Ia-1)の化合物である1-アセトナフトン(すなわち、1-アセチルナフタレン)。
【0082】
本発明のアリールケトン(B)-2:R7がメチルである式(Ia-2)の化合物である9-アセチルアントラセン。
【0083】
本発明のアリールケトン(B)-3:R7がメチルである式(Ia-3)の化合物である1-アセチルピレン。
【0084】
本発明のアリールケトン(B)-4:R7がメチルである式(Ib-1)の化合物である2-アセトナフトン(すなわち、2-アセチルナフタレン)。
【0085】
比較アリールケトン1:以下の構造:
【0086】
【0087】
比較アリールケトン2:以下の構造:
【0088】
【0089】
比較アリールケトン3:以下の構造:
【0090】
【化8】
を有する化合物である4,4’-ビス(ジメチルアミノ)-ベンジル。
【0091】
比較アリールアルデヒド1:以下の構造:
【0092】
【化9】
を有する化合物である1-ピレンカルボキシアルデヒド。
【0093】
架橋性ポリオレフィン配合物の絶縁破壊強度に対する効果について、(B)式(I)のアリールケトン及び比較(本発明ではない)ケトンを含む試験化合物を使用して評価する。本発明の架橋性ポリオレフィン配合物は、(B)式(I)のアリールケトンである試験化合物及びポリエチレンポリマー(A)-1を含む。比較架橋性ポリオレフィン配合物は、比較(本発明ではない)アリールケトン、アリールアルデヒド(又は式(I)のものではない他の電圧安定剤)である試験化合物及びポリエチレンポリマー(A)-1を含む。試験配合物中の試験化合物の濃度が配合物の総重量に基づいて0.1~3.0重量%となるように、既知量の試験化合物をポリエチレンポリマー(A)-1に溶融配合することによって試験用配合物を調製する。別々に、絶縁破壊強度試験方法について先に記載した手順に従って配合物を試験プラークに加工し、絶縁破壊事象が起こる電圧を求める。上記ワイブル統計に従って求めた故障確率値が63.2%の場合のエータ値として結果を報告する。
【0094】
比較例0(「CE0」)。100.00重量%のポリエチレンポリマー(A)-1からなる安定剤を含まない比較配合物の単一バッチを調製する。安定剤を含まない比較配合物のバッチは、電圧安定剤も任意の添加剤も含まない。別個の実験において、安定剤を含まない比較配合物の異なるサンプルを溶融配合して17個の試験プラークにする。9対の電極の3×3アレイを使用して各試験プラークの絶縁破壊強度を測定して、153個の実際の絶縁破壊強度値を得る。絶縁破壊強度値を、下記式1に従って40mmのプラーク厚さに対して正規化する。CE0の正規化絶縁破壊強度値は、90%信頼水準、ベータが18.18~18.81kV/mm(下限から上限)である、18.49kV/mmのエータ、η、値(故障確率値63.2%の場合)である。故障確率値が63.2%の場合の改善率についての全ての比較及び本発明のエータ、η、値を、故障確率値が63.2%の場合のベースライン(改善されていない又は減少していない)の正規化絶縁破壊強度値としての18.5kV/mmと比較する。
【0095】
比較例1~4(CE1~CE4):別個の実験において、ポリエチレンポリマー(A)-1を、既知量の以下の表1に示す比較アリールケトン1~3又は比較アリールアルデヒド4のいずれか1つと溶融配合して、それぞれCE1~CE4の比較架橋性ポリオレフィン配合物を得る。絶縁破壊強度試験方法に従って配合物を試験する。試験結果を表2に示す。
【0096】
【0097】
【0098】
N/rは、報告なし。表2のデータによって示されるように、電圧安定剤である添加剤を含有しないCE0に比べて、ベンジル(CE2)及び1-ピレンカルボキシアルデヒド(CE4)は、それぞれ、絶縁破壊強度を改善又はわずかに改善した(電圧を増加させた)が、2-アセチルフルオレン(CE1)は、絶縁破壊強度を変化させず、4,4’-ビス(ジメチルアミノ)-ベンジル(CE3)は、絶縁破壊強度を低下させた(電圧を減少させた)。
【0099】
本発明の実施例1(IE1、予測):ポリエチレンポリマー(A)-1を0.1~3.0重量%のアリールケトン(B)-1(1-アセトナフトン)と溶融配合して、本発明の架橋性ポリオレフィン配合物IE1を得、ここで、重量%は、配合物IE1の総重量に基づく。
【0100】
本発明の実施例2~7(IE2~IE7):別個の実験において、ポリエチレンポリマー(A)-1を、以下の表3に従って既知量のアリールケトン(B)-2、(B)-3、又は(B)-4のいずれか1つと溶融配合して、IE2~IE7の本発明の架橋性ポリオレフィン配合物を得る。絶縁破壊強度試験方法に従って配合物を試験する。試験結果を表4に示す。
【0101】
【0102】
表3のデータは、IE2~IE7の架橋性ポリオレフィン配合物が本発明の架橋性ポリオレフィン配合物の例であることを示す。
【0103】
【0104】
表4のデータによって示されるように、電圧安定剤である添加剤を含有しないCE0に比べて、式(I)の全ての本発明のアリールケトンは、絶縁破壊強度を改善した(電圧を増加させた)。更に、IE2をIE3と、IE4をIE5と、そして、IE6をIE7と比較すると、絶縁破壊強度の改善は、配合物中のアリールケトンの濃度と正の相関を示した。
【0105】
本発明の実施例8(IE8、予測):ポリエチレンポリマー(A)-1を2.5重量%のアリールケトン(B)-1(1-アセトナフトン)と溶融配合して、第1の本発明の架橋性ポリオレフィン配合物を得る。1.0重量%の過酸化ジクミルをその中に浸漬して、IE8の第2の本発明の架橋性ポリオレフィン配合物を得る。重量%は、IE8の配合物の総重量に基づく。得られた本発明の配合物を120℃で1時間加熱し、それによって、IE8の本発明の架橋ポリオレフィン生成物を作製する。
【0106】
本発明の実施例9~13(IE9~IE13、予測):別個の実験において、アリールケトン(B)-1の代わりに同量のアリールケトン(B)-2、(B)-3、又は(B)-4のいずれか1つを使用することを除いてIE8の手順を繰り返して、本発明のIE9~IE13の架橋ポリオレフィン生成物を得る。
【国際調査報告】